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ゲノム科学時代の新たな電脳ウイルスの予兆……
●管理売春では、売女と客とが二度目から直接“逢い引き”を仕始めると、置屋がマージンを搾取できなくなるので、そういう掟破りの売女はバレたらきつい折檻[せっかん]を受けるとか……。
●昨今の米国あたりのインターネット技術の世界は、これと似た状況が起きているようです。巨大な情報量のファイルを“置屋”のような業者を通さずに、ユーザ同士でやりとりできる「ナップスター」は、音楽ファイルの絶好の交換ツールとなってレコード業界の激しい襲撃に遭い、サービス供与を停止してしまいました。「ナップスター」を越える、自発的探索によるネットワーク自己形成型ソフトの「グヌーテラ」も、開発者がAOL社に“買収”されて、禁断のテクノロジーになってしまいました。(ただし改良型「グヌーテラ」が登場しつつあるようですが……。)
●そうした状況のなかで、膨大なゲノム情報をやりとりするツールとして、ゲノム学者たちがこの種のソフトウェアに注目している動向は、要チェックです。
●コールド・スプリング・ハーバー研究所はそもそも20世紀のはじめに優生学を実施する機関として独占的巨大財閥の資金援助によって生まれた遺伝学研究所で、遺伝子操作テクノロジーを生み出した頭脳拠点の一つでもあります。 (このあたりの詳しい事情は、『比較「優生学」史』【マーク・アダムズ編著、佐藤雅彦訳、現代書館、1998】を参照。)
●「ゲノム解読」関連の報道はもっぱら ヒト のゲノム情報ばかりに関心が向かっていますが、ウイルスや細菌のような情報量の少ない――しかも医学的・軍事的に利用価値が高い――生物のゲノム解読が、遺伝子特許の取得と解読技術の開発整備のために続けられています。すでに遺伝子工学によって、お好みの形質を備えた病原体を作出することは難なく出来る世の中になっているので、そうした情報をどう規制するかが、今後は戦略的な意義を持ってきます。(致死的ウイルス作出の技術的容易さについては、『突発出現ウイルス』【ロックフェラー大学助教授S・モース編著、佐藤雅彦訳、海鳴社、1999】を参照。)
●いっぽう、「グヌーテラ」のようなプログラムを土台に使えば、これまでよりも格段に感染効率のいい電脳ウイルスを開発することが可能になるでしょう。
●つまりゲノム科学とインターネットを媒介にして、現実世界のウイルスと仮想現実世界の人工生命体としての「電脳ウイルス」が容易に“相互進化”できる舞台が整いつつある、と言えるようです。
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● 遺伝子研究者が『ナップスター』技術の応用を検討
Kristen Philipkoski
http://www.hotwired.co.jp/news/news/Technology/story/20000407307.html
2000年4月5日 3:00am PDT ヒトゲノム計画に取り組むある研究者が、『ナップスター』の技術を使おうとしている。といっても、別にT3接続でモービーの曲をダウンロードしようというのではない。
ニューヨークにあるコールド・スプリング・ハーバー研究所( http://www.cshl.org/ )の生物情報科学準教授、リンカーン・スタイン博士は、ナップスター型の技術を利用して科学者たちがヒトゲノム関連の発見を共有できるようにするにはどうしたらよいかを考えている。
「私はナップスターに出会ったとき、非常に興味をそそられた」とスタイン博士は語る。「ナップスターのアーキテクチャーは(われわれが現在使用しているソフトと)似ているが、ナップスターでは『ピアー・トゥ・ピアー』のデータ交換を可能にする。それで、この技術はわれわれの注釈システムに最適ではないかと思い始めたのだ」
ピアー・トゥ・ピアーのデータ交換では、ユーザー同士が集中型のサーバーシステムを使って互いのコンピューターに直接接続し、ファイルを共有することができる。ナップスターは、インターネット上でMP3ファイルを検索・ダウンロードする簡単な方法として、大学生や他の音楽マニアの間で大人気となっている。
