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[経世済民119] 日本株は割安、低ROE修正なら5割高も 3日続伸TOPIX昨年来高値 GPIFアクティブ市場平均に見劣 債先上昇超長期安
Business | 2017年 03月 2日 16:07 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース

 
インタビュー:
日本株は割安、低ROE修正なら5割高も
AB 堀川氏


[東京 2日 ロイター] - 米資産運用会社、アライアンス・バーンスタインの日本バリュー株式共同最高投資責任者の堀川篤氏は、日本株はグローバルでみて割安であると指摘。ROE(株主資本利益率)が世界平均並みに修正されれば、グローバル市場に対し50%のアウトパフォーム(OP)も可能との見方を示した。

ロイターのインタビューに1日、応じた。

昨年12月末時点で、同社の受託資産残高は約57兆円(4900億ドル、116円で計算)。グローバル・バリュー株式ファンド全体の受託資産残高は1兆3451億円。日本株プロダクトの運用資産残高は1192億円となっている。

──日本企業の評価は。

「日本企業は徐々にだが変わってきている。以前は利益重視ではなかった企業も多くあった。しかし、3年ほど前からコーポレートガバナンスへの関心が高まってきており、一部の企業は行動を変えつつある。改善の可能性のある企業に投資していきたい」

──改善の可能性とは具体的にどういう点か。

「日本企業のROEは低い。足元で8─9%程度と、世界平均の12─13%に対し、4─5割下回っている。日本株は、PER(実績ベース)でみて約2割、PBRでは約4割、世界のレベルから割安になっているが、その要因の1つはここにある。特にPBRはROEの低さが反映されている(PBR=PER×ROE)」

──ROEが低い要因はどこにあるのか。

「ROEが低いのは、バランスシートが効率的ではないからだ。キャッシュをたくさん持ちすぎている。また利益重視の意識も低かった。しかし、逆に言えば改善のポテンシャルが大きいということであり、投資のチャンスもそこにある」

「単純計算だが、ROEが8%から12%程度に改善すれば、1.5倍だ。それだけで為替動向に関係なく、株価はグローバルマーケットに対して50%、アウトパフォームすることができる」

──成功例はあるか。

「ある半導体関連企業は、3年前は経営陣に利益改善の意欲があるのかないのかわからないような会社だった。業界トップ企業の売上高営業利益率が15─20%もあるのに、その会社は3%。しかし、当社との対話の中で、利益重視の姿勢に変わってきた。主力製品の1つである半導体洗浄装置を汎用型から個々の顧客ニーズに合せた作りに変えることなどにより、コストと利益のバランスが改善、利益率は今年12%まで改善した」

──投資家との対話がうまくいかない企業もあるのではないか。

「確かに、利益改善に後ろ向きと言わざるを得ない企業も少なくない。自分たちの業界というか世界に固執して、マーケットも気にしないタイプの企業だ。だからこそ、我々は、日本株を『やや』オーバーウエートとしている」

──日本のグローバル企業にとってはトランプ米大統領の政策もリスクだ。

「ポイントは、雇用などで不満を持っていた支持者を満足させることができるかどうかだ。満足させることができれば(景気拡大などを通じて)日本も恩恵を受けるだろう。満足させることができなければ、ポピュリスト的な政権であり、『敵』をつくることで不満のはけ口とするかもしれない。その際、ライバルである中国が対象となりそうだが、日本も巻き添えを食うリスクがある」

「国境税が実施されれば、輸出セクターは影響を受ける可能性がある。国境税は売上高にかかってくるのに対し、法人税減税は利益にかかる。その影響度は、国境税の方が大きいだろう。自動車株のウエートは米大統領選直後からやや落としている」

──今回のトランプ大統領の議会演説をどうみたか。

「今回の議会演説では、敵を探すような発言がなかった。その点では良かったのではないか。一方、掲げる政策を実行できるかには依然として不透明感が漂う。行政スタッフの陣容さえ固まっておらず、政策実行力に関しては信頼感はまだ低い」

──米国の為替政策はどうなると予想するか。

「米国はサービス産業の割合が高く、ドル高の方がプラスだとみている。多少、ドル安になったとしても米国の車が日本で急に売れるとは考えにくい。無理やりドル安にすればインフレもしくは輸入物価が上昇し、消費者、つまり支持者の懐を圧迫する。ドル高志向であれば日本株にもプラスだ」

──海外投資家の様子はどうか。

「1月に、欧州に出張してきたが、日本がインフレになるかに興味を示す投資家が多かった。これまで女性がパートで働くことで賃金の上昇率を抑えていたが、それにも限界がみえてきた。今後は賃金に上昇圧力がかかってくるだろう。インフレになれば、個人や企業の行動も大きく変わってくる可能性がある」

*誤字を修正しました。

(伊賀大記、植竹知子)

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http://jp.reuters.com/article/interview-abhorikawa-idJPKBN1690GI

 

日本株3日続伸、TOPIXは昨年来高値−米金利高で金融、素材上げ
長谷川敏郎
2017年3月2日 08:04 JST 更新日時 2017年3月2日 15:34 JST

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FRBのタカ派発言続き利上げ確率が上昇、ISM統計も良好
1ドル=114円台へドル高・円安進む、企業業績期待が再燃


2日の東京株式相場は3日続伸し、TOPIXは昨年来高値を更新した。米国の早期利上げ観測の高まりで銀行や保険など金融株が買われ、米景況感の改善やインフラ投資期待、為替の円安進行を手掛かりに電機や機械など輸出株、非鉄金属や鉄鋼など素材株も高い。
  TOPIXの終値は前日比11.60ポイント(0.7%)高の1564.69、日経平均株価は171円26銭(0.9%)高の1万9564円80銭。TOPIXは2015年12月17日以来、およそ1年2カ月ぶりの高値となった。
  シティグループ・グローバル・マーケッツ・アジアの投資ストラテジスト、ケン・ペン氏(香港在勤)は「FRBはマーケットを利上げで驚かさないよう、準備をしている。利上げ確率が80%となった今、条件は整った」と指摘。前日の海外金融市場に影響を与えたトランプ米大統領の演説も、「詳細はなかったが、話し方は驚きだった。政策を実行するために動いてくるという自信を持つことができた」と言う。

東証外観
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  ダラス連銀のカプラン総裁は1日の講演で、米経済が政策金利の上昇を受け入れるだけ十分強く、経済成長を維持するためにも利上げを支持すると発言。また、米連邦準備制度理事会(FRB)のブレイナード理事は、「追加的な緩和を解除し、緩やかな道筋をたどり続けることがすぐに適切になりそうだ」と述べた。
  米供給管理協会(ISM)が1日に発表した2月の製造業総合景況指数は57.7と、2014年8月以来の高水準となった。1日の米国債市場は、早期利上げ観測の高まりから10年債利回りが2.45%と6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇。市場が織り込む3月の米利上げ確率は2月28日の52%から80%へ上昇した。トランプ米大統領の議会演説は詳細の説明を欠いたが、冷静な論調が好感され、同日の米ダウ工業株30種平均は300ドルを超す大幅高。
  為替市場ではドル高・円安が進み、きょうは一時1ドル=114円10銭台と前日の日本株終値時点113円44銭に対し円安水準で推移した。いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員は、長期金利の上昇局面は「米国や世界の景況感が良好で為替の円安圧力がかかるという点から、日本企業にとってハッピー」とみる。
  金融や景気敏感セクターなど内外需業種が幅広く上げたことで、TOPIXと日経平均はチャート分析上、上向きの各移動平均線を上回りながら年初からのもちあいを放れた。岡三オンライン証券の伊藤嘉洋チーフストラテジストは、「日本株は新たな上昇相場が始まったとみていい」と分析。一本調子とはいかないが、日経平均は3月末に2万円超えの可能性があると予想した。
  もっとも、午後の取引では海外長期投資家からの売りも出て、日経平均は取引時間中の昨年来高値を更新したが、終値では1月4日の高値1万9594円を抜け切れなかった。シティのペン氏は、トランプ米政権に対し「まだ予算の前とあって少しだけ用心が必要。話は十分聞いたため、あとは数字が欲しい」としている。
  東証1部33業種は非鉄や証券・商品先物取引、ガラス・土石製品、保険、その他金融、鉄鋼、銀行、機械、電機など29業種が上昇。その他製品、パルプ・紙、サービス、鉱業の4業種は下落。売買代金上位では、三菱UFJフィナンシャル・グループや第一生命ホールディングス、三井金属、東京エレクトロンが買われ、メリルリンチ日本証券が目標株価を上げたロームは急伸。半面、16年12月期の決算発表を再延期した昭和電工は大幅安。任天堂や楽天も下げた。東証1部の売買高は22億1038万株、売買代金は2兆5329億円。値上がり銘柄数は1457、値下がりは421。
市場が織り込む3月の米利上げ確率の推移
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-01/OM5R2B6JTSE801


 

GPIFの日本株アクティブ運用、市場平均に見劣り−小型好調も
野沢茂樹、Min Jeong Lee
2017年3月2日 11:27 JST更新日時 2017年3月2日 14:41 JST

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• アクティブ運用の収益はTOPIXに見劣り
• 収益向上へリスクテイク、逆の結果もあり得る−SMBC日興証

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の収益環境は、トランプ米大統領が掲げる景気対策への期待で好転している。だが、国内株式で市場平均を上回る収益を目指すアクティブ運用については、順風満帆だとは言い難い。
  2016年4月から17年2月末までのTOPIXの収益率は14%程度。一方、GPIFが公表している保有銘柄を基にブルームバーグがアクティブ運用の収益率として試算した結果では、主な運用指標と比べてGPIFの保有額が多い30銘柄は約13%、構成比が高い同数の企業は12%前後にとどまっている。
  SMBC日興キャピタル・マーケッツのストラテジスト、ジョナサン・アラム氏(ロンドン在勤)は、アクティブ運用の手数料などがパッシブより高いことも考慮すると、GPIFには「やや分が悪い情勢だ」と指摘。「GPIFは収益向上を目指してリスクを取れば、実際には逆の結果に終わる可能性があるという問題を直視しなければならない」と言う。
  GPIFは運用資産が132兆円を超える世界最大規模の公的年金。日本の公的年金制度は高齢化で膨張する給付額を現役世代からの保険料や税金などで賄い切れず、1割前後をGPIFからの運用益や積立金の取り崩しに依存している。14年10月の運用見直しでは、内外株式や外国債券の基本的な資産構成割合を全体の6割強に引き上げた。国内株は年金特別会計も含めた積立金全体の約22%に相当する。

高橋則宏GPIF理事長

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
  昨年度はパッシブ運用が8割強を占め、アクティブ運用は18%どまりだが、運用指標に対する超過収益率は0.92%ポイントと6年ぶりの高水準を記録した。3日にGPIFが公表予定の16年10−12月期の収益額は四半期ベースで過去最大の10兆円規模に達したと、1日付の日本経済新聞朝刊が報じた。
3つの企業群
  GPIFは日本株のアクティブ運用でどのような企業に投資しているのか。昨年3月末時点で保有していた2037銘柄をTOPIXやJPX日経400、MSCIジャパンなど主要運用指標における構成比と比較すると、3つの企業群が浮かび上がる。
  まず、GPIFが保有する日本株の総額を主な運用指標の構成比に当てはめ、100%パッシブで運用した場合の保有額を算出。ブルームバーグの試算によると、実際の保有額との比較で理論値を上回る幅が大きい上位30銘柄はトヨタ自動車やNTT、ホンダなど日本を代表する大企業が並ぶ。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iWN4Hhhpzdcc/v1/-1x-1.png

  日本株の保有総額に占める割合を主な運用指標における構成比と比較する方法では、両者の違いが著しい30社にインタネット広告関連のセプテーニ・ホールディングスや歯科製品のナカニシ、イリソ電子工業などが含まれる。
  GPIFの保有銘柄のうち、主な運用指標に採用されていない小型株102銘柄を見ると、ソフトバンクグループでインタネット専業のメディア事業を担うアイティメディアや建設機械メーカーの技研製作所、製造業への人材派遣業を手掛けるUTグループなどが確認できる。
  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘投資情報部長は、「GPIFの日本株はパッシブ運用が中心だ」と指摘。アクティブ運用で超過収益を狙っても、複数の委託先が似たような企業に集中してしまうと、うまくいかない恐れがあると言う。特徴ある投資戦略を取る委託先を選べば、高い成長力を秘める小型株を追い求めることにもなるとも話した。
  実際、GPIFの保有銘柄で主な運用指標に含まれない小型株の収益率は同期間に約16%と、TOPIXだけでなく、東証マザーズ指数の3.8%をも上回った。生体認証機器メーカーのディー・ディー・エスや自動車部品のエイチワン、耐震基礎工事などを手掛ける日特建設は株価が2倍超に上昇。ただ、こうした小型株は1社平均の時価総額が450億円弱しかなく、合計してもアクティブ運用の1%にも満たないため、収益への貢献度は限定的だ。
  GPIFは個別銘柄の選定はできないが、委託先を戦略や成績で入れ替えている。国内株のアクティブ運用は野村アセットマネジメントやゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントなど17ファンドに委託。収益力を測る財務指標や株価変動率などを基に構成した独自の指数で、中長期的に超過収益の効率的な獲得やリスク抑制を目指す「スマートベータ」戦略への資金配分を約3年前から増やす、など分散を進めている。
  ブルームバーグの試算では、国内株のアクティブ運用のうち、スマートベータ型は昨年3月末時点で半分超を占めた。3分の1余りはTOPIXを対象としており、約5分の1は少数の優良企業に着目した戦略だった。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/io.fG5.CZFo8/v1/-1x-1.png

  GPIFが日本株を含むリスク性資産の構成比を大幅に高める運用見直しに踏み切ってから、まだ2年半足らず。年金運用界の「クジラ」には、運用対象の分散や手法の高度化だけでなく、リスク管理の強化、専門家の採用と組織作りなど課題が山積している。
  アムンディ・ジャパンの吉野晶雄チーフエコノミストは、「GPIFの運用能力に評価を下すのは時期尚早で、性急に成果を得られるものではない」と指摘。年金基金の運用なので、「長期的な視点を持つ必要がある」と語った。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-02/OM5E596JIJUY01

 

債券先物が上昇、10年入札無難通過で−日銀オペ警戒で超長期債は安い
三浦和美
2017年3月2日 08:07 JST 更新日時 2017年3月2日 16:10 JST

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10年債、日銀コミットで他セクターに比べ買いやすい−メリル日本証
超長期債、日銀オペへの疑念で売り圧力−パインブリッジ

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ikLujj7Cy__Y/v2/-1x-1.png

債券市場では先物相場が上昇。3月の米利上げ観測の強まりを背景に売りが先行した後、10年利付国債入札を波乱なく終えたことから買い優勢の展開となった。一方、超長期ゾーンは日本銀行が3日予定している国債買い入れオペで減額されるとの警戒感から軟調に推移した。
  2日の長期国債先物市場で中心限月3月物は前日比10銭安の150円37銭で取引を開始し、一時は150円33銭と4営業日ぶりの安値を付けた。午後に入るとプラスに転じ、150円54銭まで上昇。結局4銭高の150円51銭で引けた。

  メリルリンチ日本証券の大崎秀一チーフ金利ストラテジストは、10年債入札について、「無難な結果だった」とし、「10年に限って言えば、日銀が完全にコミットする姿勢を示しているので他のセクターに比べて買いやすさはある」と指摘。一方、「米国の3月利上げが急速に織り込まれてきたことで、全般的にやや買いづらくなっている面もある」と話した。
  現物債市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の345回債利回りは、日本相互証券が公表した前日午後3時時点の参照値から0.5ベーシスポイント(bp)高い0.065%で寄り付き、一時は0.07%と2月24日以来の水準まで売られた。その後は0.065%に戻した。
10年債入札
  財務省がこの日に実施した10年利付国債(346回債、表面利率0.1%)の価格競争入札の結果は、最低落札価格が100円13銭と、市場予想の100円14銭をやや下回った。投資家需要の強弱を反映する応札倍率は3.74倍と、前回の3.62倍を上回った。小さければ好調を示すテール(最低と平均落札価格の差)は4銭と前回の5銭から縮小した。
  1日の米国債相場は続落。米10年債利回りは6bp上昇の2.45%となった。ダドリー・ニューヨーク連銀総裁、ウィリアム・サンフランシスコ連銀総裁の発言を手掛かりに売られた前日の地合を引き継いだ。一方、米株式市場ではトランプ大統領の議会演説を通過し、具体策には欠けるものの冷静な論調が好感されてダウ工業株30種平均が初の2万1000ドル台に乗せた。
オペ警戒で超長期債軟調
  この日は超長期債が軟調。新発20年物159回債利回りは3bp高い0.68%、新発30年物53回債利回りは4bp高い0.875%、新発40年物の9回債利回りは4bp高い1.03%と、いずれも約1週間ぶりの水準まで上昇した。
日本銀行本店
日本銀行本店 Photographer: Akio Kon/Bloomberg
  パインブリッジ・インベストメンツ債券運用部の松川忠部長は、「米国の3月利上げ観測に加えて、明日のオペで残存期間25年超の買い入れが減額になる可能性があり、日銀オペの疑念から超長期債が売られている」と説明。ただ、「30年債利回りが0.9%に接近する中で、あえて減らすかは疑問で、過剰反応といった感がある」と言う。 
  日銀は3日の金融調節で残存期間「5年超10年以下」、「10年超」の二つのゾーンを対象とする国債買い入れを実施する。「10年超」については、10年超25年以下と25年超に細分化して同時に行う可能性がある。先月末に発表した当面の買い入れ運営方針で予告した。25年超に関しては、1回の買い入れ額のレンジが500億〜1500億円で中間値が1000億円と、前回の買い入れ額1200億円を下回っている。 
オペ実施日公表に関する記事はこちらをご覧下さい。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-01/OM5RNY6JIJUO01
 
http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/642.html

[経世済民119] 世界の銀行:罰金など法令違反の支払い約37兆円に−08年の危機後 今後増加 中国LGFV資金繰新たなリスク−ドル債急拡大
世界の銀行:罰金など法令違反の支払い、約37兆円に−08年の危機後
Gavin Finch
2017年3月2日 15:59 JST

世界の銀行がマネーロンダリング(資金洗浄)や市場操作といった行為で法令に抵触し、2008年の金融危機以降に支払った罰金や制裁金などは総額3210億ドル(約36兆6300億円)に上る。ボストンコンサルティンググループ(BCG)が集計した。
  BCGが2日公表した年次報告によれば、2016年の支払額は420億ドルと、前年から68%増えた。これまでは米当局への支払いが半分以上を占めているが、欧州やアジアの監督当局も米国並みの厳格な対応を示しつつあり、支払いは今後数年、増える見込みだとしている。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i0NtwhRghBA8/v1/-1x-1.png
原題:World’s Biggest Banks Fined $321 Billion Since Financial Crisis(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-02/OM6D856KLVR401


 

中国LGFVの資金繰りに新たなリスク−ドル建て債発行が急拡大
Bloomberg News
2017年3月2日 11:40 JST

• 昨年のドル建て債発行額は過去最大の123億ドル
• LGFVによるドル建て債発行、17年は20−30%増と見込む−S&P

中国の地方政府が抱える資金繰り問題が過去のものとなったように見えた矢先に、新たなリスクが迫りつつある。
  地方政府の建設プロジェクトで資金調達を担う事業体である地方融資平台(LGFV)は、共産党前指導部の総力を挙げた景気対策で肥大化したが、後を継いだ習近平指導部が主に債務スワップを通じて着実に対処してきた。そのLGFVが今度はドル建て債券を起債しつつある。
  ドル建て債の発行自体はまだ小さいものの、急拡大している。昨年の同債券の発行額は過去最大の123億ドル(約1兆4000億円)。2017年はさらに伸びると予想されており、中国最大のドル建て債発行体の座をめぐり、LGFVが不動産開発会社と争うようになっている。
  ここで明らかな問題がある。LGFVは通常、債務返済に充てるドル建て収入を持たない。人民元の下落が続けば、返済リスクも高まる。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iU0qgvb84Qzc/v2/1200x-1.png

  S&Pグローバル・レーティングの企業格付け担当マネジングディレクター、クリストファー・リー氏(香港在勤)は、「償還期限を迎える際に借り換えるという計画はあまりにも楽観的かもしれない」と指摘。「市場のボラティリティー(変動性)が高まる、あるいはドルのレートが上昇する、またはクレジットイベントが予期せず発生すれば、こうした資金調達手段はいつでも途絶える可能性がある」と説明した。
  S&Pは、LGFVによるドル建て債発行が17年に20−30%増えると見込んでいる。リー氏は「こうしたドル建て債の年限は3年が中心。実際に試されるのはドル建て債発行の第1波が償還を迎える18年だろう」と述べた。
原題:New Risks Loom for China Local Debt, This Time in Dollar Bonds(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-02/OM60HB6KLVR401

http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/646.html

[国際18] トランプ氏の歳出案、金融当局に利上げ迫る結果に−経済成長に打撃 党と矛盾 インフラ実現性なし 疑問だけが残る国境税
トランプ氏の歳出案、金融当局に利上げ迫る結果に−経済成長に打撃
Lisa Du、Katherine Chiglinsky
2017年3月2日 15:35 JST

大統領の政策推進に議会は「クレジットカード」与える−アリアンツ
景気過熱の抑制で金融当局は最高5回の行動必要も−ドウェイン氏

トランプ米大統領への期待感で株価を押し上げる投資家は、赤字財政支出が連邦準備制度に金融引き締めを迫り経済成長を抑制するリスクに警戒すべきだとアリアンツ・グローバル・インベスターズのグローバル・ストラテジスト、ニール・ドウェイン氏は指摘する。

  ドウェイン氏は1日にブルームバーグ・テレビジョンとのインタビューで、「米金融当局は利上げするだろう」と述べ、「トランプ大統領が政策を推進すればするほど、議会は彼に『クレジットカード』を与え、イエレン連邦準備制度理事会(FRB)議長は利上げを迫られることになる」と予想した。
  S&P500種株価指数は1日に再び最高値を更新した。ドウェイン氏は株高の一因として金利上昇による債券価値の目減りを懸念する投資家が株式にシフトする動きを挙げるとともに、インフラや軍への投資を拡大するとのトランプ氏の計画に即効性を期待しないよう警告した。

  ドウェイン氏は「国防支出でも影響が行き渡るには時間がかかる。このため米国の経済成長は引き続き鈍いままになろう」と語った。同氏はトランプ氏の減税公約や歳出案を受けて、米金融当局は経済の過熱を防止するため最高5回の行動が必要になる可能性があり、そうなれば、「借金体質」の米国での借り入れに水を差す恐れがあると指摘。米国株を物色する投資家はたばこなど不況に耐える業種を検討すべきだとし、米国のジャンク債や新興国債券にも投資妙味があろうと話した。
原題:Trump ‘Credit Card’ Spending Seen Pressuring Fed, Hurting Growth(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-02/OM6B8A6K50YP01


Column | 2017年 03月 2日 10:18 JST 関連トピックス: トップニュース

コラム:
トランプ氏議会演説、投資家に矛盾するシグナル発信

Gina Chon

[ワシントン 28日 ロイター BREAKINGVIEWS] - トランプ米大統領は28日、投資家に改めてまちまちのシグナルを送った。不法移民に合法滞在の道を開くと記者団に述べた後、上下両院合同会議での演説では、犯罪を犯す外国人を非難した。税制改革やヘルスケア改革に関する新たな詳細もほとんど示さなかった。

今回の演説では、「米国の大虐殺」などといった言葉を用いた大統領就任演説の暗いトーンとは異なり、トランプ氏は「ささいな争いは過ぎ去った」と述べた。しかし、午前のFOXとのインタビューでは、自身に対する全国的な抗議運動を巡り、オバマ前大統領を批判した。

今月にはツイッターで「偽ニュースメディア」は米国民の敵だとコメントしている。

トランプ氏は議会演説で、メキシコとの国境に「壁」を建設すると改めて表明。米国は「無法な混乱状態」をそのままにしておくことはできないとの考えを示した。

トランプ氏のゲストには、不法移民によって殺害された米国人の遺族らの姿があった。しかし、トランプ氏がこの日、国内の不法移民に何らかの形で合法滞在の道を開く可能性を示唆したことを踏まえると、彼らの存在が多少気になる。

共和党の最優先課題は、医療保険改革法(オバマケア)を廃止し別の新たな制度に置き換えることだが、その方策についてでさえ、分裂した共和党はコンセンサスを形成できていない。

トランプ氏は、米国民の保険加入を促すために税額控除や医療貯蓄口座を利用すべきだとし下院共和党の案を示唆したが、詳細への言及はなく、改革案は「コストを押し下げると同時に、より良い制度を提供」すべきと述べるにとどまった。

同氏は27日、州知事らとの会談で「医療制度がこれほど複雑だとは誰にも分からなかった」と発言している。

共和党はまた、税制改革の方法についても、特に下院指導部が支持する国境調整税で見方が分かれている。

トランプ氏は同案を巡りこれまでに矛盾する見解を示しており、28日の議会演説でも、米国は国内に製品を持ち込む外国企業に「ほとんど何も」負担させていないと述べ、漠然と国境調整税に触れたにすぎない。

大統領就任から1カ月以上が経過したが、トランプ政権はビジネスに影響する重要な問題に関し、いまだに具体的な計画を打ち出す用意ができていない。

明確なプランがなければ、大規模な改革に期待してきた議員や投資家は、提案がどこに向かうのか推測し続けることになる。

ホワイトハウスの経済政策にとって良くない兆候だ。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。


ベトナムに新造巡視船6隻を供与 2017年 01月 16日
コラム:中国の外貨準備高、越えた危険な一線 2017年 02月 08日
コラム:英国は金融業沈没で「双子の赤字」悪化も 2017年 02月 04日

http://jp.reuters.com/article/column-trump-congress-address-idJPKBN169051


[FT]党と矛盾するトランプ氏の歳出計画(社説)
2017/3/2 16:35日本経済新聞 電子版
Financial Times
 トランプ米大統領は初の議会演説で、楽観的で融和的な姿勢を示した。大統領就任演説で見せた好戦的な姿勢や、同氏が描いた陰鬱たる国家像から抜け出したことは歓迎できる。

米連邦議会で初の施政方針演説をするトランプ大統領=ロイター
米連邦議会で初の施政方針演説をするトランプ大統領=ロイター
 その内容は依然として注目に値するものだった。債務という言葉は登場したが、財政赤字に関しては全く触れられていなかった。トランプ氏は減税をする一方で、歳出を大幅に増やしたいのではという疑いがあっても、演説はその疑いを打ち消していた。議会を支配するトランプ氏自身の共和党は、原則を守り財政赤字の拡大には抵抗するかもしれない。もし抵抗するならば、共和党は民主党の支持が期待できる。共和党は過去、共和党の大統領時代に財政的な保守主義を諦めたことがある。だが、トランプ流ともいえるこの規模の財政赤字拡大を承認するとなれば、前代未聞のことだろう。

 いかなる形でも、議会における法制化の進展は、当初見られた無意味なけんか腰の姿勢を捨てつつあるトランプ政権次第だ。主に国民に向けられた演説は、法制化の進展に向けた一歩だった。トランプ氏は演説の冒頭で、このところ起きているユダヤ人に対する攻撃やカンザス州でインド人移民2人が銃撃された(うち1人が死亡)ことに触れた。これは、トランプ氏の基本理念から外れた人たちの懸念に対応する必要な認識だった。演説では、大統領就任演説と同じ一連の問題を挙げた。だが、そうした問題は打ち勝つべき障害物として示され、国内外にいる敵が引き起こした「大虐殺」とは表現されなかった。北大西洋条約機構(NATO)に対する強い称賛は、同盟国を安堵させるだろう。

■トーン変化だけでは矛盾解決せず

 演説のトーンは重要だ。だが、大統領候補から大統領らしくなった口調の変化は、今後も維持されるのだろうか。口調では矛盾も解決しない。演説で明らかになったトランプ氏の政策の数少ない要素は、トランプ流の野望と共和党のタカ派の姿勢との間の対立を高めたにすぎなかった。歳入に関しては、変わらず中間層や法人に対する減税を語った。輸出品へ課税をせず、輸入品へは課税するという「国境調整税」についての言及はなかった。政策は支出が主で、トランプ氏の口から出てくる言葉は全て高くつくものだった。

 トランプ氏は、既に示した国防費の増額に加え、子育て支援や有給の家族休暇を拡大すると言った。医療制度に関しては、引き続き公的医療保険であるメディケイドに対する政府の支援を表明した。メディケイドは、低所得者に医療保険を提供し、既往歴のある人でも医療保険を利用できることを重視している。(オンラインの保険市場「エクスチェンジ」に関する批判のある)オバマケアのこうした要素は、ほとんど補償範囲の拡大とその費用で成り立っている。費用がかさむオバマケアの仕組みは、トランプ氏が撤廃したい政策だ。撤廃しなければ、消費者への保険費用を抑えることは、つまり政府が補助金を出すことにほかならない。だが、トランプ氏の薬価の引き下げに対する案では、引き下げ分が米国の医療費支出のわずか1割を占めるにすぎないため、相殺するには不十分だ。

 こうした気前の良さは、1兆ドルに上るインフラ投資とはまた別枠だ。インフラ投資の一部は民間資本で賄われるが、数年に及ぶとはいえ、昨年度の米国の総歳出額が3兆6000億ドルであることを考えれば、巨額な要求だ。歳出を削減できる歳入はあるのだろうか。その点については何も語られなかった。そして、トランプ氏はおなじみの問題に直面している。国家予算の8割は、軍や金利支払い、年金受給者や退役軍人に対する恩給、そしてメディケイドに充てられているのだ。

 すべては聖域で、手を付けられない。経済に影響を与えず、国内総生産(GDP)比で現在104%の公的債務が今後どれほど膨らむのかは言いがたい。一部の赤字拡大は恐らく妥当なもので、致し方ないだろう。差しあたって迫る問題は政治だ。トランプ氏の歳出拡大の要求に、共和党議員がどれほど、そしてどの分野で抵抗を示すのか。もし抵抗をしないとすれば、トランプ氏の共和党に対する敵対的乗っ取りが完了することになる。

(2017年3月2日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

(c) The Financial Times Limited 2017. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.


http://www.nikkei.com/article/DGXMZO13572630S7A300C1000000/

 


疑問だけが残る国境税−トランプ米大統領、税制改革の詳細説明避ける
John Voskuhl、Lynnley Browning
2017年3月2日 14:04 JST]

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大統領は「歴史的」見直しについて詳細触れず
大統領は国境調整計画の「支持間近」との分析も

トランプ米大統領は議会演説で、法人・個人税制改革に関して新たな詳細には触れなかった。米企業の輸入に課税する一方で輸出には控除という、議論の的となっている案を大統領が支持するのか不明なままだ。
  投資家の中には税制ビジョンを具体的に示すことを期待していた向きもあったが、大統領は他国が「非常に高額な関税や税金」を課すために、米国製品が不利な状態を強いられているという従来の主張を繰り返すしたにとどまった。ライアン下院議長が気に入っている法人税の「国境調整」への支持も示さなかった。
議会演説するトランプ大統領
議会演説するトランプ大統領 Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg
  さらに、「驚異的」な税制改革案を近く発表すると約束していたにもかかわらず、個人税制については「中間所得者層向けに大規模な税負担の軽減措置を提供する」とし、大まかな青写真を示しただけだった。
  米国の輸出品に対する外国の課税について、大統領はライアン議長の国境調整計画について「支持間近」だと分析するのは、投資顧問・コンサルティング会社ベーダ・アドバイザーズのマネジングパートナー、ヘンリエッタ・トレイズ氏だ。提案内容は現在35%の法人所得税率を、国内売り上げと輸入に対する20%課税に代えるというもので、米企業はもちろん、ホワイトハウスのスタッフにも賛否両論がある。
  小売業界や自動車メーカー、それに輸入原油に依存する製油各社は、国内消費者のコストがかさむことになるとして、提案には反対だ。ゼネラル・エレクトリック(GE)やオラクルなどの推進派は、国境調整により国内生産が増加し、雇用の促進やドル高につながると主張する。ドルが高くなれば輸入品の価格は下がり、輸出のコストが上がって、税金の悪影響も帳消しになるという訳だ。
  ブルームバーグは2月28日、トランプ政権内で国境調整を巡り意見が一致していないと伝えた。政権内の高官によると、バノン首席戦略官兼上級顧問をはじめ、ミラー補佐官、プリーバス首席補佐官、ロス商務長官、ナバロ国家通商会議(NTC)委員長は賛成派。それに対し、コーン国家経済会議(NEC)委員長およびムニューシン財務長官は反対派だという。
「生命維持装置」
  それでも、上院共和党には、国境調整に冷淡な態度を示している議員もいる。上院院内幹事のジョン・コーニン議員は2月初め、提案は「生命維持装置」付きの瀕死(ひんし)状態で、上院議員は他の提案を検討していると語った。上院財務委員会のオリン・ハッチ委員長は同月28日、CNBCのインタビューに答え、提案をまだ留保していることを明らかした。
  提案実現には、トランプ大統領から強力な支持を取り付けることが必要だとトレイズ氏は分析している。上院共和党議員に対して「強い圧力をかけねばならず、それはトランプ大統領しかできない」と語っている。「上院共和党議員50名の賛成を得るためには、大統領の力がどうしても必要だ」。
個別案
  トランプ大統領の個人減税もいまだ明らかになっていない。選挙運動時には、基礎控除額を上げる、控除項目を増やす、子供や扶養者に対する税優遇措置を新設するなど、包括的な個人減税を提案している。その提案には、現行7つの個人税率を3つに集約し、最高税率を39.6%から33%に減らすことが盛り込まれている。
  ムニューシン財務長官が昨年11月末に語っていたところによると、最高税率が下がるものの、控除や優遇措置が削減されるため、「高額所得者にとって、明らかな減税とはならない」という。
  しかし、独立系調査機関の分析によれば、選挙活動時の減税提案では高額所得者が最も恩恵を受ける。アーバン・インスティチュートとブルッキングズ研究所の合弁、タックス・ポリシー・センターの分析によると、年収370万ドル(約4億2200万円)以上を稼ぐトップ0.1%の高額所得者にとっては、平均110万ドル、つまり、税引き後所得の14%の減税になるという。それとは対照的に、課税区分で5番目の中間層の減税は約1010ドルで、税引き後所得の1.8%にすぎない。
  大統領が詳細を発表しなかったことで、落胆した投資家もいる。演説前には、市場は「詳しい内容を発表することに準備万端」と見ていた。資産運用会社インテレクタス・パートナーズのチーフエコノミスト兼クレジットポートフォリオ運用責任者のベン・エモンズ氏はそう語る。
  ノーザン・トラストのケイティ・ニクソン最高投資責任者(CIO)も市場で相場上昇が続くには「減税やインフラ投資に関連して検討されている政策変更の一部に関する具体的内容が必要だ」としている。南カリフォルニア大学のエドワード・クライバード教授も詳細の欠如は「税制に関するチームが確定していない証拠。提案は複雑で時間がかかるため、今は無難な道を選んだ」と分析する。
原題:Trump’s Scant Specifics Leave Questions on His Border-Tax Plans(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-02/OM5JZ36VDKHU01

【コラム】トランプ氏のインフラ実現性、計算すれば一目瞭然−セン
コラムニスト:Conor Sen
2017年3月2日 10:25 JST

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2月28日の議会演説で、トランプ米大統領は大型インフラ投資への支持を表明した。それには十分な理由がある。他の政策ほど米国を分断するものではなく、当選の原動力となったブルーカラー労働者を潤す形で経済成長を促すと見込まれるからだ。ただ、大統領が唱える大半の政策目標と同じく、具体的なプランがない。労働市場の実態を考えてみても、帳尻が合わない。
  少し計算してみよう。議論に上っている1兆ドル(約114兆円)のインフラ支出は、10年間にわたり年1000億ドルずつ実施されるとみられる。だがインフラ支出は複雑な経過をたどり、遅々として進まないことで悪名高い。環境上の理由による遅れや、プロジェクトごとの個別の懸念が出てくるからだ。これらすべてを考慮しないとしても、労働市場の問題だけで計画は不可能に思われる。
  現時点で米国には建設業の被雇用者が680万人いる。2016年末の米国の建設支出は年率換算で1兆1800億ドルだった。つまり、建設業の労働者1人が約17万5000ドルの業務を担ったことになる。
  さらに計算を進めると、途方もない現実が見えてくる。1人当たり約17万5000ドルの業務を担うとすると、年1000億ドルの建設支出をこなすには追加で57万人の作業員が必要だということになる。これにはトラック運転手やプロジェクトマネジャー、環境評価の専門家らプロジェクト完了に必要なサポートスタッフは含まれない。
  インフラ支出がすべての建設支出に占める割合は25%で、必要な労働者数は恐らく、建設全体の中では比較的少なくて済む。トランプ政権はその抜け目のなさで、一定の労働効率改善を促すかもしれない。それでも40万人から50万人は必要になる。5万人というわけにはいかない。
  建設業で57万人の労働者を増やすというのは、どれだけ現実的なのか。この数字が最後に実現したのは1946年で、建設業の雇用の力強い伸びが続いた2013−15年ですら20万ー30万人だった。景気サイクルの後半に差し掛かっている現在は鈍化を始め、過去12カ月の伸びは17万人にとどまっている。
  しかも建設業の労働力では、移民が大きな比率を占め、不法就労者も多い。ブルームバーグが先週報じたところでは、米国の建設業で働く最大110万人が不法移民だ。不法移民の取り締まり強化は建設業から貴重な労働力を失わせる。移民政策に抜本的な変更でも加えない限り、トランプ政権のインフラ支出を支える労働力は大きく不足することになる。
(コナー・セン)
(このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピー編集部の意見を反映するものではありません)
原題:Math Will Kill President Trump’s Infrastructure Plan: Conor Sen (抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-02/OM5WEI6S972801

 


 

World | 2017年 03月 2日 15:53 JST 関連トピックス: トップニュース
トランプ氏の議会演説「大統領らしい」、信用市場大きく上昇

[ニューヨーク 1日 ロイター] - トランプ米大統領が2月28日に上下両院合同会議で行った演説は市場関係者の間で非常に「大統領らしかった」と評価され、1日の取引では信用市場が大きく上昇した。

トランプ氏の演説は論議を呼ぶことが多いが、今回の議会での演説の論調は落ち着いたもので、移民政策などを含む選挙公約について触れたものの、具体策には踏み込まなかった。こうしたことで市場心理はマイナスに振れなかったと指摘されている。

シュローダーのシニアポートフォリオ・マネジャー、リサ・ホーンビー氏は「トランプ氏の発言が分別があるように聞こえたこと、さらに市場が好意的に反応していたインフラ(投資)や税制改革に言及したことはプラスだった」と指摘。この日の取引ではダウ工業株30種.DJIが初めて2万1000ドル台に乗せるなど、株式市場は活況を呈した。

こうしたプラスの地合いは昨年11月のトランプ氏の大統領選での勝利以降継続しており、社債発行も一段と後押しされる見通し。

高格付け社債の発行は2月だけで910億ドル強。2月としては過去に4番目に高い水準となった。年初からは2670億ドル強となっており、前年の同時期を500億ドル上回っている。

クレディスイスのDCMのグローバル責任者、トーマス・マーセイン氏はトムソン・ロイター傘下のIFRに対し、これまで様子見姿勢をとっていた投資家が取引に参加するようになっており、これが一因となって投資意欲が高まっていると指摘。こうした機会を見逃すことなく資金調達計画を前倒しするよう企業に推奨している。

前日はニューヨーク連銀のダドリー総裁が利上げを「遅らせる必要はない」と述べるなど、FRB当局者からタカ派的な発言が相次いだことで、フェデラルファンド(FF)金利先物が織り込む3月利上げの確率は80%強と、前週の30%から大きく上昇。

こうしたなか、ある銀行関係者は「欧州で選挙が相次ぐほか、利上げ観測が高まっていることで今後はボラティリティーが高まる可能性がある」と指摘。仏大統領選挙や英国の欧州連合(EU)離脱などをめぐる地政学的リスクのほか、米国の税制改革をめぐる動向など、引き続き市場にとって大きなリスク要因が存在している。

ただ、市場は当面、エンジン全開で推移するもよう。アムンディ・スミス・ブリーデンの最高投資責任者(CIO)補佐、ジョン・デュエンシング氏は「市場が底堅いように見える限り、そして少なくとも楽観的な見方と活力の一部が維持されれば、FRBの利上げによって腰折れすることはない」と指摘。「米経済は完全雇用に近づいており、インフレも上昇している。このため、金融政策の正常化が継続することは、現時点では誰にとっても大きな驚きではない」と述べた。

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http://jp.reuters.com/article/trump-1mar-idJPKBN1685UU


http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/486.html

[経世済民119] [FT]ロボットがハッカーに操られて牙むく危険  英のEU離脱後の「海戦」恐れるフランス漁師
[FT]ロボットがハッカーに操られて牙むく危険
2017/3/2 15:57
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Financial Times
 世界で最も有名なロボットたちがユーザーに対してスパイ行為を働いたり、営業秘密を漏らしたり、さらには乗っ取られて襲いかかってくる恐れもある──。サイバー攻撃に対するロボットの弱さに警鐘を鳴らすセキュリティー専門家らは指摘する。

ロボットへのサイバー攻撃対策が課題になっている(ソフトバンクロボティクスのヒト型ロボット「ペッパー」)=AP
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ロボットへのサイバー攻撃対策が課題になっている(ソフトバンクロボティクスのヒト型ロボット「ペッパー」)=AP
 ソフトバンクロボティクスのヒト型ロボット「ペッパー」や米リシンク・ロボティクスの産業用ロボット「バクスター」など50種のロボットについて、米サイバーセキュリティー会社IOActiveがテストを行った結果、ハッカーがロボットの腕や足を操ったり、マイクやカメラを乗っ取ったりすることにつながりうる弱点を発見した。

 建設現場や病院など様々な場所で人間に代わって仕事をするロボットが増えるなか、サイバー攻撃の潜在的な脅威は高まっている。ペッパーはすでに店舗や家庭で使われ、バクスターは工場の組み立てラインに配置されている。米調査会社IDCのデータによると、ロボットと関連サービスへの支出は2020年に現在の2倍の1880億ドルに達する見通しだ。

 あらゆるモノがネットにつながる「IoT」関連機器の弱点の発見を専門とするIOActiveラブズのシーザー・セルード最高技術責任者は、サイバーセキュリティーを考えずにロボットがネットにつながれているのが心配だと言う。

■「特に産業用ロボットが危険」

 「ロボットがすべての家庭や多くの会社で使われるようになれば、サイバー攻撃の動機が飛躍的に増す」と同氏は話す。

 「ロボットは一定の範囲を動き回ることができ、特に産業用ロボットは力が強いので、リアルタイムで非常に危険な動きをするようにプログラミングされうる」

 ロボットに対するサイバー攻撃の証拠は挙がっていないが、ロボットは人間に身体的な危害を加えたり操業を止めたりすることに使われうると、セルード氏は警告する。

 セルード氏が発見した弱点の一つに付け込んで、ロボットをランサムウエア(コンピューターを止め、その解除のために金銭を要求する不正プログラム)に感染させれば、操業に被害を引き起こすこともできる。

 「企業が労働者をロボットに置き換え始めれば、あたかも会社の従業員がハッキングされたようなことになる」と、同氏は言う。

 ロボットメーカーに弱点を知らせているIOActiveは、中国のUBTECHロボティクスや韓国のロボティーズ、デンマークのユニバーサルロボットなどのロボットにもサイバーセキュリティー上の重大な問題を発見している。

 ユニバーサルロボットは、IOActiveの報告を受けて「指摘された潜在的な脆弱性と可能な対応策を調査中」だとしている。

 リシンク・ロボティクスは、IOActiveが指摘した問題のいくつかにすでに対処したという。

By Hannah Kuchler

(2017年3月2日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

(c) The Financial Times Limited 2017. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

http://www.nikkei.com/article/DGXMZO13568160S7A300C1000000/


 
[FT]英のEU離脱後の「海戦」恐れるフランス漁師
(1/2ページ)2017/3/2 6:30
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Financial Times
 フランス北部ブローニュ・シュル・メールでトロール漁を営むオリビエ・ルプレトルさんは昨年初め、270万ユーロの漁船の新規リース契約に署名した。そこへ、英国が国民投票で欧州連合(EU)からの離脱を決めた。英仏海峡のフランス側にいるルプレトルさんは今、自分の決断を後悔している。

 「ブレグジット(英国のEU離脱)が起きることが分かっていたら、絶対にサインしなかった」。わずか50キロ先の英国の海岸線を指さしながら、ルプレトルさんはこう話す。「我々はつぶされるかもしれない」

マルセイユ港で魚を売る人たち。英国領海近辺を漁場とするフランスの漁師に、ブレグジットの行方に対する懸念が広がっている=ロイター
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マルセイユ港で魚を売る人たち。英国領海近辺を漁場とするフランスの漁師に、ブレグジットの行方に対する懸念が広がっている=ロイター
 彼の不安はブローニュ全土で共有されている。英のEU離脱で、英国領海から外国船舶が追放されることと、フランス最大の漁港を失うことを漁師仲間は心配している。

 これから行われる離脱交渉で、比較的規模の小さな産業さえもがいかに大きな障害になり得るか、漁師たちの懸念が浮き彫りにしている。また、極めて多くのEU加盟国が英国領海へのアクセスに頼っていることから、離脱交渉で(領海接近が)最大級の交渉材料になりうると英国が抱く期待を示している。

■英漁師、外国船制限なら漁獲量3倍

 北海の魚の運命は、ブレグジット交渉で最も荒れるテーマの一つになる。オランダ、スペイン、デンマークをはじめとした国々の船舶が軒並み、貴重な漁業権にしがみつきたいと思っているからだ。だが、漁場への入場禁止でフランスのパ・ド・カレー県ほど大きな打撃を受けるところはない。

 漁師らは長年、フランスの政治で数を上回る発言力を持ち、必要なときには封鎖や奇襲作戦を用いてきた。EUの対英交渉責任者、ミシェル・バルニエ氏は、漁師の力を熟知している。2009年にフランスの農業・漁業相として、パ・ド・カレーの漁師に400万ユーロの助成金を与えざるを得なかった。漁獲割り当てをめぐる論争で、漁師らが港を封鎖したからだ。

 現時点では、欧州の船舶は厳密な漁獲割り当てを超えない限り、EU海域のほぼどこでも漁業ができる。だが、英国の一部の漁師は、ブレグジット後には外国船舶が英国領海に入るのを国が阻止するよう要求している。

 英団体フィッシング・フォー・リーブは、外国船舶を制限すれば、英国の漁師には今の3倍の漁獲量があると話す。これは、ほかのEU加盟国が英国船舶に対して接近制限した場合に生じる「比較的小さな損失を埋めて余りある」という。

 外国船の接近制限が実施されればブローニュには大きな打撃だ。ブローニュの比較的大きなトロール漁船は一度に5日間海に出て、80%の時間を英国領海で過ごす。ルプレトルさんは言う。「これがすべてだ。もし英国が実際に領海を取り戻したら、破産が相次ぐだろう。間違いない。それにここでは、漁業が立ち行かなくなれば、すべてが立ち行かなくなる」

 ブローニュの小型船は大抵、英国領海には入らず、ヒラメなどのカレイ目の魚種をとり、ガンベタ埠頭で陸揚げし、現場で売りさばくことを好む。だが、もし英国がアクセスを制限すれば、こうした船は競争激化によって悪影響を受けるだろう。

 「すべての大型漁船がフランス領海で漁業をすることを余儀なくされる」。毎朝3時に全長10メートルの漁船でガンベタ埠頭から海に出るステファン・ピントさんは言う。「海上での戦争になるだろう」

 英仏間の漁業論争は、これが初めてではない。2012年には「ラ・ゲール・デ・ラ・コキーユ(貝戦争)」と名付けられた対立が勃発し、フランスの漁師らが、英国船舶は国際法に違反し、フランス海岸に近すぎる場所でホタテ貝をとっていると不満をぶちまけた。

 「お互いさまだ」。地元の漁業委員会の長でもあるルプレトルさんはこう話す。「もし明日、英国のホタテ貝漁師全員に向かって『もうここへ来て漁業できないよ』と言ったら、彼らは不満だろう」

 ホタテ貝は別にしても、大半の専門家はまだ、英国にとっては、離脱後の(再交渉された)協定から得られるもののほうが失うものよりも大きいと話している。

■英国領海へアクセス、交渉材料になる可能性

 一方、たとえ英国が将来、外国船舶の接近を制限したとしても、すべての船を追い出せるかどうかは全く不透明だ。ほかのEU加盟国の市民はすでに、漁船を買い漁獲割り当てを手に入れて、英国領海で漁業を営むために、英国企業を利用している。これは「クオータホッピング(割り当て飛ばし)」と呼ばれる慣行だ。

 英ハル大学の調査部長を務めるリチャード・バーンズ教授によれば、英国はそうした船舶に対する「所有権と陸揚げの要件を引き締める」ことを目指すかもしれないが、英国のEU離脱後も、こうしたクオータホッピングはまだ起きる可能性がある。

 シンクタンクのニュー・エコノミクス財団は、英国はやりすぎてチャンスを台無しにしないよう気を付けるべきだと言う。自国の領海へのアクセス拡大を利用しようと、英国漁業が自らを再編するのは難しいかもしれないからだ。

 財団は英上院宛ての書簡で「漁業設備から加工工場、国民の嗜好に至るまで、この専門特化のプロセスを覆し、各国が自国の海岸に近いところでつかまえる多様な魚種を効果的に収穫し始めるまでには、数十年の歳月がかかる」と述べている。

 また、英国は国内の漁船を優遇したいと思っているかもしれないが、英国の水産加工産業はそれよりずっと価値が高く、国際貿易の一環として輸入に大きく依存している。EU27カ国の交渉担当者らは、この貿易の継続と引き換えに、英国領海へのアクセス継続を要求するかもしれない。

 「多くの漁師にとって、念頭にあるのはただ一つ。ブリュッセルであり、その規制だ」とルプレトルさん。「だが、ブレグジットがどんなインパクトを及ぼし得るか、全員が理解しているかどうかは分からない」

By Paul McClean in Boulogne-sur-Mer

(2017年3月1日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

(c) The Financial Times Limited 2017. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.
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米連邦議会で初の施政方針演説をするトランプ大統領=ロイター
ロイター
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http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/648.html

[政治・選挙・NHK221] 小泉元首相「民進が直ちに原発ゼロなら自民困る」つての総裁、幹事長が原発ゼロ。保守勢力も堂々と原発ゼロにしないといけない
小泉元首相「民進が直ちに原発ゼロなら自民困る」
2017/3/2 19:05
 
 小泉純一郎元首相は2日、福島県郡山市で講演し「(原発事故以降)6年間、実質的に原発ゼロだが、電力が足りず停電したことは一日もない」と指摘し「原発ゼロでも日本は発展できることを証明した」と強調した。記者会見では「もし民進党が直ちに(原発)ゼロにしようとなったら、一番困るのは自民党候補」とも話した。

 安倍晋三首相については「(首相に原発ゼロと)言っているが、もう聞かない。人間も色々だし、首相も色々。もう変わらない」と指摘した。元自民党幹事長の中川秀直氏も講演に参加。小泉氏は「かつての総裁、幹事長が原発ゼロ。保守勢力も堂々と原発ゼロにしないといけない」と訴えた。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDE02H06_S7A300C1PP8000/
http://www.asyura2.com/17/senkyo221/msg/621.html

[国際18] ユーロ圏の消費者物価、2月2.0%上昇 4年1カ月ぶり伸び率 ユーロ圏失業率1月は横ばい9.6% ユーロ軟調ポンド一段安
ユーロ圏の消費者物価、2月2.0%上昇 4年1カ月ぶり伸び率
2017/3/2 19:01
 【ブリュッセル=森本学】欧州連合(EU)統計局が2日発表した2017年2月のユーロ圏の消費者物価指数(速報値)は前年同月比で2.0%上昇した。伸び率は原油価格の持ち直しなどで前月の1.8%から拡大。13年1月以来、4年1カ月ぶりの高い伸び率を記録した。欧州中央銀行(ECB)が物価安定の政策目標に掲げる、物価上昇率の「2%未満で、その近辺」に数字上は到達した格好だ。

 ただ物価の基調を判断するうえでECBが重視する「エネルギーと食品、酒・たばこを除く指数」の伸び率は0.9%と1月から横ばいにとどまった。物価指数の内訳をみると、エネルギー価格指数が9.2%上昇。昨年秋の石油輸出国機構(OPEC)の減産合意を受けた原油価格の持ち直しが、全体の物価指数を押し上げた格好だ。

 原油価格の持ち直しを除くと物価の基調はなお鈍い。独コメルツ銀行は原油価格による押し上げ効果が今後は薄れるため、年末にかけてユーロ圏の物価上昇率は縮小し、17年は平均で1.3%になると予測する。

 ただ見た目の物価上昇率の回復で、もともと物価上昇に敏感なドイツなどを中心に、当面はECBの緩和縮小を求める圧力が高まりそうだ。独連邦統計庁によると、ドイツの2月の消費者物価指数の上昇率は2.2%(EU基準)と約4年半ぶりの高水準を記録した。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM02H6Z_S7A300C1000000/


ユーロ圏失業率、1月は横ばいの9.6%
2017/3/2 19:00

 【ブリュッセル=森本学】欧州連合(EU)統計局が2日発表した2017年1月のユーロ圏(19カ国ベース)の失業率は16年12月から横ばいの9.6%となった。16年12月は09年5月以来、7年7カ月ぶりの低水準を記録していた。内需中心の緩やかな景気回復を背景に、ユーロ圏内の雇用情勢は全体として底堅さを保っている。

 1月の失業率を国別にみると、ユーロ圏19カ国で最も低いのはドイツの3.8%で、1990年の東西ドイツ統一以来の低水準にある。一方、16年11月分が最新のデータであるギリシャの失業率は23.0%と高止まりしており、域内格差も目立つ。

 スペインやギリシャでは25歳未満の失業率がなお40%を超すなど、南欧を中心に若年層の失業問題も深刻な状態が続いている。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM02H6N_S7A300C1000000/

ロンドン外為9時半 ユーロ軟調、1.05ドル台前半 ポンド一段安
2017/3/2 19:00
【NQNロンドン】2日午前のロンドン外国為替市場で、ユーロは対ドルで軟調に推移している。英国時間9時30分時点では1ユーロ=1.0530〜40ドルと、前日の同16時時点と比べて0.0020ドルのユーロ安・ドル高だった。米利上げ観測の高まりから、米長期金利が上昇(価格は下落)し、欧米金利差の拡大を意識したユーロ売り・ドル買いが出た。

 もっともユーロ圏の物価上昇基調から欧州債利回りも上昇しやすくなっており、金利差の大幅な拡大は見込めないことからユーロ買い・ドル売りも入り、欧州朝方からの値動きは限定的。あすのイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長やフィッシャー副議長の講演を控え、一方向に持ち高を傾けにくい雰囲気となっている。

 ポンドは対ドルで下げ幅を広げた。1ポンド=1.2270〜80ドルと同0.0040ドルのポンド安・ドル高で取引されている。米金利先高観を背景にポンド売り・ドル買いが先行した。英国時間9時30分に発表の2月英建設業購買担当者景気指数(PMI)は52.5と、1月から上昇し市場予想もわずかに上回った。だが、ポンド安による英企業のコスト上昇が警戒され、ポンド売り・ドル買いが出た。

 円相場も対ドルで下げ幅を広げた。1ドル=114円25〜35銭と同45銭の円安・ドル高で推移している。投資家のリスク選好意欲は継続しており、「低リスク通貨」とされる円に売りが広がった。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASH2IILM1_S7A300C1000000/
http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/488.html

[経世済民119] ロボットへの課税 労働者に恩恵? JPモルガンAI数秒で36万時間解析ミス少なく無休 ホンダ新組織Xロボ担当カーナビ表彰
ロボットへの課税 労働者に恩恵?
2017/2/28 2:00日本経済新聞 電子版
The Economist
 産業革命時代の英国で、織機の普及を恐れた手工業職人が機械を打ち壊す「ラッダイト運動」が起こったように、米マイクロソフトがどれほど人々にパソコンを金づちでたたき壊したい気持ちにさせたとしても、同社の創業者ビル・ゲイツ氏は現代版ラッダイト(技術革新反対者)だとは思えない。そのゲイツ氏が最近、米オンラインメディア「クオーツ」のインタビューで、自動化が急速に進めば社会は混乱するのではないかとの懸念を示した。混乱回避のため、各国政府はロボットへの課税を検討すべきであり、それで自動化の進展が遅れれば、それに越したことはないという。これは興味深い考えだ。たとえ実務上不可能だとしても、自動化がもたらす多くの課題を提起するからだ。

■急速に自動化が進めば失業者が増加

 遠い将来、ロボットは自分で考え、貯金もし、会計士に相談もして、我々と同じように所得税を払うようになるかもしれない。しかし、ゲイツ氏が主張しているのはそんなことではなく、導入したロボットに対し、あるいは自動化で人件費が浮いて上積みされる企業利益に対して課税せよということだ。税収は労働者の再教育に使える。授業や高齢者、病人の介護など、自動化が難しい仕事が多い教育や医療の拡充にも充てられる。

ロボット課税は労働生産性の改善を遅らせる可能性も=ロイター

 ロボットの導入は高炉やコンピューターの設置と同様、設備投資になる。経済学者は通常、増産にかかわる設備には課税すべきでないと主張する。課税が投資を妨げる一方、税収は大して増えず、人々の生活は苦しくなると考えられるためだ。ゲイツ氏は、ロボット投資が石炭火力発電所の建設と少し似たところがあると主張しているようだ。生産量は増えるが、経済学者が「負の外部性」と呼ぶ社会的コストも生まれるからだ。自動化があまりに速く進めば、失業した労働者を雇用する新産業の育成が追いつかないだろう。社会的に高くつく長期失業者が増え、政府に自動化推進を妨げるような政策をとるよう圧力がかかりそうだ。ロボット課税はそうしたリスクを減らすので、試す価値は十分あるかもしれない。ちょうど高炉から排出される有害物質に課税すれば環境汚染が抑えられ、社会がよくなるのと同じだ。

 ところが、現実はもっと複雑だ。ロボットを導入しても労働者を使い捨てにはせず、彼らの生産性を高められるはずだ。逆に、ロボットに課税すれば、労働者が不幸になることもあり得る。一部の労働者はロボットに仕事を奪われるかもしれないが、製品やサービスの価格が下がるので、全体としてみれば労働者の生活は向上する可能性がある。医療分野で機械化を遅らせ人間が引き続き仕事をこなすのは、社会の安定を維持するうえで有益に見える。だが、もしそれで医療費が急増し、労働者の所得の増加分が持っていかれてしまうなら、全く引き合わない。

■労働力が安価な国では生産性改善に遅れ

 ゲイツ氏の提案で最も厄介な問題は、少なくとも今のところ、自動化の進捗度合いが速すぎるのではなく、遅すぎることだ。機械化は本来、生産性上昇率の向上、ひいては経済成長率の上昇として数字に表れるはずだ。米国では1990年代後半と2000年代初頭、労働生産性が急激に上昇した後、生産性の改善も経済成長率もずっとさえずにいる。

 自動運転車が街を走り、倉庫が無人管理される時代が間もなくやって来るとゲイツ氏が心配するのはもっともだ。ただ、安価な労働力があふれている国では、省力化投資をする企業はほとんどないかもしれない。大勢の労働者が最低賃金でもいいから雇ってくれと列をつくっているのに、なぜ倉庫を自動化する必要があるのか。ロボットに課税すれば、労働者よりロボット関連の費用がかさむため、生産性の改善が一段と遅れる恐れがある。

 自動化の勢いが実際に速まった場合でも、ロボット課税は適切ではないだろう。資本投下による機械化推進が自動化だとすると、失業者が困窮しないように、投資に伴う収入の一部を彼らに配分する必要がある。一案は、ロボットなどの自動化のための機械を多くの人が持てるようにすることだ。例えば、自動運転車をタクシーとして使い、運賃収入を所得の足しにできればいい。もう一つの方法はロボット課税による税収を再分配することだ。

■企業の市場支配力が強ければ人も機械も憂き目

 だが、生産現場が自動化されるにつれ、自動化で得られる収入にも労働者賃金と同じ圧力が加わるようになる。企業が生み出した付加価値に占める労働者の取り分を示す労働分配率は、何十年も低下し続けている。原因の一つは労働力の余剰だ。ところが、数の多さでは機械も人間も変わらない。工場では複雑な装置も量産できる。同じソフトウエアを2本つくっても100万本生産しても、コストはほぼゼロだ。大型トラックの運転手には1人ずつ指示を出す必要があるが、高度な自動運転システムは際限なく複製できる。労働者同様、機械も多過ぎれば、経済成長の果実の公正な配分にあずかれないことは明らかだ。

 米シカゴ大学の研究者は新たな報告書で、労働分配率はここ数十年、下がったが、ロボットなどの設備投資に向けられる資金の割合はそれ以上に大きく減ったと論じた。拡大したのは、企業が生産コストに上乗せできる利幅、すなわち企業利益だ。1月に発表された全米経済研究所(NBER)の調査報告書も、労働分配率の低下は「超有力企業」の台頭と関係があると分析している。有力企業が勝者として市場をほぼ独占する構図が色濃くなっているという。

 巨額の利益をあげられるのは市場支配力が高い証しだ。市場支配力は、多くの企業などとつながるネットワーク力から生まれるのかもしれないし、優れた生産文化や政府の保護政策、あるいは別のことが影響している可能性もある。自動化の波が到来すれば、超有力企業の利益を分配する必要があるだろう。上場企業なら株式の配分で、非上場なら利益への課税強化を通して実施するのだ。ロボットは悪役に仕立てるにはうってつけだが、ゲイツ氏は課税対象を変えた方がいいかもしれない。企業の市場支配力が圧倒的なら、労働者も機械も同じように憂き目をみるからだ。

(c)2017 The Economist Newspaper Limited Feb. 25th, 2017 All rights reserved.
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO13432590X20C17A2FFB000/


 

JPモルガンのAI、数秒で36万時間の解析−ミス少なく休暇申請せず
Hugh Son
2017年3月2日 07:03 JST

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法律専門家チームがかつて何万時間も費やした金融取引の解析に対応
CDSやカストディー契約のような複雑な法律文書でも利用を計画

米銀JPモルガン・チェースでは、法律の専門家チームがかつて何千時間も費やした金融取引の解析を今や人工知能(AI)技術を応用した「学習する機械」が行っている。
  JPモルガンでは「コントラクト・インテリジェンス(COIN)」と呼ばれるプログラムが昨年6月に稼働を開始。それ以前は商業融資の契約内容を解析する退屈でつまらない仕事に法律専門家や融資担当者が年間36万時間を費やしてきたが、COINのソフトウエアなら数秒で検証を終え、ミスも少なく休暇も申請しない。
  同行はクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)やカストディー(資産管理)契約といった別の種類の複雑な法律文書にCOINの技術を活用することも計画している。将来は規制の解析やコーポレートコミュニケーションの分析に役立てる可能性もあるという。
  新たなプライベート・クラウドネットワークとマシンラーニング(機械学習)への投資で可能になったCOINは、JPモルガンにとってほんの始まりにすぎない。経費とリスクを抑制し、新たな収入源を見つける狙いから同行は膨大に蓄積されるビッグデータやロボット工学、クラウドインフラを専門に扱うチームの技術拠点を最近設立した。
  1月から利用が始まった「Xコネクト」という別のプログラムは、行員の電子メールを解析し、見込み客との関係が最も近く、紹介の便宜を図ってもらえる同僚を見つける支援を行っている。
  JPモルガンのマット・ゼ ームス最高執行責任者(COO)は「われわれの取り組みは現実に成果を挙げつつある。これは絵に描いた餅のような代物ではない」と話している。
原題:JPMorgan Marshals an Army of Developers to Automate Finance (1)(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-01/OM4ESB6K50XU01


 


ホンダ、研究所に新組織「X」 ロボット関連など担当
2017/2/28 17:09日本経済新聞 電子版
 ホンダは28日、研究開発子会社の本田技術研究所が、ロボット関連など新領域の開発を担当する組織「R&DセンターX」を4月1日付で設けると発表した。二輪や四輪開発の組織と同列に位置づけるが、運営の手法を大きく変える。昨年9月には東京・赤坂に外部連携の窓口となる研究拠点を開くなど、体制を刷新して開発を加速する。

 R&DセンターXはロボット関連の技術や水素などのエネルギー創出関連、モビリティーシステムの開発を担当する。製品や技術を軸としたプロジェクトごとに組織を立ち上げ、柔軟に運営する。6カ月程度でプロジェクトの結論を出すことを目指すなど、スピード感を重視する。

 米スタンフォード大学で人工知能(AI)研究の権威のエドワード・ファイゲンバウム名誉教授と経営共創基盤の冨山和彦最高経営責任者(CEO)をアドバイザーとして招き、外部の視点も採り入れる。

 本田技術研究所の松本宜之社長は「研究所創設時の原点に立ち返って、エンジニアやデザイナーが自らの夢を原動力としながら、研究に没頭できるような組織運営を図りたい」と話した。

 さらに昨年9月に東京・赤坂に開いた「ホンダイノベーションラボTokyo」では、R&DセンターXがカバーする新領域に加えて、AIなど自動運転やつながる車(コネクテッドカー)関連の研究を担当する。外部との連携の拠点として活用する予定で、「ベンチャー企業や大学、研究機関に加えて、アイデアを持つ個人も含めて、幅広く門戸を開放して連携したい」(松本氏)としている。

 ホンダは「オープンイノベーション」を掲げ、電動化や自動運転などの先端技術を中心に、協業先を増やしている。1月に米ラスベガスで開催された家電見本市「CES」で連携先を広く募ったところ、800件以上のコンタクトがあったという。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ28HNL_Y7A220C1000000/



世界初のカーナビで「歴史的業績」 ホンダ、米学会から表彰
2017/3/2 16:33

 ホンダは2日、同社が1981年に世界で初めて実用化したカーナビゲーションシステムが、米電気電子学会(IEEE)から技術分野の歴史的な業績をたたえる「IEEEマイルストーン」に認定されたことを受け、記念式典を開いた。世界中に普及したことに加え、自動運転など最先端の技術開発の礎になっている点が評価された。

ホンダが1981年に世界で初めて製品化したカーナビゲーションシステム「ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ」
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ホンダが1981年に世界で初めて製品化したカーナビゲーションシステム「ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ」
 ホンダが81年に発売したセダン「アコード」に搭載したカーナビシステム「ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ」が認定を受けた。IEEEマイルストーンは開発から25年以上たった歴史的業績を認定する。日本企業の技術で認定を受けるのは30件目で、自動車業界では初めてという。八郷隆弘社長は2日の式典で「この技術が基盤となり、今では自動運転の新たな世界を切り開こうとしている」と話した。

 ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータは、現在一般的な全地球測位システム(GPS)ではなく、走行距離や方向を測るセンサーの情報を基に、コンピューターで現在地を割り出して、地図上に表示。当時は地図データを記録する媒体の技術も十分ではなく、走行前にペンで専用の地図シートに経路を記入。このシートにブラウン管の光を透過させて、現在地や走行経路を表示していた。

 カーナビは年々進化している。自動運転の基礎となるだけでなく、カーナビから得られるデータを基に、災害発生時には通行止めになっていない経路を判別できるなど、社会に幅広く貢献している。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ02HJW_S7A300C1TJC000/
http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/649.html

[経世済民119] AI+IoTの組み合わせが ビジネスの効率を飛躍的に高める理由 PDCAを問題解決手法と教える高校教科書の危うさ
IT&ビジネス 業界ウォッチ Special
2017年3月2日 
AI+IoTの組み合わせが
ビジネスの効率を飛躍的に高める理由


エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ 技術開発部の伊藤浩二担当課長
 膨大なデータを分析し、ビジネスの次の一手を示したり、自動的に最適な状態に調整するデータ駆動型の企業経営に注目が集まっている。

 データ駆動型経営を実践する際、とくに進化が著しい「AI」と、低コストなセンサーやネットワーク機器なども登場し、実用期に入った「IoT」の2つの分野を組み合わせることで大きな成果を挙げることができる、と説明するのは、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ技術開発部の伊藤浩二担当課長だ。

 センサーデータやWebログ、画像や音声など、IoT機器が生み出す膨大な量のデータを、そのまま人間が分析するのは事実上不可能。一方でIoTのデータは複雑でフォーマットがそろっていないため、一定のルールを組んで分析することもできない。そこでAIを使い、非構造化データを読み取ることで、役に立つ分析結果を自動的に得ることができるという。

 伊藤氏が一例として挙げるのが、交通事故防止への取り組みだ。自動車に取り付けたドライブレコーダーの映像から事故の兆候を見つけ出すサービスを提供する日本カーソリューションズとエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズが共同実験を開始した。

 日本カーソリューションズでは従来から、映像データを目で見て事故につながる「ヒヤリ・ハット」の瞬間を見つけていた。しかし、人による作業には限界を感じ、AIを用いた自動判定ができないかと考えた。それに対してエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズは、映像分析だけでなく車両に取り付けたセンサーデータを組み合わせて分析することで、非常に高精度に危険なシーンを抽出することに成功。実験では85%の精度で「ヒヤリハット」の瞬間を自動的に抽出できたという。IoTのデータ+AIの分析能力で、ビジネスを大きく飛躍させる可能性が見えてきた。

 下記から無料ダウンロードできる資料では、この例のような「AI」「IoT」のほかに「セキュリティ」についての最新情報も掲載している。ビジネスリーダーや経営者にとって、最新のビジネスIT情報をコンパクトに知るのに非常に読みやすい資料となっている。ぜひ読んでほしい。

資料ダウンロードのご案内
資料イメージ
AI IoT セキュリティ 最新事情

・第1章 AI/IoT
IoTの可能性を広げる、AI活用の最新事例とは
・第2章 IoT
IoT実践における 2つの失敗例とその対処法
・第3章 セキュリティ
セキュリティ人材不足を解決する“目から鱗”の方法


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【第159講】 2017年3月2日 三谷宏治 [K.I.T.虎ノ門大学院主任教授]
PDCAを問題解決手法と教える高校教科書の危うさ


ある高校での社会問題解決会にて。「国際結婚の問題点」

 先日ある高校で、生徒たちによる社会問題解決会を見学しました。

 最初のチームは女の子4人。1年生たちが数ヵ月取り組んだ成果を、パワーポイントでプレゼンテーションしてくれました。

「テーマは国際結婚としました」(ふむふむ)
「データを調べたら30組に1組ということでした」(へぇ、そんなに)
「国際結婚にはどんな問題があるのか、4人でブレインストーミングして考えてみました」(あら、そんな手法を)
「それを全校生徒にアンケートして検証した結果がこれです」(え!?)
「その結果、われわれ高校生では意識の壁は低いとわかりました」(……)
「これで発表を終わります」(( ゚Д゚ノノ”☆ パチパチパチパチ)

 私の隣では友人のカナダ人(奥さんは日本人)が、そのテーマだったらまずボクに聴いてよ、という顔をしていました。

高校では今、授業で「問題解決手法」が教えられている

 日本では2003年、情報教育の強化を目指し、高校で新教科「情報」が導入されました。同時に中学では(なんと)「技術・家庭」の中身が「技術とものづくり」「情報とコンピュータ」に再編され、後者でPC操作などを学ぶことになりました。

 高校の共通科目「情報」も2013年から「社会と情報」「情報と科学」(いずれかを選択必修)に再編され(*1)、前者の一角に「問題解決」が入り込みました(*2)。

 そう、イマドキの高校生は、問題解決手法を「情報」科目の中で学ぶのです。

*1 それ以前は「情報A」「同B」「同C」となっていた。
*2 「(4)望ましい情報社会の構築」の「ウ情報社会における問題の解決」

 しかしそこで示されている内容は、例えばこんな感じです。

1. 問題とは目標と現状とのギャップである
2. そのギャップを埋めるための解決策をつくり、実行することが問題解決である
3. その手法はPDCAサイクルや「問題解決の手順(下図)」などである
4. アイデア出しや問題解決案にはブレーンストーミングやKJ法(*3)が有用


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 これで、いいのでしょうか。これが未来を生きる日本の若者たちが身につけるべき「問題解決手法」なのでしょうか?

問題が曖昧な時代の問題解決手法とは

 教科書にはわざわざ注釈として「PDCAサイクルはデミング博士が提唱した品質管理法をもとにしている」とも書いてあったりします。

 そう、紹介されている「手法」は、われわれが永年のモノづくりで培ってきた「改善」手法であり、極論すれば、静的な時代の遺物なのです。この極めて動的でイノベイティブな時代には、ほとんど無力です。

 目標が見えず、問題そのものが曖昧な時代なのに、これら教科書の問題解決手法は「問題明確化」や「Plan(計画)」から始まります。工場ラインにおける品質管理ならそれでもいいでしょう。しかし、仮にも「社会と情報」です。社会や企業において、より大変(で大切)なのは問題解決ではなく問題発見です。

 情報収集も分析も、まずは現状把握と目標設定のためにしなくてはいけません。そしてようやく問題領域が定まり、そこでの問題探索が始まります。それは徹底的な現場観察と試作品をつくってみてのことかもしれません。

*3 文化人類学者の川喜田二郎博士が『発想法〜創造性開発のために』(中公新書、1967)などで提唱し、広まった。

 それは「デザイン思考」とも呼ばれるでしょう。ひたすら、観察・発見・問題定義・試作・テスト、を繰り返す手法です。「ブレーンストーミングするヒマがあったら、ユーザーに聴け、いや、観察しろ」「解決策を考えたら、とにかく試作品をつくって実際に使ってもらえ」「そういった高速での試行錯誤を繰り返せ!」

 未来に向けて今、学ぶべきなのは、そんな手法なのです。

なぜ「情報」で(のみ)問題解決手法を教えるのか

 こういった教科書を頼りに、「情報」担当教員は問題解決方法を生徒たちに伝えます。もともと「情報」は、「ITやデータ活用」科目のハズだったので、そんな訓練を教員は受けていませんが、やるしかありません。必死です。

 ポストイットと白板、ブレーンストーミングとKJ法(もどき)を使って、なんとか生徒たちを問題分析と解決策づくりに導きます。

 われわれが必要なのは、社会的テーマ(企業戦略なども含む)を解決できる人材です。若者の問題発見・解決力を高めるためには、「情報」頼りにしないで、他の科目でもやれば良いのです。何より社会系科目で、そして理科系科目でも。

 少し工夫すれば、

・地理・歴史・公民では「社会的テーマの在処」や「解決策の幅」を
・理科(物理・化学・生物・地学)では「社会の科学的テーマの在処」や「論理的解析」「探究手法」を
・数学では「現状や目標、ギャップ分析の手法」や「統計手法」

 などを学べるでしょう。

 でも文科省が2010年1月に出した「高等学校学習指導要領解説」を見ると、それはそんな連携(重複)を見事に避けています。「問題解決」「問題発見」という単語が出てくる回数は科目別に、

・「情報」:問題解決94回、問題発見1回
・「公民」:同1回、同0回
・「地理歴史」:同0回、同0回
・「理科」:同0回、同0回
・「数学」:同2回、同0回

 といった具合です。理系科目の中でこそ、問題発見・解決のプロセスが学べるのに。文系(社会系)科目の中でこそ、社会的テーマが何なのか、その原因や解決策のアイデアが学べるのに。

「問題解決」でなく「問題発見・解決」の高速試行錯誤手法を。そしてそれを「情報」科目に閉じ込めることなく、全科目での総力戦に!

 ああ、これはでも、社会人教育から高校教育への明らかな「領空侵犯」です(前講参照)。でも、あえて提起しました。この教科書ではダメだと、この取り組み方では必要な力がつかないと。

 残念ながら2022年度施行の新指導要領でもそうはなっていないようですが、教育関係者のみなさんご一考を。特にSuper Global High Schoolではぜひ。お手伝いしますので!

 参考情報・サイト
・「高等学校学習指導要領解説」文部科学省HP
・「「社会と情報」における「問題解決」の授業実践」岡本弘之(学校とICT)

(K.I.T.虎ノ門大学院主任教授 三谷宏治)

お知らせ
 3/5(日)は愛知県弥富市で子ども向けの授業です。「科学教室ルークの冒険 イロとカタチののフシギ」を朝から3連発です。1・2年生向け、3・4年生向け、5・6年生向けと少しずつ内容を変えて行います。

 各々定員は30名ですが、親子での参加も可能です。対象は弥富市民または勤務者・通学者ですが、ご興味ある方は是非。詳しくはこちらを。

 記事へのご質問・ご意見、また「うちでも講演やって!」のご依頼などはHPまでお寄せください。Official Websiteの「お問い合わせ」で受け付けています。
http://diamond.jp/articles/-/119569
http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/652.html

[不安と不健康18] アレルギーはなぜ起こる?毎日同じものを食べるのは危険  不安・うつはがんの初期症状?結腸・直腸、膵臓などで関連 
耳より健康トレンド
【第61回】 2017年2月25日 工藤 渉
アレルギーはなぜ起こる?毎日同じものを食べるのは危険


「果物」「野菜」「芋類」でもアレルギーを発症するケースがあります
アレルギーの日は知っている?
急増中の「食物アレルギー」

 さる2月20日は「アレルギーの日」だった。日本人の研究者・石坂公成がアレルギーに関わる抗体「IgE抗体」を発見し、1966年米国の学会で発表した日である。アレルギーの日の前後1週間を「アレルギー週間」として、全国の日本アレルギー協会支部では患者や医療従事者向けに様々な啓発活動を行っているという。

 アレルギーといえば花粉症を思い浮かべる人が多いだろう。人をとりまく空気にアレルギーの源が含まれ身体が攻撃されるというのは、考えてみれば恐ろしいことだ。同様に怖いのは、常日頃に口にする食品がアレルギーの源になってしまうことだ。

 厚生労働省によれば日本国民の3人に1人が何らかのアレルギーを持っているが、「食物アレルギー」が急増したのはここ15年ほどのことだという。1才未満の乳児で最も多く発症しているが、その年代に限ったことではなく小児から成人まで幅広く患者が見られる。これまではほとんど存在しなかった「果物」「野菜」「芋類」などによるアレルギーの例も報告もされているという。

免疫が誤作動し
食物を異物とみなす

 食物アレルギーとは、言葉のとおり本来無害なはずの食べ物に対して、免疫機能が過敏に反応してしまう状態を指す。免疫は有害な細菌やウイルスなどの病原体から身体を守るためのものである。正常な状態だと、食物を異物として認識しない仕組みが働き、免疫反応を起こさずに栄養として吸収する事ができる。しかし、免疫反応を調整する仕組みに問題があったり、消化・吸収機能が未熟だと、食物を異物として認識してしまうことがあるという。

 アレルギー反応はこのように異物として認識された食物の成分(食物アレルゲン)を排除するために起きるものだ。腸から吸収されたアレルゲンは血管を通して全身に運ばれるため、眼・鼻・のど・肺・皮膚・腸などでさまざまな症状が現われることになる。もちろん食物を摂った時だけでなく、触ったり、吸い込んだり何らかのかたちでアレルゲンが体内に入った場合には同様にアレルギー反応が起きる。反応は、くしゃみ、鼻水、じんましんといった直接生死には関わらないが生活の質を著しく下げるものから、呼吸困難、血圧低下といった命を落としかねないものまでさまざまだ。

変化に富んだメニューが
食物アレルギーを予防する?

 以上はアレルギーのメカニズムに関する説明である。なぜメカニズムが起動するのか、「本来無害なはずの食べ物に対して、免疫機能が過敏に反応してしまうのか」については分かっていない部分が多い。対処法は多く、自然に治ってしまうことすらあるが、決定的な治療法はないのだ。

 子どものアレルギーの説明には向かないが、大人がアレルギーを発症する理由として考えられるのが「一線を超えてしまった」説だ。例えば40歳にして花粉症を発症した人は、それまで40年間にわたって花粉を浴びてきたことで、ついにその人の許容量を越えてしまったということになる。科学的根拠は乏しいが納得できるセンではある。

 この理屈で考えると、食物アレルギーの場合には「毎日続けて食べているもの」が原因物質になりやすいので、せいぜい一日おきにすべきという説がある。つまりさまざまな食材、さまざまな料理を食べるほどアレルギーに関しての「一線を超える」リスクが低くなるのだ。

 一週間、3食をなるべく違った食材で組み立てるのは難度が高いが、栄養バランスの観点と、食生活を充実させるためにも意義のあることではあるだろう。米のような、それこそ毎日食するものの場合、銘柄を変えるといった対処法もある。ただしほとんどの病気と同様にストレスもよくないので、まだ発症していないのに神経質になるのも考えもので、悩ましいところである。

ちょっと敷居が高いが
有望な「経口免疫療法」

 アレルギーに決定的な治療法はないと述べたが、期待できそうな治療法は既にある。経口免疫療法と呼ばれるものだ。簡単に言ってしまうと、原因の食物をあえて少しずつ摂っていくことにより、結果的にその食物を食べても大丈夫になるというもので、花粉症などでも同様の理屈による治療が行われている。

「あえて少しずつ食べれば治るんじゃないの?」という発想自体は怪しげな民間療法でも行われていることだが、経口免疫療法の場合「ほんの微量から始め」あくまで「医師の管理下で」続けるという点が異なる。実際に成果が出ているため注目されている療法だが、長期の通院が必要なうえ、必ず良くなるとは限らない。二の足を踏む人も多いというが、症状が辛いなら試す価値はあるだろう。

(ライター 工藤 渉)

参考URL:

ニッポンハム食の未来財団 食物アレルギーとは
https://www.miraizaidan.or.jp/allergy/about.html

厚生労働省 食物アレルギー
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jouhou01-08.pdf

厚生労働省 アレルギーの現状
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10905100-Kenkoukyoku-Ganshippeitaisakuka/0000111693.pdf

日本アレルギー協会 アレルギーの日
http://www.jaanet.org/aboutus/syuukan.htm

独立行政法人国立病院機構 相模原病院 経口免疫療法とは
http://www.hosp.go.jp/~sagami/sinryouka/syounika_keikoumeneki.html
http://diamond.jp/articles/-/119298

 

カラダご医見番
【第331回】 2017年3月2日 井手ゆきえ [医学ライター]
不安・うつはがんの初期症状?結腸・直腸、膵臓などで関連

 うつ病など気分障害と身体の病気は強く関連し、うつ病があると心筋梗塞の発症リスクは4倍以上に上昇する。近年はがんとの関連が指摘されている。

 先日、英国から特定のがんと気分障害の関連を示唆する研究報告があった。

 解析対象は1994〜2008年に英国保険サービスが実施した16の国民健康調査(HSE)に登録した16歳以上の非がん男女、約16万3000人分のデータ。登録時点で精神的健康を評価する「GHQ-12」に回答している。

 GHQ-12は、職場のストレスチェックでもよく使われる調査票で、睡眠障害の有無、決断力、判断力の状態や抑うつ気分の有無などを測る12の質問項目から成る。

 たとえば過去4週間に「問題を解決できなくて困ったことがあったか」という質問に対し、「全くなかった(0点)」「あまりなかった(0点)」「あった(1点)」「しばしばあった(1点)」という4段階で回答するもの。精神的な問題がない0点〜強い抑うつ状態の12点で評価される。

 今回の調査では、平均9年半の追跡期間中に1万6267人が死亡。このうちがん死は、約4人に1人に当たる4353人だった。

 喫煙歴や肥満など他の影響因子を補正し、がんと気分障害との関連を解析した結果、GHQ-12スコア12〜7点の抑うつ気分がより強い人は、6〜0点の人よりも結腸・直腸がん、前立腺がん、膵臓がん、食道がん、白血病で死亡するリスクが高いことが示された。特に、結腸・直腸がん、前立腺がんはGHQ-12スコアが上がるに従って死亡数が増加した。

 研究者は「うつ病など気分障害は、特定のがんが未診断、あるいは初期のうちに先行して発症している可能性がある」としている。

 がんに先行する気分障害は「警告うつ病」ともいわれ、膵臓がんでは早期発見の手がかりになるといわれている。

 思い当たる原因はないにもかかわらず急に抑うつ症状が出た場合は、念のため血液検査や画像診断でがんの可能性を探っておこう。身体からのSOSで早期発見できればラッキーなのだから。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)
http://diamond.jp/articles/-/119354

http://www.asyura2.com/16/health18/msg/424.html

[国際18] アルゼンチンで左派ポピュリズムが定期的に台頭する理由 アルゼンチンがブラジルとは全く印象が異なる理由
橘玲の世界投資見聞録
2017年3月2日 橘玲
アルゼンチンで左派ポピュリズムが定期的に台頭する理由
[橘玲の世界投資見聞録]

 ここ何回か、米大統領選とからめてアメリカの話を書いてきたが、昨年秋に中南米カリブを旅した話が途中で終わっていて、せっかく遠くまで行ったので、2回に分けてアルゼンチンとブラジルの印象を記しておきたい。

 アルゼンチンはスペイン語圏であることから、アルゼンチン人=スペイン系と思われがちだが、現代史を辿ると、ヨーロッパ系アルゼンチン人の多くはイタリアからの移民の子孫だ。アルゼンチンの人口は約4000万人だが、他の民族との混血も含めれば、そのうちイタリア系は約3000万人で74%を占める。19世紀末から20世紀初頭にかけて、ヨーロッパのなかでもとりわけ貧しいイタリア南部から、大量の移民が港湾労働者として活況に沸くブエノスアイレスに押し寄せたことで、アルゼンチンはイタリア本国(人口約6000万人)に次ぐ「(スペイン語を話す)イタリア人の国」になったのだ。

[参考記事]
●同じ南米の大国なのに、アルゼンチンがブラジルとは全く印象が異なる理由


夜のブエノスアイレス。ライトアップされたオベリスコ(古代エジプトの太陽の塔)      (Photo:©Alt Invest Com)

アルゼンチンは「民主主義」のせいで地方にバラマキを約束する左派ポピュリズムが台頭する

 アルゼンチンは、首都への極端な一極集中という特異な構造の国でもある。観光ガイドブックを見ても、ブエノスアイレス以外に紹介されているのはブラジル国境のイグアスの滝と、アウトドア派に人気の南部の景勝地パタゴニアくらいで、「都市」はまったくない。アルゼンチンは、大西洋貿易の拠点として発展した港町ブエノスアイレス(人口約300万人)と、牧畜や農業で生計を立てる広大なパンパ(草原地帯)のふたつの「国」が合併して成立したのだ。

 こうした状況は、東南アジアならタイに似ている。バンコク首都圏の人口1500万人に対し、第二の都市であるイサーン(東北地方)のナコンラチャシマは560万人、日本人にも人気の北部のチェンマイは約390万人と人口に大きな差があるが、都市間の「格差」はそれ以上で、アジア有数の近代都市となったバンコクに比べ、それ以外は地方都市というより田舎町にちかい。

 その結果、タイの政治が民主化すると、バンコクと地方の利害対立が際立ってきた。これを利用したのがチェンマイ出身のタクシンで、ポピュリズム的なばらまき政策で地方の貧しい有権者の支持を獲得しバンコクの既成政党を圧倒した。これが王室を中心とする権力層への重大な挑戦と見なされたことで、たび重なるデモや暴動を経てタイは軍政に戻ることになった。

 アルゼンチンの政治もこれと同じで、ペロンと妻のエビータに象徴される左派ポピュリストが民主選挙で権力を獲得すると、既得権を脅かされたブエノスアイレスの富裕層が軍部と結託してクーデターを起こすという歴史を繰り返してきた。

 今世紀に入ってからもアルゼンチンは、2001年に放漫財政と対外債務の急増で大規模な金融危機を起こし、2014年にもアメリカの投資ファンドに元本返済ができず実質的なデフォルトに陥るなど経済的な混乱を繰り返しているが、その原因は「民主主義」にあり、地方の貧しい大衆の票を集めるために政治家は“ばらまき”を約束せざるを得ないのだ。

 ブエノスアイレスの繁華街であるフロリダ通りには「カンビオ、カンビオ」と連呼する客引きがたくさんいるが、「Cambio」は両替のことだ。クリスティーナ・キルチネル前大統領時代の放漫財政と悪性インフレによって、政権末期(2015年)には対米ドルの公定レートと闇レートの差が50%も開いた。その結果、闇両替が巨大ビジネスになったのだ。

 いまどき先進国はもちろん、新興国でも旅行者相手に闇両替を行なうところはあまりない(アジアではミャンマーくらいだろうか)。アルゼンチンは「中進国」とされているが、ブエノスアイレスの街に闇両替商が溢れていることにこの国が抱える困難が象徴されている。

 それでも希望がないわけではなく、2015年の政権交代はクーデターではなく民主的な選挙で実現し、中道右派のマウリシオ・マクリが選ばれた。マクリは就任早々、パナマ文書に名前が載っていることを暴かれ辞任要求デモの洗礼を受けたが、投資ファンドとの和解によって国際金融市場への復帰を果たし、財政改革を進めたことで公定レートと闇レートの差もほとんどなくなった。

 土産物店で話を訊いたら、以前は米ドルの支払いは闇レートで計算していたが、いまではドルとペソを公定レートで換算しているという。「カンビオ」と連呼するひとたちも、そのうち姿を消すことになるだろう。

 だが、話はこれで終わりではない。経済改革が成功して財政に余裕ができると、地方の貧困層への再分配を約束する左派ポピュリズムの政治家が登場し、ふたたびばらまき政策を始めるだろう。こうして財政赤字と対外債務の膨張、悪性インフレに襲われることになるが、これは「グローバリストの陰謀」ではなく、この国の政治にビルトインされた循環構造なのだ。


5月広場。正面に見えるのが大統領官邸                (Photo:©Alt Invest Com)

ブエノスアイレスの治安は言われているほど悪くはない

 中南米旅行で必ず訊かれるのが「治安は大丈夫ですか」という質問だ。そのなかでもブエノスアイレスは、ペルーやボリビアのひとたちからも「あそこは治安が悪い」といわれるほど評判は芳しくない。

 ただ実際に訪れてみると、夜でも女性が1人で歩いているほどで、危惧していたようなことはまったくなかった。

 ブエノスアイレスの街は、幅110メートルの世界でもっとも広い「7月9日大通り」が南北に走り、ラプラタ川の河口に面した東側のレティーロ地区が繁華街だ。歩行者天国のフロリダ通りには土産物店が並び、その周辺にホテルやカフェが集まっているが、このあたりは昼はもちろん夜歩いてもまったく問題ない。


幅110メートルの「7月9日大通り」                 (Photo:©Alt Invest Com)

 レティーロの北にはブエノスアイレス最大のターミナル駅があり、郊外からの通勤客などでいつも賑わっている。ただし、駅から河口に向かうあたりはビジャ(Villa)と呼ばれる貧困地区があり、近くの広場には酔いつぶれて昏倒している姿が目立つ。とはいえほとんどがふつうのひとたちで、治安が悪いといっても、女性がハンドバッグを前に抱えて歩いているくらいだ(携帯やカメラを見えるようにしていると注意される)。


レティーロ駅の豪華な内装                   (Photo:©Alt Invest Com)

駅に近い公園で寝ている(倒れている?)ひとたち      (Photo:©Alt Invest Com)

 レティーロの南側にはミュージカル『エビータ』で知られる大統領官邸と5月広場、メトロポリタン大聖堂などの観光名所がある。ここは旅行者を狙った引ったくりが多いことで悪名高かったが、私が訪れたときはパナマ文書問題で反マクリの市民団体が広場を占拠していて(幸いなことに)まったく不安はなかった。


5月広場は市民団体に占拠されていた              (Photo:©Alt Invest Com)

 7月9日大通りを渡った西側には世界三大オペラ座のひとつコロン劇場があり、その裏手は洒落たカフェやレストランがある住宅街だ。「世界で二番目に美しい書店」といわれるアテネ書店はグランスプレンディッド劇場を改築した店で、大通りから歩いて10分ほどのレコレータ地区にあるが、日が落ちてからもカップルや若い女性のグループなど地元のひとたちがふつうに歩いていた。


劇場を改築した「世界で二番目に美しい書店」。店頭ではハリーポッター・シリーズの新刊のイベントが行なわれていた                       (Photo:©Alt Invest Com)

 5月広場からさらに南に下ると少しずつ雰囲気が変わり、教会の入口に物乞いが目立つようになる。高速道路を超えると下町ボカで、人気サッカーチーム、ボカ・ジュニアーズの本拠地として知られるが、最近では赤、青、黄、緑などカラフルにペインティングされた家が並ぶ“タンゴ発祥の地”カニミート通りの方が有名になった。ただ、この近くには大きなビジャ(スラム街)があるので、バスかタクシーで行くようにいわれた。

 ブエノスアイレスを訪れたのは今回がはじめてで、経済危機のときとは雰囲気がちがうのかもしれないが、少なくとも繁華街や観光地では治安が悪いという感じはまったくなかった。もっとも貧困問題を扱うNPO団体によれば、ブエノスアイレスの住人の1割はビジャのスラムに暮らしており、生活保護などの社会福祉制度がほとんど整備されていないため、露天商などインフォーマルビジネスか、違法な商売でしか生きていく術のない生活を余儀なくされているという。


歩行者天国フロリダ通りの露天商             (Photo:©Alt Invest Com)
アルゼンチン観光の目玉、イグアスの滝の楽しみ方

 ここでアルゼンチン観光の目玉であるイグアスの滝についても書いておこう。

 北米のナイアガラ、アフリカ南部のビクトリアの滝も訪れたが、「世界三大瀑布」ではイグアスがいちばん印象に残った。

 イグアスの滝はアルゼンチンとブラジルの国境にあるが、滝の8割はアルゼンチン側で、「悪魔の喉笛」と呼ばれる最大の滝つぼをボートで体験する人気のアトラクション「アベントゥラ・ナウティカ」もある。滝の観光拠点はプエルト・イグアスの町で、ブエノスアイレスからは飛行機で2時間ほどだ。町から滝のある国立公園までは20キロほど離れており、バスで往復する。


「悪魔の喉笛」に向かうボート                (Photo:©Alt Invest Com)

 2016年5月からブラジルのビザ申請料金が10400円(日本国内の領事館で申請した場合)に値上げされたため、アルゼンチン側から国境を越えてブラジル側の滝を見にいくのは躊躇されるが、旅行記などを見るかぎり、バスで国境を越えてブラジル側のフォス・ド・イグアスに行くだけならパスポートチェックは行なわれていないようだ(乗客が申し出ないかぎり路線バスは入国管理所に止まらないというが、確かめたわけではない)。

 国立公園のなかに1軒だけ、ホテル(シェラトン・イグアス・リゾート&スパ)がある。料金は私が訪れたときで1泊3万5000円と、プエルト・イグアスの宿泊施設に比べれば割高だが、せっかくなら滝まで歩いていけるこちらに泊まることをお勧めしたい。観光客の来ない早朝なら、イグアスの滝の雄大な景観を独り占めするぜいたくを味わえるからだ。

 イグアスといえば滝つぼへのボートツアーが定番だが、じつはいちばんの魅力は整備された滝めぐりの遊歩道にある。遊歩道は上下2本があり、悪魔の喉笛を正面から眺める下の遊歩道が自撮りスポットとして人気だが、流れ落ちる滝を間近で眺める上の遊歩道の方がずっと面白い。

 周囲に誰ひとりいないなか、身を乗り出せばそのまま滝つぼに落ちていく大瀑布の上に立つという経験はめったにできないから、いい思い出になった。


下の遊歩道の自撮りスポット           (Photo:©Alt Invest Com)

整備された上の遊歩道。早朝は誰もいない       (Photo:©Alt Invest Com)

足下で大迫力の滝が流れ落ちていく            (Photo:©Alt Invest Com)
 プエルト・イグアスの町まで出ればブラジル側に行くバスがあるが、ホテルで車を手配してもらっても、国境を越えてフォス・ド・イグアス空港まで40米ドル(約4400円)だった。ブラジルのビザは事前に五反田駅前の総領事館で取得していたので入国審査もかんたんに済んだ。ブエノスアイレスやプエルト・イグアスでもビザが取れるようだが、日本の領事館と同じ手続きなら、ブラジルから出国する航空券と銀行預金の残高証明が必要になる。

 若い女性がランチに1人で巨大なサーロインステーキを食べているくらい、アルゼンチン人は牛肉の消費量が多い。旅行者がアルゼンチンで必ず訊かれるのは、「ステーキ食べたか?」だ。牛舎で飼育される脂身の多い和牛に比べ、こちらは放牧された赤身の肉で、さっぱりした味で思ったよりたくさん食べられる。


ヒレステーキ。脂身がなくさっぱりした味       (Photo:©Alt Invest Com)

 土産物も当然、革製品。レティーロの繁華街には革のジャンパーなどを扱う店がずらりと並んでいて、その場で採寸して1日で仕立ててくれる。革製品はほとんど持っていないのだが、あまりに安いので思わず1着買ってしまった。

橘 玲(たちばな あきら)

作家。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ヒット。著書に『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』『橘玲の中国私論』(ダイヤモンド社)『「言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)など。最新刊は、小説『ダブルマリッジ』(文藝春秋刊)。

●橘玲『世の中の仕組みと人生のデザイン』を毎週木曜日に配信中!(20日間無料体験中)

http://diamond.jp/articles/-/119846 


 

2016年12月22日 橘玲
同じ南米の大国なのに、
アルゼンチンがブラジルとは全く印象が異なる理由
[橘玲の世界投資見聞録]

 アルゼンチンはブラジルと並ぶ南米の大国だが、ふたつの国の印象はまったく異なる。サッカーでいえば、歴代のアルゼンチン代表はリオネル・メッシやディエゴ・マラドーナのように、ヨーロッパ系白人か、白人とインディオの混血であるメスティーソがほとんどだ。それに対してブラジルは、ペレからロナウジーニョ、ネイマールまで、アフリカ人の血を受け継ぐ選手が真っ先に頭に浮かぶ。隣国にもかかわらず、ここまではっきりと人種的なちがいがあるのはなぜだろう。

 最初に思いつくのは、ブラジルが旧ポルトガル領で、アルゼンチンが旧スペイン領だということだ。

 コロンブスがインディアス(アメリカ大陸)を“発見”すると、大航海時代の両雄であったスペインとポルトガルの間で支配領域争いが起こった。これを調停したのが1494年のトルデシリャス条約で、西経46度37分を分界線とし、そこから東で新たに発見された地はポルトガルに、西の地はスペインに権利が与えられることとされた。

 この条約はもともとは大西洋の島々を分割するためのもので、当時、南米大陸のことはまったく知られていなかった。だがこの分界線を延長すると巨大な大陸にぶつかったことで、その東側(ブラジル)がポルトガル領となり、それ以外がスペイン領とされたのだ。

 だがこれだけでは、なぜふたつの国で人種構成が大きく異なるのかはわからない。じつはこのことは、単純な地理から説明できる。


ブエノスアイレスのシンボル、オベリスコ        (Photo:©Alt Invest Com)

アルゼンチンに黒人が少ない理由

 アフリカ大陸と南米大陸は、ハート型をふたつに切って、膨らんだ部分を向かい合わせにしたような配置になっている。アフリカ大陸で中南米カリブにもっとも近いのはセネガルからナイジェリアにかけての西アフリカで、大陸奥地から狩り集められた黒人たちは、奴隷海岸の港から次々と“出荷”された。

 奴隷の輸出先は17世紀にサトウキビの一大産地になったカリブの島々だが、次いで南米にヨーロッパ人が進出すると、赤道に近い(現在の)ブラジル北部もサトウキビの栽培に適していることがわかった。そこで宗主国のポルトガルは、サトウキビの一大プランテーションを開発すべく大量の奴隷をアフリカから送り込んだ。

 その後、砂糖が安価かつ大量に製造できるようになり価格が暴落、サトウキビ農園の経営も悪化したが、こんどはヨーロッパでコーヒーが大流行した。南米大陸のなかでコーヒー栽培に適しているのは、大陸中央部のアンデス山脈の東側、現在のサン・パウロ近郊の丘陵地帯だった。こうして北部のサトウキビ農園にいた黒人奴隷が大挙して南に下り、ブラジル全土にアフリカ系人種が広がることになった。

 それに対して現在のアルゼンチンはハート型の先端に位置し、広大なラプラタ川河口は良港ではあるものの、17〜18世紀の航海術では世界のどこからも遠すぎた。地中海に近い寒冷な気候ではサトウキビもコーヒー栽培にも適さず、この地を訪れたスペイン人たちはポトシ銀山で一攫千金の夢に沸くアンデス山脈を目指して移動していった。


ラプラタ川の広大な河口をウルグアイ側から眺める    (Photo:©Alt Invest Com)
 しかしその間、アンデス山脈東部のパンパスと呼ばれる広大な草原地帯では奇妙なことが起こっていた。スペイン人が旧大陸から連れてきた牛が、天敵のいないこの地で大繁殖したのだ。この大規模な「家畜の野生化」によって、ラプラタ地域の牛の数は19世紀に1500万〜2000万頭まで増えたとされる。

 もともとは家畜だった野生の牛がここまで増えると、こんどはその牛を目当てに生計を立てようとする男たちが現われた。これが「ガウチョ」で、その語源が「孤児」や「放浪者」であることからわかるように、彼らは夢を追って南米に渡ったものの、社会の主流から落ちこぼれ食い詰めたスペイン系白人だった。

 西部劇に出てくるアメリカ(北米)のカウボーイは、広大な土地で牛を飼育する牧場主に雇われていた。それに対してガウチョは、野生の牛の集団に寄生する自由業だった。

 当時、ヨーロッパから南米に渡るのはほとんどが男で、南米大陸には白人女性がきわめて少なかった。もちろんパンパスで牛とともに放浪するガウチョと生活を共にしようとする白人女性などいるはずもなく、ガウチョはインディオの女性を妻とし、子どもをつくるようになった。

 このようにしてアルゼンチンの草原地帯に生まれたガウチョの文化は、のちに「南米のパリ」と呼ばれるようになるブエノスアイレスに暮らす、洗練されたヨーロッパ系白人の文化とはまったく異なるものだった。

 パンパスのガウチョは、「ポンチョをまとい、ギターを奏で、ナイフを操り、乗馬の達人で、3個の石を皮ひもで繋いだボレアドーラスという石投げ縄を巧みに使い、独自に発達した社交儀礼で仁義を切ればタダ飯が食えるなど、ひとつの等質的な生活文化をもつ集団」をなすにいたった。その後のアルゼンチンの歴史は都市(ブエノスアイレス)と地方(パンパス)の対立に振り回されることになるが、それは建国当初から運命づけられていたのだ。

アルゼンチンは「もうひとつのイタリア」だった

 アルゼンチンは混乱のなかで1829年にスペインから独立したが、その頃にはブエノスアイレスは南米の主要な貿易港として発展していた。その歴史は複雑なのだが、要は現代のグローバル化論争と同じ理由で社会が不安定化していった。

 独立によって宗主国のくびきから離れ、どの国とも自由に交易できるようになったことは、ブエノスアイレスの富裕な商人たちに大きな利益をもたらし、「南米のパリ」と呼ばれる活況をもたらした。それに対してパンパスのひとびとは、国際競争にさらされて地場産業が壊滅的な打撃を受けることになる。彼らは当時、ポンチョを1着7ペソで売っていたのだが、イギリスの業者は機械織りの布地で類似品を大量生産し、1着3ペソで売りまくった。こうしてパンパスのひとたちは、「グローバル資本主義」による自由貿易が自分たちの生活を破壊しているのだと考えるようになる。彼ら「無学な大衆」を動員するのがアルゼンチンのポピュリズムなのだが、それについてはあとで触れるとして、アルゼンチンのヨーロッパ系白人についてもうすこし述べておこう。


「南米のパリ」を象徴するブエノスアイレスのコロン劇場。パリのオペラ座、ミラノのスカラ座と並ぶ世界三大劇場のひとつ           (Photo:©Alt Invest Com)

コロン劇場の豪華な客席                (Photo:©Alt Invest Com)

 最初に述べたように、アルゼンチンの有名サッカー選手は白人かメスティーソだ。このとき私たちは、ごく自然に白人=スペイン系と考える。たしかに南米を植民地化したのはスペインだが、実はアルゼンチンではスペイン系白人はもはや多数派ではなくなっている。

 サッカー日本代表の長友佑都が所属するインテルは、インテルナツィオナーレ(英語でInternational)のチーム名に象徴されるように、国境の壁をなくし外国人選手にも広く門戸を開くことをチームのポリシーとしている。長友が加入した当時、そのインテルにはサネッティやカンビアッソなどアルゼンチンを代表する選手が所属していた。

 私はずっと、なぜイタリアのチームにアルゼンチン代表がこんなにたくさんいるのか不思議だったのだが、じつは彼らはイタリア系アルゼンチン人だった。もともとスペイン語とイタリア語は方言のような関係で、お互いに母語でしゃべってもなんとなく会話が成立するようだが、イタリア人の家庭に生まれればイタリア語をふつうに話せるか、すくなくもと理解できるようになるだろう。これはチーム内のコミュニケーションが重要なサッカーにとって大きなアドバンテージで、だからこそイタリア系アルゼンチン人のサッカー選手がセリエA(イタリアサッカー1部リーグ)で大きな成功を収めたのだ。

 もうひとつ不思議だったのは、イタリア現代史の最大のスキャンダルである「P2事件」で、フリーメーソンの秘密組織P2を創設したマフィアの大物が、南米諸国とりわけアルゼンチンとのあいだに強固な闇のメットワークを築き上げたことだ。

[参考記事]
●バチカン市国「神の資金」を扱う闇の男たち -前編-
●バチカン市国「神の資金」を扱う闇の男たち -後編-

 なぜイタリアの闇組織がアルゼンチンの独裁政権とつながるのかそのときはわからなかったが、じつはこれも簡単に説明できる。アルゼンチンの人口は約4000万人だが、他の民族との混血も含めれば、そのうちイタリア系は約3000万人で74%を占めるとされている。イタリアの人口が約6000万人だから、じつはアルゼンチンは本国に次ぐ「もうひとつのイタリア」なのだ。ブエノスアイレスのひとたちの憩いの場がスペイン風のバルではなくイタリア風のカフェであるように、政治や経済など表の世界だけでなく、マフィアの裏の世界でもイタリアとアルゼンチンは深くつながっているのだ。

 ブエノスアイレスは商業都市として発展したが、社会の上層を占めるスペイン系白人はそれほど多くなく、彼らはブラジルのポルトガル系白人と同じように、黒人を家産奴隷として優雅に暮らしていた。

 だが1862年に、さまざまな確執の末にブエノスアイレス州がアルゼンチン連邦に加わる頃には、南米有数の港を持つブエノスアイレスは自由貿易によって大繁栄期を迎えていた。最初は1860年代の牧羊ブームで、羊毛の輸出はたちまち伝統的な牛革や塩漬け牛肉を追い抜いた。次いで小麦やトウモロコシの栽培が始まり、イギリス資本で開発された鉄道が内陸に延びるにしたがって耕作面積も飛躍的に拡大した。そして20世紀になると冷凍技術による肉の保存と船舶輸送が普及し、ブエノスアイレスには冷凍加工プラントが建ち並んだ。

 こうした活況を見て南欧諸国、とりわけ貧しいイタリア南部からアルゼンチンに向けて大規模な移住がはじまり、1871年から1914年の間に定着移民数は310万人を数え、1914年の人口調査では総人口780万人のうち3分の1が外国生まれとなった。

 こうした移民は最初のうちは農業従事者が多かったが、大土地所有制のもとでは土地が手に入りにくいため、大半は都市に仕事を求めるようになる。ブエノスアイレスの港で荷揚げなどの肉体労働に従事していた貧しい移民たちのなかから生まれたのが、哀愁に満ちたタンゴだ。もともとアルゼンチンの人種構成は、半分以上がアフリカ系やインディオの血を引いた浅黒い肌のひとだったというが、この時期に都市部は白人だけになってしまったのだ。


ブエノスアイレスの貧しい港湾労働者が生んだタンゴ。いまではすっかり観光客向けのイベントになった                (Photo:©Alt Invest Com)

南米を代表するポピュリスト「エビータ」が生まれた背景

 経済が発展して中間層が増えると、それにともなって「格差」が大きな社会問題になるのはいつの時代でも同じだ。アルゼンチンでは19世紀後半から都市の貧しい労働者を率いた急進左派政党が台頭し、ゼネストなど激しい労働運動を繰り広げた。従来の政治勢力では左派(マルキスト)の勢いをとめることはできず、1930年9月に軍部が決起して保守党政権を樹立した。アルゼンチンは南米でもっとも開明的で民主的な政治を行なっていたのだが、これ以降、民主選挙では左派に勝てないことが明らかになって、保守派は軍部を背景として不正選挙をつづけることになる。

 第二次世界大戦が起こると、アルゼンチンでは連合国(アメリカ)につくか、枢軸国(ドイツ)につくかで国論が二分する。自由貿易から利益を得ていたアルゼンチンはアメリカの保護主義を嫌って当初は枢軸国寄りの中立を維持したが、アメリカから借款や武器貸与を止められたことで政局は混乱し、ふたたび軍部がクーデターを起こすことになる。こうして軍事政権が誕生するのだが、そのなかにフアン・ドミンゴ・ペロンという大佐がいた。ペロンの妻はマリア・エバ・ドゥアルテで、愛称は「エビータ」。その後二人は、南米を代表する“ポピュリスト”として知られるようになる。

 もともとは軍事史の研究家であったペロンがなぜ軍部のなかで急速にちからをつけ、アルゼンチン民衆の個人崇拝の対象になったのかは諸説あるが、地方のガウチョや都市の貧困層に社会福祉を提供しようとしたペロンの「カリスマ型温情主義」が、ゆたかさから拒絶されていたひとびとを引きつけた、ということのようだ。

 ペロンの地位を不動のものにしたのは1945年10月9日、軍内反ペロン派のクーデターで拘束されたことで、当時、ペロンと婚約していた26歳のエビータがラジオで国民に釈放を訴え、10月17日に2万を超える労働者が大統領官邸前の五月広場を取り囲み、それに恐れをなした軍部や保守派はペロンに権力を委ねるほかなかった。この場面はミュージカル『エビータ』やマドンナ主演の同名の映画でも有名で、大衆の動員が政治を動かすポピュリズムの典型として現在でもしばしば言及される。


映画『エビータ』でも知られる五月広場。正面に見えるのが大統領官邸。1945年10月17日、ここに2万人の労働者が押し寄せ、ペロンとエビータの名を叫んだ       (Photo:©Alt Invest Com)
 ペロンは政府介入による賃金引上げ、年金制度拡充、労働組合結成などの政策で大衆の支持に報い、「デスカミサードス(シャツなしの素肌に上着を着る貧乏人)」を自称する労働者たちはことあるごとに政府支持のデモに繰り出した。彼らのあいだで絶大な人気を誇ったのが妻のエビータで、子宮がんで33歳の若さで世を去らなければ、副大統領となって国政に大きな影響を行使したことは確実だった。


エビータの墓にはいまも花が絶えない (Photo:©Alt Invest Com)

 ペロンが失脚したあともアルゼンチンの政治は混迷をつづけ、1976年にはホルヘ・ラファエル・ビデラ将軍がクーデターで権力を掌握して独裁政治を行なった。ビデラ政権時代は労働組合員や政治活動家、学生、ジャーナリストなどが大量に逮捕・監禁・拷問され、3万人が行方不明になったとされる。「汚い戦争」と呼ばれるこの“市民に対するテロ”は、いまもアルゼンチン社会に深い傷痕を残している。

 民政移管後は、ブエノスアイレスの富裕層や企業が求める新自由主義的な政策と、それに反発する貧困層を動員したポピュリズム的な保護主義のあいだで政権は大きく揺れ、2001年と2014年の二度にわたって債務不履行を起こすなど財政問題が深刻化した。現在は、クリスティーナ・キルチネル前大統領の保護主義政策を批判して大統領選を勝ち抜いた中道右派のマウリシオ・マクリが、国際社会の信頼を回復すべく市場主義的な政策に大きく舵を切ったところだ。

 とはいえ、都市(ブエノスアイレス)と地方(パンパス)の著しい格差というアルゼンチンの構造問題は変わっておらず、今後も外部からショックが加わるたびに社会は大きく揺さぶられることになるだろう。


マクリ大統領の名がパナマ文書に載っていたことから、五月広場は「グローバリズム」を批判する市民に占拠されていた         (Photo:©Alt Invest Com)
本稿の執筆にあたって高橋均/網野徹哉『ラテンアメリカ文明の興亡』(中央公論社)を参考にしました。

橘 玲(たちばな あきら)

作家。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ヒット。著書に『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』(ダイヤモンド社)など。中国人の考え方、反日、歴史問題、不動産バブルなど「中国という大問題」に切り込んだ『橘玲の中国私論』が絶賛発売中。近刊『「言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)が30万部のベストセラーに。

●橘玲『世の中の仕組みと人生のデザイン』を毎週木曜日に配信中!(20日間無料体験中)
http://diamond.jp/articles/-/111434
http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/491.html

[政治・選挙・NHK221] 安倍内閣の「原発無策」を責められない民進党 磯山友幸の「政策ウラ読み」 日本としての明確な原発政策を考える時だ 
安倍内閣の「原発無策」を責められない民進党

磯山友幸の「政策ウラ読み」

日本としての明確な原発政策を考える時だ
2017年3月3日(金)
磯山 友幸

民進党の蓮舫代表は、連合の批判に対応して3月12日の党大会で「2030年原発ゼロ」を打ち出すことを断念した。(写真:Natsuki Sakai/アフロ)
「2030年原発ゼロ」表明を断念した民進党

 民進党の蓮舫代表が3月12日の党大会で目指していた「2030年原発ゼロ」の方針の表明を断念した。党内からの反対や、支持母体である連合からの批判に抗し切れなくなったことが大きい。メディアからは「脱原発を求める世論よりも支持母体の連合を優先したことに対し、さっそく党内の脱原発派や共闘を組む野党から批判の声が上がった」(朝日新聞 3月1日付記事)と厳しい指摘がなされている。

 民進党は前身の民主党政権末期に「2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」という方針を打ち出し、民進党もこの方針を引き継いでいる。もっとも、どうやって2030年代に原発ゼロを目指すのか、その具体的な方策は示していなかった。

 蓮舫氏は昨年、代表選に立候補した際の公約で、「原子力エネルギー政策で工程表を明らかにする」ことを表明していた。

 そんな蓮舫氏らの意向を受けた玄葉光一郎エネルギー環境調査会長が2月上旬、突然、原発ゼロの年限を「2030年代」ではなく、「2030年」に前倒しする方針を示した。反原発の姿勢を明確にして、脱原発の時期を前倒しすることで、次の総選挙の「争点」にしようとしたとみられている。

実現は困難との声が強く、「前倒し」を断念

 「働き方改革」などでお株を奪われた民進党は、解散総選挙になった場合の自民党との「対抗軸」を打ち立てられていない。昨年の参議院議員選挙では、「憲法改正阻止」を対抗軸とし、「(改憲勢力に)3分の2は取らせない」という“土俵際”のラインを自ら設定したが、国民の多くには響かず、結局、3分の2の議席を許すことになった。では、次の総選挙では何を旗印に戦うのか。早急に民進党らしい政策の柱を掲げたいという焦りが執行部にはある。

 ところが、蓮舫氏の姿勢に、党内の議員から反対の声が挙がった。電力総連出身の小林正夫参院議員ら電力系労働組合に近い議員を中心に、前倒しに反対する声が相次いだのだ。連合の神津里季生会長も「2030年代原発ゼロですら、相当にハードルが高い」として難色を示した。さらに神津氏は、2030年と数字だけ前倒ししても、その実現可能性が低いと国民に映れば、民進党にとっては大きなマイナスになると指摘した。野党感覚丸出しの言いっ放しでは、政権を託するに足る責任政党とは見られなくなってしまう、というわけだ。

 蓮舫氏は、連合傘下の電力総連や電機連合などを直接訪ねて、「30年ゼロ」について説明したが、結局理解は得られなかった。党内の異論を収拾することができず、党大会での表明は断念せざるを得なくなったわけだ。

「反原発」で民進党内が一本化されているわけではない

 民進党は「反原発」で党内が一本化されているわけではない。前述の通り、「2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」という民主党時代の方針を引き継いでいるが、当時の民主党もこの方針決定に当たっては根強い反対があった。

 当時の野田佳彦内閣が上記の方針を打ち出した背景には、野田内閣が進めた原発再稼働への反発が予想以上に大きく、毎週金曜日に首相官邸前で行われる抗議活動が盛り上がったことが背景にある。「原発稼働ゼロ」を打ち出さざるを得なかったとはいえ、当時から党内の反発は強く、政権の座にあったにもかかわらず、結局、閣議決定できずじまいに終わっている。民進党になって方針を引き継いではいるものの、本気でそれを実行に移そうという考えで党内が一致しているわけではないのだ。

 蓮舫執行部が考えている選挙の争点としては、「脱原発」は安倍晋三内閣との政策的対抗軸になる可能性は十分にある。というのも、安倍内閣が原発に対する明確な方針を打ち出せずにいるからだ。

 政権交代以降に見直した2014年4月閣議決定の「第4次エネルギー基本計画」では、原発を「重要なベースロード電源」と位置付けたものの、一方で、「省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電所の効率化などにより、可能な限り(原発依存度を)低減させる」としている。

方針が示されないまま「再稼働」へ

 実際、原子力規制委員会の安全確認を得たものは、順次、再稼働を認めるとしており、政権の意思ではなく、事業者の責任で再稼働を行うという立場を取り続けている。原発を推進するのか、脱原発に向かうのか、明確な方針を示さないまま、再稼働だけを進めているわけだ。

 安倍内閣の中でも、原発政策を巡る抜本的な議論はほとんど行われていない。下手に手を付けると国民を二分する議論に発展しかねない難題であることが分かっているからだ。政治的に争点化を避けているとも言える。そうした点を突いて民進党が安倍内閣を追い詰めようと考えたのには一理あるといってよい。

 だが、そのためには、「2030年代ゼロ」という方針ではマズイ現実がある。2030年代に脱原発というと、積極的に原発の廃止を進めるような印象を受けるが、実態は違うからだ。

 日本の原発は1970年代に20基、80年代に16基、90年代に15基が運転開始した。1997年までに51基である。ところがその後の20年間に運転開始したのはわずか5基だけ。2009年の北海道電力泊原発3号機が最後である。そして、日本では原発の稼働期間は原則40年間と決まっているため、老朽化した原発を規定通り40年で廃炉していくとすると、2037年には5基しか残らないことになるのだ。いまのまま放っておいても「脱原発」は進むのである。

なし崩し的な「脱原発」でよいのか

 安倍内閣も、原発の新設や増設、リプレイス(建て替え)などには一切言及していない。つまり、このままでいれば、なし崩し的に「脱・原発依存」が進むことになるのである。だからこそ、「脱原発」の姿勢を明確に打ち出すためには「2030年」に前倒しする必要があったわけだ。

 だが、与野党ともに「原発無策」のまま、なし崩し的に「脱原発」が進んでいくことで問題ないのか。日本は明確な方針を示さないまま、原発を放棄していっていいのだろうか。

 一方で、東京電力福島第一原子力発電所の事故処理など、今後も原発にまつわる「事業」は果てしなく続く。廃炉するにしても、原発技術者は不可欠だ。将来にわたる明確な原発政策がないまま、事業者任せで原発技術が日本国内に残っていくのだろうか。

 今、これまで原子力技術の一翼を担ってきた東芝が経営破たんの危機に直面している。米国の原子力子会社ウェスチングハウス(WH)に関連し、米国の原発工事を巡って巨額損失が発生。東芝が7125億円の損失を被ることになった。しかも、決算が確定できずにいる。

 東芝は損失を穴埋めして債務超過を回避するため、虎の子とも言える半導体事業を分社化して売却する方針を決めた。だが、会社を存続させるための対処療法で、東芝の原子力事業を持続させる見通しが立つわけではない。

日本の「原子力技術」をどのように保持すべきか

 このまま事業者任せにしておいて、日本の原子力技術を保持し続けることができるのかどうか、不透明感が増している。かといってWHでの損失がさらに膨れ上がる可能性がないとは言えない状況では、東芝という会社を公的資金で救済することは難しい。

 さらに、米国から日本への核燃料の調達や技術導入、再処理などについて取り決めている「日米原子力協定」が1988年の改定から30年を迎える2018年7月で満期が来る。本来ならば自動延長なのだが、米国側がすんなり延長を認めるかどうか微妙な情勢だ。

 協定は、日本が原子力の平和利用に徹することを前提に、原子力発電を将来にわたって継続していくことが前提になっている。原発から生まれるプルトニウムを核燃料サイクルやプルサーマル発電によって消費していくことが求められているのだ。プルトニウムが蓄積することになれば、核兵器に転用されるリスクが生じるからだ。ところが、今の日本では、そうした核燃料サイクル自体が機能しなくなっている。つまり、日本が今後、原発はどう運用していくのか、あるいは脱原発に舵を切るのか、明確な政治の意思が問われるタイミングが近づいているわけだ。

 攻撃する側の民進党が原発政策について明確な姿勢を示せないことにより、安倍内閣での原発政策の議論も封印されたままになりそうだ。


このコラムについて

磯山友幸の「政策ウラ読み」
重要な政策を担う政治家や政策人に登場いただき、政策の焦点やポイントに切り込みます。政局にばかり目が行きがちな政治ニュース、日々の動きに振り回されがちな経済ニュースの真ん中で抜け落ちている「政治経済」の本質に迫ります。(隔週掲載)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/238117/030200043/
http://www.asyura2.com/17/senkyo221/msg/643.html

[経世済民119] インフレ政策の基礎にある「例の曲線」 プレミアムフライデー、使った金額「0円」最多 ヤマトとアスクルから見えた“物流危機
インフレ政策の基礎にある「例の曲線」
「日経ビジネスベーシック」から
飯田泰之の「キーワードから学ぶエコノミクス」・04(発展編)
2017年3月3日(金)
飯田 泰之
この記事は、「日経ビジネス」Digital版に掲載している「日経ビジネスベーシック」からの転載です。連載コラムは「飯田泰之の『キーワードから学ぶエコノミクス』」。記事一覧はこちらをご覧ください。詳しい説明はこちら 。

 今回は発展編として、「いかにも経済学」なキーワードを取り上げてみましょう。

飯田泰之(いいだ・やすゆき)明治大学政治経済学部准教授 1975年東京生まれ。マクロ経済学を専門とするエコノミスト。シノドスマネージング・ ディレクター、規制改革推進会議委員、財務省財務総合政策研究所上席客員研究員。東京大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。著書は『経済は損得で理解しろ!』(エンターブレイン)、『ゼミナール 経済政策入門』(共著、日本経済新聞社)、『歴史が教えるマネーの理論』(ダイヤモンド社)、『ダメな議論』(ちくま新書)、『ゼロから学ぶ経済政策』(角川Oneテーマ21)、『脱貧困の経済学』(共著、ちくま文庫)など多数。
 これまでのアベノミクスの主役といえばなんと言っても金融政策。金融政策と言えば、現在我が国の中央銀行である日銀が「2%のインフレ」を目標に行っている量的・質的金融緩和です。
 しかし、ここであらためて考えてみましょう。
 なぜインフレを起こすことが経済政策の目標になるのでしょう。
 あまりにもいまさらの話で、人には聞けない、なんとなくわかるような気がするけどスッキリしないという人も多いのでは? その基礎に「フィリップスカーブ(フィリップス曲線)」があるのです。
 安定的な経済のためにインフレが必要だ――この根拠として最も古典的な経験則が「フィリップスカーブ」です。元々は20世紀前半の英国のデータで「失業率が低いときには賃金額の上昇率が高い」という(ごく常識的な)関係が観察されるという、ある意味地味な実証研究です。しかし、同様の関係が物価上昇率(インフレ率)と失業率の間でも観察されることが発見されたことで1960年代以降の経済政策の主役中の主役に躍り出ました。
経済政策の主役、フィリップスカーブ
 インフレ率を縦軸に、失業率を横軸にとると右下がりの関係があることから「インフレは失業率を抑制する」という主張が盛んに行われました。実際、下図のように、1980年代以降の日本のデータでも「インフレ時には低失業」「低インフレやデフレ時には高失業」という関係が確認できます。
フィリップスカーブ

1982年以降の日本のフィリップスカーブ
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/041300033/022700019/ph03.JPG

 しかしそうなると、モノが安く買える、つまりは低インフレやデフレを望むならば、高い失業率を受容する必要がある。このこともフィリップスカーブは示しています。低失業と低インフレは両立できない……どちらかはあきらめなければならないというトレードオフ関係になるというわけです。
 さて、インフレと失業の間にこのような関係が成立する理由は何でしょう。実は「これで決定」と言えるような説明はまだ為されていないのです。
 最も基本的というか教科書っぽい説明から紹介しましょう。名目賃金(賃金の額面)の硬直性です。契約期間がある程度長いことや、組合の交渉力があることから、賃金の金額はそう簡単には下がりません。このとき、デフレ(物価の下落)が生じたら何が起こるでしょう。企業にとっては自社の生産する財・サービスの価格下落は収益を悪化させることになります。しかし、賃金の額はそれに見合った分、すぐ下げることはできない。すると、企業は新規採用を抑制し、さらにはリストラを行うことでなんとか収益を確保しようとします。これがデフレ時の失業増をまねくのです。
 一方、インフレの場合にはこれと逆のことが生じます。販売する商品の価格上昇と同じだけ即座に賃金を上げるという企業は少ないでしょう。すると、いままでより高く売れるのに賃金はそこまで上げなくても良い……相対的に安く人を雇えるのだから、雇用は拡大することになるわけです。
トレードオフの関係
 以上のロジックを労働者側から見てみましょう。デフレ時には「安い物価といままで通りの賃金(これを実質賃金の上昇と呼びます)」という恩恵がある一方で、「失業確率の増大」という痛みが生じます。
 少しうがった見方をすると、失業の確率が低い人(公務員や大学教員、大企業の基幹従業員など?)がデフレを好みがちなのは、デフレ不況による失業の懸念が少ないからかもしれません。一方で、インフレ時には「物価は上がるが給料がそれに追いつかない(実質賃金の低下)」という痛みと「失業確率の低下」という安心がもたらされるというわけです。その意味では、インフレ政策は「クビの心配のない安定的な職に就いている人」から「不安定な雇用者と経営者・自営業者」への再分配になるわけです。
 インフレと失業のトレードオフ関係を前提とすると、経済政策の仕事はどちらの痛みをどの程度重視するかを決定することになるでしょう。
 例えば、インフレ率を0に留める代わりに失業率は4%台でも仕方ないと考えるのか、それとも2%くらいのインフレ率は我慢してもらって、失業率を3%以下に抑えるかを選択する…というわけです。
 しかし、このように「フィリップスカーブ上の一点を政策で選ぶ」という政策運営には大きな批判があります。「右下がりのフィリップス曲線」を導いている理屈が、上で説明した賃金の硬直性によるものとは限らないからです。
いままでそうだったから…
 右下がりのフィリップスカーブが導かれるのは賃金の硬直性以外の理由によるものであり、政策の根拠として利用することはできない、という考えから、ロジックとしては間違いがあるかもしれないが、政策利用は可能だという考えまで、経済学者の態度は様々ですが、それは回をあらためて説明することにしましょう。
 ところで、経験則を使う根拠としては、どのような説明がなされるのでしょうか。ごく正直なお話をすれば「いままでそうだったから、これからもある程度そうだろう」という以上に強い説明はない……というのが僕の考え方です。「一度も現実になったことはないが理論上はそうなるはずだ」という理論よりは、意味があるのではないか、と。ちなみに後者の方が確かだと考える経済学者も、決して少なくありません。

[3分で読める]ビジネスキーワード&重要ニュース50

(日経ビジネスベーシック編)
 今さら聞けないけど、今、知っておきたい――。ネットや新聞、テレビなどで日々流れている経済ニュースを読みこなすための「ビジネスパーソンのための入門編コンテンツ」がムックになりました。
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このコラムについて
「日経ビジネスベーシック」から
このコラムでは、「日経ビジネスBasic」に掲載した記事の一部をご紹介します。日経ビジネスBasicは、経済ニュースを十分に読み解くための用語解説や、背景やいきさつの説明、関連する話題、若手ビジネスパーソンの仕事や生活に役立つ情報などを掲載しています。すべての記事は、日経ビジネスの電子版である「日経ビジネスDigital」を定期購読すれば無料でお読みいただけます。詳しくはこちらをごらんください。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/041300033/022700019/

 
プレミアムフライデー、使った金額「0円」最多

みんなの不満

月末の金曜にしたのは誰だ!
2017年3月3日(金)
米田 勝一、データ協力:不満買取センター
 先月末の金曜日から、とうとう始まった「プレミアムフライデー」。消費刺激を狙ったこの"官製"大イベント、果たして、皆さんの目にはどう映ったのか?

