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[経世済民131] 世界経済成長予想、今年3.3%・来年3.4%に再び下方修正=OECD 政策の不確実性や貿易摩擦 

ワールド2019年3月6日 / 19:13 / 3時間前更新
世界経済成長予想、今年3.3%・来年3.4%に再び下方修正=OECD
Reuters Staff
1 分で読む

[パリ 6日 ロイター] - 経済協力開発機構(OECD)は、2019年と20年の世界の経済成長率見通しをそれぞれ3.3%、3.4%とし、昨年11月に続いて再び下方修正した。貿易摩擦や英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を巡る不透明感が打撃になるとの見通しを示した。

昨年11月時点の見通しからは19年が0.2%ポイント、20年が0.1%ポイントそれぞれ引き下げられた。

OECDは報告書で「高い政策不透明感、進行中の貿易摩擦、そして企業・消費者信頼感のさらなる低下が全て見通しの下方修正につながっている」と説明。「ブレグジットを含め、欧州ではかなりの政策不透明感が残っている。無秩序の離脱となれば、欧州の各国経済にとってコストがかなり上昇するだろう」とした。

OECDはドイツの19年成長率見通しについて、従来の1.6%から0.7%へと大幅に下方修正した。20年は1.1%成長へとやや回復すると予想。輸出依存型の独経済は世界的な需要低迷と貿易障壁拡大の影響を特に受けやすい。

日本については、19年と20年の成長率はそれぞれ0.8%、0.7%と見込んでいる。高い企業収益と深刻な労働力不足が投資を刺激し続けているが、信頼感は低下しており、最近の鉱工業生産と輸出のデータは極めて弱いと指摘。19年10月に予定されている消費税率引き上げによる短期的な影響の一部は、社会保障支出の増加、18年度補正予算、19年度予算の一時的歳出増と減税により緩和されるとの見方を示した。
https://jp.reuters.com/article/oecd-global-outlook-idJPKCN1QN13K


 

OECD、世界経済見通しを再び下方修正−政策の不確実性や貿易摩擦
William Horobin
2019年3月6日 19:12 JST
世界の成長率見通しを3.5%から3.3%に引き下げ
欧州の減速は特に急激、新たな措置の導入を−OECD
世界経済は貿易摩擦と政治的不確実性から予想される以上に苦戦しており、特に欧州の見通しを曇らせている。経済協力開発機構(OECD)が6日公表した報告書でこう指摘した。

  OECDが昨年11月に見通しを下方修正して以来、世界の主要国経済にとって良い方向に進んでいることはほとんどない。ユーロ圏と中国の景気の弱さは一段と根強いものと判明しつつあり、貿易の伸びは急減速し、英国の欧州連合(EU)離脱を巡る不確実性も続いている。

  さらなる貿易障壁や英国の合意なきEU離脱、債務増大による金融の脆弱(ぜいじゃく)性などリスクが積み上がる中、状況はむしろ悪化する恐れがある。イタリア経済は2013年以降で初めて通年で縮小する可能性もある。

  OECDは「世界的な景気拡大は勢いを失い続けている」とし、20カ国・地域(G20)のほとんどについて経済見通しを下方修正。「下振れリスクが現実になったり影響したりした場合、経済成長はさらに弱まりかねない」と分析した。

Downgrades Galore
The OECD slashes forecasts for 2019 growth in advanced economies


Source: Organization for Economic Cooperation and Development

  経済状況はユーロ圏で特に深刻で、OECDは今年の成長率見通しを1.8%から1%に下方修正した。欧州中央銀行(ECB)は今週フランクフルトで政策委員会を開くが、OECDは同中銀が利上げの先送りと銀行の資金繰り改善に向けた新たな措置を実施する可能性について示唆すべきだと指摘した。

  米経済見通しも若干引き下げられ、英国の19年成長率見通しは1.4%から0.8%に下方修正された。ドイツは1.6%から0.7%に修正された。

  OECDは英国のEU離脱を持続する脅威の一つと位置付けた。英国が合意を確保しなければ、短期的なリセッション(景気後退)のリスクが見込まれ、他国にも「相当大きな悪影響」が及びかねないと予想した。

Grim Outlook
The OECD lowers 2019 economic growth predictions for most emerging markets


Source: Organization for Economic Cooperation and Development

  中国も懸念要因で、同国経済が急減速すれば「世界の成長と貿易に著しい悪影響が及ぶ」とOECDは指摘。中国の成長率は19年の6.2%から20年には6%に低下すると見込む。OECDの予想は中国が新たな経済成長目標を6−6.5%と発表する前に準備された。

原題:OECD Cuts Global Outlook Again and Warns Worse May Be Ahead(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-06/PNXBWT6KLVR401?srnd=cojp-v2


 
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/400.html

[経世済民131] 中国に忍び寄る「灰色のサイ」、試される金融緩和効果 中国の国防予算、心配の種は「非公式な軍事力」
ビジネス2019年3月6日 / 16:13 / 5時間前更新
焦点:
中国に忍び寄る「灰色のサイ」、試される金融緩和効果
森佳子
3 分で読む

[東京 6日 ロイター] - 企業債務の膨張が中国経済を圧迫し、世界経済のリスク要因として意識され出した。5日から始まった全国人民代表大会(全人代)で、李克強首相はばらまき型の景気刺激策を取らないとしたが、金融政策は既に穏健な緩和から、大胆な緩和へと転換している。

背景には企業部門の債務膨張があり、緩和策の強化で中国景気を支える姿勢を鮮明にしたかたちだ。

ただ、中国の過剰債務問題は「灰色のサイ」とも呼ばれ、金融リスクが表面化するような事態になれば、「中国発」の世界経済後退の懸念が高まり、隣国である日本にも、大きな衝撃が打ち寄せて来かなねない。

<債務膨張の危険性>

中国経済に過剰債務の圧力がのしかかっているというデータがある。国際決済銀行(BIS)によると、中国の企業債務(金融機関除く)の名目GDP比率は、2008年3月末の142%から、昨年6月末に253%まで急膨張した。

BISは、中国の債務水準や上昇ペースの速さは、かつて金融危機に陥ったり、バランスシート調整により景気急減速を余儀なくされた国々に匹敵すると注意を喚起する。

この債務膨張は、利払い費の増大で企業の支払い能力を悪化させ、金繰りが急速にきつくなっている。同じような資金繰りの悪化は、地方の自治体にもみられ、取引相手先への支払いが延滞しているケースも出ていたと、中国ビジネスを展開している日本企業の幹部は話す。

<大胆な金融緩和に転換>

2019年の中国の金融政策方針では、18年の「穏健中立」から「中立」が削除され、「合理的で潤沢な流動性供給」が追加された。

全人代初日の5日の演説で李首相は、金融政策について「引き締め過ぎず、緩め過ぎないように維持する」と表明した。

だが、最近の金融データは、金融緩和が「穏健」を逸脱し、大胆な緩和に転じたことを示唆する。

金融システムから経済に供給されたネット資金量を示す「社会融資総量」は、今年1月に4兆6353億人民元と前年比51%の増加となった。同総量の内数の「新規人民元建て融資」とともに過去最高を記録した。融資の内訳では、企業向け貸出比率が1月に前年比43.3%と大幅に拡大した。

みずほ証券・投資情報部、シニアエコノミストの吉川健治氏は、民間企業に対する大規模な流動性供給について「景気低迷に対する現政権の危機感を表している」と話す。

足元で中国企業のマインドは悪化し、リストラや賃金の伸び悩みで消費者マインドも冷え込んでいる。そこに米中摩擦による景気下押し圧力も加わり、中国全体の需要は急激に落込んだ。

実際、中国汽車工業協会によると、中国の自動車生産台数と販売台数は昨年11月から前年比で2桁の減少が続く。中国内需の急減速は、周辺国の対中国輸出の急減にもつながった。日本の中国向けの輸出は1月に金額ベースで17.4%、数量ベースで20.8%減と一段と悪化した。

吉川氏は「予想以上の景気減速の勢いに直面した政府は、マインドの低下を抑止するために、大胆な金融緩和と積極財政の強化に乗り出した」と分析している。

具体的には、中小・零細企業に的を絞った資金繰り支援策を打ち出し、大手商業銀行による小規模企業への貸出を今年30%以上拡大する方針も示した。

また、先の日本企業幹部は、中国ビジネス最前線における金融引き締まりは鮮明で、年明けの緩和策でようやく「一息」ついているという。

ただ、中国では金融仲介・信用仲介機能そのものが働いていないと国際通貨研究所・開発経済調査部、上席研究員の梅原直樹氏は指摘する。「中国の中小規模銀行が、中小零細企業向けにしっかりとした金融仲介サービスを提供できていれば良いが、不十分なままにとどまっている」と分析する。

<忍び寄る灰色のサイ>

習近平国家主席は1月21日に中央・地方政府のトップを招集し、金融リスク問題に関し「灰色のサイ」を防止しなければならないとした。

灰色のサイとは、高い確率で存在し、大きな問題を引き起こすにもかかわらず、軽視されがちな問題を指す。

周小川人民銀行前総裁は退任前の2017年11月、債務問題に警鐘を鳴らすため灰色のサイを引用し、18年1月には楼継偉・元中国財政相が「中国で金融システムリスクが発生する確率は、09年の米国の金融危機発生前よりもさらに高い」と指摘した。

「灰色のサイはまず金融市場で認知され、大幅な通貨安・株安が起き、金融システムを揺るがすだろう。金融不安は中国経済の失速を招き、世界経済は同時不況に陥ることになる」とみずほ証券の吉川氏はいう。

ある国内証券のストラテジストは、灰色のサイが姿を現した場合、中国の需要に依存する企業の株価から先行して下落。さらに資金繰りに窮した中国国内の市場参加者が米国資産を売却すると予想され、その結果として米債価格の下落とドル安/円高が進み、日本株はさらに下落するシナリオがあり得ると述べている。

*見出しを修正しました。

編集:田巻一彦
https://jp.reuters.com/article/china-economy-idJPKCN1QN0LX


 

コラム2019年3月6日 / 17:38 / 5時間前更新

中国の国防予算、心配の種は「非公式な軍事力」
Pete Sweeney
2 分で読む

[香港 6日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国の国防費が今年の予算全体に占める割合は低下する。昨年は派手に使ったが、今年の購入ペースは減速するだろう。

だが、海上で活動する民兵を含む血気盛んな漁船団に加え、非通常兵器に対する予算外の投資により、アジアの軍拡競争は今後も一触即発状態が続くことになる。

2019年予算に国防費が占める割合はわずか5.9%にすぎず、前年比7.5%増の1.2兆元(約20兆円)となる。昨年は大幅な増額が注目を集めたが、予算全体に占める公式的な国防費の割合は1990年代以降、徐々に低下している。

米国の場合、2017年に国防総省に充てられた予算は全体の9%近くに上り、中国のそれを上回っている、とストックホルム国際平和研究所は試算する。とはいえ、中国は年間の金額ベースで世界2位の軍事大国であり、敵対国を懸念させる一方で、実際にはもっと使っているのではないかとの疑念も生んでいる。

確かに、南シナ海における領有権を巡り争いを繰り広げているベトナムやインドネシアのような近隣諸国にとって、中国の非公式な軍事力は心配の種となっている。

例えば、向こう見ずな漁船団の台頭も、対立の原因となっている。領有権を巡る対立は、割り当て制の導入を困難にしている。乱獲や汚染により、漁船は領有権の主張する範囲を超えて活動することを余儀なくされている。沿岸水域に迷い込んできた中国の漁船は、インドネシア海軍によって、またある時はアルゼンチン海軍によって沈められた。中国漁船団はまた、同国海軍や沿岸警備隊と協力して活動する海上の民兵とも手を組んでいる。

また別の懸念もある。1つは、東南アジアの通信網構築に中国企業が関与することで、政府のウェブサイトや送電網を標的としたサイバー攻撃が促進されること。もう1つは、中国が人工知能(AI)や無人航空機への研究を行っていることで、大量の軍事ドローンが生み出される可能性だ。

中国の国防費が書面上は後退したからといって、アジア海域の波風が静まるわけではないのだ。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

https://jp.reuters.com/article/bv-column-china-defence-idJPKCN1QN0VM
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/401.html

[経世済民131] ウォール街のボーナス制限、当局があらためて提案も 世界最年少のたたき上げビリオネア誕生ー21歳カイリー1140億円
ウォール街のボーナス制限、当局があらためて提案も

Jesse Hamilton
2019年3月6日 21:56 JST
ドッドフランク法に盛り込まれたボーナス規則は棚上げされていた
危険なリスクテーク抑える目的で2011年と16年に提案、承認に至らず
ウォール街はあらためてボーナス制限に直面する可能性がある。トランプ大統領が指名した当局者らが、金融危機後に提案されながら長く棚上げされてきた規則について再検討しようとしている。事情に詳しい関係者2人が明らかにした。

  取り組みは初期段階だとして関係者が匿名を条件に述べたところによると、連邦準備制度理事会(FRB)などの当局が、2011年と16年に承認に至らなかった案の再提出について協議している。10年のドッドフランク法(金融規制改革法)に盛り込まれていた規則はトレーダーに危険なリスクテークを促すインセンティブ報酬の制限を目指すものだった。

  FRBの報道官は、当局がインセンティブ報酬規則の整備にコミットしていると述べた。証券取引委員会(SEC)や通貨監督庁(OCC)などの報道官はコメント要請の電子メールに応答していない。

  報酬制限案の復活については米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が伝えていた。

原題:Wall Street Pay Limits Said to Get a Fresh Look From Regulators(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-06/PNXYOA6KLVR401?srnd=cojp-v2

 


世界最年少のたたき上げビリオネア誕生ー21歳カイリー・ジェンナー氏
Sophie Alexander、Tom Maloney
2019年3月6日 16:03 JST
化粧品会社カイリー・コスメティクスの創業者、カイリー・ジェンナー氏は、世界最年少のたたき上げビリオネアとなった。同社が米アルタ・ビューティと独占提携を結んだことが寄与した。

  ブルームバーグ・ビリオネア指数によると、21歳のジェンナー氏の資産は10億2000万ドル(約1140億円)。同指数は、ジェンナー氏が同社の株式90%を保有し、残りの株を同氏の母親が保有していると想定。母親のクリス氏は同社の広報と財務を担当するのと引き換えに報酬を受け取っている。米誌フォーブスは別の方法を使い、ジェンナー氏が最年少のたたき上げビリオネアになったと先に報じていた。

Kylie Jenner
カイリー・ジェンナー氏写真家:Dimitrios Kambouris /ゲッティイメージズ
  ジェンナー氏はセレブ一家として知られるカーダシアン・ジェンナー家の最年少のメンバーで、キム・カーダシアン氏の異父妹。同氏は2015年にカイリー・コスメティクスを創業。フォーブスによると、昨年の売上高は前年比9%増の3億6000万ドル。

  ブルームバーグは、結婚や遺産相続を通じて財産を相続していない場合、「たたき上げ」と分類している。ジェンナー氏は1億2800万人のインスタグラムのフォロワーを抱え、その人気を自社製品のプロモーションに生かしている。

原題:Kylie Jenner Becomes the World’s Youngest Self-Made Billionaire(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-06/PNXMT86S972E01?srnd=cojp-v2


 
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/402.html

[経世済民131] トランプ氏が対中交渉で早期合意促す、株価に気をもんで 米貿易赤字598億ドル10年ぶり高水準 ドイツ銀株トレード大幅損失
トランプ氏が対中交渉で早期合意促す、株価に気をもんで

Jennifer Jacobs、Saleha Mohsin
2019年3月6日 20:02 JST 更新日時 2019年3月6日 23:23 JST
米朝会談が不発に終わったトランプ氏、再選に向け成果を模索
トランプ氏は対中合意がなく株価を押し下げる展開を懸念−関係者
トランプ米大統領は中国との貿易交渉の担当者に対し、速やかに合意をまとめるよう圧力をかけている。大統領は合意のない状態が株価を押し下げかねないことに懸念を強めており、合意成立で株価の上昇を促したい考えだと、事情を知る関係者が述べた。

President Trump Speaks To National Association of Attorneys General
トランプ米大統領(4日)Photographer: Oliver Contreras/Pool via Bloomberg
  内部の議論であることから匿名を条件に語った関係者によると、トランプ氏は対中貿易交渉が進むにつれ、合意に向け進展の兆しが表れるたびに株式相場が上昇することに気づいた。3月1日を期限としていた中国製品への関税引き上げを延期した決定で米国とアジアの株が上昇した時にも、動きを注視していたと、関係者の1人は語った。

  米中は最終合意に近づきつつある。合意成立なら1年近くにわたった貿易戦争に終止符が打たれる可能性があり、来年の大統領選で再選を狙うトランプ氏への追い風にもなる。北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との会談が物別れに終わっただけに、トランプ氏が切望する成果をもたらすことになる。

  米国の貿易交渉担当チームと4日に会合を持ったトランプ氏は、中国の習近平国家主席を月内にも招き、合意の署名式を行うことに関心を表明した。

  ただ、こうした前のめりな姿勢は中国に大きな譲歩を強いることなく合意を結ぶ可能性をはらむ。

  中国の楼継偉元財政相は6日に北京で、「米国の要求の多くは中国がすでに改革を計画している内容であり、中国側の譲歩は恐らくそれほど大きなものにならないだろう」と発言。米国の要求の一部は「理不尽」だとも語った。

  トランプ氏は経済政策に対する評価の指標として株価の動きに執着している。ホワイトハウス幹部らは同氏が株価について頻繁に尋ねるため、大統領執務室に呼び出された際には相場の動きを事前に見ておくようにしている。政権内で対中交渉の合意をまとめたい勢力は、大統領のこの執着に付け込んでいると関係者の1人は語った。 

  ホワイトハウスの広報担当スタッフはコメントを控えた。

原題:Trump Is Said to Push for China Deal With Market Gains in Mind(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-06/PNXXD46VDKHU01

米貿易赤字:12月は598億ドル、予想579億ドル−通年で10年ぶり高水準
Katia Dmitrieva
2019年3月6日 22:39 JST
昨年12月の米貿易赤字は598億ドルと、前月の503億ドルから拡大した。2018年の貿易赤字は6210億ドルと、10年ぶりの高水準となった。

  統計の詳細は表をご覧下さい。

原題:U.S. Trade Gap Surged to $621 Billion in 2018, Highest in Decade(抜粋)
U.S. Trade Deficit Widened to $59.8b in Dec., Est. $57.9b
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-06/PNY5U36VDKHS01?srnd=cojp-v2


 

ドイツ銀の株式トレーディング部門、2018年に大幅な損失−関係者
Steven Arons
2019年3月6日 21:55 JST
ドイツ銀は株式業務の閉鎖を検討した時期もあった−関係者
18年に約7億5000万ドルの損失、何年も利益を上げていない
ドイツ銀行は、株式トレーディング部門が2018年に約7億5000万ドル(約840億円)の損失を出したと見積もっている。事情に詳しい関係者が明らかにした。

  関係者によると、米株部門は何年もの間、利益を上げていない。同行は株式業務全体の閉鎖を検討した時期もあったという。関係者は匿名を条件に語った。

  クリスティアン・ゼービング最高経営責任者(CEO)は昨年、株式事業、特にヘッジファンド向けサービス業務の縮小を決めた。投資銀行部門についての包括的な見直し後の決定だったとブルームバーグ・ニュースが昨年報じていた。

  株式部門の18年の損失と閉鎖の検討については、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が先に報じていた。

原題:Deutsche Bank Equities Unit Is Said to Record Deep Loss in 2018(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-06/PNY2CU6S972801?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/403.html

[経世済民131] 「若者はお金がない」の誤解!高級車やタワマンにはお金を使う理由 バブル期より増えている 単身者の可処分所得
2019年3月7日 久我尚子 :ニッセイ基礎研究所 生活研究部 主任研究員
「若者はお金がない」の誤解!高級車やタワマンにはお金を使う理由


バブル期より増えている
単身者の可処分所得

 世間では、よく「若者はお金がない」と言われる。しかし、統計データを見ると意外な事実が分かる。実は、1990年代のバブル期の若者よりも今の20代〜30代の若者の方がお金があるのだ。
 総務省「全国消費実態調査」によると、30歳未満の単身勤労者世帯の可処分所得はバブル期より増えている。1989年と2014年の可処分所得を比べると、男性では月平均18.4万円から23.0万円(+4.6万円)へ、女性では16.4万円から18.3万円(+2.9万円)へと増えているのだ(図1)。物価を考慮しても 男女ともプラスだ(※1)。

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(※1)久我尚子「若年層の消費実態(1)〜(5)」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レター(2016〜2017)
 この背景には、景気低迷は続いたものの、初任給が上がり新入社員の待遇が良くなっていること(図2)、また、初任給が比較的高い大卒者が増えていることなどがあるのだろう。

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 とはいえ、このご時勢で一人暮らしができる若者は、大企業の正社員など、若者の中でも経済的に恵まれている層なのかもしれない。ということで、非正規雇用者の若者の手取り収入も計算してみた 。その結果、25〜29歳では男性は月平均20.7万円、女性は18.4万円。やはりバブル期の一人暮らしの若者よりも2万円程度も多い(※2)。
 ちなみに、25〜29歳の非正規雇用者の約3割は大卒・大学院卒だ。非正規雇用者のうち大卒・大学院卒に限定して見ると、男性は25.0万円、女性は22.0万円にもなる。

一人暮らしの正社員より
自由にお金を使える非正規雇用の若者

 最近は人手不足で売り手市場だ。アルバイトの時給も上がっている。必ずしも正社員でなくても、月々そこそこ稼げるようになっている。非正規雇用者の場合、実家に住んでいる割合も高い(※3)。実家に住む非正規雇用の若者の方が一人暮らしの正社員の若者よりも自由に使えるお金が多いこともあるだろう。
 また、世間では「若者はお金を使わない」とも言われている。確かに、30歳未満の単身勤労者世帯の若者の可処分所得は増加傾向にあるが、消費性向は実は低下傾向にある。つまり、増えた所得をそのまま消費に回しているわけではなく貯蓄へ回している、そして、その割合は年々高まっている。若者全体として見れば、確かに「若者はお金を使わない」のかもしれない。
(※2)厚生労働省「賃金構造基本統計調査」および総務省「全国消費実態調査」より推計
(※3)総務省「親と同居の未婚者の最近の状況」
 しかし、いつの時代にも消費意欲が旺盛な層は存在する。また、単純なようだが、可処分所得が多いと、やはり消費意欲は高まりやすい。
 ここでニッセイ基礎研究所が実施した生活者1万人を対象とした「家計消費と生活不安に関する調査」(※4)のデータを紹介したい。20〜30代では他の世代に比べて「ものは買うより、できるだけレンタルやシェアで済ませたい」や「計画的な買い物をすることが多い方だ」、「毎月、決まった額の貯金をしている」、「日常的におサイフケータイを使い買い物やポイントサービスを利用している」にあてはまる割合がやや高い(図3)。

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 今どきの若者らしく、安く済ませられるものは安く済ませて、ポイントなどお得なものも賢く使う、そして、計画的に貯蓄もするといった堅実な消費態度が見える。地に足の着いた賢い消費者として、“賢実”な消費態度ともいえるだろう。
 一方で、30代の上位4割、20代の上位2割を占める年収400万円以上の若者を見ると、これらにあてはまる割合がさらに高まるとともに、「多少高くても品質の良いものを買うほうだ」や「普及品より、多少値段がはってもちょっといいものが欲しい」といったラグジュアリーさを求める割合も高まる。
妻が夫並みに稼ぐ共働き夫婦
パワーカップルの消費力
 年収が比較的高い若者では“賢実”な消費態度が強い一方で、こだわりのあるものにはお金を使う、ラグジュアリー志向もある、そんな消費態度が見えてくる。
(※4)「家計消費と生活不安に関する調査」、調査対象:全国の20〜70歳代の一般個人、調査手法:ネットリサーチ、実施時期:2017年4月、調査機関:株式会社マクロミル、有効回答数1万305(男性5153、女性5152)
 ちなみに、今の若者は上昇志向が弱く、内向き志向だなどといわれるようだが、年収400万円以上の若者では「基本的には潜在的な成功を追い求めている」(56.1%)にあてはまる割合が全体(44.0%)より+12.1%ポイントも高い。
 また、最近では、若い共働き夫婦の消費が注目されている。特に不動産業界では、都心の高級マンション市場の牽引役として「パワーカップル」への視線が熱い。
「パワーカップル」とは妻が夫並みに稼ぐ共働き夫婦のことだが、共働きがスタンダードになっている若い世代ほど増えている。仮に夫婦ともに年収700万円以上の共働き夫婦をパワーカップルとすると、2017年で全国で26万世帯だ(総務省「平成29年労働力調査」)。5000万世帯を超える日本の総世帯数からするとごくわずかではあるが、近年、増加傾向にある。2013年の21万世帯と比べると+5万世帯、増減率で見ると+23.8%にもなる。また、パワーカップルで最も多いのは30歳代の夫婦で全体の約3割を占める(※5)。
 所得が多く、消費力のあるパワーカップルは、やはり消費意欲が高い。長らく続いた景気低迷の中で、消費者全体として、食費や通信費などの生活に必要不可欠なもの以外、例えば、旅行やレジャーなどの娯楽費や交際費などは、できるだけ抑える傾向が強まっている。しかし、パワーカップルでは海外旅行や外食などへの消費意欲も旺盛だ(図4)。

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「若者のクルマ離れ」の誤解
男性は確かに減っているが…
 ところで、昔から、収入に余裕ができたり、結婚したりした後の大きな買い物の1つにクルマがある。「若者のクルマ離れ」をよく耳にするが、実はここには誤解がある。
(※5)久我尚子「パワーカップル世帯の動向(2)」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レター(2017/9/19)
 先の総務省「全国消費実態調査」の若年単身勤労者世帯の自動車保有台数を見ると、男性では確かに減っているが、女性は男性並みに増えている(図5)。その結果、現在では、一人暮らしの男女のクルマの保有状況は変わらないものとなっている。

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 都市部に住む男性では利便性の高さなどからクルマの購入は減っているものの、女性では経済力が高まることで、むしろクルマを買うようになっているようだ。

ブランド物を持つことが
必ずしもステータスではない
 実は今、「お金を使う」1981〜1996年生まれのミレニアル世代の若者層に向けて、クルマブランドでは施策が展開されている。
 レクサスやBMWといった高級車のブランド活動を見ると、直接的に新商品を訴求するというよりも、高級車に出合うことによって消費者の生活に新たな体験や世界観をもたらすといった訴求をしている。
 例えば、イベントにアーティストを呼びトークショーを行うことで、そこで新たな気づきやネットワークが生まれる、高級車に出合うことで生活に新しい体験が創出されるといったものだ。決してバブル期のようなブランド至上主義、クルマを持つことのステータスを訴求しているのではない。
 モノがあふれた中で育ってきた今の若者は、ブランド物を持つことが必ずしもステータスではなくなっている。むしろブランド物をひけらかすことは格好悪いと思っている印象もある。そんな若者達でも、ブランドに出合うことで得られる新たな体験やブランドの持つ世界観、改めて感じたその機能性の高さなどに共鳴するものを感じた時、「高くても良いものを買いたい」と思うのかもしれない。

少子高齢化・人口減少社会の
マーケティングの鍵
 新たな体験や世界観などにこだわる若者に向けたサービスを展開するのはクルマ業界だけではない。
 高級旅館やリゾートホテルを運営する星野リゾートは、この2月に若者をターゲットにしたホテルを開業した。コンセプトは「仲間とルーズに過ごすホテル」だ。24時間利用可能な中庭のパブリックスペースにはしゃれたカフェやライブラリーなどがあり、ホットワインや焚き火なども自由気ままに楽しめる。近隣には池に張る天然氷のスケートリンクもあり、軽井沢ならではの体験もできる。
「若者はお金がない」のは誤解だ。また、全ての若者が「お金を使わない」わけではない。“賢実”な消費態度を持ちながらも、こだわりがあり納得できるものには「お金を使う」、そして、ラグジュアリーさも求める若者に対して、いかにうまくアプローチできるかが少子高齢化・人口減少社会のマーケティングの鍵だ。
(ニッセイ基礎研究所 生活研究部 主任研究員 久我尚子)



http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/407.html

[経世済民131] 戦後最長の好景気で雇用が増えても「賃金」が上がらない理由 生産性の高い産業の 比重が低い日本

2019年3月7日 野口悠紀雄 :早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問
戦後最長の好景気で雇用が増えても「賃金」が上がらない理由

 戦後最長の景気拡大が続いているにもかかわらず、景気回復の実感がない理由は、賃金が上昇しないことと、零細企業の利益が増えていないことだ。
 サービス産業で従業員が増加しているが、この分野の賃金は製造業より低いため、全体の賃金が上がらない。
 賃金上昇のためには、生産性の高いサービス産業が成長することが必要だ。

6年で営業利益は55%増えたのに
賃金の上昇は0.8%
 法人企業統計(金融機関を除く)を用いて、第2次安倍政権発足と軌を一にして始まった「戦後最長の景気拡大」のもとでの企業の売上高や利益、従業員の給与などの推移をみてみよう。
 変化率や伸び率について述べる場合、とくに断りがなければ、景気拡大の起点である2012年10〜12月期から、18年10〜12月期までの期間の変化率や伸び率を指す。
 また、従業員1人当たりの従業員給与を「賃金」と呼ぶことがある。
 まず、全産業を見よう。図表1に示すように、営業利益は55%も増加した。それにもかかわらず、1人当たり給与は0.8%しか増えなかった。

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 この間に消費税率が3%ポイント上昇しているから、それを差し引いた実質賃金は、下落したことになる。
 賃金を抑えたから、利益が増えたのだ。
 有効求人倍率や失業率で見られるように人手不足が顕著になっているのだから、賃金は上昇して然るべきだ。
 それにもかかわらず、賃金が上昇しないのである。
 なぜこうなるのか? その解明が最初の課題だ。
賃金が低いサービス産業の
就業者が増えた
 経済全体の賃金が伸びない理由は、賃金の水準と従業者の増加率が産業によって異なり、賃金水準が低い産業で従業員が増えていることにある
 これを確かめるために、賃金水準と従業員数の伸び率が産業によってどのように違うかを示すと、図表2のとおりだ。

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 まず、製造業と非製造業を比べよう。1人当たり給与(四半期あたり)は、製造業が96.9万円。それに対して非製造業が82.9万円だ。このように、給与が高いのは製造業で、低いのが非製造業だ。
 しかし、製造業では従業員が減少し、非製造業で従業員が増加した。
 このために、製造業での賃金は3%の伸びを示したにもかかわらず、経済全体の賃金伸びが0.8%という低い水準にとどまったのだ。
 政府は春闘に介入することによって賃金の伸びを高めようとしている。確かに、春闘での賃上げ率は高まった。
 しかし、春闘に参加しているのは、主として製造業の大企業だ。だから、ここで賃金が上がったところで、経済全体の賃金が高くなるわけではないのである。
 非製造業の中でもとくに賃金が低いのは、サービス業だ。これを見るために、法人企業統計の「サービス業(集約)」という分類を見よう(注)。
 サービス業の賃金は低く、平均賃金は製造業の76.4%でしかない。それだけでなく、平均給与の伸び率も1.1%しかない。ところが、従業員数の伸び率は12.4%と極めて高い。
 従業員数で見ると、サービス業は製造業より多く、非製造業全体の37.1%を占める。全産業の27.7%を占めているので、この動向が、経済全体を決めているのだ。
(注)サービス業(集約)とは、宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス業、娯楽業、広告業、純粋持株会社、その他の学術研究、専門・技術サービス業、教育、学習支援業、医療、福祉業、職業紹介・労働者派遣業、その他のサービス業の合計。

生産性の高い産業の
比重が低い日本
 日本の産業構造で問題なのは、製造業の賃金水準を超える産業が少ないことである。
 図表2から分かるように、1人当たり給与が製造業より高いのは、建設業、情報通信業、広告業である。
 建設業、情報通信業では、従業員数の伸び率も高い。しかしながら従業員数が少ない。情報通信業の従業員数は206万人であり、全産業に占める比率は6%でしかない。
 サービス業の中で、1人当たり給与が製造業より高いのは、学術研究、専門・技術サービス業(集約)、教育、学習支援業だけだ。
 しかし、学術研究、専門・技術サービス業(集約)の従業員数は152万人であり、全産業の従業員数の4.4%でしかない。
 先進的な産業が経済全体の中で占めるウェイトが、アメリカなどの場合に比べて小さいのである。これが、日本全体の賃金の伸びを低くしている基本的な要因である。

サービス産業で従業員が増えたのは
女性のパートや外国人労働者
 サービス産業の状況をより詳しく見よう。図表3から分かるとおり、非製造業の中で製造業より1人当たり給与が低いのは、宿泊業、飲食サービス業(集約)、生活関連サービス業、娯楽業(集約)、職業紹介・労働者派遣業、医療、福祉業、その他のサービス業だ。

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 これらの産業の従業員数は、合計で775.2万人だ。これは、総従業員数3440.2万人の22.5%を占める。
 これらの分野では、もともと女性のパート労働者が多く、それが2018年の配偶者特別控除の拡充で増えている。また、外国人労働者も増えていると考えられる。
 だから、従業員数は増えるが、賃金が低いままで上がらないのだ。
 賃金水準が低い産業で従業員が増えていることが、経済全体の賃金の上昇を抑えているのである。
 この中で従業員数の増加が著しいのは、医療、福祉業だ。12〜18年の従業員数伸び率は74.4%と、極めて高い。
 しかし、図表2で見たように、この分野の平均給与は、12〜18年の平均では四半期当たり66万円であり、製造業の68.3%にしかならなかった。
 介護需要の拡大を反映して、さすがにこの分野では、賃金は上昇している。12〜18年の間に7%の上昇であり、経済全体の上昇率よりかなり高い。
 このため、18年10〜12月期では、製造業との比率は、図表3で見るように、ぎりぎり7割を超えた。それでも、平均給与の水準がまだ低いために、この分野が伸びることは、経済全体の賃金を引下げるのである。
 なお、ここで取り上げているのは、法人のみである。この分野は法人以外の事業形態が多い。したがって、賃金が低い産業が全体の賃金を引下げている効果はもっと大きいと考えられる。

零細サービス産業は
営業利益も給与も減少
 景気拡大の状況が一様でないことは、営業利益の増加状況を見ると分かる。
 すでに見たように、2012年から18年の間に、営業利益は全体では55%も増えた。しかし、非製造業では6%しか増えていない。
 規模別に見ると、もっと大きな差がある。
 資本金資本金1000万円以上2000万円未満の零細サービス産業の状況を見ると、図表4のとおりだ。

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 従業員1人当たりの給与は、3.2%下落した。
 それだけではない。営業利益が、12年から18年の間に32%も減っているのだ。これは、原価の増加率が売り上げ増加率に追いつかないからだ。
 資本金1000万円以上2000万円未満のサービス業の従業員は、18年10〜12月で290万人いる。これは、10億円以上のサービス業の従業員131万人の2.2倍だ。
 前述したように情報通信業の従業員数は206万人だが、290万人という数字は、この1.4倍だ。
 経済の一部で利益が増加し、株価が上がっているのは事実だ。しかし、それは上場企業のことである。これは、大企業のことだ。
 以上で見たように、全体へのトリクルダウン、つまり大企業などの利益の増加が中小零細企業にも広がるという現象は、生じていない。
 景気回復の実感がないというのは、当然のことだ。
 しかも、以上で見たのは法人である。個人企業がもっと窮状にあることは、想像に難くない。
(早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問 野口悠紀雄)
https://diamond.jp/articles/-/196129

http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/408.html

[国際25] 汚職まん延に高まるロシア国民の不満 プーチン支持、最低水準 ロシアを中心マネーロンダリング数千億円の資金洗浄
汚職まん延に高まるロシア国民の不満

ロシアのプーチン大統領への国民の支持が、就任以来、最低水準で低迷している。世論調査では、プーチン大統領の信頼度は、この1年あまりで半減。その背景にあるのが、長引く経済制裁による景気悪化に加え一層ひどくなる汚職問題だ。さらに、起業家など社会に台頭する新たな中間層を中心に高まる反発が影響しているものとみられる。市民の不満はプーチン政権の今後に影響するのか、汚職の実態を通して徹底分析する。
http://www6.nhk.or.jp/kokusaihoudou/bs22/index.html

 

「悪夢だった」 拘束されたロシア反汚職デモ参加者、経験語る
2017年03月30日
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ロシア各地で今月26日に行われた反汚職デモでは数百人が拘束されたが、デモの様子を伝える報道各社の写真の中でも、整った身なりの若い女性が警察に手足をつかまれ連行される状況をとらえた一枚がひときわ関心を集めた。

BBC取材班は、写真に写っていた女性、オルガ・ロジナさんに警察に連行された時の話を聞くことができた。
https://www.bbc.com/japanese/video-39427180

2019年03月07日 07時00分 メモ
ロシアを中心にしたマネーロンダリングシステムで数千億円の資金洗浄が行われていたことが判明

by Pavel Kunitsky

資金洗浄(マネーロンダリング)とは、犯罪組織や汚職を行った政治家、ビジネスマンが違法に着服した資金を偽装した方法で処理し、税金を回避したり安全な場所へ資金を移したりすることを指します。そんなマネーロンダリングのシステムをロシアの投資銀行トロイカ・ディアローグが計画・実行したと報じられました。「Troika Laundromat(トロイカ・コインランドリー)」と呼ばれるこのシステムを用いたマネーロンダリングは、実に数十億ドル(数千億円)規模に上るとみられています。

The Troika Laundromat - OCCRP
https://www.occrp.org/en/troikalaundromat/

The Troika Laundromat: Five Quick Takeaways
https://www.rferl.org/a/the-troika-laundromat-five-quick-takeaways/29803199.html

Q&A: what is the 'Troika Laundromat' and how did it work? | World news | The Guardian
https://www.theguardian.com/world/2019/mar/04/qa-what-is-the-troika-laundromat-and-how-did-it-work


マネーロンダリングでは、合法的なお金と違法なお金を混ぜ合わせ、区別が付かないようにして「洗浄」します。「トロイカ・コインランドリー」には70を超えるペーパーカンパニーが含まれており、複数のソースから集めた洗浄したい資金を、システムに組み込まれた複数の企業間や、時には同一企業内の複数口座内で移動させて洗浄していました。主にロシアの資産家が、西側諸国へ資金を移動させるのに使っていたそうです。

資金移動の大部分はリトアニアの市中銀行であるŪkio bankasを通じて行われていましたが、Ūkio bankasの従業員が金の流れを不審に思うことはありませんでした。Ūkio bankasは資金難に陥ったことが原因で、2013年に当局管理下に置かれています。

「トロイカ・コインランドリー」を運営していたのはトロイカ・ディアローグの独立部門。マネーロンダリングが行われていた2013年までトロイカ・ディアローグのCEOを務めていたのは、アルメニア人実業家で、慈善事業などで西側諸国にも知られているRuben Vardanyan氏でした。

by Olichel

トロイカ・コインランドリーにはおよそ46億ドル(約5000億円)もの資金が投じられており、ほぼ同額が合法的な資金と混ぜ合わされた後で西側の口座へと送金されたとみられています。送金は主に商品の売買契約にもとづいて実行され、Ūkio bankasに記録された取引内容によれば、食料品やテレビ、自動車部品といったものが売買されたことになっていたそうです。しかし、トロイカ・コインランドリーに関わる会社はペーパーカンパニーであり、実際の商品売買は行われなかったと考えられます。

たとえば2004年の3月、Ūkio bankasは20万4000ドル(約2200万円)をラトビアの口座に支払っており、取引の名目は「自動車部品の購入」となっていました。この送金はパナマにあるIndustrial Trade Corpという企業からのものでしたが、Industrial Trade Corpは自動車業界とのつながりがあったわけではなく、その後6年にわたって食品・コンピューター・建材といったものについての取引を行っていたそうです。

トロイカ・コインランドリーに含まれるペーパーカンパニーは、多くがアルメニア人の所有ということになっていました。ただし、多くはモスクワで働く建設作業員やクリーニング業者、理髪店の店主といった、会社とは関わりのない人々でした。

名前を使われていた中の1人がArmen Ustyan氏。トロイカ・コインランドリーの捜査において発見された、パナマの不動産会社に対する4000万ドル(約44億円)の融資に関する書類に、Ustyan氏の署名が見つかっています。Ustyan氏は妻や両親と共にアルメニアのアパートに住んでおり、生計を立てるために季節労働者としてモスクワへ出稼ぎに行き、アパート改装などの建設作業員として働いているとのこと。しかし、組織犯罪・腐敗報道プロジェクト(OCCRP)の取材に対して、Ustyan氏は巨額の取引について全く心当たりがないと述べています。


リトアニアの検察を含む複数の捜査機関はトロイカ・コインランドリーについての捜査を進めていますが、マネーロンダリングの流れは非常に入り組んでいるため、洗浄された資金が最終的にどこへ送金されたのかを突き止めるのは困難だとのこと。すでに複数のロシア人政治家やその親族がマネーロンダリングを行ったと判明していますが、どこの国のどのような法律に違反しているのかを明らかにし、刑事訴追するには気が遠くなるほどの時間がかかる可能性もあるとみられています。

by Maklay62
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https://news.headlines.auone.jp/stories/series/general/12189349?genreid=202&subgenreid=222&articleid=12189349&cpid=10130074

https://gigazine.net/news/20190307-troika-laundromat/

 


http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/617.html

[国際25] 中国がロシア紙に異例の圧力 経済記事削除を要求し、脅しも 
中国がロシア紙に異例の圧力 経済記事削除を要求し、脅しも
株式会社 産経デジタル 2019/03/07 17:09
爆薬製造、元大学生に不定期刑求刑
記者会見する中国外務省の陸慷報道局長=7日、北京(共同)「完全に正当」華為の米提訴を支持
 【モスクワ=小野田雄一】ロシアの有力紙「独立新聞」は5日、中国の経済成長の鈍化を報じた同紙の記事について、在ロシア中国大使館から削除要求や“脅し”などの圧力があったと伝えた。同紙によると、こうした圧力は初。経済停滞への中国の焦りを反映したとみられる。同紙は「要求は命令口調で、中国はロシアよりも上位だと主張していた。両国政府は蜜月ぶりをアピールするが、この要求が本当の両国関係を表している」と嘆息した。

 問題となったのは、中国政府が発表した統計に基づいて中国経済の停滞の可能性などを報じた記事。この記事をめぐり最近、中国大使館の職員が同紙編集部を訪れ、同紙サイトから記事の削除を要求したという。

 また、執筆した記者に対しても、同大使館幹部から「削除しないと、お前をブラックリストに入れ中国に入国できないようにする」「中国の昨年の経済成長率は6%超だが、ロシアはどうだ? 広東省の国内総生産(GDP)だけでロシアのGDPより上だ」などとの電子メールが送られた。

 同紙は「ロシアの法律は報道機関への圧力を禁じているが、中国側は自身には適用されないと思っているようだ」と指摘した。
https://www.msn.com/ja-jp/news/other/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E3%81%8C%E3%83%AD%E3%82%B7%E3%82%A2%E7%B4%99%E3%81%AB%E7%95%B0%E4%BE%8B%E3%81%AE%E5%9C%A7%E5%8A%9B-%E7%B5%8C%E6%B8%88%E8%A8%98%E4%BA%8B%E5%89%8A%E9%99%A4%E3%82%92%E8%A6%81%E6%B1%82%E3%81%97%E3%80%81%E8%84%85%E3%81%97%E3%82%82/ar-BBUtvXD
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/618.html

[経世済民131] みずほ大幅下方修正。見た目ほど悪くはないが…:5つの疑問と将来性 巨額減損で味わう「苦いクスリ」反転攻勢へ背水=重荷一掃
みずほ大幅下方修正。見た目ほど悪くはないが…:5つの疑問と将来性
金融テーマ解説
大槻 奈那 大槻 奈那 2019/03/07 印刷 みずほ大幅下方修正。見た目ほど悪くはないが…:5つの疑問と将来性印刷
国内株式

マネックス
みずほFG(8411)が業績予想修正:19/3期の当期利益は7分の1以下に
巨額損失発表の背景と今後は?
・6日引け後にみずほ(8411)が大幅な業績予想修正を発表。追加損失6,800億円を計上し、19/3期の予想利益は5,700億円→800億円と7分の1以下に。背景や見通しについて検討する。

・追加損失の内訳は、固定資産の減損5,000億円と有価証券関連損失1,800億円。最大はリテールに関するシステムの減損(4,600億円)だが、来期以降に出るはずだった償却の前倒しが大半。債券の損失も、含み損の処理や新規制への前倒し対応であり、新たに発生したものではない。

・予想修正の結果、一株当たり利益は3.15円と、今期年間配当予想の7.5円(期末は3.75円)を大幅に下回る。配当性向のメド30%も大きく上回るが、みずほは今期配当予想を堅持した。

・来期開始の中計では、市場運用依存を修正するとしており、収益水準はこれまでの目線(当期利益5,500億円程度)から引き下げられそう。配当は絶対額を重視し、安易な切り下げはないであろうが、以前よりは不透明感が増した。当面、大手行投資には配当狙い以上の妙味はなさそう。

みずほFG(8411)が業績予想修正:19/3期の当期利益は7分の1以下に
6日引け後にみずほ (8411)が大幅な業績予想修正を発表。追加損失6,800億円を計上し、5,700億円だった19/3期の予想利益は7分の1以下の800億円とされた。市場コンセンサスは5,500億円、市場予想の最低値でも4,690億円だったことから、大きなサプライズとなった。

銀行の利益はブレやすい。他業態に比べて資産が巨額であるため、益出しや含み損処理など、その資産の取扱い次第で、1、2割は簡単に読み違いが発生する。特に4Qには、有価証券や不良債権の処理を一気に進める銀行が多い。しかしそれを踏まえても、今回の修正幅は大きく、また時期的にも有価証券の期末着地点を見る前のタイミングということで特殊だった。

具体的には、6,800億円の損失計上のうち、5,000億円が固定資産の減損(図表1)。その殆どがリテール部門のソフトウェア等の減損で、残りが予定している店舗閉鎖に関わるコストである。今期カットオーバーした次期システム(構築コストは4,000億円台半ば)について、リテール部門に関わる部分の評価を見直した結果損失が生じた。一方、来期から見込まれていた償却負担(700〜800億円規模)は大きく削減されるとみられる。

有価証券絡みの損失1,800億円は、外債やETF等の有価証券のロスカットや、デリバティブの取引先リスクにかかわるもの。みずほは昨年12月末の時点で、外債や投信等で2,555億円もの含み損(うち外債1,445億円)を抱えていた。年明けから市場はかなり戻ったとはいえ、来期に向けての不安払拭のため、思い切った処理に踏み切った模様だ。デリバティブに関わる損失は、来期に予定されていた規制厳格化による部分を前倒ししたものである。



修正の結果、一株当たり利益は3.15円と、今期年間配当予想の7.5円(期末は3.75円)を大幅に下回る(図表2)。みずほは配当性向の目途を30%としているが、今年度はこれを突き抜ける。それでも、みずほは今期配当予想を堅持した。



巨額損失発表の背景と今後は?
この時期には珍しい巨額損失発表を行った背景には何があったのか。下記に質疑形式でまとめてみた。

ポイント1:なぜこの時期に巨額損失を計上?
みずほは来期から新しい中計を開始する。従来の「3か年計画」よりも長いスパンの計画とする可能性もあり、みずほの経営戦略の節目となりそうだ。これに際し、収益の見通しを立て、16年導入の新たなカンパニー制に従ってシステムの再評価を行ったところ減損が必要と判断された。

つまり、以前ほど強気で収益を見込めないということと、来期以降の中計期間に償却負担の重圧を持ち越したくない減らしたいという想いによるものと考えられる。

ポイント2:来期以降の収益は?
発表当日行われた機関投資家・アナリスト電話会議では、「これまでの課題だった市場部門への依存を改めていく」と説明された。みずほの市場部門は、業務純益の約4割を弾き出す”稼ぎ頭”だが、今後は顧客取引に一層注力するというが、市場でリスクを取らなければ、その分収益が落ちることになる。

これまでの当期利益の目線は、5,500億円程度だったが、この水準は500〜1,000億円程度引き下げられても不思議ではない(図表3)。



ポイント3:配当は維持されるのか?
19/3期の配当予想は、通期7.5円(期末3.75円)で据え置かれた。今回の損失や配当については、当局や監査法人と話し合いのもとで行われたものであろう。従って、今期分の配当については、予想通りの支払いにまず懸念はない。

しかし、来期の中期経営計画では、この厳しい事業環境で、かつ、運用収益依存からの脱皮を謳っているだけに、配当を維持するには、配当性向の目安を30%から引き上げる必要があると思われる。幸い、みずほの資本比率は、同社目標の10%(CET1比率)を上回っているとみられるため、配当性向の引き上げはムリ筋ではない。

従って、恐らく来期も7.5円の配当が維持される可能性が高いが、これまでよりは、やはり配当維持の不確実性は若干高まったと思われる。

ポイント4:他行への波及は?
今回の損失は、かなり一過性のものが多い。強いて、他行にも共通点があるとすれば、有価証券損失の処理と店舗整理コストである。18/12月の開示によれば、三菱UFJ(8306)が2,400億円、地銀ではコンコルディア(7186)が290億円の含み損を抱えていた。大手行については、デリバティブに関わるカウンターパーティリスクも共通項だ。

しかし、みずほの今回の損失は3分の2が固有のシステム関連である。他行への影響がそれほど大きいとは考えられない。

ポイント5:邦銀セクターは投資先として魅力的?
日銀は、今年は動きようがない可能性が高いとされているが、他国が緩和方向に舵を切り直す中では、動くとすれば緩和方向に行かざるを得ない。邦銀の収益環境は、みずほのコメントを待つまでもなく極めて厳しい。クレジット環境もやや軟化している。このため当面、大手行が国内の他業界に対してアウトパフォームする要因は殆どない。株式市場全体が上昇するなら、他業界に切り替えるべきであろう。

一方、銀行各行は他業界以上に配当へのコミットメントが高いのも事実で、地銀については、逆境ゆえに再編期待もある。高配当狙いでホールドとしたい。

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大槻 奈那
大槻 奈那
マネックス証券株式会社 チーフ・アナリスト 兼 マネックス・ユニバーシティ長 マネックスクリプトバンク株式会社 マネックス仮想通貨研究所所長
東京大学文学部卒、ロンドン・ビジネス・スクールでMBA取得。スタンダード&プアーズ、UBS、メリルリンチ等の金融機関でリサーチ業務に従事、各種メディアのアナリスト・ランキングで高い評価を得てきた。2016年1月より、マネックス証券のチーフ・アナリストとして国内外の金融市場や海外の株式市場等を分析する。現在、名古屋商科大学 経済学部教授を兼務。東京都公金管理運用アドバイザリーボード委員、貯金保険機構運営委員、財政制度審議会分科会委員。ロンドン証券取引所アドバイザリーグループのメンバー。 テレビ東京「ニュースモーニングサテライト」等、メディアへの出演も多数。 著書: 『本当にわかる債券と金利』(日本実業出版社)、 『1000円からできるお金のふやし方』 (ワニブックス)
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1月下旬からスタートした3月期決算銘柄の第3四半期決算発表と並行して行われていたのが12月決算銘柄の本決算発表です。
2019/03/07
https://media.monex.co.jp/articles/-/11118

 
コラム2019年3月7日 / 15:44 / 7時間前更新
コラム:みずほFG、巨額減損で味わう「苦いクスリ」
Pete Sweeney
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[香港 7日 ロイター BREAKINGVIEWS] - みずほフィナンシャルグループ(8411.T)が味わっている「苦いクスリ」は、日本の銀行が抱える病を投資家にも味わわせている。

国内2位のみずほFGは6日、固定資産の減損など合計約6800億円の損失を2019年3月期決算に計上すると発表した。減損処理の結果、当期純利益の見通しは前期比86%減の800億円となった。

店舗統廃合による減損処理や外債の含み損処理は、超緩和的な金融政策の症状といえる。少なくとも統廃合を緩和する新たな規制が実現すれば、いくぶん落ち着くだろう。

日本の金融機関は長い間、日銀による異例のマイナス金利政策の下で苦しんでいる。法人顧客に対する手数料にコストを上乗せしたくない、もしくはそれができない銀行は、利ざや縮小を余儀なくされた。

それを補おうと、多くの銀行が高いリターンを求めて海外市場に目を向けた。みずほFGは、証券ポートフォリオを全面的に見直しており、その理由の1つに「過去の外債投資」があるという。このことは、そうした努力がいかに切迫したものかを物語っている。

巨額の減損損失が明らかになったことで、わずか数日前に全国銀行協会の会長でもあるみずほ銀行の藤原弘治頭取が会見で、日銀による金融緩和政策の「負の副作用」について警鐘を鳴らしたのも納得がいく。2%のインフレ目標よりも金融の安定が大事だと同頭取は主張する。

しかし不安定な現在の状況下において、日銀の黒田東彦総裁は身動きが取れない。日銀が金融政策の正常化を検討しているとの昨年7月のロイター報道を受け、日本の株式相場は急降下した。

黒田総裁は、純資産に対して株価が危険なほど割安に取引されている銀行の苦境に同情を示していないわけではないが、コスト削減で埋め合わせが可能との考えを示唆している。日本では、高齢化と過疎化が地方で進んでいるにもかかわらず、第二地銀を含めた地銀の数は100行を超える。統廃合が解決策であることは明白だ。実際のところ、今回のみずほの損失の大半は店舗の統廃合やリテール網のソフトウエアなどを巡る固定資産の減損である。

こうした統合プロセスを遅らせてきた独占禁止法の適用が間もなく見直される可能性がある。政府は今週、地方銀行の統合基準を見直し、独占禁止法に例外規定を設ける計画を明らかにした。もし実現すれば、コスト削減に役立つ取引の機運が高まるだろう。

銀行はまた、自ら立て直しを図ることができる。海外の債券市場に手を出すのではなく、テクノロジーを駆使して人員削減を行ったり、現金取引を減らしたりすることが可能だ。最終手段として、法人顧客にマイナス金利によって発生するコストを手数料として請求することも検討できるだろう。砂糖が何さじかあれば、金融緩和による苦いクスリも飲むことができるだろう。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
https://jp.reuters.com/article/bv-column-mizuho-idJPKCN1QO0JO


 

みずほ、「6800億円」巨額損失でも前向きのなぜ
3/7(木) 5:00配信 東洋経済オンライン
みずほ、「6800億円」巨額損失でも前向きのなぜ
業績の下方修正を受け、記者会見するみずほフィナンシャルグループの坂井辰史社長(記者撮影)
 この痛みを反転攻勢につなげられるか。

 決算期末まで1カ月を切った3月6日、みずほフィナンシャルグループは2019年3月期の連結純利益について、従来予想の5700億円から800億円に引き下げると発表した。有価証券売却損などで約1800億円、固定資産の減損損失で約5000億円をそれぞれ計上する。

■三菱UFJ、三井住友に大きく出遅れ

 みずほの業績はほかのメガバンクと比べて、大きく遅れをとっている。2019年3月期の業績は、三菱UFJフィナンシャル・グループが9500億円、三井住友フィナンシャルグループが7000億円の連結純利益を見込んでいる。みずほの従来予想5700億円はそもそも2社との距離感を感じさせるものだった。

 2018年10〜12月期を終えた時点でもその差は歴然としていた。通期予想に対する純利益の進捗率では、三菱UFJが91.8%、三井住友が91.1%だったのに対し、みずほは71.9%にとどまった。目立ったのは市場部門の不調。2018年末に金融市場が混乱し、想定した結果が出せず、前年同期比829億円の減益となっていた。

 みずほのリテール部門は苦戦続きだ。セグメント別の業務純益をみると、リテール部門は2018年度通期で156億円の黒字だが、他部門と比べて低水準で収益改善が急務だ。しかし、国内では低金利環境が続き、少子高齢化によって資金需要が増えることは見込みにくい。今回の減損処理は、リテール部門の厳しさが改めて浮き彫りになった格好だ。

 リテール部門に関わる減損損失5000億円のうち、400億円は店舗統廃合に関わる損失にあたる。みずほは2017年11月に抜本的構造改革への取組みを発表し、店舗削減計画を発表した。当初の計画では、2017年3月末時点で約500拠点あった店舗を、2024年までに約2割、約100拠点減らすとしていた。今回この計画を見直し、大都市圏を中心に店舗のデジタル化を進め、追加で数十拠点の削減を計画しているという。人員については、計画通り2026年度までに1.9万人の削減を見込んでいる。

 ほかの2メガは過去に店舗に関わる減損をすでに計上している。三菱UFJは前2018年3月期に店舗改革と不採算店舗の処理に430億円を計上。三井住友も2018年3月期に店舗改革費用として250億円を計上している。みずほは他メガに追いついた形になる。

 残る4600億円の大部分はソフトウェアやシステムの減損だ。みずほは現在、新システムへの移行作業を進めている。2018年6月以降、9回に分けて週末のATM利用を停止しており、2019年7月に最後の移行作業が完了する予定だ。

 新システムの総投資額は4000億円台半ばで、5〜10年で償却をする予定だった。大半はリテール部門に帰属しているため、今回の減損によって、年間800億程度とみていた毎期の費用負担は軽くなる。また、2018年12月末時点にあった外国債券の評価損(1531億円)の大半を今回、処理したとみられる。

■坂井社長「懸念の処理はすべて完了」

 今回の下方修正は本業の業績が不調であるというより、今後発生するであろう費用を2018年度中に前倒しで計上したものだ。その点、会計的には保守的な処理を行ったといえ、みずほの坂井辰史社長が「前向きな減損」と言うように、評価できる内容だ。坂井社長は6日の記者会見で「構造的課題を解決し、強みや底力を最大限に発揮するため、今回の一括処理がベストな選択肢であると確信している」と話し、「現時点で見通せる懸念の処理はすべて完了する」と強調した。

 坂井社長は就任から1年を迎え、2019年度から新しい中期経営計画をスタートさせる。「次世代の金融業に舵を切る」(坂井社長)とし、「自前主義ではなく、連携も加速し、柔軟にスピーディに変化に対応する」(同)と意気込む。

 たしかに、みずほは他社との連携が目立つ。3月4日にリリースしたスマホ決済アプリ「J-Coin Pay」は約60行の地銀と連携し、相互の顧客基盤を活用して加盟店開拓を進める。LINEとの新銀行設立やソフトバンクと連携したJ-Scoreなど、異業種との連携にも積極的だ。

 一方で、本業の収益業績を伸ばす策については不透明な部分もある。今回の損失によって膿を出し切り、将来の成長にどのようにつなげていくのか。今回の減損で「背水の陣」を敷いたみずほの反転攻勢は、まずは5月公表の新中計にかかっている。

藤原 宏成 :東洋経済 記者

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最終更新:3/7(木) 5:00
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190307-00269676-toyo-bus_all&p=2

 
みずほ、反転攻勢へ背水=重荷一掃狙う
3/7(木) 7:11配信 時事通信
 みずほフィナンシャルグループ(FG)は、構造改革費用を中心に約6800億円に上る損失を2019年3月期に計上する。決済などの銀行サービスに異業種が相次ぎ参入する中、みずほはメガバンクの中でも三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループに収益力で水をあけられている。20年3月期以降の業績反転へ背水の陣を敷いた格好だ。

 3メガバンクの中で、みずほは経費が高止まりし、業務粗利益に占める比率は約72%(18年3月期)。三井住友の約61%、三菱UFJの約68%に比べ高く、従業員1人当たりで見た業務純益が大きく見劣りする一因となっていた。

 「重荷を一気に解消する」。18年4月からみずほFGを率いる坂井辰史社長は記者会見で巨額の損失処理を「前に進むため」と強調した。ビジネスモデルを変革する上で従来型の銀行店舗などの固定資産は重荷となる。今後の収益圧迫要因として懸念されていた次期システムの償却負担とともに、一括して費用を前倒し処理し、収益向上の足場を固める構えだ。

 今回の損失処理で20年3月期以降は経費負担が大きく減少する。坂井社長は「決して楽観していないが、収益の質が安定的なものになってくる」と自信をのぞかせた。しかし、銀行を取り巻く経営環境の変化のスピードは速く、景気の先行きにも暗雲が漂う。「反転攻勢」(坂井社長)の行方には不透明感が残っている。 

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【特集】「世界景気減速」で急浮上「日銀まさかの追加緩和」はあるか

最終更新:3/7(木) 10:09
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190307-00000018-jij-bus_all
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/415.html

[経世済民131] 銀行員が「一生安泰」ではなくなった深刻背景儲けられなくなった本業、急増する転職者 みずほ6800億円損失、3つのポイント
銀行員が「一生安泰」ではなくなった深刻背景儲けられなくなった本業、急増する転職者
秦 卓弥 : 東洋経済 記者
2018年05月28日

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エリートの象徴でもある彼らの状況が大きく変わっている(写真:Getty Images、デザイン:池田 梢)
ここ5年ほどで、銀行員の転職が急増している。本業の収益先細りや相次ぐ人員と店舗の削減計画の発表で、これまで一生安泰と見られてきた銀行員のキャリアへの不安が顕在化。支店長を目指して勤め上げる出世すごろくは崩れ、銀行を離れる人が続出しているのだ。
同期の2割しかなれない支店長のポストがさらに減る
『週刊東洋経済』は5月28日発売号(6月2日号)で「銀行員の不安」を特集。銀行員のキャリアの変化やメガバンクの経営戦略、地銀再編の行方などを追っている。

『週刊東洋経済』5月28日発売号(6月2日号)の特集は「銀行員の不安」です。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします
「総合職の同期が100人いて、2割しか支店長代理になれない。この先、支店が減っていけば、支店長になるのは厳しくなる」。都内のメガバンク支店で法人融資を担当する30代の男性は打ち明ける。
支店長代理は、早ければ入行8〜9年目で昇格できる最初の役席(ポスト)。本店でいえば調査役に相当する。同期との出世コースの分かれ目になるポストで、昇格すれば30代前半で年収1000万円が見えてくる。
男性が入行したのはリーマンショック直前の年、バブル入行組(1990年前後入社)のほかに大量採用されたもう一つの世代だ。エリア統括店や本店を経験し、営業成績も同期より高かったが、支店長代理の昇格試験は通らなかった。

「銀行は減点主義。リスクを取って新しい取引先を開拓するよりも、上ばかり見るヒラメ社員が出世する。この先20年を考えると、支店長になりたいと思わなくなる」。男性は現在、外資系金融機関の中途採用試験を受けている。
ポストは減る一方で、ノルマは厳しくなっている。「銀行員はつねに銀行のためか、お客様のためか、選択を迫られる」と話すのは、別のメガバンク支店で個人向けリテールを担当する30代の女性。
銀行員の評価は定性評価のコンピテンシー(行動特性)と定量評価の営業成績で決まる。差がつきやすいのは営業成績で、期末までに目標を達成できるかが、出世や賞与の査定に響く。金利収入が細る中、投資信託や保険など金融商品の窓口販売による手数料収入が、リテール部門の収益柱になっている。
「まじめな人ほど、耐えられずに辞めていく」
だが、「販売手数料が高く、顧客にとってメリットが少ない商品を“お願い営業”で買ってもらわなければ、ノルマを達成できない。まじめな人ほど、耐えられずに辞めていく」。

(写真:aijiro / PIXTA)
北関東の地方銀行に勤めていた男性は今年、地方公務員に転職した。法人融資の仕事は、「企業が困っているときに助けられる。やりがいを感じていた」と話すが、2年前に子どもが生まれ、働き方と転勤制度に疑問を感じ始めた。
3年で転勤するたびに、取引先から「また変わったの」と言われる。転勤は県内とはいえ、家族への負担も大きい。上司からは「(転勤を伴わない)地域限定社員にならないか」と慰留されたが、「出世ルートから外れ、割を食うだけ。形式上は地域限定社員も出世できる制度になっているが、何の担保もない。転職して、家族との時間を取れるようになった」。
リクルートキャリアによれば、銀行員の転職決定者数は、2009年度から2017年度までに4.55倍に増えた。全登録者の決定者数が同2.49倍に高まっていることを考慮しても高い水準だ。特に、異次元金融緩和が始まった2013年度ごろから顕著に増加している。リクナビNEXTの藤井薫編集長は、「マクロ環境による構造変化が、銀行員の転職を後押ししている」と分析する。

銀行はいま岐路に立っている。低金利政策により本業の利ザヤは下げ止まらず、キャッシュレス化・人口減少による来店客数の減少は続く。駅前一等地に支店を維持するのは、もはや限界が近い。昨秋、1.9万人の人員削減(全社員8万人の約4分の1に相当、10年間での自然減の計画)を公表したみずほフィナンシャルグループをはじめ、3メガバンクはいずれも中長期的に人員・店舗数を減らしていく計画を発表している。
待遇がいいメガバンクでは「3年離職率は1割、30歳時点でも2〜3割程度」(メガバンクの元人事関係者)と、まだ人材流出は限られているが、収益力に劣る地銀はより深刻だ。首都圏近郊の地銀行員は、「3年前から給与体系が改定され、ほとんど定期昇給がなくなった。若手には不評で、3年離職率は3割を超えている」と話す。
銀行出身者の6割が非金融業へ
金融業以外への、転職も少なくない。転職サービスDODAの調査では、銀行員の転職先は約6割が非金融業だ。世代別に見ると、30代以降は金融業への転職が過半だが、コンサルやIT・通信、メーカーへの転職者も一定割合いる。「銀行員はベースの能力が高いと見られ、転職市場での評価は高い」(DODAの大浦征也編集長)。

ただ、「肩書きだけで転職できるのは35歳まで。マネジメント経験があっても42歳が限界」(大浦氏)。45歳以上は、コールセンターや人材派遣業などへの転職比率が高まり、専門性を活かしづらくなる。大量採用世代で最も層が厚い、現在50歳前後のバブル入行組はポストや出向先がなく、状況はより深刻だ。
銀行業の収益モデルが大きく揺らぐ中、銀行員の生き方も転換を迫られている。
『週刊東洋経済』6月2日号(5月28日発売)の特集は「銀行員の不安」です。
https://toyokeizai.net/articles/print/222535


 

みずほ、なぜ6800億円損失? 3つのポイント
2019/3/7 6:30日本経済新聞 電子版
 みずほフィナンシャルグループ(FG)が2019年3月期に6800億円の損失を計上します(「みずほFG、6800億円損失 今期純利益800億円に下方修正」参照)。大規模な損失で連結純利益は前期比で86%も落ち込みます。なぜこうした事態に陥ったのでしょうか。

記者会見するみずほフィナンシャルグループの坂井辰史社長(6日、日銀本店)
記者会見するみずほフィナンシャルグループの坂井辰史社長(6日、日銀本店)

(1)稼いでいた店舗が重荷に

損失のうち400億円は、百数十拠点に上る店舗の統廃合に向けた固定資産の減損です。かつて店舗は個人から預金を集める大事な接点でした。ただ日銀のマイナス金利政策や、金融とIT(情報技術)が融合したフィンテック企業による金融サービスの参入で、貸し出し収益や来店客が減り、利益を生む役割を果たしづらくなっていました。

▼みずほ、低収益にメス 1.9万人分の業務削減検討

(2)システムを前倒し処理

預金口座などの管理などを担うソフトウエア「勘定系システム」では、4600億円に上る減損を計上します。みずほは2018年から19年7月にかけて新システムへの刷新を進めています。従来は20年3月期から4000億円超の開発費用を償却する予定でしたが、過大な投資と、個人部門が将来生み出す収益が釣り合わなくなっています。前倒しで処理して財務を身軽にする狙いがあります。

▼みずほFGの新システム移行、2019年7月にも完了へ

(3)債券も運用難

残りの1800億円は、外国債券の簿価と時価の差である含み損益の処理です。マイナス金利政策で日本国債の運用益が下がったことで、銀行は米国など外債の運用を広げていました。ところが米金利の上昇で債券の価格が下がり、含み損が膨らみました。運用資産の内容を入れ替えるためにも、早く損失を出し切った方が良いと判断したのです。

▼5大銀、株・債券運用不振
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO4212591006032019I00000/


 


ヒロ2019年03月07日 12:12やむなく飛び降りたみずほフィナンシャルの賭け


みずほフィナンシャルグループが3月決算で純利益予想を当初見込みの5700億円から800億円に下方修正しました。その差4900億円です。突然の修正にアナリストもびっくりでしょう。ただ、別に銀行業務に何か問題があったわけではなく、償却というテクニカルな部分の処理を前倒しで進めることによるもので銀行側は前向きの処理と考えています。さて、市場はどう捉えるか、です。

メガバンクの一角のみずほですが、合併当初から一番冴えないメガバンクであったことも事実です。みずほは日本興業銀行、第一勧銀、富士銀行が一緒になった銀行でありますが、その体質があまりにも違いすぎ、プライドの塊で社内では派閥争いが延々と続き、表向き、それを止めようとすれば子会社、関連会社でその派閥を引き継ぐという芝居を演じてきました。

それが業務効率に影響したのか、株式市場では配当金の率はよいものの株価がさえず、と言われたのは意味が逆で株価が収益に対して低すぎるから配当率が高く見える、ともいえたのでしょう。

さて、今回損失処理が発表されたのは6800億円分。うち、次期勘定系システムの処理が4600億円、店舗統廃合分が400億円、市場部門損失(主に外債)が1800億円となっています。6800億円の処理と上述の4900億円の下方修正分は計算が合わないと言われそうですが、所有株の売却益のようなプラス処理を作り出して帳尻を合わせているということかと思います。

次期勘定システムはみずほだけが遅れていた新システム移行を今進めているさなかにあり、今後発生するはずの償却費の多くを前倒し処理することで来年以降、しばらくは(5-10年とされます。)この償却の呪縛からは逃れられます。この点はプラスの処理に見えます。

店舗統廃合費用の処理は三菱UFJが430億円、三井住友も250億円分の処理を前期に済ませており、みずほだけがまだ遅れていただけのことです。よってこれは評価に値することではありません。当初予定より4900億円分悪化したのは4600億円分の勘定系システム前倒し処理のサプライズ分になるということかと思います。

ではなぜ、今そんなことをするのか、ですが、みずほ側は17年11月発表の中期経営計画の最終年になる今回、一旦処理し、次期経営計画ではフレッシュスタートを切る、という目論見のようです。

ただ、私は必ずしもこの言葉通りに受け止めていません。通常であれば5-10年かけて処理すべきまだ完了していないシステム分を無理に処理しなくてはいけない不安が同行経営陣にはあるように感じます。それがみずほ個別の問題なのか、銀行を取り巻く全体の問題かはわかりません。が、とにかく、身軽にし、何かあった時に第二、第三の処理を思い切ってできる体力温存型処理と見られる可能性はあります。

今回の処理について専門家の見方もはっきりと分かれています。私は唐突感に異様さを感じます。

銀行業を取り巻く環境は厳しいというより2-30年前と常識感が完全に変わったといってよいかと思います。「人様のお金を預かる銀行だからお金を盗もうとしない水準の給与を支給する」というのが昭和の銀行経営でした。社内恋愛も結婚前提ではないとだめだし、顧客とのやり取りも厳しくチェックされます。

顧客である我々は銀行員とお付き合いしているという認識はゼロであります。担当が数年ごとに変わり、前担当者とは「今生の別れ」となるような仕組みなら全部ロボット君とAI君に業務を任せた方がまし、ということになります。

店舗も古臭い天井がやけに高い建物で空間使用効率の悪いものが多いのに店舗に来る客は年々減る一方であります。従業員数も圧倒的に多いわけですが、メガバンクはすでに自然減等による中期的な大幅人員削減に入っており、新入社員の採用数も減じています。

ただ、金融業界を取り巻く環境変化はそんな悠長なことを言っていられないところまで追い込まれており、あらゆる体質改善を前倒しで求められる状況にあると断じてよいでしょう。

今回のみずほの発表はメガバンクに限らず地方銀行再編も叫ばれる中、地殻変動的な対応を迫られる予兆なのかもしれません。

では今日はこのぐらいで。
https://blogos.com/article/362479/
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/416.html

[政治・選挙・NHK258] 国内景気 すでに“後退局面”に入った? 中国経済の減速波及 「戦後最長景気」は幻の恐れも 
【報ステ】国内景気 すでに“後退局面”に入った?
3/7(木) 23:30配信 テレ朝 news

All Nippon NewsNetwork(ANN)

[ 前の映像 | 次の映像 ]
 内閣府は7日、1月の景気動向指数を発表し、景気がすでに後退局面に入った可能性を示した。1月の速報値は97.9と前の月より2.7ポイント低下。景気動向指数の悪化は3カ月連続となる。政府は今年1月、景気の拡大が「戦後最長になった可能性がある」との認識を示している。今回の景気動向指数の基調判断は異なるが、菅官房長官は従来の認識に「変わりはない」と強調した。
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2025年財政健全化目標 高成長でも1兆円超赤字
不正統計で厚労大臣の罷免要求へ 午後から代表質問

最終更新:3/7(木) 23:30
https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20190307-00000082-ann-bus_all


幻の戦後最長か 景気動向指数の基調判断を引き下げ[2019/03/07 18:46]

https://news.tv-asahi.co.jp/news_economy/articles/000149307.html

 政府が宣言した「戦後最長の景気拡大」は幻となるかもしれません。

 茂木経済再生担当大臣:「正月休みが例年より長く、(工場などの)稼働日数が短かったことが影響した可能性もある」
 内閣府は、中国経済の減速の影響で電子部品の生産が落ち込んだことなどから、1月の景気動向指数の基調判断をこれまでの「足踏み」から「下方への局面変化」に引き下げました。政府は、1月末に「景気拡大が戦後最長に達した可能性が高い」と宣言しましたが、その前に景気拡大は終わっていた可能性があります。
https://news.tv-asahi.co.jp/news_economy/articles/000149307.html


中国経済の減速波及 「戦後最長景気」は幻の恐れも
3/7(木) 19:39配信 産経新聞
 7日に発表された平成31年1月の景気動向指数で、景気の現状を示す一致指数の基調判断が「下方への局面変化」に引き下げられ、1月に達成したとみられている「戦後最長の景気拡大局面」が幻だった恐れが出てきた。政府は「戦後最長景気」更新の判断を維持する構えだが、その可能性は「五分五分」(民間エコノミスト)といわれており、予断を許さない状況だ。

 一致指数による景気の基調判断は基準が決まっており、7カ月平均のマイナス幅の累積が一定以上を超えるなどの条件を満たすと機械的に「下方への局面変化」と判定される。今回は昨年7月の西日本豪雨以降に相次いだ自然災害の影響が反映された。

