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有事が来るぞ(6) 有事法制が戦争を生む
http://www.asyura2.com/0403/dispute17/msg/985.html
投稿者 竹中半兵衛 日時 2004 年 5 月 20 日 09:58:13:0iYhrg5rK5QpI
 

(回答先: 有事が来るぞ(5) 有事体制下の光景 投稿者 竹中半兵衛 日時 2004 年 5 月 20 日 09:54:55)

【世相百断 第56話】

有事が来るぞ(6) 有事法制が戦争を生む

http://www5a.biglobe.ne.jp/~katsuaki/sesou56.html


小泉首相は、「備えあれば憂いなし」などという曖昧なキャッチフレーズで、日本の安全のためには有事法制が必要だというイメージを振り撒いてきた。また民主党やマスメディアもこの戦術にころりとひっかかり、日本有事に対応する法制は必要だと日本の軍事大国化の後押しをした。

 では、先の国会で成立したような有事法制がないとほんとうに日本は軍事侵略に無防備、国家が保てない状態に陥るのだろうか。

 よくよく考えてみれば、いや、よく考えてみるまでもなく、現行憲法ができてからこの方、有事法制がないから危機に陥ったなどということがこの国にあっただろうか。60年近い戦後の長い冷戦時代とその後の地域紛争頻発の時代に、有事法制などなくとも、この国はまがりなりにも平和に、他国の軍事侵略など受けずにきた。

 ではどうしてこうもばたばたと、国民を騙すようなやり方で戦時法制がつぎつぎに成立していくのか。これまでは有事法制がなくてもこの国が武力侵略される可能性はなかったが、現在、そういう可能性が高くなっているというのだろうか。

 しかし当の政府が、現在日本が軍事侵略を受ける可能性はないという認識を明言している。国民も我が国が近い将来武力侵略を受けるなどとは考えていない。そんなこと、ほとんど常識だろう。だいぶ昔のことになるが、私は「ぼくたちの戦後責任と平和思想」の中で、


 日本がなんら軍事的挑発を行なわず、専守防衛に徹していながら、なお、もし日本への武力侵略を企てる国があるとすれば、それは自衛隊の戦力をかなりの程度うわまわる強力な軍隊を保持する大国であろう。


 と書いた。今や世界唯一の軍事帝国となったアメリカ合州国と軍事同盟を結び、世界有数の軍備をもつ日本を攻めてくる無謀な国など、日本の周辺にありえないことは明白である。こんな簡単な事実の認識すらできず、明日にもX国が日本に攻めてくる、上陸してくるなどと真剣に考えている人がいれば、病的な被害妄想と言われても仕方がない。

 また、仮に日本への軍事侵略が現実のものとなった場合、現代戦ではまずミサイルや爆撃機による電撃的かつ徹底的な先制攻撃が行なわれ、取り返しのつかない被害が発生することも同じ文章の中で触れた。


 正規軍どうしの通常型戦争において、自衛隊がより強力な敵の侵攻を水際で撃退しうると考えるのはまったくのナンセンスである。(略)人口稠密なこの国土が戦場と化すことは必定である。
 
 近代兵器の飛び交う地上戦に住民が巻き込まれた場合、どのようなすさまじい情景が現出するかは沖縄戦の証言を見てみるとよい。ましてや現在、国土のいたるところに巨大石油コンビナートや原子力発電所が散在している。そのような施設が破壊され、有毒ガスや放射能が噴出し、都市火災が起こる事態を想像すれば、外敵の武力侵略に対してわれわれの生命とくらしを守ることがどれほど至難であるかは容易に想像できるであろう。


 こんな事態が現実のものとなったら、国民の暮らしと命を守るために有事法制などなんの役にも立ちはしない。沖縄戦など知らないという世代は、自分たちが爆撃される立場に立ってアフガニスタンやイラクで起きたことを見返してみるといい。

 では、テロはどうする? 現に世界中でテロリズムが横行しているではないか。北朝鮮による不審船もたびたび日本の領海を侵犯し、拉致事件まで引き起こしたではないか。

 実際、政府もマスメディアも「テロ」や「不審船」で国民の危機感を煽り、これを戦時立法の口実に巧みに利用してきた。だがテロや不審船の「おそれ」があるから、それを我が国への「武力攻撃が予測される事態」として有事法制を発動させ、憲法の人権規定を実質停止させ、総理大臣に中央集権的な絶対権力を掌握させていいのか。テロや不審船は、そんな取り返しのつかない代償を払って、軍事対応しなければならないものなのか。また、軍事対応が適切な事件なのか。

