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アルツハイマー病について日本では、塩酸ドネペジル(商品名アリセプト)が症状の進行を遅らせる効果がある薬剤として認可されている。
しかし、転載する「ニューズウィーク」の記事には、「アメリカには現在、推定520万人のアルツハイマー病患者がいるが、この病気にはまだ予防法も、進行を遅らせる方法も、治療法もない。このままでは未来は悲惨なことになる」と書かれている。
米国では治療法がないとされていながら、「アルツハイマー病は、最もコストの掛かる慢性疾患の1つだ。アルツハイマー病を含む認知症患者の治療費は今年、2140億ドルに達する見通しだ」とあるのは不思議だ。
介護費用ならわかるが、効果がないはずなのに、2140億ドル(約21兆円)も費やされている治療とはどういうものなのだろうか。
アルツハイマー病ではなく血腫や腫瘍が原因の認知症であれば、手術などで原因を除去することで改善を期待できるが、アルツハイマー型の認知症は、薬剤に頼るのではなく、生活スタイルで進行を遅らせるほかが理に叶っているように思われる。
アルツハイマー病にとって最大の危険因子が加齢であることを考えると、超長寿命社会の日本が今後迎える最大の難問は、認知症のひとたちにどう対応していくかということだと思われる。
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『ニューズウィーク日本版』2014−5・13
アルツハイマー治療と予防の最新研究
P.40
「社会が見落とすアルツハイマーの現実
医療:過去20年間に効果的な治療薬の承認はゼロ
患者と家族のストレスは限界に近づきつつある
アビゲイル・ジョーンズ(本誌シニアエディター)
コメディー俳優のセス・ローゲン(32)が、米上院の公聴会に出席したのは2月末のこと。多くのアメリカ人の命を奪うだけでなく、本人にも家族にも悲惨な晩年を強いるアルツハイマー病の研究について、政府の支援拡大を訴えるためだ。
普段は下ネタ満載のジョークで笑いを取るローゲンだが、この日はいつになく神妙だった。彼の義母は55歳のとき若年性アルツハイマー病と診断された。当時ローゲンが予想したのは,義母が家の鍵を何度もなくしたり、左右ちぐはぐな靴で出かける程度のことだった。
だが数年後、「この病気のリアルで醜い現実」を突きつけられたと、ローゲンは言う。「35年間教師だった義母は、自分のことも愛する家族のことも忘れ、やがて話すことも、食事をすることも、服を着ることも、トイレに1人でいくこともできなくなってしまった。すべて60歳になる前のことだ」
アメリカには現在、推定520万人のアルツハイマー病患者がいるが、この病気にはまだ予防法も、進行を遅らせる方法も、治療法もない。このままでは未来は悲惨なことになる。
アルツハイマー病協会の統計によると、2025年までにアルツハイマー病を患う65歳以上のアメリカ人は710万人に達する見通しだ。
アメリカ人の平均寿命が延びるに従って、その数はますます増えるだろう。アルツハイマー病の一番の危険因子は加齢なのだ。2050年の患者数は1600万人に達し、医療や長期ケア、末期ケアに掛かる費用は計1兆2000億ドルにも上る恐れがある。
「あまりの悲惨さに、怠惰で自己中心的で医者にもめったにかからない私が、慈善団体を設立した」と、ローゲンは公聴会で語った。その団体「ヒラリティー・フォー・チャリティー(慈善を楽しむ)」は、アルツハイマー病の研究と家族を支援する資金を集めている。
「アメリカ人はアルツハイマー病と言うとき声を潜める。それは政府が声を潜めているからだ」と、ローゲンは政府の姿勢を厳しく批判した。
批判は公聴会後も続いた。「公聴会に姿を見せた上院議員は2人だけだった」と、ローゲンはツイート。「政府のアルツハイマー病に対する姿勢を象徴している。優先順位が低いらしい」
だが、アルツハイマー病は既にアメリカの大きな問題だ。「患者に『私たちにできることは何もありません』と伝えるのは本当につらい。この病気は進行を遅らせる方法もない」と、ペンシルバニア大学神経変性病研究センターのジョン・トロジャノウスキ副所長は言う。
研究費は癌の10分の1
アルツハイマー病は、最もコストの掛かる慢性疾患の1つだ。アルツハイマー病を含む認知症患者の治療費は今年、2140億ドルに達する見通しだ。このうち1500億ドルは公的保険のメディケア(高齢者医療保険制度)とメディケイド(低所得者医療保険制度)でカバーされるが、360億ドルは患者や家族の自己負担だ。