 ただ、基調判断が「下方への局面変化」になったことがそのまま景気後退局面入りと認定されるわけではない。消費税率8%への引き上げの駆け込み需要の反動減が起きた26年8〜11月にも基調判断は「下方への局面変化」とされたが、内閣府の「景気動向指数研究会」は雇用や企業収益が堅調だったことなどから、後退への転換点を示す景気の「山」を認定しなかった。

 こうした前例もあり、菅(すが)義偉(よしひで)官房長官は7日の記者会見で「緩やかに回復している」という景気の現状認識について「変わらない」と強調。「戦後最長景気」を更新しているとみられるとの見解も変えなかった。

 一方、民間エコノミストの見方は厳しい。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員は「春節前倒しの影響などを割り引いてみても、一致指数の落ち方が大きい」として、昨年10月ごろに景気の「山」が生じた可能性があると指摘。「戦後最長景気」更新について「黄信号が赤になるか青になるかは、米中貿易戦争の動向が大きい」と分析している。(桑原雄尚)

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最終更新:3/7(木) 23:43
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190307-00000585-san-bus_all
http://www.asyura2.com/19/senkyo258/msg/262.html

[経世済民131] ECB、年内利上げ断念 成長予測も大幅下方修正 ドラギ総裁発言要旨 ECB貸出支援策再開へ、TLTROの仕組みと課題
ECB、年内利上げ断念 成長予測も大幅下方修正
3/8(金) 0:07配信 産経新聞
 【ベルリン=宮下日出男】欧州中央銀行(ECB)は7日、定例の理事会をドイツ・フランクフルトで開き、「マイナス金利」を実施している政策金利の現行水準について「少なくとも年内」は維持することを決めた。「少なくとも夏まで」とした従来方針からの転換。年内の利上げを断念し、先送りした。

 米中の貿易摩擦などの影響でユーロ圏経済が減速していることへの対応。ECBは2019年のユーロ圏の域内総生産(GDP)成長率見通しについても、昨年12月時点の従来の前年1・7%増から1・1%増に大幅に下方修正した。

 ECBは長期の資金供給策の実施も決定。期間は2019年9月から21年3月までで、銀行への低利融資で景気を下支えする。ECBは昨年末、国債などを大量に買い取る量的緩和を終了したばかりだが、景気減速を受けて緩和の縮小路線を修正した形だ。

 ドラギ総裁は理事会後の記者会見で、英国の欧州連合(EU)離脱問題や中国経済の減速などもリスクに挙げた上、「脆弱な状況が続き、不確実性が広がっている」と強調した。

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最終更新:3/8(金) 0:07
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ECB理事会後のドラギ総裁発言要旨
3/8(金) 0:06配信 ロイター
ECB理事会後のドラギ総裁発言要旨
 3月7日、欧州中央銀行(ECB)は、主要政策金利を予想通り据え置いた。また、危機後初となる利上げの時期を来年に先延ばしし、銀行向けの超長期の低利融資を再び実施すると発表した。写真は会見するドラギ総裁(2019年 ロイター/KAI PFAFFENBACH)
[フランクフルト 7日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は7日、主要政策金利を予想通り据え置いた。また、危機後初となる利上げの時期を来年に先延ばしし、銀行向けの超長期の低利融資を再び実施すると発表した。

ドラギ総裁の理事会後の記者会見での発言は以下の通り。

<基調的インフレ抑制>

地政学的要因、保護主義の脅威、新興国市場の脆弱性に関連した不透明感が根強く、景況感に強い影響を与えているようだ。さらに基調的なインフレは引き続き抑制されている。

<成長ペースかなり緩やかに>

成長を圧迫する特有の国内要因が一部消えつつあることを示す兆候はあるものの、景気指標の弱含みは景気拡大ペースがかなり緩やかになることを示す。

<物価圧力>

本日の決定は、域内物価圧力のさらなる蓄積と中期的な総合インフレ率の動向を支援することになる。

<多大な政策刺激>

主要政策金利に関するフォワードガイダンス、保有資産の再投資と新たな貸出条件付き長期資金供給オペ(TLTRO)によって、金融政策による多大な刺激が継続する。

<支援要因>

有利な資金調達環境、好ましい労働市場のダイナミクス、賃金の伸び加速が引き続きユーロ圏の拡大を支援し、インフレ圧力を緩やかに押し上げている。

<インフレの鈍化>

景気減速によりインフレ率のECBの目標に向けた調整が鈍化している。

<TLTROの設計>

TLTROはさまざまな目的に対応できるよう設計されている。ただ主要な目的は、向こう数年間で銀行資金を巡る情勢がどのようになっているかということだ。

<決定は全会一致>

(7日の理事会で採決に掛けられた措置について)全会一致が見られた。これらの措置が複雑であることを考えると、理事会内に結束力があることを示す極めて良好な兆候となった。

<総合インフレは鈍化へ>

総合インフレは現行の水準近辺にとどまり、その後年末にかけて鈍化する公算が大きい。

<インフレは中期的に上昇>

基調的なインフレは、金融政策対応や経済の継続的な拡大、賃金の伸びが下支えとなり、中期的に上昇する見込みだ。

<成長リスクは下向き>

ユーロ圏の先行きの成長を取り巻くリスクは、地政学的要因に絡む根強い不透明感や保護主義の脅威、新興国市場の脆弱性に伴い、依然として下向きに傾いている。

<あらゆる手段調整の用意>

ECB理事会は、インフレが引き続き持続的な形で確実に目標に向かうよう、必要に応じてあらゆる手段を調整する用意がある。

<銀行融資>

特にTLTROなど、この日の理事会で決定した政策措置は、銀行融資状況が良好であり続けることを確実にすることの一助となる。

<構造改革>

復元力を増大させ、構造的な失業を引き下げ、ユーロ圏の生産性と潜在成長力を押し上げるために、ユーロ加盟国は構造改革の実施を大幅に強化する必要がある。

<景気後退の確率は非常に低い>

理事会メンバー全員がベースラインへの信頼感を示した。景気後退の確率が非常に低いと評価したことなどを示す。

<銀行の資金供給「過密」に>

今後数年間、既存のTLTROで相当規模の銀行債券の償還期限が迫るなどして、銀行の資金供給が過密になる事態が予想される。従ってTLTROで、好ましい銀行融資条件や金融政策の円滑な波及を保全する。

<下振れリスクを維持した理由>

われわれは下向きに傾いているとのリスク評価を維持した。なぜか。われわれの決定がユーロ圏経済の復元力を確実に高めると認識しているが、ユーロ圏経済を圧迫する世界の他地域の要因に対処することができるかと問われるとできないためだ。

<復元力>

基本的に、われわれの政策はユーロ圏経済の復元力を高め、持続的なインフレ率への収束という目標達成に向けた確信につながっている。

<保護主義的な対応>

経済に関するスタッフ予想は、これまでに表面化している保護主義的な政策対応を加味しているが、将来の政策もしくは現在の協議の行方に関する評価を示すものではない。

<追加資産購入について>

(追加資産購入はあり得るかとの質問に対し)選択肢はあちこちに転がっている。問題はある特定の手段を用いる根拠となる偶発性が認められるかどうかだ。これについては現時点で憶測を控えたい。

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最終更新:3/8(金) 0:11
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190308-00000000-reut-bus_all

 
ビジネス2019年3月5日 / 16:06 / 16時間前更新
アングル:ECB貸出支援策再開へ、TLTROの仕組みと課題
Reuters Staff
2 分で読む

[フランクフルト 4日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)はユーロ圏域内企業への与信の流れを維持するため、貸出条件付き長期資金供給オペ(TLTRO)を再開する見通しだ。既に顕在化している景気の減速が突然の信用逼迫で一段と悪化するのを防ぐのが狙い。

導入が見込まれる新型TLTROの仕組みや問題点などをまとめた。

◎前回のTLTRO

ECBは前回、2016年と17年に期間4年のTLTRO(targeted longer-term refinancing operations)を実施し、金融機関に総額7390億ユーロの流動性を供給した。鍵は「貸し出し条件付き(targeted)」となっている点で、銀行は企業など実体経済に貸し出しを行う場合にはマイナス0.4%の中銀預金金利と同水準でECBから資金を借り入れ、金利を払う代わりにキャッシュを手に入れることができた。

◎再開論浮上の背景

前回のTLTROの返済までの期間が1年を切るとバーゼル規制の安定調達比率(NSFR)を計算する際の長期資金としての組み入れ比率が徐々に低下するため、6月から銀行がECBへの返済に積極的な姿勢に転じるとみられる。そうなればECBのバランスシートが縮小する一方、市中銀行はよりコストの高い調達に頼らざるを得なくなり、融資能力が制約を受ける。

既に統計は1月企業向け融資の大幅な鈍化を示した。銀行の業績不振も貸し渋りに拍車を掛ける恐れがある。

TLTROの大部分が返済期限を迎えると、実体経済に大きな影響が及ぶとECBは危惧している。

◎TLTROの効果

銀行融資は昨年、世界金融危機後で最も高い伸びを記録した。またECBの調査によると、資金調達は銀行にとって重大な懸念材料とはなっておらず、TLTROはユーロ圏の景気に対して効果を発揮したようだ。調査ではほとんどの銀行が、調達資金を企業に貸し出しており、TLTROによって調達コストを圧縮して与信条件を緩和することできたと回答した。

◎新型TLTROの狙い

新型については既に検討が行われており、早ければ7日の次回ECB理事会で導入の方針が打ち出される見通し。ただ、具体的な内容の詰めは、旧TLTROの第1回実施分返済期限まで1年を切る直前の6月までずれ込む可能性がある。

期間や貸し出し条件は、ECBの今後数年間の金融政策姿勢を縛るため重要だ。

◎新型の旧型との違い

ECBの首席エコノミストであるプラート専務理事は、旧型は「条件が非常に緩い」と述べ、新型では条件が厳しくなるとの見通しを示した。ただ、ユーロ圏の景気減速が深まれば、ECBは引き続き寛大な条件を維持するだろう。

期間は旧型の4年に対して、新型は2年から3年に短縮されそうだ。また、新型は変動金利となり、当初の金利はECBの主要政策金利であるリファイナンス金利(現在0%)に設定される可能性がある。

「条件付き」でなくなれば銀行にとって使い勝手が良くなる。その場合は調達資金の一部が、国債などに投資して利ざやを稼ぐ「キャリートレード」に使われ、実体経済に回らない恐れが出てくる。こうした投資は過去にも行われ、既に当局者の間から不安の声が上がっている。

旧型から新型への乗り換えが起こるだけではないかという問題もあるので、銀行の借り入れ可能額に制限が設けられてもおかしくない。

◎新型導入巡る論点

旧型TLTROによる借り入れ残高7240億ドルの56%をイタリアとスペインの銀行が保有しており、事実上ユーロ圏全体ではなく特定の国を対象にしているとの指摘が一部の当局者から出ている。

既に現行のTLTRO自体が以前の流動性供給制度の延長であり、銀行はECBからの調達に依存し過ぎで、TLTROの再開はECBへの依存体質を改める上で役立たないとの意見も聞かれる。

こうした細かい部分を巡って議論が長引いたとしても、政策担当者の間で新型の導入自体に反対する気配は見受けられない。
https://jp.reuters.com/article/ecb-tltro-idJPKCN1QM0MV?rpc=122
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/418.html

[政治・選挙・NHK258] 経済統計学会「統計、権力から独立を」声明文を総務省に 底なしの統計不正、総務省に飛び火 「世界の信頼失う」 
経済統計学会「統計、権力から独立を」声明文を総務省に
3/7(木) 23:45配信 朝日新聞デジタル
 厚生労働省の統計不正を受け、経済統計学会(会長=金子治平神戸大教授)が「政治権力から独立でなければならないという近代統計の原点に立ち返ることを願う」とする声明文を、総務省の統計委員会に出していたことがわかった。

 声明文は2月21日付。「公的統計が機能を果たせなかったことが、わが国を無謀な戦争へと駆り立てた」と指摘。毎月勤労統計の不正について「国のあり方そのものを根底から揺るがしかねない」と批判した。また、2000年代初頭に国が統計予算や担当職員を削減したことが不正の一因となったと指摘した。

朝日新聞社

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首相動静―3月7日
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190307-00000116-asahi-pol


 
底なしの統計不正、総務省に飛び火 「世界の信頼失う」
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2019年2月1日21時32分

写真・図版
厚労省と総務省で発覚した統計不正

 統計不正の端緒となった厚生労働省が隠蔽を認め、統計を統括する総務省でも調査員による虚偽報告という新たな不正調査が発覚した。政府統計の信頼は揺らぐ一方だ。

 今回、不正が発覚したのは、モノやサービスなどの価格変動の指標となる「小売物価統計」。日本経済を分析するうえで最も重要な統計の一つとなる「消費者物価指数」の基礎となる国民生活に直結する重要な統計だが、大阪府で調査員が架空の数値を報告し、まとめられたことが発覚した。

 発表元は統計全体を管轄する総務省。永島勝利・統計局調査企画課長は1日の記者会見で「不適切な事案であり、国民にご不便をかけた点は調査実施者として大変申し訳ない」と謝罪した。実は、不正発覚の一報は大阪府から1月28日夕に総務省に届いたが、同省は同日夜の記者会見で、厚労省所管の「賃金構造基本統計」で点検漏れがあったと発表しながら、「厚労省以外には該当がないことが確認できた」と説明していた。

 この点について永島課長は「各省庁が計画通り調査しているか、という観点とは違う問題」と主張。点検作業は限定的で、その実効性にも疑問符がつく。

 また、大阪府が委託した調査員3人の虚偽報告という不正について、西村康稔官房副長官は「個々の調査員の不適切な事務処理であり、国からの指示に問題のある事案ではない」。大阪府の松井一郎知事も「厚労省の(問題)は組織としてごまかしたもの。今回は(調査員を務める)人の問題で、全く違う」と述べ、あくまで個別事案と強調した。

 総務省は今回の問題をうけ、1月31日付で各都道府県に調査員への研修強化や監査の強化を求める通知を出した。大阪府も他に不正がないか引き続き検証する方針だ。

 政府と日本銀行は、不正が見つ…
https://www.asahi.com/articles/ASM215G7DM21UTFK00S.html?ref=yahoo
http://www.asyura2.com/19/senkyo258/msg/264.html

[経世済民131] 「マンション購入は資産構築にはならない」住宅ジャーナリストの榊氏が警告 
「マンション購入は資産構築にはならない」住宅ジャーナリストの榊氏が警告

2019/03/08

中西 享 (経済ジャーナリスト)


(siraanamwong/Gettyimages)
 「あなたの家は、『一生モノ』ではありません。『買えば安心』は大間違い」

 と、マンションに住んでいる人やこれから購入しようとする人への警告ともとれる新刊書『すべてのマンションは廃墟になる』(イースト新書)が発売された。著者は、これまでもマンション不動産市場について価格の暴落を予言するなど辛口のコメントをしてきた住宅ジャーナリストの榊淳司氏。著者にインタビューして今年の不動産市場についても聞いた。

「誤ったイメージ」

『すべてのマンションは廃墟になる』(イースト新書)
 いまや、多くのサラリーマンは就職して結婚すれば家を買う、大都市の場合、多くが分譲マンションの購入するのが当たり前となっている中で榊氏は、

 「多くの人は分譲マンションに対してかなり誤ったイメージを抱いている。幻想と言っていいだろう。それは、『マンションを購入すると自動的に幸せになれる』というものだ。

 あるいは、『マンションを買うことは資産を築くこと』という感覚で購入を決断している場合も多く見かける。こういったイメージや感覚は部分的、短期的には正しい場合も多い。

 しかし、全体的あるいは中長期的には誤っていると断言していい。最終的には所有しているマンションが廃墟化してしまう可能性も高い。廃墟化の危機を迎えるのは、地方や遠隔郊外のマンションだけではない。現在、日本に存在するマンションのほとんどが、廃墟化への時限爆弾を抱えている」

 と、空恐ろしい指摘をする。

「持ち家信仰」はもう古い
 「東京や大阪に住む人が『自宅を所有したい』と熱望するのは、敗戦後の住宅難の時代に萌芽し、現代まで受け継がれている偏った価値観だと考える」と持論を展開、「そもそも、持ち家でないといけない、という価値観を見直すべきだ」

 と、訴える。その理由として、少子高齢化、人口減少を指摘する。

 「このままだと、昔のような住宅難の時代は来そうにない。それどころか、この国がいまだに経験したことがない住宅の大余剰時代がやってくる。というか、地方ではすでにそうなっている。そのことに気づけば、マンションを購入する、というのは大きなリスクであることが見えている」

欠陥だらけの区分所有法
 その最大の元凶がマンションの所有形態である区分所有制度であると主張する。

 「区分所有について定められた区分所有法という法律には、決定的な欠陥があるのだ。1962年に制定された同法は、基本的に性善説に基づいているとしか思えない構造になっている。また、500戸や1000戸大規模マンションの登場を想定していない。さらに言えば、マンションの老朽化さえも想定外ではないか。これを改めない限りにおいて、すべてのマンションは廃墟化へのレールを突き進むことになる」

 榊氏は、

 「日本のマンションにおける区分所有権とうのは、過剰に保護されていると言えないだろうか。せめて、管理費や修繕積立金を長期にわたって滞納している住戸に対しては、もう少し厳しい制度を設けてもよいと思う。国土交通省もその必要性は気付いているはずで、その方向で見直しをしてほしい」

 と述べ、管理費の滞納が5年分に達した場合、所有権がマンションの管理組合に移転するようにしてはと、具体的な提言をする。

 区分所有法では、共用施設の変更には区分所有者の4分の3以上の賛成が必要な特別決議が必要になる。建て替えとなると法的には5分の4の賛成が必要だ。数十戸の小規模のマンションなら住民も顔見知りのため、合意形成も得やすいが、1000戸規模となると、外国人や賃貸契約で入居している人もいて、合意形成は煩雑で難しくなる。

 「『4分の3』、『5分の4』の合意はハードルが高すぎるので、最大で『3分の2』あたりまで緩和すべきではなかろうか。マンションのような何十、何百もの世帯が生活を営む集合住宅は、たとえ所有者が個人であっても、ある程度は公共的な存在であるべきだ。

 公共物であるかぎり、私人が好き勝手に扱っていいはずがない。そこでは公共物なりの常識的なルールを守り、一定の秩序が保たれるべきであろう。また必要とあれば、行政がある程度介入すべきではないだろうか。

 特に廃墟化が迫っているマンションについては、区分所有者だけの力だけではどうにもならない場合が多い。そこには当然の如く行政の介入があってしかるべきであると私は考える」

性悪説で見直しを
 榊氏は自身がコンサルティングしたケースで、マンションの管理組合の悪徳理事長が跋扈した例を取り上げている。

 この組合では理事長が管理規約を好き勝手に変更して、自分への露骨な利益誘導を図っていたという。こういったことをするためには、管理組合の特別決議が必要になる。

 85%もの賛成投票の結果に疑念を感じて、議決権行使書と議長一任の委任状の開示を求めても、区分所有法とマンションの管理規約にはそのような規定はないので開示はできないとなった。

 「つまり、悪徳理事長が委任状や議決権行使書を偽造していたとしても誰にも暴けないのである。そもそも区分所有者法は、委任状や議決権行使書を偽造してまで自分に有利な決議を可決させようと企むような悪徳理事長の登場を想定していない。いまやマンションの管理組合は利権となり、悪意の人物が私腹を肥やすことが常態化している組織なのである」

 と話し、区分所有法は性悪説に基づいて見直すべきだと強調する。

 現実に管理組合の抱える問題点として、都内マンションの実態調査を見ると、役員のなり手がいない問題はいつもトップにランクされることが多い。

 理事長の多選を禁止している管理組合はほとんどなく、結果的に理事長が何度も再選されて、気が付いたら理事長がマンション管理費を流用していたというケースは、いくつもあるという。

新たなバブル崩壊リスク
 今年のマンション市場については、

 「新築マンションは価格が高くなり過ぎて在庫が積みあがってきている。中古は2020年の東京オリンピック後には下がるのではないかという期待感から模様眺めになっている。さらに今年10月から消費税が上がれば、景気を冷やすことになる。価格が上がる要素は何もない」

 と、価格の下振れ傾向が強まると予想する。

 不動産市場は昨年に表面化したスルガ銀行の不正融資、レオパレス21の施工不良問題などネガティブニュースが度重なっている。

 榊氏が特に心配するのは、

 「今年は投資用アパート、マンションが過剰になり暴落する恐れがある。すでに投資用不動産の価格がかなり下落してきている」点で、

 新たなバブル崩壊のリスクがあるとみている。この数年、節税や遺産相続対策になるとして、富裕層が1棟建てのアパートやマンションに積極的に投資してきた。金融機関も2年ほど前までは建設資金を融資し、借りる側も低金利が続いているため担保を提供して必要資金を割と簡単に借りることができていた。

 当初はアパートやマンションに入居者が入り、期待通りの賃料が得られていたが、似たようなアパートやマンションが急増したことから、空き家が増えてきており、期待したほどの賃料が得られなくなってきているという。

 仮に賃料が大幅に落ち込んだりすると、資金計画の目算が狂うことになり、場合によってはアパートやマンションを手離さなければならなくなる。これが引き金となって、新たなバブルが破裂する恐れがあるという。

 金融機関はスルガ銀行の不正融資が露見してからは住宅関連融資の蛇口を閉めており、お金を借りてアパートを建てるのは難しくなっている。今年の不動産市場は要注意だ。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/15548
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/427.html

[経世済民131] 「不良品を返品したい」非正規雇用で貧困に苦しむ中年フリーターたち 生活保護費の増加で、高所得者は税金をさらに取られる
オトナの教養 週末の一冊

「不良品を返品したい」非正規雇用で貧困に苦しむ中年フリーターたち

『ルポ 中年フリーター』小林美希氏インタビュー
2019/03/08

本多カツヒロ (ライター)

 2040年に日本は危機を迎えると指摘されている。高齢化がピークに達し、社会保障費、介護費、医療費、年金が現在より大幅に膨れ上がるからだ。さらに、就職氷河期世代にあたる中年世代のフリーターに対し、何も対策が取られなければ生活保護費が膨れ上がる可能性も指摘されている。『ルポ 中年フリーター』(NHK出版新書)を上梓した労働ジャーナリストの小林美希氏に中年フリーターの実態や人材派遣会社、中年フリーターへの対策について話を聞いた。


(imtmphoto/iStock/Getty Images Plus)
非正規雇用で働かざるを得ない事情
――中年フリーターについては経済誌などでも2040年問題のひとつとして度々問題視されています。

小林:35〜54歳で非正規雇用で働く中年フリーターは、約273万人にものぼります。この問題に関して政策が立案され施行されるまでには3〜4年かかりますから、世の中に訴えるのは本当にこれが最後のチャンスだと考えています。

 いち早く目を向けなければ、かれらは中年から高齢者になり、職業訓練をしても正規雇用されなくなる。そうなれば、生活保護費の追加的な予算額は最大で20兆円近くになる(2008年NIRA総合研究開発機構レポートより)とされ、後のリーマンショックを考えるとさらに膨れ上がる可能性があり、日本の財政は耐えられません。

――かれらはちょうど就職氷河期世代にあたるわけですが、取材をされているなかでどんな人生を歩んでいると感じましたか?

小林:たとえば、都内の有名大学を卒業後、大手旅行会社に正社員として入社するも、劣悪な労働環境で体調を崩し退職。アルバイトを経て、保険会社に入社するも基本給が月額13万円の男性がいます。彼のように正規雇用されながらも、病気や介護などで退職し、非正規雇用で働かざるを得ない男性がいるのです。

 女性では、早稲田大学や慶応大学といった有名大学を卒業した方が多い印象です。彼女らは、仕事に関し男性も女性も性別は関係ないという世代ですから、大学在学中は有名商社や都市銀行などの総合職に就くことを目指していました。しかし、いざふたを開けると女性の総合職は一人しか採用しないといった大手企業が多々ありました。急いで一般職希望に切り替えてももはや遅く、大学卒業後の初職がアルバイトや派遣といった非正規雇用に甘んじなければならなくなってしまった。

――かれらの月給はいくらぐらいなんですか?

小林:額面で23〜24万円、手取りで20万円切るくらいが多い印象です。なかには、手取り20万円は贅沢だとまで考えている方までいます。夕飯は閉店間際のスーパーで値引きされた惣菜を買う毎日です。しかも、初任給から賃金がほとんど上がっていないのが実情です。当時、企業側は実家から通勤できる学生を優先的に採用している傾向がありました。そうであれば、多少給与が低くても生活していけますからね。

新卒採用というレールに乗れなかった人たちへの偏見
――手取りで20万円を切るとなると、仮に非正規同士で結婚した場合、妊娠、出産するのは難しいですね。


『ルポ 中年フリーター「働けない働き盛り」の貧困』(小林美希、NHK出版)
小林:20〜40代の女性の約半数は非正規雇用です。もし妊娠して、つわりが激しくなれば休まなければならないですし、無理に働けば流産や早産につながる可能性がある。非正規同士が結婚した場合、結婚はできても、子どもを持つことは非常に難しいのが現状です。

――非正規で妊娠した場合、どのような生活になるのでしょうか?

小林:派遣労働者の取材をはじめた当初から取材している女性は、派遣社員で妊娠を会社に伝えたところ、「明日から来なくていい」と事実上、解雇されました。妊娠解雇です。彼女は納得がいかず労働組合とともに会社側と争いましたが、会社側は妊娠中の彼女に月100時間の残業を前提に契約満了まで雇うというとんでもない条件を出しました。

 また、彼女が妊娠を派遣先の会社へ伝えた際に、会社は派遣会社に「不良品をとっとと返品したい」と言っていたそうです。当時、派遣労働者の人件費は物品費に計上されることが問題視されたように、人件費率を下げたい企業側は、派遣労働者を雇うことで決算上、人件費が少なくなっているように見せていたのです。

――いわゆる派遣切りには、3年ルールが適用されるようになりましたが、実態はどうなのでしょうか?

小林:2004年に労働者派遣法で一部業務において非正規雇用の上限を3年とし、3年働けば正社員などの直接雇用に転換する、と決まりました(2015年には全業務に拡大)。派遣契約を延長しない場合、1カ月前までに本人に通達しなければなりません。実際に取材をしていると2年9カ月目などで派遣契約を切るというように悪用する企業も見受けられます。同じ年に労働基準法でも非正規は3年が上限になったことも3年ルールを後押ししてしまった。

――最初のお話で有名大学を卒業しても、いまだに非正規で働き続けている女性の話がありました。日本では、経済状況のせいでやむなく学校卒業後非正規雇用だった場合、以後も非正規雇用に甘んじなければならない傾向があります。なぜ正規雇用されないのでしょうか?

小林:ひとつは、多くの人が新卒採用というレールに乗っているにもかかわらず、そのレールに乗れなかったのは能力的に劣るのではないかと企業側が判断するためです。

 もうひとつは、たとえ正規雇用と同じような仕事を任されていても、非正規は「しょせん非正規」で、正規雇用者が20代半ばまでに身に着けているスキルを身に着けていないと企業側が判断する傾向もあります。

 また、バブル経済が崩壊して以降の失われた20年の間に、企業は採用を人材派遣会社にアウトソーシングするようになったことで、企業側に人材を見る目がなくなった点もあるのではないでしょうか。

――そうなると人材派遣会社はいまなお潤っているわけですか?

小林:一般職の派遣で人材派遣会社は業績を拡大してきましたが、ここ数年は飽和状態です。最近は、一般職ではなく、看護師や保育士の派遣や人材紹介に力を入れています。どちらも人手不足な上に、公的な資金が流れますから。特に、看護師の場合、年収600万円を超える方もいますから、そのうちの2割、120万円以上の紹介手数料を人材派遣会社が受けとることが多いようす。

インターンシップの利用は有効か
――中年フリーターの問題に対し、国はどのような対応をしているのでしょうか?

小林:就職氷河期世代に対しては、国としては特になにも対策はしていません。自民党の総裁選に出馬した石破茂氏に出馬前に取材したのですが、石破さんは私の記事を読んでいてくれて中年フリーター問題に関心があるようでした。最近、外国人労働者の受け入れが議論されていますが、外国人を受け入れるなら就職氷河期世代の問題をまずはどうにかしようと発言した立憲民主党の議員がいるくらいです。東京都などの地方自治体の一部は、就職氷河期世代に特化した対策を取っています。

 国は、厚生労働省が予算をつけ就職氷河期世代より若い人たちに対してはジョブカフェというハローワークを併設した施設を46都道府県で運営しています。ただ、2009年に『AERA』に書いたのですが、最初は経済産業省も潤沢な予算をジョブカフェにつけ、リクルート社に委託しました。リクルート社は、現場に出向した自社社員に対し日給12万円、受付事務に日給5万円、キャリアカウンセラーに日給7万5000円を書類上計上していることが判明しました。もちろん、実際に社員はそんなに給与をもらえるわけではありません。その差額は3年間で数億円に上りました。

 国が、なにかの施策を打つときに、民間に委託し、委託先が再委託すると国は何も規制することができず、ブラックボックスになっています。

――民間の会社に委託し、税金を無駄にせずに中年フリーターを正規雇用するためには何が必要だと考えていますか?

小林:就労支援に関しては、以前、経済産業省が「中小企業新戦略発掘プロジェクト」、いわゆる「主婦インターンシップ」という事業を実施していたのですが、同じような形で一定期間、現場でインターンとして働いてもらいながら、お互いに見極めるのが良いのではないでしょうか。その際、インターンを受け入れた企業には日給分を国が支給すれば、企業も冒険することができると思います。

 本書にも書きましたが、伊藤忠商事の丹羽宇一郎元会長は、雇用に関し基本は全員正社員にしようと発言しています。私もその意見には賛成です。正社員を基本とし、非正規は学生のアルバイトや扶養控除内で働きたい人などに限定すべきだと思います。正社員と言っても、介護や子育てで長時間働けない人は短時間正社員とし、バリバリ働きたい人は働き、その分待遇を厚くする。そうやって社会保障をきちんと整えなければ、生活が安定せず、先行きも考えられません。

――出版後のどんな声を耳にしますか?

小林:人手不足の企業からは「そんなに大変な人達がいるなら、うちで雇いたい」といった声もあります。だから、当事者の人たちには諦めないでほしい。

 やはり、企業側の責任として人事や管理職、政治行政に関わる人にはぜひとも現実を直視してほしい。非正規雇用の問題なんて自分には関係がないと思っている方もいるかもしれませんが、このままの状態を放っておけば生活保護費の増加で、高所得の人たちは税金をさらに取られるかもしれない。ぜひ本書を手に取り、現実を知ってほしいと思いますね。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/15573

http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/428.html

[不安と不健康18] ビジネスパーソンのための「無理なく実践!食育講座」 「野菜を先に食べると太らない」は本当か 
ビジネスパーソンのための「無理なく実践!食育講座」

「野菜を先に食べると太らない」は本当か

2019/03/08

佐藤達夫 (食生活ジャーナリスト)

約2年前に「野菜の食べ方」について取り上げた。野菜350g分の栄養素が体内に入りさえすれば健康になれるわけではないこと、野菜をたくさん摂取するには加熱野菜を食べる習慣を身につけることが重要であることなどを書いた。今回は、ビジネスパーソンの間でも話題になることが多いらしい「野菜を先に食べる食事法」について考えてみたい。


(metamorworks/iStock/Getty Images Plus)
入院治療では「野菜先食べ」はやせる
「健康長寿のためにはどういう食生活をすればいいのか」というようなテーマで講演をしたときに、最も多い質問が「野菜をたくさん食べるほうがいいことはわかっているけどなかなか食べられない。野菜ジュースを飲むことは野菜を食べたのと同じような効果があるのか」という質問だ(その答えは第9回のこのコラムで書いた)。最近多くなったのが「野菜を食事の最初に食べるといいと聞いたが、それは本当か」という質問。

食事の際に、野菜を最初に食べることの健康効果は2つ考えられる。体重コントロールと糖尿病の予防の2つだ。はじめに、体重コントロールができるかどうかについて見てみよう。

筆者の記憶では、「減量のために野菜を最初に食べる」食事法を実践したのは、京都にある大学病院での肥満治療だ。生活習慣病の予防ではなく(もちろん美容上のダイエットでもない)、体重を減らさなければ近い将来に(生命の危険をも含む)重篤な疾病を招く危険性のある肥満患者に、「治療」として食事制限を行なったケースである。

入院治療中の患者に「三度の食事」の最初にキャベツを大量に摂取させる。当然、胃の中はキャベツで満たされるので、その後の食事(もちろん低カロリー食)がたくさん入らなくても満腹感はある。これを続けると、総摂取カロリー量が激減するので体重が落ちる、という仕組み。

もちろんビジネスパーソンでも、同じことをすれば体重は減る。入院患者の場合は食事がコントロールされている(その上「命に別状あり」などと脅されている)ので、これ以外の食事をいっさい口にできない。ただし、食後しばらくするとものすごい空腹感に襲われるので、入院してない人はどうしても何か食べてしまう。

多くの場合、かなり高カロリーな物を摂取してしまうので、総摂取カロリー量が落ちない。そのため、ダイエットはできない。これを制御できる(空腹感を我慢できる)ような人であれば、そもそも肥満してはいない(はず)。

ネズミの実験でも「野菜先食べ」はやせる
動物実験でも、同様な研究が行われている。ネズミにまず食物繊維の多い植物性の飼料を与え、それがなくなったら普通の飼料を与える。普通の飼料の「量」が「少ないケース」と「いくらでも自由に食べられる」ケースで、体重の変化を比較した。当然のごとく、少ないケースでは体重は減ったが、いくらでも自由に食べられるケースでは体重は減少しなかった。

ヒトでもネズミでも同じだが、体重の増減は「摂取カロリーと消費カロリーの出納」によってのみ決まる。すなわち、摂取カロリーが消費カロリーよりも少なければ体重は減少し、その逆であれば体重は増加する。

入院患者やネズミでは「摂取カロリーを強制的に少なくする」ことが可能なので、ダイエットはできるが、普通の人間ではそれ(強制的に摂取カロリーを減らすこと)ができないので、ダイエットはほとんど実現しない。

食べる順番(野菜を先に食べるか・後に食べるか)が体重の増減に影響を与える可能性はゼロではない(研究結果が少ないのでまだ結論は出せない)が、上記の「体重の増減の大原則」を覆すことにはなりそうもない。

ビジネスパーソンの「野菜先食べ」効果は不明
では次に、糖尿病の予防や治療に効果があるかないかについてみてみる。糖尿病かどうかを判断するための最も一般的な検査は空腹時血糖値の計測。前夜の夕食後から何も食べず、一番お腹がすいている時間(最も血糖値が低いとき)の血液を採取してブドウ糖の量を測るのが空腹時血糖値だ。この数値が126(mg/dl)以上が糖尿病。

近年、空腹時血糖値が126未満、つまり食後一定時間以上が経過すると血糖値が正常にまで下がるのだが、食後すぐ(30分〜2時間)に血糖値が急上昇する人がいることがわかってきた。そしてこのこと(食後高血糖)が血管を傷め、さまざまな生活習慣病の要因となっていることも指摘されている。こちらは、空腹時血糖値検査では発見できないため、「隠れ糖尿病」などと呼ばれている。

食事の最初に野菜を食べると、この食後高血糖を抑えられるようだ。そのため、この隠れ糖尿病の予防や治療には「野菜先食べ」は有効な可能性が高い。ただし「食後に急激には血糖値が上がらない人」では、野菜を先に食べることにあまり大きな意味はなさそう。自分が食後高血糖になりやすいかどうかは特別な検査が必要。糖尿病家系だという心配のある人は、一度検査をしてみるという方法もある。

一般の多くの人にとって「野菜を先に食べること」が健康にいいかどうかは、研究数がまだ充分ではないので、結論は出せない。ただし、フランス料理のコースではメインディッシュの前に野菜サラダ(やスープ)が出るし、日本の懐石料理でも最初に汁物が提供されることが多い。「食文化には(科学的な)訳がある」ことが多いので、野菜を先に食べることにまったく意味がないということでもなさそうだ。今後の時間栄養学などの研究に期待したい。

ただし、これだけはいえよう。

「野菜を先に食べるとダイエットに成功する」ということを頭から信じて、そのあと山ほど食べるなどの食行動をしていては、体重は絶対に減少しない。あるいは「野菜を先に食べると糖尿病にならないらしい」ということを鵜呑みにして、適量をバランスよく食べることをないがしろにするようなことをしていると、生活習慣病になってしまうリスクは間違いなく増える。

健康情報・食情報を「自分の都合のいいように」解釈してはならない。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/15459
http://www.asyura2.com/16/health18/msg/723.html

[国際25] ネットで4500万円集めた米ホームレス向け募金、詐欺と認める 
ネットで4500万円集めた米ホームレス向け募金、詐欺と認める

2019/03/07

BBC News


アメリカでホームレス男性のためにインターネットで募金を募り計40万ドル(約4530万円)以上を集めた女性とホームレス男性が6日、募金活動は詐欺だったと罪を認めた。

ニュージャージー州の連邦地裁で、元海兵隊員ジョニー・ボビット被告(36)は資金洗浄を目的に共謀したと法廷で罪を認めた。募金を集めたケイトリン・マクルア被告(28)は、通信詐欺の罪を認めた。

両被告は2017年11月、クラウドファンディング募金サイト「GoFundMe」で募金活動を始めた。マクルーア被告は、ペンシルベニア州フィラデルフィアの近くで自分の車がガス欠になった際、ホームレスのボビット被告がなけなしの20ドルを提供してくれたと書き、ボビット被告を支援するよう寄付を募った。マクルーア被告と当時の恋人、マーク・ダミコ被告(39)がサイトに投稿したこの話に、世界各地から1万4000人以上が賛同した。

調べによると、マクルーア被告とダミコ被告は募金開始の約1カ月前に、カジノでボビット被告と知り合った。

被告3人はさらに、窃盗のための共謀および詐欺による窃盗の罪で、州当局からも起訴されている。

元米兵が辛い境遇にありながら困っている見知らぬ人を助けたという物語に、大勢が感銘を受けて募金に協力したものの、3人のメディア露出が増えるに連れて、話の矛盾が次々と明らかになった。

マクルーア被告は友人に、話は「まったくの作り事」だと認めるメッセージを送っていた。

調べによると、マクルーア、ダミコ両被告は集まった募金をボビット被告の支援に使うのではなく、ラスヴェガス旅行や高級車やブランドもののバッグなどぜいたく品の購入に使った。薬物中毒でホームレスだったボビット被告は昨年8月、マクルーア、ダミコ両被告を詐欺などで訴え、集まった募金40万ドルのうち、自分は7万5000ドルしか受け取っていないと主張した。

検察はこの訴えを機に事実関係を精査し、昨年11月に3人全員を起訴した。

米紙フィラデルフィア・インクアイアラーによると、マクルーア被告は最大で禁錮2年9カ月の実刑判決を受ける可能性がある。ボビット被告は薬物中毒治療のため、医療刑務所などで6カ月から2年半にわたり、拘束されるかもしれないという。

一方で、ダミコ被告は本件のほか、昨年8月にマクルーア被告との恋愛関係が破綻した後にも、一緒に暮らしていた家を退去しなかったとして、不法侵入の罪で起訴されている。

(英語記事 Johnny Bobbitt: Two admit GoFundMe hoax about homeless man)

提供元:https://www.bbc.com/japanese/47479071

http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/623.html

[戦争b22] 欧州防衛産業にドイツ排除の動き、対サウジ禁輸措置で
トップニュース2019年3月7日 / 11:39 / 6時間前更新
焦点:
欧州防衛産業にドイツ排除の動き、対サウジ禁輸措置で
Andrea Shalal
4 分で読む

[ベルリン 4日 ロイター] - ドイツが導入した武器輸出規制は、欧州の防衛産業の中で自らを「のけ者」にしてしまう恐れがある。武器開発協力や、欧州共通の防衛政策育成という自国の野望が台無しになりかねない。

サウジアラビアの著名記者ジャマル・カショギ氏が殺害された事件を受けて、ドイツは昨年11月、サウジ向け軍需品輸出の全面停止を決断した。これにより、軍縮を巡るドイツと欧州各国との長年の相違は転換点を迎えている。

ドイツの決断により、英独伊西の4カ国が共同開発した「ユーロファイター・タイフーン」戦闘機48機をサウジに売却する100億ポンド(約1兆4700億円)規模の取引を含む巨額の軍需品受注が宙に浮いている。また、欧州航空機大手エアバス(AIR.PA)など一部企業では、自社製品からドイツ製部品を排除する動きがみられる。

ユーロファイター・タイフーンにかかわる英防衛大手BAEシステムズ(BAES.L)は、ドイツによる禁輸措置は自社の業績を圧迫すると警告。英仏両政府も撤回するようドイツの説得に必死だ。

メルケル独政権で連立を組む社会民主党(SPD)は、武器売却に慎重な有権者のさらなる与党離れを回避したいと考えており、サウジに対する武器禁輸継続と、より厳格な輸出制限で合意に達したい構えだ。

フランスや英国との不和を鎮めたいメルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)は、SPDがドイツの産業と雇用を危険にさらしていると非難し、圧力を強めている。

だがSPDは、連立与党は昨年、イエメン内戦に関与する国に対する武器売却を今後停止することで合意したと指摘する。その中にはサウジアラビアも含まれる。

与党内で意見がまとまらないため、ドイツ政府は1日、禁輸の期限を現行の3月9日から延長するかどうかの決断を月末まで先送りした。これにより、欧州の同盟諸国や産業内で懸念が一段と高まっている。

「現時点で問題を解決する方法が見つからない。完全に行き詰まっている」と、欧州のある業界関係者は語った。

<フランスとの協力>

ドイツは近年、他国向けの武器売却に対する制限を強化している。サウジの武器輸入全体にドイツが占める割合はわずか2%にも満たない。とはいえ、他国の武器にドイツ製部品が使われていることから、儲けの大きい欧州の武器売却プロジェクトを失速させる可能性は十分にある。

ドイツによる対サウジ禁輸措置の影響を受けているのはユーロファイター・タイフーンだけではない。欧州ミサイル大手MBDA製の空対空ミサイル「ミーティア」も、推進システムと弾頭がドイツ製のため、輸出が足止めされている。MBDAにはエアバス、BAEシステムズ、イタリアの軍需大手レオナルド(LDOF.MI)が出資している。

ユーロファイターとミーティアの取引に関する各契約は、いかなる国も一方的に輸出停止できないよう意図されていたが、それは拘束力のある正式な契約ではなく、機密性を守るという覚書としてのものだった。

ドイツ政府がこれらの契約を順守せず、サウジへの武器禁輸でフランスと協力しなかったことを受け、フランスは、向こう何十年にもわたりドイツと共同で行う巨額の武器プログラムを進める前に、拘束力ある合意を結ぶ必要性があると確信した。

仏独は「直接的な利益や国家安全保障が損なわれる」場合のみ、互いの輸出を阻止できるとした2国間の合意文書を起草している。カショギ氏殺害事件のようなケースは除外されている。

しかし、ドイツ連立与党内の亀裂がその成立を阻んでいる、と事情に詳しい関係者2人は明らかにした。また2国間合意がドイツ議会の承認を必要とするのかも不明だ。

エアバス・ディフェンス・アンド・スペースを率いるディルク・ホーケ氏はロイターに対し、新たな戦闘機や、独仏が年末までに署名する予定の新たな欧州ドローンの共同開発を進めるために合意は必要不可欠だと指摘する。

「真剣な長期解決策が見つけられなければ、ドイツとフランスのパートナーシップは長期間損なわれることになるだろう」と同氏は言う。

武器を巡る対立はまた、より統一された欧州の国防物資調達プログラム、ひいては欧州軍の創設に向けた独仏の取り組みを妨げている。武器輸出は、共同開発されたプログラムを成功させる上で決定的に重要だ。より経済的だからだ。

「ドイツの輸出政策は、フランスが1970年代に共同で開発した対戦車火器の後継を開発する決断を下した主な理由だ」。ドイツ産業連盟(BDI)のマティアス・ワクター氏はこう語る。

「軍事調達や輸出となると、ドイツ政府はまひしているというのが業界の印象だ」

ドイツはそうした政策のせいで欧州で孤立しているのかとの質問に対し、政府報道官は次のように答えた。

Slideshow (3 Images)
「この問題が、最重要同盟国の一部にとって主題となっており、決断が必要だということをわれわれは承知している。だからこそドイツ政府内で集中協議を行っており、3月以内に決断が下されるだろう」

<ドイツ抜き>

欧州では、武器に対する異なるスタンスをいかに調整するかという問題は今に始まったことではない。

だが今回がこれまでと違うのは、企業がドイツのサプライヤーを排除しようとしていることだ。

全部品の約3分の1を占めるドイツ製部品をユーロファイターから排除することはほぼ不可能だが、エアバスは中型戦術輸送機C295にドイツ製のナビゲーションライトを使用しないで済むよう再設計に着手したと、同社の関係者は先週ロイターに語った。同ライトはC295の部品の4%を占めている。

同社はまた、空中給油機「A330 MRTT」で使われている部品の約15%を占めるドイツ製品の代替品を探していると関係者の1人は明らかにした。同給油機はサウジを含む12カ国に売られている。

フランスは、ドイツと共同開発し1970年代に完成させた対戦車ミサイル「ミラン」の後継を独自に開発中だ。また関係筋によると、同国の防衛トラックメーカー、ARQUUSは中東向けに「ドイツフリー(ドイツ製を含まない)」のトラックを売り出している。

ドイツの信頼性と自主性は危機に陥っていると、ドイツ大統領の顧問をかつて務め、現在はシンクタンク「ジャーマン・マーシャル財団」(ベルリン)に所属するトーマス・クライン・ブロックコフ氏は指摘する。

「現在の輸出政策が及ぼす長期的影響は、ドイツにもはや防衛産業が存在しなくなる、ということかもしれない」と同氏は語った。

ドイツ経済省に委託されたある調査によると、同国自動車産業では2014年、雇用者数は100万人に上り、販売額は3700億ユーロ。一方、同年の防衛産業における雇用者数は8万人程度で、その売り上げは約250億ユーロと、自動車産業のほんのわずかにしか及ばない。

武器システムからドイツ製部品を排除する動きは、完了までに2、3年はかかり、それをまた元に戻すにはさらに長い期間を要する可能性があると、ある関係筋は言う。

「ドイツフリー製品にいったん切り替えてしまったら、元に戻るには何年もかかるだろう」

(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)
https://jp.reuters.com/article/germany-arms-policy-idJPKCN1QO07K

http://www.asyura2.com/18/warb22/msg/561.html

[国際25] 北朝鮮、仮想通貨5億ドル超奪う 国連報告独自入手 (イブニングスクープ)北朝鮮ハッカー集団、金融機関攻撃で1億ドル超盗
北朝鮮、仮想通貨5億ドル超奪う 国連報告独自入手
【イブニングスクープ】
北朝鮮 朝鮮半島 北米
2019/3/8 18:00日本経済新聞 電子版
保存 共有 その他
国連安全保障理事会で対北朝鮮制裁の履行状況を調査する専門家パネルが月内にも公表する報告書の全容が明らかになった。北朝鮮が経済制裁を逃れて外貨を取得する主要手段としてサイバー攻撃を強化していると分析。2017〜18年にかけ仮想通貨交換業者への攻撃で推計5億ドル(555億円)超の被害が出たとも指摘した。国連加盟国に制裁の実施体制の強化を勧告した。

イブニングスクープ
翌日の朝刊に掲載するホットな独自ニュースやコラムを平日の午後6時ごろに配信します。
近く安保理に正式に提出される報告書は18年2月から1年間における国連の対朝制裁の履行状況をまとめた内容。各国政府や国際機関の情報のほか、独立した専門家による調査結果を盛り込んでおり、対北制裁を巡る国連安保理での今後の議論に影響を与える。

報告書は今回、…

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関連記事
コインチェック流出、北朝鮮関与か 偽装メールで攻撃[有料会員限定]
2018/2/6 18:41

北朝鮮ハッカー集団、金融機関攻撃で1億ドル超盗む
2018/10/6 7:44
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42204450Y9A300C1MM8000/?n_cid=NMAIL007

北朝鮮ハッカー集団、金融機関攻撃で1億ドル超盗む
米セキュリティー会社分析
2018/10/6 7:44 
【ニューヨーク=関根沙羅】米サイバーセキュリティーのファイア・アイは、北朝鮮のハッカー集団が2014年以降、サイバー攻撃によって世界の金融機関から1億ドル(約113億円)以上を不正に取得していたとの分析を発表した。

ファイア・アイによると、北朝鮮から支援を受けているハッカー集団「APT38」は、2014年以降、11カ国、16以上の金融機関を攻撃。11億ドル以上の窃盗を試み、そのうち1億ドルは窃盗に成功したことが確認できているという。チリやメキシコ、台湾、ベトナムの金融機関やバングラデシュの中央銀行を標的としたサイバー攻撃でAPT38の関与が確認された。

ファイア・アイは、APT38による活動の増加は北朝鮮に対する経済制裁の強化が関係していると分析する。同社のナラニ・フレイザー研究員は声明で「国益追求のために資金窃盗を試みるというこれまで以上に切迫した状況を反映している」と指摘した。

APT38は、国際銀行間通信協会(スイフト)が運営する国際送金システムにマルウェア(悪意あるプログラム)を埋め込み、標的の銀行から他国の複数の銀行口座へ国際送金を指示。取引履歴を改ざんすることで証拠を隠滅する手口をとる。

APT38は、14年にソニー米映画子会社にサイバー攻撃を仕掛けたとされる北朝鮮のハッカー集団「ラザルス」に属するが、金銭獲得を目的としたサイバー攻撃を専門に展開しているという。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO36218950W8A001C1000000/?n_cid=SPTMG053
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/624.html

[政治・選挙・NHK258] 郵貯、成算なき拡大 限度額上げでも収益力課題 郵貯限度額、2600万円に倍増 閣議決定  限度額撤廃に疑問 麻生金融相
郵貯、成算なき拡大 限度額上げでも収益力課題
経済
2019/3/8 11:30日本経済新聞 電子版
政府は8日、ゆうちょ銀行の貯金の預入限度額を今の2倍となる2600万円とする政令を閣議決定した。4月1日から実施する。退職金などのまとまったお金を預けやすくなり、利便性は増す。一方、長引く低金利で運用の環境は厳しく、貯金の増加はゆうちょ銀の経営効率を下げかねない。郵政グループは規模よりも収益性を重視する戦略への転換を迫られる。

日本郵政の長門正貢社長が普通預金にあたる通常貯金の限度額をなくすよう…

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https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42159980X00C19A3EA4000/?n_cid=NMAIL007


郵貯限度額、2600万円に倍増 閣議決定
2019/3/8 6:30 (2019/3/8 9:31更新)日本経済新聞 電子版
 政府は8日の閣議で、ゆうちょ銀行が扱う貯金の預入限度額を現在の2倍となる2600万円に拡大する政令を決めた。今は普通預金にあたる通常貯金と定期性貯金を合わせて1300万円が上限だが、通常と定期性でそれぞれ1300万円とする。退職金などのまとまったお金を預けやすくして利便性を高める。4月1日に施行する。

 限度額の倍増は政府の郵政民営化委員会(委員長、岩田一政・日本経済研究センター理事長)が2018年12月に提言し、郵政民営化推進本部(本部長・安倍晋三首相)が19年1月に了承していた。

https://www.nikkei.com/content/pic/20190308/96958A9F889DE6E0E3E6E7EBE2E2E2E5E2E1E0E2E3EB979394E2E2E2-DSXMZO4217384007032019EA4001-PN1-2.jpg

 貯金は預入額が上限を超えると、超えた分が無利子の振替口座に移る。ゆうちょ銀行の現場では利用者に通知する事務の手間が煩雑だ。ゆうちょ銀行を傘下に持つ日本郵政は、通常貯金を限度額の対象外にするよう求めていた。

 一方、銀行などの民間金融機関は郵貯の預け入れが増えかねない仕組みは民業圧迫につながるとして、強く反発していた。日本郵政は民営化して株式上場もしているが、なお国が6割超の議決権を握る。民間金融機関は事実上の政府保証が色濃く残っていると見る。

 民営化委はこうした状況を踏まえて、昨年12月の提言では日本郵政グループに対し、職員による貯金獲得のインセンティブの撤廃を付帯条件として示した。将来さらに限度額を見直す場合は、日本郵政が約9割保有するゆうちょ銀株をまず3分の2未満まで減らすことも求めた。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42145900X00C19A3EAF000/?n_cid=SPTMG002

ゆうちょ限度額、来春に倍増2600万円 運用難でリスクも
2018/12/26 19:30日本経済新聞 電子版
 政府の郵政民営化委員会は26日、ゆうちょ銀行の貯金の限度額を引き上げる意見書を公表した。現在1300万円の枠を普通預金にあたる通常貯金と定期性貯金に分け、各1300万円と計2600万円に倍増させる。利用者は退職金などのお金を預けやすくなる。ただ超低金利の運用難の中で貯金だけが増えれば、ゆうちょ銀の経営のかじ取りが難しくなるリスクもある。

 今後、総務省と金融庁が関係政令を改正し、2019年4月の引き上げを目指す。限度額の緩和は、16年4月に1000万円から1300万円に上がって以来3年ぶり。

 民営化委の岩田一政委員長は26日の会見で「重要なのは郵便貯金が使いやすく質の高いサービスになること」と強調した。当初検討した通常貯金の限度額撤廃を見送ったことも踏まえて「一番望ましい姿ではないが、次善の策として適切」との見解も示した。

 ゆうちょ銀は国が過半を出資する日本郵政の子会社。限度額引き上げは、日本郵政の長門正貢社長が民営化委に要望していた。貯金が限度額を超えた場合の通知などの手続きが煩雑で事務負担が大きいためだ。参院選が19年夏に迫るなか、自民党の最大の支援組織である全国郵便局長会も規制緩和を強く求めていた。

 一方、民間の金融業界は事実上の政府保証が残るままの業容拡大は不公平だと強く反対してきた。このため民営化委は日本郵政のゆうちょ銀株の保有比率を現在の約9割から将来は3分の2未満に下げるとの条件を付記した。

 さらにゆうちょ銀の社内で貯金の獲得を評価する報奨の撤廃も求め、民間金融機関から預金が移らないよう歯止めをかける。その裏には、ゆうちょ銀が運用しきれないほど貯金が膨らむのを避ける狙いがある。限度額の引き上げは利用者に朗報だが、経営上のリスクになりかねないからだ。

 超低金利の長期化で資金の調達より運用が難しいのは官民を問わず共通する課題だ。メガバンクの預金に対する貸出金の割合(預貸率)は直近の18年9月末で52%。20年前と比べると30ポイント以上落ち込んでいる。

 ゆうちょ銀は個人や企業への貸し出しができないため、もともと運用に依存せざるを得ない。日銀のマイナス金利政策などを受けて国債が中心の運用は限界。運用資産のうち国債の割合は民営化当時に9割近くだったのが、今は3割を切る。株式のほか、不動産やヘッジファンドなど運用利回りの高いリスク資産を増やしているが、それでも利ざやはじりじりと下がり続けている。

 市場で運用しきれない分は日銀の当座預金に積む。その一部はマイナス金利の対象で、預ければ預けるほど損をしてしまう。日銀向けが中心の預け金は5年前に10兆円に満たなかったが、18年3月末時点で50兆円近くに達する。マイナス金利の適用額は足元では数千億円程度に減っているもようだが、運用難の構図自体は相変わらずだ。

 岩田委員長は「(限度額の引き上げは)バランスシートの拡大が目的ではない」と説明した。ゆうちょ銀の幹部も「貯金を集めるつもりはない」と断言する。それでも枠が拡大する分、貯金が膨らむ余地は増す。

 金融庁も経営リスクの監視を強める構えだ。今夏からゆうちょ銀を3メガバンクと同様に通年検査の対象に加えた。貯金残高や資産運用の動向をグループ経営の観点からも注視する姿勢を鮮明にした。将来の限度額の見直しに明確な条件をつけることで「打ち止め感」を出すことに腐心した。

 メガバンクの1.5倍の規模の預貯金を扱う巨鯨、ゆうちょ銀行。ビジネスモデルの将来像をどう描くかは、日本の金融システム全体も左右する難題だ。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39398490W8A221C1EE9000/?n_cid=SPTMG002


金融相「郵政の保有株下げを」 ゆうちょ限度額倍増で
経済 金融機関
2018/12/21 18:18
麻生太郎金融相は21日の閣議後の記者会見で、ゆうちょ銀行が扱う貯金の預入限度額の引き上げに関連し、日本郵政がゆうちょ銀株の保有比率を下げる必要があるとの認識を示した。

麻生氏は、政府が過半出資している日本郵政のゆうちょ銀への出資比率を現在の89%から60%台に下げることを「検討してもらわないと(いけない)」と指摘。「巨大な官営銀行が貯金の限度額を増やして民業をさらに圧迫することになりかねない」とも述べた。

政府の郵政民営化委員会は26日、限度額を2倍の2600万円に引き上げる提言をまとめる。これを受け、総務省と金融庁が政令を改正するが、麻生氏の発言は民営化の道筋を明確にするよう求める姿勢を示したものだ。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39262110R21C18A2EA4000/?n_cid=SPTMG002

ゆうちょ銀限度額撤廃に疑問 麻生金融相
2018/3/30 11:45
麻生太郎金融相は30日の閣議後の記者会見で、郵政民営化委員会で議論しているゆうちょ銀行の預入限度額撤廃案について「マイナス金利になって預金の運用に困っているのではないか。(限度額撤廃で)預金がふくれあがった場合どうするのかね」と疑問を呈した。

通常貯金の限度額を巡り、日本郵政の長門正貢社長は民営化委の聞き取りに撤廃を求めた。全国銀行協会などは撤廃に反発している。金融相は「地域の金融機関と一緒になったりとゆうちょ銀も努力している真っ最中。民営化委で色々含めて検討していただいていると期待している」と述べた。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28780530Q8A330C1EAF000/?n_cid=SPTMG002
http://www.asyura2.com/19/senkyo258/msg/285.html

[経世済民131] 日経平均株価は430円安、世界景気の減速懸念 今年2番目の下げ幅 中国貿易低調、株大幅安、二兎追う大統領 ネガティブ発信
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2019年3月8日 / 15:41 / 3時間前更新
日経平均株価は430円安、世界景気の減速懸念 今年2番目の下げ幅
Reuters Staff
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[東京 8日 ロイター] - 東京株式市場で日経平均は大幅続落。終値は430円安で今年2番目の下げ幅だった。
欧州中央銀行(ECB)が7日、経済見通しを引き下げ、利上げの先延ばしを表明したことで世界景気の減速懸念が広がり、朝方から幅広く売りが先行した。
上海株の下落に加え、後場寄り後には2月の中国貿易統計で輸出が大幅減少となったことが伝わり、世界景気への懸念は一段と強まった。先物主導で下げ幅を広げ、一時は取引時間中で2月15日以来3週間ぶりに節目の2万1000円を割り込んだ。
TOPIXは1.82%安で取引を終了。東証1部の売買代金は2兆9252億円だった。このうちメジャーSQ(特別清算指数)算出に伴う売買は7500億円程度だったとみられている。東証33業種の全てが値下がりする全面安商状で、海運、保険、証券、非鉄金属などが値下がり率上位に入った。東京エレクトロン(8035.T)やアドバンテスト(6857.T)、ファナック(6954.T)など、値がさのハイテク株も軟調に推移した。
市場では「世界景気のバロメーターでもある中国輸出の減少でグローバル景況感の悪化が意識された。当面は経済指標を見ながら一喜一憂する展開になりそうだ」(SMBC日興証券投資情報部部長の太田千尋氏)との声が出ていた。
個別銘柄では、川崎汽船(9107.T)が大幅続落。同社は7日、2019年3月期の連結最終損益が1000億円の赤字になるとの見通しを発表した。従来予想は200億円の赤字だった。傭船に関する損失引当などを計上することが響く。赤字幅拡大を嫌気する売りが優勢だった。半面、積水ハウス(1928.T)が続伸。同社は7日、2020年1月期の連結純利益が前年同期比8.1%増になるとの見通しを発表した。年間配当は前期比2円増の81円を計画している。増益、増配予想が好感された。
東証1部の騰落数は、値上がり107銘柄に対し、値下がりが2003銘柄、変わらずが23銘柄だった。
日経平均.N225
終値      21025.56 -430.45
寄り付き    21339.17
安値/高値   20993.07─21359.32
TOPIX.TOPX
終値       1572.44 -29.22
寄り付き     1588.15
安値/高値    1570.39─1590.56
東証出来高(万株) 167283
東証売買代金(億円) 29252.74
私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」
https://jp.reuters.com/article/zipair-idJPKCN1QP0UC

 

日経平均400円超下落、輸出や金融中心に全業種安い−中国は輸出入減
長谷川敏郎
2019年3月8日 7:53 JST 更新日時 2019年3月8日 13:04 JST
• ECBは19年の経済成長見通しを1.1%と、0.6ポイント引き下げ
• 中国上海総合指数は大幅下落、中国の2月の輸出入は減少

A pedestrian using his smartphone walks past an electronic stock board outside a securities firm in Tokyo, Japan. Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
8日の東京株式相場は午後一段安となり、日経平均株価の下げ幅は一時400円を超えた。欧州中央銀行(ECB)の経済見通し引き下げに中国経済の悪化が加わり、世界景気に対する懸念が強まっている。電機や機械といった輸出関連、保険、非鉄金属、海運など海外景気敏感業種中心にほぼ全面安。
• TOPIXは前日比26.04ポイント(1.6%)安の1575.62−午後0時56分時点
• 日経平均株価は同403円64銭(1.9%)安の2万1052円37銭
  ECBは7日、地政学的要因や保護主義の脅威などを理由に2019年のユーロ圏経済成長見通しを1.1%と、昨年12月時点から0.6ポイント引き下げた。8日に発表された中国の2月の輸出入は共に減少した。中国上海総合指数は2.9%安で午前の取引を終了。
  大和住銀投信投資顧問の門司総一郎シニア・エコノミストは「欧州は景気のセンチメントが弱いだけでなく、ドイツから中国向け輸出の実体面でも弱さが出てきた。中国景気も良くない」と指摘。米中交渉への楽観から日本株に強気姿勢だった向きが「景気の悪さを再認識して売っている可能性がある」と述べた。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i53Tj33qaeN4/v2/pidjEfPlU1QWZop3vfGKsrX.ke8XuWirGYh1PKgEw44kE/-1x-1.png

• 東証33業種では海運、保険、機械、証券・商品先物取引、非鉄金属、電機が下落率上位
o 海運は今期最終赤字が1000億円に膨らむ見通しと発表した川崎船が下げをけん引
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-07/PO0P0Q6S972F01?srnd=cojp-v2

10ー12月期GDPは年率1.9%増に上方修正−設備投資が押し上げ
占部絵美
2019年3月8日 9:02 JST 更新日時 2019年3月8日 10:12 JST
• 設備投資は2.7%増に上方修正、個人消費は0.4%増に下方修正
• 日本経済が力強さに欠けるという評価変わらず−みずほ総研の有田氏
2018年10−12月期の実質国内総生産(GDP)改定値は、法人企業統計における設備投資の増勢を受けて、速報値から上方修正された。市場予想を上回った。1月のモノやサービスを含む海外との総合的な取引を示す経常収支は、貿易収支が赤字へ転じたものの、55カ月連続の黒字となった。内閣府と財務省がそれぞれ8日発表した。
キーポイント
• 10 −12月期GDPは前期比0.5%増と速報値(0.3%増)から上方修正(ブルームバーグ調査の予想中央値は0.4%増)
• 年率換算は1.9%増と速報値(1.4%増)から上方修正(予想は1.7%増)
• 個人消費は0.4%増と速報値(0.6%増)から下方修正(予想は0.6%増)
• 設備投資は2.7%増と速報値(2.4%増)から上方修正(予想は2.7%増)
• 1月の経常収支は前年同月比1.4%増の6004億円の黒字(ブルームバーグ調査の予想中央値は1610億円の黒字)
• 輸出から輸入を差し引いた貿易収支は46.0%増の9648億円の赤字(予想は1兆1331億円の赤字)−2カ月ぶり赤字
• 海外配当金や債券利子などの第1次所得収支は15.1%増の1兆7592億円の黒字

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i.Vt0GQPS04c/v2/pidjEfPlU1QWZop3vfGKsrX.ke8XuWirGYh1PKgEw44kE/-1x-1.png

エコノミストの見方
みずほ総合研究所の有田賢太郎上席主席エコノミスト:
• 7−9月期の落ち込みを取り戻すことはできなかった。足元の日本経済が力強さに欠けるという評価は変わらない。設備投資については反動増がもう少し期待できた
• 1−3月期は恐らく個人消費も必ずしも強くない、海外の輸出も中国中心に弱く、非常に厳しい結果が出てくる可能性がある。4−6月期以降も海外の輸出が弱く、設備投資もこれから徐々に伸びが鈍化してくる
• 景気判断の下方修正も可能性としては十分あり得る。1月の生産は中国の春節の影響はあるとは思うが、それにしても弱い。2−3月の生産計画も強いとは言えない
• メインシナリオとして消費税の先送りはないとみている。一方、海外経済がこれまで以上に弱い結果が出てきた場合、見直しの可能性も出てきてしまう
                           
ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査室長:
• 上方修正となったが第4四半期のリバウンドが物足りないものだったという見方を変える必要は全くない
• 心配すべきは年明け以降の足元の四半期。海外経済の減速、特に中国やITセクターの調整もあり、景気後退に入る可能性はそれなりに高くなっている
• 日本経済は少なくとも踊り場であり、緩やかに回復しているという状態ではない
• この弱さがどれくらい続くかは分からないが、この状態で消費増税があるというのはよろしくなく、懸念材料
背景
• 10−12月期法人企業統計では、GDP改定値に反映されるソフトウエア除く設備投資が前年同期比5.5%増と市場予想を上回り、自然災害の影響で落ち込んだ前期から回復。季節調整済みの前期比も2四半期ぶりプラス転換
• 10−12月期GDP速報値は、自然災害で落ち込んだ個人消費や設備投資が持ち直し、2四半期ぶりのプラス成長。一方、外需寄与度は情報関連材中心に中国向け輸出が弱含み、3四半期連続マイナスだった
• 内閣府が7日発表した1月の景気動向指数は、一致指数が3カ月連続で悪化。基調判断は既に景気後退局面に入った可能性が高いことを示す「下方への局面変化を示している」と、従来の「足踏み」から下方修正された
(エコノミストのコメントを差し替えて更新します.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-08/PNXTH36K50XS01

中国:2月の輸出入は共に減少−貿易摩擦や春節で
Bloomberg News
2019年3月8日 12:38 JST 更新日時 2019年3月8日 13:26 JST
• 輸出はドルベースで20.7%減−市場予想は5.0%減
• 対米貿易戦争や欧州景気減速に伴い貿易は厳しい局面に−謝棟銘氏
中国の2月の輸出入はドルベースで共に減少した。春節(旧正月)休暇に伴う休業や貿易摩擦による不確実性が続いていることが響いた。
  税関総署が8日発表した2月のドル建て貿易統計は以下の通り。
• 輸出は前年同月比20.7%減−市場予想は5.0%減だった
• 輸入は5.2%減−予想0.6%減
• 貿易黒字は41億2000万ドル(約4590億円)

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i.jT4l1gwUhE/v2/-1x-1.png

  オーバーシー・チャイニーズ銀行の謝棟銘エコノミスト(シンガポール在勤)は「1月と2月のデータを合わせて見る方が偏りがなくて良いだろう」と指摘し、落ち込みは「貿易戦争の影響や世界経済の減速を反映している」と説明。「対米では貿易戦争があり、欧州連合(EU)も域内景気が減速しており、中国は貿易面で厳しい時期に入るだろう」と述べた。
  中国の1−2月の対米貿易黒字は2900億元(約4兆8070億円)と前年同期から3.9%拡大した。
原題:Chinese Trade Slumped in February on Trade War, Holiday Shutdown(抜粋)
(市場関係者のコメントなどを追加し更新します.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-08/PO13GX6K50XS01


日経平均の臨時入れ替え、候補分かれる−村田製やシャープなど
長谷川敏郎
2019年3月7日 16:00 JST 更新日時 2019年3月8日 8:09 JST
• パイオニアは8日に整理銘柄へ、きょうにも銘柄入れ替え公表
• 村田製やオムロン組み入れなら残る224銘柄へ売り圧力−丸三証
日経平均株価の採用銘柄であるパイオニアの上場廃止に伴う構成銘柄の臨時入れ替えが近づいている。新たに採用される銘柄で証券各社予想が分かれるなか、株価水準の高い銘柄が候補となっているため株式相場への影響を懸念する声も出ている。
  クオンツアナリストによる新規採用候補は、本命候補が3銘柄以上に分かれている。みずほ証券は可能性が高い順に村田製作所、オムロン、シャープを予想。大和証券は村田製、予備をオムロンとルネサスエレクトロニクスとする。SMBC日興証券では消去法的にシャープと見込み、野村証券ではオムロンが有力と結論付けた。
  大和証券によると、日経平均連動資産は各銘柄2750万株程度(50円額面換算ベース)。採用候補のうち村田製とオムロンは50円額面で約2750万株、ルネサスエでは500円額面で275万株の買い需要が見込まれるという。
  「もし村田製作所が採用されれば、銘柄入れ替えに伴って残り224銘柄に5000億円近い売り需要が出かねない。オムロンでも1350億円近い売りが出そう」。丸三証券の服部誠執行役員は早ければ8日に公表される銘柄入れ替えについて、同じく同日に予定される株価指数先物・オプション3月限の特別清算値(SQ)算出と並ぶ大きな需給イベントになる可能性があると予想する。
  市場関係者が需給面を懸念するのは、除外されるパイオニアの株価が66円なのに対し、村田製が1万8080円、オムロンが4900円と価格差が大きいため。過去に日経平均はみなし額面の扱いに関し、株式分割以外の変更は行わなかった。みなし額面などで調整が行われなければ、パイオニアを約2700万株売っても10数億円にしかならず、高株価の銘柄を同株数買うには残りの採用銘柄を売って資金をねん出しなければならないと、丸三証の服部氏は言う。
  日経平均の臨時入れ替えは、パイオニアの上場廃止になるのを受けた措置。第三者割当増資の払い込みに伴い8日に監理銘柄から整理銘柄に移行、27日に上場廃止となる見通し。日本経済新聞社は整理銘柄指定日から5営業日経過後に銘柄入れ替えを反映する。仮に8日に公表されれば18日に指数に反映されることから、指数との連動を目指す機関投資家は15日の終値を基準に持ち高を調整することになる。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iXGoo6K4cTw8/v2/pidjEfPlU1QWZop3vfGKsrX.ke8XuWirGYh1PKgEw44kE/-1x-1.png


【米中ウオッチ】中国貿易低調、株は大幅安、二兎追う大統領、テスラ
Bloomberg News
2019年3月8日 14:40 JST
米中を巡る主なニュースは以下の通り。それぞれの記事を読むには、青地のリンクをクリックしてください。
• 中国株:上海総合指数が今年最大の下げ−当局は株高ペースに懸念か
• 中国:2月の輸出入は共に減少−貿易摩擦や春節で
• トランプ大統領:中国との通商協議は「極めて順調」
• トランプ氏が追う二兎、通商合意と株高のいずれも得られぬ可能性も
• 中国には「もろ刃の剣」−投資資金流入、ボラティリティーに弱く
• 中国:PE、ヘッジファンドへの規制強化を検討−関係者
• 米朝協議で高過ぎるハードル設定は避けるべきだ−中国外相
• 米国は「ゼロサム」アプローチ放棄を−中国外相
• 中国:一帯一路フォーラムを4月末に開催−王外相
• 米は北朝鮮の核廃棄が21年までに可能との見方変えず−国務省高官
• トランプ氏、大きなディール望むと北朝鮮に伝えた−ボルトン補佐官
• 北朝鮮の西海衛星発射場で活動再開の可能性−38ノース
• ボーイングCEO:航空機購入が米中合意に含まれる可能性−ロイター
• 高級ブランドに弾みつけた中国の海外旅行ブーム、持続性に疑問符
• テスラ:中国の銀行から最高580億円の融資確保、上海工場建設で
• 中国が米国産大豆200万トン購入と関係者−農務長官の発表後初めて
• 中国は全ての為替介入で開示義務も、USMCA参考なら−招商銀
• 中国:2月末の外貨準備高、3兆902億ドル−予想3兆880億ドル
• 香港ドル、対米ドル許容変動幅の下限に−一時7.85香港ドル
• 中国中銀当局者、2019年の金融リスクを警告−中国金融新聞網
• 中国の主要都市、不動産販売関連で一部減税−証券時報
• 米政府、5Gセキュリティーの広範な調査実施−華為巡る懸念の中
• 華為CFO弁護団、事件の政治性に懸念ートランプ氏のコメント理由に
• EU、2020年までに中国と投資協定を締結する計画−FT紙
• 【コラム】中国はスパイ活動の型にもはまらない−Culpan
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5. 米欧金融当局が利上げに「白旗」、古き良き時代への回帰険しく


シティグループのサプライズ指数、世界中でネガティブシグナル発信
Randall Jensen、Reade Pickert
2019年3月8日 13:19 JST
• 失望の指標が相次ぎ投資家は景気減速のリスク増大を恐れる
• 資産価格は好調、米欧の株式相場は今年これまでに約10%上昇
世界中で弱い経済指標が投資家を驚かせ、世界経済に深い落ち込みが迫っているかもしれないという懸念が強まった。
  シティグループの経済サプライズ指数によると、データが予想を上回るか下回るかの指標は現在、全ての主要市場でマイナスになっている。世界の指標である同指数は4日に、2013年以来の低水準を付け、その後発表された中国やユーロ圏、経済協力開発機構(OECD)の成長予測引き下げが補強する形となった。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-08/PO0ZLS6JTSE801

  エクセンシャル・ウェルス・アドバイザーズの最高投資責任者、 ティム・コートニー氏は「市場が見たいと思うような数字が出てこない」と話した。「市場は悪化が底を打つだろうか、強含んだり、より健全な兆候が見られたりするだろうかと見極めようとしているが、そうした兆しはまだ見られない」と述べた。
  数多くの失望があったにもかかわらず、世界の資産価格は今年これまで、かなり好調だ。米国と欧州の株式は今年これまでに約10%上昇、新興市場も同程度の上げとなっているが、勢いは幾分失われたかもしれない。3月に入ると、弱いデータを受けて株価は伸び悩んでいる。
原題:Citigroup’s Surprise Indexes Flash Negative Around the Globe(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-08/PO0ZLS6JTSE801

http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/429.html

[経世済民131] 米欧金融当局が利上げに「白旗」、古き良き時代への回帰険しく  10ー12月期GDP年率1.9%増に上方修正−設備投資
米欧金融当局が利上げに「白旗」、古き良き時代への回帰険しく
2019/03/08 12:39

