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(回答先: 第26回 アメリカの最新核融合拠点 国立点火施設「NIF」の全容 (2005/07/05) 投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 06 日 16:34:41)
第27回 郵政民営化問題で現実味帯びる小泉首相の政治生命の終焉 (2005/07/07)
http://web.archive.org/web/20051231032541/http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050707_syuen/
2005年7月7日
5票差の郵政民営化法案可決で、政界は一挙に政局ぶくみとなった。
政治というのは面白いもので、いったんこういう状況になると、どんどん引き返し不能地点に向かって加速度を増しつつ動いていってしまう。
そういうときに、小泉首相がサミット出席のため外国に行ったままという状況が、多分致命的なマイナス効果となって働く。
小泉首相はかねてから、「おれは政治より政局に強いんだ」が口ぐせである。事実、これまでさまざまの政局がらみの場面を見事に切り抜けてきている。しかし、どんな政治巧者でも、現場に居合わせないと、状況コントロール能力が格段に落ちて、普通ならなんでもなくコントロールできる状況がコントロールできなくなってしまう。
政治は、基本的に人と人が会うことによって、状況が切り開かれていく。状況が急速に動いていくクルーシャルポイント(肝心かなめの時点)で、人に会えない状況に追い込まれた政治家は、どんな有能な政治家でも突破力を失ってしまう。
政局を読めずに失脚した田中角栄元首相
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思い出すのは、1974年に、田中角栄首相(当時)が、金脈退陣に一挙に追い込まれていった前後の状況である。
あのとき角栄は、前から予定されていた東南アジア諸国訪問を欠かすことができず、金脈問題が露呈して、状況が政局がらみになってきたまさにそのとき(外人記者クラブの会見で問題が一挙に表面化して数日後、国会で連日問題が取り上げられるようになったまさにそのとき)日本を離れなければならないことになった。
角栄は毎日、海外から多数の人に多数の電話を入れて、情報を集め、かつ状況を改善するべくさまざまな人にさまざまの働きかけをしつづけたようだが、うまくいかなかった。
相手と直接対峙すれば、どんな困難な状況下でも圧倒的な突破力を発揮した田中角栄も、電話ごしでは、そのパワーが百分の一以下に減殺された。イライラがつのり、角栄は海外で精神不安定状態におちいり、それがますます状況を悪化させた。
角栄は帰国早々に内閣改造に踏み切った。それで一挙に流れを変えようとしたらしいのだが、それがすべて裏目に出て、逆に、退陣必至の流れがアッという間にできてしまったのである。
ほんのしばらく前まで、無類の政治力を持っていた田中角栄が、退陣に追いこまれることになろうとは、誰も想像だにしていなかった。なのに、ほんの数日間の状況激動期に、精神的不安定状態におちいった角栄は、ことごとく状況判断を誤り、アレヨアレヨという間に一挙に政権を失ってしまったのである。
これからの数日間、あれとよく似た状況が生まれるのだと思う。不穏な空気がどんどん形成され、ポスト小泉がさかんに語られはじめる(すでにそれがはじまっている)。
next: 小泉首相はそのような動きを…
http://web.archive.org/web/20050709030213/http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050707_syuen/index1.html
小泉首相はそのような動きをおさえるために、帰国早々に電撃的な内閣改造に踏み切るのではないか。しかし、小泉人事の威力は(対自民党でも対一般社会へのインパクトでも)とっくに失われているから、やることなすこと裏目に出て、世の中の関心は、一挙にポスト小泉が誰かのほうに移ってしまうだろう。
そうなるとマスコミには、小泉政治に対するカラ口の評価があふれだし、小泉評価は、「戦後最もすぐれた政治家」から、「戦後最低の政治家」へと一挙に大転落してしまうだろう。
