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[政治・選挙・NHK261] [小沢一郎戦記(11)] 「憲法や民法の原則論は誰にも負けない」 (朝日新聞社 論座)
小沢一郎戦記
小沢一郎「憲法や民法の原則論は誰にも負けない」
(11)弁護士を目指して司法試験に挑むが、父の急死で選挙へ

佐藤章 ジャーナリスト、慶應義塾大学非常勤講師、五月書房新社編集委員会委員長
論座 2019年05月27日 より無料公開部分を転載。
 

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米国大統領杯を授与するトランプ米大統領。右奥は安倍晋三首相=2019年5月26日、東京・両国の国技館

■安倍晋三、トランプへの破格のもてなし
 
 5月26日、東京・両国国技館で催された大相撲千秋楽は、その長い歴史の中でも極めて異様な眺め、雰囲気の中で挙行された。
 
 午後5時前、手を振りながら入場してきたトランプ米国大統領夫妻と安倍晋三首相夫妻は、枡席に特別に準備された椅子に腰掛けた。その周囲を黒服に鋭い眼光のSPが取り囲んだ。残り三番だったが、両夫妻の真後ろには数人のSPが土俵に背を向けて客席をにらみつけ、中継していたNHKの解説者、北の富士勝昭氏も思わず「妙な気分ですな」と本音を漏らした。
 
 事前にはトランプ大統領のために正面枡席を一千席押さえたと報道されていた。
 
 私は記憶しているが、大の相撲好きだったシラク・フランス大統領は枡席に普通にあぐらをかいて観戦した。天皇でさえ二階貴賓席で見学していた。あまりに破格の待遇でトランプ大統領を遇する安倍首相の姿はおそらく、属国の珍しい格闘技を観戦に訪れた宗主国の大統領を案内する属国の総督といった態だろう。
 
 米国は日本との貿易交渉で農産物の関税大幅引き下げを求めているが、トランプ大統領は大相撲観戦前に「内容の多くは日本の参院選が終わるまで待つことになる」「大きな数字を期待している!」などとツイートしていた。
 
 参院選に勝たねばならない「総督」としては、選挙に不利になる関税引き下げの話は選挙後までは何とか待ってもらいたい。そのためには当然、破格のもてなしとなる。
 
 「大統領と総督」はこの日、午前中は千葉県内でゴルフを楽しみ、大相撲観戦の後は六本木の高級炉端焼き店に勇躍繰り出した。
 
■CIAに援助された岸信介
 
 宗主国の米国、属国の日本という「疑似構造」観は白井聡著『永続敗戦論』(2013年3月、太田出版)で一般に広まったが、偶然にもこの著作刊行とほぼ同時期に私自身も米国などに取材し、同じ「疑似構造」の下にある日本の政治状況について、当時所属していた「週刊朝日」に連載したことがある。『「星条旗」下の宰相たち』というタイトルで、戦後日本の首相たちが米国国旗の圧迫の下でどのような政治を行ってきたかという連載だった。
 
 取材の対象としたのは、吉田茂、岸信介、佐藤栄作、田中角栄の4人。中でも岸信介には、安倍晋三首相との関連もあり、全6回のうち半分の3回分を割いた。
 
 安倍首相の祖父にあたり、安倍首相がトランプやオバマにゴルフクラブを贈るのは、祖父がアイゼンハワーとゴルフで打ち解けた関係を築いたというエピソードをなぞったものだ。今回の来日でも、安倍首相は大相撲観戦前にトランプとゴルフに興じており、文字通り祖父の歩いたコースを外れる気持ちはないようだ。
 
 私は、岸とアイゼンハワーが対戦したワシントン郊外のゴルフクラブを訪ねたり、岸や弟の佐藤栄作が子ども時代を過ごした山口県田布施町を歩き回ったりしたが、取材の中で最も力を入れたのは、米国立公文書館での機密書類渉猟だった。
 
 とは言っても公文書館に眠る「岸信介ファイル」は拍子抜けするほど中身のないものだった。米中央情報局(CIA)が岸について作成した資料はわずか5枚しか入っていなかった。米機密資料に関して私をコーチングしてくれた加藤哲郎・一橋大学名誉教授によれば、これは膨大な非公開資料が裏に横たわっている証左だった。
 
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1955年にヤンキースタジアムを訪れた岸信介氏
 
 私はすぐにアリゾナ州ツーソンに飛んだ。アリゾナ大学の歴史学研究室で教鞭を執るマイケル・シャラー教授は米国務省の委員を務め、戦後日本関係の非公開資料に目を通し、国務省に参考意見を述べる立場にあった。
 
 この時のシャラーの話によれば、CIAから岸に対しては、経済団体や企業を通して資金が流れた。シャラーだけではない。元共同通信社特別編集委員の春名幹男は、対日工作に直接関与したことがあるCIA元幹部から、岸本人に資金提供した事実を確認している。
 
 さらに、CIAから自民党への秘密献金をスクープしたニューヨーク・タイムズ記者のティム・ワイナーは、著書『CIA秘録』の中で、「CIAは1948年以降、外国の政治家を金で買収し続けていた。しかし世界の有力国で、将来の指導者をCIAが選んだ最初の国は日本だった」「(巣鴨拘置所からの)釈放後岸は、CIAの援助とともに、支配政党のトップに座り、日本の首相の座までのぼりつめるのである」とまで記している。
 
 その岸が首相時代に残した最大の仕事は日米安全保障条約の改定だろう。対等条約を演出するために、日本における米軍の核装備や在日米軍基地から海外への戦闘出撃の際には「事前協議」をするということが前面に出された。
 
 しかし、その協議の可能性などはまったく存在する余地がないということが我部政明・琉球大学教授の研究によって明らかになっている。我部教授の研究によれば、この時代の日米間には数多くの密約がある。
 
 安倍首相が歩いている道は、岸の道に似ている。大相撲の枡席やゴルフコースで密約が語られているとは思わないが、イージス・アショアやステルス戦闘機F35など高額な米国製兵器を次々に買い上げ、トランプをはじめとする米国軍需産業関係者を小躍りさせている。
 
 アイゼンハワーからトランプに連なる共和党など米国保守層は、岸から安倍につながる属国の「疑似構造」を見て満足感に浸っているだろう。
 
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小沢一郎氏=2017年8月10日、東京・永田町
  
■米国保守層にとって邪魔な「小沢一郎」
 
 この連載「小沢一郎戦記」の主人公を語るに際してかなり回り道をした感もあるが、宗主国・属国の「疑似構造」関係はしっかり抑えておく必要がある。なぜなら、小沢一郎こそ、この「疑似構造」を打ち破る、あるいは真に対等な関係を打ち建てる可能性を持った政治家だと私は考えるからだ。
 
 前回の『小沢一郎と鳩山由紀夫、それぞれの「辺野古」』で記したが、小沢は世界の米軍再編計画を踏まえた上で米国と対等に話し合い、辺野古への基地建設を回避しようと考えていた。沖縄県民の生活を第一に考える日本の政治家であれば誰しもが考えることかもしれないが、小沢の場合、その志を担保する知識と構想力、実行力が備わっている。
 
 小沢が対等に話すことのできる外国の首脳は米国だけではない。中国共産党の首脳に対しては、一党独裁の同党の将来を憂いてみせながら、いたずらに感情的な対立に陥ることなく耳を傾けさせている。
 
 現代日本で小沢ほど世界に通用する政治家はいないだろう。同時にそのことは、宗主国・属国関係の「疑似構造」の中で惰眠を貪りたい米国保守層にとっては邪魔な存在であることを意味する。
 
 宗主国の保守層にとっては、属国の国民を管理し、厳しく税を取り立てる「ストロングマン」は、あたかも植民地の総督のようでなければならない。米軍基地についても、余計なことを言わずに、沖縄県民や国民の意思を顔色一つ変えずに潰せるような属国官僚の冷酷さがなければ困る。
 
 ここまで書けば、小沢一郎という存在が米国保守層にとっていかに邪魔な存在であるかがわかるだろう。しかし、そのことは反面、小沢が米国と対等に話すことのできる数少ない「希望の星」であることを意味する。
 
 しかし、とは言ってもただ賞賛するわけではない。私はこの連載第2回『小沢一郎「もっと早く政治改革できたのだが…」』の最後にスペインの哲学者オルテガ・イ・ガセットの名著『大衆の反逆』から言葉を引き、小沢は「自己の根をもった生」「真正な生」を生きる類いまれな政治家であると記した。その小沢の政治的な「真正な生」は、政治改革によって日本の政治にしっかりした二大政党制をもたらすことにある。
その運命的な「真正な生」はついに実現するのか。

 小沢が三度目の政権交代を目指して国民民主党との合併を模索していたころの4月3日、朝日新聞のオピニオン面に、陶器工場の労働者からオックスフォード大学教授に転じた異色の英政治学者ジェフリー・エバンズのインタビューが掲載された。

 エバンズは、英国のEU離脱に関連して二大政党制が機能しなくなっていることを語った。保守党、労働党ともそれぞれの内部に複雑な利害、価値観の対立を抱え込んでおり、離脱か残留かをめぐって党内が分裂してしまっているという。

 この政界事情は日本にも共通するところがある。

 果たして小沢は「真正な生」「自己の根をもった生」を実現させることができるのか。「真正な生」を生きる小沢は、飾らない言葉で日本政治のあるべき姿や、権力の内外から観察してきた人間模様を語る。私は、あらゆる意味でその言葉に耳を傾けるべきだと思う。
 
■岩手・水沢での少年時代
 
 小沢一郎はどのような道を歩いてきたのか。父親は、岩手
県・水沢町(後に水沢市、現在奥州市)出身の国会議員、小沢
佐重喜。農家出身だったが、家が貧しいために様々な仕事をし
ながら苦学を重ね、25歳の若さで難関の弁護士試験に合格し
た。
 佐重喜はその後、東京市会議員、東京府会議員を経て、戦後
初めての総選挙で当選した。一郎は、3歳のころ、東京大空襲
を避けるために家族に連れられて水沢に疎開、以後、地元の水
沢市立水沢小学校、同市立常盤中学校に通った。

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岩手県水沢市郊外の水田(1977年空撮)
 
――小沢さんは、小学校に上がる前、それから小学校の時、どういう子ども時代を過ごしましたか。
 
小沢 ぼくの子ども時代は、今の日本の子ども時代に欠けているものをみんな持っていたね。ぼくの住んでいたところは水沢の袋町というところで、城下町の中でも袋小路になっているようなところだった。子どもが多いところで、小さい時から、朝から晩まで隣近所の子どもたちと遊んでいたね。ガキ大将がちゃんといて、先輩後輩の関係があって、ドジョウ捕ったりナマズやフナを捕ったりして、秋になればアケビがあり栗や柿がありという感じだった。
 
 ガキ大将はやっぱり殴ったりはするんだけれども、けが人が出たり死ぬなんてことは絶対になかったね。やっぱり限度を心得ているんだね。家の中に閉じこもっている子どももいなかったね。けんかの強いやつも弱いやつもみんな一緒になって遊んでいました。戦後すぐだから遊び道具もないし、自分たちで作ったり、自分たちの手や足で遊んでいた。いや、楽しかったね。
 
 日暮れになると、みんなそれぞれに家から呼ばれて帰っていった。「誰か故郷を思わざる」とか「花摘む野辺に」とかいろいろな歌があるけど、みんなで一緒に遊んで、日の沈みかかるころに家の方から「おーい」と呼ばれてね。
 
――小沢さんも「一郎、帰って来い」とか呼ばれたんですか。

小沢 そうそう、呼びに来たよ。だけど、ぼくはたいがい時間には帰っていたから。そのころNHKで「二十の扉」とかやっていましたね。
 
「二十の扉」というのは1947年から1960年まで毎週土曜日夜
の7時30分から30分間、NHKラジオ第1放送で放送されたクイ
ズ番組。連合国総司令部(GHQ)民間情報教育局(CIE)指導
下で制作された。
  
――ラジオ放送ですね。
 
小沢 ラジオ放送。テレビなんかまだないからね。だけど、「二十の扉」は7時半からだったかな。そのころには、もうとても聞けないくらい眠くなっちゃう時間だったね。でも、ぐっすり寝て遊び疲れて、そういう毎日だったね。自然を相手に自分で工夫して遊ぶ以外なかったですね。
 
――小沢さん自身もガキ大将だったのですか。

小沢 いや、ガキ大将というともう中学生だけど、だんだん時代も変わってきて、ぼくも中学に入ってからは勉強やら運動やらがあったからね。成長するとともに時代も変わってきているから。
 
 だけど、冬になるとスケートやそりも自分たちで作るんだ。大人に作ってもらったりもしましたけどね。下駄に鉄を回した下駄スケートとか、竹を半分に割った竹スケート、それから長靴に金具だけ履いたスケートとかね。
 
――田んぼに水を張って凍らせるわけでしょう。
 
小沢 おお、道路に水を撒いたりもするし。
 
――道路に?
 
小沢 車はほとんど通らなかったからね。もちろん田んぼに水を撒けば一晩で凍っちゃうから。
 
――スケートは上手だったんですか。
 
小沢 スケートと言っても今考えるようなものではないからね。雪道を凍らせたりしているところを滑るだけだから。いやあ、楽しかった。ぼくのところは山ではなく里の方だったからスキーはしなかった。スキーはお金もかかるからね。
 
――そういう遊びの友だちづきあいの中で社会を知る、ということもありましたか。
 
小沢 社会性の勉強だね。今の子どもたちは社会、集団での営みというものを知らないかもしれないね。ぼくの田舎(水沢)の方でもだんだんみんな家の中に引っ込んでいるような感じになってきたらしい。今の子どもたちは社会生活を勉強する場がないんだね。先輩後輩とか子どもたちの中で受け継がれてきた社会性とか、仲間うちの一定のルールとかそういうものを知らないんだね。だから、親に一方的に可愛がられて育つから、かえって社会性が育たないのかもしれないね。
 
 ぼくは上が姉妹で末っ子の長男だったけど、親が比較的高齢の時の子だったので、おふくろが明治の女でえらい厳しかった。
 
母親のみちは元千葉県議会議員、荒木儀助の四女。一郎は、佐
重喜44歳、みち42歳の時の子どもだった。

――そんなに厳しかったですか。

小沢 厳しかったよ。強い女だからね。明治の女だから。選挙区でおふくろが全部選挙運動やっていたからね。あまり騒ぐと殴られたね。柱に結わえ付けられたり納屋にたたき込まれたり、うーんと怒られた。
 
――怒られる原因というのはどういうことだったのですか。
 
小沢 子どもだから、お客さん来た時に騒いだりしたことだね。
 
――反面、佐重喜さんは、少しゆっくり育てようというような方針だったのですか。
 
小沢 何だか知らないが、もう実質的に母子家庭だから。父親と接触することはあまりなかった。高校生になって、ぼくが東京に来てからは今度は逆に父親の方が体力的に弱ってきちゃったから。ぼくが大学生のころは、それまでは家に帰らないで酒を飲んでいたのが、帰ってくるようになっちゃったね。
 
 調子悪かったんでしょう、きっと。酒飲みが家に帰ってくるようになったら、もう調子悪いんだね。だから、父親につき合って晩酌の相手をしたりしていた。父親が家に帰って来てぽつんと寂しそうにしているから、可哀相に思って大学も早く帰って来て父親の相手をすることが多かった。だから、大学は全然面白くなかったけどね。
 
■父・佐重喜のこと
 
小沢佐重喜の私家版伝記『人間小沢佐重喜』には田中角栄や藤
山愛一郎らと並んで小沢一郎も追想文を寄せている。それによ
れば、小沢は一般の家庭のような父子関係を持つことはなかっ
たが、一度だけ水沢の自宅から「手をつなぎ、あるいは肩車を
してもらって、田んぼを見に行ったことが、本当に唯一のなつ
かしい思い出となっている」と記している。

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小沢佐重喜衆議院議員(1955年撮影)

−−小沢さんが小さいころのお父さんの思い出というと、水沢にあった田んぼに連れられて行ったことが残っていると書かれていますね。
 
小沢 そうそう。ずっと前だね、それは。本当に小さい頃。いくつくらいの時だろう、小学校に上がってないころだね。田んぼまで歩くと30〜40分かかるかな、ゆっくり歩くと。今でもその田んぼはあるよ。
 
 肩車されたりして一緒に田んぼまで行ったのが、親父の思い出と言えば思い出だね。あとは休みの時は、1、2度、3、4度かな、家族で旅行した思い出もある。親父と一緒というのはそういう時だったかな。
 
−−そうすると、父親とのスキンシップはあまり多くなかったということですね。
 
小沢 うん、まったくなかったね。だから、母親と一緒の時間が多かったね。
 
−−選挙になるとお母さんが一生懸命がんばったわけですね。
 
小沢 選挙というのは日常選挙だもの。日常、常在戦場だもの。今はそんなに来なくなったけど、昔は家に人が来る、その中にはお酒を飲む人もいるということだから、いろんな人が毎日いっぱい家に来たんだよ。そういう人の相手をしたり各支部を回ったりという仕事は全部母親がやっていたから。
 
1949年7月6日未明、下山定則・国鉄総裁が東京都足立区綾
瀬、常磐線の線路上で轢死体となって発見された(下山事
件)。前日から失踪していたもので、自殺説、他殺説が立てら
れ、他殺であれば労働組合、米軍など様々な憶測が飛んだ。い
まだ真実は闇の中。この当時、小沢佐重喜は第3次吉田茂内閣
の逓信大臣で、国労とともに労働運動の中核を担っていた全逓
と厳しくにらみ合っていた。
  
−−下山事件の時、お父さんは逓信大臣でしたから、警察官が1か月自宅に泊まり込んだということでしたね。子どもの小沢さん自身が金魚を買いに出る時でも私服警官2、3人に護衛された、と『人間小沢佐重喜』に書かれていますね。
 
小沢 それは昔の大臣官邸での話ですね。それで警護の警官が2、3人泊まり込んでいたから。護衛さんとは遊んだよ。ピストル触らせてもらったりしたね。
 
1955年2月17日付の読売新聞には、小沢佐重喜についてこう書
いてある(『人間小沢佐重喜』から)。「選挙に金を使わない
ことでは彼の右に出る者がないという。その点「文字通り公明
選挙です」と自信たっぷり。(略)「政治家はいつ路頭に迷う
ようになるかも判らないから」と生活はおごらず、水沢市袋町
の生家の一隅では甥が駄菓子屋を開き、東京の家も建坪十五坪
の平家で、大臣就任のときなど新聞記者やカメラマンに押しか
けられ、家族は屋外にはみ出したりするなど、彼の潔癖性の現
れであろう」
 
−−こんなエピソードが書いてありましたね。
 
小沢 そうそう。じいさん(佐重喜の父親)は自作農だったんだけど飲兵衛でね。飲み過ぎが元で田んぼも取られちゃったんだ。それで親父とおふくろが土地を取り返して、そこに小さい家を建てた。2階が8畳で、1階が8畳と4畳半、それに台所と小さい風呂場がついていた。ぼくはそこで育った。
 
 東京には最初家がなくて、父親が御徒町に持っていた家作(貸し家)に寝泊まりしていたんだけど、やっぱりどうしようもないということで湯島を買ったわけだ。その湯島の家も6畳と6畳と8畳だったかな。
 
−−佐重喜さんはかなり清貧だったんですね。
 
 弁護士だからね。親父は自分の財産を削って政治活動をやっていたから。それでものすごい貧乏な生活、どん底から這い上がったから、財界や官僚にはものすごく反感を持っていた。
 
 ぼくも実はそのDNAを継いでるんだけどね。だから、普通二代目というと金の方も後援会の方も父親から引き継いだりするでしょう。ところがぼくは全然引き継いでいない。親父は金集めの後援会というのは作らなかった。自前でやっていた。だけど、それで済んだのはやっぱり、金もかけずに選挙のできた地元の人たちがよかったんだね。いい人たちに恵まれたということですね。
 
−−さきほど常在戦場、日常選挙という話がありましたが、佐重喜さんは選挙の時は水沢に帰って来たんですか。
 
小沢 来ない。
 
−−月1回くらいは帰って来ないんですか。
 
小沢 まあほとんど帰って来ない。ぼくも選挙の時、帰りません。
 
−−小沢さん自身も選挙の時、帰らないんですか。 ・・・ログインして読む
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[政治・選挙・NHK261] [小沢一郎戦記(2)] 「もっと早く政治改革できたのだが…」 (朝日新聞社 論座)
小沢一郎戦記
小沢一郎「もっと早く政治改革できたのだが…」
(2)小沢の政治改革の核心は小選挙区制度にある

佐藤章 ジャーナリスト、慶應義塾大学非常勤講師、五月書房新社編集委員会委員長
論座 2019年03月11日 より無料公開部分を転載。
 
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国民民主党のWEB番組に同党の玉木雄一郎代表(右)とともに出演した自由党の小沢一郎代表=2019年1月25、東京・永田町
 
■勝敗のはっきりする小選挙区制度
 
 文字通りの政治決戦とされる今年夏の参院選、場合によっては衆参ダブル選挙に向かって小沢一郎が動きを強めている。過去に二度も自民党政権をひっくり返したその眼力と行動力にがぜん注目が集まっている。
 
 その小沢は、ロング・インタビューを重ねた私に対し、三度目の政権交代について「やる」と異様な力強さを込めて宣言した。立憲民主党代表、枝野幸男の言動はそんな小沢に比べておとなしく見える。野党第一党でありながら、むしろ小沢の方に熱い視線が集まってしまう由縁だ。
 
 政権交代に異様なほどの執念を見せる小沢は、言ってみれば「運命の人」だ。若くして就いた自民党幹事長時代、人類史的な冷戦終結後初めての戦争である湾岸戦争にもまれ、平和憲法を抱えながらの「国際貢献」の道を手探りで模索し、予想外に冷たい海外からの反応に呻吟しなければならなかった。
 
 憲法と国際貢献、また安全保障政策など国の根幹にかかわる問題をごまかすことなく国会で論議するために、固定化した万年与党と万年野党の支配する「55年体制」を崩し、政権交代可能な二大政党制の構築を目指す。これが小沢の政治的課題であり自らの運命として受け容れる政治的使命だ。そして、その最有力の手段となるものが、まさに二大政党制を生みやすく、勝敗のはっきりする小選挙区制度だ。
 
■「あの時受けていれば、もっと早く政治改革ができたかなあ」
 
 この運命に向かって刻々と時を刻む人生の歯車が小沢の前できしりながら急回転していくのは1991年だ。湾岸戦争が終結し、海部俊樹内閣が終幕を迎えつつある中、国際貢献と二大政党制を考える小沢に運命の女神が悪戯っぽく微笑みかける。
 
 最大派閥でありながら自派閥から首相を出すことのできない竹下派内に不満が高まり、この時49歳の小沢に首相候補の声がかかった。
 
 小沢に声をかけたのは竹下派会長の金丸信だった。インタビューに答えた小沢によれば、1991年10月初旬のこの時「朝から夜まで」金丸に説得され続けた。このころ実質的に竹下派を担っていたのは金丸と前首相の竹下登、それに小沢の3人だった。
 
 しかし、説得されながらも小沢の頭には二大政党制を目標とする政治改革があった。金丸は自分を首相にすべく懸命に説得に努めているが、その金丸本人と竹下は本音の部分では必ずしも政治改革に積極的ではない。
 
 この体制の中でたとえ自分が首相の座に就いても、思うような改革はできないだろう。説得を続ける金丸の言葉の下で、小沢はそう読んでいた。

「あの時受けていれば、もっと早く政治改革ができたかなあ」
 
 と小沢は振り返るが、この時の小沢は自身の運命的課題の前に慎重な姿勢を貫いた。その気になれば首相になれた小沢が「キングメーカー」金丸の口説きを最後まで受け容れなかったことは、自らの政治的使命に忠実な小沢の基本姿勢をよく表わしている。
  
■「小沢面談」による首相本命は渡辺美智雄だった
 
 結局、自派から首相候補を出すことができなかった竹下派は、他派閥候補の中から選ばざるをえなかった。選択の最終判断は派閥会長の金丸に一任し、選択判断の前段として小沢が候補者に「面談」することになった。
 
 ここから先の話は小沢自身の証言による。その話はユーモラスなエピソードである反面、小沢にとってまさに深い運命の時が奔流のように一気に流れ出す時間を語ってもいる。
 
 1991年10月10日午後3時、東京・永田町二丁目の十全ビルヂング3階、小沢の個人事務所に元蔵相の宮沢喜一が訪ねてきた。小沢はわざわざエレベーターまで迎えに出た。首相候補に名乗りを挙げた宮沢や渡辺美智雄、三塚博の3人と個別に面談するためだが、まるで「面接試験」のようだと揶揄されていたため小沢も一人ひとりを迎えるにあたっては気を遣わなければならなかった。
 
 三人との面談をそれぞれに終えた小沢は金丸と竹下と「首相選び」の相談に入った。この時、朝日新聞をはじめとするマスコミは宮沢本命の報道をしていた。面談の3日前の10月7日の朝日新聞夕刊1面では、最大派閥の竹下派は小沢説得に努めながらも水面下では宮沢支持が広がっていることを伝え、さらに小沢が面談した10日の朝刊1面では「竹下派、宮沢氏支持へ」と打っている。
 
 しかし、いま当事者の小沢が明かす本当の「水面下」は宮沢本命では動いていなかった。実は、金丸、竹下、小沢の3人が出した結論は、宮沢ではなく「渡辺みっちゃん」こと渡辺美智雄だった。
 
 実を言えば、党人派の3人は大蔵官僚出身の宮沢について「決断力がない」と低い評価しか与えていなかった。「お公家さん」の政治スタイルに肌合いが合わず、むしろ「野武士」のような渡辺に肌合いも政治スタイルも共感するものを感じていた。渡辺を海部の後の首相にすることに3人とも異存はなかった。中でも金丸は上機嫌で「渡辺首相」を支持した。10日の夜はこうして終わった。
 
https://image.chess443.net/S2010/upload/2019030400002_3.JPEG
自民党総裁選で小沢一郎・竹下派会長代行(左)との会談に臨む宮沢喜一氏。小沢氏は国会近くの自らの事務所に宮沢喜一、三塚博、渡辺美智雄3氏をそれぞれ招き、政策など総裁選に臨む考え方を聴いた=1991年10月10日、東京・永田町の小沢事務所
  
■金丸信の妻のこと
 
 ところが翌11日の朝、小沢にとって意表外なことが起こった。自ら「渡辺」と決定を下したはずの金丸が頭を下げてきたのだ。
 
 「すまない。渡辺はやめてくれ。宮沢に代えてくれ」
 
 呆然とする小沢は竹下と顔を見合わせたが、一任を取り付けた金丸が頭を下げて頼み込む姿に、その翻意を認めないわけにはいかなかった。
 
 一夜にして金丸の判断はなぜ変わったのだろうか。その時小沢は先輩である金丸を問い詰めることはしなかったが、金丸の妻、悦子の影響があったのではないか、という説を後日耳にした。 ・・・ログインして読む
(残り:約2806文字/本文:約5135文字)
  
https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019030400002.html
http://www.asyura2.com/19/senkyo261/msg/311.html

[原発・フッ素51] 物理学者入口紀男博士の放射能汚染水に関する所見(ちきゅう座)
2019年 5月 27日
<山端伸英(やまはたのぶひで):メキシコ在住>

海外から日本を見る際、福島第一原発の汚染処理は、安倍首相が普段着で原発の扉を開けて中に入いり、記者会見を行なうところまで「コントロール」されていれば問題はないだろうが、まだ安倍首相は福島原発の扉を普段着で開けてはいない。国際機関や近隣各国の危惧のみならず、アメリカ大陸太平洋岸でも、既にいくつかの放射能汚染の兆候が報告されており、海洋汚染への怖れが膨らんでいる。この汚染水問題について、Facebookの中でも、いくつかの貴重な発言が行なわれており、それらは現在の忖度メディアの持つ傾向を白日の下に提示している。筆者の狭いFacebookのコンタクトの中では、物理学者の入口紀男氏(熊本大学名誉教授)のいくつかの提案が現実的かつ光彩を放っている。炉心部のデブリ対策についても入口氏は提案しているのだが、ここでは朝日新聞3月19日の記事「汚染水 決まらぬ処分法」に対する入口氏の批判と提案を、入口紀男氏の了承の下に再録させていただく《3月下旬に書かれた》。入口氏は政治的には保守派の方だが、問題のスタンスは、このままエゴセントリックに日本人は無法者政府やそのメディアと歩調を合わせて問題を矮小化し続けるか、職業的、組織的、また地域的市民勢力を含めて国際社会の中で日本人としての歴史的責務を果たせるのかということだろう。

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海洋に流さなくても、現在の「最大 4倍」の数のタンクと敷地ですむ  入口紀男

2011年の事故以来、福島第一原子力発電所では 1〜3号機のデブリに冷却水を毎日約 400トン注入しています。事故直後は周囲から新たな地下水が毎日約 300トン流れ込んでいましたので、毎日合計約 700トンの汚染水を汲み上げていました。凍土壁で地下水の新たな流入量は毎日 100トンに減りましたが、凍土壁の耐用年数は約 7年しかありません。

現在毎日約 500トンを汲み上げて全量を処理装置に通しています。処理装置は ALPSといってゼオライト(粘土の一種)に放射性物質を吸着させる装置ですが、トリチウムは全く吸着されません。汲み上げた処理済みの水のうち約 400トンを冷却水として使い回しています。

朝日新聞(の3月19日の記事『汚染水 決まらぬ処分法』)では毎日約 100トンずつタンクの水が増えていくので、1,000トン入りのタンクが約 10日で満杯になり、現在もタンクが増え続けて 2020年には 137万トンとなり、タンクの保管容量の上限に達することだけを問題にしているようです。それ以外に次の三つの問題が残っています。

1.ゼオライトによるトリチウム以外の放射性物質の吸着も完全でないので、タンクの中の水には依然として環境に漏らすことができない量のセシウム 137やストロンチウム 90が含まれている。

2.冷却水は ALPSで処理したもの(トリチウムがそのまま残っているもの)を使い回しているのでトリチウム濃度が毎回加算的に高くなっている。

3.放射性物質を吸着した使用済みゼオライトは新たな高濃度放射性廃棄物であり、日本国内にその行き場がない。

海洋放出は、漁業や食生活に実害(風評被害でない)を与えるでしょう。

前記したように現在約 10日でタンク 1基が満杯になるので、今後「120年」で「4,400基」のタンクが必要となるでしょう。でも、そのころ(西暦 2139年)には、最初の 100万トンのトリチウムはそれまでの 120年間で半減を繰り返して「1千分の1」になっているでしょう。それがトリチウムを性急に海洋に流さないですむ、また、漁業関係者や魚介類の消費者と戦わないですむ、本来の処理方法でしょう。

それには仮に現在の型式の急ごしらえの小型タンクでも「4倍の数のタンクと 4倍の敷地」ですみます。石油貯蔵タンクのように何万トンも貯蔵できる型式のタンクを用いると「2倍」以下のタンク数、敷地で済むでしょう。われわれの世代の責任として、福島第一原発では、海に流さないですむのですから、新たな予算をつぎ込んで責任をもってそれをすべきでしょう。

新聞記事は、単に漁業関係者や魚介類の消費者をいつか海へ流すという妥協点へ向けて世論を追い詰めているだけのような気がします。

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以上がFBのタイムラインに書かれた内容だが、入口さんはこれを朝日の記事が出た当日に書いておられる。一物理学者の危惧が全くの忖度抜きで表白されていることに、入口氏の誠実さと科学者としての使命、他者への思いを感じることが出来る。政治家や左翼に一抹の良心があり、彼の危惧に応えようとする勢力が日本に誕生することを切に祈っている。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion8672:190527〕

http://chikyuza.net/archives/94014
http://www.asyura2.com/19/genpatu51/msg/578.html

[自然災害22] 書評 『多発する人造地震 人間が引き起こす地震』 著・島村英紀(長周新聞)
長周新聞 2019年5月28日

 世界各地で人造地震がひんぱんに起こっている。最近の地震学研究では、この10年間だけですでに100カ所以上の場所で起きているという。このことはとくに日本においては、あまり知られていない。科学的にはありえない「地震兵器」などの陰謀論と混同する向きもある。
 
 本書は、地震学(地球物理学)の先端を行く著者によるその実態を明らかにした最初の本である。
 
 人造地震とは、ダム建設、鉱山、地熱の利用、石油掘削、原油や天然ガスの採取、地下核爆発、最近の二酸化炭素の地下圧入など、人為的な生産活動や開発によって図らずも引き起こされた地震である。この点で、地震研究の方法として爆破やエアガンによって地震を起こす「人工地震」とは区別される。
 
 過去150年に人間の活動が原因の地震は728カ所で起きたという研究もある。その大半は、これまで地震活動がほとんどなかった地域で判明したものである。たとえば、アメリカのオクラホマ州は本来、無地震地帯だが、シェールオイルやシェールガスを採掘するために使われる水圧破砕法(水、化学薬品、砂を混合した液体を高圧で地下へ注入する掘削法)が、年間数百回もの地震を発生させる原因となっていることが検証されている。
 
 2008年に発生した中国内陸部の四川大地震(マグニチュード7・9)や2015年のネパール大地震(マグニチュード7・8)も人為的な地震だと見られている。今年2月から、四川省自貢市栄県の県庁前に数千人の市民が押しかけ、水圧破砕法(アメリカの石油大手シェブロンの技術)によるシェールガスの採取によって地震が発生したとして抗議し、地元政府が採掘を停止する事態となっている。
 
 韓国でも水圧破砕法による地熱開発によって、マグニチュード5・4という観測史上2番目の地震が発生した。昨年10月、市民が集団訴訟を起こし韓国政府もこの事業を中止した。四川大地震については、紫坪埔ダムに蓄えられていた3億2000万dという大容量の水のせいではないかという研究もある。
 
 これまでの人造地震は、ダム建設が誘発したものが多く、アフリカ、ギリシャ、ソ連、中国などで頻発していた。ダムの高さや水量との関連が指摘されている。しかし、ダムの建設そのものが直接地震と結びつくものではなく、そのメカニズムはまだ解明の途上だといわれる。著者は、ダム地震はダムの決壊や大雨などの自然災害による相乗作用をともなって多大な被害をもたらすことに注意を喚起している。
 
 地下核実験によって誘発された地震についても近年、北朝鮮やパキスタンなどの実験が指摘される。アメリカのネバダ州では地下核爆発による断層のずれで自然地震をも引き起こしていたことが明らかとなっている。
 
■遅れる日本の人造地震研究
 
 本書では、世界的な地震地帯で地震が頻発する日本などでは、人造地震は見つからないできたことを強調している。自然の地震と区別がつきにくいからだ。日本におけるダム地震としては1984年、牧尾ダムが完成した直後に起こった長野県西部地震をあげる研究がある。このほか、御母衣ダム(岐阜県)、九頭竜ダム(福井県)が北美濃地震や美濃中部地震を誘発した可能性も否定できないとされ
 
 最近、人造地震を誘発する新たな要因としてあげられるのが、地球温暖化対策としておこなわれ始めた大気中の二酸化炭素を地下に貯留する「温室効果ガス隔離政策(GCS)」によるものである。
 
 米国テキサス州では二酸化炭素を油井に圧入するガス圧入法を採用した直後から地震が増え始めた。「地球上から二酸化炭素を減らして、脱炭素社会を実現する」といって、二酸化炭素を水圧破砕法によって地中に圧入する仕組みの装置もふえている。
 
■北海道胆振地震も引き金?
 
 著者は、2016年から北海道・苫小牧沖で大規模におこなわれている「二酸化炭素回収貯留実験」(CCS)が、最近の北海道胆振東部地震の引き金になった可能性を否定できないと指摘している。昨年9月に発生したこの地震(マグニチュード5・8)は最大震度7と北海道では初めての震度で、既存の活断層がないとされていた地域だった。しばらく中止していた苫小牧のCCS実験を12月末に再開した直後、2019年2月に同じ場所で同規模の地震が起きた。余震がほぼ収まってから突然起きた形である。
 
 日本におけるCCS実験と地震の関連でいえば、最初のCCS実験が新潟県の長岡でおこなわれたとき新潟中越地震が起こった。このとき、CCSと地震の因果関係について国会でもとりあげられたことがある。苫小牧の実験規模は、長岡とは一桁違うほどの大規模なものである。
 
 政府は2020年ごろまでにCCS技術の実用化を目指すとして、全国的に候補地を探っているが、欧州では住民の反対によって、CCSが中止に追い込まれたところもある。
 
■人造地震の研究を嫌う政府
 
 こうした人造地震についての研究は、欧米で先行しており、日本は大きく立ち後れている。地震研究者がもっとも多く、高い研究水準を持っている国にもかかわらずである。そこには、日常頻発する自然地震との区別がつかないこともあるが、それをいいことに、人造地震が起きても自然の地震だということにしたいという力も働いている。政府も電力会社もこの種の研究を嫌っているのだ。電力会社がダムに設置している地震計のデータの多くは非公開となっている。
 
 国際的な地震学会が開かれるときは、人造地震(英語では誘発地震)のセッションが設定されるのが普通である。国の研究所に所属する地震学者がこのテーマで発表しようとしたとき、役所から事前に内容を見せるようにといわれ、役人が学会まで発表を確認しにくるという異例のできごともあった。著者は、地震や火山の研究は民間企業に頼ることはできず国の予算しか頼れないのだが、人造地震の研究は研究費が縛られ、この方面の研究者が育たない現実を憂慮、告発している。

https://www.chosyu-journal.jp/wp-content/uploads/2019/05/01de59b496b26b23f387aca54125115e.jpg
(花伝社発行、B6判・174ページ、1500円+税)

https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/11829
http://www.asyura2.com/17/jisin22/msg/686.html

[国際26] 「植民地やめよ」国連決議 米軍使う英領の島、日本棄権(朝日新聞)
朝日新聞デジタル 2019年5月28日16時30分

https://www.asahicom.jp/articles/images/AS20190523002694_commL.jpg
国連総会で英国にチャゴス諸島の統治をやめるよう求める決議が採択されると、拍手が湧き起こった=2019年5月22日、米ニューヨークの国連本部、ドンゴ・アチー撮影
 
https://www.asahicom.jp/articles/images/AS20190523002663_commL.jpg
国連総会で決議採択後、登壇したモーリシャスのジャグナット首相=2019年5月22日、米ニューヨークの国連本部、藤原学思撮影
  
https://www.asahicom.jp/articles/images/AS20190523002943_commL.jpg
チャゴス諸島の地図
 
 英国の領土で、米国が一部を軍事拠点にしているインド洋のチャゴス諸島について、国連総会(193カ国)は、英国に対し、6カ月以内に統治をやめるよう求める決議を採択した。同諸島を歴史的つながりの深いモーリシャスに帰属させるよう求める内容だ。総会決議には法的拘束力はないが、国際社会の意思としての重みがあり、英国の対応が注目される。

 決議はアフリカ諸国を代表してセネガルが提出。英国に対し、チャゴス諸島の「迅速な脱植民地化」と「元住民の再定住の促進」を求めている。

 22日の投票には178カ国が参加し、賛成はアフリカ諸国や中国、ロシアなど116カ国。英、米、豪州、イスラエル、ハンガリー、モルディブの6カ国は「英国とモーリシャスの2カ国間で解決すべきだ」などとして反対にまわった。日本や独仏など56カ国は棄権した。

 チャゴス諸島は16世紀にポルトガルに「発見」され、18世紀にフランスが植民地化。1814年に約2千キロ南西のモーリシャスとともに英国に移譲され、モーリシャスの一部として英国に統治された。1965年にモーリシャスは分離され、68年に独立した。

 チャゴス諸島で最大のディエゴガルシア島は66年から米国に貸与され、米軍がアフガニスタンやイラクへの空爆拠点として使った。軍事施設建設のために立ち退きを強制された元島民たちは領有権を主張し、帰還させるよう求めている。

 モーリシャスのジャグナット首相は採決前、「是正措置を取るのか、不正行為を認め続けるのか、国際社会が問われている。植民地主義は看過されるものではない」と議場で訴えた。

 一方、英国のピアス国連大使は決議採択後、「英領インド洋地域の防衛施設は世界の人々をテロや組織犯罪、海賊行為から守っている。総会決議にはがっかりした」と報道陣に語った。(ニューヨーク=藤原学思)
 
https://www.asahi.com/articles/ASM5R1CM5M5QUHBI03L.html
http://www.asyura2.com/19/kokusai26/msg/488.html

[政治・選挙・NHK261] 与党提出の改憲手続法改正案採決と衆参憲法審査会の開催に、断固反対する法律家団体の緊急声明(澤藤統一郎の憲法日記)
     与党提出の改憲手続法改正案採決と衆参憲法審査会
      の開催に、断固反対する法律家団体の緊急声明

はじめに

自由民主党や日本維新の会などは、継続審議となっている「日本国憲法の改正手続きに関する法律」(以下「改憲手続法」という。)改正案の今国会成立を狙い、衆議院憲法審査会での審議・採決を強行する構えを崩していない。自民党は夏の参議院選の公約に自衛隊明記の9条改憲案など4項目の改憲案を列記し「早期の憲法改正を目指す」こと、継続審議となっている改憲手続法の早期成立を目指すことを明記する調整を進めていると報道されている。

改憲問題対策法律家6団体連絡会は、自民党4項目改憲案に強く反対し、改憲手続法改正案の採決と現時点の衆参両院の憲法審査会の開催に断固として反対するものである。

1 安倍自民党による改憲発議を許してはならない
  ―自民党9条改憲案は9条2項を空文化させて海外での戦争を可能にする

自民党9条改憲案は、「前条の規定は、わが国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。…」とするもので、明らかに憲法9条2項の空文化を狙うものである。「必要な自衛の措置」の名目でフルスペックの集団的自衛権の行使が憲法上可能となり、憲法の平和主義の原理を葬り、アメリカ軍の指揮の下で何時でもどこでも海外で戦争ができる国へ転換を図るものである。これらの本質を隠し、「自衛隊の任務・権限は変わらない」などと国民を欺き、安倍首相の主導のもと数の力で9条の改憲発議を行う暴挙を許してはならない。

また、自民党の緊急事態条項に関する改憲案は、軍事的な緊急事態における内閣の権限拡大と人権の大幅な制限に利用される危険性がある。大地震などの自然災害に対応するためであれば、すでに災害対策基本法や大規模地震対策特別措置法などによって規定されており、緊急事態条項に関する改憲の必要性はない。

合区解消の改憲案は、憲法の基本原理である国民主権や普遍的価値を有する平等原則を著しく損なうものである。合区にかかわる問題の解消は、議員の総定数の見直しや選挙制度の抜本的な改革など法律改正で実現できるのであり、改憲は必要ない。

自民党の教育に関する改憲案は、教育が「国の未来を切り拓く上で極めて重要な役割を担う」として教育への国家介入を正当化する危険がある。教育の充実は、国会と内閣がその気になれば、法律や予算措置で可能であり、改憲は必要ない。

以上のとおり、自民党の4項目改憲案は、いずれも改憲の必要性・合理性を欠くうえに、日本国憲法の基本原理である平和主義、国民主権、基本的人権の尊重を破壊するものであり、安倍自民党による改憲発議を断じて許してはならない。

2 国民不在のまま、安倍自民党改憲のための憲法審査会を開催してはならない

安倍首相は、内閣総理大臣の資格に基づいて憲法改正を推進する主張を繰り返している。「憲法尊重擁護義務」(憲法99条)を負う首相や国会議員が改憲を主導することは憲法に違反する。憲法改正は、国民の中から憲法改正を求める意見が大きく発せられ、世論が成熟した場合に限り行われるべきものである。今、国民の中で改憲を望むのは少数であり世論は全く熟していない。

憲法によって公権力を制約し、国民の権利・自由を保障するのが立憲主義である。憲法に

拘束される権力の側が、国民を差し置いて憲法改正を声高に叫び、発議に向けた憲法審査会の開催を「ワイルド」に野党に迫るようなときは、憲法審査会が安倍自民党4項目改憲のために悪用されることを十分に警戒しなければならない。立憲主義を守るために憲法審査会を開催してはならない。

また、安倍首相は2020年に新しい憲法を施行すると明言して改憲ありきの立場であり、これまでの政府与党の政治手法に鑑みれば、現時点で憲法審査会を開催した場合、事実に基づく慎重な議論が行われることは期待できず、強引な議論で多数派の要望のみが実現される危険性が極めて高い。憲法審査会の伝統たる「熟議による合意形成」を尊重するのであれば、事実に基づく議論が期待できない現在の政治状況において、憲法審査会を開催すべきではない。

3 改憲手続法改正案は重大な欠陥があり、このまま成立させてはならない

継続審議となっている与党提出の改憲手続法改正案は、名簿の閲覧、在外名簿の登録、共通投票所、期日前投票、洋上投票、繰り延べ投票、投票所への同伴の7項目で、2016年に成立した公職選挙法改正の内容にそろえて国民「投票環境を向上させる」ためなどと与党は説明する。しかし、投票環境の後退を招くもの(期日前投票時間の短縮、繰り延べ投票期日の告示期限の短縮)も含まれていたり、郵便投票の対象の拡大については見送りとされている。何より、テレビ・ラジオの有料広告規制が、投票前2週間の投票運動のみに限定されていて、「国民投票を金で買う」危険性が考慮されていない本質的な欠陥があるほか、公務員・教育者に対する規制の問題、最低投票率の問題が全く解決されていない重大な欠陥のある法案である。

2007年5月の成立時において参議院で18項目の附帯決議、2014年6月の一部改正の際にも衆議院憲法審査会で7項目、参議院憲法審査会で20項目もの改善を約束した附帯決議がなされているほか、日本弁護士連合会をはじめとする法律家・法律家団体からも早急な見直しが求められている。このように重大な欠陥のある法案を急ぎ成立させる理由は全くない。それは、安倍首相が目指す臨時国会での改憲4項目発議の環境を整えるものでしかない。

以上

2019年5月27日

改憲問題対策法律家6団体連絡会

社会文化法律センター 共同代表理事 宮里 邦雄

自由法曹団      団長 船尾 徹

青年法律家協会弁護士学者合同部会  議長 北村 栄

日本国際法律家協会  会長 大熊 政一

日本反核法律家協会  会長 佐々木 猛也

日本民主法律家協会  理事長 右崎 正博

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☆昨日(5月27日)、改憲問題対策法律家6団体連絡会は、「与党提出の改憲手続法改正案採決と衆参憲法審査会の開催に、断固反対する法律家団体の緊急声明」を発出し、官邸、衆参憲法審査会委員全員、各政党、メディア等に送付して執行しました。

本日午前中行われる憲法審査会幹事会までに送り、立憲野党を励ます目的です。

☆また昨日、「法と民主主義」5月号を発刊しました。特集は「いま、ジャーナリズムを問う―本当に伝えるべきことは何か」。

各分野から、いまのジャーナリズムのあり方を批判的視点で論じています。

さらに、4月22日の院内集会「安倍政権と取材の自由」における東京新聞・望月衣塑子記者の講演とパネルディスカッションなど、興味深い記事が今月号も満載です。

ぜひお読みいただき、広げて下さい。

以上を反映してホームページを更新しましたので、こちらも時々、覗いてみて下さい。

https://www.jdla.jp/

(2019年5月28日)

http://article9.jp/wordpress/?p=12700
http://www.asyura2.com/19/senkyo261/msg/354.html

[政治・選挙・NHK261] 属国の露骨な土下座外交 トランプ訪日と日米首脳会談(長周新聞)
長周新聞 2019年5月30日

■日米貿易交渉の重大発表は参院選後

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首相官邸のインスタグラムに投稿した自撮りのツーショット写真

 米大統領のトランプが25日来日し、27日には日米首脳会談が行われ、3泊4日の日程を終えて28日に離日した。安倍首相は異例づくめの「おもてなし」に精を出した。「土下座外交」「属国外交」を露骨に暴露したもので、その屈辱的な対米従属ぶりは隠しようのないものだった。しかも過剰な「接待三昧」の裏では、貿易にしろ軍事にしろ国民の死活にかかわる国益をトランプに差し出す密約をかわしていた可能性すら疑われている。

 トランプ来日の日程を見ると、25日来日、26日午前9時から千葉県茂原市でゴルフ、午後から大相撲夏場所千秋楽観戦、その後都内の炉端焼きで夕食会。27日午前に皇居で天皇と会見、その後日米首脳会談、夜に宮中晩さん会。28日海上自衛隊横須賀基地で護衛艦「かが」に乗船、離日となっている。

 多忙なアメリカ大統領が3泊4日で来日したのは1992年のブッシュ以来だ。また、日米首脳会談は先月の26日に開催されたばかりであり、6月にはG20サミットがあり、3カ月連続でトランプと安倍首相は会談することになる。これも異例である。

 米紙・ワシントンポストは23日付けの紙面で「天皇からお相撲まで、安倍がトランプのご機嫌をとるために日本の伝統を総動員」と題して、「安倍首相ほどトランプ大統領に媚びへつらうことに心血を注いできた指導者はおそらく世界中を探してもいないだろう。………今度のトランプ大統領の訪日では、日本の昔ながらの伝統を総動員させようと、これまで以上に躍起になっている」と報じた。AP通信は「世界中の多くの指導者たちが、お世辞と好意を見せてトランプ氏にゴマをすろうとしているが、安倍首相はそのハードルをあげた」と過剰なおもてなしを皮肉っている。海外のメディアも注目するほど安倍首相のトランプ「おもてなし」は「そこまで媚びるのか」というほど過剰であった。

 そして、26日朝から2時間半にわたってゴルフに興じたあと、トランプは「われわれは素晴らしい時間を過ごした。首相と私は貿易と軍事について多くのことを話した。とても生産的な1日だ」とコメントし、ツイッターに「参院選までは、交渉の多くのことで取引を待つ」「日本との貿易交渉で大きな進展ができつつある。農産物と牛肉が大きな役割を果たす。日本の7月の選挙まで待ったら、大量だ。大きな数量を期待しているぞ!」と投稿し、27日の日米首脳会談の冒頭には「8月に大きな発表がある」とのべた。

 4月26日の日米首脳会談でトランプは、「農産物について強力に交渉していく」「日本は重い関税を課している。撤廃させたいと思っている」としたうえで、時期については「5月末に訪日するまでか、訪日のさいに日本でサインするかもしれない」と安倍首相に迫っていた。そのさい安倍首相は7月に参議院選挙があるのでそれまでは待ってほしいと懇願した。5月までに農産物の関税大幅引き下げや撤廃に応じれば農業関係者などの猛反発は必至で、参院選での敗北にもつながりかねないからだ。

 そのため安倍首相は27日の日米首脳会談前にトランプを接待漬けにし、なんとか決着を参院選後まで引き延ばしてもらうように働きかけたのではないかと見る向きが有力だ。

 トランプが農産物の交渉妥結を7月まで待つとしたのは、安倍首相のためだけではない。トランプ自身が2020年秋には大統領選を控えており、今年9月には選挙戦が本格化する。再選をめざすトランプは貿易交渉で目に見える成果を国民に示すことが必要だ。そのためには、ここで安倍首相に「貸し」をつくり、参院選挙後にはより大幅な譲歩を日本からもぎとろうとしている関係だ。

■F35を105機も購入 飲まされる要求の数々

 早速27日の首脳会談後の共同記者会見でトランプは、「アメリカはTPPに縛られない」と主張し、農業や自動車などあらゆる分野でTPP以上の譲歩を日本に迫ることを表明した。

 日本はこれまでたてまえとして「TPPと同水準の関税撤廃・引き下げが限度」との立場をとってきたが、トランプはそれ以上の市場開放を日本側に迫り、一切譲歩しないと安倍首相に屈服を迫っている。

 日米貿易交渉をめぐってはまた、安倍政府は物品のみを対象にしたい意向だが、アメリカ政府は通信や金融などのサービス、投資を含めた包括的な日米FTA協定を想定している。今回の「貸し」をとり返そうと、今後参院選後には強力な脅しを加えてくることは必至だ。

 安倍首相はトランプとの密約について内容は一切国民に説明しないまま、参院選あるいは衆参同日選に持ち込み、議席を確保しようとしている。

 トランプはまた27日の共同会見のなかで、「日本は米国の防衛装備の最大の買い手となった。新たなF35ステルス戦闘機を105機購入すると発表した。米国の同盟国のなかで日本がもっともF35を保有することになる。………自衛隊と米軍は世界各地で共同訓練をおこなっている」とのべ、日本政府が米国製兵器を大量に購入していることを評価した。貿易赤字解消を掲げて日本に武器購入を迫ってきており、今後も圧力をかけてくることは必至だ。

 翌28日には安倍首相とともに横須賀基地を訪れ、海上自衛隊の護衛艦「かが」を視察した。「かが」は事実上の空母化が昨年決まっており、日本政府がアメリカから購入するステルス戦闘機F35の搭載が可能となる。トランプは横須賀基地について「米海軍艦隊と同盟国の海軍艦隊が並んで司令部を置く世界で唯一の港だ」と強調した。さらに「かが」にF35Bの搭載が可能になることに言及し、「より広い領域をさまざまな脅威から防衛する」とのべた。安倍首相は「日米同盟はこれまでになく強固になった。“かが”の艦上にわれわれが並んで立っていることが証だ」とのべた。アメリカの大統領が自衛隊の艦艇に乗るのは初めてで、自衛隊が実質的に米軍の下請軍隊に組みこまれていることを象徴している。

 その後トランプは同じ横須賀港の米軍強襲揚陸艦ワスプに移り、米兵を前に「力による平和が必要だ」と演説し、米軍と自衛隊の連携の重要性を訴えた。米海軍横須賀基地は米第七艦隊の拠点で、ワスプは米海兵隊岩国基地所属の最新鋭ステルス戦闘機F35Bを運用している。同艦は通常米海軍佐世保基地に配備されているが、トランプの演説にあわせて横須賀に寄港していた。トランプは安倍首相に「貸し」をつくることで米国製兵器の購入を迫ってくる可能性が高く、すでに今回の過程で密約を結んでいることも考えられる。

 また、今回の首脳会談では安倍首相はイランを6月に訪問する意向を表明した。トランプは2018年にイランとの核合意を一方的に破棄し、イランへの制裁を強め、軍事的緊張を高めている。安倍首相のイラン訪問を通じてイランの思惑をつかみたいというトランプ側の要請だ。トランプは大統領就任以来、パリ協定からの脱退、中距離核戦力(INF)全廃条約からの離脱、在イスラエル米大使館のエルサレム移転の強行など、国際社会の秩序を破壊する行動を重ねており、国際社会で孤立を深めている。とくにフランスやドイツなどヨーロッパ各国との関係はきわめて悪化している。主要国ではトランプと緊密な関係を維持している指導者は少なく、トランプにとって安倍首相ぐらいしか親しいパートナーがいないというのが現状だ。そのことは、日本のアメリカ一辺倒の追随外交は国際社会で孤立する道にしか進みようがないことを示している。安倍首相の過剰なトランプ接待が国際的には笑いものになっているところにもそれはあらわれている。

 2012年冬の衆院選挙では自民党は「TPP絶対反対」を公約に掲げて過半数の議席を獲得して与党に返り咲き、選挙が終わったらTPP参加を表明するというペテンをおこなった。今年の7月にも参議院選を控えるなかで、トランプとの密約は国民になんら説明しないまま選挙に突入し、選挙が終わったらトランプのいうままにTPP水準以上の市場開放やばく大な武器購入をおこない、自衛隊を米軍の盾として戦地に動員するなど、国益を売り飛ばすペテンの再現が現実味を帯びている。

https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/11842
http://www.asyura2.com/19/senkyo261/msg/402.html

[政治・選挙・NHK261] 被爆地・広島を飛び回るオスプレイ 岩国空域(ラプコン)占有する米軍(長周新聞)
長周新聞 2019年5月30日

 広島市中心部の上空で米軍オスプレイの飛来があいついで目撃されている。岩国基地に空母艦載機60機が移駐し、極東最大の米軍基地に変貌して以来、低空飛行訓練を含む広島県内への飛来数は度をこえて増加している。74年前、原爆を投下した広島市の頭上まで傍若無人に飛びかう横暴さは、被爆地に対する挑発的な行動として市民の怒りをかき立てている。

 今月15日、広島市中心部でオスプレイ2機が南東から北西方向に飛行していく姿が目撃され、機体から岩国基地を飛び立った米軍オスプレイであることが確認された。広島県国際課によると、同日は平和公園近辺から4件、北広島町から3件の目撃情報が寄せられている。これとは別に、広島市に対し、安佐南区や安佐北区から同じような米軍機の目撃情報が計9件寄せられた。2017年12月にもオスプレイ2機が中区上空を飛行して物議を醸したが、広島市中心部で米軍機の目撃情報があいつぐことは珍しい。

 目撃情報を集約した広島県は17日、事実確認と飛行の禁止を中四国防衛局に申し入れた。これらのオスプレイ2機は横田基地配備機で、同基地と岩国基地を往復したさい、復路で広島市中心部の上空を通過し、北広島町をまわって横田基地に帰還したことが明らかになっており、本来避けるべき住宅密集地の上空を意図的に飛行したと見られている。

 広島県の集計によると、昨年度の米軍機の飛行による騒音で70デシベル以上を観測した回数は、県内6カ所で4969回にのぼっており、前年度と比べて1・3倍に増加している。とくに岩国基地からの飛行ルートに近い大竹市阿多田島では3182回(前年比1・4倍)、江田島市沖美町では169回(同1・9倍)に達した。

 2017年10月には北広島町の上空で訓練中の米軍戦闘機が、敵のミサイル攻撃をかわすための「フレア(火炎弾)」を十数発発射する事件も発生しており、住宅密集地を戦場に見立てた常軌を逸した訓練は今も止むことがない。

https://www.chosyu-journal.jp/wp-content/uploads/2019/05/6a6c74639d3558a88e80b4c3ef9ba29d.jpg
米軍が管理する岩国空域(ラプコン)

 岩国基地の配備機数が120機をこえたことに加え、岩国基地を中心にして北側は山口県萩市から島根県浜田市、南側は愛媛県伊方町から西条市に至る広大な空域は横田空域と同じ米軍管理空域「岩国空域」に指定されていることが背景にある。山口県は光市から東部地域、広島県は廿日市市から大竹市、江田島市もすっぽりとこの空域の中に含まれ、米軍機が飛行可能というよりも、米軍しか飛行できない。米軍の許可なしには日本の航空機は進入することができない治外法権空域となっている。空域内の松山空港(愛媛県)に向かう民間機は、岩国基地の管制官の指示どおり飛ばなければならず、空域のすぐ西側にある大分空港へ向かう民間機も、高度制限などの制約を受けている。2016年のオバマ前大統領の広島訪問時には、岩国基地からオスプレイ4機に先導させ、「岩国空域」を通って広島ヘリポート(旧広島西飛行場)に降りており、この空域が「米軍占有」であることを内外に誇示するものとなった。

 岩国基地では23日から、九州沖で「空母艦載機パイロットによる着艦資格取得訓練(CQ)」がおこなわれ、約60機の艦載機が滑走路の運用時間外にも離着陸をくり返している。騒音や墜落事故の危険性にとどまらず、「本土の沖縄化」の象徴として広島沿岸を含む一帯を核攻撃基地にする動きがあらわれており、被爆地を冒涜する米軍機の飛行に広島県内一帯で反発が高まっている。

https://www.chosyu-journal.jp/shakai/11844
http://www.asyura2.com/19/senkyo261/msg/404.html
[国際26] 制裁措置により失われていく人命:米国の経済封鎖がベネズエラ国民を死に至らしめる仕組み(teleSUR)
teleSUR English 2019年5月30日

米国の対ベネズエラ制裁によって命を落とした人々がいる。必要な物資を入手できずに命の危険に曝され続けている何百万人もの人々がいる。それが、今のベネズエラだ。

米国は、ニコラス・マドゥーロ政権を屈服させようとしてベネズエラ制裁を強化し続けてきた。しかし、この制裁の最大の犠牲者はベネズエラに暮らす一般の人々である。2019年4月、制裁による死者は4万人に達するとの調査報告書を、米国のシンクタンク、経済政策研究センター(CEPR)が発表した。

今年1月23日、野党議員ファン・グアイドは民主的に選出されたニコラス・マドゥーロ大統領の転覆を企てたが、このときから米国の対ベネズエラ制裁はさらに過酷を極めた。

しかし、この制裁が永年の企ての蓄積の上に築かれたものであることを忘れてはいけない。石油資源に恵まれた南米のこの国で数十年前に左翼政権が誕生して以降、米国の歴代政府はこれを葬り去ろうと画策し続けてきた。そして今から約5年前にはベネズエラの主権侵犯に手を染め、現在発動中のベネズエラ制裁の下地を作った。

2015年、バラク・オバマ大統領(当時)はベネズエラが「アメリカ合衆国の国家安全保障にとって異例かつ重大な脅威」であるとする大統領令に署名し、対ベネズエラ制裁発動の要件を満たしたのである。

そして、ドナルド・トランプは大統領就任のわずか数ヵ月後に対ベネズエラ制裁を強化し、経済封鎖をさらに強めたのだが、それが引き起こした結果は途轍もなく甚大なものであった。

「制裁は人々の生活と健康にきわめて深刻な害を及ぼしており、その度合いは拡大の一途を辿っている。2017年と2018年の両年だけでも4万人以上の人命が失われたと推定される」と上述のCEPR報告書は記している。

4万人以上という数字は、抗レトロウイルスの治療を2017年以降受けられなくなったHIV患者が推定8万人いること、人工透析を必要とする患者が約1万6千人いること、癌患者が約1万6千人いること、糖尿病や高血圧症を患う約4百万人のうち多くの患者がインシュリンや循環器系の薬剤を入手できなくなったこと、などに基づいて算出されている。

CEPR報告書はさらに次のように指摘している。「これらの制裁は、米国も調印国となったジュネーブ、ハーグ両国際条約が禁止する一般市民に対する集団的懲罰の定義に合致するであろう。また、国際法や米国が署名した諸条約に照らしても違法であるばかりか、米国国内法を冒涜しているように思われる。」

医薬品や食料や医療機器を輸入調達するには外国為替が不可欠であること、従って、石油輸出で外貨を獲得することが不可能になったとき、ベネズエラ国民に基本的医療を施すための原資が途絶えてしまうこと、そして救命物資さえも輸入できなくなることを、同報告書は指摘する。

全国生活実態調査(ENCOVI; Encuesta Nacional de Condiciones de Vida)の結果を見ると、医薬品の欠乏により、あるいは十分な医療体制を整えられないことにより危険に曝されている人々は30万人以上に達する。
 
医療分野の物資不足に止まらない。食料不足もまた人々に深刻な影響を及ぼしている。さらに、水や衛生用品のような基本的な必需品の不足による罹患率の上昇、あるいは死が早まるリスクの増大なども、この実態調査から浮き彫りにされている。

国連は、これらの影響を最も受けやすいのは子供たちであり、また妊婦や高齢者や先住民の人々や女性や思春期の少女や障害を抱える人々であり、そしてLGBTQの人々であると指摘している。

ラテン・アメリカ人権社会開発財団(FUNDALATIN)のEugenia Russian総裁は、人々の生命が深刻な脅威に曝されていると述べ、経済封鎖を強く非難した。
 
同総裁はこの5月、5人のベネズエラ人の子供およびその家族と一緒にアルゼンチンへ渡った。この子供たちは深刻な肝疾患を抱えているにもかかわらず、経済封鎖の影響で専門的な医療支援を受けることができなくなったため命の危険が生じたのである。
 
ベネズエラの国営石油会社PDVSAとイタリア政府との間では、過去10年以上にもわたって医療協力に関する取り決めが実施されてきた。この取り決めに基づき、骨髄移植が必要なベネズエラの子供たちをイタリアに送って移植手術を受けさせていた。

この取り決めはPDVSAの子会社であるCITGOを通して実施されていた。ところが、トランプ政権がここへきて攻撃的な制裁措置を発動したことにより、2019年1月、CITGOの所有する資産70億ドルが凍結されてしまった。

子供たちの治療のために送金されるはずの資金が、これによりブロックされたのである。また今年5月には、ポルトガルのノボ銀行が制裁を理由にベネズエラからの17憶ドルの送金の受け入れを停止した。ベネズエラのアレアサ外相は、この17憶ドルで医薬品と食料を購入する手はずになっていたのだと語った。

ベネズエラの公的医療制度の下で、骨髄移植は国の負担で行われ、約397件がこれまでの実績として上がっている。骨髄以外の病気でも、これまでに487名の患者が移植を伴う医療措置を国の負担で受けてきた。
 
治療のためアルゼンチンへ行った子供たちの場合も、この公的医療制度に基づき国が費用負担している。ベネズエラで何通りかの医学的評価が行われた結果、この5組の家族はアルゼンチンの首都ブエノスアイレスに所在するイタリアの病院で移植と移植後の治療を受けることになった。

国連および国連の専門家たちも米国による制裁措置を繰り返し非難してきた。国連特別報告者で、ベネズエラの実情に詳しいアルフレッド・デ・ゼイヤス氏は、これらの制裁は「人道に対する罪」であると語った。

「経済面での制裁や封鎖は、中世の都市攻囲の現代版と言えるでしょう。但し、21世紀における制裁は、単に一つの都市に止まらず、主権を有する国々を屈服させようとしています」とゼイヤス氏は語った。

(以上、文責投稿者)


原文出所
https://www.telesurenglish.net/news/Sanction-to-Kill-How-US-Blockade-Is-Taking-Venezuelans-Lives-20190529-0014.html
http://www.asyura2.com/19/kokusai26/msg/519.html

[政治・選挙・NHK261] 望月衣塑子の質問(2) 菅官房長官とドタキャン 菅官房長官が望月記者のドタキャン質問に異様なこだわりを見せた背景 (朝日新聞社 論座)
望月衣塑子の質問(2) 菅官房長官とドタキャン
菅官房長官が望月記者のドタキャン質問に異様なこだわりを見せた背景

臺宏士 フリーランス・ライター
論座 2019年06月01日


*この記事は『望月衣塑子の質問(1)質問制限の発端』の続きです。
http://www.asyura2.com/19/senkyo260/msg/198.html


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望月記者の著書を原案にした映画『新聞記者』が6/28(金)より全国公開される。政府によるメディアへの介入など現実世界と共振する設定の「権力とメディア」の裏側、「組織と個人」のせめぎ合いを真正面から描いたサスペンスエンタテインメント。©2019『新聞記者』フィルムパートナーズ

■ICANよりツイッターを優先した安倍首相
 
 菅義偉官房長官の記者会見に絡んで、官邸報道室が、質問した望月衣塑子記者の所属する東京新聞や、記者会見の主催者となっている内閣記者会に対して、抗議や問題意識の共有を求める申し入れを行った問題は、国会でも取り上げられた。

 例えば、田村智子氏(共産)は2019年3月20日の参院内閣委員会で「記者が自らの取材に基づいて、事実と確定されていない情報を基に事実を明らかにするために質問をぶつける、これは当然に行われることであり、国民の知る権利、報道の自由の原則からも当然のことだと思いますが、いかがですか」と質問している。

 これに対して、菅長官は「私が問題と考えているのは、事実かどうか確認が取れていないことや明らかに事実でないことをあたかも事実であるかのように言及し、質問をし、それに起因するやり取りが行われてしまうということは、官房長官記者会見の本来の趣旨を損ないかねないという点であります」と答弁。そして「実例を挙げさせてください。ちょうどいい機会ですから。例えば、昨年ですけれども、記者からの質問で、私が、国連人権委員会特別報告者との面会を官房長官ドタキャンしたのは何でですか、一昨年と、こう言われたんです。それで調べてみたら、面会申入れがなかったんです」と続けた(菅長官は「人権委員会」と表現しているが、これは「人権理事会」の誤りで、そのままインターネットの国会議事録に掲載されている)。

 菅長官が「事実誤認だ」として筆頭にあげた望月記者のこの質問は、2018年1月16日にあった。望月記者が「ドタキャン」という表現を使用する前には関連する前置きの質問がある。少し長くなるが、まずはそこから見ていきたい。

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菅義偉官房長官の記者会見で起きた質問制限問題について市民らに報告する望月衣塑子記者=千葉県浦安市で2019年4月6日、筆者撮影
 
 望月記者が質問したのは、スイスのジュネーブに拠点を置く、国際NGO(非政府組織)の「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)についてだった。

 ICANは2017年にノーベル平和賞を受賞。国連が122の国と地域の賛成多数で採択した「核兵器禁止条約」の制定に貢献したことが評価された。これを受けて、ベアトリス・フィン事務局長が長崎大学の招聘で翌18年1月に唯一の被爆国である日本を訪問することになったが、その際に安倍首相はフィン事務局長が求めた表敬訪問を受け入れなかったのだ。

 ICANは、約100カ国の約470団体で構成され、日本からは7団体が参加(現在は103カ国、541団体で、このうち日本は10団体)。17年12月、ノルウェー・オスロでの授賞式で、被爆者として初めて演説したカナダ・トロント在住のサーロー節子さん(広島市出身)は、ICANの「顔」だ。中心的な活動を担っている川崎哲・ピースボート共同代表は、国際運営委員を務めている。受賞は日本人とも深い関係にあった。ただ、日本政府は、米中ロなど核保有国とともに核兵器禁止条約に参加せず国際社会から厳しい目を向けられていた。

 安倍首相は折しもエストニアやラトビア、ルーマニアなど欧州6カ国を訪問中(1月12日〜1月17日)で、18日は午前中から日豪首脳会談に関連した予定があった。12日に来日して18日に離日するスケジュールを組んでいたフィン事務局長との面会の要請を、日本政府は「日程上の理由」(菅官房長官)として断ったのだ。安倍首相の外遊は好都合だったに違いない。

 サーローさんも2018年の年末に来日し、安倍首相との面会を求めたが、実現しなかった。菅長官は12月6日の記者会見で時事通信記者からの質問に対して、フィン事務局長のときと同様、「日程の都合上によるもの」と説明し、西村康稔官房副長官がこの日に面会に応じた。

 同じ6日、安倍首相が国会審議に出席した後に官邸で会っていたのは、米ツイッター社のジャック・ドーシー最高経営責任者(CEO)。安倍首相は、同社のトレードマークである青い鳥をプリントしたTシャツを贈られ、自分のツイッターに「これからもSNSを活用した情報発信をどんどん行っていきたい」と投稿していた。

 川崎氏によると、安倍首相との面会調整は、ICANの国際運営団体であるピースボートが担当した。フィン事務局長の表敬訪問については、2017年12月22日に官邸に連絡したところ、内閣総務官室宛てに書簡を送るよう指示があり、1月16、17日のいずれかを希望日として書き留めで送付した。

 翌18年1月6日に外務省軍備管理軍縮課から「外務省の所掌ではないが、首相は日程の都合がつかず会えないそうだ」と電話で知らされた。ICAN側は同課とは核軍縮政策をめぐって日頃からやりとりをしていた。離日当日の18日午前の面会を求める書簡を再度、総務官室に送付したが、これも外務省から「外遊があるかないかということにかかわりなく、日程の都合がつかないので会えないということだ」と電話連絡があった。結局、いまもって内閣総務官室からの正式な連絡はない、という。

 こうした経緯を踏まえ、サーローさんの安倍首相との面会調整については早めに取りかかった。政府に対する要請は2カ月ほどの余裕をもって10月3日に文書で行った。今度は外務省軍備管理軍縮課が窓口になった。しかし、11月29日に届いた最終回答は「首相ではなく官房副長官が対応する」という内容だった。なぜ首相に会えないのか、ということについての明快な説明はなかった、という。

■国連特別報告者の調査がキャンセル

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ノーベル医学生理学賞に決定した本庶佑・京大特別教授にお祝いの電話をする安倍晋三首相=2018年10月1日、東京都渋谷区
 
 安倍首相がノーベル賞に関心がないというわけではないだろう。
 
 過去の日本人の受賞者とはすぐに面会したり、受賞の報に接すると自ら直接電話して祝福したりしている。新聞記事で確認したところ、安倍首相が最も早く面会したノーベル賞受賞者は、民主党政権だった2012年に受賞した山中伸弥氏だった。2013年1月29日に首相官邸で面会した。

 その後も受賞者との面会は続く。2014年受賞の天野浩、中村修二の両氏とはそれぞれ同年10月23日、11月6日。15年に受賞した大村智と梶田隆章の両氏とは10月29日に一緒に会った。16年受賞の大隅良典氏とは10月31日だった。いずれも首相官邸での面会で、18年の本庶佑氏とは10月7日に京都市であった国際会議の朝食会に同席したのだった。山中氏を除いては、いずれも受賞決定のニュースからそう日を置いているわけではない。

 ノーベル平和賞に至っては、トランプ米大統領が19年2月のホワイトハウスでの記者会見で、安倍首相から「日本を代表し、経緯を込めてあなたを推薦した」という手紙を受け取ったことを明らかにしているほど関心を寄せているのだ。

 しかし、安倍首相はICANの受賞には当時、何のメッセージも送らなかったばかりか、いまもってICAN側に祝意を寄せたことはないという。このことからも、安倍首相が政府の政策と異なる団体へのノーベル平和賞受賞を苦々しく思っていた様子がうかがえる。

 2018年1月16日、望月記者が菅長官にぶつけたこれに関する質問は次のような内容だった。

 「核なき平和を互いに前進させるためにも予定を変えて(安倍首相が)と会うということを検討しないのか。首相が会えない場合、ナンバー2である菅さんご自身がICANの事務局長と会うことは検討していないのか、お聞かせください」

 これに対して、菅官房長官は「まず私はナンバー2ではありません。いずれにしろ、この件については昨日(15日)も質問があって昨日答えた通りです」としか答えなかった。

 15日、菅長官は、共同通信記者の質問に対して「外務省から日程の都合上(面会は)できないという旨回答をした。それ以上でもそれ以下でもない」と答えていた。

 それ以上でもそれ以下でもない――。これは、菅長官が、記者の質問の狙いに政府批判を嗅ぎつけたときに発するお決まりの言葉だと思う。安倍首相は嫌いだから会わないということではなく、ただ日程の都合だと強調したいのだろう。しかし、この言葉は、サーローさんのときの説明(12月6日の記者会見)にはなかった。

 「フィン事務局長が首相と面会できなかったのは、年末年始を挟んだ時期の要請で外遊とも重なり、仕方ない面はあったと思います。しかし、サーローさんと首相との面会については、かなり前から正式に要請していたにもかかわらず実現せず、残念でした。各国の政府を代表する人を表敬し核兵器廃絶に向けた要請を行うことは、ノーベル平和賞を受賞した団体の責務だと思っています。ICANとして、安倍首相への表敬訪問はいつか実現したいと思います」

 川崎氏はそう語った。

 首相官邸が問題視した望月記者の質問の「ドタキャン」という表現は、フィン事務局長による表敬訪問に続いて尋ねた中にあった。

 「一昨年(2015年)の11月のとき、国連人権理事会のデビッド・ケイさんが菅さんや高市総務大臣とご面会したいというときも、政府側がドタキャンをしたという経緯がございました。こういうことを踏まえて、国際的に高く評価されている方々と政府の要職にある方々ときっちり会ってお話をし、世界にメッセージを発信していくことの必要性というのはどの程度、政府は真剣に考えているんでしょうか」

 この質問に対して、菅官房長官は不快感を隠さなかった。

 「まず、ドタキャンなんかしていません。事実に基づいて質問してください。以上です」

 菅長官はそれだけ言うと、さっさと記者会見場から去ってしまった。つまり、肝心の質問に対しては何も答えなかったのだ。
 
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「日本政府は直接、間接にメディアに圧力をかけている」。国連特別報告者のデビッド・ケイ氏は国連人権理事会にそう報告した(2017年6月)。これを受けて開かれたシンポジウム「ペンは負けないカメラは見逃さない――ジャーナリストの良心宣言2018――」で、望月衣塑子記者(左)は、元朝日新聞編集委員の竹信三恵子氏(右)と対談した=東京都千代田区で2018年7月1日、筆者撮影
 
 デビッド・ケイ氏は、米カリフォルニア大学教授で、国連人権理事会から任命された特別報告者だ。人権理事会に対して各国の人権状況を調査し、報告する役割がある。

 日本は表現の自由の状況について初めて調査を受けることになり、ケイ氏は外務省の招待という形で2015年12月1日〜8日の日程で来日して調査するはずだった。国連自由権規約委員会やケイ氏の前任であるフランク・ラ・ルー氏(グアテマラ)が懸念を表明した特定秘密保護法(13年12月成立、14年12月施行)や、インターネット上の権利、メディアによる取材報道の自由、知る権利などに関して官民の関係者から聞き取る予定だったという。

 ところが11月に入って異例の事態が発生した。アムネスティ・インターナショナル日本など国内の9つのNGOが岸田文雄外務相宛に提出した「表現の自由特別報告者の日本調査の中止に関するNGO共同要請書」(2015年11月25日)によると、ケイ氏は、11月13日、ジュネーブの日本政府代表部から突然、メールを受け取った。次のような内容だったという。

 「関係する政府関係者へのミーティングがアレンジできないため、訪問は実施できない」――。翌2016年の秋以降で再調整するという。

 外務省は2015年10月21日の時点でケイ氏を12月に招待することをケイ氏本人にも通知していた。11月13日の延期の通告に対して、ケイ氏は「日本政府に対して再度予定されていた日程での調査の実現を求めたが、11月17日、日本政府の対応に変化が見られないためキャンセルを受け入れ」たと日本の関係者に連絡した。

 「政府関係者との調整を理由にこれを延期することは極めて異例のことであり、二度と繰り返されてはならない」。そう指摘した共同要請書に名前を連ねた、秘密保護法対策弁護団の海渡雄一弁護士らは11月25日に外務省人権人道課長と面会し、2016年前半の早期訪問の実現を要請したという。

 海渡弁護士によると、ケイ氏は同じ2015年3月に来日し、自ら外務省に赴き来日調査を強く要請していた経緯があるという。12月の訪日が正式に決まった10月21日の翌22日、ケイ氏は、国連人権理事会で演説し、調査の実現を「うれしい」と表明したという。そして、訪日のわずか2週間前のキャンセルである。

 「外務省からの連絡を受けてケイ氏が国連演説までしている中で、外務省自身が訪日調査の延期を言い出すはずがありません。私たちは当時、外務大臣よりもハイレベルの人物からの指示でドタキャンが決まったと受け止めていました。それは、人権人道課長との交渉での外務省側の態度や言葉のニュアンスからも外務省の外部からの圧力があったと思いました。それは安倍首相か菅官房長官だというのが私たちの見立てでした。私たちも日本政府によるドタキャンという認識で、言葉としても実際に使っていました」

 海渡氏は当時の状況をそう語る。

 実際に東京新聞(2015年11月26日朝刊)は「国連調査早期実現を 『表現の自由』延期でNGO」の記事の中で、アムネスティ・インターナショナル日本の川上園子氏の記者会見(25日)の発言を「日本は北朝鮮などには特別報告者制度に協力するよう言っているのに、自分の国ではドタキャンするようでは外交の説得力に欠ける」と紹介している。
 
■東京新聞「記者の言いっ放しではない」

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記者会見する菅義偉官房長官
 
 東京新聞は2月20日朝刊でこの問題を取り上げた特集記事「検証と見解/官邸側の本紙記者質問制限と申し入れ」を掲載した。
 
 それによると、官邸は「ドタキャン」質問をめぐるだけでも、「政府側が『ドタキャン』した事実は全くない」(2018年1月17日)、「『ドタキャン』という表現は何を意味するのか」(19日)、「ケイ氏の理解を得た上で新たな日程を調整した。『ドタキャンした』という根拠を示せ」(25日)、「『ドタキャン』と表現されることは経緯を正確に反映していない」(30日)――と4回も東京新聞に対して回答を迫り、東京新聞側もこれに対して3回、返答したという。

 特集面に掲載された「本紙記者の質問に対する9件の官邸側申し入れと本紙回答」とのタイトルの表から、この「ドタキャン質問」の部分を抜粋する。(わかりやすくするため一部に手を加えた)

1月16日 会見(望月記者) 「一昨年の11月の時に国連人権委(ママ)のデービッド・ケイさんが菅
     さんや高市総務相と面会をしたいという時も、政府側がドタキャンした」
1月17日 官邸 政府側が「ドタキャン」した事実は全くない
1月18日 本紙(臼田信行編集局長) ケイ氏の訪問調査が2015年12月に決まった後、日本側都合で
     キャンセルされている。菅官房長官と面会予定があったと受け取れる質問箇所は事実誤認
     だった
1月19日 官邸 「ドタキャン」という表現は何を意味するのか
1月22日 本紙 「政府がドタキャンした」と述べたのは、一昨年の訪問調査ではなく15年のことだっ
     た。当時、国際NGOも「土壇場でキャンセルした」と批判した
1月24日 官邸 ケイ氏の理解を得た上で新たな日程を調整した。「ドタキャンした」という根拠を示
     せ
1月26日 本紙 15年12月1日からの訪問調査日程が11月中旬にキャンセルされたことを「ドタキャ
     ン」と表現するのは許容範囲
1月30日 官邸 「ドタキャン」と表現されることは経緯を正確に反映していない
 
 東京は「毎日新聞、共同通信も『日本政府の要請で突然延期になった』と報じていた」と他の新聞・通信社の報道にも触れた。

 調べてみると、毎日は12月4日朝刊社説「国連調査先送り 政府の対応は不可解だ」の中で「日本における表現の自由の現状について今月中に予定されていた国連の調査が、日本政府の要請で突然、延期された」と言及していた。共同が配信し、東京15年11月20日朝刊に掲載された「表現の自由 国連調査 政府要請で急きょ延期」の記事では、「日本での現地調査が、日本政府の突然の要請で延期されていたことがわかった」と表現されている。

 東京の特集記事では触れられていないが、朝日新聞も15年12月12日朝刊社説「秘密法1年 疑惑はぬぐいきれない」で「来日調査が政府の直前の要請で延期されたうえ、事実上、来年秋以降への先送りを政府が提示していたことも判明した」と指摘していた。

 東京新聞の臼井信行編集局長は「官房長官の面会予定があったと受け取れる箇所など、一部で事実誤認があった」と誤りを認めたが、「『政府側がドタキャンした』という表現は論評の範囲内だと考える」と回答したという。

 「ドタキャン」質問には相当、腹に据えかねたのだろう。

 菅官房長官は2019年2月12日の衆院予算委員会で奥野総一郎氏(国民)の質問に対して次のように怒りをぶちまけている。(先に記したように望月記者は菅官房長官にドタキャンの理由を尋ねていないうえ、質問内容の要約にも菅官房長官にはかなりの事実誤認がある)

 「事実に基づかない質問が行われ、これに起因するやりとりが行われる場合は、内外の幅広い視聴者に誤った事実認識を拡散されるおそれがあると思っています。私が国連人権委員会(人権理事会・筆者注)の特別報告者からの面会依頼をドタキャンしたと。なぜドタキャンしたと言われたんです。それは私、記憶がなかったものですから、調べたら、面会依頼の事実がなかったんです」

 3月1日の衆院予算委員会(小川淳也氏・立憲民主)、3月8日の参院予算委員会(杉尾秀哉氏・立憲民主)、3月20日の参院内閣委員会(田村智子氏)、3月22日の参院予算委員(同)と計5回も同じように答弁している。

 これに対して、東京新聞は「検証と見解」のなかで「会見では菅氏も『ドタキャンなんかしていません』と即座に回答しており、記者の言いっ放しにはなっていない」と反論した。

 菅官房長官は、日本政府を代表して方針や見解を述べる立ち場の人物である。自分自身に対しては面会の依頼がなかったからといって、「ドタキャン」に当たらないと何度も国会で言い通すのは、いかがなものだろうか。ここまで見てきたように、日本政府はケイ氏と約束した日程を日本側の都合で中止を決め、しかもそれはケイ氏の意向を押し切るような経緯がありながら、「理解を得た」と豪語するのである。そうした日本政府の態度は国際社会にどう映るだろうか。

 それにしても菅官房長官は、フィンICAN事務局長との面会に関する質問で、望月記者が長官を「ナンバー2」と表現したことも即座に否定した。こっちは「事実誤認だ」と抗議しなくてもよいのだろうか。「ナンバー2は副総理の麻生氏だ。訂正しろ!」とでも。
 
■ドタキャン指示は誰なのか

https://image.chess443.net/S2010/upload/2019052700009_3.JPG
質問制限問題について、望月衣塑子記者(中央)と、元朝日新聞編集員でインターネットTV「デモクラシータイムス」の山田厚史共同代表(左)と、日本新聞労働組合連合(新聞労連)の南彰委員長(右)の計3人が議論した=千葉県浦安市で2019年4月6日、筆者撮影
 
 2015年という年は、政府による報道への露骨な介入が表面化した年だった。
 
 1月は外務省から退避勧告が出ているシリアに渡航したジャーナリストの後藤健二氏ら2人の日本人がイスラム国に拘束され、日本政府が解放と引き替えに2億ドルの身代金を要求される事態に陥った。イスラム国側は、安倍首相がカイロで表明した反イスラム国への2億ドルの支援表明を理由にあげた。膠着した状態が続くなかで、2人は処刑されてしまった。

 この直後の2月にシリア入りを目指した新潟市のフリーカメラマン、杉本祐一氏に対して、外務省は旅券法に基づくパスポートの返納命令を初めて出し、杉本氏は渡航を断念せざるを得なくなってしまった。外務省は邦人保護を理由にしたが、明らかにジャーナリストの活動を制約する行政処分だ。

 経済産業省出身の古賀茂明氏は、原発再稼働や武器輸出に熱心な安倍政権に批判的な人物として知られる。テレビ朝日の報道番組「報道ステーション」のゲストコメンテーターを3月で降板したが、古賀氏は最後の番組出演(3月27日)でその背景には、菅官房長官らによる官邸からのテレビ朝日への圧力を示唆した。

 4月には自民党の情報通信戦略調査会(川崎二郎会長)が、「クローズアップ現代」などで取り上げられた「出家詐欺問題」の放送で過剰演出が問題とされたNHKと、古賀氏の発言問題でテレ朝の幹部を呼んで事情聴取し、同じ月には高市早苗総務大臣がNHKに厳重注意(行政指導)した。民主党政権下ではなかった放送局への行政指導の復活である。

 安倍首相に近い自民党の若手議員が中心となって、9月の自民党総裁選をにらんで設立したとされる「文化芸術懇談会」では、議員の間からマスコミへ広告を出さないよう財界に働きかけるべきだという声が相次いだり、「安倍首相」の再登板を応援した作家の百田尚樹氏が「沖縄の二つの新聞は潰さないといけない」と発言して問題化したのもこの懇談会での講演だった。百田氏は2013年11月にNHK経営委員に就任したが、安倍首相が任命した(15年2月に任期満了で退任)。

 そして、集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法の成立(9月)をはさみ、放送界はNHKのクロ現の国谷裕子氏、TBS「NEWS23」の岸井成格氏、テレビ朝日「報道ステーション」の古舘伊知郎氏の翌16年春の降板に向けて動き出していた。

 こうした状況の中で、報道の自由への制約が懸念される特定秘密保護法に関心を寄せるケイ氏の来日を政府が「ドタキャン」したのは、2016年7月の参院選への悪影響を避けるための配慮ではないかという報道もあった(ケイ氏の訪日調査は16年4月に実施された)。

 天皇の代替わりに伴って5月4日に行われた一般参賀。実はこの日が選ばれたのは、夏の参院選を視野に入れた官邸の戦略だったという記事を共同通信が5月4日に配信している。宮内庁は平成の代替わりにならって10月の即位関連儀式の後に一般参賀を行うことを計画していたが、官邸はこれを押し切ったのだという。

 皇室さえ政治利用の対象にするような政権であれば、政府への厳しい内容が予想されるケイ氏は日本政府にとって、招かざる客であり、日程をずらそうとする思惑があったのではないかという指摘は説得力がある。実際に政府はケイ氏が報告書のなかで警鐘を鳴らした多くの項目について受け入れていない。

 12月は予算編成で役人が忙しいという事情を考慮したとしても毎年のことである。まして2015年は、臨時国会が召集されなかったのだから、例年ほどではあるまい。本当に調整がつかなかったのだろうか。

 もし、望月記者が「デビッド・ケイさんが菅さんや高市総務大臣とご面会したいというときも、政府側がドタキャンをしたという経緯がございました」と過去の経緯を質問の前置きとして説明するのではなく、少し角度を変えて、「日本政府が土壇場でキャンセルしたのは、菅さんや安倍さんといった政権中枢の指示だとNGOは受け止めていますが、どちらが指示したのでしょうか」と質問していたとしたら、菅官房長官はいったい、なんと答えていただろうか。

 「今回の決定(ケイ氏の訪日調査の延期)は、日本政府の国際人権基準を軽視する姿勢の表れと国際社会から受け止められ、結果として、日本は国内の人権問題を改善する意思が欠如しているとみなされる可能性がある」

 共同要請書は外務省にそう警告した。菅長官が望月記者のドタキャン質問に異様なこだわりを見せるのは、国連人権理事会から実は当時、厳しい抗議が日本政府に寄せられていたことから国民の目をそらそうとしているためではないか。望月記者の質問ミスによって菅長官はむしろ、助けられたのではないか――。

 ドタキャン質問はそうした、いろんなうがった見方ができてしまう。そして図らずも、ノーベル平和賞の受賞者だろうが、国連からの特別報告者だろうが、面会を拒んだり、ドタキャンしたりすることをいとわない官邸の態度が浮かび上がったのである。(「望月衣塑子の質問(3)」につづく)
 
https://webronza.asahi.com/national/articles/2019052700009.html
http://www.asyura2.com/19/senkyo261/msg/472.html

[国際26] 社会主義vs資本主義が前面に 2020年米大統領選巡る争点(長周新聞)
長周新聞 2019年6月1日

 2020年の米大統領選をめぐって、「社会主義vs資本主義」が前面に登場していることがメディアを賑わせている。オカシオ・コルテスがニューヨーク州で民主党の重鎮を破って当選した昨年の中間選挙からの趨勢だが、2016年の大統領選挙で旋風を起こしたサンダース上院議員が、民主党の大統領候補の指名獲得をめざして出馬したことを契機に論議が発展している。

  『日経新聞』(5月25日付)は、サンダースが「国民皆雇用」「国民皆保険」を掲げ、「ホワイトハウスを奪取すれば『連邦雇用保障』政策を実現する」と、北欧を上回る「福祉大国論」を目指すと主張していることを伝えている。その根底には、とくに若い世代の「経済格差への不満がある」としている。「米国は上位1%が全所得の20%を得ており、格差は第二次世界大戦時並みに広がった」。大学授業料の高騰で、低所得層は高等教育を受けられず、大卒者の7割が学生ローンを抱えている。

 サンダースは最低賃金の引き上げや公立大学の授業料無償化を提唱、財源は大企業や富裕層の大増税で賄うとして、「これ以上、アマゾン・ドット・コムなど大企業の税逃れは許さない」と訴えている。また、「国民再雇用」の財源を米国債の増発に求めるという。「インフレにならない限りは財政赤字は問題にならない」という「現代貨幣理論(MMT)」の主導者であるステファニー・ケルトン米ニューヨーク州立大教授が「サンダース陣営に加わる」と表明したことも論議を呼んでいる。

 安井明彦・みずほ総合研究所欧米調査部長は、アメリカで「社会主義という言葉」がにわかに注目を集めるようになった背景には、「若い世代を中心とした、経済システム変革への期待がある。いよいよ熱を帯びてきた2020年の大統領選挙でも、大きな論点になりそうだ」(『東洋経済オンライン』2月25日付)と指摘している。

 サンダースは集会の最後に「99%のわれわれが一つになって、富や権力を握っている1%と対決するんだ!」と訴える。それが、ソ連や中国などの「社会主義」のイメージとは無縁な、2000年代に成長したミレニアル世代の心をとらえているといわれる。

 こうした事態に、トランプが一般教書演説(2月5日)で、「アメリカに社会主義を導入しようという要求を警戒している。アメリカは決して社会主義国にならない」と異例の宣言をするにいたった。共和党陣営が来秋に向けて、自動車に張る「#社会主義者絶対反対」のバンパーステッカーを発売したこともニュースになっている。

 米ギャラップの調査では、「資本主義が良い」と感じる者の割合は2010年には61%だったのが、2018年には56%へと低下した。とくに18〜29歳の若年層では68%から45%へと大きく低下し、51%が「社会主義が良い」と回答し、資本主義を支持する45%を上回った。

 来年の大統領選挙に関するAXIOSの調査では、18〜24歳の回答者の8割以上が「アメリカの経済システムの変革を約束する候補者」を歓迎すると答えている。

 西山隆行・成蹊大学法学部教授は、「今日のアメリカでは、……社会主義という言葉は、政府による管理や統制よりも、平等と結びつけて理解されるようになっている」(『ウェッジ・インフィニティ』2月28日付)と指摘している。

 「近年の民主党左派の中には、高所得者に高い税率を課すよう提唱する人が増えている」。オカシオ・コルテスは年収1000万jをこえる課税所得のある者には70%の限界税率を適用するよう提唱している。

 柴山佳太・京都大学大学院准教授は、『京都新聞』(5月18日付)で「若者、平等な社会に関心」と題して、「最近身近な学生たちと話していると、格差・不平等問題への関心が高まっていると感じる。授業で意見を聞くと、“もっと平等な社会を実現するべきだ”と答える者が少なくない」と発言。アメリカの若い世代の意識の変化と、勤務する大学の学生の意識の共通性を明らかにしている。さらに、「時代の空気は明らかに変わってきたと感じる」「社会全体が責任を持って人々の暮らしを支えるべきだ、という考え方への揺り戻しが進んでいる」と評価している。そのうえで、先のギャラップ社の世論調査とかかわって、次のようにのべている。

 「資本主義が今のような形で続く限り、対抗軸としての社会主義の人気が高まるのは避けられないだろう」「日本では、まだ若者が熱心に応援する政党も政治家も出てきていない。だが、世代交代が進めば、状況は変わってくるだろう」と。

https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/11864
http://www.asyura2.com/19/kokusai26/msg/524.html
[政治・選挙・NHK261] [小沢一郎戦記(12)] 「自分を選んでくれる人たちの気持ちをわからずどうやって政治をするんだ」 小沢一郎26歳、田中角栄と出会う (朝日新聞社 論座)
小沢一郎戦記
小沢一郎26歳、田中角栄と出会う
(12)「自分を選んでくれる人たちの気持ちをわからずどうやって政治をするんだ」

佐藤章 ジャーナリスト、慶應義塾大学非常勤講師、五月書房新社編集委員会委員長
論座 2019年6月03日 より無料公開部分を転載。

https://image.chess443.net/S2010/upload/2019052700001_1.jpeg
田中角栄像の前で演説する小沢一郎氏=2016年7月3日、新潟県南魚沼市浦佐

■政治上の師・田中角栄

 「ドブ板選挙」という言葉がある。側溝が周りにある小さい民家をくまなくたくさん回って、候補者の名前を有権者に刷り込むくらい地域の選挙活動を一生懸命にやるという意味である。この選挙運動には「古くさい」というイメージがつきまとい、マイナスの評価を受けがちだ。

 私はまったくそうは思わない。新聞記者の仕事も政治家のそれに似たところがあって、若いころに地方に配属されると大体は「ドブ板取材」に近いことをしながら日々を過ごす。このころに記者クラブのソファに寝転んで「天下国家」の夢を見ながらうたた寝をしている記者は大した記事を書くことができない。

 政治家の場合も、「ドブ板選挙」をやることによって住民の声をたくさん聞き、国民生活にとって何が問題か、国政にとってどういうことが重要なことなのか、身に染みてわかってくるのだと私は考える。

 事前に想像していた通り、この連載の主人公、小沢一郎も同じ考えを持っていた。そして、その考えは多分に政治上の師、田中角栄から引き継いだものだった。

 1968年5月8日に衆院議員だった父親の小沢佐重喜が急死、弁護士を目指していた長男の小沢一郎は司法試験の択一(短答式)には受かったが、急遽次の総選挙に立候補することになり、自民党内で頭角を現わしていた田中角栄の門を叩いた。

――お父さんは藤山愛一郎の派閥でしたが、当時自民党内では幹事長に就いていた田中角栄が頭角を現わしてきて勢いもありました。また、お父さんも小沢さん自身も官僚的なことは好まないということで田中さんの門を叩いたということですね。紹介者はいたのでしょうか。

小沢 ええ、田中先生の秘書の榎本敏夫さんです。ロッキード事件で有名になってしまったけれども、いろいろお世話になった人の知人だったのですね。その紹介で会うことができました。

ロッキード社から全日本空輸(全日空)に対する旅客機売り込
みに際して当時の首相、田中角栄に謝礼5億円が支払われたと
いう「ロッキード事件」は、一審の東京地裁で田中有罪。田中
は控訴したが二審の東京高裁でも控訴棄却。最高裁で審理中の
1993年12月16日に田中が死去して公訴棄却となった。一審で
の田中弁護方針は5億円受け取りの完全否定だったが、榎本敏
夫秘書はメディアに受け取りを認めた。しかし、榎本は首相就
任の「お祝い」としての受け取りと証言しており、ロッキード
事件は、同時期に日本導入話が進んでいた対潜哨戒機P3Cの件
と併せ、その真相は闇の中となっている。

――最初に田中さんを訪ねたのは、砂防会館ですか。

小沢 違います。目白の自宅です。

――初めて会った田中さんの印象はどういうものでしたか。

小沢 それはもうすごいです。田中先生には、その当時、渡辺美智雄、田中六助、宮沢喜一は誰も会えないんだから。まともに会って喋れない。そのくらい上だったから。我々なんか事務所に行って声をかけるなんていうことはありえない。ただ顔を見に行って、親父が「おう」とひとこと言って、「頑張っているか」「はい」と、それだけだよ。もう怖かったな。ぼくが怖いなんて言われるけれども、こんなものじゃない。

――抽象的な言い方ですが、カリスマ性のようなものを感じるんですか。

小沢 昔の人はそうだけど、そういう権威とかを重んずる気持ちが強かったし、リーダーとしてそれだけのものを持っていたのかもしれません。今はそういう意味のリーダーはいないね。

 また、田中先生はきつかったよ。政治家をしっかりやりたいんだったら、毎日辻立ち、毎日戸別訪問何万人と言われて、選挙に対してはものすごく厳しかったね。

――初対面の時から厳しかったのですか。

小沢 もちろん。今時の政治家のように若い者にゴマなんかすってないよ。ビシビシやられたね。

――当時、小沢さんが26歳ですから、田中さんから見れば当然まだ青年でしたね。

小沢 ぼくと田中の親父の長男とは同い年だったから。

田中角栄と正妻の間には2人子どもがあり、田中真紀子の上に
長男の正法がいた。小沢と同じ1942年に誕生したが、4歳の時
に夭折した。

――そうですよね。その点で余計可愛がられたという感じはありましたか。

小沢 たぶん、親父の心理としては、それはあったんだろうね。

■大企業や大労働組合は票にならない

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街頭演説で並び立つ小沢一郎氏と国民民主党の玉木雄一郎代表。ビール箱に立っての演説は小沢氏の「定番」だ=2019年1月28日、東京・有楽町

――それでは、田中さんは最初から、じゃあこっちへ来いという感じだったのですか。
 
小沢 そんなことは絶対に言わない。

――言わなかったですか。

小沢 まず言っていない。なかなか了解しなかったよ。普通、親の後を継ぐんだから当選の確率は高いでしょう。それでも、なかなか了解しなかった。ちゃんと自分でやっていく能力がなければだめだと。

――すると、お父さんの死去が1968年5月ですから、こっちへ来てもいいよとなったのが、例えば翌年の1月とか2月とかですか。

小沢 もっと後だったね。ぼくが選挙運動を始めて、いろいろやったその挙げ句だったね。そして、東京でぼくのマイナスの情報を入れる人もいたんだね。あいつは人前で話ができないとか、あんなのはダメだという類の話を入れる人がいたから余計厳しかった。事実、ぼくは人前で喋ったことがなかったから。それで初めて人前で喋ったのは、4、5千人集まった演説会だったかな。コップで冷や酒2杯飲んで会場に行った。だから、何を言ったのか覚えてないくらいだったね。

――小沢さんは、酒は顔に出ないんですか。

小沢 出ない、出ない。

――じゃあ大丈夫ですね。

小沢 ぼくが(1968年の)12月に選挙に出る決断をして、その翌年の春ごろかな、ぐるぐる回り出して大きな会合をやって、それでようやく、まあまあいいかという感じになりました。その意味で、厳しかったから自民党は強い面があった。日常活動を徹底してやれということは先輩がみんなに言っていたからね。

――ぐるぐる回るというのは、生活時間もかなり削られるわけでしょう。

小沢 毎日毎日、朝から晩までね。親の残したものはあったから、回る対象はあったわけで、その意味では楽だったけど、運動量としては他の人と同じかそれ以上にやったね。

――朝は何時頃から回るんですか。

小沢 何時だろう。その時によるけれども、相当早くから回ったね。7時か8時かな。みんな早く起きているから。夜はそうそう遅くまでは回れないから。町場だと多少遅くてもいいけれども、田舎はそこまでは回れないからね。

――車で回るんですか。

小沢 田舎は車でなきゃとても回れない。町場は歩いて行ったよ。

――小沢さんは、選挙の時はまず郡部の方から先に回って、それから都市部の方へ攻めてくるという戦略を持っているのですよね。

小沢 そう、川上からね。

――そうすると、選挙の時には周りの郡部の方から攻めるわけですか。

小沢 選挙というか、日常活動ですね。選挙の期間なんて大したことないでしょう。日常ですよ。

――郡部から回れというのは、主に田中さんから教わったのですか。

小沢 郡部から回れというのはそうかもしれないな。けれども、自分自身としても考えてそういうふうにするようになりましたね。郡部はあまり人が行かない。それに今になるとますます過疎化して限界集落なんて言うでしょう。ところが、政治家というのはみんな、人の多いところへ行きたがるんですよ。だけど、大勢いたからって、その候補者に入れる人なんかいませんよ。それはまったくの素人のやり方なんだ。人の少ない郡部ほど政治の力を必要としているし、みんな寂しがってるんです。だから、本当に政治の力を欲しているところから回る。

 それからもうひとつは、町と言っても田舎の町の人は周辺の郡部から出てきているわけだから、そういう郡部に住んでいる人たちの息子や娘たちへの宣伝効果もあるんです。町に住んでいる人でも、ああわざわざ自分の実家の方まで行ってくれたんだということになる。いろいろな意味で、政治的にも人間関係的にも川上からなんですよ。

 実は、都会でも川上からなんです。都会でも川上と川下はあるんだ。みんなこれがわかっていない。だから選挙がダメなんだ。都会で言えば、大企業とか大労働組合とか、そんなのは票にならないんです。

――小沢さんは若手の議員に対して、とにかく自分の足で選挙区を回れとよく言っています。選挙区をこまめに回ることによって政治の課題が見えてくるんだと言っています。私は、政治家が現実の政治問題を把握する時に非常に正しい方法だと考えるんですね。

小沢 それが民主主義の基本ですね。自分を選んでくれる人たちの考えや気持ちをわからないで、どうやって政治をするんだということです。政治のイロハだと思います。

■安倍晋三さんは都会育ちだからね

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党首討論で質問する小沢一郎民主党代表(当時、右)と質問を聞く安倍晋三首相=2007年5月16日、国会内で

――若いころ選挙区を懸命に回って見えてきた政治課題の中で、印象に残っているものはありますか。

小沢 それは走馬燈のごとくいろいろとありますが、かつての自民党を思い出せば、今の自民党はまったく変質してしまった。自民党とか、日本の政治経済を動かしているトップの人たちは大体田舎から出てきている人たちなのに、自ら田舎を忘れてしまっている。

 日本は、東京への集中のメリットによって経済が大きくなってきた反面、その状態のままでは地方が寂れていってしまう。これでは最終的に日本はだめになってしまうという思いの中で、例えば田中角栄の日本列島改造論というようなものが出てきた。都会だけじゃなくて日本全国に経済発展の恩恵を及ぼすことが重要だということですね。

 ところが、今の自民党はそれがまったくなくなっちゃったな。安倍晋三さんにはまったくないね。もっとも晋三さんは ・・・ログインして読む
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https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019052700001.html
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[原発・フッ素51] 物理学者入口紀男氏の汚染土と国益への所見(ちきゅう座)
2019年 6月 4日
<山端伸英(やまはたのぶひで):メキシコ在住>

日本政府・環境省とNHKは共謀で次のような放射能汚染土(除染土という言葉に騙されているのか、国民は???)の農地利用を5月24日発表している。それについて物理学者入口紀男氏に聞いた。

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除染土の再生利用の作業を公開
NHK 05月24日 19時23分

除染で出た土などを再生利用する実証事業が全国で唯一進む飯舘村の長泥地区で、土の放射性物質の濃度を測る作業などが報道陣に公開されました。

環境省は、福島第一原発の事故にともなう除染で出た土を全国で再生利用する計画ですが、各地で反発が相次ぎ、実証事業は飯舘村の長泥地区だけで進められています。

長泥地区では、村で行われた除染で出た土を汚染されていない土で覆い、農地として利用する計画です。

再生利用される土は1キロあたり5000ベクレル以下のものに限られ、24日は「再生資材化施設」と呼ばれる施設で、異物を取り除いて、放射性物質の濃度に応じて分別する作業が公開されました。

環境省によりますと、濃度が基準を下回った土をこれまでにおよそ100立方メートル確保したということで、来月以降、こうした土が埋まった農地で、バイオマス発電などの燃料として使う作物が栽培される予定です。

長泥地区の鴫原良友区長は、「もろ手を挙げては安全安心とは言えないが、住民の同意を得て決断した。環境省には落ち着いて事業をやってもらいたい」と話していました。

環境省福島地方環境事務所の細川真宏中間貯蔵部長は、「住民と、思いや情報を共有しながら、事業をさらに前に進めていきたい」と話していました。

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入口紀男氏のコメント::::

1キログラムあたり 5,000ベクレルですが、土の比重を考えると 1リットルあたり5,000〜10,000ベクレルですね。

セシウム137とストロンチウム90が半減期(約30年)を繰り返して 1,000分の 1になるには少なくとも「300年」かかります。今から300年昔は徳川吉宗が享保の改革をやっていたころですね。

栽培されてバイオマス発電の燃料となる植物が汚染されると、大気の放射能汚染が発生するので、汚染土は栽培される植物の根が届かないように「深く」埋設することが必要です。
汚染土は地下水に触れて汚染が地下で広がらないように、「浅く」埋設することが必要です。
そのように「深く」埋設して、かつ「浅く」埋設することなど、できるわけがありません。

また、雨水で濡れたり、天日で乾いたりすることを長い年月をかけて繰り返すと、局所的に濃淡ができて、濃いところは放射性物質の「鉱脈」となり、国の基準を上回る箇所もできるでしょう。

*入口紀男氏のFACEBOOK 5月27日より承諾を得て投稿。

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また、次の判例を挙げて『国益』をめぐる司法の姿勢についても紹介しておられる。

同じく入口紀男氏のFACEBOOK、5月27日分より(御承諾済み):::::

大飯発電所3・4号機の第一審(福井地裁)の判決理由

第一審の判決主文はその後第二審で覆りましたので「既判力」はありませんが、樋口英明判事の「ヒューマニズム」がその「判決理由」(下記)の中に今も生き続けています。

判決主文: 「大飯発電所3・4号機の原子炉を運転してはならない」

判決理由(抄録):

「被告(政府・関西電力)は本件原発の稼動が電力供給の安定性、コストの低減につながると主張するが、当裁判所は、極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いの問題等とを並べて論じるような議論に加わったり、その議論の当否を判断すること自体、法的には許されないことであると考えている。

このコストの問題に関連して国富の流出や喪失の議論があるが、たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると当裁判所は考えている。

また、被告は、原子力発電所の稼動が CO2排出削減に資するもので環境面で優れている旨主張するが、原子力発電所でひとたび深刻事故が起こった場合の環境汚染はすさまじいものであって、福島原発事故は我が国始まって以来最大の公害、環境汚染であることに照らすと、環境問題を原子力発電所の運転継続の根拠とすることは甚だしい筋違いである」

― 裁判長裁判官 樋口英明(2014年5月21日)―

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30数年前、日本から離れる際、本の整理をせざるを得なくなったとき、武田泰淳氏の『滅亡について』という装丁の立派な本を手にして古本屋で一瞬躊躇したことがあるが、現在の日本と日本国民が、異常な元気さで国土を破壊している姿に驚くほかない。

何という人間性に対する集団的裏切りなのだろうか。

この集団が一部の利益にしたがっているのか、国民の多数が小選挙区などの保守的手段で騙されているのかは、もはや『戦後』に考えればいいのではないか。

もちろん、悲観するのは早いかもしれない、しかし、この官僚たち、大手メディアの保身主義的堕落の平常心を目の当たりにするとき、早すぎもしないのだ。

国土は明らかに破滅に瀕している。


〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion8693:190604〕
 
http://chikyuza.net/archives/94177
http://www.asyura2.com/19/genpatu51/msg/605.html

[政治・選挙・NHK261] 台風の目になり得る“れいわ新選組”(長周新聞 コラム狙撃兵)
2019年6月4日
 
 参議院議員の山本太郎が立ち上げた“れいわ新選組”が今夏の衆参ダブル選挙(想定)に挑戦するために寄付を呼び掛けたところ、5月末までに1億5000万円超が寄せられ、その後も伸び続けているという。3億円集まれば参院選に10人(選挙区5人、比例5人)を擁立し、5億円ならば2人区以上のすべての選挙区に候補者(13人)を立てると同時に、比例代表でも25人を擁立できるとしている。衆参ダブル選挙であれば10億円以上必要となり、その場合、比例の全11ブロックに45人を擁立することができるとして、供託金等等の選挙費用の内訳についてホームページで説明している。政党交付金など浮き袋がなにもないなかで、なにがなんでも局面を動かそうという気概に日本列島の津津浦浦からさまざまな人が呼応し、いわば軍資金ともなる政治資金を続続と寄せているのである。「思いっきり大暴れせよ!」と期待して−−。
 
 馴れ合いと予定調和の政治構造にどっぷりと浸かり、くたびれた野党が有権者から見離されている。反対のための反対をして飯を食う政党とでもいおうか、屁の突っ張りにもならない霞んだ存在感となって久しい。ところがそうした状態をもっけの幸いにして、安倍自民党が支持率17%プラス公明党の支援で一人勝ちする選挙が続いている。政党政治への不信感がかつてなく強まっており、およそ半数の有権者が選挙を棄権することによって、お粗末ながら「一強」なるものが担保されているのである。諦めと不信によって支えられた体制であり、幻滅の副産物が「国権の最高機関」を独占している状態だ。これは政党政治の壊死状態といっても過言ではない。
 
 こうした状況を打破するために、選挙や政治から阻害された残りの5割に訴えを届け、政治参加を促していく新勢力の登場が切望されてきたが、希望や維新といった上から与えられた(自民党がピンチの際に急ごしらえされる第二自民党)まがいものの新党とは異なり、街頭で足腰を鍛え、路上から立ち上がっていく形で“れいわ新選組”が台頭し、にわかに注目を浴びている。商業メディアの劇場型に支えられたプロモーションではなく、地道に街頭、路上から一人一人とつながり、批判意見にも耳を傾けながら論議し、旋風を起こしているのが彼らの特徴だ。朝日新聞の世論調査では野党では立憲をこえてトップの支持率9%というから、「もっとやれ!」と挑戦を面白がっている有権者がいかに多いかをあらわしている。しっかりとした候補者選定と政策ブレーンの結集が進めば、今夏の衆参ダブル選挙において台風の目になり得る可能性を十分に秘めているのである。
 
 スペインでポデモス、イタリアで五つ星が台頭し、アメリカでサンダース現象が起こっているように、変革を求める息吹は日本国内でも充満しきっている。持って行き場がないというだけで、受け皿を求めている状況は同じだ。国民のためにたたかう政治家の誕生、新政党の躍進なるか、山本太郎はじめとした若き挑戦者たちが泥まみれになって大暴れする姿に期待したい。 武蔵坊五郎

れいわ新選組ホームページ
https://www.reiwa-shinsengumi.com/#

https://www.chosyu-journal.jp/column/11872
http://www.asyura2.com/19/senkyo261/msg/552.html

[政治・選挙・NHK261] 天安門事件と光州事件 − 軍は躊躇することなく国民に発砲する(澤藤統一郎の憲法日記)

6月4日である。あの天安門事件から30年が経った。この事件は私の胸に突き刺さるトゲだ。これに触れられるたびに胸が痛む。

学生の頃、中国革命を輝かしい歴史の到達点と評価していた。ここにこそ人類の未来があると信じていた。それが、次第に色褪せて、トドメを刺されたのが天安門事件だった。

今年(2019年)は、「三一独立運動」「五四運動」の両事件から100年でもある。朝鮮でも中国でも民主主義・民族主義運動の先頭には、100年前から立ち上がった学生の姿があった。純粋な理想と情熱をもって体制に抵抗し、社会を改革しようと行動することは若者の特権である。

以来脈々と学生運動の灯は受け継がれてきた。1980年韓国「光州事件」(光州民主化運動)と、1989年中国「天安門事件」の対比が、なんとも痛々しい。

光州事件を舞台にした、映画「タクシー運転手」の中に、印象に残る主人公のセリフがある。戒厳令下の光州で軍が市民に発砲しているという噂を打ち消そうとしてこう言う。

「ボクも、兵役で軍隊にいたからよく分かる。軍隊は国民を守るためにある。軍人が自分の国の市民を撃つことなんてあり得ない。」

やがて、光州に入ったタクシー運転手は、軍隊が躊躇することなく市民を攻撃するという、あり得ない光景を目撃して驚愕する。

それでも光州事件の犠牲者は、今その事件に光が当てられ、国民が記憶し、韓国民主化の礎とその名誉を讃えられている。もちろん、加害の責任追求にも怠りがない。一方、天安門事件の犠牲者は、その対極にある。

中国の民主化を求める天安門広場のデモ隊は、一時は100万人に達して、あの広大な広場を埋めつくしたという。このデモ隊に、軍からの解散命令が出た。引くか、抵抗を続けるか、デモ参加者の賛否は割れたという。このときまで、「解放軍が人民に武力を行使することはあり得ない」と信じられていた。

しかし、ケ小平をトップとする人民解放軍は、武器を持たない平穏なデモ隊に発砲した。躊躇なく徹底して。ここ中国の首都でも、あり得ないことが起こったのだ。光州より遙かに大きな規模で。しかも、軍の武力が民主化を求める民衆の運動を押さえ込むことに成功している。少なくとも、この30年は。犠牲になった人々の名誉はさらに傷つけられ、事件を闇に葬ろうという圧力は弱まることがない。

民主化をなし遂げた韓国と、民主化運動弾圧に成功した中国。その落差は大きい。
そして、思うのだ。軍隊とは、常に国民を守るというものではない。これは、皇軍だけの特殊事情ではない。ある局面では、容赦なく国民を殺す存在なのだ。政権や、資本や、宗主国や、特定の指導者を擁護するために。この教訓を忘れてはならない。
(2019年6月4日)

http://article9.jp/wordpress/?p=12739
http://www.asyura2.com/19/senkyo261/msg/564.html

[政治・選挙・NHK261] 日本メディアの独立懸念 国連報告者「政府は勧告未履行」(東京新聞)
2019年6月5日 夕刊

【ジュネーブ=共同】 言論と表現の自由に関する国連のデービッド・ケイ特別報告者が、日本では現在もメディアの独立性に懸念が残るとする新たな報告書をまとめたことが四日分かった。日本の報道が特定秘密保護法などで萎縮している可能性があるとして同法の改正や放送法四条の廃止を求めた二〇一七年の勧告を、日本政府がほとんど履行していないと批判している。

 報告書は六月二十四日開幕の国連人権理事会に正式に提出される予定。

 報告書によると、日本政府が放送局に電波停止を命じる根拠となる放送法四条は効力を持ち続けており、事実上、放送局への規制になっていると指摘。政府に批判的なジャーナリストらへの当局者による非難も「新聞や雑誌の編集上の圧力」と言えるとした。「政府はジャーナリストが批判的な記事を書いても非難は控えるべきだ」としている。

 ケイ氏は一七年に公表した対日調査報告書で、日本政府に十一項目を勧告。勧告に法的拘束力はないが、政府は不正確な情報に基づくと反論していた。ケイ氏は調査の結果、九項目が履行されていないとしている。
 
 
◆勧告11項目と履行状況
 
 デービッド・ケイ特別報告者が日本政府に勧告した十一項目の主な内容と履行状況に関する評価は次の通り。

 (1)政府による介入の根拠となる放送法四条の廃止=未履行

 (2)歴史的出来事に関し教材で示された解釈に対し介入しない=未履行

 (3)教科課程の作成過程の完全な透明化を保証する=一部履行

 (4)国連の真実・正義などに関する特別報告者の訪日の招請=未履行

 (5)政治活動を不当に制限するような公選法上の規定を廃止する=未履行

 (6)特に沖縄における平和的な集会と抗議の権利を保障するために、あらゆる努力をする=未履行

 (7)特定秘密保護法で安全保障上問題なく公益に資する情報については、開示しても処罰されない例外規定を設ける=未履行

 (8)公益に資する情報の報道を促進する社会的規範の原則づくりを進める=評価できるだけの十分な情報がない

 (9)特定秘密保護法の執行が適切に行われるように、専門家による監視組織を設置する=未履行

 (10)広範に適用できる差別禁止法を制定=未履行

 (11)将来的に通信傍受に関する法律を制定するに当たっては、独立した法機関の監視下で、極めて例外的な場合にしか、通信傍受は行わないと明記する=未履行
 
 
◆沖縄抗議への圧力批判 山城氏有罪 表現の自由萎縮恐れ
 
 【ジュネーブ=共同】デービッド・ケイ特別報告者の報告書は、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設への抗議活動などに日本の当局が圧力を加えたり、過度に規制したりし続けていると批判した。

 特に抗議活動に絡み威力業務妨害などの罪に問われた沖縄平和運動センターの山城博治(やましろひろじ)議長に対し懲役二年、執行猶予三年の刑が確定したことについて、表現の自由の権利行使を萎縮させる恐れがあるとした。

 報告書は、山城氏が長期間拘束されたことに国連の特別報告者や恣意(しい)的拘束に関する作業部会が国際人権規約違反などとして日本政府に是正を求めたと指摘した。

 その上で、集会と表現の自由は「密接に関連し、互いに補強し合っている」と強調した。
 
http://www.asyura2.com/19/senkyo261/msg/611.html

[政治・選挙・NHK261] 国連報告者が新報告書 メディアの独立懸念に菅長官「不正確」と反論(産経新聞)
産経デジタル 2019.6.5 23:07

 言論と表現の自由に関する国連のデービッド・ケイ特別報告者が、日本で現在もメディアの独立性に懸念が残るとする新たな報告書をまとめた。菅義偉(すが・よしひで)官房長官は5日の記者会見で「政府の立場を十分に反映していない内容で極めて遺憾だ。不正確かつ根拠不明のものが多く含まれ、受け入れられない」と反論した。

 今月24日開幕の国連人権理事会に提出予定の報告書は、日本の報道が特定秘密保護法などで萎縮している可能性があると指摘。同法の改正や、放送局に電波停止を命じる根拠となる放送法4条の廃止などを求めた2017年の11項目の勧告のうち、9項目が未履行だとした。政府に批判的なジャーナリストらへの当局者による非難も「新聞や雑誌の編集上の圧力」とした。

 また、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の名護市辺野古移設反対派への有罪確定に懸念を示し、日本政府に集会と表現の自由を尊重するよう求めた。

 国連人権高等弁務官事務所は17年5月、ケイ氏の対日調査報告書を公表し、ケイ氏は日本政府に11項目を勧告した。勧告に法的拘束力はないが、日本政府は当時「丁寧な説明を尽くしたにもかかわらず、わが国の立場を十分に反映していない内容の報告書になったことは極めて遺憾だ」(菅氏)と反論していた。

 同事務所は「指摘の大半が噂や決めつけに基づく」「勧告は日本の現状や日本文化に対する不正確で不十分な意見を含む」などとする日本政府の反論書も公表していた。

 菅氏は5日の記者会見で、これまでケイ氏に対し「日本の立場を丁寧に説明してきた」と重ねて強調した。移設反対派の有罪判決に関しても「憲法の下、表現や集会の自由は最大限保障されている」と述べた。

http://www.asyura2.com/19/senkyo261/msg/615.html

[政治・選挙・NHK261] どうして? いつのまに、日本が民主主義後進国に?(澤藤統一郎の憲法日記)
 
デモとストとは、民主主義社会の健全性をはかるバロメータである。デモは政治的言論の自由を象徴し、ストライキは経済的要求活動の活性度を表す。デモもなくストもない社会は、抑圧された社会であるか、 活力を失って零落しつつある社会でしかない。当然に、民主主義後進国ということにもなる。どうも、日本がそれに当たるようなのだ。

ドナルド・トランプという粗野で我が儘な人物がいる。「人種差別主義者で戦争屋で女性蔑視者で環境破壊者」なのだ。アメリカの民主主義は、こんな人物に権力を預けた。それゆえトランプは、粗野で我が儘だけでなく、最も危険な人物となった。

この男が今年(2019年)の5月25日から28日まで日本にやって来たとき、政権と皇室と大相撲とゴルフ場が、最大限のオモテナシをした。これは、粗野で我が儘で危険な人物への対応としてあるまじき、明らかに異常な事態。一方、トランプの訪日に抗議する真っ当な民衆のデモは、まことに小規模なものでしかなかった。残念ながら、日本の社会が抑圧されて活力を失っていることを如実に示す結果となった。

そのトランプが、6月3日から訪欧し、まずは4日イギリス・ロンドンで市民運動の大規模なデモに迎えられた。ロンドン発時事によれば、
「トランプ米大統領の国賓訪英に反対する大規模デモが4日、
ロンドンで行われた。米英首脳会談に合わせたもので、全国
各地から推定で約25万人が参加。『共にトランプに対抗し
よう』をスローガンに、人種差別的とされるトランプ氏の政
策に抗議の意を示した。デモは反戦・女性団体、環境保護団
体など複数の市民グループが共同で主催。市中心部のトラフ
ァルガー広場から、会談会場の首相官邸に近い議会議事堂前
広場に向け、参加者らは『人種差別にノー』『トランプ(の
政策)を捨てよう』などと書かれたプラカードを掲げて練り
歩いた。野党労働党のコービン党首も参加し、集会で『(デ
モは)トランプ氏に攻撃を受けた人々を支援する機会だ』と
演説した。
議事堂前広場には抗議の一環として、トランプ氏をおむつ姿
の赤ちゃんに見立てた巨大風船『トランプベビー』が掲げら
れた。ロイター通信によると、企画した一人は『大統領に対
し、いかにこの国で歓迎されていないか想起させたい』とコ
メント。デモは、バーミンガムやグラスゴーなど国内各地で
も企画された。」

イギリス社会は、おむつ姿の巨大風船『トランプベビー』を掲げることによって、その知性も理性も、そして活力も失っていないことを世界に示したのだ。

ところで、日本での反トランプのデモは極めて小さい規模のものだったが、新天皇の就位をめぐっての提灯行列は大規模に行われた。シンガポール陥落を祝っての昔の話ではなく、21世紀の今の実話。けっして作り話ではない。

「愛知県を訪れている天皇皇后両陛下は1日夜、名古屋市
内の宿泊先のホテルで、ちょうちんを手に集まった大勢の
住民の歓迎にこたえられました。
両陛下は全国植樹祭に出席するため、1日から2日間の日
程で愛知県を訪問していて、… そして1日夜、名古屋市
内の宿泊先のホテルの前にある公園には、大勢の人たちが
ちょうちんを手に集まり、両陛下も午後8時半すぎ、ホテ
ルの17階にある明かりが消えた部屋の窓辺にちょうちん
を持って立たれました。
住民たちがちょうちんを振ったり万歳三唱をしたりして歓
迎の気持ちをあらわすと、両陛下は、上下左右にちょうち
んを振ってこたえられました。最後に部屋の明かりがつい
て両陛下の姿が見えると住民から歓声があがり、両陛下
は、何度も手を振ってこたえられていました。」(NHK)

いうまでもなく、「提灯を持つ」とは、頼まれもしないのに進んで他人の手先として働くこと。あるいは、へつらってその人をひたすら褒めて宣伝することをいう。引用したNHKの報道を「提灯記事」というのだ。戦前の国家主義教育を受けて滅私奉公を叩き込まれた臣民は、こぞって天皇に提灯を持ち、群をなして提灯を掲げた。嗚呼、日本国憲法下の今にしてなお、その臣民根性が抜けやらぬのだ。

提灯から、火袋を外すと、ろうそくとなる。韓国の民主化運動では大規模なろうそくデモが繰り返された。朴槿恵政権を退陣に追い込んだのは、光化門広場を埋めつくし溢れ出た100万を遙かに超す人々のろうそくデモだった。提灯行列と、ろうそくデモ。ちょっと似ているが、まるっきり違う。権威や権力に操られた人々のへつらいと、主権者としての自覚に基づく権力打倒の政治行動。

こんなはずはなかった。戦後の日本は、思想・良心の自由も、表現の自由も、民主主義も手にしたはずではないか。食糧メーデーも、血のメーデーも、安保闘争も、スト権ストも、公害闘争も、原水禁運動も積み重ねてきた。アベのような戦前回帰主義者に抗して、改憲だって阻止し続けてきたではないか。

それが、どうも最近調子がおかしくはないか。デモもストも、規模が小さい。元気がない。日本はいつから民主主義後進国になってしまったのだろうか。
(2019年6月6日)

http://article9.jp/wordpress/?p=12748
http://www.asyura2.com/19/senkyo261/msg/620.html

[政治・選挙・NHK261] 欠陥機大量購入の愚 F35 147機に30年で6兆円もの支出(長周新聞)
長周新聞 2019年6月6日

■米政府監査院が技術的欠陥を指摘

 「日本は米国製防衛装備の最大の買い手だ。F35戦闘機を105機購入すると発表した」「米国の同盟国の中で日本が最大のF35保有国になる」−−5月27日の日米首脳会談後の会見でトランプ大統領が自慢げに語った米国製ステルス戦闘機F35について、米政府監査院(GAO)が欠陥品であることをあいついで指摘している。日本では4月、航空自衛隊が導入したばかりのF35が青森県沖で墜落する事故が起きており、米国政府機関が「欠陥機」と認めるF35の大量購入について強い懸念が渦巻いている。

 日本が購入するF35は、この3月末までに三沢基地に配備された13機を含める購入決定分とあわせて147機にのぼる。機体価格は1機116億円といわれ、総額で1兆7052億円。さらに防衛装備庁の年次報告書によれば1機あたり年間の維持管理費は307億円であるため、機体購入額を含めた30年間の支出総額は6兆2000億円をこえる莫大な額となる。

 F35については、これまでも無数の製造上の技術的欠陥が指摘されてきたが、GAOは4月に正式に報告書を公表した。そこでは、必要な部品が調達できていないことや修理の長期遅延などが原因で、2018年の5月から11月の間に米海兵隊に配備されたF35の3割が飛行不能に陥っていたことを明かし、「戦闘機として必要な要件を満たすだけの実績が揃っていない。多面的な任務が遂行できず、必要な距離を飛行することもできない」と指摘している。

 とくに「危機的で安全性や重要な性能を危険にさらす」欠陥が、前年の報告書であげられていた111件のうち13件が未解決であり、運用試験が始まった昨年12月以降も新たに4件判明している。

