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(回答先: 本当のオーディオファイルは「ミニマリスト」を目指す 投稿者 中川隆 日時 2017 年 2 月 13 日 09:20:55)
逸品館オーディオマガジン 2013年7月
光ディスクプレーヤーからPC・ネットワークオーディオへ
http://ippinkan.com/magazine/magazine_2013-7.htm
1.情報記録密度・ネットワーク通信速度の向上と共に、光ディスクはやがてなくなる
最近、PC/ネットワークプレーヤーの情報が多くなりました。これらの新製品は、従来CD/SACDプレーヤーに変わるのでしょうか?
答えは間違いなく「Yes」です。
その時期は分かりませんがCDがレコードを淘汰したようにデジタル音源ファイルは、光ディスクメディアからより記録密度の高い(小型化可能な)HDDやメモリーにかわります。
また楽曲の販売もディスク形式での販売から、より低コストのネットワーク配信に変わるでしょう。
情報の記録密度は時代と共に向上し、音楽を記録するメディアは光ディスクではなくなります。
近未来に予想される「ディスクレス」の時代に向けて今必要なのは、PC・ネットワークプレーヤーの優位性や特徴に関する情報ではなく、「CD/SACDプレーヤーからどのようにPC/ネットワークプレーヤーに移行すればよいのか?」、あるいは「私達はこれからどのようにして音楽を楽しめばよいのか?」という具体的な内容だと思います。
しかし、現時点でのPC/ネットワークプレーヤーの情報は「高音質」に偏り、従来のCD/SACDプレーヤーからの「乗り換え」や「共存」の説明が不足しているように思います。
そこで逸品館は、これまでに培ったオーディオのノウハウとここ数年で得られたPC/ネットワークプレーヤー情報から「より現実的なPC/ネットワークプレーヤーの移行やCD/SACDとの共存のための情報」をまとめることにしました。
ただし、この分野の私の知識ははなはだ曖昧な部分もありますので、細部に間違いなどございましたらご連絡下さい。訂正させていただきます。
2.CD/SACDプレーヤーとPC/ネットワークプレーヤーの違い(パッケージ)
・デジタル音声記録方式の違い
現在私達が聞いているデジタル音声は、PCM(Pulse Chord Modulation)もしくはDSD(Direct Stream Digital)のどちらかの方式で録音されています。ご存じのようにPCMとはCDに収録されているデジタル音声形式で、DSDとはSACDに使われているデジタル音声形式です。
PC/ネットワークプレーヤーではPCMで録音された音声が、WAVE/Flac/MP3など様々な形式に置き換えられて記録されていますが、「非圧縮・圧縮」という二つの形式に大別できます。「非圧縮」とは文字通り、データーを元のまま記録し再現する方法ですが、同じ「非圧縮」でもWindowsの場合「WAV(WAVE)」、Macの場合「aiff」という異なる形式でファイル化されます。このほかにも形式はありますが、記録されるのは「PCM」でデジタル化された音声です。
「圧縮」されて記録される音声は、代表的なもので「MP3/AAC/FLAC/WMA」などの様々な方式があります。これらの形式では、「大きい音に隠れた小さい音を人間は聞き取れない」という論理に基づき、入力される波形を周波数別に分割してそれぞれの音量を比較、人間に聞き取れない「大きな音に隠れた小さな音を切り捨てる」ことで情報を間引き、音楽ファイルのサイズを小さくしています。
ファイルの圧縮には、「圧縮プログラム」と「復元プログラム」が必要ですが、現在のPCなら、高度なプログラムによる「音質劣化の少ない情報の切り捨てと復元」が可能です。「圧縮/展開されるデーター」の品質は、エンコード/デコードに使われるプログラムの進歩によって改善します。過去に不可能であった複雑な信号処理により音声を圧縮し展開しても非圧縮と区別できないほどの高音質が実現しつつある最新の携帯プレーヤーは、昔のカセットテープを使っていた時代の携帯プレーヤーとは比べものにならない低価格で、そられよりも確実な高音質を実現しています。
SACDに記録される「DSD音声形式」は、PC/ネットワーク・プレーヤーでも同様に「DSD」として扱われてますが、DSDの音質を決める記録密度が、SACDの2.6MHzに対しPC/ネットワーク・プレーヤーではそれよりも高品質の5.8MHzまで対応します。
・DAコンバータは同じ
私達が普段使っているCD/SACDプレーヤーは、「光ディスク読み取りメカニズム:デジタル音声データー記録装置」と「デジタル音声アナログ復調回路(DAコンバーター)」が一つのボディーに納められています。高級機ではこれらが分割し「トランスポーター(光ディスク読み取り装置)」と「DAコンバーター」に分かれています。
PC/ネットワーク・プレーヤーで「高音質(ハイエンドオーディオ)」を楽しむためには、「DAコンバーター」を接続して音を出します。セパレート型CD/SACDプレーヤーに当てはめるのならば、メカニズムの部分がPC/ネットワーク・プレーヤーに相当します。
http://ippinkan.com/magazine/magazine_2013-7.htm
光ディスクがなくなっても、DAコンバーター以降の装置は変わりません。
