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第28回 脳内チップが未来を変える! 米国サイボーグ研究最前線 (2005/07/20)
http://www.asyura2.com/08/senkyo56/msg/581.html
投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 06 日 17:59:31: Dh66aZsq5vxts
 

(回答先: 第27回 郵政民営化問題で現実味帯びる小泉首相の政治生命の終焉 (2005/07/07) 投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 06 日 17:44:43)

第28回 脳内チップが未来を変える! 米国サイボーグ研究最前線 (2005/07/20)
http://web.archive.org/web/20051218061908/nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050720_cyborg/

2005年7月20日

 いま、アメリカに来ている。NHKの秋の特番、「サイボーグが人間を変える」(仮題)の取材である。到着早々、ニューヨーク州立大学のシェーピン教授のラボで驚くべきものをみた。

 ネズミ(ラット)が頭に小さなTVカメラを乗せ、脳内埋め込み式の3つの電極と送信器を頭に乗せて走り回っている。

 これは生きたラットをそのままロボットのように操縦可能にした「ロボ・ラット」なのだ。

 
人間が脳を乗っ取る「ロボ・ラット」の衝撃
……………………………………………………………………
 研究者が頭部にのせたカメラからのビデオ映像を見ながら、小さなラップトップコンピュータでシグナルを送ると、ラットの動きを自由自在に操ることができる。

 遠くに行かせて、戻ってこさせることもできれば、迷路のような道に入りこませ、ジグザクに走って迷路を抜けさせることもできる。

 ハシゴを登らせて、普通なら登るはずもない高い所に行かせ、高所の細い通路を伝って、またハシゴで降りてこさせるなど、なるほど自由自在だ。

 電極は脳の運動野と体性感覚野に埋め込まれている。普通のネズミは、ヒゲで周辺環境を察知して、右すべきか左すべきかを判断し、その判断結果を運動野に送る。

 ラップトップからの信号は、その神経連絡路に入るから、ネズミは、自分の脳がそういう判断を下したと考えて(実際には考えもしないで、反射的に)、その指示通りに行動する。

 要するに、ロボ・ラットは、脳を人間に乗っとられ、人間の指示通りに動くようにされてしまったラットなのだ。

 電極はもうひとつ入っていて、それは脳の快楽中枢に埋め込まれている。

 ラットが指示通りに動くと、研究者は快楽中枢を刺激する信号を送る。ごほうびなのだ。

 普通の動物実験では、ごほうび(報酬)として、ジュースひとなめとか、食物ひとくちなどが与えられるが、ここでは、快楽中枢への刺激一発なのである。しかし、それでラットは喜んで与えられたどんな課題もこなしていく。

 見ていると、ちょっと恐ろしい気もしてくる。もしこの技術が人間に利用され、人間が快楽中枢への刺激一発で、普通ならするはずもない危ない行動をどんどんするようになったら、恐いだろう。

 ロボット・人間兵士を作ることも不可能ではないだろう。

 
next: 脳内チップが人間を支配する…
http://web.archive.org/web/20051218061908/http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050720_cyborg/index1.html

脳内チップが人間を支配する「クライシス・オブ・アメリカ」が現実に
……………………………………………………………………
 しばらく前に日本で公開された「クライシス・オブ・アメリカ」という映画があった。あれは、ほとんどこういう技術のもっと進んだヴァージョンが人間社会に応用された場合の危険性を描いたものだ。

 湾岸戦争のときにアメリカ兵の一小隊が何者かによって拉致され、中東の某所で脳手術を受け、頭にチップを埋め込まれてしまう。

 そこに信号を送ることによって、彼らの脳は自由にコントロールされるようになる。その小隊の中に、アメリカ南部の富豪の息子で、母親は上院議員というエリート中のエリートがいる。帰国後彼は政界に入り、みるみるうちに成功を重ね、やがて大統領選挙戦に出馬して、副大統領候補になる。

 そのあたりから、手に汗にぎる面白いドラマが次々に展開していくのだが、映画を見てない人の興をそがないために、これ以上は書かない。──この映画、ロードショー館での公開は終わっているが、まだ二番館のプログラムに乗っているし、まもなくDVDも発売になる。いずれTV公開もされるだろう。

 この映画、テクノロジカルにも面白いが、現代アメリカ社会の政治・社会の独特の一断面を知る上で大変興味深いから、ぜひ一度見ておくことをおすすめする。

 この映画、「クライシス・オブ・アメリカ」というタイトルをつけたのは、実は日本の配給元で、原題は「マンチューリアン・キャンディデイト」という。「満州国の候補者」の意味だが、満州国がかつて日本の傀儡(かいらい)国家であったところから、「マンチューリアン・キャンディデイト」は、「傀儡候補」の意味になる。主人公は操縦者によって脳が乗っとられているから、傀儡候補なのだ。現代風にいえば、ロボット候補といってもよい。

