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書記長が立てられた『日本改造とイラク攻撃』というスレッドで展開されている論議を引き継ぐものです。
あっしら:『 それで、ひょこひょこ顔を出すお調子者』
( http://www.asyura.com/2002/dispute3/msg/178.html )
カレラさん;『Re: それで、ひょこひょこ顔を出すお調子者』
( http://www.asyura.com/2002/dispute3/msg/189.html )
に続くものです。
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カレラさん、こんにちわ。
カレラさんの「イラク攻撃観」は米国の民主党及び共和党“外交派”に近いものがあり、間もなく可決されるであろう「イラク武力行使容認議決」もそのようなコンセンサスに基づくものだと考えています。
ブッシュ政権“強硬派”にしてみれば、「イラク攻撃」という突破口のお墨付きさえもらえれば、後は“成り行き”で進むことですから制約を受けることはないと思っているでしょう。
カレラさんは国際関係論及び安定的グローバリズムという観点から「覇権国家容認論」の立場だと思われますが、それならば、ブッシュ政権主流派を支持すべきだと言っておきます。
「「イスラム民主主義」を求める方向も有り得るのではないか、とも思います。最終的には民族なり国民が自分達で選び取ってゆくべきことなのでしょう」では、現在の矛盾を解決する安定的な“世界帝国”は確立できません。
根源的な問題は、統治ルールではなく、経済システムです。
「利息の取得」や「共同体性を損なうまでの個人の利潤獲得」を認める経済システムをイスラム圏全域とりわけ一大産油国であるサウジアラビアやイランに受け入れさせなければ、“世界帝国”は完成しないのです。
米国の「イラク攻撃」を資源権益だけに結びつける見方もありますが、資源権益は残る手法は“丸取り”だけというレベルまで押さえています。イラクやイランの資源権益が欲しいのであれば、政治的経済的取引で米英系石油メージャーが確保することも可能です。
(もちろん、天然資源権益が同時的に追求されていることは否定しません)
イラクをはじめとした中東諸国に西欧的自由民主主義制度が持ち込まれても、中央銀行の貸し出しから始まる「近代経済システム」を受け入れることはないと思われるからです。
パキスタン・マレーシア・インドネシアは植民地支配時代を通じて「近代経済システム」が確立されましたが、サウジアラビアやイランが政治的自由を得た後にそれを選び取ることはありません。
何度か書いてきましたが、イラクは近代社会主義思想を基礎とした「近代国家」であり、「近代経済システム」も相当レベルで受け入れており、経済論理から言えば、米英にとって主要な標的ではありません。
イラン−イラク戦争を通じてイラクを軍事大国として育成し、罠にはめたと同然のクウェート侵攻を契機とした湾岸戦争以降、中東に軍事拠点を置くとともにイラクを「悪の権化」として世界に広く認知させるという用意周到をもって、今次の本格的な中東軍事介入を準備してきたのです。
米英にとっての主敵は、“近代”に背を向けているイランでありサウジアラビアなのです。(そんなことを攻撃理由に掲げて戦争を始めるわけにはいかないというのが、民主主義の成果とも言えますが...)
公言できない理由ではなく、米国民にはそれなりの理解が得られる「フセインの排除と武装解除」という理由を突破口としての軍事行動の正当化に使っているわけです。
カレラさんは、敗戦後の日本が受け入れた政治・経済変革をイラク(中東イスラム諸国)も受け入れるとの“楽観的”な見通しをお持ちのようですが、それはあまりにも歴史とイスラムを知らないものだと言わざるを得ません。
(イスラム圏は、19世紀後半から英仏を中心とした西欧の経済的収奪や政治的支配を経験しています)
日本は、歴史的に形成されてきた価値観と西欧的価値観や経済システムを融合させるかたちで近代化を歩み始めました。
すぐに江華島事件を起こしたように明治維新そのものにその芽がありますが、日清戦争から「大東亜戦争」まで、まさに、近代的発展をめざした対外拡張政策の現れです。
戦後も生き残った統制派ないし革新官僚が戦後の統治形態や経済改革を受け入れたのも、それが新しい段階の近代的発展に結びつくと理解できたからであり、国民も、戦争という災厄がなくなるなかで生活向上を実現できると判断したからスムーズに新制度にのっかれたのです。
敗戦時の日本の価値観と米国が押し付けた政治・経済改革に本質的な齟齬はなかったと言えます。
日本は、戦前においてさえ、異質性や変容はあっても、近代という大枠の価値観を受け入れていたのです。
ブッシュ政権が、かつての日本に処したと同じようにイラク(中東諸国)にも処せると考えているとしたら、「敵も知らず、己も知らない」愚かな集団だと言わざるを得ません。
戦前の日本が歩んだ愚かな道を、今度は米英が同じように歩もうとしています。
日本の敗北は近代を一段階引き上げる役割を果たしましたが、米英の敗北は、近代の終焉を準備することになります。
「対イスラム戦争」の行方はここ数年で見えることですから、それを注視するしかないということになりますが...