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★阿修羅♪
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前書き
私が海外に住んで４０年以上日本を客観的に観察してきた結論は、日本民族は仕事をする能力については世界最高の実力を持つという長所があるが、短所は日本民族固有の哲学が形成されて居らず、それが世界に於いて日本民族をその実力相応の指導的地位に立つ事を阻んでいる、という事である。日本人の性質に、物事を曖昧にして誰にも責任が行かないようにする傾向があり、日本民族固有の哲学を明確にし理論的に体系づける努力をしなかった。その為、外国人に日本民族の哲学を理解させる事が出来ず、いたずらに日本人に対する誤解と侮蔑を招いた、と私は思う。
現在の日本の政治家の演説を聞いても、哲学を持たない為に、云うことが幼稚で感情論に走り、しっかりした基礎を持つ体系だった議論が全然出来て居ない。当然だろう、殆どの政治家は哲学思想を持つが故に立候補するので無く、特定の利権を代表する目的で立候補するからで、政治家としての素質は全く問われない。この問題を解決するには、哲学的思考方法を学生時代から叩き込む必要がある。それには先ず中国や西欧哲学に追従し、自らを中国化又は西欧化しようとする不毛な行為を日本の教育組織から排除しなければならない。日本の知識人は外国に対し常に受動的であって能動的でない。この悪弊を斬り捨て、能動的になる方法を述べるのがこの論文の目的である。日本の制度を幾らいじっても、受動的な人は能動的にならない。如何にして論理的な思考が出来るようになるかが問題なのである。
１．日本固有の哲学とその理論体系を確立する。
日本には外国哲学に心酔し、得意になっている人達が多すぎる。欧米でインドや中国の哲学に心酔している人がどの位いるか考えると良い。この様な日本人の外国哲学に対する劣等感が発生する理由は自分の頭で物を考える習慣が身についていないからで、言い換えれば他人の考えを理解する事ばかり、つまり本に書いてあることを記憶し其れを仲間にひらけかして優越感にひたる事に専念しているからである。
その典型的な例は外国の思想を一番先に日本に紹介したと自慢する事や、極右派や極左派の連中が書く紋切り型の文章に見る事が出来る。書いている人達は得意になっているのだろうが、独創性が無くて如何に自分の頭で考えて居ないかを証明している。自己満足の為の議論ではどうしても型にはまり論理性が無くなるのは当然だ。自分の頭脳力では外来哲学を越えられない事を悟り、その行き着く先は内部抗争と組織壊滅である。政治的意図の文章は読む人を納得させる説得力が無ければならない。結論に向かって、論理の飛躍の無い、水も漏らさぬ議論をするには、人からの借り物でなく、自分の頭から出た思想でなければならない。
特に哲学は自然科学と違い宇宙何処でも通用する法則に関する学問なのでは無く、所詮、特定社会に属する人間の主観を体系立てて、如何にも権威があるかの様に勿体ぶって見せかけた物に過ぎない。哲学は自然科学を生んだが、自然科学と違って普遍性は無いのだ。哲学好きの人には「西洋哲学が自然科学を生んだのだから西洋哲学の方が上位だ」と信じこんでいる人がいるが、これは自然科学に対する劣等感からでた妄想である。
実際、哲学は人間の数だけ存在し、優劣はあっても絶対のものは存在しない。極端に云えば、西欧哲学を全く知らなくても日本固有の哲学を作れるのである。問題は、与えられた基礎の上に如何に綿密な論理を使って議論を組み立てるかにある。西欧の真似でない哲学を組み立てるには、他人の哲学は論理の組み立て方の参考にするだけ、という態度を学生時代から強制的に叩き込む必要がある。
西欧哲学から学ぶべきは論理体系の作り方であって、思想内容そのものではない。しかるに、日本の文科系の人達は外国哲学の形、内容、気の利いた語句に魅せられ、論理体系には目もくれなかった。一方、日本の理科系の人達は物理法則や数学という論理体系を理解したから、その具現である電子機器や自動機械を外国の真似をせずとも目的に応じて作れるようになったのである。
日本の学生をもっと論理に強くする為に、全ての教科について共通した教育戦略を立てる必要がある。それは、小学校６年間は脳細胞の成長期なので丸暗記を奨励し、出来るだけ沢山の知識を詰め込むべきだが、中学校では丸暗記から自分の頭を使う様にする転換の過渡期と決め、高校からは徹底的に自分の頭で物事を考える訓練をするべきである。この訓練は特に文科系の人達に必要で（理科系の人は生まれつき自分の頭で考える能力をもっている人が多い）、書いてあることを理解する事で本を読む目的が完結したと学生に思わせてはならない。読んで得た知識をどう使うかを考える方が遥かに重要なのである。理科系の人は得た知識を使って物を造り実験をしようとするから自分の頭を使わざるを得なくなくなるだけである。
（続く）
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。