 この映画、実は、1950年代に世界中で公開されて評判になった、フランク・シナトラ主演の「影なき狙撃者」のリメイク版である。「影なき狙撃者」は実はやはり日本の配給元がつけた日本名で、原題はあのときも「マンチューリアン・キャンディデイト」だった。

 旧版の映画の背景は朝鮮戦争で、戦争中に米軍の一小隊が北朝鮮・中共軍に誘拐され、満州に拉致されて、そこで催眠術を応用した洗脳教育を受けさせられたという設定になっている。

 催眠術で洗脳された主人公が、帰国後政界に出て、大統領選に出るなど、話の骨格はリメイク版もオリジナルもほとんど同じだが、ストーリーの背景と、細部は大きく異なる。特に脳を操作する技術が催眠術とチップ埋め込みでは、操作能力もそのパワーも大きくちがう。

 取材してわかったことだが、あの映画は、我々がいま取材している技術が生まれ、世間で評判を呼びはじめたときに、その技術の上に乗せる形でシナリオが書かれたものなのだ。

 
next: 先端医療に革命もたらす…
http://web.archive.org/web/20060318211023/http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050720_cyborg/index2.html

先端医療に革命もたらす“脳の乗っ取り”
……………………………………………………………………
 迷路をクルクル走り回らされているロボ・ラットを見ていると、人間が誰かによってこのように自由自在に操作されるような社会になったら、これはたまらんことになるなと思う。

 実際、シェーピン教授のもとにはそのような恐れを抱く人々から、そのような研究は危険だからやめろという抗議の手紙やメールが沢山くるという。それどころか、この研究の背景には、エイリアンの地球乗っ取り(全人類の脳乗っ取り)陰謀計画があるのだと主張し、シェーピン教授の脳もすでにエイリアンに乗っ取られており、彼らに自由に操作されているから、こういう研究をしているのだという警告の手紙までくるという。

 ニューヨークの取材を終えて、すぐにノースカロライナのデューク大学に飛び、この方面の研究で世界をリードしているニコレリス教授のラボを訪ねた。インタビューをしたら、やはり同じような心配をする人からの反応が沢山あるという。

 しかし、現在の研究の方向は全く逆で、目的は人類操作のためではなく、脳の機能不全で苦境にある人間をいかに救済するかという医療目的にある。

 たとえば、パーキンソン病の患者の一つの症状は、身体の一部に震えが出て、それが止まらないことだが、それに対して、脳神経系のそのような震えの信号を出している部位に電気信号を出すチップを埋め込み、震えの信号をキャンセルするような信号を加えれば、その震えが止まるのである。

 そのような実験医療がすでにアメリカではFDA(Food and Drug Administration:米国食品医薬品庁。実験医療の許可はここが出す)の許可の下に始まっており、有効性が証明され、すでに実用化の段階にきている。ちょうど、心臓の不整脈症状をかかえる人が、いまペースメーカーを埋め込むことで、日常なんでもなく生活できるようになっているように、パーキンソン病のあるタイプの患者は、脳内埋め込み型の電気信号発生装置を持つことで、なんでもなく生活できるようになっている。日本でもある種のケースについては、この技術が、保険が適用されるスタンダード医療になっている。

 あるいは、てんかんという病気は、なんらかのきっかけで、脳の特定部位の細胞群が一挙に爆発的に発火(神経の発火作用)することで発作が起きるが、脳細胞の活動を常時モニターしていると、その発作のちょっと前に間もなく発作がはじまるぞという前兆現象を観察することができる。そのとき、発作の中心になる焦点部位に抑制性の電気信号を送り込むと、発作が止まるのである。

 そこでこれも脳内埋め込み型の脳内電気信号モニター装置と発作を止めるための電気信号発生装置を入れてやれば、てんかん患者の発作の心配をなくすことができる。

 これは動物実験では、てんかん持ちの動物を実験的に作ることによって、その技術の有効性が確かめられている。そのデータを見たが、なるほどビックリするほどの有効性が示されている。この治療法はFDAの許可も出て、間もなく人間で有効性を調べる実験医療がはじまる予定になっている(すでに、その実験にぜひ参加したいというボランティア患者が10人以上も出ているという)。

 こういう驚くような研究現場を次々にまわっているところなので、聞く話、見る話、オドロキの連続である。

 
立花 隆

 評論家・ジャーナリスト。1940年5月28日長崎生まれ。1964年東大仏文科卒業。同年、文藝春秋社入社。1966年文藝春秋社退社、東大哲学科入学。フリーライターとして活動開始。1995-1998年東大先端研客員教授。1996-1998年東大教養学部非常勤講師。2005年10月から東大大学院総合文化研究科科学技術インタープリター養成プログラム特任教授。

 著書は、「文明の逆説」「脳を鍛える」「宇宙からの帰還」「東大生はバカになったか」「脳死」「シベリア鎮魂歌―香月泰男の世界」「サル学の現在」「臨死体験」「田中角栄研究」「日本共産党研究」「思索紀行」ほか多数。講談社ノンフィクション賞、菊池寛賞、司馬遼太郎賞など受賞。  

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