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(回答先: では幕府の財政赤字は誰が埋めたのか? 投稿者 楽観派 日時 2002 年 6 月 01 日 23:27:20)
前近代のことをあれこれ書いてきたのは、「抑圧された封建社会」とか「暗黒の中世」という半ば固定的なイメージに対するイヤミだと受け止めて下さい。(江戸幕藩体制擁護でも、江戸復古主義でもありません。様々な害悪をまき散らしてきたとはいえ、現在出来上がっている諸条件を有効利用しないのは愚かなことです。前近代の見直しは、進歩史観や近代賛美に対する揶揄です)
江戸幕府が、石高制に全面的に依存し、利益を上げている商人からは運上・冥加などを徴収するくらいでまともに徴税しなかったことを評価しています。
(そんなことを思い付きもしなかったのか、導入しない明確な論理があったのかは不勉強でわかりませんが、商人から借金をするのではなく、徴税というかたちで召し上げていれば懐具合も良くなっていたはずです。たぶん、江戸に住む商工業者は、年貢米を売ってくれたり物資を整えてくれるなど、自分たちの必要を満たしてくれる便利な使用人と考えていたと思われます。だからこそ住環境まで面倒を見たのでしょう)
商人への本格的な徴税や農民(ムラ)に税の金納を求めれば、貨幣経済が広がり深化していったはずです。それは、多くの人の生活形態を変えていくことになります。明治維新後の「地租改正」で多くの自営農民が零落していったことからある程度類推できると思っています。(それに対する修正が戦後の「農地解放」で、戦後の高度成長を支える一つの要因でもありました。自民党政治や歪んだ農政をもたらした要因でもありますが...)
統治原資が自営農民からの年貢米と金貨の生産に依存していれば、否応なく自営農民拡大保護策をとらざるを得ません。(そうしなければ、統治基盤が瓦解します)
貨幣形態での徴税であれば、商工者の利益を重視していく政策を採ることになったでしょう。そして、必需品の米は、農民から安く買えばいいということになります。
江戸期は、食品・織物・生活用品などの産業も拡大し、年貢の金納も増えていったので、「規制緩和」で産業活動を活発化させていれば、もっと早い段階で近代化が実現できていたという人もいますが、外国に商品販売市場を見出すか、幕府が諸藩をつぶすかたちの“経済侵略”でもしなければ、近代化は実現できないものです。
近代経済システムの成立条件でもあり発展条件である「過剰生産力を市場拡大によってクリアしながら資本を増殖させる」という現実条件が消滅しつつある現在、江戸期のような共同体(国家)内経済システムがどういう論理に基づくものだったのかを見直すことは意義があると思っています。
IT革命であれ、ロボット導入であれ、生産性向上の進展は、個別の企業の利益には貢献しますが、市場の拡大が頭打ちになった現段階では、その企業も属する総体としての近代経済システムの寿命を縮める働きをします。