 今回は「不満買取センター」が実施した「プレミアムフライデーへの不満」に関するアンケート(調査期間:2017年2月24〜27日/有効回答1557人=勤務先でプレミアムフライデーが「実施された」101人、「実施されなかった」1456人)の結果と、代表的な意見を紹介する。

 この連載、気になる話題や身近なトピックに対する「ちょっと言わせて!」を紹介するのが目的。辛口であったり多少身勝手な言い分であったりしても、広い心で受け止めていただければ。

「田舎では早く帰っても行くところがない」

 まずは、大多数がそうだったと思われる「勤務先でプレミアムフライデーが実施されなかった」と回答した1456人のアンケート結果から。

プレミアムフライデーへの不満(対象:勤務先が未実施=1456人)

 不満は上位から順に、「一部の企業でしか実施されない(24%)」「実施が難しい業種がある(23%)」「大都市限定に感じる(16%)」「なぜ月末金曜日にしたのか(15%)」「他の日にしわ寄せがくる(14%)」となった。実施企業が少数だったことを考えれば、1位は当然の結果だろう。

 以下に、代表的なコメントを紹介する。全般的には、「不公平感」に対する批判が目立った。

「週休2日にもなっていない会社があるのに…。実施できるのは余裕がある大手企業だけ」(46歳、女性、公務員)

「一部の人しか恩恵がない。会社によっては早退扱いとなる。平等ではないからかえってイライラした」(45歳、女性、会社員)

「勤務が交代制で、夜勤も必ずあるのでプレミアムフライデーはムリ。もっといいアイデアで、無理なく幅広い業種で楽しめる取り組みがあればいいのだが」(48歳、男性、会社員)

「土日祝日は営業日であるサービス業の場合、プレミアムフライデーがあると週末の業務の準備に支障をきたす可能性がある。かえって迷惑」(37歳、男性、会社員)

「福祉系の職場だと、プレミアムフライデーなど絶対に実施されない」(56歳、女性、会社員)

「田舎では早く帰っても行くところがないから経済効果は期待しにくい。結局は、なんでも都会基準。勝手に都会でルールを決めて、一部の人に有利なことばっかり」(44歳、女性、会社員)

「月末は業務が普段より多く忙しい。そんな時期の金曜に実施するなんて。従業員の人数も少なく、交代で…というわけにもいかない。一体、どこを基準に考えたイベントなのか」(35歳、女性、会社員)

「プレミアムフライデーよりも『ほどほどエブリデー』の方がめちゃくちゃ嬉しい」(29歳、女性、会社員)

「こんな中途半端なことをするぐらいなら、先行して残業規制に取り組んでほしい」(29歳、男性、会社員)

「早上がりした後、帰宅して仕事を続けた」

 次に、勤務先で「プレミアムフライデーが実施された」と回答した101人の回答を見てみよう。

 寄せられた主なコメントは、以下のようなものだ。

「早上がりの分は、有給休暇を充当させられた。これでは嬉しくない」(54歳、男性、会社員)

「仕事の量は変わらないのにプレミアムフライデーだからと早く帰らされたが、終わらない仕事があったため、結局、帰宅後に仕事を続けた。サービス残業の強要と一緒。プレミアムフライデーなんていらない」(34歳、男性、会社員)

「仕事が終わらず、結局、休日出勤をする羽目になった」(52歳、男性、会社員)

「会社からは『各自の判断で、有休を活用して15:00退社してください』と伝えられた。会社としては実施したという実績になるのかもしれないが、私の周りで早上がりした人はいなかった」(35歳、女性、会社員)

「導入されている企業とそうでない企業があり、一緒に楽しみにくい空気がある。また、取引先が営業していると休みにくい」(37歳、男性、会社員)

「土曜も仕事なので、特に解放感もなく、普段とあまり変わらなかった。家族の勤め先はプレミアムフライデーを実施していなかったので、結局一人で過ごすことになる」(46歳、男性、会社員)

「私は早くに退社できたけれど、夫の勤め先はプレミアムフライデーを実施していない。子供は普通に学校だし、普段通り」(46歳、女性、自営業)

「仕事が早く終わったからと言って、いつもの会社のメンバーで飲み会をするはめに。早く帰りたかった」(34歳、男性、会社員)

「妻から、『バタバタしてるし、早く帰ってこないで』と言われ、仕方なく本屋で時間を潰して帰った。早く終わる意味がない」(40歳、男性、会社員)

「収入が増えていないのにお金を使えるわけがない。使えと言うなら収入を増やしてほしい。そのうちプレミアムフライデーを利用して副業を始めようと考えている」(47歳、男性、会社員)

 「有休を消化する形で実施されたのが不満」「しわ寄せで、ほかの日に残業や休日作業を強いられた」「金銭的に余裕がないのに消費を強要されるのはイヤ」といった意見は多く聞かれた。現時点では、実施したとしても“掛け声”だけで、本来の目的を実現するうえで必要な環境整備が追い付いていない企業が少なくないのだろう。

 なお、プレミアムフライデーの過ごし方として目立ったのは、「外食・飲み会」「買い物」「映画鑑賞」「自宅でのんびり」など。

 また、使った金額に関するデータは以下。回答数が101人と少ないのであくまでも“参考値”程度でご覧いただきたいが、約3分の1が「0円」。地域差もあるだろうが、大きな消費喚起にはつながらなかったとの結果になっている。

プレミアムフライデーで使った金額(対象:勤務先が実施=101人)

データ協力:「不満買取センター」
世の中のあらゆる不満を買い取り、データ解析を通じて、企業や社会によるサービス改善や商品開発を支援している。

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みんなの不満
大事なことだから、気になるトピックだから――ちょっと言わせて! 消費者の不満の収集・分析を通じて商品やサービスの改善サポートを行っている「不満買取センター」の協力で、話題のトピックに関するみんなの「不満」「本音」を紹介します。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/research/16/071300001/030200009/

 


ヤマトとアスクルから見えた“物流危機”
ニュースを斬る
消費者の利便性か、社員の負荷低減か。安全への投資も。
2017年3月3日(金)
大西 孝弘、藤村 広平
2月中旬、ヤマト運輸労働組合が、宅配個数の総量抑制を経営陣に求めた。3年前の宅配料金の値上げでは、収益力や現場の窮状を十分に改善できなかった。値上げはシェア低下を招く。ヤマトのビジネスモデルが岐路に立っている。

ネット通販の急増で、ヤマト運輸の宅配現場の労働負荷が急速に高まっている(写真=時事通信フォト)
 もはや「うれしい悲鳴」というレベルを超えている。
 2月中旬、ヤマトホールディングス(HD)傘下のヤマト運輸本社は緊張感に包まれていた。ヤマト運輸労働組合が、春闘の労使交渉の場で経営陣に現場の窮状を訴えた。賃金などに関する通常の要求書とは別に、「今の体制では現場に大きな労働負荷がかかっている。宅配便の総量を抑制してほしい」という趣旨の説明を口頭で述べた。
 以前から7月と12月の贈答シーズンは忙しかったが、今は年間を通じて仕事量が多くなっている。2017年3月期のヤマト運輸の宅配の取扱個数は、前期比8%増の18億7000万個になる見込み。5期前と比べると、4億個以上も増えている。
 ネット通販による荷物量が膨大で、夜9時の宅配まで多くの作業員を割かざるを得ないという。これまでも同社労組は労働環境の改善を訴えてきたが、今回は現場の労働負荷が限界に達しているという切迫感を経営陣に伝えた。
 現場の窮状を踏まえ、ヤマトの経営陣はいくつかの観点で、従来の戦略の抜本的な見直しを検討している。一つは、迅速な宅配や手厚い再配達などのサービスを見直すこと。2つ目は運賃を値上げすること。3つ目は宅配ドライバーなどの働き方改革だ。それぞれの検討項目は密接に関係している。例えば、宅配料金を値上げしたり、再配達を有料化したりすれば、取扱個数は減少し、宅配ドライバーの過重労働が緩和される可能性がある。
 SMBC日興証券の長谷川浩史アナリストは、「値上げは収益の改善効果があり、評価できる」と話す。実際、値上げ検討との報道があった2月23日のヤマトHDの株価は、前日に比べて8%上昇した。
値上げの効果は限定的だった
 こうした状況の中で、ヤマトの経営陣は、深いジレンマに陥っている。というのは、3年前に値上げをしたものの、十分な成果を上げてこられなかったからだ。
 2010年以降、宅配便の取扱個数は増える一方で、ヤマトの宅配便の平均単価と営業利益率が、同じように下がり続けてきた。2013年3月期には平均単価が600円を割り、翌期には営業利益率が5%を下回った。下落基調を反転させるために、同社は2015年3月期に大口顧客を対象に一斉値上げに踏み切る。その結果、同期の宅配便の平均単価と営業利益率はいずれも上向いた。
 だが、この値上げは根本的な解決にはならなかった。物流会社間での競争は激化し、再び下落基調に入る。単価下落に拍車がかかり、2017年3月期の営業利益率は、ついに4%を下回る見込みだ。こうした状況を打破するためには、3年前を上回る規模の値上げが必要だが、それは日本郵便などに顧客を奪われかねないもろ刃の剣でもある。
下落基調に歯止めがかかっていない
●ヤマトHDの営業利益率と単価

注:2017年3月期の営業利益率と平均単価は会社予想
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/030200598/12-03.png

アマゾンは悪者なのか
 ヤマトを中心とする物流会社の労働負荷が強まる中、宅配個数を急増させているネット通販会社への批判が強まっている。「近所で手軽に買えるような品物までネットで注文し、宅配ドライバーの負荷が高まっている」「『送料無料』と宣伝し、追加料金をとらないことが、再配達を増加させる原因となっている」などだ。2月22日、日本記者クラブの会見に出席したアマゾンジャパンのジャスパー・チャン社長には、宅配の窮状について記者からこうした声を代弁する質問が飛んだ。
 それに対して、チャン社長の回答は想定の範囲内だった。「宅配業者と緊密に連携している。イノベーションで解決するための投資をしていきたい」。あくまで物流会社との契約で決めるという立場で、新たな抜本策を講じる姿勢は示さなかった。
 ヤマト関係者は「アマゾンとは毎年、料金の交渉をしている」と話すが、単価の下落基調を覆すまでには至っていない。現場の作業負荷の増大や、単価の下落を招いてきたのは、ヤマト自身の経営判断の結果でもある。
 シェアか利益か、消費者の利便性向上か社員の負荷低減か──ヤマトはどちらを選択するのか。すべてを満足させる解はなく、中途半端な判断を下せば、今の構図に早晩戻ってしまうだろう。宅配便で5割近いシェアを築いた同社のビジネスモデルが岐路に立っている。
「アスクル後」、防火対策でコスト増も

アスクルの岩田彰一郎社長は火災現場の前で謝罪した(写真=共同通信)
 人的資源にひずみが出たのがヤマトなら、設備の課題が表面化したのはアスクルである。岩田彰一郎社長は2月22日、大規模火災に見舞われた物流センター「アスクルロジパーク首都圏」(埼玉県三芳町)で深々と頭を下げた。「関係者の皆様に多大なるご迷惑、ご心配をおかけした」。そう語る岩田社長の背後には、稼働からわずか3年半ながら、消火のために穴をいくつも開けられた建屋の変わり果てた姿があった。この日に消防当局は鎮圧を発表したが、それでも周囲は焦げついた臭いが漂っていた。
 アスクルは文具メーカー、プラスのカタログ通販部門が独立して生まれた会社。設立から20年、カタログ通販という事業モデルに限界が見え始めるなか、アマゾンにも楽天にもないサービスを目指して始めたのが消費者向けのネット通販サービス「ロハコ」だった。
 「物流を制するものがネット通販を制する」。そう語る岩田社長は、2012年にヤフーと資本提携して得た330億円の大部分を物流機能の拡充にあててきた。ロボットによる自動ピッキングライン、荷物の量に応じて段ボールの大きさを変えられる最新鋭装置──。2013年以降、アスクルは埼玉県のほかにも横浜市、福岡市で同様の物流センターを稼働。今年夏には大阪府吹田市でも新たな施設が完成する予定だった。
 ソフト面の投資も進めていた。ロハコで一部地域向けに提供していた配送サービス「ハッピー・オン・タイム」。配送時間がユーザーに30分単位で知らされることが特徴で、配送車が近づくと到着10分前にもう一度通知が届く仕組みを開発。同サービスの再配達率は2.7%と、日本の物流会社の平均である2割を大きく下回っていた。
 構造的な疲弊が指摘される日本の物流業界にあって、アスクルは果敢な投資で最新鋭の設備・IT投資を進めている会社だった。だからこそ、今回の火災が業界に与える衝撃は大きい。
 物流倉庫を運営するある中堅企業の経営者は「これはアスクルだけの問題ではない」と漏らす。「スプリンクラーや防火シャッターなど、法定基準を満たして設置していた」(アスクル)となれば、今後は設置だけでなく運用をめぐる法改正も求められそうだ。そうなれば、物流コストがかさみ、そのコストを削るために物流現場の負荷はさらに高まりそうだ。
(日経ビジネス2017年3月6日号より転載)


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ニュースを斬る
日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。
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[経世済民119] 米ロとサウジが主導する石油の新世界秩序 石油 東電vs東ガスの第2戦 LPガス 「トランプ・リセット」の評価は時期尚早 
米ロとサウジが主導する石油の新世界秩序
石油「新三国志」
トランプ大統領は石油市場にどんな影響を与えるか
2017年3月2日(木)
橋爪 吉博
 石油をめぐる内外の状況が大きく変化している。
 原油価格が1バレル当たり50ドルに暴落して2年が経過、国際石油市場では、需給環境の変化に対応した新しい秩序が生まれようとしている。
 2016年末から2017年初めにかけて、石油情勢に大きく影響を与える出来事が2つあった。一つは、エネルギー大国を目指すトランプ米大統領の誕生であり、もう一つは、サウジアラビアが主導するOPECとロシアが主導する非OPEC加盟国による原油の協調減産の実施である。
 国際石油市場は、世界の石油生産のトップ3でもある、米国、ロシア、サウジの3か国が主導するとともに、需給調整を分担する新しい時代が始まったと言える。
 初回の今回は、新しい国際石油市場の需給調整と価格形成について、説明したい。

石油相場は今、米国・ロシア・サウジアラビアの三大産油国が主導する時代に突入した(写真:Paul Edmondson/Mint Images/amanaimages)
 2000年代半ばから後半、原油価格は高騰を続け、2008年夏には1バレル当たり150ドルに近づいた。2008年9月のリーマンショック後一時暴落したものの、「アラブの春」もあって、2011年からは100ドルを超える水準で推移し、生産コストが高い、深海底の石油開発やオイルサンド等の非在来型石油の開発が進んだ。
原油価格の暴落
 その中で、水平掘削や水圧破砕等の技術革新もあって、新しいタイプ(非在来型)の石油である「シェールオイル」の生産が本格化した。シェールオイルとは、地中2000〜4000メートルの深いシェール(頁岩)層に封じ込まれている軽質油を回収したもので、従来コスト的に商業生産は難しいとされてきたものである。米国では2010年頃から年率で日量100万バレルずつ生産が増加し、2014年には日量1200万バレルとロシアとサウジを抜いて世界一の原油生産国となった。
 また、2008年9月のリーマンショック後、新興国の経済成長は鈍化、欧州も経済危機に見舞われ、世界的に石油需要の伸びは、2000年代に比して鈍化した。こうした状況から、100ドル前後の水準で推移していた原油価格は、2014年夏ごろから低下を始めた。
 こうした国際石油市場の需給緩和、供給過剰状態による原油価格の低下を決定的にしたのが、2014年11月のOPEC総会におけるシェア戦略の発動、減産決議の見送りであった。従来、OPECは、価格維持の観点から、世界の原油需給を調整する役割を担ってきた。すなわち、OPECは、需給ギャップの穴埋めを引き受け、供給過剰になれば、減産を行うのがこれまでの通例であった。
原油価格の推移(2014年1月〜2017年2月)

出所:NYMEXデータ等より作成
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/022700114/030100001/g1.png

 しかし、この時のOPEC総会では、減産決議を行うとの市場予想に反し、原油価格を維持しても、シェールオイル等に市場シェアを奪われるだけであるとして、従来の生産目標日量3000万バレルを維持し、事実上加盟各国の自由な増産を認めた。同時に、この措置は、生産コストの高いシェールオイルに対して、生産コストの安い中東等のOPEC原油が、価格戦争を挑んだものであると理解された。
 そのため、2014年秋には80ドル水準の原油価格は、2015年年明けには50ドルを切る水準まで暴落した。2015年夏には、60〜70ドル水準まで回復したものの、その後も50ドル前後で低迷し、サウジの対イラン国交断絶による両国関係悪化にもかかわらず、対イラン経済制裁解除決定による原油輸出増加予想を受けて、2016年1月と2月には、30ドル割れを経験した。
減産合意への道
 シェア戦略の標的とされたシェールオイルであるが、原油価格の変動リスクに備えて、先物取引で長期(2年分)で収益を確定させるリスクヘッジが取られていた。また、油井の生産効率化などによって生産コストを低下させたことから、原油価格低下に予想以上の耐性を示した。それでも、2015年5月をピークとして生産量は低下を始めた。
 他方、産油国側でも、原油輸出収入の激減で、財政難に陥る国が増えてきた。特に、サウジは、財政が均衡するために必要な原油価格は95ドル(IMF=国際通貨基金調べ)と見られ、年間1000億ドルに上る財政赤字を計上、175億ドルに上る初の外債を発行(2016年10月)するとともに、補助金や公務員給与の削減等を措置した。同様に、資源輸出に財政を依存するロシアも、国債価格が最低を記録、ルーブルの為替レートも暴落した。ベネズエラは、財政難からデフォルトに直面した。
 そのため、2016年に入って、ロシア等のOPEC非加盟の産油国を含めて、減産ないし生産量の凍結を模索する動きが活発化してきた。当初、核合意履行による経済制裁解除で原油増産を目指すイランと地域大国としてライバル関係(宗派問題を含め)にあるサウジの対立激化のため、合意形成は難航したが、9月28日のOPEC臨時総会において、次回総会で減産を目指す旨の「アルジェ協定」が合意された。
最近の原油需給の状況
原油需給の状況(IEA石油市場報告2017年2月号等より作成)

注:単位は百万BD。( )内は供給計に対するシェア(%)。OPECのNGL生産は非OPEC生産として計上。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/022700114/030100001/h1.png

協調減産の実施
 その後、11月30日のOPEC定例総会において、アルジェ協定に基づき、日量3250万バレルの生産上限(10月実績比日量120万バレル減産)が決議され、8年ぶりに減産が合意された。さらに、12月10日には、ロシア、アゼルバイジャン、メキシコ、オマーン等のOPEC非加盟11カ国を含む主要産油国会議が、ウイーンのOPEC本部で開催され、非OPEC11カ国による日量55.8万バレルの協調減産が合意された。OPECと非OPECの協調減産は15年振りである。
 今回の協調減産は、各国の生産割当枠ないし減産量が明記され、閣僚級の市場監視委員会も設置された近年例を見ない厳格な決議内容となっており、しかも、多くの産油国が待望し、強固な政治的意思が反映したものである。したがって、合意は相当厳格に順守されるものと見て良い。
 また、サウジは、OPEC内でイランの将来の増産余地を認め、自国の大幅減産で譲歩する形でイランと妥協を図ったうえで、ロシアが主導する非OPEC主要産油国と提携し、協調減産を目指した。従来のOPECあるいはサウジ単独による需給調整ではなく、「拡大OPEC」ないし「主要産油国連合」による需給調整を意図した新しい枠組みを提起した。「サウジ・ロシア石油枢軸」の成立といえるかも知れない。
 IEAの石油市場報告2月号によれば、OPECの1月原油生産量は日量3206バレルと生産上限を下回り、減産対象の11カ国では90%の減産達成率を実現しているなど、比較的順調に減産が履行されており、2017年下期には需給が均衡するものと見られている。
 確かに、非OPECの減産は、日量約30万バレルと遅れており、特に、55.8万バレルのうち30万バレルの減産を受け持つロシアは、1月時点で10万バレル減産にとどまっている。これは生産原油の品質上、早期減産は難しいとして、合意時点で達成には時間を要する旨を留保していたことから、想定の範囲内と言えよう。
 こうした状況の中で、ニューヨークのWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物価格は、11月の平均価格が45.76ドル、12月は平均52.17ドル、そして1月は52.61ドルと着実に上昇してきた。2月に入っても、一進一退ながらも50ドル台前半で比較的堅調に推移している。
 間違いなく、主要産油国連合による協調減産で、原油価格の底上げが図られた。
シェールオイルの役割
 他方、米国においては、国内原油在庫が7週連続で増加し、国内稼動掘削リグが602基と1年5カ月ぶりの高水準になるなど、引き続き、供給過剰感が強い。特に、シェールオイルについては、50〜100ドルと見られていた生産コストは原油価格低迷の中で、40〜60ドル程度まで低下、さらに日々効率化が進んでおり、生産業者は50ドルを超えると次々と原油先物取引で売りを立て自社コストをヘッジしているという。また、米国内では、掘削済みの2000〜4000基の油井が生産開始を待っているおり、比較的早期に100万バレル程度であれば増産できると見られている。
 こうした動きは、WTI先物価格が一進一退を続ける主な要因となっており、明らかに原油価格の上値を抑えていると言える。また、こうした米国の状況を反映して、ニューヨーク先物市場のWTI価格より、品質の劣る東京スポット市場のドバイ価格の方が高いという逆転現象が発生しており、中東原油はOPEC減産でひっ迫感が出ているものと見られる。
 さらに、米国の先行き供給過剰感の背景には、「アメリカ・ファースト」の下、「エネルギー自立」を目指すトランプ大統領の就任という要因もあるように思われる。米国の石油関係者には、環境対策の観点から、シェールオイル・ガス開発における水圧破砕技術の使用禁止や石油への炭素税導入を公約とした、ヒラリー・クリントン氏ではなく、気候変動に否定的で、シェール開発やパイプライン設置の規制緩和を進めるとした、ドナルド・トランプ氏が当選して良かったと思っている人が多いのではないか。
 オバマ前大統領が無策でも、世界中で唯一米国経済が好調だった背景には、シェール革命によるエネルギーコストの低下、貿易収支の改善といった要因があったことは間違いない。こうした観点から見ると、シェールオイル・ガスや石炭の増産によって、エネルギー自立を目指す方向性は間違っていない。したがって、トランプ政権の下では、引き続き、シェールオイルの生産は拡大し、大きな役割を果たすものと思われる。
今後の見通し
 今後の石油情勢については、協調減産が下値を支え、シェールオイルが上値を抑える形で、当面、原油価格は50ドル台前半の「ボックス圏」で推移すると見る向きが多い。筆者も同意見である。
 ただ問題は、「当面」がいつまでか、ということである。
 おそらく、現行の減産合意の見直しが行われる5月25日の次回OPEC総会までは、余程の状況変化がない限り、この状況が続くのであろう。減産合意の延長については、バーキントOPEC事務局長は「議論は時期尚早」としており、サウジのファリハ・エネルギー相は消極的発言をしている。ポイントは、減産の実施状況とともに、世界中に積み上った在庫圧力と需要の伸びをどう見るかであろう。IEAによれば、2017年の需要の伸びは前年比140万バレルの増加としている。
 その先は、よく分からない。
 ただ、今回の協調減産の枠組みは、国際石油市場における需給調整機能の変更、減産リスクの再配分を目指したものである。2014年11月のOPECシェア戦略は、原油市場の需給調整機能のシェール業者への全面的な肩代わりを目指したものであったが、2年間の油価低迷を経て、この目論見は失敗した。サウジ単独、OPECベースではなく、ロシア等主要産油国を含めた「産油国連合」ないし「拡大OPEC」による需給調整を行う。その上で、米国のシェール業者にも応分の負担を求めたものと考えられる。シェール革命と経済成長の減速という国際石油市場の構造変化を背景に、三大産油国が主導する新時代の需給調整方式であると評価できる。
 このスキームは、2年間の混迷を経て出来上がった。3大産油国もそれなりに受け入れられる安定的なものであり、筆者は、意外に長持ちするするスキームではないかと考えている。


このコラムについて
石油「新三国志」
 2016年末、今後のエネルギー業界を揺るがす出来事が重なった。1つはサウジアラビアが主導するOPEC(石油輸出国機構)とロシアなど非加盟国が15年ぶりに協調減産で合意したこと。もう1つは米国内のエネルギー産業の活性化を目論むドナルド・トランプ氏が米国大統領に就任したことだ。サウジとロシア中心の産油国連合による需給調整は原油価格の下値を支えるが、トランプ政権の規制緩和などにより米シェール業者の価格競争力は高まり原油価格の上値は抑制されるだろう。将来の原油需要のピークアウトが予想される中、米・露・サウジの三大産油国が主導し、負担を分担する新たな国際石油市場のスキームが誕生しつつある。その石油「新三国志」を、石油業界に35年携わってきた著者が解説していく。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/022700114/030100001

 

 

東電vs東ガスの第2戦 LPガスが代理戦争

From 日経エネルギーNext

ガス自由化の行方を決める合従連衡
2017年3月2日(木)
日経エネルギーNext
中西 清隆=日経エネルギーNext

 4月にスタートする都市ガス小売り全面自由化。全国的にも注目を集めるのが、東京ガスvs東京電力エナジーパートナー(EP)という、首都圏の大手都市ガスと大手電力のガチンコ勝負だ。

 東電EPは昨年、LP(液化石油)ガス販売最大手の日本瓦斯(ニチガス)とタッグを組んで家庭など小口向け都市ガス市場に参入することを表明。東電EP陣営についたニチガスが2月20日に発表した4月からの新料金は、東ガスの規制料金(大手都市ガスなどには4月以降も当面維持が義務付けられている)と比べて、基本料金は同額だが、従量料金が5%安い。東ガスはガス代1000円につき5ポイントを還元する新メニュー(自由化料金)を1月末に発表しているが、ガス単体なら現時点ではニチガスの方が安い。


東京ガスがサイサンと連携
広瀬道明・東ガス社長(右)と川本武彦・サイサン社長
 だが、料金競争は緒についたばかりだ。今は互いの出方を探っている段階と言っていいだろう。ニチガスの和田眞治社長は「東ガスが下げてくれば、我々も下げていく」と強気だ。

 東ガスと東電EPは料金競争だけでなく、互いの陣営強化にも乗り出す。首都圏の電気・ガスの勢力図がどう塗り替わるかは、他の事業者を巻き込んだ合従連衡が大きく左右することになりそうだ。

 2月2日、東ガスは関東のLPガス販売大手、サイサン(さいたま市)との提携を発表した。これにより東電EP、東ガスのいずれの陣営も、小売り強化の鍵をLPガス事業者が握る形になった。

サイサンの役目はニチガスエリアの攻略

 サイサンは東ガスからガスの卸供給を受け、全面自由化が始まる4月にも都市ガス小売りに参入する。会見の場で、東ガスの広瀬道明社長は「(サイサンには)東ガスの卸先以外のエリアを任せることになる」と話した。広瀬社長の言葉が意味するところは、東電EPのパートナーとなるニチガス系列の都市ガス事業者のエリアをサイサンが攻略するということにほかならない。

 全国では200を超す都市ガス事業者が導管を使ってガスを家庭や工場に供給している。とりわけ千葉、埼玉、神奈川など関東には数多くの中小都市ガス会社がひしめいており、これらの中には東京ガスが導管を介してガスを卸供給している事業者が20社以上ある(一部はローリーによる卸供給)。東ガスから見れば間接的に自社のガスを販売してくれる“仲間”である。

新規参入はたったの14社

 ニチガスの都市ガス子会社である東彩ガス(埼玉県越谷市)、東日本ガス(千葉県我孫子市)、北日本ガス(栃木県小山市)はそれぞれ埼玉、千葉、栃木の一部を供給エリアとしてきた。これらに加えてニチガス自身も神奈川、埼玉、栃木の一部に都市ガスを供給している。ニチガスは中小都市ガスを買収することで都市ガス事業の拡大を目指してきた経緯がある。

 こうしたニチガス傘下のエリアでは、過去の経緯からいずれも東ガスから卸供給を受けてきた。だが、東電EPと提携するに当たってこの4月から、卸元を全面的に東電EPに切り替える。つまり東ガスは、これらのエリアで計32万軒分の供給先を瞬時に失う。地域独占の解消に合わせて、ニチガスの都市ガスエリアの需要家を東ガス陣営に取り戻すのがサイサンの役割だ。サイサンとニチガスは関東でLPガスの顧客争奪で激しく競り合ってきた間柄でもある。両社は都市ガスでも正面からぶつかり合うことになる。

 電力に続く都市ガス全面自由化でエネルギー大競争の第二幕が上がる。電力とガスの垣根はなくなり、競争は熾烈を極める――。と言いたいところだが、世間的にガス自由化はほとんど盛り上がっていない。

 電力とガスの違いは新規参入事業者の数の違いに端的に現れている。1年前の電力では自由化が始まる4月までに、新たに参入する小売電気事業者の登録は250社を超えていた。ところがガスの場合、既存事業者を除いて新たに参入を届け出たガス小売事業者は15社しかない(3月1日現在)。

 激戦が予想された関東エリアでは東ガスとニチガスの2社が新料金を発表したものの、肝心の東電EPは「東ガスが新しく構築したスイッチング(顧客の切り替え)システムの稼働などが落ち着くのを見届ける」(東電EP幹部)として、都市ガス小売りは7月から始めるというスロースタートぶりだ。

 あるガス会社幹部は「ガス自由化に対する消費者の認知や関心を、どう高めるかから始めないといけない」とこぼす。関係者からはガス自由化の先行きを案じる声も聞かれる。やはり、プレーヤーの少なさは大きなネックと言っていい。このままでは消費者の選択肢は広がらず、消費者が享受する自由化の恩恵も限られてしまう。

狙いは東ガスの体力消耗、「敵に塩」も辞さず

 「本当は水面下で電気とガスの両方を扱いたいと考える事業者は少なくないはずだ」(新電力幹部)。都市ガス供給網が発達している東名阪では大手電力、大手都市ガスの双方が今後は電気とガスのセット販売に力を注ぐ。この地域で電気事業を展開している他の新電力も電気とガスのセット売りを手掛けたいと考えるのはむしろ自然だ。

 問題は都市ガスへの参入障壁が極めて高いことだ。発電所を建てて送電線につなぎ込めばいい電力とは異なり、商品となる天然ガスは海外からLNG(液化天然ガス)の形で輸入する必要がある。現時点でこれが可能なのは大手都市ガス、大手電力、一部の石油元売り会社に限られる。卸電力取引所のようなオープンな取引市場はガスにはなく、事業者同士の相対取引による卸市場も未発達だ。つまり、ガスの入手からして難しいのだ。

 加えてガス小売事業者には、家庭などで使用する給湯器やコンロなどガス機器の定期的な安全確認(保安業務)が義務付けられている。資格を持つ保安作業者の確保など、営業体制の面でもハードルは高い。

 こうした観点から注目を集めているのが、東電EPとニチガスが共同で打ち出した「都市ガス事業プラットフォーム構想」だ。都市ガス参入を検討している事業者に、東電EPが豊富に持っている天然ガスや、ニチガスがLPガス営業網に合わせて張り巡らせたガス保安のネットワークなど、都市ガス小売り参入に必要な資源を提供し、参入を支援するというものだ。

 東電EPとしては、プラットフォーム構想を介して都市ガスの卸先が増えれば販売量の増加につながる。だが、東電EPから都市ガスの卸供給を受けて小売りをするニチガスの立場に立てば、敵(小売りで競合する新規参入者)に塩を送るような側面もある。ゆえに実現を疑問視する見方もあるが、構想を推進するニチガスの幹部はこう打ち明ける。

 「新規参入者と営業エリアがバッティングすることがあっても、東ガスの需要を奪って体力を消耗させる方が先だ。他のLPガス事業者のほか、新電力や石油販売、不動産仲介事業者など潜在顧客を持つ事業者の参入を促して仲間を増やしたい。東ガス陣営と東電EP陣営に分かれた戦いになる」

 東ガスは都市ガスの卸先など34社とともに「ガスネット21」と呼ぶグループを形成している。これに対抗するのが、東電EPとニチガスの都市ガス事業プラットフォーム構想というわけだ。

「ショックだった」託送料金の水準

 東電EPとニチガスがこうした構想に行き着いた背景には東ガスの手強さがある。東ガスは電力自由化から1年足らずで電気の需要家を64万軒獲得した(1月末時点)。家庭向けでは他の新電力を大きく引き離し、圧倒的な存在感を放つ。

 東ガスの電力小売りは、ガス機器販売や保安を手掛ける地域のサービス網であるライフバルの従業員による訪問販売が奏功したとされる。「ライフバルの営業網としての強さが実証された」と東電EP幹部もその営業力は認めるところだ。自由化される都市ガスの営業では、その東ガスの牙城を崩さなければならない。対抗上、東電EP陣営にとって営業力の強化は不可避だ。

 もう1つ、東電EP陣営にとって想定外だったのは、2016年末に決まった託送料金(ガス導管の利用料)の水準が予想より高かったことだ。ある東電EP幹部は「正直言って、ショックだった」とうつむく。東ガスの都市ガス料金は全国でも安いといわれる。ガス料金に含まれる託送料金の割合が高ければ、純粋なガス小売りの粗利は薄くなる。対抗する東電EP陣営も利幅の圧縮は避けられない。この収益構造で戦うには、東電EP陣営として販売量を早期に、効率的に増やす以外にないというのが東電EPとニチガスの結論だ。それだけに「本気で仲間を増やしていく」とニチガス幹部は語気を強める。

 東電EPとニチガスの都市ガス事業プラットフォーム構想は、異業種から都市ガス参入を考える事業者には大きなチャンスにもなり得る。都市ガス自由化の行方は、エネルギー事業者の合従連衡の進展にかかっているとも言えそうだ。


このコラムについて

From 日経エネルギーNext
 電力・ガスの全面自由化を迎え、日本のエネルギー市場は新たな局面を迎えた。王者・東京電力は原子力発電所事故の賠償や廃炉の責任を背負い、大規模な合従連衡が進もうとしている。数多くの新規参入企業が虎視眈々と商機を狙い、まさに戦国時代の様相だ。電気やガスの料金は本当に下がるのか、魅力的なサービスは登場するのか――。エネルギービジネスの専門誌「日経エネルギーNext」が最新ニュースを解説する。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/022700115/022800002/


 

「トランプ・リセット」の評価は時期尚早

トランプのアメリカ〜超大国はどこへ行く

2017年3月2日(木)
篠原 匡

議会演説に臨むトランプ大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
 2月28日、ドナルド・トランプ大統領は米議会上下両院合同本会議で初めての施政方針演説に臨んだ。いつもの暗いトーンではなく、抑制の効いた比較的ポジティブな内容だった。民主党やメディアへの批判も封印するなど、国民の結束を訴えたものだった印象だ。メディアの評価も好意的なものが多い。米ワシントンポストは今回の演説のWinners/Losersをまとめた記事で、トランプ大統領をWinnersの筆頭に挙げている。

自身の政権運営には「A」評価

 トランプ大統領は自身の政権運営に「A」評価を与えているが、発足以来、拙速な大統領令や側近の辞任、メディアとの対立など様々な物議を醸している。今回の施政方針演説はカオスと化している現状をリセットする重要な機会だと捉えられていた。有権者や議会に広がっていた統治能力に対する不安の払拭につながった点において、今回の演説は一定の成功を収めたと言える。

 もっとも、南部国境に壁を築くという主張は相変わらず。現状の自由貿易体制が米国にフェアではないという見方も引き続き披露している。スキルを持つ移民に対しては態度を軟化させている感はあるが、トランプ大統領の主張の根幹部分は変わっていない。

「国境税調整」への言及はなし

 また、企業関係者や市場参加者が切望していた具体案に対する言及もほとんどなかった。例えば、税制改正に伴う国境税調整に対しては触れなかった。

 国境税調整とは、輸出と輸入で経費算入の基準を変えるというもの。下院共和党が従来から温めていたアイデアだ。簡単にいえば、米企業が輸出する場合は輸出売り上げを課税ベースから控除できる一方で、原材料などを輸入した場合は輸入仕入れ高を経費として認めない。法人税率が20%だとした場合、輸出高の20%を補助金として受け取り、輸入高の20%を関税として支払うのと同じような効果が得られる。

 国境税調整に注目が集まるのは、そこから得られる税収が10年間で1兆ドルと巨額なためだ。大規模減税、特に30年ぶりの法人税改革は共和党の悲願だが、同党は財政規律を重視するため、減税分の財源を確保しなければならない。その財源として、下院執行部は国境税調整に着目している。裏を返せば、国境税調整の導入がなければ、トランプ大統領が主張する法人税15%はもちろん、共和党の20%さえ実現することは不可能だろう(詳しくはこちら)。

インフラ投資の財源はどこに?

 だが、国境調整税は海外から製品を輸入する企業に関税を課すのに等しいため、大きな影響を受ける小売り企業を中心に反発は激しい。ウォルマートが拠点を置くアーカンソー州の上院議員が反対を表明するなど、共和党も一枚岩ではない(関連記事)。共和党は上院で過半数を取っているが、52議席とギリギリで、造反が出れば民主党のフィリバスター(議事妨害)で法案成立はおぼつかなくなる(税制改正に関して、ライアン議長は“財政調整”を活用するという意向を述べている。その場合はフィリバスター云々は関係ない)。

 トランプ大統領は演説の中で、1兆ドルに上るインフラ投資についても改めて強調した。こちらも財政と民間資金を活用するという従来の主張を繰り返しただけで財源は曖昧なままだ。トランプ大統領は議会にインフラ予算の承認を要請すると述べたが、財政規律に厳格な共和党の同意を得るのは簡単ではない。インフラ投資は民主党が賛成に回る可能性も十分にあるが、民主党との関係はハネムーン期間に大きく悪化しており、同党がトランプ政権に協力するかどうかは不透明だ。

“トランプ・リセット”の評価は時期尚早か

 財政問題はオバマケアの撤廃・置き換えにもついて回る。「オバマケアは崩壊している」とトランプ大統領は批判しているが、「共和党に回り始めたオバマケアの『毒』」の会で述べたように加入者のカバレッジを劣化させることなく財政支出を削減することは極めて難しい。代替案に関する共和党執行部のドラフトについても、ティーパーティの流れをくむ財政保守派(Freedom Caucus)が批判の声を上げている(関連記事)。

 企業関係者や市場参加者はインフラ投資や減税などの経済刺激策を期待しているが、それがどこまで実現するかは現時点では定かではない。その一つのリトマス試験紙が国境税調整だったわけだが、それに対する具体案の提示は先送りされた。3月半ばといわれる予算教書でも具体案がなければ、期待先行で上昇していた株式市場に冷や水を浴びせる可能性はあるだろう。

 今回の施政方針演説では左半分がスタンディングオベーションだった半面、右半分は座ったままで、時にブーイングも聞こえた。メディア批判は封印したが、批判的なメディアを一時、ホワイトハウスの記者会見から閉め出すなどメディアとの戦争状態が続いている。今回の演説が政権のリセットにつながったのかどうかは今の時点では何とも言えない。


このコラムについて

トランプのアメリカ〜超大国はどこへ行く
1月20日に第45代米大統領に就任したドナルド・トランプ氏。通商政策や安全保障政策など戦後、米国が進めてきた路線と大きく異なる主張をしているトランプ大統領に対する不安は根強い。トランプ氏は具体的に何を実施し、何を目指しているのか。新大統領が率いるアメリカがどこに向かうのか。それをひもといていこうというコラム。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/012700108/030100013
http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/663.html

[国際18] 「ベトナム花嫁売り飛ばし」横行、5万人の悲劇 「国際結婚紹介業」繁盛の陰で止まらぬ中越「貧困の連鎖 韓国人との結婚禁止←
「ベトナム花嫁売り飛ばし」横行、5万人の悲劇

世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」

「国際結婚紹介業」繁盛の陰で止まらぬ中越「貧困の連鎖」
2017年3月3日(金)
北村 豊

 北京紙「新京報」は2月24日付のコラム欄で「男女比率の不均衡、人為的関与は必ずしも有効ではない」と題する“中国人民大学”公共政策研究院の“毛寿龍”執行院長の文章を掲載した。その概要は以下のとおり。

外国女性で補填?

【1】ここ数年、男女比率の不均衡は“光棍(独り者)危機”を引き起こすという報道が度々なされ、世論を沸かせている。中国社会が男女比率の不均衡な社会に突入していることは確かだ。マクロ的に見て、30年後には3000万人の男性が女性配偶者の欠乏に直面する。“国家統計局”の2016年統計によれば、2015年における中国総人口の性比は105.02、出生人口の性比は113.51であった<注1>。また、“80后(1980年代生まれ)”の未婚人口の性比は136、“70后(1970年代生まれ)”の未婚人口の性比は206、過去30年で見るとある地方の人口性比は130を遥かに上回っていた。

<注1>性比は集団中の女性100に対する男性の比率で、国連が定めている性比の正常値は103〜107である。

【2】国家政策による干渉で人口を抑制するのは比較的容易だが、子供の出産を奨励、特に女児の出産を奨励するのは技術的に不可能であるだけでなく、倫理上からも不可能である。従い、最近3〜4年実施している“単独二孩(夫婦の一方が一人っ子なら2人目の子供を出産してもよい)”政策や“全面二孩(どの夫婦も子供を2人まで出産してよい)”政策は、すでに作り出された人口性比の不均衡という難題に対して相殺作用がなく、緩和作用しかない。

【3】多くの専門家が、偏った男女性比を解消するためには、男女不平等の習俗、たとえば、男が女を娶(めと)る、妻は夫の家に住む、子供は夫の姓になるなどの風習から変革に着手しなければならないと提起している。但し、これら古い風習は生活に深く根付いており、一朝一夕に変えることのできるものではない。国家が実行可能な有効的な政策は、婚姻に関わるサービスを強化して、結婚・出産の経費をできる限り少なくすることである。そうすれば、情報不足などにより独身を余儀なくされている問題なども解決することが可能となる。このほか、移民政策の改革を適度に推進し、より多くの外国女性に中国で働き生活してもらうことである。これは「“光棍(独り者)”危機」を減少させるための一種の良薬だと言える。

 毛寿龍院長が移民政策の改革を適度に推進する方策の一つとして外国女性に言及したのは、将来的に3000万人が不足する中国女性を外国女性で補填しようと考えていることにほかならない。しかも、彼はそれを一種の特効薬だと述べているのである。外国女性が中国で働き生活したとしても、彼女たちが中国男性と結婚しない限り、それは“光棍”の解消にはつながらない。さらに言えば、“光棍”の多くが辺ぴな地域に住む貧しい農民であるという事実があり、自ら進んで彼らに嫁ごうという女性は皆無に近いというのが現実なのである。人里離れた地域に住む貧困な農民の“光棍”に妻をめとらせるにはどうしたら良いのか。何かよい方策はないものか。

 2017年の年明けから2月末までのわずか2か月間に、中国メディアは“越南新娘(ベトナム花嫁)”に関わる事件を何度も報じた。それはベトナムで誘拐した若い女性たちを中国へ密入国させた上で、嫁の来手がない農村部の“光棍”の男たちに売り飛ばしていた事件だった。その例を挙げると以下の通り。

10万元で売り飛ばす

【例1】1月24日付の安徽省紙「安徽商報」は「2人の男が9人のベトナム花嫁を誘拐し、1人当たり10万元(約165万円)で売り飛ばした」と題する記事を掲載した。その概要は以下の通り。

(1)河南省東部の“周口市”に属する“鄲城県”に住む“単磊”(男、60歳)は、息子が2014年に自動車運転中に不注意で事故を起こし、懲役刑になったばかりか、賠償問題で大きな借金を作ったことで、生活に困窮するようになった。お先真っ暗な状態の中で、単磊は何とかカネを稼ぎたいと考えていた。そうこうするうちに、単磊は河南省西北部の“界首市”の“芦村”にいる遠縁の従兄である“範大海”がベトナム人の嫁を国内にいる“大齢青年(結婚適齢期を過ぎた独身男性)”に世話して少なからぬカネを稼いでいることを聞きつけた。早速に範大海を訪ねた単磊は、「範大海が雲南省のベトナムとの国境地帯からベトナム人の娘を密入国させた上で、単磊が買い手に連絡を取り、ベトナム娘1人当たり10万元で売り飛ばす」ことで合意した。これを境に2人は悪事に手を染めることになった。

(2)2015年12月から2016年3月までの間に、単磊は“苗新騰”、“馬超群”、“李代山”など9人の買い手に連絡を取る一方、範大海は自分の関係者に連絡を取って、前後4回にわたって雲南省のベトナム国境沿いにある“麻栗坡県”へ出向き、ベトナム側のルートを経て9人のベトナム女性を密入国させた。単磊と範大海の2人は、9人のベトナム女性を密かに安徽省まで移動させた上で、省内の界首市、“阜陽市”に属する“太和県”、鄲城県などへ売り飛ばした。事件の発覚後、“界首市公安局”は迅速に出動して単磊および範大海を始めとする関係者を逮捕すると同時に、被害者であるベトナム女性を救出してベトナムへ送還した。

(3)最近、この事件の裁判が“界首市人民法院(地方裁判所)”で開廷されて審議が行われた。裁判所は被告人の単磊と範大海が、売り飛ばし目的で9人の婦女を販売、受け入れ・受け渡しを行ったとして、その行為は刑法の「婦女誘拐・売り飛ばし罪」を構成するとした。苗新騰、馬超群、李代山など被告人9人は、その行為が刑法第241条第1項規定の「誘拐・売り飛ばされた婦女の購入罪」を構成するとした。但し、被告人・苗新騰などの購入者が被害女性たちの意向に沿い、その原居住地へ帰るのを妨げないことに鑑み、法律の規定に基づき、処罰を軽減するとした。裁判所は単磊など9人の被告人に対してそれぞれ懲役12年から2年の判決を下した。

【例2】同じく「安徽商報」は2月22日付の記事で、前日の21日に安徽省南部に位置する“馬鞍山市”の“雨山区人民法院(地方裁判所)”で誘拐したベトナム女性を馬鞍山市内の独身男性に売り飛ばした事件の審議が行われ、被告人“呉某”、“張某”など6人に対し「婦女誘拐・売り飛ばし罪」により、それぞれ懲役10年6か月から2年の判決が言い渡されたと報じた。その概要は以下の通り。

6.8万元で買い付け

(1)2013年2月から4月の間に、被告人の呉某と張某の紹介を経て、ベトナムで誘拐された後に売り飛ばされて雲南省入りしたベトナム女性3人はそれぞれ6.2万元(約102万円)、6.3万元(約104万円)、6.3万元で、馬鞍山市の男性3人に妻として売られた。

(2)2013年12月、被告人の“盧某”は被告人の“袁某”から紹介を受けて、ベトナムで誘拐された後に売り飛ばされて雲南省入りしたベトナム女性を6.8万元(約112万円)で馬鞍山市の男性に妻として売り渡した。

(3)2015年4月、被告人の“徐某”は被告人の“孫某”から雲南省で結婚相手を紹介するよう依頼され、ずっと相応しい相手を物色したが見つからなかった。そこで、徐某は被告人の呉某と張某に連絡を取り、これを受けた呉某と張某が被告人の盧某を通じて被告人の“王某”に連絡を取った。王某はスマートフォンで依頼人の孫某へ多数の女性の写真を送り、その中から好ましい女性を選択するよう要求した。孫某はベトナムで誘拐されて雲南省東南部のベトナムとラオスとの国境沿いにある“河口瑶族自治県”へ売り飛ばされた女性を選択した。その後、孫某は呉某、張某、盧某、徐某と共に河口瑶族自治県へ向かい、徐某が主体となって6.8万元で当該女性を買い付けて孫某の妻とした。

(4)事件が発覚した後、被告人の呉某、張某、盧某、王某、徐某は逮捕され、被告人の袁某は電話で召喚されて出頭した。裁判所は審理を経て、被告人6人の行為は「婦女誘拐・売り飛ばし罪」を構成すると認定し、上述の判決を下したのだった。

 誘拐されて売り飛ばされるベトナム女性は、“人販子(人買い)”に中国で働ける、勉強ができる、商売ができるなどの甘言で騙され、人買いに売られて中国へ不法入国する。中国へ一歩足を踏み入れた段階で、人買いは本性を表してベトナム女性を支配下に置き、彼女たちをベトナム花嫁として婚期を逃した“光棍”に売り飛ばすのである。密入国でパスポートも持たず、言葉も通じない彼女たちは、自分の身に何が起こっているか知らぬうちに見ず知らずの独身男に売られて、その妻にされるのである。

 シンガポールに拠点を置く「第一海外婚姻紹介所(First Overseas International Matchmaker)」のウェブサイトには、“越南新娘精選(選り抜きのベトナム花嫁)”と題されたページがあり、国際結婚を望むベトナム女性1000人以上の写真が掲載されており、個々の写真をクリックすると、女性たちの姓、年齢、学歴、出生地、所在地が表示される。ベトナムは儒教思想の影響を受けて今なお男尊女卑の考え方が色濃く残っており、家庭内の女性の地位は非常に低い。このため、多くの女性たちが男女平等の生活に憧れ、国際結婚により祖国を離れて暮らすことを希望している。そうした姿勢が“越南新娘精選”に反映されているように思える。

「1年以内に逃げたら代替賠償」?

 一方、ベトナムの田舎には中国語で“養媽”<注2>と呼ばれる結婚紹介業者がいて、結婚を希望する貧しい女性たちを集め、礼儀作法や教養を高めるための研修を行い、彼らを見た目、聡明で貞淑な女性に仕立て上げる。こうした“養媽”は中国の結婚紹介業者と提携していて、中国の同業者が連れてくる国際結婚希望の“光棍”と彼らが研修を行ったベトナム女性を見合わせ、結婚を成立させることで商売を行っている。

<注2>“養媽”の“媽”は母親を意味するので、“養媽”を直訳すると「養母」となるが、結婚紹介業者は女性だけでなく、男性もいる。

 中国の農村部に行くと「ベトナム花嫁紹介」と書いた広告が壁や電柱に張られているのを目にすることがあるが、その代表的な例は以下のような内容になっている。


ベトナム人花嫁の広告
”3ヶ月以内に花嫁が来ます”
”20萬元ポッキリ!”
四大保証:
@処女を保証します。
A.3ヶ月以内に結婚出来ます。
B追加料金は頂きません。
C一年間で逃げ出したらもう1人補償します
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/101059/030100089/h1.PNG


 これを見た中国の“光棍”たちは親戚中から借金して広告に書かれている連絡先に電話を入れて申し込み、ベトナムへ向かうことになる。中国の“光棍”にしてみれば、中国女性を娶ろうとすれば必要となる高額な結納金も不要だし、車や住宅を購入する必要もなく、極めて安上がりに結婚できる。一方のベトナム女性は中国人と結婚すれば、貧しい生活から抜け出し、安楽な生活ができ、ベトナムの実家へ仕送りもできると夢を描いている。こうした2人が結婚に合意し、所定の手続きを経て婚姻を結び、花嫁が花婿の家に到着する。

 しかし、そこで花嫁が見るのは、ベトナムの実家と同程度、あるいはそれ以下の生活水準で貧困にあえぐ花婿の家である。理想と現実の差に愕然としたベトナム花嫁は花婿の家から逃亡を図り、何度か連れ戻された末に逃亡に成功し、何とかベトナムへたどり着く。このため四大保証には「1年以内に逃げたら代替を1人賠償」と書かれているのである。

 2015年4月28日付の週刊誌「中国新聞週刊」はベトナム花嫁に関する記事の中で次のように報じた。

【1】中国には不完全な統計でベトナム花嫁が10万人以上存在する。そのうち合法的な婚姻者は半数に満たず、彼女たちの大多数は農村で貧困にあえぎ、戸籍も持たない。1991年に中国とベトナムが国交を回復した後、両国の国際結婚は急速に増大し、貧困ライン上で生活にあえぐ大量の“光棍”たちと徐々に富裕化する中国に命運を託したベトナム女性の願望がはからずも一致した。

【2】2002年にはベトナム女性を紹介する結婚紹介所が続々と出現し、ベトナム花嫁紹介のウェブサイトは広西チワン族自治区と福建省から始まり、その後広東省、江西省、浙江省、湖北省、湖南省を経て東北三省(黒龍江省、吉林省、遼寧省)へと展開した。2010年以降はメディアの報道の中でも、本来“白衣柳身(白いアオザイを着て柳のように細身)”というイメージのベトナム花嫁には多くのレッテルが貼られるようになった。それは、「ベトナムの輸出特産品」、「“光棍節”ネットショッピングの人気商品」<注3>、「集団逃亡の常連」、「人買いの獲物」、「電柱広告の主役」などである。

<注3>中国では11月11日を“光棍節(独身者デー)”として盛大に祝う風習があり、この日のネットショッピングはヒートアップして莫大な売上高を記録する。

非合法5万人? 悲しい現実

 2017年2月末時点で、中国国内にどれだけのベトナム花嫁が存在するのかは分からないが、たとえ10万人が正しいとしても、合法的婚姻者が半数の5万人なら、非合法に誘拐されて売り飛ばされた者が5万人存在することになる。これら10万人のベトナム花嫁の中で現状に満足している人は恐らく極少数であり、残りの大多数は極貧生活の中で悲運を嘆いていることだろう。

 ベトナム花嫁に対する“光棍”の切実な需要があるから国際結婚紹介の商売が成り立つし、ベトナム女性を誘拐して売り飛ばす犯罪も横行する。その結果として当のベトナム女性たちが幸せになれるのであれば話は別だが、どう見ても彼女たちの多くは不幸な境遇にある。これでは毛寿龍院長が言う移民政策の改革による「“光棍”危機」の解消という提案は妥当性を欠いていると言わざるを得ないが、上述したようにベトナム花嫁の国際結婚紹介業は繁盛しているようだし、ベトナム女性の誘拐・売り飛ばし事件も多発している。悲しいかなそれが現実なのである。


このコラムについて

世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」
日中両国が本当の意味で交流するには、両国民が相互理解を深めることが先決である。ところが、日本のメディアの中国に関する報道は、「陰陽」の「陽」ばかりが強調され、「陰」がほとんど報道されない。真の中国を理解するために、「褒めるべきは褒め、批判すべきは批判す」という視点に立って、中国国内の実態をリポートする。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/101059/030100089

 


2013年02月17日 21時20分47秒
★ベトナム、韓国人との結婚禁止 ←デマ(誤報)でした!

テーマ:☆ネトウヨのデマ検証
こんにちは!
杉野洋明です。

少し前に、ベトナムが韓国に「最貧国」扱いされて…について取り上げたことがありましたが、今回も同じく、ベトナム関係のお話です。

少し古い話になりますが、昨年2012年2月17日、韓国で衝撃的なニュースが流れました。
最初に報じたのは、聯合ニュースだったみたいですが、ここでは中央日報の記事を紹介します。


「50歳以上の韓国男性、ベトナム女性との結婚を禁止」
2012年02月17日17時48分
中央日報日本語版
早ければ今年4月から、50歳以上の韓国人男性はベトナム人女性と結婚できなくなる。また韓国人男性は年齢が16歳以上離れた若いベトナム人女性を妻として迎えられなくなる。

韓国の国際結婚仲介業協会のハン・ユジン会長は17日、「先月、ベトナム各地方の代表団が集まって協議し、4月からこうした内容を施行することにした」と伝えた。

ハン会長は「ベトナムの半官半民団体の女性連盟が国際結婚の副作用に敏感になっているため、こうした措置が出てきたと聞いた」とし「今後ベトナム人女性との結婚はかなり減ると予想される」と述べた。
(以下略)
http://japanese.joins.com/article/402/148402.html


このニュース、日本でもNEWSポストセブンで「ベトナム 50歳以上、年の差16歳以上の韓国男性との結婚禁止」という見出しで報道され、ツイッターでもかなりの数の関連ツイートが流れています。
http://www.news-postseven.com/archives/20120925_144616.html


で、杉野も、このニュースが気になったので、ちょっと調べてみました。
その結果なんだけど…

これ、どうも聯合ニュースの誤報だったみたいです。

このニュースは、韓国でも大きい話題になったらしく、結局、韓国の政府機関である”女性家族部”が、ベトナムの政府機関に確認し、報じられたような事実が無いことを確認。
女性家族部のHPにて、その旨を発表する、というところにまで行ったようです。


-------------------引用開始------------------

タイトル 説明資料_聯合ニュース(2月17日)_韓国男性の50歳以上の国際結婚を禁止関連
担当者  キム·ソンチョル  電話番号02)2075-4720
登録日 2012-02-17ヒット2073
担当部署 多文化家族課
添付ファイル 120217_(女性家族部)説明資料_聯合ニュース国際結​​婚関連_ディストリビューション。

韓国男性50歳以上の場合と、ベトナム女性との年の差が16歳以上の場合、国際結婚を制限するという聯合ニュース報道関連が、事実でないことを通知します。

説明資料添付します。

-------------------引用終了------------------

http://mogef.go.kr/korea/view/news/news03_02.jsp?func=view&bid=25&idx=641912
(女性家族部発表該当部分のurl。韓国語が分からなければ機械翻訳推奨)

また実際に、ベトナムまで確認しに行った仏教空新聞とかいう新聞の記者も、ベトナム現地でこの報道が、聯合ニュースの誤報であったことを確認している。

http://www.bzeronews.com/news/articleView.html?idxno=25173
(韓国語が分からなければ機械翻訳推奨)


まあ、韓国とベトナムとの間での法的問題や、悪質な結婚仲介業者の振る舞いについては、日本や韓国でも、ネットを中心に話題になったりしていますが、当事国のベトナムでも、割合大きな問題として認識されている模様です。
参考で、ベトナム語のソースを貼っておきます。

http://www.sotuphap.bentre.gov.vn/tin-hoat-dong/phong-pho-bien-giao-duc-phap-luat/625-mot-so-deim-han-che-bat-cap-trong-luat-hon-nhan-va-gia-dinh-va-cac-van-ban-huong-dan-thi-hanh.html

http://vienkhpl.ac.vn/index.php?cid=280#_ftn9

いずれにしても、ベトナムが韓国人男性との結婚を禁止した、というのは、韓国のマスコミの誤報だったってことが分かったので、今後はあまりネット上で書いたりしない方が良いでしょう。

また、ネトウヨがマスコミに釣られた、とか言われちゃいますよ。

ところで、これが誤報であるとなると、じゃあ、カンボジアの話はどうなんだ?と疑問が湧いてくる。

在カンボジア韓国大使館のHPによると、2008年4月に、カンボジア政府が、韓国人との結婚等でブローカーが半ば人身売買の形で結婚させられているとして、カンボジア人と外国人の結婚の全面禁止を発表。

そして同年11月に「恋愛結婚なら婚姻を認める」と条件を緩和させたのだが、「じゃあ、見合いはOKだよな?」とある韓国人団体が集団見合いを行い、これが「人身売買」にあたるとして、2010年3月頃に暫定的に韓国人だけ国際結婚に関する領事確認申込書受付を停止、という流れらしい。

http://khm.mofat.go.kr/webmodule/htsboard/template/read/korboardread.jsp?typeID=15&boardid=3408&seqno=735008

しかし翌月には解除された模様。

ちなみに、この結婚禁止令だが、台湾はまだ(2013年2月1日現在)解除されてないらしい。

台湾の公視新聞網(http://news.pts.org.tw/detail.php?NEENO=232384 )によると
-------------------引用開始------------------

柬埔寨禁與台人通婚 拒發婚姻證明
柬埔寨政府宣布禁止柬埔寨人與台灣人結婚,因此柬埔寨政府拒絕發給這些家庭「結婚證書」,但是台灣法令又規定必須要有當地結婚證書才能申請結婚面談,民間團體批評,

(カンボジアが台湾人との結婚を禁止、婚姻証明発行を拒否。
カンボジア政府が台湾人との結婚禁止を宣言し、そのためカンボジア政府は、あるカップルの結婚証明の発給を拒否した。しかし台湾の法律と法令では、当地の結婚証明がなければ台湾での結婚申請が出来ず、民間団体が政府を批判している…)

-------------------引用終了------------------

実際、台湾でのベトナム人花嫁の扱いも酷いもので…

☆杉野洋明 極東亜細亜研究所〜韓国系企業の元社員が語る韓国-vm

台湾のベトナム人花嫁の広告
”3ヶ月以内に花嫁が来ます”
”20萬元ポッキリ!”
四大保証:
@処女を保証します。
A.3ヶ月以内に結婚出来ます。
B追加料金は頂きません。
C一年間で逃げ出したらもう1人補償します


日本人との結婚については、大丈夫そうだけど、本邦の国民だって、東南アジアで幼女買春してたりしてるわけで、韓国や台湾を批判出来ないんじゃないだろうか…?。
http://ameblo.jp/nidanosuke/entry-11379892926.html
http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/493.html

[政治・選挙・NHK221] トランプ演説から見える安保「満額回答」の狙い 斬世界ランキングが変える大学の序列 慶應、早稲田大より評価が高い豊田工業大
トランプ演説から見える安保「満額回答」の狙い

ニュースを斬る

日本の防衛費増額でも米国からの調達は増加か
2017年3月3日(金)
細川 昌彦
 トランプ政権が目指す方向が2月28日の議会演説で明確になってきた。安全保障に関しては、国防費を大幅に増額する方針を表明した。IS撲滅、中国やロシアへの対抗が狙いだ。同時に、同盟国に応分のコスト負担を期待していることに注目すべきだ。


 先般の日米首脳会談の共同記者会見でも、トランプ大統領は「日米両国は防衛能力を一層高めるために日米同盟に大きな投資を続けていくことが大事だ」と発言している。中国の海洋進出への対処と北朝鮮のミサイル防衛のために、日本の防衛費に対しても増額への圧力がかかることは不可避であろう。

 日米首脳会談を総括して、安保に関しては「満額回答」という見方が日本では定着している。トランプ政権は尖閣諸島が日米安保条約5条の適用対象であることを明確に確認し、懸念していた米軍駐留経費の問題も出さず、反対に謝意を表明した。日本政府も所期の目的を充分達成して大成功と評価する。

 しかし問題は、『なぜトランプ政権が「満額回答」したか』だ。

トランプ政権の「したたかな戦略」

 共同声明の中で最も注目すべきは、安保関連の最後に盛り込まれた一文だ。

 「日米同盟の強化」に向けて「日米両国の各々の役割、任務、能力を見直す」ために「外務・防衛の2プラス2を開催」する。

 簡単に言えば、対北朝鮮、対中国の日米同盟を強化するために、日本の自衛隊の果たす役割を増やし、そのために自衛隊の能力を強化する方向を目指して日米が協議する。日本の防衛費が対国民総生産(GNP)比1%と、他の同盟国と比較しても格段に低い中で、今後防衛費の増大を求めてくるのは明らかだ。これは今回の議会演説でも明確になっており、トランプ政権が北大西洋条約機構(NATO)加盟国に対して費用分担の増大を迫っていることとも軌を一にする。

 また、そこには米国の今後の軍事力の展開においてIS撲滅にプライオリティを置くため、東アジアでは日本に分担を求めざるを得ない事情もある。マティス国防長官の一連の日韓、欧州歴訪の意図もそこにあった。

日本の防衛力低下に危機感を

 問題は、日本の防衛費が増大することによって日本の防衛産業からの調達が増えるのではなく、米国の軍事産業からの装備の調達が増えるということだ。日本の防衛産業の国際競争力が脆弱であることから、ここ5年間を見ても、米国からの調達が増えている。それにもかかわらず、日本の国内調達は減って、日本の防衛産業は縮小しつつある。

 このような傾向は今後、ますます強まっていくだろう。それこそトランプ政権が期待するところであり、米国の貿易赤字を減らし、国内雇用を生む実利につながるのだ。

 この問題に比べれば、米軍の駐留経費の負担増など微々たる問題だ。尖閣諸島への日米安保条約5条の適用も、米国のこれまでの政権のスタンスを確認したに過ぎない。これらの点で日本に対して「満額回答」で満足させたうえで、今後の布石を打って実利を取る。まさにしたたかな戦略だ。

 だからと言って、この米国の戦略に日本は乗るべきではないという意味ではない。北朝鮮や中国の動きを考えれば、日本自身の防衛力を高めていく方向性はやむを得ない選択であろう。国際情勢は緊迫しており、今後、防衛費の増大は避けて通れないだろう。

 日本としてはいかに防衛産業を強化していくかを真剣に考えることが急務であり、それなくしてはトランプ政権の思うつぼだ。

 「満額回答」に喜んでいるだけではなくトランプ政権の真の狙いを見極め、日本の防衛産業の競争力低下・弱体化という現実に危機感を持つべきだろう。

 日経ビジネスはトランプ政権の動きを日々追いながら、関連記事を特集サイト「トランプ ウオッチ(Trump Watch)」に集約していきます。トランプ大統領の注目発言や政策などに、各分野の専門家がタイムリーにコメントするほか、日経ビジネスの関連記事を紹介します。米国、日本、そして世界の歴史的転換点を、あらゆる角度から記録していきます。

このコラムについて

ニュースを斬る
日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/030200593/?ST=print


 

世界ランキングが変える大学の序列
記者の眼
慶應大、早稲田大より評価が高い豊田工業大
2017年3月3日(金)
河野 祥平
 あなたは、自分が大学に進学した時、どのような基準で大学を選んだだろうか。また、自分の子供を行かせたい大学をどのような基準で選んだ(選ぼうとしている)だろうか。
 日経ビジネス2月20日号の特集「行きたい大学がない」では、日本の大学が直面している研究や人材育成、経営にまつわる課題を詳報した。大学が自ら変わらなければならないことはもちろんだが、一方で大学に進学しようとする受験生やその親が、どのような目的意識や知識を持って大学を選ぶべきかも重要になっている。
 大学を選ぶ判断材料は様々だ。入学金・授業料などの金銭面、強みとする研究の特徴、卒業生の就職や国家資格取得の実績、キャンパスの立地など。親戚が卒業した大学についての「口コミ」や、スポーツの分野で活躍する選手を多数輩出しているというのもその一つ。だが、これまで日本で最も大きな判断材料となってきのは偏差値だ。
単なる「物差し」が最大の判断基準に
 現在、日本に国公私立大学は約780校あり、大学・学部ごとに偏差値が割り振られている。これはベネッセコーポレーションや河合塾など教育ビジネスの大手各社がそれぞれ独自に算出している入学試験の難易度の指標。各社は模擬試験やアンケートなど各種の膨大なデータを基に統計的に算出しているもので、最も分かりやすい入りやすさの「物差し」である。

(写真=Natsuki Sakai/アフロ)
 偏差値が高い、すなわち難易度が高い大学には優秀な学生が多数集まり、社会的にも「高学歴」として認められやすい。そのため、入試の競争は激しく、それだけ人気がある大学ともいえる。こうした理屈から、日本においては長きにわたり偏差値が大学の格付けの指標として大きな影響力を持ってきた。偏差値の高い大学と言えば、東京大学、京都大学などの「旧帝大」や一橋大学といった国立大学、私立では慶應大学、早稲田大学などが思い浮かぶだろう。これは大学のブランドイメージにも結び付いてきた。
 「大学からは『偏差値を少しでもあげてくれないか』といった電話がよくかかってくる。もちろんそんなことは出来るわけがないですけどね」。ある教育産業の関係者はこう苦笑する。逆に、受験業界では過去に、企業側の担当者が大学側に偏差値操作を「餌」にした営業をかけるケースがあったという噂も根強い。偏差値の序列に支配される高等教育の実態は長年問題視されながら、改善が進んでこなかったこともまた現実である。
 しかし、こうした「常識」が変わる可能性が出てきている。その大きな要因が日本でも普及が見込まれる世界的な大学ランキング。特集でも取り上げたのが、最も代表的な世界大学ランキングの一つである「THE世界大学ランキング」だ。実は、このランキングを細かく見ていくと、従前のような偏差値の高い大学とランキング上位に入る大学にはズレもあることが分かった。多面的なデータを基に大学の真の実力を図るランキングの存在感の高まりを前に、多くの大学が変革を迫られている。
 THE世界大学ランキングは、英国の老舗教育情報誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)」が2004年から発表している。「教育力」「研究力」「研究の影響力」「国際性」「産業界からの収入」の5分野に大別され、さらに全13項目の指標が評価対象とされている。例えば、「教育力」であればアンケートによる評判調査、教員数と全学生数の比率など、「研究の影響力」は1論文あたりの引用数、「国際性」は留学生数と国内学生数の比率などが対象になる。
大学の総合的なポイントの高さが評価につながる
●THE世界大学ランキングの評価指標

注:THE世界大学ランキング(2016-2017年)の評価基準
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/221102/030100420/zu01.png

 13指標はそれぞれ0〜100のスコアで評価され、定められた割合に応じて足し合わせた総合点が高い順にランク付けされる。割合が大きいのは「教育力」「研究力」「研究の影響力」の3分野だが、いずれにせよバランス良く点数を積み上げられる大学の総合力が高く評価される格好だ。
トップ200にわずか2校
 さて、それでは日本勢の競争力をTHE世界大学ランキングを基にみるとどうか。今回の特集を参照いただきたいが、結果は決して芳しくない。昨秋に発表された2016-2017年のランキングでは、日本でトップの東京大学も39位にとどまっている。さらに、世界のトップ大学とされる上位200位のうち、2016-2017年は東大と京大の2校しか入らなかった(2010-2011年は5校)
 日本の大学の全体的な競争力の低下は国家レベルでの課題だが、ランキングには別の見え方もある。私大のブランド力では群を抜く慶應大と早稲田大はともに順位が601-800位と、知名度ほど順位が高いわけではない印象だ。一方、トヨタ自動車の社会貢献活動の一環として1981年に設立された豊田工業大学は351-400位。産業界や研究の影響力といった部分での高い評価が私大の双璧を上回る順位につながった。
 企業と同様、大学も「ヒト・モノ・カネ」が競争力にとって必要なことは言うまでもない。重要なのは、THE世界大学ランキングがこれらに大きな影響力を持っていることだ。例えば、優秀な各国の若者らが留学先を選んだり、企業が産学連携を進めようとする上で組む大学を選んだりするにあたり、このランキングが判断を左右するとされている。
 ランキングが下がった大学は競争力が落ちているとみなされ、さらに言えばランキング圏外の大学はそもそも留学先・提携先の候補にも入らないという事態さえあり得るということになる。加えて、政府も2013年に閣議決定した「日本再興戦略」で、今後10年でトップ100に10校が入ることを国の目標とするなど、高等教育に関わる政策や施策において無視できない評価基準となっているのだ。
 こうした日本政府の方針は、国際的に見ればむしろ遅れているともいえる。アジアでも中国や東南アジア各国は国家の施策として高等教育の水準を高め、海外から優秀な人材を獲得しようと力を入れているからだ。
 代表的なのがシンガポール。シンガポール国立大学、南洋工科大学といった国立大学はシンガポール政府が多大な予算を費やし、手厚い報酬などで世界中から優秀な研究者を集めている。一方、研究者には国際的に評価される論文を多数発表し、経営陣には優秀な留学生を多数獲得できる大学経営を強く求める。KPI(重要業績評価指標)による数値管理も徹底する。
 KPIを達成すれば研究予算や報奨金などで遇する一方、達成できなければ学内に居場所はなくなるほど厳しい環境。ただ、それがランキングの順位を引き上げ、国際的な地位を高めることにも繋がってきた。シンガポール経営大学ビジネススクールの好川透教授は「国として、高等教育に関する哲学がはっきりしている」と表現する。
広島大学は独自のKPI
 一方で、こんな疑問や反論も当然出てくるだろう。「大学の研究や人材育成の価値はそんな点数の積み上げだけで決まるものではない」「人脈を広げたり、スポーツに打ち込むことも学生にとっては貴重な経験ではないのか」
 もちろん、こうした意見にも一理ある。実際、日本の大学関係者には「ランキングを政策に反映させるのはいかがなものか」といった反発の声は強いという。加えて、大学ランキングは評価基準が変わればランキングも変動しやすく、欧米系の大学が上位に入りやすいといった面も指摘されている。また、THEなどは大学向けのコンサルティング事業を強化しており、ランキング自体の中立性が十分に担保されるのかという問題もある。
 ただ、種々の問題点を考慮に入れるとしても、普及が進む大学ランキングを日本の大学が無視できないことは明らかだ。学生にどのような高等教育を授けて活躍できる人材を育てられるか、短期・中長期に限らず画期的な研究成果をどれだけ生み出せるかーー。大学が本来担うべき高等教育機関としての役割を可視化する利点は、ランキングには間違いなくある。
首都大学東京 大学教育センターでの教育改革や総合研究推進機構の設置
広島大学 世界大学ランキングの評価指標を分析し、独自のKPIを導入
東京理科大学 起業家を組織的に育成するための「起業推進センター」を発足
関西学院大学 全学生が学部や主専攻以外のプログラムを経験できる制度を導入
競争力を高めようと新たな取り組みも
●主な大学の施策
 こうした状況を受け、いち早く大学の競争力を高めるための手段として、大学ランキングを活用しようと動き出している大学も増えている。特集でも紹介した広島大学では、2023年に世界ランキングトップ100入りを目指して、独自のKPIを取り入れた。首都大学東京や関西学院大学なども取り組みを進めている。
 シンガポール経営大の好川教授は「日本の大学は長い間、経営も研究者も『ぬるま湯』に浸かりすぎてきた。本当の大学の競争力とは何かを、真剣に考えなければならない」と指摘する。従来の偏差値序列や曖昧な「ブランド力」の上にあぐらをかき、中長期のビジョンを明確にしてコアコンピタンス(中核となる強み)を磨き込めない大学に未来はないだろう。それは同時に学生やその親が、主体性を持って大学を選ぶべき時代になっていることも意味している。


このコラムについて
記者の眼
日経ビジネスに在籍する30人以上の記者が、日々の取材で得た情報を基に、独自の視点で執筆するコラムです。原則平日毎日の公開になります。
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[経世済民119] コラム:「バフェット信仰」はもうたくさん 中国軍は南シナ海で米軍を出し抜けるか
Column | 2017年 03月 3日 20:05 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:「バフェット信仰」はもうたくさん

Edward Hadas

[ロンドン 1日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 著名投資家のウォーレン・バフェット氏はカルト的な崇拝の対象になっている。投資会社バークシャー・ハザウェイ(BRKa.N)の会長を務める86歳のバフェット氏は、膨大な投資リターンと処世訓、そして米国を応援し続ける姿勢によって尊敬を集めてきた。

だが、このオマハの賢人は、称賛と同じ程度に批判の対象ともなるべき人物だ。

歳月を経て、バフェット氏の輝かしい名声に少し陰りが出ている。2つの理由から、それも無理からぬ話だろう。

第1に、バークシャーの時価総額は4200億ドル(約47兆9300億円)まで膨らんでいるが、これに匹敵するほど印象的な投資リターンを維持する能力がないのは、どれほどユーモアたっぷりに自嘲してみせても隠せるものではない。

バフェット氏を中心とする小人数のチームは依然として優秀かもしれないが、彼らの奇跡の日々は終わっている。

2002年の時点で、バークシャー普通株の総利回りは、過去10年間にわたって年20%だった。S&P500に比べて10.6ポイントも高い、驚くべき数字だ。ただ2016年には、その差は1.3ポイントまで縮んだ。アクティブ運用するファンドマネジャーの大半に比べてはるかによい数字だが、バフェット氏の言葉を神のお告げのように扱うには十分ではない。

第2に、投資リターンが低下する一方で、バフェット氏の偽善ぶりは増大している。彼はデリバティブ商品を「金融市場の大量破壊兵器」と呼んでいるにもかかわらず、自身はデリバティブ市場での取引を続けている。

もっと重大なのは、バークシャーが株式の27%を保有する米食品大手クラフト・ハインツ(KHC.O)のブラジル人経営者たちの焼き畑的な経営スタイルを支持していることだ。これは、長期的な視点で投資する慎重な経営者を支援するという、バークシャーが築いた長年の評判を裏切るものだ。

ただ「バフェット信仰」の最大の問題は今に始まったことではない。そもそもの最初から、彼の関心は市場を上回る投資成績をあげることに集中しており、経済にはほとんど貢献していない。金融資本主義にとってはお粗末なモデルなのだ。

金融がなぜ経済の役に立つのかをエコノミストが説明しようとする場合、彼らが強調するのは、新規資本の重要性だ。企業は新製品開発や新工場建設、あるいは新規サービス提供のために、銀行から融資された、あるいは株主が投資した資金を使うことができる。投資の主要な源泉は既存事業からの留保利益だが、金融システムは、これを補完する重要な役割を果たすとされている。

こうした説明において金融に好意的なエコノミストが対処しなければならないのは、金融市場における活動の大半は、新たな生産資本の調達にはほとんど役に立っていないという不都合な現実である。特に確立された企業の株式をめぐる取引は、経済全体にとって新たな、もしくは価値のあるものを何一つ生み出すことはない。

こうした活動は実際、投資家にとって流動性を提供しており、簡単に株を売却できるなら、ひょっとしたら投資家はもっと多くの資本を提供する気になるかもしれない。あるいは、経営陣にプレッシャーをかける外部投資家の存在は、若干の価値があるのかもしれない。

だがこれらは、ゼロサム・ゲームを称賛する理由としては、いかにも根拠薄弱である。ある投資家が市場を1ポイント上回れば、誰か別の投資家が同じ1ポイントだけ下回ってしまう。経済にとって、これでは差し引きゼロである。

バフェット氏が非常に巧みにやってきたのは、まさにこのようなゲームだ。同氏は株主向けの最新の書簡のなかで、バークシャーが株式を永遠に保有し続ける意図をもっているというのは誤解であるとして、これを一掃しようと試みているものの、彼の投資戦術は、安値で買った株を大半の場合は保有し続けるというものだ。

バフェット氏はこれまでうまくチャンスを見つけてきたし、恐らく今でもそれは変わらない。だが、同氏にとっての相対的な利益は、必然的に他の投資家の相対的な損失なのである。

バフェット氏の名誉のために言っておくならば、彼はバークシャーが保有・支援する企業に圧力をかけて、可能な限り利益を搾り取るような真似はしてこなかった。同氏の不干渉主義のおかげで、他のプライベートエクイティ会社が容認する水準以上の比率で利益を投資に回すことのできた企業もあったかもしれない。

バフェット氏は25日に送付した公式書簡のなかで、バークシャーは「ドルベースの留保利益では米国企業のなかで首位」であると自慢している。昨年、彼の企業グループは約130億ドルもの資金を企業の設備投資に投じているが、それでも2015年に比べて5分の1近く減っている。

だが、バフェット氏が好むタイプの企業は、社会経済構造に恩恵をもたらすのと同じくらい、害悪をもたらす可能性がある。彼が好む企業は、価格決定力があるか、緩やかな規制のもとに置かれており、急速に変化するテクノロジーや移ろいやすい関心といった大きなリスクを取る必要のない企業である。つまり、彼が好むのは、非効率な市場で活動する効率的な企業なのだ。

その典型的な例が、クラフト・ハインツがバークシャーの手厚い支援のもとで進めたものの失敗に終わった、英蘭系日用品大手ユニリーバ(ULVR.L) (UNc.AS)買収の一件である。

買収に名乗りを上げたクラフト・ハインツは、買収価格を大幅に上回るコスト削減を予定していた。ユニリーバ―が慎重に築いてきた「開発途上国に優しく健康的な生活を支える企業」というイメージを、仮にクラフト・ハインツ側が維持したいと思っていたとしても、利益の最大の部分は投資家のポケットに入ることになっただろう。顧客は、優先リストの最下部に追いやられていくことになったはずだ。

バークシャーも、ときには新規資本を提供してきた。特にそれが顕著だったのは金融危機の時期だ。同社はゴールドマン・サックス(GS.N)や、ゼネラル・エレクトリック(GE)(GE.N)、バンク・オブ・アメリカ(BAC.N)から、法外ではないにせよ、非常に有利な条件を引き出した。

だが、後になって巨額の利益が得られたのは、米連邦準備理事会(FRB)と米国の納税者が、金融システムを自壊から救うために渋々ながら資金を出したからである。バフェット氏は米国の「経済ダイナミズム」を「奇跡的」と表現するが、彼自身は英雄的に振る舞うというよりは暴利を貪っているようにも見える。

投資家のあいだでの「バフェット信仰」は、彼が経済を支えているからではなく、市場との勝負に勝っているということに基づいている。

投資の社会的重要性が、たとえばサッカーと大差ないのであれば、こうした熱狂にも害はあるまい。しかし昨今では、成長の促進よりも内部関係者の富の蓄積に貢献するようなシステムに対して、ポピュリスト的な怒りが高まっている。もはやゲームを楽しんでいるときではない。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

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Column | 2017年 03月 3日 20:04 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:中国軍は南シナ海で米軍を出し抜けるか

 3月1日、アジアにおける米国のアプローチが常に、中国の裏庭で空母を航行させることに重点を置いている一方、中国は仮想敵国に対して戦略的バランスを崩すためにできることを何でもやっている。写真手前は中国初の空母「遼寧」。南シナ海で昨年12月撮影。提供写真(2017年 ロイター/China Stringer Network)
 3月1日、アジアにおける米国のアプローチが常に、中国の裏庭で空母を航行させることに重点を置いている一方、中国は仮想敵国に対して戦略的バランスを崩すためにできることを何でもやっている。写真手前は中国初の空母「遼寧」。南シナ海で昨年12月撮影。提供写真(2017年 ロイター/China Stringer Network)
Peter Apps

[1日 ロイター] - 米空母カール・ビンソンは、先週ほぼずっと南シナ海で監視活動を行っていた。これはまさに、米国の影響力と、米海軍の優れた世界的到達能力を示すエピソードにほかならない。

その狙いは、同盟国を安心させるだけではなく、今回の場合は、仮想敵国にメッセージを送ることにある。

しかし米国がそのような活動を、抵抗を受けずにいつまで続けられるかは、ますます疑わしくなっている。

10年余りで、中国海軍が米国よりも多くの艦船を保有する可能性を一部の専門家は予想している。中国の軍備増強は、南シナ海の領有権問題で優位に立ち、米国に対抗する戦略の一環である。

米国が世界で軍事的優位を保持することは、国防費を約9%、540億ドル(約6兆1700億円)増やすというトランプ大統領の計画の中核だ。しかし、米国がアジア地域で軍事的優位を持続させるには、それだけでは十分ではないだろう。

中国の国防費の伸びは昨年やや減速したものの、過去20年にわたり、ほぼ毎年のように2ケタ増を繰り返してきた。さらに重要なのは、米国が効果的な対応が全くできないようなさまざまな戦術を導入していることだ。

アジアにおける米国のアプローチが常に、中国の裏庭で空母を航行させることに重点を置いている一方、中国は仮想敵国に対して戦略的バランスを崩すためにできることを何でもやっている。新たな兵器システムや海軍における相当な規模の従来型の戦力拡大といったことだけでなく、海軍基地や水上発電所、人工島の建設を含む多くの戦術から成る戦略だ。

アジアで衝突が起きるのは仮定の話ではなく時間の問題だと、一部の現旧米軍当局者は考えている。同様にあり得る話と思えるのは、実際に戦争の引き金となる何かが起きる一歩手前の状態で、概して血は流れないだろうが、数十年に及ぶ対立状態に陥る可能性だ。

それこそ中国の計画なのだろう。

それは中国が自国の一部とみなす台湾の海域周辺でミサイル発射試験や軍事演習を実施した1995年以降、ますます熱心に同国が取り組むゲームである。当時のクリントン大統領は、台湾海峡を監視するため空母2隻を派遣した。それは、中国が負け戦だと分っている戦争を始めることなしには阻止できない動きだった。

以来、中国は周辺地域から米軍、とりわけ空母を遠ざけるための能力獲得に専念している。多くの専門家は、米国の戦略立案者が再び中国の沿岸地域に空母を接近させるリスクを負いたくないと考えるに十分な、潜水艦やミサイルや戦闘機といった兵器技術を中国が手にしているとみている。

中国は、至近距離の艦船を破壊するための兵器のみならず、台湾に照準を定めた弾道ミサイル数千発を保有しているとみられる。一部の専門家は、中国が今後20年のうちに台湾を支配下に収めようとする可能性を指摘している。

中国の次なる目的は、豊富なエネルギー資源が眠っているかもしれない、フィリピンやベトナムやマレーシアが領有権を主張する多くの環礁や島にまで自国の軍事力を拡大することかもしれない。

南シナ海における中国の最も尊大な領有権主張は昨年、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所で却下された。だが中国は、特にフィリピンと領有権を争うスカボロー礁周辺での建設拡大を続行した。2012年に中国軍が足を踏み入れてからは、そこに軍事施設を築き上げている。

このような基地を根拠に、中国軍は自国の領土だとして空域や海域を主張し、他国の航空機や船舶に登録を求めている。米国やオーストラリアなど他国の軍は、比較的罰せられず、国際的な正当性もほとんどないこうしたルールを無視している。

しかし、中国を止める戦略を誰も持っていない。トランプ政権のティラーソン国務長官は指名承認公聴会で、米軍が中国に南シナ海にアクセスさせないようにする可能性を示唆して驚かせた。そうなれば戦争が始まることはほぼ間違いなく、これに関してはその後言及されてはいない。

南シナ海で起きていることは、多くの点で、2014年のロシアによるクリミア併合でプーチン大統領が成し遂げたことと似ているが、より漸進的である。クリミア併合では、ウクライナや同盟国が対処する前に、軍人ではない武装した親ロシア派を使って現実を変えてしまった。

ウクライナでは、今でもロシアは公式に認めないが、結局は公然と軍事力を使って東部のロシア語を話す地域を占拠する気のあったことが明らかとなった。

問題は、南シナ海で中国も同じようなことを考えているかどうかだ。そして、もしそうなら何が起きるか、ということだ。

中国は、かつて米国が自国に対して使用したハイレベルかつハイバリューの軍事資産を獲得することに一段と力を入れている。ソ連製の中国初の空母は、主に訓練での使用にとどまってはいるものの、かつてないほど活動している。昨年12月、同空母は中国の沿岸水域外で初の長距離パトロールを実施したとみられる。中国はまた、初となる国産空母を建造しており、報道によると、さらにもう1隻の建造も進めているという。

これら空母は中国の国際的なイメージにとって重要である。ロシアが昨年後半にシリアで空爆を実施するために唯一の空母を派遣したことで集めた注目を目の当たりにしたからだ。中国は、ロシアのように、弾道ミサイル搭載の潜水艦の建造を増やしている。これは、中国のいかなる仮想敵国にとっても、全面戦争によって大激変をもたらすリスクに対する明らかな警鐘となっている。

いくつかの予測データによると、向こう10年から15年で、中国は高性能のコルベット艦や巡視船、他の艦艇のみならず、最大4隻の空母や潜水艦100隻を含む、計500隻の艦隊を持つ可能性がある。一方、トランプ大統領は米海軍の艦船を350隻に増やし、より強力な艦船の割合を高め、全世界に展開させるという計画だ。

米空母カール・ビンソンは、南シナ海の領有権が争われている海域を通過することで、米国の軍事力を改めて誇示した。しかし実際に戦争が起きた場合、そのように巨大な艦船が撃沈されるまでどれくらい生き残れるかは全く分からない。

どちらにせよ、カール・ビンソンは来週、同地域を離れる。だが、米国の他の戦力は残されたままだ。そして中国も依然として軍備増強を進めるだろう。

*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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グローバル企業はなぜ貧しい母子を見殺しにしたのか
大企業への告発を描いた映画『汚れたミルク』が日本で世界初公開
2017/03/02
小川たまか (ライター・プレスラボ取締役)
 映画『汚れたミルク/あるセールスマンの告発』は1990年代から今も続く事実に基づくフィクションだ。2014年の完成後、海外の映画祭では何度か上映されたことがあるが、その後、公開されることがなく、今年になって世界で初めて日本での公開が予定されている。

 公開が遅れた理由は、作品を見ればすぐにわかるだろう。この作品は、あるグローバル企業に対する1人の労働者の告発を描いている。彼はこの告発のために脅迫を受け、祖国に帰れず、家族とも離れて暮らすことになった。


『汚れたミルク/あるセールスマンの告発』は3月4日公開予定
(公式HP http://www.bitters.co.jp/tanovic/
『汚れたミルク/あるセールスマンの告発』あらすじ
1997年.ある大手グローバル企業が、パキスタンで粉ミルクを強引に販売したことによっ
て、不衛生な水で溶かした粉ミルクを飲んだ乳幼児が死亡する事件が発生した。セールスマンのアヤンは、自らが販売した商品が子どもたちの命を奪っていることに気づき、世界最大企業を訴えようとする。アヤンの前に立ちはだかる、途方もなく巨大な権力の壁。しかし、男は人生の全てを投げ打って立ち向かう。子どもたちを守るため、そして愛する家族のために――。これはパキスタンで実際に起こった事件を基に描かれる、隠された真実の物語。
WHOが粉ミルクより液体ミルクを推奨する理由

 日本では昨年末、液体ミルク解禁のニュースが報じられた。今年に入り、国内販売開始について2020年を目標とすることが発表されている。

 液体ミルクは常温で保存することが可能で、粉ミルクのようにお湯で溶く手間がかからない。熊本地震の際に特例としてフィンランドから液体ミルクが贈られたことが話題となったが、緊急時の備蓄用のほか、外出時の負担削減などのために販売を求める声が挙がっていた。※ミルクは始めから液体では…と思われる方もいるかもしれないが、“粉”ミルクとの比較で“液体”ミルクと名付けられている。

 実はWHO(世界保健機関)は、日本では一般的な粉ミルクよりも液体ミルクや母乳を推奨している。これは主に発展途上国に対する啓発だ。

 映画の中では下水道が整備されていない地域で、衛生的ではない水で粉ミルクを溶く母親の姿が登場する。ミルクを与えられた乳児は下痢などの症状を起こし、命の危険にさらされる。母親たちは大手グローバル企業(※)の販売する粉ミルクは質が良いと医師から勧められていた。

(※)作中に実名が登場する。インターネット上でもすぐに検索できる。

 発展途上国における粉ミルクの危険性は不衛生な水だけが問題ではない。貧しい家庭では、粉ミルクを節約するために薄めて使ってしまうことさえあった。もちろん、これでは乳児が必要な栄養分を接種できず、栄養失調につながる。さらに、粉ミルクだけを与えることが続くと、多くの場合、母親は母乳が止まってしまう。粉ミルクを買うお金がなくなった母親が母乳を与えようとしたとき、母乳が出なければ乳児は栄養を摂ることができなくなる。

 海外では、メーカーが無料配布した粉ミルクのサンプルを使ったために母親の母乳が止まり、深刻な事態に陥ったケースも報告されている。このため、WHOは粉ミルクメーカーが母親たちに直接接触することについて注意喚起を行っている。


「メーカーがこの映画の公開を好ましく思っていないことは確か」

 映画の主人公アヤンのモデルになったのは、現在トロントに暮らすサイヤド・アーミル・ラザ・フセイン氏だ。フセイン氏にスカイプで共同取材を行い、いくつかの質問をした。

 この映画で糾弾されているグローバル企業がパキスタンで粉ミルクを販売する際、医師や母親に対して「衛生的な水を使う」「薄めてはいけない」「母乳が出なくなる可能性がある」などの指導を行うことはなかったのだろうか。賄賂を受け取って母親たちに粉ミルクを進めていた医師は、この危険性に気づいていなかったのだろうか。

 フセイン氏は、母親たちに対する指導は「全くなかった」と答えた。

 「医者たちは(下水道が整備されていないパキスタンでは)母乳が一番良いことはわかっていたが、情報を分かち合うことはなかった。記憶にある限り、母親たちに情報を伝えるプログラムはなかった。ただ、それにもかかわらずベビーショーなどで母親たちに接触し、『賢い子になりますよ』と言いながらサンプルを渡す行為は、違反行為にもかかわらず行われていた」(フセイン氏)

 また、彼が務めていたグローバル企業は日本でも展開しているが、日本国内での粉ミルクの製造販売は行っていない。このことと、世界で初めて公開が決まった国が日本であることについて関連があると思うかを聞いた。

 「関係はないと思うけれど、理由の一部なのかもしれない。少なくとも、メーカーがこの映画の公開を好ましく思っていないことは確かだと思う。当初の予定ではインドや中東で公開される予定があったけれど、とにかく公開が決まったことがうれしい」(フセイン氏)

 このグローバル企業は児童労働などの問題でも糾弾され、国際的なイメージは非常に悪い。しかし日本ではほとんど報じられておらず、関心が払われていない。また、映画内ではこの企業だけではなく、他のグローバル企業でも同じことが行われている可能性があることも示唆されている。

「巨悪の出どころは、強さではなく、弱さ」

 映画のパンフレットには、このような社会問題をどうやって「説教臭くならずに」伝えるかが大きな課題だったと書かれている。妻子を愛する普通の市民だったフセイン氏が大企業との闘いに身を投じていく姿が違和感なく描かれている。


 試写を見たという、液体ミルクの国内販売を求める「乳児用液体ミルクプロジェクト」代表の末永恵理さんからはこんな感想が寄せられた。

 「構成が面白い映画で、社会派だけど居心地悪くならず楽しみながら観られました」

 「観客は主人公の成功を追体験し、その成功を手放し家族を危険にさらすことの過酷さも目の当たりにします。これは同時に、粉ミルクに関わる社員や医師たち全員が突き当たる壁でもあります。(悪から)目をそらす一人ひとりの弱さが集まったとき、赤ちゃんを死に追いやる巨悪に化けてしまうのです」

 「巨悪の出どころは、強さではなく、弱さである。目をそらす弱さが、ときに、さらに弱い人への暴力になり得る。だから、まずは自分が、目をそらさずに見つめること。特殊な状況を描いた映画ですが、そこから浮かび上がるメッセージはとても普遍的で共感できて、自分の糧にしたいと感じるものでした」

 「ちなみに、衛生状態のよくない場所では粉ミルクはリスクとなり、液体ミルクの普及が本気で命を救えることも良く分かる内容となっていますよ」

 弱さは誰の中にもあるものだろう。この映画で描かれる事実は「遠くの貧しい国で起こったこと」ではない。

 フセイン氏の告発はすでに20年近く昔のことだ。しかし作品を最後まで観れば、この問題が昔のことではなく、今現在も続いていることがわかるだろう。

『汚れたミルク/あるセールスマンの告発』
© Cinemorphic, Sikhya Entertainment & ASAP Films 2014
3/ 4(土)より、新宿シネマカリテほかで全国順次ロードショー。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9015


 
自分の子や孫を「貧困層」に落とさないために私たちができること=山田健彦

2017年2月28日 ニュース

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教育水準と将来の収入には、高い相関関係があるとされます。自分の子どもや孫が経済的に困窮しないように、と願うのは人情でしょう。ただし、いま議論が活発化している「教育無償化」だけに頼っていては、片手落ちになるリスクがありそうです。(『資産1億円への道』山田健彦)

「我が子の生涯賃金」は何に左右されるのか。最重要の要素とは?

活発化する「教育無償化」をめぐる議論

誰しも自分の子どもや孫が健康でいられると同時に、経済的に困窮しないようにと願うのは世の常だと思います。

さて、教育水準と将来の収入には高い相関関係がある、というのが定説になっています。文部化科学省の調査でも、

両親の収入が高いほど4年制大学への進学率が高くなる
どのような学校段階に進んだかは、卒業後の就業状態や所得に影響を与える
とあります。

貧困により高校、大学、あるいは大学院へ進むことができないのは、本人にとってのみならず、国にとっても大きな損失です。このような社会的問題がクローズアップされて、教育費の無償化をめぐる議論が国会で活発になってきました。

【関連】安倍政権の命取りに?森友学園小学校の地下に眠る「最大のタブー」=近藤駿介

国会での議論がアテにならない理由

国会では教育無償化を実現するにあたって、憲法改正が必要/必要ナシなどの議論があり、かたや財源確保でも各党の主張はバラバラで、一致する点を見いだすのは容易ではなさそうです。

教育無償化は授業料などを免除する政策ですが、その範囲をめぐっては就学前の幼児教育から大学や大学院を含む高等教育までと幅広く、一口に無償化と言っても、その対象をどこで線引きするかによって国の財政負担額は大きく変わります。

現行憲法では「義務教育は無償」とする規定はありますが、就学前の教育や高等教育には何も言及していません。「改憲が必要」とする人たちは、政権が代わっても教育無償化が維持されるために改憲の必要性を主張しています。

必要な費用は、各党の見積もりベースで3.5兆円から5兆円と幅があります。その中で最も高い比率を占めるのが、大学や大学院などの高等教育にかかる負担額。文部科学省などによると、全国の大学や短大が学生から集めている年間授業料が約3兆1千億円に上り、無償化にはこの程度のお金がかかることになります。

安倍首相が1月の施政方針演説で意欲を示したのは、高等教育の無償化です。政府は来年度予算案に大学の給付型奨学金創設で70億円を盛り込みましたが、無償化実現には遠く及ばない金額です。

Next: 「大学の選択=高等教育は将来の賃金に影響しない」米経済学者の主張

将来の年収に影響するのは大学よりも父親?

一方では、反対論もあります。代表的なのは、「大学教育をすべて無料にするとか、返済不要の奨学金を広く用意すると、自分の学費と生活費を親から面倒を見てもらっている人は得をする。対して、家計を支えるために、大学なんぞにいっておれない人々に対しては増税などで負担増を強いるだけではないか」というものです。このように、社会制度が教育制度やその成果に与える影響を研究するのを「教育社会学」と呼ぶそうです。

もう1つ、メディアではほとんど報道されていませんが、「教育経済学」的見地からの議論もあります。慶応大学SFC(湘南藤沢キャンパス)の教育経済学者・中室牧子准教授の研究によると、「どの高校や大学にいっても、将来の年収に影響しない」「父親が勉強を見ると、子どもの学習時間は長くなる」そうです。
※参考:「じつは学歴で年収は変わらない」日本の教育を変えるエビデンス・ベーストとは? 中室牧子さんに聞く – The Huffington Post

教育社会学と教育経済学の違いですが、中室准教授は「教育社会学は、教育格差や不平等に注目し、親の所得や子どもの学力との関係を分析します」「教育経済学では、子どもが自分で選べない“親”や“遺伝”などの影響を制御したうえで、子どもの学力を上げるために、私たちに何ができるのかを分析します」と言っています。

教育経済学の代表的な成果としては、米国プリンストン大学の経済学者らが「大学の選択は将来の賃金に影響しない」ことを明らかにしています。この結果を踏まえ、米国では高校の進路カウンセラーは生徒に「偏差値で大学を選ばずに、何をやりたいのかで選ぶことが大事だ」とアドバイスしているそうです。

生涯賃金に影響を与えるのは、5歳以下での教育かもしれない

どこの大学に行くのかで将来の収入に影響が出ないのなら、いったい何が影響を与えるのでしょうか。

アメリカでは、「5歳以下の教育や健康への投資が、生涯に渡って大きな影響を与える」という研究が多数報告されているとのことです。子どもや孫に、学習する習慣を身に着けさせることも大事です。

中室准教授の調査によれば、「親が勉強時間を決めて、子どもに守らせる」「親が勉強を見ている」と、子どもが自ら学習する習慣を身につけるそうです。調査では「父親が、机に座って勉強を見ている」場合に、もっとも学習時間が長くなる傾向が見られました。

また親ではなく、大人が子どもの勉強を見た場合でも、子どもの学習時間が増える結果が得られたとのことです。親や大人の行動によって、子どもの学習時間は変わるのですね。

また、中室准教授は「『親の学歴・収入が高いほうが、子どもの学力が高い』という相関関係を明らかにした研究成果とも照らし合わせると、下位層の子どもの保護者の学歴や収入は、高くないと考えられます。貧困の世代間連鎖は、深刻な社会問題です。これを断ち切るために、下位層の子どもたちの学力をどう上げていくかが重要です」と述べています。

どのようにすれば子どもたちの学力が伸びるのかを調べることなく、「教育の無償化」のみに焦点を当てている今の国会の議論には、ちょっと問題があるのではないでしょうか?

なお筆者のブログにも補足で、シカゴ大学のジェームズ・ヘックマン教授(2000年、ノーベル経済学賞受賞)の研究について載せています。

【関連】高等教育無償化の財源に?「教育国債」にひそむ日本の問題点=久保田博幸

【関連】さらに貧困化する日本人。「エンゲル係数急騰」本当の理由=内閣官房参与 藤井聡

【関連】春が来た!「国の教育ローン」を使いこなす11のポイント=新美昌也

1 2
『資産1億円への道』(2017年2月22日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
http://www.mag2.com/p/money/34826

http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/726.html

[経世済民119] 会議を邪魔する「3大モンスター」 「同一労働同一賃金」の目的は格差是正ではない 処遇差の「合理性」とは? 日本での導入

会議を邪魔する「3大モンスター」
会議が変われば、仕事が変わる
枝葉末節を延々と論じる「枝好き上司」
2017年3月6日(月)
横田 伊佐男
 時間が長く、成果や結論がまとまらない非効率会議に不満を抱えるビジネスパーソンに向けて、本コラムは、「最強会議」のあり方を紹介しています。
 非効率会議とは正反対である「最強会議」を「最小時間で、最大成果を残す」と定義することに異論を挟む余地はないでしょう。前回記事の「『トランプ大統領と電話会議』なぜダメか」では、安倍首相が短時間でトランプ大統領との会談をまとめ、成果を残したことをその手本として紹介しました。
「3大欠如」の要因は「人」にある
 ひるがえって、ビジネスパーソンの現場を見ると、なかなかそうはうまくいっていません。短時間で大きな成果を上げられていません。それは、会議を仕切る議長の3大欠如、すなわち「逆算力の欠如」「ファシリテーションの欠如」「執念の欠如」があるからです。
 では、議長を悩ますこれら3大欠如の要因は何でしょうか。私は会議運営に悩みを抱える受講生に向けて講座を展開する中で、それら欠如の要因は、「人」にあることを突き止めました。
 最強会議運営のやり方を体系的に学んでも、現場に戻ると会議に参加する人の顔がどうしても浮かんでしまうのです。
 「あー、あの人達には通用するのかな。うまくいくかな」
 ビジネスパーソンが会議に費やす時間は膨大です。しかし、会議を上手に活用できれば、意思決定が早まり、アイディアがあふれ、参加者のモチベーションを上げることができます。そんな会議を邪魔する「人」は、まさしく「モンスター」です。
 その「モンスター」は、3種類に分かれます。受講生に対して与える3大モンスター別の処方箋、いや退治方法をお教えしましょう。3種類の「モンスター」達とはどんな「人」なのでしょうか。
若手に多い「無口」モンスター
 まず、会議中にまったく発言しない「人」、これが「無口モンスター」です。会議室を静寂で支配します。能面のような表情、終始手元にある資料を見る振りをしながら、居眠りを決め込みます。意見を募ろうとすれば、頑なに気配を消しながら決して発言することはありません。
 静寂を装っているので、会議を邪魔するようには思えませんが、会議を有効活用しようとするやる気あふれる議長を幻滅させるには、「静寂」はあまりにパワフル過ぎます。まだ仕事に不慣れな若手に多く見られます。
 では、彼ら「無口モンスター」は、なぜ無口になるのでしょうか。それは、3つの「ないない意識」があるからです。
・(自分は、会議と)「関係ない」という意識
・(会議が)「面白くない」という意識
・(会議によって、何にも)「変わらない」という意識
 当事者意識が極めて希薄なのです。そのための対策キーワードは、「見える化」です。
 彼らが発言に関与することを参加者全員が目に見えるよう可視化することが大事になります。彼らに発言の機会を与えましょう。具体的には、ポストイットを参加者1枚ずつ配布し、意見を書いてもらいます。それらを一斉にホワイトボードなどに貼り出すのです。議長が貼り出した意見をグルーピング化し、参加者の意見を構造化できれば満点です。
 これは通常の意見の募り方と異なることでしょう。通常は、一人ひとり順番に意見を募りますが、これだと声の強い発言者や上役の意見に影響を受けます。一斉に募ることで、他者意見に影響を受けることなく、発言を余儀なくさせられます。
 また、議長が意見を構造化することで、参加者のどういう意見が大多数で、自らの意見はどこに属すかなど、興味を喚起させることもできます。
 「見える化」が重要なのは、人は目で見て情報を取得する性質があるからです。花火のように夜空に消えるがごとく、発言自体も空気に紛れてしまいます。それをポストイットなどで可視化しておけば、「耳で聞いて」や「記憶を探して」発言することよりずっと、「目で見て」発言することが容易になります。
年配に多い「枝好き」モンスター
 会議には、主要な「論点」、つまり考えるべきポイントがあります。そしてその「論点」には、本質たるべき「幹」があり、本質から外れる「枝」があります。その先には表面だけの「葉」があります。
 四字熟語にある「枝葉末節(しようまっせつ)」とは、本質から外れた些末なことを表す通り、「枝」を掴まず、「幹」を意識することが会議の場合、いや仕事全般的に極めて重要になります。
 しかしながら、会議には、「幹」から外れ、「枝」をつかまえ、延々と論じる「枝好き」モンスターがいます。どうでもいいこと、今この場で論じなくてもいいことについて時間を独占して話し込もうとします。いったん会議の主導権が「枝好き」モンスターに渡り、軌道修正が利かない場合は、会議自体がそれで終了し、何の結論も成果の残せなくなります。
 なぜ、彼らは「枝」を掴んでしまうのでしょうか。
 それは、情報のインプット量が少ないので、自分の知っている範囲、経験値でしか発言できないからなのです。何が本質か見極めるための勉強量が圧倒的に少ないとも言えます。しかも困ったことに、年配の上役の人に多いのが特徴です。つまり、「もっと勉強してきなさい」と言えないことが会議の雰囲気を重苦しくしてしまいます。
 これらの対策キーワードは、「準備とルール化」です。まず議長が前提や背景情報を丁寧に説明した後に「論点=考えるポイント」を決めます。この論点は、「〜について」ではなく、「〜なのか?」という5W1Hで表現されるような疑問文でなければなりません。
 「今日は、この問い(論点)に対する答えを話し合います」と事前に準備します。次に、会議の目立つ場所、ホワイトボードなどに大きく「本日の論点は○○○。この論点から外れたら、即座に論点に戻りましょう」と書き出し、ルール化します。
 とはいえ、それでも話は必ず脱線します。つまり「幹」から離れて、「枝」に流れます。その度に、「皆さん、論点から外れてませんか」と勇気を持って振り返りましょう。慣れてくれば、参加者は頭をかき、笑いながら、「枝」拾いをやめてゾロゾロと「幹」に戻ってくれます。
中堅に多い「あいまい」モンスター
 最後のモンスターはちょっとやっかいです。発言しない「無口モンスター」でもなく、本質から外れる「枝好きモンスター」でもありません。しかしながら、立場を明らかにせず、コミットを避け、結論をはぐらかし続けます。それが「あいまいモンスター」です。仕事に精通する一方、いろいろな責任を負わされる40代の中堅に多く見られます。
 例えば、「賛成」か「反対」かの立場を明らかにしない。声の強い意見などが大勢を占めるまで辛抱強く潜伏し続けます。また、自らが表立って解決するよう前に出てくることは絶対にありません。議長の多くは、参加者の発言により何かを決めたり、アイディアを創出することを期待しています。そんな中、「あいまいモンスター」の存在は、手応えが感じにくいので歯がゆくなります。
 なぜ「あいまいモンスター」は、立場を明らかにせず、コミットもせず、会議の場で潜伏し続けるのでしょうか。
 それは、「自分だけに」火の粉が飛んで来るのを極端に嫌がるからです。不用意な発言で「自分だけが」担当になってしまう、そんなことから逃れたいのです。そういう彼らへの対策キーワードは、「火の粉の分散化」です。全員に役割を与えるようにしましょう。
 会議の最後を使って、以下3つを取りまとめると行動が倍速化できます。時間はわずか5分ほどでまとまります。

 これらを書き出し、会議終了後に全員で確認します。この名前の中にタスクを担当してもらう「あいまいモンスター」も入れ込みます。
 大丈夫ですか、という不安な声が聞こえてきそうですが、大丈夫です。彼らの名前だけでしたら嫌がりますが、参加者の多くが「担当者」に名を連ねていれば、自分だけ重荷を背負わされたという被害妄想から遠ざけてあげられるからです。
 会議は、「人」と向き合います。「人」で成果を上げることもできれば、「人」で成果を下げ、意味がなくなることもあります。
 会議の質を下げるモンスターの正体を見極め、タイプ別に対策を講じることで、必ず会議は好転します。会議が好転すれば、仕事が好転していきます。
 「人」と向き合う会議ですから、モンスターと向き合い問題解決してみましょう。モンスターと言えども恐れる必要はありません。彼らモンスターも「人」の子なのですから。
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 本コラム著者、横田伊佐男氏による1泊2日の合宿型講座です。「確実に」「ストレスなく」組織の生産性を上げる会議の進行手法を2日に分けてしっかり学べます。
 プログラムは「最大の効果を引き出すためのカンタン準備術」「論点を定める『拡大思考』」「アイディアを整理する『分割思考』」「圧倒的な実行力を生み出す『俯瞰思考』」などで構成。15分の簡易ミーティングから数日に及ぶビジネス合宿まで、各種会議を効率的に取り仕切ることができるようになります。
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このコラムについて
会議が変われば、仕事が変わる
 会議に次ぐ会議…。ビジネスパーソンにとって「会議」は必要不可欠な活動ですが、忙しければ忙しいほど、非効率な会議は避けたくなるものです。効率的かつ生産性のある「会議」は、上級管理職から一般社員まで共通の願い。とはいえ、理想にほど遠いのが現状でしょう。
 このコラムでは、その課題を解決しつつ、「受動的」に会議にぶら下がる社員から、「能動的」に会議を仕切るビジネスパーソンに生まれ変わるため、カンタンかつ最強の会議術を修得してもらおうと考えています。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/skillup/16/012600016/022800007/ 

 


「同一労働同一賃金」の目的は格差是正ではない
ここが間違い、女性の攻め方
処遇差の「合理性」とは? 日本での導入が難しい理由
2017年3月6日(月)
野村 浩子
 「働き方改革実現会議」で、「長時間労働是正」に向けての議論が進んでいる。争点は、「残業時間の上限規制」と「勤務間インターバル規制」の導入。さらには、「同一労働同一賃金」も注目を集める。非正規従業員の待遇改善を目指し、昨年末には政府ガイドライン案が示されている。今回は、2008年から正社員とパートタイマー社員との間で「同一労働同一賃金」を実現している、りそな銀行に制度導入の目的とその効果を聞いた。

「同一労働同一賃金って何? 僕たち管理職が、派遣社員の人と同じ仕事をするってこと?」
 ある大手企業の管理職が、冗談交じりにこうもらした。その内実が分からずに戸惑っていることが見てとれる。よく分からないのは管理職だけではない。ある上場企業の役員は、こうあっさり切り捨てた。
「同一労働同一賃金? だって非正規は、雇用の調整弁ですからねえ。そんな甘いことを言っていたら経営が成り立ちませんよ」
 
 こうした台詞を口にできるのも、もはやこれまで。2016年12月に同一労働同一賃金の政府ガイドライン案が発表され、パートタイム労働法など関連法案の改正が見込まれる。いずれの企業も、否応なく対応を迫られることになる。
目指す賃金水準は「非正規は正規の8割」
 同一労働同一賃金とは、ざっくりまとめて言うなら「同じ仕事をしている人には、不合理な差別をすることなく同等の賃金を払いましょう」ということ。
 今や働く人の4割を非正規労働者が占める。非正規で働く人のうち、世帯主もしくは単身者は1割を超えている。非正規は主婦パートが中心だから時給が安くても生活には困らないという時代は終わった。非正規であってもその収入で家計を支える人が増え、社会的格差の大きな要因となっている。
 安倍晋三首相が「非正規という言葉をなくす」「同一労働同一賃金の実現を」とこぶしを突き上げるのは、単に経済格差の解消のためだけではない。賃金を上げて、消費を底上げして経済を活性化させることが狙いである。
 お手本は、欧州にある。EUは1997年のパートタイム労働指令で「同一労働同一賃金」を定めた。日本では、非正規雇用者の賃金は正規の6割弱にとどまるが、欧州各国をみると8割から9割の水準である。日本も同一労働同一賃金を実現して、10年かけて欧州並みの8割の水準に近づけたいというのが政府の狙いである。
日本での導入が難しい理由
 ただ、お手本が欧州にあるといっても、日本で実現するのは、極めてハードルが高い。安倍首相が「同一労働同一賃金を実現する」と口にしたとき、多くの人事・雇用の専門家らは耳を疑ったものだ。日本では、なぜ難しいのか。
 ひとつには、欧米ではジョブ型雇用であるのに対し、日本ではメンバーシップ型雇用であるためだ。ジョブ型、メンバーシップ型というネーミングは、日本労働政策研究・研修機構の主席統括研究員の濱口桂一郎氏によるネーミングで広く知られているので、耳にしたことがある方も多いだろう。
 欧米では「この仕事をしてもらいましょう。このポストに就いてもらいます」と職務を明確にして採用する。対する日本は、採用時にどこに配属されるか、どんな仕事をするかはわからない。いったん採用されたら、企業のメンバーとなり、辞令に従い異動もすれば転勤もする。そのかわり雇用は基本的には定年まで保障されている。年功型賃金のカーブが緩やかになってきたとはいえ、通常は、50歳前後まで給料は少しずつ上がっていく。
 一般的に若いころは働きに比べると給料が安すぎるものの、中高年になると貢献度に比して給料をもらい過ぎとみられる人も少なくない。こうした日本のメンバーシップ型雇用の下、「同じ仕事なら、同じ給料にしましょう」という同一労働同一賃金を導入するのは難しい。
 もうひとつは、欧州では一般的に産業別労働組合が力を有しており、同じ産業内、職種内で給与水準が決められ、それがフルタイム勤務の正社員以外にも適用されやすい仕組みのため、同じ仕事なら同じ給料と定めやすい。ところが日本は企業内労働組合が中心で、その多くは正社員が対象である。これも同一労働同一賃金の導入を難しくしている。
 こうしたハードルがあるなかで、早くも2008年に「同一労働同一賃金」の人事制度を導入した企業がある。グループ全体で正社員約1万7000人のりそな銀行である。導入の目的、そして制度の内容を聞くため、同社の人事部を訪ねてみた。
「同一労働同一賃金は、結果に過ぎない。目的ではない」
「同一労働同一賃金は、結果に過ぎないのです。正規と非正規の処遇差をなくすことを目的に導入したわけではありません」
 開口一番、人事担当は少し困惑した表情でこう言った。2003年、経営破たんした同行は、社員の大量退職という事態を迎え、それまでの男性総合職中心の働き方を見直さざるを得なくなった。性別・年齢・雇用形態に関係なく、すべての社員が活躍するような「ダイバーシティマネジメント」を進めないと、会社が回らなくなったのだ。
 年齢が上がるとともに給料が上がる年功給の仕組みを廃し、「職能制度」から「職務等級制度」へと切り替えた。正社員、パートタイマー社員に共通の職務等級を導入し、同じ職務グレードならば、職務給(基本給)を時給換算で同額とした。その結果、「同一労働同一賃金」になったというのだ。
 実は、りそな銀行の導入経緯は、欧州のそれと近い。日本総合研究所の調査部長である山田久氏は、著書『同一労働同一賃金の衝撃』(日本経済新聞出版社刊)のなかで、日本においては正規と非正規の格差是正のために導入論議がなされているが、欧州では人権保障の概念の下、性別や人種間の格差是正、社会のダイバーシティの尊重により活力を高めることに目的があったと説く。「『同一労働同一賃金』の真の意義は、働くすべての人がその属性にかかわらず、それぞれの持つ個性を生かして能力を発揮することを促すための、報酬面で有効な基準である」とする。
 経営破たんを受けて、性別・年齢関係なくすべての人に活躍してもらう必要に迫られたりそな銀行もまた、ダイバーシティ尊重のなかで「同一労働同一賃金」を実現したことになる。
 りそな銀行の人事制度は、図1、図2の通り、現在は大きく3つのコースに分かれる。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/261748/030100015/graph1.JPG


http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/261748/030100015/graph2.JPG

 無期雇用の正社員も、パートナー社員(パートタイム社員)も、同じ職務グレードで仕事をしていれば、時給は同じである。この場合のパートタイム社員はフルタイムを前提に働く人を指す。この他、扶養の枠内で就業調整をする人もいるが、その場合は時給が低くなる。これに2016年4月に「スマート社員」が加わった。やはり、時間あたりの職務給(基本給)は同じだが、残業ゼロか、職務限定かを選ぶことができる。出産・育児や介護といったライフイベントに合わせて、働き方を変えたいという社員が増えたことに対応するものだ。人数でみると、社員が約6割、パートナー社員が約4割、始まったばかりのスマート社員は現在200人ほどといった割合だ。
「全部同じ処遇だと、かえってバランスを欠く」
 コース間の行き来もできる。これまでもパートナー社員から正社員への登用は行われていたが、これに加えて2016年春から、スマート社員への転換も始まった。子育てを理由に、正社員からスマート社員に転換した社員は、昨年は100人ほど。またパートナー社員からスマート社員への変更も昨年は100人ほどいた。一時的な職種変更も可能だという。スムーズな移行ができるのは、同じ仕事なら時間当たりの基本給が同じだからだ。どんな雇用形態であっても、どのグレードにいるかで時給が決まるため透明性が高い。
 ただし正社員もパートタイマー社員も「全部同じ処遇だと、かえってバランスを欠く。金銭的処遇差も必要だ」と人事担当は語る。正社員には、転勤もあれば、トラブル対応・緊急対応にあたる時間外勤務もある。負う責任も違えば、負担感も違う。その分「金銭的処遇差」をつけないと、社員の納得感は得られない。「公平感」を保つには、金銭的処遇差と非金銭的処遇差の双方をにらみながらバランスをとる必要があるのだ。
 そこで、賞与や手当、退職金で差をつけている。例えば、正社員の賞与を100%とするなら、スマート社員は70%、パートナー社員は少額。退職金も、正社員には100%支給されるが、スマート社員は「一部」、パートナー社員は「なし」といった具合だ。手当も、正社員には、住宅手当や子供手当があるが、そのほかの社員にはない。年収換算して比べると、正社員5:スマート社員4:パートナー社員3、といった比率になるという。
 これから同一労働同一賃金を導入する企業では、人件費のアップが気になるところだろう。非正規の処遇改善をする分、正社員の賃金引下げも起こりかねない。りそな銀行の場合、2008年に導入して以来、人件費の負担増はなかったのか。
 同行の場合、もともとパートナー社員の時給水準が高めで、制度変更前の時給でグレードを決めたため、導入時の人件費のアップはなかったという。ただし、その後は評価に応じて上がるか横ばいのどちらかとなる。そこで少しずつ人件費は膨らんでいったが、コスト増のマイナス面よりも、社員のモチベーションが上がることによるパフォーマンスの向上といったプラス面のほうが大きかったという。
 「人件費が膨らんでも、パフォーマンスが向上すれば、総額としてはコントロールできると考えていた」と人事担当。こうした考えにもとづく同一労働同一賃金は、同行の経営立て直しを成功させた故細谷英二会長の置き土産のひとつである。
何が「合理的」な処遇差で、何が「不合理」なのか
 現在も議論が進む「働き方改革実現会議」には、同行の人事担当役員も参加している。ここでの議論も踏まえて、昨年末には「同一労働同一賃金」の政府ガイドライン案が示された(図3)。基本給、賞与・手当、福利厚生、教育訓練・安全管理の4分野にわたり、正規と非正規の従業員の間でその差が合理的と認められるか否かの指針を示すものだ。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/261748/030100015/graph3.JPG

 このガイドラインをみると、欧州の同一労働同一賃金の「運用方法」をモデルとしていることがうかがえる。東京大学の水町勇一郎教授は、『非正規雇用改革』(日本評論社)のなかで、欧州の事例をこう解説する。同じ仕事をしているからといって、賃金をまったく同じにすることは、キャリアコースの違いなどから実際には難しい。そこで手当や福利厚生も含めて同一労働同一賃金に近づけるという運用がなされている。欧州の先例もふまえ「均衡待遇の実現に向けては、賃金のみならず待遇一般を対象とする必要がある」という。
 昨年末に開かれた働き方改革実現会議では、人事・雇用の専門家、そして労使の間でも、こうした考え方で概ね一致している。日本政府のガイドライン案は、この議論を踏まえて策定されたものだ。
 2011年に厚生労働省が行った有期労働契約に関する調査を見ると、正社員と有期雇用者の間には、家族手当、住宅手当、また福利厚生などで大きな差がある(図4)。基本給以外の手当についても、その差に合理性があるかを問い直す必要がある。

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 そうした視点で、図3の政府ガイドライン案を今一度見てみよう。
 賞与では「同じ貢献なら同一の額を支給すること」とされ、役職手当や時間外手当の割り増し率、通勤手当や単身赴任手当についても同一とするようにと示された。ただし、家族手当や住宅手当については明記されていない。賞与に関しては踏み込んだ指針となっており、役職手当や時間外手当の割り増しについても、均衡待遇への一歩となるだろう。
 教育訓練はどうか。職務内容が同じなら、正社員と非正規従業員の教育訓練の機会も同じとすることとされた。もし実現すれば、均衡待遇に近づける後押しとなるはずだ。
 もっとも注目される「基本給」については、@職業経験や能力、A業績・成果、B勤続年数――という3つの評価基準が提示された。ただしキャリアコースなどで差をつけることは認められるという。このあたりは企業によって解釈・運用が分かれそうだ。合理的な差とは何か、何が不合理な差なのか、さらなる議論が必要だろう。
 今後は、こうした処遇差について企業に説明責任を求めるか否かも焦点となる。実効性をいかに担保するかが重要だ。
同一労働同一賃金は単体で導入してもうまくいかない
 懸念されるのが、「法令順守」のために、正規と非正規の「職務分離」が行われることだ。同一労働同一賃金が導入されると、正規と非正規との処遇差に合理的な説明が求められるようになるが、実際には難しい。そこで企業側は「説明ができないから、仕事をはっきり分けてしまえ」となり、職務分離が進むおそれがある。そうなると、非正規従業員はステップアップが難しくなり、正規雇用への道が閉ざされる可能性もある。
 働き方改革実現会議に参加したイトーヨーカ堂の人事マネジャーが、「(同一労働同一賃金の導入で)非正規雇用者が定型業務に特化されてしまい、正社員へのキャリアパスを描きにくくなり、今以上に正規、非正規の格差が拡大する懸念がある」と発言したのは、こうした理由からだ。「最も重要なのは、多様な働き方に対応する選択肢を設計して、正社員への登用の機会を設けて実現すること」だという。
 目指すべきは、「職務分離」ではなく「職務融合」。正規も非正規も、性別も国籍も関係なくすべての人が持てる力を発揮できる環境を整えて、企業の活力を高める。そのための同一労働同一賃金であるはずが、表面的に法令順守をするための「職務分離」が起こりかねない。そうしたリスクも念頭に置く必要がある。
「同一労働同一賃金は、目的ではなく手段である」
 経営改革そして雇用改革に取り組んできたりそな銀行に学ぶなら、それぞれの企業が同一労働同一賃金という「手段」を使って達成しようとする「目的」を、まずは真摯に見定める必要があるだろう。
 前出の山田久氏はまた、同一労働同一賃金は単体で導入してもうまくいかないと指摘する。働き方改革、雇用制度改革、そして家族の在り方、社会システムの変革があってこそ真に機能するという。
 メンバーシップ型雇用のどこを残して、どこを変えるのか。男性が稼ぎ主というモデルが崩壊しつつあるいま、夫婦の役割分担をどう見直すのか、税制・社会保障制度をライフスタイルに中立な仕組みにどのように変えていくのか。社会全体のパラダイム転換が求められている。同一労働同一賃金の実現は、非正規雇用者の待遇改善という問題にとどまらない、大きな課題を我々に突きつけている。
『女性に伝えたい 未来が変わる働き方』(野村浩子著、KADOKAWA刊)

元『日経WOMAN』編集長が提案する、二極化時代の新しい生き方、働き方
働きにくさ、生きづらさを変えるためのヒント。
男女雇用機会均等法の施行から30年が経ち、女性たちの働く環境はどう変わったか。多様化する時代の中で、自分らしく働くためにはどうすればよいか。豊富な事例から、新しい時代の「働き方」「生き方」を探る。


このコラムについて
ここが間違い、女性の攻め方
 働く女性を後押ししよう――、あちこちで「女性活躍推進」の大合唱が聞かれる。ところが、そこには大きな壁がある。「勘違い」や「思い込み」である。2013年4月、安倍晋三首相は「働く女性の環境を整えることこそ、成長戦略の大きな柱」とスピーチ、その中で「3歳まで抱っこし放題」を実現すると発言した。「ああ、わかってないな」、多くの女性がため息をついたものだ。企業はいま、女性社員が働き続けるための環境を整え、女性管理職の登用を進めるものの、経営幹部の「刷り込み」がネックになることも少なくない。
 一方、消費の場面に目を転じると、女性顧客の力が増している。しかし、従来の発想では、女性市場は攻めきれない。家族のあり方が大きく変わり、女性の経済力も増すなかで、ライフスタイルが大きく変化しているからだ。
 女性社員を、女性市場を、企業はどう攻めればいいのか。「ダイバーシティ推進」「ワークスタイル」「ライフスタイル」の3つの柱を軸に、働く女性の心理を読み解いていく。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/261748/030100015/ 


http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/749.html

[国際18] 「壁を建てたのは、英語を話さない人達だった」 アメリカ〜超大国はどこへ行く  クラウド界の絶対王者「AWS」独走の秘密
「壁を建てたのは、英語を話さない人達だった」

