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(回答先: Re: 後藤新平シンポジュウムの続き 投稿者 ジャック・どんどん 日時 2004 年 12 月 01 日 23:42:40)
ジャック・どんどんさん どうもです。
過分なお言葉を戴いて恐縮です。
>ドイツの社会政策を採用したのも、後藤新平の慧眼かもしれません。ひょっとすると、
>第一次大戦・第二次大戦は、躍進著しいドイツを叩いて、ソビエトと戦わせる国際金融の
>支配層の方々の意志が働いていたのかも。
ジャック・どんどんさんの視点とは微妙にずれますがI.ウォーラーステインは「第一次、第二次世界大戦は米独30年戦争だ」と言っています。これもテーマがでかすぎて調子に乗ると生活ボロボロになりますから宿題にします。(笑)
>後藤新平と北一輝と石原莞爾が三人がもし現在の日本の状況をみて、日本の国家戦略を
>立てるとしたらどうするでしょうか?3人ともクソリアリストやから、こんな絶望的な現況
>でも何か戦略をひねり出すでしょう。
議論板で三島由紀夫の天皇論についてUPしたんですが、三島は「天皇がたらふく食っているブルジョワなら倒すのは簡単だ、そうじゃないから苦労しているんだろう」とか怖いこと言ってますね。丸山真男の『日本政治思想史研究』の冒頭で、いわゆる「アジア的停滞」についてヘーゲルを引用していますが、中国の皇帝や天皇はヨーロッパの絶対君主としての皇帝とは違う、内部の矛盾で自己展開しない、矛盾は常に「外部」との間で起こり内部の構造は保持されるという話です。(この辺はもろヘーゲル的弁証法ですから割り引いて評価しないとダメなんですが)
北一輝は天皇を「土人の酋長から立憲君主制の『皇帝』にしよう」とした。「皇帝」になると何時かは滅ぶわけです、戦争に負けたり内政に失敗すれば。革命で倒されるかは別として少なくとも「自分で退位出来る」ようになります。
昭和天皇は戦前に一回だけ国家主権者として統帥権を行使する機会があった、2.26事件の時です。叛乱の知らせを聞いた昭和天皇は「朕が股肱の老臣を殺めし逆賊」と言って激怒するわけです。手足をもがれた思いで相当の危機感を持ったと思います。「朕自ら近衛師団を率いて征伐する」とまで言ったようですが、周囲に押し止められています。
もし、もしですよ、白馬に打ち跨った「大元帥陛下」が近衛連隊を率いて叛乱部隊を鎮圧したとすると、逆説的に「天皇親政」が実現し絶対君主になったことになる、右翼運動は壊滅でしょうし、敗戦で天皇制も終わっていたかもしれません。少なくとも戦後「栄誉ある位置=高貴ではあるが聖ではない」存在としてはあったかもしれませんが、政治権力とは切り離された「俗人」になっていた可能性があるんじゃないかと夢想します。(笑)
北一輝がそこまで考えていたかは判りませんが、明治以降の「近代天皇制」はそういう「例外状況」を想定しないと掴めないんじゃないか、騎馬民族がどうしたとか天皇の起源や「日本人の心性」ががどうしたとか論議では、死ぬまでやっても核心には入れないんじゃないか。
いま『天皇制の基層』赤坂憲男X吉本隆明(講談社学芸文庫)を読んでますが、吉本の『共同幻想論』のリターンマッチみたいなものです。以前のレスでも書きましたが私の世代(サイードの『オリエンタリズム』アンダーソンの『想像の共同体』網野善彦の『異形の王権』をまず読んだ、なぜが3冊とも89年〜90年の本です。柄谷ファン(笑)としては『日本近代文学の起源』を入れてもいい)が吉本に感じるどうしようもない違和感や批判は赤坂が全部展開しています。
昭和天皇の「大葬の礼」の話で吉本は稲作がどうのとか旧説を開陳するんですが、赤坂は「明治以前の天皇の葬式は全部仏式だった」と致命的な一撃を加えるわけです。これは網野善彦が『日本論の視座』の冒頭でも書いてますが、江戸時代では家康の「公家諸法度」でがんじがらめで金もないし即位の礼だって省略した天皇は沢山いる。明治維新はまさに王政「復古」だったわけで、古文書を漁って仏教渡来以前の天皇家の礼式を「再現」したことになる。そういうグランド・デザインを描いた悪魔的に頭のいい奴がいたという事です。
『共同幻想論』は1970年なんで当然歴史的な限界がある、しかし80年代以降吉本は駄弁にふけって「実証」との格闘を忘れた、無残としか言いようがありません。「『共同幻想論』逝ってヨシ!」ですね。
>生業に支障のないようにしてくださいね(自分から頼んどいて、ホンマ厚かましいことです)。
一応健全な市民生活を送っておりますが、(前にも書きましたが)仕事の追いまくられて間をおいて読み止しの本を開いても「あれっ?なんだったけ」の繰り返し(笑)、機会があったときに書いておかないと全部忘れる。もちろんあっしらさんのように「引き出し」が無限にあるわけでもなし、適度に充電してネタを仕入れて出直します。