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(回答先: Re: 上田秋成 vs 本居宣長の 「天皇論争」@ 【宣長斬り!】 投稿者 バルタン星人 日時 2004 年 11 月 18 日 08:53:06)
バルタン星人さん、レスありがとうございます。昨日の続きです。
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秋成の意見に対して、宣長は反論します。
宣長
「万国の図を見たことを、珍しげに事事しく言い立てるとは、おかしな話だ。いまどきだれがあの地図を見ていないなどということがあろう。また皇国のさほど広大ではないことも、知らぬものがあろうか。すべての物の尊卑美悪は、形の大小できまるものではない。数尋(ひろ)の大石も方寸の珠玉にしかず、大きな牛馬も人にはおよばない。
かの万国図を見ると、南極にも草木も生えず人もいない荒芒(こうぼう)の国があり、その広大さは地球の三分の一にもあたるほどであるが、さだめし、上田氏は、これを四海中の最上の国と思っているのであろう。」
さらに
宣長
「そもそも皇国が四海万国の元本宗主たる国であるのに、面積がさほど広大でないのには、二柱の大御神が生み成し給うたときに、凡人の小智をもってしては測りがたい深理があったのに相違なく、その不可解の理はさておくとして、現に目に見えることだけ挙げても、まず皇統の不易であること、人の命をたもつ稲殻の美しいこと、神代より外国に犯されたためしがないこと、田地多くして人民の多いことなど、諸国に冠絶する点は枚挙にいとまがない。
しかるに世世の人人は、皇国がこのようにすぐれて尊い仔細も知らず、いま上田氏もまたこれを悟ることができずに、浅薄な論議をするというのは、何事であろうか。
太古の伝説はどこの国にもあるというけれど、外国の伝説は正しいのではなく、誤って伝えたり、みだりに偽造したりして愚民を欺くもの。かの遥かな西の国国で尊敬している天主教のごときは、すべて偽造の説である。
しかるにわが皇国の古伝説は諸外国のようなたぐいのものではなく、真実の正伝であって、今日の世と人のありさまと神代の様子が、不思議なまでに一一符合している玄妙さは、言葉に尽くしがたいほどであり、それを上田氏が、外国の雑伝説とおなじもののようにいって、この妙趣を悟らないのは、大脚光にかかった一点の黒雲、すなわち漢意(
カラゴコロ)の雲がまだ晴れていないからである」
書(フミ)はその記せる言辞(コトバ)こそ主(ムネ)という信条にしたがい、大御国の古意(イニシエゴコロ)にそって字句を精密に解釈する『古事記伝』執筆に精魂を傾ける日々を、すでに二十年以上も続けて、そこに書かれてある世界が、すべて眼前にあるように確実なものとして映ってきていた宣長には、秋成の論難が、賢(さか)しらな言挙げとしかおもえなかったのであろう。
それにしても江戸時代の上田秋成が、すでにこれほど明晰で理性的な認識を示していたのに、近代の知識や学問が大量に流れ込んだあとの昭和初期に、世の中が滔滔(滔滔)として神話と歴史を同一視する皇国史観の方向へ押し流されていったことを考えると、人間の知恵というのはじつに当てにならないものだなあ・・・と思わずにはいられない。
(終わり)
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以上のは、長部日出雄『天皇はどこから来たか』(新潮文庫 2001年)
小生の力では、とてもうまくまとめれないので、引用しました。語りのうまさはさすがにおさべさんです。
長部さんは『津軽世去れ節』『津軽じょんがら節』で直木賞受賞、最近では『マックス・ウエーバーとその時代』があります。
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(感想)こりゃ、どう考えても宣長先生の負け!です。本居宣長もたいしたことないじゃん。妄想にふけるドンキ・ホーテ(宣長)に対して、冷静に凡人の立場から突っ込みをいれるサンチョ・パンサ(秋成)みたい。
この論争だけみてますと、秋成に斬られなくても、宣長先生、自ら切腹!もんです。
もちろん、宣長先生も他のテーマではスンバラシイ大先生なんでしょう?バルタン星人さん。
宣長がヘーゲル主義者というのは、ちょっとわかりません。ヘーゲル主義というのも、イマイチ、よくわかりません。長谷川宏さんが訳した「歴史哲学もん」はわかりやすいですが、未だにヘーゲル主義というのを理解していません。テーゼとアンチ・テーゼの二項対立しながら発展するのが、弁証法ということでいいんでしょうか。テーゼとか、アンチ・テーぜというのも、コトバだけ知ってるだけです(ホントはよくわかりません)。
中上健二さんの『18歳の地図』ですか、最初に接したのはATG製作の映画でした。原作者が誰か知りませんでした。暗めの青春映画でしたが、なかなかの秀作だと自分でおもってます。若いころはATG系の暗い映画が好きでよくみてました。『祭りの準備』もよかったです。原田美枝子出演の映画は、見てみます。レンタルビデオ屋にあんのかな?
最後に、ネタ本の著者の長部さんは敬愛する兄さんを太平洋戦争で「犬死」させた苦い思い出があり、それをエネルギーにしていたのかもしれません。
確か、岩波ジュニア新書で兄の思い出をつづっています。わたし、泣きました。
再び、犬死しないように・・・・・・・・イラク派遣軍が心配です。
今晩はこのへんで。