トランプのアメリカ〜超大国はどこへ行く

国境に移り住んだアーティストはイーゼルの前で抗議する
2017年3月6日(月)
篠原 匡、長野 光
 米国最南端の町、ブラウンズビル。メキシコ国境に隣接する町には国境のフェンスが既にある。もっとも、両国を隔てるリオグランデ川から離れたところに建てられたため、実際の国境とフェンスの間に取り残された住民も少なくない。彼の日常生活に支障が出ないよう、道路のところはフェンスが切れている。フェンスの目的が不法移民を阻止することだとすれば、その効果は全くない。

 「米国第一主義」というスローガンの下、トランプ大統領は雇用の国内回帰と治安の強化を推し進めようとしている。その政策を支持する米国人は一定数、存在する。それでは、国境に住む人々はどう感じているのか。 4人目は国境のゲートと目と鼻の先に住むアーティストのマーク・クラーク氏。メキシコの文化に惹かれブラウンズビルに移り住んだ同氏はアートを通じてフェンスに抗議している。

(ニューヨーク支局 篠原 匡、長野 光)
(フェンスの向こう側 Vol.1 / Vol.2 / vol.3 から読む)


メキシコとの国境に接するブラウンズビル(米国テキサス州)。国境のフェンスよりメキシコ側に住むアメリカ人が少なからずいる
フェンスの向こう側 Vol.4 マーク・クラーク

Mark Clark(マーク・クラーク)  68歳
アーティスト

マーク・クラーク氏、アーティスト(写真:Miguel Angel Roberts、以下同)

国境のゲートのそばでアートギャラリーを運営しているマーク・クラーク氏
 2008年に、あのばかげたフェンスの一部が完成したときにアートショーを開催しました。タイトルは“Art Against Wall”。フェンスに自作の絵を引っかけたんだよ。メディアで紹介されたし、けっこうな人が見に来ました。それで2回目をやることにしたんだけど、2回目はブラウンズビル市の許可が下りなくて。勝手に絵を飾ったら国境警備隊が武装してきて、「すぐに出て行け」と怒鳴られた。こちらは私の他に老婆ふたりと犬一匹なのにあんなに武装してきて。

 私がブラウンズビルに移住したのは2005年です。それまでは22年間、ワシントンDCのスミソニアン協会で働いていました。なぜブラウンズビルに移住したかというと、メキシコ人やメキシコの文化が好きなんですよ。20年近く年2回ほどのペースでメキシコに遊びに行っていて。ここは国境なのでメキシコにすぐ行くことができるし、町自体もほとんどメキシコと言っていい。文化がとても面白いんですよ。


ギャラリーのバルコニーから国境のフェンスが見える。「(国境を越えたメキシコ側の)マタモロスには週1回は行くかな。向こうでアートを見たり、画材を見たり。向こうの方が人口も多いし、ブラウンズビルよりもいろいろあるよ」
「売れ行き? 酷いね(笑)」

 ここでアートギャラリーを運営しています。売れ行き? 酷いね(笑)。でも、気にしたことは全くない。私は既にリタイアしており年金がある。大した額じゃないけれど、生活していくぶんには何の問題もない。私が来る前に、ここには芸術やアートと呼べるようなモノはなかったけど、今では才能のあるアーティストも増えつつある。この町に少しは貢献できたんじゃないかな。


ギャラリーの内部。ここに展示されている作品は地元アーティストのもの。彼が乗っている自転車はフェンスと同様の素材を使って制作している
 この町はメキシコと米国の文化が混じり合うところだから、私自身の作風にも大きな影響を与えた。政治的という面でも。私は米国でもメキシコでも民主党を支持しているんだ。あのばかげた壁のためにね。このエリアの芸術作品は注目され始めている。以前、メキシコシティのメトロの地下に、150フィート(約46メートル)にわたって私の作品が展示されるというイベントがあった。そのときは毎日1万人が私の目の前を通過していったんだ。


クラーク氏の油絵。メキシコの影響が色濃く感じられる

ドラッグカルテル同士の構想が激しかったマタモロスの影響が色濃く感じられる作品。ドラッグカルテルのギャングがクルマを蜂の巣にしている

こちらの作品では、トランプ大統領と思われる金髪の男が首を刈られている
「シフト交代するときに警備が緩む時間があるんだよ」

 不法移民はよく見かけるよ。もう12年ぐらい住んでいるけど、月に1人は確実に見るという感じだね。なぜ不法移民と分かるかって? 壁をよじ登っているからかな。泳いでいたり(笑)。確かに、国境警備隊はたくさんいるが、シフト交代するときに警備が緩む瞬間があるんだよ。実際、その時間にゲートの真下を不法移民がよく泳いできてたよ。

 一度、スイムスーツを着て、足にフィンをつけた不法移民が頭に大きな缶を載せて泳いできたときがあった。全部で6人。一人はトランシーバーと拳銃を握っていたよ。そのときはさすがに警察に通報したね。

「シャベルをやるから好きなだけ穴を掘りな」

 トランプ氏は国境に壁を作るといっているけど、怒っている男の暴走といったところだ。シャベルをやるから好きなだけ穴を掘りな、という感じだね。どうせ相手は入る方法を見つけるし。あの壁は大きな「ファック・ユー」サインだ。

 しかしそれにしても、このエリアは安全だよ。一度だけ身の危険を感じたことがあった。真夜中に、底の大きな駐車場でがたいのいい男達が叫ぶように声をかけてきたんだ。「やられる」と思ったら、キリスト教のパンフレットを出して布教してきた。全く安全だよ、このあたりは。


ここの作品は購入可能。頼めば小さなサイズに書き直してくれることも
 メキシコ人はとにかくよく働くよ。しかも、米国人が頼まれてもやらないような仕事をやる。暑くて、汚くて、危険を伴う、そんな仕事だよ。そこのフェンスを立てた人達も英語をしゃべらない人達だった。工事のときに止まっていた労働者のナンバーを見ると、全部メキシコだからね。皮肉としかいいようがない。不法移民が米国民の仕事を取るというけれど、どれだけの米国人が暑い日に黙々とシャベルで穴を掘るっていうんだよ。


「正直、取り締まりが厳しすぎると思う。昔はもっと簡単に行き来できていたが、家族が生き別れ状態なんて話もよくある」
 日経ビジネスはトランプ政権の動きを日々追いながら、関連記事を特集サイト「トランプ ウオッチ(Trump Watch)」に集約していきます。トランプ大統領の注目発言や政策などに、各分野の専門家がタイムリーにコメントするほか、日経ビジネスの関連記事を紹介します。米国、日本、そして世界の歴史的転換点を、あらゆる角度から記録していきます。

このコラムについて

トランプのアメリカ〜超大国はどこへ行く
1月20日に第45代米大統領に就任したドナルド・トランプ氏。通商政策や安全保障政策など戦後、米国が進めてきた路線と大きく異なる主張をしているトランプ大統領に対する不安は根強い。トランプ氏は具体的に何を実施し、何を目指しているのか。新大統領が率いるアメリカがどこに向かうのか。それをひもといていこうというコラム。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/012700108/030300014


 

クラウド界の絶対王者「AWS」独走の秘密

企業研究

アマゾン・ウェブ・サービス、成長率は年60%
2017年3月6日(月)
小笠原 啓
巨大な上に成長率は年60%。マイクロソフトとグーグル、IBMが束になってもかなわない。アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は発足から10年で、クラウド業界で他を圧倒する存在になった。“絶対王者”として独走する秘密は何か。米ラスベガスで毎年開催される「re:Invent」に答えがあった。


米ラスベガスで開催された「re:Invent」に登壇したアマゾン・ウェブ・サービスのアンディ・ジャシーCEO(写真=鍋島 明子)

スライドの撮影に余念がない女性エンジニア(写真=鍋島 明子)
 2016年11月30日午前7時。パソコンを抱えたインド系の若者と中年の白人女性が、米ラスベガスの巨大ホテルで先を争うように走っていた。途中にルーレット台やスロットマシンが置かれているが目もくれない。カジノより確実な稼ぎを約束するイベントが、間もなく開演するからだ。


世界各国から3万2000人が来場した(写真=鍋島 明子)
 午前8時、数千人の技術者がひしめくイベント会場に、1人の男が姿を現した。米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のアンディ・ジャシーCEO(最高経営責任者)。米アマゾン・ドット・コムが提供する、クラウドサービスの指揮官である。

 「あらゆる業界の大企業がクラウドを使い始めた」「古いテクノロジー企業が収縮する一方で、AWSは急成長を続けている」。会場の熱気は、ジャシーCEOの次の言葉で一気に高まった。

 「これから、あなたたちが手にする“スーパーパワー”を紹介しよう」

 AWSの年次イベント「re:Invent」(新発明の意)は、客観的に見れば新製品発表会だ。ジャシーCEOが胸を張る「スーパーパワー」も自社サービスの宣伝に他ならない。だが、そう切り捨てられない“熱量”がこのイベント全体を支配している。


パートナー企業がブースを構え自社サービスをアピールした(写真=鍋島 明子)
 参加料金は原則として1人1599ドル(約18万円)と高額だ。にもかかわらず、今年の来場者は3万2000人と昨年比で1万人以上も増えた。5日間で約400の会議が催され、世界各国のソフト開発者やIT企業の幹部が集結。日本からも700人以上が参加した。

 人材育成を手掛ける米グローバルナレッジによると、2016年時点で最も稼げるIT関連資格は「AWS認定技術者」だ。平均年収は12万5000ドル(約1400万円)を超え、サイバーセキュリティー関連の資格保有者より高い。AWSの最新動向を把握してスキルを身に付けることが、ITエンジニアとしての収入アップに直結する。ジャシーCEOの発言が自分たちの稼ぎを左右すると知っているからこそ、技術者たちは高いチケット代を払い、眠い目をこすってラスベガスに集まったのだ。

サーバー数千台を5分で準備

 AWSはアマゾンの一部門にすぎないが、その勢いは本業のネット通販を凌駕し始めた。2016年1〜9月期の売上高は、前年同期比58.6%増の86億8300万ドル(約9800億円)。営業利益も同2.4倍の21億8200万ドル(約2500億円)に達した。アマゾンの全売上高に占める比率は9.4%にとどまるが、74.4%の利益を生み出している。

売り上げはネット通販の10分の1
●米アマゾン・ドット・コムの業績推移

利益の過半をAWSが稼ぐ
●セグメント別営業利益(2016年1〜9月期)

 AWSはもともと、アマゾンのネット通販を支える存在だった。膨大な数の注文をリアルタイムに処理するには、サーバー運用などで高度なノウハウが求められる。こうしたノウハウをまとめて社外に開放すれば、大きなビジネスになると考えた。2006年のことだ。


左:米マクドナルドなどがAWSの導入事例を公開
右:巨大カジノを抱えるホテルがイベントの舞台(写真=鍋島 明子)
 狙いは、「システム開発に関する複雑な業務を、ネット通販と同様に“ワンクリック”で提供する」(AWS日本法人の長崎忠雄社長)ことだった。まずは膨大な数のサーバーを調達し、世界各地に巨大なデータセンター群を構築。顧客企業が必要に応じて、インターネット経由で利用できる仕組みを整えた。今では「2005年時点にアマゾンを支えていたのと同規模のサーバーを、毎日追加している」と、AWSのトップ技術者であるジェームズ・ハミルトン氏は話す。


AWSは毎日、大量のサーバーを追加していると説明した
 サーバーの調達は、企業にとって頭の痛い問題だ。複数製品を比較し、必要な台数を算定するのは一苦労。設置場所を確保して電源などを手配するだけでも、半年近くを要してしまう。AWSはこの作業を劇的に手軽にした。申し込みから5分程度で数千台規模のサーバーを利用する準備が整い、必要に応じて増強できる。

10年間で58回の値下げ

競合4社の合計より大きい
●世界のクラウド市場シェア

出所:米シナジー・リサーチ・グループ。2015年のシェア。IaaS、PaaS、プライベートおよびパブリッククラウドの合計
 ここに着目したのが、米Airbnb(エアビーアンドビー)などのスタートアップ企業だった。今年本格サービスを始めた、金融ベンチャーのウェルスナビ(東京都千代田区)もその一社だ。

 独自のアルゴリズムで自動的に資産を運用する「ロボアドバイザー」サービスが売りだが、「AWSなしには起業は考えられなかった」と柴山和久CEOは打ち明ける。早く結果を出さなければ潰れかねないベンチャーにとって、一銭の利益も生まないサーバーの調達業務に費やす時間はないからだ。

 スピードだけではない。ネット通販で培った薄利多売のビジネスモデルもAWSの特徴だ。

 大量調達によりサーバーなどのコストを削減。それを原資に新たな顧客を呼び込むことで、常にスケールメリットを追求し続ける。サービス開始からの10年間で58回も値下げし、業界の価格破壊を先導してきた。

 企業が自前で購入したサーバーは年を追って陳腐化し、次第に保守コストがかさむようになる。AWSでは逆に、常に最新のサービスをクラウド経由で利用でき、料金は一貫して下がり続ける。旧来のIT業界の常識を真っ向から否定することで人気を博し、AWSは急速にシェアを高めていった。

 米シナジー・リサーチ・グループによると、AWSの世界シェアは2015年に31%で、米マイクロソフトと米IBM、米グーグルなど4社合計を上回る。発足から10年で、AWSは他の追随を許さない“絶対王者”と見なされるようになったのだ。


AWS日本法人の長崎忠雄社長は「製品ロードマップの9割は顧客の声で決まる」と話す(写真=鍋島 明子)
 IT業界では、デファクト(事実上の標準)を握った企業が圧倒的に優位となる。“勝ち馬”に乗ろうと多くの技術者が集まることで、ソフト開発が一層加速するからだ。「新技術が真っ先に採用されるため、優秀なエンジニアほどAWSを使いたがる」とウェルスナビの柴山社長は話す。

 結果、「米国ではあらゆる組織が雪崩を打ってAWSに移行している」と、調査会社ITRの甲元宏明プリンシパル・アナリストは指摘する。米ゼネラル・エレクトリック(GE)や米マクドナルドなど業界のトップ企業はもちろん、米中央情報局(CIA)や米航空宇宙局(NASA)もAWSを利用している。

 米国の全証券会社が加盟する規制機関「FINRA」のスティーブン・ランディッチCIO(最高情報責任者)は今年のre:Inventに登壇し、こう宣言した。「AWSは競合より数年先を走り、ギャップは今も広がり続けている。FINRAは今後、あらゆるシステムをAWSに移行させる」。規制当局が公の場で“お墨付き”を与えたら、銀行や証券会社がどんな行動を取るかは明らかだ。

 日本でも同様の動きが始まっている。ソニー銀行は2013年末から段階的に、リスク管理や帳票管理といった社内の業務システムをAWSに移行させてきた。移行したシステムの年間のコスト削減効果は、3〜5割に達するという。

 銀行業務の中核である勘定系システムについては慎重にならざるを得ないが、「規制対応などを踏まえつつ、今後はさらにAWSへの移行を進めていきたい」と福嶋達也・執行役員は力を込める。「国内IT勢とは規模が桁違いで、AWSを利用しない方がむしろリスクが高まる」(同)と考えているからだ。

AWSを選ぶ「3つの理由」

サーバーやデータベースをクラウドで提供
●AWSが提供する主なサービス

(※図1)
 国内企業がAWSを選び始めた理由は、大きく3つある。

様々な業界で導入相次ぐ
●AWSを導入した主な日本企業

 1つ目は機能の豊富さだ。※図1で示したように、AWSには仮想サーバーやストレージなど、ITインフラの構築に必要な機能が既にそろっている。その機能が今でも猛烈な勢いで増殖しており、AWSが2015年に追加した新サービスや新機能の数は722。2016年は約1000に達する。そのほぼ全てが「顧客の要望に応えるために開発したものだ」と長崎社長は述べる。

 AWSの新サービスが、新たな市場を創出するケースも増えてきた。

 ビッグデータ分析では高価なハードとソフトを使うのが通例で、かつては膨大な初期投資を賄える大企業の独壇場だった。ところが、2012年に「Redshift(レッドシフト)」を投入したことで状況が一変。従量課金で使えるようになったことで、ベンチャー企業でも手軽にデータ分析できる環境が整った。スマートフォンのアプリ開発が活性化した、一つの要因と言える。

 システム構築を手掛けるサーバーワークスの大石良社長は「AWSの進化に追随すれば、常に最新技術を使い続けられる安心感がある」と話す。

 2つ目はセキュリティーだ。


ソニー銀行の福嶋達也・執行役員は「国内勢はAWSに追いつけていない」と語る(写真=陶山 勉)
 AWSはクレジットカード業界の標準である「PCI DSS」など様々な認証を取得し、セキュリティー専門家も数多く抱える。同社のサービスは複数企業でITインフラを共有するのが前提だが、仮想プライベートクラウドの「VPC」を使えば、特定領域を“専有”できる。企業内ネットワークと同等の安全性で、AWSを使える仕組みが整った。

 国内金融機関は金融情報システムセンター(FISC)の安全対策基準に照らしてシステムを運用する必要があるが、「当行の独自チェックと第三者監査を通じ、AWSは基準をクリアしているとの結論に至った」(ソニー銀行の福嶋執行役員)。

 金融機関だけではない。医療機器を手掛けるシスメックスは、世界各国から寄せられる苦情を管理するシステムをAWS上で稼働させている。同社の血球分析装置などに不具合が生じていないかを、顧客の声を通じて把握する。

 問題を見落とすと健康被害につながりかねないため、情報管理の方法は薬機法(旧薬事法)などで規定されている。同社情報ソリューション部の矢野光洋シニアプランナーは「誰がいつログインしたかなど、正確な記録を残せるのがクラウドの利点だ」と話す。

自社で管理するより安全

 AWSは2016年から、セキュリティー機能の「AWS Shield(シールド)」を無償で提供している。面倒なサイバー攻撃対策を肩代わりしてくれるようになった。自社でデータを保管するよりもAWSに預けた方が安心だという考えが、世界で一般的になりつつある。

 3つ目の理由は、「JAWS(ジョーズ)」と呼ばれる技術者コミュニティーの存在。日本全国に60以上の支部があり、毎晩のようにAWSの使い方を議論している。フリーランスだけでなく、企業に属するITエンジニアも数多く参加するのが特徴だ。

 大手ITベンダーが顧客企業を組織する「ユーザー会」とは異なり、JAWSの運営はコミュニティーごとの自主性に任されている。参加者に求められるのは、積極的にノウハウを開示するオープンな姿勢。「他社の失敗事例を学べるのが面白い」と、大企業中心のコミュニティーを率いるNTTドコモR&Dイノベーション本部サービスイノベーション部の大野友義部長は話す。

 日本企業はシステム導入でも「前例」を重視する傾向がある。様々な事例がJAWSの場で共有されることで、AWSの普及が加速するのは確実だ。

 11月のイベントでは、AWSの新たな武器がトラックとともに登場した。「AWS Snowmobile」だ。

トラックで企業内データを“引っ越し”
●ラスベガスでお披露目された「AWS Snowmobile」

 企業が扱うデータが増えるほど、AWSへの移行は困難になる。ネット回線は大量のデータを転送するには不向きだからだ。そこで考えたのが、トラックに積んだサーバーを企業のデータセンターに直結してデータを吸い上げ、AWSに運ぶ構想だ。ジャシーCEOによると「専用線で26年かかるデータを、半年で転送できる」という。

 AWSの力が増すほど、協業する企業も広がる。NECは11月、AWSへの移行支援体制を強化すると発表。最上位のAWS認定技術者を50人規模に増強し、2年間で120億円の売り上げを目標に掲げた。「AWSとまともに戦うのは得策ではない。既存システムとAWSを上手に融合させることを提案していきたい」と、SI・サービス市場開発本部の川井俊弥エグゼクティブエキスパートは話す。日立製作所もAWSに精通した人材の育成を進めている。

パートナー育成が課題

 「自分たちで勉強してAWSを使えば、ITベンダーに頼んでいた仕事を“中抜き”できると日本の経営者が気付き始めた」と、ガートナージャパンの亦賀忠明・最上級アナリストは指摘する。国内では前述のサーバーワークスなど、AWSにほぼ特化したITベンダーが急速に台頭している。NECや日立といった大手も、旧来型のビジネスに固執していては明るい未来は描けない。

 AWS自身も協業の必要性を強く認識している。様々なサービスを矢継ぎ早に提供したことで、単純明快だったAWSも次第に複雑化してきた。今では主要サービスの数が70を超える。「従来のパートナーだけでは仕事をこなしきれなくなってきた」との不満も、顧客企業から漏れるようにもなった。日本国内でさらにシェアを伸ばすには、実際の業務に精通したパートナーの育成が喫緊の課題だ。

 拡大するクラウド市場でAWSが最も有利なポジションにいるのは間違いない。だが、地力があるIBMやマイクロソフトそしてグーグルを相手にリードを保ち続けることができるのか。挑戦者だった過去の10年とは違う戦い方を迫られることになる。

INTERVIEW
アンディ・ジャシーCEOに聞く
クラウドはアマゾンの通販を超える

米ハーバード大学でMBA(経営学修士)を取得し、1997年に米アマゾン入社。2006年にAWSを立ち上げ、一貫してクラウド事業を率いる(写真=鍋島 明子)
──米国と比べると、日本企業のクラウド導入は遅れている。

 「まだ初期段階だが、これから間違いなく加速する。クラウドを導入すると、アイデアが浮かんでから実現するまでの時間が極めて短くなる。何千台というサーバーを数分間で用意でき、必要なくなったら余計な料金は支払わなくてよい。試行錯誤のスピードが速まれば、それだけ競合より先を走れる」

 「ほとんどの企業はIT人材の不足に悩んでいる。ITインフラをクラウドに移行すれば、貴重な人材を(保守ではなく)サービス開発に集中させられる。これは、企業全体の競争力にプラスに働くはずだ」

──AWSが市場を支配し、いつか値上げするのではないかとの懸念がある。

 「可能性はほぼゼロだ。AWSは過去10年間、競合に関係なく自主的に50回以上も値下げしてきた。削減したコストは顧客に還元するのが我々の主義だ」

 「クラウドは長期にわたるビジネスだ。仮に2?3年赤字になっても、必要な投資をためらうことはない。顧客との良好な関係を構築するのが最優先だ」

──AI(人工知能)では米グーグルなどとの競争が激化している。

 「AIは今後の成長に不可欠な要素だ。AWSは技術者に様々なツールを提供し、開発が加速するよう支援している。クラウドで提供する膨大な処理能力なしに、AIの進化は難しいだろう。AWS上では他のプラットフォームとは比較にならない規模で、AIや機械学習の開発が進められている」

 「音声認識に関しても競争が激しい。(英語と比べると)日本語対応には時間がかかっているが必ず対応する」

──2016年4月にAWS部門のCEOに就任した。AWSの位置付けは変わるのか。

 「アマゾンの小売事業はAWSにとって巨大で重要な顧客の一つだ。経営体制も顧客基盤もお互いに独立しており、それは今後も変わらない」

 「AWSの年間成長率は50%を超える。現在でも非常に大きなビジネスになっているが、まだ膨大なチャンスがあると考えている。1000億ドル規模の小売事業を超えて、AWSはアマゾン最大の事業になるだろう。いつになるかは明言できないが、間違いなく可能だ」

(日経ビジネス2016年12月26日・2017年1月2日号 より転載)


このコラムについて

企業研究
『日経ビジネス』に掲載された、企業にフォーカスした記事の中から読者の反響が高かったものを厳選し、『日経ビジネスオンライン』で公開します。

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[政治・選挙・NHK221] 朝日新聞が懲りずに売り込む「不安のポピュリズム」 異次元緩和が招いた積極財政論の台頭 米国議会で高まる「日本憲法改正せよ

朝日新聞が懲りずに売り込む「不安のポピュリズム」
「ゼロリスク」のビジネスは再生産される
2017.3.3(金) 池田 信夫
カナダ・ウラン大手、東京電力から契約解除通知 法的措置へ
福島県にある東京電力福島第1原子力発電所(2016年2月10日撮影、資料写真)。(c)AFP/TORU YAMANAKA〔AFPBB News〕
?間もなく東日本大震災から6年がたつ。震災の傷は癒えつつあるが、福島第一原発事故で今なお約9万人の避難者が帰宅できない。他の地域に移った子供は「放射能いじめ」にあうという。最近マスコミはその報道に熱心だが、6年前に彼らがどういう報道をしたか、覚えているだろうか。

『AERA』は2011年3月28日号の「放射能がくる」という全ページ特集で「首都圏が放射能で壊滅する」と報道し、朝日新聞の「プロメテウスの罠」という長期連載では「原発事故で鼻血が出た」という類の放射能デマを執拗に繰り返した。この6年は、日本人がいかにマスコミの「空気」に弱いかを示した。

「原発の運転資格」を否定する朝日新聞

?朝日新聞3月2日の社説は「東電と原発?運転する資格があるか」と題して、東京電力の柏崎刈羽原発で重要施設の耐震性不足が明らかになった問題について「不都合な情報を軽んじたり、対応が遅れたりする会社に、原発を運転する資格はない」と断じている。

?原発に「運転資格」があるのだろうか。電力事業者には資格が必要だが、東電はそれを満たしている。これは原子力規制委員会の安全審査をめぐって東電の報告に不備があったという話で、運転とは関係ない。もちろん朝日新聞に資格認定する権限はない。

?福島事故のあとも、他の原発は通常通り運転していた。それを止めたのは、2011年5月の菅直人首相の浜岡原発についての「お願い」である。これには法的根拠はなかったが、その後も定期検査で止まった原発の運転を民主党政権が認めなかったため、全国の原発がほとんど止まったままだ。

?朝日新聞は「再稼働に慎重な米山隆一・新潟県知事は、東電への不信感をあらわにした」と書いているが、知事に再稼動を認可する権限はない。立地するときは、地元の県知事や市町村長の許可が必要だが、運転に許可は必要ない。

?リスクがないに越したことはないが、エネルギー源に「ゼロリスク」はなく、それを求める必要もない。原発の代わりに石炭火力を燃やすと大気汚染や気候変動のリスクが大きく、再生可能エネルギーのリスクもゼロではない。国際機関が一致して示すように、発電量あたりの健康被害は原発が最小なのだ。

地元感情のために8兆円かける「廃炉」

?しかしゼロリスクを求める「空気」に、役所も東電も従わざるをえない。福島第一原発の「廃炉資金」積み立てを東京電力に義務づける、原子力損害賠償・廃炉等支援機構法の改正案が2月7日、閣議決定されたが、これは原発の中に残っているデブリ(溶けた核燃料)を2020年代に取り出す費用8兆円を積み立てろというものだ。

?デブリは圧力容器の下の空間に黒い塊のようになってこびりついているが、格納容器の中には封じ込められている。原子炉は冷温停止状態にあるので、放射線は依然として強いが暴走する危険はなく、今はほぼ安定した状態である。

?デブリを無害化するもっと簡単な方法は、そのままチェルノブイリ原発のように原子炉をコンクリートでおおう石棺で封じ込めることだ。チェルノブイリの石棺は、高さ約100メートルのアーチ型のシェルターで、コストは21億5000万ユーロ(約2600億円)。8兆円かかる福島の「廃炉」とは桁違いだ。

?こんな簡単な答が出せないのは、「地元感情」に配慮しているからだ。昨年、支援機構が廃炉作業の「戦略プラン」で石棺に言及したところ、福島県の内堀雅雄知事が経済産業省に「大きなショックを受けた。元の生活を取り戻そうとしている住民にあきらめろというのか」と抗議した。

?支援機構の山名元・理事長は、これに対して石棺プランを否定して「引き続きデブリの取り出しをめざす」と釈明したが、知事の抗議は政治的スタンドプレーである。デブリの除去はきわめて危険であり、取り出しても原発のまわりに住民は住めない。除去はいずれ挫折し、石棺にせざるをえないだろう。

不安を煽って敵をつくるポピュリズム

?朝日新聞はトランプ大統領を「ポピュリズム」と批判するが、不安を煽って分かりやすい敵をつくるのはポピュリズムの「世界標準」である。ヒトラーが大恐慌に沈む労働者の不安を煽ってユダヤ人を敵に仕立てたのも、トランプが白人の不安を煽ってメキシコ人を敵に仕立てたのも同じだ。

?その点で朝日新聞は戦時中から続く、ポピュリズムの老舗である。今も懲りずにゼロリスクの不安を煽って「原子力村」を敵に仕立てている。こういう社論に疑問をもつ記者もいるが、彼らは紙面でそれを書くことができない。書いたら本社にいられなくなるからだ。

?山本七平は、こういう「空気」を公害反対運動に見た。1967年に公害基本法ができたとき、その目的に「経済の健全な発展との調和を図る」という規定があったのをマスコミが「公害防止に経済との調和を考えるのはおかしい」と攻撃したため、この条文は削除された。

?これによって公害を減らすにはどんなコストをかけてもよいという「空気」が生まれた。公害は「絶対悪」であり、環境保護は「絶対善」なので、コストが合理的かどうかは考えないで、リスクがゼロになるまで税金を投入する。その費用対効果を疑う者は「非国民」として指弾を浴びる。

?戦時中に「非国民」を攻撃した最大の犯人も、朝日新聞だったことは偶然ではない。1931年に約150万部だった朝日新聞の発行部数は、満州事変以降の戦争で従軍記者が送ってくる記事で爆発的に伸び、1942年には370万部を超えた。この最大の原因は戦意昂揚ではなく、「うちの息子の部隊はどうなっているのか」と気遣う親の不安だった。

?2010年9月に出版された朝日新聞著『原子力ルネサンス 温暖化対策、高まる機運』は「地球温暖化対策の決め手として原子力が注目され、原子力産業は成長産業になった」と謳い上げたが、3・11のあと朝日は急旋回して「原発ゼロ」の論陣を張った。

?このビジネスモデルは、紙の新聞の購読者に合わせたものだ。団塊の世代は子供のころ「平和憲法」を教え込まれ、学生のころ学生運動を見て反権力的な気分が抜けないからだ。彼らは今70歳ぐらいなので、このビジネスはあと10年ぐらいもつかもしれないが、それ以上はもたないだろう。

?しかし朝日新聞が日本人の心に刻みつけた不安のトラウマは消えない。東京都の小池百合子知事が豊洲市場にゼロリスクを求め、石原慎太郎元知事を敵に仕立てるポピュリズムにも、同じ手法が応用されている。朝日が消えても、不安のポピュリズムは再生産されるだろう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49334

 


 
【第8回】 2017年3月6日 翁邦雄 [おきな・くにお]

異次元緩和が意図せず招いた積極財政論の台頭
日本が人口ペシミズムを乗り越えるのに必要なこと

安倍首相が「アベノミクスで大事なのは“やってる感”」と語ったとされる。しかし、「やってる感」を醸成するマクロ政策では、日本経済の隘路は解消しない。なにより重要なのは、人口減少・高齢化を迎えた日本の社会経済の中長期的な姿を踏まえて、健全な自然利子率の上げ方について考えることである。具体的にはどのようなことをすればよいのか。クルーグマンの提案を踏まえたうえで、人口ペシミズムを克服する道について検証する。
<詳しくは新刊『金利と経済』でご覧いただけますが、同書で取り上げたトピックに一部手を加えてご紹介していきます>

 この連載の中で、クルーグマンが2015年10月の「日本再考」で、財政の持続性回復こそ日本が直面している中心的な課題だ、と論じていることについて触れた。

 では、日本はどうすればよいのか。クルーグマンは、日本が必要とするのは、インフレ率を高めるための拡張的な財政政策と金融政策を組み合わせたきわめてアグレッシブな政策であり、インフレ目標は政策が破綻しないだけ十分な高さでなければならない、とした。それは、重力圏から脱出して、周回軌道に乗るだけのスピードに到達していなければならないのであり、そしてアベノミクスはそこに届くだけアグレッシブではない、というのである。


日本が進むべき道とは?
 この日本に対する新たな政策提言について、クルーグマン自身「論理的だが、あまりに直感に反するので、採用される見込みがない」とする。たしかに、“財政再建”という目的を前面に押し出し、そのために、超大型財政を組んできわめて高いインフレを起こせ、というクルーグマンの提案は無理筋にみえる。

 しかし、これまでの異次元緩和が、意図せずに実現したことがひとつある。

 それは、日銀が大量の長期国債を購入し、長期金利の警報機能を失わせることで財政規律を麻痺させ、財政拡張への抵抗感を弱めたこと、さらには、日銀の損失が前提となる「日銀トレード」で長期国債の利回りを大きくマイナスにしたことで、マイナス金利を財源とする積極財政論を台頭させたことである。こうしたなかで、最近では、FTPLの「管理された無責任」論も台頭している。

 旧大蔵省で主税局総務課長を務めた黒田総裁は、財政再建の必要を痛感していたはずである。おそらくは量的・質的金融緩和で早期に2%のインフレ目標が達成されれば、財政再建にも貢献する、と考えていただろう。しかし黒田総裁は、インフレ目標達成は日銀の責任、財政再建は政府の責任、という形式的な議論で押し通し、財政規律への影響を無視して非伝統的金融政策をすすめ、結果的に財政規律を大きく毀損してきた。

 クルーグマンがこれに気付けば、欧米で大きな障害になってきた財政規律へのこだわりを巧妙に破壊することに成功したことこそが異次元緩和の最大の成果だ、と高く評価するかもしれない。この道をもう一歩進めば、クルーグマンの「日本再考」で提案された爆発的な財政拡張によるきわめて高いインフレ率の醸成、という道になる。そこでは、きわめて高率のインフレを醸成することが必要だ、とするクルーグマンが、「臆病の罠」とよぶ2%のインフレ目標へのこだわりは破棄されるべきことになる。

アベノミクスは『やってる感』なんだから成功とか不成功とかは関係ない?

 しかし、これが本当に日本にとって進むべき道だろうか。

 異次元緩和は、進むべき道をミスリードしてきたのではないか。

 最近、しばしば目にするようになった警句として「じり貧を避けんとしてドカ貧にならないよう」という言葉がある。米内光政・海軍大臣が、米国の経済封鎖によって、じりじり状況が悪化する苛立ちのなかで、高まる対米開戦論に警鐘を鳴らした発言として知られる。しかし、世論は気短で、理性的に長期的にみて望ましい選択に向かうとは限らない。日銀の異次元緩和だけでなく、2016年に相次いだ英国のEU離脱、トランプ大統領誕生などの出来事は、そうした危惧を強く感じさせる。クルーグマン新提案も大きな「ドカ貧」リスクを伴う。

 興味深いことに、安倍総理はインタビューで「アベノミクスは『やってる感』なんだから、成功とか不成功とかは関係ない。やってるってことが大事」と述べた、とされる(※1)。もし政治的にこの路線が成功し「やってる感」で高い支持率を得られているとすれば、これ以上、実験的なマクロ経済政策で一発逆転的な成功を狙うべきではないだろう。

 ただ、「やってる感」を醸成するだけのマクロ政策では、日本経済の隘路は解消しない。日本の社会経済を立て直すには、その中長期的な姿を踏まえて、健全な自然利子率の上げ方について考える必要がある。自然利子率が上がらない限り、日本が抱えている根本的な問題は解決しないからだ。

 この連載で何度か述べたように、日本の自然利子率低下の背景には、日本の人口減少・高齢化がある。むろん、労働力人口が減少しても、自然利子率や成長率が必然的に低下するわけではない。たとえば、吉川洋氏は、かねて成長率をけん引するのは人口ではなくイノベーションである、と強調している。近著でも、経済成長のカギを握るのはイノベーションであり、日本が世界有数の長寿国であることはチャンスなのだ、と論じている(※2)。

 筆者も、日本にとって高齢化には「イノベーションを誘発し成長率を高めるチャンス」という要素がある、と考えてきたから(※3)、そのこと自体には異論がない。しかし、高齢化をチャンスにするためには、公的部門だけでなく民間部門も、この問題と正面から全力で向き合い、人口減少・高齢化から派生する切実なニーズとイノベーションを結びつけていく必要がある。

 右肩下がりの自然利子率の大きな背景である高齢化が、大きなビジネスチャンスを伴っているのはなぜか。もう少し、具体的に考えてみよう。

 人は高齢化に伴ってクオリティ・オブ・ライフが低下しかねない色々なトラブルを経験する。これ自体は、困ったことだ。しかし、この冷厳な事実は、高齢化に伴ってクオリティ・オブ・ライフを維持するための切実な需要が様々な形で発生する、ということを意味する。

 たとえば、認知症の薬であるアリセプトは市場を席巻し、エーザイの中核的な収益源になった。アリセプトは症状の進行を抑制する薬だが、認知症を根治できる薬が開発できれば爆発的に売れるだろう。また、運動器の障害で歩行困難や転倒リスクをもたらし要介護になる可能性を高めるロコモティブ・シンドロームは、変形性関節症と骨粗鬆症に限っても、推計患者数が数年前でも4700万人と膨大である(※4)。その予防や、ロボット等による発症者の介助には、きわめて切実なニーズがある。

 また、今後の高齢者の多くは、インターネットを使える。だから、生活用品が宅配されれば、足が弱ってもひとり暮らしを維持できる期間が長くなる。ちなみに、国内の物流「総トン数」は減っているが、宅配「個数」は爆発的に伸びており、今年2017年2月23日には、宅配便最大手のヤマト運輸が、荷受量を抑制する検討に入ったことが報じられた。宅配個数が増える一方、人手不足で長時間労働が慢性化しているため、という。

 この間、米国小売り最大手のウォルマートが、2015年10月に米連邦航空局に対し、中国製のドローンを使った屋外での試験飛行許可を申請したと報じられている。実証試験の対象は、店舗から家庭への宅配などである(※5)。人口減少と高齢化の併進は、こうした切実なイノベーションを必要とし、それは生産性を上げる方向に作用する。

 高齢化の中で、できること、早急にすべきことは山積している。政府にはそれに向き合う責務があるが、企業にとってみても、それは利益を上げる機会である。日本は高齢化先進国であることに照らせば、国内のニーズに向き合えば、これから伸びていく海外の需要にも向き合える、ともいえる。

 現時点で、企業部門に人口ペシミズムが強いのは、人口減少・高齢化を国内の既存需要の減少のみに着目する傾向が強く、前向きなイノベーションの展開の糸口を十分つかめていない、ということだろう。

(※1)芹川洋一・御厨貴『政治が危ない』日本経済新聞出版社、2016年、21ページ
(※2)吉川洋『人口と日本経済』中公新書、2016年
(※3)翁邦雄『経済の大転換と日本銀行』岩波書店、2015年
(※4)日本臨床整形外科学会ホームページ http://www.jcoa.gr.jp/locomo/による
(※5)http://forbesjapan.com/articles/detail/9882 なお、ウォルマートは倉庫内の在庫管理にドローンを活用していることが知られている。
http://diamond.jp/articles/-/120128

 


米国議会で高まってきた「日本は憲法改正せよ」の声
与野党のベテラン議員が「日米同盟の片務性」を批判
2017.3.4(土) 古森 義久
米国・ワシントンD.C.の国会議事堂。米国議会で日米同盟の片務性を批判する声が高まってきた(資料写真)
?米国のトランプ政権は日米同盟の堅持と尖閣諸島の共同防衛を確約している。その一方でこのほど、民主党の有力議員が米国議会で“日本は憲法を改正しない限り米国の公正な同盟パートナーにはなれない”“現状では米国は尖閣を防衛すべきではない”という主張を表明した。

?日本側の憲法が原因とされる日米同盟の片務性は、これまで米国側から陰に陽に批判されてきた。だが、これほど真正面からの提起も珍しい。日本側としても真剣に受け止めざるをえない主張だろう。

中国の無法な膨張が議題に

?2月28日、トランプ大統領による議会両院合同会議での初演説の数時間前に、米国議会下院外交委員会の「アジア太平洋小委員会」が公聴会を開いた。アジア太平洋小委員会は、日本や中国などアジア・太平洋地域の諸課題を審議している。

?新政権下では第1回となるこの公聴会は「中国の海洋突出を抑える」という名称がつけられていた。南シナ海と東シナ海における中国の無法な膨張を米国はどう抑えるべきかが審議の主題だった。

?委員会は、テッド・ヨホ議員(共和党)を議長に、共和、民主両党の議員たちがメンバーとして並び、シンクタンクなどから証人として招いた3人の専門家の見解を聞きながら議論を進めていくという方式である。

?私は、南シナ海や東シナ海での中国の横暴で威嚇的な行動をトランプ政権下の新議会がどう捉えているのかが分かるのではないかと期待して、出かけていった。

2人のベテラン議員が日本の現憲法を問題視

?公聴会ではまず議長のヨホ議員が、中国の南シナ海での人工島造成や軍事基地建設を膨張主義だとして非難し、中国による東シナ海での日本の尖閣諸島領域への侵入も米国の同盟国である日本への不当な軍事圧力だと糾弾した。

?そのうえで同議員は、オバマ政権下の米国のこれまでの対応が中国をまったく抑えられなかったと指摘し、日本などの同盟国と連帯して対中抑止態勢を構築することを提唱した。その前提には、トランプ政権が日米で尖閣を共同防衛する意思を表明していることがもちろん含まれていた。

?ところがこの委員長発言の直後、民主党を代表して発言したブラッド・シャーマン議員が驚くほど強硬な語調で日本を批判したのである。

「トランプ政権が日本の施政下にある尖閣諸島の防衛を約束したことには反対する」

?中国の海洋進出を非難する前にトランプ新政権の対日安保政策に反対を唱える発言に、私は驚かされた。シャーマン議員はさらにショッキングな発言を続けた。

「日本は憲法上の制約を口実に、米国の安全保障のためにほとんど何もしていない。それなのに米国が日本の無人島の防衛を膨大な費用と人命とをかけて引き受けるのは、理屈に合わない。日本側はこの不均衡を自国の憲法のせいにするが、『では、憲法を変えよう』とは誰も言わない」

「2001年の9.11同時多発テロ事件で米国人3000人が殺され、北大西洋条約機構(NATO)の同盟諸国は集団的自衛権を発動し、米国のアフガニスタンでの対テロ戦争に参戦した。だが、日本は憲法を口実に、米国を助ける軍事行動を何もとらなかった。その時、『日本はもう半世紀以上も米国に守ってもらったのだから、この際、憲法を改正して米国を助けよう』と主張する政治家が1人でもいただろうか」

?シャーマン議員は公聴会の満場に向けてそんな疑問を発すると同時に、日本やアジアに詳しい専門家の証人たちにも同じ質問をぶつけた。

?シャーマン議員はカリフォルニア州選出、当選11回のベテランである。民主党内でもかなりのリベラル派として知られる。そんなベテラン議員が、日米同盟が正常に機能するためには日本の憲法改正が必要だと主張しているのである。

?シャーマン議員の主張の言葉を継いだのが共和党の古参のデーナ・ローラーバッカー議員だ。ローラバッカー議員もカリフォルニア州選出で当選13回である。中国に対して厳しい構えをとることで知られ、国務長官候補として名前が挙がったこともあった。同議員は次のように発言した。

「確かに日本の憲法が日米同盟の公正な機能を阻んでいる。だが、安倍晋三首相は憲法改正も含めて日本の防衛を強化し、同盟を均等にしようと努めている。それに、アジアで中国に軍事的に対抗する際、本当に頼りになるのはまず日本なのだ」

?ローラバッカー議員もやはり日本の現行憲法が日米同盟の双務性を阻み、本来の機能を抑えていると認めている。

?両議員に共通するのは、日本の現憲法が日米同盟を歪めているので、改正した方がよい、という認識である。特にシャーマン議員は、米国の尖閣防衛誓約を日本の憲法改正と交換条件にすべきと述べているのにも等しい。

日本の防衛費抑制も批判

?証人たちが発言する段階になっても、シャーマン議員は再び「日本の防衛努力の不足」を指摘した。そして、防衛費の対GDP比も持ち出してきた。

「米国などが国際的な紛争を防いで平和を保とうと努力する一方で、日本は血も汗も流さない。憲法のせいにするわけだ。日本の防衛費はGDPの1%以下だ。米国は3.5%、NATO加盟諸国は最低2%にするという合意がある」

?そのうえでシャーマン議員は「日本が防衛費をGDPの1%以内に抑えているのは、やはり憲法上の制約のためなのか」と証人たちに質問をぶつけていた。

?トランプ氏は選挙期間中に日米同盟の片務性を批判していたが、先日の日米首脳会談における友好的な対応から、日本側には安心感が生まれたようだ。だが、議会ではこのように民主党と共和党のベテラン議員が揃って日本非難を打ち出している。米国の超党派の議員から、日本の現憲法や防衛費に対する批判が表面に出てきたという現実は深刻に受けとめねばならないだろう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49336
http://www.asyura2.com/17/senkyo221/msg/794.html

[不安と不健康18] 焼肉で痩せる!最初にホルモン次は赤身の順で食べよ よく焼いて脂を落とし、野菜と一緒に食べましょう
【第25回】 2017年3月6日 岡田明子 [管理栄養士]
焼肉で痩せる!最初にホルモン次は赤身の順で食べよ
よく焼いて脂を落とし、野菜と一緒に食べましょう
 焼肉はカロリーが高いから太りそう…というイメージをお持ちの人も多いのではないでしょうか?しかし、肉はタンパク質の宝庫で、食べ方を意識すればダイエットにつなげることができます。今回は焼肉店を活用した太らない食べ方をご紹介いたします。
焼肉店はタンパク質の宝庫
最初にホルモンを注文しよう
 男性に人気の焼肉店は肉や魚介類などタンパク質の宝庫ですが、肉の部位を選んで食べないと脂質の摂り過ぎが気になります。効果的な付け合わせの食べ方もありますので、ダイエットを意識した焼肉メニューの選び方のポイントをご紹介します。
●カロリーの低い肉から食べよう

 早めに注文しておきたい肉の部位は、ミノ、ハツ、レバー、センマイなどのホルモンです。ホルモンはカロリーが低くタンパク質を多く含むほか、噛み応えもあるので、よく噛んで食べることが満足感につながります。
 次はタン、ロース、ハラミなどの赤身肉をオーダーしましょう。カルビは脂肪分が多い部位なので避けるのがベストです。部位の名前を覚えられないという人は、メニューの写真を見て赤身の肉を選びましょう。白い脂身が多い肉はカロリーも高いので避けましょう。牛肉の部位の図と部位別のカロリー一覧を載せておきます。

 ちなみに豚肉は、焼肉店では豚バラ肉や豚トロなどの脂身が中心ですのでおすすめできません。
 その他、肉の食べ方のポイントとして、「焼野菜と肉を交互に食べること」があります。こうすること肉の食べ過ぎを防ぐことができます。
 また、網焼きにすることで脂が落ちるのでよく焼いて食べることもポイントです。タレは、焼肉のタレよりもレモン汁や塩、わさびでいただくことでカロリーを抑えることができます。
 肉の他に網焼きでおすすめなのは、鶏肉やエビ、ホタテ、イカなどの海鮮です。低カロリーで高タンパクな食品ですので、牛肉と一緒に摂るとよいでしょう。

●肉以外の注文でも痩せるポイントがある
 肉の選び方に続いて、焼肉に臨む際の心構えとダイエットに効果的な付け合わせの選び方をご紹介します。
(1)乾杯のビールは枝豆とセットで!
 飲み会が始まると、ドリンクメニューを先にオーダーすることが多いかと思いますが、「枝豆」も一緒にオーダーしましょう。特にビールは糖質を多く含むので、糖質の代謝を促してくれるビタミンB1を多く含む枝豆を一緒に食べることがポイントです。
(2)焼肉では飲むより食べる!「タンパク質を摂る」ことに集中
 お酒はビール中ジョッキ1杯程度に抑えることがおすすめですが、どうしても飲み足りない場合は、糖質ゼロのハイボールかウーロンハイ、緑茶ハイにしましょう。これらはウィスキーや焼酎を炭酸水やお茶で割っているので量が多く、長く楽しめます。ただ、お酒は飲み過ぎると食欲増進につながるので、焼肉店では「タンパク質を摂る」ことを意識して飲むことよりも食べることに集中した方がダイエットにもつながります。
 肉が運ばれて来たら、「肉を焼く人」に徹してみましょう(そうすると、食べ飲みするヒマがなく暴飲暴食を防ぐことにつながり好感度アップにも繋がるかもしれません!)。
(3)最初に野菜の小鉢を1杯
 食物繊維を多く含む野菜を最初に食べることは血糖値の急上昇を抑え、脂肪の蓄積を防ぎます。キムチ、野菜サラダ、ナムル、たたききゅうり、焼野菜などを最初の一皿とし、1人小鉢1杯は食べられるように人数分の野菜をオーダーしましょう。肉をサンチュなどの葉野菜に巻いて食べることもおすすめです。
 食物繊維の他に、タンパク質を効率よく体内で利用するためにはビタミンB6が必要です。ししとうがらし、にんにく、赤ピーマンなどビタミンB6が多く含まれている野菜を一緒に摂りましょう。
(4)その他のサイドメニューも満足感を意識
 肉の食べ過ぎを防ぐためには、冷奴のようなタンパク質の摂れるサイドメニューを頼んでおくのもおすすめです。豆腐チゲ、わかめスープ、ユッケジャンスープなど温かい汁物は胃を落ち着かせてくれるので満足感にもつながります。
 シメに食べたくなるご飯系のクッパやビビンバは、焼肉店では1人前が多いので、1人で食べるのではなく何人かでシェアして食べるとよいでしょう。
痩せるためには「タンパク質」が必要
身体をつくり、食後の代謝を上げる
 ダイエットを意識した焼肉の食べ方をご紹介しましたが、ダイエットをするためには、脂質や糖質を抑えるだけでなく、タンパク質が必要だということをご存じでしょうか?
 私たちの体の中で、筋肉はもちろん骨、皮膚、髪、内臓などあらゆる組織を構成しているのがタンパク質です。肉や魚などからタンパク質を摂ると、体内でアミノ酸に分解されます。このアミノ酸が体内で消化・吸収されて体の組織(体内のタンパク質)を形成しているのです。体を構成する20種類のアミノ酸のうち、9種類は必須アミノ酸と呼ばれ、食事から摂り入れなければなりません。不足すれば、体全体の機能や基礎代謝の低下につながります。
 必須アミノ酸を摂るためには、タンパク質を多く含む食品(肉、魚、卵、大豆、大豆製品、乳製品など)を食べるようにしましょう。その時に、偏食せず様々な種類のタンパク質を毎日摂ることが大切です。
 これらの食品の必要量を摂ることは体づくりに役立つだけでなく、食べ応えがあるので満足感が得られます。すると、間食や糖質を多く含む食品を食べなくてもよくなり、結果的にダイエットにつながるのです。
 さらに嬉しいことに、タンパク質は栄養素の中でも消化吸収に伴って発生する「食事誘発性熱産生」が最も高いので、食後の代謝が上がりやすいという特徴があります。
 では、ここで自身のタンパク質の必要量を計算してみましょう。
 タンパク質の摂取目安量(g)=自分の体重(kg)×1〜1.5g
 この計算式に当てはめると、例えば体重が70kgの人であれば1日に摂るタンパク質の目安量は70〜105gになります。
 ただし、タンパク質の摂取目安量=食品の質量ではないことに注意しましょう。というのも、肉を100g食べたからといって100gのタンパク質が摂取できるわけではないのです。
 赤身のサーロイン肉のステーキならば、200g食べてやっと約40gのタンパク質が摂取できます。その他は水分や脂質、炭水化物などの質量なので、毎食で意識しないと目安量のタンパク質量は摂れないことになります。前述した焼肉の部位別エネルギー・タンパク質量の表もご参考ください。
 ダイエットにはNGというイメージのある焼肉店も、メニューの選び方や食べ方のコツを押さえれば、ダイエットはもちろんのこと肌や髪を丈夫に健康にすることにもつながります。焼肉店を活用してタンパク質の摂取につなげていきましょう。
1ヵ月で2kg減!商社勤務の営業マン
Sさん(43歳男性)の場合
 タンパク質の摂取量を意識してダイエットに成功した人の例をご紹介いたします。
 Sさんは、朝は食べないことが多く、昼は外食、夜は週に4回は外食、という食生活を送っていました。身長176cm、ダイエット開始時の体重は80kgだったので、1日に80〜120gのタンパク質量を目安に、タンパク質を必要量摂るように意識した食生活に変えました。
 肉は大好きで毎日摂っていたSさんも、このダイエットを始めると意外にタンパク質が摂れていない事に気付きました。1日に必要なタンパク質量を摂ろうと思うと朝食も抜けないですし、しっかり食事を摂るようになったので間食が減ったとおっしゃっていました。
●ダイエットサポート前のある日の食事
 朝食 食べない
 昼食 牛丼
 間食 スナック菓子、飴
 夕食 鶏の唐揚げ、ポテトサラダ、お漬物、ビール
 →1日のタンパク質量 49.2g
●サポート中のある日の食事
 朝食 パン、コーヒー、ハムエッグ、
 昼食 サバの焼き魚定食(ご飯、鯖の塩焼き、ほうれん草のお浸し、豆腐の味噌汁)
 夕食 牛肉のステーキ、チキンサラダ、冷や奴、ビール
 →1日のタンパク質量 97.6g
 外食の多いSさんでしたが、特にランチを工夫し、お店やメニューをしっかり見て選ぶようになったそうです。その結果、1か月で2kgの減量に成功しました。Sさんのようにタンパク質を意識した食事をすることで健康的なダイエットをすることができます。
(管理栄養士 岡田明子)
http://diamond.jp/articles/print/119860


http://www.asyura2.com/16/health18/msg/426.html

[不安と不健康18] 医療界で活用が始まった人工知能は何ができるのか? 医療方針の最終判断を下すのはあくまでも医師 
医療界で活用が始まった人工知能は何ができるのか?
医療方針の最終判断を下すのはあくまでも医師
2017.3.6(月) 多田 智裕
人工知能は医師の仕事を代替するようになるのか?(写真はイメージ)
 2月20日、厚生労働省の「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」に「AIによる診療支援と医師の判断との関係性の整理(案)」が提出されました。
 AI活用推進懇談会では、医療において人工知能をどのように活用し、質と安全性を確保するかについて検討しています。この懇談会で提言されたことは以下の3つです。
(1)人工知能による診断や治療方針の最終的な意思決定は医師が行う
(2)人工知能を活用した意思決定においての最終的な責任は医師が負う
(3)より良い診療支援の確率のために人工知能の開発に医師の関与が必要
 つまり、人工知能が診断や治療方針を行うのではなく、あくまで医師のアシストとして使用する方向性が示されたと解釈できるでしょう。
問診に人工知能を活用
 とはいえ、医療において人工知能がそのように活用されるのか、そして、画像認識能力では人間を超えたとされるディープラーニング(深層学習)を用いるとどのようなことが可能になるのかという検証は、まだまだ始まったばかりです。
 医療現場での人工知能の活用例の一部を見てみましょう。
 メドレーという会社がオンライン上で提供している「症状チェッカー」というソフトがあります。
 症状チェッカーは、症状から病気を推定する診断アシストシステムです。例えば便秘など、自分が一番困っている症状を選び、いつからその症状が出たか、吐き気を伴うかなどの質問に答えていくことにより、考えられる病気の可能性を絞っていくことができます。受診すべき診療科や、受診すべきタイミング、そして予測される検査・治療法や、自分でできるセルフケア方法まで示される点が、従来の病気辞典との大きな違いとなっています(症状チェッカーの詳しい説明はこちらをご覧下さい)。
 症状チェッカーは幅広く全ての疾患を対象としていますが、診療科目を絞れば、もっと精度の高い診断を自動で提示することが可能になります。
 以前も紹介しましたが、「肛門科.jp」(専門医による無料簡易問診診断)は肛門科でよくある症状ベスト10について問診に答えるシステムです。24時間いつでもどこでも、一番確率が高い疾患を1つに絞って提示し、その一般的な治療法を参照することが可能です。
 これらは、人工知能を活用することで、時間・場所による制約なしに、低コストで均質な医療を提供できる可能性を示した実例と言えるでしょう。
ディープラーニングは医療界の黒船となりうるか?
 以上の例は、いずれも医師が選択肢を作成し、ソフトのアルゴリズムを決めて診断を出力するようにプログラミングしています。
 これに対し、新しい機械学習方法である「ディープラーニング(深層学習) 」では、入力されたデータをもとに、コンピューターが自ら特徴量を導き出すことができます。例えば犬と猫と馬の画像を大量に人工知能に学習させると、全く別の犬の画像を見せても犬と人工知能が判定するようになるのです。
 これの何がすごいかというと、「猫は丸顔で鼻が小さい」「犬は面長で眉が下がっている」などの特徴を教え込まなくても、それらの特徴を機械が自力で判断して獲得するという点です。この能力を高めていけば、画像認識能力においては人間の能力を上回るようになるでしょう。
ピロリ菌感染の有無を画像から診断
 この技術を医療に応用すると何ができるようになるのでしょうか。私たちが現在研究を進めている実例を紹介しましょう。
 前回紹介したように、日本人の胃がんの98〜99%にピロリ菌が関係しています(「要確認、あなたは『ピロリ菌』に感染していないか?」)。そして、ピロリ菌にかかっている方の胃内視鏡には特徴的な所見が見られます。以下の2つの写真を見比べてください。
ピロリ菌に感染している胃の写真
ピロリ菌に感染していない胃の写真
 見た目が全く違うというのは、一般の方でもお分かりになると思います。これらを言葉で説明すると、「ピロリ菌に感染していると、広範囲に赤くなって、胃の粘膜がむくんでひだも太くなっている」、一方「ピロリ菌に感染していない場合は、毛細血管がきれいに見えて白くべっとりとした粘液も見られない」という言い方になります。従来の人工知能だとこれらの特徴を一つひとつ教え込む必要がありました。
 しかし、ディープラーニング(深層学習)方式であれば、教育用の大量の画像を学習させることで、それらの特徴を人工知能が自動習得し、ピロリ菌胃炎を診断することができるようになるはずなのです。そうなれば、内視鏡専門医不足の地域でも専門医に匹敵するレベルの診断ができるようになることでしょう。
人工知能にできること、できないこと
 ここまで、医療に人工知能を応用しようという現場の動きを紹介してきましたが、改めて確認しておくべきことが1つあります。それは、あくまで人工知能は「与えられた情報をもとに確率を出力するだけ」だということです。
 例えば、ピロリ菌胃炎に関しては、入力された内視鏡画像にピロリ菌胃炎の確率が90%という確度が出力されるだけなのです。ピロリ菌がいるかいないかという最終判断は、内視鏡医師が、その情報とその他の検査データや既往歴を総合して下します。そういう意味では、人工知能は人の業務を代替するものではなく、人の知能を増強させるものと捉えるのが適切と言えるでしょう。
 しかし、それだけであったとしても、現場では大いに役に立ちます。内視鏡に関しては検診などで大量の画像が撮影されますので、そちらの画像診断の補助(ダブルチェック)に活用すれば、診断の見落としを防止することが可能になります。
 また、現状のダブルチェックは人間が行っているため、見逃しの確率を減らすのには限界があります。人間と人工知能がそれぞれの基準でチェックすれば、見逃し率の大幅な低下が期待できます。
 人工知能が医師の仕事を奪うとまで言うと、煽りすぎかとは思います。しかし、より高い精度で医師が仕事を行えるようになる未来がすぐそこまで来ているのは間違いないと私は思います。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49314


http://www.asyura2.com/16/health18/msg/427.html

[経世済民119] 量子コンピューターがあなたのパスワードを破る日 パリがロンドンに取って代わる夢ルペンで望み薄 PIMCOアイバシン快進撃
量子コンピューターがあなたのパスワードを破る日
いまさら聞けない量子コンピューターの基礎知識
2017.3.6(月) 小谷 太郎
IBMが2015年に発表した4つのキュービットから成る量子回路。 Photo by IBM Research, under CC BY-ND 2.0.
 世の中では量子コンピューターが熱い話題を振りまいています。
 量子コンピューターの研究会が無数に開かれて、量子コンピューターを製作する(と称する)企業が相次いで立ち上がり、グーグルやインテルやマイクロソフトなど業界大手が資金をどばどば注いでいると報道されます。
 量子コンピューターの時代が到来すれば、既存のコンピューターの原理的な限界が突破され、超高速演算が可能になり、分子構造が瞬時に解析され、今の通信技術に使われている暗号は片っ端から解読される、などと景気のいい噂が飛び交います。
 しかしその量子コンピューターとはいったいどんな代物なのでしょうか。なぜそのような期待が集まっているのでしょうか。
 ここでは量子コンピューターの基本を、本当に基本から紹介しましょう。実は量子コンピューターがどういうものになるのか、誰も正確なところを知りません。
量子コンピューターの「り」は量子力学の「り」
「量子力学」は、原子や電子や分子や素粒子など、ミクロな粒子やミクロな物体の振る舞いを説明する物理学です。
 原子や電子や分子や素粒子などのミクロな存在について知られるようになってきたのは20世紀初めですが、そういうミクロな世界はそれまで人類の知っていたマクロな世界と全然違いました。なにしろ、「2個の物体は、同時に同じ場所に存在できない」とか、「物体と波は別物」といった常識すら通用しないのです。
 驚いた人類は、そういうミクロな世界の物理法則を手探りで突き止め、量子力学を創始しました。量子力学の基本原理は1926年前後のほんの数年間で出揃い、以後100年近く、ほとんど修正なしで使われてきました。
 量子力学によると、ミクロな粒子やミクロな物体の状態は「波動方程式」にしたがって変化します。ボールや天体やバネや人体などマクロな物体の変化を計算するには運動方程式を用いますが、ミクロな世界を支配するのは波動方程式です。
量子力学はミクロな世界の物理法則。
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量子コンピューターとはだから何?
 現在の標準的なコンピューターは、データを、2進法という0と1の羅列で表現します。例えば「A」という文字は「01000001」という具合です。最小のデータは「0」または「1」の値をとる1桁の数値で、これは「ビット」と呼ばれます。
 コンピューターの行う複雑で膨大な処理も、0と1に施す単純な演算の組み合わせです。例えば「A」という文字データを「a」という文字データに変える単純な処理は、「01000001」というデータを「01100001」(a)に変える単純な演算で実現できます。
 コンピューターという物体は複雑で膨大な電子回路ですが、1と0は、この回路の電圧や電流などのオン・オフで表現されます。乱暴にいうと、コンピューターが「A」を「a」に変える処理をしているときには、コンピューター内の8本の信号線を「01000001」という8ビットの電流が流れていき、トランジスタでできた論理回路を通り抜けるうちに「01100001」に変えられます。
 量子コンピューターは、ビットを信号線の電圧や電流ではなく、ミクロな粒子や物体の状態で表現します。この状態は「キュービット」または「量子ビット」と呼ばれ、波動方程式にしたがって変化します。どういう粒子や物体をキュービットとして選ぶかは、研究者の好みによります。「量子ドット」「電子スピン」「核スピン」「超電導回路の電流」「イオンのスピン」などなど、あらゆる量子力学的おもちゃがキュービット候補として試されています。
 そして、キュービットにかける磁場やマイクロ波などをうまく調整すると、行いたいデータ処理や演算のための波動方程式が準備できると期待されます。
 つまり、量子コンピューターは
1)何らかのキュービットでデータを表現する。
2)演算を行う波動方程式をどうにかして物理的に準備する。
3)キュービットを波動方程式のもとで変化させる。
4)演算結果のキュービットを読み取る。
という手順で演算や計算を行うのです。
量子コンピューターは、データをキュービットで表現する。
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量子コンピューターは何の役に立つ?
「A」を「a」に変える処理には、量子コンピューターでなくても、普通のコンピューターで十分です。もし量子コンピューターが実用化されても、みなさんがこの記事を読むために使っているスマホやPCやタブレットが、量子コンピューターに置き換わることはまずないでしょう。
 量子コンピューターはある種の計算に威力を発揮すると期待されています。「フーリエ変換」「因数分解」「離散対数」などなどといったたぐいの計算です。
 普通のコンピューターに大きな整数を1個与えて、その因数を探して因数分解するよう命じると、大変時間がかかることが知られています。数が大きくなると、因数を探す計算ステップが爆発的に増えてしまうのです。
 けれどもその計算を量子コンピューターに与えると、数が大きくなっても、計算ステップがさほど増えないことが分かっています。だから巨大な数を因数分解させると、量子コンピューターは普通のコンピューターを圧倒すると期待されています。
 普通のコンピューターにとって因数分解が苦手だという事実は、暗号通信に利用されています。暗号通信とは、私たちがパスワードやカード情報を送信する際に使われまくっているコンピューター技術です。
 現在主流の暗号技術では、暗号解読の手順に因数分解が組み込まれています。あらかじめ因数を知っている解読者ならただちに暗号解読できますが、因数を知らない盗聴者は、因数分解に長時間かかります。コンピューターが因数分解するのに時間がかかるおかげで、私たちは盗聴者に解読される心配なしにネットで買い物できるのです。
 けれども、大きな数を素早く因数分解できる量子コンピューターが実用化されたなら、既存の暗号通信方式はもう危くて使えません。何らかの新しい暗号通信技術が必要になるでしょう。既存の暗号通信に代わるのは、量子技術に基づく暗号かもしれません。
だが量子コンピューター製作はとてつもなく難しい
 しかし量子コンピューターの第1段階としてキュービットを用意するためには、とんでもなく高度な技術が要求されます。量子ドットや電子スピンなどのキュービット候補を単に並べるだけでは駄目で、全体が1個の波動関数で表わされる「エンタングルメント状態」あるいは「量子もつれ状態」にしないといけません。エンタングルメント状態でないと、望みの波動方程式にしたがって変化しません。
 現在、トラップしたイオンをレーザーで励起させる手法で、10個以上のエンタングルメント状態にあるキュービットが達成されています。一方、PCやスマホのCPUは64ビットと銘打ったものが普通で、キュービットの世界記録はこれに届きません。50キュービット以上でないと量子コンピューターは有利にならないという見積もりもあります。普通のコンピューターと競争しうる量子コンピューターはまだ先という印象です。
 そしてキュービットは増やせば増やすほど不安定になります。周囲の熱雑音を受けると、エンタングルメント状態でなくなってしまいます。(これは、ミクロな粒子や物体をたくさん集めるとマクロな物体となってしまって量子力学の適用範囲外になるため、という見方もできます。)
 つまり量子コンピューターは、普通のコンピューターに対抗できるほどキュービットを集めると、量子コンピューターでいることが困難になるという、本質的な問題を抱えているのです。
 ともあれ、現在、研究者は競ってキュービット製作に取り組んでいます。キュービットの数と、安定して存在できる時間は伸びつつあります。量子コンピューターが完成に近づいているという人もいます。
 量子コンピューター分野の急速な発展を注視しましょう。
量子コンピューターの研究は観測問題ともエンタングルしてる
 ところで量子力学は、その創始期から、欠陥を抱えた体系であることが指摘されています。量子力学の欠陥問題は「観測問題」と呼ばれます。さまざまな言い表し方がありますが、端的にいうと、「ミクロな物体はいくつ集めるとマクロになるのか」「量子力学が適用できるのはどこまでか」という問題です。この問に、現在の量子力学は答えることができません。
 量子コンピューターの実現可能性は、この観測問題と重なります。量子コンピューターの実験は、観測問題の実験です。量子コンピューターの研究をする人は、同時に観測問題に取り組んでいるのです。量子コンピューターの研究がこの問題に、解答、あるいは解答につながる洞察を与えることは疑いありません。
 量子コンピューターが実現できてもできなくても、その研究により、量子力学の基礎的な理解が進みつつあるといえます。
 観測問題という、100年近く未解決だった宿題がついに解ける日が来るかもしれません。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49312

 

PIMCOのアイバシン氏、「債券王」の前任者を抜く快進撃
John Gittelsohn
2017年3月6日 06:25 JST

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「債券王」の異名を取るビル・グロース氏が2014年に去った後、パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)は米債券業界に点在する資産運用会社の一つになるように見えた。だが実際には、グロース氏の後任となったダン・アイバシン氏が、めきめきと実力を現した。
  過去3−5年間に「PIMCOインカム・ファンド」ほど成績の良い債券ファンドは、米国内にほとんど存在しない。PIMCOの顧客でもあるエンジェルス・インベストメント・アドバイザーズのCIO、マイケル・ローゼン氏は「どの期間においても飛び抜けて良い、面食らうほどの成績だ」と話す。

  ブルームバーグとモーニングスターのデータによると、インカム・ファンドの直近12カ月の成績はプラス10.6%で、アクティブ運用型の株式または債券ファンドでは類いを見ないペースで顧客資金が流れ込んでいる。
  インカム・ファンドの運用資産は2月末に754億ドル(約8兆6000億円)に達し、グロース氏が運用していた「PIMCOトータル・リターン」を抜くという金字塔を打ちたてた。ブルームバーグのデータによると、トータル・リターンの運用資産はグロース氏が退社してから下降線をたどり、今や742億ドル。2月にはトータル・リターンが10億ドルの純流出だった一方、インカム・ファンドは20億ドルの純流入となった。
  アイバシン氏は昨年、インカム・ファンドの共同運用担当者であるアルフレッド・ムラタ氏と共に、他の運用担当者が手を引いた領域でチャンスをものにした。サブプライム住宅ローン債権への投資拡大がその一例だ。これらは主に住宅市場が崩壊する前に発行され、償還請求に見舞われたヘッジファンドが安値処分を余儀なくされたものだ。
  両氏はまた、昨年2月の原油価格急落、英国の欧州連合(EU)離脱決定や米大統領選の後、比較的リスクの高い社債や米国外の債券を積極的に買い入れた。トランプ氏当選という意外な選挙結果で金利が急上昇し、債券価格が下落した際には長期債を買い増し、それがその後反発(利回りは低下)した。11月8日の大統領選以来のインカム・ファンドの成績はプラス2.75%と、ブルームバーグ・バークレイズ米国アグリゲート中期債指数のマイナス1.8%を大きくしのいだ。
  同ファンドの好成績はPIMCOの安定にも寄与している。資金流出入は昨年7−9月期と10−12月期に入超となり、2013年までの5000億ドル出超から盛り返した。
原題:Pimco’s New Bond Chief Is Red Hot and Luring Billions in Cash(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-05/OM9DH36VDKHT01


http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/752.html

[経世済民119] トランプ政策への市場反応、正解は米株か JリートIPO公募割続出 生保超長期債回避 米国債改革頓挫 ドラギ静観インフレも
FX Forum | 2017年 03月 6日 11:00 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:
トランプ政策への市場反応、正解は米株か

村上尚己アライアンス・バーンスタイン(AB) マーケット・ストラテジスト
[東京 3日] - 年初来、方向感がなかなか定まらない日本株市場だが、3月に入ってからは、年初来高値をつけるなど堅調に推移し始めている。

振り返れば、日本株市場は2016年11月から17年初までは、トランプラリー(米株高・ドル高・金利高)を受け、大きく上昇したが、その後はトランプ政権が打ち出す政策(トランプノミクス)への思惑で揺れ動いている。

それは、以下に説明するような、米国の株式市場と債券・為替市場の温度差(異なる市場シグナル)を映した「こう着相場」だと言えるだろう。

周知の通り、米国株はトランプ政権への期待から12連騰を含めじりじりと最高値を更新し続けている。ダウ工業株30種の終値は3月に入り、2万1000ドルの大台を超えた。米国株は、トランプノミクス実現期待を背景に、企業業績の一段の改善を織り込んでいると思われる。

一方、米国の債券・為替市場は17年に入ってから、対照的な反応を見せ始めている。債券市場では長期金利上昇が止まり、為替市場では円高ドル安地合いがやや強まったのだ。これらの市場では、恐らくは閣僚人事の遅れなどを理由に、トランプ政権の政策転換への疑念が高まっていたのだろう。

加えて、フランス大統領選挙に対する警戒なども、そうした値動きに作用したと思われる。米国やドイツなど安全国債の買いが促され、それが米国の長期金利低下をもたらし、ドル高に歯止めをかけた面もあろう。

ただ今後は、そのような悲観心理の巻き戻しが起こるのではないだろうか。フランス大統領選挙を理由に、ドイツ2年国債金利が2月に史上最低水準(マイナス0.9%)まで低下したが、いくらなんでもリスク回避の行き過ぎだ。

筆者は、今年は米国政権交代による大規模な政策転換が各金融市場の方向を決すると考えている。このため、上記のような、米国株式と米国債券市場の値動きの差は長期化しないとみている。

フランスなど欧州政治に関する思惑は、一時的な相場変動要因にすぎず、今年の相場の主役にはなり得ない。フランス大統領選挙でルペン国民戦線党首が勝利するシナリオに対する懸念は今後も浮上する場面があろうが、それが米国の金利低下や円高を長期化させる可能性は低いと考える。

<トランプ政策のリトマス紙は国境税調整>

さて、筆者の見立てが正しければ、高値更新を続ける米国株式市場の値動きの方が妥当であり、米欧債券市場でみられた年初からの金利低下もいずれ終わる、ということになる。

こう書くと、以下のような反論が聞こえてきそうだ。トランプ大統領は2月28日に行った初の議会演説で、1兆ドルのインフラ投資を議会に要請するとともに、法人税率引き下げと中間層減税を含む税制改革を打ち出したが、いずれも事前の言及を超えるものではなかったではないか、と。

恐らくは閣僚人事承認の遅れだけではなく、就任当初の大統領としては異例の支持率の低さ、強硬的な保護主義政策なども、当初からトランプ政権に対して懐疑的だった市場参加者の心理を一層慎重にさせているのだろう。日本のメディアや市場関係者の多くは依然、総じてトランプ政権への疑念を強調している。

確かに筆者も、拡張的な財政政策というトランプノミクスの核心については、いまだに具体策の面で不透明な部分があることは認める。ただ、「米国製品を買い、米国人を雇う(Buy American and Hire American)」という方針を掲げる大統領が、減税・政府支出拡大を実現させる可能性はやはり高い。

問題はどのくらい財政拡張的になるかだ。その意味で注目されるのは、共和党が以前から提案している国境税調整の扱いだろう。

国境税調整の導入は輸入企業を中心に大きな増税となり、法人税率引き下げによる減税効果を薄める。米国の製造業を優遇する通商政策の観点から国境税導入を目指しているトランプ政権が、共和党案に沿った制度改定に慎重になるのは当然だ。

「均衡財政政策」にこだわる共和党議員との折衝を経て、国境税調整に伴う増税措置の部分を縮小させることで拡張的な財政政策を徹底できるのかが、トランプノミクスの正体を見定める上での大きなポイントになると筆者はみている。

<日本株、15年の高値トライへ環境整うか>

トランプ政権が拡張的な財政政策を打ち出せば、日米英で財政政策拡大が実現する。フランス大統領選挙次第では、ユーロ圏も拡張財政に転じるシナリオを想定できる。

リーマン・ショックから8年が経過して、先進各国が遅ればせながら金融・財政政策のアクセルを全開にするということは、過去20年続いた米国を含めた先進国の経済成長減速・インフレ率低下という、大きなトレンドの終焉をもたらすことになるだろう。

また、金融市場では、トランプ大統領の発言に一喜一憂する場面が多くなり、米国などの経済指標に対する感応度が今年になってから低下しているようにみえる。実際には、米供給管理協会(ISM)発表の2月製造業景気指数は57.7と、14年8月以来の高水準まで改善している。

景気回復は米国だけではなく、グローバル製造業購買担当者景気指数(PMI)も52.9と、11年5月以来の水準まで改善した。バブル崩壊リスクが意識される中国など新興国を含め世界経済は回復しているのだ。11年から深刻化した欧州危機を引き金に中国など新興国の減速、そして原油など国際商品市況のブーム崩壊を招いたが、こうした大きな流れが転換しつつあることを、今年に入ってからの企業景況感改善は示唆している。

回復しているのは企業景況感だけではない。2月分のハードデータが判明していくのはこれからだが、2月の韓国輸出は前年比プラス20%と大幅な伸びとなり、年明け以降の輸出の伸びが顕著になっている。価格上昇で輸出金額が膨らんでいる側面は大きいが、先進国経済の回復と新興国経済の安定で、12年以降停滞していた世界貿易も回復しつつあるとみられる。

もちろん、こうした動きはトランプ政権誕生によるものではなく、過去の金融緩和の徹底と緊縮財政の緩和を背景に16年前半から始まっていた。そして、始まりつつある世界経済復調が、経済重視を掲げるトランプ政権や安倍政権の支持率の追い風になるだろう。

米国株市場が最高値を更新し、トランプ政権や安倍政権に懐疑的なエコノミストなどから「過熱感」が指摘されているが、成長率回復による業績改善が素直に織り込まれているのだと筆者はみている。高値を更新する米国株市場に追随し、米金利上昇とドル高が早晩再開するのではないか。日経平均株価が、15年の高値をトライする環境は整いつつあると考える。

*村上尚己氏は、米大手運用会社アライアンス・バーンスタイン(AB)のマーケット・ストラテジスト。1994年第一生命保険入社、BNPパリバ、ゴールドマン・サックス、マネックス証券などを経て、2014年5月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(こちら)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

コラム:日本経済の「春」はいつまで続くか=竹中正治氏 2017年 03月 04日
コラム:円高派と円安派、年末に笑うのはどちらか=尾河眞樹氏 2017年 02月 23日
コラム:成長の時代はなぜ終わったのか=河野龍太郎氏 2017年 01月 15日
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-naoki-murakami-idJPKBN16A0CQ?sp=true

 


 
JリートIPO公募割れ続出、「安易上場」にツケ−東証審査明確化
桑子かつ代、長谷川敏郎、竹生悠子
2017年3月6日 06:00 JST更新日時 2017年3月6日 10:01 JST

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• 16年のIPO7銘柄のうち5銘柄が初値で公募割れ、現在も下回る
• 東証は上場審査の運用を明確化、想定価格の算定根拠提出を要請

アベノミクスの下で上昇し続けていた日本版不動産投資信託(Jリート)に逆風が吹いている。リートの収益源である不動産は価格上昇で取得が難しくなり、今後の成長への不安要因が出てきたからだ。昨年相次いだ新規上場は公募価格割れが目立ち、相場全体も伸び悩み始めた。
  リートは保有不動産のテナントからの賃料収入などを原資に配当する証券化商品。昨年の新規上場(IPO)銘柄は過去10年間で最多の7銘柄あった。このうちさくら総合リート投資法人と投資法人みらい、大江戸温泉リート投資法人、マリモ地方創生リート投資法人、スターアジア不動産投資法人の5銘柄は初値が公募価格割れとなり、2月末時点でもなお公募価格を下回った状態となっている。
  安倍政権下の超金融緩和を背景に堅調が続いていたJリート相場もこのところ、伸び悩んでいる。アイビー総研の調査によると、東証REIT市場の時価総額は1月末時点で12兆700億円と、安倍政権発足当時から3倍弱に膨らんだ。しかし、2月末までの過去1年間に限って見ると東証REIT指数の騰落率はマイナス3%に対して、TOPIXはプラス18%と明暗が分かれている。
  しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹運用部長は、昨年のIPO銘柄の状況について「リート市場が良かったために上場したが、結局は公募割れで投資家に受け入れられなかった」とした上で、「安易に物件を集めて上場しても、市場からの支持は集まらない」と分析する。
  マイナス金利政策で不動産価格の上昇に拍車が掛かる中、クレディ・スイス証券の望月政広アナリストは「リートが物件取得を続けられるか、成長余地があるかどうかを投資家がみている」との見方を示す。米総合不動産サービスのJLLによると16年の日本の商業用不動産投資額は2年連続減少の3兆6700億円。不動産証券化協会がまとめた既存Jリートの取得額は1兆2700億円と前年比で約1割減少した。


https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iuhqGYqijATg/v1/-1x-1.png

  投資法人みらいの運用会社である三井物産・イデラパートナーズ取締役業務部長の平塚弥志氏は、同法人の上場来のパフォーマンスに関して「資産規模が小さいリートのIPOが続き、投資家の需要が弱い中での上場タイミングが影響した可能性がある」とみている。同氏は資産拡大に向け「毎年700億ー800億円程度の新規取得をしていきたい」と語った。
上場審査
  東京証券取引所は昨年12月、リート上場審査の運用を明確化した。証券会社や発行体に対し想定価格や仮条件、公開価格の算定根拠に関する書類を提出するよう文書で明記。配当に相当する収益分配金についても「経済環境などの変化に適切に対応可能な状況かどうかも確認のポイント」との文言を新たに盛り込んだ。

東京証券取引所

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg
  東証上場推進部の内藤友則課長は、「最近のリートIPOの環境を考慮し、今までの運用を明確化した」と説明する。公募価格の決定過程について、みずほ証券上級研究員の石沢卓志氏は「発行体の力が強い」とし、「ブラックボックスに近い形で決まっていたのを客観的な視点ではっきり決めろと言っており、単なる注意喚起以上のものがある」と受け止めている。
  不振続きのIPOを受けて、今年初となる2月7日の森トラスト・ホテルリート投資法人上場は市場関係者の注目を集めた。公開価格は14.3万円と目論見書の想定価格15.8万円を9.5%下回る水準に設定。初値は公開価格を上回り、2月末まで割り込まずに堅調に推移している。
  しんきんアセットの藤原氏は「想定価格では市場平均より高いため、今のホテル環境やクオリティからはもっとプレミアムがないと厳しいとの見方が強かった。しかし公開価格を14.3万円まで下げてきたので投資家に受け入れられた」と話す。
日銀依存
  日本銀行が量的・質的金融緩和の一環としてJリートの投資口を直接購入したことやマイナス金利政策で不動産価格が上昇したことがリートには追い風になってきたが、市場環境はやや変わりつつある。昨年の米大統領選でトランプ氏が選出されて以降、景気浮揚期待から米長期金利が上昇。日本でも金利上昇圧力が高まり、昨年7月には史上最低のマイナス0.3%まで下げた長期金利は2月3日、一時1年ぶりの0.15%を付けた。
  早稲田大学ビジネススクールの川口有一カ教授は、「これまでおんぶにだっこだった日銀の金融政策は効かなくなるので、海外投資家はJリートから離れている」と話す。東証のデータでは、海外投資家はマイナス金利導入直後の昨年2−4月は計2622億円の買い越しだったが、昨年5月から今年1月は売り越しが目立ち、同期間は計1003億円の売り越し。アイビー総研の藤浪容子氏は「海外投資家の売り姿勢が継続している」と語った。

大手町タワー

Photographer: Yuya Shino/Bloomberg
  一方、国債の一部が依然マイナス金利の中で、国内投資家は利回りの乗った商品への選好を強めており、みずほ証券の石沢氏はリート相場の下落局面は「割安という点で投資家にはありがたい状況」との見方を示した。アムンディ・ジャパンの浜崎優市場経済調査部長も、「日本の金利上昇の度合いは米国よりかなり低く、妙味は落ちていない」と話す。
  01年に始まったJリート市場では、08年のリーマンショックで相場急落に見舞われたほか、一部のリートがファイナンス不能で破たんし、統合が相次いだ。13年以降はデフレ脱却を目指す安倍政権下で市場は回復傾向が続いているが、「IPOのクオリティを上げておかないと、いずれ環境が悪くなったときにリーマン後のように再び問題になる」と、しんきんアセットの藤原氏は懸念する。
  川口教授は、今後の市場育成には「ブルーチップだけの市場では将来の広がりがなく、銘柄の多様性が必要だ」と話している。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-05/OLNUJZ6KLVR601

 


なぜ生保は超長期債を積極的に買わない、オペ不透明で上向く金利目線
三浦和美、Chikako Mogi
2017年3月6日 08:51 JST

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• 生保のターゲット金利に上昇しないと需給改善しない−損保ジャパン
• 投資家が買いたい水準は恐らく30年債利回りで1%台−三井住友AM

超長期金利での運用が不可欠な生命保険会社など機関投資家にとって、日本銀行が金利上振れを放置してきた超長期国債は投資環境が改善しているようにみえる。だが、日銀金融調節に対する不透明感もあって、買いの目線にはまだ届いていないようだ。
  昨年9月に日銀が長短金利操作によるイールドカーブ・コントロールを導入して以降、超長期を中心にカーブの傾斜化が鮮明になっている。長期の10年物と超長期の30年物との国債利回り格差は、2月17日に84ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と、昨年3月以来の水準まで拡大した。30年物国債利回りは2月20日に、新発債として1年ぶり高水準となる0.92%を付けている。
  損害保険ジャパン日本興亜の石崎竜也グループリーダーは、「超長期利回りの絶対水準としてはかなり良い水準まで上がっているものの、米金利の上昇に対する警戒が強いうちは、金利リスクを取りにくい。超長期債は、生命保険などが明確に買いのターゲットとしている利回り水準まで上昇しないと、需給環境は改善しない」と言う。

損害保険ジャパン本社

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg News
  確かに、足元の新発30年国債利回りは0.8%台後半と、過去10年間の平均1.8%と比べると相当に低いまま。日本証券業協会が毎月発表する国債投資家別売買高によると、1月の生保・損保の超長期債買い越し額は2684億円と2カ月連続で前月の水準を下回った。1年前と比べると1.9%縮小している。
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iG14GaZekeyg/v2/-1x-1.png
 

大阪の日本生命ビル入り口

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg
 日本生命保険の筒井義信社長は1月のブルームバーグとのインタビューで、20年債と30年債の利回りが1%を超えてこないと、投資対象として考え難いとの見解を示した。
  日銀は10年ゾーンの金利上昇に対しては、日々の金融調節で抑え込む姿勢を見せている。長期金利が2月3日に一時0.15%と約1年ぶりの水準まで上昇した際には、「5年超10年以下」の国債買い入れ額を引き上げた上、0.11%の固定利回りで無制限に買い入れる指し値オペの実施に踏み切った。
  長期金利は日銀の方針通りにゼロ%付近にとどまりつつ、超長期金利は市場が生損保などの機関投資家が望む水準にまで上がることは可能なのだろうか。三井住友アセットマネジメントの深代潤グローバル戦略運用グループヘッドは、「日銀としては超長期金利の上昇に連れて、10年金利が0.1%を突破する事態は避けたい考えだと思われる。一方、投資家が買いたい水準は恐らく30年債利回りで1%台。日銀も急な金利上昇には手を入れてくると思われるが、緩やかなペースでは問題ないはず」だと言う。

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  新発国債の超長期物利回りが1年ぶり高水準を付けた後の2月10日。日銀はオペで、超長期国債買い入れを合計200億円増やした。だが、その後に同利回りが一段と上昇し、イールドカーブの傾斜化が進んでも、対応する気配を見せていない。むしろ今月3日には、残存25年超の買い入れ額を減額した。損害保険ジャパン日本興亜の石崎氏は、「日銀の新たなオペ運営は、ボラティリティの低下に寄与するかもしれないが、超長期に対する警戒感というのは変わらない」と指摘した。
  バークレイズ証券の押久保直也債券ストラテジストは、3日のオペについて、「基本的に日銀としては3月のオペ運営も買い入れ額を減らしたいという方向が見えるような内容だった」と指摘。「減額バイアスがかかりつつも、ターゲットの10年金利周辺だけは手厚くするといういびつなバランスになっている。需給が締まりやすくフラットニング傾向のある3月だからこそ、計算して減額をぶつけてきた可能性がある」と分析している。
 
  大和住銀投信投資顧問の国部真二債券運用第二部長は、「日銀は超長期に関してある程度今よりはもう少し上がってくるところまでは容認する可能性はある」と予想。「20年債利回りが1%に上昇するようになったら、10年金利ももう一回0.15%から0.2%程度まで上昇するだろう」とし、「今後グローバルに金利が一段と上昇することになると、日銀は市場との対話で長期金利の変動幅を少しずつ容認していく形になるだろう」と言う。  

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-05/OMC1FG6JTSE801

 


ドラギECB総裁は静観、インフレ率急上昇でも−エコノミスト調査
Piotr Skolimowski、Andre Tartar
2017年3月6日 10:56 JST

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• ECBは6月より前にリスク評価を変更せず−エコノミスト
• テーパリングは18年第1四半期に開始と大部分が予想

欧州中央銀行(ECB)の景気刺激策の終了スケジュールが、エコノミストの間で具体的になりつつある。
  ブルームバーグが2月27日から3月2日にかけて実施した調査では、当局が少なくとも6月まで待ってユーロ圏の景気回復へのリスク評価を修正し、債券購入の一段の縮小発表は9月に入ってからとの回答が大部分を占めた。また、量的緩和(QE)のテーパリング(段階的縮小)と2017年終了後の延長を回答者の82%が予想。テーパリング開始時期は18年1−3月(第1四半期)との回答は約4分の3を占めた。政策金利については、19年以降まで据え置きとの見方が半数近かった。

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  ドラギECB総裁は、3年余りにわたる経済成長でインフレ率が目標を名目的に上回っているにもかかわらず、域内景気の刺激策縮小を求める声を退けている。エコノミスト調査結果に示された予想シナリオなら、複数のユーロ参加国で今年行われる選挙でポピュリスト(大衆主義)政党が躍進する可能性やトランプ米大統領の経済政策の影響など、さまざまなリスクを当局が判断する時間が確保される。
  9日のフランクフルトでのECB政策委員会でQEや金利の変更があると予想するエコノミストはいない。ただし、少数のエコノミストは政策の文言がかなり変更される可能性を見込む。
  メリオン・キャピタルのチーフエコノミスト、アラン・マッケード氏は「今はすっかり静観の状態だ」と述べ、「欧州は重要な選挙を控えており、ECBは9月24日のドイツの選挙結果が出るまではさらなる政策変更にコミットしないとわれわれは受け止めている」と語った。
  ユーロ圏の2月インフレ率は2%と、4カ月で4倍に加速したことから、14年夏に開始した異例の景気刺激策からの出口戦略を策定するよう金融当局に求める圧力が高まっている。ドラギ総裁は、インフレ率の急上昇の主因はエネルギー価格であり基調的な物価圧力は依然として弱いとの見解を示し、不透明な国際情勢の中で辛抱強く臨むよう呼び掛けている。

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https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iroDcQBMYhw4/v2/-1x-1.png

原題:Draghi Seen Keeping Cool on Stimulus Drive Amid Inflation Surge(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-06/OMDBE96KLVR401


 

タカ派に傾いた米金融当局、平静装う中国に試練−人民元揺らぐ公算
Bloomberg News
2017年3月6日 10:05 JST

人民銀副総裁らは為替相場が安定していると強調
米利上げに伴いドルが上昇すれば元の下落圧力が高まる可能性


米金融当局の最近のタカ派的姿勢が人民元を揺るがすことを中国が懸念しているとしても、はた目には分からない。今のところは、だ。
  中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が5日開幕し、指導部は安定のメッセージを発信した。中国人民銀行(中央銀行)の潘功勝、易綱両副総裁は為替相場が安定していると強調。潘副総裁は短期的に影響を受けたとしても人民元のいかなる変動も「正常」なものとなろうとの見解を示した。
  人民銀の貨幣政策委員だった李稲葵清華大学教授は全人代の場でのインタビューで、「中国の主要目標は上期に人民元を安定維持させることだ」とし、「一段のボラティリティー(変動性)を容認できる環境にはなっていない」と述べた。
  安定の表明は他の新興市場にとって安心材料となるかもしれないが、中国には困難な任務となり得る。米金融当局が3月利上げを視野に動く中、ドル上昇は人民銀にとって試練となる。米国の金融引き締めは中国の利回りの優位性を損ね、人民元の下落圧力が強まって資本流出を加速させかねない。
  人民銀は一方で政策金利引き上げに消極的な公算とみられる。李克強首相は全人代での政府活動報告で、2017年の成長率目標を6.5%前後に設定し、さらに良い結果を求めたいと述べた。ここで利上げすれば、まだおぼつかない景気回復を危うくしかねない。
原題:China Beats Stability Drum as Fed Outlook Risks Pullback in Yuan(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-06/OMD9MO6JTSE901
http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/753.html

[国際18] 情報リーク追及は地獄への道、ウォーターゲート再来も  米司法長官の「うそ」、どう裁かれるべきか 
Column | 2017年 03月 6日 10:19 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:
情報リーク追及は地獄への道、ウォーターゲート再来も

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 2月28日、米国のトランプ政権は、飛躍的なペースで歴史に残る成果をあげようとしている。しかし残念ながら、そのなかには合衆国の憲法と法律の精神や文言に反するものが含まれている。写真はトランプ大統領。ホワイトハウスで1月撮影(2017年 ロイター/Kevin Lamarque)

Tim Weiner

[28日 ロイター] - 米国のトランプ政権は、飛躍的なペースで歴史に残る成果をあげようとしている。しかし残念ながら、そのなかには合衆国の憲法と法律の精神や文言に反するものが含まれている。

トランプ大統領は25日、ツイッターに次のように投稿した。「FBIは、長年政府に浸透している国家安全保障に関わる『情報漏えい者』を、まったく阻止できていない。FBI内部の漏えい者でさえ見つけられていない。今すぐ発見を(FIND NOW)」。トランプ大統領が大文字ばかり使うときは注意した方がいい。

見識ある市民なら、ロシアによるサイバー攻撃と2016年大統領選におけるトランプ陣営の選挙運動との関わりについて、FBIが防諜捜査を進めていることを知っている。この件を巡る米国の代表的な報道機関による一流の報道に接しているからだ。

大統領が疑っているのは、こんな情景だろう──。コロンビア特別区の薄暗い駐車場のどこかで、中折れ帽を被り人目を気にしながら速記でメモをとる記者たちに対して、FBI関係者が情報を漏らしている。もしくは最新の暗号化機能付きアプリを使っているのかもしれないが、これについては後述しよう。

トランプ大統領はこの疑惑が消えることを願っている。それを誰が責められるだろうか。このツイッター砲の最高責任者は、それを「まったくの政治的な魔女狩り」と呼ぶ。だが、トランプタワーの金ぴかの部屋と、シャンデリアで飾られたクレムリン宮殿のスイートルームを結ぶ証拠の痕跡があれば、米連邦捜査局(FBI)はそれを追うだろう。

どうやら大統領が目指しているのは、FBIを威圧し、ホワイトハウスの職員を怯えさせ、議会を黙らせ、情報漏えいを食い止め、メディアを阻止することのようだ。トランプ大統領は、記者たちを「人民の敵」と攻撃し続けている。この簡潔なフレーズが最後に流行ったのは、100年前、レーニンがロシア革命を推進していた頃だ。

プリーバス首席補佐官は先日、コミーFBI長官と会談した。それはプーチン大統領配下のスパイとトランプ陣営の選挙運動に関する報告、そしてこの件について大統領が激怒している、という内容だった。

コミー長官は、石のように沈黙を守るという正しい対応を見せた。もちろん、彼はプリーバス首席補佐官が「きわめて軽率」だったなどとは言わなかった。考えてみれば、そう言うこともできただろうが。

大統領を脅かすようなFBI捜査を、大統領首席補佐官が妨害しようとした最新の例は、1972年6月、ウォーターゲート事件の発覚から数日後のことだ。当時のハルデマン首席補佐官はニクソン大統領の命を受けて行動したが、それはオープンリール式のテープで録音されていた。このテープが、捜査妨害の決定的な証拠とされ、ハルデマン首席補佐官は有罪判決を受け、ニクソン大統領は辞任した。

筆者は特別検察官ではなく、プリーバス首席補佐官の行為が、21世紀に入って最も深刻な対外諜報事件についてコミー長官と連邦議会に圧力をかける司法妨害だとは断言できない。(司法妨害に関する連邦法は、連邦レベルにおける捜査について「影響を与え、妨害し、又は介入しようとする試み」を対象としている)。

ただ、大統領がFBIにケンカを売り、中央情報局(CIA)をナチス呼ばわりする状況は、ある意味で、犯罪よりも性質が悪い。これは大変な失態だ。今のホワイトハウスが、こうした失敗を続けることは許されない。メディアとの戦いをエスカレートさせるのも、愚かな考えだ。

「メディアは民主主義にとって必要不可欠だと考えている」。NBCの番組「トゥディ」に20日出演したジョージ・W・ブッシュ元大統領はそう語った。「権力には中毒性があり、腐敗しやすい。メディアが権力を乱用する者を批判することは重要だ」。知っている。筆者も2度、読み返さなければならなかったからだ。

ホワイトハウスはさまざまな機会を捉えて、メディアを、そして政権内の情報提供者を攻撃している。先週、スパイサー大統領報道官は、部下の職員たちに対し、彼らの通話が監視されていると通告した。彼は特に、「Signal」や「Confide」といった暗号化通信アプリを使わないよう警告。トランプ大統領は、今や法執行機関のトップとも、にらみ合っている。

ホワイトハウスが最も避けたいのは、情報漏えい源を必死になって追及することだろう。特に、大統領による権力乱用を示唆するわずかな証拠でもある場合にはなおさらだ。そうした追及は、米国政界では地獄につながる道なのだ。そして私たちは過去にもその道を通ったことがある。

当時のニクソン大統領は就任から55日後、B52爆撃機の大編隊をカンボジアに派遣し始めた。米国はカンボジアとは戦争状態になく、この攻撃は機密とされた。だが、その情報はやがて漏えいした。

1969年4月25日、ニクソン大統領は国家安全保障問題担当のキッシンジャー補佐官を執務室に呼び、情報漏えい対策を担当するよう命じた。キッシンジャー補佐官は命令に従い、J・エドガー・フーバーFBI長官の助けを借りて、自分の部下である国家安全保障会議(NSC)スタッフたちの電話の盗聴を開始した。

盗聴の対象は広がり、NSC、国防総省、国務省の連邦政府職員ら13人、新聞記者4人が含まれるようになった。彼らは外国のスパイではなく、米国市民だった。

ホワイトハウスは盗聴内容の書き起こし記録を受け取ったが、何の役にも立たなかった。後にニクソン氏は「噂話やくだらないものばかりだった」と述べている。

当時、国家安全保障局(NSA)も独自の監視リストを作成していたが、その対象は2人の上院議員を含むまでに拡大していた。1人はフランク・チャーチ上院議員で、インドシナ半島における戦争に反対する最初の超党派法案を推進していた。もう1人はハワード・ベイカー上院議員で、1973年のウォーターゲート事件をめぐる公聴会で「大統領は何を知っていたのか、そしていつそれを知ったのか」と質問したことで知られている。

これらはすべて(ウォーターゲート事件で、情報リークを防ごうとしたため「配管工」と称されたコソ泥チームを含め)、言論や報道の自由を定めた合衆国憲法修正第1条に対して大統領が仕掛けた戦いの一環だった。当時は、「ペンは剣より強し」が実証された。今日ではどうだろうか。近いうちに分かるだろう。

トランプ大統領は、多くの自由な助言を受け付けていない。しかしこの問題に関しては忠告を受け入れるべきだろう。彼は、大統領職の権限を振りかざして、記者たちと行政府や立法府内の情報提供者のあいだに割り込むべきではない。情報漏えいをめぐって、FBI、連邦議会、報道機関に対して戦いを挑むことはできない。

これら3つの勢力はたえず対立している。だが、自由なメディアが連邦捜査官と協調して働くことは可能だ。彼らが一致してホワイトハウスに対抗すれば、決定的な量の共有情報が集められるだろう。

その情報はいつか、明白な証拠の痕跡を追及する召喚状という形を取るかもしれない。FBI捜査官が、その召喚状をホワイトハウスに突きつける可能性もある。1973年に起きたことだ。再び起きないとは言い切れない。

*筆者はピュリツァー賞を受賞した著述家。著書に “Legacy of Ashes: The History of the CIA”(「CIA秘録─その誕生から今日まで」)など。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)


休止中の油井からガスと油が噴出 2017年 03月 01日
コラム:米国よりも深い欧州「反イスラム」の闇 2017年 02月 13日
元名大生「弁護士殺したい」 2017年 02月 17日
http://jp.reuters.com/article/weiner-leaks-idJPKBN16A0X9?sp=true


 

Column | 2017年 03月 6日 10:50 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:米司法長官の「うそ」、どう裁かれるべきか
 

 3月2日、ロシアとの接触について「うそ」をついていたセッションズ米司法長官(写真)は、どう裁かれるべきなのか。ワシントンで撮影(2017年 ロイター/Yuri Gripas)
Tim Weiner

[2日 ロイター] - 「ロシアと連絡を取らなかった」という発言は、「その女性と性的関係を持たなかった」という言葉と並び、大きな虚言として米国政治史に記録されることになるだろう。

ジェフ・セッションズ米司法長官は、クリントン元大統領と同じく、弁護士である。ロースクールで授業をさぼっていたのでなければ、右手を挙げて真実を話すと誓いながら、真実とは全く違うことを語るのは悪しき慣習だと知っているはずだ。

クリントン氏は偽証について「『ある』という言葉の意味が何であるかによる」というフレーズを用いて説明した。セッションズ氏は「ない」という言葉の意味を精査することによって、それを超えなくてはならないだろう。

昨晩、眠ってしまった人のために、何が起こったかを説明しよう。決定的な証拠の匂いが米議会の廊下にかすかに漂っている。

1月10日の指名承認公聴会で、昨年の大統領選の期間中にトランプ陣営に関わる誰かがロシア当局者と接触していたという証拠を知ったらどうするかと聞かれ、セッションズ氏は、その当時「ロシアと連絡を取らなかった」と答えている。

しかし複数の司法省関係者と米ワシントン・ポスト紙の報道によると、セッションズ氏は昨年2回、駐米ロシア大使と面会している。

これは記憶の衰えなどではない。不正行為である。しかも米国の司法長官によるものだ。

大統領選でトランプ陣営の選挙活動に加わった当時、セッションズ氏は上院議員だった。国家安全保障担当の大統領補佐官に就任後たった24日で辞任に追い込まれたマイケル・フリン氏と同様、セッションズ氏は選挙期間中、トランプ氏の信頼厚いアドバイザーを務めた。フリン氏はロシア大使との接触をめぐり、ペンス副大統領にうそをついていた。同氏がうそをついた理由は依然として謎である。

今となってはセッションズ氏も、仲間の上院議員を前にして行った証言でうそをついていたようである。同氏は昨年9月、上院にある自分のオフィスでロシア大使と会っていた。7月にも同大使と話している。

30年にわたる情報機関やスパイ活動に関する取材を通じて、元KGB(旧ソ連国家保安員会)でありロシアの専制君主であるプーチン大統領が、信頼できるスパイの取り巻きに囲まれていることを、筆者は知っている。故に、ロシア大使が諜報部員たちと密接に連絡を取り合っていただろうと考えている。米国も含め、多くの国の大使は諜報機関と協力し、情報を共有したり交換したりすることはよくある。

記憶力の良い議員ならウオーターゲート事件を思い出すだろうが、それも無理もない。民主党議員は次々に公聴会を開いて、一人ずつ辞任に追い込むことでトランプ政権を倒そうという構えだ。

「議会で真実を話すと宣誓したにもかかわらず、ロシアとの接触についてうそをついていた司法長官は辞任しなければならない」と民主党のペロシ下院院内総務は1日、そうコメント。「セッションズ氏はわれわれの国の司法長官に適任ではない。辞めるべきだ」と批判した。

共和党のリンゼー・グラハム上院議員はCNNに対し、「FBIが本質的に犯罪と考えることがあるなら、特別検察官が必要となるのは明らかだ。もしそのような日が来るのであれば、それはジェフ以外の誰かでなくてはならないと私は真っ先に声を上げるだろう」と語っている。

なぜなら、セッションズ氏は自身やトランプ大統領を調査することはできない。そのため本件は、トランプ陣営の幹部に対し、宣誓のもとで行われる尋問や大陪審証言、起訴、あるいはそれ以上に悪い事態へと発展する可能性があるからだ。

民主党のロン・ワイデン上院議員は、トランプ政権とロシアの関係を調査する特別検察官の必要性についてグラハム議員に賛同している。両議員とも、まもなくそれを現実のものとするかもしれない主要な委員会の一員である。

上院のしきたりを考えると、情報、外交、軍事の各委員会による非公開の公聴会を開催して、手始めにコミー連邦捜査局(FBI)長官を含む情報当局幹部の話を聞く可能性が高い。

セッションズ氏はコミー氏の上司にあたる。司法長官はFBIの捜査を許可したり却下したりする権限をもっており、FBI長官は司法長官にリポートしなければならない。

今では誰もが知っているように、FBIはロシア政府とトランプ陣営の接触について、その範囲と実体を捜査している。これは敵国の活発なスパイ活動を明らかにすることを目的とした捜査である。

秘密工作、サイバー攻撃、プロパガンダ(別名:偽ニュース)、ウィキリークスやツイッターボットの兵器化など多方面から仕掛けてくるハイブリッド戦争によって、西側の民主主義を妨害しようとする世界的作戦の一環として、プーチン大統領がトランプ氏を大統領にする手助けをしたかったことはよく知られている。

任務は完了した。これはロシアに対する「冷戦2.0」の1回戦だ。

将来を占う水晶玉の持ち合わせはないが、法の支配はいかなる政治家や大統領よりも力があると筆者は考える。もしほころびが次から次へと出てくるなら、セッションズ氏は司法長官を長く務めることはないかもしれない。長期間にわたり、同氏がこの件を調査することはほぼないだろう。

FBIがその任務にあたる。また、下院ではないにせよ上院がこれら国家の重大問題を詳しく調べることになるだろう。メディアは今後も事実を明らかにしようとするだろう。そして最終的に法廷に行き着くのであれば、裁きが下されることになる。

*筆者はピュリツァー賞を受賞した著述家。著書に “Legacy of Ashes: The History of the CIA”(「CIA秘録─その誕生から今日まで」)など。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。


コラム:トランプ米大統領の為替認識に潜む「危険」 2017年 02月 22日
森永製菓と森永乳業の株式売買を一時停止=東証 2017年 02月 24日
休止中の油井からガスと油が噴出 2017年 03月 01日
http://jp.reuters.com/article/column-sessions-idJPKBN16A0PQ
http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/520.html

[経世済民119] 生活賃金と最低賃金の動向 80年代の日本よりずっと複雑、米中貿易戦争の巻添 ベトナム超富裕層10年後2.7倍増加率世界一
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生活賃金と最低賃金の動向
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最低限の生活水準を維持するための賃金水準として、非営利団体などが雇用主に導入を求める「生活賃金」が10月末に改定され、ロンドンでは9.75ポンド、それ以外の地域では8.45ポンドとなった。一方、4月の「全国生活賃金」導入によって年齢別などに5種類となった法定の最低賃金額についても、改定が進められている。
生活賃金、ロンドンで9.75ポンド
生活賃金(living wage)は、労組や宗教団体、非営利組織などが結成した非営利団体Living Wage Foundationによるキャンペーンで、最低限の生活水準の維持に要する生計費から、必要な賃金水準を設定するもの。最低賃金制度のような遵守義務はなく、雇用主が自主的に導入の可否を決めることができる。適用対象は18歳以上の労働者で、導入組織は自らが雇用する従業員だけでなく、例えば清掃業務の委託先など下請け組織の労働者にも、生活賃金が適用されるよう努めることが求められる。適正な導入が認められれば、Living Wage Foundationから認証を受けることができる。これまでにおよそ2900組織が認証を受けている(2016年11月時点)。
現在、ロンドンとロンドン以外の地域に関する2種類の生活賃金額が設定されており、毎年改定が行われている。今年の改定に際しては、ロンドンとそれ以外の地域に関する算定方法の統一をはじめ、各種の見直しが行われた(注1)。平均的な生計費の算出には、貧困問題を扱うジョセフ・ローンツリー財団が毎年公表する「最低所得基準」(minimum income standards)が用いられる。一般市民からの意見聴取を元に、必要最低限の生活水準に要する財・サービス等の構成やその費用をみるもので、これに基づいて、各種の家族構成毎に想定される生計費を算出し、人口比の加重平均により求められる平均的な生計費から、時間当たりの生活賃金額が設定される(注2)。
10月末に公表された生活賃金の改定額は、ロンドンについて9.75ポンド(昨年から3.7%増)、またロンドン以外の地域では8.45ポンド(2.4%増)となった(注3)。ロンドンとそれ以外の地域の差額は、大半が平均的な住宅の賃料の差によるものだ。
なお、キャンペーンの支援組織でもあるKPMGの報告書(注4)によれば、生活賃金未満の被用者は2016年時点でおよそ560万人で、職種別には販売補助や小売店のレジ係(88万人)、未熟練サービス職種(74万人)、介護サービス(45万人)、未熟練の清掃職種(43万人)、託児関連サービス(30万人)などの従事者が多い(注5)。また若者や女性で相対的に比率が高く、18−21歳層の被用者で全体の69%、また女性では27%が生活賃金未満と推計されている。
最低賃金は5種類に
一方、最低賃金制度の一環として、政府が2016年4月に導入した「全国生活賃金」(National Living Wage)は、上記の生活賃金とは性質が大きく異なる。従来の全国最低賃金(National Minimum Wage)制度における成人(21歳以上)向け最低賃金額6.70ポンドに50ペンスを加算した7.20ポンドを、25歳以上層向けの額として新設したもので、その名称に反して生活費等は考慮されていない。また、導入時点の水準に関して、諮問機関である低賃金委員会(Low Pay Commission)による検討を経ていないことや、2020年までに平均賃金の6割程度に引き上げるとの目標が予め設定されている点で、従来の最低賃金制度とも異なっている。全国生活賃金が25歳以上の労働者に適用される新たな最低賃金となったことで、従来の成人向け額は21〜24歳向けに対象が限定されることとなった。このため、最低賃金額としては、全国生活賃金と併せて年齢別に4種類、これにアプレンティスシップ(企業における見習い訓練)参加者向けの額を加えた計5種類が設定されている。
全国最低賃金については、例年どおりこの10月に改定が行われたところだ。新たな最低賃金額は、21〜24歳向けが6.95ポンド(25ペンス、3.7%増)、18〜20歳向けが5.55ポンド(25ペンス、4.7%増)、16〜17歳向けが4.00ポンド(13ペンス、3.4%増)、アプレンティスシップ参加者向けが3.40ポンド(7ペンス、3%増) (注6) となった。
さらに、最低賃金の改定を4月に統一するとの政府の方針により、2017年4月には全国生活賃金を含む全ての最低賃金額が改定対象となる予定だ。低賃金委員会の案に沿って11月に示された改定額は、全国生活賃金について7.20ポンドから7.50ポンド(4.2%増)への引き上げ、また各種の最低賃金額も1%前後の引き上げとなる(注7)。関連して、低賃金委員会は2020年時点の全国生活賃金の目標額について、3月時点の予測から45ペンス引き下げて8.61ポンドとしている。この間の賃金水準の上昇率について、財務省などが当初予想を下方修正していることによるもので、2018年以降毎年5%弱の引き上げにより、目標を達成することが可能となる。
図表:生活賃金・最低賃金額の推移(ポンド)

http://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2017/03/img/uk_01.gif

なお、全国生活賃金の導入に際しては、雇用の減少につながる可能性が懸念されていたが、これまでのところそうした影響は報告されていない。Resolution Foundationの調査(注8)によれば、多くの雇用主が人件費の増加に対して、価格転嫁(回答企業の36%)や利益による吸収(同29%)、あるいは生産性や効率性の向上への各種の取り組みなど(注9)、雇用削減以外の手段により対応しているとみられる。
経営側は、低賃金委員会が目標額に関する予測を引き下げたことを評価しており、今後の改定についても、景気や雇用状況に合わせた柔軟な対応を政府に求めている。全国生活賃金の導入時には想定されていなかったEU離脱が、6月の国民投票の結果を受けて現実に生じる可能性が高まっており、経済の減速が予想されることも一因とみられる。

1. "Calculating a Living Wage for London and the rest of the UK"。ロンドン市の生活賃金は、生活費と平均所得の二つのアプローチにより、最終的な生活賃金を決定していたが、これが生活費に基づく算定方法に統一された。また従来は、ロンドン以外の地域の生活賃金はラフバラ大学の研究センターが、ロンドンについてはロンドン市が、それぞれ算定していたが、今年からはLiving Wage Foundationが設置した委員会組織(Living Wage Commission−労使、専門家などで構成)による方向付けの下、シンクタンクResolution Foundationが双方の算定を担うこととなった。(本文へ)
2. 単身・カップルの別や、子供の数・年齢などにより17タイプの家族構成が想定され、それぞれについて、消費支出、住宅の賃料、カウンシル税、交通費、託児費用が推計される。なお、成人の構成員が週37時間のフルタイム労働に従事していることが前提とされている。(本文へ)
3. Resolution Foundationのレポート(上掲)によれば、ロンドンについて上記の計算方法で求められた金額は10.15ポンドで、40ペンスの開きがある。詳細は示されていないものの、算定方法の変更による極端な上昇を抑制するため、増加率の上限値(物価上昇率+3%)が設定されており、これが適用されたとみられる。この差額は、今後の改定により順次調整される予定。(本文へ)
4. "Living Wage Research for KPMG - 2016 Report" (本文へ)
5. これに対して、生活賃金未満の労働者の比率が高い職種としては、バーのスタッフやウェイター・ウェイトレスなどが挙げられている。(本文へ)
6. 適用対象は、19歳未満のアプレンティスシップ(見習い訓練)参加者について訓練期間中、また19歳以上の参加者については最初の12カ月間。(本文へ)
7. 21〜24歳向けが7.05ポンド、18〜20歳向け5.60ポンド、16〜17歳向け4.05ポンド、アプレンティス向けが3.50ポンド。(本文へ)
8. "The first 100 days: early evidence on the impact of the National Living Wage" (本文へ)
9. 労働者に努力を求める(16%)、訓練投資を拡大(15%)、使用する労働力の抑制(14%)、技術への投資(12%)、など。(本文へ)
参考資料
• Gov.uk 、Living Wage Foundation 、Resolution Foundation 、Joseph Rowntree Foundation 、Centre for Research in Social Policy 、BBC 、The Guardian ほか各ウェブサイト
参考レート
• 1英ポンド(GBP)=139.87円(2017年3月6日現在 みずほ銀行ウェブサイト )
関連情報
• 海外労働情報 > 国別労働トピック:掲載年月からさがす > 2017年 > 3月
• 海外労働情報 > 国別労働トピック:国別にさがす > イギリスの記事一覧
• 海外労働情報 > 国別労働トピック:カテゴリー別にさがす > 労働法・働くルール、労働条件・就業環境
• 海外労働情報 > 国別基礎情報 > イギリス
• 海外労働情報 > 諸外国に関する報告書:国別にさがす > イギリス
• 海外労働情報 > 海外リンク:国別にさがす > イギリス
http://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2017/03/uk_01.html 

 

80年代の日本よりずっと複雑、米中貿易戦争の巻き添えの影響−野村
Bloomberg News
2017年3月6日 15:26 JST

米中貿易摩擦の巻き添えを被るのは中国の市場だけではない。野村ホールディングスがこうみている。
  野村の調査によれば、中国の対米輸出で上位25業者の8割以上が本土以外の企業による所有。一部製造業の株式銘柄がリスク拡大に直面する一方で、輸出業者を所有する企業が各地に分散していることは、1980年代の日本ほど中国自体は脆弱でないことを意味している。当時は対米輸出で目立つ企業の大半が日本企業で、米政府はトランプ米大統領が現在示唆しているような措置を講じたと野村は説明している。
  野村の中国株リサーチ責任者、劉鳴鏑氏とアナリストのエリン・チャン氏は「米中間の貿易戦争は、台湾や韓国、米国に上場している株式にも等しく影響を与える可能性がある」と記し、今の中国を巡る状況は80年代の日本より「ずっと複雑」だと論じた。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iS0FIK552hD4/v1/-1x-1.png

原題:U.S. Trade War Hit Would Spread Beyond China Stocks, Nomura Says(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-06/OMDPPF6K50XT01


 
ベトナムの超富裕層200人、10年後に2.7倍の540人で増加率世界一
2017/03/03 17:05 JST配信

 英系不動産サービス大手のナイト・フランク(Knight Frank)が発表したレポートによると、2016年末時点におけるベトナムの超富裕層人口は前年末比+30人増の200人だった。

 2016年から2026年までの10年間で2.7倍の540人に達する見通しで、世界で最も高い増加率となる。ベトナムに次いで高い増加率が見込まれているのはインドの2.5倍、中国の2.4倍。

 ナイト・フランクの定義する「超富裕層」とは、住居以外に資産3000万USD(約33億9000万円)以上を保有する人を指す。

 2016年末時点における世界の超富裕層人口は前年末比+6340人増の19万3000人、資産10億USD(約1130億円)以上を保有する人の数は+60人増の2000人に達した。

 ベトナムで資産100万USD(約1億1300万円)以上を保有する人の数は2016年末時点の1万4300人から10年後には3万8600人に上る見通し。また、資産10億USD以上を保有する人の数は1人で、2026年までに3人に増える見込みとなっている。

 ナイト・フランクによると、2016年はイギリスで欧州連合(EU)からの離脱が国民投票で決まり、米国ではドナルド・トランプ氏が大統領選に当選するなど変化の大きい年だったが、世界の総資産は増加しており、前年比減少となった2015年とは反対の傾向にあるという。

 またベトナムについては、医療や製造、金融などの分野の発展により今後も引き続き資産100万USD以上を保有する人が大幅に増加すると予測している。

 2016年末時点の超富裕層は依然として北米に集中しており、その数は7万3000人、次いで欧州が4万9000人、アジアが4万6000人となっている。

 しかし2026年になると超富裕層は米国が9万5000人と引き続きリードする一方で、アジアが欧州を抜き8万8000人に達し、世界の超富裕層人口は2026年までに+43%増の27万5000人に上る見込みだという。


週間ニュースランキング [統計]
1ベトナムの超富裕層200人、10年後に2.7倍の540人で増加率世界一 (3日)
2年初2か月のFDI認可額、前年同期比+21.5%増―実行額+3.3%増 (2/27)
32月全国消費者物価指数、前年同月比+5.02%―ガソリン価格引き上げなど (3日)
4年初2か月の新規設立企業1万4451社、前年同期比+3.9%増 (3日)
51月の訪日ベトナム人2万1600人、前年同月比+46.0%増 (2/17)
http://www.viet-jo.com/news/statistics/170302120312.html

 



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[経世済民119] 13年の歴史に幕:R25の終焉が示すフリーペーパー「冬の時代」 中国経済のファイナンス規模、今年はドイツGDP相当分増加

2017年03月03日 05時30分 更新
13年の歴史に幕:
R25の終焉が示すフリーペーパー「冬の時代」 (1/2)
フリーペーパーとして一世を風靡(ふうび)した「R25」がその歴史に幕を下ろす。出版不況のなか、印刷・配送費用に見合う広告収入が見込めず、フリーペーパーやフリーマガジンは休刊、廃刊が相次ぐ。Web転換も容易ではなく、業界は「冬の時代」に突入した。
[SankeiBiz]
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 フリーペーパーとして一世を風靡(ふうび)した「R25」がその歴史に幕を下ろす。出版不況のなか、印刷・配送費用に見合う広告収入が見込めず、フリーペーパーやフリーマガジンは休刊、廃刊が相次ぐ。Web転換も容易ではなく、業界は「冬の時代」に突入した。

 かつて最大60万部を誇ったフリーペーパーの雄としては、なんとも寂しい幕切れの印象が残った。

 「皆さまにはご迷惑をおかけすることを深くおわび申し上げます」

 R25を運営する「Media Shakers(メディアシェイカーズ)」が1日に発表した1枚のリリースには、4月28日でR25を終了する告知と読者への謝罪が書かれていたが、終了に至る経緯や理由は一切触れられていなかった。

 R25は2004年にフリーペーパーとして創刊。30歳前後のビジネスマン層を意識して、仕事、結婚、マネーなどの話題やニュースなどを隔週刊(当初は週刊)で提供してきた。最盛期には返本率2%前後という、無料情報誌でも「驚異的」(出版関係者)な数字をたたき出した。

 勢いに乗って、新社会人向けに「R22」、20代からアラサー女性をターゲットとした「L25」などの姉妹誌も発刊。その成功に刺激された参入も相次ぎ、フリーペーパーブームをけん引する存在だった。


若いビジネスマンや女性に支持された「R25」も時代の波には勝てなかった=2011年1月、大阪市中央区(田村慶子撮影)
記事の縮小が広告難を招く悪循環……

しかし、やがて部数低迷に陥り、15年9月についに紙としては休刊。その後はネットメディアとして運営され、月間1500万超のPVを記録したこともあったが、「計画通り広告が集まらない」(発行元のリクルートホールディングス)現状を打開することは難しいと判断したようだ。

 R25休刊と同じ15年には、90年以上の歴史を持つ資生堂の企業文化誌「花椿」も、やはり紙媒体としては廃刊を余儀なくされ、アルバイト求人情報誌「an」も首都圏や関西圏の一部地域で休刊した。1967年に首都圏で創刊された同誌は、九州や東海にも拡大したが、求人広告の減少に直面していた。

 背景には、フリーペーパー業界が抱える厳しい構造問題が横たわる。雑誌の発行の継続は非常にコストが掛かるが、とくにフリーペーパーは膨大な印刷費用が必要だとされる。

 「経営が厳しいと特集や企画ページを減らさざるを得ない」(前出の出版関係者)が、内容が薄ければ手に取る読者も当然減る。売り上げの伸びが見込めないので発行部数を抑えれば、クライアントも離れていく。「悪循環に陥り、号数を重ねるにつれ先細りになっていく」(同)のだ。

 それでも、10年以上続いたR25は大健闘した方かもしれない。「5号までいければ立派。実際は創刊号や2号の発刊どまりで消えていくフリーペーパーがいくつもある」(同)というのだから。

 苦境に陥った各誌が飛びつくのがWebというのもほぼお決まりのパターン。フリーペーパーの読者層である若者層が、PCやスマートフォンなど情報端末にシフトしているからというのが、これまたおしなべてその理由に挙げられる。

 だが、実際にはグルメ情報一つとっても、「食べログ」などの専門の情報サイトがいくつも存在し、ネットユーザーはフェイスブックなどSNSで情報交換することが増えている。「なにもフリーペーパーに情報を提供してもらわなくても、事足りている」といった声が聞こえてくる。

 実際、追い込まれたR25がデジタルで立て直しを図ったものの、状況は改善できなかったことが、業界の苦境を象徴している。(柿内公輔)

なぜ時刻表に“謎ダイヤ”が存在するのか
「R25」サービス終了 フリマガ時代の寵児消える
民事再生申請の「Newton」発行元、負債増の理由は?
茨城県の地方紙「常陽新聞」、休刊 購読者伸び悩み
オリコン、週刊エンタメ誌「オリ★スタ」休刊 「オリコンWEEKLY」など37年の歴史に幕
“出版不況の中でも売れる本”を生み出す「ウェブ小説」の仕組みとは?

http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1703/03/news044_2.html


 
2017年03月01日 14時24分 更新
3月31日に更新停止:
「R25」サービス終了 フリマガ時代の寵児消える
ビジネスパーソン向けWebメディア「R25」と関連サービスが終了。一時期は週刊のフリーマガジンを60万部発行し時代の寵児に。15年にWeb完全シフトするも、PVが大きく落ち込んでいた。
[ITmedia]
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 Media Shakersは3月1日、ビジネスパーソン向けWebメディア「R25」と関連サービスを終了すると発表した。3月31日に更新を停止し、4月28日にサービスを終了する。


「R25」サービス終了。Webは3月31日に更新停止する
 2004年創刊のR25は、リクルート社内の新規事業コンテストから出発。定期刊行のフリーマガジンを、首都圏の主要鉄道駅、コンビニエンスストア、大型書店のスタンドで無料配布するという大々的な手法をとり、若手ビジネスパーソンからの支持を得た。一時期は毎週60万部を発行し、フリーマガジン時代の寵児(ちょうじ)として注目を浴びた。

 しかし読者のデジタルシフトに対応するため、15年にWeb版の「web R25」と統合し、紙版は休刊(特別号などのフリーマガジン発行は続行)。Web版は15年には月間5143万PV(ページビュー)に伸びていたが、16年にはブラウザとアプリを合わせて1582万PVにまで落ち込んでいた。


1582万PVに落ち込んでいた(=16年媒体資料)
 R25(ブラウザ版、アプリ版、ニューススタンド版)の終了に加え、R25関連成果型広告や、インフォグラフィックニュースサイト「ZUNNY」のサービス提供も終了する。

 R25編集部は、「2004年のフリーマガジン創刊以来、若手ビジネスマンを応援すべく、話題になっている旬のトピックをはじめ、ビジネスマンとして知っておきたい情報を分かりやすく紹介してきました。13年にわたり、R25というメディアが続いてきたのは、何よりも読者やユーザーの皆様のお陰です。本当にありがとうございました」とコメントしている。

 R25の運営はリクルートホールディングスと、2005年にリクルートと電通が共同で設立したMedia Shakers。Media Shakersの事業内容はR25の運営とR25に関連した広告と運用ソリューション提供。16年3月期の業績は、決算公告によれば最終損益が894万円の赤字、利益剰余金は2億6100万円のマイナスだった。

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http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1703/01/news121.html

 
中国経済のファイナンス規模、今年はドイツGDP相当分増加−UBS
Bloomberg News
2017年3月6日 15:52 JST

中国では今年も与信のエンジン音が引き続き鳴り響きそうで、同国の2017年の諸目標を基に試算すると、既に巨大に膨れ上がった経済全体のファイナンスにドイツの年間の国内総生産(GDP)とほぼ同等規模の資金が加わることになる。
  株式市場を通じた資金調達や約5兆元(約82兆5000億円)相当の地方債スワップ、そして12%のマネーサプライの伸び目標を加えると、UBSグループのアナリストらは中国経済全体のファイナンス規模が今年14.8%拡大するとみる。これは23兆元相当の増加を意味するという。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ibLRLtl9kNkg/v2/-1x-1.png

  UBSの中国経済調査責任者、汪涛氏(香港在勤)ら同行エコノミストらは「中国のレバレッジの伸びはペースこそ鈍化するものの、規模はそうでもない」とリポートに記述。「信用の伸びペースを依然強くしておきたい政府の意向や中国短期金融および債券市場で見られた最近の顕著な引き締めは、中国人民銀行が金融政策のバランスを取る上で直面する難しさを裏付けている」と付け加えた。
原題:China’s Credit Target Implies Adding Entire German GDP This Year(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-06/OMDR406TTDS501


http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/759.html

[社会問題9] なぜ若手人気女優は親の宗教に「出家」したのか? 友だち集団の掟と対立しない家庭のルールには、子どもを従わせることができる
2017年3月6日
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なぜ若手人気女優は親の宗教に「出家」したのか?
[橘玲の日々刻々]
 若手女優が突然、新興宗教団体に「出家」するとして芸能界を引退しました。不安定な人気商売で精神的に追い込まれていたようですが、この団体を選んだのは両親が信者で、自身も子どもの頃から宗教行事に参加していたからでしょう。

 このコラムで何度か、「子育てに意味はない」と書きました。子どもに説教しても無視されるのには進化論的な理由があるという話ですが、「矛盾してるじゃないか」と思うひともいるでしょう。若手女優は、ちゃんと親のいいつけどおり熱心な信者に育ったからです。

 しかしこの出来事も、現代の進化論の枠組みでちゃんと説明可能です。

 アメリカの在野の研究者ジュディス・リッチ・ハリスが子育ての常識に疑問を持ったきっかけは、就学前の移民の子どもたちが母語を忘れ、すぐに英語を話しはじめることでした。子どもの成長が家庭環境で決まるなら、英語を話せない両親との会話に必要な母語をなぜさっさと捨ててしまうのでしょうか?