・CD/SACDプレーヤーは一体型が有利で、PC/ネットワーク・プレーヤーはセパレート型が有利
ハイエンドオーディオの世界では、セパレートアンプの様に「機能毎に筐体を分割するシステム」がより高級で高音質とされています。しかしCD/SACDプレーヤーにはそれが当てはまりません。なぜならば、CD/SACDプレーヤー内部でそれらを接続する方法とトランスポーターとDAコンバーター(以下DAC)のように外部でそれらを接続する方法(規格)が異なるからです。
CD/SACDプレーヤーを外部でDACと接続する場合には、S/PDIFもしくはAES/EBUという接続規格を用います。私達が良く目にする同軸ケーブルや光デジタルケーブルによるデジタル接続が「S/PDIF」ですが、見て分かるように「一本の信号線でデジタル信号を伝達する」方式となっています。CD/SACDプレーヤー内部でトランスポーター(メカニズム部)とDACを接続する場合には、I2Sという基本的に3本(もしくは4本)の信号線を使って接続する規格を用います。接続に使う線が多いからという理由だけではなく、同じくロックを使える(トランスポーターとDACを同期できる)のも音質的に有利です。さらに、伝送距離が非常に近いのもジッターなどの点で有利です。他方セパレート型が有利なのは、電源回路を大型にできることや、電磁波で音を汚す電源トランスを複数使えることなどですが、これは電源部分を別置きにすることで解決できます。理想のディスクプレーヤーのパッケージングは、電源別置き一体型ーです。TADブランドから発売される最高級CD/SACDプレーヤー「D600」は、電源のみ別置きのセパレート型になっていますが理想的で優れたパッケージングだと思います
しかし、メカニズム部がPCになると条件が変わります。まずPCとDACを接続するには、DACが対応するデジタルオーディオ信号を使わねばなりませんが、CD/SACDプレーヤーと違って接続が内部でも外部でも使える信号の品質は大きく変わりません。外部内部で接続による優位不利がないという点で、内部接続が有利だったCD/SACDプレーヤーと条件が異なります。次にオーディオ機器に比べて動作周波数が著しく高いPC内部は強力な電磁波のイズで満たされていて、この部分にアナログ回路(DAC)を搭載するのは音質面で非常に不利です。
これらを合わせて考えると、PCを使う場合「デジタルとアナログは分離」する方が音質的に有利です。また、アナログ回路に比べ進歩の早いデジタル回路(PC)を別にすれば、デジタル領域のみを素早くアップグレードすることが可能になり、常にシステムを最新の状態に保てます。これらの理由から、PC/ネットワークプレーヤーでは、デジタルトランスポートとDACを分離して使う、セパレート型が理想的なパッケージと考えられます。
3.CD/SACDプレーヤーとPC/ネットワークプレーヤーの音質の違い
ではオーディオマニアが最も気にする「音質」について解説したいと思いますが、このページを書いているのは2013年7月ですからデジタル技術の進歩と共に内容が陳腐化したり、現状と沿わなくなることが十分考えられますので、その点は予めご理解下さるようお願い申し上げます。
・読み取り方式による「エラー」の違い
CD/SACDプレーヤーは、ディスクに刻まれたピットをレーザー光線で読み取ることで「デジタル音声データー」を読み出します。実際に再生される音質(プレーヤーから出てくる音)は、ディスクの材質、表面の汚れ、メカニズムなどの影響を大きく受けることが知られています。これに対しCDよりも遙かに回転速度(データー転送速度)の速いHDDやメモリーからデジタルデーターを読み出すPC/ネットワークプレーヤーではCD/SACDプレーヤーに比べ、データー伝送速度が比べものにならないほど早く、またPCは基本的にデータエラーを起こさないため、「PC/ネットワーク・プレーヤーはエラーを起こさないから音が良い」と考えられることがあります。しかし、これは間違っています。
まずよく知られていないのが、CD/SACDの読み取り方式です。特にCDは規格が古くリアルタイムで音が出てくるように「見えている」ためか、ディスクに記録されたデジタルデーターをそのまま再生していると勘違いされることが多いようです。しかし、これは大きな間違いです。CDはある程度のブロックにデジタルデータ(PCMデーター)が分割されて記録されています。これは、万が一一部のビットが読み取れなくても、「元のデーター(オリジナルデーター)」を完全に復元するためです。
これを可能とし、ディスクの汚れや傷などによりビットが読み取れなくてもオリジナルデーターが完全に復元できるようCDメカニズムには「最小限のメモリー」と「CPU」が搭載されています。CDが発売された当時「メモリー」や「CPU」は今と比べて圧倒的に高価でした。その当時の技術でもほぼ完全にオリジナルデーターが読み取れる方式が、さらに技術が進歩した今オリジナルデーターを復元できないという程致命的な「読み取りミス」を起こすことはありません。また、CDプレーヤーからリアルタイムで音が出てくるように見える(そう作っている)からといって、内部で何も補正や補間を行っていないのではありません。CDメカニズムは最小限のメモリーとCPUで欠落したビットから、完全なオリジナルデーターをPCと同じように復元しているのです。(詳しくはこちらをご覧下さい)
