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日本人の平和ボケを世界は笑ってる
http://www.asyura2.com/0311/war41/msg/1392.html
投稿者 なるほど 日時 2003 年 12 月 19 日 09:51:11:dfhdU2/i2Qkk2

(回答先: マスコミは自衛隊のイラク派遣を責任持って報じて欲しい。(10月28日)[軍事ジャーナリスト神浦氏] 【一部マスコミは自衛隊の死を期待?】 投稿者 なるほど 日時 2003 年 10 月 28 日 12:42:39)

■2003/12/19 (金) 日本人の平和ボケを世界は笑ってる

小津安二郎という監督サンの映画を初めて見たのは
ドイツのテレビでドイツ語に吹き替えられていたもの。
日本滞在中は生態百年とかでNHK-BSで特集を放映していた。
で、昨日はフランスのテレビが生のまま「彼岸花」を放映しており、
途中からみたのだけど、良かった!

日本がいつのまにか忘れてしまった風景がそこにあって
なつかしかったなあ。

そうそう、新潮45 新年号(昨日発売)
で、私の

「ヨーロッパの「年金」徹底検証」

というのが掲載されています。
師走でそれどころではないでしょうが、ぜひ読んで下さいな。
年金問題、日本も関心あると思いますので。

さて、イラクへの自衛隊派遣で日本、てんやわんや ですね。
左系のメデイアがとくに足を引っ張っている。
多分に意図的でしょうなあ。
日本を押さえてこんでおいて、他の国がそのすきに
世界で目立つようにし点稼ぎを
しようとしている。
韓国なんて3千人もの兵士をイラクにだしてるっていうのにね。

日本人って、どうしてこうも視野が狭くなって
臆病になってしまったのだろう。
目的は人道支援なのに。
それで命を落とすのは名誉なのに。
このことにについては産経新聞の正論(辛口コラム参照のこと)

チャンネル桜のクライン孝子の言いたい放題2
http://www.ch-sakura.jp/

で私見を発表しています。
チャンネル桜の水島さんのお話ですと、大好評ですって。
でも一般のテレビは私を避けている。

何だろう?

そこで、工藤さんからのお便り。
一部、抜粋します

< 私は首相のイラク派遣を支持する。

多くの識者が指摘するように、安全な任務では決してない。
国会審議で「戦闘の行われていない安全な場所」へという「縛り」
によって建前の議論しか出来ず、本音が言えないのだ。

民主党は決定までは反対でもよいが、いったん決まった以上「阻止」
の姿勢を貫いているようだが、政権担当能力を疑われる。

テロ攻撃を受けることも十分考えられる。
不幸にも死傷者が出て「危ないから撤退」ということにならないよう、
関係者の頑張りを期待する。
「戦闘を避け、憲法を守った」ということでは後世の笑いものになる。
歴史に評価されるのは「命を懸けて守った」という勇気や犠牲的精神であって、
「怖くなって逃げ出した」ということでは恥を残すことになる。

http://www.ztv.ne.jp/web/ms-kudoh/  >

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
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21世紀を迎えた今世界は混沌としています。日本もその渦中にあって
政治経済ともに、国際的視点に立脚し欧州からの情報収集が不可欠に
なってきています。欧州の国際情勢を日記風にまとめドイツ滞在歴30余
年のジャーナリストが刻々と現地よりレポートします。
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_

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◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「集団的自衛権で内閣法制局解釈を批判 米国務副長官」を読みました。
 http://www.asahi.com/politics/update/0910/003.html

 アーミテージ国防副長官は集団的自衛権で内閣法制局解釈を批判しているのではなく、恫喝していると思います。  8月31日に「『逃げるな、茶会でない』 米副長官が自衛隊派遣を要求」というニュースがネットでのみ流れましたが、これと同様に恫喝しているでしょう。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030831-00000013-kyodo-int

しかし、アーミテージ国防副長官の焦りは米国がちまたに言われる帝国で「ない」からこそ恫喝するしかなくなっていると推測されます。 『帝国以後−アメリカ・システムの崩壊』を読むとそう思えてきます。 また、サイード、チョムスキー氏のように米国を「帝国」として糾弾するのは、好ましくないように思われます。 日本人に仕方がない意識が芽生えてしまうからです。 そこで本を紹介しつつ現状を見てみたい。

『帝国以後 アメリカ・システムの崩壊』エマニュエル・トッド著、藤原書店書籍の帯には「ソ連崩壊を世界で最も早く予言した『新ヨーロッパ大全』のトッドがハンチントン、フクヤマ、チョムスキーらを逆手にとり、EU露日VSアメリカという新構図、『新ユーラシア時代の到来』を予言」とあります。 小生がサイト内を調べて以下の有益そうなリンクがありました(仏独語で最もヒット件数が多かったです)。

