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シミュレーションとして想定し得るひとつのシナリオによる「警告」
http://www.asyura2.com/0406/war59/msg/160.html
投稿者 ファントムランチ 日時 2004 年 8 月 29 日 07:44:27:oswAM6lqBSCW6
 

(回答先: イラン・イラク隠密同盟など実体なし 投稿者 パーマン21号 日時 2004 年 8 月 28 日 11:05:31)

パーマン21号さん、はじめまして。レスありがとうございます。

★まず「この記事の基本的スタンス」に関する私の感想を述べますと... 、

この記事は基本的に現在の中東地域の戦力バランスを分析し、多くの見落とされている、または意図的に伏せられている情報を加味することで、情勢判断の幅を広げようというものです。西側の大手メディアが流す政府広報的なニュースや、それのみに根拠を依存すべきだと考えている多くの退屈な国際政治評論家などの言論が一方である中(アメリカなどにもそのような学者肌の優等生論文があふれている)、この筆者はそれらに強く対抗する論調で文章を書いていますので、一般的な記事に比べるとやや偏った、前のめりに感じられる部分もあるかもしれません。

その点はご本人も承知の上で敢えてそういう手法をとっているわけで、さらに彼は「西側」の人間でありながら「西側」の指導者や軍司令官を辛辣な表現で批判したり、また記事ではたとえばIslaelという単語を使わず、代わりにZionという用語を使い、イスラエルという国家の存在を認めてはいないかのような(ユダヤ人全体ではなく一部の急進的なシオニストに支配されている現イスラエル政権という意味かもしれないませんが)、やや挑発的な姿勢と、反米・反シオニズムの立場が感じられます。しかしこれも彼がより強い「警告」を発するために敢えてとっている手法だと思われます。

また現状を分析して未来について書くのものはすべて「予測」である以上100%断定できることなど有り得ません。それはあくまで一つの見解に過ぎないのであって、読者はそれを承知した上で読むべきです。この記事は文章の中で不確かな予測に関して、断定的な口調で語る部分も多く見られますが、書き手が予測的見解を述べる際に、あまりに自信なげに「〜かもしれない」「〜という可能性もある」という語尾表現を連発する必要はないと思われます。読んだ結果そこにどれくらい有用な情報があるのか、全体としてどれほどの説得力があるのかは、読後の感想に差が生じて当然です。

この記事は、欲望によって非常に限られた情報と狭い視野をもとに情況を判断しがちな支配層や騙されやすい大衆に向けて、「こういう見方もある」、「こういう展開も想定できる」というシミュレーションを試みているのであり、そこに影響を及ぼす要因をより多く追加し、判断の質的向上を図ろうというものです。やってしまったことは二度と取り返しがつかない現実世界で、物事を推し進めるにあたり、つねに最悪の結果、最大のリスクを考慮しなければならないわけで、そのためにはがらっと視点を変え、相手側の戦術と心理を深読みするくらいの姿勢も重要で、そこから想定し得る複数のシナリオを導き出して提示することに意味があるのではないでしょうか。

この筆者はたぶん反米でも反ユダヤ人でもないと思います。イランやイラクがイスラエルを消滅させることを願っているわけでもないでしょうし、イランやイラクに戦いをけしかけているわけでもありません。ただこうしたシナリオを提示することでアメリカとイスラエル側がイランを攻撃したり、イラクへの対応を誤ると、逆にしっぺ返しが来る、そして双方に測り知れない犠牲を強い、しかも敗北するという見解を示しています。戦争を仕掛けてはいけないというより、出来ないのだ、だから自重すべきだという「警告」を強く発しているわけです。

イスラエルがイランを攻撃すれば、第3次世界大戦に発展するという飛躍した主張をしている人もいます。この記事ではそこまでは触れていませんが、第3次世界大戦につながりかねない、そこに行き付くまでの過程を具体的に、シミュレーションのひとつのモデルとして提示しているのであり、仮説だとしても気付かされる点が多いと感じます。ブッシュ大統領はイラク占領統治に「誤算があった」と正式に認めました。イラク侵攻と占領統治は不可分の行為であり、占領統治に「誤算があった」ということはこの戦争そのものに「誤算があった」ということになります。占領統治の難しさはイラク侵攻に反対した人々がとっくに見抜いて「警告」していたことでした。

ブッシュ政権は開戦当時、占領統治下でイラク南部のシーア派とこれほどこじれるとは予想していませんでした。それに関する深読みした「警告」は当時は無視されていました。現在これから先の展開を考える場合でも、やや可能性を広く捉えて論証し、想定し得るいくつものシナリオからリスクを認識して行動する、あるいは行動を控えることが重要で、ことが起こってから「誤算があった」で済すには、あまりに犠牲が大きすぎるというか、まったくこれは犯罪です(この連中を裁く仕組みがないのが問題ですが)。無謀な行動に突っ走る前に、それが無謀であることを悟り、とりあえず膠着状態を保つなかで政治的解決の道を模索する、あるいはせざるを得ないということを、この「警告」は説いているわけです。