 こうしてハリスは、膨大な証拠にもとづいて次のように主張します。

「家庭のルールが友だち集団の掟と対立した場合、子どもが親のいうことをきくことはぜったいにない」

 脳のプログラムがつくられた旧石器時代には、離乳期が過ぎれば母親は次の子どもを産むのですから、幼児の世話をすることはできません。だとすれば子どもは、年上のきょうだいやいとこなど、「友だち」のなかで生きていくほかありません。そう考えれば、親の言葉を捨てて友だちの言葉(英語)を選ぶのは当然です。

 しかしこれは、視点を変えれば次のようにいうこともできます。

「友だち集団の掟と対立しない家庭のルールには、子どもを従わせることができる」

 私たちは、幼いときに親がつくった料理の味をいつまでも美味しいと感じます。移民の子どもの味覚が変容しないのは、友だち集団に入れてもらえるかどうかの基準に、食べ物の好き嫌いが関係ないからです。――ニンジンが食べられないからといって仲間はずれにされることは(ふつうは)ありません。

 同様にハリスは、宗教も「友だちの掟」とは関係がないといいます。スピリチュアルな感覚は人類に共通していますが、宗教は文化的なもので、脳のOSができあがったあとに農耕社会のなかで影響力を持つようになったのです。

 子どもたちは、親の宗教によって友だち集団を選ぶことはありません。アメリカなどで、宗教によって子ども集団が分断されているように見えるのは、人種が異なるからです。

 進化論的には、子どもは自分に似た子どもに魅かれるようにつくられています。自分のことを親身に世話してくれるのが、きょうだいやいとこなど血縁関係にある仲間であることを考えれば、これも当たり前でしょう。

 すべての親が苦い経験として知っていることでしょうが、親は子どもの友だち関係に介入できず、どれほど説教しても音楽やファッションの趣味を変えることはできません――これが友だち集団の内側と外側を分ける指標になっているからです。しかし皮肉なことに、宗教は親から子へと受け継がれ、しばしば世俗化した社会と衝突するのです。

参考:ジュディス・リッチ ハリス『子育ての大誤解』
『週刊プレイボーイ』2017年2月27日発売号に掲載

橘 玲(たちばな あきら)

作家。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ヒット。著書に『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』『橘玲の中国私論』(ダイヤモンド社)『「言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)など。最新刊は、小説『ダブルマリッジ』(文藝春秋刊)。

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橘玲の書籍&メルマガのご紹介
世の中(世界)はどんな仕組みで動いているのだろう。そのなかで私たちは、どのように自分や家族の人生を設計(デザイン)していけばいいのだろうか。
経済、社会から国際問題、自己啓発まで、様々な視点から「いまをいかに生きるか」を考えていきます。質問も随時受け付けます。
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なぜ若手人気女優は親の宗教に「出家」したのか? [橘玲の日々刻々][2017.03.06]
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子どもの疑問をぶつけてみよう! 「なぜ同じことを言っているトランプ大統領を絶賛しないの?」 [橘玲の日々刻々][2017.02.13]
日本人のあなたが、知らないうちに重婚状態になっているリスクについて [橘玲の日々刻々][2017.02.06]
http://diamond.jp/articles/-/120319
http://www.asyura2.com/12/social9/msg/765.html

[経世済民119] マンションの「局地バブル」はもう崩壊寸前 7割以上が完成在庫 買い手も借り手もつかない 銀行が引き締めに
マンションの「局地バブル」はもう崩壊寸前

住宅ジャーナリスト 榊淳司
2017年03月06日 09時19分
無断転載禁止
 資材高騰や人手不足などで建設コストがかさみ、新築マンションの価格上昇が続いている。モデルルームを訪れた購入希望者が想像以上に高い販売価格に驚き、二の足を踏むケースが目立っているという。一部でささやかれる「マンションバブル」。崩壊のリスクをはらんでいるのか。住宅ジャーナリストの榊淳司氏が解説する。
増える「塩漬け」物件

 
 「けっこう塩漬け物件が多くなってきたよ」

 先日、ある有力デベロッパーの幹部が、ため息混じりにこう漏らした。首都圏の新築マンション市場はここに来て、大きな曲がり角を迎えていると言うのだ。

 大手マンションデベロッパーでも、ここ2年ほどの間に購入した用地でマンション事業を行っても、価格を上乗せしていったら購買層の手が届かない状態になる。そういう用地は、仕方なく「塩漬け」される。事業化できない理由は、用地購入時に想定した販売価格では高すぎて「売れない」という見通しがハッキリしているからだ。

 新築マンション市場は、明らかに冷えかけている。別の言い方をすれば「バブルが崩壊しかけている」ということになる。

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マンションバブルはどこで弾けるのか? >>

金融緩和に「爆買い」

 
 新築マンションを取り巻く、この「バブル」とは何か。簡単に、今の「バブル」の経緯を見てみよう。

 2013年から始まったアベノミクスは、旧民主党政権時代に停滞していたマンション市場を活性化させた。マンションが売れ出したのである。

 ところが、消費税が14年4月に5%から8%へ上がると、マンションの購入意欲は一気にしぼみかけた。それを救ったのは、同年10月、日本銀行の黒田東彦総裁が行った異次元の金融緩和と言われる施策だ。金利が低下するとともに、住宅ローンの貸し出し競争が激化した。

 にわかに活気付くマンション市場に輪をかけたのが、15年の1月から適用された相続税の増税だ。非課税の枠(基礎控除)が大幅に縮小された。このため、富裕層を中心に金融資産を不動産へ転換する動きが起こり、都心のタワーマンションに人気が集中した。円安を背景とする外国人による「爆買い」がマンション市場を席巻していた時期とも重なった。

「局地バブル」が始まっている

 金融緩和や外国人投資などが重なった結果、15年から16年の前半にかけて、マンション市場は大都市圏を中心に、地域限定ながらバブル化した。私はこれを「局地バブル」と呼んでいる。

 そのエリアは、東京の都心とその周縁、城南、湾岸エリア。川崎市の武蔵小杉周辺。横浜のみなとみらいエリア。そして、京都市の御所周辺と下鴨エリアが当てはまる。

 このほかにも、福岡市、仙台市の一部で目立った価格上昇が起こったが、それらは実際の需要の増大を伴っているので、「どこかで弾けて消える」といったバブル的な要素は少ないと考える。

 実際の上昇幅としては、東京・港区で、12年の終わり頃の販売価格と比べて1.5〜2倍程度。そのほか、山手線内では1.5倍程度の上昇だ。したがって、過去10年以内に、この「局地バブル」エリアで新築マンションを購入した人は、現状でほとんど含み益が生じている。

 ただし、08年のリーマン・ショックで崩壊した「不動産ミニバブル」の最盛期だった06年〜08年前半にマンションを購入している場合はこの例外となる。

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増加するマンションの「完成在庫」 >>

崩壊の兆しが見える「局地バブル」
 
 しかし今、この「局地バブル」には崩壊の兆しが見える。

 まず、何よりも新築マンションが売れなくなった。私は、東京23区のうち20区の新築マンションの建設現場を、1クール3か月という周期でくまなく見て回り、その内容を「資産価値レポート」にまとめてネットで有料頒布している。最近、その資産価値レポートの中身を最新情報に更新するたび、「完成在庫」の増加が目立っている。完成在庫とは、すでにマンション建物が完成しているにもかかわらず、売れ残った住戸がある状態のことだ。

 例えば、世田谷区では16年の夏ごろから、販売中の物件の6割強が完成在庫になっている。世田谷区は都心バブルが最も早く近郊に及んだエリア。さらに、最も遅くバブルがやってきた江戸川区でさえ、現状で販売物件の7割以上が完成在庫になっている。私はこの資産価値レポートを7年以上も作成しているが、これほど完成在庫の割合が高まったことはなかった。

 つまり、新築マンションが売れていないのだ。

 これは統計数字にも表れている。不動産経済研究所によると、16年の首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)における新築マンションの年間供給は、前年より11.6%減の3万5772戸。契約率は68.8%で、09年以降初めて70%を下回った。さらに、平均価格は0.5%ダウンの5490万円で4年ぶりの下落となった。

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高級タワーマンションも売れない >>
 
強気の価格設定

 
 このように、すでに16年時点で、マンションが「売れない」兆候は表面化していた。

 17年に入って、この傾向はさらに強まっている。その結果、デベロッパーたちはこれまでの強気の事業姿勢を見直し、今以上の高値で開発分譲する予定だった用地を「塩漬け」にしているのだ。

 その例として分かりやすいのは、江東区の湾岸エリアだ。ここには二つの象徴的なタワーマンションがある。ともに「東京ワンダフルプロジェクト」という冠を付けられた「スカイズ」と「ベイズ」の2物件だ。地下鉄有楽町線の豊洲駅からそれぞれ徒歩12分と11分。最近話題の豊洲新市場に近い。

 先に完成したスカイズ(44階、1110戸)は、13年の新築販売時に20年の東京五輪開催決定で注目を集め、短期間で完売した。販売価格は、3LDK(75平方メートル)で5800万円台(坪単価250万円台)。その後、16年7月に完成したベイズ(31階、550戸)は6000万円台(同260万円台)となり、いずれも強気の価格設定となった。

買い手も借り手もつかない

 スカイズより低層にもかかわらず、隣接するベイズが高値を維持したため、16年の初めには、スカイズの中古価格が坪単価300万円を超える相場観を形成。実際、このスカイズとベイズからは、大量の売り物件が流通市場に出始めた。値上がりを期待して投資的に購入された住戸が多かったのだ。

 ところが、政府指定の不動産流通機構「レインズ」の情報に出てくるベイズの成約事例は、17年1月末時点でわずか2件。多くの物件が売り出されている割に、買い手がつかない状態が続いている。

 つまり、都心などでにわかに湧き上がったマンションバブルは、一部ではすでに崩れようとしているのだ。

 先日、このベイズを賃貸運用目的で購入した男性と話す機会があった。

 「同じマンションで賃貸に出している住戸がたくさんあるため、なかなか借り手がつかない状態だ」と男性は嘆く。「管理費など毎月のランニングコストやローンの支払いがあるので、やりくりが苦しい。賃料を下げようか悩んでいる」


銀行が引き締めに入った >>


金融機関も「潮目が変わった」

(画像はイメージ)
(画像はイメージ)
 ローンを貸し出す金融機関も局地バブル崩壊に敏感だ。

 ある大手企業に勤務している50代のビジネスマンが、昨年末から不動産投資を検討していた。私のスタッフが優良物件を紹介して、いざ購入となった。

 ところが、銀行融資が下りない。メガバンクや地銀など、数行に打診したが結果は同じ。16年の前半までなら、間違いなく一発で審査が通ったと言えるほどの優良物件だ。男性の勤務先や収入を考えれば、融資を受けられる可能性は高かった。にもかかわらず、融資が下りない。これは明らかに銀行が引き締めに入った兆候だ。

 実は、16年後半からそういった動きが目立ってきた。マンションデベロッパーはもちろん、金融機関も「潮目が変わった」と感じている様子がうかがえる。

 とはいえ、現状では不動産価格が下落しているというあからさまな動きは見られない。ところが、現場では明らかに空気感が変わっている。

 この先、はっきりとマンション価格の下落を感じるようになるまでには、もう少し時間がかかるだろう。ただ、リーマン・ショックのようなに不況到来を実感させるような「事件」が起こると、一気にその流れが加速するのではなかろうか。

【あわせて読みたい】
・マンション投資「メガ大家」になれる人、なれない人
・持ち家VS賃貸、損しないための「視点」とは
・あなたのマンションは「2020年問題」を乗り切れるか?!

プロフィル
榊 淳司( さかき・あつし )
 京都府出身。同志社大学法学部、および慶應義塾大学文学部卒業。1980年代後半のバブル期以降、四半世紀以上、マンション分譲を中心とした不動産業界に関わる。著書に「年収200万円からのマイホーム戦略」「磯野家のマイホーム戦略」(ともにWAVE出版)、「やってはいけないマンション選び」(青春出版社)、「新築マンションを買ってはいけない」(洋泉社新書)、「年収300万円でも家が買える!」(WAVE出版)、「マンション格差 」(講談社現代新書)など。オフィシャルサイトは こちら
『マンション格差』(講談社)
『マンション格差』(講談社)



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2017年03月06日 09時19分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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[社会問題9] 最強?人形ホラーとしての『アンパンマン』
ホーム > オピニオン > 文化・教育
オピニオン


▼文化・教育

菊地 浩平(きくち・こうへい)/早稲田大学文学学術院助教  略歴はこちらから
最強?人形ホラーとしての『アンパンマン』
菊地 浩平/早稲田大学文学学術院助教
世界初?の人形専門講義誕生
 わたしが2014年4月に文化構想学部で立ち上げた「人形メディア学概論」(春期)と「人形とホラー」(秋期)は、一年かけてあらゆる「人形」について学術的検討を試みる他に類を見ない(おそらく世界唯一の)講義だ。
 講義で扱う対象は人形劇やぬいぐるみ、蝋人形、わら人形、腹話術、ロボット、ラブドールなど多岐にわたるが、一貫しているのは「人形」というメディア(=媒体、媒介)を通じて「われわれ」について考察するという点である。われわれは、呪術、芸術、科学技術、コミュニケーションなど様々な用途で、絶えず人形を生み出し続けてきた。ならば、あらゆる人形について考察することは畢竟、多様な観点からわれわれを見つめ直すことに他ならない。そこでわたしはこうした営みを「人形メディア学」と名付け、様々な時代、場所の人形及び、関連作品や文化事象について日々検討を行なってきた。
一見感動的な『それいけ!アンパンマン いのちの星のドーリィ』だが…
 一連の講義のなかで、ひと際学生たちから好評なのが国民的人気作品『アンパンマン』に潜む《最強の人形ホラー》としての側面を明らかにする回だ。取り上げるのは2006年に発表された映画『それいけ!アンパンマン いのちの星のドーリィ』(以下『ドーリィ』)。この物語は持ち主に捨てられた人形・ドーリィが「いのちの星」の力により生命を得て、金髪巻き髪ロングの青ドレス姿に変身するところから始まる。このドーリィは自分の楽しさだけを優先するシリーズ内屈指のおてんば娘であり、そんな彼女を周囲は煙たがる。物語の中盤以降ドーリィは悩み、アンパンマンやロールパンナに助言を求めるも、どう生きていくべきかまるで分からなくなってしまう。やがて、ばいきんまんの生み出した巨大ロボによる攻撃の的となるドーリィ。そんな彼女を守ろうと身を挺したアンパンマンは、ロボの度重なるビームによって絶命する。その刹那、ドーリィは遂に自身の使命を悟り、命をアンパンマンのために捧げる。復活したアンパンマンは巨大ロボを打ち倒すも、傍らにはドーリィの亡骸がある。その夜、ドーリィの弔いが始まると、彼女には数多のいのちの星が降り注ぐ。腰の下まであった巻き髪は肩上に二つ結びされ、青ドレスからエンジのオーバーオール姿に様変わりした彼女は、こうして遂に「人間」となったのだった。
 大まかなプロットはカルロ・コッローディの名作『ピノッキオの冒険』(1883)を踏襲しつつ、わがまま放題だったドーリィが、終幕においてアンパンマン的自己犠牲を体現する姿は涙を誘う。またクライマックスで流れ、本作の主題とも深くかかわる楽曲『アンパンマンのマーチ』(以下『マーチ』)男声合唱バージョンは、感動を通り越して笑いすらこみあげてくるような荘厳さである。こうして考えてみると、本作は良質な「子ども向け」映画にも思える。しかしながら本作の人形、すなわちドーリィに着目すると、『アンパンマン』に潜在するホラー性が浮き彫りになってくる。
『アンパンマン』は最強のホラーになり得る!
 物語の中盤、ドーリィはアンパンマンに「なんのために生まれたの?なにをして生きるの?」と問う(いうまでもなく『マーチ』からの引用だ)。するとアンパンマンは、夕暮れの虚空をじっと見つめながら「困ってる人を助けるためかな」と答える。だがドーリィはその回答に全く納得できず「つまんない」とその場を立ち去ってしまう。このやり取りからドーリィの一筋縄ではいかぬ性格が浮き彫りになるのだが、実は後に用意されたロールパンナとドーリィの対話によりこの場面の真価が明らかになる。
 とある夜、ドーリィが街の灯りを遠くに見つめていると、傍らにロールパンナが現れる。ドーリィはロールパンナにも「なんのために生まれたの?」と問う。するとロールパンナは「わからない」という。ドーリィは「(アンパンマンの答えは)嘘だよね?」とたずねると、ロールパンナは「嘘じゃない。アンパンマンはそうなんだ。でも私にはできない」と答える。ロールパンナはジャムおじさんにより生みだされたメロンパンナの姉でありながら、わけあって正義の心と悪の心をあわせ持ち、それ故にアンパンマンたちとは遠く離れて住むことを余儀なくされているという極めて複雑なキャラクターだ。彼女は本作でこの場面にしか登場しないのだが、この対話が先のアンパンマンとのやり取りのわずか6分後になされることの効果は小さくない。すなわち生きる目的が「わからない」ロールパンナの存在は、正義感に溢れ、完全無欠の絶対ヒーローであるアンパンマンを否が応にも相対化し、批評してしまう。結果として、アンパンマンよりもロールパンナの方がはるかに身近で「わかる」し、逆にアンパンマンが「つまんない」、どころかまっすぐ過ぎてなんだかこわい存在に見えてくるのはわたしだけではないはずだ。
 またこうしたアンパンマンへの批評的態度は、物語冒頭、学校での『マーチ』合唱シーンにも垣間見える。児童たちの歌唱による「なんのために生まれて なにをして生きるのか」というお馴染みのフレーズを聞いた途端、ドーリィは「変な歌!」と叫び周囲をざわつかせる。ドーリィは「なんのために生きるかなんて決まってる」、「自分が楽しむためだ」と言い放つ。周囲にいたカバオらは「それは違う!」と反論するが、「なにが違うの?」と問われても答えることはできない。
 当たり前だ。生きる目的や使命など簡単にわかるものではない。それにもかかわらず、ドーリィの理念は口にした途端に批判される。なぜか。答えは簡単だ。それは自己犠牲を信条とする「アンパンマン的正義」と相容れないからである。つまり本作では学校という場所が、彼らの信じる「正義」に反する者を糾弾し得る場所として描かれるのだ。こうなってくると『マーチ』が彼らの英雄称賛歌に聞こえないでもない。
 流石にそこまではいわないが、こうした描写の積み重ねにより浮かび上がるのは、アンパンマンと彼を中心とした「世界」が、実は極めて排他的な空間であるという事実である。それと同時に、「なんのために生まれて なにをして生きるのか」を問う人形・ドーリィを通じて、本作がアンパンマンを中心とするこの「世界」それ自体の再検討を試みていることが明らかになってくる。
 そして極めつけは、ドーリィの髪型と服装が変化し、人間になった彼女がコミュニティにすっかり受け入れられた様子を描くエンドロールである。もちろんこれは、自分本位に生きてきたドーリィの変化を通じて、自己犠牲を払って人に奉仕する心を忘れてはいけない、という教訓的なメッセージを描いたものであろう。

『ピノッキオの冒険』初版掲載の挿絵
 しかしここで本作が『ピノッキオの冒険』のプロットを踏襲している点に注目したい。『ピノッキオの冒険』はディズニー映画版が有名だが、実は19世紀末イタリアにおける「教育」の暴力性を描いた風刺小説としても名高い。紙幅の関係で詳しく述べることはできないが、ジャーナリストでもあったコッローディは、数十年後にファシスト党が目指す、自己犠牲を是とする全体主義国家を予見していた。そして国民の画一化を図る「教育」を批判し、小説を通じて子どもたちの行く末を案じたのである。
 それを考慮すれば、アンパンマン的正義への批評性を宿していた本作の結末を単なるハッピーエンドとみなすのは難しい。むしろ本作は、ドーリィという人形だけが「世界」に違和感を覚えそれを表明するも、最後にはやむなく大勢に取り込まれてしまうという、救いなきホラー描写により幕を閉じていると考えられる。髪型と衣装の変貌と、命を賭した自己犠牲→(不自然なまでの)コミュニティからの「承認」というプロセスはそれを象徴するものであろう。すなわち本作は、『ピノッキオの冒険』の今日的アップデートとして『アンパンマン』に潜在する全体主義的恐怖を描いた、傑作人形ホラーに他ならないのである!
 ここで一点申し添えておこう。元々『アンパンマン』は1969年に既存のヒーローものへの批評性を宿した作品として生み出された。作者のやなせたかしは、たくましい肉体や超能力ではなく、お腹を減っている人を助けるという素朴なあり方こそがヒーローには不可欠であると考えていた。しかし、『アンパンマン』が国民的人気作品となり得たいま、彼もまた既存のヒーローを代表する存在となった。そこで『ドーリィ』は、改めてヒーローやその「世界」を批評し、そこに潜在する暴力性をも描いてみせた。つまりここまで述べてきた要素は、『アンパンマン』がもともと有していたヒーロー批評的性質について、その作品世界を巧みに利用して再提示するものであったことを忘れてはならない。
世界随一の人形教育研究拠点形成へ
 この講義を受けた学生たちは「教育」や「ヒーロー」、ひいては「世界」について思考する機会を『アンパンマン』から得る。授業後に彼らが寄せるコメントシートは、毎年他の回とは比較にならない程の熱量を帯びている。自分でカリキュラムを組んで能動的に学び、やがてより広い世界に羽ばたいていく大学生たちと取り組むにあたり、これほど適した作品が他にあるだろうか(しかも見事に今日的でもある)。彼らはそこで、「子供向け」としか思われてこなかったような作品や人形に出会い、世界を見つめ直す機会はいつどこにでも偏在するという、当たり前だがつい忘れがちな事実と対峙するのである。
 以上のようにして、わたしは人形というメディアを通じてわれわれについて考察し、更には学生たちとも対話を試みている。現在、人形やその関連作品、文化に関する研究は決して活発とはいえない。それ故に、わたしは学術的な研究を進めるのと同時に、その成果を対外的に発信していく方法を模索する必要に駆られている。その一環としてこれからも、研究者であると同時に教育者でもあることをおろそかにせず、教壇に立ち学生たちの力も借りながら研究を推進していきたい。そうした積み重ねにより、世界随一の人形教育研究拠点を国内に形成することがわたしの目標であり、本稿がそうした未来への狼煙のようなものとなればうれしい。

参考資料
・『それいけ!アンパンマン いのちの星のドーリィ』日本テレビ他、2006。
・前之園幸一郎『『ピノッキオ』の人間学:イタリア近代教育史序説』青山学院女子短期大学学芸懇話会、1987。
・アンパンマン公式ポータルサイト
菊地 浩平(きくち・こうへい)/早稲田大学文学学術院助教
【略歴】
1983年生まれ。早稲田大学演劇博物館グローバルCOE研究助手、日本学術振興会特別研究員(PD)を経て2014年より現職。専門は人形表象
文化全般。2017年秋に上述の講義内容をまとめた単著『人形メディア学の逆襲(仮)』を河出書房新社より刊行予定。

【論文】
「日本人形表象文化と、着ぐるみ/ギニョールとしてのゴジラ」『表象・メディア研究』7号、早稲田 表象・メディア論学会、2017。
「リカちゃんはなぜ太らないのか」『人形玩具研究』27号、日本人形玩具学会、2017。
「でくのぼうとしての初音ミク」『日本の舞台芸術における身体―死と生、人形と人工体』国際日本文化研究センター、2017。など
【文化・教育】関連 オピニオン
• 写し絵と幻燈 — 映像の考古学
• 「ディズニーランドは決して完成しない」
• 人とコンピューターの協調で互いに成長していく電王戦と世界コンピュータ将棋選手権


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• まる、くおん。

http://www.yomiuri.co.jp/adv/wol/opinion/culture_170227.html


http://www.asyura2.com/12/social9/msg/766.html

[経世済民119] 40兆円の損失を生む「子どもの貧困」の背景 正月を知らない子どもたち…貧困がもたらす国の損失 奨学金頼みで老後破産?…我
40兆円の損失を生む「子どもの貧困」の背景

東北福祉大学特任教授 草間吉夫
2017年03月06日 11時07分
無断転載禁止
 「子どもの貧困」が深刻な問題となっている。進学や就職の道を狭められた子どもたちが、大人になってからも生活に苦しむケースが少なくない。このような状況で、子どもの貧困を福祉の観点のみから支援するだけで十分なのだろうか。児童養護施設で育ち、内閣府の子供の未来応援国民運動発起人・アドバイザリーを務める草間吉夫氏が解説する。

ある日、お母さんが蒸発した


 私は1966年、生後3日で乳児院に預けられ、高校まで茨城県内の児童養護施設(以下、養護施設)で育った。

 施設でともに育った先輩に、50代の男性Aさんがいる。

 両親と妹2人の5人で暮らしていたAさんが養護施設に入所したのは小学校低学年のころ。ある日、母親が突然蒸発した。それ以来、Aさんの父親は、ギャンブルにのめりこむようになって借金を繰り返し、一家の生活は一気に苦しくなった。

 満足に食事もできなくなり、Aさんは、この施設に身を寄せた。高校を卒業したものの、住所不定の父親を頼ることもできず、社員寮のある都内の会社に働き口を求めた。身寄りのない、初めての土地だったが、そこで自立を目指すはずだった。

 それから30年以上がたった昨年のことだ。都内のある区役所から、Aさんについて身元照会の連絡が施設に入ったという。Aさんは、何らかの理由で職を失い、その後生活が行き詰まって区役所に駆け込んだ。独り身のAさんは、結局、生活保護を受けることになった。

 なぜ、Aさんの半生は、こうも過酷なのか。

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大人になってからも引きずる「子どもの貧困」 >>

就職できても安定しない生活


 残念ながら、Aさんのようなケースは、養護施設の退所者に珍しいことではない。

 かつて、子どもたちが養護施設に入所してくる理由は、親の行方不明や長期入院などによる経済的要因がほとんどだった。一家の収入が途絶え、日々の生活が苦しくなり、子どもたちの衣食住は脅かされた。こうやって入所してきた子どもたちは、中学や高校を卒業すると、社員寮のある工場や住み込みで働ける飲食店などへ就職するのが当たり前だった。

 とはいえ、労働環境は厳しく、収入は限られていた。就職できたからといって、生活が安定するわけではない。新たな人間関係や見知らぬ土地になじめず、職や住まいを転々とし、再び経済的に追い詰められてしまうことも多い。

 私の場合は、知識を身につける機会に恵まれた。日本育英会(現・日本学生支援機構)の奨学金とアルバイト、親戚からの少しばかりの仕送り、そして施設と施設長個人から借金をして学費をまかなった。高校を無事卒業し、大学へ進学、地元で就職できたのは極めて珍しいケースだった。

 当時を振り返ると、貧しさはそこかしこに満ちていた時代だった。

経済苦は虐待を生んだ

 それから30年。厚生労働省によると、2015年10月1日現在、児童施設は全国に602か所あり、2万7828人の子どもたちが暮らしている。最近は、子どもたちの入所理由が大きく様変わりしている。かつて、大半を占めていた経済的理由は少数派となり、親からの虐待を理由とした入所が約60%に上っている。

 その典型例として、児童養護施設の関係者らの会合で報告されたケースを紹介したい。

 山梨県の機械製造工場に勤務する24歳男性。東京都内のアパートで育った。物心ついたときから父親はいなかった。定職に就かない母親は、日々のいらだちを幼かった男性にぶつけた。空腹を訴えれば頬を打たれ、給食費を求めれば足蹴りされたという。

 男性が中学1年生のときだった。一日中家に引きこもっていた母親は、男性に近所へ食料をもらってくるように命令した。「ふざけんな」と言い返すと、刃物を手にした母ともみ合いになった。「このままでは、殺されるかもしれない」。男性は、学校に相談し、養護施設で暮らすことになった。

 「人生を変えたい」と大学進学も考えたが、将来にわたって、数百万円という奨学金を返す自信もなく、就職する道を選んだ。「母親や親戚に相談なんてしたくなかった」。当時の苦い記憶が、今も心の片隅にこびりつく。

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進学をあきらめる二つの理由 >>

子どもの貧困に広がる支援

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 もちろん、悪いことばかりではなく、養護施設の子どもたちを取り巻く状況は改善しつつある。

 現在では、入所する中学生に学習塾代が全額、国から支給されるようになった。生活費・家賃・資格取得に対する国の貸付制度や、17年度から始まる進学児童に対する給付型奨学金の創設は心強い支援となる。

 民間の支援も広がっている。北関東を中心に地域密着型の学習塾を展開する開倫塾(林明夫代表)は、16年から創業地である栃木県内の養護施設の子どもたち向けに、無料または低額による学習支援を始めた。

 安価で食事を提供する「こども食堂」や、ボランティアが勉強を教える「無料塾」などの取り組みも全国で広がっている。

大学進学はわずか1割

 とはいえ、養護施設に入所する生徒の大学・短大への進学率は11.1%にとどまっている。一般家庭と比べると4分の1にも満たない。この数字は、「生活保護世帯」(20.0%)、「ひとり親家庭」(23.9%)よりもはるかに低い(2015年度平均、文部科学省・厚生労働省調査)。

 支援策が充実しつつあるにもかかわらず、なぜ、養護施設の子どもたちは進学をあきらめてしまうのだろうか。

【理由1】乏しい学習意欲

 一つは学力である。学習体験を持てない家庭環境にあった子どもがほとんどだからだ。学力の高低は、学習習慣が身に付いているかどうかに深く関係してくる。

 養護施設の子どもに低学力が圧倒的に多いのは、このような背景が大きく影響している。また、学習意欲は学力と比例する傾向もあり、自主的に学ぶ子どもが極めて少ないのが実状だ。

【理由2】教育よりも生活支援

 二つ目は、養護施設が子どもたちの成長を見守る生活施設であって、教育機関ではないためだ。制度上、職員に求められる資格は、保育士、児童指導員、臨床心理士といった主にライフサポートをする職種である。このため、成績の振るわない子どもがいても、学力や学習意欲を伸ばすための手立てがない。

 大学進学には、経済的な裏付けも必要だ。親の支援を当てにできない子どもたちは、進学しようとすれば多額の借金を背負うことになる。たとえ十分な学力があっても、「借金をしてまで進学したくない」という子が就職の道を選んでも不思議はない。施設職員も大学進学を強く勧めるのをためらってしまうのだ。

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「子どもの貧困」による損失は40兆円 >>


子どもの貧困が招く社会的損失

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 子どもの貧困対策として、進学を支援する必要性を裏付ける調査結果がある。

 日本財団の子どもの貧困対策チームが2015年12月、「生まれた家庭の経済格差が教育格差をもたらし、将来の所得格差につながっている」と公表した。

 現在の日本では、衣食住に困るような「絶対的貧困」は少ないとしながらも、ギリギリの生活を強いられ、進学や就職の選択肢が狭まるケースが目立つ。このため、大人になってから得られる所得は減り、国の税収減につながるという。同チームは、「わが国が何も対策を講じなければ、いずれ国家が被る社会損失は最大40数兆円にまで膨らむ」と試算する。

 教育によるその後の経済的格差は、ノーベル経済学賞を受賞した米・シカゴ大学のジェームス.J.ヘックマン教授も指摘している。就学前教育を実施した子どもと未実施の子どもの40歳時点における追跡調査で、就学前教育が社会的収益率に高い効果があることを実証している。

福祉対策ではなく公共投資

 ここで紹介した養護施設の子どもたちの状況は、子どもの貧困の一側面に過ぎない。ひとり親家庭、生活保護受給世帯、多子世帯などで進学をためらう子どもたちがいる。こうした子どもたちの支援は、福祉対策として考えるのではなく、未来への公共投資として捉えるべきだと考える。

 そのために、子どもの進学をさらに支援するための財源を創出する必要性がある。

 もっと具体的に言えば、「子ども国債」なるものを創設し、財源を捻出することを提案したい。「子ども国債」を最初に構想したのは、私が育った養護施設を経営する社会福祉法人同仁会の2代目理事長を務める遠藤光洋氏(78歳)である。今から20年以上も前、私と児童福祉のあり方を議論した際に同氏が財源創出策として提唱した。

 財政投入による支援で、養護施設における子どもたちの自己実現度が高まるだけでなく、将来は国家としても彼らの納税としてリターンを見込める。

 養護施設の子どもたちは、未来そのものだと言える。子どもの貧困の一側面である進学問題にも目を配り、支援の拡充に取り組んでいかなければならない。

【参考文献】

「東京都における児童養護施設等退所者の実態調査報告書」(2017年、東京都福祉保健局)

「子供の貧困が日本を滅ぼす」日本財団子どもの貧困対策チーム(2016年、文春新書)

「日本の大課題 子どもの貧困」池上彰編(2015年、ちくま新書)

「幼児教育の経済学」ジェームス.J.ヘックマン(2015年、東洋経済新報社)

【引用HP】

内閣府子供の未来応援国民運動

・「子供の貧困対策 マッチングフォーラム」が、3月12日(札幌)、16日(京都)に開催される。

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プロフィル
草間 吉夫( くさま・よしお )
 1966年茨城県高萩市生まれ。生後3日から高校卒業まで乳児院と児童養護施設で育つ。東北福祉大学社会福祉学部卒、同大学院修士課程修了。児童養護施設に5年勤務後、松下政経塾に入塾。東北福祉大学教員を経て高萩市長を2期歴任。2017年、同大学院博士課程満期退学。内閣府子供の未来応援国民運動発起人・アドバイザリー、厚生労働省社会保障審議会専門委員など。主な著書に、「ひとりぼっちの私が市長になった!」(講談社)、「高萩市長草間吉夫の1600日」(茨城新聞社)など。

http://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20170302-OYT8T50055.html

 

正月を知らない子どもたち…貧困がもたらす国の損失
立教大学教授 湯澤直美
2016年01月15日 10時30分
無断転載禁止
 17歳以下のおよそ6人に1人が貧困の状況にあり、その割合は増え続けているという。このまま放置すれば、大きな経済的損失を日本にもたらすとする報告書が発表された。貧困状態に置かれ、孤立しがちな子どもたちへの支援は、人道的な理由からだけでなく、将来の国の経済や財政にとっても不可欠だ。子どもの貧困を研究する湯澤教授に寄稿してもらった。
「年越し」にも格差

貧困家庭の子どもたちが支援団体の大人たちと食卓を囲む(大阪子どもの貧困アクショングループ提供)

 2016年の新しい年を迎えた。子どもたちにとっては、クリスマス会、大晦日(みそか)、お正月などイベント続きの冬休みを過ごす時期である。しかし、「おめでとう」の言葉が行きかうこの時期に、しんどい思いをする子どもたちがいる。
 「何年もクリスマスケーキを食べたことがない」「お年玉はない」「友だちと遊びに行く交通費もない」「家の中は十分な暖房がない」。そのような子どもたちのなかには、いつもお腹(なか)をすかせている子どもも少なくない。
 これは、現代の日本の話である。
 むろん、苦しいのは子どもばかりではない。生活費・教育費のために働く親たちは、非正規から正規への転職もままならず、少しでも時給の高い夜間や日曜・祝日に働かざるを得ない。夜間は子どものみで過ごす「ひとり暮らし児童」ともいわれる状況になりやすい。子どものための労働が、子どもと過ごす時間を奪う悪循環。保護者の苦悩は計り知れない。
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328万人の貧困…将来の経済にも大きな打撃
 このような貧困のすそ野は広がっている。先進諸国における貧困層の割合を把握する指標のひとつに、相対的貧困率がある。日本の子どもの相対的貧困率は年々悪化し、最新のデータでは16.3%(2012年データ:厚生労働省「平成25年国民生活基礎調査」)。0歳から17歳の子どものうち、約6人に1人が貧困状況にあることになる。
 実数では約328万人。2014年の出生数が約100万人であることと比べると、その3倍以上に相当する数字だ。経済協力開発機構(OECD)加盟34か国でみると、日本の貧困率は高いほうから11番目に位置する。
 そのような現状をふまえ、2015年12月、日本財団は『子どもの貧困の社会的損失 推計レポート』を発表した(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社との共同事業)。子ども時代の経済格差が教育格差を生み、将来の所得格差につながるという想定から、格差を放置したままでいるとどのような経済的な影響があるかを推計した報告書である。
 推計の結果はどうだったか。現在15歳の子ども(約120万人)のうち、生活保護世帯、児童養護施設、ひとり親家庭の子ども約18万人だけでも、経済的損失は約2.9兆円に及び、政府の財政負担は約1.1兆円増加する、という。
 「貧困」というと、とかく困窮した家庭や個人の問題として語られることが多い。それゆえ、貧困対策を講じることについては、「一部の人々に税金がつぎ込まれる」という感覚に陥りやすい。しかし、このレポートは、「個」の視点を超えて、「経済」の視点からアプローチしている点が特徴だ。子どもの貧困をそのまま放置すると、将来の国民の所得が低下する。それは、消費の低下を招く。そうすると、国内市場の縮小が一段と加速する。人口減少時代に突入している今、子どもの貧困対策を慈善事業として捉えるのではなく、経済的効果をもたらす経済対策として捉える必要を、データを使って訴えている。
 持続可能な社会の鍵は子どもの貧困対策への投資にある。あなたはどう考えるか、ぜひレポートを一読してみてほしい。
経済的損失2.9兆円、財政負担1.1兆円

貧困家庭の子どもたちに届けるために集められたお菓子(フードバンク山梨提供)
 レポートの内容を簡単に紹介しよう。貧困世帯とそうでない世帯では、進学状況が異なるために、最終的な学歴や就業状況にも差が生まれる。この状況を改善しなければ、貧困世帯の子どもは将来にわたり賃金水準が低くなり、一生のうちに受け取る所得(生涯所得)が低位になる。
 そうすると、政府が徴収する税収や社会保険料収入も低下する。一方、生活保護費などの社会保障給付費は増加することになる。
 そこで、進学や進路に差が出る中学卒業時に着目する。子どもの貧困対策を行わず進学率や就労環境に格差が残る状況(現状シナリオ)と、子どもの貧困対策により教育・所得格差が一定程度は改善される状況(改善シナリオ)を比較してみるのである。
 まずは、現在15歳の子どもが19歳〜64歳までに得る所得の差を把握した数字をみてみよう(図1)。64歳までに得る所得の合計は、現状シナリオより改善シナリオのほうが2.9兆円増えている。言い換えれば、子どもの貧困対策を行わない場合、将来的には約2.9兆円の市場の縮小、すなわち経済損失が生まれることを意味する。
 このような所得の差は、税・社会保障費用の個人負担額(個人が納める額)の差となって現れる。そこで、国民が負担する税や社会保険料の合計額から、生活保護費など社会保障給付額を差し引いた金額がどの程度かによって、政府の財政負担は増減する。これを「税・社会保障の純負担」として推計した結果、改善シナリオよりも現状シナリオの方が、約1.1兆円少ない。このことは、子どもの貧困対策を行わないと、政府の財政負担は約1.1兆円分増加することを意味している。

(図1)二つのシナリオでの推計結果  出典:日本財団・三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(2015)「子どもの貧困の社会的損失 推計レポート」
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 注意しなければならないのは、貧困家庭全体を網羅することは難しいため、この推計は生活保護世帯・児童養護施設・ひとり親家庭を対象として、その1学年に限定している点である。つまり、「全年齢、さらにはこれから生まれてくる子どもについても考慮すれば、経済への影響は甚大となる」と、レポートは警鐘を鳴らす。
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また、実際には、生活保護基準に満たない所得水準でありながらも、生活保護を受給していない貧困層は広範に存在している。そのような貧困層も対象として推計すれば、子どもの貧困対策を講じなかった場合の将来の経済的損失は更に大きいことになる。
 制度がその対象となる人をどの程度カバーできているのかを示す割合を捕捉率という。日本は、先進諸国のなかでも生活保護の捕捉率が低いことで知られている。
 厚生労働省が生活保護基準未満の低所得世帯を推計したデータをみると、平成19年国民生活基礎調査をもとにした推計では、子どものいる総世帯数は1,256万世帯。そのうち生活保護基準である最低生活費未満の世帯は154万世帯と推計されたことから、子どものいる世帯に占める低所得世帯の比率は12.2%になる(所得のみを要件とした場合)。こうした低所得世帯のうち、実際に生活保護を受給する被保護世帯数は12万世帯である。つまり、最低生活費未満の154万世帯と被保護世帯の12万世帯を合せた166万世帯のうち、実際に生活保護を受けている比率は7.4%に過ぎないという結果であった。(厚生労働省「生活保護基準未満の低所得世帯数の推計について」:2010年)[1]。
 生活が苦しくても生活保護が利用されないのはなぜか。何よりも厳しい社会の目がある。全生活保護受給世帯数に占める不正受給件数は2.4%(2011年度)であるのに対し、バッシングともとれる生活保護批判は受給層全体へと向けられがちである。社会福祉を利用することへの抵抗感が、困窮状況にある人々に広がっている。実際、経済困窮状況にある若い人たちと話をすると、「絶対に生活保護だけは受けたくない」と言う。
 どんなに苦しくても自分でやっていく、と言い切るのだ。自己責任、勝ち組/負け組という論調もあいまって、「助けて」と言えない人々が増えるばかりか、低年齢化しているのである。いまや、子どもがいる低所得世帯を対象とした就学援助制度すら、子どもがいじめにあうことを恐れて申請しない、という保護者に出会うことも珍しくない。彼らが社会の目にとまるのは、餓死など悲惨な状況となって事件化してからである。
 あらゆるものを「持たない」状況にならないと、生活保護は受給できない。たとえば自動車は資産となり、原則処分とされている(障害をもつ場合の通勤・通院等は認められる場合もある)。
 しかし、交通機関が整備されていない地方では、自動車はぜいたく品ではなく、移動のための必需品である場合も多い。車が使えないが故に凍える冬に遠方の保育所に連れていけず、ママ友の通園時に一緒に乗せてもらう、という肩身の狭い思いをしている厳寒地の母親もいる。また、これまでは、生活保護世帯の高校生自身のアルバイト代や奨学金を塾代に使用すると、保護費が減額されてきた。このルールは、ようやく2015年10月以降改められたが、高校卒業後の進学の壁はまだまだ高い。
 いったん生活保護を受給すれば、地域社会の厳しい監視の目にさらされる。奪われかねないのは自分への誇りや尊厳だ。
ホームレスはどんな子ども時代を送ったか

子どもたちと年越しを過ごすツアーの一こま(大阪子どもの貧困アクショングループ提供)
 筆者は、ある数字をみて愕然(がくぜん)としたことがある。ある自治体で、2005年度に生活保護廃止となった世帯の世帯主の学歴階層を計算した。政府の統計では、学歴をとっていないためだ。ほとんどの世帯類型で、中卒が6〜8割を占める。母子世帯の母親の場合には、中卒の割合は48.7%で他の世帯類型と比較すると低い数値だが、それでも約5割を占めているのである(図2)。いずれの世帯類型でも、高校中退によって中卒である者の比率は低く、高校に進学しなかった者が多い。

(図2)生活保護廃止世帯の世帯類型別の学歴構成 (A自治体:2005年度保護廃止世帯、単位:%、湯澤直美・藤原千沙(2009)「生活保護世帯の世帯構造と個人指標」(『社会福祉学』50巻1号)をもとに作成)
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 このような数値を国民全体の動向と比較するため、国勢調査をもとに生まれた世代別にみたものが(図3)である。世代が若くなるにつれ、国勢調査では中卒割合が低く、生活保護世帯では中卒割合が高いことが明白である。みなさんは、このような数字から何を想像するだろうか。

(図3) 生活保護廃止世帯(A自治体:2005年度保護廃止世帯)の学歴構成:国勢調査との比較、湯澤直美・藤原千沙(2009)「生活保護世帯の世帯構造と個人指標」(『社会福祉学』50巻1号)をもとに作成)
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 子ども期から困窮状況にさらされ、教育を受ける機会が十分に保障されなかった人々の生活史は統計数値に表しにくいために、あまり知られていない。
 3〜4年前、路上で生活する状態になった人々、いわゆるホームレスのかたが多くいる都内のある地域で、長い髪の毛がコールタールのように固まっている男性に話を聴いた。
 さとしさん(仮名)は、まだ30歳代前半。ある地方都市で育つ。親の病気等で家計が急変したことから、アルバイトをしながら定時制高校へ進学。しかし、体力もきつくやむなく中退。もともと若者が働ける職場が少ない地域であり、定職をみつけようにも中卒では更に厳しい。仕事を求めて上京、非正規だが港湾労働者として働いてきた。しかし、転機が訪れる。腰を痛め失職。それからはすべり台をおりるように人生が失速し、公園でひとり、生きている[2]。
 「子どもの貧困」は「見えにくい」と言われている。しかし、ホームレス状態にある人々、生活保護を受けている人々のなかに、「見える」のである。
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では、さとしさんは、努力が足りなかったのか。日本の社会システムのなかでは、学歴の差が様々な格差に結びつき、社会的な不平等となって個人の人生に影響を及ぼす点を見逃してはならないだろう。
 まず、雇用形態。学歴が低位なほど、非正規雇用の比率は一貫して高い。「平成24年版就業構造基本調査」をもとに若年層(15―34歳)の就業状況などを分析した報告書によると、男性の初職が正社員である割合は、中卒の場合には37.0%であるのに対し、高卒では65.5%、大学卒では79.5%と開きが大きい。女性では、中卒で初職が正社員である割合は12.3%と男性よりも少なく、高卒でも50.5%と男性との格差が大きい[3]。
 当然、正規と非正規では収入に差がつく。同調査によると、若年層の男性の場合、正社員の年収は平均335.9万円であるのに対し、パート・アルバイトでは134.1万円、その他非典型雇用では213.7万円である。女性では、正社員の年収は264.8万円、パート・アルバイトは111.6万円、その他非典型雇用は180.5万円であり、いずれも男性よりも低額である。更に重要なのは、年齢が上昇するにしたがって、収入格差が広がるという点だ。
 また、学歴によって選べる職種や企業規模も違う。「きつい労働」ほど、離職率も高くなる。(図4)は学歴別の離職率をみたものだ。1年以内の離職率は大学卒では13.1%であるのに対し、中卒では44.3%、3年以内の離職率は大学卒では計32.3%であるのに対し、中卒では65%を超える。

(図4)平成24年3月新規学校卒業者の離職率 出典:厚生労働省「新規学卒者の離職状況(平成24年3月卒業者の状況)」をもとに作成
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 いま、一部の民間団体や社会福祉施設では、高卒認定試験によって高卒資格を取得する支援が始まっている。また、厚生労働省では、母子世帯の母親自身が高卒資格を取得できるよう支援する高等学校卒業程度認定試験合格支援事業を創設した。しかし、働きながら、ひとりで勉強するのはたやすいことではない。寄り添い、ともに学ぶサポートが必要だ。
次のページ改善の鍵は高校中退率の低減 >>
 社会的損失の推計の「改善シナリオ」とは、生活保護世帯・児童養護施設・ひとり親家庭の子どもの高校進学率と中退率を全国平均並みに改善させ、大学進学率も上げるような支援を国などがした場合をさしている。教育格差をいかに改善するか、そのポイントのひとつに高校中退率の低減があるとレポートは指摘している。
 実は、高校中退率は学校種別によって大きく開きがある。全日制普通科の中途退学率は0.9%であるのに対し、通信制は5.2%、定時制では11.1%と1割を超えている。しかも、これは1学年での中退率なので、最終学年までを合計した中退率は更に高くなる。さとしさんが中退したのは特別なことではないともいえる。
定時制高校は教育の安全網
 家計や教育費のために、働きながら高校に通う若者は今なお少なくない。若者の労働を搾取するブラックバイトが広がる現代では、学業と仕事の両立は一層厳しい。ところが、各地で定時制高校の統廃合や閉鎖の動きが進んでいる。教育のセーフティーネットとも言える定時制高校。身近な場所になくなるとどうなるだろうか。まりさん(仮名)の例でみてみよう。
 まりさんは、夕方までアルバイトをしながら、夜間定時制高校に通っていた。しかし、その学校が統廃合されてしまい、1時間以上遠くにある定時制高校に通わざるを得なくなった。アルバイトを早く切り上げねばならなくなり、収入が減った。
 通学の交通費は余計にかかるようになり、定期代も出せなくなる。仕方なく、毎日切符で通うことに。それでも頑張って登校していたが、ある日、バイト先の雇い主からこう言われる。「主婦のほうが使いやすいんだよね」と。シフトで融通の利かない定時制高校生は使いにくい、というのだ。
 バイト先を首になったまりさんは、次の仕事がみつからず、学校納付金も払えなくなり、間もなく中退に追い込まれた。それでも、弟や妹には進学してほしい。まりさんは、職を求めて10か所以上応募したが、中卒で雇ってくれるところはない。そんなある日、街頭で声をかけてくる男性がいた。儲(もう)かる夜の仕事があるよ……と。
「不利の雪だるま」とは?

夜の街にたたずむ少女(本文とは関係ありません)
 さとしさんやまりさんの人生をみると、ひとつの不利が、更なる次の不利につながり、自分の努力だけではどうにもならない事態に陥っていくことがわかる。不利が累積するのである。これを、私は「不利の雪だるま」と呼んでいる。
 家庭の経済力が教育格差に直結する社会システムをそのまま放置すれば、不利の雪だるまが子どもの人生に立ちふさがり、子どもの基本的権利を剥奪していくのである。社会的に不利が生み出されるのだから、社会的に不利を生み出さない制度や政策が必要だ。
 ユネスコ「学習権宣言」にはこう明記されている。「学習権はたんなる経済発展の手段ではない。それは基本的権利のひとつとして捉えられなければならない」「学習活動はあらゆる教育活動の中心に位置づけられ、人々を、なりゆきまかせの客体から、自らの歴史をつくる主体にかえていくものである」と。
 「学ぶことは生きることです」。ある定時制高校生の言葉である。
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 今回の社会的損失のレポートが提起している重要なメッセージは、子どもの貧困問題は、政策の関与によって一定程度は解決が可能である、ということではないだろうか。
 諸外国の先進事例が示しているように、人生のスタートライン、いわば乳幼児期からの早期発見と早期支援が何よりも欠かせない。親の妊娠期からのアプローチも重要だ。幸いにも、日本には保育制度が公的責任のもとで発展してきた経緯がある。仕事と子育ての両立支援として保育が必要なばかりでなく、貧困家庭を守る最前線の社会資源としてより機能させる政策が期待される。
 保護者支援も欠かせない。子どもの育ちの保障という観点から雇用労働のあり方を見直すためには、長時間労働やワーキング・プアの解消は必須である。
広がる民間団体の支援

フードバンク山梨の取り組み
 貧困がもたらすものは、経済的困窮ばかりでない。人間関係・社会関係からの孤立を深め、精神的に追い詰められていくのである。
 学校があれば、暖房があり、給食を食べることができる。貧困家庭にとって、学校の長期休暇は楽しみどころか、親子ぐるみで苦しさが増す期間になる。このような困窮状況にある人々を支援するために、食料を届けるフードバンクの活動も各地に広がりつつある。フードバンク山梨では、子ども支援プロジェクトを企画し、食料支援を必要としている世帯に、クリスマスの時には食品とともにプレゼントを届ける活動を実施した。届ける箱のなかには、クリスマスカードと手作りリースも添えられている[4]。
 また、大阪子どもの貧困アクショングループでは、年末年始に3泊4日、古民家で一緒に年越しを過ごす「年越しツアー」を実施している。大晦日にはみんなで初もうでに行き、お正月には手作りのおせち料理を味わい、まるで実家への里帰りのような時間になる。ツアーに参加できない親子にも、ボランティア特製のおせち料理を届けている。年越しでみんな買い物袋をいっぱい持っている姿をみて悲しい気持ちになっていた親子が、届いたおせちと手紙をみてとても幸せな気持ちになれたという[5]。
子どもを孤立に追い込む貧困
 若者にとっても新春の壁がある。たとえば、各地で実施される成人の日の行事。成人式に参列するには、コート、スーツ、それらにあう靴がいる。女性ならば、振袖も多い。貧困家庭ではとても購入できないが、レンタル費用の拠出も難しい。それゆえ、出席さえできない若者もいる。
 子どもから大人への節目として大事なこの行事にも、格差がつきものだ。社会的に標準とされる暮らしを維持するには、「個人の暮らし」ばかりでなく、このような社会的な機会や社会関係に参画する「社会的な暮らし」も欠かせない。その機会から遠ざかるほど、貧困は社会的排除となって、子ども/若者を孤立に追い込んでいくのである。
 子どもの貧困問題は、いわばまっとうな社会、公正な社会をいかに創るのかを問うている試金石でもある。いまこそ、大人たちの英知を寄せ集めたい。
 
[1] この推計では、全国消費実態調査を基にした推計も行われている。また、貯金や住宅ローンなどの資産の保有要件も考慮した生活保護基準未満の世帯数の推計もある。
[2] 本稿では、個人が特定されないよう、趣旨を損ねない範囲で事例は加工している。
[3] 『若年者の就業状況・キャリア・職業能力開発の現状<2>−平成24年版「就業構造基本調査」より−』独立行政法人 労働政策研究・研修機構、2014年
[4] フードバンク山梨のホームページを参照。
[5] 大阪子どもの貧困アクショングループのブログを参照。
 
プロフィル
湯澤直美( ゆざわ・なおみ )
 立教大学コミュニティ福祉学部教授。専門は社会福祉学。現在、 子どもの貧困研究プロジェクト を運営し、子どもの貧困の解決に向けた研究を進めている。編著書に、『子どもの貧困白書』(明石書店)、『子どもの貧困−子ども時代のしあわせ平等のために』(明石書店)、『福祉政策理論の検証と展望』(中央法規)など。
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奨学金頼みで老後破産?…我が家の学費計画
ファイナンシャルプランナー 菅原直子
2016年03月01日 09時21分
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| (第1回) | (第2回) | (第3回) |
 住宅費用、老後費用と並ぶ三大費用の一つ、教育費用。子ども1人につき、最低でも1000万円はかかるといわれる。特に費用がかかるのが大学進学だ。「教育費が足りない!」という状況に陥らないためには、どんな準備をしておくべきなのか。教育費に詳しいファイナンシャルプランナーの菅原直子さんに解説してもらった。
進学資金不足、二つの理由

文部科学省の「学校基本調査」などを基に菅原さん作成

 高校生の大学進学率(短期大学含む)が50%を超えて10年近くになる。専修学校専門課程(専門学校)等も含めると、平成27年3月に高校を卒業した生徒の進学率は76.32%。4人に3人は進学した計算だ。都道府県別にみると、複数の府県で80%を超えており、東京都は84.9%。「みんな」が進学していると言っても過言ではないだろう。
 ところが、「みんな」が進学する中、進学資金を十分に用意できず苦しんでいる親子も少なくない。
 実は、大学4年間分の学校納付金を入学前にすべて準備できている家庭には、あまりお目にかからない。「初年度納付金」と呼ばれる入学金と大学1年次の学校納金だけでも家庭で用意できればまだいい方だ。入学手続き時に必要なのは、初年度納付金の6〜7割程度。入学試験に合格したにもかかわらず、この額の用意ができず子の進学を断念せざるを得ないケースもある。
 大学の費用は、1年間当たりの費用が高校までとは段違いに高額である。さらに、そもそも月謝制ではないため、毎月の収入から支払うのはまず不可能。あらかじめ貯(た)めておかなくてはならないということが、高校までとは異なる特徴だ。
 次の表は、私立大学の初年度納付金を分野別にまとめたものだ。全平均は約143万円である。

 進学資金を家庭で用意できない理由は、主に二つが考えられる。
 (1)大学納付金の額が高く、保護者の収入からの支払いが難しい
 (2)一定額を貯めてきたが、必要額を知らなかったため結果的に不足
 (1)は、その特徴を知らず、入学直前に慌てるというものだ。バブル崩壊後の「失われた20年」を経て、保護者の収入は伸び悩んでいる。にもかかわらず高校までの教育費はそれなりにかかる。目の前の塾代などで支出がかさんで、大学に向けての貯蓄ができなかったということもある。もちろん、塾代どころか日々の生活費でいっぱいいっぱいという家庭も存在する。
 (2)は子どもが生まれて、教育費のためにと学資保険に加入したり、積み立てを始めたりする人たちに起きる。とりあえず支払える金額での契約にとどまり、目標額を把握しないまま18歳を迎えてしまうのだ。とりあえず学資保険に加入している、積立貯蓄をしているという安心感から、根拠なく「ナントカナル」と思っていたりする。自身が大学生だった頃のイメージで、学費を安く見積もってしまっていることもある。また、(1)同様に、収入に余裕がなく学資保険だけで精いっぱいということもある。
 いずれの理由にせよ、かかる費用が手元にないということに変わりはない。
 実際に筆者が相談を受けた事例を以下に紹介する。
妻がパート、学資保険加入も学費足りず…Aさんの場合
 Aさんは、3人の子(長女・長男・次男)を持つ50代の会社員。妻はもともと専業主婦だったが、長女が中学に上がったころ、その塾代を補うためにパートタイムで働くようになった。
 Aさん自身は、家庭の経済的な事情で進学がかなわなかったこともあり、子どもたちが大学進学を希望するのなら、ぜひ応援したいと考え、子どもたちには、それぞれ18歳で100万円を受け取ることのできる学資保険に加入していた。
 100万円では大学4年間の費用には足りないだろうとは思っていたが、具体的な金額を調べたことはなかった。長女が高校3年生になり、オープンキャンパスでもらってきた資料に目を通して驚いた。長女は看護師の資格取得を目指しており、希望する大学の4年間の学校納付金は約700万円となっていたのだ。
 Aさんは十数年前に自宅を購入し、預貯金のほとんどを吐き出していた。貯蓄はしてきたが、住宅ローンの支払いに追われて、やっと300万円が貯まったところである。この300万円を学資保険に足しても、4年間の学費には足りない。下には、まだ2人の子が大学進学を控えている。これから学費をどのように捻出していけばいいのか困って、高校が開催した進学資金セミナーと相談会に参加したのだった。
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高校生保護者の切り札は「奨学金」?

わが子のために資金を使いすぎ、老後に余裕がなくなるおそれも
 Aさんがまず考えたのは「奨学金」の利用だ。奨学金のひとつに、返済不要の「給付型奨学金」がある。これは、独自の選考や入試時、大学進学後の成績といった条件を満たすことで利用できる。しかし、進学を希望する大学が独自に設ける給付型奨学金は、学校納付金の内訳のうち「授業料」のみが対象だった。前掲の表を見てもわかるように、授業料は納付金全体の6割ほどだ。学校に納める費用全額を給付してもらえる制度は無く、給付型に該当しても、300万円程度は自己負担しなければならない。しかも、実際に入学してみないと、給付型に該当するかどうかわからない。
 Aさんは、長女が高校3年生の4〜7月に、在籍している高校を通じて予約する「日本学生支援機構」の貸与型奨学金で資金計画を立てることにした。
 ところで、学生や保護者、時には高校の教師ですら、日本学生支援機構の奨学金を「もらう」と表現することがある。「受給」していることを指しているのだが、仕組みを十分に理解していない人が聞くと「貸与型奨学金を受け取っている」のではなく「返済する必要のない奨学金を受け取っている」という誤った理解につながることがある。
 当初はAさんも、日本学生支援機構の奨学金を「もらえる」ものと思っていた。機構が組織改編される前の「日本育英会」の頃に、貸与型の奨学金でも返済免除になる仕組みがあったことから勘違いしたのだ。Aさんは勘違いにより、大学独自の給付型奨学金と日本学生支援機構の奨学金をダブルでもらうことで、3人の子を大学に通わせることができると思った。そのようなオイシイ話はめったにない。
 もらうものではないとわかっても、他に選択肢は無い。Aさんは長女に奨学金を借りるよう勧めることにした。ただし長女の名義で奨学金を借りても、返済は自身がするつもりだ。退職金は2000万円ほどあるはずなので、そこから300万円を奨学金返済にまわしても、残りは十分あると計算した。
 日本学生支援機構の奨学金は、無利子の第一種と有利子の第二種。金利負担が心配になる第二種は、利率は最大3%と定められている。平成27年3月に大学を卒業した奨学生に適用の利率は、固定タイプ0.63%、変動タイプ0.10%で、負担感は大きくない。
 奨学金は、一般の借金に比べて金利が低く、お得なイメージを持たれることもある。使い道がギャンブルであれば絶対に借金をしない人であっても、使い道が学業であると心のハードルを簡単に下げてしまいがちだ。そして90万円借りればいいところを、100万円借りようとしたりする。毎月のモデル返済額を見て、簡単に返せると思ってしまうのだ。
保護者の老後生活費を取り崩してはならない
 Aさんは、自身の退職金で長女の借りる奨学金を肩代わりしようと考えている。長男と次男に対しても公平を期すため、同じように負担するつもりだ。長女の奨学金を肩代わりするのと同額の300万円ずつを負担すると、子ども3人分の退職金からの支出は900万円。残りは1100万もあるのだが、実は退職時にはまだ住宅ローンが残っていて、繰り上げ返済に充てるつもりもある。
 300万円の預貯金も長女のために使ってしまうと手元資金はゼロになる。10年弱の残りの会社勤めの間にどれだけ貯蓄できるかが気にかかる。長男と次男にも、奨学金の肩代わり以上の学費が必要になるかもしれない。退職金を使い切ってしまった場合、公的年金だけで老後生活が成り立つのか、Aさんは計算をしたことがない。
 大学資金を出すのは、子どもたちの未来を援助したいからだ。しかしその結果、Aさん夫婦の老後生活に経済的な余裕はまったくなくなろうとしている。
 Aさんは、どうすればよかったのだろうか。
時間を味方につけてコツコツ預貯金が一番の近道
 子どもの大学進学は、生まれてから18年が経過した4月。子どもの進路はまだわからないが、最初に書いた通り「みんな」が進学する。4年間分の学費を貯めておくに越したことはない。もし進学しないようなら、そのお金は保護者自身の老後生活費や住宅ローンの繰り上げ返済に使えばいいのだ。貯めておいて損はない。
 お金の準備ができなかったから、子どもの大学進学を先送りするというのは、通常ありえない。せっかく合格したのなら、何としても必要資金を用意しようとするのが親の気持ちだろう。
 高校卒業までに500万円を貯めようとする場合、毎月の積立額は次のようになる。

 この原稿を書いている間に、マイナス金利のニュースが飛び込んできた。個人の普通預金にマイナス金利の適用はなさそうだが、上の表の金利が0.00%、まったく利息が付かない行とほぼ変わらないようだ。つまり、現状では「コツコツ預貯金」で利息をアテにできそうもない。
 通常、積み立てをするときは、「金利」と「時間」を味方にすれば、複利の効果で利息が利息を生む。今は、金利を味方にできていない状況なので、とにかく時間を味方にするしかない。生まれたときから学費を必要とする時期までを最大限長く利用するために、生まれてすぐに貯蓄を始めたい。すでに子どもがいる家庭は、なるべく早く行動に移すことが重要だ。ゴールの金額が同じであれば、積み立てる回数(期間)が多く(長く)なるほど、毎回の積立額は小さくて済み、家計の負担感も小さいからだ。
 子どもが高校に入学し、いよいよ大学進学を本気で目指していることが分かった段階から大学の費用を貯め始めると、毎月約14万円を貯めなくてはならない(表中の赤枠部分)。Aさんの場合は、妻がすでにパートタイムで働いて子どもの塾代として使っている。さらに収入を14万円増やすことは難しい。
 子どもが生まれた月から始めれば、積立額は月額2万2000円ですむ(表中の青枠部分)。収入の多くない若いころにはつらく感じることもあるだろうが、捻出できないほどでもないだろう。
 学費の積み立てに学資保険を利用することもあるが、契約は毎月の保険料からではなく、ゴールの満期保険金額が必要な教育費と合致する内容で行いたい。
 1日先のことですら、確かなことは分からない。だからといって明日の準備を何もしなくてもいいということはないはずだ。
 子どもが生まれたら、18年後を想像し、大学進学のための費用を貯め始めてほしい。その一歩が、子どもの大学進学をかなえる足掛かりになるのだし、保護者自身の老後生活を助けることにもつながるからだ。
 
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・初の東大推薦入試 面接でズバリ聞かれた「あの質問」とは
・「親の葬儀」で慌てないよう…準備したい3つのこと
 
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奨学金で老後破産しないために…5ステップでメンテナンス
ファイナンシャルプランナー 菅原直子
2016年05月10日 09時28分
無断転載禁止
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 大学入学時、教育資金が足りずに奨学金を借りた結果、卒業後に返済に苦しめられる問題が目立つ。返済の肩代わりで親の老後資金や生活費が圧迫され、「親子共倒れ」ということもありうる。
 前回の「 奨学金頼みで老後破産?…我が家の学費計画 」では、計画的に教育資金を 貯(た) める方法について、ファイナンシャルプランナーの菅原直子さんに解説してもらった。しかし、間に合わなかった人でもまだやれることがあるという。それが「奨学金のメンテナンス」だ。わが子に借金を背負わせず、自身の生活も守るための方法を菅原さんに寄稿してもらった。
給付型奨学金創設に期待…貧困の連鎖を教育で断ち切れ

大学進学時、学生の大きな支えになるのが奨学金だ(画像はイメージ)

 昨今、学生への経済支援が注目されている。以前は奨学金の返還に苦しむ若者に対し、「借りたものは返せ」という非難が多かった。しかし最近は、返還できない理由自体の解決を図ろうとする動きが加速しているように見えて心強い。
 財源の問題はあるとはいえ、国が検討している給付型奨学金創設への期待は大きい。若者が社会の入り口で借金を背負わなくても済むのだから。
 一方、奨学金の返還を促すためなのか、独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)は大学別の返還率を公表するらしい。返還が滞っているのはすでに卒業した者であって、今さら大学側が滞納者にアプローチするすべはないはずだ。本来、貸し手に説明責任があるはずなのに、その責任を転嫁しているようにも見え、大学名の公表には疑問が残る。高校3年生で奨学金を予約する学生も多く、大学名公表の先には高校名の公表もあるのではと心配だ。
 学校名の公表よりも、奨学金を利用してでも進学をして教育を受けることのメリットについて、広くコンセンサスを得られるよう願いたい。
貸与型奨学金は、現時点での現実的な手段
 とはいえ、今後の施策に期待はしても、今の高校3年生には間に合わない。進学資金が不足している高校生と保護者は、すでに存在している方法を利用するしかないだろう。学生自身が利用できるのが、奨学金制度である。
 奨学金には、返済の必要がない「給付型」と返済の必要がある「貸与型」がある。JASSOが3月に発表した「学生生活調査」(有効回答数=4万5577人)によると、2014年度(平成26年度)に何らかの奨学金を受給していた大学生は51.3%に上る。およそ大学生の半数が奨学金を受け取っていると言える。
 貸与型の多くはJASSOが占めている。JASSO奨学生(奨学金を受給している人)となっている大学生の割合は00年度から14年度までの14年間で2.3倍となった。14年度は全大学生・短大生の38.75%、2.6人に1人が利用している。

「学校基本調査(文部科学省)」「事業報告書(JASSO)」を基に菅原氏作成
 これだけJASSOが利用される理由としては、入学前に予約できる安心感がある。
 入学前に支払う受験料や入学手続き費用で保護者の財布が底をついてしまった場合、入学はできても学業の継続は困難になる。入学前予約が可能な給付型奨学金制度を持つ大学も見受けられるが、まだ少ないのが現状だ。入学前に受給が約束されるJASSOの役割は大きい。

「平成25年度奨学金事業に関する実態調査報告(JASSO)」より菅原氏作成
 返済の必要がない「給付型」を利用できればよいのだが、現実はそう甘くない。上のデータと調査年度は違うが、2013年度(平成25年度)では、大学生・短期大学生の奨学金受給者の92.2%が貸与型だ。給付型がいかに「狭き門」で、貸与型に頼らざるを得ないか、ご理解いただけるだろう。
5ステップで「奨学金貧乏」を回避しよう
 奨学金を利用するにあたり、まず意識してもらいたいことがある。それは、貸与型の奨学金は「借金」だということだ。
 奨学金の利用額の決め方がわからず、ゆとりをもった金額を借りておこうと考える家庭は多い。日々の支払いを滞らせないようにしておきたいという気持ちは理解できる。しかし、大学を卒業した時、わが子が就職できるかどうか、就職できたとして、奨学金を返還できるだけの収入を得られるかどうか、まだわからないのだ。この段階で、多めに借りることはおすすめできない。借金が増えれば、返済に苦しむことになりかねないからだ。
 では、借りる金額を必要最小限にとどめるためにはどうしたらいいのか。高校3年生の子どもを持つ家庭を例に挙げ、奨学金を借りてから返すまでに意識したいポイントを、次の時期ごとに分けて考えてみたい。
  1.申し込み前
  2.貸与開始前
  3.受給中
  4.卒業〜返還開始
  5.返還開始後
次のページ借りなければならない金額は?

【ステップ1】申し込み前:高校3年生の4月まで…借りなければならない金額を具体的に親子で算出
 JASSOの奨学金は貸与型のみで、無利子の第一種と、有利子の第二種がある。
 将来の返還負担を大きくしないために、まずは利息のかからない第一種を選ぶ努力をしよう。申し込み条件のうち、第一種の成績基準に合致するよう、高2の3学期までの内申平均を3.5以上にする。ただし、世帯収入が多いなど、家計基準に合致しなければ第二種を申し込まざるを得ない。
 高校3年生のAさんは、理系の私立大学への進学を希望している。入学金は保護者が用意してくれるが、家計は楽ではないので入学後の学費は頼れない。大学では実習が忙しくてアルバイトの時間は取れそうもなく、学費は奨学金を利用するしかないと考えている。奨学金は、多めに借りておけば何かと安心なので、第二種の最高額12万円コースを選ぶつもりでいる。貸与総額は576万円(=12万円×12か月×4年)で、これに利息がつく。

(菅原氏作成)
 奨学金の利率は卒業時点で決まる。予約申し込みの段階では実際の返還額はわからない。たとえば12万円コースで利率1%なら、返還年数は20年、返還月額は2万6606円となる。10万円コースでも利率3%なら2万6914円でほぼ同額になる。適用される利率がわからない以上、返還額を増やさないためには、貸与額そのものを少なくしておく方がいい。

(菅原氏作成)
 Aさんの4年間の学費総額はおよそ550万円。Aさんは保護者にも手伝ってもらい、4年間の収入と支出を書き出してみた。その結果、保護者が用意してくれていた150万円は、入学金だけにとどまらず、1年次の学校納付金全額とほぼ同額であることが分かった。さらに、現在通っている予備校代から月額2万円はそのまま援助してもらえることになり、年間の収入は24万円(2万円×12か月)に。半分は通学費用にするので、学費分としては12万円だ。
 用意できる資金を洗いなおしたことで、借りるべき奨学金の額も見直すことができるようになった。当初、奨学金で用意しなくてはならないのは4年間分の学費と考えていたが、3年間の学費から48万円(=12万円×4年)を差し引いた額でいいことがわかった。つまり、借りるべき金額は約356万円だ。Aさん一家は、これなら12万円を借りなくてもやっていけると判断し、8万円コースを選ぶことにした。当初の12万円コースよりも貸与総額192万円の減額、つまりそれだけ借金を減らせたことになる。
 このように、奨学金はどうしても足りない金額だけを借りるようにしよう。そのためにも、在籍する期間中に家計から出せる金額や本人のアルバイト代等の収入と、学校納付金や通学費などの支出を差し引きしてみることが重要なのだ。
 必要月額と選択できるコースがぴったり一致しない場合、多めのコースを選択すると毎月いくらかは手元に残るはず。これは貯めておいて、翌年の貸与月額を減らしたり、繰り上げ返還をしたりして、つねに貸与総額を減らすようにする意識を持ちたい。
【ステップ2】貸与開始前:予約申し込み〜入学前…早めに合格したら、アルバイトも検討
 AO入試や推薦入試で早めに合格が決まったら、アルバイトも検討してみよう。高校の学業に支障のない範囲で、たとえば土日に4時間ずつ時給1000円で4か月(32日間)間働けば約13万円になる。6時間で5か月(40日間)なら約24万円。収入を増やせば、奨学金の利用額を減らすことができる。
 Aさんは、推薦入試で合格すれば11月からアルバイトをするつもりでいる。予備校もやめるので、前払いした費用のいくらかは戻ってくる。推薦で受からなかった場合は一般受験するので、アルバイトはせず予備校にも通い続ける。
 どの時点で合格するかによって、収支は変わってくる。それらを図表化して、大学入学後に変更可能な貸与額の参考にしよう。
【ステップ3】受給中:入学〜卒業…入学してからチェックしたい「給付型奨学金」

余分に借りた奨学金を小遣いにしてしまうケースも。足をすくわれないように注意(画像はイメージ)
 奨学金選びは入学時で終わりではない。自分に該当する給付型奨学金があるかどうか、常にチェックすることが重要だ。「あなたは、この給付型に該当していますよ」などと親切に教えてはもらえない。自ら情報を仕入れに大学の学生課などに出向こう。利用できる制度を見つけたら、書類の多さや手続きのわずらわしさに負けず、申請を。奨学金は一度決めたコースを変更することができる。給付された分だけ、貸与型奨学金の額を減らすことが可能になる。
 アルバイトも、学業に支障のない範囲で行おう。理系大学や専修学校専門課程の場合、授業数が多いなどでアルバイトの時間を確保しづらいが、長期休暇だけでも働くことができれば、それだけ収入を得ることができる。

 Aさんは、1年生の時には入学後の忙しさに紛れて給付型奨学金をチェックできなかった。しかし、課外活動で知り合った先輩のアドバイスにより、後期は前期以上に学業に精を出して成績を上げた。2年生に進級直後、年間の授業料の半額を給付される奨学金に申請したところ、該当者に。授業料は90万円なので、給付額は45万円。1か月あたりに換算すると3万7500円で、貸与コースを現在の8万円から5万円に減額可能となる。
 第二種奨学金は、進級時の「継続願」の時しか貸与額の変更ができないと思われがちだが、必要に応じていつでも月額の貸与額を変更できる。Aさんは6月から5万円コースに変更した。Aさんが給付を受けた奨学金は1年ごとの申請だったが、3・4年生でも奨学生になることができ、貸与奨学金は卒業まで月5万円にとどめることができた。
 貸与額が変更できることを知らず、4年間同額を借り続けて借金を膨らませてしまう人もいる。余剰分は子どもが小遣いとして使ってしまった、というパターンも多い。足をすくわれないように注意したい。
 第二種奨学金については、利率算定方式の見直しも重要になる。この利率には2種類あって、奨学金申し込み時に「利率固定方式」「利率見直し方式」のいずれかから選ぶ。しかし、総返済額を左右する利率は卒業(貸与終了)時点で決定するため、申し込み時に自分が返済する際の利率がどうなるかわからないのだ。高校3年生の1学期に予約する場合、4年数か月後に決定する利率を見通すのはプロでも難しい。したがって、利率の決まる直前で見直すことが、少しでも有利な方式を選ぶことにつながる。
 金利は、年率3%が上限となる。2016年3月に貸与終了(卒業)した人の場合、利率は利率固定方式0.59%、利率見直し方式0.10%だ。無担保で借りられるお金の金利としては決して高いものではない。しかし、貸与月額8万円で4年借りた時の利率が0.5%と3%の場合を比較すると、総返還額は約112万の差になる。金利の動向を完全に見通すことはできないが、せめて卒業間際に、その後の市場金利の方向性を確認して、利息が少なくなりそうな方式を選びなおすようにしたい。
 卒業間際に、手元にゆとり資金があるのなら、奨学金の繰り上げ返還を行おう。有利子の第二種に利息がつくのは卒業の翌月から。したがって、在学中に返還した分は利息を支払わないので、返還額を増やさずに済む。
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【ステップ4】卒業〜返還開始:卒業から6か月の生活がカギ

社会人は出費も多い(画像はイメージ)
 奨学金の返還は卒業して半年が経過した10月から。4〜9月は、奨学金の返還がないので財布にゆとりがある。ゆとりに慣れてしまうと10月からがつらいので、最初から返還をしているものと仮定してやりくりをするといい。つまり、月額給与の手取りが17万円、奨学金の返還が2万円なら、4月から15万円の範囲で貯蓄と生活費をまかなうのだ。4〜9月は2万円分多く貯蓄ができる。

 Aさんは、実家から通える会社に就職できた。親の理解のもと、家に入れるお金は食費と通信費として3万円のみにしてもらい、毎月7万円を貯蓄に回すことにした。ボーナスには頼らず、毎月の給料で計画的に貯蓄し、奨学金の繰り上げ返済をしようと考えている。将来は、車や住宅を購入したいので、まずは、借金を返済することが大事と理解しているからだ。
 Aさんの貸与総額は282万円だった。途中でコースを変更したことで、4年間ずっと8万円を借りた場合よりも100万円減額することができた。その結果、返済年数も20年から16年に短縮され、毎月の返済は1万5000円ほどとなった。
 財布にゆとりがある4月からの半年は、通常の7万円に2万円を足した9万円を貯蓄する目標を立てた。実際には、世話になった両親と祖父母に初任給でプレゼントをしたり、その後も会社に着ていく服を買ったりと、目標を100%達成できた月は少なかった。しかし、無駄遣いしないことを心がけたことで、半年後からの生活では、うまく貯蓄ができるようになった。
【ステップ5】返還開始後:返還開始から返還終了(最長20年間)まで…返還が難しい場合も方法が
 奨学金をきちんと返還するつもりがあっても、人生は山あり谷あり。やむを得ない突然の出費が続いたり、病気になって休職したりといったこともあるだろう。生まれた子どもを保育園に預けられずに仕事を辞めざるを得ないこともある。
 どうしても返還が難しい場合は、返還を待ってもらったり、1か月あたりの返還額を減らしたりする手続きを行おう。返還を滞らせたまま知らんぷりをすると、いわゆる「与信情報」にキズが付く。信用を失い、クレジットカードが使えなくなったり、自動車の分割払いができなくなったり、住宅ローンが組めなくなったりするなど、実生活に影響が及んでくるのだ。
返済の肩代わりは、老後破産の要因にも
 子どもが借りた奨学金は子ども自身が返済する仕組みだが、時に親が返済の肩代わりをすることもある。
 親が奨学金の連帯保証人になると子どもと同じ責任を負うが、そうでない場合も子どもが返済で苦しんでいれば、親の気持ちとして援助してやりたくもなる。

親の年齢と子のイベント(菅原氏作成)
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 上記は、JASSOの最長20年間の返済年月を表している。親が25歳時に生まれた子は、親が44歳時に大学に入学する(赤い枠)。大学時代、子どもの教育費に預貯金をすべて使い切ったとしても、自身の老後生活費を貯める時間は10年以上ある。
 一方、35歳時の誕生だと子どもの大学卒業は親が57歳の時。学費負担を終えてから老後生活費を貯める時間的余裕はほとんどなく、教育費を負担する時期と親の老後生活費の準備が重なる。それでも、子ども自身が奨学金の返済をきっちり行うのであれば、老後生活費は何とかなるだろう。それが45歳時の誕生なら、子の卒業時には定年退職後だ。教育費を負担することは、即自身の生活費を圧迫する。
 もし、返済5年目から3年間(青い枠)奨学金の返済を援助するとどうなるか。第一種で3万円を4年間借りると、青枠3年間の返済分は約33万円。第二種12万円で3%の利率だと約116万円になる。奨学金を考えなしに多めに借りてしまう危険性がわかってもらえると思う。
 収入は限られているのだから、教育費に多くを使ってしまうと老後資金が不足する。親の老後破産を防ぐためにも、貸与型奨学金の額をできるだけ減らす教育資金プランを実行することが重要になる。
 
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・子どもがお金で苦労しないために〜幼児からできるマネー教育
・増加中? 社会人デビュー直前のひきこもり
 
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プロフィル
菅原直子( すがわら・なおこ )
 教育資金コンサルタント。外資系生保を経て1997年よりファイナンシャルプランナー。高校生と保護者向けの進学資金・ライフプラン講座を中心に個人相談も行う。時間を味方につけられるよう、出産前後〜小学生保護者向けのお金まわり講座に注力中。

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共働き夫婦「うちは大丈夫!」の落とし穴
ファイナンシャルプランナー 當舎緑
2016年07月07日 11時00分
無断転載禁止
| (第1回) | (第2回) | (第3回) |
 財布が二つある共働き。収入が多い分、それぞれの稼ぎをお互いが好きに使うなど、財産管理が甘くなりがちな面もある。子ども2人を中学から私立に行かせた結果、大学進学を前に教育費が足りないおそれが出てくる家庭も少なくないという。共働き世帯が教育費を貯蓄する上でのポイントを、ファイナンシャルプランナーの當舎緑さんに解説してもらった。
夫婦共働きでも苦しい家計

共働きでも家計が厳しいのはなぜ?(写真はイメージ)

 女性の就業率はいわゆるM字カーブが多いと言われている。結婚して子どもができるといったん仕事を辞め、子どもが少し大きくなると働き出すというライフプランだ。家計診断をするときに、「専業主婦の妻は子どもが一定の年齢になると働く」という要素を入れて家計のキャッシュフローを作ると、その後の家計が断然楽になる。家計の見直しの際、赤字対策としてよくお薦めしている方法ではある。
 ところが、共働きであっても家計は楽ではないというご夫婦にお会いすることがある。1組や2組ではない。なぜなのか。
ゼロからでなくマイナスからのスタートをしているケース
 夫婦どちらもが自らの奨学金返済中というAさん夫妻が家計診断に訪れた。共働きなのに全く預金ができていない。子どもの学費のために貯蓄もしたいし、これから住宅も購入したいという気持ちはあるものの、全く対策をしていない。まずは教育費を貯(た)めたいというご相談だった。
 現在2人とも30歳で、子どもは3歳と5歳。奥さんが150万円、夫が450万円の年間収入がある。
 家計の財布は別々で、家賃と子どもの保育料は夫、水道光熱費は妻。食費や消耗品はそれぞれレシートを出して分担しているが、負担があいまいな項目もあり、全体としてどちらが管理するという方針はないという。また、携帯代などの通信費用はそれぞれが支払っている。児童手当は夫の口座に入金され、そのまま何もせず入れたままとなっているので、使っていることもあるかもしれないとのこと。
 更に、これまでの家計をヒアリングすると、妻が再び働き出したのは2人目の子どもが1歳になった時。1人目の子どもを妊娠したとき、妻が退職して、夫の給料で2人分の奨学金を返済していたのだ。
 たとえ妻に収入が無くても、大黒柱に収入があるので「奨学金を返さない」という選択肢はあり得ない。もし何の手続きもせず、奨学金を3か月以上延滞すると、個人信用情報の取扱機関に登録される。その結果、クレジットカードが発行されない、ネットショッピングや自動車ローン、住宅ローンを満足に組めないなど、生活に支障をきたすこともあり得る。

表1 Aさん夫妻の奨学金(日本学生支援機構の奨学金返済シミュレーションを基に當舎さん作成)

表2 大学生の年間生活費用(単位:円、日本学生支援機構平成26年度「学生生活調査」より當舎さん作成)
 夫婦それぞれの奨学金は表1のようになっている。現時点で、妻は4年、夫は7年の返済が残っていることとなる。
 大学生の学費等・生活費は、表2の学生生活調査からわかるように、一番少なく済む「自宅通学の国公立の学生」でも月に9万1608円、平均でも15万5175円が支出されている。全額家計から出すのが困難な家庭も多い中、2人が借りている金額は決して多すぎるわけではないことがわかるだろう。
 Aさん夫妻の場合、いずれも学生時代にアルバイト代が5万円程度あったため、奨学金の額がこの程度に収まっている。もし理系などの忙しい学部であまりアルバイトができない場合には、奨学金の総額がもっと膨れ上がっていた可能性もある。奨学金を借りる場合にはできるだけ最少の金額に、そしてできるだけ早め早めに返すこと、しかも結婚前に完済しておくことが理想的であろう。
次のページ妻の働き方も考えてみよう
夫婦2人で働けば、それほど苦労せずに奨学金を返せると考える方は多い。そもそも奨学金は、いいのか悪いのか一番手軽に借りられるという借金といえる。
 Aさん夫妻のケースでは、どちらも月々の負担が少ないし、無理に返済を早めることもなく、これくらいの負担ならちゃんと返せるだろうと軽く考えており、何の対策も講じていなかった。しかし、妻が仕事を辞めると、奨学金の返済は、夫ひとりの給与から支出することとなる。その結果、子どもの教育費が満足に貯められない負の連鎖となっていた。
 おまけに今回のケースでは、妻の年収が150万円と、家計の足しにするには微妙な金額に収まっていた点も問題となる。妻は給与から自分の社会保険料も控除されていたので、手元に残るお金も少なく、貯蓄ということが考えられなかったのだ。

表3 年収120万円と年収150万円の手取りの差額(當舎さん作成) ※健康保険の扶養家族の認定要件は、年収の見込み130万円未満が条件。収入が120万円の場合では、雇用保険のみの加入で計算した
 表3を参照してほしい。120万円の年収で働いたときと150万円の年収で働いたとき、手取りの差額は意外と少ない。額面では30万円も違うにもかかわらず、月額で7004円、年額で8万4048円と、その差は10万円に満たないのだ。
 一番貯蓄できるはずの子ども0歳から小学生時代までが、親の奨学金の返済期間と重なるのは非常に大変なことだ。改めてAさん夫妻の収支を調べてみたところ、夫の口座に入金された児童手当は、やはり夫の収入と一緒になり、保育料や生活費に使われてしまっていた。もし、その児童手当をすぐに他の口座に移していれば、以下のような金額が積み立てられているはずである。家計管理のために教育費を別の口座で管理していれば、今頃は教育費として、「必ず」132万円は貯まっていた計算となるのだ。

表4 子ども2人の児童手当を積み立てた場合の貯蓄額(當舎さん作成)
夫婦の財産を見直ししないまま損をしているケース

住宅ローンや保険料が教育費を圧迫する(写真はイメージ)
 高校生2人の子どもを持つBさん夫妻のケースを見てみよう。
 30歳で第1子を出産後、2年後に第2子を出産した。最初は妻も総合職で給料もかなりよかったので、少しでも早く返済が終わるように2人がそれぞれ住宅ローンを負担したそうだ。ところが、妻は子どもが小学生のときに転職し、年収は半減した。
 その時、夫婦で家計を見直しておけばよかったのに、これまでと同様の生活を続けてしまった。しかし、このままでよいのか妻が心配になって相談に来たのだ。
 妻の方は、自身が負担する分の住宅ローンを借り換えするなどしており、家計に対する意識が高い。しかし、夫の財産については、いくらあるのかも知らず、結婚当初から何にいくら使い、いくら貯蓄しているのかも全く話したことがなかったという。
 普通は年収が変わったとき、子どもが進学するときなど、ライフプランの区切りには家計の見直しが必須だ。生命保険を見直したり、ローンを早めに返済したり、貯蓄を見直すという方法である。ところが、生命保険は結婚当初に加入した生命保険を見直しせず、高い保険料をずっと払い続けていた。
 よく言われているが、生命保険は家の購入に次ぐ大きな買い物だ。子どもが生まれたばかりの専業主婦のご家庭であれば、夫に万が一のことがあることを考えて、高い保険に加入することを勧めることもある。しかし、共働き家庭であれば、死亡保障額の低い、比較的安い保険でも大丈夫だ。一方の収入がなくなっても、もう片方の収入が続くからである。
 Bさん夫妻が加入している生命保険をチェックすると、必要保障額の設定がかなり高くなっていた。妻が働いているにもかかわらず、遺族が「専業主婦と子ども2人」になる想定で保障額を見積もられていたのだった。知人を介して加入したこともあり、特に吟味もせず、高い保険料を払い続けていたのだ。自然に天引きされていることで、真剣に見直すきっかけのないまま、かなり損をしたことになる。そこで、生命保険の見直しを行い、必要保障額を下げることで、月々の保険料を約4万円から2万円に圧縮した。
次のページ教育費のためにさらに厳しい見直しをすると
さらに、夫が負担する分の住宅ローンについても、借り換えや繰り上げなどの見直しを提案した。高校生のお子さんは2人とも中学から私立に通っている。学費などの子どもにかかる費用はすべて夫の収入から払っているものの、ほとんど貯蓄ができていない。
 妻は食費や水道光熱費、雑費を負担しているが、子どもが小さい時よりも食費の負担はかなり増えている。食費、水道光熱費、通信費などの「基本生活費」自体が増加しているにもかかわらず、妻の収入は転職後全く増えていないので、こちらも当然あまり貯蓄できていない。「(住宅ローンは)払えているから大丈夫」と、夫が思っていることが問題だった。

表5 住宅ローンの借り換えによる効果 ※諸費用は、借り換えに必要な印紙税や司法書士報酬など(當舎さん作成)
 現時点で2000万円の残債がある住宅ローンを借り換えた場合の効果は、表5の通りだ。返済額が増えているが、こちらには生命保険の見直しで浮いた2万円を回す。企業年金や退職金があまり望めない企業であれば、定年前に住宅ローンを完済しないと、教育費が夫婦2人の老後資金を圧迫するからだ。総返済額にもかなり高い効果があることがわかるだろう。
 併せて、これまで妻が負担していた基本生活費を夫に負担してもらうよう提案し、妻の給料を貯蓄にまわすこととした。これは、夫の収入から自身の小遣いにあてている金額に余裕があり、生活費を負担してもらうことが不可能でない給与だったからだ。

表6 学部ごとにかかる費用 ※一部端数処理(文部科学省の調査を基に當舎さん作成)
 Bさん夫妻は幸運なことに、夫の銀行に入金されていた児童手当を、子ども名義の口座に積み立てており、子ども2人にそれぞれ200万円程度を貯蓄できていた。ただ、表6を見てもらうとわかるが、私立大学初年度納付金の文部科学省の調査結果から、大学進学時に平均131万1644円の負担が待っている。子ども2人とも、とりあえず初年度はこの貯蓄で何とかなるとしても、2年次以降のプランはこれからの妻の貯蓄にかかっている。
 今後は夫も家計の情報を共有することが大切だとアドバイスをした。夫の給与で日常の基本生活費を賄い、妻の給与は全額貯蓄するくらいの覚悟がなければ、子ども2人を中学から大学まで私立に通わせ、最後まで奨学金に頼らず修了するのは困難と言わざるを得ない。

共働きのメリットを引き出すためには、計画性が大事(写真はイメージ)
 2人が働くことで、安易に家計が楽になるとは思わないようにしたいものだ。家計がダブルインカムであったとしても、ひとつの財布に置き換えて、キャッシュフローを考えておきたい。Aさん、Bさんどちらのケースも、夫婦お互いの収入があるということで、基本生活費以外をブラックボックスにしてしまった点が一番の問題といえる。
 ファイナンシャルプランナーとしては、貯蓄の目安は手取りの10%程度の金額を薦めている。しかし、夫婦どちらにも収入があると、それぞれが好きな用途で貯蓄していることも多い。結婚した当初から、「住宅取得資金」「子どもの教育費」「旅行費用」「老後資金」「予備費」などの目的別に2人まとめて貯蓄するようにし、そこから計画的に使えてこそ、ダブルインカムのメリットを最大限に引き出せるといえるのだ。
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プロフィル
當舎緑( とうしゃ・みどり )
 社会保険労務士、行政書士、ファイナンシャルプランナー。資格取得の講師だけでなく、教育・育児、マネーなどのセミナー講師や執筆をはじめ、近年はベネッセのネットサイト「たまひよnet」のQ&Aの回答者、一般社団法人かながわFP生活相談センターの理事、神奈川県の県民センターや横浜市内の区役所で法律相談をするなど、幅広い活動を行う。3児の母でもある。

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2016年07月07日 11時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/ichiran/20160506-OYT8T50035.html?

http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/763.html

[政治・選挙・NHK221] 北朝鮮が弾道ミサイル4発発射、3発は日本のEEZに落下 米国務省「強く非難」 首相「新たな脅威、領海領土に近づいている
北朝鮮が弾道ミサイル4発発射、3発は日本のEEZに落下−政府
Bloomberg News
2017年3月6日 08:49 JST 更新日時 2017年3月6日 11:02 JST
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韓国国防委員長:北朝鮮が先月試射した「北極星2号」に似ている
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北朝鮮は6日朝、4発の弾道ミサイルを発射した。日本政府によると、このうち3発が日本の排他的経済水域(EEZ)に落下した。
  韓国の聯合ニュースは北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射した可能性があると報じたが、公式な確認は取れていない。北朝鮮は米韓両国が開始した軍事演習を侵略への前触れと非難。こうした中でミサイルが発射された。
北朝鮮が2月試射した「北極星2号」
北朝鮮が2月試射した「北極星2号」 Photographer: AFP via Getty Images
  韓国合同参謀本部はテキストメッセージで、これらのミサイルの飛行距離が約1000キロメートルだったことを明らかにした。これは北朝鮮が先月発射したミサイルの2倍の飛行距離となる。先月のミサイルについては、韓国政府は中距離弾道ミサイル「ムスダン」の改良型とみられると指摘していた。
   韓国合同参謀本部から報告を受けた韓国国会国防委員会の金栄宇委員長は電話インタビューでこの飛翔体について、北朝鮮が先月試射した「北極星2号」と似ていると発言。「北朝鮮はさまざまな試験の取り組みの一環として、今回は発射角度を低くして、前回より長距離の飛行を目指したようだ」と指摘し、国防委を午後3時に開く予定だと述べた。
  約5年前の金正恩体制発足後、北朝鮮は3回の核実験と一連のミサイル発射を行ってきた。今回の試射は、米本土に到達可能な核弾頭を搭載したミサイル開発に向けた一歩となる可能性がある。
  安部晋三首相は記者団に対し、北朝鮮に厳しく抗議したと述べた。円相場は北朝鮮の飛翔体発射の報道を受けて、対ドルでの下げを消して上昇に転じた。
  国連は北朝鮮の兵器開発を禁止し、金正恩朝鮮労働党委員長に核開発を断念させるよう制裁を強化してきた。しかし金委員長は1月、同国がICBM試射準備の最終段階に入ったと述べていた。これに対し、トランプ米大統領はツイッターで、「それは起こり得ない!」とコメントした。
  北朝鮮と主要な同盟国である中国の関係は金委員長の異母兄、金正男氏がマレーシアで不審な死を遂げたことを受け緊張が走っていたが、今回の発射で緊張がさらに高まる可能性がある。北朝鮮の主要貿易相手国である中国は金正男氏が殺害された後、北朝鮮からの石炭輸入を全て停止した。
原題:North Korea Fires Four Missiles That Fall Into Sea of Japan(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-05/OMD8UQ6KLVR401

 

北朝鮮の弾道ミサイル発射、米国務省「強く非難する」
 アメリカ国務省は5日、北朝鮮による弾道ミサイルの発射について、「国連安保理の決議違反であり強く非難する」とした声明を発表しました。
 アメリカ国務省は5日、トナー報道官代行の名義で発表された文書で、「弾道ミサイル技術の使用を禁じた国連安保理決議の明白な違反である、北朝鮮による複数の弾道ミサイル発射を強く非難する」と表明。「挑発は国際社会の結束を強くするだけだ」と指摘したうえで、「国際社会の平和と安定を脅かす挑発的な活動や発言を慎み、真剣な協議の場に戻るという戦略的な判断を求める」と北朝鮮側に促しました。
 一方、日韓両国については「脅威に直面するなか同盟国の防衛は揺るがない」と強調したうえで、「伸張する脅威に対してはあらゆる能力を使う用意がある」として、強い姿勢を表明しています。(06日14:31)
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2998645.html

 


北朝鮮、弾道ミサイル4発発射 安倍首相「新たな脅威」
The Huffington Post | 執筆者: Chitose Wada
投稿日: 2017年03月06日 10時03分 JST 更新: 2017年03月06日 10時03分 JST
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菅義偉官房長官は3月6日に緊急会見し、北朝鮮が同日午前7時34分に、弾道ミサイル4発を発射したと発表した。うち3発が、日本の排他的経済水域(EEZ)に落下したという。現時点においては、付近を航行する航空機や船舶への被害は確認されていない。

安倍晋三首相は記者団の取材に応じ、「しっかり情報収集し分析する。北朝鮮に厳しく抗議した。北朝鮮が新たな脅威となったことを明確に示すものだ」などと述べた。

韓国の聯合ニュースは、ミサイルは平安北道・東倉里(トンチャンリ)付近から発射されたとみられると伝えた。その発射場所から、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の「KN08」や「KN14」との見方も出ているという。韓国軍当局者はこのミサイルは約1000キロ飛行したと述べた。

今回のミサイル発射についてロイターは、1日から始まった韓米合同の野外機動訓練「フォールイーグル」に対する報復とみられると分析した。

北朝鮮は2月12日、北朝鮮西岸からも中距離弾道ミサイル1発を発射している。このミサイルは、高度550キロまで上昇し、発射地点から東に約500キロ離れた日本海に落下した。
http://www.huffingtonpost.jp/2017/03/05/story_n_15175832.html

 


World | 2017年 03月 6日 16:56 JST 関連トピックス: トップニュース
北朝鮮が日本海にミサイル4発、ICBMの可能性低いと米韓当局

[東京/ソウル 6日 ロイター] - 北朝鮮は6日朝、同国西岸から弾道ミサイル4発を日本海に向けて発射した。3発は日本の排他的経済水域(EEZ)に落下したとみられる。北朝鮮は大陸間弾道ミサイル(ICBM)の試射を以前から示唆してきたが、米国と韓国当局は今回のミサイルがICBMだった可能性は低いとみている。

ミサイルは午前7時34分ごろ、北朝鮮西岸の東倉里(トンチャンリ)から4発ほぼ同時に発射された。韓国軍によると、ミサイルは東方へ約1000キロ飛行し、高度は約260キロに達した。日本の防衛省によると、4発とも秋田県男鹿半島の西300─350キロの日本海に落下し、うち3発は日本のEEZ内に、残り1発もEEZ付近に落ちた可能性があるという。

安倍晋三首相は国会の参議院予算委員会で、「北朝鮮が新たな脅威となったことを明確に示すものだ」と発言。「安全保障上の重大脅威」としたうえで、北朝鮮に厳重に抗議したことを明らかにした。日本はその後に国会を中断。国家安全保障会議(NSC)を開き、さらなる事態に備えた対応などを確認した。

日本は米国、韓国とそれぞれ電話で外相会談を行った。岸田文雄外相は米ティラーソン国務長官との間で、国連安全保障理事会で強いメッセージを出すことで一致した。岸田外相は記者団に、「日米、日韓、日米韓で国連の場を含めて緊密に連携していく」と語った。


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 3月6日、北朝鮮は6日朝、同国西岸から弾道ミサイル4発を日本海に向けて発射した。3発は日本の排他的経済水域(EEZ)に落下したとみられる。写真は6日、ソウル市内の駅で北朝鮮のミサイル発射のニュースに見入る市民(2017年 ロイター/Kim Hong-Ji)
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北朝鮮の金正恩労働党委員長はかねてから、米国まで到達するICBMの発射実験が最終段階にあると述べてきた。韓国軍は今回のミサイルがICBMだった可能性は低いとする一方、さらなる分析が必要とした。米当局者もロイターに対し、ICBMを発射した形跡はないとした。

北朝鮮による弾道ミサイルの発射は今年2度目。2月12日の前回は、固体燃料を使った新型中距離弾道ミサイル「北極星2号」を発射した。稲田朋美防衛相は記者団に対し、今回の発射の意図について、米国と韓国が3月1日に開始した合同軍事演習に反発した可能性があるとした。

北朝鮮は昨年だけで20発以上の弾道ミサイルを発射、2度の核実験を実施した。9月には同時に3発のミサイルを撃ち、いずれも日本のEEZ内に落下した。韓国は中国が強く反発する中、在韓米軍による新型迎撃ミサイル「THAAD」の配備受け入れを決定。日本は既存の迎撃ミサイルの改良を急ぐとともに、新型ミサイルの導入の検討を本格化させている。

*内容を追加します。

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北朝鮮、潜水艦から弾道ミサイルを発射=韓国軍
中国、朝鮮半島の緊張をもたらす行動に反対を表明
北朝鮮のミサイル発射、米韓軍事演習受けた「報復」=中国新華社
http://jp.reuters.com/article/abe-kp-idJPKBN16D00B

 
「キム・ジョンウン」同姓同名は改名を、11年に父正日氏が命じる

[ソウル 3日 ロイター] - 韓国の国営KBSテレビは3日、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)第1書記と同姓同名の国民に改名が指示されていたと報じた。

父親の金正日(キム・ジョンイル)総書記が生前、正恩氏が後継者として事実上選ばれたことを受け、2011年に通達した。

北朝鮮の内部文書をKBSが引用したところによると、生まれた子供に同じ名前を付けることが禁じられたほか、同名者は出生証明書や住民登録票を修正するよう指示された。

北朝鮮では、金日成(キム・イルソン)国家主席や金正日氏についても、同じような命令が出されていたという。

北朝鮮に「キム・ジョンウン」という名前の人が何人いるかは不明。「キム」はよくある名字で、「ジョンウン」という名前も多い。
http://jp.reuters.com/article/kim-northkorea-idJPKCN0JI09320141204
http://www.asyura2.com/17/senkyo221/msg/820.html

[経世済民119] 日産の1月度生産・販売・輸出実績は引き続き好調を維持 GM撤退プジョーがオペル買収2650億円 自動車ブランドランキング
日産の1月度生産・販売・輸出実績は引き続き好調を維持
2017年3月1日
• カテゴリー:日本車情報, 日産
• タグ:1月, 2017, NISSAN, 日本車, 日産, 生産, 販売, 輸出
• 中古車情報:日産




日産自動車株式会社は2017年2月27日、2017年1月度の生産・販売・輸出実績の速報値を発表した。
まず生産だが、グローバル生産は46万2056台と対前年同月比で+5.7%となっている。これは12カ月連続で前年実績を上回る数値で、1月としての過去最高も記録している。そのうち国内生産は9万6909台(同+48.1%)と6カ月連続で前年実績を上回っているが、海外生産は36万5147台(同-1.8%)と前年同月を下回っている。

販売については、グローバル販売が44万9780台(同+0.8%)と6カ月連続で前年実績を上回り、1月としての過去最高を記録。軽自動車を含む国内販売は5万5838台(同+10.6%)と3カ月連続で前年実績を上回った。そのうち国内登録は4万1013台(同+30.0%)と大幅に伸びているが、軽自動車は1万3815台(同-24.0%)とこちらは大幅なマイナスとなっている。
また海外販売は39万3942台(同-0.4%)とわずかに前年実績を下回っているが、米国では11万2319台を販売。これは前年同月比で+6.2%となる数字で、1月としての過去最高となっている。また欧州では5万9821台(同+13.6%)を販売している。

日本からの輸出は5万862台(同+53.4%)という大幅な伸びを記録。9カ月連続で前年実績を上回った。

その好調さを受けて日産は、2017年度に新卒・中途を合わせ前年度に対し38%アップの390名増となる、1420名の採用を計画している。とくに技術系・技能系の採用を増やすことでインテリジェント・モビリティの実現を加速させるとともに、生産台数増加や技能継承への対応を進めていく予定だ。
https://carview.yahoo.co.jp/news/market/20170301-10261265-carview/?mode=full 

 
日産セレナの販売好調、売れてる理由は新しさだけじゃない!?
2017/03/02 16:09 by 山本晋也 ニュース・新車, ビジネス・経済, 新車


2016年8月に5代目とフルモデルチェンジした日産セレナの販売が相変わらず好調です。発売から1か月で2万台を超える受注を果たしていましたが、その勢いはとどまるところを知りません。

発売開始からおよそ7か月、2017年2月末時点での受注台数は約6.5万台。これは歴代モデルと比べても突出したもので、『セレナ』という名前で売っているのではなく、明らかに市場からの評価を受けていることが見て取れます。
●歴代セレナ(2〜5代目)発売7か月後の受注台数(日産自動車発表値)
2代目(C24型):43,500台
3代目(C25 型):55,500台
4代目(C26型):48,500台
5代目(C27 型):65,000台
»次ページセレナが評価されているポイントは?


では、セレナが評価されている理由は何でしょうか。セレナの特徴といえば、量販価格帯のミニバンとして初めて採用した自動運転支援技術「プロパイロット」が挙げられます。その装着率は56%と半分以上ですが、デビュー当初は7割程度の装着率だったことを考えると、「プロパイロット」ありきではなく、ミニバンとしての本質が人気を集めているという風に見ることができそうです。
つまり、日常的な使い勝手の良さがセレナのアドバンテージと考えられます。具体的には、狭い場所でも開閉しやすい「デュアルバックドア」、足の動作でスライドドアを開閉できる「ハンズフリーオートスライドドア」といった同クラスのミニバンではセレナ独自の機能が、ミニバンユーザーに評価されているといえるでしょう。

また、3列それぞれに2個ずつUSB端子を用意するなど、実用性を考慮した装備も”かゆいところに手が届く おもてなし”を感じさせるのも選ばれている理由ではないでしょうか。
市街地での短距離ユース、ストップ・アンド・ゴーが多いシチュエーションではライバルであり、2016年のミニバンナンバーワンセールスとなったトヨタ・ヴォクシーのフルハイブリッド車にアドバンテージもありますが、価格差を考えると、セレナのマイルドハイブリッドも十分に比較できる性能を持っています。さらに、ハイブリッド4WDとなると、Mクラス・ミニバンではセレナしか選択肢がないのも事実。
歴代セレナが培ってきた使い勝手の良さと先進的メカニズムの好バランスが、セールスにつながったといえそうです。









(写真:冨士井明史 文:山本晋也)
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http://clicccar.com/2017/03/02/450583/2/

 

仏PSAが米GMの欧州事業買収で合意、オペルなど−約2650億円
Ania Nussbaum
2017年3月6日 12:23 JST 更新日時 2017年3月6日 17:30 JST
 
フランスの自動車メーカー、グループPSAは同業の米ゼネラル・モーターズ(GM)の欧州事業を22億ユーロ(約2650億円)相当で買収することで合意した。欧州2位の自動車メーカーが誕生することになる。プジョーとシトロエンを製造するPSAは成熟市場での競争力強化を目指す。
  6日の両社発表によると、PSAはドイツのオペルと英国のボクソール買収で13億ユーロを支払い、残りはファイナンス部門の取得に使う。ファイナンス事業の半分はフランスのBNPパリバが買い取る。
  事業統合により、共同開発や工場投資分担、購買の一本化を通じて2026年までに年17億ユーロのコスト節減を見込む。これらの措置を導入するための費用は約16億ユーロ。不採算のオペル部門については20年までに営業利益率2%、26年までに同6%を達成するとしている。 
  GMは売却に伴い40億−45億ドル(約4550億−5120億円)の非現金費用を計上する。売却は年内に完了する見込み。GMはオペルの年金債務の大半を引き継ぎ、これに絡む一部として30億ユーロをPSAに支払う。
原題:Peugeot Maker Agrees to Buy GM’s Opel in $2.3 Billion Deal (1) (抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-06/OMDIDS6TTDSA01


 

自動車ブランド価値ランキング、トヨタが首位、トップ100に中国15ブランド―中国メディア レコードチャイナ 2017年3月6日 12時10分 (2017年3月6日 22時56分 更新)


6日、英コンサルティング会社、ブランド・ファイナンスがこのほど発表した2017年版の「最も価値のある自動車ブランド」トップ100に中国から15ブランドが入選した。首位は日本のトヨタだった。写真は2016年の北京モーターショー。(Record China)
[拡大写真]

2017年3月6日、英コンサルティング会社、ブランド・ファイナンスがこのほど発表した2017年版の「最も価値のある自動車ブランド」トップ100に中国から15ブランドが入選した。首位は日本のトヨタだった。参考消息網が伝えた。

上位3ブランドはトヨタ自動車、BMW(独)、メルセデス・ベンツ(独)で前年から順位に変更はなかった。

中国ブランドでは、哈弗(ハーバル、Haval)、五菱(ウーリン、Wuling)、長城(グレートウォール、Great Wall)、宝駿(バオジュン、Bao Jun)が新たにランク入りした。順位はそれぞれ、30位、38位、77位、80位だった。

中国ブランドで首位は吉利(ジーリー、Geely)の24位。(翻訳・編集/柳川)
>>次の記事:韓国メディア嘆く「隣に中国、それが韓国の宿命」―仏...
http://www.excite.co.jp/News/chn_soc/20170306/Recordchina_20170306017.html
http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/767.html

[政治・選挙・NHK221] 首相、特区「年内に追加指定」規制緩和の対象拡大 正社員不足過去10年で最高  GDP減 地方税収3600億円減 コメ品薄
首相、特区「年内に追加指定」規制緩和の対象拡大
2017/3/6 19:14
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 安倍晋三首相は6日の国家戦略特区諮問会議で「特区による規制改革の手を緩めることはない」と述べ、年内に追加の特区を指定する考えを表明した。農業の専門技術を持つ外国人雇用など特区のみで認める大胆な規制緩和の適用を求める自治体が増えたためだ。意欲的な自治体を特区に組み込んで、規制緩和の裾野を広げて、成長の底上げにつなげる。

 特区は東京都や大阪府、沖縄県など17自治体が指定を受けた。今春から自治体や事業者から新たな規制改革のメニューを募り、4回目となる特区指定の判断材料とする。

 農業分野で外国人を雇いやすくする規制緩和は、政府が今の国会に提出する国家戦略特区法改正案に盛り込む。この規制緩和は秋田県大潟村や群馬県昭和村などが提案してきた経緯があり、これらの自治体が追加指定の候補になりそうだ。

 政府は特区法改正案を近く閣議で決める。農業分野のほか、宿泊や飲食などサービス業で訪日客に対応する外国人を受け入れやすくする。自動運転など先端技術の実証実験に迅速に取り組めるよう規制の見直しにも着手する。小規模保育所(ミニ保育所)の入所年齢制限も「原則2歳児まで」としていたのを「5歳児まで」に緩める。

 6日の会議では、すでに特区になっている17自治体の実績も評価した。今年度に認定された規制改革の事業数は、東京都で27件、福岡市で12件に上った一方、沖縄県や兵庫県はそれぞれ1件にとどまるなど地域間のバラツキが目立った。竹中平蔵東洋大教授ら民間議員は、一般住宅の空き部屋に旅行者らを最短2泊3日で泊められるなど「民泊」の規制緩和を適用する自治体が大阪府・市など一部に限られていることを問題視した。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS06H40_W7A300C1PP800/


 

企業、正社員「不足」43.9% 過去10年で最高
2017/3/6 19:57
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 帝国データバンクが今年1月の調査(1万社強が回答)で正社員の過不足を聞いたところ、「不足」と答えた企業が43.9%で、過去10年で最高となった。大企業は51.1%だった。非正社員も人手不足は深刻で、飲食店が8割台と断然トップだった。経済成長の足を引っ張りかねないほど人材需給は逼迫している。

 正社員は前回調査(16年7月)に比べ6.0ポイントも上昇。大企業が中小企業(42.1%)より高かった。業種を見ると放送(73.3%)、情報サービス(65.6%)、メンテナンス・警備・検査(62.9%)が続いた。

 非正社員の「不足」の割合は29.5%。前回調査より4.6ポイント高く、過去10年で最高だ。飲食店(80.5%)、娯楽サービス(64.8%)、飲食料品小売り(59.4%)と続き、消費関連が目立った。帝国データバンクの窪田剛士氏は「長い目でみて経済成長を抑制しかねない状況だ」と指摘する。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGF24H0D_W7A300C1EE8000/


 


1月のGDP、前月比0.5%減 日本経済研究センター
2017/3/6 22:00
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 日本経済研究センターが6日発表した1月の実質国内総生産(GDP)は前月に比べて0.5%減少した。3カ月連続で前月水準を下回った。自動車が振るわず、輸出が1.2%減少した。設備投資も0.4%減だった。一方、個人消費は0.4%増加した。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS06H36_W7A300C1EE8000/

 


 
都道府県の17年度税収見積もり、3600億円減
2017/3/6 19:59
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 全国47都道府県の2017年度税収見積もりは、18兆9000億円規模と16年度当初比で約3600億円減った。昨年の円高で地方法人住民税と地方法人事業税が減収となったのが主因。税収減は都道府県の予算規模の抑制にもつながっており、アベノミクスが為替水準に左右される実態が改めて浮き彫りとなった。

 主な税目では、地方法人2税が5.1兆円と1400億円減るほか、地方消費税が3.7兆円と1800億円減少すると見積もった。地方法人2税は自動車産業を抱える愛知県が2割以上の落ち込みを予測するなど、輸出産業を抱える自治体への影響が大きかった。

 地方税収はアベノミクスなどの恩恵で12年度以降、5年連続で伸びてきた。都道府県の税収に加え、市町村の税収も減少に転じれば、地方税として11年度以来6年ぶりの減収となる。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS25H0Q_W7A300C1EE8000/


 


コメ品薄感強まる 2月のDI調査
2017/3/6 22:01
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 米穀安定供給確保支援機構(東京・中央)が6日まとめた2月時点のコメDI(指数)調査によると「品薄感が強まった」との見方が増加した。前回調査の1月に続いて需給はさらに引き締まった。外食や中食に使う安い価格帯のコメが不足している。

 コメ卸会社や生産者、小売店などから回答を得た。需給が緩む、引き締まるなどの回答をもとに一定の計算式でDIを算出する。50を均衡点に100へ近づくほど需給は引き締まり感が強くなり、価格は上がる。

 需給判断は1月から2ポイント増の57。2カ月連続で「締まった」が増え、4カ月ぶりの高い水準になった。3カ月先の需給見通しも54で3ポイント上昇した。米価水準については高価格帯のコメが余り気味で、現状の判断は1月から1ポイント減らして59。見通しも52で横ばいだった。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDJ06H1U_W7A300C1QM8000/
http://www.asyura2.com/17/senkyo221/msg/822.html

[経世済民119] 吉野家「牛丼一筋」モー限界?マイナス基調鮮明 すき家も減収、松屋増 セメント需要逆風、鉄骨シフト  組替大豆で割増金上昇
吉野家「牛丼一筋」モー限界? マイナス基調鮮明
2017/3/6 21:50
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 牛丼一筋の「吉野家」がもがいている。6日発表した既存店売上高は3カ月連続で減り、マイナス基調が鮮明になった。牛丼チェーンの競合店や外食大手が新メニューを相次ぎ開発し集客数を増やすなか、牛丼を軸とするビジネスモデルに限界が見えつつある。

 「吉野家は牛丼のイメージ。松屋は定食やカレーのメニューが豊富」。牛丼店激戦地の東京・神田。満足げな顔で松屋神田須田町店(東京・千代田)を出てきた男性会社員(47)はメニュー数で松屋を選び、約50メートル先の吉野家淡路町店(同)はほとんど利用しない。

吉野家は牛丼以外のメニュー多角化で集客力回復を急ぐ(東京・千代田)
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吉野家は牛丼以外のメニュー多角化で集客力回復を急ぐ(東京・千代田)
 牛丼が主軸のままの吉野家に対し、メニューを幅広くそろえる「すき家」のゼンショーホールディングスと「松屋」の松屋フーズ。足元では後者に客が集まる。

 吉野家ホールディングスが6日発表した2月の既存店売上高は前年同月比4.6%減。前年はうるう年で営業日数が1日多い点を加味しても2016年12月から続く減収基調が鮮明になった。

 一方、すき家は同1.3%増。松屋は0.6%減と27カ月ぶり減だが、前年のうるう年の影響で売り上げが3ポイントほど押し下げられたといい実質は約2%の増収だ。松屋は2週間に1度は定食の新商品を出し、すき家も派生商品を充実させる。

 吉野家の売上高に占める牛丼の比率は5割前後。これに対し松屋は2〜3割とされる。他の外食大手も新商品を次々出すチェーンが好調だ。日本マクドナルドは毎週のように新商品を出し業績を急回復させ、ファミリーレストラン大手も期間限定メニューで客を呼ぶ。

 ベジ丼、麦とろ御膳、豚丼、ご当地鍋――。吉野家も15年春から新メニューを出したがヒットは長続きせず、安定して増収を維持できない。

 人手不足も響く。吉野家の運営は若い男性アルバイトが働くことが前提だったが、いま頼るのはシニア層や外国人だ。闇雲にメニュー数を増やせば管理する食材数や調理の工程数が増え、店頭運営が破綻しかねない。

 「牛丼一筋80年」と約40年前にテレビCMでうたい、固定ファンをつかんだ吉野家。牛丼チェーンの強みはどの店も同じ味を楽しめる安心感だった。が、いまは弱点になりつつある。

 集客や検索のツールが発達し、消費者はチェーン店ではない独自色の強い店も安心して探せるようになった。景気の足踏みが続き、店選びもさらに厳しくなる。吉野家はメニューの多角化を急ぐが、競争軸は様変わりしている。(小沼義和)

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吉野家・すき家減収 1月既存店 (2017/2/8付) [有料会員限定]

牛丼3社2ケタ営業増益 第3四半期 (2017/2/14 22:07)

1月の実質消費支出、前年比1.2%減 食料品の低迷で (2017/3/3 9:58)

1月の外食売上高、2.4%増 5カ月連続プラス (2017/2/27 18:31)

外食が24時間営業縮小 すかいらーく、7割を午前2時閉店 (2016/12/16付) [有料会員限定]
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ06HW8_W7A300C1TI1000/

 

吉野家・すき家減収 1月既存店 松屋は増収
2017/2/8付日本経済新聞 朝刊
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 牛丼大手3社の1月の既存店売上高が7日までに出そろった。吉野家ホールディングスの「吉野家」が前年同月比2.3%減、ゼンショーホールディングスの「すき家」が3.1%減だ…
http://www.nikkei.com/article/DGKKASDZ07HV4_X00C17A2TI5000/


 

セメント需要に逆風 高層ビル工法が鉄骨シフト
2017/3/6 22:02日本経済新聞 電子版
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 セメント国内需要の低迷が続いている。高層ビルの工法が鉄骨にシフトしているのが逆風となっている。2020年の東京五輪や再開発関連工事の本格化による需要増を打ち消しかねない。

 都心で進む再開発プロジェクトは建物が高層・大規模化する傾向にあり、「18、19年度にピークを迎える」(鹿島)のがゼネコン(総合建設会社)の一致した見方。清水建設の三沢正俊執行役員は「物件の大型化で大半が鉄骨造。鉄骨工事が忙しく…
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDJ06H0M_W7A300C1QM8000/


 

大豆、割増金3年ぶり上昇 組み替え品の作付け増え
2017/3/6 21:59日本経済新聞 電子版
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 2017年秋に北米で収穫する遺伝子非組み換え大豆の割増金が3年ぶりに上昇した。割増金は16年産に比べて8〜12%高い。家畜の飼料に使う組み換え大豆が1ブッシェル10ドル前後と過去の推移と比べて高い水準にあり、組み換え大豆に作付けをシフトする農家が増えた。

 割増金は穀物メジャーなど集荷業者が農家から大豆を調達する際、シカゴ相場に上乗せする価格。非組み換えは雑草の処理など栽培に手間がかかるため、農家…
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDJ06H1Q_W7A300C1QM8000/
http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/768.html

[国際18] 北朝鮮、マレーシア大使の国外追放を通告 「好ましからざる人物」 国外退去処分の北朝鮮大使、マレーシアを出国 
北朝鮮、マレーシア大使の国外追放を通告
「好ましからざる人物」
2017/3/6 21:27 
 【北京=共同】朝鮮中央通信は6日、北朝鮮外務省がマレーシアの駐北朝鮮大使を「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)」として7日午前10時(日本時間同10時半)までの国外追放を通告したと伝えた。
http://www.nikkei.com/article/DGXLAS0040026_W7A300C1000000/


 
国外退去処分の北朝鮮大使、マレーシアを出国
2017/3/6 19:54 (2017/3/6 23:01更新)日本経済新聞 電子版
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 【クアラルンプール=吉田渉】北朝鮮の金正男(キム・ジョンナム)氏殺害への対応を巡ってマレーシア政府から国外退去処分を受けた北朝鮮のカン・チョル駐マレーシア大使は6日、クアラルンプール国際空港から出国した。マレーシアが通告した期限ギリギリで、同国が示唆した国交断絶を回避する思惑が透ける。だがマレーシアは強硬姿勢を崩さず、断交などの火種はくすぶる。

 カン大使は同日午後4時前、黒塗りの自動車に乗ってク…
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM06H8P_W7A300C1FF2000/


 



http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/523.html

[政治・選挙・NHK221] “泥船”シムズ理論に乗る安倍政権 インフレになれば自然に財政再建 改憲へ“渡りに船”だが、財政インフレ政策はリスク大
“泥船”シムズ理論に乗る安倍政権


改憲へ“渡りに船”だが、財政インフレ政策はリスク大


けいざい内視鏡
2017年3月7日(火)
平田 育夫

 2%インフレを目指した日本銀行の異次元緩和の効き目が薄れたことで、安倍政権は今、財政をふかしてインフレを起こす「財政インフレ」に傾斜し始めている。

 財政の状況が悪いときにそんなことをしたら、さらに財政再建が遠のくと思うのが常識。しかし米国の経済学者の間には「上手なやり方で財政を活用すればデフレ脱却にも財政再建にも役立つ」とする理論があり、安倍政権はこれに乗ろうとしているのだ。

 この理論を実行に移した国はまだない。いわば危険に満ちた「賭け」に政権が打って出る裏には、戦慄すべき計算が働いているようだ。

 くだんの理論はノーベル賞経済学者のクリストファー・シムズ米プリンストン大学教授らが、1990年代の半ばから唱えている「物価水準の財政理論」。金利がゼロ近辺となりデフレ脱却へ金融政策の効果がなくなったとき、物価水準を決めるのは財政政策だ、という考え方から、歳出の拡大や減税などを実施すべきだと主張する。

「インフレになれば自然に財政再建」

 一見、ケインズ政策に似ているが、この理論の特徴は将来の増税や歳出削減を封印して、人々にインフレの到来を確信させ、消費や設備投資を促すところだ。それによって実際にインフレになれば、税収が増えて、国の借金(国債発行残高)が目減りするので、財政を立て直しやすくなる、と説く。

 有権者に不人気な緊縮財政ではなく、インフレによって自然に財政を健全にするという、政治家にとってはまことに都合のよい理論である。

 シムズ教授は昨年夏に米国内の講演で自説を改めて披露。安倍首相への経済政策の指南役である浜田宏一内閣官房参与(米エール大学名誉教授)はそれを聞いて「目からウロコが落ちた」と持ち上げた。今年2月にはシムズ教授が来日して講演。また政権内では世耕弘成経産相が経済財政諮問会議でシムズ理論を引き合いに出し、政府による技術革新促進のための投資拡大を訴えた。

 こうした動きからエコノミストの間では「シムズ理論が安倍政権の今後の財政運営のバックボーンになる」という見方が広がっている。 

 特に今の安倍政権にはシムズ理論に頼らざるを得ない事情がある。

 第1に、政府はすでに昨年から、金融緩和の限界をみて、財政の活用に政策の軸足を移してきている。主要7カ国首脳会議(伊勢志摩サミット)で安倍首相が各国に積極財政に向けた協調を提案したのも、日本の財政運営を緩めるための布石だった。実際に2016年度の第3次補正予算では7年ぶりに1.7兆円の赤字国債を追加発行するなど、拡張型の財政に踏み出している。シムズ理論はそれを正当化してくれる。

 第2に、首相が公約した財政健全化目標(2020年度に基礎的な財政収支を均衡させる)の達成は誰が見ても不可能になっている。この目標を大幅に延期する際に、緊縮財政に慎重なシムズ理論は渡りに船となる。

 第3に、安倍首相の在任中の最大の目標は憲法改正にあるとみられ、その実現に目途がつくまでは大幅な増税や歳出削減は避けたいところだろう。首相は来年9月の自民党総裁選挙で3選を果たし、2019年にも憲法改正に臨む可能性がある。となれば、2019年10月に予定している10%への消費税率引き上げの再延期も考えるとみるのが自然である。その際に「増税封印」を勧めるシムズ理論は心強い味方だ。

 では果たして、シムズ理論への傾斜で「デフレ脱却と財政健全化」が本当にうまくいくのだろうか。

 学者の間には「人々のインフレ予想に働きかけるという点で日銀の異次元緩和と同じであり、異次元緩和と同様、インフレ喚起に失敗する」との見方もある。だが、この理論は「インフレが起きるまで積極財政を続ける」という意味を含んでいるから、政権は積極財政を続けることになるだろう。経済が完全雇用に近いなかで財政による需要の追加が続けば、いずれはインフレになる可能性が大きい。

なぜこんなリスキーな策に出るのか

 問題はインフレになった後だ。シムズ教授は「インフレ率が日本の目標である2%に達したら、財政政策や金融政策で引き締めればよい」という。しかし実際には日銀による国債購入の大幅な減額などで金融を引き締めると国債金利の急騰を招き、財政や経済に大きな打撃を及ぼすので、日銀が一気に引き締めに転じるのは難しい。

 一方で歳出の削減や増税など財政による引き締めは、そもそも政治家が嫌うところ。かくして、いったんインフレになると2%を超えて加速し、高率のインフレになる恐れがある。高率インフレが視野に入ると資本の海外逃避による円安→物価高騰や、金利急騰による財政不安の拡大なども加わって、最悪では金融システム不安や、日銀や国債の信認低下など大混乱(つまりは財政・経済の破綻)に陥る可能性がある。

 インフレ率を2%程度以下に管理するのは、非常に難しい。また運よくそれに成功したとしても、国内総生産(GDP)の2倍にのぼる政府債務の負担を目に見えて軽くするためには長い歳月を要する。客観的にみればリスクが大きく、果実にはそれほど期待できない政策といえるだろう。

 そのような財政インフレ策に安倍首相が向かうとすれば、そこにはどんな計算が働いているのだろうか。

 首相に近い政府高官(局長級)に聞いたところ、答えはこうだった。

「安倍さんは、積極財政でインフレになれば金融を多少引き締めるだけでインフレ率を2%以下にキープできると考えている。また、緩めの財政運営を何年も続ければ、インフレが管理不能になる恐れは確かにあるが、安倍さんは自民党総裁の3期目の期限である2021年秋まで、そういう事態にはならないとみているようだ」

 確かにエコノミストのなかには「財政運営が本当にニッチもサッチも行かなくなるのは、団塊の世代の全員が75歳以上となり医療・介護費が急増する2025年以降」という見方があるのも事実。また政府内では「日銀保有分の国債は永久に借り換えることにして、元本償還のための歳出を抑える」など破綻までの時間を稼ぐための検討も進めているようだ。

改憲までは「ゆるゆる」が続く?