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iuVSr34W2rRM/v2/pidjEfPlU1QWZop3vfGKsrX.ke8XuWirGYh1PKgEw44kE/-1x-1.png
米欧金融当局が利上げに「白旗」、古き良き時代への回帰険しく
(Bloomberg)
(ブルームバーグ): 米欧のセントラルバンカーは、従来よりも低い金利と大きく膨らんだバランスシートという、日本が長年経験してきた「ニューノーマル(新常態)」を甘受しつつある。
  欧州中央銀行(ECB)は7日、景気悪化に伴い緩和策巻き戻しの計画に狂いが生じたとして、少なくとも年末までの金利据え置きと、銀行向けの新たな資金供給策の導入を発表した。米連邦準備制度はすでに1月、金利据え置きを決めるとともに、約10年前の金融危機対策として積み上げた現行で4兆ドル(446兆円)規模のバランスシートについて、縮小終了の方針を明らかにした。
  サマーズ元米財務長官とイングランド銀行(英中銀)のシニアエコノミスト、ルーカス・レイチェル氏は7日、ブルッキングズ研究所で紹介された調査リポートに、「超低水準の均衡金利が半恒久的な特徴であるかのような日本の経験を、他の先進国・地域が繰り返す恐れがある」と記した。
  ECBと米金融当局の最新の措置を受け、これまで常識とされてきた状態に政策を戻そうとする当局の取り組みが終わり、次の動きは引き締めではなく緩和となるのではないかとの観測が台頭した。
  米欧の当局者は、人口高齢化や生産性の伸び悩みを背景とした経済の低成長、持続的な低インフレといった、日本が過去数十年間にわたり苦悩してきた問題に取り組みつつある。
  こうした長期的な課題を一層複雑にしているのは直近の問題だ。具体的には、通商摩擦を巡る懸念や中国でのレバレッジ解消を契機に、製造業を中心とした世界的な成長鈍化が見られる点が挙げられる。
  先の金融危機が2009年に収束して以降、不安定な局面はこれまでも何回かあったが、いずれも一過性のものだった。金融当局者は今回もそうなるよう期待している。一時的な不振であれば、緩和策の巻き戻しを再開することは可能だ。
  そうでない場合、超低金利と巨大なバランスシートを抱えた金融当局には、今後新たなリセッション(景気後退)に見舞われても、対応のための弾薬がほとんど残されていないことになる。
  パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)のマネジングディレクター、アンドルー・ボソムワース氏は「日本で20年前に起きたことがユーロ圏で現在繰り広げられている可能性が強い。長期的、おそらく恒久的な利回り低迷という、資本市場の『日本化』を意味するのではないか」との見方を示した。
  国際決済銀行(BIS)のクラウディオ・ボリオ氏は、今後の展開を予測するのがますます難しくなっていると話す。金融経済局長を務めるボリオ氏は「金融引き締めプロセスは停止され、予想しにくくなった」と指摘。「政策正常化に向けた狭い経路は曲がりくねったものであるようだ」と語った。
©2019 Bloomberg L.P.
https://news.goo.ne.jp/article/bloomberg/business/bloomberg-PO0ZON6TTDS701.html


 


景気リスク、「緩やかな」金利軌道を正当化−ブレイナードFRB理事
Matthew Boesler
2019年3月8日 4:54 JST
見通し下方修正に合わせ、金利軌道も下方修正を−ブレイナード氏
バランスシート縮小は年内に終了するべきだ−プリンストンで講演
米連邦準備制度理事会(FRB)のブレイナード理事は、米国内外で景気見通しが弱まりつつあることから、米金融当局が以前に想定していたよりも「緩やかな」金利軌道が求められると述べた。

  ブレイナード理事は7日、ニュージャージー州プリンストンで講演。講演原稿によると、「生産と雇用のベースライン見通しを小幅に下方修正することで、当局の伝統的な政策ツールであるフェデラルファンド(FF)金利の軌道を小幅に下方修正することが必要となるだろう。そうすることで景気の弱さの一部相殺を助ける。そうした弱さは景気を圧迫するはずだ」と述べた。「さらに、リスク管理の基本原則を踏まえれば、下振れリスクの高まりにより、政策軌道の形状を小幅に下方修正することが正当化される」と話した。

Lael Brainard
ブレイナードFRB理事写真家:Andrew Harrer / Bloomberg
  「全体として、米国の軟調な消費関連データや国外の減速は、先般の金融市場のボラティリティーとともに見通しの形状を圧迫する可能性が高く、従って政策軌道の形状を緩めることを正当化するかもしれない」と指摘。「生産と雇用への下振れリスクの高まりは、景気の見通し形状が変わらない場合でも、FF金利の軌道をもっと緩やかにすることの論拠となろう」と述べた。

  同理事はまた、米金融当局はバランスシートの縮小を年内に停止するべきだとも語った。バランスシート縮小のプロセスは2018年の初めに開始された。「バランスシートの正常化はかなり進んだため、年内に資産償還を徐々に縮小することが適切になる」と話した。

原題:Brainard Says Risks to Economy Argue For ‘Softer’ Fed Rate Path(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-07/PO0EZW6VDKHS01?srnd=cojp-v2


10ー12月期GDPは年率1.9%増に上方修正−設備投資が押し上げ
占部絵美
2019年3月8日 9:02 JST 更新日時 2019年3月8日 10:12 JST
• 設備投資は2.7%増に上方修正、個人消費は0.4%増に下方修正
• 日本経済が力強さに欠けるという評価変わらず−みずほ総研の有田氏
2018年10−12月期の実質国内総生産(GDP)改定値は、法人企業統計における設備投資の増勢を受けて、速報値から上

方修正された。市場予想を上回った。1月のモノやサービスを含む海外との総合的な取引を示す経常収支は、貿易収支が

赤字へ転じたものの、55カ月連続の黒字となった。内閣府と財務省がそれぞれ8日発表した。
キーポイント
• 10 −12月期GDPは前期比0.5%増と速報値(0.3%増)から上方修正(ブルームバーグ調査の予想中央値は

0.4%増)
• 年率換算は1.9%増と速報値(1.4%増)から上方修正(予想は1.7%増)
• 個人消費は0.4%増と速報値(0.6%増)から下方修正(予想は0.6%増)
• 設備投資は2.7%増と速報値(2.4%増)から上方修正(予想は2.7%増)
• 1月の経常収支は前年同月比1.4%増の6004億円の黒字(ブルームバーグ調査の予想中央値は1610億円の黒字


• 輸出から輸入を差し引いた貿易収支は46.0%増の9648億円の赤字(予想は1兆1331億円の赤字)−2カ月ぶり

赤字
• 海外配当金や債券利子などの第1次所得収支は15.1%増の1兆7592億円の黒字

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i.Vt0GQPS04c/v2/pidjEfPlU1QWZop3vfGKsrX.ke8XuWirGYh

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エコノミストの見方
みずほ総合研究所の有田賢太郎上席主席エコノミスト:
• 7−9月期の落ち込みを取り戻すことはできなかった。足元の日本経済が力強さに欠けるという評価は変わらな

い。設備投資については反動増がもう少し期待できた
• 1−3月期は恐らく個人消費も必ずしも強くない、海外の輸出も中国中心に弱く、非常に厳しい結果が出てくる

可能性がある。4−6月期以降も海外の輸出が弱く、設備投資もこれから徐々に伸びが鈍化してくる
• 景気判断の下方修正も可能性としては十分あり得る。1月の生産は中国の春節の影響はあるとは思うが、それに

しても弱い。2−3月の生産計画も強いとは言えない
• メインシナリオとして消費税の先送りはないとみている。一方、海外経済がこれまで以上に弱い結果が出てきた

場合、見直しの可能性も出てきてしまう
                           
ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査室長:
• 上方修正となったが第4四半期のリバウンドが物足りないものだったという見方を変える必要は全くない
• 心配すべきは年明け以降の足元の四半期。海外経済の減速、特に中国やITセクターの調整もあり、景気後退に

入る可能性はそれなりに高くなっている
• 日本経済は少なくとも踊り場であり、緩やかに回復しているという状態ではない
• この弱さがどれくらい続くかは分からないが、この状態で消費増税があるというのはよろしくなく、懸念材料
背景
• 10−12月期法人企業統計では、GDP改定値に反映されるソフトウエア除く設備投資が前年同期比5.5%増と市

場予想を上回り、自然災害の影響で落ち込んだ前期から回復。季節調整済みの前期比も2四半期ぶりプラス転換
• 10−12月期GDP速報値は、自然災害で落ち込んだ個人消費や設備投資が持ち直し、2四半期ぶりのプラス成

長。一方、外需寄与度は情報関連材中心に中国向け輸出が弱含み、3四半期連続マイナスだった
• 内閣府が7日発表した1月の景気動向指数は、一致指数が3カ月連続で悪化。基調判断は既に景気後退局面に入

った可能性が高いことを示す「下方への局面変化を示している」と、従来の「足踏み」から下方修正された
(エコノミストのコメントを差し替えて更新します.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-08/PNXTH36K50XS01

http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/430.html

[政治・選挙・NHK258] 「新パイプラインはロシアの罠」は真っ赤な嘘! 英エコノミスト誌の「作文」を鵜呑みにした日本の新聞 
「新パイプラインはロシアの罠」は真っ赤な嘘!
英エコノミスト誌の「作文」を鵜呑みにした日本の新聞
2019.3.7(木) 杉浦 敏広
ロシアから天然ガスを欧州へ送る「ノルト・ストリーム」(出典:ガスプロム)
プロローグ
利益を生まない巨大プロジェクト
 「利益を生まない巨大プロジェクトが進められている場合、理由が2つ考えられる。出資者が愚かであるか、あるいは狙いが他にあるかだ」
 2019年2月20日付・日本経済新聞6面に、英週刊誌エコノミストの「新パイプラインはロシアのワナ」と題する長文翻訳記事が掲載されました。
 上記はこの論考の冒頭の一節です。内容は事実に反する記述が多く、曲解と偏見に満ちた記事なので論評に価せずと考え、筆者は無視しておりました。
 ところがその後、多くの知人・友人から「この記事内容は本当か?」との問い合わせを受けました。
 内容は事実と異なっていても、著名な雑誌であり影響力も大きいようなので、今回はあえてこの記事を題材として取り上げることにしました。
 この記事が批判している対象パイプライン(P/L)は「ノルト・ストリームA」と命名された、ロシアからバルト海経由ドイツまでの天然ガス海底パイプラインです。
 Aと命名された理由は@があるからですが、最初のパイプラインは単に「ノルト・ストリーム」が正式名称です。
 ただし、「ノルト・ストリームA」と比較する意味で、この小論ではあえて「ノルト・ストリーム@」という名称を用いたいと思います。
 この小論ではまず、旧ソ連邦・新生ロシア連邦から欧州向けの天然ガス輸出の歴史を概観することにより、旧ソ連邦・新生ロシア連邦が天然ガス供給源として信頼に足る存在であるかどうか検証します。
 次にノルト・ストリーム@の現況を分析し、なぜ米国やウクライナがノルト・ストリームAに反対しているのか考察したいと思います。
 最後に、英エコノミスト誌冒頭の一句が果たして正鵠を射ているのかどうか、筆者個人の見解をご披露させていただきます。
旧ソ連邦・新生ロシア連邦から
欧州向け天然ガス輸出の歴史
 旧ソ連邦崩壊前夜、ソ連邦ガス工業省傘下にコンツェルン・ガスプロムが設立され、天然ガスの輸出業務を担当していました。
 コンツェルン・ガスプロムは新生ロシア連邦に入るとガスプロムに改組され、今では世界最大の天然ガス生産・輸送・販売会社になりました。
 旧ソ連邦の石油輸出公団とOMV(Österreichische Mineralölverwaltung/オーストリア石油会社)は1968年6月1日、ソ連邦からオーストリア(墺)向け天然ガス供給契約に調印しました。
 「なぜ、石油輸出公団が天然ガス輸出契約を?」と不思議に思われる方もいると思いますが、当時はソ連邦にガス輸出公団が存在せず、石油輸出公団が天然ガスの輸出交渉をしていました。
 40年後の2008年6月、OMVはウィーンで天然ガス契約40周年記念式典を挙行して、露ガスプロムに対し「過去一度も途絶えることなく天然ガスを供給してくれたことに感謝する」旨の感謝状を手交しています。
 2018年6月5日には同じくウィーンで、契約50周年記念式典を開催しました。
 露ガスプロムのA.ミーレル(A.Miller)社長と墺OMVのR.シーレ(R.Seele)社長は2018年6月5日、露V.プーチン大統領と墺S.クルツ首相臨席の下、既存の2028年までの天然ガス長期供給契約を2040年まで延長する契約書に調印。
 露A.ミーレル社長は「欧州への天然ガス長期安定供給のためにはノルト・ストリームAの建設が必要不可欠である」と強調しています。露ガスプロムと墺OMVの関係は、他の欧州大手ガスユーザーにとり一つの指針を示していると言えましょう。
 1991年末にソ連邦が解体されてソ連邦が消滅したときも、欧州向け天然ガス供給が途絶えたことはありませんでした。
 このことは、「アラブの春」で北アフリカから地中海経由南欧向け天然ガス供給が一時途絶えたことを想起するとき、ソ連邦・ロシアがいかに信頼に足る資源供給国であるか、事実が物語っていると言えましょう。
 このように書くと「いや、ロシアはウクライナ向け天然ガス供給を止めたではないか」との反論が出ること必至と思います。
 確かに、ロシアはウクライナ向け天然ガス供給を過去3回止めました(2006年、2009年、2014年)。しかしそれはあくまで経済問題であり、政治問題ではありません。商品代を払わない買い手に、商品供給を続ける売り手はいません。
旧ソ連邦・新生ロシア連邦から
欧州向け天然ガス輸出の歴史
 2018年6月5日付・ロシアの日刊紙コメルサントに、旧ソ連邦・新生ロシア連邦から欧州向け天然ガス供給開始の歴史が略述されているので、要旨をご紹介します(bcm=10億立米)。
1967年:“ドルージュバ”(友好)と“ブラーツトボ”(同胞)P/L完工後、ソ連邦からチェコスロバキア向けに天然ガス供給開始。
1968年6月:ソ連邦石油公団と墺OMV 、年間1.4億立米の天然ガス供給契約調印。
以後、2018年5月末までにロシアから累計218bcmの天然ガスを供給。
1968年:ソ連邦と東独(DDR)、天然ガス供給契約調印。
1969年:西独(BRD) に社会民主党(SPD)党首のW.ブラント首相誕生、Ostpolitik(東方政策)推進。ソ連邦に天然ガスと鋼管の交換取引を提案。
1970年:西独とソ連邦、契約調印。西独のガス輸入会社はRuhrgasとVerbundnetz。
1973年:ソ連邦から東独と西独向けに天然ガス供給開始。以後、2018年5月末までに1兆立米以上の天然ガスが旧ソ連邦・新生ロシア連邦からドイツ(東独・西独)に供給された。
1975年:ソ連邦はブルガリア・ハンガリー・フィンランド・伊・仏と天然ガス供給契約調印。
1978年:ソ連邦から旧ユーゴスラビア連邦向け天然ガス供給開始。
1979年:ソ連邦からルーマニア向け天然ガス供給開始。1980年にはソ連邦から欧州向け天然ガス供給量は54.8bcmに拡大。
1986年:トルコと年間6bcm、25年間の長期供給契約調印。トランス・バルカン陸上P/L完工後の1987年から天然ガス供給開始。以後、ソ連邦・露連邦からトルコ向けに400bcm以上の天然ガスが供給された。
(1991年末)旧ソ連邦崩壊、新生ロシア連邦誕生
1996年:露ガスプロムとギリシャ、天然ガス契約調印。ギリシャ向け天然ガス供給開始。
2001年:ヤマル半島〜欧州天然ガスP/Lで、ロシアからオランダ向け天然ガス供給開始。
2017年:露は非CIS諸国(EU諸国-バルト3国+トルコ)向け194.4bcmの天然ガスを輸出。
 2018年のロシアから非CIS諸国向け天然ガス輸出量は201.7bcmとなり、この結果、欧州連合(EU)28か国の天然ガス消費に占める露産天然ガスのシェアは2017年の34.2%から、2018年36.7%に上昇しました。
 これが、米ドナルド・トランプ大統領が「欧州はロシアの天然ガス依存度が高すぎる」と批判する背景になります。
 なお、露ガスプロムは欧州向け天然ガス輸出先をCIS(独立国家共同体)向けと非CIS諸国向けに分類しています。
 ガスプロムの言う非CIS諸国とは(EU諸国−バルト3国+トルコ)を指しますので、政治的なCIS諸国とは多少異なります点、追記しておきます。
ノルト・ストリーム@Aと
ドイツ国内天然ガス陸上パイプライン
 露ガスプロムは世界最大のガス会社です。露国内で天然ガスを生産し、自社の国内・輸出用P/L網で欧州に天然ガスを輸出しています。今年12月には中国向けに天然ガス供給開始予定です。
 ロシアからバルト海経由ドイツ向け海底P/L「ノルト・ストリーム @」(NS @)は、露フィンランド湾Vyborg(ヴィボルグ)から独Greifswald(グライフスヴァルト)湾Lubmin-1基地まで口径48インチ(1220o)、全長1224キロの2本の天然ガスP/Lです。
 設計輸送能力は計55bcmですが、2018年の輸送量は設計能力以上の58.8bcmになり、2011年末の稼働開始から2018年末までに累計264.1bcmの天然ガスをロシアからドイツに輸出しました。
 付言すれば、海底P/Lの建設費は水深にほぼ正比例します。浅ければ安く、深ければ高くなります。
 日本のメディアではほとんど報じられることはありませんが、実は海底P/Lだけ建設しても無意味です。
 海底P/Lに接続する陸上受入基地と陸上P/Lを建設しないと、海底P/Lは完工しても稼働できません。
 NS@に接続するドイツ国内陸上P/L(口径56”=1420o)は「OPAL」と「NEL」の2系統あり、OPALはチェコ・スロバキア方面へ、NELはオランダ方面に天然ガスを輸送しています。
 NS@がフル稼働態勢に入ったのは、陸上接続P/Lが完成して、EUガス規制(第3次エネルギーパッケージ)の適用が除外された後のことです(後述)。
 NS@に並行して、全長1220キロのノルト・ストリームA(NS A)が現在2本同時に建設中です。
 総工費95億ユーロ、海底P/L NS Aの出荷基地は露フィンランド湾のウスチ・ルガ、独国内受入基地はLubmin-2、陸上P/Lが「EUGAL」(European Gas Pipeline Link)です。
 EUGALはLubmin-2基地から独・チェコ国境まで全長約480キロのP/Lで、口径56インチ、送圧100気圧、既存のOPALパイプラインに並行して建設中です。2本建設予定で、1本目は2019年末、2本目は2020年末までに完工予定です。
 NSAとEUGALが稼働すれば、欧州のエネルギー安全保障に大きく貢献するでしょう。
 NS@とNSAのパイプライン地図は以下の通りです。余談ですがNS@が1224キロ、NSAが1220キロと多少距離が異なるのは、ロシア側の起点(出荷基地)が異なるからです。
ノルトストリーム(冒頭と同じ図)(出典:露ガスプロム http://www.gazprom.com/projects/nord-stream2/
http://jbpress.ismedia.jp/mwimgs/9/5/600/img_951e17e59fc307f53d78ce05527af62159972.jpg

 ご参考までに、ロシアから欧州向け天然ガス海底P/Lは以下の通りです。

拡大画像表示
http://jbpress.ismedia.jp/mwimgs/e/1/-/img_e1841dac2ab483f99e7fa431f9ae793782023.jpg

米国はなぜノルト・ストリームAに
反対しているのか
 上述の通り、海底P/L NSA は順調に建設中です。今年2019年2月末現在、全長1220キロのうち既に700キロは敷設済みで、2019年11月には1本目が、年末には2本目が完工予定です。
 ドイツ国内接続陸上P/Lの1本目は今年末に完工予定ですから、来年早々にはNSAの1本目とEUGALの1本目P/Lが接続されて、P/Lシステムは稼働態勢に入るでしょう。
 米トランプ大統領はこのNSAに反対を表明しています。経済制裁も視野に入れ、P/L建設協力企業を恫喝しています。
 反対理由はNSAが建設されるとNS@と併せ、欧州の天然ガス対露依存度が高くなること、およびロシアからウクライナ経由欧州向けトランジット輸送がなくなり、ウクライナ経済が疲弊するという理由です。
 ウクライナでは3月31日が大統領選挙です。新大統領にとり喫緊の課題は、今年末に失効する同国経由欧州向け天然ガス長期トランジット契約の対露更改交渉になります。
 トランジット輸送により同国が得る収入は年間20億〜25億ドルと言われており、この輸送がなくなると同国経済は大打撃を受けます。これが、ウクライナがNSA建設に反対しているゆえんです。
 ではなぜ、トランプ大統領やウクライナは建設中のNSAに対する反対運動を大々的に展開しているのでしょうか?
 トランプ大統領自身、既に完工間近の2本の海底P/L建設を阻止できるとは思っていないはずです。
 筆者は、米国やウクライナはP/L建設遅延を狙っていると考えております。
 年内にNSAの1本目とそれに接続する1本目の陸上P/Lが完工して接続され、年内に稼働態勢が整えば、それは現在進行中のEU・露・ウクライナ(宇)3者間のウクライナ経由欧州向け天然ガストランジット輸送契約更改交渉において、ロシアが有利になります。
 現行契約は露プーチン首相と宇ティモシェンコ首相臨席のもと、2009年1月に締結された、2009年1月1日から2019年12月末まで11年間有効の長期契約で、今年末に失効します。
 既に昨年7月と9月、および今年1月に契約更改交渉を行いました。次回は新大統領就任後の5月に交渉再開予定です。
 この時点で、ウクライナを迂回する1本目のNSAから独国内経由中欧・東欧に露産天然ガスが供給される態勢に目途がついていれば、それはウクライナの交渉力が弱まることを意味します。
 米国にとり、露が交渉において有利になる状況が出現することは望ましくありません。
 せめて年内のP/L完工・稼働が不透明な状況(=ロシアにとり不利な状況)で、EU・露・ウクライナが対等な立場で交渉することが望ましいと思っているはずです。
 ウクライナ経由欧州向けトランジット輸送がなくなると、ロシアの欧州向け天然ガス輸送計画に支障が出ます。ガスプロムにとり欧州市場は金城湯池であり、主要な外貨獲得源です。
 その最重要市場への天然ガス供給に支障をきたすことはガスプロムの損失となり、ひいてはロシアの国益を毀損します。ロシアはこの様な事態だけは避けなければならず、逆に米国はそのような事態を望んでいます。
 上記が、米国がNSA反対キャンペーンを展開している理由と筆者は理解しています。
ウクライナに真の脅威となる天然ガスP/Lは?
 ウクライナは2015年11月、露からの天然ガス輸入を停止しました。しかし実際にはP/L逆走により、NS@の露産天然ガスを欧州側から輸入しています。
 P/Lでロシアから直接輸入するよりも、千立米あたり約100ドル高い価格で輸入しているのが実態です。
 しかし、ウクライナにとり真の脅威はNSAではありません。それは黒海横断海底P/L「トルコ・ストリーム」です。
 ロシアにとり、米国やマスコミの目が建設中のNSAプロジェクトに注がれていることは、実は都合のいい事態かもしれません。
 露ガスプロムはその間に、粛々と黒海横断海底P/Lを建設しました。
 バルカン陸上P/Lは、ロシアからウクライナ・ルーマニア・ブルガリア経由トルコにP/Lガスを供給しています。
 1本目のトルコ・ストリーム(以後、TS@)はトルコ市場向けですから、完工・稼働するとバルカン陸上P/Lは不要になり、ウクライナ経由がゼロになります。
 TS@プロジェクトでは既に全長930キロの海底P/L2本がほぼ完工しており、1本のP/Lの年間輸送能力は15.75bcm、2本で31.5bcm、現在はトルコ国内の陸上接続P/Lを建設中です。
 1本目はトルコ市場向け、2本目は南欧・中欧向けであり、ブルガリアから西に行けば、セルビア・ハンガリー経由墺バウムガルテンのハブ市場に接続可能になります。
 このトルコ・ストリームの前身は「サウス・ストリーム」でした。
 サウス・ストリームはブルガリア向けに4本の海底P/L(1本15.75bcm、計63bcm)を建設する構想でしたが、同国に親欧政権誕生後、このP/L建設構想は反故となり、代替案として実現したのがTS@です。
 もしロシアが本当にウクライナ経由トランジット輸送をゼロにしようとすれば、「トルコ・ストリーム A」(TSA/年間輸送能力15.75bcmx2本)も建設するでしょう。
 このTSAが実現すると、文字通りウクライナ経由はなくなります。
 TSAに関しては、もう一つニュアンスがあります。
 TSAは西欧ではなく、南欧向けガス供給を主眼とします。これは、カスピ海産天然ガスをコーカサス・トルコ経由南欧に輸出する「南ガス回廊」構築構想と真っ向から競合します。
 カスピ海シャハデニーズ第2段階の天然ガスはピーク時生産量16bcmですから、この量ではロシアにとり脅威になり得ません。
 脅威となるのは、カスピ海横断海底P/Lが建設されて、対岸のトルクメン産天然ガスが大量に南欧向けに流れるインフラが構築される構図です。
 ですから筆者は、これを阻止すべくロシアはTSA構想を今後推進すると予測しています。
 ロシアの問題点はNSAが建設されるかどうかではありません。
 NSAは(多少遅れても)実現するでしょう。ロシアの問題点はロシアに十分な天然ガス輸出能力・余力があるかどうかです。
 筆者は、供給能力・余力が隘路となり、このままいけば露ガスプロムの輸出戦略の破綻が早晩表面化すると睨んでいます。
 ただし、対策はあります。それはガスプロムがトルクメン産天然ガス輸入を再開して国内ガス需要に充当し、西シベリア産天然ガスを輸出に振り向けることです。
 欧州に向かうはずのトルクメン産天然ガスをロシアが輸入すれば、その分トルクメン産ガスの輸出能力は低下します。
 ゆえに、ロシアにとりトルクメン産天然ガスの輸入再開は一石二鳥の喫緊の課題になります。
ノルト・ストリームAの障害
EU第3次エネルギーパッケージ
 EUの第3次エネルギーパッケージは2009年に採択されました。これは一言で申せば「天然ガス市場の自由化、生産と輸送の分離」で、日本風に言えば「発電と送電の分離」になります。
 欧州天然ガス市場に於ける競争力を阻害する要因を排除すべく、EU域内のP/L輸送能力の半分は第三者に開放することが規定されています。
 NSAが現在直面している問題はEU委員会が策定した新ガス指令案です。
 指令案によれば、第三国からEU域内への国際P/Lに対し、出荷基地と受入基地にもこの「生産と輸送の分離」規定が適用されることを想定しています。
 もちろん、このガス指令案がノルト・ストリームAを念頭に策定されたことは論を俟ちません。
 フランスのエマニュエル・マクロン大統領は2月7日、突如この案に賛成を表明したため、慌てたのが独A.メルケル首相。
 直ちに両首脳は協議に入り、メルケル首相は翌8日、「独仏は協議の結果、ガス指令修正案で合意に達した」と発表。
 修正案とは、出荷基地に適用することを外すこと、受入基地を有する国がガス指令を適用するかどうかEUと協議のうえ決定するという案です。
 すなわち、NSAの出荷基地露ウスチ・ルガには適用されず、露ガスプロムはP/L輸送能力全量55bcmを使用可能になります。
 受入基地ルブミン-2はドイツですから、ドイツがガス指令を適用するかどうか責任をもつことになります。
 ただし、適用例外措置を認めてもらう場合、例外措置発効時の5か月前までにP/L受入国はEU委員会に申請することになっています。
 米国やウクライナのNSA反対運動よりも、露ガスプロムやドイツにとり、このEUガス指令案の方が実は頭の痛い問題ではないかと筆者は推測しております。
英エコノミスト誌記事への反論
 ここで、冒頭の「新パイプラインはロシアのワナ」と題するNSA批判記事に戻ります。
 何度読んでも意味不明です。デタラメな記事と言っても過言ではありません。
 この記事を書いた記者も翻訳記事をチェックした(はずの)日経デスクも、このパイプラインのことを知らないのではないでしょうか。
 ではこの記事を概観します。
 まずパイプライン地図が目に入ります。「ノルドストリーム2」の地図があり、ビボルグからグライフスバルトまでとなっています。
 Nord(北)はドイツ語ですから、発音は「ノルト」になります。しかしこれは枝葉末節です。
 NS@の起点(出荷基地)は露フィンランド湾ヴィボルグ、受入基地は独グライフスヴァルト湾ルブミン。NSAの起点はフィンランド湾ウスチ・ルガであり、ヴィボルグではありません。
 P/L地図の起点が間違っているということは、P/Lプロジェクト自体をよく理解していない証拠と言わざるを得ません。
 「経済的に見れば、必要のないパイプラインだ」と書いてありますが、具体的な根拠は不明です。
 既存のP/L網で十分足りるというのがどうやら理由のようですが、欧州では今後天然ガス輸入拡大が必要です。
 なぜなら、石炭火力からガス火力への転換、原発停止などによりEU域内の天然ガス需要が増える一方、EU域内の天然ガス生産量が減少するからです。
 欧州域内最大のガス田、オランダのフローニンゲンでは天然ガス生産量が減少しています。同ガス田のピーク時生産量は2013年の53.8bcm、2019年の生産予測は17.5bcm。今後4〜5年以内に年間生産量12bcmまで減少し、2030年までに生産をやめる計画です。
 北アフリカからの天然ガス供給も減少の見込み、ノルウェー産天然ガスの増産も困難です。
 ですから、露産P/Lガスが安定的に供給されることは欧州エネルギー安保に貢献することになり、経済的に見れば必要なP/Lなので建設しているわけです。
 「ガスプロムがノルドストリームの唯一の株主だ」と、露ガスプロムが唯一の株主であることを批判しています。
 しかしこのNSAプロジェクトは当初、欧州の大手需要家(買い手)5社がこのプロジェクトに権益参加することになっていました。
 ところが、米国の対露経済制裁により権益参加が阻止されてしまいました。ですから、もしガスプロムが唯一の株主であることを批判するのであれば、批判の対象はロシアではなく米国になります。
 「ノルドストリーム2によって、ロシアはバルト海地域にインフラ設備を有することになる。これは、現地のロシア軍駐留を増強する言い訳になり得る。だからこそ、バルト3国や北欧諸国ポーランドは懸念しているのだ」
 話は全く逆です。NS@とAのP/L地図をご覧ください。
 このP/Lは露からフィンランド〜スウェーデン〜デンマークの排他的経済水域経由、ドイツに入ります。
 反露志向の強いバルト3国やポーランドの排他的経済水域を経由すると嫌がらせを受けること必至です。すなわち、懸念しているのはロシアであり、であるがゆえにバルト3国とポーランドを意図的に避けました。
 それでも一つ問題が発生しました。NS@はデンマーク領離れ小島の領海を一部通過しています。
 NSAは@に並行して敷設中ですが、デンマークは米国の圧力を受け、自国領海通過を拒否しており、これがNSA建設遅延の原因になっています。
 「第2に、ノルドストリーム2は欧州のロシア産エネルギーへの依存度を高めることになる」
 これは事実です。しかし買い手は民間企業であり、民間企業は安くて安定した供給者から商品を購入します。
 旧ソ連邦、新生ロシア連邦からの天然ガスは安くて安定的に供給されているので、買い手は露産ガスを選好しています。依存度の多寡は結果論に過ぎません。
 「アラブの春」で北アフリカから地中海縦断海底P/Lが止まり、天然ガス不足となり困ったのが南欧です。
 この時、追加供給して欧州の不足分を補填したのが露ガスプロムですが、別に経済支援したわけではありません。
 ビジネスとしてガス供給を増やしただけですが、結果として双方の利益になりました。
 エコノミスト誌は「最終消費者にもっと公正な価格でガスを提供すべく・・・、コストを開示し、透明性を高めるように求めてきた」と主張しています。
 露輸出者と欧州需要家の天然ガス価格契約は油価連動型ですから、油価が高くなればガス価格も高くなり、逆も真なりです。
 しかし契約は商業契約であり、価格形成式は当事者(売り手と買い手)間の秘密事項です。西側企業の石油・ガス契約でも、当事者間の契約価格や価格形成式を公表することはありません。
 開示されたら情報漏洩になります。
 付言すれば、この油価連動型長期契約方式は露ガスプロムが発明した契約形態ではなく、欧州大手需要家がソ連邦にガス契約書の雛型として提案しました。
 当時油価が安かったので、油価連動型にすればガス価格も安くなることは分かっていました。
 この油価連動型長期契約により大儲けしたのが西独RuhrgasとVerbundnetz、墺OMVなどです。
 「ロシアは天然ガスの供給をいつでも政治的な武器に使えると考えている」
 この批判は典型的、かつステレオタイプな文言です。
 上述の通り、ロシアの天然ガス輸出は商業契約です。契約に従い量も価格も規定されており、過去50年間、供給が政治的理由で途絶えたことはありません。
 ロシアにとり石油(原油と石油製品)と天然ガスは主要な外貨獲得源ですから、自らバルブを閉めることは自分で自分の首を絞めることと同義語です(ウクライナは別次元の問題)。
 他の批判も推して知るべしと言えましょう。
エピローグ
犬が吠えても、駱駝は進む
 ロシア語の諺に「犬が吠えても、隊商(駱駝)は進む」があります。
 トルコや中東諸国にも同様の諺があるそうです。スラブ民族は森の民であり砂漠の民ではありませんので、中央アジア諸国でこのような諺が定着したのではないかと推測します。
 米トランプ大統領はノルト・ストリームA建設反対を強硬に唱え、西側の建設協力企業に圧力をかけています。
 しかし、ロシアから欧州向け天然ガス供給は増えています。
 需要家は安い価格で安定した供給を保証する、信頼に足る生産者・供給者から天然ガスを購入します。結果として、この経済合理性が欧州のエネルギー安全保障に貢献しており、ここには政治が関与する余地はありません。
 米トランプ大統領がいくら反対しても、独メルケル首相はNSA建設を支持しており、(デンマーク領海通過問題以外)海底P/Lも陸上接続P/Lも建設は順調に進行しています。
 上記の諺を援用すれば、「トランプ吠えても、メルケルは進む」となりましょうか。
 墺S.クルツ首相は2月20日、ホワイトハウスで米トランプ大統領と会談。その際、大統領から米国産ガス輸入を迫られたことに対し、下記のようにコメントしています。
≪Buying gas from the United States would not be a problem for us. But as long as Russia’s price is better than that of the United States, Russia is more attractive for us as a partner on this issue. A believe that as a former businessman, [Trump] can understand that we have different interests here,≫ the Austrian Chancellor noted.
(米国からガスを買うことは問題ありません。しかし露産ガスが米国のガスより安い限り、露産ガスの方が魅力的です。ビジネスマンならお分かりいただけると思います)
 正鵠を射たコメントと言えます。優秀なビジネスマンたるトランプ大統領は、果たして何と回答したのでしょうか。
 筆者は常々、なぜ英フィナンシャル・タイムズ紙やエコノミスト誌がかくも稚拙な対露批判を展開しているのか不思議に思っていましたが、今年3月号の『選択』を読み納得しました。
 「英国、対ロ秘密情報戦の内実/暴露された陰の組織と黒い手口」と題するリポートは、英国の秘密組織がカネを払い、ロシアへの警戒感を高めながら親ロシア派を攻撃し、より強硬な対ロ政策を歓迎する世論の形成を促しており、その支払い先に、英国では「エコノミスト」誌や「フィナンシャル・タイムズ」紙が登録されている、と報じています(同誌17頁)。
 エコノミスト誌記事の冒頭に曰く、「利益を生まない巨大プロジェクトが進められている場合、理由が2つ考えられる。出資者が愚かであるか、あるいは狙いが他にあるかだ」。
 どうやら、エコノミスト誌記事冒頭の一節には「デタラメな記事が書かれている場合、理由が2つ考えられる。記者が愚かであるか、あるいは狙いが他にあるかだ」の方がよく似合いそうですね。
(参考地図)
 ご参考までに、NS@とNSAに接続するドイツ国内陸上P/L、NEL、OPAL、EUGALのP/Lルートは以下の通りです。
地図出所:https://www.eugal.de/en/eugal-pipeline/route/
http://jbpress.ismedia.jp/mwimgs/4/e/400/img_4e5b6625219bb284145d913caa2a485a45508.jpg
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55675

http://www.asyura2.com/19/senkyo258/msg/292.html

[環境・自然・天文板6] “ゲノム編集”というエサで釣る人、釣られる人 内側から問い直す日本のベンチャー業界の“常識”(5) 
“ゲノム編集”というエサで釣る人、釣られる人
内側から問い直す日本のベンチャー業界の“常識”(5)
2019.3.7(木) 藤田 朋宏
「ゲノム編集」という言葉の響きに酔ってはいけない。
 大企業の安全神話が崩れ、ベンチャー企業の存在感が増していく中、ベンチャー業界を取り巻くさまざまな論説が流れている。だが、当のベンチャー企業側は、その現状と行く末をどのように捉えているのだろうか。戦略コンサルタントを経てバイオベンチャーを創業した、ちとせグループCEOの藤田朋宏氏が、ベンチャー企業の視点から日本の置かれた現状を語っていく。(JBpress)

【第4回】「そのバイオプラスチックで本当に生態系を救えるか?」(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54914

耳障りのいい言葉が流通する理由
 あちこちの技術分野の未来に詳しそうな意識高そうな人が、最先端技術が生み出す近未来の社会のあり方について断定口調で語っているのを「カッコいい」と思う層が、年代に関係なく、今の日本社会では着実に増えているように感じています。

 彼らのような実効力の無い扇動業に憧れるのって、若い頃にありがちな過ちのうちのひとつ(厨二病というより、大学2年生にありがちな大二病というか)だと僕は感じます。

 上では世代に関係なくと書きましたが、今の日本はむしろ、若い人に地に足が付き過ぎちゃって達観しすぎている人が多く、逆にバブル時代に青春時代を過ごした年輩の層に、いつまでもこの扇動業に振り回される大二病をこじらせてしまっている人が多いのが、今の日本の姿なのかもしれません。

 技術分野が細分化され、どの技術がどれくらいの確実性で実現可能か、専門の人の中でさえも意見が割れ議論が続けられている現在の世の中において、さまざまな技術分野を幅広く見通して、今後100年の技術動向を正確に言い当てられる人が存在するわけはありません。天才とか努力とかいうレベルを超えている話ですから。

 しかしながら、将来に対して不安な人が多い社会だからこそ、それっぽい専門用語を散りばめながら、「あたかも何でも知ってるぜ風」に言い切れてしまう扇動業のニーズが高まっているのが今の日本の姿なのでしょう。

 と、ここまで、社会において技術を語ることで社会を扇動する役割を担っている人に対してネガティブに受け止められるような書き方をしていますが、彼らがどんなに根本的なところで、技術の理解を間違えていても、彼らが語る技術動向の大筋が、目先の金儲けを企む薄っぺらい輩のためだけでなく、その技術分野で悪戦苦闘する技術者を支えるものになるのであれば、「時代の空気の代弁者」として、それはそれで社会のためになる役割なんだろうなと、嫌味ではなく思ってます。

 わざわざ、皆から文句を言われるというご苦労な役割を職業として買って出てくれているんだから、みんなで愛でればいいんです。

 かくいう自分自身の場合も、いつのまにやら非医薬品領域のバイオ領域(日本では昔から“農芸化学”といわれていた分野とか、英語だと“industrial BIO”といわれる分野)において、技術動向に詳しい扇動業的な扱いを世間からしてもらっています。

 しかし、現実的には、本業をやりながら技術動向の情報を手に入れ続けるのは結構大変です。大変ですというより無理です。

 当人的には「いちいち、他の人の先端研究まで追っかけてないですよ・・・」と思うので、表立って技術動向について意見を言うことは、控えているのですが、油断すると「おいおい。理論的にそれは無理だろ」「いくらなんでも流石に、それは見過ごせないわー!」って言説が、あたかも事実であるかのように、日本社会の大勢を占めてしまうことが頻繁にあります。

「ゲノム編集」というカッコいい言葉
 そんな私にとって、近頃どうにも後にも目に余るのが、主にAI方面の技術を語る人々による「お前、自分のカッコいいプレゼンに“ゲノム編集”って単語を入れてみたかっただけやろ!」と感じる論説です。

 その手のプレゼン曰く、「既に遺伝子は自由に編集できて、生命を自由にデザインできる世界はすぐそこまで来ているんだ」と。そして、それに続く結論は、「かようにも世の中が変わってきているのだから、意識高い諸君は、立ちあがって起業しよう!」となるわけです。

 もし、私の目の前でこの手のかっるーいプレゼンをされたら、「お前、ゲノム編集ってのが何なのか知ってんのか?」と皆の前で聞いてしまいそうですが、そもそも僕だけでなく、“ゲノム編集とは何か”が分かっている人は、その手のプレゼンがなされる場には行きません。

 誰も正さないので、プレゼン資料にまぶしてあるだけでカッコよく見えるワードである「ゲノム編集」が、意識高い系のプレゼンで使用される頻度は増え、そしてますます魔法の技術が、すぐに人類や社会を変えるかのように理解され広がっていくのでしょう。

 今回、私が説明したいのは、人類は高等生物の遺伝子配列を自由に操る技術は、まだ全く手に入れておらず、ましてや高等生物を自由にデザインするなんて未来は、ビジネスとして議論できるような期間の間にやって来ることはないであろうという事実です。

「え、そうなの?」って思う人が多いのではないでしょうか。生物学の現時点での進歩について、多くの人が間違えて理解している最大の理由は、「ゲノム編集」(英語は“Genome Editing”)っていう名前が人々を惑わし、意識高い系の扇動業の皆さんにお小遣いを稼ぐ機会を与えてしまっているからだと、僕は考えています。

 最初に明言しておきたいのは、方法はどうであれ、好むと好まざるに関わらず「人類はいつか遺伝子配列などを操ることで、生き物を自由にデザインできる日が来る」こと自体は、多くの生物学者が否定できない事実です。

 私は、そもそも遺伝子配列を改変するだけで、生き物を自由にデザインできるとは思っていませんが、生き物を自由にデザインできる未来が来ること自体は全く否定しません。

道具さえあれば“編集”できるのか?
 生命の設計図は、DNAにデジタルのデータとして書かれていることになっています。ゲノム編集技術とは、この生命の設計図を消したり書いたりできるよ、今までの遺伝子組換えと呼ばれていた技術よりも消しゴムや鉛筆の適用範囲と精度が高まったよ、というだけの話なのです。

「編集」とは名ばかりで、生き物を自由に編集できるようになったよ、という技術ではないのです。

 例えるならば、人類史に残るロシア人の大文豪が書いた膨大なロシア語の書物を目の前にして、ロシア語を全く理解できない輩が、印刷された文字を書き換えるの消しゴムと鉛筆を手にしただけで「これで私は、この文章を自由に編集できる!」と吹聴しているようなものなのです。

「文字を消したり書いたりできることと、文章を編集できることって、根本的に異なるものですよね」と言いたくなる私の気持ち分かりますか?

 こういった指摘に対して、技術扇動家たちは言うのです。「どの遺伝子がどういった役割をしているかのデータベースはドンドン拡大している。だから、生き物を自由に編集することはもうできたようなものだ」と。

 これも上の例で例えると、「ロシア語の辞書が拡充しているから、文字さえ書き換えられれば、文章を自由に編集できるのは同義だ」と、ロシア語を読もうとしたこともない輩が言っているのと同じだということです。

 確かに、遺伝子機能のデータベースは日々拡充されています。しかし、ロシア語の例に例えると、ロシア人の大文豪が書いた書物は10万以上の単語が使われているのに、彼らが手にしている辞書には1000の単語しか収録されていないようなものだったり、そもそもひとつの単語はいろいろな意味を持っているのに、どれもひとつの意味しか収録されていない、そんな不完全な辞書であるということを無視した議論になっているのです。

 子供が使う単語さえも網羅できていない辞書があるだけで、ロシア語の文法も全く分からないのに、「大文豪が書いた文章を、どこからどうやって編集するつもりなのかな?」と言いたくなる私の気持ち分かりますか?

 文学作品において、単語の一つひとつが有する意味は、その文脈によって解釈が変わることも多いです。また、皮肉や感情を込めてわざとおかしな単語を使うこともあれば、後々の伏線のためにわざと違和感のある表現を残しておくようなこともあるでしょう。

 言葉と同様に、遺伝子もひとつの遺伝子が多様な意味を持ちます。まだまだ現在の科学では全て解き明かされているわけではないですが、生き物が進化の過程としてさまざまな環境を生き残るために過ごして来た時間や、生き物としての形態という初期値との関係で、現在のゲノム配列が決まっていることは、生命現象の解明に真摯に向き合っている人なら誰もが同意してくれる事実だと考えます。

 つまり、こういうことです。文章や文学に興味や理解がある人ほど、たとえ印刷された文字を書き換えられる鉛筆と消しゴムに加えて、完璧な辞書とロシア語の理解があったとしても、「人類史に残る大作家が書いたロシア語の文学を、より良いものに編集できるというなんて、無知にも程がある」と思うでしょう。

 それと全く同じように、生命を理解することに興味や理解がある人ほど、不完全な消しゴムと鉛筆と、まだまだ辞書とも呼べないような遺伝子データベースしかない現段階で、「近い将来にはゲノムを自由に編集でき、生命を自由にデザインできる時代は到来している」と喧伝する輩を見るたびに、「それ釣れますかー」「儲かってますかー?」という気持ちになる私に、同意してくれるのではないかと感じます。

・・・などと僕が書いたところで、ロシア文学の深遠さや、生命の神秘には全く興味も持たず、今日のバズりやPVだけ追っかけて、かっるーいことを言う扇動家の言説の方が、実際、釣れちゃうし稼げちゃうのが今の日本社会です。

 いろいろな価値観の人たちの存在があっての「社会」だし、社会ってだから面白いのだと思うものの、こうして誰も幸せにならない戦争とか始めちゃうのが人類なんだろうなと諦め気味に思う今日このごろです。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55646
http://www.asyura2.com/15/nature6/msg/698.html

[国際25] 北朝鮮、これから始まる「粛清の嵐」と「軍の台頭」 大恥かいた金正恩、自暴自棄で不測の事態も 米朝首脳会談決裂でも、ご褒美
北朝鮮、これから始まる「粛清の嵐」と「軍の台頭」

漂流する東アジアを撃つ(第3回)
2019.3.7(木) 右田 早希
金正恩氏、列車で帰国の途に ホー・チ・ミン廟を訪問後
〔AFPBB News〕ベトナム・ランソン省のドンダン駅に到着して手を振る、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(中央、2019年3月2日撮影)。(c)YE AUNG THU/AFP

(右田早希:ジャーナリスト)

「パル オムヌンマル チョルリカンダ」(? ??? ????)

 朝鮮半島に、昔から広く流布する諺だ。直訳すると、「足のない馬、千里を行く」。これだとチンプンカンプンだが、朝鮮語(韓国語)では、「マル(?)」には二つの意味があって、「馬」と「言葉」。つまりこの諺は、「人の噂話というものは、アッという間に千里も伝わってしまう」と諭しているのだ。換言すれば、朝鮮半島の人々は、噂話が大好きだということだ。それは、いくら北朝鮮のような閉鎖社会であっても、基本的に変わることはない。

会談決裂は北朝鮮国内で「周知の事実」
 先週2月27日、28日に、トランプ大統領と金正恩委員長がハノイで行った米朝首脳会談の「世紀の決裂」は、一週間が経っても、北朝鮮国内では「成功裏に終わった」ことになっている。例えば、朝鮮労働党中央委員会機関紙『労働新聞』(3月5日付)は、こう報じている。

<朝鮮労働党委員長でおられ、朝鮮民主主義人民共和国国務委員会委員長でおられるわれわれの党と国家、軍隊の最高領導者・金正恩同志におかれましては、ベトナム社会主義共和国に対する公式親善訪問を成果を持って終えられ、3月5日に専用列車で祖国に到着された。(中略)

 明け方の3時に、歓迎曲が鳴り響く中で、敬愛する最高領導者同志が乗られた専用列車が平壌駅構内に静かに入ってくると、最高領導者同志を寝ても覚めても夢見ていて、ただお戻りになる日だけを日がな指折り待ちわびてきた全国人民の、烈火のような敬慕の情と立ち溢れる激情の噴出である「万歳!」の、爆風のような歓呼の声が、平壌の空を覆い満たし、こだましたのだった>

 明け方の3時に、平壌市民たちが歓呼するはずもなく、また本当に歓呼させられたなら、いい迷惑だったろう。朝鮮中央テレビの映像で見る限り、駅のホームに居残りの幹部たちがズラリ整列し、平身低頭で迎えていた。

 実際には、「金正恩委員長がトランプ大統領と決裂した」という事実は、すでに北朝鮮国内に流布しているという。

胸を撫でおろした居残り組
 丹東で長く、北朝鮮への観光ビジネスを行っている中国人が証言する。

「中国と北朝鮮は、1400qもの国境を接していて、日々交流しているのだから、当然国境付近の北朝鮮人は知っている。われわれも中国のSNS上に載っている話を、北朝鮮人たちにしている。彼らは裏では、『3日もかけてハノイまで列車で往復して、いったい何をやっているんだ?』と呆れ顔だ。

 そもそもいまの北朝鮮人は、父親の故・金正日総書記に抱いていたような敬愛の念を、金正恩委員長に対しては抱いていない。ただ従え、尊敬しろと命じられて、面従腹背で頭を下げているだけだ。

 丹東で北朝鮮ビジネスをやっているわれわれは、今回の米朝会談後に、対北朝鮮ビジネスが本格的に復活できると期待していただけにガッカリだ。だが、私たち以上にショックを受けているのが、当の北朝鮮人たちだ。あと一年もいまの経済制裁が続けば、北朝鮮は潰れてしまうよ」

 これから北朝鮮で起こってくるであろうことが、二つある。

 一つ目は、今回の「ハノイの決裂」に対する朝鮮労働党内部での「総括」だ。すなわち、誰を「生贄(いけにえ)の羊」にし、責任をなすりつけて粛清するかということだ。今回、ここまで「最高権威」(金正恩委員長)に国際的な恥をかかせてしまったのだから、「プライドの国」と言われる北朝鮮で、金委員長の側近たちが無事で済むはずがない。

【写真特集】視察する北朝鮮の指導者、金正恩氏
北朝鮮の国防科学院の試験場を視察する金正恩朝鮮労働党委員長。朝鮮中央通信配信(2018年11月16日配信、撮影日不明)。(c)AFP PHOTO/KCNA VIA KNS〔AFPBB News〕

 最も危険なのは、『労働新聞』などで、金正恩委員長に同行してハノイ入りしたと報じられた「側近11人組」である。北朝鮮メディアで紹介されている順に名を挙げると、朝鮮労働党中央委員会副委員長の金英哲、李洙?、金平海、呉秀容、李容浩・外相、努光鉄・人民武力相、朝鮮労働党中央委員会第一副部長の金与正、李英植、金成男、崔善姫・外務副大臣、朝鮮労働党江原道委員会委員長・朴正男である。

 少なくともこのうち何人かが、血祭りに上げられることが予想される。「無事」が保証されているのは、金正恩委員長の妹である金与正と、金委員長がスイスで過ごした少年時代に父親代わりとなった李洙?くらいのものだ。李洙?は今回、世界遺産のハロン湾の観光視察をやっていたくらいなので、アメリカとの交渉からは外されており、直接的な責任は問われないだろう。だが残り9人の幹部は、いつ誰が無惨な粛清に遭っても不思議ではない。

 象徴的な映像があった。前述の朝鮮中央テレビが映し出した駅のホームで出迎える光景で、留守番役を担った幹部たちは、一様に明るい表情を見せていたのだ。朝鮮労働党中央委員会政治局常務委員会委員の金永南、崔龍海、朴奉珠らである。彼ら「居残り組」の心中を察するに、「ハノイに同行を命じられなくてよかった」と、ホッと胸を撫でおろしていることだろう。

密かに軍を恐れる金正恩
 もう一つ、今後の北朝鮮で起こってくるだろうことは、120万朝鮮人民軍の再度の台頭である。

 金正恩委員長は昨年4月、朝鮮労働党第7期中央委員会第3回総会を招集し、国家の重要決定を行った。それは、それまでの「核と経済」という「並進路線」をあっさり放棄し、「核開発は完了したので、今後は経済建設に専念する」と定めたのだ。

 以後、金委員長は、朝鮮人民軍をあからさまに軽視してきた。北朝鮮の長年の「仮想敵国」であるアメリカと北朝鮮が、ともに敵国でなくなれば、これまでのような強大な軍事力を有している必要がない。というより、今後の経済開発にとって、軍はむしろ「お荷物」になってくる。

 金正恩委員長は、これまで長く朝鮮人民軍が独占してきた軍需経済などの既得権益を剥ぎ取ることを、使命にしてきたのである。だから金委員長は、内心では軍を恐れている。恐れているから、空軍が管理している自分の専用機には乗らず、鉄道省が管理している専用列車に乗って、はるばるハノイまで出かけて行ったのである。

 3月5日には韓国の国家情報院が国会で、「北朝鮮北西部・東倉里(トンチャンリ)のミサイル発射場で、撤去した施設の一部を復旧する動きが把握された」と報告した。朝鮮人民軍は今後、核開発もミサイル開発も復活させるよう、金正恩委員長に強い圧力をかけていくだろう。

 朝鮮人民軍にクーデターを起こされないためには、金委員長はある程度、軍の意向に沿った国家運営をしていかねばならない。一年数カ月の「平穏の時」を経て、北朝鮮が再びキナ臭くなってきた。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55681


 

大恥かいた金正恩、自暴自棄で不測の事態も
大きな期待が一転失望と恥辱に変った時、ボンボンは・・・
2019.3.7(木) 西村 金一
金正恩氏が平壌に到着 国営メディア報道
越北部ランソン省のドンダン駅で列車に乗り込む前に手を振る北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(2019年3月2日撮影、資料写真)。(c)Vietnam News Agency / AFP〔AFPBB News〕

 ベトナムの首都ハノイで行われた米朝首脳会談では、北朝鮮の非核化とそれに見合うおみやげ(制裁解除、終戦宣言、支援)を決めるという合意ができず、したがって共同宣言に署名できなかった。

 客観的に見れば、両国とも相手国の狙いが明確に分かったことは、交渉の2歩や3歩の前進だと言える。

 今回、米朝が合意できなかった部分は、北朝鮮が非核化を完全に実施できるかどうかの核心部分である。

 それは、北朝鮮が進めてきた大量破壊兵器すべてのリストを提供することである。特にウラン濃縮施設がリストに入っていることと、その査察と廃棄が問題だ。

 このほかに私が注目しているのは、今回の会談で北朝鮮国家の期待に応えられず、金正恩委員長が人生で「初めての屈辱」を味わったことだ。

 北朝鮮の今後の方向性や戦略は、「金正恩委員長が受けた屈辱に対する怒りが抑えられるのか」によって大きく異なるのではないかと考える。

 どう転ぶにせよ、金正恩委員長の腹一つで決まるだろう。だから読めない。

1.北朝鮮は計り知れない期待を抱いていた
 駅のホーム一面に真っ赤な絨毯を敷いて、盛大な見送りを受け、金正恩委員長は特別列車に乗り込んだ。

 今回のような盛大な見送りの写真は、これまで朝鮮中央通信に掲載されなかったと、私は記憶している。

 同通信は、「敬愛する最高指導者が第2回朝米首脳の対面と会談で立派な成果を収めて、無事に帰国することを心から願った」と期待を込めて書いた。

【写真特集】視察する北朝鮮の指導者、金正恩氏
北朝鮮の国防科学院の試験場を視察する金正恩朝鮮労働党委員長。朝鮮中央通信配信(2018年11月16日配信、撮影日不明)。(c)AFP PHOTO/KCNA VIA KNS〔AFPBB News〕

 金正恩委員長はベトナムに向かう特別列車の中で、これから得られる成果を夢見ながら、列車から見える街並みや風景を見て、一駅一駅通過するたびに、北朝鮮はもうすぐ中国の都市や町のようになるだろうと思いを巡らせていたのだろう。

 会談が始まると、朝鮮中央通信は、「新しく到来する平和・繁栄の時代」「みんなが喜ぶ立派な結果が出る」「成功を祈願する全世界の関心と期待」といった表現を使用して、会談で大きな成果が出ることを期待しているという風潮であった。

 ドナルド・トランプ米大統領の「我々は極めて立派な関係を結んでおり、大いに成功した会談になると確信する」といった言葉も報じた。

 労働新聞は、金正恩委員長の今回の外遊に「全国が沸き返っている」とも伝えた。

 トランプ大統領も金正恩委員長に、ことあるごとに「あなたの国には、経済的にものすごい潜在力がある。あなたには、国の素晴らしい未来が待っているものと思う」と言ってきた。

 金正恩委員長は会談前から、トランプ大統領のお世辞に完全に舞い上がってしまっていたようだ。

2.直接交渉で大胆な決断を期待
 金正恩委員長は新年の辞で、「米朝関係が今年、良好な関係を築くことができる。双方の努力によって今後、必ずよい結果がもたらされると信じたい」と述べた。

 会談の初日、金正恩委員長は「素晴らしい会談、素晴らしい再開が用意されることになったのは、トランプ大統領閣下の大胆な政治的決断によるものだと思います」と述べた。

 北朝鮮はこれまで何度も、金英哲氏を特使としてワシントンまで行かせ、トランプ大統領へ直接、金正恩委員長の親書を渡してきた。それをトランプ大統領は至極喜んだ。

 北朝鮮は、実務協議に参加するマイク・ポンペオ国務長官やジョン・ボルトン大統領補佐官を騙すことはできないが、直接トップ会談で、トランプ大統領と交渉すれば、騙せると考えていた。

 そして、トランプ大統領が罠に嵌って大胆な決断をしてくれると期待したのだと思う。

 会談初日の「自信はあるか」との記者の質問には「予断はしない、私の直感では良い結果が出ると信じている」と答えた。

 制裁解除と終戦宣言の成果を欲しがり、前のめりになっていたのは金正恩委員長だった。

 金正恩委員長の経験の少なさ、中国や韓国とは上手くいったという実績が、甘い期待を持たせることになったのではないだろうか。

3.会談が決裂した最大の理由は何か
 トランプ大統領は会談後の記者会見で「北朝鮮は経済制裁の全面解除を要求してきた」と明かしたうえで、米国が寧辺の核施設や北朝鮮が公表していない核関連施設の査察や廃棄を求めたところ、金正恩委員長氏が難色を示したため「立ち去ることを決めた」と述べた。

 米朝会談で合意に至らなかったのは、「北朝鮮の要求は全経済制裁解除だったから」とトランプ大統領やポンペオ国務長官が述べている。

 私は、実質はウラン濃縮施設のリストアップと廃棄を求めたことが最大の理由だったと考えている。

 ウランの濃縮については、遠心分離機を数千台揃えさえすれば、地下の施設だけでなく通常の工場でも発見されずに核物質を製造することができる。

 北朝鮮は、ウラン濃縮施設について明確にリストに挙げて、隠蔽して核物質を製造することはないということを表明しなければならない。

 かつて北朝鮮は、ウラン濃縮の兆候を数多く指摘されても「やっていない」と主張してきた。

 だが、隠し通すことが不可能になり、あるいは主張した方が国益に繋がると判断した場合には、「うそ」を撤回して「事実」を表明してきたという経緯がある。

 米国はウランの濃縮問題について、北朝鮮に隠され騙されてきた。今回も同じことが繰り返されれば、トランプ大統領は「能なし大統領」と呼ばれることになる。

 トランプ氏はこれだけは避けたいところだ。

4.金正恩委員長の失望と今後の予測
 北朝鮮メディアは会談直前、北朝鮮人民が経済再建を待ち望む大きな期待を報じたのだが、結果は予想に反して得るものは何もなかった。

 会談後、ベトナム公式訪問の映像を見ると、金正恩委員長の魂が抜けたような、ぼーっとした無表情の写真が散見された。

 このような写真が出たのは、父の金正日総書記の葬儀の時以来で、金正恩委員長が北朝鮮のトップに就いてからは初めてではないだろうか。

 金正恩委員長にとってはそれほどの衝撃だったと見ていい。

 金正恩委員長は、ベトナムから帰りの特別列車に戻ってから、怒り狂っていたかもしれない。

 今回の会談では、これまで経験したことがないほどの屈辱を味わわされたものと思う。

 金正恩委員長は、北朝鮮金一族の後継者として大事に育てられてきたから、これまで屈辱というものを受けたことがないのではないだろうか。

 金正恩委員長は大きな恥をかかされたわけだから、今回米国の手の内を読み取れなかった者たちへの粛清は免れないだろう。

 金正恩政権内部では、北朝鮮への経済制裁が継続されるという前提で、今後の対米戦略を大転換するほどの見直しをしているに違いない。

 短期的な対米戦略としては、以下の3つのいずれかであろう。

@引き続き友好的な戦略を進めるのか

A再び2017年と同じような恫喝する瀬戸際戦略に逆戻りするのか

B2つの中間として友好的だが恫喝の兆候だけ見せる戦略を取るのか

 対韓戦略としては、米国の動きを無視して友好関係を加速させる、南北関係を悪化させて韓国を動揺させる、ことなどが考えられる。

 長期的に見ると、もしも交渉が進展しなければ、再び過激な挑発に進む可能性が高いとみるべきであろう。

 予想を超える事態が起こる予感もしないわけではない。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55664

 
米朝首脳会談決裂でも、ご褒美を手にした金正恩
米韓合同軍事演習の終了に大喜び、日韓関係はさらに悪化も
2019.3.7(木) 渡部 悦和
【写真特集】視察する北朝鮮の指導者、金正恩氏
元山の靴工場を視察する金正恩朝鮮労働党委員長。朝鮮中央通信配信(2018年12月3日配信、撮影日不明)。(c)AFP PHOTO/KCNA VIA KNS 〔AFPBB News〕

 米朝首脳会談が終了した直後の3月2日、米国のパトリック・シャナハン国防長官代行と韓国の鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防相が、毎年春に実施していた大規模な米韓合同軍事演習を終了すると発表した。

 この米韓合同軍事演習は、実働演習(実際に部隊が行動する演習)である「フォールイーグル(Foal Eagle)」と指揮所演習(コンピューターや指揮統制通信システムを利用した指揮所の演習)「キーリゾルブ(Key Resolve)」である。

 今後は規模を縮小した新たな訓練に衣替えすることになる。

 これら2つの演習は米韓合同演習における最大の演習であり、昨年8月に予定されていた乙支(ウルチ)フリーダムガーディアンも中止されたので3つの大きな演習がすべて中止されることになる。

 大規模演習すべての中止は、一般の人が考える以上に各方面に大きな影響を与えることになる。

 当然、我が国も大きな影響を受けることになるので、今回の演習中止の影響について考察してみた。

トランプ大統領のツイート
 ドナルド・トランプ大統領は3月4日、次のようにツイートした。

 「軍事演習(私はウォーゲームと呼ぶ)については金正恩委員長との会談で話したことはない。フェイク・ニュース!」

 「(米韓合同軍事演習の中止に関しては)ずっと前に決断していた。なぜなら、それらの“ゲーム”にはあまりにも多額の金がかかるし、膨大な経費は返済されないからだ」

 米韓合同軍事演習でも最も大規模で最重要な演習を蔑むかのように「ゲーム」と呼び、そんな金食い虫のために多額の金は使えないというのだ。

 トランプ大統領は、米国が70年以上の年月をかけて築き上げてきた米国の前方展開戦略に関する基本的な認識を欠いている。

 米国の前方展開戦略は、米国の国益に基づき世界中で構築してきた同盟関係や友好関係の根拠になっている。

 日本に在日米軍を配置しているのも、韓国に在韓米軍を配置しているのも、米国の国益に沿った措置であり、米国主導の世界秩序を支える貴重な存在だ。

 しかし、トランプ大統領にとって、同盟関係は負担以外の何物でもないかのように振る舞っている。

 米国にとっての金銭的な損得のみで同盟関係を判断することは、将来に禍根を残すように思えてならない。

 米国の著名なシンクタンク「外交問題評議会(Council on Foreign Relations)」のリチャード・N・ハース会長は、3月4日付のツイッターで、次のように批判している。

 「(演習費用の)計算は意味をなさない。米国の国防費7000億ドルの中の(米韓合同演習経費)1400万ドルを節約することにより次のような問題が発生する」

 「米軍の即応性が低下する。米国の日本や韓国との同盟関係を弱体化させる。北朝鮮がリスクを取りやすくなる。韓国の北朝鮮に対する経済制裁破りに導く。日本が米国への依存を再考するようになる」

 このハース会長の指摘は本質をついていると思う。

「フォールイーグル」と「キー・リゾルブ」の価値
 そもそも、今回の中止の対象になったフォールイーグルとキーリゾルブとはいかなる意義を有する演習であろうか。

 まず、フォールイーグルは、世界最大の実動演習と言われていて、後方地域の安全確保・安定作戦、前方地域への重要物資の推進、特殊作戦、地上機動、水陸両用作戦、戦闘航空作戦、海上作戦、特殊作戦部隊への対処作戦などの広範な作戦を実施する。

 米軍の参加者は数万人、韓国軍の参加者は数十万人(最大で50万人参加)であり、いかに大規模な演習であるかが分かる。

 次いで、キーリゾルブについて説明する。

 キーリゾルブは、実動演習ではなく指揮所演習であり、韓国防衛を支援する米インド太平洋軍の作戦計画に基づいて行われている。

 指揮所演習の主たる目的は、指揮官の指揮統制能力の向上、幕僚の幕僚活動の能力の向上、米軍と韓国軍の調整能力の向上などだ。

 フォールイーグルは2001年以降、キーリゾルブの前身であるRSOI(Reception, Staging, Onward movement, and Integration)演習と一体となって実施されることになった。

 RSOIの各段階を説明すると、米軍を韓国内に受け入れる(reception)段階、韓国内で部隊と兵器を合体させる(staging)段階、部隊を朝鮮半島内の所定の戦略的位置に移動させる(onward movement)段階、既に到着した部隊と新たに到着した部隊を統合する(integration)段階がある。

 つまり、RSOI演習では、米国本土などから到着する米軍を受け入れてからすべての部隊を戦力発揮できる状態にする段階までを訓練する。

 このRSOIは、2008年にキーリゾルブと名称変更になったために、それ以来フォールイーグルとキーリゾルブが一体となった大規模演習が行われてきた。

金正恩委員長が最も恐れた演習
 北朝鮮との交渉の歴史を振り返って明らかなことは、「力を信奉する北朝鮮には、力を背景とした交渉しか機能しない。北朝鮮に対して融和的な交渉は機能しない」という事実だ。

 トランプ大統領は2017年末まで、「北朝鮮に対する最大限の圧力をかける」と主張し、その通りに行動してきた。

 その最大限の圧力路線こそが金正恩体制に大きな影響を与え、核実験の中断や弾道ミサイル発射実験の中断をもたらしたと思う。

 最大限の圧力の中で最も重要な手段が「国連の経済制裁」と軍事的圧力であった。

 軍事的圧力の中で大きな効果があったのは大規模演習フォールイーグルとキーリゾルブの実施である。

 金正恩委員長が最も恐れた事態は、演習であるフォールイーグルとキーリゾルブがそのまま実戦に移行し、米韓連合軍が北朝鮮を攻撃する事態だった。

 金正恩委員長は、自らが殺害される事態を恐れるからこそ、強硬にこの大規模演習に反対してきたのだ。この合同演習を中止することは、金正恩委員長に大いなる安心感を与えることになる。

北朝鮮の非核化がますます困難に
 まず北朝鮮が核ミサイルを放棄することはないことを再認識すべきだ。

 金正恩委員長は、核ミサイルの保有が自らの体制を維持する最も有効な手段であると確信している。だから今まで米国の軍事的圧力に抵抗し、国連の経済制裁を受けても核ミサイルの開発と保有を続けているのだ。

 フォールイーグルとキーリゾルブが中止になり、大きな脅威がなくなった金正恩委員長が北朝鮮の完全な非核化に応じるとはとても思えない。

 トランプ大統領が期待する「大規模演習中止が緊張緩和をもたらし、結果的に北朝鮮の非核化を推進する」とは私にはとても思えない。

 米国の北朝鮮への対応は、「すべての選択肢がテーブルの上にある」という「北朝鮮に対する最大限の圧力路線」に戻るべきだと私は思う。

米韓連合軍への悪影響
●演習をしない軍隊は使い物にならない

 訓練や演習をしない軍隊は、有事の際に使い物にならない。

 私は自衛隊の現役時代、「練磨無限」を合言葉にして訓練や演習に励んできた。訓練に訓練を重ねることにより、有事に能力を発揮する精強な部隊が出来上がるという確信があった。

 自衛隊での勤務が長くなり、階級が高くなって連隊(約1000人規模)、師団(数千名規模)、方面隊(数万規模)を指揮する立場になって初めて大部隊の演習の重要性が分かってきた。

 若い小隊長や中隊長の時代にも確かに訓練に励み、その階級における訓練で多くのことを学んだが、大部隊を指揮統率するためには別の能力が必要だと痛感したものだ。

 その能力を鍛えるのが大部隊の演習なのだ。

 「フォールイーグル」や「キーリゾルブ」は、米韓合同演習で最大の演習であり、米軍と韓国軍の大部隊指揮官や幕僚の能力を高める非常に貴重な機会だ。

 その演習の機会がなくなることは、間違いなく米軍や韓国軍、特に韓国軍の能力を低下させる。

●米韓合同の有事作戦計画の改善が難しくなる

 米韓合同軍は、保有する有事作戦計画を常に改善し続けていかなければいけない。

 その改善の有効な手段がフォールイーグルとキーリゾルブなどの大規模演習を実施し、そこから改善の教訓を得ることだ。

 すべての大規模演習を中止する悪影響はあまりにも大きいと言わざるを得ない。

●米韓同盟の形骸化

 米韓同盟を形骸化していく可能性がある。在韓米軍の存在意義を低下させ、将来的な撤退に導く可能性がある。

我が国が覚悟しなければいけないこと
●キーリゾルブの前身のRSOIについて説明したが、キーリゾルブでも、米国本土などから来援する米軍を受け入れてから全ての部隊を戦力発揮できる状態にする段階までを訓練する。

 実は、米本土から展開する米軍の一部は、日本の領土や領海を経由して朝鮮半島に展開する。

 その際に、在日米軍がその作戦を支援することになる。つまり、大規模演習が中止になることは、在日米軍の任務役割にも影響を与えることになる。

●トランプ大統領の日米同盟に関する言動には細心の注意を払わなければいけない。

 日米同盟について、金銭的な損得勘定で様々な要求をしてくることを覚悟しなければいけない。

 まず考えられるのが日米共同訓練についても「金がかかるから中止する」と言いかねないし、在日米軍の削減や在日米軍駐留経費の負担増額を要求してくる可能性もある。

 さらに、日米貿易赤字の解消を強烈に求めてくることも覚悟しなければいけない。日米同盟の根幹が問われる事態を覚悟しておいた方がいいかもしれない。

●大規模合同演習の中止により米韓同盟の存在理由が希薄化し、在韓米軍の存在意義が減少してくると、いずれは在韓米軍撤退が現実のものとなってくる可能性がある。

 在韓米軍が存在しているからこそ日米韓の軍事協力も可能である分野が存在する。

 例えば、朝鮮半島の状況が悪化し、在韓日本人の避難が必要な場合、自衛隊はNEO(邦人避難作戦)を実施するが、日韓のみの二国間では韓国側の協力は難しい。

 そこに在韓米軍がいると、米軍と協力してNEOを行うことが可能になる。在韓米軍がいなくなると自衛隊のNEOは非常に難しい作戦になるだろう。

 また、在韓米軍が撤退した状況下では、現在日韓で締結している軍事情報包括保護協定(GSOMIA)も破棄される可能性が高い。

 いずれにしろ、日韓関係はさらにぎすぎすしたものになるだろう。

●3月1日付のJBpress「決裂すべくして決裂した米朝首脳会談だが・・・(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55640)」で私は次のように書いた。

 「今のままでは、北朝鮮の核兵器、弾道ミサイル、化学兵器、生物兵器が残ったままになり、拉致問題も解決しない厳しい状態が続く可能性が高い」

 朝鮮半島の情勢は、我が国にとって望ましくない方向にどんどん進んでいる。

 思い出すのは、英国の第3代パーマストン子爵ヘンリー・ジョン・テンプルの「永遠の同盟国もなければ、永遠の敵対国もない。あるのは永遠の利害関係のみだ」という有名な格言だ。

 いまこそ我が国の本当の実力が試される時だ、国を挙げてこの厳しい状況を打破する以外にない。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55677

ドナルド・キーン氏の恩人はCIA東京支局長だった
日本文学の道を選ぶように勧めたポール・ブルーム氏
2019.3.7(木) 新潮社フォーサイト
新潮社の会員制国際情報サイト「新潮社フォーサイト」から選りすぐりの記事をお届けします。
インタビューに答えるドナルド・キーン氏(2015年12月28日撮影、写真:AP/アフロ)
(文:春名幹男)

 日本文学に偉大な貢献を為し、最後は日本人として亡くなったドナルド・キーン氏(享年96)。本当に希有な元アメリカ人だった。

 私は約20年前、一度だけ会うことができた。彼の自宅で貴重なインタビューに応じてくれた。

 その時にお借りして複写した写真が拙著『秘密のファイルーCIAの対日工作』(新潮文庫)に掲載されている。写っているのは、ポール・ブルーム氏。戦後の1948年、初代の米中央情報局(CIA)東京支局長として赴任した。吉田茂首相とも親しい伝説的なスパイだった。真珠湾攻撃前の1941年夏、米ノースカロライナ州ブルーリッジ山脈の谷あいでくつろぐブルーム氏をキーン氏が撮った写真である。