この記事では様々な情報をもとに分析や想定を行なっていますが、そうした見解に関して、私はほとんど違和感を感じませんでした。ある部分は非常に納得でき、またある部分は論旨がギリギリのところを攻めいてるのだなと感じてもじゅうぶん理解の範囲内でした。ただいくつかの箇所で根拠となっている情報の出所が明示されていないという点が、少し引っかかるということはあります。例えば別の記事になりますが、以下の記事では神経質なほど一段落ごとの内容について参考文献や引用元へのリンクを明示するよう、最後にまとめて40件ほど列挙しています。

http://www.asyura2.com/0406/war57/msg/829.html

これと比べると両者対照的ですが、記事のタイプが違うとしか言いようがありません。イランとイラクの隠密同盟に関するこの記事は和訳するに当たり、固有名詞などをネット上で検索をかけると、多くの事実関係については自然と裏がとれ、基本的に信頼がおけるという印象をもっていますが、一方でたとえば「イラン沿岸部に何時でも出撃できるように待機している攻撃機」について描写がきわめて具体的な割りに、情報の出所が明示されていないのが残念ではあります。彼の書いたものをすべて読んでいるわけではないので分かりませんが、中には以前自分で詳しく書いたものを引っ張ってきている記述もあるかも知れません。

★(勝手ながら)以上を踏まえて、 パーマン21号さんのご見解に簡単ながらお応えします。

>しかし今回のイラク戦開始前においても、
>該当戦闘機がイラクに返還されることはなかったのである。
>つまり約束らしきもの?はとうに反故にされ、
>イランは無償で最新鋭の戦闘機とその機密情報ともらっただけのことであり、
>これはほとんどイラ・イラ戦争においてイラクの支払うべき、
>戦後賠償費の一部ぐらいの意味しかないものであった。
>筆者の言う、<イラン‐イラク同盟>など、
>「イスラムの大儀が存在する以上何らかの協力関係はありうる」
>という程度の憶測記事としか思えない。

そういう見解も否定しません。でも筆者の見解も否定できないと私は思います。
湾岸戦争でアメリカがフセイン政権にとって敵に回った以上、
イランと和解を進め政治的に急接近することはむしろ自然であり、
ロシアやフランス・中国などから油田権益と引き換えに同種の武器援助を得るなど、
イラン・イラク両国はいわば抑止戦略的に非常に似かよった立場に陥ったわけです。
またイラクには経済制裁がしかれ、飛行禁止区域が設けられ、
さらに大量破壊兵器への査察団が繰りかえし出入りしていました。
こうしたなかで湾岸戦争当時イランに避難した戦闘機などは、
そのままイランに預けておくほうが、イラクに戻すよりも遥かに安全であると私は思います。
それには両国の信頼関係が重要ですから、それに疑問を感じるのは分かりますが、
どちらか天秤にかけた場合、空軍の一部をより奥座敷であるイランに置いておくほうが、
米国の手が届かず正解だろうと、当時フセイン大統領は判断したのでしょうし、
イラク戦争が起こった現在から見てもそれは正解だった言えるでしょう。
そしてそれは戦後賠償費というよりは、ゆるやかな同盟関係の質と捉えることもできます。
もしイラクにそれらの戦闘機が返還されていてイラク戦争初期に出撃しても、
米軍の戦力が充実している時にまともに勝負をかければ、無駄に撃墜されるだけです。
それよりもJoeVialls氏が提示した戦略のほうが、戦況のタイミングや地形的にみて
理に叶っていますし、エクゾセを装備しているからには対艦攻撃が主戦術になります。
イラクからペルシャ湾に出るには飛行禁止区域とクエートがありますし、
敵が制空権を握る中、距離的に考えてもとんでもない自殺行為でしょう。
サダム・フセインがこのような理由でイランに戦闘機を預け続けていたとも考えられます。
断定はできませんが否定もできません。諸説あっていいと思います。
筆者はあくまで戦略的に考えてそうした協力関係が有り得ると分析し、
だから隠密同盟という表現を使ったのだと思います。

>イラク・シーア派がイラン政府と結託しているなどというのは、
>韓国人と日本人が儒教や仏教を信じているので、同じ同盟関係にある連立国家だとデマをつくようなものである。
>民族的な違いが、宗教以前に国家を裏切ることを抑制しているのである。