 しかしトランプ米政権をはじめ欧米諸国がポピュリズム志向を強め、積極財政で足並みをそろえれば、2〜3年内に世界的にインフレ傾向となる公算もある。その影響で日本では予想以上に早いテンポで物価が上がり、金利も上昇して、財政・経済の破綻が早まる危険性も見逃してはならないだろう。

 仮にそうした事態を避けられても、緩い財政運営のままでは、安倍首相の退陣後、医療などの社会保障費が急増する2025年が近づくにつれて財政破綻のリスクが高まるのは火をみるより明らかだ。

 憲法を改正して歴史に名を刻むため、首相は少なくとも自身の在任中の財政について極めて楽観的に見ている――。先の政府高官の話からは、そう推察せざるをえない。

 よりにもよって財政の非常時に、憲法改正という大事業を掲げるリーダーが出現し、しかもなぜか国民からの支持が高い。皮肉な展開というしかないが、どうやら現政権が「ゆるゆるの財政運営」(政府高官)に突き進み、財政破綻のリスクを増大させるのは避けられない見通しとなってきた。


このコラムについて

けいざい内視鏡
政府の経済政策や企業の活動には必ず「表」と「裏」の顔があります。マスメディアは確証をとりにくい裏の狙いや事情に踏み込むのを避けますが、えてして裏側に大事な真実が隠されているものです。当事者の動きを丹念に追いながら、独自の「読み」を加えて、混沌とした現代経済の“体内”に深く迫ってみたいと思います。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/011700041/030600005/
http://www.asyura2.com/17/senkyo221/msg/846.html

[経世済民119] “労働教”から離脱し、キリギリスとして生きよ 移民流入で人口増も。JR東海の需要に不安なし思考停止経営からの決別
“労働教”から離脱し、キリギリスとして生きよ

キーパーソンに聞く

精神科医の泉谷閑示氏に、これからの「働き方」を聞く
2017年3月7日(火)
柳生 譲治
 電通社員の過労自殺事件をキッカケとして「長時間労働」の是正が国民的な関心事となっている。しかし現実には、法で定められた有給休暇の消化すらままならないのが働く人の現状だ。長時間働いていれば「あいつは頑張っている」と見なされるのが日本社会。逆に、周りが多忙な中でさっさと早帰りすると「空気の読めない奴」などと白い目で見られる現実。それは日本社会ならではの会社組織への「同調圧力」が働いているからではないか。

 『仕事なんか生きがいにするな 〜生きる意味を再び考える〜』という刺激的なタイトルの著書を1月に出版した精神科医の泉谷閑示さんはこれまで、全ての人に同質的価値観が求められるがゆえに、個人が追い詰められる日本社会の問題を論じてきた。働くことこそ生きることという“労働教”によって精神的なバランスを崩していく、日本のビジネスパーソンのための処方箋を聞いた。

泉谷閑示(いずみや・かんじ)氏
精神科医、思想家、作曲家
1962年秋田県生まれ。東北大学医学部卒業。東京医科歯科大学医学部附属病院、財団法人神経研究所附属晴和病院などに勤務したのち渡仏、パリ・エコールノルマル音楽院に留学。現在は、精神療法を専門とする泉谷クリニック院長。「泉谷セミナー事務局 official site」を通じて、一般向けのセミナーや勉強会も行っている。『「普通がいい」という病』『反教育論 〜猿の思考から超猿の思考へ〜』など著書多数。近著に『仕事なんか生きがいにするな 〜生きる意味を再び考える〜』『あなたの人生が変わる対話術』がある。
「頭」と「心」は異なる、そのことをまず知るべし

「働き方改革」が大きなテーマになる中で、長時間労働からうつ病を発症したり、さらには過労死したり過労自殺したりする人たちが日本には絶えません。いま泉谷先生のクリニックを訪れるビジネスパーソンの方々には、どういう傾向がありますか。

泉谷:精神的に追い詰められた原因はクライアントさんによって様々です。パワハラ的な上司の独裁の下で疲弊し葛藤している人もいれば、どんな目的で使われるかも分からない仕事を振られて「オレは何をやっているのだろう」と、はたと自分の生き方に疑問を感じてやって来られる方もいます。

 ただ、原因は様々でもその結果として、うつ病になって休職を余儀なくされ、通り一遍の薬の治療だけでは先が見えずに、休職と復職を繰り返すような方が少なくないのが現実です。そういう方々は「硬い勤勉さ」を持った、生真面目でストイックな感じの人が多いように思います。ストイックに自分にムチ打って、怠けを絶対に許せないような人たちです。

 やれるところまで精いっぱい働くべきだと、常に限界まで挑んでしまう。精神のバランスを崩してしまう人は、そういうタイプであることが昔から多いのです。そんな人たちには、「頭」と「心」は異なるということをまず、知っていただきたいと思います。

「心」に常にフタをしてしまうと、精神的な病につながる

「頭」と「心」の違いとは、どういう意味でしょうか?

泉谷:頭も心も同じようなものだろうと思っている人は少なくないと思いますが、それは間違いです。「頭」とは理性の場であり、一方の「心」は感情や欲求、感性、直観の場で、「身体」と分かち難くつながっています。例えば「頭」は仕事を進めるための情報処理を行い、過去を分析したり、未来を予測したりします。それに対して「心」は野生原理の感情や欲求の場ですから、仕事はしないで「休みたい」とか「眠りたい」「遊びたい」とかいう欲求を抱えていたりします。

 本来、動物は「身体」と連携した「心」のみでできているのですが、近代以降の人間は、「頭(理性)」が思い上がって「心」の出した結論を軽視し却下しがちなのです。「頭」が「心」の欲求に常に「フタ」をしてしまっているのです。「頭」が「心」を強力にコントロールしようとしているわけですね。これでは、うつ病などの精神的な病気を引き起こしてしまうのも仕方のないことです。

「大通り」を行くだけが人生ではない

自分の欲求を押し殺している状況ですね。ただ、現実には、仕事が忙し過ぎて心の欲求に応えられないのであれば、仕事を辞めない限り改善は難しいかもしれないですね。

泉谷:もちろん、そういうケースもあるでしょうね。私のクリニックに来られるクライアントさんにもよくお伝えしていますが、例えば休職している人が同じ職場の同じ仕事に復職することだけが「ゴール」なのではありません。私のクリニックでの精神療法や心理療法を通じてじっくりと検討した結果、今の仕事や職場に納得できないことが明確になったような場合には、転職したり、独立起業したりすることも選択肢に入ってくるだろうと思います。

 精神的に追い詰められた方々の原因を大別すると、「本人側」に原因がある場合と、その人が属している「環境側」に原因がある場合があります。本人側に問題がある場合は、たとえ勤務する会社を変えたところでいずれ同じ行き詰まりが生じるため、精神療法を通じて本人が抱えている問題の解消に努めていくことが不可欠になります。しかし、会社の体質や仕事の内容、上司との関係など、環境に原因がある場合は、さきほど申し上げたように、その人が本当に何をしたいのかをしっかりと突き詰めたうえで、転職したり独立起業したりすることも視野に入れるべきでしょう。

 つまり、そうした方々は、企業が売り上げや利益を出すためといった「意義」をひたすら追求する“労働教”に疲弊してしまっているのです。人間として「意味」を感じられるような生き方を模索することが大切です。皆と同じような「大通り」を行くだけが人生なのではなく、自分らしいユニークな「小径(こみち)」を行ったって良いんじゃないか、とクライアントさんに伝えることがよくあります。

日本は今もムラ社会だから、「空気を読む」

環境に問題がある場合というのは、どういうケースがありますか。泉谷先生がかねて著書で指摘されてきた、「個人主義」が確立されていないがゆえの「同調圧力」といったこともありますか。

泉谷:日本では職場や組織に対する「同調圧力」が強く、窮屈な思いをするということがもちろんあります。いわゆる「空気を読む」というやつです。あいにく日本は今も「ムラ社会」ですから。いまも従順でない者には、一種の「しごき」が与えられることさえあります。電通社員の過労自殺といったこともその延長線上にある問題です。個人主義の未熟な社会ゆえの悲劇と言えるでしょう。

 ここからは、ちょっと脱線するのをお許しいただきたいのですが、以前、私が研究社から出した本(『「私」を生きるための言葉 〜日本語と個人主義〜』)で、言葉を切り口にして、日本の「ムラ社会」を考察したことがあります。欧米の言語と日本語を比較したら、とても興味深いことが見えてきたのです。欧米の言語では、主語を立てることが必須になっているわけですが、日本語には本当の意味での主語がないのです。そのことが、日本の社会の在り方を象徴的に表しているのです。

ムラ社会ゆえに、日本語には「主語=私」が欠けている

「同調圧力」のお話から、ずいぶん話題が変わりましたね(笑)。

泉谷:いいえ、日本語の言語構造と「ムラ社会」とは直接関係しているという話です。ちょっと我慢して聞いてください(笑)。日本の社会の特徴を考える上で、日本語に「主語」がないという考え方から、示唆を得るところは少なくありません。

 「日本語では主語が省略されることが多い」と私たちは学校で習ってきましたよね。その考え方で言えば、省略されることは多いものの、日本語に主語はあることになります。でも、そうではなくて、一見、主語とされているものは「主題」を立てているだけであって、そもそも欧米語のような主語がないのではないかという議論が近年活発になっています。そのため、日本語を用いる私たちは、「私」という一人称がない未熟な「0人称」にとどまってしまうという傾向を帯びているのです。

「0人称」とはどういう意味でしょう。

泉谷:「0人称」と最初に呼んだのは哲学者・フランス文学者の森有正で、日本人の話し手には「自分がない」という意味が込められています。日本語では自己と対象の主客が合一的で、その間の境目があいまいです。話者は個人主義の欧米人のような確固とした主体を持っておらず、相手との関係によって話す内容さえも変化してしまいます。言い換えれば「誰」が言ったかはあまり問われない社会。「誰でも同じ意見である」「同じ価値観を持っている」という前提に立った社会であるとも言い換えることもできます。自分もほかの人間も考え方は同じだから、あえて主語を明示する必要はないということになるのです。

日本は「主語=私」がないという言語構造からして、環境に同調していく傾向を帯びていると。

泉谷:そうなんです。しかし面白いことに、インド・ヨーロッパ語族の言語も7世紀くらいまでは、やはり日本語と同じように主語というものはなかったのだそうです。しかし、そのうち動詞の活用が始まり、主語も登場してきた。英語では12世紀頃、主語の義務化が起こるようになってきた。それはムラ的だったヨーロッパの中世の社会が、「個人」に目覚めていった社会の流れと密接に関連しているわけです。

つまり、日本は「個人主義」という点では800年くらいヨーロッパから遅れていると。ゆえに自分と他人との関係が未分化で、「同調圧力」もまだ強いのだということになるのでしょうか。

仕組みだけは欧米から輸入し、「二重構造」の社会に

泉谷:800年とは言いません(笑)。でも、個人主義という観点ではおそらく400年くらいは遅れているのではないでしょうか。そんな風に相変わらず「ムラ社会」が継続されているのが実情なのに、社会の仕組みだけは欧米からどんどん導入している。例えば「成果主義」とか「コンプライアンス」とか。しかし、やはり環境は相変わらず「ムラ社会」なので、それは表面的に真似たに過ぎない「二重構造」になってしまっていて、そこに齟齬が出てくるわけです。そして、そのツケは個人に押し付けられているのです。

 例えば、建前上は欧米企業のように「自分の意見をはっきり述べるように」と社長や上司から言われますが、生真面目な人がその指示を本気にしてはっきり意見を述べたりすると、「空気が読めない」とか「強調性がない」とか言われてしまう。あるいは「働き方改革」ゆえの時短の指示に従い、さっさと帰ったりすると、白い目で見られてしまう。

 ちなみに私は、病院に勤めていた時には「同調圧力」には決して従いませんでした。自分の仕事が終わったらさっさと帰るようにしたのです。欧米では、ほかの人がまだ仕事をしているから帰りにくいなどということはありえません。生真面目な人が多い日本では、「ふざけた奴だ」と思われるかもしれませんが、案外それくらいで丁度いいのではないかと思いますよ。

 本題に話を戻しましょうか(笑)。

 こうした「ムラ社会」ゆえの同調圧力との軋轢によって、精神的に追い詰められる人が日本にはとても多いのです。そういう人たちには、是非、勇気を持って「ムラ社会」から自覚的に離脱し、本当の自分を生きることをお勧めしたいと思います。例えば私のクリニックでも、同調圧力の高い企業で生きづらそうにしている人が、何かの機会に海外に出たり英語を使ったりすると、まるで別人のように生き生きするというケースも少なくありません。

「自分は自分、人は人」という前提を忘れない

最初におっしゃられた「硬い勤勉性」をもった人ほど、同調圧力にやられてしまいそうな気がします。ムラ社会の同調圧力に屈しないためにはどうしたらよいのでしょうか。

泉谷:コロンブスの卵のような言い方になりますが、最初から「ムラ」に入らないことです。例えば、あえて最初からランチのグループに入らないとかですね。「ムラ」に入らなければ、当たり前のことですが「村八分」といういじめに逢うことはないのです。「ムラ社会」では、その場にいない人が悪口のターゲットにされてしまう可能性はもちろんありますけれど、いくら陰で悪口を言われても、自分の耳に届かなければ、それは言われてないのと同じなんです。そうやって一人ひとりが、ある程度の覚悟を持って個人主義的に自立していくことでしか、日本は根本的に変わっていけないのではないかと思います。「自分は自分、人は人」という当たり前の前提を忘れないことです。

「自分と仲たがいするより、世界と仲たがいすることを選ぶ」

なかなかそう割り切れない人もいるのでは?

泉谷:日本人の陥りやすい最大の問題点は、自分と人との「関係性」を最重要視してしまって、「関係性」を守るがために個人の方が歪んでしまうというところにあるように思います。その結果、個人が精神的に追い詰められていく。私はよくクライアントさんに、「それは本末転倒でしょ?」と言っています。

 つまり、自分はこう思う人間で、相手には相手の意見がある。その相対的関係で2人の関係が決まるわけです。しかし、どちらも人間なんだから、時間の経過とともに考えが変わったりすることもあるでしょう。すると、自ずと両者の関係は変わるはずです。あらかじめその前提をわきまえたうえで、「他者」同士として「対話」を行う。本来の関係性とはそういうものです。なのに、日本人の多くは関係性を何が何でも温存しようとするがために、自分の意見を飲み込んだり、自分の考えを捻じ曲げたりすることをしてしまう。そして、さきほどの「頭」と「心」の話で言えば、「頭」が「心」にガッチリとふたをしている状態が起こってしまう。そこから、「心」や「身体」の問題が起こってくるのです。

 合わなくなってしまったのであれば、それはそれで仕方ないわけだし、残念ながら対立してしまうこともあるかもしれない。それが「個」として立つ人間同士の関係の、避けがたい宿命です。どうしてこの当たり前のことが引き受けられないのか、と私は思います。もちろん、自分の考えには最低限の責任が伴いますから、「自分はこうです」という主張をキチンと考えておかなければなりません。そこをごまかすために、人間関係におもねるように生きてはいけないと思うのです。確かソクラテスの言葉だったと思いますが、「自分自身と仲たがいするよりは、世界全体と仲たがいすることを選ぶ」というのがあります。このような覚悟が、自分が拠って立つ基本でなければならないでしょう。「自分を大切にする」とはそういうことです。

 また、自分自身の「心=身体」とキチンと「対話」することも重要だと思います。例えば、毎朝、目覚まし時計に起こされること自体、「心=身体」にはとても酷なことをしているわけです。起きたくないのに、無粋なベルで起こされるんですから。大げさに聞こえるかも知れませんが、毎日でも自分の「心=身体」に「ごめんね」と謝る。そういう内的な姿勢が必要なんです。

精神衛生上の効果はあるのでしょうか。

泉谷:はい、全然違うと思いますよ。ぞんざいに「心=身体」を無視し続けると、いずれ“自爆テロ”を起こされるのがオチです。我々の「心=身体」は決してでたらめではありません。現代人は「心」をあまりに軽視し過ぎです。本来は「心」が社長で、「頭」はその秘書に過ぎないはずが、どうにも関係が逆転してしまっていて、秘書である「頭」が独裁者になり社長に「黙れ」とやっている。それが現代人の不幸の原因なのです。

大人も「心」を中心にして、生活全体を遊ぶべし

最近出版された、『仕事なんて生きがいにするな』では、もっと日常の中の遊びや余裕を重視した方がいいというようなことを書かれています。追い詰められたビジネスパーソンが精神の危機から脱するために、具体的にどんなことをすればいいのでしょうか。

泉谷:小さな子供が無心で遊ぶように、大人も「心」を中心にして、生活全体を遊ぶべきなのです。ただし、それは大人ならではの成熟した遊びであり、頭脳を駆使した創造的な遊びになるでしょう。身近なところで具体的に言えば、料理とか日曜大工、音楽などもよいだろうと思います。実際にそういう「遊び」を仕事にまでしてしまった人もいます。

 私のクリニックに来ていたクライアントの方で、もともとはかなりのエリートと言われるような職業についていた方がいるのですが、休職中に遊びの一環であるモノづくりに熱中するようになりました。すると、どんどん元気になっていって、ついには会社も辞めて、そのモノづくりを職業にしてアトリエを開きました。つまり、そのクライアントさんは自分の「鉱脈」を掘り当てて、生きる意味を取り戻すことができたわけです。

 現代人は、もはやハングリーに働かなくてもさすがに死ぬほどのことにはならないのに、「働くことこそ生きること」という“労働教”にいまだに洗脳されたままなのです。戦後すぐの時代の人々がハングリーに働くことが不可欠だったのは事実ですが、今はもう、そういう時代ではありません。にもかかわらず、日本人は「ハングリーモード」のスイッチを戻せなくなってしまっている。生きる手段に過ぎなかった「ハングリーに働くこと」自体が、自己目的化してしまっているのです。もっと一人ひとりが「生きる意味」を大切に生きてもよいのではないでしょうか。

「ごはんが食えなくなる」ことはない

しかし、会社を辞めて仕事にまでしてしまうというのは、一般の人には危険な発想ではないですか。

泉谷:そんなことはないと思います。よくみなさん、思い切った転身をしようとする人に対して「ごはんが食えなくなる」などとおっしゃいますが、私は「本当でしょうか?」と申し上げたい。今の日本で「食えなくなる」といっても、戦争直後の切実さとはまったく異なると思うのです。今はアルバイトもたくさんあるし、生活保護もあるし、どうにかして生きていける。

 むしろ、「あの人は社会から落伍した」とか、「負け組だ」などと世間から思われるのが、多くの人は嫌なのだと思うのです。「ムラ社会」の発想から抜けていないのです。辞めるときに同僚から「馬鹿だな」と言われたら、「馬鹿でーす!」と開き直ってもよいのではないでしょうか。世間的にうまくいっていると見られている人も、いつかは落伍するかも知れないし、それが人生でしょう。そして、誰でもいつかは必ず死ぬわけです。世間に振り回されている人が、最後に一番馬鹿を見るのではないでしょうか。「心」が本当にやりたいことをやらない人生なんて、後悔してもしきれません。

 みんなもっと「キリギリス」になった方がよいのではないかと私は思うのです。「アリ」のように未来のためにコツコツと働いているだけでは、「今を生きる」前に死んでしまいます。

 ある現代音楽の作曲家が、亡くなるときに「本当はバッハのような美しい音楽を書きたかった」と後悔したそうですが、それなら最初から自分の「心」の本当の声を聞いて、美しい音楽を作ればよかったのではないでしょうか。本当にやりたいわけではないことの中で消耗する人生よりも、最後に「おもしろかった」と言えるような人生を歩むことが、やはり人間にとって一番大切なことではないだろうかと思います。


このコラムについて

キーパーソンに聞く
日経ビジネスのデスクが、話題の人、旬の人にインタビューします。このコラムを開けば毎日1人、新しいキーパーソンに出会えます。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/238739/030200240/?


 


 
移民流入で人口増も。JR東海の需要に不安なし JR 思考停止経営からの決別
JR東海 葛西敬之・代表取締役名誉会長インタビュー(上)
2017年3月7日(火)
大西 孝弘
 国鉄の分割民営化で、JR7社体制に移行してから4月で30年を迎える。その間、東海道新幹線の収益力に磨きがかかり、超電導磁気浮上式鉄道(超電導リニア)の建設着工までに至った。その一方で、JR北海道のようにローカル線の赤字路線に経営が圧迫され、収益安定の見通しが立たない会社も出てきた。
 国鉄の分割民営化から東海旅客鉄道(JR東海)の経営まで中枢を歩み続けた葛西敬之名誉会長は、今のJRをどのように見ているのか。また代表取締役の立場から今後30年の展望も聞いた。

葛西 敬之(かさい よしゆき)氏
1940年生まれ。63年東京大学法学部卒業後、日本国有鉄道(国鉄)入社。69年米ウィスコンシン大学経済学修士号取得。国鉄では多くの経営計画業務に携わる。87年東海旅客鉄道(JR東海)発足と同時に取締役、95年に社長就任。2004年に会長、2014年から現職。1990年から代表取締役を務める。国家公安委員など政府の要職を歴任。(写真=村田和聡)

JR発足の30周年を迎えます。葛西敬之名誉会長は国鉄の分割民営化から東海旅客鉄道(JR東海)の経営までを主導し、今も代表取締役を続けています。今後30年後の日本はどのような状況になり、その中でJR東海はどのような経営をしていこうと考えていますか。
葛西:日本が30年後にどうなるかは分かりません。私は1940年に生まれ、その30年後の1970年は日本が世界第2位の資本主義国になっていました。
 その間に完全に焼野原になった時を越えて復活しました。30年というと何が起こるか分かりません。
 ただ日本の国土を考えた時に東京〜横浜〜名古屋〜京都〜大阪を結ぶ回廊は、30年後も一番重要な回廊の1つであることは間違いありません。
 すべての地図を描けなければまずいという訳でなく、すべてが変数で地図は描けないのです。人件費や人口もそうです。
明日は我が身だと米国や欧州を見なければ
 人口は増える可能性があると思います。人口の流入圧力はそう簡単に制御できません。
 インドネシアやベトナムなどアジアで人口が増えてます。そこの人たちが少しゆとりができた時に、どこで働き、どこに住み、どこに旅行しようかと思うのか。アジアで日本ほど生活インフラや教育や医療システムが整って、安全で生活しやすい国はない。
 放っておけばどんどん人がやってきて、止めるのは難しい。流入してくる人たちをどのようにマネージするのか大事になってくるのではないでしょうか。
 (移民政策で)ヨーロッパは大混乱になっていて、日本は同じような傾向にはならないと思いますが、アメリカでは混乱が起こっています。日本だけがそういうものに対して完全に局外に立つということはできないでしょう。
 日本人の人口が減るのは間違いないでしょう。しかし、トータルとして日本に定住する人口は、増える圧力の方が大きいと思います。そのことにみんなが目を背けていますが、明日は我が身だと米国や欧州を見なければなりません。
米国もマネージしないともたない
昨今は、米国や欧州も移民を受け入れない流れが強まっています。
葛西:ペリーが来航した時の日本の人口は3400万人くらいです。その時のアメリカの人口は2000万人くらい。それが今や約3億人だから15倍になりました。
 150年間で日本や中国の人口は3倍強ですので、人口の自然増は3倍くらいと言えます。アメリカは15倍なので、そろそろマネージしないとアメリカはもちません。(トランプ米大統領の移民政策については米国民の)半分くらいは支持している可能性がありますよね。
 欧州は地中海をはさんでアフリカと向かい合っていて、中東もあるからマネージが難しい。アメリカは大西洋と太平洋で隔てられているから、比較すればマネージャブル。欧州はアンマネージャブル。日本は今のところ局外に立っているように見えるけど、必ず同じ流れの中に巻き込まれると思います。
 こうして大局的に俯瞰して見ると、東京〜大阪を移動する人の数はそんなに減ることはないと思います。

現在は山梨県の実験線で走行試験が繰り返されている超電導リニア。2027年の東京〜名古屋の開通を目指し、本格的な工事が始まっている (写真提供=JR東海)
言葉が通じない人が「入ってくる」
一般的には日本の人口は減ると見られています。
葛西:それは日本人の人口だけを見ていて、「浸透圧」を考えていないからです。浸透圧が減るというシナリオはないようですね。
 世界中の人口が増えていく傾向にある時に、こんな住みやすい場所の人が減っていくというシナリオはたぶんなくて、みなさんは日本人の人口が減ることを心配している。もっと心配しなくてはいけないことは、言葉が通じない人が入ってくることです。
 そのことは目を背けたいのですね。見たくないから。本当は心配なことだと思います。
 世界の傾向を見ると、人口が減るという心配より、たくさん流れ込んできて困るという心配をした方がいいと思います。社会が一体性を失うということにならないかということです。
 アメリカやヨーロッパでは移民制限を叫んでいる人が増えていて、フランスの大統領選挙では(極右政党の国民戦線党首の)ルペン氏が勝つかもしれません。そうした中で日本だけ「別天地」がいつまでも続かない可能性があります。
 どこかで覚悟を決めて、どうするかのコンセンサスを持ってないとどうにもなりません。JR東海の経営している地域をみると、悲観する必要は全くありません。
 輸送のキャパシティーは増えます。(リニア中央新幹線で)東京〜大阪が1時間で結ばれ、その間を飛行機のように直結するだけでなく、途中で自由に乗り降りできるようになるので、東京〜大阪は世界でも極めてユニークな地域になります。その中で我々は大動脈の役割を果たしていきます。
 我々は完全な民間企業の私鉄とは違います。国の大動脈輸送を創業の使命として持っていますので、国の役割を果たしながら、健全経営を維持していくことを基本方針とするしかありません。
リニアは新幹線「のぞみ」プラス700円
数年前に、超電導リニアは東海道新幹線「のぞみ」の700円プラスで採算が合うというお話がありましたが、それは変わっていませんか。
葛西:試算の考え方は変わってません。実際の料金をいくらかにするかは、建設が終わった時の経営状況を反映するので、今のうちに決まりません。あくまで現時点の試算です。
リニア中央新幹線が開通した時に、今の東海道新幹線はどのような役割を担うのでしょうか。
葛西:現在、東海道新幹線は「のぞみ」が1時間当たり最高で10本、「ひかり」が2本、「こだま」が3本というダイヤ構成になっています。
 15本走らせる能力があり、これを17本にできるかもしれない。その中の停車パターンとしてひかりの本数を増やすことで、大都市圏以外に住む方々の利便性を高めることもできます。リニアと新幹線の両方で役割分担していくことになるでしょう。
 例えば、名古屋の利用者はリニアに移りますよね。それに対して、横浜や静岡、浜松、奈良、京都に対する利用者の需要は東海道新幹線が応えるのかもしれません。
豪華寝台列車は全く考えていない
九州旅客鉄道(JR九州)が発案した豪華寝台列車「ななつ星in九州」がブームになっており、東日本旅客鉄道(JR東日本)や西日本旅客鉄道(JR西日本)が豪華寝台列車を相次いで運行し始めます。JR東海も同様の列車を考えていますか。
葛西:全く考えていません。あれは乗ることが目的の列車です。我々の東海道新幹線や超電導リニアは、できるだけ待つことなく短時間で目的地に行くように、交通手段としての効率性を徹底しており、これが正しい方法だと思います。
 JR九州の観光列車は一般的に採算性がないと言われますが、会社のイメージを全国に発信しました。その意味で、プロジェクトは成功ではないでしょうか。
 ただ、乗ることを目的とした列車で稼ぐことはできません。東海道新幹線は日本の大動脈に不可欠な交通手段で、そこに我々は徹するべきです。

JR九州が発案した豪華寝台列車「ななつ星in九州」。1泊2日コースで30万〜45万円と高額だが、人気のため予約が難しい
30年前、JR東海の経営はバラ色ではなかった
4月にJR発足後の30年を迎えます。改めてこの30年を振り返ってもらえますか。
葛西:30年前、国鉄の分割民営化がスタートした時、JR東海の経営はバラ色ではありませんでした。収入は、東海道新幹線が7000億円、在来線が1000億円のトータル8000億円くらい。
 それに対して借金が5兆円以上で、5年分の収入を超えていました。年間3500億円くらいの金利も支払わなければならず、厳しい経営環境でした。
 そのときに30年後の状況を想定し、それに向かって進んだというわけではありません。足元の現状を見て、東海道新幹線を近代化してきた結果です。
 新幹線をスピードアップし、東京・品川に新しい駅を作って利便性を高め、新幹線システムを改善、完成させてきました。結果が見えないから進めないのではなく、これをやるしかないから進めてきたのです。
 こうした中でゼロ金利時代に入って、借金が約1兆9000億円くらいに減り、利子も約720億円まで減りました。東海道新幹線の輸送能力をギリギリまで使い切ってしまった時、輸送能力の増強の切り札は中央新幹線なのです。
 ただ中央新幹線を作るためには、東京〜大阪で1時間というブレークスルーがなければ、このプロジェクトはできないだろうと考えました。
 ゼロ金利という天の助けもあって、我々の負担で超電導磁気浮上式鉄道(超電導リニア)を作れるようになって、それをテコにして一気に中央新幹線プロジェクトを現実のものとしています。
 超電導リニアの建設は、JR発足当時に予測した範囲にはなかったことです。そこまでの楽観論は持っていませんでした。努力と幸運の両方がプラスに働いて、思いのほかうまくいった30年でした。

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特に想定外の幸運だったのは何でしょうか。
葛西:金利の低下はやっぱり大きかったですね。利払いは当初の3500億円から5分の1くらいになっていますから。利払いが会社の最大のネックでした。

 JR東日本を見ると、首都圏という強い都市鉄道があって、関連事業も大いに展開して、そこで稼いだお金で東日本全域の非採算路線を維持するというモデルです。
 JR東海は東海道新幹線が鉄道収入の9割近くを稼いでいて、残った在来線を内部補助してもおカネは余ってしまいます。それなので、東海道新幹線の収入で、国鉄の債務をたくさん負うというモデルでした。
 ですから赤字路線を維持するモデルと、借金を負担して金利を払うモデルと、どちらのモデルの方がリスクが大きいのかというのが比較のコアになります。
 赤字路線は要員の効率化や値上げなどで赤字を小さくしたり、どうにもならなくなったら、道路転換することで赤字を免れることもできます。
 でも借金は免れようがありません。返して金利を減らすしかありません。ですから借金が経営リスクが一番大きいとみんな思っていたでしょう。JR東海の経営がうまくいったのは、金利が下がったことが大きいと思います。
新幹線以外の路線はすべて赤字
赤字のローカル線はどのように捉えてますか。
葛西:端的に言って、JR東海は「東海道新幹線会社」です。幹線やローカル線など新幹線以外の路線はすべて赤字です。
 だけど「路線単体として赤字」というのは、国鉄時代だと線区別原価計算を盛んに言って、政府から助成金を取るための論理でした。
 民営化と同時に、東海道新幹線を便利に使うために東海道本線など在来線のほとんどは、東海道新幹線のネットワーク鉄道の一部になると考え方を変えました。
 東海道新幹線を基軸とするアクセスネットワークと考え、これを強化すると方向転換したのです。

名松線は三重県松阪市から同県津市美杉町を結ぶ。1両編成で山間を走る。終点に近づくほど、自然豊かな景色を眺められる(写真=高木茂樹)
三重県の名松線は利用者が少ないうえに災害にもあって6年半休止していましたが、住民の要請もあり昨年3月に復旧しました。
 名松線は難しい路線です。道路転換した方がいいのですが、我々がそれを言って地元と対立する訳にもいきません。
 台風で路盤が流れてしまいまして、これを再生することを三重県も考えないだろうと思いました。ところが三重県は路盤を作り直し、その費用を地元が負担する意欲を示したので、我々も復旧することにしたのです。
国に口を出される謂れもない
超電導リニアは民間の資金だけで建設する方針でしたが、財政投融資から融資を受けました。
葛西:今回の財投は政府がお金を調達して、調達金利プラス実費を上乗せして貸してくれる形です。
 超電導リニアを開業すれば入ってくるキャッシュフローで100%返せます。
 市場から調達すると国よりも金利が高くつく可能性がありますし、あれだけの規模の額を調達するとたいへんな手間もかかります。
 銀行の融資と同じような条件で、担保は東海道新幹線の収益力です。非常にタイムリーよく政府にも決断していただきました。
 名古屋までの建設費は5兆5000億円と見ていて、2兆5000億円は自分たちが新幹線で生み出したキャッシュフローを使い、残りの3兆円は将来のキャッシュフローを前借りして調達します。
 2027年までに5兆円まで膨らむという試算で、それ以上借りると経営が不安定化するので、いったん開業したら2兆5000億円のレベルに下がるまで8年間工事を止める予定でした。
 しかし、今回の融資で止める必要がなくなり、シームレスな工事ができるようになりました。財政出動はないから口を出さないことは確認しました。
政府は本当に口を出さないのでしょうか。
葛西:他のことに使えば口出すでしょうが、超電導リニアを作るために使えば、国が口を出す謂れはないし、我々も国に口を出される謂れもありません。
※インタビュー後編は3月8日公開予定です。


このコラムについて
JR 思考停止経営からの決別
 国鉄の分割民営化で、JR7社体制に移行してから4月1日で30年を迎える。4社が上場したが、新たな文化や成長モデルを示したとは言い難い。30年で浮かび上がったのは、主要路線の収入と立地の良さに甘んじてきた姿だ。
 人口減少時代に突入する中、思考が止まった経営から脱しないと将来はない。今のままでは「株主利益の追求」と「地方路線の維持」の二兎を追えないだろう。
 人口が減少すれば、JRも縮小均衡に陥るのか。JRの未来は日本の未来でもある。逆境を跳ね返すビジネスモデルの確立が急務だ。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/030200118/030600004/

http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/782.html

[経世済民119] エスカレートする中国のロッテいじめ それでいて米国の保護主義を批判の矛盾 運用難で急増「法人普通預金」日銀は金利上昇追認
エスカレートする中国のロッテいじめ
それでいて米国の保護主義を批判する矛盾 

二十七億の瞳 〜巨大国家・中国の今
2017年3月7日(火)
小平 和良

尖閣諸島を巡る反日活動では、一部が暴徒化した(写真:ロイター/アフロ)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/278549/030600008/p3.jpg

 「尖閣問題の時は他人事だったけど、やっとあの時の日本の気持ちが分かったよ」。
 中国に駐在するある日本人は最近、知り合いの韓国人駐在員がこう漏らすのを聞いた。「あの時」とは2012年に日本政府が尖閣諸島を国有化した時を指す。中国で、日本車や日系企業の店舗・工場などを破壊するなど、反日運動が高まった。今のところ韓国の製品や店舗を対象にした大規模なデモや破壊行為は起きていないが、中国で活動する韓国企業や韓国人は2012年以降に日本人が感じた気持ちを理解するほどに風当たりが強まっている。
 原因は在韓米軍が進めるTHAAD(地上配備型ミサイル迎撃システム)の配備だ。中国は韓国にTHAADが配備されることに一貫して反対してきた。昨年、米国と韓国がTHAADの配備を決定した後、中国のメディアは韓国芸能人や韓国ドラマの露出を制限した。中国政府は否定しているが、韓国メディアは「限韓令」が敷かれたと報じている。
 
 2月27日にTHAADの配備場所が決まったことで、中国は反発を拡大させている。特に狙われているのが、配備場所を提供したロッテグループだ。ロッテは韓国南部の慶尚北道・星州(ソンジュ)のゴルフ場をTHAAD配備場所として韓国政府に提供することを決定し、韓国国防省と契約を結んだ。
 ロッテは中国国内で幅広い事業を展開している。菓子や飲料を販売するほか、大型スーパーや百貨店などを運営。石油化学や不動産開発、金融といったビジネスも手がけてきた。中国メディアの報道によると、ロッテは1994年の中国進出以来、600億元(約1兆円)を投資。大型スーパーのロッテマートの店舗数は150に及び、売上高は3兆ウォン(約3000億円)を超えるという。日中関係の悪化に苦しんできた日本企業を尻目に、ロッテは中国で順調に事業を伸ばしてきた。だが、THAAD問題で状況は一変した。
 ロッテが配備場所の提供を決めた翌日の2月28日午後、上海市内にあるロッテマートを訪れてみた。通常通り営業していたものの、店内には数えるほどの客しかいない。店員は時間を持て余し、同僚と立ち話をしている。平日午後の早い時間であったことやネットの配達サービスが普及していることを差し引いても、あまりにも寂しい客の入りだ。

上海市内のロッテマートの店舗

 吉林省吉林市では配備場所が正式決定する直前の2月26日、20人ほどの市民が「THAADを支持するロッテは今すぐ中国から出て行け」と書かれた横断幕を掲げて抗議したと報じられている。
 ネット上には、江蘇省南通市で起きた抗議活動を映した画像や、朝鮮族が多く暮らす遼寧省丹東市の店舗で市民が夜間に抗議するのを映した動画もアップされている。食品メーカーの衛龍食品は自社の豆腐製品などをロッテマートから撤去した。
韓国行きのツアーも消える
 また、浙江省杭州市や金華市の店舗が消防上の理由で営業を停止している画像もネット上に出回っている。昨年秋にTHAAD配備場所がロッテのゴルフ場になることが明らかになって以降、中国政府は、中国国内で活動するロッテの法人や店舗に対して税務調査や消防検査を強化していた。その結果だろうか。2月28日には北京市内の店舗が違法に広告を掲出していたとして、また3月1日には安徽省蕪湖市の店舗が違法に無線機器を使っていたとして、当局が処罰に及んだ。
 ロッテが遼寧省瀋陽市で建設中の「ロッテワールド」の工事も昨年末から止まっている。これはテーマパークやショッピングセンターなどが集積する複合施設だ。
 中国ロッテのホームページは2月28日にダウンしたまま、今もアクセスできない状態が続いている。アリババ集団が運営する「Tモール(天猫)」などの通販サイトでも、ロッテの旗艦店がなくなったり、商品がサイトに登場しなくなったりしている。

中国ロッテのホームページはアクセスできなくなった

 中国外国部の耿爽(グン・シュアン)副報道局長は会見で、ロッテに対する不買運動が起きていることについて、「米国と韓国がTHAADを配備することに対する中国国民の立場ははっきりしている。(ロッテが)中国国民の声に耳を傾けることが必要だと思う。外国企業が中国で成功するか否かは、中国の市場と消費者が決める」と発言。ロッテに対する様々な抗議活動を事実上、黙認する考えを打ち出した。
 韓国への「報復」はロッテ以外にも広がりを見せている。中国国家旅遊局は3月3日、韓国への旅行を自制するよう促すコメントを出した。韓国メディアなどによると、国家旅遊局は旅行会社に対し、韓国行きの旅行商品を販売しないように通達を出した。中国の旅行サイト大手、シートリップ(携程)で韓国旅行を検索しても、何も結果を表示しない状態になっている。
 ネット上には、韓国・現代(ヒュンダイ)自動車の乗用車が壊された画像も投稿されている。中には「5年前はヒュンダイに乗っている奴に俺のトヨタ車を壊された。やっと仕返しができる時が来た」といった書き込みもある。日本車や日本企業に対する暴動を思い出させる展開だが、さすがに暴力的な手段を用いることについては批判的な声がメディアやネットで上がっている。
 中国への貿易依存度が高い韓国にとって、韓国製品ボイコットが広がれば影響が大きくなりそうだ。韓国の輸出に占める対中国の割合は2015年で26%と、日本(17.5%)と比べて高い。THAADは数カ月後にも配備が完了すると報じられている。実際に配備されれば、中国の報復措置はさらにエスカレートしそうだ。
李克強首相は全人代で「保護主義に反対」
 3月5日、中国・北京で日本の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)が開幕した。今年の政府の施政方針などを示す政府活動報告の中で、李克強首相は「国際貿易と投資の自由化と円滑化を進める。中国はグローバルな経済協力をこれまでと変わることなく推し進め、他国間貿易の主要プレーヤーとしての地位を維持する」と語った。さらに「あらゆる形の保護主義に反対する」とも述べている。
 米国のトランプ政権は、貿易面で中国を攻撃する姿勢を貫いている。米通商代表部は、3月1日に米議会に提出した報告書で、WTO(世界貿易機関)の紛争解決手続きについて「そのまま従う必要はない」と主張。さらに中国を名指しで批判している。WTOのルールよりも国内法を優先する考えを明確にしたことで、中国製品などに対し、WTOルールから外れた高関税を課す可能性が現実味を帯びてきた。
 これに対し、中国は習近平国家主席がダボス会議で自由貿易の重要性を強調するなど、経済のグローバル化を肯定する存在として世界での位置付けを高めようとしている。全人代での李首相の発言もこの延長線上にある。
 今回の韓国への報復について中国は、「国民の選択にすぎない」「法律に照らして処理しているだけ」との言い方で正当化するのだろう。だが、こうした物言いを信じる人は誰もいない。自由貿易の守護者として存在感を高めようとしながら、その一方で、ロッテに対して「報復」をする。この矛盾を解決しない限り、中国がグローバル経済のリーダーになることはあり得ない。


このコラムについて
二十七億の瞳 〜巨大国家・中国の今
GDPで米国に次ぐ世界2位の規模となり、海洋進出やシルクロード経済ベルト構想などで他国への影響力を強める中国。日々の報道では経済の先行きや共産党内部の権力闘争、高まる軍事的脅威などが伝えられる。しかし、それは中国という国家の総体としての一面にすぎず、この広大な国に生きる一人ひとりに伝えられる姿とは違う暮らし、思想、真実がある。13億人超の国民、すなわち27億の瞳が見つめるこの国の一断面を切り取る。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/278549/030600008/ 

 

運用難で急増した「法人の普通預金」日銀は超長期ゾーンの金利上昇を追認…
上野泰也のエコノミック・ソナー
2017年3月7日(火)
上野 泰也

経済活動の活発な大都市に、マネーが集中する動きが加速している。(イラスト:PIXTA)
経済活動の活発な大都市に、マネーが集中する動きが加速
 日銀が1月30日に公表した昨年12月末の都道府県別預金・現金・貸出金の関連で、興味深い報道があった。地方の金融機関や企業の間で特に関心が高いテーマだろう。
16年末の銀行預金、関東に過半=大都市への集中加速──日銀 (2月13日 時事通信)
 経済活動の活発な大都市に、マネーが集中する動きが加速している。日銀がまとめた2016年末の都道府県別預金によると、関東地方の預金残高は前年末比13.1%増の368兆1176億円。全国(730兆2368億円)に占める関東の割合は2.2ポイント上昇の50.4%と、データをさかのぼることが可能な1998年以降で初めて年末の残高が5割を突破した。
 都市銀行や地方銀行など139行を対象に、各都道府県内の本支店の預金残高を集計した。
マイナス金利の影響で、企業が普通預金を増やした
 全国に占める関東の割合は、1998年末の約43%から上昇傾向が続いている。関東の中でも東京都の伸びが突出しており、2016年末の東京の預金残高は前年末比19.1%増だった。
 けん引役は法人預金だ。日銀が2016年2月にマイナス金利政策を導入した影響で、企業が利回りの低い債券での資金運用を減らし、代わりに預金を増やした。
 大手行関係者は「企業収益が高水準で推移していることも、法人預金増加につながった」と指摘。大企業の本社が多い関東に預金が集まる構図になっている。大都市を抱える近畿、中部両地方も、それぞれ4.3%増と堅調だった。
地銀の営業基盤が弱体化、再編の呼び水になる可能性も
 一方、四国は0.6%増、東北は1.4%増にとどまった。県別では愛媛が0.4%減、岩手もわずかにマイナス。若者の都市部転出や相続に伴う資産の流出、企業活動の停滞などが背景にあるとみられる。
 地方で預金の伸び悩みが続けば、地銀の営業基盤が弱体化し、再編の呼び水になる可能性もありそうだ。
 関東地方(特に東京)に法人預金が集中する傾向が加速している背景についてこの記事は、@日銀のマイナス金利導入をうけて企業の債券運用が減り預金滞留額が増えたこと、A高水準の企業収益を指摘した。
 さらに、地方で預金が伸びにくい理由としては、@若者の転出や相続に伴う都市部への資産流出、A地元での企業活動の停滞を挙げた。
 法人預金全体の動きについて実際の数字を確かめるため、日銀発表のマネーストック統計に含まれている法人預金の種類別残高を見ると、マイナス金利導入の次の月(2016年3月)に預金通貨(普通預金など要求払預金)が急増したことが確認される(前月比+8兆2684億円)<■図1>。

■図1:マネーストック 「法人預金」 預金通貨・準通貨・CD(月中平残)

(出所)日銀
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/030200084/ZU01.jpg

 これに対し、預金通貨との金利差がほぼ消滅し、一定期間資金が固定されるというデメリットの方が意識されやすくなった準通貨(定期性預金)やCD(譲渡性預金)は、3月に残高が減少した(前者が前月比▲7561億円、後者が同▲2兆4247億円)。
事業法人による債券運用が減少した理由
 また、日本証券業協会が発表している公社債投資家別売買高から、事業法人(マネーストックで出てきた法人預金の「法人」よりも範囲が狭いことに留意)による債券運用の動向(除く短期証券ベース)を見ると、日銀がマイナス金利を導入した頃から買付額−売付額のプラス幅(買い越し幅)が一段と縮小していることがわかる。直近データである今年1月は+391億円にすぎない<■図2>。

■図2:公社債投資家別売買高 「事業法人」 買付額−売付額 (除く短期証券)

(出所)日本証券業協会
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/030200084/ZU02.jpg

 事業法人の買い越し幅は、以前は1000億円を超える月が珍しくなく、2015年2月には4938億円の買い越しとなっていた。だが、1000億円超えは2015年11月(1634億円)が最後。2016年は、1月が983億円、マイナス金利が導入された2月が782億円で、3月は403億円にとどまった。
 事業法人による債券運用が減少した理由としては、マイナス金利導入とそれによる長短金利低下の影響が大きい。特に、短中期ゾーンの金利がマイナス化したことで、短い期間の余資運用において主力だったCD・CP(コマーシャルペーパー)などでの現先運用や、1〜2年程度の債券購入を、事実上行えなくなったことが痛い。これらより運用期間が長い長期ゾーンでは、日銀により「ゼロ%程度」に金利ターゲットが設定されているが、10年程度も資金を固定化することになる割には金利水準がかなり低いと言わざるを得ない。また、超長期ゾーンには現在の目線ではそれなりにまとまった金利が付いているものの、後述するように日銀によるグリップが相当弱く、値動きが不安定である上に、償還までの期間があまりにも長すぎることから、一般企業の余資運用には通常適さない。
 日経平均リンク債などのオプション取引を絡めた金融商品で、より大きなリスクをとりながら金利収入をできるだけ確保しようとする動きも出ているが、法人が預金通貨に滞留させている金額と比べれば、金額の規模はかなり小さい。
「長生きリスク」に備えた個人の預金も積み上がる
 法人に加えて、「長生きリスク」を拭い去れない個人の預金も積み上がっている。前年と比べた伸び率が貸し出しのそれを常に上回る中で、日銀が発表した1月の預金・貸出動向速報から試算される銀行の「預貸ギャップ」(預金と貸出金の差)は223兆9185億円になり、過去最大をまた更新した。
 このように「未曾有のカネ余り」が続いていることから、銀行経由にせよ事業法人による直接の動きにせよ、潜在的には債券での資金運用のニーズは非常に大きいと考えられる。したがって、そうした観点からは、長期金利の上昇・国債イールドカーブの金利上昇方向での急傾斜化(ベアスティープ化)には自ずと限度がある、という話になる。
超長期ゾーンの金利はこのところ不安定な動き
 ただし、すでに述べた中にもあるように20年・30年・40年の国債利回りに代表される超長期ゾーンの金利はこのところ不安定な動きとなっており、金利低下の阻害要因である。
 そう書くと、日銀は「イールドカーブ・コントロール」を行っているのだから超長期ゾーンでも金利上昇は押さえ込まれているのではないかと、不思議に思う人もいるだろう。
 だが、日銀が長期金利の操作に乗り出した昨年9月から今年2月までの間、このゾーンの金利は大幅に上昇しており、日銀はそれを事実上追認してきた。
 金融緩和の枠組みを修正するに際して日銀が導入した「イールドカーブ・コントロール」。その運営(長期国債買い入れの入り方)が不安定化した原因として、筆者を含む市場の側は、@調節パターンの固定化をできるだけ回避して柔軟性を確保しておきたい現場(日銀金融市場局)の意向、A市場に対する日銀のミスコミュニケーション(対話の失敗)に加え、Bトランプ米大統領から日本の円安誘導をけん制する発言が出てきたことによる調節スタンスの萎縮(金利低下を促すような目立った行動をとりにくくなったこと)もあると推測している。
国債イールドカーブの形状は「適切なもの」と事実上追認
 そうした中、2月9日に高知で講演・記者会見を行った中曽宏日銀副総裁は、2%の物価目標の達成がまだ遠いことから、10年債利回り「ゼロ%程度」に設定されている長期金利ターゲットの引き上げにあわてて動くつもりはなく、粘り強く緩和を続けていくとした。
 その一方で中曽副総裁は、「イールドカーブ・コントロール」の実際の運営には金融政策決定会合でガイドラインのようなものは設けることはせず、現場(金融市場局)のオペレーションデスクに運営を委ねるということでよいとの考えを表明した。
 そして、記者会見で最後に向けられた質問「先程から、『最も適切と考えられるイールドカーブの形成を促す』という発言がありますが、現在の金利は適切な水準にあるのでしょうか」に対して中曽副総裁は、「繰り返しになりますが、今の経済・物価・金融情勢を踏まえると、現在の短期が▲0.1%程度、長期金利の10年物が『ゼロ%程度』と、このもとで形成されている現在のイールドカーブは適切なものだと認識しています」と明言した。
 これは、40年債が1.0%台、30年債が0.8〜0.9%台、20年債が0.6%台というところまで上昇した超長期ゾーンの金利水準を含めて、発言があった2月9日時点の国債イールドカーブの形状は「適切なもの」だとオーソライズし、事実上追認したものだろう。筆者はそのように理解している。
副総裁の講演の資料には、10年超から急角度で上昇する図表
 付言すると、副総裁の午前中の講演原稿に添付された図表には、短期政策金利(▲0.1%)と長期金利操作目標(ゼロ%程度)の2か所のみで「ピン留め」されたイールドカーブが、10年を超えたところから急角度で上向いている直近の状況が示されていた。
 債券市場参加者の多くは、イールドカーブの形状に関する日銀の評価はコントロールが導入された当初と比べてずいぶん変わったなという印象を抱いている。「信じてみたけれど裏切られた」という思いを抱いている向きも少なくないだろう。
 この問題に関する経緯を整理して、振り返ってみよう。
 黒田東彦総裁は、「イールドカーブ・コントロール」を導入した昨年9月21日の金融政策決定会合終了後の記者会見では、「現時点においては、現時点のイールドカーブは概ね妥当ではないかと考えています」と述べていた。
 だが、この発言には「現時点においては」という限定句がしっかり付いていたことが、後で振り返ってみれば重要だった。これは言うまでもなく、政策当局者があとで言い訳できるように付けておく常套句である。
 その次、11月1日の金融政策決定会合終了後の記者会見で黒田総裁は、「全体としてのイールドカーブは概ね前回の会合通りであり、特に違和感はありません」と発言。「概ね妥当」とした9月の発言からトーンダウンした。
 黒田総裁はさらに、超長期ゾーンの金利について、「2つの点を操作目標として示し、マーケットでイールドカーブが全体として整合的で、適正な形になると想定しておりまして、先行きの経済・物価に対する見方などを反映して、上下に変動しつつも、金融市場調節方針と整合的な形で市場において形成されていくものであろうと認識しています」と発言。市場における上下動を経て形成されるものだという認識を前面に出した。
超長期ゾーンでは、力ずくで押さえ込まないというメッセージか
 超長期ゾーンでは日銀のグリップが弱い、つまり金利の上昇を力ずくで押さえ込むような行動はこのゾーンでは基本的に取らないつもりだというメッセージを日銀は発信したつもりだったのだろう(実際にその時にそう受け止めた市場参加者は少なかったのだが…)。
 そして、いわば「最後の一撃」になったのが、すでに触れた2月9日の中曽発言である。
 国内債券相場は引き続き、「日銀依存」の様相がきわめて濃い。日銀の「心中」を慮って、あるいは市場調節の微妙な変化をにらみながら、今後も動くことになるだろう。
 ただし、すでに述べた通り、運用先を求めるマネーが大量に蓄積しているのもまた事実である。4月から新しい年度に入り、国内機関投資家の多くが債券の運用の面で動きやすくなると、超長期ゾーンの国債がじわじわ買われて利回りが下がる中でイールドカーブは金利が低下しつつ平坦化(ブルフラット化)していくだろうと、筆者は予想している。


このコラムについて
上野泰也のエコノミック・ソナー
景気の流れが今後、どう変わっていくのか?先行きを占うのはなかなか難しい。だが、予兆はどこかに必ず現れてくるもの。その小さな変化を見逃さず、確かな情報をキャッチし、いかに分析して将来に備えるか?著名エコノミストの上野泰也氏が独自の視点と勘所を披露しながら、経済の行く末を読み解いていく。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/030200084/


http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/783.html

[経世済民119] 「もうからない林業」でしたたかに稼ぐ人たち 日本と仁丹を救うオッサンの「根拠なき確信」森下仁丹が第四新卒の採用
「もうからない林業」でしたたかに稼ぐ人たち

記者の眼

個性派の林業経営者に学ぶ秘策とは
2017年3月7日(火)
宇賀神 宰司
 林業は「もうからない」と言われる。木材価格は1980年にピークを迎えた後、ヒノキが約4分の1、スギが約3分の1まで落ち込んでいる。背景には価格や物量で競争力を持つ輸入材に押されたこと、さらに木材需要そのものが住宅着工件数の減少などから下落を続けたことがある。

 だが、そうした長年に渡る逆境の中、林業経営でしっかり利益を出すことを追求しつづけている林業経営者たちがいる。

 その一人、岐阜県山県市にある極東森林開発の中原丈夫社長は「『林業はかつて儲かった。今は樹木を切るだけ損する』などといつまでも嘆いているのは『バブルの頃はよかった。崩壊して経営は厳しい』と言っているようなもの。それでは先に進めない。厳しい状況でも利益を出す方策はある」と明言する。

 こうした個性派の林業経営者たちを取材した。彼らの試みは厳しい市場環境にあるあらゆる業界で応用がきくはずだ。

たった1本の丸太をジャストインタイムで生産

 極東森林開発の中原社長は江戸時代、1731年から286年の歴史を持つ専業林家の9代目。岐阜県内に300ヘクタールの森林を所有し8人のチームで樹木を伐採し販売する。

 極東森林開発の特徴は、注文から3日以内に顧客の要望に応じた樹木を切り出せる「短納期」「ジャストインタイム」だ。さらには特殊注文材と呼ぶ、1本単位での注文も受け付ける「多品種・小ロット」の商品構成も取る。

 森林所有者は自ら樹木を伐採するか、作業を外部の事業者に委託して伐採してもらう。地域の森林組合を通じて、丸太の状態でセリにかけていく原木市場に持ち込んだり、住宅用の木材を作る製材工場に出荷したりする。当然、木材価格は上下する。タイミングが悪ければ、まとめて安く買いたたかれることもある。

 中原社長はこうした状況に疑問を持ち、どうしたら木材が高く安定して売れるか考えるため原木市場などで卸業者へのリサーチを開始した。そこで見えてきたのは生産者視点と消費者視点の違いだ。


林業の「見える化」を進めてきた極東森林開発の中原丈夫社長(写真:堀 勝志古)
 「林業家は自分たちのペースで樹木を切る。『そろそろあの斜面を切るか』という具合だ。そして切り出した丸太を市場に持ち込む。仮に『1カ月以内にこの太さのスギが100本、ヒノキが100本ほしい』などと要望があっても『まあ、切ってみないとなんともいえないけど、1カ月したら連絡するよ』という具合。そして実際には必要な丸太が揃っておらず『ある程度まとまるのはまた1カ月後だからそのころ来てくれ』という始末。これでは高く売れないのは当たり前だ」(中原社長)

 中原社長は林業でも在庫管理の考え方でマーケットニーズに対応できると考えた。そのためには当然、樹木の樹齢、樹種、伐採や植林の履歴など、森林の状況を正確に把握する必要がある。まず、これらの情報を先祖伝来の台帳を基にデータベース化した。「森林を倉庫に見立て、森林の『見える化』を図った」(中原社長)。

 2001年から注文を受けてから切り出す注文材の販売を開始。2003年から1本単位での受注も始めた。

 受注販売を始めてみると、売れないと考えられていた丸太も売り先があることが分かってきた。例えば、長さ13メートル、直径46センチといった大きな丸太だ。

 住宅用木材などへの加工のしやすさから中丸太と呼ばれる長さ3.65〜4.0メート、直径14〜22pの丸太が売れ筋で、それより大きなものは売りづらいと言われる。だが、中原社長は「少量なら確実にニーズはある。むしろ、売れない先入観から市場に出てこないので、ウチに注文が舞い込んでくる」と話す。生産者の思い込みを逆手にとって、少ない市場を確実にモノにする。丸太は体積で相場が決まっているので、太く長い丸太は売れれば高値が付く。さらに短期間の納期を守ることで価値が上がる。

 太く長い丸太を得るためには樹齢が高い樹木を育てる必要がある。樹木の価値が最大になる80〜90年まで育て伐採する。100年育てれば「100年杉」という価値も付く。

 中原社長は「『もうからない林業』はここには存在しない」と豪語。売上高は約6000万円と小規模ながら営業利益率は20%程度を確保している。

木材一貫生産で「稼ぐ」


「特殊な木材、加工も含めて1社で住宅1棟分の木材をすべて提供できるのが強みだ」と話す山長商店の榎本崇秀社長(写真:菅野勝男)
 和歌山県田辺市にある山長商店は木材の植林、伐採から住宅用建材として最終製品に仕上げるプレカット加工までを一貫して手がける。最終消費者の住宅メーカーから1棟単位で直接、木材の注文を受ける。この仕組みも、切り出した木材の付加価値を上げて販売する「林業で稼ぐ」方法だ。

 榎本崇秀社長は「自社で木材の生産、流通、加工すべてを手掛けているのは、全国的にも珍しいでしょう」と自信をのぞかせる。

 木材の伐採、製材、プレカット加工はそれぞれ事業者が異なり、流通の過程では卸業者など中間業者が介在する。住宅メーカーと森林所有者、林業家が直接、取り引きすることは一般的ではなく、特殊な木材などではあり得るが、丸ごと1棟分というのは珍しい。

 ある戸建て住宅の注文では柱、梁、土台などに使うスギやヒノキの加工木材だけで500本以上があった。木材費に加え、加工費も計上する。

 住宅メーカーにとっては1カ所ですべての木材が、現場で大工作業をする最終製品として揃えられるメリットがある。住宅を注文するお客である施主には合板や集成材ではない無垢材で「紀州材」ブランドを売りにできる。1本、1本に伐採から加工履歴があり、自分の家の木材がどの森林から来たものなのか、実際に森林を見学することも可能になる。商品に物語を付け顧客を引き付けるストーリーマーケティングを実践できる。

 こうした体制を整えるためには、まずは森林の状況を完全に把握するところから始まる。山長商店も300年以上続く老舗で和歌山県に約5000ヘクタールの森林を所有する。特殊な木材の注文にも対応できるよう、樹齢や樹種、伐採・植林履歴をデータベース化した。

 注文から1カ月以内に加工を終えて出荷する。過去の注文履歴から売れ筋の木材を把握して、常に3カ月分の木材をストックしておく。こうすることで急な注文にもスムーズに対応できる。これも全て一貫したデータ管理のおかげだ。

 樹木の伐採を手掛ける作業者は、注文状況に応じた伐採計画に従って、必要な木材を切り出す。

常識を打ち破り経営の多角化に舵

 山長商店では森林管理に加え、まず、丸太を材木にする製材業を自社で始めた。プレカット加工まで本格的に手がけるようになったのは、自社工場を新設した1997年から。

 榎本社長は「当時、輸入木材に押されて国産木材の需要が減り、木材価格も下がった。製材までしても利益が得られなくなった」と話す。木材市場でまとめて安く買い取られる状況があり、それを打破したかった。そこで住宅メーカーから直接、注文を受け、最終製品としてプレカット加工まで手掛ける決断をした。林業事業者がプレカット加工まで手掛けることは前例がほとんどなく勇気のいる決断だったが、業界の常識を乗り超えることで危機を脱した。「あの決断がなければ、今の山長商店はなかった」(榎本社長)。


山長商店のプレカット工場。作業を自動化した生産工程のほかに、複雑な加工は職人が手作業で仕上げる工程もある(写真:菅野勝男)
 木材流通の川上から川下まで直結したことで市場で求められる木材を必要なだけ必要な時期に切り出す計画生産ができる。中間事業者をなくすことで営業利益率の向上にもつながった。近年は売上高約20億円に対して、5〜8%で推移している。

 長らく斜陽産業と言われてきた林業にも最近、復活の兆しが見え始めている。供給量全体は横ばいで推移する中、国産材の供給量は伸びてきた。全体に占める国産材の割合である木材自給率は2015年には33%まで上昇し、30年ぶりに3分の1の水準に達した。

 価格の下落や円安で輸入材に対して競争力を持ったことや、戦後に植林され伐採に適した46年以上の樹木が全体の半数を超えるなど供給力が増えているからだ。人口減などから住宅着工件数は低位で推移しているものの、木材を使った公共建築物やバイオマスでの利用など新たな需要も生まれている。

 厳しい林業で生き残ってきたからこそ、個性派の林業経営者たちは工夫を重ねて「稼ぐ」仕組みを作ってきた。市場ニーズに合わせたジャストインタイム、多品種・小ロット、川上から川下まで一貫して手掛ける経営の多角化とブランド化など。林業復活に向けて、その知恵が生かされる時が来ている。


このコラムについて

記者の眼
日経ビジネスに在籍する30人以上の記者が、日々の取材で得た情報を基に、独自の視点で執筆するコラムです。原則平日毎日の公開になります。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/221102/030600422

 

 


日本と仁丹を救うオッサンの「根拠なき確信」

河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学

仁丹曰く「案外、オッサンたちがこの国の希望かもしれない」
2017年3月7日(火)
河合 薫

 久々にいいニュースである。

https://www.youtube.com/watch?v=vtC11L1y3WE

 昭和のオッサンたちの常備品だった「ひとつぶのんだら スーッとネ ジン ジン ジンタン ジンタカタッタッタタ〜」の仁丹を製造する森下仁丹が、“第四新卒”の採用をスタートさせた。

毎日新聞では「『第四新卒』おっさん、おばはんWANTED」
東京新聞では「森下仁丹が『第四新卒』採用へ おっさん、おばはん求む」
読売新聞では「求む中高年、森下仁丹が『第四新卒採用』」
日経新聞では「森下仁丹、50代中心の中途採用導入へ 幹部候補に 」
朝日新聞では……掲載なし(私が確認した限りでは……)。

 はい、そうです。ごらんのとおり“第四新卒”とは、おっさん、おばはんのこと。

 森下仁丹の定義によれば、
「社会人としての経験を十分積んだ後も仕事に対する情熱を失わず、次のキャリアにチャレンジしようとする人材」をいい、
「性別・年齢を問わず採用」
していくことを、第四新卒採用と呼ぶのだという。

 募集職種は、「食品・医薬品の営業、開発、製造および新規事業開発に関するマネージメント業務」で、前職での業種・職種は問わない、正社員採用(試用期間3カ月あり)。

 求められる資質は「やる気」のみ!

 そう。やる気だ。

 そこで今回は「やる気」についてアレコレ考えてみようと思う。

 では早速(2週続きで動画からスタートになってしまった)、採用募集の動画をご覧ください。……泣けます!


「オッサンたちへ」
「あの頃は仕事がすべてだったんです。」
「ずっといた場所から出てみたい、そう思ったんです。」
「まだ、できると思うんです。」
「案外、オッサンたちがこの国の希望かもしれない。」
「オッサンも変わる。ニッポンも変わる。」

「瞬間、『やばいことしたな』と思ったものです(笑)」

「案外、オッサンたちがこの国の希望かもしれない」――。

 ふむ。いいコピーである。

 「女性を輝かせる」前に「オッサンを輝かせろ!」と、私はこれまで幾度となく訴えていたので、やっとこういった会社が出てきたことが、率直にうれしい。

 現在、日本の総人口は約1億2700万人。そのうち大人人口(20歳以上)は約1億500万人。40代以上は約7700万人。これが2020年には約7800万人に増え、「大人の10人に8人」が40代以上になる。

 つまり、「オッサンにニッポンを変えてもらわない」ことにはえらいことになる。「いやいや、あとは楽させてもらいますよ〜」なんて50過ぎで、心の引退をされては現実問題として困るのである。

 で、ここで疑問がわくわけです。

 「オッサンにやる気さえあれば、ニッポンは変わるのか?」と。

 とかく昨今のオッサンたちはお疲れ気味。時折やる気を見せるものの「あの人、やる気だけはあるんだけど……」と、周りからちょっとばかりウザがられたり、やる気を見ればみせるほど周りのテンションを下げる“残念なオッサン”も少なくない。

 いったいどんな「やる気」ならオッサン自身も、ニッポン(=会社)も変えることができるのだろうか?

 “オッサン”の連発で申し訳ないのだが、結論から述べると私はオッサンの「やる気」が、「人格的成長(personal growth)」というポジティブな心理的機能によるものなら、変わると確信している。

 「人格的成長」とは「自分の可能性を信じる」気持ちのこと。専門家の中にはこれを「チャレンジ精神」と同一に扱う人もいるが、実際には異なる。 チャレンジ精神が、 自分の行動する力に価値を見出していることに対し、人格的成長は、自分の内在する力に価値を見出すもので、

 先の動画でいえば
「まだ、できると思うんです」
という、実にシンプルかつ根拠なき確信である。

 そう。「根拠のなき確信」ほど、人間の底力を引き出す無謀な心の動きは存在しない。

 実は森下仁丹の駒村純一社長も、自分の可能性にかけ、会社を変えたひとりだったのである(詳細は同社HPをご覧下さい。以下、抜粋して要約)。

 駒村さんは元商社マン。イタリアに駐在した時には現地の出資先の社長も経験するなど、まさに順風満帆のキャリアを歩んだ人物である。

 ところが、ある日ふと「このままではつまらない人生になってしまう」と感じ始める。引退に向けて安定した人生が約束されていたにも関わらず、だ。

 そこで一念発起し、52歳で商社を退職したそうだ。

 「早期退職の意向をメールで送ったときは、エンターキーを押した瞬間に、『やばいことしたな』と思ったものです(笑)。

(中略)

 転職先が決まっていたわけではありません。まだまだ自分は一線で働きたいという思いだけで、退職を決めました」

 駒村氏はこう語っている。

周りは敵ばかり

 退職後は、キャリアを生かし外資系企業を中心に就職活動を始めたが、就職先は決まらなかった。

 無職となり5か月が過ぎようとしたとき、「経営状況が悪化している大阪の老舗企業が、経営の立て直しの人材を探している」と知り合いからオファーが届いた。それが森下仁丹だった。

「私には、そうした企業を黒字転換させてきた経験がある。自分のキャリアが生かせるかもしれない」

 そう考えた駒村氏は、執行役員として入社。

 が、中に入って知った会社の現状は、想像以上に厳しいうえに社内には「やる気が失われていた」。

 売り上げはピーク時の10分の1。それでも社員たちには「創業120年を超える老舗がつぶれるわけがない」と、危機感を全くもっていなかったのである。

 そこで経営の立て直しを進めようとするのだが、「外から来たやつが何を言ってやがる」と反感を持つ人も多く、周りは敵ばかり。

 「社内に蔓延する『つぶれるわけがない』という空気を変えるには、新しい風を入れるしかない」――。

 駒村氏は、外部の人材を積極的に起用し、管理職に抜擢。当然ながら、生え抜きの社員は猛反発。それでも氏はやり方を変えなかった。

「新しい人が来て結果を出していけば、それが刺激になる。会社が本気で変わろうとしているという危機感を持ってもらうためには、まず行動で示すことが大切でした。改革には痛みが伴う。その痛みを避けていては、前に進むことはできない」

 自分を信じ、中途採用を広げ、部長職の平均年齢も40代と大きく若返り、2006年には社長に就任。本社の工場敷地も売却し、財務状況を健全化させ、次のチャレンジをするための下地を整えた。

 その結果、生まれたのが現在の経営の柱となっている、独自のシームレスカプセル技術。10年間で売り上げを倍にし、今に至っているのだという。

 「このままではつまらない人生になってしまう」という感覚は、まさしく「人格的成長」であり、「自分の内在する力に価値」を見出しているからこそ、「自分のキャリアが生かせるかもしれない」と考え、周りが敵だらけでも「会社を絶対に再生できる」と行動できた。

 ただ、おそらく駒村氏自身が公言していない、「苦悩」や「情けない自分」との葛藤もあったはずだ。

「辞めなきゃよかった」という言葉が出そうになる

 前回(「やりがい搾取」の共犯?文科省公認の天職信仰)書いたとおり、すべてのサクセスストーリーは「後付け」で、そこには決して語られない、あるいは本人でさえも忘れてしまった「かっこ悪い自分」が例外なく存在する。

 全くレベルは違うし、ここで個人的な話を持ち出すのはおこがましいのだが、私もそうだったから。前向きな気持ちで崖から飛び降りた先には、いくつもの鋭利な砂利が転がっていて。それを乗り越えるには節操なく自分の可能性を信じる気持ちと、痛みを痛みと思わないずぼらさが必要なのだ。

 私は「このままでいいのかな。もっとなんか出来るんじゃないかな。自分の言葉で伝える仕事がしたい」と、若気の至りで28歳のときスッチーを辞めたわけだが、実際に辞める決心をしたのは、「2年後の自分」を想像したときだった。

 「2年後、今のままCAをしている自分と、他のことをやっている自分、どちらが魅力的か?」――。そんな問いがふとわいてきて、後者の自分に魅力を感じ、辞めた。

 なぜ「2年後」で、なぜそういう問いになったのか、自分にも分からない。辞めたところでナニかが決まっているわけでもない。

 でも、「他のことをやっている自分の方が魅力的」という根拠なき確信が、辞めたあとの不安をワクワクした感情に変えたのである。

 とはいえ、現実は想像以上に厳しい。

 28歳の小娘に「自分の言葉」などあるわけがなく、元気いっぱい辞めたはいいけど、何も決まらない、進みたくても、前に進む道筋すらちっとも見つけられない自分がいて。

 スッチーの同期が「明日からロスだよ」なんて電話してくると、「辞めなきゃよかった」という言葉が出そうになり、でもその言葉を口にした途端、自分がどうにかなってしまいそうで、絶対に口にできなかったのである。

 なので、気象予報士第1号となり合格当日にたまたま「ニュースステーション」に出演するまで、私は友だちと連絡をとっていない。

 多分、潔く辞めたはいいけど「何者にもなれていない自分」が、ちょっとばかり恥ずかしかったんだと思う。

 ただ、そこに至るまで私が踏ん張れたのは、「それでいいんだよ。踏ん張れ」と背中を押してくれる人たちがいたからに他ならない。民間の気象会社で出会った気象庁のOBのおじいちゃんたち、社内でサポートしてくれた上司、そして、何よりも気象のずぶの素人の私を受け入れてくれた当時の社長さんがいたからこそ、私は砂利道をなんとか歩くことができた。

 そんなときに自分にできることといったら、気象の勉強をひたすらやることだけで。給料泥棒にならないよう、必死で勉強し、少しでも仕事の質をあげるべく努力することくらいしかできなかった。

 おそらく駒村氏にも、痛みの伴う改革を断行するうえで応援団がいたのではないだろうか。同じように「会社の空気を変えなきゃ」と危機感を持ち、社外からきた駒村さんを信じ、駒村さんの可能性に賭けた人がいた。「敵」の中に数少ない応援団がいて、彼らがいたからこそ、駒村さんも自分に課せられた仕事の質を必死であげるべく努力したのだと思う。

「学び続ける覚悟」を持つこと

 人格的成長――。

 「自分の内在する力に価値」を見出す、前に開かれた感覚である人格的成長は、あくまでも“今”を成長への通過点と捉え、不甲斐ない自分、自分に対する批判、といった向き合いたくない「自分の市場価値」を受け入れるまなざしを持ち、危機感を持つ感覚と言い換えることができる。

 そして、目の前の仕事の「質」を高めるために、「自分にできること=学び」に励む。とにかく動く。アレコレ考えずにとにかく動く。自分をどうこうするのではなく、目の前の仕事を「少しでもいい仕事」にすべく努力する。その結果、人格的成長が強化されていくのである。

 つまり、真のやる気とは、結局のところ「学び続ける覚悟」を持つこと。

 ほんのちょっとでもいいから、仕事の質を高めるべく勉強する。「自分の成果物」の価値を上げるべく邁進する。それが、結果的に自分を進化させ、「うん、成長したかも…」といった自負につながっていく。

 かなり前に本コラム(定年延長で激化する「“オッサン”vs若者」バトル)でも紹介したが、高齢者雇用を通じて生産性を10年で3倍まで向上させた「VITA NEEDLE社」(米マサチューセツ州のステンレス製のニードルやチューブといった特殊部品を製造する会社)の従業員もそうだった。

 高齢者の方たちは、「自分を雇ってくれた会社」を信頼し、誠心誠意会社に尽くした。

 自らの持つ能力と知見を最大限に生かし、積極的にスキルを磨き、社員同士で助け合い、互いにスキルを向上させ、自分の人生の集大成としてひたすら一生懸命働き、企業の生産性向上に寄与したのである。

 オッサンを求める「環境」に、「真のやる気」と「経験」という係数が加わればオッサンは化ける。でもって、オッサンが「環境」を変える。

 これまで600名超の方たちをインタビューしてきたけど、いかなる状況になっても腐ることなく、自分を信じ、前に踏み出した“おっさん”たちがいた。

・「まだ終わりたくない」と一念発起し転職を試みたものの、直後にリーマンショックが勃発。職安通いを強いられた元一流企業の部長53歳。

・50代には仕事がないことに気付き、給与半減覚悟で小企業に転職したマンネン課長52歳。

・「発展途上国で自分の技術を生かしたい」と英語学校に通い、青年海外協力隊に応募したメーカー勤務の男性49歳。

・「もっと会社の役に立ちたい」と、誰も行きたがらない離島勤務を志願した部長さん53歳。

 中には私のインタビューに答えるうちに、「自分にももっとできることがあるのではないか」と前に踏み出した人たちもいた。

 彼らはいずれも、誰もが知っている大企業に勤め、そこそこ出世していている人たちだったが、そういった属性を捨て、まる裸の「自分」に勝負をかけた人たちだった。

 その“オッサン”たちは、みんなイイ顔をしていた。

 そんなオッサンたちを受け入れる質のいい環境が増える火付け役に、森下仁丹がなればいい、と心から願う。

 ちなみに同社広報によれば、「社員数300人規模の会社なので採用は数人程度と考えていますが、3月6日午前中の時点で、応募数は約1000人に上っています」とのこと。おぉ!「やる気」に満ちたオッサンは、たくさんいるのだ。

 オッサン、がんばれ! オバさん、がんばれ! はい、オバさんの私もがんばります!

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このコラムについて

河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学
上司と部下が、職場でいい人間関係を築けるかどうか。それは、日常のコミュニケーションにかかっている。このコラムでは、上司の立場、部下の立場をふまえて、真のリーダーとは何かについて考えてみたい。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/030300094/
http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/784.html

[政治・選挙・NHK221] 安倍首相:北朝鮮ミサイル、脅威は新たな段階と確認−日米会談「漁船等が操業していたら…」 狙いは在日米軍、安保理緊急会合へ
安倍首相:北朝鮮ミサイル、脅威は新たな段階と確認−日米会談 

萩原ゆき
2017年3月7日 09:26 JST 更新日時 2017年3月7日 12:11 JST

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トランプ米大統領は日本を100%支持と発言ー萩生田副長官
安倍首相はより多くの役割と責任果たすと伝えるー萩生田氏

安倍晋三首相は7日午前、トランプ米大統領と電話会談し、北朝鮮のミサイル発射は国連安全保障理事会決議違反で、脅威は「新たな段階になっている」との認識を確認した。電話会談後に萩生田光一官房副長官が記者説明した。
  萩生田氏によると、電話会談は日本時間午前8時5分から25分間行われた。トランプ氏は日本を100%支持し、米国の日本に対するコミットメントは揺るぎないと述べた。安倍首相は、日米同盟による抑止力を高める中で日本がより多くの役割と責任を果たす用意があると発言。検討を速やかに進めていきたいと伝え、両首脳は早期に外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)を開催することで一致した。
  安倍首相はまた、米政府内での対北朝鮮政策の見直しに触れ、日米間で戦略目標を共有することが重要との見解を示した。
  北朝鮮の朝鮮中央通信は7日、今回の発射には在日米軍基地の攻撃を任務として与えられた砲兵部隊が訓練に参加したと伝えている。電話会談で安倍首相は、同報道に触れ、両国を含めた地域安全保障に対する明らかな挑発行為であり断じて容認できないとの発言した。
  閣僚会議後に会見した菅義偉官房長官は、北朝鮮のミサイル発射後、速やかに電話首脳会談を開催できたことは、日米の強固な結束を内外に示す上で極めて有意義だったと述べた。北朝鮮の脅威レベルが高まる中、ミサイル防衛で「国民の生命と平和を守るためにしっかり対応していくのは当然のことだ」とも語った。
  一方、稲田朋美防衛相は7日、韓国の韓民求(ハン・ミング)国防相と電話会談を行い、北朝鮮の核・ミサイル問題に一致して取り組むことが重要で、日韓・日米韓で緊密に協力していくことで一致した。防衛省が電話会談の概要を発表した。
  
  北朝鮮は6日朝、4発の弾道ミサイルを発射した。安倍首相は同日の参院予算委員会で、事前の発表もなかったことから、「漁船等が操業している可能性もあり、極めて危険な行為だ」と語った。菅官房長官は午前の記者会見で、ミサイルはいずれも約1000キロメートル飛び、うち3発が日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したと推定されると述べている。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-07/OMF4ZJ6KLVR601


 


北朝鮮ミサイル、狙いは「在日米軍」 安保理が緊急会合へ
2017.03.07 Tue posted at 09:58 JST

北朝鮮メディアは、金朝鮮労働党委員長が発射を監督したと伝えた

(CNN) 北朝鮮の朝鮮中央通信(KCNA)は、6日早朝に発射したミサイルについて、在日米軍基地への攻撃に向けた演習だったと伝えた。
KCNAによると、ミサイルは有事の際に在日米軍基地を攻撃する任務を負う部隊の演習として発射されたという。
同通信はまた、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が発射を監督したとも伝えた。
国連安全保障理事会はミサイル発射を受け、緊急会合を開催する見通しだ。
安保理メンバー国の外交筋によると、日米両国が開催を要請した。安保理メンバーの大半は現在、アフリカを訪問していることから、会合は8日になる可能性が高いという。
日米韓の防衛当局が確認したところによると、北朝鮮が発射した4発の飛翔体は約1000キロ飛行し、このうち3発が日本の排他的経済水域(EEZ)に落下した。
北朝鮮が昨年9月に発射した3発の弾道ミサイルも約1000キロ飛行し、日本の防空識別圏内に入っていた。

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http://www.cnn.co.jp/world/35097667.html


 


北朝鮮ミサイル、在日米軍基地の攻撃担う部隊が発射=朝鮮中央通信
2017年3月7日(火)10時29分
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3月7日、北朝鮮の朝鮮中央通信(KCNA)は最高指導者の金正恩・朝鮮労働党委員長が、在日米軍基地を攻撃する任務を負った軍部隊による4発のミサイル発射実験を指揮したと伝えた。写真は1日、朝鮮中央通信が配信(2017年 ロイター)
北朝鮮の朝鮮中央通信(KCNA)は7日、最高指導者の金正恩・朝鮮労働党委員長が、在日米軍基地を攻撃する任務を負った軍部隊による4発のミサイル発射実験を指揮したと伝えた。

北朝鮮は6日朝、同国西岸から弾道ミサイル4発を日本海に向けて発射した。発射は、3月1日から始まった米韓合同軍事演習に反発する姿勢を示したとみられている。

KCNAは「砲兵部隊には、合同軍事演習を進める主戦論者たちに情け容赦なく報復する強い意志がある」とし、「(金正恩氏は)実際に戦争がいつ勃発してもおかしくない厳しい情勢を踏まえ、朝鮮人民軍(KPA)の戦略部隊に高度な警戒態勢を維持し、迅速に行動し、位置について攻撃を開始し、敵を壊滅させるために万全な準備を整えるよう命じた」としている。

外交筋によると、今回の発射を受け、日米韓3カ国が国連安全保障理事会に緊急会合の開催を要請。緊急会合は8日に開催される公算が大きいという。


[ソウル 7日 ロイター]

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http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/03/post-7117.php
http://www.asyura2.com/17/senkyo221/msg/854.html

[経世済民119] 日銀・政井委員「日本経済の下振れリスク低下」 外準増1.23兆$ 金利追う個人が国債へ 米国の人民元自由化支持、仕切直し
日銀・政井委員「日本経済の下振れリスク低下」
2017/3/7 10:31
 日銀の政井貴子審議委員は6日、スイスのチューリヒで講演し、原油などエネルギーの価格が安定していることで「日本経済の下振れリスクは昨年後半に比べて低下している」との認識を示した。

 為替については、昨年の円相場の変動率がやや高めだったと指摘。為替水準が短期間に大きく変動すると「企業マインドに悪影響を及ぼす」とした。また雇用環境が良好な一方で賃金の上昇が弱く、「消費の盛り上がりが弱い」とも指摘した。

 物価に関しては、2%の物価安定の目標に向けたモメンタム(勢い)は維持されているが力強さに欠けるとし、今後も「必要な政策の調節を行っていく」とした。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDC07H0T_X00C17A3EAF000/

 
2月末の外貨準備高、1兆2323億ドル 2カ月連続増
2017/3/7 9:47
保存 印刷その他
 財務省は7日、2月末の外貨準備高が1兆2323億4000万ドルだったと発表した。1月末に比べて7億6700万ドル増えた。2カ月連続で前月を上回った。債券の利息収入があったほか、金価格が上昇したことで保有する金の時価評価額が上がった。


http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS07H07_X00C17A3EAF000/


 


金利追う個人が国債へ 16年度発行額、倍増の4.5兆円
2017/3/7 0:30
 個人向け国債の2016年度発行額が9年ぶりに4兆円を突破し、米リーマン・ショック前の07年度に迫った。日銀のマイナス金利政策で預金の魅力がなくなり、個人マネーの受け皿となったものの、裏で支えたのは財務省が証券会社向けに出した“販売促進費”。17年度の縮小を見込んだ駆け込み需要の側面が強く、来年度は反動減となりそうだ。

 個人向け国債は固定3年、固定5年、変動10年の3種類がある。いずれも年0.05%の最低金利を保証し、元本割れのリスクがない。個人投資家は証券会社や銀行など金融機関を通じて応募し、財務省は応募があった分だけ翌月に発行する。

 16年度の発行額は4兆5556億円。07年度以来の高水準になった原動力は、個人向け国債の金利が相対的に高く映っているためだ。昨年2月に日銀が導入したマイナス金利政策を受け、大手銀行の定期預金金利は0.01%まで低下。安全性の高い個人向け国債へ流れた構図だ。

 証券会社の積極的な販売姿勢が後押しした。野村証券は16年度発行分の販売額が前年に比べて5倍強、大和証券も約4倍となった。SMBC日興証券は45%増えた。

 証券会社は新規顧客を獲得するための商品として個人向け国債の販売に力を入れている。証券各社はボーナス支給時期などに個人向け国債の応募額などに応じて現金を贈呈するキャンペーンを実施。預金に近い商品設計の個人向け国債で顧客と接点ができれば、投資信託や社債など他の金融商品の販売にもつながる。

 しかし、この勢いが続くかは微妙だ。実は財務省が4月発行分から個人向け国債を販売する金融機関に支払う事務手数料を減らすためだ。例えば、3年国債なら100円あたり40銭から20銭へ半減。5年、10年もそれぞれ4割、2割減らす。

 手数料は証券会社のキャンペーンの原資で、「頻度などを見直す必要もある」(証券会社)という。別の証券会社は「キャンペーン内容の変更を見込んだ駆け込み需要が発生した」と語る。

 実際、前年度比での増加幅は2.1倍に上ったものの、その半数近くを17年1〜3月期の発行額(2兆1384億円)が占めた。1〜3月期に限ると、増加額は3.4倍に上る。

 財務省も17年度は慎重な発行計画を立てている。16年度より大幅に減る2兆9500億円を見込む。需要に応じて発行する応募形式を採用しているため、実需を無視した計画を作れない。

 ただ、日銀が国債を大量に買い入れてもなお、銀行と保険の保有割合は昨年9月末時点でそれぞれ約25%、約22%。日銀が量的緩和の出口を模索する時、金融機関に依存し過ぎるとリスクが偏在してしまう。家計は1.4%にとどまり、低すぎる保有比率を上げる試みは道半ばだ。個人の需要を喚起する魅力づくりが課題となりそうだ。
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO13740860W7A300C1EE8000/


 


米国の人民元自由化支持、仕切り直しへ−G20で米中は折り合えるのか
Justina Lee
2017年3月7日 11:28 JST

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• トランプ米大統領は為替問題めぐり対中批判を繰り返す
• ムニューシン米財務長官は中国の為替操作国認定を急がないと示唆

ドイツで来週開催される20カ国・地域(G20)財務相・中央銀総裁会議で、米中両国は外国為替政策に関して合意できる文言を見いだすという極めて難しい課題に挑むことになりそうだ。
  トランプ米大統領は元安誘導の為替操作をしているとの対中批判を繰り返しているものの、中国人民銀行(中央銀行)は元の下落ペースを和らげるため介入を行っている。17、18両日のG20会議では、米国側は対中貿易赤字を悪化させる元安継続を招くことなく、これまで示してきた人民元自由化支持を仕切り直しする必要がある。
  シルバークレスト・アセット・マネジメントのニューヨーク在勤チーフストラテジスト、パトリック・ホバネツ氏は、「どうやって中国側の腕を締め上げるかということではない。米国はすでにそうしている。米国が『どんなことを本当に望んでいるのか』をどのようにして伝えていくかが問題だ」と述べた。同氏は以前、北京の清華大学で働いていた。
  
  現在は人民元を押し下げる市場環境となっており、元安が続けば貿易摩擦が悪化するだけでなく、中国からの資本流出が拡大するリスクもある。ムニューシン米財務長官は中国を為替操作国として認定するのを急ぐ必要はないと示唆する一方で、トランプ大統領はそうした操作の「グランドチャンピオン」が中国だと断じている。
  

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iXcHQzqt51no/v2/-1x-1.png
原題:China Currency Manipulation Could Be Just What Trump Needs (1)(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-07/OMF78K6KLVR401


 

豪中銀、政策金利を据え置き−シドニー住宅価格が安定へのリスク
Michael Heath
2017年3月7日 12:46 JST
オーストラリア準備銀行(中央銀行)は7日、政策金利を据え置くことを決めた。物価の低迷よりも、シドニーの不動産価格高騰に伴うリスクの方が大きくなっていることが背景にある。
  ロウ総裁率いる準備銀はオフィシャル・キャッシュレートの誘導目標を1.5%に据え置くことを決定した。豪州の昨年10−12月の経済成長と貿易動向は堅調で、ブルームバーグの調査ではエコノミスト29人全員が金利据え置きを見込んでいた。
原題:Australia Holds Rates as Sydney House Prices Pose Stability Risk(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-07/OMFEAF6S972Y01

 

ヘッジファンド、「クオンツ」獲得あの手この手−報酬だけで動かせず
Nishant Kumar、Katia Porzecanski
2017年3月7日 07:03 JST

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米KKR、北米投資PEファンド向けに約1.6兆円調達−過去最大規模
• シタデルは世界の大学で18回の「データソン」開催
• サイエンティストとエンジニアの需要はかつてない高さ

2月のある日、マサチューセッツ工科大学(MIT)の学生60人ほどが薄暗い室内にこもり、データ処理と分析に格闘した。
  中間試験ではない。ヘッジファンド会社シタデル主催の「データソン」だ。400人の応募者の中から選ばれた参加者がしのぎを削った。データサイエンティストやエンジニアの人材を求め、シタデルは今年、米英アイルランドの大学で18回のデータソンを開催する。最終的な優勝賞金は10万ドル(約1140万円)だ。
  シタデルの人材戦略責任者、ジャスティン・ピンチバック氏はMITで開催された大会でインタビューに応じ「大規模で複雑なデータの山を扱える分析的思考に強い人材が必要だ」と語った。「一つの地域や大学に限ってしまうと人材の全体的な分布図が見えない。このためにデータソンをしている」と話した。
  ヘッジファンドはかねて、高報酬によって優秀な人材を引き付けてきたが、業種を問わず技術者への需要が高い中、人材集めに工夫をこらしている。チューダー・インベストメントのような伝統的なヘッジファンドもクオンツ運用者を求めているが、運用成績低迷と手数料への下押し圧力でヘッジファンドはかつてのような魅力的な職場ではなくなってしまった。
  クオンツ運用の草分けで、主力ファンドが過去4年にわたり競合を上回るパフォーマンスを残しているヘッジファンドのトゥー・シグマですら、グーグルやフェイスブックといったテクノロジー業界の巨人との競争にさらされる。
  マン・グループのルーク・エリス最高経営責任者(CEO)は昨年12月にミルケン・インスティチュートのサミットで、イノベーションを起こせる人材が必要だが「こうした人々は報酬にそれほど左右されない。金銭的に魅力的な提案は多く受けているので、彼らを引き付ける他の方法を見つける必要がある」と話した。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/inyO.VzAP48U/v1/-1x-1.png
原題:Citadel Joins Two Sigma Chasing Quants in Campus Recruiting Push(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-06/OME83B6K50XT01

http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/791.html

[政治・選挙・NHK221] 政活費交付条例、町・村21%どまり 市より財政厳しく 東京五輪経済効果32兆円 農業の生産性、3年で倍増、中小農家は低迷
政活費交付条例、町・村21%どまり 市より財政厳しく
2017/3/7 12:07

 全国町村議会議長会は7日までに、2016年7月時点で全国928町村議会のうち、政務活動費の交付に関する条例が制定されているのは全体の21%(194町村)にとどまると発表した。全国市議会議長会によると、15年12月時点で全体の88%の市議会で政務活動費が交付されており、差が目立つ。町や村の財政が市に比べて厳しいことなどが背景とみられる。

 地方自治法は、議員が調査・研究などの経費に充てるため「自治体は、条例の定めにより政務活動費を交付することができる」と規定。ただ町村側は「都市部に比べて予算が潤沢ではない」(長野県白馬村)と、財政的な制約を訴える。

 自治体ごとに定める交付額にも差が見られる。名古屋市議会では会派を通して議員1人当たり月額50万円を交付しているが、沖縄県北中城村議会は1万円、千葉県長生村議会は3千円だった。

 一方、議員から交付の要望がない町村議会も。条例に基づき月額4千円を交付していた群馬県下仁田町は「必要とする議員がいない」として、交付を取りやめたという。〔共同〕
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG27HHF_X00C17A3000000/


 

東京五輪の経済効果、全国で32兆円 都が30年まで試算
2017/3/7 0:27
日本経済新聞 電子版
 東京都は6日、2020年東京五輪・パラリンピックが全国に及ぼす経済効果を発表した。大会招致が決まった13年から大会10年後の30年までの18年間で約32兆3千億円と試算。全国の雇用増加数は約194万人と見積もっている。

http://www.nikkei.com/content/pic/20170307/96958A9E889DE3E1E5E6E0EAE3E2E2E5E2E1E0E2E3E59793E3E2E2E2-DSXKZO1374282007032017EA1000-PB1-2.jpg

 経済効果は、大会開催の直接投資や支出で生じる「直接的効果」と、大会後のレガシー(遺産)で生じる「レガシー効果」に分けて算出した。
 直接的効果は、競技会場の整備費、警備や輸送を含む大会運営費、大会観戦者らの支出、企業のマーケティング活動費などを合わせ、約5兆2千億円と試算した。
 レガシー効果は、交通インフラ整備、バリアフリー対策、訪日観光客数の増加、競技会場の活用、スポーツ人口やイベントの拡大などにより、約27兆1千億円に上ると推計した。都の担当者は「ロンドン大会を参考にすると、五輪の経済効果は大会後10年くらいは続く」とみている。
 経済効果の約32兆円は、13年から20年までの8年間で約21兆円、21年から30年までの10年間で約11兆円と見込む。うち都内が約20兆4千億円と約6割を占めるが、観光需要の拡大などに伴い、都外の地域にも約11兆9千億円の経済効果をもたらすと試算している。
 大会に伴う全国の雇用増加数は、直接的効果の約30万6千人、レガシー効果の約163万人2千人とし、うち都内は約129万6千人と推計した。都の担当者は「大会は都内がメイン会場だが、経済効果は地方にも広く及ぶだろう」と話す。
 都は招致段階の12年、東京大会の経済効果は約3兆円との試算を発表。その後、競技会場の整備費や大会運営費など経費全体が膨らんだことや、大会後のレガシー効果を初算出したことで大幅に上積みした。ただ、都の試算は経済成長率の変動や大会後の反動減などを盛り込んでいない。
 東京五輪の経済効果では、日銀が建設投資や訪日観光客の増加などにより、14〜20年の実質国内総生産(GDP)を累計で25兆〜30兆円押し上げるとの試算を公表済み。みずほ総合研究所は15年度から20年度までのGDP押し上げ効果を累計約36兆円と推計している。
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO13742810X00C17A3EA1000/

 


農業の生産性、3年で倍増 大規模農家のロボ導入などで
2017/3/6 23:44日本経済新聞 電子版
 国内の農業法人の業界団体である日本農業法人協会(東京・千代田)によると、売上高5億円以上の大規模法人の生産性が、この3年間で倍増したことがわかった。売上高1億円未満の法人の生産性はほぼ変わらなかった。同協会は「(投資余力がある)大きい法人は作業ロボットなどを導入し、生産性を高めている」と分析している。

 2004年から15年までの加盟法人(直近約1400法人)の業績を調べた。売上高5億円以上の法人の従業員1人当たりの平均売上高は横ばい傾向だったが、12年から上昇に転じ15年は6433万円と3年間で倍増した。売上高5000万〜1億円の法人は800万円台と3年前と変わらず、売上高1億〜3億円の法人も1440万円と伸び率は1割にとどまった。

 政府は20年までに農林水産業・食品分野で省力化につながるロボットを20機種以上投入し、生産性向上を後押しする。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS03H4F_W7A300C1EE8000/
http://www.asyura2.com/17/senkyo221/msg/856.html

[戦争b19] 北朝鮮のミサイル 国民守る全ての策講じよ日米は「核抑止」強化へ協議を 米軍基地まで狙う北朝鮮 マレーシア対立激化出国禁止
2017.3.7 05:02
【主張】
北朝鮮のミサイル 国民守る全ての策講じよ 日米は「核抑止」強化へ協議を

 北朝鮮が弾道ミサイル4発を日本海に向けて発射し、うち3発が日本の排他的経済水域(EEZ)に着弾した。操業中の漁船などを危険にさらす重大な敵対行為を、容認することはできない。

 安倍晋三首相が「北朝鮮が新たな脅威となった」と、厳しい認識を示したのは当然である。

 そもそも、北朝鮮は国連安全保障理事会決議で、あらゆる弾道ミサイル発射を禁じられている。

 それを封じようと、国際社会がこれまで重ねてきた努力は何なのか。北朝鮮がまったく態度を変えない状況を目の当たりにし、改めて考えねばなるまい。

 《異常性を放置できない》

 危険性を増すこの国の暴発を回避するには、日米両国や国際社会がより連携を強め、あらゆる手立てを尽くす必要があろう。

 金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男氏が神経剤VXを用いて殺害されたさきの事件は、北朝鮮の残虐性や異常性を改めて示した。それに対する世界の冷たい視線を気にすることもなく、違法なミサイル発射を繰り返す。

 そのタイミングは、米韓両軍が今月1日開始した定例の合同軍事演習にぶつけたものであり、北朝鮮は事前に「容赦なく粉砕する」などと主張していた。

 同時に注目すべきは、中国で年1回の全人代(国会)の開会中だったという点である。

 中国は経済制裁として北朝鮮からの石炭輸入の年内禁止に踏み切った。これは中国が今後の対米関係を考えての措置だったとみることができる。ミサイル発射には中国への反発もうかがえる。

 問われるのは、挑戦的態度をとられた米中両国の対応だ。トランプ政権は核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に対し、「テロ支援国家」への再指定や武力行使も選択肢に含めることを検討している。対決姿勢はより鮮明となろう。

 後見役の中国は、その姿勢により対北経済制裁の効果を減殺してきた。今回、国家の最重要会議の最中にメンツをつぶされたことをどう考えるのか。

 ただ、中国は韓国への「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備計画について、米韓への反発を強めている。北朝鮮の封じ込めに向けて、他の関係国との連携を重視する姿勢が求められる。

 韓国は職務停止中の朴槿恵大統領の罷免か否かで国が二分している。政界内に親北勢力も広がる中で、朝鮮半島の平和と安定を熟慮し、次期大統領選に臨む冷静さが不可欠だろう。

 政府は参院で開催中の予算委員会を中断し、国家安全保障会議(NSC)の会合を開いた。外交ルートで抗議したのも、これまでと同様の対応だ。

 それぞれ必要な措置だが、それらによって日本の安全が直接、高まる効果は期待できない。

 《首相が「敵基地」決断を》

 状況を分析、論評するだけの段階は終えて、国の守りを固める新たな対応に乗り出すときだ。未着手の方策は多くあるはずだ。

 弾道ミサイルの迎撃をめぐっては、昨年8月から自衛隊に対する「破壊措置命令」が常時発令されている。

 領土への着弾など国民の生命が脅かされそうな場合には、ためらわずに迎撃しなければならない。その際、自衛隊に防衛出動を命ずることも政治の責任である。事態が起きてからゆっくり考える時間はないのである。

 自衛隊の迎撃ミサイルの弾数補充も必要だ。いくら発射機があっても十分な弾数がなければ役に立たない。予算を確保し、備蓄増を急ぐべきだ。

 弾道ミサイル防衛の強化を進めるのと並行して、敵基地攻撃能力の保有が必要だ。安倍首相が決断し、自衛隊への巡航ミサイルなどの導入を進めてほしい。

 北朝鮮の政権崩壊時などに、自衛隊が日本人拉致被害者を救出するための法解釈の変更、態勢の整備も忘れてはならない課題だ。

 政府や自治体の重い責務である国民保護にも万全を期さねばならない。秋田県男鹿市で、弾道ミサイル攻撃を想定して17日に初めて行われる住民避難訓練の成果が注目される。

 北朝鮮が米本土を核攻撃する能力を持てば、日米安保条約に基づく「核の傘」に破れが生じる。近く開く外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)で、核抑止の態勢強化の協議を始めるべきだ。
http://www.sankei.com/column/print/170307/clm1703070001-c.html

 


米軍三沢基地まで狙える北朝鮮弾道ミサイル 「新たな脅威」となった4発同時発射訓練
2017/3/ 7 14:48 印刷
北朝鮮 弾道ミサイル
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北朝鮮が6日(2017年3月)午前、弾道ミサイル4発を立て続けに発射し、秋田・男鹿半島の西300〜350キロ地点に落下した。北朝鮮が異なる攻撃目標を想定して弾道ミサイルを4発同時発射したのは初めてで、自衛隊の迎撃がより困難になったことを示している。

安倍首相は「今回の弾道ミサイル発射は北朝鮮が新たな脅威となったことを明確に示すもの」と明らかにしたが、そこで番組でも「新たな脅威」とは何か? を伝えた。

今回の弾道ミサイルは、北西部・東倉理付近から通告なしに発射され、いずれも1000キロ前後離れた日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したとみられている。

北朝鮮の弾道ミサイル発射は、日米首脳会談直後の先月12日に発射されたのに続いて今年で2回目。その狙いについて朝鮮中央通信は7日朝、「在日米軍攻撃用弾道ミサイルの4発同時発射訓練に成功した」と伝えた。

発射実験が日本にある米軍基地へのミサイル攻撃だったことを明確にした形だが、稲田朋美防衛相は「1日から始まった米韓連合軍事演習の実施への反発である可能性が考えられる」とコメントしている。

また、先月の北朝鮮のミサイル発射に対しトランプ米大統領が「北朝鮮が大陸間弾道ミサイルの発射事件をする構えを見せた場合、アメリカは軍事攻撃をすることもあり得る」と述べたことへの反発ともとれる。

ミサイルはアメリカに選択迫るメッセージ?

番組にゲスト出演した共同通信の磐村和哉編集委員は「秋田沖に落下したが、延ばせば青森の米軍三沢基地を狙える。北朝鮮も考えていると思う。トランプ政権に対し攻撃か交渉か、選択を迫るメッセージが込められているのではないか」と指摘する。

しかし司会の小倉智昭は「攻撃なら北朝鮮は徹底的にやられますよね」。この疑問に磐村は「金正恩体制を10年〜20年継続していく安全保障上の担保、保証をアメリカから取り付けたい思いがあるのだろう」と答えた。

交渉を勝ち取るための脅しというわけなのだろうか。磐村は「次に発射するのは大陸間弾道ミサイル(ICBM)が予想される」という。
文 モンブラン
http://www.j-cast.com/tv/2017/03/07292407.html

 


北朝鮮とマレーシア、対立激化 出国禁止で応酬
2017/3/7 13:11日本経済新聞 電子版
 【クアラルンプール=吉田渉、ソウル=加藤宏一】北朝鮮外務省は7日午前、同国に滞在するマレーシア人の出国を一時的に禁止すると発表した。国営の朝鮮中央通信が報じた。北朝鮮の金正男(キム・ジョンナム)氏殺害を巡るカン・チョル大使のマレーシア追放に抗議の意を示したとみられる。一方、マレーシアのザヒド副首相も同日、同国に在住する北朝鮮籍大使館職員の出国禁止を発表。両国の対立は深刻な外交問題に発展した。

 北朝鮮外務省はマレーシア人出国禁止の時期を「マレーシアで起きた事件が公正に解決され、同国にいる(北)朝鮮の外交官や住民の安全が完全に担保されるまで」とし、駐北朝鮮マレーシア大使館に通告した。

 カン大使追放との関係には触れていないが、北朝鮮への強硬姿勢を強めるマレーシアへの抗議の意思を示したのは確実だ。マレーシア国営ベルナマ通信によると、北朝鮮に在住するのは大使館職員と家族の合計9人。

 一方のマレーシアも即座に対抗措置を発表した。ザヒド副首相は同日昼前に「北朝鮮大使館の全ての職員の出国を即時止めるよう出入国管理局に指示した」と発表した。「北朝鮮の措置に対応した」と明言した。

 正男氏殺害を巡る両国の対立は深まっている。平壌に逃亡した北朝鮮籍の4容疑者が主犯格と疑われ、北朝鮮大使館の2等書記官の関与も浮上した。だが北朝鮮は捜査への協力を拒み、マレーシアへの批判を続けている。マレーシアが大使追放に踏み切ったことで、両国がお互いの国民の出国を禁止する異例の事態に発展した。

 マレーシアは北朝鮮との国交断絶も検討している。これに対して北朝鮮は在住者を「人質」に取り、断交阻止へ揺さぶりをかけた可能性がある。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM07H6A_X00C17A3EAF000/


 


 
北朝鮮の出国禁止「我が国民を人質」 マレーシア首相
クアラルンプール=都留悦史、遠藤雄司2017年3月7日14時51分
写真・図版
北朝鮮大使館の出入り口を封鎖するように警察が規制線を張った=7日、クアラルンプール、遠藤雄司撮影
写真・図版
 北朝鮮の金正男氏が殺害された事件に絡んで、北朝鮮外務省が同国に滞在するマレーシア人の出国を一時的に禁じた措置について、マレーシアのナジブ首相は7日、「国民の出国を妨げる北朝鮮の決定を非常に強く非難する」とする声明を出した。

 ナジブ氏は「実質的に我が国民を人質にとる忌まわしい行為はすべての国際法と外交慣例を軽視するものだ」とし、「国民を守るために、彼らが脅威にさらされれば必要なすべての措置をとることをためらわない」と強く警告した。

 さらにナジブ氏は声明で、警察長官に対して北朝鮮在住のマレーシア人の安全が確保されるまで、マレーシア在住の北朝鮮人の出国を禁じる対抗措置をとったことを明らかにした。

 クアラルンプールにある北朝鮮大使館周辺は7日昼ごろに警察官によって一時封鎖された。大使館員が公用車で門から出る際、警察車両と規制線で行く手を阻んだために大使館員が警官に抗議する場面もあった。現場を訪れたマレーシアの内務副大臣は報道陣の取材に「大使館の中にどれだけの人数がいるのか確認する必要がある。対話は外務省がしている」と説明した。(クアラルンプール=都留悦史、遠藤雄司)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM07H6A_X00C17A3EAF000/


 

マレーシア首相、北朝鮮を非難−出国禁止措置で応酬
Kanga Kong、Shamim Adam
2017年3月7日 13:19 JST 更新日時 2017年3月7日 15:54 JST 
ナジブ首相は警察に全北朝鮮国民の出国を阻止するよう指示
必要なあらゆる措置をためらわないとナジブ首相
 
マレーシアのナジブ首相は7日、北朝鮮がマレーシア国民の出国を一時的に禁止したことを強く非難した。
  同首相は北朝鮮による「この忌まわしい行動はマレーシア国民を事実上、人質とするものであり、全ての国際法と外交基準を完全に無視している」との声明を発表。「われわれの願いは迅速な解決だ」と述べ、対立が「エスカレートするのを避けるため北朝鮮指導部に対し北朝鮮からマレーシア国民の出国を直ちに認めるよう求める」とコメントした。
  
  ナジブ首相は北朝鮮にいるマレーシア国民の安全が保証されるまで全ての北朝鮮人のマレーシア出国を阻止するよう警察に指示したと説明。マレーシアは自国民を守るため「必要なあらゆる措置を講じることをためらうことはない」と表明した。
  北朝鮮は同日、北朝鮮がマレーシア国民の出国を一時的に禁止したと国営の朝鮮中央通信(KCNA)を通じ発表。北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄である金正男氏とみられる男性がクアラルンプールで殺害されて以降、両国間に緊張が走っていたが、今回の措置によってさらに緊張が高まっている。
  KCNAによれば、マレーシアにいる北朝鮮の外交官と国民の安全が確保されるまで北朝鮮からのマレーシア国民の出国禁止措置を続ける。北朝鮮は問題が「公正かつ迅速」に解決されることを望んでいるとも伝えた。
原題:Najib Accuses North Korea of Holding Malaysian Citizens Hostage(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-07/OMFFF36S972801
http://www.asyura2.com/16/warb19/msg/757.html

[国際18] テディベアもK-POPスターも泣いている−THAAD巡り中国強硬 ロッテ20店舗超閉鎖 WBC韓国まさかイスラエルに敗北
テディベアもK-POPスターも泣いている−THAAD巡り中国強硬
Bruce Einhorn、Sohee Kim、Kyunghee Park
2017年3月7日 14:51 JST
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韓国・済州島の人気観光施設を訪れる中国人観光客が減少
中国は韓国が配備を決めたTHAADを自国にとっての脅威と捉える
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テディベアやK−POP(韓国のポップス)スターらにも、韓国と中国の外交関係緊張化の影響が及んでいる。
  リゾート地として名高い韓国の済州島は昨年、中国からの訪問客が外国人来訪者の約85%を占めた。中国人旅行者らはツアーバスで植物園や済州テディベア博物館などの観光スポットを訪れるのが定番だ。
  ただそれは、韓国が米国と共に「高高度防衛ミサイル(THAAD)」システムを韓国内に配備するのを決めるまでのことだった。中国はTHAADを自国の安全保障上の脅威と捉えており、自国民が韓国で休暇を過ごすのを思いとどまらせる措置を講じ始めた。
  テディベア博物館のゼネラルマネジャー、ピョン・チャンシク氏は「今年に入って中国人観光客が20%ほど減少した。われわれだけで解決できることは何もない」と話した。
  事態はさらに悪化する見込みだ。韓国観光公社によると、中国国家旅遊局は旅行代理店に対し、韓国行きのパッケージツアー商品販売を15日から停止するよう命じた。済州島には昨年、中国から約310万人が訪れた。
  同島に2015年にオープンしたPLAY K−POPミュージアムの来場者も減っている。ホログラムを使ったコンサートホールや、韓国ポップスの有名歌手の画像との自撮りができるエリアなどで人気の施設だ。
  同ミュージアムのカン・オヒョン氏は「まともに影響を受けている」と嘆く。これまでは中国人のツアーグループが1日当たり6、7組ほどやってきたが、「最近は中国人グループを乗せたバスが1台来るか来ないかという日がある」と話した。
原題:U.S. Missile System Hurting Korean Teddy Bears, Pop Stars (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-07/OMFEZX6TTDSQ01


 

中国、韓国ロッテの20店舗超閉鎖 THAAD計画に反発か
ロイター 3/6(月) 17:38配信

中国、韓国ロッテの20店舗超閉鎖 THAAD計画に反発か
 3月6日、韓国のロッテグループは6日、中国の10店舗余りが当局の調査後に閉鎖されたと明らかにした。写真は5日、杭州市で閉店したロッテの店舗(2017年 ロイター)
[ソウル/上海 6日 ロイター] - 中国当局は、韓国のロッテグループが中国で展開する23店舗に調査に入った後、閉鎖を命じた。中国は、韓国による米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備計画に反対している。

【写真部ブログ】世界の働く女性たち

ロッテの発表によると、丹東から常州までの幅広い地域にまたがる23店舗が閉鎖となった。これ以上の詳細は明らかにされていない。

ロッテ・マートは1月末時点で、中国国内に約115店舗を展開。同グループにとって中国は最大の海外市場で、2015年の売上高は約3兆ウォン(26億ドル)だった。

傘下にロッテ・マート部門を持つロッテ・ショッピング<023530.KS>の株価は一時4%下落したが、その後は値を戻した。

系列のロッテ・インターナショナルは先週、韓国政府がTHAAD配備を予定している土地と代替地との交換を承認した。

反発を強める中国は、韓国の企業にサイバー攻撃を仕掛けたり、中国国内の旅行会社に韓国ツアーの販売を停止するよう指示している。

一方、韓国の黄教安・大統領代行は6日、北朝鮮が弾道ミサイル4発を発射したことを受けて、THAADの迅速な配備を呼びかけた。

*内容を追加します。

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アングル:北朝鮮対応に悩む中国、「影響力は過大評価」の声も
最終更新:3/7(火) 12:45
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170306-00000079-reut-n_ame


 

韓国人「WBC開幕戦、韓国まさかのイスラエルに敗北!」
カテゴリ韓国の反応スポーツ
58コメント
wbc

韓国のネット掲示板に「イスラエルvs韓国、WBCの状況」というスレッドが立っていたのでご紹介。
【韓国発狂】韓国、WBCであっさり敗北www ⇒ マスゴミがお通夜状態キタ━..
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1. 韓国人(スレ主)

isu

年俸の合計が100億以上の韓国代表たちが、イスラエルに負けているwwwww
俺は、イスラエルが野球をするなんて聞いたこともなかったんだがwwwwww

翻訳元:http://www.ilbe.com/9540426596


2. 韓国人
そして負けた!