CDはよほどのことがなければ読み取りエラーを起こさず、読み取り精度はPCと変わりません。
・読み取りメカニズムやディスクの素材による音の違い
CDプレーヤーが登場した頃に「CDはデジタル記録だからアナログのように価格で音は変わらない」と言われました。現在は、CD/SACDプレーヤーの音質が「価格で変わらない」と考えるオーディオマニアは一人もいらっしゃらないはずです。また、ガラスCDやBlu-spec、SHM-CD、HQCDのように従来のCDよりも高品質な記録媒体(ディスク)を使うことで音質の改善を謳うCDソフトが発売されたように、ディスクの材質も再生音に大きな影響を与えます。しかし、これは決して「エラーがなくなったから音が良くなった」のではありません。
PC/ネットワークプレーヤーは「読み取りエラーを起こさないからCDプレーヤーよりも音が良い」、「読み出せるデーターが変わらないなら音も変わらない」、「データーの精度が高ければ音が良い」という考えはオーディオ機器には当てはまりません。その理由は今も完全に解き明かされていませんが、AIRBOWが開発したディスクスタビライザー 「STB-1」で付属のゴムリングを使いCDディスクの振動」を変えれば高音の量と響きの多さが著しく変化することから「デジタルデータではない何かの要因」がCDプレーヤーの音質を左右していることが分かります。(詳しくはこちらをご覧下さい)
しかし、PC/ネットワーク・プレーヤーで記憶媒体に使われるメモリーやHDDはCD/SACDディスクに比べると振動の影響を受けにくく、媒体の違いによる音質変化はCD/SACDプレーヤーよりも小さいように思います。しかし、最高音質を追求するような場合には、メモリーやHDDによる音質の違いも無視できなくなります。(詳しくはこちらをご覧下さい)
・フォーマットによる音の違い
音声フォーマットの上限は、CD/SACD/BDでは「PCM:192kHz/24bit、DSD:2.8MHz」ですが、PC/ネットワークプレーヤーは「PCM:384kHz/32bit、DSD:5.6MHz」とさらに上位のフォーマットまでサポートしています。PC/ネットワークプレーヤーの世界では、CDのPCM:44.1kHz/16bitを超えるフォーマットを「ハイレゾ」、SACDの記録方式である「DSD(Direct Stream Digital)」を「DSD」と読んで、CDよりも高音質であると説明されています。
http://ippinkan.com/magazine/magazine_2013-7.htm
比較の方法にもよりますが、デジタルよりもアナログの方が音を細かく記録できます。
しかし、高級オーディオ機器の場合(低価格品は別)それらの違いは「数字」ほど大きく感じられません。では、その理由を考えてみましょう。
4.アナログ・デジタル音質の違い
・デジタルには高級も低級もない
私達が聞いている音は「空気の粗密波(空気の圧力変化)」ですが、このアナログ的な連続変化を、そのまま連続する電気信号に置き換え、「連続曲線で記録する」のがアナログ記録です。その曲線を点に分解し記録するのがデジタルです。アナログ方式による記録再生では「機器の性能」がその品質をダイレクトに左右します。つまり、高級な装置の音がよりよく聞こえます。しかし、デジタルでは「機器の性能」が出力するデーター品質に影響しません。100円均一で買える電卓と、スーパーコンピューターがはじき出す答えは「同じ」これがデジタルの世界です。このアナログの世界とデジタルの世界が混在するのが「デジタルオーディオ機器」です。さらに話を掘り下げて「アナログ」と「デジタル」の違いを考えましょう。
・オーディオ機器の音質は、アナログ回路が決める
出力される演算結果が「機器の性能に依存しない」ため、アナログよりもデジタルの音が正確で良いと言われますが、それはあくまでも「デジタル領域(机の上)」での話に限られます。実際のデジタルオーディでは、アナログをデジタルに変換するサンプリング(A/D変換)とその復元(D/A変換)は「アナログ回路」が担っています。つまり、デジタル領域出の演算結果は変わらなくても「アナログ回路の品質」が再生される音質にダイレクトに影響を与えるのです。結論を先に述べるなら、デジタルオーディオ機器の音質は、「アナログ回路の善し悪し」が決め手です。メディアや評論家が主張するように「フォーマットの品質」はデジタル機器の音質に決定的な影響を与えないのです。
・アナログとデジタルの「記録方式」の違い
レコードプレーヤーとCD/SACDプレーヤー、そしてPC/ネットワークプレーヤーの音の違いを知るために最も重要なポイントが「アナログ記録」と「デジタル記録」の違いです。
スペック(測定データ−)が優れているからデジタルはアナログよりも音が良い。それが、デジタルがアナログよりも音が良いとされる論拠です。より微細なデジタルデーターをコンパクトに記録できるデジタルはアナログよりも進歩した優秀なフォーマットのように感じますが、「現実的(物理的)」に見れば、デジタル信号はアナログ信号を間引いて作られてた(サンプリングされた)信号であることを忘れてはいけません。
デジタル信号はアナログ信号を「圧縮(間引き)」して作られます。
・スペックと音質は必ずしも一致しない
数値上はアナログを大きく上回るデジタルは、アナログよりも本当に音が良いのでしょうか?