これはまったく粗暴な理論展開で、イスラム教徒シーア派としての心理を考えるうえで、
たとえ同じシーア派でもペルシャ人とアラブ人という違いがあるからといって、
韓国人と日本人が儒教や仏教を信じ云々という比喩が適当だとはとうてい思えません。
またこの記事は、
サドルがシーア派聖職者たちによって選定された人物という表現は使っていても、
「イランのシーア派に服属する人物」などとは一言も言っていませんし、
しかもこの記事全体がそもそも、
「宗教的」理由で何らかの連携が生じているという角度から論じられていません。
あくまで「戦略的」に共通の敵に対して共闘する体制の形成について論じられています。
また、アメリカを追い出した後にどうなるかについては、内戦の混乱を否定していません。
スンニ派・シーア派・イランとの具体的な合意や会合などの情報が示されていないので、
その連携を強調しすぎの感はありますが、三者の利益から考えて何らかの手段で、
連絡を取り合っていることはじゅうぶん考えられます。
筆者は旧イラク政権とイランとの間にゆるやかな同盟が形成されていて、
それが今も何らかの形で継続していると捉えているわけです。
そして現在抵抗しているスンニ派をイラク共和国防衛隊の残党と位置付けています。
私にはフセイン政権が湾岸戦争後の12年間に、イランとどのような関係を維持したか、
またイラク戦争の開戦直前に、裏でイランとどのような交渉を行なったかは分かりませんが、
危急存亡のフセイン政権と、東側のアフガニスタンが米国の手に落ちたイランが、
まったく何の交渉も行なわずに、音信不通だったとは考えられません。
ただ、仮にゆるやかな隠密の同盟関係を結んでいたとしても、
フセイン政権が崩壊した時点でその同盟関係をまともに引き継ぐ主体が存在するのか?
ということになり、それについては甚だ無理があると言わねばなりません。
そういう意味ではイランとイラクの同盟など、実体は無いと言われるのも分かる気がします。
政権を失ったイラクのどんな勢力も、イランとの平等な同盟は維持できないでしょう。
ただスンニ派にしてもサドル派にしても、今はどんな援助でも欲しい筈です。
しかしここでイラク側からではなく、イラン側から考えてみて下さい。
米国と長年敵対関係を続け、アフガニスタンとイラクの両方が米国の占領下に落ち、
イスラエルから核関連施設をめぐりプレッシャーをかけ続けており、
戦争を仕掛けられることを想定して対策を講じざるをえない状況になっています。
ロシアにもすがるでしょうし、イラク情勢が混迷し、その地で米国を食い止められれば、
それで自国の防衛になるので、イランにとってイラクの抵抗勢力との繋がりは重要です。
イランは混乱に乗じてイラクの領土を手に入れようとまでは今どき考えないでしょうから、
仮に米国をイラクにおいて撃退でき、その後内戦状態になった場合でも、
結果的に親イランの政権が誕生すれば儲けものと思っているはずです。
それにはとにかく今から米国の傀儡ではない諸勢力と関わっていくことが重要です。
さらにイランがもし追い詰められて先制攻撃に出る場合、
新規の戦争として宣戦布告というかたちをとるよりは、イラク戦争がまだ継続していて、
イラク軍の反撃と、同盟としての参戦というかたちをとるほうが、
面白いといってはなんですが、大義としては、ちょっとはマシかなとも思ったりします。
いずれにしてもこの記事でいうイラン・イラク隠密同盟とは、厳密な意味のものではなく、
ゆるやかで実体が捉えにくい、流動的なものを表していると思われます。
あとは言語表現の問題であり、それが不適切だと拘られればどうしょうもありません。

>事実、穏健派指導者は何者かにより次々と殺害され、どういう訳か、
>牙をむいて襲いかかる獣(ブッシュ・コピー)だけが生き残っていくようなのだ。
>こうした<イラク・シーア派=イラン政府>同盟論は、ブッシュ政権の流す、対イラン包囲網の一貫であると思うな。
>つまりイラク問題に手を出せば火傷することになるぞ、という威嚇である。

イスラエルとアメリカが対イラン包囲網を目指しているのは確かでしょう。
しかしあらゆる角度から見て包囲網は成功していないと思います。
単に地理的に両側のアフガニスタンとイラクを中途半端に押えているだけでしょう。
またどうもパーマン21号さんは現在も米国が絶大なる兵力を保持し、
イランを痛めつける余力がじゅうぶん残っていると認識されているようなのに対し、
この筆者は米軍は疲弊しきっており、イランに手を出す余力は無く、
下手な動きをすれば散々な目に遭うのは米国とイスラエルだと言っているわけで、
これについては、まったく見解が逆ですよね。
現在の米国の軍事力、経済力、外交力、国内世論などを総合的に見てどう評価するか。
その辺の状況認識に相違がありすぎるようです。

いやパーマン21号さんは米軍がそれほど元気だとは思っていないかも知れません。
米軍がそれほど元気でなくとも、言葉によるハッタリの威嚇はできますからね。
私が最近のイランに関する記事から感じることは、イランの政府高官の発言や態度に、
強がりのハッタリではなく、何かに裏打ちされた確かな自信のようなものを感じるのです。
実際イスラエルかアメリカがイランを攻撃したらどうなるのか知りたくもありますが、
このまま判らずじまいとなることを願っています。

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