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投稿者 SP' 日時 2001 年 3 月 14 日 20:20:52:

『宇宙人 第0の遭遇』(アルバート・K・ベンダー著、コンノケンイチ監訳、徳間書店)より。


  はじめに:「ベンダー・ミステリー」──私の先入観を覆した戦慄のコンタクト

 本書の監訳を依頼されたはよいが、実は困ってしまった。
 引き受けてから困ったもないものだが、「ベンダー・ミステリー」が話題になったのは三〇年以上も前のことで、あまり頭に残っていなかったのだ。また以前にアメリカで頻発していた「ブラックメン」の暗躍がテーマで、当時のUFOウエーブに便乗したオドロオドロしたフィクションものという印象しかなかったからである。
 自分がそうした感想しか持っていない本の監訳をするのはいかがなものかと思ったのである。
 とりあえず手持ちの資料を調べてみた。
 意外だったのは、「ベンダー・ミステリー」は当時の欧米でジョージ・アダムスキーの『宇宙人会見記』と並ぶ古典派UFO本の双璧と評されたほど有名だったのに、日本訳は光文社から一九六八年に刊行されたダイジェスト版『空飛ぶ円盤ミステリー』の一冊だけだった。
 かつてのUFO専門誌『UFOと宇宙』(現在は廃刊)の「ブラックメン」に関連する記事の中にもベンダーに関する掲載文はほんの僅かで、全体から受ける印象も以前と変わらず薄いものだった。
 そうこうしているうち、本書のゲラ刷りが出版社から届いた。見られる通りダイジェスト版ではなく、「完訳本」である。
 とはいっても、原著は三〇余年も前に書かれたもので、現在ではアポロ計画やボイジャー計画などによって宇宙への理解も当時より飛躍的に増大している。
 また月のミステリーや火星の人面岩、アメリカで大きく問題化している「異星人リトル・グレイによるアブダクション(強制拉致)事件」などの問題も新たに出ている。
 それらが果たして本書とどう結びついてくるのか? という意地悪な期待感もあった。
 しかし、読んでみて本当に驚いた。
 私が持っていた先入観とは、まるで内容が異なっていたからである。
 まず、日本に伝えられていた「ベンダー・ミステリー」の大要を述べておこう。
 一九五三年秋、全米規模のUFO研究会(IFSB)を組織していたアルバート・K・ベンダーはアメリカ政府筋の強要を受けたにしては、あまりに異常で深刻な恐怖を示し、突如としてIFSBの機関誌『スペース・レビュー』に次のような声明文を掲載し、組織を解散してベンダー自身もUFO研究活動から身を引くと宣言した。
「もはやUFOは謎ではない。その正体はすでに分かっているのだ。だが、これについての情報は、ある種の権力によって押さえられている。我々としては、その詳細を本誌に発表したいのは山々だが、情報の特質にかんがみて発表しないように勧告されたことははなはだ残念である。我々のようにUFOに関する仕事にたずさわっている人々には、十分に警戒するよう、せつに忠告するものである」
 当時IFSBの役員だったグレイ・バーカーが不審に思い、ベンダーに長距離電話をかけて執拗に問いただしたところ、次のように答えたという。
「私がUFOの秘密を知った直後に、突然、私の家に奇怪な三人の男たちがやって来た。そしてUFOの研究や調査に関しては沈黙しろと命じたのだ」
 その九年後(一九六二年)、ベンダーは、この奇怪な行動の理由となった事情を『空飛ぶ円盤と三人の男』と題する書物にまとめて公表した。それを注釈を含めてグレイ・バーカーが編集したのが本書である。
 グレイ・バーカーは、一九五二年から定期刊行誌『ザ・ソーサーリアン』の出版を続け、そのころからアメリカでは有名で信頼できるUFO研究家として名声を得ていた人物である。
 もっとも不審な点は、ベンダーは第二次大戦中、航空部隊の一員として参戦し、戦後は「アクメ・シェア社」に勤め、三〇歳そこそこの若さで同社のブリッジポート工場の支配人までのしあがったタフな男である。
 まして、UFOの起源が地球外であることは彼自身十分に予期していた。このような人物が政府機関員から脅かされたぐらいで怯えてしまい、懸命に築き上げてきた世界的な組織をいとも簡単に解散したりするだろうか。
 私も今回、完訳本を読んで分かったことだが、ベンダー・ミステリーのテーマである「ブラックメン」は、どうやら二つのタイプに区分されるようだ。日本では両者がゴッチャになって印象づけられてきたので、ベンダー・ミステリーの本質が正確に伝わらなかったのだと思う。
 一つは、正確な正体は不明だが、全身黒ずくめの身なりをした当局の秘密工作員がUFO研究者などへ脅迫を行なっていたことである。
 それらの報告は、すでに一九四〇年代後半から散発し始めていた。彼らは一般の目撃者だけではなく、UFO研究家の前にも現れて脅しをかけ、活動の停止を強要するという行為を行なっていた。