それは「No」でもあり「Yes」でもあります。私の経験では、「論理上のスペックや測定データーと聴感上の高音質」は必ずしも一致しない」というのが正解です。また、「アンプやスピーカー、リスニングルームの音質の影響」は、それよりも音質に大きく影響するのは周知ですが、ここであまり話を広げるとこのコラムの論点がぼやけてしまうので、今回は「プレーヤーの再生音」に限定して音質差が生じる理由を考えることにしましょう。
また、これから考えることはアナログとデジタルの「音質勝負」の決着を付けるのが目的ではありません。機器そのもの音質は部屋やスピーカーを含めたシステムのすべてが影響します。オーディセットの総合的な音質は、デジタルかアナログかという入り口の違いだけで優劣が決まるほど簡単ではありません。より大切なのは、それぞれの違いを「自分自身の音作り」に反映することです。
先ず最初にアナログとデジタルの違いについて復習します。アナログ波は「連続曲線」で、デジタルはその連続曲線を間引いた「点」です。アナログの録音再生では「波形そのものを様々な物理形式に置き換えて」います。デジタルの場合は、まず音声を「データー」に置き換え、ふたたびその「データー」を連続曲線(アナログ波形)に戻します。アナログ波形のデーター化を「サンプリング」と呼びます。デジタルはアナログ信号を「サンプリング」する段階で「何らかの切り捨て」を行います。
しかし私達が聞いている(感じている)空気の疎密波を「そのままの波形でテープやレコードに物理的な方式で音声を記録するアナログ」は、論理(測定)スペックでデジタルを大幅に下回まわっても「数字的な切り捨て」は行われていません。回路から考えれば「アナログ回路の限界のスペックまで無理なく(自然に)記録できるのがアナログ記録です。それに対し、回路の物理的な限界を考慮せずできないことを無理にやらせようとしているのがデジタル記録とも言えます。従ってオーディオ機器の音質指標として重要視される「どれくらい低い音から高い音まで記録できるか?=周波数特性」と「どれくらい小さい音とどれくらい大きな音まで記録できるか=ダイナミックレンジ」などでは、デジタルがアナログを大幅に上回ったとしても「実際に耳に聞こえる音(有効な音)」でデジタルがアナログを上回るという保証はなく、逆にスペックで劣るアナログがより「生々しく聞こえる」という事も十分に考えられます。
・連続曲線から点へ、そして再び連続曲線へ
それをさらに詳しく説明しましょう。CDを超えるハイビット・ハイサンプリングのデジタルデーターは、アナログをデジタルに置き換えるときの点の数が多い(細かくする)のは、ご存じだと思います。もし、すべてのデジタルオーディオ機器は搭載する「アナログ回路の品質が同一」ならば、これは正しく現実になります。しかし、例えデータファイルの品質が低くでも、アナログ回路の工夫次第で「粗い点」をより理想に近いアナログ曲線で結ぶ事が可能なら、CDをハイビット・ハイサンプリングやDSDを超える音質で再生する事が可能です。これを実現するのが高級オーディオ機器に搭載されているアナログ回路です。
・音楽は響きの芸術
デジタルデーターが悪くても(フォーマットが低くても)アナログ回路が良ければ、出てくる音はハイレゾを超える。このお話をデジタルの領域や音質を引き算して考えると納得しにくいかも知れません。普通の考え方であれば、音の純度(純粋性)は録音されたときが最高で、そこからは劣化するだけと考えられているからです。しかし、アナログ回路でもデジタル回路でも、音質は劣化するだけではありません。失われた「音」を回路が復元することができるなら、海路を通過することで音質が改善することがあり得ます。実際にそれを体験できるのが、高級「プリアンプ」です。CDとパワーアンプを繋ぐプリアンプは、信号増幅を行いません。ケーブルよりの遙かに複雑でロスの多いはずの回路を搭載するにもかかわらず、プリアンプを使うことで音質が改善する。これがアナログ回路で音質を復元できるという根拠です。
・アナログ回路による響きの復元
それでは私の考える「アナログ回路による音質の復元システム」をご紹介しましょう。この考察に重要なのは、「音楽がコントロールされた(整然とした)響きで構成される」事です。まず、楽器から音が出る様子を考えましょう。例えば「ギター」。ギターは張られた弦(ゲージ)を指で弾いて振動させ、それを胴で響かせます。ギターの音の決め手となるのは「弦(ゲージ)」ではなく、「胴(共鳴体)」です。基本となる響きを共鳴体で増幅する。これが、楽器(電子楽器は除きます)の基本構造です。
この構造をアナログ回路に当てはめます。説明をわかりやすくするため「真空管」を例に挙げます。真空管はカソードとプレートの間にある「グリッド」に信号を流すことで信号を増幅する構造になっていますが、金網状の構造を持つグリッドは「物理的に振動」します。ギターの「胴」のように、真空管は入力される信号に「共鳴」するのです。300Bという真空管の音が良いと言われる理由は、正にここにあります。Westernというメーカーが作った300Bを指で弾くと「ピーン」という澄み切った良い音がします。この真空管の響きが「失われた楽器の響き」を復元するのです。