日本文学の道を選ぶよう勧めた
 2人は前年、コロンビア大学で知り合った。ブルーム氏は横浜・山手の生まれで当時BIJ(Born In Japan)と呼ばれた。フランス人民戦線のレオン・ブルム首相の遠縁で、父はフランス人、母はアメリカ人でいずれもユダヤ系だった。一家でフランスに戻ったが、ドイツ軍のパリ入城でニューヨークに逃れた。40歳を過ぎていたが、日本語を学び直そうとしていた。

 世界各地を旅していたブルーム氏はまだ18、19歳のキーン氏に自分の経験を話した。実は日本文学の道を選ぶよう勧めたのは、ブルーム氏だった。ブルーム氏との出会いが、キーン氏の転機となった。

「フランスで育ったアメリカ人はたくさんいる。日本のことをよく知っているアメリカ人は少ないので日本文学をやった方が君のためになる」と言われたという。

 この2人ともう1人のアメリカ人で日本と中国を研究していた人物、そしていわゆる「帰米2世」(米国に生まれ、中等教育を日本で受けて米国に戻った2世)の猪俣正という青年の4人で合宿中に撮ったものだった。

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 しかし、日米開戦。ブルーム氏はワシントンに向かい、発足したばかりの戦略情報局(OSS)に入り、第2次世界大戦の末期はスイス・ベルンで、後のCIA長官アレン・ダレスの下で終戦工作に従事した。

日本軍国主義と戦った
 他方、キーン氏は海軍日本語学校で日本語を学び、戦時中はその日本語能力を使って、各地で日本軍捕虜の尋問に携わった。

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 その時の日本語教官に、邦字紙『羅府新報』記者や『朝日新聞』ロサンゼルス通信員をしていた1世の記者、坂井米夫がいた。坂井は終戦前の1945年にOSSに入り、「日系人要員を日本国内に潜入させ、天皇に無条件降伏を直訴する」という奇抜な計画を立案した。

 当時の日本軍人は戦陣訓で「生きて虜囚の辱めを受けず」と教えられており、捕虜になってどう対応すべきか分からず、キーン氏らの質問に対して、日本軍の内情をすらすら答えたようだ。

 いずれにしても、ブルーム、キーン、坂井の3氏らは日本軍国主義を嫌い、戦った人たちだった。

 戦後、1947年にCIAが発足、ブルーム氏らがCIA東京支局を設立した。

 ブルーム氏は文人肌で、欧米で日本について書かれた稀覯本(きこうぼん)を含む文献を収集するのが趣味だった。現在、横浜開港資料館にブルーム・コレクションが置かれている。

 他方、三島由紀夫らとも交遊、戦後はCIAの仕事もやりながら、時折キーン氏らとも会っていただろう。

 しかし、キーン氏は自分からブルーム氏との関係を明かすことはほとんどなかった。私には、懐かしい表情を浮かべて話してくれたが、インテリジェンス関係の人物のことを軽々に話して変な陰謀説に巻き込まれるのを避けたかったのかもしれない。


春名幹男
1946年京都市生れ。国際アナリスト、NPO法人インテリジェンス研究所理事。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授、早稲田大学客員教授を歴任。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『米中冷戦と日本』(PHP)、『仮面の日米同盟』(文春新書)などがある。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55653
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/626.html

[国際25] 習近平がピンチ、中国「全人代」に流れる不穏な空気 トランプ「キム氏に失望」米韓合同軍事演習中止、胸なでおろす北朝鮮と中国
習近平がピンチ、中国「全人代」に流れる不穏な空気
政府内で非難を浴びる習近平の経済政策と個人崇拝路線
2019.3.7(木) 福島 香織
中国・北京の人民大会堂
 年に一度の中国の国会に相当する両会(「全国政治協商会議」と「全国人民代表大会(全人代)」)が今週から始まった。全国政協は3月3日に開幕し、13日に閉幕、全人代は5日に開幕、閉幕日は15日が予定されている。

 今年の両会の雰囲気はかなり異常である。どういうふうに異常なのか。

習近平は孤立している?
 まず秋の中央委員会総会をスキップしている。

 中国の国家運営を行っているのは共産党。本来は前年(2018年)秋の共産党中央委員会総会で可決したことを春の両会で国内外メディアを通じて人民に広く知らせるというのが中国の政治システムである。ところが、一番重要な中央委員会総会がないまま全人代が開かれた。これが中国の政治にどんな影響を与えるのかまだ分からないが、不穏な空気が漂っているのは確かだ。

 ちなみに本来秋に開かれるはずだった第13期全国人民代表大会第1回会議・第3回全体会議は昨年の全人代直前の3月に開かれ、憲法改正案が可決された。改正憲法では「党の指導」と言う言葉が入れられ、国家主席任期の制限を撤廃した。それは習近平が長期個人独裁を固めるための布石といわれ、習近平独裁が始まる、といった論調の報道が国内外であふれた。

 だがその後、習近平独裁を阻むさまざまな逆風が吹く。米中貿易戦争、中国経済の急減速、習近平の個人崇拝やその他政策に対する体制内知識人たちの公然とした批判・・・。「習近平は2期目に入って、その政策方針を中央委員会で可決する中央委員会総会(四中全会)を秋に開かねばならなかったが、開けなかったのは、総会で対米政策や経済政策、個人崇拝路線に対する非難の集中砲火を浴びるのではないかと恐れたからだ」という人もいる。

 そういって中央委員会総会を避けたものの、両会を開くためには政治局会議や中央工作会議を開いて、個々の政策を打ち出さねばならない。だがニューヨークタイムズが関係筋情報として報じていたところによれば、両会直前に開かれた政治局会議で、ある人物がテーブルを叩いて、習近平の現行政策を責めたとか。第19回党大会で選ばれた政治局メンバー25人のうち13人は習近平派だ、という説もあったが、今の政治局内で習近平は孤立しているのだろうか。

小学生の喧嘩みたいな習近平サイドの対応
 またフランス国際放送(RFI)によれば、2月末に公布された「党の政治建設強化に関する意見」は、習近平が激しい党内部批判にあったため、それに対する党員および両会メンバーに対する警告の意味もある、と上海政法学院国際事務・公共管理学部副教授の陳道銀が指摘しているらしい。

 この「意見」に書かれている文言をちょっと抜き出してみる。

「党内に根本的に解決されていない問題がある」

「一部の党組織、党幹部は政治をおろそかに見て、政治問題を他の問題に比べて語らず、甚だしきは、中国の特色ある社会主義の方向性とはかけ離れた重大問題があるという」

「党の政治路線を裏切り、歪曲し、否定する言動と闘争することを決意せねばならない」

「党中央の権威と集中統一指導を維持すること、その鍵は習近平総書記を党中央の核心とし、全党の核心的地位とすることを維持すること、この“二つの維持”を堅持せよ」

「中央の重大政策の決定と習近平総書記の重要指示を貫徹実施したかを精査する問責メカニズムを完成させよ」

「“二つの維持”からかけ離れる一切の誤った言動を防止し糾弾することを堅く決意し、いかなる方式の“低級紅”(分かりやすい称賛、ごますり)や“高級黒”(分かりにくい批判、風刺や皮肉)をやってはならず、党中央に面従腹背の人間を決して許さず、どちらにもいい顔する両面派も許さず、偽忠誠を決して許さない」・・・。

 こういった文言から想像するに、習近平は自分の掲げる政治路線に難癖をつけられ、習近平が言うところの中国の特色ある社会主義路線から改革開放経済に戻せとか、もっと政府の干渉を減らして経済を市場化しろ、とか迫られたのだろう。それで、この反論を展開した。

 党の(俺の)政治路線にケチをつける奴は裏切り者だから戦うぞ、俺の党の核心的地位は絶対守る、俺の指示を貫徹しないお前たち官僚にも責任があるんだ、だから問責制度をもっと強化する、おべっか使いも遠回しの批判も、面従腹背も、偽忠誠もたくさんだ! ・・・平たく言えばこんな感じで、まるで小学生の喧嘩みたいだ。

 こんな調子で春の両会に突入するのだから、3月15日までの期間、全人代は平穏に済むのだろうか。

雇用対策、減税、2019年の経済政策のポイント
 全人代はまだ始まったばかり。とりあえず、初日の「政府活動報告」の中身を精査しておこう。

 2019年の経済政策のポイントとしては、以下の項目が挙げられた。

(1)今年のGDP伸び率目標が6〜6.5%と、下に大きく振れてもいいように幅をとられた。

(2)1100万の就業機会をつくり、調査失業率を5.5%前後、登録失業率を4.5%以内に抑える。就業優先政策をとる

(3)2019年の政策で強く打ち出されているのは減税、税制改革。製造業の増値税(日本の消費税に相当)率は16%から13%へ。交通運輸業、建築業は10%から9%へ。

(4)貨幣政策を穏健に適度に調節し、水をじゃぶじゃぶに流すのではなく、臨機応変に多様な方法で流動性の合理的な余裕を維持する。

(5)零細民営企業を支援、大手国有商業銀行による零細民営企業への融資を30%以上増やす。

(6)ビッグデータ、AI分野の研究開発により、新時代の通信技術、バイオ医療、EV、新素材、ハイテク装備などの新興産業を育成、モバイルネットの通信料金を20%以上下げる。

(7)国内投資は鉄道投資8000億元、水運交通1.8兆元。中央予算内の投資額は前年比400億元増で5776億元。

(8)外資吸引政策として、上海自由貿易テスト区を増設、海南自由貿易テスト区を推進、自由貿易港の建設を検討。より多くの領域で外資独資経営を許可し、債権市場の開放をパーフェクトにする。取り急ぎ国際通行経貿ルールに沿うように政策の透明度と執行の一致度を高め、国内外企業を同一に扱い、公平競争の公正市場環境を作り出し運営する。外商合法権益保護を強化する。

(9)環境汚染については、二酸化硫黄、窒素酸化物の排出量を3%削減、PM2.5濃度の削減を重点的に行う。化学的酸素要求量、アンモニア窒素排出量を2%削減。

国防費は7.5%増、軍備増強を継続
 国防と軍事については引き続き軍隊の改革と軍備増強を推し進める。

「習近平の強軍思想を国防・軍隊建設の指導的地位におき、党の軍隊に対する絶対的指導の根本原則と制度を堅持し、軍事委員会の責任制度を全面的に深く貫徹する」

「新時代の軍事戦略方針を貫徹し、実戦化軍事訓練の水準を高め、国家主権、安全、発展利益を断固維持する。国防・軍隊改革を継続する。各レベルの政府は国防・軍隊建設を関心を持って支持し、(政府・人民は軍人・軍人家族を擁護し、軍は政府・人民を擁護する)“双擁”活動を展開する」

 予算案をみれば国防費は7.5%増、1兆1898元規模。厳しい財政から20兆円近くを割き、強軍化建設に力を入れている。

台湾独立派の「陰謀」は許さない
 香港マカオ台湾政策については以下のように独立派に強い牽制をかけ、香港・マカオの一体化や台湾統一を急ぐ姿勢を見せた。

「“一国二制度”“香港人が香港を統治する”“マカオ人がマカオを統治する”の高度な自治方針を全面的に正確に貫徹し続け、中国憲法と基本法に厳格に依拠して実施する。香港、マカオの特別行政区政府、行政長官の施政を全面的に支持する」

「香港・マカオとともに“一帯一路”建設と広東香港マカオグレートベイエリア建設の重大チャンスをしっかりつかみ、自身の優位性をさらに発揮し、全面的に内地との互恵協力を深化させる」

「台湾工作に対する大政策方針を堅持する。『台湾同胞に告げる書』発表40周年記念式典での習近平の重要演説精神を全面的に貫徹し、一つの中国原則と“92年コンセンサス”を堅持し、両岸関係の平和的圧点を推進し、祖国平和統一プロセスを推進する。台湾独立派による分裂の陰謀・行動に断固反対し、これを抑制し、国土主権と領土保全を断固維持する」

「貿易摩擦には妥当に対応してきた」
 米中関係については、まず、2018年の回顧の部分で「過去一年、中国は深刻な外部環境の変化に直面した。経済のグローバル化は曲折にあい、多極主義は衝撃を受け、国際金融市場は震撼した。特に中米貿易経済摩擦は一部企業の生産、経営、市場先物に不利な影響を与えた」と受け止め、「この一年、中国は習近平を核心とした党中央の政策決定と実施を深く貫徹し中米経貿摩擦に妥当に対応してきた」と振り返る。

 そのうえで、外交方針として以下のような項目を挙げた。

「2019年、地域の全面的経済パートナーシップ協定を推進し、中日韓の自由貿易区、中国EU投資協定交渉を推進し、中米貿易交渉を継続する」

「中国は互恵協力、ウィンウィン発展を堅持し、平等な協議による貿易問題の解決を一貫して主張してきた。承諾したこと真摯に履行し、自身の合法的権益を断固守る」

「主要大国との話し合いと協調協力を強化し、周辺国家との関係を深化させ、発展途上の国家との互恵協力を開拓する。積極的にグローバルな挑戦に対し妥当な対応を行い、地域のホットイシューに対する解決のために、中国はより建設的な提案を多く行っていく」

「習近平」色を消そうとしている?
 印象としては、(習近平が壊した)中国の経済政策に対する信用の失墜を必死に回復し、対外関係を修復しようとする李克強の生真面目なところがにじむ報告であると思う。

 今回の報告では「改革」という言葉が105回も繰り返された(昨年は97回)。昨年の改革開放40周年記念で、習近平は重要演説で「改革できること、すべきことは改革するが、できないこと、すべきでないことは改革しない」と語り、「改革しない」宣言をしたと言われたが、こうした習近平路線を打ち消しにかかっている気もする。その一方で、毛沢東にもケ小平にも触れず、「習核心」を強調している。習近平が嫌う“低級紅”“高級黒”そのままの表現ではないか? ひょっとすると政治局会議でテーブルを叩いて習近平を責めたと言われるのは李克強だろうか?

李克強首相を再選 中国
中国・北京の人民大会堂で開催中の全国人民代表大会(全人代)で、首相に再選された後、習近平国家主席(左)と握手する李克強首相(2018年3月18日撮影)(c)AFP/NICOLAS ASFOURI〔AFPBB News〕

 就業優先政策を初めてマクロ政策として取り上げているところを見ると、昨年の大量失業が深刻に社会の不安定化を招いていると実感しているのだろう。だが、中国の最大の経済問題である不動産政策についての言及がなく、不動産バブルをどうするつもりなのか見えない。

 また一帯一路戦略は何度も強調しているが、「中国製造2025」戦略には一言も触れなかった。米中貿易戦争が中国をそこまで追い込んだと言える。2月下旬に行われた米中通商協議では、米国側の要求8項目に対して5項目は中国が妥協している。この全人代でも、外国企業に技術移転を強制することを禁じる外商投資法が成立する見込みだ。

 だが、最大の問題は全人代報告の中身ではなく、それを実行する体制内の対立にある。個人的には、いろいろ漏れ伝えられている体制内の問題が表面化するのではないかという視点で、全人代を注目している。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55678

 
ワールド2019年3月7日 / 06:49 / 4時間前更新
トランプ大統領、ミサイル施設復旧事実なら「キム氏にかなり失望」
Reuters Staff
1 分で読む

[ワシントン 6日 ロイター] - トランプ米大統領は6日、北朝鮮のミサイル施設に一部復旧の兆候があるなどと伝えた各種報道が事実なら、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長への失望は大きいとの認識を示した。

トランプ氏は、北朝鮮が合意に違反しているかとの記者団の問いに「実際にそうなら非常に残念だ」と発言。さらに「極めて初期段階の報道で、判断するのは時期尚早。様子を見たい」と語った。「(報道が事実なら)金委員長にはとても、とても失望するだろうが、そうはならないと思う。最終的には解決されるだろう」とも述べた。

先週の米朝首脳会談は物別れに終わったが、トランプ氏は「非常に厄介な問題があった。問題を解決する必要がある」と述べた。金委員長を念頭に置いたのか、「関係は良好だ」と付け加えた。

聯合ニュースによると、韓国の情報機関、国家情報院(NIS)は、北朝鮮が昨年解体を開始した東倉里の西海(ソヘ)ミサイル発射施設の一部に復旧の兆候があることを確認した。[nL3N20S4AN]

これについて、米政府筋は復旧活動が米朝首脳会談前に始まった可能性が高いとの見方を示した。ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、北朝鮮が非核化に向け動かなければ、制裁強化を検討する考えを示している。[nL3N20T0N5]
https://jp.reuters.com/article/northkorea-usa-trump-idJPKCN1QN2RU


 

米韓合同軍事演習、中止の理由は「金がかかる」から胸をなでおろす北朝鮮と中国
2019.3.7(木) 北村 淳
フォール・イーグルに参加中の米海軍強襲揚陸艦ワスプ
 アメリカ国防総省は、毎年春に実施してきたアメリカ軍と韓国軍の大規模合同軍事演習「フォール・イーグル」と、それと並行して行われてきた米韓合同図上演習「キー・リゾルブ」を中止することを決定したと発表した。

北朝鮮にとっては最大の軍事的脅威
 フォール・イーグルは、1997年から毎年韓国で開催されてきた世界最大規模の軍事演習の1つである。アメリカ軍側も韓国軍側も海軍、海兵隊、陸軍、そして空軍の部隊を参加させて実施される米韓統合軍総合軍事演習である。2008年からは、指揮官レベルの高度なコンピューターシミュレーションによる合同図上演習、キー・リゾルブも同時に開催されてきている。

フォール・イーグルに参加中の米韓海兵隊上陸部隊
 いまだに国際法上は休戦状態にある朝鮮半島の警戒監視にあたり、米韓軍事同盟の責務を果たすために韓国に駐留を続けている在韓米軍にとって、フォール・イーグルとキー・リゾルブは突出して重要な軍事訓練である。

 また、大規模な統合部隊を実戦さながらに機動させるフォール・イーグルは、アメリカ軍にとっても貴重な機会である。またアメリカとしては、大規模部隊展開能力を北朝鮮や中国に見せつけることによって抑止効果を生み出そうという目論見もある。

 もちろん北朝鮮にとっては、アメリカ海軍空母部隊やアメリカ海兵隊上陸部隊などが参加して、朝鮮半島で世界最大規模の軍事演習を繰り広げるフォール・イーグルは、軍事的挑発以外の何物でもない。それどころか、軍事演習を口実にして大軍を集結させ戦争に突入した事例は少なくないため、まさに北朝鮮にとっては最大の軍事的脅威なのである。

 金正恩政権だけではない。北朝鮮の背後に控える中国にとっても、フォール・イーグルが最大限に不快極まる軍事演習の1つであることは論を待たない。

フォール・イーグルに参加中の米空母カール・ビンソンと米韓艦艇
米軍首脳は中止したくなかった
 このようにフォール・イーグルは、在韓米軍にとってだけでなくアメリカ国防当局にとっても戦略的に極めて重要な軍事演習である。しかしトランプ大統領は、莫大な経費がかかるこの種の軍事演習は中止すべきであるとの考えを表明していた。

 昨年(2018年)には、2月に平昌オリンピック・パラリンピックが開催され、また6月には米朝首脳会談の開催も予定されていたため、外交的見地からフォール・イーグルとキー・リゾルブの開催が危ぶまれた。

 しかしながら、米国防当局には中止する考えはなく、時期を調整するとともに規模を若干縮小して実施することとなった。

 昨年11月、マティス国防長官は、「2019年春に予定されているフォール・イーグルならびにキー・リゾルブは継続して実施するが、アメリカと北朝鮮の外交関係の進展に水を差さないように、規模を若干縮小して継続する」との方針を表明した。国防当局にとっても、北朝鮮の非核化はぜひとも実現させたい目標である。そうである以上、北朝鮮にとって最大の軍事的脅威の1つであるフォール・イーグルを若干控えめに実施することは、マティス長官にとっても妥当な方針であったのだ。

 米軍首脳は、米朝交渉が始まっても北朝鮮軍の脅威は決して低下しておらず、米韓合同軍事演習を継続する必要性があると考えていた。

 第2回米朝首脳会談前、在韓米軍司令官を兼ねる太平洋陸軍司令官、ロバート・エイブラムス陸軍大将は、「北朝鮮の軍事力の変化は皆無、あるいは極めてわずかである」と連邦議会で証言した。また、エイブラムス司令官は、北朝鮮の軍事システム開発は、アメリカ、韓国、そして周辺地域の同盟国に対して極めて危険な脅威となっていると指摘した。実際に北朝鮮軍がこの冬に実施した冬季軍事演習はこれまでにない大規模なものであった。

 これ以前の連邦議会公聴会でも、エイブラムス大将は「(2018年8月の)米韓合同軍事演習(ウルチ・フリーダム・ガーディアン)を中止したことによって、在韓米軍の即応性がわずかなものではあるとはいっても低下した」と証言している。したがって、在韓米軍司令部としては、これ以上在韓米軍の即応性が低下し、米韓同盟の抑止力が低下することを防ぐためにも、マティス国防長官が表明したように「フォール・イーグルならびにキー・リゾルブは継続するべきである」とホワイトハウス側に釘を刺したものと思われる。

 しかしながら、そのホワイトハウスでは、すでに2018年末に、ともに海兵隊大将という職歴があり、フォール・イーグルのような大規模軍事演習の価値を熟知しているジョン・ケリー大統領首席補佐官ならびにマティス国防長官が辞任してしまった。そのため、在韓米軍司令官の警告にもかかわらず、「大金がかかる大規模軍事演習は中止」というトランプ大統領のかねてよりの持論が、「北朝鮮の非核化の可能性に水を差す挑発的な大規模軍事演習は差し控えるべきである」という外交的論理と相まって、実現してしまったのであろう。

米韓軍事演習が復活する条件
 もっとも、フォール・イーグルが開始される1997年以前にも、アメリカ軍と韓国軍の間では大規模な合同軍事演習が行われていた。「チーム・スピリット」という米韓合同演習が1976年から93年まで実施され、フォール・イーグル同様に北朝鮮にとっては最大の軍事的威嚇となっていた。しかし、アメリカと北朝鮮との外交関係の進展が期待されたため94年から96年にかけては大規模な米韓軍事演習は中断されたのだ。

フォール・イーグルに参加中の米空軍B2ステルス爆撃機
 このような前例もあるため、フォール・イーグルが中止されたとはいっても、アメリカ当局が「北朝鮮との真剣な外交交渉は無意味である」という判断を下した場合には、再びフォール・イーグル以上の規模の米韓軍事演習が復活するかもしれない。

 しかしながら、チーム・スピリットが中止された際には、大統領から「莫大な費用がかかる軍事演習は中止すべきだ」といった声が上がったことなどなかった。一方、今回の米韓軍事演習の中止は、少しでも北朝鮮の非核化の気配が存続する限り、そしてトランプ政権が存続する限り、継続される可能性がある。

 いずれにせよ、当面の間は、北朝鮮そして中国にとって好ましからざる大規模軍事演習が2つ消えたことだけは事実である。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55670
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/627.html

[環境・自然・天文板6] 時間の歪みが観測できる!日本発「光格子時計」の衝撃
【第151回】 2019年3月7日 週刊ダイヤモンド編集部 ,小栗正嗣 :週刊ダイヤモンド編集部論説委員
時間の歪みが観測できる!日本発「光格子時計」の衝撃
「光格子時計」 香取秀俊/東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻教授
香取秀俊(東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻教授)
Photo by Yoshihisa Wada
 香取秀俊は「光格子時計」の発明者である。光格子時計とは、特別な波長のレーザー光で作ったごく小さな格子の入れ物に、100万個ものストロンチウム原子を入れ、それぞれの原子の振り子の振動数を同時に観測することで、驚異的な精度を実現する時計だ。
 私たちの生活を支える「秒」の単位には基準がある。かつては地球の自転速度から決められたが、1967年に英国でセシウム原子時計が発明されてからは、これが物差しとなった。
 セシウム原子の精度は、発明当時に10桁(10のマイナス10乗)、その後の進歩で15桁という精度となっている。6000万年に1秒ずれる計算になる。
 これでも十分な精度に思えるが、光格子時計が刻むものはレベルが違う。精度は18桁、ずれは300億年に1秒という、まさに超が付く高精度なのである。
 この時計という道具の革新は、さまざまな分野で、大きなインパクトをもたらす。
未開拓の道を選んで歩き
「魔法の波長」を発見
 香取が光格子時計のアイデアを初めて披露したのは、2001年に英国で開かれた原子時計の国際会議でのことだった。7年に1度しか開かれない、原子時計研究の重鎮が集う国際会議だ。
 この当時の王道を行く先端研究は、捕まえた単一イオンを見る原子時計「単一イオン時計」だった。「次世代の原子時計はこれで決まり」と多くの研究者がこのテーマを追い掛けていた。
 博士課程修了後の94〜97年、香取がポスドク(客員研究員)として籍を置いていたドイツのマックスプランク量子光学研究所もしかりだ。
 世界の俊英が集うこの研究所では、毎週のようにセミナーが開かれ、世界のトップの研究者が最新の研究成果を披露し、情報交換に躍起になっていた。
 97年に日本に帰った香取は、彼我の差に頭を抱えた。最先端研究である単一イオン時計を日本で研究しても、はなから勝負にならない。全く太刀打ちできない。
 こうなれば、人がやらないような研究で「人の行く道の裏」を行くしかない。誰も分け入らないようなルートで山に登るしかない。
 日本に帰国後、参加した五神真・現東京大学総長のERATO(創造科学技術推進事業)プロジェクトでも、未開拓の分野へのチャレンジを自らに課した。
 それが光格子時計で大きな役割を果たすことになる「魔法波長」の発見につながった。
 光格子時計では、レーザー光の干渉でできる光の格子に、原子を閉じ込める。そのとき、一般的には原子のエネルギーが変化し、時計の性能が低下してしまう。
 しかし、特定の波長のレーザー光を使って原子を閉じ込めると、原子が吸収する光の振動数はその影響を受けないことを発見した。この波長が「魔法波長」だ。
 原子時計の重鎮たちが集った国際会議に話を戻そう。香取が初披露した光格子時計に対する反応は微妙なものだった。原子時計研究の王道からすれば“突拍子もない”とあって、「実現させるのは難しいのでは」「面白いではないか」と評価は相半ばした。
 ところが、その直後に若手研究者対象の戦略的創造研究推進事業さきがけの資金を得て、光格子時計づくりに着手するや、03年には早くも魔法波長の測定に成功。突拍子もないはずの光格子時計の基盤は、とんとん拍子で整った。
 そこからは様相が一変。米国、欧州などの研究者チームが続々と研究を始め、今、世界で30近くのグループがより高精度の光格子時計づくりとネットワークづくりを目指し、しのぎを削っている。中国も割って入り、うかうかしていられない状況だ。
ゆがみの精密測定で分かる
地下で何が起こっているか
 現在のセシウム原子時計による秒の定義が、この10年ほどで光格子時計によって再定義されるのはほぼ間違いない。この革新的な道具を使うことによって、さまざまなことが可能になる。
 香取がすでに始めているのは、アルバート・アインシュタインの一般相対性理論の検証だ。相対論は、重力は空間と時間をゆがめるとする。そのゆがみが確認できるというのである。
 重力が強い所、つまり低い地点では時間がゆっくり進むとされている。高い地点と低い地点では、その重力差から時間のずれが生まれる。それを光格子時計で測定し逆算することで、二つの地点の高低差を測ることができる。
 香取らのグループは16年、約15キロメートル離れた東京大学と理化学研究所の光格子時計を光ファイバーで結んで比較し、センチメートルレベルで標高差を計測することに成功している。
 18年には高さ450メートルの東京スカイツリーの展望台に小型化した光格子時計を設置し、地上に比べてどれだけ時間が速く進むのかという検証も始めた。
 光格子時計は時計の概念を変えるかもしれない。時間を計り、確認し合うための道具から、時空のゆがみを利用した全く新しい道具に生まれ変わり得る。
 例えば、火山活動や地震による地殻変動などによる標高差のリアルタイムの変化、質量分布の変化を測定することで、見えない地球の内部で何が起こっているのかつかむセンサーになるかもしれない。地下のマグマの位置だけでなく、地下資源を探ることも可能だろう。
 小型の光格子時計がネットワーク化されることで、自動運転などのインフラ環境が飛躍的に高まる未来も想像できる。日本電信電話、島津製作所などと共同で時空間情報の共通プラットフォームを構築する未来社会事業プロジェクトも動きだした。
 全く新しい時空のインフラが登場する日は、そう遠くはない。(敬称略)
(「週刊ダイヤモンド」編集部 小栗正嗣)
【開発メモ】ストロンチウム光格子時計
 下の写真は、18桁の精度で1秒を刻むストロンチウム光格子時計の本体。光格子という光の波長よりも小さな籠状の入れ物を多数作り出し、そこに100万個の原子を閉じ込めて同時に観測する。例えば、東京と九州の時計をつなげて実験すると、潮汐の効果によって6時間に14cm、東京と九州が相対的に上下するのが見えるはずである。

https://diamond.jp/articles/-/196028

http://www.asyura2.com/15/nature6/msg/699.html
[政治・選挙・NHK258] 平成日本の過ち、「滅びの40年」回避できるか
コラム2019年3月7日 / 10:54 / 3時間前更新オピニオン:

平成日本の過ち、「滅びの40年」回避できるか

半藤一利 作家
4 分で読む

[東京 7日] - 幕末から昭和まで、歴史を見つめてきた作家の半藤一利氏は、平成の日本は国家に目標がなく、国民も基軸を失いつつあると指摘する。

日本の近現代は40年サイクルで転機が訪れてきたとし、現在の不穏な世界情勢の中、バブル崩壊から次の節目である2032年に向けてどういう国にしたいのか、新しい時代を生きて行く人たちは真剣に考えるべきだと警鐘を鳴らす。

同氏の見解は以下の通り。

日本の近現代は京都の朝廷が開国に方針転換した1865年に始まり、そこから40年周期で節目を迎えている。1905年に日露戦争に勝って列強の仲間入りをし、1945年にそれまで築き上げた大日本帝国を壊滅させた。占領の空白期を経て1952年から新しい国家の建設に乗り出し、40年かけて経済大国への階段を駆け上がった。

そしてバブルが崩壊し、現在の40年間は1992年に始まった。この史観が正しければ、次の転機は2032年に訪れる。果たして滅びの40年になるのか、それとも態勢を立て直し、新しい国造りの40年にできるのか。

作家の半藤一利氏。2月に東京で撮影(2019年 ロイター/Nobuhiro Kubo)
近代日本が経験した過去3度の40年は、いずれも国家に目標が、国民に機軸があった。最初は富国強兵と立憲君主制の天皇、戦後は復興と平和憲法。真ん中の40年も、間違ってはいたが、アジアに冠たる帝国を建設するという目標と、「現人神」の天皇という機軸があった。しかし、今の日本は国家に目標がない。憲法改正を叫ぶ声が高まり、国民の機軸も失われつつある。

平成に入ってからおかしくなったように思う。戦後どれほど苦労して日本を再建したか、そのことを知る世代がいなくなり、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」という栄光だけを背負ったリーダーに代替わりした。開国から苦労して近代国家をつくり上げた世代が引退し、一等国になった栄光だけを知る世代に交代した日露戦争後の40年間のようだ。

<平成は出だしでつまずいた>

そもそも平成は、出だしで少し間違えた。1989年6月に中国で天安門事件が発生し、11月にベルリンの壁が崩壊、12月にルーマニアのチャウシェスク大統領が暗殺されて東欧諸国で民主化革命が起きた。一方、バブル真っ最中だった日本は、当時サラリーマンだった私を含めて左うちわで浮かれ、世界が大きく変化していることに目を配らなかった。

その後も日本はバブルの処理、阪神・淡路大震災、オウム真理教による地下鉄サリン事件と国内問題に追われ、国際情勢から取り残された。今もそれは続いており、日本は世界の変化についていけていない。国際連盟を脱退して世界と関係を絶った戦前の姿に重なる。

今の世界は不穏だ。第1次世界大戦後の情勢とよく比較されるが、1921年に就任したハーディング米大統領は、国際連盟の創設に尽力したウィルソン大統領の平和主義を転換し、現在のトランプ大統領に似た米国第一主義を掲げた。欧州諸国も自国第一主義に走り、1929年の大恐慌がそれに拍車をかけ、ヒトラーやスターリンなどの指導者が出てきた。

とはいえ、歴史は必ずしも繰り返されるわけではない。日本人も、いつまでも軸がないまま、ふわふわとしていることはないだろう。2032年にこの国がどうなっているのか、私のような年老いた人間が語るべきことではない。平成が終わり、その先の時代を生きていく若い人たちが、日本をどういう国にしたいのかを真剣に考える必要がある。

<次代の天皇のあり方>

今の天皇陛下は11歳で終戦を迎え、象徴天皇とは何か、平和国家とは何かをずっと考えてこられたと思う。それが形として現れたのが、被災地への慰問や戦地への慰霊の旅だったのであろう。

 第2次世界大戦中の激戦地サイパン島を訪れ、多数の犠牲者が出た北部の岬「バンザイクリフ」で慰霊した天皇・皇后両陛下。2005年6月撮影(2019年 ロイター/Eriko Sugita)
2005年にサイパンを訪れた天皇陛下は、戦時中に多くの人が亡くなったバンザイクリフに立ち、皇后陛下と並んで深々と頭を下げられた。その後ろ姿の写真を見たとき、天皇陛下は本気で平和というものをお考えになっていると感じた。

ご自身が形作った象徴天皇像を次の天皇も受け継ぎ、国民統合のため努力をしてくれるだろうと確信して譲位を決められたのだと思う。

これからの時代、天皇にどういう存在でいてもらいたいのか、国民が考えて見いだしていくべきだ。

*本稿は、ロイター特集「平成を振り返る」に掲載されたものです。半藤一利氏へのインタビューをもとに、同氏の個人的見解に基づいて書かれています。

*半藤一利氏は作家。1930年東京生まれ。東京大学文学部卒業後、文芸春秋社に入社。編集者のかたわら、「日本のいちばん長い日」など第2次世界大戦をテーマにした本を執筆。「週刊文春」、「文芸春秋」の編集長などを歴任後、著作活動に入る。著書に「ノモンハンの夏」、「昭和史1926─1945」、「昭和史 戦後篇 1945─1989」、「語り継ぐこの国のかたち」などがある。

(聞き手:久保信博)
https://jp.reuters.com/article/opinion-kazutoshi-hando-idJPKCN1QO050
http://www.asyura2.com/19/senkyo258/msg/294.html

[経世済民131] 円全面高、中国貿易統計で世界景気懸念が拡大−ドルは111円割れ 景気動向下方へ50カ月ぶり 地銀再編で資金調達一変、備え
景円全面高、中国貿易統計で世界景気懸念が拡大−ドルは111円割れ
小宮弘子
2019年3月8日 12:00 JST 更新日時 2019年3月8日 15:27 JST
東京外国為替市場では円が全面高。欧州中央銀行(ECB)による経済見通しの大幅引き下げを受け、世界景気の減速懸念が強まる中、中国貿易統計の悪化も嫌気され、株安とともにリスク回避の円買いが進んだ。ドル・円相場は約1週間ぶりに1ドル=111円を割り込んだ。
• ドル・円は午後3時23分現在、前日比0.5%安の1ドル=111円00銭。111円65銭を日中高値に一時110円95銭と2月28日以来の水準まで円買いが進行
• ユーロ・円は0.4%安の1ユーロ=124円38銭、一時124円31銭と3週間ぶりのユーロ安・円高水準
• 豪ドル・円は一時0.7%下げ、約1カ月ぶりとなる1豪ドル=77円78銭前後まで豪ドル安・円高が進行

市場関係者の見方
外為どっとコム総研の神田卓也調査部長
• 中国の貿易統計がきっかけで、ドル・円は200日移動平均線を割り込む動き
• 今回の中国貿易統計は旧正月の影響もあったと思うが、これで今晩発表の米雇用統計が弱いとなると世界経済について心配になる
大和証券投資情報部の石月幸雄シニア為替ストラテジスト
• ECBも含め、カナダも豪州も中銀がかなりハト派にシフトする中で、日銀は打つ手が限定的ということで、資金の逃避先は円という形になるのだろう
みずほ証券の福田煕輝FXストラテジスト
• 米指標に持ち直しが見えている中で、労働市場がそこまで崩れなければ、景況感も回復しており極端に米国の利下げを織り込みに行くような動きにはならない。そうなると、日米金利差は今一定程度あるので、そこがドル・円の下支えになる
背景
• 2月の米非農業部門雇用者数の市場予想は前月比18万人増と、1月の30万4000人増から伸びが鈍化する見込み。一方、失業率は3.9%と前月から0.1ポイント改善、平均時給は前月比0.3%上昇と1月の0.1%上昇から加速すると見込まれている
• 中国の2月の貿易統計で、ドルベースの輸出は前年同月比20.7%減(市場予想は5.0%減)、輸入は5.2%減(同0.6%減)
• ECBは7日、成長とインフレ見通しを引き下げ、条件付き長期リファイナンスオペ(TLTRO)を再開すると発表。金利ガイダンスも変更し、少なくとも年末まで据え置くと表明
• 世界景気の減速懸念から7日の米株式相場は4日続落。8日のアジア株は全面安で、中国・上海総合指数は同時刻現在3.1%安、日経平均株価は430円(2%)安で取引を終了
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日本株大幅続落、景気懸念と中国株急落−輸出や金融中心に全業種安い
長谷川敏郎
2019年3月8日 7:53 JST 更新日時 2019年3月8日 15:27 JST
• ECBは19年の経済成長見通し下げ、中国の2月輸出入は共に減少
• 中国上海総合指数はことし最大の下げ、当局の過熱抑制観測も

A pedestrian using his smartphone walks past an electronic stock board outside a securities firm in Tokyo, Japan. Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
8日の東京株式相場は大幅に4日続落。欧州中央銀行(ECB)の経済見通し引き下げに中国株大幅安が加わり、世界景気の先行きに対する懸念が強まった。機械や電機など輸出関連、非鉄金属、海運、金融中心にほぼ全面安。
• TOPIXの終値は前日比29.22ポイント(1.8%)安の1572.44
• 日経平均株価は同430円45銭(2.0%)安の2万1025円56銭
o 両指数とも4日続落は昨年12月25日の5日続落以来の連続安
o 下落率は米中交渉懸念と欧州景気悪化が重なった2月8日以来1カ月ぶりの大きさ
  ECBは7日、地政学的要因や保護主義の脅威などを理由に2019年のユーロ圏経済成長見通しを1.1%と、昨年12月時点から0.6ポイント引き下げた。景気懸念から安く始まった日本株は、中国株安と為替市場でのドル安・円高進行で下げ幅を広げる展開となった。

  大和住銀投信投資顧問の門司総一郎シニア・エコノミストは「欧州は景気のセンチメントが弱いだけでなく、ドイツから中国向け輸出の実体面でも弱さが出てきた。中国景気も良くない」と指摘。米中交渉への楽観から日本株に強気姿勢だった向きが「景気の悪さを再認識して売っている可能性がある」と述べた。
  中国上海総合指数は日本株の取引時間中に一時3.6%安と、18年10月11日以来の日中下落率。2月の輸出入が共に減少したほか、最大手証券による珍しい「売り」推奨で当局が株高ペースを落とそうとしている兆しと受け止められた。中国株の上昇一服と為替のドル安・円高が重なることが警戒され、日本の株価指数先物に売りが膨らんだ。
• 東証33業種では海運、保険、機械、証券・商品先物取引、非鉄金属が下落率上位
o 海運は今期最終赤字が1000億円に膨らむ見通しと発表した川崎汽船が急落
• 取引開始時に算出された株価指数先物・オプション3月限の特別清算値(SQ)は2万1348円40銭ーブルームバーグ試算
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-07/PO0P0Q6S972F01


気動向指数「下方への局面変化」に判断下げ−4年2カ月ぶり
青木勝
2019年3月7日 14:59 JST 更新日時 2019年3月7日 17:06 JST
• 昨年9−12月までは「足踏み」:一致指数が3カ月連続で悪化
• 景気は緩やかに回復しているとの認識に変わりはない:菅官房長官
内閣府は7日発表した1月の景気動向指数(一致指数)の基調判断について、景気後退局面に入った可能性が高いことを示す「下方への局面変化」に引き下げた。2018年9月から12月までは「足踏み」としていた。
  「下方への局面変化」は、事後的に判定される景気の山がそれ以前の数カ月にあった可能性が高いことを示す。この表現が使われたのは、消費税率8%への引き上げの影響で消費低迷が続いていた2014年11月以来。政府は第2次安倍内閣が発足した12年12月から始まった景気拡大期間が、今年1月時点で74カ月となり、「戦後最長の可能性がある」との認識を示していたが、今後修正される可能性が出てきた。
1月の景気動向指数の概要はこちらをご覧下さい
  1月の景気動向指数(2015年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比2.7ポイント低下の97.9と3カ月連続で悪化した。指数を構成する9指標のうち速報値からデータが利用可能な7指標が全てマイナス寄与となり、特に投資財出荷指数(除く輸送機械)や鉱工業生産指数、耐久消費財出荷指数などの低下が響いた。先行指数は1.3ポイント低下の95.9と5カ月連続で悪化した。

   
  
  菅義偉官房長官は同日の記者会見で、「景気動向指数は各経済指標の結果をそのまま指数化するため、例えば中国の春節時期が早いことから輸出が手控えられるなど本来であれば景気の基調とは分けて考えた方がよい要因の影響もある」と説明。「政府はさまざまな経済指標を分析するとともに、指標の動きの背景にある経済環境や企業の景況感などを総合的に勘案して景気の基調を判断している」とし、景気は緩やかに回復しているとの従来の認識に「変わりはない」と語った。
  第一生命経済研究所経済調査部の新家義貴主席エコノミスト(リポート):
• 今月の落ち込みについては中華圏の春節に伴うアジア向け輸出の大幅減少が影響している面も大きいとみられるため、2月の数字も併せて判断する必要はあるだろう
• 仮に2月の戻りが限定的なものにとどまるようであれば、1−3月期のGDP(国内総生産)マイナス成長を予想する向きが増えるとみられ、実態としても景気は変調をきたしているとの評価が優勢になってくるだろう
  三井住友アセットマネジメントの宅森昭吉チーフエコノミスト(リポート):
• 中国経済の成長鈍化などに伴い、国内生産の伸びが鈍くなっているのが主因だ。ただし、中国は19年に2兆元(約33兆円)規模の減税などの経済対策が実施される予定で、年央以降の景気浮揚効果が期待される
• にわかに「戦後最長の景気拡張は幻で、昨年秋から景気後退局面に入っている可能性がある」との見方が出てくるかもしれない
(第4段落に菅官房長官のコメントを追加して更新します.)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-07/PNZEK56K50XS01?srnd=cojp-v2


 

【第3回】 2019年3月7日 古山喜章 :ICOコンサルティング社長
地銀の再編が進めば、資金調達事情は一変する
多くの経営者は、どうすれば強い財務体質の会社になれるかと悩んでいる。財務体質を強化するには、自己資本を充実させる必要があるが、増資をしたり収益を上げるのは容易ではない。しかし、増資も事業拡大もしないで、自己資本を高める方法があるという。それは「銀行取引」を見直すことだ。銀行から押しつけられている悪条件を解消するだけで、財務体質を改善して自己資本を高めることができるのだ。『社長!カネ回りをよくしたければ銀行の言いなりはやめなさい』の著者に、銀行取引と財務強化のポイントを聞く。


銀行の吸収合併で
融資姿勢がガラリと変わる
 これから、地方銀行の合併や再編がどんどん進むといわれています。実際問題、地方銀行の数は100を超えており、過剰です。さらに信用金庫・信用組合があり、政府系金融機関やメガバンクもあります。

 その中でも、最も多いのが地方銀行です。

 これまでにも銀行の吸収や合併はありましたが、その際、さまざまな悲劇があったことを忘れてはいけません。

 東北中部で不動産事業を営む津川興産(仮名)では、メイン銀行から、同社の財務状況では通常ありえないくらいの融資を受けていました。メイン銀行はかつての相互銀行、いわゆる第二地方銀行です。

 津川興産は不動産を購入して販売したり貸したりする事業なので、調達資金が大きくなります。そこに目をつけて、格付け(スコアリング)が低くても、資金を貸していたのが、メイン銀行だったのです。今どきの環境では融資先の新規開拓は厳しく、数億円単位で融資ができる津川興産は、同行にとって、ありがたい存在でした。

 津川興産にとっても、融資を受けられれば資金繰りが助かりますから、じゃんじゃん借りていました。

 結局、津川興産は長期借入金を返済しきれず、短期借入金を増やして長期の返済に充てていきました。さらには、その長期の返済さえ滞らせ、メイン銀行からの短期融資に依存する状態になっていました。

 ところが、そのメイン銀行が、地元の第一地銀によって吸収合併されたのです。津川興産の取引支店は残ったものの、第一地銀に変わりました。その時点で、支店長以下のスタッフも変わりました。そして合併後、新たな支店長が津川興産に来て、津川社長に言ったのです。

「御社へのこれまでの融資を見直しさせていただきます。次の新たな短期借入金の融資はできかねますので、どうかご了承ください」

 通常ではありえない無謀な融資が常態化していたのですから、無理もありません。

いくらでも貸してくれる
そんな銀行は危ない
「えっ、そんな……」

 困ったのは津川社長です。短期借入金ありきで回っていた資金繰りをどうすべきかという問題に直面しました。そう簡単に業績が大幅改善することはなく、間もなく長期も短期も、返済金が不足することは明らかでした。

「急にそんなことを言われても困ります」

 津川社長は、新しいメイン銀行に泣きついたものの、事態が好転することはありませんでした。

 すると、メイン銀行は、津川興産への融資を回収見込みのない不良融資扱いとみなし、関連するサービサー(債権回収会社)に債権を譲渡することにしました。津川社長も了承したのです。即倒産よりもマシだと思ってのことだったそうです。

 結局、津川社長は、サービサーと返済交渉を進めることになりました。そして、保有物件の売却、個人資産での資金づくり、役員報酬の大幅カットなどを行うことで、なんとかその難局を乗り越えたのです。

 しかし、一度とはいえ、返済不能による債権譲渡の履歴があると、銀行から新たな融資を受けることは当面不可能です。

 それでも、津川興産は、なんとか生き残っただけでも御の字でした。

 津川興産は、今でいうところのゾンビ企業だったのです。借入金ありきで生き永らえていたわけです。しかも、その状況に甘え、経営改善を怠っていました。

 そこに、取引銀行の吸収合併が起こったわけです。

 同じような状況は、津川興産だけではありません。むしろ、全国至る所に同じようなゾンビ企業が存在するはずです。

「この銀行はいくらでも貸してくれるから、まだまだ大丈夫」などと思っていると、危機は突然やってくることになります。

 これから地銀の再編はどんどん進みます。だいたい、いくらでも貸すということ自体が、銀行業としてはおかしいのです。それだけ、その銀行は危ない橋を渡ってでも融資をするという危険な経営状態にあるわけです。

 それがわからずに、やみくもに借り続けるのは、経営者として失格です。

 取引している銀行で、吸収や合併が起こると、資金事情が一変します。だから、「借りられるから借りるという無謀な借り方」をしてはいけません。
https://diamond.jp/articles/-/195742
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/433.html

[経世済民131] 財政拡大理論「MMT」理想の地は日本か「財政赤字は悪くない」大統領選にらみ経済学論争ブラックロックCEO現代金融理論クズ
ビジネス2019年3月8日 / 11:31 / 8時間前更新焦点:

財政拡大理論「MMT」理想の地は日本か

Reuters Staff
3 分で読む

[東京 8日 ロイター] - MMT(Modern Monetary Theory、現代金融理論)が、注目を集めている。独自の通貨を持つ国の政府は、通貨を限度なく発行できるため、デフォルト(債務不履行)に陥ることはなく、政府債務残高がどれだけ増加しても問題はない、という考えだ。米国では、激しい論争を巻き起こしているが、財政が膨張しながら低金利にとどまる日本は理想の地なのか──。金融緩和策に限界論が出る中で支持が広がるか、市場の関心も高い。

<米大統領選2020の焦点にも>

アレクサンドリア・オカシオコルテス氏。昨年11月にニューヨーク州から連邦議会下院選に立候補し、29歳で当選。女性として史上最年少の米下院議員となった。将来の大統領候補との呼び声もかかる彼女が、MMTを支持したことで注目が一気に高まった。

2020年の大統領選をにらみ、野党・民主党では、財政政策の議論が活発化。民主党左派を中心に提唱されている国民皆医療保険や温暖化対策の1つである「グリーン・ニューディール」の財源を確保する手段の理論的裏付けとして、MMTが採用される可能性もある。

MMTの提唱者の1人である、ニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン教授によると、ユーロという共通通貨があり、独自の通貨を持たないギリシャなどは、独自の判断で無制限の流動性供給を行うことはできない。それゆえデフォルトリスクがある。

しかし、独自通貨を持つ米国のような国では、政府債務の増加がマクロ的な供給不足からインフレを起こすような場合でなければ、経済成長と雇用の増加が続いている限り、政府債務の増加自体は問題ない──。これがケルトン教授の説明するMMTのコア部分だ。

政府債務残高が22兆ドル(2200兆円)に達する米国では、債務上限問題が毎回議論となるが、この理論に基づけば、まだまだ国債を出していいことになる。

ケルトン教授は2016年の米国大統領選では、バーニー・サンダース上院議員の顧問を務めていた。サンダース氏が2020年の大統領選に出馬すると表明していることも、MMTから目が離せない理由の1つだ。

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、2月26日の議会証言で「自国通貨での借り入れが可能な国にとって赤字は問題でないという人もいるが、私は間違っていると思う」と明確に否定した。しかし、FRB議長が議論に参戦してきたことで、逆に注目を集めるという皮肉な結果になってしまっている。

<金融政策の限界論で脚光>

こうした理論が脚光を浴びているのは、世界的に金融政策の限界論が強まってきたことが背景だ。非伝統政策に踏み込んでも景気や物価の浮上効果は限定的で、次は財政が政策の中心になるの見方が増えてきている。

中国も5日から始まった全国人民代表大会で、大型減税や融資拡大で景気を支援する方針を示した。2019年に企業の税金や手数料を約2兆元削減するほか、地方政府の特別債発行枠を2兆1500億元に設定。単純に足し合わせれば「4兆元」規模の対策になる。

「国債を大量に発行すれば、価格は下がり、金利は上がる。投資家にとってみれば、国債の魅力は増す。現状で言えば米国などはまだまだ、国債を発行することはできるだろう。しかし、それが持続性を持つかどうかは別だ」とBNPパリバ証券・チーフエコノミスト、河野龍太郎氏は指摘する。

MMTの弱点は、金融市場の「反乱」だ。今は歴史的にみても低い水準にある金利が、政府や中央銀行への信頼が失われたときに、跳ね上がるリスクがある。

野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミスト、木内登英氏は「トランプ政権の財政拡張策によって双子の赤字、つまり財政赤字と経常赤字の同時拡大が進む現状では、財政赤字のさらなる拡大は経常赤字の一段の拡大観測を強め、それはドルの信認をも低下させる」(1日付リポート)と指摘する。

ドル安と悪い金利上昇とが、相乗的に進むリスクも高まる。米国の経常赤字は海外からのファイナンスでまかなっている。いくら金利が高くなっても、財政に不安がある国の債券は買われないだろう。米国経済が袋小路に追い詰められれば、世界のマーケットを揺らすことになる。

昨年10─12月、世界的な株安をもたらしたのは、金利の上昇が大きな要因だった。金利上昇のマイナスを上回って株価を押し上げるだけのインパクトが財政拡大策にあればいいが、そうでなければ、株安を通じた景気下押し圧力が強まりかねない。

<財政肥大でも金利ゼロの日本>

その点、MMTのような理論は、米国より日本の方が受け入れやすいかもしれない。

政府債務残高は対GDP比で200%を超え、世界でも類を見ない規模になっているにもかかわらず、金利水準はゼロ近傍と最も低いレベルだ。中央銀行が人為的に(長期)金利を低く抑える「実験」はもう済ませてあり、効果も実証済み。さらに幸か不幸か物価も上がらない。まさにMMTが主張するような状況に日本はある。

急激な景気後退や金融危機に陥らないような場合であっても、景気浮揚や物価上昇(デフレ脱却)のための、理論的支柱として使われる可能性もある。国土強靭化の名の下に、財政拡大を主張する政治家も少なくない。

日銀の金融緩和策の選択肢は、限られるとの見方も多い。マイナス金利の深掘りは地銀など金融機関に大きなダメージを与える可能性がある。銀行保有の国債は担保需要を除くとかなり減っており、かつての「バズーカ」のような民間からの大量の国債購入は難しくなっている。ETF(上場投資信託)増額も株式市場への副作用が増す。

大きな景気後退や金融危機が、新たに来たときに、金融政策の選択肢が多くないとすれば、財政に国の政策の中心がシフトする可能性がある。「財政拡大を正当化するような経済理論が、今後たくさん出てくるのではないか。その1つがMMTなのだろう」と三井住友銀行のチーフ・マーケット・エコノミスト、森谷亨氏はみる。

金融政策による財政ファイナンスは、誰もが否定するが「明示的ではないにせよ、財政を陰ながらサポートする金融政策という位置付けで、日銀による大量の国債購入が次のアベノミクスとして再開される可能性は否定できない」(国内銀行)との見方は根強い。

しかし、「財政を何に使うのかの議論が全くないまま、ばらまきに終わってしまう怖れがある」と、ニッセイ基礎研究所・チーフエコノミスト、矢嶋康次氏は警鐘を鳴らす。ばらまきでは、潜在成長率は上がらず、「借金」だけが積み上がる今の日本経済の状況が、さらに悪くなるだけだと懸念している。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)
https://jp.reuters.com/article/mmt-japan-idJPKCN1QP072

 


トップニュース2019年3月8日 / 11:36 / 3時間前更新
アングル:
「財政赤字は悪くない」、大統領選にらみ米国で経済学論争
Howard Schneider
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[ワシントン 6日 ロイター] - ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏とローレンス・サマーズ元米財務長官は過去3週間、ツイッターやテレビ、新聞のコラム欄を活用して、ニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン教授に反論を重ねてきた。

ケルトン教授は、政府予算や財政赤字は完全雇用やインフレを実現するために積極利用すべしという「現代金融理論(MMT)」の強固な提唱者で、2016年の前回大統領選ではバーニー・サンダース上院議員の顧問を務めた。

ケルトン氏の主張に対し、クルーグマン氏は「支離滅裂」と一蹴し、サマーズ氏はワシントン・ポストのコラムで新たな「ブードゥー経済学(魔術のようで理論的に怪しいとの意味)だ」と批判した。

サマーズ氏はCNBCテレビで「全ての米国人が支持するはずの考えを1つ挙げるなら、それは算術の法則だ」とも発言。これに対してケルトン氏は5日、ツイッターに「この論争では負ける気がしない」と投稿するなど事態は白熱化している。

一連のやり取りは単にソーシャルメディア(SNS)上での余興やゲームだとやり過ごすこともできる。だがこれは野党・民主党内で大統領選候補の指名をにらんで強まってきている基本的な議論を反映している面もあり、その点を軽視することはできない。

具体的には左派を中心に提唱されている国民皆医療保険や温暖化対策の1つである「グリーン・ニューディール」の財源を、どうやって確保するかという問題だ。いずれも大統領選に向けた候補指名争いの主要な論点として浮上。早くもトランプ大統領からは民主党は「社会主義」を受け入れている証拠だと攻撃を浴びている。

米国政府が抱える債務は22兆ドルに膨らみ、義務的経費や利払いなどで慢性的な財政赤字が生まれている状況を踏まえ、あらゆる政治グループに属する経済学者と米連邦準備理事会(FRB)の専門家は、財政は既に持続不可能な経路をたどっているので、この先は慎重な運営が求められると警鐘を鳴らす。

こうした中で、ケルトン氏の理論を用いれば、米国の債務や財政赤字の活用法、またFRBの果たす役割に関する見方はがらりと変わってくる。つまり民主党の大統領候補指名レースに参加している人々が論じているような政策の実現を後押ししてくれる。

これほどの発想転換は、平時なら思いもよらないだろう。しかし2007−09年の金融危機から10年が経過し、サマーズ氏や国際通貨基金(IMF)の元チーフエコノミスト、オリビエ・ブランチャード氏らいわゆる主流派の経済学者ですら、政府の財政政策運営について再考を迫られている。

なぜならFRBによる大規模な債券買い入れや大型減税を実施しているのに物価や金利が跳ね上がらない局面では、もっと借金をして生産的な公共事業に投資しても安心だろう、という意見が一般的になってきたからだ。

オバマ前政権で大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を務めたジェーソン・ファーマン氏は5日、前政権は野心的な公共事業を策定したものの、それでも政府債務の対国内総生産(GDP)比を一定に保つか、下げるのが得策だと考えていた。ところが今では多くの人から、なぜ対GDP比を低くしなければならないか質問を受け、比率を抑えるべきだという経済的な確信が揺らいできたという。

結局のところ、ファーマン氏もブランチャード氏も、コストに見合うメリットがあるプロジェクトへの支出を米国は敬遠すべきでないという見解を持つようになっている。特にブランチャード氏は、地球環境を救うために債務が膨らませるのは「名案だ」と話す。当然支出に限度はあるが、債務の利払い費用の伸びを経済成長ペースが上回る限り、借金を継続できそうだ。

ケルトン氏に至っては、政府ができるし、やるべきだと考える範囲はもっと広く、債券市場や外国為替市場が許さないことを地球を救う支出を抑制する理由に挙げるのは、かなり筋が悪いと主張する。同氏は大統領選出馬を決めたどの人物ともまだ連携していないが、求職者全てに政府が仕事を保証するなどの一部のアイデアは、カマラ・ハリス上院議員(カリフォルニア州選出)などと共通している。

またケルトン氏は、米国の通貨発行権を完全雇用や温暖化対策の財源確保などの実現に活用すべきだと論じている、ただパウエルFRB議長は先週の下院証言でこうした考えを全否定し、サマーズ氏らは他国で物価高騰や通貨危機を招くといった副作用があったと指摘した。

とはいえMMTは批判的な立場の人々が積極的に反論せざるを得ないほど波紋を広げているのは間違いない。

オバマ前政権のCEAスタッフだったベッツィ・スティーブンソン氏はツイッターでMMTについて「右も左もない。普通の人々が興奮が冷めた時点で代償を支払うような魔法の考えだけが存在している」と投稿した。
https://jp.reuters.com/article/usa-economy-mmt-idJPKCN1QO0TS


 

 

ブラックロックCEO、現代金融理論を支持せず−「くず」と一蹴
Margaret Collins
2019年3月8日 0:57 JST
ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)
ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO) Photographer: Stefan Wermuth/Bloomberg
米資産運用会社ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)は「現代金融理論(MMT)」を支持しない考えを示した。

  フィンク氏は7日、ブルームバーグテレビジョンのインタビューで、MMTは「くず」だと一蹴。「財政赤字は非常に重要な問題だと私は確信している。財政赤字は金利をずっと高く、持続不可能な水準に押し上げる可能性があると私は強く信じている」と述べた。

  MMTを支持するエコノミストらは、米国は借り入れが自国通貨建てであることから、紙幣を印刷して借金を賄うことができ、破綻はあり得ないと主張する。アレクサンドリア・オカシオコルテス氏ら当選1期目の民主党議員らが、グリーン・ニューディールや国民皆保険など社会政策の原資の1つとして支持に回っている。

  米議会予算局(CBO)によると、米財政赤字は数年以内に1兆ドルを突破するとみられている。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は先週、MMTを「誤り」だと指摘。サマーズ元財務長官やノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏も批判している。

ブラックロックのフィンクCEOインタビュー

出典:ブルームバーグ
  一方で否定的に見ていない人がいることも事実だ。パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)の元チーフエコノミスト、ポール・マカリー氏は、自身は「正真正銘のMMT支持者ではない」ものの、強い共感を覚えると述べている。

  フィンク氏は「MMTは財政赤字が害をもたらし多過ぎると分かるまで、借り入れを続けられるという理論だ。親である私からすれば、子どもの素行が悪くてもずっとただそれを見ているだけで、手が付けられなくなるまで放っておくことと同じだ。良いアプローチではないと思う」と述べた。

原題:BlackRock CEO Fink Says Modern Monetary Theory Is ‘Garbage’ (2)(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-07/PO02X66TTDS201?srnd=cojp-v2


http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/434.html

[経世済民131] 米労働生産性:第4四半期は1.9%上昇、予想上回る−生産は減速 アマゾン、米国内ポップアップストア全て閉店へ 書店増設に
米労働生産性:第4四半期は1.9%上昇、予想上回る−生産は減速
Jeff Kearns
2019年3月7日 22:38 JST 更新日時 2019年3月8日 0:26 JST
昨年第4四半期の米労働生産性は予想よりも上昇したが、前四半期からはほぼ変わらなかった。生産と労働総投入量はともに減速した。

キーポイント
10−12月の非農業部門労働生産性指数は前期比年率1.9%上昇
ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想は1.5%上昇
前四半期は1.8%上昇に下方修正
単位労働コストは2.0%上昇、前四半期は1.6%上昇
インサイト
過去データの改定も含めた労働省の発表によると、生産性の伸びは2007−18年に平均1.3%上昇、2000−07年の平均は2.7%上昇
生産性統計は景気減速を一部反映している。生産は3.1%上昇と、前四半期の4%上昇から減速。労働総投入量は1.2%上昇と、2.1%上昇から鈍化
詳細
労働生産性指数は前年同期比では1.8%上昇。2018年の平均は1.3%上昇と、15年以来の高い上昇率
実質給与は前期比2.4%上昇と、約1年ぶりの強い伸び。前四半期は1.4%上昇
10−12月期の生産性統計は、政府機関一部閉鎖の影響で発表が遅れた。同統計を発表する労働省は閉鎖されなかったが、前提となるデータをまとめる商務省が閉鎖されていた
統計の詳細は表をご覧ください。

原題:U.S. Productivity Gains Exceed Forecasts Even as Output Cools(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-07/PO00EK6S972801?srnd=cojp-v2


 

https://jp.reuters.com/article/amazon-com-popup-stores-idJPKCN1QO01P
テクノロジー2019年3月7日 / 09:34 / 5時間前更新
アマゾン、米国内ポップアップストア全て閉店へ 書店増設に力点
Reuters Staff
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[6日 ロイター] - 米アマゾン・ドット・コム(AMZN.O)は国内の短期営業店舗ポップアップストアを全て閉店し、書籍販売の実店舗「アマゾン・ブックス」の増設に力点を移す計画。同社の広報担当者が6日、明らかにした。

株価はこの日の取引を1.4%安で引けた。米書店チェーン大手バーンズ・アンド・ノーブル(B&N)(BKS.N)は8.9%急落。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は先に、アマゾンが米国内のポップアップストア87店舗を4月末までに全て閉店する計画と報じていた。

ポップアップストアはここ数年、アマゾンのAI(人工知能)スピーカー「エコー」などの目新しい商品を取り扱ってきたが、同社が2017年に買収した食品スーパー、ホール・フーズの広範な店舗網や昨年開設したレジ無しコンビニ「アマゾン・ゴー」で新製品を含む幅広い商品の販売が可能になった。

広報担当者によると、アマゾンはサイトで高評価の商品を取り扱う実店舗「アマゾン・4スター」も増やす計画。

同担当者は「熟考の結果、ポップアップ店舗を廃止する決定に至った。その代わりにアマゾン・ブックスとアマゾン・4スターを拡大する」と述べた。
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/435.html

[経世済民131] 経常収支でも進む黒字減少、稼げる産業の再構築が急務 物価2%の勢い低下、日銀は追加緩和模索へ=山口元日銀副総裁
ビジネス2019年3月8日 / 13:31 / 6時間前更新焦点:

経常収支でも進む黒字減少、稼げる産業の再構築が急務

Reuters Staff
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[東京 8日 ロイター] - 2018年の経常黒字が、3年ぶりに20兆円を割り込んだ。貿易黒字の大幅減少が主因だが、安定的な所得収支の黒字を理由に、マーケットではこの動向を懸念する声はほとんどない。しかし、20年代後半に超高齢化による貯蓄減少が顕在化して経常赤字に転落するとの試算もある。

市場混乱を避ける「軟着陸」を図るには、先端技術を駆使した新ビジネスの創出が欠かせないと専門家は指摘するものの、足元で起きている貿易黒字の急速な収縮は、「稼ぐ力」の衰退の象徴だと指摘する専門家の声もあり、光明はなかなか見えない。

<貿易より海外投資で稼ぐ時代>

「経常収支は、ライフサイクルと一緒。現役時代に働いて得た貿易黒字は、高齢化すれば減少し、海外で築いた資産からの貯蓄と利子で切り盛りしていくことになる」──。

経済財政諮問会議の民間議員の1人、慶應義塾大学の竹森俊平・経済学部教授は、日本経済の現状を家庭の状況にたとえ、「一家の働き手」が引退しつつある状況であり、貿易黒字より経常黒字が重要になってきていると指摘する。

18年の経常黒字19兆円の構成をみると、海外投資からの配当・利子などの第1次所得収支が21兆円の黒字なのに対し、貿易収支はわずか1兆円の黒字にすぎない。

2011年の東日本大震災以降はエネルギー輸入が膨らみ、15年まで貿易赤字が継続。その間、日本は2000年代半ばから着々と投資してきた海外資産からの所得収益を増やしてきた。16年以降、貿易黒字が復活したが、もはやその規模は所得収支に遠く及ばない。

<20年代には国内貯蓄減少、海外頼みで経常赤字に>

しかし、経常黒字も、団塊世代が75歳以上となって超高齢化社会が現実になる2022年以降、その規模が徐々に減少し、赤字に転落する可能性があるとの見方が民間エコノミストの間では多い。

実際、経常黒字額の大部分を占める所得収支の黒字を支える対外資産残高は、ピークの14年末から3年連続で減少。18年末に回復したものの、14年比で20兆円程度減少している。

ニッセイ基礎研究所の試算では、国内貯蓄の減少に伴い、経常収支は27年度ごろから小幅赤字に転落する。

その試算によると、家計貯蓄率が24年以降、高齢化の影響でマイナスが恒常化。企業の内部留保も、20年代後半には設備投資増加や金利上昇、円高による付加価値減少などが予想され、減少傾向をたどる。

慶大の竹森教授は「当面は所得収支で経常黒字が確保できるものの、貿易赤字が巨額となってくれば、経常黒字維持は難しくなる」と指摘。「貿易赤字拡大を防ぐには、輸出競争力が重要であり、そのためにも先端産業の強化が欠かせない」とみている。

<経常赤字の先に見える危険なシナリオ>

国内の貯蓄が減少して経常赤字に陥りかねないという状況は、単に国際収支上の問題にとどまらない。日本経済全体の状況が大きく変化しかねない危険をはらむ。

立正大学の池尾和人・経済学部教授は「国内の貯蓄があるから、金融機関や日銀を通じて大量の国債が消化されている。財政の持続性への信頼が保てるか否かは、貯蓄がもつかどうか次第」だと解説する。

そして「20年代に入れば、貯蓄が減少して様相が変わる。金利が上昇し始めたら、そこでどれだけ増税できるか、また歳出をカットできるか次第で、財政への信頼が失われることもある」と警告する。

日本総研の湯元健治副理事長の試算によると、20年代の超高齢化社会では医療・介護といった社会保障費が膨張。その不足財源を全て消費税でカバーする場合、17%への消費税率引き上げが必要となる。

それができなければ財政状況は一段と悪化し、日銀のテーパリングが始まる時期と相まって、長期金利の急上昇リスクが一段と現実化しかねないとみている。

巨額の債務残高が積み上がっている日本において、金融市場で低金利が維持されている背景には、経常黒字の存在やその背後に存在する巨額の対外純資産の存在がある。

また、8%と他の先進国と比べて低い消費税率の水準が、今後の引き上げ余地の大きさとして海外投資家の目に映り、財政改善期待が辛うじて残存しているということもある。

しかし、自動運転、AI(人口知能)、ビッグデータを使ったビジネスモデルの転換、プラットフォーマーに代表される収益率の高いビジネスモデル構築など、最先端のビジネス現場で、日本企業は米国などに大幅に後れを取っている。

ある民間エコノミストは「先端技術を駆使したビジネスが育たず、このまま高齢化を迎えると、持続的な財政運営が難しくなるだろう」と指摘。足元で国債現物が品薄になっている短期的な市場環境とは正反対の状況が、いずれやってくるリスクに警鐘を鳴らしている。

中川泉 編集:田巻一彦  
https://jp.reuters.com/article/zipair-idJPKCN1QP0UC


 

ビジネス2019年3月8日 / 14:41 / 5時間前更新インタビュー:

物価2%の勢い低下、日銀は追加緩和模索へ=山口元日銀副総裁
Reuters Staff
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[東京 8日 ロイター] - 元日銀副総裁の山口広秀・日興リサーチセンター理事長は、ロイターとのインタビューに応じ、日本経済が減速する下で、日銀が掲げる物価2%目標に向けたモメンタム(勢い)は低下してきているとし、金融政策運営は「追加緩和を模索する方向にならざるを得ない」との見解を示した。

大規模な金融緩和の長期化によって副作用に対する懸念が強まる中、金融政策の適切な遂行と金融システムの安定確保は「車の両輪」と述べ、効果と副作用を検証しながら漸進的に金融政策を進めていく重要性を強調した。インタビューは7日に行った。

詳細は以下の通り。

−−日本の経済・物価見通しについて。

「内需は、個人消費も設備投資も緩やかに回復している。一方、輸出はこのところ頭打ち感がはっきりと出ている。輸出が下を向くと経済全体の足が引っ張られがちであり、現状の景気は全体として減速している」

「先行きは海外経済の動向に依存するが、輸出の下振れが大きくなれば、企業の収益・マインドの悪化を通じて設備投資にブレーキがかかり、経済の減速度合いが強まる可能性がある。景気後退のリスクも小さいとはいえない」

「物価については、需給ギャップの動きが影響して、下押し圧力が働くとみている。消費者物価の前年比上昇率はじりじりと低下していく方向だろう」

−−先行きの日銀の金融政策運営をどうみるか。

「目標の2%の物価上昇率に向けたモメンタムは、むしろ少しずつ低下してきており、日銀としては追加緩和を模索する方向にならざるを得ない。ただ、使える手立てはかなり限られており、小さな変化に直ちに対応するというよりは、大きく景気が減速し、物価上昇のモメンタムもかなり低下したときに、何らかの手を打つことになるのではないか」

−−追加緩和の手段は。

「より長いタイムスパンで考えれば、金融政策の正常化が大きな課題だ。追加緩和といっても、長い目で考えた正常化のプロセスと極力矛盾しない政策は何かを考える必要がある。すでに日銀のバランスシートは相当に大きくなっており、バランスシートにできるだけ負担をかけない政策手法を見出していくことになるのではないか」

「資産買い入れは、緩和の枠組みの中でも、削減できるものがあれば、削減してもいい。一方、金利の追加的引き下げの可能性が、全くないわけではないだろう」

−−正常化のプロセスと求められるコミュニケーションは。

「FRB(米連邦準備理事会)は、非常に早い段階から出口の議論を開始した。これによって市場に無用の混乱を与えずに、出口に向けて動き出すことができた。日銀も、市場が当面の緩和継続を想定しているような状況においてこそ、出口ないし正常化の方法論を議論し、市場に提示していくことが必要だと思う」

−−大規模緩和長期化の金融システムへの影響は。

「金融政策の適切な遂行と金融システムの安定確保は、日銀にとって車の両輪だ。金融政策の運営に当たっては、金融システムや金融機関経営の健全性を確保していくことを、同時にしっかりと考えていかなければならない」

−−金融機関は、どのように対応していくべきか。

「現在の金融緩和を続けるだけでも、金融機関収益面には厳しいインパクトが及ぶ。特に地域金融機関への影響は大きい。こうした状況を克服するために、金融機関同士の合従連衡を模索していくことも必要になるかもしれない」

−−物価2%目標の位置づけをどのように考えていくべきか。

「長い目でみて2%目標を維持しながらも、先行き消費者物価が前年比プラスの領域で動いていくと判断できる状況になれば、政策の方向を(現在の緩和から引き締め的に)変えるといった対応があってもいい。2%目標をひたすら厳格に追及する必要はないとの議論も、一時よりは強まっているように思う。日銀として柔軟に考えてもいいのではないか」

−−黒田東彦日銀総裁の下での異次元緩和の評価と課題。

「それまでデフレを克服することができなかった環境の中で黒田総裁が登場し、大胆な緩和政策に踏み切ったことは、全く理解できないわけではない。ただ、2%目標は実現できないまま6年がたとうとしている」

「大胆な緩和の結果、国債市場の機能が低下し、株式市場のゆがみも指摘されている。金融機関の収益基盤も毀損(きそん)されるなど副作用が蓄積している。この6年間の政策についてポジティブな評価はしにくい」

−−金融政策運営における白川方明前総裁との大きな違いは何か。

「効果を明確には読めない政策については、漸進的に進めるというのがそれまでの政策運営だった。効果と副作用がはっきりしなくとも、必要であれば大胆に進めていくのが黒田総裁のスタンスだと思う」

「しかし、そうした大胆な政策には、実験的な要素が必ずある。事前に予測できない効果と副作用を検証し、GRADUAL(漸進的)に進めていくことが大事だ。GRADUALに進めることで極端な政策に陥らずに済むし、いつでも方向転換ができる。こうした政策運営が基本だ」

−−中銀の独立性は、どのように変化したか。

「(この6年間は)政府の経済政策との連携がかなり意識されていたようにみえる。もう少し独立性を大事にしたほうがよかったと思う。厳しい財政状況と限られた金融政策発動余地の中で、今後、追加緩和や出口ということになると、これまで以上に財政政策と金融政策の連携を意識せざるを得なくなるのではないか」

*内容を追加しました。

伊藤純夫 木原麗花 編集:田巻一彦
https://jp.reuters.com/article/interview-financial-policy-idJPKCN1QP0FH

http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/436.html

[経世済民131] 優秀な人の予想が当たるわけではない 欧州銀への投資避けよブラックロックCEO 米家計純資産3兆7300億ドル減−株下落 
米家計純資産:10−12月期は3兆7300億ドル減−株式相場の下落で
Alex Tanzi、Jeff Kearns
2019年3月8日 2:50 JST
米国の家計資産は昨年10−12月(第4四半期)に減少。株式相場の下落が影響した。一方で消費者の債務はここ1年余りで最も遅いペースでの増加にとどまった。住宅市場の軟調が背景にある。米連邦準備制度理事会(FRB)が7日発表した。