July 26, 2003 The Conceited Empire
http://dominionpaper.ca/features/2003/the_conceited_empire.html

May 27 2003 Extract from Prospect, June 2003
http://www.rwevans.co.uk/~r/rwevans/wevansnet04/item0042A.htm

【推奨書籍】『帝国以後 − アメリカ・システムの崩壊 −』エマニュエル・トッド著
http://www.asyura.com/0304/dispute10/msg/288.html
http://www.asyura.com/0304/dispute10/msg/288.html

「帝国以後、世界は」
http://www.fujiwara-shoten.co.jp/book/book432.htm#todd

『帝国以後 アメリカ・システムの崩壊』評者、養老孟司
http://www.mainichi.co.jp/life/dokusho/2003/0511/04.html

“帝国としての米、崩壊過程に”(インタビュー)
http://raq1.aminet.or.jp/~voyage/info/BonVoyage-Tayori/kininal.news.B.html

『経済幻想』エマニュエル・トッド著/藤原書店/3200円+税
http://village.infoweb.ne.jp/~fwix9916/dodthtm.htm

日本語一番目の書評に少し図書館で借りた本の情報を加えると以下のようになります。
http://www.asyura.com/0304/dispute10/msg/288.html

「著者であるエマニュエル・トッド氏は、1951年生まれ、パリ政治学院を卒業しケンブリッジ大学で歴史学博士」「ユダヤ系フランス人のようである。 (祖父がオーストリアのユダヤ人で米国に移住したことやフランスに多くのユダヤ人親族がいることが明記されている)1995年のシラク大統領誕生に際して理論的に貢献したともされているが、彼自身の思想的立場は、政治的には自由主義的民主制を尊重し、経済的には資本主義を合理的とみなしつつ新自由主義や自由貿易には異議を唱えるといった程度しかわからない。 (イデオロギー的な解釈や裁断は避けて科学的に説明するという身構えのようである)」。

小生が図書館で借りた、トッド氏の『移民の運命』(この本の方が凄いかもしれない)も加えると、祖父は『アデン・アラビア』でデビューしたポール・ニザン、父は『レ・タン・モデルヌ』誌の編集委員及び昨今カミュ論を出版したオリヴィエ・トッドであり、曽祖父を介してレヴィ・ストロースの遠縁にあたるので(『野生の思考』、『悲しき熱帯』等で有名な構造主義四天王の一人)、気鋭の人口学者、人類学者になって不思議はなさそうです。

また、トッド氏は第二次大戦中に家族がカトリックに改宗したため、キリスト教的教育を受けています(『世界像革命』)。 また「学問は事実によって検証されなければならない」と主張しているため、勘ぐりは不要なようです(デュルケーム的と称してもいます)。

以下、日本語一番目の書評を転載
http://www.asyura.com/0304/dispute10/msg/288.html

トッド氏は、基本的に、米国が帝国から略奪者に変容し、略奪者であり続けるために世界に脅威を与えることでその地位を失うことになると判断している。 (略奪とは、米国民が消費する財の多くを諸外国に依存し、そのために必要な資金までもを諸外国に依存している経済実態を指す)

またイデオロギー的にも、米国が普遍主義ではなく差異主義に拠っていることから、帝国の名に値しないと評価している。 (属領民もローマ市民として包摂したローマ帝国とは異なり、内なる黒人・ヒスパニック・アラブ人を敵対(非人間)視している米国の実態を指す。 普遍主義・差異主義という識別はフランス人らしい)

さらに地理的にも、ユーラシアが世界の重心であり、米国はそこから遠く離れた周辺国という見方をしており、ブレジンスキー氏の「壮大なチェスボード」はそれを自覚した上のものだと受け止めている。 そして、チェスが国技であるロシアを相手にチェスを指すのは愚かだと諌めてもいる。 (笑)

トッド氏は、米国の覇権喪失過程で、略奪者となった米国への対抗軸としてユーラシア+日本の同盟が生まれる可能性を示唆している。 軍事面でのロシア、経済面でのドイツ+日本という構図で、コールマン博士と類似的な国際関係の変化を予測している。 そして、このような対立構図をアテネ=米国とスパルタ=ロシアの関係に比定している。 (トッド氏の経済を除く日本に対する評価には過大な面も見られる)

