あと4年以内。トランプ「米国第一主義」が招く世界経済のリセット
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2017.01.31 高城剛『高城未来研究所「Future Report」』 まぐまぐニュース
特定国の人々のアメリカ入国を拒否するなど、就任早々「誤ったアメリカ第一主義」をかざしだしたトランプ大統領に、国内外から激しい非難の声が上がっています。メルマガ『高城未来研究所「Future Report」』の著者・高城剛さんは、氏の就任を境に「米国は世界のアメリカではなくなった」とし、さらに今後、世界経済が破綻に追い込まれるような「米国のみに都合の良いルール」が突如発表される可能性も否定できないと危惧しています。
■アメリカが「世界のアメリカ」ではなくなった日
今週は、第45代米国大統領となったドナルド・トランプの就任演説から読み解く「米国の未来」につきまして、私見たっぷりにお話ししたいと思います。
先週2017年1月20日、第45代ドナルド・トランプ米国大統領は、就任演説で次のように語りました。
ほかの国々が、われわれの製品を作り、われわれの企業を奪い取り、われわれの雇用を破壊するという略奪から、われわれの国境を守らなければなりません。保護主義こそが偉大な繁栄と強さにつながるのです。
私たちは雇用を取り戻します。私たちは国境を取り戻します。私たちは富を取り戻します。そして、私たちの夢を取り戻します。
私たちは、新しい道、高速道路、橋、空港、トンネル、そして鉄道を、このすばらしい国の至る所につくるでしょう。
デトロイトの郊外で生まれた子どもたちも、風に吹きさらされたネブラスカで生まれた子どもたちも、同じ夜空を見て、同じ夢で心を満たし、同じ全知全能の創造者によって命を与えられています。
他国の国境はわれわれが守ってきました。
海外で何兆ドルも費やしている間に、米国のインフラは荒廃し朽ち果てました。
本当の問題は我々の政府を何党が統治しているかではない。人々が統治しているかどうかです。
我々は今日、ワシントンDCから人々に権力を取り戻すのです。
と、このように語っています。
保護主義政策による「米国第一主義」と自ら話している通り、この日を境にアメリカは、第二次世界大戦後、そして東西冷戦終結後強固になった「世界のアメリカ」ではなくなりました。あわせて、他国の国境を守らず、その予算を国内のインフラに投資すると話しています。
一方、「世界のアメリカ」のために表に裏に活動していたのがCIAです。そこで、トランプは就任の翌日、大統領になってからの初の訪問先として、CIAを選びスピーチを行いました。これは事実上通達で、主な留意点は二点です。「他国の政府を転覆させてはならない」、「マスコミを使って、誤報を流してはならない」という二点で、これにより、いままでCIAの得意技ともいうべき「見えない国境」利権を完全否定することとなりました。
これを、CIAがそのまま受け入れるのか、まだ、定かではありません。過去にもCIAとFRBにメスを入れようとしたケネディ大統領が、何者かに暗殺されたことがありましたが、トランプはCIAのスピーチのなかで、「ケネディにできなかったことを成し遂げる」と発言しています。
また、トランプの就任演説直後にホワイトハウス公式サイトの「Climate Action Plan」のページが削除されたことからも、地球温暖化に懐疑的な姿勢も明確となりました。
これらのことから、全地球的グローバルな考え方は、今後の米国政府から一切なくなります。当面「米国第一主義」を掲げ、米国内に工場と雇用を呼び戻し、まるで脅迫に応じるように資本家たちは、あらたな米国への投資と雇用を声高々にあげはじめています。
しかし、トランプが対峙しなければならないのは、他国ではなく、実はデジタルによる時代の変化だと僕は考えています。これには絶対に抗うことができません。トランプになびいたように見える資本家や経営者たちの腹の中は、「米国にあらたに投資し(いまは)雇用を生みます、(が、しばらくしたらロボット化します)」と宣言しているようにも聞こえます。
この構造は、日本各地に増え続ける「シャッター通り」にも似ており、その問題の本質は、イオンのような大型店舗の進出だけではなく、インターネットとデジタルに取り残された人が、いつまでも既得権にしがみつき、変化を恐れているからに他なりません。
同じように時代の歪に立つトランプ政権は、どこかで時代に追い詰められ、戦争ではない過酷な道を進まざるを得なくなるでしょう。それは、ハードリセットによる「米国第一主義」です。
このような、いま唱えられている「米国第一主義」のすり替えが、今後4年以内に現実になるかもしれません。例えば、米国債のデフォルトやドルの価値を大幅に変え、世界経済がどんなに滅茶苦茶になろうとも、米国に都合の良いルールを突然発表するようなことが起きることを、覚悟を持って誰もが予見する必要があります。
なぜなら、過去100年において、米国は何度もこのようなことを行なってきたからです。
image by: Debby Wong / Shutterstock, Inc.
『高城未来研究所「Future Report」』
著者/高城 剛
1964年生まれ。現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。毎週2通に渡るメルマガは、注目ガジェットや海外移住のヒント、マクロビの始め方や読者の質問に懇切丁寧に答えるQ&Aコーナーなど「今知りたいこと」を網羅する。