 具体的には、「コックピットの画面がフリーズ(システムの異常による停止)し、ソフトウェア修正のための運用試験開始が遅延」「夜間飛行でヘルメット装着型のディスプレイが不鮮明」などのほか、酸素欠乏などで乗員の身体にかかわる異変が35件も発生するなど、パイロットの生命維持装置(LSS)にも欠陥を抱えているという。いずれも原因を特定できておらず、「今後数年解決しない問題もある」としている。だが、米国防総省はこれらの欠陥の修正をフル生産の開始を決定する今年10月以降に先延ばしする方針で、GAOは多くの欠陥が「フル生産までに解決されない」と批判している。

 また、5月に公表された報告書では、「製造上の欠陥によりエンジン燃料管が飛行中に破裂した」事例を記している。しかも、交換が必要な古い燃料管が117機で使用されており、これは世界中に配備されたF35の約4割に当たると報告している。

 昨年4月の開発試験終了前にも966件の欠陥が確認されており、年末までに800件以上の欠陥が解決に至っていなかったことも明かしている。米ニュースサイト「ビジネス・インサイダー」は、米軍が開発中の「最悪の兵器プロジェクト」のワースト5にF35戦闘機をあげた。

 今年4月に青森県沖で墜落した航空自衛隊三沢基地配備のF35「ライトニングU」は、同型機では初の事故であり、米ロッキード・マーチン社が開発し、はじめて日本で組み立てられた最新鋭機だった。乗っていたパイロットは行方不明、エンジンや主翼の一部をのぞいて機体の大部分も行方不明のまま2カ月が経過し、防衛省は捜索の打ち切りを表明した。事故原因を特定するために必要なフライトレコーダーも見つかっていないにもかかわらず、事故の原因は「パイロットが平衡感覚を失った可能性が高い」と行方不明のパイロットの人的問題として片付けて同型機の飛行再開を命じている。

 ところが事故機は2017年6月の試験飛行で冷却系統の警報装置が作動して名古屋空港に着陸し、昨年8月にも不具合で千歳空港に着陸しており、同機を含めて配備したF35・13機のうちの5機が不具合で7回も緊急着陸していることを防衛省が明らかにしている。

 事故機のパイロットが緊急脱出をしていなかったとの情報とともに、米国であいついで発生しているパイロットの酸素欠乏(呼吸調節装置の故障)による重大事故との共通点も指摘されており、事故原因に機体の問題が絡んでいることが濃厚といえる。だが、防衛省は「配備計画は変更はない」として運用を継続する方針だ。

 一方、F35の導入を決めていたイギリス、フランスが同機の調達を中止したのにつづき、ドイツ国防省も調達中止を決定。同じく共同開発国であるカナダ政府も、購入・維持価格が160億ドル(約1兆3360億円)から450億ドルへと3倍近く高騰したため、予定していたF35全65機の導入を白紙撤回した。イタリア政府も、長期的に90機の調達を予定していたが、国防相自身が「追徴金の原因となる」として調達の打ち切りを表明している。オランダも、導入機数を90機から37機へと大きく削減した。

 製造国の米政府機関が欠陥機と認定し、現実に原因不明の事故や墜落があいついでいるF35の導入は、国防云云以前に、乗り込む自衛隊員の生命と安全にかかわる重大な問題をはらんでいる。購入や運用を決めるのは政府だが、費やされるのは6兆円を超える膨大な国民の税金であり、命を賭して乗り込むのは自衛隊員である。そして墜落すれば製造元を守るために「パイロットの過失」とするなど、「国防」を掲げながら、自国民の財産や生命よりも米国の利益を優先した無責任かつ異常な取引が日米間で進行している。

https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/11887
http://www.asyura2.com/19/senkyo261/msg/621.html

[政治・選挙・NHK261] 「高等教育無償化」で文科省が大学を支配する 大学は国のいいなりでは社会に貢献できない (朝日新聞社 論座)
小林哲夫 教育ジャーナリスト
論座 2019年06月07日

https://image.chess443.net/S2010/upload/2019060300003_1.jpeg
文科省入り口

■「無償化」要件の罠

 いま、国は大学をデザインしている。

 大学を好き勝手に操っている、といってもいい。

 国にとっていちばん都合の良い大学とは何かを考えながら、高等教育政策を打ち出しているとしか思えないからだ。悲しいかな、大学はそれに粛々と従っている。無視したり、反旗を翻したりするとお金とかお墨付きとかがもらえない。ヘタしたら大学運営の根幹に関わってしまうからだ。

 今年5月、「大学等における修学の支援に関する法律」が成立した。所得が低い世帯の学生への入学金・授業料が減免されることになり、「高等教育無償化」政策と喧伝されている。たが、「無償化」の恩恵を受けるためには、国が指定する大学に通わなければならない。どういうことか。

 「無償化」大学にはこんな要件がつけられている。「実務経験のある教員による授業科目が標準単位数(4年制大学の場合、124単位)の1割以上、配置されていること」「法人の「理事」に産業界等の外部人材を複数任命していること」――。

 ここで示された「実務経験のある教員」とは大学業界で実務家教員と呼ばれ、企業の財務管理、資産運用、海外事業展開の担当者、官庁や自治体での政策遂行責任者、あるいは、弁護士、公認会計士、税理士などを指している。いま、大学には社会で役に立つ人材を育成するためには専門知をきわめさせるより、職業訓練を優先させたほうがいいという考え方が浸透しつつある。就職実績の向上が、志願者の増加につながると信じられており、そのためには。実務家に手とり足とり指導してもらいましょうというわけだ。

 文科省はこうした大学の弱みをわかった上で、実務家教員を推奨する。そこで割を喰うのが「世間知らずの学者」だ。彼らは「社会の役に立たない学問をは教えている」と言われ、隅に追いやられてしまう。定年でリタイアしたあと、空いたポストには実務家教員がおさまっているというケースがよく見られるようになった。一方で、「即戦力を育ててほしい」という企業からのプレッシャーにも押されて、実務家さがしに奔走する大学も増えた。大学教員のあいだから、当然、学問の危機を憂う声が出ている。

■「無償化」の対象とならないところは受験生から選ばれない

 こうした実務家教員、そして、学外理事がいない大学に通っても、学費はタダにならないわけだ。なぜ、国はこんな枠組みをつくったのだろうか。文部科学省はこう説明している。「大学等での勉学が職業に結びつくことにより格差の固定化を防ぎ、支援を受けた子どもたちが大学等でしっかりと学んだ上で、社会で自立し、活躍できるようになるという、今回の支援措置の目的を踏まえ、対象を学問追究と実践的教育のバランスが取れている大学等とするため、大学等に一定の要件を求める」(文科省「高等教育の無償化に係る参考資料」2018年11月21日)。

 つまり、国は大学に対して「学問追究と実践的教育のバランスが取れている」ことを求めている。「学問探究」など言われなくてもわかっているので、「職業に結びつく」「実践的教育」に力を入れなさい、と言いたいわけだ。

 大学にすれば、学生募集のためには、「無償化」を適用される要件を整えなければならない。どの大学も教育内容、カリキュラムに「職業に結びつく」実務系科目(たとえば簿記、会計とか)を採り入れ、実務家(企業の経理担当者)を呼んで教壇に立たせることになるだろう。いま、文系、教育系、芸術系、体育系、芸術系がメインの大学は、「実践的教育」が得意ではないが、国の方針に従って教育内容を変えるしかない。「無償化」の対象とならないところは受験生から選ばれないからだ。

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冨山和彦・経営共創基盤CEO

 思い起こされるのは、2014年、経営共創基盤代表取締役CEOの冨山和彦氏が、文科省の有識者会議で打ち出した、G(グローバル)型大学、L(ローカル)型大学の構想だ。トップ校はG型として世界をめざしてもらう。残りの多くはL型で職業訓練校にすべきという趣旨で、経済・経営系学部はマイケル・ポーターの戦略論ではなく簿記・会計、会計ソフトの使い方を教える。法学部は憲法ではなく道路交通法を教え、大型第二種免許を取得させる、などという意見だった。国は大学の理想像を職業訓練校に求めているのだろうか。こうなると、「無償化」をタテに、すべての大学に職業訓練の役割、L型構想的な教育を押しつけているとしか思えない。

 もう1つ、「無償化」には高いハードルがある。対象となる学生は「高等学校を卒業し、または高等学校卒業程度認定試験(いわゆる高認)に合格してから2年の間までに大学等に入学を認められ進学した者」となっており、2年浪人以上はタダにはならない。また、長年、教育機関から離れていた社会人に門戸を閉ざしているわけだ。定年になった人、育児の手が離れた主婦が、大学で学び直したいといっても、国は冷たくあしらったわけだ。

https://image.chess443.net/S2010/upload/2019060300003_3.jpg
「選ばれた大学で目指す国際人」。文科省によるスーパーグローバル大学創成支援事業のサイトには、こんなキャッチコピーが並ぶ

■事実上の新たな「大学設置基準」

 どれもこれもおかしい。憲法と教育基本法を引っ張り出せば、合理性を欠いた相当ムチャな政策 ・・・ログインして読む
(残り:約3200文字/本文:約5371文字)

https://webronza.asahi.com/national/articles/2019060300003.html
http://www.asyura2.com/19/senkyo261/msg/644.html

[政治・選挙・NHK261] 「青い山脈」の成功と失敗 ― 亡き杉葉子を偲んで ― (ちきゅう座)
 
「男女同権」や「基本的人権」は、競争第一の企業社会の門前で立ちすくんだのである。同権の代わりに不平等と格差が、そして人権社会の代わりに同調圧力の共同体が出現したのである。「令和の御代」は、「青い山脈」の精神的側面の実現に失敗した日本の現実を、更に厳しい姿で我々に突きつけることになるだろう。(本文より)


2019年 6月 6日
<半澤健市(はんざわけんいち):元金融機関勤務>

 
《ヤミ屋に囲まれて生まれた「青い山脈」》
■ 昭和24年1月に作曲されたこの曲のメロディーは、当時服部(良一)が大阪駅から京都駅へ行くすし詰めの電車の中で生まれた、という。ハッピ姿やハチ巻きの闇屋の大群がぎっしりと乗り込み、服部は身動きも出来ないまま、車窓からくっきりと見える美しい山脈(やまなみ)を眺めながら、健康的なメロディーを頭に画いていた。これと思った旋律が浮かんだので、忘れない中に直ぐに書き留めておかなければ、と考えた服部は、五線紙をカバンから取り出す隙もないので、ポケットの手帖を辛うじて引っぱり出し、手帖の鉛筆で、ハーモニカの略符1,2,3を使って素早く書き留めた。まわりの闇屋さんも、商売の計算をしている仲間と思ったのか、同情的に見てくれたので、電車が京都駅に滑り込むまでに、最後の小節を無事書き終って、目出度く「青い山脈」の名旋律が完成した。■

 これは、三枚組のCD『服部良一―僕の音楽人生』(1989年、コロムビアミュージックエンターテインメント(株))に、音楽評論家瀬川昌久が書いた解説の一部である。

《「青い山脈」を選んだのは一人だけ》
 30人ほどの映画同好グループで、「世界映画史上・私のベスト3」という人気投票をしたことがある。20年ほど以前と記憶する。上位には「天井桟敷の人々」、「ローマの休日」、「第三の男」、「ライムライト」といった不朽の名作が、邦画では小津安二郎、黒澤明、溝口健二の代表作が並んだ。

「青い山脈」を挙げたのは私一人だった。服部良一が「闇屋さん」に囲まれて名曲を作ったとき、私は13歳であった。「青い山脈」と杉葉子は、私にとって青春の象徴であったし、私の中では「戦後民主主義の象徴」であり続けた。

それは「青春」の輝きと儚さ、未成熟に終わった「戦後民主主義」をずっと想起させてくれたからである。原節子(教師島崎雪子)、木暮実千代(芸者)、若山セツコ(その妹)、池部良(受験浪人金谷六助)、竜崎一郎(独身の町医者)、伊豆肇(旧制高校生ガンちゃん)。彼らは既に映画に出演していた。特に原節子、木暮実千代、竜崎一郎は、戦意高揚作品の主役、準主役でもあった。杉葉子だけが唯一の「新人スター」である。その肢体の美しさに私は息をのんだ。私は今でも映画館のどの席の近くで見たか―混んでいて座席に座れなかったのである―をハッキリ覚えているし、その後テープやDVDで何度も見て場面の展開を覚えている。

《杉葉子と原節子は戦後民主主義の象徴だった》
 今井正によるこの作品のあと、「青い山脈」は三回のリメイクがあったが、誰もが思い出すことはない。杉葉子はその後、成瀬巳喜男の「山の音」「めし」、市川崑の「結婚行進曲」「青春銭形平次」、田中絹代の「月は上りぬ」などで一定の評価を得たが、結局「青い山脈」の寺沢新子(旧制高等女学校5年生)の衝撃を超えられなかった。女子大出の英語教師を演ずる原節子は理念の具象化として表現されている。それもあって彼女の住まいが画面に現れることはない。杉葉子も「お母さんが二人いる」設定にもかかわらず、その家庭も画面に出てこない。主題歌「恋のアマリリス」の歌詞にある「姉と呼びたき師の君も悩み給うか恋の夜は」は新子の目線で見た雪子である。前編で、二人が女学校に近い小高い丘の芝生でおどる場面に、このメロディーは雪子が口笛を吹く設定で使われた。

《名曲だけが残るのだろうか》
 監督の今井正はなぜか、服部作曲の「青い山脈」を高く評価しなかったという。しかし藤山一郎と美人歌手奈良光枝が吹き込んだレコードは空前のヒットとなった。70年後の今でも、懐メロのTV番組は、「青い山脈」の全員合唱で終わる。今井はそれでも、前編―前後編二本あったのだ―のタイトルバックに合唱で入れた。後編、恋人たちが砂浜に向かって銀輪を走らせる場面にも使った。婚約した原節子と竜崎一郎を望遠レンズに入るラストシーンでもゆっくりした旋律を歌い上げている。

私個人は、レコードB面で、二葉あき子が歌った「恋のアマリリス」を好む。杉葉子らは撮影中に後者をくちずさむことが多かったという。両曲は米国のポピュラー音楽家パーシー・フェースが、大編成オケ用に編曲して録音しているが、叙情性において映画タイトルバックのコーラスに遠く及ばない。

《人は71年前を知っているだろうか》
 昭和24年は今から71年前である。そこから71年遡ると、1877年(明治10年)である。国会も憲法もまだ出来ていなかった。右大臣三条実美の時代である。官軍は西郷隆盛と西南戦争を戦う一方で、上野では内国勧業博覧会が開かれていた。「音楽取調掛」が「東京音楽学校」に改組されたのはこの10年後である。

私が「青い山脈」を見たときに、71年前のそういう過去を回想することはできなかった。ならば、私の「青い山脈」回想は、今の13歳に、伝わるであろうか。私は「青い山脈」を論じて次のことを伝えたいのである。

《歴史認識はバラバラにされ百田某が歴史を語っている》
 昭和の前半に生まれた「青い山脈」は、その昭和を生き延び、平成をも生き延びた。されば、年相応に、老いたといわねばならない。「青い山脈」が夢見た生活水準は、その後40年ほどで実現した。GDP世界第二位になったからである。しかしそこが頂上だった。平成の30年間は、映画の恋人たちの成果が、次々にハゲ落ちる過程であった。更にいえば、もともと「青い山脈」の精神的な理念は実現されなかった。「男女同権」や「基本的人権」は、競争第一の企業社会の門前で立ちすくんだのである。同権の代わりに不平等と格差が、そして人権社会の代わりに同調圧力の共同体が出現したのである。「令和の御代」は、「青い山脈」の精神的側面の実現に失敗した日本の現実を、更に厳しい姿で我々に突きつけることになるだろう。人々は今、70年どころか、100年単位の長期展望を迫られている。同時に百田某の「歴史書」がベストセラーであるのが現実である。(2019/06/03)

初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion8699:190606〕

http://chikyuza.net/archives/94248
http://www.asyura2.com/19/senkyo261/msg/647.html

[政治・選挙・NHK261] ロスジェネ世代の残酷な境遇  結婚や子育てならず社会衰退の要因にも(長周新聞)
 
(1) 現在35〜44歳の約1700万人のうち、非正規で働く人が317万人、フリーターは52万人、職探しをしていない人も40万人
(2) 全労働人口に占める非正規雇用は38・3%(2017年)
(3) 非正規労働者の男性の89・6%が未婚 少子化問題を加速
(4) 40〜64歳の中高年のひきこもりが全国に約61万人
(5) 雇用の調整弁として使い捨て
(6) 人口はますます減少し、税収も落ち込み、社会全体が後退・衰退
(以上、本文より)


長周新聞 2019年6月4日
 
 「就職氷河期世代」「ロスト・ジェネレーション(失われた世代)」と呼ばれる世代がクローズアップされている。バブル崩壊後、就職難に陥った30代後半から40代後半の世代の人たちのことを指している。これまでの常識で考えれば、社会の中軸として働き、大多数の人が結婚して子どもを育てている……そんな風に描かれる世代でもある。ところがこの世代の4人に1人が高校、大学を卒業しても就職できず、今もって非正規の職を転転として結婚や出産もできない、あるいは無職の状態に陥っている。このロスジェネ問題は10年以上前から抜本的な対策を求める声が専門家などから上がっていたにもかかわらず、政府は「若者の自己責任」という言葉で放置してきた。その結果、深刻な少子化をもたらしただけでなく、今後はロスジェネ世代の高齢化が進むことによって生活保護受給といった社会保障などが大きな社会問題となっている。安倍政府は4月、この世代を「就職氷河期世代」から「人生再設計第一世代」と呼び方を変え対策に乗り出すとしている。ロスジェネ世代の実態について統計などをもとに描いてみた。
 
 
 厚生労働省は、「就職氷河期世代」をバブル崩壊後の新規学卒採用が特に厳しかった1993年〜2004年頃に学校卒業期を迎えた世代と定義している。浪人や留年がない場合、今年4月時点で大卒の場合は37〜48歳、高卒では33〜44歳の人たちが該当する。バブル崩壊後の経済低迷期に就職のタイミングがぶち当たり、新卒で非正規社員に採用される不安定雇用に晒された。その結果、現在35〜44歳の約1700万人のうち、非正規で働く人が317万人、フリーターは52万人、職探しをしていない人も40万人という深刻な状況がある。

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グラフ@ 正規雇用と非正規雇用労働者の推移
 
 当時、「ニート」「フリーター」といった言葉が、まるで若者たちが悪いことでもしているような意味合いを持って氾濫した。若者に対して「就職できないのはやる気がないからだ」という自己責任論が煽られた。将棋の駒のように安い労働力として使い続けられ、今もってそこから抜け出せず放置されてきた世代でもある。ロスジェネ世代は、大学を卒業して就職し、結婚して子どもを育て、退職後は年金をもらって……というこれまで描かれてきた人生のシナリオが通用しなくなった初めての世代ともいわれている。

■バブル崩壊のしわ寄せ
 
 大卒就職率はバブル崩壊直後までは80%前後の水準を維持していた。ところが1992年からはバブル崩壊の影響で新卒採用が絞りこまれ、下降の一途をたどった【グラフA参照】。95年には65・9%まで落ち込んだが、これは氷河期の序章に過ぎず、大手証券の山一証券が97年に廃業に追い込まれた頃、就職率はさらに落ち込み、2000年に統計上初めて6割を下回る55・8%をつけた。

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グラフA 大卒就職率(全卒業者に占める就職者の割合)の推移

 2000年の大卒者の実態をより具体的に見てみる。この年、大学を卒業したのは53万8683人だったが、このうち就職したのは30万687人(55・8%)だ。このなかには、「1年以上の雇用契約」である派遣や契約社員などの非正規雇用での就職も含まれている。一方、就職者以外の人数をみると、フリーターと考えられる「一時的な仕事に就いた者」が2万2633人。進学も就職もしなかったのが12万1083人となり、その多くはアルバイトをしながら生活するフリーター、あるいはアルバイトもしていない無職者と考えられる。この他に「不詳の者」が3万688人いるが、大部分が大学に進路先を届け出なかったもので実質はアルバイトなどで生計を立てるフリーターなどと考えられる。就職者以外のフリーターや無業者をひとまとめにすれば、その人数は17万4404人で、その年の大学卒業者の3割以上という深刻な状況があった。
 
 その後も大卒就職率は低下し、2003年に55・1%と過去最低となった。大学の新卒者だけではない。高校新卒者の就職内定率も、2003年には74・4%と最低となった。2003年の20〜24歳の完全失業率は9・8%で、新卒時期の10人に1人に職がない事態に陥っていた。
 
 新卒で就職を逃せば採用条件は一段と厳しさを増す。この世代は社会人としての出発点で、パートや派遣、契約社員といった非正規雇用の道を選ばざるを得なかった人が、他の世代と比べて格段に多い。労働政策研究・研修機構の「壮年非正規雇用労働者の仕事と生活に関する調査」(2015年)では、男性で25歳時に非正規雇用の場合、5年後の30歳時に正規雇用になっているのは41・7%、10年後の35歳時で49・1%と約半数にとどまる。最初に非正規雇用として働き始めれば、そこから抜け出すことが容易ではないことを示している。
 
 バブル崩壊とその後の就職難という困難に直面した世代が、その後もずっと不安定雇用を強いられているのは、政府が派遣法の改悪など雇用の規制緩和をおし進めたことにある。1990年代末、政府はアメリカや大企業からの要求を反映して、契約社員や派遣社員の規制緩和を進め、大企業は楽に安上がりな非正規社員を増やせるようになった。1994年に雇用者の5人に1人だった非正規社員は、2004年には3人に1人になった。そして小泉構造改革による2004年の製造現場への派遣労働解禁によって一気に拍車がかかった。従来は学生アルバイト、パート主婦、定年後の嘱託など、人生の一時期に限定されることの多かった非正規雇用が、新卒の若者たちに広がった。若い男性の正社員就職の受け皿だった製造業でも派遣が解禁され、派遣社員として就職していく若者が目立つようになった。2002〜2007年まで日本は「いざなぎ景気の再来」と呼ばれるほど景気が拡大したといわれ、役員報酬も株主配当も内部留保も増えていた。一方で労働者の非正規化が進み、従業員の給与は減少しつづけた。
 
 総務省の労働力調査によると、雇用者に占める非正規社員の比率は2008年当時の25〜34歳で25・6%だったが、同世代の10年後にあたる18年の35〜44歳は28・8%と悪化している。35〜39歳の男性の平均年収はこの20年で77万円減った。そして全労働人口に占める非正規雇用は38・3%(2017年)となり、現在も増え続けている【グラフ@参照】。それによって大企業の内部留保は6年連続で過去最高を更新し、2017年には446兆4844億円にのぼるなどボロもうけしているのだ。

■非正規雇用の9割未婚 加速した少子化
 
 就職氷河期世代が「中堅」と呼ばれる年代になり、将来への不安から結婚・出産に踏み切れない人も多い。それは深刻な少子化問題を加速させている。就職氷河期に大学を出た世代は2016年では35〜40歳。数字でいうと993万人だ。しかし、その子ども世代は少なく、25歳下(10〜15歳)と仮定すると669万人しかいない。ロスジェネからロスジェネジュニアの人口再生産率は67・4%にとどまっている。ロスジェネは団塊ジュニアや第二次ベビーブームといわれる大きな人口の膨らみを含む。この世代を不安定雇用に追い込み、結婚や出産に踏み切れない人が増えたことで、第三次ベビーブームは起きなかった。これが異常事態であることは人口ピラミッドを見るとよくわかる【グラフB参照】。

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グラフB こなかった第3次ベビーブーム(日本の人口ピラミッド2016年)

 国内の婚姻件数は、ほぼロスジェネの親に当たる団塊の世代が25歳前後だった1970〜74年にかけ、年間100万組をこえていた。それが右肩下がりとなり、2017年には半分近い60万組に減った。働きながら結婚して子どもを産み育て、未来の担い手を再生産していくことができず社会に展望がない。国の無策によって、少子化という負のスパイラルがつくり出され、日本社会の将来に大きな損失をもたらした。
 
 非正規労働者の男性の89・6%が未婚で、年収が低いほど未婚率が高いことがわかっている。正社員になりたい、結婚したいという意欲はあっても、「どうせ無理だろう」という無気力や諦めの感情が、新しいことに挑戦するエネルギーを削ぐ結果にもなっている。

■単身世帯が増加し孤立
 
 少子化と同時に進むのが単身世帯の増加だ。非正規雇用者は正社員に比べて貯蓄が少なく、社会保険の加入率も低い【グラフC参照】。そのまま年金を受給する世代になると、月7万円に満たない国民年金しか受けとれない。

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グラフC 男性の正規雇用と非正規の平均賃金(2017年)

 懸念されるのが、仕事や社会参加せずに孤立する「ひきこもり」だ。中高年の「ひきこもり」は、家族も周囲には隠すため非常に見えにくい問題だ。今年3月末、40〜64歳の中高年のひきこもりが全国に約61万人いるという推計を内閣府が公表した。中高年のひきこもりが社会問題として注目される背景には、人口規模の大きいロスジェネ世代が30代後半から40代後半にさしかかっていることがある。長くひきこもる40〜50代の子どもを、70〜80代の親が年金で養っている場合が多く、親世代が高齢化し生活が立ちゆかなくなっていけば貧困に陥る可能性が高い。そうした状況が目前に迫っているということだ。
 
 安倍政府は今年3月、就職氷河期世代にあたる30代半ばから40代の支援策を決めると発表した。その内容は、人材不足となっている運輸や建設、農業などの業界団体等に委託する形で資格習得などをおこなうことや、人手不足業種との職場見学会つき面接会などによって正社員就職を促進するという。また正社員に採用した企業に1年限り最大60万円を支給している制度を拡充させるとしている。だが、厚生労働省が2017年度から「就職氷河期世代の人たちを正社員として雇った企業に対する助成制度」に約5億3000万円の予算を付けたが、利用されたのは約765万円。翌18年には10億7000万円と倍増させるも1億2800万円という結果に終わっている。
 
 「就職氷河期世代」は社員と同じ仕事をしても賃金を抑えられ、同等の社会保障も受けられず、雇用の調整弁として使い捨てられ、少なくない人人が生活の不安から結婚したくてもできない、子どもをつくりたくてもつくれないという人生を余儀なくされた。これは個人の努力云々で起こったことではなく、社会構造や労働法の変化によってもたらされた結果にほかならない。そして人口はますます減少し、税収も落ち込み、社会全体が後退・衰退する局面を迎えているのである。この問題にメスを入れるには労働者の正規社員化を促進するため大企業の使い捨て労働を規制し、正社員と非正規の給与格差の是正・処遇改善といった抜本的な問題に着手する以外にない。

https://www.chosyu-journal.jp/shakai/11874
http://www.asyura2.com/19/senkyo261/msg/653.html

[政治・選挙・NHK261] れいわ新選組に寄付1.6億円超 消費税廃止掲げ反緊縮(朝日新聞)
朝日新聞デジタル 2019年6月7日19時42分

 夏の参院選に向け、野党内に「消費税」を争点化する動きが出ている。自民党は7日に発表した公約で「10月の消費税率引き上げ」を明記。野党はすでに消費増税反対で歩調を合わせるが、消費税の廃止や税率の引き下げを訴える声も出始めている。

 野党で消費税廃止の急先鋒(きゅうせんぽう)が、4月に「れいわ新選組」を立ち上げた山本太郎参院議員(東京選挙区)だ。山本氏は格差是正のため、消費税廃止と政府のさらなる財政出動など「反緊縮」を前面に打ち出す。

 主張は話題を呼び、全国各地での街頭演説やインターネット上で募った寄付は40日目で1億円を超えた。6月5日時点では1億6826万円に。内訳は1千円や5千円など少額の寄付が6〜7割を占めるという。政治資金に詳しい日大法学部の岩井奉信教授は「通常の個人献金の集め方では、これほどの金額は集まらない。異例だ」と指摘する。

 山本氏は「3億円で参院選に10人擁立」など集まった金額によって選挙への対応を決めるとしており、すでに独自候補の1人目として、北朝鮮による拉致被害者家族連絡会の元事務局長、蓮池透氏の擁立を発表した。

 格差是正をめざし、さらなる財政出動を求める主張は、米民主党のオカシオコルテス氏、英労働党のコービン氏ら欧米で活発化する「反緊縮左派」と重なるという指摘もある。

 草の根から野党超党派に「反緊縮」を呼びかけるキャンペーンを展開する立命館大経済学部の松尾匡教授は「大胆な財政出動を求める反緊縮への訴えは世界的なムーブメントであり、山本氏はようやく日本に現れた最初の一人」とみる。

 野党内にもこうした「反緊縮」に同調するような動きが出始めている。

 国民民主党の玉木雄一郎代表は5日の定例会見で「消費税の減税も選択肢から否定するものではない」と発言。立憲民主党が宮城選挙区に擁立した新顔の石垣のりこ氏や、比例区に公認した新顔のおしどりマコ氏ら公認候補者も「消費税廃止」を訴えている。

 ただ、民主党は与党時代に消費税率10%への引き上げを自民、公明両党と合意した経緯があるだけに、野党内にも消費減税への反発はある。

 旧民進党系の衆院会派「社会保障を立て直す国民会議」代表の野田佳彦前首相は6日、記者団に「玉木代表まで言うとは驚いた。減税までいうのはポピュリズムの極致だ」と強く批判している。(河合達郎)
 
http://www.asyura2.com/19/senkyo261/msg/655.html

[政治・選挙・NHK261] 「れいわ新選組」が小倉で街頭宣伝 新勢力の結集めざし熱こもる山本太郎の演説(長周新聞)
長周新聞 2019年5月9日


■新自由主義に対抗する勢力結集なるか

 今夏に参議院選挙を控えるなかで、自由党が解党し国民民主党に合流するなどの動きが始まっている。そのなかで山本太郎参議院議員が一人で「れいわ新選組」なる組織を立ち上げ、全国で街頭演説をおこなっていることが注目を集めている。5日に小倉駅前でおこなった街頭演説の概要を紹介する(紹介するグラフや表は街頭演説で山本氏が提示したもの)。

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JR小倉駅前での山本太郎の演説を聞く人たち(5月5日)


「れいわ新選組」旗揚げの決意
- 山本太郎は小沢一郎さんと一緒にやってきたが一人で旗揚げをした。その名は「れいわ新選組」。まだ一人だが、みなさんのお力をお借りして勢力を拡大していき、予定調和の永田町に切り込んでいきたい。

「れいわ新選組」の使命
- 日本を守る、とはあなたを守ることから始まる。あなたを守るとはあなたが明日の生活を心配せず、人間の尊厳を失わず、胸を張って人生を歩めるよう全力を尽くす政治のうえに成り立つ。あなたに降りかかる不条理に対して全力でその最前に立つ。何度でもやり直せる社会を構築するために。

- 20年間におよぶデフレで困窮する人人、ロスジェネを含む人人の生活を根底から底上げし、中卒、高卒、無職、障害、難病を抱えていても将来に不安を抱えることなく暮らせる社会をつくる。私たちがお仕えするのはこの国に生きるすべての人人。

具体的な政策
- すぐにやらなければならない8つのこと
@ 消費税は廃止。
A 全国一律、最低賃金1500円。・・・これは政府が保障する。
B 奨学金徳政令。・・・国が「武富士」をやっていることで555万人が苦しんでいる。これをチャラにする。
C 公務員を増やす。・・・世界と比べても日本は公務員の数が少ない。1万人当りの数を見てもイギリスの3分の1、アメリカの2分の1だ。安定雇用を増やすことが経済政策となっていく。
D 一次産業戸別所得保障。・・・日本の食料自給率は低すぎる。安全保障を語るならば食の安全保障をしっかりと守らなければならない。
E 「トンデモ法」の一括見直し・廃止。・・・例えばTPP。自民党は「日本の主権が奪われる」とまでいって絶対反対していたのに政権をとったら掌を返した。こういうものからは抜けなければならない。水道民営化につながるPFI法もある。
F 辺野古新基地建設中止。・・・沖縄の民意は何度も示されている。アメリカの海兵隊の中枢にいる方方も、この基地の必要性には懐疑的だ。
G 原発即禁止・被曝させない。・・・南海トラフ、首都圏直下地震はもう来るといわれている。そのときに本当に安全かどうかは大きな地震が起こった後でないと答え合わせできない。そのようなことにみなさんを巻き込むわけにはいかない。

- 「れいわ新選組」はみなさんの生活をしっかり底上げしていくことをやっていきたい。選挙が近づけば土下座までするが、選挙が終わればどこに行ったかわからない幻の生き物、政治家。それでは困る。みなさんの声をしっかり聞き、議会に届け、形にするのが政治家だが、どこに生息しているのかよくわからないという実態がある。なので今、全国を回りみなさんの声を直接お聞きしている。

「れいわ新選組」という名前について
- ご意見もあるが、短い期間に旗揚げして次の選挙までにたたかえる準備を整えなければならない。多くの方に覚えていただける名前を考えた場合、よくある政党名ではやはり難しい。7月には参議院選だけでなく、おそらく衆議院選もある。ダブル選挙になったとき政権を狙いに行くのだ。「一人なのになにいってるんだ」といわれるかもしれないが、政権をとれるかどうか、もしくは野党のなかでも数を増やせるかどうかの鍵はみなさんがお持ちなのだ。

- 元号に対しては天皇制につながるという考えで否定される方もおられるかもしれないが、私たちはイデオロギーに縛られたところでのたたかいをしたいのではない。勝ちに行かなければならない。「元号を政治利用するのか」という方もおられるかもしれないが、平成も大学名や企業名に使われた。元号はみんなのものだ。

- 「新選組」は血生臭くないかと思う方もいらっしゃるかもしれない。もっといえば幕府側の人間だろうと。だが主権在民の世の中で最高の権力者はみなさんだ。最高権力者のみなさんを体を張ってでもお守りする。新しい時代に選ばれる者たちということで「新選組」にした。

- 令和に入り「新しい時代だ」とコマーシャルされているが、名前が変わっただけで新しい時代なんかにならない。私は格差が広がり続けた時代が平成だったと思っている。多くの方方が大企業や政治の手によって搾取され続けた。今の体制のまま令和に突入していけば、より多くの人人が疲弊する世の中になる。だからこそ、本当の新時代を迎えるために、私たちが数数の経済政策を持ってみなさんの生活を底上げしていくという気持ちで立ち上げた。名前だけ、空気だけの新時代ではなく、本当に政治が変わるということを実現するために、新しい時代を切り開く。

■水道の民営化とPFI  アメリカに誓った麻生大臣

- 昨年夏に水道民営化につながるPFI法案が可決された。PFIの始まりはイギリスだ。税金でつくられたインフラなどの公共部門を使いながら民間にうまみを吸い上げさせるというものだ。でも表向きは違う。例えば水道は老朽化して、更新するのに公共でやると途方もなくお金がかかるから、安くするために民間の知恵を借りるのが一番だというふれ込みだ。だがイギリスではやめる方向に入っている。民間でやった方がバカ高くついたからだ。病院、学校などPFIを使うことで4割、5割、6割増し高くなったという話だ。これはイギリスの会計検査院が指摘している。

- 『ザ・ガーディアン』は2018年1月の記事で、「英会計検査院、納税者はPFI契約のために200億円(約30兆円)よけいに支払うことになる」と書いている。『フィナンシャル・タイムス』2018年2月の記事も、「英国会計検査院の報告ではPFIを利用して建設した学校は公的機関がやった場合より四割も高く、病院では六割をこえる費用がよけいにかかる」としている。「政府や自治体に金がないから民間にやらせよう」という考え方だが逆に高くついた。世界はやめる方向にあるが、日本は何周も遅れて昨年夏前に法律を成立させた。

- イギリスの例を見てもろくでもないものだとおわかりいただけるかと思う。では誰のためにやるのか。企業をもうけさせるためだ。日本でPFIの旗振りをしていたのは竹中平蔵だ。この顔が出てきたら話がわかる。「みなさんのために」というが、自治体が運営すれば安い値段で安全な水を提供することが担保されるが、企業が参入したらどうなるか。まず住民に提供されるサービスではなく、株主にどれだけ利益が還元できるかということに話が変わっていく。だから命にかかわるような水を民間に託すのはよくないと思う。水は水道法のなかに入っていて水道法は憲法25条の生存権と紐付けられた法律であるという答弁を以前にいただいた。

- この水を民営化する話は麻生太郎さんが2013年4月にアメリカに渡ったさいに、民間のシンクタンク・CSISの本拠地に乗り込んで記者会見を開き、「水道はすべて国営もしくは市営、町営でできていて、こういったものをすべて民営化します」といったところからだ。CSISは完全に企業側で、日本に対してありがたくない提言をし続けている。ジャパン・ハンドラーと呼ばれる人たちがいて、今の政権はかなりありがたがっているシンクタンクだ。2013年の段階で日本の水道を民営化するという話をみなさん聞いていただろうか。日本の水道は麻生さんの持ち物ではない。にもかかわらずアメリカに行って勝手に「これから日本の水道をオンセールします」といい出した。「水道の料金を回収する99.9%というようなシステムを持っている国は日本の水道会社以外にありませんけれども、この水道すべて国営、もしくは市営、町営でできていて、こういったものをすべて民営化します」といっている。

- そればかりでなく、「学校をつくって運営は民間がする、公設民営、そういったものも一つのアイディアとしてあがってきつつあります」といっている。公共を使って民間をもうけさせる行為を水道に限定していない。昨年夏にPFI法が通ったとき、私は内閣委員会で審議に参加していた。どこまでの範囲でPFIをやるのかはPFI法2条を見ればわかるが、道路、鉄道、港湾、空港、河川、公園、水道、下水道、工業用水道等の公共施設、庁舎、宿舎等の公用施設、賃貸住宅及び教育文化施設、廃棄物処理施設、医療施設、社会福祉施設、更正保護施設、駐車場、地下街等の公益的施設、情報通信施設、熱供給施設、新エネルギー施設、リサイクル施設、観光施設及び研究施設、船舶・航空機等の輸送施設及び人工衛星(これらの施設の運行に必要な施設を含む)。全部だ。ずうずうしいにもほどがある。少なくとも命にかかわりのあるものは絶対にこんなことはやってはいけない。

- 世界でどういうことが起こっているか。例えば水道では、自治体でやっていたのを民営化して水質が低下したとか料金が上がったとか。内部に関して情報開示がされず、なにをされているかわからない、とんでもないお金の使われ方がされていたりの連続だった。

- 残念ながら今この国をコントロールしているのは企業側だ。大企業、グローバル企業、世界中で人人がこの新自由主義の流れ、グローバル化の流れとたたかっている。だが日本は長時間労働と高くない賃金のなかで日常に精一杯で、なかなか政治に目を向けられないという方がたくさんおられる。でもここでたたかわなければ、低賃金や長時間労働の状況をつくったのは政治なのだ。

■大企業に奉仕する政治  派遣法も入管法も

- なぜ政治がそのようなことを進めてきたのか。選挙のときの組織票と常日頃からの献金、落選したときに仕事を与えてくれるなど、企業のお陰で国会議員になれたからだ。議員になったらご恩を受けた方方に一生懸命ご恩返しをしますということだ。この国で一番大きな経済団体は経団連だ。経団連は政治に対して提言をし続けているが、これは提言でなく命令だ。

- たとえば派遣法で派遣という働き方が生まれてだれが得をしたか。最初は小さな穴だったが、それがどんどん広がった。小泉・竹中のときだ。そのあとも派遣法は改定が続いているが、製造業まで広がったうえに不安定な働き方が担保されるような改悪が積み重ねられている。これも経団連のお願いが形になってより進化している。ほかにも昨年、外国人労働者を導入する入管法の改正があった。法案の段階で決まっていたことはほとんどない。決まっていたのは「今より安い労働者を大量に長時間働かせられるような働き方をつくれ」ということだけだ。その人たちの社会保障面をどうするのか、長期間いる人に対して家族の帯同をどうするのか、職種は何に限定するのかも決まらないまま法案審議が続いていった。

- これまでみなさんの働き方が壊されて、いま非正規雇用は4割くらいだ。企業はいつでも好きにクビにできる方が働かせやすいからだ。でも働く方は半年後、一年後の自分なんてイメージしようがない。不安定な労働環境を広げることを政治の場でやっている。企業が望んでいるからだ。企業に力をもらって議員になり、政権をとったからだ。これが現実だ。国会の中、議会の中に企業側の代理人が多数派を占めたときには好きな法律がつくれる。どんな法律も変えていける。その連続でみなさんはこの何十年のあいだ奪われ続けた。これが今、加速している。

- 入管法のときに野党側は徹底的にたたかうといった。だが本当に徹底的にたたかったか。国会は一日も延長なしだ。延長すればいいというものではないが、数の力で最終的に決められるわけだから、国会を普通に回していたらダメだ。体を張ってでも止めなければいけない。国会を不正常化することによってマスコミがなぜかを説明してくれる。とんでもない法律が通ろうとしていることを全国の人たちが意識できるようなたたかい方を野党側がしなければいけなかった。野党側の質問によって、入管法の数数の問題点があからさまにはなったが、そこからさらに全国津津浦浦に今なにが起きているかを知らしめるために、なにをいわれようと野党が体を張って国会を止めなければいけない。

- 現実はどうだったか。国会はスケジュール通りに終わった。それは徹底的にたたかうということなのか。予定調和じゃないか。早く年末年始が迎えたかった? それどころではない。今以上に安い労働力が流入してきた場合にこの国はどうなるのか。この国の労働環境はもう十分に壊されて、替えの効く部品のように扱われている。この状況のなかで入管法なんかを通してしまったときにはこの先どんな未来が待っているのか。

- あなたを守るために国があり、あなたの生活を今より豊かにするという努力を国がするために政治があり、税金を払っているのに、まったく逆だ。みなさんのことは目の中に入っていない。目の中に入った瞬間に浮かぶのはコストだ。そんな政治だったらない方がまし。そんな政治だったら税金なんて払いたくないのは当然だ。でも税金を払わないのは犯罪になる。だったら税金を払って価値のある政治をみんなでつくるしかない。

- 私は入管法のときにも牛歩をやった。「また山本太郎が悪目立ちしたいのか」と見た人もいるかもしれないが、本気でたたかっていないことをみなさんに知らせなければならない。体を張ってでもなぜ止めないのか、というのを一人でやると、与党側だけでなく野党側からも罵声が飛ぶ。ばれるからだ。徹底的にたたかうことは一人では難しい。たかだかそこで牛歩をやっても2分か3分伸びただけだ。だが、人数を増やしていけばたたかい方が変わっていく。たとえばテレビで与党側も野党側もなぜ本気でやらないのかということをしゃべったとしたら、1%の視聴率で100万人の人が見る。「本気でやっていないんだな」とわかったら、支持政党の尻を叩く。そうすると緊張感が生まれる。今の国会に緊張感なんてない。このままではダメだ。それを変える力をみんな持っている。

- ほかにもある。働き方改革のなかでやられた高度プロフェッショナル制度。これも2005年に経団連がやろうとしたホワイトカラーエグゼンプションの看板をつけかえたものだ。年収400万円以上の人の残業代をゼロにしようと目論んだ。400万円でスタートして、残業代という概念自体をぶっ壊したいというのが2005年からあったということだ。だが年収400万円はボリュームのあるゾーンになる。そこで一回看板を下ろし、名前をつけかえて登場した。高度プロフェッショナル制度で1750万円以上くらいの人たちの残業代はゼロということになった。ここから国会の審議なしで、大臣の出す省令で下げていける。サービス残業を続けているという方も大勢いらっしゃるが、今の法体系ではむちゃくちゃな働き方をさせられた場合、証拠をしっかりとっていれば裁判に訴えることができる。だが残業という概念自体がなくなると裁判にさえならない。

- 消費税を2025年までに19%まで上げろといっているのも経団連だ。だから恥を知れといっている。消費税を上げると法人税も所得税も下げていける。金持ちはより金持ちに、企業側はよりもうけるためにコストカットする必要がある。コストの一つは税金だ。法人税の減税の穴埋めに使われているのがみなさんの消費税だ。完全に企業側が自分たちの利益のみを追求するために政治を動かしている状態だ。みんな貧乏にさせられている。それは間違った政治、間違った経済政策のせいだ。企業側のみに慮るような政治がおこなわれ続けたらすり減るのはあなただ。これを変えたい。

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消費税 増税3%分の使途の推移

■真向対決する政治勢力つくる  与野党の野合に風穴を

- 政治が企業側にコントロールされている。これは国内企業だけでなくグローバル企業にもまたがった話だ。

- TPPなどを考えたらわかるが、20分野以上にわたってどんどん規制緩和していく。自民党は野党時代、「国家の主権が失われる」といって全力で反対していたが、政権交代したとたん全力でとりくんだ。デフレが続いているときに規制緩和していけば、よりデフレが深刻なものになる。競争を激化させるとどんどん弱いところが淘汰される。デフレのときには企業も産業も、働く人人も守らなければならない。あたりまえの話だが真逆の政策しかやっていない。目の前のもうけだけ。今だけ金だけ自分だけ。それを全力でやっているのがこの数十年にわたる政治だ。2013年に安倍総理が施政方針演説でいった「世界で一番企業が活躍しやすい国をめざします」という言葉につきる。約束通りのことをやっている。一握りの人たちにとっては素晴らしい政治だ。だが、みなさんのもとには降り注いできていない。

- 日本の政治が変わったとしても、グローバル企業たちによってコントロールされる部分もあるのだから、国を変えるのは難しいのではないかということだが、まず日本としてどうするのかというのを政治の場で示せなければいけない。たとえば米軍基地を日本の至るところに、思ったときに好きな場所につくれるという約束の下、日米関係が結ばれている。まさに植民地だ。この条件が変わらず推移しているから北方領土を返してもらえない。「北方領土を返したらアメリカ軍が基地をつくるだろ? アメリカ側に了解とってくれよ」とプーチンさんにいわれている。独立国家であるかのようにだませているのは日本国内に暮らしている人たちだけで、間接的にこの国は植民地状態であるということだ。

- しかし、米軍に対してもグローバル企業に対しても、国内の大企業に対しても、その国の政治・政権が方向性を示せば、それ以外やりようがない。圧力はかかるかもしれないが。そのような政権をつくれるのはみなさん以外にない。億万長者でもワーキングプアでも持っている票は一票だ。金持ちはその票をいかにまとめて自分たちの考えを議会で形にすることを担保するかを考えている。逆にみんなが薄く横につながっていけば、振り幅を逆にできる。ここまでさんざんな状況をつくったのは政治だ。だから別の方向に向けることもできる。まずは国内で政治・政権がどういう方向性を示すか、それさえもなければなにもない。この国に生きる多くの人たちがなにを求めているかということで当然舵は変わる。まだ投票という民主的な手続きが残っているうちにこの船の舵を変えなければならない。時間がないと思っている。

- 小沢一郎さんと自由党で共同代表をしていた。順当に行けばこの7月の参議員選挙で東京から出ることになっていたと思う。そして自由党は解党して国民民主党と一緒になった。大きな政党についていき、推薦をもらって出ればお金も出るし組織も動かしてもらえる。その方が一議席に近い。そこから離れて一人でやるのはハードルが高い。しかし私がほしいのは一議席ではない。山本太郎の一議席が守られたところで世の中は変わらない。みんなが動くときだ。真っ向から永田町のなかでケンカしていく勢力が必要だ。与党にも野党にも緊張感を持たせるような勢力をつくれるのはあなただ。

- 自由党の共同代表という立場にあったり、どこかの政党に属しているという立場にあったりしたら、与党と野党が机の下で手を結んでいるなんていいづらいが、一人になったら何でもいえる。これから全部みなさんにばらす。これが政治のあり方だ。コントロールするのは企業ではない。あなただ。あなたが判断するために必要な情報をどんどん発信していく。国は何でもできる。自分の奥さんの友だちの学校経営者にただ同然で国有地を差し上げることもできるし、歴史的公文書の改竄だってできる。賃金統計8年分を捨てることだってできる。長時間労働も可能にするし、企業側に税金だって流すしやりたい放題。だったらその逆をやりましょう。一部の人間に忖度することなんてやめろ! みんなに忖度しろ! ということをやらせてほしい。

- 選挙はエントリー費用だけで選挙区だったら300万円。最低限、選挙らしい選挙をするためには3000万円資金が必要だ。完全な参入障壁になっている。参議院でいえば10人が全国比例でたたかうとなったとき、入場料は一人600万円、合計で6000万円必要だ。むちゃくちゃだ。これをみんなで集め、集まった額によって挑戦できるレベルを探したい。

- 参議院で10人擁立する場合の最大限の獲得目標は10人全員当選で、最少の獲得目標は山本太郎一人で政党になることだ。選挙で2%の得票を得られたら一人でも政党になれる。それによってNHKや民放などで、党首討論となれば党首として出ることができる。幹事長会談や政調会長会談などに全部出ることができる。テレビに出て一番嫌なことをぶつけにいく。政治を本当にみんなに楽しんでいただきたい。一緒に育てていただきたい。一緒に成長していきたい。国会にそういう存在がいたとしたらもっと政治はおもしろくなる。みなさんとともに歩んでいく、みなさんに育てていただく、国会のなかで本気で本当のことをみんなに伝えていく勢力を拡大したい。

■緊急事態条項の危険性  改憲で政府が狙っていること

- 安倍政府が憲法改正で何をたくらんでいるのか。2012年に出された自民党の憲法改正草案の中身を見ると、一つは憲法36条だ。もとの36条は「公務員による拷問及び残虐な刑罰は絶対にこれを禁ずる」とある。ところが自民党はこれを「公務員による拷問及び残虐な刑罰は禁止する」とした。「絶対」を抜いた。憲法学者が、例外として拷問が可能になる恐れがあると指摘している。

- 続いて、憲法99条にある「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」を、自民党は「全て国民は、この憲法を尊重しなければならない」とした。憲法は権力側を縛るものだが、国民を縛りにきたことが窺える。法律はみなさんが守るものだが、憲法は権力者が守るものだというのが常識だ。これが逆になっている。

- 表現の自由も縛っている。現行憲法21条の「表現の自由」だが、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」となっている。自民党は第1項は変えていないが、第2項として違う言葉をいれてきた。「前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない」。そりゃそうだと思った方は冷静に考えてほしい。その「公益」「公の秩序」は誰が決めるのか。全部権力側だ。「消費税10%にするなんてけしからん。みんなでデモしよう」としたときに、これは公益ではないか、反対するなんてけしからん、ということにもされかねない。こうして街頭で国のウソをしゃべっていることが公の秩序を乱すということにもなりかねない。「前項の規定にかかわらず」とちゃぶ台返しされるような表現の自由などあってないようなものだ。こんな憲法改正は認めることはできない。民主主義において情報は血液のような役割であり、循環しなくてはならない。だから表現の自由は最大限認められるべきである。しかしまったく逆の方向に行っている。

- 端的な狙いをいうと、自民党は憲法改正に4項目をあげていた。一つは自衛隊を憲法のなかに明記すること、もう一つ最初は教育の無償化をいっていたが、どんどん後退して、努力義務程度の負担になっている。もう一つは参議院の合区の解消。自民党が合区したものを解消するなど自作自演だ。そして最後の一つが緊急事態条項だ。このために憲法改正すると思ってもらって間違いないと思う。自衛隊の話だけに特化したら結構まずいことになる。自衛隊を明記すれば、一般的な世界レベルの軍隊のような形になる可能性はある。それはすでに安保法制で憲法の解釈をねじ曲げてむりやり法律化した。これを憲法が後追いで改定するような形だ。これも問題だが、そこに特化すると本丸を議論する時間が削られてしまう。本丸が緊急事態条項だ。

- 緊急事態条項は「緊急事態です」と総理大臣がいえば緊急事態にされてしまうという話だ。その場合に三権分立されていた権力を一つにまとめられるようになる。行政府、立法府、司法が一つになったら独裁になるのでこの三つを牽制しあう仕組みが三権分立だが、緊急事態条項になるとこれが一つになり、独裁になる恐れが強まる。2012年の自民党の憲法改正草案では、総理が必要と思えば閣僚と相談して、緊急事態を宣言できるが、その条件に「等」が含まれているため、幅広くどこまでも緊急事態にされてしまう可能性が強まる。内閣が政令で勝手にルールを決められるというのはめちゃくちゃだ。その政令は閣議決定で決まる。

- 今までに安倍さんがどんな閣議決定をやってきたかを見ると、「安倍首相はポツダム宣言を当然読んでいる」「島尻沖縄北方大臣は歯舞(はぼまい)の読み方を知らないという事実はない」「森友学園問題を巡り、財務省・文科省・国交省に対する政治家からの不当な働きかけは一切なかった」「安倍首相の妻、昭恵氏は公人でなく私人」といった内容だ。国のカネで五人も秘書をつけているのだから、どう見ても公人だ。こんなふうにカジュアルに閣議決定をする人たちが閣議決定でルールを決められるようになったら地獄だ。

- 災害のときにまぬけな指導者がトップに座っていた場合、二次災害、三次災害が生まれる。災害時に一番権限を持たなければならないのは、被災した自治体それぞれのトップだ。そこのリクエストに即行で応えられるような形で進めていかなくてはならないし、なによりも緊急事態のときに重要なのは事前の準備だ。権力者に権力を集中させたところで解決できることはなにもない。東日本大震災の被災3県の37市町村に対して実施したアンケートでは、被災した自治体の96%が「災害対応で憲法が障害になった事例はない」と答えている。権力集中などされたら余計にややこしくなる。すでに災害やテロが起きたときに必要な法整備は完全にされている。どうして今さらトップに権力を集中させることが必要なのか。

- トルコでは2016年にクーデターの未遂が起こり、非常事態宣言を発令した。その後、非常事態宣言をどんどん延長した。これはよくあることで、ドイツでもナチスドイツが国家緊急権的なことを使い、解除されたのは戦争が終わったあとだった。トルコではクーデター未遂事件から2週間たたないうちに兵士、民間人を起訴なしで1万人以上拘束した。そして公務員、裁判官、警察、研究者、教員らを6万人以上解雇や停職などにした。政権に対して批判的だった人たちをこのチャンスに乗ってクビにした。テレビ、ラジオ局も放送免許をとり消し、これまで政権に批判的な報道機関を政令で閉鎖し、人権・基本的自由の保護を定めた欧州人権条約を停止させた。何でもありだ。そのあとにも2017年4月に大統領権限を大幅に拡大するような憲法の改正、この国民投票がトルコでおこなわれ、賛成が51.4%と僅差で勝利した。その結果とんでもないことがたくさん出てきた。一番ひどいのは大統領に司法への介入権限を認めたことだ。こういうことが実際におこっている。

- 憲法を変えなければただちに困る人はいるだろうか。今の憲法を守ってもらわなくては困るという状態の方が多いと思う。ちなみに、今ある憲法さえ守れない人たちに緊急事態条項のようなものを手渡したら大変なことになるに決まっている。憲法を変えたいなら今ある憲法を守れといいたい。

■貧困大国になった日本  奪われ続けた20年間

- 厚労省の国民生活基礎調査では1000世帯のうち生活が苦しいと答えたのは56.5%、子持ち世帯で生活が苦しいと答えた人は6割をこえる。母子世帯では82.7%だ。これだけ大勢の人が生活苦になっているというのは政治・経済政策が間違っている。構造自体がおかしい結果だ。

- 憲法25条では、すべての国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有するとあるが、格差はどんどん開いている。大企業は今や過去最高益。あのバブル期よりももうかっている。内部留保は数年のあいだに40%増えている。この数年のあいだに40%以上所得が増えた人はいない。企業がもうかること自体は悪くないが、もうかった分、一部でも働く人人に還元してほしい。だが残念ながらそのような形にはなっていない。政治の場で、経済界などに後押しされて政権をとった勢力たちが、暮らしが苦しくなって首を絞めていくようなことを決めているからだ。企業側のコストとは税金と働くあなただからだ。長時間低賃金がスタンダードになり、外国からもっとたくさんの労働者を呼べるようになったらもっとコストダウンできる。そんなことばかりやり続けて、あげくの果てに消費税だ。社会保障のためといいながら、使っているのはごく一部で、あとは法人税の減税に対する補填だ。健康で文化的、最低限度の生活を営む権利を有しているのに、それが全然守られていない。

- 国はみなさんに投資らしい投資をしているだろうか。20年もデフレという国は日本以外にない。安倍総理にも聞いたが返ってきた答えは「ございません」だった。あたりまえだ。20年デフレは異常だ。その結果なにが生まれるか。圧倒的に需要が足りていない。需要とは消費と投資だが、消費がなければ投資もない。この需要が圧倒的に減っている状態から脱却できていない。デフレからインフレに脱却させるためには国が投資するしかない。やらなければならないのは産業を守り、労働者を守ることだ。しかし規制緩和の連続で競争をどんどん激化させていった。それはデフレのときにやったら余計にひどい目にあう政策だ。わかっていないわけがない。デフレの方がお金の価値があるから、たくさん持っている人はデフレの方が嬉しいのだ。

- あなたが今生活が苦しいのはあなたのせいではない。この国の経済政策が間違っていて、国がすべき投資をしてこなかった結果だ。それが国民生活基礎調査でもあらわれている。なぜ子どもたちの約7人に1人が貧困なのか。なぜ一人暮らしの20歳〜64歳までの女性の3人に1人が貧困なのか。こういう国を先進国と呼ぶのか。第三の経済大国と呼ぶのか。経済は一部によって回されているかもしれないが、そこで得られた富はあなたたちのところには流れてこないようにつくられているのが今の政治だ。何十年にもわたってみんな奪われ続けている。国は助けてくれない。見殺ししかない。憲法25条が守られない世の中が横行している。そんな輩がなにをいっているのかというと“憲法を変えたい”。寝言は寝てからいえ。

- この奪われ続けた20年間、その原因を見てみると、IMFが出しているデータ(戦争・紛争をやっていない140カ国以上のデータをもとに)では、1997年からの20年間の政府総支出の伸び率で、日本は最下位。世界一ドケチなのが日本だ。あなたが苦しいのは頑張らなかったから、能力がないからではなく、国の能力が低すぎたせいだ。国がやろうと思えば、もっと大胆に投資をしてあなたの生活を底上げできる。そうしなければ消費が活発になるわけがないし、貧困が減るわけがない。

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1997年〜2017年の20年間の政府総支出の伸び率

- 同じくIMFのデータで、1997年から20年間の名目GDPの伸び率では、戦争・紛争をやっていない140カ国以上のうち日本は最下位だ。将来に不安があるから今はお金を使わない。もしくは今使えるお金自体がなく、消費がどんどん弱っていく。企業は従業員を増やしたり設備投資したりしなくなり、消費・投資が弱る。20年続けてみんな貧乏になり、生産能力は落ちる。完全衰退国家だ。今でも戦犯が国会のなかにいる。選挙で勝ち続けているんだから自分たちには責任がない、みんなが選んだんだという話にされている。

- 毎年3万人をこえていた自殺者は、今2万1000人をこえたくらいだ。目に見える戦争・内紛はないのにこの自殺者数は異常だ。自殺未遂は一年間で53万人をこえる。15歳〜39歳までの死因の第1位は自殺だ。10代前半も死因の第1位が戦後初めて自殺になった。死にたいと思える世の中でみんな必死に生きている。いつ壊れてもおかしくない状況にされている。理由はドケチ国家だ。

■政府の借金は国民の資産  緊縮財政のための詭弁

- 「国の借金が…」など、なに寝ぼけたことをいっているのか。どの国も政府が借金する。人生80〜90年生きる人の借金と、何千年と続くことが前提の国と、どうして借金の話が同一にされるのか。しかも、政府の借金なのに、なぜ国民の頭数で割って一人頭の借金額をいわれるのか。だまされてはいけない。誰かの借金は誰かの資産なのだ。政府の借金はみなさんの資産だ。政府の借金が増えていくということと相関して民間の貯蓄は増えている【グラフ参照】。本当のことが伝えられていないだけだ。

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日本の政府と民間の収支バランス(1980〜2016年度)

- ただし、バブルのときだけ国も民間も黒字になったことがあった。それ以外はだいたい相関関係がある。国の借金、財政赤字を拡大してみんなに投資をしたときには、民間の貯蓄は増える。当たり前だがそれが隠されている。「国の借金が…」にだまされてはいけない。企業は手持ち資金以上に銀行から融資を受けて投資し、事業規模を拡大していく。国もそうだ。成長させていかなければいけない。20年間デフレで唯一成長していない国が日本だ。

- 財源は新規国債しかない。いつまでもできるわけではないが、インフレ率2%程度になるまでというのが日本銀行と政府の見解だ。それまでは精一杯いろんな施策を投入するということだが、この6、7年の間にほとんどインフレになっていない。コアコアCPI(価格変動の大きい食料、エネルギーを除いた物価指数)で見ると0.4%。これでインフレにしたなどドヤ顔されても困る。普通に緩やかに成長していける国というのは、緩やかなインフレの状態にあるからだ。デフレの20年間で衰退国家化したんだから、当然緩やかなインフレの状態に持っていかなくてはいけない。だからインフレ率2%という、一般的な国国が成長率として担保している部分を目標にしている。新規国債を発行し、20年間さんざんな目にあった人たちに対しても当然投資をしていかなくてはいけない。借金額が問題ではなくインフレ率が問題になる。

- 私が今いっていることは財務省もいっていた。だが今は「借金はけしからん」といい、「このままでは財政破綻する」とは直接いわないが、それに近い煽りをしている。だが「財政破綻は起こらない」ということはすでに財務省自身がいっていることだ。今財務省は、「わが国の財政は毎年の多額の国債発行が積み重なり、国際的にも歴史的にも最悪の水準にあります。太平洋戦争末期と同水準、欧州諸国のような財政危機の発生を防ぐためにGDPとの対比で債務残高が伸び続けないよう収束させていくことが重要です」といっている。欧州みたいに財政危機が起こる可能性があるかも、と煽っているが、日本は財政破綻はしない。自国通貨建ての借金をしているからだ。それに加えて、自国通貨を発行する能力があるから倒れようがない。

- ヨーロッパで財政破綻したギリシャは自国通貨建ての借金ではない。EU加盟国だから通貨はユーロであり、自国で通貨を発行できない。通貨を発行できるのはヨーロッパ中央銀行だ。収入がなくてそれを返済できる形でなければ破綻する。日本とはケースがまったく違うことを菅直人さんあたりがだまされて、消費税を上げる必要があるという頓珍漢なことをいっていた。財務省もそれをわかっている。個人の借金とも企業の借金とも違う話だ。
 
- いつまででもお金を発行できるわけではない。世の中にお金が出回りすぎればインフレに近づいていくので悪性インフレにならないために、インフレターゲット2%というリミットをもうけている。

- 「欧州諸国のような財政危機の発生を防ぐために」とか「ハイパーインフレになるぞ」みたいなことを委員などにいわせて、消費税の引き上げが必要なんだというのが財務省側のロジックだ。財政制度等審議会に「平成2年度の5.3倍にあたる借金が積み上がって、一般政府の債務残高はGDP比で238%に達しようとしている。歴史的に見ても足下の債務残高対GDPは太平洋戦争末期の状態に匹敵している」という資料を出したりして、たいへんだと煽り続けている。ハイパーインフレに関しても、第一次大戦後のドイツの事例などどんどん資料を出している。

- しかし、2002年の財務省の外国格付け会社宛の意見書で、財務省は「自国通貨建て国債で借金しているとデフォルトには陥らない」と自分たちでいっている。「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」と。これをいっていたのが現在の日銀総裁の黒田東彦さんだ。当時は財務官僚だった。第2弾では「ハイパーインフレの懸念はゼロに等しい」とか、第3弾では「戦後初期のアメリカはGDP120%ごえの債務を抱えていたし、50年代初期のイギリスは200%近くの債務を抱えていた事実を無視しているじゃないか」といっている。事実を無視しているの財務省ではないか。国の借金がこれ以上積み上がったらやばいことになるという話自体を信じることは間違いだ。政府の借金はあなたの借金ではなく、政府の借金はあなたの資産だ。だまされてはいけない。

- 新規国債発行を財源にして、参議院の調査情報担当室に試算をしてもらった。消費税を5%にした場合、6年目に減税効果で一人当りの賃金が約32万円上がる。消費税をゼロにした場合、6年目に減税効果で一人当り44万円賃金が上昇するという結果が出た。

- ここからが重要だが、消費税を5%に減税した場合、消費者物価指数の上昇率は、3年目のピークでやっと1.21%。ここから緩やかにおちていく。つまり消費減税をちょっとやったぐらいではインフレ率2%など到底到達しない。ゼロにした場合、初年度は5%近く物価は落ちるが、その後健全な形で上がり、3年目に1.67%まで上がるけれど、その後また落ちていく。

- つまり消費税を8%から0%にしても全然足りないということだ。もっといろんなことをやっていかないといけない。奨学金で首を絞められている555万人の賃金をチャラにするのに9兆円が必要だが、日銀は株買いで一年間で6兆円使っている。それがいいか悪いかは別として、それぐらい大胆な投資だってできるのだ。9兆円で555万人を救えるなら価値があると私は思う。

- 今投資をしなくていつするのか。この先もっと人人が野垂れ死ぬような状況は生まれてくる。貯蓄ゼロという人は20代で60%をこえている【表参照】。30代、40代、50代も40%をこえている。その人たちは資産形成のできないまま高齢化する。どうやって高齢時代を生き抜くのか。国は平気で切り捨てる。だからこそ資産形成できるような底上げをしていかないとだめだ。今これができなければ本当に悲惨なことになってしまう。逆にいえばやれるということだ。なぜ政治でそれをやらないのか、どうして野党はこのことをいわないのか? まったく勝負にならない。「消費税増税は今は無理だろう」など、どんなロジックだ。永遠に増税なんてしてはいけないし、据え置きもありえない。減税以外道はない。みんなの生活を地盤沈下させたのは消費税だ。すべての税金の滞納の6割が消費税だ。消費税というもの自体が壊れている。消費税だけは赤字でもとられるから。本気でたたかえよ。みんながこれで暮らしていけるという経済政策を野党が旗あげなきゃ一生選ばれない。本気でケンカする気あるのか。

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年齢別 貯蓄ゼロ世帯の割合

- 2013年の特定秘密保護法、総理のお友だちのために国有地を差し上げた森友学園問題、獣医学をつくった国家戦略特区、法人税の引き下げ、派遣法の改正、安保関連法、刑訴法、TPP、種子法廃止、テロ等準備材などたくさんの法律が通されてきた。そのあいだに3回選挙があったが、政権交代は起きなかった。野党に任せて景気がよくなる気がしないからだ。財政比率とかプライマリーバランスの黒字化などという。プライマリーバランスの黒字化とは、借金なしの収入のなかでやるということで、パイは縮小し続けるということだ。それを実行して黒字化させたギリシャやアルゼンチンはその後破綻した。野党はバカじゃないのかという話だ。自分の考えと違う方向のことも知ろうとするべきだ。

- 本当の財源のつくり方をみなさんにお知らせし、それを実際にやれる政治勢力を誕生させるしかない。もし野党側が一つになるときには私は旗を降ろす。ただし、消費税を5%まで下げるといえばだ。財務省に認められて政権をとりたいなど長期的な目標を持って政治に臨むな。今日死ぬのをやめよう、明日もなんとか生きようと思っている人たちの根底には経済問題が大きくかかわっている。その人たちを救わなければ国がある価値はない。それをいえる野党がいないのなら、もう政治なんてやめちまえということだ。なんのために政治家になったのかということを、もっと理論的に詰めていけるようやっていきたい。

■本気で政治変革を目指す  自己保身では何も変わらぬ

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JR小倉駅前での山本太郎の演説を聞く人たち(5月5日)

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集まった人びとに語りかける山本太郎(5月5日)

- 一人の国会議員で何ができるのか。私一人では何もできない。だが実際に力を持てば生活を底上げすることができる。自分一人勝つためだったら小沢一郎さんについていく。だが私がキャリアを積む20年、30年を、この国が壊れていく速度が待てるかということだ。私が小沢さんのそばで「雑巾がけを頑張ります」といったら、今の自民党の若手と一緒だ。自民党の若手は、働き方がぶっ壊されたり、大量に外国人労働者を呼び込めるようになったり、TPPなどこの国がぶっ壊されることに次次に賛成し続けている。理由は自分のキャリアを潰したくないからだ。総理がやっていることに反対したら自分の出世の芽がなくなるからだ。そんな人間にこの国が救えるか。本気でケンカする気力も気概もないのに、どうして政治の場に来たんだという話だ。

- みんな壊されていることはわかっている。労災の請求件数がどれだけ上がっているか。年間数件程度だったのが今は1000件レベルだ。労災の請求までいきつけない人もいる。働き方をむちゃくちゃにされて、誰が救うのか。政治しかない。その政治を変えれるのは誰ですか? みんなじゃないですか。だったら、どうか力を貸してほしい。まるで人間を交換のきく部品のように扱っている。今勝ち組の人もいつまで勝てるかわからない。あなたが経団連の関連の御曹司だったら、あるいは海外に資産を移してこの国からいつでも逃げ出せる状況なら助かるかもしれない。でも大多数の人人はこの国で生きるしかない。だったら政治を変えるしかない。もう全員が食い物にされているんだ。

- 奨学金で考えてほしい。なぜ若い人に借金までさせて学ばせるのか。教育を受けたいという若い人たちに教育を受けさせるのが国の役目じゃないか。未来への投資だ。でもこの国は武富士がやっているようなサラ金に巻き込んでいる。もうかっているのは金融機関だ。なぜ金融機関に年間340億円もうけさせるために若い人たちに借金をさせるのか。大人が借金をするときには、仕事が決まり、年収、返済計画など手続きが必要だ。だが将来何になるかもわからず、給料の額もわからない状態で、なぜ300万円も400万円も借りさせるようなことをするのか。大学院を出たら1000万円の返済が肩にのしかかっていく。でも実際に社会に出たら、薄い初任給のなかから生活し、そのうえ奨学金の返済まである。独り立ちできるわけがない。少子化が加速するに決まっている。それをわかってやっている。

- この国に生きるみなさんのために政治をやるなんて前提は、茶番の国会の中にはない。そこに6年いたから、もう一回自分がこの茶番の中に入ったとしてもガス抜きにしかなれていない。それをもう一回やるのか。それでは救えない。みんなで変えるときに来ている。もう時間はない。だから力を貸してほしい。政治は政治のプロに任せておけばいいなんて大間違いだ。その結果、どんな世の中になったのか。政治家としては未熟で荒削りかもしれないが、本気でやりたい。本気で怒っている。どうか力を貸してほしい。

れいわ新選組公式ホームページ
https://www.reiwa-shinsengumi.com/

れいわ新選組youtubeチャンネルhttps://www.youtube.com/channel/UCgIIlSmbGB5Tn9_zzYMCuNQ

https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/11671
(投稿者注:当掲示板への転載の場合に起こり得る読みにくさを軽減すべく、体裁面で若干の加工処理を行った。)
http://www.asyura2.com/19/senkyo261/msg/700.html

[政治・選挙・NHK261] 反G20訴える市民グループ 福岡・天神で街頭行動(朝日新聞)
朝日新聞デジタル 2019年6月9日21時53分

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街頭でG20財務相・中央銀行総裁会議への反対を訴える市民グループ=2019年6月9日午後2時59分、福岡市中央区、野上隆生撮影

 福岡市で開催されている主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に反対する街頭行動が9日、同市中心部であった。買い物客らでごった返す西鉄福岡(天神)駅前で15人ほどがプラカードを掲げ、「G20では、貧困や格差など世界の大きな課題は解決できない」「経済会議と言いながら、大規模な交通規制でかえって地域経済に支障を出している」などと訴えた。

 主催は市民や労働団体などでつくる「RAGE AGAINST THE G20(G20に怒りを)@FUKUOKA」。6月9日の「ロックの日」にちなみ、米国のロックバンド「レイジ・アゲンスト・ザ・マシン」をもじって名付けたアピール行動で、スピーチの合間にこのバンドの曲「ゲリラ・ラジオ」を流した。

 行動に参加したイラストレーター、いのうえしんぢさん(48)は「米国が貿易を通じて世界経済を支配するためのルールづくりをしてきたのが、これまでのG20の歴史」と指摘。「貧しい国から甘い汁を吸うような経済のルールを勝手に作ってほしくない」などと訴えた。(野上隆生)
 
http://www.asyura2.com/19/senkyo261/msg/705.html

[政治・選挙・NHK261] [小沢一郎戦記(13)] 小沢一郎が見たロッキード事件 (朝日新聞社 論座)
小沢一郎戦記
小沢一郎が見たロッキード事件
(13)田中角栄のもとを次々と人が離れていく中、小沢はロッキード裁判に通い続けた

佐藤章 ジャーナリスト、慶應義塾大学非常勤講師、五月書房新社編集委員会委員長
論座 2019年06月10日 より無料公開部分を転載。

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記者会見で質問に答える小沢一郎氏=1993年11月8日、国会内

■田中角栄のもとを去らなかった小沢一郎

 司法試験を目指していた大学院生、小沢一郎が、日本の政治の頂点に上り詰めようとしていた自民党幹事長の田中角栄の門を叩いたのは、一郎26歳、角栄50歳の1968年12月だった。その3年7か月後の1972年7月、田中角栄は、自民党総裁選で佐藤栄作の支持した福田赳夫を破って党総裁、第64代の首相に就任した。

 しかし、2年5か月後の1974年12月には国会などで金脈問題の追及を受け首相を辞任。さらに首相退陣後、1976年7月にはロッキード事件の受託収賄罪容疑などで逮捕された。権力の頂点に駆け足で駆け上がり、戦前の高等小学校を卒業しただけで首相になったということで「今太閤」ともてはやされたが、その座から転がり落ちるのも早かった。

 小沢は、短い時間の中で描いてみせた人生と権力の急角度の放物線を至近距離で目撃し続けた。ロッキード事件の裁判も欠かさず傍聴した。

 しかし、小沢は事件や裁判の推移を冷静に見つめていただけではない。首相辞任後の田中から櫛の歯が抜けるように一人また一人と田中のもとから人が去っていく中で、寡黙な青年政治家、小沢だけは去らなかった。

 東京・平河町にある砂防会館の田中事務所に足繁く訪れ、田中を見舞った。長い話をするわけではない。何時間でも二人だけで将棋盤とにらみ合った。余計なことは喋らず、人生の苦しみと無為の時間を黙ってともに過ごしてくれる人物。田中がそこに無償の友情の姿を見いだしていたとしても不思議ではない。

 ロッキード事件そのものは、全日空への旅客機L1011トライスターの売り込みに関してロッキード社から田中に5億円の謝礼が支払われたという筋が人口に膾炙しているが、全体像はそんな単純なものではない。ロッキード社からは軍用の対潜哨戒機P3Cの売り込みの件もあり、事情は輻輳していた。

 事件の背景についても、独自の資源外交や急な対中国国交回復を成し遂げた田中に対して米国が仕組んだとする見方や、政敵田中を追い落とすことを目論んだ三木武夫首相の執念を挙げる見方など、多分に政治的な要素の強い事件だと位置づける考え方が根強く存在する。

 その意味で、ロッキード事件はまだ解明されていない部分が非常に多い事件である。田中の栄光の頂点への急登攀と、容赦のない急転落を目の前で目撃し、苦しみの時間を傍でともに過ごした小沢一郎は、事件をどのように見ていたのか。

 ロッキード事件そのものについては、小沢も政治的色彩の強い事件だと考えていたが、その見る角度は非常にユニークなものだった。

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1979年秋の総選挙をにらんだ自民党田中派が総会。中央で話を聞くのが田中角栄元首相。右奥は小沢一郎氏

■「中国の次はソ連だ」

――小沢さんが田中角栄の門を叩いたのは1968年12月です。その後72年7月に田中角栄政権が誕生しますね。

小沢 昭和47年(1972年)だから、ぼくがまだ2期目の時ですね。

――そうですね。この時には、田中さんはまず日中国交回復を非常に華々しく仕遂げて、秘書だった佐藤昭子さんの著書によると、「次はソ連だ」としばしばつぶやいていたということですね。非常に田中さんの野心を感じる文脈ですが、そのあたりはどうだったのでしょうか。

 佐藤昭子は田中後援会の「越山会の女王」と呼ばれた秘書。
17歳で田中に出会い、秘書として田中を支え続けた。田中派の
竹下登や小沢らからは慕われたが、田中が倒れて後は田中の長
女、真紀子と合わず、田中とも会うことはできなくなった。そ
の著書『決定版 私の田中角栄日記』(新潮文庫)には「田中
の目はいつも先を睨んでいた。中国に行く前から、私にはこう
言っていたのだ。「中国の次はソ連だ、ソ連だよ」

小沢 中国と全然国交がないというのも不自然な話だからね。だから、日中国交を回復させたのは大英断だったと思う。自民党の中の意見は真っ二つだったけど、それでもやりましたから。最後は総務会を説得して説得して、反対派は欠席してもらったんだったかな。とにかく大変な騒ぎでしたね。しかし、その後、ソ連だということで、チュメニ油田のこともあるし、アメリカににらまれたという話になってくるんです。

 チュメニ油田はロシアの西シベリアにある油田地帯で、産油
国ロシアの中でもエース的存在。田中角栄は中東産油国や米国
の石油メジャーに一方的に頼らない独自の資源外交を目指し
て、チュメニ油田開発をめぐりブレジネフ・ソ連共産党書記長
や西ドイツ首脳らと交渉を重ねていたが、これが米国の「虎の
尾」を踏んでロッキード事件を仕掛けられたという見方が根強
くある。

――もちろん田中さんは、ソ連のチュメニ油田開発だけではなくて、オーストラリアに行って独自のウラン資源外交を展開しました。これも含めて米国に睨まれる原因を作ったと言われていますね。

小沢 それはそうかもしれない。アメリカも、刑事免責を与えた上でのコーチャン(ロッキード社副社長=当時)やクラッター(同社東京代表=同)の嘱託尋問を許しているからね。まず、ロッキード裁判自体がものすごくねじ曲がった裁判だと思う。お金を出したロッキード社側のコーチャンとクラッターを刑事免責にしておいて証言を取ったわけだから、非常に問題でしょう。あれをやればみんな検察の言う通りに喋るでしょう。お前は免責にしてやるから何でも喋れということですから、

 でたらめでも何でも全部喋ってしまう。それでその喋ったことを証拠採用するというのでは、もう話にならないでしょう。

――小沢さんは、ロッキード裁判はほとんど傍聴したわけですよね。

小沢 はい。他に毎回傍聴している人がいなかったですからね。しかし、変な裁判だと思いました。まず、関係者の誰も5億円というお金も、お金が入っていたというダンボールも見ていないんだよ。

――裁判の内容はまた後ほどお聞きするとして、その間、田中さんの普段の様子はいかがでしたか。裁判の経過とともに田中さんのもとからだんだん人が去っていく中で、小沢さんだけは変わらずに足繁く田中さんの事務所を見舞っていたという関係者の回想もありますが。

小沢 うん、ぼくはしょっちゅう行っていたよ。

――しょっちゅう?

小沢 うん、親父の顔を見られるかどうかという感じがあって、しょっちゅう行っていた。ひょいっと出入りする時に、ひょいっと挨拶するだけだったけどね。ぼくは、それで満足だった。

――それは、小沢さんにとっても田中さんはそれだけ人間的な魅力があったということですか。

小沢 はい。それとやっぱり、それだけ心情的に近かったからね。しょっちゅう行っていたけど、あまり喋ったりはしない、親父は。ただ、「おう」って言うだけだよ。

――そうやって事務所に行かれて、それから田中さんの自宅にも行ったのですか。

小沢 目白の自宅に行くのはもっと後からかな。ほとんど事務所だったね。

――田中さんの政務秘書だった早坂茂三さんの回想によると、小沢さんは砂防会館の田中事務所によく顔を見せて、田中さんと小沢さんと二人で何時間でも将棋を指していたとありますね。

小沢 はい。

――さらに早坂さんの回想では、小沢さんは田中さんからいろいろな話を聞いたとありますね。田中さんが苦労した政治の話や、政治家の生き様などを小沢さんに話して、小沢さんは田中さんの良いところも悪いところもわかっていたと回想しています。やはりいろいろな話を聞きましたか。

小沢 そうそう。それはそうです。いろいろなことを話したり、ぼくの前で重要な電話をしたり、いろいろとありましたね。何でも喋ったし、自分の本心も喋っていた。

――ロッキード事件については何か話していたことはありますか。

小沢 まあ、それはぽっちんぽっちんとね。

――何か特別に印象に残っていることはありますか。

小沢 あれは意図的で政治的な問題だったからね。

――田中さんも、ふとあれは政治的だと言ったりするのですか。

小沢 いや、そんなことはわかりきっていることだから言わないけどね。非常に機微にわたる話は今でもなかなか言えないけどね。田中の親父の名誉にかかわることもあれば、相手方のこともあるからね。相手方はだんだんと亡くなっている人もいるから話してもいいことではあるけど、まあぼくがこの(政治の)世界でも辞めれば喋るかもしれない。

――そうですね。そこで、政治的だったという話ですが、ロッキード事件の場合、国内的にはやはり当時の三木武夫首相が非常に積極的で、田中さんを追及するために、まさに刑事免責の嘱託尋問、司法取引までやったということが指摘できますね。

小沢 その点は、まさに仲間うちで刺したとも言えるわけですね。田中の親父は三木武夫首相にやられたとも言える。うちの中の敵というのは一番危ないんです。それで、客観的事実を言えば、三木さんが田中の親父に敵対するようになった原因は、後藤田さんなんだよ。

――後藤田さん?

後藤田さんです。

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全員閣僚懇談会で田中角栄首相と並ぶ三木武夫副総理=1973年11月14日、首相官邸

■三木武夫の牙城・徳島に後藤田正晴を擁立したことが…

 後藤田正晴は徳島県麻植郡東山村(現吉野川市美郷)に生ま
れる。戦前の東京帝国大学卒業後、内務省に入省。戦後内務省
廃止後は警察庁に入り警察官僚の道を進む。警察庁長官を辞任
後、第1次田中角栄内閣の内閣官房副長官(事務)に就任。以
後、田中は後藤田を重用し、1974年の参院選に徳島選挙区から
立候補させた。

――そうですか。

小沢 後藤田さんがそもそもの原因なんだ。 ・・・ログインして読む
(残り:約1107文字/本文:約5056文字)

http://www.asyura2.com/19/senkyo261/msg/719.html

[政治・選挙・NHK261] (森友問題に関し)投書のお願い 醍醐聡(ちきゅう座)
2019年 6月 9日
<醍醐聡(だいごさとし):東京大学名誉教授>


お知り合いの皆さま


私も告発人に加わっている市民有志が刑事告発した森友学園への国有地売却に関わる背任の嫌疑は、

 市民有志、刑事告発 
     ↓
 大阪地検、不起訴処分
     ↓
 市民有志、大阪検察審査会に審査申立て
     ↓
 大阪検審、背任について不起訴不当の議決
     ↓
 大阪地検、再捜査

という経過を経て、目下、大阪地検特捜部が背任の嫌疑を再捜査中です。
(他の市民グループが告発した公文書遺棄についても再捜査中)

この件で、6月6日の『日刊ゲンダイ』に1面全面で私のインタビュー記事が掲載されました。


つきましては、この件でお願いをさせていただきます。

大阪地検の不起訴処分を不当とした大阪第一検察審査会は、「議決要旨」の末尾で、

 「最後に付言すれば、背任罪について、本件のような社会的に注目を
  集めた被疑事件については、公開の法廷という場で事実関係を明ら
  かにすべく公訴を提起する意義は大きいのではないかと考える。」

と指摘しました。

http://chikyuza.net/wp-content/uploads/2019/06/345b35424b726d0579b5ff3399ad4d66.jpg
「議決要旨」の該当箇所

つまり、捜査をやりなおし、起訴して、公開の法廷で背任の真偽を究明すべきと言ったわけです。

しかし、大阪地検におざなりの再捜査で幕引きさせず、起訴処分を決定させて、 裁判に持ち込むには、世論の厳しい監視が何より、重要です。


そこで、皆さまに、この問題を風化させてはならない、大阪地検は背任で起訴せよ、背任の背景(政治の関与)まで踏み込めという意見を、全国紙、あるいは地元紙へ投書、投稿をしていただけないでしょうか?

この問題は安倍政権の国政私物化の一角をなすものであり、しぶとく追及しなければならないと考えています。

どうかよろしくお願いいたします。

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2017年3月6日国会での安倍首相答弁(参院予算委会議録)

http://chikyuza.net/wp-content/uploads/2019/06/a1d81ecf5ad2f503456814c0a33971ef.jpg
安倍首相が上記答弁を行ったときのニュース画像


〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/

〔opinion8710:190609〕

http://chikyuza.net/archives/94337
http://www.asyura2.com/19/senkyo261/msg/728.html

[政治・選挙・NHK261] 「月収の基準ずれてる」 阪急電鉄の中づりに批判殺到(朝日新聞)
朝日新聞デジタル 2019年6月10日20時53分

https://www.asahicom.jp/articles/images/AS20190610003931_comm.jpg
「上から目線」だと批判された阪急電鉄の中づり広告(同社提供)


 阪急阪神ホールディングス(HD)は10日、月収に触れた阪急電鉄の中づり広告が、インターネット上で庶民感覚とずれているなどと批判されたため、撤去することを決めた。同社広報は「公共交通機関の広告として内容が不適切だった。今後は適切かどうかのチェックを強化する」と説明した。

 広告は、働く人を勇気づける言葉の企画として6月から始まり、阪急神戸線、宝塚線、京都線の一部の電車に掲示していた。全80種類のキャッチコピーの中に、「毎月50万円もらって毎日生き甲斐(がい)のない生活を送るか、30万円だけど仕事に行くのが楽しみで仕方がないという生活と、どっちがいいか。」というものがあった。この内容に対して、ツイッター上で「月収の基準がずれている」「(高級住宅地のある)阪急沿線の金銭感覚だ」などと批判が殺到したという。

 また、「私たちの目的は、お金を集めることじゃない。地球上で、いちばんたくさんのありがとうを集めることだ。」という広告に対しても、「ブラック企業のような精神論で不愉快」といった批判が寄せられた。

 キャッチコピーは、コンサルティング会社が出版した本の中から、同社と阪急が選んだという。(神山純一)

http://www.asyura2.com/19/senkyo261/msg/739.html

[政治・選挙・NHK261] 民主主義をめぐる日韓の差 − 「6・15事件」を前に考える −(ちきゅう座)
2019年 6月 11日
<岩垂 弘(いわだれひろし):ジャーナリスト>

 今年も「6・15事件」が近づいた。 今から59 年前の1960年6月15日、日米安保条約の改定に反対する学生集団が国会構内に突入し、これを阻止しようとした警官隊と衝突、学生集団の中にいた東大生の樺美智子さんが死亡した事件だ。この事件は民主主義擁護の運動の中で起きた事件と位置づけられているが、国民の間では今やほとんど忘れ去られ、毎年、6月15日がめぐってきても事件を顧みる目立った行事はない。しかし、隣国の韓国では、毎年この時期に、この国の民主化運動の原点とされる「光州事件」に対し国家的な記念行事が行われる。この違いは何から来るのだろうか。

 この5月18日、一つの国際ニュースが私をとらえた。韓国の光州市の国立墓地で「光州事件」39周年記念式典が政府主催で行われたというニュースだった。

 光州事件とは、韓国で、1979年の朴正熙大統領暗殺事件直後にクーデターで権力を握った全斗煥・少将を中心とする若手将軍グループが80年5月に戒厳令を全国に拡大し、金大中ら与野党の政治家を逮捕するなど、民主化の動きを阻止しようとしたのに対し、光州市の学生・市民が5月18日から抗議行動を始めると、戒厳令部隊が武力で弾圧し、多数の死傷者が出た事件だ。死者・行方不明者は300人以上とされる。
 その後、事件が全国に知れ渡るにつれて、光州で蜂起した学生・市民の運動が80年代の民主化運動を牽引した原動力となり、ついに87年6月に韓国民主化が達成された、と言われるようになった。こうした評価に基づき、今では、この事件は「5・18民主化運動」と呼ばれる。
 
 5月18日に行われた39周年記念式典には4000人あまりの市民が参加したが、これに出席した文在寅大統領は「あの時、公権力が光州で行った野蛮的な暴力と虐殺に対し大統領として国民を代表しもう一度深く謝罪します」と述べ、続けてこう呼びかけた。

 「光州の5月は私たちに深い負債意識を残しました。5月の光州と共にできなかったこと、虐殺される光州を放置したという事実が同じ時代を生きた私たちに消せない痛みを残しました」
 「その負債意識と痛みが1980年代民主化運動の根となり、光州市民の叫びがついに1987年6月抗争につながりました。6月抗争は5.18の全国的な拡散でした。大韓民国の民主主義は光州にあまりにも大きな借りを作りました」
 「大韓民国の国民として同じ時代、同じ痛みを経験したのならば、そして民主化の熱望を共に抱いて生きてきたのならば誰一人としてその事実を否定することはできないでしょう。5.18の真実は保守・進歩で分けることはできません。光州が守ろうとした価値こそがまさに『自由』であり『民主主義』であったからです。私たちがすべきことは民主主義の発展に寄与した光州5.18を感謝しながら私たちの民主主義をより良い民主主義に発展させていくことです」
 
 私は、文大統領の演説を読んで、韓国における民衆による民主化運動深化の歩みを知り、感動した。とともに、私の脳裏に甦ってきたのは、日本における戦後民主主義運動の頂点とされる1960年の反安保闘争とその後の日本国民の動きだった。

 1960年の反安保闘争が戦後最大とされる大規模な大衆運動に盛り上がったきっかけは、岸信介自民党内閣が同年1月に米国政府と結んだ日米安保条約改定案(新安保条約案)の承認を同年2月、国会へ提出したからだった。同条約案はその第5条で「日本国の施政の下にある領域における、[日米]いずれか一方に対する武力攻撃」に対しては共同行動をとることを宣言して旧条約の片務性を解消し、第6条で、米軍が「日本国において施設及び区域を使用することを許される」のは、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため」であると規定していた。
 これに対し、野党の社会党、日本労働組合総評議会、平和団体などが「日本が戦争に巻き込まれる危険性が増す」と反発、安保改定阻止国民会議を結成して集会やデモが中心の反安保闘争を展開した。が、当時、労組幹部が「安保は重い」ともらしたように、運動はなかなか盛り上がらなかった。
 
 が、状況は一夜で一変する。国会での新安保条約承認を急ぐ自民党が5月19日夜、国会内に警官隊を導入して社会党議員を排除した上、衆院安保特別委員会で新安保条約の採決を強行、さらに会期を延長して衆院本会議で同条約を自民単独で採決したからである。これを機に、全国各地からおびただしい人たちが国会議事堂につめかけ、抗議の声をあげるに至った。その数は、5月19日3万人、20日10万人、21日5万人、26日17万人、6月11日23万人にのぼった。6月4日には全国で労組によるストが行われ、560万人が集会・デモに加わった(人数は日本ジャーナリスト会議編『主権者の怒り 安保斗争の記録』による)。
 それまで、集会やデモで掲げられていたプラカードの文言は「安保反対」「戦争は嫌だ」といったものが大半だった。が、「5月19日」を境に「民主主義を守れ」「岸(首相)を倒せ」に代わった。自民党の“暴挙”を機に反安保闘争は議会制民主主義擁護運動といった性格を帯びるものとなった。

 「6・15事件」はそうした中で起きた。国会構内に突入した全学連主流派の隊列に加わっていた樺さんの死は多くの人たちに衝撃を与え、6月18日に国会周辺につめかけた人たちは33万人に達した。が、抗議の声がとどろく中、新安保条約は19日午前0時過ぎ、参院の議決を経ないまま自然承認となった。岸内閣は退陣を余儀なくされ、6月23日に辞職した。

 「5月19日」以降の反安保闘争の中で生まれた市民グループの一つに「声なき声の会」があった。それまでの集会・デモの中心は労組員と学生で、市民の姿はまれ。そんな中、千葉県柏市の画家・小林トミさん(当時、30歳)が知人の映画助監督とともに「総選挙をやれ!! 誰デモ入れる声なき声の会  皆さんおはいりください」と書いた横断幕を掲げて東京・虎ノ門から国会まで行進。そこに加わってきた一般市民でつくられたグループだった。

 小林さんは6・15事件から1年後の61年6月15日、樺さんが亡くなった国会南通用門を訪れた。事件直後、そこは彼女の死を悼むあふれんばかりの人びとと花で埋まっていたのに、1年後はわずか20人ばかりが来ているだけだった。ショックだった。「日本人はなんと熱しやすく冷めやすいことか」。小林さんは、決意する。「日米安保条約に反対する運動をこれからも続けてゆこう。そして、運動の中で1人の女性の生命が失われたことを忘れまい」。以来、小林さんと「声なき声の会」の人たちは毎年6月15日に「樺美智子さん追悼 6・15集会」を開き、集会後、花束をもって国会南通用門を訪れるようになった。

 小林さんは2003年に病没するが、彼女の遺志を継いだ「声なき声の会」の人たちによって6・15集会はその後も続けられている。参加者は2010年代までは約40人を数えたが、それ以降は約30人といったところ。今年の集会は59回目で、6月15日(土)午後2時から、東京都新宿区早稲田2丁目の早稲田奉仕園会館地下 YOU-Tホールで開かれる。
 6・15事件以来、この事件を忘れまいと毎年、記念の催しを続けてきたのは、私の知る限り、「声なき声の会」だけだ。「民主主義」に対する韓国と日本の市民の対応の違いに驚かされるのは私だけだろうか。

 それにしても、この違いはどこから来るのか。日本人についてはよく、「熱しやすく冷めやすい」「喉元過ぎれば熱さを忘れる」「過去のことは水に流す」といった性格、あるいは価値観があると言われるが、そのことと関係があるのだろうか。それとも、「民主主主義の成熟度」という点で韓国の方が一歩先んじているということだろうか。

初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye4610:190611〕

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[IT12] 無人運転電車の暴走事故を侮るな システムを狂わす電子機器のノイズにも目を向けよう (朝日新聞社 論座)
木代泰之 経済・科学ジャーナリスト
論座 より無料公開部分を転載。

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シーサイドラインは事故後3日目に社員による手動運行を再開した=横浜市内で筆者撮影

 横浜市の新交通システム「シーサイドライン」が6月1日、新杉田駅で車両が突然逆走して車止めに衝突した。長年無事故だったコンピューター制御の無人車両は、なぜ逆走したのだろうか。

 シーサイドラインは6日、「車両で信号の断線が見つかった。進行方向を切り替える指示が伝わらなかった可能性がある」と発表したが、国の運輸安全委員会は「断線は事故の衝撃で起きた可能性もある」として、更に調査を進めている。

■原点に戻って安全性を考え直すよい機会

 無人運転の新交通システムは、1980年代から「コンピューターに任せておけば大丈夫」という信頼の下に全国各地に建設されてきた(下の表)。

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 シーサイドラインを含め、無人運転の新交通システムの多くは、車両側と駅側の両方にあるATO(自動列車運転装置)が、全線にわたる記録や駅側の情報をもとに連携して運行指示する方式である。

 無人なので経営効率は良いが、一方で「コンピューターで何が起きるか予測できない」という現実も生じている。シーサイドラインでは、断線を検知できず、逆走時に自動ブレーキが作動しないというシステム上の欠陥が見つかった。

 無人運行は時速500キロのリニア新幹線でも予定され、航空機や車も電動化と自動化が進んでいる。今回の事故は、一度原点に戻ってシステムの安全性を考え直すよい機会でもある。

■電子機器から発生する電磁ノイズをまず疑う

 コンピューター化や電動化を進めると、人間の単純ミスによる事故は減る。半面、従来考えられなかった故障や事故のリスクが生まれる。まず気を付けなければならないのは電子機器や部品が発生する電磁ノイズ(EMI)の影響である。

 EMIの発生は基本的に避けがたく、回路や空気中を伝わって他の電子部品やシステムに誤信号を生じさせる。このためシステムの設計にあたっては、EMIの遮へいや機器の配置を考慮するが、高電流が流れる電車は、それ自体が強力なEMI発生源になる。

 半導体では、内部で起きる信号同士のクロストーク(干渉)も問題になる。

 コンピューター化すると半導体の数量が増える。その回路は高密度で、信号線が微細な間隔で並んでいる。このため並行する信号線が互いにノイズとなり、信号の0と1が変わるなど、誤動作を起こしやすい。

 半導体世界1位のサムスンの資料には、「信号線の間隔が20〜30ナノメートル(1ナノは10億分の1)ならクロストークは心配ないが、10ナノメートル以下だとクロストークが発生する」とある

 2次元の半導体はすでにこの限界に達している。半導体各社が、2次元メモリーを縦方向に30層〜50層積み上げる3次元メモリーの開発に挑んでいるのはこのためだ。

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有人で運転を再開し、事故のあった新杉田駅に向かう新交通システム「シーサイドライン」=2019年6月6日、横浜市磯子区

■大阪市のニュートラム事故(1993年)は原因不明のまま

 厄介なのは、EMIやクロストークの現象は不確実で、事故原因として特定しにくいことだ。電子回路や部品の経年劣化、落雷、宇宙放射線、整備エラーなど様々な要因も影響する。

 1993年、大阪市のニュートラム南港ポートタウン線で、シーサイドラインと類似した暴走事故が起きた。住之江公園駅に進入した電車が減速せずに60メートル暴走し、車止めに衝突して210人が負傷した。

 事故調査委員会は運行を1か月半停止して原因を調査した。部品の接触不良が見つかったが、事故との関係ははっきりせず、結局、「ブレーキ指令系統の極めてまれな一時的導通不良」という苦しい内容の報告書になった。

 大阪のニュートラムは事故後、万一暴走が起きた時は非常ブレーキで停止させる装置を新たに導入。安全の確保を無人で行うことの困難さを抱えつつ26年間運転を続けている。

■新幹線は時速30キロ以下なら運転士が手動で操作

 新幹線の運転はどのように行われているのだろうか。運転士が発車ボタンを押すと、次の到着駅に近づくまでのスピード管理は全てコンピューターが行う。しかし、到着駅の近くで時速30キロまで減速すると、あとは運転士が停止するまで手動で運転する。これなら車両が駅構内で暴走する心配はない。

 新幹線も完全な自動運転にすることは可能だが、全部をコンピューター任せにしないのは、運転士の技量を維持する目的もあるという。もし自動システムが故障したとき、手動運転ができる運転士がいなければ、復旧に支障が出る。人間が関与する余地を意図的に残しているのは賢明だ。

■航空機の電池の連続発火も原因不明のまま運航再開

 航空機分野でもEMIの影響が疑われる事故があった。 ・・・ログインして読む
(残り:約621文字/本文:約2593文字)

https://webronza.asahi.com/business/articles/2019060700005.html
http://www.asyura2.com/14/it12/msg/286.html

[政治・選挙・NHK261] 野党は「消費減税」を看板政策として国政選挙を闘え 想田和弘 (マガジン9)
映画作家・想田和弘の観察する日々
第77回:野党は「消費減税」を看板政策として国政選挙を闘え

By 想田和弘 2019年6月12日
出典「マガジン9:https://maga9.jp/


 山本太郎参議院議員が4月に立ち上げたばかりの政治団体「れいわ新選組」に、6月5日時点で1億6826万円もの個人献金が集まった。朝日新聞によると、千円や五千円などの少額の寄付が全体の6〜7割を占めるという。

 ツイッターを眺めていると、一人で何回も寄付したという投稿をよく見かける。

 日大法学部の岩井奉信教授は「通常の個人献金の集め方では、これほどの金額は集まらない。異例だ」とのコメントを寄せている。

 リベラル派の急先鋒として活動してきた山本議員だが、彼がいま人気を集めている一番の理由は、「反安倍」でも「脱原発」でも「護憲」でもない。彼が人々の共感を集めているのは、「消費税廃止」や「最低賃金1500円」といった「庶民のための経済政策」「反緊縮」を前面に出しているからである。

 それは山本氏が全国津々浦々で行なっている、街頭演説と質疑を聴いてみればわかる。彼がしばしば目に涙を浮かべながら語っていることの大半は、この国でどうして庶民が苦しい生活を強いられていて、どうすれば生活を改善できるのか、という問題に費やされている。

 実際、日本で暮らす庶民の生活は苦しくなる一方である。

 金融広報中央委員会が行なっている「家計の金融行動に関する世論調査」によると、貯蓄ゼロ世帯(2人以上世帯)は1987年に3.3%であったのが、2017年には31.2%になった。ここ30年間で恐ろしいほど上昇しているのである。

 一方、日本商工会議所の三村明夫会頭は、経済財政諮問会議などで最低賃金を時給1000円に引き上げる議論が行われていることについて、「重大な影響が中小企業にあると思います。1000円というのは大変大きな金額ですよ」と述べ、反対を表明した。時給1000円で1日8時間・月20日間働くとすると年収192万円になるが、そんな賃金すらも払えないと言ったわけである。これでは貯蓄ゼロ世帯が増え続けるのも不思議ではない。

 他方、金融庁は退職後に2000万円が不足する例もあるとして、「若いうちから資産運用が必要」とする報告書をまとめた。麻生太郎財務大臣は次のように言い、無責任にも資産形成による自助努力を促した。

 「100まで生きる前提で退職金って計算してみたことあるか? 普通の人はないよ。そういったことを考えて、きちんとしたものを今のうちから考えておかないかんのですよ」

 年収192万円に満たぬ貯蓄ゼロの人たちが、いったいどうしたら2000万円貯められるというのか。政治家たちの長年にわたる失政と無責任には憤りを禁じ得ないが、逆に言うと、だからこそ「庶民のための経済政策」と「反緊縮」を訴え、富裕層優遇の新自由主義政策をひっくり返そうとしている山本太郎は、草の根から支持を集めているのである。

 興味深いのは、山本氏が2月、民間業者に委託して独自で行った世論調査の結果だ。
 「山本太郎が新党を立ち上げたら支持しますか?」との問いに対して、9%超が「支持する」と回答したという。そして「支持する」と答えた人のうち、自民支持層と立憲支持層がともに約15%を占めたというのだ。

 つまり山本太郎の主張は、イデオロギー的には真逆であるはずの、自民支持層からも票を奪えるのである。

 なぜなら経済的に困窮しているのは、自民支持層も同じだからだ。そして彼らが消極的に自民を支持しているのは、野党がアベノミクスに対抗できる経済政策を打ち出してこないからではないか。僕は山本太郎の人気ぶりを眺めながら、そう確信している。

 不可解なのは、参院選もしくは衆参同日選を控えているにもかかわらず、立憲民主党などの野党がこの安倍政権打倒の絶好の機会に飛びつこうとしないことである。

 消費税廃止を掲げる山本太郎だが、野党が消費税の5%への減税を公約にするなら、選挙でも共闘したいと発言している。安倍政権を打倒したいなら、野党は今すぐに「消費減税」を政策の中核に据え、選挙戦ではそれを前面に出して「庶民のための経済政策」を訴えるべきであろう。

 もちろん、それは選挙のための単なる方便ではない。

 安倍政権が2014年に消費税を5%から8%に増税した際、消費が冷え込んで日本経済が深刻なダメージを受けたことは明らかである。これは多くのエコノミストたちが指摘しているところだ。

 だって、それはそうだろう。デフレ経済で消費が落ち込んでいるのに、消費するたびに罰金のごとく税を払わされる消費税を上げてしまったら、ますます経済がドツボにハマるであろうことは、経済学者でなくてもわかる物事の道理だ。というより、それは日々の生活の肌感覚でも実感できることである。

 しかも「消費増税分は社会保障に使う」という公約は完全に反故にされた状態だ。山本太郎事務所が内閣官房に問い合わせたところ、増税分の84%は使途不明だという。

 要するにあの増税は、少なく見積もっても「失政」であり、もっと言うと「詐欺」だった可能性が高いのである。であるならば、最低限、消費税は元の5%に戻すべきではないか。

 これは極端な主張でもなんでもない。いま話題の「現代貨幣理論(MMT)」を支持するかどうかとも関係ない。そういう意味では、実にハードルの低いはずの政策なのである。

 その最低限のハードルをもなかなか越えようとせず、「消費税増税凍結」にまでしか踏み出せない野党たちに、僕はもどかしさを感じてしまう。いったい何をためらっているんだ、と。安倍政権が消費税増税延期を再び言い出したら(その可能性は十分にある)、「凍結」ではとても闘えないぞ、と。

 とはいえ、当たり前だが山本太郎だけでは安倍政権を倒せない。安倍政権を倒すには、どうしても立憲民主・国民民主・共産・社民の力を合わせることが必要なのだ。それは山本太郎が望んでいることでもある。

 だからこそ強く願う。野党全党が「消費減税」を前面に掲げて選挙戦を闘うことを。「ボトムアップの政治」だけでなく、「ボトムアップの経済」と「経済のデモクラシー」を大きく掲げることを。

 いずれにせよ、今のままでは惨敗必至だ。野党はこの起死回生のチャンスを絶対に逃してはならない。


*************
想田和弘(そうだ かずひろ): 映画作家。ニューヨーク在住。東京
大学文学部卒。テレビ用ドキュメンタリー番組を手がけた後、台本
やナレーションを使わないドキュメンタリーの手法「観察映画シリ
ーズ」を作り始める。『選挙』(観察映画第1弾、07年)で米ピー
ボディ賞を受賞。『精神』(同第2弾、08年)では釜山国際映画祭
最優秀ドキュメンタリー賞を、『Peace』(同番外編、11年)では
香港国際映画祭最優秀ドキュメンタリー賞などを受賞。『演劇1』
『演劇2』(同第3弾、第4弾、12年)はナント三大陸映画祭で
「若い審査員賞」を受賞した。2013年夏、『選挙2』(同第5
弾)を日本全国で劇場公開。最新作『牡蠣工場』(同第6弾)はロ
カルノ国際映画祭に正式招待された。主な著書に『なぜ僕はドキュ
メンタリーを撮るのか』(講談社現代新書)、『演劇 vs.映画』(岩
波書店)、『日本人は民主主義を捨てたがっているのか?』(岩波
ブックレット)、『熱狂なきファシズム』(河出書房)、『カメラ
を持て、町へ出よう ──「観察映画」論』(集英社インターナショ
ナル)などがある。

https://maga9.jp/190612-5/
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[政治・選挙・NHK261] 独裁臭の政治家たち 鈴木耕 (マガジン9)
言葉の海へ
第76回:独裁臭の政治家たち

By 鈴木耕 2019年6月12日
出典「マガジン9:https://maga9.jp/


■毒を失くした「喜劇」

 みなさんは『独裁者』という映画をご存じだろう。チャップリンの傑作として、知らない人はいないはず。封切りは1940年のニューヨーク。当時、世界を席巻していたドイツの独裁者ヒトラーを徹底的に戯画化し嘲笑した作品で、チャップリン自身、命懸けの勝負だったという。

 当のヒトラーがこの映画を観たかどうかはよく分かっていないようだが、当然のことながら、ドイツやその同盟国(もちろん日本も!)では上映禁止となった。

 喜劇とは、“毒”を持つもの。巨大で強いものへ向けて、強烈な毒を放つ風刺こそが、喜劇の真髄である。チャップリン『独裁者』は、そのもっとも優れた成果だった。

 笑いは権力者に対する庶民のささやかな抵抗だ。ロシアの小噺、日本の落語や川柳などがそれにあたる。

 だが、権力を持つ者はそれを逆手に取ることも多い。例えば、中世ヨーロッパの王侯らは、身近にいつでも“道化”を侍らせていた。自分を笑いの対象にさせて、それを自らが愉しむ余裕を持つというのが、権力者の権力者たるゆえんだと考えていたからである。

 そこでは道化といえども命懸けだ。権力者への風刺がどこまでが許されるのか、どこで一線を踏み越えてしまうのか。踏み越えれば王の怒りを買い、命を落とす。だが、ただ追従するだけでは王の機嫌を損ねてしまう。そのぎりぎりの“笑いの闘い”が、喜劇の危ない面白さなのだ。

 だが日本では、そんな喜劇とは無縁な“お笑い”が蔓延している。それこそ毒にも薬にもならぬバカ騒ぎが、とうとう首相官邸にまで入り込んだのだ。6月6日のことである。

 「吉本新喜劇ご一行様」が首相官邸を訪問、“乳首ドリル”とかいう“芸”を披露して安倍首相を喜ばせたらしい。ぼくはこの“芸”をよく知らないので、そこにどんな“毒”が込められているかは分からない。だが安倍首相との和気あいあいのやりとりを見ていれば、残念ながらそこには、毒も風刺の欠片もなさそうだった。

 権力に絡め取られ、権力者のご機嫌取りに終始する「喜劇」などというのは、まさに語義矛盾である。そんなものを「喜劇」とは言わない。ただのゴマすりでしかない。

 吉本は「新喜劇」という名称を改めるべきだ。少なくとも「喜劇」は使ってほしくない。「お笑いゴマすり劇場」くらいが関の山だろう。

 そして、お笑い芸人を身近に呼びつけて愉しんでみせるという、独裁者の真似事を始めた安倍首相にも、ぼくは吐き気がする。

■しょせん、二流の独裁者

 「戦争の世紀」と呼ばれた20世紀が終わり、21世紀が幕を開けたころ、新しい時代は戦争のない「民主主義の世紀」になるだろうと期待された。だが現実は、あのニューヨーク同時多発テロで新世紀が始まったのだ。日本では、東日本大震災とそれが引き起こした原発爆発という未曾有の事態が新時代の到来だった。

 テロ、災害、核事故……。

 そこからどう立ち直るかが新世紀の課題だったのだが、結果は、世界中に「独裁的政権」が生まれるという皮肉な成り行きになってしまった。人々は、過酷な現実に立ち向かうには「強い指導者」が必要だ、と思い込んだのかもしれない。

 アメリカ・トランプ大統領、ロシア・プーチン大統領、中国・習近平主席、北朝鮮・金正恩委員長、さらには、フィリピン・ドゥテルテ大統領、ブラジル・ボルソナーロ大統領……。

 大から小まで、なぜかいま世界を引っ掻き回しているのは、トランプ氏を筆頭に、独裁臭の漂う政治家ばかり。そして、その独裁臭をこのところ大いに強めているのが、わが安倍晋三首相である。

 トランプ氏とはいつでも差しで話ができる政治家として、安倍本人も取り巻き連中も自慢タラタラだ。だが何のことはない。トランプ氏の言いなりに何でも買うのだから、そりゃトランプ氏だって悪い気はしない。「おう、いつでも会ってやるぜ、次は何を買うんだ?」ってなもんだろう。

 結局、これらのどの国を見ても「自国ファースト」である。自分さえよければ他人はどうなったって構わないというのが唯一の政策。ところが日本だけは違う。「自国セカンド」なのだ。自国のことはさておいて、トランプ氏の要求には何でも従う。「アメリカ・ファースト」の次なのだから「日本セカンド」でしかない。

 その意味からも、安倍は結局「二流の独裁者」である。

 独裁臭の漂う政治家とは気が合うらしい安倍首相だが、プーチン大統領にはコケにされっぱなしだ。「日露平和条約締結」を成し遂げて歴史に名を刻もうと思っていたようだが、プーチン氏には「日米安保条約下では、北方領土に米軍基地を置かない保証もない。領土問題は交渉の議題にはなり得ない」と軽くいなされただけ。

 「プーチン大統領とは、これまで24回も会談している。お互いの気心は十分に知り尽くしている」と語っていたはずの安倍首相が、このところ、まったく日露交渉に言及しなくなってしまった。情けない。

 むろん、北朝鮮との交渉も進展の気配なんかない。

 突然、これまでの圧力一辺倒の北朝鮮外交を「なんの前提条件もなしで、直接、金委員長と話し合う用意がある」とぶち上げたはいいが、金氏には「何をいまさらずうずうしい」と一蹴される始末だ。そう言われるのも分からなかったのなら相当な“外交音痴”だ。外交の安倍? よく言うよ。

 ぼくには、日本国民がなぜ、こんな“屈辱的な安倍外交”に目をつむっているのかがよく分からない。安倍支持者に多いとされる“愛国者たち”が、なぜ安倍支持を続けるのかが理解できない。

■せめて、責任くらいとれよ!

 たとえ二流であっても、安倍という“独裁者もどき”は国民の言うことになど耳を傾けない。ただ、強権で抑えつけ押し潰すだけだ。沖縄を見ていれば、そのことに疑問の余地はない。

 秋田のイージス・アショア(陸上配備型イージスシステム)配備についてのデタラメさでも、安倍政権の強権体質をさらけ出した。

 これまでのさまざまなデータ捏造・隠蔽・廃棄・虚偽など、“安倍忖度”官僚どもの所業は許しがたいものだが、いくら暴露され批判されても、まるで蛙のツラにションベン(汚い表現で申し訳ないが、連中にはこれくらいの表現でも物足りないくらい)である。

 住宅や学校のすぐそばに危険な基地を造るのに、グーグルアースを資料に、定規と分度器を使って計算した、というのだから常軌(シャレじゃないぞ)を逸している。他の候補地へ直接出向いての実地調査もしていない。最初から「候補地は新屋地区」と決めていたのだから、他地区を実地調査しようなどとは考えもしなかったのだ。

 グーグルアースと定規…。「ふざけるのもいい加減にしろ! こちらは命の問題なんだ!」と、説明会で住民が激怒した気持ちは、ぼくにも痛いほどよく分かる。秋田は、ぼくのふるさとなんだ!

 しかも、これにはひどいオマケまで付いていた。

 なんと、この住民説明会の席上で防衛省の役人が居眠り、その場面をバッチリ絵に撮られていたのだ。最初から丁寧に“真摯に”説明する気なんかなかったのだろう。住民がなにを言ったって、安倍官邸が造ると言ってるんだから、オレたちは粛々とそれに従うだけ。説明はポーズでいい。ということだろうな、きっと。

 安倍がよく言う“真摯に”の見本のような官僚だ。

 さすがに佐竹敬久秋田県知事も「まことに遺憾。話は振出しに戻った」と怒りを隠さない。それでもなお、岩屋毅防衛相は「予定通り秋田に」と言ってはばからない。いったいどういう政府なのか!

 「老後のために2千万円用意しとけ」ってのも、凄まじい言い草だ。10日の国会参院決算委員会で、野党に「百年安心年金はどこへいったんだ」と突っ込まれると、例によって安倍首相、シドロモドロで訳の分からない答弁を長々と繰り返す。呆れた委員長が「速記を止めて」と言ったのにも気づかず、ペラペラと訊かれてもいないことを喋りまくるいつものパターン。

 安倍首相が議長を務める「未来投資会議」という、何やら怪しげな名称の半官半民の会がある。そこで示されている65歳から70歳の仕事の選択肢は次のようなものだ。

 1.定年廃止
 2.70歳までの定年延長
 3.継続雇用制度の導入
 4.他企業(子会社は除く)への再就職
 5.個人のフリーランスとしての契約
 6.個人による起業
 7.個人の社会貢献活動

 へえーっ、そうですか……と言うしかない。だけど、なんでここに、
 8.年金でのんびりと老後を過ごす
 という選択肢が入っていないのだろう? そのための「年金制度」だったはずではないか。

 自らの政策の失敗を、個人の努力=自己責任に押しつけるのは、最低の政府だろう。しかも、その失敗の責任を誰もとろうとしない。

 独裁者もどきの腐臭。上が腐れば下も腐る。


*************
鈴木耕
すずき こう: 1945年、秋田県生まれ。早稲田大学文学部文芸科卒業
後、集英社に入社。「月刊明星」「月刊PLAYBOY」を経て、「週刊プレ
イボーイ」「集英社文庫」「イミダス」などの編集長。1999年「集英社新
書」の創刊に参加、新書編集部長を最後に退社、フリー編集者・ライ
ターに。著書に『スクール・クライシス 少年Xたちの反乱』(角川文庫)、
『目覚めたら、戦争』(コモンズ)、『沖縄へ 歩く、訊く、創る』(リベルタ出
版)、『反原発日記 原子炉に、風よ吹くな雨よ降るな 2011年3月11
日〜5月11日』(マガジン9 ブックレット)、『原発から見えたこの国の
かたち』(リベルタ出版)、最新刊に『私説 集英社放浪記』(河出書房新
社)など。マガジン9では「言葉の海へ」を連載中。ツイッター@kou_1970
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[政治・選挙・NHK261] [本日の安倍総理] というコーナー 鈴木耕 (マガジン9)
言葉の海へ
第75回:【本日の安倍総理】というコーナー

By 鈴木耕 2019年6月5日
出典「マガジン9:https://maga9.jp/


■NHKニュースの堕落

 江戸期の俳人・宝井其角にこんな句がある。

 〈鐘ひとつ 売れぬ日はなし 江戸の春〉

 めったに売れることのない鐘だって、江戸ではけっこう売れる。それほど繁栄している大都会の春だなあ…というほどの意味のようだ。

 その句に倣っていえば、最近のNHKは

 〈安倍の顔 見ない日はなし NHK〉

 ということになろうか。

 別になんのニュース価値もないけれど、とにかく“安倍の顔“はNHKニュースには欠かせない。あの顔を出さないとNHKの1日は終わらない。それほど安倍権力はスゴイのだ…というほどの意味。

 NHKニュース(とくに午後7時のニュース)には、まるで【本日の安倍総理】というコーナーがあらかじめ設けられているみたいだ。必ずといっていいほど、安倍首相の“ご尊顔”が映し出される。

 時には、「安倍総理、私邸の近所を散歩」なんてどうでもいいことまでが、なぜか“ニュース”になっちゃう。日本でもっとも巨大なTV局がこれだから、他の民放だって似たようなものだ。

 しかも危ないのは、NHKのこの傾向がどんどん強まっていること。その陰にいるとされるのが、安倍ベッタリで有名な岩田明子解説委員兼記者(こういう肩書も異例だという)である。

 雑誌「選択」6月号に、「NHK『政治部』、『政権広報機関』の哀れな内情」という記事があった。一部引用しよう。

 岩田氏は、二〇〇〇年に首相に就任した森喜朗政権の時代から
政治部に在籍している。全国紙記者によれば「彼女は官房副長官
時代の安倍担当になる前から、さらに言えば、岡山放送局当時か
ら特ダネ記者だった」。とはいえ、安倍政権が長期化し、首相本
人との関係で岩田氏が突出している現実が「NHKの政治部の人
事に歪みをもたらしている」(NHK関係者)ことも事実であ
る。(略)
 人事の歪みとは、岩田氏の直属の上司である官邸キャップの原
聖樹氏が第二次安倍政権発足以来、同職を続投している事態であ
る。岩田氏が信頼する先輩記者が他にいないため、「彼女の意向
で原氏が続投を余儀なくされている」(前出関係者)と言われて
いる。(略)
 政権の意向を背にして、自社の人事に影響力を行使する政治記
者は極めて稀と言ってよいだろう。岩田氏が策動したとされる象
徴的なNHK政治部の人事があったのは三年前のこと。とりたて
て非のない政治部長がわずか一年で地方局に飛ばされた。真偽の
ほどは確かではないが「部長として当然の指摘をしたのが、岩田
氏の逆鱗に触れた」「後任人事は岩田氏の言いなり」と噂され、
これ以降、彼女に逆らうことはタブーという空気が蔓延していた
という。(略)

 ソースが“関係者”とぼかされているので、すべて信じていいのかどうかは分からないが、これは他のところでも聞いた話だから、ある程度の信憑性はあるだろう。

 確かにNHKニュースにおける岩田記者の“安倍ヨイショ解説”は、目に余るものがある。逆に言えば、それだけ安倍官邸にとっては“貴重な人材”ということになる。あの元TBS記者の山口某が表には出てこられない現在、安倍首相の最側近記者としての岩田記者の存在は、これからもますます大きくなるだろう。

 記事のタイトルにある通り、岩田記者とともにNHKの「政府広報機関」としての役割は肥大化していく。むろん、安倍退陣後はどうなるか分からないけれど。

■安倍首相の「やってる感」演出

 だが困ったことに、この傾向は他の民放各局にも、多かれ少なかれ言えるのだ。
 安倍首相とたいへん親しいことでも有名な、あの“問題発言”の幻冬舎の見城徹社長は、実はテレビ朝日の番組審議会委員長でもあり、このTV局に大きな影響力を持っている。

 番組審議会とは、局の番組にさまざまな意見を言う立場だ。その委員長が、なんと“安倍友”なのだ。個々の番組ディレクターたちが“安倍忖度”をしない、とは言い切れまい。抵抗するジャーナリストたちは、いつの間にか、表舞台から消されていく。そんな例は、国谷さんや岸井さんをはじめ、たくさんあったじゃないか。

 だから、【本日の安倍総理】的な演出は、NHKのみならず、民放各社のニュースやワイドショーにも頻出する。それが、「安倍的パフォーマンス=懸命にやっている感の表出」である。

 とにかく、どんな事件があっても災害が起きても、「安倍首相は次のように、関係閣僚に指示しました」というようなニュースが、むろん“安倍の顔つき”で大量に流される。それは異常な多さだ。

 これだけTV画面に頻繁に登場すれば、それだけで視聴者には「ああ、がんばっているな」と刷り込まれる。当たり前だ。

 安倍政権に逆らったために、菅官房長官から「地位に恋々としがみついている」とまで罵声を浴びせられ退任した元文科省事務次官の前川喜平氏は、東京新聞のコラム「本音のコラム」(6月2日付)で、その安倍パフォーマンスについて、こんな辛辣な文章を書いていた。

 川崎・登戸で起きた小学生ら二十人殺傷事件。悲しい思いがこ
み上げる。だが政権は、このような大事件も自らの支持拡大に利
用する。人々の憤りに訴え、悲しみに取り入る行動をとるのだ。
 「緊急閣僚会議」の開催はその典型的な手法だ。事件翌日の五
月二十九日、安倍首相は緊急閣僚会議を開き、「強い憤りを覚え
る」「安全を何としても守らなければならない」「政府一丸とな
って早急に取り組む」などと発言。テレビも新聞も大きく報道し
た。こうした緊急閣僚会議は、悲惨な事件が起きるたびに催され
る恒例行事のようになっている。
 二〇一六年の津久井やまゆり園事件後の閣僚会議では、安倍首
相が「断じて許せない」「内閣一丸となって対応する」と発言。
二〇一八年の結愛(ゆあ)ちゃん事件後の閣僚会議では「こんな
痛ましい出来事を繰り返してはならない」「命を守ることを何よ
りも第一に、すべての行政機関があらゆる手段を尽くす」と語っ
た。
 その十カ月後、心愛(みあ)ちゃん事件が発覚すると…(略)
 かっこいい台詞はすべて官僚の作文。首相はそれを読んでいる
だけだ。心にもない芝居。国民に「やってる感」を植え付ける見
世物。それが緊急閣僚会議なのである。

 まったくその通りだ。官僚の作文を読み上げるだけだから、安倍首相にとっては中身なんかどうでもいい。

 例えば、前川氏のコラムにも出てきた悲惨な幼児虐待死事件。このときの談話では、なんと、安倍首相は心愛(みあ)ちゃんを結愛(ゆあ)ちゃんと言い間違えたのだ。似たような名前だったとはいえ、緊急閣僚会議まで開いた案件の肝心の幼児の名前を間違えるなど、それこそ前代未聞だろう。心がこもっていない証拠だ。

 ま、漢字が読めないのは安倍首相のお家芸だから仕方ないとはいえ、あまりにひどすぎる。

 だが、安倍首相にとっては、この「やってる感」が大切なのだ。中身なんかどうでもいい。ひたすら「国民のみなさまのために、アタクシは身を粉にして“やってる”のです」というわけだ。だがこれは、マスメディアが“報道”してくれなくては効果がない。

 だから、各TV局には圧力をかけ、意に添わないキャスターなどはクビにさせ、岩田記者みたいなのを重用する。そして新聞社の政治部や幹部クラスとは、しきりに食事会を催す。

 するとTVも新聞も、「安倍首相、映画鑑賞」「映画に感激、主演タレントと食事」などという愚にもつかないことまでを、ニュースとして流してしまうことになる。

 「枝野幸男立憲代表、アイドルの○○と食事」なんてのも同じようにマスメディアからニュース配信されるのならまだ分かる。だけど、そんなのは聞いたことも見たこともない。

 昨日も今日もまた明日も、ひたすら【本日の安倍総理】だけが“ニュース”になる。これでは、安倍内閣の支持率上昇計画に、マスメディアがそっくり加担していると言われても仕方ないではないか。

 毎日毎日TV画面で「何かをやっているらしい安倍首相」を見せつけられれば、それは極めて有効な刷り込み現象になる。マスメディアはいまや、安倍支持率上昇マシンになっているのだ。

■票にならぬことには冷血

 本気で取り組んでもらわなくてはならないことだって、安倍首相はパフォーマンスに利用するだけで、何の成果も挙げちゃいない。

 トランプ大統領来日も、徹底的にパフォーマンスに利用した。だが内実は、呆れるほどのお粗末さ。結局、トランプ夫妻のツアーガイドを務めただけのみっともなさ。あれが我が国の宰相だと思えば、こんなぼくでさえ情けなくて言葉もない。

 トランプ大統領と「膝づめでふたりきりで話せるのは安倍総理だけ」などと、官邸茶坊主たちは大ボラを吹くけれど、トランプ大統領が「8月に大きな発表があるだろう」と会見の場で述べた時には、安倍首相は白目を剥いてびっくりしただけ。何も聞かされていなかったのだろう。

 日米貿易交渉は、トランプ大統領に一方的に押し切られたのだ。何の成果もなかった。成果がないどころか、選挙が終わった8月以降には、日本の農家は激しくつらい目にあうだろう。

 沖縄については一言の言及もなかった。あれだけ「民意」を示し続けている沖縄の基地問題について、せめて一言でもトランプ氏に再考を求めるべきではなかったか。

 だが安倍には、最初からそんな気などないかったのだ。なぜか?

 「沖縄は票にならない」と思っているからだ。票に結びつかない事案については、安倍はとことん“冷血”である。

 逆に「拉致問題」では、異常なほどの熱心さを売り込む。「票になる」と踏んでいるからだ。だが、それにしたところで、「トランプ大統領は3回も拉致問題に言及してくれた」などと自慢げに言うだけ。トランプ氏が「金委員長と安倍首相が直接会う段取りをつけてくれた」とでもいうのならともかく、3回言及したことが、果たしてどんな成果なのか?

 安倍首相は突然、「金委員長と前提条件なしで直接会う」と、これまでの圧力路線を大転換してしまった。だがその道筋など、毛ほども見えていない。逆に、北朝鮮「いまさら前提条件なしの会談などと、ずうずうしい」とまで罵られる始末。「安倍外交」がいまや笑いものだ。

 言葉の軽さは今に始まったことじゃないけれど、安倍首相、まさに口先男である。

 拉致家族会の方たちだって、もう、うすうす安倍パフォーマンスの無意味さには気づいているのではないだろうか。

■マスメディアはいまや、「安倍支持率上昇マシン」化

 天皇の退位、そして新天皇即位、令和への改元、トランプ大統領の来日、さらには東京五輪の聖火コース設定…。

 それらをめぐる、マスメディアの異様なほどの大騒ぎ。そこへ脈絡もなく登場する“安倍総理”。

 国際NPO「国境なき記者団」が世界180ヵ国を対象にした「世界の報道の自由度ランキング」を、毎年発表している。それによると、日本の報道の自由度は、このところ下降一直線。こんな具合だ。

2005年(小泉首相)37位
2010年(鳩山首相)11位
2012年(野田首相)22位

 ところが、安倍首相時代になると、53位→59位→61位→72位→67位(2019年)と、ほんの少し持ち直した年もあるが、ほぼ右肩下がりの下降曲線を辿るばかり。

 だが、このニュースを報じる“日本の報道者“たちは、疑問は持たなかっただろうか? それほど自由度が失われたのはなぜか、誰のせいか、何があったのか。このたった10年間で、11位から67位まで急降下したのはなぜなのか…と。

 ぼくは、日本のマスメディアにかなり絶望している。自分たちの仕事である「報道」からこんなに自由が奪われていることに、ジャーナリストならばなぜ抵抗しないのか。いや、報道を仕事とする報道機関(報道企業というべきか)は、社としてなぜ抵抗しないのか。こんなランク付けされて、なぜ悔しくないのだろう?