トッド氏は、人口学や文化人類学の分析手法を用い、識字率・出産率(合計特殊出生率)・乳幼児死亡率・いとこ婚・人種間通婚・殺人発生率・自殺率などの比較を通じて国民性や地域性を描き出している。 (このような観点での認識は希薄だったので、判断の是非は別として興味をそそられた)

書籍からいくつか引用する。

「エリート主義とポピュリズムが対決するこうした政治システムは、なんとも奇妙な「民主主義」だ。 普通選挙は存続しているが、右と左のエリートが、不平等の縮小につながるようないかなる経済政策の方向転換をも禁じることで合意しているのである。 それはますます突拍子もない世界となって行き、選挙の駆け引きは、メディア上での大仰な対決を繰り広げた末に、現状維持に行き着く。 エリート間の友好関係は、上層に公認の協議が存在することの反映に他ならないが、そのため、普通選挙が危機の可能性を示唆する場合であっても、表面上の政治システムが崩壊することは阻止される。 」(P.41)

「世界はしたがって、二重の逆転に直面している。 先ず世界とアメリカ合衆国の間の経済的依存関係の逆転、そして民主主義の推進力が今後はユーラシアではプラス方向に向かい、アメリカではマイナス方向に向かうという逆転である。 このようにずしりと重い社会的・歴史的過程を想定すれば、一見奇妙に見えるアメリカの行動も理解することができる。 アメリカ合衆国の目標は民主主義的にして自由主義的な秩序を擁護することではなくなっている。 その秩序は当のアメリカ自体において内実を失いつつあるのだ。 様々な財と資本の供給が最重要課題となり、これからはアメリカ合衆国の基本的戦略目標は、世界の資源を政治的手段によって統御することとなる。 」(P.44)

「二つの型の「帝国」の資質がアメリカには特に欠けている。 その一つは、全世界の現在の搾取水準を維持するには、その軍事的・経済的強制力は不十分である、ということ。 二つ目は、そのイデオロギー上の普遍主義は衰退しつつあり、平和と繁栄を保証すると同時に搾取するため、人々と諸国民を平等主義的に扱うことができなくなっている、という点である。」(P.117)

「ある程度の犠牲精神が要求される作戦は、それが可能であるときには必ず同盟国の徴募兵部隊に任された。 <中略>作戦毎に部族の長と契約して金を支払うという、現在アフガニスタンでアメリカがやっている「流儀」は、それゆえ昔ながらの方法の、さらに悪質化した現代版にすぎない。 この面ではアメリカはもはやローマにもアテネにも似ておらず、ガリア人傭兵やバレアス島の投石兵を雇っていたカルタゴに似ている。 B52はさしずめ象の代わりということになろうが、生憎ハンニバルの役割を果たす者はだれもいない。 <中略>最近、死者なき戦争という概念が、少なくともアメリカ合衆国の側で浮上して来たが、この概念こそは、非対称的対決へのもともと持っていた選好を最終的到達点にまで突き詰めたものに他ならない。 それはアメリカ軍の伝統的な地上での無能さを許容し、公式化し、さらに助長することになる。」(P.123)

「アメリカ合衆国の経済的・軍事的・イデオロギー的手段には限りがあるため、アメリカは己の世界的役割を主張するには、小強国を虐待する以外の可能性がないのである。 アメリカ外交の酔っ払いの千鳥足のような行動振りには、一つの論理が隠されている。 すなわち現実のアメリカは軍事的小国以外のものと対決するには弱すぎる、ということである。 すべての二流の役者たちを挑発すれば、アメリカは少なくとも世界の檜舞台での役割を主張することができる。」(P.185)

「有効な対空防御体制、さらには核抑止力を持たない国は、いかなる国といえども、空から飛来する恐怖に情け容赦なく曝されるということを、実際上、世界中に示唆した。 しかし地上戦に突入することができないというアメリカ陸軍の能力不足のために、超大国の根本的無能力も改めて浮き彫りにされてしまったのである。」(アフガニスタン戦争に関する説明:P.188)

「アメリカ経済は、消費財の大量輸入がさらに増大していることからも分かるように、その実体的現実においては生産性が低いということを認めるならば、株式資本化は虚構の集塊であり、アメリカ合衆国へと向かう金は文字通り蜃気楼の中に吸い込まれるのだと、考えなくてはならない。 摩訶不思議なやり口によって、周縁部の特権者たちが資本投資と考えた金の動きは、アメリカ人にとっては、世界中から購入される財の日常的消費のために用いられる通貨記号へと変貌してしまう。 資本投資はしたがって、何らかの仕方で蒸発してしまうということになる。 <中略>アメリカで倒産がある度に、それはヨーロッパや日本の銀行にとっては、資産の蒸発となって現れる。 <中略>どのようにして、その程度の速さで、ヨーロッパ、日本、その他の国の投資家たちが身ぐるみ剥がれるかは、まだ分からないが、早晩身ぐるみ剥がれることは間違いない。 最も考えられるのは、前代未聞の規模の証券パニックに続いてドルの崩壊が起きるという連鎖反応で、その結果はアメリカ合衆国の「帝国」としての経済的地位に終止符を打つことになろう。」(P.143)