ギターのゲージが胴で振動し楽器として美しい響きを生み出すように、真空管は入力信号に共鳴し、美しい響きを生み出しているのです。もし、ギターの響きと真空管の響きが「同じ美しさを持つ」ならば、真空管の響きにより失われた楽器の響きを蘇らせることができます。真空管を例に挙げましたが、アナログ回路に使われる部品はほぼすべて「少なからず響きを発生」します。アナログ回路で発生する響きを響きを整える(チューニングする)ことで、出力される音の美しさは入力される信号を超えられます。
アナログ回路が発生する響きが「美しい」か「そうでないか」で出てくる音の美しさはまるで変わります。楽器のような美しい響きを持つ、優れたアナログ回路を持つオーディオ機器から発せられる音は「入力される音(入力されるデジタルデーター)」を確実に超えられます。楽器の美しいサウンドと同等に、アナログ回路が生み出す美しい響きは私達を感動させます。音楽が「響きの芸術」なら、オーディオもまた「響きの芸術」なのです。
古くても元値が高価なデジタル機器の音が良いのは、搭載されるアナログ回路の響きが美しいからです。さらに詳しくは、逸品館オーディオマガジンの「オーディオは生演奏を超える」をご覧下さいませ。
・デジタル回路の優位性
では、デジタル記録はアナログ記録に比べて「音が悪い」のでしょうか?必ずしもそう決めつけられません。先ほど高度なアナログ回路は、「劣化した信号を復元できる(失われた響きを復元できる)」と書きましたが、デジタル回路でも復元プログラムを使うことで「残された情報から失われた情報を復元する」事が可能です。TVドラマなどで「ぼやけた映像をデジタル処理すると見えなかった画像が浮かび上がってくる場面」を見ることがありますが、それは残された映像信号の時系列の動きを分析し、失われた信号を論理的に計算して導き出す(論理プログラムで復元する)ことで「失われた画像」を再現する技術です。
「失われた情報をプログラムで推測し復元する」という技術は、音声の復調にもすでに広く使われています。例えば、私達に最も身近なCDプレーヤーで「オーバーサンプリング(デジタルフィルタ−)」という言葉を聞くことがあります。またCDの16bitをこえる24/32bitという高精度のDACが使われます。これらを搭載するCDには、CDの44.1kHz/16bitから最大192kHz/32bitのハイレゾリューション信号を作り出す「デジタルフィルター(論理プログラム)」が搭載されています。デジタルフィルターの働きで、周波数の上限が20kHzしか記録できないCDのデジタル信号からさらに高い周波数の信号を生み出し、ダイナミックレンジを拡大することが可能です。つまり、CDプレーヤーにはすでに「失われた波形をデジタル的に復元する技術」が搭載されているのです。
この「復元プログラム」は、デジタル音声の「圧縮」にも使われます。現在ほとんどの携帯プレーヤーでは音楽ファイルのサイズを小さくするために「音声圧縮(MP3/AACなど)」という技術が用いられていますが、この技術は「大きい音に隠れた小さい音を人間は聞き取れない」という論理に基づき、入力される波形を周波数別に分割してそれぞれの音量を比較、人間に聞き取れない「大きな音に隠れた小さな音を切り捨てる」ことで情報を間引き、音楽ファイルのサイズを小さくします。PCの進歩はそれまで不可能であった複雑な信号処理を可能とし、音質をほとんど劣化させない「圧縮・復元」を可能としています。
話をまとめます。デジタルがアナログよりも優位な点は二つあります。一つは「伝達時に情報が劣化しない」ことです。アナログ信号が記録されるレコードはテープにコピーして、コピーしたテープをさらにコピーを重ねると「確実に情報が劣化して音が悪く」なります。しかし、デジタル化された情報はコピーをいくら重ねても劣化することがありません。特にコストが問題となる低価格のオーディオ機器では、パーツや回路の質で劣化しない「デジタル」の特長が最大に生かされます。
量産され高性能・低価格がどんどん実現するデジタル回路(IC・LSI)に比べ、高精度なアナログ回路は未だに驚くほど高価です。逆に機器のデジタル・低価格化が進んだことで、高精度なアナログ回路は昔よりも生産が難しく高価になりました。今も昔もオーディオ機器の音質は「アナログ回路」が決め手となっています。高音質の実現に高度なアナログ回路を必要とするデジタルオーディオ機器は、搭載するアナログ回路(デジタル回路の電源回路などもアナログ回路です)が高価なため高額になるのです。アナログ回路の品質が音質を大きく左右する事を知れば、「過剰なデジタルスペック神話」の呪縛は解けると思います。
最新の携帯プレーヤーは、昔のカセットテープを使っていた時代の携帯プレーヤーとは比べものにならない低価格で、そられよりも確実な高音質を実現していますが、これがデジタル技術の最高の成果です。アナログ信号の一部を切り捨てて作られた「劣化しない圧縮信号」であるデジタルは、価格が安い機器でこそその特長が最大に生かされる「音が悪くなりにくい技術」なのです。
5.ソフトウェアの重要性
・OSの重要性
ここでPCが搭載する「プログラム(OS)」に注目して高音質を実現した、AIRBOW製品をご紹介します。2013年5月に発売したAIRBOW SSS-2013は、「オーディオ専用OS」を搭載した初めてのミュージックコンピューターです。MSHDと名付けられたこの「オーディオ専用高音質OS(i-CAT開発)」は、64bit Real Time Linuxをオーディオ用途にチューンナップしたOSですが、この製品は「ソフトウェアーのチューンナップ」で過去にない高音質を実現します。