 もっと悔しがれよ、とぼくは言いたいのだ。

 少数の記者たちが踏ん張っているのは知っている。彼らを、会社として守らなくてどうするのだ!

 だがいまや、この国のマスメディアは、最初に書いたように「安倍支持率上昇マシン」と化している気がして仕方ない……。


*************
鈴木耕
すずき こう: 1945年、秋田県生まれ。早稲田大学文学部文芸科卒業
後、集英社に入社。「月刊明星」「月刊PLAYBOY」を経て、「週刊プレ
イボーイ」「集英社文庫」「イミダス」などの編集長。1999年「集英社新
書」の創刊に参加、新書編集部長を最後に退社、フリー編集者・ライ
ターに。著書に『スクール・クライシス 少年Xたちの反乱』(角川文庫)、
『目覚めたら、戦争』(コモンズ)、『沖縄へ 歩く、訊く、創る』(リベルタ出
版)、『反原発日記 原子炉に、風よ吹くな雨よ降るな 2011年3月11
日〜5月11日』(マガジン9 ブックレット)、『原発から見えたこの国の
かたち』(リベルタ出版)、最新刊に『私説 集英社放浪記』(河出書房新
社)など。マガジン9では「言葉の海へ」を連載中。ツイッター@kou_1970
でも日々発信中。

https://maga9.jp/190605/
http://www.asyura2.com/19/senkyo261/msg/822.html

[政治・選挙・NHK261] 麻生太郎だ。不都合な報告書は受け取らない。文句があるか。(澤藤統一郎の憲法日記)
 
なに? 前代未聞だと? ミゾユウの事態だって? な〜に、いつものことだ。騒ぐほどのことではない。もっとも、「騒ぐほどのことではない」というしかない、が正確なところか。

私は政治家だ。政治家にとって大切なものは、真実でも事実でもない。票だ。選挙だよ。選挙でものをいうのは、幻想だ。何が真実であるかが問題ではない。選挙民に、真実らしく見えるものが何か。それだけが問題なんだ。こんなあたりまえのことが、キミたちにはわからんかね。

ダチョウという鳥があるだろう。危険が迫ると、砂の中に頭を突っ込んで自ら目隠しをするというじゃないか。ほんとかどうかは知らんが、よくできた話だ。私から見ると、選挙民も同じさ。少なくとも、我が党や友党支持の選挙民は。

目を開けるのは、安全を見て安心したいとき。危険は見たくない。不都合には目をつむる。これが私の支持者だ。だから、選挙民の望むように不安を取り除いてやればよいのだ。不都合な真実を取り除くのではない。目隠しすればよいだけのこと。それが、「年金不足・2000万円」の報告書不受理というわけだ。

申し上げたとおり、この金融庁の金融審議会が作成した報告書は、「世間に著しい不安と誤解を与えており、これまでの政府の政策スタンスとも異なりますので、正式な報告書としては受け取らない」んだ。これで、文句があるか。

えっ? 何が誤解かって? これまでの政府の政策スタンスとどう異なるのかって? 世間に与えた著しい不安は、真実が明らかになったからではないかだと? そんなことに、まともに回答していたら、ますます不都合な真実が明らかになってくるだろう。受け取らないと言ったら受け取らないんだ。同じ質問を繰り返すんじゃない。

えっ、なに? 「そもそも、受け取らないなんてことができるのか?」って。森羅万象を司っている内閣の一員である私が、「受け取らない」と言えば、結局はこんな報告はなかったことになる。それだけのことだ。

繰り返し申し上げるが、標準的な夫婦が年金受給を30年継続するとして、公的年金のほかに、「30年間で約2000万円が必要」というのが報告内容だが、このことが真実かどうかは問題ではない。参院選が近いだろう。こんな時期に、「不都合な真実」などは要らん。「不都合な真実」を前提の議論もまったく用がない。必要なのは、「100年安心」という年金制度のキャッチフレーズに、ひびを入れないという配慮だけだ。

最近の審議会は、政権に対する忖度が足りない。選挙間近のこの時期に、こんな答申出すことはないじゃないか。選挙が終わってから、出しゃあいい。トランプだって、安倍晋三との協議内容についての発表を、参院選終了までは伏せると配慮をみせているじゃないか。選挙後ならこんな答申問題にもならなかったのに。

なんだって、敵に塩を送るようなマネをするんだ。たとえば、9月10日参議院決算委員会での安倍晋三に対する小池晃質問だ。これじゃ安倍晋三形なしだ。赤旗が鬼の首を取ったようなはしゃぎようで、こんな風に報道している。これでは困るのだ。

 「金融庁は、高齢夫婦の平均収入と支出の差は毎月5万5000円で、
公的年金だけでは30年間で2000万円不足すると試算しています。
小池氏は、政府がこれまで『厚生年金で必要な生活費はまかなえる』
『100年安心の年金』などと宣伝してきたけれど、今回の金融庁の報
告書でそれがウソだったことを『ある意味、正直に認めた』とただしまし
た。安倍晋三首相は『国民に誤解や不安を広げる不適切な表現だった』
と弁明しましたが、金融庁の試算自体は否定できませんでした。

 小池氏は「『100年安心』といっていたのに、人生100年になったら
『年金はあてにするな』『自己責任で貯金せよ』というのは国家的詐欺
に等しいやり方だ」と批判。答弁に窮した安倍首相は「では、どうしたら
いいというのか」などと激こうして繰り返すだけでした。」

赤旗はしょうがないとして、産経系のFNNまでがこんなことを言っている。これは困った。他は推して知るべし、だ。

加藤綾子キャスター:風間さん、麻生大臣が(報告書を)受け取らない
ってどういうことなんですか? 

風間晋解説委員:政府にとって、不都合な真実が明るみに出てしまっ
た報告書なんですよ。今までも年金だけではちょっと心配だよね、赤字
だよねってみんな薄々勘付いてはいたわけです。ところがここに、長寿
というか、政府が「人生100年時代」だって盛んに言い始めているわけ
じゃないですか。この赤字が人生100年と合体して『30年で2000万円足
りない』という、数字としてはっきり出てしまった。だからインパクトが大
きい。これはちょっとまずいということで、報告書はなかったことにしよう
としていますけど、この状況は隠せないわけですよね。

加藤綾子キャスター:受け取らなくても、これは変わらないということで
すよね。

お分かりだろう。こんな報告、普通に受け取っちゃいかんのだ。難癖つけて、なかったことにしなければならない。えっ? かえって、目立つことになったって? やっぱり、私もダチョウになろう。砂の中に頭を突っ込んで目隠しだ。
(2019年6月12日)

http://article9.jp/wordpress/?p=12782
http://www.asyura2.com/19/senkyo261/msg/824.html

[不安と不健康18] 意外に高い地下鉄のPM2.5 原因は鉄道ならでは(朝日新聞)
朝日新聞デジタル 2019年6月13日16時45分

https://www.asahicom.jp/articles/images/AS20190611002673_commL.jpg
地下鉄ホームでPM2・5の濃度を調べる奥田知明准教授の研究チーム=2018年7月、横浜市、奥田さん提供

 日本のある地下鉄構内のPM2・5(微小粒子状物質)濃度は、地上の5倍――。慶応大の研究チームがこんな研究結果をまとめた。地下空間のPM2・5濃度の規制はなく、実態の把握も十分とはいえない。5月にあった会合で、研究チームは、地下鉄駅の空気環境を改善するため、関係機関が連携して対応することが必要だと訴えた。

 慶応大理工学部の奥田知明准教授のチームは昨年7月、横浜市営地下鉄の駅ホームに午前5時から午後8時までPM2・5の測定器を設置し、空気中の濃度を調べた。

 その結果、午前9〜10時の1立方メートルあたりの平均濃度は約120マイクログラム。地上の同じ時刻の約5倍とピークに達した。また、全時間を通じての平均濃度も約70マイクログラムで、地上の4倍ほどになった。

 なぜ、地下鉄でPM2・5がこんなに多いのか。

 奥田さんらが粒子の成分を調べると、地上で観測されるPM2・5と比べて鉄や銅、ステンレスに含まれるクロムなど金属系の数値が非常に高かった。また、列車の発着前後も濃度が上がり続ける傾向があった。粒子の動きをみると、走行中の列車の後方で激しく乱れた気流に巻き上げられていた。
https://www.asahicom.jp/articles/images/AS20190612002399_commL.jpg

 奥田さんは「ブレーキ時の車輪とレールとの摩擦で鉄分が削られるなどして、空気中に巻き上げられるのでないか」と指摘。ラッシュ時は運行本数が多いうえ、人がたくさん乗り、強くブレーキをかけるため、濃度も高くなり、その後、しばらく漂っているのではないかと推察する。

■「健康に影響を及ぼすレベルではない」ものの……

 規制はどうなっているのか。

 環境省は大気中の濃度の1日平均値について「1立方メートルあたり35マイクログラム」とする基準値を設定している。ただ、屋内である地下鉄の駅は対象外だ。厚生労働省も建物の衛生管理基準で空気中の浮遊粉じんの量を「150マイクログラム以下」と規定しているが、鉄道施設には適用されない。

 事業者による実態把握は進んでいない。横浜市交通局は「濃度測定はしていないが、常時換気を行ったり定期的に清掃したりして、空間の清浄化に取り組んでいる」。大阪メトロ広報課も「国の基準がないので、測定していない」と言う。

 一方、東京メトロは昨年12月に初めて一部の駅で予備調査を実施し、どんな測定方法や機器が有効かを調べた。「結果を精査し、今後の態勢を検討している」(広報部)という。

 奥田さんによると、十数年前から海外でも地下鉄のPM2・5濃度が高いことが知られており、対策が取られている。2015年に発表された論文によると、ロンドンの地下鉄駅では過去に1立方メートルあたり最大480マイクログラム、スペインのバルセロナで同186マイクログラムが計測された。EUは14〜18年、バルセロナで約1億円をかけて汚染の原因を調査し、試行的に換気方法を変えるといった措置をとった。

 奥田さんは、日本では地下鉄構内でのPM2・5について、責任を持つ行政機関が定まっていないことが問題だと指摘する。「国内の地下鉄での濃度は、ただちに健康に影響を及ぼすレベルではないが、日本の対応は遅れている。国として対応機関を決めて、早急に原因調査と対策に取り組むべきだ」と訴える。(桑原紀彦)

https://digital.asahi.com/articles/ASM5Y6JRGM5YULBJ016.html?rm=333
http://www.asyura2.com/16/health18/msg/764.html

[地域13] 彦島みそ・日下初美氏に聞く 郷土で親しまれる麦味噌の魅力(長周新聞)
2019年6月13日

■その地に宿る微生物の力

 日本の食生活で味噌、醤油はなくてはならない基本的な調味料である。味噌の起源は、古代中国の「醤」(しょう)といわれ、1000年の歴史を持つ調味料である。味噌には豊かな地域性があり、全国各地でさまざまな味や食感、色の違いを楽しむことができる。今年1月に茨城県でおこなわれた「アンコウ祭り」で、下関のアンコウ鍋が人気を呼んだ。白菜やネギ、エノキなどたくさんの野菜に、アンコウの肝や皮まで余すことなく使った白味噌仕立てのアンコウ鍋で、上品なアンコウの出汁を引きたてる甘みのある麦味噌が人気を呼ぶ一つの要因なのだという。味噌は地元の「彦島みそ」の麦味噌が使われた。下関人には、甘みのある白味噌の味わいになじみがあるが、塩気の多い米味噌を使うのが主流な関東人にとっては珍しいという。このように味噌は地域によって原料も味も大きく違い、長い歴史のなかで地域の味が育まれてきた。

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彦島みそ

 今回、彦島みそをつくっている有限会社マルイチ彦島醸造工場の常務取締役の日下初美氏に味噌の魅力について話を聞いた。同社は今年で創業65周年を迎える。日下氏は、味噌づくりの原点について「味噌づくりに人間が携わるのは仕込みの3日間だけで、あとは微生物の力を借りて発酵熟成をくり返す。原料は大豆、麦、米、塩。私たちは自然の力、大地の恵みをいただいている。仏教用語に『身土不二』という言葉がある。『身』と『土』は切り離せないという意味で、地元の旬の食品や伝統食が身体に良いということだ。味噌はその土地の気候風土によって材料が同じでも味が違う。地域でつくられたものを食べることが健康につながることを幼いころから食生活を通して学んでほしい」と語る。

■全国シェアは米味噌が圧倒

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味噌地域別分布図

 味噌の原材料は、麹、大豆、塩だ。味噌は米味噌、麦味噌、豆味噌の3つに分かれている。主原料は大豆で、その大豆を発酵させるために米・豆・麦のどの麹を使うかで種類が変わる。米麹と大豆・塩でつくられたものは「米味噌」、豆麹と大豆・塩でつくられたものは「豆味噌」、麦麹と大豆・塩でつくられたものは「麦味噌」だ。

 『食は県民性では語れない』(角川新書)によると、現在全国で製造される味噌は、米味噌が約8割を占め、麦味噌と豆味噌がそれぞれ5%ずつ、そして調合味噌が1割とするデータがある。麦味噌は実は全国でも九州と山口県と四国の一部しかなく、米味噌が圧倒的なシェアを占めている。

 麦味噌が生まれたのは平安時代になってからといわれている。各地で稲作が盛んになると、米麹を使った米味噌が全国各地でつくられるようになった。しかし、九州地方は米がとれにくく、かわりに麦の生産が盛んだったため、麦を麹にした麦味噌がつくられるようになったと伝えられている。

■麹の状態見極める職人の技

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蒸し上がった麦をほぐすため崩壊機に入れる作業(彦島みそ提供)

 彦島みその原点は、今から800有余年前、壇ノ浦で破れた平家の落人が彦島に逃げのびて、恵まれた天然の地形と湧き出る清水によってつくられたといういい伝えがある。その味をひき継いできた「彦島の一二苗祖(彦島を開拓した人)」の末裔から、日下氏の祖父・一義氏(故人)が家に伝わる味噌づくりを習い、1949(昭和29)年に始めた。

 大麦と裸麦と二種類の麦を使用しており、麦麹の割合が高く甘口で、麦特有の香りと旨み、舌ざわりがあるのが特徴だ。味噌製造工程を簡単に聞くと、まず大麦と裸麦を水に浸し、それを大釜で蒸して36度から40度に冷まし、そこに麹菌をまく。この温度が大事で、冷やしすぎても熱すぎても麹が働かない。約36時間かけて製麹し、一度ひっくり返して3日目には麦麹ができあがる。このさい、水温・浸漬の時間、温度や湿度、麹の状態などを見極めるのに職人の長年の経験による勘や技術が生きてくるという。

 その麦麹と大豆、塩と種水を混ぜて2〜3カ月の発酵熟成期間を経て、商品として出荷される。「彦島みそ」は本州の西の端の関門海峡に浮かぶ彦島という風土から生み出される味で、その甘みのある味噌は、あさりの味噌汁や豚汁と相性が抜群だという。「昔はみな自家製で味噌をつくっておりその家の味があった。家族にとって居間が居心地がいい場所だったように、味噌も居間に置いておけば居心地がよくなり美味しい味噌ができるといわれていた。味噌や醤油づくりは、醸造工場に棲み着いたその地の微生物の力を借りなければできない。だから同じ原料を使っても味が変わる」という。麦味噌は色も白や淡色であるが、北日本の寒い地域の米味噌は塩分を多く含み、熟成期間は1年と長いため色も黒っぽいのが特徴だ。

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彦島みそは地元の子どもたちに味噌づくりを体験させている

■医者いらず―発酵食品の力

 古くから日本では「味噌は医者いらず」といわれてきた。最近ではコレステロールの抑制、がんや胃潰瘍の予防、整腸作用とそれにともなう老化防止や美肌効果など、さまざまな働きが研究されている。日下氏は「戦後日本は、学校給食にパン食が入り食生活が欧米化してきた。今、食生活は乱れ、どこでも食べ物は買えるが添加物が多く含まれ、それによって健康にも悪く免疫力も弱まっている。私たちの生活のなかには味噌だけでなく醤油、納豆、キムチ、ワイン、ヨーグルトなど、人間がなしえることができない微生物の力によってできる発酵食品が数多くある。私たち人間は、生き物の力をいただいて生きているということを学んでほしいと、学校に出向いて子どもたちと伝統食材の味噌づくりもしている」と語った。また「カレーにはバターを入れるよりも、味噌の方がコクが出るし、チキンラーメンに味噌を少し入れたら味が劇的に変わる」という。味噌の可能性は広く、使い道は味噌汁だけにとどまらない。

 普段、何気なく食べている「味噌」の物語から、日本の食文化の豊かさと奥深さ、また地産地消の大切さを学ぶことができる。

http://www.hikoshimamiso.com/
彦島みそホームページ
http://www.hikoshimamiso.com/

https://www.chosyu-journal.jp/yamaguchi/11935
http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/885.html

[政治・選挙・NHK261] あの「国家戦略特区」、やっぱり「ずさんで、でたらめ」なのだ。(澤藤統一郎の憲法日記)
 
加計学園事件で、ダーティーなイメージをすっかりと定着させた国家戦略特区。久しぶりに、全国紙の一面に顔を出した。毎日新聞が、6月11日・12日と連続して問題の各事件をトップで報道した。

国家戦略特区問題とくれば、主役は常に諮問会議議長の安倍晋三である。が、このたびの毎日報道2事件の準主役は同一人物で、国家戦略特区諮問会議・ワーキンググループ座長代理の原英史である。

この人、元は通産官僚。2009年に退官して、2010年民間人の立場で雑誌『SAPIO』に連載した記事の表題が、『おバカ規制の責任者出てこい!』。いささか不真面目な物言いだが、この人の考え方も、この人を有識者委員に迎えた国家戦略特区の基本スタンスも察しがつこうというもの。

規制がおバカか、無理無体の規制緩和がおバカなのかが、今深刻な課題として、問われているのだ。

11日の記事は、見出しが「国家戦略特区 政府ワーキンググループ委員関連会社 提案者から指導料200万円 会食も」「外国人美容師解禁を巡る原氏と特区ビズ社の関係」という記事。

リードだけ引用すれば、下記のとおり。

 「政府の国家戦略特区を巡り、規制改革案を最初に審
 査するワーキンググループ(WG)の原英史座長代理
 と協力関係にあるコンサルタント会社が、2015年、
 提案を検討していた福岡市の学校法人から約200万
 円のコンサルタント料を受け取っていた。原氏は規制
 緩和の提案を審査・選定する民間委員だが、コンサル
 会社の依頼で、提案する側の法人を直接指導したり会
 食したりしていた。」

12日の記事は、見出しが「政府、特区審査開催伏せる」「WG委員関与 HPと答弁書」というもの。
これもリードだけ引用すれば、下記のとおり。

 「国家戦略特区ワーキンググループ(WG)の原英史
 座長代理が申請団体を指南し、協力会社がコンサルタ
 ント料を得ていた問題で、原氏と同社が関与した漁業
 法にかかわる規制改革案のヒアリング開催が、首相官
 邸ホームページ(HP)で伏せられている。政府は審
 査の透明性を確保するとして、提案者や規制官庁にヒ
 アリングした日付・案件を公表しているが、今回の案
 件が掲載されていないのは提案者の要望を受け入れた
 とみられる。事実と異なるヒアリング件数の政府答弁
 書も閣議決定していた。」

ジャーナリズムの真骨頂は、権力に不都合な事実を洗い出し暴き出すところにある。毎日は、よく取材してこの任を果たした。これは、氷山の一角ではないのか。願わくは、各紙、各記者が、さらに徹底して追求して、ディテイルを明らかにしていただきたい。

問題の会社は「特区ビジネスコンサルティング」(略称「特区ビズ」、現在は商号変更して「イマイザ」)というのだそうだ。いかにもふざけた名称だし、「特区ビジネスコンサルティング」という業務の成立自体が胡散臭い。

 「この『特区ビズ』は、少なくとも15年3〜12月は、
 原が代表を務める政治団体『土日夜間議会改革』と同じ
 マンションの一室(東京都千代田区)に事務所を設置。
 一部のスタッフは団体と特区ビズの業務を掛け持ちし、
 電話番号も同じだった。特区ビズの社長は、政治団体
 の事務も担当していた」

と報じられている。原は、毎日に反論をこころみているが、この点については否定していない。

また、

 「同社は15〜16年、数十件の特区提案にコンサルタン
 ト業務などで関与。このうち少なくとも福岡市中央区の
 美容系学校法人が、日本の美容師資格を持ちながら国内
 で就労できない外国人を特区内で働けるようにする規制
 改革を希望し、同社にコンサル料を支払った。法人など
 によると14年11月以降、原氏らは法人側と福岡市内
 でたびたび面会。法人副理事長(当時)は原氏と市内の
 かっぽう料理屋で会食し、費用は法人が負担した。副理
 事長はコンサル料の支払いを認め、『特区ビズの方とし
 て原氏と会った。提案書の書き方を教わった』と語った。
 提案は15年1月、特区ビズ社名で内閣府に提出され、
 WGで審査中」

という。この点についても、事実に争いはなさそう。

もう1件。12日報道の件はこんな内容だ。

 「複数の関係者によると、この改革案は漁業法で制限され
 ていた真珠養殖の規制緩和を求めるもので、2015年6
 月ごろ、関東地方の真珠販売会社が提案した。その際、原
 氏は同社に自身と協力関係にある『特区ビジネスコンサル
 ティング』(特区ビズ、現在は商号変更)を紹介。特区ビ
 ズが提案資料を作成し、原氏もたびたび助言した。この規
 制改革案はその後、WGでの議論を踏まえ、昨年12月の
 漁業法改正で実現した。」

特区の設定とは、他にない特例を認めようというもの。行政に求められる公平性の原則をくずして、例外としての不公平取り扱いを認めることなのだ。そのような、原則を崩すだけの際だった合理性・必要性が求められる。他の件にもまして、手続の徹底した透明性の確保と、厳正厳格な公平性・中立性について国民の信頼が求められる。

しかし、その取材があぶり出した事実は、国民の疑惑を招くに十分である。あの、アベの下で、またぞろ問題が出てきたと思わせる。これに対する原の反論は、「自分はカネをもらっていない」という弁明である。毎日は「原がカネを受けとった」とは言っていないのだが。

毎日は、取材対象の弁明についても、こう記事にしている。

 「元経産官僚の原氏は、…毎日新聞の取材に『(同社に)
 協力はしているが(コンサル料は)知らない。会社と私は
 関係ない』と説明した。内閣府は『委員が提案者の相談に
 応じ、制度を紹介するのは通常の活動』としつつも、同社
 と原氏の関係は『事務局として承知していない』と回答し
 た。」

ワーキンググループ幹部とコンサルの業者が、こんなにも一体となって、こんなにも親密にほいほいと動いていることに、愕然とせざるを得ない。コンサルを求める方も、ビジネスチャンスを窺う利にさとい企業である。こんな環境でコンサルの業者が動けば、当然にカネも動く。一体となっている特区委員にもカネにまつわる疑惑が生じるのは当然のことだ。こういう話しは、なかなか外へは出にくいものだが、氷山の一角を見れば、一事が万事、これがありふれた事態なのかも知れないとおもわせる。まずは、行政や国会の場での、徹底した疑惑の解明が望まれる。

なお、規制改革を担当する内閣府特命担当大臣は、あの片山さつきである。片山さつき自身の問題については、2018年11月9日付けの当ブログをご覧いただきたい。

片山さん、ずさんで、でたらめ。めちゃくちゃじゃないですか。
http://article9.jp/wordpress/?p=11428

嗚呼、アベ内閣。あっちもこっちも、「ずさんで、でたらめ。めちゃくちゃ」だ。
(2019年6月13日)

http://article9.jp/wordpress/?p=12786
http://www.asyura2.com/19/senkyo261/msg/839.html

[政治・選挙・NHK261] 安倍イラン外交の成果なし ー 「手みやげなく手ぶらの使いが、成功するわけはない」(澤藤統一郎の憲法日記)
 
安倍晋三がイランを訪問した。アメリカとイランの緊張が高まっている中での注目の外交ではあった。タイミングとしては上々の舞台設定。衆目の一致するところ、安倍はトランプの使いっ走りではあるが、それなるがゆえの期待もあった。

安倍とその取り巻きは、本日(6月14日)の各紙トップに、アベ外交成果の記事が躍っていることを夢みていたのかも知れない。アメリカとイラン、その間を取りもって平和的な解決への道筋をつけることができれば、それは明らかに評価に値する。しかし、夢は所詮夢でしかなかったようだ。本日の大ニュースは、むしろホルムズ海峡でのタンカー攻撃と被災だった。「首相訪問に冷や水」(産経)の文脈での報道。

トランプの、イラン核合意からの一方的な離脱と経済制裁は不可解千万。誰が見ても、真っ当な国のすることではない。イランの怒りはもっともというほかはない。ところが関係国のどこにも、アメリカをたしなめる権威がない。イラン核合意の当事国とは、P5(米・英・仏・露・中)と、ドイツ・EUである。このズラリ並んだ世界の大国が、トランプという粗暴な人物の粗暴な振る舞いを静止できないのだ。

そこで、関係国でない日本の、トランプの使いっ走りに期待が集まった。溺れる者にとってのワラの一本である。「もしかしたら、トランプは振り上げた拳の下ろしどころに苦慮しているのではないか」「面子を保ちつつ、イランとの関係修復の路を安倍に託したのではないか」という期待である。

しかし、この期待は空振りだった。仲介者が交渉をまとめるためには、交渉材料の仕込みが肝要である。反米感情沸騰のイランの指導者を宥めるだけの交渉材料。その「手みやげ」を秘めての外交ではないかとの期待だったが、裏切られた。安倍がトランプから、事前に何らかの譲歩の提示を託されたとは見えない。

アベに提灯の常連を除いては、安倍外交の成果についての大方の見方は厳しい。「失敗」「成果ゼロ」「いつもの、やってる振り」というあたりが常識的な見方。

毎日の評価は、「日本は対話の糸口を探ったが、『仲介』に向けた戦略は練り直しを迫られている。」 というもの。このあたりが穏当なところだろうが、実は練り直すべき、もともとの「戦略」があったとは考え難い。無手勝流で、取りあえず交渉してみたが、なんの成果もなく、初めて「戦略が必要」なことを悟った、というところではないか。要するに、手みやげなく、手ぶらの使いだったわけだ。

安倍の立場は、トランプのメッセンジャーボーイであって、それ以上でも以下でもない。安倍は、トランプと対決してトランプを説得しようとの気概はない。日本の首相の権威のないことを嘆かずにはおられない。

仮に、日本が真の平和国家としての信任を各国から得ていたとしたら…、いかなる国とも平等対等の平和外交を貫いていたとしたら…。日本の外交力は、もっと強力なものとなっていたはずではないか。

田中浩一郎・慶応大大学院教授(政策・メディア研究科)が、「イランの期待に応えず」として、毎日紙上に解説している。分かり易く、納得できる内容。とりわけ、イラン側からの見方が鮮明である。部分的に引用して、ご紹介しておきたい。

「イランは米国による経済制裁の影響で国内経済が厳しい状況に置
かれており、日本に対して主要財源である原油の輸出を可能にして
ほしいと期待していた。しかし、首脳会談後、記者発表をするロウ
ハニ大統領の表情は硬く、事態が大きく動くようなことはなかった
と思う。安倍首相も用意された文書通りに話している印象だった。」

「イランからすれば、勝手に核合意から離脱し国際秩序を乱してい
るのは米国だ。米国の言う通りの形で直接対話に応じることはない。
しかし、経済的には苦境が続く。そうした状況下で得た機会が、今
回の安倍首相の訪問だった。」

「根本的な問題に対処するなら、日本が米国との仲介役として、イ
ラン側にも信頼を得ることだ。そのためには米国に核合意復帰を約
束させることだが、それができない以上、米国が禁じたイラン原油
の輸入を日本が続けることを通じ、日本の中立的な立場を明確にす
る必要がある。だが、今回、日本はそこまで踏み込めなかった。」

「もともと米国に対して厳しい姿勢を示しているハメネイ師を、日
本が『手ぶら』で翻意させるのは無理だ。米国が一方的に振る舞っ
ているのに、なぜそれに従わなければならないのかと思うのは、主
権国家として当然だ。」

「日本の外交努力が今回限りではなく、継続するプロセスであるこ
とを示しておく必要がある。トランプ米政権の中でも特に強硬なボ
ルトン大統領補佐官らに、『日本のようなイランと特別な関係を持
つ国まで乗り出してきたのに、イランは交渉に応じなかった。外交
の季節は終わり』と、軍事的な対応を始めるアリバイ作りに使われ
る危険があるからだ。」

一々、もっともである。「トランプと親密で、トランプと価値観を同じくし、トランプの手先に甘んじる外交」の功罪を、もっとリアルに見つめ直さねばならない。政権も、国民も。やがて、トランプが世界から指弾されて失脚する日が必ず来る。そのとき、日本もトランプの同類として指弾の対象とされてはならないのだから。
(2019年6月14日)

http://article9.jp/wordpress/?p=12790
http://www.asyura2.com/19/senkyo261/msg/868.html

[政治・選挙・NHK261] ナショナリズム 日本とは何か/日比谷焼き打ち事件と「国民」B  日露戦争を伝えた特派員、揺れた文学者たち (朝日新聞社 論座)
ナショナリズム 日本とは何か
【9】日比谷焼き打ち事件と「国民」B
日露戦争を伝えた特派員、揺れた文学者たち

藤田直央 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)
論座 2019年06月13日 より無料公開部分を転載。

https://image.chess443.net/S2010/upload/2019041100002_1.jpg
明治の文豪・二葉亭四迷(左)と国木田独歩も日露戦争に揺れた

 「新聞の売れゆきがぐんとふえた」(朝日新聞社史 明治編、1995年)という日露戦争の報道は、人々に連帯感をもたらした。それは、できたての近代国家をまとめるべく明治憲法で示された天皇の「臣民」としてというよりも、初の総力戦に臨む運命共同体である「国民」としてのものだった。

 そんな連帯感を生んだ報道とは、どんなものだったのか。朝日新聞の特派員・弓削田秋江は、日露戦争において、そして日本陸軍にとって最初の大規模戦闘となった1904年の遼陽会戦に従軍した。ロシア軍の陣地「首山」を抑えた際の記事に、こんな一節がある。

■「同胞は屍を戦場に曝したり」

 日本の軍隊の忠勇をさも誇気に鮮かなる旭旗が首山の中腹に樹て
られし時の如何に嬉しかりしよ。然れども此国旗を此山に樹てんが
為め二千余の同胞は屍を戦場に曝したり。昨日まではさしも要害堅
固なりし敵の陣地に日章旗の勇ましく飜へるを見ては歓極まって幾
度か泣かんとし路の傍、畑の中、敵を睨んで突進せし最期の面影を
其儘に残しつつ累々として脚下に横はる屍を見ては「アア親もある
べし、妻子もあるべし」との感先起こり、情迫りて胸は裂けんばか
り塞がりぬ(1904年9月22日、東京朝日新聞)

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日露戦争に従軍した朝日新聞の特派員・弓削田秋江=朝日新聞社史より

 朝日新聞社史はこの記事を、当時の東京朝日新聞の社論を率いた主筆・池辺三山が絶賛した、ということでここまで紹介している。弓削田はそのすぐ後で、こうも書いた。

 而して余はしみじみ思ひぬ。戦後満州解放の暁、万一にも甘き汁
を列強に吸はれ、日本の国民が指を咥へて外人の背後に立つが如き
とあらば、それこそ戦死者の忠魂は永遠に瞑目するの機なからめ

 遼陽も満洲(中国東北部)の一角だった。日本にすれば、日露戦争は南下するロシアから満州を「解放」する戦いだった。

 開戦から7カ月、弓削田が満州で同胞の死を悼んでいた頃、歌人・与謝野晶子は日露戦争に出征した弟を思い「君死にたまふことなかれ」と詠んだ詩を発表した。

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与謝野晶子=国立国会図書館所蔵

 「すめらみことは戦ひに おほみづからは出でまさね」と軍の頂点にある明治天皇にも触れた。評論家の大町桂月は「日本国民として、許すべからざる悪口」と批判。とげとげしい空気が社会を覆う。

 そこから戦いが終わるまでさらに一年、日本側の戦死者は陸軍中心に約8万4千人にのぼった。犠牲に見合わない「屈辱講和」への反発が、「国民」による空前の暴動、1905年9月の日比谷焼き打ち事件へとつながった。

 日比谷公園から皇居外苑、京橋、銀座へ。暴動の現場を、明治の思想に詳しい作家の関川夏央さん(69)と巡ってきた。築地の朝日新聞東京本社にたどり着き、そこでも問いを重ねるうち、かつてこの会社にいた二葉亭四迷(1864〜1909)の話が出た。

■二葉亭四迷さえ「勝った勝った」

 「あの重厚な二葉亭四迷さえ、勝った勝ったと喜んだんだよ」と関川さんは言った。

 日本近代小説の先駆けとされる言文一致体の「浮雲」を書いた四迷は、ロシア文学に造詣が深かった。1904年に大阪朝日新聞に入り、東京でロシアの事情や新聞翻訳の記事を書いていた。

 関川さんが触れたのは、1905年5月末の日本海海戦の時の四迷の高揚ぶりだ。日本の連合艦隊とロシアのバルチック艦隊による戦いには、日本海の制海権、日露戦争の帰趨、ひいては近代国家・日本の命運がかかっていた。

 銀座の東京朝日新聞本社で「大勝利」を知り、牛込の知人宅に「とうとうやつたよ」と駆け込んできたという四迷の様子を、小説家の伊藤整が「日本文壇史 10」(1971年、講談社)で書いている。

       ◇

 二葉亭は言った。

 「まだ十分分らんが、勝利は確実だ。五隻か六隻は沈めたらう。昨夜はまんじりともしなかった。今朝も早くから飛び出して今まで社に詰めてゐた。結局はまだ分からんが、電報が来る度毎に勝利の獲物が次第に殖えるから愉快でたまらん。社では小使給仕までが有頂天だ。号外はもう刷れてるんだが、海軍省が沈黙してゐるから、出すことが出来んで焦りじりしている」

 そして二葉亭は、「かうしちやおられん。これからまた社へ行く。大勝利だ。今度こそロス(※藤田注 バルチック艦隊のロジェストウェンスキー提督)の息の根を留めた」と言ってまた帰って行った。その顔には海軍の軍令部長か何かのやうな誇らしい表情が漲ってゐた。

 戦争の具体的な経過やロシア側の実力については誰にも負けない深い知識を持ってゐて、簡単に勝利に酔ふことに警告を発していた二葉亭も、この時はその話の中の「給仕小使」のやうに有頂天になってゐた。

       ◇

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前日の日本海海戦の号外を求めて東京朝日新聞本社に集まった人たち=1905年5月28日、東京市京橋区滝山町(現・東京都中央区銀座6丁目)。朝日新聞社

 ちなみに伊藤整はこのエピソードに続けて、四迷と、先ほどの従軍記者・弓削田秋江の意外な接点に触れている。四迷は東京朝日新聞主筆・池辺の勧めで1906年から連載小説「其面影」を書くが、20年近く前の「浮雲」以来となる小説執筆を渋る四迷を説得したのが、帰国していた弓削田だった。

 弓削田は四迷の家を訪ね、政治と文学が両立するかという議論を4時間あまり続けた。結局「其面影」では曖昧になったが、もとの四迷の構想はこうだったという。

 「彼は日露戦争のあとで、表面には出ないが社会の大きな問題となってゐた戦争未亡人のことを小説に描いて見たら、と考へてゐたのであつた。日本海海戦のときあんなに勝利に熱狂してゐた彼は、戦後になると、その犠牲者たちのことが心にかかるやうになってゐた」(「日本文壇史 10」)

 四迷は3年後に肺結核で亡くなる。関川さんはもう一人、その頃に同じ病で夭折した明治の文豪に触れた。 ・・・ログインして読む
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[政治・選挙・NHK261] 「老後2000万円不足」の真犯人(上) (朝日新聞社 論座)
「老後2000万円不足」の真犯人(上)
金融庁が金融機関を支援し、資産形成ビジネスに加担し、老後の不安を煽った

深沢道広 経済・金融ジャーナリスト
論座 2019年06月11日 より無料公開部分を転載。


 金融庁の作業部会が6月3日に公表した報告書について、金融庁が火消しに奔走している。報告書は老後に備え資産運用の重要性を指摘し、国民に対して資産形成や運用管理の必要性を提言するメッセージを盛り込んだ。これに対して、野党やインターネット上の個人から批判が相次いでいる。

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問題となった試算(第21回市場ワーキング・グループ 厚生労働省資料)

■意見集約できていたのか?

 この報告書は金融庁の金融審議会の作業部会が策定したもの。金融庁は人生100年時代を見据えた高齢社会において資産寿命を延ばす顧客の行動をサポートするため、金融サービス提供者に求められる対応はどのようにあるべきかといった議論の結果を取りまとめた。全容は約60ページにも及ぶ。

 作業部会は大学教授などの有識者のほか、民間の金融機関やファイナンシャルプランナーといった専門家など、利害関係者が横断的に議論に参加した。金融庁以外の関係省庁や業界団体も数多く参加した。

 これ自体はどこの省庁でもよくやる手だ。しかし、金融庁は1行政機関の作業部会に異常に多くの関係者を関与させていた。多くの関係者が様々な注文を付け、議論は空中分解していた面もあり、バランスが悪かったのではないか。

 一部の参加者は「オールジャパンで作った」と胸を張る一方で、「メッセージの出し方によっては諸刃の剣になる」との懸念も当然あり、温度感の違いは否定できない。

■マスコミのあおり報道が元凶

 ことの発端は大手メディアのあおり報道が主因だ。「平均的な収入・支出で、夫婦のみの高齢夫婦無職世帯では不足額が毎月約5万円で、20〜30年間で総額1300万〜2000万円となる(毎月の赤字額5.5万円×12カ月×20〜30年)」というものだ。

 もっとも、この金額も「こうだったらこうなる」というかなり大雑把な機械的な試算に過ぎない。支出については、例えば老人ホームなどの介護費用や住宅のリフォーム費用など特別な支出は含んでいない。

 しかし、メディアの一部が「少子高齢化による公的年金制度の限界を自ら認め、国民の自助努力が必要」と批判的なスタンスをとった。この「2000万円不足」が切り取られ、独り歩きした。

 さらに「老後受け取る公的年金のみでは老後の生活が安心できない」と追い打ちをかけた。これらがインターネットなどで拡散し、報告書を公表した金融庁が事態の収拾に奔走せざるを得なくなった。

 国会会期中で、政府・与党批判の材料難に喘ぐ野党が一斉に飛びつき、「国民に不安をあおる」と一斉に批判に転じた。野党は参院選の格好の争点にしたい考えだ。

 しかし、やめておいた方がいい。政権がどの党であろうがなかろうが、日本の社会保障制度は見直し不可避であるからだ。むしろ国会で多数を占める政府・与党が明確な方針を打ち出すべきだったはずなのに、わが国では歴史的にほとんどの場合、選挙に負けるのを避けるため先送りしてきてごまかしてきたのだ。

■安倍政権は国政選挙控え早期収拾

 現政権もしかりである。

 麻生太郎金融相は6月7日、報告書の一部内容について「表現が不適切だった」と陳謝。「老後を豊かにするための額を一定の前提で出した試算だ」といち早く釈明した。政府・与党として今夏の国政選挙を控え、国民の反感を買うのは是が非とも避けたく、早期に事態収拾を図りたい。第1次安倍内閣は「消えた年金問題」の発覚で、事実上退陣に追い込まれたトラウマがあるためだ。

 もちろん、政府は現時点で公的年金の限界など決して認めていないし、将来においても自ら公的年金の限界を認めるわけにはいかない。金融庁としては民間有識者らの作業部会の意見を淡々とまとめたつもりなのだろう。

 政府はこれまで先細る公的年金を補完するのは企業などが運営する企業年金だとの立場をとってきたが、報告書は「企業年金の役割も重要である」と言及するにとどめ、個人の自助努力の重要性をより鮮明にしている。自助を強調するあまり、一緒に検討しなくてはならない重要な視点を意図的に外して妙な報告書が完成したのである。

 個人の自助努力とは、企業に頼るのではなく、個人が任意でするという意味だ。言うまでもなく年金の所管は厚生労働省で、もちろん報告書を取りまとめるにあたって、厚労省もオブザーバーとして関与していたが、影は薄い。企業年金については厚労省の部会で別途検討が進んでいる。

■はめられた厚労省?

 筆者は前述の「2000万円不足」が元々どこから出てきたのかを探った。

 それは、4月21日の作業部会(第21回)に見て取られる。「2000万円不足」の根拠は、オブザーバーだった厚労省が提出した総務省家計調査(2017年)のデータがベースとなっている。

 議事録によると、資料を説明した厚労省の課長は「現在、高齢夫婦無職世帯の実収入は20万9198円と家計支出26万3718万円との差は月5.5万円程度となっております。その高齢夫婦無職世帯の平均貯蓄額は、赤囲みの部分、2484万円となっております」と説明した。

 さらに同課長は「今後、実収入の社会保障給付は低下することになることから、取り崩す金額が多くなり、さらに余命も伸びることで取り崩す期間も長くなるわけで、今からどう準備していくかが大事なことになります」と述べた。

 一見すると、厚労省課長はごくごく当たり前のことを述べているだけで、悪意はなさそうだ。本人もまさかこのような事態になるかは想像もしていなかったであろう。

■「大御所」が積極的メッセージ

 もちろん、作業部会のメンバーの中でも報告書の取りまとめに際して、金融庁が国民に対してメッセージを発することに対しては慎重な意見もあった。しかし、こうした行政側からの問題提起を受け、作業部会のメンバーの中でも国民に向けたメッセージを強く打ち出すべきとの意見で一致したのだ。

 例えば、長年金融審にかかわってきた池尾和人・立正大学経済学部教授は「(金融庁が)国民向けにパンフレットを作るのかということを考えているのなら、メッセージ性ははっきり出すべきじゃないかという気がしています」と述べ、口火を切った。

 また、厚労省の社会保障審議会のメンバーでもある駒村康平・慶應義塾大学経済学部教授は「月々の赤字額は5.5万円ではなく、団塊ジュニア世代には10万円くらいになってくるのではないか」と指摘。「今の高齢者も単に節約だけではなくて、ちゃんと将来の絵姿を見据えて運用も含めて資産の維持に努めていくべきだというメッセージを明瞭に伝えていただきたい」と援護した。

 そして、件の報告書が完成し、公表に至ったわけだ。筆者は「これまでの真実から国民の眼を背けさせて煙に巻くような、何を言いたいのかわからないあいまいな報告書よりははるかにましだ」とは思う。関係者の勇気に敬意を表したい。

■金融庁が金融ビジネスを支援

 確かに、報告書では、金融資産の保有状況で65歳時点の高齢世帯の貯蓄額の数字を示している。世帯主が65〜69歳で2人以上の世帯の平均額は2252万円。単身世帯で1506万〜1552万円だ。この額を必要に応じて取り崩すことになるので、直ちに2000万円が不足するわけでは決してない。

 にもかかわらず、報告書は「金融資産はさらに必要」と強調している。さすがにこれでは、金融庁が金融機関のビジネスを支援し、資産形成ビジネスに自ら加担し、国民の老後の不安を煽っているといわれても仕方あるまい。ある大手証券会社OBは「未熟な担当者が作った出来の悪い資料。もう金融庁は死んだといわれても仕方ない」という。

 さらに、報告書にはもう1つ見逃せない記述がある。高齢顧客保護のあり方についてである。

 この点、金融庁はこれまで75歳など一律の年齢制限といった業界団体の自主規制を尊重してきた。しかし、報告書では「高齢者の状況も様々で、商品のリスクや複雑さに応じてメリハリをつけていくべきである」など、業者寄りのスタンスに傾倒している。従来の一律の自主規制を静観してきた態度から一転、「本来は個々人に応じたきめ細かな対応が望ましい」という。

■老後資金は個々人で違う

 高齢世帯の貯蓄額は単身世帯、子供がいる世帯など世帯ごとに様々だ。現役時代の働き方次第で貯蓄額の格差は広がりつつある。 ・・・ログインして読む
(残り:約1496文字/本文:約5023文字)

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[政治・選挙・NHK261] 「老後2000万円不足」の真犯人(下) (朝日新聞社 論座)
「老後2000万円不足」の真犯人(下)
退職金も企業年金も揺らいでいる。「退職給付難民」の増加にどう向き合うのか

深沢道広 経済・金融ジャーナリスト
論座 2019年06月12日 より無料公開部分を転載。


■めぐまれた高齢者を前提とした報告書

 金融庁の報告書は物議をかもしたが、現実はもっと深刻だ。同報告書は夫婦いずれかが会社員か公務員で働いていたなど比較的めぐまれた高齢者を想定しているためだ。派遣社員などの非正規労働者や自営業などの場合、老後2000万円でも足りない現実をつきつけた。十分な退職金がなく、低所得で十分な保険料を支払わないため低年金問題が新たに生じる。いわば「退職給付難民」であり、こうした人々は蚊帳の外である。

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公的年金年金額の分布状況(厚生労働省年金制度基礎調査2017より)

 金融庁の件の報告書は、高齢夫婦無職世帯の平均的な収入と支出を前提としている。とりわけ、平均的な収入の9割以上が公的年金の金額である。報告書は月額19万円の公的年金をうけとるなどして実収入を20万9198円とし、年間約230万円(19万円×12カ月)の安定収入を前提としている。

 高齢者夫婦2人で年間230万円の収入は、夫婦のいずれかが現役世代に正社員の会社員や公務員などで安定的に所得を得て厚生年金に加入していた比較的めぐまれた層だ。単純に1人当たり年間115万円の年金受給できる計算だ。

 厚生労働省の年金制度基礎調査(老齢年金受給者実態調査2017年)によると、公的年金の年金額が年間120万円未満の人は全体の50.4%を占める。非正規労働などで現役時代に十分保険料を納めず、年間84万円未満の人は32.6%に達する。このようなケースであると、実際の年金収入はさらに低くなるので、貯蓄が2000万円あったとしても、当然に足りなくなるはずだ。

■真犯人は厚労省か金融庁か?

 しかし、実態はかなり違う。直ちに足りなくなるわけではないし、貯蓄がその時点で必要となるわけではない。厚労省の国民生活基礎調査の概況(2017年)によれば、高齢者世帯の所得構成は66%が公的年金で、残りを就労などによる稼働所得で補っているのが実態だ。

 金融庁の報告書は実収入のうち、公的年金が9割で稼働所得がほとんどない前提自体がかなりいびつであるといえる。厚労省は実際、4月21日の作業部会で実態を示す上記資料のほか、問題の試算資料を提出した。

 ところが、6月3日にまとめられた報告書には厚労省の実態を示す資料は盛り込まれなかった。金融庁が問題の試算のために、実態を無視して都合のいいデータだけを残したのであろうか。真相は藪の中である。

 金融庁の報告書によれば、60歳代の高齢夫婦無職世帯の貯蓄額は2129万円、70歳以上の世帯で2059万円。貯蓄額が2000万円以上あるのは、若年から財形貯蓄などで自助努力を定期的にコツコツ続けてきたか、定年退職時にもらう退職金の影響が大きい。非正規労働者で働いていると、基本的に退職金はないので、40歳代の派遣社員は「この金融庁の指摘する貯蓄額は夢のまた夢」という。

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高齢者世帯の所得の構成

■「資産形成どころではない」

 金融庁の促す資産形成をするだけの貯蓄すらない人がどれだけいるのか考えてみたい。それが先決ではないかと考えるからだ。実際は金融庁の掲げる「貯蓄から資産形成へ」の前段階、貯蓄すらできていない世帯が一定数存在する実態が浮かび上がってくる。

 金融広報中央委員会の家計の金融行動に関する世論調査(2018年)によれば、20歳代から70歳代の貯蓄額の平均値は1430万円、中央値は609万円だった。中央値は貯蓄額を低い世帯から並べた場合ちょうど真ん中に位置する世帯の貯蓄額を意味する。

 年齢別にみると、20歳代の平均値は249万円、中央値は111万円。30歳代は平均値が660万円、中央値が382万円。40歳代は平均値が942万円、中央値が550万円。50歳代は平均値が1481万円、中央値が900万円。60歳代は平均値が1849万円、中央値が1000万円。70歳代は平均値が1780万円、中央値は700万円だった。

 なぜ平均値と中央値がこれほど乖離するのか。それは「貯蓄がない」と答えた人が相当数いるためだ。

 預貯金などの金融資産を保有しない世帯の割合は20歳代で全体の32.2%、30歳代で17.5%、40歳代で22.6%、50歳代で17.4%、60歳代で22%、70歳以上で28.6%となり、決して無視できる割合ではない。

 貯蓄がない世帯は資金を資産形成に回せる余裕はないと考えられる。約8割の貯蓄がある世帯はまだ恵まれているのだ。

 この問題は複雑で解決は容易ではない。例えば、派遣社員などの非正規雇用で働く期間が長く、低賃金で十分な貯蓄ができないまま、高齢化が進み年金受給を迎えるような場合があげられる。

 筆者は2001年に大学を卒業した就職氷河期世代の1人で、39歳まではフルタイムの正社員で働いてきたが、一時的にフルタイムで働けなくなった経験がある。離職後は健康保険と住民税の支払いでとても貯金できる余裕はなかった。

 政府は就職氷河期世代を支援する方針を掲げているが、長期的には実効性は疑わしい。ハローワークの求人倍率が高くても、求職者側が求人を選り好みして、求人に至らないケースが多いためだ。

 労働環境は求人倍率だけでみれば、改善しているものの、実際にはハローワーク以外で就業する場合も多いので、労働市場の実情を示す指標とはもはやいえない。

■働き方が年金格差助長

 老後資金の柱はかつて退職金と年金だった。しかし、近年この退職給付の柱は揺らぎつつある。若年層を中心に働き方が多様化しているためだ。企業から企業への転職のほか、副業形態で個人が複数の仕事を持つ形式も増えつつある。

 また企業や組織に属さず働く、いわゆるフリーランスの働き方も増加している。ランサーズのフリーランス実態調査によれば、フリーランス人口は2018年時点で1119万人と労働力人口の17%を占めているという。

 確かに、このような働き方は長く働き続けることができる可能性を高め得る。しかし、多くの場合、制度上退職金を受け取れないか、退職金があったとしても低い水準になる可能性が高く、老後の収入の柱である退職給付の点で不利益を被る可能性がある。

 例えば、フリーランスの人が老後十分な年金を確保するためには、最低限の国民年金(老齢基礎年金)のみならず、上乗せ制度に加入する必要がある。政府が推進する副業による収入確保は、本来退職給付と一体で検討しなくてはならないのに、現状は必ずしもそうはなっていない。

 ただ、現役世代の職業は老後の公的年金の受給額に大きく影響する。

 厚労省の年金制度基礎調査によると、現役時代に正社員の会社員中心で過ごした人(=20歳〜60歳まで40年の加入期間のうち20年超が正社員)の年金額(年額)は187.5万円。これに対して、自営業中心に過ごした人(=40年の加入期間のうち20年超が自営業)の年金額は94万円と歴然の差がある。これを30年間でみると、正社員だった人は5625万円受け取れるのに対して、自営業だった人は2820万円しか受け取れない。

 もちろん、この差は現役世代に支払った保険料の差からくる。会社員は会社負担分と合わせ数倍の厚生年金保険料を支払っている。

■揺らぐ退職金と企業年金

 退職給付制度を持つ企業の割合は1992年度には全体の92%に上ったが、2012年度には75.5%まで低下した。主に中小企業が運営していた税制適格年金の優遇措置がなくなることで、多くの企業が退職給付制度自体を廃止したためだ。

 当初は終身雇用を保障していた日本企業だが、雇用される側が定年までの就業を望まず、中途離職者が急増した。派遣社員やアルバイトなど正社員を望まない若年層が増加したのも背景だ。

 今や大学卒の新卒社員は3年で半数が離職するのが常識だが、短期間の就労を繰り返すと退職給付難民になり得るリスクは高まる。まとまった金額の退職金が受け取れないほか、十分な公的年金が得られなくなる可能性があるためだ。

 どのような契約形態で就業するかは個人の選択の問題だが、正社員で厚生年金保険料をできる限り長い期間納めることが老後受け取る厚生年金を増やすことにつながる。

 もっとも、退職給付制度が廃止されているのは、主に従業員規模の少ない中小・零細企業が中心で、企業の運営する退職給付は減少傾向にあるのが実態だ。大企業は労働組合が組織されている場合が多く、制度の廃止には反発が大きい。しかし、中小企業では経営者の意向で制度が廃止される場合も多い。

 政府は2013年の企業年金改革でかつて企業年金の中核だった厚生年金基金を特例措置で解散できるようにしたため、多くが自主的に解散を選んだ。

■退職金額はピークから4割減

 大学卒の定年退職者の退職給付額は平均で1700万〜2000万円程度で、ピーク時から3〜4割減少した。1997年には3203万円あったが、年々減少し、2017年には1997万円となった。これは高齢者の貯蓄額に長期的には影響し得る。

 正社員には多くの場合一定の退職給付が支払われるが、非正規労働者に退職金が支払われることはまれだ。払われるにしても正社員に比べて金額が少ない場合がほとんどだ。一般に非正規労働者は雇用期間が有限で、所得が不安定になりやすく、年金保険料が十分積み立てられず、老後の年金額も低額に陥りやすい。

 旧民主党政権下で公的年金の受給資格は25年から10年に短縮されたことで、これまで年金の受給資格がない人に年金が支払われることになった点では一歩前進だが、保険料の納付期間が短いため、老後受け取る年金額も少なくなる低年金という新たな問題が生じつつある。

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受給資格短縮で発生した低年金問題(厚生労働省年金制度基礎調査2017より)

■不都合な真実

 報告書はこうした環境変化の事実について言及はしているが、根本的な解決からは目を背けている。 ・・・ログインして読む
(残り:約1487文字/本文:約5628文字)

https://webronza.asahi.com/business/articles/2019061000010.html
http://www.asyura2.com/19/senkyo261/msg/883.html

[政治・選挙・NHK261] 「安保法明白に9条違反」 宮崎元法制局長官が証言(東京新聞)
2019年6月14日 朝刊

https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201906/images/PK2019061402100077_size0.jpg
宮崎礼壹元長官

 集団的自衛権の行使を認めた安全保障関連法は違憲だとして、群馬県内を中心とする二百八人が国に損害賠償を求めている集団訴訟の証人尋問が十三日、前橋地裁(渡辺和義裁判長)であり、宮崎礼壹(れいいち)・元内閣法制局長官は「安保法は憲法九条や政府解釈に明白に反しており、違憲だ」と述べた。全国各地の同種の訴訟で証人尋問が行われるのは初めて。

 宮崎元長官は第一次安倍政権を含む二〇〇六〜一〇年に長官を務めた。集団的自衛権の行使は憲法上許されないとした一九七二年の政府見解に言及し、「集団的自衛権の行使は、憲法が容認する自衛の措置を超えるため違憲であるというのが、政府や国会の一貫した解釈だ」と証言した。

 政府が二〇一四年に閣議決定した「武力行使の新三要件」については「極めてあいまいで混乱を招く」とし、「密接な関係にある他国への武力攻撃を国として主体的に判断できない。武力を行使した場合、存立危機事態が消滅したとして日本だけが戦線を離脱することはできない」と指摘。

 また「第一次、二次世界大戦の惨禍を経験して現行憲法を手にしたわが国は、集団的自衛権の行使を減らすことに取り組むべきだ」と述べた。

 このほか、武蔵野美術大の志田陽子教授(憲法学)と、東京新聞の半田滋論説委員に対する証人尋問が行われた。志田教授は「原告らが人格権を侵害され、法的救済が必要」と訴えた。 (市川勘太郎)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201906/images/PK2019061402100078_size0.jpg
現内閣法制局と宮崎氏の安全保障関連法に関する見解

https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201906/CK2019061402000139.html
http://www.asyura2.com/19/senkyo261/msg/888.html

[政治・選挙・NHK261] <「消された」報告書を読む>(上)老後2000万円 要介護なら1000万円追加(東京新聞)
2019年6月15日 朝刊

 金融庁の金融審議会市場ワーキング・グループ(WG)が今月三日公表した報告書「高齢社会における資産形成・管理」。そこで示された「老後に二千万円の蓄えが必要」との試算は、どうはじき出されたのか。

 根拠となったのは、総務省の二〇一七年家計調査にある夫六十五歳以上、妻六十歳以上の夫婦のみの無職世帯の平均的な収支。提示したのは公的年金制度を所管する厚生労働省だ。

 厚労省は、年金など社会保障給付が中心の収入と、食料、住居、医療などへの支出に月約五万五千円の差額があることをWGに資料で示した。報告書はこの差額を「赤字」とみなした。一年で六十六万円、三十年なら千九百八十万円になる。この単純なかけ算を基に、老後に預貯金などの金融資産が二千万円程度必要になると導き出した。

 必要な蓄えは、これだけでは済まない。報告書は、介護が必要になった場合などの費用の平均額を「二千万円」の試算に含めなかったと明記している。

 報告書の参考資料では、高齢者が要介護になった場合の費用が最大一千万円と紹介。ほかにも住宅のバリアフリー化などに伴うリフォーム費用は約四百六十五万円、亡くなった時の葬儀費用は約百九十五万七千円と見積もっている。(下図参照)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201906/images/PK2019061502100074_size0.jpg

 四月のWGの議論でも、民間委員から、年金給付水準の将来的な低下を踏まえると「月々の赤字は十万円ぐらいになるのではないか」との見方が出ていた。

 報告書をきっかけに、老後の生活資金不足と年金制度への不安が表面化した。国民の関心は一気に高まる中、政府は正面からの議論を避けている。

 安倍晋三首相は二千万円の試算を「不正確であり、誤解を与えるものだった」と主張。麻生太郎副総理兼金融担当相は、報告書の受け取りを拒否した。「これまでの政府の政策スタンスと異なる」とする。だが、そもそも月約五万五千円の差額は、厚労省が以前から示していた。麻生氏の説明とは矛盾する。

 法政大の小黒一正教授(公共経済学)は「報告書で示された問題意識に誤りはない。政府は、厳しい現実を直視した上で、今後の社会保障制度をどう設計していくかを議論すべきだ」と指摘する。 (中根政人)

     ◇

 「老後二千万円」を盛り込んだ報告書を、安倍政権は参院選に不利な材料として、存在すらしないものにしようと躍起だ。政権によって消された報告書が投げかけたものは何なのか。三回連載で読み解く。報告書の全文は金融庁ホームページに掲載されている。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201906/CK2019061502000160.html
http://www.asyura2.com/19/senkyo261/msg/890.html

[政治・選挙・NHK261] 「自民党が土木建築を切り捨てた」、山本太郎氏が公共事業の必要訴える[品川](高橋清隆の文書館)
2019年06月14日11:36

 新党「れいわ新選組」の山本太郎参院議員は13日夜、東京のJR品川駅前で街頭記者会見を開き、自民党と土建業界が親密との印象を否定。公共事業を半減させたのが自民党政権だったと説明し、防災や水道、鉄道など公共性の高い分野は国が主導するべきと主張した。

https://livedoor.blogimg.jp/donnjinngannbohnn/imgs/8/9/8910e5df-s.jpg
1997〜2016年の政府総支出の伸び率が世界百四十数カ国中最低であることを示す山本氏(2019.6.13筆者撮影)

 会見は午後6時半から同駅前ペデストリアンデッキで2時間40分超開かれた。ピーク時には、会社帰りなどの市民約500人が足を止めて質疑に参加していた。

 人垣に加わった市民から、自民・公明・維新3党の票を取り込んではどうかとの提案があった。鉄道・道路整備を期待する自民党支持者が多い一方、野党には公共事業の充実が期待できないからというものだった。

 これに対し、山本氏は「それよりも、諦めて投票に行かない4割にリーチした方が早い」との見方を示す一方、「自民党は土木・建築業界と親密でずぶずぶの関係にあるとのイメージがあるが、本当か。どんどん切り捨ててはこなかったか」と疑問を投げ掛けた。

 2020年の東京五輪関係で潤っているゼネコンはあるとしながらも、過去20年間の政府総支出の伸び率が世界最低であることを示し、「20年間続くデフレは国が投資をしてこなかった結果だ」と指摘した。

 「この国のインフラは脆弱だ」として、昨年の西日本豪雨のではリダンダンシー(余剰、代替交通網のこと)がないため支援物資を被災地に運べなかったことを挙げた。北海道をはじめとする寒冷・豪雪地帯や過疎地でも移動の権利が保障されるべきだとして、「最低限の整備は国がやるべきだ」と強調した。

 過去20年間の公的資本形成の推移をグラフで示し、「橋本政権の48兆円から小泉政権で27兆円に約半減し、第2次安倍政権で微増した。よく、民主党のせいだと言われるが、彼らが事業仕分けで削ったのは3兆円程度。半減させたのは自民党だ」と両断した。

 「公共事業は雇用につながるし、企業にもプラス。(経済指標でも)一番早く数字に表れる。そもそも、この国は災害だらけ。防災対策はもちろん、歩道のバリアフリー化だって必要」

 さらに、山本氏は「それ以外の分野も、削減されてきた。コンクリートから人へじゃなく、コンクリートも人も」と切り出し、教育機関に対する公的支出(対GDP費)のグラフを示す。OECD加盟34カ国中、最下位の少なさだ。

 「若者たちが奨学金で苦しんでいるのは、先進国の姿じゃない。どけち国家世界一の日本。デフレが20年続いた国は日本以外ないと総理も認めている。土木・建築関係の人は、自民党に『もっと金を出せ』と言わなければ。国土強靱化と言いながら、蛇口を閉めている」と突き放した。

https://livedoor.blogimg.jp/donnjinngannbohnn/imgs/f/5/f56e5dc0-s.jpg
公的資本形成の推移(1994〜2016年)(2019.6.13筆者撮影)

https://livedoor.blogimg.jp/donnjinngannbohnn/imgs/d/8/d8fc31db-s.jpg
教育機関に対する公的支出(対GDP費、2015年)(2019.6.13筆者撮影)

https://livedoor.blogimg.jp/donnjinngannbohnn/imgs/f/b/fb5b6203-s.jpg
JR品川駅前にできた人だかり(2019.6.13筆者撮影)

http://blog.livedoor.jp/donnjinngannbohnn/archives/2006734.html
http://www.asyura2.com/19/senkyo261/msg/892.html

[お知らせ・管理21] 2019年06月 削除依頼・投稿制限・等管理スレ。突然投稿できなくなった方も見てください。 管理人さん
53. 肝話窮題[2] isyYYouHkeg 2019年6月15日 20:16:35 : KzsKwpDjm2 : NEZCVnVxTW5zNjY=[35]

管理人さん

>>52で指摘がありましたように、二重投稿をしてしまいました。
お手を煩わせることになり恐縮ですが、当方が投稿しました

http://www.asyura2.com/19/senkyo261/msg/892.html

を削除して下さるようお願いします。当方の確認不足で申し訳ありません。

>52さん、ありがとうございました。



http://www.asyura2.com/13/kanri21/msg/558.html#c53

[政治・選挙・NHK261] 「種子法廃止は違憲」 農家ら1300人らが提訴 東京地裁 (週刊金曜日オンライン)
高橋清隆|2019年6月12日3:09PM

http://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/wp-content/uploads/2019/06/ce31ff3f314cae5c5fd1df7291ddbe65-768x576.jpg
5月24日、東京・霞が関の東京地裁に横断幕を掲げ入場する原告ら。(撮影/高橋清隆)

主要農産物種子法(種子法)の廃止(2018年4月1日)が生存権を保障する憲法25条などに抵触するとして違憲確認などを求める「種子法廃止等に関する違憲確認訴訟」を、全国の農家・消費者1315人が5月24日、東京地方裁判所に起こした。

原告は、山田正彦元農林水産相が幹事長を務める「TPP交渉差止・違憲訴訟の会」が募った。同会は2015年5月に「TPP交渉差止・違憲訴訟」を起こし、今回はその第3次訴訟として位置付ける。川田龍平参議院議員やジャーナリストの堤未果氏、農業経済学が専門の鈴木宣弘・東京大学大学院教授、元外務省情報局長の孫崎享氏、エコノミストの植草一秀氏も原告に名を連ねる。

当日は午後1時に訴状と人数分の委任状を民事第2部に提出し、受理された。147人の弁護人を擁し、1年半かけて訴状を準備した。

種子法は1952年、食糧増産という国家的要請の下、コメ、麦、大豆の安定供給を図るため制定された。各都道府県に地域に合った優良品種の開発や試験などとともに、圃場を指定してそれら優良品種の原種・原原種の生産を義務付けてきた。これによって、採取農家は安心して種子を生産し、一般農家は優良種子を安価で購入し、一般消費者は安全な主要農産物を安く購入することができた。

訴状は、(1)種子法廃止法が違憲であることの確認、(2)原告A(一般農家)が種子法に定められた諸々の措置を経て生産された種子を用いて主要農産物を栽培できる地位にあることの確認、(3)原告B(一般消費者)が同農産物の供給を受ける地位にあることの確認、(4)原告C(採取農家)が、自らの所有する圃場が種子法に定められた「種子生産圃場」として都道府県によって指定される地位にあることの確認、(5)被告の国は原告らに対して各1万円を支払う、ことを求めている。

(1)については憲法25条の生存権と同29条の財産権を根拠にする。25条は「健康で文化的」と書かれ「食」の表記はないが、48年の「世界人権宣言」や66年の「国際人権規約」を引用し、「食料への権利」が当然に含まれるとの主張を展開する。訴額は1955万円になる。

【廃止の背景にはTPP協定 貿易自由化より小農の権利を】

「TPP交渉差止・違憲訴訟」では違憲確認や締結差止が棄却されたが、2018年1月の控訴審判決は種子法廃止について「背景事情の一つにTPP協定に関する動向があったことは否定できない」と認めている。

記者会見で、「違憲訴訟の会」の池住義憲代表代行は今回の提訴を「歴史的な裁判」と評した。国連が2019年からの10年間を「家族農業の10年」と決めたことや、18年12月に「小農と農村で働く人々の権利に関する宣言」を採択したことを挙げ、「それに逆行するのが日本政府。1315人の仲間とともに、司法府の判断を仰ぐ」と強調した。

弁護団の岩月浩二代表は、種子法がサンフランシスコ講和条約発効の3日後に成立したことに触れ、「食料に対する権利を保障していくことが国の基盤であると当時の国会議員は痛感して制定した。それを衆参わずか5時間ずつの審議で中身も分からないまま廃止した。これに対し、食料に対する権利を侵害するということで提訴に至った」と動機を明かした。

種子法廃止を受け9道県でこれに代わる条例をすでに制定し、2県が制定予定。種子法関連で国会に提出されている各地方議会からの意見書は4月15日現在131件に上る。山田氏は「すべての都道府県が条例を作れるわけではない」と訴訟の意義を説明する。

国会では種子法復活法案が継続審議になっているが、与党の抵抗で成立の見通しは立っていない。川田氏は「国会議員の中に、種子法廃止の問題を知って驚く人がいた。まだ、中身があまり知られていない。法律を復活させていくためにも、争うことで事実が明らかになればと思う」と裁判の行方に期待を寄せる。

(高橋清隆・ジャーナリスト、2019年5月31日号)

http://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/2019/06/12/antena-493/
http://www.asyura2.com/19/senkyo261/msg/901.html

[政治・選挙・NHK262] 「老後2000万円問題」の何が問題か(玉木雄一郎オフィシャルブログ)
2019年06月15日

老後2000万円足りないとする金融庁の報告書が大きな問題となっています。麻生大臣の「受け取らない発言」や、役人に責任転嫁するような姿勢には強い憤りを感じます。許せません。他方、年金の「100年安心プラン」はウソだった決めつけるような議論には、違和感を覚えます。

そもそも年金100年安心プランは、少子高齢化に合わせて年金を自動減額する仕組み(「マクロ経済スライド方式」)を導入し、年金の積立金が100年間は枯渇しないようにした改革なので、当然、年金額は減っていくように設計されています。つまり、もともと100年安心プランが担保するのは「年金財政の健全性」であって「国民生活の安心」ではありません。

それを、あたかも人生100年時代を生きるに足る年金(額)がもらえる改革だと誤解を与え続けてきた与党の責任は大きいし、野党もその誤解を前提に攻めると、誤解が広がるだけになります。まずは、今後どの程度年金が減るのか正確に示すことが大切です。大丈夫と言い続けるのは単なる問題の先送りです。

平成16年の年金制度改革は、大まかに言うと、将来にわたって厚生年金を約2割、国民年金を約3割、自動的に減らすことで積立金が100年間もつようにした改革です。しかし前提条件が甘すぎたため、100年を待たずに枯渇しそうになっています。つまり、国民生活の安心だけでなく、年金財政の安心も、両方心配な状況になっています。

改革の方向性としては、報酬比例部分の改革と基礎年金制度の改革を分けて、後者については年金の「最低保障機能」を税投入によって高めるのが一案です。ただ、高齢者向けベーシックインカム「的」な制度になるので、例えば月7万円を給付するなら消費税換算で4%程度の安定財源が必要です。高額年金受給者に投入されている税金を減らすのか、また、生活保護との関係をどうするのか、議論の整理が必要です。

報酬比例部分については、賦課方式から積立方式への移行も一案ですが、いわゆる「暗黙の債務」の問題が生じます。現役世代の保険料が彼ら自身の積み立てに回るので、今の年金受給者への資金を別途調達しなければなりません。700兆円にも及ぶ「暗黙の債務」なので、これを国債発行以外で調達可能か検討が必要です。

年金問題は、とかく誰かを責めがちになりますが、本質的な原因は、少子高齢化で受益者と負担者のバランスが崩れていること、そして何より日本人の寿命が伸びていることです。いずれにしても、無い袖はふれないので、長生きのリスクをどうカバーするのか、具体的な対策を考えていかなくてはなりません。

だからこそ、金融庁の報告書も受け取った上でちゃんと活用すればいいのです。何より、最新の財政検証も早く出すべきです。選挙を意識して、とにかく真実を隠そう、発表を遅らそうでは、年金制度に対する不信感が高まるだけです。ましてや、役人に責任をおし付けることなど論外です。

この点に関して、安倍政権の対応は全くだめです。

私たち国民民主党としては、NISAの拡充やiDECOの加入年齢引き上げなどの改革とともに、現行制度をベースに、低年金者に対する年金の加算を行うことからはじめたいと考えます。その上で、公的年金の最低保障機能を高めるための総合的な改革案を議論していきたいと思います。

https://ameblo.jp/tamakiyuichiro/entry-12480819326.html
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/102.html

[政治・選挙・NHK262] 「初めてデモに行ってきた」から8年 悲惨な状況に真面目に向き合う  中島京子(朝日新聞社 論座)
中島京子 作家
論座 2019年06月16日

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東日本大震災後、原発に反対するデモが各地で毎週のように開かれ、労組や団体の動員ではない個人や家族連れの参加が目立つようになった=2011年4月10日、東京・高円寺

■2011年の時点では、もう少し楽観的な希望があった

 2011年の6月、朝日新聞に「初めてデモに行ってきた」というエッセイを寄稿した。3月に東日本大震災があり、福島第一原子力発電所の事故があって、それから約2カ月後の5月7日に、渋谷で行われた反原発デモに参加した経験を書いた。

 読み直してみると、8年前の私は若干、腰が引けていて、「自分は社会派作家じゃないし、震災を機に作風が一変したりもしないだろう」などと書いている。「デモ」は「社会派」の人が行くものだという先入観があり、それに参加するのにちょっと気後れがあったらしい。でも、あれから何度もデモにも集会にも行ったし、機会があれば新聞や雑誌で自分の意見を述べるようにもしていて、それでもちっとも世の中はよくならないという危機感にまみれている昨今、自分が「社会派」かどうかなんて、もはやどうでもいいことである。それより、ほんとうに、この先、この国がどうなってしまうのかが、心配だ。

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2011年6月7日付、朝日新聞夕刊(東京本社版)への中島さんの寄稿

 東日本大震災は、あきらかに私自身を変えた。ことに、原発事故の衝撃は、深い反省を呼び起こした。事故そのものもショックだったが、自分がいかに長い事、政府や官僚や電力会社の嘘、ごまかし、騙しに気づかずにいたかを思って情けなかった。日本の原発は安全でクリーンで対策も万全という嘘に、騙されたというよりも、騙されたかったというのに近いかもしれない。震災をきっかけに、世の中を見る目が変った。

 それでも、2011年の時点では、もう少し楽観的な希望があった。

 自分のようなぼんやりした人間も、おかしいと思って声を上げたし、そういう普通の人はもっと増えていくのだから、世の中はいい方向に変わるのではないかと思っていたのだ。「(デモ参加者の)人数が増えればマスコミも政府も無視できなくなるはず」と、エッセイにも書いている。テレビの報道番組に自分の参加したデモの映像が映ると「行ってよかった!」という気持ちになった。

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安保関連法案に反対して国会周辺を埋め尽くした人たち=2015年8月30日

■デモの人数は増えたけれど

 しかし8年経って、いまは無邪気に人数が多ければ報道されるとは思えなくなっている。今年5月3日の憲法集会は、昨年を上回り6万5千人が参加したと「東京新聞」は一面で報じているけれど、「NHKニュース7」は壇上の野党議員を映しただけで集まった人々を画面に映さず、人数も伝えなかったそうだ。

 それからもう一つ気になるのは、デモのときに動員される警察官の増加だ。とくに官邸前や国会前は多い。デモ参加者より多いと感じる。しかし、実際どのくらい動員されているのか、私は把握していないので、もし、数が増えていないとすれば、警察官が醸し出す威圧感が増したのかもしれない。

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国会前に向かう人の動きを妨げるなど、警察の過剰な警備も見られた=2015年9月16日、国会正門前付近

 デモ/集会参加者を限られたスペース(官邸前、国会前の場合は歩道のみ)に押し込めて、通せんぼするように青い特殊車両がずらっと並ぶ光景は異様だし、地下鉄の出口やら横断歩道やらを勝手に封鎖して、集会場所にたどり着きにくいようにするのも問題があると思う。毎回、人であふれかえる地下鉄出入り口付近を目撃するたびに、いま、このときに大震災が起こったら、私はこの地下鉄構内で命を落とすのではないかという想像で恐怖にかられる。デモや集会は平日の夕方や土日に開催されることが多いから、永田町にはほとんど車が走っていない。車道を通行止めにして、デモ参加者に開放すれば、ずっと安全な抗議行動が可能になるのに。

 私が参加したデモでいちばん人数が多かったのは、2015年8月30日の安保法制反対のときで、主催者の発表によれば、国会前に12万人、全国各地で行われた同趣旨のデモに参加した人数を合わせると35万人の人出だったが、あのとき国会正面前を埋め尽くした参加者の映像/画像は鮮烈な印象を残した。あれ以来、そうした画像が残らないように、警備が厳戒になったと言う人もいる。

 8年間に、いろいろなことがあった。まずは、2012年に自民党(+公明党)が与党となり、安倍さんが政権に返り咲いた。以来、ずっと、総理大臣は安倍晋三氏である。

 2013年に秘密保護法が強行採決で成立した。2015年には安保法制がやはり強行採決された。2017年には同じように共謀罪が成立した。いずれもこの国の民主主義や平和主義を根幹から揺るがす法律で、デモにも集会にも何度も足を運んだけれど成立してしまった。沖縄の辺野古基地建設に反対するデモも行っているのだが、政府はどうして沖縄の民意を無視し続けるのか。

 森友学園、加計学園の疑惑、財務省による文書の改ざん事件、自衛隊の日報が隠された問題、厚労省の統計不正、次から次へと国が国民を騙す事件があって、そのたびにやはり怒りを表明するのだが、どれひとつ、きちんと解決してはいない。鳴り物入りで成立した秘密保護法の効果なのか、何なのか、役所が出してくる資料は「のり弁」と呼ばれる、真っ黒に文字を塗りつぶした異様な紙であることが多い。

 そんな中に、ひどいセクハラ事件とか、ヘイトスピーチとか、政治家による耳を疑うばかりの失言とか、そんなことも続く。これにも抗議する。

■街にデモのある風景は、当たり前になった

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中島さんが初めて参加したデモ。楽器やドラムを演奏しながら歩く人など、さまざまな表現が見られた=2011年5月7日、東京都渋谷区

 何度か選挙もあった。参議院で議席の3分の2が改憲勢力となって、安倍首相の妄執的な改憲への情熱も高まっている。最近の世論調査では6割近い政権支持率と報道されていた。アベノミクスもぼろが見え、年金破たんが公的に宣言され、北朝鮮やロシアとの外交もうまく行かないというのに。

 膨れ上がる東京オリンピックの費用、カジノをめぐるあれこれ等、ひどいことばかりだが、このあいだ知って非常に驚いたのは、防衛関係費だ。2011年度に4兆7752億円だったのが、2018年度に5兆1911億円に増大したことに驚いたのでは、ない。防衛省が毎年公開している「我が国の防衛と予算」によれば、この増大する防衛費の中で、自衛隊による災害援助関係予算が、震災前に組まれた2011年度の1051億円から、2019年は100億円ほどに縮小されていたことなのだ! 10分の1に! 東日本大震災の後もマグニチュード7レベルの地震は各地を襲い、各地の豪雨でたいへんな死者を出し、御嶽山は噴火し、熊本でも北海道でも大地震があったのに、なぜ9割削減なのか? どうしてこれはもっと大きく報道されないのだろう? 防衛省はせっせとそのお金で欠陥品のF35やオスプレイを買っているわけだ。

 あれから8年。どう考えても、状況は悪くなっているようにしか思えない。

 街にデモのある風景は、当たり前になったし、オンラインなども含めれば現状に異を唱えるための署名活動なども、以前と比べればずいぶん盛んになっている。それなのに、状況が悪くなりっぱなしというのは、どういうことなんだろう?

 「報道の自由度ランキング」は、鳩山政権の2009年の11位を頂点に下がりっぱなしで、2012年には22位、2019年には67位まで転落した。「秘密保護法」や「共謀罪」など、国民の知る権利や表現の自由を縛る法律ができたことは、この「転落」に大きく寄与したはずだ。古舘伊知郎、岸井成格、国谷裕子という名物キャスターが、次々番組を降板したのは2016年のことだった。

 テレビの政権への「忖度」は当たり前の光景になり、首相がテレビに出るのは、バラエティ番組に出演するときであって討論番組や報道番組に出るときではなく、その「素顔」がもっぱらトランプ大統領とのゴルフや居酒屋店での振る舞いとして情報番組に消費される。

 国会の予算委員会の審議が、与党の審議拒否により100日以上ストップしているという異常事態も、つい最近までまったく報道されなかった。ひょっとしたら「トランプ大相撲観戦」や「令和初の国賓、天皇と会談」や芸能人の薬物スキャンダルのほうが「視聴率が取れる」からという「純粋」な理由かもしれないが、野党が舌鋒するどく安倍首相を追及する場面を見ることは一切なく、ゴルフや相撲を見せられている事態は、異常な「政権支持率」の数字に貢献していないだろうか。関係ないと思う方が難しい。

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性暴力に対する無罪判決が相次いでいることに抗議する「フラワーデモ」が、いま全国各地に広がっている=2019年6月11日、東京駅前

■民主主義国の主権者であることは、けっこうしんどい

 正直言って、日本はいま、ひどい状況にあると思う。

 そして最近私は、安倍政権の支持率が高いのは、人々が騙されていたいからではないかと考えるに至った。私自身、この政権ならまだまだ恐ろしいことを隠しているんじゃないかという気がするし、アベノミクスの失敗も、手詰まりの外交も、破たんした年金も、いつのまにか海外で多国籍軍とともに行動している自衛隊も、真実を目の当りにしたら呼吸が止まるのではないかというほどの恐ろしさがある。政権交代はしなければならないと思うが、政権さえ変えれば薔薇色の未来が待っているなどとは、どうしたって考えられない。これまでに積み重ねてきた嘘、ごまかし。そのぼろぼろの土台の上に築かれている国を、どうやって立て直すのか考えるだけで眩暈がする。

 恐ろしいものを見せないでメルヘンだけを見せてくれるのなら、もうそれでいい、真実は知りたくないというのが、意識的にせよ無意識にせよ、政権支持層の気持ちではなかろうか。しかし、それはもう、薬物依存のようなものだから、どんなにつらくても真実と向き合わなければならない。

 ひとつだけ、8年の間に私が得たものは、この悲惨な状況をきちんと認識して、ましなものに変えようと考える人たちが少なくない数いる、という確信だ。

 社会や政治にさほど関心がなかったころには知り合えなかった人たちが、いまの私の周りにはいる。その中には、この夏に国政選挙に出馬することにした人もいるし、政権中枢に鋭い質問をし続けているジャーナリストもいるし、マイノリティの権利を守るために戦っている弁護士もいる。それこそ、私より後におずおずデモデビューして、いまや常連という人もたくさんいる。

 民主主義の国の主権者であるのは、けっこうしんどいのだなということも、遅まきながら学んだ。でも、騙された挙句にとんでもない未来に連れて行かれるのが嫌なら、まじめに悲惨な状況と向き合わなければならない。それを知っていて、ちゃんと怒っている人々がいるので、絶望には至らずに過ごしている。

https://webronza.asahi.com/national/articles/2019061000002.html
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/112.html

[中国12] 香港の若者たちは何を守ろうとしているのか 世界一政治的な「九十後」世代のアイデンティティ (朝日新聞社 論座)
富柏村 ブロガー
論座 2019年06月16日

https://image.chess443.net/S2010/upload/2019061400003_1.jpg
逃亡犯引渡し条例改正に反対し、香港政府や立法会に近い道路を占拠する若者を中心とした数万人の市民=2019年6月12日、写真は以下すべて筆者撮影

■中国とは関係のない「香港の価値」

 香港の若者たちは何を守ろうとしているのか?

 「香港の価値」であることは間違いない。中国にとっても香港の価値はあった。ケ小平の改革開放政策の中で香港の資本、ビジネスのノウハウやシステムを中国は取り入れる必要があり、それによって中国が豊かになるという構図。香港返還の1997年で見ても、香港の当時のGDPは中国全体額の20%にも匹敵するものだったのが今では3%でしかない。2018年には深圳のGDPが香港を抜いた。

 かつて中国にとつて「金の卵」を生む貴重な国際経済都市も、今となっては中国にとって香港が「上海や深圳と何が違うのか」となる。中国の国力と社会の安定に自信をもてば、なぜ「何かと国内の政治的安定まで脅かす」香港だけに一国二制度を保証するメリットがあるのか、と訝しがってもおかしくない。

 巨大な〈国家〉に対して、香港は高度の自治権を有するといっても、その国家の下部構造としての一特別行政区である。力の差は歴然だが、香港には〈香港の価値〉があると香港の人々も、そして海外の人々も、そう思う。この香港の価値には「中国とは違う」が付く。アイデンティティを認識しようとするとき、常に「……と違う」はついてくるもので、欧州とは違う英国、北米でも米国とは違うカナダ……となる。だから香港でも「中国とは違う」となることも、その歴史的経緯からしておかしくはない。

 しかし、ここでいう「中国」は単純な比較対象ではなく、つねにネガティブ。欧米列強の侵略を受けた清朝、アジアで最初の共和制国家として成立しながら群雄割拠で内部崩壊する民国、国共内戦、政治的混乱が続き経済成長こそ成功させたが未だに法治や人権に怪しい一党独裁の現政権……悲しいかな、つねにネガティブに映る「祖国」がそこにある。

 英国領であった植民地の香港には国共内戦、中国の赤化、大躍進政策での恐慌、反右派闘争や文化大革命といった混乱で大陸から多くの人々が逃げてきた。文化大革命では反英闘争として毛沢東に呼応し、天安門事件では「暴動」の首謀者として指名手配された運動家らを中国から脱出させ海外に亡命させる黄雀作戦を成功させた。

 1997年の中国返還以降も中国で唯一、天安門事件の歴史的見直しを主張できる場所として追悼活動と中国の民主化支援をする香港。常に「祖国」があり、それの抱える悲劇も問題も共有していこう、という姿勢があった。「中国とは違う」から、その地の利を活かして中国が良化することを願う。香港市民支援愛國民主運動聯合會(支連会)の動きがまさにこれにあたる。

 それに対して「中国とは違う」から香港の自分たちには関係ない、と感じる若い世代が台頭している。「九十後」、1990年以降の生まれの彼らが最初に目立ったのは2012年、香港政府が推進しようとした愛国教育への抗議活動で、教育者や市民にまじり、この愛国教育の対象となる中学生(日本で言う中学・高校)たち自身が参加したばかりか、この抗議運動の中心を担ったのは16歳の若者だった。

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“100万人”デモ出発地点のビクトリア公園に近い路上で、警察が道路の一部を「安全上」封鎖した=2019年6月9日

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警察の道路片側と市電路の封鎖に抗議するデモ参加者たち=2019年6月9日

■世界一政治的な香港の若者たち

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道路占拠が未明に一掃された6月13日、若者らの静かな抗議が続いた香港政府近くのペデストリアンデッキ

 その翌年、香港で大陸からの観光客が粉ミルクなど買い占める状況への反対運動がピークを迎える。2008年に中国で有毒粉ミルクが問題となり、中国政府が大陸民の香港旅行緩和をしていたこともあり、香港の、とくに深圳に近い新界では大陸客の粉ミルクや薬品、生活用品の爆買いが著しく、住民にとって社会問題化していた。人民元は2007年1月に、すでに対香港ドルで為替比率が逆転し元高、香港ドル安となっていて、関税もない香港は買い物天国。その購買力に対して「大陸客は出ていけ!」というキャンペーンが新界のベッドタウン駅前で繰り広げられ、これの中心も「九十後」の若者たち。彼らの行動力と、運動への取り組みの柔軟性は、香港社会で抵抗勢力として一定の実力をつけていた。
 
 そして2014年の雨傘運動となる。香港での普通選挙実施要求が発端の運動だったが香港中心部での長引く道路占拠は政府との交渉も具体的な成果が見られないまま一掃され、この運動は失敗とされた。それでもこの運動の中から、新しい思考、指向が生まれている。これまで以上に「香港が本土」という意識が強まり、中には「香港独立」を唱え、デモの際に英国旗や中華民国旗を振りかざす動きも見られた。

 路上で運動を起こした彼らは、2016年には香港の国会にあたる立法会への政治参画を目論んだ。一定数の確実な支持はあったが、香港独立派とされる立候補者は選挙以前に立候補資格が選管によって剥奪され、当選した議員も議員就任時の宣誓で国家侮辱等があったとして議員資格剥奪されるなど、運動や思考にかなりの圧力も受けている。

 それでも、むしろ信念を確実にして「中国とは違う」香港の価値、それは人権と自由、法治であり、まだ不完全ではあるが香港の民主主義を実現させるという目標に向かっていく。これにとって中国の一党独裁政権は大きな圧力、障害でしかない、となる。

 中国政府側からすると国家顚覆すら企図する危険団体、活動家扱いだが、「九十後」の彼らからすれば、生まれ育った香港の大切なものを守ろうという自分たちは、ラディカルではなく保守的という感覚すらある。

 今の国際情勢のなかで「ポスト90年」の香港の30歳以下の若者たちが、これほど政治的なのは世界的にも類を見ない。何をそこまで怒っているのか、何に不満なのか、というシニカルな見方も、とくに中国の若者たちの間からある。中国に対して不満こそあれ、中国全体をまるで敵のように扱う香港の若者たちの利己心と映る。

 だが、香港の「九十後」の若者たちには、すでにまるでDNAのような「香港の価値」というアイデンティティがあり、これを守るためなら何かあれば、すぐに抗議行動を起こすだけの力を有しており、一党独裁の巨大な中国政府にまでNo!をつきつける。力の違いを考えると無謀とも思える強い意思だが、“Free HK”こそ彼らの心の拠りどころで、それは何も奇異な思考ではなく、人権や自由、法治という誰もが望む基本理念であるかぎり、彼らは希望を捨てることもなく何らかの形で抵抗運動を続けてゆくことになるのだ。

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香港政府、立法会に近い道路を数万人が占拠=2019年6月12日

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翌日、占拠が解除された同地点の様子


富柏村(ふ・はくそん) ブロガー
茨城県水戸市生まれ。1990年より香港在住。香港中文大学大学院修士課程(文化人類学)中退。フリーランスでライターもしていたがネット普及後は2000年からブログで1日もかかさず「 富柏村香港日剩」なる日記を掲載している。香港での日常生活や政治、文化、飲食など取り上げ、関心をもつエリアは中国、台湾やアジアに広く及んでいる。香港、中国に関する記事の翻訳もあり。

https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019061400003.html
http://www.asyura2.com/17/china12/msg/833.html

[政治・選挙・NHK262] <「消された」報告書を読む>(中)年金給付水準「調整」 実質は「低下」表現修正(東京新聞)
2019年6月16日 朝刊

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公的年金の給付水準に関する表現の変化

 老後に公的年金以外で二千万円の蓄えが必要と試算した金融庁金融審議会の報告書は、将来の公的年金の給付水準について「今後調整されていくことが見込まれている」と記した。先月二十二日に示された当初の報告書案には、給付水準について「中長期的に実質的な低下が見込まれている」と「低下」の文字があったが、最終的に「調整」に修正した。

 「調整」とは、現役世代が支払う保険料の上限を定め、現役世代人口の減少や平均余命の伸びに応じ給付水準を徐々に引き下げる「マクロ経済スライド」という仕組みを指す。年金制度を維持するための仕組みだ。

 厚生労働省が二〇一四年に公表した年金の財政検証では、この「調整」の結果、年金給付水準は約三十年後の四三年度まで下がり続ける見通しを示した。

 財政検証によると、現役世代の平均手取り収入に対し、夫婦で受け取ることができる年金額の割合を示す「所得代替率」は、一四年度に62・7%だったが、その後は二〇年度が59・3%、四〇年度が51・8%、四三年度の50・6%まで低下することを示した。

 修正前の報告書案に記された「実質的な低下」という表現は、こうした試算に合致する内容だ。

 当初の報告書案には、この他にも年金の給付水準を巡り「今までと同等だと期待することは難しい」「今後は公的年金だけでは満足な生活水準に届かない可能性がある」などの厳しい表現が並んでいた。

 みずほ証券の末広徹氏は、報告書の表現が当初案から変更されたことについて「国民が萎縮しないようバランスを考えて調整したと思うが、給付水準が実質的に低下するとの見通しは厚労省の財政検証の結果なので、ストレートに伝えるべきだった」と指摘する。

 また末広氏は、年金財政の負担と給付に関する正面からの議論を、政府が避けようとする傾向について「今回もうやむやにして先送りすれば、次に年金問題が注目された時は、この程度のショックでは済まないだろう」と懸念する。 (坂田奈央)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201906/CK2019061602000142.html
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/114.html

[政治・選挙・NHK262] <くらし デモクラシー>「道徳に教育勅語」募る憂い 軍国主義の支柱 復権の動き(東京新聞)
2019年6月16日 朝刊

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父・森戸辰男元文相について語る長女の檜山洋子さん=広島市南区で

 憲法に「生存権」を加えた元広島大学長の森戸辰男の長女檜山洋子さん(84)=広島市南区=には、憂慮することがもうひとつある。軍国主義の精神支柱とされた教育勅語の「復権」の動きだ。教育勅語を衆参両院が排除・失効した一九四八年、文部相を務めていたのが森戸だった。それから七十年後。柴山昌彦文部科学相は昨秋の就任会見で「道徳に使えるという意味で普遍性がある」と発言し、物議を醸した。

 十歳で終戦を迎えた檜山さんは、中学生のころ父に訪ねたことがあった。「マッカーサーがトップではだめなの?」。戦前の天皇から連合国軍総司令部(GHQ)の支配に変わったように思えたからだ。いつになく強い口調で父は答えた。「それは違う。どんなことがあっても、これからの日本は日本人一人一人がつくっていかないといけない」

 国民主権を学び始めた檜山さんの心に深く刻まれた言葉だ。

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教育勅語の謄本

 戦前の教育勅語は、明治天皇に授けられた「教え」を基に臣民教育を進めてきた。戦後の憲法や教育基本法は、軍国主義を支えた根本原理としてこれを否定。衆参両院も一九四八年、「主権在君ならびに神話的国体観に基づいている」として、教育勅語の排除・失効を決議した。文相として答弁に立った森戸も「過去の文献として扱い、かりそめにも神格化することのないように」とクギをさした。

 だが、安倍政権の閣僚たちから教育勅語を容認する発言が後を絶たない。

 第一次安倍政権が発足した直後の二〇〇六年に教育基本法が改正され、教育目標に「愛国心」が盛り込まれた。安倍首相肝いりの教育再生会議は道徳の教科化を提唱し、第二次安倍政権になり小学校や中学校で具体化した。

 閣僚らの容認発言を後押しするように、一七年三月には「憲法や教育基本法等に反しない形で教材として用いることまでは否定されることではない」とする答弁書を閣議決定した。

 国民主権に相反する教育勅語を使ってどんな教育をするというのか。檜山さんは焦燥感を募らせる。

 「国民を戦争に駆り立てた教育勅語は残しちゃいけん。父たちは戦争で犠牲になった多くの人が浮かばれないと考えたのだと思います。戦争を経験していない政治家たちは何も見えていない。父たち先人が、なぜ教育勅語を排除したのかをよく考えてほしい」 (神野光伸)

◆民主主義 機能させるには 取材班から

 「世界の真ん中で輝く国」を目指すという優越感たっぷりの安倍首相のスローガンがむなしい。この間、むしろ「本当に先進国か」と焦りたくなる問題が次々に噴出しているからだ。

 森友学園問題では財務省が公文書改ざんに手を染め、厚生労働省は、景気判断の元となる毎月勤労統計のでたらめさを知りながら放置。老後には年金のほかに二千万円が必要だとする金融庁の審議会報告書が物議を醸すと、麻生副総理兼金融担当相は受け取りを拒否。政府・与党は「報告書はない」から、議論もしないと開き直る。

 国民を軽んじる政権の姿勢には「またか」とうんざりしたくなる。

 国際的にも日本の民主主義の評価は低く、英エコノミスト誌の関連シンクタンクによる民主主義指数では日本は二十位以下。女性議員の少なさなどから「欠陥のある民主主義」に位置付けられている。

 日本の民主主義が機能していないと感じるなら、なぜなのか。当たり前の暮らしのために、手の中にある一票の力をどう使えばいいのか。新シリーズ「くらしデモクラシー」では、民主主義を再起動させるヒントを探していきたい。 (中山洋子)

 シリーズへのご意見、情報を募集します。メールはshakai@tokyo-np.co.jp ファクスは 03(3595)6919、郵便は〒100−8505(住所不要)東京新聞社会部「くらしデモクラシー」取材班へ。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201906/CK2019061602000138.html
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/116.html

[政治・選挙・NHK262] 「共謀罪」表現の萎縮 懸念 成立2年 廃止求める集会(東京新聞)
2019年6月16日 朝刊

https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201906/images/PK2019061602100054_size0.jpg
共謀罪の廃止を求める集会で議論する精神科医の香山リカさん(左)と日本ペンクラブの吉岡忍会長(中央)ら=15日、東京都文京区で

 犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を含む改正組織犯罪処罰法の成立から二年の十五日夜、同法の廃止を求める集会が東京都文京区内であった。

  (木原育子)

 「共謀罪」法は、捜査機関による乱用や言論の萎縮などが懸念される中、自民、公明両党が二〇一七年六月十五日の参院法務委員会で採決を省略する異例の手続きで議論が打ち切られ、本会議で強行採決した経緯がある。

 集会は「共謀罪廃止のための連絡会」など三つの市民団体が主催。同会の米田祐子さん(44)は「問題意識を再確認していきたい」と呼び掛けた。

 月刊「創」編集長の篠田博之さんをコーディネーター役に、日本ペンクラブ会長の吉岡忍さんと、精神科医の香山リカさんも対談した。

 ネットに批判的な書き込みをされて都内の講演会が中止になった香山さんは、「行政は少しでも問題がありそうなものは手を引きたがる。ある種の表現の萎縮を招いている」と指摘した。

 昨年四月に自由人権協会などが、第三者から個人情報の提供を求められた際の方針について、インターネット事業者十三社に実施したアンケート結果も報告された。五社しか回答がなく、芹沢斉(ひとし)代表理事は「共謀罪を効果的に運用するには監視が必要になる」とし、プライバシー保護の取り組みの遅れを危惧した。

 都道府県警がテロ等準備罪(共謀罪)の捜査を行うときは事前に警察庁へ報告することになっている。警察庁によると、同罪を適用して捜査をした事例は全国で一件もないという。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201906/CK2019061602000132.html
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[政治・選挙・NHK262] 人生百年も金次第(ちきゅう座)
2019年 6月 16日
<熊王信之(くまおうのぶゆき):ちきゅう座会員>

老後に年金以外で2000万円が要る、との金融庁の報告に衝撃が広がっています。

国民の大多数が薄々感づいていたことが金融庁の報告で事実の裏付けが出来た、と言うことなのです。 金額に相違はありますが、金融機関の広報には過去から老後資金の蓄えが必要、と謳われ、投資についても税制面でNISA等の裏付けが出来たので若くても月々貯蓄や投資に金銭を託す方々がおられます。

誰も今のこの国の年金が百年安心とは思っていなかったのですが、金融庁の報告で明々白々の事実と改めて知らされ、衝撃を受けたのです。 百年安心なのは、「年金制度」であり、国民の老後が安心なのでは無い、と。

そこで肝心要の国民の老後の備えですが、現在では、凡そ、半数以上が金融庁の報告にある2000万円には届きません。

単身者の調査が無いので不完全なのですが、総務省の資料に依れば、所帯主の年齢が60歳以上の所帯(単身所帯は対象外)の保有金融資産の調査では、2000万円以上の保有者は、40.8パーセントになっています。 調査対象の半数以上の所帯が金融資産2000万円以下の保有者なのです。

図1−2−5 貯蓄現在高階級別所帯分布

出所:平成30年版高齢社会白書(概要版) 平成29年度 高齢化の状況及び高齢社会対策の実施状況 第1章 高齢化の状況(第2節 1) 第2節 高齢期の暮らしの動向(1) 1 就業・所得    内閣府

https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/html/gaiyou/s1_2_1.html

単純に言えば、単身所帯は除くものの、50パーセント以上の所帯で老後資金不足なのです。 これでは、生活保護制度の対象も増加する一方になるのが自明です。 或いは、生活保護も切り捨てられるのでしょうか。

金融庁が焦るのも無理からぬものがありそうです。

さて話題が逸れますが、その金融庁の報告についてです。 端的に言って、金融庁の報告について必読の義務があるのは、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)とアベ政権の方々、と思われます。 加えて、彼等が金融庁に教えを乞うべき内容は、投資の基本である資産分散の初歩的知識と金融経済の現状を知るための基礎を理解する能力、と思われます。

例えば、株式投資、中でも日本株投資の基本ですが、簡単に言えば、高騰した頃、買ってどうするの、とお聞きしたいのです。 日経平均が一万円を切っていた時期に買って、昨年来の株安時期前に売るのが当然の処、高騰した時期に買っていれば損するのは当然で、従って、年金基金を十数兆円も棄損する結末になるのです。

アベノミクスのためのギャンブル運用で年金15兆円が溶けた! 女性自身 記事投稿日:2019/02/21 06:00 最終更新日:2019/02/21 06:00 https://jisin.jp/domestic/1713526/

その原因は、現在のGPIFが、投資の基本に忠実な売買が不可能だからです。 理由は、アベの何たらの成功を表面的に「見える化」するために日本株を買うことを義務づけられているからです。 日銀と同じく、です。 これは、証券界の関係者ならば常識でしょう?  今や、日本株は、官製相場になってしまっていることを。

上記の事実も、証券界の方々は、重々、承知しつつも、自らは口に蓋をしつつ知らぬ振りですので、上記のように女性自身等の場違いな媒体しか事実を報じません。 日経等は、報じてもその他の報道に交じり大々的には報じないか、素知らぬ振りです。 でも彼等は、仲間内や友人、知人には、日本株は止めておけ、と言います。

市場で午前中に売りが膨らみ暴落した午後には、大口の買いが入り、結果的に暴落が落ち着く、と。 個別株の買いでは無く、ETF(上場投資信託)なので、幅広く値動きする、と。 さて何時まで持つのか、と心配だ、と。

債権投資についても、外国債券投資では、利回りと外貨の値動きの両者で損得が出来るので、外貨に換えるタイミングが難しいのです。 簡単に言えば、リーマンショック時には円が対ドルで100円を割ったことがありますが、その時に外貨に換えておけば今でも利益が出る訳です。 GPIFにそのような機動力があるのでしょうか? 純粋に利益のみを追求するだけの投資に徹することが可能か否か、です。

今や、金縛り、では無くて、アベ縛りになってしまった可哀そうなGPIF。 これで基金を損じるな、と言われても、ね〜。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion8726:190616〕

http://chikyuza.net/archives/94490
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/129.html

[政治・選挙・NHK262] 「生活できる年金払え」日比谷でデモ 政府の対応に抗議(朝日新聞)
朝日新聞デジタル 2019年6月16日20時45分

https://www.asahicom.jp/articles/images/AS20190616002034_commL.jpg
「年金返せ」「年金払え」などと書かれたプラカードを掲げてデモ行進する人たち=2019年6月16日午後1時59分、東京都千代田区、渡辺洋介撮影

 老後の資産形成における「2千万円不足」をめぐる政府の対応に抗議するデモ行進が16日、東京都千代田区の日比谷公園周辺であった。約2千人(主催者発表)が参加し、「生活できる年金払え」などと声をあげた。

 デモは、都内の会社員男性(35)がツイッターなどで呼びかけた。千葉県松戸市の自営業、横山卓典さん(30)は金融庁の審議会がまとめた報告書を麻生太郎金融担当相が受け取らない対応が不満という。「年金の不足を受け止めたうえで制度の在りかたを議論すべきなのに、選挙のために報告書をなかったことにするのは不誠実だ」と憤った。

 初めてデモに参加したという東京都中央区の主婦(30)は「『100年安心』と言っていたのに、十分な年金がもらえなくなるなんておかしい」と指摘。10カ月の子どもがいるが、「自分の老後も不安な状態では、安心して子育てもできない」と語った。(渡辺洋介)

https://www.asahi.com/articles/ASM6J5HKPM6JUTIL00T.html
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/131.html

[政治・選挙・NHK262] 中島岳志の「野党を読む」(3)山本太郎 2年前の「枝野幸男ブーム」と今の「山本太郎ブーム」。何が同じで何が違うのか (朝日新聞社 論座)
中中島岳志の「野党を読む」
(3)山本太郎 
2年前の「枝野幸男ブーム」と今の「山本太郎ブーム」。何が同じで何が違うのか

島岳志 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授
論座 2019年06月16日


■山本太郎ブームはなぜ巻き起こるのか

 いま「山本太郎ブーム」が起きています。

 山本さんが各地の街頭で行う演説会は、瞬く間に黒山の人だかりができます。山本さんが話す内容は、グラフや数字を使った統計資料を基礎とする経済政策が中心で、1時間を優に超えるレクチャーに近いものです。しかし、人は減らない。むしろ雪だるま式に増えていきます。

 このうねりは一体何なのか。

 約2年前、「枝野幸男ブーム」が起きました。「枝野立て」という声が各地で起き立憲民主党が立ち上がると、あっという間に野党第一党の議席数を勝ち取りました。

 「山本太郎ブーム」と「枝野幸男ブーム」は何が同じで、何が違うのか?

 両者に共通するのは、「一人で立ち上がる姿」です。大きな流れに抗し、勝算を度外視して立ち向かう姿勢は、多くの人の共感を呼びます。大きな塊から飛び出し、安定した場所を捨ててでも、国民の選択肢を作る行動に、人は期待を寄せます。

 今回の参議院選挙に向けて、立憲民主党は「物語」の設定がうまくできていないように見えます。同じブームを同じ主人公・同じ内容で巻き起こすことは不可能です。新たな「物語」を作らなければ、国民の期待を集めることは難しいでしょう。

 一方で、山本さんは「物語」の設定に成功しているように思えます。山本さんは6年前の参議院選挙でも、東京選挙区から立候補し、ブームを巻き起こしました。一見すると、今回はこの時のリバイバルのように見えますが、単なる6年前のコピーでは、現在のようなブームは起きません。

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Tシャツにジャケット姿。大きな身ぶりで訴える山本太郎氏=2018年10月9日、千葉・船橋駅

■自民支持層を切り崩す「消費税廃止・減税」

 何が6年前と違うのか。なぜ今、山本太郎に注目が集まるのか。

 その理由は山本さんが今回強く訴えている「消費税廃止・減税」にあります。

 後で述べるように、山本さんは街頭に立ち続ける中から、原発問題の根っこには労働問題があり、その先に全国民に関わる経済問題があるという認識に至ります。そして、全国各地で生活苦に陥っている人たちの痛みに触れ、リアルな「お金」の問題を最重要課題に設定していきます。

 そして今、自民党支持者も山本太郎支持へ流れているのです。

 朝日新聞のWEB版に興味深い記事が載っています。山本さんが2月に民間業者に委託して独自で行った世論調査によると、「新党を立ち上げたら支持しますか?」という問いに対して「支持する」と答えた人のうち「自民支持層と立憲支持層がともに約15%を占めた」というのです(河合達郎『山本太郎氏、ひとりからの挑戦 野党に化学反応起こすか』朝日新聞オンライン、2019年6月1日)

 山本さんはどこから票を引きはがしているのか?

 それは2年前に立憲民主党を応援した人だけでなく、同じぐらいのボリュームで自民党支持層から共感を集めているのです。

 自民党支持層の中には、景気対策を重視し、「反緊縮」を支持するビジネス界の人たちがいます。しかし、それ以上に山本さんの主張は、苦境にあえぐ農家や中小企業、商店主など旧来の自民党支持者たちに支持されています。

 ここには2年前に立憲民主党に吹いた風と、異なった要素が含まれているように思います。山本さんは一般的に、左派的な政治家と見なされますが、実際は保守的な庶民層に届く熱量をもった政治家です。これから選挙戦が過熱化し、テレビなどで山本さんの姿と主張が取り上げられると、安倍政権に不満を持つ保守層に支持が拡大する可能性があります。

■山本太郎の「ヤンキー気質」

 なぜ、山本太郎という政治家は保守的な庶民層の心を動かすのか。

 それは、彼の「ヤンキー気質」にあると私は思います。

 彼自身が様々なインタビューで語っていることですが、中学生の頃は各所で悪さをした「ヤンチャ」な子だったと言います。実際、彼の母親は、次のように語っています。

 ワルだったんですよ。その頃、娘にも言ってたんですけど、この
コは絶対、将来刑務所行きやからって。あんた結婚したころ、太郎
が刑務所から出てきて、お金せびりに来ると思うけど、絶対渡した
らあかん!って。(山本太郎『母ちゃんごめん普通に生きれなくて』
TVぴあ、1998年)

 山本さんは高校時代の素人参加のバラエティ番組出演がきっかけで芸能界デビューしますが、「勉強がイヤで芸能界に入ったようなもん」だったと言います。(『山本太郎 闘いの原点』ちくま文庫、2016年)

 そして、俳優として具体的に「不条理への怒り」「損得勘定を超えた気合」などを内包する「心優しいワル」を演じ、評価を獲得しました。「デビュー時から肉体を駆使してきた」と言うように、彼は演ずる対象と時に一体化し、行動力を身につけていきます。(「本当の芸能人なら声を上げてファンを守れ!! 行動する俳優 山本太郎」『金曜日』2011年11月4日号)

 精神科医で『世界が土曜の夜の夢なら――ヤンキーと精神分析』(角川書店、2012年)などの著書がある斉藤環さんは、山本さんについて「自らの“情緒”に対して忠実な人」と評し、その側面と「反知性主義」の組み合わせが「きわめてヤンキー的」と指摘しています(「太郎からの手紙」『金曜日』2013年11月22日号)

 彼は、政治家になる過程で勉強を重ね、円形脱毛症になるまで頑張りました。しかし、社会に対しては、次のように言います。

 僕が目指す社会は、究極は、頑張らなくても生きていける世の中で
す。もう、「これトチったら俺の人生終わりだな」みたいな世の中は
やめにしたいんですよね。そういう状態が続く人生は地獄ですよね。
「まぁいいか」みたいな余裕が欲しい。
 何をもって頑張るかは個人差があるので、それを測るのは難しい。
でも、頑張れない時に頑張ってもロクなことがないから、ゆっくり休
んで、それを国が支えて、そろそろ力が湧いてきたという時に頑張っ
てもらう方が、ずっと生産性は高いですよ。だって、無理しても壊れ
るだけだもん。
 だから、「いいよ、頑張らなくても」という世の中になればどんだ
けいいか。今はあまりにも地獄すぎると思うんです(山本太郎、(取材
・構成)雨宮処凛『僕にもできた!国会議員』筑摩書房、2019年)

 一体、山本太郎という政治家は何者なのか。

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街頭で訴える山本太郎氏。演説の大半を経済対策に費やした=2019年5月29日、東京・北千住駅

■政治へのきっかけは原発事故

 山本さんが政治に関与し始めたきっかけは東日本大震災による原発事故でした。

 彼は、この時まで「何かあった時、自分は助かるかもしれない」と思っていたそうです。自分は芸能界で活躍する人間であり、税金も多く払ってきた。だから、他の人よりも優先的に助けてもらえるという「選民意識みたいなもの」があったと言います。

 しかし、これが一気に崩壊します。自分は切り捨てられる側の人間であると痛感し、「税金、高いなと思いながらも、そこそこな額を真面目に収めてきたのに切るんですか」と思ったと言います。(前掲『山本太郎 闘いの原点』)

 この時、彼の中に「猛烈に「生きたい」という感情が湧きあがってきた」と言います。(「「生きたい」という思い、自分への憤慨、そして政府への怒り 三位一体の原動力」『マスコミ市民』2012年3月)

 そして、この思いが怒りに変わっていきます。

 本格的にスイッチが入ったのは、「国が子どもの被曝に対しても20ミリシーベルトという基準値を与えた時」でした。「子どもたちの命も守らないような国」には「未来がない」。「未来を諦めた国」なんてどうかしている(『山本太郎 闘いの原点』)。そう思った山本さんは、声を上げようとしました。

 しかし、立ちはだかったのが芸能界という壁でした。

 俳優として芸能界で生きていくためには、特定の政治勢力に加担するような政治的発言はタブーで、「シガラミや利害」が絡んでいます。自分の思っていることを言えば、俳優としての仕事を失うのではないか。そんな自主規制が働きました。

 山本さんは、言うべきことを言えていない自分への苛立ち・ストレスを溜め込み、自問自答します。

 「今、声を上げないってことは、推進派と同じじゃないか」「お前、本当にそれで自分を許せるのか? 後悔しないとでも思ってるのか?」

 そんなとき、2011年4月8日に孫正義さんがツイッターでつぶやきました。

 「皆さんは、原発賛成・反対?」

 山本さんは、これに「反対!」と返します。その瞬間、「内側から何かがどっと溢れてきて、なぜか涙が止まらなくなった」と言います。

 初めて「宣戦布告」した瞬間、堰を切ったように涙が溢れました。
何かを失うかも知れぬ不安、後悔の涙じゃない。これまで、本当の自
分を押さえつけ、言うべきことも言えずにいた。声を上げた瞬間の涙
は、本当の自分を取り戻した、解放の涙でした。(「独占インタビュー 
俳優・山本太郎 原発マネーに汚染されたテレビと芸能界へ」『週刊
現代』2011年8月6日号)

 山本さんは、「やっと人間に戻れた」という感覚を持ち、反原発運動に参加する意思をもちました。そして、その週末、高円寺で行われた反原発デモに参加。ここで一人で悶々としていた気分が吹き飛び、肩の荷が下りたと言います。そして、思いを共有する人たちと意思表示をする自由を味わい、感動します。

 それから本格的に各地の反原発運動・デモに参加するようになっていきました。

■芸能界に働く自主規制

 しかし、彼が前進すればするほど、俳優としての仕事に支障が出るようになります。

 社会問題は企業と繋がっており、CM出演に支障が生じます。テレビ番組もスポンサーによって成り立っており、広告収入が減るようなことは避けられます。その結果、政治発言をするタレントは忌避され、業界内の自主規制が加速します。

 さらに、所属事務所に様々な抗議・嫌がらせ電話がかかってくるようになりました。そして、ついにマネージャーから出演予定だったドラマについて「反原発発言が問題になっており、なくなりました」というメールが届きました。

 この時の心境を、山本さんは「本当にこんなことがあるんだなとショックでした」と語っています。(「独占インタビュー 俳優・山本太郎 原発マネーに汚染されたテレビと芸能界へ」『週刊現代』2011年8月6日)

 山本さんは、このままでは事務所に迷惑がかかると考え、10年以上所属していた事務所をやめてフリーになります。すると、「仕事関係では実際、収入が十分の一になりました」(「緊急インタビュー 未来に向けて生きる学びを:山本太郎さんに聞く(第2回)」『高校のひろば』83号、2012年)。

 知り合いに頼んでテレビ局などに営業をかけてもらうと「ちょっと今、山本は出せないでしょう」という反応が返ってきたと言います。(野呂美加、山本太郎対談「“生きたい”という本能が原動力 仕事があっても命がなきゃ意味がないと思いませんか?」『婦人公論』2011年12月7日)

 それでも山本さんは、反原発運動から遠ざかりませんでした。それは「子供を助けたい」「子供から未来を奪ってはいけない」という思いが強かったからだと言います。

 やっぱり自分の人生を振り返っても、いつが輝いていたかってい
うと、断然子供の頃なんですよ。自分を取り巻いている世界の広さが
どんどん分かってきて、好きな人が現れて恋が始まってという、あの
わくわくする感じ。「どの年齢に帰りたいですか?」って聞かれたら、
きっと多くの人は子供時代とか思春期を思い浮かべる気がするんです。
(『山本太郎 闘いの原点』)

 では山本さんは、どのような子供時代を送ってきたのか。

https://image.chess443.net/S2010/upload/2019061500001_4.jpeg
街頭で訴える山本太郎氏。新たに立ち上げた「れいわ新選組」をアピールした=2019年5月229日、東京・北千住駅

■母子家庭で育ったこと

 山本さんは母子家庭で育ちました。父は、1歳の時に亡くなったといい、「父の存在はぼくの中にはいっさいない」と語っています(岩切徹「現代の肖像 俳優 山本太郎 ”脱原発”役者の軌跡」『アエラ』2012年12月3日)

 彼を育てた母親は「パワフルで正義感が強」い人で、「日常的にも自分より弱い立場の人には、手を差し伸べろっていうことはすごく言われ」たと言います。山本さんは、母の存在から大きな影響を受けて育ちました(『山本太郎 闘いの原点』)

 母はフィリピンの貧しい子供たちを支援するボランティア団体のメンバーで、山本さんも子供の時から何度もフィリピンに行って、仕事を手伝わされました。

 母は次のように語っています。

 東南アジアに行くと、バクシーシ(喜捨)じゃないけど、いろん
な町や村で日本から持っていった食べ物とかデザートを、子供たち
に実際に配らしたんです。慈悲の心とか、優しさを培うために。施
す方が、自分の内に徳を積めるというか、してもらった人がたとえ
一時でも幸せを感じれば、自分も幸せな充実感で満たされる。それを
子供たちに教えたかったんです(『山本太郎 闘いの原点』)

 母は学校の規範から自由。夏休みが終わっても、家族で海外から帰ってこないこともありました。一方で家では「鬼軍曹」。ヤンチャな山本さんは、繰り返し厳しくしかられました。子供の時は「うっとうしい」と思っていたそうですが、社会に出るころにはその思いが「尊敬と感謝」に変わったと言います。

 子供の頃の山本さんは、とにかく勉強が大嫌い。小学校の時に「このままじゃ、高校に行けません」と先生に言われ、私立の中学校と高校のつながった学校に通うことになります。そして「今までの僕の学校人生において、担当してくれた先生には平等に迷惑をかけた」と言います。(「緊急インタビュー 未来に向けて生きる学びを:山本太郎さんに聞く(第2回)」『高校のひろば』83号、2012年)

 そんな彼にとって転機になったのが、『天才・たけしの元気が出るテレビ!』の「ダンス甲子園」に素人として出演したことでした。ここで彼の個性に人気が集まり、世間に注目される存在になりました。

 しかし、その過激なパフォーマンスを問題視した所属高校の校長は彼を呼び出し、「テレビの活動を続けるのか、それとも学校やめるのか」と迫ります。山本さんは職員室から母に電話をすると、母から「太郎の人生だから、自分で本当にやりたいことをやりなさい」と言われ、電話口で大泣きしました。

 そして、芸能界にデビュー。俳優として活躍するようになります。

■天皇への手紙

 具体的に政治家への道を歩み出したのは、東日本大震災の翌年(2012年)でした。2012年12月に衆議院議員総選挙への出馬を表明し、東京8区から無所属で出馬しますが、この時は落選しました。

 しかし、2013年7月の参議院議員通常選挙に東京都選挙区から立候補し、65万票を超える票を獲得して当選。2014年の衆議院選挙後には、政党要件を失っていた「生活の党」に入党し、「生活の党と山本太郎と仲間たち」という政党名に改めます。2016年には「自由党」に党名変更。

 そして、今年離党。新党「れいわ新選組」の立ち上げに至ります。

 その間に起きたことで話題になったのは、「天皇への手紙」でした。2013年10月31日、園遊会に出席した山本さんは、明仁天皇に書簡を直接手交しました。これが大問題になり、山本さんは厳しい批判にさらされます。

 この時、山本さんは次のように語っています。

 お手紙には、原発の再稼働については一切書いていません。子供
たちの被曝、原発労働者たちの理不尽な処遇、それとこのことも含
めて秘密にされてしまう秘密保護法によって、戦前と同じ状況に向
かっているという心の叫びをしたためました。陛下に何かを求める
というよりも、自分自身の心の叫びでした。
 今回の行為については猛省しています。(『週刊現代』2013年11
月23日号)

 山本さんには、明仁天皇に対する「敬愛の念」があったと言います。それは国民への気遣いや言葉の端々に表れる「権力者を戒めるようなニュアンス」、そして「開かれた皇室」への共感に基づいていたと言います。彼は騒動ののち、明仁天皇を「「父無き子の父」のような存在」と語っています。(「天皇への直訴事件のその後 「手紙」についての偏向報道に反論する」『創』2014年1月)

 ここには天皇制をめぐる重要な論点が潜んでいると思いますが、この点は別稿を期したいと思います。

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蓮池透さん(右)の擁立を発表する山本太郎氏=2019年5月31日、東京都新宿区

■労働問題、そして経済問題へ

 山本さんは初当選の選挙戦で、原発問題を国民に問いました。しかし、有権者の反応はいまいちでした。そしてあることに気づきます。

 僕は選挙のときに原発のこと、被曝のこと、TPPのこと、そして
労働問題についてお話ししてきましたが、聴衆のみなさんとの距離
がぐっと縮まるのは、実は労働問題だということに気付いたんです。
演説をしていても、立ち止まる人の数も反応も違う。演説が終わっ
たらみなさんと握手をするんですけど、そのときに話かけられるの
も、労働問題のことがいちばん多かったんです(「政党や団体を超
えて不満がある人たちを集めたい」『Posse』2013年9月号)

 働く人間ひとりひとりにとって、労働環境が改善されていかなか
ったら、世の中に興味を持てないよな、っていうことに気が付いた
わけです。朝から晩まで働いて、その後に社会のことを考えるって
不可能だなって。2年間ずっと活動してきて、そういう部分に思い
が至ったというか」(「秘密保全法反対で全国キャラバン 全国各地
を歩き回る それが僕流の「政治」だ」『創』2013年11月号)

 山本さんがたどり着いたのは「労働問題」でした。結局、原発事故の処理をする危険な労働は、下請け会社や派遣会社に丸投げで、しかもピンハネして安い賃金で働かされていました。

 この被曝労働は「過労死の問題にもつながって」いると考え、労働問題に話を展開すると、反原発運動には距離感を示していた人たちも、熱心に話に耳を傾けるようになりました。

 労働問題に力を入れていかなければならないと思った山本さんは、次第に経済問題に関心をもちます。

 その大きなきっかけとなったのは、2016年1月に出版された松尾匡さんの『この経済政策が民主主義を救う−安倍政権に勝てる対策』(大月書店)を読んだことでした。山本さんは言います。

 その本を読んで衝撃を受けました。要は安倍政権をどうやって倒
すのかという時に、なくてはならないものがある。それは安倍さんを
超える経済政策だと。(山本太郎、(取材・構成)雨宮処凛『僕にもで
きた!国会議員』筑摩書房、2019年)

 そして「松尾先生に「知恵をつけてください」とメール」し、2016年夏ごろから、松尾さんらとともに勉強会がはじまりました。

 この頃、山本さんは自民党の経団連中心主義を厳しく批判しています。安倍内閣は「国民のための政治」ではなく「企業のための政治」であり、その政策は経団連の提言を「完全コピー」している。結局、安倍内閣は大企業優遇のために法人税を減税し減税分を補てんするために消費税を上げようとしている。さらに「人件費の削減」のために外国人労働者の受け入れを進め、「世界的な低賃金競争に自国の人々を引きずり込」もうとしている。そして、TPPによって一部の利益を確保し、農家を苦しめようとしている。(「安倍政権は経団連の御用聞きか」『月刊日本』2016年10月)

 一連の問題を見ていると、安倍政権や経団連は「お前たちが生き
ることは許してやる、但し、余計なことは口に出すな、政治に興味
を持つな」という本音が見て取れますよね。まるで王の様な振る舞
いです。バカ殿ですかね?

 いくら子どもたちが貧困で苦しもうと、若者が借金まみれで家族
を持つのは贅沢だと言われ、少子化も絶望的な状況の中でも「関係
ない」とばかりに、税金を既得権益者にばらまき続けている(前掲
「安倍政権は経団連の御用聞きか」)

 この主張を展開しているのが、保守色を特徴とする雑誌『月刊日本』であるというのも重要です。彼は次第に、自民党を支持してきた保守層を意識し、生活者としての連帯を呼びかけるようになっていきました。

■消費税減税、財政出動

 では、具体的に経済政策をどのようにすべきか?

 山本さんは、「まず景気を良くしなければならない」と言います。清貧の思想を説くのではなく、生活苦にあえいでいる人に目を向け、お金が回るようにしなければならない。景気を良くするためには総需要が大きくならなければならない。総需要は「消費+設備投資+政府支出」であり、この中でGDPの6割を占めるのが個人消費である。だとしたら、何とかして個人消費を伸ばさなければならない。

 では、何をすべきか。

 ここで「消費税廃止・減税」という主張が出てきます。

 消費税を増税すると、景気は冷え込みます。デフレ経済下での消費税増税は、経済に深刻なダメージを与え、貧困層を直撃します。実質賃金が増えることない中で消費税分の物価が上がると、ギリギリの生活水準で耐えしのいでいる人たちは、生きていくことが出来なくなります。

 そんなことはやってはならない。むしろ消費税を廃止もしくは減税することで物価を下げ、経済の循環をよくした方がよい。そう主張します。

 財源は、金融資産の所得への増税。そして「法人税の増税と賃上げを行った企業に対する減税をセットでやる」。(前掲『僕にもできた!国会議員』)

 そして「金融緩和と大胆な財政出動」を進める。作り出されたマネーで「国がこれまで放置してきた分野、支出を渋る分野に大胆に投資」する。「そこが一番伸びしろがある産業であり、成長分野」であり、具体的には「介護、保育、教育、公的住宅」などにお金を回す。「一番足りていない部分を大胆に」テコ入れする(「山本太郎が実行したい最低限の政策」『消費者法ニュース』2018年1月)

 企業が求めるのは「需要」。需要を上げるためには、出生率を上げなければいけない。そのためにやるべきことはなにか。

 一つ目は「個人やその家族に教育の負担をかけない」こと。二つ目「低廉な家賃で住める公的住宅」の提供。そして三つ目「所得に対する補填」。(前掲「山本太郎が実行したい最低限の政策」)

 このような経済政策を大胆に打ち出すことによって、格差・貧困問題を解決することこそ、今の日本に求められていると説きます。

■「左右対決」ではなく「上下対決」

 いつもの図で、山本さんを位置付けることにしましょう。

https://image.chess443.net/S2010/upload/2019061500001_5.jpg

 山本さんは、明確なUのタイプの政治家です。セーフティネットの充実に積極的で、リベラルな価値観を鮮明にしています。

 山本さんの重要な点は、このUのゾーンを、安倍内閣に疑問を持つ保守層と共有しようとしていることです。

 脱原発に限らず市民運動とかに関わると、すぐ“サヨク”ってレ
ッテルを貼られたりするでしょう……でも僕に言わせてもらえば、
この国に人が住めなくなるかどうか、自分たちの子供が生きていけ
るかどうかって瀬戸際で、右も左もないやろと。もっと言えば、右
翼って本来、国を愛する人、美しい国土を愛する人の集団なんでしょ
う? この状況に右翼が怒らんでどないすんねんと。(『山本太郎 
闘いの原点』)

 山本太郎という政治家は、「左右対決」という軸ではなく、「上下対決」によって成り立っています。イデオロギーの対立ではなく、富を持てる者と持てない者の対決。安倍内閣によって特権を得ている一部の人に対する生活者の反逆。この構図を旧来の自民党支持者に投げかけ、安倍内閣に疑問を持つ保守層に訴えかける姿勢が、山本さんの特徴でしょう。

 日本政治に新しい「風」を吹かせることができるのか。他の野党は、この潮流に呼応することができるのか。

 参議院選挙の動向を注視したいと思います。

https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019061500001.html
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/132.html

[政治・選挙・NHK262] [小沢一郎戦記(12)] 小沢一郎「政権交代が『政治とカネ』を解決する」 (朝日新聞社 論座)
小沢一郎戦記
小沢一郎「政権交代が『政治とカネ』を解決する」
(12)ロッキード事件の真相〜日本の検察は米国の意向を汲んだのか

佐藤章 ジャーナリスト、慶應義塾大学非常勤講師、五月書房新社編集委員会委員長
論座 2019年06月17日 より無料公開部分を転載。

https://image.chess443.net/S2010/upload/2019060800003_1.JPEG
ハワイでのニクソン米大統領との首脳会談を終えて帰国、声明文を読む田中角栄首相(左)。右は大平正芳外相=1972年9月3日、羽田空港


■ロッキード事件を巡る新証言

 小学校卒業から日本政治の頂点に駆け上がり、急速度で転落していった男、田中角栄。その頂点となった現代史の舞台を自らの目で確かめるべく、私は自らの足でそこに立っていた。

 前夜の宿泊地から、椰子の木立やいくつもの白い波頭を車窓に眺めながら車で1時間と少し。ハワイ・オアフ島の最北端にあるそのホテルは太平洋に小さく突き出した岬の上に立ち、開放されたロビーは四囲の海からの風を受け続けていた。

 6階に上ると、エレベーターホールは大きな窓に囲まれ、岬の両側に広がる海からの光を浴びている。奥の部屋までまっすぐに伸びた廊下は、反対に自然光を一切遮断し、規則的に配置された明かりがクリーム色の壁を浮かび上がらせていた。

 奥にある最上級のプレジデンシャル・ルームまでは、柔らかい絨毯の上を私の足で90歩ほどだった。1972年8月31日、暗い廊下を自分自身と向かい合いながら歩いていた男――田中角栄は、どんなことを考えていたのだろうか。

 同日ハワイ時間午後1時過ぎ、首相の田中角栄は、米国大統領、リチャード・ニクソンが待つオアフ島最北端のクイリマ・ホテルに到着した。前夜の宿泊地は、盟友・小佐野賢治がワイキキビーチに所有するサーフライダー・ホテルだった。首相就任後、米国大統領との初めての首脳会談だった。大きな議題は二つ、田中新政権が取り組む日中国交正常化問題と、拡大しつつある日米貿易不均衡問題だった。二つとも田中政権の直面する宿命的な大問題だった。

 そして、貿易不均衡問題のうち、一体何が話し合われ、何が合意対象となったのか。この時具体的には、農水産物や民間航空機、ヘリコプター、ウラン濃縮サービスなどの日本への輸入・購入問題が焦点となっていた。

 このうち民間航空機は1972、73年度中に約3億2000万ドル相当の輸入が見込まれ、日本航空と全日空2社が、ボーイング社の747かマクダネル・ダグラス社のDC10、あるいはロッキード社のL1011トライスターの3機種のうち、いずれかを購入することになっていた。

 このころ、米国内ではベトナム戦争による特需はピークを過ぎ、軍需産業は不況のただ中に落ち込みつつあった。国防総省(ペンタゴン)は財政を縮小させてロッキード社は最大の経営危機を迎えていた。ロッキード社の工場を抱え、雇用危機に襲われたカリフォルニア州を最大の地盤とするニクソンは、同社を救うために2億5000万ドルの銀行の緊急融資に政府保証までつけた。

 しかし、ロッキード社を自力更生させる製品は限られていた。その中のひとつは民間航空機トライスター。そしてもうひとつは、軍事用の対潜哨戒機P3Cだった。

 事件発覚から40年後の2016年7月、NHK報道局が驚くべき番組を放送した。ロッキード事件に関する新事実がいくつも紹介され、事件の構造が大きく変わってしまうようなインパクトの強い報道番組だった。

 従来、外務省や米国側議事録によって、田中とニクソンのハワイ会談ではトライスターやP3Cのことは何も話されなかったとされていたが、ニクソン大統領の副補佐官だったリチャード・アレンはNHKに対して、「ニクソンとキッシンジャーは、日本に対し、P3CだけでなくE2Cも売るべきだ、と会議で言っていました」と証言した。

 E2Cは米国グラマン社が開発した早期警戒機だ。日本政府はそれまでこの早期警戒機と対潜哨戒機を国産化する方針を堅持していたが、田中帰国後、国産化方針を取り下げて、P3CとE2Cの輸入を決めた。

 さらにロッキード社のエージェントを務めた商社、丸紅の当時の担当課長はNHKに対し、田中角栄への5億円の趣旨はトライスターではなくP3Cだったと証言した。ただ、田中に対して5億円申し込みをした時はとてもその趣旨までは話せなかったのではないか、と推測していた。

 これらの証言は、全日空のトライスター導入について田中の受託収賄罪を問うてきた検察、裁判所が断定した事件の構図を大きく変えるものだ。

https://image.chess443.net/S2010/upload/2019060800003_2.jpeg
初公判後の記者会見で検察を批判する小沢一郎氏= 2011年10月6日、東京・永田町

■米国の意に沿わない政治家たち

 ロッキード事件が発覚した米国上院公聴会では、日本への
P3C売り込みに関して「政財界の黒幕」と言われた児玉誉士
夫に対し総額21億円が支払われたことが明らかにされた。
 
――ロッキード事件は、全日空が導入したトライスターの問題と防衛庁が輸入した対潜哨戒機、P3Cの問題がありました。P3Cの問題の方では、児玉誉士夫氏に21億円が流れているという話でしたね。

小沢 それは、いろいろと何か言う人がいました。

――しかし、21億円というと大きい額ですよね。

小沢 はい。

――児玉氏というと、盟友関係にあった中曽根康弘氏が思い浮かべられます。また、児玉氏は米国CIAのエージェントではないかと常に疑われていました。それと比べれば、田中角栄とトライスターの関係は比較的事件化しやすかったのではないか、とも思われますね。

小沢 はい。それと、やはり田中さんは睨まれていたんですね、アメリカから。

――アメリカから?