しかし、ナップスターは大論争も引き起こしている。全米レコード工業会(RIAA)は、ナップスターを使った音楽ファイル共有が著作権法に違反するとして、米ナップスター社を訴えているのだ。
スタイン博士はヒトゲノム計画から報告される情報を管理するためのより良い方法を模索していたが、ある晩、米ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)の放送でナップスターについて知った。スタイン博士は同ソフトの技術が持つ可能性に熱い期待を抱いているが、ゲノム研究者がこのアイディアを実行に移すことについては若干の不安を抱いている。
「まだ思い切って実行に移してはいない。今のところナップスターは著作権侵害と結びつけられやすいので、雑音が静まるのを待ちたい」とスタイン博士は言う。
ナップスター社はスタイン博士のアイディアを歓迎しており、同社の広報担当、リズ・ブルックス氏によれば、ナップスター社もこのファイル共有技術をより広範な用途に利用する道を探っているという。
「わが社は、非常に重要な科学的発見を共有するためにこの技術を利用するというアイディアが大変気に入っている」とブルックス氏。
ナップスターと同類の『グヌーテラ』(Gnutella)は、ゲノム研究の成果を交換するのにさらに適しているだろう、とスタイン博士は語る。しかし、グヌーテラ・プロジェクトは先月、発表された直後に中止を余儀なくされた( http://www.hotwired.co.jp/news/news/Technology/story/3879.html )。
グヌーテラは、企業のサーバーと関係なく自ら成長するようなネットワークを作るよう設計されていた。ユーザーは他の「サーバント」コンピューターと接続し、参加ユーザーの鎖を作ることができる。1対1あるいは多対多の接続ができる構造だ。
「グヌーテラは複数のサーバーを介して機能し、それらのサーバーは情報を複製する。これは非常にエキサイティングな技術だ。というのも、われわれがヒトゲノム計画で扱わなければならないデータは、常に増え続けるからだ」とスタイン博士。「現在のデータ量はおよそ5テラバイトだが、われわれはまだ全体の3分の2の塩基配列の決定を終えたに過ぎない。データ量はもう1桁増えるだろう」
ゲノム研究全体から見れば、ゲノムの塩基配列の決定など、作業のほんの一部に過ぎない。ヒトゲノム地図それ自体は、C、A、G、Tという文字の寄せ集めだ。これらの文字は、ヒトの遺伝子のDNA塩基配列は表わすものの、遺伝子がどのように機能するかは示していない。このゲノム地図は遺伝情報を探索するための出発点であり、ゲノム研究者たちはここから病気の診断法や治療薬を発見していかなくては ならないのだ。
研究者たちが共有できる情報が多ければ多いほど、こうした発見はより早く実現するだろう。
「大規模なゲノム研究所には、研究データを電子的な手段で公開するためのサーバーを構築する資金がある」とスタイン博士。「小規模の独立した生物学研究所は、そうしたデータを利用する側の立場で、情報をダウンロードしている」( http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Genbank/GenbankOverview.html )。
しかし、小規模な研究所は自分たちの研究成果を電子的手段で公開する手段を持っていない。ここでナップスターやグヌーテラのような技術が活躍するのだ。
しかしスタイン博士は、この技術が将来、単にヒトゲノム研究にとどまらず広く利用されることを望んでいる。
「私の希望は、この技術が将来すべての生物学者に利用されることだ。優秀な高校生までもが研究に貢献できるようになるといいのだが」と博士は語る。
米インサイト社や米セレラ社のような企業は、ゲノム情報を収めた自社データベースの使用料として数千〜数百万ドルを要求する。ナップスター型の技術がこのようなデータベース使用料による収入を損なう可能性があるかどうかは、まだわからない。
「結局は、ゲノム情報を持っている会社がどうやって金儲けをするかにかかっている。インサイト社のような企業にとって、あるいはセレラ社にも部分的に言えることだが、そのような収入が損なわれる可能性はあると私は考える」と米ネオモーフィック社のサイラス・ハーモン社長は言う。同社はカリフォルニア州バークレーにあるゲノム関連企業だ。