 当時のアメリカ軍や政府関係者の身分証明書は、必ず本人の写真が刷り込まれて固有の札入に入れて使用されてきた。しかし黒服の男たちが示した空軍の身分証明書は太い黒文字で印刷され、本人の写真は貼っていなかった。
 もう一つのブラックメンのタイプは、異星生物(アンドロイドのようなもの)が人間の容姿を装って現れたというものだ。ベンダーが本書で述べているのはまさにこれなのだ。異星生物によるテレパシーなどに類する超常現象の手段を用いた脅迫や、UFO調査活動の停止と沈黙の恐るべき強要だった。
 つまりベンダー・ミステリーの本質は、異星人による強制拉致(アブダクション)によるコンタクト・ストーリーそのものだった。だからベンダーは「大戦中に味わったどんな恐怖よりも激しく深い恐怖を感じた。もし私以外の人が、このような出来事にぶつかったら、たぶん恐ろしさに驚倒し、気を失ってしまうに違いない」と述べているのである。
 それも単なるミステリー性を帯びた異星人との接触だけではなく、ベンダーの身に起こったことは以降も世界各地で続発しているUFO関連の諸問題をすべて含んでおり、とくに現在アメリカで大問題となっているUFOアブダクションの原形と特質を明確に兼ねそなえた事件だったことも示しているのである。
 ベンダーが述べるコンタクト・ストーリーはあまりにも具体的かつリアルなもので、しかも異星生物のドライ(非情と酷薄)さが事件全体にわたって横溢している。(中略)情緒的な日本人に受け入れられなかった理由もこれで理解できた。
 たとえばベンダーの問いに対し、彼らは次のように答えている。
「神は人類の創作で、存在しない。死後の生命も存在しない。キリストは小さな町の噂話が大きく膨らんだもので、他の人によって奇跡を大きく誇張された人物である」
 そうした観点では、キリストの再来のような金星の長老たちが哲学的な訓話を垂れるアダムスキーのコンタクト・ストーリーとは好対照で、内容的にも正反対なのは面白い。
 アダムスキーと異なる、二〜三の 例を挙げておこう。
「金星は幕に覆われ、地球が何年も以前に経験したのと同様の有史以前の段階を経験している。そこでは生命体がまさに進化しつつあるが、それが地球の生命体と似ているかどうか我々には分からない。しかし、あなた方の進化の初期における生命体によく似た特質を持っていることだけは確かである」
「火星には建築の傑作である荒廃した都市がある。移動に使われた広大な水路組織の遺跡もある。彼らは通りすがりの惑星から来た人類に滅ぼされた」
「地球人は月には到達できるだろうが、大きな失望を与えることになるだろう。月には地球で使える可能性のある鉱物が豊富に存在する」
 私たちにはドキリとするようなことも述べている。
「いくつかの点で地球は非常に呪われている。その一つに、地球には多くの人種と国家群があるために常に紛争が起こる可能性があり、これが地球を完全破壊することにつながるかもしれない」
「我々は実験のために、地球人の多くを我々の惑星に送った。そして我々の仲間に見せるため、地球人の何人かを展示している。我々は多くの惑星の住民の標本を保存しているが、標本の何人かは死んでいる。地球人の場合も同じで、彼らは生き残らなかった」
 彼らが地球に来た目的は、海水から抽出した生成物を得るためで、ときどき不注意で陸地に落としたのが、UFO研究家たちの間でさまざまな憶測と興奮を呼んだ『エンジェル・ヘア』(UFO目撃の際に落下する粘性のある白い糸のような物質)や氷塊が地上に落下する現象なのだという。
 癌の原因についてベンダーは質問しているが、私も以前からある推測を持っていた。
 それは日本における癌患者発生率の統計が石油コンビナート周辺と大都会に集中しているからで、タバコが肺ガンの原因と目の敵にされているがそうではなく、石油をエネルギー源とする大気汚染が多くの癌患者を発生させているらしい。
 ベンダーの質問に対して彼らは「ガソリンで動く乗り物の出現が主な要因だ」と、ズバリ答えている。
『プロジェクトX』のことも本書で初めて知った。
 一九五三年のはじめ、オーストラリアとニュージーランドの民間UFO調査局は、両国にUFO目撃が集中していることに何か深い意味があるのではと考えた。
 彼らはUFO基地が存在する可能性として、南極に疑いの目を注いだ。
 そしてアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド三国による合同の南極基地研究が行われていることにも着目し、そのUFO基地の研究理論を『プロジェクトX』と述べている。
 年配の方なら当時を振り返って、『地球観測年』の一環という名目で多くの国家によって南極へ調査隊が殺到したことを思い出されよう。
 当時アメリカの著名なジャーナリストだったフランク・エドワーズは、自著『世界は謎に満ちている』(早川ライブラリ・日本訳刊一九六三年八月)に次のように述べている。
「UFO出現にともなう最初の計画は、多数の国家による南極への殺到だった。ソビエト、スウェーデン、ノルウェー、カナダ、アメリカ(そして日本)がいまなお南極で大規模にその機能を発揮している。多くの計画に人材、資金、資材を注入しているのは、たんなる偶然の一致なのだろうか?(中略)