PCが搭載するOSで音が変わる?それは使用するPCで表計算の演算結果が変わると言われているようで、俄には信じられないかも知れません。確かにデジタルデーター領域だけを見れば、OSのチューンナップで音質が変わることは説明することはできません。なぜならデジタルデーターは、PCの回路やソフトウェアーの品質によって内容が変わらないからです。
ここで再び登場するのが、アナログ回路です。PCからDACに出力される「デジタル信号」は「アナログ波形(矩形波)」で出力されます。DACは受け取った「矩形波の角」でデジタルデーターを判別します。この角が「立っている(正確に立ち上がっている)」か「丸まっている(立ち上がりが鈍っている)」かは、デジタル信号を復調する場合の品質に大きく影響します。アシンクロナス回路を搭載するUSB接続や本来タイミング情報を持たないプロトコル接続のLANでさえ、到達する波形の影響を受けるようです。なぜ、PCから出力されるデジタル信号が中継器(HUBなど)を経由しても、DACから再生される音質に影響を与えるかはよく分かりませんが、USB/LANケーブルの品質がDACの音質を左右するのも同じ「出力信号波形」が影響しているのだと思われます。
PCから出力されるデーター信号の波形が音質に影響するのであれば、ソフトウェアーやプラットフォーム(PCの土台となる基盤)の改良により改善した「データー信号波形品質の向上により、「再現される音質の向上」が実現することは、十分考えられます。またソフトウェアーのチューンナップやプラットフォームの高級化によってもたらされた「アナログ波形品質の向上」により高音質が実現すると考えることで、PC/ネットワークプレーヤーも従来のオーディオ機器と同じように接続ケーブルや電源、あるいはインシュレーターの影響を受ける事実を受け入れられると思います。
コンピューターとは論理プログラムを搭載したアナログ機器です。DAコンバーターに出力されるデーターが「アナログ波形」という形を取る限り、プログラム本体(OSやプレーヤーソフト)の制御方式の違いや、アナログ波形を生成するハードウェアが音質に影響するのは当然です。PC/ネットワークプレーヤーがCD/SACDと違っているのは、同じデジタル機器でもPC/ネットワークプレーヤーは「メカニズム」と同等に「ソフトウェアー」の影響も受けることです。CD/SACDがメカニズムで音が変わったように、I-CATが開発したMSHDはPCの制御をオーディオに特化させることで高音質を実現した、従来のCD/SACDメカニズムにも匹敵する「新しい時代のオーディオ用OS」だと考えられます。
6.CD/SACDプレーヤーとPC/ネットワークプレーヤーの機能の違い
・連続演奏・シャッフルプレイ・プレイリスト
CD/SACDではトレイにセットした「1枚のディスク」の範囲を超えたプレイは不可能ですが、PC/ネットワークプレーヤーはプレーヤーソフトの機能により、データーストレージ(データー記憶装置)に収録した複数の音楽ファイルを無制限に再生できます。例えば1000を超える楽曲をランダムにプレイしたり、プレイリストを作って選んだ曲を順に再生したり、これまでのCD/SACDプレーヤーとは比較にならない機能と楽しさが実現します。ディスクという小さな器の範囲を超えて、音楽再生の世界が広がる。これは、今までのオーディオプレーヤーにはなかった、新しい魅力です。また音源の購入もディスク単位からデーター単位へと変化し、好きな曲だけを購入することができるようになります。
・デジタル出力方式と音質・機能の違い
ここまでの説明でPC/ネットワークプレーヤーは、「新しいデジタルトランスポーター」と考えらればよいと分かりました。次はDACとの接続です。
PCをDACと接続するには、従来と同じS/PDIFに加えてUSB/HDMI/Fire-Wire/Thunderbolt/LANのなど様々な規格が存在します。ここでは、一般的なPC/ネットワークプレーヤーとオーディオの接続で使われる、S/PDIF/HDMI、USB、LANの4つの規格と音質や機能の違いについて説明しましょう
・S/PDIF、HDMI
S/PDIFとHDMIはコネクターなどの規格が違いますが、伝送されるデジタル音声データーのフォーマットは同一のS/PDIF形式です。ただし、従来のオーディオ機器が備える同軸/光接続では、ノーマルではPCM:96kHz/24bit 2chまでのサポートで倍速(Wスピード)でも、PCM:192kHz/24bit 2chまでしか伝送できませんが、信号線が多いHDMIは非圧縮のPCM:192kHz/24bit信号を最大8chまで送れます。また、S/PDIFだけではなくドルビーデジタルやDTS、あるいはDSDなどのストリーム信号も伝送できます。
接続は送り側と受け側の機器に対応する端子が付いていればそれで良く、特別なドライバーのインストールなどの作業は不要です。HDMIはコネクターの形状は違いますが、接続は従来のオーディオ用規格と同じです。映像信号やEthernet信号、機器間のコントロール信号も伝送できるHDMIは、バージョンを変えながら、現在も進歩を続けています。
・USB