小沢 うん。アメリカというのは単純なところがあるから。自分の敵か味方か、というような一方的な結論を出すことがあるからね。だからアメリカは今も失敗の連続なんだけど、田中さんはアメリカのオイル資本の不興を買ったのではないかという説がやっぱりあるんだな。

 だから、刑事免責を与えて証言させるという、制度としてありえないことも認めて証言させたからね。だから、アメリカ政府がその気になれば何でも抑えてしまうね。余計なことを喋るなとアメリカ政府が言えばそれで全部済んでしまうこともあるから。だから、その意味では、あの時、アメリカの意向がかなり入ってきたのではないか、という推測が成り立つね。

 ロッキード事件発覚間もない1976年2月16日夜、児玉誉士夫
への国会医師団診察が行われたが「出頭できる状態ではない」と
診断された。実はその日中、児玉の主治医である東京女子医大教
授が児玉邸を訪れ、意識障害・昏睡状態を引き起こすセルシン・
フェノバール注射を児玉に打っていたことがわかっている(「新
潮45」2001年4月号掲載、天野恵一・東京女子医大脳神経外科
助教授=当時=手記)。この主治医派遣の決定を下したのは自民
党幹事長だった中曽根康弘だったのではないかと、当時衆院事務
局で医師団派遣の調整をしていた平野貞夫元参院議員は著書『ロ
ッキード事件「葬られた真実」』(講談社)で記している。さら
にその4日後の20日には、ロッキード社出身の駐日米国大使ホ
ッジソンは米国政府に対し、中曽根が事件を「もみ消す」ように
要請してきたことを報告している。この文書は2010年2月12日、
朝日新聞が初めて報道して明らかになった。


――事件が発覚した1976年2月、当時自民党幹事長だった中曽根康弘さんが米国大使に事件をもみ消すよう要請しましたね。

小沢 そのことはぼくは知らないけれど、不思議ではない。中曽根さんは田中の親父に頼まなければ総理になれなかったからね。

――田中さんをかばう意味でもみ消してくれと言っているのではなく、自分の関連で言っていたということは考えられませんか。

小沢 自分が? なるほど。しかし、それはぼくはわからん。ぼくはそれは知らない。

――田中さんは、首相在任当時、ソ連のチュメニ油田やオーストラリアのウラン鉱開発など独自の資源外交を展開して米国の不興を買ったという推測が根強くあるのですが、小沢さんはロッキード事件当時、そういうことを考えていましたか。

小沢 いや、当時は三木(武夫)さんの意図を考える方が大きかったと思う。ぼくとしてはそれが大部分だったな。ただ、その三木さんの意図にアメリカは応じていたわけだからね。アメリカの軍産複合体は政府と一体だから、いろいろと隠す気になれば隠せるわけだ。
 
 だけど、三木さんはとにかくやれというわけで事件化した。その動きを見て、アメリカの方も、あの田中はあちこち動き回っているから、この際やってしまえというようなことが合わさったのかもしれない。アメリカの影響が一番大きくてやられたんだとは思わなかったけど、やはり三木さんの影響は大きかったと思う。

――というふうに、当時は考えたわけですね。

小沢 はい。

――そして、その考えは後になっても変わらなかったですか。

小沢 やはり、そういうように働いたかな、ということだね。ぼくの件でも言われているが、田中の親父の時もアメリカの影というのはよく言われていました。だから、これは確証はないんだけど、アメリカが世界各地で、アメリカの意に沿わない政治家には何かの圧力を加えているというのは事実だと思います。

――事実ですか。

小沢 事実だと思う。自分の言うことはあまり聞きそうにない強力な政権は嫌うわけです。むしろ操り人形にできる政権が欲しいわけだ。他の国の例を見ると、アメリカがものすごく関与している事例があると思う。だから、田中の親父のこともぼくのこともあながち嘘ではないんだな、と思います。

■検察は米国の意向を汲んだのか

 ロッキード事件に関しては、米国に先駆けて日中国交回復を仕遂
げ、独自の資源外交を展開した田中角栄を米国が刑事被告人に突き
落としたという陰謀説が根強くある。完全無罪となった小沢一郎の
「陸山会事件」に関しても、国連主義・米中間の独自外交路線を模
索する小沢を嫌った米国が仕掛けたという説が存在する。

――歴史的に有名な事件としては1973年のチリ、アジェンデ政権に対する軍事クーデターがありますね。反アジェンデ政権勢力の裏に米国CIAの存在がありましたね。

小沢 それは、今やっているところもあると思います。

――無罪になった小沢さんのケースを少しお聞きします。小沢さんのケースでも、裏にアメリカがいるのではないかとしきりに言われましたね。 ・・・ログインして読む
(残り:約3612文字/本文:約7756文字)

https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019060800003.html
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/142.html

[政治・選挙・NHK262] <「消された」報告書を読む>(下)「自助の充実」指摘 投資促進は政権の方針(東京新聞)
2019年6月17日 朝刊

 年金制度への不安を招いたと批判され、事実上の撤回に追い込まれた金融審議会「市場ワーキング・グループ(WG)」の報告書が提起したのは、「人生百年時代」とも呼ばれる長寿化の進展を踏まえて自らの資産を計画的に運用・管理する重要性だ。「貯蓄から投資へ」の流れを促したい安倍政権の方針とも合致する。

 本文の結びには、こんな記述がある。「寿命が延び活動し続けるということは、それだけお金がかかるということ」

 WGは「お金」を巡る現状や見通しについて、公的年金の給付水準が下がっていくとみられることや、企業の退職金が減っていることなどを指摘。一人一人が早い段階で資産運用を始める「自助の充実」の必要性を説き、政府には投資優遇税制の拡大を求めた。

 記述が投資に偏っているのは、麻生太郎金融担当相からの諮問事項が「家計の安定的な資産形成」だったことによる。報告書が「三十年で約二千万円の(資産)取り崩しが必要」とした公的年金に関する記述は、「老後の生活で足らざる部分」として提示したデータにすぎない。

 その報告書が年金制度の持続性を否定していると受け取られると、政府・与党内からは「政策議論の材料として取り上げるには値しない」(自民党の岸田文雄政調会長)などと批判が相次いだ。だが、盛り込まれた内容に安倍政権の方針との目立った齟齬(そご)はない。

 投資促進では、二〇一四年から少額投資非課税制度(NISA)を導入し、その後も未成年向けの「ジュニアNISA」、少額・長期の「つみたてNISA」を創設したことを紹介。「今後より一層の制度周知」の必要性を訴えている。

 背景には「極端に現預金に偏っている」(麻生氏)個人金融資産をはき出させ、経済活性化を図りたい狙いがある。実際、安倍政権の一六年の経済対策では「家計の『貯蓄から資産形成へ』という流れを政策的に後押し」と明記している。

 公的年金に関しても、報告書は「老後の収入の柱」だと説明しており、菅義偉(すがよしひで)官房長官が「老後の生活設計の基本であるという、これまでの政策スタンスと異なる」と述べるほどの食い違いはない。

 与野党とも「赤字」と表現された毎月の収支差を問題視しているが、安倍晋三首相は一八年二月の衆院予算委員会で「基礎年金だけで全て必要なものを賄うことは難しい。蓄えを含め、万全な老後が可能となるよう努力していきたい」と答弁。政府として、年金で生活費を全額カバーすることを想定していないと認めている。 (生島章弘)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201906/images/PK2019061702100058_size0.jpg
報告書に引用された老後資金に関するデータ

https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201906/CK2019061702000120.html
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/145.html

[政治・選挙・NHK262] 「今の自民党の指導部・・・非人道的で非人間的でダメ」(久米) 「安倍さんの選挙・・・投票率を下げることによって固定票で勝とうとする選挙戦術・・・浮動票は寝ててくれ」(中島) (久米宏 ラジオなんですけど)
TBSラジオ 「久米宏 ラジオなんですけど」より
ゲストコーナー「今週のスポットライト」
2019年6月15日放送分のゲストは政治学者・中島岳志氏
https://radiocloud.jp/archive/kume954/?content_id=59586(全33分52秒)

(一部を以下に抜粋紹介。文責スレ主)

16:47頃から
(久米)
もう1カ月余りで参議院選挙で、選挙の前だから、まだ公示前なんで好きなこと言えるんですけど、バランスとった発言などはワタクシするつもりは全くなくて、今の自民党の指導部は僕はもうまったく非人道的で非人間的でダメだと思うんです。何とか自民党は負かさない限りこの選挙はあかんなと思って・・・

29:20頃から
(久米)
あのう、これ皆さんおっしゃってますけど、自民党は決して多数を取ってるわけじゃないですよね、投票で。

(中島)
そうなんですよ。

(久米)
選挙で多数を取ってるのは実は自民党じゃないんですけど、仕組みでもって、国会で多数の議席を占めちゃってるだけで、実はトランプも票数で行けばトランプの方が少なかったんだけど、選挙人を獲得したのが多かったというだけの話で、どうも仕組みの利用の仕方が野党が下手っていうか与党に有利にできてるっていうか、そういうことなんですよね。

(中島)
それにちゃんと適応できてなかったんですよね。まあ、ようやく形というのが完全ではないにしろ出来てきたというのは野党側の前進だと思うんですけれども、しかしやっぱり統一的なビジョンっていうんですかね。
僕は安倍内閣の非常に面白い傾向は、安倍さんの選挙というのは小泉さんの選挙と真逆で、小泉さんの時代っていうのは投票率を上げることによって勝とうとしたんですよね。つまり浮動票をつかもうっていう戦略なんです。ただ安倍さんは逆で、投票率を下げることによって勝とうとしてるんですよね。

(久米)
「寝ててくれ」法ですね。

(中島)
そうなんですね。すると、いわゆる自民党支持層と野党支持層のコアな層というのは自民党層の方が分厚いんですよね。3対2ぐらいの対比なんですけれども、そうしたらいわゆる浮動票というのが動かないようにして、そしてこの固定票で勝つっていうそういう選挙戦術なんですよ。
だから、「寝ててくれ」っていう選挙をやってるんですよね。僕としては、もう怒らないといけないと思うんですよね。
そのためにはちゃんと争点があって、野党に、なんかこの野党に任せればもう一個大きな選択肢があるんだっていう、そのビジョンと具体的政策を投げてくれないとなかなか支持が集まらないと。今回もやっぱりこのまま突入してしまうとぼやけてますよね。
なので、例えばなんですけども、山本太郎さんが支持されているっていうのは消費税という問題で切り込んでいる。で、それは単に消費税を下げるというポピュリズムではなくてそこから彼は経済政策を語り始めるんですね。やはり私は政治の、ひとつの政治家の王道を行っているんだと思いますけれども、これを野党がみんなでやれるか、というのに掛かっていると思うんですよね。

(久米)
野党っていうのは、連携が下手ですよね。

(中島)
そうですね。

(久米)
だから野党だっていうふうにも言えるわけですけど。

(中島)
政権への執着でしょうね。自民党は凄かったですよね、久米さんがニュースをされていた頃、自社さ連立政権なんてもう凄まじいですよね。だってこれまで真逆にいた社会党と連立してまでも自民党は政権を取ろうとしたわけですよ。

(久米)
もう何でもありですからね。

(中島)
それぐらいの、まあ、もちろん問題はあるんですけれども、それぐらいの執着がないとですね、具体的な自分たちの政策をできないっていう、まあ非常に強い理念とか、リアリズムがあったんだと思うんですよね。

(久米)
つまり共産党のトップを総理大臣にする、してもいいから、政権が取れるものなら取りたいっていう、そこで、今の、心根っていうか、作戦がないとできないっていうことですね。

(中島)
それぐらいの場合によって柔軟性と現実性を持つことが僕は重要なんじゃないかと思います。

(久米)
そうかぁ(ため息)。本当は政治面白いんでね。皆さん興味を持っていただければ。若い人がもしかしたら、山本太郎現象で投票所に足を運ぶことになったら結構面白いことになるかも知れません。ありがとうございました。

(中島)
ありがとうございました。
32:47
 
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/160.html

[政治・選挙・NHK262] 年金制度は、自己責任・自助努力が前提なのさ。甘ったれちゃいけないよ。(澤藤統一郎の憲法日記)
 
君ら、人生設計を考えるときに100まで生きる前提で退職金って計算してみたことあるか? 普通の人はないよ。でも、今のうちから考えておかないかんのですよ。

年金はね、人生設計のうちの生涯収入の一部だ。まさか、年金だけで老後の生活が安泰なんて、君たち本気で思い込んではおるまいね。年金で100年安心と思っているなんて、冗談だろう。

君ら誤解していないか。「年金100年安心」って、文字どおり「年金の制度維持は100年安心」ということで、「人生100年時代の年金生活が安心」ということではない。2004年の年金改革は「持続可能な年金制度」作りが目的で、老後の暮らしの保証じゃなかったんだよ。この辺の勉強がしっかりできているかね。

君らの勝手な誤解は、政府の責任じゃない。世の中そんなに甘いもんじゃない。知ってるだろう。「自己責任」、「自助努力」だよ。私なんか、年金なんて当てにしていない。受給しているかどうかも自分じゃ知らない。

でもお分かりだろう。老後の暮らしの安心のために、気前よく年金の支払いを振る舞っていたら、たちまち年金制度そのものが成り立たなくなる。年金制度の維持が100年は安全のためには、「入るを量って出ずるを制す」が肝要なんだ。分かり易く言えば、「保険料を増額して、給付額を減額する」「負担増、受益減」ってことだ。

とどのつまりは、高齢者の生活を犠牲にして年金制度を守ろうということ。これって常識だろう。誰が考えても分かることだし、それ以外に、年金制度維持の方法があったら教えてくれ。

今の時勢を考えて見たまえ。保険料負担の現役世代がどんどん減っているのが現実じゃないか。「入るを量る」はたいへん困難だ。ならば、「出ずるを制す」に徹するしか方法はなかろう。

ところが、年金受給者世代が際限なく増えている。平均余命がどんどん延びているんだから、「出ずるを制す」の政策は一人あたりの年金支給額を減らという方法に落ちつくことになる。それだけの単純なロジックじゃないか。

手品じゃあるまいし、「保険料は減らせ」「年金給付は増やせ」なんて、身勝手なことができるわけはない。安倍晋三が、決算委員会で言ったとおり、そりゃ「バカげた政策」だ。「年金100年安心」のためには、「保険料は増やす」「年金給付は減らす」しかないんだよ。

マクロ経済スライドは、そのためのシステム。このご時世、マクロ経済が年金受給者に厳しく推移することは、誰の目にも明らかではないか。安閑と年金受給額を現状維持としていたら、年金制度が崩壊することは目に見えている。だから、経済の悪化にしたがって、年金額を自動的に減額するのが、マクロ経済スライドだ。合理的だろう。年金生活者の生活をカットして、年金制度を維持しようという優れものだ。

2004年は、小泉内閣のときだ。あのとき、安倍晋三は確か自民党幹事長。自公で、「年金100年安心」を吹聴した。でも、あのときから、今のご時世は見通せていた。問題は財源の確保だったんだ。なんと言っても、国庫負担の問題だ。

ここは、基本的な考え方の相違だ。もちろん、「税制による所得再分配機能を最大限発揮せよ」という野党の皆さんの、いつもながらの主張はあるだろう。決まり切ったフレーズとして、「大企業や富裕層への優遇税制を見直せ。負担増を求めよ」「軍事費削って、福祉にまわせ」ってね。

でも、もう、やれることはやった。給付財源の国庫負担分を、段階的に引き上げて3分の1から2分の1までにした。これで十分だろう。これ以上、国庫負担部分を増やすことは、財界がウンと言わない。何よりも、企業や富裕層の経営意欲に水を差すことになり、経済の活性化が失われる。だから、財源は、消費増税しかない。

金融庁金融審議会の報告書が「年金だけでは老後の資金を賄うことができないため、95歳まで生きるには夫婦で2000万円の蓄えが必要」と言って非難囂囂だ。非難の声が高いから、臭い物に蓋をした。政治家として、当然のことじゃないか。

ところがだ。「自公政権の国家的詐欺」だの、「国民に対する年金詐欺」だのとまことに評判が悪い。こんな悪口雑言が言論の自由として許されてよいもんかね。まあ、フランスや韓国や香港とは違って、日本人は行儀がよくて温和しいから安心はしているが、年金問題は選挙に響くところが頭が痛い。

ホンネのところ、言いたいのは次のことだ。
国民諸君よ、年金だけでは暮らせるはずがない。貯金も利息はないに等しい。だから、株に投資したまえ。さすれば、国民こぞっての株式市場参入が実現して、株価が大いに上がる。株価が上がっている限り、政権は安泰なのだ。

えっ? 株式投資のリスクが現実化したらどうなるか? 前にも言ったろう。そりゃ、自己判断・自己責任・自助努力の大原則だ。誰も、責任とってはくれない。世の中けっこう厳しいんだよ。甘えてくれるな。
(2019年6月17日)
 
http://article9.jp/wordpress/?p=12807
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/162.html

[政治・選挙・NHK262] 右であれ左であれ、わが祖国 鈴木耕 (マガジン9)
言葉の海へ
第77回:右であれ左であれ、わが祖国

By 鈴木耕 2019年6月19日
出典「マガジン9:https://maga9.jp/


■DON’T SHOOT OUR KIDS!

 デモの力を再認識した。香港の若者たちのことである。いや、若者たちだけではなかった。その若者の親たちもまた、立ち上がったのだ。母親たちの掲げたプラカードには「子どもたちを撃つな!(DON’T SHOOT OUR KIDS!)」とあった。
 ぼくは、それを見て胸が熱くなった。

 香港での「逃亡犯条例改正案」に激しく抵抗する若者たちのデモは、6月9日には、なんと103万人(主催者発表)に達したという。
 香港の人口は約730万人といわれているから、およそ香港市民の7人にひとりはこのデモに参加したことになる。おびただしい人数が、香港立法議会前を埋め尽くし、それに対し官憲が催涙弾の水平射撃を行い、多くの負傷者が出た。
 なぜ、こんな大きなデモが巻き起こったのか。
 それは「容疑者を中国へ引き渡すことが可能な法案=逃亡犯条例改正案」を香港政府が強行しようとしたからである。
 むろん「中国での犯罪容疑者が香港に逃げ帰った場合、その者を中国へ引き渡すが、犯罪者に限るのだから一般市民には影響はない」と、香港の林鄭月娥行政長官は説明したけれど、その裏に、何が隠されているかを感じ取った若者たちの反発は強かった。
 日本政府だって同じだ。「安保関連法」や「特定秘密保護法」などの例に見れば分かるではないか。巷間言われるように、「権力は腐敗する。絶対権力は絶対に腐敗する」。
 怪しげな法案の内容を説明する際には、決まって本来の危ない意図を隠すのだ。だから、この「逃亡犯条例」は、中国政権に批判的な民主人士の犯罪をでっちあげて、中国へ引き渡してしまうのではないかという危惧を、若者たちは抱いたのである。
 この巨大なデモは、その意味では「民主主義を守れ!」という運動だった。さすがに、林鄭月娥長官も「この条例案はしばらく延期する」と発表せざるを得なくなったのだが、これにもすさまじいほどの反発が起きた。デモ参加者たちは「延期ではなく撤回せよ」と叫んだ。
 16日、ふたたび巨大デモが敢行され、香港中心部は抗議の意思を示す「黒い服」で埋め尽くされた。その数は9日のデモを上回り、なんと200万人を超えたといわれる。前述したように、香港の人口は約730万人。デモの巨大さが分かるだろう。今週の松本哉さんのコラムでもその様子をレポートしてくれているので、ぜひ読んでみてほしい。
 16日、ついに林鄭長官は「香港社会に大きな対立をもたらしてしまった。市民に深くお詫びする」とのコメントを発表したが、「撤回」については言及しなかった。独裁色を強める中国・習近平政権の強い意向が背景にあるのは間違いない。
 この対立は、中国政府がどこまで譲歩するかにかかっているのだが、いまの習近平政権を見ていると、譲歩の可能性は小さいだろう。大阪での「G20」が終わるまでは習氏も動かないだろうが、その後の展開がものすごく気になるところだ。
 あの「天安門事件」の再来にならなければいいのだが。

■香港デモに同情的な右派

 日本では「デモで世の中は変わらない」と、知った風なことを言う人たちは多い。ことにネット右翼系の人たちは、これまで「デモはパヨクの煽動だ」などと、SNS上で言い続けてきた。ところが、今回の「香港デモ」に関しては、どうも様子が違う。
 右派系の人たちが、「香港デモ」に妙に同情的なのだ。これまでの「デモ嫌い」はどこへ行ったのか?
 その理由は、実は単純である。香港の若者たちが、ネット右翼が大嫌いな中国政府に対して反旗をひるがえしているからだ。つまり彼らのロジックは「敵の敵は味方」というもの。
 ぼくも、独裁臭が漂う現在の中国・習近平政権には大反対だ。彼の反民主主義的な強圧政治は、とても「左翼政権」などと呼べる代物ではないと思うからだ。その意味でも、若い「香港デモ」には胸がうたれるし、彼らを断固支持したい。

 だけど、それならば……言いたいことがある。
 強大で暴圧的な中央政権に抗う地方の住民たちを支持するという構図は、どこかで見たことはないのか、とぼくは言いたいのだ。
 そう、沖縄での辺野古米軍基地建設についての対立の構図だ。
 安倍政権の強権的な工事推進一点張りに対して、沖縄の人たちは、何度も何度も繰り返して「反対」の意志表示をした。
 各種の選挙では「基地建設反対」を掲げる候補者が勝ち続けているし、今年2月24日に実施された辺野古基地建設の賛否を問う「県民投票」では、投票率52.5%、そのうち基地建設反対が71.7%という圧倒的な民意を、県民は示したのではなかったか。

 中国政府という権力が「一国二制度」という香港の民主主義の最後の砦をなんとか葬ろうとしている姿は、少なくともぼくには「辺野古をめぐる沖縄の民意」を圧し潰そうとする安倍政権の姿にダブる。
 権力に抗う姿は同じだ。

■民主主義に右も左もないはずだ

 ディストピア小説の極北『1984年』の著者ジョージ・オーウェルに『右であれ左であれ、わが祖国』という評論がある。ヒトラー独裁前後のドイツと革命直後のソヴィエト連邦、そしてはざまで揺れる祖国イギリスを見つめた評論だったと思う。
 ずいぶん昔に読んだもので、詳しい内容はもう憶えていないけれど、しかしこの不思議なタイトル『右であれ左であれ、わが祖国』は、なぜかずっとぼくの頭の隅に残っていた。

 いわゆる左右の溝は、SNSが隆盛になってから、日本ではことに激しくなったようで、「ネトウヨ」「パヨク」(ぼくはこのイヤな言葉を基本的には使わない。ほとんど「ネット右翼」「リベラル」などと表記している)と、まるで罵倒合戦の様相を呈している。
 しかし、いかにネット右翼を自認していても、今の日本で民主主義を完全否定するような人はそうはいまい。お互いに、どんなに批判し合っても「民主主義擁護」に異存はないはずだ。「右であれ左であれ、わが祖国」なのだ。
 であればこそ、香港のデモに共鳴する右派の人たちに、もう一度、沖縄の現況を知ってほしいと思う。

 強権発動で住民たちの意志を圧殺する中央政府の姿が、沖縄と香港では同じように見えませんか?

https://maga9.jp/190619-5/
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/194.html

[政治・選挙・NHK262] 荻原博子さんに聞いた:安倍政権は予定通り10月に消費税を増税するか? (マガジン9)
https://maga9.jp/wp-content/uploads/2019/06/title-8.jpg
この人に聞きたい
荻原博子さんに聞いた:安倍政権は予定通り10月に消費税を増税するか?

By マガジン9編集部 2019年6月19日
出典「マガジン9:https://maga9.jp/

今年7月4日公示、21日投開票予定の参議院議員選挙。10月の消費税10%への引き上げを控え、増税の是非が争点の一つとなることは必至です。しかし、経済ジャーナリストの荻原博子さんは、「過去二回、増税先送りによって選挙を大勝してきた安倍政権は、今回も増税延長のサプライズカードを切る可能性がある」と指摘します。消費税が政争の具として扱われる現状を、著書『安倍政権は消費税を上げられない』で明らかにした荻原さんに、消費税をめぐる安倍政権の本音について伺いました。

■なぜ『安倍政権は消費税を上げられない』のか

――荻原さんは昨年12月、『安倍政権は消費税を上げられない』と題する著書を出版されました。そうお考えになる理由を教えてください。

荻原 答えは簡単で、安倍政権は過去二回の選挙で「増税延期」を表明することによって大勝したからです。
 2014年4月、安倍政権下で消費税が5%から8%に引き上げられました。増税後、消費は低迷し、アベノミクスも失速。先行きへの不安感が募り、企業は賃金を上げられず、さらに消費が冷え込むという悪循環に陥りました。当然ながら政権支持率が下がり、崖っぷちに立たされた安倍首相が出したのが、歴代首相は誰も使ったことのない「消費税増税先送り」のサプライズカードだったのです。
 14年11月に、景気が良くないことを理由に、15年10月に予定されていた10%への消費税増税を17年4月まで先送りすることを決定。翌月、「消費税増税延期について国民に信を問う」という大義を掲げて衆議院を解散させて挑んだ総選挙では、自公合わせて全議席の3分の2を上回る議席を獲得しました。さらに16年6月には、消費税引き上げを19年10月に再延期すると表明。その後の参院選も与党の圧勝に終わり、定員242議席中、自公で146議席を占めるまでに至りました。

――増税先送りのカードを、選挙の「追い風」として利用してきたのですね。

荻原 そもそも、消費税引き上げに関与した首相は、選挙で大敗するのがこれまでのセオリーでした。79年、大平内閣で初めて消費税の導入が閣議決定された後の衆院選では、自民党が過半数割れの惨敗。また、97年に5%に増税した橋本内閣は、翌年の参院選で大敗。2011年には民主党(当時)の野田首相が、12年6月に消費税率を10%に引き上げる「3党合意」を、自民党、公明党との間で交わした後、同年の衆院選で大敗しました。
 本来、政権にとっては「鬼門」である消費税増税を先送りすることによって、安倍首相は長期政権を築いてきたのです。

――今年4月には萩生田光一氏(自民党幹事長代行)が増税延期をほのめかす発言をするなど、今年7月の参院選前を前に、安倍政権が「サプライズカード」をちらつかせる動きがみられました。

荻原 「景況によっては、延期もありうる」との萩生田氏の発言に対し、「あれは萩生田さんの個人的意見で、政権の考えとは異なる」と苦言を呈する政権関係者の声もあったそうですが、萩生田氏は安倍首相の側近中の側近です。公の場で、選挙の結果を大きく左右する消費税について、不用意な発言をするはずがありません。あの発言は、増税延期発言が国民にどう受けいれられるかを確認するための観測気球だったとみるのが適切でしょう。
 そもそも財務省出身でもない安倍首相には「消費税をなんとしても上げたい」というモチベーションが希薄のように見受けられます。だからこそ、選挙が近づくまでは「消費税引き上げの必要性」をパフォーマンスとして語るし、選挙が近づいて風≠ェ変れば、簡単に主張を覆して「景気が良くないから、増税は見送る」などと発言できるのでしょう。
 これまでに二度も「増税先送り」のサプライズカードを切った事実こそが、安倍政権が国民の生活や財政状況の健全化を考慮して消費税増税を進めようとしているのではなく、選挙の結果にのみ注視して、消費税を「政争の具」として扱っていることの証左ではないでしょうか。

■トランプ大統領も消費税増税に反対

――増税延期が過去の選挙の大勝に結びついたこと以外に、安倍政権が「消費税を増税できない」理由はあるでしょうか。

荻原 実は、アメリカのトランプ大統領も消費税増税に否定的なんです。
 トランプ大統領は、日本の消費税は輸出産業への補助金だとみなしています。というのも、日本には輸出業者に消費税が還付される「消費税還付制度」というものがあり、国内から国外にモノを売る場合、相手国には相手国の税金があるからそちらに準じるべきという考え方によって、輸出業者は消費税を免除されるのです。また、商品を輸出する前段階で材料の仕入れ時などに納めた消費税も国から還付されます。これに対して、トランプ大統領は「アメリカで日本車が売れるのは、日本政府の補助金によって価格が安価に抑えられているからだ」と主張して怒っているのです。
 多少強引な考え方ではありますが、トランプ大統領のこうした見方も、安倍政権にとっては消費税増税に二の足を踏む要因となるでしょう。

――給料も上がらず、「アベノミクス」の効果を実感しづらい現状では、国民としても消費税増税を受け入れがたいところです。

荻原 最近では、消費者だけでなく、産業界からも反対の声が上がるようになっています。例えばこれまで増税に賛成してきた日本自動車工業会は、18年に「自動車税など、自動車ユーザーの税負担を軽減しなければ、消費税増税は認められない」と明言しています。
 また、消費税増税による低所得者への負担を軽減するための策として、飲食料品や新聞などの税率を8%に据え置く「軽減税率」制度が実施されることになっていますが、これに対しても小売業者や外食チェーンを中心に不満の声が上がっています。例えば飲食店の場合には、同じメニューでも店内で食べるか、持ち帰りにするかによって税率が変わる場合があります。レジシステムの改修など余計な手間とコストがかかるのですから、不満を訴える声があるのも当然です。
 消費税10%への引き上げと、それに伴う軽減税率の導入に対しては、大企業から町のおそば屋さんまで、強い不満感をもっているのが現状です。

■消費税をめぐる政権の発言の前提は、常に「選挙」

――荻野先生ご自身は、10月の消費税10%への引き上げは適切と思われますか。

荻原 私自身は、多くの世帯が家計に苦しんでいる現状では、消費税の増税は適切でないと考えています。
 黒田日銀総裁や菅官房長官は、13年のアベノミクス開始以降、「景気は緩やかに回復している」と言い続けていますけど、6年間も「緩やかな回復」を続けていたら、今は結構、好況なはずですよ。
 しかし実際には、14年の消費税8%への引き上げ以降、消費はシュリンクして景気は右肩下がり。アベノミクスによる格差拡大で富裕層は一層豊かになる一方、一般世帯の家計は厳しくなるばかりです。多くの人が消費を控えざるを得ない現状ですから、消費税増税なんてとんでもない話です。

――確かに消費者としては、消費税引き上げ後の生活に大きな不安を抱きます。一方で気になるのが国債残高など、国の借金です。その金額は1千兆円以上ともいわれるなか、将来世代へ負担の先送りをしないためにも、消費税増税はやむをえないとの意見もあります。

荻原 国の借金が1千兆円以上あるから、「日本の先行きは真っ暗だ」という人もいますけれど、年間約500兆円(実質GDP)を稼ぐ日本の屋台骨はそんなにヤワじゃありません。今の日本の財政状況を分かりやすく例えるなら、「衰退しつつある老舗商店」というところでしょうか。右肩下がりには違いないのですが、昨日今日、成り上がった新興国ではありませんから、底力もあるし、国際的な信頼もある。対外純資産残高も340兆円(18年末時点)と、世界最大の純債権国の地位を28年間キープしています。
 考えてみてほしいのが、約1千兆円の国債のうち、4割超を保有しているのが日本銀行だということです。健全な状態と言い難いのは確かですが、国が中央銀行に借金をしているのですから、親会社が子会社に借金をしているようなもの。日銀保有の国債に限っては、60年の償還期限を100年に延長するとか、借り換えを続けられるような仕組みをつくるとか、いくらでも手の打ちようはあるんです。

――ただこの先、少子高齢化の進展によって社会保障費が増えるから、財源確保には消費税増税が必須だと主張する声も根強いです。

荻原 社会保障費のことを考えるのなら、増税の前に、まずはムダを省くことが先決のはずです。国が国民の同意もなく1基100億円のミサイルを購入するようなお金の使い方をしているのに、どうして国民が負担増を受け入れなくてはいけないのでしょうか。
 消費税と社会保障費について語る時、「北欧に比べて日本の消費税率は低い」と主張する人がいます。確かに、福祉国家として有名なスウェーデンの消費税率は25%で、日本よりずっと高率です。しかし、国民がこの税率を受け入れているのは、医療や教育、介護などにかかる費用を、ほぼ国が負担してくれるからこそ。日本でも、増税したら社会保障サービスが良くなると信じている人は多いようですが、増税によって増えた税収がどういう使い方をされるか、具体的な議論はほとんどされていません。税率だけを比較して、「他国より低いから上げるべき」といった議論はナンセンスです。
 国債残高にせよ、社会保障負担にせよ、「消費税増税の根拠」としてもっともらしく主張しているのは誰かといえば、消費税を政争の具として扱い、最善のタイミングで「増税延期」のサプライズカードを切りたい政権や、消費税増税を悲願とする財務省の人たちでしょう。結局彼らは、己にとって都合のよい情報を、都合のよい角度で国民に提示して、「消費税増税は既定路線」とのイメージを植え付けたいだけなのです。残念ながら、そこからは国の財政健全化に真剣に取り組む姿勢は見えてきません。

――参院選を控え、今のところ政権は、10月の消費税引き上げについて「先送り」とも「予定通り決行」とも明言していません。

荻原 安倍首相にとって、今年7月の参院選は、第四次安倍内閣の「中間成績」発表の場ともいえる、非常に重要な選挙。今回も、土壇場になって「増税延期」のサプライズカードを切る可能性は捨てきれません。実際、菅官房長官は、「リーマンショック級の出来事が起こらない限り、10月に(消費税率を)10%に引き上げる予定」との発言をしています。これは裏を返せば、「『リーマンショック級の出来事』と政府が判断する出来事」が起これば、増税を延期するというエクスキューズでもあります。参院選を迎えるにあたり、最終的には、7月1日に発表される日銀短観などを踏まえ、予定通り増税するか、先送りのサプライズカードを切るかを決めるのでしょう。
 いずれにせよ、政権が消費税について語る時、その前提には必ず「選挙」がある。そのことを、私たちは肝に銘じておくべきです。

(構成/田上了子 写真/マガジン9編集部)

荻原博子(おぎわら・ひろこ)1954年、長野県生まれ。大学卒業後、経済事務所に勤務し、1982年にフリーの経済ジャーナリストとして独立。経済の仕組みを平易に解説する家計経済のパイオニアとしてテレビや雑誌で活躍。近著に『年金だけでも暮らせます 決定版・老後資産の守り方 』(PHP新書)、『安倍政権は消費税を上げられない』(ベスト新書)、『払ってはいけない―資産を減らす50の悪習慣−』(新潮新書)などがある。

https://maga9.jp/190619-4/
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/197.html

[政治・選挙・NHK262] 山本太郎議員、誘われたら安倍内閣の財務相に? 自民と組む条件は…(AERA)
2019.6.19 08:00 AERA

https://cdn.images-dot.com/S2000/upload/2019061800020_1.jpg?update=20190619121758
山本太郎(やまもと・たろう)/1990年、高1時に「ダンス甲子園」に出場、芸能界入り。「ふたりっ子」(96年)、「新選組!」(2004年)などの人気ドラマに出演。映画「光の雨」「GO」で01年度日本映画批評家大賞助演男優賞、「MOON CHILD」「ゲロッパ!」「精霊流し」で03年度ブルーリボン賞助演男優賞を受賞。11年4月に反原発運動を開始、13年7月の参院選で初当選。44歳(撮影/大野洋介)


 夏の参院選に向けて各党が公約を発表する中、その斬新さで注目を集めているのが山本太郎参院議員の「れいわ新選組」だ。「消費税廃止」をはじめ「デフレ脱却給付金1人月3万円の給付金」「奨学金徳政令」などを掲げている。政策実現への意気込みを聞いた。

https://cdn.images-dot.com/S2000/upload/2019061800020_2.jpg?update=20190619121758
れいわ新選組「八つの緊急対策」(AERA 2019年6月24日号より)

*  *  *

──「公共投資拡大」「1人月3万円の給付金」など、野党よりむしろ自民党と親和性が高そうな「バラマキ」的施策も掲げています。もし安倍首相から「山本さんの政策を一部採り入れるから手を組もう」と誘われたらどうしますか。

 自民党が本気で減税すると言うならば、そちらに乗ります。何がなんでも野党陣営ということではない。我々の政策が実現できるなら、手をつなげるところとはつなぎますよ。ステップ・バイ・ステップ、一歩ずつ前進するための一段階というとらえ方です。

──原発や憲法を巡る立場が相いれなくてもですか。

 それとこれとは別の話です。全ての考え方が完璧に同じなんてことは、家族でも恋人同士でもあり得ないでしょう? 全て同じじゃなきゃダメという姿勢は、宗教かイデオロギーでしかない。私はこれまでも、与党が提出した法案の半分には賛成しています。

──減税をやるから、安倍政権の財務大臣をやってくれと言われたら、閣内に入りますか。

 引き受けますよ。いいじゃないですか、そんな大きな役職をもらえるなら。ただ、言いたいことは言いますし、財務省のスキャンダルをどんどん暴きます。だからすぐ罷免されるでしょうけどね。あ、でも副大臣や政務官じゃお断りです。

──アエラの試算では、れいわ新選組の各種政策を実現するには、少なくとも50兆円規模の財源が必要です。

 他の税で穴埋めできる部分もありますが、僕はデフレからの脱却のための原資として、国が借金をすることは何の問題もないと考えています。これは統計を見れば明らかですが、日本は諸外国と比べて経済成長率と、政府支出の伸び率がともに圧倒的に低い。安倍総理も、日本ほど低成長が続いた国はほかにないと認めている。つまり、政府が緊縮財政を重んじるあまり、適切に財政出動して必要な投資をしてこなかったから、成長できなかったということです。

 小さな政府ではなく、ルールにのっとった大きな政府を目指すべきなんです。財務省や有識者はお金を刷りまくったらハイパーインフレになるといいますが、現状はどうですか。もちろん、いくらでも借金していいとは考えておらず、我々の政策でも、経済対策はインフレ率が2%になるまでとしています。

(聞き手/編集部・中原一歩、上栗崇)

※AERA 2019年6月24日号より抜粋

https://dot.asahi.com/aera/2019061800020.html?
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/201.html

[政治・選挙・NHK262] 山本太郎・れいわ新選組が選挙で伸びる三つの根拠 米山隆一 (朝日新聞社 論座)
山本太郎・れいわ新選組が選挙で伸びる三つの根拠
左派ポピュリズムのど真ん中の政策。国民の間の「ルサンチマン」も後押し

米山隆一 前新潟県知事。弁護士・医学博士
論座 2019年06月19日 より無料公開部分を転載。
 
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街頭の山本太郎氏。演説は聴衆の質問に答える形で進む=2019年5月29日、東京・北千住駅

■比例代表で複数当選、政党要件の獲得も視野に

 自由党を離れた山本太郎氏が本年の4月1日、れいわ新選組をたちあげて2カ月半が経ちました。政党支持率の世論調査の対象になっておらず、マスコミ的な扱いはまだまだ小さいものですが、その独特な街頭宣伝のスタイルも相まって、SNSを中心に反響を広げつつあります。れいわ新選組が発表しているところでは、すでに1億6000万円の寄付を集めているとのことです。
(スレ主追記:「4月の会見から昨日までに【1億9,583万円】のご寄附のお申し出を頂きました。」(れいわ新選組ツイート 3:12 - 2019年6月18日)

 無駄に何回も国政選挙を経験したものとして私は、この「寄付額」というものは極めて重要なものだと思います。人は比較的気軽に「応援」はしてくれても、なかなか身銭を切ってはくれません。実感としていえば、寄付をしてくれるのは、支援者の100人に1人ぐらいの感覚で、逆に言うと身銭を切って寄附をしてくれるような「熱い」支援者は、自分の寄付を無駄にしないためにも周りを巻き込んで応援してくれるので、1人から寄付を得ることが出来たら、100人程度からの得票が得られるという感覚があります。

 「ざっくり」であることを承知で、この“計算”をれいわ新選組に当てはめると、寄附1件を3000円〜1万円として1.6〜5万件の寄付を集め、現時点で100〜500万票を獲得しており、「100万票で1人当選」といわれる比例代表で複数人の当選者を得ることも、「全国比例で2%以上の得票(120万人程度)」を得て政党要件を獲得することも、視野に入っているものと思われるのです。

 予想にはまだ早いとは思いますが、私はきたるべき参院選において、大勢としては与党の勝利が動かないなかで、れいわ新選組が予想以上に伸長し、野党再編のカギとなると同時に今後、政界に波紋を投げかける存在となると考えています。以下その理由を述べたいと思います。
 
■左派ポピュリズムのど真ん中の政策

 れいわ新選組のなによりの特徴は、その政策が「左派ポピュリズムど真ん中」であることです。

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図1

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図2

 ありがちで恐縮なのですが、政党を「国家志向−個人志向」「拡張財政志向−均衡財政志向」でわけた四分図で示すと、上記のようになると私は思っています(恐縮ながら社民党と共産党は除いています)。

 日本の政治における最大のプレーヤーである自民党が、「国家志向−拡張財政志向(公共事業型)」であるために、野党主流派(民主党系)はこれへの対抗軸として、「個人志向−均衡財政志向」でした。従前から、野党は福祉の拡充は訴えていましたが、それはあくまで「困っている人を救う」ための福祉・貧困対策です。野党主流派は自民党のばら撒きを批判してきた手前、自らはばらまきと言われるような政策を大っぴらに主張できなかったのです。

 従来の与野党の対立は、「清濁併せ呑む自民党(国家のために動き、財政を大きく使う)」と「清貧な野党(個人のために動き、必要以上に財政を使わない)」という「清貧度」軸にそったものであったと言えます(図1)。

 そのため、従来は図1の「左上」の部分、「個人志向−拡張財政志向」という本来であれば左派ポピュリズムど真ん中の位置が空いていたのですが、山本太郎・れいわ新選組は、まさしくこのど真ん中に位置するものだと言えます(図2)。

 勝手にそのエッセンスを抜き出すなら「福祉・貧困対策の枠組みを超えて、財政を通じて個人に富を分配しよう!」というものであり(最低賃金1500円、奨学金徳政令、1次産業所得補償はまさしっくそう言う政策です)、自由主義社会における左派(中央集権・共産主義でない左派)政策そのものなのです。

 れいわ新選組の登場によって与野党の間に、新たに「分配方法」軸――すなわち、国家の為の分配を、財政によらず(企業・集団を通じて)行うか(国家の競争力を高める為に、企業・集団に利益をもたらし、これを通じて分配するという維新的政策)、個人の為の分配を、財政によって行うか(最低賃金や奨学金等個人が使う為に、財政によって分配するというれいわ新選組の政策)かの――という対立軸が生まれることになります(図2)。

■「平等・正義」は多数派を糾合する旗印になりづらい

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記者会見をする山本太郎氏=2019年5月31日

 最近、政治関係者の皆さんと話す機会が増えているのですが、そのなかでれいわ新選組が話題に上ると、野党関係者の方々から「いや、俺たちもああいう主張をしたいんだ。でも政治家たるもの、分別のある主張をしなければいけないっていう縛りみたいなものがあって、出来ないんだよ」という反応を多く聞きます。

 立憲民主党を代表とする野党陣営は、上記の通りどうしても従来の「清貧度軸」に沿って「平等」「正義」を主張しがちです。とはいえ、いかに野党支持者とはいえ、人は自分に直接関係のない平等・正義にはそこまで強い関心を持ちません。そして、ある程度平等・正義が実現した社会において、不平等・不正義に曝されるのは少数派です(だからこそ問題になるのですが)。

 従って、平等・正義は極めて重要なものではあるのですが、すでに一定程度それが実現した社会においては、多数派を糾合する旗印には実のところなりづらいものなのです。

 これに対し、れいわ新選組が旗印に掲げる、福祉対策・貧困対策の枠を超える「財政を通じて個人に富を分配しよう!」という政策(最低賃金1500円、奨学金徳政令、1次産業所得補償等)は、過半数とは言わないまでも、相当数の人がその利益に預かれるもので、野党支持者の多くに訴求します。同時に、「分配」政策はもともと自民党的な政策という要素もあり、与党支持層にも相当程度に訴求しえるものです。

 極めて単純で身もふたもないといえばそれまでですが、れいわ新選組の掲げる左派ポピュリズムど真ん中の政策は、そのポピュリズム性ゆえに、与野党の枠を超えて多くの人に訴求しうると思われるのです。

■れいわ新撰組を伸ばす「ルサンチマン」

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政治団体「れいわ新選組」の立ち上げを表明する山本太郎氏=2019年4月10日、国会内

 政策論からいきなりレベルが下がるようで恐縮ですが、私がれいわ新選組が伸長すると思うもう一つの理由に、今の日本社会を覆う「ルサンチマン」の存在があります。

 選挙において政策が重要なのはもちろんですが、選挙もまた、人がやるものであり、「感情論」も極めて重要なファクターとなります。

 実際、自民党安倍総理は、6年経ったいまでも、「民主党政権時代という悪夢」発言を繰り返し、野党やマスコミからは批判されるものの、保守層からの支持はむしろ強めているのですが、これはどう見ても安倍総理個人と保守層のルサンチマンを、旧民主党系を「仮想敵」として攻撃することではらすことが、自らの立ち位置を明確にし、支持を固める役割を果たすうえで奏功しているからだと思われます。

 また、日本維新の会は、自民党以外のほぼ全方位を仮想敵としていますが、これも失礼ながら、創設者の橋下徹氏のルサンチマンと恐らくは大阪・関西人のルサンチマンを、野党を仮想敵としてはらすことによって、少なくとも関西での支持を保持する役割を果たしているものと思われます。

 世に存在する「ルサンチマン」は、上手にそれを掬い上げ、仮想敵を設定して鮮やかに溜飲を下げる事が出来れば、人をまとめる大きな武器となることは、日本政治の現状を見ても、アメリカの「トランプ現象」をみても、否定できない現実であると思われます。

■「あなたに忖度」のキャッチコピーの狙い

 その観点から見ると、今日本を覆っている最大のルサンチマンは、率直に言って、「格差社会の中で、自分は負け組になってしまった」という「負け組ルサンチマン」でしょう。そして、この場合の仮想敵は、与党・野党と言った特定の政党ではなく、「現在いい思いをしている人」になります。

 山本太郎れいわ新選組の「あなたに忖度」のキャッチコピーは、ものの見事にこの負け組ルサンチマンのど真ん中をついています。負け組ルサンチマンを持つ人が心理の奥底で望む本当の本音は、お題目の様な「公平・公正」ではなく、いま「勝ち組」が不当に受けている「忖度」をはぎ取り、「勝ち組」に変わって自らが受けることなのです。

 おそらくは、意識的になされているこの「ルサンチマン戦略」を、山本太郎・れいわ新選組は今後さらに手を変え品を変えて展開すると思われます。これまた極めて単純で身もふたもないといえばそれまでですが、現在の日本に蔓延する現状に対するルサンチマンを見事に掬い上げることによって、れいわ新選組は、野党支持者のみならず、現状に不満のある与党支持者にもその支持を広げる可能性は、相当程度に高いものと私は思います。

■山本太郎氏の政治家としての資質

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初当選を決めてた山本太郎氏=2013年7月21日、東京都杉並区

 最後の一点は、ありきたりなのかもしれませんが、山本太郎さんの政治家としての資質です。

 私は知事選の時から山本太郎さんに応援演説をしていただき、縁浅からぬものがあります。演説を聞く前は、失礼ながら「いわゆる芸能人」という思いもあったのですが、初めて演説を聞いたその瞬間から、 ・・・ログインして読む
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https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019061800002.html
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/204.html

[政治・選挙・NHK262] 丸山衆議院議員の不当な発言は何を意味するものであろうか (ちきゅう座)
2019年 6月 18日
<岡本磐男(おかもといわお):東洋大学名誉教授>

 丸山衆議院議員(日本維新の会)は、この度北方領土のクナシリ島において日本人関係者に対して驚くべき異常な発言を行った。「北方領土は日本が戦争をひき起しても取返すべきものと考えられるのではないか」というのがそれである。これには今日まで、ロシアとの平和的な外交交渉を通じて北方四島の返還交渉に苦慮してきた日本の政治家・官僚のみならずこれに関係してきた人達は皆驚いたにちがいない。私自身も唖然としてあいた口がふさがらなかった。しかも丸山議員は東大法学部出身でエリート・コースを辿ってきたというではないか。一体東大法学部で日本の戦後の平和憲法について、どんな勉強をしてきた人なのだろうか。第2次大戦後の平和憲法においては、いくつかの理念の中でも戦争放棄の理念が高々と掲げられ、陸、海、空の軍事力の全てが廃棄されるべきことがうたわれているではないか。こうしたことは、日本の中学生でも知っている最も単純な平和憲法の知識なのではないのか。もっとも現在の自民党政権の政治家はこの平和憲法の理念に異議を唱え、憲法改正を目論んでいるとはいえ、現行憲法下にある国会議員達は、現行憲法を遵守せねばならぬ立場にあることはいうまでもない。

 さらに現在は大国は核兵器を大量に所有しているから、そうした核兵器大国に対して、領土の返還を戦争によって求めるなどということは時代錯誤も甚だしいといわざるをえない。そんなことは子供でも分かる理屈である。丸山議員がなぜこうした発想をしたのかはどう考えても分からないが、よほど世界情勢にうとく、不勉強だという外はない。決して知識人であるとはいえないだろう。だがこうした非知識人を国会議員に選んだのは、外ならぬ日本の国民大衆なのである。

 私はここで1941年の、第2次世界大戦が開始された当時の日本の社会情勢を回顧せざるをえない。同年12月8日未明に日本海軍はハワイ沖で真珠湾攻撃を行ったことがラジオで報道された。それは確かに日本の軍部が満州事変(1931年)以来、財閥と結託して着々と政界を抑圧して独裁的な軍国主義・全体主義国家を築きあげ支配層となってきたことの帰結であった。だがこの大戦争の開始にあたって日本の大衆の大部分は拍手喝采し戦争に協力することを誓ったのである。私の家族では父はサラリーマンであったが母と共に、また近所の人達と共に大喜びであった。まさに3年後には、米国空軍が日本本土の各地に対してB29の空襲を敢行し本土の大部分を焼け野原にする等とは夢にも思わなかったであろう。このように国民大衆を悲惨な境遇に追いやったにも拘わらず、戦争指導者達が常に云っていたことは、「戦争に勝利するか否かは、軍事力や科学技術力などではない。精神力だ。大和魂だ。これがしっかりしていれば、いつかは日本に神風が吹く。」といったようなものであった(もっとも日本精神を強調していたのは陸軍の方で、海軍は長期戦となれば敗北するとみていたようである)。私達中学生は、こうした弁舌を学校の校長先生を通じて、また軍事教練を教える配属将校を通じてよく聞かされており、信じこまされていた。

 だが実際はどうだったのだろうか。日本は1945年の春以降、6月の沖縄戦、8月のヒロシマ・ナガサキへの原爆投下を通じて数10万人の民間人の死者を出しついに8月15日の無条件降伏にいたるのであるが、敗戦後に至って強く感じたことは、やはり戦争指導者達の見識のなさ、無責任性がひどかったという一言につきる。戦後かなりの年月をへて、私は米国のオレゴン大学の宿舎に1か月滞在したことがあるが、日本では教育研究設備が1位といわれる東京大学よりも大きな教育研究設備をもつ大学が、同大学を含めて多数存在することを知り、こんな国と闘った日本の戦争指導者の認識不足、知見の甘さをいやという程感じさせられたのである。世界情勢に通じていれば日本は米英の国々と闘うなどということは無謀きわまりないということが、容易に理解できたはずである。それ故戦後連合国側の立場から裁かれるようになったA級戦犯の人達を輩出したのも止むをえざることだったと考えている。

 大戦後は、軍国主義、国家主義は廃止され日本は民主主義国家となった。だが民主主義とはいっても、それは日本の政治的側面に導入されたにすぎず、経済的側面としては日本は資本主義の社会である。それは、資本家と労働者の対立を生産関係とした階級社会に外ならない。にも拘わらず日本の労働者の大部分はこの点を十分に理解していない。その点の証拠としては、今日の日本人の8割から9割の人達は労働者階級に属すると考えられるが(中小企業者もサラリーマンも労働者とみなす)真に労働者のためを思って活動する政党はきわめて弱小なそれとしか捉ええないことである。私が本稿で批判したいと思うのは、知性なき労働者大衆である。戦争中も戦争指導者に抵抗もせず、そのいい分に唯々諾々として従った日和見主義的な労働者大衆である。

 戦後は自民党政権の時代が大部分を占める。とくに約40年程以前の中曽根政権の時代には英国のサッチャー政権、米国のレーガン政権のような新自由主義の立場が強調され労働運動が弾圧され、労働者の立場は弱められるようになったが、それにも拘わらず保守党としての自民党は、一時的には勢力を弱体化させることがあったとはいえ、力強くたち直ってきた。現在の安倍政権もかなり右寄りで国家主義的だとの批判を受けながらも50%近い高い国民の支持を受けている。これは何故なのだろうか。それは労働者達の階級意識が稀薄だからに外ならない。自民党政権は表面上は勤労者大衆のための政策を施行しているかにみせつけながら、本質的には支配層としての財界人=資本家層の人々の意向を第一としていることの真相を大衆は見抜けないのである。

 今日の安倍政権の真の意図の輪郭をえがくことは容易であるように思われる。それは第1には日米同盟の強化である。日本の安全保障において最も重要なことは、米国の軍事力に追従していくことである。米国の核の傘に依存していくことである。日本の自衛隊は米軍のもとにおかれ、米軍と共に行動するようにせねばならぬ、と考えている。それ故安倍首相の就任以来の発言は、日本という国家の主体性は全く感じられぬものとなった。日本国憲法の平和主義は明らかに捨てさられている。軍事力をもつ方が安全なのか、軍事力をもたない方が安全なのかについてもっと緻密な議論が必要となろう。私は世界の諸情勢についてもっと緻密な議論をしていかなければ、日本は戦争に巻きこまれる恐れがあると思うが、安倍政権は常に単純な議論ですましている。私はこれを知性主義の放棄であるとみている。そして労働者大衆も安倍政権に追従して知性主義を放棄している。

 次に安倍政権下において各種の格差拡大が報じられている。最も基本的な要素は、労働者層における正規社員と非正規社員との割合において、前者よりも後者の方が拡大傾向にある半面、後者の賃金水準の方が低下傾向にある点が指摘されている。また首都圏のような大都市圏の住民が地方自治体に住む住民に較べて増大傾向にあり、後者は減少傾向にある点が指摘されている。さらに学問研究・教育に携さわる学者、教育者の分野の問題についていえば、相対的に研究費、教育費は削られる傾向にあり、海外の学者、教育者に較べて、日本の学者、教育者の地位、待遇は低下させられる傾向にあることが論ぜられている。

 第3に私が最も懸念するのは、安倍政権が政治的に批判的な論調を展開するような知識人の知性主義を排斥するかの如き姿勢をとっていることである。それは、例えばマスコミに対する言論統制にみられることである。

 私も最近は年金生活者であるので、新聞、テレビをみることが多くなったが、記事の質が低下しているなとか、下らない番組が多いなと思わされることが少なくない。戦時中の軍国主義時代には、ラジオでは軍人や兵士を賞賛するような番組が多かったが、これに丁度対応するように最近のテレビ番組では、芸能人が活躍する番組と、野球、相撲、ゴルフ等のスポーツマンが活躍する番組とが圧倒的に多くなった。芸能人やスポーツマンの番組が悪いわけではないが、国民の関心をこうした方面に向けるということは、支配層の人達、政治家にとっては、安心して身勝手な政治的追求を行いうる、ということを意味するものではなかろうか。芸能活動やスポーツ活動は、労働者大衆の知性の向上にさ程役立つものではないからである。

 現在の日本社会は決してよい方向に向かって動いているとはいえない。否むしろ反対に最近生じている社会的な不祥事をみると、懸念さるべき病理現象もあり、悪い方向に向かっていると考えざるをえない。ここではそれら全てが労働者達の知性の欠如にあると糾弾するわけではない。そうではなくてむしろ労働者大衆に対してもっと誇りをもち知性主義を保持してほしいと鼓舞、激励したいのである。労働者こそが一方では搾取もされているとはいえ、他方では真の意味で社会の生産活動を支える中枢的存在なのである。今立ち上がらなければ、日本は永久に腑抜けの社会になってしまうであろう。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion8733:190618〕

http://chikyuza.net/archives/94604
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/206.html

[政治・選挙・NHK262] 脳〈内閣〉の暴走と免疫システム〈国会、裁判所、メディア、警察etc〉の機能不全 想田和弘 (マガジン9)
映画作家・想田和弘の観察する日々
第74回:脳〈内閣〉の暴走と免疫システム〈国会、裁判所、メディア、警察etc〉の機能不全

By 想田和弘 2019年3月20日
出典「マガジン9:https://maga9.jp/


 私たちの身体には、免疫システムというものが備わっている。

 身体に病原体や寄生虫などが侵入したり、がん細胞などが生じたりしたら、それらを認識して殺してくれる。私たちの身体は、免疫システムの働きのおかげで、病気から保護されている。

 なんでいきなりこんな話をするのかといえば、日本社会の免疫システムが危険なほど混乱・弱体化し、もはや機能不全に陥っているのではないかと感じるからである。

 たとえば、俳優が違法薬物を使用していたという、どう考えても社会(=身体)にとっては極めて小さな「かすり傷」。本来ならば、警察という免疫系の一種がちょっとだけ動き、容疑者を逮捕し、裁判で吟味すれば済むはずである。ところがあたかも大きな癌か何かを見つけたかのように、日本中(=身体全体)がひっくり返るような騒ぎになってしまう。

 その様子は、まるで酷い花粉症か猫アレルギーにかかったような感じだ。

 花粉や猫のフケは、本来ならば人間の身体に害を及ぼすわけではない。しかし免疫システムが混乱すると、それらを重大な外敵であると勘違いし、なんとかしてやっつけようと総攻撃をかけてしまう。そしてその総攻撃が、発疹やクシャミや炎症となって、人間の身体と精神にダメージを与える。

 瑣末な問題を深刻な問題であると勘違いし、全力で排除しようとしてしまう。まあ、それだけならそれほど心配することではないのかもしれないが、その逆も実際に起きているから実にやっかいである。

 つまり、生命を脅かすような病原体を、免疫システムが病原体であると認識することができない。したがって、身体を守るための対応も起動しない。

 そういう例を挙げようと思えば、いくらでも挙げられる。

 たとえば、日本社会の息の根を止めそうになった、福島第一原発事故。免疫システムが正常に作動するなら、同じような事故を起こしかねない日本各地の病原体(=原発)など虱潰しに廃止させたであろう。ましてや再稼働させようなんて選択は、到底しないはずである。

 たとえば、立憲主義という日本社会の免疫システムの重要な系統を弱らせてしまう、秘密保護法や安保法。免疫システムが正常に作動するなら、自らを弱らせる病原体や、病原体を植え付けようとする勢力は排除しようとしたはずである。

 たとえば、日本経済に筋肉増強剤を投与するような、アベノミクス。免疫システムが正常に作動するなら、恐ろしい副作用が身体を蝕むことに身体そのものが警告音を鳴らし、ボロボロになるまえにやめさせるはずである。

 たとえば、アベノミクスの失敗をごまかそうとして行われたようにみえる、統計不正。免疫システムが正常に作動するなら、身体の状態を誤って伝える細胞があるならば、速やかに排除するはずである。

 問題は、脳(内閣)が身体のあちこちに病原体や癌を生じさせても、国会や裁判所やマスメディアや警察などといった免疫システムが適切に反応せず、スルーを決め込んでいることである。その代わりに、あるいはその反動として、花粉や猫のフケを排除することに躍起になっている。

 だが、それ以上に問題なのは、そういう脳の暴走や免疫系の機能不全に、「身体そのもの」であるはずの主権者が、いつまで経っても気づこうとしないことだ。

 働きすぎで、自分の身体の中で進行中の病気に気づく暇もないのであろうか?

 あるいは、後で突然末期癌を宣告されたときに、敗戦時のように「だまされたー!」と一億総出で文句を言うのであろうか?

 そうなる前に、伊丹万作が敗戦直後に書いた言葉を改めて記しておきたい。あたかも現代人に対して発した言葉のように思えてしまうからだ。

 だまされたということは、不正者による被害を意味するが、し
かしだまされたものは正しいとは、古来いかなる辞書にも決して
書いてはないのである。だまされたとさえいえば、一切の責任か
ら解放され、無条件で正義派になれるように勘ちがいしている人
は、もう一度よく顔を洗い直さなければならぬ。
 しかも、だまされたもの必ずしも正しくないことを指摘するだ
けにとどまらず、私はさらに進んで、「だまされるということ自
体がすでに一つの悪である」ことを主張したいのである。(略)
 また、もう一つ別の見方から考えると、いくらだますものがい
てもだれ一人だまされるものがなかつたとしたら今度のような戦
争は成り立たなかつたにちがいないのである。
 つまりだますものだけでは戦争は起らない。だますものとだま
されるものとがそろわなければ戦争は起らないということになる
と、戦争の責任もまた(たとえ軽重の差はあるにしても)当然両
方にあるものと考えるほかはないのである。
 そしてだまされたものの罪は、ただ単にだまされたという事実
そのものの中にあるのではなく、あんなにも造作なくだまされる
ほど批判力を失い、思考力を失い、信念を失い、家畜的な盲従に
自己の一切をゆだねるようになつてしまつていた国民全体の文化
的無気力、無自覚、無反省、無責任などが悪の本体なのである。
 このことは、過去の日本が、外国の力なしには封建制度も鎖国
制度も独力で打破することができなかつた事実、個人の基本的人
権さえも自力でつかみ得なかつた事実とまつたくその本質を等し
くするものである。
 そして、このことはまた、同時にあのような専横と圧制を支配
者にゆるした国民の奴隷根性とも密接につながるものである。

(伊丹万作『映画春秋』創刊号・1946年8月)

https://maga9.jp/190320-2/
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/207.html

[政治・選挙・NHK262] アベノミクスがもたらした格差・貧困への怒りを投票行動に(澤藤統一郎の憲法日記)
 
参院選が近い。総選挙との同日ダブル選はなくなった模様。
政権としては、「どうせこのままでは支持率はジリ貧。すこしでも勝てる見込みがあれば、今のうちにダブル選挙」だったであろうが、そこまで踏み切れなかったということだ。6月26日で今通常国会の会期を終了し、G20終了後の7月4日公示で、同月21日投開票がほぼ確定と伝えられている。

この参院選は日本国憲法の命運を左右する。自・公・維の改憲派議席を3分の2以下に押し込むことができれば、「安倍改憲」のもくろみは当面ついえることになる。何しろ、今が改憲派にとっての千載一遇のチャンスなのだ。このチャンスは、「安倍が首相でいるうち」「両院に改憲派議席が3分の2あるうち」のこと。参院選は、これを突き崩す護憲派のチャンス。

安倍自民は、「日本の明日を切り拓く」「令和新時代・伝統とチャレンジ」とのキャッチフレーズを掲げた上で、参院選公約として下記の6本の柱を建てている。
(1)力強い外交・防衛
(2)経済成長と所得引き上げ
(3)誰もが安心、活躍できる人生100年時代の社会保障
(4)最先端をいく元気な地方
(5)復興と防災
(6)憲法改正を目指す

6番目の柱の「憲法改正」だが、どの世論調査でも「安倍内閣での憲法改正には反対」が国民多数の世論である。与党が、改憲公約を前面に掲げて選挙ができる環境にはない。これを承知で、選挙戦での安倍自民の強調点は、「経済成長と所得引き上げ」の柱に寄り掛かることになる。

「圧倒的な国民には受益の実感がない」「むしろ格差を拡大してきただけ」「企業のための雇用条件切り下げではないか」と言われながらも、政権は数字をつまみ食いしてアベノミクスの効果を語り続けてきた。

「経済政策で票を集めて、獲得した議席で改憲を実現する」というのが、年来の安倍政権の改憲戦略。今回もそうせざるを得ないのだが、「経済政策で票を集める」ことが困難になりつつある。政権が選挙戦では頼みにしているアベノミクス効果が息切れし、崩壊寸前なのだ。

昨日(6月18日)の朝日に、「年収200万円未満が75% 非正規のリアルに政治は」「非正社員が働き手に占める割合は過去最高水準」という記事。あらためて、アベノミクスがもたらした国民生活の実態に驚かざるを得ない。これが、アベノミクス6年の「成果」の内実なのだ。

記事は、こう始まる。

  「全都道府県で1倍超の有効求人倍率、高い大卒の就職率、歴史的な低失
  業率――。安倍政権は『アベノミクスの成果』として雇用の指標をよく語
  ります。でも、非正規雇用が10人に4人にまで増え、そのほとんどの年
  収が200万円に満たないことはあまり触れられません。安倍晋三首相が
  『非正規という言葉を一掃する』と言いながら、歯止めなく増え続ける非
  正規雇用も、参院選での論点になりそうです。


そして、就職氷河期を経験した非正規労働者の具体例を挙げて、こう言う。

   安倍政権はこの春から、「働き方改革」の新制度を順次導入している。
  ただ、高プロのように働き手のニーズというよりも、企業目線、経営者目
  線で生産性の向上をめざす改革が際立つ。

   首相があまり触れない数字もある。非正規雇用だ。この6年間で約300
  万人増え、2018年10〜12月は2152万人になった。首相は「非
  正規という言葉を一掃する」と宣言したが、働き手に占める非正規の割合
  はいまや38%を超え、過去最高の水準にある。

   総務省の2017年調査では、非正社員の75%は年収200万円未満。
  「働いても働いても生活が豊かにならない」、いわゆるワーキングプアに
  当てはまる。女性だけだと比率は83%に達する。

   氷河期世代に象徴される非正規雇用が増え続けるのは、企業が人件費を
  抑えようと正社員よりもパートやアルバイトを雇ってきたことがある。加
  えて、1990年代後半以降、自民党政権が企業の求めに応じて派遣労働
  などの規制緩和を進めたことも背景にある。

   平均賃金を上昇させるには、際限なく増え続ける非正規雇用に歯止めを
  かけることが欠かせない。目先の看板施策にこだわる今の政権にそうした
  機運は乏しい。直近では、最低賃金の大幅な引き上げを求める政府内の声
  が、企業側の強い反対でかき消された。

   この先、多くの外国人労働者が「特定技能」の資格で入ってくると、平
  均賃金はさらに伸び悩む恐れがある。


偶々、海外ニュースで目に留まったのが、スイス各地で行われた6月14日の女性労働者のストライキ。男女間の賃金格差是正や職場でのハラスメント根絶を求めての、ストライキ参加者は計50万人にのぼるという。スイスの全国人口は800万余。日本に当てはめれば、500万人を遙かに上回る規模のストライキとなる。

虐げられている者が声を上げ、立ち上がらねばならない。香港でも韓国でも、民衆の力が政治を変えることを教えている。日本でも、そうありたい。まずは、この不満を参院選で表したい。投票による「反安倍」「反自公」「反アベノミクス」「反改憲」の意思表示を。
(2019年6月19日)

http://article9.jp/wordpress/?p=12817
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/217.html

[政治・選挙・NHK262] アエラの記事について(山本太郎オフィシャルブログ)
2019-06-20 15:09:03

先日取材を受けたアエラの記事は、
現在の私のスタンスを簡潔にまとめて下さった良記事だと感じました。
改めて、感謝申し上げます。
https://dot.asahi.com/aera/2019061800020.html

一方で、この記事に書かれた内容が一部、
炎上していると聞きました。

不安を感じた支持者などからお問い合わせがありましたので、
お答えいたします。

炎上のポイントは、
【政策の一部を実現するために、自民党と組む】
という部分。

この話の前提は、「選挙後」です。
選挙後に、政策を進めるためには手を組むこともあり得る、
という内容です。

政策ベースで手を組むことは、
院内の活動においては普通の話であり、全ての政党が、
政策を前に進めるために行っている仕事です。

「政策ベースで手を組む可能性」、について、アエラの記事ではまるで、
選挙前にも手を組むかのような印象を与えるものになっています。

アエラ記者の私への「振り」の部分も、
記者自身が「選挙後」と、ハッキリ前提にしています。

以下、取材時の音声です。
ご興味あればお聞き下さい。
http://www.taro-yamamoto.jp/wp-content/uploads/2019/06/AERA-190612_1705.mp3

お聞きいただいた通り、
インタビュアが「選挙後」と聞いているにも関わらず、
記事には選挙で手を組む、との印象を与える内容になっています。
非常に残念です。

とはいえ、こちらにも落ち度はあります。
原稿チェックを要求していましたが、
ほぼ完成原稿として短い時間での返信を求められていた結果、
疲労困憊のなかで、修正に力を注げず、
ほぼノーチェック状態で返してしまったことは、
反省すべきところです。

どのような取材であっても、必ず全編音声を録音しています。
今回はその一部を公開することで、
皆さんの疑問に答えられると思い、
このような形を取らせていただきました。

おわり

https://ameblo.jp/yamamototaro1124/entry-12483648484.html
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/237.html

[政治・選挙・NHK262] 原発ゼロ政策「与党と違い」福島で国民・玉木氏(河北新報)
2019年06月18日

 国民民主党の玉木雄一郎代表は17日、福島市で記者会見し、夏の参院選で同党が公約に盛り込み、福島選挙区(改選数1)に立候補予定する野党統一候補も訴えている「原発ゼロ」政策に関し「与党との大きな違いだ。与党はゼロは掲げていない」と強調した。

 同党は今回の公約に「2030年代の原発ゼロ」を入れた。玉木氏は「山の登り方や登るスピードに多少の違いはある」と実現時期を巡る野党間の隔たりを認めた上で「原発に依存しない社会をつくることで各野党は一致している。大きな争点の一つだ」と語った。

 玉木氏は17日、農業現場の視察で福島県入りした。

https://sp.kahoku.co.jp/tohokunews/201906/20190618_61026.html
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/244.html

[政治・選挙・NHK262] 山本太郎「消費税廃止が、野党とこの国に残された唯一の活路である」 その現実味を語った (現代ビジネス)
山本太郎「消費税廃止が、野党とこの国に残された唯一の活路である」
その現実味を語った

時任 兼作 ジャーナリスト
現代ビジネス 2019.06.20

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■「寄付2億円」の原動力

「『憲法の重要性』とか『立憲主義』みたいな話って、多くの方には残念ながら、響かないと思うんですよね。目の前の生活でそれどころじゃない。今月を乗り切れるかどうか。それなら野党は、こうやって皆さんの暮らしを楽にします、と提案できなきゃ。

第二次安倍政権が誕生してから、野党が今日まで負け続けてきた理由は、経済政策が弱すぎたこと。そこに尽きると思う。

なぜなら、例えば与野党が安保法制や特定秘密保護法で激しく対立した時、世論調査では『自民党、ちょっとやり過ぎだよね』という答えが圧倒的に多かったわけです。そんなことが何度もあったにもかかわらず、6年間の間に5回選挙をやって、すべて野党は負けたわけですよね。その現実と向き合わなきゃならないですよ。

理由は何か。野党はよく財政再建、財政規律と言いますよね。ですが、それを実際にやろうとすると何が起こるかと言ったら、財政カットと増税がセットになるわけです。要するに、『我々が勝ったら、今より生活が苦しくなります』と国民に宣言しているようなものですよね。

20年以上もデフレが続くこの状況でそんなことをやったら、本当にこの国は壊れてしまう。そういう民意に野党が寄り沿わないのは、ちょっとあまりにも状況が飲み込めていないんじゃないでしょうか」
 
この男、左なのか右なのか。その言動は本気なのか、パフォーマンスに過ぎないのか。一般国民に寄り添う庶民派なのか、それともポピュリストか――。

いま日本政界でもっとも毀誉褒貶の激しい政治家、それが山本太郎だろう。

https://gendai.ismedia.jp/mwimgs/6/d/640m/img_6d0634004dadc5dbd2d83d79d202ec2d241802.jpg

この7月の参院選が初めての改選選挙となる。4月、新元号の発表直後に、それまでの自由党を離党し、師である小沢一郎のもとを離れて政治団体「れいわ新選組」を一人で立ち上げた。5月末には、北朝鮮による拉致被害者家族として知られる蓮池透が山本の仲間に加わり、参院選出馬を表明している。

冒頭の言葉の通り、山本の発言は既存の政治の枠にはまらない。野党主流派とも、もちろん自公政権とも異なるその言葉が、いま急速に支持を伸ばしつつある。「れいわ新選組」に集まっている寄付金は6月中旬現在、2億円に達しようとしている。

他の野党にない求心力を生んでいるのが、「消費税廃止」の提言である。

■消費税をなくしたら、どうなるか

「ここまで国民が疲弊している中で、一番わかりやすい経済政策を掲げよう、と考えました。消費税なら、たいてい誰でも払っているし、自分ごととして捉えられる。『消費税を5%に減税』『将来的には廃止』を野党が一致して訴えれば、『野党が勝てば物価が下がりますよ』と言うのと同じです。

街頭演説、フィールドワーク、いろいろなところで格差の拡大、困窮している方々の現実を感じています。どうしてここまでひどい状況になったのか。やっぱり国による人への適切な投資が、この数十年間なされてこなかったんだと思うんです。

20年以上に及ぶデフレ、これは紛れもなく国の誤った経済政策の結果でしょう。一方で今の政府の、デフレ脱却を謳いながら一向に実効性がない政策も当然ダメ。要は、世の中にお金が回るようなことをしなきゃならない。

デフレで一番奪われたもの、それは消費と投資です。消費が弱まれば投資だって弱まるわけだし、表と裏ですよね。そんな当たり前のことが忘れられて、消費が弱り続けているなら、そりゃみんな貧乏になるわな、と。

じゃあ、緊急的にやらなきゃいけないことはなんだろうと考えたら、強制的な物価の引き上げ、つまり消費増税を止めること。それをしなきゃならない。

強制的に物価を上げるけれども賃金は上がらないから、実質賃金は落ちる。生活が苦しくなるのは当たり前ですよね。だからまず、この増税による強制的な物価の引き上げ、平成からずっと続く間違った経済政策、これを止めるべきだということです」

とはいえ、消費税をなくして国の財政が成り立つのかという疑問は誰の頭にも浮かぶ。山本は、こう続ける。

「もし8%の消費税を廃止した場合、初年度には5%と少しくらい物価が落ちて、そこからは順調に物価が上がるというシミュレーションもあるんです。経済活動が活発になって、物価がちゃんと上がっていくということです。

もちろん消費税をなくせば、あったはずの財源がなくなるだろうという指摘はごもっとも。では何で補うかと考えたとき、2通りやり方がある。ひとつはスタンダードなやり方、税で回収する。もうひとつは新規国債の発行です。特に税に関していえば、消費税の導入前に戻る必要があるだろうと。所得税と法人税を再びメインにして、さらにそれらの累進性も強めるべきですね。

https://gendai.ismedia.jp/mwimgs/3/5/640m/img_35bffe1c0325a18c1dbf9cfca7dcef67198752.jpg

逆に言うと、今までは消費税が導入されて所得税と法人税が下げられてきた。最初は直接税と間接税のバランスの是正、つまり直間比率の是正が理由だったはずが、いつの間にか社会保障や財政再建を名目にして、どんどん消費税率が上がるという話になっている。ありえないですよ、はっきり言って。意味がわからない」

■野党の中の空気感

消費増税の是非、さらに消費税そのもののメリットとデメリットについては、経済学者の間でも百家争鳴である。筆者は山本の主張がどれだけ的を射ているかをあえて判断するつもりはないが、いずれにしても、こうした大胆な政策提言が、山本が身を置く野党のあいだでも物議をかもしていることは確かなようだ。

自由党を飛び出した背景にも、この消費税をめぐる政策論争、ひいてはこの参院選をいかに戦うかに関する野党間のお家事情があった、と山本は言う。

「小沢(一郎)さんがずっとおっしゃっていたのが、『野党が固まらなきゃ勝てない』と。それは私も異存がなくて、選択肢が多くなればなるほど票は分散してしまう。それで結局、一つ一つの党が考えていることを掘り下げる暇もなく、より露出が多い党に票が流れてしまう。そうなったら与党が勝つのは当たり前ですよね。だから極力選択肢を少なくして、AかBかの戦いにするのが一番だと。

それはわかるんですが、しかし野党の合流に関していうと、『独自でやります』というグループもある。特に今は、野党第一党である立憲民主党がその『独自グループ』になっていますから、それ以外の例えば自由党や国民民主党が固まったところで、これはなかなか厳しいだろうと。

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私はただ野党が集まるだけでは弱いと思うし、そこに政策、特に多くの国民が今直面している問題を掬いあげるような政策が必要だと思う。その軸になりうるのが消費税なんですね。勝ちに行くのなら、誰もが当事者として意識できることを旗として掲げなきゃまずいということで、私は飛び出すことに決めたんです。

小沢さんには『誰にも理解されない可能性が高いぞ』『野党がこれから一緒になろうという中で、別グループを立ち上げるということは、君の政治生命をかける戦いになるな』と助言いただきました」

野党の共通政策として消費税廃止を目指す。まずは5%に減税する――。4月の立ち上げ会見で、「これを野党共通政策にできるなら、自分の旗はいつ下ろしてもいい」と述べた山本。しかし、その言葉に追随する野党勢力の動きは、今のところ鈍いと言わざるを得ない。

「私は今、無所属で国民民主党の会派に入れてもらっている状態ですけど、先輩方とお話をすると、びっくりするぐらい真面目というか。いい意味でも悪い意味でも……政権を取ったら言うことが180度変わる、というような狡猾な人たちじゃないんですよ。やはり民主党政権時代に、自分たちが消費税を上げた責任があると感じていらっしゃる方が多い。

やはり話していると、『消費税をちゃんと社会保障分野の財源にすべきだ』という話になるんですね。しかしそもそも今の政権は、消費税の税収増分を社会保障に16%しか使わず、あとは借金返済とかに使いましたという間抜けな状況ですよ。みんなからお金を搾り取って借金返済したら、その分世の中からお金がなくなるだけですよね。だったらそこを突いて戦えばいいのに、と僕は思ってるわけですよ。

まあ、こういう話をしていると、国民民主党の玉木(雄一郎)代表が『減税という選択肢もなくはない』とおっしゃったりとか……もちろん私じゃなくて周囲の影響かもしれませんが、こうして極端なことを言い続ければ、徐々にみんなこっちに近づいてきてくれるんじゃないかと(笑)」

■自分を左派とは思わない

安倍政権が長期にわたり緩和政策をとる中、日本の政界では「左派で反緊縮」のポジションが不在だと言われて久しい。そうした中で、オカシオ=コルテスやサンダース、コービンといった、近年人気を伸ばしている欧米の左派を参照することはあるのだろうか。

「英語が読めないので(笑)。読めれば、彼らが言っていることをパクったりできたんですけど。ただ、もともと欧米の左派と呼ばれる人たちが財政出動を声高に言っていることは知っていたので……日本の場合は、それを与党に持っていかれたということですよね。

自分自身は『左派』と呼ばれることに対してちょっと抵抗があります。右派も左派もなくて、自分はフリースタイルだと思っている。どうしても右派とか左派とかいうと分断が生まれちゃうんですけど、もうそういう状況じゃない、上下だと。

左右ではなく上下。1%と99%の戦いだ、というところでやっている。それにしても本来ならば、人々の生活を底上げするために積極的にいろんな政策を駆使するのが、世界標準の左派だろうとは思いますけどね」

増税に関する3党合意を実現した元首相の野田佳彦は、先に触れた玉木の「消費税減税」発言に関して「ポピュリズムの極致」と批判している。反論はあるか、と尋ねると背筋を伸ばして、こう答えた。

「財務省の代理人みたいな人に何を言われてもピンとこないですね、ええ。国民が困窮していて、もう底が抜けそうな中で、生活を底上げする政策を唱える人間をポピュリストとしか呼びようがないのだったら、そうです私がポピュリストです、と言わせていただきたいですね」

「令和の時代に、新たに選ばれる者」との意味を込めて立ち上げられたという「れいわ新選組」。その消長が気にかかる。

(文中敬称略。写真/西崎進也)

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/65301
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/263.html

[政治・選挙・NHK262] 「マクロ経済スライド」を廃止して、減らない年金とすることがバカげた提案か。これを続けることがバカげた政策か。 (澤藤統一郎の憲法日記)
 
昨日(6月19日)の党首討論。正確には、「国家基本政策委員会合同審査会」というそうだ。メディアは注目しなかったが、志位和夫(共産党委員長)と安倍晋三との「討論」を振り返ってみたい。
以下が、その「討論」の議事速報(未定稿)からの引用である。本日の赤旗紙面には、おそらく発言のとおりの、もっと詳細な文字起こしが掲載されている。これによれば、安倍晋三の発言は、この議事速報のように滑らかなものではない。つっかえ、つっかえのよれよれ発言。

○志位和夫君
  金融庁が、夫婦の老後資金として公的年金以外に三十年で二千万円が
 必要との報告書を公表したことが年金への不安を広げております。年金
 への不安は、これにとどまるものではありません。マクロ経済スライド
 による給付水準の引下げという大問題があります。
  直近の公的年金の財政見通しによれば、マクロ経済スライドは、現在
 四十一歳の人が六十五歳で年金を受け取れるようになるまで続き、これ
 によって、受け取れる年金の水準は、平均的な高齢夫婦世帯で月額四万
 三千円、三十年間で約一千六百万円も減らされます。
  先日の参院決算委員会で、我が党の小池晃議員がマクロ経済スライド
 はやめるべきだと求めたのに対し、総理は、年金は給付と負担のバラン
 スで成り立っている、やめてしまうというのは無責任でばかげた政策と
 言いました。
  しかし、今でさえ老後の生活を支えられない貧しい年金を、マクロ経
 済スライドを続けて更に貧しい年金にしてしまうことこそ、私は無責任
 でばかげた政策と言わなければなりません。
  マクロ経済スライドを中止しても、給付と負担のバランスをとる手だ
 ては幾つもあります。私は、その手だての一つとして、高額所得者優遇
 の保険料のあり方を正すことを、きょうは具体的に提案いたします。
  今の年金保険料は、月収六十二万円、ボーナスを含め年収で約一千万
 円を超えますと、保険料負担がふえない仕組みになっています。年収が
 約一千万円の上限額を超えますと、二千万円の人も、一億円の人も、み
 んな保険料は同じ、年間九十五万五千円です。
  そこで、提案でありますが、約一千万円のこの上限額を、健康保険と
 同じ約二千万円まで引き上げる。そのことによって、約一・六兆円の保
 険料収入がふえます。その際、アメリカでやっているように、高額所得
 者の年金給付の伸びを抑制する仕組みを入れる。そうすれば、それによ
 る給付増分を差し引いても、毎年約一兆円の保険料収入をふやすことが
 できます。この一兆円を、マクロ経済スライドをやめ、減らない年金に
 する財源に充てる、これが私たちの提案であります。
  総理に端的に伺います。
  年収一千万円を超えますと、保険料がふえなくなる高額所得者優遇の
 保険料のあり方、これは正すべきではないですか。端的にお答えくださ
 い、正すかどうか。

 問題点の指摘、制度改正の提案、そして質問の内容。すべて、明瞭で具体的である。要約すれば、「給付額不十分な年金制度をさらに切り下げるのがマクロ経済スライド。これを廃止して金額が下がらない年金給付とすべきだ。マクロ経済スライドの廃止に代わる財源確保措置として、現行の高額所得者優遇の保険料のあり方について見直しを提案する。(高額所得者優遇の保険料のあり方)を正すか、どうか。」ということ。時間がない中で「質問に、端的にお答えください」は当然のこと。

保険料を納付し給付を受ける立場の全国民が、こぞって耳を傾けたくなる質問ではないか。これに対する安倍の回答は、いく通りか考えられる。

想定回答その1は、「現行の高額所得者優遇の保険料のあり方は、やはり問題があると思いますので、正します」というもの。こうすれば、安倍政権の人気は急上昇の可能性があった。別に、高額所得者に犠牲を強いるという策ではない。高額所得者優遇措置を改めるというだけ。その結果として「非高額所得者層」の年金給付額を増やす(あるいは減らさない)ことができるのだ。

想定回答その2は、「現行の高額所得者優遇の保険料のあり方は変更することなく維持します」というもの。こうすれば、安倍内閣の人気は落ちるが、自ずと、政治姿勢や基本理念の対決点が明らかになる。ここを議論の出発点として、意見交換が始まることになる。

あるいは、どちらとも明確にせず、曖昧なままとする想定回答その3もありうる。たとえば、「政策の理念には賛同しますが、階層間の利害の調整は容易なことではありません。今後の課題として検討させていただきます」など。いわゆる、リップサービスだけの実質ゼロ回答。

さて、安倍の回答は、以上の想定回答のどのパターンだったか。驚くべし。どれでもないのだ。聞かれたことに答えない、いつもの不誠実極まる安倍晋三流。

○内閣総理大臣(安倍晋三君)
  この議論で大変残念なのは、先ほどの党首の議論で、年金のいわば積
 立金が枯渇するというときに拍手が起こったことであります。
  私は、そういう議論はすべきではないですし……(発言する者あり)
○会長(佐藤勉君)
  お静かにお願いします。
○内閣総理大臣(安倍晋三君)
  テレビを見ている方々がおられますから……(発言する者あり)
○会長(佐藤勉君)
  静かにしてください。
○内閣総理大臣(安倍晋三君)
  大切なことも述べなければいけないわけでありまして、基礎年金の
 運用については、四十四兆円プラスになっているということははっき
 りと申し上げておきたいと思いますし、マクロ経済スライドについて
 の御質問でございますが、マクロ経済スライドについても、先ほど来
 お話をさせていただいておりますように、これは平均寿命が延びてい
 きますから、給付はふえていく。そして、生産年齢人口が、ふえてい
 きますから、当然、これは被保険者は減っていく。その分を調整して
 いく、そうしたファクターを調整していく数字によって、将来の受給
 者の所得代替率を五割を確保していくというものでありまして、それ
 が今発動されて、しかも、それが〇・九から〇・二になったというこ
 とは、まさに改善したということを申し上げているわけでありまして、
 先ほどさんざん毀損されましたが、そのことをはっきりと申し上げて
 おきたいと思います。
  その上において、共産党の主張は、マクロ経済スライドを廃止して、
 その上で、なおかつ将来の受給者の給付が減らないようにする上にお
 いては、これは七兆円の財源が必要でございます。皆さんはその財源
 がある、こうおっしゃっています。七兆円というのは巨大な財源であ
 ります。巨大な財源があるというのは、これはかつて聞いたことがあ
 るような話でございますが、それはそう簡単には出てこないわけでご
 ざいます。
  いずれにいたしましても、私たちは、このマクロ経済スライドとい
 う形において、今の形で、マクロ経済スライドの形において、それを
 発動させていくことによって今の受給者と将来の受給者のバランスを
 図っていく、あるいは将来の給付と負担のバランスを図っていきたい、
 こう考えておりますが、今、志位委員がおっしゃった御提案について
 は、これはまずはちゃんと検証しなければ、その数字は明らかでない
 わけでありますし、一兆数千億円で賄えるものではなくて、七兆円と
 いう、全く枠が違うわけでありますから。
  いずれにいたしましても、マクロ経済スライドをやめてしまうとい
 う考え方は、もう一度申し上げますが、これはばかげた案だと思います。
 ○会長(佐藤勉君)
  時間が参っておりますので、簡潔にお願いいたします。

こりゃなんじゃ。「端的にお答えください」とされた質問は、「高額所得者優遇の保険料のあり方を正すのか、どうか」ということ。これにはまったく答えようとせずに、他党党首との論争を持ち込み、「マクロ経済スライドをやめてしまうという考え方は、これはばかげた案だと思います。」と締めている。あ〜あ。議論するのが虚しくなる手合いなのだ。時間がない。最後の志位発言は次のとおりである。

○志位和夫君
  私は、減らない年金にするための具体的提案をやった。それに対する
 お答えは一切ありません。七兆円というのは、私たちの暮らしを応援す
 る政策のパッケージでやる財源の問題なんです。この問題……
○会長(佐藤勉君)
  時間が参っておりますので、終わりにしてください。
○志位和夫君
  マクロ経済スライドをやるということは、今の年金の水準を六割から
 五割に、現役世代との所得代替率を減らすわけでしょう。これは減って
 いくんですよ。
○会長(佐藤勉君)
  時間です。
○志位和夫君
  私は、今政治に求められているのは、貧しい年金の現実を直視して、
 安心の年金に変えるための責任を果たすことだ、報告書を隠蔽するこ
 とじゃないということを申し上げて、終わります。
○会長(佐藤勉君)
  これにて志位君の発言は終了いたしました。

安倍晋三という人物。まともな議論をする能力のないことを、政治家としての強みとしているのだ。

それでも、短い時間に、これだけは浮き彫りになった。

「今でさえ老後の生活を支えられない貧しい年金を、マクロ経済スライドを続けて更に貧しい年金にしてしまうことこそ、私は無責任でばかげた政策」というのが、志位和夫の共産党。

「自動的に年金給付額を減らす『マクロ経済スライド』を廃止せよ。そのための財源を真剣に検討せよ」という提案を「もう一度申し上げますが、これはばかげた案だと思います。」というのが安倍晋三。

これが、一握りの「高額所得者層」と、圧倒的多数の「非高額所得者層」との、それぞれの利益代表の「討論」なのだ。どちらに軍配を上げるべきかは、有権者の選択となる。自分に不利な政党選択をすることのなきよう、お間違えなく。
(2019年6月20日)

http://article9.jp/wordpress/?p=12821
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/267.html

[政治・選挙・NHK262] 県民投票の結果を反映するために 問われる日本の民主主義と報道姿勢 (朝日新聞社 論座)
県民投票の結果を反映するために
問われる日本の民主主義と報道姿勢

元山仁士郎 「『辺野古』県民投票の会」代表
論座 2019年06月20日 より無料公開部分を転載。

■ウチナーンチュの力と憤り

https://image.chess443.net/S2010/upload/2019061700008_2.jpg
沖縄県民投票で反対多数の一報を受け、記者の質問に答える元山仁士郎さんら=2019年2月24日、那覇市

 「県民投票は、予想外のことだらけだった」

 2月24日の投開票が終わってから、記者の方々が私や私の周りの人々に語った言葉だ。予想外だったこととは、後述する、投票率、得票数、署名数の三つを指していた。今回の沖縄県民投票は、沖縄や日本の人々だけでなく、記者たちの姿勢が問われたものにもなった。

 沖縄県民投票の設問は「普天間飛行場の代替施設として国が名護市辺野古に計画している米軍基地建設のための埋立て」について。結果は、投票率52.48%。投票総数60万5385票のうち、反対が43万4273票(71.74%)、賛成が11万4933票(18.99%)、どちらでもないが5万2682票(8.7%)であった。

 この結果は、県民投票条例第10条に規定されている「4分の1の壁」を超えられた点で、まずは成功と言える。同条では、賛成、反対、どちらでもない、のいずれか多い数が投票資格者総数の4分の1(28万8400人)に達したときは、知事は投票結果を尊重し、かつ首相と米大統領に通知すると定められていた。また、過去最多得票であった玉城デニー候補の票数(39万6632票)を上回るかどうかが一つのメルクマールとされていた。その中で反対票が玉城候補の得票数を上回ったことは、結果にさらなる重みを与えたと感じている。

 さらに、低投票率が懸念されていた中で、投票率が50%を超えたことには沖縄県民の底力を感じた。2018年11月28日には、菅義偉官房長官は県民投票の結果が移設工事に影響することは「まったくない」と述べていた。埋め立て工事を推進する国側、現場で作業を進める防衛省・沖縄防衛局は、県民投票に向けた討論の場に出席せず、説明責任を果たそうとしなかった。結果が出た後に、いつものように国側は「丁寧に説明する」と繰り返しているが、その絶好の機会であったはずの県民投票でなぜ説明責任を果たそうとしなかったのか、大いに疑問である。

 埋め立てを容認する立場にいる沖縄の自民党は全くと言っていいほど表に出なかった。また、沖縄の公明党や日本維新の会は移設反対の立場だが、静観していた。こうした雰囲気の中で、多くの人が投票所に足を運んだと私は見ている。「県民の心が一つになれば、想像をこえる大きな力を発揮する」。昨年8月に急逝した翁長雄志前沖縄県知事が病室で息子に語った言葉だ。条例制定のための署名数もさることながら、投票結果にもこの大きな力を感じた。

 しかし、このような結果にもかかわらず、県民投票の翌日から埋め立て工事は続いている。岩屋毅防衛大臣は3月5日の参議院予算委員会で、県民投票の結果にかかわらず、事前に工事を続ける方針を決めていたと明らかにした。「あらかじめ事業については継続すると決めていた。総理(安倍晋三首相)への報告は逐次行い、了解をいただいていた」とも説明した。

 「主権が国民に存する」この国で、こんなことがあり得るのだろうか。岩屋防衛大臣は、2月26日の記者会見で「沖縄には沖縄の、国には国の民主主義がある」と言ったが、沖縄は日本ではないということなのか。日本政府・現政権の対応に、強い憤りと悲しさを感じるとともに、声をあげない日本に住む人々への不信感が募る。日本は「民主主義」という価値を本当に大事にしているのだろうか。日本にとって民主主義とは一体何なのだろうか。疑問ばかりが頭に浮かんでいる。

■私の1年より、沖縄の50年

 私が県民投票への模索を知ったのは一昨年2017年の11月9日だった。大学の学部の頃にお世話になっていた成蹊大学法科大学院の武田真一郎教授から県民投票の話を聞いた。端的に言うと、知事の埋め立て承認撤回を後押しするために県民投票が必要だという説明を受けた。武田教授は沖縄県を支援する全国の行政法研究者や弁護士からなる辺野古訴訟支援研究会のメンバーの一人でもあり、2000年に徳島市で行われた吉野川の可動堰計画の是非を問う住民投票の経験も持っていた。

 辺野古新基地建設をめぐる県民投票の議論は2016年から行われていたが、発議権を持つ知事や議員からはなかなか具体的な動きは起きず、かつ知事や議員が動いたのでは政治的≠ニみなされかねないことから、県民が主体となる必要性を説かれていた。私は、武田教授から話を聞くまで中学・高校の授業で習う程度の直接請求の知識しかなかったが、教授の言う法的な意義だけでなく、歴史的・社会的な意義があると直観し、その日から県民投票に向けて少しずつ準備を始めた。

 2017年の12月上旬に「辺野古県民投票を考える会」を立ち上げ、12月27日に那覇市内で勉強会を開催した。やはり県民投票に関心のある市民は多く、100名ほど入る会場が満杯になった。その後は、2018年2月4日に行われた名護市長選挙を見守っていた。稲嶺進氏が3千票余りの差で渡具知武豊氏に敗れ、チルダイ(落胆)ムードに包まれながらも、県民投票の必要性はますます高まっていると感じた。3月4日に勉強会を名護市で開催し、約30名が参加。3月5日には辺野古キャンプ・シュワブゲート前でも勉強会を開き、約100名が説明を聞いた。懐疑的な意見もあったが、説明を受けると納得した表情の人が多いように見受けられた。

 その間、名護市長選挙後には、建設や小売り・流通業などを手がける「金秀グループ」の呉屋守将会長が、翁長知事を支持する「オール沖縄会議」の共同代表を辞任する意向を伝えた。理由は、名護市長選の責任を取るということと、「オール沖縄会議」では県民投票の検討すらされなかったことだった。この報道を受けて私は金秀本社に電話をした。日程の都合がつかず一度断られたが、3月中旬に先方から連絡があり、3月末に面談することとなった。面談ではぜひ一緒に実現しようと賛同いただいた。大学院を休学するかどうか悩んでいたが、この返事で県民投票の実現性が高まったと感じ、休学を決意する後押しとなった。私の1年よりも、50年先の沖縄の人々に活きる共通体験をいまつくりたいと思った。

■世代間の対話と島々の対話

 私が直観した歴史的・社会的意義とは、主に「世代間の対話」と「島々の対話」の二つを指している。

 今回の県民投票は、私の祖父母を含む沖縄戦体験者がいる中で実施できる最後の機会になってしまうかもしれない。私たち若い世代が戦争体験者と改めて話し、沖縄戦/戦争と密接不可分な基地について一緒に考えてほしいと思った。私は祖父母に署名をもらいに行く際に、基地についてどう考えているのか、戦争のときどのような体験をしたのか、話を聞くことができた。また、沖縄の「祖国復帰」を経験している私の親にあたる世代からも、1972年の復帰前後の変化や、当時の望みと現状などについて聞いてほしいと思った。それが「世代間の対話」の目的だ。

 二つ目は「島々の対話」だ。沖縄は大小160の島々から成り、そのうち47島に人々が暮らしている。米軍基地は沖縄本島と呼ばれる島に集中しているが、他の島々の人々は基地に対してどう感じているのかを知りたい、さらに他の島々の問題も知りたいと思った。県民投票を通じて、沖縄の島々で課題を共有し、ともに解決していく一助になればいい。そんな思いから、私自身、八つの島を回り、その島に暮らす住民と話をしながら署名を集めた。条例が制定されてから投票日までの間にも四つの島を回り、県民投票までの経緯や辺野古基地問題の現状、私の思いを伝え続けた。それぞれの島で、人手不足や水不足、医療環境や教育環境の不備といった問題を聞くことができた。それらを沖縄本島での報告の中で話し、私自身がそれぞれの島々・地域を媒介する「メディア」の役割を果たした。

 県民投票のスローガンとして掲げたのは、「話そう、基地のこと。決めよう、沖縄の未来。」。普段、友達や家族とも話しづらい基地について、県民投票を入り口に話してみよう。投票するときは、沖縄の未来を見据えて投票しようという思いを込めた。対話を重ねて、一つの意思を示すことに重きを置いた。そのために、私自身が世代や立場、生まれ育った環境の異なる方々と話す姿勢を見せ続けた。

■新しさとハードル

 昨年4月16日、「辺野古」県民投票の会(県民投票の会)を設立した。これまで勉強会や説明会に来ていただいた方々に声をかけ、立ち上げ時のメンバーは20名ほどだった。その友人・知人と輪が広がり、請求代表者は多いほうが運動が広がると見越して、2012年に直接請求が行われた「東京電力管内の原子力発電所の稼働に関する東京都民投票」の請求代表者31名を上回る33名を集めた。5月1日に沖縄県への代表者証明書交付申請を行い、審査ならびに手続きを経て5月23日から署名集めを開始した。地方自治法第74条に定める条例制定の直接請求には沖縄県の有権者の50分の1である2万3千筆ほどが必要だったが、私たちは有権者の10分の1である11万5千筆を目指して活動を行った。

 沖縄では1996年にも一度、県民投票が行われた。「日米地位協定の見直し及び基地の整理縮小に関する県民投票条例」に基づき、日本で最初に行われた都道府県単位での住民投票である。この県民投票の署名活動と今回の違いは主に三点ある。第一に、市民℃蜻フの運動であったこと、第二に設問がより具体的であること、第三に文字通り全県的な取り組みとしたことだ。

 前回の県民投票は、連合沖縄(日本労働組合総連合会沖縄県連合会)が主導した動きだった。詳しい内容は江上能義・琉球大名誉教授の論文「沖縄の県民投票」(1998年)に譲るが、当時の渡久地政弘会長が先頭に立って傘下の組合員に呼びかけ、街頭署名活動を行った。しかし今回の署名活動は、私のような学生や、弁護士、司法書士、会社役員など既存の政党や団体に依らない市民が始めた。たしかに6月頃から各政党、団体が徐々に協力を表明し、ともに署名集めを行っていたが、主に街頭に立って呼びかけをしたのは若者・市民であった。その新しさ≠ェ輪を広げる原動力となったように思う。

 次に、今回の県民投票では設問をより明確にした。前回の県民投票は、1995年の米兵による「少女暴行事件」を受け、県民総決起大会の要求事項にあった日米地位協定の見直しと、基地の整理縮小を一つの設問に盛り込み、賛否を問うものだった。これには、当時から「抽象的な要求」という批判があった。県民投票の2日後に行われた大田昌秀県知事との会談後、橋本龍太郎首相は記者会見で「地位協定の見直し及び米軍基地の整理・縮小を求める今回の県民投票に込められた沖縄県民の願いを厳粛に受けとめております」と述べた。しかし、「知事さんは、普天間基地の問題を含め、具体的な特定の基地の問題について言及されてはおられません」とも答えている。結果的に「整理・縮小」の名の下に、現在行われている普天間基地の移設/辺野古新基地建設が進められることとなった。こうした前回の県民投票の教訓も踏まえて、今回の県民投票は、沖縄県知事の権限であり、県民が選択できる「埋め立て」の賛否を問い、承認撤回の裁判にも活かせるものとした。

 全県での取り組みは、前述のように、沖縄の島々・地域を回ることで、そこに住む人々の議論を促すことができた。条例が制定されてからも、宮古島、石垣島、多良間島、久米島を回った。後述する市長らの県民投票不参加表明や、ハンガーストライキが注目を浴び、各島々の人々が思考し、議論する環境をつくりだすことができた。

■焦りと広がり、県知事選へ

 署名集めの期間は2カ月間。しかし、1カ月経って集まった署名は5千筆程度と、必要数の2割程度に過ぎなかった。そのことが報じられた翌日から、事務所の電話が鳴り止まず、多くの方から叱咤激励や具体的な協力をいただくようになった。その後、沖縄県内でスーパー約60店舗を展開する金秀商事に協力を打診し、店頭での署名活動を強化するようになった。会のメンバーのみならず、 ・・・ログインして読む
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https://webronza.asahi.com/journalism/articles/2019061700008.html
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/272.html

[政治・選挙・NHK262] 《大阪からファシズム》を伝える 斎加尚代著『教育と愛国』 (ちきゅう座)
2019年 6月 21日
<江口千春(えぐちちはる):手をつなごうみんなが安心できる暮らしネットワーク>

『教育と愛国』という本は、異なる意見を持つ人を攻撃して、脅して従わせる動きが、大阪から広がろうとしていることを具体的に教えてくれる大変貴重な1冊と思います。

著者の斎加尚子(さいか ひさこ)さんは、毎日テレビのディレクター(毎日放送映像取材班)。『映像’17教育と愛国――教科書で今何が起きているのか』(2017年7月)で、第55回ギャラクシー賞テレビ部門大賞を受賞しました。 岩波書店 2019年5月刊)定価1700 円+税

学校と教師に集中砲火を浴びせ脅迫した事例、教育「改革」を首長がダイレクトに指揮する条例に関するページを紹介させていただきます。

維新の会の吉村洋文大阪市長(当時)が、慰安婦を取り上げた平井教諭の授業にかみついてツィートした。

「慰安婦問題を扱うこの教諭は、先の国会で河野外務大臣が『史実に反する』と答弁した事実は生徒に伝えているんだろうか。…公立公務員の教員の授業だ。新文科大臣はこの現状を知ってくれ」と。

そして、さらなる「集中砲火」を浴びせたのは維新などの大阪府会議員らだった。10月の府議会教育常任委員会で、延べ12人もの議員が次々とこの記事に触れて、追及を続けた。例えば

西田薫議員(維新)「(記事が)事実ならば、この教諭は教師ではない、活動家だという方もいました。…この教育公務員が(20年間に)指導した生徒は延べ何人になるんですか」

枡田大阪府教育庁小中学校課長「…7000人から8000人程度と概算できます」

平田教諭の授業内容は日本政府の見解も取り上げ、一方的にならないよう工夫されており、吹田市教委は「不適切ではなかった」と判断した。

にもかかわらず、勤務先の中学校や吹田市教委に抗議の電話が何本もかかり、11月には、差出人不明の脅迫状が届き、京都での校外学習を予定していたのにたいして、卑劣にも「京都で襲撃するぞ」と書かれていたので、校外学習は、急遽中止になった。

彼らが、モデルにした「教育」は、アメリカで展開された、「競争させ」「点数が悪い学校はつぶす」政策。

その手法を最初は支持する人が多かったが…。どうなったのか。著者の斎加尚子さんは、アメリカのブッシュの「ゼロ・トレランス」法案の実施とその破綻を調査しに行きます。そこでその法案を作ってきたニューヨーク州立大学のラヴィッチ教授自身が「あれは失敗だった。日本はまねをしないでくれ」と明白に宣言する様子までを明らかにしていきます。 是非下記動画をご覧になってみてください。

☆「米国流教育の落とし穴」毎日放送映像取材班  YOU TUBEから

https://www.youtube.com/watch?v=SuhjN5cCYRk

初出:「手をつなごうみんなが安心できる暮らしネットワーク」2019.6.18より許可を得て転載

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/

〔opinion8744:190621〕

http://chikyuza.net/archives/94680
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/274.html

[政治・選挙・NHK262] 〈いまごろ丸山眞男か〉という君へ(1) ― 柄谷行人による「丸山眞男の永久革命」を読む ― (ちきゅう座)
スレ主メモ欄(ここはスルーして頂いて結構です)

(1) 日独のファシズムの違い
(2) 民主主義的なワイマール憲法に発する「下からのファシズム」としてのナチズム
(3) 天皇制・軍・国家官僚の強権に発する絶対主義体制としての「天皇制ファシズム」

(4) 二つの戦犯裁判
(5) ナチス幹部は自己の行為の責任を認め、かつ自己の行為の正当性を主張
(6) 日本の戦争指導者は正当性を主張せず、かつ自己の責任を認めず(天皇の命令に従った)

(7) 明治憲法下の天皇は無答責の立憲君主。自ら命令する立場に非ず
(8) 日本の戦争には行為の責任者がいないことに。「無責任の体系」

(9) ファシズムの温床は個人がばらばらのアトム(原子)と化した状態。大衆社会
(10) 事実上半封建的な社会であった戦前の日本も都市化やマスメディアの発展で大衆社会化
(11) 共同体に依存しつつ、その中で浮動する者

(12) 「市民」は「自主的に他者とアソシエーション(結社)を形成する個人」
(13) 市民社会はアトムが集まったのではなく、諸個人のアソシエーション
(14) 民主主義とは、選挙投票や議会制度のようなシステムではない。民主主義は、たえず自主的なアソシエーションを更新する「永久革命」

(15) 明治以後の日本に残る「封建遺制」
(16) 「天皇制とは何か」を問う契機
(17) 暴力だけで持続的な支配は不可能であり、服従する者の積極的同意が必要

(18) 丸山が一貫して追求した「社会主義」を丸山は「民主主義」と呼び、「永久革命」と呼んだ。自主的な諸個人のアソシエーションを創り出すことと同義

****************

〈いまごろ丸山眞男か〉という君へ(1) ― 柄谷行人による「丸山眞男の永久革命」を読む ―

2019年 6月 21日
<半澤健市(はんざわけんいち):元金融機関勤務>

 本稿は、思想家柄谷行人(からたに・こうじん、1941〜)が書いた丸山眞男論の紹介である。紹介する理由は、私はこの論文―正確にはエッセイというべきか―に衝撃を受けたからである。(1)で柄谷論文の要約を行い、(2)でその「衝撃」につて述べることにしたい。私は、丸山眞男や柄谷行人の「熱心な読者」でなく、読書好きな人間として「普通の読者」であると思っている。にも拘わらず、私は柄谷の丸山新解釈が、昨今では希有な問題提起であると感じた。

 柄谷論文は、丸山による戦後初期の政治論文集『現代政治の思想と行動』(1957年、未来社)の中国語版(沈力衛成城大教授訳で2018年刊行)の「序文」として、2016年に書かれた。柄谷は、丸山が「中国でほとんど知られていない」と知り、日本でもそうであろうと考えて、丸山の仕事の「概観」を書こうとした。それを『世界』(2019年7月号)に掲載された本論文の「著者解題」で述べている。

■柄谷行人「丸山眞男の永久革命」の要約
 『現代政治の思想と行動』は、戦後の約10年余の間に書かれた。その時期は二つに分かれる。第一期は、日本占領下であって米国流の民主主義と共産主義思想が併存、対立した時期である。ここで丸山は戦時下のファシズムを論じた。第二期は、講和条約後であって日本経済が復興を始め、ナショナリズムが復活した時期である。丸山は、主に政治と文学を論じた。

《「無責任の体系」のはじまり》
 ファシズムを論じた理由は、当時がファシズム批判と反省の時期だったからである。当時、学会・論壇での批判は、一つはアメリカの民主主義の立場、二つは独占資本と国家の結託とする立場から発せられたものであった。丸山はこれと異なる立場で、日独のファシズムの違いに注目したのである。ドイツ(ナチズム)の場合、ワイマール憲法に発する「下からのファシズム」であり、日本のファシズム(天皇制ファシズム)は、天皇制・軍・国家官僚による絶対主義的な体制であり、民主主義の欠如の結果に生じたとするものである。丸山は、日本におけるファシズムを、ファシズム一般に解消することなく、考察しようとしたのである。

 二つの戦犯裁判において、ナチス幹部は自己の行為の責任を認めながら正当性を主張したのに対し、日本の戦争指導者は正統性を主張せず、自分の責任を認めることはなかった。そして天皇の命令に従ったのだといった。しかし明治憲法によって無答責の立憲君主であった天皇は、自ら命令する立場になかった。さすれば日本の戦争には行為の責任者がいないことになる。丸山はそれを「無責任の体系」と呼んだ。日本ファシズムは、資本主義経済の矛盾から生じた問題でもなく、デモクラシーを疎外する封建遺制の問題として片づけることもできない。丸山は「もっと根深い日本社会の特性として、あるいは思想的な伝統において見なければならない」と考えた。この問題意識は、のちの思想史研究の出発点となった。

《ファシズムと大衆社会》
 第二期の丸山は、ファシズムを大衆社会の中に置いて日独の比較を試みた。丸山は、共同体と市民社会の対比、つまり人々が共同体に属するか、自立的な個人としてあるか、の対比で考えていたが、この頃から異なる視点を導入した。個人がばらばらのアトム(原子)と化した状態から、ファシズムが生まれるという観点である。とすればワイマール民主主義から独裁体制が生まれたのも大衆社会に起因することになる。これは戦前の日本にも当てはまる。事実上半封建的な社会であったが、都市化やマスメディアの発展で、大衆社会化が生じていた。そういう状況下にあれば「突如としてファナティツクな政治参加に転化することがある」と丸山はのちに書いている。(「個人析出のさまざまなパターン」、1968年).農村共同体から出てきた人々は、自立的な個人でなく、浮動する者となる。労働者階級も例外ではない。柄谷は「このような状態は丸山がこれを書いた当時も、さらに、現在でも進行している。戦前のファシズムのようなものにはならないとしても、似たような現象はいつでも起こりうるのである」と書いている。

《市民論への展開》
 丸山は運動家としては市民運動を唱えた。市民というと、ホワイトカラーであり、ブルーカラーのイメージではない。そのため丸山の主張は、西欧個人主義の市民主義だとか、知的エリート主義だと非難された。しかし丸山の「市民」は、「自主的に他者とアソシエーション(結社)を形成する個人」である。ヨーロッパで自立的都市は各種ギルドの連合体として始まった。市民社会はアトムが集まったのではなく、諸個人のアソシエーションとして始まったのである。日本には市民都市はなく、民主主義もなかった。丸山によれば民主主義とは、選挙投票や議会制度のようなシステムではない。民主主義は、たえず自主的なアソシエーションを更新する「永久革命」である。安保闘争で、丸山が市民運動を鼓舞したのはこの観点からであった。彼は、学生運動家からは市民主義者として、旧左翼からは非マルクス主義者として、新左翼からは特権的なリベラル進歩派教授として、80年代にはポストコロニアル派から、ナシナリストとして非難された。しかしそれらは、丸山の知的背景や経験を知らぬ者の言葉である。

《「政治」という問い―講座派の批判的継承》
 丸山が取り組んだのは一貫してマルクス主義の問題であった。それは1930年代に始まった。日本のマルクス主義理論は、「講座派」、「労農派」の二派に分かれていた。講座派は、明治維新後の日本は、絶対主義国家であり、社会主義革命に先立ち、封建的残存物である天皇制・地主制を撤廃するブルジョア革命が必要だという「二段革命論」を唱えた。
労農派は、明治維新をブルジョア革命と見て維新後の日本を近代資本主義国家と規定し、社会主義革命を主張した。講座派は、ロシア革命の経験を日本に適用したコミンテルンの理論に盲従するものであった。立憲君主制があり、普通選挙法が成立していた1927年時点で「君主制打倒」を掲げるのは愚劣である。柄谷は一方で、「労農派の認識は、ある意味では正しかったが、ある意味ではまちがっていた」という。彼らは、資本主義が発展すれば、天皇制・地主制のような封建的遺制は自然消滅すると考えていた。そして日本社会の「政治的・観念的上部構造」を深く考察しなかった。労農派は宇野弘蔵らの経済学者を輩出したが、講座派は歴史学や文学で強い影響力をもった。

 丸山はなぜ講座派に強い関心を抱いたのか。
講座派の理論には、天皇制をはじめ、明治以後の日本に残る「封建遺制」への注視があったからである。彼らは封建遺制の説明には失敗したが、「天皇制とは何か」を問う契機を残した。「政治的・観念的上部構造」には、相対的な自立性があり、その解明という課題を残した。史的唯物論では、国家は支配階級がもつ暴力装置である。だが暴力だけで持続的な支配は不可能であり、服従する者の積極的同意が必要である。経済的下部構造に還元できない「自立した政治的次元」があるのだ。それは上部構造である思想史を問うことに重なった。丸山はこれらのテーマを考え続けた。その過程で、丸山はマックス・ウェーバー、カール・シュミット、アメリカの政治学などを導入して語った。そのため西洋新知識に依拠した非マルクス主義者とみなされた。しかし丸山の仕事はもっぱら講座派的関心から来たのであった。ファシズムと戦争の下で、それを一人で考え抜いたのである。

《揺るがぬ社会主義者として》
 丸山の仕事は、ドイツのフランクフルト学派に比較できるであろう。この学派はナチズムに敗北した後に、一部はアメリカに亡命して、思考を重ねて「ブルジョアイデオロギー」であるフロイトの理論を社会的な視野の中で採用した。丸山の仕事は、フロイトやフランクフルト学派とは無縁であったし、マルクス主義に内在する問題を追跡しない、欧米新学説の輸入者とみられていた。しかし、丸山の認識は日本におけるマルクス主義運動の体験からきたのである。彼の親友は、マルクス主義運動の経験者である文学者竹内好や武田泰淳であった。
 丸山は、彼を批判した左翼がほとんど転向したのちも、また90年代のソ連崩壊で社会主義の理念が疑われても、揺るがなかった。彼が一貫して追求したのは「社会主義」であった。ただし彼はそれを「民主主義」と呼んでいた。それは自主的な諸個人のアソシエーションを創り出すことと同義であり、それを「永久革命」と呼んだのである。

 以上が柄谷論文の要約である。客観的たろうと努めたが我流である。興味ある読者は、『世界』掲載の原文に当たられたい。「《》マーク」中にある小見出しは『世界』編集部がつけたものである。『現代政治の思想と行動』は、現在は『増補版 現代政治の思想と行動』(1964年初版、未来社)が流通しており、内容に多少の異同があることを記しておく。(2019/06/14)

初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔study1048:190621〕

http://chikyuza.net/archives/94668
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/277.html

[政治・選挙・NHK262] 棄権について(山本太郎オフィシャルブログ)
2019-06-21 23:16:08

山本太郎は、本日行われた予算委員長解任決議および財務大臣の問責決議、
の採決に参加しなかった、つまりは棄権した。

これから棄権の理由を説明をしますが、「野党」と一括りにすることをお詫びいたしたい。
戦いたい野党もいるのは承知しています。
加えて、政治の劣化の根源は、現在の与党側にあり、
官邸の下請けに成り下がった立法府の自殺行為を率先しているのも与党側である、
ということを前置きさせていただきます。
 
 
参議院規則を無視し、予算委員会を開かなかった予算委員長。
大臣としての資質がない、財務大臣。
職を辞していただきたい。
ごもっとも!

なのに私は、棄権した。
 
 
それに対して、自民党に擦り寄る準備か?などと妄想される方がいるなら、
全く違うし現在の政治をちゃんと見れていない。
 
 
このタイミングの問責。
何の意味をもつのだろうか?
国会閉会間近の風物詩、以外にその理由は見当たらない。

与党側が予算委員会を開かないなら、他の委員会審議はやらない、
「本会議もやらない、とにかく予算委員会の開催が全ての委員会審議を再開する条件だ!」という姿勢を野党は見せたか?
見せなかった。

ゴールデンウィーク前から、予算委員会を開かない問題があった。
しかし、GWが始まる前に本会議を開く合意をしてしまっている。

ズル休み、●●連休、と揶揄されることを恐れて、
自民側の要求を受け入れたのかも知れない。

それがどうした?

何を言われようが、行政監視機能を発揮できずに、
数々の疑惑や議論しなければならない問題を白日の下に晒せないほうが、
この国に生きる人々にとっての本当の不利益だ。
予算委員会の集中審議に引っ張りだすまで、徹底抗戦以外になかったはず。
 
 
GWが明けてからは?
ほぼ通常運転。

与党は予算委員会を開かない、けしからん。
確かにそう。

しかし、そこに与党が開かざる得なくなる戦いはなかった。

与党側は、開けばダメージを受けることがわかってる、だから開かない。

野党は数の力ではとても及ばない、ならば体を張ってでも開かせる。
その気迫がなければ開けるはずもない。

事前の戦いが事実上ほぼない中で問責されても痛くも痒くもない。

事前に精一杯の戦いがあっての問責ならば、意味もあろう。

しかし残念ながら、戦っている印象を残すための儀式でしかない。
そんな儀式には参加したくないのだ。

冒頭でも触れたが、1番悪いのは、立法府の役割を骨抜きにする与党側であることは間違いない。

彼らは野党時代に言いがかりに近い、どんな小さな話でも持ち出してゴネ続けた。
そして権力を奪取、自分たちのやりたい放題を続けている。

昔の自民党みたいに、あることないこと持ちだしてゴネ続けろなど言ってない。
身体を張ってでも予算委員会を開かせなければならない理由が山ほどあるじゃないか。

スマートに戦って勝つなんて幻想でしかない。
そんな余裕なままで政権奪取できるのはいつになるのだろうか?
あまりにも気位の高い戦い方しかできない野党は野党のままだ。

いつまで地獄のような状態をこの国に生きる人々に強いるのか?

