菅原経産相辞任/首相の任命責任は重大だ
9月の内閣改造で初入閣したばかりの菅原一秀経済産業相が、選挙区内の有権者に秘書が香典を渡していたと認め辞任した。後任には梶山弘志元地方創生担当相が即日就いた。
公選法は、政治家が選挙区内の住民に金品を提供することを禁じている。例外として、本人が出席する結婚式の祝儀や葬式の香典などは認められているが、秘書らが代理で渡すのは違法となる。
民主主義の根幹である有権者の投票行動が、カネやモノでゆがめられてはならないからだ。
菅原氏を巡っては、カニや高級メロンなどを有権者に贈ったとされるかつての疑惑も蒸し返され、野党が国会で追及していた。
今回の香典について「後で知った」とし、自らの指示ではないと強調した。だが、数々の公選法違反が疑われているさなかのことだ。
秘書に法令順守を徹底していなかったとすれば認識が甘すぎる。こうした行為が常態化していたとの疑いは増すばかりである。
閣僚を辞めて済む問題ではない。菅原氏は事実関係について国民への説明責任を果たすべきだ。
辞任を受けて、きのう開催予定だった衆院経産委員会は取りやめとなり、菅原氏が約束していた「国会での説明」はなされなかった。
野党の集中攻撃による政権へのダメージを最小限に抑えるため、首相官邸が早々に幕引きを図ったとみられる。
東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉など経産相が担う課題は山積する。その重要閣僚に、以前から疑惑が指摘されていた人物を充てた。関西電力役員の金品受領問題も対応が迫られる時期でもあり、安倍晋三首相の任命責任は重大だ。
菅原氏は菅義偉官房長官の側近的存在とされる。信頼する菅氏への配慮が先に立ち、閣僚の適格性をよく見極めずに起用したのなら、あまりに不用意といわざるを得ない。
多少の問題があっても乗り切れる、というおごりがあったとすれば政権の緩みは深刻だ。
2012年12月から続く安倍政権では、選挙区でうちわを配った松島みどり法相、不明朗な政治資金支出が発覚した小渕優子経産相、建設会社からの金銭授受疑惑が浮上した甘利明経済再生担当相(いずれも当時)ら「政治とカネ」の問題で辞任に追い込まれた閣僚が複数いる。
政権として襟を正し、長期化とともに目立ち始めた緩みを引き締める必要がある。
首相は「任命責任は私にある」と口にするだけでなく、自ら事実関係の解明を指示し、国民の信頼回復に努めるべきだ。
神戸新聞社説 2019年10月26日
https://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201910/0012820796.shtml
菅原経産相辞任 問われる任命責任
有権者へ金品を配った公選法違反の疑いが浮上していた菅原一秀経済産業相が事実上、更迭された。
週刊誌報道によると今月中旬、菅原氏の秘書が選挙区内の有権者に香典を渡した。菅原氏も事実と認めている。菅原氏は役員の金品受領問題で関電に真相解明を求めており、自らの問題に関し真相を国会で説明する必要がある。
また、菅原氏は2006年から07年にかけて後援者らにお歳暮やお中元としてメロンやカニなどを贈っていたとの疑惑も過去に報じられており、任命した安倍晋三首相の責任も厳しく問われることになる。
公選法は政治家が選挙区内の住民に、金銭や物品などを提供することを買収行為とみなして禁じている。例外として、本人が出席する結婚式の祝儀や葬式の香典などは認められている。しかし、秘書らが代理として渡すことは違法となり、できない。
菅原氏の秘書が香典を渡した件はこれに該当する可能性が高い。首相官邸が菅原氏に疑いを晴らせない場合は辞任するよう求めていたのはこのためとみられる。
菅原氏自身が公選法違反を自覚していたなら、言うまでもなく、経産相だけでなく議員辞職に値する。
菅原氏は、秘書が代理で香典を出したことを確認せず、翌日、自身も香典を持って行き、一つは遺族から返却されたと弁明している。例外で認められている行為だと言いたいのだろう。
しかし、国会で過去の疑惑が追及されているさなかであり、誤解を招く行為は慎むよう菅原氏が秘書に指示するのが常識ではなかったか。菅原氏が追及を深刻に受け止めていなかったのか、事務所を統率できていなかったのか。いずれにしても信じ難く、許されないケースである。
一方、菅原氏は関電役員の金品受領問題が発覚した当初から「事実関係を徹底解明して、厳正に処する」と強調し、電気事業法に基づき関電に報告を命じるなど厳しい姿勢で臨んでいた。その矛先は今、そのまま自身に向けられている。
菅原氏も辞任前日には「国会で説明する」と述べていた。辞任後、立憲民主党は、菅原氏が衆院経産委員会の理事会に出席し、疑惑について説明するよう求めている。