郵政民営化は国家の解体と切り売りに等しい
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肝心の郵政民営化については、マスコミ論調は一般に、民営化を支持し、民営化の側に正義があるという立場だ。民営化反対論者たちは、アナクロの旧体制温存主義者たちという扱いだが、私はこの論調に納得がいかない。
私は小泉首相の郵政民営化の基本的発想そのものが根本的にまちがっていると思う。
郵政民営化論者の最大の狙いは、なんといっても事業体としての郵政公社を解体し、郵政三事業をバラバラにして、それを民間の事業者にわけ与えてしまうことにあるようだ。
なかんずく、郵貯と簡保をバラバラにして、その持てる資金を民間の金融業者、保険業者にわけ与えてしまおうということのようだ。
郵貯と簡保は世界最大の金融事業体である。しかしそれは誰のものか。国民のものである。それは国民が長年にわたって営営と育てあげてきたものである。
この金融システムは国民の資産なのである。小泉首相がやろうとしていることは、それをバラバラ事件のごとく解体し、大きな肉のかたまりにして、「民間でできることは民間で」のかけ声とともに、周辺でハイエナのごとく舌なめずりして待っている、内外の金融資本に投げ与えてしまおうということなのだ。
これは国民の資産の切り売りどころか、投げ捨てに等しい行為だ。
数年前に起きた日本長期信用銀行の外資への切り売りに比す人が多いが、私はもっと悪いと思う。
金融事業体としてのスケールの大きさは、郵政公社と長銀では、巨象とネズミくらいのちがいがある。ある意味では、郵政公社の金融力は国家そのものといっていいぐらいの大きさを持つ。
つまりこれは小泉首相による国家の解体と切り売りなのだ。
next: 比較するなら、これは明治初年代に…
http://web.archive.org/web/20050709030643/http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050707_syuen/index2.html
比較するなら、これは明治初年代に政府が殖産興業政策によって、次から次に公金を投じて作っていった、ありとあらゆる官営鉱山、官営工場を、明治 10年代に入ると片端から、政治家、官僚と結託した民間の有力者に払い下げていった、官営工場・官有物の連続払い下げ事件(日本の財閥はすべてこのプロセスで生まれ育ち、日本の政治腐敗、経済腐敗もすべてここから生まれた)に比すようなできごとだと思う。
郵政公社は基本的に国民の資産であるという視点からものごとをきちんと考えていけば、これほど愚劣な民営化政策に国民全体がのせられるべきではないということが誰の目にもすぐ明らかになるはずである。
郵政事業の赤字を演出した財務省にこそ非がある
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郵便事業にしても同じことだ。鈴木邦成「民営化で始まる物流大戦争」(かんき出版)が指摘するように、郵政公社の郵便事業はうまく育てていけば、世界最大の物流ビジネス会社になるだけの巨大なポテンシャル能力を持つものだ。
ところが、小泉首相がやろうとしていることは、これまた解体して、いいとこ取りで民間に切り売りしてしまおうという発想でしかない。
国民の資産を大切に守り育てようという視点がまるでない。
小泉首相は、日本が救いがたい赤字財政国家におちいってしまったのは、郵政の金融事業が赤字国債の最大の購入者として機能しているからであって、巨額の赤字国家システムをつぶすためには、どうしても郵政の金融事業をつぶす必要があるという。
しかし、これはとんでもない倒錯した議論だ。
たしかに、郵政の金融事業が、赤字国債の最大の支え手として機能しているという事実はある。
しかし、それに郵政公社が自ら好んでしていることではない。
そうさせているのは誰か。そのようなシステムを作り郵政公社にそのような役まわりを演じさせてきた、財務省(大蔵省)ではないか。そして、このスキームを徹底的に利用して甘い汁を吸い放題に吸ってきたのは自民党ではないか。
この連中こそ、日本の経済を破綻させ、政治をダメにしてきた元凶ではないか。
このような日本の政治、経済の積年の病弊を改めようと思うなら、小泉首相がまずなすべきことは、財務省の政策を改め、自民党の政策を改めることではないか。
