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「2005年から崩壊危機」
「コンクリートジャングル」の危険度は
JR山陽新幹線の福岡トンネル(福岡県久山町)で起きたコンクリート
壁のはく落事故で、全国の新幹線トンネルが一斉点検される。この事故は
新幹線だけでなく、「コンクリート・ジャングル」といわれる都市ではど
うか、住んでいるマンションは大丈夫なのか――といった疑問を抱かせる。
「コンクリートの構造物が崩れだす日が来る可能性が高い」と指摘する
千葉工業大の小林一輔教授(70)=コンクリート工学=に、その「危険」
について聞いた。(藤英樹)
大惨事を招きかねなかった山陽新幹線トンネルのコンクリート壁はく落
事故は、日本の「安全神話」の象徴とされてきた新幹線安全論を大きく揺
るがしている。
小林教授は「危機的状況は新幹線にとどまらない」と警告、「二百年の
耐久性があるとされる日本のコンクリート構造物が、二〇〇五年から二〇
一〇年の間に一斉に崩壊するだろう」と話した。
山陽新幹線事故は「危機の先触れをなす出来事」と小林教授。山陽新幹
線では、昨年にもトンネルや高架橋のコンクリート片がはがれ落ちる事故
などが報告されている。
山陽新幹線の建設は一九七〇−七五年。六〇年代に建設された東海道
新幹線より新しいのに、むしろ山陽新幹線の方がコンクリートの事故が目
立つのはなぜなのか。
小林教授は「工業製品は後からできるものほど品質が優れているのが普
通。だが、コンクリート構造物の場合は例外で、後からつくったものの方
の品質が劣っている」と指摘した。
以前から山陽新幹線の高架橋コンクリートの劣化の惨状を指摘してきた。
高架橋やトンネルのコンクリート劣化が激しい理由は二つと言う。一つは
コンクリートの原料に塩分の多い海砂が使用されたということ。
「六四年の東京オリンピック開催を境に、異常ともいえる高度経済成長
が続いた。山陽新幹線が建設されるころには良質な川砂が枯渇してしまっ
た。このため海砂が使われたわけだが、高濃度の塩分が鉄筋の腐食を早め
た。腐食した鉄さびは容積が二・五倍にも膨張する。これによって外側の
コンクリートに圧力が加わり劣化した」
もう一つは、コンクリートの成分として必要なアルカリ成分が濃縮され、
強アルカリ化することで逆に劣化を促進してしまうこと。「六五−七五年
にかけてセメントの製造方法が変わったことが大きい。省エネ化や量産化
を狙った新しい製造方法では、製造工程でアルカリの循環が行われ、濃縮
されるといわれる」
強アルカリによるコンクリート劣化を、欧米では「コンクリートのがん」
と表現しており、七〇年代にはドイツや英国、カナダ、デンマークなどで
も被害が生じていた。
小林教授は強アルカリによるコンクリートのひび割れ発生について
「いつ発症するかを知るのは困難で、いったん発症した場合、これを止め
る手だてがない」と、その恐ろしさを訴えた。