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(回答先: 太平洋戦争で彼我で殺された人の数を再考せよ 投稿者 ウッチャー 日時 2002 年 9 月 26 日 00:54:12)
私が指摘したのは、愛国心及びそれを産み出す人間の精神的土壌そのものへのべラー教授の切り込みがあまりにもお粗末という点であって、愛国心そのものを称揚し、戦時中の日本のあり方を肯定しているのではない点に留意が必要です。故意に「愛国心」を突き放した言い方をすると、「このやっかいな難物を抱え込まざるを得ない人間という生き物が、これをどう飼い馴らせば良いのだろうか」という問題の捉え方が必要だということです。
そもそも、愛国心を下らない俗情、災いをもたらすだけの厄介物と捉え、理性で制御できる、また制御すべきと本気で考えているのだとしたら、近代史を何も学んでいない事になります。この精神を抜きにしては、アメリカ合衆国の独立は成り立たなかったし、明治維新もあり得なかったし、西洋における国民国家の成立もなかった。その後の民族独立や対立についても然り、つまり、近代史は成立しなかったのです。北朝鮮との融和を妨げる日本の「愛国心」やイラク攻撃を是認する米国の「愛国心」のみが誤っているというご都合主義なのだとしたら、失笑の対象でしかなく、論評するに値しない。
別の見方をすれば、べラー教授はパレスチナ難民やイスラム過激派やあるいはイラクに向かってこう言うべきでしょう。「下らない愛国心など捨ててしまいなさい。米国や国連への反発もテロ行為も一切やめるべきだ。自爆テロの成功を喜ぶアンタ達の表情は、サッカー試合に狂喜する民衆のあの歪んだ醜い表情そっくりだ。」と。これが如何に説得力に欠ける物言いか誰の目にも明らかでしょう。私はべラー教授を個人的に知る立場にはありませんが、氏が従順な読者の多い日本の言論界という安全圏でしかモノをしゃべっていないことは明らかです(イスラム圏でも同様の発言をしているなら、別の角度から批判を加えますが)。
「それならば愛国心とは何ぞや、その生成メカニズムはどんなものか」という貴殿のご質問ですが、それは万巻の書にあたり、深く考え、自らおつかみ下さい。私がここでチャート式で教えて差し上げられるような代物ではありません。
べラー教授の言辞は、物事を深く考えない偽善者を拡大再生産する浅薄で下らない議論です。