サウジ人記者の死で浮上した トランプの「利益相反」問題 ファクトチェック・ニッポン!
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/240615
2018/10/31 日刊ゲンダイ
トランプ米大統領(左)とジャーナリストのジャマル・カショギ氏(C)ゲッティ=共同
サウジアラビア人ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏が殺害された事件は、サウジアラビア政府が「計画的殺害」としつつも政府中枢の関与を否定する姿勢を貫いているため、日本のメディアは幕引きをにおわせる報道を始めている。
しかし、米国のジャーナリストはそうは考えていない。それは、この事件があらためてトランプ大統領の資質の問題を浮かび上がらせているからだ。それは一言で言えば、この大統領が就任前から問われてきた「利益相反」の問題だ。この「利益相反」は、大統領が自身のビジネスなどに有利になるようその権限を利用することで、就任の当初からトランプ大統領につきまとっている問題だ。
その懸念のひとつにサウジアラビアが浮上したということだ。CNNは、トランプ大統領が候補者時代の演説で何度もサウジアラビアに謝意を表する言葉を発していたと当時の映像とともに報じている。
日本の報道では、トランプ政権がサウジアラビア政府に厳しい対応をとれない理由として、サウジアラビアが大量の米国製の武器の購入に合意した点を挙げる。しかし、それをファクトチェックすれば、「半分だけ事実」でしかない。トランプ大統領個人の問題の方が根が深い……そう語る米国のジャーナリストは多い。
例えば、トランプ大統領が政権発足当初に出した大統領令に、中東の7カ国からの移民や難民を制限するものがあった。これはテロ対策とされたが、サウジアラビアはその7カ国に入っていない。9・11以降に米国で起きたテロ活動に関わった人物を見ると、サウジアラビアの入国が15人と最も多いにもかかわらず、である。これについて米国のメディアは、トランプ氏がサウジアラビアでホテル事業を展開している事実を併せて報じていた。
トランプ大統領については、ロシア疑惑に関して既に特別検察官が捜査を始めているが、この捜査チームが娘婿のクシュナー氏とサウジアラビアとの関係について調べを進めていることが報じられている。捜査が娘婿で止まると思っている人は少ないだろう。
そもそも、このロシア疑惑についても、米国のジャーナリストの関心は、ロシア政府が選挙に関与したということから、トランプ大統領本人とロシアとの関係に移っている。その際、事実解明の鍵を握るのは「タックス・リターン」だと多くのジャーナリストが語る。
「タックス・リターン」とは納税者がIRS=米内国歳入庁に提出する納税資料だ。ロシア疑惑をいち早く報じたNPOメディア「マザー・ジョーンズ」のラス・チョーマ記者は、「トランプ大統領はロシアから融資を受けているとの指摘がある。本人は否定しているが、以前、次男のエリック氏がそう証言している。タックス・リターンが開示されれば、それら全てが明らかになる」と話した。
ロシアに続き、サウジアラビアと、仮に大統領がビジネス上で融資を受けるなどしている相手国に対して本来とるべき対応をとらずに米国の国益を害したとなれば、「利益相反」の疑いは極めて強くなる。
ただ、この「タックス・リターン」について、歴代大統領は開示しているが、トランプ大統領は一貫して開示を拒否している。米国では11月6日に、中間選挙が行われる。今、チョーマ記者らが関心を持って見ているのは選挙結果とともに、特別検察官が「タックス・リターン」の提供をIRSに求めるかだ。その際に問題となるのは、既にロシアだけではない。
立岩陽一郎
ジャーナリスト、1967年生まれ。91年、一橋大学卒業後、NHK入局。テヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクなどを経て2016年12月に退職し、17年からフリーランスとして活動。現在は調査報道を専門とする認定NPO運営「ニュースのタネ」編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。毎日放送「ちちんぷいぷい」レギュラー。
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— いたにのりお (@je3gnu) 2018年10月30日
「利益相反」は安倍政権の体質そのものだから、忖度メディアがまともに触れるわけもなく…… https://t.co/4CMUXrjchs #日刊ゲンダイDIGITAL
— Petitmiars (@Petitmiars) 2018年10月31日