「アメリカの経済関係の新聞・雑誌は、この両国(引用者注:日本とドイツ)のシステムを「非現代的」で「閉鎖的」として、その改革を要求し続けているが、現実にはこれらのシステムの誤りとは、あまりにも生産性が高いということに過ぎない。 世界的不景気の局面では、最も強力な工業的経済の方が常に、時代遅れの経済や生産性が低い経済より打撃を受ける。 一九二九年の危機はアメリカ経済を直撃したが、それは当時アメリカの工業力が強大だったからである。」(P.250)」

「アメリカ合衆国は、不平等革命、寡頭制への転換の全世界的旗頭になったのだ。 そのような転換は世界のすべての社会の指導階層の気をそそっていると考えることが出来る。 今後アメリカが提案するのは、もはや自由主義的民主制の保護ではない。 すでに最も豊かで最も力がある者に、さらに多くの金と権力を提案するのである。 <中略>「帝国への統合」という選択肢はヨーロッパの指導階層から見て、国民国家を葬り去り、帝国と婚姻を結ぶという、二重の心性的革命を前提とするであろう。 つまり一方では自国の民の独立を守ることを断念する。 しかし自分たち指導階層は、その見返りとして、アメリカ指導階層に完全な資格者として組み込まれる、というわけである。」(P.242)

「ゲームは、チェックメイトで終わらず、ステールメイト[手詰まり]で終わることになろう。 つまり唯一つの強国の勝利で終わるのではなく、どの強国も支配権を握ることができないという状態で終わるだろう。」(P.270)

「われわれがこれ程まで、自分を凌駕する経済的・社会学的・歴史的な諸力によって引きずられていくのであれば、市民としても政治家としても、われわれは何を為すことが出来るのだろうか?先ず第一に、世界をあるがままに見るすべを身に付け、イデオロギーの、その時々の幻想の影響、メディアによって養われる「恒常的な偽の警報」(これはニーチェの言葉だ)の支配を脱すること。 現実の力関係を感知するというのは、それだけでも大したことである。」(P.273)

転載終り

以下の結論が米国に対し独仏が強気な理由を示していますし、国防副長官に盲従する形で内閣法制局の集団的自衛権の実質的解釈変更を行なうには危険と思われます。

「かつてそうであったように今日も、真の力とは人口学的・教育的な分野に属するものであり、真の権力とは経済分野に属するものである。 正道を踏み外して、アメリカ合衆国との軍事力の競争という蜃気楼の中に迷い込むことは、何の役にも立たないだろう。 偽の軍事力競争は、現実の戦略的重要性を持たぬ国に絶えず介入するという事態に立ち至る。 われわれとしては、アメリカ軍の後ろに付き従って、作戦演劇(作戦の舞台)の観念と演劇作戦の観念を取り違えることなどしてはならないのである。 アメリカの側に立ってイラクに介入するというのは、流血の軽喜劇の中で端役をこなすだけのことに過ぎない。」

「二十世紀にはいかなる国も、戦争によって、もしくは軍事力の増強のみによって国力を増大させることに成功していない。 フランス、ドイツ、日本、ロシアは、このような企みで甚大な損失を蒙った。 アメリカ合衆国は、極めて長い期間にわたって、旧世界の軍事紛争に巻き込まれることを巧妙に拒んで来たために、二十世紀の勝利者になったのである。 この第一のアメリカ、つまり、巧みに振る舞ったアメリカという模範に従おうではないか。 軍事主義を拒み、自国社会内の経済的・社会的諸問題に専念することを受け入れることによって、強くなろうではないか。 現在のアメリカが『テロリズムとの闘い』の中で残り少ないエネルギーを使い果したいと言うのなら、勝手にそうさせておこう。 それはもはやすでに存在していない覇権の維持のための闘いの代用物に他ならない。 もしアメリカがあくまでも全能を証明しようとするなら、遂には己の無能を世界に暴露するという事態に立ち至ってしまうだろう」(p279)