遺伝子や遺伝子機能で特許を取得して利益を得ようともくろんでいる会社は、おそらく影響を受けないだろう、とハーモン社長は付け加えた。
「私はこの流れはある程度避けられないと思う――ゲノム情報は広く出回ることになるだろう」とハーモン社長。
インサイト社とセレラ社はコメントを拒否した。
スタイン博士は、ゲノムデータ特有の検索を可能にするためには、ナップスター/グヌーテラの基本的なプロトコルをベースにして自分でコードを書かなければならないだろうと言う。
博士は、この技術の開発に関して数社と交渉中であると語ったが、具体的な企業名については明言を避けた。
[日本語版:高森郁哉/岩坂 彰]
日本語版関連記事
・セレラ社がヒトゲノム読み取りレースに勝ち名乗り
・『ナップスター』より強力? 『グヌーテラ』、ウェブで復活
http://www.hotwired.co.jp/news/news/Technology/story/20000406304.html
・インターネットで遺伝子情報をばら売り
http://www.hotwired.co.jp/news/news/Technology/story/3930.html
・オープンソースの「MP3共有」プロジェクトに障害
・米英両首脳が遺伝子情報の公開を呼びかけ
http://www.hotwired.co.jp/news/news/Technology/story/3873.html
・民間企業の協力で『ヒトゲノム計画』加速の可能性
http://www.hotwired.co.jp/news/news/Technology/story/3364.html
WIRED NEWS原文(English)
http://www.wired.com/news/technology/0,1282,35404,00.html
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『ナップスター』より強力? 『グヌーテラ』、ウェブで復活
Christopher Jones
2000年4月4日 3:00am PDT 米アメリカ・オンライン(AOL)社の社員によって始められ、波紋を起こしたファイル共有ユーティリティー・プロジェクトが、オープンソース支持者の手によって復活しようとしている。
3月に『グヌーテラ』(Gnutella)ソフトウェアが初めて発表されたとき、AOL社は「これは無許可で独自に行なわれたプロジェクトだ」として、すぐにそのサイトを閉鎖した。
このファイル共有ソフトウェアツールを作ったのは、AOL社に買収された米ナルソフト社の創立者で、人気のあるMP3プレーヤー『ウィンアンプ』を開発したジャスティン・フランケル氏とトム・ペッパー氏だ。グヌーテラは、『ナップスター』(Napster)と同じくユーザー同士がネットを介してMP3ファイルを共有できるようにするユーティリティーだが、ナップスターよりもさらに強力なものになるかもしれない。
この数週間でネット上のあちこちにグヌーテラ・ネットワークができあがり、非公式のグヌーテラ関連サイトがいくつも誕生して、グヌーテラ・ソフトウェアの提供やユーザーからの質問の受け付け、フォーラムの主催などを行なっている。
3日(米国時間)には、非公式のあるグヌーテラ・サイトがこのソフトのバージョン0.56と今後のリリース情報を公開した。サイト上の「よくある質問コーナー」には、ナルソフト・チームは一切関与していないと説明されている。
「関係者を保護するため、これらのバージョンはソースコードにアクセスできる誰かによって作られている、としか言えない。すでにいくつかの新バージョンができているため、これからもさらなるバージョンがきっと登場するだろうと予想される」と、サイトには書かれている。
電子メールでこの非公式のグヌーテラ・サイトについてのコメントを求めたが、返事はなかった。またグヌーテラの作者であるペッパー氏のコメントも得られなかった。
3日午前9時の時点で、2000以上のホストが存在し、グヌーテラ・ユーザーのネットワーク上には交換可能なファイルが25万ほどあった。
