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http://www.tokyo-np.co.jp/feature/sakimori/news/070325.html
イラクの首都バグダッド上空。昨年十一月、航空自衛隊のC130輸送機が米軍基地キャンプ・セイサーに着陸しようと高度を下げたところだった。
「ピー、ピー、ピー」
突然、操縦室に警報が響いた。同時にボン、ボンと鈍い音を残しておとりとなる火炎玉のフレアが機外に自動発射された。
「右だ!」。機体が傾き、急激に右へ旋回する。続いて左旋回。さらに右旋回、左旋回と警報が消えるまで切り返しは続いた。
警報はミサイル接近を探知すると鳴る。イラクに出回っているのは旧ソ連製の地対空携帯ミサイル「SA7」だ。熱源のエンジンめがけて飛び、機体近くでさく裂する。
警報機は操縦席の左右にあり、右が鳴れば右旋回し、左なら左旋回する。機体をミサイルに向ける捨て身の戦法だけに「勇気がいる」と操縦士は口をそろえる。フレアだけでは逃げきれない。
バグダッド便を経験した乗員は同じ感想を抱くという。「これは訓練ではない。実戦なのだ」
イラク特措法に基づき、クウェートのアリ・アルサレム空軍基地に派遣されている空自部隊約二百人は日本政府の決定により、昨年七月三十一日からバグダッドへの飛行を開始した。そこで求められたのは「ミサイルからの回避行動」。陸上自衛隊を空輸していたイラク南部のアリ(旧タリル)との往復では一度もなかったことだ。
警報が鳴り、回避行動をとった回数について、運航担当の空自幹部は「頻繁にある」と驚くべき証言をする。昨年十一月には同一地点で警報が鳴る事象が頻発した。
「空自機が狙われているのか」との問いに、統合幕僚監部運用二課長の松村五郎陸将補(48)は「撃たれたことは一度もない」と断言する。
それでは機械の誤作動なのか。
昨年十二月に帰国した第十次派遣輸送航空隊司令の田中久一朗一佐(50)は「『分からない』というのが正確な答えだ。乗員は窓から機外を監視しているが、向かってくるミサイルを見たという目撃証言は上がらなかった」。
誤作動なら、なぜアリやアルビルで警報が鳴らないのか。ミサイル飛来を排除できないから警報が鳴るたび、毎回、回避行動をとらざるを得ない。
昨年九月、首相官邸。安倍晋三官房長官(52)=当時=のもとへ空自幹部が報告に出向いた。
幹部「多国籍軍には月三十件ぐらい航空機への攻撃が報告されています」
安倍「危ないですね」
幹部「だから自衛隊が行っているのです」
安倍「撃たれたら騒がれるでしょうね」
幹部「その時、怖いのは『なぜそんな危険なところに行っているんだ』という声が上がることです」
政府決定通りの活動を続け、政治家に知らんぷりをされては、屋根に上ってはしごを外されるのに等しい。安倍氏は答えた。「ああ、それなら大丈夫です。安全でないことは小泉首相(当時)も国会で答弁していますから」
確かに小泉純一郎氏は国会で「危険だからといって人的貢献をしない、カネだけ出せばいいという状況にはない」と述べている。「危険」は首相のお墨付き、というのだ。
◇
イラク派遣への関心は陸上自衛隊の撤収後、急速に薄れた。防衛省は、現在も続く航空自衛隊による空輸活動の詳細を公表せず、論点を示さないまま、七月に期限切れとなるイラク特措法の延長を図る。新防人(さきもり)考第二部では知られざる空自活動の実像に迫る。
(この連載は社会部・半田滋が担当します)
2007年3月25日
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