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流氷を追って(2) 幻の大海流【ホーツク回廊を行く:Yomiuri Online 知床特派員】
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投稿者 エイドリアン 日時 2004 年 1 月 30 日 13:16:02:SoCnfA7pPD5s2
 

(回答先: 流氷を追って(1) 未知への航海【ホーツク回廊を行く:Yomiuri Online 知床特派員】 投稿者 エイドリアン 日時 2004 年 1 月 30 日 13:13:13)

■ 危機一髪! データ回収

 国際調査団のリーダーとして、決断を迫られていた。北大低温科学研究所の若土正曉教授(59)は、ついに声をあげた。
 「つらいが、次であきらめよう。大事な宝物だが、もう時間がない」

 日本、ロシア、米国の3か国の研究者が、1997年から始めた共同プロジェクト。謎のオホーツク海と流氷の実態を解明する、壮大な研究調査だった。

 ところが2000年9月、北サハリン沖数100メートルに沈めた「幻の海流」を探る重要な測定器系が、行方不明となる。

 流氷を知床半島にもたらす巨大な流れはこの時、予想もつかなかった。1年前に沈めた地点から5マイル(約8キロ)ずつ、ロシアの観測船「クロモフ号」を移動させては止まり、測定器からの発信音を探した。

 だが、3時間かかっても反応はない。スケジュールは押し迫っている。米露の50人もの研究者や船員がいらだつ。監視役のロシア海軍兵士も、文句を言い始めた。

 若土教授は、測定器担当の水田元太助手に、次の5マイルで最後の探索にするよう指示を出す。

 最後の地点に停泊した。すると「かすかですが……。先生、反応があります」。水田助手の目が輝いた。「ピーッ」。確かに、受信機にかすかな反応がある。

 「やったあ」。日露米の研究者は、抱き合って歓声をあげた。海流の謎を解く流速などのデータがいっぱい詰まった測定器は、見事に回収された。

                 ◇

 それは、大激流だった。深さ1000メートルにもおよぶ「東カラフト海流」の存在がわかったのだ。


[発見された幻の大激流「東カラフト海流」]

 海流の流量は、サハリン沖東側の北緯53度付近で、1秒間で700万立方メートル(札幌ドーム4・4杯分)にも達し、日本海を北上して津軽、宗谷の両海峡まで到達する対馬暖流の3倍以上の大海流だった。

 海流の幅は約150キロで、2つの流れからなっていることもわかった。一つはサハリン沿岸を南下し、北海道沖を直撃して知床半島に至る。もう一つは東に向かい、千島列島付近で時計回りの方向にいくつもの渦を巻き起こす。こちらの流れの方が大きかった。

 さらに、季節差が著しく、冬季は夏季の10倍以上流量が大きいこともわかった。知床半島に漂着する流氷は、厳冬期にシベリア大陸から吹き付ける寒風で作られ、この激流が送り込んでいた。

 若土教授は、万感の思いで語る。「この激流をたどることで、北半球の気候システムの理解につながったのです」

 東カラフト海流の発見は、さらに驚くべき事実を明らかにする。

[2004年1月29日]

流氷を追って(2) 幻の大海流

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