キーポイント
家計および非営利団体の純資産は前期比3兆7300億ドル(3.5%)減の104兆3000億ドル−1年ぶり低水準
家計債務は年率2.9%増加−住宅ローンの減速を反映
前期は3.6%増
詳細
家計および非営利団体が直接・間接的に保有する株式の価値は、第4四半期に4兆5700億ドル減少
住宅ローンを除いたベースでは、消費者の債務は年率6.2%増と、伸びは前期を上回った
住宅の評価額から住宅ローン残高を除いた部分(エクイティ)の不動産全体に占める割合は60.1%と、前期の59.8%から上昇
原題:U.S. Household Wealth Slumped in Fourth Quarter Amid Stocks Rout(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-07/PO0B0Y6K50XV01?srnd=cojp-v2


 


優秀な人の予想が当たるわけではない
ストラテジーレポート広木 隆 2019/03/08
欧州中央銀行(ECB)は7日の理事会で、2019年のユーロ圏の経済成長率見通しを引き下げ、年内の利上げを断念した。世界景気減速の懸念が改めて高まり、米国ではダウ平均が3週ぶりの安値まで売られるなど欧米市場が全面安。これを受けて日本株も大幅続落で始まった。もうこの時点で、僕は嘆息していた。何度も見た光景だ。東京市場は何も考えていないひとたちの集まりだから、何も考えない機械(プログラムされているだけで考えない)と、米国雇用統計と3月決算を控えて動けない本邦機関投資家の足元を見透かした短期の投機筋の売りで一方的に下げが拡大していく。
追い打ちをかけたのが中国の貿易統計だ。2月の貿易統計で輸出額(米ドル建て)が前年同月比20%のマイナスと大幅に減少した。中国の景気減速を警戒した海外投資家などの売りがかさんだとメディアの市況解説は報じた。
また嘆息。
2月の貿易統計で輸出額が前年同月比20%のマイナス。So what? (それが、何か?)「中国の」、「2月の貿易量」が、大幅に減ると景気減速か?春節の影響であることぐらい小学生でもわかる。陰暦で巡る春節は太陽暦では毎年異なり、この時期の中国の統計は季節調整できない(中国の統計はこの時期に限らず季節調整されないが)。
それを「前年比、大幅減」と報じる愚かさ。それを真に受けて株を売る愚かさ。この時期の中国の貿易量は春節の影響で毎年低下する、しかも劇的に減少するのである。下記グラフ参照。
中国の輸出額(ドルベース)

出所:Bloomberg
ECBは昨年12月時点に1.7%を見込んでいた実質GDP成長率の見通しを1.1%と大幅に引き下げた。潜在成長率も下回る水準だ。これで「世界景気減速懸念」と一斉に報じられたが、やはりSo what?ではないか。完全に後追いだからだ。ドラギ総裁自身が認めるとおり市場が先に動いて、ECBのスタッフ見通しがそれを追認した格好だ。もっと言えば、欧州委員会はちょうど1ヶ月前に、今年の域内経済成長率予測を従来予想の1.9%から1.3%に引き下げた。0.6%の下方修正は今回のECBスタッフ見通しの改定幅と同じであり、ECBスタッフは市場と欧州委員会の両方を後追いで見通しを変更したに過ぎない。
中央銀行の調査部門のスタッフといえば、間違いなく優秀なひとたちだ。だが、そういうひとたちの予想が当たるわけではない。我が日銀を見てもわかるだろう。日銀の調査部門のスタッフは我が国が誇る俊英ぞろいである。しかし、展望レポートを出す度に、下方修正に次ぐ下方修正。つまり、彼らの見通しは外れ続けているのである。彼らの予想が当たるなら、ECBはとっくに利上げに踏み切り、日本だってインフレが2%に近づいていただろう。しかし、現実にはそうなっていない。であるなら、ECBスタッフ見通しが(しかも完全に後追いで)引き下げられたくらいで、なぜこれほどマーケットは大騒ぎするのか。理由は簡単、売る口実にしたいからだ。今の市場には2種類の人間しかいない。本当は景気後退などどうでもいいのにネガティブなことを言って、いろいろな恩恵に浴すること(メディアで注目されることもそのひとつ)を目的に騒ぐひとと、天真爛漫過ぎて真面目に心配して狼狽売りをしてしまうひとだ。こうして市場の混乱は大きくなる。
それほど中央銀行のスタッフの優秀さを信じるなら、やはりこの下げは買い場だろう。ECBスタッフ見通しによれば、今年の成長率は1.1%と大幅に下げたが、来年は1.6%とV字回復する予想なのだから。
https://media.monex.co.jp/articles/-/11134

ショート・スクィーズ 踏み上げ相場間近
ストラテジーレポート
広木 隆 2019/03/01
ロング(買い)の反対がショート(売り)ではない。
ある2期間のリターンをx, yとすると、
その2期間のロングの累積リターンは (1 + x)(1 + y) - 1 = x + y + xy
ショートの累積リターンは (1 - x)(1 - y) - 1 = -x - y + xy
と、xyの部分が同じ符号で加わるために、非対称である。
日本株の戻りが鈍い。昨年10-12月の急落分をほぼ取戻し、再び史上最高値更新を視野に捉える米国ダウ平均に比べ、日経平均は下げ幅の半値戻しにも届いていない。日本株の売買に占める海外投資家の比率はおよそ7割。外国人が買わないと日本株は上がらない、というのはもはや常識だが、その外国人が買っていないのだから戻りが鈍いのも当然だ。昨日発表された東証の投資部門別売買動向によれば海外投資家は4週連続の売り越し。今年に入ってから1週しか買い越していない。海外勢が買い越し基調に転じていないのが、日本株相場の戻りが力強さを欠く理由だ。

出所:QUICKデータよりマネックス証券作成
しかし、先週のレポートのテーマをもう一度、思い出そう。「悪い」と「良くなっている」は両立する、ということだ。悪いのは現状、良くなっているは変化の方向だった。外国人はまだ売り越しだが、その売り越し幅は週を追うごとに縮小している。外国人の売り圧力が軽減しており、それとともに日経平均もじり高となっている。
実は、この「じり高」が効いている。売り方にとっては真綿で首を絞められるような怖さがある。信用取引の売り残も週を追って増加、昨年の高値をつけた10月以来となる9000億円台に乗せてきた。
二市場合計 一般・制度信用(売残)金額

出所:QUICKデータよりマネックス証券作成
今週、日経新聞は弱気型のETFの純資産が急増していると報じた。日経平均株価とは逆方向に値動きが2倍となる「NEXT FUNDS 日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信」の純資産総額は2000億円を超え、2014年の上場以来、過去最高水準である。

出所:Bloomberg
ダブルインバースETFの純資産は拡大しているが、ETFそのものの出来高は昨年末あたりをピークに減少している。つまり、相場のどん底でこのETFを買ってショートポジションをとった投資家は、反対売買のチャンスがなく、そのまま持ち続けている。損失拡大に耐えられず、どこかで踏みにくるだろう。直近の信用売り残のピークは昨年9/17の週だった。そこから半月後に日経平均は27年ぶり高値をつけたが、空売りの踏み上げが株価を高値に押し上げた面もあっただろう。
売り方の踏み上げが加速するのは、日経平均が2万1700円を超えるラインか。そこを越えれば、「半値戻しは全値戻し」の格言が売り方の脳裏をよぎるだろう。そこまでくれば200日移動平均越えも見えてくる。主な上値抵抗帯はすべてクリアする。売り方は怖くてたまらないはずである。
買いの損失は株が紙くずになる全損で確定されるが、売りの場合は青天井、理屈のうえでは損失は無限大である。買いの失敗(値下がり)は、失敗したポジションがどんどん小さくなるが、空売りの失敗(値上がり)は失敗したポジションがどんどん大きくなる。買いの反対が空売りではない。非対称なものである。
カーネマン=トヴェルスキーの「プロスペクト理論」によれば、損失拡大の痛みが逓減していくためにポジションを塩漬けにしてしまうことが示されている。しかし、ロングの損失拡大とショートの損失拡大ではプロスペクト理論の効用関数が違うのではないかと思う。僕の仮説は、ショートの場合、限界効用が逓減せずに利益の領域のように手仕舞いを急ぐ心理が働くように思われる。いずれにせよ、巨額に膨れ上がった売り方の踏みで3月相場は一段高となるだろう。
https://media.monex.co.jp/articles/-/11086


 

欧州の銀行への投資は避けよ−ブラックロック副会長が勧め
Steven Arons
2019年3月8日 14:33 JST
• 魅力的な投資先になるには数年かかる可能性高いとヒルデブランド氏
• 資金洗浄疑惑や取引低迷に加え、ECBの見通し引き下げも痛手
世界最大の資産運用会社ブラックロックのフィリップ・ヒルデブランド副会長は、欧州の銀行への投資を避けるべきだと語った。
  同副会長は7日のブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、欧州の銀行業界について、「大きな痛みを伴う移行期のただ中にある。再び魅力的な投資先になるにはさらに数年かかる可能性が高い」と指摘した。
  ブラックロックは、苦境にあるドイツ銀行をはじめ多くの欧州大手行の株式を保有している。欧州の銀行は金融危機以降、ウォール街のライバルに追いつこうと苦闘してきた。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iie.Mf3c1TSY/v2/pidjEfPlU1QWZop3vfGKsrX.ke8XuWirGYh1PKgEw44kE/480x-1.png

  資金洗浄を巡るスキャンダル拡大や取引の低迷、域内の競争に伴う悪影響に加え、欧州中央銀行(ECB)がユーロ圏成長率予想の下方修正を7日に発表しことも、欧州銀にとって痛手だ。ヒルデブランド氏はECBの最新見通しの発表前にコメントした。
原題:Stay Away From European Banking, BlackRock’s Hildebrand Says(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-08/PO15I96TTDS001

 
父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話

【第1回】 2019年3月7日 ヤニス・バルファキス ,関美和
若者世代に今「一番伝えるべき」経済の真実
元財務大臣が語り尽くした全「ホンネ」

元財務大臣が十代の娘に語りかけるかたちで、現代の世界と経済のあり方をみごとにひもとき、世界中に衝撃を与えているベストセラー『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』(ヤニス・バルファキス著、関美和訳)がついに日本に上陸した。
ブレイディみかこ氏が「近年、最も圧倒された本」と評し、佐藤優氏が「金融工学の真髄、格差問題の本質がこの本を読めばよくわかる」と絶賛、ガーディアン紙(「新たな発想の芽を与えてくれるばかりか、次々と思い込みを覆してくれる」)、フィナンシャル・タイムズ紙(「独自の語り口で、大胆かつ滑らかに資本主義の歴史を描き出した」)、タイムズ誌(「著者は勇気と誠実さを併せ持っている。これぞ政治的に最高の美徳だ」)等、驚きや感動の声が広がっているその内容とは? 一部を特別公開したい。

経済の解説書とは正反対の経済の本
 この本を書きはじめたきっかけは、2013年にギリシャの出版社に頼まれた講演だった。この講演は、若い人たちに向けて経済について直接語りかけるいいチャンスだった。私は昔から、経済学者だけに経済をまかせておいてはいけないと思っていた。この本を書いた理由もそこにある。

 橋をつくるとしたら、建築の専門家にまかせたほうがいい。手術を受けるとしたらもちろん、医師にまかせるべきだろう。アメリカ大統領が科学との戦いを宣言し、子どもたちが科学の授業を敬遠するいまの世の中で、科学の解説書はとても貴重だ。一般の人たちが広く科学を理解し、科学に対して敬意を払うことが、科学界を護る盾になる。またそれが専門家の育成にもつながるだろう。

 しかし、この本はそのような類のものではない。

 経済学を教える者として、若い人たちにわかる言葉で経済を説明できなければ教師として失格だとつねづね思ってきた。そしてもうひとつ、経済学を教える中でさらに強く感じてきたことがある。それは、「経済モデルが科学的になればなるほど、目の前にあるリアルな経済から離れていく」ということだ。

 物理学や工学といった自然科学の世界では、理論が科学的に洗練されればされるほど、自然の働きがよりわかりやすく目の前にさらされていくものだ。しかし、経済学はどうも反対らしい。

 そこでこの本は、経済学の解説書とは正反対のものにしたいと思った。もしうまく書けたら、読者の皆さんが経済を身近なものとして感じる助けになるだろう。それに、専門家であるはずの「経済学者」がなぜいつも間違ってしまうのかもわかるようになるはずだ。

 誰もが経済についてしっかりと意見を言えることこそ、いい社会の必須条件であり、真の民主主義の前提条件だ。

 景気の波は私たちの生活を左右する。市場の力が民主主義を脅かすこともある。経済が私たちの魂の奥に入り込み、夢と希望を生みだしてくれることもある。専門家に経済をゆだねることは、自分にとって大切な判断をすべて他人にまかせてしまうことにほかならない。

目の前の混乱から離れて世界を見つめ直す
 この本を書こうと思ったのには、もうひとつ理由がある。私は長いあいだ娘のクセニアと離れて暮らしてきた。娘はずっとオーストラリアで育ち、私はギリシャに住んでいるので、一緒に過ごす時間が少なく、たまに会えてもまたすぐ離れ離れになってしまう。これまで時間がなくて話せなかったことを娘に話すようなつもりで、この本を書いた。

 この本の執筆は、楽しい作業だった。脚注も参考文献もつけず、学術論文の作法も気にせずに書いたのは、この本が最初で最後だ。

 いつもの「まじめ」な本と違って、この本は母国語で書いた。故郷のアイギナ島にある自宅で、サロニコス湾とペロポネソスの山々を遠くに眺めながら、筆のおもむくままにまかせた。あらかじめ決められた目次も手引きも計画もなかった。たまに泳いだり、ボートに乗ったり、パートナーのダナエと出かけたりしながら、9日間でこの本を書き上げた。

 この本がギリシャで出版されてから1年後、私の生活は一変した。ギリシャ危機をきっかけにユーロ危機が起き、とんでもない大混乱の中に放り込まれたのだ。

 私はギリシャの財務大臣として、国民と国際機関の板挟みになった。だが、その経験のおかげで、この本も注目を集めて多くの言語に翻訳され、フランスやドイツ、スペインなどでベストセラーになった。主要言語の中で、まだ翻訳されていないのは英語だけだった。

 そしてやっとジェイコブ・モーとペンギン・ランダムハウスの優秀な皆さんのおかげで、英語版〔日本版の底本〕が出版されることになった。

 2015年のギリシャ危機での困難な体験を描いた『アダルツ・イン・ザ・ルーム』(未邦訳)の執筆には、ほとほと手を焼いた。その大変な難産のすぐあとで、この本を英語に書き直す作業を行うことで、私は癒された。

 沈みゆく経済の渦に囚われてもがいた経験から逃避できる場所が、この英語版の執筆だった。この本のおかげで、私は昔の自分に戻れたような気がした。昔の私は、マスコミの攻撃にさらされることなく平穏に執筆を行っていた。自分自身に問いかけながら、頭の中にある本当の考えを掘り起こす静かな時間は、私にとって何よりも貴重だった。

資本主義を解き明かす
 いま、私たちは日替わりのニュースについて意見を交わすのに忙しく、本当に見るべきものが見えなくなっている。

 私たちが真剣に考えなくてはいけないのは、資本主義についてだ。

 2017年7月に、私はやはり故郷のアイギナ島で、同じ海と山を眺めながら、この英語版の執筆を行った。娘にはブレグジット、グレグジット〔ギリシャのユーロ圏離脱〕、トランプ、ギリシャ危機、ユーロ危機といった話題ではなく、資本主義について語りたかった。私たちの人生を支配している資本主義という怪物とうまく共存することができなければ、結局は何もかも意味をなさなくなってしまうのだから。

 しかし、私はこの本の中で「資本」や「資本主義」という言葉を使わなかった。この言葉が悪いというわけではない。ただ、この言葉につきまとうイメージのせいで、本質が見えなくなってしまうと思ったのだ。

 そこで「資本主義」のかわりに、「市場社会」という言葉を使うことにした。「資本」という言葉は、「機械」や「生産手段」と言い換えた。専門用語は使わないにこしたことはない。

 影響を受けたものや出典については、告白しなければならない。ここには、私が1980年代のはじめごろから意識的、または無意識的に集めたり借りたり略奪してきたアイデアや言葉や理論や物語が詰まっている。私は自分の考えを磨くため、また講義で学生や聴衆の心に響くような話をするために、ありとあらゆるアイデアを頭に入れてきた。本書はそんなさまざまな影響のもとに一気に書き上げた。そのすべてを示すことはできないが、いくつか思い出せるものを挙げておこう。

 文学作品のタイトルの多くは本文の中で紹介した。SF映画のタイトルも本文中に挙げている。SF映画は私にとって現在を理解するのに欠かせないものだ。そのほかに、4冊の本を挙げておきたい。

 まずは、ジャレド・ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』(草思社文庫)。格差の拡大から人種差別的な固定観念までを取り上げた第1章の話を裏付けてくれるのがこの本だ。次に、リチャード・ティトマスの『贈与関係』(未邦訳)。これはカール・ポランニーが『大転換』(東洋経済新報社)で行った議論をもとに血液市場を取り上げたものだ。もう1冊はロバート・ハイルブローナーの名著『入門 経済思想史――世俗の思想家たち』(ちくま学芸文庫)。そして、マーガレット・アトウッドの『負債と報い――豊かさの影』(岩波書店)。この本は負債について書かれた本の中で最高の1冊として、自信を持ってお薦めできる。

 この4作品以外に、私が影響を受けた人物と思想をここに記しておこう。

 カール・マルクスの亡霊。古代アテネ人が書いたギリシャ悲劇。ジョン・メイナード・ケインズによる「合成の誤謬」の解説。そしてベルトルト・ブレヒトの皮肉と洞察。

 彼らの物語と理論と執着は、私の頭の中に住み着いて離れない。この本の内容にも、その影響が表れていると思う。

(本原稿は『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』からの抜粋です)

ヤニス・バルファキス(Yanis Varoufakis)
1961年アテネ生まれ。2015年、ギリシャの経済危機時に財務大臣を務め、EU から財政緊縮策を迫られるなか大幅な債務帳消しを主張し、世界的な話題となった。長年イギリス、オーストラリア、アメリカで経済学を教え、現在はアテネ大学で経済学教授を務めている。著書には本書の他に、EU経済の問題を指摘した『そして弱者は困窮する』(未邦訳)や「史上最良の政治的回想録の1つ」(ガーディアン紙)と評された『アダルツ・イン・ザ・ルーム』(未邦訳)など、数々の世界的ベストセラーを持つ。2016年にはDiEM25(民主的ヨーロッパ運動2025)を共同で設立し、その理念を世界中に訴えている。

関美和(せき・みわ)
翻訳家。杏林大学准教授。慶應義塾大学卒業後、電通、スミス・バーニー勤務を経て、ハーバード・ビジネス・スクールでMBA取得。モルガン・スタンレー投資銀行を経て、クレイ・フィンレイ投資顧問東京支店長を務める。主な訳書に『誰が音楽をタダにした?』(ハヤカワ文庫NF)、『MAKERS 21世紀の産業革命が始まる』『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』(NHK出版)、『FACTFULNESS 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』(日経BP社)、『明日を生きるための教養が身につく ハーバードのファイナンスの授業』(ダイヤモンド社)など。
https://diamond.jp/articles/-/194993?

http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/437.html

[社会問題10] 自治体が見た「引きこもり家族」の窮状、全国初の専門支援でできること
2019年3月7日 池上正樹 :ジャーナリスト
自治体が見た「引きこもり家族」の窮状、全国初の専門支援でできること

引きこもり長期高齢化に伴う「8050問題」に対応する先進自治体の1つが岡山県総社市。この度、新たに立ち上げた「ひきこもり家族会」で明らかになった、関係者の窮状とは(写真はイメージです)

引きこもりの「8050問題」に
立ち向かう自治体初の試み

 引きこもり長期高齢化に伴う「8050問題」が、ホットな話題になっている。

 8050問題とは、「はち・まる・ごーまる」と読む。80代の親が50代の収入のない子の生活を支えて行き詰まることで、8050問題に近づく「7040世帯」も含めて指すことが多い。特に最近増えているのが、制度の谷間に埋もれた「8050問題支援の先進自治体はどこですか?」というメディアや現場の行政関係者からの問い合わせだ。
 
 そんな“8050問題先進自治体”の1つと言えるのが、2017年4月にいち早く基礎自治体では全国初となる「ひきこもり支援センター」(愛称“ワンタッチ”)を開設した、岡山県総社市だろう。

http://www.sojasyakyo.or.jp/since2018/09hikikomori/hikikomori.html

 この“総社モデル”と呼ばれる取り組みは、市の後押しを受けて、社会福祉協議会の中に「ひきこもり支援センター」の専門相談員2人を配置。相談員が、電話やメール、来所、訪問で無料の相談に応じてきたほか、民生委員らを通じた実態調査や、引きこもる人たちやその家族などが気軽に立ち寄れて安心できる「居場所」づくり、相談員と一緒に本人や家族をサポートする「ひきこもりサポーター養成講座」を開催するなど、それぞれのニーズ合わせた対応をしてきた。

 そんな中で、同センターが最近、必要に迫られて立ち上げたのが「ひきこもり家族会」だ。

 センター開設から2019年1月末までに受けた相談者数は、延べ174人。相談の内訳は、本人や家族だけでなく、兄弟姉妹、親族、地域住民と多岐にわたる。そのうち、何らかの形で本人と相談できたのは58件。家族のみの相談は60件。家族にも会えず、関係機関への情報提供止まりになっているケースが56件あった。

 ひきこもり支援員で社会福祉士、精神保健福祉士でもある佐々木恵さんによると、家族のみの相談を聞いていると家族が孤立してしまっていて、同じ境遇にある家族が話し合える場が欲しい、という声が何人かの家族から上がったという。

 2018年度に入り、佐々木さんらは家族会への参加を希望する人たちに声をかけ、家族会の設立準備会を毎月開いてきた。その集まりの中で家族会をつくろうという機運が高まり、8月に発足したという。

 とはいえ、家族は引きこもる子の存在を「家の恥」として隠す傾向が強く、なかなか外に悩みを発信することができないため、横につながれないことが多い。しかし同市では、市で活躍できる人対象の「ひきこもりサポーター養成講座」を受講していた家族たちの間で、「自分たちが変わらなければいけない」という意識に変わっていた点が大きな原動力になった。

「悩みを家族だけで抱え込んでいる他の人たちにも、家族会ができたことを知ってもらいたいと、メディアに出てもOKのご家族が率先して呼びかけて、設立記念式典でレモンの木の植樹を片岡聡一市長と一緒に行いました。そんなメディアを通じた姿が発信力となって、ご相談がまた増えたんです」(佐々木さん)

一軒家を借りてリラックス、
何でも話し合える仲になれた

 家族会は、平日の午後、一軒家を借りて開所された居場所の「ほっとタッチ」で、毎月第3木曜日の午後2時から4時頃まで開かれている。

「最初は会議室で開かれていたのですが、一軒家を借りるようになって、リラックスできる雰囲気なのか、自分のご家族の話を打ち明けてくれるようになりました。『ご近所の人には言えないけど、家族会なら同じ境遇にある家族同士なので、ここで話して帰ると肩の荷が下りた感じがする』と話される80歳代の親御さんもいました」

 また8050問題への対応としては、「地域を巻き込む」ことも重要なキーワードの1つだ。

 総社市は、社協の中に「ひきこもり支援センター」があるため、地域の行事などの情報にもコミットできて、それらの行事への参加者を募ることもできる。民生委員などの会議に出席し、地域でのお手伝いや体験できるような役割があるときは声をかけてほしいなどとお願いしてきた。

「地域には、まだまだ色々な資源が潜在しています。地域の方々にお声をかけて、引きこもりという特性を理解していただき、参加させていただく機会をつくってもらっています。サポーターになっていただいた方も地域のあちこちにいますので、役割づくりにも協力してもらったり、孤立している家族に関する相談を受けたりしています」(佐々木さん) 

 専門相談員は、必要に応じて本人や家族への家庭訪問も行っている。たとえば「電気が止まっていて心配」との情報があれば、その家庭を訪問する。しかし、本人から「電気を必要としていない」と言われると、“伝書鳩”のように「すり合わせ」を求められることも少なくない。

グレーゾーンにいる人々の叫び
専門スタッフの拡充が必要

 こうしたきめ細かな対応ができるのも、「ひきこもり支援」に特化した部署だからだ。

 ただ、周囲が「何かしら障害があるのではないか」「制度を受けたほうがいいのではないか」と感じていても、本人自身が「障害ではないから」などと捉えている場合、専門職として関わる中で、佐々木さんには迷いがあるという。

「これからどういう選択肢があるのかを提案させていただき、本人の選択で就労した仕事が失敗したとしても、『別の方法ででも頑張れるんだ』と気づいてもらえるよう、促しています」 

 佐々木さんによると、「引きこもり」と断定できない、どこにも該当しないグレーゾーンにいて、居場所を探している人が多いことも実感しているという。

「ひきこもり支援センターという看板を掲げた相談窓口ができたことでわかりやすくなり、来てもらいやすくなったことは強く感じます。『今まではどこに相談していいのかわからなかった』と、相談者の方々から何度も言われました。このセンターができたので、引きこもり当事者の方からの相談も多くなったように感じます」

 わかりやすさを伝えることは、相談につなげるための重要なキーワードだと言える。

 現在の相談員は2人体制で、手一杯の状態だという。これから社会が8050問題に向き合うためには、こうした専門のスタッフを拡充していくことによって、相談につながれずにいる家族に対し、きめ細かなサービスが提供できるのではないか。

(ジャーナリスト 池上正樹)

※この記事や引きこもり問題に関する情報や感想をお持ちの方、また、「こういうきっかけが欲しい」「こういう情報を知りたい」「こんなことを取材してほしい」といったリクエストがあれば、下記までお寄せください。

Otonahiki@gmail.com(送信の際は「@」を半角の「@」に変換してお送りください)

 なお、毎日、当事者の方を中心に数多くのメールを頂いています。本業の合間に返信させて頂くことが難しい状況になっておりますが、メールにはすべて目を通させて頂いています。また、いきなり記事の感想を書かれる方もいらっしゃるのですが、どの記事を読んでの感想なのか、タイトルも明記してくださると助かります。
https://diamond.jp/articles/-/196124
http://www.asyura2.com/18/social10/msg/140.html

[不安と不健康18] 「仏教」と「人工知能」の世界から見たマインドフルネス マインドフルネスを「筋トレ」から「オーガニック・ラーニング」へ
【第1回】 2019年3月7日 
「仏教」と「人工知能」の世界から見たマインドフルネス
メンタルをコントロールし、集中力・創造力が高まるとしてビジネスシーンで大きなブームとなっている「マインドフルネス」。しかし、ブームとなった半面、単なるツールとして安易に用いられ、その本質を見誤ってしまう危険もあるのではないか。
そこで「ハーバード・ビジネス・レビュー」の新シリーズ「EI Emotional Intelligence感情的知性」最新刊の『マインドフルネス』発売記念イベントで、ゲーム・人工知能(AI)開発の第一人者にして哲学塾を主宰する三宅陽一郎氏、曹洞宗僧侶としてグーグルやスターバックスなど米国の名だたる企業に坐禅を指導してきた藤田一照氏に、マインドフルネスの本質について語り合ってもらった。その内容を2回に分けて公開する。(構成/田坂苑子、写真/斉藤美春)


「競争社会に勝つため」のマインドフルネスは正しいのか
三宅 本来、「禅」というのは欲求や煩悩などを含め、いろんなものから解き放たれるためにあるのだと思うのですが、最近、特にアメリカでは、「集中力や生産性を上げるため」というようなマインドフルネスの「目的性」がはっきりしてきている気がします。

 目的を明確に持ってマインドフルネスを取り入れようとするのが非常にアメリカらしいプラグマティズム的発想だな、と。そういうマインドフルネスには邪心と言いますか、本来至るべき境地とは逆のものが入ってしまっている気がするのですが、藤田さんはそのあたりをどうとらえていらっしゃいますか。

藤田 アメリカでこういうことに関心を持っている人は非常に真面目な方が多いんです。向こうで坐禅を教えていたとき、プリンストン大学を出た医師の方がいらしたんですが、「私のために悟れるプログラムをつくってくれ。どんなに困難でも必ずやり遂げる。今までそうやって生きてきたから」と言うんですね。

 プロジェクトが好きで、目指すものがあると喜んでがんばる。彼らのような人たちはそうやってがんばって欲しいものを手に入れてきたので、その思考のまま「禅で悟りというすばらしいものを手に入れたら、自分はもっと成功する」と考えている。

 そもそもそういった考え方に疑問を呈しているのが仏教だということ、その思考の路線を変えるのが禅なのだということを理解してもらうのに苦労しました。彼らとしては、そういうやり方で生きてきて8割方うまくいっているのだから、残り2割を禅やマインドフルネスで補強すれば完全になると思っている。


三宅陽一郎(みやけ・よういちろう)
日本デジタルゲーム学会理事、「人工知能のための哲学塾」主催。ゲームAI開発者。京都大学で数学を専攻、大阪大学(物理学修士)、東京大学工学系研究科博士課程(単位取得満期退学)。2004年よりデジタルゲームにおける人工知能の開発・研究に従事。東京大学客員研究員、理化学研究所客員研究員、IGDA日本ゲームAI専門部会設立(チェア)、DiGRA JAPAN 理事、芸術科学会理事、人工知能学会編集委員。著書に『人工知能のための哲学塾』 『人工知能のための哲学塾 東洋哲学篇』(ビー・エヌ・エヌ新社)、『人工知能の作り方』(技術評論社)、『なぜ人工知能は人と会話ができるのか』(マイナビ出版)、『人工知能と人工知性』(iCardbook)。共著に『絵でわかる人工知能』(SBクリエイティブ)、『高校生のための ゲームで考える人工知能』(筑摩書房)などがある。
三宅 面白いですね。最近シリコンバレーから日本へ移ってくるエンジニアが結構いるんですが、なぜ日本に来たのかと聞くと、向こうは競争が激しすぎる、と言うんですね。そういう熾烈を極める競争社会のなかで、本来ならその対極にある禅の思想やマインドフルネスが必要とされているというのが、私としてはとても面白くて。

 向こうの人にとっては「勝つため」「競争社会で生き延びるため」にマインドフルネスが必要、という不思議な感覚がありますよね。もちろんそうではない事例もたくさんあるとは思いますが。

マインドフルネス=解像度の高い目をもつ
藤田 人が現実に満足できずジタバタする心には、「自我」とか「エゴ」とか色々な言い方がありますが、道元はこれを「吾我(ごが)」と言っています。禅では「がんばる」ということが、この「吾我」に通じてしまうんです。でも「吾我」を持っているとできないようにデザインされているのが、坐禅やマインドフルネスというものなんですね。

 ただこの「がんばらない」というのが非常に難しい。緊張を解いて目的や執着を手放してくつろぐのがいちばんいいんですよ、と言っても、真面目な人は「はい、わかりました! がんばってくつろぎます!」となってしまう(笑)。

 私自身やはり最初はがんばってしまいましたし、そこがわかるまでに10年くらいかかりましたから。でももちろん10年もかからない人もいますし、すぐわかる人もいます。だからやらないよりはやったほうがいい。ずっとやっていたら、どこかで変わっていきますから。

 そのためにも最初は「うまくいっていない」ということに気がつく、ということが大事です。マインドフルネスによってサクセスストーリーが始まるわけではなくて、最初はたぶん失敗がずっと続く。それをありのままに「観る」ということがマインドフルネスなんです。

 仏教の言葉で「如実観察」と言うんですが、「実の如く観る」ということですね。ありのままに観ることで失敗の原因がどこにあるかが見えてくる。この如実観察のための訓練が「瞑想」であり、より「解像度の高い目」で経験を観ることがマインドフルネスだと私は思います。

三宅 吾我を手放して自分の失敗もありのままに観る、ということですね。一般の人からすると仏教というのは厳しい修行があって、それを経て高みに行って……というような常人ではなかなか及ばないところがあるイメージですが、マインドフルネスはそれをアメリカでわかりやすくパッケージングして日本に逆輸入した、という感じですね。

 そこまで仏教に詳しくない一般の人には「これぐらいわかりやすければ自分にもわかる!」ということでブームになったんでしょうね。

パッケージ化されたことで一般に浸透

藤田 そうですね。三宅さんがおっしゃるように、日本の仏教は入り口を高いところにおいて、みんなに「私には無理」と思わせるようなプレゼンをしてきたので、あれだけ長い間布教をしてきても全然広まってこなかった。でも、マインドフルネスが逆輸入され、仏教にいちばん縁のなさそうなビジネスマンたちが瞑想に関心を持った。今まで日本のお坊さんたちはいったい何をやっていたんだと言われたりしますよ(笑)。

 そもそもアメリカのマインドフルネスは、マサチューセッツ大学医学部教授のジョン・カバットジンが、瞑想やヨガを取り入れることで鬱や慢性疼痛などを抱えた人の治療に効果があるのではと瞑想中に思いついて、禅の思想から発展させて提唱したものなんですよ。

三宅 敷居を低くしてプロダクティブにするのが、やはりアメリカ人はうまいですね。


藤田一照(ふじた・いっしょう)
1954年、愛媛県生まれ。灘高等学校から東京大学教育学部教育心理学科を経て、大学院で発達心理学を専攻。院生時代に坐禅に出会い深く傾倒。28歳で博士課程を中退し禅道場に入山、29歳で得度。33歳で渡米。以来17年半にわたってマサチューセッツ州バレー禅堂で坐禅を指導する。2005年に帰国し、現在も坐禅の研究・指導に当たっている。2010年より2018年まで曹洞宗国際センター所長。スターバックス、フェイスブック、セールスフォース、グーグルなど、米国の大手企業でも坐禅を指導する。著書に『現代坐禅講義』(KADOKAWA)、共著に『アップデートする仏教』(幻冬舎)、『禅の教室』(中央公論新社)、『生きる稽古 死ぬ稽古』(日貿出版社)、『退歩のススメ』(晶文社)、『感じて、ゆるす仏教』(KADOKAWA)、『安泰寺禅僧対談』(佼成出版社)、『仏教サイコロジー』『マインドフルネスの背後にあるもの』(サンガ)などがある。
藤田 カバットジンさんのマインドフルネス瞑想にある「レーズン瞑想」なんて、すごいと思いましたよ。干しブドウひと粒を30分くらいかけて、眺め、においを嗅ぎ、触り、味わい……というものですが、五感を研ぎ澄ますエクササイズを干しブドウを使ってやるなんてね。

三宅 「チョコレート瞑想」とかすごく衝撃的でしたからね。ここからなら私も入れるかな、という気持ちになりますよね。

藤田 こういう方法論というかマニュアルを作るのがアメリカの人はすごく上手ですね。だからこそ仏教なんてまったく触れることもなかった、瞑想なんてやりそうにもなかった人たちが、こぞってやるようになっている。

 ちなみに、「マインドフルネス」という言葉は西と東が出会ってできた面白い言葉なんですよ。Mindful(マインドフル)はもともと西洋にあった言葉で、聖書にも載っている古くからある英語です。仏教用語にサティ(sati)というパーリ語の言葉があり、日本語では「念」とか「気づき」などと訳されることが多いのですが、本来はもっと広く深い意味をもっています。

 このサティの訳語として英語圏であてられたのが、mindfulnessです。それが日本にきて、カタカナの「マインドフルネス」となった。サティよりも世俗的な形に成形されているマインドフルネスを否定的に見る向きもありますし、私もそう思う部分はありましたが、今はサティとマインドフルネスのあいだをうまくつなげられるといいのではないかと思っています。

(後編は、明日3月8日公開予定)
https://diamond.jp/articles/-/195914


 

【第2回】 2019年3月8日 
マインドフルネスを「筋トレ」から「オーガニック・ラーニング」へ
メンタルをコントロールし、集中力・創造力が高まるとしてビジネスシーンで大きなブームとなっている「マインドフルネス」。しかし、ブームとなった半面、単なるツールとして安易に用いられ、その本質を見誤ってしまう危険もあるのではないか。
そこで「ハーバード・ビジネス・レビュー」の新シリーズ「EI Emotional Intelligence感情的知性」最新刊の『マインドフルネス』発売記念イベントで、ゲーム・人工知能(AI)開発の第一人者にして哲学塾を主宰する三宅陽一郎氏、曹洞宗僧侶としてグーグルやスターバックスなど米国の名だたる企業に坐禅を指導してきた藤田一照氏に、マインドフルネスの本質について語り合ってもらった。(前編はこちら)
(構成/田坂苑子、写真/斉藤美春)


マインドフルネスを「筋トレ」から「オーガニック・ラーニング」へ
三宅 サティとマインドフルネスの違いというのはどういうところなんでしょう。

藤田 生まれてから2年くらいの赤ちゃんは、学校のように教えなくても日本語の基礎や運動の基礎を知らないうちにマスターしていますよね。教えていないのに勝手に学んでしまうことを「オーガニック・ラーニング」と私は呼んでいるんですが、サティを行うのはそういうイメージです。先生がいてプログラムがあってそれをこなしていく……というよりは、赤ちゃんのように皮膚から入ってくるような感覚。そうやって学んだほうが、いざというときにメッキが剥がれない。

 サティの修行は、いわば24時間マインドフルネスを、お互いにサポートし合うコミュニティのなかでやるようなものです。先輩や師の言動を見て自然に身につけていくオーガニック・ラーニングがそこにはあるんですね。

 かたや今のマインドフルネスは、たとえば8週間というコースのなかで「スキル」を学ぶ感じなので、アプローチが違うんですよね。両方のいいところを、互いにトランスファーできればいいと思っているんですけどね。


三宅 陽一郎(みやけ・よういちろう)
日本デジタルゲーム学会理事、「人工知能のための哲学塾」主催。ゲームAI開発者。京都大学で数学を専攻、大阪大学(物理学修士)、東京大学工学系研究科博士課程(単位取得満期退学)。2004年よりデジタルゲームにおける人工知能の開発・研究に従事。東京大学客員研究員、理化学研究所客員研究員、IGDA日本ゲームAI専門部会設立(チェア)、DiGRA JAPAN 理事、芸術科学会理事、人工知能学会編集委員。著書に『人工知能のための哲学塾』 『人工知能のための哲学塾 東洋哲学篇』(ビー・エヌ・エヌ新社)、『人工知能の作り方』(技術評論社)、『なぜ人工知能は人と会話ができるのか』(マイナビ出版)、『人工知能と人工知性』(iCardbook)。共著に『絵でわかる人工知能』(SBクリエイティブ)、『高校生のための ゲームで考える人工知能』(筑摩書房)などがある。
三宅 なるほど。学びというのは最初いろいろ試行錯誤するんですよね。自分の中から行為を組み立てていって、その行為のほとんどが失敗なわけですが、ある行為は世界と自分の中でループができあがる。

 例えば泳ぐのが下手な人は最初、水と自分がうまく調和していない。ところがあるときなぜかうまく調和し、遠くまで泳げるようになる。ある瞬間「発見」するわけですね。

 赤ちゃんもいろんなことをやってみて、その中からダメな行為と良い行為というのを自分で判断していく。サティというのも、おそらく自分自身で発見するものなんじゃないかなと思うんです。マインドフルネスのほうは、上から正解をまず教えてあげるようなところがあって、そこが違うのかなと感じます。

藤田 ええ。それに、マインドフルネスはよく「心の筋トレ」というふうにも言われたりしますね。体の筋トレで、何キロのダンベルを何回上げて……というトレーニングをするのに似ている。一方、サティのほうは、漁師の人が毎日仕事で海に網を投げては引き上げたりしているうちに自然についた筋肉、というイメージですね。

三宅 自然と一体のなかで身についたのがサティで、マインドフルネスはボディビルディング的、ということですね。

藤田 そう、だから筋肉の質が全然違うんですね。筋トレは筋肉痛になったほうがいいんだけど、漁師のほうは仕事ですから筋肉痛にならないように体を使うわけです。だから漁師のほうの筋肉にはインテリジェンスが含まれている。全身を使ってやるので。

 筋トレは、今日は上腕二頭筋、というように一部分に焦点をあててやる。そういう違いがあるわけです。

三宅 学ぶ側がマインドフルネスという簡易版と、サティという本物があることを知っていればいいんですよね。

藤田 ええ。私としてはそのふたつをうまく接合できればいいなと思っています。マインドフルネスが浸透してきたことで、色々な道具立てもそろってきたので、何かブレイクスルーが起こるかもしれないな、とそういう気がしています。

人工知能に必要なのは「煩悩」

藤田一照(ふじた・いっしょう)
1954年、愛媛県生まれ。灘高等学校から東京大学教育学部教育心理学科を経て、大学院で発達心理学を専攻。院生時代に坐禅に出会い深く傾倒。28歳で博士課程を中退し禅道場に入山、29歳で得度。33歳で渡米。以来17年半にわたってマサチューセッツ州バレー禅堂で坐禅を指導する。2005年に帰国し、現在も坐禅の研究・指導に当たっている。2010年より2018年まで曹洞宗国際センター所長。スターバックス、フェイスブック、セールスフォース、グーグルなど、米国の大手企業でも坐禅を指導する。著書に『現代坐禅講義』(KADOKAWA)、共著に『アップデートする仏教』(幻冬舎)、『禅の教室』(中央公論新社)、『生きる稽古 死ぬ稽古』(日貿出版社)、『退歩のススメ』(晶文社)、『感じて、ゆるす仏教』(KADOKAWA)、『安泰寺禅僧対談』(佼成出版社)、『仏教サイコロジー』『マインドフルネスの背後にあるもの』(サンガ)などがある。
藤田 ところで三宅さんにお目にかかったらうかがってみたいと思っていたのですが、人工知能を悩ませることってできるんですか? 

「自分はなんで生まれてきたんだろう」とか、私たちが当たり前にやっている「悩む」ということがわからないと、人工知能が人間に近づくことは難しいのではないですか。

三宅 ええ、まさにそのとおりです。人間は悩みますし、煩悩から逃れたいと思っている。でも、人工知能というのはこの世界になんの執着もない。たとえば人工知能をつくってゲームの中においても、そのままでは何もしない。プレーヤーもこの世界も、人工知能にとっては意味がないので。

 私がやっているのは、「あのプレーヤーを憎んで倒してこい」とか「お前の陣地は絶対に守らなければならない」とか、そういった執着を人工知能に教えることなんです。そうすることでどんどん動きはじめるんですね。ですから人工知能の開発者がやっていることというのは、どうやったら人工知能にこの世のしがらみを与えるか、執着をさせるか、ということ。

 人工知能には、私たちのような「身体」がない。だから欲求がない。そこが人間らしくないところなんですね。人工知能を人間らしくするためには、むしろ「煩悩」が必要なんです。

藤田 「身体」というのは、知覚装置としての身体ということでしょうか。

三宅 あるいは世界に対して主体的に働きかける「実体」といいますか。今の人工知能は自分で問題を作る能力がないんです。全部の問題が人間から与えられていて、それを解くという装置になっている。主体的に生きていない人工知能が主体性を持つことができれば、自分で問うことができる。今、人工知能がたくさん情報を与えられて難しいことを解いていくという段階はほぼ終わっています。

 次の発展としては、いかにして自分で問うという能力をつけるか。これは人工知能ができて以来、60年の悲願でもあるんですよ。そして主体的に生きるにはやはり身体というものが必要になってきます。

 今ある人工知能ロボットは身体を持っているように見えても、その身体は知能から完全にコントロールできるものなんです。つまり身体としては、完全に知能に隷属してしまっている。身体というのは本来、ある程度自立性を持っているものなんです。身体の中に知能があるわけですね。

藤田 それはすごくわかります。私も瞑想や坐禅の指導をしているときに、人の体もAIロボットのようになってしまっている、と感じることがあります。それでは瞑想・坐禅にはならない。生きている物質としての身体の言い分をきちんと聞くという態度でやらなければならないんです。

 瞑想や坐禅では呼吸を観察するのですが、体を道具視している近代の身体観を持った人たちがやると、呼吸の感覚をアグレッシブに取りにいこうとしてしまっている。そういうアプローチをされると、体は嫌がるというか、呼吸を探しにくくなる。むしろ探そうとしないで、自分はその場にいてやってくるものを迎え入れる。そういう態度でいると体は自由にしていいんだと感じ、いろんな感覚を届けてくれるんです。

「我思う、ゆえに我ここになし」――考えすぎると自分を見失う
三宅 近代自我が始まったデカルトの「我思う、ゆえに我あり」の思想から、身体と自我が分かれ、世界と自我が分かれ、「意識が王様」になってしまったんですよね。そして意識してしまうと、ちゃんと見えなくなってしまう。

藤田 ええ。逆に仏教の課題というのは「意識の外を意識する」ということなので、デカルトの言い方で言うと「我思う、ゆえに我ここになし」。つまり考えてしまうから自分を見失ってしまうんです。

三宅 すばらしい名言ですね(笑)。

 西洋の古典的な近代哲学の上に立っている今の人工知能では、「考える主体以外の主体がどこかにある」という考えがないので、結局単なる思考マシーンになってしまっている。人工知能にはかねてからフレーム問題という重要な課題がありますが、「枠」から逃れられないんです。

 人間が設定した問題からちょっと外に出ただけで、人工知能は対処できなくなってしまう。ロボットが滑稽にみえるのは、人間は枠の外のことがわかっているのにロボットはひたすらその枠のなかで何かをやることしかできないからです。掃除中にいきなり洗濯物が飛んできても、プログラムになければ掃除ロボットにはお手上げ。現実世界には無限の雑音があるから、人工知能は現実が苦手なんです。

 それならその現実を先にデータ化してしまえばいいのでは、というのがグーグルなんかがやろうとしていることなんですね。最初にすべてスキャンしてしまって、全部を「意識にのぼらせて」しまおう、と。人間のように無意識のうちにうまく解決手段を考えることはできませんからね、人工知能には。

仏教と東洋思想が人工知能開発を次の段階へ

三宅 実は仏教というのは、私たち人工知能の開発者にとって知りたい知識の宝庫なんです。私たちがいちばん知りたいのは「人間の知能ってどうなっているの」ということなんですけど、たとえば仏教の教えをひもとくと、人の知能が多層構造になっていることなど千年以上も前から理論としてあったわけです。

 一方で西洋の哲学書をいくら読んでも、知能のモデルは出てこない。また西洋から見ると、仏教はサイエンスではないので、あまり人工知能の文脈には乗ってこない。実験をやって結果を出すのではなくて、自分で経験することによって会得するものですから。仏教は人間の知能の形を体験で探求しているんですね。

 西洋の人には、仏教がまさかそんなに深い「知能」を抱えているとはなかなかわからない。そこをなるべくわかりやすくしようというのが私の研究でもあるんです。

藤田 先ほどお話しした「解像度の高い目で経験を観る」ことが仏教の探求方法ですからね。仏教や東洋の瞑想の伝統は、解像度の高い目で自分の内的世界を観測する装置を開発したけど、西洋は外部を観察する解像度の高い望遠鏡や電子顕微鏡を開発したと、そういう感じですね。

三宅 そうなんですよ。それに西洋の哲学者は物事を分解して組み上げるところで知を形成するという考え方なのに対し、東洋の思想家は物事を区別しないところから知が生まれる、という発想なんですね。だから仏教を勉強すればするほど、私たち人工知能の開発者たちが知りたいと思っていることが出てくるんです。

 さすがに教典を読むことはできないので、仏教についてわかりやすく書かれたものをヒントにしているんですが。本来の形をわかりやすくディダクションしたものを目的に応じて利用しているという点では、私のやっていることもマインドフルネスに似ていると言ってもいいかもしれません。

藤田 そうですね。初期仏典なんかについては、今はわかりやすく書いてある本も多いです。仏教は古くさいパッケージングをしてきたせいで、骨董品のように扱われてきました。でも古い蓄音機だって飾って置いておくだけではただの昔の音楽装置というところで終わってしまうけれど、まわして鳴らしたら懐かしい音が聴こえてくる。

 だから仏教も、取り出して音を出さないとダメなんです。まだたぶん賞味期限は切れていないはずですから。

三宅 賞味期限が切れているどころかむしろ必要とされているからこそ、西洋で取り入れられたのでしょうね。ただ彼らもそこに本質があるとわかっていてもなかなか取り出せない。だからそのあいだを藤田さんのような方々がつないでいる。

 実は西洋哲学の上に立ってきた人工知能も今、行き詰まっているんです。おそらくいつか、東洋のいろんな知見を取り入れるともう一段階高い人工知能ができるとみな気づくと思うんですよね。

 私はそれを何とか伝えたいと思っているんですが、なかなかうまく伝えられない。マインドフルネスのようにうまくキャッチーな感じで伝えられたら、将来は人工知能研究者が必死に仏典を読むというような時代がくるのではないかと。藤田さんのような方々と人工知能研究者とが一緒に人工知能を作るという、そういう未来が来るのではないかと思っています。
https://diamond.jp/articles/-/195936

http://www.asyura2.com/16/health18/msg/724.html

[経世済民131] 主流派経済学とMMTの対立点 MMT:トンでも?まとも? 自国通貨発行国に適用される財政政策等の一般原則 
wankonyankoricky @wankonyankorick

主流派経済学とMMTの対立点


alittleecon.wordpress.com/2014/06/08/mod…


2016-02-15 10:13:38
主流派:財政赤字は悪 MMT:赤字は良くも悪くもないが、非政府部門の意図的支出が資源を完全稼働させるのに十分でなければ、必要となる。

2016-02-15 10:17:49
主:財政黒字は善 MMT:財政余剰は善くも悪くもないが、遊休資源があるときには成長の足を引っ張ることとなり、ひどいことになるかもしれない。

2016-02-15 10:20:13

主:財政黒字は国内貯蓄に貢献する MMT:通貨発行国が、自分の発行した通貨を貯蓄するのはナンセンス。貯蓄とは将来の購買力を事前にため込む行為で、資金調達に制約のある非政府部門にしか当てはまらない。政府は事前に資金をため込む必要なく「貯蓄」も不要。

2016-02-15 10:27:51

主:財政予算は景気循環を通じて均衡すべき。MMT:財政予算は景気循環に関わらず、非政府部門の支出決定で完全雇用を達成できなければ、総支出を補わなければならない。

2016-02-15 10:31:26

主:財政赤字は金利を引き上げる。希少な民間貯蓄を奪い合いになるから。MMT:民間貯蓄はあらかじめ決まっているわけではなくて、所得とともに増減する。

2016-02-15 10:34:12

主:政府の資金調達費用は債券市場で決まる MMT: 中央銀行が金利を決定している。イールドカーブ上のどの期間でもコントロール可能だ。政府支出の費用を本当に決めているのは、政府プログラムに利用可能な実物資源。

2016-02-15 10:37:07

主:財政赤字は将来の増税を意味する MMT:財政赤字は償還される必要はない。すべての世代は自由に自分たちの課税水準を決定できる。

2016-02-15 10:38:59

主:政府は(貨幣)財政空間を使い切るだろう MMT:財政空間とは、通貨と引き換えに入手できる実物資源とサービスによってより正確に定義できる。貨幣財政空間を使い切ることはあり得ない。

2016-02-15 10:42:55

主:財政赤字は、巨大な政府と同義 MMT:財政赤字があったって政府が巨大か小さいかはわからない。非政府部門の貯蓄意欲が高くて、政府が完全雇用維持を目標にしていれば、赤字になる。

2016-02-15 10:45:53

主:政府支出はインフレ的 MMT:あらゆる支出はインフレリスクをはらむ。遊休資源を使っている限り、政府支出がインフレ的ということはない。もし名目総需要が生産力を上回っていれば、なんの支出でも、インフレ的になり得る。

2016-02-15 10:51:34

主:民間部門に対して国債を発行することで、中銀直接引受けよりインフレリスクを減らせる。 MMT:国債を発行しようと発行しまいと財政支出のインフレリスクに違いはない。インフレは支出によって引き起こされるのであって、貨幣的アレンジメントは関係なし。

2016-02-15 10:55:58

主:財政赤字は国債として将来世代の負担になる MMT:世代間の負担は、実物資源の利用可能性という形で関連する。例えば、再生不可能な資源を使い切ってしまえば、次世代の負担となる。現在の実物資源を将来世代に移転することなど不可能。

2016-02-15 11:01:40

主:失業が金利に関わる MMT:雇用が金利に関わる

2016-02-15 11:05:01

主:ソブリンマネーの発行者もデフォルトリスクあり MMT:ソブリンマネーの発行者はデフォルトリスクなし。いかなる債務も通貨を発行して支払える。

2016-02-15 11:07:27

主:納税者の金 MMT:公共通貨。納税者は資金供給しているわけではない。租税は、われわれの代表者が実物資源を自由に使えるための工夫。これにより政府は国民全体の利益のためのソシオーエコノプログラムに向けて実物資源を利用できるようになる。

2016-02-15 11:13:29

主:人間は自己利益に基づく合理的決定を行っている MMT:人間は複雑で、あまり行動を予言できるものではない。理性と感情は切り離せない。

2016-02-15 11:15:41
ツイート

• Modern Monetary Theory の基礎 77pt
• リッキーさんの一連のツイートからMMTの考え方に触れる。 99pt
• 通貨はいかなる意味で政府負債なのか? 及びソマリアシリングの話 72pt
https://togetter.com/li/1006896


 

ジョン・T・ハーベイ
「MMT:トンでも?まとも?」(2019年3月5日)
今年に入ってMMT(現代金融理論)に対する主流派経済学者の(つまらない)攻撃が増えているのですが、MMTerではないポストケインジアンであるJohn T. Harvey先生がついに痺れを切らしてForbes氏に書いた文章のゲリラ翻訳。
MMterには好意的に受け取られています。

MMT: Sense Or Nonsense? 
ttps://www.forbes.com/sites/johntharvey/2019/03/05/mmt-sense-or-nonsense/

「現代金融理論(MMT)をめぐる現在の議論に参加する忍耐力はないね」、とTwitterに書いたのはほんの数日前のことだった。議論の大部分は、人格攻撃だったり、藁人形論法だったり、噛み合っていなかったりで全くの時間の無駄のように見えた。まあ、気が変わったんだよ!

ポール・クルーグマンがもう何年もMMTと戦っているリングに、有名な主流経済学者であるローレンス・サマーズとケネス・ロゴフが新たに参戦だ。自分が意見したところで解決に向かったりはしないだろうが、吐き出しておきたくなったんだ。一言でいえば、クルーグマン/サマーズ/ロゴフが間違っている。

まず私の立場をはっきりしておく。私はMMTの全部に賛成というわけではない。但し、その賛成できない部分が公共の議論になった試しはなく、MMTの政策提案に変更を迫る論点でもない。一般人にとってはどうでもいい部分だ(学術論文にすれば二、三本分だ)。要するに、私はMMTのいくつかの側面について実際に批判的なのであり、彼らの方針に沿った発言をする立場の人間でもないということを理解いただければ。

とは言え、昨今の議論の文脈ではMMTersが正しい。
それを説明するため、最初にMMT(あるいは、マクロ経済学が適切に行われていると私が考えているもの)とはどのようなものかをレビューしておく必要があろう。当然、手短かに、だ。そこでジョブギャランティ制度に焦点を当てる。

解決されるべき中核問題

1. 論を待たないこととして、働く意思がある人すべての職を民間部門で雇用できればそれに越したことはない。しかし民間部門では労働は費用であるから最小化が目指される。これは批判ではなく、我々の経済から切り離せないインセンティブ構造である。

2. 私たちがモノやサービスを生み出す能力は人類史上でかつてない高水準にある。そこから誰か(例えば失業者)を疎外することに論理的な理由はない。それは道徳に反する。

マクロ経済上の本質的事実

3. 大統領の娘が数日前にまさしく言ったように、人は働きたいものだ。全くその通り。

4. 貨幣は希少なものではない。民間部門も公共部門もキーボード入力で貨幣を生み出すことができる。もちろん、民間と公共ではそのメカニズムが異なっている。

5. 公共部門においては、あらゆる意図と目的のため、財務省と中央銀行が協調して行動し、この統合政府自身が貨幣創造をファイナンスしている。これは日常的に行われていることで、新しい話ではない。

6. 資源は、貨幣と異なり希少性があり、それは民間と公共の両方の部門でモノとサービスを生産する能力を制約する唯一のものだ。 たとえばアメリカの労働者人口を倍増させるといったことはできない。 労働者がそんなに多くはいない。給料を準備することはできても、実行できない。 非現実的だ。我々にはできないことがあるのだ。

7. 米国政府は、自国通貨建ての債務をデフォルトすることはできない。これは理論ではなく法則だ。 紙幅の関係でここに詳述することはできないが、背景知識としてはこのブログ投稿を見てほしい。

8. 公共部門の赤字は民間部門の黒字に等しい。これは理論ではなく、基本的な会計だ。政府支出が税収より多いのであれば、民間部門は4月15日の納税額よりも稼いでいるということになる。クリントン時代の財政黒字時代に民間部門の債務が激増した理由はこれだ。この論点もまた背景知識としてこの投稿がある。

その解決策

9. 遊休状態の資源がある場合、政府が新しく創出する貨幣を使用することによってそれらを有効利用しない理由は何もない。労働力のことだ。 石炭やジャガイモならば遊休していても大きな社会的/経済的問題にはならない。 しかし金融危機後の景気後退の最中に1500万人の失業者が存在しているなら、それは大問題だ。

10. 私たちにモノやサービスを生産する能力があり、働く意思がある人々が存在するときに、政府が行動しないなら道徳に反する。失業中の労働者を民間部門が雇うと利益を上げることができないことはある。そう、民間がそうする必要はない。

11. その場合、失業者は公共部門に雇われるべきだ。 国防、警察、防火、インフラの修繕、公教育、環境の清掃と保護、高齢者の介護など、利益を生み出さない社会問題が存在している限り、雇用機会は無数に存在している。心配するなら、私たちが全部の社会問題を解決し尽くす日がやって来てからすればよい。ついでに言えば、利益を生み出せる社会問題は民間部門に残しておくべきだ。

12. 私たちはすでにMMTを実行しているし、実行して来た!!!!! 財政赤字はいつも貨幣創造によって賄われてきたし、失業者を雇うために行動してきた経験もあり、非常に高い債務/ GDP比も問題なく管理されている。 MMTはある種の過激な政策だとして書かれる記事ばかり読まされるものだが、それはまともな批評を受けるよりも恐ろしい戦術だと感じる。MMTは過激なものではなく、私たちがすでに行っている事項について視点を変えたり、方向性を変えたり、再構成しようとするものだ。大きな話であるのは間違いないが、私たちが現在または過去においてやってこなかった事柄は何も含まれていない。

13. その政策でインフレになるのは、私たちが完全雇用状態にあるとき、供給能力を超えて需要を押し上げようとしたときだけだ。しかし、そもそもこの政策の目的が完全雇用に到達することにあるのだから、それを超えて継続する意味はない。タイヤに空気を送り続ければ、やがて爆発するだろうというようなものだ。そうなる前に送るのをやめるだろう。もともとドライブを再開したいだけなのだから。

主流による批判の評価

私はもう静かに座って無根拠な批判をただ耳に入れ続けることができなくなった。わが心の平安のために言わなければならないことがある。MMT、つまりはマクロ経済学の概要は上で正確に説明したので、ここからクルーグマン、サマーズ、ロゴフのコメントのレビューに移ろう。

上記で各項目に番号を付けたのは、以下で参照しやすいようにだったのだ。上が少々長くなっていたのは、彼らの批判に対して言っておかなければならないと感じたことを書き留めたからだ。さあ始めよう!

ポール・クルーグマン

MMTで政策運営すると (Wonkish)


これは賢いタイトルだね。“wonkish”という単語は癇に障るものがある。「私は賢く、読者は私が言っていることを理解できないかもしれない」と言っているようだ。はっきりそう言え!しかしまあ、無害なハッタリだ。

こう仮定しよう。FRBまたは他国の中央銀行は金利を設定できる。他の条件が一定なら金利を下げると総需要は増加する。


クルーグマンについては別のやつを取り上げた方がよかったかもしれない。こいつは即座にカタが着く。現実世界において、需要は金利の動きに影響されないというのは有名な話だ。何もMMTではなく、主流の研究でも示されている結果だ。これはFRBの研究。はい、初めからこの仮定が却下されるのであれば、これに基づいている残りの部分は無意味だ。余談だが、クルーグマンが使っているこのモデルはあまりに単純化されたもの(IS-LM)で、その発明者でさえ学部の教室以外で使えるとは思っていなかった代物だ。

ラリー・サマーズ

そして経済状況の変化に対応して新しい経済学的な考え方が開発されたのだが、それらは以前の正統性の破壊を反映したものになっている。


経済学の正当性崩壊は何十年も前に起こっている。MMTその他は昨今の経済状況の結果としてできたものではない。

そして今、それらの新しい考え方が、あたかもフリーランチが存在するかのように異端の経済学者達によって過度に単純化され、誇張されている。政府は誰にも負担を課さずに支出できる能力があると言うのだ。


”異端の経済学者達”についてははーコメント。しかし、フリーランチならサマーズの学派の国にも存在している。正統経済学において、生産可能性フロンティアの内側(例えばフルキャパシティ未満)にいる状態であれば何の犠牲も払うことなく生産を増やすことができる。但し、正統経済学は経済でが瞬時に完全雇用に至ると単純に仮定するので、これが論点にならない。#1を参照。

MMTと略記される現代貨幣理論は、現代のサプライサイド経済学だ。 あるまともな考え方 ? つまり実質金利が低いときには伝統的な財政政策のタブーに捕らわれない必要がある…


MMTは「実質金利が低いとき」とは何の関係もない。もし今の政策金利が25%でインフレ率が0%だったとしても上の1から13は何も変わらないだろう。引用を続ける:

あるまともな考え方 ? つまり実質金利が低いときには伝統的な財政政策のタブーに捕らわれない必要がある ?というものも異端経済学にかかると、ジョブギャランティへの大支出ですら他の誰にも重荷を課すことなく中央銀行がファイナンスすることが可能であるという馬鹿げた主張になってしまう。


”異端の経済学者達”は…上で書いたか。この箇所は先ほどのフリーランチの話に戻る。失業者が雇用されることのどこに重荷が登場するのか?大不況は重荷である。完全雇用は重荷などではない。

第一に、MMTはどういうわけか紙幣を印刷することによって、政府はゼロコストで赤字を賄うことができると言う。


これが正確な主張かどうかは別として、どんなコストも支払可能だという原則と一致しない。#7

第二に、MMTの主張は誤りで、単に新しい貨幣を創出すれば、期限を迎えた債務を償還をしたりデフォルトを回避することができるというのは事実ではない。 いくつかの新興市場の経験が示すように、ある一点を過ぎるとそのアプローチはハイパーインフレをもたらす。


二点。1)インフレ的になるのは経済が完全雇用を超え続けているときだけ(#13を見よ)であり、2)紙幣の印刷がインフレを引き起こすこともない。貨幣を支出したなら引き起こしうるが、印刷しただけでは起こしようがない。さらに民間部門もまた貨幣創造ができることを忘れてはならない。

第三に、MMTは閉鎖経済という観点からすべてを演繹する。しかし彼らのように政府の財政赤字を中央銀行のファイナンスに頼る財政策は、おそらく為替レートの崩壊を招くだろう。


かもしれない。インフレになったならだが。#13を見よ。

繰り返すが、私の主張は単なる理論ではない。MMTの理論に反して、いくらお金を印刷しても内国債をカバーできなくなる事例は多数の新興市場で観測されている。同じことは産業経済にも当てはまる。 1981年のフランスのミッテラン政府と1998年のドイツのシュレーダー政府は、MMT風の政策アプローチを推し進め、結局は停滞を余儀なくされた。1970年代半ば、イギリスとイタリアはそれぞれインフレ金融に過度に依存したために、国際通貨基金に援助を求める事態になった。


はい、それも理論に過ぎない。誤った理論があるだけだ。上記のインフレの議論に戻るだけだ。

しかし、右派にせよ左派にせよ、フリーランチのようなものはありません。


いや、完全雇用に達していないときには、ご自身の学派の中にさえフリーランチは存在している。

ケネス・ロゴフ

2020年の選挙後に力を発揮するかもしれない米国の進歩派リーダーは、とりわけ現在は低インフレで低金利であるという観点から、広範囲にわたる新しい社会的プログラムに資金を提供するために、FRBのバランスシートを資金源として使えと主張している。


ここは根本的な誤解が表れている。 政府の能力を社会的プログラムに資金を供給するために使おうという話は、インフレや低金利とは全く関係がない。#5 と #13。

投資家が国債を保持することに消極的になれば、その通貨を保有することにも関心がなくなるだろう。


そうなったとしてFEDは無限に国債を買い取れるのだが、まあいい、こう言おう。完全雇用の国の債務を持つことに彼らが消極的になる理由は?#5 と#9を見よ。   

その国が貨幣を市場に大量投棄しようとすると、インフレが起こる。


ここには多くの議論の余地があるが、ここでは次の一つだけを。自国が完全雇用のときに国の債務を放棄する理由は何か。

一元的な計画経済(おそらく一部のMMT支持者の目標)に移行したとしても、この問題は解決されないだろう。


これは薄いベールをかぶせた攻撃だ。そのようなことを誰も示唆していないことを彼自身が明らかに知っている。だから「おそらく」なのだ。実際のケネス・ロゴフはとてもいい人だ。昨年、メリカ海軍戦争大学で彼と一緒にパネルを務めたものだ。 正直言って、彼が議論の前提や構造を離れてこのようなことを言うのはとても悲しい。

確かに、債務が永遠にGDPより早く上昇することはないが、かなりの期間にわたってそうなる可能性がある。


これは長い段落からの引用なのだが、この一文以上のことは書かれていないのでロゴフ教授もこの分がキーであることに同意だろう。「確かに」?なぜ? ロゴフは続く数段落でも同様の批判を続けるが、明らかに、「米国は財政支出のために借り入れをしなければならい」という前提に立っている。これは政府財政についての基本的な誤解だ。#4、#5、#7を見よ.

ロゴフのことで思い出すのは、債務の危険性に関するラインハートとの共著論文だが、後に深刻な(そして仮説を深刻に揺るがす)計算ミスがあることが発覚した。誤りが修正されたとき、債務と低成長の間の相関関係が消えうせた。関係する学術的な議論はまだまだあるのだが、Colbert Reportの報道が最高だ!

ロゴフの最後のパラグラフは誹謗中傷と、一元的な計画経済だというコメントからの連座の誤謬になっている。

結論

いま4、5、6時間かけてこれを書いたのは良かっただろうか。良かったのだと思う。同じことをすることは二度とないと思うが、学んだことがある。一般理論の緒言の中でジョン・メイナード・ケインズは書いている。(ついでながらケインズとケインジアンは同じものではない…長い話だ!)