 まずテロは、戦争とは明確に区別すべきものである。国際法上、テロは刑法上の犯罪であって、国家間の戦争、すなわち有事法制発動の根拠とはならない。基本的には犯罪行為として対処すべきもので、戦争の問題とは厳密に区別すべきである。

 また、テロという犯罪行為を根絶するためには、国際協調による平和的な手段によって貧困や差別、国土の荒廃などの根源的な問題を解決することがもっとも肝要であって、軍事的な手段で対応してもテロは根絶しないことは、イラクやアフガニスタン、イスラエルなどで起きていることを見れば明白だろう。先進国によるアンフェアな貿易や開発のルールを、開発途上国が自立できるフェアなものに変えるといった、南北問題の解決なども不可欠だ。これらは軍事対応とはまったく別の次元の話だ。

 不審船はどうか? 国籍不明の不審船が日本の領海をたびたび侵犯したら、「武力攻撃が予測される事態」として有事法制を発動させ、海上自衛隊の艦船で対応するのか。たった数十トンのちっぽけな船が日本の領海に入ってきただけで? こんな大袈裟なことをやる国がほんとうに世界のどこかにあるのだろうか?

 不審船対策は海上保安庁の仕事だろう。たとえそれが、今、日本人が忌み嫌いきっている北朝鮮のものであろうと、海上保安庁の対応能力を強化すればすむことで、これきりのことで日本が戦争状態に入るなどとは大袈裟に過ぎる。実際、これまで起きた不審船事件程度で、政府は有事法制など発動させないだろう。

 つまり、有事法制は近い将来ある日突然敵国が武力侵略してくることを想定してあたふたと制定されたものでもないし、テロや不審船対策のための法律でもない。

 ただし、長いあいだ闇の世界に潜行していた有事法制が、9・11事件によって火がついたアメリカ・ブッシュ政権の「戦争ヒステリー」と「テロリズムとの戦争宣言」を幸便な追い風として、一気に表世界に現われてきたことは間違いない。政府は、大規模テロや不審船も「日本有事」にあたり、防衛出動の対象になると国会で答弁している。

 近い将来日本本土がいきなり武力侵略される事態は想定できないものの、日本が戦争に巻き込まれる事態が考えられないわけではない。それはどんなケースだろうか。

 考えられる第一のケースは、アメリカと北朝鮮の軍事紛争だ。

 ブッシュ政権は北朝鮮を「悪の枢軸のひとつ」として敵視政策をとり、これに怯えた北朝鮮はアメリカから武力不可侵の約束を取り付けようと現在必死になっている。そのために核のカードをちらつかせる危険な綱渡り外交を展開している。

 もしこの北朝鮮の綱渡り外交が裏目に出てブッシュ政権を必要以上に刺激し、北朝鮮の核政策の進行を座視できなくなった同政権が「核疑惑」や「テロリスト支援」を名分に北朝鮮への攻撃を決意し、空爆を開始したら、『有事が来るぞ(4)徴用先は海外だ』で述べたとおり、周辺事態法によって自衛隊は「後方支援」のために出動しなければならない。「後方支援」とは前線の同盟軍への兵站活動であり、まぎれもなく国際法上の戦争行為だから、北朝鮮側はアメリカとともに日本にも反撃することは必然であり、国際法上も当然ということになる。

 まさにこれは「周辺事態法」が定義する、「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」であり、有事法制が発動される。

 ただし、こういう事態の勃発はアメリカが北朝鮮に先制攻撃を仕掛けた場合であって、その逆は考えられない。

 いま必死に「瀬戸際外交」を続ける北朝鮮に、日本に軍事侵攻してアメリカ・韓国・日本と全面戦争を遂行する能力などありはしない。このところ報道され続けている北朝鮮の経済力や軍事力を考えれば、簡単に理解できるだろう。今この国に流布されている北朝鮮脅威論とは、「拉致を行った国」、「核開発を宣言して『瀬戸際外交』を続ける国」、「なにをするかわからない異様な国」といったイメージを振りまき、ある目的のもとに小泉政権がメディアを利用して漠然たる不安感を煽っているだけのものなのである。