グヌーテラの革新的な機能の1つに、現在どのような項目が検索されているかをリスト表示するモニタリング・ツールがある。3日朝に実行されていた検索には、『Warez』、『Amber Lynn』、『Leon Redbone』、『Britney Spears』、『Powertweak』、『Star Wars』、『3d Studio Max』、『MPEG Encoder』、『marijuana』、『Ring of Fire』などがあった。
このサイトによると、ソフトウェアのソースコードは、バージョン1.0がリリースされた時点で入手できるようになるという。
ナップスター・プログラムはユーザーにファイルを共用させるために集中型のサーバーシステムを使っているが、グヌーテラは、 一企業の動きと関係なく自ら成長するようなネットワークを作るよう設計された。グヌーテラ・ソフトウェアを使えば、ほとんどどんな種類のファイルでもダウンロードできるほか、ユーザーは自分の望むファイルタイプやコンテンツの名前で検索することができる。
ナップスターに似たプログラムは他にも使われている。『Imesh』や『キュートMX』、もっと最近では『スカウア』などがその例だ。『オープンナップ』のように、オープンソースのナップスター・プロジェクトもいくつか進行している。
米スカウア社のトラビス・カラニック戦略担当副社長は、最近のファイル共有ソフトウェアブームについて、こう語っている。「コミュニティーの価値と、マルチメディア・コンテンツの価値が評価されているのだ。検索エンジンは双方向性が非常に低い。だが、何かを共有しようとしている人々のために検索エンジンを作れば、そこには大変な価値が生まれる。『ICQ』のように、誰もがコミュニティーの一員になる。ただ、こちらはライフスタイルに重点が置かれているのだ」
カラニック副社長は、スカウア社ではユーザーが著作権で保護された楽曲を共有できないようにする方針をとっていると述べた。著作権所有者から著作権付きのファイルを交換しているユーザーに関する情報が寄せられた場合、スカウア社はすぐにそのユーザーに警告を発する。3度警告されると、そのユーザーのアカウントは取り消される。スカウア・ソフトウェアにはファイルの交換以外にも色々な使い道があるので、ナップスターのような訴訟が起こされるという心配はしていないと、カラニック副社長は言う。
全米レコード工業会(RIAA)が昨年12月にナップスターに対して訴訟を起こしたとき、RIAAはナップスターが著作権のある音楽の違法コピーおよび配信を助長すると主張した。
先週、米連邦地方裁判所のマリリン・ペーテル裁判官がナップスター社の弁護団による裁判延期を求める申請に応じたため、RIAA対ナップスター社の訴訟の進行は遅れている。公判は4月10日に予定されている。
[日本語版:藤原聡美/柳沢圭子]
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366 05/18 17:58 検索業者不要の新ソフト AOLが開発を禁止 外経84 #01
【ワシントン18日共同】十八日付のワシントン・ポスト紙は、米オンラインサービス最大手アメリカ・オンライン(AOL)の若手技術者が、既存の検索業者を経由せずに無料でデータのやりとりができるようになる「革命的ソフトウエア」を開発したが、AOLはネット関連企業の根幹を揺るがしかねないとして開発を中断させた、と報じた。
「GNUTELLA」と名付けられたソフトは社員のジャスティン・フランケルさん(21)が開発。AOLは開発禁止の代わりに、ソフトをフランケルさんから約一億ドル(約百九億円)で買い取った。
しかし同紙によると、ソフトの一部はネット上に流出、世界中で一万人以上がダウンロード(データの複写)して改良中。数カ月で「次世代GNUTELLA」が生まれるという。
GNUTELLAは検索業者のサーバーを通らずに、ネットで結ばれたコンピューターに到達し内部のデータをすべて検索する。目的のサイトなどが見つからない場合は、次々にほかのコンピューターを探すようにプログラムされており、高速で検索の手を広げる。
サーバーを通らないため音楽ソフトからポルノ画像まですべてのデータを自由に無料でやりとりできるだけでなく、検索業者を通過しないため、不正があっても追跡が不可能になるという。
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