著者にとって本書を書き上げることは、脱出のための長い苦闘だった。著者が読者を攻撃することに成功するならば、本書は読者にとっても長い苦闘ということになるだろう。これは伝統的な思考と表現形式からの脱出だ。登場する諸概念は全く単純で自明なものばかりだ。難しいのは、新しい概念それ自体ではなく、古い概念から逃れることの方なのだ。古い概念は、私たち教育を受けてきた者の心の隅々に充満しているのだから。


クルーグマン、サマーズ、ロゴフの批判を読みながら、私はケインズのこの言葉について考えていた。著名な経済学者たちはMMTを強く拒絶するのだが、強いのはむしろ正統派の見解への固執なのだ。わざとそうしているわけではなく、パラダイムシフトをすることが誰にとっても非常に難しいのだ。MMT、つまり正しく為されるマクロ経済学は、まさしくケインズが言うように「実に単純で自明」なものだ。難しさは、モデリング(クルーグマン)やインフレーション(サマーズ)や債務調達(ロゴフ)といった時代遅れの概念を回避することにこそある。

私は経済学における相反する見解についての授業を持っているが、今回のことはそのための良い教訓となるだろう。
ttps://www.forbes.com/sites/johntharvey/2019/03/05/mmt-sense-or-nonsense/


03/07/2019 ? 5:16 PM
By erickqchan
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http://econdays.net/?p=10108


 

 

自国通貨発行国に適用される財政政策等の一般原則(ランドール・レイ「MMT入門」翻訳ブログより)
2016-10-23 09:54:17
テーマ:経済総合
今回は、過日取り上げたランドール・レイの『MMT入門』翻訳ブログ18節から、自国通貨を発行するすべての国に適用できない、あるいは適用される一般原則の概要をご紹介します。

(以下、原文のまま抜粋)
<自国通貨発行国には適用できない命題>

 一般的に信じられているが、実際には誤っているものから始めよう。次の命題は、自国通貨を発行している政府には適用できない。

1、政府は(家計や企業と同じように)予算制約の下にあり、徴税や借入によって資金を調達する必要がある。

2、財政赤字は悪であり、特殊な場合を除いて経済に負担をかける。

3、政府赤字は金利を上昇させ、民間部門を締め出し、必然的にインフレーションを起こす。

4、政府赤字は将来世代に負債を残す。この負担を軽くするためには、今の政府は支出を削減し、増税しなければならない。

5、政府赤字は、投資に使われるはずであった貯蓄を奪ってしまう。

6、投資や政府赤字のための資金調達には、貯蓄を必要とする。

7、今現在の政府赤字が高ければ高いほど、将来の税率は高くなる。赤字から発生する負債の元利を返済しなければならないためである。


<自国通貨発行国に適用される原則>

 上記の誤った命題の代わりに、通貨発行権をもつあらゆる政府に適用される命題を提示しよう。たとえ固定相場制を採用していても、これらは適用される。

・政府は通貨単位を名づけ、その単位で測られる通貨を発行する。

・政府は自らの発行する通貨での納税義務を課すことによって、その通貨への需要を確保する。

・政府は準備預金口座に貸方記入することで支出し、準備預金口座に借方記入することで徴税する。

・同じようなやり方で、銀行は政府と非政府部門の仲介者として機能する。つまり、政府支出が行われたときは預金者の口座に貸方記入し、納税が行われたときは預金者の口座に借方記入する。

・政府赤字は銀行準備預金の純残高であり、非政府部門の銀行預金の純残高でもある。

・中央銀行はオーバーナイト金利を一定の目標水準に保つために、準備預金を増やしたり
 吸収したりする。

・オーバーナイト金利は、中央銀行によって「外生的」に与えられる。準備預金の量も民間銀行の必要と欲求に応じて「外生的」に決まる。そして、「預金乗数」は預金に対する準備金の、単に事後的に決まる比率である。できる限り自然に考えると、準備金に「レバレッジ」をかけた分だけ預金は外生的に膨らんでいくのであり、事前にレバレッジの比率が決められているわけではない。

・財務省は中央銀行と協力し、過剰準備を吸収するために新たな債券を発行し、準備不足を解消するために債券を回収する。

・そのため、債券の売却は、主権政府によって行われる借入操作ではなく、中央銀行が目標金利を達成するために行う「準備維持」の道具である。

・政府はいつも支出に制限を課しているが、財務省は自らの通貨で買えるものであれば常に何でも「買う能力を有している(afford)」。

・政府が制限を課している場合(中央銀行自身が運営上の制約を課している場合も含む)を別として中央政府からの借り入れは無制限に行える。

現段階では、これらの命題のなかに謎めいて見えるものもあるだろう。今後はこれに、明快な説明を加えていくつもりである。政府予算を家計予算にたとえるような「紋切型の知恵」と対比させるために、後に詳説する一般原則を並べてみたまでだ。
 注意しておきたいが、これら一般原則は無制限の政府支出を行うべきだということを含意しない。政府が自国通貨で買えるもの全てを「買う能力を有している(afford)」からといって、全てを買うべきだとは言えない。そして、海外通貨によってしか買えないものは、自国通貨によって政府が直接買うことはできないのは明らかだ。
 これら基本原則は、大きすぎる政府支出がインフレーションにつながる可能性をも否定していない。さらに言うなら、為替レートへの影響も考えられる。即ち、政府支出が過大でるとき、あるいは目標金利が低すぎるときは、通貨切り下げの圧力が発生するかもしれない。つまり、政府の金利設定政策は、財政政策と同じように、為替レートやインフレ率、あるいはその両方に影響を及ぼしうるということだ。そういう意味で金利設定政策や財政政策は、為替レートやインフレ率をコントロールしたいという願望によって「制限」されるのだ。
https://ameblo.jp/datoushinzoabe/entry-12212372852.html


 

オカシオ-コルテスは政策の財源をどうするつもりなのか?紙幣を(たくさん)印刷せよ!
オカシオ-コルテス氏とMMTに関連する情報が少ないのでゲリラってみました。図表は省略で。
ttps://www.bloomberg.com/news/features/2019-01-17/alexandria-ocasio-cortez-s-big-ideas-for-taxes-and-medicare

アレクサンドリア・オカシオ-コルテスと自由市場の唱道者ジョセフ・オバートンとはまだ顔を合わせたことがないかもしれない。しかし彼女は、よく知られている彼のコンセプトである「オバートンの窓」というものをしっかりと把握している。この用語は、無数にあるアイデアのうち公共の討論に値すると見なされているアイデアの一群を指す。 彼女の活躍で税率に関する「オバートンの窓」はかなり左に移動した。
ニューヨーク州ブロンクス出身のオカシオ-コルテス、このマスコミ受けする29歳は、史上最年少で下院議員に選出された女性だ。 1月6日に放映された番組、60ミニッツではグリーンニューディール政策について語った。これは2035年までに米国を再生可能エネルギー100%に転換させるというプランだ 。番組ホストのアンダーソン・クーパーは「そのプランは増税が必要ですね」と尋ねた。「人々が公正な分担金を払い始めなければならなくなる要素がありますね」と彼女は答えた。 その細部について尋ねられ彼女は言った。「いちばんトップにいる人、1000万ドルを持っている人なら、税率は60か70パーセントになるでしょう」。

70パーセント! ちなみに2017年12月に可決された税法の下での最高税率は37パーセントだ。 節度ある社会では誰もあえて言わないような極端な数字がいきなり議論の焦点になった。オカシオ-コルテスのファン ? Twitterだけで240万人のフォロワーがいる ? はこれを歓迎した。 一部の専門家は70%という数字を支持する学術研究を掘り出した。歴史的に見れば オカシオ -コルテスも控えめだとの指摘も現れた。1960年代という最近の時代でも最高税率は90パーセント以上だったのだ。低税率を擁護する人々は彼女に罵詈雑言を浴びせ、彼女の支持者たちはそれで燃え上がった。

オカシオ-コルテスは理解している。一つのアイデアが採用されるまでには、たとえ不十分であっても「語られるようになる」段階を経る必要がある(トランプ大統領もよくわかっている)。最近コロンビア大学から引退したピューリッツァー賞受賞の歴史家、エリック・フォナーは次のように述べている。「”無理だ、われわれには何も変えられない”と言うのは一番簡単なことだ」。 「アメリカの歴史における大きなアイディアの大部分は、”君たちには何も変えられないよ”と言われた過激派のグループから始まっていた。」フォナーは左傾化する民主党を、奴隷制度と戦った南北戦争前の過激共和党になぞらえる。「まず案を提示する。それがすぐに実現しないことは承知の上で。しかしそのアジェンダを推し続けることで政治的言説を変えていく。そしてその一部を望む誰かと行動を共にする。」

60分ミニッツでのオカシオ-コルテスはこの話題をさらに過激な方向に進めることはしなかった。そのかわりに彼女はこの機会を使って別の論点の「オバートンの窓」を動かしにかかった。財政赤字についてだ。彼女は現代貨幣理論(MMT)と呼ばれる学説への支持を表明した。これは若者や左派政治家や政策担当者の心を捉えつつある理論だ。そのコアにある考えは直観に反するもので、自国通貨の場合借金はインフレを引き起こさない限り問題にならないとするものだ。MMTの支持者はこう言う。「経済が過熱するリスクがなければ、新しい政府支出は別の支出を削ったり増税したりする必要はない」。

オカシオ-コルテスは次のように発言することもできたはずだ。「そうじゃない、アンダーソン。グリーンニューディールへの支出のために増税する必要はありません。でも私は増税もしたい。金持ちから貧しい人々にお金を分配すべきと確信しているからです。」と。そうすればインターネットですぐに大注目になっただろう。 バードカレッジのレヴィ経済研究所の上級研究者であるMMTの理論家ランダル・レイは、オカシオ-コルテスがグリーンニューディールに関連させて増税を持ち出したことに「少しがっかりた」と書いている。 別のMMT理論家でバーニー・サンダースの経済顧問でもあるステファニー・ケルトンは、オカシオ-コルテスが富裕層への増税を好む本当の理由は富の不平等を何とかしたいと思っているだと説明する。「所得と富の不平等は、1920年代と同等の水準になっているという認識があるのです。」

何にせよ、オカシオ-コルテスは税率の引き上げを目指している。1980年代のレーガン革命以来、民主党員は共和党員と同じくらい増税アレルギーを持つようになっていた。 ヒラリー・クリントンは、2016年の大統領選挙キャンペーンで税率の引き上げの主張はしなかった。 バーモント出身のワイルドな社会主義者、サンダースでさえ大統領に立候補したときに提案した最高税率はたったの52パーセントだった。しかし、税に反対する保守派たちはオカシオ-コルテスの登場によってタブーが壊れつつあることを感じ取った。彼らが何十年もかけて建設し強化してきたダムの壁に亀裂が入った。全米税制改革協議会の代表であるグローバー・ノーキストは1986年に有名な「納税者保護誓約書」(Taxpayer Protection Pledge)を考案した人物だが、ツイッターで彼女の提案を奴隷制度に譬えた。「奴隷制度はオーナーが生産者から100%を奪い取るものだ。民主党の女性議員オカシオ・コルテスは70%(CNNによれば)がいいそうだ。70%の搾取は何と呼べばいいのかね”?」

ノーキストは、今は税率が70%に上がることはないと確信していると語る。なぜならあれはひどいアイデアだから、と。彼が言うには、これを喜ぶ民主党員が自分たち自身を傷つけているだけだ。 オカシオ-コルテスは自分の仲間を破滅に導く「ハーメルンの笛吹き」であると。しかし、金持ちに対する税率の引き上げが民主党における失われた問題になるかどうかがハッキリしたわけではない。1月12日と1月13日に行われたHill-HarrisXの調査では、登録投票者の59%が最高税率の70%への引き上げという考えを支持していることがわかった。これは共和党の有権者の45%を含んでいた。 おそらくオカシオ-コルテスと同じく自分自身を民主社会主義者と呼ぶサンダースの大統領選挙運動のおかげで、「社会主義」という言葉さえもダーティーなものではなくなっている。 8月のギャラップ社の調査レポートでは、民主党員と民主寄りの人々のうち57パーセントが社会主義について肯定的な見方をしていた。対して資本主義に肯定的な見方をしたのは47%だけだった。

70%の最高税率によって米国の経済と企業に何が起こるだろうか。最上位層のやる気をそぎ、非生産的な租税逃れを誘発するだろう。実際、金持ちの納税が少なすぎると考える多くの経済学者も、抜け穴をなくすことの方が良い解決策だと言っている。いろいろな所得に課税するようにした方が、狭い意味での所得に対する税率を上げるよりも効果がある。

ノーキストは、70%の最高税率は高収入者を米国から流出させる引き金になるだろうと主張する。以前に米国の税率が同じように高かった時代は、他の国の税率もまた高かったため移住するインセンティブは小さかった。 右寄りのシンクタンクであるTax Foundationは1月14日、1000万ドルを超える所得(キャピタルゲインではない)に70%の最高税率を課してもは「収入はあまり上がらないだろう」と発表した。「あまり上がらない収入」 とは、10年間で合計で1,990億ドル、あるいは、最高税率区分に含まれる人々は仕事を減らしたり非営利事業への投資を減らす可能性を考慮する前なら2,920億ドルとのことだ。

対して、オカシオ-コルテスを支持する経済学者は、デンマークの最高税率は56.5%で、年間約8万ドルを超えてる所得層に適用されるが、これは彼女の案である1000万ドルをはるかに下回る水準にもかかわらず、生活水準は世界最高レベルにあることをとすぐに指摘した。ノーベル賞受賞者のMITのピーター・ダイアモンドとカリフォルニア大学バークレー校のエマニュエル・サエズ氏による2011年の論文は、最高所得税率(連邦と州の合計)を73%とすべきだとの提言をしている(やはりキャピタルゲインは除いて)。彼らは、その層に対する余分な収入のドルは、低所得者が受け取るドルに対してほとんど価値がないと見なした。彼らの研究への批判者は、ダイアモンドとサエズは金持ちを毛を刈り取る前の羊のように扱っており、高い税率が高度な学位を取得したりビジネスを始めることをどれだけ妨げるかを過小評価しているとする。ダイアモンドはその批判を退けつつ、より多くの公共投資の必要性を挙げ、「私は完全に満足だ」とオカシオ ? コルテスの70パーセントの提案を評価した。

あまり知られていないが、彼女がニューヨーク州ウエストチェスターカウンティーの高校生時代は科学オタクだった。2007年にのインテル国際科学工学フェアには46カ国から約1,500人の学生が参加していたが、微生物学の分野で四人に与えられた二等賞のうちの一人だった(線虫に対する抗酸化物質の効果についての研究だった)。 このことは、ブロンクスでプエルトリコ人の家系に生まれた少女が、一族で初めての大学進学者になったという物語に付け加えられるエピソードだ。 彼女が家を出て大学に通っていたころに父親が亡くなり、一家は破産の瀬戸際に追い込まれた。 「労働者階級の出身だったら、何か一つでも災いがあったら全部がバラバラになってしまうって感じること多いよね」約1年前、彼女はインスタグラムのビデオでそう語っていた。

オカシオ・コルテスは、バラク・オバマ前大統領と同様に2011年に大学を卒業するとコミュニティのオーガナイザーになり、ウェイトレスやバーテンダーとして生活費を賄った。2016年はサンダースのキャンペーンのために働いた。その後、物事が早く回り始めた。彼女はブロンクス ? クイーンズ議会地区で民主党の指名選挙の出馬し、ジョー・クローリーを破る番狂わせを起こした。下院民主党議員幹部会の議長だったクローリーは、カリフォルニアのナンシー・ペロシ下院議長¥を引き継ぐ候補者と見られていた。 彼はオカシオ・コルテスの18倍もの費用を使い、ニューヨーク州知事のアンドリュー・クオモ、ニューヨーク市長のビル・デブラシオ、そしてニューヨークの二人の上院議員から推薦を受けていた。 彼女は圧勝した。

よほどのコミュニケーションスキルがなければ、どのテーマについてであれ「オバートンの窓」をシフトさせることはできない。オカシオ-コルテスはこの点、忍者レベルだ。彼女はソーシャルメディア上で批判に対応しサポーターをワクワクさせる。旧世代が街頭デモでやっていたことをここでやっている。「組織化に終わりはないと私は固く信じている」。60ミニッツのインタビューでクーパーにそう語った。選挙後の最初の行動の一つは、ペロシの事務所を訪問することだった。彼女に祝福してもらおうとしたのではない。まもなく下院議長になる彼女の事務所を占領していた気候変動活動家を支援するためだった。今、オカシオ-コルテスはペロシの部屋から二ドア離れた部屋で働いている ? しかしペロシのためにではない。彼女は、民主党のに進歩派の議員連盟を作るというアイデアを提案したのだ。モデルは右側の強力な自由議員連盟だ。彼女の同調者には、最初のソマリア系アメリカ人議員の一人となったミネソタ州のイルハン・オマル、ネイティブ・アメリカン女性として初めて選出されたニューメキシコ州のデブ・ハーランド、初のパレスチナ系アメリカ人議員となったミシガン州のラシダ・トレイブがいる。「これはムーブメント。私じゃない。」 オカシオ-コルテスは、昨年インスタグラムのビデオでそう語った。

オカシオ-コルテスもトランプもソーシャルメディアの達人だ。 信頼性を攻撃された時の対応が上手だ。 事実に基づいた批判をしようとしても、 彼らの支持者たちに意地悪でアンフェアだと受け取られてしまう。外部の声を抑制しようというエスタブリッシュメントからのお決まりの反応ということになる。それで、オカシオ-コルテスは昨年ソーシャルメディア上で、ペンタゴンが21兆ドルの資金を紛失し、これは国防総省の年間予算の約30倍にあたるという間違った発言をした。トランプとは違い、彼女は自分の過ちを正す。昨年のインスタグラムでこう語った。「あらゆる問題とあらゆる物事についていつも完璧と思われてしまうのは大変」と彼女は昨年のインスタグラムで語っている。

この言葉の裏には、オカシオ-コルテスにはシフトさせたい「オバートンの窓」がまだたくさんあり、批判されるかといってスピードを緩める意思はないということが読み取れる。 グリーンニューディールと富裕層への増税以外にも、メディケア・フォー・オール(国民皆保険)、連邦職業保証、移民・関税執行局の廃止、大学や専門学校の授業料免除がある。さらに、軍事費用の大幅な削減、攻撃用兵器の禁止、商業銀行と投資銀行を分離していた大恐慌時代からの法であるグラス・スティーガル法の復活もある。これらはすべて、トランプの下で規制緩和を享受してきたアメリカ企業にとってテールリスクになるように思える。オカシオ-コルテスのチーフスタッフであるサイカット・チャクラバーティはこう言う。「これは、ウォール街のエリート幹部に会いに行って飲んでもらえるような計画じゃない。まずは見せてやらないと。」

問題は、彼女がそれらを見せてやることができるかどうかだ。 オカシオ-コルテスがワシントンにやって来た1週間後、同僚の民主党議員は彼女は破壊的でチームプレーヤーではないと不満を述べた。一番罪深いのは 彼女の罪の中で最高のもの:彼女からみてリベラルさ十分ではない議員に対して、その対抗馬の側に付くと脅すのだ。「コルテス氏は良かれと思ってやっているのでしょうが、味方を攻撃するなというルールは絶対です。」と、ミズーリ州の民主党議員エマニュエル・クリーバーは言う。「われわれ民主党員の中で狙撃する必要はないというだけだ。」

オカシオ-コルテスと同調者たちが法案を通すためには、財政赤字を理由に使って反対勢力の支出案に対抗するという共和党の実績ある戦略を潰さなければならないだろう。そこでMMTが登場する。MMTは政府は増税せずに、さらには国債で民間から借り入れすることすらせずとも、支払いをすることができるとする。 政府は単に新しいお金を作って支払いにあてる。 MMTの下では、政府支出の上限は、政府が国の生産能力を使い尽くすところだ。それを超えれば高いインフレがもたらされるだろう。 現在のように、インフレ率が低い限り財政赤字は問題ない。普通の経済学者は、たとえ自国通貨建ての債務であっても、印刷機に頼らずとも債務を返済する能力があるという投資家からの信頼を失ってしまえば危機に陥る可能性があると答えるものだが。

依然として重要で、MMTなど全然重要ではない空間は、ペロシ下院議長の事務所だ。 1月3日、ペロシの指示の下、下院はペイアズユーゴ―原則を含む一連の規則を可決した。これには赤字を増加させる法案は、増税か歳出削減で相殺することを義務付けるものだ。 ペイゴー(PAYGO)として知られているルールだが、MMTの精神に反しており、リベラル民主党員の支出法案のほとんどを骨抜きにするものだ。 オカシオ-コルテスは、カリフォルニア州のロー・カンナとハワイ州のトゥルシー・ギャバードと共にこの規定に反対した三人の民主党議員の一人となった。

オカシオ-コルテスは、下院歳入委員会に入ることを切望していたがそれはかなわなかった。この委員会では税、社会保障、およびメディケアを扱うところだ。しかし、彼女は同僚の進歩主義者とともにカリフォルニア州のマキシン・ウォーターズが率いる強力な下院金融委員会の座を射止め、うまいこと失地を回復した。 ニューヨーク州の民主党議員、キャロリン・マロニー氏は、次のように語っています。 「かつての私も周りが抑え込もうとするような若者でした。誰に対してもそんなことをする人を私は信じません。オカシオ-コルテス議員は新しいエネルギーと新しいアプローチをもたらしています。私たちは皆これを受け入れるべきです。」

オカシオ-コルテスが政治的常識を無視していることは、活動家としての彼女の最大の美点である一方、それは代表としてのアキレス腱にもなりうる。 彼女が自分を抑える兆しはない。 「いずれにせよ...」経済アドバイザーのケルトンは言う。「言論がシフトしています。言論スペースが開放されつつあるのです。」
http://econdays.net/?p=10083
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/440.html

[不安と不健康18] 花粉症患者が間違えている薬の使い方!8割の人は1種類だけではダメ 花粉症で薬が効かない理由 今日は調子がいいから薬は飲ま
2019年3月8日 羽根田真智
花粉症患者が間違えている薬の使い方!8割の人は1種類だけではダメ
花粉症で薬が効かない理由
今日は調子がいいから薬は飲まなくていいや……と思っている人は要注意です! Photo:PIXTA
花粉症のシーズンに本格的に突入している。東京都の場合、スギ花粉は3月まで、ヒノキ花粉は5月のGWまで飛散するというから、花粉症の人は数ヵ月にわたり、つらい日々が続く。今年は例年よりも飛散量がやや多め、という報告もあり、先が思いやられる。花粉症対策の記事はさまざまな媒体で例年掲載され、実際に対策を行っている人は多いが、それでも花粉症の症状に苦しまされるのはなぜか? 花粉症治療に力を入れる日本医科大学耳鼻咽喉科学教室准教授の後藤穣医師に、この苦しみから確実に開放されるために何をすべきか、話を聞いた。(聞き手/ライター 羽根田真智)

花粉症の薬が効かない人は、
処方と使い方が適切でない可能性大
後藤穣
後藤 穣
日本医科大学耳鼻咽喉科学教室准教授
1991年日本医科大学卒業。日本医科大学千葉北総病院医局長、日本医科大学耳鼻咽喉科学講師などを経て、2008年9月〜2010年6月まで日本耳鼻咽喉科学会千葉県地方部会理事を務める。2010年7月より日本医科大学附属病院復帰。2011年日本医科大学耳鼻咽喉科学准教授、2013年日本医科大学多摩永山病院耳鼻咽喉科部長、2014年日本医科大学多摩永山病院教授、2018年8月より現職
――マスクをつけ、室内に花粉を入れないように心掛け、薬も飲んでいる。それなのに花粉症の症状に苦しむのは、どうしてなのでしょうか?

「薬が効かない・効き目が不十分」とおっしゃる患者さんの話をよく聞くと、たいていの方は、薬を適切に処方されていない、あるいは薬を適切に使えていません。両方に当てはまる患者さんもかなりいます。

 昨年4月にも皮膚に貼る新しいタイプのアレルギー性鼻炎治療薬が発売され、薬の選択肢が増えました。上手に薬を使えば、よほどの重症例を除いて、日常生活に支障が出ない程度まで効果を抑えることは可能だと思います。

――「薬を適切に処方されていない」とのことですが、そもそも処方薬でないと花粉症の症状を抑えるのは難しいのでしょうか?

 ごく軽症であれば、市販薬でも症状を抑えられます。抗ヒスタミン薬成分であるエピナスチン塩酸塩は「アレジオン」、フェキソフェナジン塩酸塩は「アレグラ」という商品名で、医療機関で処方されていましたが、医療用から一般用に切り替わりました。つまり、薬局・ドラッグストアでも購入できるようになりました。

 一方、この薬は今でも処方薬としてもあり、成分量もまったく同じです。処方薬なら健康保険が適用されるので値段が安くなりますが、通院時間や病院での待ち時間を考えると、市販薬を利用するのも問題ありません。

 ただし、風邪薬とアレルギー性鼻炎薬の両方の側面を持っている市販薬は、長期的な服用をおすすめしません。眠気などの副作用や長期的に服用することのリスクが指摘されている「第一世代の抗ヒスタミン薬」が含まれており、また、眠気を覚ます目的のカフェインなどさまざまな成分も含まれているからです。長期的服用が、身体に何らかの影響を及ぼすかもしれません。

 ここまでの話は、最初に申し上げた通り、「ごく軽症であれば」という条件付き。問題は、花粉症患者の8割以上は、重症度でいうと中等症以上であるということです。

花粉症患者の8割以上は
2種類以上の薬の併用が必要
――それほど多いとは驚きです。

 2011年5月11〜18日に「花粉症と思われる症状がある」などの条件に該当する3382人を対象にインターネット調査を行い、鼻アレルギー診療ガイドラインの重症度分類に従って調べたところ、判明しました。性別で関係なく、20歳以上では実に9割以上が中等症以上だったのです。

 軽症であれば、1種類の花粉症の薬でも症状を抑えられるでしょう。その中でもごく軽症なら、本当につらい時だけ市販薬で対処するのも一つの手だと思います。

 ところが、中等症以上の花粉症は1種類の薬では対処できません。2種類以上は必要であり、医療機関を受診しないと手に入れられません。理想を言えば、自分の花粉症が軽症、中等症、重症・最重症のどれに該当するのか? 病型として、「くしゃみ・鼻漏(鼻水)型」か「鼻閉(鼻詰まり)型または鼻閉を主とする完全型か」を知ると、より適切な薬を医師も処方できますし、自分でも選びやすくなります。

 ただそれを知らなくても、くしゃみ、鼻水、鼻詰まりが頻繁に起こるようなら、1種類の薬で対処可能な軽症ではなく、2種類以上の薬が必要な中等症/重症と考えるべきです。

――なぜ2種類以上の薬が必要なのですか?

 花粉症の主な症状はくしゃみ、鼻水、鼻詰まりです。くしゃみや鼻詰まりが特に苦しい人には、抗ヒスタミン薬とともに鼻噴霧用ステロイド薬がよく効きます。ステロイドと聞くと危険視して飲みたがらない人もいますが、鼻噴霧用ステロイド薬は非常に安全な薬なので、安心して使って大丈夫です。

 また、鼻詰まりが特に苦しい人にはこれらの薬に加えて、抗ロイトコトリエン薬や抗プロスタグランジンD2・トロンボキサンA2薬がよく効きます。抗ヒスタミン薬ひとつですべての症状にOK、というわけにはいきません。

 なお、鼻炎用のスプレーが市販されていますが、これはステロイド薬ではなく、当然ながら、処方する鼻噴霧用ステロイド薬とは全くの別物です。そして鼻炎用のスプレーは、私は花粉症に対し、おすすめしません。市販の鼻炎用のスプレーは血管収縮薬であり、長期的に使うと、下鼻甲介腫脹などが起こり、鼻詰まりがひどくなるからです。これを薬剤性鼻炎と呼んでいます。

「症状がひどい時だけ飲む」はダメ
継続使用しないと効き目は落ちる
――もう一点、指摘されている「薬を適切に使えていない」とはどういうことでしょうか?

 例えば、抗ヒスタミン薬と鼻噴霧用ステロイド薬を処方されたとしましょう。患者さんによく見られるのが、「症状がひどい時だけ飲む」という行動です。特に、鼻噴霧用ステロイド薬はそういう使い方をしている人が珍しくありません。

 花粉症の治療薬は、花粉の飛散量が多い日も少ない日も関係なく、毎日、決められた回数使用することが基本。花粉症の点眼薬も同様です。1日4回点眼するとされている点眼薬を、1日2回しか使わないのは「間違った使い方」です。

 花粉はシーズン期間中、飛散量は変化するものの、毎日飛んでいます。薬を今日飲んで明日は飲まない、というやり方では、血中薬物濃度が一定せず、効き目も落ちるのです。スギ花粉に反応する人は3月末まで、ヒノキ花粉にも反応する人は5月のゴールデンウイーク明けまで継続して飲むことが、「正しい」花粉症対策の薬の使い方になります。薬の止め時は、新聞、ニュースの花粉情報で飛散量が少なくなっており、かつ、症状も落ち着いているタイミングです。

眠気が少ない薬を使っても、
効果は低くならない
――花粉症の薬を飲むと眠気に襲われ、仕事にならないという人もたくさんいます。なんとかなりませんか?

 その場合、使っている抗ヒスタミン薬はどの世代のものでしょうか?

 抗ヒスタミン薬は第一世代、第二世代とあり、第二世代はまた前期(鎮静性)と後期(非鎮静性)の2タイプに分かれます。ヒスタミンは花粉症にとっては「害」ですが、脳にとってはなくてはならないもの。ヒスタミンの働きを抑える抗ヒスタミン薬は、どれくらい脳のヒスタミンを抑えるかによって、眠気の程度が変わります。第一世代の抗ヒスタミン薬は脳のヒスタミンを70〜80%抑えるため、眠気が強くなるのです。

 一方、第二世代後期(非鎮痛性)の抗ヒスタミン薬は20%以下に統一されています。だから眠気が少ない。20%以下の中でも、薬によっては0%に近かったり、10%程度だったり、20%に近かったりするものがあります。今使っている抗ヒスタミン薬がどの世代のものかをチェックし、第二世代後期のものであっても「それでも眠い」という場合は、医師に相談してください。第二世代後期の中でもより眠気が少ない薬を紹介してくれるでしょう。

 ただ、眠気が本当に抗ヒスタミン薬によるものかは、確認が必要です。単なる寝不足かもしれませんし、睡眠環境が悪かったり、アルコール摂取による睡眠の質の低下、または睡眠時無呼吸症候群(睡眠中に呼吸が何度か停止する病気)をはじめとする何らかの病気が関係しているかもしれないからです。

――眠気が少ない薬は、効果も低いように思うのですが、どうでしょうか?

 かつてはそう言われた時もありました。しかし今は違います。第二世代後期の薬は、眠気が少ない一方で、効果も高いといえます。

 残念なのは、今でも第一世代の抗ヒスタミン薬を出している医師が、私が思っている以上にいることです。インターネットによる医師調査で明らかになった結果です。第一世代の抗ヒスタミン薬は眠気や口の渇きといった副作用だけでなく、この薬の服用によって眠りの質を下げることが明らかになっています。催眠作用を求めて第一世代を使う人もいると聞きますが、かえって眠りの質を下げることにつながるのでやめるべきだと考えます。

「貼るタイプ」花粉症薬も登場
夜に貼って朝の症状に備えることも
――昨年4月に発売した新タイプの薬はどういうものでしょうか?

 世界で初めての経皮吸収型アレルギー性鼻炎治療剤で、商品名は「アレサガテープ(一般名:エメダスチンフマル酸塩貼付剤)」です。これまで抗ヒスタミン薬は飲む薬(経口薬)、点鼻薬しかありませんでした。しかし飲むのが苦手な人や、飲み薬では服用を忘れてしまう人などがいます。そこで開発・販売されたのが経皮吸収型、つまり貼るタイプの抗ヒスタミン薬なのです。食事による投与タイミングの制限がないのも特徴。アレルギー症状は一般的に朝出やすいと言われますが、夜から貼って朝の症状に備えるという使い方もできます。

 今は成人に対してのみ承認が下りていますが、飲み薬を嫌がるお子さんにも使えるのではないかと、今後は臨床試験が行われる見通しです。

――花粉症で苦しむ人に対して一言いただけますか?

 ここまで述べたように、花粉症の薬を適切に用いれば、症状はかなり抑えられます。また、貼り薬も登場し、治療の選択肢が増えました。花粉症には手術や免疫療法などの手段もありますが、手術はハードルが高く、免疫療法は治療期間が年単位と長く、かつ、どれだけ効果を得られるかは人それぞれで、治療が終わらないとそれが分かりません。花粉症の現実的な治療としては、薬物治療が最も大切だと考えています。

 かつては「花粉が飛散し始める2週間前から薬を服用しないと効かない」とも言われていましたが、今の薬は、飛散してから服用しても効果があります。それでも、飛散量が少ないうちから飲み始めた方が、花粉症の症状で苦しむ期間は短いことは間違いありません。まずは医療機関を受診し、どの症状に最も困っているかを医師に伝え、薬を処方してもらってください。
https://diamond.jp/articles/-/196257?

http://www.asyura2.com/16/health18/msg/725.html

[国際25] トランプ氏、米軍駐留国に経費全額プラス5割の支払い要求へ 
トランプ氏、米軍駐留国に経費全額プラス5割の支払い要求へ−関係者
Nick Wadhams、Jennifer Jacobs
2019年3月9日 0:36 JST
米軍駐留で受ける恩恵の対価と主張、政権内で要求案を策定中
同盟国が米国の意に従えば割引も、外交取引の材料として活用も狙う
トランプ大統領は米軍駐留国の政府が十分な費用を負担していないと、長年にわたり不満を述べてきた。その費用の全額、さらにプラスアルファの支払いをトランプ大統領は望んでいる。

  ホワイトハウスの指示の下、トランプ政権はドイツと日本、最終的には米軍が展開する全ての国に対する要求案を策定しつつあると、政権当局者や計画について報告を受けた関係者十数人が明らかにした。駐留経費全額に加え、米軍の駐留で恩恵を受けている対価としてプラス50%以上の支払いを求める方針だという。

  この「費用プラス50%」方式により、駐留経費負担として現在米国に支払っている額の5−6倍の拠出を要求される国も出てくる可能性がある。

JAPAN-US-NKOREA-DIPLOMACY
米海軍横須賀基地に入港する空母ロナルド・レーガン(2017年5月)撮影: Kazuhiro Nogi/AFP via Getty Images
  この構想について、当局者は米国が同盟国に負担増を求める中で検討中の案の1つであり、要求を緩和する可能性もあると注意を促した。それでも、国防総省や国務省には衝撃が広がっている。トランプ氏のコミットメントの深さに対してすでに疑いを抱いているアジアや欧州の同盟国から大きな反発が広がり、その矢面に立たされることを危惧するからだ。

  匿名を条件に語った現・元当局者によると、トランプ政権はこの要求を通じて同盟国の支払額を増やすだけでなく、同盟国を意に沿わせる材料として活用したい狙いもある。その証拠として国防総省は2つの計算式の算出を要請されていると、同当局者らは発言。1つはドイツなどの国に要求するべき額の算定、もう1つは同盟国が米国と緊密に連携する政策をとる場合の割引率の算定だったという。

  ランド・コープの調査員、デービッド・オクマネク氏によると、ドイツが現在負担しているのは米軍駐留経費の28%で、年間10億ドル(約1100億円)程度。「費用プラス50%」方式が適用されれば、支払額は跳ね上がる。日本や韓国も同様だ。

  米国務省と国防総省はコメントを控えた。日本、カタール、アラブ首長国連邦の当局者は、米国からそのような接触を受けていないと回答した。ドイツ大使館の報道官はこの件に関して何の議論もないと述べた。

原題:Trump Said to Seek Huge Premium From Allies Hosting U.S. Troops(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-08/PO1UD0SYF01S01?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/630.html

[国際25] 北朝鮮メディア、米朝会談物別れを初確認 「世論は米に責任」  トランプ米大統領、中国との通商合意を確信 合意なくても安泰
ワールド2019年3月9日 / 00:36 / 2時間前更新
北朝鮮メディア、米朝会談物別れを初確認 「世論は米に責任」
Reuters Staff
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[ワシントン/ソウル 8日 ロイタ] - 北朝鮮の国営メディアは8日、ハノイで先週開催された米朝首脳会談が物別れに終わったことを初めて確認した。その上で、合意する用意がなかった米国側に責任があると世論は批判していると指摘し、米国に対する不満をにじませた。

労働新聞は論説で「国内外の世論はハノイで開かれた米朝再会談が合意なく終わったことを残念に感じ、米国に責任があるとみている」と主張。

同時に、日本は米朝関係を「必死に妨害」し、合意が見送られたことに「拍手喝采」していると批判した。

トランプ大統領はこの日、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との関係は良好だとあらためて述べた上で、北朝鮮がミサイル実験を再開すれば失望すると語った。

今週に入り、北朝鮮が昨年解体を開始したミサイル発射施設の一部を復旧し、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の製造施設で活動を開始したことが報じられている。[nL3N20U16O]
https://jp.reuters.com/article/northkorea-usa-trump-idJPKCN1QP1R7


 

ワールド2019年3月9日 / 01:16 / 1時間前更新
トランプ米大統領、中国との通商合意を確信 合意なくても安泰
Reuters Staff
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[ワシントン 8日 ロイター] - トランプ米大統領は8日、中国との通商協議で妥結できると確信しているが、通商合意のいかんにかかわらず米国は安泰との考えを示した。

トランプ氏は、中国と合意できると依然確信しているかとの質問に「もちろん確信している。だが米国に不利な内容であれば合意しない」と語った。

中国が妥結に前向きでなく、習近平国家主席との会談も実現しない恐れがあるとの報道については「それについては聞いていない。われわれはうまくやっている。合意があろうとなかろうと、われわれは非常に安泰だ」とした。

カドロー米国家経済会議(NEC)委員長はブルームバーグTVに対し、通商協議が「4月まで続く可能性はある」と指摘。その上で合意の「タイミングや場所は重要ではない。妥当な合意を得ることが重要であり、それが米国の利益だ」と語った。

これに先立ち、ホワイトハウスの通商担当顧問を務めるクリート・ウィレムス氏は、米中通商協議は進展しているものの、依然多くの課題が残っていると述べた。
https://jp.reuters.com/sponsored/article/hamilton-with-koji-tomioka-ladies
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/631.html

[国際25] EU、英に一方的な関税同盟の脱退提案を用意=首席交渉官 英EUの打開見通せず−安全策見直し手続き強化 
ワールド2019年3月9日 / 02:17 / 10分前更新
EU、英に一方的な関税同盟の脱退提案を用意=首席交渉官
Reuters Staff
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[ブリュッセル 8日 ロイター] - 英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)交渉でEU側の責任者を務める欧州委員会のバルニエ首席交渉官は8日、EUは関税同盟からの一方的な脱退を英国に提案する用意がある一方、英・アイルランド国境問題に関する安全策(バックストップ)の他の要素は維持する必要があると述べた。

また「英国はその意思に反して関税同盟を強いられることはないだろう」とした。
https://jp.reuters.com/article/britain-eu-barnier-idJPKCN1QP1ZK?il=0


英EUの打開見通せず−安全策見直し手続き強化、英の返答待ちか
Ian Wishart、Jessica Shankleman
2019年3月8日 13:52 JST
離脱協定案で規定された「見直し手続き」強化をEUが提案と関係者
承認なしのバックストップ離脱を容易にする修正要求をEUは拒否
メイ英首相は、欧州連合(EU)との離脱合意案の見直し協議を経て、歴史的に重要な下院採決に来週臨む。英・EU双方が合意に向けた進展を少なくとも目指す兆候が表れる中で、メイ首相は8日、修正案の採決の行方がEU側の手中にあると主張する予定だ。

  複数の関係者が匿名を条件に語ったところでは、アイルランド国境へのハードボーダー(物理的壁)設置回避を保証するため、英国がEUとの関税同盟にとどまるとしたバックストップ(安全策)条項について、EU側は協定案で規定された「見直し手続き」の強化に向けた新たな提案を示した。より良い解決策に置き換えるプロセスの加速を促すため、こうした確認作業が6カ月ごとに設定されている。

  関係者によれば、EUが提示した打開策は、英国側の要求を満たすには十分でない。離脱協定案に盛り込まれた調停手続きについて、EUの承認なしのバックストップ離脱を容易にする修正をコックス英法務長官が今週要求したが、EU側はきっぱりと拒否し、新提案への英側の回答を待っている状況という。

  メイ首相はイングランド北東部の漁港の町グリムズビーで8日行う演説で、来週の下院採決前にバックストップで法的拘束力を伴う修正を得ることを引き続き望んでいると述べ、EU側に責任があると主張する見通しだ。英・EU間の協議は週末にかけて続けられる予定だが、双方の当局者は打開の見込みにますます悲観的になりつつある。

King Abdullah II of Jordan Visits U.K. Prime Minister May
メイ英首相写真家:Chris Ratcliffe / Bloomberg
U.K. Parliament Votes to Rewrite Brexit Divorce
コックス法務長官写真家:Luke MacGregor / Bloomberg
EU Leaders Summit With Danger Of No-Deal Brexit Increasing
ユンケル欧州委員長写真家:Jasper Juinen / Bloomberg
原題:May Makes Last-Ditch Plea to EU to Help Break Brexit Impasse(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-08/PO16UO6TTDS001?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/632.html

[国際25] ドラギ総裁のさよならギフト、市場は不満−「不十分」か「出尽くし」か 独10年債利回りゼロに スーパーリッチは10の都市に
ドラギ総裁のさよならギフト、市場は不満−「不十分」か「出尽くし」か
Brian Swint
2019年3月8日 20:46 JST
• 「追加の景気刺激を目指すなら、これは不十分だ」−ABNアムロ
• 「状況が悪化したらECBにどれだけ選択肢が残されているだろう」
10月末で退任する欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁の最新かつ恐らく最後の景気てこ入れ策は、残念ながら十分ではない可能性がある。
  ECBは7日、長期リファイナンスオペを再開すると発表したほか、2020年に入るまでは政策金利を引き上げないと約束した。しかし投資家やエコノミストから評価する声があまり聞かれない。
  ABNアムロのエコノミスト、ニック・コーニス氏は、「追加の景気刺激を目指すなら、これは不十分だ」とし、「ECBはフォワードガイダンスで金利据え置きを約束する期間をさらに先まで延ばさなければならないかもしれない。債券購入プログラム再開のような、それ以上の行動を取らざるを得なくなるリスクも高まっている」と述べた。
記者会見するドラギ総裁
(出典:ブルームバーグ)
  ECBは最新の経済予測で2019年の成長率予想を大きく引き下げた。見通し悪化が続く中でドラギ総裁が市場の期待以上の対応を打ち出すよう追い込まれたと、事情に詳しい関係者は話す。
  アヨンド・マーケッツのチーフトレーダー、ジョーダン・ヒスコット氏はECBの決定について、「ハト派どころではない」と論評し、「現段階でもしも状況が悪化したら、効果的な緩和策としてECBにどれだけの選択肢が残されているだろうか。私には分からない」と語った。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iaD.d5tTKJBc/v2/pidjEfPlU1QWZop3vfGKsrX.ke8XuWirGYh1PKgEw44kE/576x-1.png
原題:Draghi’s Goodbye Present Received With Disappointment by Markets(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-08/PO1MVW6K50XY01?srnd=cojp-v2

 
東京外為市場ニュース2019年3月9日 / 02:21 / 5分前更新
ユーロ圏金融・債券市場=独10年債利回りゼロ%に迫る、指標軟調でECBのハト派姿勢裏付け
Reuters Staff
3 分で読む

[ロンドン 8日 ロイター] -
<金利・債券>
米東部時間11時53

*先物 清算値 前日比 前営業日終 コード

3カ月物ユーロ 100.31 0.00 100.31
独連邦債2年物 111.83 -0.03 111.86
独連邦債5年物 132.44 -0.18 132.62
独連邦債10年物 164.39 -0.15 164.54
独連邦債30年物 186.06 +0.46 185.60
*現物利回り 現在値 前日比 前営業日終 コード

独連邦債2年物 -0.541 +0.023 -0.564
独連邦債5年物 -0.379 +0.023 -0.402
独連邦債10年物 0.069 +0.005 0.064
独連邦債30年物 0.714 -0.014 0.728

ユーロ圏金融・債券市場ではドイツ10年債利回りが低下し、ゼロ%に近づいた。独
鉱工業受注が軟調だったことに加え、中国のドル建て輸出が減少したことなどで、欧州中
央銀行(ECB)が前日の理事会で示したハト派的なスタンスが裏付けられたことが背景

ECBは前日の理事会で、政策金利に関するフォワードガイダンスを修正し年内の利
上げを断念したほか、銀行向け超長期低利融資を再び実施することを決定。
これを受け、前日はユーロ圏の国債が買われ、利回りは少なくとも2016年以来の水準
に低下した。
この日はドイツ、中国、米国で相次いで軟調な経済指標が発表された。ドイツの1月
の鉱工業受注指数は前月比2.6%低下し、予想の0.5%上昇に反してマイナスになっ
たことに加え、18年6月以来7カ月ぶりの大幅な低下となった。また、中
国の2月の貿易統計では、ドル建て輸出は前年同月比20.7%減となり、減少率は20
16年2月以来の大きさとなった。
さらに米国の2月の雇用統計は、非農業部門の雇用者数が2万人増と、17年9月以
来の小幅な伸びにとどまった。市場予想は18万人増だった。
こうした中、独10年債利回りは一時0.048%まで低下し、16年
以来の低水準を付けた。その後はやや上向き、0.07%で取引を終えた。
仏10年債利回りも0.40%近辺と、16年以来の低水準を記録。そ
の後は下げ幅をやや縮小し0.41%で取引を終えた。週間では16ベーシスポイント(
bp)低下。週間の低下幅としては、英国の国民投票で欧州連合(EU)離脱が決まった
翌月の16年7月以来の大きさとなる。
ソシエテ・ジェネラル(パリ)の金利ストラテジスト、キアラン・オヘイガン氏は「
前日のECBの決定は債券価格の押し上げに大きな影響を及ぼした。こうした影響は当面
は続くと予想される」としている。
ただ、前日に大きく低下した南欧諸国の国債利回りはこの日はやや上昇。イタリア1
0年債利回りは2.51%と 2bp上昇した。ただ週間では23bp低下と
、昨年9月以来の大幅な低下となる見通し。スペイン10年債利回りとポル
トガル10年債利回りも週間で15bp程度低下している。
https://jp.reuters.com/article/-idJPL3N20V3OM?il=0

 
スーパーリッチは10の都市に集中−ロンドン、東京、シンガポールがトップ3
Ben Stupples、Frederik Balfour
2019年3月8日 8:03 JST
• 富裕層が本邸と呼ぶ住宅のほぼ半分はたった10の都市に集中
• 富裕層が多く住む世界トップ3はロンドン、東京、シンガポール
世界に複数の家を持ちプライベートジェットで飛び歩く。スーパーリッチな人々は文字通り、世界を股に掛けている。
  しかし、この特別な人々が本邸と呼ぶ住宅のほぼ半分は、たった10の都市に集中している。不動産仲介のナイト・フランクの2019年ウェルスレポートが示した。それによると、資産3000万ドル(約33億5000万円)以上の富裕層が本邸を構える世界のトップ3はロンドン、東京、シンガポールの順だった。米国は世界随一の経済大国だが、上位10都市に入ったのはニューヨークだけだった。
Where the Richest Live
Number of people with at least $30 million

Source: Knight Frank, The Wealth Report 2019
Note: Top 10 cities shown
  データは、超富裕層が大都市に集中している実態を浮き彫りにした。ビジネスチャンスやライフスタイル、病院、交通インフラなど全てが、金持ちを大都市に引き付ける。英国の欧州連合(EU)離脱にもかかわらず、ロンドンは世界で最も金持ちが集まる街だ。
  ナイト・フランクの住宅調査世界責任者、リアム・ベイリー氏は「ロンドンが提供するものは非常にユニークだ。これほど多くの異なる分野のグローバルハブとしてロンドンに匹敵する都市はほかにない」と述べた。
  ナイト・フランクによると、ウルトラハイネットワースと呼ばれる超富裕層の数は昨年、世界で約20万人。そのうち3分の2余りがアジア、欧州、北米に住んでいる。地域別で富裕層が最も多いのは欧州だった。
Luxury Investments
10-year value change

Source: Knight Frank, The Wealth Report 2019
原題:From New York to London: Here’s Where to Spot the Super Rich (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-07/PNZHD66JIJUO01?srnd=cojp-v2

http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/633.html

[国際25] 債券上昇、世界景気懸念でリスク回避強まるー利回り曲線はフラット化 中国株:今年最大の下げ ECBの最新決定、正しい対応
債券上昇、世界景気懸念でリスク回避強まるー利回り曲線はフラット化
三浦和美
2019年3月8日 7:59 JST
更新日時 2019年3月8日 16:09 JST
債券相場は上昇。欧州中央銀行(ECB)の経済見通し下方修正や弱い中国の貿易統計を受けて、世界景気の先行き不透明感が強まり、リスク回避の買いが優勢となった。超長期債を中心に買いが入り、利回り曲線はフラット(へいたん)化した。

新発20年物167回債利回りは0.395%と、日本相互証券の前日午後3時の参照値より3ベーシスポイント(bp)低い0.395%と、2月22日以来の水準まで低下。新発40年物11回債利回りは一時0.645%と2週間ぶり低水準
新発10年物353回債利回りは2bp低いマイナス0.035%と、2月27日以来の水準
長期国債先物3月物の終値は前日比16銭高の152円79銭。一時152円83銭まで上昇
市場関係者の見方
三井住友トラスト・アセットマネジメントの押久保直也シニアエコノミスト
ECBの経済見通し引き下げで世界的に景気減速懸念が強まり、中国の指標内容も弱かったことでリスクオフの流れが加速
米連邦準備制度理事会(FRB)も含め、世界的に中央銀行のベクトルが緩和方向にシフトする感がある中で、日本銀行は大きく買い入れ減額に動きにくくなった
年度末に向けてキャッシュつぶしニーズが一部で残る中、超長期債しか買えない投資家が多く、外部環境と需給両面のサポート材料で利回り曲線は一段のフラット化(平たん)を試す余地がある
背景
東京株式相場は大幅安。日経平均株価の終値は前日比2%安の2万1025円56銭。ドル・円相場は一時1ドル=111円台を割り込み、2月28日以来の水準までドル安・円高が進行
中国:2月の輸出入は共に減少−貿易摩擦や春節で
ECB、新たな長期オペ開始へ−金利は少なくとも19年末まで据え置く
日銀買い入れオペ
対象は残存期間1年以下と1年超5年以下。買い入れ額は据え置き。各ゾーンの応札倍率は前回から上昇
三井住友トラストAMの押久保氏
倍率が上昇しており、需給が緩んでいる印象で、中期ゾーンにとっては弱い材料になった
参照:過去のオペ結果
新発国債利回り(午後3時時点)
2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債
-0.145% -0.155% ー0.035% 0.395% 0.580% 0.650%
前日比 +0.5bp -0.5bp -2.0bp -3.0bp ー3.5bp -4.0bp

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-07/PNZJKZ6S972901?srnd=cojp-v2

中国株:上海総合指数が今年最大の下げ−4%超下落、3000割れ
Bloomberg News
2019年3月8日 14:00 JST 更新日時 2019年3月8日 17:12 JST
• 中国人民保険集団が10%安−中信証券が「割高」だとして売り勧める
• 株式市場は過熱気味、当局は緩やかな強気相場目指す−楊巍氏
8日の中国株式相場は大幅下落。上海総合指数が約5カ月ぶりの大きな下げとなった。同国最大手の証券会社が珍しく「売り」判断を示し、中国当局が株高ペースを落とそうとしている兆しとの受け止めが広がった。
  上海総合指数は前日比4.4%安で取引を終了。節目の3000を割り込んだ。値上がりが目立っていた中国人民保険集団が値幅制限いっぱいの10%安。中信証券は同社株が「著しく割高」であり、今後1年で50%余り下げる可能性があるとして売りを顧客に勧めた。
  西蔵隆源投資のファンドマネジャー、楊巍氏は「このような売り判断は当局の承認を受けたに違いない」と指摘。「中国株式市場は過熱気味で、投機も目立つ。当局は熱狂型の強気相場ではなく、緩やかな強気相場としたい考えだ」とコメントした。


原題:China Stocks Sink Most in 2019 as Rare Sell Rating Stuns Traders(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-08/PO16W86JIJUO01

ECBの最新の決定、景気減速への「正しい対応」−ノボトニー氏
Krystof Chamonikolas
2019年3月8日 18:18 JST
欧州中央銀行(ECB)政策委員会メンバー、ノボトニー・オーストリア中銀総裁は、金融政策を通じた刺激策拡大は最近の経済減速に対応する正しい決定だとの認識を示した。

  ノボトニー氏は8日、プラハで記者団に対し、ユーロ圏が「明らかにリセッション(景気後退)ではない状況」をECBは強調したかったと説明。「その一方で、景気を拡張させるシグナルは出したかった。ECBの行動は正しい対応だと思う」と述べた。

  ECBは7日、経済見通しを大きく下方修正し、長期にわたって政策金利を低く維持すると約束したほか、新たな市中銀行向け長期資金供給プログラムを打ち出した。

  ノボトニー氏は同プログラムを9月に開始する意向について質問され、「成功させるには、十分に準備しなければならない」と回答。「正しいタイミングだと思う」と語った。

原題:Nowotny Says Latest ECB Move Was ‘Correct Response’ to Slowdown(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-08/PO1HXO6K50XT01?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/634.html

[経世済民131] 2月の米雇用統計は2万人増、17年9月以来の小幅な伸び 米住宅着工1月は予想上回る回復 米経済成長率1Qは+1.4% 
ビジネス2019年3月9日 / 00:21 / 2時間前更新
2月の米雇用統計は2万人増、17年9月以来の小幅な伸び
Reuters Staff
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[ワシントン 8日 ロイター] - 米労働省が8日発表した2月の雇用統計は、非農業部門の雇用者数が2万人増加し、2017年9月以来の小幅な伸びにとどまった。市場予想は18万人増だった。建設業を含むいくつかの部門で雇用が減り、全体水準を抑制した。景気が急減速しているとの懸念が高まる可能性がある。

米経済は7月で、景気拡大期間が10年となる。これまでで最長だ。ここにきて成長ペースは鈍化しており、この日の雇用統計もそれを示す。米連邦準備理事会(FRB)が利上げに対し「忍耐強く」ある姿勢を支える内容だ。

ただ失業率は0.2%ポイント低下の3.8%へ改善した。1月25日まで35日間続いた政府機関の一部閉鎖で一時的に失業していた連邦政府職員が再び仕事に就いたことを反映。閉鎖期間は過去最長だった。現在は職を探していないが働く用意のある人や正社員になりたいがパートタイム就業しかできない人を含む広義の失業率(U6)は7.3%と、1月につけた11カ月ぶりの高水準である8.1%から低下した。1月は政府閉鎖が影響した。

時間当たり賃金は前月比0.4%(11セント)増と、1月の0.1%増から加速した。2月は日数上、計算に歪みが出たことも影響した。2月の前年同月比は3.4%増と、09年4月以来の大幅な伸びとなった。1月は3.1%増だった。

18年12月と19年1月の雇用者数は計1万2000人上方改定された。2月に雇用の伸びが鈍化したことは、気候要因で12月と1月に雇用が大幅に増えた反動もあるとみられる。働き手が見つかりにくくなっていることも要因だ。

雇用統計の内訳は、建設業が3万1000人減と、13年12月以来の大幅な落ち込みだった。1月は5万3000人増加していた。小売業は2月に6100人減、政府職員は5000人減だった。レジャー・接客はプラスマイナスゼロだった。
https://jp.reuters.com/article/us-feb-payroll-idJPKCN1QP1PW

トップニュース2019年3月9日 / 00:32 / 2時間前更新
米雇用統計:識者はこうみる
Reuters Staff
2 分で読む

[8日 ロイター] - 米労働省が8日発表した2月の雇用統計は非農業部門の雇用者数が2万人増加し、2017年9月以来の小幅な伸びにとどまった。市場予想は18万人増だった。

市場関係者のコメントは以下の通り。

●米国経済「一人勝ち」に変調

<キングスビュー・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ポール・ノルテ氏>

2月の弱い数字は、他の国と同様、米国も痛手を受けていることを示唆する。これまで、世界の中で米国経済が最も好調とされてきたが、そうした状況が変わりつつあるのだろう。

●前月の反動減

<インベスコ(ニューヨーク)の首席グローバル市場ストラテジスト、クリスティナ・フーパー氏>

米非農業部門雇用者数の増加数が2万人にとどまり、衝撃的なひどい結果となった。1月は極めて好調だったため、その反動だったと考えられる。

今後は増加数が予想を上回ったり、下回ったりする不安定な状況が続く可能性がある。今回は予想を大きく下回ったが、大きく予想を上回った前月に続くものだった。

市場では主要中銀の動きを受け、警戒感が出ていた。先ず米連邦準備理事会(FRB)が政策を大きく転換させ、次いでカナダ銀行(中央銀行)、さらに欧州中央銀行(ECB)も政策を転換させた。

今回の雇用統計が低調だったことで、世界的な景気減速に対する懸念は一段と高まる。

世界経済、および米経済の行方を示す指標は強弱混交となっているため、今後発表される経済指標の重みは増す。FRBは指標次第との姿勢を示しているため、今後、経済指標の重要度は増していく。

●翌月の数字見極める必要、FRBの軌道に変更なし

<TDアメリトレードの首席市場ストラテジスト、JJ・キナハン氏>

3カ月平均では雇用者数は18万6000人増と、良好な経済状況を示唆していることから、政府機関閉鎖という要因を含まない翌月の数字を踏まえ、2月の結果を見極める必要がある。ただ、これほどまでのボラティリティはやや理不尽だ。

天候要因も影響したと考える。専門職やヘルスケアなどの雇用者数が堅調に増加する半面、建設が減少、サービス業・レジャーが横ばいという状況にも、天候が2月の数字に影響したことを示唆している。

ただ、今回の結果が米連邦準備理事会(FRB)の政策軌道を変更することはないだろう。

●失業率・賃金など中身は堅調

<BMOキャピタル・マーケッツ(ニューヨーク)の米金利ストラテジスト、ジョン・ヒル氏>

非農業部門雇用者数は予想を大きく下回ったが、中身を見ると、予想を上回った部分もある。失業率は低下し、広義の失業を示すU─6失業率の低下は過去最大となった可能性がある。時間当たり賃金も予想を超えて上昇した。

過去には、非農業部門雇用者の増加数が今回のように低調だった月もあった。例えば、2016年5月は1万5000人増、17年9月は1万8000人増だった。雇用増が軟調だったのは単月限りのもので、その後に増加数が20万人レベルに戻れば、今回の結果を深刻に捉える必要はなくなるだろう。

ただ、第1・四半期の米経済成長率が1%を下回る公算は大きい。成長は停滞しており、第1・四半期は思わしくないだろう。
https://jp.reuters.com/article/us-payroll-instantviews-idJPKCN1QP1PF

米住宅着工件数、1月は予想上回る回復ぶり−許可件数も増加
Katia Dmitrieva
2019年3月8日 22:39 JST 更新日時 2019年3月9日 0:08 JST
1月の米住宅着工件数は市場予想を上回る規模で拡大した。一戸建て住宅の着工が大幅に増えた。着工許可件数は9カ月ぶりの高水準。住宅ローン金利低下で住宅市場が安定しつつあることが示唆された。

キーポイント
1月の住宅着工件数(季節調整済み、年率換算、以下同じ)は前月比18.6%増の123万戸−市場予想(119.5万戸)を上回る
前月は104万戸(速報値108万戸)に下方修正
着工件数の先行指標となる住宅着工許可件数は、1.4%増の135万戸−市場予想では128.7万戸への減少が見込まれていた
インサイト
一戸建て住宅の着工件数は25.1%増の92万6000戸と、1979年以来の大幅増。ただ、一戸建ての着工許可件数は2.1%減少し、2017年8月以来の低水準
許可は受けているが未着工の件数が1月は約20万3000戸と、07年5月以来の高水準。住宅建設業界の活況が向こう数カ月続くことを示唆
政府機関の一部閉鎖に伴う遅れで、正確な着工・完工の日時を定めるのが通常より困難な可能性を統計の報告書が指摘
今回の統計は当初2月20日に発表されることになっていた。2月のデータは3月26日に発表予定
  統計の詳細は表をご覧ください。

原題:U.S. Housing Starts Rebounded in January by More Than Forecast(抜粋)U.S. Jan. Housing Starts Up to 1,230k Annualized; Est. 1,195k

(詳細を追加して更新します.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-08/PO1V4G6TTDS101


米経済成長率、第1四半期は+1.4%=NY連銀ナウキャスト
Reuters Staff
東京外為市場ニュース2019年3月9日 / 02:17 / 10分前更新


[ニューヨーク 8日 ロイター] - 米ニューヨーク連銀の国内総生産(GDP)予想「ナウキャスト」によると、第1・四半期の米GDP伸び率は年率1.40%の見通し。最新の住宅販売や住宅着工などを反映した。前週末時点では0.88%だった。
https://jp.reuters.com/article/usa-economy-nyfed-idJPL3N20V3QN?il=0
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/444.html

[経世済民131] 米雇用統計:2月は2万人増、1年余りで最小−時給は伸び加速 アマゾン、ポップアップ全店閉鎖に潜む脅威、大化けする兆し
米雇用統計:2月は2万人増、1年余りで最小−時給は伸び加速
Jeff Kearns
2019年3月8日 22:40 JST 更新日時 2019年3月9日 1:14 JST
• 失業率は3.8%に低下−約50年ぶり低水準に接近
• 製造業の雇用者数は4000人増、建設業は3万1000人減
2月の米雇用統計では、雇用者数が1年5カ月ぶりの小幅な伸びにとどまった。一方、賃金の伸びは加速し、失業率は低下した。米雇用のエンジンが減速し始めている可能性が示唆された。
キーポイント
• 非農業部門雇用者数(事業所調査、季節調整済み)は前月比2万人増
o ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想中央値18万人増
o 前月は31万1000人増(速報値30万4000人増)に上方修正
• 家計調査に基づく失業率は3.8%に低下−約50年ぶり低水準に接近
• 平均時給は前年同月比で3.4%増(予想3.3%増)−前月3.1%増

背景
• 賃金の伸びは加速したものの、雇用者数の大幅な減速で米消費動向を巡る懸念が強まる可能性がある。昨年12月の小売売上高も9年ぶり大幅減だった
• 世界的に成長が鈍化し、トランプ大統領が導入した減税など財政刺激策の効果も弱まる中、景気拡大は今年減速するとエコノミストらは予想
• 政策当局者やエコノミストは労働市場に懸念要因があるとの結論に至る前に、あと数カ月は様子を見る可能性がある
エコノミストの見解
ムーディーズ・アナリティクスの金融政策調査責任者ライアン・スイート氏:
• 「パニックに陥る理由は全くない」と指摘。「数カ月を平均してみると、雇用市場はなお順調だ。景気が緩やかになり始めるのに伴い、雇用の伸びは今年減速するだろう。ただし今後雇用創出のペースが毎月のように2万人ということはあり得ない」と述べた。
詳細
• 雇用者数が予想を下回るのは、2月としては2011年以来初めて。2万人の伸びは、複数のハリケーンの被害に見舞われた17年9月以来で最小
• 製造業の雇用者数は4000人増(予想中央値は1万2000人増)
o 建設業は3万1000人減、小売業は6100人減、教育・ヘルスサービスは4000人増、娯楽・ホスピタリティーは変わらず、プロフェッショナル・ビジネスサービスは4万2000人増
• 労働参加率は5年ぶり高水準の63.2%で変わらず
• 平均時給は前月比では0.4%増(予想0.3%増)−前月は0.1%増
• 民間部門の2月の雇用者数は2万5000人増(予想17万人増)
o 政府部門は5000人減
• 週平均労働時間は34.4時間に減少(前月34.5時間)
• 「U6」と呼ばれる不完全雇用率は7.3%に低下(前月8.1%)
o U6にはフルタイムでの雇用を望みながらもパートタイムの職に就いている労働者や、仕事に就きたいとは考えているものの積極的に職探しをしていない人が含まれる
  統計の詳細は表をご覧下さい。
原題:U.S. Hiring Plunges to 20,000 as Wage Gains Top Estimates (3)(抜粋)
(統計の詳細を追加し、更新します.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-08/PO1V3N6VDKHS01?srnd=cojp-v2


 

アマゾン、ポップアップ店の全店閉鎖に潜む脅威
eコマース巨人のリアル店舗への野望は、まもなく大化けする兆し
2019.3.8(金) 小久保 重信
アマゾン、新コンセプトの実店舗をNYにオープン四つ星以上の品など厳選
米アマゾン・ドットコムがニューヨークのソーホー地区にオープンした新店舗「アマゾン・4スター」(2018年9月27日撮影)。(c)Jim WATSON / AFP 〔AFPBB News〕

 米アマゾン・ドットコムが、現在米国で展開している「ポップアップストア(小規模・短期営業店舗)」は、今年(2019年)4月下旬までにすべて閉鎖されると、英ロイター通信や米ウォールストリート・ジャーナルなどが報じている。

 その理由について、アマゾンは詳細を明らかにしていないが、おそらく同社の実店舗戦略が、ここに来て新たな段階に入ったからだと筆者は考える。

ショッピングモールや百貨店内の87店舗を閉鎖
 ウォールストリート・ジャーナルによると、アマゾンは、2014年ごろからポップアップストアの営業を始めた。店舗の設置場所は、ショッピングモール内や、一昨年に買収した高級スーパーチェーン「ホールフーズ・マーケット」の店舗内など。

 その1店舗当たりの売り場面積は、数十平方メートルと、ワンルームマンションほど。同社のAIスピーカー「Amazon Echo」や、タブレット端末「Fire」、電子書籍端末「Kindle」などを展示し、顧客が商品を試せるようにしているほか、これら製品の下取りも行っている。

 同社は、米百貨店大手のコールズ(Kohl’s)とも提携し、「Amazon Smart Home Experience」と呼ぶ、約90平方メートルほどの売り場で、同社製品をはじめとするスマートホーム関連製品を展示、販売している。

 (参考・関連記事)「アマゾンの実店舗戦略、今度は米大手百貨店と提携」

 ウォールストリート・ジャーナルによると、これらの店舗は、極めて短期間のみ営業するものも少なくなく、わずか数カ月で閉鎖するものもあった。現在は、87店舗が営業中だが、これらのすべては、4月29日までに閉店する。

食品スーパーチェーンの出店を計画中
 一方で、アマゾンには、より大規模な実店舗戦略がある。先ごろは、米国の複数の都市で、新たな食品スーパーのチェーン展開を計画していると伝えられた。

 報道によると、早ければ、年内に1店舗目をロサンゼルスで開設する見通し。サンフランシスコ、シアトル、シカゴ、首都ワシントン、フィラデルフィアの店舗についても検討されている。

 (参考・関連記事)「アマゾンの野心がまた垣間見えた」

 アマゾン広報担当者によると、同社はこれ以外の店舗展開も拡大していく。例えば、米国で2015年から営業している書籍の対面販売店舗「Amazon Books」と、 昨年(2018年)9月にニューヨークで営業を開始した新業態店舗「Amazon 4-star」だ。

多業態店舗を大規模展開する段階に
 アマゾンの実店舗展開は、これまでとは異なる曲面を迎えているようだ。

 例えば、昨年1月に正式オープンしたレジ精算不要のコンビニエンスストア「Amazon Go」は現在、10店舗を展開しており、まもなく、11店目が営業を始める予定だ。

 前述したとおり同社は、2017年にホールフーズを買収し、約480の店舗を傘下に収めた。今のアマゾンの実店舗展開は、同社がポップアップストアを始めた2014年当時と、大きく状況が異なる。

 顧客の同社製品に対する反応や、需要を把握することが目的の小規模な実験店舗は、その役割を終えた。

 高級スーパーマーケットから、より幅広い消費者層をターゲットにした庶民のスーパー、そして、ITを活用したコンビニと書店、eコマースとの融合を狙った特選店など、アマゾンの実店舗戦略は、さまざまな業態の店舗を同時に大規模展開するという、これまでとはまったく異なる領域に突入したようだ。

 (参考・関連記事)「アマゾン、そもそも、なぜ実店舗展開を加速するのか」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55699
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/445.html

[国際25] マレーシア航空失踪事件から5年、中国陰謀説急浮上  違法な臓器移植を隠蔽するため江沢民派が実行した大量暗殺事件か 
マレーシア航空失踪事件から5年、中国陰謀説急浮上違法な臓器移植を隠蔽するため江沢民派が実行した大量暗殺事件か
2019.3.8(金) 末永 恵
航空史上最大のミステリーの捜索現場では、世界の最新鋭の海底探査機が投入された。失踪後1週間が過ぎ、ブラックボックスの電源が切れた公算が高いため信号による音波の探知を断念。カメラやソナーを完備した米海軍の無人潜水艇「ブルーフィン21」を海中に投入し機体の海底捜索を実施した(豪州パースから西方約2000キロ付近海域、オーストラリア国防省提供)
 「Good night, Malaysian three seven zero(おやすみなさい。MH370)」
 この言葉を最後に地上との交信を絶ったマレーシア航空370便(ボーイング777型機)。
 航空史上最大のミステリーといわれる同航空機失踪事件から3月8日で5年目を迎えた。
 マレーシア航空370便は、2014年3月8日0時41分(現地時間)、乗員乗客239人を乗せて、クアラルンプール国際空港を出発し、中国・北京に向かった。
(「消えた『MH370便』で経営破綻懸念高まる」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40137
(「失踪したマレーシア航空の副操縦士の許されない行動」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40168
(「マレーシア機の大捜索で誇示された中国の新たな海洋強国政策」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40209

 ところが、離陸から約50分後、地上管制との交信が途絶え、南シナ海上空で左旋回して予定コースを大きく外れ、南西に向かった。
 マレーシア空軍のレーダーは、離陸後約1時間40分ほど、奇妙な飛行コースを捕捉していたが、間もなく同機を見失い、消息が途絶えた。
 マレーシア当局によると、MH370便は、マレーシアから北京までの飛行時間とほぼ同じ、離陸から7時間30分ほどにわたって、まるでレーダーの追跡をかいくぐるかのように、ジグザグの飛行線を描くように飛行していたと見られている。
 日本を含め10か国以上が参加して南シナ海やインド洋などで、大捜査線が大展開されたが、手がかりは全くつかめず、2017年1月、捜索は打ち切られ、迷宮入り事件となった。
 3月3日、日本人も多く住む首都クアラルンプール・パブリカのショッピングモールでは、マレーシアのローク運輸相が出席する中、370便の乗員、乗客の家族ら300人近くが集まり、5周年追悼集会が開かれた。
 会場では、事件後初めて、アフリカ・タンザニア沖合で発見された数少ない機体の残骸も公開され、内外のメディアの注目を集めた。
 しかし、5年が経過した今、同機の墜落場所、墜落原因、さらには機体、行方不明となっている乗客乗員に関する情報など、墜落に関する確証たる詳細はいまだ一切、明らかになっていない。
 乗員だった夫を追悼したジャキータ・ゴメスさんは「捜索を再開してほしい。今のままでは、機体も何も、どこにあるのか分からず、何を信じていいかも分からない」と苦悩の表情を隠し切れない。
 MH370便の消息が絶たれた事実が明らかになったのは、3月8日の日が明けた午前9時過ぎだった。
 北京に降り立つはずだった370便が到着せず、北京国際空港では大騒ぎとなっていた。乗客の過半数に相当する154人の中国人が乗っていたからだ。
 筆者は同日朝、前日夜にマレーシア上訴裁判所で、同性愛行為による禁固5年の有罪判決を受けたマレーシアのカリスマ野党指導者、アンワル元副首相を取材するため、彼が会長を務める人民正義党(PKR)の党大会会場へ向かっていた。
マレーシア航空は2014年、MH370便失踪とMH17便撃墜という2回の悲劇に見舞われ、経営困難に陥り国営化された。しかし、60憶リンギ巨額血税投入もむなしく、最近では「身売り問題」が浮上している(筆者撮影。マレーシア・クアラルンプール国際空港。2019年2月)
 クアラルンプール郊外で開催されていた同党大会取材中、MH370便が消息を絶ったことを知った。
 しかし、その時、まさかこんな大惨事になるとは思わなかったし、その事件でのちにアンワル氏が“渦中の人”になるとは想像もしていなかった。
 有罪判決を受けた翌日で、さぞかしショックを隠し切れないだろうと想像していたが、党大会の会場を訪れたアンワル氏は、少しやつれたような雰囲気だったものの、庶民派で知られる彼は党本部の席に座らず、一般党員の席に支持者に囲まれるようにして、静かに座った。
 筆者が「お話を聞いてもいいですか?」と聞くと、「いいよ、大会が終わってからね」と微笑み、壇上に立つ執行部の国会議員の演説に聞き入った。
 この時点で、MH370の失踪事件の詳細は明らかになっていなかった。
 しかし、そのインタビューは実現しなかった。大会開催中にMH370が消息を絶ったことが明らかになったからだ。大変な惨事が予測され、アンワル氏ら野党首脳陣もその対応にそそくさと会場を後にして行った。
 アンワル元副首相と再会したのは、それから9日経った17日だった。インタビューの主旨は、当初の予定を変更せざるを得なかった。
 なぜなら、MH370便の機体や原因が不明なまま航空史上最大のミステリーとして、世界のメディアの謎解きの“渦中”にあったのがアンワル氏本人だったからだ。
 事故から1週間が過ぎ、捜査線上に、MH370便のベテラン機長であったザハリ氏の「自殺説(ジハード)」が同機の有力な失踪原因として浮上した。
 同機長は野党支持者で、熱烈なアンワル支持者であることが判明。
 同機が消息を絶つ前日夜、マレーシア上訴裁判所でアンワル氏に対し、同性愛行為による禁固5年(連邦裁=最高裁にすでに上告)の有罪判決が下った。
 このため、ザハリ機長が大きな失望感を抱き、判決の数時間後の8日未明にクアラルンプール国際空港を発った同機を道づれに自決したと憶測されていたからだ。
 有罪判決、同機失踪の後、初の日本メディアによる筆者の独占インタビューに応じたアンワル氏は、初めて「ザハリ機長とは遠戚である」ことを公表。
 面識があると認めた一方で、「ザカリ機長は人格者で乗客の命を奪うようなことは決してない」とMH370の事故との自身やザハリ機長の因果関係を真っ向から否定した。
(「渦中のアンワル氏、消えたMH370便機長の自殺説について語る」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40223) 。
 その上で、ザハリ機長のジハード説が(アンワル氏を有罪に導いた)与党・ナジブ政権の政治的策略だと厳しく非難した。
 しかし、昨年5月、マレーシア政府とともに2年間の調査の指揮を執ったマーティン・ドーラン氏などの専門家は、豪州メディアに対して、「航空史上最大のミステリーの失踪事件は、『機長が乗員乗客を道連れに心中した大量殺人事件だった』」と明かした。
(「英エコノミスト誌発禁で謎が深まるマレーシア航空機失踪の真相」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40318
 さらに、事故機と同じボーイング777型機の著名なパイロット、サイモン・ハーディ氏も、「制御不能で墜落した」とする豪州の運輸安全局の見解を否定して次のように述べている。
 「その人物(機長)は最後の最後まで飛行機を操縦し、文明から可能な限り、離れた場所に航空機を隠すことが目的だった。おそらく、これまで捜索されてきた場所よりもかなり離れたところだろう」
 一方、当事国のマレーシアでは、昨年7月末、マレーシアが主導する19人の国際調査チームが、400ページを超える膨大な報告書を公表。
 「第三者によって進路が変更された可能性はない」と結論づけ、「ハイジャックの可能性、犯行声明を発表した組織、さらには身代金要求等が一切行われなかった」とテロの疑惑を否定した。
 さらに、事件の最大の関心事であるパイロット(ザハリ機長)の事件への関与についても、「パイロットによって引き起こされたものではない」と真っ向から否定した。
 昨年5月、政権交代を果たしたマハティール首相も3月初旬の豪州テレビとのインタビューで「人命を守る使命のある、しかもベテラン機長が、こんな事故を引き起こしたとは考えられない」と完全否定している。
 それでは、当事国のマレーシアでメディアや国民が最も有力視している事件の原因は、何なのか。
 「中国による陰謀説」だ。
 昨年、中国の有名女優、ファン・ビンビンが公の場から姿を消した背景に、米国に亡命中の資産家、郭文貴氏による習近平国家主席と盟友である王岐山国家副主席とファン氏の不倫報道があるとされている。
 実は、この郭氏は、中国の国家公安当局出身。
 これまで数々の中国共産党の暗部を暴露してきたが、北京に向けて、乗客の過半数を占めた中国人を乗せたMH370便が失踪した事件は、「江沢民派が実行した大量暗殺事件」であると明かしているのだ。
 郭氏によると、江沢民氏の息子・江綿恒氏が、腎臓移植の手術を複数回受けており、同氏の臓器移植のため決行された殺人事件が発覚しないようにしたものだという。
 つまり、マレーシア航空機に乗っていた同事件を熟知する移植関係者を暗殺するため、江沢民派がハイジャックし、意図的に墜落させたというのである。
 具体的には、一連の移植手術に関わった医者の家族、さらには内情を知る者がマレーシアに逃走。中国の警察関係者も捜査のため現地入りしていた。
 その医療関係者の搭乗した帰国便が、北京行きのMH370便だったという。
 その実行を企てた首謀者が、警察、公安、司法を掌握する共産党中央政法委員会トップの孟建柱書記で、江綿恒氏とは「兄弟仁義」を交わす間柄という。
 その関係は、孟氏が江綿恒氏のために、腎臓移植手術を手配したことから始まったとしている。
 さらに、江綿恒氏は2004年から4年間、南京軍区の医院で数回、腎臓移植を受けたという。
 腎臓やドナーの手配は、孟氏と上海政法委員会責任者ら、軍幹部関係者が行ったとし、「江綿恒氏の腎臓移植手術のために5人が殺害された」と具体的に証言する。
 中国では2000年当初から、中国共産党が法輪功学習者の臓器を摘出するという大がかりな犯罪行為を実行していると暴露され、米国議会、欧州議会、カナダ、オーストラリア政府が、法輪功学習者などの囚人の強制的臓器摘出を中止するよう、中国政府を強く非難してきた。
 これに加え、機体捜索にあたってマレーシアが中国に対して懐疑的になっている背景には、中国の南シナ海における覇権拡大がある。
 中国が最大の犠牲者を出したとはいえ、軍艦4隻、沿岸警備船4隻に加え、人工衛星10基、航空機8機を続々と投入。
 人名救助のイメージにはほど遠い護衛艦「綿陽」や揚陸艦「井岡山」に加え、攻撃力に優れた2万トン級の揚陸艦「崑侖山」と「金剛山」を投入、救助活動はまるで「中国の軍事ショー」のような様相を呈した。
 実際、当時としては救助目的の中国の船舶派遣としては過去最大だった。
 これに対し、オーストラリア政府は「中国政府は実際には捜索活動を行わず、西側の海軍情報を得るため、南シナ海やインド洋南部まで侵入していた」と非難している。
 人命救助に名を借りた覇権拡大の意図が見え隠れしていたというのだ。
 今月5日から始まった全国人民代表大会(全人代)では、2019年の「国防費」が前年比7.5%増の1兆1900億元に決まった。
 南シナ海での人工島建設・軍事基地化は、ケ小平時代に立ち上げられた「内海化計画」の一環で、インド洋沿岸諸国での海軍基地確保(「真珠の首飾り」戦略)も、同時に実施されている。
 航空史上最大のミステリーは、もしこれら、中国の野望を達成されるために実行されたとするなら・・・。
 その代償を中国が支払う時が必ず来なければならない。さもなければ、抹殺された無二の命は報われないからだ。
(取材・文・撮影 末永恵)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55690

http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/635.html
[不安と不健康18] 糖尿病は冬に悪化、「突然死」防ぐには春のリカバリーが大事!  
2019年3月6日 木原洋美 :医療ジャーナリスト
糖尿病は冬に悪化、「突然死」防ぐには春のリカバリーが大事!
 
