2019年8月2日 朝刊
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「立場の違う他者の歴史認識を理解することが重要」と話す山田教授=川崎市多摩区で
歴史をテーマにする学者や教育関係者らでつくる歴史教育者協議会が今年、創立七十年の節目を迎えた。九条改憲が現実味を帯び、日韓関係の悪化が懸念される中、歴史認識の重要性を訴える会員たち。埼玉県草加市で三〜五日に開かれる全国大会を前に、委員長を務める山田朗(あきら)・明治大教授に思いを聞いた。 (聞き手・清水祐樹)
−なぜ歴史認識が重要なのか。
歴史は、自分たちが体験していないことから学べる人間の英知だ。なぜ、今の平和憲法ができて大切に継承されてきたのか。それだけ繰り返していけないことが過去にあったということ。歴史認識とは国際理解でもある。同じ事象でも、立場によって伝えられ方は異なる。戦争で言えば、加害側と被害側。八月十五日は日本人にとっては終戦の日だが、韓国人から見れば植民地支配からの解放の日という位置付けになる。どちらが正しいかではなく、他者の歴史認識を知ろうとしなければ、相互理解が進まず、対立が深まるだけだ。
−歴史認識で注意すべきことは。
歴史上、何が起きたのかをきちんと掘り起こすことが大切だ。原爆のきのこ雲の写真に対し、日本人は悲惨な光景を連想するが、米国の中には戦争を終わらせた平和の象徴ととらえる人もいる。アジアでは解放の象徴とみられることもある。そういう認識もあると知ることが重要だ。
−教育と歴史認識のかかわりは。
他者の歴史認識を取り上げていくのが教育の役割。海に囲まれた日本は外部との交流が少なく、内向きの認識が主流となってきた。他者の視点を踏まえて多角的に歴史を学んでいかないと。戦争でも「当時は仕方なかった」と過去に肯定的な見方だけしていては、歴史から何も学ぶところがなく、未来につながらない。
−歴史修正主義の強まりが懸念されているが。
歴史修正主義は、歴史の一部分を強調し、結果として事実と違うことを主張するのが特徴。放置せずにきちんと抑制しないと危険だ。インターネットで検索しただけで分かったつもりになる若者が増えるなど、教養の在り方が崩れてきているのが、まん延の一因ではないか。
−地域で歴史に触れるには。
核家族化が進み、家庭内で歴史が伝えられる機会は減ったが、地域には資料や石碑などが残っている。そうしたものに触れて地元の歴史を学ぶことは、視野を広げる契機になる。
<歴史教育者協議会> 過去の誤った歴史教育が軍国主義やファシズムの柱となっていたとの反省から、歴史関係の学者や教職員らによって1949年7月に設立され、2011年4月に一般社団法人に移行した。全国の都道府県や地域・学園ごとに支部組織があり、現在の会員は約1600人。各支部は、歴史や社会問題を学び、社会科の授業や教育を巡る実践報告を出すなどし、中国や韓国の教員との交流もある。研究成果は毎夏の全国大会で報告され、理解を深め合う。
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