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宗教社会学者ロバート=べラー教授に対する朝日新聞のインタビュー記事が興味深い(24日付け)。
『記者:しかし,米国民は大統領の強硬姿勢(イラク戦争)を支持しています。
べラー教授:
今回ほど,一般の米国民とインテリとの間で大きなギャップが生じたことはない。ほとんどの国民は,古風なまでの愛国心を見せている。』
いわゆる「愛国心」というものが,正しい判断力を歪ませる例をふたたびここにみる。政府ないしその支配者たちは、自分たちの望む方向へ大衆を導くため、大衆の判断を歪ませる手段として,俗情に訴えるプロパガンダを行う。その筆頭格がこの「愛国心」という「俗情」なのだ。
アメリカの支配者側は大衆が騙されやすい(被暗示性=suggestibility)という点を見抜いていて、そこにつけいり、「愛国心」をメディアを通じ徹底して刷り込んでいった。大衆の側は「愛国心」が排他性と閉鎖性という「メンタリティーの病」を作ってしまうことなど,考えたこともないのだ。単なる玉蹴(け)りという遊びに過ぎないのに,日章旗をふりかざし,君が代を歌い,ニッポンと連呼し,喧嘩に及んだり、絶叫して涙を流したりする。大衆は「正義の執行者アメリカ」と連呼し,星条旗を振りかざし、大統領を護民の主神の位置にすらおく。「愛国心」という「俗な感情」にどっぷり浸(つ)かって、互いに,自分たちがいかに正当か,角を突つきあって闘争するのだ。
日本政府及び,その背後の日本支配層による「愛国心」プロパガンダに洗脳された人々が,アメリカの愛国心とその結果としてのイラク戦争出征支持という決断に対し,批判することができると思える論理の「矛盾(・混乱・破綻)」に陥ることに違和感を覚えない程度に,大衆は善良だが,暗愚・無明に導かれやすい。
で,戦争にまっ先にかりだされるのが、その「愛国心」あふれる大衆なのであって,支配層は安全なところで,高見の見物を決め込んでいるのである。「愛国心」を洗脳されているくせに,自分では進んで出征を志願しない,という二重基準の連中もでてくる。
貧者あるいは持たざる者は、富裕支配層(持てる者)イデオロギーを刷り込まれ,それを自分自身で生み出した判断体系であるかのような錯覚におちいり、親切なことにそれに固着し,撞着して、他者を「排他」し,自己を「閉鎖」すること(他者攻撃・自己防衛)に汲々となるのである。国を愛するならアメリカのイラク戦争を支持せよと富裕層にいわれ応じるアメリカ大衆。国を愛するならアメリカのイラク戦争を支持せよとアメリカ支配層と提携する日本支配層に吹き込まれる日本の大衆。富裕者層間の国際的提携の共通テキストに「愛国心」という「俗情」を奮い立たせよと書いてあるのだ。
日米両国で国旗を熱心に降る人々その恍惚の顔を見よ。彼らは双子のような相貌をしているのだ。
世界でせめて一国だけでも,「愛国心」というレトリックや視点以外のレトリックで問題を分析し,あるいは説得する国があってもいいのではないか。それが日本であったら何か不都合でもあるのか。そこまでアメリカの真似をして恥ずかしくないのか。後生大事な日本の「自尊心」とやらを,それで満たせるのか。その調子で,今回の北朝鮮問題,東アジア問題を克服できると思っているのだろうか。アメリカが世界の問題を解決できない主要な原因を日本人が踏襲して(同じ騙され方をして)、ラチが開くのか。「愛国心」で把握した場合、金日成・金正日という独裁者に抑圧され、国家的に拉致されている被害者である北朝鮮の大衆の問題をどう位置付けることができるのか。統一的な視点を持ってくる必要があるのではないか。日本人の拉致問題には,北朝鮮の国民には一切責任がない,彼らも,とらわれ人なのだ。責任は独裁者、金親子にある。愛国心の視点から捕らえると,日本の朝鮮学校の生徒たちや在日の人々に日本人が嫌がらせをするという問題をさけることができるのか。北朝鮮の人々も金親子に「愛国心」で洗脳された被害者なのだ(マスゲームで一糸乱れぬ恍惚の振る舞いを見よ)。
それにしても,人間というのは騙されてそうなったにせよ、一度頭にハメ込まれたことに対して、どうしてこうもしがみついてそこから出られないのか。どれだけ言っても,自己を客観視できないのか,自己を突き放してみることができないのか。自分が自己への膠着(刷り込まれた自己)の虜囚であることに気付かない人々に、強い徒労を覚えても,忍耐でダイアログを続けるしかないのか。
日本でもアメリカでも,自分の限られた知見の限界を超克する試みを持たない人々には知的にも社会的にも成長を期待することはできない。人類の全体的な意識の成長にとってお荷物としかえいえない。変化が早く,惑星全体の破壊が迫るという意味で時間がなくなっている今日的情況の中で,騙されて覚えた同じ歌を壊れた蓄音機のように繰り返し歌い続ける余裕やヒマがあるのか。