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戦略的な勝敗の帰趨が決した「イラク侵略戦争」は、2日前を転機として戦闘レベルでも勝敗の流れが大きく変わったと推測する。
お気づきのように、米英軍側から示される「戦況報告」が昨日からばったりと言ってもいいほど途絶えている。
しかし、その一方で、今日(3・27)未明(日本時間)から、これまで防御に徹してきたイラク軍正規部隊が南下作戦を敢行しているという報道がなされている。
これは、イラク軍が本格的な反攻に転じたことを意味するから、これまでにない激しい戦闘が展開されていると考えるのが妥当であろう。
激しい交戦状況でも、戦況が米英侵略軍に優位に推移していれば、攻撃当初のように宣伝を含めた「戦況報告」が頻繁に行なわれると考えるのが素直だろう。
イラク側の大攻勢を予感した昨夜は朝まで様々なTV報道を見続け、起床後の昼前からもTV報道をウォッチした。
しかし、深夜に報じられた「共和国防衛隊が1000台ほどの装甲車両を連ねて南下しており、第7騎兵大隊や海兵隊第一師団と交戦に至る可能性が大きい。合同軍(侵略軍)は深刻な事態だと受け止めている」という情報の枠組が変わっていない。
時速30Kmから60Kmで移動し続けているというのであれば、平均30Kmで10時間走れば300Kmも南下し、クウェート国境に迫っていることになる。
しかし、ユーフラテス川沿いに侵略軍が縦列で途切れることなく存在しているのだから、5時間も南下すれば侵略軍に遭遇し交戦に進むはずである。
このようなことから、報道を通じた「戦況報告」がないだけで、現実のイラクでは各所で激しい戦闘が行なわれていると推察する。
■ 3月25日から26日にかけて攻守が一転した
地上戦に入って3日間ほどは侵略軍が激しい抵抗を受けることなくバグダッドに向けユーフラテス川南側まで北上した。
バグダッドに向かうユーフラテス渡河地点であるナシリアで本格的な抵抗を受け、先遣部隊(第3歩兵師団重装甲部隊)はそこを避けるかたちでナジャフ方面に向かった。
(ナシリア付近は、その後、バスラ攻略を担っていた米軍海兵隊第一師団が橋を渡ってバグダッドを別ルートで窺う拠点になっているとされる)
バグダッド攻略先遣部隊は3日ほど前にカルバラに到達し、首都を外周で防御する共和国防衛隊と対峙するかたちでとどまった。
イラク軍は、25日以前も、非正規部隊による侵略軍補給部隊への散発的な攻撃を行なってきた。
一日3000トンとも言われる補給物資を前線に輸送するために、それこそベルトコンベアを敷設したほうが合理的だと思われるほど、すきまなくという感じで輸送車両が進路を埋めている。昼夜を問わず走行しているので、夜間は、闇にヘッドライトを浮かび上がらせながらの走行である。トラックには自動小銃を携帯した護衛兵が搭乗しているが、闇にいる敵は見つけにくいのに対して、自分たちは所在を明示しながら動いているのである。
このような状況であれば、戦車や迫撃砲がなくとも、携帯型ロケットランチャーや自動小銃で補給を阻害することができる。
補給部隊に対する攻撃に加えて主力攻撃部隊を攻撃するように変わったのが、3月25日から26日の夜だったようである。
この交戦については、昨日、イラク側が500名から700名の死者を出したという“公式”の「戦況報告」が報じられた。
しかし、実態は、共同通信の「イラク中部に展開する米陸軍第3歩兵師団に従軍しているロイター通信記者がイラク南部のナジャフ近郊から伝えたところによると、同歩兵師団の一部が26日、ユーフラテス川に架かる橋をめぐりイラク軍と激しい戦闘を展開、「一定の数」の戦車や装甲戦闘車を失ったもようだ。戦況を把握している第3歩兵師団の将校が明らかにした。戦闘があったのはナジャフの南東約20キロにあるアブシュハイル付近。同師団将校は、イラク側がてき弾筒や小銃で米戦車などを攻撃、「米兵は戦車や戦闘車を放棄して敗走したとみられるが、その後の運命は明らかでない」としている。将校はまた、地上部隊を支援するために航空兵力が投入されたことも明らかにし、26日の地上戦で米軍側が苦戦模様だったことを示唆した」(http://www.asyura.com/0304/bd25/msg/304.html)ものだったのである。
イラク南部からイラク中部は2日前から激しい砂嵐にみまわれて、攻撃ヘリの出撃や移動標的への空爆支援ができない気象条件になっている。
25日から26日にかけての重装甲部隊という危険な敵への攻撃は、この気象条件を活かす判断で行なわれたものだろう。
26日にイラク国営TVを空爆した意図のなかに、イラク側が米英軍の不利な戦況をTVを通じて世界に流すことを防ぐことがあったと考えるのは穿ち過ぎだろうか。
さらに言えば、住宅地にミサイルを2発撃ち込んだのも、国際世論の非難を承知の上で、イラク側の報道をそれに対する非難に集中させるために行ったと意地悪く考えられないこともない。
また、昨日達成した“華々しい”戦果として、「米軍、北部に本格展開開始 空挺部隊が1000人降下」(共同通信記事見出し)というものがある。
しかし、記事にあるように、「イラク北部のクルド人支配地域に米陸軍第173空挺(くうてい)旅団の約1000人が降下、飛行場を確保したことを確認した」というものである。( http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=RANDOM&PG=STORY&NGID=main&NWID=2003032701000022 )