HDMIと同じようにUSBにもいくつかのバージョンがあります。最新・最高速のバージョンは、USB3.0ですがオーディオ用には(今のところ)USB1.0と2.0が使われています。USBのバージョンにより対応する最大のオーディオ規格は変わりますが、PCM:384kHz/32bit、DSD:5.6MHzと光ディスクに記録できる最高のフォーマットを上回ります。また、ソフト側(ドライバー/ソフトウェア側)が対応していれば、ドルビーデジタルやDTSなどのサラウンド信号も送ることができますが、ほとんどの場合2ch(ステレオ)での高音質再生のために使われます。
特別なソフトウェアーのインストールが不要なHDMIと違い、USBで機器を接続するには送り側の機器(PC)に受け側の機器(インターフェイス)に対応するドライバーのインストールと音声出力の設定が必要になります。PCがWindowsを搭載する場合や、Mac PCをお使いの場合には専用のドライバーのインストールが不要になることもありますが、基本的にはドライバーのインストールや音声出力切り替えなどの最低限のPC操作の知識は必要です。
・S/PDIF、HDMI、USBの共通点
これらのデジタル接続は、PCとDACを一対一もしくは一対多で接続するために使いますが、一対多で使った場合「すべての機器に同じ信号が出力」されます。接続のイメージは、CDトランスポーターとDACの接続とほとんど同じです。
これらの方式を使ってPCとDACを接続した場合、記憶装置に収録された音楽ファイルをオーディオ機器に対応する「デジタルデーター形式」に変換して出力するための「プレーヤーソフト(Windows Media Playerやi-Tunesのような)」が必要になります。出力可能な音楽ファイル形式はプレーヤーソフトに依存しますが、WAVEやDSDだけではなく、Flac/MP3/AACなど様々な形式で記録された音楽ファイルを再生できます。
また、プレーヤーソフトはシャッフルやリピート、プレイリストの作成や、ジャケット画像の表示など、CD/SACDプレーヤーにはない使える機能を持っています。従来のCD/SACDプレーヤーと同じ感覚で音楽を聞きたいとお考えならPCとDACの接続は、S/PDIF、HDMI、USBがお薦めです。
・LAN(ネットワーク)接続
LANは、その名前「Local Area Network」の通り、複数の機器を相互に接続して「ネットワーク」を構成するための接続規格です。LAnN(Ethernet)を使えば、一台のPC(NAS)を同時に複数の再生機(クライアント)に接続すれば、収録した音楽データーを共有し、それぞれの機器で個別の音楽ファイルの再生が可能になります。LAN接続で音声を伝達するには、音楽データーの配信(ストリーミング)を行うソフトのインストールが必要です。Windows Media Playerやi-Tunesなどにはこの機能が備わっていますが、クライアント(LAN接続可能なオーディオ機器)側にも対応するソフトのインストールが必要です。Windowsをインストールしているオーディオ機器やiPhone、iPod Touchなどがそれらに相当しますが、一般的なハイエンドオーディオ機器では使えません。
S/PDIF、HDMI、USBでは、PC側のソフトが音楽ファイルを選択しそのデジタルデーターをDACへ送信していました。LAN接続によるストリーミング再生がこれらと違うのは、PC(NAS)はクライアントからの送信要求に応じてデーターを送り出す所です。PC(NAS)はあくまでもクライアントの指示に従うだけなので、複数ファイルにまたがるシャッフルやプレイリストによる再生を行うためには「クライアント(DAC)側」に対応する(送信を指示する)ソフトが必要になります。多くのLAN機能搭載DACはこのような複雑なソフトを搭載しませんから、LAN接続では従来のCD/SACDプレーヤーと同じように「アルバム単位でのプレイ」が基本になります。
私達が知らずに使っている「ストリーミング再生」の代表が、YouTubeやUstreamです。これらのサイトやインターネットラジオ局は、サーバー側に「ストリーミング配信」が可能なソフトが搭載されれ、クライアント(端末)からの要求に応え、音声(画像)データーを配信(Streaming)しています。
「DHCP」を利用して機器をLAN接続することはさほど難しくありません。しかし、固定IPアドレスを使う、セキュリティーを完全にする、などさらに上級のテクニックを使うためには、高度なネットワーク接続の知識が必要になります。
また新しいオーディオに「ネットワーク」という名称が入るためか、PC/ネットワークプレーヤーの世界ではネットワーク接続が基本のように考えられがちです。しかし、従来のCD/SACDプレーヤーのシステムには、USB、HDMIによる接続が便利で近いように思います。
このLANという規格を家電製品で共通化したものが「DLNA(Digital Living Network Alliance」です。これらを搭載する機器間ではメディアを共有できますが、複雑なプレイなどにメーカー固有の命令が使われることがあり、DLNA対応機器同士であれば「必ず完全に動作する」という事はありませんが、動作保証が確認されている機器同士であれば、LANケーブルを接続するだけですぐに使えドライバーソフトのダウンロードも不要です。また、機器がWANに接続されていればインターネットラジオが聴けるなどのメリットもあります。映像や各種メディアを含む、マルチメディア再生に対応させたいのであれば、DLNAには大きなメリットがあります。また、LAN配線は細く安いので他のデジタル接続に比べ長距離の引き回しが圧倒的に容易なことも大きなメリットです。