春は体調を崩しやすい。特に生活習慣病は冬の間に悪化し、春はさらに悪くなる季節なのである。糖尿病もその1つで、春のリカバリーが重要となる。そこで、糖尿病を悪化させない予防策などを東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科の坂本昌也准教授に聞いた。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

突然死を防ぐには
糖尿病の治療が一番大事
 春は体調を崩しやすい、原因は環境の変化や激しい気温差のせいで自律神経が乱れがちになるから。……というのは定説だが、実をいうと不調、特に生活習慣病(成人病)は冬の間に悪化し、春はさらに悪くなる季節なのである、ということを東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科の坂本昌也准教授らが明らかにした。

 冬に悪化が懸念される生活習慣病としては「心筋梗塞」が知られているが、実は、もっと心配な病気がある。それは「糖尿病」だ。

「糖尿病なんて、自分は関係ない」とあなたは思うかもしれない。

 しかし、厚生労働省が行った平成28年「国民健康・栄養調査」によれば、「糖尿病が強く疑われる者」の割合は12.1%(男性は16.3%、女性9.3%)、「糖尿病の可能性を否定できない者」の割合は12.1%(男性 12.2%、女性12.1%)にも上っている。

 あなたが糖尿病でないのは、単に、検査をしていないからわからないだけかもしれないのである。

 糖尿病は合併症として、心筋梗塞を含む、もろもろの血管病を引き起こす。目の病気である「糖尿病性網膜症」と腎臓の病気である「糖尿病性腎症」に、手足のしびれなど末梢神経が侵される「糖尿病性神経障害」を加えて、昔から糖尿病の3大合併症と呼ばれているが、それ以外にも「心筋梗塞」「脳梗塞」「高血圧」「認知症」などなど、血管に関係する病気はすべて、糖尿病で悪化することを覚えておいてほしい。

 さらにいえば、人生の中で2人に1人は経験するといわれている「がん」も、一部のものでは糖尿病の存在によりリスクが上昇すると報告されている。

 日本では、毎年12万人以上もの人が突然死で亡くなっているのだが、その死因で最も多い「致死性不整脈(心室細動)」の危険因子にも、糖尿病が挙げられている。

 突然死したくなかったら、第一に気を付けるべきは糖尿病なのである。

血糖、血圧、コレステロールは
冬に大きく悪化する

坂本昌也 東京慈恵会医科大学附属病院糖尿病・代謝・内分泌内科准教授

 さて、困ったことに、糖尿病は冬に悪化する。

 しかも、ちゃんと通院して、治療を受けている患者でも、90%は治療目標数値として設定されたガイドラインがクリアできていないことが、このたび東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科の坂本昌也准教授の調査で判明した。

 糖尿病は、一度発症したら完全に治すことはできないため、それ以上病気が悪くならないよう、血糖値(HbA1c値)、血圧値、脂質値(LDL-コレステロール値)といった数値をひたすらコントロールすることが治療の中心になる。

 この治療は生涯続けなければならないので、患者が途中でいやになって、治療から逃げ出したりしないよう、QOL(生活の質)を保つことも重要だ。

 近年は、食事療法、運動療法に加え、さまざまな薬剤が登場したおかげで、ある程度、上手にコントロールできている患者が増えてきているのだが、坂本准教授らは、「まだまだ不十分」と考えた。

「日本でも海外でも、糖尿病患者の予後改善のために影響を及ぼす血糖値(HbA1c値)、血圧値、脂質値(LDL-コレステロール値)の治療目標値が設定されガイドライン化されています。しかし、このガイドラインも各学会によって違いがある上に、最近では目標値に幅を持たせるガイドラインも出現し、混乱を招いています。

 原因は、ガイドラインの基になる大規模臨床試験をする際にご協力いただく患者さんの数値が、季節ごとに結構大きく変動していることにあります。

 現場の医師の実感として、『冬に悪化している人が多い』というのはわかっていても、実際に、どの数値が、どれくらい変動しているのかといった詳細なデータや、それらに影響を及ぼす因子についての報告は、これまでありませんでした」

コントロールできている人は
10人に1人もいない!
 そこで坂本准教授らは、糖尿病データマネジメント研究会(Japan Diabetes Clinical Data Management Study Group:JDDM)における登録病院38施設の約10万人強のデータベースを基に、血糖、血圧、脂質(LDL-コレステロール)、体重の月別の季節変動の詳細とそれに伴うガイドライン達成率を検証し、さらにそれらに影響を及ぼす因子を同定した。

 解析の対象は、血糖値、血圧値、脂質値、体重が同時に測定されている2型糖尿病患者4678人で、2013年から2014年の24ヵ月で年間12回以上通院している者。

 達成率を検証するガイドラインの基準は、血糖値はHbA1c7.0%未満, 血圧は正常値とされる130/80mmHg未満、脂質(LDL-コレステロール)は100mg/dL未満とし、血糖値、血圧値、脂質値の3つとも全て達成している群をABC達成群とした。また夏は6月から8月、冬は12月から2月と定義した。

「結果、非常に驚きました。ABC達成群の割合はとんでもなく低く、特に冬は9.6%しかいなかったのです。夏場でもたったの15.6%です。

 また、冬に心筋梗塞や脳卒中の発生が多いことは知られていますが、今回の調査では、冬において、血糖、血圧、脂質、体重が全て一緒に連動して増悪していることが分かりました。

 ABC達成率を低下させる因子としては、血圧達成率の低下、肥満、糖尿病歴10年以上であることが関連していました」

 このように、坂本准教授は驚いているが、筆者はもっと驚いた。

 ガイドライン基準は、「これを守れなかったら糖尿病は悪化しますよ」という数字である。患者も医師も、緊張感を持ってコントロールに励んでいるはずなのに、ちゃんとできている人が、夏場でさえ20%もいないとは。

 どうりで、糖尿病患者のための食事療法や運動療法の本が、ちまたにごまんとあふれているわけだ。糖尿病の治療は、一般に考えられている以上に難しいようなのである。

春にリカバリーしないと
悪化しっぱなしになる
 ではどうしたら、糖尿病の悪化をしっかりと予防できるのだろうか。冬により悪くなる理由の考察と春に実践すべきリカバリー術を、坂本准教授に尋ねてみた。

――冬のどういう条件が、悪化に影響しているのでしょうか。

 気温の低さ、運動不足、食事、年末年始の暴飲暴食など、すべて影響すると思います。特に日本では冬に味噌汁、鍋物を食べる機会が多く、塩分の摂取量が増える。運動不足にもなるため、気温の低さも併せて、血圧に大きく影響します。また年末年始などの長期休暇は血糖値も悪くなることは報告されています。冬で外出が少なくなると、日光にも当たらなくなるためビタミンDが不足し、悪玉コレステロール値は悪化します。

 さらに冬場の体組成の変化、交感神経系の活性化なども関与致します。

――春先のリカバリーはやはり重要ですか。

 はい。3月からは本当にリカバリーしなくてはならない時期になります。冬場で悪くなった方、特に食事以外にも、インフルエンザに罹患(多くの場合熱が出ますので、これだけでも血糖値が上がったり、運動ができずに、体重が上昇したり大変です)したりもすると、各データがさらに悪化します。

 冬に悪化し、年度末は仕事で不規則な生活をする、旅行に出かける、4月も含めて歓送迎会から、ゴールデンウィーク(今年は10連休)などになると、今年は春以降さらに悪化することが予想されます。

 毎年ですが、冬場に悪化して、そのまま1年間高くなってしまう方も見受けられます。年齢の上昇と各データの悪化が脳梗塞や心筋梗塞を引き起こします。

 また、この冬、テレビの医療番組で、『ミカンがいい』とか『イチゴの練乳ミルクがけがいい』というお話があったみたいで、今季、ミカンやイチゴの食べ過ぎで病気を悪化させた方が多くおられました。困ったものです。

 特にミカンは、今では品種改良などもどんどん進み、小さくて甘いものが多くあります。

 小さいがゆえ、満足感もなく多く摂取することにつながってしまいます。オレンジジュースなどは低血糖の時に速やかに血糖値を上昇させるために使用しますので、血糖値は著しく上昇します。

――先生は、ご自身の患者さんに対して、どのようなところに注意し、強化して、診療を行っていますか。

 基本は、食事運動療法の徹底です。冬の鍋、おもち、ミカンなどは、血圧と血糖値を上昇させるので、注意してもらいます。

 運動不足にならないよう、夕食後の軽いストレッチ、難しければ、少しでも座る時間を少なくすることなどを指導しています。

 お出しする薬では、降圧薬と脂質改善薬を内服されている患者さんは、コントロールにもよい影響がありました。その意味では医師の側も、患者さんの食生活をよく聞いて、薬を強化することを実施すべきと考えています。逆に夏には薬を減らすべきかもしれません。

 さらに、体重が増加したあとには血糖値が上昇傾向になるのて、冬場には血圧測定に加えて体重測定の実施も必要だと思います。

 基本にはなりますが、心筋梗塞や脳梗塞を予防するには、血糖、血圧、脂質のすべてに意識を持つようにしていただきたいと考えています。

「悪化」を防ぐためには
どうしたらいいか
――悪化を予防するために、患者には何ができるでしょう。

 今回10万人に調査してみて、医師の側がいかに糖尿病患者の血圧や、脂質、体重を測定していないかがわかりました。

 悪化を予防するために、患者さん自ら、主治医に測定をお願いしてもよいと思います。また現状の心血管病リスクの評価として血管年齢などの検査もしていただくのもよいと思います。

 会社の健康診断は、5月ごろに行うのが普通ですが、各値が季節変動をしていることを考えると、この時期のデータは、年間を通して一番よいデータです。しかも患者さんは検診に備えて事前に頑張って調整していることなどを考えると、多くの隠れ糖尿病、隠れ血圧、隠れ脂質異常患者さんがいるかと思います。

 予防医学的な見地から考えると、糖尿病に限らず、成人病の健康診断は冬場に行うべきだと考えます。現状では難しいとは思いますが。

――春にお勧めのリカバリー術を教えてください。

 やはり、外に出て日光を積極的に浴びることが一番です。また、4月は職場異動なども含めて生活スタイルが変わります。体重計や携帯など、今までついていなかった健康に関するデータが提示できる機能がついた機器の購入などもいいと思います。

 今、保険にも、運動をするとプラスアルファの特典があったりするものが登場していますよね、利用してみてはいかがでしょうか。

 昨年度のデータで30歳の方は65歳になるまでに3人に1人が糖尿病を発症しています。結婚していれば、どちらかが糖尿病であることを避けることは難しい現状です。春から夏は血糖値の負債を減らすチャンス。夏場に納涼会がある方や、アイス、果物が好きな方はこの時期に減らさないと、負債は増え続ける一方です。脳梗塞で寝たきりになったりしないよう、生活をぜひ見直してください。

――普段の診療の中で、今回の結果について「やっぱりね」と実感する事象の経験はありますか。

 はい。医師であれば、皆そうだろうなとは想像はしていると思います。そして、ある意味仕方がないという風に諦めていたように思います。これでは病気はよくなりません。

 血糖、血圧、脂質の季節変動、特に血圧と血糖は認知症にも大きく関与しています。また、コントロールするために薬の量を増やしても、かえって低血糖や低血圧を引き起こすこともあり、それがさらに交感神経系を活性化して、高血糖や高血圧を引き起こす場合もあるので、そういう意味では、医師に任せるより、患者さん自身が食事や運動によるコントロールを強化し、自身の体は自身で守るという意識が必要だと思います。

 なかなか難しいのは、一度糖尿病や高血圧を発症すると、ちょっとした刺激でも変動が大きくなってしまいます。その意味では、糖尿病になる前から変動を意識することは重要と考えています。

 糖尿病には、自己免疫疾患である1型と、遺伝的要因と生活習慣(過食や運動不足)による2型の2タイプがある。2型糖尿病を発症する前には、ほとんどの人が、血糖値は正常値より高いものの、糖尿病と診断されるほど高くはない「糖尿病予備軍」となっているという。

 すでに発症している人も、予備軍の人も、2型糖尿病および心血管疾患を発症するリスクの高さを自覚して、春先はしっかりとリカバリーしてほしい。

◎坂本昌也(さかもと・まさや)
東京慈恵会医科大学附属病院糖尿病・代謝・内分泌内科准教授。
本稿で取り上げた論文は、American Diabetes Association(ADA:米国糖尿病学会)機関誌「Diabetes Care(IF13.6)に、2019年1月オンライン掲載されたもの。
https://diamond.jp/articles/-/195992

http://www.asyura2.com/16/health18/msg/726.html

[不安と不健康18] 「外食メニューが命を縮める」は本当か? メディアが煽る食の不安、外食企業の反論を聞いてみた 
「外食メニューが命を縮める」は本当か?メディアが煽る食の不安、外食企業の反論を聞いてみた
2019.3.10(日) 大倉 隆弘

「またいつもの“祭り”です」と彼はうんざりした声で言いました。「どこか一誌が始めると、横並びでみんな同じテーマをやる。週刊誌が一巡したら今度はテレビに飛び火するかもしれません」。

 そうぼやくのは、とある外食企業で食材の安全性を研究する専門家です。

「一般消費者が普段食べている食品がいかに危険か」を訴えるマスコミの記事、報道は後を絶ちません。最近もある週刊誌に、外食企業のメニューに発がん性物質が使われているという特集記事が掲載されました。これを受けて別の週刊誌も翌週の号で同じような特集を組みました。

 こういう記事が出るたびに世の中は騒然とするわけですが、筆者は少し眉に唾して眺めています。それは10年ほど前に吹き荒れた「中国産食材は危ない」という嵐の時の経験があるからです。

 当時、流通系の会社の広報にいた筆者は、食品安全の専門家に中国産が本当に危ないのかを尋ねてみました。すると、返ってきた答は意外なものでした。「国産なら絶対に安全だというのは、科学的な根拠のない神話です」と言うのです。

 その専門家はこう説明してくれました。

「たとえば野菜でいうと、確かに日本では毒性の強い危険な農薬は禁止されています。そうはいっても、一部の意識の高い外食や流通を除いて、残留農薬や重金属などがまったく検査されていない食品をそのまま店頭に並べている店は少なくありません。体に害を及ぼすほどの危険な食品が出回ることはほとんどありませんが、『国産』というだけでフリーパスなところがあるのです」

「一方、中国産だから危険だということは決してありません。現在、中国産の農産物は現地で政府機関の厳しい検査を受けていますし、日本に入る時は税関で抜き取り検査も行われる。検査がある分だけ安心とも言えるわけです」

 つまり、国産だから安全だという思い込みは間違いなのです。それ以来、筆者は食の不安を煽るマスコミの記事を少し冷静な目で眺めるようになりました。

「メディアは公正で正しい」のか?
 さらに筆者が問題だと思うのは、こういう食の不安を煽るような記事に対する食品メーカーや外食業界からの反論がほとんど聞こえてこないことです。

「企業は手前勝手なことを言うが、メディアは公正で正しい」という世の中の暗黙の前提があるため、自分たちの言い分はすべて「言い訳」に聞こえてしまう──。企業側はそう認識して、口をつぐんでいるのでしょう。

 そこで今回、一連の報道で批判を浴びている食品企業の専門家の1人に話を聞き、あえて週刊誌の記事に反論してもらいました。彼の会社が「言い訳しやがって」などと叩かれては本末転倒なので、ここでは覆面で登場してもらいます。

 今回話を聞いた専門家は、大学の農学部を卒業後、食に関わる複数の会社で20年以上にわたり世界の食材の安全性を研究してきました。その研究対象は家畜の飼料から野菜の肥料、農薬、食品添加物、食材の保管温度や輸送方法にまで及びます。まさに川上から川下まで熟知した「食の見張り番」と言える人物です。主なやり取りは以下のとおりです。

「増粘剤」は発がん性物質なのか
──「添加物=発がん物質」という図式が週刊誌に書かれていて、不安な日々を送っている消費者が多いかもしれません。食の安全の専門家としてはどうお考えでしょうか。

「食の危険性を煽る記事は以前からありますが、最近の一連の記事を拝見しても、いささか消費者の誤解を招きそうな表現になっていますね」

──一部の週刊誌は、ハンバーグやコロッケ、餃子にも使われるという「増粘剤」を問題視しています。実際はどうなのでしょうか。

「『増粘剤』の発がんの危険性は『アルギン酸エステル』にあるとしているようですね。その原料である『酸化プロピレン』が気化した場合の発がん評価を根拠にしています。しかし、実際に増粘剤として使われているアルギン酸エステルに問題の酸化プロピレンが残留しているのかというと、答えはノーです。また、週刊誌が問題視するアルギン酸エステルそのものについては具体的な発がん性の評価データがないというのが事実です。

 ただ、増粘の用途で使われる一部の加工デンプン(「ヒドロキシプロピルデンプン」「ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン」)はEUの動物実験で発がん性の懸念があるとの報告があり、乳幼児用のミルクやベビーフードなどには用いないように制限されています。ただし、大人向けには特に制限は設けられていません。

 また、WHO(世界保健機関)が設けた合同食品添加物専門家会議では、加工デンプンについて『安全性に問題はなく、上限値を設定しない』としています。日本政府も『安全である』との判断のもと、特に規制は設定していません」

リン酸塩は「毒物」なのか
──週刊誌が特に危険性を煽っているのが食品添加物「リン酸塩」ではないでしょうか。「毒物」扱いしている記事も目にします。

「リンといえば、われわれの身体には不要で有害な成分のようにさえ感じますよね。しかし実際にはリンは必須栄養素です。1日のリン摂取の目安は18歳以上の男性で1000ミリグラム、女性で800ミリグラムとされています。平成27年の『国民健康・栄養調査』におけるリンの平均摂取量は989.8ミリグラムでしたから、ほぼ充足している状態と言えるでしょう。

 一方でリンは1日の摂取量の上限が3000ミリグラムに設定されていますが、これは発がん性が理由ではありません。リンの過剰な摂取はカルシウムの吸収に悪影響を及ぼすからです。

 リン酸塩については、ハム、ソーセージなどの肉加工品に添加物として広く使用されているのが実態です。ある研究では、ウインナーソーセージのリン含有量は100グラムあたり163.0±44.7ミリグラムとしています。仮に普段の食事に加えて500グラムのソーセージを食べたとすると、約815ミリグラムのリンを余計に摂取したことになります。しかし、そこまで食べても、リンの摂取が上限の3000ミリグラム/日に達することはまずありません。そもそも、500グラムものウインナーを毎日食べ続けるというのは現実にはありえないですよね。むしろそんなに食べたら塩分や脂質の量の方が心配です。

 このように週刊誌のリン酸塩に関する記述には『量』の議論がなく、リンが入っていることだけをことさらに問題視して不安を煽っています。毎日、大量のソーセージを食べ続けない限り、普通の食生活を送っていればまったく問題ないということです」

「量」の議論をしない報道には要注意
──炭酸飲料に入っている「ぶどう糖果糖養液」などの「異性化糖」も、肥満や高血圧、糖尿病などを引き起こすとして問題視されています。

「『異性化糖』は添加物ですが、今日の多くの専門家は『異性化糖と砂糖(ショ糖)は非常に類似しているため、これらを置き換えても健康への明確な影響はない』と明確に認めています。

 表示に『異性化糖』と書いてあると、『異』という文字が含まれるだけに何か危険なものであるかのように勘違いしそうですが、要は砂糖と同じです。もちろん摂り過ぎは肥満や他の不調の原因になります。砂糖と同じように生活の中で適度に甘味を楽しみつつ、節度ある摂取をしようということ。それだけのことですね」

──一連の週刊誌報道は根拠を欠いたものであるということですか。

「マスコミは往々にして、ある特定の物質を挙げて、そのカテゴリや添加物全体を問題の対象として広げる、使用の有無だけを議論し『量』の議論を一切しない、などの特徴があります。そういう報道には要注意ですね。消費者の方々は、根拠の怪しい報道を気にするエネルギーを、健康な食生活を実現するために使った方がよほど体のためにいいと思います」

 偏食を避ける、清涼飲料の飲み過ぎを避ける、好きなものだけ食べる習慣を是正する、アルコールの過剰摂取や過剰な喫煙を控える──。「そういった当たり前のことのほうがずっと大切です」と、その専門家は訴えます。根拠を欠く健康情報に怯えて食生活を縛られている人は、ぜひ耳を傾けてほしいと思います。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55694
http://www.asyura2.com/16/health18/msg/727.html

[経世済民131] 震源地は中国 あおり受けた日本、これで不況に入るのか  3カ月働いて3カ月ブラブラする中国の若者と「日本病」
震源地は中国 あおり受けた日本、これで不況に入るのか
 
2019年3月8日06時00分
半導体大手のルネサスエレクトロニクスは国内6工場で生産休止を計画する=熊本市の工場
景気は岐路にさしかかっている
https://www.asahicom.jp/articles/images/AS20190307004483_comm.jpg

 国内の景気が、すでに後退しつつある可能性が浮上してきた。中国経済が変調した影響が本格的に及んできたからだ。日本は、このまま不況に入るのか。
 内閣府が景気動向指数の基調判断を引き下げた一因は、先週発表されていた1月の鉱工業生産指数の落ち込みだ。前月に比べて3・7%減。平均で2・5%を予測していた民間エコノミストたちに「ネガティブサプライズ」との受け止めが広がっていた。
 震源地は中国だ。過剰な債務を減らすために中国政府がとってきた引き締め策に加え、米国との対立が追い打ちをかけた。自動車やスマートフォンの売れ行きが悪くなり、中国企業が投資を手控える動きも広がる。

 あおりを受けたのが日本企業
https://www.asahi.com/articles/ASM346S9YM34ULFA02Z.html


3カ月働いて3カ月ブラブラする中国の若者と「日本病」

広岡 延隆
上海支局長
2019年3月11日
全1402文字
 2月下旬のある朝、広東省深セン市にある「三和人材市場」の周辺は、工場の募集を目当てに職探しをする若者であふれていた。若者たちは人材会社の担当者と話し、条件に納得すると続々と大型バスに乗り込み深センや隣接する東莞市にある工場に向かっていく。「1日に2000人ぐらい来るけど、企業の募集人数には追いつかない」。人材会社の担当者は困ったような顔で笑った。


深センの人材市場は職を求める若者でごった返していた
 担当者は「昨年から企業の募集人数はあまり変わっていないのに、人手不足感はますます強くなっている」と話す。地方から大都市に出てきて職を探す人が減っているのかと思い話を聞いてみると、どうも様子が違う。

 しばらく話していると「最近の若者は働く意欲に乏しいのが問題だ」と嘆き始めた。工場の募集は住み込み食事付きがほとんど。3カ月働いたら3カ月はブラブラし、それからまた働きに出る。そんな若者が増えているのだという。必然的に定着率も悪く、同じ数の募集でも送り込む人数を増やさなければ企業の要請に応えられない。

 良い悪いは別にして社会が豊かになれば、そうした生き方を選ぶ人が一定の割合で増えるのは当然のことなのかもしれない。日本で「フリーター」が出てきたのはバブル経済の時期。人材市場の担当者の嘆きは、日本でも聞いたことがあるような言葉だった。

 3月5日に北京市で開幕した全国人民代表大会(全人代、国会に相当)でも、「日本でも聞いたような話だ」と感じた発言があった。

 全人代において、李克強首相は2019年の経済成長率の目標を「6〜6.5%」にすると宣言し18年の「6.5%前後」から引き下げることを明らかにした。「バラマキはしない」とも言いながら、企業の税や社会保険料の負担を2兆元(約33兆円)弱軽減し、地方政府がインフラ建設にあてる債券の発行枠を18年と比べ8000億元多い2兆1500億元にするなどの景気テコ入れ策が次々と発表された。

 中国の景気が減速局面にあることは間違いない。リーマンショックの際、中国は4兆元もの経済対策を発動して世界経済を救った。だが、地方政府や国有企業の債務という形で後遺症が残った。中国政府は債務を削減しながら経済を軟着陸させるという、微妙な舵取りを求められている。

 過剰債務に悩みつつ、景気落ち込みを防ぐための経済対策を打ち出さなければならない姿は、どうしても日本経済と相似形に映る。中国の場合はまだ日本ほど財政は悪化してはいないが、国有企業の割合が多い点には注意が必要だ。

 中国ではもう一つの大きな構造問題が顕在化しつつある。一人っ子政策の影響で11年ごろに生産年齢人口がピークを迎えたとみられることだ。16年には一人っ子政策が廃止されたが、18年の出生率は過去最低を記録した。今後は社会保障費がのしかかるという日本同様の問題に直面する可能性が高い。

 中国政府は日本と同じ轍を踏まないよう、日本のバブル経済とその崩壊を真剣に学んでいる。だが、現時点では日本のようなバブル崩壊こそ起きていないものの、日本と同様の問題に直面しつつある。もちろん、中間層の増加によって世界最大の消費市場がさらに拡大していること、インフラがまだ行き渡っていないため建設後の経済効果が見込みやすいことなど、日本とは前提条件が異なる部分もある。

 中国も高齢化と低成長に悩む「日本病」に陥ってしまうのか。その先行きは世界にも大きな影響を与えることになる。

codeblueline

人口減少に伴うGDPの減少は避けられそうにないけど、固定電話一切無視して携帯の普及だけ目指して成功するとか、先を見通す能力はわが国政府より中国政府の方がありそう。

2019/03/11 06:41:113
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00019/030800028/?P=2
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/461.html

[経世済民131] 働き方改革を加速させる「サテライトオフィス」 残業削減と生産性向上の二兎をどう追うか シニアの「心の高齢化」をいかに防ぐ
働き方改革を加速させる「サテライトオフィス」

2019.3.11(月) 田澤 由利

東京電力の郊外型から、駅ナカ、NY発WeWorkまで


東京電力のテレワークオフィス「SoloTime」
 メディアなどで「サテライトオフィス」という言葉を目にすることが多くなった。

 その背景には「働き方改革」がある。時間外労働の上限規制など、働き方改革法案は、4月1日から施行となる(中小企業は来年から)。

 特に、時間や場所を有効活用して柔軟に働く「テレワーク」を導入する企業が増えるなか、「働く場所」が多様化してきている。

 今回は、「サテイラトオフィス」ビジネスの最新の動きをお届けする。

働き方改革における「サテライトオフィス」とは?
 「サテライト(satellite)」は、惑星のまわりを回る「衛星」のこと。サテライトオフィスは、「本社や本部から離れたところにある小規模な事務所」として使われることが多い。

 一方、「働き方改革」の視点からは、「毎日通勤し、朝から晩まで働いていたオフィス (所属事業所)から離れた、会社が認める働く場所」と言うこともできる。

 「働き方改革」において、生産性を向上させつつ、人材を確保しなくてはいけない企業にとって、コストを抑えつつ「社員が働く場所」を広げる「サテライトオフィス」は、非常に重要な位置づけとなる。

 筆者は、「サテライトオフィス」を大きく3つに分類している。

●都市型サテライトオフィス

 首都圏であれば、東京駅、品川駅、新宿駅など、企業が集まる都市部に設置されたサテライトオフィス。

 社内会議や資料印刷のために会社に戻ることなく、営業のための移動を効率化できる。企業の生産性の向上に寄与する。

●郊外型サテライトオフィス

 社員が住む郊外に位置するサテライトオフィス。子育てや親の介護などで、通勤時間が負担になる社員が、効率よく働くことができる。

 短時間勤務の子育て社員がフルタイムで働くことも可能だ。災害や交通トラブル時も、有効に機能する。企業にとっては、社員の離職防止、ワークライフバランス向上、そして災害時の事業継続に寄与する。

●地方型サテライトオフィス

 全国各地で、地域の自治体などが設置するサテライトオフィス。

 テレワークの普及により「地方のサテライトオフィスで仕事が可能」になれば、地方創生はもちろん、社員の福利厚生から地方での人材確保、災害時の事業継続など、企業にもメリットが生まれる。

サテライトオフィス御三家も次のステップへ
 早くから法人向けのサテライトオフィス事業に取り組んできた先兵は、それぞれ次のステップに動き始めている。

 東急電鉄のNEWWORKは、直営店は首都圏を中心に全国に設置。店舗ネットワークは全国100拠点となる。今年に入って大阪にも直営店を設置した。

 リクルート系不動産会社ザイマックスは、サービス名を『ZXY(ジザイ)』に変更、来年度は100店舗を目指す。

 三井不動産の駅直結のハイグレードオフィス『ワークスタイリング』も、2020年度には50店舗を目指す方針だ。

 4月1日の「働き方改革法案」施行を前に、確実にビジネスとして成長することが予測されるサテライトオフィス事業。新しい企業の新しい動きも見え始めている。

東京電力の郊外型サテライトオフィス
 東京電力が郊外型サテライトオフィス事業をスタートした。

 先に書いたように、都市型は営業活動の効率化に、郊外型は社員のワークライフバランスに大きく貢献する。

 しかし、東京の「郊外」は広いうえに、一地域の利用者数が限られる。ビジネス性を考えると、東京23区内から徐々に広がるのを待つしかないと、筆者は考えていた。

 しかし、東京電力は3月1日、八王子市にテレワークオフィス「SoloTime」の第1号店舗をオープンした。

 さっそく八王子の「SoloTime」を訪問してみた。八王子駅から徒歩3分。

 普通の雑居ビルの8階なので、正直期待していなかったのだが、エレベーターを降りると、白を基調にしたオシャレなオフィスが目の前にあった。

 「ひとりの時間」という名称から、ネットカフェのような個別ブースが並んでいるのかと思いきや、オープンスペースも広く、明るく、過ごしやすい。

 無人店舗ではあるものの、女性でも安心して利用できる安全性が特徴だ。

 非常用の「緊急ボタン」の設置はもちろんだが、なかなか押しにくいという配慮から不安な時は「ちょっと見守って」ボタンも用意されている。

 八王子は、複数の路線が入るターミナル駅。都市部へ通勤する人も多い。企業が認める「サテライトオフィス」があれば、多くの社員のワークライフバランスが向上するだろう。

東京電力のテレワークオフィス「SoloTime」
 新規ビジネスを担当している東京電力ホールディングスの佐藤和之氏は、こう語る。

 「働き方が多様化するこれからの時代、都心ではフェイス・トゥー・フェイスの打ち合わせなどの『会議・コミュニティ』の場所となり、家の近くではテレビ会議も含めた『ソロワーク』の場所となるのではないか」

 「在宅勤務はスイッチのオン・オフが難しいことから郊外のサテライトオフィスのニーズは今後増えるだろう」

 今後、東戸塚にも出店が決まっているようで、顧客ニーズを検証しながら、次々と郊外を中心に展開していきたいとのこと。他の事業者とは異なるスタンスに注目したい。

全世界で425拠点
NY発WeWorkは「コラボレーシュン」
 WeWorkは、2010年ニューヨークで2人の青年が立ち上げたコミュニティ型ワークスペースだ。

 世界100都市以上に425か所、総面積は45万坪以上。日本に進出したのは2017年だが、今月には都内12か所を中心に、横浜、大阪、福岡へも展開し、年内に約30か所を目指している。

 国内のオフィスは、丸の内北口、六本木アークヒルズサウス、GINZA SIX、日比谷パークフロントなど、誰もが憧れる人気オフィスビルが連なる。

 しかし、WeWorkで働く一番のメリットは「ステータス」ではない。

 「コラボレーション」だ。会員専用SNSから、コミュニティのためのサポート、イベントまで、メンバー同士が交流するためのサービスが用意されている。

 今年1月に京橋の東京スクエアガーデンのWeWorkに本社を移転したニューチャーネットワークスの高橋透社長を訪ねた。

 WeWorkの共有スペースに入るなり、実に様々な人が、自分のスタイルで仕事をしている。高橋氏に移転した理由を聞くと、「ここの方が快適だから」と即答。

 「社員が生き生き仕事をして、ネットワークを広げている。これからの時代は、毎日同じオフィスで、同じ人と仕事をする時代ではない」

 マネシージャーの畑中恵美さんは、自社の専用スペースではなく、あえて共有スペースで仕事をしている。

 1日1人、新しい人に声をかけることを心がけているからだ。これからのサテライトオフィスは、仕事場でありつつ、ネットワークやビジネスのコラボレーションを広げる場に進化しつつある。

WeWorkの共有スペース©WeWork
JR東日本「駅ナカ」オフィスは今年の夏に正式スタート
 これから注目される「働く場所」は、ビルに用意されたオフィスだけではない。JR東日本が昨年11月から今年2月にかけて実証実験を実施したのは、「駅ナカ」オフィスだ。

 実証実験では、東京駅・新宿駅・品川駅に設置された。企業にとっては、究極の「都市型」サテライトオフィスである。

 『“働く人”の1秒を大切に』というコンセプトどおり、移動の合間、15分単位で利用できることが特徴だ。

 筆者も実証実験期間中に利用してみた。夕方の時間帯は出張帰りの直前に利用する人が多いのか、予約が取りにくかった。

 スマホから予約して、少し前にブースに到着。しかし、予約した時間にならないとブースをオープンできない。

 一瞬面倒だなと思ったが、逆に空いていれば1分前でも予約できるという考え方だ。

 ブースのオープンは、スマホアプリからドアに掲示されたQRコードを読み込むだけ。自分用のQRコードを表示する手間も不要だった。

 ブースは決して広くはないが、30分程度なら問題ない。中にはモニターも設置されカメラも用意されている(筆者が利用したときは利用不可だった)。

 何より助かったのは、時間が近づくと「声」で知らせてくれること。

 仕事に没頭していると時間を忘れがちになるので、ありがたかった。時間を意識して仕事をするという意味でも、場所の便利さだけでなく業務の効率化に貢献しそうだ。

 このサービスは、2019年夏、「STATION BOOTH」として、正式スタートする予定だ。

 また、JR東日本は、「法人向けの駅ナカコワーキングスペース」や「法人向けの駅チカレンタルオフィス」も予定している。

JR東日本 駅ナカ・オフィス(実証実験時)
テレワーク・デイズに向け
市場は急速拡大となるか?
 東京オリンピックパラリンピックの交通緩和をきっかに、日本の働き方を変えるべく国が2017年から実施している「テレワーク・デイズ」。

今年の「テレワーク・デイズ2019」は約1か月
 昨年は、1682団体、延べ30万人以上が参加した。テレワーク・デイズの期間、都内のサテライトオフィスが満席になる現象が出たほどだ。

 先日、「テレワーク・デイズ2019」の方針が発表された。2020年前年ということもあり、目標は3000団体・延べ60万人を掲げている。

 期間も、1か月以上(2019年7月22日〜9月6日)が設定されている。

 テレワークを導入する企業が増え、それに応えるようにサテライトオフィスが広がっている。日本の働き方がいよいよ変わっていく大きな動きを感じずにはいられない。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55679


 

【第1回】 2019年3月11日 大田弘子 :政策研究大学院大学教授
残業削減と生産性向上の二兎をどう追うか、大田弘子氏が語る働き方改革の本丸
政策研究大学院大学教授 大田弘子氏

4月から「働き方改革関連法」が施行される。月45時間、年360時間を原則とした時間外労働の上限規制の導入、年次有給休暇の確実な取得、同一企業内の正規雇用労働者と非正規雇用労働者間の待遇差の禁止などが盛り込まれ、現在、対応に追われている企業も多いことだろう。政府の規制改革推進会議の議長として、働き方改革の議論を進めてきた大田弘子さん。大田さんは、働き方改革関連法をどう評価しているのか。前編では、働き方改革法案の施行でも解決できない、日本人の働き方に関する問題を語ってもらった。

「長時間労働の是正」は大きな第一歩
高プロ人材の要件に課題も
 私は政府の規制改革推進会議の議長として、働き方改革の議論を進めてきた。4月に施行される「働き方改革関連法」によって、働き方にまつわる問題は一歩前進した。働き方や労働市場の改革は非常に難しいので、ここまでこぎ着けられたことを評価したい。

「働き方改革関連法」は、平たく言えば、(1)長時間労働の時間規制、(2)有給休暇の確実な取得、(3)同一労働同一賃金の3点が大きなポイントだ。

 なかでも、長時間労働にメスが入ったことは重要だ。「日本企業独特の働き方」ともやゆされる長時間労働の常態化は、問題が長らく指摘されていたにもかかわらず、これまで改革されずにきた。子育て中の女性が働くときの阻害要因だったのも事実だ。

これまで残業時間は、上限についてのガイドラインがあっても、結局は36協定で労使が協定を結べば、事実上青天井が許された。それが、今回の施行で罰則付きで、法規制できるようになったことには大きな意義がある。

 一方で、もちろん課題も残っている。まず、会社員の一部を労働時間規制から外す「ホワイトカラー・エグゼンプション」としての、高度プロフェッショナル制度(以下、高プロ)が、中途半端な議論に終わり、「年収1075万円以上・金融商品開発など5業務」で要件が切られてしまった点だ。海外マーケットとのやりとりが多い部署、部門、職種、IT系、研究職などがその例である。

 このように、今回は肝心の対象が年収などで一律に決められてしまった。対象職種にあてはまる人は、そもそも外資で働いている場合も多く、年俸制などで労働時間では管理されず、自律的な働き方を既にしている。今回の制度は、それを後追いで認めているにすぎない。

 本来、高プロは、「単に年収が高い人を別に管理すればよい」とか「決まった職種だけに適用すればよい」ものではない。収入や職種といった、一律の外形基準で限定するのではなく、実態として見るべきである。

 近年では、ホワイトカラーの業務の中で、長時間働いたからといって成果が上がるわけではない「労働時間で成果を測れない仕事」が非常に増えている。そうした仕事は、仕事の進め方や時間、仕事をする場所を固定的に決められず、一律の労働時間管理になじまない。

 労働時間と成果がリンクしない職種の人たちの労働時間をどう管理するのか、そしてその対象をどう限定するのか――この問題を正面から議論する必要がある。

 しかし、最初から「残業代ゼロ法案」だとレッテルを貼って決めつける動きがあったのは、建設的ではなく、残念だ。どうすれば、マネジメントがその人の仕事の内容にフィットし、生産性の向上に結びつくのか。また、残業では測れない成果をいかに評価するのかが、議論の核心にあるべきだ。

生産性向上につなげられるかが課題
人材投資とIT投資の並行促進で対処

 働き方改革を生産性向上につなげられるかどうかが最も重要な課題で、それなしには、長時間労働も本格的には是正されないだろう。中小企業には、残業時間規制が1年猶予されるものの、生産性向上が待ったなしだ。長時間労働の是正によって「残業を管理する仕事」だけ増え、人手も足りず、「業績が落ちる」事態も十分に起こりうる。働く時間だけ減って、そのまま業績が落ちたのでは本末転倒である。

 そこでは、AI、IoT、ビッグデータなど、デジタル化が新たなフェーズに入った第4次産業革命の中、デジタルイノベーションを含めた効率化も同時に進めなければならない。大企業では、働き方改革の流れを受けて、業務効率化やRPAに取り組み始めているが、これが生産性向上につながっているかどうかは、まだ定かではない。単なる業務効率化にとどまらず、業務内容の本格的見直しが必要だろう。そのためには、IT投資、それから人材投資が重要だ。

 デジタルイノベーションの真っただ中にあって、事業戦略の立て方が従来とは異なるのだから、人の使い方も同じでいいはずがない。根本的にその部分に取り組むことで、働き方改革を生産性向上につなげることができるのではないか。

 イノベーションを喚起するための人材投資は、単に技術分野だけではなく、経営人材も重要だ。ただし、経営人材は豊富にいるわけではない。デジタルイノベーションを前提にビジネスモデルをつくれる人、プロセスを構築できる人が、今後ますます求められるだろう。その意味で、外部人材をどう活用するかも重要な課題である。

 どういう人材を評価するのか、どういう人材を外部から採用したいのかが、それぞれの企業の人材の質に影響を与える。日本の大企業では、これまで人材の流動性が低く、失敗を許容しない人事評価を行うところが多かったが、あらためて人材の問題を考える必要がある。

 その意味では、今回の働き方改革は、同時に行うべき「人材投資」と「IT投資」の2つの投資と改革の背中を押したと考えるべきではないか。つまり、働き方改革関連法は単なる労務管理の変更ではなく、経営問題と捉えることが肝要なのだ。

同一労働同一賃金に残る課題
「ジョブ型正社員」がカギに

 また今回の法律で、同一労働同一賃金の導入に着手できたことも、前進だ。目指すべきは、非正規の雇用形態でも、著しく不利になることがなく、働き手それぞれが選べること。また、非正規が非正規のままで固定化するのではなく、正規と非正規の間の移動ができるようになること。

 今回の同一労働同一賃金は、非正規雇用者の待遇改善を実現させようとするもので、これは一歩前進ではあるが、正規と非正規の間の壁が低くなったわけではない。多様な働き方を選べるようにするには、労働市場全体の改革が必要である。

 現在は、年功序列的な待遇と強い雇用保障で守られた大企業での正社員と、組合のない中小企業で働く社員との格差も大きい。非正規から正規社員になることだけでなく、中小企業から大企業の正社員になるのも非常に困難だ。だから、新卒就活の際の大企業志向がなくならないし、日本全体として人材が生かされない。

 2017年の労働力調査によると、役員を除く雇用者に占める非正規雇用の割合が37.3%である。正社員の職がなく不本意に非正規を選んでいる人は全体の14.3%で、残りは非正規を選択している。子育てや介護との両立のために非正規を選択している人も少なくないだろう。こうした働き方の選択が、著しい不利益をもたらさないようにすること、同時に、非正規を選択しても、その後に正社員で働く機会が得られるようにすることがきわめて重要だ。固定化を防ぎ、流動性を確保することである。

 そこで、大企業、中小企業、非正規の間の高い壁を低くし、格差を是正するための方策としては、3つの問題に取り組むべきだと考えている。

A)働き方による著しい不利益をなくす

 同じ企業の同じ労働なら、正規と非正規の間で、説明のつかない対価の格差をなくす。今回の同一労働同一賃金はその一歩だが、労働移動の可能性などを含めて、まださまざまな点で格差が残る。

B)固定化せずにキャリアアップできるよう職業訓練の機会を増やす

 労働市場の流動性を高める際に、職業訓練の機会を多様に得られるようにすることは不可欠だ。職種ごとの訓練プログラムに沿って民間企業の現場で訓練を受けられるようにする「ジョブカード制度」を以前につくったが、こうした制度の実効性を高めるべきである。

C)正社員の中に「ジョブ型」のメニューをつくり、ルールを明確化する

 正社員にはなりたいが、転勤はできない、残業できない、無限定な配置転換はいや、という人は少なくない。そういう人のために、職務や勤務地、労働時間のいずれかを限定する正社員を「ジョブ型」社員とよぶが、この選択肢ができると、正社員で働きやすくなる。既に多くの企業が「ジョブ型」の形態を取り入れているが、まだルールが明確ではない。例えば、地域限定の正社員の場合に、その勤務地の事業所が閉鎖したらどうなるか、子育て中に労働時間限定のジョブ型を選び、その後に元に戻れるか、などルールを明確にしておくことが必要だ。いま規制改革推進会議でも取り組んでいる。

 同一労働同一賃金に関して、外国人労働者の受け入れについても多くの課題がある。外国人労働者を受け入れるなら、きちんと受け入れなければならない。外国人労働者を採用する理由として「安いから」ではいけない。あくまで、その労働力や技能を必要とするから採用するのであり、賃金や待遇は日本人と同じにすべきで、そのための監督も厳しくすべきだ。

 労働市場改革が難しいのは、政策形成の場に、組合のない中小企業の社員や非正規社員や外国人の声が届きにくいから。経団連も連合もどうしても大企業中心の視点になりがちで、一番改革を必要としている“声なき声”が政策の場に届かない。政策決定プロセスの見直しも必要だ。

働き方改革と切り離せない
デジタルイノベーションに「出島」の試み

 働き方改革と併せて生産性を上げるための取り組みが重要だと申し上げたが、この点で一番重要なのは、イノベーションを起こしやすい環境をつくることだろう。とくに最近は、不連続で画期的な「破壊的イノベーション」が、技術やビジネスモデルを速いスピードで変えつつある。

 日本生産性本部の調査「イノベーションを起こすための工夫に関する企業アンケート」によると、「日本企業は破壊的イノベーションを起こしにくい」と考えている企業が3分の2に上る。しかし、手をこまぬいているばかりではなく、20%の企業は「出島」をつくる試みを始めている。

「出島」とは、異次元のテーマに取り組み、破壊的イノベーションを起こすために、通常のビジネスとは独立した形で運営されるイノベーション拠点のこと。大きな組織の中では、ビジネス・プロセスを変えるのに時間がかかり、失敗が許されない雰囲気も強いから、「出島」をつくって、試行錯誤を許容する環境をつくりだしているわけだ。

 そういう場所をつくって、いろいろなことに挑戦させて、失敗の経験を積ませる。どうしても日本企業の多くは、一度失敗すると、それが失点となって評価されがち。これだけ変化が激しい時代には、「失敗が評価される環境があること」が必要だ。

 しかし、出島があるだけではそれが全体へ波及するには至らない。「出島」をつくる企業が増えているのはよい兆候だが、「出島」での成果を結実させるために必要なのは、元の組織である「本体」において、出島で起こったイノベーションを受け入れる文化や環境をつくり、変わっていくことだ。

 最初から最後まで出島には研究開発の人しかおらず、意思決定できる人が関与していなかったり、どこまでも特別の存在として「離島」のままだったりすると、イノベーションにつながらない。出島で、イノベーションを担う人材が育つと同時に、本体の意思決定に食い込んでいく必要がある。

 実際に出島を担っている企業の経験者に聞くと、「出島がピッチャーだとしたら、本体側にキャッチャーが存在することが必要だ」と強調していた。ピッチャーに外部から人材を持ってきたとしても、本体側にキャッチャーがいなければ変革につながらない。その意味でも、出島を担当する人材は、経営に関与する権限を与えられた人であることが望ましい。トップの強い関与も重要だ。

 いずれにせよ、「失敗」を許容し、評価する人事運営が、これからの日本企業にますます求められるだろう。働き方改革の射程は、こうした人事運営にまで至るものだと考えている。

(政策研究大学院大学教授 大田弘子)
https://diamond.jp/articles/-/196295


 


シニアの「心の高齢化」をいかに防ぐか
心理学と経営学の知見を活かす
竹内 規彦:早稲田大学大学院経営管理研究科 教授
2019年3月11日
世界第1位の長寿大国となった日本において、シニアの就業者数は増加の一途をたどっている。その活用に取り組む企業は増加しているが、「雇用保障」や「福祉」の対象という位置付けが多いのが現状だ。しかし、労働人口の減少などを背景に、これからは「企業の価値ある内部資源」として、シニア人材を活用し、競争優位につなげる必要性が高まっている。本稿では、加齢に伴い人の内面は何がどう変わるのかを明らかにし、加齢のポジティブな側面を組織の強みにつなげられるかを考察する。そのうえで、企業がシニア人材を組織の「活力」の源泉とすべく、いかに育成・活用すべきかについて考える。
『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』2019年4月号より、1週間の期間限定で抜粋版をお届けする。

問われるシニア人材の活用
 日本社会は、これまでに人類が経験したことのない未曾有の少子高齢化を経験している。2007年、日本は高齢化率(国や地域の総人口に占める65歳以上人口の割合)が21%を超える「超高齢社会」へと突入した。この頃から日本の高齢化率は、世界第1位を維持している。2018年時点の日本の高齢化率は28.1%であるが、推計値によると今後もこの値は上昇し、2035年には約3人に1人が65歳以上になるとされる[注1]。

 働くシニアの動向はどうだろうか。従来、日本企業で働く人の多くは、60〜65歳前後で各社が設定する定年年齢に達し、その後は退職金、年金、現役時代の預貯金などをもとに老後を過ごすのが一般的だった。しかし、ここ最近の傾向として、60歳以上になっても働く人が増えている。

 たとえば、55〜64歳人口に占める就業者の割合は、2006年から2016年までの間で64.7%から71.4%へ増加しており、同様に65〜69歳人口に占める就業者の割合も、10年間で34.6%から42.8%へと8ポイント以上増加している。加えて、70〜74歳の層でも、4人に1人が仕事に就いていることが報告されている[注2]。すなわち、個人の職業生活が従来よりもいっそう、長期化しているのである。

 現在、企業におけるシニア人材の活用は進みつつあるが、その多くは「雇用保障」や「福祉」という位置付けに留まっている[注3]。周知の通り、高齢化と同時に進行する少子化の影響から、日本の生産年齢人口(15〜64歳人口)は減少の一途をたどっている。そして、医療技術の高度化や高齢者の健康志向の高まりなどから、高齢者の運動能力は過去15年間で10〜15%程度上昇している[注4]。また、後述するが、シニアの知的能力や仕事へのモチベーションは一律に低下するわけではなく、むしろよりポジティブに評価できる部分が少なくない。つまり、今後求められるのは、「企業内の価値ある内部資源」としての、シニア人材の積極的かつ戦略的な活用であるといえるだろう。

 加えて、この積極活用に向けた課題は、シニア人材に対するものだけではない。個々人の職業生涯の延長に備えた若年・中年層向けのキャリア開発支援など、シニアに至るまでの人材に関わる課題も含んでいる。

 企業は、「人生100年時代」を見据えて、シニア世代を含むあらゆるキャリアステージの人材をいかに育成・活用し、組織の「強み」、ひいては企業の競争優位の構築につなげられるのかについて、正面から取り組むべき時期に来ているのだ。

加齢に伴う内面の変化
 企業がシニア人材の活用を考えるうえで、まず重要なことは、加齢によりどのような内面的な変化が人に起こるのかを、正しく理解することであると筆者は考えている。

 本特集号の論文「シニア世代を競争優位の源泉に変える」でも指摘されているが、シニアに対する誤った認識に基づくステレオタイプな認知(たとえば、あらゆる意欲や能力が衰えるなど)により、無意識のうちに「エイジズム」(年齢差別)が職場に蔓延する例は枚挙にいとまがない[注5]。シニアが持つ経験や能力の過小評価が、企業の人的競争力の低下を招いていることは十分にありうるのである。

 では、加齢に伴いシニアの内面は何がどう変わるのか。加齢の内面変化を科学的に究明するディシプリンに、老年心理学や生涯発達心理学などがある。以下、加齢の変化を大きく「能力」(知能)の側面と「モチベーション」の側面とに分けて、筆者らの研究成果なども踏まえつつ、見ていくことにする。

「能力」(知能)の変化

 人の知能は大きく、「流動性知能」(fluid intelligence)と、「結晶性知能」(crystallized intelligence)に分類される[注6]。流動性知能は、新たな物事を学習する、新たな環境に適応する能力である。これは「動作性」の知能に相当し、流動性知能が高いと、非言語的な情報処理(計算など)や、空間的な動きを視覚的に処理する能力などに長けているとされる。一方、結晶性知能は、個人が蓄えた経験や知識を活用し、異なる文脈や状況に応用する能力である。これは「言語性」の知能に相当し、結晶性知能が高いと聴覚的な情報処理や語彙力、言葉を使った説明や思考などに長けているとされる。

 この2つの知能と加齢との関係については、豊富な研究蓄積がある。これらの研究では、流動性知能は加齢による変化を受けやすい一方、結晶性知能は加齢による変化を受けにくいという特徴がおおむね確認されている。一例を挙げると、動作性(流動性知能)は、30歳以降低下し続けるのに対し、言語性(結晶性知能)は、50代半ばまで上昇しその後低下に転じるものの、その落ち込みは緩やかである[注7]。

 加齢と知能の関係について、さらに詳細を見てみよう。知能と年齢の関係を長年研究しているアラン・カウフマン(元エール大学小児研究センター教授)らの研究では、知能検査の世界標準として知られる「ウェクスラー成人知能検査」の第4版(WAIS-IV)で検査される、4つの知能領域と加齢の関係について報告をしている[注8]。

 図表1「4つの能力の加齢変化」から、蓄積された経験・知識の活用や言葉による説明力・思考力などに関わる「言語理解」(≒結晶性知能)と、情報の一時的な記憶と処理を同時に行うような一時的記憶力や二重課題の遂行力に関わる「ワーキングメモリー」は、加齢による影響を受けにくいことがわかる。特に、言語理解は成人後期まで上昇し、その後の下降も緩やかである。


 興味深いことに、ワーキングメモリーは60歳までほぼ一定水準を保ち、以降徐々に下降するものの、80歳あたりまでは必ずしも大きな落ち込みは見られない。一方、視覚的な情報処理や新たな環境適応に関わる「知覚推理」(≒流動性知能)と、情報処理のスピードや筆記能力に関わる「処理速度」は、30代以降一貫して低下が見られる。

 このように、シニアの知的能力は、必ずしも一様に低下しているわけではなく、むしろ言語理解などの結晶性知能は、高い水準を維持しているといえる。つまり、シニアは語彙力や言葉を使った説明力・思考力が高い傾向にある。当然ながら個人差はあるが、職場での指導的な役割や、社内外のステークホルダーに説明が求められる場面などで、活躍できる可能性が高い。また、記憶と処理を同時並行してこなすワーキングメモリーもけっして低くはない。一方で、ハイスピードでの課題処理や視覚情報の処理、未知の領域の学習などは、シニアには不向きかもしれない。

 モチベーションの変化

 次に、年齢の上昇につれ、仕事に対するモチベーションはどのように変化するのだろうか。「強さ」と「質」という2つの側面から見ていく。

(1)「強さ」の変化

 ここでは、仕事へのモチベーションの代理指標として、就業者の「ワークエンゲージメント」の年齢変化について見てみる。ワークエンゲージメントは、産業・組織心理学の領域で著名なユトレヒト大学教授のウィルマー・シャウフェリが提唱した考え方である。「活力」「熱心さ」「没頭」を特徴とする、仕事に取り組む際の前向きで充実した心の状態を指す[注9]。

 筆者の研究グループは、2018年に日本企業に勤務する18〜75歳までの就業者約6800人を対象とする質問紙調査を実施し、ワークエンゲージメントを含む組織行動関連の調査データを収集した。図表2「ワークエンゲージメントの年齢変化」は、ワークエンゲージメントの構成要素である「活力」「熱心さ」「没頭」のそれぞれについて、回答者の年代別の推移を示したものである(図表の縦軸は、スコア〈最高値は100〉が高いほど、回答者の各エンゲージメント得点が高いことを意味する)。


 興味深いことに、この図表から、年齢の上昇につれ、仕事へのエンゲージメントは下がるのではなく、むしろ上昇する傾向にあることがわかる。特に、61歳以降の年齢区分で、「活力」と「熱心さ」のスコアが比較的大きく上昇していた。したがって、個人差は当然あるものの、シニアの就業者は相対的に見て、若手や中年層の就業者よりもワークエンゲージメントが高いというのが実態である。

 なお、ワークエンゲージメントの効果として、職務パフォーマンスの向上とストレス反応の低下が明らかにされている。特に、エンゲージメントは、職務満足や組織コミットメント(会社への愛着)よりも職務パフォーマンスへの効果が高いことが、過去20年間に報告された論文約100編の検証データに対するメタ分析より確認されている[注10]。

 ただし、先の加齢に伴うエンゲージメントの上昇を示す結果は、企業で働く人々を対象としたものである。調査対象のシニアは、定年年齢に到達した後でもあえて働く選択をしている人々であり、仕事から引退した非就業者にも、同様の「高いエンゲージメント」現象が見られるかは定かではない。

(2)「質」の変化

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 学術的には、加齢に伴うモチベーション変化は、「強さ」の変化よりも「質」の変化が大きいと考えられている。

 スタンフォード大学ロンジェビティ研究所教授のローラ・カールステンセンが提起した「社会情動的選択性理論」(socio-emotional selectivity theory)と、その後の実証研究による裏付けから、以下のような変化が明らかとなってきている。

 まず、加齢に伴い個人の関心事は、自身に関連する「リソースゲイン(資源獲得)の最大化」から「リソースロス(資源損失)の最小化」へとシフトする傾向があるとされている。なかでも、およそ30歳までの若年では、個人の行動は「情報探索」や「知識獲得」によって動機付けられる一方、30歳を超えたあたりから、個人の行動は「感情調整」により動機付けられるようになる[注11]。つまり、若いうちは、「新たな情報や知識を得るには何をすべきか」を意識して行動する傾向が強いが、年を取るにつれ、新たな経験よりも「自身の感情を安定させるためには何が必要か」を優先して行動するようになる。

 さらに、このようなモチベーションの質的変化は、個人が「誰と交流するか」という選択に影響を与え、ひいては個人の対人ネットワークの大きさにも変化をもたらすことが明らかとなっている。すなわち、新鮮な情報や知識の獲得に強く動機付けられる若い時期は、より多くの人々、いままで知り合ったことのない人々と交流し、新たな情報や知識の獲得に役立てる傾向が見られる。

 一方で、加齢に伴い、自身の感情の安定や心の平穏を求めることに強く動機付けられるようになると、配偶者や家族、親友や近しい同僚など、過去に築いてきた心許せる人たちとの継続的な交流をすることによって、自身の情緒面での安定を優先するようになる。

 実際に、ハイデルベルク大学老年心理学部教授のコーネリア・ヴルツらは、対人ネットワークと年齢の関係に関するメタ分析を行い、個人の対人ネットワークは30歳まで広がるものの、それ以降は徐々に狭まる傾向にあることを報告している[注12]。

 興味深いことに、この研究以外にも、「30歳」が、モチベーションの質的変化が起きる1つのターニングポイントであることを示唆する研究が、複数見られる(筆者らによる日本人サンプルの研究でも確認している[注13])。

 このようなモチベーションの質的変化には、一長一短がある。過去に築いてきた人たちとの交流を深化させられる一方で、新たな知識獲得を通じた自己成長にブレーキをかけてしまい、対人関係の幅は限定的になりがちとなる。そしてこの変化はシニアだけでなく、早い人では、30歳前後から見られる点に留意したい。

シニア人材をイノベーションの源泉にする
 これまで見てきたように、シニア人材の能力やモチベーションには、積極的に評価できるポイントが少なくない。シニアの「ポジティブな側面」に目を向けると、イノベーションを喚起できる可能性が高まる。

 前述のように、シニア人材は、結晶性知能に見られるような、経験をベースとした知能が高い水準で維持されている。ここで注目したいのは、シニアの持つ「専門性」と「応用力」である。経験により培われる知識やスキルの専門性の深化は、自明である。そして、結晶性能力の核でもある、自身の経験を他の新しい領域や文脈に活かす能力が、応用力である。

 これらはいずれもイノベーションを引き起こすうえで、重要な能力であると考えられている。なぜなら、新たな知の創造には、既存の「知の組み合わせ」(knowledge combina-tion)が不可欠だからである[注14]。すなわち、複数のメンバーが持つ異なる専門的な知識・経験の交換によって引き起こされる「個人間での知の組み合わせ」と、一人の個人が(新たな)異なる環境やフィールドで自身に蓄積された経験・知識を活かす形で生まれる「個人内での知の組み合わせ」の両者が求められる。したがって、新たな知が生まれるための個人の能力要件として、専門性の深化と応用力の伸張が挙げられる。この両者は(当然のことながら個人差はあれど)シニアに十分に期待できる能力だと考えられる。

 特に前者のチームでのイノベーションが生まれる重要な要因の1つに、構成するメンバーのダイバーシティ(多様性)を高めることが挙げられる。ダイバーシティには、大きく3つのタイプがある。すなわち、「属性ダイバーシティ」(メンバーの性別、年齢、国籍が多様なこと)、「深層レベルダイバーシティ」(メンバーの性格、価値観などが多様なこと)、および「仕事関連ダイバーシティ」(メンバーの仕事の専門領域、スキル、経験などが多様なこと)である。これらのうち、メタ分析の結果、チームの創造性を高める効果が確認されたのは、「仕事関連ダイバーシティ」のみであった[注15]。

 ここで重要なのは、年齢という属性のみの多様性では、イノベーションは生まれないという点である。すなわち、シニアが長年蓄えてきた「専門性、スキル、経験」に着目し、既存のメンバーの知との組み合わせ、知の多様性を追求する必要がある。

 つまり、シニアの活用をイノベーションにつなげるためには条件があり、それをクリアすることが欠かせない。1つは、既述の通り、年齢というシンボルに着目しないことである。すなわち、年齢を多様化させること自体が目標になってはならない。あくまで、シニアの持つ固有の専門性、スキル、経験を、いかにイノベーションや成果につなげるかという視点でシニア活用を考える必要がある。

 さらに、シニアは加齢により、一部の「能力」は若い世代よりも劣後する点もあるのは事実である。特に、情報処理のスピードや未知の領域の学習などは、若年層にキャッチアップできないケースもあるだろう。

 したがって、新たな職場や組織へのシニアの配属(再配属)については、シニアの能力を「活かす」形での仕事や役割のアサインメントが大切である。そのためには、シニアの専門性やスキル、仕事経験などの中で、何が職場やチームの「情報資源」となりうるかを洗い出す必要がある。そのうえで、シニア人材を採用(再雇用)・配置(再配置)する際に、シニア本人の経験や専門領域が採用・配属後の職場・組織にとって、どのような情報の「新規性」と「補完性」があるかを考えなければならない。

 では、シニア活用によって、職場のイノベーションを喚起していると考えられる企業事例には、どのようなものがあるだろうか[注16]。その1つに、世界最大の食品飲料会社の日本法人であるネスレ日本が、2018年1月に開始した「シニアスペシャリスト採用」が挙げられる。

 ネスレは、成長戦略の1つに「ダイバーシティの推進」を掲げていることで知られている。この一環として開始したのが、他社で関連する職務経験を積んだ60歳以上のシニアを「新規採用」するという同制度である。同社の採用情報ページにも掲載されている通り、募集対象者は、「働くことによって心身ともに健康で充実した毎日を送りたい」「長年培った経験や専門知識を発揮したい」といった考えを持つ意欲ある60歳以上の人である。幅広い職種で募集を行い、特殊な技能を持つシニアに限定した採用とは異なる。雇用形態は契約社員で採用し、採用後は他の社員と同様に成果を求めるという。

 ネスレが実施するこの制度のポイントは、シニア活用の目的を、ダイバーシティ推進を通じたイノベーション喚起のチャンスとして明確に位置付け、実践していることである。たとえば、募集前には、人事部が社内の各部署からどのようなシニアスペシャリストがほしいかというニーズを把握し(情報資源の洗い出し)、募集を行っている。同じシニアであっても、あえて外部の人間を新たに入れるという情報資源の「新規性」と、現場のニーズに応えることで対応可能な情報資源の「補完性」がバランスよく保たれ、職場のイノベーションが誘発する環境といえるだろう。

【注】
(1)総務省統計「局統計からみた我が国の高齢者」統計トピックスNo.113, 2018. https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1131.html(2019年2月1日確認)
(2)OECD, “Scoreboard on older workers, 2006 and 2016, 35 OECD countries,” 2016. https://www.oecd.org/els/emp/older-worker-scoreboard-2016.xlsx(2019年2月1日確認)
(3)本稿では、シニア(高齢者)の年齢定義をおおむね60歳前後以上としてとらえている。なお、国連では60歳以上、世界保健機関(WHO)では65歳以上、また日本の「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」では55歳以上を高齢者と定義している。
(4)スポーツ庁「平成29年度体力・運動調査結果の概要及び報告書について」2018年。http://www.mext.go.jp/sports/b_menu/toukei/chousa04/tairyoku/kekka/k_detail/1409822.htm(2019年2月1日確認)
(5)ポール・アービング「シニア世代を競争優位の源泉に変える」『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』2019年4月号。
(6)J. L. Horn and R. B. Cattell, “Age Differences in Fluid and Crystallized Intelligence,” Acta Psychologica, 1967.
(7)A. S. Kaufman, “WAIS-III IQs, Horn’s Theory, and Generational Changes from Young Adulthood to Old Age,” Intelligence, 2001.
(8)E. O. Lichtenberger and A. S. Kaufman, Essentials of WAIS-IV Assessment, Wiley, 2009.
(9)W. B. Schaufeli and A. B. Bakker, “Defining and Measuring Work Engagement: Bringing Clarity to the Concept,” In A. B. Bakker and M. P. Leiter (Eds.), Work Engagement: A Handbook of Essential Theory and Research, 2010.
(10)M. S. Christian, A. S. Garza, and J. E. Slaughter, “Work Engagement: A Quantitative Review and Test of Its Relations with Task and Contextual Performance,” Personnel Psychology, 2011.
(11)L. L. Carstensen, “Evidence for a Life-span Theory of Socioemotional Selectivity,” Current Directions in Psychological Science, 1995.
(12)C. Wrzus, M. Hanel, J. Wagner, and F. J. Neyer, “Social Network Changes and Life Events Across the Life Span: A Meta-analysis,” Psychological Bulletin, 2013.
(13)Y. Jung and N. Takeuchi, “A Lifespan Perspective for Understanding Career Self-management and Satisfaction: The Role of Developmental Human Resource Practices and Organiza-tional Support,” Human Relations, 2018.
(14)C. J. Collins and K. G. Smith, “Knowledge Exchange and Combi-nation: The Role of Human Resource Practices in the Performance of High-technology Firms,” Academy of Man-agement Journal, 2006.
(15)H. van Dijk, M. L. van Engen, and D. van Knippenberg, “Defying Conventional Wisdom: A Meta-analytical Examination of the Differences Between Demographic and Job-related Diversity Rela-tionships with Performance,” Organizational Behavior and Human Decision Processes, 2012.
(16)この事例は、ネスレ日本のホームページのほか、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構が発行する月刊誌『エルダー』2018年6月号(ネスレ日本)をもとに記述している。

シニア活用が重要な一方で、それが若手社員のモチベーションを奪うような事態は避けなければならない。竹内氏はそのために「未来展望」が重要だと指摘する。未来展望とは何か、いかなる成果をもたらすのか、などが記された全文は『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』2019年4月号に掲載。

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[マスコミ・電通批評15] なぜこうなった?民放の信頼度急上昇、ネットは下落 既存メディアに依存し続ける日本人、「報道の多様化」の日は遠い 
なぜこうなった?民放の信頼度急上昇、ネットは下落
既存メディアに依存し続ける日本人、「報道の多様化」の日は遠い
2019.3.11(月) 加谷 珪一
相変わらず多くの日本人が新聞やテレビに高い関心を寄せている(写真はイメージ)
 メディアに関する信頼度調査で、民放テレビが上昇する一方、インターネットの信頼度が低下していることが分かった。

 日本はもともと新聞に代表される従来型メディアに対する信頼度が異様に高いという特徴が見られる。近年の日本では、あらゆる階層の人が、新聞やテレビをはじめとする従来型メディアに対して激しい批判を行っているが、こうした言動も、裏を返せば、多くの人が新聞やテレビに対して高い関心を寄せていることの証拠である。

 ここまでネットが普及したにもかかわらず、日本ではニュースの多くを従来型メディアに頼っている。だが従来型メディアに対する精神的な依存から脱却しない限り、報道の多様化は進まないだろう。(加谷 珪一:経済評論家)

相変わらず信頼度が高いNHKテレビ
 公益財団法人「新聞通信調査会」は毎年「メディアに関する全国世論調査」を行っている。最新の2018年版によると、各メディアに対する信頼度は、NHKテレビが最も高く、2位が新聞、3位が民放テレビ、4位がラジオ、5位がインターネット、6位が雑誌だった。

 メディアの信頼度に関する順位は、長期にわたってほどんと変化しておらず、NHKに対する信頼度は2008年が74点、2018年も70.8点と高得点が続いている。新聞もほぼ同レベルで2008年は72点、2018年は69.6点だった。一方、雑誌の信頼度の低さにも変化がなく、2008年度は48.2点、2018年でも43.1点と大きく変わっていない。

 年代別でも大きな差は見られない。トップのNHKテレビは得点こそ年齢が下がるにしたがって低下してくるが、20代、50代、60代、70代以上でトップとなっている。30代と40代だけは新聞とテレビが逆転しているが、働き盛りの年代なので、あまりテレビを見ていないことが影響していると思われる。

 そうした中で近年、顕著に変化したのが民放テレビ局とインターネットである。

 民放テレビ局は、2017年の調査は59.2点だったが、今回の調査では新聞との順位逆転には至らなかったものの点数が急上昇し62.9点となった。2017年まではほとんど点数が変わらなかったので、これは2018年に特徴的な動きといってよい。

 一方、インターネットはここ2〜3年、下落傾向が顕著となっている。2008年の段階では58点と雑誌よりもかなり上に位置していたが、年々信頼度を下げており、2018年は49.4点と40点代まで下落している。

 各年度の調査結果における点数の上下変動の幅を考えると、2018年における民放テレビ局の上昇幅は突出している。よほどの出来事がないとここまでの変化は生じない可能性が高いが、2018年に民放テレビ局の信頼度を著しく上昇させる出来事があったとは思えない。

 今回の民放テレビの数値上昇には、調査方法の変更が関係している。

民放テレビ急上昇の理由は?
 この世論調査は、新聞通信調査会が行っているものなので、どうしても新聞に関する質問項目が多くなっていた。だが2018年からは、幅広いメディアを対象とした質問項目に変更され、テレビ報道に関する質問も加えられたことから回答者の印象が大きく変わった可能性がある。

 今回のポイント急上昇が質問項目の変更によるものなのか、別の要因があるのかについては、来年度以降の結果を見て判断する必要があるだろう。

 一方、ネットの信頼度低下については、以前からの傾向なので2018年だけに特徴的な現象ではない。ネットが登場した当初は、不特定多数が情報発信できる点が評価され、既存メディアに取って代わるのではないかとの期待があった。実際、ネットの初期にはリテラシーの高い利用者も多かったが、ネットが社会に普及するにつれてフェイクニュースが増え、信頼度を低下させた可能性は高い。

 確かに近年のネットにおけるフェイクニュースのひどさは目を覆うばかりだが、一方で、日本の従来型メディアに対する信頼度の異様な高さにも危うさを感じる。

 同じ条件での国際比較調査は存在しないので単純に結論付けることはできないが、米国で行われている各種メディア調査の結果を見ると、新聞やテレビがここまで高い信頼度を得るケースは少ない。新聞やテレビに対する信頼度が過度に高いというのは日本社会における1つの特徴と言ってよいだろう。

「公式発表」に利用されている新聞とテレビ
 従来型メディアに対する日本人の依存度の高さは、近年、激しくなっているマスメディア批判からも逆説的に読み取ることができる。

 かつて、既存メディア批判というのはネットにおける特徴的な現象だったが、今となっては、政治的な立場や社会階層を問わず、多くの人がメディアの報道を激しく批判している。つまりどのような立場の人であれ、自分が理想とする報道を新聞やテレビが行わないことに対して激しい怒りを感じるということであり、これは新聞やテレビといった既存メディアが、依然として日本人のメンタリティの中に大きな存在感を示していることの裏返しでもある。

 そもそも自分が軽視しているメディアがどのような報道をしようとあまり関心がないはずであり、実際、米国ではここまでのメディア批判は見当たらない。

 批判という形であれ、多くの人が従来型メディアの報道に激しく感情を揺さぶられているということは、新聞やテレビの潜在的な読者(視聴者)は極めて多いということであり、媒体としての価値は依然として高いという結論にならざるを得ない。

 政府や企業が何らかの発表をする際、ウェブサイトには情報を掲載せず、新聞社とテレビ局だけに情報を流すケースは意外と多い。公式発表ではないので、あえて分類すれば単なるリーク記事ということになるが、多くの人はこれに気付いていない(普段マスメディアを声高に批判している人が、こうした報道を公式発表だと勘違いしてツイッターなどで拡散していたりする様子は滑稽である)。

 事件報道も同じで、多くの人が公式発表だと思っているものの大半は、警察関係者による特定のメディアを対象としたリークで成り立っている。もしこうした憶測やリークに基づく報道がなければ、公になる事件の情報は激減してしまうというのが実状なのだ。

 行政機関や企業が、既存メディアを過度に優遇するのは、批判という形であれ、日本人が既存メディアに精神的に強く依存しており、その影響力が大きいと判断しているからである。

マスメディア批判が逆に影響力維持に貢献という皮肉
 もし本当に従来型メディアに不信感を持っており、その影響力を排除したいのであれば、無視するのがもっとも簡単な方法である。NHKを除いてテレビや新聞はあくまで商業ジャーナリズムなので、広告媒体としての価値がなくなれば、あっという間に経営は困難になるだろう。

 だが多くの人は、批判という(アンビバレントな)形で新聞やテレビによる報道を最優先で話題にしてしまう。結果として広告媒体の価値は落ちず、情報の独占もなくならない。つまりマスメディアを激しく批判している人は、実は自分のクビを締めているのだが、なかなかその図式に気付かない。

 おそらくだが、日本人が既存メディアに過度に依存していることの背景には、一種の「甘え」があると筆者は考えている。真偽不明の情報の中から自分のリテラシーに従って、信用できる情報を自ら選択するよりも、一定の体制を持った機関に情報を管理してもらい、そこに依存する方がラクだという感覚が存在していると思われる。だからこそ多くの人が、自分の気に入らない報道に対して感情的になってしまう。

 こうした甘えがあると、どうしても従来型メディアが有利になり、一次情報も独占されてしまう。

 今回、取り上げた調査では、情報への対価についての質問もあるが、「ニュースは無料で入手したい」と考えている人の割合は45.1%、一方で「信頼性の高いニュースを得るためには代金を払ってもよい」と考える人は25.6%しかいなかった。どちらともいえないという人が27.7%いるが、この回答者の多くは最終的には無料を希望する可能性が高いと考えられる。

 報道に相応の体制を求めつつも、対価を支払うことについて極めて消極的ということであれば、少なくともテレビの優位性は当分の間、継続する可能性が高いと考えざるを得ない。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55696
http://www.asyura2.com/16/hihyo15/msg/489.html

[マスコミ・電通批評15] データ主義時代の新たな銀行「情報銀行」とはなにか 「個人情報を信託」する情報銀行は受け入れられるのか 
データ主義時代の新たな銀行「情報銀行」とはなにか
「個人情報を信託」する情報銀行は受け入れられるのか
松ヶ枝 優佳/2019.3.11

「情報銀行」の登場で企業による個人情報の利活用は進むか?
 個人から信託されたパーソナルデータを適切に管理・運用する「情報銀行」。2019年3月、その事業者認定が始まる。現代のデータ主導社会において強大な価値を生む存在になり得るとあって、三菱UFJ信託銀行のようなメガバンクも参入を表明する等、注目を集めている。
 官民が一体となって普及を急ぐ情報銀行事業とは、一体どのようなものなのだろうか。
「情報銀行」の概要と登場してきた背景
 そもそも、情報銀行とは何だろうか。総務省「平成30年版 情報通信白書」では以下のように定義されている。
・情報銀行(情報利用信用銀行):個人とのデータ活用に関する契約等に基づき、PDS等のシステムを活用して個人のデータを管理するとともに、個人の指示又は予め指定した条件に基づき個人に代わり妥当性を判断の上、データを第三者(他の事業者)に提供する事業。
 情報銀行は、個人から購買履歴等、個人情報にひもづく様々なデータを信託され、その管理や、適切な事業者への販売を請け負う仕組みなのだ。データを預けた利用者には直接的、または間接的に何らかの便益が還元される仕組みとなっているため、お金を預けると利息が付いて戻ってくる「銀行」に例えられている。2018年6月26日に総務省と経済産業省が発表した「情報信託機能の認定に係る指針ver1.0」内にある以下の図が分かりやすいだろう。
出典:総務省・経済産業省「情報信託機能の認定に係る指針ver.1.0」より引用
http://jbpress.ismedia.jp/mwimgs/a/d/550wm/img_ad8a46717c7eb15e00944411274d8997230630.jpg

 なお「PDS」の定義は下記の通り(総務省「平成30年版 情報通信白書」より)。
・PDS(Personal Data Store):他社保有データの集約を含め、個人が自らの意思で自らのデータを蓄積・管理するための仕組み(システム)であって、第三者への提供に係る制御機能(移管を含む)を有するもの。
 要するに、PDSは主に個人が自らの意思で自身のパーソナルデータを管理・運用するための仕組みを指す。しかし、もはや日々蓄積されていく膨大なデータを個人で適切に管理・運用することは困難となってきている。そこで注目されているのが、安心してパーソナルデータの管理・販売を委託できる情報銀行の仕組みなのだ。
 GoogleやAmazonを例に出すまでもなく、近年「個人情報の利活用」は多方面からの関心を集めている。膨大な量のパーソナルデータを収集して一元管理できる情報銀行事業は、多くの企業にとって魅力的に映るだろう。事実、同事業の審査・認定を行う日本IT団体連盟と総務省が2018年10月19日に行った事業者向けの説明会には、金融・流通・食品・製造・教育・ヘルスケア・通信・放送・コンサル・マーケティング・リサーチ等、様々な業種から約200社、400名以上もの人々が集まったという。
 2017年5月に「個人情報」の定義の明確化や匿名加工情報(氏名等の個人を識別できる情報を削除した個人情報)制度の導入、個人情報を第三者へ提供するための手続き(オプトアウト)の厳格化等が義務付けられた「改正個人情報保護法」が全面施行されたことも、少なからず影響しているだろう。
次ページ消費者にとって情報銀行はどのような存在となるのか