月曜には総理の問責という儀式が行われる。
私はその儀式もパスする。
本気で引きずり下ろす気がない戦いには与しない。


最後に。
数々のご指導をいただいてきた諸先輩方に対して、
一括りに捉えられるような書き方になって申し訳ありません。
グッと我慢をしながら変わるタイミングを狙っておられることは勝手に理解しているつもりです。

日頃から人々の声を直接聞き、議会に問題提起し、形になるように努力するということを、
先輩たちから6年間勉強させていただきました。

一緒に戦う野党をつくりたいんです。
本気で戦う勢力をみなさんと作りたい、
というラブコールです。

超優秀、ハートの熱い先輩方と支持者の皆さんとなら、
世の中を変えられると確信しています。

本日からの問責に棄権、は、私の中の抗議行動なのであります。

長文失礼いたしました。

https://ameblo.jp/yamamototaro1124/entry-12484345740.html
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/287.html

[政治・選挙・NHK262] 〈いまごろ丸山眞男か〉という君へ(2) ― 柄谷行人の「丸山眞男とアソシエーショニズム」を読む ― (ちきゅう座)

スレ主メモ欄(ここはスルーして頂いて結構です)

(1) 伝統的な社会(共同体)から個人が析出individuationされる四つのパターン
(2) ■「民主化した個人タイプ(D・democratization)」 集団的な政治活動に参加 中央権力を通じる改革を志向
(3) ■「自立化した個人タイプ(I・individualization)」 自立的、同時に結社形成的 市民的自由の制度的保障に関心をもち、地方自治に熱心
(4) ■「私化した個人タイプ(P・privatization)」 「民主化タイプ」の正反対 政治活動の挫折から、政治を拒否し私的な世界にひきこもる
(5) ■「原子化した個人タイプ(A・atomization)」 政治に無関心 逃走的 それゆえに突如としてファナティックな政治活動に参加 権威主義的なリーダーシップに帰依し神秘的「全体」に没入する傾向

(6) 近代日本に特徴的な「私化」と「原子化」
(7) 「自立化する個人I」が育たなかった
(8) 国家権力にたいするバリケードが脆弱
(9) 民主化をともなわぬ「大衆化」現象

(10) 自立した個人が少なく浮遊する個人が多い理由
(11) 文学者の敗北と、「国家による教育権の独占」
(12) 徳川時代の農村の自治的コンミューンに依拠していた明治一〇年代の自由民権運動
(13) それが壊滅したとき人々は政治的現実を斥ける「私化」へ向かい、文学は私小説となった

(14) 国家による教育権独占が無造作に、スムーズに行われた
(15) 寺を行政機構の末端に据え。寺子屋教育を国家教育にきりかえた 
(16) 徳川時代の村にわずかに残った自治も、町村制によって完全に官治行政の末端に包み込まれた
(17) 中央集権国家ができ上がり、国家に対抗する自主的集団は事実上皆無に
(18) 自由なき平等化と帝国臣民的な画一化へ

(19) 「令和改元」で見えてきた「天皇制」の問題
(20) 「戦後民主主義者」として振る舞った明仁天皇
(21) 「譲位報道」から見えてきたある種の政治的危機
(22) 現上皇・上皇后の「人間性の発露」によって隠蔽されていた「天皇制」の不可侵・不合理・不可思議がそろりと可視化
(23) ここに発する困難が日本の近未来を覆う
(24) 「無責任の体系」をおのれの問題とせず、天皇制に正面から向き合うことから逃げ回ってきた「戦後民主主義」
(25) 「戦後民主主義」に対する復讐の始まり
 
****************

〈いまごろ丸山眞男か〉という君へ(2) ― 柄谷行人の「丸山眞男とアソシエーショニズム」を読む ―

2019年 6月 22日
<半澤健市(はんざわけんいち):元金融機関勤務>

《ポストモダンと丸山はどう結びつくのか》
 柄谷は丸山をいつどこで捉えたのか。
彼が、本格的に丸山を論じたのは2006年の「丸山眞男とアソシエーショニズム」が初めてであるらしい。しかし柄谷の問題意識は80年代に始まっていた。

 柄谷の丸山認識は、優れた「近代主義者」というほどのものであった。
 80年代、柄谷行人は「ポストモダニズム」の旗手の一人として認知されていた。
ポストモダンとは、「近代以後」または「後近代」の謂である。柄谷の近代批判は、「自発的な主体(主観)への批判」であった。自発的な意志なんてない。それは他人の欲望に媒介された結果にすぎない。主観は自由ではなく、「言語的な制度(システム)の中に規定されている」、つまり自由な個人主体というフィクションから出発するブルジョア的思想に過ぎないという批判であった。しかしそれは自由の否定ではない。1968年5月革命に象徴される運動は、アソーシエイティブ(結社的)な活動をめざしていた。

 しかし構造主義もポスト構造主義もすぐに資本主義の脱構造に追いつかれ体制内化する。日本のポストモダニズムもポスト産業資本主義と同義となってしまった。私(半澤)は、吉本隆明が、有名ブランド商品のモデルになった写真をよく覚えている。
 バブル経済もあって日本のポストモダニズムは、世界の先端を走っているように見えたが、実は近代の欠落を示しているのではないか。柄谷にはそういう思考が芽生えた。1984年頃に柄谷は、丸山がこの観点で近代に取り組んできたのではないかと考えた。

《知識人と大衆は乖離していない》
 日本のポストモダニズムが、知識人の批判をするときの立場は、インテリが大衆を上から目線でみていることを批判するものだった。しかし、日本はそんな知の階級社会なのか。そうではない。日本では知識人と大衆は乖離していない。乖離は西洋やアジアにはあるが、すでに徳川時代に養子縁組による階層モビリティーの動きが始まっていた。
柄谷は丸山による鶴見俊輔批判を例示している。鶴見は、抽象的な思想あるいは原理の支配を批判する。しかし実は庶民の視点ではなく知識人の視点からみている。日本では知識人が支配したことはないし、思想や原理が支配したことはない。そういう丸山の思考に柄谷は同意する。丸山の次の言葉を引用する。
■「イデオロギー過剰なんていうのはむしろ逆ですよ。魔術的な言葉が氾濫しているに過ぎない。イデオロギーの終焉もヘチマもないんで、およそこれほど無イデオロギーの国はないんですよ。/大衆社会のいちばんの先進国だ。ドストエフスキーの『悪霊』なんかに出てくる、まるで観念が着物を着て歩きまわっているようなああいう精神的気候、/われわれには実感できないんじゃないですか/思想によって、原理によって生きることの意味をいくら強調してもしすぎることはない」。■

 柄谷は、小林秀雄と正宗白鳥のトルストイの家出と野垂れ死にをめぐっての論争を例示した。小林は、プロレタリア文学が傑作を生まなかったとしても、彼らは思想に生きた。日本において初めて思想が「絶対的な普遍的な姿で」存在したのはマルクス主義だけであると「私小説論」で述べた。丸山は、針生一郎との対談でそう言った。

《丸山こそ唯一の批評家である》
 柄谷は1984年に「ポストモダニズムと批評」という論文のなかで、丸山の発言は真の意味での「批評」だと称賛している。丸山は本物の「批評家」だと言っている。柄谷のみるところ、批評とは方法や理論ではなくて「生きられる」ほかないものである。小林秀雄は、戦中に思想を捨て「実践的な没入」でのみ感受できるベルグソン哲学の方向へ向かった。丸山はそれを実感信仰だといって批判した。丸山こそ批評家を継続した唯一の人である。ここで正確に、柄谷による批評の定義を見ておこう。「いきられる」の意味をかんがえながら読んでほしい。
■それは日本固有の問題ではなく、カントの「批判」とともに出てきた問題である。思想は実生活を超えた何かであるという考えは、合理論である。思想は実生活に由来するという考えは、経験論である。カントは合理論がドミナントである時、経験論からそれを批判し、経験論がドミナントであるとき合理論からそれを批判した。彼は合理論と経験論というアンチノミーを揚棄する立場に立ったのではない。もしそうすれば、カントではなくヘーゲルになってしまうだろう。この意味で、カントの批判は機敏なフットワークに存するのである。ゆえに私(柄谷)はこれをトランスクリティークと呼ぶ。■

《共同体の「個人の析出」の精緻な難解》
 柄谷は政治学者にして批評家たる丸山眞男の思考様式を追跡する。そして丸山の「個人析出のさまざまなパターン」に達する。これは、1960年の日米箱根会議に丸山が提示した論文(英文)である。私にはとても難解で十分理解したとは言えないが、乗りかかった船だと思い、柄谷論文を抜き書きをする。それなりに整序はしたつもりである。

 丸山は、伝統的な社会(共同体)から個人が析出individuationされるパターンを考察した。これが近代化とともに個人が社会に対してとる態度を四つに分類した。タテ軸の上部に、「結社形成的associative」、下部に「非結社形成的dissociative」、ヨコ軸の右に政治的権威に対して「求心的centripetal」と左に「遠心的centrifugal」なそれぞれ態度をとる個人類型を、四象限に分けて配置する。そしてこの四つの傾向をもつ個人を次のような四タイプに分けた。

■「民主化した個人タイプ(D・democratization)」は、集団的な政治活動に参加するタイプである。中央権力を通じる改革を志向する。
■「自立化した個人タイプ(I・individualization)」は、そこから自立的するが、同時に、結社形成的である。市民的自由の制度的保障に関心をもち、地方自治に熱心である。
■「私化した個人タイプ(P・privatization)」は、「民主化タイプ」の正反対で政治活動の挫折から、政治を拒否して私的な世界にひきこもる。
■「原子化した個人タイプ(A・atomization)」は、政治に無関心であり、逃走的であるが、それゆえに突如としてファナティックな政治活動に参加する。権威主義的育たなリーダーシップに帰依し神秘的「全体」に没入する傾向をもつ。

 一般的にいえば、近代化が内発的でゆっくり生じる場合はIとPが多くなり、後進国の近代化の場合は、DとAが多くなる。四つのタイプが一生を通して純粋不変であることは希である。

《日本でタイプIが育たなかった理由》
 近代日本に特徴的なことは、伝統社会が残っていたのに「私化」と「原子化」が早期に登場し、かつ圧倒的に多かったことである。「自立化する個人I」が育たなかった理由を、丸山はこう書いている。
■日本における統一国家の形成と資本の本源的蓄積の強行が、/驚くべき超速度で行われそれがそのまま息つく暇もなく近代化―末端の村行政に至るまでの官僚制支配の貫徹と、軽工業及び巨大軍事工業を機軸とする産業革命の遂行となった/その社会的秘密の一つは、自主的特権に依拠する封建的=身分的中間勢力の抵抗の脆さであった。/ヨーロッパに見られたような社会的栄誉をになう強靱な貴族的伝統や、自治都市、特権ギルド、不入権をもつ寺院など、国家権力にたいするバリケードがいかに本来脆弱であったかがわかる。/「立身出世」の社会的流動性がきわめて早期に成立したのはそのためである。政治・経済・文化あらゆる面で近代日本は成り上がり社会であり(支配層自身が成り上がりで構成されていた)、民主化をともなわぬ「大衆化」現象もテクノロジーの普及とともに比較的早くから顕著になった。(『日本の思想』)■

《日本において私化するPが圧倒的に多い理由》
 Iが少なくPが多い―すなわち自立した個人が少なく浮遊する個人が多い状況―のは同じメダルの両面である。Pが多い理由を、柄谷は文学者の敗北と、丸山による「国家による教育権の独占」で例示する。
明治一〇年代の自由民権運動は、徳川時代の農村の自治的コンミューンに依拠するものであった。それが壊滅したとき人々は政治的現実を斥ける「私化」、すなわち文学に向かったということである。透谷の自殺以後、文学は人間の内面に向かい遂には私小説となった。

 すべてPのタイプである。石川啄木が「時代閉塞の現状」で、日本の知識人が「強権に対して何等の確執をも醸した事がない」と述べたのを読んで、丸山は啄木に「私化するタイプと異なる結社形成的な個人」を見た。しかし結局、日本文学は私小説へなだれ込んだ。

 丸山は、別の重要な事実として国家が教育権を独占したことを挙げて、次のようにいう。
■国家が国民の義務教育をやるということは、今日近代国家の常識になっておりますが、この制度が日本ほど無造作に、スムーズに行われた国は珍しいのであります。/(ヨーロッパでは)教会が、教育を伝統的に管理していた。そこでこの教会と国家との間に、教育権をめぐって非常に大きな争いをどの国でも経験している。ところが日本では/お寺は完全に行政機構の末端になっておった。/ですから寺子屋教育を国家教育にきりかえることは、きわめて容易だったわけです。そのほか、ヨーロッパでは、自治都市や地方のコンミューンがやはり国家権力の万能化に対するとりでとなり、自主的学園の伝統をつくる働きをしましたが、この点でも、日本では、都市はほとんど行政都市でした。また徳川時代の村にわずかに残った自治も、町村制によって、完全に官治行政の末端に包み込まれてしまったので、中央集権国家ができ上がると、国家に対抗する自主的集団というものはほとんとなく、その点でも、自由なき平等化、帝国臣民的な画一化が、非常に早く進行しえたわけです。(「思想と政治」)■

《「講座派」への回帰をめざす》
 「近代主義者」丸山眞男はこのように日本近代化を批判している。「息つく暇もなす近代化―末端の村行政に至るまでの官僚制支配の貫徹と、軽工業及び巨大軍事工業を機軸とする産業革命の遂行」への痛切な感情の吐露を、柄谷もまた共感していると読めないであろうか。
 丸山の近代批判は、さらに進んで「明治以後に生じた問題は、徳川時代あるいはそれに先立つ織豊政権の時代に根ざしている」。柄谷は、丸山が徳川から織豊政権にさかのぼり、遂には歴史意識の古層にまで遡行して考えたことの意味を問い、いまや世界史のパースペクティブの中で、日本の特徴を見直すべきだと考えているという。それはマルクスの「アジア的生産方式、封建的生産方式」の視点を再考することで可能になるかも知れないといい、「日本資本主義論争」以来、丸山が考えていたことだと、「丸山眞男とアソシエーショニズム」と題する論文を結んでいる。

《紹介で終わったがそこで私の一言》
 今回も柄谷論文の紹介に終わってしまったが、私の感想で締めくくりたい。

 第一に、80年代のポストモダン言説は、日本の高度成長とバブル経済への、知的世界の一つの対応だった。柄谷はそういう意味のことを言っている。その観察に、私は一瞬唖然とし、次に変に納得した。
 それは私自身を含めた「日本の企業人の心情」と通底し交錯しているからである。私は末端の兵士に過ぎなかったが、当時の経済人の言説を回顧すれば、思い上がりのパレードであった。
 「ヨーロッパを日本経営のブティック(骨董店)にしてやる」というのがあり、「アメリカの軍事力を除き怖いものは何もない」というのがあり、リベラル陣営からも頭を冷やせという意味で「セールスマンの死よ、来たれ」というのがあった。我々は、日本が経済の世界最終戦争に勝利しつつある気になっていたのである。

 第二に、本稿前回に柄谷の丸山再評価が、2016年の丸山著作中国語訳の序文に始まったと書いたが、どうしてどうして、今までのべてきたように、それは1980年代に始まっていたのである。この先見性には脱帽したい。しかも、講座派の視点による日本近代の再評価ということである。柄谷が引用した丸山の個人析出論文は60年代のものであり、おそらくケネディ・ライシャワー路線―すなわち帝国主義が出てこない近代化論―の開始を予感して書かれたように思われる。そして近代主義者でこそ言える日本近代の「成り上がり性」を批判している。

 第三に、本稿では直接の主題にしていないが、「令和改元」で見えてきた「天皇制」の問題である。「戦後民主主義者」として見事に振る舞った明仁天皇の「譲位報道」から見えてきたことは、ある種の政治的危機の可能性である。現上皇・上皇后の「人間性の発露」によって辛くも隠蔽されていた「天皇制」の、不可侵・不合理・不可思議、がそろりと可視化され始めた。ここに発する困難が日本の近未来を覆うことになるだろう。「無責任の体系」をおのれの問題とせず、天皇制に正面から向き合うことから、我々は逃げ回ってきた。まだ私はぼんやりとしたことしか言えぬ。しかしここでも「戦後民主主義」に対する復讐が始まっていると思う。

 結局、二人の言説紹介に終わったエッセイはこれで終わりである。「いまごろ丸山眞男か」と題した意味を、君に、少しは分かってもらえただろうか。(2019/06/18)

初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔study1049:190622〕

http://chikyuza.net/archives/94699
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/292.html

[政治・選挙・NHK262] 映画「主戦場」の異例のヒットを喜ぶ (澤藤統一郎の憲法日記)

私は未見なのだが、映画「主戦場」が大きな話題となっている。2019年4月20日公開で、その2か月後の興行成績を朝日新聞は、「東京の映画館では満席や立ち見状態になり、上映後には拍手が起きる『異例のヒット』」と報じている。全国各地に上映館が拡大している。この種の映画としては、紛れもない「最大級の異例のヒット」。世論への影響も小さくない。

テーマは慰安婦問題。劇映画ではなく、多数者へのインタビューを重ねた地味なドキュメンタリー。これがなぜ異例のヒットとなったか。何よりも、異例の宣伝が功を奏したからだ。出演者自らが勤勉な宣伝マンとなって話題作りに励み、この映画の題名や内容や評判を世に知らしめ、多くの人の鑑賞意欲を掻き立てたのだ。制作者の立場からは、こんなにありがたいことはなかろう。

5月30日、この映画の出演者の内の7人が、共同で上映中止を求める抗議声明を発表した。そのうち、3人が共同記者会見をしている。これが、この映画の存在と性格を世に知らしめる発端になった。言わば、これが話題作りパフォーマンスの発端。多くの人は、この記者会見で、こんな映画があり、こんな問題が生じていることを初めて知ることとなった。

「主戦場」を異例のヒットに導いた7人の宣伝マンの名を明記しておかなくてはならない。多くは、おなじみの名だ。ほかならぬこの7名が、映画の出演者として自らが出演した映画の上映中止を求めている。それだけで、映画の宣伝としての話題性は十分。この声明と記者会見で、この映画を観るに値すると考え、映画館に足を運ぼうと思いたった数多くの人がいたはずである。
 
  櫻井よしこ(ジャーナリスト)
  ケント・ギルバート(タレント)
  ニトー・マラーノ(テキサス親父)
  加瀬英明(日本会議)
  山本優美子(なでしこアクション)
  藤岡信勝(新しい教科書をつくる会)
  藤木俊一(テキサス親父のマネージャー)

「共同声明」は、彼らが映画の上映中止を求める理由を7項目にわたって書いている。その7項目のタイトルが下記のとおり。
1、商業映画への「出演」は承諾していない
2、「大学に提出する学術研究」だから協力した
3、合意書の義務を履行せず
4、本質はグロテスクなプロパガンダ映画
5、ディベートの原則を完全に逸脱
6、目的は保守系論者の人格攻撃
7、出崎(監督のデザキ)と関係者の責任を問う

上映や出版の中止を求める場合、普通は「事実が歪曲されている」「事実無根の内容によって名誉と信用を毀損された」とする。表現の自由も、「事実を歪曲する自由」を含まないからだ。しかし、この7項目に、そのような主張は含まれていない。具体的に、真実と異なる表現を指摘できないと理解せざるを得ない。

毎日「夕刊ワイド」が詳細に報じているとおり、「『主戦場』は、出演者の発言と表情を克明に追う。抗議声明に名前を連ねているケント・ギルバート氏は3月の試写会鑑賞後、毎日新聞の取材に対し『取り上げる意味のない人物の発言を紹介している』と批判を加えた一方で、自身の発言部分については『まともに取り上げてくれています。それは大丈夫です』と話している。」というのだ。

藤岡信勝は「学術研究とは縁もゆかりもない、グロテスクなまでに一方的なプロパガンダ映画だった」と強調したというが、本来プロパガンダ映画作りも、表現の自由に属する。

その上、「商業映画への出演は承諾していない」「大学に提出する学術研究だから協力した」「合意書の義務を履行せず」の主張は、彼らにとって旗色が悪い。

一方、デザキ氏と『主戦場』配給会社の東風は6月3日、東京都内で記者会見した。デザキ氏は、出演者が「撮影、収録した映像、写真、音声などを私が自由に編集して利用することに合意する合意書、承諾書に署名した」と指摘した。藤岡氏ら2人については、公開前の確認を求めたため、昨年5月と9月に本人の発言部分の映像を送ったという。その後、連絡がなかったため大丈夫だと考えたという。デザキ氏は、出演者には「試写会」という形で一般公開される前に全編を見てもらう機会を与えたとも強調した。(週刊金曜日)

にもかかわらず、6月19日、この7人のうちの5人(ギルバート、マラーノ、山本、藤岡、藤木)が原告となって映画の上映差し止めと計1300万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。どういうわけか、櫻井よしこ、加瀬英明の二人は、提訴をしていない。

いずれにせよ、勝ち目を度外視したにぎやかな提訴がまたまた話題を呼び、この映画の社会的関心を盛り上げることに成功している。有能な宣伝マンたちの、献身的な行為と賞讃せざるを得ない。

なお、朝日の報道に、原告らは「映画で『歴史修正主義者』『性差別主義者』などのレッテルを貼られ、名誉を毀損(きそん)された」とある。

フーン。彼らにも、『歴史修正主義者』『性差別主義者』などは、名誉を毀損する悪口だという認識があるのだ。

「歴史修正主義」とは、歴史的事実をありのままに見ようとせず、自らのイデオロギーに適うように歴史を歪めて見る立場をいう。イデオロギーに、事実を当てはめようという倒錯である。典型的には、「天皇の率いる日本軍が非人道的な行為をするはずがない」という信念から、「従軍慰安婦などはなかった」とする立場。あるいは、日本という国を美しいものでなくてはならないとする考え方から、日本の過去の行為はすべて美しいものであったという歴史観。原告ら5人は、この映画制作進行の過程で、こう指摘される結論に至ったのだ。その過程が示されていれば、名誉毀損にも侮辱にも当たらない。

また、「性差別主義者」についてである。「例えば、上映中止を求めている一人の藤木俊一氏。『フェミニズムを始めたのは不細工な人たち。誰にも相手にされないような女性。心も汚い、見た目も汚い』との内容を語る様子がスクリーンに映し出される。だが、記者会見でこの発言について確認を求められた藤木氏は『訂正の必要はない』と述べている。」(毎日・夕刊ワイド)

『主戦場』という映画のタイトルは、いまや日本でも韓国でもなく、当事国ではないアメリカこそが、この論争の主戦場になっているという、映画の中での右派の言葉からとったものだという。

あるいは、これまでの論争を総括し集約して、このスクリーンこそが従軍慰安婦問題の主戦場である、という主張なのかも知れない。いや、スクリーンにではなく現実の社会の論争喚起にこそ主戦場がある、との含意かも知れない。何しろ、安倍晋三を首相にしているこの日本の歴史認識状況なのだから。

この映画と映画をめぐる諸事件が、従軍慰安婦問題論争に火をつけ、活発なメディアの発言が続いていることを、歴史修正主義派を糾弾する立場から歓迎したい。
(2019年6月21日)

http://article9.jp/wordpress/?p=12826
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/293.html

[政治・選挙・NHK262] れいわ新選組の挑戦 3億円到達で10人擁立にメド 政治に幻滅している4割に思い届け (長周新聞)
2019年6月22日

 山本太郎参議院議員が1人で「れいわ新選組」なる組織を立ち上げ、全国で街頭演説をおこなっていることが注目を集めている。16日に広島パルコ前でおこなった街頭演説では、政策を訴えるとともに、寄付が多く寄せられ参議院選に10人擁立する見通しを明らかにした。演説の概要を紹介する(グラフや表は街頭演説で山本氏が提示したもの)。

https://www.chosyu-journal.jp/wp-content/uploads/2019/06/610b9502019d010ae3c3c85ac416888a-768x513.jpg
https://www.chosyu-journal.jp/wp-content/uploads/2019/06/868b6524714d6f1f010c2a7bc0664c4f.jpg
広島PARCO前での街頭演説(16日)

山本太郎

 国会議員とは皆さんの代表だ。皆さんの声を聞いてそれを国会につなげ、形にしていく努力をするという仕事でありながら、国会議員をほとんど見かけたことがない。選挙の時には土下座までするが選挙が終わればどこに行ったか分からない幻の生物。まるで都市伝説みたいな話になっている。なのでこの場で皆さんのストレートな意見をぶつけていただきたい。ただし、すべての答えを持ち合わせているはずもない。その場合はご存知の方がいらっしゃったら知恵を授けていただきたい。そのようなやりとりのなかから先先政治的にとりくむ課題が見えてくることもあると思う。

 まずは山本が何をしているのかということについてお伝えしたい。

 参議院議員・山本太郎は小沢一郎さんとしばらく活動してきたが、今1人になった。国会議員は700人以上いる。そのなかでたった1人で旗揚げしても物事がなかなか前に進まないのは当然だ。「1人でなにができるのか」と聞かれる場合もある。おっしゃる通り。なので皆さんにこの勢力を大きくしていただきたい。その力を持っているのはみなさん一人一人だ。

 一人一人が意志を持ったとしたらコントロールする側としてはやっかいな話だ。逆にいえば皆が自分に自信がなく、「私は関係ない」と距離を置かれる方がコントロールしやすい。一人一人の自信を奪うことによって、よりコントロールしやすい国につくりあげられてしまったと思っている。あなたには力がある。全員同じ船に乗っているわけだから、少なくとも生まれた状況や育った環境によってその先の道が大きく変わってしまうような状況ではなく、国がしっかり底上げしながら、せめてスタートラインは同じように立てるようにする。本当に自分が困ったときには手を差し伸べてくれる国や社会であってほしい。それを実現するためには政治を変えるしかない。その力を持っているのはみなさんだ。

 れいわ新選組がどのような決意を持って永田町で皆さんと一緒に進んでいくのか。

 日本を守るとはあなたを守ることから始まる。あなたを守るとは、あなたが明日の生活を心配せず人間の尊厳を失わず胸を張って人生を歩めるよう全力を尽くす政治の上に成り立つ。あなたに降りかかる不条理に対して全力でそのさい前に立つ。何度でもやり直せる社会を構築するために。

 20年間に及ぶデフレ、デフレで困窮する人人、ロスジェネを含む人人の生活を根底から底上げする。中卒、高卒、非正規、無職、障害、難病を抱えていても将来に不安を抱えることなく暮らせる社会をつくる。

 私たちがお仕えするのはこの国に生きる全ての人人。それが私たちれいわ新選組の使命である。このような使命感を持って皆さんとともに歩んでいけたら、そしてこの国の数数の問題を一つ一つ解決し、前に進んでいけたらと思っている。
 
■8つの緊急政策とは

 れいわ新選組は8つの緊急政策をあげている。

@「消費税は廃止」。
 消費税は強制的な物価の引き上げだ。経済活動が活発になって物価が上がっていくならば、賃金の上昇も起こっていくはずだ。賃金は上がっていないので、実質賃金が下がった状態だ。生活が苦しくなるのは当たり前だ。

A「全国一律最低賃金1500円 政府が保障」。
 政府は最低賃金を1000円にしてみせるという。しかし1000円で働いたとしてもワーキングプアのままだ。人間の尊厳を守れる生活を担保するために1500円は必要だ。これで計算するとだいたい月24万円ぐらいだ。あなたにはその価値もないと自分の中で決め付けていないか。今や大企業は過去最高益だ。あのバブルよりももうかっているのに、どんどん税金は安くなっている。とるべきところからいただければ政府が保障することも可能だ。

B「奨学金徳政令」。
 奨学金に苦しんでいる方が非常に多い。現在奨学金を借りている方、返済されている方方全部含めると555万人だ。先進国でありながら、国がやっているサラ金を利用しなければ大学に行けない、高等教育を受けられないのはおかしい。「国がおこなっている武富士です」と国会で紹介したら議事録から削除するよう要請された。奨学金555万人をチャラにするには約9兆円必要だ。日本銀行が1年間にETF株を買うのに費やす費用は6兆円だ。あくまでも日銀の政策だが、555万人の生活を楽にすると考えたときに、9兆円は高い買い物とは思わない。少子化が問題だというならば真っ先にとりくむべき課題だ。

C「公務員を増やす」。
 国会の勢力のなかには公務員叩きが大好きな政党も存在している。でも考えてみてほしい。高い給料をもらいながらやっている公務員は一握りだ。それ以外の公務員は今どんどん非常勤・非正規との置き換えが進んでいる。全国で見ても5人に1人は非常勤・非正規だ。同じような仕事をしているのに同じ待遇が受けられず、安定しない。世界の先進国の1万人当りの公務員数を見ると日本は圧倒的に少ない。イギリスの3分の1。アメリカの2分の1程度だ。
 そして不安定な働き方が世代横断的に非常に広がっている。不安定な働き方で半年後、1年後の自分をイメージできるだろうか。非正規という働き方を広げて喜ぶのは雇う方だ。働く方は将来もイメージできない。安定雇用も経済政策の一環だ。公務員は安定雇用にも寄与するような仕事だ。そこを拡大していく必要がある。

D「一次産業戸別所得補償」。
 安全保障問題が声高に叫ばれている。北朝鮮がどうしたとか中国がどうしたとか。もちろんそういった脅威的な部分には対処が必要だと思うが、まず最初に守らなければならないのは食の安全保障ではないか。食料自給率は4割に届かないぐらいだ。ほとんど輸入に頼るという形をとっていれば、この国は食べ物でコントロールしやすくなる。アメリカの食料戦略によって日本の食料自給率はかなり低くなってきている。100%を目指すように一次産業に就く人人に対して手厚くしていくべきだ。

E「トンデモ法の一括見直し・廃止」。
 ここ数年間にとんでもない法律がたくさんつくられた。特定秘密保護法や国家戦略特区、TPP、種子法の廃止、水道民営化に寄与するようなPFI。皆さんの税金からつくられたインフラなどを破格の値段で民営に任せるような、公的な財産で民間にうまい思いをさせていくようなやり方は改めなければならない。国が切り売りされるようなことも進んでいる。こういった法律を見直し、廃止の道を探っていかなければならない。

F「辺野古新基地建設の中止」。
 沖縄の民意は何度も示されている。それだけではなく沖縄県のみにそれだけの荷重をかけていいのか。日本全体の問題であるにもかかわらず、その多くを沖縄が抱えているところに新しい基地は必要か。アメリカの海兵隊、その中枢にいた人人からも辺野古の新基地建設には疑問符が投げかけられている。

G「原発即時禁止 被曝させない」。
 南海トラフや首都圏直下地震がもうすぐではないかといわれている。被害総額が試算されたり、報道でも流れているのに原発は大丈夫なのかという話だ。大丈夫だとの根拠は新規制基準だというが、本当に大災害がやってきた後でなければ安全性について答え合わせはできない。国民の生命・財産を守ることが政治の仕事であるといいながら、それほどの大博打に皆さんを巻き込むなどあり得ない。
 エネルギーの主力は火力だ。火力の中でも環境負荷が少なく、燃料の調達も中東などに依存せず、非常に広い範囲から調達ができる天然ガス。ここに対してより環境負荷が少なくなるような研究に投資していき、原発の廃炉も成長産業として国が投資していくことも考えていかなければならない。

■街頭での質疑応答

質問

 今の日本の選挙のシステムはかなり不備がある。一つの会社が選挙管理とか投票用紙の計測とかすべてを担っている問題もあるが、「この選挙区ではこれだけの投票結果が出ました」とテレビでいえばすべて決まってしまう。しかも8時になったらもう当選者が決まっている。不正選挙についてどう思うか。

山本

 ネット上でいわれているが、ある程度ファクト(事実)を固めたうえで聞かないことには信頼を失う部分がある。選挙関連機器の購入に関しては1社ではなく、選択する自由はそれぞれの自治体にあるそうだ。話自体がちょっと違う。本当に不正選挙をやろうと思ったらその自治体の職員など選挙にかかわる者すべてが加担しなければならず、かなりハードルが高いと思う。不正選挙ができないぐらいに、不正選挙があったとしてもごまかしきれないぐらいの得票が得られる状況にしていくしかないと思う。
 
 どれだけ貧しくても億万長者でも持っている票は1票。いかに横につながるかで世の中をコントロールすることができる。そのための選挙であり、政治だ。あなたが政治から手を離した瞬間に喜ぶ人人がいる。投票率が下がれば下がるほど力を持つ人たちがいる。組織票を持っている人だ。国政選挙で投票率が6割にも到達しないような状況で、4割の人たちが票を捨てている。一方で現在政権を握っている人たちは約3割程度の票で世の中をコントロールし、皆さんを搾取することまでできている。であれば票を捨ててしまっている4割の人とも手をつないでいけば、別の方向に社会をつくっていける。
 
 政治はパワーゲームだ。そのパワーゲームにさえ参加をするのを諦めてしまっている人たちにもそれを広げていきたい。あなたの生活を支えること、それを政治で実現することができる。コントロールする側に立ちませんか。一緒にあなたのコントロールを受けて国会の中で動き回るアイコンを手に入れませんか。

質問

 今ロスジェネ世代に与党が就職支援とかいっているが、れいわ新選組の政策があればお願いする。

山本

 私もロストジェネレーションだ。ロスジェネとは大学卒業と超デフレとが重なった世代だ。1997年、98年に本格的就職氷河期が始まった。引き金になったのは消費税が5%に上がり、世界で金融危機などもあった。これらが合わさってかなり厳しい状況に置かれたのがロスジェネ世代だ。前期が現在40〜44歳ぐらい、後期が35〜39歳くらいの方だ。もちろん正規で職に就いている方方もおられるが、なかには非正規だったり、働けていない方もいる。

https://www.chosyu-journal.jp/wp-content/uploads/2019/06/e7ded4b08c6b183a44d636851bd76be0-768x747.jpg

 大卒の有効求人倍率を見ると1996年、2000年卒は有効求人倍率が0・99などという状況まで陥った。とにかく勉強していい大学に入り、いい会社に就職すれば人生安泰だと刷り込まれてきたが、実際に自分が卒業するときにはほとんど就職なんてできず、いくら面接や試験を受けに行ったりしてもだめだった。一番最初に就いた仕事が非正規やバイトだった人が次に正社員になれるのはいつか。景気が持ち直せば自分よりも若い世代が正社員になっていく。自分の仕事の履歴は非正規やバイトで、正社員になることが非常に難しかった世代だ。

 今もロスジェネ世代のなかには初めて就職した時と変わらないような所得で生活をされている方方がいる。なかでも多いのが女性だ。全世代の女性非正規労働者に占めるロスジェネの女性非正規労働者の割合を見ると、2018年には1451万人のうち21%を占めている【グラフ参照】。そしてロスジェネ世代から上の世代に非正規の割合が多い。全非正規雇用者で見た場合でも2120万人のうちロスジェネ世代が18%を占め、それから先で非正規雇用の割合が増えている。不安定な働き方の引き金になっているのがロスジェネ世代だ。

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 本格的デフレから非正規という働き方がどんどん増えていく状況になったということだ。本来であればロスジェネ世代は第3次ベビーブームを起こさなければいけなかった世代だ。少子化になることは50年前からわかっていたのに、政府はロスジェネ世代に対してなにも施策をしてこなかった。蛇口を絞り、財政をカットしまくった。望むなら誰もが家族を持てるぐらいの施策を打っていかなければ人口が減っていくのは当然だ。だとすればボリュームゾーンといわれているロスジェネ世代に投資をするのは持続可能な国をつくる戦略上、絶対にやらなければいけないことだった。

 ロスジェネに限らず全世代横断的に効果がある施策として、一つは消費税の廃止がある。強制的な物価の引き上げをしてきた消費税をなくせば物価は下がる。消費税増税によって個人の消費が落ち込んだ。ということは所得も落ち込む。消費税が廃止になればまた消費が加熱していくのではないか。

 また消費税廃止は中小零細企業にとってプラスになる。すべての税金の滞納の中で6割を占めるのが消費税だ。駅前の流行っているラーメン屋の主人から、もう1年も2年も消費税を払っていない状況にあると聞いた。なぜか聞くと、これだけ物の値段が安くなっていて、1杯のラーメンからとれる利益には限度がある。にもかかわらず従業員を増やさなければいけないし、いろんな状況を考えた時に消費税を払う余裕までないという。このような状態に置かれた中小零細がたくさんいると思う。そこを引き下げていけば最低賃金1500円にリーチしやすくなるし、できない場合には政府が保障する形をとれば実現可能だと思う。ロスジェネだけでなくすべての世代横断的に消費が盛り上がっていく、景気が回復していく道筋をつける必要がある。

 奨学金をチャラにする政策も同じだ。学校卒業時に300万円、400万円、500万円ぐらいの借金を背負って社会に出て返済が始まるのが奨学金だ。大学院卒で1000万円をこえる人たちもいる。大人が借金するときには、どのくらい稼ぎがあるのかなどを調べたうえで返済可能額を貸してもらえる。しかし奨学金は将来どんな仕事に就くかわからないし、どれくらい給料がもらえるかもわからないのに、何百万円も貸し付けて利息までとる。年間350億円ぐらいの旨みを金融機関に差し上げるために利息をとる形が今も続いている。安い給料のなかで一人暮らしをしていれば家賃や水道光熱費、食費など生活費が必要だ。全部支払った後で奨学金を返済し、返済が可能であってもお金が残らない。せめて奨学金をチャラにすれば、返済分を必要な物に回してもらうことで経済に寄与してもらうことができる。デフレからの脱却をいうのであれば、よりみんなが消費しやすくなる施策を国が金を出してでもやらなければならない。

 また、住宅政策が非常に重要だ。広島県では住居費は給料の3〜4割ということだが、都会に行くと5割などになる。これは先進国として大きな間違いだ。そうしたベーシックなサービスに関しては極力一人一人の負担を軽くしていくことが重要だ。これだけ不況、デフレが20年続いている国は日本以外にない。安倍総理に聞いても「他にございません」と答えている。20年間、みんな奪われ続けたということだ。その代表的なのがロスジェネ世代の人たちだ。収入のうち3、4割が住居費で消えてしまう状態を変えればいいのではないか。

 今、私は東京の国会議員宿舎で暮らしている。国会議員は給料の1割で宿舎をあてがってもらっている。非常にありがたい。だったらみんなも望めば給料の1割程度で住める家があったらいいのではないか。なぜ国会議員や公務員だけの特権にしているのかと思う。そういうベーシックサービスを担保すればみんなお金を使うようになるわけだから、当然消費はより活気づくだろう。日本経済を救うためにも景気回復するためにも、そういうとりくみをする必要がある。医療、介護、保育、教育、住居といったものに対してより負担が少なくなることをしなければならない。

 一番大事なことは安定した職に就いてもらうことだ。圧倒的に日本の公務員は数が少ない。そして非常勤や非正規に置き換わっている。今不安定な暮らし方をしている人や、ニーズがあるけれど給料が安すぎて人が集まらない職種を公務員化していった方がいいのではないか。例えば保育、介護。全産業平均の100万円以上給料が少なくて、保育士や介護士が足りないのはあたりまえだ。待機高齢者、待機児童をなくすためには処遇の改善以外にない。資格は持っているが、その仕事に就くと生活が立ちゆかなくなるから就かない方がたくさんいる。あたりまえの話だが、国はコストだと思っているのでやりたがらないが、払っているのは年貢ではなく税金だ。支え合える社会をつくり、持続可能な社会をつくる前提の下で税金を払い、政治家を選んでそれをやってもらうはずだ。しかし残念ながらそのような状況になっていない。

■消費税廃止の財源は?

質問

 現在国民1人当たりの借金も大きい。日本は少子高齢化社会で未婚率も増え、子どもを産む人も少なくなっている。税以外で収入を増やす方法がなく、政府からの支出が多ければさらに赤字になり、将来の世代の負担が大きくなると思う。この政策だったら財政破綻の可能性も考えられると思うが、財源をどうするのか。

山本

 消費税廃止にかかる費用はおよそ25兆〜20兆円規模だ。これを廃止する場合、かわりの財源が必要になる。さらに奨学金をチャラにする費用に約9兆円。当然その金をどうするのかという疑問は生まれる。財源の一つは税、もう一つは新規国債の発行だ。

 税金で賄う場合、増税の必要があるなら、まずは大金持ちからいただくのが筋だと考えている。もうけている人からパーセンテージを高く、もうけていない人からは低くいただくのは税金の基本だ。日本は所得税に関しては累進制だが、法人税は税率が決められている。これで苦しんでいるのは中小零細だ。大企業にのみ、この税率からさらに税金が割引きされるメニューが80以上ある。明らかにとり方がおかしいと思う。だからこそ税金のとり方を変えるだけで税収は変わる。

 例えば法人税に累進制を導入し、たくさんある割引きメニューを廃止する。この2つでどのくらいの税収が生まれるか、2016年の法人税で考えると、10兆4676億円だったものが19兆円も増えるという試算がある。なぜやらないのか。組織票をもらっている自分の最大のお客様に対して最大の配慮をおこなった形がこれなのだから、やめるわけにはいかないという話だ。大企業に対する優遇を廃止して所得税と同じ累進課税にすれば、法人税収は2016年で見ても2・8倍に増える。

 そしてもう一つ、所得税の最高税率を引き上げる。1974年の最高税率は75%で、19段階の刻みがあった。それが今や最高税率は45%で7段階の刻みに変わった。より持っている人たちにとってプラスになった。これをやめる。さらに株など金融資産から得られる所得は分離課税になっているが、これをすべて所得として考えたうえで課税するなど、やり方はいろいろある。これらでだいたい10兆円くらい税収ができるとみられている。法人税とも合わせて29兆円生まれるという試算だ。これなら消費税も廃止できるし、奨学金にかかる9兆円も1年目には無理でも翌年にはできるではないか。

 もう一つの財源は新規国債の発行だ。新規国債とは政府の借金だ。「このままだったら日本は破綻してしまう」というが、騙されてはいけない。政府の借金がなぜあなたの借金なのか? という話だ。今この国には1000兆円をこえる借金があり、1人頭約900万円の借金を抱えているとテレビ・新聞がいっている。その情報源は財務省だ。まず伝え方に誤りがある。

 財務省の平成28年度の貸借対照表を見ると、右側の負債の部分は確かに1000兆円をこえている。しかし、右側だけ見て「国の借金が1000兆円をこえている。このままでは破綻する」というのは正しい伝え方ではない。負債と資産を差し引いたうえで純の負債という形で話をしなければならないのに、資産の部分を隠して負債だけで語っているのが財務省であり、それに逆らえないテレビ・新聞だ。国の借金は純で見ると半分以下になるということを大前提として共有したい【表参照】。

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 続いて、国の借金があなたの借金ということについてだが、だれかの借金はだれかの資産だ。つまり借金を全部なくしたら世の中からその分お金が消える。その根本に一回立ち戻りたい。たとえば国が20兆円借金し、社会保障分野に投資したとする。国にとっては20兆円の借金でも、みなさんにとっては20兆円の資産になる。当たり前の話だ。その裏付けとして日本銀行の資金循環統計がある。政府が赤字を拡大したときには民間の貯蓄が増えるという相関性があらわれている。ただしこれが一度崩れたときがある。それはバブルのときで、国も企業も一般も黒字になった。それ以外は同じ状況が生まれる。政府の借金はあなたの借金ではない。

 逆に赤字を出さず、収入のなかでやるという一般の家計における勘定の仕方でやると、当然経済はしぼんでいく。企業と同じで、手持ち資金以上の融資を受けて事業規模を拡大していく。でも国は企業とは違う。破綻するのは最終的な貸し手がいなくなったときだが、国は日本円で借金をしていて、日本円を発行する能力を持っている。お金を刷れば返すことができる。この能力があってどうやって破綻するのかということだ。破綻したギリシャの通貨はユーロで、ヨーロッパ中央銀行しか発行できない。ユーロで借金をしていたギリシャは外国通貨で借金をしているのと同じだったということだ。日本は状況が違う。

 2002年に世界の三大格付け会社が「日本国債の格付けを引き下げる」といったとき、財務省が怒って意見書を出したが、私と同じことをいっている。格付けを引き下げる理由はデフレ経済下の大幅な財政赤字だったが、財務省はそれに対し「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」といっている。円で借金していて円が刷れるのに、どうして破綻するんですかということだ。

 財務省は他にも「ハイパーインフレの懸念はゼロに等しい」といっている。自国通貨建てで借金していて、円を刷って返済しようとしてもハイパーインフレにはならないということだ。デフレが20年続く国で、なかなかインフレにもならないのにハイパーインフレなんてずいぶん先の話だ。そして、戦後初期のアメリカはGDP120%をこえる債務を抱えていたし、1950年代初期のイギリスは200%近くの債務を抱えていたという事実を無視していると指摘している。問題は借金の量ではないということだ。インフレ率がよっぽど高くなるのはまずいが、インフレ率がしっかりと管理されていれば問題ないという話だ。

 ちなみに日本が本当に破綻するのであれば、もうすでに日本自身の信用が失われてないとおかしい。であれば日本の金利、国債の金利が上がっていないとおかしいことになる。信頼のない相手にお金を貸すときに金利が下がるなんて話はない。だが、1997年からみても日本の国債金利は下がり続けている。このなかで長期国債、主役の10年物も、1997年から2018年まで金利は下がり続けている。マーケット・世界は日本が財政破綻しないことはわかっている。国内だけで、国の公会計と家庭の家計を混同したような方法で「日本は破綻する」みたいなことをいいながら、消費増税など、みなさんから金を搾りとろうとし続けているということだ。

 現在の金利は6月12日時点でマイナス0・115。破綻どころではない。「これ以上借金したらやばい。借金を返すから増税します」「将来の世代に負の遺産を渡すんですか」といって増税されていく。でも実態はそんなことはない。どの国も借金して成長していっている。まともに成長している国は緩やかなインフレだ。デフレで消費が弱れば、従業員を増やそうという人たちもいない。大きな工場をつくろうとか新しく機械を入れ替えるようなこともしない。投資も弱り、消費も弱り、需要自体がどんどんこの国から失われていく。それが20年以上続いたら当然国力は落ちていく。それをやってきたのが自民党だ。民主党も同じだ。財務省の論議に乗らなければ政権がとれないから、それをやり続けてきた。それがみんなの困窮化につながっていった。

 景気が良くなるとはGDPが拡大する状況のことだ。GDPの中身は個人消費、民間投資、政府支出、純輸出の4つだ。この4つのうち一番大きなエンジン、55%〜60%が個人消費だ。みんながお金を使えないとか、将来のためにお金を使わないようにしていたら景気が悪くなるのは当たり前だ。そこで政府が財政をカットするといい出したら、余計世の中にお金が回らない。消費税増税をいうが、それは消費にかかわるすべての部門にかかる税金だ。ただでさえ回っていないお金がどんどんひき抜かれていけばますます世の中にお金が回らない。明らかに間違っている。政府しかお金を出せない。デフレからインフレにできるのは国だけだ。舵取りできるのは国だけだ。だとするならば政府が個人消費がもっと活発になるようなことに財政出動しなければならない。財政再建の話を今、この時期にしてるなんて間抜け以外のなにものでもない。

 政府や与党も野党もプライマリーバランスの黒字化と馬鹿みたいにいっているが、これを実現した国がどこかあるか。ギリシャは破綻した。アルゼンチンもだ。それ以降プライマリーバランスの黒字化を目指しているような国がどこかあるだろうか。今この国に生きている人人の状況も見えていないし、この国がこのままでは本当に沈んでしまう。

 農業をやられている方方などは自分たちで食べ物をつくったり、物物交換しながら生き抜くことは可能かもしれない。でもそういうことのできる人たちは限られている。多くの人が生産者に頼りながら、お金というツールを使ってそれを買っていく。このままいけば本当に税金だけとられて受けられるサービスはますます少なくなっていく。「国の借金」ということに対しては心配する必要はないと思っている。必要なところにお金を出し、インフレ率が2%になったら世の中にお金が増えすぎないよう絞っていく。回り過ぎたお金は税制で話したように、税収として吸い上げて制御するような形になると考えている。

 財政危機宣言、『朝日新聞』も1995年に記事で出している。過去の日本の財務大臣などは財政非常事態宣言みたいなことを1982年からいい続けてきた。で、いつ破綻するのかという話だ。

質問

 使用済み核燃料を今保管するのに年間莫大なお金を使っていると聞いたが、火力発電になったらどうなっていくのかが心配だ。原発が稼働してさえいれば再利用できるサイクルがあるので、火力発電になったら核燃料の保管をどう考えているか。

山本

 核の発電から生まれたゴミは今のところゴミとして計上されない。これを資産として計上するために「リサイクル可能な燃料だ」という立て付けが必要になる。だから核燃料サイクルを進めようという考え方だ。

 核ゴミをこれ以上増やすわけにいかないので、「リサイクルできるから資源のない国としてはいいでしょう」という触れ込みだが冷静に考えていただきたい。地震が多い国の日本でこの先、南海トラフや首都圏直下などが来た時に核燃料サイクルであったり、原子力施設も維持していく場合には、たとえその時に稼働していなかったとしても同じような過酷事故が起こる可能性がある。冷やし続けなければいけないので、ステーションブラックアウトみたいなことになって電力が失われたとしたら同じようなことになる。私は大型の地震がもう来るといわれているなかで、原発は安全だといい続けるのは無責任だと思っている。原子力施設を含めその核燃料、核をリサイクルするという概念さえも辞めた方がいいと思っている。

 原子力に関する学問がここで止まってしまうではないかといわれる方もいるが私はそう思わない。核燃料サイクルをやめたとしても核のゴミは残り続けるからだ。それ以外にも廃炉技術ももっと進めていかなければならない。世界でも類を見ないメルトダウンを起こした原発が今も存在している。これは収束の仕方が分かっていない。国は30〜40年といっているが、それは事故していない原発の収束期間と同じくらいだ。おそらく100〜200年単位だ。費用も天文学的にかかるであろう。でもそこに関してはやらなければならない。人類が挑戦しなければいけないような収束作業だ。原子力は学問的にも閉じられるものではない。

 核ゴミについて日本では300bくらい掘って埋めてしまえみたいな話になっている。地震が多い国で地層処分にするのは大丈夫なのかという話だ。ドイツでも何十年も前から捨て場について実験を続けてきている。2011年にドイツの核のゴミ捨て場の候補地に行ったが、1000bくらい地下にアリの巣状に張り巡らされたような部屋に置いていくということだったが、水が溢れてくるという問題が起こった。核のゴミを保管している容器に水が接触したら腐食していく。いろんな議論があってドイツでも最終候補地が決まっていない。岩塩層は何千年も水が入ってこなかったから大丈夫だといっていたが、人間が穴を掘ることによって水の通り道をつくった。

 核のゴミ置き場は議論しなければならないことだし、とくに推進してきた人たちが責任を持って提案しなければならないが、300b地下に埋めて安全が確保されるのかというと難しい。きちんとした技術が確立されるまでは地上に保管するしかないと考えている。「武力攻撃が」という話もあるが、日本海側の原発は今も元気だ。まったく矛盾した話だ。

質問

 寄付金について金額だけでなく人数が分かるとその代表として、発言権が増えるのではないか。金額と人数が表に出てくるといいと思う。

山本

 金額は常に出している。4月10日から6月15日までに1億9225万円集まった。いろんな方々が寄付くださり、外で食べようと思ってたけど我慢して1000円寄付しようという方、500円という方もいらっしゃるし、100万円出すという方もいらっしゃる。今この時点でこれだけの金額が集まれば、参議院は10人を立てることは宣言できる。

 ただ事務所の業務内容として、人数を把握するところまでできる状況にはない。本来参議院で10人がたたかうというのは、数百人単位の給料を払って雇うような政党がやることだ。それを今回1人の議員事務所の事務機能を中心においてボランティアなどでやっている。ほとんどもう一杯一杯という状態だ。チラシを折る作業さえも非常に助かる。一人一人ができることを集めてなんとか大きな勢力にし、国会の中でガチンコでケンカするような勢力を拡大していけたらと思っている。

質問

 今のような内容を、本来であれば国会で議論するのが当たり前だが、現実にできていない。参議院も衆議院の予算委員会も3カ月以上、2ヶ月以上開けていない。下手すれば今季は予算委員会なしで閉じるような現実がある。そんなことを許すわけにはいかないとは個人的には思うが、自民党・公明党が審議に応じないのをどうやって変えていけばいいのだろうか。最近一番怒りがたまっていることだ。

山本

 現在予算委員会が開かれていない。その中でも集中審議が本当は開かれなければいけない。総理大臣も全閣僚も揃ったうえでテレビも入る非常に緊張感が高いものだ。審議しなければいけないことがたくさんある。賃金に関するデータなど8年分以上なくなっている。老後2000万円の問題やイージス・アショアの問題など、国会の中で話さなければいけないことがたくさんあるはずだ。トランプさんと話をして、「選挙が終わった後に得することを晋三がやってくれるって言ってるけど後でのお楽しみね」。みたいなことをツイッターでいわれているぐらいだから、おそらく農作物など、いろんな部分でアメリカ側に譲歩することが約束されているのだろう。

 とにかく説明されていないことだらけなのに、なぜ予算委員会を開かないのか。自民党側は自分たちにマイナスのことが出るのは嫌だ。選挙が近づいているときにやりたくない気持ちはわかる。野党側がやるべき仕事で何ができるかというと、国会議員の仕事である行政監視だ。国会は立法府だが、安倍さんがいるところは行政府。安倍さんは行政の長だから、国会で決めた法律に従って皆さんの税金が適正に使われて、ちゃんと行政運営がされているのかをチェックしなければならない。そのチェックすべき内容がそろっているけれども、その行政をチェックする機会、疑義をぶつける舞台である予算委員会、とくに集中審議を一切開く気がないのは、仕事をしていないということだ。

 これに対して野党がしっかり抗うしかない。ただし与党と野党では圧倒的に数は違うから、与党側が押し切れる。けれども野党側は武器がないわけではない。ここまできたら委員会や本会議を一切開かせないようにするという体を張った抵抗しかできない。野党が一切拒否して体を張ってでも止める気概でなければ与党は予算委員会を開くとはいわないだろう。本来ならそれをする必要があった。国会が不正常になればニュースは流すから、世の中のみんなに知ってもらえばよかった。その機会はゴールデンウィーク前にあったが、早々とその姿勢をやめて本会議開催につきあった野党がいる。「ずる休み」といわれるのが怖かったみたいだ。野党第一党の立憲民主党が与党とまず交渉をする。ここでたたかう姿勢を見せなければ、結局流されてしまう。最終的に本会議の採決に応じたのは立憲民主党だ。立憲民主党の支持者の人はお尻を叩いてほしい。政治家をシャキッとさせられるのはやはり支持者でしかない。

 私が野党第一党だったらとことん体を張る。例えば私が政党になったとして、党首討論のようなところで腰が引けてる野党に対して、野党第一党でも第二党でも「日和って与党側と手組んだんですよね」という趣旨の話をしたら、「腰が引けて結局あれから予算委員会開かれてませんけど、責任感じないんですか?」という話をする。そうすることによって緊張感が生まれると思う。テレビは1%の視聴率で100万人が見る。まず今政治に必要なのは緊張感だ。その緊張感を生み出すためにもガチンコで喧嘩をする人間を国会の中に増やさなければいけない。

 「どうせ数の力で決まるのだから選挙で勝つ以外にないのではないか」みたいな多数決の論理に持って行かれてどうするのか。のちのちみんなの首が絞まるような法案が去年通っているのにどうして国会が1日も延長せずに通っているのか。私が牛歩するのを嫌がるのは与党だけでなく野党もだ。どちらにとってもめんどくさい存在だから嫌われている。だったらその人数を増やす方がもっと緊張感が生まれておもしろくなる。国会がおもしろくなれば注目する人が増える。

 今のまま国会におまかせ、議会におまかせしてきた結果、搾取され続けてきた。痛みを伴う改革のあとに良いことがあると信じた結果、さらなる痛みが続くだけだった。この先もそうだ。子どもの7人に1人が貧困、20歳〜64歳まで1人暮らし女性3人に1人が貧困、高齢者5人に1人が貧困。生活が苦しいといっている人は厚生労働省の調査で56%をこえて、シングルマザーの82%が生活が苦しい。壊れるのは時間の問題だ。

 変えられると思っている。夢見過ぎだといわれてもいい。一緒に行ってくれる人を募集している。あなたが諦めてしまったという政治に、私が1人でもやっていく決意を固めている。そこに期待を寄せてほしい。疑ってくれて結構だ。疑ってかかるのが政治だ。そのなかでもこいつだったら動いてくれるのではないかと、私のお尻を叩きながらもっと国会を楽しみ、政治に興味を持って、それを動かせるという自信を取り戻してほしい。
 
https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/12000
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/299.html

[政治・選挙・NHK262] 『「反緊縮」宣言』 松尾匡・編 (長周新聞 書評)
2019年6月22日

 新自由主義・グローバリズムのもとで貧富の格差が著しく拡大し、1%の超富裕層のための政治から99%の働く者の生活の繁栄をめざす政治への転換を求める運動が、国際的潮流となって発展している。スペインのポデモス、イタリアの五つ星、フランスの黄色いベスト運動、アメリカのサンダース現象、イギリスの労働党におけるコービンの躍進などがそうだが、それらの運動の中心的なスローガンが「反緊縮!」である。

 80年代以降、新自由主義的改革を推進する各国政府は、「財政難であり財政健全化のためには緊縮政策が必要だ」として、財政面から社会保障、医療・教育・福祉を切り捨ててきた。それは大企業には法人税を大幅に削減する一方で、大衆には消費税などの増税を強いるものであった。

 こうした「財政赤字」を理由にした緊縮政策に反対し、「金持ちのためではなく、失業や低賃金に苦しむ働く人人のためにもっとお金を使え」という「反緊縮運動」の主張は、大衆的な支持基盤を拡大し勢い良く発展している。だがこの潮流は、日本では欧米のような幅広い支持を得た運動として表面化してはいない。

 本書はそうしたなかで、国際的な「反緊縮運動」がとなえる経済政策について紹介したものである。日本において「反緊縮」を訴える経済学者や、それに共鳴する文化人、市民運動家らの寄稿文で構成している。

 編者の松尾匡・立命館大学経済学部教授(理論経済学)は、「反緊縮運動」が掲げる政策を特徴づけるものとして、@社会保障や教育など民衆のための支出を増やす、A景気を拡大して雇用を増やす、B金融緩和(中央銀行がお金をたくさん出すこと)を利用する、C金持ちへの課税の強化を主張し大衆増税に反対する−−の4点をあげている。そこでは、「財政危機」を誇張する論は「緊縮派のプロパガンダ」と見なされているという。

 昨年、アメリカの中間選挙で、「民主社会主義」を掲げるオカシオ・コルテスがこのような政策を掲げて史上最年少で議員になったことで話題を呼んだ。彼女は「財政の収入と支出を合わせる必要はない」というMMT理論(現代貨幣論)を提唱する経済学を理論的な裏付けにしていると公言している。

 本書では、こうした「反緊縮」を支える経済理論が「景気拡大のための財政出動」をとなえたケインズ経済学の現代的な潮流であるとして、経済学者が独自に解説する小論もいくつか収めている。各論者は、深刻なデフレ不況下での財政赤字の削減が不況をより長引かせ、むしろ事態を悪化させることを強調している。消費増税についても同様で、「社会保障のために」というがその実、法人税率引き下げの財源確保のためであり、大衆消費購買力をさらに低下させるだけである。

■アベノミクスの人為的失策 社会保障切り捨て

 アベノミクスについても、「機動的な財政出動」をとなえて大衆をまどわしたが、初動の財政支出は箱モノなどに使われ庶民の生活には回らなかったばかりか、社会保障などへの支出は容赦なく切り捨ててきたことを明確にしている。初年度に消費増税した後は財政規模を抑制し続け、公共事業への支出を社会保障の削減によって帳尻合わせするだけであった。

 「異次元の金融緩和」の効果もドルの基軸通貨体制のもとで円安を通じて外需に回され内需につながらない。大量の余剰資金が日銀の当座預金や大企業の内部留保にとどまり、大衆消費にまで回らない。本書は長期のデフレ不況から脱却できず、国民を苦しめているのは、そうしたアベノミクスによる人為的な失策にあったことを浮かび上がらせている。

 本書が着目するもう一つの点は、「反緊縮」を掲げた運動が旧来の「右派か左派か」といった枠組みでは対応できないことである。サッチャー、レーガンから始まった新自由主義はその後、欧米日の労働党や民主党など社会民主主義、中道左派、リベラル派を巻き込んでいった。そのもとで、新自由主義が政治的に「自由、民主、人権」を主張して市場の自由化を促進する立場に立つ一方で、これに対抗する勢力は欺瞞的な「自由と民主主義」への不信を強め、経済的平等を叫び直接的な民主主義で国家に富の配分を求めるという対立となってきたからだ。

 日本でも民主党を含めて野党の大部分が緊縮政策に陥ったことで、「反緊縮」を装ったアベノミクスの補完的役割を果たしてきた。本書では、そうした条件下で「反緊縮」を掲げた潮流が欧米のように大衆的支持を得て躍進する局面が見られないのは、日本やアジアに共通した現象であることを明らかにしている。

 この点についてはとくに、中国(香港も含めて)では「民主派」「リベラル派」が政治制度の改革を求めて新自由主義を推進する側に立ち、経済的な平等を求める広範な大衆の支持を得られないことに端的に示されているという。

■緊縮策続けた左派への怒り 「右傾化」の背景

 松尾教授は世界的に見て右翼潮流が「反緊縮」や「ポピュリズム」を旗印にする側面もあり、アメリカの労働者のなかにトランプ支持、フランスの黄色いベスト運動にもルペン支持者が多いことにふれている。そしてこれを単なる「右傾化」ととらえるのではなく、その背後にはアメリカの民主党やフランスのマクロン(中道派)が続けてきた「緊縮政策への深い失望と反発」があることを見る必要があると指摘している。

 民主主義とは、「エリートが密室で作った政策より、生活に基づいた民衆の素朴な要求の方が尊重される」ことだという潮流が台頭しているのである。そこから、左派と見なされている野党の間で、「極右とは手が組めないが中道右派ぐらいまでは手が組める」とか、「世論が保守化しているから、中道リベラルあたりの勝てる候補で一本化を」などと考え野合するのは、「エリートが密室でつくってきた政治の典型」であり自殺行為であるとして、次のように警告している。

 「緊縮と長期不況の犠牲となった、あるいはその犠牲となるのではと不安に感じている若者たちの、もっとも嫌うものだ。……左派がそんなものと組んだら新自由主義に対する怒りをもろともにぶつけられる」と。

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 (亜紀書房発行、B6判・174ページ、1700円+税)

https://www.chosyu-journal.jp/review/12011
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/301.html

[政治・選挙・NHK262] 寝ながら語られる「国防」(長周新聞 コラム狙撃兵)
2019年6月22日

 防衛省のいい加減さには、萩市や阿武町の住民たちも言葉を失っている。イージス・アショアの配備候補地として選定した秋田県に続いて、山口県でも高台の標高が誤っていたことが発覚したが、これらはみな実地の測量調査をすることなく、グーグルアースに頼り切ってパソコン上の数値を鵜呑みにし、そこから定規や分度器で測って「適地」としていたことが原因だった。結論ありきだったのである。

 驚かされるのは、戦争をしようかという組織がたいへん原始的なやり方で地理を把握し、その誤った地理への認識を共有して組織全体が動いていることである。国防とか防衛を掲げる組織が、その重要施設を配置しようというのに山の高さや地理に対して極めていい加減であり、適当なやっつけ仕事感覚で物事を動かしているのである。不真面目といえばその一言に尽きるが、結論ありきだったという前提に加えて、国民の生命や財産を守るという使命感や緊張感が欠落しており、別目的のために任務を遂行していることをあの居眠りともども暴露した。「国防のために重要である」といくら口先で吹聴しても、その傍らで寝ているというふざけた態度に住民が激怒するのは当然だ。

 ところで、静止している山の高さすら正確に測ることができない軍隊が、動きながら向かってくるミサイルに立ち向かうことは可能なのだろうか? と素朴な疑問を抱いてしまう。まさかとは思うが、その場合もグーグルアースや定規、分度器を使って、居眠りしながらやるのだろうか? と素人は今回の一件からつい想像してしまうのである。戦争できる国になるために安保法制を強行し、地球の裏側まで出撃できるようになったというが、前述したように国防及び国土への理解に対して不真面目なのに、「攻撃」にのみ意識が向いているのだとすれば馬鹿げた話である。だいたい、食糧自給率も四割未満で、国土に54基も原発を抱えながら拳を振り上げるなど、愚か者か後先考えない者にしかできない行為である。

 近年のアジア近隣諸国への喧嘩腰外交が破綻しているのを見てもわかるように、最大の防衛政策は外交によって友好平和、平等互恵の関係を築き、「アジアの世紀」といわれる時代の変化に対応することだろう。北朝鮮が市場開放に向けて動くなかで、イージス・アショアの配備そのものが時代遅れなものでもある。安倍晋三がバイ・アメリカンのトランプに売りつけられ、当のトランプは電撃的な米朝会談によって北朝鮮の資本主義化利権に食い込もうというのである。日本をアジアの狂犬にして米本土防衛の盾にしながら、アメリカは利だけもっていく戦略である。

 もともと結論ありきで秋田、山口への配置を決めたのは、その延長線上に位置して守りたい対象が米軍の重要出撃拠点となるハワイとグアムだからである。米軍基地を守るための盾として最新鋭の陸上固定イージスを配置し、「ハワイやグアムに向かってくるミサイルを手前で撃ち落としなさい」というものにほかならない。それは同時に攻撃的な意味において北朝鮮のみならずロシアや中国への最前線の睨みともなる。まさに日本列島の不沈空母化である。そのようなアメリカの軍事戦略のための武器を押し売りされ、まるで日本列島を防衛するために必要であるかのように欺瞞しているのが防衛省の役人たちである。米軍の下請軍隊として自衛隊は最前線に鉄砲玉としてかり出され、防衛省は米軍需産業の武器買い取り商と化し、年間5兆円の防衛費をアメリカに貢ぐ。国防とは名ばかりである。このいい加減さは、独立を投げ捨てていることに深い根がある。 武蔵坊五郎

https://www.chosyu-journal.jp/column/12002
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/302.html

[政治・選挙・NHK262] 多様性が発展させる民主主義 「新時代沖縄」をつくるポジティブパワー (朝日新聞社 論座)
多様性が発展させる民主主義
「新時代沖縄」をつくるポジティブパワー

徳森りま NGO「ちむぐくるアクション」発起人
論座 2019年06月22日 より無料公開部分を転載。
 

 「めずらしい名前ですね――」 

 自己紹介の場面で必ずと言っていいほど言われる台詞だ。すかさず、私はこう返す。「父親が日系ペルー人で、ペルーの首都リマ市が由来なんです」。なるほど、と相手が頷いて腑に落ちた表情になる。

 沖縄県は歴史的に日本有数の移民県として知られており、県民の4人に1人は海外に親戚を持つともいわれている。琉球王国が廃止され、明治政府の「旧慣温存」政策によって農民層が重税と貧困にあえぐ中、移民政策が国を挙げて推進された。ハワイ、フィリピン、北米、南米、日本本土……。一獲千金を夢見て沖縄島から大勢の人々が国内外へ旅立った。

 筆者の父方の曽祖父母もその一例で、1世紀前に東海岸にある離島の平安座島(へんざじま)からペルー・リマ市へ移民した。そうして父の代までペルーでの暮らしを続けてきた。沖縄が米軍統治下から日本へ施政権が返還されることが決まり、これから経済が良くなるから沖縄に移りなさいと親戚から説得された父の家族は、「沖縄返還」の1972年、沖縄へ「引き揚げる」ことを決断した。

 しかしながら、ペルー育ちで日本語が理解できず、学歴も財産も持たない外国出身家族の来沖後の苦労は大変なものであった。筆者自身は沖縄生まれの沖縄育ちだが、「移民の子ども」として親の背中を見て育ってきた自負がある。

 先ほどの自己紹介のパターンには続きがあって、お決まりの質問が投げられる。

 「ペルーへ行ったことはありますか?」「―いいえ」
 「スペイン語は話せますか?」「―いいえ」
 「ペルーの〇〇を知っていますか?」「―いいえ」

 親が外国出身でも、子どもがその国の言語や文化を会得しているとは限らない。私の自己紹介はいつも否定することとセットだった。

 親の仕事の都合で幼少期を南米のウルグアイとブラジルで過ごし、8歳で沖縄に帰ってきたとき、小学校で「帰れブラジル人!」と言われた。強烈なショックだったが、この体験がきっかけとなってアイデンティティについて考えるようになった。「私って何者なんだろう? 日本人? ウチナーンチュ(沖縄人)? 外国人?」 

 ペルーの文化に愛着はあるが、行ったこともなければ言葉もわからない。見た目も国籍も周りの日本人/ウチナーンチュと変わらない。でも、「日本人でしょ」と言い切られるとなにか違和感がある――。

 みんなと同じ存在になりたいけれども、どんなにあがいても帰属できない。この世界のどこにも自分の居場所がないと感じていた。

 あまりにも息苦しくて、そのうちペルーにルーツがあることも、南米で過ごしたことも隠して生きるようになった。そうやって、周りに同化して生き抜くしかなかった。

■マイノリティの自分と沖縄

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翁長知事は、辺野古新基地建設の問題や、沖縄に米軍基地が集中する実態を英語で紹介した。「沖縄の人々は、自己決定権や人権をないがしろにされている」と国際社会に訴えた=2015年9月、スイス・ジュネーブの国連人権理事会

 自分のルーツを否定する人生に転機が訪れたのは、琉球大学在学中に日系留学生の友人らと出会ったことがきっかけだった。前述の通り、沖縄県は世界中に移民を出した背景から、各国に県人会があり現在でも活発に活動している。そうした沖縄出身者の子孫向けに県や市町村の奨学研修制度があり、今日も沖縄への留学交流が続いている。
 見た目はウチナーンチュなのに外国出身。日系留学生たちは、母国の言葉と日本語、ときにはウチナーグチ(沖縄語)を交えながら沖縄への愛と期待を語る。その姿だけでも眩しかったが、何よりも、沖縄ともう一つ(場合によっては二つ以上)のルーツがあることを当たり前として捉えている彼らが、卑屈に生きてきた自分とは対照的で、本当に羨ましかった。

 同時に、大学で移民史や琉球・沖縄史を学び、琉球併合、沖縄戦、米軍占領、沖縄返還といった国策を顧みたとき、私自身もまた彼らと同じく、沖縄の歴史の性質上、生まれてきて当然のマイノリティだったのだと悟った。

 それがわかったとき、自分自身の中で、マイノリティとして生きてきた「わたし」と、米軍基地問題について日本の中で意見を言っても聞いてもらえない沖縄の存在がリンクした。そして、沖縄に生まれ育ちながら、琉球・沖縄史を自らの歴史として義務教育で学ぶことができない現行制度や、すでに存在しているマイノリティ・グループが認識に反映されていない社会のあり方に疑問を持つようになった。

 大学院を修了後、「島ぐるみ会議」という沖縄の市民団体に事務局スタッフとして関わり、名護市・辺野古へ座り込みに行く市民らの支援や、故・翁長雄志前県知事が国連人権理事会へ参加した際の随行サポートを行った。

 機動隊に力づくで市民が排除されていく抗議活動の現場に毎日通い、21世紀の日本で起きている国家的暴力を目の当たりにした。

 日本史上初めて、翁長知事が行政首長として国連人権理事会に行くことになったときには、いよいよ辺野古問題は日本国内のシステムだけでは救済の限界があるという顕れなのだなと思った。同時に、他国の外交官やNGO、マスメディアが真剣に沖縄の訴えに耳を傾けてくれたことに、沖縄で起きている問題が人権侵害問題として国際社会に知られれば、まだまだ解決の余地はあるとの実感が持てた。

■南米で気づいた「沖縄の心」

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紛争を経験したコロンビアの山村で、沖縄戦を伝えるイベントを開催。人々は親身に聴き入ってくれた=2016年5月

 人権侵害に苦しむ人びとが世界中から集って訴える姿に刺激を受けた半面、沖縄の声を届ける上で自分自身の力不足も痛感した。まったく違う場所で経験を積んで、沖縄の抱える問題を普遍的な人権問題として語れるようなりたい――そう思い、海外ボランティアとして2016年よりコロンビア、2017年よりペルーでそれぞれ働くことにした。

 コロンビアでは、村役場の職員として紛争犠牲者の支援担当に就いた。人口1万人規模の小さな集落だが、国内で過去2番目に大きな爆破事件がゲリラによって起きたことで有名な場所だ。凄惨な地上戦を経験した沖縄の出身だからこそ何かできることがあるはずだと思ってこの土地での活動を希望したが、むしろ教わることのほうが多かった。

 半世紀近く紛争が続き、2016年にサントス大統領(当時)がゲリラとの停戦合意でノーベル平和賞を受賞したことで知られるコロンビアは、行政やコミュニティに国連や国際人権NGOがどんどん入り、ソフト・ハード両面から支援が進んでいた。10歳くらいの村の子どもが走り寄ってきて、「私たちは直接紛争を経験していないけど、親やお年寄りたちが暴力を受けたこの地域で暮らしているのだから、私たちも間接的な紛争の被害者なんだよ」と当然のように言い切る姿には、沖縄、いや日本こそ戦争被害者に対するケアや補償が立ち遅れているとさえ感じた。

 一方で、沖縄で行われている公教育の場での平和教育の実践や、世界の恒久平和を願って、国籍や軍人、民間人の区別なく、沖縄戦などで亡くなったすべての人々の氏名を刻んだ記念碑「平和の礎(いしじ)」の理念を紹介するとき、「暴力の時代」から間もないコロンビアの人々は、自分事として真摯に耳を傾けてくれた。この経験から、「命(ぬち)どぅ宝(たから)」(命こそ宝)の精神に表される沖縄の平和を希求する心は、世界レベルで共有すべき尊いものなのだと確信を持つことができた。

 ペルーでは、沖縄県人会や日系コミュニティに通って高齢者らと接するうちに、沖縄戦のトラウマを抱えたまま海外へ移民して生きているウチナーンチュがいることを知った。ある高齢者は、「ペルーの家族や孫たちは沖縄戦の実態を知らないし信じてくれない。戦争の話をしても、そんな酷いことが現実に起こるわけがない、おばあちゃんは悪い夢を見たんだよと言われた」と筆者に語った。凄惨な戦争体験の苦しみを誰とも共有できないまま、自分の胸の内に抱えて異国で生きている人々がいるということを、私は想像したことがなかった。

 沖縄戦のことだけではない。アメリカ占領下の出来事や今日に続く米軍による犯罪被害を、沖縄の親戚や留学、渡沖した人々を通じて聞かされてきた海外に暮らすウチナーンチュたちもまた、胸を痛めながら、しかし誰かに疑問を投げかけることもできず葛藤していた。同時に、自身のルーツでもある沖縄のために何か行動を起こしたいと考えている若者たちにも出会った。

 世界には26カ国・1地域に92の沖縄県人会があり、海外に暮らす県系人の数は40万人を超える。そうした海外コミュニティにいる沖縄への想いを持つ人々と手を取り合い、国際社会に沖縄の置かれている状況を発信すれば、米軍基地問題をはじめ、沖縄の抱える問題は解決の方向へ向かうと感じた。

■みんなで考え、決める

 2018年8月に南米から帰国すると、間もなくして翁長知事が急逝した。沖縄島は例えようのない深い悲しみに包まれた。翁長知事は、保守、革新、無党派の立場を問わず、「オール沖縄」で県民が心を合わせることの大切さを説き、実際に取りまとめることができた偉大な政治家だった。失って改めて、これまで県民の先頭に立ち、知事として沖縄の問題を一身に請け負って巨大な権力と闘ってきた翁長氏の存在の大きさと尊さに、大勢の人々が気づかされた。埋め立て承認撤回の裁判、さらに迫り来るであろう政府の横暴に、どうやって沖縄は対抗していけばいいのか。悲しみと不安に多くの県民がうなだれた。

 翁長知事が亡くなって数日が過ぎた後も、知事選の候補者選考は一向にまとまらず県民は気を揉んでいた。そうした中、「辺野古」県民投票の会代表の元山仁士郎さんやSEALDs RYUKYUで活動していた後輩から、一緒に会って話をしたいと声をかけられた。数人程度の集まりだと考えていたら、予想に反して20人弱にまで膨れ上がった。そうして集まった10〜30代のメンバーで、これから自分たちが沖縄を守るためにどうしたらいいか、どんな政策が必要か、誰を知事にしたいかを、とことん話し合った。

 実は、2018年春に翁長知事のがんが明らかになった時に、市民の間では後継者候補として当時衆議院議員だった玉城デニー氏の名前がささやかれていた。しかし、政党や組織からなる「調整会議」の人選関係者の間で彼の名前が議論されることはなかった。そのことが頭の片隅にあった私は、集まりの中で事情を話してみた。

 はじめは、「玉城デニーって誰?」「僕は安室奈美恵ちゃんが知事になったほうがいいと思う」などと話していたメンバーだったが、 ・・・ログインして読む
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[政治・選挙・NHK262] 沖縄戦〜父が親友に手渡した手榴弾 沖縄戦の最前線で戦い、生き残った父が、最期に私に伝えたかったこと (朝日新聞社 論座)
沖縄戦〜父が親友に手渡した手榴弾
沖縄戦の最前線で戦い、生き残った父が、最期に私に伝えたかったこと

島袋夏子 琉球朝日放送記者
論座 2019年06月22日

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親友の遺影を見つめる父=2015年6月、那覇市、第一中学徒隊展示室(琉球朝日放送提供)

■鉄血勤皇隊の生き残りとして逝った父

 昨年89歳で亡くなった父が生きていたら、何を思っただろうか――。平成最後の夜、私はそんなことを考えていた。

 昭和2年生まれの父は、17歳で「鉄血勤皇隊」と呼ばれる少年兵として、沖縄戦の最前線に送り込まれた。

 天皇の兵として銃をとり、御国のために戦ったのだ。

 そこは、人間が、人間でなくなる地獄だった。父は生涯、その体験から逃れることができなかった。

 我がままで、癇癪持ちで、家族を容赦なく傷つける人だった。けれど、そんな父を嫌いにはなれなかった。

 父がもう長くないという連絡を受け、当時東京に住んでいた私は、一睡もせずに、始発の電車に飛び乗り、羽田空港から沖縄に向かった。

 慌てて那覇市内の病院に駆けつけると、父はベッドに横たわり、痩せ衰えてはいたが、相変わらずの口調で、心配する娘の気持ちなど無視して、誰か知り合いの新聞記者を呼ぶように言った。

 最期にどうしても、沖縄戦のむごたらしさ、沖縄が受けてきた「差別」を伝えたいというのだ。

 父は人生の最期に、ひとりの父親として、娘に「ありがとう」とか「お前はいい子だった」とか声をかけるのではなく、鉄血勤皇隊の生き残りとしての務めを終えてから、死ぬことを選んだ。

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親友の墓参り=2015年6月、名護市(琉球朝日放送提供

■17歳の少年兵 親友の死

 物心ついたころから、毎年6月23日の「慰霊の日」が近づくと、父とふたりで訪れる場所があった。那覇から車で約1時間半、灼熱の太陽に照らされて輝く、紺碧の海を見ながら、西海岸をドライブする。

 車内で聴くのは、いつも決まってベートーベンの「エリーゼのために」。私が初めて覚えたクラシック音楽だ。

 父がこの曲に、特別な思いを抱いていることは、幼心にも感じていたが、詳しいことを知ったのは、もう少し後になってからだった。

 サトウキビが揺れる静かな集落に、古い亀甲墓はあった。父の親友が眠る場所だ。

 梅雨明け後の沖縄は、むせるように暑い。恵みの雨を大量に蓄えた大地は、生命力に溢れ、緑が一層艶やかになる。

 父は汗だくになりながら、墓の周囲に生い茂る雑草を刈り取り、隅々まで掃き掃除をする。そして、ひと段落すると、墓前に花や果物、線香を備えて手を合わせ、しばらく黙って墓石を眺めるのだった。

 親友は、父が沖縄県立第一中学校に通っていた頃の同級生だ。

 沖縄本島に米軍が上陸し、艦砲射撃の暴風が吹き荒れていた昭和20年3月27日、父たちは卒業式の最後に軍命を言い渡され、鉄血勤皇隊として招集された。

 雨のように降って来る砲弾、手足を失い、泣き叫びながら這いずりまわる兵士たち、辺り一面に無残に横たわる死体…。痩せた足に兵士がすがりつき、「助けてくれ、助けてくれ」と叫ぶのを、跳ねのけながら逃げたと父は語った。

 沖縄戦の組織的戦闘があと5日で終わるという6月18日のことだった。大けがをした親友を連れて彷徨っていた時のことを、父は戦後35年目の同窓会誌に書いている。

 両尻がむき出し、尾骶骨がはみ出て歩けない君を、勤皇隊本部
 に帰すように誰に命令されたのか全くおぼえていないが(中
 略)君は突然「母の所に連れて行ってくれ」と僕に頼んだね
 (中略)君が厄介な荷物のように思われたのだろうか、「手榴
 弾をくれ」と君は言った。 僕は頭上で炸裂する榴散弾のとび散
 る音をききながら君に最期の言葉をかけたように思える。「ど
 うせ俺もあとでいくから」と。〈山田義邦「追悼の記」『養秀
 百年』(養秀同窓会,昭和55年)〉

 それは父と親友の別れの場面だった。父は、大けがをして歩けなくなった親友に自分の手榴弾を渡し、自決を促したのだ。

 だが、父は戦後しばらく、その出来事の重みを感じていなかったという。「戦争だったのだから仕方ない」。そう思っていた。

■東京で

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1950年代 東京で

 転機が訪れたのは、東京の大学に進学したときだった。

 友人の家を訪ねるため、郊外の住宅地を歩いていると、玉砂利が敷かれた立派な邸宅から、ピアノの音色が聴こえてきたのだという。それが、ベートーベンの「エリーゼのために」だった。

 その美しい旋律は、父に厳しい現実を突きつけた。

「私が5日前に出てきた沖縄は、糞だらけの生活をしているのに」

 沖縄は戦争が終わった後も、米軍占領下に置かれた。人権は保障されず、貧しく、惨めな暮らしが続いていた。

 豊かな暮らしを着実に取り戻しつつある東京と、復興とは程遠いふるさと・沖縄。彼我の差を比べ、「悔しさが込み上げた」という。

 さらに、故郷・沖縄の置かれている立場を突きつけられる出来事があった。大学の掲示板に張られていた求人広告に、大きな墨字で、「第三国人、琉球人を含む、かたくお断りします」と書かれているのを、目にしたのだ。

 父は当時のやるせない思いを、繰り返し私に語った。

「何百社という企業から求人が出ていた。それなのに頭に来たね。国のために、天皇のためにと、銃をとって戦ったんだよ。友だちが死んだんだよ。何のための戦争だったのか」

 その時から、父の葛藤が始まった。

 勉強も、友だちとの平凡な日々も諦め、ただ御国のためにと、身を捧げた青春時代だった。なのに、全てが終わった後、待ち受けていたのは、散々な仕打ちだったのだ。

 父は、親友に手榴弾を渡し、死なせてしまったことを、生涯悔やむことになった。

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親友と死別した場所を供養に訪れた父=2015年6月、糸満市摩文仁(琉球朝日放送提供)

■「天皇陛下万歳」 再び友だちを失った

 結局、貧乏で孤独な都会暮らしの中で、肺病を患った父は、学業を断念して島に帰った。いくつか職を転々とした後、香水やウイスキーといった免税品を扱う仕事に就いた。

 当時の沖縄と言えば、長く日本本土と切り離され、混沌としていた。しかし一方で、復興に向け、また祖国復帰を目指して、人々が逞しく生きた、エネルギー溢れる時代でもあった。

 父は、米軍統治下の「アメリカユー(米国世)」、復帰後の「ヤマトゥユー(大和世)」と激動する社会で、自分の人生を取り戻した。贅沢もし、自由も手に入れ、地獄の戦場を逃げ回った日々や、その後の惨めな暮らしも忘れることが多くなっているように見えた。

 しかし、退職すると、あの日を振り返ることが多くなった。年を重ねるごとに、戦死した親友の墓参りに訪れる頻度が、月に一度、週に一度と増えていったのだ。

 80歳を過ぎて、父には年の離れた男友だちができた。その人は、父の戦争体験を何かで読み、連絡してきたのだという。沖縄戦や基地問題に関心が高く、平和運動に積極的に取り組んでいた。

 ふたりは毎日のように行動を共にした。運転ができなくなった父を連れて墓参りにも行ってくれたし、忙しさにかまけて父の相手をしない私にも「たまにはお父さんに会いに来なさい」と度々電話をかけてきた。3年前には、父がずっと探していた別の同級生の家族をブラジルから呼び寄せ、同級生が戦死した場所を案内して、家族に最期を伝えたいという父の悲願を叶えてくれた。

 ところが、そこまで尽くしてくれた友だちは、突然、父の元を去った。父が不用意にあることを話したのがきっかけだった。

 何年も前になる。父が傷痍軍人の会に出席したときのことだ。

 沖縄からの出席者は、天皇皇后陛下に一番近い最前列に案内された。すると、どこからかともなく、「天皇陛下万歳」の三唱が始まった。

 沖縄戦体験者には、天皇制について複雑な感情が根強い。父もそうだった。

 だがその時、父は咄嗟の出来事に、自分だけが、ただ立ってやり過ごすわけにはいかなくなり、一緒に手を挙げてしてしまったのだという。

 父にしてみれば、どうしようもなかったのだ。しかし、そのエピソードを聞いた友だちは、激怒した。私にも電話をかけてきて言った。

「お父さんにはがっかりした」

 天皇の兵として銃をとった父は、戦場で友だちを亡くし、晩年は「天皇陛下万歳」をしたことで、再び友だちを失ったのだ。

 友だちが去り、また寂しくなった父のことを思うと、不憫でならなかった。それ以上に、鉄血勤皇隊の生き残りとしての「あるべき姿」を期待され、それに沿わなかったために「がっかりした」と言われたことに、私は理不尽さを感じた。

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戦争体験を語る父=2015年6月、那覇市(琉球朝日放送提供)

■父が最期に伝えたかったこと

 その後も父は、話を聞きたいと訪ねてくる人たちには、戦争体験を包み隠すことなく語った。ある時は、親友に手榴弾を渡した場面を語りながら「私は人を殺したのです」とまで言った。

 何が父をそこまで追い詰めたのか。

 父は今の政権が、また沖縄に軍事基地を造り、さらに憲法まで変えようとしていることに、強い危機感を抱いていた。

「勇ましいことばかり言うが、若い人たちは本当の戦争を知らない」

 戦争を知らない裕福な閣僚たちが、隣国への敵意や憎しみを煽っている。若者たちが、権力者の意のままに、戦場に送られてしまうのではないか。かつての自分と同じように取り返しのつかない過ちを犯してしまうのではないか――そう心配していたのだ。

 父は、強い口調で語った後、癇癪を起こして、途中で帰ってしまうこともあった。堪らなかったのだろう。

 どんどん論調が激しさを増していく背景には、戦争に動員された少年たちや、戦後ずっと葛藤し続ける自分の姿を、美談として取り上げられることへの恐れがあった。父の元には、全国から何人もの記者が話を聞きにやって来たが、父は、どの記事にも満足していなかった。

「メディアは、親友に手榴弾を手渡した壮絶な体験には興味を寄せるけれど、その後、沖縄が受けた差別や、自分たちが味わった悔しさは書いてくれない」

 そんなことを思っては、孤立感を深めていたのだ。

 百歳まで生きると言っていた父だが、一昨年の夏、入院してから約1カ月後に息を引き取った。その遺志は、枕元で、急かされながら、私がアイフォンで記録した。

 戦争の時代を生きた親たちが、何を背負わされ、どんな気持ちで生きてきたのかを想像し、その思いを継いでいくのは容易ではない。責めるのも、美しく讃えるのも違うと思う。

 沖縄は今、梅雨の季節を迎えている。

 少年たちが泥だらけになって戦場を駆けていたころだ。父は、戦争中もずっと激しい雨が降っていたと話していた。きっと雨を見る度に思い出していたんだろう。

 父がいなくなって最初の夏、私はいつもの場所を、夫と二人で訪ねた。今年も梅雨が明け、サトウキビが揺れる頃になったら、行く予定だ。

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戦争体験を私に語る父=2015年6月、那覇市、第一中学徒隊資料展示室(琉球朝日放送提供)

https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019060900002.html
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/315.html

[国際26] 世界難民の日、温かな食卓を共に囲む意味を考える (朝日新聞社 論座)
安田菜津紀 フォトジャーナリスト
論座 2019年06月22日
 
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2018年9月、イラク北部クルド人自治区内の国内避難民キャンプ。ISによる被害やその後の奪還作戦などで家を追われた人々のうち、いまだ約180万人が避難生活を送っている(写真は筆者撮影)

 薄雲が空を覆い、夏の終わりにしては肌寒い日だった。時折、気まぐれのように降る小雨が静かに車窓をつたう2017年秋、10年ぶりに訪れたドイツで、シリアから逃れた友人を訪ねた。北部ハノーファーから、列車は森を抜け、穏やかな田園風景の中、更に郊外へと走る。降り立った駅前広場の周りには、小ぎれいな商店が軒を連ね、のどかな街並みが広がっていた。行きかう人々の中には、イスラムのヒジャブを被った女性の姿も目立つ。若者たちの会話からも時折、アラビア語が聴こえてくる「お待たせ!バスの乗り換えにまだ慣れなくて」と出迎えてくれた彼は、白髪が目立ち、実年齢よりもずっと年上に見えた。

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車窓からの風景。小雨交じりの風景の向こうに、二重の虹がかかった

■シリアの戦禍を逃れ、単身ドイツへ

 アリさん(仮名・40代)が単身ドイツへとたどり着いたのは2015年、とりわけ多くの難民が危機を逃れヨーロッパを目指した年だった。この年だけでも110万人がドイツに入国したとされている。

 シリアが戦禍にのみ込まれていく中、知識層だった彼は、政府側、反政府側双方から、自分たちの力になるよう声がかかったのだという。「誰も、殺したくなかった」。故郷を離れた苦渋の思いをアリさんはそう語る。けれども家族全員でいきなり難民となるのはあまりにも無謀に思えたという。妻と幼い3人の娘をシリアに残し、まずは単身、隣国トルコから海を渡った。最初に自分ひとりがそのリスクを背負い、海外に生活基盤を築き上げようと試みたのだ。いくつもの国境を越え、あまりに長い道のりの末にたどり着いたのがドイツだった。

 「最も危険だったのはやはりボートでギリシャを目指したときだった」と、命がけの旅を振り返る。「スマートフォンに家族へのメッセージを書き残して、沈みそうになったらいつでも送れるように準備しておいたんだ」。自分がこれまで築いてきた全ての人間関係から切り離される、あまりに孤独な選択。何より家族といつ会えるのか、何ら約束された将来が見えないのがたまらなく苦しかったと当時を振り返る。実際、家族の呼び寄せ許可は、年々厳しくなっていた。

■予想よりはるかに高かった言葉の壁

 ドイツでの暮らしに馴染もうと努めてきたものの、言葉の壁は予想していたよりもはるかに高いものだった。彼の前職はエンジニアだったが、専門用語も多いその職能をドイツで生かすにはあまりにも言葉が不自由だった。今は小さな企業でインターンをしながら、いつかまたエンジニアとして働けるよう、ドイツ語を猛勉強する毎日を送る。「職に就けないことを、一部では“楽をしている”と見られることもある。ただシリアでは日々当たり前のように仕事をしていた自分にとって、働けないということは“社会から必要とされていない”ということと同じなんだ」。

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アリさんがかつて暮らしていた、シリア首都ダマスカス。旧市街地のハミディア市場の入り口

 現在暮らしている街は元々移民たちも暮らしている地域ということもあり、商店街にはハラールフード(イスラム法上で許されている食材や料理)の店も少なくない。モスクもあり、目立った不自由はないという。「どこの国にいても、皆結局は故郷で慣れ親しんだ味を恋しがる。それがビジネスチャンスだって、中東のレストランを開いたり、それに関する商売を新しく始めた人たちもいるくらいなんだ」。

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ハラールフード店内。アラビア語表記が目立ち、ドイツにいながら異国を訪れているようだった

■人を全力でもてなす文化

 駅の周りの喧騒を抜け、第二次大戦後、駐留していたイギリス軍の兵士家族が使っていたのだという古びたアパートの門をくぐると、「パパお帰り!」と小さな娘たちが3人、アリさんに飛びつくように出迎えてくれた。つい2カ月前、ようやく奥さんと娘さんたちの呼び寄せが叶ったのだった。その時空港まで迎えの車を出してくれたのも、彼を支える近隣の住人たちだったという。

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アリさん宅の朝ごはん。ひよこ豆のペーストや、新鮮な野菜が並ぶ

 アリさんの家に泊めてもらうのは一泊だけの予定だったものの、結局私はもう一泊お邪魔することになる。「ちょうど長女の10歳になる誕生日なんだ。よかったら一緒にお祝いしよう」と声をかけてもらったからだ。ご家族が作ってくれるシリア料理はどれも、懐かしい味ばかりだった。おまけに食べても食べてもお代わりを勧められるお昼ご飯をようやくたいらげると、「さ、これから夜ごはんだ」とまたシリア料理がふるまわれる。ご家族の生活費が限られている中でおもてなしをしてくれる申し訳ない気持ちと共に、内戦前のシリアでの日々が思い返された。アリさんのような全力で人をもてなす文化のあり様に、当時何度触れたことだろう。

 二日目の夜、2年ぶりに家族そろって迎える誕生日はお母さんの手作りケーキでのお祝いだった。アリさんも、娘さんたちの顔も輝いていた。「だけどね」と時折、彼の顔がくもる。「後ろめたい気持ちでいっぱいになるときがあるんだ」。誰しもが家族の呼び寄せが叶うわけではない。それ以前に、ヨーロッパにたどり着くことさえできず、追い返された人、力尽きた人たちがいた。何より戦乱のシリアにはまだ、多くの友人、親戚たちが残っている。家族が安心して食卓を共に囲める時間がどれだけ貴重なものなのか、彼は身を持って知っていた。

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歓声をあげながら、娘さんはロウソクを吹き消した

■ヨルダンの難民キャンプで

 シリアの隣国ヨルダンのザータリ難民キャンプでは、最初に訪れた2013年、配られたパンをその場ですぐ売りに出している人々の姿を目にしたことがある。「いつか帰るときのために、少しでも貯金がほしい」と、出来ることといえば自分自身の食べ物を我慢して換金することだった。

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配られたばかりのパンを、キャンプの片隅で売る父子

 キャンプ内ではWFP(世界食糧計画)が配布するフードクーポンを、所定のスーパーで食料品などと交換する仕組みがあった。けれども紛争が長引くほどに支援集めも困難を極め、クーポンも減額の一途をたどる。「あのスーパーのものはそもそも値段が高い」と、フードクーポンを売り払い、そのお金でキャンプ内に人々が築いた独自のマーケットで買い物をする女性たちの姿もあった(現在は虹彩認証が導入されている)。キャンプ内の学校では、朝ごはんを抜いてきた子どもたちが空腹で授業に集中できず、NGOがスナックを配るなど、対策を立てていた。それぞれのテントやプレハブに帰っても、ガスが不足すれば、温かい食べ物が食べられる機会も限られる。

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キャンプ内で配られていたクーポン

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キャンプ内の市場は、「シャンゼリゼ」と呼ばれていた

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キャンプ内の学校前で売られている安価なお菓子が、子どもたちのささやかな楽しみだ

 2011年の東日本大震災後、各地の避難所を巡り、改めて「食」が人の心持ちを大きく左右することを感じてきた。同じカロリーを摂れば、体は同じように生きられるかもしれない。けれども温かな食べ物を皆で囲んで食べるのと、冷たいものを一人でぽつんと口に入れるのでは、湧き上がるエネルギーが全く違うものになる。

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キャンプ内で暮らすご家族の食事。缶詰の食品や、パンなど乾きものが主だ

■世界で7000万人が避難生活送る

 6月20日は世界難民の日だ。この日の前後に毎年、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR) は、故郷や慣れ親しんだ家を追われた人々の人数を発表してきた。その数はここ数年「過去最多」を更新し続け、今年も7000万を超える人が避難生活を送っているとされている。そして難民となってしまった人々の生活は平均すると26年も続くという。

 食に「質」を求めるのは、一見すると贅沢に思えるかもしれない。けれども食卓が体の栄養だけではなく、心の栄養としての役割を果たしてくれることを考えたとき、「明日も生きていたい」と思える環境とは何かが見えてくるのではないだろうか。

 シリア出身の友人からはよく、こんな連絡が入る。「お誕生日のお祝いに、こっちに来れない?だって来年もこうやって、皆で誕生日を祝えるか分からないじゃない」、と。

(この連載は毎月第4土曜日に掲載します) 

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https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019061700006.html
http://www.asyura2.com/19/kokusai26/msg/675.html

[政治・選挙・NHK262] 映画『新聞記者』に込めた思い 「映画」こそ真の自由であることを願って (朝日新聞社 論座)
映画『新聞記者』に込めた思い
「映画」こそ真の自由であることを願って

河村光庸 映画プロデューサー
論座 2019年06月23日
 
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©2019『新聞記者』フィルムパートナーズ

映画『新聞記者』
東京新聞の望月衣塑子記者の著書「新聞記者」を原案にした映画。
6/28(金)より全国公開。政府によるメディアへの介入など現実世界
と共振する設定の「権力とメディア」の裏側、「組織と個人」のせ
めぎ合いを真正面から描いたサスペンスエンタテインメント。
映画予告編はこちらhttps://www.youtube.com/watch?v=zdPSidwlJ_I


■メディアの「権力監視」が薄まる中で

 2019年、新しい元号「令和」が始まり、参議院選挙、翌年に控える東京オリンピックの開催。かつて経験したことのないような時代の大きなうねりの中で、人々はどこからどのような情報を得ていかなければならないのでしょうか。

 第二次安倍政権の発足以降、下がり続ける「世界の報道の自由度ランキング」(国境なき記者団)で日本は2016年、2017年には連続67位と、ついにG7各国の中で最下位となったことはすでにご承知かと思います。

 フェイクニュース、メディアの自主規制は蔓延し、官邸権力は平然と「報道の自由」を侵す……。

 この数年で起きている民主主義を踏みにじるような官邸の横暴、忖度に走る官僚たち、それを平然と見過ごす一部を除くテレビの報道メディア。最後の砦である新聞メディアでさえ、現政権の分断政策が功を奏し「権力の監視役」たる役目が薄まってきているという驚くべき異常事態が起きているのです。

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©2019『新聞記者』フィルムパートナーズ

 それと共に、そしていつの間にか暗雲のように社会全体に立ち込める「同調圧力」は、人々を委縮させ「個」と「個」を分断し孤立化を煽っています。

 そのような状況下、正に「個」が集団に立ち向かうが如く、官邸に不都合な質問を発し続ける東京新聞の望月衣塑子さんの著書『新聞記者』が私に映画の着想を与えてくれました。そしてこの数年日本で起きた現在進行形の政治事件をモデルにしたドラマがリアルに生々しく劇中で展開していくという映画史上初の試みとなる大胆不敵な政治サスペンス映画に着手しました。

 そして、出来上がったのが映画「新聞記者」です。

 本作は、報道メディアは政治権力にどう対峙するのかを問いかける作品です。

 権力がひた隠す政権の闇に迫ろうとする一人の女性記者と、理想に燃え公務員の道を選んだある若手エリート官僚との対峙・葛藤を描いた政治サスペンス映画です。

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©2019『新聞記者』フィルムパートナーズ

■我々の前に立ちはだかる「官邸記者クラブ」

 過去、政治権力とジャーナリズムを扱った洋画は多くの名作を生んでいますが、日本映画にはほとんどありません。しかもフィクションではありますが、この映画の最大の特徴である、ここ2、3年で起きた政治的大事件をモデルにしているところです。

 これらの政治事件は本来であれば一つ一つが政権を覆すほどの大事件です。ところがあろうことか、年号が令和に変わろうが継続中であるべき大事件が一国のリーダーと6人の側近の“令”の元に官僚達はそれにひれ伏し、これら大事件を“うそ”と“だまし”で終りにしてしまったのは多くの国民は決して忘れはしないでしょう。

 一方で日本の報道メディアについても多くの問題があります。記者クラブの中でなぜ望月記者に続く人間が現れないのか? それで権力の番犬の役割が果たせるのか?

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©2019『新聞記者』フィルムパートナーズ

 既存メディア、特に「記者クラブ」の政治部の記者たちは望月記者を「目立ちたいだけ」と非難していますが、その前にジャーナリズムの本質的な姿勢に立ち返るべきは「官邸記者クラブ」です。

 御用メディアとリベラルに二分化され、その視点ありきで報道する今の日本の新聞をはじめとした報道メディアの姿こそ異常だと思わざるをえません。我々からすると官邸の前に立ちはだかっているのが正に官邸記者クラブそのものなのです。

 前提としてですが、私はどこかの野党や政治勢力に組するものではありませんし、この作品は一人の記者を礼賛するでもありません。むしろ報道メディア全体、記者一人一人に対するエールを送るつもりで作りました。

 「これ、ヤバいですよ」「作ってはいけないんじゃないか」という同調圧力を感じつつ映画を制作し、宣伝でも多くの注目を浴びつつも記事にはしてもらえず、それでも何とか公開まで持っていこうというのが今の状況です。

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©2019『新聞記者』フィルムパートナーズ

■民主主義に立ち戻れ

 私はこの映画を安倍首相は勿論ですが、それよりも何よりも多くの自民党員の方々に真っ先に観てもらいたい。歴史的に自由民主党の最大の特色は多様性にあったはずが、安倍首相は一元化をはかり、民主主義的政党政治とは言いがたく、官邸独裁政治であることは火を見るより明らかです。第二に政治嫌い、若い人々に観てもらいたい。政治から距離を遠ざける事は民主主義の義務や権利を放棄するのと同じ事であるからです。

 でも私は僭越ながら、この映画で多くの人々に民主主義に立ち戻ってもらいたい。

 民主主義というのは人類が血と涙で勝ち取った先人の恵みです。誰かが民主主義から国民を遠ざけようとしているとすれば、それは絶対許せない。それが私の想いです。

 皆さま、この機会に是非この映画にお心を向けて下さい。「映画こそ自由な表現を」の旗を掲げ、ご覧頂いた皆さまのご意見ご感想を糧に、映画「新聞記者」は前人未踏の道を進んでまいります。


筆者
河村光庸(かわむら・みつのぶ) 映画プロデューサー
1949年生まれ。94年に青山出版社、98年にアーティストハウスを設立し数々のヒット書籍を手掛ける一方、映画出資にも参画し始め、映画配給会社アーティストフィルムを設立。08年にスターサンズを設立し、『牛の鈴音』、『息もできない』(08)などを配給。エグゼクティヴ・プロデューサーを務めた『かぞくのくに』(11)では藤本賞特別賞を受賞。ほか企画・製作作品に『あゝ、荒野』(16)、『愛しのアイリーン』(18)など。


https://youtu.be/b2v_qZyrIOI
論座「安倍政権を再考する」
長期化する安倍政権。疑惑は棚上げ、外交は空回り、年金不信は高まる。このまま今秋に首相在任が歴代最長となり、来夏に東京五輪を迎えるのか。
東京新聞の望月衣塑子記者と東工大の中島岳志教授が「安倍政権を再考する」というテーマで7月7日に討論します。「論座」が主催します。
この選挙イベントの申し込みはこちら→【イベント申し込み】https://peatix.com/event/710312


https://webronza.asahi.com/national/articles/2019061900010.html
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/337.html

[政治・選挙・NHK262] 私たちの心のかさぶたを剝がす辺野古新基地建設 (朝日新聞社 論座)
基地の島・OKINAWAの今と未来への展望(1)
私たちの心のかさぶたを剝がす辺野古新基地建設
6月23日の「慰霊の日」に、沖縄の現在地と未来への選択肢を考えたい

松元剛 琉球新報社執行役員・編集局長
論座 2019年06月23日

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平和の礎を訪れ、戦没した親類を供養する家族=2019年6月23日午前7時50分ごろ、糸満市摩文仁の平和祈念公園(琉球新報提供)

 6月23日、沖縄中が鎮魂に包まれる「慰霊の日」が巡り来た。沖縄戦の組織的戦闘が終結したのは22日だったとの説がほぼ確定的になっているものの、例年通り、戦後74年となる「沖縄全戦没者追悼式」がこの日に糸満市摩文仁で催された。

 早朝から降り続く強い雨の中、糸満市摩文仁の平和祈念公園や、畑や原野に散乱していた無数の遺骨を集めて建立された「魂魄の塔」(こんぱくのとう)=同市米須=に多くの遺族らが訪れ、亡くなった家族らのみ霊を慰めた。

 2019年度に新たに追加された42人を含む、24万1566人の名前が刻銘された「平和の礎」には、傘を差しながら花を手向け、手を合わせる人の姿が目立った。

■沖縄のアイデンティティー

 玉城デニー知事は、「沖縄全戦没者追悼式」の平和宣言の一部に、初めて沖縄語(ウチナーグチ)と英語を加え、平和な世界構築の決意を示した。辺野古新基地の埋め立ての是非を問うた2月の県民投票の反対多数の結果を挙げ、知事はこう訴えた。

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沖縄全戦没者追悼式で平和宣言を述べる玉城デニー沖縄県知事=2019年6月23日午後0時26分、沖縄県糸満市摩文仁、江口和貴撮影

 「人間が人間でなくなる戦争は二度と起こしてはならない。
県民投票の結果を無視して工事を強行する政府の対応は、
民主主義の正当な手続きを経て導き出された民意を尊重せず、
なおかつ地方自治をもないがしろにするものだ。県民の大多数
の民意に寄り添い、辺野古が唯一との固定観念にとらわれず、
沖縄県との対話による解決を強く要望する」

 宣言の締めで、知事はこう述べた。

 「幾世(いちぬゆー)までぃん、悲惨(あわり)さる戦争(いくさ)
ぬねーらん、心安(くくるや)しく暮らさりーる世界(しけー)んでぃし、
皆さに構築(ちゅくてぃ)いかんとーないびらん(いつまでも、
平和で安心した世界をみんなで築いていかなければなりません)」

 ウチナーグチを平和宣言に取り入れたことは、沖縄の未来は沖縄が決める自己決定権の発揮を求める県民の思い、アイデンティティーを反映させた意義があろう。

 知事の平和宣言に対し、参列者から随所で「そうだ」という声が上がり、大きな拍手が沸き上がった。安倍晋三首相の式辞に対しては、再三「帰れ」などの厳しいやじと怒号が上がったのとは対照的な光景であった。やじを飛ばすことは、慰霊の場にそぐわない行為という批判もあるが、心の底から沸く県民感情が噴きだしたものであろう。

■「構造的差別」が色濃くなった平成時代

 やや沖縄県民には縁遠く感じられたが、元号が平成から令和に代わって初めての鎮魂の日を迎えた沖縄は、来年の戦後75年を見据えつつ、政治、経済、社会の地殻変動が断続的に続いている。

 平成の沖縄は、高校野球の春夏の甲子園で4度の優勝や歌手の安室奈美恵さんの活躍などが県民に自信と勇気をもたらした。その一方、過重な基地の負担はほとんど変わらず、沖縄の民意を一顧だにしない安倍政権によって辺野古新基地建設が強権的に進められている。こうした状況に、県民から「構造的差別だ」との声が上がるようになった。

 新天皇が即位し、令和が始まった5月1日付の琉球新報朝刊の紙面作りに際し、私は、退位と即位一色になる紙面を避け、令和の世を展望する県民の思いがにじむ紙面をつくるよう、編集局員に号令を掛けていた。

 もちろん、トップは「新天皇が即位」の大見出しを張り、改元を報じたが、あらかじめ広告を外してスペースを確保した上で、沖縄の政治、経済、スポーツの各界を代表する人たちに登場してもらい、「沖縄の誇り 未来展望 基地問題、いまだ『宿題』」の3段見出しが付いた記事を腹位置に掲載した。1999年から2期8年間、県知事を務めた稲嶺恵一氏(85)は平成の沖縄を振り返り、「むしろ沖縄の孤立感はひどくなった」としながら、「沖縄が経済的自立を果たせば、政府に対する沖縄の発言権も増す」と語った。

 その傍らには、国籍や敵味方を超え、沖縄戦や南洋群島の戦争で亡くなった人の名を刻む「平和の礎」で、扇状に広がる刻銘板の要の位置にある「平和の火」に手を合わせる子どもの写真を添え、「平和のともしび 絶やすことなく『こころ』摩文仁から発信」の記事が載った。記事は「令和の時代にも摩文仁の地に、県民の心の中に平和の火はともり続ける」と結んでいる。何とか、恒久平和の世が到来することを願う沖縄からのメッセージを宿した紙面が作れたのではないかと自負している。

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平和の礎の「平和の火」に手を合わせる幼児=2019年6月23日午前7時54分、糸満市摩文仁の平和祈念公園(琉球新報提供)

■「敵の兵士にも家族がいて悲しむ人がいる」

 今回、論座編集部から「沖縄の現在地と未来への選択肢」という重いテーマをいただいた。3回に分けて、基地の島・OKINAWAの今と未来への展望を記したい。いくつかの私事を交えることをお許し願いたい。

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佐賀市で講演する松元剛さん=2015年9月5日、佐賀市のアバンセ

 私は1989年(平成元年)に琉球新報に入社した。その前年の88年夏、入社試験の10日前に72歳で父が逝った。大正5年生まれ。空手で鍛え上げ、70歳近くになっても「指立て伏せ」が二桁できるほど頑健だった。生きていれば103歳になる父が、南洋群島での戦火を生き抜いていなければ、私は生を受けていない。

 父にとって第2の家庭に生まれた私は沖縄の施政権が返還された1972年に小学校に入学した。ぜんそく持ちで、あと数日欠席すると進級できないほど体が弱かった。家に寄る父がキャッチボールの相手をしてくれたり、相撲を取ったりしてくれて、少しずつ体が強くなった。小学5年生の慰霊の日の直前、怒られたことがなかった父の逆鱗に触れた。射すくめるような視線を受けて私は泣きべそをかきながら、話を聞かされた。

 テレビの戦争映画を欠かさず見ていた私は、小遣いのほとんどを充ててゼロ戦や戦車のプラモデルを買ってばかりいた。沖縄全戦没者追悼式が執り行われる慰霊の日が近付く6月の暑い日、模型作りに夢中になっていた私に父が怒声を浴びせた。

 「戦争はどんなに大変か、映画の中で撃たれて死ぬ敵の兵士にも家族がいて、悲しむ人がいることが分かるか」

 動揺する私に顔を紅潮させた父が戦争体験を語り始めた。初めてのことだった。

■機銃掃射で打ち抜かれたのは右ひじだけではなかった

 働きながら東京の夜間大学を出た後、父は沖縄出身の友人に誘われ、南洋群島のパラオ島に渡り、かつお節製造会社などに勤めた。1944年に現地で召集された。パラオ諸島を含む南洋群島には、戦前、戦中を通して日本の統治下にあり、多くの日本人が移り住んだ。

 「沖縄県史 移民」によると、昭和12年(1937年)のパラオの日本人在留者は約1万1千人で、その4割強をウチナーンチュ(沖縄県出身者)が占めていた。太平洋戦争中、パラオに住む日本人男性の多くが現地日本軍の召集を受けた。「沖縄県史資料編」によると、沖縄出身者3059人が徴兵され、そのうち664人が戦死した。

 沖縄出身の親しい友人たちとペリリュー島の守備隊に赴くはずだった父は、部隊の集合時間に遅れた。「たるんでいる」と怒る上官から軍靴で殴られ、顔が血みどろになる制裁を受けた。ペリリュー島に渡ることはかなわず、衛生兵としてパラオに残された。

 1944年夏から秋にかけて、米軍が上陸せず、地上戦がなかったパラオでも日に日に米軍機による空襲が激しくなった。父は両手で2人の傷病兵を支えて移動中、米軍機の機銃掃射に遭った。父の右ひじを切り裂いた機銃弾が一緒に付せた兵士の背中に命中し、その兵士は血しぶきを上げてすぐに息絶えた。

 「20、30センチずれていれば、父さんが死んでいた。今もすまない思いでいっぱいだ」

 ペリリュー島での2カ月に及ぶ激戦の末、日本軍の守備隊は玉砕し、親しい友人たちは一人も戻らなかった。

 このペリリュー島の闘いは、沖縄戦にも影響を与えた。ペリリュー島を攻める米海兵隊の司令官は「3、4日で戦闘は終わる」と豪語していたが、固い地盤の洞窟陣地などを活用した日本守備軍1万人余の組織的な持久ゲリラ戦術は大いに米軍を苦しめた。海兵隊の精鋭部隊をもってしても戦闘を終わらせることができず、陸軍に取って代わられるという屈辱を受けた。

 父からは、沖縄戦で父方の親類が犠牲になったことも詳しく聞かされた。

 「一緒に死ぬはずだった友を慰める責任がある」と言って、南洋群島の墓参団に毎年参加していた父は、この日を境に、こう私を諭すようになった。

 「どんなことがあっても戦争だけはするな」

 「新聞を毎日読みなさい。戦争で何が起きたか、沖縄で何が起きているかを学んで、自分の意見を持ちなさい」

■沖縄を「同胞扱いしない」国の姿

 戦後74年を迎え、沖縄戦や南洋群島での戦火をくぐり抜けた戦争体験者は減り続け、県人口の約1割になった。体験を聞くことによる沖縄戦の継承は難しくなり、大きな課題となっている。凄惨な地上戦が繰り広げられた沖縄戦体験者の4割は心的外傷を持つとされる。その傷口に塩を塗り込むように、今も米軍機が爆音をまき散らし、民意に反して名護市辺野古への新基地建設が強行されている。

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辺野古沿岸部で進む埋め立て工事=2019年6月13日午後0時59分、沖縄県名護市、日吉健吾撮影

 沖縄を「同胞扱いしない」国の姿を感じ取り、悲惨な経験を語り始めた沖縄戦体験者が増え続けている。自らの意思で沖縄のありようを決めることができない負の歴史を終わらせ、子や孫の世代に戦争につながる基地負担を背負わせたくないという意思をもつ人たちだ。沖縄戦と米軍統治の苦難の戦後を縦糸に、新たな基地を強要する為政者への反発を横糸にした新基地ノーの重層的な民意が強まっている。沖縄戦と今に続く米軍基地の重圧はまぎれもなく、地続きの問題である。

 沖縄戦の記録映像の中でも、最も印象的な映像の一つに登場する幼子が、戦後74年の歳月を経て、初めて戦争の恐怖を証言した。

 今年の慰霊の日当日、23日付琉球新報は1面トップで、米軍が撮影した沖縄戦の記録映像の中で最も印象深く、沖縄戦を振り返る報道でも頻繁に用いられている「震える少女」について、「これは私だ」と名乗り出た女性を特報した。

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米軍が撮影した「震える少女」は「自分だ」と名乗り出た浦崎さんの記事をトップに据えた琉球新報6月23日付1面(琉球新報提供)

 浦崎(旧姓・賀数)末子さん(81)=那覇市小禄=がその人だ。45年6月下旬ごろ、糸満市(当時は高嶺村)大里の農道で、2人組の米兵にカメラを向けられた。当時7歳だった浦崎さんは「初めて見るアメリカー(米国人)の青い目が怖くてぶるぶる震えた」と証言した。15歳上の姉と一緒に避難場所を探している途中だった、という。浦崎さんの脳裏には、今も砲弾が飛び交う戦場を逃げ惑ったつらい記憶が消えない。2年前、知人が持ってきた映像の静止画像を見て鮮明な記憶がよみがえり、着物の柄を見て「自分だ」と確信したという。

 映像が撮影された後、浦崎さんは、本島中部の越来村(現・沖縄市)にあった米軍の収容所に姉とともに収容された。母と弟にも再会したが、弟は避難先の自然壕で受けた催涙弾の影響でその後、亡くなった。防衛隊に召集された父と兄、さらに戦時中に受けた傷が原因で姉も亡くした。

 不戦を願う浦崎さんはこう証言を締めくくった。

 「弟は病床で『おー、おー、おー』とうなって死んでいった。戦争は本当に恐ろしい。またんあてーならん(二度と起こしてはならない)」

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ぐずつく天気の中、早朝から魂魄の塔に手を合わせる人たち=2019年6月23日午前7時30分、糸満市米須(琉球新報提供)

■家族連れで辺野古の浜を訪れる人が増えている

 私はここ十数年間、1月1日の早朝、米軍普天間飛行場の移設を伴う名護市辺野古への新基地建設現場に近い名護市辺野古の浜を訪ねるようにしている。県内全域から数百人の市民が夜明け前から訪れ、初日の出を見ながら、目の前の海に新たな基地を造らせてはならないという思いを共有する場になっている。毎年のように、本土から訪れる人たちもいる。

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土砂投入から14日で半年となる辺野古沿岸部の埋め立て工事現場=2019年6月13日午前9時57分、沖縄県名護市、朝日新聞社ヘリから、堀英治撮影

 2013年末、当時の仲井眞弘多知事が、政府の埋め立て計画を承認して以来、それに抗うように家族連れで辺野古の浜を訪れる人たちが増えている。沖縄で基地報道に携わる者として、民意の重さを肌で感じる大切な時間である。毎年、孫を連れた老夫婦、生まれて間もない赤ちゃんを抱く若い夫婦がいて、できるだけ、話を聞くようにしているが、ほぼ共通しているのは、「子や孫のために、新たな基地を造らせてはならない」という言葉だ。

■地上戦は壮絶な選択を一人一人に迫った

 辺野古の浜を後にすると、向かう場所がある。それは沖縄本島中部の読谷村の海岸沿いに建つ歌碑である。

 今なお続く米軍基地の重圧、それに抗う沖縄社会の闘いの原点は「ありったけの地獄を集めた」と形容される沖縄戦にある。

 1945年4月、米軍が沖縄本島に上陸した読谷村楚辺。サンゴ礁と白い砂浜がコントラストを描く沖縄の原風景を残し、東シナ海の水平線が一望できる景勝地・ユウバンタがある。風光明媚な広場に「艦砲ぬ喰(く)ぇー残(ぬく)さー」の歌碑が建つ。近くには在沖米陸軍基地「トリイステーション」が広がり、歌碑からも目に入る。

 沖縄戦体験者の平和への願いを込めた「艦砲ぬ―」は4人姉妹(艶子、綾子、千津子、慶子)の「でいご娘」が歌う。その父で楚辺出身の比嘉恒敏さんが、戦争に喰われ損なった自らの実体験をもとに、魂の奥底から沸く感情をつづり、作詞作曲した。沖縄戦後史を彩る名曲は、慰霊の日が近づくと、地域の慰霊祭や個人が集まる場でも歌われる。沖縄を代表する「反戦歌」である。

 沖縄に配置された第32軍(琉球新報は沖縄守備軍の呼称をやめた)は、本土防衛のための時間稼ぎのため、ペリリュー島の戦闘で効果を上げた出血持久戦を選択し、多くの住民を沖縄本島の南に逃れる軍と行動を共にするよう仕向けた。県民に「軍官民共生共死の一体化」を強いた「捨て石作戦」の下、米軍との激しい地上戦による県民の死者は約12万2千人(軍人軍属含む)に上り、ほぼ4人に1人が亡くなった。家族を全て失った人、死が迫る激戦地に深手を負った家族や友人を置き去りにした人、日本兵に命じられて漆黒の闇に包まれた壕で赤ん坊の口をふさいで絶命させた母親―。極限状態の地上戦は壮絶な選択を一人一人に迫った。

 「艦砲ぬ―」の歌詞は、猛烈な米軍の砲撃からかろうじて生き残った感慨と死にそびれた自責の念が交錯する。農地を米軍基地に接収されて困り果て、生活物資を得るために忍び込んだ基地内で捕まり、米兵に殴られてしまう嘆き節も響く。終戦後の苦難と米軍統治に翻弄された民衆の姿が描かれ、家族を亡くした記憶にとらわれた遺族の心情とともに哀感漂うリズムに乗せる。インターネット上で鑑賞できるので、ぜひ味わってほしいと思う。

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納骨堂を訪れ、線香をあげ語りかける遺族=2019年6月23日午前9時10分、糸満市摩文仁の沖縄師範健児之塔近くの壕(琉球新報提供)

■民謡「艦砲ぬ喰ぇ残くさー」に込められた決意

 読谷村楚辺出身で、戦時中、大阪に出稼ぎしていた比嘉さんは、米軍の潜水艦に撃沈された学童疎開船対馬丸に乗った両親と長男を失い、大阪では空襲の直撃弾を受け、目の前で妻と次男が防空壕ごと押しつぶされ、亡くなった。戦後、比嘉さんは故郷の読谷に戻って再婚し、でいご娘の4人を含む7人の子宝に恵まれ、ようやく穏やかな生活を取り戻した。村芝居の地謡を担い、地域の祝いの席には三線を手に駆け付け、家族で盛り上げたという。姉妹4人組の「でいご娘」は父・恒敏さんの情熱と厳しいけいこで、1962年に誕生した。民謡ブームに乗って人気を博し、「でいご娘」は、本島全域、宮古、八重山、奄美群島にも公演に出掛けた。

 比嘉家を悲劇が襲ったのは、1973年10月10日、体育の日の夜だった。那覇市であった結婚披露宴の余興に出演した帰り、宜野湾市の国道58号で、家族が乗り込んだ車2台のうち、恒敏さんと妻シゲさんが乗った1台に、飲酒した米兵が運転する車が激突した。午後10時すぎに起きた事故でシゲさんは即死し、恒敏さんは子どもたちを気遣いながら、4日後に亡くなった。56歳だった。車がひしゃげ、原形をとどめないほど衝撃が大きかった重大事故をきっかけに、沖縄本島の南北を結ぶ幹線道路の国道58号に中央分離帯ができた。

 あまりにも理不尽に両親を失った「でいご娘」は、一時活動を休止する。4人で話し合い、それぞれの人生を歩もうと決めた。しかし、失意にもがく姉妹を癒やし、奮起のエネルギーとなったのは、両親と奏でた民謡だった。4人娘は自然と集まるようになり、父・恒敏さんが残した1曲だけでもレコードに残したいと考えた。75年6月、シングルレコード「艦砲ぬ喰え残くさー」がリリースされると、大ヒットした。「でいご娘」は再出発を果たした。「艦砲ぬ喰ぇ残くさー」という言葉が社会現象になるほどだった。戦後30年目にして愛唱される「反戦歌」が産声を上げた。

 「艦砲ぬ―」の最後は、平和を継承する決意を込めている。

 「恨でぃん悔やでぃん 飽きじゃらん 子孫末代 遺言さな(戦争をいくら恨んでも悔やんでも足らない。子々孫々まで語り伝えねば)」

■日常的な基地の重圧感で心の傷口が瞬時に開く

 米国の戦争に付き従う回路を開く集団的自衛権の行使が容認され、住民を守る「防衛」ではなく、敵に奪われることを前提にした「離島奪還訓練」の頻度が増している。いずれも安倍政権下で進む動きだ。さらに、沖縄の民意を組み敷いて、辺野古への新基地建設に向けた埋め立てが強行されている。

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オスプレイが駐機場に並ぶ米軍普天間飛行場=2018年12月7日、沖縄県宜野湾市

 沖縄戦体験者の約4割が心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症しているか、発症間際の心の傷にさいなまれている。専門家によると、米兵事件・事故や防ぎようがない米軍機の爆音など、日常的な基地の重圧感によって戦争の記憶が揺さぶられ、心の傷口が瞬時に開くのだという。

 辺野古新基地建設は、沖縄戦体験者の心の心のかさぶたを剝がし、痛みを負わせる最たる要因だろう。

 6月2日、4月に北谷町で発生した在沖米海軍兵による女性殺害事件の「緊急追悼・抗議集会」が町内で催された。沖縄全域から500人が集い、犠牲になった女性が事件前に米軍側に保護を訴え、容疑者の海軍兵(犯行後に自殺)に被害女性への接近禁止命令が出ていたにもかかわらず、凶行を防げなかったことに強い抗議の意思を示した。集会のタイトルを記す横幕には「彼女は私だったかもしれない」の文字があった。この集会で、「でいご娘」のリーダーである島袋艶子さんが、地元北谷町の関係者代表としてマイクを握った。

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両親が犠牲になった米兵による飲酒運転事故のつらい記憶をたどりながら、殺害された女性の子どもたちへの思いを語る島袋艶子さん=2019年6月2日、北谷町内(琉球新報提供)

 艶子さんは7人きょうだいの一番上。女性殺害事件の発生現場に近い北谷町栄口区の区長を10年以上務めている。両親を亡くした46年前の米兵の飲酒運転事故を振り返り、「同じ被害者として、話せることがあるなら」と、初めてこうした集会の場での発言を引き受けた。今回の事件で、母を失った2人の子どもたちを地域全体で支えたいという思いが、艶子さんを突き動かした。

 両親が犠牲になった事故当時、艶子さんは26歳だった。その日に帰宅した後、子を授かったことを母に伝えようとしていたことにも触れ、「私も(今回の被害家族と同様に)子どもたちだけ取り残された状況だった。私と重なるところがある」と語った。

 当時は沖縄の施政権返還から1年半足らずの激動期で、頼れる人も少なく、親類には米軍基地で働く基地従業員もいた。「米軍に何か言うと仕事がなくなるよ」「事故前にちょっと休憩でもしていたら、事故に遭わなかったはずだ」「家族で一つの車に乗るもんじゃない」という心ない言葉にもさらされた。

 集会でのあいさつで、艶子さんは当時のつらさも率直に語った。事故の翌年、初の子が生まれた後、母のシゲさんと検診にいく夢を見ることもしばしばあった。深夜の国道で起きた事故以来、電気を消して寝ることができなくなった。艶子さんの心の傷は今も癒えていない。「でいご娘」を育んだ比嘉一家を襲った悲劇は、沖縄戦と現在の基地の過重負担が連なっていることを「令和」の時代になっても浮かび上がらせる。戦後に起きた米兵による事件・事故の被害者の多くがトラウマを抱え続け、今も後を絶たない事件・事故のたびに忘れたい記憶を呼び起こされるのである。

 艶子さんは発言の最後に力強く、こう訴えた。

 「戦争がないように、平和であるように祈りながら、これからの子どもたちのために歩んでいきたい」

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平和の礎で肉親の名前を見つけ、涙ぐむお年寄り=2019年6月23日午前8時13分、糸満市摩文仁の平和祈念公園(琉球新報提供)

■沖縄戦体験していない世代が執筆した『沖縄戦を知る事典』

 6月になって、沖縄戦を体験していない世代の28人が執筆した『沖縄戦を知る事典』(吉川弘文館)http://www.yoshikawa-k.co.jp/book/b450620.htmlが発刊された。幅広い47のテーマに分け、沖縄戦の実相に迫り、史実を記録し、沖縄の時代を担う世代に分かりやすく伝えたいという気概に満ちた事典である。執筆者たちに共通するのは、沖縄戦と今も続く広大な米軍基地の存在、米軍絡みの事件・事故が起き続ける現在は地続きであるという認識だ。

 編者の一人で1970年生まれの吉川由紀さん(沖縄国際大学非常勤講師)の前書きを引きたい。本土に住む国民にも呼び掛けている。

 「沖縄戦から74年が経っても、私たちはあの時代と地続きであることから逃れられません。そして今の日本社会は『沖縄』抜きには語れないことも、多くの方が認識されているでしょう。これほど小さな島に、全国の7割の米軍専用基地があり続けることの理不尽さ、憲法がないがしろにされる異常さに、『沖縄』は気付かせます。沖縄戦の教訓が今を生きる人々の財産となったとき、それは民主主義を否定する強大な暴力に抗う原動力になるはずです。沖縄に暮らしているか否かが問題ではありません」


松元剛(まつもと・つよし)
琉球新報社執行役員・編集局長

 1965年那覇市生まれ。駒澤大学法学部卒。89年琉球新報社入社。
社会部警察・司法担当、中部支社報道部、2度の政経部基地担当、編
集委員、経済部副部長などを経て、2010年4月から政治部長兼論説
委員。13年4月から編集局次長兼報道本部長、16年6月から論説副
委員長を兼務。17年4月に読者事業局次長、18年6月から執行役員・
読者事業局特任局長。19年4月から現職。

 共著に『徹底検証 安倍政治』(岩波書店)、『内心、「日本は戦争を
したらいい」と思っているあなたへ』(角川書店 新書oneテーマ21)、
『検証 地位協定 ―日米不平等の源流』(琉球新報社編、高文研)、
『〈沖縄〉基地問題を知る事典』(吉川弘文館)、『ルポ・軍事基地と闘
う住民たち』(琉球新報社編、NHK出版)、『観光コースでない沖縄
(第4版)』、高文研)、『沖縄 自立への道を求めて』(高文研)など。

 雑誌『世界』(岩波書店)で、2008年4月から輪番コラム「沖縄
(しま)という窓」を連載中。


「基地の島・OKINAWAの今と未来への展望」は、3回に分けて配信します(論座編集部)。

https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019062300001.html
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/347.html

[政治・選挙・NHK262] 阪市立泉尾北小学校での『「天皇陛下ご即位記念」児童朝礼』への抗議署名に賛同を(澤藤統一郎の憲法日記)
 
複数の友人から、教えられた。
《子どもたちに渡すな!あぶない教科書 大阪の会》が、ネットで次の訴えをしている。

憲法を無視した大阪市立泉尾北小学校での『「天皇陛下ご即位記念」児童朝礼』に対する抗議文に賛同をお願いします!
https://blog.goo.ne.jp/text2018

確かにこれはひどい。こんな事態を看過して極右ナショナリズム勢力をのさばらせてはならない。しかも、こういうバカげたことの中心にいるのが、維新政治の申し子というべき「民間人校長」(小田村直昌)である。広く、抗議の声を集約して、インターネット署名を集めたい。ぜひご協力を。以下は、拡散・転載大歓迎というネット記事の転載である。

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
  抗議文への団体・個人賛同をお願いします!
  憲法を無視した大阪市立泉尾北小学校での
  『「天皇陛下ご即位記念」児童朝礼』に対する抗議文
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

 5月8日(水)、大阪市立泉尾北小学校において全校の子どもたちが参加
する『「天皇陛下ご即位記念」児童朝礼』(以下、「児童朝礼」)が行われま
した。「児童朝礼」では、まず小田村直昌校長が代替わりと新元号の説明を
しました。なんと新天皇を「126代目」とまで紹介しています。

 その後、「愛国の歌姫」と呼ばれている山口采希(あやき)氏(「教育勅
語」を歌にし、塚本幼稚園でも歌ったことがある)がゲストとして登場し
ました。そこでは、明治時代の唱歌「神武天皇」「仁徳天皇」を歌いました。
どちらも神話上の天皇を賛美し、「万世一系」を印象づける国民主権に反す
る歌です。さらに「仁徳天皇」を歌う前には、教育勅語児童読本(1940年)
や修身教科書に登場する「民のかまど」の話をしました。

 さらには、自身のオリジナル曲「行くぞ!日の丸」「令和の時代」も歌い
ました。「行くぞ!日の丸!」は、「日の丸」を先頭にしてアジア諸国に侵
略した戦前の日本軍の姿を彷彿とさせます。外国籍の子どもたち、中でも
かって日本が侵略・植民地支配した国々にルーツを持つ子どもたちは、こ
の歌によって深く傷つくのではないかと私たちは憂慮します。

 小田村校長は同校のHPで山口氏の歌や話を「とてもいいお話」「とても
素晴らしいゲストでした」と絶賛しました。このような「児童朝礼」は、戦
前の教育勅語教育を小学校に露骨に持ち込もうとした森友学園の「瑞穂の國
小學院」に通じるものがあり、明らかに憲法違反です。公立学校でこのよう
な集会が行われていること自体、全国的に例を見ません。

 私たちは、憲法に反する内容を子どもたちに押しつけた「児童朝礼」を行
った小田村校長と、同校長を任命した大阪市教育委員会に対して厳しく抗議
したいと思っています。そして同校の保護者・子どもに対してはもちろんの
こと、大阪市民に対する説明と謝罪を求めたいと思います。

 大阪市教委に対して抗議の申し入れを行いたいと思っています。
それまでに出来るだけ多くの団体・個人賛同を集めたいと思っています。
ぜひ、ご協力をお願いします。


■下記の要望書への団体・個人賛同を呼びかけます。
◇団体賛同の場合
  団体名をお知らせください。
◇個人賛同の場合
  お名前
  お立場(教職員、保護者、生徒、学生、研究者、弁護士、市民など)
  できればで結構です。
  お名前の公表(インターネットを含む)の有無
◇締め切りは7月7日(日)
◇送り先
  メール iga@mue.biglobe.ne.jp
◇PC・スマホ用署名ページ
  http://form01.star7.jp/new_form/?prm=6a6b423%2F2–21-0583fb
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■憲法を無視した大阪市立泉尾北小学校での『「天皇陛下ご即位記念」児童朝礼』に対する抗議文

5月8日(水)、大阪市立泉尾北小学校において全校の子どもたちが参加する
「5天皇陛下ご即位記念」児童朝礼(以下、「児童朝礼」)が行われました。
「児童朝礼」では、小田村直昌校長が「天皇陛下がお代りになった話と126
代目であること、元号も日本古来から続いているお話」(泉尾北小HP)を
しています。新天皇を「126代」とすることは、神話上の神武天皇なども含
む数え方をしており、歴史的事実に反し皇室が「万世一系」であるかのよう
に教えることに他なりません。

その後、「児童朝礼」では「愛国の歌姫」と呼ばれている山口采希(あやき)
氏(「教育勅語」を歌にし、塚本幼稚園でも歌ったことがある)がゲストとし
て登場しました。そこで山口氏は、明治時代の唱歌「神武天皇」「仁徳天皇」
を歌いました。どちらも神話上の天皇を賛美し、「万世一系」を印象づける国
民主権に反する歌です。さらに「仁徳天皇」を歌う前には、教育勅語児童読
本(1940年)や修身教科書に登場する「民のかまど」の話をしました。これ
は、戦前の皇国臣民化教育の定番教材で、子どもたちを「臣民」に仕立て上
げていったものです。2015年2月、愛知県一宮市教育委員会は、「建国記念
の日」を前にした全校朝会で「民のかまど」の話をした市立中学校校長を注
意をしたこともありました。

しかし、大阪市立泉尾北小学校のHPには、この「児童朝礼」の様子が紹介
されており、小田村校長は山口氏の歌・話を「とてもいいお話」「とても素晴
らしいゲストでした」と絶賛しました。HP記事の最後には、小田村校長が
山口氏の書いた色紙をもった写真も掲載されています。その色紙には、「皇紀
2679」と書かれています。「皇紀」は神話上の天皇である神武天皇に由来する
もので、戦後は公教育でも行政文書でも一切使用されていません。「皇紀」を
使った色紙の画像を公立小学校のHPに載せることは不適切です。

山口氏は、自身のオリジナル曲「行くぞ!日の丸」「令和の時代」も歌いまし
た。「行くぞ!日の丸!」は、「日の丸」を先頭にしてアジア諸国に侵略した戦
前の日本軍の姿を彷彿とさせます。外国籍の子どもたち、中でもかって日本
が侵略・植民地支配した国々にルーツを持つ子どもたちは、この歌によって
深く傷つくのではないかと私たちは憂慮します。大阪市がめざす「多文化・多
民族共生教育」に反するものです。

公立学校の児童朝会での山口氏の歌や話は、戦前の教育勅語教育を小学校に
露骨に持ち込もうとした森友学園の「瑞穂の國小學院」に通じるものがあり、
明らかに憲法違反です。公立学校でこのような集会が行われていること自体、
全国的に例を見ません。

泉尾北小に山口氏を呼び、「天皇陛下ご即位記念」児童朝礼を行ったのは小田
村校長です。小田村校長は大阪市の民間人校長として5年目(泉尾北小では
2年目)で、任命したのは市長と教育委員会です。小田村校長は、大阪市立
小学校校長になってから、右派団体である「学ぼう会北摂」で講演をしたり、
龍馬プロジェクト会長の神谷宗幣氏のインターネット番組に登場し、大阪市
の人権教育や歴史教育を「偏向教育」と批判している人物です。今回の「児
童朝礼」は、小田村校長が意図的に実施したことは明らかです。

私たちは、憲法に反する内容を子どもたちに押しつけた「児童朝礼」を行っ
た小田村校長に対して抗議します。小田村校長を任命し、「児童朝礼」を実施
させた大阪市教委の責任を追及します。小田村校長と大阪市教委は、同校の
保護者・子どもに対してはもちろんのこと、大阪市民に対する説明と謝罪を
行ってください。

(資料)
■山口采希氏が歌った曲
□「行くぞ!日の丸!」
  喜びと悲しみに
  情熱が肩を組む
  うつむいた日は過ぎた
  時が来た まっしぐら
  行くぞ!行くぞ!日の丸が行くぞ!
  ああ勇ましく 日の丸が行くぞ
  ひたぶるに駆け抜けた
  根こそぎのなにくそで
  どん底も手を伸ばし
  風一つ 掴んだる!
  行くぞ!行くぞ!日の丸が行くぞ!
  揺るがぬ魂 日の丸が行くぞ
  行くぞ!行くぞ!日の丸が行くぞ!
  ああ勇ましく 日の丸が行くぞ
  行くぞ!行くぞ!日の丸が行くぞ!
  白地に赤く 日の丸が行くぞ

□「令和の御代」
  春の訪れ 風も和やかに
  薫り高く 梅の花のように
  うるわしき日々を
  ありのままに
  咲き誇る
  令和の御代に
  和らぎの日々を
  それぞれの心
  満ち足りて
  咲き誇る
  令和の御代に
  心寄せ合う
  令和の御代に

◇神谷宗幣氏の番組での小田村直昌校長のインタビュー動画ぜひ、みてくだ
さい。あまりにもひどいです。https://youtu.be/fIAFEDXE1ns

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いやはやなんとも、というほかはない。
大阪市教委は、事態を把握していないのだろうか。見て見ぬふりなのだろうか。府教委はどうなのだろう。

内閣が天皇賛美一色であり、それを可視化した儀式を行うから、こんな校長が出て来るのだ。衆参両院が、全会一致で天皇就任の賀詞決議などするから、こんなことが許されると思う輩が出てくる。

この公立小学校の天皇礼賛行事。もしかしたら、これを許す時代の空気の反映なのかも知れない。ごく例外的な跳ね上がりの孤立した行動だと軽視できないのではないか。怖ろしいことなのかも知れない。
(2019年6月23日)

http://article9.jp/wordpress/?p=12844
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/349.html

[政治・選挙・NHK262] 自衛隊と憲法(ちきゅう座)
2019年 6月 24日
<青山 雫(あおやましずく):ちきゅう座運営委員>

安倍首相は事あるごとに、憲法改正への意欲を口にされ就中第9条の 改変についてはご執心なようだ。そこでつとに持ち出されるのが「自 衛隊の違憲論争」の改憲による決着だという。違憲論争が一体どこで 行われているのかというと、憲法学者間であるとしている。もちろん 学者間で見解の相違が生じるのはありうることだし、学問的に究明さ れるべき課題であることも論を待たない。

しかしその一方で安倍首相自身が政治というのは学問論争ではないと も国会答弁で繰り返し言明されてることも周知の事柄に属している。

一体安倍首相は学問論争に決着をつけるために改憲しようとしている のだろうか、そうではなく、政治という実践領域でなにか不都合があ ってのことなのだろうか。

以下の安部首相の率いる行政府の一角を占める防衛省のHPからの引用。 簡単明瞭、平和憲法に完全に合致していると宣言している。行政府の 長たる安倍首相(ご当人は立法府=国会の長だと思い込んでいる節も無 きにしも非ずだが)が、なぜに違憲論争云々を口にして動揺しなくては ならないのか。政治と学問とは別個の領域だとご当人が言明しているに もかかわらずだ。
そもそも、自衛隊とその法的根拠である自衛隊法は、自民党政権時代の 1954年に成立しているし、歴代内閣は民主党時代含めて、専守防衛の 範囲内で合憲であるとして来ている。そうそう、当時の首相は吉田茂で、「曲学阿世の徒」とかいう名言を残されて政治史に冠たる名跡を残されて おりますな。

それを何をいまさら、「違憲論争」なるものを持ち出して改憲なのか。 混乱を極めた思考の持ち主としか言いようがないが、そのような人物が 一国の首相である資質を備えているかどうか、困ったものである。

引用 防衛省HP https://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/seisaku/kihon02.html

憲法と自衛権

1.憲法と自衛権

わが国は、第二次世界大戦後、再び戦争の惨禍を繰り返すことのないよ う決意し、平和国家の建設を目指して努力を重ねてきました。恒久の平和は、 日本国民の念願です。この平和主義の理想を掲げる日本国憲法は、第9条に 戦争放棄、戦力不保持、交戦権の否認に関する規定を置いています。もとよ り、わが国が独立国である以上、この規定は、主権国家としての固有の自衛権 を否定するものではありません。政府は、このようにわが国の自衛権が否定 されない以上、その行使を裏づける自衛のための必要最小限度の実力を保持す ることは、憲法上認められると解しています。このような考えに立ち、わが国 は、憲法のもと、専守防衛をわが国の防衛の基本的な方針として実力組織とし ての自衛隊を保持し、その整備を推進し、運用を図ってきています。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/

〔opinion8753:190624〕

http://chikyuza.net/archives/94751
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/365.html

[国際26] 6月2日・8日朝日新聞掲載のルポに関するベネズエラ大使の抗議書簡(駐日ベネズエラ大使館HP)
 
2019/06/24

6月2日・8日朝日新聞掲載のルポに関するベネズエラ大使の抗議書簡

6月2日、8日に朝日新聞に掲載された記事「200万都市、電気も水もない ベネズエラ マラカイボ」および「かつての豊かな産油国 政情不安続き 危機」に関して、駐日ベネズエラ大使が抗議の書簡を送付しました。内容を掲載します。
 
 
                                     
                               (大使館訳)
                           
X.A.C.