要するに内閣総理大臣である自分、自民党総裁である自分が配下の者たちに命じて、なすべきことをなさしめるのが第一に必要なことのはずである。単純すぎるほど単純な論理をふりまわして、すべては郵政公社が存在するからいけないのだといって、郵政公社つぶしに狂奔することではないだろう。
小泉首相の「郵政公社をつぶさないと日本の赤字財政がなくならない」という論理は、ちょっと違う世界におきかえてみたら、日本の教育水準が低くて、非行、不登校児など、問題ばかり起こしているのは、全国津々浦々にある公立の小中学校がダメだからだ。これを片端からつぶして、民間の教育業者に片端から事業移転してしまえば、教育水準もあがり、国の負担も減るから一石二鳥だというに近い乱暴な議論である。
next: さらに極端なことをいえば…
http://web.archive.org/web/20050709032127/http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050707_syuen/index3.html
さらに極端なことをいえば、これは、まるで、死刑廃止論者が、「日本から死刑がなくならないのは、死刑執行人がいるからだ」といって、死刑執行人の全員首切りを叫ぶのとほとんど同じような議論である。
問題の性質がちがうことは重々承知の上だが、小泉首相の主張の論理的ナンセンスぶりを浮き彫りにするために、あえてこの比喩をさらに使い続けると、死刑がなくならないのは、死刑執行人がいるからではなくて、死刑をよしとする制度があって、死刑執行人の上に、死刑執行を命じる人がいるからなのだ。
要するに、ここまでひどい赤字財政国家を作ってしまったことで何より悪いのは、赤字国債を引き受けてきた郵政公社ではなくて、このスキームを作ってその上にアグラをかいてきた党だということは、火を見るより明らかではないか。
それを郵政公社をつぶせというのは、倒錯の論理そのものである。
小泉首相よ、本当に必要な「小泉改革」とは、小泉首相自身を「改革」することではないのか。
小泉・竹中コンビにトドメ刺す「竹中大臣のPR戦略文書」
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今週の「週刊ポスト」が、「竹中『疑惑のチラシ作戦』でバレた『小泉支持者はIQが低い』内部文書」という記事で面白いことをバラしていた。
竹中郵政改革担当大臣が雇ったPR業者のPR戦略文書に、「小泉内閣の支持基盤は、主婦層、子供層、シルバー層など、『具体的なことはわからないが、小泉総理のキャラクターを支持する』IQが低くて構造改革にはポジティブな層」という分析があるという。
このバクロ文書は、小泉・竹中コンビにとって致命傷になるかもしれない。
これから参院の郵政問題の審議がはじまるが、小泉・竹中にこの文書が突きつけられ、「あなたは郵政民営化を支持してくれる人達はIQが低い人々と考えるPR業者に、郵政民営化のPRを頼んでいるのか。あなたは大衆はIQが低いと思っているのか。あなたは大衆をバカにしているのか」
などと連日にわたって攻めたてられたら、いかにもっともらしい否定答弁をならべて切り抜けようとしても、そうすればするほど、そういう文書の存在が喧伝され、「小泉・竹中イコール大衆をIQが低いとバカにする政治家」というイメージができあがってしまうだろう。
自分をバカにする人間に対する大衆の怒りは、爆発すると、とんでもなく大きい。
おまけに、このPR業者に対する発注それ自体が、不明朗きわまりないもので、ほとんどスキャンダルといっていい裏事情があることが報道されている。この文書は二重の意味で、小泉・竹中コンビの致命傷になるかもしれないのである。
立花 隆
評論家・ジャーナリスト。1940年5月28日長崎生まれ。1964年東大仏文科卒業。同年、文藝春秋社入社。1966年文藝春秋社退社、東大哲学科入学。フリーライターとして活動開始。1995-1998年東大先端研客員教授。1996-1998年東大教養学部非常勤講師。
著書は、「文明の逆説」「脳を鍛える」「宇宙からの帰還」「東大生はバカになったか」「脳死」「シベリア鎮魂歌―香月泰男の世界」「サル学の現在」「臨死体験」「田中角栄研究」「日本共産党研究」「思索紀行」ほか多数。講談社ノンフィクション賞、菊池寛賞、司馬遼太郎賞など受賞。
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