得する年金術 子や孫と同居すれば大幅な「繰り下げ」も可能
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180101-00000012-pseven-life
週刊ポスト2018年1月1・5日号
子供と一緒に得する方法は…(イラスト/河南好美)
年金は何歳から受け取るべきか──内閣府の検討会などで、受給開始を「75歳」まで選べる制度の導入が提言されている。「少しずつでも『長く』受け取る」か「期間は短くても『たくさん』受け取る」か。これは「どちらが正しいのか?」という二者択一の単純な判断ではない。「年金博士」こと社会保険労務士・北村庄吾氏はこういう。
「定年退職後の人生において、『お金』はもちろん重要ですが、心身の健康、そしてどんなことに時間を費やしたいか、といった要素も大切になってきます。体が比較的よく動く60代のうちにしかできない目標があるのか、70代まで長く続けられる趣味を持っているのか。そうしたことも踏まえて初めて、60歳以降の『どの時期』にお金が必要かというシミュレーションが可能になってくる」
つまり、「繰り上げ」「繰り下げ」の判断は、夫婦の趣味、定年後の楽しみや生きがいをどこに見出すかによっても変わってくるのだ。
「繰り上げ」「繰り下げ」は、“子供や孫との関係”も踏まえた判断が必要になってくる場合もある。前出・北村氏はこういう。
「親子関係が良好なら、リタイア後の『同居』はメリットが大きい。最大の利点は、『子供の扶養に入る』という選択肢が生まれることです。扶養に入ることができれば、子供の保険料負担を増やすことなく、親も健康保険に加入できる。
また、高額療養費の世帯合算が可能になり、医療費の自己負担を抑えやすくなります。さらに、同居する親が亡くなった場合、子供は最大2か月分の未支給年金を受け取れる」
ただし、子供の扶養に入るには、60歳以上の親の年収が180万円未満であることが条件となる。ここでいう「年収」には年金も含まれる。
「年収180万円ですから、月額にして15万円。サラリーマンだった親が退職後に『60歳から繰り上げ受給』を選んでしまうと、この条件に引っかかる可能性が高い。同居で家賃など様々な費用が節約できることを踏まえ、年金は『繰り下げ』が良いでしょう。60歳の定年後に働くにしても、月収15万円を超えないような働き方を選べばいい」(同前)
65歳で年金受給開始になると月収15万円を超えてしまうことになりそうだが、「基礎年金だけ受給して、厚生年金は繰り下げ受給」あるいは、「厚生年金だけ受給して基礎年金は繰り下げ」という方法を選べば、年金月額を15万円未満に抑え、扶養に入り続けることも可能になる。
「子供との同居による『繰り下げ』受給で年金額を増やせれば、70代以降の家計に余裕ができる。そうすると、孫が教育費のかかる年代に差し掛かった時に、子供世代にかける負担を小さくできるといったメリットも出てくるでしょう」(同前)
「繰り上げ」「繰り下げ」の選択肢が広がるほどに、年金は“世代を超えた家族”で考えるべきものになる。