                         2019 年6月 12 日、東京

朝日新聞
国際報道部長
坂尻 信義 様

日本を代表する言論機関として、その伝統と見識の深さにより、長きにわたり市民の
信頼を得ている貴紙に、心より敬意を表します。

この度は、過日掲載されたベネズエラ情勢に関する記事について、貴紙の伝統と信頼
からは考えられないほど偏向した内容であり、結果としてベネズエラが直面している
困難をさらに悪化させるものであるため、強く抗議するとともに、正確な情報を伝え
る記事の掲載を要望いたします。

問題の記事は、本年6月2日、8日に掲載された「200 万都市、電気も水もない ベ
ネズエラ マラカイボ」および「かつての豊かな産油国 政情不安続き 危機」(岡田
玄サンパウロ特派員、竹花徹朗機動特派員)です。

偏向記事であると指摘をせざるを得ない最大の理由は、現下のベネズエラの困難を
作り出している原因を一切無視していることです。食糧や医薬品の不足、インフレ
など経済的な苦境を作り出しているのはアメリカが主導する経済制裁であることは、
すでに国際社会が広く認めていることであり、国連の報告でもその悪質さは「アメ
リカの経済制裁は人道に対する罪である」と厳しく指摘されています。

人道に対する罪であるとされる理由について、世界的経済学者であるジェフリー・サ
ックス教授(米コロンビア大学)は今年5月に「集団罰としてのベネズエラの経済制裁」
なる報告書をまとめ、「米国政府の経済制裁によりベネズエラ市民が生命の危機にさ
らされており、そのために、2017 年から 18 年にかけて4万人が犠牲になった」と
しています。

更に、岡田特派員の記事は「政権が食い物にした石油大国」なる、アメリカやその影
響下にある野党側の常套句を使いつつ、事実を直視しない偏った政府批判に終始し
ています。
国営石油会社 PDVSA の解雇問題は、違法なサボタージュに端を発しており、その後、
復職が認められていること、そして、何よりも、PDVSA が直面しているオペレーショ
ンや、資金調達の困難もまた、アメリカの経済制裁が原因であることを無視しています。

2015 年より本格化したこうした、経済制裁こそが、ベネズエラを疲弊させ、アメリ
カの不当な介入を可能にするいわば地ならしであることは言うまでもありません。

問題の記事は、写真もふくめ、一見すると「市民の苦境を伝える」という正義の衣を
まとおうとしていますが、上記の事実を重ね合わせると、それが、真実を覆い隠し、
結果としてアメリカの介入につながる世論づくりに加担するものであると言わざるを
得ません。

貴紙の岡田特派員は本年4月 30 日にアメリカの影響下にあるグアイド氏がクーデ
ーター未遂事件を起こした際にも、彼らの一方的な情宣にのみもとづいたためか、
明らかな誤報を伝えています。

今回、再度、問題ある記事が掲載された経緯について、私どもは知る由もありませ
んが、上記、強く抗議し、正確な実相を伝える記事の掲載を要望いたします。
 
                                敬 具

                  (署名)
              セイコウ・イシカワ
                  大使
 
 https://venezuela.or.jp/news/2198/

http://www.asyura2.com/19/kokusai26/msg/690.html

[国際26] 米国の対ベネズエラ制裁により数万名が死亡したことが報告書で明らかに(経済政策研究センター(CEPR)プレスリリース)(駐日ベネズエラ大使館HP)
2019/06/24

米国の対ベネズエラ制裁により数万名が死亡したことが報告書で明らかに(経済政策研究センター(CEPR)プレスリリース)

経済政策研究センター(CEPR)が、米国の経済制裁によりベネズエラで約4万名の人命損失があったなどと指摘する報告書を発表しました。

報告書に関するCEPRのプレスリリースを掲載します。

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CEPRプレスリリース

米国の対ベネズエラ制裁により数万名が死亡したことが報告書で明らかに

2019年5月3日

制裁が続けば今年はさらに悪化するだろうと報告書の著者らは指摘している。

ワシントンD.C.― 経済政策研究センター(CEPR)が、共に経済学者のマーク・ワイズブロットとジェフリー・サックスの報告書を発表。報告書は、トランプ政権が2017年8月から課している経済制裁によって数万の死者が発生し、人道危機が急激に悪化していることを明らかにしている。

「制裁は、命をつなぐ医薬品、医療機器、食料、その他輸入している必需品をベネズエラ国民から奪い取っている」と、CEPRの共同代表であり報告書の共著者であるマーク・ワイズブロットは述べた。「これは米国の国内法、国際法、及び米国も署名している諸条約に違反している。議会は歯止めをかけるため手を打つべきだ。」

トランプ政権が1月に暫定政権を承認したことにより、新たな一連の金融・貿易制裁が設けられ、これらは経済・国民にとって破壊的なものになっていると報告書は指摘している。こうした新たな規制により、限られた外貨で行われる医薬品やその他輸入される生活必需品の支払いまでもが格段に難しくなった。

著者らはまた、深刻な不況やハイパーインフレからの経済回復を制裁がいかに阻害しているかも説明している。

「通例、ベネズエラの経済危機はすべてベネズエラ政府の責とされる」と著者の一人、ジェフリー・サックスは語る。「しかし、実際はそれ以上だ。米国の制裁はベネズエラ経済の崩壊、ひいては体制転換への誘導を意思的に狙い撃ちしている。ベネズエラ国民に重大な害を及ぼす、無益、無慈悲、違法かつ破綻した政策である。」

2017年8月以降、トランプ政権が課してきた広範な経済制裁の結果には次のものがある。

・2017年から2018年にかけて4万名の人命損失があったと概算される。

・制裁は食料や医薬品へのアクセスを低下させ、疾病や死者数を増加させた。

・2017年8月の制裁は大幅な石油減産の一因となり、これにより市民に多大な損害が出た。

・1月から適用されている米国の制裁が続いた場合、本来避けられるはずの人命損失がさらに数万名発生すると見られる。

・この論拠として次の事項がある。2017年以来抗レトロウイルス治療を受けていないHIV患者が約8万名、透析の必要な患者が1万6千名、がん患者1万6千名、糖尿病及び高血圧症の患者400万名(この多くは、インスリンや循環器の治療に向けた薬を入手できていない。)。

・2019年1月の制裁以降、石油生産は1日あたり43万1千バレル(36.4%)減少。これにより人道危機は大きく加速すると見込まれるが、人命損失をさらに急増させるのは、今年見込まれている67%の石油減産である。

原文はこちらhttp://cepr.net/en-espanol/spanish-press-releases/un-informe-encuentra-que-las-sanciones-de-ee-uu-en-venezuela-son-responsables-de-decenas-de-miles-de-muertes

https://venezuela.or.jp/news/2197/

[スレ主補足]
掲題の報告書に関しては下のスレッドでも紹介されていますので、宜しければ参照ください。
http://www.asyura2.com/19/kokusai26/msg/519.html
 
http://www.asyura2.com/19/kokusai26/msg/691.html

[政治・選挙・NHK262] 戦争は絶対に厭だ。われら庶民、儲けと権力欲の「戦争屋」にだまされてなるものか。(澤藤統一郎の憲法日記)
 
「戦争屋にだまされない厭戦庶民の会」から、『厭戦庶民』の32号と33号が届いた。小さなパンフだが、とても面白い。充実している。肩肘張らないつぶやきもあれば、肩肘張った論文もある。石川逸子さんの詩もあり、みごとな替え歌もあり、言葉遊びもある。肩書を「弁護士・平和委員会代表理事」として内藤功さんも書いている。多くは、神奈川県内の活動家、それも元気溢れる高齢の方の発言集。

この会は、名物活動家・信太正道さんが主宰していた。元特攻隊員だったが出撃寸前に敗戦となって命ながらえた方。戦後は海上保安庁職員、海上自衛隊、航空自衛隊をへて日航機長となった。徹底した非戦論者で、9条改憲阻止の信念と活動に揺るぎがなかった。

信太さんは2015年11月10日に亡くなられたが、その遺志を継ぐ人々が「戦争屋にだまされない」とする、「厭戦庶民の会」の活動を続けているのだ。ひとりの人の熱意が、その人の死後にも他の人に受け継がれる好例。

この会の会則は、9か条ある。その第9条が、以下のとおりである。

   「(不戦の誓い) 私たちは、戦争を放棄し、軍備および交戦権を認めません」

「改憲的護憲論」には反対を明確にしたうえ、反アベ政権の運動においては、そういう人とも批判的に共闘を、という学習会の報告もなされている。

時節柄、天皇や天皇制、元号に関わる論稿が多い。象徴天皇制を厳しく指弾する意見もある。こんな記事が目を惹いた。

「私は天皇制は勿論、天皇の存在そのものに絶対反対なのです。」という立場を明確にした方の、かなり長い論文の次の一部分。

   「戦直後、当時の共産党を中心に、天皇制打倒が叫ばれた。
   しかし、そこには天皇制の捉え方について、二つの意見があ
   った。
    一つは、徳田球一書記長のとらえ方=天皇とは、どう言い
   繕っても、排他的民族主義・侵略性の思想を秘めた国のトッ
   プである。今こそ(この敗戦という大転換期に)即これを無
   くさないかぎり、いかなる共和的民主国家も出来得ない。と
   いうもの。
    今一つは、野坂参三に代表されるとらえ方=天皇には二つ
   の側面がある。一つは絶対的天皇制権力機構であり、他方は
   宗教的側面である。天皇制権力機構は即廃絶すべきであるが、
   他の天皇の宗教的側面は国民が天皇を慕っているのだから、
   今、それをも即打倒というべきでなく、後の、国民投票によ
   るべきだ。
    そして結果的に・・・いろんな経緯はあるとしても日本の新憲
   法に、この野坂泰三氏の思想が取り入れられた。天皇の制度
   権力機構は廃止する。しかし日本国の象徴として天皇を残す。
   である。」
 
   「天皇制の忌まわしさにおいて、その独裁的権力機構と、そ
   の宗教的といえる精神的なもの象徴天皇制とどちらが恐ろし
   いか、私に言わせれば後者です。」

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そして、紹介したいのが、疎開世代の「戦争体験」。

         美空ひばり「一本の鉛筆」と
            「日米安保闘争」
          私の「厭戦」の原点です
           長谷川徑弘(84歳)

    毎年5月の「平和のための戦争展inよこはま」に「美空ひ
   ぱり〜一本の鉛筆」の展示を担当して久しくなります。
               ◇
    これには、私が「太平洋戦争」下、横浜から箱根に集団疎開
   していた時に、母親が「粗末な便箋に鉛筆書きの手紙」を毎月
   1通出してくれた思い出があるからです。
    今年(2019年)6月24日は美空ひぱり没後30年です。
    新聞・TVなどで、回顧番組があるでしょうが、「一本の鉛
   筆」の紹介があるかどうか。若い人たちには、「ひぱり」が、
   忘れられてきているかも、気がかりです。
               ◇
    「一本の鉛筆」のメロディも歌詞も、淡々としていますが、
   共に彼女の心情をこめた最高のものです。メロディは低音域
   でゆったりした3拍子。
    歌詞には
   「一本の鉛筆があれば戦争はいやだと私は書く」
   「一枚のザラ紙があれば あなたをかえしてと私は書く」
   「一本の鉛筆があれば 8月6日の朝と書く」
   「人間の命と書く」
    「ザラ紙」は「わら半紙=上質紙に対して下等紙」の事。
               ◇
    こうした歌詞が、私が疎開先で受け取った母からの「便箋
   に鉛筆書き」の手紙とダプルのです。
    その母は、5・29横浜大空襲の後の6月9日、産後の体
   を壊して他界。赤子も後を追う。私と妹は集団疎開先に居て、
   母の死に顔を見られなかった。
    「母を返して」。
 
    こんな事も。戦後、親戚預けになった弟2人が、他人様
   への気苦労人生でか、数年前に病み他界。今、残りは、年
   長組の兄・私・妹の3人。人生が逆さまになった。
               ◇
    「戦争体験者」は、「戦争体験」を語り続けなければなり
   ません。「過去」の先に「現在と未来」があるから。
    ひばりさんは、横浜大空襲の前、4月16日の磯子地区
   の“はみ出し爆撃”で被災して。
               ◇
    私の住まいの玄関脇に「一本の鉛筆〜ひばり」の手製ボ
   ード、メーデーなどには手製プラカードを抱えて出かけま
   す。どこかで見かけたら、私です。
    私のもう一つの。“厭戦”は、「日米安保条約」です。
   @1952年「旧安保」(「起ちあがれ(安保破棄の歌)」、
   A1960年「新安保」(子ども遊び「アンポハンタイ」/
     6・23全国統一行動)、
   B1970年「10年固定期限終了・安保廃棄6・23集
     会各地で盛り上がる」。
               ◇
    この後、「安保闘争」は影が薄くなって、はや50年・
   半世紀になろうとしています。
    私は、「諸悪の根源・日米安保条約」と指摘する畑田重夫
   先生(95歳)からいただいた「生涯学習・生涯青春」の
   直筆色紙を、机前に貼りつけ、がんぱっています。今、84歳。


今、このような無数の先輩たちが、「改憲阻止」「安倍ヤメロ」の運動の先頭にいる。
(2019年6月25日)

http://article9.jp/wordpress/?p=12862
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/404.html

[政治・選挙・NHK262] 麻生さんの先見の明が伺えるのに、一部を除き報道が無いのは何故なのでしょうか?(ちきゅう座)
2019年 6月 25日
<熊王信之:ちきゅう座会員>

本日、麻生さんのHPを覗きますと、あるある未だ削除されない御論稿が。
麻生太郎ホームページ 2019.6.25 閲覧
http://www.aso-taro.jp/lecture/kama/2008_3.html

(以下、引用)
2008年3月号 全額税方式
 1992年に「総量規制」という名の土地売買に対する融資の規制が行われました。お忘れの方も多いかと存じますが、この規制によって日本の土地価格は暴落し、土地の資産価値を著しく落とす結果となりました。以来日本は長く続く「デフレ不況」に苛まれることになりました。戦前の高橋是清大蔵大臣以来、数々の不況は何れも「インフレ下の不況」でしたから、我々はその対応策はそれなりの経験を積んできたのですが「デフレ下の不況」は初体験でした。従って数々の政策判断が遅れたり間違えたりして土地神話が崩れ、国民の政治に対する不信と経済に対する不安が蔓延していったんです。
 さて世論調査によると、国民にとっての最大の先行き不安は「年金」という名の老後の備えになっているんです。私が会社に入った昭和30年代、給与の心配はしても年金の心配をしていた奴はいなかったと記憶します。しかし今は平均寿命も大幅に伸び、定年退職後の時間が長くなっています。そこで「年金」に関心が向かいます。
 他方、年金を扱う社会保険庁の対応が甚だお粗末。杜撰というかサボタージュというか知りませんが、極めていい加減な加入記録管理という問題が表面化したために「老後のために貯金する」という人が広範にふえてきました。そこで提案なんですが、この際思い切って基礎年金は「全額税方式」に切り替えませんか。なぜなら年金制度に対する不信感から国民年金の納付率は5〜6割程度になっていて、国民皆保険という謳い文句は現実離れしています。また制度発足当初は勤労者7、8人で高齢者1人の面倒をみる予定だったんですが、今は少子高齢化。この先は2、3人で1人の面倒・・・となります。現行制度の大前提が崩れるんですから、この制度が先行きもたなくなるのは時間の問題と思われます。
 そこで私はこの際思い切って、保険料方式から「全額税方式」に改めたらいかがかと提案するわけです。その税源は消費税を5%から10%にして約13兆円を捻出します。そのかわり勤労者は国民年金なら月々1万4千円納めなくてよくなりますから、12ヵ月をかけますと16万8千円、これを消費税で換算しますと336万円の消費になるはずです。月に直すと28万円の消費をすることになりますが、普通のサラリーマンで、月28万円消費税対象の消費をしている方はそんなにはおられないと思います。
 また、厚生年金もこの際、税方式にしたとしますか。こちらは人によって異なりますが、月々5、6万円になるんじゃありませんか。これが給与から引かれているわけで、その分が手元に残ると給与所得がそれだけ増えることになります。もちろん企業も同額を納めており、それが不要になれば、その分を従業員に還元すれば、国に納めるか従業員に支払うかの違いですから、従業員個々の所得はその分上がることになります。こういう具合に考えたら、全額税方式も理解が得られるのじゃありませんか。
 もちろん、これまでまともに保険料を納めてこられた方々に対して、その納められた分は支払い時になったらお返し致します。一挙にとは行かないと思いますが、毎月の給付額に上乗せをすれば、文句はつかないかと存じます。
 また、これまで既に納めてしまって、今現在年金を受け取っておられる高齢者の方々は、新たに5%の支出増を求められることに不満がおありでしょうし、理屈として正しい意見だと私も思います。そこでそういう方々に過日こんな話を致しました。
 「皆さんの言い分もごもっともです。しかし皆さんは掛け金の4倍の年金を受け取っておられます。皆さんの孫は2倍しか貰えません。その孫の納める年金で皆さんは生活しておられる。皆さんは月々7万円位の消費で生活しておられるでしょう。その5%、3,500円を年金制度確立のために払って頂けないでしょうか。このままならいずれ現行制度は崩壊し、お孫さんが年金を受け取る年齢になった時には、支払う制度が無くなっているかも知れないんですが…」と申しあげました。いくつもの例外はあるでしょうが、極端な困窮状態の人には、生活保護という社会保障制度がありますし、また若いうちから備える方々は401Kなどをより優遇するといった政策もあると思われますが、いかがでしょうか。

以上引用終わり
さて、如何でしょうか? 年金の方式は兎も角も、麻生さんは、「現行制度の大前提が崩れるんですから、この制度が先行きもたなくなるのは時間の問題と思われます。」と自ら認めておられます。
そしてご自身のご提案を述べられ、「現行制度の大前提が崩れるんですから、この制度が先行きもたなくなるのは時間の問題と思われます。」と仰せられるのです。
加えて、今回の金融庁の報告の趣旨と同じく、「若いうちから備える方々は401Kなどをより優遇するといった政策もあると思われます」と2008年の時点でご提案になっておられます。
これでは、金融庁の報告よりも10年以上も前に将来が見えていた、と言うことではありませんか? 同等の報告を受けて、「そら俺が十年以上も前に言ったとおりじゃね〜か。 テメーラ、今頃、何だ? 報告書には俺が方向を示した、と書け。」と仰せられて当然ではないのでしょうか?

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/

〔opinion8758:190625〕

http://chikyuza.net/archives/94782
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/420.html

[政治・選挙・NHK262] 大いに語ろう、消費税と年金のこと。参院選に勝抜いて改憲を阻止するために。(澤藤統一郎の憲法日記)
 
昨日(6月26日)、第198通常国会が150日の会期を終えて閉会となった。既に7月4日公示・同月21日投開票の参院選挙日程が確定している。いよいよ、日本国憲法の命運を左右する選挙戦の到来だ。

この国会会期中、改憲審議は1ミリの進行もなかった。衆参両院とも議席数では3分の2を上回る改憲派が、この千載一遇のチャンスを生かすことができなかったのだ。これはまさしく、民意のしからしむところ。議席分布と、改憲世論とはけっして相関していない。数では勝る自・公・維の改憲派議員も、改憲ゴリ押しの無理はできないことがよく分かっているからなのだ。

しかし、自民党は今回の選挙公約6本の柱の最後に、「憲法改正を目指す」を掲げた。自民党がこの選挙で「勝利」することとなれば、改憲への弾みとなり得る。

また、市民連合と5野党会派の「共通政策」も、その筆頭に「安倍政権が進めようとしている憲法『改定』とりわけ第9条『改定』に反対し、改憲発議そのものをさせないために全力を尽くすこと」を挙げた。野党陣営の「選挙勝利」は、改憲阻止の大義となる。

憲法の命運がかかる選挙ではあるが、実は必ずしも選挙の勝敗が憲法に関する民意如何で決せられるわけではない。選挙では、多くのイシューをならべて有権者の支持が競われるからだ。

いま、民意が改憲を望んでいるわけではない。だから、改憲勢力が、改憲提案を大きく前面に掲げて民意を問おうとすることはしない。安倍晋三が、昨日の記者会見で言ったことは、「(参院選の)最大の争点は安定した政治のもとで新しい改革を前に進めるのか、あの混迷の時代に逆戻りさせるのかだ」というものだった。必ずしも、改憲を前面に押し出し、改憲是非で、民意を問おうなどというものではない。

安倍は、民主党政権時代を極端に暗い世相に描き、経済の振興こそが最大の課題だとする。

   「経済は低迷し、中小企業の倒産。今よりも4割も多かった。高校卒業し、
   大学を卒業して、どんなに頑張ってもなかなか就職できなかった。今より
   も有効求人倍率が半分にしか過ぎなかったあの時代。全てのきっかけはあ
   の参院選挙の大敗であります。まさに私の責任であり、そのことは片時
   たりとも忘れたことはありません。令和の新しい時代を迎え、あの時代に
   逆戻りをさせてはならない。そう決意をしております」

つまりは、安倍自民が前面に押し出すのは、経済問題であり、アベノミクスの「成果」なのだ。もちろん、アベノミクスが息切れし、その「成果」への実感が多くの人に乏しいことはアベ自身も良く知るところ。だから、「前政権の時代はひどかった」ことを強調して、「あれよりは今ずいぶんマシでしょう」となり。「あの時代に戻ってもよいとでも思っているのですか」と畳み込んでいるのだ。それが「政治の安定」か、「不安定な決められない政治」に戻すのか、という二者択一を突きつける問題設定となっている。

アベの戦略は、言わば「経済で票と議席を取って」、「その議席獲得の成果を改憲実現に生かす」というものだ。だから、改憲阻止を我がことと思う者は、今経済についても語らなければならない。アベノミクス批判の立場で。

この参院選は、「年金選挙」であり、「消費税選挙」である。総じて、経済や財政・税制のありかたが主たる問題となる。経済に関する論争を避けて通れない。

いまは、資本主義爛熟の世である。市場経済は、見えざる神の手による合理的な調和をもたらすとは、世迷い言。実は、この見えざる神は、多くの人を不幸に突き落とす死に神でしかない。

資本主義経済とは、これを野放しにしておけば、飽くなき資本の利潤追求欲求が多くの人々を搾取し収奪し尽くすことになる危険な存在である。富める者と貧しき者との不公正な格差は無限に広がり、長時間労働も幼児労働も蔓延し、植民地支配や好戦国家をも産み出す。その弊を除去するためには、経済の外からの別の理念による統制が必要なのだ。

民主主義の統治は、資本の搾取や収奪の自由を規制する。民主制国家の租税は、資本主義が原理的に作り出す貧富の格差を緩和するための、所得や富の再分配機能をもたなければならない。具体的には、徴税の場面では、担税能力の格差に対応する応能主義が原則となり、累進課税でなくてはならない。また、税の使途の局面では、国民の生存権を全うする福祉政策に適合するものでなくてはならない。

われわれ戦後教育を受けた世代は、福祉国家論を当然の常識として育った。国家は国民の自由を妨げてはならないと禁止されるだけでなく、富裕者からの富を集めて福祉政策を行うべく命令され、これを実行すべき任務を負っている。国家とは、財政とは、税務とは、そのように資本主義の矛盾を緩和して、資本の論理に対置される、人間の尊厳擁護の論理に奉仕するためにある。

このような視点から消費税を見れば、応能主義でもなければ、累進制でもない。むしろ、逆進制ではないか。どうして、こんな制度が、今の世に許されるのか。さらに、消費増税とは許しがたい。

そして年金制度。これも、所得と富の格差を緩和し、多くの人の老後の安泰を確保すべきものとして、年金支給原資に国庫資金を大きく組み入れてしかるべきなのだ。自助努力を強調する与党は、そもそも国家の成り立ちについての自覚に乏しいといわねばならない。

さて、これから、追々と参院選における経済的な論点の各論について書き継いでいきたい。改憲阻止のために、消費税・年金を論じようということだ。
(2019年6月27日)

http://article9.jp/wordpress/?p=12872
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/489.html

[政治・選挙・NHK262] 報道の死は国の死につながる (マガジン9)
言葉の海へ
第78回:報道の死は国の死につながる

By 鈴木耕 2019年6月26日
出典「マガジン9:https://maga9.jp/


■NHKニュースの奇異

 6月23日、沖縄「慰霊の日」である。太平洋戦争時、沖縄は日本国内で地上戦が行われた地であり、その死者数は約20万人、県民の4人にひとりが死亡したといわれる酸鼻極まる戦いだった(米兵もまた1万2500人もの戦死者を出している)。

 沖縄で“組織的戦闘”が終結したとされるのが、1945年6月23日。その日を沖縄県は「慰霊の日」として、県民の休日にした。県民が、死没者を悼み、あの戦争を忘れないためである。毎年この日、沖縄では「沖縄全戦没者追悼式」が行われる。今年もその日が来た。

 正午から、慰霊の式典が行われるということで、ぼくはテレビを点けた。昼のNHKニュースの時間。そこで、ぼくは愕然とした。なんだ、こりゃ? トップニュースは延々と“逃亡容疑者逮捕”で、なかなか沖縄は出てこない。あれ? 今日は「慰霊の日」じゃなかったっけ?

 だけど、ニュースが終わると「特別番組」が始まり、式典の模様が生中継された。ああ、そういうことか、と一応は納得した。

 小学6年生の山内玲奈さんの平和の詩の朗読、そして玉城デニー沖縄県知事のウチナーグチ(沖縄言葉)と英語を交えた式辞。どちらも静かだが胸に沁みるスピーチだった。

 来賓あいさつは安倍首相。こちらはまるで心に響かない。毎年同じような文面を、さっさと終わりたいのか猛烈な早口で読み飛ばす。そんなにイヤなら出席しなきゃいいのに。

 会場からは、かなりのヤジや批判の声が挙がる。それはかすかだが、NHKのマイクも拾っていた。しかし、耳をそばだてていなければ聞こえないほどの音量。NHK技術陣の苦労のほどがしのばれる。

 実際、後でSNS上に公開されていた動画で確認すると、多くの声が聞きとれる。とくに安倍首相が「沖縄の負担軽減」「そのための辺野古移設」などに触れると、叫びは一層高まった。「ウソをつくな!」「何しに来たっ!」「帰れ!」「恥を知れ!」……。会場には怒号ともいえる叫びが響いていた。NHKが拾えなかった(拾わなかった)声だ。

 ところが安倍首相が退席すると、NHKはあっさりと中継を止めた。そして「八重山カヌー紀行」というような番組を始めたのだ。まだ式典は続いていたのに、あれはどういう意図だったのだろう?

 ぼくの大好きな沖縄の海の番組だったけれど、異様な編成だ。ぼくはテレビを消した…。

 この日のNHKの夜7時のニュースでは、会場での安倍首相への批判の叫びを流し、コメントもあったということだが、ぼくはどうせ同じだろうと思い、7時のニュースは見なかった。いや、見る気がしなかったのだ。

 テレビが壊れかけている。

■テレビ朝日の、ある人事

 辛辣な政権批判で知られるウェブサイト「LITERA」に、ギョッとする記事が載っていた。(6月23日)

      テレビ朝日が2000万円報告書問題で麻生財相を
     追及した「報ステ出身の経済部長」を報道局から追放!
            露骨すぎる安倍政権忖度人事

   (略)「経済部長・Mさんに、7月1日付人事異動の内示が下ったんで
   すが、これが前例のない左遷人事だったんです。M部長の異動先は総合
   ビジネス局・イベント事業戦略担当部長。今回、わざわざ新たに作った
   部署で、部長とは名ばかり。これまでの部長は政治部長やセンター長に
   なっているのに、これはもう嫌がらせとしか思えません」
    M部長は古舘伊知郎キャスター時代、“『報道ステーション』の硬派路
   線を支える女性プロデューサー”として有名だった女性。経済部長に異
   動になってからもその姿勢を崩さず、森友問題などでは、経済部として
   財務省をきちんと追及する取材体制をとっていたという。(略)

 このM部長は重要な局面では、自らも記者会見の場へ出て質問をすることもあったという。その人が、何をやるかも定かでないような新設の部へ飛ばされた。要するに、安倍政権にとって都合の悪い報道をして来た者は、こんな目にあう、ということか。

 報道という現場から、政権(権力)批判が消えていく。それも“忖度”という目に見えない圧力によって消されていく。そのことを、報道機関であるテレビ局が自ら行う。テレビ局はもはや報道機関ではなく“放送企業”でしかなくなってしまったのか。

■差別やヘイトを煽る番組や広告

 企業であれば、売れる(視聴率が取れる)なら何でもやる。公共の電波を使っているという意識は捨て去ったようだ。

 6月24日の毎日新聞が社説でこう書いている。

    在阪民放局で、人権への配慮を欠く放送が相次いだ。偏見を
   助長する恐れのある内容だ。業界全体への信頼にかかわる。
    読売テレビはニュース番組で、見た目で性別が分かりにくい
   人に対し、しつこく確認するという主旨の企画を放送した。(略)
    一方、関西テレビではバラエティー番組に出演した作家が、
   韓国人気質について「『手首切るブス』みたいなもん」とコメン
   トした。民族差別や女性蔑視をあおる表現であり、ヘイト発言
   と受け取られかねない。(略)
    とくに関西テレビでは、同様の発言が以前にも放送され、社
   内で議論した上で「差別的な意図はない」と判断していた経緯
   があった。(略)
    若者を中心にテレビ離れが進み、視聴率競争や制作費削減で
   現場には疲弊が広がる。構造的な問題も横たわる。(略)

 書いてある通りだと思うが、この批判は、書いている新聞へも撥ね返ってくるはずだ。同じことが、新聞社内でも起ってはいないか。

 毎日新聞にだって、それこそヘイト表現としか思えないような書籍や雑誌の広告が散見されるではないか。社内の広告審査が機能していないとしか思えない広告が、かなり多く見かけられるのだ。

 新聞購読者数が減っていることは紛れもない事実。そのために、多少ヤバイ広告でも、目をつぶって掲載しているというのが実際のところだ。

 そのようなマスメディアの窮状をいいことに、カネのある組織がTVCMや新聞広告でヘイトをばら撒く。

 ほんとうに、気をつけなければならない。

■日本の報道の危機に国際的懸念も

 国際NGO(非政府組織)の「国境なき記者団」が毎年発表している「報道の自由度ランキング」で、日本は今年67位だった。この順位は安倍政権になってから急落の一途をたどっている。例えば民主党(鳩山首相)政権時代は世界で11位だったものが、第2次安倍政権以降は、53位→59位→61位→72位→67位と無残なほどの落ち込みである。

 「国境なき記者団」だけではなく、国連も日本のメディアの独立性に憂慮を示す報告書をまとめている。

 毎日新聞(6月24日付)に、こんな記事が載っていた。

    言論と表現の自由に関する国連のデービッド・ケイ特別報告
   者が、日本では現在もメディアの独立性に懸念が残るとする新
   たな報告書をまとめた。日本の報道が特定秘密保護法などで委
   縮している可能性があるとして同法の改正や放送法4条の廃止
   を求めた2017年の勧告を、日本政府がほとんど履行してい
   ないと批判している。
    沖縄の米軍基地の県内移設などに対する抗議活動についても
   当局の圧力が続いているとし、日本政府に集会と表現の自由を
   尊重するように要請した。報告書は24日に開幕する国連人権
   理事会に正式に提出される予定。(略)
    政府に批判的なジャーナリストらへの当局者による非難も
   「新聞や雑誌の編集上の圧力」と言えるとした。「政府はジャ
   ーナリストが批判的な記事を書いても非難は控えるべき」とし
   ている。(以下略)

 さらにこの記事では、辺野古基地反対運動のリーダー山城博治さんの有罪確定についても「(表現の自由の)権利行使制限の恐れがある」として深刻な懸念を示したとされている。

 これに対し菅官房長官は、またも紋切り型の反応。「極めて遺憾。報告書は不正確かつ根拠不明のものが多い。日本では憲法の下、表現の自由、集会の自由は最大限保証されている」と記者会見で反論した。

 よく言うよ、である。あの東京新聞・望月衣塑子記者に対する会見での扱いを見ていれば、菅氏の言うことが絵空事であることはバレバレではないか。

 こんなマスメディア状況にありながら、前述のテレビ朝日のような露骨な“安倍忖度人事”が行われている現実もある。

 ――報道が死ねば、国も死ぬ―― それこそが、日本を敗戦に導いた報道機関の「痛苦な反省」ではなかったのか。

https://maga9.jp/190626-2/
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/490.html

[政治・選挙・NHK262] F35墜落事故は本当にパイロットが原因なのか (朝日新聞社 論座)
F35墜落事故は本当にパイロットが原因なのか
105機の追加購入に1兆2000億円。トランプとロッキードへの遠慮が見え隠れ

佐藤章 ジャーナリスト、慶應義塾大学非常勤講師、五月書房新社編集委員会委員長
論座 2019年06月28日

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三沢沖に墜落したのと同型の航空自衛隊F35A=航空自衛隊HPから

■墜落したF35、捜索は2か月で打ち切り

 安倍首相は憲法9条を変えたくてうずうずしている。うずうずしているどころかその願望を堂々と公言さえしている。このこと自体、憲法99条の憲法尊重擁護義務違反に当たる可能性が大きいが、安倍首相の憲法軽視の姿勢は今に始まったことではないのでさしたる驚きはない。

 首相の憲法違反の言動、政治的行動に格別の驚きを感じないというのは極めて異常な政治状態であることを示しているわけだが、そんな状態の中でもやはり驚くことはある。

 航空自衛隊三沢基地(青森県)のステルス戦闘機F35が青森県沖の太平洋上に墜落した。約2か月という短期間の捜索、原因究明の結果、死亡したベテラン・パイロットが空間識失調という平衡感覚を失う状態に陥り、墜落の原因をつくったという推定の結論を出して、捜索、原因究明の努力を放棄した。

 安倍首相は憲法9条を変える理由として、自衛官を父親に持つ子どものことを考え、自衛隊の存在を憲法に堂々と書き込む必要があると何度も繰り返してきた。しかし、そこまで自衛官のことを思うのならば、わずか2か月で捜索打ち切り、原因究明中止というのはあまりに諦めが早いのではないか。

 安倍首相の言動と実際の行政行動とのギャップに驚く。

 F35は安倍首相が1兆2000億円という巨額支出をして105機の追加購入を決めた次期主力戦闘機だ。

 ベテラン・パイロットの墜落事故についてはもっと時間をかけて慎重に原因を追究すべきだろう。米国ロッキード・マーチン社が開発製造した機体には何も原因がなく、推定だけで自衛隊のパイロットに原因があったと結論を出すのはあまりに非論理的だ。まるでトランプ大統領やロッキード社に遠慮しているようではないか。

■本当に「空間識失調」なのか

 事故はどのようにして起こったのか。航空自衛隊の発表に基づいて再現してみよう。(「航跡概要図」参照)

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航空自衛隊の発表資料より

 発表によれば、4月9日午後6時59分ころ、三沢基地所属のF35A戦闘機の4機編隊が同基地を離陸。1番機に搭乗していた細見彰里(ほそみ・あきのり)3等空佐(41)は同7時25分ころ、戦闘訓練の対抗機2機を訓練の上で撃墜したことを地上の管制機関に報告した。

 その1分後、近づいていた米軍機との距離を取るため管制機関から降下の指示を受け、細見3等空佐は「はい。了解」と送信し、左降下旋回を始めた。

 この時、近づいてきた米軍機の高度は約1万1300メートル。細見3等空佐のF35Aは約9600メートルだったが、細見3等空佐は約4900メートルまで約20秒で降下、時速約900キロ以上という急降下だった。

 さらに午後7時26分15秒前後、管制機関は左旋回を指示、細見3等空佐は左旋回した後「はい、ノック・イット・オフ(訓練中止)」という落ち着いた送信の声を最後に約4700メートル下の海面に時速約1100キロ以上の速さで激突したとみられる。

 航空自衛隊の発表では、緊急脱出の形跡は確認されず、機体は激しく損壊し、部品や破片などが海底に散乱していたという。

 では、事故原因についてはどうか。航空自衛隊はまず、酸欠やG―LOC(重力に起因する意識喪失)、機体の不具合などの可能性は極めて低いとしており、その上で次のように結論づけている。

    有効な回復操作が可能な最低高度に至っても回復操作が見
   られないことから、操縦者が「空間識失調」(平衡感覚を失っ
   た状態)に陥っており、そのことを本人が意識していなかっ
   た可能性が高いと推定

 しかし、この「推定」は本当に合理的なのだろうか。

 航跡概要図を見てまず驚くのは、細見3等空佐が約9600メートルの高さから約4900メートルの高さまで時速約900キロの速さで左旋回しながら降下し、さらに左旋回しながらスピードを緩めるどころか速めて海面に激突していることだ。この間、本当に細見3等空佐は「空間識失調」の錯覚の中で操縦桿を握っていたのだろうか。

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航跡概要図(イメージ) 航空自衛隊の発表資料より

■飛行時間3200時間のベテラン・パイロット

 「空間識失調」とは何か。バーティゴともいい、地上が下にあるのか上にあるのか、あるいは機体が上昇しているのか下降しているのかさえわからなくなる状態のことで、夜間飛行や濃霧の中などで地平線や水平線が見えない飛行中に陥りやすいという。

 ここで合理的な疑問は、細見3等空佐は総飛行時間3200時間、F35での飛行時間は60時間という経験を持つかなり熟練したパイロットであるという点だ。これほどのベテラン・パイロットが空間識失調に陥り、海面に激突するまで気がつかなかったということがありえるだろうか。

 疑問の第2点は、空間識失調は周りが見えない夜間などに起こりやすいとはいえ、F35のパイロットは夜間でも昼間のように見えるゴーグルがついたヘルメットを着用している点だ。F35自体1機100億円を超え、維持費を含めると300億円は超えると言われるが、ヘルメットひとつ取っても4400万円という代物だ。

 F35は、このヘルメット・ゴーグルと風防ガラスのセットで、明るすぎる時は暗めに、夜間は昼間のように外が見える「総合視認システム」を採用している。つまり、どんな強烈な太陽光線の下にいても、真っ暗な夜中にいても、操縦桿を握ってさえいれば快適なジェットの空が楽しめるシステムになっているのだ。 

 したがって細見3等空佐も最後まで水平線をにらんでいたことは確実だろう。横に見える水平線の状態をにらみながら、飛行時間3200時間のベテラン・パイロットが水平飛行の錯覚の中に居続けたということが果たしてありえるだろうか。それともこの「総合視認システム」が壊れていたとでも言うのだろうか。

 実は、墜落原因については、パイロットの空間識失調などではなく、機体の方に問題があったのではないだろうか、とする見方が根強い。

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F35A=2019年4月10日、航空自衛隊三沢基地

■「ある特定の操作法」

 2018年6月、米国会計検査院(GAO)はF35に966件もの未解決の欠陥があり、そのうち111件が「安全性や他の重要な性能を危険にさらしうる欠陥」と位置づけている。

 これだけ多くの欠陥がGAOによって指摘されていることも驚きだが、さらにこの6月12日、米国のオンライン軍事専門誌ディフェンス・ニュースが内部文書を入手し、「13の最も重大な欠陥」があると報じた。超音速飛行は短時間だけ可能、制限時間を超えるとステルス機能を失い、機体の損傷などもあることなどが指摘されているが、その6番目に掲げられた項目は今回の自衛隊事故を考える上で座視できない欠陥だろう。直訳するとこうなる。

    ある特定の操縦法の後、F35BやF35Cのパイロットは常に
   完全に機体の上下左右のコントロールをできるわけではない

 ここでなぜF35Aが含まれていないのかは不明だが、主語のパイロット以下の原文を示すとこうだ。

   Pilots are not always able to completely control the aircraft’s
   pitch,roll and yaw.

 pitch,roll and yaw というのは簡単に言えば上下左右のこと。飛行機に即して言えば、進行方向に対してまっすぐな直線がX軸としてのroll、水平方向がY軸としてのpitch、垂直方向がZ軸としてのyawだ。

 つまり、ある特定の操縦法の後ではパイロットは、進行方向、水平方向、垂直方向すべての機体のコントロールに支障が生じてしまうと言っているのだ。パイロットにとってこれほど大変なことはないだろう。

 「ある特定の操縦法」とは何だろうか。

 一般的には戦闘機同士の対決、俗に言うドッグファイトのことを指すようだが、細見3等空佐が直前に訓練していたのは、まさに2機対2機に分かれての「対戦闘機戦闘訓練」(航空自衛隊発表)だった。しかも、その直後に左旋回して急降下している。

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空自のF35Aを捜索する米海軍機と海自の護衛艦=2019年4月10日、青森県三沢市沖の太平洋上

■電子化された「高技術」だが…

 実は私は、このディフェンス・ニュースの記事が出る前に、専門家から、自衛隊機事故の真の原因は機体の上下左右の傾きを測るジャイロセンサーの問題なのではないか、と聞いていた。

 かつてはアナログ式だったジャイロセンサーはコマの原理を応用しており、傾いた姿勢から真っ直ぐになろうとするコマの原理を応用して傾きを測る方式を採っていた。アナログ式ではあるが、かなり完成度の高い技術だった。

 ところが、近年これを電子化したのはいいが、地磁気や飛行機自体の磁気の影響を受けやすいという。したがって、電子化したこのジャイロセンサーをジェット戦闘機に組み込んだ場合、どのような影響を受けるのかよくわかっていない、と専門家は指摘していた。

 この電子化ジャイロセンサーが原因となって、民間航空機であるボーイング737MAXが2018年10月にインドネシアで、今年3月にはエチオピアで相次いで墜落している。

 機首の上下の向きをコントロールする水平尾翼はパイロットが手動で操作しているが、737MAXでは、この操作を補助するためにMCAS(エムキャス)と呼ばれる装置を初めて設置した。機体の前方につけたセンサーで機首の角度を検知、そのデータを基にMCASが自動的に機首を下げる。

 このことを取材して報道したNHKの「ニュースウオッチ9」によれば、インドネシア事故の調査報告書に驚くべきデータが記されていた。

 事故の前にパイロットが20回以上も機首を上げようと操作を繰り返し、そのたびにMCASが機首を下げようとしていた。つまり、どういう不具合が生じたのか電子化されたジャイロセンサーが機首を下げよう下げようとしているのに反し、パイロットがそれに抗して機首を上げよう上げようと悪戦苦闘しているうちに地上に激突してしまったという状況だ。

 もちろん、簡単に推論の糸がつながるような話ではないが、事故を起こした自衛隊機についても、その観点から十分調査すべきポイントではないか。

 戦闘機の歴史は教訓に満ちている。

 太平洋戦争の初期、日本の零戦はなぜ強かったのか。簡単に言えば操縦士の安全性を極限までそぎ落とした設計だったために、軽く、戦闘性に秀でていたためだ。安全性を追求すれば鉄板の厚さなども分厚くなり機体は重くなる。戦闘機の場合、この「割り切り」が問題になる。

 F35の場合、ステルス性と重厚なコンピューター装備が特徴だ。特にコンピューター装備では機体の周りに張り巡らせた配線のケーブルが相当に重くなる。私も専門家に100メートルのケーブルを持たせてもらったが、かなり重い印象を持った。このケーブルが1機につき何千メートルも張り巡らされているのがF35だ。

 そして、F35はこのコンピューターシステムを盛り込みすぎているのではないか、と専門家は指摘した。この盛り込みすぎのシステムがジャイロセンサーにどのような影響を与えたか。

 戦闘機コンピューターのもうひとつの問題は、エンジニアの問題だ。マイクロソフトやアップルなど民間のシニアクラスのエンジニアは、年収数千万円。ところが、軍需産業に関わるエンジニアの場合、いたるところで守秘義務に縛られる上に違反すれば重罪、しかも年収はせいぜい1000万円クラス。優秀なエンジニアが民間と軍需のどちらに向かうかはおのずと明らかだろう。

 今回のF35墜落事故の原因を考える上でもうひとつ大きく膨らむ疑問は、フライト・データ・レコーダーが見つかっていないという点だ。通称ブラックボックスと呼ばれるこのレコーダーは、端的に言って墜落事故を前提にして製造、搭載されている。海底に破片が散乱している状況まで確認していながら、肝心のブラックボックスが未発見という事態が果たしてありえるだろうか。

 このブラックボックスのデータを見ればすべて明らかになるだろうが、なぜかその捜索さえも打ち切られている。事故の真相が明らかになることがそんなにまずいことなのか。あるいは、そんなに早く捜索を打ち切る理由があるのか。どう考えても首をひねらざるをえない。

 細見3等空佐が最期にどのような闘いを遂行していたのか、何としても明らかにする義務が、残された者、あるいは政府にはあるのではないだろうか。今後も、F35は日本の上空を飛び続ける。「空間識失調」などという推定の結論ではなく、事実に基づいた原因究明は航空自衛官のためにも、ジェット音の下にいる国民のためにも必要だろう。

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トランプ米大統領(右)との首脳会談で、握手を交わす安倍晋三首相=2019年4月26日、ワシントンのホワイトハウス

■ロッキードからの高い買い物

 F35は民主党の野田政権時代に42機購入することを決定したが、安倍政権はさらに105機を買い増し、合計147機を導入することにしている。この閣議了解が2018年12月。これにより航空自衛隊の現有F15戦闘機のうち99機をF35と入れ替える。

 ところが、今年3月、米国防総省は2020年度から24年度までの間に、日本の航空自衛隊が退役を決めたF15を80機購入すると発表した。日本にはF35を売り込んでおきながら自らは以前のF15購入を決めるというとんでもない動きだ。

 F35は米空軍、海軍、海兵隊合わせて2000機以上配備する予定なので、F15の80機購入は問題にするほどの数ではないと見る見方もあるが、専門家は「予定は単なる予定。これからF15に切り替えていく動きが出てくるのではないか。日本への売り込みは、ロッキードの製造ラインを動かしていくための方便ではないか」と皮肉に見ている。

 F35については米国でも評判は芳しくないようだ。F16戦闘機を設計したピエール・スプレイ氏は、F35に関するインタビューを受けて「生まれつきどうしようもない飛行機だ、構想そのものがバカなんだ」と取り付く島もない。

   ――なら、なぜこんなもの作ったんですか?
   金じゃよ。金をつかうこと、それがこの飛行機のミッションだ。
   米議会からロッキードに金を送る。それがこの飛行機の真の
   ミッションなのさ。

 ロッキードと言えば、日本ではすぐに1976年のロッキード事件が思い出される。表向きは民間航空機L1011トライスターが問題になったが、実は軍需用の対潜哨戒機P3Cが、日本に対するロッキードの売り込みの本命だった。P3CからF35へ、ロッキードからの高い買い物は相変わらず続いている。

https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019062100001.html
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/491.html

[政治・選挙・NHK262] 安倍外交は採点不能、よくて赤点 参院選前に総括 (朝日新聞社 論座)
安倍外交は採点不能、よくて赤点 参院選前に総括
現場取材20年の記者が憂う日本外交の劣化

藤田直央 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)
論座 2019年06月28日 より無料公開部分を転載。

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来日したトランプ米大統領と首脳会談冒頭で握手する安倍首相=6月28日朝、大阪市住之江区。朝日新聞社

 もし夏の参院選を乗りきれば、在任期間が歴代最長に届こうかという安倍晋三首相。通常国会が終わって来たる参院選に向け、政権の仕事ぶりが問われる今、首相に返り咲いてから6年半の「安倍外交」を総括しておきたい。

 まずは「採点不能、よくて赤点」という厳しいベースから考えざるをえない。なぜか? 20年間、取材現場で日本外交を見てきた立場から述べる。

■「採点不能」のわけ

 評価のベースが「採点不能、よくて赤点」である理由は、安倍政権が官邸主導の名のもとに、日本外交に関する国民への「説明責任」を著しく劣化させたからだ。

 自身の取材不足を棚に上げて「説明せよ」と叫ぶつもりはない。ただ、安倍政権は「地球儀を俯瞰する外交」や「戦後外交の総決算」など、なにかと外交をアピールしながら、歴代政権と比べると隠し事が多すぎる。ほんとうに国益にかなう判断や交渉がされたのか、「経緯」をめぐる闇が広すぎるのだ。

 特にそれが目立つのが、首相を交えた官邸での会議、そして首脳会談だ。日本の外交・安全保障の司令塔というふれこみで2013年にでき、首相が議長を務める国家安全保障会議(NSC)や、安倍首相が米国のトランプ大統領やロシアのプーチン大統領との会談で多用する「テタテ」(一対一)での「突っ込んだ議論」の中身は、ほとんど明かされない。

 「特定秘密保護法ができたから仕方ないよ」と思われるかもしれない。安倍政権の採決強行で生まれたこの法律は確かに14年から施行されているが、各行政機関が毎年指定する特定秘密のうち、外交関連は実はそれほど多くない。

 18年に指定された特定秘密に関する政府の報告書によると、NSCでは同年中の会議の「結論に関する情報」、外務省では同年中に「外国の政府等から国際情報統括官組織に提供された情報」のみだ。

 にも関わらず、発足から150回以上を数えるNSCの四大臣会合(首相、外相、防衛相、官房長官。今は副総理も参加)については、菅義偉官房長官が記者会見で議題を述べるだけ。テタテのやり取りも首脳間の信頼関係を崩さないようにと極秘扱いだ。

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2017年9月、北朝鮮の核ミサイル問題などを挙げて「国難突破解散」を表明した安倍首相=首相官邸。代表撮影

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北朝鮮の弾道ミサイル発射を受けて開かれた国家安全保障会議。左から安倍首相、自衛隊制服組トップの統合幕僚長、麻生副総理(内閣広報室提供)=2018年版防衛白書より

 その結果、安倍政権下では、外交に関して首相や官房長官が公言したこと以外について、官邸や外務省の関係者の口が極めて重くなった。それが秘密かどうか以前に、「報道されると、誰が言ったんだという官邸の犯人捜しが始まる」(外務省幹部)と萎縮している。

 日本外交の「経過」についての説明責任を、安倍政権はかくも劣化させた。それが、評価のベースが「採点不能、よくて赤点」というゆえんだ。ただし、安倍外交が「経過」をそこまでして伏せながらも、久々の長期政権が享受する政治基盤を生かすことで「成果」を得ているのなら、平均点に近づくかもしれない。

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6月末に議長を務めるG20(主要20カ国・地域)首脳会議を前に、会場となる大阪城西の丸庭園にある大阪迎賓館を視察する安倍首相=4月、大阪市中央区。朝日新聞社

 次にそうした観点から、主要各国との関係をざっと顧みたい。

 (安倍外交の「成果」について安倍政権の人たちと話すと、首脳会談が頻繁な主要国との外交で「首相が毎年のように代わっていた以前と違い、自己紹介から入らなくていいので議論が深まる」とか、6月末に大阪で開かれる「G20」サミットのような国際会議で、「首相の存在感が高まって議論をリードできる」などと語られる。だが、それは長期政権のメリットとして一般的に言えることであり、安倍外交を問う本稿の趣旨とずれるので評価対象としない)

■最大の懸案、日中関係

 台頭する中国への対応は日本外交の最大の懸案だ。

 日中関係は、安倍政権の直前の民主党政権による2012年の尖閣諸島国有化を機に、1972年の国交正常化以降で最悪に陥ったが、安倍政権になって2014年に関係改善に合意し、首脳が往来するところまで立て直した。中国が反発する首相の靖国神社参拝も、安倍首相はこだわりを抑え、13年を最後に控えている。そこは評価できる。

 ただし、日中関係について安倍政権の6年半で明らかになったのは、そもそも時の首相が独自色を発揮できるほど生易しいものではなくなっているということだ。背景には、今後も続くであろう中国の台頭と、米国の警戒からくる米中対立がある。

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来日した中国の習国家主席と首脳会談を前に握手する安倍首相=6月27日夜、大阪市北区。代表撮影

 日中関係が改善したのは、トランプ政権との「貿易戦争」を機に経済面でリスクヘッジを迫られた習近平政権と、安倍政権との利害の重なりの広がりによるところが大きい。一方で、安全保障面では尖閣周辺海域でのにらみ合いが続いており、安倍政権は中国の海洋進出への対応という点で利害が重なる米国との同盟強化で対応してきた。

 日中関係は安倍外交を云々する前に、日本が米中対立の行方に目を凝らしながら、そこでどう生き抜くかという国家の行方がかかった危機管理の問題になっている。中国にしても、日本とは歴史認識や尖閣の問題を抱え、日米同盟もあって易々と関係強化には踏み込めない。

 安倍政権は、日中関係をそうした綱渡りでしのいできた。首脳会談もまだ頻繁とはいかないだけに、安倍外交のアラも見えにくかったと言える。

■安倍・トランプの「やってる感」

 中国の海洋進出や北朝鮮の核・ミサイルへの対処に日米同盟が欠かせないにもかかわらず、「米国はもう世界の警察官はできない」と公言するトランプ大統領が、2017年に登場した。そんな厄介な状況の日米関係において、安倍外交は目立った。

 大統領選でのトランプ氏躍進を外務省は読み切れず、米国の新政権との人脈づくりは後手に回ったが、安倍首相が当選間もないトランプ氏をトランプタワーに訪ねたり、ゴルフをくり返したりして首脳間で絆を深めた。世界がトランプ氏に振り回されるなか、日本外交の財産といえる。

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5月末に来日したトランプ大統領と千葉県でゴルフをする安倍首相。「自撮り」したという=首相官邸のツイッターより

 もちろん手放しでは評価できない。今の日米関係がその安倍・トランプ関係に頼りすぎなのに、二人きりのテタテで「やってる感」は伝わるが何を話しているのかわからないという、冒頭に述べた説明責任の劣化にからむ恐ろしい状況があるからだ。

 最近のテタテについて言えば、安倍首相は日本人拉致問題の訴えに力を入れていることはわかる。北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との会談に踏み切ったトランプ氏に、拉致問題解決を望む自分の考えを伝えてほしいというわけだ。二度目の今年の米朝首脳会談の後、安倍首相は「トランプ大統領から金委員長に伝えていただいた」と喜びをあらわにした。

 ただ、不動産王・トランプ氏の信条はあくまでディール(取引)だ。テタテで安倍首相に何を頼んでいるのだろうか。

 シンゾーはアメリカの武器を買うと言ってくれた、という趣旨の発言をトランプ氏はよくする。もともと日本政府で決めていた話について「大統領に美しい誤解をしていただいている」(小野寺五典・前防衛相)という見方もあるが、5日末の訪日でもトランプ氏から踏み込んだ発言があった。横須賀に停泊中の海上自衛隊護衛艦「かが」を安倍首相と訪れた際のことだ。

 自衛隊最大の船である「いずも型」護衛艦「かが」は、空母に改修される可能性があるが、政府はまだ決めていない。空母に積まれる戦闘機の機種も表向きは未定だが、トランプ氏は「かが」艦内での訓示で「この船は近く改修され、最新鋭の(米国製)戦闘機F35を運ぶ事になるだろう」と語ったのだ。

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拡大5月末に来日し、海上自衛隊の護衛艦「かが」を訪れて自衛隊と米軍の隊員に訓示するトランプ大統領。隣には安倍首相=神奈川県横須賀市。代表撮影

 日米間で焦点の貿易交渉でも、首脳間のやり取りには危うさがつきまとう。安倍首相が昨年9月の首脳会談後の記者会見で、米国が望む包括的な自由貿易協定(FTA)ではなく物品に関する協定「TAG」の交渉開始に合意したと言って、後で米国駐日大使に否定されたり、トランプ氏が5月末の訪日の際に「7月の選挙後に待つ」と参院選を控える安倍首相に配慮するかのようなツイートをしたり……

 かと思えばトランプ氏は6月末、訪日を控えた米メディアのインタビューで「我々が攻撃されても日本は我々を助ける必要はない。できるのは攻撃をテレビで見ることだ」と主張。大統領当選前から変わらぬ日米安保体制への不満をあらわにした。安倍政権が日米同盟が揺るがないようにと踏み切った集団的自衛権の限定行使容認や、米軍普天間飛行場の沖縄県内移設のための工事開始など、まったくお構いなしだ。

 「首脳会談は12回、電話協議は30回」と外務省も安倍・トランプ関係の濃密さを強調するが、外務省幹部が入れないテタテで2人は一体何を話しているのか、誤解が生まれていないか、危なかっしいこと甚だしい。

 もしひそかなディールがあるとすれば、国益に沿っているかどうかの検証ができず、2人が政権を去った後に引き継がれる保証もない。テタテ頼りの安倍外交が抱えるリスクは大きい。

■北方領土で日本の立場不明に

 テタテ頼りの安倍外交といえば、日ロ関係はその最たるものだ。安倍首相は昨年5月の国会答弁で、プーチン大統領とテタテを重ねていることについて、こう語っている。

 「平和条約交渉の中身は、最後の時点に至るまで外に出すわけにはいかない。テタテ会談の時には、基本的には平和条約交渉の話しかしていません。ただ、そこでどういう対話がなされたかを私が紹介した瞬間に、もう次の首脳会談では話ができなくなってしまいます」

 日ロ平和条約交渉は北方領土交渉と表裏一体だけに、これも危うい話だ。

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1月の日ロ首脳会談冒頭、プーチン大統領と握手する安倍首相=モスクワのクレムリン。朝日新聞社

 首脳間で信頼関係を深めることは大切だ。しかし、領土問題のように国益がぶつかり合うテーマで、テタテで「突っ込んだ議論」を重ねると、互いに外に言えないことがどんどん増える。秘密を共有するという意味で、信頼関係というよりも連帯感が生まれて議論は進むかもしれないが、それが国益に沿っているか、後継者に伝わるかはわからない。日米関係で述べたのと同様である。

 安倍政権は日本外交において「経過」の説明責任を劣化させた。それを補って余りある「成果」を得ているのか。その観点から私が最も厳しい目を向けるのが、この日ロ関係だ。

 安倍首相や河野太郎外相は、平和条約交渉について「政府の立場は変わらない」とくり返す。だが、ロシアの前身であるソ連と国交を回復した1956年の共同宣言以来、戦争で奪われた北方領土の返還を目指して日本外交が積み重ねてきた「政府の立場」は、安倍政権でわけがわからなくなってしまった。

 それは、外務省が毎年発行する「外交青書」2019年版ではっきりした。終戦時にソ連が占拠し日本が返還を求めてきた北方四島について、1957年に出た最初の青書は「固有の領土」とし、2009年からは毎年「固有の領土」や「日本に帰属」と書いてきた。19年版でそれらの言葉が消えてしまったのだ。

 しかも、日ロ交渉の到達点として1993年から記され続けてきた「東京宣言」への言及もなくなった。四島がどちらに属するかを棚上げせずに平和条約を締結するとした同年の首脳間合意であり、安倍内閣で2013年に閣議決定した日本初の国家安全保障戦略にも、その内容をあえて明記していたのに、だ。

■四島へのこだわり捨てた?

 外交青書で唯一言及された過去の合意は、平和条約締結後の二島引き渡しを記した1956年の日ソ共同宣言だ。もし、こうした記述そのままが日本政府の基本方針になったのなら、日ロ間の共通認識は一気に63年前まで後退したうえ、日本が四島へのこだわりすら捨ててしまったことになる。

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5月末の日ロ外相会談後に共同記者発表に臨む河野外相とラブロフ外相=東京・麻布台の飯倉公館。代表撮影

 安倍首相は首脳間のテタテの中身を語らず、河野外相は「国民が日本外交への理解を深める一助に」と自身が巻頭言でうたう今年の外交青書で説明を一変させておきながら、「政府の立場は変わらない」と強弁する。そして、2人とも56年宣言を強調するようになっている。

 安倍政権の対ロ外交はなぜ、こんなに風通しが悪いのか。たとえば20数年前、同様に平和条約交渉決着を目指した橋本龍太郎首相は「ユーラシア外交」を唱え、領土問題での妥協を包み込めるような日ロ関係発展に向けたビジョンを国民に示した。

 「当時とは状況が違う」と首相周辺は語る。「いまは膨脹する中国にどう対応するかだ。日米豪印が連携するインド太平洋戦略で南を、日ロ関係の発展で北を抑える。でも米ロ関係が悪い中で、日ロ関係のビジョンまで打ち出すのは、いかにも間が悪い」

 日本の国益にとっては、台頭する中国への対応こそが喫緊の課題であり、そのためにロシアとはとにかく北方領土問題で妥協して早く関係を安定させる。四島へのこだわりを断つ政治判断をするには、久々の長期政権である安倍政権の登場というチャンスを逃してはならない――というわけだ。

 戦略としてはわかるが、そんなことは安倍政権が作った国家安全保障戦略に一言も書いていない。ロシアという言葉が出てくるのはたった1カ所だ。首相自身が交渉にのめり込み、これまでの方針との整合性をもって国民に語る言葉を失っていく。そんな自縄自縛に安倍外交は陥っている。

■首相の出番ない日朝関係

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2月に首相官邸で拉致被害者の家族らと会う安倍首相=朝日新聞社

 安倍外交で首相にいっこうに出番が来ない分野がある。日朝関係だ。

 日本の安全保障の要諦である朝鮮半島では、非核化をめぐって2018年から対話が動き出したが、かつて北朝鮮と「六者協議」を開いた米中韓ロ日の中で、日本だけが北朝鮮と首脳会談をできていない。「内閣の最重要課題」に掲げる拉致問題で成果のない安倍首相は今年、ついに「無条件」での会談を金委員長に呼びかけた。

 日朝関係のこの現状に、安倍外交の脆さが露呈している。

 それは、2002年に初の日朝首脳会談を実現し、今の金委員長の父にあたる金正日総書記に北朝鮮による日本人拉致を認めさせるという成果を上げた小泉政権と比べると、よくわかる。

 02年の会談がうまくいった理由には三つある。@当時の米ブッシュ政権による北朝鮮への圧力、Aその米国に日朝首脳会談開催を納得させた小泉純一郎首相とブッシュ大統領の関係、B首脳会談で日朝双方にメリットのある合意を仕上げるための事前交渉だ。

 現状を考えると、Aにあたる安倍・トランプ関係はある。だがそれは日朝交渉においては@のように米国が北朝鮮に圧力をかけている状況でこそ生きる。1953年に朝鮮戦争の「休戦」協定が結ばれて以来、世襲の金体制を維持するため米国との駆け引きを最優先する北朝鮮にとって、今のように米朝対話が動いている時、あえて日本と対話する必要はない。

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2002年9月、初の日朝首脳会談後に互いに署名した日朝平壌宣言を交換し、握手する小泉純一郎首相と金正日総書記=平壌の百花園迎賓館。代表撮影

 さらにBがどうか。02年の会談に向け事前交渉にあたったのは、当時外務省アジア大洋州局長だった田中均氏。水面下で北朝鮮の相手方と一年間かけて20回を超える交渉をし、互いが本当に首脳の意向を体しているのかを探りつつ、首脳会談で国交正常化交渉再開に合意する文書の原案づくりを進めた。そこまでしても、会談で北朝鮮が拉致問題を認めるかどうかは、当日までわからないという神経戦だった。

 安倍政権で、北朝鮮との間にここまで濃密な事務レベル交渉はできていない。その理由を外務省幹部は「今年の米朝やロ朝の首脳会談を見ても、北朝鮮側で事前協議が機能していない」と話すが、それだけではない。安倍首相自身が日朝国交正常化交渉のハードルを上げてきた面があるからだ。

 安倍首相は、北朝鮮が核実験とミサイル発射を続けた2017年までは、圧力によって対話に向かわせると繰り返し、日本独自の制裁を強め、国際的な包囲網を築こうと各国首脳と会談するたび協力を求めていた。この年には北朝鮮の脅威まで挙げて「国難突破解散」に踏みきり、衆院選に勝って政権基盤を固めた。ところが、18年に初の米朝首脳会談で対話が動き出すと一転、金委員長に「無条件」の日朝首脳会談を呼びかけるようになった。

 こうした安倍政権のぶれを見ると、拉致問題へのこだわりはわかるが、それを解決するための外交について、脆さどころかそもそも戦略があるのかとさえ思ってしまう。02年に初の日朝首脳会談を実現させた三つの要因のうち、米朝関係への洞察と、日朝双方のメリットを探る事前交渉の二つを通じて、北朝鮮を揺さぶるしたたかさは見えない。

 安倍首相が圧力から「無条件」対話へ転換したのは自分の都合による右往左往だ、と北朝鮮に足元を見られないような外交が必要なのだ。

■日韓は懐広く、対イランは検証を

 これまで述べてきた、安倍首相の振る舞いを軸とする安倍外交からは離れるが、日本外交にとって重要な分野に最後に触れておく。それは日韓関係とイラン問題だ。歴代最長政権をうかがう安倍首相であればこそ、政権基盤の強さを生かして様々な外交課題に積極的に取り組めるはずだ。そうした視点からこの二つの分野を考える。

 まず日韓関係だが、 ・・・ログインして読む
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https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019061900011.html
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[政治・選挙・NHK262] 政治家に必要な、涙とともにパンをかみしめる体験 (朝日新聞社 論座)
政治家に必要な、涙とともにパンをかみしめる体験
冷静な判断力、実社会に関する体験と道徳的資質とともに

杉田聡 帯広畜産大学名誉教授(哲学・思想史)
論座 2019年06月28日 より無料公開部分を転載。


 前稿「立候補者の略歴に学歴・学校歴はいらない」(https://webronza.asahi.com/culture/articles/2019062700008.html)で私は、政治家にとって学歴・学校歴に意味はなく、重要なものは別にあると記した。それはいったい何か。

■政治家に欠きえない冷静な判断力

 「職業としての政治」論で有名なマックス・ヴェーバーは、政治家に求められる資質として「情熱、責任感、判断力」をあげていた。そして判断力とは、「事柄(事態)と人に対する距離〔を見はからう能力〕」である、と(ヴェーバー『職業としての政治』角川文庫、75-6頁、ただし訳はかならずしも出典とした訳書に従っていない。以下同じ)。

 政治家は、一般にはもちえない権力によって市民・社会に多大な影響を及ぼしうる。それは市民生活に安逸を与えもすれば、苦痛をもたらしもする。人を生かすこともできれば、殺すこともできる。政治という営みは、それだけ厳粛な意味をもつ行為である。

 だからこそ政治家には、情熱のみならず「冷静な判断力」(同77頁)が、「事柄と人に対する距離」が不可欠だと、ヴェーバーは記すのである。それを欠けば、「情熱」は統制のとれない興奮にいたる。これをヴェーバーは政治家にとっての大罪と記すが(同前)、今日、与党にはその種の「政治家」が多すぎると私には思われる。満足な説明責任もはたさずに強行採決に訴える様子を見ていると、彼らは政治家として大罪をおかしていると感ずる。

■政治家に欠きえない観察者の立場・歩みよる資質

 では、いったい何が、冷静な判断力の行使を可能にするのであろう。

 政治思想家のハンナ・アーレントは、美学を論じたカントの『判断力批判』を政治哲学書として(多少むりに)読もうと試みたが、その中で唯一成功したと思われるのは、冷静な判断力行使を可能にする条件を明示したことである。

 アーレントは、政治家は行為者でありながら、己の活動についての公平な観察者となる必要があると論じ、その場合に、少数派を含めた市民との共生を可能にする「共同体感覚」を、政治家固有のエートス(持続的な性格・倫理観)として重視した。

 政治家は政党に属するのがふつうだが、そのために己の立ち位置をせばめてしまう結果になることが多い。しかも今日、与党の場合、党内で自由な議論ができる余地は極小化している(朝日新聞2019年6月13日付「朝日・東大共同調査/自民 15年で進んだ純化」を参照)。

 だが政治家にとって最も重要なのは、この共同体感覚――分断ではなく、同じ市民としての共生可能性を重視しようとする市民感覚――であり、それを保持した公平な観察者(第三者)の立場に立てることである(アーレント『カント政治哲学の講義』法政大学出版局、77頁、109頁)。

 社会契約説で名高いルソーも、政治家の資質について重要な発言を行った。近代的価値の実現をめざした政治団体(国家)は、人々があい集って総意を形成し、その指揮の下に、全員の利益を配慮しつつ運営されなければならない、と(ルソー『社会契約論』岩波文庫、30-1頁;ルソーは直接民主制論者であるため「人々」は市民全体をさすが、間接民主制論として「議員」と読んでよい)。

 要するにルソーは、特定の集団(党派)の立場に偏するのではなく(同48頁)、少数派を含めた全成員の総意(一般意思)によって法を制定する必要がある、と論じたのである。

 もちろん総意形成は、問題によっては困難かもしれない。だがこれは、民主制下の政治理念として不可欠である。そして総意形成のためには政治上の技術も重要だが、はるかに重要なのは、少数派の利益を考慮し我意(特殊意思)をすてて歩み寄る、人々(議員)の道徳的資質である、と論じている(ルソー『エミール』河出書房新社、555頁)。

 世の英知に従えば、政治家に不可欠なのは以上のような資質である。

■勉学より重要なのは実社会での体験と共感である

 では、こうした資質を備えるためには、そもそも何が必要なのだろう。

 学校教育も必要な条件となりうる。ただし、高卒か大卒か、「名門」校出か非名門校出かなどは、無関係だろう。どの学歴・学校歴も、政治家に固有なエートスをつくる保障にはならない。

 むしろ高い学校歴をほこる人は、偏差値教育への適応をつうじ、「短時間内に頭脳のなかに蓄えた知識を要領よく紙上に再現する能力――というより技術――を持つ」かもしれないが(尾形憲『学歴信仰社会――大学に明日はあるか』時事通信社、28頁)、それだけが価値ある人間的能力でない。ましてや、それが政治家にふさわしい能力だとは、とうてい言えない。

 いや事態はむしろ逆で、 ・・・ログインして読む
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https://webronza.asahi.com/culture/articles/2019062700016.html
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[政治・選挙・NHK262] 山本太郎氏インタビューの後で (マガジン9)
言葉の海へ
番外編:山本太郎氏インタビューの後で

By 鈴木耕 2019年6月26日
出典「マガジン9:https://maga9.jp/


 先日、山本太郎さんのインタビューを、彼の国会の事務所で行った。

 とても楽しいインタビューだった。太郎さんも、こちらの眼をじっと見つめて真剣に言葉を選びながら答えてくれたし。もちろん、ぼくの考え方とは違う部分もあったけれど、そんなことはインタビューでは当たり前だ。気持ちのいい時間だったことは確かだ。

 超多忙を極める太郎さんとの内容に関する確認作業に手間取ったこともあり、インタビューを行ってから大分、時間が経った。その間に、「AERA」に山本太郎インタビューが掲載された。ぼくもさっそく読んでみた。そこで、やや違和感を覚える部分があった。そのことは、きちんと書いておく必要があると感じ、蛇足だとは思いながら、編集部に頼み込んで、こんな文章を書かせてもらうことにした。

 「AERA」の中で、自民党との関係について、太郎さんは次のように発言している。

    自民党が本気で減税すると言うならば、そちらに乗ります。何がなんでも
   野党陣営ということではない。我々の政策が実現できるなら、手をつなげる
   ところはつなぎますよ。ステップ・バイ・ステップ、一歩ずつ前進するため
   の一段階というとらえ方です。

    ――原発や憲法をめぐる立場が相いれなくてもですか。

    それとこれとは別の話です。全ての考え方が完璧に同じなんてことは、家
   族でも恋人同士でもあり得ないでしょう? 全て同じじゃなきゃダメという
   姿勢は、宗教かイデオロギーでしかない。私はこれまでも、与党が提出した
   法案の半分には賛成しています。

    ――減税をやるから、安倍政権の財務大臣をやってくれと言われたら、閣
    内に入りますか。

     引き受けますよ。いいじゃないですか、そんな大きな役職をもらえるなら。
   ただ、言いたいことは言いますし、財務省のスキャンダルをどんどん暴きます。
   だからすぐ罷免されるでしょうね。あ、でも副大臣や政務官じゃお断りです。

 まあ、財務大臣になってもすぐに罷免されるだろう・・・と言っているのだから、ここはジョークととらえてもいいと思う。

 それに、与野党の枠を超えて「手をつなげるところはつなぐ」というのはぼくも賛成だ。硬直した与野党対立の構図を越えて、いい政策なら賛成する。政治家として立派な見識だと思う。

 けれど、やはり「原発や憲法を巡る立場」について「それとこれは別の話です」というのには、ぼくとしてはいささか困ってしまう。「別の話」で済ませていいことではないと思うからだ。

 政治家として、絶対に譲れぬ一線があるのではないか。これまで太郎さんが訴え続けてきた「原発」や「憲法」についての主張に、いささか抵触するのではないか。

 「マガジン9」は、2005年に発足した当時は「マガジン9条」といっていた。創設当時のメンバーたちに「憲法9条の精神だけは譲れない」という暗黙の了解事項があったからだ。

 その後、さまざまな分野に踏み込むことが増え「条」をとって「マガジン9」と名乗るようになった。それでも【憲法の精神】についての考え方が柱になっていると、ぼくはいまも思っている。

 だから、経済政策で一致できるなら「憲法や原発」については棚上げにしてもいいと、ぼくは考えない。

 確かに太郎さんの言うように、すべての考え方が完璧に同じなんて、どんな似た考えの人同士だってあり得ない。同じ志の仲間同士であっても、いろんなことで意見が対立することはある。だが、一緒に行動し闘おうとするなら「最低限の同意事項」がなければならないと、ぼくは思う。

 それが「マガジン9」の場合は、【憲法】ではないか。「それとこれとは別の話」と、ぼくは思わない。

 少なくともぼくは、そう理解している。

 もし太郎さんが、「原発や憲法は別の話」とほんとうに考えているのなら、やはり「そこはぼくとは違う」と、インタビューをした者の責任として、はっきりと書き残しておかなければならないと思ったのだ。
 
https://maga9.jp/190626-6/
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/500.html

[政治・選挙・NHK262] 参院選前に学者の会がアピール 憲法、労働等各分野から発言 (長周新聞)
2019年6月26日

 安全保障関連法に反対する学者の会は23日、東京都千代田区の学士会館で「学者の会アピール発表大記者会見」を開き、全国の31大学から約100人の学者や知識人が集まった。学者の会は2015年6月に発足して以後、現在までに1万4353人の学者・研究者と3万2493人の市民の賛同人を集め、市民や学生とともに安倍政府の政策を検証し、平和で民主的な政治をとり戻すための集会やシンポなどをおこなってきた。今回、参議院選を前に、改憲を掲げて暴走する安倍政府に鉄槌を加えるために主権者としての行動を呼びかけるアピールを発するとともに、憲法、外交、労働、福祉などあらゆる分野で、どのように国民主権が蹂躙され破壊されてきたのか専門的知見から学者たちが発言した。以下、発言者の発言要旨を紹介する。


◇ 東京大学名誉教授 広渡清吾

 私たち学者の会は、2015年6月15日、ここ学士会館で安保関連法案に反対して運動を進めるために、設立の記者会見をおこなった。反対運動は60年安保反対以来の国民運動として大きく盛り上がったが、それにもかかわらず安倍政権は法案成立を強行した。法成立の翌日、2015年9月20日、学者の会はここ学士会館で170人をこえる出席者をえて記者会見をおこない、安保関連法を廃止するまで運動を続けることを宣言した。

 それから約4年がたった。安倍政権は軍拡政策をますます明確にし、九条改憲の具体案を正面から提案するにいたった。この間、2016年参議院選挙、2017年衆議院選挙と2度の選挙がおこなわれたが、安倍政権に対して立憲擁護の政党を打ち立てて安保関連法を廃止にするという学者の会の課題はその展望を開くにいたっていない。

 来る7月には参議院選挙が予定されている。学者の会として3度目の国政選挙だ。安保関連法の廃止を求め、その大前提として憲法九条を擁護し立憲主義を実現する政治をつくりだすために、私たちはこの選挙へ安倍政権に決定的な打撃を与えることをめざす。

 なぜこのことが今の日本社会に必要なのか、私たちの思いと願いをこれまでにも増して、日本社会の市民のみなさんにお伝えし、一緒にたたかっていただくことを期待したい。


◇ 名古屋大学教授 愛敬浩二 [憲法]

 憲法に関して話したい。1点目が九条改憲に関する問題だ。先日公表された自民党の公約でも「早期の憲法改正をめざす」とある。4点の改正項目の筆頭に「自衛隊の明記」とある。安倍首相やその周辺は「自衛隊を明記しても現状は変更しない」といっているが、法律学者としてはそもそも現状を変更しない条文改正があり得るのか、現状変更しないならそもそも憲法を改正する必要はないのではないかという思いはある。

 だが強調したいのは、そもそも現状が問題だということだ。すなわち集団的自衛権行使を容認した安保法制がどんどん実施されている。戦争のできる国へと、この国の形がどんどん改変されている。これは広い意味での憲法の変更だといえる。

 一つは自衛隊による米軍防護の件数が2016年は0件、2017年は2件、2018年は16件でわずか1年の間に8倍となった。これぐらい自衛隊の米軍防護が日常的におこなわれるようになっている。もう一つは昨年9月に海自の潜水艦が南シナ海で対中国の訓練をした。これはどこで自衛隊が活動することが期待されているのかが明確に示されている。

 さらに最近、トランプ大統領が来日したときに護衛艦「かが」に乗った。「かが」は米軍機も発着可能な空母に改修することが予定されているものだ。そこでトランプ大統領は「(自衛隊が)さまざまな地域の紛争や離れた地域の紛争に対応してくれるだろう」といった。自衛隊をどこに送り込みたいのかがはっきりする。安保法制を廃止するということは単に法律を廃止するということではなく、ここまで変えられてしまった国のあり方をせめて集団的自衛権を閣議決定した2014年7月1日以前に戻さなければいけないと思う。そうでないとずるずるとアメリカの戦争に引きずりこまれる可能性が高くなる。

 2点目は沖縄の辺野古新基地問題と南西諸島における自衛隊配備の問題だ。辺野古基地問題に関して、2014年の県知事選では翁長氏が、埋め立てを承認した仲井真氏に10万票の差をつけて当選した。10万票は沖縄県知事選で極めて大きな数字で、圧勝だった。2018年、玉城知事が当選した県知事選でも自民、公明、維新、希望が推薦した佐喜真氏に対して8万票の差をつけて当選した。今年2月の県民投票でも投票者の70%以上の人が辺野古新基地反対の意志表示をした。3回にわたり明確で圧倒的な反対意思が示された。

 それにもかかわらず知事選の前、県民投票の前から「どんな結果になろうが埋め立てを止めるつもりはない」と政府はいっている。これは主権者がいっていることをないがしろにしているとしか思えない。憲法改正の議論のとき、安倍首相は「憲法九六条の改正要件が厳し過ぎて国民に判断させる機会を与えていない。けしからん」という。では沖縄で明確な意志が3回も示されているにもかかわらず、それに対して何も対応しないのはまったくおかしい。

 3点目は、南西諸島の自衛隊配備に関して、最近、宮古島、与那国島に住民に対する説明とは異なって弾薬庫が配備された。現在の日米安保は九条のもとにおかれており、建前ではあるが「日本と極東の安全のために米軍が存在する」と説明されている。沖縄になぜ海兵隊が必要なのか、日本の安全との関係で関係なければ出ていってもらうという議論があってもいい。ところがもし九条が改正されてしまえば、おおっぴらにアメリカのグローバルな軍事展開のために基地を提供するとアメリカに明確に意志表示をすることになる。仮に台湾有事があった場合に、南西諸島は最前線になる。

 安倍首相は今年の2月、トランプ大統領をノーベル平和賞に推薦したというのが暴露された。そこまでアメリカに迎合する政治家が、日本の政治をおこなっている。この状況を変えなければいけないと思う。


◇ 東京大学名誉教授 和田春樹 [外交]

 私は本年初めの国会冒頭の安倍首相の施政方針演説についてのべたい。この演説のなかで、「地球俯瞰外交の総仕上げ」と語った。最初に中国について、「日中関係は完全に正常な軌道へ戻った」とのべた。これが安倍氏がいう唯一の外交成果のようだ。だが安倍氏の外交軍事政策の基本戦略が、米国と結んだ対中国封じ込めの軍事的対決と体制づくりにあることは歴然としている。

 安倍首相は対ロシア外交を掲げた。「信頼と友情を深め、領土問題を解決し平和条約を締結する。1956年宣言を基礎にして交渉を加速する」とのべた。しかし、もはやこれは空文句に過ぎない。四島返還を下ろして、二島返還でまとめようとしたが手遅れだった。ロシア外交は明らかな失敗だ。

 それが安倍首相にもわかっているため、この演説で北朝鮮外交で意欲を見せた。「北朝鮮の核ミサイル、もっとも重要な拉致問題の解決に向けて相互不信の殻を破り、次は私自身が金正恩委員長と直接向き合い、あらゆるチャンスを逃すことなく果断に行動する。北朝鮮との不幸な過去を清算し、国交正常化をめざす」とのべた。

 しかし、米朝首脳会談に向けて安倍首相が拉致問題を押し立てたのは、「日本国家は拉致という北朝鮮の犯罪行為を忘れない」というものだった。この問題をあくまでも暴露告発して、北朝鮮をなおも追及するつもりだという意志表示であったが、被害者家族は「とにかく交渉だけはしてほしい」という願いを強め、安倍氏は交渉する気を見せるように追い込まれていった。5月から「無条件で会談する」といいだして注目を引く作戦を展開し始めた。しかし安倍首相は2006年以来の「拉致三原則」を堅持しており、対話はたんなるジェスチャーに過ぎない。金委員長と会談はできないし、拉致問題の解決に進むこともできない。

 もしも本気で無条件で交渉をおこなおうというのであれば、拉致三原則を放棄して平壌宣言に基づいて平壌と東京に大使館を開き、ただちに核ミサイル問題、経済協力問題、制裁解除問題、そして拉致問題を交渉することができる。しかし、その道を進むことはできないだろう。

 施政方針演説のなかで最も恐ろしかったのは、韓国について一言もふれず、完全に相手にせずの対応を示したことだ。韓国は日本にとって大事な隣国であり、日韓間は大きな問題を抱えているにもかかわらず、そういう態度をとった。それを聞いて1938年1月の近衛首相の演説を思い出し慄然とした。あのとき、「爾後国民政府を相手にせず、新興支那政権の成立発展を期待する」といって日中戦争に完全に突入していった。中国、韓国、北朝鮮とは断絶し対決して、米国との軍事同盟にこもり米国と心中するという未来は悪夢だ。安倍首相は自分の国のまわりで戦争が起こるのを防ぎ、そして隣国との平和的で人間的な協力関係をつくっていくことが外交の第一の課題であることを理解していない。考えていない。その意味でとんでもない総理大臣だと思う。


◇ 京都大学名誉教授 間宮陽介 [経済政策]

 安倍政権はたんに暴走しているだけでなく、破壊しながら暴走している。破壊は部分的な破壊ではない。障子が破れると部分的に切りとって貼りかえると修復されるが、部分的な破壊ではなく一つが破壊されると次が破壊される。それは根本的なところにまで及んでいる。憲法、立憲主義、法の支配の破壊、教育、労働、いろんな面での破壊が進んでいる。そうした破壊は経済でも起こっている。アベノミクスが失敗した、クロダノミクスが失敗したというたんなる失敗の話ではない。経済自体が破壊されている。

 経済学の古典を紐解くと経済の目的について書いている。「国民一人一人の福祉厚生、生活水準を向上させるにある」と謳われている。それはアダムスミスからケインズ、現代にいたるまで変わらない。しかし先の国会で、「年金の財源について法人税率を引き上げて年金の財源に回せばいい」と議員がいったら安倍氏がせせら笑い、「論外だ。経済成長が大事だ。そのためには一部の富裕層を優遇する」という。それは「経済成長をすれば、恩恵が下下まで回っていく。雨水がしたたり落ちるように恩恵が世界全体に広まる」というトリクルダウンのことをいっている。

 そういってこの間法人税率を下げ、10月から消費税率を上げることになっている。だが法人税率が下がり企業の利潤は増えている。だがそれが設備投資に回れば経済活動を促すが、1年で30兆から40兆円という大きな額が企業の貯蓄に回っている。内部留保の累積が400兆円で、ものすごい額が企業のなかに留まっている。

 マクロ経済的にいうと内部留保は貯蓄と同じであり、貯蓄が増えるとGDPは下がっていく。内部留保が増えるとGDPを抑制する効果がある。法人税率の引き上げ、消費税率の引き下げをすれば消費支出が増えるからGDPを増やす効果をもたらすが、従来の経済の目的が壊されている。

 その点は日銀の政策でもおこなわれている。富裕層のために日銀が株式を買い集め、その結果、日銀が保有している株式(ETF)は、残高が25兆円になっている。日本全体の株式の2〜3割の株式を保有している。日銀が筆頭株主になっている大企業も何社かある。それが進むと日銀が日銀の首を絞めるようになってくる。大量の株式を保有して株価が下がると日銀の財務状況が悪化する。多額の株式を買っているので、簿価にあらわれない損失分が膨らんでくる。下手をすると債務超過になりかねない。それを守るために自分のために株を買い付けなければならない。どんどん所有株式が増えていく。目的が富裕層のためという事態からさらに進んで日銀みずからの保身のために株を買わなければいけなくなってくる。

 それは日銀が保有する国債についてもいえることだ。現在450兆円の国債を持っている。従来、国債は景気調整、物価調整のために買ったり売ったりするのが目的だったが、政府の財政赤字をサポートするために国債を購入するようになっている。

 政府の経済政策の意味が変わってきており、さらに経済の破壊活動を推進するのが新自由主義だ。新自由主義の新自由主義たるゆえんは企業間の競争を高めるのではなく、未開拓の地、従来は市場化されていなかった教育、農林水産業、医療をビジネスチャンスとするということだ。そうやって生活面を破壊していく。新自由主義というのは破壊活動の先兵になっている。日本は経済的にも破壊されていくと思う。安倍政権はぜひとも倒さなければならない。


◇ 早稲田大学名誉教授 浅倉むつ子 [労働]

 安倍政権は2016年以降、「働く人の視点に立った働き方改革」といい始め、2018年6月に「働き方改革法」を成立させた。ここでは同一労働同一賃金、時間外労働の上限規制など非常に耳当たりのよいキーワードをたくさん用いた。しかしその内実は決して労働者の権利擁護ではない。これはわずかな規制を付け加えただけであって、その効果が見込まれない。

 強調したいのは、安倍政権の働き方改革というのは、労働政策上の法理念が欠落していることだ。

 労働の立法政策を語るのであれば、憲法的価値をベースとした人権、基本権の調整となるような理念が必要だ。今年は国際労働機関・ILOの創立100周年にあたる。ILOは「すべての人にディンセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)」を実現することを目標としている。日本でも民主党政権の時代には「公正な処遇のもとディンセント・ワークを実現するために、不合理な格差の解消をはかる」ということがきちんと提示されていた。

 今の安倍政権はILOの国際基準には目もくれず、国際基準に後ろ向きであることを隠そうともしていない。労働政策は決して経済政策に代替されるものではない。そういうことを強調したい。

 理念のない政策の当然の結果として、働き方改革の目玉政策での「同一労働同一賃金」の政策というのは、ほとんど実効性は期待できない。「正規労働者と非正規労働者の待遇差が非合理なものであってはならない」とするにとどまり、現在の著しい格差を縮小するような画期的効果を期待できるものではない。そもそも正規と非正規の格差を問題とするのなら、両者間に異なるルールを用いること自体を問題とすべきであって、格差に合理性があることを立証する責任は使用者にある。それを明確にすべきだと思う。

 しかし改正法は合理的でなければならないということまでは求めずに、「不合理な場合には損害賠償が可能となる」、それだけの効果しかない。しかも問題は正規、非正規間の格差だけではなく、正規労働者(雇用管理区分)の差別の合理性が日本では問われているはずだが、安倍政権はそれについての認識が欠如している。

 さらにいうと時間外労働の上限規制は、現実的な時間短縮効果を期待できないと思う。上限は従来は厚労大臣告示に合わせられている。しかも特例の限度基準が過労死ラインしかない。ここでは過労死ラインまでは罰則を気にしないで時間外労働を命じる、そういうふうに考えてしまう使用者が登場しても不思議でない。時間外労働の上限規制が逆効果をもたらさないことを願うばかりだが、働き方改革ではこれを規制強化と位置づけて、それと引き換えに高度プロフェッショナル制度を導入した。これは自分の労働の分量をみずから決められることを想定されている管理監督者とは異なって、高度プロフェッショナルな人たちが上司の指揮命令を受けて働いている労働者であるにもかかわらず、一切の労働時間規制から除外されるという仕組みだ。この新しい制度は働き方改革の名には値せず、過労死放任の制度というべきかと思う。

 このような安倍政権の労働政策ではなく、私たちは長時間労働と決別して、健康や家庭の事情で残業できない人であっても8時間働けば普通に生活できる当たり前の社会づくりを求めたいと思っている。むしろ労働基準法が定めている8時間労働の原則に立ち返って無制限、無限定な正社員の働き方を見直し、すべての人にディンセント・ワークを保障する働き方改革が必要なのだと思う。今こそ新しい政権をつくって本当に改革を私たちの手で実行したい。それを心から願っている。


◇ 同志社大学教授 岡野八代 [ジェンダー]

 ジェンダーとは「社会的、文化的性差」と一般的には定義されている。だが現在の政治状況のなかで、私たちはさらにはっきりと「ジェンダーとは個個人にさらに強い力で強制される政治的な性差だ」と考えるべきだと思うようになった。なぜなら現在、安倍政権でおこなわれている前代未聞の、政治という名に値しない権力の乱用は、私たちの職業選択や人生設計に大きな影響を与える性差に対しても政治的に大きな力が働いているといわざるを得ないからだ。

 それは私たちの基本的人権、未来にむけて新しい可能性を一人一人が創造していく自由、そうした人権を保障することこそが国家の役割だと規定する憲法を無視した暴力的な法の制定、多様な国民の意思が反映され、代表による熟議がおこなわれなければならない最高機関であるはずの国会審議の軽視、そして恣意的な法の運用や制度設計を許さないために文書によって過去のプロセスを記録すべき行政における文書主義の破壊、また法や制度が基づくはずのデータの改ざんなどがあげられる。

 「男らしさ、女らしさ」など私たちの言葉遣い、身のこなし方まで規定する性差の規範は、国家を根底から支える一つの秩序だ。それは例えば、国の労働力をどう編成するか、また未来の世代や生産年齢をこえた人たちをどのように支えたりするかといった労働、人口、福祉社会政策に密接にかかわっている。安倍政権下では女性活躍といいながら、女性の多くは正規労働から排除され、家事責任の大半を担わされ、男性世帯主がいない女性親一人世帯では、母親はもちろん、多くの子どもたちが貧困にあえいでいる。この仕組みを、いかに政治的な労働政策や社会保障制度のなかで見えなくさせているのかがジェンダー秩序にほかならない。

 またそうしたジェンダー秩序は、理想的な国民像、国民としての権利や責任、政治的、市民的な権利の受け止められ方が男女によって異なる原因にもなっている。例えば日本における現在のジェンダー秩序は、「身体を侵害されない」という人権の中心であると同時に、市民的権利の根幹を女性には充分には保障していない。なぜなら、強姦罪が改正され、強制性交等罪となってなお、どれほど抵抗したのかをもってその強制性をはかろうとするため、性暴力を決して許してはいけない人権侵害といまだ日本は認めていないからだ。

 さらに労働力としては資本の都合のよい使い捨てできる安価な資材のように女性を利用し、その能力の発展をさまたげるセクシャルハラスメントも容認するようなことを大臣がいっている。また医学部の不正入試にあらわれたように、未来に可能性を広げるはずの教育を受ける権利さえ奪う、そのような歪んだ構造をジェンダー秩序が支えている。

 そしてこの秩序が政治的につくられたものだと私が主張する理由は、他ならない現在の政治こそが女性には最低限文化的に一人で生きていける生活費を保障せず、身体の安全を保障しないような社会を許すどころか、欲してもいると考えざるを得ないからだ。

 例えば、今年の統一地方選挙ではようやく誕生した政治分野における男女共同参画推進の法律も反映し、全国レベルではようやく女性当選者が10%をこえた。しかし自民党にいたっては女性議員は3・5%に過ぎない。これは政権与党として政治は男が独占してよいのだという政治的な姿勢を発し続けていることにほかならない。こうした態度こそが、今私が話してきたジェンダー秩序をつくりだし、女性を差別する社会構造を温存し続けている。

 この歪んだジェンダー秩序は女性だけを苦しめているわけではない。規制緩和という名の下で、労働者に対する権利侵害の横行で過酷な労働を押しつけられて苦しんでいる人、あるいは強い男らしさの規範に批判的な男性たちの生きづらさをつくり出している。もっといえば、多くの男性政治家が体現するような女性蔑視を身につけさせられている、女性を支配するようになる男性もまた個人の価値を尊重できないような人格を帯びてしまうという点では、自由な社会で生きづらくさせられているといえるかもしれない。

 安倍政権の立憲主義への敵意は個人の尊厳、自由、なにより人に強制されずに幸福に生きたいと願う権利にも向けられている。ジェンダーの視点から、このような敵意は、可能性に開かれた私たち一人一人の自由な創造力と未来を殺すのだと訴えたい。


◇ 東京大学名誉教授 大沢真理 [社会保障]

 社会保障の問題は、この学者の会の趣旨からいえば、やや周辺的な趣旨と思っていたが、思いがけず時の話題になっている。6月21日にいわゆる「骨太の方針」の最新版が閣議決定された。私はこれを読んであっけにとられた。「70歳まで働け、病気になるな、要介護になるな、お上に頼るな」ということだけが社会保障の項目に書かれている。

 今年の骨太方針は75ページもあり、去年も72ページだった。安倍政権も2013年までは30ページ台だったのだが、長くなればなるほど中身がなくなる。「年金の信頼をとり戻す」などというのは念頭にないことが骨太の方針で明らかになった。「年金が頼りにならない、だから貯金しろ」というのは政府のスタンスとは違うから、報告書は受けとらないし、なかったものにするというのだ。さらに財務省の審議会で「年金の給付水準が下がる」という言葉は書き換えさせられている。しかし年金の給付水準が下がっていくことは、2004年の年金改革のさいにデザインされていたものだ。

 年金に限らず日本の社会保障は「機能不全に陥っている。機能強化が必用である」ことを初めに書いたのは、福田康夫内閣の社会保障国民会議の報告だった。自力で何ともできないときに頼るのが社会保障であり、生活を成り立たせ安心感を持たせるのが社会保障政策だ。それ以来、日本の社会保障には機能強化が必要だということは政権交代をこえて共有されてきた認識だ。麻生太郎内閣でも「機能強化が必要だ」との報告書をまとめてきた。

 ところが今の安倍政権は日本の社会保障には機能強化が必要だというスタンスに対して完全に背を向けてきた。「安心できない」といっているのを、「安心だ」と強弁している。また安倍政権は姿勢として背を向けてきただけでなく、実際に社会保障給付費総額の対GDP比を低下させている。日本のように高齢化が進む国で、社会保障給付費の規模を低下させるのはすごいことだ。一つには安倍政権下で物価指数は4ポイント上がっている。消費税率をアップし、それから社会保障の当然増、自然増といわれる圧力があるなかでのことだ。もちろん名目額からみた社会保障給付総額は増えているが、その対GDP比が低下してきたというのはいかに強力な適正化、重点化といわれるものが作用してきたかということを如実にあらわしている。実際にこれまでの安倍政権の骨太方針において、社会保障は適正化、重点化という要望の下で、負担は増し給付はカットするという一点張りで終始している。社会保障という言葉が出てくるチャプター(章)は、財政健全化のチャプターのなかの筆頭項目として出てくる。

 ところで安倍政権もさすがに評判が悪いと察知したのか、2017年ぐらいから成長政策から分配政策にスタンスを移しているのではないかという好意的な解釈もある。これは言葉に騙されている。2018年の骨太方針から社会保障の「基盤を強化する」という言葉が出てくる。「機能強化」と「基盤強化」は平仮名にすると二文字しか違っていないのだが、聞き流してしまうと大変危険だ。きちんと文書を読めば、世代間の負担と給付のあり方を再検討する、そしてきちんと収入をはかる、支出を減らすという文脈で基盤強化はいわれている。実は基盤強化と機能強化は正反対なのだ。

 そしてとうとう「70歳まで働け、病気になるな、要介護状態になるな、自分で何とかしろ」ということだけが社会保障の項目に書かれている事態になっている。あっけにとられているだけではどうしようもないので、こういう政権には鉄槌を下さなければならない。そのチャンスが間もなくやってくる。


◇ 慶応大学学生 谷虹陽 [未来のための公共]

 未来のための公共という団体で自分も市民運動にかかわってきた。2017年に発足した市民団体で、特措法に反対する行動、公文書改ざんに対しても抗議の声を上げてきた。

 選挙について、立憲野党と安倍政権の対立の枠組み、「左派や右派」「保守か革新」で語られることが多い。だが最近の政治を見ていると一部の支配層対90%以上の市民という構図の方が正しいのではないかと思っている。今一部の富裕層にカネが集中していたり、政権中枢に巨大な権力が集中していたりする。

 権利や尊厳を切り崩されている状況で、次の選挙で問われるのは一部の富裕層や政権を握る中枢の政治家による今のむちゃくちゃな政治を許すのか、あるいは一人一人の尊厳が尊重される平和で民主的な社会を実現するために立憲野党を応援するかのどちらかだと思う。


◇ 京都大学教授 高山佳奈子 [金融庁報告書問題]

 金融庁報告書問題について、自民党政権、民主党政権、現自民党政権下で地方制度等審議会の委員を務めてきた立場から発言する。本日のアピールのテーマは「一人ひとりの尊厳が尊重される平和で民主的な社会のために」となっている。一人一人の尊厳が尊重されるためには暮らしを守らなければならない。だがそうはなっていない。平和に反する武器、しかも機能に問題があるような武器を爆買いし、福祉予算が足りなくなっている状態だ。

 そしてその事実が書かれている報告書を握り潰す時代になっている。これが民主的な社会の妨げになっていることは明らかだ。審議会の委員は政府自身が任命する非常勤の公務員だ。そしてその専門的な知見を披露し審議して報告書を作成し、それを地方政治に役立ててもらうというのが審議会委員の任務だ。血税で雇われている審議会の委員が、知見を結集して専門的な立場から検討をおこない、提出した報告書が反古にされるということは民主主義のために必要な情報の共有ができなくなるということだ。税金の使い方がわからなくなっているということだ。

 専門家の立場として今回、このような事態がおこったことに対して強い憤りを覚えている。なぜ事実が握り潰されているのか。それは選挙の前に都合の悪い情報は隠したいからに他ならない。真実は沈まない。今こそ主権者としての行動を訴えたい。


◇ 学者の会のアピール

        一人ひとりの尊厳が尊重される平和で民主的な社会のために
                今こそ主権者としての行動を

 2015年9月19日に安全保障関連法が強行採決された翌日、「安全保障関連法に反対する学者の会」の学者170名が学士会館に集い、大記者会見を開き、抗議声明を発表しました。

 学者の会は、この日よりこれまで15回の集会やシンポジウムなどを開催し、のべ1万2000人を超える方々と学び、考え、行動をともにしてきました。そして、学者の会の取り組みは、全国各地の大学有志の会が立ち上がるなかで、いっそう広がり、力強く展開してきました。

 平和主義、立憲主義、民主主義という基本的価値を守りはぐくむ志を同じくする私たちは、それぞれ学者としての専門的立場から、そして大学という学問共同体に身を置く大学人として、学生や市民、労働者の皆さんと連帯し、路上や生活の場で声を上げるとともに、学問の軍事利用に反対し、大学や学校、職場や暮らしを壊し、個人の尊厳を奪うような政策の抜本的転換を訴えてきました。

 しかし、この間、安倍政権は暴走をつづけ、国家の根本さえ大きく歪めてしまいました。ポスト真実の政治が、日本の将来を蝕んでいます。

 この夏の選挙で、日本の「戦後」は、最大の正念場を迎えます。結果次第では、まっとうな議論のないまま、明文改憲への動きがいよいよ加速することになってしまうでしょう。「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないようにする」という70余年前の焦土の決意と希望は、私たちの代で意味を失ってしまうのでしょうか。

 闇の深まる時代に、学問が照らす光は、私たちの歩む道を示すはずです。自らの蒙を啓く研鑽の場としての大学は、未来を切り拓くための「自由の砦」たりうるはずです。

 2015年、大学から路上にとびだした若者たちが、政治は、統治者の支配の道具ではなく、私たち主権者一人ひとりが尊厳あるくらしを勝ち取るための日常であることを教えてくれました。

 学者の会は、いま再び、市民の皆さんに呼びかけます。

 大きな連帯をつくることによって、私たちは政治を変えることができます。

 今こそ、主権者としての行動を起こし、私たちの声で議会を動かそうではありませんか。

                     2019年6月23日
                      安全保障関連法に反対する学者の会
                      大学有志の会ブロック連絡会

https://www.chosyu-journal.jp/shakai/12036
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/502.html

[政治・選挙・NHK262] 月衣塑子の質問(3)復活した質問妨害 (朝日新聞社 論座)
望月衣塑子の質問(3)復活した質問妨害
官邸の執拗な質問妨害に、新聞社や官邸記者たちはどう対応しているのか

臺宏士 フリーランス・ライター
論座 2019年06月28日


■復活した「質問妨害」

 菅義偉官房長官の記者会見で、望月衣塑子・東京新聞記者に対する質問妨害が5月下旬に再び起きた。

 2018年秋から始まっていた質問途中に司会の官邸職員が質問を遮る行為は、今年3月中旬、いったんはやんだかに見えたが、2カ月余ぶりの復活だった。東京新聞が官邸に改善を求める申し入れを行った後の6月に入り、妨害は再びなくなった。

 いったい、何が起きたのだろうか。

 5月21日午前の記者会見。望月記者は、朝日新聞、テレビ朝日の各記者に続く最後となる3人目の質問者だった。

 「東京、望月です。拉致問題についてお聞きします。2002年の小泉訪朝時は直前まで完全秘匿して水面下での交渉をしたうえで、電撃訪朝での首脳会談をし……」

 質問の前提となる事実関係を共有するための説明を始めてから25秒ほど経過したときだった。司会進行役の上村秀紀・官邸報道室長が突然、「質問に移って下さい」と遮るように声を上げた。

 上村室長は、2018年12月28日に記者会見を主催する内閣記者会に対して、望月記者が事実誤認の質問をしているとして「問題意識の共有」を求める文書を出した人物だ。

 望月記者が直後に口にした質問は、上村室長の妨害に押されて質問に切り替えたかのような形になった。

 「なぜ、水面下交渉という手段を今回は取らないのかお聞かせ下さい」

 それから3日後の5月24日午後、28日午前の質問でもそれぞれ29秒、28秒がたつと上村室長は「質問に移って下さい」と遮ったのだった。

 そして、5月28日午後の記者会見。望月記者は前週から続く質問妨害について菅長官にぶつけた。「菅長官が『世の中の人もそろそろ質問妨害していたことを忘れているだろうからやってみろ』と上村室長に言ったかどうかはわかりません。しかし、3回も続いたのでこれは許せないと思った」と明かしたのだ。


   望月衣塑子記者 東京、望月です。会見での上村室長による
   質問妨害についてお聞きします。先週からですね、上村室長
   による質問妨害が再び、再開(ママ)されました。先週と今
   日の午前で調べますと、25秒から30秒ほどの間に「質問
   に移って下さい」が3回ありました。あの30秒を越えて
   いる長い質問はほかの記者にもあるんですが、そちらには
   妨害はありません。これ、狙い撃ちのようにも見えるんで
   すが、見解をお聞かせ下さい。

   菅義偉官房長官 全くそんなことありません。
   (上村秀紀・官邸報道室長「このあと日程ありますので次
   最後でお願いします」)

   望月記者 はい。(私の)受け止めとしては妨害に思えま
   す。この妨害行為についてはですね、新聞労連やMIC、
   知識者や弁護士団体などもこれまで抗議の意を示しまし
   て、官邸前のデモでは現役の記者から面前DVだとの批
   判も出ておりました。室長の上司は菅長官ですけれども
   質問者の精神的圧力になるようなこの行為を再開された
   理由というのは何なんでしょうか。

   菅長官 あのー、この会見は記者会との間で行われてお
   りますから、記者会との間でしっかり対応してますし、
   そういうことはありえません。

 この日(5月28日)、望月記者は自分の短文投稿サイト・ツイッターに「『そんなことはありません』と、まさかのクラブ(内閣記者会・筆者注)への責任転嫁。記者会が妨害再開を容認するわけもなし。不当な妨害はやめるべきだ」と投稿。関連した投稿は4件に上った。

 怒りの大きさが分かる。

https://image.chess443.net/S2010/upload/2019062700009_2.JPG
柏崎智子・東京新聞記者は「官邸のやり方を見ていて記者の分断もありますが、感じるのは面前DV」と訴えていた=東京・永田町の首相官邸前で、2019年3月14日、筆者撮影

■官邸記者たちは面前DVの被害者か、共犯者か

 望月記者が質問の中で触れた「面前DVだ」と官邸前デモ(2019年3月14日)で指摘したのは、同じ東京新聞社会部の同僚である柏崎智子記者だ。

 「今回の官邸のやり方を見ていて直感的に感じるのは、面前DV。望月さんのことをいじめているようであって実はその場に居合わせた多くの記者に同じようなトラウマを抱えさせること。本質は支配だと思うんです。その場の記者を支配する。支配されているのかどうかは、その場ではなかなか感じにくく、『なんとなく空気が重いなー』みたいな感じになっていってだんだんと自由が奪われていくところがあり、面前DVみたいなやり方は、認めてはいけないと思ってます」

 菅長官は5月28日午後の記者会見で「そういうことはありえません」と述べている。

 「そう」とは、上村室長による望月記者を狙い撃ちにした妨害行為を指すと思われるが、直前に「記者会との間でしっかり対応」という言葉を重ねると、上村室長による妨害行為は、内閣記者会との間で了解済みで行われた可能性があると受け止めるのは自然だ。

 面前DVというのであれば、その場に居合わせた他の記者たちは望月記者と同様に官邸の被害者という立ち場になるが、もし予め了解していたとなれば、これは被害者どころか共犯者ということになる。

 望月記者は、翌5月29日午後の会見で再び、質問妨害問題についての見解をただそうとした。ところが、菅長官は質問途中で割り込み、「大変申し訳ないけども、ここはそうしたことを質問するとこじゃなくて、記者会主催でもありますから記者会に申し入れて下さい」とはねつけた。

 望月記者は「確認したいんですが、特定の記者の質問を25秒以上たったら遮るということを記者会が容認したということを言いたいんですか」と続けようとすると、菅長官は「いや、記者会で問題点があったら記者会の方に問題点を指摘下さい。ここは大事な記者会見の場でありますので」。全くかみ合わない質疑に、重ねて質問しようと手を上げる望月記者に、ついには「その発言だったら指しません」と拒絶したのだった。

 この時点では望月記者は「日朝首脳会談についてお伺い致しますね」といったんは引き下がったのであった。

 実は、望月記者は質問するにあたって予め内閣記者会側にも聞いていた。「望月記者への質問妨害を再び始める」という打診が官邸から内閣記者会にあったのか――。これに対しては明確に否定していたという。

<さすがにそれはありません。望月さんにだけ妨害するという要望が官邸から来ても記者会としては容認できません。絶対認められませんから>

 問題があるのは、官邸職員の上村室長の行為であるのは明らかだと思うのだが、どういうわけか菅長官には通用しないのである。

https://image.chess443.net/S2010/upload/2019062700009_1.JPG
「(1月24日の質問では)1分半の質疑で7回も遮られました。菅さんが上村室長の妨害行為によって私の質問を聞き取れていないようでした」。望月衣塑子記者は、上村秀紀官邸報道室長の質問妨害の実態についてそう語っていた=東京都豊島区で、2019年6月15日、筆者撮影

■権力者が記者会見で質問者を指名するメリット

 ところで、菅長官が述べたように官房長官の記者会見は、報道各社の政治部記者で主につくる内閣記者会が主催し、記者から手が上がっている間、官房長官は指名し続けるという慣行で運営されてきた。終了時に幹事社の記者が、他に質問がないかを会見場全体を見回し、各社に確認するという手続きをへたうえで、終えることになっている。

 これは、他の省庁や知事の記者会見と異なり、会見者が気に入らない記者の質問を受け付けないという事態にならないことが大きな特徴だった。

 少し話はずれるが、会見者が質問する記者を指名する方法が、いかに会見者にメリットがあるのかを会見者側の失敗例から考えてみたいと思う。

 それは、いまから2年以上ほど前に遡る。2017年10月の衆院選(10日公示・22投開票)を控え、自民党を大きく揺さぶった、小池百合子東京都知事がこの年の9月、代表に就任した「希望の党」に絡む質問だった。

 2016年7月に自民党を飛び出して都知事選に立候補して当選。都知事に就任して以降、小池知事は、17年2月の千代田区長選、同7月の都議選と連戦連勝の破竹の勢いだった。テレビではワイドショーまで取り上げるほど、希望の党は安倍一強政治に楔を打つ野党として支持を広げていた。

 ところが、この勢いが急速に失速するきっかけとなったのが9月29日の記者会見で口にしてしまったいわゆる「排除発言」だったのは記憶に新しい。

 前原誠司・民進党代表は「希望の党に公認申請すれば排除されない」と所属議員に説明し、同党は希望の党への合流を決めたが、その一方で小池知事は「安保、改憲を考慮して一致しない人は公認しない」などと述べていて、小池知事の真意について注目が集まっていた。

 この点についての見解をただしたのが、フリーランスのジャーナリスト、横田一氏だった。

 都知事の定例記者会見は、週1回金曜日に開かれるが、小池知事は横田氏の質問内容が気に入らなかったらしく、挙手しても指名されることはあまりなかったことを、横田氏は著書「検証・小池都政」(緑風出版、2017年7月)の中で明かしている。同書の面白さは、小池知事の会見で質問の指名を受け続ける「”好意的記者”ランキング」(16年8月〜17年2月24日)の一覧表を実名で掲載していることだ。

 「批判的な記者の質問を受け付けない一方、友好的なメディアを優遇するトランプ大統領と瓜二つなのが、総理大臣待望論が出始めた人気抜群の小池百合子・東京都知事だ」

 こう書き出す記事に添えた一覧のトップに掲げられたのは『日本テレビ』の久野村記者で14回。次いで『THE PAGE』の具志堅記者の12回。そして、『ニコニコ動画』の七尾記者が10回と上位10人の実名と回数を記した。一方、横田氏がこのランキングの期間に質問されたのは2回だった。

 小池知事が同書の記述を意識していたかどうかはわからないが、横田氏は2017年9月29日に実に半年ぶりに指名されたのだった。

 「前原代表が昨日ですね、所属議員向けに、希望の党に公認申請をすれば排除されないという説明をしたんですが、一方で、知事、代表は、安保、改憲を考慮して、一致しない人は公認しないと。言ってることが違うと思うんですが、前原代表を騙したんでしょうか。それとも共謀して、そういうことを言ったんでしょうか。お二人の言ってることが違うんですが」

 小池知事は2017年9月25日に希望の党の代表に就任していた。このため、小池氏の会見は、知事としての会見と、党代表としての会見を分けた2部制になっていて、横田氏の知事会見での質問に対して、党代表会見で答えたのが、次の内容だった。

 「前原代表がどういう発言をしたのか、承知をいたしていませんが、『排除されない』ということはございませんで、排除いたします。取捨(選択)というか、絞らせていただきます。それは、安全保障、そして憲法観といった根幹の部分で一致していることが政党としての、政党を構成する構成員としての必要最低限のことではないかと思っておりますので、それまでの考えであったり、そういったことも踏まえながら判断をしたいと思います」

 この排除発言の反響は凄まじく大きく、発足したばかりの小池新党にとっていわば命取りとなった。東京新聞が衆院選を検証した記事にその後のエピソードを掲載している。

 2017年10月25日朝刊一面に掲載された連載「誤算の行方・上」は、小池知事の「排除発言」があった翌9月30日に大阪市で開かれた記者会見で、小池知事が司会者に「あてないで」と差し出したメモには横田氏の名前があったという。小池氏は食事がのどを通らないほど悔やんだらしい。この記事では「フリー記者」と匿名だったが、明らかに横田一氏のことだ。

 この例を見れば、会見者が自分の都合で質問者を指名したいと考えるのは当然だろう。本来は、それだけで情報操作でもあるのだ。

 話を菅長官の記者会見に戻す。

https://image.chess443.net/S2010/upload/2019062700009_3.JPG
新聞労連が開いた第62回新研中央集会のテーマは「官邸会見の役割から考える〜ジャーナリズム、本音と建前〜」。望月衣塑子記者に対する質問妨害についても取り上げられた。上村秀紀・官邸報道室長が内閣記者会に「問題意識の共有」を求めた申し入れ文書がいまも記者会の掲示板に貼られているという報告があった(右端)=東京都文京区で、2019年6月22日、筆者撮影

■質問制限を巡る攻防

 「その発言だったら指しません」――。

 これは予想外の言葉だったのかもしれない。望月記者は苦笑すると、「いいですよ。はい」と受け入れた上で、「じゃ、ほかのことを聞きます。日朝首脳会談についてお聞きしますね。えーと……」と二問目の質問に移ったのだった。

 菅長官は2月26日の記者会見では望月記者を指名し、「この会見は一体何のための場だと思っているのか」と問われたのに対して「あなたに答える必要はない」と述べていたが、今回はそもそも質問する機会を与えないという信じがたい態度を示したのである。

 だから、菅長官が「その発言だったら指しません」と拒否することは、取材規制につながるルール違反の異例の発言だったのは当然だ。これまで望月記者については憎々しげな記事を書いてきた産経は「『質問妨害』への見解拒否 菅長官、東京新聞記者に」と客観的な記事を出している(5月29日配信)。

 東京新聞は、長谷川栄一内閣広報官に対し、上村室長の妨害行為を「本紙記者を狙い打ちにした質問制限」、菅長官の指しませんという発言を「恣意的に質問者を選別するなら会見が形骸化しかねない」と指摘し、改善するよう5月31日に文書で申し入れた、と報じた(6月1日朝刊)。ただ、3面の最下段の右隅で、ベタ記事という非常に目立たない扱いだった。

 東京新聞は望月記者の質問に絡んでこれまで9件の申し入れを官邸から受けていた。それらに対しての回答や、質問妨害への中止要請も行ってきたが、これまで記事にはしてこなかった。

 2018年12月28日に官邸が東京新聞や内閣記者会に抗議や問題意識の共有を求める申し入れを行っていたことが2月1日に月刊誌『選択』に報じられ、日本新聞労働組合連合(新聞労連)が抗議声明を発表(2月5日)。国会でも取り上げられるなど社会問題化したことを受けて、2月20日朝刊の特集記事「検証と見解/官邸側の本紙記者質問制限と申し入れ」で初めて詳細を読者に報告した。

 東京新聞が今回の申し入れを紙面で取り上げたのは、第三者で構成する同紙の「新聞報道のあり方委員会」で、「報道の最前線で何が起きているかということもニュースであり、読者の関心は高い」(魚住昭氏)=4月6日朝刊=と指摘を受けるなど、官邸と東京新聞とのやりとりが水面下で行われてきたことなどへの批判に応えたものだと思われる。

 望月記者によると、「質問に移って下さい」「質問は簡潔にお願いします」――そう言って、上村室長が質問を遮る妨害行為は、翁長雄志・前沖縄県知事の死去に伴って2018年9月に行われた県知事選を機に沖縄問題に重点を置き始めたころから強まったという。

 「当時の上村秀紀報道室長による妨害はとにかく酷かった。質問がかき消されて聞き取れない」

 5月30日のツイッターにそう書き込んだ妨害は、なかなか止まなかった。東京新聞は2019年1月22日に「短い質問の途中に4回せかす言葉を挟まれた。催促は最小限にしてほしい」、2月13日にも「質問途中で何度も催促の言葉を挟むのは質問への妨害」と2回も文書で改善を求めたが改まらなかった。

 例えば、2月7日午後、国会審議への出席のため菅長官に代わって西村康稔官房副長官が記者会見した。2月5日に新聞労連が「官邸の意に沿わない記者を排除するような今回の申し入れは、明らかに記者の質問の権利を制限し、国民の『知る権利』を狭めるもので、決して容認することはできません。厳重に抗議します」と官邸が内閣記者会に望月記者の質問を「事実誤認」と決めつけて「問題意識の共有」を求める申し入れを批判する声明を出し、質問制限問題がにわかに注目を集めていた直後だった。

 ところが驚くことに、望月記者が妨害行為についての質問をしているさなかに上村室長は割って入っている。「質問は簡潔にお願いします」(16秒)、「質問に移って下さい」(26秒)、「質問して下さい」(35秒)と44秒の質問時間全体のなかで3回も妨害を行っているのだ。

 この質問に対する西村副長官の回答も「今回の件につきましてはですね、上村室長からは、質問権を制約したり、知る権利を制限したり、その意図は全くないというふうに報告を受けております。まあ、いずれにしても建設的なやりとりができればというふうに思っています」というもので、自分が質問されているときに目の前で起こっていることさえ無視するような非建設的なやりとりが首相官邸で行われているというのだから、あきれるほかない。

 新聞労連や民放労連が加盟する日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)が呼びかけた官邸前での抗議デモ(3月14日)の前日にようやく、やんだのだが……。

 望月記者に続き、質問妨害の再開を官房長官記者会見で質問したのは、朝日新聞記者だった。東京新聞が文書を広報官に申し入れた週明けの6月3日午後の記者会見だった。

 「長官会見をめぐりですね、東京新聞が6月1日付の紙面で長谷川広報官に申し入れをしたということを報じてるんですが、事実関係と受け止めがあればお伺いしたいと思います」

 菅長官の発言は、5月29日に望月記者の質問に対しての内容をほぼなぞられえたものだった。付け加わったのも「官房長官会見というのは記者の皆さんからの質問に対して、政府の見解、立ち場をお答えする場であるということをかねてから申し上げております」という、これも従来の見解を繰り返した内容だった。

 上村室長による妨害の再開が、舌鋒鋭い質問を参院選前に続けられることを危惧した官僚の忖度なのかどうかは分からない。そして、望月記者が指摘したような「25秒ルール」の導入を記者会が了解はしていなくても、菅長官に近い番記者の間では承知済みだったのかどうかも不明だ。ただ、この朝日記者の質問を機に妨害はなくなっている。

■「質問妨害はやめない」宣言

 6月3日(月)から7日(金)まで菅官房長官の記者会見は午前と午後を合わせて10回あった。

 このうち、望月記者が質問したのは、3日午前(安倍晋三首相が官邸で省庁幹部と面談した内容を首相官邸が記録し、文書を作成していなかったことに関連した質問)▽4日午前(元農林水産事務次官の熊沢英昭容疑者が長男を刺殺した事件についての質問)▽5日午後(国連特別報告者のデビッド・ケイ氏が、日本では現在もメディアの独立性に懸念が残るとする新たな報告書をまとめたことについての質問)−−の3回だ。

 望月記者はいずれも2問、質問しているので質問の回数は合計で6回ということになる。

 質問時間をチェックしてみたところ、3日の1問目が25秒、2問目が24秒。4日は2問とも29秒。5日は1問目が28秒で、2問目が18秒だった。あくまで筆者の計測によるものだが、質問自体は数秒ほどなので、もし仮に25秒以内に質問に移らないときは上村室長が質問を妨害するというルールを何らかの理由で決めたのだとしたら、上村室長は少なくとも6回の質問のうち3回は「質問に移ってください」と妨害していないと、5月下旬に連発した行為とのつじつまが合わない。東京新聞が指摘したように結局は恣意的な介入なのだ。

 2019年2月15日に政府は山本太郎参院議員の質問主意書に対して答弁書を閣議決定している。そこには「今後とも、定例会見において長官の日程管理の観点からやむを得ない場合には、司会者が、これまでと同様に協力呼び掛け等を通じて、定例会見の円滑な進行に協力を求めることはあると考えている」とある。言葉は柔らかいが、要は質問妨害はやめませんよ、という宣言であるわけだ。

 菅長官は「記者会で問題点があったら記者会の方に問題点を指摘下さい」と言っている。東京新聞はこれに対して何か行動を起こしたのだろうか。また、官邸から同紙に対しての回答はあったのだろうか。

 東京新聞編集局に対して次の3点について質問してみた。

  1.申し入れに対して、長谷川広報官、官邸側からは何らかの対応
   ――文書での回答等はありましたか。もしあったとすれば、謝罪
   の有無や、回答の内容についてお教え下さい。
  2.上村室長がこうした質問制限を再開した理由を東京新聞では何
   だとお考えでしょうか。
  3.菅長官は望月記者の質問に対して、「(官房長官記者会見は)記
   者会主催でもありますから記者会に申し入れて下さい」とも発言
   しております。御社では内閣記者会に対して、申し入れはしたの
   でしょうか。行っていればその内容、行っていなければその理由
   をお教え下さい。

 これに対して、東京新聞編集局から次のような文書回答が6月28日付であった。

  1.長谷川広報官から文書で回答がありました。官房長官の業務日程
   に支障が生じないよう「やむを得ず」「呼び掛け(協力依頼)を行
   うことがある」等、これまでと同様に理解を求める内容でした。
  2.理由は分かりません。なお、5月末の申し入れ以降、本日まで質
   問制限はありません。
  3.官邸側に申し入れた後、質問制限がされなくなったため、内閣記
   者会への申し入れはしていません。

 東京新聞の回答によれば、長谷川広報官は、同紙に謝罪するどころか、2月15日の閣議決定に続き、今後も質問妨害があり得ることを再表明したようなものである。

 しかも、見てきたように5月下旬に上村室長が3回にわたって妨害した理由を、妨害をやめたことも含めて「やむを得ず」と考えるにはもはや無理があり、官邸には理屈など通用しそうにない――と、批判は無駄だと一瞬でもあきらめようと思わせるところに、長谷川氏の広報官としての腕があるのかもしれない。

 一方、「記者会で問題点があったら記者会の方に問題点を指摘下さい」と言った菅長官と内閣記者会との力関係は微妙だ。

 月刊誌『選択』2019年6月号などによると、菅長官は『週刊文春』2019年4月11日号に掲載された「安倍政権vs.平成皇室」というタイトルの記事に番記者とした懇談内容の詳細が掲載されたことに激怒したらしい。令和の元号発表をめぐる裏話が録音を元にしたかのように記事にされていたからだ。

 菅長官からいわば、連帯責任のように「今後、夜回り取材は受けない」と通告を受けた番記者たちが慌てた結果、思いついたのが、紙袋の中にICレコーダーや携帯電話を入れて録音しないことを態度で示すというものだったらしい。『選択』が付けた見出しは「菅長官に屈服する『番記者』 取材の際の『ある儀式』が定着」。

 録音機の回収は、いまはされなくなったという情報もあるが、いずれにしろ望月記者に対する質問妨害をめぐって内閣記者会が一致して菅長官に物を申すという流れにはなりそうになく、菅長官の開き直ったような発言は、それを見透かしているのは間違いない。

 新聞労連新聞研究部が2019年5月、内閣記者会の幹事業務を担当する19社の記者を対象にアンケートを行った。33人が回答した(このうち望月記者が官房長官会見に参加した17年6月以降に所属していた経験があるのは19人、現在も所属しているのは14人)。そこに寄せられた声に次のようなものがあった。

 「長官の夜回りでは最近、携帯電話やICレコーダーを事前に回収袋に入れて、忠誠を誓っている。さまざまなメディア側からの萎縮・自粛が進むなかで、官邸会見の問題も起きていると感じている。非常に息苦しい」 (「望月衣塑子の質問(4)」につづく)

https://webronza.asahi.com/national/articles/2019062700009.html
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/510.html

[政治・選挙・NHK262] 同日選を見送った安倍首相。長期政権の限界と今後・・・「政権に刃向かえば狙い撃ち」「外部に対するあからさまな攻撃」「過剰なまでに政権の防衛を図って」「国民には無関心でいてもらってちょうどいい」・・・ (朝日新聞社 論座)
同日選を見送った安倍首相。長期政権の限界と今後
政権交代の時代における長期政権のあり方を示した安倍政権だが……

牧原出 東京大学先端科学技術研究センター教授(政治学・行政学)
論座 2019年06月27日 より無料公開部分を転載。

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首相官邸に入る安倍晋三首相=2019年6月25日

■支持の源泉は「精いっぱい頑張っている」

 6月19日に行われた1年ぶりの党首討論を見た。野党党首がそれぞれ見せ場を作ろうと自党のアピールを込めた質問を投げつける。これに対する安倍首相はと言えば……やはり安倍首相だった。

 精いっぱいの愛想笑いはこわばり、薄ら笑いのように見えてしまう。側近が作成したであろうペーパーをもとに頭に叩き込んだ政府の政策、たとえばマクロ経済スライド、について説明を語りはするものの、質問への答えにはなっていないうえ、雄弁とは程遠い。そのどこか鈍感だが、精いっぱい「頑張っている」姿は、ごくごく普通の人である。

 だが、ここにこそ、安倍首相が支持される一つの面がある。すなわち、熱狂的なポピュリズムではなく、「ちゃんとやっているのであれば支持する」という、ある意味冷静な一般国民の政治への態度こそが、支持の源泉なのである。

■ダブル選なしに見え隠れする守りの姿勢

 通常国会が閉会し、政治の舞台は7月21日投開票の参院選に移る。政権に返り咲いて以来、すべての国政選挙に勝利を収めてきた安倍首相にとって今回の選挙は、あれほど騒がれたにもかかわらず、衆参ダブル選挙ではなく参院選単独になった。そこに見え隠れするのは、与党の守りの姿勢である。

 確かに、内閣支持率も自民党支持率も高い。だが、それは新年度予算案の成立後、衆議院予算委員会を開かず、安倍首相を国会にできるだけ出さなかったこと、いわば「安倍隠し」によって支持率をキープするという、守りの姿勢の所産である。実際、その間、政府は内政の目玉となるような新しい政策を何も発表していない。安倍首相の任期が残り2年となるなか、いよいよ政権をたたむ方向へと徐々に舵(かじ)を切りつつあると考えざるを得ない。

 そこで、通常国会の閉会を機に、安倍内閣を来し方をあらためて振り返りつつ、この内閣の行く末、さらに今後の政治が向かう先について考えてみたい。

■政権交代時代の長期政権の形を示す

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通常国会閉会日、参院本会議が散会し、議場を出る議員ら=2019年6月26日

 第2次以降の安倍内閣は、憲政史上、最長政権となることはほぼ確実である。だが、最長であること自体には、今やさして意味はない。諸外国をみれば、政権交代を経てこれくらいの年数で政権を率いているリーダーはいくらでもいるからである。

 この政権は、憲政史上2度目の政権交代によって成立した。また、憲政史上初めて、かつて与党であった政党が政権交代によっていったん下野した後、次の政権交代によって復帰した政権であった。「そうした政権交代を経ても、長期安定政権が可能である」ことを示したこと。それが第2次以降の安倍内閣の最大の成果なのである。

 民主党による2009年の政権交代まで続いた「自民党政権」(かたちは連立政権でも、自民党が圧倒的に大きな力をもった)のもとでは、自民党という枠組みの中でよりよい首相候補があれば、国民はそちらを選択し、既存の政権に「ノー」を突きつけた。竹下登内閣や森喜朗内閣の末期の一桁の内閣支持率はその現れである。

 だが今は、政権がどうにも行き詰まり、与党支持層までもが雪崩をうって「野党に政権を担ってほしい」とでも考えない限り、内閣支持率が20パーセントを切ることはない。安倍内閣は、そうした底堅い政権基盤の上に立ち、強固なチームワークを誇る「官邸チーム」が、危機管理・経済・外交を中心に政権を運営した。その結果、安定した政治環境が作り上げられたのである。

■一度目の「失敗」を「強さ」に転化

 振り返れば、2000年代半ば以降、1年で交代する短期政権が続くきっかけとなったのは第1次安倍内閣であった。長期政権であった小泉純一郎内閣を継いだ安倍内閣は、不祥事の続発と閣僚の大量辞任が続くなか、「消えた年金」問題に安倍首相が対応しきれず、参院選で大敗して崩壊した。

そんな短期政権時代に終止符を打ったのも安倍首相である。いかにも矛盾をはらんだ平成政治の「一幕」と言えるが、第1次安倍内閣がまるでバラバラだったのに対して、現在の安倍内閣はバラバラとは真逆な「強固な政権チーム」に支えられている。

政治家として安倍氏は、かつてはぶら下がり会見で、今は国会審議で、的を外したような受け答えをし、こみいった政策をたどたどしく説明するといった具合に、鮮やかさは微塵もない。だが、同じ人物でありながら、強固なチームに支えられれば、これほどまでに政権は浮揚する。

 一度目の政権にいたメンバーを多く含むチームであればこそ、二度目は失敗しなくなる。これは、政権交代の時代に特有な政権の立ち上げ方であろう。そこに安倍首相がつくり出した混乱を、安倍首相だからこそピリオドを打てた理由がある。まさしく政権交代の時代ならではの政権の立ち上げ方である。

 であるならば、野党もまた、政権を担った経験が少しでも継承されていれば、安倍首相のように「二度目」のチームを組んで政権に復帰することも不可能ではない。つまり、現政権が示しているのは、政権交代の時代とは、過去の政権の負の遺産を、もう一度政権を組織して払拭することができるし、その必要があるということなのである。

■同一性の高いくすんだ印象の官邸チーム

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党首討論で、立憲民主党の枝野幸男代表(右)の質問に答弁する安倍晋三首相(左)=2016年6月27日

 とはいえ、二度目とはいえ、現政権には大きな限界がある。長期政権にもかかわらず、何が政権のレガシー(遺産)かと問われると、さして思い浮かぶものがない。直近の長期政権であった小泉純一郎政権は、構造改革、道路公団民営化、イラク戦争、郵政解散など話題で持ちきりであった。この点が、同じ長期政権でも、小泉政権と安倍政権との違いである。これは何に起因するのだろうか?