 朝鮮半島だけではない。同様の事態が台湾海峡で勃発すれば、「周辺事態法」にいう「我が国周辺の地域」とは、地理的概念ではなく、事態に即した概念(というわけのわからない政府解釈)であるわけだから、やはり米軍の軍事行動に連動して日本の後方支援が始まり、有事法制が発動される。こうした事態に有事法制が発動されることは、やはり『有事が来るぞ(4)徴用先は海外だ』で述べたとおり、「アメリカの先制攻撃に対してわが国への反撃が予測される場合、武力攻撃予測事態に至れば有事法制は発動される」と石破防衛庁長官が国会答弁で言明している。

 さらには、東アジアの紛争だけでなく、遠く離れたインド洋や中東で米軍が軍事行動を起こしても、やはり自衛隊は地理的制約のない「周辺事態法」によって後方支援を開始する。こんな遠方では、米軍に攻撃されている国が直接日本本土に反撃することはありえないが、有事法制に関する政府の答弁によれば、「武力攻撃」とは日本の国土に対するもののみならず、「海外にある日本の艦船」や「在外公館」への攻撃も含むというから、「海外の艦船への武力攻撃が日本の領域への攻撃に発展しない場合でも武力攻撃事態となる」とやはり石破防衛庁長官が国会答弁で言明しているとおり、これも有事法制発動の対象となる。もっと正確にいえば、「日本の支援艦隊に向けて米軍の交戦国がミサイルの発射態勢に入った」と通報されれば、武力攻撃事態と判断されて有事法制が発動される。

「テロへの報復」を叫んでアフガン空爆を強行し、証拠を示せない「大量破壊兵器の脅威」を叫んでイラクに侵攻したブッシュ政権の正気の沙汰とは思えない戦略を目のあたりに見れば、こういったシナリオがけっして絵空事ではなくなったと考えざるをえない。今ブッシュ政権を侵しているのは、被害妄想的な「脅威」への先制攻撃理論だ。

 つまりいずれのケースも、日本が攻撃される場合とは、まずアメリカがどこかの国に殴りかかることによって殴られた国が反撃し、アメリカの支援に動いた日本が戦争に巻き込まれるパターンだといえる。

 こうして自衛権の行使としては正当化できない戦争に日本は巻き込まれ、武力攻撃事態が宣言されて有事法制が発動され、自衛隊と米軍のために地方自治体が支援活動に従事させられ、建築関係者や医療関係者、陸海空の輸送業者・労働者が徴用され、市民の土地・建物や企業の物資が収用・管理されていく。

 これが有事法制発動のシナリオである。

 特に朝鮮半島の情勢は危険極まりない。米朝関係が緊迫し、水面下での軍事緊張が高まっている今、日本が有事体制を整えるということは、米軍に朝鮮半島への出撃拠点と兵站基地を提供することを意味しており、ブッシュ政権の先制攻撃への誘惑をいっそう高めることになる。これが北朝鮮の瀬戸際外交をさらに危険な段階に押し進め、戦争への悪循環を加速させることになりかねない。

 さらには日本近辺で周辺事態が勃発した場合、日本は米軍の後方支援のみならず、実際に自衛権を唱えて参戦していくだろう。「現実に着弾しなくても敵が攻撃に着手したら武力攻撃とみなす」からはじまって、「ミサイルが発射されなくても発射準備にかかったら武力攻撃とみなす」へと参戦の判断基準がどんどん前倒しされ、ついには「敵がミサイルに燃料を注入したら、その基地を攻撃するのも自衛権の範囲だ」と、「ブッシュ・ドクトリン」と見間違うばかりの先制攻撃論まで政府は国会で堂々と述べている。実際に朝鮮有事となったら、「北朝鮮がミサイル発射態勢を整えた」との通報がアメリカ側からなされれば日本は直ちに参戦する可能性が高い。

 インド洋や中東で米軍が軍事行動を起こし、敵側が日本の米軍支援への報復で日本国内でテロ活動を行なった場合も、政府答弁によれば有事体制に入ることは先述したとおりだ。

 こうみてくれば、小泉首相のいう「備えあれば憂いなし」の「備え」とは、日本有事ではなく、アメリカが「周辺地帯」で戦争を起こすための「周辺事態」の国内法制であることがわかるだろう。

 つまり今回の有事法制は、冷戦時代の「防衛型有事法制」から、集団的自衛権行使を前提とした「介入型有事法制」への転換をはかり、アメリカの要求を満たして日米軍事同盟をいっそう強化しようとするものだ。