クルド人支配地域は、攻撃開始前から米軍が動き回り、外国在住反フセイン勢力の会議まで開催されたところである。
そして、笑えることに、クルド人支配地域には、3000mクラスの滑走路を持つ飛行場を含む二つの飛行場を利用することができる状態にある。
そのような地域に、1000名もの兵士をわざわざパラシュート降下させる必要なぞないのである。
空挺部隊の1000人降下も、苦しい戦況を覆い隠すための“華々しい戦果”だと受け止めている。
※ 参照書き込み
『バグダッド攻略先遣部隊第3歩兵師団がナジャフで終夜攻撃を受ける [ABCニュース]』
http://www.asyura.com/0304/war29/msg/140.html
『南部で最大規模戦闘 イラク兵500人死亡/補給路寸断の地獄絵 米軍が逆に“兵糧攻め”に』
(http://www.asyura.com/0304/war29/msg/147.html)
■ バグダッド防衛部隊が南下を開始
26日夜に始まった精鋭部隊とされる共和国防衛隊の南下作戦は、気象条件と25日から26日にかけて得た戦果を踏まえて決定されたものであろう。
激しい砂嵐は今日と明日までは続くと予測されており、その間は攻撃ヘリや地上支援空爆が行えない。
地上の視界は75mほどで、イラク側車両の動きもレーダーで動きがあるということがわかる程度でその構成はわからないという。
火力で劣るイラク側が、第3歩兵師団や海兵隊第一師団の壊滅をこの段階で意図しているとは考えられないから、バグダッド侵攻部隊の分断と先遣部隊の孤立化を目的とした作戦だと考えている。
カルバラ付近に陣取っているとされる米英侵略軍の先鋒は、第3歩兵師団のなかの騎兵大隊と呼ばれる重装甲部隊である。
イラク側は、カルバラそのものではなく、より南側にあるナジャフやさらに南側のナシリアをめざしているようである。
ナジャフ付近にも重装甲部隊はいるが、共同通信の記事にあるように、26日の時点で「米兵は戦車や戦闘車を放棄して敗走した」のなら、反撃力は大きく削がれていることになる。
ナシリア付近にいる海兵隊第一師団も、背後から断続的な攻撃を受けており、従軍記者が「洗濯機に投げ込まれたパンツのような混乱状況で、兵士たちは身をかがめて攻撃を避けている」とレポートされているような状況にある。
また、第3歩兵師団は、既に十分な補給が受けられない状態になっており、燃料不足に悩んでいるというレポートが放送されている。
海兵隊第一師団も、そこに対する燃料輸送車列が攻撃された後の様子が映像付きで報じられている。
共和国防衛隊の南下作戦は、弱体化したナジャフとナシリアにいる侵略軍攻撃部隊を壊滅させるか後退させることを目的としたものと推測する。
ナジャフとナシリアの部隊が前日と同じように、戦車や戦闘車を放棄して敗走する状況に追い込めば、カルバラにいる先遣部隊は孤立化し、進路を埋め尽くしている補給部隊に対する攻撃を縦横無尽に行なえることになる。
カルバラは、補給線のいちばん先になるから、他の部隊以上に補給が不足している可能性が高い。
燃料や弾薬は慎重に使うとしても、水や食糧は消費せざるを得ない。
侵略軍は制空権を握っているのだから、このような事態に陥ることを想定して航空基地にも補給物資が用意してあれば、それを空輸することはできるだろう。
しかし、どうであれ、バグダッド攻略の先鋒をつとめるはずの第3歩兵師団機甲部隊が、攻撃部隊ではなく、生き残りに四苦八苦する防御部隊に変わってしまうことは避けられない。
仮に激しい砂嵐が明後日以降も続くなら、航空支援を受けられないままの防衛戦を強いられることになる。
イラク側が犠牲を覚悟でカルバラ駐留部隊の弾薬を費消させてしまえば、強力な機甲部隊も、散り散りになって敗走するか、投降することになるだろう。
中部から南部との動きと連動するかのように、バスラ駐留部隊が最南端とも言えるアルファウに向けて進撃を開始したとも報じられている。
昨日投稿した『【「イラク侵略戦争」のゆくえ】 開戦前からは大きく変わった「バグダッド陥落」の戦略的意義 − 「バグダッド攻防戦」に至る前に政治的決着を −』( http://www.asyura.com/0304/dispute9/msg/359.html )で提起した「イラク侵略戦争」の政治的決着をさらに急がなければ、イラク側・米英侵略側双方にさらなる犠牲者を出すだけになってしまうだろう。
※ 参照書き込み
『共和国防衛隊がバグダッドから海兵隊第一師団がいるナシリア方面へ南下 [BBCニュース]【イラク側が本格的な攻勢に転じた】』
( http://www.asyura.com/0304/war29/msg/224.html )
バスラを出て南下したイラク軍がアルファウの英国軍部隊と交戦状態 [BBCニュース]【イラク側が各地で一斉大反攻!】
( http://www.asyura.com/0304/bd25/msg/309.html )
『共和国防衛隊がナジャフの第6、第7騎兵大隊にも攻勢へ [CNN]【イラク側が二正面で大攻勢!米軍司令官も深刻さを認める】』
( http://www.asyura.com/0304/bd25/msg/286.html )
『第3歩兵師団の先鋒部隊が分断され孤立化する可能性 − CNNコメンテーター(元陸軍中将)は創造力豊かな戦術だと評価 −』
( http://www.asyura.com/0304/bd25/msg/303.html )