 「ワンフレーズ・ポリティクス」と言われ、短いコメント以上の説明しかできなかった小泉首相ではあったが、何がポイントかを把握する「勘のよさ」は超一流であった。ワンフレーズで物事を言い当てる力は、ぶらさがりにおける瞬時の応対から、手に取るようにわかった。

 くわえて小泉首相のもとに結集したチームは、能力あふれる多彩な人々が少なくなかった。たとえば自民党の「守旧派」と闘う審議会での個性あふれる有識者たちがそうであり、2005年の郵政解散・総選挙で登用された「刺客」政治家には、高度な専門能力をもった女性たちが目立った。

 ところが、安倍政権の官邸チームの常連たちには多彩さが欠ける。なにより女性がいない。また、国会で平気でヤジを飛ばす安倍首相にならってか、秘書官がヤジを飛ばして委員長から注意されるなど、鮮やかさも乏しい。首相とともに、くすんだ印象をかもしだす、同質性の高い集団である。それゆえ、官邸チームはすべての課題には対応できず、うまく対応できる領域と、鈍い対応しかできない領域とに二分されるであろうことはすぐに想像できる。

■経済と外交では一定の成果

 このうち相対的にうまく対応できたのは、やはり経済と外交であろう。具体的に言えば、アベノミクスの一環としての金融緩和と、集団的自衛権の解釈変更による安保関連法の成立は、この政権が実現した大きな転換である。政権が退陣した後も、歴史的転換として日本政治に刻印されるであろう。

 外交ではこのほかにも、TPP(環太平洋経済連携協定)に遅れて参加しながら、その成立を主導した▼民主党政権時代にこじれた中国との関係を立て直した▼異形の大統領ドナルド・トランプが誕生して以来、アメリカから強烈な要求をつきつけられないように、うまくかわしてきた▼ロシアのプーチン大統領とも、平和条約締結には至らないまでも、何とか関係を維持する――など一定の成果を挙げている。また、安全保障において、中国を念頭に「自由で開かれたインド太平洋戦略」を打ち出し、アメリカを巻き込んだことも大きく評価できる。

 長期政権の結果、安倍首相が国際社会で経験豊富なリーダーと目されているのは確かである。ただ、残念なのは、知性あふれる政治家とは見られてはいないことである。かつて長期政権となった中曾根康弘首相は、シャンソンを好んで歌い、フランスのミッテラン大統領に哲学を語って「世界の中曽根」を目指していた。これに対して、安倍首相はいつまでも、「世界の安倍」にはなれそうにない。

 旧制高校の雰囲気を残しつつ、東京帝大から内務省に入った中曾根首相は、自民党長期政権の時代、「三角大福中」といわれた派閥の領袖たちの最終走者として政権を担った。時間をかけて首相としての準備を重ねたエリートであった。

 これに対して安倍首相は、野党・自民党を率いて民主党政権を打倒し、政権を奪取した。岸信介元首相を祖父にもつ政治家一族で育ちはよいが、中曾根首相のようなエリート教育を受けてはこなかった。だが、2009年に自民党が下野したあと、必要だったのは、おそらくは安倍首相なのである。

 つまり、政権交代の時代に野党から立ち上がるリーダーに求められる能力は、上から目線のエリートが知性溢れる弁舌を振りまくよりは、まずは平均的な国民の目線に立ち、そこから支持をかき集め、精いっぱい能力を磨こうすることである。安倍首相は自らそれを示した。もちろん望みうる最良のリーダーとは言えないが、初めての政権交代後の長期政権を担った点では、これ以上を求めるのは酷かもしれないのである。


■記憶に残らない諮問機関

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衆院本会議で立憲民主党の枝野幸男代表(手前)による内閣不信任決議案の趣旨弁明を聞く安倍晋三首相(後方右)と麻生太郎財務相兼金融相(同左)=2019年6月25日

 そうした安倍内閣は、政策形成、とくに内政において粗らが目立った。小泉内閣が多彩な有識者をそろえた諮問機関を立ち上げて、数多くの目玉の政策を練り上げ実行していったのに対して、安倍内閣は多数の諮問機関をつくったにもかかわらず、どれも記憶に残っていない。

 たとえば東京オリンピック誘致では、元スポーツ選手から元女性キャスターまで多数の有名人を起用し、消費増税を延期する際には経済情勢を検討すべくアメリカからノーベル賞を受賞した経済学者のポール・クルーグマンを呼んだ。また、人生100年時代構想会議ではイギリスのロンドン・ビジネススクール教授のリンダ・グラットンを招き、天皇退位という歴史的事件を粛々と行うための検討会議では、右から左まで有識者が結集した。

 にもかかわらず、どれも今となっては印象が薄い。なぜか。考えつくのは、有識者と官邸の関係性における小泉内閣と安倍内閣の違いである。

 小泉内閣では、多くの有識者が小泉首相との会見を感激あふれる筆致で記している。それぞれ小泉首相に激励されたこと、あるいは会話で触発されたことを熱く語っていた。だが、安倍首相にせよ菅義偉官房長官にせよ、そうした激励をしたのか、触発するよう言葉を発したのかどうか疑問であり、仮にしていたつもりであったとしても、おそらくは受けた側がそうとは感じ取れなかったとすら想像したくなる。

 むしろ安倍内閣では、政権に刃向かえば狙い撃ちのように報復されるという面が強く浮かび上がる。「チーム安倍」などと言われる政権内の結束は、裏を返せば、外部に対するあからさまな攻撃とセットになっている。

■高齢化と疲弊に悩む政権チーム

 このあたりも、政権を民主党から取り戻した後、過剰なまでに政権の防衛を図ってきた現政権の限界であろう。とすれば、国民を鼓舞することはおよそ無理。国民には無関心でいてもらってちょうどいい、といったあたりにとどまらざるをえない。

 その結果、精いっぱいの運営のための努力は重ねてはいるものの、多くの国民はそれに気づかないどころか冷淡に見やり、それでも他に選択肢はないから選挙の際には自民党に投票する。あの熱狂的な小泉内閣への支持とは正反対の、どこまでも冷めた空気が漂い続けるのである。

 そんな安倍政権も残すところ、あと2年である。 ・・・ログインして読む
(残り:約797文字/本文:約5716文字)

https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019062500003.html
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/511.html

[政治・選挙・NHK262] 最悪、最低の顔ぶれのG20大阪サミット −直前に日米安保破棄発言のトランプ大統領から殺人関与濃厚のサウジ皇太子まで −(ちきゅう座)
2019年 6月 29日評論・紹介・意見 G20アベ坂井定雄
<坂井定雄(さかいさだお):龍谷大学名誉教授>

 大阪で6月27,28日に開催された主要20ヵ国・地域首脳会議の開会会合のテレビ中継を見ながら、「G20最悪、最低の顔ぶれだ」と思った。G20は2008年にワシントンで開催されてから、毎年開催され、日本では初めて。まず、トランプ米大統領。2年半前の就任以来、第2次大戦後、米国が先導して営々と築いてきた、平和と経済繁栄をめざす国際的秩序、条約・協定から次々と脱退する徹底した無責任と利己主義。欧米など6か国がイランと締結し、実行された核合意から米国だけ一方的に脱退。現在は原子力空母艦隊をはじめ軍事力をイラン周辺海域に集中して、いつでも攻撃する態勢だ。

 歴代米政権が最も信頼してきた英国のメイ首相は退任直前、フランスのマクロン大統領には、反対勢力の激しいデモが続く。そして、トランプが就任以来、真っ先に訪問し、兵器の巨額売却の約束を獲得、イランを敵視する中東政策の頼りとするサウジアラビアから参加したのは、米国を本拠地にしていた自国民の国際的ジャーナリストを訪問先のトルコ大使館内で殺害した事件の関与が濃厚視されるムハンマド皇太子。

 そして安倍首相。主要国の首相の中で、最もトランプにゴマをすり、トランプの信頼が厚いと内外に誇示していた。だがその実、安倍首相が知っていたかどうか不明だが、じつは、米国内での集会や目立たないメディアへの発言で、日米安保条約の破棄の可能性を主張。さらには米国の諜報機関がやった疑いもある日本タンカー攻撃については、「警護は自国でやれ」とまで言っているのだ。 以下に朝日新聞の引用を紹介しよう。

 日米安保をめぐるトランプ大統領の発言―
 「日本が攻撃されたら我々は軍事力を行使しなければならないが、我々が攻撃されても、日本人は何もせず、家でソニーのテレビを見ていられる」(2016年8月5日、アイオワ州の選挙集会)
 「日本のことに関して言えば、私はすべての同盟国を助けたい。しかし我々は巨額の金を失っている。世界の警察官にはなれない」(同年9月26日、大統領選の最初のテレビ討論会)
 「日本は原油の62%を(ホルムズ)海峡経由で輸入している。なぜ我々が他国のために無報酬で航路を守っているのか。自国の船舶を(自国で)守るべきだ。(2019年6月24日、トランプ氏のツイッター)
 「(トランプ大統領は)日米安全保障条約を破棄することに言及した」(同日米ブルームバーグ通信)

初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion8770:190629〕

http://chikyuza.net/archives/94884
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/512.html

[政治・選挙・NHK262] 山本太郎氏に異例の寄付金 なけなしのお金、託す理由は(朝日新聞)
朝日新聞デジタル 2019年6月29日12時00分

https://www.asahicom.jp/articles/images/AS20190621001593_commL.jpg
「山本太郎氏の演説に勇気づけられた」と話す名古屋市在住の50代男性


 参議院議員の山本太郎氏が立ち上げた政治団体「れいわ新選組」が4月の設立以来、2カ月余りで2億円超の寄付を集めたとしています。山本氏はどちらかというと好き嫌いが大きく分かれる政治家であり、「れいわ」の政策の実現性を疑問視する見方もありますが、「短期間でこれほどの個人献金が集まるのは異例」(政治資金に詳しい日本大の岩井奉信教授)といいます。彼らは個人としてどんな思いで「政治」にお金を託したのでしょうか。実際に寄付した人たちにSNSで連絡を取り、会ってみました。(牧内昇平)

■通帳残高は数万円

 きっかけは、インターネットでみた街頭演説だった。

《あなたの生活が苦しいのは、あなたのせいにされていませんか。あなたが役に立たないからとか、あなたが勉強してこなかったからだとか。冗談じゃない!》

 山本氏の言葉を聞くうち、名古屋市に住む50代男性は、涙があふれてきた。

 4月末のことだった。電子部品工場で3時間ほどの残業を頼まれ、自宅に帰り着いたのは夜9時過ぎだった。数カ月前に念願の正社員になったのはいいが、このところ残業続きだ。家賃3万8千円の1Kアパートには、「おかえり」と声をかけてくれる家族はいない。朝8時15分の始業からほとんど休憩なしの仕事。疲れすぎて食事を作る気がしない。もやしときゅうりをつまみに缶酎ハイを1本あけた。

 「明日も6時半に起きて出勤しないとな……」「一体なんのために生きているのだろうか……」

 街頭演説の動画に出会ったのは、そんなときだった。

 正直言って、これまでは山本氏のことが大嫌いだった。「脱原発」をくり返すだけのタレント政治家。単なる目立ちたがり。そんな風に思っていた。

 でも……。

 通帳の残高は5万円ほどしかなかったが、その中から1万円を寄付した。

■時給1050円

 20年近く、非正規の仕事を転々としてきた。

 派遣会社から最初に紹介されたのは、自動車の組み立て工場。ラインを流れてくる乗用車の座席にシートを固定する。60秒に1台こなすのがノルマ。左手の握力が弱い男性にはつらかった。後ろにいた派遣先の社員が「こいつダメだ」と言った。一日で仕事がなくなり、寮で待機を命じられた。その後も愛知県内で製造業派遣の仕事を渡り歩いた。要求通りに働けないとすぐ契約を切られ、長く仕事がなければ寮からも追い出された。

 いまの部品工場で働き始めたのは、昨春のことだった。時給は1050円。一生懸命働いたら「正社員にならないか」と声をかけてもらえた。だが、正社員になったら、以前よりも仕事がきつい。毎日2、3時間の残業。不慣れな事務仕事も加わり、神経をすり減らす。「不安定な非正規か、過労でブラックな正社員か」。こんな二者択一があることは聞いていたが、その通りだった。

 「20年間、本当につらかったけど、政治は一度も助けてくれませんでした。ハケンのときはモノ扱いされ、最低賃金すれすれの給料です。でも、すべて『自己責任』で済まされてきました」

《自信を奪われてるじゃないですか、みんな》《自己責任? 違う。国がやるべき投資をやってこなかったから》

 山本氏は演説でそう語っていた。男性は6月、新たに8千円を寄付した。

■脱原発から格差解消へ

 芸能人だった山本氏は東日本大震災をきっかけに政治に関心をもち、脱原発をかかげて2013年の参院選で初当選した。原発への問題意識が出発点だったが、現在の軸足は貧困や格差の解消に移っている。

 注目を集めているのは街頭演説である。名古屋、大阪、神戸、東京……。全国各地の繁華街で長時間にわたる演説を行ってきた。インターネットで配信された動画は数万回再生されているものも多い。

《1年間で2万人くらいひと死んでるんですよ、自殺で。命を落とさなきゃいけないくらい追い込まれた人たちがいるんですよ。働き方にもっと余裕あったとしたら、こんなことになる? 自分が存在していいんだっていう世界になってたらこんなことになる?》

 山本氏の言葉はときに過激だが、生活苦を抱える人びとから一定の支持を得ている。

 東海地方の30代女性は、小学生の娘と2人暮らしのシングルマザー。飲食業で正社員として働く。月収は手取りで15万円に満たない。忙しいときは6日連続、7日連続の勤務が当たり前。ときどき娘は「さみしい」と泣くが、暮らすためには働くしかない。

 「働いても、働いても、苦しい。それだけです」

■養育費も拒まれて

 結婚した男性はまったく育児をせず、仕事から帰るとパソコンでゲームをした。離婚したが、養育費の支払いを拒まれた。子どもが小さいころは、育児で残業ができず、パートの仕事しか選択肢はなかった。カフェや社員食堂、学校の給食室……。調理の仕事を転々としたが、どこも月収は13万円くらい。やむを得ずクレジットカードで借金したこともある。子どもが寝静まってから、ひとり泣いた日を数え上げたらキリがない。

 「死にたいと思ったことは何度もあります。そのたびに、子どものためにと思いとどまりました。とりあえず今日一日、息をしよう。お先真っ暗だから、先のことは考えないようにしよう。そう自分に言い聞かせて、なんとか生きてきました」

 女性が「れいわ」に1千円を寄付したのは、ゴールデンウィークのころだ。切り詰めてばかりでうつ状態になっていた。自分にご褒美を一つだけ許そうと思い、数カ月前に携帯電話をスマホに変えた。インターネットを見る機会が増え、山本氏の演説を知った。

《生きててくれよ! 死にたくなるような世の中、やめたいんですよ》

 その言葉にふれ、寄付を思い立った。これまで政治には関心がなかった。投票にすら行かなかったこともあるが、今は生活の苦しさをなんとか「政治」で変えたいと思っている。

■月収16万円

 東京都在住の40代女性も、2人の娘を自力で育ててきた。21歳で結婚。35歳のときに離婚してからは、当時小学生だった娘2人を養うために保険業界で必死に働いた。これまでの人生で、選挙には1回しか行ったことがなかった。

 「あの頃どう生きてきたか。今となっては全然思い出せない。それくらい余裕がなくて、貧乏でした。世の中がどうのとか、政治がどうのとか、考える余裕は全くありませんでした」

 現在は飲料会社で正社員として働いているが、収入は手取りで16万円。昇給の見通しはない。子どもたちは無事に成人を迎えたが、現時点で貯金はゼロ。年をとってからの生活が不安でならない。

《生活が苦しいのをあなたのせいにされるなんて、ムチャクチャな話だと思いません?》

 動画上の山本氏から「選挙に行こう」と促され、「たった一票でなにが変わるの?」と思っていた自分を後ろめたく感じた。5月、6月と、2千円ずつ「れいわ」に寄付した。週末だけ飲む「第三のビール」の本数を減らすことになるだろう。

■日々の生活に追われ

 筆者は5月以降、ツイッターで「『れいわ』に寄付した」という人に連絡をとった。返答をくれたのは30人ほどだが、生活苦をかかえる人、格差解消や貧困対策を切実に求めている人が多かった。日々の生活に精いっぱいで、これまでは投票に行かなかった人もいた。

 「毎月1千円ずつ、合計3千円寄付しました。10年以上前に個人で会社をたちあげましたが、倒産するかもしれません。本業とは別に、夜は食品仕分けのアルバイトをしています。生活に直結する消費増税が一番の問題です」(九州地方、50代男性)

 「月5千円をメドに寄付しています。清掃工場で働いていますが、徹夜勤務もあるのに月収は手取りで17万円ほど。給料が少ないのに困っています。これまで選挙にはあまり行きませんでしたが、自分も何かしなきゃと思っています」(中国地方、40代男性)

 「合計3万円寄付しました。認知症グループホームと訪問介護ヘルパーの掛け持ちです。休みは週に1日もありません。それでも月収は手取りで20万円くらい。ひとり暮らしの若い人たちも同じ条件で働いていて、さらに苦しそうです」(大阪府、60代女性)

 山本氏は「れいわ」を立ち上げた4月以降、選挙を戦うための寄付を市民からつのっている。2カ月余りで集まった寄付金は2億円を超えたとしており、6月上旬の時点では1千円や5千円など少額の寄付が6〜7割を占めるという。政治資金に詳しい日本大の岩井奉信教授は「政治に対して寄付する文化が日本に根付いていない中で、短期間でこれほどの金額が集まるのは異例だ」と指摘する。神戸学院大の上脇博之教授は「一昨年に結成した立憲民主党もそれなりに個人からの寄付を集めたが、今回の山本太郎氏への寄付も注目すべきお金の集まり方だ」と話す。

■半信半疑の声も

 「れいわ」がホームページでかかげる政策は「消費税廃止」「最低賃金1500円」「奨学金徳政令(返済を免除)」など、低所得者の耳に心地よい政策が並ぶ。財源については、デフレ期には積極的に国債を発行して、工面したお金を減税や社会保障の財源にするという「反緊縮」の考え方を鮮明に打ち出しており、国の借金が野放図に増える心配もつきまとう。

 低所得者がすべて山本氏を支持しているわけでもない。東北地方に住む月収10万円台の40代女性は「コロコロと党を変えて重みが感じられず、信用するのは難しい」という。

 ある政治学者は「国会で力をもつには、最終的には野党で結集するしかない。仲間づくりの努力をしなければ、山本氏はいつまでたっても影響力のないインディーズ(独立系)候補にすぎない」と指摘する。

 山本氏の率いる「れいわ」が参院選後にどれほどの政治勢力になるかは未知数である。

■待ったなしの貧困・格差問題

 それでも、財布の底をはたいて山本氏を後押ししようという人びとがいることは事実だ。生活苦に寄り添おうとする山本氏の立ち居振る舞いに、彼らは共感を覚えているのではないか。「生きててくれよ」という彼の叫びが共感を得るのは、裏を返せば、「自分は生きていていいのか」と思い巡らしながら暮らしている人がたくさんいるということだろう。

 厚生労働省の調査によると、日本の貧困率は15.7%(2015年)。国民の7人に1人が貧困状態で暮らしている。ひとり親世帯に限れば、この数字は50%を超える。全世帯の15%、母子世帯に限れば38%が「貯蓄ゼロ」の状態だ。

 選挙戦でも各党はこの現状から目を背けることはできない。

    ◇

 今夏の参院選では「貧困・格差」が論点として浮上している。主要政党は格差是正でどんな政策を掲げているのか。

【自民党】
・幼児教育・保育の無償化
・雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保

【公明党】
・最低賃金を時給1千円超に引き上げ
・非正規労働者の賃金を欧州並みに引き上げ

【立憲民主党】
・非正規雇用をできる限り正規雇用化
・最低賃金を時給1300円に引き上げ

【国民民主党】
・児童手当の支給対象を18歳まで延長
・低所得者向けの家賃補助制度を創設

【日本共産党】
・最低賃金を時給1500円に引き上げ
・少子高齢化に合わせて年金を減らす「マクロ経済スライド」の廃止

【日本維新の会】
・幼稚園や保育園をはじめ、すべての教育を無償化
・公的職業訓練の見直し
 
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/540.html

[政治・選挙・NHK262] 「バカな国民の支持を取り込み、バカを利用し尽くす」− これがアベ自民の戦略だ。(澤藤統一郎の憲法日記)

昨日(6月28日)の毎日朝刊「論点」欄。論点は、「『不都合な真実』の扱い方」である。3人の論者からの聴き書きだが、そのリードが「年金だけでは老後資金が2000万円不足する」と指摘した金融庁ワーキンググループの報告書について、麻生太郎副総理兼金融担当相が受け取りを拒否したことに批判の声が広がった。『不都合な真実』に背を向ける政権与党の姿勢は、公文書の隠匿や改ざんなど枚挙にいとまがない。その振る舞いの背景と危険性を考える。」という、まことに真っ当なもの。

論は自ずと、こんなバカげた政府がなぜできたのか、なぜ続いているのか。どうすれば、もう少しマシな政府に交替させることができるのか、を問うことになる。

白井聰の語りの標題が、「『下流』層を取り込む自民」となっている。「こんなバカげた政府がなぜ続いているのか」に対する回答として、「自民党が、手際よく『下流』層を支持者として取り込んでいるからだ」というもの。

しかし、この標題ではいかにもインパクトに乏しい。毎日のデスクは温和しい。もう少し刺激的に、「バカな国民の支持を取り込む自民党」あるいは、「バカを利用し尽くす自民党戦略」とすべきではなかったか。自民支持の国民をバカ呼ばわりするのだから、紛糾覚悟の必要あることはもちろんだが、こちらの方が真実にも、白井の言わんとするところにも近い。

白井の語りの中心部を引用する。なぜ、アベ自民の愚行への真っ当な批判が、政権に通じないのか、という問題関心についてである。

    新聞も野党も政権の論理矛盾や隠蔽体質を批判している。だが、
   麻生太郎財務相いわく「新聞読まない人は全部自民党支持だ」。
   批判が効果を発揮しないのは、自民党が論理的整合性に関心を払
   わない有権者層を主たる「顧客」として取り込んでいるからだ。

    小泉純一郎政権時代、広告代理店が政府に提出した広報戦略資
   料が話題になった。政権の支持基盤である「具体的なことはわか
   らないが、小泉総理のキャラクターを支持する」主婦や若者、高
   齢者を「B層」と名付け、彼らに「分かりやすい」宣伝を提案し
   ていた。

   低い所得だけでなく、意欲に欠ける生活習慣や思考様式を共有す
   る階層「下流」。「B層」は「下流」の言い換えともいえよう。
   小泉政権向けの広報戦略資料が暗示したのは、政権が新たな格差
   の拡大を防ぐのではなく、利用し尽くそうという意志ではなかっ
   ただろうか。

   これは、自民党が特定の階級・階層に依拠する党への変質を宣言
   したに等しい。しかも、その階層の利害を代表せず、単に支持基
   盤として利用するのだ、と。

   (自民党の広告戦略は)消費社会に生まれ育ち、政治の知識に乏
   しい人々の感情をふんわり肯定し、決して内実を知らしめず、た
   だ好印象を抱かせる戦略だ。

    自民党はイラストレーターに安倍晋三首相を侍として描かせる
   など、政策を直接語らない、特に若者向け広告を次々と仕掛けて
   いる。若年層全体を「B層」扱いして、「これからの日本の主役
   は総じてバカでいい」との前提に立っている。この前提でどんな
   未来を描くつもりか。

    ただ、「B層」扱いされている有権者も市井の人々である。今
   の年金問題も、人々がふんわりとした政治宣伝の洪水から頭を上
   げ、眠っていた怒りを沸き立たせるきっかけにはなりうる。いず
   れにせよ、怒りが復権しないままでは、この国は滅びるほかない
   だろう。

民主主義とは、一人ひとりの有権者が理性を持ち、どのような政策・政党が自分の利益になるかの判断が可能だという前提で成りたっている。ところが、「B層≒下流」への働きかけ方次第では、「決して内実を知らしめず、ただ好印象を抱かせる戦略」が功を奏し、少なからぬ国民が操作されて自らの利益に反する政策でも政党でも支持してしまうのだという。いや、現に今、そうなっているというのだ。アベ自民は、「日本の主役は総じてバカでいい」と本気で思い、「総じてバカな主役に支えられ」、その階層を支持基盤として今日あるのだ。

かつては、国民を侵略戦争に引き込み、兵士として使い捨てた天皇を、靖国の母は恨みをもたず批判もせず、戦死した息子を靖国に神と祀ってくれることに、天皇の親拝に感涙した。今なお、世の中の矛盾を糊塗し、「不幸に寄り添う」ことで矛盾を覆い隠す役割を果たす天皇を、「ありがたい存在」とするのが、平均的国民である。主権者の理性の確立は難しい。

白井の、「怒りが復権しないままでは、この国は滅びるほかない」は、突き放した言い方。そもそも、怒らないのがB層のB層たる所以。だからこそ、アベ自民に取り込まれているのだ。「怒りの復権」は、百年河清を待つに等しいことではないか。怒りに火をつける工夫が必要なのだ。

同じテーマを郷原信郎(弁護士)も論じている。彼は、最後をこう締め括っている。

   今の政権には自浄作用が全くない。だから、どんなに非常識なこと
   が起きても是正されない。現状を変えるには、選挙で国民が意思表
   示をするしかないだろう。その際、「どの政党がいいか」や「他の
   政権と比べて」ではなく、「今の政権そのものが是か非か」という
   選択をしてほしい。政権基盤が揺らぐことは一時的にはマイナスか
   もしれない。しかし、非常識で不誠実な政治が続く方が、この国の
   将来にはるかに深刻な影響を与えることを、若い人たちも危機感を
   持って考えてほしい。

なるほど。選挙では、「今の政権そのものの是非を問え」という問題提起には説得力がある。しかし、どうしたら、「若い人たちも危機感を持って考えて」もらえるのだろうか。「若い人たち」ばかりではない。「アベ政権の好印象を抱かせる戦略」に取り込まれている少なからぬ人々に、である。

ぬるま湯に慣れ親しんだ蛙は、湯の温度が上がっても飛び出すことができず、熱湯の中で茹で蛙になってしまうと言う。蛙たちよ、起きよ。目を覚ませ。アベのぬるま湯はもう沸騰しているではないか。
(2019年6月29日)

http://article9.jp/wordpress/?p=12884
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/546.html

[政治・選挙・NHK262] 人口減少問題解決のカギは女性の政治参加にあり (朝日新聞社 論座)
人口減少問題解決のカギは女性の政治参加にあり
元参院議員・円より子が見た面白すぎる政治の世界
N平成で解決できなかった日本の課題

円より子 元参議院議員、女性のための政治スクール校長
論座 2019年06月30日

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アメリカ大使館で、左からケネディ大使、円より子、目黒依子さん。三浦まりさん、シャーマン国務次官補と記念に。野田聖子さんは一足早く帰ってしまっていた=2015年1月30日

■政治が変わると感じた平成のはじめ

 今年4月、平成が終わった。

 1989年1月8日に発表された「平成」という元号には、内外・天地ともに平和が達成されるようにとの思いが込められた。

 世はバブル景気に浮かれていた。しかし、昭和天皇が崩御され、歌舞音曲の類は遠慮され、町には暗がりが広がっていた。そして、大喪の儀が行なわれた2月24日には、いく昭和を惜しむかのように、冷たい氷雨がそぼ降っていたのを覚えている。

 昭和の終わった1989年は、冷戦の終わった年でもあった。11月10日、ベルリンの壁が崩壊。12月3日にはブッシュ大統領とゴルバチョフ首相が「冷戦の終結」をマルタ島で宣言した。

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1989年の参院選で勝利し記者会見する社会党・土井たか子委員長=1989年7月24日

 この直前、三菱地所がニューヨークのロックフェラーセンターを買収し、日本の威力を見せ付け、世界から、特にアメリカから睨まれた。そうした世界の「目」に気づくこともなく、日本はバブルに浮かれ続ける。

 12月29日の大納会で、日本の株価は3万8915円の高値を付けた。それがピークだった。金融の専門家という人たちが何人も、この勢いで4万円を超えると予想したのを思い出す。予想が難しいのは分かるが、専門家の意見といえども、あまりまともに聞かない方がいいとも悟った。

 社会党が自民党に圧勝し、「山が動いた!」の名文句を委員長だった土井たか子さんが残したのも1989年だった。平成のはじまりは政治をも変えるのかと思わせた。

 1992年5月、熊本県知事だった細川護煕さんが新党を立ち上げた。既成政党の馴れ合い体制にとどめの一撃を刺したと受け止められ、拍手喝采で迎えられた。月刊誌に掲載されたその結党宣言に胸震わせた人は多かった。私もその一人だった。

   荒海に漕ぎ出していく小舟の舳先に立ち上がり、難破することも恐れ
   ずに、今や失われかけている理想主義の旗を掲げて、私はあえて確た
   る見通しも持ちえないままに船出したいと思う。歴史を振り返ってみ
   れば、理想の船出というものはいつもそういうものだったのだ。

 新党はその後、平成の間にいくつできたことだろう。政党の離合集散、そして覚えきれないほどの新党結成に、国民の気持ちはしだいに冷めていく。

 しかし、政党助成金もまだない頃に、細川さんの10億円以上の借財をして理想主義の旗を掲げ、日本新党という小舟で船出したその熱気と男っ気に感じ入った人は少なくなかった。私が日本新党に入り、政治の道に踏み出したのもそのためだ。

 あれから四半世紀。平成が幕を下ろした今も、日本新党の結党の精神は生き続けていると、私には思える。否、生き続けさせ、政治にもう一度「正義と信」を取り戻したいと思う。

■支えてくれた多くの人たち

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アベ政治を許さないの旗を掲げ、杉並区内で活動を続けていた円より子=2016年1月25日

 女性政治家として、女の細腕で、政治の何が変えられると、多くの人から嗤(わら)われた。
 「女だてらに」「女のくせに」「気の強い女は好かれないよ」「円という名前のようにもっとまあるくなれば」。
 「ジェンダーって何だ」「フェミニストなんておっかないねえ」「ゲイの秘書を雇ってるんだってね。彼女もレズビアンなんじゃないの」

 それこそありとあらゆることを言われたが、いつも聞き流した。さまざまなことがあったが、大病もしないし、何より、セクハラと思える発言をする人も、その多くは応援してくれる善意の人であったし、私を守ってくれる人が大勢いた。私が気付かないうちにいやなことを処理しておいてくれる人がいたのだ。

 だからこそ、ここまでやってこられたのかもしれない。政策でも、国会運営でも選挙でも、好きなようにやってきたが、それはすべて、見えないところで動いてくれていた人たち、「君のためにやったよ」なんてわざわざ言わない大人の人たちに、私は支えられてきた。

 何と幸運だったことか。その幸運と、多くの人々の力を、私は今、これから政治の世界に挑戦してくれるかもしれない女性たち、そして、今、政治の世界で活動している女性たちを応援することにつぎ込みたいと思う。

 せっかく政治の世界に飛び込んだのにセクハラ、パワハラに悩む人もいる。しかし応援してくれる人は必ずいるのだ。謙虚に勉強し、知識を身につけ、セクハラ、パワハラなどにめげず、この国の未来である子どもたちに、明るい社会を残すために共に闘いたいと思う。

 「自分が日本の10歳の子どもなら、この国を捨てるだろう」と言ったのは、ジム・ロジャーズという世界屈指の投資家だが、子どもたちがこの国に見切りをつけたりしないような国づくりに、待ったなしで踏み出すことが、今を生きる私たち大人の責任だ。

■「世代間扶養モデル」の破綻は明らか

 2016年から出生数は100万人を切っている。今のままの出生率(1.42)なら、2053年に人口は1億人を割り込むと推定されている。人口減少だけではなく、高齢者が異常に多い、いびつな人口構成になる。

 東京は、神奈川、千葉、埼玉などとともに、高度経済成長期、地方からの激しい流入人口の受け皿となって人口を増やした。特に金の卵として働きに来た中卒の若者や、大学に進学した学生たちが、20代でこの一都3県で結婚して居を構え、子どもを育ててきた。その団塊の世代があと4〜5年もすると後期高齢者になる。

 この一都3県では、2015年から2025年の間で後期高齢者がおよそ175万人も増えるとの推計が出ている。親の介護による離職、生活苦、心中、また老老介護の悲劇は跡を絶たないが、それでもまだ団塊の世代は支えてくれる現役世代がいる。しかし、団塊ジュニアが後期高齢者に突入する2050年頃、働き盛りの世代は激減する。働く世代が高齢層を支えるという「世代間扶養モデル」が破綻するのは火を見るより明らかだ。

 社会保障の財源は今でも不足しており、働く女性のための保育所も保育士も不足。特別養護老人ホームも待機者が列をなしている。このままでは2050年を待つまでもなく、我が国は破綻(はたん)してしまうだろう。

■「世代内扶養」そして「All for All」

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「All for All」みんなはみんなのために。つまり、一人も取りこぼさないという思いを込めた井手英策さんの案に賛同し、前原誠司さんは党代表選を闘った=2017年7月28日

 しかし、65歳以上でも3千万円以上の貯蓄がある世帯は、全体の12.5%もある。貯蓄なし世帯(16%)との格差が広がっている。負担増になる世帯からは不満が飛び出すだろうが、高齢者といえども資産のある人は医療や介護の自己負担を、働く世代と同様に負ってもらうしかない。いわゆる「世代内扶養」である。

 しかし、それより思いきって、すべての人を対象に教育費と医療費・介護費を無料にしようという案がある。無料にということは、サービスを受けられるようにするということだ。

 いま、高収入で高資産の人や中収入中資産の人は増税感を持ち、支払った税金の恩恵を受けていないのではないかという疑念を持っている。それどころか低収入低資産の人ばかりに税が使われており、自分たちは働き損ではないかと思っている。働いても働いても賃金が上がらないのに、という不満も出ている。それが、生活保護受給者へのバッシングにつながったりする。

 そうした人々の間の分断と社会の分断を失くすためにも、収入にも資産にも関係なく教育・医療のサービスを受けられる仕組みにしようという案だ。これは慶應義塾大学の井手英策教授の提案である。民進党代表だった前原誠司さんは2017年、この井手さんの提案を採用し、「All for All」(みんながみんなのために)を旗印にした。

 介護保険ができて、個人と家族が負担してきた介護の一部が社会化された。介護は妻と嫁の役目という社会通念が強かったから、介護保険導入には多くの反対と苦労があった。
思い出すのは、政治家や経済界の男性対象にアンケートをした時、女性たちがあきれて笑ってしまう解答である。「あなたより配偶者が先に逝ったら、あなたの介護は誰がするか」という問いに「妻には私より先に逝くなと厳命している」と。

■「教育も保育も親の責任」のおかしさ

 現在、教育の社会化が大きな抵抗にあっている。2009年に政権交代した民主党が、子ども手当や高校無償化を打ち出した時もそうだった。我が国では、教育は個人が負担するもの、親の責任という意識が強いからだ。

 実際、小学校から大学までの教育機関に対する公的な教育支出がGDPに占める割合は3%程度しかなく、OECD諸国中、下から2番目という低さだ。

 高齢者福祉や子育てなどの公共サービスについて、「政府の責任か、個人や家庭の責任か」を問うた2010年の調査では、年金は6割の人が、高齢者医療は7割の人が「政府の責任」と答えているのに対し、教育では3割、保育・育児も3割に届かなかった。

 子どもの貧困が言われて久しく、収入格差は健康格差、学力格差につながっている。働かなくては食べていけないのに、保育所には入れない。「日本死ね、保育園おちた」という一人の母親のブログが日本中の女性や、子どもを育てる男性たちにも共感を呼んだのは、教育も保育も親の責任と考えがちな国民の意識に甘えて、高齢の有権者の声だけに耳を傾けてきた政治への大きな怒りだったのだ。

 かつて1989年に1.57ショックが列島中をかけ回った。一人の女性が一生の間に産む合計特殊出生率が、ひのえうまの年よりも低くなったことに人びとは驚いたが、さりとて政治が何の有効策も取らなかった間に、子どもを産める女性の数が落ち込み、もはや出生率を上げたところで出生数は減り続ける事態になってしまった。

■若い人に雇用を。教育に予算を

 子どもを産んでもいいな、育てたいなと思える社会。産みたい人が産める社会を早急に整備する必要がある。それには雇用がまず大事だ。契約で、いつ解雇されるかわからない状況で、子どもを持つなど無責任なことはできないと考えるのは当然だ。それなのに国も企業も非正規雇用を増やしている。子どもを産んでほしくないとしか思えない。

 教育にお金がかかりすぎるのも大問題だ。誰だって我が子には、良い暮らしをさせたい。そのためにも高教育を受けさせたいと願うが、大学受験料が1校3万円と聞いて震え上がる親がいるのは当然だ。私は1980年代の初めから母子家庭のネットワークをボランティアで運営してきたが、バブルに向う時代でもあったから、頑張ればパートから正社員になれた女性もいた。

 しかし、あの時代でも、年齢差別によって、4年制大学を出て、中高の教員免状を持っていても公立学校の採用試験は受けられず、小さな企業でも35歳を過ぎると採用されなかった。子どもたちの多くは大学進学をあきらめた。

 今、子どもの7人に1人が貧困状況にあり、このまま十分な教育を受けられないと、将来の社会的損失は40兆円に上るという試算もあるという。

 病気、生活保護、犯罪などが増えれば、それだけ税金・財源がかかる。一人一人が健康に働き、所得と資産を持ち納税ができれば、その社会の損失は小さくてすむ。子どもを持つ人が増えれば働き手が増えるという、身もふたもない現実論はともかく、なにより私たちの周りで子どもたちの笑い声が聞こえる地域社会があることは幸せなことではないか。

 公立学校の質を高めること、学校ボランティアを増やし、先生の負担を減らすなどやれることは多いが、とにかく教育の予算を増やす、若い人たちの雇用を確保することが大事だ。

■持ち家政策より賃貸住宅の充実

 住宅も重要な要素だ。「人生100年」とも言われる時代。4人家族で育ち、一人暮らしを経て、家庭を持つと2人から3人そして4〜5人となり、また子どもたちが出ていって2人となる。そして最後は1人暮らしか集団の施設暮らしだ。ライフサイクルに合わせ、住まいも変わる。持ち家政策よりも、良質な賃貸住宅を借り替える政策に転換すべきだと私は長年訴えてきた。

 住まいは人の暮らしの土台である。離婚した女性が、健康も顧みずに二つ三つの仕事を掛け持ちして子育てを終えた後、高齢になって住む場所にも苦労している。すべての世代に、住宅問題は喫緊の課題なのだ。

 もちろん、子どもたちの将来にツケをまわさないように、財政の健全化にもつめなければいけないし、社会保障の見直しも必要だ。いびつな人口構成の解消に向け、若い世代への投資を進めるためにも、少子化を解消するという切り口で全体を統合し、大胆な政策を推し進めなくてはならない。それがこの国の未来を切り開くことになると私は信じている。

■米国務省ナンバー2の女性と語ったこと

 オバマ政権下で在日アメリカ大使館の大使だったキャロライン・ケネディさんが、私の続けている「女性のための政治スクール」に関心を持ち、話をしたいと言ってきたことがある。

 日本の女性の教育レベルはとても高いのに、政治の世界で数が少なすぎる。女性が活躍しやすい社会をつくるためにも、女性議員を増やすにはどうすればいいか、何が問題なのか話し合いたい。ついては他の人も推薦してほしい――。

 ケネディさんからの要望に、私は政界から野田聖子さんを推した。

 2015年1月30日(金)、私は野田聖子さんらと共にケネディ大使との話し合いに臨んだ。しかし、この日の主役は大使ではなく、国務省ナンバー2のウェンディ・ルース・シャーマン国務次官補だった。彼女は2日間の予定で安倍晋三総理・岸田文雄外務大臣らに会う日程をかいくぐり、私たちと2時間近くも日米の政治と女性、そして「ガラスの天井」について語り合ったのである。

 私はシャーマンさんと年齢も近く、ウーマンリブ華かなりし頃のベティ・フリーダンやエリカ・ジョングなども話題に上った。また、彼女は「エミリーズ・リスト」を運営したことで知られる。EMILY’s とはEarly Money Is Like Yeastの略で、早期の資金はイースト菌のように膨れ上がるということで、資金のない女性たちを議員にするのに貢献した団体だ。私もこれにならい、1994年Fifty Clubを創設している。シャーマンさんと私は意気投合し、日米で女性の地位を上げようと誓い合った。

■二階幹事長の一言に右往左往する大臣たち

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赤松良子さん主宰のW I N W I Nの会合で。野田聖子さんと円より子=2019年1月18日

 その1か月半後の3月17日、ビル・クリントン元大統領が来日した時、招待された私は野田聖子さんと話しながら、ケネディ大使に挨拶するため、列に並んでいた。そこへ自民党幹事長の二階俊博さんが来て、私たちの後ろに並んだ。

 大使館員がすぐにとんで来た。

 「二階先生、お並びにならずとも、すぐ大使のところへご案内します」。そこで二階さんが一言。

 「私はこの二人の女性を追い越して先に行こうなんて、恐れ多いことはできませんね。円さんは民主党の総理候補、野田さんは我が党の総理候補だからね」

「あっ、二階先生」と挨拶して先に行こうとしていた数人の現役大臣は、二階さんの言葉を聞いて、私と野田さんの後に並んで順番を待つことになってしまった。

 二階さん特有の上手な座持ちである。野田聖子さんはその後、真顔で言ったものだ。「円さん、冷たい民主党なんかにいたらろくなことないわよ。自民党に来なさいよ。二階先生が組織をつけてくれる」と。もちろん、ご丁重にお断りした。

■女性の政治参加が進めば……

 ただ、その後も野田聖子さんとは、女性の政治参加を促進しようと協力し合っている。女性の政治参加が進めば、女性の社会進出と子育ての両立、男性の育児参加が進み、我が国の喫緊の重要課題である人口減少問題に抜本的に切りこむことができると信じているからである。

 もちろん、子どもを持たない選択肢、里子や養子を育てる選択肢など、多様な生き方があっていい。しかし、競争や効率優先ではないゆったりとした時間の流れと豊かな自然の中で、子育てを楽しめる社会を何としても作り出したいと、私はやはり願うのだ。

https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019062800001.html
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/551.html

[政治・選挙・NHK262] 沖縄慰霊の日の安倍首相へのヤジが意味するもの (朝日新聞社 論座)
辰濃哲郎 ノンフィクション作家
論座 2019年06月30日 より無料公開部分を転載。

https://image.chess443.net/S2010/upload/2019062800003_2.jpg
沖縄全戦没者追悼式の会場に入る安倍晋三首相(手前左)を迎え入れる玉城デニー沖縄県知事(同右)=2019年6月23日、沖縄県糸満市


 きっと安倍晋三首相には、沖縄の怒りの意味が理解できなかったのだと思う。

 6月23日、沖縄戦で亡くなった20万人を超える住民・軍人らの霊を慰め、世界平和を願う沖縄全戦没者追悼式に、例年通り安倍首相が出席した。

■英語とウチナーグチをまじえて政府に苦言呈した玉城知事

 出席者の献花で厳かな空気が流れるなか、平和宣言を読み上げた玉城デニー県知事は、戦没者への慰霊の言葉とともに、安倍政権の沖縄政策に正面から切り込んだ。

 2月に実施された県民投票で投票者の7割以上が辺野古基地建設に「反対」の意思を示したことについて、「県民投票の結果を無視して工事を強行する政府の対応は、民意を尊重せず、なおかつ地方自治をもないがしろにするもの」と苦言を呈した。同時にウチナーグチ(沖縄方言)と英語で世界に向けて沖縄の肝心(ちむぐぐる=相手を思いやる心の奥底の感情)の尊さを説いた。

 続いて小学6年生の女児がつづった「平和の詩」を女児本人が朗読した。

 「『命どぅ宝』/生きているから笑い合える/生きているから未来がある」

 平和の大切さを読み上げる女児の幼い声に、会場ではハンカチで涙を拭う女性の姿も。そして司会者が告げる。

 「来賓挨拶、内閣総理大臣、安倍晋三殿」

 和らいだ雰囲気が一変して、緊張が走る。出席者の多くが身を乗り出し、視線は安倍首相の立った会場右前方に集中する。突然、「帰れ!」「恥を知れ!」。怒号が飛んだ。まだ3人ほどに留まっている。

 安倍首相は、いつもの早口であいさつ文を読み始める。「沖縄が負った癒えることのない深い傷を思うとき、胸ふさがる気持ちを禁じ得ません」。昨年とほぼ同じ追悼の辞だが、「この地の誇る豊かな海と緑」という部分が「この地の誇る美しい自然」に差し替えられているのは、辺野古の海の埋め立てを強行していることを意識したためか。それでも会場は、まだ静けさを保っていたが、基地問題に触れるとざわつき始める。

 「沖縄の方々には、永きにわたり、米軍基地の集中による大きな負担を担っていただいております。この現状は、何としても変えていかなければなりません」

 すかさず、「嘘つき!」と男性の激しい声が響いた。続いて女性の声も。さらに県民の琴線に触れるスピーチが続く。

■激しいヤジの背景に、埋め立てを強行する安倍政権への不信感

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追悼式の後、会場をあとにする安倍首相の車を走りながら護衛するSPたち

 2015年に返還が実現した西普天間住宅地区跡地利用について、「(返還が)実現した初の大規模跡地であり、基地の跡地が生まれ変わる成功例として、県民の皆さまに実感していただけるよう、跡地利用の取り組みを加速します。引き続き、できることはすべて行う、目に見える形で実現するとの方針のもと、沖縄の基地負担軽減に全力を尽くしてまいります」。返還を主導した現政権の功績をアピールしているようにも聞こえるが、「大規模」と言っても、西普天間住宅地区跡地は沖縄における米軍専用施設の2%にも満たない面積だ。依然として全国の7割以上の米軍基地が沖縄に存在する状態は変わっていない。

 「出生率は日本一、沖縄に魅せられて訪れた観光客は昨年度約1千万人と、6年連続で過去最高を更新しました。沖縄が日本をけん引し、21世紀の万国津梁(ばんこくしんりょう)として世界の懸け橋となる。今、それが現実のものとなりつつあります」

 記者席の近くに立って聞いていた男性から「あんたがやったわけじゃないだろう」と、ボヤキともつかぬ声が飛ぶ。会場からは失笑が漏れる。

 「この流れをさらに加速させるため、私が先頭に立って、沖縄の振興をしっかりと前に進めてまいります」

 「私が先頭に立って」というフレーズに、「止めてくれ!」という男性の怒鳴り声と、「言葉はいらない!」という女性の声が混じる。「安倍はやめろ!」も聞こえる。

 挨拶を終えたが拍手はまばらだ。見渡すと、それでも3割ほどの参列者が拍手を送っている。自席に戻る安倍首相に向かって「帰れ!」「嘘つき!」など険悪な空気が続く。先ほど「あんたがやったわけじゃないだろう」とぼやいた男性が、またポツリと独りごとのようにつぶやく。

 「あんたの発言には心がないよ」

 追悼式の厳粛な雰囲気を壊すという意味では、大きな声でのヤジは褒められたものではない。だが、昨年よりも、一昨年の追悼式よりも、怒りの声を上げた人は圧倒的に多い。2月に行われた県民投票で辺野古基地建設に明確に反対の意思を示したにもかかわらず、一顧だにせず埋め立てを強行する安倍政権への不信感が渦巻いているのだろうか。

■沖縄の尊厳を傷つける、トランプ氏との「友人」の演出

 沖縄に滞在していて安倍政権に対する敵愾心は、日々高まっていることを感じる。この追悼式が行われる約1カ月前、安倍首相が来日した米国のドナルド・トランプ大統領をゴルフや居酒屋で過剰とも批判される接待で「友人」を演出したが、トランプ氏に「友人」と呼ばれ仲睦まじく満面の笑みをたたえることが、沖縄の尊厳をどれほど傷つけているかを安倍首相はわかっていない。

 ドランプ氏が来日したのは5月25〜28日だ。その1カ月半ほど前の4月中旬、北谷町に住む女性が、海兵隊の兵曹に殺害されて、兵曹本人も自殺した事件があった。この兵曹には被害者に対する暴力などで米軍から接見禁止命令が出されていて、事態を米軍も把握しているなかで起きた犯罪だった。3年前の4月には、うるま市でウォーキング中の20歳の女性が海兵隊に所属していたこともある元軍属に殺害され、米軍基地脇の空き地に遺棄された事件が起きている。

 こういった事件が頻発すれば、綱紀粛正が徹底して然るべきだが、今年4月から2カ月間で米軍関係者が飲酒運転などの道交法違反などで10人が逮捕される異常な事態も明らかになった。関係自治体が米軍に対して綱紀粛正を求めていても、こういった事件は後を絶たない。6月には酒に酔って器物損壊で逮捕された海兵隊が、取り調べ中の警察官に殴り掛かるなどの事件もあった。

■綱紀粛正訴えるも続く米軍絡む事件事故

 問題になっているのは刑法犯や道交法だけではない。1年半前の17年12月、普天間基地に隣接する宜野湾市立普天間第二小学校の校庭に、重さ約7.7キログラムの米軍ヘリコプターの窓枠が落下した。児童に当たっていれば大惨事につながっていたはずだ。その6日前には、同小学校から約1キロ離れた緑ヶ丘保育園に米軍ヘリのものとみられる部品が落下しているのが見つかったばかりだ。窓枠が落下した小学校には、その後、防衛局から監視要員が派遣され、その監視員の指示で校庭から避難したのは、事故後、678回にのぼっているという。

 そして6月4日には、浦添市の中学校に、ヘリの翼を防護するゴム製のテープが落下しているのが見つかった。地元紙である琉球新報の6月6日付のWeb Newsによると、 ・・・ログインして読む
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https://webronza.asahi.com/national/articles/2019062800003.html
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/556.html

[政治・選挙・NHK262] 山本太郎から自民党を支持してきた皆様へ (朝日新聞社 論座)

山本太郎から自民党を支持してきた皆様へ
法人税を減税し、消費税を増税するのはおかしくないですか? 私は野党の一員です!

山本太郎 参議院議員 れいわ新選組代表
論座 2019年06月30日


■安倍政権は経団連中心主義

 私・山本太郎は、この度、「れいわ新選組」という政党を立ち上げました。6年間、参議院議員を務め、様々な政治課題に取り組んできました。その過程で、多くの国民の経済的苦境に直面し、経済政策の重要性に気づきました。

 なぜ、新党を立ちあげたのか?

 それはどうしても国民の皆さんに訴えたいことがあるからです。

 特に、自民党を支持してきた皆さんに率直に聞きたいことがあります。農業・漁業などの第一次産業の方々、中小企業の方々、商店主の方々、日本の基盤を支えてきた全国の皆さんに、どうしても聞いたい。

 生活、苦しくないですか? 安倍政権になって、生活がよくなりましたか? むしろ苦境に陥っていませんか? 心まで削って生きていませんか?

 厚労省の国民生活基礎調査のデータによると、国民の56.5%が「生活が苦しい」と言っています。母子世帯では82.7%もの人が「生活が苦しい」と言っている。

 この悲痛な叫びを無視していいのですか?

 今の自民党は、かつての自民党ではありません。例えば1970年代に首相になった田中角栄さんは「列島改造論」を唱え、公共工事を積極的に行いました。福祉にも力を入れ、再配分を強化しました。

 しかし、右肩上がりの成長の時期が終わると、自民党はどんどん「小さな政府」の方向に舵を切り、自己責任を強いるようになりました。

 貧困、格差の拡大、地方切り捨て。約束してきた年金も十分には支給できず、2000万円という巨額の貯蓄をしろと迫ります。

 近年の自民党は、これまで日本の国土や暮らしを支えてきた人たちを切り捨ててきました。経済政策は、いつも大企業の幹部に有利なものばかり。経営者ばかりが裕福になり、庶民の実質賃金はあがりません。

 その総仕上げが安倍政権です。

 アベノミクスは金持ちばかりが得をし、貧しい人たちが損をする政策のオンパレードです。これは圧倒的な不公正です。さらに一部の「友達」の利益のために、ルールを曲げ、証拠を隠蔽し、記録を改ざんしている。

 一体、何なのですか。

 大企業優遇の法人税減税。逆進性の強い消費税の増税。年金資金を使った株価のつり上げ。

 私は訴えたい。このまま自民党を支持していていいのですか? 別の選択肢にむけて一緒にチャレンジしてみませんか?

 私は何としても日本を守りたい。それはあなたを守ることから始まります。

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れいわ新選組のポスター(れいわ新選組のホームページより)

■法人税を減税し、消費税を増税するのはおかしくないですか?

 長く続くデフレ下で、多くの中小企業の皆さんや商店主の皆さんが苦しんでいる姿を、私は何度も見てきました。地方に行くと、駅前はどこもシャッター通り。膝を交えて話を聞くと、どれだけ多くの人たちが苦しみ、精神まで蝕まれているのかがわかりました。

 お金がないって、どれほど辛いことなのか。人生の大切なものを失い、傷つき、ささやかな夢までも捨てなければならない。お金がないことが発端となって、自殺に追い込まれる人もいる。日本はもはや、「豊かな総中流社会」なんかではありません。

 こんな経済状態で消費税が上がると、生きていけますか?

 安倍内閣は2014年に消費税を5%から8%に引き上げました。消費税増税で得た税収はどう使われてきたか。8兆円ほどあった税収のうち、社会保障の充実に使われたのはわずか16%です。安倍さんは「増税分の4/5は借金返しに充てた」と国会で答えています。結局、消費税を上げても、苦境に立たされている国民のもとには配分されません。

 消費税は1989年の竹下内閣の時に導入されました。それから30年。消費税が上がる一方で、他の税金が減っています。何が減ったか。「所得税」と「法人税」です。

 計算すると消費税収のうち73%が法人税減少分に割り当てられています。法人税はどんどん減税され、またデフレ下の消費の落ち込みによって減収も重なっています。

 税金は、お金を多く持っている人が多く払う。これが原則のはずです。消費税はお金持ちほど負担が少なく、貧しい人ほど負担が重くなる税金の仕組みです。

 中間層が減少し、貧困世帯が急増する中、消費税を上げるのはおかしくないですか? 真逆の政策ではないですか? 景気をさらに悪くして、どうするんですか?

 年収に占める消費税の負担割合を調べたデータがあります。消費税が5%になった1997年では、200万円未満の低年収層は「5.50%」であるのに対して、1500万円以上の高年収層では「1.10%」になります。これが8%の2015年になるとどうなるか。前者が「7.20%」であるのに対して、後者は「1.60%」になります。もしこれが10%になると、前者は「8.90%」になり、後者は「2.20%」になります。

 消費税は、低年収層の生活を直撃するのです。貧困層の負担が、圧倒的に重い。

 そんな政策、どう考えてもおかしい。景気よくするんだったら、消費に負担のかかるようなことをしてはいけない、経済政策のイロハのイ、です。

 消費税は上げるのではなく、下げなければいけません。

 どうしても増税が必要ならば、まずは、持っている人から取る。法人税にも累進性を導入する。儲けが多くなったときには、税率が高まり、そうでないときには負担が減る、そのような仕組みを導入する必要があります。

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街頭に立つ山本太郎氏。軽快な演説に聴衆が集まってくる=6月19日、新宿駅西口

■とにかく景気をよくしなければならない

 日本は、需要が20年以上衰退してきた国です。要はデフレが継続しているのです。こんな国は、世界の中でも日本ぐらいしかありません。

 これをやってきたのは誰か? その大半は自民党政権です。

 みんな大切なものを奪われ続けている。心までも奪われてしまっている。自信を取り戻すためには、まずは足元の経済を安定させなければなりません。

 日本のGDPの55%〜60%は個人消費です。日本の経済をよくするためには、消費を活性化させなければいけません。みんなが、いつもよりもちょっと多く消費しようかなと思わないといけない。とにかく景気をよくしなければならない。

 そんな時に消費税を上げてどうするんですか。みんな消費しなくなるに決まってるじゃないですか。

 民間の投資も減ってきています。当然ですよね。この先が不安だから。

 政府は経済政策を間違え続けています。景気を浮揚させるためには、財政出動をしなければならない。特に成長産業に投資をしていかなければならない。その中心は介護、保育、教育、公的住宅などでしょう。

 一番足りていない部分に大胆にお金を回し、活性化を促す。

 そして、消費税を減税していく。

 企業を経営する側としては、これからものを買う人が増えるなと予測がつくので、それに備えて準備しよう、投資しようということになる。そうするとお金が回る。賃金が上がる。そんな好循環を作っていく必要があります。

 「本物の好景気を見せてやる」という強い意気込みで経済政策に取り組むことが重要です。

■最低賃金、低すぎませんか?

 れいわ新選組では、「最低賃金1500円を全国一律、政府補償で実現する」ことを掲げています。

 そんなことが出来るのかと言われますが、よく考えてください。政府は最低賃金1000円にしますと言ってドヤ顔していますが、それって明らかにワーキングプア、年収100万円台です。政策的に何としても是正しなければいけないんです。これは政治の仕事です。

 いま大企業は過去最高の収益を上げていると言われています。それなのに国民の賃金は上がらない。むしろどんどん賃金は下げられてきました。雇用の非正規化によって。今や約4割は、不安定な非正規労働です。

 政府と財界は、いかに人間を安く使うかばかりを追及してきました。人間の価値を貶め続けてきたんです。

 最低賃金1500円にしても、月収は24万円。あなたには、それに満たない価値しかないんですか。バカにされていませんか。あまりにも過小評価されていませんか。

 最低賃金を上げると、中小企業などで経営が厳しいところが出てくると思います。そういうところには、政府がしっかりと補助をする。政府がちゃんと埋め合わせをする。政治によって、確実に賃金が上がる。

 私は、全国一律最低賃金を訴えています。人は各地に分散しなきゃいけない。東京一極集中では、この国は持たない。例えば首都圏直下地震などの大災害がきた場合、バックアップできる地方都市が多くないとダメなんです。

 だから地方の賃金も上げる。全国的に最低賃金は低すぎます。

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れいわ新選組 東京四谷事務所(れいわ新選組のホームページより)

■必要な公共工事は大切!

 私は、公共事業はいけないというのは間違いだと思っています。

 公共事業ばかりにお金を使うなと言われていますが、どこか刷り込まれて、洗脳されてしまっているように思います。公共事業は雇用の面でも、災害時のインフラという面でも大切な存在です。そう簡単にどんどん減らしていいものではありません。

 日本は1990年代後半から小泉政権にかけて、公共事業をぐっと減らしました。公共事業より大きな枠組み「公共投資」でみると、橋本内閣から小泉内閣までの約10年間に予算は半減しています。

 その結果、急に仕事がなくなった地方の土木関係者は、非常に苦しい状況に追い込まれました。大手建設会社の下請け・孫請けの仕事では、足元を見られて、買いたたかれています。そして、現場の労働者・作業員の賃金が下げられる。危険な仕事も、安い賃金で引き受けることを強いられています。

 原発の事故処理における、労働者の惨状を聞いてきました。被曝のリスクを背負わされるのは、結局、経済的に弱い立場に立たされた人たちです。命を削らされているんです。

 公共工事は重要です。問題は質です。

 必要なインフラ整備は着実に進める。教育や医療など、いくらでも必要なものはあります。水道、鉄道などの公共性の高いものは国が主導し、積極的に支出すべきです。デフレ経済下では、財政出動をしっかりと行い、未来に投資しながら、お金を回していく。

 公共工事=悪ではありません。

■奨学金の返済で苦しんでいませんか?

 日本という国は教育に対してもお金を使っていません。その結果、負担が家計に押し寄せています。

 今、約555万人もの人が、奨学金の借金を背負っています。大学を卒業して、社会に出た瞬間、概ね300万円以上の借金を背負って新生活がスタートする。貯蓄どころではありません。20代の貯蓄ゼロ世帯は60%を超えています。

 こんな状態で、しかも少子高齢化で、若い世代が定年退職した世代を支えることができますか? ムリです。

 奨学金という借金について、「国がやっている武富士じゃないか」と国会で発言したところ、議事録から削除するように言われました。おかしなことです。本当のことなのに。

 結局、奨学金返済問題は、利息を金融機関が儲けていることに行きつきます。いつのまにか奨学金が金融商品にされているんです。こんな状況を作り出していった小泉政権を含む自民党政権の責任は重い。

 自分の子どもが「大学に行って勉強したい」という夢を持った時、かなえてあげたいと思うのが親心じゃないですか。

 けれども、地方から東京の大学に行くと、生活費だけで膨大な金額がかかります。住宅費が高すぎる。アルバイトをしたって、最低賃金が安すぎる。授業料も高い。

 そんな状況を見ると、今の家計では到底、十分な仕送りをしてあげられない。「夢を諦めてくれ」と言わなければならない。

 これって、おかしくないですか? 自民党は何をやっているんですか? 自民党に任せていていいんですか?

 若い世代から希望を奪っていたら、この国の先にあるのは地獄です。少子高齢化に対応できるわけがない。30代から50代でも貯蓄ゼロ世帯は4割を超えます。

 もう猶予はありません。大きく政策を切り替える時期が来ています。

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参院本会議で代表質問に立つ山本太郎氏=2019年2月1日

■公務員を増やす

 日本は公務員が多すぎると思われています。繰り返し、公務員を減らせという主張が聞かれます。そんな主張を看板に掲げている政党もあります。

 しかし、冷静に数字を見てください。人口1万人あたりの公務員数を世界の水準でみると、日本は圧倒的に少ないんです。統計調査によると、イギリスの3分の1、アメリカの半分です。

 だから、現場では何が起きているのか。非正規雇用の比率が増えているんです。要は、官制ワーキングプアが拡大しているんです。

 このような状況は、災害に弱い行政を増やしていきます。災害が起きた時、しっかりと対応できる職員がいないと、復旧・復興はどんどん遅れます。これは私たちの命にかかわる問題です。

 安定した正規の公務員数を増やすことは経済政策です。介護・保育も同じです。給与をアップし、安定した職業にしていく。ニーズがある所にお金をしっかりつけていく。公務員は地方の雇用の重要な受け皿です。

 公務員は恵まれているとバッシングが起きますが、これはどう考えてもおかしい。正規の公務員並みの給料を、みんながもらえていないことがおかしいんです。

■農業を守る

 日本はいま、食料自給率が40パーセントを切っています。食糧安全保障は国を守る上で最重要事項のはずです。農業をしっかり守り、自給率を確保しなければ、国を守ることのなんてできません。

 防衛費に多額の予算を求め、中国や北朝鮮に高圧的な言動をとる自民党の政治家が、同じような力強さで食料安全保障を語っている姿を、私は見たことがありません。本気でこの国の安全保障や防衛を考えるのだったら、農業を守らなければならない。農家の皆さんを不安にさせない政策をとらなければならない。

 あまりに低くすぎる食料自給率を是正し、100%目指して大改革する必要があります。第1次産業に就けば安定した生活が送れるよう、政府が戸別に所得補償する必要があります。

 TPP反対と言っていたはずの自民党は、選挙の時の約束を反故にして、TPP推進に力を注いでいました。

 そんな自民党を信用していいんですか? 農家のみなさん、おかしくないですか? 自民党を支持していていいんですか?

 先日、トランプ大統領が来日しました。そして、安倍首相と貿易協定交渉を行い、農畜産品の扱いをめぐって何か取り決めをしました。交渉の内容については、参議院選挙のあと、公表するそうです。

 なぜすぐに公表できないんですか? 選挙が終わってからの公表ということは、選挙に支障が生じるという認識なんですよね?

 自民党を支持してきた農家の皆さんにお聞きしたい。このままでいいんですか? 自民党に票を入れることで、自分の首、絞めていませんか?

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街頭で訴える山本太郎氏。演説は聴衆の質問に答える形で進む=2019年5月29日、東京・北千住駅

■野党共闘に参加する

 私を含めた野党陣営にも問題がなかったわけではありません。国民の選択肢になれるような経済政策も打ち出せていなかったと考えます。

 私は、もちろん野党共闘に賛成です。

 参議院選挙の本質は、安倍内閣vs野党です。私は野党の一員で、全力で安倍内閣に対抗します。一人区では、当然、野党候補を応援します。いっしょに戦います。

 私は野党のお尻を叩きたいんです。枝野さんにも、玉木さんにも、志位さんにも、頑張ってもらいたい。一緒に戦いたい。国民に自公政権以外の選択肢を作りたい。野党が協力して政権交代を成し遂げたい。思いは同じです。

 そのためには、野党は今よりも、もっと戦闘的にならなければならない。本気で安倍内閣と対峙しなければならない。与党側に「ぬるい」と思われているような野党では駄目なんです。

 怪我をしても、障害を抱えていても、難病を患っても、将来に不安を抱かずに生活できる社会をつくる。あなたの幸せを守る。

 あなたを守るとは、 あなたが明日の生活を心配せず、人間の尊厳を失わず、胸を張って人生を歩めるよう全力を尽くす政治の上に成り立ちます。

 あなたに降りかかる不条理に対して、全力でその最前に立つ。何度でもやり直せる社会を構築するために。弱くある自由を保障する。

 20年のデフレで困窮する人々、ロスジェネを含む人々の生活を根底から底上げします。中卒、高卒、非正規や無職、障害や難病を抱えていても、将来に不安を抱えることなく暮らせる社会を作る。弱くある人々に手をさしのべ、自分の弱さを見つめる。

 そのような社会を実現するために、山本太郎は、れいわ新選組の候補者と共に、そして野党の皆さんと共に、全力で戦います。

https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019062700001.html
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/560.html

[政治・選挙・NHK262] 貿易交渉に米「安保カード」 (東京新聞)
東京新聞 2019年6月30日 朝刊

 トランプ米大統領は二十九日の記者会見で、日本に対する防衛義務と貿易赤字という異なる問題を同列に並べ、痛烈に不満を表明した。両国は夏の参院選後の妥結を目指して貿易交渉を加速するが、成果を焦る米側が「安全保障カード」をテコに譲歩を迫る展開も現実味を帯びてきた。日本政府は押し返す構えだが、大きな懸念材料を抱えることになったのは間違いない。

 「貿易もそうだ。米国は搾取されてきた」。トランプ氏は会見で日米安保条約で米国だけが防衛義務を負うことを不公平だと訴えた後、唐突に対日貿易赤字への不満を口にした。

 G20サミットに出席するため訪日する直前にも、トランプ氏は米メディアのインタビューで日米安保条約の問題に言及。二十八日の日米首脳会談では結局、持ち出さなかったが、政府関係者は「直接言われることもあり得ると考えて、想定問答を用意していた」と明かす。

 安保と貿易を結びつけることは荒唐無稽にも映るが、日本政府が警戒感を抱くのは、かつて米国が韓国との交渉で用いた「前歴」があるからだ。

 トランプ氏は対韓貿易赤字を問題視し、自由貿易協定(FTA)の見直しを主張。二〇一八年一月から始まった交渉では、在韓米軍の撤退をちらつかせ、結果として鉄鋼の輸出数量制限などの厳しい要求を受け入れさせた。

 今年四月から始まった日米貿易交渉は、農産品と工業品の関税の扱いを巡って議論は平行線をたどる。早期妥結を求めるトランプ氏の意向を受け、日米は夏の参院選後の早期に妥結することで一致しており、九月に米国で開かれる見通しの日米首脳会談が交渉のヤマ場となる見通しだ。今後、双方の主張が折り合わなければ、来年の米大統領選に向けて成果を焦るトランプ氏が日米安保をテコに一方的な譲歩を迫ってくる懸念は拭えない。 (矢野修平)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201906/CK2019063002000124.html
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/562.html

[政治・選挙・NHK262] 映画 「 #新聞記者 」が全国150館で上映スタート!(望月衣塑子ツイッター)
固定されたツイート
望月衣塑子@ISOKO_MOCHIZUKI

映画 「 #新聞記者 」が全国150館で上映スタート!
萎縮や忖度が蔓延し、時に息苦しさ感じる日本社会の中で、一人一人がどう直面する問題に向き合い、声を上げ社会を変えていけるのか。映画を観た方々が一歩を踏み出す勇気を持って頂けたらと思います
上映館は→https://movie.jorudan.co.jp/cinema/37432/schedule/


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猫屋敷さん♪音楽人。でも今は政治アカウントになってます 
返信先: @ISOKO_MOCHIZUKIさん

#新聞記者 #新聞記者みた
映画の中で【与党ネットサポーターに流させろ!】みたいなセリフが出て来ます。
これは映画を見る前の知識として絶対知っておきたい情報です↓

https://lite-ra.com/2017/10/post-3499.html
記者が自民党ネットサポーター会合に潜入レポート。生々しい実態が明らかに!

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たこやき@肉球新党 
返信先: @ISOKO_MOCHIZUKIさん

観てきました。
観ている間ずっと、心拍数高かったです。そして怖かった。なんとしても最悪の政権を引きずりおろさねばと思いました。2人の主役の方の演技が素晴らしかったです。

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悶々 
返信先: @ISOKO_MOCHIZUKIさん

選挙前に映画みるべき
必見!
まだ 感情が高ぶってる。

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adnxji 
返信先: @ISOKO_MOCHIZUKIさん

#新聞記者 を見てきました。現在進行形としてのこの国の政治とメディアの問題を深く掘り下げていた。二人が向き合うシーンから先は、私たち自身が踏み出す方向を選べと問われているようでした。
#記者たち や #ペンタゴンペーパーズ の時と違った沈黙が、場内が明るくなっても続いていた。

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ヒロキ 
返信先: @ISOKO_MOCHIZUKIさん

今まで劇場で映画を観たことがなかった自分が、6月28日に近所の映画館で観ました。素晴らしい映画で、特にシムさんの健気な取材姿勢に感動して涙が出ました。
望月記者さんも「圧力」が少なくないと思いますが頑張ってください。遠くから応援しています。

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内海新聞 
返信先: @ISOKO_MOCHIZUKIさん

テーマがテーマだけに日本人女優が断られ、結局韓国人にされたと聞きチープな日本映画かとまったく期待しないで見に行ったが完全に覆された。最初から最後まで息をのむ展開。派手なVFXやアクションがなくても役者の演技で迫力ある映画ができるのだと久々に感銘した。シリーズ続編がほしい秀作

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Tohsan 
返信先: @ISOKO_MOCHIZUKIさん

見た。 見たほうがいい作品。 名作かどうかは別にしてヒリヒリするリアリティを随所に感じる力作。
原因不明の打ち切りになる前に是非映画館へ!

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ぽん 
返信先: @ISOKO_MOCHIZUKIさん

#新聞記者 観てきました。現在愛媛では今治のみの上映です。観てる間、ドキドキが止まらない感じでした。「まさか」と思うことを見過ごしていると「茶色い朝」を迎える日が来る。このままで良いんですか?と自分に問われたと思いました。

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YUUKO 
返信先: @ISOKO_MOCHIZUKIさん

見てる間ずっとゾワゾワした感覚、最後の桃李くんの涙とごめんなさいがいろんな意味合いでグッときますね。何かを、何かをしなくては変わらない。一人の力はとても小さい、が多くが賛同すれば力は増幅すると信じたい。

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山上禎男(千葉のヤーミー)#ツワモノ 
返信先: @ISOKO_MOCHIZUKIさん

望月さん、頑張れ。その勇気に敬服いたします。世間を覆う悪い空気を払拭するいい映画ですね。

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山上禎男(千葉のヤーミー)#ツワモノ 
返信先: @ISOKO_MOCHIZUKIさん

言論の自由と公正な報道は、守らないといけないと思います。この映画が、評価されて数年後、あんな悪い時代もあったねと振り返られる様に、今から正しい時代に戻していかないと。

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Satoko 
返信先: @ISOKO_MOCHIZUKIさん、@kimuratomoさん

観てきました!
「一歩踏み出す勇気」
まずは参院選までに無党派層を促し少しでも投票率を上げること。

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yabetti2011 
返信先: @ISOKO_MOCHIZUKIさん

この映画を見て選挙に行こう!

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Bukazaemon 
返信先: @ISOKO_MOCHIZUKIさん

「日本人には、個人の尊厳に充分目覚めていない人が多い。近代的な個の自覚を持っていないと、容易に国や会社や学校といった組織や集団に同化し従属するようになる。」前川喜平さん

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たもさん 
返信先: @ISOKO_MOCHIZUKIさん

終わるまで緊張の連続でした。新聞記者の使命感と権力に対峙する仕事の厳しさがにじみ出てくる映画は初めてでした。それにしても国家権力の凄まじさを知らしめてくれた。

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hirobuku 
返信先: @ISOKO_MOCHIZUKIさん

望月さんが日々闘う姿が目に浮かびました。
私も勇気出して、目の前の小さなことから変えていきます。

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ゆずゆず 
返信先: @ISOKO_MOCHIZUKIさん

今日、#新聞記者 見てきました。
新聞、TVなどの報道が権力に屈して事実を伝えられず、官僚は政権への忖度で隠蔽、改ざんなどが乱発する現状ですが、大半の人はおかしいと声をあげたいはず。
たくさんの人がこの映画を見て声をあげて欲しいと思いました。

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mamisan2016 
返信先: @ISOKO_MOCHIZUKIさん

出来ることあります。
変えられることを変えるちょっとした勇気!

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さあさあ 
返信先: @ISOKO_MOCHIZUKIさん

松坂桃李さん、シム・ウンギョンさん、お二人の演技が本当に素晴らしかった。#新聞記者

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こうがみちほこ 
返信先: @ISOKO_MOCHIZUKIさん

#新聞記者 #映画新聞記者 愛媛で唯一上映している今治市で観てきました。静かな重い緊張感の連続で心拍数が上がってます。これで良いのか?このままで良いのか?小さな違和感をずっとそのままにしていて良いのか?

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LunaTomo  メディアは政府の広報 
返信先: @ISOKO_MOCHIZUKIさん

観に行きました?最後までスリル満点ですね。
そして、久しぶりにあの事件もこの事件も思い出し、忘れないぞ、と心に誓いましたよ。これからも応援してます。

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peacepeace 
返信先: @ISOKO_MOCHIZUKIさん

俳優さんたちの演技がうまくて、おもしろい映画になっています。獣医学部のある大学で人口密集地から離れた地域にあれば、生物兵器の研究にぴったり。なぜあそこに獣医学部なのか、ずっと不思議だった。

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親愛なる El Che (全原発即廃炉) 
返信先: @ISOKO_MOCHIZUKIさん

#新聞記者
官僚の中にも、メディアの中にも、ダメ官僚、ダメマスコミ人ばかりでなく、巨悪と戦う心ある人達を応援したい気持ちです。
あらためてこの映画を見て、現実に望月衣塑子さんも記者クラブメディアの中で、本当に戦っているのが分かりました。#東京新聞 を購読して応援しています。

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三悔堂 
返信先: @ISOKO_MOCHIZUKIさん

“現実世界の望月さんたちもいろんな攻撃に晒されているんだろうな” と映画を見ながら考えていました。
私たちにできることは限られているけれど,この映画について,また勇気ある発言についてTwitterで応援することも無意味ではなさそうですね。

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森田ミツ 
返信先: @ISOKO_MOCHIZUKIさん

望月さんの著書を読み、映画化されると聞いて楽しみにしていました。
エンターテイメントでありながら、考えさせられる素晴らしい映画でした。
この映画をできるだけ多くの人に観てもらいたいと思います。

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ゆたちゃん 
返信先: @ISOKO_MOCHIZUKIさん

#新聞記者みた 昨晩観ました。23:20終映のレイトショーでもほぼ満席!そう、こんな事件あったばっかりだよね!これもそうだね!まだ続いてるよ!かたがついてないよ、この話!こんな汚いやり方で、世論操作やってるんだ!やってても不思議はない!いろいろ符合するよね、支持率とか!息を呑んで観た!

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Δ 〜選挙に行こう〜 
返信先: @ISOKO_MOCHIZUKIさん

新聞記者 見てきました。
やはり、ウソはいかんですね。
隠すことさえ、罪になる・・・
そして、知らない ということは、怖いことだ。

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kahy 
返信先: @ISOKO_MOCHIZUKIさん

本日観させていただきました
政治の汚い部分に目を向けて過ごして来ましたが、すでにうやむやになりそうな加計学園問題に改めてスポットを当てる絶好の機会だと思いました。国民は沢山のことで騙されていることに気づくべきです
もう、腐った政治に終止符を打たなければ日本の未来は無いと確信しました

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nabeoolongtea 
返信先: @ISOKO_MOCHIZUKIさん

望月さん、取材お疲れ様です。私も新聞記者を観ました。この映画はプロデューサーや望月さんをはじめ出演者、監督を含めた全ての関係者から我々観客に今の日本これでいいのと問いかけられた映画だったと感想を持ちました。東京新聞、拝見していますよ。

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るちゃ 
返信先: @ISOKO_MOCHIZUKIさん

映画「#新聞記者」の生みの親の望月さん、日々の取材活動、本当にお疲れ様です。貴女の活動を通して様々な問題点が白日の下に晒されることで、政治に関心を持つ人が増え、結果として国が変わっていけば良いと思っています。私の周辺にたくさん拡散しますね。

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望月衣塑子さんがリツイート
南 彰(新聞労連委員長)@MINAMIAKIRA55

映画「#新聞記者」のなかでは、意に沿わない報道や記者を「誤報」「捏造記者」といって脅し、「あったもの」を「なかったこと」にしようとする権力の姿が描かれている。現在進行中の現象の核心をこれほどリアルに、大胆に描き出した作品があっただろうか。

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望月衣塑子さんがリツイート
シネマイーラ@cinemae_ra

「新聞記者」上映終了後に、お客様が拍手されました!珍しい出来事ですね。それだけ支持共感されたのでしょうね。ありがとうございます。
中日新聞「映画の扉」に紹介記事を書きました。夕刊には監督インタビュー大きく掲載されました・・7/19まで上映しますので鑑賞是非是非です。

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望月衣塑子さんがリツイート
希木ゆきち@poguemahaone

エンドロール後、一瞬静まり返ったのち、自然と会場に拍手が。「よくやった!」とお客の声。作品としてもジャーナリズムとしても素晴らしい。そう、よくやった、だ。気持ち悪いくらい良く出来た、フィクション、だ。
面白いから、とかじゃない。頼むからただ観てくれ。

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望月衣塑子さんがリツイート
にゃん吉@umetaro_uy

映画「新聞記者」 問い合わせ殺到でHPパンク!!
藤井監督「1人のこの国に生きている人間として何で今まで避けてきたんだろ。逆にそこに気づいた。自分たちの話しなのにずっと無視してきたのはなんでだろう。この映画に携わることで再認識した」
今起こっている現実とリンクしていて面白かった

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望月衣塑子@ISOKO_MOCHIZUKI

映画「 #新聞記者 」
#松坂桃李 さん「新聞記者のHPがきのうパンク、皆さんの感想多くて。それくらい熱量のある作品なんだなと」
#藤井道人 監督「この国に生きる人間として何で避けて来たのかと。自分たちの話なのに無視してきたのは何でなんだ。映画に携わり再認識した」

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望月衣塑子@ISOKO_MOCHIZUKI

映画「 #新聞記者 」
#河村光庸 プロデューサー「( #詩織 さんへの性的暴行事件で準強姦)逮捕状取り下げなんてあり得ない。官邸は身近な人間達守るために警察まで動かすのかと衝撃だった。警察国家化進み、内調が公安を使い情報吸い上げ、官邸が政敵潰しに利用してる」

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望月衣塑子さんがリツイート
報道1930とNEWS23を応援する会@映画『新聞記者』6/28公開@ouenhst

報ステの元チーフプロデューサーの女性、その後も経済部長ながら武器輸出など特集で報道に顔を出してたのに、ここへきて完全に報道と関係ない部署へ異例の左遷!
みなさん、テレビ朝日へ抗議をお願いします!
電話→03-6406-5555
ご意見フォーム→http://goo.gl/i4Pcn

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望月衣塑子さんがリツイート
yoshita07@Harunchan123

「公務の在り方を問うシンポジウム」
前川喜平氏「最悪は中央官庁の幹部人事。安倍さん菅さんのメガネに適う人物しか登用されない。やりたい放題、そこにいるはずのない人達がポストを占めている。霞が関の人事を変えない限り劣化は止まらない」
シンゾーの官僚私兵化は取り返しのつかない所に来ている。

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望月衣塑子さんがリツイート
マス対コア@MASS_VS_CORE

上田晋也のサタデージャーナル最終回 (2019年6月29日)
「一人ひとりが問題意識を持ち考え行動に移す≠アれが大事ではないか!
あたりまえの事が言えない世の中は健全な社会とは言えない!」
「政治、世の中を変えるのは、我々一人ひとりの意識だと思っています」

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望月衣塑子さんがリツイート
藤井道人@mickbabel

「新聞記者」原案の望月衣塑子さんは、忙しい中5分でも10分でも現場に来てくれて、記者の動きやリアリティを細かく教えてくれたとても熱い方でした。今この日本で、1人の人間としてどう生きていくか。いよいよ明日公開です。皆様の眼でこの映画を感じていただけたら幸いです。 #新聞記者 #6月28日

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望月衣塑子さんがリツイート
ジョンレモン@horiris

本日28日から公開の #新聞記者 を観て来ました。
公開中なので詳しいことは書けませんが、内容がリアルで怖ろしいほどの恐怖。妻と子どもを持った父の心の葛藤。もう涙が止まりません。
官邸前のデモのシーンもリアルで「ほんとのこと言え!」など怒号系コールそのまま再現。
絶対お勧めの映画です。

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望月衣塑子さんがリツイート
Asuka0813@Asuka08131

#新聞記者みた
良かった。もう一度観たいです。
私たちの生きているリアルとリンクして、とても怖い。
このおそろしい現実の中で自分はどう生きるのか向かいあえる作品です。
たくさんの人に観て欲しい。
特に中学生、高校生、大学生に観て欲しいです。
#新聞記者
#私たちこのままでいいんですか

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望月衣塑子さんがリツイート
南 彰(新聞労連委員長)@MINAMIAKIRA55

政治部に籍を置く1人として、映画「#新聞記者」プロデューサー河村光庸さんの指摘は痛い。
《既存メディア、特に政治部の記者たちは望月記者を「目立ちたいだけ」と非難していますが、その前にジャーナリズムの本質的な姿勢に立ち返るべき》
#私たちこのままでいいんですか

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望月衣塑子@ISOKO_MOCHIZUKI

映画 #新聞記者 で #内調 の中で葛藤する #外務官僚 を見事に演じ切っていた #松坂桃李 さん
「問題作でも、全裸でも、僕はひるまない。最初に脚本読んだ時『こんなに攻めた映画作るのか』と衝撃を受けた。ただ、最終的にお受けする際には迷いはなかった」 #婦人公論

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望月衣塑子さんがリツイート
冨永 格(たぬちん)@tanutinn

「権力と闘うジャーナリストを描く外国映画を見ると、こういう映画は日本では無理かと思ってしまうが、そんな諦めを打ち消してくれたのが、この『#新聞記者』だ。取り上げている数々の政治事件が何を指しているかは一目瞭然。現在の大手映画会社にはおそらくできないだろう」(キネマ旬報の評)

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望月衣塑子さんがリツイート
kappaー選挙に行かなきゃ日本は何も変わらない@aVuhO1C6fvZoA0L

映画「新聞記者」みた。
怖かった。
終了後、満員の客は咳払い一つ聞こえない沈黙、、、
小説、映画ではあるが、想像していたこの国の暗部と100%同じ。場面は見慣れた国会前、内閣府、記者会館、。
日本国民みなこれを見て選挙やったら自公は10議席とれるだろうか?
必見!!

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https://twitter.com/ISOKO_MOCHIZUKI/status/1144804651574820864
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/571.html

[政治・選挙・NHK262] 「民意反映」実感乏しく 有権者に聞く「民主主義とは」(東京新聞)
<参院選 くらしデモクラシー>
「民意反映」実感乏しく 有権者に聞く「民主主義とは」

2019年7月1日 朝刊

https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201907/images/PK2019070102100088_size0.jpg
民主主義は機能している?

 「選挙は民主主義における最大の論戦の場」「民主主義の原点である選挙」−。安倍晋三首相がそう連呼したのは、2年前の衆院選。「民意」は安倍政権を選択したが、この2年、政権が数にまかせて押し通した重要法案には、水道の民営化を認める改正法や、生煮え議論の入管難民法改正など、国民に異論が多いものも。この現状を有権者はどう見ているのか、参院選を前に問い掛けてみた。「民主主義って何だと思いますか?」

  (小倉貞俊、神野光伸)

 「国難突破解散」をうたった二〇一七年十月の衆院選。安倍首相は選挙前の記者会見で「民主主義」を繰り返し、解散の大義を強調した。「税こそまさに民主主義。国民の信を問う」「民主主義の原点である選挙が、北朝鮮の脅しで左右されてはならない」など、普段の演説ではほぼ使わない「民主主義」という単語が、一回の会見で五回登場。「森友・加計問題」の国会審議をしないままの解散に、疑惑隠しとの批判が高まっていた時だった。

 選挙で勝利した後の安倍政権下では、官僚の忖度(そんたく)による公文書偽造や破棄などの問題が噴出。野党は「民主主義の危機」を叫ぶ。

 与野党でかみ合わない「民主主義」という言葉。有権者はどんなイメージを持っているのか。東京・渋谷駅前で都内の会社員男性(26)は「平和とか平等、ですかね」。アルバイトの女性(23)は「世の中がうまくいっている、というイメージ」と答えた。

 無料通信アプリ「LINE(ライン)」でつながるフォロワーにも同様に投げかけてみると、老若男女から「民の暮らしをよくするための政治」「単なる多数決にとどまらない、少数意見の尊重」「何でもみんなで話し合って決める」などの返答が寄せられた。

 「日本で民主主義は機能していると思うか」も尋ねたところ、二十代女性が「日常生活に問題ないから、機能している」と回答したものの、実名で回答したほぼ全員が「機能していない」「ほぼ機能していない」とした。その理由として、沖縄県民の「民意」に反して、名護市辺野古(へのこ)への米軍新基地建設を進める国の姿勢を挙げる人が多かった。

 千葉県市川市の主婦井上英子さん(56)は「『普通が一番』というのが母の口癖で、周りと同じにしていれば、それが一番幸せと教育されてきました。周りや世の中の空気に乗るだけの人が多ければ、民主主義が機能するのは難しいのではないかと思います」とした。

 民主主義が「機能不全」に見えるのはなぜか。専修大の岡田憲治教授(政治学)は「前回衆院選では与党が大勝したものの、得票率では五割を切っていた。小選挙区制の多数決システムへの違和感もあり、『民意が反映されていない』との思いを多くが募らせている」と指摘する。

 岡田氏は「民主主義とは多数決のことではなく、共同体を運営する一手段」と説明し、有権者として参加することの重要性を説く。「民主主義は、間違えることを前提にするシステム。自らの判断ミスを踏まえて協力し、未来をつくっていく当事者意識が大切だ」

https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201907/CK2019070102000111.html
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/593.html

[政治・選挙・NHK262] トランプの言うとおり(長周新聞 コラム狙撃兵)
2019年7月1日

 米大統領のトランプが「日米安保は不公平である」と騒ぎ始めて、日本政府が慌てている。最近、親しい人物との会話のなかでこの条約の破棄に言及したことが取り沙汰され、日米当局は即座に否定していたが、その後の米テレビ局のインタビューに対して、改めて「日本が攻撃されたら米国は日本を守らなければならないが、米国が攻撃されたときに日本はわれわれを助ける必要がない」とのべ、その片務性に強い不満を示したというのである。世界中で戦争をひき起こしている米国・米軍を助ける必要がある、つまり不戦の誓い(憲法九条)を覆して、世界中の戦争に参加せよという意味ならば、こんな条約はトランプの望み通りに破棄した方が、今後の日本社会にとってはもっとも危害が及ばない賢明な選択だろう。世界中でアメリカに成りかわって恨みを買うなど、まっぴらゴメンである。

 日米安保は不公平である−−。確かにトランプがのべている通り、日米安保条約はまことに不公平・不平等である。いまさらいわれなくてもわかっている。米本土防衛のための不沈空母として、中国やロシアを睨んだ最前線基地を国内に120カ所以上も置かれ、その駐留経費は一方的に日本側が負担させられたうえに、米軍再編で部隊配置が変わると、グアムへの移転経費や厚木基地の空母艦載機機能の岩国移転経費など、みな日本側の負担である。首都圏はじめ日本各地で制空権を握られ、米軍関係者や大統領は空の玄関口である成田空港ではなく横田基地から入国してきたり、いつでも好き勝手である。米軍機が墜落したり、基地内で爆発事故が起きても日本側は捜査はおろか近づくことすら許されず、主権国家といえる状況ではない。米兵が刑事事件をひき起こしても日本の法律で裁くことができず、米国本国に逃げ帰ってチャラにされたり、日米地位協定ともどもまことに一方的で不公平・不平等だらけである。トランプのいうとおりだ。

 したがって、その片務性に不満を示して破棄するとアメリカ側がいうのであれば、日本側としてもおおいに片務性に不満を示し、積年の怒りを込めて破棄したうえで、辺野古も普天間も、岩国や厚木、横須賀、横田はじめとした国内120カ所の米軍基地・施設もそっくり返還させ、米本土に持ち帰らせれば、それこそ安倍晋三が唱える「戦後レジュームからの脱却」をなし得たと評価することもできる。所詮「日本を守るため」など後付けの欺瞞であって、単独占領の遺物でしかない。日本列島を武力で抑え、アジア侵略の拠点にしていただけなのだ。朝鮮戦争に出撃し、ベトナム戦争にくり出し、戦争に次ぐ戦争を仕掛けた無料滞在型の不沈空母なのだ。

 ここまでくると「日本を守る」の呪文はきわめていい加減であり、欺瞞に満ちていることを考えないわけにはいかない。彼らは日本を守ることなど考えておらず、もともとが原爆を投げつけ、沖縄戦で大量殺戮をやり、全国空襲で一般人を殺戮したうえで乗り込んできた占領軍である。それが散々殺したうえで「日本を守る」などと欺瞞しつつ、「アメリカが攻める」ために居座り続けて七〇年以上が経過している。

 しまいには南沙諸島を見ても米軍の身代わりになって自衛隊が中国との睨み合いにかり出され、最近ではイランとの武力衝突にも動員されかねないような状態だ。グアムとハワイにある米軍の重要出撃拠点を防衛するために、その盾として手前に位置する萩市むつみと秋田市に陸上固定型のイージス・アショアを配備するなど、「日本を守る」という建前は既に浮き上がり、露骨なまでにアメリカを守るための配置である。そして「日本を守る」ために米国内でも欠陥機とされているF35を売りつけ、米軍需企業を潤わせるATMのような扱いである。こうした一方的で不公平な要求に対して、主権を失った隷属国家がどこまでも付き従っていく無様さ、捨て駒にされてなお丸呑みしていく情けない姿を見せつけられている。 吉田充春

https://www.chosyu-journal.jp/column/12063
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/594.html

[政治・選挙・NHK262] 政府・与党総がかりで問題にフタ・・・「議員身分は重い」の誤解、規範崩壊を助長 専門家語る(朝日新聞)
朝日新聞デジタル 2019年7月1日06時00分

 説明責任を果たさない行政府に、行政監視の役割を放棄する立法府。安倍晋三首相は「安定した政治」と胸を張るが、政治の機能不全が目につく。4日に公示される参院選で、主権者はなにを問うべきなのか。長谷部恭男・早稲田大教授(憲法)と杉田敦・法政大教授(政治理論)に語り合ってもらった。(構成 編集委員・高橋純子)

■政府・与党総がかりで問題にフタ

https://www.asahicom.jp/articles/images/AS20190630001368_commL.jpg

 杉田敦・法政大教授 26日に閉会した通常国会では、予算委員会の開催日数が過去10年間で最少でした。参院では、野党は国会規則に基づき、3分の1以上の委員による「開会要求書」も出しましたが、与党は拒否した。2年前、憲法53条に基づき臨時国会の召集を野党が要求した時も、安倍内閣は無視して衆院を解散した「前科」がある。立憲主義に反するふるまいが常態化しています。

 長谷部恭男・早稲田大教授 参院選を控え、政権のイメージを悪くしたくない。ゆえに論戦は極力避けるし、金融相は「老後資金2千万円不足」を指摘した報告書を受け取らない。政府・与党総がかりで問題にフタをし、それを「政治の安定」と言ってはばからない。まともな大人のやることとは思えません。政治家が、自分たちは社会のお手本、ロールモデルなのだという規範意識を失ってしまっている。選挙に勝てばそれでいいと。制度の劣化ならば修復も可能ですが、人の劣化、政治家の規範意識の崩壊は、国家の崩壊を招来しかねません。

 杉田 政治家が選挙を通じて主…

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残り:2346文字/全文:2943文字

https://www.asahi.com/articles/ASM6X52ZVM6XULZU00P.html?iref=comtop_list_pol_t
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/598.html

[政治・選挙・NHK262] 「法と民主主義」6月号《特集・アベノミクス崩壊と国民生活》のお薦め(澤藤統一郎の憲法日記)
 
梅雨空ぐずつく中、本日で6月が終わる。天皇交替とそれに伴う新元号騒ぎはやや落ち着き、通常国会が会期の延長なく閉幕し、鳴り物入りの大阪G20もさしたる話題なくスケジュールを消化した。

ところで、大阪に集まった各国首脳の顔ぶれ。知性ある人の影は薄く、知性の欠けた人物ばかりが我が物顔の振る舞い。およそ人類の理想とは無縁で、人権や民主主義、格差の是正などになんの関心もなさそうなトランプ、習近平、プーチン、そしてトランプにものが言えない安倍晋三。もうひとり、カショギ殺害の犯人と名指しされているサウジの皇太子など。なるほど、これが今の世界の縮図なのだ。

週明けの明日、7月1日からは本格的な参院選挙戦。日本国憲法の命運にかかわる選挙だが、自ずと焦点はアベノミクスの評価となり、具体的には「消費増税」の可否と「年金問題」が争点となる。憲法改悪阻止のために、政権与党の経済政策の失敗を論じなければならない。

このほど発刊となった、日本民主法律家協会の機関誌「法と民主主義」6月号は、そのような問題意識から、「アベノミクス崩壊と国民生活」を特集した。
https://www.jdla.jp/houmin/index.html

下記のとおり、緊急の特集に素晴らしい執筆者を得ることができた。

 特集★アベノミクス崩壊と国民生活
 ◆特集にあたって … 編集委員会・南 典男
 ◆今、一番心配すべきことは何か グローバル経済と日本 … 浜 矩子
 ◆アベノミクスを歴史の文脈でとらえる … 山本義彦
 ◆安倍政権による「全世代型社会保障」への軌跡 … 二宮厚美
 ◆アベノミクスと増税・消費税 … 浦野広明
 ◆アベノミクスと漁業… 加瀬和俊
 ◆アベノミクスと日本の財政 … 醍醐 聡

 ■連続企画●憲法9条実現のために〈23〉
 安倍改憲を吹っ飛ばせ!自民党改憲Q&A徹底批判
 (改憲問題対策法律家6団体連絡会・安倍9条改憲NO!全国市民アクション主催 院内集会より)
  ・集会で明らかにされた「自民党改憲Q&A」の嘘とごまかし … 大山勇一
 
 ◆司法をめぐる動き
  ・冤罪救済と誤判の防止に向けて … 高見澤昭治
  ・5月の動き … 司法制度委員会
 ◆メディアウオッチ2019●《選択の季節に》
   トランプ、年金、イージスはつながっている 政府がウソを言うのは当たり前か? … 丸山重威
 ◆あなたとランチを〈46〉
  さあこれから飛ぶぞ … ランチメイト・大久保賢一先生×佐藤むつみ
 ◆改憲動向レポート〈15〉
  「憲法9条改正など私たちにはありえない。世界の真珠だ」(国文学者・中西進先生) … 飯島滋明
 ◆トピックス●いまなぜ西暦併用アピールなのか … 稲 正樹
 ◆時評●「裁判所にだけは行きたくない!」「弁護士のお世話にはなりたくない!」 … 今 瞭美
 ◆ひろば●不便にして、かつ有害。日常生活からの元号排除を … 澤藤統一郎

「法と民主主義」(略称「法民」)は、日民協の活動の基幹となる月刊の法律雑誌です(2/3月号と8/9月号は合併号なので発行は年10回)。毎月、編集委員会を開き、全て会員の手で作っています。憲法、原発、司法、天皇制など、情勢に即応したテーマで、法理論と法律家運動の実践を結合した内容を発信し、法律家だけでなく、広くジャーナリストや市民の方々からもご好評をいただいています。定期購読も、1冊からのご購入も可能です(1冊1000円)。

お申し込みは、下記のURLを開いて、所定のフォームに書き込みをお願いいたします。なお、2019年6月号は、通算539号になります。

https://www.jdla.jp/houmin/form.html

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               ◆特集にあたって

    内閣支持率を支えてきたアベノミクスは、崩壊する過程に入ったと思う。
    内閣府が公表する景気動向指数が2019年1〜3月期、4月期と連続
   して「悪化(景気後退の可能性が高い)」になった。株価や不動産価格が
   高かったのは、日本銀行が莫大な国債を買って金融緩和を続け、株、不動
   産信託を購入して買い支えてきたからだ。国の借金は鰻登りに増加したが、
   成長戦略は失敗し、名目GDPは停滞したままである。膨大な財政負担だ
   けが残った。
   他方、アベノミクスは国民生活に深刻な危機をもたらしている。
   老後の資金形成で「およそ2000万円必要になる」などとした金融庁の
   審議会がまとめた報告書が国民に大きな不安をもたらしている。
    社会保障制度だけでなく、実質賃金及び家計消費の低下、地域経済の衰
   退、地銀・信金の経営悪化、内需の衰退、貿易収支の赤字化など、国民生
   活全般に深刻な危機が生じている。戦後憲法のもと築かれてきた社会保障
   制度、雇用・賃金を保障する労働基本権制度、所得再分配機能を持った税
   制度、地域を活性化させる地方自治制度などが、アベノミクスによって加
   速度的に壊されている。

    本特集は、本年7月に予定されている参議院議員選挙を前にして、アベ
   ノミクスが日本経済と国民生活の深刻な危機をもたらしていることを明ら
   かにし、アベノミクスから抜本的に転換する経済政策を展望しようという
   ものである。

   浜矩子氏(同志社大学教授)は、グローバル経済の中でのアベノミクスの
   特異性として、@国家主義を標榜する最もたちの悪い「ディグローバル」
   (国境を越えた人々のつながりの破壊)であること、Aキャッシュレス化
   (実は、物理的現金から電子的現金に現金決済の形態を切り替えること)
   を推進し、権力が市民の現金取引を捕捉しようとしていること、Bギグエ
   コノミー化(フリースタイルで働くこと)と称して、働く人々の人権を蔑
   ろにし、生産性向上のために使おうとしていること、そしてこの三つが関
   連し合っていることを指摘している。

   山本義彦氏(静岡大学名誉教授)は、ナチスが経済を安定させてナチズム
   体制を構築したのと同様に、第二次安倍政権が経済の浮揚によって改憲を
   実行しようとしていることを喝破した上で、アベノミクスの6年間が給与
   水準の低下、消費税増税や年金給付の低下をもたらして国内市場を制約し
   ていると指摘し、給与条件の向上、正規労働力の本体化、中小企業の生産
   活動の強化、法人税の適切な負担、介助労働の条件向上など、アベノミク
   スと真反対の方向に舵を切ることを展望している。

   二宮厚美氏(神戸大学教授)は、安倍政権7年間で社会保障費の削減が4
   兆2720億円に及び、圧縮されたのが医療・年金・介護の高齢者向けの
   福祉(「高齢者三経費」)であること、削減の理由として「高齢者三経費」
   の対応に消費税率10%への引き上げが必要(「社会保障・税一体改革」)
   と述べていたことを明らかにした上で、安倍政権はその後「一体改革」に代
   えて「全世代型社会保障」のキャッチフレーズを持ち出し、消費税増税後も
   高齢者三経費に回さないで済まし、社会保障費削減を基調とする政策を続け
   るとしており、ペテンであると鋭く問題を指摘している。

   浦野広明氏(立正大学法学部客員教授)は、安倍政権の消費増税8%によっ
   て、@消費支出が減って今に続く深刻な不況を引き起こしたこと、A消費税
   収入の大部分が法人税減税の穴埋めと軍事費に消えたこと、B消費税は企業
   の(利益+賃金)にかかるので、企業の外注化を促してリストラを促進した
   ことなどを指摘した上、消費税増税を中止して人権を基軸とした税制(応能
   負担の原則・税金を福祉に使う)に転換することを展望する。

   加瀬和俊氏(帝京大学教授)は、安倍内閣による漁業・農業の「成長産業化」
   方針の下で、漁業法が大幅に改変され、企業的経営体が優良漁場を優先的に
   確保し、免許された海面を私有地のように排他的に占有し続ける仕組みが作
   られ、@小規模漁業者を排除し、A都道府県行政を国の付属物とみなし、B
   現場の実情を軽視していると指摘している。アベノミクスによって、漁業の
   みならず地域経済全体が壊されようとしている。

   醍醐聡氏(東京大学名誉教授)は、アベノミクスにおける財政について、防
   衛関係費の後年度負担残高の伸びが大きいこと、装備品の価格や納期は米政
   府が主導しており、米側の納品書と精算書の記載に食い違いがあったこと、
   その一方で、市民生活に直結する社会保障関係費と地方交付税ののびが大幅
   に抑制されてきたことなどを指摘している。

   アベノミクスからの政策転換を広く訴え、安倍内閣を追いつめ、日本国憲法
   がかがげる人間らしい生活を取り戻す闘いのために、ともに頑張りましょう。
   〈「法と民主主義」編集委員会・南典男(弁護士)〉


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「ひろば」(執行部関係者の巻末コラム)欄は、私(澤藤)が書いた。「不便にして、かつ有害。日常生活からの元号排除を」という標題。

   4月1日に新元号が発表され、5月1日新天皇就任となった。だからと
   いって世は何も変わらず、また変わってはならない。にもかかわらず、
   メディアは浮き足立ち、これに乗せられた人々の「代替りフィーバー」
   「令和フィーバー」現象である。政権の思惑どおりであったろう。

   30年前は下血報道が長く続いた後の天皇の死に伴う交替劇だった。国
   民に前天皇の死に対する弔意が求められ、日本社会の少なからぬ部分が
   唯々諾々とこれに従った。歌舞音曲の自粛が申し合わされ、大きな社会
   的同調圧力が可視化された。
   あのとき、よく分かった。天皇を「国民統合の象徴」としている憲法規
   定は、ナショナリズム喚起の有用な道具なのだ。対内的・対外的な国民
   統合の道具は、政権にとって便利な統治の装置なのだ。

   今回の新天皇就任には、天皇の死が伴っていない。国民主権原理を逸脱
   した前天皇のメッセージが生前退位容認の特例法となったからだ。その
   ために、今度は祝意強制の圧力が蔓延した。新天皇就任祝意一色のメディ
   アの垂れ流し、前天皇礼賛の提灯記事・提灯番組の羅列が大きな役割を
   果たした。その提灯メディアに乗せられて、戦前・戦中を彷彿とされる
   提灯行列までが行われたという。
   「住民たちがちょうちんを振ったり万歳三唱をしたりして歓迎の気持ち
   をあらわすと、両陛下は、上下左右にちょうちんを振ってこたえられま
   した。…… 両陛下の姿が見えると住民から歓声があがり、両陛下は、
   何度も手を振ってこたえられていました。」
   というのが、NHKの報道である。ここに、主権者の姿はなく、臣民の
   残滓が見えるのみ。

   あらためて、象徴天皇制礼賛ないし受容のイデオロギーとの対峙が課題
   となっているが、その課題は、象徴天皇制を支える小道具との日常生活
   での対決として具体化する。その中で最重要のテーマが、「日の丸・君
   が代」強制への抵抗と、元号使用の拒否であろう。
   元号という紀年法は、天皇の在任期間と緊密に結びつけられた天皇制の
   付属制度であることから、その表記が通用する地域は限定され、存続期
   間も有限である。明らかな欠陥紀年法。ビジネスには、不便極まりなく、
   国民生活にも元号は廃れつつある。先年、ある皇族女子の婚約記者会見
   での発言が、すべて西暦で語られていたことが話題となった。

   ところが、裁判所は5月1日以後文書の日付に新元号を使い始めた。当
   然に、事件番号もである。訴状や準備書面の主張部分はすべて西暦を用
   いても、固有名詞である事件番号は元号を用いるしかない。そこで、裁
   判所を孤立させたい。弁護士はすべからく、西暦を使おうではないか。
   そうすれば、やがては法律文書も、判例検索もすべて西暦表記に統一せ
   ざるを得なくなる。
   もっとも、現状は楽観できない。人権派と思しき弁護士の元号使用に愕
   然とすることがある。本誌への寄稿にも、時に元号表記があって戸惑わ
   ざるをえない。
   時代遅れの元号表記、不便というだけではない。国民の主権意識覚醒の
   障害として有害なのだ。日常性から排除しなければと思う。(弁護士 
   澤藤統一郎)

(2019年6月30日
 
http://article9.jp/wordpress/?p=12886
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/600.html

[政治・選挙・NHK262] 望月衣塑子記者インタビュー前編 罵倒されても外せと言われても、質問を続ける理由(講談社サイト ミモレ)
インタビュー 未来が変わる小さなchange
罵倒されても外せと言われても、望月衣塑子記者が質問を続ける理由

ミモレ 2019.6.26


6月公開の映画『新聞記者』は、ある内部告発に端を発した疑惑を追う女性ジャーナリストの物語。「医療系大学の新設を巡る利権」「権力の癒着」「官僚のスキャンダル」「内閣情報調査室(内調)の暗躍」……そこで描かれるのは、現実でもどこかで耳にしたことがあるような話ばかり。原案は東京新聞の記者、望月衣塑子(もちづきいそこ)さんによる『新聞記者』(角川新書)。内閣の定例会見での、菅官房長官とのバトルで知られる人物です。

「声をかけて下さったプロデューサーさんが今の政治に疑問を持ち、“日本でもアメリカのように政治に切り込んだ社会派作品があるべきだ”と強く思っている方で。ただ私の体験を書いた原案そのままではなく、より広い観客に訴えられる、娯楽性のあるフィクションにしたいと。私と、前川喜平さん(元文部科学省事務次官)、マーティン・ファークラーさん(元ニューヨーク・タイムズ東京支局長)、南彰さん(朝日新聞記者・新聞労連委員長)の4人の対談も撮影したんですよ。“どうやって使うんだろ?”と思っていたんですが(笑)、うまくインサートされていて。実在の人間がリアルな政治問題を批判する場面が入ることで、映画と現実がクロスする感じになっています」

映画は、私たちの何の変哲もない日常、その裏側を描いていきます。例えば。疑惑を追う主人公の若手記者・吉岡エリカが、その過程で出会う若手官僚・杉原拓海。彼は内閣情報調査室で働いていて、現政権を維持するための世論コントロール――スキャンダルのリークや、フェイクニュースの拡散など――を行っています。権力の都合のいいように操作される世の中で、それを知りながら――もしかしたら知るからこそ、メディアは忖度しているようにも。それもまた、どこか現実とオーバーラップします。

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東都新聞記者・吉岡エリカを演じるのは今最も注目される韓国女優のひとりシム・ウンギョン。正義と組織に葛藤する若き官僚・杉浦拓海を演じるのは、主演作が続く松坂桃李。 c2019『新聞記者』フィルムパートナーズ

■「被害者報道は誰もやりたくない」「求めてない」で良いのか

「“メディア=正義”とは見えていないんですよね、やっぱり。例えば5月に起きた自動車事故での保育園の会見。おそらくメディアに関係している方だと思うのですが、“現場の記者は誰もやりたいと思っていない、遺族取材をやめよう”とつぶやき、ネット上で数万を超える“いいね!”がつきました。私も記者になって最初の仕事が遺族取材で、なぜこんなことをと思った経験があるので、その気持ちはわかります。でも被害者の言葉を伝えなければ、事故の悲惨さは“他人事”で終わってしまう。ニュースにすることで“保育園の沿道のガードレールを義務化しよう”といった、社会の変化につながっていくと思うんです」

ただその一方で、政治家などが相手の場合、「それで終わり?」と思ってしまうことも。そのバランスの悪さが、メディア不信の根源にあるようにも思います。

「それは私も憤りを感じるところで。“韓国で「モリカケ(森友・加計)」みたいなことが起こったら、官邸前に10万人20万人集まるのが普通。なんで日本人は怒らないんですか?”と言われたことがあるんですが、まず記者がそうなんです。“お上至上主義”が抜けないし、忖度してしまうんですよね」


■質問も答えも“予定調和”の会見で、何が聞けるのか?

