日銀の金融政策決定会合
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2018年06月15日 在野のアナリスト
米欧日とつづいた中央銀行の金融政策会合を通過し、市場は一先ず落ち着き、小康といったところです。ほぼ予想通りですが、それぞれの違い、差が大きく開いた印象です。米FOMCは利上げし、年4回の利上げとなることが確実、フォワードガイダンスも廃止し、今後はFOMC後に常に会見する、と緩和モードから通常モードへの転換が鮮明です。
ECBは今年いっぱいで国債買取を終了し、再投資をして引き締めには転じず、少なくとも夏までの利上げに転じない、と緩和モードの終了を決定。日銀は緩和モードのまま、現状維持を決定しました。北朝鮮問題では安倍政権の『置いてきぼり』が疑問視されましたが、金融政策では日銀の『置いてきぼり』がはっきりした。しかも、日銀は欧米に比べてETF購入など、ふみこんだ金融緩和をしていて、置いていかれるのですから尚深刻です。
毎回、自信満々に記者会見をしてきた黒田氏も、元気がなかった。何しろ物価が下がってきており、2%の目標は遠くなるばかり。その原因として挙げるのが、失業率が低下しても低賃金労働が多い、グローバリゼーションの影響、ネット通販の普及、というもの。しかし先進国共通とするので、欧米から出遅れる日本の理由にはなりません。
日本はデフレマインドが…と言ってみたところで、それを大量にお金をばらまき、マネタリーベースを拡大すれば改善する、といって始めた黒田バズーカで改善できなかったのですから、今の政策を継続する意味を失います。黒田バズーカを止めて別の方策にするか、さらに新たな方策を付け足さない限り、2%の物価目標を政策として達成することは不可能でしょう。しかしすでに国内の金融機関が長引く低金利で疲弊し、機能を低下させている現状では何をやっても逆効果。まさに自縄自縛、出口がまったく見えません。
日本の最大の問題は労働人口の減少であり、国内で購買力が落ちる。再雇用などもありますが、給料を大きく下げられ、生活水準を下げざるを得ない家庭が多い。マインドではなく、収入の低下を引き起こす要因が大きすぎるのです。賃金上昇の恩恵をうけられる層が減るのですから、賃上げ→インフレの経路も否定される。しかも、安倍政権もインフレを唱えなくなり、物価情報にむけた協力もない。この前、再雇用で同じ仕事をしているのに給与の引き下げはおかしい、という裁判がありましたが、本来は国がそうした再雇用について、制度面から家計を潤す制度をつくっていかなければおかしいのです。経団連が夏のボーナス6.71%増、といってみたところで、その恩恵をうけられる層は限られるのです。
利上げ局面の米国に資金がひきつけられ、米経済は堅調。一方で新興国経済は不安。次の経済危機は、個人債務の破裂にともなうとみられていますが、その引き金がよく分からなかった。しかし日銀の引き締めが、その引き金になりかねなくなってきた、といえるのでしょう。それが緩和モードのアンカーになった日銀の責務、ともいえるでしょう。
骨太の方針でも、低金利による財政規律の緩みが鮮明になってきた。ますます日銀は自縄自縛に陥った、といえるでしょう。引き締めモードのインパクトが、政府、企業、個人に与える影響が大きすぎるのです。市場では安倍グジット、総裁選で安倍氏が再任されないと大変だ、などとも語られますが、海外からそうみられている、という話は聞いたことがありません。安倍政権が退陣するより、黒田日銀がバズーカからバキュームになる方が、よほどインパクトが大きいのです。バキュームは真空、空虚、孤立を意味する。今の日銀は、すでに黒田バキュームになっているかのような、今日の記者会見の黒田氏の表情。日銀の事情、自爆によって世界経済を暗転させかねないとしたら、遅れれば遅れるほど、黒田氏の苦悩はますます深まっていくといえるのでしょうね。