ただし、「小泉首相と『真昼の決闘』」を読むとブルーになれるでしょう。
http://homepage.mac.com/naoyuki_hashimoto/iblog/C1570102516/E1804312369/index.html


http://www.rondan.co.jp/html/mail/0309/030911.html
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「新聞批判」番外

 旭川新聞「田中良太のニュースを読む」第12号=2003年12月12日
(金)執筆=掲載日は12月16日(火)
 **********************
 カッコ良い外交官の死
 **********************
 イラクで死んだ外交官二人の評価が高い。今月六日行われた外務省合同葬の弔
辞で、小泉首相は「二人ともご家族の誇りであると同時に日本国、国民の誇りで
もあります」と賞賛した。続けて「日本政府はあなた方の遺志を受け継ぎ、国際
社会と協力してイラク復興に努めていきます」と言った。
 とくに奥克彦参事官(死後、大使に昇進)の方は、高校・大学時代はラグビー
部員という行動派。今年四月ロンドンからイラクに入った後、外務省ホームペー
ジに「イラク便り」を連載していたのも異色だ。一二月一日付朝日新聞のコラム
「天声人語」は「イラクで殺害された奥克彦さんが、外務省のホームページに連
載していた『イラク便り』を読む。強い使命感を帯びて日々励んでいたことが、
痛いほど伝わってくる」と語っている。
 その「イラク便り」の中で、奥参事官が強調しているのが「テロとの闘い」で
ある。イタリア警察軍が攻撃されたナーシリヤの現場へ行き、「犠牲になった尊
い命から私たちが汲み取るべきは、テロとの闘いに屈しないと言う強い決意では
ないでしょうか」と書く。バグダッドの、国連現地本部の爆破現場付近で知り合
いのユニセフ(国連児童基金)職員の名刺を見つける。「我が日本の友人よ、ま
っすぐ前に向かって行け!と、語りかけてくるようです」「必ずやクリスの遺志
を継いで、今まで以上にイラクの復興に貢献できるように、心から誓わずにはい
られませんでした」と書く。「闘う外交官」の姿が浮かんでくる。
 ちょっと待てよ。外交官って何だっけ。
 手許の政治学小辞典を引くと外交とは「主権国家間の諸利益・諸関係を交渉で
調整する政府の活動」だと定義されている。この調整がうまく行かなければ、戦
争になってしまう。つまり外交の目標は戦争を避けることだと言える。
 「闘う外交官」はカッコ良いが、外交の目標は、ちょっと違うんじゃないかと
思わざるを得ない。
 「悪魔の辞典」の類では、外交官を「職業的な嘘つき」だとか、「ペテン師」
だとか定義する。世間から悪口を言われても、カッコ悪くても、戦争を避ける道
を探っていくのが外交官の本来の姿なのである。
 「テロとの闘い」は、目的とは逆にテロを盛んにする。パレスチナに目を向け
ればすぐに分かることである。イスラエルのシャロン現政権は「テロの根絶」を
掲げ、パレスチナ解放機構(PLO)本部を武力攻撃するような強硬路線をとっ
ている。そのためPLO内部で、自爆テロを正当化している過激派の発言力が強
まる。つまりシャロン政権とPLO過激派は、互いに持ちつ持たれつの関係なの
である。武力攻撃と自爆テロの応酬におびえる人たちは、その双方の被害者であ
ろう。
 同じことは米ブッシュ政権の「テロ根絶」路線についても言える。ブッシュ大
統領が「テロとの闘い」を強調すればするほど、テロリストたちは元気づき、世
界中の人々がテロに脅えることになる。こんな構図を理解して、「闘わない」道
を選ぶことこそ、外交官らしい行動だろう。
 「闘う外交官」の死は、ブッシュ大統領とともに闘おうとしている小泉首相に
とって利用価値の高いものだった。二人の死は、九日の自衛隊派遣計画閣議決定
に結びついてしまった。
 それにしても日本という国での論議のあり方はおかしい。自民党の慎重派から
共産党まで、そしてマスコミも、「自衛官に死者が出たら、どう責任をとるの
か?」と、首相に問いかける。
 これも違うんじゃないか。「自衛隊が、イラク人を殺傷したらどう責任をとる
のか?」と問うべきであろう。
 アラブ民族の連帯感は強い。自衛隊が襲撃を避けるためイラク人を殺すような
事態になったら、これまでの良好な対日感情は吹っ飛ぶ。ひょっとすると、原油
が入ってこなくなるような事態も考えられるのである。
 イラク人の生命という視点を忘れて、日本人の生命だけにこだわる。そういっ
た論議が横行している奇妙さを誰も指摘しない。日本人全体が、外交感覚に欠け
ているということではないか。
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