関電には法まで持ち出して厳しい対応を求めながら自身の問題は経産相辞任で幕引きにするようでは行政の正当性が失われることになる。一閣僚、一議員の問題ではないのだ。
そもそも、過去の疑惑が報道され、疑いが解消されていないにもかかわらず、なぜ安倍首相は菅原氏を経産相に起用したのか。「任命責任は私にあり、こうした事態になってしまったことに対して国民の皆さまに深くおわびする」と述べているが、おわびをして済む話ではない。
安倍政権では過去、政治団体の不明朗な政治資金支出を巡り小渕優子経済産業相が、建設会社からの金銭授受問題で甘利明経済再生担当相が辞任している。
いずれのケースでも本人から十分な説明はなされていない。都合の悪いことは辞めてうやむやにする。そんな積み重ねが今回の事態を招いているのではないか。安倍首相自身が起用した理由を明らかにするとともに菅原氏に国会で説明させるべきだ。
東奥日報時論 2019年10月26日
https://www.toonippo.co.jp/articles/-/267790
茨城新聞論説 2019年10月27日
https://ibarakinews.jp/hp/hpdetail.php?elem=ronsetu&%E3%80%90%E8%AB%96%E8%AA%AC%E3%80%91%E8%8F%85%E5%8E%9F%E7%B5%8C%E7%94%A3%E7%9B%B8%E8%BE%9E%E4%BB%BB%E3%80%80%E5%95%8F%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%82%8B%E4%BB%BB%E5%91%BD%E8%B2%AC%E4%BB%BB
山陰中央新報論説 2019年10月27日
http://www.sanin-chuo.co.jp/www/contents/1572056708245/index.htm
[菅原経産相更迭] 重要ポストになぜ起用
菅原一秀経済産業相はきのう、選挙区内の有権者に秘書が香典を渡したとの公選法違反の疑いを巡り、辞任した。事実上の更迭と言える。
菅原氏は9月発足の第4次安倍再改造内閣で初入閣したばかり。経産省は関西電力役員の金品受領問題、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)妥結など大きな課題をいくつも抱えている。そのさなかの大臣辞任である。任命した安倍晋三首相の責任は、極めて重い。
首相は「任命責任は私にあり、国民に深くおわび申し上げる」と陳謝した。菅原氏自らが詳しい経緯を明かすのはもちろん、過去にも疑惑が取り沙汰されたことのある人物をなぜ重要閣僚に起用したのか、首相も十分説明していく必要がある。
更迭は野党の集中砲火を浴びる前に収拾を図ったとみられる。政府としては内外に問題が山積する中、閣僚の不祥事などで国会審議が停滞するのを避ける狙いが透ける。国民の信頼を取り戻すためにも、徹底した真相の解明を求めたい。
週刊文春によると、菅原氏の公設秘書が今月中旬、地元の東京・練馬の葬祭場に香典を持参し、事務所から故人への枕花を発注した。大型連休前後には後援会幹部にリンゴを配ったという。以前は有権者にメロン、カニなどを贈っていたとも報じられていた。
きのうの閣議後の記者会見で、菅原氏は「結果として秘書が香典を出した」と報道内容を認めた上で、「秘書が香典を出したことは後で知った」と自らの指示でないことを強調した。
一方、共同通信の取材によれば、菅原氏の元秘書は2006年、同氏から直接指示を受けて有権者らに向けた贈答品リストをつくった。元秘書は「法律に抵触するのではないかと思ったが、菅原氏はパワハラが激しく意見を言えば解雇される雰囲気で、言い出せなかった」という。
菅原氏は当選6回の衆院議員である。報道の通りなら、公選法で禁じられている寄付行為に該当する。その感覚の古さ、甘さにはあきれるしかない。野党から出ている「あり得ない。50年前のようだ」といった声が、一般的な受け止め方ではないか。
今回の内閣改造では、首相の「お友達」の登用が目立った。菅原氏は菅義偉官房長官の側近的存在である。菅氏への信用を背景に、安倍政権で存在感を増す経産省のトップに起用されたとしたら、政権の緩み、おごりを示すとも言える。
今回の疑惑は議員辞職や刑事罰にもつながる重大な話だ。政府は国民の政治不信をぬぐい去らなければならない。菅原氏の更迭だけで幕引きとすることなく、追及に向けて積極的に協力するべきである。
南日本新聞社説 2019年10月 27日
https://373news.com/_column/syasetu.php?storyid=111758.
