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私はベーシックインカム制度には詳しくないので間違っている点があるかも知れませんが、今朝の朝日新聞にベーシックインカムについてのコンパクトな解説記事が掲載されており、それを読んでベーシックインカム制度の基本的な考え方に疑問を持ちました。 朝日新聞の解説記事(以降 記事と省略)では、ベーシクインカムの財源を所得税とし、一人当たり毎月8万円の給付を行なうものとしていました。これを実現する為にすべて所得税でまかなうこととし、所得税額を一律45%としています。この条件で試算すると記事では以下のように総所得額が決まると述べています。なお記事のモデルでは市民税などは考慮していません。 年収700万円の3人家族(夫と妻と子供一人。妻は家事専業) 年収400万円のシングル 記事によれば、世帯人数が多いほど既存税制との最終所得の差額がプラスの方向で大きくなり、手取り収入の増加につながります。一方、単身世帯では既存税制と最終所得の差額がマイナスの方向で大きくなります。記事の3人世帯モデルでは、最終所得が既存税制と比べて約7.9%増加しますが、単身世帯モデルでは約14.1%減少します。二つのモデルの最終所得の差額の絶対額は97.35万円にもなります。 こうした結果になるのはベーシクインカムが個人に対して支払われるからです。これは「少人数世帯から多人数世帯への所得移転」と見なすことができます。最も人数が少ない単身世帯モデルでは、この記事によれば最終所得が12%以上減少することになり、単身世帯にとってベーシックインカムは到底受け入れられない制度ということになるでしょう。 ではワーキングプアと呼ばれる年収200万円以下の単身世帯ではベーシックインカムはどのような結果をもたらすでしょうか。計算を簡単にするために年収を195万円とし、社会保険料の控除分は4%としています。 年収195万円のシングル このモデルでは単身世帯であってもベーシクインカムにより、現在の税制より13.32万円最終所得が増加します。ベーシックインカムではあるレベルを下回る極端に少ない所得の世帯に対して所得を増加させる働きがあります。これはベーシックインカムの優れた点です。そして人数が多ければ多いほどその最終所得は極端に大きく増加します。低所得層では最終収入に占めるベーシックインカムからの収入の割合が大きいからです。 高額所得層に対してベーシックインカムはどのような影響を与えるでしょうか。ここでも社会保険料の控除分は4%としています。 年収2000万円の3人家族(夫と妻と子供一人。妻は家事専業) 高額所得層では現在の税制とベーシックインカムではあまり違いが見られません。このモデルではベーシックインカムの場合に所得が増加しています。高額所得層から低額所得層への所得再配分の機能は、現在の税制に比較してみるとベーシックインカムは弱いようです。これは現在の税制が曲がりなりにも超過累進税制であるのに対して、ベーシックインカムでは定率税制であることからくる必然的な結果です。 ベーシックインカムの基本的な考え方として「個人に対して支払う」があります。これを現実に当てはめてみると、多人数世帯ではこれまでより収入が大きく増加することになります。ではこの増加した支払いの原資はどこから得たものでしょうか? それは単身世帯からの税金です。これまで挙げたいくつかのモデルでは、単身世帯で収入が大きく減少し、多人数世帯で大きく増加しています。これは「少人数世帯から多人数世帯への所得移転」です。高額所得者も納める税額は大きいですが、その分、ベーシックインカムで収入が補われています。また、高額所得層ほど子供の人数が多い傾向があり、その意味でベーシックインカムは高額所得層の多人数世帯に有利な制度と言えます。 単身世帯では収入の45%を税金として納めているにもかかわらず、ベーシックインカムで得る収入は月8万円でしかありません。単身世帯は多人数世帯に比べて一人当たりの生活費が多く必要です。衣食住のすべてにおいて複数人世帯は一人当たり経費が単身世帯より少なくて済みます。こうした事実は、ベーシックインカムが「個人に対して支払う」といういわばマイナスの人頭税という仕組みからくる無視できない矛盾です。 ベーシックインカム制度は単身世帯だけが損をする制度ということになります。特に中所得層の単身世帯が最も多くの減収となります。このように特定の条件の層に対してだけ、大きな負担を負わせることになるベーシックインカムは、改善の余地が多いにあると言えるでしょう。 以上が、バーシックインカムにあまり詳しくない私が抱いた疑問です。 |