官房長官とのバトルも辞さない望月さんの記者としての姿勢には、そうした思いがあります。映画に登場する主人公・エリカの、“アメリカ育ちで日韓の両親を持つ”というキャラクターは、そうした新聞業界にある望月さんの「異物感」とリンクしているかのようです。

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c2019『新聞記者』フィルムパートナーズ

「納得がいかないとストレートにぶつかっていく主人公には、“私もこんなやったよな”って思いました。でも作品を見た当時の上司からは“ぜんぜん違うだろ、お前はあんなおとなしくない、あんなもんじゃなかった”と(笑)。大学で一年だけ海外留学を経験するまではずっと国内育ちですが、よく“帰国子女だよね”とも言われますね。でも海外のジャーナリストは“海外では望月さんみたいな人ばっかり”と」

逆を言えば、望月さんが“変わり者”と思われることこそが、日本のマスコミの特殊性かもしれません。望月さんは続けます。

「例えば今の官房長官の定例記者会見って、長官側の要望もあり、質問が事前に官邸側に渡っていることが多いと聞きます。自民党でも後藤田正晴官房長官の時はまずしていなかったと聞きますが、たぶん菅さんは質疑が苦手で、その場でしどろもどろになったりしたくないんだと思うんです。それは官房長官に限らず、首相の会見も同じ。もちろん記者はそうはしたくないけれど、求められてしまえばなかなか抗えない。
海外では記者がダイレクトに質問をぶつけるのが当たり前で、あのトランプ大統領ですら、例えばシンガポールで行われた米朝首脳会談では、単独で1時間ぶら下がり(記者が大統領を囲む)会見をやる。でも日本の政治家は国連なんかで外国の記者に“事前に質問を投げてくれ”と言って笑われている。記者も政治家もそれでいいというありようは、本当によくない。用意された答弁だけ、形だけで、何も聞けないし、何もチェックできないですから」

実は、メゲたりすることもあるそうです。特に菅官房長官が国会で望月さんを罵倒し騒ぎになっている時は、あまりに腹が立って食事が喉を通らなかったのだとか。

「注目を浴びて“罵倒されてましたけど大丈夫ですか?”とかと聞かれるんですが、“大丈夫じゃないよ!”って(笑)。会社からも“検証記事をまとめるから、今は不用意にしゃべるな”と言われていて、反論一つできず言われっぱなしでしたし。
でもしばらくすると応援してくれる人が沢山出てきて。市民団体の方たちが官邸に抗議声明を出したり、直接抗議してくれたり、朝日新聞や共同通信の記者が会見で追及してくれたり。内閣記者クラブも、昨年末の官邸からの“望月を外せ”という要請には、“さすがに容認はできない”と抵抗してくれたみたいで。もちろん私の至らない点や反省すべき点もありますが、私の権力への向き合い方について、正面から文句をいう人は少なくなってきたと感じています。それは私のためではなく、「記者はなんの為に存在しているのか」「政府広報のためではなく、国民の知る権利を支えるために記者がいるんだ」という、“原点”の価値を共有する記者達が多いということなのだと思います」

伊藤詩織さんに端を発した日本のメディアの#MeToo、テレ朝の女性記者へのセクハラ、事務次官による「女性記者を囲む会」の実態など、望月記者へのインタビューは後編へと続きます。

<映画紹介>
『新聞記者』

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c2019『新聞記者』フィルムパートナーズ

一人の新聞記者の姿を通して報道メディアは権力にどう対峙するのかを問いかける衝撃作。
東京新聞記者・望月衣塑子のベストセラー『新聞記者』を“原案”に、政権がひた隠そうとする権力中枢の闇に迫ろうとする女性記者と、理想に燃え公務員の道を選んだある若手エリート官僚との対峙・葛藤を描いたオリジナルストーリー。主演は韓国映画界の至宝 シム・ウンギョンと、人気実力ともNo.1俳優 松坂桃李。

https://youtu.be/zdPSidwlJ_I
『新聞記者』予告篇

6/28(金)新宿ピカデリー、イオンシネマほか 全国ロードショー!
監督:藤井道人
出演:シム・ウンギョン、松坂桃李
本田翼 岡山天音 郭智博 長田成哉 宮野陽名 / 高橋努 西田尚美
高橋和也 / 北村有起哉 田中哲司
配給:スターサンズ/イオンエンターテイメント
c2019『新聞記者』フィルムパートナーズ

撮影/塚田亮平
取材・文/渥美志保
構成/川端里恵  
著者PROFILE  

望月 衣塑子Isoko Mochizuki
1975年、東京都生まれ。東京・中日新聞社会部記者。慶応義塾大学法学部卒業後、東京新聞に入社。千葉、神奈川、埼玉の各県警、東京地検特捜部などで事件を中心に取材する。2004年、日本歯科医師連盟のヤミ献金疑惑の一連の報道をスクープし、自民党と医療業界の利権構造の闇を暴く。経済部記者などを経て、現在は社会部遊軍記者。防衛省の武器輸出政策、軍学共同などをメインに取材。著書に『武器輸出と日本企業』(角川新書)、『武器輸出大国ニッポンでいいのか』(共著、あけび書房)、『新聞記者』(角川新書)。二児の母。

https://mi-mollet.com/articles/-/17788
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/602.html

[政治・選挙・NHK262] 望月衣塑子記者インタビュー後編 ハラスメントに声を上げることは、忖度社会を拒否することでもある(講談社サイト ミモレ)
インタビュー 未来が変わる小さなchange
ハラスメントに声を上げることは、忖度社会を拒否することでもある【東京新聞記者・望月衣塑子】

ミモレ 2019.6.29


6月公開の映画『新聞記者』は、ある内部告発に端を発した疑惑を追う女性ジャーナリストの物語。「医療系大学の新設を巡る利権」「権力の癒着」「官僚のスキャンダル」「内閣情報調査室(内調)の暗躍」……そこで描かれるのは、現実でもどこかで耳にしたことがあるような話ばかり。原案は東京新聞の記者、望月衣塑子(もちづき いそこ)さんによる『新聞記者』。内閣の定例会見での、菅官房長官とのバトルで知られる彼女は、伊藤詩織さんの会見を受け、いち早くご本人にインタビューした記者としても知られています。

映画『新聞記者』には、伊藤詩織さんの事件をもとに描かれた場面があります。自身のレイプ被害を実名と顔を公表して告発した会見、その後の場面はそのまま、望月さん自身が経験したことです。

「特派員協会で行われた詩織さんの会見には、ネットも含めて大手メディアは全社来ていたんです。他社に抜かれたら嫌だから。なのに終わった後、各社が互いに“お前のとこやる?どうする?”と“談合まがい”なことをしてる。本当に、最低だなと。新聞では普段はそういうことは見たことがなかったから驚きました。さらに、加害者とされる人物の不起訴処分が確定し、報道機関に対して名誉棄損訴訟をちらつかせたこと、安倍首相に近い人物だったことで、メディアは完全に及び腰になってしまった。でもBBCもニューヨーク・タイムズも書いているわけですから。

テレビの報道においても、社の上層部からの圧力があったと聞いています。もちろんお上から文句を言われるということは、以前にもちょいちょいあったこと。“また電話がかかってきた”くらいで笑って流す程度のことだったんです。でも今は“官房長官の秘書官から連絡が”と大きな問題になってしまう。上層部が政権となれ合いの関係になっているから、現場の中間管理職たちが目を付けられることを恐れ、及び腰になってしまうんです。モリカケ問題で左遷され退職を余儀なくされたNHKの相沢冬樹記者がいい例ですが、人事権を握る上層部と政権との関係があり、それを現場が肌で実感しているから、委縮してしまっているんですよね。
またテレビ朝日では、安保法制や原発、憲法改正、年金問題などを取り組んできた松原文枝経済部長が、7月の人事異動で新設のイベント事業戦略担当部長に移ることになりました。彼女がディレクターとして企画・制作した、報道ステーションの「ワイマール憲法の教訓」の特集は、2016年のドキュメントの最高位「ギャラクシー大賞」と日本ジャーナリスト協会賞を受賞するなど、実績は十分です。
テレビ朝日の記者達からは「政権を批判する報道を続けてきたことへの明らかな報復・粛正人事だ」と批判の声が聞こえてきます。安倍一強が続く中で、メディアの幹部達が政権に擦り寄るような動きが目立ちますが、これはメディアの自殺行為ではないでしょうか」

■「あの事件」の裏で、常態化していたセクハラ

伊藤詩織さんの事件はまた、日本の女性たちのレイプ被害やセクハラについての様々な考えを浮き彫りにしました。「彼女にも非があったのでは」と考える人たち。本名と顔を出した告発を“売名”かのようにいう人たち。女性がレイプ被害を晒すことを嫌がる人たち。被害者然としていない彼女に腹を立てる人たち。

「マスコミの世界で言えば、テレビ朝日の女性記者が財務省の(当時)福田事務次官を告発したことがありましたよね。あの時に、財務省記者クラブのある女性記者が、“でも、みんな知ってましたよね”と言ったのを覚えています」

「福田さんは財務省のエリート中のエリートで、それまでも数か月に1回は記者クラブの大手経済新聞の男性記者たちが幹事になって『福田さんが女性記者に囲まれる会』というのをやっていたそうです。その飲み会では、福田氏が女性記者に向かって“お前、最近ヤってないだろ”なんてことを平気でいったり、手を握ったり肩を抱いたり。女性記者たちはその場では仕方なく“あははあはは”と付き合って、終わった後に“気持ち悪いよね”と言い合っていたと聞きました。昼間のアポで次官室に行った時ですら隣に座ってくる人だったから、分かっている女性記者たちは「絶対に1対1での夜の取材は危ない」という認識があったといいます。

告発した女性記者は国税庁との兼務で、福田氏のセクハラについてはある程度は知っていたけれど、そこまでの情報を共有しきれていなかった。告発した理由は「どこかで断ち切らなければ、いつまでたっても“女性記者なんて所詮そんなもん”という扱いしかされない」「自分一人の問題ではない、きっちり声を上げるべきだ」と考えたからだそうです。

彼女の告発の裏には、詩織さんの勇気に触発された部分があったと聞いた、と望月さん。録音したのも詩織さんの事件が証拠不十分で不起訴になったから。そして自分が所属するテレビ朝日ではなく新潮社に持ち込んだのは、会社に言えば音源ごと没収されかねないと分かっていたから――つまり彼女はあらゆる「忖度」を拒絶したのだと、言えるかもしれません。

「事務次官になるまでそんなことをやっていた人だから、これまでも嫌な目に遭った女性記者や財務省の女性職員はいたと思う。私たちの世代が戦っていたら、彼女や詩織さんの世代が苦しむことはなかったし、それを許してきた私たちの世代が反省するところだと思う。

詩織さんだって、当初こそサングラスにマスク姿でしたが、“自分が隠れなければいけない理由なんてない”と、途中からは日本に戻っても顔を隠さなくなった。そして本来やりたかったドキュメント番組の製作を次々と手掛け、カルバン・クラインのモデルにもなって、前向きにどんどん発信している。すごい驚きだし、その勇気は若い世代からしか学べない、学ばなきゃいけないと痛感します」

それ以降、様々なセクハラやパワハラの被害、体験について、声を上げて語り始めています。こうした流れをきっかけに、政治や社会に女性たちが参画していけば、世の中の空気は変わるのではないかと、望月さんは考えています。

「議員会館に行くとすごく感じるんですが、キーパーソンと言われるような政治家たちって、歩き方からして心許ないほど年配の男性ばかりなんですよ。そんな人たちが取り仕切っていたら、日本の政治が変わるわけがない。女性がきっちりとものが言える社会になり、いろんな形で関わっていければ。例えば、軍事ばかりにお金を使うのではなく、おざなりにされている教育や福祉にもお金が回るようになると思う。パンプスやハイヒールを女性に仕事で強いるのはおかしいと訴える、「#Ku too」の動きを見ても、女性だからと我慢することは何もない、どんなことでも言っちゃっていい。みんなで声を上げ、みんなで考え動いていけば、世の中は変わっていくと思います」

https://mi-mollet.com/articles/-/18016
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/603.html

[政治・選挙・NHK262] 「わたしたちに問われるのは、他に責任をなすりつけることではなく、自己批判を恐れず、失敗を直視し、一人でも多くの人びとと連帯する道を歩むことではないでしょうか」・・・松本昌次さん、戦後を体現した編集者の豊穣な世界 (朝日新聞社 論座)
松本昌次さん、戦後を体現した編集者の豊穣な世界

論座 2019年07月01日
中嶋 廣 編集者

https://image.chess443.net/S2010/upload/2019070100006_2.JPEG
編集者・松本昌次さん=2006年

■「ゼロ年代の50冊」の1冊 (本文はhttps://webronza.asahi.com/culture/articles/2019070100006.html?page=1参照。以下抜粋)

 今年1月15日、編集者の松本昌次さんが亡くなった。享年91歳。亡くなって半年近くが経つが、晩年の姿を、著書を通して書いておきたい。ここでは、私が編集をした『わたしの戦後出版史』(トランスビュー、2008年)と、それ以後に出た『戦後編集者雑文抄――追憶の影』(一葉社、2016年)、そして遺稿集、とは言っても松本さんの眼の行き届いた、『いま、言わねば――戦後編集者として』(一葉社、2019年)について書く。

■花田清輝と埴谷雄高の架空対談 (本文はhttps://webronza.asahi.com/culture/articles/2019070100006.html?page=2参照。以下抜粋)

 この『戦後編集者雑文抄』は、おおむね21世紀に書かれた文章を収める。今になってこの本を読めば、編集者・松本昌次さんがいかに多くの優れた人を、結びつけたかを思い知らされて、目くるめく思いがしよう。

 出版界が毎日毎日、新刊を出しながら、実際には荒涼たる風景の中で呆然と佇んでいるとき、松本さんの世界はじつに豊穣なのだ。今世紀に入って、荒涼のなかで、ほとんど何も残らなくなったとき、ただひとり松本さんだけが、小説家や詩人、政治学者や女優を華麗に結びつけた。

■吉本隆明との出会いと別れ (本文はhttps://webronza.asahi.com/culture/articles/2019070100006.html?page=3参照)

■初めて時事ネタを取り上げた「最後の本」

 最後の『いま、言わねば――戦後編集者として』は、松本さんが亡くなった後に出た。そういう意味では遺稿集だが、しかし松本さんから「最後の本」を作りたいという電話が、一葉社の和田悌二と大道万里子宛てにあり、会ってみると、収録予定の原稿はほとんど用意されていた。本の構成や目次から書名、体裁、発行部数、定価、販売方法まで、細かく書かれたメモが渡されている。

 これが齢91歳、亡くなる1か月前のことだ。全盛期、年に40〜50点作るのが当たり前の松本さんとしては、90歳を超えようが、亡くなる1か月前であろうが、本に関することはゆるがせにできなかった。

 「収録原稿は、基本的には二〇一三年から二〇一七年までに『レイバーネット』『ほっととーく』『9条連ニュース』に書かれたものの中から選んでほしいこと、体裁はとにかく簡素に、並製でカバーもオビもつけずに表紙のみにすること、ただし表紙にはルソーの『カーニヴァルの夕べ』を入れたい、ページ数は二百ページ以内におさめること、などなど、あの独特の丁寧なやさしい文字でびっしりと書き込まれていた」。

 この本は、松本さんにとって「最後の本」になることが決まっていた。その最後の本に、初めて時事ネタを取り上げたのである。松本さんは、考えてみれば編集者としては、著者のことなどを取り上げて、それが今現在と切り結んでいても、本の骨格は「追想」のかたちを取っていた。

 それが今度は、『いま、言わねば』と題して、身の回りの時事を正面に据えたのである。現在の天皇制、靖国問題、護憲と反原発、ヘイト・スピーチ、“壁”と村上春樹、トランプ劇場、などなど。松本さんは91歳で出す最後の本で、今まさに問題になっていることに、正面を切って応えたのだ。

 ここでは二つのコラムを取り上げよう。一つは「不都合な過去を帳消しにする安倍首相の演説」である。「安倍晋三首相の米議会演説に、のっけから岸信介祖父が登場したのには驚いた。しかも『民主主義の原則と理想を確信している』元総理大臣としてである」。

 岸信介といえば、戦前は満州国で官僚として頭角を現わし、東条内閣の商工相として積極的な役割を果たした。戦後はA級戦犯の容疑者として拘禁されたが、かろうじて一命を永らえ、総理大臣としてよみがえった。そして1960年の安保条約改定の強行採決を行い、民主主義を踏みにじった。

 しかし安倍首相は、傲岸にもそこを捻じ曲げる。「歴史認識などどこ吹く風の安倍首相にふさわしく、祖父はまるで生まれながらの民主主義者である……」。これは本当に信じられない。首相にふさわしくない人として、マスコミが特筆大書して批判すべきことだ。

https://image.chess443.net/S2010/upload/2019070100006_3.jpeg
東京都北区の事務所で=2005年

■こんなふうに死にたい

 けれども、松本さんの真骨頂は、実はもう1本のコラム、「わたしたちに問われていること」にある。そのコラムは、憲法9条を守るために奮闘している、Aさんという女性を巡ってである。Aさんは9条を守る、ある運動体に所属しており、松本さんは大方30年ほど親しくさせていただいている。

 そのAさんがあるとき安倍首相を取り上げて、「インポテンツの男の子」のようだと表現した。これはAさんが、ある政治学者がそういうふうに表現したのを、「我が意を得たり……安倍を語る時これほど的確な表現はない」と書いたのだ。

 松本さんはこれにまったく納得できず、抗議の意味の手紙を出した。「これは相手をメクラ、ツンボといっているのと同じなのです。どんなに我慢できない安倍首相であっても、肉体的欠陥で相手をさげすむ姿勢は、在日朝鮮人にあらん限りのヘイト・スピーチを投げかける連中と、同次元にたつことになります」。

 するとAさんからは、おっしゃる通り、ヘイト・スピーチと同じ次元に立っていた、自戒します、という返事が来た。

 それはいいのだが、その返事にこんなことが書いてあった。「Aさんは、戦後七〇年、戦争に向かう根っこを断絶できるか、かなりのエネルギーがいるとのべて、『結局は選挙に行かなかった人々の無責任な行為のツケを、今、こうむっていると云う事か』と書いているのです」。つまりは、こういうことなのである。本当にAさんは、そういうふうに思っているのだろうか。

 「これは『上から目線』どころか、社会運動者としてのみずからの責任のほかへの転嫁以外の何物でもありません。……自己批判のない運動体は、弱体化するしかありません」。社会正義を押し立てて運動している人たちには、この手の人が大勢いる。

 また別に、М・Tさんは80歳で、八王子駅頭で民主主義の危機を訴えて、ビラ配りをしている。年齢を考えると、これは本当に頭の下がることである。

 しかしそのビラの終わり近くに、M・Tさんはこんなことを書いている。「米軍の事情で天から降ってきたような平和憲法で守られたことが理解できない民度の低い、思考停止族と一緒にすり鉢の底へ行きたくない」(大意)。

 これもさっきの、自分の意見とは異なる人に、責任を押し付けるのと一緒である。「ビラなどに関心を示さない、あるいは『五割の沈黙者』に対し、民度の低い思考停止族とは、よくも言えたものです。……このような傲慢な発言をみとめるわけにはいきません。わたしたちに問われるのは、他に責任をなすりつけることではなく、自己批判を恐れず、失敗を直視し、一人でも多くの人びとと連帯する道を歩むことではないでしょうか」。

 松本昌次さんは、救急車で緊急搬送された後も、死ぬ直前までこの本のゲラを直していたという。私もそんなふうに死にたい、と思う。

*ここで紹介した本は、三省堂書店神保町本店4階で展示・販売しています。

https://webronza.asahi.com/culture/articles/2019070100006.html
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/613.html

[政治・選挙・NHK262] 乙武さんありがとう(村本大輔note)
村本大輔
2019/07/01 11:06

https://d2l930y2yx77uc.cloudfront.net/production/uploads/images/12672737/rectangle_large_type_2_f5bcd9233c4ace8729997f67f1a25d94.png


乙武さんのnoteを読んだ。

以下は乙武さんが書かれた記事から抜粋

 ◇

「エレベーターはミス」をジョークだと受け止められた人々を、私は心底羨ましいと思った。

『「朝から、とっても悲しい気持ちになる」そう、書き込んだ。G20において開催された夕食会での安倍総理の発言だ。

「大阪城は、最初に16世紀に築城されました。石垣全体や車列が通った大手門は17世紀はじめのものです。

150年前の明治維新の混乱で、大阪城の大半は焼失しましたが、天守閣は今から約90年前に、16世紀のものが忠実に復元されました。

しかし、1つだけ、大きなミスを犯してしまいました。エレベーターまでつけてしまいました。」

どうしてエレベーターをつけたことがミスなのだろう。車椅子やベビーカーを必要とする人は、観光できなくて当然だと思われているのだろうか。
総理にその存在を否定されたように思えて、とても悲しい気持ちになった。』

 ◇

と書かれたいた。僕は最初に総理の「ミスをおかした、それはエレベーターをつけてしまったこと」の発言を聴いて「あー、お城なのに、エレベーターつけたことかーなるほど」と思って乙武さんの「朝から悲しい気持ちになる」というツイートにピンと来てなかった、少し考えて「あ、乙武さんは車椅子だからか!」と恥ずかしながら時間差で気付いた。

乙武さんのコメント欄を読んだら2パターンの批判があった。ひとつは「歴史の建造物なんだからそのまま再現するのが当たり前だ、だからエレベーターはミスだ」もうひとつは「総理のジョークだ、なんでジョークがわからないんだ」大阪の松井市長も総理にジョークのセンスがなかっただけ、とコメントしていた。

それに対して乙武さんは「多くの人はジョークだと受け止めた。私にはそう受け止められなかった。たぶん、これまで見てきた景色があまりに違いすぎるから。」とツイッターで書いていた。

僕たちのこの社会はみんな同じような景色を見てるようでその場面場面になれば、みてきた景色は違う。お笑いの仕事をしていて、そこに一番怖さを感じる。いつも500人近い人の前で好き放題漫才をする。中にはそのジョークの被害者がいるかもしれない。

この前、夜遅くからスタートした独演会だったのでアダルトな笑いをやった、結構どぎつめのネタだったが時間帯と客層もあってか客席は爆笑だった。その時僕の視界に入ったのはお母さんときてる小学生の男の子だった。男の子は気まずそうな顔をしていた。せっかくお母さんと僕の独演会を、笑いを観に来てくれたのに、僕は嫌な思い出を使ってしまったかもしれない。

この前、メジャーリーガーが打ったボールが客席の女の子に直撃した、女の子は病院に運ばれた、大丈夫だったみたいだけどメジャーリーガーはその場にうなだれた。

これは僕らだけの話じゃなく、みんなの言葉もSNS上で飛びまくってる。その言葉は毎日誰かに直撃して傷つける。

だから僕はそんな時、うずくまってる人がいたら「ここにくるから悪いんだよ、きた方にも責任はあるんだよ、あれはジョークなんだから」と攻める方より、うずくまってる人から沢山気付ける人間でありたい。

僕は今回乙武さんが声をあげてくれたおかげで僕も同じことをしてるんではないか、ジョークなんだから、お笑いなんだから、といってうずくまってる人を突き放してないだろうか、と考えるきっかけになった。

ありがとう乙武さん。僕が次に話すときは、誰かにもう少し優しくなれる気がする。

エレベーターをつけたのがミスではない、世界中が見る可能性がある場で、一国の総理が、エレベーターをつけたのがミスだったという本気ともジョークとも暴言ともとれる発言をし、世界中の車椅子で大阪城の上に登りたいという車椅子の障害者の存在を想像しない発言をしたことが、ミスだったと思う。

仕事柄、自戒を込めて。

https://note.mu/muramoto/n/n3ea00377b24a
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/631.html

[政治・選挙・NHK262] 日本と世界の未来を危うくするアベ政権の退陣を求めています。(前川喜平ツイッター)
自由と平等と友愛を原理とする社会の実現を求めています。 日本と世界の未来を危うくするアベ政権の退陣を求めています。
前川喜平(右傾化を深く憂慮する一市民)@brahmslover


(以下、珠玉の最新ツイート集)

◇昔竹下首相が「言語明瞭、意味不明」と揶揄されたことがあった。このアベ首相の発言は「言語不明、意味更に不明」だ。ごまかすための言葉すら持ち合わせていないということだ。
https://twitter.com/brahmslover/status/1145995150046273536

◇安倍晋三と暴力団とはどういう関係だったのか?追及すべきだ。
https://twitter.com/brahmslover/status/1145849199625293824

◇この政権は本当に早く変えないと日本の未来が危ない。
https://twitter.com/brahmslover/status/1145757185932025856
?
◇年金に不安を感じる人は自民党と自民党の候補者に投票してはいけません。
https://twitter.com/brahmslover/status/1145728835645689857

◇韓国に対する輸出規制?そんなことをして徴用工問題が解決するはずない。日韓の対立を深めて、事態は悪い方にしか動かない。双方の嫌日・嫌韓感情を煽るだけだ。それが国内的な目的なのかも知れないが。
https://twitter.com/brahmslover/status/1145721760341323776

◇「三原じゅん子演説の「全く違います」は全く違う」と毎日新聞のファクトチェック。
「数字は嘘をつかないが、嘘つきは数字を使う」政治アナリストの伊藤さんの名言のとおりだ。
アベ政権の嘘に騙されるな!
https://twitter.com/brahmslover/status/1145567173429157888

◇利権誘導政治丸出し。国民生活不在。 https://t.co/SrVYw8l8rU
https://twitter.com/brahmslover/status/1145138230024519680

◇首相や大臣や国会議員に、国民投票による解職請求(リコール)制度を設けるべきだ。やめてもらいたい人は沢山いる。
https://twitter.com/brahmslover/status/1144722788818681856

◇参議院選挙でアベ自民党が勝ったら、そのあと起こりそうなこと。年金財政検証で一層の年金不安。消費税引き上げで消費が大幅落ち込み。日米貿易交渉で農産品への関税を引き下げ。武器を更に爆買い。教育勅語を奉唱する学校が増加。日本維新の会と連携して憲法改正を発議。などなど・・
https://twitter.com/brahmslover/status/1144720717033832448

◇G20。殺人容疑者のサウジ皇太子と一緒にアベ夫妻がにこにこと写真に収まっていた。
https://twitter.com/brahmslover/status/1144687020364587010

◇日露首脳会談について、news23星浩氏のコメント「北方領土問題の前進はなさそう。肝心の共同経済活動で合意ができずということ。どういう問題点があったのか検証してほしい」。このコメント、かなりおかしい。共同経済活動がうまくいけば、北方領土は帰るのか?明らかなアベ忖度コメントだ。
https://twitter.com/brahmslover/status/1144684985175044096

◇学校図書館は子どもたちが自ら学ぶための大事な場所。それをサポートする学校司書は大事な学校職員。学校図書館法で配置が努力義務になっている。でも多くの学校司書は非正規。正規職員として定数を算定し、給与を国庫負担すべきだ。
https://twitter.com/brahmslover/status/1144247512250892288

◇株などの金融所得で儲かっている人の税率は低い。そのことを、金融所得に縁のない多くの国民は知らされていない。
https://twitter.com/brahmslover/status/1144070930001383424

◇アベ首相が「改憲」を参院選の争点としたのは「年金」を争点にしたくないからだが、他に適当な材料が見つからなかったからでもある。「改憲」では多くの票は獲れない。「消費税延期」も「北朝鮮の脅威」も最早使えないから「改憲」を持ち出すしかなかったのだ。
https://twitter.com/brahmslover/status/1144065371541917696

◇室井さんの言うとおり。 https://t.co/aGysFCtTev
https://twitter.com/brahmslover/status/1144056460520771585

◇公立学校の教員には時間外勤務手当を支給せず、代わりに本給に一律4%の上乗せをするという「給与特別措置法」。残業させ放題の元凶だ。廃止すべきである。
https://twitter.com/brahmslover/status/1144047007805235200

◇お国のために死ぬことが美徳という倒錯した観念に囚われた人たち。この人たちに改憲させてはいけない。
https://twitter.com/brahmslover/status/1143910536108634113

◇「改憲が参院選の争点」とアベ自民党総裁。アメリカと一緒に戦争したい国民がどれだけいるのだろう?改憲よりも年金、介護、保育、税金だろう、争点は。
https://twitter.com/brahmslover/status/1143908740199882752

◇いいね、子ども食堂。無言給食なんて、ここには無いよね。みんなでワイワイ言いながら食べたらおいしいよね。
アレルギーとかハラルとか、これから取り組まなきゃならないこともあるだろうけど。行政の支援は、やっぱり必要だろうな。
https://twitter.com/brahmslover/status/1143814688158781440

◇自衛隊にも防衛大学校にも、根深い暴力体質があるようだ。暴力を容認する人間は、戦争も容認するだろう。
https://twitter.com/brahmslover/status/1143804625386008576

◇ふるさと納税制度は、地方税制を大幅に歪めている。スガ官房長官がいる限り、是正はされない。見直しを進言した総務官僚は左遷された。
https://twitter.com/brahmslover/status/1143798949611880448

◇トランプは「普天間の返還のためには、辺野古だけでは足りない。100億ドル払え」って言うのか?銃剣とブルドーザーで取り上げた土地なのに。
https://twitter.com/brahmslover/status/1143794279271112705

◇アベ首相の外交的敗北は、国際的に認知されたということですね。
https://twitter.com/brahmslover/status/1143792513347514368

◇自由民主党は、小泉政権で半壊、アベ政権で全壊した。20年以上自由民主党を支持してきた人は、この惨状を良く見た方がいい。
https://twitter.com/brahmslover/status/1143749995604037632

◇今アベ自民党にとって一番怖いことは、「年金財政検証」が外へ漏れることだろう。厚労省の担当部署へは、厳しい箝口令が敷かれていることだろう。
https://twitter.com/brahmslover/status/1143746093387091969

◇ホントに何度見ても、とんでもない人たちだ。こんな人たちに憲法を勝手に変えられたら、この国は破滅するだろう。
https://twitter.com/brahmslover/status/1143603936663785472

◇今国会「野党の追及が低調だった」とnews23の星浩氏。ちがうだろ。「予算委員会が開かれなかったというのもある」と小川彩佳氏。そうでしょ。
https://twitter.com/brahmslover/status/1143529018852958208

◇アメリカが日本のためにホルムズ海峡の安全を守っているとトランプ大統領。ホルムズ海峡を危険にしているのがトランプではないか。
https://twitter.com/brahmslover/status/1143527401109905408

◇トランプ大統領が日米安保破棄に言及?いいね!この際辺野古の中止と米軍駐留基地全体の縮小を交渉したらいい。
https://twitter.com/brahmslover/status/1143526646487453698

◇「なんとなくアベさん支持」で本当に大丈夫だと思いますか?「ほかに適当な人がいない」って本当だと思いますか?アベノミクスやアベ外交は本当にうまく行っていると思いますか?「年金は100年安心」って本当だと思いますか?
https://twitter.com/brahmslover/status/1143349437923598337

◇アベ政権に反対する人は、それぞれに明確な理由を持っているが、アベ政権を支持する人には、特段の理由を持たない「なんとなく支持」という人が多いのだろう。
https://twitter.com/brahmslover/status/1143348432498597889

◇28日全国公開の映画「新聞記者」は、アベ政権の闇を抉り、メディアのあり方と官僚のあり方を問う映画。だが、本当に問うているのは、国民のあり方だ。
https://twitter.com/brahmslover/status/1143347391862431745

◇アベ首相の対露外交の完全な失敗。「やってる感」で国民を騙すことは、もう出来ない。
https://twitter.com/brahmslover/status/1143337494907195392

◇「トランプ政権の中にイランと戦争したがっている者がいる」「絶対に忘れてはならないのは、アメリカ現代史上最悪の外交・軍事の過ちは、嘘から始まったということだ。ベトナム戦争もイラク戦争も」「戦争で死ぬのは億万長者の息子や娘ではない。労働者の息子や娘だ」とサンダース氏。
https://twitter.com/brahmslover/status/1142723479503900672

◇テレ朝もついにアベ政権の軍門に下ったか。良心と正義に基づく報道を続けてきたジャーナリストが追放された。これはまさしく民主主義の危機だ。
https://twitter.com/brahmslover/status/1142617414447669248

◇「企業ぐるみ選挙」などというものが成り立っていることが大問題だ。誰に、どの党に投票するかは、有権者ひとりひとりが決めること。
https://twitter.com/brahmslover/status/1142581037718835200

◇「今、必死のお願いを積水ハウス様、積水ハウス様の関連企業様に全国回ってお願いをさせて頂いております」と和田政宗参院議員(週刊文書)。彼が企業ぐるみ選挙に依存していることを露呈している。
https://twitter.com/brahmslover/status/1142580452064026624

◇アベ政権の暗部を描く社会派映画「新聞記者」。製作者河村光庸氏の覚悟のほどを感じとってほしい。
https://twitter.com/brahmslover/status/1142267486202519552

◇年金は高齢者より若者の問題だ。
本当に100年安心な年金制度はつくれる。
いましっかり学び考え行動すれば。
https://twitter.com/brahmslover/status/1141641153147621377

◇政治指導者によるヘイトは、世界中で起きている。ドナルドもウラジーミルもシンゾーも。 https://t.co/m6PdNzkobp
https://twitter.com/brahmslover/status/1141523825684647937

◇官僚のアベ化現象が起きている、ということだと思う。
https://twitter.com/brahmslover/status/1141216437815537664

◇「年金は与野党の争点にすべきではない」などという主張が目立ってきた。そんな馬鹿な。これほど国民の生活に直結する問題を、争点にしない方がおかしい。
https://twitter.com/brahmslover/status/1140608500709543936

◇アベ政権は、あったことをなかったことにする「成功体験」を繰り返してきたが、この詐術はそろそろ効かなくなってきたようだ。年金が2千万円足りないという金融庁の報告書は、全国民が知ってしまった。もう「なかったこと」にはできない。
https://twitter.com/brahmslover/status/1140252290567172097

◇国家戦略特区は利権の巣窟。成田の国際医療福祉大医学部は、今治の加計学園獣医学部の前例になったケース。政権のお友達だけ特別扱いできてしまうのが国家戦略特区。特区制度の周りでゴロゴロしているのが原英史や高橋洋一。親分は竹中平蔵。
https://twitter.com/brahmslover/status/1139392253632233477

◇タンカー攻撃はイランだとポンペオ。眉に唾をつけなければならないのは、こういう話を聞いたときだ。にわかに信じることなく、慎重に見極めることが大事。 https://t.co/x3OHHiJ8xI
https://twitter.com/brahmslover/status/1139318159217815552

◇アベ政権が言う「社会保障改革」とは給付を減らすことを意味している。本当の「改革」は誰もが安心して暮らせるようにすること。お金は、有るところには有る。そのお金を回せばいいのだ。
https://twitter.com/brahmslover/status/1139315429682241536

◇日本の若者、捨てたもんじゃない。
https://twitter.com/brahmslover/status/1139310094414307328

◇日本の若者たちよ、命懸けで自由を守ろうとしている香港の若者たちから学ぼう!香港の若者たちと連帯しよう!
https://twitter.com/brahmslover/status/1139168851206164481

◇都合の悪いことは、隠す、ごまかす、なかったことにする。アベ政権がこの6年半ずっとやってきたことだ。
https://twitter.com/brahmslover/status/1139096138902933504

◇このままでは年金で暮らせなくなる。だから・・・2000万円貯めろ、そのためにNISAを買え、ではなく、普通に暮らせる年金にするにはどうするか、と考えるべき。
https://twitter.com/brahmslover/status/1139095204726575104

◇メディアの劣化は民主主義を死に至らしめる。現在進行中の事態。
https://twitter.com/brahmslover/status/1139094211674791938

◇どんなウソでも、強弁すれば無知な国民は信じてついてくる、とアベ政権は高を括っている。
https://twitter.com/brahmslover/status/1138996608656322560

◇内部留保を貯め込む大企業と株で大もうけしている富裕層への税金を増やすと、日本経済がダメージを受け、マイナス成長になり、税収は減るというのがアベ首相の答弁。これはウソだ。アベノミクスが1%の金持ちのための政策であることを、99%の国民は早く気づかなければならない。
https://twitter.com/brahmslover/status/1138897292251914240

◇10日の参院決算委。マクロ経済スライドをやめ、大企業と富裕層の減税見直しで財源を生み、低年金を底上げせよと小池晃氏。首相は、それでは経済成長がマイナスになると主張。小池氏は、このままでは将来不安を煽り内需を冷え込ませ、消費税増税で経済は破綻すると反論。経済政策としての説得力あり。
https://twitter.com/brahmslover/status/1138894468591915008

◇(再掲2013年3月13日のツイート)
「回復」を祝うということは、失う前の状態を肯定することだ。教育勅語と軍人勅諭で個人の精神を縛りつける国を肯定してはならない。
https://twitter.com/brahmslover/status/1138872570990669824

◇(再掲2013年3月13日のツイート)
国家主権よりも国民主権の方がずっと大事。日本国民はサンフランシスコ平和条約で国民主権を回復したのではない。日本国憲法で初めて手中にしたのだ。4月28日より5月3日の方が百万倍大事。
https://twitter.com/brahmslover/status/1138870846867484672

◇(再掲2013年3月13日のツイート)
「主権回復」など祝う必要はない。降伏で失った「主権」は、人間をマインドコントロールで奴隷化する国の主権であって、「回復」すべきものではなかったのだ。この国は、日本国憲法とともに新生したのだ。
https://twitter.com/brahmslover/status/1138869671388565504

◇(再掲2013年3月8日のツイート)
主権回復の日?サンフランシスコ平和条約が日米安保条約と抱き合わせだったことを知らないわけではあるまいに。主権回復を祝う暇があるなら、米軍基地の縮小を交渉すべきだ。
https://twitter.com/brahmslover/status/1138868507028754432

◇(再掲2013年1月25日のツイート)
ヒトラーは民主主義が産んだ独裁者だった。日本国民の皆さん、このドイツ国民が80年前に犯した過ちと同じ過ちを犯してはいけないのです。
https://twitter.com/brahmslover/status/1138289123024728064

◇原英史。特区をメシのタネにする特区ゴロ。特区は「特別扱い」という利権なのだ。 https://t.co/mZNvpENSGB
https://twitter.com/brahmslover/status/1138269358126292992

◇(再掲2013年1月9日のツイート)
仮に天皇廃止を主張したとしても何ら不利益を被らない社会でなければならない。
https://twitter.com/brahmslover/status/1138168976628785152

◇(再掲2013年1月9日のツイート)
安倍自民党総裁は君が代斉唱で仕事始めだと。なんとグロテスクなんだ。
https://twitter.com/brahmslover/status/1138168463283769344

◇7人のサムライ、吉本新喜劇、ViVi・・・
こんなことで自民党に投票するくらい国民は愚かだ、と自民党は考えている。
https://twitter.com/brahmslover/status/1138164166613536768

◇前川喜平(右傾化を深く憂慮する一市民)@brahmslover
6月10日
思うところあり、本日から本名を記し、公開ツイートにしました。
https://twitter.com/brahmslover/status/1138130467306127361

https://twitter.com/brahmslover
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/639.html

[政治・選挙・NHK262] 嗚呼、この大企業・金持ち優遇税制の歪み。(澤藤統一郎の憲法日記)
 
先日、浦野広明さん(立正大学法学部客員教授(税法学)・税理士)を囲んで、日本の税制の歪みについての贅沢な講義を受けた。浦野さんが作成したレジメは、A4で27頁という気合いの入ったもの。「どうする消費税? 財源問題と税制のあり方」という標題。

浦野さんも、到底その全部を語り尽くすことはできず、また、講義を受けた側がどれだけ消化できたかも心もとない。その講義の中で印象に残ったことを2点だけ書き留めておきたい。すべて、浦野さんの受け売りである。

[1] タックスヘイブン日本

 言うまでもなく、タックスヘイブンとはtax haven=「租税回避地」のことである。普通、タックスヘイブンとして知られているのは、モナコ公国、サンマリノ共和国、英国領のマン島やジャージー島、カリブ海地域のバミューダ諸島、バハマ、バージン諸島、ケイマン諸島、ドバイ(アラブ首長国連邦)、バーレーンなどである。また、香港、マカオ、シンガポールなども、税率が極めて低いため、事実上のタックスヘイブン地域にあたる。

 ということが常識なのだが、実は、タックスヘイブンとは他国のことではない。大企業や富裕層にとってだけの話だが、現在の日本がタックスヘイブンであることを見逃してはならない。

 安倍首相はかつて施政方針演説で、「世界で一番企業が活躍しやすい国を目指します」と述べた。しかし、今さら目指す必要などない。既に今、日本の大企業や富裕層は手厚い租税特別措置(優遇税制)によって、税負担が著しく軽減、ないしは完全に免除されている。これが、「タックスヘイブン日本」の実状。

 大企業の法人税負担について鋭い分析をしている「不公平な税制をただす会」の共同代表・菅隆徳税理士は、さまざまな大企業優遇税制をやめて法人税に超過累進税率を適用すると、16年度で法人税収が29兆1,837億円になるとしている(全国商工新聞2018年10月15日)。ちなみに実際の法人税収は10兆4,676億円であるから、19兆円もの増収が見込めることになる。

主要大企業の法人3税(法人税・法人住民税・法人事業税)の負担額と率は、下記のとおりである(単位は億円)。なお、法人実効税率は30.3%から31%だというが、大企業の税負担は極めて低い。いや、錚々たる大企業が、マイナス負担で、還付を受けてさえいるのだという。なるほど、これが、「タックスヘイブン日本」の実態。

           税引前純利益   法人3税   負担率%
  トヨタ自動車   22,381  4,049   18.1
  武田薬品工業     2,479     ▲46   ▲1.9
  キヤノン      2,736    493   18.0
  三井物産       3,545     ▲54   ▲1.5
  本田技研工業    4,659    597   12.8
  丸紅          565    ▲66  ▲11.6
  デンソー      1,809    395   21.8
  伊藤忠商事       765     93   12.1
  小松製作所     1,710    410   24.0
  アステラス製薬   2,916    160    5.5
  京セラ         697    154   22.1
  いすゞ自動車       699    233   18.8
  豊田自動織機   1 ,141    820   20.3
  住友商事      2,100    ▲46   ▲2.2
  (出所:菅隆徳「公平税制」第397号(2018年9月15日))

 また、2017年度予算の申告所得税収入は3兆740億円であるという。浦野さんは、この金額を、金持ち優遇の分離課税制度と、度重なる累進性緩和の結果、かくも過小になったものだという。浦野さんの計算によると、分離課税を総合課税とし、1974年当時の超過累進課税の税率を適用すれば、所得税収入額は、13兆1,673億円になるという。予算より約10兆円を超える所得税の増収が見込まれるというのだ。

「法人3税」と「所得税」を、真っ当な課税にしただけで29兆円の財源が生まれる。19年度予算の消費税全税収19兆3,920億円を遙かに超える財源がある。消費増税回避はおろか、消費税全廃も可能なのだ。

[2] トヨタには、4800億円還付の消費税

 消費税には、逆進性があるという。金持ちも貧乏人も、消費生活に同率の税負担を求められる。年金生活者には、最も切実に身を切る悪税である。また、消費者に負担を転嫁できない弱い立場の中小業者にも負担感は大きい。

 では、巨大企業の代表格、トヨタ自動車株式会社は、年間幾らの消費税を納めているのか。答は、ゼロである。いや、ゼロどころではない。国庫から4,815億円もの還付を受けているのだ。

これが、「輸出免税制度」という大企業優遇策のカラクリによるものだという。トヨタに限らず、世界中に輸出しているわが国の巨大企業は、輸出免税制度によって消費税を負担するのではなく巨額の還付を受けている。これは、事実上の国庫補助金にほかならない。庶民が国庫に納めた消費税が、国庫からトヨタにまわっていると言ってもよい。

消費税額の計算は、次のようなものである。

事業者の「B消費税の納付税額」は、課税期間中の「@課税売上げに係る消費税額」から「A課税仕入れ等に係る消費税額」を差し引いて算出する(@−A=B)。

@「課税売上げに係る消費税額」は、原則売上金の8パーセント。A「課税仕入れ等に係る消費税額」は、原則仕入れ総額の8パーセント。@からAを差し引いて、B納付すべき消費税額、が算出される。この、「課税仕入れ等に係る消費税額を差し引く」ことを「仕入税額控除」というのだそうだ。

ところが、「輸出免税制度」では、輸出売上にはゼロの税率が適用され、一方その売上に対応する課税仕入の8%は、仕入れ税額控除の対象となる。そこで、トヨタ自動車の2019年3月期の単独決算は、以下の通りとなり、消費税を1円も払わず4,815億2,160万円の還付を受けている。

  トヨタ自動車株式会社の消費税計算(18年4月1日〜19年3月31日)
   @ 「課税売上げに係る消費税額」      3,270億8,000万円
         @ 輸出売上8兆5,458億円×0%        0円
         A 国内売上4兆0,885億円×8% 3,270億8,000万円
      @+A                3,270億8,000万円
   A 「課税仕入れ等に係る消費税額」        8,086億0,160万円
         仕入額を売上高の80%と推算して   10兆1,075億2,000万円
         その消費税額は10兆1,075億2,000万円×8%=8,086億0,160万円
   B 納税額(@の金額からAの金額を仕入税額控除したもの)
         @−A  ▲4,815億2,160万円(納税ではなく還付となる)

なんという、至れり尽くせりの大企業偏重、金持ち優遇の税制。そのツケは、すべて庶民にしわ寄せなのだ。こんな政権与党を、延命させておいてなんの利益があろうか。
(2019年7月2日)
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/642.html

[政治・選挙・NHK262] 参院選の深層の争点は、日米安保と天皇制!(ちきゅう座)
2019年 7月 2日
<加藤哲郎(かとうてつろう):一橋大学名誉教授>


 まわりもちで回ってきた大阪G20、もともとリーマンショック後の国際金融危機回避のためにG7がよびかけて作ったサミットで、例年G7・G8後に開かれてきましたが、今年はなぜか、G7より前にG20でした。これも、安倍晋三の参院選向けパフォーマンスと思われますが、実質的には米中をはじめとした多角的な二国間協議の場、議長国ホストの出番は「和食でのおもてなし」程度でしか、ありませんでした。その「おもてなし」の場で、ジョークのつもりで発した「大阪城天守閣復元の大きなミスはエレベーターをつけたこと」が、障碍者や高齢者のためのバリアフリーに対する配慮の欠如・逆行として、ネット上では炎上です。
 「外交の安倍」で参院選に突入のはずだったのに、中国習近平を来春に国賓として招待する話ぐらいで、もともと2島返還の調印儀式まで狙っていたロシアのプーチンとの会談は成果なし。米国以外の国々の首脳が期待した「保護主義反対」も首脳宣言に書き込めず。というより、そもそも議長国日本が「自由貿易」のために努力した気配なし。世界が注目した米中会談は決裂を回避できたが、双方の国内事情があってのことで日本の出番はなし。直近でイランの首脳に会ってきたはずなのに、目玉に狙ったハメネイ氏招待などもちろんできず、中東・欧州の当事国からもお呼びはなし。隣国韓国とは首脳会談もできない醜態ぶり。

 何度会っても米国兵器爆買いばかりで、日米地位協定についても自由貿易協定(FTA)についても異議を述べない安倍晋三の国で、米国トランプ大統領は、傍若無人に言い放題。出発前にホルムズ海峡の日本タンカーは自前で守れとジャブを入れ、ブルームバーグは日米安保条約破棄の持論を大きく報道、懸命に火消しに回る安倍官邸をよそに、G20会場でも日米防衛義務の不平等、米国側負担軽減に言及。米国大統領選挙向けのブラフとはいえ、「日米同盟」一本できた「トランプ命」の忠犬ポチ=アベ・シンゾーにとっては、屈辱の国際舞台での日本叩きです。

 6月29日の大阪記者会見では、こんな問答がありました。

Q:ボイス・オブ・アメリカのスティーブ・ハーマンです。大阪での安倍晋三首相との会談後、日米安保条約の破棄についてまだ考えていますか。また、首相はそれについて何を語りましたか。
A:トランプ大統領
「いいえ、それについては全く考えていない。不公平な合意であると私は言っているだけだ。そして、それについては彼(安倍首相)に過去6カ月間、話してきた。私が語ったのは『仮に誰かが日本を攻撃すれば、われわれは彼らに続いて戦闘に加わり、実際に全力で臨む』ということだ。われわれは四つに組んで戦い、日本のための戦闘にコミットする。誰かが米国を攻撃しても、彼ら(日本)はそうする必要がない。これは不公平だ」
「私は彼(安倍首相)に対し、われわれとしてそれを変えなければならないと話した。なぜなら、誰もわれわれを攻撃することのないよう望むが、仮にそのようなことが起これば(その逆になる可能性の方がずっと大きいが)、誰かがわれわれを攻撃するなら、われわれが彼ら(日本)を助けるのであれば彼らはわれわれを助けるべきだからだ。そして彼(安倍首相)はそれを分かっている。それについて、彼には何の問題もないだろう」

と。ーーつまり、「破棄」までいかなくとも「安保改定」は当然と考えており、安倍晋三にも幾度も伝えてあるというのです。安倍首相は「日米同盟は盤石」が口癖、してみると、日本国民には隠して、トランプのご機嫌取りと爆買いを繰り返してきたもののようです。

 そのうえ、トランプ大統領が大阪のホテルで演出したとされる、総仕上げの米朝会談のビッグニュースが、G20閉会直後に待っていました。トランプに袖にされたうえ、安倍首相が袖にしたつもりだった韓国文大統領が米国と組んで、なんと、ツイッターで金正恩北朝鮮委員長を板門店に呼び出し、3回目になる米朝会談、史上初めて米国大統領が北朝鮮の土を踏む一大情報戦イベントが実現しました。朝鮮戦争終戦宣言への劇的な急旋回です。
 無論、トランプにも金正恩にも国内向けの思惑があり、大きくはトランプ大統領の再選戦略の一環です。とはいえ、拉致問題についての無条件日朝交渉を求める日本にとっては、寝耳に水の蚊帳の外、75回外遊し、延べ150か国以上を巡ったという安倍首相の「スタンプラリー外交」の浪費・無力を、白日に晒しました。参院選後に先送りされた日米FTA貿易交渉で、日本の農産物から自動車まで、株価や財界ばかりでなく、国民生活が大きな打撃を受けることは、目に見えています。

 久しく聞くことのなかった「アンポ破棄」「安保改定」が、思わぬ方向から、しかも「アメリカン・ファースト」の流れで、米国大統領の口から流れてきました。日本の野党・平和運動も、ナショナリスト右翼も、久しく「日米同盟」を所与の前提にしてきましたから、 面食らっていることでしょう。日米安保と朝鮮戦争は、もともと一対でした。1950年代はじめの占領終了からサンフランシスコ講話の時期、東西冷戦が朝鮮半島で局地的熱戦になり、西側陣営に日本を組み込み全土を米軍基地にするために、日米安保条約は結ばれました。今日の自衛隊の前身、警察予備隊は、駐留米軍が朝鮮半島に入った間隙での国内治安維持を名目に発足しました。再軍備の第一歩でした。
 いわゆる1960年安保闘争は、まさに「安保改定反対」「安保破棄」が国民的社会運動になり、安倍晋三の祖父・岸信介首相を退陣に追い込んだものです。日本経済の高度成長自体、朝鮮戦争特需を重要な出発点にしていました。日本の経済大国化も、米国経済との一体化を土台にしていました。「日米安保」が「日米同盟」と言い換えられるようになったのは、安全保障ばかりでなく、外交・内政・貿易・金融・教育・文化・社会にまで「日米安保」が浸透・内在化して「失われた30年」に引き継がれたためです。

 その歴史的出発点の朝鮮戦争の終結のきざしが見え、「日米安保の破棄」が米国側から語られるようになったことこそ、安倍首相がG20全体会議で世界の首脳に繰り返しスピーチした「令和=beautiful harmonyの新時代」の裏声の意味でしょう。北朝鮮・金委員長が昨日「過去を清算し未来へ」と述べたのは、アメリカおよび韓国との関係では、朝鮮戦争終結の決意と考えられます。
 参院選の内政問題での争点、景気回復・社会保障・福祉・消費税・最低賃金・教育・格差貧困・外国人労働者問題等々の底に流れる深層の争点が、実は、これまでのような米国一辺倒の国づくりでいいのか、日本経済・社会をどう主体的に作れるのかという問題です。「日米安保破棄」とは、それほどの重みのある核心的論点です。もちろん、トランプの提起しているのは、よりいっそうの日本の軍事的従属と日本経済の「米国のサイフ」化をめざすもので、1960年に日本国民が願った「安保反対」「安保破棄」とは、正反対のものですが。

 日本と東アジアの人々にとっての「過去の清算」は、1950年代まで戻ればいいというものではありません。北朝鮮は、トランプを歓迎して「朝鮮戦争の清算」を述べましたが、日本に対しては、「日本の過去の犯罪は決して闇に消えない」とする労働新聞論評(6月11日)で、朝鮮半島の植民地化とアジア・太平洋戦争期まで遡ってでなければ、首脳会談などありえない、と主張しています。中東イランやホルムズ海峡に向かう前に、まずは「令和」以前の大正・昭和・平成、いや天皇が代わっても不透明な「日本の新時代」の中身を、警戒しているのです。安倍首相の言う「令和の新時代」に、天皇の名のもとに進められた日本の軍事化・侵略の過去を想起し、オーバーラップしているのです。
 よく、平成天皇の言動を見て、左派の中でも、「日本国憲法の象徴」 にふさわしく「戦後民主主義を体現」とまで評価する議論が聞かれます。しかし、諸外国、とりわけアジアの隣国の人々にとっては、天皇に「平成の時代、戦争はなかった」といわれても、イラクにもカンボジアにも自衛隊は出ていました。日本の一人あたりGDPはいまや世界第26位で羨望の対象ではありませんが、軍事力については世界第7位の軍事大国です。天皇個人ではなく、天皇制と戦争が結びついていたのです。

 平成天皇は、即位後「皆さんとともに日本国憲法を守り」と明言しましたが、「令和」の新天皇は、単に「憲法にのっとり」だけでした。先日専修大学現代史研究会での私の講演、太田耐造文書「昭和天皇へのゾルゲ事件上奏文と新聞発表ーー思想検察のインテリジェンス」(当日配付資料は、ちきゅう座で公開)を準備するさい、1936年の天皇機関説事件、37年日中戦争開始後の「憲法」の軍部・官僚・学界による扱いを調べたのですが、「国体の本義」「日本精神」「大東亜共栄圏」「八紘一宇」を基礎づけるためには、大日本帝国憲法の天皇主権と統帥権の明文規定では足りず、「日本法理」により「憲法」を「憲法の精神」と読み替え、「みことのり」「かみながら」の建国神話と聖徳太子の「17条憲法」にまで遡って「天皇の聖戦」を根拠づけるものでした。
 言論統制とメディア支配が著しい安倍ファッショ政権のもとでは、こんな「立憲主義」の読み替えが現れても、不思議ではありません。今日、7月1日に、商業捕鯨の問題とはいえ、戦後初めての国際組織(IWC)からの脱退、韓国に対する経済制裁の実行が行われました。参院選の深部の争点には、政権にとって格好の操作・利用対象となった天皇制の問題、「象徴天皇制」の是非をめぐる討論の不在があるように、思われてなりません。
 近刊『ゾルゲ事件史料集成――太田耐造関係文書』 全10巻(不二出版)については、カタログが公開されています。昨年末に「15年戦争と日本の医学医療研究会(戦医研)」で行った私の記念講演はyou tube に入っていますが、その後の研究で厳密にした学術論文「731部隊員・長友浪男軍医少佐の戦中・戦後」が、同研究会誌19巻2号(2019年5月)に発表されました。著作権の関係ですぐにはアップロードできませんが、ご関心の向きは、戦医研の方にお問い合わせ下さい。

初出:加藤哲郎の「ネチズン・カレッジ』より許可を得て転載 http://netizen.html.xdomain.jp/home.html

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye4615:190702〕

http://chikyuza.net/archives/94960
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/644.html

[政治・選挙・NHK262] れいわ新選組、怒涛の当事者候補大作戦!(マガジン9)
雨宮処凛がゆく!
第487回:れいわ新選組、怒涛の当事者候補大作戦!! の巻

By 雨宮処凛 2019年7月3日
出典「マガジン9:https://maga9.jp/


 参議院選挙が迫っている。そんな中、あらゆるところで「山本太郎現象」なる言葉を聞く。

 そんな山本太郎議員が旗揚げした「れいわ新選組」の候補者に今、大きな注目が集まっている。

 すでに発表された蓮池透さんはご存知だろう。拉致被害者である蓮池薫さんの兄にして、元東電社員。拉致被害者家族でありながら、太郎氏が政治に目覚めるきっかけとなった「原発」に東電社員としてかかわっていたという稀有な立場だ。

 れいわ新選組の候補者として6月末、新たに二人が発表された。

 一人は、安冨歩氏。東大教授であり、女性装でも知られる氏は昨年、埼玉県東松山市の選挙に出馬。馬やちんどんミュージシャンたちと繰り広げたお祭りのような前代未聞の選挙を覚えている人も多いだろう。そんな安冨氏のインタビューなどを私は様々な媒体で読み、「生きづらさ」を体現する人物として、そして「男らしさ」「女らしさ」などの壁をぶち破る存在として、非常にリスペクトしてきた。

 ここで安冨氏の経歴を「なぜ日本の男は苦しいのか? 女性装の東大教授が明かす、この国の『病理の正体』」を参考にしつつ、紹介したい。

 同記事によると、安冨氏の両親は「男の子は大きくなったら戦争に行って、天皇陛下のために死ぬ」という靖国精神を植え付けられたど真ん中の世代。そんな親は安冨氏にエリートになる以外の道を許さず、氏は京大に進学。住友銀行(当時)に就職したのち、京大で修士課程に進み、東大教授にまで上り詰めたという。親が望んだ華々しいエリートコースだが、たびたび沸き起こる自殺衝動に長らく悩まされてきたという。

 「どんなに登り続けてもゴールの見えない断崖絶壁を、一人、延々と登り続ける孤独と不安」。しかし、「挑戦することをやめると気が狂いそうになる」のでやめられない。

 そんな安冨氏が「解放」される大きな転機のひとつが「離婚」。同時に両親とも絶縁すると、自殺衝動は消えたという。また2013年から始めた「女性装」も安冨氏を大きく変えたようだ。男らしさの呪縛から解放され、同時に「“自分でないもの”になろうとするストレス」から解放されたという。記事にて、安冨氏は以下のように語っている。

 「今まで私は男らしく振る舞ったり、男らしい恰好をする事で、私自身を“自分でないもの”にしていた。親によって植え付けられた『男は元気ハツラツとした兵士になって、国のために死ね』という洗脳を、知らずに履行していた。それが、自殺衝動や苦しみの原因」

 トップエリートに上りつめた人が、自らの生き方を見直すことは稀だろう。しかし、安冨氏は自身の気持ちと向き合い、生き方を変えていった。その姿が多くの人に勇気や気づきを与え、著書も多数出版している。

 その安冨氏が、れいわ新選組から立候補するというのである。6月27日の出馬記者会見で、女性装に身を包んだ安冨氏は、もっとも大きな原則は「子どもを守る」こと、それこそが基本原則であることを強調した。

 同時に、すでにこの社会は「政策をどうこうしてなんとかなる段階」を超えていることも指摘。政治の原則を変えるためには、「今まで私たちが知っている政治じゃない」存在こそが必要と、れいわ新選組からの出馬を決意した理由を述べた。現代社会を「豪華な地獄」(見た目は素晴らしいけど、中にいると息が詰まって苦しい社会だから)と表現する安冨氏は、「経済」という言葉を「暮らし」に変えなければならないと述べ、以下のように語った。

 「東京タワー建てて、新幹線走らせて、オリンピックやって、大阪万博やったから経済成長したので、スカイツリー建てて、リニアモーターカーひいて、東京オリンピックやって、大阪万博やったらもういっぺん経済成長すると思ってんじゃないかと思いますけど、雨乞いです、こんなの。私たちはその雨乞いのために何十兆円も使ってるんですね。狂気です、こんなの。
 一人ひとりの暮らしが立つってことはどういうことかを、考えなければいけない。私たちの社会の立て付け、法律とかイデオロギーとか思考とか価値観すべて、私たちが、経済と呼んでるものに応じて出来上がっているので、それが続かないと死ぬと思っているけど、それはただの勘違いです。私たちは勇気をもって、自分たちの暮らしを立て子どもを守り、育てるってことをどうやったら実現できるかを考えないといけないし、それには助け合いが必要です。お金では解決できない。だから人と人との関係をとり結ぶ手段が必要なんです。でも、私たちはそういう能力を失ってきた。なぜなら、そういう能力を持つ人間は資本制生産システムにとっては不便なんです。友だちのこと考えて会社に来ないような奴はダメなんですね。だから友達が一人もいなくてお金が頼りの人間がいなくては、私たちの経済は持たない。私たちは友だちを作る力、助け合いをする力を失ってしまったので暮らしは成り立たなくなり、お金を稼がなくては死んでしまうと思うようになったわけです。
 それを改める以外に、繁栄の中の貧困という意味のわからない世界から抜け出すことはないと思います」

 安冨氏の話を聞きながら、胸が高鳴るのを抑えられなかった。なんだか、今までの「政治を語る言葉」では到底語り得ない選挙が始まりそうではないか。これまでの政治の方程式なんか、まったく通用しない世界。この安冨氏の大きな視点と、山本太郎氏の経済政策が合致したら、と思うだけでワクワクしてくる。安冨氏も、太郎氏の経済政策について、「一部の人が儲けるものではなく、みんなが豊かになる政策だと思っている」と語った。会見のこの日はさらに、時空が歪むような質問が記者の口から飛び出した。

 「新撰組には、安富才助っていう馬術師範がいたと思いますが、安冨さんは子孫ですか?」

 安富って苗字で馬術師範で新撰組って、もう安冨氏の先祖確定だし生まれ変わりに決まってるのでは?

 この質問に安冨氏は、祖父が岡山出身で、安富才助も岡山、ポピュラーな苗字でもないのでもしかしたら遠縁かもとしつつ、「安富才助は土方の遺言を受け取った人なので、太郎さんが倒れる時は、私が遺言を引き受けたい」と述べたのだった。ああ、こんなに時代劇マニアとかが喜びそうな話なのに、いまいち知識が足りなくて悶絶できないことに悶絶する!!

 このように、安冨氏の会見は、終始「隣にいる山本太郎が常識人に見える」という、これまた初めての感覚に襲われながらも無事に終了。これから起きるとんでもない「祭り」に期待値が振り切れそうに高まったのだった。

 そうしてその翌日に発表されたれいわ新選組の候補者は、重い障害がある木村英子さんだった。

 彼女は車椅子に乗り、横に介助者をつけた状態で出馬会見にのぞんだ。

 木村さんは生後8ヶ月の時に保育器ごと玄関に落ちて首の骨を損傷。以来、話すことはできるものの、全身をほぼ動かせない状態だという。19歳まで施設で暮らし、その後、自立生活をしてきたという54歳の彼女のことを、私は本で知っていた。それは相模原の障害者施設で19人が殺害された事件のあとに出版された『生きている! 殺すな やまゆり園事件の起きる時代に生きる障害者たち』。自身の半生を綴った彼女の原稿は、涙なしにはとても読めないものだった。

 19歳で施設を出て、早や35年。現在54歳の彼女が様々な人の手を借りながら地域で暮らしてきた今日までの日々は、そのすべてが「戦い」だったはずだ。その上、障害者施策を学び、声を上げ、自分たちのニーズを政治に伝える運動をしてきた。いわば、自分自身が身体を張って、命がけで道なき道を切り開いてきた人だ。

 会見で、彼女は現在の障害者施策の問題点に触れつつ、「自分の身体をもって、政策を変えてもらいたい」と語った。また、その後の太郎氏の発言も印象的だった。

 木村さんは、自身が出馬することによって、太郎氏が「障害者を利用してる」というバッシングに遭うのではないかと心配していたのだという。これに対して、太郎氏は一言、言った。

 「上等です。障害者を利用して、障害者施策を進めようじゃないか」

 障害者運動の有名なスローガンに、「私たち抜きに私たちのことを決めないで」というものがある。が、700人以上いる国会に、車椅子の人はいないし彼女のような重度の障害がある人はいない。障害者がいない場所で、障害者施策が決められているということの異常さ。そう、私たちはこれを異常と思わなければならないのだ。木村さんが国会に行くかもしれない。そんなことを想像しただけで、どれほどの異常な空間で障害者の法律が、政策が作られているか、改めて意識したのだった。

 そしてこの日の会見でひとつ、気付かされたことがある。それは記者との質疑応答の場でのこと。いくつかの質問をまとめて木村さんにぶつけた記者に、彼女はゆっくりと言ったのだ。

 「私、メモとることができないので、ひとつずつ答える形でいいですか?」

 ハッとした。バリアフリーとかよりずっと以前に、こういうことなんだ、と思った。全身がほとんど動かない彼女は、ペンなどでメモをとっておくことができないので質問をいくつもされても記憶できない。だからひとつずつ質問をする。いくら「合理的配慮」と言われても、こういった一つひとつのことは言ってもらわなければわからない。そして障害は、障害者ごとに一人ひとり違う。メモがとれる人もいれば、話すことができない人もいる。100人いれば100通りのニーズがあるのだ。

 太郎氏は、木村氏について「究極、国会に存在してるだけでいい」と言った。

 その通りだと思う。国会の本会議場で投票する際には、一人ひとり階段に登って投票しなければならない。そんな時、車椅子の彼女はどうするのか。「一人では水も飲めない」という彼女の介助者は、果たして本会議場に入れるのか。想像してみるだけで、あらゆる場所が「健常者向け」にのみ、設計されていることを突きつけられる。「障害者差別解消法」はできたけれど、それをより進め、よりよいものにして、みんなが住み良い、生きやすい社会にしていくことができるのは、やはり障害がある人なのだ。その人たちが政策立案に関わることなのだ。今は元気な人でも、いつか病み、老いる。人間、老いればなんらかの障害を持つ。障害者は、だからこそ高齢化社会を生きるモデルを作るフロントランナーなのである。

 と、れいわ新選組のことばかり書いていたら「偏ってる」とか言われそうだが、私自身、この6年間、ブレーンの一人として山本太郎氏を「育ててきた」という思いがある(上から目線で申し訳ないが)。そしてそんなふうに思っている人は、本当にたくさんいる。レクチャーをはじめ、多くの専門家を紹介したり、質問の原案を作ったり、「こういうことをしてくれ」と持ちかけたり、自分の、周りの困りごとを訴えたり。木村英子さんだってその一人だ。多くの障害者施策について太郎氏に教え、そして「力を貸してくれ」と頼んできた。そんなふうに「みんなで育てた議員」こそが山本太郎氏だと思うのだ。そしてこれこそが、ひとつの民主主義の実践ではないだろうか。

 山本太郎氏について、私は常々言っていることがある。

 それは「世界を変えるのは、いつの時代も”空気を読まないバカ”である」ということだ。

 そして今、太郎氏以上に空気を読まない、空気なんか読んでいられない候補者が集まった。もう、今までの政治の知識とか政局云々とかこれまでの方程式とかそういうものがまったく役に立たない前人未到のチャレンジが始まった。

 とりあえず、私はこのビックウェーブに乗る。面白いから。だって太郎氏とこの6年間かかわってきたのも、ただひとつ、「面白い」からだ。それが二次被害的に「世の中をマシにする」ことに役立ったら、これほど嬉しいことはない。政治にかかわったり社会を変えようとすることは、苦行ではなく「楽しい」ことなのだ。それがもっと、広まればいい。そしてみんながもっと、投票だけでなく、選挙にかかわっていけばいいと思うのだ。


雨宮処凛
http://ameblo.jp/amamiyakarin/
あまみや・かりん:1975年北海道生まれ。作家・活動家。2000年に自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版)でデビュー。若者の「生きづらさ」などについての著作を発表する一方、イラクや北朝鮮への渡航を重ねる。現在は新自由主義のもと、不安定さを強いられる人々「プレカリアート」問題に取り組み、取材、執筆、運動中。『反撃カルチャープレカリアートの豊かな世界』(角川文芸出版)、『雨宮処凛の「生存革命」日記』(集英社)、『プレカリアートの憂鬱』(講談社)、『自己責任社会の歩き方 生きるに値する世界のために』(七つ森書館)など、著書多数。2007年に『生きさせろ! 難民化する若者たち』(太田出版)でJCJ賞(日本ジャーナリスト会議賞)を受賞。「反貧困ネットワーク」副代表、「週刊金曜日」編集委員、、フリーター全般労働組合組合員、「こわれ者の祭典」名誉会長、09年末より厚生労働省ナショナルミニマム研究会委員。

https://maga9.jp/190702-2/
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/658.html

[政治・選挙・NHK262] 参院選、山本太郎はどうするか(山本太郎オフィシャルブログ)
2019-07-03 15:33:27

2019年参議院議員選挙が明日から始まります。
れいわ新選組は、選挙区・比例区あわせて10人の候補者を擁立する予定です。

そして、私、山本太郎は比例区で立候補予定です。
今回からは導入された特定枠(比例区の得票数に応じて優先的に当選が決まる)を、
使用する予定です。
その枠に、重度の障害をお持ちの木村英子さん、難病ALS当事者のふなご やすひこさんを登録する予定です。

予定、予定の連発は
公選法上の都合です。
あしからず。

当事者が国会に行き、道を切り拓く。
れいわ新選組の本気のチャレンジ!引き続き応援してください。

山本太郎

https://ameblo.jp/yamamototaro1124/entry-12489668870.html
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/661.html

[政治・選挙・NHK262] 山本太郎の「れいわ新選組」は既存政党を喰いつくす 安積明子 (Yahoo!ニュース)
7/3(水) 8:00

https://rpr.c.yimg.jp/im_sigg6fhduEChzCCGUR6HdEdDKg---x800-n1/amd/20190703-00132640-roupeiro-000-8-view.jpg
れいわ新選組で天下をとれるか?(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

■自民党をはるかに超えた聴衆の数

 山本太郎氏が率いる「れいわ新選組」の進撃が止まらない。7月2日午後7時から新宿駅西口で行った街頭演説会には約1000名が集まった。山本氏は同場所で6月19日にも演説会を開いたが、それよりも確実に聴衆の数は増えている。

 自民党は同日、同じ場所で街宣を行った。参議院選に東京都選挙区から出馬予定の丸川珠代元環境大臣と比例区から出馬予定の丸山和也氏の他、非改選の中川雅治元環境大臣や青山繁晴氏、朝日健太郎氏が参加。G20で大役を終えたばかりの世耕弘成経産大臣や党女性局長の三原じゅん子氏も応援に駆け、豪華な面々が顔を揃えた。

 ところが集まった人たちはせいぜい150名。山本氏の演説会にはるかに及ばない。そればかりではない。空気が違うのだ。

 実際のところ、自民党の街宣に集まった人たちは、必ずしも穏やかな聴衆とは限らなかった。彼らには標的があった。三原じゅん子氏だ。

 三原氏は6月24日の参議院本会議で安倍晋三首相の問責決議案に対して反対討論を行ったが、この時に激しく野党を批判。「民主党政権の負の遺産の尻ぬぐいをしてきた安倍総理に感謝こそすれ、問責決議案を提出するなど、全くの常識はずれ。愚か者の所業とのそしりを免れません」と述べ、最後に「恥を知りなさい」と叱責したのだ。

 これに強く反発する人たちが事前にネットでこの日の三原氏の登壇を調べ上げ、集まってきたのだろう。三原氏の演説になると、「恥を知れ」のプラカードや幟が掲げられ、「恥を知れ!お前らに年金を語る資格はない!」との罵声が飛んだ。

 小競り合いもあったのだろう。警備していたSPのひとりが飛んできて、暴言を吐いた人を制止する場面もあった。

■演説会では1万円を寄付する男性も

 しかしその騒然とした雰囲気は、1時間後には一掃されていた。三原氏に罵声を飛ばし、「恥を知れ」との幟が掲げられたと同じ場所に、れいわ新選組のピンクの幟がはためき、ライトやモニターが設置された。午後7時の「開演」の前からすでに支持者がどんどん集まってきた。「ステージ」の側にあるオリジナルグッズの販売コーナーでは、クリアリーフやTシャツが売れていた。

 その隣は寄付のコーナーで、若い女性が封筒に住所氏名を書き込み、1000円札を入れていた。同じく20代と思しき男性が、1000円札を寄付していた。中には1万円札を差し出す男性もいたが、短い時間にざっと見ただけで10名くらいが寄付をしていた。こうして集められた寄付は、7月1日までに2億2570万円にものぼっている。

 候補の面々も個性的だ。5月31日に北朝鮮による拉致被害者家族会連絡会の事務局長だった蓮池透氏の擁立が発表された。6月27日には安冨歩東京大学東洋文化研究所教授、翌28日には自立ステーションつばさ事務局長の木村英子氏、7月1日は元コンビニオーナーの三井義文氏、2日に沖縄創価学会壮年部の野原善正氏など、次々と候補が決定。他の政党にないインパクトがある面々であることに加え、極めて巧妙な戦略が読み取れる。

■障碍者の代表は木村氏か斉藤氏か

 たとえば木村氏の擁立だ。生後8か月で事故のために重度の障碍を持つことになった木村氏は出馬会見で、障碍者の人生がいかに閉じ込められたものかを述べていた。

「お盆や暮れには介護者が足りなくて、(入りたくない)施設に入れられる」

 また介護の手が足りない時は、1日1食しかとれない人もいるなど、深刻な人権侵害の現状が語られた。

 同じく障碍を持つ候補としては、立憲民主党が「筆談ホステス」として有名になった斉藤りえ氏を擁立する。5月7日の出馬会見で、斉藤氏は元社民党参議院議員で視覚障碍を持つ堀利和氏から、「国会には2004年から障碍を持つ議員はいなくなった。斉藤さんには障碍者の代表として頑張ってほしい」と託された。

 斉藤氏はシングルマザーとして子育て政策も訴えるが、やはりメインは障碍者政策だろう。しかし斉藤氏は会見で「国政の福祉政策で、何が足りないと思うのか」という筆者の質問にきちんと答えられなかった。ちなみに立憲民主党は元「モーニング娘。」の市井紗耶香氏も「子育て世代の代表」として擁立したが、市井氏も出馬会見で政策についての質問に対し、ほとんど答えることはできなかった。

 「見てくれ」の立憲民主党に対し、「実務則対応」のれいわ新選組。ともに障碍者の代表を自任する2人の候補を見ていると、そう思わざるを得ない。仮に木村氏の得票が斉藤氏に負けたとしても、れいわ新選組の快進撃を見ると、斎藤氏の票をかなり喰うことは間違いない。

■LGBTでも立憲民主党に喰い込む

 性の多様化という観点でも、女性装の安富氏を擁立するれいわ新選組は立憲民主党の脅威となるだろう。立憲民主党にはレズビアンをカミングアウトした尾辻かな子衆議院議員が在籍し、増原裕子氏や石川大我氏を参議院選で擁立。婚姻平等法案・LGBT差別解消法案を提出したこともある(廃案)。

 しかし安冨氏は2018年7月8日の東松山市長選に挑戦するなど、積極的な活動を展開。7月2日の演説会でも聴衆に人気を博していた。

 台風の目となろうとしているれいわ新選組だが、17日間の選挙でどのくらい大化けするのか。7月2日夜には山本氏の比例区への鞍替えも報じられた。比例区で議席の積み増しは可能なのか。また東京都選挙区の議席は死守できるのか。れいわ新選組からますます目が離せない。


安積明子
政治ジャーナリスト
兵庫県出身。慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。その後に執筆活動に入り、政局情報や選挙情報について寄稿するとともに、テレビ・ラジオに出演。趣味は宝塚観劇やミュージカル鑑賞。また月に1度はコンサートや美術展に足を運ぶ。座右の銘は、幼い時から母から聞かされた「実るほど、頭を垂れる稲穂かな」。「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)に続き、「「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)を4月11日に刊行

https://news.yahoo.co.jp/byline/azumiakiko/20190703-00132640/
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/662.html

[政治・選挙・NHK262] 冷酷な統計が示す、これが平均的国民の老後年金生活。 (澤藤統一郎の憲法日記)
 
昨日(7月2日)、厚労省が2018年の「国民生活基礎調査の概況」を公表した。下記の両URLで、その報告を見ることができる。

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa18/dl/09.pdf
平成 30 年国民生活基礎調査の結果を公表します(Press Release)

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa18/dl/10.pdf
平成 30 年 国民生活基礎調査の概況

同報告は、特に【調査結果のポイント】として、次の点を挙げている。
・1世帯当たり平均所得金額は551 万6 千円 <前年560 万2 千円>
・生活意識が「苦しい」とした世帯は57.7% <前年55.8%>
(注:生活意識は、5段階の選択肢であり、「苦しい」は「大変苦しい」「やや苦しい」の合計)

1年前に比較した国民生活は、客観的に所得が減って、主観的には生活意識を苦しいものとしている。そのことが、統計に表れている。これが、アベノミクス6年目の「前年比成果」なのだ。わずか1年で、所得は「9万円」の減、生活苦は「2%」の変動である。

折しも、参院選直前である。「年金選挙」の様相を帯びてきたこの選挙の争点に関わるものとして、この統計も「老後」の「年金問題」との関連で注目された。

この点について、同報告は、次のように特記している。

   「高齢者世帯(65歳以上の者のみで構成するか、又はこれに18歳
   未満の未婚の者が加わった世帯)では「公的年金・恩給」が61.1%、
   「稼働所得」が25.4%となっている」
   「公的年金・恩給を受給している高齢者世帯のなかで「公的年金・
   恩給の総所得に占める割合が100%の世帯」は51.1%となっている」

つまり、年金受給者の多くが、ほぼ年金だけに頼って暮らしている。稼働所得は、微々たるものに過ぎない。まったく年金だけに頼って暮らしている人も過半数に及ぶ。

さて、公的年金受給者全体の半数を上回る51.1%が、ハッピーに公的年金だけで悠々と老後の生活を楽しんでいるのか。あるいは生活費に不足ではあるが公的年金以外の収入を得ることができないアンハッピーな状態なのか。統計は、直接にその点に切り込んではいない。

しかし、高齢者世帯の「平均公的年金・恩給」受給額は、年間204万5000円であるという。この金額で、「1.5人」(高齢者世帯は、夫婦構成と単独構成とほぼ半々。所帯人員数の平均は、「1.5人」でよいと思う)が暮らしていけるはずはない。一人あたり月額にすると、11万円程度に過ぎないのだから。

また、同報告によると高齢者世帯総所得金額の「中央値」は、年額260万円である。204万円が年金、その余の年間50万円余が稼働収入ということになる。これが平均的国民の老後だ。「年金だけでは生活は成り立たず」、さりとて「働こうとして真っ当な稼働収入を得るあてもない」と覚悟しなければならない。

消費増税をしてさらに経済弱者を痛めつけたり、F35を買ったり、イージスアショアに莫大な金を注ぎ込む余裕など、この国にはないことを悟らなければならない。

毎日新聞は、「老後所得『年金のみ』半数 生活苦しい55%」(7月3日朝刊)との見出しで、下記のとおり簡潔に報じている。

   65歳以上の高齢者世帯のうち、働いて得られる収入がなく、総所得
   が公的年金・恩給のみの世帯が半数に上ることが2日、厚生労働省の
   2018年国民生活基礎調査で分かった。生活への意識を質問したと
   ころ、高齢者世帯で「苦しい」と答えた割合は55・1%に上り、前
   年から0・9ポイント増加した。

   無年金の人らを除く高齢者世帯のうち総所得に占める公的年金・恩給
   の割合が100%の世帯は51・1%。この割合が50%を超える傾
   向は1990年代から続く。1世帯当たりの平均所得(17年)を見
   ると、高齢者世帯は334万9000円。所得の内訳は「公的年金・
   恩給」61・1%、「稼働所得」25・4%−−など。

また、時事通信はこう伝えている。

   収入「年金のみ」が半数=高齢者、生活の支え−国民生活基礎調査
   厚生労働省は2日、2018年の国民生活基礎調査の結果を発表した。
   年金や恩給をもらっている高齢者世帯について、これらの収入が総所
   得の100%を占めると答えた割合は51.1%と約半数だった。恩
   給の受給者はごく限られるため、収入源が年金のみの高齢者世帯が相
   当数を占めるとみられる。

   17年の割合は52.2%。過去増減はあるが、13年の57.8%
   から微減傾向が続いている。働く高齢者が増えたことが影響している
   とみられる。
   老後の資金をめぐっては、公的年金以外に2000万円の蓄えが必要
   と指摘した金融庁報告書が注目を集めている。老後への不安が広がる
   中、高齢者世帯の多くが年金を支えに生活費を確保している実態が改
   めて浮き彫りとなった。


時事がいう「働く高齢者が増えた」のは、明らかに不十分な年金では暮らせないことの結果である。割りの悪い仕事でもやらざるを得ないのだ。年金は増やさない。いや、マクロ経済スライドで、着実に減らしていく。これが、政権の老人「反福祉」基本構想なのだ。

若者が、これを他人ごとと見過ごしてはならない。生活を「苦しい」と感じているのは、「児童のいる世帯」では、62.1%【前年58.7%】と高齢者所帯より高い。また、年代別で世帯人員1人当たり平均所得金額をみると、最も低いのが「30〜39 歳」の179 万6 000円なのだ。しかも、若者が年金受給年齢に達する頃、マクロ経済スライドは今の水準には及びもつかない低年金受給額となっているのだ。

若者よ、あなたがたの老後は、さらに厳しい。あなたが、投票所に足を運んで、この政権にノーを突きつけない限りは。
(2019年7月3日)

http://article9.jp/wordpress/?p=12907
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/671.html

[政治・選挙・NHK262] おもてなし外交のなれの果て 助田好人 (マガジン9)
こちら編集部
おもてなし外交のなれの果て(助田好人)

By マガジン9編集部 2019年7月3日
出典「マガジン9:https://maga9.jp/


■「外交の安倍」と誰が呼んだのか

 一瞬フェイクニュースかと思いました。6月30日午後、トランプ米国大統領と金正恩朝鮮労働党委員長が板門店で会談し、2人で軍事境界線をまたいで超えるパフォーマンスの映像がテレビに流れたときです。

 先月、令和時代の最初の国賓としてトランプ大統領を日本に招聘し、新しい天皇陛下との会談を設け、大相撲が行われていた両国国技館の桟敷席に異例の椅子設置で歓待し、米国製ステルス戦闘機F35を105機、1兆円以上で購入すると約束して、強固な日米同盟をうたう安倍首相が、G20が開催された大阪サミットの場で隣に座るトランプ大統領から何も知らされていなかった。

 文在寅韓国大統領との面談を拒否していなければ事前に耳打ちされたかもしれない。当の河野外務大臣はG20開催中、ツイッターに会場の写真をアップし、「タローを探せ」というお遊びをしていました。

 相手と真っ当な議論ができず、「お・も・て・な・し」で仲良くなるか、居丈高な態度で怯ませようとするか、で問題を解決しようとする外交のなれの果てといわざるをえません。歓待すれば来賓は喜び、一緒に笑顔でカメラに安倍首相とツーショットで収まってくれる。「外交の安倍」と呼ばれる本質は、そんな画像や映像に過ぎないのではないでしょうか。

■トップが何を考えているのかわからない

 かつて安倍首相は、プーチン大統領との会見を前に、同大統領のことを「ウラジーミル」と呼びかけていました。

 相手をファーストネームで呼ぶことで親しみを伝えたかったのでしょう。しかし、ロシア語ではファーストネームをそのまま使うことはありません。たとえば、男性で「ドミトリー」であれば「ジーマ」、女性の「タチアーナ」であれば「ターニャ」。プーチン大統領(ウラジーミル・ウラジーミロヴィチ・プーチン)の場合は「ヴァロージャ」という愛称で呼ぶのが普通ですが、相手に敬意を込めて、「ウラジーミル・ウラジーミロヴィチ」とファーストネームと父称を合わせて呼びかけるべきでした。

 外務省のロシア語専門家は助言をしなかったのでしょうか。単に呼び捨てにされたプーチン大統領は「安倍首相」と返しました。

 2人は25回以上も首脳会談を重ねたにもかかわらず、北方領土交渉は何も進んでいないどころか、後退した感さえあります。安倍首相には、北方領土は2島返還で決着させるのか、全島返還を譲らないのか、あるいはすべてを両国の共同管理にするなのか、最善のシナリオと最悪のシナリオを描いて交渉に臨むような様子も感じられず、相手に気に入ってもらおうとする態度ばかりが目立つのです。にもかかわらず、「北方領土を取り返すには戦争するしかない」という趣旨の発言を行った某議員に野党が提出した辞職勧告案に自民党は難色を示しているのですから、ロシア側の「北方領を返還したら、その地に米軍基地ができるのではないか」という警戒心はしごく当然でしょう。

■喧嘩のできない首相

 かつて田中角栄元首相は初めて訪ロした際、当時のブレジネフ・ソ連共産党書記長に対して「自分は日本からシベリア上空を飛んできた。ソ連は広大な国。ほんのちっぽけな北方領土くらい返してくれてもいいだろう」と言って、唸らせたといいます。ブレジネフにしてみれば愉快ではない発言ですが、本音を語る田中角栄を信頼に足る人物とみなしたのではないでしょうか。

 また、昨年亡くなった野中広務氏は、中国の胡錦濤主席(当時)に、戦後、中国が日本に国家賠償を求めなかったお礼を伝えると同時に、同主席から日本の中国向けODA(政府開発援助)に対する感謝の言葉を引き出しました。また平壌を訪問し、朝鮮労働党幹部と行った会合では、「IAEA(国際原子力機関)の核査察を受け入れろ」と主張して譲らず、相手を激昂させたこともあります。しかし、交渉の最後には「あなたは絶対的に友好でない人だから、これからも何回もきなさい」と言われ、何度も議論を重ねました。野中氏が互いの利益を考えながら、全身全霊で相手に対峙していることが北朝鮮側が伝わったのでしょう。

 しかし、そのパイプも失われました。

 5月に「金正恩委員長と前提条件なしでの会談を目指す」と発言した安倍首相を北朝鮮が相手にしないのは、米朝関係の改善が進む中、乗り遅れまいとする安倍首相の焦りが見えるからでしょう。あれだけ強硬な態度をとっていたのに、米国が柔軟な対応をした途端に態度を軟化するような相手だから、放っておけば自分たちの方が有利になる――私が金正恩ならそう考えます。

 相手が本気なのか。交渉に命を張っているのか。そういうものを相手は見極めようとします。お互い国を背負っている者同士、「お友だちになって問題を解決する」なんてありえません。

 安倍首相は本気の喧嘩ができない人なのだと思います。国会で野党との厳しい論戦に挑もうとしない同首相は、自らに対する批判への耐性が低いように思えます。たいていは逆切れしたり、論点をはぐらかす論法で切り抜けたり、官僚の作成したメモを棒読みしたり、これらを外交の場でやると相手の信頼を決定的に失います。いや、もう失ってしまっているのかもしれません。

■外交を身近なテーマに

 外交は政府間のやりとりであり、機密情報なども絡んだりしますから、市民には語りにくい対象です。日常生活への影響は大きくないという思いも、関心を低くしている理由でしょう。しかし、超高額の戦闘機を購入すれば、そのしわ寄せは福祉や教育、あるいは新しい産業の育成などにきます。通商交渉の結果は中小企業の業績にもかかわってきます。

 外交を外務官僚や一部ジャーナリストのものにせず、もっと語り合うべき。人と人との関係を常識的に考えることのできる、私たちの普通の感性が一番大事なのだと思います。

(助田好人)

https://maga9.jp/wp-content/uploads/2019/07/bcca357650b37590d85d7396366643f9-1024x768.jpg
中国側から見る中朝ロ3国間国境。白い監視塔から手前が中国、川を挟んで左側遠方がロシア、川の右岸が北朝鮮、奥に見えるのは日本海。対米追従外交はもう限界。新しいアジアの時代を見据えた日本の外交を

https://maga9.jp/190703-2/
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/672.html

[政治・選挙・NHK262] 暴走する「安倍語辞典」 鈴木耕 (マガジン9)
言葉の海へ
第79回:暴走する「安倍語辞典」

By 鈴木耕 2019年7月3日
出典「マガジン9:https://maga9.jp/


■「蚊帳の外」も使用禁止語に…?

 トランプ大統領と金正恩委員長の突然の会談。マスメディアは一斉に「電撃的」と報道していたが、伝えられる情報を詳しく見ていくと、やはりその裏には文在寅韓国大統領のかなり周到な根回しがあったようだ。つまり、米朝韓3ヵ国共同の外交成果だったわけだ。
 むろん、中国の習近平主席と金委員長の先日の会談も、そうとうな影響を与えているとも思われる。
 ここで問題になるのは、我が日本である。
 日本外務省もトランプ氏のツイッターは読んでいただろうが、あれはいつものトランプ流のパフォーマンスだという理解、まったく情報の過疎地帯になってしまっていた。つまり「蚊帳の外」だったわけだ。
 政府広報と化しているNHKニュースでさえ、外務省は情報をつかんでいなかったと認めた、と報じていた。

 こんな話が流れている。
 首相官邸から外務省などに対して「蚊帳の外」という言葉は使用禁止、というお達しが出たというのだ。
 朝鮮半島の緊張緩和どころか、それを害するような政策をとり続けてきた安倍政権が、米朝首脳会談や南北首脳会談の邪魔になっているのは明らかだということを、やっと官邸も気づき始めている。だからこそ、「蚊帳の外」を認めるわけにはいかないのだ。
 失敗続きの安倍首相にとって、最後の切り札ともいえる拉致問題も「蚊帳の外」のままだ。さすがに拉致家族会の方々からも、安倍首相の大言壮語の割にはまるで中身のない対応に、そろそろ批判も出ているようだ。

■「何もしない」→「向き合う」

 安倍首相はそれでも、ニコニコ動画の党首討論で「トランプ大統領から私の考え方を金委員長に伝えていただいた。私も最終的には、金氏と直接向きあって解決しなければならないと思っている」と強がった。
 今回の短時間の米朝首脳会談で、トランプ氏が金氏に「拉致問題」について言及したという報道は一切ない。にもかかわらず、安倍首相はそんな強がりを言う。
 「安倍語辞典」は、さまざまな言い換えに満ちている。言葉を換えれば実質も変化するとでも言いたいようだ。だがここにきて、「安倍語辞典」は、言葉の追放にも手を染め始めたらしい。「蚊帳の外」という言葉を、とうとう辞書から消し去ったのだ。
 「向き合う」という言葉も、安倍語では、実質的には「何もしない」ということを意味する。
 政治家は言葉のファイターでなければならない。だが、その言葉を自分の都合のいいように言い換えるのであれば、ファイト(言葉の闘い)など成立しない。
 安倍首相の国会での質疑がまったく機能しないのは、メチャクチャな「安倍語」を駆使するからだ。その意味でも、安倍晋三氏は政治家としての資質を失っている。

■「投資」→「資産形成」

 年金の「2000万円問題」が参院選の争点になっている。
 その中で、ちょっと引っかかるのも、やはり言葉の言い換えだ。例えば、年金だけでは暮らせないから「投資」によって不足分を補う、というのが金融庁などの報告書だったわけだ。その「投資」がいつの間にか「資産形成」という言葉にすり替えられていた。
 「投資」では失敗のリスクもイメージされるから、「資産形成」で乗り切ろうというわけだ。
 どう考えたって同じ意味だろう。それをまたしても言葉のすり替えによってごまかしにかかる。

■「航空母艦」→「多用途運用護衛艦」

 これが、軍事だともっとひどいことになる。
 まず、「武器」を「防衛装備品」と言い換えたのは記憶に新しいが、「武器輸出」を「防衛装備品移転」とは、いったいどういう言語感覚の持ち主なのだろう。
 極めつけは護衛艦「いづも」の呼称である。「いづも」は改修によって、その機能面からも誰が見ても航空母艦としか思えないものに変身。これまでは、専守防衛の立場から所有しないとされてきた空母なのだから、批判は必至だった。そこでまたも姑息なことに、これを「多用途運用護衛艦」という呼び名でごまかしにかかった。
 しかも、その前段もあった。2018年防衛大綱では、「空母」をボカして「多用途運用母艦」とすることにしていたのだが、最終的にはこの「母艦」をさらに分からないように「多用途運用護衛艦」と、何がなんだか分からない名称に落ち着いたのだという。
 まあ、「退却」を「転進」、「全滅」を「玉砕」、最終的には「敗戦」を「終戦」と言いくるめたような国だ。その“美しい国”の伝統を継承している内閣なのだから、「安倍語辞典」の中身も分かる。

■「責任がある」と「責任をとる」との違い

 言い換えもすごいが「安倍(内閣)語」で際立つのは、デタラメな言葉の用法である。
 安倍自身が、何か不祥事で責任を問われると、必ず口にするのが「責任は内閣総理大臣たるアタクシにあります」というフレーズだ。だが、「責任はある」と言いながら「責任をとる」とは決して言わない。
 つまり「責任をとる」を「責任はある」でごまかしにかかるのだ。
 「ある」なら「とる」のが当たり前だろう。だが、安倍は「ある」と「とる」を使い分けて(というより、ごっちゃにして)、結局は「責任逃れ」をしているに過ぎない。言葉をバカにし過ぎている。

■「捏造」→「誤記」

 「責任者」がそんな態度だから、政府が丸ごと無責任になるのも当然だ。それが典型的にあらわれたのが、イージス・アショアの配置地を巡る防衛省の態度だ。
 その候補地とされた秋田市新屋地区の検討結果の報告書に、9カ所の「誤記」があったとして、岩屋毅防衛相は、秋田県に対して謝罪した。のちに、さらに2カ所の「誤記」も判明し、同じく山口県の阿武町と萩市の配置予定地でも、同様の「誤記」が判明した。
 問題は、この「誤記」という言葉である。
 ほんとうに「誤記」、つまり誤って記したものであるなら、この謝罪も意味をなす。しかし、とてもそうは思えない。
 もし「誤記」ならば、なぜすべてが、防衛省に都合のいいような「誤り」なのか。この中に防衛省にとって不利な「誤り」もあるのなら、その言い訳も認められよう。だが、秋田9カ所(計11カ所)、山口2カ所の「誤記」すべてが、防衛省の説明に都合のいい「誤り」だったのだ。
 こんなバカなことがあるか!
 これは明らかに「捏造」である。自らに都合のいいように書き換えるのは「誤記」ではない。普通の言葉では、「捏造」というのである。ふつうでない「安倍語辞典」は常軌を逸している。
 ここにも「安倍(内閣)語」の、凄まじいばかりの言い換えがある。

■安倍政治は“オワコン”である

 言葉をまともに扱えない政治に未来はない。その意味からも、安倍政治はもはや“オワコン”なのである。
 「安倍語辞典」は安倍本人から内閣全体へ。そして政府そのものへと暴走の度合いを強めている。言葉の暴走は、いつか国民を傷つけることになる。その前に、暴走は止めなければならない。

 選挙が近い。

https://maga9.jp/190703/
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/673.html

[政治・選挙・NHK262] 山本太郎は日本のバーニー・サンダースか (朝日新聞社 論座)
山本太郎は日本のバーニー・サンダースか
左派ポピュリズムと中道リベラルの「戦略的互恵関係」

大井赤亥 東京大学非常勤講師(政治学)
論座 2019年07月03日 より無料公開部分を転載。

https://image.chess443.net/S2010/upload/2019070300005_1.jpg
支持者とともに国会に初登院した山本太郎氏=2013年8月2日

 現代政治を捉える一つの指標として、「左派ポピュリズム」という言葉が広がっている。移民排斥や保護貿易を掲げた右派ポピュリズムは、イギリスのEU離脱やアメリカでのトランプ政権誕生を生みだした。その一方で、同じく反グローバリズムを基調としながらも、平等や社会的公正を重視する左派ポピュリズムも各国で台頭している。

 左派ポピュリズムとは、ベルギー生まれの政治学者C・ムフによれば、自由民主主義の枠組の内部にありながら、政治的敵対線の引き直しを通じて「人民」の集合的アイデンティティを再構築し、新しい左派のヘゲモニーを打ち立てる戦略だとされる(注1)。事実、欧州各国が採用する緊縮財政に反対して、2010年以降、スペインのポデモス、イギリスのコービン、アメリカのサンダース、フランスのメランションなど、民衆的人気に依拠してラディカルな政治ヴィジョンを提示する左派勢力が活発化しているのだ。

 しかし同時に、排外主義や保護主義の高まりに対して、これらの左派ポピュリズムが伝統的な中道リベラル勢力とどのような関係を構築するか、各国ごとに模索が続けられている。ここでは、左派ポピュリズムと中道リベラル勢力とのあるべき関係をめぐり、2016年アメリカ大統領選におけるサンダースとヒラリー・クリントンとの関係を参考にしながら、日本政治における山本太郎と既存野党との戦略的互恵関係の可能性を探りたい。

(注1)C・ムフ、山本圭・塩田潤訳『左派ポピュリズムのために』明石書店、2019年、67頁。

■サンダースと左派ポピュリズム

 ムフによれば、アメリカはポピュリズムという用語が肯定的に使われてきた政治社会であり、サンダースの戦略は「明らかに左派ポピュリズムのそれである」。他方、2016年大統領選でそのサンダースと民主党候補の座を競ったヒラリーは中道リベラルを代表する政治家であり、両者はそれぞれ、既存の政治システムの根本的変革を迫る「敵対的左派」(サンダース)と、既存政治の枠内において改良を模索する「調整型リベラル」(ヒラリー)という二つの選択肢を象徴的に示すものであった(注2)。

 かねてからアメリカ政治における「はぐれ者(outsider)」を自認してきたサンダースは、大胆な急進的提案を掲げて2016年大統領選に登場し、一躍旋風を巻き起したのは記憶に新しい。大企業への課税強化、15ドルの連邦最低賃金、学費無償の大学創設、5年間で1兆ドルの公共投資による1300万人の雇用創出といった政策は、そのまま山本太郎の政策と驚くほど重なっている。当初は「記念受験ならぬ記念立候補」(パトリック・ハーラン)と評されたサンダースも、今や2020年大統領選における民主党の主要候補に位置づけられており、この間のアメリカ政治のダイナミズムを感じさせる。

(注2)大井赤亥「『トランプ以後の世界』におけるオルタナティヴのために」『現代思想』、第45巻第1号、青土社、2017年1月、231‐233頁。

https://image.chess443.net/S2010/upload/2019070300005_4.jpeg
ヒラリー・クリントン氏

■ヒラリーの苛立ちと中道左派の宿命

 他方、ヒラリーの基本政策は中間層の復活と国民皆保険制度の創設であり、日本でいえばかつての民主党の長妻グループに等しく、政治の利害調整を比較的労働者寄りに行おうとする選択肢であった。このようなヒラリーのスタイルは、既存政治の内部に留まるという意味で「保守的」でありつつも、多様な社会運動の要求を包摂し、それらを制度の内側に反映させるという点で中道リベラルの柔軟性を示すものでもあった。

 では、大統領選におけるサンダースとヒラリーとの関係はどのようなものだったろうか。ヒラリーは大統領選を振り返った自著『何が起きたのか?(What Happened)』(光文社、2018年)においてサンダースへの感情を極めて ・・・ログインして読む
(残り:約4067文字/本文:約5671文字)

https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019070300005.html
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/675.html

[政治・選挙・NHK262] 「いま行われている政治は裏切りだ」 れいわ・山本代表(朝日新聞)
朝日新聞デジタル 2019年7月4日20時20分

https://www.asahicom.jp/articles/images/AS20190704002056_comm.jpg
新宿駅で第一声を上げる「れいわ新選組」の山本太郎代表=2019年7月4日午前11時6分、東京都新宿区西新宿1丁目、江口和貴撮影

 いま行われている政治は完全に皆さんへの裏切りだ。20年以上続くデフレを続けてきたのは、明らかに自民党の経済政策の誤りの連続なのではないか。格差は広がり続けるばかり。この資本主義の格差の広がりを是正できるのは、政治という存在なのではないか。

 消費税は増税ではない。腰の引けた野党が言っているような、凍結でもない。減税しかない。20年以上続くデフレから脱却するためには、景気を良くする必要がある。消費が喚起されなくてはならない。強制的な物価の引き上げで実質賃金も下がり、お金がなくて物が買えないという状況を解消するためには、まず強制的に物価を引き下げる。つまりは消費税減税をまずする。これが何よりも必要だ。(東京・新宿駅前)

https://www.asahi.com/articles/ASM743HVWM74UTFK010.html


新着ニュース一覧

首相の演説日程、また非公表 抗議活動・ヤジを懸念?(7/4 20:25)
党首第一声 「いま行われている政治は裏切りだ」 れいわ・山本代表 (7/4 20:20)
党首第一声 「安倍政権下で国民の暮らし壊された」社民・吉川幹事長 (7/4 20:20)
党首第一声 「今の時点での消費税増税は安易だ」 維新・松井代表 (7/4 20:20)
党首第一声 「安倍政治サヨナラの審判下す選挙に」共産・志位委員長 (7/4 20:20)
党首第一声 「正直な政治と生活の安心取り戻そう」 国民・玉木代表 (7/4 20:20)
党首第一声 「政治のバージョンアップ、皆さんと」 立憲・枝野代表 (7/4 20:20)
党首第一声 「世界であつれき、日本が対話で協調を」公明・山口代表 (7/4 20:20)
党首第一声 「力合わせ、政治の安定を確保していく」自民・安倍総裁 (7/4 20:20)
 
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/693.html

[政治・選挙・NHK262] 「安倍政権支持」の空気(朝日新聞)
朝デジまとめ
作成:2019年7月3日

第2次安倍内閣の発足から6年半。さまざまな不祥事に揺れ、野党から厳しい批判を受けながらも支持率は一定の水準を保ち続けている。なぜか。ゆるやかに漂う「安倍政権支持」の空気を追った。(全3回)

[1] 若者 「政治が助けてくれるとは思えない」
朝日新聞デジタル 2019年7月1日08時00分 石川瀬里、渡辺洋介

https://www.asahicom.jp/articles/images/AS20190630001689_comm.jpg
自民党総裁選最後の街頭演説に集まった支援者たち=2018年9月19日、東京・秋葉原、仙波理撮影

「僕が生きていけているので」 若者に際立つ安倍政権支持

 毎日欠かさずチェックするのは株価のチャート。米国の雇用統計も注視する。空き時間は外国為替証拠金取引(FX)の勉強に充てる。新聞もテレビもネットニュースも見ない。都内の男性(25)は、ベンチャー系のマーケティング会社で働く。「貯金しても無駄。今は借金してでもFXにつぎ込みたい」

 率直に聞いてみた。政治に対して、どう思うのか。「安倍さんはがんばっているんじゃないですか?」。なぜ。「うーん、なんでだろう……」。そして、しばらく考えてから言った。「僕が生きていけているので。それに日経平均株価もいいし」

     ◇

 安倍内閣の支持率は、18〜39歳の男性で際だって高いのが特徴だ。朝日新聞の世論調査で過去3年の平均をみると、18〜29歳の男性は57・5%、30代男性は52・8%。男女の全体は42・5%だった。さらに、閣僚らの不祥事が起きても、この世代の支持率は一時下がってすぐに回復する。

 社会保障などで将来に回されたツケを負担する若い人々が、いまの政治を支持する理由を知りたい。そう思って街角で話を聞き続けるうちに出会ったのが、この男性だった。

 生まれ育ったのは、東京から北…こちらは有料会員限定記事です。残り:1171文字/全文:1729文字


[2] 貧困 「あれこれ言う前に自分を鍛えなきゃ」
朝日新聞デジタル 2019年7月2日05時00分 一色涼、福井悠介

https://www.asahicom.jp/articles/images/AS20190701004481_comm.jpg

この貧困、自己責任だもの 格差認め自民支える若者たち

 深夜。東京・銀座のブランドショップ。華やかな服やカバンが並ぶ、客の消えたフロアに作業服を着た男たちが集まってきた。モップを構え、日が昇るまでに床や壁を磨き上げる。アルバイト代として支払われるのは、5時間で約7千円。朝方、スーツを着た人の波に逆らって、寮に戻る。バイトの同僚と2人部屋。コンビニやスーパーで買う弁当とビールが「唯一のぜいたく」だ。

 中村克利さん(36)は、そんな暮らしをして6年になる。地元・徳島市の高校を出て塗装業に。山口県の自動車工場でも働いたが、リーマン・ショックのあおりで雇い止めになり、東京へ出てきた。「自分は貧困層だと思う」と言う。東京五輪後にいまの仕事が減り、もしクビになれば「ホームレスかも」と不安が消えず、ハローワークにも通っている。

 その中村さんの投票先は自民党だ。「この先どうなるかわからない。自民が引っ張っていれば、よくはならないけど悪くもならない」と言う。

 総務省の調査によると、2018年の非正規雇用は10年前と比べ350万人あまり増え、約2120万人となった。働き手に占める割合は約38%と過去最高の水準にある。背景には、バブル崩壊後の雇用情勢の悪化や自民党が進めた規制緩和などがある。

 格差の拡大や貧困を、政治の問題とは感じないのか、と尋ねた。

 「仕方ないって思う。自分がこ……こちらは有料会員限定記事です。残り:1031文字/全文:1581文字


[3] 元野党支持者 「少なくとも決められる政治ですから」
朝日新聞デジタル 2019年7月2日19時46分 岡戸佑樹、角拓哉、柏樹利弘

https://www.asahicom.jp/articles/images/AS20190702002904_comm.jpg
参院選の選挙戦最終日、最後の訴えを聞く有権者ら=2016年7月、東京都内

働く現場 「自民じゃだめなのか」 長年野党支えてきたが

 愛知県東海市の川上貴士さん(77)が市立勤労センターを訪れたのは、6月下旬のこと。参院選に向けた自民党支部の総会に出席するためだった。

 川上さんは自民支持を公言する。しかし、かつては市内の製鉄所に勤め、約50年にわたり野党に投票してきた。

 考えが変わったという。

 東海市は鉄の街だ。自動車や航空産業に主要部品を供給する鉄鋼メーカーの工場がひしめく。その労働組合の力が強く、過去20年以上、国政ではほぼ毎回、野党系候補が自民候補を上回ってきた。

 組合員だった川上さんも、現役時代は協力を惜しまなかった。市議選で何人もの組合員が立候補すれば、自宅のげた箱に候補者の顔写真を貼り、家族に覚えさせ、票をふり分けた。

 連日の残業、徹夜、休日返上……こちらは有料会員限定記事です。残り:1091文字/全文:1399文字

https://www.asahi.com/special/matome/abe_mood/?iref=comtop_8_08
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/702.html

[政治・選挙・NHK262] プリンス初の会員制ホテル 軽井沢に 一口1338万円(朝日新聞)
2019年7月4日16時23分

 プリンスホテル(東京)が長野県軽井沢町に8日オープンする会員制リゾートホテルの報道関係者向け内覧会が3日にあった。同社初の会員制ホテルで、主に国内の富裕層をターゲットにしている。

 軽井沢浅間プリンスホテルの敷地内に25億円をかけて設けた。戸建てのヴィラタイプ15棟と、ホテルの客室を転用した48室があり、いずれも複数の会員で利用する。

 ヴィラは木造平屋建て床面積約80平方メートル。リビングや寝室、浴室、キッチンなどを備え、6人まで利用できる。共有制の会員権(権利期間35年)180口を販売中で、現在の募集価格は1口1338万8千円。他に年会費16万2千円、一室1泊2万3760円。

https://www.asahicom.jp/articles/images/AS20190703001682_commL.jpg
会員制ホテル(ヴィラタイプ)の寝室=長野県軽井沢町

 ホテルの客室を改装した48室は30〜85平方メートルで、1〜4人用がある。576口を販売しており、募集価格は393万円。こちらは権利期間(15年)が終われば一部が返還される預託制になっている。他に年会費11万8800円、利用料金は大人1人1泊4536円。

 このほか、敷地内に新たに温泉棟を設けた。

 この日は、西武ホールディングスの後藤高志社長やプロフィギュアスケーターの荒川静香さんらがテープカット。後藤社長は「軽井沢は日本を代表するリゾート地。これを皮切りに会員制ホテル事業を全国で展開し、富裕層やアクティブシニアのニーズに応えていきたい」と話した。(土屋弘)

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テープカットをする西武ホールディングスの後藤高志社長(中央)と荒川静香さん(右)ら=長野県軽井沢町

https://i.socdm.com/a/1/1550/1466023/20190703093954-685fdd7e81788d.jpg
袋とじ画像 (このメディアにはセンシティブな内容が含まれている可能性があります。)

https://www.asahi.com/articles/ASM7345KGM73UOOB00B.html
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/703.html

[政治・選挙・NHK262] 安倍政権のネット戦略は国民の弱みを突いてうまい 政治リテラシーの欠如から生まれる権威への接近 (朝日新聞社 論座)
安倍政権のネット戦略は国民の弱みを突いてうまい
政治リテラシーの欠如から生まれる権威への接近

勝部元気 コラムニスト・社会起業家
論座 07月04日 より無料公開部分を転載。

https://image.chess443.net/S2010/upload/2019070400009_2.jpeg
安倍政権が東京・秋葉原で支持を集めるのはなぜか?

 安倍首相が芸能人との会食を重ね、その様子をSNSにアップしていることについて、前回の記事『芸能人と安倍首相の仲良し演出会食は何が問題か』では、首相の側と芸能人(および芸能事務所)の側から、それぞれ蜜月を演じることのメリットを探りました。

https://webronza.asahi.com/culture/articles/2019070300009.html
芸能人と安倍首相の仲良し演出会食は何が問題か

■混沌とした時代で芸能人も権威を欲している

 今回は、さらにマクロの視点で社会全体を捉えたいと思います。とりわけ、注目したいのが、権威主義の広まりです。多様化が進み、社会の流動性が高まる中で、自身の存在にお墨付きを与えてもらえるような分かりやすい権威を欲する権威主義が近年強まっています。この傾向は芸能人も決して例外ではないようです。

 たとえば、昨今のジャニーズ事務所のタレントがこぞって有名大学に進学するのも、大学という一種の権威を獲得することで、今後見通しの効かない時代に対する備えにしているとも考えられます。

 この傾向はネット上のインフルエンサーも同様です。彼らは一見新しい価値観を持っている人々のように思うかもしれませんが、彼らのSNS投稿には、先輩成功者の権威を自分の評価に利用している場面が少なくありません。昨今流行りのオンラインサロンでも、イベントゲストの権威を利用して自身のブランド構築に利用している例が非常に多くあります。

 先日、カリスマ編集者として人気を誇るインフルエンサーが、「権力者飲み!!権力こそ自由!」とTwitterでつぶやいていたのが典型例だと思います。多様で混沌とした時代だからこそ、自身の成功を分かりやすく“枠づけ”してもらえる権威が少しでも欲しいのでしょう。

■オタク層の「2匹目のドジョウ」を狙っている?

 それに加えて、市民の側も政治的権威を強く欲しているのではないでしょうか? その典型例がオタク層です。2008年に麻生太郎元総理が漫画『ローゼンメイデン』を羽田空港で読んでいたという「目撃談」がインターネット上で話題となり、麻生氏はオタク界隈で「ローゼン麻生」「ローゼン閣下」と呼ばれるようになりました。

 これを機にオタクの自民党支持は広がったと言われています。株式会社ドワンゴ(麻生氏の甥で株式会社麻生の代表取締役社長である麻生巌氏が2005年から取締役を務めている)が運営する動画サイト「ニコニコ動画」はオタク層をメインターゲットとしています。ここは、内閣支持率の世論調査も行っており、他の媒体に比べて支持率が概ね高い位置にあり、かつモリカケ問題等で他の調査が下落した際にも、下落せず一定の高さを保っています。

 安倍首相は、国政選挙の際に、大きく喝采を受けられる東京・秋葉原での演説を好み、一部メディアからは「聖地」と呼ばれていますが、秋葉原が「自民党支持の街」となったのも、このローゼン麻生の件以来ではないでしょうか。

 確かに麻生氏は漫画を読むのは好きだと公言しているものの、「ローゼンメイデン」は「立ち読みしただけ」と言っていますし、そもそも自民党政権はオタク層にとって都合の良い政策を並べているわけでは決してありません。

 それなのに、「自分たち(が好む文化)を、権威ある人が受け入れてくれた!」という親近感から、これを機にオタク層の一部がごそっと自民党を支持率するようになりました。特に「今まで社会の中で陰の存在だった」という自意識が強い彼らには、有力政治家が立ち読みしたというだけでもとても嬉しかったに違いありません。

 もちろん、自民党はこれを狙ったわけではないと思いますし、他にも要因は様々あると思うのですが、結果的に「麻生氏とローゼンメイデンの“会食”的接近」の効果は絶大だったと言えるでしょう。

 ここから分かるのは、「エンタメを好むファンの側も権威との接近を求めているのではないか?」ということです。自分の好きな芸能人やコンテンツに権威付けしてもらうと、自分自身も認められたと感じ、権威を与えてくれた人に対して好感を持つのではないでしょうか。

 そのような中で、安倍政権が「2匹目のドジョウ」として芸能やお笑いファンにターゲットを定め、政策を消したうえで、ただ「権威」との距離が近いイメージを提供するのは、安倍首相自身、著名人、そのファンにとって「三方よし」で、実に効果的な戦略と言えます。

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「権威」に寄りかかるネット上のインフルエンサーも少なくない Photo: garagestock/Shutterstock.com

■国民の政治リテラシー向上しか道はない

 このように表に出る人間もそれを支える側も権威を欲する時代の流れの中で、会食した個別の芸能人に対して、「権力者の犬になった!」と批判をしても、あまり意味がないように感じます。

 芸能人にとっては、批判の声に従っておとなしくするよりも、それを気にせず権威に寄り添ったほうが自身の仕事のプラスになる面が大きいのですから、残念ながら権威主義的な政治と芸能の癒着は今後も続くどころか、ますます広がっていくことでしょう。

 では、どうすれば、この権威主義的な傾向を変えられるのでしょうか? 確かに権力を分散させて、「一強」という強い権威が生じないようにすることは理論上最も効果的です。選挙であれば、より幅広い政党の議席獲得が重要です。

 ですが、2019年7月1日から3日にわたって連載された朝日新聞の『「安倍政権支持」の空気』を見ても分かるように、既に権威主義に深く陥って、政権与党を支持する国民が、新たな選択をするのは難しいように感じます。

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https://webronza.asahi.com/culture/articles/2019070400009.html
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/704.html

[政治・選挙・NHK262] 「民主党政権の悪夢」の呪縛を解き放て 野党共通政策を具体的に掲げて与党に迫り、取り込ませる。そのリアリティが勝利の鍵だ (朝日新聞社 論座)
「民主党政権の悪夢」の呪縛を解き放て
野党共通政策を具体的に掲げて与党に迫り、取り込ませる。そのリアリティが勝利の鍵だ

保坂展人 東京都世田谷区長 ジャーナリスト
論座 2019年07月04日


■「自己責任」を繰り返したシンルグマザー

 あれは、17〜18年前のことでした。

 ある言葉をめぐって、夜遅くまで、平行線の議論をしていたことを思い出します。

 彼女はシングルマザーで子育ての最中、お子さんには障がいがありました。会話を重ねていくと 「自己責任なんです。私は社会に救済は求めません」「ここで頑張るかどうか、すべては自分の責任です」と繰り返しました。

 彼女は何度も「自己責任」を強調しました。

 「ひとりで生きられないから、社会保障があるんです。自力で頑張ることも大事ですが、社会的支援を受ける必要がある時もあるんです。何もかも『自己責任』にしてしまえば、政治や行政は何のためにあるんですか」と私は問いかけました。

 「そう考える人はその人の自由。私は、社会に期待しません。すべては、自己責任だと思います」と彼女は絶対に譲りませんでした。

 エンドレステープのように、「自己責任」を語り続ける彼女に対して、私は「社会的連帯」や「相互扶助」を説きましたが、かたくなに受け入れてもらえませんでした。

 「自己責任…か。どうして、この4文字に収斂してしまうんだろう」

 私は、固い岩盤のような彼女の価値観にはねかえされ、角度を変えながら対話を試みました。

 「痛みをともなう構造改革」を呼号する小泉純一郎首相が高い支持率を誇っていた頃の話です。現在のように「自己責任」という言葉が氾濫する前で、私はこの4文字をどうしも飲み込めずに異物感を覚えて、妙に耳に残り続けたことを覚えています。

■貧困層に広がる「自己責任」論とあきらめ

 そして、あの時の彼女のような考え方をする人たちは、増え続けました。

 当時は、国会で小泉首相と「日本社会に『格差と貧困』があるのかどうか」と議論していた時代でした。今や、日本社会に「貧困と格差」が拡大していったことは、誰もが認めるようになりました。

   「この貧困、自己責任だもの 格差認め自民支える若者たち」
   (2019年7月1日・朝日新聞デジタル)
    総務省の調査によると、2018年の非正規雇用は10年前と比べ350万
   人あまり増え、約2120万人となった。働き手に占める割合は約38%
   と過去最高の水準にある。背景には、バブル崩壊後の雇用情勢の悪
   化や自民党が進めた規制緩和などがある。
    格差の拡大や貧困を、政治の問題とは感じないのか、と尋ねた。
   「仕方がないって思う。自分がこうなったのは自分が考えた結果だ
   から」。返ってきたのは、そんな言葉だった。

 この記事には、「自己責任論を肯定するかどうか」という調査結果が紹介されています。

    早稲田大学の橋本健二教授(社会学)の分析によれば、「格差が広
   がってもかまわない」と考える人の割合は、この10年間で各所得層
   で増えた。しかも増加率は貧困層で最も高く、貧困層の4人に1人は、
   我が身にふりかかる不利益を受け入れている。そして、貧困層の4割
   は自己責任論を肯定する。

 政治に多くを期待しない、だがかろうじて維持している「現在の生活」が瓦解するようなら、現政権と自民党を支持するという声につながります。

 また、その傾向と結びついて、若年層や非正規労働で「格差と貧困」の渦中にある人々が、その原因を「社会のルール変更」である政府の政策に求めることなく、「自己責任」とあきらめて政権与党以外の選択肢を求めないという価値観が広がったことが、長期政権を支えています。

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党首討論会で発言する立憲民主党の枝野幸男代表=2019年7月3日、東京都千代田区

■希薄な「野党の存在感」

 乾いた諦念と現状追認のムードが広がったのは、安部晋三首相がいつまでも口にする「悪夢のような民主党政権」の記憶と、「それよりはまし」という大衆意識がいまだに強いからと言われていました。

 「民主党政権の失敗」「それよりはまし」という単純化されたイメージがここまで長続きしているのは、「野党の存在感」が希薄であったことと裏表の関係にあります。

 参議院選挙は4日に公示されました。17日間の選挙戦が始まります。

 この選挙を通して、野党党首が街頭演説やコメントで発する「言葉」によって、一見すると磐石に見える「現状追認」の壁を突き崩せるかどうか情勢は急転します。待たれているのは「怒りの言葉」であり、「現状を突き破ろう!」という魂を揺さぶるメッセージだと思います。

 有権者の日常的心情には、「怒りの表出」を阻害する「自己責任」のロックが複数かかっています。そもそも「政治」と「自分の生活」は無関係だとさえ感じている人も多数です。

 「ちょっと待てよ。投票で世の中って変わるかもしれないな」と一陣の風が錆びついてしまったロックを外すためには、遠くから聞こえてくる「国民の皆様」的な一昔前の「政治家言語」は無力です。

■与党に政策を取り込ませて実現する

 野党であれば、政権批判は当然のことです。

 ただし「100」「0」で政策の正当性を争うような単純化は避けるべきだと思います。与党は長期政権維持のため、「貧困と格差」の問題も含め、政策の微修正を続けているからです。

 「評価するべきところはよしとして、足らざるところを指摘して変更させる」。これが政治のリアリズムです。

 3年前の参議院選挙を前に、私は次のように書きました。

   『野党の「共通政策」で政治は変わる』(ハフポスト・2016年4月16日)
    一般的には野党共闘に「共通政策」を期待しても無駄ではないか、
   与党が圧倒的多数の国会では、とくに議席の3分の2を与党が抑え
   ている衆議院の解散がなければ参議院で与野党比がかわったところ
   で大きな変化はない、「野党の共通政策が実現する可能性はゼロ」と
   考えている人が多いのではないでしょうか。
    結論から言えば、野党が「共通政策」で結束した時には、政府・
   与党の国政運営に多くの影響を与えるのです。その前兆が、「保育
   園落ちた」の波紋が広がった保育園待機児童問題の展開や、「給付
   型奨学金」創設への動きです。参議院選挙直前というこの時期に、
   党としてはなるべく対立軸を鮮明にさせない「抱きつき」(クリン
   チ)で争点化をさせまいという意図も見えます。

 これまでに、野党が政策要求することで、世論に火がつく前に、政府・与党がこれを取り込んで実現するということは、何度もありました。

 参議院選挙は政権選択選挙ではありませんが、野党が共通政策を練り合わせた結果、実現していくプロセスが見えてくれば、野党の存在意義は十分に示せるのではないでしょうか。

 もちろん「獲得議席」は重要です。ただ、「与党100」「野党0」という価値軸と、批判勢力は文句を言うだけで何ひとつ実現しないという刷り込みこそ、野党の議席増を抑え込んできたものの正体だと見抜くべきです。

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党首討論会で発言する自民党の安倍晋三総裁=2019年7月3日、東京都千代田区

■党派を超え一致する工夫

 ここでは一例をあげます。

 参議院選挙が終わると、10月に消費税増税と共に、幼児教育・保育の無償化が実施される予定です。「少子化対策」や「子ども・子育て支援」は政府・与党にとっても重点化している政策のはずです。

 私は、2017年9月の特別区区長会で、国民健康保険料について次のように発言しました。

    現在、少子化問題は選挙でも各党共通の関心事だと思うが、国民健
   康保険料の均等割額が、事実上の「人頭税」となっていることを問題
   にしたい。たとえば、子どもひとりあたり49500円だが、2人いれば
   99000円、3人なら148000円とはねあがっていく。子どもの数が多け
   れば多いほど多額の保険料を徴収する仕組みは少子化対策と逆行して
   いて、変更するべきだ。

 「子どもの数が多くなるほどに、減免されるのではなく、人数分はねあがる算出方式を変更せよ」という私の問題提起は、23区の区長でつくる特別区区長会でたびたび議論となりました。そして、統一要望事項に入れようということになり、2018年8月には特別区区長会から国に対しての「平成31年度国の施策及び予算に関する要望書」となって提出されました。

 「多子世帯への支援など、子育て世帯の経済的負担を軽減するため、子どもに係る均等割保険料の軽減措置を始めとした制度の見直しをすること」と、多子世帯に対しての国民健康保険料の均等割額の軽減を明確に求めています。

 自治体の現場を預かる首長の立場から見ても、明らかな矛盾だと指摘している「均等割額×子どもの数」という人頭税方式が深刻な少子化を迎えている今日、正当化できる論理はどこにもないはずです。

 特別区の区長も、国政与党に近い立場の保守系無所属が多く、野党系出身の首長はそう多くはありません。ただ、これはおかしいよねという点で一致したという具体例です。

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党首討論会で、意見を述べる各党の出席者=2019年7月3日午後、東京都千代田区

■野党は「社会的連帯」の社会政策を示せ

 「抜本改革」の手前の改善、修正に狙いを定めて政策焦点化する、国政選挙ならではの大きな論戦の中で、選挙結果にかかわらず実現がはかられていく――野党側にこうしたリアリズムが宿り、着々と仕事が進められるという存在感が出てくれば、長期政権を支えてきた「民主党政権の悪夢」という「封印」はポーンと外れるはずです。

 7月21日には参議院選挙の投票が行われます。私たちの生活が「よりまし」となるための提案と論戦こそ、待たれているのではないでしょうか。

 今回の参議院選挙では、全国の1人区で「野党統一候補」が立ちました。与党側は「政治の安定」という名の現状維持で議席を確保しようとしていますが、野党各党を代表する統一候補がこの間の長期政権を支えてきた「自己責任」の呪縛を解き放ち、「社会的連帯」「相互扶助」の社会政策を具体的に示して、「格差と貧困」の連鎖を断ち切る道筋を描くだけで、選挙後の政治を大きく塗り替える可能性があります。

https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019070300006.html
http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/705.html

[政治・選挙・NHK262] 安倍政権とNHKの蜜月は民主主義を破壊しないか 内閣支持率が落ちない背景に、権力と一体化する政治報道 (朝日新聞社 論座)
安倍政権とNHKの蜜月は民主主義を破壊しないか
内閣支持率が落ちない背景に、権力と一体化する政治報道

徳山喜雄 ジャーナリスト、立正大学教授
論座 2019年07月04日 より無料公開部分を転載。

https://image.chess443.net/S2010/upload/2019070200008_1.jpg
籾井勝人・前NHK会長(左)と安倍首相=2014年3月12日

 「NHKと政権の距離」をめぐって批判が絶えない。経営委員会の委員長や委員の人事、さらに会長人事を政権の肝いりでおこない、6年半を超える第2次安倍晋三政権下、NHKへの影響力が増し、NHK側も忖度をつづけているように映る。その実例を本稿で縷々述べるが、社会に大きな影響力を持つ公共放送で、民主主義のインフラといえるNHKと安倍政権の蜜月。参院選を間近に控える日本を、どの方向へと導いていくのであろうか。

■政治記者が政権スタッフのごとく目を光らせる

 NHKと政治権力との関わりについて昨今の動きを振り返りたい。

 たとえば、昨秋の翁長雄志・前沖縄県知事の県民葬で、菅義偉官房長官が首相の弔辞を代読したとき、参列者から「ウソつき」「帰れ」などの怒号が1分間以上にわたって響き渡った。このシーンを民放は放送したが、NHKは流さなかった。同じく昨秋の沖縄県知事選で、玉城デニー氏を「当選確実」とする速報を他メディアより1時間半遅れで伝えた。これまでのNHKの選挙報道では、考えられないことだ。

 安倍首相は1月6日放送のNHKの討論番組「日曜討論」に出演。米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への基地移設をめぐり、埋め立て予定海域へのサンゴ移植はされていないのに、「サンゴは移している」と発言。NHKはこの内容の真偽を確かめないまま放送し、誤報となった。収録から放送まで丸1日以上あり、チェックする余裕があったが、首相の言葉を唯々諾々と流しただけだった。

 加計学園問題をめぐっては、前川喜平・前文部科学次官に最初にインタビューし、「総理のご意向だ」という文書があるとの証言を証拠とともに得たが、いまだに放映していない。その後、他メディアが報じることになった。森友学園問題では、特ダネを放った大阪放送局の司法記者の相澤冬樹氏が記者職を外され退社している。相澤氏は昨年12月、「安倍官邸vs.NHK」を出版。スクープの放送後、東京の報道局長が「なぜ出したんだ」と激怒したと記されている。

 「NHKと政権の距離」問題を語りだすと、枚挙にいとまがない。NHKの政治記者が、まるで安倍政権のスタッフのごとく放送内容に目を光らせているかのようだ。政権にかかわる報道をみるかぎり、「公共放送」なのか「国営放送」なのか、区別がつかないありさまだ。NHKは根本的に考え直さなければならないだろう。

■編集権と人事権を一手に握る会長

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百田尚樹氏

 このようなことが起こる背景には、NHKの予算は国会承認で、経営委員会の人事は衆参両院の同意のうえで首相が任命するという事情があり、政治家とりわけ政権中枢に弱い面がある。さらに会長が編集権と人事権を一手に握り、絶大な力を持っているが、その会長人事が政権の影響下で行われる。

 たとえば、第2次安倍政権の発足後、政権は2013年11月、安倍首相に近い作家の百田尚樹氏や埼玉大学名誉教授の長谷川三千子氏ら4人をNHKの経営委員会に送り込んだ。翌14年、会長に三井物産の副社長をしていた籾井勝人氏が就任。籾井氏は ・・・ログインして読む
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[政治・選挙・NHK262] ナチス突撃隊張りの足立康吏衆院議員の野党攻撃、維新は結社の自由、政党の存在を否定するのか(ちきゅう座)
2019年 7月 4日
<広原盛明(ひろはら もりあき):都市計画・まちづくり研究者>

−大阪維新のこれから(9)−

 いまどきこんな極右体質の国会議員がいるかと思うと、背筋が寒くなり身体中に戦慄が走る。2019年6月25日、衆院本会議における維新代表・足立康吏議員の発言が耳から離れない。足立議員は安倍内閣不信任案決議に反対する理由として、「共産党と同じ行動をとるのが死んでも嫌だからだ」と臆面もなく述べたのである。「死んでも嫌」という表現は、相手の存在そのものを否定する主張すなわち「共存の否定=民主主義の否定」につながる。共に生きるのが嫌であれば、自分が死ぬか、相手が死ぬか(殺すか)のどちらかを選ぶしかない。憲法で保障された基本的人権としての思想信条の自由、結社の自由を根本から否定する恐ろしい考え方だ。

 足立議員といえば、これまでも野党各派に対して聞くに堪えないような罵詈雑言を数知れず繰り返してきた悪名高い人物だ。2016年当時、野党第1党だった民進党に対しては「民進党はあほでバカでどうしようもない政党」「民進党はウソつき」「最大の違憲集団こそ民進党」などと議場で数回にわたって放言し、ブログでは「民進党に国会の議席は不要」とまで書き込む有様だ。なにしろ野党側からは年4回も連続して懲罰動議を出されるという、憲政史上比類のない「新記録」をつくった人物なのである。

 不思議なことに、足立議員に対しては野党側から繰り返し懲罰動議が出されているにもかかわらず、その取り扱いを協議する(与党主導の)衆院議院運営委員会では結論が出されないままで放置されている。このため動議は懲罰委員会にかからず、足立議員は登院停止や資格停止などの処分もなく、責任も問われないままノウノウと問題行動を繰り返す状況が続いている。つまり、足立議員は与党に庇護されることで(飼われることで)、野党攻撃の「鉄砲玉」としていとも効果的に利用されているのである。

 足立議員の攻撃は、朝日新聞などリベラルなメディアにも向けられている。朝日新聞は、2017年11月11日の社説で文部科学省の審議会が加計学園の獣医学部の新設を認める答申をしたことに関し、「『総理のご意向』をめぐる疑いが晴れたことにはまったくならない」と指摘した。これに対し足立議員は、ツイッターにこの社説を引用した上で「朝日新聞、死ね!」とのドギツイ言葉を投げつけ、おまけに「拡散歓迎」との書き込みまで付け加えたのである。ことあるたびに「死ぬ」「死ね」を連発する足立議員は、物事の決着を相手の抹殺によって付けようとする衝動に駆られるのであろう。行き着くところは、ナチスドイツの「ホロコースト」の道に通じるのではないか。

 アメリカのトランプ大統領も、自らの言動に批判的なニューヨークタイムズ、ワシントンポスト、CNNテレビなどのメディアを「フェイク」と決めつけることで知られる。取材拒否を始め、あらゆる手段を使ってその影響力を削ごうとする。安倍首相も、読売、産経、フジテレビなど右派メディアを重用する点では「親密な友人」と変わりない。まして、足立議員のような無鉄砲な人物がいれば、これを利用しない手はないと考えるのがごく自然だろう。だから、足立議員は懲罰委員会にも掛けられずに泳がされ、安心して野党攻撃の「鉄砲玉」としての役割を果たすことができるのである。

 維新は6月27日、次期参院選の公約を発表した。毎日新聞(6月28日)を除いて内容を報じたメディアは見当たらないが、私はその中の「憲法改正」に関する項目を読んでゾッとした。その内容は以下の通りだ(抜粋)。
 「9条議論の前提として、旧日本兵らのための国立追悼施設の整備や米中央情報局(CIA)のようなインテリジェンス機関を創設。各党に具体的改正項目の提案を促し、衆参両院の憲法審査会をリードする」

 「旧日本兵のための国立追悼施設の整備」及び「米中央情報局(CIA)のような諜報機関の創設」を維新がことさらに参院選公約として掲げたことは、維新の目指す国家像を明らかにするうえで重大な意味を含んでいる。端的に言えば、それは「靖国神社の国立化」であり、「特高警察の拡大強化」にほかならない。軍事支配体制のためのイデオロギー拠点施設として国立追悼施設をつくり、実行部隊としてCIAのような謀略諜報機関を創設するとの方針なのだ。ナチスドイツでいえば、国民生活の隅々までナチズムを浸透させた情報宣伝局と秘密警察(ゲシュタポ)を併せ持ったような体制を整備しようというのである。

 維新は目下参院選に向け、大阪以外の地域で候補者擁立に精力的に動いている。北海道では「新党大地」の鈴木宗男代表、東京では「都民ファースト」出身の元都議、神奈川では「希望の党」前代表の松沢参院議員など、とにかく票を稼げる候補者は所属を問わず大歓迎というわけだ。その背景には、維新は大阪では猛威を振るっていても、全国的には広がらないという焦りがある。なぜなら大阪を除く国政選挙の比例代表の得票数は、2012年衆院選の1080万票が17年衆院選では僅か5分の1の245万票へ激減したからである(毎日新聞2019年6月22日)。

 だからこそ、維新は大阪ダブル選挙の勢いを駆って次期参院選で一気に勢力を挽回する戦略をとらざるを得ない。それが足立議員を代表に立てての野党攻撃を主とする内閣不信任案決議反対の発言であり、参院選における突出した極右的政策の打ち出しとなって表れている。「日本のこころ」や「希望の党」など極右政党が軒並み退場した現在、その支持層を維新が一手に集めるには足立議員のような「鉄砲玉」が必要であり、自民党より右の政策が有効だと判断しているためであろう。

維新幹部の吉村大阪府知事は6月28日、大阪府庁で記者団に対し「特に憲法改正は強く訴え、議論をリードしていきたい。今の自民党に任せていたら全然進まないので、参議院選挙ではこの点を訴え、憲法改正を強烈に引っ張っていく役割を果たしたい」と述べた(NHKウェブニュース)。吉村知事も足立議員と同じく極右体質の政治家であり、外見は異なっていても根はつながっている間柄だ。参院選では両者は並び立って活躍するだろう。だが、審判を下すのは全国の有権者だ。選挙結果の行方を注視したい。(つづく)

初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion8783:190704〕

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