3. 韓国人
You Win


4. 韓国人
ファックwwwwwwwwwwww


5. 韓国人
ホームでイスラエルにwwwwwww
http://blog.livedoor.jp/kaikaihanno/archives/50801268.html
http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/527.html

[政治・選挙・NHK221] 国内の薬価毎年改定で広がる波紋、海外製薬各社は収益減を懸念 日本市場は大幅縮小へ 新薬発売遅れるリスクも
国内の薬価毎年改定で広がる波紋、海外製薬各社は収益減を懸念
松山かの子
2017年3月7日 08:47 JST

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日本の医薬品市場規模は25年までに3割減−米国研究製薬工業協会
新薬の国内発売が遅れる可能性も、海外製薬会社が対日投資減なら

政府が薬剤費の膨張に歯止めをかけるために毎年薬価を改定すると決めたことで製薬業界に波紋が広がっており、世界第3位の日本市場が縮小する可能性もある。

  政府は昨年12月、市場の実勢価格を反映させるため、これまで2年に1回だった薬価改定を毎年実施する方針を発表。年間約9兆円規模の薬剤費は膨張を続けており、医療保険財政を圧迫していることが薬価改革の背景にある。
  米国研究製薬工業協会は日本の医薬品の市場規模が2025年までに3割減の620億ドル(約7.1兆円)になると試算。同協会のエイミー・ジャクソン日本代表は、日本政府の方針は多国籍製薬会社による対日投資を他の国に振り向けてしまう危険性があると指摘する。「日本で治験を行う投資意欲を著しくそぐものだ」とし、実際にそうなった場合には、国内での新薬発売までにこれまでより長い時間が必要になるかもしれないとの見方を示した。

  ジャクソン氏によると、これまで多国籍製薬企業が日本での投資を増やしてきたのは、日本政府が10年に画期的な新薬の価格を維持する方針を示したためだと説明する。同協会の調査によると、厚生労働省に対して15−19年に製造承認を申請する見通しの薬の数は、06−09年比で倍増する見通し。さらに、13−15年に日本で行われた治験数は21%増加した。
  同省保険局医療課の目黒芳朗氏は、薬価制度改革の狙いについて「国民皆保険の持続性とイノベーションの両立が重要でそれを目指している」とし、「最終的には国民が恩恵を受ける国民負担の軽減と医療の質の向上を実現する」と話した。

費用対効果の仕組み

  改革では年1回の薬価改定に加え、新しい効能が追加された際に薬価を見直す仕組みや、費用対効果の評価を本格的に導入する。近年、小野薬品工業のがん免疫療法薬「オプジーボ」やギリアド・サイエンシズのC型肝炎治療薬「ソバルディ」といった高額な新薬が登場しており、機動的に対応するのが狙い。オプジーボの価格はすでに半額に、ソバルディの価格は約3割引き下げられている。
  小野薬広報担当の谷幸雄氏は、18年4月の通常改定時にオプジーボの薬価が切り下げられる可能性は想定していたが、「改定時期が14カ月前倒しになった点は想定外だった」との考えを明らかにした。国民皆保険制度の維持に配慮が必要なことや、高額薬剤の議論が高まったことでオプジーボの使用を自粛する動きもあり「本来必要な患者さんに行き届いていないといった状況などを総合的に踏まえ、今回の緊急的な対応について受け入れざるを得ないと判断した」という。
  厚労省は昨年、高額医薬品の費用対効果を分析する制度の対象として、7種類の医薬品を発表。これにはソバルディ、ハーボニー、オプジーボのほか、中外製薬の乳がん治療薬「カドサイラ」などが含まれている。分析結果は今年にも発表される見通しだ。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-06/OM7Y8N6JTSE801


 


 
主要製薬企業 17年3月期は2%減収で着地へ―小野薬品が過去最高業績も…国内市場 停滞感くっきり
2017/02/13

国内の主な製薬企業の2017年3月期第3四半期決算が出そろい、各社の業績予想から今期の着地が見えてきました。

AnswersNewsの集計によると、国内主要製薬企業12社の17年3月期の売上高は前期比1.9%減となる見通しです。昨年4月の薬価改定や後発医薬品の浸透により国内市場が停滞した上、昨年秋までの円高の影響も尾を引きます。

免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」が伸びた小野薬品工業や、抗HIV薬のロイヤリティー収入が拡大する塩野義製薬が過去最高の業績となる見通しですが、国内事業は半数以上の企業で減収。17年3月期は国内市場の停滞を改めて印象付ける決算となりそうです。


INDEX

海外事業は堅調も円高の影響大きく
国内も半数超が売り上げ減

海外事業は堅調も円高の影響大きく

AnswersNewsでは、年間連結売上高が1000億円以上の国内製薬企業12社について、2017年3月期通期業績予想を集計しました。

それによると、12社の売上高の合計は前期から1.9%減少する見通しで、武田薬品工業(前期比5.9%減)やアステラス製薬(5.3%減)、第一三共(3.7%減)など半数超となる7社が減収を予想。12月決算の企業でも、中外製薬(1.4%減)や協和発酵キリン(5.8%減)が減収で16年12月期を終えています。

主な国内製薬企業の2017年3月期業績見通し

https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/s3-ten-navi.com-wpimg/answers/wordpress/wp-content/uploads/2017/02/76c55bc65d59f8fc4c6f7988c128ffae.png


売り上げ減少の要因は主に2つ。1つは昨年秋ごろまでの円高の影響。もう1つは、昨年4月の薬価改定や後発医薬品の浸透による国内市場の低迷です。

円高による売上高の減少影響は、いずれも第3四半期時点で、武田薬品が1146億円、アステラスが896億円、第一三共が408億円に上りました。

ただ、武田とアステラスは現地通貨ベースでの海外売上高は拡大しています。武田薬品は潰瘍性大腸炎・クローン病治療薬「エンティビオ」が1000億円を突破し、多発性骨髄腫治療薬「ニンラーロ」や大うつ病治療薬「トリンテリックス」も堅調に推移。アステラスは前立腺がん治療薬「エクスタンディ」(日本製品名「イクスタンジ」)や過活動膀胱治療薬「ミラベトリック/ベットミガ」(同「ベタニス」)が好調です。

大日本住友製薬も円高で231億円の減収影響を受けましたが、ブロックバスターの抗精神病薬「ラツーダ」の拡大で増収を確保。抗HIV薬のロイヤリティー収入が伸びる塩野義製薬は過去最高の業績を更新します。

一方、第一三共は主力の高血圧症治療薬「オルメサルタン」の特許切れが響き、現地通貨ベースでも米国売上高が減少。新薬が伸びる国内は好調ですが、前期に生産子会社の売却益を計上した反動もあり、通期では15.7%の営業減益に沈みます。

昨年11月の米大統領選以降、為替は円安に振れており、第3四半期決算発表では最近の円安傾向を反映して通期業績予想の上方修正した企業も目立ちました。各社の海外事業はおおむね堅調に推移しており、今後の為替動向次第では通期業績の上振れもあり得ます。

国内も半数超が売り上げ減

一方、国内事業の好調ぶりが目立つのは、免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」が牽引する小野薬品工業です。

2月の薬価引き下げや競合品となる「キイトルーダ」の発売により予想を下方修正したものの、「オプジーボ」の国内売上高は今期1050億円まで拡大。国内売上高は第3四半期時点で前期比60.4%の増収となりました。通期の連結業績は売上高49.7%増、営業利益124.5%増と大幅な増収増益で過去最高の業績となります。

プロトンポンプ阻害薬「ネキシウム」や抗凝固薬「リクシアナ」など新薬が伸びる第一三共も国内事業は好調。通期の国内医療用医薬品の売上高予想を従来から50億円上積みし、5050億円に上方修正しました。前期比では2.1%の増収。エーザイは、味の素との合弁会社EAファーマの設立で旧味の素製薬の製品が売り上げに加わったことで、大幅な増収となります。

国内医療用 首位交代か

反面、「イクスタンジ」が4月の薬価改定で市場拡大再算定を受けたアステラスは6.7%の減収を予想。鎮痛薬「セレコックス」や糖尿病治療薬「スーグラ」も期初の想定ほど伸びず、第2四半期の時点で国内医療用医薬品の売上高予想を下方修正しました。

大日本住友や塩野義、大正製薬HDも、長期収載品の減少で国内売上高を減らします。キョーリン製薬HDは、主力の気管支喘息治療薬「キプレス」の特許切れが響きます。

武田薬品は通期の国内医療用医薬品の売上高予想を開示していませんが、長期収載品をイスラエル・テバとの合弁事業に移した影響で減収となる見通しです。第3四半期時点では前期比7.0%減となっており、このままのペースでいけば通期の着地は5030〜5040億円。守り続けてきた国内医療用医薬品売上高トップの座を第一三共に奪われることになるかもしれません。

今回集計対象とした12社のうち、国内医療用医薬品の通期売上高予想を開示しているのは、武田薬品と小野薬品、科研製薬を除く9社。そのうち半数を超える5社が減収を予想しています。武田薬品と科研製薬は減収が確実で、これを合わせると12社中7社が国内で減収となる見通しです。

国内医療用医薬品市場の四半期成長率の推移

https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/s3-ten-navi.com-wpimg/answers/wordpress/wp-content/uploads/2017/02/5890f5ebd9c3b642c84df6beb90af78f.png


IMSジャパンが2月9日に発表した国内医薬品市場統計によると、16年の国内医療用医薬品市場は10兆6246億円で、前年比0.3%増。薬価改定のあった14年、12年を下回り、過去5年間では最も低い成長率となりました。

2960億円を売り上げたC型肝炎治療薬「ハーボニー」の影響を除けば、実質的には市場は前年割れ。これまで高い成長を続けてきた薬局市場が前年比3.6%減と11年以降で初めてマイナスとなるなど、国内市場の停滞感は数字にもくっきりと表れています。

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http://www.asyura2.com/17/senkyo221/msg/858.html

[経世済民119] ドイツ1月の製造業受注、2009年以来の大幅減−投資財落ち込む  BR4百社超に働き方改革要求 米KKR約1.6兆円調達
ドイツ1月の製造業受注、2009年以来の大幅減−投資財落ち込む
Piotr Skolimowski
2017年3月7日 16:35 JST
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製造業受注指数は前月比7.4%低下−予想2.5%低下
前年同月比では0.8%低下
 
ドイツの製造業受注が1月に8年ぶりの大幅減を記録した。投資財が落ち込んだ。
  独経済省が7日発表した1月の製造業受注指数(季節・インフレ調整済み)は前月比7.4%低下。低下幅は2009年1月以来の最大で、ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想中央値(2.5%低下)より大きかった。昨年12月は5.2%上昇だった。1月は前年同月比では0.8%低下した。
  同省は「年初の弱さは手に負えないものではない。製造業の企業景況感は長期的な平均に比べ相当強く、製造業の回復を依然として見込むことができる」とコメントした。
  発表によると、1月の国内受注は前月比10.5%減。投資財の16.8%減少が響いた。輸出受注は4.9%減った。
原題:German Factory Orders Slump Most Since 2009 on Investment Goods(抜粋)
German Factory Orders Slump Most Since 2009 on Investment (1)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-07/OMFO106JTSE801


 
ドイツ銀が復活を賭けるゴールドマン元パートナー、CEO継承布石か
Steven Arons、Jan-Henrik Förster
2017年3月7日 13:12 JST
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米KKR、北米投資PEファンド向けに約1.6兆円調達−過去最大規模
シェンク氏は投資銀行の収入を拡大させる責務を担う
クライアン氏後継のためのウォーミングアップのようだとアナリスト


ドイツ最大の銀行であるドイツ銀行のマルクス・シェンク最高財務責任者(CFO)は、ディール(取引)に携わる仕事がしたくてたまらず、毎週1日を顧客との時間に費やしていたが、そのような習慣は同僚らに常に受け入れられるわけではなかった。シェンク氏の考えをよく知る関係者の1人が明らかにした。
  米銀ゴールドマン・サックス・グループの元パートナーであるそんなシェンク氏には今、切羽詰まったドイツ銀に必要な収入をもたらす能力を自ら示すチャンスが与えられた。

  ドイツ銀は5日、シェンク氏(51)とクリスティアン・ゼービング氏(46)を共同副最高経営責任者(CEO)に起用する人事を発表。2人は同行が2年足らず前に断念したも同然のビジネスモデルを復活させ、成長を回復させる責務を担うことになる。

  ドイツ銀は85億ドル(約9700億円)相当の新株発行による資本増強と同時に公表した新たな戦略の下で、トレーディング部門をトランザクションバンキングとアドバイザリー業務から分離するとしたジョン・クライアンCEO(56)の計画を撤回。売却を目指していたリテール部門ポストバンクも再統合へと方針を転換する。
  エクイネット・バンクのアナリスト、フィリップ・ヘスラー氏(フランクフルト在勤)は共同副CEO就任の2人について、「クライアン氏の後継のためのウォーミングアップが行われているかのようだ。われわれはどちらがより良い実績を挙げ、トップに就く可能性が高いかを向こう2、3年かけて見守ることになるだろう」と語った。

  シェンク氏は再統合後の投資銀行部門を共同で統括する。同部門の収入はドイツ銀で最も大きいが、クライアンCEOが業務の縮小に動く中で、同行の資本力をめぐる懸念を背景に市場シェアを落としていた。一方のゼービング氏は、ポストバンクと法人顧客、ウェルスマネジメント(富裕層向け資産運用)業務を統合して新設するプライベート・商業銀行部門の運営に携わる。
原題:Deutsche Bank Bets on Ex-Goldman Partner in Strategy Reversal(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-07/OMFADG6S972A01

 


 
ブラックロック、投資先400社超に働き方改革求める
2017/3/7 0:49日本経済新聞 電子版
保存その他
 米運用会社ブラックロックの日本法人ブラックロック・ジャパンは6日、投資先の日本企業400社超に株主としての期待を伝える手紙を送った。企業の持続的成長には従業員の働きがいや満足度が重要なことが明らかになったとして、働き方改革を通じた投資や工夫を求める。

 ブラックロックはグループで1000社以上、20兆円強の日本株を持つ。米本社のラリー・フィンク会長兼最高経営責任者(CEO)の手紙に日本法人の井澤吉…
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO13734210W7A300C1DTA000/


 

米KKR、北米投資PEファンド向けに約1.6兆円調達−過去最大規模
Melissa Mittelman
2017年3月7日 12:23 JST

北米を中心に投資する同社のファンドとしては12番目
アポロやカーライル、シルバーレイクも資金調達を進める

米KKRは、北米に投資する新たなプライベートエクイティ(PE、未公開株)ファンド向けに139億ドル(約1兆6000億円)を集めた。北米を中心に投資する買収ファンドの調達額としては過去最大規模となる。
  6日の発表資料によると、同社は出資に同意した投資家から最大125億ドルを集め、自社のバランスシートと社員の資金から14億ドルを拠出した。北米を中心に投資する同社のファンドとしては12番目となり、従来型の買収や成長投資のほか、少数株式や公開企業への足掛かりとなるポジションの取得を目指す。
  大手PE投資会社の資金調達ペースが鈍る兆しは表れていない。シルバーレイクが5つ目の主力ファンド向けに125億ドルの調達を目指していると事情に詳しい関係者が昨年12月に明らかにした。アポロ・グローバル・マネジメントは次のグローバルPEファンド向けにコミットメント募集を開始。同ファンドは現行の184億ドルの資金プールと同等かそれ以上の規模になると見込まれている。一方、カーライル・グループの複数の幹部も2016−19年にさまざまなファンド向けに計1000億ドルを集める計画を明らかにした。
  アレックス・ナバブ氏率いるKKRの北米PEチームは、11−14年に11番目のファンド向けに90億ドルを調達。同社の届け出によると、昨年末時点の評価額はコストの1.4倍で、手数料を引いた後の年間リターンはプラス18%だった。
原題:KKR Gets Record $13.9 Billion for North American Buyout Fund (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-07/OMF9XI6JTSEB01
http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/795.html

[戦争b19] 中国軍は南シナ海で米軍を出し抜けるか 中国財政相:予算めぐる透明性に問題なし−国防費の記載見送り後 
コラム:
中国軍は南シナ海で米軍を出し抜けるか

 3月1日、アジアにおける米国のアプローチが常に、中国の裏庭で空母を航行させることに重点を置いている一方、中国は仮想敵国に対して戦略的バランスを崩すためにできることを何でもやっている。写真手前は中国初の空母「遼寧」。南シナ海で昨年12月撮影。提供写真(2017年 ロイター/China Stringer Network)
Peter Apps

[1日 ロイター] - 米空母カール・ビンソンは、先週ほぼずっと南シナ海で監視活動を行っていた。これはまさに、米国の影響力と、米海軍の優れた世界的到達能力を示すエピソードにほかならない。

その狙いは、同盟国を安心させるだけではなく、今回の場合は、仮想敵国にメッセージを送ることにある。

しかし米国がそのような活動を、抵抗を受けずにいつまで続けられるかは、ますます疑わしくなっている。

10年余りで、中国海軍が米国よりも多くの艦船を保有する可能性を一部の専門家は予想している。中国の軍備増強は、南シナ海の領有権問題で優位に立ち、米国に対抗する戦略の一環である。

米国が世界で軍事的優位を保持することは、国防費を約9%、540億ドル(約6兆1700億円)増やすというトランプ大統領の計画の中核だ。しかし、米国がアジア地域で軍事的優位を持続させるには、それだけでは十分ではないだろう。

中国の国防費の伸びは昨年やや減速したものの、過去20年にわたり、ほぼ毎年のように2ケタ増を繰り返してきた。さらに重要なのは、米国が効果的な対応が全くできないようなさまざまな戦術を導入していることだ。

アジアにおける米国のアプローチが常に、中国の裏庭で空母を航行させることに重点を置いている一方、中国は仮想敵国に対して戦略的バランスを崩すためにできることを何でもやっている。新たな兵器システムや海軍における相当な規模の従来型の戦力拡大といったことだけでなく、海軍基地や水上発電所、人工島の建設を含む多くの戦術から成る戦略だ。

アジアで衝突が起きるのは仮定の話ではなく時間の問題だと、一部の現旧米軍当局者は考えている。同様にあり得る話と思えるのは、実際に戦争の引き金となる何かが起きる一歩手前の状態で、概して血は流れないだろうが、数十年に及ぶ対立状態に陥る可能性だ。

それこそ中国の計画なのだろう。

それは中国が自国の一部とみなす台湾の海域周辺でミサイル発射試験や軍事演習を実施した1995年以降、ますます熱心に同国が取り組むゲームである。当時のクリントン大統領は、台湾海峡を監視するため空母2隻を派遣した。それは、中国が負け戦だと分っている戦争を始めることなしには阻止できない動きだった。

以来、中国は周辺地域から米軍、とりわけ空母を遠ざけるための能力獲得に専念している。多くの専門家は、米国の戦略立案者が再び中国の沿岸地域に空母を接近させるリスクを負いたくないと考えるに十分な、潜水艦やミサイルや戦闘機といった兵器技術を中国が手にしているとみている。

中国は、至近距離の艦船を破壊するための兵器のみならず、台湾に照準を定めた弾道ミサイル数千発を保有しているとみられる。一部の専門家は、中国が今後20年のうちに台湾を支配下に収めようとする可能性を指摘している。

中国の次なる目的は、豊富なエネルギー資源が眠っているかもしれない、フィリピンやベトナムやマレーシアが領有権を主張する多くの環礁や島にまで自国の軍事力を拡大することかもしれない。

南シナ海における中国の最も尊大な領有権主張は昨年、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所で却下された。だが中国は、特にフィリピンと領有権を争うスカボロー礁周辺での建設拡大を続行した。2012年に中国軍が足を踏み入れてからは、そこに軍事施設を築き上げている。

このような基地を根拠に、中国軍は自国の領土だとして空域や海域を主張し、他国の航空機や船舶に登録を求めている。米国やオーストラリアなど他国の軍は、比較的罰せられず、国際的な正当性もほとんどないこうしたルールを無視している。

しかし、中国を止める戦略を誰も持っていない。トランプ政権のティラーソン国務長官は指名承認公聴会で、米軍が中国に南シナ海にアクセスさせないようにする可能性を示唆して驚かせた。そうなれば戦争が始まることはほぼ間違いなく、これに関してはその後言及されてはいない。

南シナ海で起きていることは、多くの点で、2014年のロシアによるクリミア併合でプーチン大統領が成し遂げたことと似ているが、より漸進的である。クリミア併合では、ウクライナや同盟国が対処する前に、軍人ではない武装した親ロシア派を使って現実を変えてしまった。

ウクライナでは、今でもロシアは公式に認めないが、結局は公然と軍事力を使って東部のロシア語を話す地域を占拠する気のあったことが明らかとなった。

問題は、南シナ海で中国も同じようなことを考えているかどうかだ。そして、もしそうなら何が起きるか、ということだ。

中国は、かつて米国が自国に対して使用したハイレベルかつハイバリューの軍事資産を獲得することに一段と力を入れている。ソ連製の中国初の空母は、主に訓練での使用にとどまってはいるものの、かつてないほど活動している。昨年12月、同空母は中国の沿岸水域外で初の長距離パトロールを実施したとみられる。中国はまた、初となる国産空母を建造しており、報道によると、さらにもう1隻の建造も進めているという。

これら空母は中国の国際的なイメージにとって重要である。ロシアが昨年後半にシリアで空爆を実施するために唯一の空母を派遣したことで集めた注目を目の当たりにしたからだ。中国は、ロシアのように、弾道ミサイル搭載の潜水艦の建造を増やしている。これは、中国のいかなる仮想敵国にとっても、全面戦争によって大激変をもたらすリスクに対する明らかな警鐘となっている。

いくつかの予測データによると、向こう10年から15年で、中国は高性能のコルベット艦や巡視船、他の艦艇のみならず、最大4隻の空母や潜水艦100隻を含む、計500隻の艦隊を持つ可能性がある。一方、トランプ大統領は米海軍の艦船を350隻に増やし、より強力な艦船の割合を高め、全世界に展開させるという計画だ。

米空母カール・ビンソンは、南シナ海の領有権が争われている海域を通過することで、米国の軍事力を改めて誇示した。しかし実際に戦争が起きた場合、そのように巨大な艦船が撃沈されるまでどれくらい生き残れるかは全く分からない。

どちらにせよ、カール・ビンソンは来週、同地域を離れる。だが、米国の他の戦力は残されたままだ。そして中国も依然として軍備増強を進めるだろう。

*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

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中国財政相:予算めぐる透明性に問題なし−国防費の記載見送り後
Bloomberg News
2017年3月7日 16:00 JST
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国防費などはまだ公表されていない別文書に盛り込まれた−肖財政相
いわゆる透明性欠如の問題はない−肖氏
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中国の肖捷財政相は7日、予算の透明性確保の姿勢をあらためて確認した。今年の予算報告書では、過去約40年で初めて国防費などの主な支出項目の記載が見送られていた。
  肖財政相は開会中の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)に合わせて開かれた記者会見で、国防費などの支出項目はまだ公表されていない別の予算文書に盛り込まれたため、記載が見送られたと説明。「複数の当事者からの提案」を受けた変更だとし、支出に関する追加情報はどこかに盛り込まれたと指摘した。
  肖財政相はブルームバーグ・ニュースの質問に対し、「いわゆる透明性欠如の問題などというものはない」と回答。「予算案の編成プロセスに対する新たなアプローチが生まれているというだけだ」と述べた。
  中国の国防費は1980年から予算報告書で公表されていた。最新の報告書では公安と外交に関する支出も除外されていた。
原題:China Defends Budget Transparency After Military Outlays Omitted(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-07/OMFMDC6K50XS01
http://www.asyura2.com/16/warb19/msg/758.html

[経世済民119] 米3月利上げで円安加速は本当か ドル円こう着終焉、下抜けか 中国、経済減速、労働力の流動化必要  東証続落 JQ18日↑
FX Forum | 2017年 03月 7日 15:26 JST 関連トピックス: トップニュース
オピニオン:
米3月利上げで円安加速は本当か

青木大樹UBS証券ウェルス・マネジメント本部 日本地域CIO兼チーフエコノミスト
[東京 7日] - 市場では、米連邦準備理事会(FRB)による3月利上げとドル円上昇を予想する向きが増えているが、米利上げが必ずしも円安につながらないことは2004年の教訓が示していると、UBS証券ウェルス・マネジメント本部最高投資責任者(CIO)兼チーフエコノミストの青木大樹氏は指摘する。

当時、FRBは6月末に金融引き締めに転じたが、米長期金利は上げ渋り、ドル円もほどなくして下落基調に転じた(7月下旬の112円台から12月初旬には101円台まで下落)。

今回も、米経済の先行き不透明感から米長期金利が上昇せず、一定期間にわたってドル安円高方向に振れる可能性があるという。

同氏の見解は以下の通り。

<利上げは時期尚早、弱さ見え始めた米経済>

3月の米利上げ実施でドル円上昇に拍車がかかるとの予想が、短期投機筋を中心に、高まっている。イエレンFRB議長が3日の講演で、雇用をめぐる指標とインフレが力強さを維持すれば14―15日の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを決定すると発言したことから、そうした期待がさらに強まっているようだ。

ただ、我々は、イエレン議長が過去繰り返してきた「Data Dependent(指標次第)」という利上げの条件を十分にクリアできているとは思っていない。

確かに、1月の米消費者物価の前年比伸びは2.5%に届き、同月の非農業部門雇用者数も前月比22.7万人増えるなど、及第点に達しているように見えるが、ここにきて実体経済の弱さを示すデータが増え始めている。

例えば、1月の個人消費支出はインフレ調整後で前月比0.3%減と、昨年8月以来初めてマイナスとなった。インフレ調整後の可処分所得も同0.2%減だった。金融機関の貸し出しペースを見ても、消費者・事業・住宅向けのいずれも減速し始めている。

また、堅調と言われる雇用統計にしても、非農業部門雇用者数の増加分は大半が低生産性・低賃金のサービス分野であり、賃金の伸びは予想に届かず、労働参加率も低いままだ。10日発表の2月分雇用統計で、雇用の「質」がよほど改善していれば話は別だが、足元の実体経済は3月利上げに耐えられるような状況にはないと考える。

<「コナンドラム」再現も、円高が続くリスク>

ただし、以下のように、イエレン議長が見ている場合は、3月利上げという短期投機筋の読みが当たる可能性はある。

第1に、米経済はすでに身の丈(長期的な均衡水準)を上回る成長を遂げており、ここからは過熱(不均衡の蓄積)が懸念される。第2に、トランプ政権の拡張的な財政政策(トランプノミクス)が実現することで、そうした過熱ぶりに拍車がかかる恐れが高まっている――。

筆者自身はまだ米経済に対して強気な見方を持てない。まず、これまでのデータから分析すれば、1―3月期の国内総生産(GDP)成長率は1%半ば程度にとどまる。また、詳しくは後述するが、トランプノミクスの経済効果は発現までに時間がかかる上、インパクトは限定的とみられる。

加えて、前回指摘したように、リーマン・ショック以降進行している米経済の「日本化」(高貯蓄・低生産性・高齢化)に歯止めがかかることは期待しにくい。よって、拙速な追加利上げが続けば、米景気の腰折れを招きかねない。

むろん、イエレン議長の目に映る米経済の景色が筆者と異なり、過熱が懸念されると言うのならば、答えは早期利上げとなろう。また、その場合は、日本化を受け入れて、現在の低成長ペースが米経済の実力という認識になるのだろう。

では、仮に3月に利上げがあった場合、ドル円は上昇するのだろうか。実は「米利上げ=ドル高円安」と限らないことは過去の事例が示している。そのことが一番顕著に表れたのは、グリーンスパンFRB議長時代の2004年だ。

同年6月30日、FRBは利上げを決定し、2年に及ぶ金融引き締め局面に入った。それを受け、107―108円台で推移していたドル円相場は7月下旬に112円台まで上昇したが、その後、年末(12月初旬)にかけて起こったことは101円台への円高進行だった。

利上げに伴って短期金利ゾーンは上昇したものの、長期金利ゾーンが上げ渋り、イールドカーブのフラットニングが進み、ドル高圧力は遮られた。当時のグリーンスパン議長が長期金利の低下について「コナンドラム(謎)」と呼んだのはいまだ記憶に新しい。

今回も、同じことが起こる可能性はある。前述した通り、米経済のファンダメンタルズに不安がある中で利上げを急げば、先行き不透明感からイールドカーブにフラットニング化の圧力がかかる。米利上げが中国など新興国経済に与える負のインパクトも勘案すれば、リスクオフの円高にも注意が必要だろう。

<過剰なトランプ政策期待、米成長はよくて2%台後半>

もちろん、想定以上のペースで利上げが進んだとしても、米経済が利上げを乗り越えて成長していくのであれば、中期的にはドル高円安圧力が増すだろう。グリーンスパン議長時代に話を戻しても、ドル円相場の基調は2005年半ば以降、ドル高円安方向にシフトしている。

ちなみに、昨年末にFOMCメンバーが示した政策金利見通しから素直に想定すれば、利上げは今年3回、来年2―3回となる。この回数はすでに市場に織り込まれているが、仮にペースがさらに速まるならば、ドル円上昇圧力は高まる。

鍵を握るのは、いわずもがな、トランプノミクスだろう。具体策が明かされていない状況では正確な分析は難しいが、仮に財政赤字を大幅に膨らませるような拡張的なものになるとすれば、実際、長期金利に上昇圧力がかかり、イールドカーブがスティープニング化していく可能性はある。その場合、イエレンFRBも先回りして、追加利上げで対処せざるを得なくなるだろう。

もっとも、我々は、そうしたシナリオが実現する蓋然性は現時点では高くないと考えている。均衡予算主義者の多い議会共和党との調整が進めば、財政政策の拡張度はかなり控えめなものに落ち着くと予想されるためだ。

例えば、トランプ大統領が議会演説で言及した1兆ドルのインフラ投資計画にしても、金額は官民合計額であり、実施期間も10年など複数年度にわたるものだ。実際の年間政府支出額は400億ドル前後にとどまると予想される。この程度の規模はすでに市場に織り込まれており、GDPの押し上げ効果はせいぜい0.2―0.3%ポイントにとどまる。

法人税制改革に対する期待も先走りし過ぎているように思われる。米企業の海外利益に対するリパトリ減税は政策実現上のハードルが比較的低く、早い段階で実現するかもしれないが、企業収益の拡大は主に自社株買いや配当に使われ、設備投資や賃金への波及は限定的だろう。

また、国境税導入も視野に法人税制改革を目指すことになれば、議会との調整が紛糾するのは必至であり、立法化は早くとも今夏以降となろう。しかも、共和党案の国境調整税は輸入産業には増税となる。輸出産業に対する減税効果は相殺され、GDPに対しては0.5%ポイント未満の押し上げ効果しか期待できない可能性がある。

一方、規制緩和ではイノベーションを生み、生産性を向上させるようなものは見当たらない。優先度の高いオバマケア(医療保険制度改革法)の廃止や環境関連規制の見直しなどは、一部の産業では恩恵が期待できるが、脱・日本化を促し、成長を加速させることは期待できないだろう。

このように考えると、トランプ政権下の米経済成長はせいぜい2%台後半程度にとどまる可能性が高い。したがって、拙速な金利上昇は続かず、中期的なドル高ペースも限定的なものとなる公算が大きいと見ている。

ただし、これは世界経済にとって悪いシナリオとは言えない。急激にドル高に振れないことで、まず新興国経済への負のインパクトが限られる。目下、人民元安を食い止めることに躍起になっている中国から見ても、好ましい流れだろう。

むろん、世界的な低成長の中でカネ余りが続けば、通貨のボラティリティーが高まるリスクには一層の警戒が必要になろう。今は実感が湧かないが、より長期的な視野に立てば、通貨の信認低下に伴い、金などの実物資産、あるいはビットコインのような仮想通貨へのマネー流入に拍車がかかるシナリオにも備えておく必要がいずれ出てくるのかもしれない。

*本稿は、青木大樹氏へのインタビューをもとに、同氏の個人的見解に基づいて書かれています。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(聞き手:麻生祐司)

*青木大樹氏は、UBS証券ウェルス・マネジメント本部の日本における最高投資責任者(CIO)兼チーフエコノミスト。2001年より内閣府で政策企画・経済調査に携わった後、2010年にUBS証券入社。2016年、インスティテューショナル・インベスター誌による「オールジャパン・リサーチチーム」調査の日本経済エコノミスト部門にて5位(外資系1位)に選ばれる。

ベトナムに新造巡視船6隻を供与 2017年 01月 16日
コラム:米国よりも深い欧州「反イスラム」の闇 2017年 02月 13日
コラム:ドルはなぜ年初来「最弱通貨」なのか=佐々木融氏 2017年 02月 27日
http://jp.reuters.com/article/opinion-daiju-aoki-idJPKBN16E0EU


 

 


コラム:
ドル円こう着終焉へ、上抜けか下抜けか

佐々木融JPモルガン・チェース銀行 市場調査本部長
[東京 6日] - ドル円相場がレンジ内での取引を続けている。先週は、米連邦準備理事会(FRB)高官のタカ派的なコメントが相次ぎ、市場の早期利上げ期待もかなり高まった。当社ニューヨークのエコノミストも、これまで年内2回の利上げを予想していたが、先週末に年内3回に変更し、次の利上げ予想は5月から3月に前倒しした。

それでもドル円相場はレンジの上限を上抜けられなかった。市場は14―15日の連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ決定を8割以上の確率で織り込み、年内の利上げ回数も2.6回程度織り込んでいる。

フェデラルファンド(FF)金利先物から見た年内の利上げ織り込み回数とドル円相場はこの2週間ほど相関が強い。このままの相関が続くならば、年内の利上げ織り込み回数が3回になると、ドル円相場は115.50円まで上昇する計算となる。つまり、レンジの上限は抜けられない。

1月12日から現在までの約2カ月弱のレンジは111.60円から115.62円の4円レンジだ。この「2カ月程度、4円レンジ」は最近よく見受けられる。2015年2月半ばから5月半ばまでと、同年8月下旬から11月初までは、ともに118円から122円という4円レンジ内での取引を続けた。

昨年はドル円相場が比較的よく動いた年だが、それでも2月上旬から4月初までの2カ月弱はおおむね111円から115円の4円レンジ内で上下動を続けた。興味深いことに、この111円から115円のレンジは今年とほぼ同じレベルであり、かつ今のところ時期まで一緒だ。

ドル円相場がレンジ取引になるということは、一定水準まで下がってくるとそこでドルを売ろうとする人よりドルを買おうとする人が多くなり、逆に一定水準まで上がってくるとそこでドルを買おうとする人よりドルを売ろうとする人が多くなることを意味する。比較的その時の相場観やマクロ経済に基づいた需給が影響していると考えられる。

そうした観点から、2015年中に「2カ月、4円レンジ」が2回とも同じ水準で発生し、2016年と今年の「2カ月、4円レンジ」が同じ水準で発生しているのも納得できるが、興味深い現象だ。

逆に、ドル円相場が比較的長く続いたレンジを抜けるということは、相場観やファンダメンタルズを変える何かしらのイベントやニュース、もしくはフローが発生したことを意味しているとも考えられる。

そうなると、過去のレンジ相場の後、結果的にどのような理由で「2カ月、4円レンジ」を抜けていったのかについて振り返れば、今回のレンジがどのような理由で終わるかを予測する上で参考になるかもしれない。

<7日公表の米貿易収支、保護主義に火を付けるか>

2015年2月半ばから5月半ばの「2カ月、4円レンジ」は最終的に上抜けしたが、この時、米国経済指標は強かったものの、米長期金利があまり上昇していない中で、特段の理由もなくドルが買われていったことによりレンジを上抜けした。

日米金利差との相関はこの時かなり低下している。ただ、だからということもないかもしれないが、この時のドル円上昇はすぐに終わり、6月初に125.86円の高値、つまりアベノミクス後のピークをつけて反落している。

2015年8月下旬から11月初のレンジ取引も最終的に上抜けした。きっかけは予想を上回る雇用統計で、米長期金利も上昇した。この時は12月の利上げ期待が70%程度まで高まりドルを押し上げた。しかし、レンジを上抜けした日の高値からそれほど大きく上昇することなく、FRBが実際に12月に利上げを行うと、ドル円は反落し、下落基調をたどった。

2016年2月上旬から4月初のレンジ取引は最終的に下抜けした。2015年の2回のレンジ取引上抜けは結局、ドル円の上昇基調につながらなかったが、2016年のレンジ取引下抜けはドル円の下落基調につながり、記憶にも新しいように111円のレンジの下限を下抜けた後、6月の英国民投票における欧州連合(EU)離脱選択を受け、99円台まで下落している。

2016年4月初にレンジを下抜けしたきっかけは、世界的に株価が軟調に推移する中で、円の買い戻しが続き、米紙のインタビューで安倍晋三首相が介入に否定的なコメントを発したことが引き金となった。

こうした少ない例だけで判断するのはやや無理があるが、それでもやはりFRBの利上げ期待の変化は重要と言えるだろう。前述のように年内3回の利上げを完全に織り込むだけでは現在のレンジを上抜けるのには不十分だが、仮に年内4回の利上げを完全に織り込むと、現在の相関によればドル円は119円ちょうど近辺まで上昇する計算となる。

一方、円高方向に下抜けるパターンとしては、政治的な要素が重要になってくるかもしれない。米政権が保護主義的圧力を増してくるという思惑が強まることがレンジ下抜けのきっかけとなる可能性はやはり高いだろう。

当社は米国の法人税制改正において、現在提案されているような形の国境調整措置が導入される可能性はかなり低下していると予想している。さらに、トランプ大統領や共和党は、国境調整により増加した税収を法人税率引き下げの原資にしようと考えていることから、法人税率引き下げも容易ではなく、トランプ大統領が主張する15%への引き下げの可能性は極めて低いだろう。

国内政治が順調に進まないと、国民の目を外に向ける必要が高まってくるかもしれない。米国では来週、14―15日のFOMCに加えて、15日には連邦債務上限凍結期間が期限を迎える。さらに、大統領予算教書が提出され、4月になれば財務省が半期為替報告を公表する予定だ。

連邦政府の資金繰りが怪しくなり、大統領予算教書も市場の期待に応えられないと、米政権は貿易相手国への批判を強めて国内の目をそらそうとするかもしれない。この観点から、実は7日に1つ重要なデータ公表が控えている。それは1月米貿易収支だ。

市場のコンセンサスは485億ドルの赤字、当社の予想も489億ドルの赤字だ。どちらにしても約5年ぶりの赤字額の大きさとなる。ドルは実効レートベースで見るとかなり割高になっており、これがじわじわと効いて今後も貿易赤字が拡大する可能性がある。そうなれば、当然、トランプ大統領の保護主義的姿勢も強まってくるだろう。

筆者は今回も昨年同様レンジは下抜けとなり、円高・ドル安基調が始まる可能性が高いと予想する。

*佐々木融氏は、JPモルガン・チェース銀行の市場調査本部長で、マネジング・ディレクター。1992年上智大学卒業後、日本銀行入行。調査統計局、国際局為替課、ニューヨーク事務所などを経て、2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行。著書に「インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?」「弱い日本の強い円」など。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

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Column | 2017年 03月 7日 13:51 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:
 
中国、経済減速で求められる労働力の流動化

Pete Sweeney

[香港 6日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国は経済成長の減速で、労働力の流動性を高める改革が必要になっている。政府は5日、今年の成長率目標を6.5%と昨年実績の6.7%より低い水準に設定。国内製造業の過剰設備削減計画も打ち出した。

その姿勢は素晴らしい。だが当局は都市部の失業率を4.5%未満に抑えたいと考えている。そこで、何か手を打つ必要がでてくる。

5日に開幕した全国人民代表大会(全人代)に提出された政府活動報告によると、政府は通貨供給量伸び率の目標を引き下げ、国有の「ゾンビ企業」の淘汰を進め、鉄鋼・石炭の生産能力を減らす方針だ。一方でそれによって構造的な失業を発生させないと約束し、むしろ昨年目標より100万人多い1100万人の新規雇用を創出すると表明した。

失業率の上昇を抑えるために、経済が低迷している地域の多くの当局は、国有企業から解雇された人たちを、実は必要とされていない低賃金の職に振り向けている。これはいつまでも続かない。中国版の「ラストベルト(錆びついた工業地帯)」にとどまったままの労働者は、もっと急速な成長を遂げている地域に速やかに移動させる必要がある。さもないと既に懸念すべき状況にある富の格差が一段と開いてしまう。

ガベカル・ドラゴノミクスのデータによると、労働力を送り出している貧しい省と、それを受け入れている豊かな省の賃金格差は2012年以降じりじりと拡大を続けている。

残念ながら職探しのための移動を抑える性格を持つ、中国の戸籍(戸口)制度は今も残っている。同時に失業者が大量に押し寄せる事態を懸念する地方政府は、流入規制強化に忙しい。

北京市と上海市は既に移住者歓迎の旗を降ろしており、市長は人口に上限を導入。移住者が経営する零細企業を摘発して閉鎖させたり、家屋の取り壊し、行政サービス利用拒否などに乗り出した。他の富裕な都市も追随するのは間違いない。

だが経済の不均衡を是正するなら、労働市場の不均衡も解消しなければならない。それはつまり労働者の地域的な分布を変えるという意味だ。労働者が自由に移動できるようになれば、失業が回避されるだけでなく、人件費が高い地域にある工場のコスト増大を阻止できる。人為的に移動の自由を制限することは、中国が望む消費主導の経済成長を促せないばかりか、貧困の緩和にも無益だ。中国は成長のスピードが落ちたものの、それでもまだ労働政策が十分に追い付いていない。

●背景となるニュース

*中国の李克強首相は、5日の全人代開幕時における政府活動報告で今年は6.5%程度の経済成長を目指す考えを示した。昨年の目標成長率は6.5─7%で、最終的に6.7%を達成した。過去最高の銀行融資額や投機的な住宅投資、多額の公共投資が支えになった。

*今年の通貨供給量伸び率の目標は12%前後に引き下げられ、財政赤字の対国内総生産(GDP)比の目標は変わらずの3%だった。

*昨年の銀行新規融資額は12兆6500億元と過去最高。また直近のデータでは1月の新規融資は2兆0300億元で過去2番目の大きさになった。

*政府活動報告によると、昨年の都市部における雇用は1314万人増加し、就職ないし起業した大卒者数は過去最高に達した。

*中国は今年、さらに都市部で1100万人の雇用創出を目指し、失業率を4.5%未満に抑え続ける意向。李首相は「この雇用創出目標人数は昨年より100万人多く、われわれが雇用を一段と重視していることを強く表している」と述べた。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

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東証大引け、3日続落 慎重姿勢続く 値幅は2カ月半ぶり小ささ
2017/3/7 15:35
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 7日の東京株式市場で日経平均株価は小幅ながら3日続落した。前日比34円99銭(0.18%)安の1万9344円15銭で終えた。6日の米株安を受けて投資家が運用リスクに慎重な姿勢を崩さなかった。海外投資家などによる小口の売りが続いた。日経平均への影響が大きいファストリやファナックの下げが目立った。下値には国内機関投資家の押し目買いが入り、下げ幅は限られた。日経平均の日中値幅(高値と安値の差)は57円99銭と2016年12月26日以来約2カ月半ぶりの小ささだった。

 日米の長期金利の上昇の勢いが鈍るなか、円は1ドル=113円台後半と、前日夕とほぼ変わらない水準だった。円相場の方向感の乏しさを反映し、輸出関連株は高安まちまちだった。

 非鉄金属、鉄鋼業、ゴムは軟調。半面、海運業や石油石炭製品、鉱業は堅調だった。

 JPX日経インデックス400や東証株価指数(TOPIX)はほぼ横ばいだった。

 東証1部の売買代金は概算で1兆9866億円と、前日に続き節目の2兆円を下回った。売買高は15億7596万株だった。東証1部の値下がり銘柄数は985、値上がりは841、変わらずは178銘柄だった。

 三菱UFJ、三井住友FGなどメガバンクが下げた。フジクラ、DOWAのほか、楽天、ディーエヌエが軟調だった。一方、宅配運賃の引き上げ観測の出たヤマトHDは上昇し、関連して宅配ボックスを手掛けるアルファも上昇した。3日発売の新型ゲーム機「スイッチ」への期待が根強く任天堂が上昇。国際石開帝石のほか、キリンHDなど食品株も堅調だった。

 東証2部株価指数は6日続伸し、終値は46.32ポイント高の5812.15と最高値を連日で更新した。シャープやマーチャントが上げた。半面、朝日インテク、フライトHDが下げた。〔日経QUICKニュース(NQN)〕
http://www.nikkei.com/article/DGXLASS0ISS16_X00C17A3000000/


 
新興株7日 ジャスダック18日続伸、マザーズは12日ぶり反落
2017/3/7 15:32
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 7日の新興企業向け株式市場で日経ジャスダック平均株価が前日比4円08銭(0.13%)高の3043円94銭と18日続伸した。2005年12月16日〜06年1月16日以来の連続記録となった。終値は連日で1991年7月3日以来、約25年8カ月ぶりの高値を更新した。セキュリティーソフトの販売拡大を評価した買いで大幅高となったアズジェントなど個別に材料が出た銘柄に買いが入り、相場全体を押し上げた。

 ジャスダック市場の売買代金は概算で593億円、売買高は1億659万株だった。アエリア、トレイダーズが上昇した。半面、Jエスコムやジシステム、セグエGは下落した。

 東証マザーズ指数は12営業日ぶりに反落した。終値は前日比9.33ポイント(0.86%)安い1071.12だった。利益確定の売りが優勢になった。モブキャスやレノバ、ITbookが下落した。一方でジーエヌアイやミクシィ、アカツキは上昇した。

 7日に東証マザーズ市場に上場したロコンド(3558)は10時23分に公開価格(1850円)を42%上回る2625円で初値を付けた。終値は2735円だった。〔日経QUICKニュース(NQN)〕
http://www.nikkei.com/article/DGXLASS0ISST2_X00C17A3000000/


 
ドバイ原油・7日午後、小幅続伸 54.10ドル前後
2017/3/7 17:10
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 原油でアジア市場の指標となる中東産ドバイ原油のスポット価格は7日、小幅続伸した。取引の中心となる5月渡しは前日比0.20ドル高い1バレル54.10ドル前後となった。安値で押し目を拾う動きが出やすくなっている。

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商品市況、ドバイ原油、原油、小幅続伸


商品概況 一覧
ドバイ原油・7日午後、小幅続伸 54.10ドル前後 (17:10)
商品15時15分 トウモロコシが反落 原油は続伸、上値は限定 (15:40) [有料会員限定]
商品11時30分 白金が続落、欧米株安が重荷 ゴムは反落 (11:43) [有料会員限定]
商品9時30分 原油が続伸、産油国の減産期待が支え 金は続落 (9:46) [有料会員限定]
ドバイ原油・7日午前、続伸 54.20ドル前後 (9:35)
シカゴ穀物概況・6日 (6:39)
NY商品、原油が小反落 米国の供給増を警戒 金は5日続落   (6:01)
ドバイ原油・6日午後、小幅反発 53.90ドル前後 (6日 16:39)
商品15時15分 ガソリンが反発 行楽需要の増加観測で (6日 15:38) [有料会員限定]
商品11時30分 金は下げに転じる、円高重荷 白金は高い (6日 11:41) [有料会員限定]
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDJ07H1B_X00C17A3QM8000/
http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/796.html

[原発・フッ素47] 関電、原発審査合格7基で値下げ攻勢に他社戦々恐々 動かぬ原発、東電など3社が技術協力 東電関連2社税減免 被災企業制度

 
関電、原発審査合格7基で値下げ攻勢に他社戦々恐々

2017年03月07日 06時00分更新
文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン)


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安全審査の合格を獲得した大飯原発4、3号機(手前から)。出力は両基共に118万kWと関西電力保有の原発の中で最大で、収益改善効果も大きい Photo:関西電力/JIJI
 関西電力が、暗く長いトンネルを抜けつつある。2月22日、関電大飯原子力発電所3、4号機が原子力規制委員会の安全審査に合格した。これで同社は保有する9基のうち、7基で安全審査の合格を獲得した。

 再稼働へ向けた審査は今後も続き、立地自治体の同意を得る必要もあるため、すぐに再稼働というわけではない。だが、大きなヤマを越えたことになる。

 関電は東日本大震災後に吹き荒れた反原発機運などお構いなしに、再稼働へ向けて経営資源を集中させてきた。それは、もともと電源に占める原発依存率が50%を超えるほど高かったこともあるが、再稼働の先に巨額の収益改善が見込めるからだった。大飯3、4号機の再稼働は、実に1カ月100億円もの収益改善効果をもたらす。

 だからこそ、関電は原発再稼働に執念を燃やしてきた。そのかたくなさは「原発と心中」とやゆされるほどだったが、今となっては妥当な戦略となってきた。

 というのも、再稼働できるかどうかの最終的な鍵は、今や原子力規制委員会の安全性に関する専門的な審査ではなく、各地方裁判所の裁判長が握るようになったからだ。原発に反対する住民は全国の地裁へ再稼働差し止めの仮処分を多数申請しており、関電高浜原発3、4号機は2016年3月の大津地裁での仮処分により停止した。

 裁判所が電力会社の主張を認めるかどうかは五分五分で、裁判長の判断は予測不可能。つまり、どれか1基でも再稼働にこぎ着けたい電力会社にとっては、審査に合格し、地元の同意も得た原発を1基でも多く手元に持っておいた方が、再稼働の可能性が上がるのだ。

 業界内では6基合格獲得がベストシナリオといわれていたが、それを上回る7基で合格を獲得した関電には、一足先に春が訪れたといっていい。

「7基は脅威」

 一方、他の電力会社は戦々恐々としている。関電は原発を再稼働すれば、電気料金の値下げに踏み切ると宣言しているからだ。

 関電は値下げできれば、電力自由化による激しい価格競争を有利に進めることができる。エネルギー政策が専門の橘川武郎・東京理科大学大学院教授は「電力供給エリアで隣接している中部電力や、ガス市場で競合する大阪ガスに対して攻勢に出るだろう」と話す。

 実際、ある業界幹部は「原発再稼働が進むのは業界としては歓迎だが、関電の7基は脅威」と漏らす。

 ただ、関電が忘れてはならないのは、根強く残る原発再稼働に反対する住民の声だ。1月に高浜原発で工事用大型クレーンが倒れ、2号機の建屋の屋根が壊れたが、こんな事態を招くようでは、地域住民や社会の理解は得られない。

 勝ってかぶとの緒を締めよ──。関電はこの言葉を自らに言い聞かせるときだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男 )

http://ascii.jp/elem/000/001/447/1447053/

 


 

 

動かぬ原発、苦肉の連携 東電など3社が技術協力
2017/3/7 16:49
保存 印刷その他
 東京電力ホールディングスと中部電力、北陸電力の3社は7日、原子力発電所の安全向上に向け技術協力する協定を結んだと発表した。営業地域が隣接するため事故対応などで連携しやすいほか、改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)と呼ぶ同タイプの原発を持つ特長を生かす。背景には多くの原発で稼働停止が長期化している現状がある。連携は人材やノウハウの維持、育成に向けた苦肉の策でもある。

 東電など3社はシミュレーターを使った原発の運転訓練を相互に実施して運転技術を高めるほか、情報交換を通じて関連する知見を共有する。事故発生時は状況把握や災害対策拠点の運営を支援するために技術者などを派遣。近隣住民の避難や放射線の計測などでも協力する。

 他の電力会社も既に同様の連携に取り組んでいる。関西電力は2016年、原発に加圧水型軽水炉(PWR)を採用する北海道や四国、九州の各電力会社と技術協力協定を締結。東電も東北電力と災害時の住民避難支援での協力を発表済みだ。経営の独立性を維持しながらも共通課題では手を組むものだ。

 中部電力がこういった協力関係を結ぶのは今回が初めてだ。東電は国から原子力を含む主要事業で他社との再編を迫られており、火力事業で提携する中部電は有力候補の一つとされる。今回の連携を将来への布石とみる向きもありそうだが、中部電は「あくまで技術・安全面の協力にとどまるものであり、経済産業省の有識者委員会で議論されているような原発事業の再編につながるものではない」と予防線を張る。政府が期待する再編劇はなお道筋がみえない。

(小倉健太郎)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ07HQI_X00C17A3000000/


 
 


2017.3.7 11:40
【東電福島第1原発事故】東電関連2社も税減免 被災企業向け制度を利用

 東京電力福島第1原発事故で被災した事業者向けの地方税の減免制度に、東電の関連企業2社が申請し、福島県に許可されていたことが7日、分かった。減税による県の減収分は、復興予算で穴埋めされる。事故を起こした側の関連会社が間接的に復興予算の恩恵を受けることに疑問の声も出そうだ。

 2社は「関電工」(東京都港区)と「東京エネシス」(東京都中央区)。昨年3月時点で、東電は関電工の約46%、東京エネシスの約24%の株式を保有し筆頭株主となっている。両社のホームページなどによると第1原発の廃炉作業にも携わっている。

 この制度は、原発事故時に避難指示が出た地域に事業所があった法人や個人事業主が対象。申請後、福島県知事の「確認書」を受けて制度の利用が可能となり、新たな設備投資の際に不動産取得税など地方税が減免される。県によると、両社とも確認書の交付を受けている。県の担当課は「(制度の根拠となる)法律に東電関連の会社を排除する規定はなく、制度の要件に合致するのであれば手続きをしている」と説明している。
http://www.sankei.com/affairs/news/170307/afr1703070016-n1.html


http://www.asyura2.com/16/genpatu47/msg/621.html

[原発・フッ素47] 福島原発廃炉 ようやく「登山口」にまで来た 避難指示7割解除=進まぬ住民帰還 20k圏内の動物を世話する 実現困難も税投
福島原発廃炉 ようやく「登山口」にまで来た
2017年03月07日 06時01分
 東京電力福島第一原子力発電所からの放射能放出のリスクは、大幅に低減している。

 東日本大震災から6年を迎え、事故の初期対応は、ほぼ終了したと言えよう。

 難関はこれからだ。政府・東電は、30〜40年間に及ぶ廃炉作業を着実に進めねばならない。

 事故の直後、核燃料が溶けて、原子炉内の温度は300度を超えた。現在は、外気温とほぼ同レベルにまで下がっている。再び核反応が起こる事態は考えにくい。

 作業員も、一時の7000人超から約6000人に減った。敷地の9割では、通常の作業服で行動できるようになった。

 危機的状況は解消されたが、溶けた核燃料を取り出す作業が控える。東電は、廃炉作業の「登山口」に来た、との認識を示す。

 まずは、原子炉内部の状況把握が不可欠だ。炉はどの程度壊れているのか。溶けた核燃料は塊の状態なのか、飛散したのか。

 調査は壁にぶつかっている。建屋内で極めて高い放射線量が測定され、容易に近づけない。原子炉内にロボットを投入しても、障害物に行く手を阻まれる。

 2号機では今年に入って、炉内の破損状況が辛うじて捉えられた。原子炉の圧力容器直下の床には、大きな穴が開いていた。核燃料が落下した痕跡とみられる。

 破損が深刻な1、3号機では、ロボットの投入さえ難しい。

 政府・東電は、2021年に核燃料取り出しに着手する計画だ。その手法を9月にも決める方針だが、データ不足は否めない。

 遠隔操作技術などのさらなる進歩が必要である。

 原子炉建屋への地下水の流入などで発生する汚染水の問題も、抜本的な解決には至っていない。

 汚染前の地下水を井戸からくみ上げる手法が奏功し、発生量は当初の1日400トンから100トン余に減った。地下水流入を止めるための凍土壁も、完成が近い。

 問題は、敷地内のタンクに保管されている大量の水の扱いだ。

 全体の約8割は浄化されている。浄化後の水には、海洋放出できる物質しか含まれていない。内外の原子力施設では、政府の基準に従って放出されている。地元の理解を得るため、政府・東電には丁寧な説明が求められる。

 福島第一原発の廃炉には、約8兆円を要すると試算されている。国を挙げて立ち向かわねばならない難事業である。政府が陣頭に立って、内外の知見や技術を結集することが肝要だ。

2017年03月07日 06時01分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20170306-OYT1T50113.html


 


 
避難指示、7割解除へ=進まぬ住民帰還−原発事故・東日本大震災6年

2015年9月に全域で避難指示が解除された福島県楢葉町の住宅地。民家の明かりはほとんど見られない=3月1日夜
http://www.jiji.com/news/kiji_photos/0170303at42_p.jpg

 東京電力福島第1原発事故で国が出した避難指示は、4月1日までに福島県内11市町村の対象区域の約7割で解除される。2014年4月以降、順次解除された5市町村の住民登録者計約2万人に対し、帰還率は13.5%にとどまる。意向調査からは、放射線被害への不安や生活インフラ復旧の遅れが帰還を阻んでいることが分かる。
「復興の浜へ−津波被災地のいま−」=福島県公式チャンネル〔PR〕

http://www.jiji.com/news/kiji_photos/20170303ax22.jpg

 15年9月に全域で解除された楢葉町は、今年1月末時点の住民登録者7276人(解除前日は7363人)に対し、居住しているのは781人にとどまり、戻ったのは高齢者が多い。夜になると、町内の明かりは街灯ばかりで、暗闇と静寂が広がる。同県いわき市に避難している60代の主婦は「古里だから帰りたいが、若い人が戻らない町で商業施設や医療機関が継続していけるか不安」と話す。
 復興庁などが継続的に実施している避難者の意向調査によると、昨年11月時点で「戻らないと決めている」人の割合は川俣町で31.1%、葛尾村で28.3%、南相馬市で26.1%に上り、若者ほど割合が高い。
 南相馬市や浪江町、富岡町、川内村などでは、戻らない理由として買い物や交通機関など生活環境の不備を挙げる人が多く、医療環境に不安を持つ人は、いずれも4割を超えた。南相馬市では「原発の安全性への不安」が54.8%。放射線量への不安も40.7%に上る。


http://www.jiji.com/news/kiji_photos/20170303ax24_p.jpg

 国や自治体は、人を呼び戻し、新規の定住者を迎え入れようと、商業施設や交通インフラなど生活環境の整備に力を入れる。4月に避難指示が解除される同県富岡町には、24億円かけて一時的な2次救急病院を開設する予定。事業者向けには財政支援や官民合同によるコンサルティングのほか、再生可能エネルギーやロボットなどの新産業を集積させる「イノベーション・コースト構想」を進めている。
 いわき明星大の高木竜輔准教授(地域社会学)は「避難先での現状の生活水準を元の場所で確保できない中では、すぐに戻ることはできないだろう。少なくとも避難を余儀なくされた時間の2倍は必要ではないか」と指摘している。(2017/03/07-14:50)
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http://www.jiji.com/jc/article?k=2017030700808&g=eqa


原発事故から6年、いまも20km圏内に取り残された動物たちを世話する人々
2017.03.07 ニュース

事故から6年が経っても、牛舎には餓死した牛の骨が多数散乱していた
https://nikkan-spa.jp/wp-content/uploads/2017/03/A7220.jpg

 ’11年の原発事故から6年間、警戒区域内に取り残された動物たちを撮り続けている写真家がいる。太田康介さん(58歳)だ。事故後、人間たちは辛うじて避難することができたが、自力で避難することのできないペットや家畜は置き去りにされ、その多くは餓死していった。

「当時、原発20km圏内には、牛が約3400頭、豚は約3万1500頭、鶏は約63万羽が取り残されていました。犬は登録されているだけで約5800匹でしたが、未登録の犬もかなり多かったと思われます。猫に至っては、その数はわかっていません」(太田さん)

 6年が経った現在の原発20km圏内には、その痕跡がわずかながら残っている。福島県富岡町のある牛舎には、餓死した牛たちの骨がいまだに多数転がっていた。柱には、腹を空かした牛たちが飢えをしのごうとかじった跡がくっきりと残っている。周辺の田んぼでは除染が行われていたが、この牛舎内だけは時が止まっているかのようだ。

 現在の20km圏内は除染が進められ、地震や津波で破壊された家屋も解体が進んでいる。この地域に、太田さんは東京から2週間に1度のペースで通い、猫の世話をしているという。

「まだ、世話が必要な猫が残っているんです。普通に餌を置いておくとアライグマや狸、猪などの野生動物に食べられてしまうので、猫だけが入れるサイズの『えさ台』を高所に設置しています」

⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1297843

「えさ台」を設置する太田さん。入り口を、ちょうど猫が入れるくらいの大きさに調整している
 現在、20km圏内は部分的に住民の帰還が進められているものの、戻ってきた住民の数は少ない。人間から餌をもらう動物である猫が生きていく環境は、整っていない状況だ。太田さんはボランティアと協力して、えさ台を置いてもらえるよう地権者に交渉しつつ、猫の数が増えすぎないよう去勢手術も行っている。(※太田康介さんの「えさ台」活動については個人ブログ「うちのとらまる」を参照)
→次ページ人間以外の動物はみんな被害者
人間以外の動物はみんな被害者

「牛は犬猫と違ってよく食うから、餌をやるのが大変だ」と語る松村さん
 原発から12kmの富岡町内で暮らし、犬や猫、牛や馬を保護している松村直登さんは、震災直後に街をさまよっていた動物たちを路上で捕まえて保護してきた。一時は近くのダチョウ園から逃げ出したダチョウも飼っていた。

「警戒区域に残った家畜は殺処分するって国が言うから、我慢できなかったんだな。俺が助けてやっからなと。ペットも餌やらねえと自分じゃ生きていけねえっぺ。人間以外の動物みんな被害者よ。人間が作るものに完璧なものはねえ。原子力が“夢のエネルギー”なんて嘘だったんだ」(松村さん)

『週刊SPA!』3月7日発売号掲載記事「[原発20km圏内]に残された動物たち」では、6年が経った原発20km圏内で、いまだ取り残されている動物たちの世話をする人々の姿をリポートした。

取材・文/北村土龍 写真/太田康介
https://nikkan-spa.jp/1297831?page=2


 

<原発からの請求書>(6)実現困難でも税金投入 高速増殖炉
2017年3月7日 朝刊

 Q もんじゅが廃炉になるといいます。いくらのお金が使われたのですか。
 A 三十六年間に一兆四百十億円が投入されました。成果を出すことなく、政府は昨年末、廃炉を決めました。廃炉費も三千七百五十億円に上る見通しです。
 Q なぜそんなことに。
 A 高速増殖炉は、「増殖」という言葉どおり、使った以上の核燃料をつくれるとされ、「夢の原子炉」ともてはやされました。政府は「資源の乏しい日本には必要」と力を入れてきましたが、一九九四年に稼働させた途端、冷却剤に使う爆発しやすいナトリウムが漏れる大事故に。その後も問題続きでほとんど運転できませんでした。より小規模で基礎的な「常陽」と合わせ一兆六千億円強が研究に費やされました。
 Q 費用はだれが負担しましたか。
 A 国民です。大手電力が運営する商用の原発の費用が電気料金を中心に集められているのと違い、研究用なので所得税や消費税などで集めた税金がほとんど。文科省が所管する「日本原子力研究開発機構」に予算投入されてきました。
 Q 政府は高速増殖炉はあきらめるのですか。
 A いいえ。政府は昨年末に経済産業省主導で次の研究に進み、後継機の開発を始めることを決めました。フランスの高速炉建設計画「アストリッド」への参加を決め、二〇一七年度予算で五十二億円を使う予定。研究者もフランスに送り込みます。増殖炉でないので、もんじゅが目指したように燃料が増えるわけではないが、実現すれば使用済み核燃料から出てくるプルトニウムを何度もリサイクルできる点は同じです。政府はフランスとの共同研究で得た知識を生かし、停止中の常陽も再び活用してデータを集め、実用化に近づいた「実証炉」の建設を目指すといいます。
 Q また税金の無駄遣いにならないか心配です。
 A 共同研究では仏が多額の資金を要求してくる可能性は大きい。経産省の言う通り新たに実証炉をつくるならば一兆円を超えるのは確実です。もんじゅの二の舞いになる心配はあります。
 Q なぜ日本は高速炉開発から撤退しないのか。
 A 米国、英国、ドイツなどは実現困難とみてすでに撤退しています。日本は、使用済み燃料をそのまま埋めるのでなく、全部リサイクルに回す政策を取っています。このためフランスなどの再処理工場に委託して使用済み燃料から分離したプルトニウムが四十七トンも国内にたまっています。
 プルトニウムは核兵器もつくれる物質なので米国など各国が日本を警戒しています。しかし、このプルトニウムは通常の原子炉では使えないため、高速炉が必要になっているのです。日本は「プルトニウムは武器でなく燃料」と言い続けるために、いくら見込みが薄くても高速炉に多額の国民のお金を使わざるをえない「自縄自縛」に陥っているのです。 (吉田通夫)
 原発政策と電気代についての疑問、意見をお寄せください。ツイッターからはハッシュタグ #原発からの請求書 をつけて投稿してください。メールは keizai@tokyo-np.co.jp ファクスは03(3595)6914


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[医療崩壊5] 「三兎を追うものは一兎をも得ず? − 追うべき二兎を考えるとき」総合商社の眼、これから世界はこう動く
総合商社の眼、これから世界はこう動く
2017年03月07日
第161回 「三兎を追うものは一兎をも得ず? − 追うべき二兎を考えるとき」

2月28日、トランプ大統領は上下両院合同本会議の演説において、医療保険制度改革法(オバマケア)を代替する医療保険システムを実現するための5つの原則を提示しました。実現が難しそうなもの、あるいは実現しても思うような効果が得られそうにないものもあり、米国の医療保険制度における諸問題を一気に解決するのは難しそうです。

オバマケアは、オバマ前大統領が当時約5,000万人とも言われた無保険者をなくすために主導し、2010年に成立、2014年以降に完全実施された制度です。これによって約2,000万人が医療保険に加入できたとされています。その一方で、健康状態の悪い低所得者の保険加入が増えた結果、保険金の支払いが急増し保険料の値上がりを招きました。また、未加入者は罰金(所得の2.5%)を課せられるのですが、保険料よりもずっと安いため、健康な人の中には罰金を払うことを選択し無保険のままという人もおり、このことがさらなる保険料の引き上げを招いたと見られています。オバマケアによってこれまで無保険であった人達の医療に対する「アクセス」は向上しましたが、「費用」の問題がより深刻になりました。

これに関連する興味深い考え方があります。1994年、ペンシルバニア大学の教授であった故キシック博士は著書(注1)の中で、ヘルスケアの鉄の三角形(The Iron Triangle of Health Care)という概念について述べています(図表1)。これは三角形の頂点に示した3つの要素:「費用の抑制(Cost Containment)」、「アクセス(Access)」、「質(Quality)」は互いにトレード・オフの関係にあり、1つの要素、あるいは2つの要素を改善できたとしても、それは残る1つの要素の犠牲によって成り立つというものです。オバマケアの導入前後の米国の状況を見ても、この概念は当てはまっているようです。

http://lounge.monex.co.jp/advance/marubeni/20170307_marubeni_graph01.jpg
20170307_marubeni_graph01.jpg

翻って日本はどうでしょうか。世界に誇る日本の医療制度、即ち「国民皆保険」「フリーアクセス」によって、米国に比べれば遥かに安い患者負担で、自分が行きたい病院で受診することができ、質についても高い評価(注2)を得ています。一見、上述の3つの要素が全て成立しているように思えますが、日本全体としての医療費は高齢化や医療技術の高度化などの理由によって年々増加し、さらに医療費を含む社会保障関係費に見合った負担がなされず、赤字国債でその場を凌ぎ次世代に負担を先送りしている状況です。上記の三角形に当てはめると、「アクセス」や「質」を優先していることで、「費用の抑制」が犠牲になっている状況と捉えられます。

いつまでも「費用の抑制」を犠牲としていて良いのでしょうか。少なくともその負担を将来世代に先送りすべきではありませんが、それは現時点における保険料や税金、あるいは患者負担の上昇を意味します。将来不安や消費の低迷を招く恐れがあり、慎重な対応を取らざるをえないでしょう。

そうなると、「質」か「アクセス」を犠牲にする必要が出てきます。しかし、「質」を犠牲にすることはヘルスケアにおいては文字通り致命的になる可能性があり、容易では無さそうです。「アクセス」の犠牲はどうでしょうか。重篤な疾患のケースにおいてアクセスが悪い状況は避けなくてはなりませんが、軽度の疾患での受診については、「鉄の三角形」の制約がある以上、一定のハードルが課されても致し方ないと筆者は考えます。米国は費用の問題が主ですが、社会保障制度が充実し、医療費の患者負担が極めて低いとされている北欧の国々であっても、低い費用負担で受診できる医療機関は予約を取ること自体が極めて困難なせいか、風邪程度の症状では診療所や病院に行かない(行けない)のが一般的な様です。日本においても軽度の疾患では保険適用外、それ以外のケースでも救急以外は診療所の受診を経なければ、病院などの専門的な医療にはアクセスできない仕組みを早急に導入するべきだと考えます。

2025年には、団塊の世代が全員75歳以上となり、日本の医療費は現在のおよそ40兆円から60兆円にまで急増することが見込まれています。上述の3つの要素を同時に成立させる方法が見つからないのであれば、それらの中で何を選んで何を犠牲にするのか、決めなくてはなりません。残された時間は多くありません。一刻も早い対応が望まれます。

(注1)KISSICK, W. L. (1994). Medicine's dilemmas: infinite needs versus finite resources. New Haven, Yale University Press(注2)OECD (2014). OECD Reviews of Health Care Quality: Japan - Assessment and Recommendations.

コラム執筆:近内 健/丸紅株式会社 丸紅経済研究所

■ 丸紅株式会社からのご留意事項
本コラムは情報提供のみを目的としており、有価証券の売買、デリバティブ取引、為替取引の勧誘を目的としたものではありません。丸紅株式会社は、本メールの内容に依拠してお客様が取った行動の結果に対し責任を負うものではありません。投資にあたってはお客様ご自身の判断と責任でなさるようお願いいたします。

前の記事:第160回 「クルーズ船が運ぶ地方の活力」 −2017年02月21日
http://lounge.monex.co.jp/advance/marubeni/2017/03/07.html
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[経世済民119] 世界経済見通しに大きな懸念、来年まで成長加速見込みでも−OECD ナショナリズムがリスク 日本の成長率引き上げ輸出増寄与
世界経済見通しに大きな懸念、来年まで成長加速見込みでも−OECD
Mark Deen
2017年3月7日 19:00 JST更新日時 2017年3月7日 19:38 JST

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• 18年は8年ぶり高成長へ、生産性の伸びは緩慢と指摘
• 保護主義と市場急変動の可能性が経済へのリスク

世界経済は貿易障壁の悪化や過熱した株式相場、起こり得る為替相場の急変動などに起因するリスクに耐えられるほど強くない恐れがあると、経済開発協力機構(OECD)が報告で指摘した。
  7日発表された世界経済見通しによると、2017年の成長率は3.3%と16年の3%から上昇し、18年はさらに加速して8年ぶり高成長に達する見込み。それでも、投資の弱さと生産性向上の遅さが理由で金融危機前の20年間の平均成長ペースには届かないとされている。
  チーフエコノミストのキャサリン・マン氏はインタビューで、「成長は加速するが、この回復の土台の弱さが非常に懸念される」とし、「生産性向上のペースは遅々としており、不平等はなくならない。こうした組み合わせの下では本格的な回復に必要な消費と投資の力強さを想定しにくい」と語った。
  名指しはしていないものの、OECDの懸念の幾つかは高関税導入などトランプ米政権の政策に関連している。OECDはまた、株式相場の強さはトランプ政権の景気刺激パッケージへの期待に基づいている部分があり、株価評価と実体経済の見通しに「ずれ」があると指摘した。
  OECDは為替相場の変動が急拡大する可能性にも言及。「リスクは直ちに顕在化しないかもしれないが、現実味のある可能性であり続けている。複数の大きな衝撃が互いに作用し合うことによって、回復を腰折れさせる恐れがある」と分析した。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ivxXehnzsSV4/v2/-1x-1.jpg

原題:OECD Sees a Lot to Worry About in the Global Economic Outlook(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-07/OMFTO26KLVR501

 
OECD見通し、世界経済緩やかに回復 経済ナショナリズムがリスク

[パリ 7日 ロイター] - 経済協力開発機構(OECD)は7日発表した経済見通しで、世界経済は緩やかに回復しているが、経済ナショナリズムと主要中央銀行の政策の分岐によるリスクがあるとの見解を示した。

世界の成長率見通しは今年は3.3%、来年は3.6%として前回11月と変わらずだった。

OECDのマン首席エコノミストは、米国の金利上昇による金融市場のボラティリティ―で一部の借り手に悪影響を与えるおそれがあり、ドル上昇にもつながる可能性があると指摘。「経済ナショナリズムも現時点ではどの程度政策に反映されるか分からず不確実な要素だ」と述べた。

同氏は米トランプ政権だけがナショナリズムを訴えているわけではないとしながらも、米国の輸入コストが10%増加した場合、国内経済を通じて輸出コストを15%押し上げるとのOECDの試算を示した。

多くの国で景気回復は緩やかになるとし、消費支出と企業投資が低迷するなか金融市場は経済実体から切り離されるとの見方を示した。

米連邦準備理事会(FRB)は着実に利上げすると見込まれ、為替レートの振れが見込まれるという。

米国の成長率見通しは、今年は内需を要因に上方修正、来年は下方修正したが、金利上昇とドル高の影響は政府支出が一部相殺されるとの見通しを示した。

英国はインフレ率上昇が消費・企業活動を圧迫するなか、欧州連合(EU)離脱が投資を抑制するとし、成長率は今年は1.6%(前回1.2%)、来年は1.0%(前回と変わらず)に鈍化するとの見通しを示した。

日本は財政面が成長を支えるとして今年の成長率見通しを上方修正した。

*内容を追加しました。

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http://jp.reuters.com/article/oecd-economy-idJPKBN16E14F

 
OECD、日本の実質成長率17年1.2%に上げ 輸出増が寄与
2017/3/7 20:37
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 【ジュネーブ=竹内康雄】経済協力開発機構(OECD)は7日、世界経済中間評価を公表した。日本の2017年の実質経済成長率を、16年11月の前回評価から0.2ポイント引き上げ、前年比1.2%になると予測した。円安で輸出や生産が増えているほか、積極的な財政政策が寄与する。

 世界経済は3.3%と前回から変えなかった。米国は0.1ポイント引き上げ2.4%、ユーロ圏は前回と同じ1.6%とした。中国は0.1ポイントプラスの6.5%。

 世界経済は米国や中国などを中心に財政拡大が見込まれるため、企業の経済活動を後押しし、世界の需要を増やすと解説。ただ原油価格や金利が上昇していると説明し、「経済の回復ペースは緩やかにとどまっている」と評価した。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF07H0H_X00C17A3EE8000/

http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/802.html

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貧困×認知症×暴力=「高齢者犯罪」拡大の現実

パラシュート無き落下の日本学 首都圏の今後

高齢化社会が直面する難題、見て見ぬふりはもうやめよう
2017年3月8日(水)
山本 一郎

 2014年12月4日、NHK『クローズアップ現代』で、高齢社会研究の関係者の間で大変ショッキングな内容の放送があり、話題になった。タイトルは「犯罪を繰り返す高齢者 〜負の連鎖をどう断つか〜」[1]。府中刑務所では高齢の犯罪者の受刑者が急増し、10年で2倍の400名になったという事実だ。家族がなく失うものもない高齢者が、犯罪を繰り返しては逮捕、収監され、刑務所で衣食住を満たすという負のスパイラルが報じられている。犯罪者の更生を政策レベルで考える上で、再犯率引き下げの実現を阻むものは「犯罪を犯すことで失うものがある」あるいは「犯罪を行わないことで安寧な生活を送ることができる」ことだ。こう考えられる状況にないか、考える能力がない高齢犯罪者の実態が詳らかになったことに多くの関係者は衝撃を受けた。

悲劇の主役は「取り残された人々」

 もともと、戦後の犯罪史的にも、世界的な犯罪動向でも、必ずしも高齢者による犯罪そのものが累犯率が高いものとは言えない。高齢になってから窃盗や寸借詐欺などを働いて検挙される人の初犯率は90年代までにかけてずっと高い割合で推移している。つまり、いままで犯罪には縁のなかった人が、高齢になって初めて犯罪に踏み込んでしまう傾向だ。むしろ、衝動的な犯罪や強盗・殺人など重度の犯罪はずっと若者が主たる割合を占めていた。この手の犯罪を抑え込むには若者の社会化を促したり、職業・家庭の安定といった、将来を見据えた居場所づくりを奨励していた。未熟な若者が「犯罪など犯さずとも幸福に暮らしていける良い環境づくり」を社会や地域、家庭、職場が一体となって行うことで、高度成長を背景に豊かであった日本社会は、若者による犯罪の抑え込みに成功したと言える。

 しかしながら、2000年代以降になると高度成長が終わり、失われた10年を経て日本経済自体の低成長が日本人の「未来に対する安心感」を損ない始めた。また人口構成上も急速かつ不可逆に進行する高齢化、少子化の影響を受けて、犯罪の年齢構成も徐々に変容していった。また、それまで明るみに出ることが少なかった高齢者同士の介護疲れからの殺人が増加。2000年の介護保険制度導入前の1998年には20件であった介護疲れによる殺人や無理心中事件が、2014年には42件と倍増。重大な刑事事案にはならない日常的な高齢者への虐待も問題視されるという意見が増えているが、水面下で具体的にどのくらい増えているかは現段階では分からない。また、介護する側の認知問題や経済困窮などの事由もあり、事情を加味し本人に反省があるなどとして、起訴されないケースも多数報告が上がるようになっている。高齢社会と言われて久しい日本において、むしろ繁栄から取り残された人々が高齢者の犯罪の主役になってしまっているのが実情と言えよう。

 法務省は2007年、高齢者と犯罪の関係についての研究文書『高齢犯罪者の実態と意識に関する研究』を発表[2]。その後も、重点的な再犯率抑え込み政策の主眼として10年間の取り組みにおける数値目標として、「刑務所出所後2年以内に再び刑務所に入所する者等の割合を今後10年間で20%以上削減する」ことを定めた『再犯防止に向けた総合対策』(2012年)[3]を策定。また2016年には「薬物依存者・高齢犯罪者等の再犯防止緊急対策 〜立ち直りに向けた"息の長い"支援につなげるネットワーク構築〜」を閣議決定[4]し、前面に打ち出している。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/022700044/022700001/hanzai.PNG

 浮かび上がるのは、窃盗など軽微な犯罪を繰り返しては摘発され続ける貧しい老人の姿だ。10〜20代のころから犯罪行為に手を染め検挙され続けそのまま歳を重ねて老人になるケースも一定の割合で存在する。一方、65歳以上になってから軽度の窃盗で検挙され、起訴されなかったものの二度目の窃盗で有罪判決を受けて以降、常習犯になっていくケースも少なくない。高齢者になってからの初犯が、累犯に進行する事例は目につく。いずれも犯罪を行ったことが周辺に知れ渡って社会から孤立し、さらに貧しくなって窃盗に走らざるをえなかったり、自力で生活する経済力がないため人生を諦めて刑務所のほうが快適だとまで述懐してしまう状態に陥ったりもする。

粗暴犯、認知症、マイナスのスパイラル

 また、2000年以降目立って増加しているのは高齢者の粗暴犯である。高齢者の刑法犯検挙人員に占める粗暴犯の比率や人数を見ると、1989年(平成元年)の高齢者の一般刑法犯6,625件のうち、殺人48件、強盗8件、障害141件、暴行48件だったのに対し、2014年(平成26年)はまず高齢者の一般刑法犯自体が約8倍の47,252件となった。その73%にあたる24,518件は比較的軽微なものも含む窃盗犯である。しかしながら、高齢者の殺人は192件、強盗117件、障害1,649件、暴行3,478件である。確かに高齢者自体が増えているとはいえ、人口比で見ても類型で見てもはるかに速いペースで増えてきており、粗暴犯が高齢者の刑法犯検挙人員の11.9%を占めているという状況は見逃せない。とりわけ、粗暴犯の代表格である暴行事案が高齢者において激増していることは、この四半世紀の間に高齢者における犯罪の類型や捉え方が激変していることの証左と言えよう。

 おそらく、都市型高齢化問題を考える上で現象として出てくるのは目に見える高齢者犯罪の数値だけではない。水面下の高齢者に対する虐待と、高齢者同士の対立による障害事件など、検挙に至らないため数字に出にくい粗暴犯であろう。高齢者絡みの生活相談件数の増加でとりわけ目立つのは長い企業勤めを終えて引退した団塊の世代前後が自宅で暮らすようになって、家庭内やマンション管理組合、電車・バスなどの公共交通機関で自分の思い通りにならずキレて暴力行為に及ぶ場合である。軽微なものであれば犯罪にはいきなりならず、家庭内であれば配偶者が我慢するなどしてなかなか表面化しない。地域に居場所を作ろうにも、それまで企業勤めに励む一方、地域行事に積極的に参加した経験が乏しい年代でもあり、住んでいる地元に接点が少ないのも特徴だ。1947〜1949年の3年間に生まれた団塊の世代だけで、現在806万人いる。1947年生まれであれば2017年現在70歳だ。これらの予備軍が、生物である人間が運命的に避け得ない認知症に一定の割合で陥ったとき、認知症による犯罪と社会はどう向き合うべきか考える必要がある。

 この問題で特筆すべきは、2015年に法務省が調査を実施した内容だ。高齢受刑者のうち、その刑期が短期か長期かを問わず認知症傾向があるとされる者は約17.2%、1,100人にのぼると見られる[4]。逮捕された時点で責任能力の有無を確認して起訴するかを判断しているはずが、起訴して有罪判決を受けて刑務所に入ったら中程度以上の認知症だった、という事例は事欠かないことを意味する。あるいは、軽度認知症レベルで責任能力ありとして起訴され有罪になって収監後に、それまでの生活が一変して一気に痴呆が進む場合もある。高齢者犯罪に対しては、「地域社会とつながった指導・支援を刑事司法の各段階において実施」とマイルドな表現に徹しているが、裏側に隠された意味は重い。それは、ふたつの意味で破壊的な作用を日本社会にもたらす。ひとつは、冒頭のNHKの番組でも問われている「帰るところのない、失うもののない老人」が起こす強いマイナスのスパイラル。もうひとつは、本人が健常ならば犯罪などするはずもない善良だった人が、加齢による判断能力の低下で「うっかり犯罪者になってしまう」ケースだ。

 高齢者による犯罪への考察では、現在の刑法において起訴され有罪とされるのは「責任能力のある人物に限る」という点は加味しなければならない。つまり、すでに認知症を発症してしまっている高齢者が行う犯罪への検挙は、かなりの割合が不起訴か、書類送検すらされないと見られる。認知症による心神喪失とされると、責任能力なしと判断され起訴猶予ではなく犯罪不成立となる。そして、その高齢者は問題を抱えたまま、家族や地域に帰されることになる。

疎外と貧困問題、地域定着支援に光明も…

 そして、高齢受刑者には必ずと言っていいほど、社会から疎外された貧困という問題がつきまとう。高齢者犯罪の実態研究では、明らかに社会に行き場のない事実に対する戸惑いや鬱積が浮かび上がる。「経済的に困ったとき助けてくれる人はいますか?」の問に対し、「いない」と答える高齢受刑者の割合は42.6%。「あなたの現在の生活で、悩みや心配事はありますか」と聞くと、複数回答で「健康がすぐれない」46.4%、「お金がない」34.5%、「仕事がない」30.9%、「借金がある」15.5%と続く[2]。健康を害し、働けなくなった老人が、助けてもらえる人もいない状況で生活費に困り犯罪を繰り返してしまう姿は、受刑者のインタビューからも垣間見えよう。

 この現実を受け入れる関連省庁、地域、自治体も政策的な対応に奔走している。厚生労働省では矯正施設退所者の地域生活定着支援(地域生活定着促進事業)[5]として、釈放後に必要な福祉サービスを受けることが困難となっている、高齢や障害を理由として釈放後の行き場のない人に対し矯正施設収容中から、矯正施設や保護観察所、既存の福祉関係者と連携する仕組みを構築している。その結果、2014年には受け入れ調整(コーディネート)された者が年齢の別を問わず1,396名、うち半分以上の752名がコーディネートされた受け入れ先である帰住地に入所した。

 このうち、再犯に及んだとみられるケースは確認できない。この良好な結果を見る限り、高齢者による犯罪については釈放後の居場所確保と、経済的な安定、活動での出番を準備することが再犯率を引き下げる大きな要因になっていることは理解できよう。高齢犯罪者は、原則として関係者の献身的な努力もあったうえで受け入れ先さえきちんと用意できれば、再犯率を効果的に引き下げることは可能だ、と評される。分類を細かく見ると、65歳以上の帰住者のうち、中度以上の知的障害を持つ者は355名中46名(12.9%)、精神障害を持つ者は355名中54名(15.2%)と一般社会における知的障害、精神障害の罹患率からすると格段に高い(平成28年度版『障害者白書』)[6]。

 また、帰住者分類の65歳以上のカテゴリーでは軽度認知症や精神的なものも含む障害を持つとみられる者も、355名中238名の中に入っている。社会から切り離され孤独に暮らしている高齢者が、人との関わり合いを絶たれて健常的な判断能力を喪失し犯罪に及ぶ場合も広く見られる。貧困や社会との断絶によって孤立した高齢者が犯罪に及ばないようにするには、家族単位、あるいは更生保護施設、グループホームなど孤立を避けるためのユニットを充実させていくことが重要だ。犯罪に立ち入らない精神的安定を企図したり、家族や高齢者同士の監視を行うことしか解決へと導く方策がないのもまた事実である。

 一方で、時系列でみた場合に完治のない不可逆の疾病でもある認知症については、ひとくちに人とのつながり、見回り、監視といっても馴染まない状況であることもまた多く見られる。独居老人が独居である理由として、性格、価値観、環境その他、一人で暮らすことを人生の経過の中で選択しているケースから、伴侶に先立たれて結果として独居になってしまうケースまで様々である。地域とのかかわり自体を持ちたがらないうえに、現在住んでいるところから離れたくないと希望する独居老人がどの省庁、自治体の調査でも過半である。東京都が実施した実態調査では、認知症が疑われる250名を対象に訪問による聞き取り調査を行ったところ、24.4%が「一緒に住んでいる家族はいない」と回答している(在宅高齢者実態調査 平成20年調査、平成21年発表)[7]。また、さいたま市の高齢者調査では、独居老人を示す単身高齢者率は12.9%と前回調査の3年前に比べて実数で36.6%増、単身率で18.3%増となっている(さいたま市高齢者生活実態調査 平成27年)[8]。

 さらに、「誰か近くに話をする相手はいますか」の設問に対しては高齢者のみの世帯がさいたま市平均で5.0%であるのに対し、単身高齢者は11.8%。「誰か近くに困ったとき頼れる方がいますか」では高齢者のみの世帯では9.3%に対し単身高齢者は15.0%である[8]。

 日常的なコミュニケーションから困ったときのちょっとした頼み事まで、孤立している高齢者のケアが必要だと再犯防止の観点から必要であると理解される。しかしながら、地域の見守りや声掛けがそこまではスムーズにいっていない現状が見て取れる。同様の状況は、千葉、神奈川でも散見される一方、その受け皿となるべき地域包括ケアの事業上の稼働状況は限界に近い。例えば、単純に活動している民生委員を地域で暮らす高齢者で除しても、もっとも低い行政区分でも150名近い生活者が活動・保護対象となる。民生委員法上、これら対象となる高齢者が介護保険の要介護認定されていれば、保護対象からは外れる。とはいえ、地域児童の安全やドメスティックバイオレンス対策など幅広い市民生活の護持を目的としているボランティア同然の民生委員にこれ以上多くを期待するのも困難と言えよう。

 この傾向は日本全体で普遍的に存在する高齢化社会の現象の一断面と相似形であって、東京都や各都市部の行政に問題があって独居老人が増えたと結論付けられるものではない。むしろ、高齢者の生活の実態を詳らかにしていく過程で、高齢者による犯罪を防ぐという必要な目的ひとつとっても、その犯罪動機の重要な一部である困窮や社会的孤立に対して適切な手段が充分には講じられていない、というのは特に重視されるべき点である。暮らしている高齢者に対して地域が適切に孤立対策をするというテーマは誰にも否定されるものではない。一方、その解決の道筋を政策的に実現するとなると、最終的な政策予算の裏付けもない善意のボランティアシップによらなければならないというのでは改善をすぐに期待できるものではない。

2030年、善意とやりがいでは乗り切れない

 また、認知症を患う日本人の破壊的な増加については次回に詳しく論述するが、高齢者犯罪による社会秩序の混乱を防ぐという意味合いを超える。つまり、日本全体がこれから空前の規模の認知症患者の出現とそれへの対応を迫られることになる。平成24年(2012年)時点での認知症を患う人の数は推定で462万人と見られるのに対し、その13年後の平成34年(2025年)には700万人を超えると予測されている(認知症施策推進プラン)[9]。その意味では、高齢者犯罪に対する再犯防止の考察は、来たる大量認知症時代を克服するための先導研究として社会的に切り離されている高齢者に対してどのようなアウトカムを目指す政策を打ち出していくのかを考える上で、極めて重要な知見を与えてくれるものと言えよう。

 極めて強いマイナスの要因は、経済的な低成長の常態化と国家の税収・財源不足、これに伴う予算の硬直化である。日本には、青天井の社会保障費を担い得るだけの財政的、人口的余力はもはやない。予算が維持できたとしても、これから激増する高齢者、とりわけ団塊の世代が2030年には後期高齢者入りをしたとき、一人当たりにかけられる社会保障費は一層減る。受け持つべき老人は増えるのに、受け止める福祉・介護の現場に落ちる予算が変わらなければ、現場の仕事量は増えるばかりだ。貧困や繋がりをカバーできるだけの民生委員、ケアマネージャー以下福祉や介護に携わる人たちの低待遇が公共サービスの質的低下を強く惹起し、一定の社会的な善意ややりがい、温かさを前提としてきた地域の受け入れ態勢が崩壊する懸念がある。

 さらには、日本社会における晩婚化や少子化の影響どころか、結婚そのものをしない未婚割合の増加とそれも価値観として許容する多様性を確保した結果、労働年齢を超えて仕事を離れたり趣味に費やせる可処分所得を失うと一気に社会から孤立する傾向に拍車がかかる。結婚しないという選択は現代社会における個人の責任と自由の範囲内であるが、若くて働けるころは良い。しかし、親の高齢化や自分自身が病気、怪我で働けなくなったとき、さらには自分自身が高齢者になったとき、高齢者犯罪の傾向として顕著な「話せる人がいない」「困ったとき頼れる方がいない」という身寄りのない、切り離された個人が大量に出現するという深刻な状況に直面することになる。若いころの選択として結婚しないと判断して独身を謳歌しながら、いざ親の介護や自身の病気・怪我、さらには高齢になって「こんなはずではなかった」という状況に陥る。結果として、これらの国民の救済は公的機関と地域で受け止めなければならなくなる。

 このような問題や見通しを踏まえて、変遷を続ける日本の社会観、家庭観、結婚観や老齢の親や兄弟、伴侶に対する介護の状況に合わせた「受け入れられる地域づくり」のビジョンが強く求められる。とりわけ所得の低い独身世帯の孤立について、高齢者になり身動きが取れなくなる前に防いでいかない限り、この問題は不可逆的に悪化していくことだろう。この高齢者犯罪の要因に貧困が結び付いたときでも、生活保護の状態に陥った独居老人を犯罪者予備軍とするわけにもいかず、地域との結びつきを強要する施策が実現できるわけでもない。実際、貧困に陥っても犯罪に手を染めることなく慎ましく暮らし一生を終える高齢者は96%以上であり、そのような善良に暮らしている高齢者を疑いに晒す必要はない。

 一方で、不幸にして認知症を患い街角や隣家の畑で窃盗や万引きをしてしまい摘発されてしまう老人や、生活的困窮に耐えられず万引きを犯してしまう老人の現状は、一歩間違えばどのような人物でも間違った判断に追い込みかねない。高齢者が高齢者同士を支え合う、家庭内の老老介護を地域や社会が一体となって共に暮らし、緩やかに老いるコミュニティーを形成するために何ができるのかを早急に模索するべき時期が来ていると言えるだろう。

都市部で増殖する「キレる高齢者」

 ここで改めて、都市型高齢化の懸案となる東京都の状況を整理する。東京都では、認知症を含む高齢者ケアに関する専門家会議や、続発する万引き対策についての検討会が多数開催されているが、東京都の高齢者犯罪に関する特徴、とりわけ伸び率の点では窃盗だけでなく暴行の割合が高くなっている。1992年(平成14年)に比べて12年後の2014年(平成26年)までの傾向を見ると、60歳以上の一般刑法犯のうち暴行がこれは東京都近隣県と比べても有意に高い傾向があり、実数で3.1倍。東京都に在住の65歳以上の高齢者は198万人(1992年)から94万人増の292万人であることから考えても、都市部特有の傾向として人口過密ゆえの粗暴犯の傾向が見て取れる。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/022700044/022700001/zaimei.PNG

 いわゆる「キレる高齢者」問題は、とりわけ都市圏で集中的に発生し認知されている。もちろん人口が多く認知件数が増えやすい傾向があるのは事実であり、地方と単純な比較はできないものの、粗暴犯の傾向として「見知らぬ人物とのトラブル」は状況認識をするうえで大事なポイントとなる。飲酒の有無は別として、鉄道など公共交通機関で駅員などに対する暴力事件の発生件数は2015年(平成27年)は792件と前年比8件減少したが、年齢別構成割合では60代以上が188件(23.8%)と全年代トップとなっている[11]。うち112件が東京都内で発生していることも踏まえて、都市部における高齢者犯罪への対策の在り方と、釈放後の再犯を抑え込む仕組みについて弾力的に考えていく必要があろう。

 これを踏まえて、次回は日本社会で破壊的に増加すると見られる認知症を患う老人と社会全体の構造について状況を整理し、考察を行う。

<参考リンク>
[1] 犯罪を繰り返す高齢者 〜負の連鎖をどう断つか〜 | NHK クローズアップ現代

[2] 高齢犯罪者の実態と意識に関する研究

[3] 再犯防止に向けた総合対策

[4] 薬物依存者・高齢犯罪者等の再犯防止緊急対策 〜立ち直りに向けた"息の長い"支援につなげるネットワーク構築〜

[5] 矯正施設退所者の地域生活定着支援(地域生活定着促進事業)

[6] 平成28年度版(2016年) 障害者白書

[7] 東京都在宅高齢者実態調査(専門調査) 平成21年度

[8] さいたま市高齢者生活実態調査 平成27年度

[9] 認知症施策推進プラン(新・オレンジプラン)

[10] 東京都 万引きに関する有識者研究会

[11] 鉄道係員に対する暴力行為の件数・発生状況について

このコラムについて

パラシュート無き落下の日本学 首都圏の今後
少子高齢化が進み、人口減少時代を迎えた日本。課題は多く、即効薬はない。しかし、手をこまぬいているわけにはいかない。パラシュートを付けずに落ちるに任せるわけにはいかない。まずはリアルなデータを基に現状を見つめ直すところから始めよう。例えば、声高に叫ばれる「地方の衰退」だけでなく、「首都圏の老朽化」も深刻だ。貧困、孤立がもたらす「高齢者犯罪」などもまた、暗い影を落とす。もう、浮かび上がってきた難題から目を背け、やり過ごそうとするのはやめよう。打つべき手を、打つために。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/022700044/022700001
http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/810.html

[不安と不健康18] 骨の老化防止「牛乳を飲むだけでいい」は間違いだった!
【第7回】 2017年3月8日 阿保義久 [北青山Dクリニック院長]
骨の老化防止「牛乳を飲むだけでいい」は間違いだった!

高齢化社会では、姿勢の保持や移動がままならなくなる老化現象に悩む人が急増しています。ここで注目される「骨と筋肉」は体を支える骨格器、身体を動かす運動器という役割にとどまらず、生きた器官として全身の臓器と密接に関わっていることが最近注目されています。さらに、心臓・血管・脳と同様に骨や筋肉の老化も40代からゆっくりと進行していくことがわかってきました。
今回から2回連続で「骨と筋肉」を取り上げ、骨と筋肉の若々しさを保つことが全身のアンチエイジングにおいていかに重要なのか、また、その方法について解説します。(北青山Dクリニック院長 阿保義久)

40代から骨と筋肉の老化現象が始まる


骨量と質の改善は、同時に全身の健康管理にも繋がります
 内臓脂肪の蓄積により糖尿病、高血圧や動脈硬化などの生活習慣病が誘発されるメタボリックシンドローム(メタボ)は皆さんよくご存じでしょう。

 対して、「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」と呼ばれる加齢による運動機能の低下を表す言葉はあまり馴染みがないのではないでしょうか。また、ロコモの状況が悪化し、筋力低下と抑うつや認知機能の低下により社会生活を営めなくなる現象を表す「フレイル(虚弱)」という概念や、加齢に伴い筋肉量の低下を表す「サルコペニア」という用語もあまり知られていないと思います。

 これら、「ロコモ」、「フレイル」、「サルコペニア」は骨や筋肉の老化を象徴するキーワードになります。

 ロコモ、フレイル、サルコペニアは、加齢に伴う骨や筋肉の老化によって引き起こされる状態をそれぞれ異なる視点から捉えたものです。いずれも40代から徐々に進行し、徐々に健康で快適な生活を送れなくなるばかりか、社会性も喪失して要介護の状態に陥ってしまいます。こうした人が年々増えていることから、これらの言葉はしばしば注目されるようになってきました。

 骨や筋肉の老化を阻止するためには、40代から正しい知識を身につけて老化を予防する生活習慣を心がけることが大切です。今回は、骨の仕組みをご説明し、骨の強化方法をお伝えします。

骨の役割は体を支えるだけではない
全身とネットワークでつながっている

 骨には、姿勢を維持し内臓を守る役割があります。しかし、骨の重要な役割はこれだけではありません。

 まず、全身を巡っている「血液をつくる」ことが骨の大切な仕事の一つです。骨の中心部にある骨髄には血液の生産を司る造血幹細胞が豊富にあって、赤血球、白血球、血小板はここで作られます。赤血球は全身の細胞に酸素を運ぶ機能、血小板は止血機能、白血球は異物や外敵を除去する機能があります。すなわち、骨(骨髄)がしっかりと働かなければ、全身の細胞は生きていけず、出血は止まらず、また自己を守る免疫も働かないことになります。

 さらに、カルシウムを主とした「ミネラルを貯蔵しその出し入れをコントロールする」ことも骨の重要な役割です。骨は、生命活動を営むのに極めて大切なカルシウムを管理しています。

 体内にあるカルシウムの99%が骨や歯に存在し、残りの1%が血液や体液に含まれますが、血液中のカルシウムの量を常にほぼ一定の濃度に保つために骨が重要な役割を果たしています。

 血液中のカルシウムは筋肉の収縮や弛緩をコントロールしたり、生命活動の情報を伝達したり、血液や体液のpH(酸・アルカリバランス)を調節しています。これが不足するとカルシウムが骨から血液に溶け出し、必要がないカルシウムは血液から骨に取り込まれて、血液中の濃度が一定になるよう巧みに調節されています。その調節に関わるのがカルシウムの貯蔵庫たる骨なのです。

 他にも骨の細胞は、心臓血管、膵臓や胸腺などの臓器の代謝にも影響を与え、肥満・糖尿病・脂質代謝異常・動脈硬化などにも関係することがわかっています。骨が全身の代謝調節に重要な役割を担っているのです。

 骨は体を支え内臓を守るだけではなく、それ自体が一つの臓器として全身の各臓器とネットワークを構築していることになります。ですので、骨の老化は全身に影響を及ぼしてしまいます。

骨量だけではなく質が大切
「糖化」は大敵

 骨の老化現象を表すのに、骨密度や骨量という概念がしばしば用いられます。骨密度が低下すると骨粗鬆症という骨がもろく折れやすくなる病気に罹ることが知られています。

 骨密度を増やすには、骨の主原料であるカルシウムの摂取が重要なのは言うまでもありません。しかし、単にカルシウムを大量に摂取しても骨の中にカルシウムは蓄積されません。

 既に触れたように、カルシウムは骨と血液・体液の間を行き来しているのですが、その出し入れを巧みに調節しているのがマグネシウムです。マグネシウムがなければ骨の中に十分なカルシウムが取り込まれません。骨粗鬆症を防ぐにはカルシウムの摂取に加えて十分なマグネシウムの摂取が必要です。

 骨密度は、骨の形成に必要なこれらカルシウムやマグネシウムなどのミネラルの量を測定しているのですが、骨の健康状態や若々しさを評価するためには骨の密度や量だけではなく、その質が大切であるということが注目されています。

 骨の質を決める要素として最も重要なのはコラーゲンです。コラーゲンはカルシウムやマグネシウムなど骨を構成するミネラルを結ぎ合わせる働きがあります。骨内にコラーゲンがしっかりと行きわたっていなければ、例えカルシウムやミネラルが豊富(骨量が豊富)でも、もろく折れやすい骨になります。

 そして、骨の質を決めているコラーゲンの質も重要です。コラーゲンの質は、タンパク質と体内の余分な糖が結びつくことによっておこる「糖化」によって悪化します。糖化は代表的なタンパクの一つであるコラーゲンを悪化させるのみではなく、あらゆるタンパク質を変性・劣化させます。そして、身体のほとんどはタンパク質でできているので、糖化はコラーゲンの質すなわち骨の質の悪化のみではなく、体中のあらゆる臓器、特に脳や血管を侵すことも知られています。糖化を防ぐことが、骨や体のアンチエイジングの重要なポイントと言えます。

「牛乳を飲むだけでいい」は間違い
骨の量を増やし、骨質を良くする食材・栄養分

 骨の量と質を改善するために食事の工夫が有効です。積極的に摂りたいビタミンと、悪影響を及ぼす「糖質」について挙げておきます。

(1)マグネシウム

 骨の量、密度を決める主原料はカルシウムですが、カルシウムの吸収や体内での適切な分布をサポートしている重要な成分がマグネシウムで、カルシウムだけではなく同時に十分なマグネシウムの摂取が大切です。

 カルシウム不足を補うために有効と知られる乳製品には、実はマグネシウムがあまり含まれていません。カルシウム摂取を心掛けて牛乳などを積極的に摂っている人でも、マグネシウムが不足していることが指摘されています。カルシウムとマグネシウムを合わせてしっかりと摂取するためには、大豆製品や海藻類、キャベツ・ブロッコリーなどを食するのが望ましいようです。

(2)ビタミンD

 また、ビタミンDは、骨を作るビタミンとも呼ばれ、血液中のカルシウム濃度を一定に保つ働きがあります。ビタミンDは、イワシ、鮭、サンマなどの魚やキノコ類に豊富に含まれます。また、日光刺激により皮膚で体内のビタミンDが活性化されるので、過度の紫外線刺激は避けつつも適度に太陽光にあたることも大切です。

(3)ビタミンK

 ビタミンKは、骨に含まれるオステオカルシンというタンパクを活性化させてカルシウムとの結合を促し骨の形成を進めます。ビタミンKの摂取源としては、レタス、納豆、青菜、海苔、ニラなどが挙げられます。

(4)ビタミンC

 代表的なビタミンであるビタミンCは、骨密度を高めることが以前から知られており、骨の質を決めるコラーゲンの合成にも不可欠です。骨の量、質、両方の改善にビタミンCは有効です。

(5)「糖質」に注意

 一方で、コラーゲンの質を悪化させるのが、ホモシステインという物質と前述の糖化です。ホモシステインはビタミンB群や葉酸が不足すると増加してしまいます。豚肉、牛レバー、菜の花、枝豆などの摂取で、ビタミンB群や葉酸は補充できます。糖化は、急激な高血糖によって誘発されます。糖質の摂り過ぎと運動不足は厳禁です。ホモシステインや糖化は、血管の老化現象である動脈硬化の危険因子でもあります。

 興味深いのは、骨の健康のために必要な栄養管理は、同時に全身の健康管理にも繋がることです。ビタミンDには抗がん作用や免疫力増強効果があり、ビタミンCは抗酸化作用など様々な疾患の予防に関わり、ホモシステインや糖化を管理することは、血管の老化を防ぐことにもなるのです。全身とネットワークでつながっている骨の特徴がこの点でも示されていると言えます。

 次回は「筋肉」について詳しく取り上げたいと思います。
http://diamond.jp/articles/-/120409
http://www.asyura2.com/16/health18/msg/429.html

[原発・フッ素47] 事故から6年、原子炉内の一部明らかに−福島第一廃炉作業は前途多難  
事故から6年、原子炉内の一部明らかに−福島第一廃炉作業は前途多難
占部絵美
2017年3月8日 07:50 JST
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A Japanese flag flies in front of buildings in Tokyo, Japan, on Monday, Sept. 28, 2015. Prime Minister Shinzo Abe's campaign to reflate the economy received another blow Friday, with data showing the Bank of Japan's main inflation gauge dropping into negative territory. Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg
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線量の高い2号機へのロボット投入は目的達せず、廃炉費用8兆円に
汚染水対策は正念場、たまり続けるトリチウム水の処分法が課題に
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東京電力・福島第一原子力発電所の事故から6年が経過し、原子炉内部の状況がロボットによる調査でようやく明らかになりつつある。ただ、格納容器内の放射線量の高さは調査を阻み、廃炉で最大の難関とされている溶け落ちた燃料(デブリ)を取り出すことの難しさを浮き彫りにしている。
2号機内で立ち往生したサソリ型ロボット
2号機内で立ち往生したサソリ型ロボット Source: International Research Institute for Nuclear Decommissioning (IRID)
  東京電力ホールディングスは今年に入り、炉心溶融(メルトダウン)を起こした福島第一原発1−3号機の中で格納容器内の放射線量が最も高いとされる2号機に東芝製ロボットを投入した。核燃料を収納していた圧力容器の下の足場につながるスロープを掃除するロボットは高い放射線量の影響で約2時間でカメラが故障。続いて投入した調査用のサソリ型ロボットはスロープ上に堆積するゴミに足を取られ、目的の圧力容器の下に到達せずに止まってしまった。
  一連の調査で格納容器内の状況が一部明らかになり、圧力容器から約4メートル離れた位置で毎時210シーベルトという放射線量を確認した。東電HD原子力・立地本部長代理の岡村祐一氏は「外に影響を与えずに仕事ができたという点で非常に大きな成果があった」と語るが、今夏に決定するデブリの取り出し方針の策定に必要な情報は十分得られておらず、2号機のさらなる調査予定は明らかにしていない。
  今月、2号機よりも格納容器内の水位の高い1号機にはワカサギ釣りのようにカメラを水中に垂らす日立GEニュークリア・エナジー製ロボットでの調査が予定されており、さらに水位の高い3号機向けに投入する東芝製の水中遊泳ロボットは今春完成する。
  圧力容器内にあった1号機の燃料はほぼ溶け落ち、圧力容器全体を覆う格納容器の底のコンクリート(厚さ2メートル)を50−60センチメートル侵食している可能性があり、2、3号機の燃料はある程度圧力容器内に残っていると推定されている。東電HDはロボットを活用して実際のデブリの形状や詳細な位置を把握する予定だ。
凍土壁は99%以上凍結
  デブリの取り出しでは、格納容器に水をためて行う方式と空気中で行う方式の二つが検討されている。水中方式は、米スリーマイル島原発事故で用いた既存技術を応用でき、原子力規制委員会の田中俊一委員長は水で放射線を遮蔽(しゃへい)して取り出すのが理想的と推奨する。ただ1−3号機の格納容器が全て破損しており、冷却のための注水が汚染水となって外に流れ出ている状況だ。高放射線下で穴の大きさや場所を特定し、補修するためにもさらなるロボット開発は必要となる。
デブリ処理が難航する福島第一原発
デブリ処理が難航する福島第一原発 Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg
  東電HDの中長期ロードマップによると、初号機でデブリ取り出しを開始する2021年度より前に建屋内の水を抜いて除染することを計画している。格納容器から漏れ出ている冷却水と建屋内に流れ込む地下水からなる汚染水のうち、地下水流入を減らす切り札として導入された凍土壁はまだ効果を発揮していない。16年3月に凍結を開始した凍土壁は1−4号機を取り囲む全長1500メートルの99%以上が凍結したものの、凍結前と変わらず毎日300トンの汚染水がタンクにたまり続けている。
  東電HDの岡村氏は、凍土壁を完全に凍結して地下水を遮断し、建屋周辺の水位を急激に下げると、相対的に水位の高くなった建屋内から汚染水が外に流れ出す懸念があるため、未凍結箇所を残していると説明。年度内をめどに建屋内外の地下水位をコントロールするためのくみ上げポンプを増強し、規制委の凍結許可を待っている状況だという。
トリチウム汚染水
  この間も汚染水はたまり続け、福島第一原発の建屋内や約900基のタンクに計約100万トンの汚染水が存在し、このうち放射性物質除去装置をもってしても除去が困難なトリチウムを含む汚染水が7割を占める。東電HD執行役員の内田俊志・福島第一原発所長は、「トリチウムを取り除くことはできないので、増える汚染水は何らかの処理をしていかなければタンクを造り続けなければいけない」と頭を抱える。
  東電HDの原子力事業を外部の視点で監視する原子力改革監視委員会委員長のデール・クライン氏は、トリチウム汚染水を海洋に放出すべきだと指摘している。膨大な数のタンクにためておくと漏えい事故の可能性が高まるため、水で薄めるなど濃度をきちんと管理した上で放出する方が良いとの考えだ。
  政府は有識者会合を通じてトリチウム汚染水の処分方法について地層注入や海洋放出など五つの選択肢をまとめ、さらに別の有識者会合でこれらの処分方法の社会的影響について風評被害、被ばく評価などの観点から専門家に意見を求め、最適な方策を探っている。
チャレンジ
汚染水貯蔵タンク
汚染水貯蔵タンク Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg
  デブリの取り出しや汚染水対策と平行して、東電HDが取り組む使用済み燃料の取り出し作業は、定期点検中でメルトダウンを免れた4号機の1535体が14年に完了したのみ。3号機からの取り出しは作業員を守るための除染に時間がかかり、18年夏にずれ込む見通し。高い放射線に阻まれ少しずつ遅れる作業工程は、30−40年で完了する廃炉計画の長期化や廃炉費用がさらに膨らむ可能性を高める。8兆円とされている廃炉費用は、電気料収入を主とする東電HDの利益から捻出される。
  6年経過してもなお全容を把握できていないデブリを取り出す廃炉計画を継続するよりも、旧ソ連チェルノブイリ原発のようにコンクリートで覆う石棺化が経済的ではないかという問いに対し、東電HDの岡村氏は、デブリを建物で長期間閉じ込めるのは、「正しい保管の仕方ではない」と断言。より安全性の高い廃炉の完遂に向けて「われわれはチャレンジしていく。時間はかかるかもしれないが」と述べた。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-07/OM6YLZ6K50XU01
http://www.asyura2.com/16/genpatu47/msg/627.html
[経世済民119] 「伝統スタイル」の連続利上げ、米当局開始へ 株一斉売に身構えるHF危険水域 米消費信用残、伸び最小 京都の寺で運用NO1
「伝統スタイル」の連続利上げ、米当局開始へ
ガンドラック氏 John Gittelsohn
2017年3月8日 09:59 JST 更新日時 2017年3月8日 11:28 JST
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年内2、3回の利上げをガンドラック氏は見込む
米10年債利回りは今年、最終的に3%に向けて上昇すると予想
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米金融当局はインフレと経済成長の加速に伴い、一連の利上げを開始する公算が大きい。投資会社ダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック最高経営責任者(CEO)が、こうした見方を示した。
  債券ファンドのダブルライン・トータル・リターンを運用するガンドラック氏は7日のウェブキャストで、「連続した米当局の行動パターンが始まるだろう。ほぼ伝統スタイルだ」と述べた。
ガンドラック氏
ガンドラック氏 Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg
  米連邦公開市場委員会(FOMC)は来週、フェデラルファンド(FF)金利誘導目標を0.25ポイント引き上げると見込まれている。米経済の勢いが強まる中で今年初の利上げに踏み切りそうだ。イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長は先週、景気が順調に進めば、年内に追加利上げがあることを示唆。トランプ大統領誕生を正しく予想した数少ない資産運用担当者であるガンドラック氏(57)は、年内2、3回の利上げを予想するとも語った。
  
  同氏によれば、米当局は歴史的に「潮目が変わるまで」利上げを続けてきた。近い将来のリセッション(景気後退)をダブルラインとしては見込んでおらず、株式の上昇相場は利上げに伴い終わりを迎える可能性があるとの見方も同氏は示した。
  今年の米10年債利回りについては、短期的に2.25%を下回る水準に下がるが、「その後は3%に向かって上昇すると思う」と語った。さらに株式相場について、「われわれが予想するように年央に米国債利回りが上昇し始めれば、それに屈する形になるだろう」とも付け加えた。
  ガンドラック氏は1月のウェブキャストで、トランプ政権の1期目の終わりまでには米国債利回りが6%に達する可能性を指摘しており、7日もこの予想を繰り返した。同氏のこの日の他の助言内容は以下の通り:
欧州の債券・株式投資は避けた方がよい
割安なアジア株購入を−特に日本株とインド株
金利上昇の環境では、銀行ローン債権や米インフレ連動債の購入を
原題:Gundlach Predicts ‘Old School’ Fed Will Do Sequential Hikes (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-08/OMGY8U6KLVRB01

 
株一斉売りに身構えるヘッジファンド、バリュエーションが危険水域
Dani Burger
2017年3月8日 02:52 JST
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• 米銀と卑金属を減らし、金を買い
• 経済指標はセンチメントに追いついていない
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米株の時価総額は今年に入り1兆5000億ドル(約171兆円)増大した。しかしヘッジファンドは先行きを警戒している。
  2017年の売買動向を見ると、運用者らは上昇を見込むポジションを積み上げなくなった。クレディ・スイス・グループがまとめたデータによれば、運用会社は景気動向に敏感な銀行株や銅などの資源を売っている。その代わりに買っているのは金だ。
  ヘッジファンドが米株、特に金融株へのエクスポージャーを過去最高付近に高めた昨年12月後半とは様変わりだ。
  ヘッジファンドとの取引があるアルファ・セオリーのベンジャミン・ダン社長によれば、これはある意味、銀行株の長期上昇を受けて利益を確定した安全戦略にすぎない。同時に、ポジションのシフトは政策変更と景気改善のペースに関する疑問を反映したものだ。
  「多くのヘッジファンドとの対話で聞こえてくるのは『今は本当に先が見渡せない』ということだ。ソフトデータは良好だがハードデータが追いついていないため、様子見の姿勢が多い」とダン氏は述べた。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ibl3dRZisMsM/v2/-1x-1.png
原題:Hedge Funds Gird for Stock Selloff as VALUations Rattle Nerves(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-07/OMGCHCSYF01S01

 

 
米消費者信用残高:1月は88億ドル増−12年7月以降で最小の伸び
Vince Golle
2017年3月8日 05:39 JST

1月の米消費者信用残高は2012年7月以降で最小の伸びとなった。回転信用が減少した。
  米連邦準備制度理事会(FRB)が7日に発表した1月の消費者信用残高は、前月比で88億ドル増加した。増加幅はブルームバーグが実施した調査での最も低い予想も下回った。前月は148億ドル増だった。

  クレジットカードなどの回転信用は38億ドル減。前月は36億ドル増加していた。
  学資ローンや自動車ローンといった非回転信用は126億ドル増。前月は112億ドル増だった。
  統計の詳細は表をご覧ください。
原題:Consumer Borrowing in U.S. Posts Smallest Gain Since July 2012(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-07/OMGONHSYF01S01

 


京都の寺で運用界イチロー目指す、ヘッジファンドGCIが資金も
伊藤小巻
2017年3月8日 00:01 JST 更新日時 2017年3月8日 10:34 JST
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A Japanese flag flies in front of buildings in Tokyo, Japan, on Monday, Sept. 28, 2015. Prime Minister Shinzo Abe's campaign to reflate the economy received another blow Friday, with data showing the Bank of Japan's main inflation gauge dropping into negative territory. Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg
10−12月GDP年率1.2%増に上方修正−市場予想は下回る
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GCIが17日に京都ラボを開設、大学院生らを集め資産運用の研究
実用性のありそうなモデルにはシードマネーを提供、実際に運用も
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東京の騒がしさから離れた京都市の平安神宮近くにある明道寺。ヘッジファンドのGCIグループはこの寺を改装し、資産運用の研究や世界トップレベルのファンドマネジャー育成に向けた「京都ラボ」を17日、立ち上げる。
  庭石を配し、こけむした中庭を眺める本堂を利用した広間には、木製の大きな机が置かれている。大学院生ら研究者を集め、GCIのファンドマネジャーやアドバイザーの大学教授らと議論。人工知能(AI)などを駆使した運用モデルや理論を構築し、実用に耐えられそうなモデルは、GCIの自己資金を使って実際に運用を試みる。
京都ラボを訪れたGCIグループ創業者の山内英貴氏
京都ラボを訪れたGCIグループ創業者の山内英貴氏 Photographer: Komaki Ito/Bloomberg
  GCI創業者の山内英貴氏(53)は、日本では「メジャーで活躍するイチローのようなトッププレーヤーが存在しないと運用力が強くならない」という。最前線で働く金融のプロと金融工学や情報工学の研究者が融合する京都ラボは、トッププレーヤー育成の「最短距離になり得る」と強調する。
  長引く超低金利で年金や生保などが運用難に陥る中、1750兆円の個人資産の効率的な運用は重要な課題。金融庁も「資産運用の高度化」を重点施策の1つに掲げる。日本橋・兜町を拠点に東京を国際金融センターにする構想もあるが、山内氏はデータ処理を繰り返すモデル運用の開発には「ノイズと欲望が多すぎる」として、京都の古寺を選んだ。
  日本では金融分野での産学協同は遅れているのが実情。立命館大学理工学部の足立高徳客員教授は、米国の大学は企業のデータを存分に使って成果を挙げているのに対して、「日本はアカデミアの理論は進んでいるが、大量のデータを使うことが必要な最近の研究では企業に比べて貧弱なデータでしか検証できていない」と話す。京都ラボは「科学的に取引作法を研究しようという若者に、実践につながる環境で研究機会を与えている」と評価する。
トップレベルの運用者
  GCIグループは東京大学経済学部との産学協同を通じて、トップレベルの運用者を育成した実績がある。東大大学院経済学研究科で金融システムを専攻しながら、インターンとして実務に携わった山本匡氏がその一人。現在は同社でクオンツ運用しており、その運用戦略は2016年に30.51%のリターンを上げた。
  英調査会社プレキンによると、山本氏が運用するファンドの運用成績(2016年)の世界ランクはシステマティック運用部門で4位、マクロ戦略部門で10位 。山内氏は京都ラボで「そういう人材を出していきたい」と語る。
旧臨済宗明道寺を利用した京都ラボ
旧臨済宗明道寺を利用した京都ラボ Photographer: Komaki Ito/Bloomberg
  研究者との共同チームのほかに、金融工学やITの専門的知識のない一般参加者(最大10人)のチームも発足させる。20代から60代と年齢も職業もばらばらなこのチームは、個人向けに投資教育活動している野川徹氏が率いる。同氏は「人生経験があるほど面白いロジックができるし、若い人からは常識にとらわれないアイデアが出てくる」と、思わぬ着想に期待している。
  学術環境の整った京都という地の利も人材育成に適しているという。京都府には34の大学があり、人口10万人に対して1.3校の割合で、人口の1.3%が学生といずれも全国1位。外国人も多く、山内氏は「若くて有能なグローバルな人材を引きつけ、伝統と創造性が一緒になって魅力的」と話す。
シードマネー
  半年から1年程度で実用化の可能性があると判断された運用の理論やモデルについては、GCIキャピタルの自己資金を元手(シードマネー)として実際にテスト運用する考え。シミュレーション通りの運用が確認できれば、GCIアセットマネジメントのマルチ戦略の1つに組み入れたり、ファンド化する可能性がある。
  
  米国の公的年金や財団などでは新規設立ファンドに対して、一定条件下で当初の運用資金を預ける「新興運用者育成プログラム」が一般的だ。山内氏は、運用者育成には「開発したモデルを動かす環境とシードマネー」が必要という。それでも1年に1個、本当に使い物になるものができるかどうかという。
  孤児だった主人公が悪役レスラー養成機関「虎の穴」にスカウトされて覆面レスラーとして活躍するアニメ「タイガーマスク」になぞらえて、山内氏はこう言う。「これは資産運用版の虎の穴のようなプロジェクトだ」。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-07/OLPSYB6S972P01
http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/819.html

[国際18] トランプ米大統領、共和党のオバマケア代替法案を支持−保守派は酷評廃案へ アジア各地で火種まく北朝鮮、トランプのジレンマに
トランプ米大統領、共和党のオバマケア代替法案を支持−保守派は酷評
Billy House
2017年3月8日 09:34 JST

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複数の共和党系団体、オバマケア撤廃に力不足と批判
トランプ大統領:ライアン下院議長案を支持することは「誇り」

米下院共和党が打ち出した医療保険制度改革(オバマケア)代替法案をトランプ米大統領は支持する考えを表明したが、保守派は酷評しており、1人の共和党上院議員は下院を通過できても上院に送付されたと同時に廃案になると指摘した。
  トランプ大統領は7日、ホワイトハウスで下院共和党議員らに同法案の支持を呼び掛けた。同大統領は共和党が長年掲げる公約の集大成だと同法案を擁護するライアン下院議長と緊密に協力する姿勢を示した。
  ライアン下院議長は同日午後に記者団に対し、「トランプ米大統領に感謝したい。大きな仕事をするのは容易ではないが、われわれは公約しており、その公約を果たしていく」と言明した。
  トランプ大統領は下院共和党指導部との会合で、新たなプランを支持することは「誇り」だと述べ、米国民が「医師や保険プランを選択できる。良い医療だと呼べる」と語った。
  だが、こうした共同戦線は同案に対する党内の激しい批判に弱められている。ランド・ポール上院議員は同案を「オバマケアを薄めたもの」にすぎないと一蹴。一部の下院共和党議員らは「共和党の福祉給付金制度」を創設することになると批判した。さらに、保守派グループは「ライアンケア」と名付け、「公的医療制度の焼き直し」にすぎないと指摘した。
  プライス米厚生長官は7日にホワイトハウスで記者団に対し、同法案が患者と事業主の支援を目指す「プロセスの始まりだ」と述べるとともに、反対する保守派とも協力して取り組んでいく姿勢を示した。
原題:Trump Enters Obamacare Spat as Conservatives Savage GOP Plan (2)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-08/OMGXE76K50XS01


 


アジア各地で火種まく北朝鮮、トランプ米大統領のジレンマに
David Tweed
2017年3月8日 03:22 JST
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A Japanese flag flies in front of buildings in Tokyo, Japan, on Monday, Sept. 28, 2015. Prime Minister Shinzo Abe's campaign to reflate the economy received another blow Friday, with data showing the Bank of Japan's main inflation gauge dropping into negative territory. Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg
10−12月GDP年率1.2%増に上方修正−市場予想は下回る
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金正恩氏との対話にオープンだったトランプ氏、オバマ路線に傾く
北朝鮮、真の狙いは交渉か−専門家
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マレーシアの殺人、中国の抗議デモ、日本に向けたミサイル試射−。
  このすべてが北朝鮮にたどることができる。金正恩・朝鮮労働党委員長がトランプ米大統領の反応を引き起こそうと挑発しつつ、アジアの緊張をあおっている姿勢も浮き彫りにする。経済制裁や懐柔策、軍事的な圧力、この全てを持ってしても暴走を止めることができない北朝鮮に対し、トランプ氏や習近平・中国国家主席をはじめとする世界の指導者の対応が問われている。
朝鮮中央通信が7日公表した、朝鮮人民軍が発射したとされるミサイルの未確認写真
朝鮮中央通信が7日公表した、朝鮮人民軍が発射したとされるミサイルの未確認写真 Source: KCNA via KNS via AFP/Getty Images
  トランプ大統領は当初、金正恩氏との対話に後ろ向きではない姿勢を示していた。だが最近では、核開発の放棄なしには交渉はあり得ないと主張したオバマ前政権の路線をなぞりそうな様相だ。
  トランプ大統領にとって、北朝鮮問題の重要度はオバマ時代と比べて上がっているかもしれない。米本土に届く核弾頭搭載可能な大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発で、北朝鮮の技術に進歩が見られるからだ。挑発の手を休めていた北朝鮮が最近相次いで国際社会を騒がせているのは、米国を交渉の席に着かせ譲歩を引き出すことを狙った金正恩氏流のやり方なのだろうと、複数の専門家はみている。
  ソウルの延世大学で中国地域を専門とするジョン・ドルーリー准教授は、「おとなしくしていても意味がなく、行儀を良くしても米国には影響しないと北朝鮮は判断した」と分析。それでも「北朝鮮は交渉を望んでいるのだと思う」と述べた。
  北朝鮮の言動はかつてないほど切迫感を増している。AP通信によると、同国の国連大使は安保理に向けた書簡で、3月初めに始まった米韓軍事演習について朝鮮半島と北東アジアを「核の惨事」に向かわせるリスクを冒していると非難した。
  ただ、金正恩氏は殉教者として終わりを迎えるよりも、生存して権力の座にとどまりたいはずだと、トロイ大学講師でソウルを拠点とするダニエル・ピンクストン氏は述べた。
原題:Kim Jong Un Lights Fires Across Asia, Raising Dilemma for Trump(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-07/OMGF7W6KLVR501
 



http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/532.html

[経世済民119] 英ポンド、対ドルで6週ぶり安値−PMIで景気減速懸念が強まる 英上院がEU離脱法案の修正可決、下院で再審議−政府は否決へ
英ポンド、対ドルで6週ぶり安値−PMIで景気減速懸念が強まる
Anooja Debnath
2017年3月3日 20:47 JST

10−12月GDP年率1.2%増に上方修正−市場予想は下回る
東芝株4600万株をブラックロック貸し出し−市場は空売りに利用か
日経平均下げ100円超す、輸出や素材安い−米大統領つぶやき医薬品も
「伝統スタイル」の連続利上げ、米当局開始へ−ガンドラック氏

3日の外国為替市場でポンドがドルに対し6週間ぶり安値を付けた。経済指標で2月のサービス業の拡大ペースが5カ月ぶりの低水準だったことが明らかになり、英経済が1−3月(第1四半期)に減速した可能性が高まった。
  ポンドは主要通貨に対しほぼ全面安。対ドルでは6日続落し、メイ首相が単一市場へのアクセスを犠牲にして立法権の回復と移民制限を優先させる方針を示した1月17日以来の水準まで売り込まれる場面もあった。
  IHSマークイットがこの日発表した2月の英サービス業購買担当者指数(PMI)は53.3と、1月の54.5から低下。低下幅はエコノミストが予想した以上だった。総合PMIも予想に届かなかった。PMIは50が活動拡大・縮小の分かれ目。
  コメルツ銀行の為替ストラテジスト、トゥ・ラン・グエン氏は、「欧州連合(EU)離脱をめぐる不透明性に英経済はこれまで抵抗力を示してきたが、これが持続可能ではないとの投資家の懸念が強まった」とし、「これがポンドを圧迫しているのは明らかだ」と語った。
  ポンドはドルに対し前日比0.3%安の1.2228ドル。一時は1.2215ドルまで下落した。ユーロは対ポンドで0.7%高の0.8622ペンス。

原題:Pound Slumps to Six-Week Low on U.K. Services Slowdown (Correct)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-03/OM8L136TTDS201/articles/2017-03-03/OM8L136TTDS201


英上院がEU離脱法案の修正可決、下院で再審議へ−政府は否決目指す

Tim Ross、Alex Morales
2017年3月8日 11:39 JST
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離脱交渉の結果を議会に諮ることを義務付ける修正などが加えられた
与党保守党から否決の阻止に動く造反議員の数が今後の焦点となる
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英上院は7日、欧州連合(EU)離脱手続き開始のためにリスボン条約50条を発動し、離脱の通告を行う権限をメイ首相に与える法案について、修正案を賛成366、反対268の賛成多数で可決した。下院での再審議が13日にも始まる。
  EU離脱通告法案は無修正で下院を通過したが、上院では在英EU市民の権利保障に加えて、離脱交渉の結果を議会に諮り、「重要な意味を持つ採決」を議会が行うことを義務付ける修正が加えられた。離脱合意の条件が十分に好ましいものではないと判断される場合には、政府に再交渉を求める権限を議会に認めるもので、メイ首相がこれまで警告してきたようにEU側の提案が意に沿わない場合に合意が成立しないまま交渉を打ち切ることも議会の承認がなければできなくなる。
  メイ政権は下院で修正案の否決を目指すが、与党保守党内で否決の阻止に動く構えを見せる議員がどの程度の数に上るかが今後の焦点となる。先月の下院の採決では7人の議員が造反した。閣僚経験者でもあるボブ・ニール下院議員は5日にBBC放送に対し、拘束力を伴う採決を議会に保証する上院の修正案を支持する可能性があると語った。
  保守党の下院での過半数は17議席分にとどまり、少数の与党議員が造反しても修正案の否決が阻止されることがあり得る。
原題:U.K.’s May Faces Fresh Brexit Battle After Lords Rewrite Bill(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-08/OMH3Z16TTDS501
http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/820.html

[国際18] トランプ氏、実はロシア大使と昨年4月に面会−当時の報道示す 大統領副報道官は先に選挙期間中の接触は皆無と説明
トランプ氏、実はロシア大使と昨年4月に面会−当時の報道示す
Justin Sink
2017年3月8日 12:17 JST
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大統領副報道官は先に選挙期間中の接触は皆無と説明
面会は短時間で実のあるものではなかったとホワイトハウス当局者
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ホワイトハウスのサンダース大統領副報道官は3日、ドナルド・トランプ氏が2016年の米大統領選期間中にロシア当局者と関わったことは「皆無」だと記者団に明言した。しかし、実際には昨年4月、ロシアのキスリャク駐米大使とワシントンで会っていたことが当時の報道から分かる。
  昨年5月13日付の米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)の記事によれば、トランプ氏は4月27日、ワシントンのメイフラワー・ホテルでの外交政策に関する演説に先立ち、要人レセプションの際にキスリャク大使と面会していた。
  この記事には、トランプ氏は「レセプションに訪れたキスリャク氏と他の3人の外国大使を温かく迎えた」とある。トランプ氏はその直後に行った演説で、「ロシアとの緊張緩和と関係改善」は可能だと語っていた。
  ホワイトハウスの当局者はこの面会について、わずかな時間で実のあるものではなかったと指摘。トランプ氏がレセプションに出席したのは5分ほどで、複数の外国大使がその場にいたと説明した。
原題:Trump Met Russian Ambassador During Campaign at Speech Reception(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-08/OMH51B6JTSE801
http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/533.html
[医療崩壊5] 東京大学の処分で見えた最高学府の凋落 臭いものには蓋、正直者は徹底懲罰・・・ 
東京大学の処分で見えた最高学府の凋落 臭いものには蓋、正直者は徹底懲罰・・・

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2017.3.8(水) 上 昌広
モルヒネに代わる「副作用のない」鎮痛薬を開発か、研究
仏パリで撮影された錠剤〔AFPBB News〕
 3月3日、東京大学は研究不正に対する処分として分子細胞生物学研究所(分生研)の加藤茂明・元教授ら4人を懲戒解雇相当、1人を諭旨解雇相当とすることを発表した。

 東大は2014年に発表された調査委員会の報告書の中で、「学生らへの強圧的な態度や指導」が不正の背景と糾弾している。

 懲戒解雇は6段階ある懲戒処分で最も重い。加藤元教授は退職金の一部を返還したという。

 「相当」とつくのは、加藤元教授たちが既に引責辞任しており、東大が処分を下す立場にないからだ。

東大の処分に世間の違和感

 読売新聞の取材に対し、加藤元教授は「到底承服できるものではありませんが、不服申し立ての手段はありません。道義的責任は痛感しており、その責任は果たしたつもりです」とコメントしている。

 このコメントを読めば、「加藤元教授は反省が不十分のようだ」と感じる方が多いだろう。ところが、実態は異なる。マスコミは報じないが、医師や医学研究者の中には、東大の処分に違和感を抱く人が少なくない。実は私もそうだ。

 私は、東大が今回のような処分をすれば、研究不正に対する隠蔽体質を助長しかねないと思う。その理由は東京大学の不正を働いた研究者への処分がダブルスタンダードになるからである。

 確かに、加藤元教授の研究室は組織ぐるみで研究不正を行っていた。その意味で加藤元教授の責任は甚大だ。

 ただ、彼がどの程度不正に関与したかは不明である。調査委員会も、加藤元教授が直接指示したとは認定していない。強制捜査権がない調査委員会でやれることには限界がある。

 しかしながら、加藤研の複数のグループの中で、不正を指摘されたのが特定の個人に集中していたことは、加藤元教授が直接不正を指示しなかった可能性を示唆する。

 ところが、加藤元教授は自ら責任を取った。加藤研究室の研究不正が指摘されたのは、2011年末だ。研究不正に詳しい「11jigen」氏は、2012年1月10日に論文24本の疑義についての申し立てを関係者に送った。

 加藤元教授が東大を依願退職したのは、2012年3月末である。加藤元教授は、筆者に対し「一目見てアウトだと思った」と言う。

 辞職後は、両親の故郷である福島の被災地で、若手医師や看護師の研究指導や子供たちの学習指導に従事してきた。彼に指導を受けることが評判となって、福島の被災地の病院には若手の医師や看護師が集まっている。

 加藤元教授の活動は、あの「フライデー」ですら「論文ねつ造で辞めた東大教授、福島で(反省)ボランティアの日々」という好意的な記事を掲載している。

 加藤元教授は、福島の方々からも温かく迎えいれられている。ご興味のある方は、南相馬市で学習塾を経営する番場さちこ先生の文章をお読みいただきたい。

東大の研究者では珍しい潔さ

 実は、東大の研究者で、これほど「潔い」教授は珍しい。多くは問題を起こしても、自ら責任を認めることはなく、教授の地位にしがみつく。

 例えば、血液・腫瘍内科の黒川峰夫教授のケースだ。2013年末、白血病治療薬の医師主導臨床研究に、ノバルティスファーマ(ノ社)の社員が不適切に関与し、患者の個人情報を無断でノ社に渡していたことが判明した。

 メディア報道によれば、ノ社から医局への奨学寄付金以外に、2013年度だけでもノ社から黒川教授個人に148万円の金がコンサル料などの名目で渡っていた。

 がんの治療歴という患者の個人情報を無断で営利企業に渡していたことは、基礎研究のデータ改竄・捏造などとはレベルが違う問題だ。知人の弁護士は「刑法の守秘義務違反に抵触する可能性が高い」という。

 もし、同じことを金融業や流通業がやったらどうなるだろう。社長の辞任は避けられず、おそらく刑事事件になるだろう。このケースでも企業側の対応は迅速だった。ノ社では関係した日本人幹部すべてが更迭された。

 ところが、黒川教授に対する東大の処分は、文書による厳重注意だけだ。黒川教授は、現在も東大教授の地位に留まり、大学生や若手医師を「指導」している。そして、日本血液学会では理事こそ務めていないものの、「教育委員会」の委員として学会員への教育を担当している。

 東大医学部は、この手の話について枚挙に暇がない。

 昨年8月14日および29日付で6つの研究室から発表された22報の論文に不正の可能性があることを指摘された。現在、東大は調査を実施中だ。

 告発された教授6人中、5人が医学系研究科の教授だ。この告発の真偽は調査結果を待つしかない。

 ただ、告発された教授の中には「前科」がある人もいる。その1人が小室一成・循環器内科教授だ。彼が千葉大在職中に主任研究者を務めたノ社の降圧剤を扱った臨床研究に研究不正の疑いがかけられた。

 千葉大学の調査によれば、調査した108例のデータのうち、収縮期血圧の45%、拡張期血圧の44%に誤りがあったという。約半数のデータに誤りがあるなど、常識的に考えられない。

約半数のデータに誤りもオネストエラー

 日本高血圧学会は昨年8月に、この研究について紹介した2010年の論文を撤回すると発表した。

 一方、一連の疑惑に対し、小室教授は「オネストエラー(誠実に行った上の誤り)」とコメントしている。

 日本高血圧学会と小室教授の言い分の何れに説得力があるかは言うまでもない。もし、小室教授の言い分が正しく、半分をミスしてしまうなら、そのような医師は教授はもちろん、医師免許も返納した方がいい。

 東大は、この件について処分しなかったし、日本循環器学会は昨年3月に小室教授を代表理事に選出した。

 小室教授は今年60歳を迎える。東大は60歳定年で、それ以降は最高65歳まで、1年ごとの定年延長だ。私は、東大医学系研究科の教授会が、どのような対応をするか興味を持っている。

 門脇孝教授(糖尿病・代謝内科)の研究室の論文への不正疑惑も説得力がある。ご興味がある方は、サイエンスライターの託摩雅子氏の記事「論文不正の告発を受けた東京大学(2)その解析方法の衝撃」をお読みいただききたい。

 彼女は、この文章の中で以下のようにコメントしている。

 「キリの良い日だけに死んでいくマウスや、別の2つのデータの平均値とぴったり一致するデータ、繰り返し現れる特定の数値のエラーバー、グラフ全体が破線などは、本当に実験が行われていたのかさえ、疑問が生じてくる」

 「しかし、ベクトルデータでないと解析できず、今回のような手法が使われることがなければ、おそらくその不自然さにまず気づかないだろう」

 私は、この指摘には説得力を感じる。もちろん、門脇教授が直接手を下したとは思わない。日本の医学界の権威である彼が、そんなことをするメリットがないからだ。

東大の対応はダブルスタンダード

 ただ、彼は、今回の告発に対し、昨年9月の米国のサイエンス誌のインタビューに答えて、「全く根拠がなく、匿名者による誤った告発」とコメントした。加藤元教授の対応とは対照的だ。

 私は東大の調査委員会が、このベクトルデータの不正疑惑について、どのような調査結果を発表するか、その際に門脇教授がどのような対応を取るか関心を持っている。

 私は、東大の加藤元教授への対応と、医学系研究科への教授の対応はダブルスタンダードだと思う。自ら引責辞任した教授が、退職後も懲戒解雇される一方、頬被りを続けている教授が、現職にとどまり、学会において出世していくのは誰が見てもおかしい。

 今後、東大の研究者は、不正があった場合に頬被りをした方がよいと考えるだろう。正直に言った方が、メディアで批判され、懲戒解雇され、退職金も貰えなくなるのだ。誰も、こうはなりたくない。

 ただ、こんなことを続ければ、東京大学への信頼は失われてしまう。現に、加藤元教授が苦渋の思いで依願退職することで、分生研は新しいスタートを切ることができた。

 一方、医学系研究科は「疑惑の医学部」のままだ。いま、東大に必要なのは、オープンな議論と公平な処分だ。東大幹部の矜持が問われている。

ismedia
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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49367
http://www.asyura2.com/16/iryo5/msg/565.html

[経世済民119] 1月の経常黒字89%減8カ月ぶり減少、貿易赤字 GDP上方修正も予想以下 アベノミクス役割終え円高 日銀最重要は金利制限


1月の経常黒字89%減8カ月ぶり減少
2017/3/8 10:40日本経済新聞 電子版
保存その他
 財務省が8日発表した1月の国際収支統計(速報)によると、海外とのモノやサービスなどの取引状況を示す経常収支は655億円の黒字となり、前年同月に比べて88.9%減少した。黒字額が前年同月を下回るのは8カ月ぶり。原油価格の上昇で輸入額が増え、貿易収支が1年ぶりに赤字に転じたことが要因だ。


 経常黒字は31カ月連続だった。貿易収支は8534億円の赤字となり、赤字額は前年同月に比べて2倍近くに拡大した。1…
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS08H0P_Y7A300C1MM0000/



経常黒字、17年1月は前年比9割減 貿易赤字で2年半ぶり低水準


[東京 8日 ロイター] - 財務省が8日発表した2017年1月の国際収支速報によると、経常収支の黒字額は前年同月から約9割減の655億円と、2年半ぶりの低水準だった。日本の正月や中国の春節を前に輸出を控える動きが広がった。貿易収支は1年ぶりに赤字に転じた。


経常収支が前年同月を下回ったのは昨年5月以来8カ月ぶり。黒字額としては15年1月の992億円を下回り、赤字だった14年6月以来の水準となった。


経常黒字が大幅に減少した背景には、正月休みなどの季節要因に加え、原油価格の上昇に伴う輸入の増加がある。


石油連盟によると、原油価格は円ベースで前年同月を40.5%上回った。経常収支のうち、貿易収支は8534億円の赤字だった。
http://jp.reuters.com/article/current-account-jan-idJPKBN16F013



 



Business | 2017年 03月 8日 02:18 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース


 独財務相「経常黒字は競争力反映」、トランプ政権の批判退け


[ベルリン 7日 ロイター] - ショイブレ独財務相は7日、ドイツの経常黒字は国内企業の競争力の高さが要因であり、為替操作の結果ではないとの認識を示し、対独貿易赤字に関する米国の批判を退けた。外国人記者に対し述べた。


トランプ米政権で新設された国家通商会議のナバロ委員長は前日、650億ドルに上る米国の対ドイツ貿易赤字は極めて困難な通商問題の1つとし、欧州連合(EU)の制約の外で赤字縮小に向けた2国間協議が必要との認識を示した。同氏はこれまで、ドイツが過小評価が著しいユーロを利用することで貿易で有利な立場を得ているとの見解も示している。


ショイブレ財務相は「われわれが(為替)操作によって黒字を達成しているとは誰も主張できない」とし、ユーロ相場は欧州中央銀行(ECB)の管轄だと述べた。


さらに金融危機の教訓を忘れてはならないとし、20カ国・地域(G20)で金融規制強化に向けた一段の取り組みを求めると指摘した。トランプ米大統領は金融規制改革法(ドッド・フランク法)の見直しを指示しており、貿易赤字に加え、金融規制でも米国と異なる立場を鮮明にした。


また17─18日に独バーデンバーデンで開催される20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に先立ち、来週16日にムニューシン米財務長官と会談することを明らかにした。14日にはワシントンで、メルケル独首相とトランプ米大統領が会談する予定。
http://jp.reuters.com/article/germany-g20-schaeuble-0307-competition-idJPKBN16E2B3




 




 



 


 


Business | 2017年 03月 8日 02:39 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース
保護主義・通貨切り下げ反対、G20声明草案から削除


[ブリュッセル 7日 ロイター] - 17─18日に独バーデンバーデンで開催される20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の共同声明草案から、保護主義や競争的な通貨切り下げに断固として反対するとの文言が削除されたことが分かった。草案をロイターが入手した。