一方、研究資金は圧倒的に不足している。米国立衛生研究所(NIH)は昨年、癌に53億ドル、エイズに30億ドル、糖尿病に10億ドルの研究費を投じたが、アルツハイマー病は5億ドルだった。
「危機が迫っていることは20年前に分かっていた。だが当時開発中の20種類ほどの薬のどれかが画期的な結果をもたらしてくれるに違いない、誰もが楽観していた」と、デューク大学脳科学研究所のムラリ・ドレイスワミー(精神医学)は言う。「実際には過去20年間、有効な治療薬の承認は1つもない」
バラク・オバマ大統領は11年、全米アルツハイマー病プロジェクト法(NAPA)に署名。これに基づき「全米アルツハイマー病対応計画」が発表され、25年までに予防法と治療法を確立するための目標が定められた。
今年1月には米議会が、アルツハイマー病の研究、教育、介助、介護者への支援額を計1億2200万ドル増やすことを決めた。それでもNAPA顧問委員会が推奨する支援額20億鶴には遠く及ばない。
「この病気はわれわれの世代特有の医療問題になるだろう。次の世代まで持ち越されないといいのだが」と、NAPA顧問委員会のロナルド・ピーターセン委員長は語る。「何とか抑制しなければ、アメリカの医療システムは破綻してしまう」
家族の恥というイメージ
00年からの10年間でエイズ、脳卒中、心臓疾患、前立腺癌による死者は減っているが、アルツハイマー病に関連する死者は68%も増加した。今やアルツハイマー病は、アメリカで6番目の死因となっている。
60代の女性がアルツハイマー病にかかる可能性は、乳癌になる可能性の2倍。65歳の女性が死ぬまでにアルツハイマー病にかかる確率は約17%(男性は9%)。黒人高齢者は、白人高齢者よりも認知症にかかる可能性が約2倍高い。
平均的なアルツハイマー病患者は診断後に4年〜8年生きる。中には20年以上生きる人もいる。家族や介護者にもたらす精神的、肉体的、経済的な負担は極めて大きくなる可能性がある。
初めて義母の病気を知ったとき、ローゲンは衝撃を受けたという。「こんなに若くてもアルツハイマー病になるんだと思った」と、彼は本誌に語った。「その侵攻のスピードと激しさはまったくの予想外だった。物忘れがひどくなる程度のイメージしかなかったが、それはこの病気のごく一面にすぎない。歩くことも、動くことも、話すこともできなくなるんだ」
アメリカの成人の25%近くが、アルツハイマー病は遺伝性だと勘違いしている。その一方、60歳以上の高齢者が最も恐れているのは認知症(35%)で、癌(23%)や脳卒中(15%)を上回った。
「この病気は親や祖父母の命を奪っているのに、誰も何の妙策も講じていないようだ」と、ローゲンは言う。「いつか私たちの命も奪うだろう。それなのに一般にはアルツハイマー病に対する危機感がほとんどない」
その背景にはネガティブなイメージがあるようだ。「家族の恥のような気がして、親がアルツハイマー病だとは誰も言いたがらない」と、トロジャノウスキは言う。「患者自身が啓蒙活動をできないこともあるだろう。アルツハイマー病には(パーキンソン病になつて積極的な啓蒙活動を始めた俳優)マイケル・J・フォックスはいない」
「アルツハイマー病は老人の病気だと思われている」と言うのは、NAPA顧問委員会のピーターセンだ。「25年前の癌と同じで、誰も話題にしたがらない。だが癌の活動家たちは、病気を明らかにして研究を進めるべきだという意識を広めることに成功した。アルツハイマー病はまだそうなっていない」
もっとも診断法は進歩している。アルツハイマー病患者の脳には「老人斑」と「神経原線維変化」という異常が見られる。これらの異常は神経細胞の作業の流れを妨害し、最後には神経細胞を死に至らしめる。
老人斑や神経原線維変化は、加齢とともに誰の脳にもある程度は発生する。だがアルツハイマー病患者のほうがずっと多い。以前は亡くなったあと解剖をしない限りアルツハイマー病の確定診断を下すことはできなかった。だが今では、脳スキャンや髄液検査をすれば症状が出てくる前に病気の兆候を見つけることができるようになった。
最近の研究の重点は、症状の出現や進行を遅らせることに置かれている。老人斑が増えているが記憶障害は起きていない高齢者や、アルツハイマー病を引き起こす遺伝子変異を持つ人々を対象にした新薬の臨床試験も進められている。
まれにだが、アルツハイマー病の原因となる3種類の遺伝子変異も知られており、その場合は65歳より前に、場合によっては30歳という若さで発症する。だがこれらの遺伝子変異が原因の症例はアルツハイマー病全体の1%にも満たない。
「暗闇で銃を撃つようだ」