首相の任命責任こそ問われる
地元選挙区でメロンやカニなどを配ったことや公設秘書が香典を届けたことが週刊誌で報じられ、公職選挙法違反疑惑が批判されてきた菅原一秀経済産業相が辞任しました。9月の安倍晋三政権の内閣改造で就任してからわずか1カ月余りです。2012年12月に発足した第2次安倍政権以降、9人目の閣僚辞任です。
菅原氏は「私の問題で国会が停滞し、法案審議ができないことは本意ではない」と言いましたが、公選法違反疑惑については否定しています。引き続き菅原氏の疑惑をただすとともに、首相の任命責任を追及することが重要です。
閣僚辞任だけではすまぬ
公職選挙法は、国会議員やその候補者が選挙区内で金銭や物品を配ることを、買収の罪に当たるとして厳しく禁じています(221条)。たとえ葬儀の香典でも、議員本人が出席して手渡す場合を除いて禁止しています。
菅原氏の大臣就任後、同氏の公選法違反疑惑を取り上げたのは、『週刊文春』10月17日号です。それによれば、菅原氏は07年ごろから盆暮れが近づくと、選挙区(衆院東京9区=練馬区の一部)内の支援者や自民党内の有力者に、高級メロンやカニ、いくらなどを秘書に配らせていました。それ以外にも年の初めには町内の新年会に、年末には消防団分団の夜回りなどに、秘書が届け物をしていたといいます。同誌は、メロンを買った際の領収書や、受け取った側の礼状なども報じました。こうした疑惑は、国会でも追及されましたが、菅原氏は「調査する」というだけで言い逃れに終始しました。
さらに24日発売の同誌31日号では、菅原氏の公設秘書が17日、選挙区内の支援者の通夜で、「衆議院議員 菅原一秀」と表書きした2万円入りの香典袋を手渡したことを写真付きで掲載しました。公選法違反が国会で大問題になっているさなかの露骨な行為は、もはや釈明の余地はありません。
菅原氏の閣僚辞任は当然です。しかし、菅原氏の辞任の理由は国会審議に影響があるということで、秘書が香典を渡したのは、当日本人が行けなかったからで、自分が翌日行って香典を渡し、秘書が渡した分は返してもらったととってつけた言い訳をし、公選法違反の責任は「よく確認したい」というだけでした。25日予定されていた衆院の経済産業委での追及を免れるためでもあったのは明らかです。
公選法を守らない菅原氏には、国会議員としての資格もありません。速やかに説明責任を果たし、議員も辞職すべきです。菅原氏の辞任について安倍首相は、「任命責任は私にある」と言いましたが、菅原氏に真相をただすとは言いません。いくら「任命責任」を口にしても説得力はありません。
解明へ国会の役割が重要
安倍政権で「政治とカネ」の問題で閣僚などの辞任が後を絶たないのは、首相自身が、国有地を格安の価格で払い下げた「森友学園」疑惑や、首相の長年の友人が理事長の「加計学園」疑惑などで責任を果たしてこないことと無関係ではありません。任命した菅原氏に説明させるだけでなく、首相自らも姿勢を改めるべきです。
菅原氏の公選法違反疑惑をはじめ、安倍政権の一連の疑惑解明に向けた、国会の役割が重要になっています。
しんぶん赤旗主張 2019年10月26日
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik19/2019-10-26/2019102602_02_1.html
菅原経産相辞任 これで幕引き許されない
公設秘書が地元有権者に香典を渡したとする疑惑が取り沙汰されていた菅原一秀経済産業相が事実を認め、辞任した。首相官邸が菅原氏に進退を検討するよう求めており、事実上の更迭である。
香典以外にも、公選法が禁じる寄付行為の疑いがある事案が浮上している。菅原氏はきのうの衆院経産委員会で経緯を説明することになっていたが、辞任に伴い取りやめになった。これで、うやむやにしてはならない。
問題に火を付けたのは週刊文春で、菅原氏の事務所が10年ほど前、選挙区内で有権者らにメロンやカニなどを贈っていたと、今月上旬に報じた。菅原氏は国会で追及され、「しっかり調べる」と答弁していた。
秘書が香典を手渡したのは、その直後の17日。違法な寄付行為を疑われたばかりなのに、一体どういうつもりなのか。順法精神を欠いているとしか思えない。閣僚の辞任は当然だし、立法府に身を置く資格もない。
関西電力の役員らが多額の金品を受け取っていた問題では、電力会社を所管する経産相として「言語道断でゆゆしき事態だ」と厳しく批判していた。その裏で、自身も金品を巡る問題にまみれていたことにはあきれるほかない。