 これはUFOが南極地帯に出現したという話が伝わってから、二四カ月以内のことであり、過去二〇〇年間にこの方面におくられた国、人、船、機材よりはるかに多いものである。(中略)
 それはともかく、南極に派遣された探険隊は、きわめて明確な二つの成果を生んだ。一つはチリのオレゴ隊長の指揮下にあった、船舶の上空を旋回していた円盤状の飛行体を映画およびスチール写真に撮影したことであり、もう一つは、これらの飛行体はある理由から、おそらく極地で地球の大気中にはいってきたのであろうということである」
 その南極のUFO基地にベンダーは強制的に拉致されている。そこで見た情景は本書において驚くほど克明に記述されている。
 このベンダーの本は出版された当時、人々から自己宣伝や売名行為であるというごうごうたる非難の矢面にさらされた。しかしその後のベンダーはUFO研究から身を引いて、マスコミからも完全に消息を絶っている。単なる売名や宣伝のためだけだったとも考えづらい。長い目で見れば真偽は分かることである。
 ベンダーは本書の最後に、次のように記している。
「私の話が空想的だと知っている。これを読んだほとんどの人が私の話を信じないだろうことも知っている。しかし私は決して失望せず、決然とした態度を取る。異星からの訪問者はすでにあなた方の反応を予言していたし、私も彼らの予言が的中すると確信している。ブリッジポートの『サンデー・ヘラルド』に出た最後の記事のおかげで、私はIFSBのスタッフとして働いていた残りの親友を失った。彼らは以後いっさい私とは関わりを持たなかった。彼らの一人は、『私はあらゆる機会を捕らえてあなたを笑い者にし、あなたの話を私に語るすべての人々に、それは嘘だと言ってやろう』とまで言った。(中略)私はただ、私に起きたことをありのままに述べたに過ぎない。他の著者の本と同様に、私の本に関しても、読者のあなたが最終的な審判者である」(中略)
「ブラックメン」には、二つのタイプがあるといった。
 アメリカ当局の秘密機関員による、UFOに起源をもつ金属片を入手した人物に対するブラックメンの出現、UFO研究家の場合には脅迫による活動の放棄と沈黙の強要である。
 とくにUFO目撃が集中発生した一九五〇〜六〇年代後半には、謎の黒服の男たちが目撃者の身辺に出没するという事件がいたるところで起きていた。彼らの言動はまことに不可解きわまりなく、目撃者たちの不安を募らせた。
 ベンダーが本書を発表して事実上UFO研究から身を引いた後にも、実は「ブラックメン」に関わると思われるストレートで凄味のある事件が発生している。(中略)
 偶然の一致にしては不気味だが、当のグレイ・バーカーも本書を出版した直後、UFO問題に深入りした研究家にお決まりの「心臓発作」で急死しているのである。
 ジョージ・アダムスキーも、一九六二年六月に各国代表に送付した『サターン・レポート』で驚くべき異星人のメッセージを伝えた三年後、バーカーと同じ「心臓発作」で急死している。
 私が当時インタビューを望んでいた、カナダの公的なUFO調査計画『プロジェクト・マグネット』の最高責任者ウィルバート・B・スミスも(註1)、そしてジョージア工科大学院の学部長だったロバート・サーベイチャー博士(註2)も、同じく唐突な死を迎えているのである。
 近いところでは、もっともUFO問題に積極的な発言を行なっていたジム・アーウィン(アポロ15号のク ルー)が、アポロ宇宙飛行士二六人(註3)の中で真っ先に「心臓マヒ」で急死したのも偶然だろうか。
 知ってのごとく、ケネディ暗殺事件に関わる多くの証人も、偶然を超えた確率で次々に死去している。これら両者に共通することは、不気味な何かを暗示していまいか?
 私は一九八九年に『ケネディ暗殺とUFO』(たま出版)を出したが、「ケネディ暗殺にUFOが関係するなどバカバカしい」と一笑に付す人が大部分である。
 しかしUFO問題が米当局の最高機密に属し(註1参照)、その事実をケネディ大統領が一般に向け公表しようと決意していたら、それは動機的にも最大の仮説として浮上してくるはずである。ケネディこそ、アポロ計画の最大の推進者だったことを忘れてはならない。しかも、それに関わる多くの傍証も存在するのである。
 新しいものでは、一九九四年一二月に訳刊されたジム・キース著『[超極秘]第四の選択』(徳間書店刊)にも、次のような記述がある。
「読者が、フォン・ブラウンならびにNASAの司令部にいる九〇人の仲間を、気難しいインテリで改心したナチの科学者だとまだお思いであれば、彼らがジョン・F・ケネディ暗殺にどう関係したかを調べればいい。名著『暗殺集団の名前』の著者、ウイリアム・トービット(テキサスの法律家、故デビット・コークランド)はケネディ暗殺の中心的役者の一人に、NASAの安全保障部に指令を与えているフォン・ブラウンの名を挙げている」(原文のまま)

