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Re: 上田秋成 vs 本居宣長の 「天皇神話論争」 A 【宣長 切腹!】
http://www.asyura2.com/0406/idletalk11/msg/1206.html
投稿者 バルタン星人 日時 2004 年 11 月 19 日 00:30:47:akCNZ5gcyRMTo
 

(回答先: Re: 上田秋成 vs 本居宣長の 「天皇神話論争」 A 【宣長 切腹!】 投稿者 ジャック・どんどん 日時 2004 年 11 月 18 日 20:43:49)

ジャック・どんどんさん どうもです。

いやー、面白い!  感謝です。

>秋成の意見に対して、宣長は反論します。
たしかに苦しい。ほとんど駄々っ子レベルですね。

>いまどきだれがあの地図を見ていないなどということがあろう。
宣長は、地図は地図、地球儀は地球儀としてしか見ていないんでしょう。元は商人のはずなんですが。秋成は単に「科学的真理」だけではなくモノの後ろにあるテクノロジーとか人間を考えているだと思います。地球儀を作っているオランダの職人が鼻歌歌いながら「なんだか木っ葉みたいな国だな」とか言って日本の国をひょいと書き入れる。そういう人間に見られているんだぞと言いたいんだと思います。

>凡人の小智をもってしては測りがたい深理があったのに相違なく、その不可解の理は
>さておくとして、
カール・ポパーは反証可能性のないもの、例えばフロイトの精神分析のように「あるような、ないような」みたいなものは科学じゃないと言っていますから 宣長も当然「失格!次!」になってしまいます。ただ問題は「不条理ゆえに我信ず」というのは別レスでも書きましたが啓蒙や理性で簡単に取り除けないやっかいなものなわけです。
アンチキリスト666さんの「聖書の矛盾」は昼休み板で続いていますが、要は「とにかく俺は信じるんだ」という人と一体どういう対話が可能なのかという事になると思うのです。

井上ひさしは母子家庭で(ます子さんという小説にも出てくる有名なお母さんがいます)キリスト教の教護施設で育つのですが外国人の神父が運営しているわけです。井上がこう書いています。「私は神は信じなかったが、見知らぬ外国に来て、本部から新しい礼服にと送られてきた生地を子どもの学生服を新調するために与え、ぼろぼろの服で私達の食糧のもとになる畑を耕す神父たちを信ぜずにはいられなかった」
物凄くいい話ですが、同時に非常に危険な話でもあるわけです。つまり言っていることは納得できないがこの人が言う事なら、あるいは「あんな良い人が言うんだから」ということです。
感情というのは理性で制御できない、自分だって「不条理ゆえに我信ず」になるかもしれないということです。
非常に逆説的ですが普遍宗教のない日本だと「いや、それだけは絶対出来ません」と言い張れるバックボーンがありません。キリスト教とかつてのマルクス主義ぐらいでしょう。
だからキリスト教徒の奥さんがお焼香しないといって離婚したり、キリスト教徒の自衛隊員が殉職して靖国神社に祭られてしまった。奥さんが「やめてくれ」と頼んでもやめない、「べつにいいじゃん」というノリでしょう。そのくせ、みょーに「同調圧力」が強いし。

>もちろん、宣長先生も他のテーマではスンバラシイ大先生なんでしょう?バルタン星人さん。うーん、宣長は朱子学批判でもあるわけです。朱子学は「理」を立てる、つまり世界には「理」=ことわりがあるんだ、「武」=暴力ではなく理で争う、言説で勝負するんだということです。これは当時の幕府の方針と合致している。武士が刀を抜かなくなったから武士道が出来たんです、そのまえの戦国時代は下克上の殺し合いですから。
宣長は人間は理だけでは語れない、そこからあふれ出すものだという認識はある、むしろ理を排してあるがままに生きることを肯定するわけです。中国の理を立てる思想に「汚染」される前に「もののあはれをしり」穏やかに暮らしてきた理想状態が古代にあったんだということですね。だから「ますらおぶり」を排して「たおやめぶり」を賞賛するのですが、それがなぜファナティックな皇国思想にひっくり返るのかが最大の問題なのです。

>宣長がヘーゲル主義者というのは、ちょっとわかりません。
もちろん宣長がヘーゲルを読んでいたわけではありません。ヘーゲル的と言い直してもいいです。(笑)ヘーゲルだと「絶対理念の自己運動」なんですが、現在から見て過去を恣意的(目的論的)に意味づけて構成してしまう。ご紹介いただいた宣長の論法を見ればわかりますが
「稲殻の美しいこと、神代より外国に犯されたためしがないこと、田地多くして人民の多いことなど」というのは色々あったけど結果として(ある意味偶然に)そうなったということに過ぎないわけです。全く別の結果もありえた。それを「神に選ばれた国だから」という形で過去に「原因」を勝手に作っちゃうわけです。
つまり宣長の歴史観というのは「原因」という一点から単線的かつ同心円的に進行してきた円錐形の筒みたいな構造になっている。その円錐形が最後に世界を全部覆うんだということです。円錐形の頂点(原因)というのは「座標」ですから大きさ広がりのないタダの点、宣長の言っているように「よくわかんないけど、とにかくあるんだ」という「ウソだろー、ざけんなよー」という話です。
秋成の話にもどすと、そんな特権的な中心はないんだ、驕る必要もないし卑下する事もないということだと思います。


中上の映画の題を書くのを忘れました。「青春の殺人者」です。
http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD18597/cast.html

原田美枝子様だと最近では「愛を乞う人」がいいですね。

長部さんの本は土曜日に図書館で探してみます。ありがとうございました。

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