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(回答先: Re: 俊輔、新一じいちゃんを語る? 新一、毅一じいちゃんを語る? 投稿者 ジャック・どんどん 日時 2004 年 11 月 29 日 21:26:35)
ジャック・どんどんさん どうもです。
やっぱり、つっこみが入りましたね。(笑)
まず、鶴見さんの話から。
シンポジュウムに行ったのは鶴見俊輔さんの顔を見に行ったのが理由の大部分です。ご高齢だし(京都にお住まいなので)もう東京に出てこられる機会も少ないだろう、そろそろ見納め(ヲイ、ヲイ)かということです。鶴見さんは後半のパネラーの一人として出られたので、長く話されたわけではありません。内容もジャック・どんどんさん御存知の話が多かったと思います。(未知の聴衆相手だから仕方がないですが)
印象に残った話は、「私の母親は後藤新平が理想としたものを暴力で私に実現しようとした」という事で思わず唸ってしまいました。
鶴見さんは6歳?まで後藤新平宅に同居して毎日顔を見ていたのですが、後藤新平のお屋敷は今の麻布の中国大使館とサウジアラビア大使館をあわせた広大な敷地にあたるところで、女中さんはいる、お妾さんまで同居しているのに鶴見さんの母親は「うちは貧乏だ」と言ってジャック・どんどんさんご紹介の「ゴーフル盗み食い事件」の様に殴る蹴る。(笑)
鶴見さんは3歳の時に「こんな屋敷に住んでいて貧乏な訳がない、うちの母親は狂っている」と思ったそうです。芥川龍之介の母親は本当の狂人だったようで、芥川の「茫漠たる不安」の一因ともいえますし、母親との関係は存在論的な問題を抱え込んでしまうようです。
「後藤新平については何を話したのか不思議なくらい全く記憶がない」が、いつも話すときはしゃがみ込んで同じ目線で俊輔少年と話していたと言っておられました。後藤新平は岩手の水沢藩の出なんですが「賊軍でしかも1万石ぐらいの武士と言っても皆百姓をしていたような小藩」だった、それが才覚一本で明治新政府に登用された、その辺が後藤新平の「目線の低さ」につながっているのだろうということ。それとすごいお屋敷に住んでいたが、今で言う来客が出入りする「事務所」の様なもので現金はあまり持っていなかったらしい(この辺が明治の政治家の特徴で、元記事の正力松太郎に用立てた金も麻布の屋敷を担保に金を借りたようで、新平の死後売却する原因になっています。)
では正力は金を返さなかったのかと言えばそうではなく、後藤新平の故郷水沢に「日本初の公民館」を借りた倍の金で建てたようです、つまり家族には返さない、政治がらみの金はそういう個人の金じゃないんだということです。新平も娘婿の鶴見祐輔を引き立てて登用したという話もない、悪党は悪党なりに「筋」を通したわけで「バカな息子に世襲させていったら国が滅びる」というヨーロッパ的な「公」=パブリックとは違うけど、ある前提があったという事かもしれません。まぁ正力松太郎はそれを喧伝して「美談」にしちゃうんでやっぱり悪党なんですが。(笑)
ここからは私の推測ですけど鶴見さんの母親は親の貧乏な頃を知っている、政治家の家というのは本人が死ねばチャラだ、今みたいに地盤、看板、カバン(金)の「三バン」を相続するわけじゃないというのがあったと思うわけです。でもそういうのは第二世代までで鶴見俊輔のような第三世代には通用しない、その辺のすれ違いが悲劇だったのかと思いました。鶴見さんもわかっているんじゃないかと思いますが、なにせ幼児期の暴力というのは強烈ですから。
鶴見さんもご高齢で頭はしっかりしておられますが、舌はもつれるし声もかすれる、でも「表現者としては一流」ですね。きちんとメモ作って来て見ながら話すから話が循環しないし、一番受けていました。(笑)聞き取りにくければ皆身を乗り出して聞く、先代の古今亭志ん生の晩年の落語(ってマニアックですが)みたいなものです。
そういえば「後藤新平の演説のレコード」というのを冒頭に流していましたが、岩手なまりですが鶴見さんと声がそっくりでしたね。(姉の鶴見和子さんは病院付き?の老人施設に入っておられるようで、今回のシンポジュウムには出席されませんでした。)
シンポジュウム形式というのは(いつもそうですが)限られた時間で多数の人が発言しますから、司会者がよほどうまく仕切らないとグチャグチャになります、今回もそうです。知識を得ようとして身構えていくと肩透かしですね。(そういう意味では何回か見ましたが浅田彰はコーディネーターとして物凄く優秀だと思います。)
あと、加藤登紀子が来てました、ご主人(故藤本敏夫氏)が同志社?で鶴見さんと縁があったのと、加藤さんのご尊父が後藤新平が満州に作ったハルピン学院の第一回卒業生だったそうです。でも加藤さんの話は....やっぱり歌のほうがいいですね。(笑)
長くなったので他の発言者の話は一旦切って別レスにします。