 いまアメリカで大きな問題と化しているUFOアブダクション(強制拉致)事件、それは対岸の火事ではない。近い将来は日本にも、必ず大きな波となって押し寄せてこよう。
 否、すでに起きているらしい。私自身も仙台でアブダクション体験者としか思えない人の訪問を受け、数々の不思議な体験を聞いている。
 ブラックメンの存在も他人事ではない。それは今でも形を変えて存続し、世界各地で秘密裡に活動しているのかもしれない。
 あらゆるUFOミステリーの原形をなすと思える当著「ベンダー・ミステリー」は、UFO問題に関心のある人なら大いに参考になるはずである。

コンノケンイチ

[註1]ウィルバート・B・スミス
 カナダ運輸省の首席電波技師で、放送、測定部の部長。UFOの推進原理を解明するために一九四〇年代後半に設置されたカナダの公的UFO調査機関『プロジェクト・マグネット』の責任者。そこでの調査の結論を一九五〇年一月二一日付けの覚書としてカナダ政府に提出した。
 それによれば、墜落UFOは合衆国政府当局の最高機密に属し、水素爆弾より高くランクされ、推進原理はヴァンネヴァー・ブッシュ博士の率いる小グループによって集中的な解明が続けられている。そしてこの問題全体が、合衆国政府から途方もない重要性を持つものと見なされていると報告。

[註2]ロバート・サーベイチャー
 ジョージア工科大学院の学部長を務めるなどの輝かしい経歴を持つ人物で、アメリカの名士録「Who's Who」にも長文で紹介されている。
 この人物が記者団に対して、堂々と次のような証言を行なったので大騒ぎになった。
1・あるときサーベイチャーはオハイオ州デイトンにあるライトパターソン空軍基地の会合に招かれ、その会合で政府の役人たちが合同研究開発委員会とつながりのある科学者たちに墜落UFOに関する情報や発見事項を報告することになっていた。そこではヴァンネヴァー・ブッシュや著名な数学者ジョン・フォン・ノイマンらが出席し、UFOはこの太陽系外の宇宙からやって来た恒星間宇宙船と思われるという説明を受けた。
2・墜落UFOが回収されていること。
3・政府機関で働くトップ科学者であるヴァンネヴァー・ブッシュが機体の調査を行なっていること。
4・政府の科学顧問として働いていた当時、回収されたUFOの機体が、とてつもない急加速と急減速に耐えられるよう非常に軽量で、きわめて堅固な素材からできていると聞かされた。

[註3]アポロ8号から17号までのクルーの数
 二度搭乗した宇宙飛行士は、デイビット・スコット(アポロ9、15号)。ジョン・ヤング(アポロ10、16号)。ジェームス・ラベル(アポロ8、13号)。ユージン・サーナン(アポロ10、17号)の四名である。


「心臓」といえばブルーブックの責任者ルッペルト大尉(1923-60)も発作で早世していますが、近年では"The Day After Roswell"(邦訳『ペンタゴンの陰謀』)が出版された翌年に…

 ちなみにこのコーソウ元中佐、矢追特番の中では元気そうに証言していたが、番組が放映される二週間前の七月十六日に、心筋梗塞で死亡している。享年八十三であった。とにかく、これで本当に「死人に口なし」状態となってしまったわけである。(と学会『トンデモ本1999』光文社p129)





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