そうした人物を重要閣僚に充てた安倍晋三首相の任命責任は重い。
第2次安倍政権発足からの約7年で、閣僚の辞任は9人目となり、桜田義孝五輪相が復興軽視発言で辞任してから半年ほどしかたっていない。
首相は、閣僚人事では派閥や有力者の推薦を丸のみしていると言われる。菅原氏は菅義偉官房長官の側近。菅氏の要請を受け、首相は安易に起用したのだろう。そこには、多少問題があっても政権は揺るがないという、おごりと緩みがあるのは間違いない。
今回の問題で浮き彫りとなったのは、寄付行為がいまだにはびこっていることだ。
週刊文春によると、菅原氏の事務所から故人に供える枕花を発注したり、大型連休ごろには秘書が「令和」と印字されたリンゴを後援会幹部に配ったりしていたともされる。
元秘書は、中元や歳暮の時期に菅原氏から「この人はカニね」などと言われていたと証言している。菅原氏の指示で、有権者向けの贈答品リストも作成していたという。買収行為が常態化していたことをうかがわせる。
第2次安倍政権以降、2014年に、小渕優子経産相(当時)が有権者にワインを贈るなどしていたほか、松島みどり法相(同)が地元の祭りで自分の似顔絵入りのうちわを配っていたことが発覚。2人とも辞任に追い込まれた。昨年も茂木敏充経済再生担当相(同)の秘書が線香などを配布し、公選法違反に当たるかどうか物議を醸した。
金品にまつわる問題が起きるたびに政治不信が高まっていく。悪弊の根を断つことが求められる。
徳島新聞社説 2019年10月27日
https://www.topics.or.jp/articles/-/275486
菅原経産相更迭 辞任で幕引きは許されぬ
関西電力幹部の金品受領問題で「言語道断。由々しき事態」などと非難した当の本人が、選挙区内の有権者の葬儀で秘書を通じて香典や枕花を渡していたという。しかも、過去に贈答品を提供していた疑惑の渦中でのこと。事実ならば公選法違反であり、言語道断。衆院議員も辞すべきだ。
菅原一秀経済産業相が安倍晋三首相に辞表を提出した。首相官邸が辞任を検討するよう求めており事実上、更迭された格好だ。過去の疑惑には逃げ切れると思っていた節があるが、葬祭場で香典を渡す菅原氏の公設秘書の姿が週刊誌に報じられ、一気に更迭へと動いたとみられる。
菅原氏はこれまで度々、スキャンダルが浮上しており、こうした人物の「身体検査」が不十分なまま閣僚に起用されたこと自体が政権の緩みにほかならない。菅義偉官房長官の側近中の側近とされ、菅氏の強い推薦で起用されたという。菅氏の責任は無論、任命権者である安倍首相の責任が大いに問われる。
週刊誌によると、菅原氏の公設秘書が今月、地元の東京都練馬区の葬祭場に香典を持参したほか、事務所から故人への枕花を発注した疑いがある。大型連休前後には後援会幹部にリンゴを配ったとされる。これ以外にも、菅原氏は2006年から07年にかけて地元の有権者にメロンやカニなどを贈っていたとも報じられている。
公選法は政治家が選挙区内の有権者に、金品などを提供することを買収行為とみなして禁じている。例外として本人が出席する葬儀の香典や結婚式の祝儀などは認められている。しかし、秘書らが代理として渡すことは違法だ。
菅原氏は今回の件で、翌日、自身も香典を持って行き一つは遺族から返却されたと釈明している。例外で認められている行為だと言いたいのだろうが、国会で過去の疑惑を追及されている最中であり、信じ難い。
問題は、秘書による香典や枕花の提供が常態化していたとも報じられていることだ。菅原氏は関電問題で「事実関係を徹底解明して、厳正に対処する」と強調。法に基づき、関電に報告を命じるなど厳しい姿勢を見せていた。その矛先は今度は自らに向けられている。辞任で幕引きすることは許されず、真相を国会で説明する必要がある。
安倍政権では過去に、政治団体の不明朗な資金流出を巡り小渕優子経産相、建設会社からの金銭授受問題で甘利明経済再生担当相が辞任に追い込まれているが、本人による十分な説明責任は果たされていない。辞任すればうやむやにできる、そんな姿勢が国民の政治不信を増幅させてきたことを忘れてはならない。
福井新聞論説 2019年10月26日
https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/961044
http://www.asyura2.com/19/senkyo266/msg/819.html