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(回答先: 日本のとるべき戦略 8 投稿者 岩住達郎 日時 2004 年 5 月 17 日 06:59:02)
10.日本の貿易戦略
敗戦後、日本政府は、天然資源の少ない日本が生存するには人的資源を使った加工輸出に頼る他無い、と決断し、国民の貯蓄を重点的に輸出産業に注ぎ込んで大成功を納めた。この成功に味を占めた日本政府は輸出至上主義に傾倒し、生活に必要な原料を輸入する為に輸出するのでなく、富を集積する手段として輸出をする様になった。
この加工輸出至上主義は日本人特有の「こだわり」が物造りの才能と相乗効果をもたらし、世界に比類無い商品を生んだからこそ実現できたのである。原料輸出は有限でいつかは尽きてしまうのに反し、加工輸出は無限に続ける事ができる。例え世界中の資源が掘り尽くされても、太陽光エネルギーを使って、リサイクル材料で加工輸出を続けられる。従って、日本人の商品開発能力が続く限り日本の貿易黒字は保証されている。これは日本の持つ大変な長所である。
しかしながら、その日本の長所を受益するには条件がある。それは日本が他国の隷属国になり、せっかく蓄積した労働の果実を全て取り上げられて仕舞う事が無い、という事だ。現在の日本はアメリカに隷属し、この30年間蓄積した富をどんどんアメリカに収奪されようとしている。しかし収奪は始まったばかりだ。アメリカが日本からの借金を返せなくなったとき、又はドルを大暴落させた時に収奪が完了する。ここで断っておくが、こういう事態に陥ったのはアメリカよりもむしろ日本の政府の方に責任がある。この事態を早急に改善するには日本は以下の貿易戦略を実行せねばならない。
日本が急速に貿易黒字を延ばしていた頃、アメリカは日本に輸出を円建てで行い、円をドルと並んで国際通貨にする様に勧めた事がある。これを断ったのは日本政府なのだ。何という馬鹿な事をしたか。私はこの原因は、日本人特有の謙譲の美徳に拘って、円が世界に流通するのを官僚が怖れたからだと思う。その為に日本は輸出代金をドルで受け取り、それをアメリカに貸して利子を稼いだ。当時の浅はかな官僚には、その結果円がどんどん強くなって折角稼いだ利子よりもドルの価値の下落の方が大きくなるという事が解らなかったのだ。もし日本政府が円建てに踏み切っていたら、アメリカの貿易赤字はもっと小さく、日本もアメリカに莫大な額のドルを貸す羽目に陥らなかっただろう。
過ちは直すのに遅すぎるという事は無い。日本政府は直ちに物品、サービス、資本、全ての輸出を円建てにすると宣言すべきである。そして世界中の国に日本と同様の利子で円借款を提供する事、又その担保として相手国の天然資源を要求する事を述べるべきである。それと同時に、日本は輸出相手国の市場攪乱を防ぐため、日本の輸出品で強い競争力をもつ物に対して、相手国の競合品と同じ程度の価格になる様に輸出税を掛ける事を約束する。
円借款に担保を要求するのは強欲の為では無くて、債務者が慎重にお金を使う様にする為である事を良く説明する必要がある。そして、借款はあくまでも利子以上に収益の期待できる投資のみに限る事を明確にする。従って、軍事力増強などの非生産的目的には貸さない。輸出税を日本企業に掛けるけれども、輸出税の大半を輸出奨励金として輸出企業に還元する。これは輸出税の目的が相手国の競合企業に競争力を付けさせる事にあり、共存共栄の為の国際与点制度(後述)の一つである事を各国に説明せねばならない。
輸出税が生むもう一つの良い結果は、海外に進出した競争力のある日本企業は、日本に逆輸入をして日本市場を攪乱出来なくなり、海外市場の開拓に力を注ぐ様になる事だ。例えば、ユニクロのファーストリーテイリングは中国人の安い労働力を使う事により大幅に商品の価格を下げた。価格低下が日本にもたらした利益とその為に仕事を失った日本人の不利益のバランスがどうなったか、を考えると、このバランスは圧倒的に日本国民に不利益をもたらす事は自明の理である。
アメリカの企業は海外に工場を移すだけでなく、サービス業務まで英語国のインドなどに移している。彼らの決まり文句は、そうする事によって生産性が上がり、解雇された社員はもっと給料の良い新しい職業に就ける様に再訓練するから問題ない、という。誰だってそれは詭弁の絵空事である事を知っている。解雇された人達がいくら新職業に適応しようにも、給料の良い職業に就けるだけの能力を持ち合わせていないから、今までよりずっと安い給料の、熟練を必要としない職業しか無い。高い能力を必要とする仕事が沢山あって空席を埋められない、という状態ならまだしも、そんな仕事は元々存在しないのだ。経済学者や企業経営者は自分達の議論に都合の良い空論を言っているだけで、何の証拠もない。
私企業の利益が日本の国益に優先するべきでは無い。日本企業は国内で消費する物を日本で作り、外国向けの物は外国で作る事を国の基本的政策とするべきある。勿論商品によっては売れる数量が少なくて日本にある生産設備のみで世界中に供給するに十分な場合は別である。人口の小さい国では国内消費が少なくてその国専用の生産設備を作るのは採算に合わないから、当然そのような国には中国などで作った物を輸出する事になる。自由市場と競争原理を損なわず、しかも世界各国の国益を守るには輸出税と現地生産の原則が最も良い妥協である。
(続く)