 これは私が勝手に言っていることではない。「有事法制の整備」の必要性について当の政府が、「日米安保体制の信頼性を一層強化し」「冷戦終結後の我が国を取り巻く安全保障環境の変化を踏まえ、新たな事態への対応を図る」ことである(2002年1月内閣官房)といっている。

「日米軍事同盟のいっそうの強化」などという紋切り型の言い方は好きではないので、もっと直截にわかりやすい言い方をすると、有事法制は「もし攻められたら」の備えではなく、米軍と一緒に「もし攻めてしまったら」への備えだといえる。

 一連の戦時法制がこうした秘めたる目的によって制定されたことは、『有事が来るぞ(4)徴用先は海外だ』で述べたとおり、「そもそも周辺事態法は、97年の「日米防衛協力のための指針」(新ガイドライン)策定を受けて、新ガイドラインを実効あらしめるために生まれた法律」であり、さらには「同ガイドラインの策定が1994年の北朝鮮の核開発疑惑に際してアメリカ側の後方支援要求に対して日本政府が応えられなかったことを一つの契機としていた」という有事法制誕生の経緯によってもよくわかる。


 有事法制が急浮上したのは、「9・11事件」を機にアフガン空爆に踏み切ったブッシュ政権が「反テロ戦争の拡大」を叫ぶさなかであった。その背景には94 年の朝鮮半島危機に際して米軍の兵站要求に応じられなかったこの国の支配層の「トラウマ」と、新ガイドライン(96年)やアーミテージ報告(00年)での強硬な対日要求があった。そして、武力攻撃事態法案には、「アメリカと緊密に協力しての対処措置」(第3条)、「米軍の作戦を円滑にするための兵站支援」(第2条)、事態対処法制としての米軍支援法の制定(第22条)など、独立国家の法制では類例を見ない対米追随条項が並んでいる。


 だが有事法制はけっしてアメリカの軍事支援だけが目的ではない。アメリカの強い要求に乗った形で達成したいもう一つの大きな目的がある。

 それは日本の軍事大国化である。

 アメリカの軍事行動の全面的な後方支援を達成するということは、同時に自衛隊の行動の円滑化を必要とし、さらには、これに乗って国民や地方自治体をも巻き込んだ国家総動員体制を達成できれば言うことはない。小泉政権は、戦後この国のタカ派が連綿と準備し、目指してきた壮大な軍事大国化の密かな計画を、内閣の高支持率、9・11にはじまるアメリカのあからさまな対日軍事要求と朝鮮半島の危機、国民、野党、メディアなどの平和と暮らしを自ら守る力の弱体化などをみて、ここを千載一遇のチャンスと冷戦後の国家構想もないままに手持ちの冷戦型有事法案を急いで国会に上程し、一挙に実現させてしまったのである。

 小泉内閣は表向き「聖域なき構造改革」を掲げ、構造改革の急進的実行政権として登場したが、同時に、軍事大国化の実現にも並々ならぬ意欲をもっていた。これは小泉内閣が外交・安保政策で何をやってきたかを見返してみればよくわかる。

 小泉首相が自民党総裁選で公約したのが、靖国神社参拝だった。その公約どおりに靖国神社への首相参拝の既成事実化に並々ならぬ努力を傾け、それによって靖国神社を戦死者の公認慰霊施設とし、国民が安心して戦争で死ねる仕組をもう一度つくりあげようとした。さらには北朝鮮の不審船の跳梁を口実とする領域警備法案の制定、そして有事法制の制定へと走ってきた。これらはけっして偶然の出来事ではなく、この国のタカ派の要求に応えて日本の軍事大国化を完成に導くシナリオに沿って行なわれてきたことである。さらには、首相就任時の記者会見では集団自衛権の見直しの必要性に触れ、憲法改正にまで言及してきた。

 こうした一連の経緯を見返してみれば、小泉首相を表看板に据えて日本の軍事大国化を進める層の明瞭な意思が見える。つまり彼らの目的は、戦後日本の大前提であった専守防衛の建前すらかなぐり捨て、日本を海外で戦争のできる普通の国に変えることである。

 さて、日本がアメリカ合州国との軍事同盟をよりいっそう強化し、再びアジアに戦争を仕掛けるような国になってほしいとあなたは思いますか?

(2003年11月29日)

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