7.接続によるデジタル伝送方式の違い
・S/PDIF、HDMI、USB接続
S/PDIF、USB、HDMI接続では、音声データーは必要な形式に変換されて送信されます。しかし、音声データーは通常のデーターとは異なる「一方通行」の方式で送信され、伝達経路でデジタルデーターが損なわれたばあい、伝送される信号に含まれる「エラー訂正データー」を利用して受け側機がデーターの修復を行いますが、「データーの再送信」は行われません。そのためケーブルやインターフェイスの品質が相当お粗末な場合音楽データーが損なわれる可能性はありますが、よほどのことがない限り通常データーが損なわれる恐れはありません。
・LAN接続
LAN接続がUSBと異なるのは、S/PDIF、HDMI、USB接続のようにデジタルデーターを「一方通行」で送信するのではなく、「双方向通信」で行われることです。データーは単純な「データーを含む矩形波」に置き換えられて通信されるのではなく、プロトコルという「規格」に置き換えられて送信されます。通信は「双方向」でデーター欠落が生じた場合は、「再送信」が行われケーブルや中継機器の品質でデーターが損なわれることがありません。送受信でデーターが損なわれないLAN接続でも、LANケーブルの品質で音質が左右されるのは不思議です。
8.後書き
CDプレーヤー(デジタル・オーディオ)の登場時、またそれを超える高音質ディスクSACDやDVD/Audioの登場時もそうでしたが、新しいオーディオ技術が登場する度に「メディア」と「評論家」は、高音質や新しい時代の幕開けを声高々に告げようとします。しかし、それはあくまでも高音質を餌にした「利益誘導のためのコマーシャル」に過ぎません。
すべてが間違っているとは言いませんが、明らかに現実に出てくる音とは違うお話です。もし、彼らの主張が事実ならば、CDよりも圧倒的に音が良いSACDやDVD/Audioが衰退した理由を説明できません。そういう事実があるにもかかわらず、PC/ネットワークオーディオでまたしても「高音質への誘導」が繰り返されています。一体何が正しくて何が間違っているのか消費者にはまったく判断できないと思います。そういう「悪しき習慣」を断ち切るために、今回は特にハイレゾやDSDがCDより高音質という理由がないことをお伝えしようと思いました。特にPC/ネットワークオーディオがCD/SACDよりも高音質あるという論拠はアナログ回路まで含めて考えると正当な論拠に乏しく、呪文のように繰り返されてきた「高音質の主張」と同じくらい無意味です。
また、今回は具体的に書いていませんが、様々な理由によりレコーディングで使用されるマイクの最高周波数は「20kHz」を大きく超えていません。レコーディングでは、最高40kHz程度の高域収録能力があれば良く、現場では48kHz/24bitが主流に使われています。時には96kHz/24bitが使われることがありますが、DSDは録音後の編集ができないためほとんど使われていません。つまり、販売されているハイレゾやDSD音源は、そのほとんどすべてがこれらの「低級なデジタル規格からアップサンプリングして作り出されたもの」なのです。
ハイレゾやDSDを信奉する人たちは「まったくオーディオの現場を知らない」と断言できます。「ハイレゾを聞いてみたけれど、CDとそんなに変わらなかった。」お使いのオーディオ機器が高級であればあるほど、そう実感なさると思います。目先のスペック競争に巻き込まれて所有している機器やソフトが「悪い」と思い込まれる必要はありません。
確かにパズルを解くように難しい情報を展開し、悦にいるのもオーディオの楽しみの一つだと思います。私もすべての技術を完璧に把握してこのページを書いているわけではありませんから間違いがあるかも知れません。しかし、たとえ情報が間違っていたとしても、あるいは「正しい」・「正しくない」を抜きにしても音質改善を模索する想像は、オーディオの楽しみの一つです。
しかし、それでもどれほど知識を深めても、「やってみなければわからない」、「聞いてみなければ分からない」のがオーディオの奥深さであり楽しさです。
オーディオを知れば知るほど、その謎は深まるばかりです。オーディオ機器から音楽家の魂が宿るような「熱い音」を出すために必要なのは最新の技術や知識でもなければ、高価なオーディオ機器でもありません。それは、「よりよい音で音楽を聞きたいというあなたの情熱」です。
たゆまぬ情熱が音を少しずつ熱くし、やがて音の向こう側に「音楽家の魂」を感じるようになれ、いずれは音そのものに「音楽家の魂」が宿る瞬間がやってきます。その大いなる喜びをすべての音楽ファンと一緒に味わうこと。それが逸品館の目指す「音の世界」です。
2013年7月 逸品館代表 清原 裕介
http://ippinkan.com/magazine/magazine_2013-7.htm
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