これまでは「あらゆる保護主義に反対する」としていたが、草案では「公正で開かれた国際通商システムを維持する」となっている。


また「競争的な通貨切り下げを回避し、競争目的で為替をターゲットとしない」との文言が消え、「従来の為替相場のコミットメントを再確認する」となった。


今回は保護主義的な通商政策を掲げるトランプ米大統領の就任後初のG20財務相・中央銀行総裁会議で、米政府の新たな立場を反映し文言が変更されたもようだ。


さらにG20共同声明は長年にわたり「為替相場の過度なボラティリティーや無秩序な動きは経済や金融安定に悪影響をもたらす恐れがある。為替相場について緊密に連携する」との文があったが、これも今回の草案には含まれていない。


事情に詳しい当局者は「草案で保護主義への言及がないのは変だ」とし、「全員が合意できる最低ラインなのだろう」と話す。


米国内の雇用拡大を目指すトランプ大統領は、米市場に輸入されるドイツ車に対し35%の国境税を課すなどと発言。今年G20議長国を務めるドイツの政財界では、トランプ氏の保護主義的な政策に警戒が強まっている。


一方、トランプ米政権で新設された国家通商会議のナバロ委員長は6日、650億ドルに上る米国の対ドイツ貿易赤字は極めて困難な通商問題の1つとし、欧州連合(EU)の制約の外で赤字縮小に向けた2国間協議が必要との認識を表明。同氏はこれまでに、ドイツが過小評価が著しいユーロを利用することで貿易で有利な立場を得ているとの見解も示している。
http://jp.reuters.com/article/g20-draft-protectionism-frx-idJPKBN16E1ZB



 




 



 
実質GDP改定値、年率1.2%増に上方修正 設備投資上振れ


[東京 8日 ロイター] - 内閣府が8日発表した2016年10─12月期実質国内総生産(GDP)2次速報値は、前期比0.3%増(1次速報値0.2%増)、年率換算1.2%増(同1.0%増)に上方修正された。ロイターの事前予測調査では、中央値が前期比0.4%増、年率1.6%増だった。


上方改定に寄与したのは民間設備投資。財務省の法人企業統計を反映させた結果、1次速報値の前期比0.9%増から同2.0%増に上振れた。業種別では不動産や建設などが上方改定要因だった。


個人消費も前期比0.01%減から同0.04%増へと若干の上方修正となった。自動車や衣服が寄与した。


一方、民間在庫の寄与度は0.1ポイント減から0.2ポイント減に下方改定された。


名目GDPは前期比0.4%増、年率1.6%増。1次速報では前期比0.3%増、年率1.2%増だった。


今回の統計を受け、内閣府幹部は「所得環境の改善が続く中で、緩やかな回復基調が続いているとの認識に変わりはない」と説明した。
http://jp.reuters.com/article/gdp-revised-idJPKBN16F00Z



 
10−12月GDP年率1.2%増に上方修正−市場予想は下回る
日高正裕
2017年3月8日 08:59 JST更新日時 2017年3月8日 10:44 JST
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• 設備投資が2.0%増と速報値を大幅に上回る−個人消費は横ばい
• 消費など内需は「物足りない力強さに欠ける結果」とSMBC丸山氏
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昨年10−12月期の実質国内総生産(GDP、改定値)は、速報値から上方修正された。設備投資が速報値から引き上げられて全体を押し上げた。4期連続のプラス成長は変わらず。市場予想は下回った。内閣府が8日発表した。
キーポイント
• 10−12期GDPは前期比0.3%増と速報値(0.2%増)から上方修正(ブルームバーグ調査の予想中央値は0.4%増)
• 年率換算は1.2%増と速報値(1.0%増)から上方修正(予想は1.5%増)
• GDP全体の約6割を占める個人消費は横ばいと速報値と変わらず(予想も0.0%)
• 設備投資は2.0%増と速報値(0.9%増)から上方修正(予想は1.7%増)



https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iQkYvunI_o8I/v2/-1x-1.png


背景
  財務省が1日発表した法人企業統計によると、10ー12月期の全産業(金融・保険を除く)の設備投資は、前年同期比3.8%増と市場予想に反して2期ぶりのプラスとなった。GDP改定値に反映されるソフトウエアを除く設備投資は同3.3%増で、季節調整済み前期比では3.5%増だった。  
  政府は2月の月例経済報告で「一部に改善の遅れもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」との景気判断を維持。日本銀行の政井貴子審議委員は6日、スイス・チューリヒで講演し、昨年後半以降の原油価格の安定的な動向が「世界経済ひいては日本経済にも好影響を及ぼす」と指摘。「日本経済の下振れリスクは昨年 後半と比べて低下しているとみている」と述べた。
エコノミストの見方
• ゴールドマン・サックス証券の田中百合子エコノミストは発表後のリポートで、法人企業統計で堅調な伸びが確認された設備投資は1次速報から大きく上方修正され、消費増税直前の2014年1−3月以来の高い伸びとなったと指摘。在庫は下方修正されたが、これは在庫調整が一段と進ちょくしたことを意味し、設備投資の上方修正と合わせ「内容は悪くない」としている。
• SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは発表後のリポートで、外需の貢献により今年の日本経済は潜在成長ペースか若干それを上回る程度の成長が可能とみる。名目雇用者報酬は明確に増加しているが、「個人消費の拡大に結び付いていない」と指摘。内需という観点では「物足りない力強さに欠ける結果」としている。
詳細
• 公共投資は2.5%減と速報値(1.8%減)から下方修正
• 在庫のGDP全体への寄与度はマイナス0.2ポイントと速報値(マイナス0.1ポイント)から下方修正
• 外需の寄与度はプラス0.2ポイントと速報値から変わらず
• 7−9月期の実質GDP成長率は前期比0.3%増、年率1.2%増
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-07/OMF3WE6JIJUP01


NY外為:ドル指数ほぼ変わらず、週内にECB会合や米雇用統計
Dennis Pettit
2017年3月8日 06:18 JST更新日時 2017年3月8日 07:28 JST
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7日のニューヨーク外国為替市場でドル指数はほぼ変わらず。トレーダーは週後半に集中するイベントに備えている。
  この日のドルはメキシコ・ペソと韓国ウォンに対して下落した。ロス米商務長官から、ドルが強すぎるのではないとの発言が報じられると、ドルはわずかながら上げを失った。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i3mJvbsiXqSc/v2/-1x-1.png


  ニューヨーク時間午後5時現在、主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は前日比変わらずの1245.15。ドルは対円で0.1%未満上昇して1ドル=113円98銭。対ユーロでは0.2%高い1ユーロ=1.0566ドル。
  今週は欧州中央銀行(ECB)の定例政策委員会が開かれるほか、米国では2月の雇用統計が発表される。
  欧州発の経済統計の内容はおおむね改善されたがトレーダーはECBは少なくとも仏大統領選挙終了までは金融政策を変更しないとみている。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想ではECBは少なくとも6月末まで今の姿勢を維持する。利上げがあるとしたら来年以降と予想されている。
  米金融政策当局による3月利上げがほぼ確実視されている中で、トレーダーは8日発表される米民間雇用統計に注目している。給与明細書作成代行会社のADPリサーチ・インスティテュートが給与名簿に基づく集計調査を発表する。市場参加者は米労働省が10日発表する雇用統計前にADP統計を基に雇用見通しを微調整する。労働省発表の雇用統計が今後の利上げ見通しの時期を見極める手掛かりになる可能性があるとみられている。
  トレーダーは雇用統計で引き続き月間20万人程度の雇用増が示され、時給の伸びが予想されている年2.8%増のペースとなった場合、当局は年内の利上げ回数について、従来予想を維持するのかどうか説明を求められる可能性があると話した。
  
原題:Dollar Marks Time Before ADP Report, ECB Meeting and Jobs Data(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-07/OMGQAE6VDKHS01




 



  


アベノミクスが役割終え、忍び寄る円高の足音
明治の円高時代に近代化を果たした歴史が示唆するもの
2017.3.7(火) 伊東 乾
円高と株価下落でアベノミクス正念場、政策失敗指摘する声
国会で演説する安倍晋三首相〔AFPBB News〕
 2016年6月、英国のEU離脱で為替相場は大きく動きました。結果的に円は高値をつけ、ユーロもポンドも、またドルも結果的に「とばっちり円高」の状況を呈した。言ってみれば為替の「ギアチェンジ」のようなことが起きてしまいました。


 これが11月以降、米国の保護貿易・重商主義政権成立で、さらに次のギアに入ってしまい、為替は再度推移します。


 一時期は1ユーロ110円近く、1ポンド130円まで漸近していた欧州通貨は、冬から各々1ユーロ120円前後、1ポンド130円程度に浮上、とは言え円高であるのは間違いありません。


 国際情勢の変化、とりわけ地政的リスクである武力紛争のみならず、国民投票その他の不安定要素による迷走もまた、地政上のリスクとして考えないわけにはいかないでしょう。


 ここで歴史を大きく振り返って見ましょう。


 欧州、あるいは海外が経済・金融の混乱の最中にあり、結果的に発生した「とばっちり円高状態」の中で、日本はかつてどのような判断、行動を見せてきたでしょうか。


19世紀から占う2017年


 時代は大きく遡ります。1880年代、西南戦争のために政府軍が購入した近代兵器によって金銀が流出し、日本はほぼ失敗国家状態に陥ってしまいました。


 木戸孝允、大久保利通ら最大のブレーンが相次いで逝去するなか、新政府は松方デフレ政策などで起死回生の挽回を図りますが、まさにこの時期、欧州は19世紀世界恐慌に直撃され経済は大打撃を被りました。


 その余波は露骨に日本にも押し寄せます。フランスで暴落した生糸の価格は、そのまま横浜から出荷されていた日本の養蚕農家を直撃し、富岡も高崎も熊谷も秩父もひどいことになりました。


 この中で、幕藩体制期から火薬と鉄砲の伝統があった地域で、困民が蜂起したのが、人も知る「秩父事件」にほかなりません。


 ちなみに私は、いま俳人の金 子兜太さんとご一緒して秩父事件の問題を考えつつ大規模な作品を作曲していますが、1つの重要なポイントがここにあります。


 金子さんは封建遺制の色濃く残る20世紀前半の秩父の社会構造に問題を感じて東京帝国大学経済学部に進みます。しかし、卒業後日銀に3日間通勤しただけで南方に出征せざるを得ませんでした。


 戦後も積み残されたままだった、かつて青年金子兜太が抱いた疑問を、ご一緒して考えつつ、コラボレーションを進めています。


 今月は藤原書店からCDブック「存在者 金子兜太」が出ますので、その前後にまたこれについては触れたいと考えています。今回はその序論部にもあたる「松方デフレ」の周辺に光を当ててみたいと思います。


 富岡製糸場の女工哀史も、秩父事件も、ローカルに眺めていたのではその構造が分かりません。19世紀グローバル経済の中で何が起きていたかを直視すると、今日の日本の進路を考える大きなヒントになるはずです。


 1880年代、フランスは史上最低最悪の不況に見舞われていました。それはドイツや英国、米国も同様だった。19世紀世界恐慌の低迷状態が蔓延していました。


 とそこまでで終わりにしてはいけません。要するに外貨が軒並み安値をつけた。結果的に新興国、後発ながら近代国家を目指していた日本は「ポスト松方の19世紀とばっちり円高」の状況に見舞われていたことに注意しましょう。


 円高ですから輸出は伸びません。生糸は暴落し秩父事件には帝国陸軍が討伐に出動する騒ぎとなりました。


 が、逆に言えば海外からの輸入には拍車がかかります。


 原材料も入って来やすいし、設備導入にも適しています。海外からの雇用なども以前よりは容易になるでしょう。


 そしてこの時期、日本は多数のお雇い外国人を導入、東京で再編された洋学式の帝国大学は破竹の勢いで西欧に追いつき追い越していきます。


 ベルリン留学中の北里柴三郎は血清療法を確立、長岡半太郎以下の日本の物理学者は最先端の原子物理で世界に一角を現しました。


 「おどき・めどき」という言葉があります。男時、女時、と漢字では書く。


 景気がよくどんどん社会が前に行く時期を「男時」と呼ぶのに対して「雌伏」という言葉が「雌」の字を含むように、必ずしも急な右肩上がりでない時期、地味な輸出でしっかりと本位通貨準備高などを上げ、国家として自力をつけて近代日本の礎を気づいたのが 、1880年代だったと思うのです。


 以下に記す1880年代初頭の「大隈財政」は、第2次安倍政権が鳴り物入りで推し進めた経済政策、いわゆる「アベノミクス」と通じるいくつかの「積極性」があるように思います。


 グローバル経済が本来「女時」であるのに、「まずは、景気だ!」などと見かけだけ「男時」のような空気をローカルに作り出そうとしても、土台人為的なものですから、早晩女時の本質が露呈するのは避けられません。


 1881年「明治14年の政変」で この大隈らを追放した岩倉、伊藤博文ら国際派、ないし1880年代主流派は、政策の大転換を図ります。


 不換紙幣は回収、焼却され、徹底的な金融の引き締めが実施されました(いわゆる「松方デフレ政策」)。「女時」にはそれに合致した「雌伏10年」が本来の経済的な体力をかち得るのに必要不可欠、という質実剛健な考え方と言ってかまわないと思います。


「失われた1880年代」に確立された近代日本


 1870年の普仏戦争以降、ドイツ、フランスの両雄を含む欧州全体、また南北戦争後の混乱収拾期にあった米国も、19世紀の世界同時恐慌状態に突入してしまいました。


 この痛手は大きく、例えばフランスは結局19世紀末までこれを脱することができませんでした。


 良くも悪くも状況が本当に変わったのは1914年に第1次世界大戦の火蓋が切って落とされて以降のことと言っていいでしょう。


 厳密な評価は様々に分かれるかと思いますが1880年代は、この「19世紀世界恐慌」のいわば1つの「ドつぼ」と言える時期だった。


 そしてこの、いわば列強が「弱っていた間」、とばっちり円高期に、日本は近代国家としての体制を急ピッチで整えていきます。


 西南戦争の戦費調達のため、明治新政府は大量の不換紙幣を発行しており、このため日本では大変なインフレが発生していました。


 大蔵卿・大隈重信はこの原因を、本位通貨である銀貨不足にあると考え、外債を発行して銀を導入する「明治の積極財政」大隈財政を推し進めようと考えました。


 これに対して、実質的に不良債権のような形で出回っている「悪貨」不換紙幣を回収・焼却して財政の健全化を図ろうと考えたのが、次官の松方正義だったわけです。


 しかし、国内の実体経済成長以前に外債に頼って帳簿上の財政改革を進める大隈らの内向きの発想に、外遊を通じて国際社会の現実に通じた岩倉具視らは限界を感じていました。


 1881年「明治14年の政変」で この大隈らを追放した岩倉、伊藤博文ら国際派、ないし1880年代主流派は、政策の大転換を図ります。


 不換紙幣は回収、焼却され、徹底的な金融の引き締めが実施されました(いわゆる「松方デフレ政策」)。「女時」にはそれに合致した「雌伏10年」が本来の経済的な体力をかち得るのに必要不可欠、という質実剛健な考え方と言ってかまわないと思います。


 翌1882=明治15年には日本銀行を創設、緊縮財政のもとで準備高比率を上げていき、1885=明治18年には念願の銀兌換紙幣の発行=銀本位制の確立に成功します。


 しかしこの間、日本の民衆は多くの痛みを耐えねばなりませんでした。


 1884年念頭からのフランスでの恐慌悪化、特に日本の主要外貨作物であった絹相場の暴落で、生糸の輸出で細々と銀を稼いでいた日本経済は直撃を受け、最も零細な1次生産者であった米作しない養蚕農家の中には飢餓状況に陥る者も多数発生しました。


 ここから「秩父困民党」の蜂起すなわち1884=明治17年10−11月「秩父事件」など、数々の惨事を招いてしまいます。


とばっちり円高と自由民権運動


 これらと前後して明治14年の政変直後、岩倉ら「国際派」は「10年後をめどに国会開設」立憲君主制の体制を整え、近代国家としての自立を列強にアピールして、江戸幕府が結んだ不平等条約の改正など長年の懸案課題解決を企図します。


 1882=明治15年、伊藤博文はドイツに渡りプロイセン憲法をモデルとする新しい近代日本国家の立憲体制を具体的に模索し始めます。


 秩父事件の翌1885年には、太政官制度を廃して近代西欧的な内閣制度が導入され、伊藤自身が初代の内閣総理大臣に就任、1889=明治22年に大日本帝国憲法が発布、1890年には予告どおり帝国議会の開設に漕ぎ着けます。


 議会制度を伴う帝国憲法で「上からの国民軍」を編成した大日本帝国は、とばっちり円高を利用して近代軍備を増強拡充、やがて1894(明治27)年の日清戦争以降の帝国主義展開へと駒を進めていきます。


 そして 、普仏戦争に勝利したドイツがフランスからの賠償金でそのようにしたのと同様に、1897=明治30年、松方の念願であった金本位制の導入に成功、20世紀列強の一角として日露戦争〜第1次大戦の帝国主義戦争に突入して行ったわけです。


 今日の日本では、韓国朝鮮に対するヘイトを普通に見かけますが、これは1910年の韓国併合と35年にわたる大日本帝国による支配時代を経た後、70余年が経過しても、いまだにこういうものがある、という状態です。


 さかのぼって130年前には「清国の苛烈な支配下にある朝鮮民衆を圧制から解放する」などという「義戦」の旗印が喧伝され、帝国臣民の義務として兵役についた日本の「国民軍」が大陸で日清戦争を戦った。


 でもその背景には、冷静な国益念頭のそろばん勘定があり、この戦争に勝って日本が得たものは、金本位制の導入、八幡製鉄所や京都大学創設の創設など、計算し尽くされた準備が存在していた。


 善し悪しではなく、事実として、そのようにして130〜120年前の日本は「女時」をしのいで戦乱を転機に「男時」の社会経済、重工業の導入に伴う近代産業国家、列強の1つ、東アジアの盟主としての日本の確立へと進んで行った。


 その1つのエポックが、日清戦勝後の1902年に締結された「日英同盟」でした。


 当事の民衆は、長く見れば800年続いた大英帝国の「光栄ある孤立」が崩れ、英国と「肩を並べる」列 強の一角に進んだ「帝国万歳大勝利」と喜び、そのままその威勢を借りて日露戦争にも政治的な勝利を収めてしまう。


 こうした一連の、皮一枚の薄っぺらい展開を、夏目漱石のような当事の知識人がどう冷ややかに見ていたか、はこのコラムですでに触れた通りです。


 今私たちが直面しているのは、この逆の状況であることに注意するべきでしょう。


 英国はEUに参加するまでに「光栄ある孤立」と逆方向に針が触れていた。それが「孤立」の栄光というノスタルジーに煽られた民衆投票によって再び「英国の孤立」が到来し、いわば1902年以前の状況、つまり重商主義の世界帝国として君臨したイングランドの亡霊に 憑りつかれたかのようでもあります。


 さらに追い討ちをかけて、米国が「世界の警官」という安全保障面を含むグローバリズムから、筋違いな「モンロー主義」などの言葉すら聞かれる保護主義体制へと舵を切ろうとしている。


 これも、ここでは紙幅がつきましたが、1899年の米西戦争以前の状況に時計の針が進むかのような面を指摘できるでしょう。


 話は突然変わるようですが、大阪で「教育勅語」を暗誦させる幼稚園のなんのという、とんでもない話が表に出、国有地の不正払い下げその他、政権がひっくり返るレベルのスキャンダルになりつつあると思われます。


 この「教育勅語」が発布されたのもこれらと 同じ時期、つまり1890年であることに、今回最後に注意しておきたいと思います。


 ある意味、ブレグジットだ、トランプ政権だという流れと、時流という意味では完全に符合している面もあると言える、それをこういう側面から記すコラムは、私のこれくらいしかないと思いますが、実際、見事に歩調が整っています。


 と同時に、その浅はかさ、愚かさ、ばかばかしさは、同時代人の夏目漱石が100年以上前に、この上ないほど痛烈に記している通りであって、ろくなものではありません。


 的確な理解がなければ、歴史の流れの中で、国の歩みを過つことになるでしょう。


 大日本帝国憲法の発布と帝国議会の発足、近代国家としてのフレームワークが整ったのは、欧州が終わりのない不況に辛吟していた「失われた時代」に重なっていたことは、中学高校の日本史で必ずしも強調されません。


 これらすべてグローバル経済の浮沈を直視しつつ、当時の指導層が日本国を運転した結果で、その良し悪しを今ここでは、一切言っていません。


 ただ、間違いなく言えるのは、国際情勢を正しく見る目がなければ、国家経営は失敗のリスクを高める、という基本でしょう。


 グローバル経済のギアチェンジ以前に構想され、2012年以降、第2次安倍内閣が推進した「アベノミクス」は、完全にその役割を終え、2017年、いや2016年度以降に妥当性があるとはおよそ思われません。


 明治の「とばっちり円高」から130年余後の今日、私たちに訪れている経済、金融の変化を、どのように見、どう判断、行動していくべきなのでしょうか?


(つづく)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49348


 



 




 



 
 


【第56回】 2017年3月8日 宿輪純一 [経済学博士・エコノミスト]
日銀の最重要課題は長期金利「制限」政策とならざるを得ない


 金融政策を司る日本銀行は、2016年1月の金融政策決定会合で、当座預金にマイナス金利(マイナス0.1%)の導入を決定し、2月から導入された。これは日本銀行に当座預金を開設している銀行(金融機関)に向けた施策で、貸出金利の低下および当座預金の残高低下、つまり貸出あるいは国債買入などの増加を期待してのことだ。しかし実際には、経済本体の構造改革が進んでいないために、資金需要が伸びることはなく、逆に融資残高が減少した。しかも、利ザヤの縮小により銀行の経営は悪化した。


 現在、日本の銀行で預金と貸出の関係はどうなっているか。金額でいうと、全国銀行協会(全銀協)加盟行では預金の約7割しか貸出に回っておらず、残りの約3割は運用として国債の購入等に振り向けられていた。メガバンクではそれが約6割:4割だ。その後、国債の金利もマイナス金利となってしまったために、経営の悪化が見込まれた銀行株が下落し、日本のみならず海外の株式市場にも影響を与えた。


 9月の金融政策決定会合では、日銀は長短金利操作(イールドカーブコントロール)を開始した。これは長期金利(10年物国債金利)を「0%程度」で推移させることを目標としたものだ。この結果、短期金利(当座預金金利)がマイナス0.1%、長期金利が0%程度となり、、必然的に10年物以上の国債の金利はプラスになることになる。銀行は一般的に10年物以上の国債、20年物国債を中心に購入しており、銀行の株価は安定していくことになった。


トランプノミクスで日本の長期金利も上昇


 しかし金融市場というものは予想外のことが起こるものである。昨年11月の米国大統領選でドナルド・トランブ氏が勝利し、1月に就任の後、規制緩和と減税、インフラ投資の財政政策を主とした景気刺激=財政赤字拡大型のトランプノミクスが導入された。これにより、米国長期金利も上昇し、大統領選直前の約1.6%から約2.6%まで約1%も上昇した。株式の連れ高・連れ安と同様に、連られて日本の長期金利も上昇することとなった。


 1月下旬には、日銀は国債買入オペ(公開市場操作)を一部スキップしたが、これは予想外のことで、日銀と市場との対話がぎくしゃくし、国債価格の下落(金利の上昇)につながった。さらにタイミングの悪いことにく、1月末にはトランプ大統領が為替レートを意識して、日本の大量の資金供給(≒金利のコントロール)を非難した。このことをきっかけとして、2月2日には長期金利は終値ベースでプラス0.1%、2月3日にはプラス0.15%まで上昇。この事態に日銀は“金額無制限で買入を行う”指し値オペまで行った。


 ここで問題になるのは「1%程度」の“程度”の幅である。現在、市場ではマイナス0.1%〜プラス0.1%の幅と考えられている。しかし金利は上限であるプラス0.1%を突破した。国債を購入する銀行等の金融機関にとっては好都合だが、日本国債約1000兆円のうち、約4割をも保有する日銀には、逆に問題が発生した。


 日銀は政府から独立した法人とされ、資本金は1億円で、そのうち政府が55 %を、民間が残り45%を出資する。出資者には一般の株式会社の株式に相当する出資口数を証した「出資証券」が発行される。出資証券はジャスダックに上場され、株式に準じて取引されている。金融政策を司っていることもあり、議決権(経営権)はない。当然「決算」も行っている。


 日銀の決算は、外国為替では時価評価で損益(為替差損益)を算出しているが、国債では受取利息と支払利息の「損失」を、国債の満期までの期間で分割して計上する方法(減価償却法)を採用している。損失とは、長期金利の低下(価格の上昇)を背景に、額面を大幅に上回る高値で国債を買っているためだ。


 この計算方法でも、日銀が金融緩和のために大量に買っている国債の「含み損」が、昨年末に10兆円を超えたと見られる。異次元緩和導入直後の2013年度末の損失額は約1兆円だったが、昨年末には約10兆円に拡大したと見られている。政府機関の決算や会計を検査する会計検査院も「日銀は財務健全性の確保に努めることが重要」と懸念を示した。昨年4〜6月に日銀が購入した国債全体の利回りもマイナス水準になった。日銀の財務内容が悪化すれば、国への納付金が減り、赤字になれば、納付金どころか補助金の可能性もあり、逆に国の財政にマイナスになる。


金利が上昇すれば損失が広がる


 さらにいうと、現在の日銀の決算方式では、国債価格がどのように変動しようと基本的に損益には関係しない。しかし銀行などの金融機関は、国債などの金融商品は減価償却法ではなく、「時価評価法」で決算を行い、国債の“価格”が値下がり(金利が上昇)したら損失が発生する。つまり、金利が上昇すると損失が広がるのである。


 すなわち、金利の上昇を抑えないと、金融機関の決算方式では損失が拡大していく。つまり、金融機関にとっては一般的な時価評価法の「評価損」が、現在の日本銀行が採用している原価評価法の「含み損」を超えて拡大することになる。


 こうなると、長期国債0.1%と示したレベルを自ら守ることが、日銀にとって至上命令となってくる。「金額を無制限にして買入を行う」指し値オペも行い、また2月末には国債買入オペ(公開市場操作)を事前に通知することによって、長期金利は一時的に低下することとなった。


 筆者は借入や評価損の問題、そして経済や金融では「考え方」が大事ではないかと考えている。やはり、国債買入金額や「評価損」は大きすぎれば、問題になるのである。そもそも返済計画のない借金(国債発行)は、銀行ではあり得ない。“無制限”という買入(介入)も、経済や金融では不自然さを否めない。この辺の「そもそものまじめさ」が、国民に向けた経済政策でもっとも大事なのではないか。もし国民が政策に不信感を抱いたら、経済政策は良い方には効かないであろう。


 このように、とにかく今年の金融政策は、長期金利を0%前後、マイナス0.1%〜プラス0.1%にコントロールすることが最重要課題となる。つまり「長期金利制限政策」とならざるを得ない。しかも、トランプノミクスおよび政治的圧力と米国の中央銀行FRBの利上げ政策によって長期金利が上昇し、日本の長期金利も上昇傾向にあり、油断ができない。そうなれば今後、無制限介入を行い、国債購入目標の80兆円が反故にされる可能性もあるのである。


(経済学博士・エコノミスト 宿輪純一)


http://diamond.jp/articles/-/120404


 


 


 




 



 


タンカーのUターン、米シェールブームによる世界ガス貿易の変化示す
Naureen S. Malik
2017年3月8日 11:05 JST


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• 新たなガス貿易の枠組みの中で中国とメキシコの輸入需要拡大
• 原油に類似したスポット市場への移行でLNG市場は断片化


米ルイジアナ州を昨年12月下旬に出発した液化天然ガス(LNG)タンカーは、LNGの世界貿易の変化を象徴している。LNGは中南米や中国、インドなどの国々でますます、割安かつ大気汚染度の少ない燃料の選択肢と見られている。
  タンカー「マラン・ガス・アキレス」はパナマ運河を通過し、速度20ノットでアジアに向かっていたが、太平洋で突然Uターンした。その後、メキシコのマンサニージョ港に寄港し、積み荷を降ろした。
  この突然の航路変更は、かつてはほぼ全てが目的地が設定された長期契約だったLNG業界で、昨年シェールガス輸出を開始したばかりの米国が新たな枠組みを構築しつつある実態を示している。米シェニエール・エナジーなどの新規参入の米国の天然ガス輸出業者は常に最良の価格を求めている。米国の輸出が拡大する中、こうした戦略は、LNG市場を原油に類似したスポット市場に移行させる可能性がある。
  船舶ブローカー、ポテン・アンド・パートナーズのビジネスインテリジェンス責任者、ジェーソン・フィール氏は電話インタビューで、「米国は直前の通知でも適正価格でガスを届けている。柔軟性がある。LNG市場は短期的なものに移行しつつあり、米国はこうしたニーズに非常に効率的に対応している」と指摘した。
  英コンサルタント会社エナジー・アスペクツによれば、米国は2020年までに世界3位のLNG輸出国となり、輸出能力は日量約83億立方フィートと、世界シェアの14%を占める見通しだ。

タンカー「マラン・ガス・アキレス」の航路
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ivHRktItVgkg/v2/-1x-1.jpg
  
原題:Tanker’s U-Turn Shows How Shale Boom Is Changing World Gas Trade(抜粋)


https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-08/OMH2WR6S972901



http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/824.html

[戦争b19] 若いクルド人女性難民が見たシリアの現実 アラブの春、民主化運動が残した負の遺産との戦い 武士道で破滅する自衛隊 幹部討死
若いクルド人女性難民が見たシリアの現実
アラブの春、民主化運動が残した負の遺産との戦い
2017.3.8(水) 佐藤 真紀
2016年7月、「イスラム国」が支配するモスルから避難してきた人たち
時間が6年前のあの時に戻ったなら

?3月15日で7年目を迎えるシリア内戦、先月から今月の初めまで政権側と反体制派を招き、スイスのジュネーブで和平会議が行われていた。

?しかし、時事通信の配信記事には、「シリア和平協議、成果なく中断」という見出しがつけられ希望は遠のくばかりである。

?「もし、時間があの時に戻れるのなら、革命なんてなかった方が良かったわ」

?10代後半でシリアを去り、難民としてイラクで暮らすリーム・アッバース(23歳)は言う。

?「この6年間で、40万人を超える人たちが殺されたのよ」

?難民の数は、UNHCR(国際連合難民高等弁務官事務所)によると、500万人に近い。21世紀最大の人道危機と呼ばれるゆえんである。

?リームは鎌田實が代表を務めるJIM-NETというNGOのイラク事務所で現地スタッフとして働いている。

?イラクの小児がんの子供たちの支援が中心だが、「イスラム国」から逃げて来るシリア難民や、モスルからの国内避難民の支援も行っているから、悲惨なのはシリアだけではないことをよく知っていた。そんなリームが6年間を振り返った。

若者は新しい波を求めていた

?2010年の終わりに、チェニジアで起きた民主化運動は、瞬く間にアラブ諸国に広がっていった。若者たちは、ソーシャルネットワークを駆使して独裁政権を倒していく。

?2011年3月15日、シリアにもその波が押し寄せる。アサド独裁政権に黙殺されていた若者たちが立ち上がり、自由と民主主義を掲げたデモが全土に広がった。

?リームはクルド人で、シリア北部のカミシリの田舎で農家の子として生まれた。12人兄弟で下から3番目だった。革命が起きたときは、高校を卒業し、首都ダマスカスの看護学校の学生になったばかりだった。

?「新しい波??そんなものは感じなかった。自由とか、民主主義とかいう言葉はとても新鮮だったわ」

?「でも、リビアやエジプトは結局うまくいかなかったし、今のままでも、私たち貧しい一家にとっては、タダで学校に行けた。給料は安くても看護師になりたかった」

?クルド人は、差別されていた。国籍を与えられない人もいて、彼らは高校までしか行けないし、働いても低い賃金しかもらえない。

?アラブの春は、シリアではうまくいきそうな気もした。政府は彼らに国籍を与えることを約束した。しかし、民主化運動が暴力的な戦いになるとすべては壊されてしまった。

?リームは、3人の同級生の女の子と一緒に下宿生活を送っていた。その看護学校は、卒業すると軍の病院で働く子も多く、体制側とみなされた。

?学校に爆弾が投げ込まれたり、ルームメートが誘拐されて帰ってこなかった。自分もブラックリストに載せられていると知らされ、親戚が迎えに来てくれてダマスカスを去った。

2012年難民としてヨルダンに逃れた反体制派の旗を掲げる人たち
イラクで難民生活を送る女子たち

?生まれ故郷のカミシリに戻ったが、内戦が激しくなると孤立してしまい、2013年に難民として、イラクのクルド自治政府の首都であるアルビルの難民キャンプに収容されたのだ。

?クルド自治政府は、シリア難民に対しては、同じクルド人ということで、住民票を与え、就労の自由も保証した。

?アルビルは、イラク戦争後、治安が安定していたので、投資と開発が進み、高級ホテルやショッピング・モールもたくさんできた。地元の女子たちは、人前で働くのは親の反対などもあり、よしとしないから、シリア難民の女子たちが雇われる。

?また、難民キャンプなどで、人道支援を行う国際NGOのスタッフになる若者も多い。英語が少ししゃべれると、高額の給料をもらえる。

?そして、人権とかジェンダーとかそんな話題を職業にし、スターバックスのようなカフェで500円くらいするコーヒーを飲むのだ。シリアにいたら到底味わえない自由があった。

?難民キャンプのクリニックでボランティアをしていたリームは、ほとんど英語が喋れなかったが、キャンプの管理者から勧められJIM-NETで働くことになった。

?3年半が絶ち、結婚もし、貫禄が出てきた。英語もうまくなった。JIM-NETの仕事を気に行ったのか、安い給料でも辞めずにいる。「なぜ?」と聞いたら「自分のアイデアを取り入れてもらえるから」と言う。

?私は、いちいち細かいことを指図するのは面倒なので、ほったらかしにしておいたら、リームが勝手に、難民のお母さんを集めて、毛糸の帽子を作ったり、ビーズ細工を作ったりして、JIM-NETの収益にならないかと目論んでいる。

?実は、シリア人が命をかけて勝ち取ろうとしていたのは、そういう「いい加減に生きること」なのかもしれない。

難民キャンプで妊産婦の相談を受けるリーム(右)
シリアに帰る

?2014年「イスラム国」がモスルを占拠すると、クルド自治政府は、予算の大半を戦費に充てなくてはならず、公務員の給料も払えなくなってしまう。

?難民キャンプでの食料の配給なども減ってしまい、2015年は、難民生活に見切りをつけてヨーロッパを目指すシリア難民であふれた。リームの兄弟もドイツへ向かったが、リームは、ヨーロッパに行くことを拒んだ。

?「シリアほど美しい国はないと思うわ」

?昨年10月、リームは様子を見にシリアへ行くことになった。彼女の故郷のカミシリの村人は、ほとんどがヨーロッパなどに移住してしまい年寄りしか残っていなかった。

?ダマスカスに向かう飛行機は満席で、ブローカーにお金を払ってシリア軍の輸送機に乗せてもらった。300人ほどの乗客がおり、けがをした兵士や遺体と一緒にリームらは貨物を載せる床に座らされた。

?隣には、「イスラム国」に感化されて自爆テロを行おうとした10代半ばの女性が手錠をかけられて座っていた。タバコを吸わせろと騒ぎ「私は、バグダーディを知っているわ」と狂ったように笑っていたという。

?ダマスカスの中心部に入ると、報道で見ている悲惨な状況と異なり、子供たちは学校に通い、普通に暮らしていたので驚いた。

?しかし、混雑している道沿いには30メートルおきにチェックポイントがあり、道を行く若い男性のほとんどは軍服を着ていた。夜になると銃声と爆撃音が聞こえ戦時下であることを思い出させられる。

?シリアで暮らしていくのは、まだまだ難しいが、平和への希望も感じている。「これからどうする。看護師になるのかな?」と聞いた。

?「はい。これからのシリアに必要なのは、理学療法士のような仕事かなと思い始めました。6年間で多くの人が障害を負ってしまって、シリアそのものが障害者のようになっているから・・・。障害を一緒に乗り越えて行こうかなって」

会議で発表したリーム。右は鎌田、左が佐藤
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49352

 


自衛隊よ、武士道に入れあげていると破滅するぞ
自衛隊幹部が勇ましく突撃して討ち死にでどうする
2017.3.8(水) 部谷 直亮
武士道の過剰な礼賛は旧軍末期の失敗を繰り返すことになる(写真はイメージ)
?一体の亡霊が自衛隊を徘徊している。武士道という亡霊が。

?元々、自衛隊の「武士道」好きは旧軍末期以来の伝統的なものであった。それが近年になり、武士道ブームが公的なものとなりつつある。

?2000年以降、武士道の重要性を公言する将官が相次いで出現し、各部隊でも「武士道の神髄」云々といった講演が行われるようになった。そして2016年に制定された陸自の新エンブレムには、抜身の日本刀が交差したデザインが採用された。

?しかし、近代国家の国益と名誉を担う軍隊として、それで良いのだろうか。

?武士道とは、新渡戸稲造が騎士道を焼き直しした「西洋的武士道」、至上の価値を“死”に見出す「葉隠的武士道」、犬畜生と言われても勝つことに意味があるとする「戦国的武士道」等々の幅広い解釈があり、体系的な思想のないバズワードでしかない。

?自衛隊内の言うところの武士道には、「戦国的武士道」の要素はあまり見られない。実質的には、「勇敢」「規律」「正々堂々」といった合言葉のもとに部隊をまとめていくための拠り所という色彩が強い。

?だが、武士道の過剰な礼賛は旧軍末期の軍事的失敗を繰り返すことにならないだろうか。実際、政治学者のサミュエル・P・ハンティントンはこの点を痛烈に批判している。

?今回は、自衛隊が武士道をもてはやすことの危うさを考えてみたい。

日本の将校は軍人ではなく武人

?ハンティントンは、政軍関係論の古典として名高い『軍人と国家』で日本の将校の特徴を挙げている。

?第1に、日本の将校は近代の職業軍人としての指揮官というよりも、中世の一武士に過ぎないということだ。それは、まさに武士道の弊害を指摘していることに他ならない。

?ハンティントンは、ある論者の以下のような論評を引用している。

「日本の将校は素晴らしい人間の指導者である。彼の弱点は欧州の将校のように戦術の熟練者であることを維持することに失敗していることである。彼は戦闘を指揮するよりも、自らそれに入っていってしまう。(中略)日本の将校は、軍人というよりも武人的である。そして、そこに彼の弱点がある。(中略)武人に必須の資質は、勇敢さであるのに対して軍人のそれは修練である」

?そして、ハンティントンは次のように指摘する。日本軍の将校教育では、科学的能力よりも、砲火の下での勇気の重要性が強調される。これにより兵士と将校の間に緊密な連帯が存在する一方、将校は兵士の持たぬ技術と能力をもっているわけではなかった、と。

?実際、よく知られているように、末期の日本軍は一部を除き、長期持久するよりも勇ましく死ぬこと、もしくは精神的価値に意義を見出した。そのため、純軍事的な意義の低い作戦(沖縄戦での5月攻勢や大和特攻)を繰り返したのである。こうした点は、一砲兵将校としてフィリピン戦に参加した、作家の山本七平も「現実を無視した精神性への傾斜」として指摘しているところである。そして、これらの拠り所として、末期の日本軍が縋ったのが「武士道」であった。

?こうした気風は現在でも自衛隊に残っており、幹部が睡眠不足に陥る原因の1つになっている。もちろんその弊害を理解している幹部もいるが、武士道的な“勇気”を見せられる指揮官でなければ部下がついてこないとも嘆く幹部もいる。

?しかし、突撃に意義を見出す文化が、宇宙戦争、サイバー戦争も含めた高度な現代戦に適合しているとは言い難いし、過去の戦争でも役に立たなかったことは間違いない。

?例えば、警察予備隊(自衛隊の前身)創設時にはこんなエピソードがある。警察予備隊のある若い中隊長が演習時に、米軍審判から「部隊の3割が喪失したが次の行動はどうするか」と尋ねられた。すると中隊長は「攻撃を続行する」と回答した。しばらくして攻撃は失敗し、頭上に砲弾が落下中、「次の行動は?」と米軍審判に尋ねられた。中隊長はまたもや「戦闘を継続する」と回答した。今度は熾烈な砲火を受け「敵攻撃機接近中」と米軍審判が伝えたところ「現地点で戦死します!」と回答した。これを目撃した対日軍事顧問団のコワルスキー大佐は「武士道を感じた」と回顧しているが、こうした勇ましいだけの将校が指揮官失格なのは言うまでもない。

?また、こんな話もある。警察予備隊のある隊員が兵舎で切腹し、「マッカーサー万歳」と自分の血でシーツに書いた。貧しい家庭に生まれ育った彼は戦後に共産党に入党したが、幻滅して予備隊に入隊したのだった。米軍将兵の指導に感動し、熱心に訓練に励んだが、自分が理想とする立派な兵隊にはなれなかった。また、共産党に入党していたことを激しく後悔していた。彼はそれらの罪を償い、米国と日本、故郷に謝罪するために、武人として切腹する道を選んだのである。

?だが、これが福沢諭吉が言う「権助の死」に等しいことは明白である。権助は、主人の依頼を受けたたった1両のカネをなくしたために死をもって報いた。福沢諭吉は、文明を益することのない無意味な死だという点で、忠臣義士の討ち死にも権助の死も同じだとしている。

アカデミックな議論ができない日本の将校

?ハンティントンが指摘する日本の将校の第2の特徴は、ものの見方や判断が客観的ではなく、きわめて「主観的」だということだ。この傾向も、武士道を過剰に評価する姿勢と表裏一体と言ってよい。

?ハンティントンは、戦前の日本海軍研究者としては随一の存在であるアレキサンダー・キラルフィの以下のような趣旨の内容を引用している。

「軍事的観点から見れば、日本人の精神は客観的ではなく、主観的である。平時において、英米の評論家や学生は、太平洋や地中海の支配権に関して、フランスとイタリアの対立、ドイツとロシアの対立といった、直接関係ない戦争を詳細に論じることが出来る。しかし、日本人は直接関係ない海洋問題への関心に乏しい。

?西洋の学生が海軍力それ自体に注目して、アカデミックな方向に沿って問題を処理しようとするのに対して、日本の学生は国家政策的なアプローチを排除することが困難である。彼らはグアム島問題について、彼らの国家にとって除去されねばならない脅威であると述べたり、ほのめかしたりせずに議論ができない」

?これは現代にも通じる指摘だろう。実際、グアム島を尖閣諸島や南シナ海に置き換えてみれば、そのまま通じるはずである。日本では尖閣諸島問題や南シナ海問題について論じるとき、アカデミックにその影響を分析するよりも、往々にしてその領有権や日本への直接的な脅威についての戦術的な議論に終始してしまう。ひどい場合は、尖閣諸島を米国が防衛するか、しないかにまでレベルが低下する。

?こうした主観的な議論に欧米の専門家や政策担当者が共感することはないし、主観的かつ近視眼的な議論から賢明な戦略が生まれないのは明白である。

現代戦に適合した幹部自衛官像とは?

?自衛隊がいまだに武士道を体現しようとしているのは、世界的にみれば異常である。

?例えば「カウボーイ精神の米軍」「ロングボウ自由農民の英国軍」「ユンカー精神のドイツ軍」「重装騎兵精神のポーランド軍」「騎士道精神のフランス軍」「ボヤール精神のロシア軍」などがあり得るだろうか。まともな近代国家で前時代の倫理規範や価値観を大々的に掲げている国など1つもない。

?むしろ、米軍などは、時代や戦略環境に合わせて理想とする幹部像を変えている。第2次大戦までのプロの将校とは戦闘のリーダーであり、冷戦期はマネージャーであり、ポスト冷戦期は学者戦士を意味し、そして、今や、「学者戦士」すらイラク・アフガン戦争時代の遺物として次なる理想像が模索されている。

?そうした現状をみれば、幕府陸軍や明治陸軍の先人たちが懸命に相対化した「中世的な武士道」を、現代の戦略環境や戦略文化に適合するかも考えずに称揚することの愚かさは明らかだろう。

?少なくとも明治陸軍が、西郷隆盛率いる「武士団」や清朝軍、帝政ロシア軍に勝利できたのは、武士道精神のおかげではなく、西欧的なプロフェッショナルな軍人組織になろうと努め、その点で上回ったからにほかならない。

?中隊レベルの士気高揚の範囲ならともかく、「武士道」を自衛隊全軍の価値観とすることは無理があり、危険でしかない。むしろ今やるべきなのは、「現代戦で国益を実現するために必要な自衛隊幹部の理想像とは何か」を国民的に議論していくことである。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49356
http://www.asyura2.com/16/warb19/msg/761.html

[国際18] 父は殺害された」 金正男の“息子”がユーチューブで声明 キム・ハンソル助けた千里馬民間防衛 金一家の行方は明らかにできず
父は殺害された」 金正男の“息子”がユーチューブで声明
2017年3月8日
金正男の息子のキム・ハンソル(C)共同通信社

https://www.youtube.com/watch?v=48sn4gXKzO4

 マレーシアの空港で殺害された金正男氏の息子、金漢率氏(21)とみられる男性が7日、ユーチューブにビデオメッセージを投稿し、「父親は殺害された」と語った。

「KHS Video」と題された40秒の動画はハンソル氏の支援団体のページに投稿されている。メディアが掲載しているハンソル氏によく似ているが大人びた容貌の男性が英語で「私の名前はキム・ハンソルです。北朝鮮出身で、キム一族の一人です」と語ってパスポートを提示するが、個人情報を保護するためか、黒塗りにされている。

 そして「父は数日前に殺害された。私は母と妹と一緒にいます」と語り、支援者に謝意を述べるところで名前の音声がカットされる。最後に「早く事態がよくなることを期待しています」と述べて動画が終了する。

 脱北者を支援している団体の活動家は、動画の男性はハンソル氏本人に間違いないと語った。ハンソル氏の支援団体は事件後、正男氏の遺族を安全な場所で保護しているという。

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金正恩に虎の尾踏まれ 米軍に「北朝鮮VX工場」空爆作戦
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/201055


2017/03/07 に公開
キム・ハンソル助けた千里馬民間防衛... 「金一家の行方は明らかにできず、「

殺害された金正男の息子キム・ハンソルがYouTubeの映像を使用して近況を伝えた。キム・ハンソルの脱出を助けた団体は、「千里馬の民間防衛」という組織として知られて。

この組織は、ホームページによると、北朝鮮離脱住民を保護する団体を標榜している。これらは"脱出をワンかの情報を分けたい方を守る」と明らかにした。北朝鮮離脱住民の現居住地がどこにでもかまわないことが分かった。

千里馬民間防衛側は「先月、金正男暗殺以来、その家族からの助けが必要だと要請がきた。それらを満たし、安全な場所に直接移動させた。その他脱北要求が数回入って脱出を何度も実行した」とし「金正男家族の現在の行方や、上記の脱出過程の事項は、これ以上公開しない」と明らかにした。また、オランダと中国、米国、名前を明らかにしたことがない第3のおかげであるとも伝えた。

8日に公開された映像でキム・ハンソルは、金日成一家キム・ハンソルである。私の父は、数日前に殺害された」と述べた。続いて「私は現在、母親の妹と一緒にいる。私たちは、状況がすぐに良くことを期待する」と明らかにした。

キム・ハンソルは中国とマカオ、フランスのパリなどで住まいを移し通ったことが分かった。最近までマカオに泊まったことが知られたが、金正男殺害後に行方が分からなくした。マレーシアの父の遺体を収拾しに行くだろうという観測が多かったが、動線が徹底的に秘密にかけられてきた。

韓国政府は、映像に出てきた人物が、実際のキム・ハンソルあるかと千里馬民間防衛がどのような団体なのかなどを把握している。
https://www.youtube.com/watch?v=_ACRxTij-zE
http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/537.html

[政治・選挙・NHK222] 確定拠出年金の制度改正、政府の隠れた意図とは 公的年金に頼る時代は終わり、自己責任の時代に Special Report
確定拠出年金の制度改正、政府の隠れた意図とは
Special Report
公的年金に頼る時代は終わり、自己責任の時代に

2017年3月9日(木)
武田 健太郎

老後資金を自ら積み立てる「じぶん年金」が普及期に入ろうとしている。2017年から税優遇のあるDC制度を、現役世代ほぼ全員が利用できるようになる。公的年金だけに頼る時代は終わり、自己責任で将来資産を用意する時代が本格化する。

スポーツコメンテーターの杉山愛氏などが、9月に愛称iDeCoを発表(写真=時事)
iDeCo
読みは「イデコ」。英語表記のindividual-type Defined Contribution pension planからとった個人型確定拠出年金の愛称
 「これは政府からの隠されたメッセージ。いま気付いてくれるかどうかで、将来設計に大きな違いが出てくる」
 2017年1月から個人向け確定拠出年金(DC)制度が改正され、新たに公務員や主婦など2600万人が参加できるようになる。制度の愛称は「イデコ(iDeCo)」。冒頭のコメントは、この制度改正を受けての厚生労働省幹部のものだ。
 これまで公的年金が支えてきた老後資金を、自ら積み立てる「じぶん年金」に頼る時代が既に始まりつつある。「今回のDC制度の変更は、この大きな地殻変動の一部であることに気付き、早期に自助努力で資金積み立てを始めてほしい」と厚労省幹部は話す。

個人型確定拠出年金の利用対象者が拡大する
●制度変更前後の比較

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/278202/030600059/p2_1.jpg

*1=国民年金基金の掛け金または国民年金の付加保険料との合計
*2=企業型確定拠出年金のみ加入なら月額2万円
iDeCo 何がお得?
3つの税制メリットを受けられる
●確定拠出年金制度の仕組み

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/278202/030600059/p6_1_1.jpg

 個人型確定拠出年金(iDeCo)は、自分で毎月掛け金を出して金融商品を運用し、結果次第で老後に受け取れる年金などの金額が変わる制度。これまで自営業者と企業年金のない会社員向けだったのが、来年から公務員や主婦も加え、ほぼ全ての現役世代が加入対象となる。制度のメリットは3つの節税効果にある。

若い世代の運用相談やセミナー参加がここ数年増えている(写真=時事)
 1つ目は積み立て時に受けられる所得控除。年末調整や確定申告を通じて、掛け金を全て所得から差し引くことができる。年収800万円の場合、所得税と住民税合わせて掛け金の30%程度の節税効果が見込める。
 2つ目のメリットがあるのは運用時。通常、投資信託が値上がりして売却益を計上した場合、利益に約20%の税金がかかる。これが、iDeCoの場合は非課税となる。利益が出た分をそのまま再投資できるため、効率的な運用が可能となる。
 3つ目は受け取り時のメリット。運用したお金は60〜70歳までの間に、一時金か年金、または一時金と年金の併用で受け取る。どの受け取り方式でも控除の対象となり、税金が安くなる。
 DCとNISAを比較した場合、どちらも自らのリスクで資産運用する点は同じだが、税制面ではDCは3つの優遇があるのに対し、NISAでは運用時の非課税のみにとどまっている。
 制度を利用するためには、金融機関を1つ選び口座を開設する必要がある。積立額は月5000円からで、1000円単位で金額設定できる。上限は公務員や自営業者などで異なる(46ページ参照)。

運用先は自ら選択
 個人が自ら運用商品を選ぶ必要もある。主な商品は投資信託。株式や債券で運用するタイプのほか、主要な資産に投資先を分散するバランス型投信や不動産投資信託(REIT)を取り扱う金融機関もある。

デメリットにも注意
●確定拠出年金制度の主な制約

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/278202/030600059/p6_2.jpg

 このほか、定期預金や保険商品など元本割れリスクのない商品が取りそろえられている。
 主なデメリットは、途中解約ができない点。原則として60歳になるまで運用資産は引き出せない。運用の責任は個人が負うため、投資した商品の運用成績が悪化して、掛け金の総額より受取額が少なくなる可能性もある。金融知識を身につけ、過度なリスクを負わないようにする必要がある。
 口座を開設する際に手数料がかかるほか、毎月の口座管理にも費用が発生する。

高齢化で公的年金は限界
公的年金のみだと現役時代の収入の半分に
●厚生年金と基礎年金の合計による所得代替率の推移

出所:厚生労働省
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/278202/030600059/p3.jpg

日本の年金制度の総合力は中国より低い
●グローバル年金指数ランキング(2016年度)

出所:米コンサルティング会社マーサ―
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 言うまでもなく、日本の公的年金は制度疲労を見せている。賦課方式と呼ぶ、シニア層の年金受給分を現役世代が仕送り方式で支える仕組みを採用しているため、少子高齢化の影響を直に受ける。
 国立社会保障・人口問題研究所によると、現在は1人の高齢者を2.8人の現役世代で支えているが、2030年には1.8人、2050年には1.3人で支えることとなる。支えられる側が増え、支える側が減れば制度運営が難しくなるのは当然のことだ。
 現役世代の所得に対して、もらえる年金額がどれくらいかを示す所得代替率という数値がある。2014年度時点では62.7%だが、厚生労働省の試算では2040年度に50%程度まで引き下がるという。
 米コンサルティング会社マーサーが各国の年金制度の持続性などを比較したランキングでは、日本は全27カ国中の26位と下から2番目に沈む。驚くべきことに、中国やインドなどよりも低い順位となっている。
 日本の年金財政は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を通じて運用する130兆円の積立金はあるものの、将来、年金の支給額が減り、支給開始も70歳などに引き上げられるシナリオは避けられない状況にまで追い込まれている。

支給額の上昇を抑えやすくする国民年金法改正案を巡り国会が紛糾(写真=時事)
 12月に入って成立した公的年金の支給額を抑制しやすくする国民年金法改正案を巡っては、国会で激しい論争が繰り広げられた。野党民進党は「年金カット法案」と批判する一方で、安倍晋三首相が「世代間の公平性が確保され、制度への信頼を得る」と訴える場面もあった。
 こういった環境の中では、政府としても「公的年金が制度疲労を見せているので、国民自らも積み立ててほしい」とDC制度拡充の本当の狙いを声高には説明できない。
 将来設計の責任が「公」から「私」にバトンタッチされつつある事実を、制度変更を通して読み解く他はない。
 かつて、高齢者の生活や介護は共同体が支えてきた。それが、経済発展を通じて政府が支える体制ができ、社会が成熟して高齢化を迎えた今、自らが自らの老後を支える準備をしなくてはいけない時代となっている。
 経済コラムニストの大江英樹氏は「DCは税制メリットが大きく、資産運用には優れた制度。公的年金の補完としては最適」と指摘する。
 公的年金だけでは国民の将来を支えられないが、「じぶん年金」普及に向けて制度は整備した。政府の苦しい胸の内が透けて見える。
 2017年1月からのDC制度変更でスポットライトを浴びているのが、新たな加入対象となる公務員だ。雇用と収入が安定しており、金融機関にとっては、喉から手が出るほど欲しい顧客層。新たに口座を開設してもらえば、少額投資非課税制度(NISA)口座の開設や他の金融商品を売り込むチャンスにもつながる。
 地方公務員との結びつきが強い、地方銀行ではDC口座開設に積極営業を仕掛けているはず──。とあるファイナンシャルプランナー団体からそんな話を聞いて、四国のある有力地銀を訪ねた。すると、想定とは真逆の答えが返ってきた。

チラシを置くのも厳禁
 「実は思ったようなアプローチをかけられず、歯がゆい状況です」。営業担当者は、残念そうに話し始めた。背景にあるのは公務員の労働組合である自治労の存在。特定の金融機関による営業やセミナーを避けるよう厳格な方針を示しているという。
 11月に開かれたDCセミナーでは、第一地銀や第二地銀など複数の団体が講義する形式。しかも、説明できる範囲はDC制度に関する概要的な内容にとどまる。
 役所には、金融機関のチラシも置けない状態。当然、職場内を直接訪れての職域セールスも、ほとんどの市町村でご法度という。
 公務員という大鉱脈を目の前に、思うような営業戦略を手掛けられない金融機関の歯がゆさが見え隠れする。
 先ほどの地銀の営業担当者は制度運用面での不安も指摘する。「必要な申請書が11月中に届く予定だったが、12月中旬にならないと届かない。来年1月の制度開始に間に合わない可能性がある」と焦りを募らせる。
 今回の制度改正を定めた「改正確定拠出年金法」が国会で可決したのは今年5月下旬。それから約半年の急ピッチでの準備で現場の一部には混乱が見られている。
 2017年当初からの個人型DC制度普及へのロケットスタートは、現時点では期待薄だ。個人の基礎年金番号の記入などの手続きに煩雑な部分もあり、多くの人が申請を見送る可能性も懸念される。
 さらには、「認知度がNISAに比べてかなり低い状態」(野村総合研究所の金子久・上級研究員)という点も見逃せない。

ジュニアNISAのわだち踏まぬ
 これらの課題に対し、政府も手をこまぬいてはいられない。今年4月に開始した未成年者向けの少額投資非課税制度(ジュニアNISA)では、加入者数が伸び悩み、政策効果が出ていない。ジュニアNISAの二の舞いは避けたいと、政府は下の表にあるように次々と対策を打ち出している。
政府は制度普及を急ぐ
●主なキャンペーン内容

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 なかでも厚生労働省は2016年度の補正予算で約5億円のDC制度普及に向けた予算を計上した。
 テレビやラジオ、インターネット広告を実施するほか、効果を測定して次の広告戦略へフィードバックするなど、マーケティングの手法を取り入れる。
金融各社は低コスト投信を拡充する
●商品数と信託報酬

注:「個人型確定拠出年金ナビ」から一部引用
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 国内の個人が保有する金融資産は約1700兆円。それに対し投資信託の保有残高は全体の約5%にとどまる。モーニングスターの朝倉智也社長は「NISAとDCを通じて、政府は資産運用を日本に根付かせる大勝負に出ている。来年からのDC制度拡充を空振りさせるわけにはいかないという思いは強い」と分析する。
 「SBI証券がさらに割安な日本株投信を投入してきたぞ」。今年、ネット証券業界では、DC向けの運用商品を巡る最新情報が激しく飛び交っていた。
 各社が意識するのは、信託報酬とよぶ投資信託の管理費用。保有金額に応じて運用期間中はかかり続けるコストのため、長期運用を基本とするDCでは低ければ低いほど良いとされる。

赤字覚悟の消耗戦
 今年9月には楽天証券がDC事業に参入。運用できる商品数を28本と、SBI証券(62本)など同業に比べ少なく抑えた。「投資初心者にも推奨しやすい低コストの安い商品に絞り込んだ」と楽天証券経済研究所の篠田尚子ファンドアナリストは話す。

楽天証券のサイトでは、商品別の投資比率や評価損益などの情報を見やすくした
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 商品数などで戦略の違いこそあれども、顧客の関心を引くコストを提示できるかに各社は注力している。上の表にある通り、確定拠出年金に力を入れる証券会社で最もコストの安い投信の信託報酬は0.1%台が並ぶ。モーニングスターによると、株価指数などに連動するインデックス型投信の信託報酬は平均で年率0.64%。激しい競争の結果、業界平均を大きく下回る商品がDC向けに取りそろえられている。
 仮に顧客が信託報酬0.15%の商品を100万円運用した場合、年間わずか1500円を運用会社などと分け合う形になる。「DC事業はどこの会社も当面は赤字。消耗戦が続くよ」。ある大手証券の幹部は嘆く。
 もうからないのに各社は顧客争奪戦を繰り広げざるを得ない。その背景には、政府の動きがある。
 金融庁は長期的な顧客利益につながる商品を作るという「受託者責任(フィデューシャリー・デューティー)」の確立を金融機関に強く求めている。
 これまで証券会社は、毎月高い水準の分配金を支払う投信を積極販売し、投信の運用状況に陰りが出たら次の売れ筋商品に乗り換えさせる、「回転売買」で販売手数料を稼いできた。当然、短期志向の投資家しか育たない。
 金融庁は金融機関へ規律順守を強く求め、低コスト投信などを通じた長期の積み立て運用を促すよう働きかけている。当然、20〜30年単位での運用を前提とするDC制度の普及は、金融庁の描く未来図に合致している。
 金融各社も回転売買で稼ぐビジネスモデルがもはや続かないとの意識は強い。そのため低価格競争で身を削りながらも、DC向けの顧客争奪には手を抜けない状況となっている。
 もっとも、顧客視点で見ると、コストの低下や金融機関からの長期視点の運用提案は、消費者利益にかなっている。個人が将来資金の積み立てを増やし、証券会社側も低コストの金融商品を提供する。将来的にウインウインの関係を作るための、金融機関にとっての生みの苦しみの時期と現在を捉えることもできる。
 1980年代からDC制度を導入している米国では、じぶん年金は機能しているのだろうか。

米国は個人年金の割合が大きい
●日米の65歳以上世帯の収入構成

出所:日本は厚生労働省「平成27年国民生活基礎調査」。
米国はEmployee Benefit Research Institute 2012
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 上の円グラフが示すように、65歳以上世帯の収入構成を比較した場合、米国は公的年金などへの依存度が38%と日本の67.5%に比べ低い。
 その一方で、米国は個人年金や企業年金の割合が18.4%と日本の5.6%の3倍以上となっている。公的年金を十分に補い、老後の生活資金を支える役割を果たしている。

米国は10年前の年金改革でDCの普及が加速(写真=Chip Somodevilla)
 2001年にDCを始めた日本と比べ、制度の歴史が長い点は普及の要因の一つだ。だが、それが全てではない。米タワーズワトソンの浦田春河ディレクターは「自動的に多くの人が制度参加するシステムを作り上げたことが有効だった」と指摘する。
 米国ではベビーブーマー世代(1946〜64年)の退職ラッシュを控え、公的年金からじぶん年金へのシフトを目指した年金改革法を2006年のブッシュ前大統領政権時に成立させた。
 この法律により、DC導入企業の従業員に対し、これまでの任意加入から、自ら拒否を表明しない限りは自動的に加入する方式の採用が進んだ。
性悪説が普及促す
 さらに、毎月の掛け金が入社当初は給与の3%から始まり、徐々に10%程度まで自動的に引き上げるシステムの導入も新しいルールには盛り込まれた。
 全ての人が合理的に考え、将来のための積み立てを自発的に始められるわけではない。一種の「性悪説」に基づいた仕組み作りがDC普及につながった。
 投資商品に関しても、同様の発想だ。米国では、運用資産を指定しない際に自動的に選択される「デフォルト商品」として、ターゲット・デート・ファンド(TDF)と呼ぶ商品が人気を集める。
「ほったらかし投信」が米国では主流
●ターゲット・デート・ファンドの資産配分比率のイメージ

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/278202/030600059/p12.png

 定年退職時までの投資期間で、徐々に投信内の資産配分が変わるのが特徴。運用初期は株式など高リスク資産を多く組み入れ、次第に低リスクの債券などの配分が増える仕組みとなっている。
 「米国でTDFは100兆円レベルの運用資産規模に拡大している」とブラックロック・ジャパンの内藤豊・商品開発部長は話す。
 将来設計に全く関心がなくても、知らぬ間にDC制度に加入し、知らぬ間に資産運用ができる仕組みを米国では作り上げている。
 日本でのDC制度の本格普及はこれから。公的年金だけに頼れない環境で、多くの人が将来の生活安定を確保するためには、制度を通じたじぶん年金作りは欠かせない。
 日本での少子高齢化の進行は米国よりも先を行く。残された時間は少ない。他国の良い事例は、すぐ取り入れる。DC制度の素早い進歩が、日本の未来を明るくする。
(日経ビジネス2016年12月26日・2017年1月2日合併号より転載)


このコラムについて
Special Report
日経BP社の媒体の中から、読者の反響が高かったものを厳選し、『日経ビジネスオンライン』で公開します。
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[経世済民119] 個人情報を匿名化して売買、仕込まれた“劇薬” 政府が方針公表も、険しいデータ開国への道 ビッグデータで最適値付け 
個人情報を匿名化して売買、仕込まれた“劇薬”政府が方針公表も、険しいデータ開国への道


ニュースを斬る
2017年3月9日(木)
寺岡 篤志
 政府は企業が顧客の個人情報を第三者に提供する際の指針を公表した。例えば鉄道会社が持つ乗降履歴は利用日時を30分単位に丸めるなど、個人が特定できないように「匿名化」する。

 
 ビッグデータの活用に弾みをつける狙いだが、データのオープン化を急ぎすぎれば、却って国際的にはつまはじきにされかねない。個人情報保護の最先端を走る欧州が、法整備が不十分な国へのデータの持ち出しを禁止しようとしているからだ。

 また、ビッグデータ時代の重要な資本となるデータそのものでも、インターネット上のデータを支配している米国の「GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)」に質も量も遠く及ばない。

 データ後進国の日本に挽回の道はあるか。

データビジネスは利便性と人権保護のバランスが重要だ
 「POS(販売時点情報管理)データのうち、超高級品など希少な商品の購入履歴は削除、または商品カテゴリーに置き換える」

 「自動車の移動履歴は、自宅や職場を特定されないように走行開始、終了時の位置情報を削除する」

 2月28日に政府の個人情報保護委員会が発表した指針は、POSデータ、クレジットカードの利用情報、鉄道の乗降履歴、自動車の走行データ、電力使用量という5つの類型について、個人が特定されないように情報を加工するための具体例を示した。

 こうした「匿名化」を施せば、企業は本人の承諾無く第三者に情報を売買できるようになる。今年5月の改正個人情報保護法の全面施行に向けた動きだ。例えばPOSデータやカード情報なら精緻なマーケティングや在庫管理に、自動車のデータは混雑緩和につながるサービスなどに応用できる。

 政府の狙いは、各企業がデータを融通し合えるようにすることで、データの集積を進めることだ。処理能力の高いAI(人工知能)の開発が進んでも、分析するデータの量が各企業の保有分だけに止まっていては宝の持ち腐れ。優れた分析にはまず大量の統一されたデータが必要になる。

 ただし、個人情報の活用は利便性と人権保護のバランスが重要だ。データは情報を丸めるほど利用用途は限られる。一方、電子マネー「Suica(スイカ)」のデータを無断で外部提供していたJR東日本のように、対応を誤れば苛烈な非難を浴びる。そして問題は人権保護だけにとどまらない。データを安易に流通させれば国際的な信頼を失い、かえって取り扱いの対象となるデータの量が減ることにもなりかねない。

 EU(欧州連合)は昨年、個人情報保護を強化する「一般データ保護規則(GDPR)」を制定した。2018年5月に発効する。日本にとって一番影響が大きいのが、EU域外へのデータの持ち出しを制限する規定だ。日本の企業がEU内に持っている子会社や事業所にも適用される。EUと同等レベルの保護制度が組まれていると認定され、持ち出しが自由に認められる見込みなのはイスラエルやスイスなど11の国と地域。日本は対象になっておらず、持ち出しには複雑な認証手続きが必要になる。

 個人情報保護に詳しい牧田潤一朗弁護士は、日本がGDPRの認定を受けていない背景について「国民1人ひとりの人権意識の高さが、日本と欧州では段違い」と話す。日本の匿名化の枠組みは「EUの認定国を目指してGDPRの枠組みに沿った考え方になっているが『仏作って魂入れず』だ」と手厳しい。

 典型的なのが「オプトイン」「オプトアウト」の考え方だ。個人情報の取扱いをする際に、企業側があらかじめ本人の了解を得るのがオプトイン。逆に、本人が反対の意思表示をしない限り、個人情報の取得や流用が行われるのがオプトアウトだ。牧田弁護士は「ウェブサイトの閲覧履歴など細かい情報の取得に至るまで、EUではオプトインが浸透している。日本ではオプトアウトの考え方が根強く、消費者も慣れてしまった。例え承諾を求められたとしても、しっかり理解せずに同意してしまう消費者が多い」と指摘する。

 こうした権利意識の違いは、データの利用方法の規制でも表れている。EUは経済状態や健康状態、個人的嗜好などを自動的に分析する行為を「プロファイリング」と定義。各消費者はプロファイリングに異議を唱える権利があるとGDPRで明記された。企業側は異議に対して正当な根拠を示さない限り個人情報の利用を制限される。懸念されているのは、例えば特定の人種や地域の居住者が保険料で差別的な扱いを受けるような事態だ。

 日本でも書店が客の顔認証データを万引き防止に利用していることがインターネット上で議論になったことがあるが、個人情報保護法にはデータの利用方法について特段の規制がない。病歴や犯罪歴など機微に触れる情報の保護強化を謳ってはいるものの、データの適正利用に繋がるかは不透明だ。

 EUが今後データ提供の認定国を選定するに当たって、優先協議の相手として日本や韓国を挙げているが、牧田弁護士は「日本は改正法の施行後に実績を積み上げないと、権利保護への姿勢強化を証明できない。GDPRの発行までに認定を受けられる可能性は低い」とみる。

「情報銀行」で個人を啓発

 欧州の権利保護の態勢に追いつくための“劇薬”を政府は仕込んでいる。内閣府のIT総合戦略本部が明らかにした「情報銀行」の推進だ。一定の認証を得た民間業者が開設する銀行に、各消費者が加工していない生の個人情報を預託。銀行を通して情報の提供を受けた業者は、消費者に便益を提供する。例えば、自身の病歴などを情報銀行経由でヘルスケア業者に提供すると、ビッグデータ解析の結果弾き出された健康管理のためのアドバイスが提案される、といった仕組みだ。

 ここで重要なのは、消費者一人ひとりが生の個人情報の提供先を意識的に把握・管理する必要があるということだ。ある企業が持っている自身の情報を別の業者に移管することもできる。個人情報は貯金や株券と同じ、自身の大事な資産として取り扱われるようになる。IT総合戦略本部は、こうした権利を使いこなすための教育・啓発を進めていく考えだ。

 一方、この教育・啓発が不十分なままデータの利用促進だけが推し進められれば、利便性と権利保護のバランスが崩れかねない。「情報が集まる企業側の発言権が増し、個人情報の提供を拒む人は満足なサービスを受けられずに置き去りにされるといういびつな市場が出来上がる」(牧田弁護士)との懸念の声も漏れる。

 EUがGDPRによる権利保護を推し進める背景には、利便性と権利保護のバランスを1社でコントロールできるほどの「データ寡占業者」への警戒感があるとみられる。世界中に情報の根を張っている米国の「GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)」だ。

 しばしば批判にもさらされるGAFAだが、その情報資産はビッグデータを活用したい企業に取ってみれば垂涎の的だ。膨大な会員データやウェブサイトの閲覧履歴が統一されたフォーマットの中に納められ、その引き出しや分析のためのアプリケーションも整っているからだ。

 ビッグデータによるマーケティング支援を手掛けるフロムスクラッチの武田卓哉執行役員は「一方、日本では、同じ会社内でリアル店舗とEC(電子商取引)サイトのデータの項目が揃っていないなどお粗末な状況で、すぐに情報を他社に売買できない会社は多い」と指摘する。GAFAに並ぶ情報量を得ようとすれば違う企業同士のデータを統合することになり、フォーマットの統一にさらに大きな労力がかかる。データという商品の魅力において、米国との彼我の差は大きい。

 そこで、武田氏は「日本はデータの正確性で勝負していくべきではないか」と指摘する。例えばECサイト内のアクセス履歴について「日本はミス無く100%の収集を目指そうとする真面目な技術者が多い」という。

 実際にデータの正確性が成果を得た事例もある。東京工業大学の元素戦略研究センターは、ビッグデータ解析により新物質の組成を探し出す「マテリアルズインフォマティクス」を利用し、希少元素を使わない赤色発光する新たな窒化物半導体を開発したと発表した。細野秀雄センター長によると、マテリアルズインフォマティクスは米国が主導して開発が進んだ技術だが「実際に有望な新素材を生成できたのは初めて。日本が歴史的に緻密な研究データを積み重ねてきた成果だ」という。

 改正個人情報保護法の施行により「ビッグデータ元年」となる今年は、日本が今後のデータ社会での勝ち組になれるかを占う分かれ目でもある。日本独自の強みを発揮する方法を探らなければ、日本は他国からデータをもらえず、データの買い手も少ない。データ開国への道はまだ遠く険しい。


このコラムについて

ニュースを斬る
日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/030700607

 
ビッグデータで最適値付け

トレンド・ボックス

高くても顧客が納得する価格を弾き出す
2017年3月9日(木)
市嶋 洋平
需給によって変わるモノやサービスの価格決定に、ビッグデータが使われ始めた。客観的なデータを正しく分析すれば、高くても顧客が納得する価格がはじき出せる。IT専門誌「日経ビッグデータ」から、国内外の最新事例を紹介する。

「福岡ヤフオク!ドーム」では2016年シーズンから、需要に応じて観戦チケットの値段が動的に変わる仕組みを導入している(写真=©SoftBank HAWKS)
 「あ、高い(温かい)鍋」──。鍋が恋しくなる季節、今年はこんなダジャレが流行した。秋以降、野菜の値段が軒並み高くなったからだ。夏場に複数上陸した台風と日照不足の影響が重なり、農作物の収穫量が大幅に減った。供給より需要が多ければ、モノの値段が上がることを消費者は改めて実感した。

 ただ、世の中には価格が変わりにくい商品もある。例えば、プロ野球の観戦チケットはシーズン開始前に価格を決めてしまうのが一般的だ。スタンド席や外野席など、座席の場所(席種)に応じて価格帯を変えて値付けする。この価格が、シーズンを通じて全試合に適用される。

 コンサートなどのチケットも価格が固定されている。S席やA席など大まかに分類されてはいるものの、S席の中で前方と後方では価値が異なる。

チケット価格が毎日、変わる


チケットの転売問題に揺れる音楽業界でもダイナミックプライシングに注目が集まっている
 価格の硬直性は経営の重しとなる。イベントの日程が迫ってチケットが売れ残っていたとしても、価格を下げて販売するのが難しいからだ。チケットの価格は印刷したり、情報誌に掲載したりするので、その時点で価格が決まってしまう。買ったタイミングで価格が異なれば、「損をした」と文句を言う客も出てくるかもしれない。

 この状況に一石を投じたのが、ヤフーと福岡ソフトバンクホークスだ。2016年シーズンに「福岡ヤフオク!ドーム」で開催される試合の観戦チケットの一部を対象に、AI(人工知能)を活用した価格の最適化に取り組んだ。

 「同じクラスの席でもそれぞれの価値は異なるはず。いい席を評価して購入していただけないかと考えた」(ヤフーチケット本部チケット推進部の稲葉健二部長)。

 2016年シーズンは列ごとに評定して、異なる価格を付けることにした。その判断の根拠となるのは、(1)過去にその席がヤフオクドームの5万2000席の中で何番目に買われたかの実績値(2)現在の対象チケットの売れ行き(3)天候やホークスの順位、相手チーム、開始時刻や曜日──。これらのビッグデータを活用した(図1)。

需給に応じて価格を柔軟に変える
●図1:観戦チケットの価格を決める要素(左図)
●列ごとに異なる価格(右図)

(画像提供=ヤフー)
 価格は100円単位で上下させた。例えば、9000円のチケットが列によって9900円で販売されたり、試合日が近づくにつれて値段が柔軟に変わったりするように設定した(図2)。需要が低ければ、価格が下がる場合もある。チケットは、ヤフーが運営する電子チケットサービス「PassMarket(パスマーケット)」を通じて販売した。

買ったタイミングで500円以上の差
●図2:購入時期で変わるチケット価格

 2016年シーズンは100席で試験的に取り組んだため、収益への寄与は限定的だった。来シーズンは「対象とする席と種類を増やしたい」(稲葉部長)。

 参考とするデータとしては上記の3つのほか、相手チームの成績や、選手の「2000本安打」などのイベント、登板予定のピッチャー、残り試合数なども来シーズンは入る可能性がある。観戦したいと思う人の数に合わせて、チケットの価格が動的に変化する仕組みを構築しようとしている。

リクルート、相場価格を指数化

 ITを活用して、適正価格の精度を上げる技術を「ダイナミックプライシング」と呼ぶ。顧客の購入意欲に応じて商品・サービスの価格と割当量を変えることで収益の最大化を図る。

 価格を1つに固定してしまうと、販売数はおのずと上限が形成される。潜在的な顧客の中でも、高くても買う層と安くないと買わない層がいる。価格をダイナミックに変化させることで、こうした層の購入意欲を高め、全体の収入を増やす(図3)。

複数価格の設定で収益を最大化
●図3:ダイナミックプライシングの概念

 このダイナミックプライシングにとりわけ関心を示しているのが、スポーツやエンターテインメント業界だ。興行主としては人気に応じて適切な収益を確保したいと考えるのは当然だ。消費者も人気のチケットが入手しやすくなればメリットがある。

 戦略的な値付けに乗り出す各社に共通するのが、外部データの活用による精度向上への期待だ。

 例えば、リクルート住まい研究所は住宅情報誌に掲載した価格などの情報と販売期間、場所や駅からの距離などの物件情報などを基に、2000年代初頭に住宅価格指数を開発。住宅関連企業や金融機関などに提供してきた。当時開発を担当したリクルートホールディングスR&D本部RIT推進室の清水千弘フェローは「購入者の実態を反映したよりリアルタイムな指数を目指した。家を購入して後悔する人をなくしたいという思いがあった」と説明する。

 リクルートは住宅指数を無償で公開するほか、購入者アンケートの結果など蓄積した情報を分析して住宅情報誌やサイトへの広告を出稿する企業には基本的に無料で提供している。

 現在は、「事業者がマンション向けに購入した土地に関連し、どのような条件の物件を建設すればどのような収益になるのかシミュレーションできる仕組みを検討している」(清水フェロー)という。

エアビーは価格を自動決定


エアビーアンドビーでは部屋を貸し出すホストが「スマートプライシング」を利用して価格を決める
 売り手と買い手の価値に対するギャップを埋める橋渡し役として、客観的なデータを活用する動きもある。先行するのが米Airbnb(エアビーアンドビー、以下エアビー)だ。一般人が自宅の一部を宿泊者に貸し出す民泊サービスでも、ビッグデータが生かされている。

 エアビーの宿泊料金は、日々大きく変動している。宿泊料金を決めているのは、部屋を貸し出している「ホスト」ではない。エアビーが機械学習によって生成したアルゴリズムが、都市の宿泊需要動向や物件ごとの「価格弾力性」を予測し、売り上げが最大になる宿泊料金を1日ごとに決定している。

 エアビーは部屋を貸し出すホストに対して、宿泊料金設定を支援するツール「Smart Pricing(スマートプライシング)」を提供している。ホストは宿泊料の上限と下限、受け入れたい宿泊客の数という3点をシステムに入力するだけでいい。アルゴリズムが適切な宿泊料を設定する。

 「オーナーにとって宿泊料の設定は非常に難しい作業だった。様々な情報を集めて、毎日価格を更新し続ける必要があるからだ。そのような苦労を取り除きながら、オーナーの収入を最大化するツールの提供を考えた」

 スマートプライシングのプロダクトマネジャーであるカーラ・ペリカーノ氏はそう説明する。

 アルゴリズムは、(1)都市における宿泊需要(2)物件が存在する場所(3)物件の内容や価格弾力性──の3つから、宿泊料金を決定する。価格弾力性とは、宿泊料金の上下に伴って需要が増減する変動幅の大きさのことを言う。

 アルゴリズムが1日単位の宿泊需要や価格弾力性の予測に使用するデータは数百種類に及ぶ。そして予測アルゴリズムは全て、機械学習によって開発した。学習データの件数は数十億件以上で、予測モデルの「特徴」の数も数十万個に達するという。

 都市におけるイベントの有無なども、アルゴリズムが直近の宿泊予約動向から予測。人間がイベントスケジュールを入力するといったことはしない。

需要よりも価格弾力性が重要


エアビーが米サンフランシスコで設定している街区。通りやエリアごとに細かく価格帯を変えて、最適な値付けに利用する
 同社のデータサイエンティストであるバー・イフラー氏は、「宿泊の料金を決定する上では、需要の動向よりも、物件の価格弾力性の方が重要だ」と説明する。

 例えば、宿泊需要がスポーツ大会などのイベントに起因する場合、宿泊料金を上げても需要は減りにくい傾向がある。宿泊客の側に「どうしてもその都市で宿泊したい」という強い動機があるからだ。

 一方、宿泊需要がホリデーシーズンの宿泊などレジャー目的である場合は、宿泊料金を上げると需要は急減する。宿泊客は他の物件や都市を選んでしまうためだ。

 エアビーが管理する数百万件の物件それぞれの価格弾力性も、これまでの宿泊実績データを基に予測している。物件の価格弾力性は、駅やバス停までの距離やその物件が立地する都市のブロック(街区)、これまでの宿泊客による物件のレビューやその内容によって変動する。

 例えば、宿泊客によるレビューの文章が全くない物件よりも、1本でもレビューがある物件の方が、需要の高まりに応じて宿泊料金を引き上げる「強気」の価格弾力性が設定される。レビューの本数そのものは宿泊料金に影響しないが、「三つ星」の評価が多い方が宿泊料金は強気になる。

 米国では物件の住所も宿泊料金に大きな影響を与える。サンフランシスコのような都市圏では、ストリートが1つ違うだけで、街の雰囲気や治安が大きく変わってしまうからだ。

 スマートプライシングは、オーナーの営業方針も考慮して宿泊価格を決める。エアビーのオーナーは、あくまでも一般人だ。部屋の稼働率を最大化したいオーナーがいる一方で、本業に影響しないよう宿泊客の受け入れをあまり増やしたくないオーナーもいる。

 そこでスマートプライシングは、稼働率を上げたいオーナーの場合はアグレッシブな値付けを、そうではないオーナーには低い稼働率のままで収入を増やせるような値付けを推奨する。

ビッグデータはAIで分析

 スマートプライシングのシニア・ソフトウエア・エンジニアであるチャン・リー氏は「予測に人間が関与することはほぼない」と語る。人間の関与を排除することで、エアビーが管理する数百万件の価格弾力性を1日単位で予測することが可能になった。

 エアビーは機械学習のシステムを外部に公開している。2015年5月に、自社で開発した「Aerosolve(エアロソルブ)」をオープンソースソフトウエア(OSS)として公開した。スマートプライシングの予測アルゴリズムの開発にも使用した。スマートプライシングは、エアビーの強みがそのビジネスモデルだけではなく、技術力にあることも示している証拠と言えそうだ。

 価格の最適化は運輸や不動産など一部の業界では長年取り組まれてきたが、他の多くの業界ではほとんど進んでいないのが実態だ。原因は様々あるが、その一つは増え続けるデータに対処しきれていないことにある。

 価格を決める要素としては天候や日程、ライバル商品との価格差などさまざまある。IoT(モノのインターネット)の活用が広がれば、今後データは爆発的に増えるのは間違いない。膨れ上がるデータに対応する1つの解が、AIの活用となる。利益を最大化させる、最適な値付けは古くて新しい経営課題と言える。

(日経ビジネス2016年12月5日号より転載)


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[経世済民119] 川崎重工、哨戒機への執念実る 三菱重工から50年ぶりに首位奪取 世界最大級投資家BRが日本企業400社に突きつけたESG
川崎重工、哨戒機への執念実る

防衛装備品、三菱重工から50年ぶりに首位奪取

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ニュースを斬る
2017年3月9日(木)
寺井 伸太郎
2015年度の防衛装備品契約額で、川崎重工業が三菱重工業を抜いてトップに立った。首位交代は半世紀ぶり。日本周辺海域の警戒・監視を担う哨戒機の開発が奏功した。川崎重工は民間機向け事業などで技術を磨き、かつての受注失敗の雪辱を果たした。

川崎重工業は日本周辺海域の潜水艦や不審船などを警戒・監視する哨戒機「P-1」を量産(写真提供=海上自衛隊)
 神奈川県の海上自衛隊厚木航空基地。空色に塗装された哨戒機「P-1」が飛び立ち、日本周辺海域をうかがう潜水艦や不審船などの警戒にあたる拠点だ。2月下旬、砂ぼこりの舞う駐機場ではP-1のほか、プロペラが特徴的な現主力の哨戒機「P-3C」の姿もあった。

 2016年6月に防衛装備庁が公表した15年度の装備品契約額で、川崎重工業は2778億円と前年度に比べ約5割増えた。三菱重工業は1998億円と24%減り、1965年度から死守してきた首位の座を明け渡した。

 逆転劇の主役となったのが川崎重工の手掛けたP-1だ。防衛省は2015年度、20機のP-1を7年間の長期契約によって一括調達することで、川崎重工や部品会社と合意。総額約3400億円の大型案件で、主担当企業である川崎重工の契約額を約2000億円押し上げた。

 従来、財政法で長期契約の上限は5年とされてきた。だが防衛装備品は高額で生産に時間もかかる。より長期のまとめ買いにした方がコストを抑えられるとして、特別措置法で上限を10年に延長。その第1弾がP-1だ。

 防衛省によると、毎年分散発注するのに比べ、同じ20機にかかる金額を約400億円抑制できる。防衛産業からみれば、設備やヒトのやりくり、資材の調達などの計画を立てやすくなる。

 川崎重工が首位を奪取できたのは、単に一括契約の波に乗ったからというだけではない。背景には継続的な航空機生産への取り組みがあり、P-1はその執念のたまものでもある。

哨戒機、一度は米企業に敗退

 時代は1970年代にさかのぼる。当時運用していた哨戒機の後継機について、日本政府は当初、国産機の開発を志向。川崎重工も機体設計など着々と準備を進めていた。だが米国側の巻き返しで国産化路線は白紙撤回され、最終的に米ロッキード(現ロッキード・マーチン)製の哨戒機P-3Cの導入が決定。自主開発の機会を奪われた国内の防衛産業に衝撃が走った。

 その後も、川崎重工はP-3Cのライセンス生産や米ボーイングの民間機の胴体生産などで航空機関連の技術を地道に磨き続けてきた。

 雪辱の機会は2001年に巡ってきた。P-3Cの後継機として、川崎重工が主担当企業に選ばれて開発が始まったのがP-1だ。主翼や胴体部分を手掛ける三菱重工や富士重工業をはじめ、約3000社に上るサプライヤーが参画するプロジェクト。エンジンはIHIが生産し、ほぼ純国産の機種だ。

 量産初号機を13年3月に納入、17年3月末までの生産は計10機を見込む。岐阜工場(岐阜県各務原市)では数本の生産ラインで複数機の組み立て作業を並行。搭載機器の点検作業の自動化や、職人の技に過度に依存しないための工程標準化など、これまでに培ってきた生産ノウハウをつぎ込んだ。

 哨戒機は潜水艦などを探知するための音響センサーやレーダーなど電子機器の固まり。内部に張り巡らされた配線は4万本、計120kmに達する。川崎重工・航空宇宙カンパニーの飛永佳成営業本部長は「サプライヤーから集まった機器類を一つのシステムにまとめ上げるのに最も苦労した」と話す。

 P-1は探知の精度や範囲など哨戒能力はもちろん、P-3Cとの比較で航続距離は1.2倍、飛行速度は1.3倍と、航空機としての性能も向上した。

 今回の一括契約で受注した20機の納入は18年度から始まる。年5機ずつ、4年間かけて生産する計画だ。それでも約100機あるP-3Cの更新需要は尽きないとみられ、「さらに30〜40機の受注を目指す」(飛永氏)。従来の潜水艦やヘリコプターなどに加え、P-1を手に入れた川崎重工は装備品市場で収穫期を迎えつつある。

首位交代は50年ぶり
●川崎重工業と三菱重工業の装備品契約額推移

出所:防衛装備庁資料などから本誌作成
三菱重工、護衛艦受注に全力

 対する三菱重工も黙ってはいない。戦車や艦艇、戦闘機など、幅広い装備品を担ってきた自負がある。反転攻勢に向け、大型案件に期待している。具体的には、島しょ部での有事などを想定し、従来よりコンパクトで機動性に優れた「新型護衛艦」、レーダーで探知されにくいステルス性を備えた「次期戦闘機」などだ。


三菱重工業は新型護衛艦の開発などで失地回復を図る(同社が近年建造した「てるづき」)(写真提供=海上自衛隊)
 新型護衛艦は18年度以降の契約で複数隻の連続建造が見込まれる。三菱重工の防衛・宇宙ドメイン幹部は「当社が培ってきたエンジニアリング能力を結集して対応する」と受注に強い意気込みを示す。

 同盟国の防衛力強化を求める米国のトランプ政権発足を受けて、日本でも防衛予算の拡大論議が起こりつつある。国内防衛産業の追い風にも映るが、「米国からの装備品の輸入圧力が高まる可能性もあり、市場環境は楽観できない」(大手メーカー)。

 14年度に閣議決定された防衛装備移転三原則で、防衛装備品の輸出規制が事実上緩和された。目立った実績はまだないが、将来的には海外市場も含めた競争が活発化する可能性もありそうだ。

(日経ビジネス2017年3月13日号より転載)


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世界最大級の投資家が日本企業400社に送った書簡

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ブラックロックが突きつけた「ESG」
2017年3月9日(木)
杉原 淳一
世界最大級の資産運用会社・米ブラックロックが、投資先企業に「従業員の生活水準向上」を求めている。社員のやりがいや満足度を重視する投資姿勢は、日本の「働き方改革」とも一致する。「ESG(環境・社会・企業統治)」への取り組みが、企業経営の重要テーマとして注目を浴びそうだ。

フィンク氏は長期投資の重要性を訴え続けている(写真=AP/アフロ)
 「企業が従業員の能力開発や生活水準の向上に積極的に投資しているかを注視している」──。3月上旬、ブラックロックのラリー・フィンク会長兼CEO(最高経営責任者)が、日本の有力企業約400社に向けて書簡を送った。1月ごろに欧米の投資先企業に送付した書簡の和訳版で、「ブラックロックが今、企業経営のどんな点に注目しているのか」を端的に示す内容だ。

 同社はフィンク会長兼CEOが1988年に創設した。年金基金や機関投資家から資金を預かり、世界中の株式や債券などに投資している。運用資産は約600兆円(昨年末時点)で、日本のGDP(国内総生産)を上回る規模だ。

 日本株だけでも20兆円以上を保有しており、大量保有報告書によると日立製作所や三菱ケミカルホールディングスなど有力企業の大株主に名を連ねている。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)や日銀と並ぶ“日本株式会社の大株主”となっており、同社が「企業による従業員への投資」を重点項目に挙げたことは、日本企業の経営戦略に大きな影響を与える。

世界の有力企業に対し、社会的な役割や貢献の重要性を訴える
●フィンク会長兼CEOの書簡要旨
世界経済について
グローバル化と技術革新の果実が、都市部の人材に偏在している
ブレグジットや中東情勢の混乱の根底には、この現実への反発がある
投資先の企業経営者に対し、上記の環境変化をどう分析し、経営戦略にどう反映しているのか問いかける
ESGの重要性
従業員の能力開発や生活水準向上への積極的な投資を重視する
企業の持続的な成長にはESG(環境・社会・企業統治)が不可欠。グローバル企業は、進出先の地域に根ざした存在であるべきだ
短期的な経営視点へのけん制
安易な株主還元よりも、将来に向けた成長投資を優先するよう求める
対話による改善が見られず、企業の説明や対応が不十分な場合は、取締役の選任や不適切な役員報酬に反対票を投じる
「ESG」が示す、真の企業価値

 書簡の中でフィンク氏が最も強調したのが、「ESG」の重要性だ。環境・社会・企業統治の頭文字を取った言葉で、企業経営を評価する際に、従業員の満足度やその企業が社会に与える影響などを重視する考え方を指す。

 フィンク氏は長年、投資先企業がESGとどう向き合っているかを重視してきた。今回の書簡でも改めてその方針を示し、「グローバル企業は、事業を展開する各市場で地域に根ざした存在であるべきだ」と強調している。

 投資家が企業を選ぶ際、元手となる資本を使ってどれだけ利益を稼いだかを示す指標であるROE(自己資本利益率)などが重視されてきた。ただ、表面的な利益指標だけでは、その企業が本当に長期投資の対象とする価値があるのか分かりにくい。

 例えば、工場が環境汚染を引き起こせば、立地先の国や住民から訴訟を起こされる可能性が高まる。多くの従業員が慢性的に疲弊、もしくは退職していくような職場環境では、生産性を向上させるどころか維持することすら難しい。企業統治が機能しなければ経営陣が不正にはしりやすく、企業そのものが傾きかねないというリスクもある。

 このように、短期的に大きな利益が出ていても、ESGを軽視する企業は投資対象としてふさわしくない、という考え方が欧米で急速に広まっている。

 日本では「ESGはあくまで機関投資家による社会貢献の一環」と位置付けられてきた。しかし、電通の新入社員の自殺を機に「働き方改革」が叫ばれるようになり、短期的な利益の積み上げよりも、社会貢献や労働環境への配慮こそが企業を長期的に成長させるという認識が徐々に広まりつつある。

 ブラックロック・ジャパンの井澤𠮷幸会長CEOは、「従業員が幸せに働いているかどうかが、企業の成長を左右するのは明白だ。政府が進める働き方改革は我々の方向性と一致しており、投資先企業との対話を通じて、その取り組み姿勢を問いたい」と話す。

グローバル化の負の現実

 ブラックロックがESGの重要性を強調するのは、ブレグジットや中東情勢の混乱など、昨年から続く世界的な変化の根底に「グローバル化と技術革新が起こした影響への反発がある」(フィンク氏)と分析しているからだ。「グローバル化の果実が必ずしも公平に分配されず、高度なスキルを持った都市部の人材に偏っている」(同)という負の現実があり、熟練度の低い従業員の仕事を大量に奪ったと見ている。

 今回の書簡では、企業の短期志向にくぎを刺したのも特徴だ。フィンク氏は2016年7〜9月期末までの12カ月間で、S&P500指数の構成企業による配当・自社株買いの総額が、同じ時期の営業利益の総額を上回っていると指摘。株主還元に偏り過ぎて成長投資がおろそかにならないよう、投資先企業に注文を付けた。

 フィンク氏の問題意識は、「企業がとにかく短期的な利益を上げて、それを株主だけに還元していれば評価される時代が終わった」(井澤会長CEO)ということの表れだ。今年の株主総会は、日本企業が世界的な変化にどう向き合うのかを見極める重要な機会となりそうだ。

(杉原 淳一)

(日経ビジネス2017年3月13日号より転載)


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[国際18] 「なくてもいい国」と中国に言い渡された韓国 THAAD配備への報復が始まった 
「なくてもいい国」と中国に言い渡された韓国

THAAD配備への報復が始まった


早読み 深読み 朝鮮半島
2017年3月9日(木)
鈴置 高史

3月6日夜、米軍はTHAADの機材を韓国に持ち込み始めた(提供:U.S. Force Korea/AP/アフロ)
(前回から読む)

 中国が韓国に対する経済制裁に乗り出した。韓国は耐えられるのだろうか。

始まった「韓国イジメ」

「中国がイジメる!」と韓国人が騒いでいます。

鈴置:在韓米軍へのTHAAD(=サード、地上配備型ミサイル迎撃システム)配備が始まりました。THAADの配備予定地は慶尚北道・星州(ソンジュ)のゴルフ場です。

 2月27日にゴルフ場の所有者である韓国ロッテグループが軍用地との交換を役員会で決めました。翌28日に韓国軍と正式に契約。韓国軍がゴルフ場を米軍に提供します。

 THAAD配備を拒否するよう、韓国に圧力をかけてきた中国の面子は丸つぶれ。さっそく、韓国への報復に乗り出したのです。

広がるロッテの営業停止処分

 真っ先に標的となったのはロッテグループでした。中国で展開する量販店「ロッテマート」4店舗が消防法に違反したとして3月5日までに、1カ月間の営業停止処分を受けました。

 遼寧省丹東市の2店舗、浙江省・杭州市と江蘇省・常州市のそれぞれ1店舗です。韓国経済新聞の「滅茶苦茶な中国のTHAAD報復・・・ロッテマート4店が営業停止」(3月5日、韓国語版)が報じています。

 聯合ニュースの「中国『反ロッテ』波状攻撃・・・対策に決め手欠く韓国政府」(3月6日、韓国語版)は、6日までに営業停止処分となった店舗が23カ所に及んだと報じました。

 ロッテマートは中国全土に99店舗あります。2016年11月から消防法や食品安全法による中国当局の検査を受けていました(「中国が操る韓国大統領レース」参照)。

 「THAADの用地を提供したら営業停止にするぞ」との警告です。中国は今、それを発動したのです。

 3月2日にはロッテ免税店のウェブサイトがサイバー攻撃を受け、一時的にダウンしました。韓国メディアは韓国ロッテのキャンデーが「ビタミンEの成分が規制に違反した」として中国の検疫当局により廃棄処分にされたと報じています。

韓国観光も全面禁止

ロッテ狙い撃ちですね。

鈴置:輸入制限は韓国製の食品全体に広がっています。聯合ニュースが「韓国食品の輸入拒否相次ぐ 中国のTHAAD報復」(3月6日、日本語版)で報じました。

中国政府は自国民の韓国観光も制限する方向でしたね。

鈴置:2016年11月から示唆していました(「中国が操る韓国大統領レース」参照)。約束通り、というのも変ですが今回、しっかりと実行に移しました。

 3月2日に中国政府が同国の旅行代理店に対し、韓国旅行商品の販売を全面的に中止するよう指示した、と韓国各紙が報じています。

 翌3日には中国国家旅遊局が「旅行のリスクを認識し、目的地を選ぶように」と自国民に韓国旅行の自粛を呼び掛けました。念のいった話です。

日中から同時に圧迫

 2016年に韓国を訪れた観光客は約1700万人。うち約800万人が中国人です。ただでさえ「嫌韓」で日本人観光客が落ち込んだ後ですから、韓国の観光業界は大きな打撃を受けるでしょう。

 韓国の同業界はこれを見越し、日本人観光客の誘致に力を入れていました。しかし1月6日、韓国の合意違反に怒った日本政府はスワップ交渉を中断しました(「『百害あって一利なし』の日韓スワップ」参照)。

 日本政府は駐韓大使も一時帰国させましたが、韓国が合意を守ろうとしないので2カ月経っても戻していません。事実上の「大使召還」です。

こんな状態で韓国に日本人の客足が戻るかは不明です。韓国は通貨スワップに次いで観光でも、日中双方から圧迫されることになったのです(「中国が韓国を『投げ売り』する日」参照)。

サムスンや現代も対象に

中国は「対韓制裁」をいつまで続けるのでしょうか。

鈴置:中国外交部の耿爽報道官は3月3日の記者会見で「関係者が(中国)民衆の声に耳を傾けることを望む」と述べました。

 「民衆の声」を名分に掲げ、在韓米軍へのTHAAD配備を拒否するまで「対韓制裁」を続けるぞ、と脅したのです。

 各地で「韓国製品の不買・打ちこわし運動」が始まったとしきりに中国のネットが伝えます。「民衆の声」のつもりなのでしょう。

 中国共産党の対外威嚇用メディア、Global Timesは社説「SK must face bitter pill over THAAD」(3月1日、英語)で以下のように書きました。

If the deployment of THAAD continues, resentment toward Seoul from Chinese consumers will eventually lead to zero exports of South Korean cultural goods to China. It will be the bitter fruit created by Seoul itself.
China is the largest market for Samsung and Hyundai, both of which have factories in China. Most of their products sold in China are made in China. Sanctioning them will lead to a complicated outcome. However, Sino-South Korean conflicts keep escalating; the two companies will suffer sooner or later.
 もしこのままTHAADの配備が進むのなら、中国人の「嫌韓」により、韓流ドラマの輸入が皆無になる。韓国の自業自得だ。中国という巨大市場を享受するサムスンや現代(ヒュンデ)も早晩、ひどい目に遭うだろう――というのです。見出し通りに「韓国は苦い薬を飲むことになる」という威嚇です。

泣きを入れる韓国政府

韓国政府はどう対応したのですか?

鈴置:“小声”で中国に抗議しています。中国を怒らせたくはない。しかし国民の手前、何も言わないわけにもいかないからです。

 中央日報の「韓国外交部、中国のTHAAD脅迫に『言動の自制を』」(3月3日、日本語版)が、その空気をよく示しています。以下がポイントです。

趙俊赫(チョ・ジュンヒョク)外交部報道官は3月2日の定例会見で「韓国企業に不利益を与えるべきだとの主張が中国の一部から提起され懸念している。両国関係の発展、そして両国国民の友好増進に資さないような言動は自制することが望ましいと考える」と述べた。
 「韓国企業を苛めたら許さないぞ」と毅然として抗議するのではなく「そんな怖い言い方をしないで」と泣きを入れたのです。

 えらく弱気です。それでも韓国では「前に比べれば強く出た」と評価されています。記事は以下に続きます。

2月28日の定例会見の時に示した政府の公式立場よりもやや強いものだ。同日には趙報道官は「このような発言は両国関係の発展に資するものではない」とだけ触れた。
「中国の良識」に期待

新聞は「どうせよ」と書いたのですか?

鈴置:初めは「中国の良識」に期待する向きもありました。中央日報の「ロッテ、THAAD用地提供・・・総力外交で中国の圧迫防げ」(2月28日、日本語版)が典型です。こんなくだりがあります。読みやすい日本語に直して引用します。

Global Timesは評論で「中韓の経済が複雑に絡まっている状況で報復は『両刃の剣』だ」と慎重論を提起した。
「中国に投資し多くの雇用を創出するロッテを圧迫すれば、中国企業と労働者も影響を受けることになる」と賢明な対応を注文した。我々は中国でこうした合理的な声が力を増している状況に注目する。
 もちろん、中国に良識を期待しても無駄でした。2日後、韓国人から頼りにされたGlobal Timesは社説「Dissent can’t sway China over SK sanctions」(3月2日)で、次のように書きました。

Although mainstream Chinese society has supported sanctions on South Korea and Lotte Group in particular, some people also hold different views. This is normal. China has already become a diverse society in which it's impossible to have a monolithic view of a single event.
However, Chinese society has formed a collective determination to impose sanctions on South Korea, so there is no room for the latter to take any chances.
困るのは韓国だけ

 中国社会の主流が韓国とロッテに対する制裁を支持している。中国は多様な社会だから、一部には異なる意見もある。しかし中国社会は韓国に制裁を下すことで合意している。少数意見が採用される余地はない――という宣告です。

 韓国人が「変な希望」を持たないよう、つまり「中国を甘く見るなよ」と社説で釘を刺したのです。

 実際、中国の対韓制裁が「両刃の剣」になるとは言えません。韓国の全輸出に占める対中輸出は対香港まで含めれば30%前後。一方、中国の対韓輸出は全体の4−5%。中韓が対立し、仮に貿易をすべてやめても中国はさほど困らない。しかし韓国経済は崩壊します。

 興味深いのは、先に引用した社説「SK must face bitter pill over THAAD」(3月1日、英語)の中国語の原文――環球時報の「韓国を怪我させる必要はない。衰弱させればよい」(2月28日)だけにあるくだりです。以下です。

韓国は中国と陸地で接しているわけでもない。先進技術もなく、中国にとって重要な天然資源も持たない。中国の経済発展にとって、韓国は「あってもなくてもいい国」なのだ。
日本は一致団結した

韓国人はがっくりきたでしょうね。

鈴置:はっきりと「あってもなくてもいい国」と言われてしまったのですからね。多くの韓国メディアがこの記事を引用しました。

 聯合ニュースの「中国の人民日報の姉妹紙『サムスンも現代も当分苦労する』と脅し」(3月1日、韓国語版)、SBS放送の「『韓国はあってもなくてもいい国』・・・中国、THAAD報復を本格化」(3月1日、動画、開始後1分50秒から)などです。

 それに加え3月2日には「星州のゴルフ場を外科手術的に破壊する」と中国の高級軍人に脅されもしました。

 環球時報の「羅援の『THAADを制する十策』」(3月2日、中国語)という記事です。さすがの韓国人も「変な希望」――「中国に対する甘え」を捨てざるを得ませんでした。

 韓国紙は経済制裁の長期化を見越し「2012年の中国の反日暴動に対し、日本はどう対応したか」を分析する記事を載せるようになりました。各紙とも「日本は慌てず中国のイジメに冷静に対処した」「日本人は一致団結した」と強調しています。

なぜ「一致団結」を強調するのでしょうか。

鈴置:韓国では国論が分裂したからです。朝鮮日報が3月3、4日に実施した世論調査では55.8%が「THAAD配備に賛成」と答えた半面、32.8%が「反対」と回答しました。

「文在寅45.8VS安哲秀32、文在寅56.9VS黄教安25.4」(3月6日、韓国語版)で読めます。

韓国にも引導渡す

 3月6日夜、米軍が突然にTHAADの機材を韓国に持ち込み始めました。聯合ニュースは「在韓米軍のTHAAD実戦運営 早ければ4月から」(日本語版)で、当初は6−8月だった実戦配備の計画が前倒しになると報じています。

 米軍は京畿道の烏山(オサン)空軍基地で大型輸送機から機材を降ろす光景の写真や動画を公開しました。動画は在韓米軍のサイト「THAAD arrives on the Korean Peninsula」(3月6日、英語)で見ることができます。

 米国は中国に対し「反対しても無駄だ。もう配備を始めたのだから」と言い放ったのです。もちろん韓国に対して「中国の顔色をこれ以上見るな」と引導を渡す意味もあったのでしょう。

 このところ米国は韓国に対し「配備の約束を破るんじゃないぞ」と執拗に念を押してきました(「米国のTHAADを巡る対韓圧力」参照)。

米国のTHAADを巡る対韓圧力
2016年
12月20日 安全保障補佐官に内定のフリン元陸軍中将、訪米した韓国政府高官に「THAAD配備は米韓同盟の強固さの象徴」
2017年
1月31日 訪韓を前にしたマティス国防長官、韓民求国防長官に電話し、THAAD配備を確認
2月2日 マティス国防長官、訪韓し「北朝鮮の核の脅威が最優先課題」と表明、THAAD配備も再確認
3月1日 マクスター安全保障補佐官と金寛鎮・国家安保室長、電話会談し「THAAD配備を再確認」
3月1日 マティス、韓民求の米韓両国防長官、電話で会談しTHAAD配備を再確認
3月6日 米軍、THAADの一部機材を烏山空軍基地に搬入
 突然の装備持ち込みに対し、中国の耿爽報道官は3月7日「我々はTHAAD配備に激しく反対し、必要な措置を激しく取り、自らの安全利益を守るだろう。発生するすべての問題の後始末は、韓国と米国が負担すべきである」と非難しました。

 米国が聞く耳を持つわけもありません。同日、北朝鮮から「(3月6日の弾道弾の発射試験は)在韓米軍を目標とする部隊が担当し、成功した」と威嚇されてもいるのです。

 中国の韓国イジメはますます激しくなるでしょう。韓国がいつまで耐えられるかに注目が集まります。

(次回に続く)

■変更履歴
在韓米軍サイトの情報を更新しました[2017/03/09 01:50]
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『孤立する韓国、「核武装」に走る』

■「朝鮮半島の2つの核」に備えよ

北朝鮮の強引な核開発に危機感を募らせる韓国。
米国が求め続けた「THAAD配備」をようやく受け入れたが、中国の強硬な反対が続く中、実現に至るか予断を許さない。

もはや「二股外交」の失敗が明らかとなった韓国は米中の狭間で孤立感を深める。
「北の核」が現実化する中、目論むのは「自前の核」だ。

目前の朝鮮半島に「2つの核」が生じようとする今、日本にはその覚悟と具体的な対応が求められている。

◆本書オリジナル「朝鮮半島を巡る各国の動き」年表を収録

『中国に立ち向かう日本、つき従う韓国』『中国という蟻地獄に落ちた韓国』『「踏み絵」迫る米国 「逆切れ」する韓国』『日本と韓国は「米中代理戦争」を闘う』 『「三面楚歌」にようやく気づいた韓国』『「独り相撲」で転げ落ちた韓国』『「中国の尻馬」にしがみつく韓国』『米中抗争の「捨て駒」にされる韓国』 に続く待望のシリーズ第9弾。10月25日発行。

このコラムについて

早読み 深読み 朝鮮半島
朝鮮半島情勢を軸に、アジアのこれからを読み解いていくコラム。著者は日本経済新聞の編集委員。朝鮮半島の将来を予測したシナリオ的小説『朝鮮半島201Z年』を刊行している。その中で登場人物に「しかし今、韓国研究は面白いでしょう。中国が軸となってモノゴトが動くようになったので、皆、中国をカバーしたがる。だけど、日本の風上にある韓国を観察することで“中国台風”の進路や強さ、被害をいち早く予想できる」と語らせている。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226331/030800095/
http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/543.html

[経世済民119] NY原油(8日)大幅続落、12月以来安値−米在庫増に市場は焦燥感 金株も下落 債券弱気相場入 ドル上昇ADP統計の大幅増
NY原油(8日)大幅続落、12月以来安値−米在庫増に市場は焦燥感
Mark Shenk
2017年3月9日 05:12 JST

8日のニューヨーク原油先物市場ではウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物が大幅続落。昨年12月以来の安値。石油輸出国機構(OPEC)加盟国・非加盟国が減産を実施したものの、米国の在庫水準を下げるには至っていないことが米エネルギー情報局(EIA)の週間統計で明らかになった。
  ソシエテ・ジェネラル(ニューヨーク)の商品調査責任者、マイク・ウィットナー氏(ニューヨーク在勤)は電話取材に対し、「原油市場はしびれを切らせている」と話す。「OPECの減産合意の後、12月に大きく上昇したのは市場が均衡を回復するとの期待があったからだ。OPECは日量100万バレル以上を削減しているようだが、米国の在庫水準には何ら影響を与えていないみたいだ」と述べた。
  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物4月限は前日比2.86ドル(5.38%)安い1バレル=50.28ドルで終了。終値ベースで昨年12月7日以来の安値。ロンドンICEの北海ブレント5月限は2.89ドル下げて53.03ドル。
原題:Oil Slumps to Lowest This Year as Traders Focus on Record Supply(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-08/OMII9DSYF01S01


NY外為:ドル上昇、ADP統計の大幅増で政府統計上振れ見込む
Dennis Pettit
2017年3月9日 06:24 JST 更新日時 2017年3月9日 07:37 JST

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8日のニューヨーク外国為替市場でドルが上昇。朝方発表された米民間雇用統計を受けて、市場参加者の間では10日発表の米雇用統計が予想外の大幅増になるかもしれないとの見方が広がった。
  主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は上昇。一時はイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長が今月会合での利上げを示唆した3日以来の高水準を付けた。米10年債利回りが昨年12月以来の高水準に上昇したこともドルの支援材料となった。資源国通貨は下落。原油や金属の値下がりが響いた。
  給与明細書作成代行会社のADPリサーチ・インスティテュートが発表した給与名簿に基づく集計調査によると、2月の米民間部門の雇用者数は29万8000人増加。市場予想を大きく上回った。ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーは10日発表の雇用統計見通しを上方修正した。

  ニューヨーク時間午後5時現在、ブルームバーグ・ドル・スポット指数は0.4%上昇。ドルは対円で0.3%上昇して1ドル=114円35銭。対ユーロでは0.2%上昇して1ユーロ=1.0541ドル。
 
  ロス米商務長官は北米自由貿易協定(NAFTA)について、改定に向けた政府の「実質的な」交渉は恐らく今年の遅い時期まで始まらないだろうと述べた。ロス長官はカナダとメキシコはある程度の譲歩が必要だろうとの見方を示した上で、ドルの強さについての質問には回答を避けた。同長官の発言を受けてメキシコ・ペソとカナダ・ドルは対ドルで下落した。
  9日に行われる欧州中央銀行(ECB)の政策委員会を控え、この日の外為取引は薄商いだった。米金融政策当局が利上げ軌道にある一方で、欧州と日本の政策金利はせいぜい横ばいと予想しており、トレーダーは依然としてドルの押し目買いに傾いている。
  ECBは政策金利および金融政策を据え置き、量的緩和(QE)は従来通りの水準で維持すると予想されている。最近の経済統計は内容が改善しており、ECBは政策スタンスの変更を検討しているのかどうか、その手掛かりを探ろうと市場参加者はECB声明発表後に行われるドラギ総裁の会見に注目している。
原題:Dollar Rises to Weekly High After ADP Data Shows Surge in Hiring(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-08/OMIL7V6VDKHT01

米ADP民間雇用者数:2月は29万8000人増−約3年ぶりの大幅な伸び
Patricia Laya
2017年3月8日 23:36 JST
2月の米民間雇用者数はほぼ3年ぶりの大幅な伸びとなった。建設業や製造業で雇用が大きく増えた。
  給与明細書作成代行会社のADPリサーチ・インスティテュートが8日発表した給与名簿に基づく集計調査によると、2月の米民間部門の雇用者数は29万8000人増加。これは2014年4月以来の大幅な伸び。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は18万7000人増だった。
  製造業や建設業を含む財生産部門の雇用は10万6000人増。これはデータでさかのぼれる2002年以降で最大の増加幅。前月は5万5000人増だった。財生産部門のうち建設業は6万6000人増と、11年ぶりの大幅な伸び。製造業は3万2000人増で、2012年3月以降で最大の伸び。
  サービス業は19万3000人増。前月は20万7000人増だった。
  ADPと共同で集計調査を行うムーディーズ・アナリティクスのチーフエコノミスト、マーク・ザンディ氏は発表資料で「この冬、季節外れの暖かさとなったことが一因なのは間違いない。だが過去最高付近にある求人件数や過去最低水準の解雇が労働市場全体を下支えしている」と指摘した。
  従業員が500人以上の大企業の雇用者数は7万2000人増加。50−499人の中堅企業では12万2000人増えた。49人以下の小企業では10万4000人増と、8カ月ぶりの大幅な伸びとなった。
原題:ADP Says Companies in U.S. Hired the Most in Almost Three Years(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-08/OMI28R6VDKHT01



米国株:3日続落、エネルギー中心に売られる−原油値下がりで
Oliver Renick
2017年3月9日 06:20 JST 更新日時 2017年3月9日 07:19 JST
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8日の米株式相場は3日続落。原油相場の大幅下落を手掛かりにエネルギー株が売られた。朝方は2月の米民間雇用者数の大幅な伸びに反応して、上昇する場面もあった。
  S&P500種株価指数は前日比0.2%安の2362.98。ダウ工業株30種平均は69.03ドル(0.3%)下げて20855.73ドル。

  S&P500種の3日続落は1月以来で最長。ダウ平均銘柄ではエクソンモービルとシェブロンが大きく下げた。
  CMCマーケッツのチーフ・マーケット・ストラテジスト、マイケ ル・マッカーシー氏(シドニー在勤)は「これは終わりの始まりというわけではなく、恐らく単なる調整局面だろう」と分析。「米国や中国の経済の力強さを示す兆候は見られており、世界的に押し上げ要素はなお存在する」と続けた。
  金融株はほぼ変わらず。一時上昇していたが、徐々に上げを失う展開となった。
  シカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティ指数(VIX)は3日連続で上昇した。
  給与明細書作成代行会社のADPリサーチ・インスティテュートが8日発表した給与名簿に基づく集計調査によると、2月の米民間部門の雇用者数は29万8000人増加。これは2014年4月以来の大幅な伸び。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は18万7000人増だった。
原題:U.S. Stocks Down for Third Day as Utilities, Real Estate Slump(抜粋)
原題:Crude Rout Drags Stocks Lower as Treasuries Slide: Markets Wrap(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-08/OMILD86VDKHS01


米国債:続落、10年債利回り年初来の最高−民間雇用が予想上回り
Elizabeth Stanton
2017年3月9日 06:26 JST 更新日時 2017年3月9日 07:33 JST

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8日の米国債相場は続落。10年債利回りは昨年12月以来の高水準を付けた。民間雇用者数の伸びが最も楽観的な予想を上回ったことが、売りを誘った。10日には労働省が2月の雇用統計を発表する。
  来週の連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げの後、利上げペースが速まるとの見方が市場で織り込まれている。10年債利回りは一時2.582%と、昨年12月20日以来の高水準を付けた。ただ、10年債入札で需要が強かったため、その後は伸び悩んだ。
  ニューヨーク時間午後5時現在、10年債利回りは前日比4ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇の2.56%。

  給与明細書作成代行会社のADPリサーチ・インスティテュートが8日発表した給与名簿に基づく集計調査によると、2月の米民間部門の雇用者数は29万8000人増加。最も高い予想は25万5000人増だった。これを受け、ゴールドマン・サックス・グループとモルガン・スタンレーが雇用統計の非農業部門雇用者数の予想を上方修正。予想中央値は19万人増から20万人増に上昇した。
  利回りは5年債を中心に軒並み今年の最高水準を付けた。
  5年債と30年債の利回り曲線はフラット化し、利回り差は一時104.5bpと、過去数年の最小レベルにあと5bp未満に迫った。
  オーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)取引に基づいて推計される3月の利上げ確率は87%(7日は83%)、9月の利上げ確率は97%に上昇(7日は87%)した。
  10年債入札(発行額200億ドル、銘柄統合)では最高落札利回りが2.560%と、午後1時の締め切り時点の入札前取引の水準2.580%を下回った。応札倍率は昨年6月以来の高水準となる一方、プライマリーディーラー(政府証券公認ディーラー)の落札に占める割合は5月以来の低水準となった。
  TDのストラテジストは戦術的な10年債買い持ちを推奨した。利回り上昇を阻む要因として、財政政策を巡る不透明感や世界的な低利回りに加え、3月の米金融当局の金利見通しがあまり変わらないとの見方を挙げた。
  商品先物取引委員会(CFTC)によると、投機筋の米国債売り越しは過去最高となっている。
  原油相場が5%を超える急落となったため、インフレ連動国債(TIPS)は通常の国債よりも軟調だった。TIPS5年物と通常の5年債の利回り差は2.02%に縮小した。
  投機適格級の社債発行も注目されている。過去2営業で400億ドル近くの起債があり、米国債を圧迫した。8日はユナイテッド・ヘルス・グループなど6社が総額65億ドルの社債を発行した。
  
原題:Treasuries Tumble After ADP Employment Tops Highest Estimates(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-08/OMILHC6VDKHS01


 

米10年債利回り、グロース氏注目の2.6%に接近−弱気相場入り間近か
Brian Chappatta
2017年3月9日 07:20 JST

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• ジャナスのグロース氏、2.6%はテクニカル分析で重要な節目と指摘
• フィボナッチ分析でも極めて重要なレベルに
債券市場のベテランで、ジャナス・キャピタル・マネジメントのファンドマネジャーを務めるビル・グロース氏の目には、米国債市場の弱気派が今にも雄たけび上げるような相場に映る。
  米10年債利回りは8日、2月のADP民間雇用者数が予想を大きく上回る伸びを示したのを受け、昨年12月以来の高水準の2.58%を付けた。利回りは2.6%台に接近しつつあり、この水準が週間ベースで続けば弱気相場が始まるシグナルだとグロース氏は述べている。
  フィボナッチ・レシオに基づくテクニカル分析やモーゲージ関連のヘッジが増える可能性など、この水準が極めて重要なことを裏付ける材料は多い。その上、短期金利のトレーダーは来週の連邦公開市場委員会(FOMC)でタカ派的メッセージが示されることに備えており、彼らの予想通りなら、利回りは急上昇に向かう可能性がある。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iIuT9.pxDDsY/v2/-1x-1.png

  10年債利回りは昨年7月に過去最低の1.32%を付けて以降、ほぼ2倍になった。11月の米大統領選で減税や規制緩和、財政出動の公約を掲げたドナルド・トランプ氏が勝利した後に債券安は加速。来週の利上げの可能性が高いことを示唆する最近の米金融当局者の発言が、利回り上昇に拍車を掛けている。
  グロース氏は1月に「10年債利回りが週間ベースや月間べースで2.6%を上回れば、テクニカル分析では極めて強力で重要な意味があるため、そうなるときは上昇相場が壊れ、弱気相場入りだ」と指摘。同氏は利回りが2.6%を上回ることは、ダウ工業株30種平均が1月25日に実現した2万ドル超えよりも重要な金融市場のバロメーターだとしていた。同氏に8日に取材を試みたが返答はない。

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原題:Bill Gross’s Bond Bear Market Looms as 10-Year Yield Nears 2.6%(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-08/OMILM06JTSF601


 


 

ドラギ総裁、基調的物価圧力は依然弱いと指摘か−9日の決定後会見
Carolynn Look
2017年3月9日 06:33 JST 

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• ECBは9日に最新の経済予測を公表
• 総合インフレ率2%は構造的弱さを隠している
 
欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁がユーロ圏にインフレが戻ったなどと考えていないことは明らかだ。総裁は9日の政策委員会後の記者会見で、基調的な物価圧力は依然として弱いとの認識を繰り返すだろう。
  ユーロ圏のインフレ率は1月に2%と、2%弱を目指すECBの目標を上回った。9日公表される最新の経済予測でインフレ率見通しが上方修正されるかもしれないが、それがドラギ総裁の発言内容を変える可能性は低い。
  問題は、最近のインフレ率上昇がドラギ総裁の設定した条件を満たしているかどうかだ。政策見直しの前提条件として総裁はインフレ加速が「幅広く、持続可能で、自律的かつ、中期的に一貫している」ことを挙げている。
• 域内の国別に見ると、1月のインフレ率はアイルランドの0.2%からベルギーの3.1%とばらつきが大きい
• 総合インフレ率の上昇は主として2015、16両年の原油価格の動きに起因しているが、今年終わりに向けてその影響は薄れる見込みだ
• エネルギーなどの影響を除いたコアインフレ率は1%に届かず、しかもユーロの18年間の歴史の中で一貫して低下傾向にあり構造要因を示唆する
• 長年の危機と低成長の中で資源の稼働率が低く、失業率は10%に近い
• コアインフレ率を構成するモノとサービスの価格上昇の兆しは見られない
• インフレ期待は弱まりつつある。ECBが重視するインフレ期待の指標は昨年終わりに2%に近づいたが、その後は低下しつつある
というわけで、ドラギ総裁の条件は満たされていない。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iEPDLFGkd5Kg/v2/-1x-1.png

原題:Draghi’s Caution on Inflation Signals ECB Stimulus Stays for Now(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-08/OMHPFW6JIJUP01


 
ECB、「現行またはそれ以下」文言に注目−18年利上げ予想は尚早でも
Stephen Spratt、Stefania Spezzati
2017年3月9日 03:28 JST 
欧州中央銀行(ECB)が早ければ2018年半ばにも利上げするかもしれないという市場の予想は恐らく、先走りだ。
  ゴールドマン・サックス・グループはECBが中銀預金金利を引き上げるのは早くても「2019年の遅い時期」と予想する。モルガン・スタンレーは18年いっぱいの現状維持を見込み、バンク・オブ・アメリカ(BofA)メリルリンチは資産購入プログラムの終了が先との見方だ。
  アナリストらは文言の変化に注目する。9日の声明で「金利が長期にわたり、資産購入プログラムの終了後もかなりの間、現行またはそれ以下の水準にとどまる」という文言が少しでも削除されれば、いわゆる量的緩和プログラムの終了前にも金利が引き上げられるとの観測を呼ぶかもしれないと、スフィア・サリムは氏らBofAメリルのストラテジストは3日のリポートに記している。
原題:ECB PREVIEW: Market Betting for 2018 Rate Rise Seen as Premature(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-08/OMI604SYF01T01

http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/842.html

[経世済民119] 通商摩擦頼みの円高ストーリーを疑え 株高円安の命運握る米インフラ 実質賃金横ばい正規残業減、非正規上昇 2月通貨供給増加
FX Forum | 2017年 03月 8日 19:02 JST 関連トピックス: トップニュース

コラム:
通商摩擦頼みの円高ストーリーを疑え

村田雅志ブラウン・ブラザーズ・ハリマン 通貨ストラテジスト

[東京 8日] - 米通商代表部(USTR)は1日、2017年の通商政策年次報告書を議会に提出した。この報告書は、毎年3月1日までに議会に提出することが法律で義務付けられたもので、貿易赤字削減を目指すトランプ政権の通商政策方針を示した公式文書となる。

報告書の内容は、トランプ政権の基本スローガンである「米国第一」の考えを通商政策にも適用したものとなっている。報告書の冒頭では、通商政策の基本目標は、全ての米国民にとってより自由でより公正な形での貿易を拡大することであると明言。その手段として、多国間交渉よりむしろ二国間交渉に注力し、目標が達成されない場合には通商協定を再交渉・修正するとしている。

また、報告書では通商政策の優先事項として、1)国家主権の保護、2)米国通商法の厳格な執行、3)海外市場を開放するためのレバレッジの利用、4)新しくより良い通商協定の交渉、の4項目が表明されている。

各項目の内容を整理すると、トランプ政権は、米国の貿易赤字削減を目指し、世界貿易機関(WTO)での決定よりも米国の国内法を優先し、アンチ・ダンピング課税やセーフガードといった貿易救済措置を駆使し、二国間交渉を活用する意向にあると解釈できる。

<政策目標はドル安ではなく貿易赤字縮小>

米国家通商会議(NTC)のナバロ委員長は6日、貿易赤字の縮小が経済成長につながると述べ、米国が巨額の貿易赤字を計上している国として中国、日本、ドイツ、メキシコを名指しした。その上で、日本については「極めて高い非関税貿易障壁がある」と指摘している。

ロス米商務長官は7日、1月の米貿易赤字が約5年ぶりの高水準となったことを受けて声明を発表し、数カ月内に好ましくない貿易合意を再交渉し、貿易の実行に新たなエネルギーを注ぎ込むと表明。自由で公平な貿易という目標を達成する上では貿易不均衡の是正(米貿易赤字の削減)が重要な一歩になると指摘した。

エコノミストや経済学者などからは、保護主義的な通商政策は、最終的には自国の不利益にしかならず、他国経済の混乱も引き起こす結果になるから回避すべきとの指摘がなされている。しかし、外部者が自然科学的なアプローチで事の真偽を示し、政策当局者の考えを正そうとしても、政策当局者の中で信念や思い込みが強ければ、政策に大きな影響力を及ぼすことも難しくなる。

否定的な意見・見方が長期にわたり数多く示されていても、アベノミクスが4年以上も続けられているように、トランプ政権はさまざまな指摘・批判を浴びながらも保護主義的な通商政策を続けると見込むのが現時点では妥当と思われる。

4月には麻生太郎副総理とペンス米副大統領をトップとする経済対話の初会合が開催される。一部からは、1980年代から90年代半ばの日米通商交渉を引き合いに、トランプ政権が米貿易赤字の削減を目指し、日本に対し、さまざまな圧力をかけ、結果として円高・ドル安が進むとの見方が示されている。

しかし、今から20年以上も前の事例を根拠に、経済対話が円高・ドル安につながるとする見方には無理な飛躍があるように思える。菅義偉官房長官は、トランプ大統領が日本の為替政策を通貨切り下げだと批判したことについて強く否定し、会見やインタビューなどを通じ円相場の安定が極めて重要だと繰り返し述べている。安倍晋三政権は円相場の安定を非常に重視していると考えられ、経済対話でも円高圧力が強まらないよう細心の注意を払うと思われる。

前回のコラム(2月16日付「トランプ円高は妄想、側近論文にヒント」)でも指摘したように、トランプ政権側も、経済対話の目的が米貿易赤字の削減にある以上、円高・ドル安の進展を強く望むとは思えない。自動車を中心とした対米輸出の自主規制や米国への生産移転(直接投資)の促進、米農産物の輸入拡大などといった対米貿易黒字(米国から見た対日貿易赤字)の削減策が日米間で合意されれば、米国側が円高・ドル安を望む必要がなくなる。

<国境調整税導入の現実味>

下院共和党が昨年提案した国境調整税の導入が、米貿易赤字の削減につながる可能性もある。国境調整税は、昨年の米大統領選に向けて公表された改革案の1つで、米国で使用あるいは販売する輸入部品や最終財を税控除の対象から外す一方、輸出で得た収入は課税対象の所得から除外する仕組みとなっている。

これにより米国内での生産は、米国外での生産より有利になると考えられ、結果として輸出増・輸入減を通じ米国の貿易赤字が縮小すると期待される。トランプ大統領は当初、輸入品に対し高い関税を適用する国境税を主張し、下院共和党案に対しては複雑すぎると批判していたが、最近では国境調整税を容認する姿勢を示している。

ただ、国境調整税は、輸出企業に対し有利に働く一方で、輸入企業には不利に働くことが一目瞭然だ。輸出比率の高い製造業など米企業25社超は、米国製連合(American Made Coalition)を立ち上げ、国境調整税の導入を支援しているが、小売関連企業200社超からなる小売業リーダーズ協会は、国境調整税の導入に反対する声明を発表するなど、国境調整税に対する米産業界の評価は二分している。

こうしたことから、国境調整税の早期導入は難しいとの見方が強まっているが、下院共和党、トランプ政権ともに、輸入品に例外品目を認めるといった譲歩を絡めながらも、国境調整税の導入を目指し続けるだろう。国境調整税の導入で見込まれる税収増は10年間で1兆ドル超と言われており、財政赤字の拡大を抑制しつつ大規模な減税の導入を目指すトランプ政権や共和党にとって国境調整税の導入は魅力的だ。

経済対話によって日米通商交渉の合意が近づき、国境調整税の導入期待が高まれば、対米貿易黒字(米国から見た対日貿易赤字)が縮小するとの見方から、ドル円相場は円安・ドル高圧力が強まりやすくなるだろう。トランプ政権の保護主義的な通商政策が、円高につながると安易に信じ込むのは控えた方が良さそうだ。

*村田雅志氏は、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの通貨ストラテジスト。三和総合研究所、GCIキャピタルを経て2010年より現職。近著に「人民元切り下げ:次のバブルが迫る」(東洋経済新報社)

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

コラム:ドル120円予想を支える2つの根拠=鈴木健吾氏 2017年 02月 20日
コラム:ドル円こう着終焉へ、上抜けか下抜けか=佐々木融氏 2017年 03月 07日
コラム:円高派と円安派、年末に笑うのはどちらか=尾河眞樹氏 2017年 02月 23日
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-masashi-murata-idJPKBN16F0K5


 
ヘッジファンド、17年は資金流出ペース鈍化か−マクロ戦略への期待で
Katherine Burton
2017年3月9日 06:48 JST

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地政学的不安定の中でマクロ戦略ファンドに投資家は信頼寄せる
昨年は370億ドル流入予想に反し700億ドルが流出

ヘッジファンドの顧客は、今年は業界からの資金流出ペースが鈍化すると見込んでいる。地政学的に不安定な時期のマクロ戦略ファンドの成績に機関投資家は信頼を寄せていると、ドイツ銀行の調査が明らかにした。
  8日公表されたこの調査によると、回答者らは2017年の資金動向を10億ドル(約1140億円)の純流出と予想した。16年は700億ドルの純流出だった。昨年の予想は370億ドルの純流入で、投資家が自分で予想した通りに行動するとは限らない。
  今回の調査で回答者は、マクロ戦略のファンドを最も有望視している。差し引きで27%の回答者がマクロ戦略ファンドへの投資を増やすつもりだと答えた。欧州連合(EU)離脱を問う英国の国民投票や米大統領選挙のあった2016年と比べても「政治を巡る今後の見通しはそれ以上ではないまでも、同じくらい不確実に思われる。経済成長を促す方法について、世界の政策当局者の間で違いが目立つ」と、ドイツ銀は調査結果についてのリポートで指摘した。
  クオンツ戦略の人気も引き続き高い。クオンツファンドに投資しているという回答は79%と昨年調査の70%から上昇。この種のファンドに資金配分を増やす計画だとの回答は46%だった。一方、株式ロングショート戦略のファンドへの投資は減らすという回答が18%に上り、ファンドの種類別の中で最大だった。
  手数料が発生する下限のリターンを定めることや投資資産の増加に伴い手数料率が下がる仕組みを求める回答も7割以上と多かった。
  ドイツ銀行は機関投資家460人を調査し、結果をまとめた。
原題:Hedge Fund Clients Say Retreat to Slow in 2017 as Macro Beckons(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-08/OMHV1U6K50YP01

 


 

FX Forum | 2017年 03月 8日 19:01 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:
株高・円安の命運握る米インフラ投資

木野内栄治大和証券 チーフテクニカルアナリスト兼シニアストラテジスト
[東京 8日] - トランプ米大統領は2月28日、連邦上下両院議員らを前に施政方針演説を行った。新味はないが、大統領らしく振る舞ったことで安心感があったと評価された。

確かに、翌日のNYダウは303ドルもの大幅高となった。しかし、事前に12営業日連続上昇を続けてきて、1日小幅反落した後の大幅高だったので、安心感があったとの評にはやや違和感がある。不安感が事前に強かったわけではないからだ。

むしろ、経済政策では唯一具体的な数字をあげてインフラ投資に言及したことを好感した可能性がある。実際、米国株式市場では公共投資関連株が大きく切り返した。

実は同じような光景は昨年11月の選挙結果判明直後にも見られた。トランプ氏による勝利スピーチに関し、大統領らしいとの評だったが、同時にインフラ投資に関して明確に言及したことも市場の話題となった。

こちらは事前に不安感があったので、どちらを市場が評価したのは定かではないが、選挙翌日の米国株式市場は公共投資関連株中心に堅調で、NYダウは256ドルの大幅高となった。

この2回の事例では、株価上昇だけでなく債券市場でも明確な金利上昇が観測されている。こうして見ると、大統領らしいとの安心感だけではなく、インフラ投資への言及が株高の原動力だった可能性が高いと捉えることができるだろう。

<減税では景気浮揚効果は遅い>

今回は大統領演説の前週にインフラ投資法案の審議は2018年に先送りされるとの報道があった。同時に、ムニューシン米財務長官も新政権による景気刺激政策の経済効果は2017年に関してはわずかである可能性をメディアとのインタビューで答えている。筆者は米財務省が減税を中心に検討していた証左だと思う。

これらを受けて、米国金利は低下し、連れてドル安が示現し、日経平均はNYダウに逆行するかたちで2月27日まで4営業日連続安となった。インフラ投資が今年実施されるか否かが、ドルや日本株にとっては重要であることが理解できるだろう。

また、この4日間はNYダウも小幅な上昇ばかりが続いた。大統領が演説でインフラ投資期待を復活させた後の大幅高と比較すれば、やはりインフラ投資期待は米国株の上昇にも寄与していた可能性が感じられる。

経済的には、インフラ投資は直接的ですぐに効果が出やすい。通常ならば今秋に入札などが行われ、時間とともに契約金額分の経済効果は確実に表れる。さらに、建設会社が建設機械を購入し、人員を雇うなど、民間部門での投資と雇用の誘発効果も年内に顕在化する。

一方、減税策では減税金額の全てが活用されることは稀だろう。時期的にも法人減税のメリットが生じるのはおそらく来年3月頃の納税時期だ。それも10―12月期の1四半期分だけのわずかな額にとどまる懸念もある。

その場合、ある程度まとまった金額が民間の手元に残るのは、さらにその先だ。実際、減税を推進しトランプ政権との類似性が指摘されるレーガン大統領下では、景気回復は政権2年目の終盤だった。

つまり、減税とインフラ投資では、効果が出る時期などが全く異なる。今年の相場を考える上では、インフラ投資の有無が重要であることが理解できる。

<12連騰は景気回復相場の特徴>

さらに、NYダウの連騰記録は1920年以降で調べると、特殊な需給が発生した1987年に次ぐ歴代2位の12連騰まで進んだ。過去に同じく12連騰となったのは1970年12月7日までで、「インフレ抑制の手を多少緩めても景気回復を優先する方向に変わった」(東京証券取引所編「証券」1971年2月号より抜粋)ことが背景だ。

最近の11連騰は1992年1月3日までで、「景気の先行き回復期待や、金利低下による株式市場への資金シフトが背景」(同・1992年3月号より抜粋)とされる。いずれも景気回復に重きが置かれている場面だ。今回も、「大統領らしい演説だった」などとのファンダメンタルズに影響がない話だけが12連騰もの歴史的な記録をもたらした主要因であるはずがないと思う。

ちなみに、NYダウは10連騰までと11連騰以上ではその後のパフォーマンスが全く異なる。過去の10連騰を達成した11回は、半年後は7回上昇、4回下落、騰落率の中央値は2.3%の上昇だ。一方、過去の11連騰以上を達成した7回は、半年後で6回上昇、1回下落、騰落率の中央値は12.6%上昇だった。今回、単純に当てはめれば、NYダウは2000ドル以上の上値余地があることになる。

<争点はトランプ大統領が語らなかったこと>

さて、トランプ大統領の議会演説に話を戻すと、財源に関しては、オバマケア(医療保険制度改革法)の見直しと民間資金の活用だけに触れた。これまで提案されてきたリパトリ減税や超長期国債発行、国境調整税には言及がなかった。この現段階では言わなかったことこそが今後の議会との交渉の争点なのだろうと筆者は思う。

リパトリ減税とは、米国企業が海外利益を米国に還流(リパトリエーション)する際の税率を、通常の法人税率ではなく、特別の低減税率適用を可能とすることで、米国での資金活用を促すとともに、これまで取りはぐれていた分のいくらかを徴税する政策だ。

この財源は法人減税の財源には適さない。法人減税を同時に行ってしまうと、リパトリ減税のインセンティブが減退し、財源として見込みにくくなる。よって、リパトリ減税を実施するなら、法人減税は若干先送りとなり、使途は自ずとインフラ投資に軸足が置かれることになるだろう。リパトリの促進によるドル高効果も加わり、今年の日本経済や世界経済にメリットが大きい。

一方、超長期国債発行は利回りが高く、足元の財政を悪化させやすい。超長期の債務を新たに抱えることも、財政悪化と捉える議員もいるだろう。議会共和党がこうした財政悪化分で公共投資を賄うことを容認するとは考えにくい。よって、超長期国債発行で資金調達するならば、使途は法人減税中心となり、今年の米国や世界景気に好影響は少なく、景気の浮揚効果は来年からだろう。

いずれかの手段も議会に認められないなら、議会が推進する国境調整税に行き着くことになりかねない。もちろん国境調整税選択なら世界の市場はショック安だろう。

なお、国境調整税は世界貿易機関(WTO)違反との表面的な論評が多いが、他国の付加価値税の還付制度をWTOが認めていることで米国貿易は競争上不利であることは間違いない。付加価値税の還付制度と平仄(ひょうそく)を合わせた国境調整税の制度創設が全く認められないわけではない。議論の進展に注意したい。

このように、リパトリ減税、超長期債発行に落ち着くか、国境調整税となるかなどを今後見定める必要がある。ただ、いずれにしても4月末のハネムーン期間(新政権発足後の最初の100日間)終了までは交渉余地が残る。その頃まではインフラ投資に対する政策期待が続き、株価堅調の継続が期待できると判断している。

*木野内栄治氏は、大和証券投資戦略部のチーフテクニカルアナリスト兼シニアストラテジスト。1988年に大和証券に入社。大和総研などを経て現職。各種アナリストランキングにおいて、2004年から11年連続となる直近まで、市場分析部門などで第1位を獲得。平成24年度高橋亀吉記念賞優秀賞受賞。現在、景気循環学会の理事も務める。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。


コラム:円高派と円安派、年末に笑うのはどちらか=尾河眞樹氏 2017年 02月 23日
コラム:トランプ相場でドル125円へ=田中泰輔氏 2017年 01月 10日
〔需給情報〕2月第4週、海外投資家が日本株を533億円売り越し=現物先物合計 2017年 03月 02日
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-eiji-kinouchi-idJPKBN16F0GX?sp=true

 

金融緩和「まだ4年」 日銀政井委員、デフレ脱却に意欲
2017/3/9 10:29
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 日銀の政井貴子審議委員は8日、ロンドンで講演し、2013年の異次元緩和導入から「まだ4年しか経過していない」と指摘した。日銀は昨年9月、物価上昇率2%が定着したと判断するまで緩和を継続する政策を導入した。政井氏はこの政策を通じて予想物価上昇率を高めることが「何としても必要」とし、デフレからの完全脱却に意欲を示した。

 日銀は13年の異次元緩和導入当時、2%の物価安定の目標達成のメドを2年程度としていた。政井氏は足元で「物価が持続的に下落するという意味でのデフレではない」状態に来たとの認識を示した。物価上昇率2%の達成に向けて、日銀が金融緩和を維持するとともに、政府の経済対策で需要を高める努力が必要とした。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDC09H0E_Z00C17A3EAF000/


 

実質賃金、1月は前月比横ばい 基本給は増加 毎月勤労統計
2017/3/9 9:05

 厚生労働省が9日発表した1月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月に比べて横ばいだった。名目賃金は増加したものの、消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)が前年同月比0.6%上昇したことで実質な賃金水準は前月比変わらずだった。厚労省は賃金動向について「基調としては緩やかに増加している」との見方を示した。

 基本給や残業代など名目賃金にあたる現金給与総額は0.5%増の27万274円だった。内訳をみると、基本給にあたる所定内給与は23万8737円と0.8%増加し、残業代など所定外給与は1万9396円と0.2%増加した。所定内給与は16年10カ月ぶりの伸び率だった。一方、ボーナスなど特別に支払われた給与は1万2141円と3.7%減少した。

 今回から月ベースでの発表が始まったパートタイム労働者の時間あたり給与は2.5%増の1111円で、統計をさかのぼれる1993年以降で最高になった。〔日経QUICKニュース(NQN)〕

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実質賃金、9月は0.9%増 8カ月連続増加 毎月勤労統計 (2016/11/7 9:00)

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実質賃金、4カ月ぶりプラス 2月0.4%増 (2016/4/5 9:24)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL08HOR_Y7A300C1000000/
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL09HD7_Z00C17A3000000/


 

残業「月100時間」特例、5年後見直し 労使が最終調整
2017/3/9 12:50日本経済新聞 電子版
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 経団連と連合は交渉中の残業時間の上限規制を巡り、繁忙期の上限特例について規制の施行から5年後に見直しを検討する方向で最終調整に入った。繁忙期の上限特例は政府方針の「月100時間」で大筋で合意しているものの、細部で詰めの調整が続いている。

 政府は労使の合意を受け、今月末にまとめる働き方改革実行計画に5年後の見直し規定を盛り込む方針だ。見直し規定については連合が強く主張していた。経団連も長時間労働の…
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS09H0D_Z00C17A3EAF000/


 


 
みずほ銀、長プラを0.95%に据え置き
2017/3/9 12:31
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 みずほ銀行は9日、毎月10日前後に決める大企業向けの融資金利の指標となる長期プライムレート(最優遇貸出金利)について、現行の0.95%で据え置くと発表した。〔日経QUICKニュース(NQN)〕

 


2月のマネーストック、「M3」は前年比3.6%増 「M2」4.2%増
2017/3/9 8:51 
 日銀が9日に発表した2月のマネーストック(通貨供給量)速報によると、代表的な指数のひとつである「M3(現金、銀行などの預金)」の月中平均残高は前年同月比3.6%増の1282兆5000億円だった。

 M3からゆうちょ銀行などを除いた「M2」は同4.2%増、M3に国債や投資信託を加えた「広義流動性」は同2.6%増だった。〔日経QUICKニュース(NQN)〕
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL08HK0_Y7A300C1000000/
http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/849.html

[国際18] オランダ人の不満、裕福だが怒れる国民 極右優勢 金融市場が注目し始めたFrexit ユーロへの不満がもたらす日本への余波
 
オランダ人の不満、裕福だが怒れる国民
今月の総選挙で極右政党が優勢な理由、政治で重要なのはトレンド
2017.3.9(木) Financial Times
(英フィナンシャル・タイムズ紙?2017年3月7日付)

オランダ極右政治家、支持率トップに 3月の総選挙で第1党躍進か
オランダ・スキポールにある裁判所に出廷した自由党(PVV)のヘルト・ウィルダース党首(2016年11月23日撮影)。(c)AFP/ANP/Remko de Waal〔AFPBB News〕
?それはまさに豊かな暮らしのように聞こえる。比較的裕福で、それなりに平等で、ワークライフバランスが良く、就業率は高く、全般的に満足度が高い――。では、オランダ人は一体何が不満なのだろうか。

?3月15日の総選挙を前に、反イスラムを掲げるポピュリスト(大衆迎合主義者)のヘルト・ウィルダース氏が世論調査で健闘している。それをもってオランダは格差や人生における機会の不均等、悲惨な中間層圧迫といった近代工業時代の無秩序によって苦しめられているのだろうと想像するのは容易だ。

?だが少なくとも一見したところでは、データは別の物語を伝えているようだ。一部のオランダ人が過激主義の政治に傾いている社会的な理由はあるかもしれないが、経済的な意味では、彼らの生活はかなり良い。オランダ人以上に市民が豊かで健康、あるいは幸せな国はほとんどない。

?オランダ議会の使節団がアフガニスタンのカブールを訪れ、ハーミド・カルザイ大統領に会って自己紹介したとき、この「オランダのパラドックス」がリベラル派政党「民主66」のアレクサンダー・ペヒトルド党首に衝撃を与えた。

「同僚の議員が言ったんですよ、『マリアン・ティーメです、動物のための党です』と。すると大統領が彼女に目を向け、『面白いですね、面白い。我々は人間のための党から始めますが、もしかしたら50年後には・・・』と言って」。ペヒトルド氏はこう振り返る。「時折、私は本当に、我々が少し甘やかされていると思いますね」

?以下、本紙フィナンシャル・タイムズは、オランダ人の生活に関するデータを検証し、不満を探してみた。

「満足している」はオランダ語で何て言う?