親兄弟にアルツハイマー病を発症した人が1人でもいれば、発症リスクは高くなる。だが運動したり食事に気を付けたり、頭を使ったり社会と問わったり勉強したりすればリスク軽減に役立つかもしれない。
ハーバード大学の研究によれば、アルツハイマー病に限らず認知症にかかっている人では、RESTと呼ばれるタンパク質の量が大きく減少しているという。健康な高齢者の脳内で、加齢の影響から神経細胞を守る役目を果たしているのがRESTだ。この発見は将来の新薬開発の糸口になるかもしれない。
「アルツハイマー病の原因ははっきりしておらず、ある意味、われわれは暗闘でやみくもに銃を撃っているようなものだ」と、デューク大学のドレイスワミーは言う。
「製薬会社が新薬の臨床試験プログラムに着手しても、得てして10年くらいのタイムラグが生じる。人問の治験に持っていくまでの8〜9年の問に、科学は進歩してもっと新たな何かが見つかる。だが製薬会社の多くはタイタニック号と同じで、すぐには方向転換できない」
マサチューセッツ州デダムに住むパム・ホワイトの病気の進行はゆっくりだった。パムは元ソーシャルワーカーで、若い頃はモデルをしていた。
パムはまず、家にある本をもう一度買ってしまうミスを犯すようになった。自動車を運転していて迷子になったり、簡単な計算ができなくなったり、しょっちゅう鍵をなくすようになった。料理などのちょっとした作業もうまくできなくなった。
「母がこなしていたたくさんの家事や役割は父が引き継いだ。でもそれは徐々に自然に進んだので、家族の誰も深刻には考えなかった」と、彼女の末っ子で精神科医のルーク(32)は言う。
09年、当時61歳だったパムは若年性アルツハイマー病と診断された。有名な画家だった母、マリアン・ウィリアムズ・スティール(01年にアルツハイマー病で89歳で死去)についての本を書き始めてから、まだ1年しかたっていなかった。
「愛する家族が死に至る病気にかかり、変貌していくさまを目の当たりにするのは非常につらい」と、パムの長男バンカー(40)は言う。バンカーはドキュメンタリー映画監督で、母がアルツハイマー病と診断されてから、母と家族の体験を迫った映画の製作を始めた。
そして完成したのが『マリアンの非凡な才能』だ。題名は、パムが書きかけていた本のタイトルから取った。ホワイト家にはマリアンが描いた絵が何枚も飾られている。
この映画では、救いのない診察の場面や、投薬をめぐるぴりぴりした会話、パムの顔に浮かぶ、困ったようなぼんやりとした表情も包み隠さず描かれている。パムは洋服の着方が分からなくなり、診察ではカードに書かれた絵が何か答えられず、今が西暦何年かも分からず「19何年」と答えてしまう。
患者と家族の生の声を
数年の間、家族はパムの病状を秘密にしていた。パムは自らの病気をなかなか受け入れられず揺れ動いていた。
昨年12月、パムの夫エド(69)は自宅でパムの介護に専念するため金融関係の仕事を引退した。近くに住む娘のデポン(37)は家族を連れてしょっちゅう実家を訪れている。外部の介護サービスを利用することもあるが、エドが介護から解放されるのは2カ月に1度、4〜6日問だけ。そんなときは友人たちとゴルフに出掛ける。
「私にとって最大の問題は、檻に閉じ込められている気分になることだ。妻の身なりを整えて車に乗せるという大仕事をしなければ、絵筆一本も買いに行けない」と、エドは映画の中で語る。「だがそれを考えてはならない。妻が私に与えてくれた素晴らしい生活を思えば、私は妻に大いに尽くさなければならない。欲求不満はたまるが」
パム自身の独白もある。
「私は家族と子供たちのために生きている。問題は、アルツハイマー病になってしまったこと。最初は本当に落ち込んだし動揺したけれど、本当は病気は大きな問題ではなかった。病気によって何かが本当に変わってしまうわけではないし、悲しくもなければ後悔もしていない。こんなに素晴らしい家族とすごく素晴らしい夫がいて私は幸せ者だと思う。母も亡くなる前にはこんなふうに感じていたのではないか」
この話を問いて、エドはガッツポーズをする。
「あの映画の価値はまさにこの場面にある。個人的な体験を共有し、この病気が一般的なイメージとは異なることを理解してもらうのはとても大切なことなんだ」とローゲンは言う。「私のスピーチが注目を集めたのは、1つには私がアルツハイマー病について語ったことに世間が衝撃を受けたからだ。ある意味、あれは大成功だった」
だがそれは、アルツハイマー病がどれほど話題にされていないかの裏返しでもある。」
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