?ほかの先進国の市民と比べると、オランダ人は満足している。

?経済協力開発機構(OECD)の調べでは、オランダ人の生活の満足度は7.3と、OECD加盟国の平均6.5を大きく上回っている。これは仕事と余暇の快適なバランスに起因しているのかもしれない。

?オランダ人労働者は事実上どのOECD加盟国よりも多くの時間をオフィスの外で過ごす。並外れて長時間働かなければならないと報告する従業員はほとんどいない。

?オランダでは、生産年齢人口の約82%が仕事に就いている。これに対し、ドイツでは68%、フランスでは67%だ。

?大半の先進国では25歳未満の若者が苦労しているが、オランダ人の若者の3人に2人近くは就業している。これに対して、OECD全体では半分未満だ。

稼いで輸出する

?欧州の標準に照らしても、オランダ人は裕福だ。1人当たりの所得は約5万3000ドルで、スペイン、イタリアより38%高く、英国よりも21%高い。オランダ人はかなり平等でもあり、大半の国よりも富が均等に行き渡っている。

?それだけの富が、多額の経常黒字という形で積み上がっている。オランダの経常黒字は今年、国内総生産(GDP)比8%を超える見込みで、OECDで3番目に大きい。

オランダ人の不満

?では、一体何がおかしくなったのか。

?オランダについては、平均値は必ずしも全体像を表さない。政治においては傾向が重要で、いくつかのレベルでオランダ人はストレスの兆候を見せている。例えば、仕事の質は低下傾向にあるように見える。2008年の金融危機以降、臨時の仕事と自営の割合が急激に高まった。

?従業員のおよそ4人に1人が短期の契約で、その割合はOECD諸国の平均の2倍にのぼり、危機以前から4ポイント上昇している。25歳未満のオランダ人従業員の半分以上は、短期の契約社員だ。

?オランダ経済の最近の動向は、絶好調とはほど遠い。2016年下半期には成長が加速したものの、それもほぼ8年間、悪戦苦闘した末のことだ。国民所得が危機以前のレベルに戻ったのは、ようやく2015年になってからだ。オランダ経済は大半のOECD加盟国に後れを取っている。

「状況が好調かどうかは常に相対的な問題だ」。米ジョージア大学のカス・ムデ氏はこう言う。「オランダ人は自分たちをギリシャと比べたりせず、10年前のオランダ人と比べる。さらに悪いことに、自分たちのことを、自分たちが10年前にこうだったと思う様子と比べる」

信用収縮――そして地方の州を忘れるな

?オランダ企業は資金へのアクセスを得るのに苦労している。中小企業の約12%が銀行融資を受けるのに苦労しており、ギリシャを除くとユーロ圏で最も高い割合だ。

?銀行業界の集中度の高さと小口融資の高金利が、お粗末な融資状況の理由の1つだ。中小企業向けの銀行融資の90%近くが大手銀行3行から来ている。地域的な格差もある。オランダの失業率は今年1月に5.3%に低下し、大半のOECD加盟国と比べると、まだ低いレベルにある。だが、危機以前の水準と比べると、依然、かなり高い。

?例えば、オランダ北部のフローニンゲン州では、失業率は9%超に達している。この北部の国境地帯が、ウィルダース氏の支持基盤が比較的強い地域になっている。だが、同氏はゼーラント州やリンブルフ州など、失業率のレベルが最も低い部類に入る地域でも健闘している。

By Alex Barker and Duncan Robinson in Brussels with Valentina Romei in London
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金融市場が注目し始めた「Frexit」の可能性
“ユーロへの不満”がもたらす日本への余波

2017.3.9(木) 新潮社フォーサイト

フランス・サンエルブランで開かれた国民戦線(FN)の選挙集会で、演壇に立ったマリーヌ・ルペン党首(2017年2月26日撮影)。(c)AFP/JEAN-FRANCOIS MONIER〔AFPBB News〕
(文:青柳 尚志)

 3月15日の到来を世界中が固唾をのんで待ち受けている。オランダの総選挙で反移民、反欧州連合(EU)を掲げる右翼の自由党は第1党となる勢い。4月と5月に投票を迎えるフランスの大統領選挙で、右翼の国民戦線(FN)のルペン候補への追い風になりかねない――。インテリを自認する人なら、こう言ってポピュリズム(大衆迎合主義)に眉を顰めるのが無難というものだろう。
 だがオランダ議会のなかで、欧州単一通貨ユーロからの離脱が真剣に議論されだしたとしたら、どうだろう。オランダ議会は、3月の総選挙後に国の最高諮問機関である枢密院で、同国とユーロの関係を総合的に議論すると決めた。この議論はユーロ残留と並んで、ユーロからの脱退も俎上に載せる。枢密院と聞くと明治憲法時代の日本みたいだが、その仕組みは以下のような具合だ(在日オランダ大使館による)。
 枢密院は、1531年にカーレル5世が設置し、現在でも国家最高諮問機関。政府は法案、議事規則、国際協定の議会批准法など全て枢密院に諮問しなければならない。ただし政府は枢密院の助言に拘束されるわけではない。枢密院は君主(現在はウィレム=アレクサンダー国王)が議長を務め、副議長と最大28名の顧問官によって構成される。さらに加えて、最大50名の臨時顧問官を任命することができる。
 通常の枢密院顧問官は、社会への貢献が認められた人物で、内務・王国政務大臣の推薦と法務大臣の同意に基づき、君主が任命する。枢密院顧問官は終身制だが、実際には70歳になると引退する。枢密院の副議長が日常の運営を執行する。王位後継者は18歳になると枢密院会議に同席する。君主が亡くなり後継者または摂政者がいない場合、枢密院は君主の大権を行使する。枢密院は行政法における最高司法機関の役目も果たす――。
 君主の権威に裏打ちされた社会の安定装置であると察せられる。その枢密院にユーロへの残留か離脱の判断を委ねることになったのは、それだけオランダ社会にユーロへの不満が鬱積しているためだ。英国はEUへの残留か離脱かを国民投票にかけ、想定外のBrexit(EU離脱)の結果が飛び出した。枢密院が穏当な検討結果を示せば、国民世論の沈静化を図れるだろう。

「マイナス金利」で12兆円の被害
 大人の知恵とも言えるが、検討事項がEUとの関係ではなく、ユーロの問題であるのはなぜなのだろか。カギを握るのはユーロの番人である欧州中央銀行(ECB)によるマイナス金利政策だ。民間銀行からの預入金に0.4%の手数料(マイナス金利)を課している結果、オランダの長短金利は何年にもわたってマイナスに沈んだ。国債など安全資産で資金を運用している年金基金などの機関投資家は逆ザヤが生じてしまった。
「オランダの年金が被った損失額は1000億ユーロ」。野党・キリスト教民主勢力のピーター・オムツィヒト議員は、ECBのマイナス金利政策による被害額が、日本円で12兆円近くにのぼると指弾する。オランダは欧州でも富裕なグループに属し、世界で有数の年金制度の充実した国として知られる。オランダ経済そのものは欧州の「勝ち組」だけに、年金財政の基礎を揺るがしかねないECBの超金融緩和には、憤懣やるかたない。
 イタリア、スペインなど南欧の「負け組」を救済するための超金融緩和の尻ぬぐいを、なぜ「勝ち組」である自分たちがしなければならないのだ。この辺がオランダ野党の言い分であるが、単なる居酒屋談議と言い切れないところに、欧州の抱える病根の深さがある。ECB傘下のドイツ連邦銀行は保有するマイナス利回りの国債から損失にいら立ちを募らせ、ECBのマリオ・ドラギ総裁に超金融緩和の打ち止めを、ことあるごとに求めている。

移民をめぐる文化摩擦
 金融政策は1つだが、財政は各国バラバラ。そんなユーロという通貨の矛盾が募っていることは、本丸であるEUを討とうとしているオランダ・自由党にとっては渡りに船。中東やアフリカからの難民問題が火を付けた、移民に対する不満を煽る作戦は、それなりに有権者の気持ちをつかんでいる。オランダの人口は2015年に1690万人と前の年に比べて7.9万人増えたが、その大半は移民による増加である。

http://jbpress.ismedia.jp/mwimgs/7/9/-/img_79fccd3a1336d1ed67b4c0956d9309a738118.jpg

 自然増と移民増を比べても、2011年までは年5万人程度の自然増があったが、それ以降は自然増が落ち込んでいる。その一方で、2013〜2015年と移民増が増加し、オランダの人口増の牽引役となっている。移民のウエートが高まっているばかりでない。オランダといえば世界に先駆けてマリファナを合法化するなど、寛容な社会として知られ、人々はそれを誇りにしてきた。が、街行くオランダ人さえ眉をひそめるような、移民をめぐる文化摩擦が広がっている。

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「いやなら出ていけ」。1月23日付のオランダ各紙にそんな意見広告が掲載された。反移民の右翼政党による広告と思いきや、広告主はオランダのマルク・ルッテ首相である。国の価値観を否定するなら「出ていけ」と主張する意見広告を、首相自らが打ったのだ。英BBCによれば、ルッテ首相は新聞広告で「普通に振る舞え。さもなければ出ていけ」と主張。自由を求めてオランダに来たはずの人たちが、その自由を乱用しており、国民は反感を強めていると指摘した。
 伏線がある。オランダでバス運転手の職に応募した移民男性が、女性と握手を拒んだ。そのために就職できなかった。そんな事例を首相は取り上げた。この大手バス会社は国内の人権機関に批判されたが、首相はバス会社を擁護した。
「実に奇妙な批判だ」。首相は「会社がもちろん正しい。『私の宗教信条にそぐわないので女性と握手できない』と運転手が言うなど、認められないはずだ」と述べた。「私を含めて大勢が反発しているのは、まさにこのようなことだ。なぜならここでは、お互い握手をするというのが社会の規範だからだ」。オランダの握手は、日本で言えば会釈やお辞儀に相当するということか。
「文明の衝突」談議に深入りするつもりはない。この手の話が社会問題になるということは、「意識の高い」系ではない普通の生活者の間に相当な不満が鬱積している証拠と見なければなるまい。右翼の自由党が反移民キャンペーンに利用するのが目に見えていたからこそ、中道保守の首相は舵を右に切ったのだろう。皮肉にも、そうした対応は世論の8割が移民問題を懸念している雰囲気を、さらに強めてしまう。そしてオランダの総選挙の結果は、フランス大統領選にもドミノ倒しのような影響を及ぼしかねない。
「2度あることは3度ある」
 金融市場はもう蠢いている。国債のデフォルト(債務不履行)リスクを取引する、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場で、フランスが焦点となり始めた。フランス国債の保険料に相当するCDSのプレミアムが、跳ね上がってきたのだ。右翼のルペン候補が当選し、公約に掲げたEUとユーロからの離脱に踏み切ったら・・・つまりFrexit(フレグジット)の悪夢が市場参加者を覆っている。
 フランスの大統領選は2回投票制。1回目の投票で過半数を得た候補がいなければ、上位2人によって2回目の決選投票を行う仕組みになっている。2回投票制は左翼の台頭を抑えるために、ドゴール大統領がしつらえた安全装置。それが今回は右翼の台頭を防ぐ装置として働くことになる。今のところは、そうした床屋政談が一般的である。
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 有力候補者は右翼のルペン、中道保守のフィヨン元首相、中道のマクロン元経財相の3人。4月23日に実施される第1回投票に向けた支持率調査では、今のところルペン候補が頭ひとつ抜け出し、マクロン、フィヨンの両氏が追っている。当初優勢を伝えられたフィヨン氏が苦戦を強いられているのは、実態のない仕事での妻への給与支払いに世論の批判が集中したからだ。マクロン氏は不人気なオランド社会党政権の閣僚を務めたが、若手のテクノクラートといった感じで、人気がある。
 いずれにせよ、5月7日の第2回(決戦)投票では、反ルペンの連合が形成されるだろうから、ルペン当選の目はない。そんな読み筋が一般的だが、昨年6月の英国民投票や同11月の米大統領選の前にも、自称専門家たちから盛んに聞かされた見立てである。「2度あることは3度ある」というのが、何事にかけても用心深い投資家たちの胸算用である。だからこそ、フランス国債を売った資金はドイツ国債に流れ、欧州株は軟調に推移しているのだ。
日本にも「欧州発のとばっちり」か?
 いい迷惑を被っているのは日本である。万一、ルペン氏当選が現実味を帯びてくれば、ユーロ崩壊、EU解体の思惑が一気に高まり、グローバルな投資資金は欧州から逃げ出す。金相場が上昇しだしたのは、そうした動きの前触れだが、いかんせん金市場の規模は小さすぎる。となると、ドルと並んで円が逃避資金の受け皿になりかねない。2010年に起きた、ギリシャに端を発した欧州政府債務危機に際しても、日本は円高に苦しめられたが、今回も欧州発のとばっちりは要警戒である。
 ルペン氏が波に乗れるかどうかのカギを握るのは、トランプ米大統領とイスラム過激派だろう。不謹慎な言い方を許してもらえるなら、前者はルペン氏の向かい風となり、後者は追い風となるはずだ。トランプ政権が米国内で軋轢を強めるようだと、フランスの有権者もちゃぶ台返しを躊躇するかもしれない。一方、イスラム過激派が再び大規模テロを起こすようなら、世論は硬化しルペン氏を大統領に押し上げるかもしれない。
 9月に総選挙が予定されるドイツも、メルケル首相の率いる中道保守のキリスト教民主同盟(CDU)が強烈な逆風に直面している。中道左派の社会民主党(SPD)が第1党の座を得て、政権交代を果たす可能性も取り沙汰されだした。ドイツの有権者の心象風景はオランダと良く似たものだろうし、日本でも多く紹介されているので繰り返さない。1つ違いを挙げるならば、移民制限を唱える政党「ドイツのための選択肢」(AfD)の規模が、オランダの自由党に比べて、不満の受け皿としては小さいことだろう。
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他人事ではない「欧米の津波」
 Brexit、米大統領選と、大西洋を渡った津波はいまオランダに打ち返そうとしている。日本の識者は、トランプ政権が自滅すれば津波も減衰すると見ているようだ。日本で容易に視聴できる反トランプのCNNだけを見ていると、そんな気持ちもしてこようもの。だが、米調査機関の『ピュー・リサーチセンター』の世論調査(2月7〜12日)が示す次のような結果を、どう判断したらよいのだろうか。
 トランプ大統領の支持率=39%、民主党支持者による大統領支持率=8%、共和党支持者による大統領支持率=84%。民主党のアメリカと共和党のアメリカに米国は見事に分断されているのだ。(In First Month, Views of Trump Are Already Strongly Felt, Deeply Polarized, Pew Research Center, Feb. 16)
 大統領の支持率と不支持率を属性別に見ても米国に走る活断層が浮かび上がる。男性が45%対48%、女性は33%対63%。白人が49%対46%、黒人は14%対79%、ヒスパニックは17%対76%といった具合なのだ。
 そして大卒でない白人に限ると、支持率と不支持率は56%対38%である。リベラルなメディアが取り上げようとしなかった、「虐げられた白人たち」つまり「アメリカの深部」でのトランプ大統領の人気は、依然として高い。そんな彼らは、オランダやフランスの選挙結果に、膝を打つことだろう。
 翻って日本。2016年の難民受け入れは28人。その前の2015年は27人だった。トランプ政権による中東など7カ国からの難民一時受け入れ停止を批判するメディアも、不思議に口をつぐむ。技能実習に名を借りた裏口からの移民政策には批判もあるが、大胆な門戸開放に世論は躊躇している。皮肉にもこの狭き門のおかげで、日本は深刻な移民や難民の問題に直面せずに済んでいる。だが、北朝鮮の体制が臨界点を超え、南北朝鮮が混乱の渦に飲み込まれたら――。東アジアの地政学リスクが確実に高まる中、欧米を襲っている津波は決して他人事ではない。
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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49364



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[戦争b19] 中国を拠点にサイバー活動、北朝鮮・偵察総局の全貌 政権幹部も粛正する北朝鮮・国家保衛省の全貌 北朝鮮・恐怖の秘密工作機関
アジア・オセアニア
中国を拠点にサイバー活動、北朝鮮・偵察総局の全貌

北朝鮮・恐怖の秘密工作機関(後編)
2017.3.9(木) 黒井 文太郎
国連安保理、北朝鮮の制裁逃れを非難 マレーシアなど拠点
http://afpbb.ismcdn.jp/mwimgs/c/4/600w/img_c409d49921757bb8d10fdb25b7ab78d6167171.jpg

北朝鮮・平壌の人民劇場を訪れた金正恩・朝鮮労働党委員長。朝鮮中央通信(KCNA)配信。(2017年2月22日撮影、同23日配信、資料写真)。(c)AFP/KCNA VIA KNS〔AFPBB News〕
金正男暗殺事件の当初、韓国の情報機関「国家情報院」は、暗殺の指示を出したのは北朝鮮の軍の秘密工作部隊「偵察総局」であり、5年前から金正恩が偵察総局に金正男暗殺指令を出していたとの見通しを示した。そのため報道では偵察総局が凄まじい暗殺軍団かのようなイメージで語られた。

しかし、2月27日、国家情報院は、犯行を行ったのは偵察総局ではなく「国家保衛省」であるとの見解を発表した。

偵察総局が暗殺集団であるというイメージは現在は正しくない。実際のところ、偵察総局が実施した破壊工作は、近年は非常に少ない。

(前編はこちら)「政権幹部も粛正する北朝鮮・国家保衛省の全貌」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49344

3組織の役割を踏襲した偵察総局

偵察総局は、金正日が晩年の2009年に、それまで海外で活動してきた秘密工作機関である党の「35号室(旧・対外情報調査部)」、党の「作戦部」、軍の「偵察局」の3組織が合併して創設された組織である。

ちなみに、それまで海外秘密工作機関としては、それ以外に党の「対外連絡部(旧・社会文化部)」という組織があったが、そこは偵察総局には吸収されず、いったん「225室」という名称で内閣傘下に組み込まれ、秘密工作機関としての活動は大幅に縮小した。その後、統一戦線部の隷下に改編されている。

軍の偵察総局は、そのまま母体である3組織の役割を踏襲した。それぞれの役割は以下の通りである。

35号室──海外での諜報活動(前身の対外情報調査部の仕事で有名なのは、日本国内での日本人拉致や1987年の大韓航空機爆破テロ)。

作戦部──主に韓国に潜入する工作員(南派工作員)のひそかな送り迎え(そのため潜水艦や工作船を運用する)。

偵察局──海外での秘密軍事作戦(有名な作戦は83年のミャンマーでの全斗煥・韓国大統領爆殺未遂)。

なお、偵察総局に入らなかった党対外連絡部の有名な仕事は「よど号グループ」の管理や、欧州ルートでの日本人拉致だ。

北朝鮮で偉いのは金正恩だけ

偵察総局は組織上は軍の組織だが、軍の指揮系統からは事実上独立しており、金正恩に直結している。この偵察総局の特異性を説明するため、まずは朝鮮人民軍の権力構造について解説しておきたい。

朝鮮人民軍の組織上のトップは人民武力相だが、あまり実権はなく、3つの大きな軍内組織である「総参謀部」「総政治局」「偵察総局」がそれぞれ独立して実権を握っている。なかでも権限が強いのは、軍内政治警察である総政治局で、総政治局長ポストは北朝鮮では金正恩に継ぐ事実上のナンバー2ポストである。総参謀部のトップである総参謀長は、朝鮮人民軍全体を指揮する事実上の軍トップで、以前は金正恩に継ぐナンバー2ポストだったが、現在は総政治局長のほうが序列が上だ。

この北朝鮮の権力機構の序列についてよく誤解されているのは、どの機関が制度的にどの機関より上とか下とかいう話だ。形式上はそうした序列があるが、実際には北朝鮮の権力構造は、トップである金正恩と「その他」の関係しかない。金正恩が優遇する組織が優先されるし、それらの組織のトップの人間も、その序列は金正恩が意のままに決める。北朝鮮の政権幹部には序列が存在するが、それはあくまでその時点での金正恩による評価にすぎず、序列が上の人間が下の人間より単純に偉いということではない。北朝鮮で偉いのは金正恩だけで、その他は全員、偉くないのだ。

軍の謀反を警戒する金正恩は現在、軍全体の指揮権を持つ総参謀長(最高司令官は金正恩だが、その意にそって指揮権を代行する)の権限を制限するため、軍内部の謀反の兆しに目を光らせている総政治局を統括する総政治局長にナンバー2の序列を与えている。現在の総政治局長(つまり政権ナンバー2)は、党幹部(党組織指導部第一副部長)から軍監視役として送り込まれた黄炳瑞である。黄炳瑞・総政治局長は他に党政治局常務委員、党中央軍事委員会委員、国務委員会副委員長のポストにあり、次帥に称せられている。

偵察総局は金正恩直結、初代局長は金英哲

軍の独立機関である偵察総局は、陣容は総参謀部や総政治局よりずっと小規模だが、秘密工作機関であるため、総参謀部傘下の実戦部隊とは指揮系統を切り離され、金正恩直結の別系統となっている。

もともと初代局長だった金英哲が全権を握っていた組織だが、つまりは金正恩から金英哲に、総参謀部長を通じない直結のルートがあったということである。

金英哲は2009年に創設された偵察総局のトップに就任した時点では、国防委員会政策室長だったが、その後、権力中枢に引き上げられ、昨年1月には偵察総局長から党統一戦線部長・党書記(対南担当)に転出した。その後、党中央委員会副委員長、党政治局員、党中央軍事委員会委員、国務委員会委員などにも就任している。

偵察総局はこのように初代局長だった金英哲の部隊という印象が強い組織だったが、昨年1月の金英哲転出の後、未確認情報だが、昨年5月に第7軍団長だったハン・チャンスンが後任の局長に就任したとの情報がある。

なお、党の統一戦線部長に就任した金英哲だが、昨年夏の約1カ月間、なんらかの責任を問われ、農場で革命化教育を受けたとの未確認情報がある。このとき金英哲の責任を追及したのが金元弘・国家保衛相で、この両者に確執があるとの推測も報じられたことがあるが、これも未確認である。

仕事のメインは諜報活動

前述したように、偵察総局の前身組織はかつてさまざまな秘密工作を実行してきたが、2009年に偵察総局が発足してからは、それほど目立った秘密工作は多くない。知られているところでは、2010年3月の韓国軍哨戒艦「天安」の撃沈、同年に韓国で摘発された工作員の黄長Y・元書記暗殺未遂(まだ初期段階だった)、2011年の金寛鎮・韓国国防長官暗殺計画(疑惑段階)などがある。

もちろん現在でも、とくに海外での諜報活動も任務とする偵察総局は、海外に要員を派遣していることは間違いない。旧「偵察局」の破壊工作部門であれば、軍の化学兵器部門との協力もあり、毒殺のプロットも計画可能だろう。前述した黄長Y・元書記暗殺未遂の工作員は、懐中電灯型銃や毒殺用偽装ペンを持ち込んでいた。

しかし、実際のところ、偵察総局による暗殺は、久しく実行されていない。偵察総局の仕事のメインは諜報活動であり、作業としてはほとんど現地で協力者をオルグすること(包摂という)である。

偵察総局はそうした任務のため、海外に要員を常駐させているはずである。国交のある国なら外交官に偽装するのが一般的だが、それ以外にも、貿易商などに偽装する場合もあるだろう。とくに、韓国へのスパイの潜入は、今でも偵察総局が力を入れて実施していると思われる。

偵察総局の内部機構は、以下の通りと推定される。

▽第1局(作戦局※旧・党作戦部)
スパイ浸透・養成担当。海州、南浦、元山、清津の4カ所に出撃のための連絡所を運営。

▽第2局(偵察局※旧・軍偵察局)
軍事作戦を担当。2010年の韓国哨戒艦撃沈事件にも関与したとみられる。

▽第3局(対外情報局※旧・党35号室)
外国で対南情報を収集し、第三国を通した韓国浸透を支援する。

▽第5局(対南交渉局※旧・国防委員会政策室の実働セクション)
南北対話関与、交渉技術研究などを担当。

▽第6局(技術サイバー局)
サイバーテロとスパイ装備開発。

▽第7局(支援局)
他部局の工作を支援。

中国各地でサイバー作戦を展開

偵察総局の近年の活動として特筆すべきは、サイバー作戦である。偵察総局でサイバー戦を担当するのは第6局(技術サイバー局)だが、実働部隊として専門の「121局」が運用されている。121局の要員は推定で3000人。交代で中国各地に派遣され、ハッキング任務に従事しているとみられる。

そのため偵察総局第6局は、たとえば遼寧省、黒龍江省、山東省、福建省、北京隣接地域などに、貿易会社事務所などに偽装したハッキング基地を設置しているとみられる。とくに中心的な拠点は遼寧省丹東市に設置されているようだ。

古い記事だが、2011年5月8日付『中央日報』日本語版が、北朝鮮ハッカーの興味深いインタビューを掲載している。一部抜粋引用する。

「上部からの命令により中国に行き、南朝鮮のサイトをハッキングする。また、指示されたプログラムを受け取り、南朝鮮の動画ファイルに悪性コードを埋め込む作業もする」

「正直なところ、どの南朝鮮サイトもハッキングはとても簡単だ。指示さえ下されれば数百人ずつがあるサイトを攻撃する。それであっという間にダウンする。IPアドレスのため、できるだけわれわれがやったことを知られないようプロキシサーバーを利用し、第三国を迂回して入る方法を使う」

「南朝鮮の選挙の際には、数十人ずつチームを作って中国に滞在し、南朝鮮のサイトで世論を作り、デマを広める。サイトに加入するために盗用した住民登録番号を使う。われわれは住民番号100万個を持っている。南朝鮮の人の名義で開通した携帯電話もある」

「私の友人らが中国で仕事をする際にはひとりが数百人分の住民番号を管理した」

「中国に行く期間は短くて10日、長くて3〜6カ月だ。デマ攪乱チームは2〜3カ月ずつ滞在する」

「コンピューターウイルス製作のために働く人だけでも数百人になる」

リスキーな暗殺を敢行する特異な独裁体制

いずれにせよ北朝鮮の工作機関は、偵察総局や国家保衛省以外を含めても、重要人物の暗殺はそれほど行っていない。

他の工作機関も含めて、北朝鮮が実際に成功した暗殺は、今回の金正男を別にすれば、97年の李韓永殺害くらいしかない。李韓永(本名・李一男)は、金正男の実母である成尢ヤの姉の息子である。つまり金正男の従兄弟にあたる。

この李韓永は82年に韓国に亡命し、96年に暴露本を出版した。この暴露本で「喜び組」など北朝鮮上層部の私生活を明らかにしたことが、おそらく決定的な原因となり、97年、ソウルの自宅アパートの前で銃撃されて殺害された。犯人は逃げおおせたが、これは偵察総局の前身組織ではない「党社会安全部(対外連絡部)」による暗殺作戦との説がある。

今回の金正男暗殺はその党統一戦線部225室(対外連絡部の後身)でもなければ、破壊工作のプロ集団である軍の偵察総局でもなく、おそらく秘密警察である国家保衛省の作戦と思われるが、いずれにせよ国家が明らかな犯罪行為である暗殺を行うのは、露呈した場合の政治的リスクを考えると、現代ではやはりリスキーである。

金正男暗殺のように、北朝鮮の犯行であることが歴然な暗殺を、しかも金正男が特別に反政府活動などをしているわけでもないのに実行するというのは、それこそ政治的殺人のハードルが極端に低い超個人独裁体制の特異性の表れといえるだろう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49345


政権幹部も粛正する北朝鮮・国家保衛省の全貌
北朝鮮・恐怖の秘密工作機関(前編)
2017.3.7(火) 黒井 文太郎
金正男氏殺害、唯一の北朝鮮国籍の逮捕者を釈放 国外退去へ
マレーシア・セパンの警察署から釈放される北朝鮮籍のリ・ジョンチョル氏。リ氏は金正男氏殺害事件で今のところ唯一の北朝鮮国籍の逮捕者だった(中央、2017年3月3日撮影、資料写真)。(c)AFP/MOHD RASFAN〔AFPBB News〕
2月13日にマレーシアで金正男が暗殺された事件で、同月27日、韓国の情報機関「国家情報院」は、犯行を行ったのは軍の「偵察総局」ではなく、「国家保衛省」で、そこに北朝鮮外務省が協力したとの見解を公表した。北朝鮮の工作機関について最も情報を持っているのは韓国の情報機関だから、現時点ではその可能性がきわめて高いと判断していいだろう。

現在、海外で破壊工作を実施できる北朝鮮の組織は、この偵察総局と国家保衛省の2つである。前者は諜報活動や破壊工作を担当する情報機関で、後者は反乱分子を摘発する秘密警察である。

国家保衛省はもともと北朝鮮国内での秘密警察活動と、海外での北朝鮮外交官の監視などが主任務だったが、近年は脱北者追跡の役割が増えており、それに従って脱北者の多い中国東北部、東南アジア、さらには韓国内での秘密活動が強化されている。こうしたエリアでの暗殺などのダーティワークは、近年は偵察総局よりも、むしろ国家保衛省が主力になってきている。

工作員が脱北者を追跡・処刑

ただし、報道されているイメージのように、暗殺を常日頃から実行しているかというと、それほどでもない。今回の金正男暗殺のような大規模な作戦は、おそらく初のことだ。

前述したように、国家保衛省は海外では脱北者の摘発を主任務としているため、とくに中国東北部で脱北者の捕捉を実施している。また、同地において、韓国の脱北者支援団体や韓国情報機関員などと日常的に水面下の攻防戦もある。そうした中で、殺人行為もときおり行われているが、それも大がかりなものはほとんどない。

比較的大がかりな作戦とすれば、脱北者に偽装して韓国内に工作員を潜入させ、そこで他の脱北者を追跡する活動がある。たとえば、2008年に韓国で摘発された女工作員・元正花の場合は、韓国に潜入した後、協力者獲得工作と同時に、大物亡命者である黄長Y・元書記の所在確認も命令されていた。元正花の養父も南派工作員で、その養父含めて数人のスパイ団を韓国内で作っていたが、摘発されている。

なお、元正花は脱北した後、担当した韓国情報部員と男女関係になるが、それを聞いた国家保衛省の担当指導員は、それを利用してその韓国情報部員を暗殺するように元正花に命じている(未遂行)。

また、2012年に韓国で摘発された国家保衛省工作員は、脱北者団体幹部に接触するように命令されていた。ただし、いずれもそれほど大がかりな作戦ではなかった。

恐怖支配を実施する最重要組織

国家保衛省は5万人とも7万人ともいわれる正規要員(うち平壌市テソン区の本部には8000人が勤務との未確認情報)と、数十万人の協力者がいると推定されるが、詳細は不明である。内部の機構も非公表で、詳細は不明である。

国家保衛省は形式上は省として内閣の一機関だが、実際には金正恩に直結している。国家保衛省は昨年6月、「国家安全保衛部」から名称が変更された。北朝鮮では党中央直結とされる「部」が内閣所属の「省」より格上のため、この名称変更を「降格」と推定する報道もあったが、当時は昨年5月の党大会からの大幅な組織改編が進行中で、たとえば人民武力部も人民武力省に名称変更されるなどしており、一概に降格とは断定できない。国家保衛省の権限は依然絶大なものがあり、金正恩の権力の源泉である恐怖支配を実施する最重要組織であることには変わりない。

失脚した国家保衛省のトップ

その国家保衛省では今年1月中旬、大事件が発生した。トップである金元弘・国家保衛相が解任され、次官級を含む複数の幹部が処刑されたのだ。金元弘は大将から少将に降格されたとだけ伝えられているが、その後の消息は不明で、いずれにせよ失脚したことは確実である。北朝鮮の権力層の失脚の過去事例からみると、監禁・軟禁で済めば良いほうで、処刑される可能性も高い。

この大粛清は、党の組織指導部の内偵調査によるものとみられる。タテマエとしては、独断による拷問、越権行為、汚職などが挙げられたようだが、要するに「ウラの権力を行使してきた人物は、力を持ちすぎると独裁者にとっても危険なので、排除された」ということだろう。

金元弘はもともと秘密警察畑の人物である。金正日政権の終盤に、軍内の秘密警察である「保衛司令部」司令官を務めた後、軍内の政治警察である「総政治局」の組織(人事)担当副局長に転じ、2011年末の金正日死去を受けた金正恩体制発足後、2102年4月に国家安全保衛部長に就任している。このように各種の秘密警察での任務を長く務めた人物であり、国家安全保衛部長となってからも、2013年12月の張成沢処刑をはじめ、金正恩政権下の多くの幹部粛正を主導してきた。

北朝鮮ではウラ権力である秘密警察の指揮官になった人物の多くが、やがては自らも粛正されるという運命にあったが、金元弘も例外ではなかった。彼自身、おそらくそのことは予想していたであろうし、実際、彼以外の政権幹部格の多くが粛正の対象になっていたため、金正恩に疑われることのないよう、ひたすら金正恩の意に沿う働きだけを心掛けてきたと思われるが、金正恩はそう甘くはなかったということだ。

国家保衛省の歴代幹部の末路は悲惨

ここで、国家保衛省の前身組織のトップたちの悲惨な末路を振り返ってみよう。国家保衛省は、もともと金日成の時代から、独裁者の権力維持のために最重要の中枢組織だった。当初は1973年に金日成直属の秘密警察として「国家政治保衛部」として発足。部長は金炳夏で、金日成体制の恐怖支配確立を主導したが、彼は82年に処刑された。その後、国家保衛部と改編され、部長には李鎮洙が就任したが、実際には金正日が直轄した。

李鎮洙は87年に視察先で変死(ガス中毒死とみられる)するが、それ以降、金正日の直轄下で部長ポストは空席とされ、歴代の第一副部長が実務を取り仕切った。当初、その責任者となったのは金英龍・第一副部長だった。国家保衛部は93年に国家安全保衛部に改編されるが、98年、内部で大粛清が行われる。このとき、責任者だった金英龍・第一副部長は、粛正を悟って服毒自殺している。

その後、金正日政権終盤になって、同部の実務を担当した責任者は、禹東測・第一副部長だった。2011年末に金正日が死去した際、霊柩車に付き従った8人の幹部が金正恩体制の当初の後見人であり、そのうち4人が軍・秘密警察幹部だったが、そのひとりが禹東測だった。しかし、その禹東測も早くも2012年4月に失脚した。処刑は確認されていないが、その後の消息は一切不明である。

前述した金元弘は、この禹東測失脚を受けて国家安全保衛部のトップに就任した。それも、87年以来、空席だった同部長としての就任だった。それだけ厚遇されたといえる。

なお、国家安全保衛部時代の幹部の粛正では、もうひとり有力な幹部の例を紹介しておこう。2011年に処刑された柳京・副部長である。彼は2001年に日本と拉致問題・国交回復問題を秘密交渉した「ミスターX」とみられる幹部で、それだけ金正日が信頼していた人物だったが、金正日の晩年、収賄の疑いで粛正の対象になったのである。

このように、国家保衛省の歴代幹部の末路は悲惨である。それでも、そのポストに任命されれば、自らの粛正を回避するために、ひたすら金正恩に忠誠を尽くすしかない。忠誠を尽くす唯一の方法は、ひたすら懸命に不穏分子を狩り出すことだ。しかし、その仕事に邁進すれば、自ずとウラの権力が集まってくる。そうなれば独裁者の猜疑心の対象となり、結局は粛正の対象になる。どちらに転んでも悲惨な運命である。

国家保衛省を監督する党組織指導部

今年1月の金元弘失脚は、党組織指導部が主導した。国家保衛省は金正恩に直結する組織だが、その指導権・監督権を、金正恩は党組織指導部に与えている。しかし、国家保衛省が党組織指導部の傘下にある組織かというと、そうとも言えない。

北朝鮮の政治体制は、制度上のタテマエとは違い、実際には金正恩がトップで、それ以外はすべて独裁体制の歯車であり、それぞれの立場の強さはひとえに金正恩の考え次第である。現在の金正恩体制で、体制内の監視機構として大きな権限を与えられているのは、軍の「総政治局」、党の「組織指導部」、そして国家保衛省である。

独裁政権にとって、どこかの組織が突出して権力を握ることは危険である。そのため、ウラの権力を握る組織同士を互いに監視させ、1つの組織に権限が集中しないようにするわけだ。

総政治局は、軍を監視する。独裁体制にとって最も警戒されるのは、軍のクーデターであり、そうした芽を摘むために総政治局には絶大な権限が与えられている。

国家保衛省は不穏分子を実際に摘発・粛正する実働部隊である。その権限はさらに絶大なもので、金正恩の命令があれば、軍や党のトップクラスであっても粛正することになる。そして、国家保衛省を監督する組織として、金正恩は党組織指導部をあてている。

党組織指導部の中でも注目される実力者が、趙甬元・副部長だ。現在、金正恩の視察に最も多く同行している最側近といわれている。昨年7月、太永浩・元駐英公使が韓国に亡命し、韓国メディアで盛んに金正恩体制批判を語っているが、その太永浩も趙甬元の政権内での権勢について指摘している。

1月の金元弘・国家保衛相の失脚も、おそらく金正恩=趙甬元ラインで決められたものではないかと思われる。

なぜ暗殺の実行を急いだのか?

そして、この金元弘失脚と大粛清が、今回の金正男暗殺に影響した可能性がある。

今回の暗殺の謎の1つは、どうして監視カメラが完備している空港内で行われたのかということだが、可能性の1つとして、暗殺の実行が急がれていたかもしれないということがある。

本来ならもっと時間をかけて標的である金正男の行動を監視し、人の目のない場所でこっそり殺害したかったところ、そこまで監視する時間的余裕がなかったのではないか。そう考えると、襲撃者たちの身元の足がつきやすい空港内での犯行も合点がいく。

そして、その急いだ理由に、国家保衛省内部の粛正があったのではないか。つまり、いつまでも結果を出せなければ、自分たちも粛正の対象にされてしまうという恐怖があったのではなかったかという可能性がある。

これはあくまで1つの可能性だが、たとえば太永浩・元駐英公使などが最近、頻繁に韓国メディアに登場し、さかんに金正恩政権批判を発言していることに関連し、激怒した金正恩がこれまでの幹部亡命者とその協力者の処刑を命令。その多くの対象の中に金正男の名前があり、作戦を急いで実行する必要が生じたのではなかったか。

「外務省職員」は国家保衛省からの要員?

なお、韓国の国家情報院によれば、今回の暗殺は、国家保衛省に外務省が協力した形ということで、犯人グループの中に外務省職員が名指しされているが、もしかしたら国家保衛省から外務省に派遣されている要員の可能性もある。国家保衛省は海外に派遣される北朝鮮国民の亡命阻止も重要任務だが、そのため常日頃から多くの要員が外務省に送り込まれているはずである。

また、秘密警察である国家保衛省は、秘密保持のために、基本的には国家保衛省内の限られた要員によるチームで作戦を行うものと考えられる。金正恩の直接指示があれば可能だが、通常は他の省庁と共同で秘密工作を行うことは考えにくい。同様に、事件当初、国家保衛省と偵察総局の共同作戦の可能性を指摘する報道もあったが、その可能性も小さい。

国家保衛省は、外務省や偵察総局などと比べても圧倒的に格上であり、恐れられている存在である。今後も、脱北者たちに対する暗殺作戦は続くものと思われる。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49344
http://www.asyura2.com/16/warb19/msg/764.html

[政治・選挙・NHK222] 日米経済対話、農水省不参加 インフラ・通信など議論へ=関係筋 諮問会議スティグリッツ氏招待「トランプ経済」解説=政府筋 
Business | 2017年 03月 9日 13:18 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース

 
日米経済対話、農水省不参加 インフラ・通信など議論へ=関係筋

[東京 9日 ロイター] - 4月に第1回会合が予定されている日米経済対話で、農業分野を議論せず、農水省も参加しない方針を日本政府が固めた。複数の関係筋が明らかにした。日本側はインフラ整備やエネルギー・通信関連などでの協力を主要なテーマとして設定し、国土交通省は参加する。同対話の参加範囲を含めた日本案を近日中に米国側へ打診する。

<鉄道やガス輸入などインフラ分野を列挙>

2月の日米首脳会談で設立が決まった日米経済対話は、日本側が麻生太郎副総理兼財務相、米国側がペンス副大統領をトップとする形で、1)財政・金融政策の連携、2)インフラ(社会資本)整備、エネルギーなどの事業の協力、3)2国間貿易の枠組み――について議論する。

自動車や為替などをめぐりトランプ大統領が相次いでツイッターで対日けん制発言を繰り返してきたが、日本側は対米経済協力を議論する場として提案した。麻生副総理を中心に財務省や外務省、経済産業者、国土交通省などが組織横断的に交渉担当者の人選を進めている。

複数の関係筋によると、早ければ週内にも米国に示す日本案では、米国での高速鉄道プロジェクトや鉄道車両製造、米産シェールガスの日本への輸入、サイバー攻撃防御などの通信技術と多岐にわたる。

日本側は、トランプ大統領が官民資金1兆ドルを掲げたインフラ投資に対し、どのように側面支援が可能なのか議論したい考えだ。

米国では、トランプ政権が環太平洋連携協定(TPP)からの脱退を掲げ、対日輸出で豪州に先行された牛・豚肉業界が、日米FTA(自由貿易協定)を要求しており、今後のトランプ政権の出方に注目が集まっている。

日本側には、農業分野で圧倒的な競争力を持つ米国と2カ国交渉を始めてもメリットが少ないとの考え方が多い。

ただ、米国側が農業分野を同対話の枠組みに含めるよう強く求めてきた場合、日本側も交渉スタンスの再検討を迫られる可能性があるとの声も、日本政府内にはある。

もっともトランプ政権は、フリン氏が大統領補佐官を辞任した後も、セッションズ司法長官が虚偽証言疑惑で批判されるなど、主要な人事での「ごたごた」が多発。政治任用とされる主要官庁の幹部人事も、いまだに空席が多く残っている。

このため日米経済対話のテーマ絞り込みなどの日米間における議論は進んでおらず、4月18日を軸に調整が進んでいる初会合は、顔合わせ的な「キックオフミーティング」になるとの見方もある。

だが、米国家通商会議(NTC)のナバロ委員長は6日の講演で「日本には極めて高い非関税障壁がある」と発言。トランプ政権が今後、どのような対日要求を出すのか予断を許さないとの見方もある。

(竹本能文 編集:田巻一彦)

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News | 2017年 03月 9日 14:57 JST 関連トピックス: トップニュース

諮問会議、スティグリッツ氏招待 「トランプ経済」解説=政府筋 

[東京 9日 ロイター] - ノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・スティグリッツ氏(米コロンビア大教授)が、政府の経済財政諮問会議(議長、安倍晋三首相)の特別講師として招かれることが9日、わかった。米新政権発足後の同国経済の情勢や、トランプ大統領の経済政策を中心に解説する。複数の政府関係者が明らかにした。

スティグリッツ氏が出席するのは14日の次回会合で、同氏の来日に合わせて臨時で開催する。

諮問会議は今年に入り、トランプ大統領就任を踏まえ、日本からの対米直接投資や米国での日本企業による雇用創出の現状について情報共有を進めてきた。

海外の有識者を招待するのは異例だが、「講演を通して米国経済への知見を深める機会としたい」(政府関係者)考えだ。

スティグリッツ氏は昨年3月にも来日し、政府の国際金融経済分析会合に出席。消費税率10%への引き上げ延期を提言していた。

(ポリシー取材チーム 編集:田巻一彦)

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http://jp.reuters.com/article/abe-stiglitz-idJPKBN16G0FJ
http://www.asyura2.com/17/senkyo222/msg/142.html

[経世済民119] 金融庁、地銀に特別検査 外債で運用損を警戒 トランプリスク取扱注意書 海外勢5カ月ぶり日本株売越 株反発 AF死んでない

金融庁、地銀に特別検査 外債で運用損を警戒
2017/3/9 1:31日本経済新聞 電子版
 金融庁は地方銀行に対し、運用部門に焦点をあてた特別検査を実施する。地銀は日銀によるマイナス金利政策の導入で投資しにくくなった国債に代わり、少しでも高い利回りを求め、外債や複雑な仕組みの運用商品への投資を膨らませている。足元の米金利上昇で多額の含み損を抱えたり、実際に損失を出したりしている地銀が多いため、警戒を強める。

 まず地銀3グループ程度に立ち入り検査し、必要に応じて対象を広げる。外債を多く保…
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS08H5A_Y7A300C1MM8000/


金融庁、地銀に特別検査 まず3グループ
米金利上昇、外債で運用損
2017/3/9付日本経済新聞 朝刊
 金融庁は地方銀行に対し、運用部門に焦点をあてた特別検査を実施する。地銀は日銀によるマイナス金利政策の導入で投資しにくくなった国債に代わり、少しでも高い利回りを求め、外債や複雑な仕組みの運用商品への投資を膨らませている。足元の米金利上昇で多額の含み損を抱えたり、実際に損失を出したりしている地銀が多いため、警戒を強める。

http://www.nikkei.com/article/DGKKASFS08H5A_Y7A300C1MM8000/



金融庁:地銀の外債運用を検査へ、リスク管理体制検証−米金利上昇
河元伸吾、呉太淳
2017年3月9日 17:05 JST

金融庁は、国債に代わって外債運用を拡大させている一部の地域金融機関を対象に立ち入り検査を実施する。ドナルド・トランプ米大統領の当選以降の金利上昇を受けて、地銀が保有する米国債の価格下落が経営に与える影響などを調査する考えだ。
  金融庁の遠藤俊英監督局長が9日、参院財政金融委員会で外債運用をテーマにした検査を実施する方針を明らかにした。これまでは運用体制やポートフォリオ(資産配分)の状況などをヒアリング(聞き取り調査)の形で監督していた。しかし、特定の金融機関についてリスク管理態勢の実態が分からないことから立ち入りで検査することを決めたと答えた。平木大作氏(公明)の質問への答弁。
  日本銀行のマイナス金利政策で運用難に陥った地域金融機関は、外債投資を活発化させている。財務省の統計によると、昨年11月までの1年半にわたり、対外中長期債投資は買い越しが続いていた。米大統領選出以降、12月末にかけて米長期金利は急上昇しており、保有する外債に含み損が発生している可能性が出ている。
  SMBC日興証券の佐藤雅彦アナリストは、地銀の外債運用について「国債の償還後に外債を含めた分散投資を積極化しており、米金利上昇は一つのリスクとして浮上している」と指摘。ただ、地銀は保有株式の売却益などで有価証券運用をカバーしているため、「外債運用の含み損によって大幅な業績修正に向かうことは考えにくい」とみている。
  日本格付研究所(JCR)の大山肇チーフアナリストは、地銀の外債投資のリスクはすでに格付けに織り込んでいるものの、今後は「銀行が財務体力や収益力との比較でリスクを取り過ぎていないか見ていく」と述べた。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-09/OMJE1I6JIJUO01

 

コラム:トランプリスクの取扱注意書

熊野英生第一生命経済研究所 首席エコノミスト
[東京 9日] - トランプ米大統領が就任して、少しずつ不確実性を占う材料が蓄積されてきた。当初は経験値がゼロだったので、世界経済の先行きが極めて不確実だったが、それが若干後退してきたということだ。

例えば、2月28日に議会で行われたトランプ大統領の演説内容を見てみよう。ここから経済政策をうかがうと、1)貿易面で公正を強調、2)雇用創出による中間所得層の拡大、3)1兆ドルのインフラ投資、4)法人税減税などの税制改正、の4本柱となっている。事前に知らされていた内容ばかりで、演説前に膨らんだ期待感に比べると、やや肩透かしだった。

それでもNYダウは大きく上げて、トランプ演説を好感した。これは、トランプ大統領が従来の過激なトーンを抑えたことへの好感である。大統領当選直後のスピーチにも共通するが、普通の大統領らしく丸くなった方が国民から好まれるのだ。

角のある態度よりも丸い対応の方が人気を上げるとトランプ大統領は学習していくだろう。この予想通りならば、不確実性は今後低下していくはずだ。

<日本経済の分岐点、早ければ今秋か>

次に、大統領の影響力がいかに大きいといっても、景気動向はファンダメンタルズに沿って動いていく。目下の日米経済の上向きトレンドは、そう簡単に変えられない。

日本経済の基本シナリオについて具体的に見ていくと、次の通りとなる。日本の製造業の生産活動は、2016年2月を大底にして上昇局面へと転換した。この流れが、先行きのどこで寿命を迎えるのか、考えてみよう。

日本の生産循環を動かす米国の循環に注目すると、米供給管理協会(ISM)発表の製造業景気指数が50を超える米景気拡大局面は2016年9月に始まった。この局面は少なくとも2018年内は続きそうである。

日本の生産循環は、米国発の景気循環よりも半年早く始まって、1年半ほど早く終了するパターンに見える。よって、米ISMの好況が2018年末まで続くとすれば、リーマン・ショック後の経験則に照らして、少なくとも2017年秋くらいまでは、生産拡大を続けるとみられる。

ショックが2017年中にあれば、同年秋よりも早く生産拡大が終わり、大きなショックがなければ同年秋よりも生産拡大は長持ちすることだろう。

整理すると、日本経済の基本シナリオは、以下の三段階となるのではないか。

1)2017年前半は、生産拡大の勢いが頑健であり、ショックに対する耐久性は強いので、景気拡大局面は続く。

2)2017年秋くらいになると成長ペースがマイルドに変わってきて、ショックがあれば景気拡大を終わらせる公算が大きくなる。

3)米国次第であるが、2018年入りすると日本は循環的な成長ペースが鈍ってきて、ショックがなくても景気の調整期を迎える可能性が高くなる。

<トランプ政策は「引き算」で考える>

2016年11月の大統領選におけるトランプ氏勝利以来、トランプ・ラリーが続き、まだ第二幕、第三幕があると期待する人も多い。しかし、筆者は、「足し算」ではなく「引き算」で考える方がおおむね間違いないとみている。

マーケットで大統領の発言が好感されることがあっても、それが実体経済に影響を与えるまでには、相当の修正を迫られる。財源問題、国際的な貿易ルールの縛り、そして抵抗勢力との調整があるからだ。

混乱させることは簡単だが、経済を上向かせるプロジェクトを完遂することは極めて難しい。懸念材料となっている「国境税」も、今後、換骨奪胎されて、いくらか毒が抜かれることが期待される。これは、「引き算」のマイナス幅が小さくなる可能性である。

未来の可能性の中で警戒されるのは、基本シナリオに影響を与える米金融政策への政治介入だ。目下、米連邦準備理事会(FRB)による3月利上げシナリオが現実味を増している。FRBは年内さらに利上げを重ねるだろう。

FRBのこうした意図は、今から成果を出したいと願っているトランプ大統領の考えとは食い違いそうだ。トランプ大統領は、実体経済が完全雇用かどうかは気にせずに、もっと雇用増加が欲しいと切望しているように見受けられる。大企業を集めて、雇用増を求めるなど、自分の権力を行使して可能なことを最大限行うつもりでいるようだ。

歴史的な教訓に沿って考えると、米政権が実力以上の雇用拡大を狙うと金融引き締めが遅れてしまい、悪性のインフレ予想が芽生える。政治的思惑に流されるというバイアスを排除するために、中央銀行に独立した判断を与えて、それを脅かさないようにするというのが教訓である。

最後に、筆者はトランプリスクを過大評価しないよう指摘する一方で、逆の過小評価リスクについても怠りなく考えたい。おそらくトランプリスクは「こんなものだ」と理解したつもりになったときが、一番危険だ。重要なのは、複眼思考である。

*熊野英生氏は、第一生命経済研究所の首席エコノミスト。1990年日本銀行入行。調査統計局、情報サービス局を経て、2000年7月退職。同年8月に第一生命経済研究所に入社。2011年4月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司) 


視点:トランプ円安は幻想、進む「米国の日本化」=青木大樹氏 2017年 01月 23日
視点:インフレ税はなぜ日本に必要か=シムズ教授 2017年 02月 13日
コラム:米国を蝕む「縁故資本主義」=河野龍太郎氏 2017年 02月 02日
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-hideo-kumano-idJPKBN16G0EX?sp=true

 

 
米金融当局、インフレ予防で後手に回ってないか−新たな関心事に
Matthew Boesler、Luke Kawa
2017年3月9日 15:16 JST

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来週の米利上げの可能性を投資家が既に織り込む中、あまりに急速なペースでのインフレ高進の予防で米金融当局が後手に回っていないかどうかに市場の関心は移っている。
  その答えは米東部時間10日午前8時半(日本時間同日午後10時半)に発表される2月の雇用統計で一段とはっきりするだろう。フェデラルファンド(FF)金利先物の反応を見れば大勢は分かるだろうが、米国債5年物と10年物のスプレッド(利回り格差)に着目すれば、中長期的なインフレリスクを巡る投資家の見方を探るのに役立つ。

  米金融当局者から3月利上げの可能性を強く示唆する発言が相次いだことで、同スプレッドは過去2週間に縮小し、当局がインフレ高進の予防に関して後手に回るリスクはないと、投資家が今のところ考えている様子がうかがわれる。現在47ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)前後の同スプレッドは、過去2回の米利上げサイクルの終盤にはマイナス圏に落ち込んだ。
  サザン・バンコープ(アーカンソー州リトルロック)のポートフォリオマネジャー、ビンス・フォスター氏は、スプレッド縮小は「インフレリスクの低下を指し示すものだ」と指摘。「当局が実際に後手に回っているなら、市場はインフレリスクプレミアムの高まりを織り込んでいるだろう」と語った。
原題:Is the Fed Behind on Tightening? Watch This Inflation Indicator(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-09/OMJ94Q6JTSED01


 

中国経済全体のファイナンス活動、2月は予想下回る水準
Bloomberg News
2017年3月9日 19:03 JST

経済全体のファイナンス規模は1兆1500億元−予想1兆4500億元
M2が前年同月比11.1%増−予想は11.4%増


中国経済全体での2月のファイナンス活動は市場予想を下回る水準にとどまった。当局がレバレッジ(借り入れ)解消と資産バブル抑制に向けた取り組みを進めていることが示唆された。
  中国人民銀行(中央銀行)が9日発表した2月の経済全体のファイナンス規模は1兆1500億元(約19兆円)。ブルームバーグがまとめた市場予想の中央値は1兆4500億元だった。
  マネーサプライ(通貨供給量)統計では、2月のM2は前年同月比11.1%増。市場予想は11.4%増だった。同月の新規人民元融資は1兆1700億元。市場予想(9500億元)を上回った。
  中国当局は債務増大に伴うリスクを管理するため、慎重な金融政策を維持すると表明している。今年のM2の伸び率目標は12%と、昨年の13%から引き下げられた。
原題:China Money Supply Growth Slows Amid Campaign to Contain Risk(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-09/OMJK9H6JTSEA01


 

 
ドルは114円台半ば、米雇用統計期待が支え−目先はECB会合に注目
小宮弘子
2017年3月9日 11:30 JST 更新日時 2017年3月9日 15:56 JST

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米金利先物動向に基づく算出では3月の米利上げの予想確率は100%
上値めどの115円を大きく上抜けるのは困難−ANZ


9日の東京外国為替市場では、ドル・円相場が1ドル=114円台半ばで小じっかり。前日発表の米民間雇用統計が予想を大きく上回り、週末の米雇用統計も良好な内容で3月の米利上げを後押しするとの期待がドルを支えた。
  午後3時52分現在のドル・円は前日比0.1%高の114円41銭。8日の海外市場では米ADP雇用統計の上振れを受け、米債利回りの上昇に伴い一時114円75銭までドル買い・円売りが進行。その後114円台前半まで伸び悩んだが、この日の東京市場では114円59銭まで強含んだ。
  一方、市場は3月の米利上げをほぼ織り込んだ状態となっており、海外時間に欧州中央銀行(ECB)の政策委員会といったイベントを控えて、積極的にドルの上値を追う動きは見られなかった。
  オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)マーケッツ本部外国為替・コモディティー営業部長の吉利重毅氏は、米金利が上昇したこともあり、ドルが「ビット気味」だが、ドル・円の上値めど115円は変わらず、同水準を大きく上抜けるのは困難、と指摘。「仮に115円台を抜けていくとしたら、来週のFOMC(米連邦公開市場委員会)で年内利上げが3回から4回で、さらに来年も3回といったようなイメージになった場合」と話した。

  ブルームバーグのエコノミスト調査によると、10日発表の2月の米雇用統計で非農業部門雇用者数は前月から20万人増加の見込み。1月は22万7000人増だった。
 
  給与明細書作成代行会社のADPリサーチ・インスティテュートが8日発表した給与名簿に基づく2月の米民間部門の雇用者数は29万8000人増加(予想は18万7000人増)と2014年4月以来の大幅な伸びとなった。
  ADPの上振れを受け、8日の米国債市場では10年債利回りが一時2.582%と昨年12月20日以来の水準まで上昇。米金利先物動向に基づくブルームバーグの算出によると、来週14、15日のFOMCでの利上げの予想確率は100%となった。
  みずほ銀行のトレーダー、日野景介氏(ニューヨーク在勤)は、ドル・円は3月高値の114円75銭を更新できず、最近のレンジを抜けきれなかったが、「本戦の雇用統計に向けて期待をつなぐ形にはなった」と説明。SBI証券市場金融部の相馬勉部長は、「米雇用統計か来週のFOMCがもう一押しとなって、115円を超えれば弾みがつく」と予想、「財政政策が出れば、もう一段上を試すのは確実で、ドルを売る理由がない」と話した。 
  ユーロ・ドルは前日の海外市場で1ユーロ=1.05ドル台前半までユーロ売り・ドル買いが進行。この日の東京市場では一時1.0528ドルと4業日ぶりのユーロ安・ドル高水準を付けた。
ECB
  ブルームバーグのエコノミスト調査によると、ECBは9日の会合で政策金利を据え置き、毎月の債券購入プログラムを現行800億ユーロから4月に600億ユーロに減らして少なくとも12月まで続ける方針を繰り返すとみられている。
  政策委員会の決定はフランクフルト時間午後1時45分(日本時間同9時45分)に発表され、ドラギ総裁がその後記者会見する。ユーロ圏のインフレ率は4年ぶりに2%に達し、2%弱を目指すECBの目標を上回っており、この日公表される最新の経済予測ではインフレ率見通しが上方修正される見通し。
ECB政策委員会に関する記事はこちらをクリックしてください。
  上田ハーロー外貨保証金事業部の小野直人ストラテジストは、域内のインフレがECB目標に到達し、緩やかだが成長回復も続く中で、緩和継続の理由付けは難しくなりつつあるとし、ドラギ総裁がこうした状況をどのように説明するのかがポイントになると説明。投資家の視線が米利上げに向く中で、「政治的な不透明さからECBの動向について織り込みがそれほど進んでいない」とし、「タカ派な内容となれば、ユーロの上昇幅は大きくなる」との見方を示した。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-09/OMIZ4T6KLVR401
 

 

日本株は反発、米民間雇用の拡大と円安推移−ゴムなど輸出中心堅調
佐野七緒
2017年3月9日 08:10 JST 更新日時 2017年3月9日 15:36 JST

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米ADP統計、雇用者数は2014年4月以来の伸びに
ECB理事会、あすの米雇用統計控え様子見姿勢も


9日の東京株式相場は反発。米国の民間雇用統計が予想を上回り、米長期金利が上昇、為替のドル高・円安推移が好感された。ゴム製品や精密機器、輸送用機器など輸出株中心に高く、ゴムには野村証券がブリヂストンの投資判断を「買い」とする材料もあった。
  TOPIXの終値は前日比4.43ポイント(0.3%)高の1554.68、日経平均株価は64円55銭(0.3%)高の1万9318円58銭。日経平均は5営業日ぶりの上昇。
  東京海上日動火災保険・資産運用第2部の桑山祐介課長代理は、米国のADP雇用統計は想定以上に良く、「10日の雇用統計も良くなれば、市場は短期的には利上げの加速を織り込む可能性がある」と指摘。また、きょうの欧州中央銀行(ECB)理事会で「多少でもタカ派的な態度の変化が見られれば、欧州の金利上昇につながり、米金利も上昇、 円安方向になる。日本株にはフォローの風が吹きやすい」との認識を示した。
東証内ボード
東証内ボード Photographer: Akio Kon/Bloomberg
  給与明細書作成代行会社のADPリサーチ・インスティテュートが8日に発表した2月の米民間部門の雇用者数は、29万8000人増と2014年4月以来の大幅な伸びとなった。市場予想の中央値は18万7000人増。これを受け、市場が織り込む3月の米利上げ確率は100%となり、6月の確率も7日の43%から48%に上昇した。
  マネックス証券の広木隆チーフ・ストラテジストは、「3月利上げをほぼ完全に織り込む中、最後の不安は雇用統計の下振れだったが、ADP雇用統計で疑念は払拭された」と言う。
  8日の米国債は続落し、10年債利回りは2.56%と4ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇、昨年12月以来の高水準となった。米長期金利の上昇を受け、きょうのドル・円は一時1ドル=114円50銭台と前日の日本株終了時点113円77銭からドル高・円安方向に振れた。前日の海外市場では一時114円75銭まであった。
  9日の欧州では、ECBの政策決定会合が開かれる。ECBは現行の金融緩和策を据え置く見通しだが、ユーロ圏のインフレ率は4年ぶりに2%に到達、出口議論が活発化する可能性もあり、ドラギ総裁の発言が注視されている。東京海上日動の桑山氏は、「緩和を強めるとも考えにくく、リスクとしてあるのは円安方向」とみる。
  きょうの日本株は上昇して始まり、日経平均は朝方に一時96円高まで買われた。しかし、その後は上値の重い展開。東海東京調査センターの武藤弘明チーフエコノミストは、「米労働市場はタイト化が続いている。今後行き過ぎた利上げでドル高になり、経済が崩れかねないとの警戒感があり、円安になっても日本株は上がりにくい」と複雑な事情を指摘した。10日には米雇用統計、来週には米連邦公開市場委員会(FOMC)、極右勢力の行方が焦点のオランダ総選挙なども控え、積極的に買い進みにくい事情もあった。
  東証1部33業種はゴム、精密、海運、ガラス・土石製品、非鉄金属、金属製品、証券・商品先物取引、輸送用機器など21業種が上昇。ゴムは、野村証券が値上げ効果で原材料高吸収を見込み、ブリヂストの投資判断を「買い」とした。鉱業や鉄鋼、電気・ガス、石油・石炭製品、倉庫・運輸、保険など12業種は下落。鉱業や石油は、8日のニューヨーク原油先物が5.4%安の1バレル=50.28ドルと大幅続落、昨年12月以来の安値を付けたことが嫌気された。
  売買代金上位ではブリヂストやSUMCO、オリンパス、スズキ、ヤマトホールディングス、東京エレクトロン、メリルリンチ日本証券が目標株価を上げた三井金属が高い。半面、一部報道をきっかけに決算発表の再延期リスク、米原子力子会社の米政府による債務保証問題が懸念された東芝が大幅安。JR九州や新日鉄住金、クレディ・スイス証券が投資判断を下げた横河電機も安い。東証1部の売買高は15億9502万株。売買代金は1兆8791億円。代金は前日から6%強減り、2兆円の大台を下回った。上昇銘柄数は1216、下落は625。


 


 

2月の海外勢、5カ月ぶりに日本株売り越す−個人8カ月ぶり買い転換
関根裕之
2017年3月9日 17:00 JST

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強い米国株、相対比較で停滞日本株の魅力低下
3月1週の海外勢は現物で売り越し、先物は買い越す


2月の日本株市場で、海外投資家は5カ月ぶりに売り越しに転じた。為替市場でドルの上値が重く、円安による企業収益の押し上げ期待が後退、株価がもみ合い色を強める中、米国株が強い動きを見せたため、相対的な日本株投資の魅力が低下した。
  東京証券取引所が9日に発表した2月(1月30日−2月24日)の投資部門別売買動向(東証、名証1・2部等合計)によると、海外勢の売越額は2567億円だった。売り越しは昨年9月以来。
  証券ジャパンの大谷正之調査情報部長は、昨年11月の米大統領選後の上昇相場が一服し、「海外勢にとっては米国株の堅調な動きが影響した」と分析。日本株は「もみ合いに終始したため、売買動向ではっきりとした傾向が出にくかった」とみる。
  2月の米S&P500種株価指数は月間で3.7%上昇、これに対しTOPIXの上昇率は0.9%にとどまった。日経平均株価の月間高安値幅も平均で164円と、1月までの過去3カ月の平均185円から縮小した。

  一方、2月の個人投資家は小幅ながら8カ月ぶりに買い越し転換、買越額は7707万円だった。証券ジャパンの大谷氏は、「1月に押し目を拾えなかった個人が買いに入った」と言う。このほかの動向は、年金基金の動向などを反映する信託銀行が3カ月ぶりに売り越し、売越額は1749億円。国内勢では最大の売り手だった。投資信託は5カ月連続の売り越しで、金額は1646億円。
  同時に公表された3月1週(2月27日−3月3日)の動向では、海外勢が3週連続で売り越し、売越額は797億円だった。一方、大阪取引所によると、先物では同週に1784億円買い越し、現物と先物の合算では987億円の買い越しだった。国内勢はおおむね売り越し、個人は2週連続(売越額840億円)、信託銀は5週連続(同381億円)、投信は12週連続(同588億円)だった。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-09/OMJDD26KLVR401

 


まだ死んでいない−アクティブファンドの一部、指数連動型を粉砕
Charles Stein
2017年3月9日 10:57 JST 更新日時 2017年3月9日 15:34 JST

新興市場株と中期債のファンドは成績良好−モーニングスター
アクティブから昨年3400億ドル流出、パッシブには5050億ドル流入

全てのアクティブ型ミューチュアルファンドの運用者がパッシブ型に負けているわけではない。
  調査会社モーニングスターが8日発表したリポートによれば、新興市場株ファンドと中期債ファンドの運用者の過半数は過去3−5年にインデックスファンドを上回る成績を収めた。新興市場株ファンドでは全体の約60%がこの間に指数連動型をパフォーマンスで上回った。中期債ファンドでは過去3年に54%が、過去5年では68%がインデックス型に打ち勝った。
  アクティブファンドの運用成績と高コストに不満を持つ投資家は、インデックスファンドや上場投資信託(ETF)に資金を移している。モーニングスターのデータによれば、2016年にはアクティブファンドからネットベースで資金が3400億ドル(約39兆円)流出する一方、パッシブファンドは5050億ドルを集めた。
  大半のアクティブ型株式ミューチュアルファンドは昨年、運用成績でパッシブ型を上回ることができなかった。過去3年、5年、10年で見ても、この優劣は変わらない。
原題:Not Dead Yet: Some Active Funds Actually Beat Their Index Rivals(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-09/OMIWUZ6KLVR701
http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/861.html

[国際18] 再選目指すプーチン陣営、自らが掘った落とし穴 解析ロシア 次期大統領選まであと1年、問われる「正統性」
再選目指すプーチン陣営、自らが掘った落とし穴
解析ロシア
次期大統領選まであと1年、問われる「正統性」
2017年3月10日(金)
池田 元博
 ロシア大統領選挙まであと1年。早々と出馬の意向を表明する政治家も現れ、選挙モードが徐々に本格化しつつある。選挙戦は本命のプーチン大統領の再選が確実視されるものの、プーチン陣営に思わぬ障害が立ちはだかっている。

2012年3月4日、大統領選に勝利したプーチン氏。ほほを伝う涙を隠さずに、支持者の前での勝利宣言を行った。(写真:AP/アフロ)
 ロシアメディアは大統領府筋の情報として、プーチン大統領の任期満了に伴う次期大統領選が2018年3月11日に実施されると一斉に報じた。投開票日まであと1年となり、政界もにわかに慌ただしさを増しつつある。

 すでに立候補の意思を表明した政治家もいる。改革派政党「ヤブロコ」の共同創設者、グリゴリー・ヤブリンスキー氏だ。反政権派ブロガーとして知られる弁護士のアレクセイ・ナワリヌイ氏も出馬の意向を示している。

 また、大統領選の「常連」ともいえるロシア共産党のゲンナジー・ジュガノフ党首、ロシア自由民主党のウラジミル・ジリノフスキー党首、「公正ロシア」のセルゲイ・ミロノフ代表も、次期大統領選への出馬が見込まれる。
 とはいえ、大本命とされるのはやはりプーチン大統領だ。プーチン氏自身は依然として次期大統領選に参加するかどうかを明言していないが、続投への野心は極めて強いといわれる。健康上あるいは別の突発的な理由がない限り、出馬して再選されるのは確実との見方が国内では支配的だ。

 現に大統領府内では、プーチン再選に向けたあの手この手の戦略を着々と練り始めている。司令塔とされるのは昨年10月、国営原子力会社「ロスアトム」の社長から、大統領府で内政を統括する第1副長官に抜てきされたセルゲイ・キリエンコ氏(元首相)だ。
外務省がロシア情報に関する海外「フェイクニュース」の摘発サイト

 再選戦略の一例として挙げられるのが、国内の経済分野の監視強化だ。有力経済紙「ベドモスチ」などによると、大統領府は主要省庁に対し、次期大統領が就任する来年5月までの期間、毎月ごとに有力企業の動向などの経済状況の報告を義務づけるという。
 対象となるのはエネルギー省、産業貿易省、運輸省などで、各省庁はそれぞれの分野の有力企業をリストアップし、各企業から地域の政治、経済、社会状況に影響を与えそうな敏感な事例を定期的に吸い上げる方式をとる。逆に選挙運動にプラスに働くような企業イベントがあれば、プーチン大統領の地方遊説先に選定することも検討しているようだ。

 また、最近になってプーチン大統領はペルミ州、ノブゴロド州、リャザン州など、自ら「辞職願」を出した地方の州知事や共和国首長の任期切れ前の辞職を認め、別の知事・首長代行を相次ぎ任命している。

 これもキリエンコ第1副長官率いる大統領府のチームが地方の経済状況などを評価し、“落第”した知事らを今年9月に予定される地方選前に退任させているのが実情とされる。来年3月の大統領選を前に、プーチン政権のイメージに傷がつくような地方選にはしたくないとの理屈だ。

 一方でロシア外務省は2月から、ロシア情報に関する海外の「フェイク(偽)ニュース」を摘発するサイトをホームページに開設した。摘発対象の海外メディアのネットサイトに「FAKE」と赤く刻印した画像も掲載し、誤報と判断する理由も詳しく記載している。欧米との情報戦争に対処するためだが、大統領選でプーチン氏に不利な情報の流入を防ぐ狙いも垣間見える。
 国内でのプーチン大統領の支持率は依然、8割を超える。大統領府などが特別に再選戦略を練らなくてもよさそうな状況だが、念には念をということのようだ。ただし、ここにきて大統領府に重い難題がのしかかってきているという。プーチン大統領が再選の条件として、投票率、得票率いずれも70%台の達成を暗に求めているというのだ。
投票率、得票率の双方で「70%」が必要な理由
 過去の大統領選でのプーチン氏の得票率は、2004年が71.31%、2012年は63.6%。投票率はそれぞれ64.39%、65.34%だった。世論調査をみる限り、当時と比べてプーチン氏の支持率ははるかに高いが、支持する有権者がすべて投票所に足を運ぶとは限らない。ましてやプーチン氏の当選が事前に確実視される状況では、必然的に国民の関心も薄くなる。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/040400028/030800024/graph1.jpg

 とくにプーチン氏が憂慮しているのが昨年9月の下院選だ。結果そのものは政権与党の「統一ロシア」が大勝し、全議席の4分の3以上を確保した。しかし国民の関心は総じて薄く、投票率が47.88%と低迷したからだ。
 いくら憲法改正によって合法化されたとはいえ、次の大統領選で当選すればプーチン氏にとって通算で4期目となる。4期目を全うすれば、首相時代も含めて実質24年の長期政権となる。ただでさえ、「皇帝」「独裁者」などと海外で皮肉られるプーチン氏にとって、国際社会で自らの正統性を誇示するには高い投票率と得票率が欠かせないというわけだ。
 プーチン陣営が正統性にこだわる背景には、2012年3月の前回の大統領選での苦い経験もある。前年末に実施された下院選で、票の水増しなど与党側による様々な不正行為が発覚。「公正な選挙」を求める大規模な抗議行動が各地でわき起こった。その直後の大統領選だっただけに、「やはり不正行為があったのは……」との疑念が内外で根強く残った。二の舞いは避けたいはずだ。

 なるべく公正な方法で、投票率や得票率をどうやって高めるか。ひとつは、本命を揺るがす存在ではないが、国民の注目が集まるような著名人を候補者として擁立することだ。前回の大統領選では、NBAのプロバスケットボールチーム「ブルックリン・ネッツ」のオーナーとしても知られる大富豪の実業家のミハイル・プロホロフ氏が、クレムリン承認のもとで出馬した経緯がある。
 大統領府はすでに、下院で議席をもつロシア共産党などに適当な若手候補がいないかを打診したがみつからず、結果的に常連候補者であるジュガノフ党首らの出馬を容認する方向という。

鍵を握る「反政権ブロガー」候補の動向

 今後、焦点となるのはナワリヌイ氏への対応だろう。政権の汚職や腐敗を追及するブロガーとして知られ、最も著名な野党勢力の指導者である同氏が出馬するかどうかについては、国民の関心も極めて高い。問題はクレムリンのコントロールが効かない点だ。現に同氏は、メドベージェフ首相が内外の複数の豪邸など莫大な隠し財産を保有していると告発したばかりだ。
 ナワリヌイ氏は2013年のモスクワ市長選に立候補し、政権派の候補に敗れたものの善戦した経緯がある。仮に次期大統領選に出馬すれば、確かに有権者の意識も高まり、投票率の上昇につながるかもしれない。しかし選挙戦でプーチン批判を大展開されれば、政権側のシナリオが大きく狂う恐れがある。
 実はナワリヌイ氏に対しては、ロシア中部キーロフの裁判所が先月、地元の国営木材加工企業から資金を横領したとして、横領罪で執行猶予付き5年の有罪判決を言い渡している。政権側はこれを理由に、結局は同氏の大統領選出馬を阻むのではないかとの観測が現状では根強い。

 では、どうするのか。ロシアメディアによると、大統領府はプーチン陣営の選挙キャンペーンの強化策も立案中だ。従来は政権与党の「統一ロシア」が大統領選のキャンペーンを主導していたが、次の選挙ではガスプロム、ロスネフチといった国営企業なども総動員するという。

 例えばキリエンコ大統領府第1副長官が社長を務めたロスアトムは、傘下に350以上の企業や研究機関などを抱える。ロスネフチは国内の約60の地域に販売網がある。ガスプロム傘下のガスプロム・メディアは大手テレビ局「NTV」など複数の有力メディアを保有する。こうした国営企業の資源を最大限活用して、投票率と得票率のアップをめざすというわけだ。

投票率向上のため、検討される苦心の策

 大統領府はさらに別の方策として、投票制度の見直しにも着手したようだ。中央選挙管理委員会に対し、投票所の数を大幅に増やしたり、住民登録していない場所での有権者の投票を容易にしたりすることが可能かどうかを検討するよう求めているという。
 このうち投票所については、現在は1投票所当たり最大3000人という有権者数を1500人に引き下げ、全国の投票所の数を倍増する案が浮上している。投票所がより近くなれば、有権者が足を運びやすくなるからだ。
 ただし、こうした制度改革の実現には多額の費用負担が伴う。投票所の増設もそうだし、住民登録していない場所での投票を容易にするには、全国に約9万5000カ所ある地区選挙管理委員会のすべてにコンピューターを導入し、選挙人名簿の登録変更を迅速に処理しなければならないからだ。

 実際に実現するかどうかが危ぶまれるなか、ついには苦肉の策として次期大統領選の投票日に合わせて、地域ごとに住民の関心の高いテーマで住民投票を実施させる案まで浮上しているとの情報もある。
 海外からみればプーチン氏の超長期政権がほぼ確実視され、世界を見渡しても最も無風の選挙となりそうなロシアの次期大統領選だが、「正統性」という意外な落とし穴に苦慮しているのが実情のようだ。


このコラムについて
解析ロシア
世界で今、もっとも影響力のある政治家は誰か。米フォーブス誌の評価もさることながら、真っ先に浮かぶのはやはりプーチン大統領だろう。2000年に大統領に就任して以降、「プーチンのロシア」は大きな存在感を内外に示している。だが、その権威主義的な体制ゆえに、ロシアの実態は逆に見えにくくなったとの指摘もある。日本経済新聞の編集委員がロシアにまつわる様々な出来事を大胆に深読みし、解析していく。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/040400028/030800024/ 

http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/563.html

[政治・選挙・NHK222] リーマン・シスターズなら破綻しなかった?

リーマン・シスターズなら破綻しなかった?

記者の眼

女性活用、他人事と思うなかれ
2017年3月10日(金)
藤村 広平
 「もしリーマン・ブラザーズがリーマン・ブラザーズ&シスターズだったら……。きっと、破綻することは無かったでしょう」

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/221102/030900425/p1.jpg

 スピーチ中盤で放たれた渾身のジョークに、耳を傾けていたビジネスウーマンたちから笑い声があがった。壇上に立っていたのは安倍晋三首相。1月20日夜、東京都内で開かれた「女性リーダーのための経営戦略講座」の懇親会での一幕だ。


「女性リーダーのための経営戦略講座」の懇親会で挨拶する安倍首相。女性リーダーに囲まれ、いつにも増して饒舌(2017年1月20日、東京都港区)
 政治家がこうした場で挨拶するのは良くあることだが、これだけ出席者に女性の多いパーティーは珍しい。

 この日は通常国会の召集日で、安倍首相は1万字を超える分量の施政方針演説をこなしてきたばかり。だが全方位から黄色い歓声とスマートフォンのカメラを向けられた首相はいつになく饒舌。リップサービスも含まれるとはいえ、わざわざ会場に駆けつけて女性活用の意義を語る姿には「女性役員の割合を2020年までに3割まで引き上げる」と掲げる政権の本気度がにじみ出ていた。

多様性といっても色々。まず女性から

 この講座は、経済産業省が2015年から幹部候補の女性を民間企業から招いて実施している研修プログラムの一つ。2016年度は全国から約60名の女性リーダーが参加し、ハーバードビジネススクールの教授陣から「マクロ経済と経営戦略」「リーダーシップ論」などの講義を受けた。

 女性活用、女性の社会進出、女性登用――。表現はその都度違っていても、女性の活躍を後押しする取り組みは長らく人権問題として受け止められてきた。だが現在の政府は「これは社会政策ではなく経済政策」(安倍首相)という姿勢。「女性の活躍を、経営を強くするための手段としてとらえてほしい。だから(15年以降の女性リーダー育成プログラムは)厚生労働省ではなく、我々が指揮をとっている」。経産省・経済社会政策室の藤沢秀昭室長はそう語る。

 日本は人口が減るという未曾有の時代に突入し、これからは国内市場の縮小が避けられない。国内で新たな事業モデルを築き上げていくにしても、海外に打って出るにしても、企業には、これまでにない大胆な発想が求められる。

 こうしたなか、企業の意思決定に携わるのが例えば「四年制大学を卒業し、サラリーマンとしてそこそこの成果を上げ、いくつかの担当部署を移りながら主任、係長、課長、部長と昇進してきた男性」ばかりでは、いつも似通ったようなアイデアしか出てこないリスクがある。

 そのリスクを軽くするのが経営人材におけるダイバーシティー(多様性)の実現。だが、一口にダイバーシティーといっても国籍や宗教、生活スタイル、障害の有無、性的嗜好など色々な要素がある。社会的な理解・受容度を考えるとまだハードルが高いものがあるのも事実であるため、政府としてはまず着手しやすい「性別」から始めたという形だろう。政府の呼びかけと前後して、企業でも女性が働きやすい職場づくりを進める動きが進み始めている。

 だが……。記者は常々感じていたことがある。

 女性活用の取り組みとして脚光を浴びるのが、経営余力のある「ホワイト系大企業」ばかりではないか、という点だ。

大企業ばかりでいいのか

 女性向けに商品やサービスを開発しているBtoC企業の事例を耳にすることが多いのも気になる。「それはおまえの勝手な思い込みだろう」との批判を覚悟のうえで、あえて列挙するのなら、カルビーや資生堂、高島屋、日産自動車、日本ネスレといった企業群だ。

 たとえば、日産自動車のカルロス・ゴーン社長は今年1月、日本経済新聞の「私の履歴書」にこう書いている。

 「日産の車を買ってくれるのは誰か、という点が問題意識にあった。調べてみると、世界中で車の購入の約65%は女性が決定権を持っていることがわかった。だが、車を開発し、生産し、意思決定しているのは、どの企業でもほとんどが男性だ。これはおかしいと思った」

 この言葉の通り、日産は2015年、国内販売を統括する責任者のポジションに星野朝子・専務執行役員を据えている。「クルマの購入を決めるのは家庭で実権を握る女性なのだから、クルマを作って売る側にも女性の感覚が必要」。これ自体は至極真っ当な考え方といえる。だが、BtoC産業だけで良いのだろうか。

 意思決定のありかたを変えていかなくてはならないのは、地方の中小企業や、顧客が男性だったり、BtoB領域が専門だったりする企業も同じであるはず。前述の「いかにも」なホワイト系大企業ばかりが脚光を浴びれば浴びるほど、中小企業の男性経営者らは「うちには関係ない話」と白けてしまうのではないか。

 もしホワイト系大企業が目立つことが女性活用の推進にネガティブに働くとしたら、それは日々企業取材する私たちビジネスメディアの責任でもある。そこで、記者は冒頭の経営戦略講座に参加していた企業から、あえて中小、しかもBtoCとはできるだけ縁遠い企業を探すことにした。

 こうして記者が訪れたのが、埼玉県蕨市のオプトエレクトロニクスだ。資本金こそ9億4241万円、売上高も71億円(2016年11月期)と中小企業というには規模が大きいが、従業員数は約260人。なによりウェブサイトに書かれた事業内容が「自動認識装置の開発、製造、販売」と、お堅い。

 自動認識装置とは、小売り店のレジや物流倉庫などで使われるバーコードの読み取り機のことだ。レーザー光で認識する方式では、オプトは国内で9割超、世界でも第2位のシェアを誇るという。一般消費者に商品を販売することはなく、顧客として日々向き合うのは小売り業界や、同業界向けにシステムを開発する大企業の営業担当者。まさに、男社会を主戦場とするメーカーだ。

 そんな会社で、女性リーダーがどう活躍しているのか。

産学連携の窓口役

 「なにも特別なことをやっているつもりはないのですが……」。そう謙遜するのは開発管理部の大島龍子部長。もともと銀行で為替業務に携わっていたが、2006年にオプトに入社。3年前、部長に昇格した。

 大島部長の担当は産学連携だ。同社が全国の大学と共同研究するにあたっての窓口役と考えればわかりやすい。過去数年、同社は電気通信大学や長野大学、神戸大学など複数の大学と製品の共同開発プロジェクトを立ち上げている。その黒子として活躍してきたのが大島部長というわけだ。

 志村則彰会長は「我々のような中小企業が、これだけ継続的に大学と連携できているのは大島さんのおかげ」と話す。現在販売しているバーコードスキャナーの基礎技術の一部は、電通大と共同開発したもの。技術の応用品として、紙ではなく液晶に商品の値段を表示する電子棚札を開発、発売したこともある。「産学連携といっても、企業が大学の研究室のスポンサー役になるだけという実態も多い」(大島部長)なか、オプトは着実に「稼げる共同研究」で実績を積み上げてきた。


産学連携を取り仕切るオプトエレクトロニクスの大島部長(2017年3月、埼玉県蕨市の同社本社)
 大島部長の仕事の特徴は、大学側との丁寧なやりとりにある。

 研究成果の発表会があれば必ず夜には懇親会を企画し、終わってからも教授や学生へのお礼の電話やメールを欠かさない。プロジェクトが一段落してからも学生との接触を続け、自社インターンへの参加や、最終的には正社員採用にまでつなげてしまう。オプトには電通大出身のエンジニアが約30人いるが、このうち半分は大島部長が研究後もフォローを続けたことでオプトの門をたたくことになった元学生たちという。「男性ばかりで会社を舵取りしていた昔はこうはいかなかった」と志村会長。

 オプトで課長以上の管理職は16人。このうち、すでに大島部長を含めた3人が女性で、日本企業の現状である「3%台」を大きく上回る。

 志村会長は「女性だからといって優遇する気はない」と話すが、一方で「労働人口の絶対数が減るなか、女性に活躍してもらうにはどうすればいいのか、いまのうちに考えておかないといけない」とも強調する。2014年からは、産休や育休で職場を離れる可能性のある女性社員を採用する際には、必ずその1人のほかに、休職期間中にカバーする社員も1人、併せて採用するという方針を掲げている。

 休職者がいないときには人員が余るが、志村会長は「それなら、全社員がそのぶん30分早く帰宅できるようにすればいい」。オプトにとって女性活用はCSR(企業の社会的責任)ではなく、すでに重い経営課題となっている。地方の中小企業、かつ男性が携わることの多いお堅いBtoB企業でも、なかには経営者らが意識改革を進めているところもある。オプトの取り組みは、そんな現実を教えてくれる。

決まり文句「うちにはそんな余裕ない」

 女性活用を、一部のホワイト系大企業だけの問題に矮小化してはいけない――。こんな危機意識を持っているのは経産省も同じだ。2016年から地方企業が地方企業同士で女性活用について議論するイベントを企画。フォークリフト作業を女性に任せている企業の現場を訪問するバスツアーも開いた。

 「現在の男性経営者たちは、均質な(男性)社員が会社経営を担いながら成長した時代を過ごしてきた。総論としては『女性活用って大切だよね』と分かっていても、いざ自社の問題として実践するとなると腰が重くなる」。経産省・経済社会政策室の藤沢室長はそう指摘する。

 はたして、リーマン・ブラザーズ&シスターズなら破綻しなかったか。

 歴史にifは禁物であり、この問いへの答えは誰にも分からない。ただリーマン・ブラザーズが破綻したこと自体は歴史の教科書に載る事実だ。理由が何であれ、旧来型の経営を続けていてはいつか限界が来るということだけは、間違いないといえるのではないか。


このコラムについて

記者の眼
日経ビジネスに在籍する30人以上の記者が、日々の取材で得た情報を基に、独自の視点で執筆するコラムです。原則平日毎日の公開になります。
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[不安と不健康18] 職場健診で発見できない難聴があるってホント? 知ってビックリ! 健康診断のウソ・ホント
職場健診で発見できない難聴があるってホント?
知ってビックリ! 健康診断のウソ・ホント
2017年3月10日(金)
田村知子=フリーランスエディター
会社勤めを続けている限り、避けては通れない職場の健康診断。自覚症状のない病気を見つけてくれるのは有難いが、仕事に追われるなかで再検査を受けるのはできれば避けたいのが人情。異常値を指摘されたとしても、どこまで生活を見直せばよいのか、今ひとつ釈然としない人も多いだろう。このコラムでは、各種検査への臨み方や結果の見方、検査後の対応など、誤解交じりで語られやすい職場健診についてわかりやすく解説する。
Q  50代になって何となく聞こえの悪さを感じているが、職場健診の聴力検査では「所見なし」だったので心配ない?
A  初期の加齢性難聴は健診では見つかりにくい。言葉の聞き取りにくさや生活習慣病があれば、耳鼻咽喉科で検査を

一般的な職場健診の聴力検査では、加齢による難聴を見つけにくい場合もある。(©jedimaster-123RF)
 職場の健康診断で行われる聴力検査は「選別聴力検査」というもので、自覚しにくい難聴のスクリーニング(拾い上げ)を目的としている。「オージオメーター」という機器とヘッドホンを用いて、低い周波数の1kHzの音を30dB、高い周波数の4kHzの音を40dBの音量で聞き、聞こえたタイミングで正確に応答ボタンを押すことができれば、特に問題のない「所見なし」とされる。
 だが、順天堂大学医学部耳鼻咽喉科学講座の池田勝久教授は、一般的な職場健診の聴力検査では、難聴を見つけにくい場合もあると指摘する。「選別聴力検査はもともと、常に騒音にさらされている職場での聴覚管理を第一の目的として、定期的な実施が義務付けられたものです。そのため、騒音性難聴の初期で聞こえにくくなるといわれる4kHzの音が設定されています。一方、加齢に伴って起こる加齢性難聴は、8kHz以上の高音域から聞こえにくくなるため、ごく初期では職場健診で見つけるのは難しい場合もあります」
 ちなみに、1kHzの音は、日常会話に必要な聴力を検査するために使われる。

 難聴は、音が伝わる経路(聴覚伝導路)のどの部位に異常が生じても起こる。聴覚伝導路のうち、外耳、鼓膜、中耳部に原因があるものを「伝音性難聴」、内耳、聴神経・脳に原因があるものを「感音性難聴」と呼び、脳の脳幹・大脳皮質に原因があるのものを「中枢性難聴」ともいう。また、伝音性難聴と感音性難聴を併せ持つ混合性難聴もある。
 伝音性難聴の原因には耳垢がつまる耳垢栓塞(じこうせんそく)、鼓膜炎、急性・慢性中耳炎、滲出性(しんしゅつせい)中耳炎、耳硬化症などが、感音性難聴の原因には騒音性難聴、加齢性難聴のほか、突発性難聴、メニエール病、聴神経腫瘍などが挙げられる。
 ただ、職場健診で見つかることが多いのは、医療機関を受診するような自覚症状がほとんどなく、ゆっくりと進行する慢性の感音性難聴だ。先述した騒音性難聴、加齢性難聴もこれに当たる。
音は聞こえても、言葉が聞き取れない
 加齢性難聴には、主に3つの特徴がある。1つは、音は聞こえても、言葉が明瞭に聞き取れないこと。「例えば、テレビの音は聞こえても、会話が聞き取りにくいため、ボリュームを大きくしていることを、家族などから指摘されるケースがあります。職場では、会議での会話が聞き取りづらい、理解しづらいといったことで苦労する場合もあります」(池田教授)。
 2つめは、生活習慣病と関連すること。「高血圧や脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病があると、血のめぐりが悪くなることで耳の中の毛細血管が詰まり、聞こえが悪くなります」(池田教授)。
 そして3つめは、遺伝的な要素。「加齢性難聴のなりやすさには個人差があり、それを決めているのが遺伝的な要素です。親なども50代、60代で早期に難聴になった家系の人は、そこに生活習慣病や騒音といった環境因子が加わると、やはり若いうちでも加齢性難聴になりやすいといわれています」(池田教授)。

 騒音と聞くと、工場や工事現場などの大きな音をイメージするかもしれないが、池田教授は「日常的な生活環境の中にも騒音はある」という。「例えば、地下鉄の走行時の音も騒音といえます。さらに、地下鉄内でイヤホンをして音楽などを聞く場合は、ボリュームを上げがちになるので、聴力にも影響を与えます」(池田教授)。
 職場健診の聴力検査で特に所見がない場合でも、言葉の聞き取りにくさやほかの検査で生活習慣病の指摘があれば、一度、耳鼻咽喉科で詳しい検査を受けておくといい。
 耳鼻咽喉科では通常、125Hz〜8kHzまでの7種類の周波数で調べる「純音聴力検査」と、言葉や単語がどれくらい聞き取れるかを調べる「語音聴力検査」を行い、加齢性難聴かどうかを判別する。
 加齢性難聴を治療する方法はないが、生活習慣病の改善や騒音を避けることは、進行を遅らせることにつながる。「コエンザイムQ10などの抗酸化物質が予防にいいとする研究もされています」(池田教授)。
 聞こえの悪さが進んでくると、言葉が明瞭に聞き取れなくなることで、会話がおっくうになり、家族や友人などとのコミュニケーションも楽しめなくなってくる。「加齢性難聴は、聞こえにくいという日常生活の不便さだけなく、孤独感や抑うつ状態など心理面にも影響することが問題視されています」(池田教授)。
 聞こえの悪さが気になる場合は、耳の病気の有無を確認するためにも、耳鼻咽喉科を受診しておくと安心だ。
池田勝久(いけだ かつひさ)さん
順天堂大学医学部耳鼻咽喉科学講座教授、医学博士
1956年生まれ。81年東北大学医学部卒業後、同大学附属病院耳鼻咽喉科入局。87年ミネソタ大学耳鼻咽喉科留学。89年東北大学医学部附属病院助手、93年同講師を経て、99年東北大学大学院医学系研究科助教授。2003年から現職。日本耳鼻咽喉科学会専門医、日本気管食道学会認定医、日本アレルギー学会認定医、日本レーザー医学会専門医、頭頸部がん暫定指導医


このコラムについて
知ってビックリ! 健康診断のウソ・ホント
会社勤めを続けている限り、避けては通れない職場の健康診断。自覚症状のない病気を見つけてくれるのは有難いが、仕事に追われるなかで再検査を受けるのはできれば避けたいのが人情。異常値を指摘されたとしても、どこまで生活を見直せばよいのか、今ひとつ釈然としない人も多いだろう。このコラムでは、各種検査への臨み方や結果の見方、検査後の対応など、誤解交じりで語られやすい職場健診についてわかりやすく解説する。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/skillup/16/090200008/030600011/

http://www.asyura2.com/16/health18/msg/430.html

[経世済民119] 「3000万円ないと老後破産する」のウソ  債券界の花形は日本株に強気 FRB記録的債務で綱渡り 大量のニトログリセリン
「3000万円ないと老後破産する」のウソ
「定年男子 定年女子」の心得
定年退職時に貯金が150万円しかなかった私
2017年3月10日(金)
大江 英樹

大江英樹(おおえ・ひでき)氏
経済コラムニスト。1952年、大阪府生まれ。大手証券会社で個人資産運用業務、企業年金制度のコンサルティングなどに従事。定年後の2012年にオフィス・リベルタス設立。写真:洞澤 佐智子
 多くの人は定年後の生活に不安を持っています。私のセミナーで参加者に聞くと、多くの方が「老後は不安だ」とおっしゃいます。
 ところが、よく考えてみるとこれは実に不思議な話です。なぜなら持っているお金の額は人によって違うからです。そう考えると、不安だと思う人もいれば、別に不安だと思っていないという人がいてもおかしくありません。にもかかわらず、誰もが一様に「老後が不安だ」と言うのは、いったいどういうわけなのでしょうか。
 例えば50歳の時点で金融資産の保有額がほぼゼロという人はおよそ3割います(金融広報委員会「家計の金融行動に関する世論調査」平成28年版より)。一般的な考えでは、定年退職まであと10年ほどということになります。にもかかわらず、金融資産が全くないということであれば、たしかに不安だというのはうなずけます。
 しかしながら、一方では1億円以上の金融資産を保有している人も同じように「老後が不安だ」と言うのです。一体どれくらいのお金があれば「不安」では無くなるのでしょう。
 よく言われるのは「老後の生活には1億円かかる」とか、「定年退職時に3000万円ないと老後破産する」といった類の話です。これはあながち間違いとは言い切れませんが、さりとて正しいというわけでもありません。
 実を言うと私自身、会社で定年退職を迎えた時に持っていた預貯金は150万円しかありませんでした。なにしろ娘2人を中学校から私立に通わせたうえに、高校の時には2人とも1年間海外留学をしたので、普通よりは教育費が余計にかかったと思います。
 さらに私の父が事業に失敗し、私が借入金の保証人になっていたために、父の借金の一部を肩代わりしたという事情もあり、預貯金はあまりなかったのです。
 もちろん持っている金融資産はそれがすべてというわけではなく、従業員持株会などで積み立ててきた自社株が少しはありましたが、退職時には株価が大きく下がっていたため、こちらも時価評価で140万〜150万円程度でした。すなわち両方合わせても300万円はなかったのです。しかしながら、退職して5年経ちますが、何とか破産せずに今日まで来ています。
「入」と「出」が分かれば不安は解消される
 実は、これだけあれば安心とか、これだけないとダメだとかいうのはあまりアテにはならないと考えたほうがいいのです。なぜなら人の生活スタイルは様々なので、個人で支出の金額は全く異なるからです。一番大切なことは自分にとっての「入」と「出」を把握しておく、すなわち「収支」をしっかりと把握する、ということです。

イラスト:フクチマミ
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/030600122/030800002/shikake1.jpg

 ここで先ほどの疑問に対する私なりの答えを出してみます。保有している金融資産が多くても少なくても一様に「不安だ」と感じるのは、将来にわたる収支がよく分かっていないからなのです。
 たとえ少々お金をたくさん持っていても、それだけで生活していたのでは、いつかは蓄えが無くなります。どれぐらい持っていれば安心なのか、ということが分からないから不安なのです。
 だとすれば、「入」と「出」をおおよそでいいので把握すれば良いのです。これから生涯にわたってかかる費用は一体どれくらいあるのか、そして定年退職後、仮に一切働かなかったとした場合、公的年金や会社の退職金、企業年金などでどれぐらいのお金が入ってくることが見込めるのか。それらを計算してみた上で、今自分の持っている金融資産と併せて、どれぐらい不足するかを把握することがまず大切です。
 これは一見、難しいように思えますが、それほど大変なことではありません。まず「入」の方が簡単なのでこちらを考えてみましょう。
 公的年金がどれぐらい支給されるか。これは実に簡単で「ねんきん定期便」を見れば載っています。但し、50歳未満の人は必ずしも正確な金額にはなっていませんので、その場合は「ねんきんネット」に登録してシミュレーションをすれば、おおよその金額は把握できます。
 また、会社の退職金や企業年金なども多くの会社では人事部等に聞けば教えてくれます。最近は昔と異なり、退職給付制度そのものがポイント制になっているため、企業によっては年に1回、給与明細にそのポイントが記載されていることもありますから、これは比較的容易に把握することが可能です。
 次に「出」を見ていきましょう。人によってライフスタイルが異なりますので、その金額も人それぞれです。したがって一般的な数字を挙げてみてもあまり意味はありません。
 自分の生活ぶりから把握するしかないのです。多くの人はそういう自分の数字を調べて把握するのが面倒だから手っ取り早く知りたがるのです。その結果、金融機関やマスコミの「これだけ必要だ」という文言に踊らされてしまっているような気がします。
 私は定年前の2年間と定年後の2年間、自分自身で家計簿をつけました。それによって現役時代の生活費と退職後の生活費がどれくらい違ってくるかを知りたかったからです。
 多くの本には退職後の生活費は現役時代よりも下がると書いてありますが、それは事実でした。私の場合で言えばおよそ70%ほどになったのです。もっともこれは一番大きな割合を占めていた住宅ローンの返済が定年と同時に終わったことが大きかったと言えます。
 こうして「入」と「出」が分かれば、どれぐらい不足するのかが明らかになります。不足があればそれを目指して資産づくりをしていけばいいのです。目標に向かってお金を貯めるのは大変かもしれませんが、少なくとも漠然とした不安はかなり解消します。
50代になったら、数字を把握することを始めよう!
 私は定年退職時にわずかな蓄えしかありませんでしたが、心配はしていませんでした。なぜなら子供はもう独立していましたし、住宅ローンも返済は定年と同時に終わる予定にしていたからです。経常的に必要となる大きな支出がないうえに、家計簿をつけたこともあって、定年後の生活費は夫婦2人でだいたい20〜25万円ぐらいだということが見込めました。
 
 一方で私自身が企業年金に関連する仕事をしていたので、年金については多少知識がありました。そのため公的年金や自社の退職給付制度についてもある程度その金額の把握も可能でした。
 結果として、日常の生活費をまかなうのは公的年金と企業年金で何とかなりそうだと思えたのです。預金がわずかしかなくてもあまり大きな不安はなかった理由はここにあります。
 でも、もし私がこういう知識もなく、知るための努力もしていなければ、恐らく定年間際は不安でしょうがなかっただろうと思います。大切なことは定年ギリギリになって考え始めるのではなく、できれば50代初めあたりからこうした「入」と「出」の把握をすべきだということです。

イラスト:フクチマミ
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/030600122/030800002/shikake2.jpg

 もちろん生活費だけなら何とかなったとしても、一時出費、例えば家のリフォームだとか、自分の楽しみのための旅行といった費用は日常生活費とは別に考えておかなければならないでしょう。
 また将来起こりうる「介護」についてもおおよその費用の予測をしておくことが必要になります。そのための費用は今後入ってくる公的年金だけでは十分ではなく、現在持っている金融資産も必要ですし、それらが少なければ、これから働いて得る収入から積み立てて準備していかなければなりません。
「不安は持っているのに関心がない人」は意外に多い
 こうしたデータを調べて「入」と「出」を把握することは、それほど難しいことではありません。にもかかわらず、それをする人はあまりいません。私がいつも感じているのは、多くの人が老後に対して「不安は持っているのに関心がない」ということです。
 もし関心があれば、実際に必要な金額を調べようとしたり、それに向けて何らかの行動をとったりするはずです。でも不安なのに何も行動しないというのは、ひょっとすると心の底では「何とかなる」と思っているのではないでしょうか。
 日本の場合は諸外国に比べると公的年金制度や公的医療保険制度は充実していますから「何とかなる」というのはある程度その通りかもしれません。ただ、人生においては何が起こるかわかりません。大切なことは自分自身の収支予測とシミュレーションをきちんと数字で知っておくことです。
 そうやって自分にとって足らないと思われる分だけを準備していけばいいのです。漠然と「3000万円ないと破産する」という金融機関の煽り文句に釣られて焦って変な金融商品を買わないようにすることが大切です。
 老後破産を防ぐ最も大切なことは自分の数字をきちんと把握することだと言ってもいいでしょう。
 次回は、「これを間違えると老後破産一直線!」をお送りします。
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『定年男子 定年女子 45歳から始める「金持ち老後」入門!』

 「定年後は悠々自適神話」は崩壊。65歳まで働くことを覚悟している現役世代がほとんど。
しかし勤務先で再雇用されても仕事のやりがい、給与ともに大幅ダウンし、職場の居心地はひどく悪いのが現実だ。
 さらに65歳で会社を「卒業」し、年金収入だけになったら、本当に暮らしていけるのか…。 親や自分の介護にかかるお金は? 60代からの就活ってどうやればいい?
 人生100年時代に、経済的にも精神的にも豊かな定年後を送るために現役時代から準備すべきことを、お金のプロであり、リアル定年男子&定年女子のふたりが自らの経験と知識を総動員してガイドする。


このコラムについて
「定年男子 定年女子」の心得
STOP! 老後破産。定年男子こと、元金融マンで経済コラムニストの大江英樹氏が本音で語る「金持ち老後」入門コラムです。「不安な未来」に向けて、何をどう備えるべきか。定年退職時に預金150万円しかなかったという自らの体験を基に、優しく解説します。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/030600122/030800002/?ST=print


債券界の花形ガンドラック氏は日本株に強気、賛同の声強まる
竹生悠子、Livia Yap、Min Jeong Lee
2017年3月10日 06:33 JST 更新日時 2017年3月10日 08:20 JST

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米利上げは円安要因、債券から株へシフト促し日本株に追い風
外国人は日本株買い越し、米上場の日本株ETFにも資金流入

著名債券運用者のジェフリー・ガンドラック氏からみて、日本株は割安だ。この見方に賛同する声が、多くの投資家の間で強まり始めている。
  ダブルライン・キャピタルを率いるガンドラック氏は、2013年に日本株に強気な姿勢を取ったのに続き、今回は日本株がリフレトレードの一つになると考える。来週の米追加利上げがほぼ確実視され、焦点はその後の利上げ回数に移っている。米利上げは円安につながり、また債券から株へのシフトを促すことで日本株への追い風になる。

  日本株に強気の見方は強まるばかりだ。日本株や日本株に投資する米上場投資信託(ETF)に外国人投資家から資金が流れ込み、TOPIXは15年の高値に近い。
  アリアンツ・グローバル・インベスター ズ・ジャパンの寺尾和之最高投資責任者は、日本株について「この3カ月ぐらいに強気になった」として、「米国の景気が少し良い方向にきているのが大きい。日本はデフレからインフレという流れにあると思う」と語った。
  外国人投資家は米大統領選挙でドナルド・トランプ氏が選ばれた週以降に日本株を1兆8000億円買い越した。トランプ氏勝利は米政府のインフラ支出と国内インフレへの期待をかき立て、円はドルに対し四半期ベースで20年余りで最大の下落を演じた。選挙結果の衝撃で一時下落したTOPIXもその後に約20%上昇した。
  昨年の大半を通じて敬遠されていた米上場の日本株ETFの人気も回復。ブラックロックのiシェアーズMSCIジャパンETFとウィズダムツリー・インベストメンツのジャパン・ヘッジド・エクイティ・ファンドには、今年に入り7億4000万ドル(約850億円)余りが流入した。昨年はいずれも米ETFの中で、最大級の大幅純流出だった。
  日本株の好調について、ミント・パートナーズの世界マクロ戦略ストラテジスト、マーティン・マローン氏は「日本銀行の積極的な金融緩和が国内債券から株への大規模なシフトを引き起こした」ことも要因だと分析した。
  7日にウェブキャストで語ったガンドラック氏はまた、米国のインフレと成長の加速に伴い米金融当局は連続利上げを開始する公算が大きいとの見方も示した。
  ガンドラック氏をはじめ投資家はこれが日本株への追い風になると考えるが、円相場と密接に結び付く市場の動きを予測するのは容易ではない。北朝鮮のミサイル発射から米議会での債務上限の議論まで、世界でのあらゆる出来事に円は反応するからだ。
  春にはフランスの大統領選挙もある。しかし野村ホールディングスは、強気相場がさまざまなリスクを乗り越えるとの期待を示す。野村証券の佐藤雅彦エクイティ・マーケットアナリストは「欧州の選挙やトランプ氏のマイナスな政策もある」が、「グレートローテーションがいよいよ始まれば株高は続く気がする」と話した。

原題:Bulls Get Louder on Japanese Stocks as Gundlach Case Spreads (1)(抜粋)


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9日の米株式相場はほぼ変わらず。S&P500種株価指数は小幅ながら4日ぶりに上げた。米国債利回りの上昇を受けて不動産株などが下げた一方、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁の発言が相場を下支えした。ヘルスケア株が高い。
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  S&P500種株価指数は前日比0.1%未満上昇の2364.87。ダウ工業株30種平均は2.46ドル上げて20858.19ドル。
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  一方で公益は0.2%下落、不動産は1.3%下げた。米10年債利回りは9営業日連続上昇となった。
  ドラギECB総裁はこの日、ユーロ圏経済の循環的回復が勢いを増していることを認めた。
  市場では10日発表される2月の米雇用統計に注目が集まっている。8日発表された民間雇用者の統計では、増加幅が市場予想を上回った。
  今月に入り米金融政策当局者からタカ派寄りの発言が聞かれたことから、市場では来週の連邦公開市場委員会(FOMC)会合での利上げ決定がほぼ確実視されている。
原題:U.S. Equities Mixed After Three-Day Slump as Health Care Gains (抜粋)
原題:Treasuries Slump Worsens Before Jobs as Oil Drops: Markets Wrap(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-09/OMKGATSYF01S01

 

グロース氏「ゴルディロックス」イエレン議長、記録的債務で綱渡り
John Gittelsohn
2017年3月10日 06:35 JST
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• トランプ氏仕掛けた幻想、引き込まれてはならない−月間投資見通し
• 世界の債務、大量のニトログリセリン積んで山道走るトラックのよう
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ジャナス・キャピタル・マネジメントで債券ファンドを運用するビル・グロース氏は、米国の債務水準が記録を破りそうな勢いだと指摘し、セントラルバンカーは借り入れコストと成長促進の必要性に挟まれ危ない綱渡りを強いられると警告した。
  「ジャネット・イエレン氏は現代のゴルディロックス」だと、グロース氏は9日発表の月間投資見通しで、適温を見つける童話の主人公にたとえた。「これまでのところは順調な仕事ぶりのようだ。しかし金融システムのレバレッジは高く、大量のニトログリセリンを積んで山道を走るトラックのようだ」と述べた。
  グロース氏によれば、米経済が抱える債務負担はあまりにも重く、一歩踏み間違えれば中央銀行取り付け騒動に相当する事態を引き起こしかねない。世界的にも国内総生産(GDP)と比較した借り入れは金融危機が本格化した2008年当時よりも高いと、同氏は指摘する。
  「一歩間違えれば信用の内部崩壊を引き起こし、株式や高利回り債、そしてサブプライム住宅ローン債券の投資家が一斉に銀行に押し寄せかねない」とグロース氏。2008年に比べて「今の中央銀行は柔軟性が低くなっている」と続けた。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/injAlu73gSyU/v1/-1x-1.png
  ブルームバーグがまとめたデータによると、米国の公的債務は7月に対GDP比104.8%。2008年7月は67.5%だった。グロース氏は書簡の中で、米国のクレジット65兆ドルは年間GDPのほぼ350%に相当すると指摘。かねて低金利やマイナス金利を批判してきた同氏は、金融危機の再来を招きかねない世界の債務に銀行ローンや住宅ローン、株式などを含めている。
  グロース氏はまた、トランプ政権が公約する経済成長を過剰に楽観しないよう投資家に促した。「3−4%成長や、減税と規制緩和の魔法といったトランプ氏が仕掛けた幻想に引き込まれてはならない」と警告。「今年からは自分のマネーがもたらすリターン(利益)ではなく、自分のマネーがリターン(返ってくる)するかどうかにもっと関心を払うべきだ」と続けた。
原題:‘Goldilocks’ Yellen Faces Tightrope With Record Debt, Gross Says(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-09/OMK02WSYF01S01


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