消費者にとって情報銀行はどのような存在となるのか
 では、消費者の立場から見た「情報銀行」はどうだろう。正直、「個人情報を預ける」という響きに抵抗を感じてしまう人も多いのではないだろうか。2017年1月27日にインテージが発表したデータ流通とプライバシーに関する意識調査の結果を見ても、情報銀行を「利用したい(3.6%)」または「どちらかと言えば利用したい(29.9%)」と回答したのは全体の33.5%。PDSに関しては6割以上が利用意向ありと回答しており、多くの消費者が第三者に個人情報を預けることに不安を感じており、「個人情報は自分で管理したい」と考える傾向にあることが分かる。
 企業による個人情報の管理の仕方は度々問題視されるが、最近では2018年3月にイギリスのデータ分析会社ケンブリッジ・アナリティカがSNS「Facebook」の利用者の個人情報を不正に収集していたことが発覚。さらにそのデータを使い米大統領選を操作していたという疑惑が持ち上がり、大きな波紋を呼んだ。
 現状、情報銀行事業を行えるのは日本IT団体連盟による審査に通過して認定を受けた企業のみとなるが、慎重な消費者は自分の情報を預けるに相応しい企業かどうか、厳しい目で見定めることになるだろう。
 一方で情報銀行は、個人に代わりパーソナルデータを渡す事業者を審査する役割を持っている。現状においても消費者は、何か新しいサービスの利用を開始する際は「利用規約」や「個人情報の取扱いについて」といった長々とした文章に「同意」させられている。しかし、その内の何人が提示された規約全てを熟読し、納得した上で「同意」しているのだろうか。2018年12月27日に日本IT団体連盟が発表している、日経クロストレンドのインタビュー記事内で、情報銀行の認定基準制作に携わった崎村夏彦氏は「まず、個人の同意能力を疑ってかかるべき」と発言している。
 その点、情報銀行が持つ「情報信託機能」とは、本当にその規約に同意して良いかどうか、その企業に情報を渡して良いのかを個人に代わり判断してくれるものなのだ。もちろん、その情報の取得方法や利用目的は事前に分かりやすく明示するよう「情報信託機能の認定に係る指針ver1.0」でも記されている。

 加えて、万が一情報銀行から情報が漏えいした場合について同指針を見ると、「提供先第三者に帰責理由があり個人に損害が発生した場合は、情報銀行が個人に対し損害賠償責任を負う」とされており、事業参入には相応のハードルが存在することを示している。
 様々な個人情報を預ける代わりに、より便利で快適な生活を実現する情報銀行。それだけでなく、個人情報を守るための「盾」の一種として捉えると、消費者側にとってもメリットは少なくないのではないだろうか。
次ページどのようなプレイヤーが参入を考えているのか

どのようなプレイヤーが参入を考えているのか
 現在は認定事業者の発表を待っている段階だが、既に以下のような大手企業が参入に名乗りを上げている。各社の動きを見てみよう。
●三菱UFJ信託銀行
 2019年度中のサービス開始を目指し、2018年11月19日より情報信託銀行サービス「DPRIME(仮称)」の実証実験を開始。参加者のスマートフォンにダウンロードされたβ版アプリを利用することで、参加者が「行動データ」「歩行データ」「金融データ」をどの程度自分の判断でアプリへ集約するのかを検証した。加えて、データ提供オファーに対する応諾の可否や、希望対価水準等の検証を行った。
 同実験にはアシックス、NTTデータ、Japan Digital Design、テックファーム、東京海上日動火災保険、no new folk studio、マネーツリー、三菱UFJ銀行、三菱UFJフィナンシャル・グループ、レイ・フロンティアの全10社、合計1000名が参加しており、各社の関心の高さが伺える。
●電通グループ
 2018年9月に電通テックの子会社として「マイデータ・インテリジェンス」を設立。2019年春に情報銀行サービス「MEY」を開始させるために準備を進めている。データの暗号化や管理は電通が請け負う。
 消費者は一度MEYに個人情報を登録しておけば、様々なキャンペーンに参加できる仕組み。また、個人の判断で企業ごとに提供する範囲を変更することも可能だ。既に2018年11月19日から企業向けに個人情報を管理・運用するためのプラットフォーム「MEY ベネフィット」の提供を開始し、プロモーションを行っている。
●日立製作所
 2018年9月10日、日立コンサルティング、インフォメティス、東京海上日動火災保険、日本郵便、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアムと共に実証実験の開始を発表。その成果を基に2019年度中の事業化を目指すと報じられている。
 家庭での電力使用量や、歩数等の活動量のデータを収集。収集されたデータは家電向けの保険商品や、在宅率に応じた最適な宅配ルートの構築等に活用される。総務省の「平成30年度予算 情報信託機能活用促進事業」の一環として2019年3月末まで実施される予定。
日立製作所他5社による実証実験のイメージ(画像はプレスリリースより引用)
http://jbpress.ismedia.jp/mwimgs/6/6/550wm/img_66d150d5802a0c17c29e601a4db72a79139137.jpg

●富士通
 2017年8月中旬から約2ヵ月間、イオンフィナンシャルサービスと共に実証実験を実施。自社の従業員500名を対象に、情報銀行が個人向けに行う「一次サービス(情報の預託)」に対して消費者が感じる抵抗感や課題感の把握や、一次サービスで得たデータを活用・販売する「二次サービス(情報の開示)」に関する消費者の関心事項の抽出を行った。
 さらに2019年1月29日には大日本印刷と共同で、情報銀行事業普及のためのプラットフォームを開発・提供することを発表している。
 このように様々な企業が実証実験を行い、本格参入に向けた準備を詰めている段階だ。
次ページ情報銀行がもたらすビジネスの変化と

情報銀行がもたらすビジネスの変化とは
 政府によって推進され、日本企業がGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)に立ち向かうための手段としても期待がかかる「情報銀行」。今はまだ黎明期にあたるが、今後参入に意欲的な多くの企業や政府によって、ビジネスモデルや制度が整えられていくはずだ。
 消費者の中には個人情報を第三者に委ねることへの抵抗感を持つ者も少なくないが、2018年12月11日に情報処理推進機構が発表した「2018年度情報セキュリティに対する意識調査」の個人情報の取り扱いについての項目を見ると、健康状態などの個人を特定できない情報に関しては漏えいした場合も「補償不要」と答えている人の割合が高い。取得するデータや活用先によっては、改正個人情報保護法によって導入された匿名加工情報制度が普及の一助となるかもしれない。
 また、2018年11月29日に中部電力は契約者データを活用した「地域特化型」の情報銀行事業への参入・実証実験の開始を発表したが、このように事業者によって異なる色を持つ情報銀行が多数登場していくだろう。
 しかし、収集したいデータが個人に近いものであればあるほど、同意を得ることは難しくなる。また、前述した通り情報銀行サービスを提供する事業者は高い信頼性と共に、消費者や情報を提供する側の事業者にとってどれだけ魅力的なメリットを提示できるかを迫られることになる。

 実際の運用によって、活用に適した分野やそうでない分野もはっきりしていくだろう。まずは認定企業第一号の発表が待たれるところだ。


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[国際25] 帰り支度のトランプを緊急提案で引き留めた北朝鮮 米国は初めから決裂を想定〜米朝首脳会談の経緯が明らかに 
帰り支度のトランプを緊急提案で引き留めた北朝鮮
米国は初めから決裂を想定〜米朝首脳会談の経緯が明らかに
2019.3.11(月) 黒井 文太郎
米朝首脳会談、合意なく唐突な幕切れ トランプ氏帰途に
第2回米朝首脳会談を終え、ベトナム・ハノイの空港で米大統領専用機エアフォースワンに搭乗するドナルド・トランプ大統領(2019年2月28日撮影)。(c)Saul LOEB / AFP〔AFPBB News〕

(黒井 文太郎:軍事ジャーナリスト)

 2月27、28日にベトナム・ハノイで行われた米朝首脳会談の経緯、その舞台裏が、米政府を取材する米メディア各社の報道によってかなり明らかになった。

 それによると、両国の事前の実務者協議ではもともと熾烈な駆け引きが続いており、合意には至っていなかったようだ。

 ただし、これまでとは違う前向きな材料があった。北朝鮮側が初めて、寧辺の一部の核施設の閉鎖をカードとして切っていたことだ。北朝鮮側は、そのカードと引き換えに、制裁の主要部分の解除を要求していた。これに対し、アメリカ側はそれを渋っていた。おそらく南北経済活動の一部を認めるなどの小さな見返りに留まっていたものと思われる。

 米朝双方の要求の隔たりは大きかったが、とくに北朝鮮側からすれば、寧辺の核施設の一部閉鎖という大きなカードを出せば、アメリカもおそらく最後はそれなりの規模の制裁解除に応じるだろうとの期待もあったのではないかと思われる。

事前の実務者協議、北朝鮮は強気だった
 事前にトランプ政権側からさかんに「首脳会談は成果が期待できる」との見通しが発信されていた。そのため、北朝鮮側は「トランプ大統領はとにかく合意したがっている」と受け止めたのだろう。北朝鮮の交渉はかなり強気なもので、実務者協議の過程で、北朝鮮側が「交渉は中止だ」と脅すことも何度かあったという。

 しかし、事務方の事前協議では、互いの条件は合意に達していない。寧辺の核施設の廃棄については、北朝鮮側が廃棄する「寧辺の核施設」の中身を具体的に明言していなかった。おそらく昨年(2018年)12月から使用していない「原子炉」は入るが、それ以上については不明である。

 また、逆に北朝鮮側が求める制裁解除は、具体的にみると、軍事物資以外のほとんどの禁輸を解くような内容で、アメリカ政府が呑めるものではなかった。したがって、アメリカ側としては、最初から大きな取引の合意はほとんど期待していなかったようだ。

 米CNNによると、実は首脳会談の直前、先乗りしていたポンペオ国務長官が、事前協議のために北朝鮮側のカウンターである金英哲・副委員長との会談を申し入れていたが、断られたとのこと。首脳会談直前まで続けられた実務者協議でも進展はなく、首脳会談前夜には、アメリカ側はもう合意そのものに期待はほとんどなかったらしい。

トランプ流のビジネス手法で席を立つ
 首脳会談は2月27日の夕方から始まった。2人きりの短い会談の後、側近2人ずつを交えての夕食会となったが、その席で、金正恩委員長が「寧辺の一部核施設を廃棄するので、見返りに国連制裁11項目のうちの5項目を解除してほしい」と持ち出した。それに対して、トランプ大統領は、制裁を解除するためには「すべての核施設の廃棄」というビッグディールの提案で応じた。当然、金正恩委員長は呑めない。

 こうして第1ラウンドは、互いに要求を高く「ふっかけ」るところからスタートした。要求の差はきわめて大きく、合意がほぼ不可能なことは明らかだった。

 しかし、ホワイトハウスはそれでも、翌日の午後2時から合意文書の調印式を行うと公式に発表した。すでに合意の可能性はほとんどなかったが、それでも北朝鮮側に圧力をかけたのであろう。

 翌28日午前、いよいよ本番となる首脳会談が始まったが、すでに前夜に要求を出し合っており、互いに妥協することもなく、合意見送りに終わった。

 しかし、トランプ大統領が会談場所のメトロポールホテルで帰り支度をしている時、北朝鮮の崔善姫・外務次官がアメリカ代表団のところに駆けつけ、「寧辺の核施設廃棄の見返りに制裁の一部解除はどうか」との金正恩委員長のメッセージを届けた。アメリカ代表団側は、「寧辺の核施設の具体的な中身が不明確なので、明確にしてほしい」と答えた。

 崔善姫・外務次官はすぐに金正恩委員長のところに取って返し、「寧辺のすべての核施設」との金正恩委員長の返事を得て、それをアメリカ代表団に伝えた。つまり、この時点で初めて、北朝鮮は寧辺のすべての核施設を廃棄するというカードを切ったのである。

 それでもアメリカ側は、制裁解除にはまだまだ不十分だとして、交渉の継続を拒否した。北朝鮮が土壇場でこのカードを切ったことで、北朝鮮が容認しようとしていた条件が明らかになったわけだが、それではトランプ政権が考える取引にはまだまだ不足していた。

 しかし、これで北朝鮮側がまだ協議を続けたがっていると、アメリカ側は認識した。会談決裂後、ポンペオ国務長官と記者会見に臨んだトランプ大統領は、それでも会談の雰囲気が悪くなかったことに言及し、北朝鮮側を特に非難することもなく、今後の協議への期待を語った。

 こうした経緯をみると、トランプ大統領の側は、最初から今回の会談での合意見送りは選択肢の1つだったといえる。北朝鮮が一向に実のある非核化措置に応じないなか、首脳会談という大舞台で大きな要求を突きつけることで、北朝鮮側に大きな圧力を加え、今後の交渉への布石としたのだろう。簡単に妥協せずに、要求を突きつけたままいったん席を立ってみせるという、トランプ流のビジネス手法といえるだろう。

 実際、アメリカ側ではその後、ポンペオ国務長官が早期の協議再開を模索するなどの動きに出ている。3月7日には国務省高官が記者会見で、今後の協議への期待を表明した。

浮上した第3のウラン濃縮施設の存在
 なお、首脳会談でトランプ大統領が金正恩委員長に対して、「寧辺の核施設廃棄だけでは不十分で、すべての核施設の廃棄が必要だ」と言った際に、唐突に名前を挙げた「未公表の寧辺以外の核施設」については、トランプ大統領は会見では具体的にどこだとは言及しなかったが、報道ではいくつかのウラン濃縮施設の存在が浮上している。

 1つは、昨年から米ミドルベリー国際大学院モントレー校のジェフリー・ルイス東アジア核不拡散プログラム部長や、米シンクタンク「科学国際安保研究所(ISIS)」のデービッド・オルブライト所長らが衛星写真分析などから指摘してきた平壌郊外の千里馬に建設された「カンソン発電所」と呼ばれる施設である。ただし、この施設はすでにかなり広く報道されているもので、トランプ大統領が会見で「誰も知らない施設を我々は知っている」「それを名指しした時、北朝鮮側は驚いているように見えた」と語っている部分とは一致しない。

 2つ目は、韓国紙「中央日報」が3月5日に報じた寧辺隣接地の分江(プンガン)の施設。ただし、こちらは寧辺の施設群の一部と見なすことができ、トランプ大統領が交渉材料の「寧辺以外のウラン濃縮施設」として持ち出すのはやはりしっくりこない。

 前出のミドルベリー国際大学院のルイス部長などは、「米政府はウラン濃縮施設が3カ所あるとみている。うち2つは寧辺とカンソン」「3つ目の場所については米政府が厳しく秘匿していることから、寧辺とはまったく別の場所と考えられる」と発言している。もしかしたら、このまだ報道されていない第3のウラン濃縮施設を、トランプ大統領は金正恩委員長に突きつけたのかもしれない。

北朝鮮がICBMを増産していると事態は深刻
 最後に、米朝首脳会談後の北朝鮮の動きについて、いくつか気になる情報を列記しておきたい。

 まず、アメリカの北朝鮮分析サイト「38ノース」と米シンクタンク「戦略国際問題研究所」(CSIS)が3月5日、衛星画像の分析から、北朝鮮北西部の東倉里のミサイル発射場の復旧が進んでいることを公表した。復旧作業自体は米朝首脳会議の前から始められていたとみられる。もっとも、この施設は実質的にはテポドンを使った宇宙ロケットの発射場で、非核化とはそれほど関係のない施設である。

北ミサイル施設、再び「稼働可能」に 衛星画像が示唆
北朝鮮・東倉里のミサイル発射施設「西海衛星発射場」を捉えた衛星写真(2019年3月6日撮影)。(c)Airbus Defence & Space/38 North/Pleiades © CNES 2019, Distribution Airbus DS〔AFPBB News〕

 対米交渉を計算して持ち札を増やす目的なのか、あるいは今後、「ミサイルではなく、宇宙ロケットだ」として発射を行うつもりなのかは不明だ。可能性は非常に低いが、仮に後者の場合、アメリカはミサイル発射と見なして厳しい措置を取ることになるだろう。

 それより気になるのは、韓国の「国家情報院」の徐薫長官が3月5日に国会で「平壌郊外山陰洞(サンウムドン)のICBM開発製造施設でも活動が再開」と報告したことだ。こちらは東倉里などとは違い、実際に火星15などを製造した施設なので、活動がこのまま本格化した場合、北朝鮮がICBMを増産している可能性があることになる。あるいは山陰洞で新型宇宙ロケットを作って東倉里から打ち上げるかもしれない。いずれにせよ事態は深刻となるだろう。

 また、3月4日にはIAEA(国際原子力機関)が、米朝首脳会談にもかかわらず「北朝鮮がウラン濃縮施設での活動を続けている」ことを公表している。

 こうした北朝鮮側の不穏が動きに対し、アメリカ側はまだ静観の構えだ。たとえば前述の東倉里のミサイル発射場復旧のニュースに、トランプ大統領は「まだ初期段階の報告だ。(事実なら)金正恩委員長にひどく失望するだろうが、そうはならないと思う」と語っている。

 他方、北朝鮮の側は3月7日、朝鮮中央通信が、米韓が3月4日から実施している小規模な合同軍事演習「同盟」について、「敵対関係解消と軍事的緊張緩和を確約した朝米共同声明や北南宣言に対する乱暴な違反」「朝鮮半島の平和と安定を望む同胞と国際社会の願いに対する全面的な挑戦だ」と激しく批判した。

 米朝交渉はいったん仕切り直しだが、こうした状況からすると、トランプ大統領が狙ったような押したり引いたりの駆け引きによる交渉は、そう簡単に動き出すこともなさそうだ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55708
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/643.html

[政治・選挙・NHK258] 日本語と日本語教育をどのように守るべきか 言語問題、あなたは「反日」?  人口危機 正視せぬ日本人 
日本語と日本語教育をどのように守るべきか 言語問題、あなたは「反日」?
2019.3.11(月) 伊東 乾
赤線地区への観光客抑制する新措置を導入、アムステルダム
オランダ・アムステルダムの売春公認地区として知られる「飾り窓地区」(2011年10月13日撮影、資料写真)。(c)AFP/ANP/KOEN VAN WEEL〔AFPBB News〕

 皆さんは、ご自分の、あるいは皆さんのお子さんの「進学」をどのような観点からお考えになりますか?

 もっと分かりやすく言うなら、大学で学ぶということを「就職」とどれくらい関係づけて考えておられますか?

 例えば、息子さんが「インド哲学をやりたい」などと言ったとして、親御さんはどのように反応するか?

 「それは素晴らしい、深いテーマだ。頑張りなさい!」と言うか。それとも、「そんなものやっても就職先がないから、やめなさい」とたしなめるか・・・。

 こうした観点で、大変切実な問題がオランダで発生しました。

 同国のトップ大学、アムステルダム自由大学が、オランダ語の学部学生募集を停止(https://www.universityworldnews.com/post.php?story=20190301125347590)したのです。

 もし、東京大学が、日本語やその古典研究を「ペイしないから」と全面廃止してしまったら、いったい今日の日本社会はどのようなリアクションを示すでしょうか?

人類最高の叡智を支える言語
 アムステルダム自由大学とは個人的に長い縁があります。私は一個人の作曲家、演奏家として同市内にあるアンネ・フランク・ハウスとのコラボレーションを長年続けています。

 その国際教育部長ヤン・エリック・ドゥッベルマンの奥さん、ディーンケ・ホンディウス=アムステルダム自由大学史学科教授とも共同のプロジェクトを持っています。

 ディーンケさんは黒人奴隷流通史の専門家で、かつてアメリカ新大陸開拓初期、現在のニューヨークがニューアムステルダムと呼ばれた時代から、複数の大陸間で取引された奴隷貿易を研究する第一人者です。

 ちなみに、現在のニューヨークは、オランダ東インド会社が送った探検隊が発見しました。

 ハドソン川中域に丘の多い具合の良い島を見つけ(マンハッタン島:マンハッタンとは丘が多いという意味の先住民族語とのこと)、防御のために壁をたくさん造って(ウオール街)建設したオランダ植民地の中心街を「ニューアムステルダム」と名づけました。

 ここが「ニューヨーク」になるのは、第2次英蘭戦争(1665〜67)でオランダが英国に負け、これらの植民地がヨーク公(のちのイングランド王ジェームズ2世 1633-1701)の所領となったからです。

 以後、第3次英蘭戦争で一時期奪還されますが1674年のウエストミンスター和約で英国領となり、以後は英国植民地として米国東海岸は発展します。

 米国がイングランドからの独立を勝ち取るべく戦争を起こすのは1775〜83年と、約100年後のことで、この間に新大陸先進圏の共通語は、産業革命に先んじた英語で定着、21世紀の今日、第1の国際共用語として通用する基礎の一端となっています。

 翻って、日本の海外文明受容はどうだったでしょうか?

 17世紀前半、徳川幕府は鎖国政策を断行し、欧州とのやり取りはオランダのみに限られました。理由は、プロテスタントのオランダが、スペインやポルトガルのように布教を通じた植民地拡大を図らなかったからにほかなりません。

 オランダ人は、日本を植民地とするのではなく、日本の特産物を欧州に持ち帰り、その付加価値でビジネスすることを考えました。

 私のルーツである佐賀、有田や伊万里の磁器は世界に冠たる水準を誇りましたから、鉄砲伝来で対日航路が開けた16世紀中葉から、オランダ人はそれを持ち帰り、欧州で売ることで、莫大な利益を得ることになります。

 白磁は「白いダイヤモンド」と呼ばれました。

 やがて、単に物流で差益を得るだけではなく、オランダ人自身も同様の焼き物を作れないか、というイノベーションの気質が高まります。

 そのようにして1580年代以降、極東の陶磁器技術を欧州に従来からあるファイアンス焼きと融合させる「デルフト焼き」が工夫されます。

 中国や朝鮮、日本からの陶磁器は圧倒的な貴重品で、その高度な職人技芸は長らく欧州の追随を許すことがありませんでした。

 また、東アジア側でもオランダ語を通じて西欧の文化を吸収していきます。

 プロテスタントのオランダでは、ローマ・カトリックが禁圧した地動説に基づく科学書の出版が認められ、羅針盤をはじめとする高度な航海技術も確立されました。

 1600年代初頭に始まるケプラーらの新しい暦法はほとんど時差なく日本にもたらされます。西欧由来の暦法はその正確さが評価されて日本でも応用され、貞享暦(1684)以後の暦法として定着します。

 ちなみにこの時代を生きた近松門左衛門は浄瑠璃「賢女手習並新暦」を残しています。

 さらに寛政暦(1798)以降では楕円軌道法が採用されました。

 伊能忠敬の日本全図(1800〜15)は、当時のこうした世界最先端、人知の最も優れた成果を反映して作成されたもので、のちに英国海軍が驚愕、対日政策が改まり、明治維新から日英同盟に至る歴史を決定づける一因にもなったと考えられます。

 こうした人類最先端の叡智を、江戸時代の日本人は主としてオランダ語で、しかし後には英語でも輸入するようになります。

 例えば親藩の岡山、津山藩では洋学が盛んで、初期には蘭学が、また開国前後からは英学など欧州諸言語での学問百般が輸入、咀嚼され、近代日本の基礎を準備します。

 津山出身の箕作麟祥(あきよし)や菊池大麓らは維新後の1873(明治6)年・・・この年、日本はグレゴリオ暦が導入されて、完全な近代暦制となりますが・・・に「明六社」を結成、1877年に創設された東京大学では最初の日本人教授陣として指導にあたります。

 菊池は理化学研究所の初代所長、東京大学、京都大学双方の総長、文部大臣なども歴任しています。

 それくらい、その時代で人知の最高水準を担う言語は決定的な意味を持つわけですが、オランダ語はすでにその役割を果たさなくなって久しくなってしまいました。

運営するだけ赤字が増える
 アムステルダム自由大学のスポークスマン ヴェッセル・アフターホーフ氏は、「運営すればするほど、赤字となる」と、オランダ第1の大学がオランダ語コースを閉鎖する背景を述べています。

 ここ数年、志願者が激減し、過去10年で60%の減少、今年は5人の入学希望者しかいなかった。「国文科」の教授数の方が志願者よりも多くなってしまうことになり、コース閉鎖が決定されたとのこと。

 「学生1人当たり、教員1人の給与を政府が負担するわけではない」という分かりやすい理由で、今後成長が望めず、コストばかりがかさむ「国文科」の閉鎖が決定されたというのです。

 もちろん、激しい批判の応酬があります。冒頭に引いた報道リンクで同大学のジョン・コッペンホール=オランダ文学科教授は「ただごとでない遺憾な事態」とコメントしています。

 「私たちは母国語について議論しているのであって、それは私たち自身の文化の理解に本質的で、継続することそのものが極めて重要なのである」と。

 ここで皆さん、考えていただきたいのです。

 例えば「源氏物語」の研究を、あるいは古代日本史の実証的な研究を、東京大学がやめてしまったら?

 あるいは「国文学」(「日本語学」)の学部レベルでの教育・人材育成を、我が国の主要な大学が停止してしまったら?

 どうでしょう。源氏物語を研究したからといって、それで就職に有利になるというようなことがあるのか。私にはよく分かりません。

 しかし、少なくとも古代王朝の正統論争や、古墳から出土する鉄剣文の解読などが、年収の良い仕事に繋がるなどとは到底思えません。

 そういう「人気のない専攻」は、維持すればするほど赤字がかさむから、経営判断でやめてしまった方がよいのでしょうか?

ちなみに・・・日本の事例で考える
 日頃、とても「国家的」な話をされる方が、こういうところではいとも簡単に「経営的」な意見を開陳するのを目にして、私はしばしば驚嘆します。

 当然ながら、こうした基礎的な人材育成を一国の中核的な教育機関が手放してしまう あるいは廃止することに対して、私は徹底的に批判的、反対です。

 個人名を伏せますが、かつて1回目の「共通1次テスト」が実施されたとき、全国1位だった高校3年生は、東京大学「理科V類」ではなく「文科V類」に志望を出願しました。

 この生徒は私の母校の先輩にあたり、こうした事情を当時の恩師である校長(故・大坪秀治先生)からうかがいました。

 「(全国1位の学生が)理V(医学部)に出願せず、文Vに出すというのは、理と文を間違えているのではないか?」

 「本当に文Vなのか?」

 「せめて文Tでは?」

 「もったいない」

 ・・・といった意見が、校長会のような場で矢のように出され、上記の母校校長(大坪先生)は烈火のごとく怒って大演説をされたそうです。

 なぜ「点が高い」と「医学部」や「法学部」でないと「もったいない」のか?

 この生徒は、当時から歴史を専門とすることを心に決めており、実はクラブの先輩として私も知る人でしたので、裏話を聞いたのは30年近く経ってからでしたが、そりゃそうだろうと大いに首肯しました。

 この「第1回共通1次試験全国第1位」の学生は、現在は国史・東アジア古代史の分野に関わる人であれば誰もがその名を知る碩学となっておられ、東京大学文学部教授として後進の指導に当たってもいます。

 例えばこういうキャリアパスを、つまらない経営判断で潰してしまうと、二度と元に戻すことはできません。

 学術は、学術それ自身の価値において研究・教育を徹底すべきである、と私は考えます。その時々でどのようにでも変化してしまう、市場価値やら人気やらで、フラフラすべきではありません。

 上に記した。医学や法律学でさえ、そうでしょう。人気その他で内容がどのようにでも変化して、人の命が救えるか、正義を全うすることができるか・・・。できるはずがありません。

 オランダ、アムステルダム自由大学の「国文廃止」の決定は、極めて遺憾なものと言わざるを得ません。

 市場価値的な人気でふらついてはいけない価値のために、官費つまり税金を原資として、研究教育機関の独立性を確保する必要があると言わねばならないでしょう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55698


 
人口危機 正視せぬ日本人 上級論説委員 大林 尚
堺屋氏『平成三十年』の先見の明
核心
2019/3/11 2:00日本経済新聞 

東京メトロの四谷三丁目駅(新宿区)を降りてすぐ、新宿通りから路地を入ったところに美術愛住館がある。堺屋太一氏が生前、個人事務所を兼ねた建物を改築した小さな美術館だ。2018年夏から3カ月にわたり、ここで万国博覧会展が開かれていた。

世界初のロンドン博(1851年)以降の足跡をたどる企画展だ。圧巻は、半世紀ほど前の大阪博(1970年)の会場を緻密に再現した300分の1のペーパークラフト模型。本邦初…

https://www.nikkei.com/content/pic/20190311/96958A9F889DE6E0E0E3E1E3E6E2E2EAE2E1E0E2E3EB869180E2E2E2-DSXMZO4221312008032019TCR001-PN1-5.jpg

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堺屋太一さん死去 作家、元経済企画庁長官

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42213140Y9A300C1TCR000/

http://www.asyura2.com/19/senkyo258/msg/361.html

[政治・選挙・NHK258] 南京大虐殺の「嘘」はどう作られ世界に広まったか タウンゼントやホワイトが見抜いた蒋介石や米宣教師の虚 恐るべき米国の底力
南京大虐殺の「嘘」はどう作られ世界に広まったか
タウンゼントやホワイトが見抜いた蒋介石や米国人宣教師の虚言
2019.3.11(月) 森 清勇
孫文が眠る南京・中山陵、予約制により混雑緩和
孫文が眠る南京・中山陵(2018年10月2日撮影)。(c)CNS/泱波〔AFPBB News〕

 1927年に権力者になった蒋介石は宣教師たちを蔑んでいた。

 しかし、ある時から自身が洗礼を受け、宣教師たちを擁護するようになる。それは自身の保身のための策略であった。

 ドイツの将軍を軍事顧問に迎えて万全の防御態勢を固めた上海戦で敗北すると、「宣伝戦」に切り替える戦略を採用する。孫子の兵法で称揚されているもので、自国の立場を有利にするプロパガンダ作戦である。

 蒋介石はそのための組織を1937年11月に整えるため、国民党中央党部と国民政府軍事委員会を改組して中央宣伝部を組織する。

 これは、上海戦で敗北し、南京への追撃戦が展開されている時であり、軍事力に代えて、「タイプライターで闘う」戦術への転換である。

 宣伝部副部長には米国の大学を卒業し、新聞編集にも長じた董顕光を当てる。留学以前にはわずかな期間ながら、蒋介石の英語教師をしたこともあり、戦後は台湾の駐日大使となる。

 また、宣伝部の下に対外宣伝を専らにする国際宣伝処を設け、その処長には大学教授で文学者の曾虚白をあてる。

 国際宣伝処の本部は重慶(南京後の国民政府の首都)に置くが、上海と香港に支部を開設、昆明や米英加豪墨印星(シンガポール)の首都か大都市に事務所を設ける。

 特に米国ではワシントンのほかにニューヨークとシカゴにも事務所を構えた(北村稔著『「南京事件」の探求』、以下同)。

 国際宣伝処は蒋介石に直属して各地の党機関と政府機関を管轄して活動する。本部、支部、事務所がそれぞれに刊行物を出し、通信社も設立する。

 宣伝に信憑性をもたせるために処長が採用した方策は、「中国人は顔を出さずに手当てを支払うなどの方法で、『我が抗戦の真相と政策を理解する国際友人に我々の代言人となってもらう』という曲線的手法」である。

 この国際友人として働く中心的な人物が、オーストラリア人の元ロイター通信記者で、当時は英国のマンチェスター・ガーディアン紙中国特派員のティンパーリー(中国名・田伯烈)である。

 蒋介石の国民党・国民政府の顧問になり、「百人斬り競争」の武勇伝や「怒濤のごとく南京城内に殺到した」などと日本の新聞が報じると、これらを取り込み「日本軍の悪行」に歪めて『WHAT WAR MEANS』(戦争とは何か)をロンドンで上梓する。

 中国語版の『日軍暴行紀実』が同時並行して出る手際の良さは宣伝網が有効に機能していたことを示している。

 また、ティンパーリーからの話を受けて、金陵大学教授で安全地帯国際委員会委員でもあったスマイス(中国名・史邁士)が南京戦で日本軍が与えたとする被害状況『南京戦禍写実』(通称「スマイス報告」)を著述する。

 いずれも1940年のことで、「両書は一躍有名になった」というが、蒋介石政権の威信をかけた宣伝戦であり、当然であろう。

蒋介石の米国世論操縦策
 日中戦争時の1939年4月から12月まで重慶の国民党国際宣伝処で働き、のちにピュリッツアー賞も受賞するセオドア・ホワイト(中国名・白修徳)は回想録『歴史の探求』で、蒋介石の米世論操縦について明かしている。

 米国への接近は米国で教育を受けた蒋介石夫人の宋美齢が、夫を説き伏せてメソジストに改宗させたことから始まるという。

 そして主要な部長(閣僚)、たとえば財務部長(オバーリン大・エール大卒)、外交部長(エール大卒)、教育部長(ピッツバーグ大卒)、情報部長(ミズーリ新聞学校卒)は米国の大学卒で、政府内の米大学出身者を数え上げたらきりがなかったという。

 そうした中でも、各国に派遣された大使の面々は、圧倒的に米国の名門大学卒業生で、ワシントンにはコーネル大・コロンビア大卒、ロンドンにはペンシルバニア大卒、そしてパリにはコロンビア大で3つの学位を取得した顧維鈞を任命していた。

 顧維鈞は国際聯盟で日本非難の演説を行った人物で、息子もハーバード大に在籍しているのを自慢にしていたという。

 また、中国銀行頭取(ハーバード大卒)、司法院長(コロンビア大・カリフォルニア大卒)、国家保健監督官、海外貿易委員会、塩務署など中央機関のトップも多くが米国の大学出身者が占めていた。

 ハーバード大学を1938年秋に最高学位で卒業したホワイトは、世界旅行の給費を受け、ロンドンを皮切りに、パリからスーダンやパレスチナ、インド、シンガポールなどを旅して、39年初めの数カ月間を上海で過ごす。

 上海を根城に北京にも出かけ、また日本軍のスポークスマンに取り入り、満州も旅行する。

 英米人などに牛耳られた上海では工場労働者の少女たちが日に何人もごみの山に捨てられている状況も見てショックを受ける。

 いままでに見たこともない不条理が記者になる決意をさせ、4月から重慶の蒋介石政権の宣伝員に繋がる。

 自身のハーバード大の学位はボストンよりも中国でずっと意味があり、「中国ハーバード・クラブを結成したが、会員にはジョン・F・ケネディ(大統領)がワシントンでハーバード・クラブを作ってもこうはなるまいと思えるほど、蒋介石政府高官の割合は大きかった」と述懐している。

 米国の学歴を持つ中国高官が多かったのは、ホワイトには「好都合な人脈であったが、中国国民にとっては大いなる悲劇であった」と冷静である。

 立派な英語を話す政府高官たちではあったが、「自国の民衆とは異質の存在で、民衆に対する理解を―重慶という古都についての理解さえも―欠いている」ので、「中国で何が起きているのか」さえ知らないと手厳しい。

 ホワイトは蒋介石に最初は尊敬と称賛の念をもっていたが、「次第に憐れみを感じ始め、最後は軽蔑するようになった」という。

 それでも「私はアメリカの世論を操るために雇われたのだ。日本に敵対するアメリカの支援は、政府が生存を賭ける唯一の希望だった。アメリカの言論を動かすことは決定的(に)必要なのだ」と述べる。

 当時のホワイトは、軍国主義日本に対する中国政府は正義という認識に立っており、「アメリカの言論界に対して嘘をつくこと、騙すこと、中国と合衆国は共に日本に対抗していくのだということをアメリカに納得させるためなら、どんなことをしてもいい、それは必要なことだと考えられていた」と明言している。

報道の真実性
 ホワイトは国際宣伝処で「自身が脚色した」戦時報道の実例を2つ挙げている。

 一つは、日本軍に占領されていた浙江省のある所の劇場で、日本軍兵士が観劇中に蔡黄華(ツアイ・フアン・フー)という中国人女性が手榴弾を投げ込んで数人を殺し、無事に逃げおおせたという中国語の記事を目にしたことである。

 ホワイトは文字から忠実に「ミス・ゴールデン・フラワー・ツアイ」とし、「ゲリラの首領、中国抵抗戦士団の巴御前」と英語に翻訳し、少しだけ脚色したというのだ。

 すると、ニューヨーク・タイムズ特派員のダ―ディン記者を除き、通信員たちは飛びつき、各通信員の本社からは写真を要求してきたという。

 そこで情報部の同僚が、腰に二挺拳銃を下げた若い中国人女性の写真を提供すると、彼女は「二挺拳銃のゴールデン・フラワー嬢」となる。

 通信員たちはますます情報を欲しがり、情報部は気前よく彼らの要求に応じ、数カ月のうちに「ゴールデン・フラワー」ツアイは、蒋介石夫人に次ぐ抵抗運動のヒロインになったというのである。

 リライトマンの手にかかった彼女の偉業は、米国で伝説となり、ホワイトがタイム誌の極東部長になっていた3年後には、タイム誌で取り上げたらどうかとの提案が持ち上がり、作り話の張本人であったことを白状しなければならなくなったというのである。

 もう一つは難民と彼らの苦難についての記事で、1937年から38年の漢口陥落までの14か月間に、国民救済委員会は難民キャンプに2500万食配ったというものである。

 ところが「どうしてか間違って」、記事では「統計によると中国が抵抗を始めた最初の数年間に日本軍侵略者の手を逃れてきた人々の数は、2500万人にのぼる」となってしまったという。

 数字は海外に伝送され、新聞社の資料に残り、雑誌の記事に使われ、日中戦争の学術的数値となって何度も現われ、「すでに歴史の一部となってしまった」と述べる。

 実際は「二百万あるいは五百万だったかもしれない」が、「二千五百万という数字がほとんど全ての歴史書にしっかり残っている」ので、「日本軍による混乱を(正しくは)誰一人知ることはないだろうと悟った」と自省している。

 誰も否定できない「嘘」の独り歩きは、「南京大虐殺」の構図を想起させる。

中国における米国人宣教師たち
 1931年に上海副領事として赴任し、第1次上海事変を体験した米外交官のラルフ・タウンゼントは、その後福建省副領事となるが33年に帰国すると外交官を辞する。

 そして、中国の真実が外部世界に伝わっていないとして著述したのが『暗黒大陸 中国の真実』である。

 中国に住んでいる外国人で中国の国情を把握しているのは宣教師、民間事業家、そして領事館員や外交官等の政府役人であるが、宣教師は事実が知られると援助が打ち切られる危惧を持ち、事業家は不買運動を恐れ、政府役人は外交辞令的なことしか言えないわけで、一種の「箝口令ともいうべきものが敷かれる」結果だという。

 3年の外交官生活でしかなかったが、新聞記者と大学教授をそれぞれ3年づつ経ての外交官であり、他方で書籍を通しての中国しか知らないで赴任したことや好奇心が旺盛であったことなどから、「中国の真実」が全く伝わっていないことを痛感し、その現実を宣教師と事業家と政府役人の在り様に見つけたのだ。

 全10章のうち大部は中国人と中国の実情、そして阿片に費やし、日本(人)と中国の関係などもあるが、中でも宣教師と布教については2つの章を割いて実例を挙げて「糾弾」ともいえる記述をしている。

 事業家や政府役人は概ね都市部に所在するが、宣教師は啓蒙などの使命から、辺鄙なところに所在し、危険なところなどにも出かけたりして、中国の実体を事業家や政府役人より詳しく知っているからである。

 他方で、米国では富める人も貧乏な人も分に応じた寄付をすすんで行うのは、それが有効に使われているという認識に立っているからであるが、中国での布教は不毛の歴史であったし、いま(当時)の布教活動の実態は国民の期待に沿うようなものではないとバッサリ切り捨てる。

 カトリックやプロテスタントを問わず、ミッション・スクールには米国から多大の金が投入されているが、聖職者になるのはほんのわずかでしかない。宣教師が中国人の孤児を育てても、成人して泥棒の親玉になって育てた宣教師を狙う話なども書かれている。

 宣教師の敷地を貸したら、ついには住みついて、返却を要求しても逆に損害賠償を請求される状況であるという。

 こうした事例をいくつも挙げ、他にも理解できないようなこと、理不尽なことが数え切れないほどあるが、ともかくこうした実態は何一つ本国、なかでも支援者たちに全然伝わっていないし、事実は全く逆のことになっているという。

 タウンゼントは上海や福建省で見た宣教師を主体に論述しているが、南京の宣教師たちも日本軍を悪者にする嘘を捏造してでも報告するのが中国(蒋介石政権)を助ける道という意識が通底していたと思われる。

 だからこそ、南京の宣教師たちは、日本軍兵士が行ったとする掠奪、強姦、放火(これらも中国敗残兵によるものが多いとみられるが)などを大虐殺に仕立てる蒋介石のプロパガンダ作戦に進んで協力したのだ。

宣教師による米国内の宣伝行脚
 国民党・政府の意を受けて大活躍するのはティンパーリーである。

 日本の罪行を告発する『WHAT WAR MEANS』を著述する前から、国民党外交の主目的である米国への工作を推進する。

 南京安全区国際委員会委員で国際赤十字委員会委員長でもあったアメリカ人のジョン・マギー牧師が撮影した金陵大学病院で治療中の民間人負傷者を示す16ミリ・フィルムが宣伝に活躍されることになる。

 ティンパーリーは米国人のジョージ・フィッチが持参したこのフィルムを見て、一計を案じる。フィッチはYMCA理事で、教会の関係者として、またロータリー・クラブの会員など交友範囲が絶大なことから、全米の宣伝マンにする発想である。

 「ハル(国務長官)からはきっと会見を申し込まれるだろうし、もしかすると、大統領(ルーズヴェルト)とも会うようなことになるかもしれません。彼のワシントン行きは、将来アメリカの中国政策にとって重大な意義をもつようになるでしょう」(北村著)とまで述べている。

 実際にマギーのフィルムをもって渡米したフィッチがたどった道を眺めてみよう。

 1938年1月19日、日本軍の許可を得て、軍用列車で日本兵とともに南京から上海へ行く。

 このとき、虐殺場面を撮ったとされるネガ・フィルム、8リール(ほとんどは大学病院で撮影したもの)をオーバーの裏地に縫い込んでいたため、「少し気を遣った」という。

 上海では直ちに複写するためにコダックの営業所に行き、4セットを作成する。

 フィッチは約5週間滞留しており、ティンパーリーに会い、米国での面会者などの根回しをしたに違いないが、ティンパーリーのことも、滞在間に何をしたかについても一切言及していないとされる。

 2月25日に上海を立ち、香港を経て広州からハワイに飛ぶ。ホノルルでは「ある中国人グループと食事をし」、次のサンフランシスコでは中国総領事に会い、「中国人の友人」も交えてチャイナタウンで会食する。

 さらに「ロサンジェルスなどで持参のフィルムを交えた2、3の講演会を行った」という。

 4月18日、ワシントン着。国務長官や大統領には会えなかったが、国民政府の米国大使・王正廷に会い、また旧知のホーンベック国務省次官(彼は反日親中の中心人物)の斡旋で中国に関係の深い米国人の要人たちに面会し、下院の外交委員会、戦時情報局、新聞記者団に件のフィルムを見せている。

 その後、ニューヨークに赴き、6月に中西部を経由して7月に再び西海岸に戻り、サンフランシスコで講演する。

 このとき、会場にいた唯一の日本人から「脅迫に近い抗議を受けた」とされる。北村氏は、この頃に日本側もフィッチの反日的言動をマークし始めていたとみる。

 フィッチはこのあと再びニューヨークに戻るが、やがて体調を崩して入院。11月10日に西海岸のロングビーチから中国への帰途に就く。

 「フィッチのアメリカでの活動は文字通りの大旅行であり、多額の資金と周到な計画を必要としていた。これら全てが、国民党国際宣伝処によりアレンジされたことは容易に想像がつく」と北村教授は述べる。

当時の日本側の見方
 『スマイス報告』は、昭和15年、興亜院(1938年に設置され、42年に大東亜省に吸収)に勤務していた吉田三郎氏が上海に調査に行き、同所でアメリカ長老教会のミリカン夫人を知り、同夫人から紹介された金陵大学のベイツ教授から説明を受けた時に入手する。北村教授の前掲書中の「『スマイス報告』の徹底的検証」から、当時の日本がどのように見ていたかが分かる。

 吉田氏は「こういうものを世界中に配って基金を集めているのです。その中には南京地方に於ける農産物の調査、南京地方の人口調査等、いわゆる科学的調査を標榜しつつ、そのことによって日本が飛んでもないひどいことをやっているような印象を世界中に統計を通して与えている。しかしよく見ると科学的な研究という面を被った排日宣伝文書であります」と報告を見抜く。

 その理由として、「南京地方における損害の統計を作る場合に、(中略)火災の場合についていえば、支那軍が逃げる時に放火したために焼けたものまで皆その中に一緒に入れてある。・・・これで見ると皆日本軍がやったことのように見えるのです。斯様に巧妙なる科学戦争というものが世界中に、この機関を通してまかれている事実を見た」というように、的確に指摘している。

 また、ベイツ教授は「今度の戦争による被害が支那全体でどの位あるかということを書いたものですが、それを是非読んで貰う必要ある」として「WHAT WAR MEANS」を紹介する。吉田氏は上海の書店で入手する。

 殺人競争の章を見て、「材料は日本の新聞から取ってありました。何々少尉武勇伝という記事がそのまま載せてあったのであります。そういうように新聞記者が日本の文献その他日本側に不利な情報を編集してできているのがこの本でありまして、かような排日的な宣伝文書は外国人の間に多く読まれている」として危惧する。

 ミリカン夫人にこのことを話すと、「ぎょっとして『あれはあまりよい本ではない。あの書物は熱を以て書かれているのだから、歴史家があれをそのまま談じては困る。あなた方は歴史家であるから、もっと客観的にものをみなければならない。・・・ああいうものが全部であると思われては困る』と言って居りました」と、外国人でも疑問視していたことを指摘している。

 「その書物を見ますと、日本の官憲の或る部分はこの書物を出すことを支持していると書いてある。・・・恐らくそれは嘘だろうと思います。この書物による利益は皆赤十字社に寄贈すると書いてある。なかなか上手に出来ています。かような種類の本がどんどん売れているのですから全く困ったことです。日本の左翼の人がそれを訳すことを許可してくれといって盛んにミリカンのところへ来る」と聞いたと述べる。

おわりに
 当時の日本人の方が賢明ではなかっただろうか。世間の信用をバックに、戦争に伴う「通常の犯罪」(もちろんないに越したことはない)を「大虐殺」に衣替えさせるのに米国人宣教師たちが大いに関係していたのだ。

 すべては全世界に巧妙に張り巡らせていた国際宣伝処の仕業であったことが今や明確になってきたのではないだろうか。

 日本軍も犯罪は犯した。しかし、それは中国が主張するような人道に悖る何十万人の市民を虐殺するなどではなかった。

 中国は依然として「南京大虐殺」を主張し、拡大流布さえしようとしているが、論点のすり替えや証拠資料としていたものの撤去など、綻びも見えてきた。

 日本は決然と否定することが大切ではないだろうか。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55687


 
東京大空襲:日本中を震撼させたB29の次もあった!
日本が夢想した超大型爆撃機「富嶽」級を実戦配備させた米国

2019.3.11(月) 渡邊 光太郎
B-29(左)とB-36(右)。戦時中、世界水準を超えた超大型機であったはずのB-29が、B-36の隣にいると小型機に見えてしまう(出所:B-36 Peacemaker Museum)
 毎年、3月になると東京大空襲の体験談を目にする機会が増える。昭和20年3月10日、約300機の「B-29」が隅田川両岸の人口密集地を焼き払い10万人の犠牲者が出た。
 一般市民が暮らす人口密集地を攻撃目標とする神経も恐ろしいが、何千キロも離れた場所からそれを実行できる米国の国力も恐ろしい。
 爆弾6.6トンを積んで、マリアナ諸島から日本まで片道2500キロの距離を往復できる爆撃機を300機揃える――。
 そんなことは当時の日本にはとうていできなかったし、押し寄せるB-29から日本を守ることもできなかった。
 しかし、日本には太平洋を越えて米国本土を空襲するため、B-29を圧倒的に凌ぐ爆撃機を製造する計画が存在した。
 中島飛行機の創業者中島知久平により構想された「富嶽」である。
 B-29は当時の最先端の航空機であったが、マリアナ諸島から日本を空爆し戻るのがやっとだった。東北地方や北海道は攻撃圏外であった。
 一方、富嶽は日本から離陸し、米国本土を空爆して、そのまま大西洋に抜け、ドイツ占領地域に着陸するというB-29でも不可能な壮大な作戦をすることを想定していた。
 現在の大型旅客機でもそれほどの距離を飛べるものは限られる。
富嶽は大日本帝国の妄想に終わる
 B-29が2200馬力のエンジンを4基搭載し、航続距離約9000キロ、最高時速は600キロ弱、最大爆弾搭載量9トン、全長は30メートル、全幅が43メートル。
 対する、富嶽は5000馬力のエンジンを6基搭載し、航続距離約2万キロ、最高時速780キロ、最大爆弾搭載量20トン、全長は43メートル、全幅が63メートル。
 確かに、富嶽が実現すれば、B-29を圧倒する爆撃機になる。しかし、想定数字をあげつらったところで、B-29に対抗する航空戦力も整えられない大日本帝国が実際に作れるわけがなかった。
 例えば、5000馬力のエンジンは絶望的であった。
 日本も2000馬力級の「誉」というエンジンを完成させ、戦争末期に実践投入まで持ち込んでいる。「疾風」や「紫電改」といった戦争末期に完成した新型戦闘機に搭載している。
 小型軽量で大馬力の誉は、確かにカタログ数値では非常に優秀なエンジンだった。
 しかし、日本の工業力では安定して量産することができなかった。また、故障多発を克服できなかった。日本の新型戦闘機は、襲いかかる米軍機に対抗できる数が揃うことはなかった。
 一方、米国は2000馬力級のエンジンの大量生産に成功したうえ、トラブルも実戦に耐えるほどに抑え込むことができている。
 2000馬力級のエンジンを積んだグラマン「F6F」戦闘機は「ゼロ戦」をバタバタ撃墜したし、そんなエンジンを4基積んだB-29の大編隊も実現してしまった。
 その米国でも5000馬力のエンジンを実現できていない。
 2000馬力のエンジンも十分にモノにできていなかった大日本帝国。それなのに5000馬力のエンジンができるわけがなかった。
 エンジンに限らず、当時の日本には質的にも量的にも超大型機を作る能力はなかった。
 高空を長距離飛行するのに必要なターボチャージャーや与圧室も作れない、大型機を大量生産するだけのアルミニウムもない、工場のキャパも足りない。航空機のエンジニアは戦争中は仕事が激増し過労死寸前・・・。
 実際、日本が実用化できた爆撃機はエンジン2基で与圧装置もなし、マリアナ諸島まで往復できないのでB-29の基地も特攻でしか攻撃できない、爆弾も1トン程度しか積めないというものだった。
 富嶽の実現どころかB-29に圧倒的に劣るものであった。そんな質的に劣る爆撃機すら、B-29と同じ数が揃うことはなかった。
 日本の航空産業の実力を考えれば、富嶽など絵に描いた餅でしかなかった。
 富嶽開発プロジェクトは開始から1年もたたずに断念されてしまう。国家の非常時にこんな妄想膨らませて遊んでいるわけにはいかなかったのだろう。
 大日本帝国にとって、富嶽などは、現実逃避的な妄想に過ぎなかった。
米国では富嶽を実現
 しかし、日本には妄想に過ぎなかった富嶽。米国は何と実際にそれに匹敵するものを戦争中に開発し、終戦直後に完成させていた。
 その名は「B-36」。
 B-36は3500馬力のエンジンを6基搭載し、最高時速は後期型では700キロ近くに達し、航続距離1万5000キロ、最大爆弾搭載量32トン、全長49メートル、全幅70メートル。
 日本が全くかなわなかったB-29を圧倒的に超えている。妄想計画だった富嶽に対する個々の項目の単純比較では優劣があるが、十分に対抗できそうな内容である。
 富嶽は設計すら固まらなかったのに対し、B-36は終戦5日後の1945年8月20日に機体が完成しロールアウトしている。
 もっとも、さすがの米国も3500馬力のエンジンは開発に手間取り初飛行は翌年になった。そして、量産に入り1948年から実戦配備をしている。
 米国の航空産業は、戦争に勝つために差し迫った開発や生産をこなしたうえで、当時の世界水準を圧倒するB-29すらはるかに超える超大型機の開発を行っていたのだ。
 戦時中の日本の航空産業では、性能が向上していく米軍機に対抗する機種の開発、軍からの改造の要望への対応、一機でも多くを生み出すための生産など、大量の仕事に忙殺され、もう限界という状態だった。
 当時の体験談を読むと、技術者は過労で倒れることがあり、生産現場は過重労働で疲れ果てていた。
 ヘトヘトになるまでの努力をしても、戦闘機のような小型機すら米国の生産数に遠く及ばないし、ゼロ戦の後継機も満足に作れなかった。
 大戦末期には米国では標準になっていた2000馬力級エンジンの安定供給も果たせなかった。B-29を防ぐだけの戦闘機も配備できなかった。
 現に存在している米国の航空戦力に対抗することすらできていない状況で、とても、富嶽のような米国の水準を圧倒的に超える巨人飛行機の開発まで手が出るわけがない。
 一方、米国は単純な数の比較で4倍以上の航空機を製造し、大日本帝国の航空戦力を圧倒した。
 米国の航空機生産実績には数千機のB-29を含む、大量の大型機を含むことを考えれば、その差は数の差にとどまらない。
 米国はそのうえで、B-36という日本であれば妄想でしかない超大型機を開発する余力を持っていたのだ。恐るべきことである。
 こんな国力のある国と戦って勝てるわけがない。3年10か月戦っただけでも立派なものと言えるだろう。
B-36は役には立たなかったが・・・
 米国がB-36の開発を始めた理由は、英国がドイツに負けてしまった場合、大西洋を超えてドイツを空爆できる爆撃機が必要になると考えたからだ。
 「こんな爆撃機が欲しい」というレベルだった富嶽に対し、米国では超大型爆撃機の実現が、第2次世界大戦初期の一時期においては必達目標だったのだ。
 しかし、ドイツはあと少しのところで英国を降伏させることはできず、太平洋戦争が始まる頃にはその心配はほぼなくなっていた。
 それでも、B-36は優先順位を下げられつつも開発は継続された。
 ここで不要不急として中止にならなかったことも驚きであるが、優先順位が下げられた状態で開発しても、戦争終結後すぐに完成していることはもっと驚きである。
 第2次世界大戦後、核兵器の時代になり、米国の勢力圏からソ連を爆撃できるB-36は核戦力の主力として重宝されることになる。
核戦力として活動していた時代のB-36(出所:ロッキード・マーチン)
 しかし、戦後すぐに航空機のエンジンはピストンエンジンからジェットエンジンに移り変わる。
 B-36は強力なエンジンを持つとは言え、第2次世界大戦の飛行機と同じピストンエンジンのプロペラ機。時速200〜300キロの速度差のあるジェット戦闘機にはすぐに撃墜されてしまう。
 結局、B-36は配備されてから約10年経った1959年にはすべて退役してしまう。その間、朝鮮戦争があったが、B-36は一度も実戦に出ることはなかった。
 B-36は確かに当時の世界最大の航空機であったし、この飛行機の実現のための技術開発は米国航空産業の資産になっただろうが、決して活躍した航空機ではない。
 よって、B-36の知名度はあまり高くない。また、メーカーのコンベアーもジェネラルダイナミクスを経て、ロッキード・マーチンの一部になり、名前が残っていない。
 しかし、あまり役に立ったようには見えないにしても、米国版富嶽のB-36は大日本帝国では妄想に過ぎないものを実際に実現してしまう恐るべき米国の底力の象徴ではあった。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55685
http://www.asyura2.com/19/senkyo258/msg/362.html

[国際25] 悪人よりも悪魔を目指すトランプ、毒は猛毒をもって制す 刑事訴追避けるには大統領再選しかない!窮地のトランプ
トランプを読み解く

悪人よりも悪魔を目指すトランプ、毒は猛毒をもって制す

2019/03/11

立花 聡 (エリス・コンサルティング代表・法学博士)


写真:ロイター/アフロ
残虐な独裁者を「信じる」と明言するワケ
 ハノイで行われた米朝首脳会談で、北朝鮮から米国に帰国後死亡した米学生オットー・ワームビアさんの件について、金正恩氏は「事件を知らなかった」と関与を否定したところで、トランプ大統領は「(その説明を)信じる」と応じた。

 案の定、トランプ氏の対応には多くの非難が殺到した。残虐な独裁者を擁護するかのような発言は到底容認されるべきものではない。

 ところが、考えてみると、そもそもこんな事件で問い詰められた金正恩氏は、「はい、私が関与していました。申し訳ない」と素直に認めるはずがない。そこでトランプ氏は、「どう見ても、あなたが指示したのではないか」と追及しても、結局のところ水掛け論になり、会談も取引も何もできなくなる。

 国際政治の舞台は国益ないし支配者層の利益の最大化を図るうえで、愚直に真実を語る場ではない。嘘をつくこともつかれることも、日常茶飯事。トランプ氏が語る「信じる」というのも嘘である可能性が大いにあるだろう。そこでトランプ氏にそれが真意か嘘かを確認することも、額面通りに受け取りそれを批判することも、ナンセンスとしか言いようがない。

 さらに言ってしまえば、トランプ氏が金正恩氏のことを「素晴らしい指導者」と褒めたり、「相性が合う」と好意を示したりすることも、同じ性質のものではないかと思う。いちいちそのへんを追及しても建設的とはいえない。善悪の単純化された民主主義的な正義はときにナイーブすぎる。悪人の狡知や老獪な手口を否定したところで、民主主義自体の価値も毀損されかねない。

 しかし、残念ながらこの世の一般常識では、トランプ氏はやはり筋悪な異端児に分類されてしまうのである。

阿呆の作法踏み外しと筋悪な異端児
 トランプ氏の大統領当選はその当時、世界を驚かせた。いちばん驚いたのは学者や評論家、世のエリートたちだったのではないか。

 米大統領選に先立って、東洋学園大学教授・櫻田淳氏は2016年3月22日付産経新聞「正論」で、「踊る阿呆」と「見る阿呆」という喩えを使って、「耐え難いトランプの無知と錯誤」「トランプ候補の言動は、『踊る阿呆』としての作法を全く踏まえていない」と酷評した。

 まさに「正論」である。トランプ氏は作法を踏み外している。だが、作法踏み外しこそがトランプ氏の取り柄であり、差別化されたマーケティング手法でもあった。作法を踏まえてエリート政治家たちと同じ土俵で議論するなら、彼は大統領選で戦えない。選挙に勝たなければ、国家統治の資格すら得られない。まず、何が何でも選挙に勝つこと、大統領になることが最優先だった(参照:ずけずけ言う男、トランプ流の選挙マーケティング)。

 さらに、櫻田氏が2016年4月5日付の同じ産経の「正論」で、「トランプ氏の登場に期待し、便乗して何かをしようという発想それ自体が、極めて筋悪なものである」と批判した。これも正論だ。この世のいわゆる普遍的価値観における「正論」に立脚すれば、「筋悪」というのはトランプ氏にふさわしいキーワードである。

毒をもつ男たち、トランプとチェーザレ
「日本の作家は、どうやら悪を書くのが不得手であるようだ。それは、日本の歴史上の人物に偉大な悪人がほとんどいないことから、書くのに慣れていないのか、それとも、日本人自体が見事な悪人とは肌が合わない気質をもっているためかもしれない」

 歴史作家の塩野七生氏はこう指摘する(新潮文庫『想いの軌跡』360頁)。塩野氏自身の感覚からすれば、チェーザレ・ボルジアのような「毒をもつ男」はむしろ政治家としてより魅力的である。

 毒と悪が同一ネガティブなカテゴリーに帰属するとすれば、価値観的にいずれも日本人によって否定される対象となるだろう。トランプ氏のもつ毒がチェーザレのそれとやや異なるように見えたのは、時代や社会体制の異質性故の結果に過ぎない。チェーザレはもし、現下の民主主義時代におかれた場合、トランプ氏に酷似していたかもしれない。あるいはその反対も言えるのではないだろうか。

 故に、櫻田氏の「筋悪論」は今日の日本人の普遍的価値観や善悪観の表出として、正鵠を射た指摘であるように思える。

 直近の米中貿易戦争からも、トランプ氏の「筋悪な本質」を垣間見る場面は多々ある。中国との戦い方は、洗練された紳士ルールよりもむしろ無頼漢らしきものが目立つ。

「以其人之道,還治其人之身」(朱熹『中庸集注』第13章)。「その人のやり方をもって、その人を倒す」という意味で、俗にいえば、「毒をもって毒を制す」という策略だ。トランプ氏は中国哲学を熟知しているか、それとも、その筋に精通する人材のブレーンがいるのか、あるいは単にトランプ氏自身がもつ「天然毒」の無造作な表出なのか、知る由もない。

 トランプ氏は猛毒をもっているようだ。紳士同士の付き合いは紳士ルールでいいが、賊と付き合う際には必ず賊ルールを使うこと。見苦しいと思ったら賊にやられる。日本人は毒を持たないから、常に毒にやられるわけだ。

「米国第一主義」は何も悪くない!
 トランプ氏は「米国第一主義」、保護主義の旗を掲げたところで叩かれた。グローバリズムに公然と異を唱えるには相当な勇気と覚悟が必要だ。よほどの異端児でない限り、なかなか難しい。

 グローバリズムの基底に横たわっているのは、世界的貧富の格差の撲滅という価値観と倫理観である。裕福な先進国とそうでない途上国や新興国、その貧富の差を無くすことを善とするイデオロギーである。世の中、そうした「絶対的正論」たる美辞麗句を唱えれば、誰もが反論できなくなる。特に日本は最初から格差を悪としている以上、文脈的に格差消滅を目標とするグローバリズムが正義となるだろう。

 しかし、トランプ氏は反グローバリズムだ。2018年9月25日の国連総会一般討論演説で、氏は「グローバリズムのイデオロギーを拒絶し、愛国主義の理念を尊重する」と明言する。持論の「米国第一主義」をさらに明確な形にしたところで、その「国際協調に背を向ける姿勢」は大方のメディアに批判された。無論、悪としてだ。

 人間は生物同様、自己保存の本能を有している。自己保存故に他者との資源争奪が不可避的に生じる。一方で、その資源争奪現象の消滅を善とした場合、その善を謳歌することを疑うことすら、悪とされるのである。そうした風潮が主流化する世間では、哲学に求められる「懐疑」という基本的姿勢は萎縮する。人間一般に対してペシミストに立脚するトランプ氏はむしろ冷徹な視線で、醜悪に満ちた世界を正視していた。無論、そのポジションに立った時点である意味、トランプ氏自身の相対悪は余すところなく露呈したのである。

「真・善・美」というが、客観的存在として認知され得るのは「真」だけである。ただ「真」は往々にして「醜」だったり、「悪」だったり、あるいは「醜悪」だったりする。トランプ氏は主観的な美醜論や善悪論よりも、むしろ客観的な「真」を忌避せず、たとえどんな醜悪な真であろうとも、これを正視する姿勢を崩そうとしなかったのである。

「悪人」よりも「悪魔」を目指せ
 人間集団の利益からすれば、国家利益が最大単位の集団利益になろう。そこで一国の大統領として国益の擁護と維持を第一義的なミッションと捉えることは至極真っ当だ。にも関わらずたびたび世間に非難されるのは、民主主義社会のマスコミによって強化されるルサンチマンに起因する。

 非難は世間から消えることはない。非難を恐れる政治家は失格だ。たとえ「醜」や「悪」であろうとも、たとえ世間からどんなに罵声を浴びようとも、絶対に引かない。政治家やリーダーにはそうした厚顔さが必要なのだから。

 2018年12月1日、ブエノスアイレスで開かれたG20首脳会議はついに、「保護主義と闘う」との文言を盛り込むことなく、首脳宣言を採択して閉幕した。悪魔の勝利だった。

 悪人とは、ちょっとした悪事に手を染める小物にすぎない。だが、悪魔は違う。悪魔がなす悪事はもはや、手を染める程度ですまない。全身全霊をかけるのだ。悪は必要悪であり、一種の独自の相対的正義であり、これらを裏付ける原理原則ができたとき、哲学、あるいは神学の次元に達する。天使の対極にある悪魔サタンは極悪ながらも、神であることには変わりない。

 中途半端な偽善者や悪人よりも、トランプ氏は悪魔を目指しているようにも見える。帝王学の極意であろうか。

連載:トランプを読み解く
http://wedge.ismedia.jp/category/torayomi
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/15591


 
海野素央の Love Trumps Hate

刑事訴追避けるには大統領再選しかない!窮地のトランプ

2019/03/11

海野素央 (明治大学教授、心理学博士)

 今回のテーマは、「米朝首脳会談後のトランプ支持率」です。2回目の米朝首脳会談はベトナムの首都ハノイで先月27、28両日に開催されました。以前記事の中で説明しましたが、ドナルド・トランプ米大統領の元顧問弁護士マイケル・コーエン被告の公聴会が27日に米議会で開催され、会談よりも高い関心を集めました。

 米国の有権者は、米朝首脳会談及びコーエン被告の議会証言をどのように捉えたのでしょうか。本稿では、最新の世論調査に基づいて分析します。


(Roman Tiraspolsky/Gettyimages)
真っ二つに分かれた米朝会談の見方
 米NBCニュースとウォール・ストリート・ジャーナル紙の共同世論調査(19年2月24−27日実施)によれば、トランプ大統領の支持率は46%でした。これまでの40%前後の支持率と比較しますと、上昇したことになります。

 ところが、「決裂」の結果となった米朝首脳会談後に行ったクイニピアック大学(米東部コネチカット州)の世論調査(同年3月1−4日実施)をみますと、確かに共和党支持者のトランプ大統領に対する支持率は82%と高いのですが、全体では38%まで低下しています。

 また同調査が、「米朝首脳会談は成功したか、失敗したか」尋ねたところ、「42%対42%」の結果になり、有権者の意見が真っ二つに分かれました。前のめりであったトランプ大統領が「悪い取引」を拒否した点を評価する声がある一方で、非核化に関して具体的な成果を何も出せなかったという批判もあります。

 トランプ大統領はワシントンを出発する前に、「北朝鮮がミサイルと核の実験をしないことも取引材料になる」と述べて、現状維持を示唆していました。昨年の米中間選挙においても支持者を集めた集会で、北朝鮮がミサイルと核の実験を中止している点を繰り返し強調し、成果としてきました。

 つまり、トランプ大統領は米朝首脳会談で「最低ライン」は確保できたという認識を持っています。

 ただ、クイニピアック大学の調査では、看過できない結果が出ています。「トランプ大統領の北朝鮮政策に対して、自信が持てますか」という質問に対して、42%が「はい」、52%が「いいえ」と回答している点です。

 昨年6月にシンガポールで開催された1回目の米朝首脳会談後に、同大学が実施した世論調査では同じ質問に、49%が「はい」、47%が「いいえ」と答えました。2回目の会談が物別れに終わった結果、「はい」と「いいえ」が逆転し、トランプ大統領の北朝鮮政策に不安を抱く有権者が5ポイント増えています。

コーエン公聴会の評価
 次に、コーエン被告の公聴会に対する有権者の反応もみてみましょう。世論調査で定評があるモンマス大学(米東部ニュージャージー州)の調査(19年3月1−4日実施)によると、同被告の議会証言について37%が「正直」、24%が「部分的正直」、16%が「不正直」と回答しています。

 さらに、同調査が「トランプ大統領は弾劾されるべきか」と質問したろころ、42%が「されるべき」、54%が「されるべきではない」と答えています。しかし、18年11月の調査結果と比較しますと、「されるべき」が6ポイント上昇しており、コーエン被告の公聴会の影響を受けたといえるでしょう。

 クイニピアック大学の世論調査においても、41%がコーエン被告は「真実を語った」と回答しており、「真実を語っていない」の36%を5ポイント上回りました。「トランプ大統領とコーエン被告のどちらを信じますか」という質問には、50%がコーエン被告、35%がトランプ大統領と回答しており、同被告に軍配が上がりました。

 加えて、「トランプ大統領は大統領に就任する前に犯罪を犯したと思いますか」という質問に対しては、64%が「思う」と答えました。共和党支持者においても、約3割がトランプ大統領が犯罪を犯したと信じています。

 トランプ大統領にとってさらに悪いことには、16年の米大統領選挙中に、不倫をしたとされる女性に「口止め料」を支払い、その費用を明らかにしなかった点について、約4割が「非倫理的で犯罪」と答えています。彼らはトランプ大統領が選挙資金法に違反したとみているのでしょう。

 これらの調査結果を見る限り、コーエン被告の議会証言は、トランプ大統領に対して確実にダメージを与え、議会民主党が同大統領の刑事訴追への第1歩を踏み出すきっかけになったことは間違いありません。

「逃げ切り」を狙うトランプ
 選挙資金法違反に加えて、コーエン被告の証言により、トランプ大統領は「共謀罪」に問われる可能性も高くなりました。以前述べましたが、同被告は下院監視・政府改革委員会での公聴会において、内部告発サイト「ウィキリークス」が、ヒラリー・クリントン元国務長官に不利なメールを大量に流すことを、トランプ大統領が事前に把握していたと証言したからです。

 仮にそうであるならば、トランプ大統領はウィキリークスと共謀した形になります。しかも、米情報機関はウィキリークスが公開したクリントン陣営及び民主党本部の電子メールは、ロシアのハッキング集団が窃盗したものであると断定しています。となると、トランプ大統領は外国政府、しかも敵国の政府と共謀したと解釈ができます。

 さて、米司法省の内規では、現職大統領は刑事訴追を受けません。ただし、これも繰り返しになりますが、トランプ大統領は20年の米大統領選挙で民主党候補に敗北し、前大統領になると訴追される可能性があります。

 従って刑事訴追から逃れるために、トランプ大統領にとって来年の大統領選挙での勝利は「絶対条件」になりました。ロイター通信によれば、たとえ訴追されても大抵の連邦刑事罪は時効が5年なので、時間切れになるというのです。

 トランプ大統領が次の大統領選挙に勝って、果たして逃げ切り態勢に入ることができるのか、注目です。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/15590
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/645.html

[国際25] 歴史的視点から見た「米朝首脳会談」の本質 朝鮮半島の歴史が暗示する“金正恩の末路” 
WEDGE REPORT

歴史的視点から見た「米朝首脳会談」の本質 朝鮮半島の歴史が暗示する“金正恩の末路”
2019/03/10

樋泉克夫 (愛知県立大学名誉教授)


写真:AFP/アフロ
 2月末のハノイにおける米朝首脳会談は、トランプ大統領にとっては成功であったが、金正恩委員長にとっては失敗だったのか。その逆だったのか。両者にとって成功だったのか。あるいは共に失敗だったのか。互いが相手を甘く見てハードルを上げすぎたのか――両陣営関係者のみならず関係各国においても喧々諤々・甲論乙駁の議論が見られ、その評価は定まりそうにない。

 場合によっては米朝平和宣言にまで踏み込むのではないかなどと異様なまでに期待値が高かっただけに、我が国メディアの大勢に漂う“落胆ぶり”は目を覆うばかり。米朝両国関係は一気に冷え込むだろうとヤケクソ気味な極論まで聞かれるほどだ。毎度のことながら、根拠薄弱なままに希望的観測を打ち上げすぎるのではなかろうか。

 考えてみれば、1950年6月に勃発した朝鮮戦争以来、じつに70年近くも時に敵対感情を滾らせながら相互不信を募らせ続けてきた両国である。昨年6月のシンガポールに続き今回のハノイの2回の会談において最高首脳が握手したからといって、その程度の関係で互いが腹を割って話し合えるほどに相手を信頼できるなどと考えるのは、余りにも現実離れしている。情緒的にすぎるとしか言いようはない。

「敵対」を「友好」に転換させたキッシンジャーの手腕
 かつて「外交とは交渉当事者の個人的信頼感の醸成が大前提である」といった趣旨の発言をしたのは、1972年2月のニクソン大統領訪中を実現させたキッシンジャー大統領補佐官だったと記憶する。

 彼がニクソン大統領と共に北京に乗り込み、周恩来首相以下の中国政府首脳との間で交わした機密会談の内容を記録した『ニクソン訪中機密会談録(増補版決定版)』(名古屋大学出版会 2016年)には、敵対していた米中間の信頼醸成に向けて(ということは中国側を信用させるために)、アメリカは当時の中国にとっての最大の脅威であった「ソ連社会帝国主義」が中国に向けて展開していた軍事情報を最大漏らさず伝えたと記されている。

 じつはこの会談の3年前の1969年3月、中ソ両国は両国国境を流れるアムール川(黒龍江)支流のウスリー川の中州に位置するダマンスキー(珍宝)島の領有権をめぐって、全面戦争一歩手前の軍事衝突を繰り返した。中国側は国内に向けてソ連軍を押し返し勝利したと伝えているが、やはり近代装備のソ連軍の脅威をヒシヒシと感じたに違いない。

 おそらく人民戦争の時代は過ぎ去ったことを自覚したからだろう、毛沢東はソ連軍による核使用の全面攻撃まで想定し北京中心部に防空壕を建設する一方、「三線建設」と称し兵器工場を中心とする主要国防施設を内陸部に移設したほどだ。であればこそ相変わらず国民には「打倒美帝国主義」を叫び続かせながらも、“敵の敵は味方”の論法に従って、毛沢東は様々な方法を駆使してホワイト・ハウスに「ニクソン訪中歓迎」のサインを送ったのである。当時の中国政府にしてみるなら、アメリカが収集したソ連軍に関する最高軍事機密は喉から手が出るほどに欲しかったはずだ。

“虎の子の軍事機密”を提供することで、敵対から友好へと転換させようと格闘するアメリカの対中外交の“本気度”を示したということか。

「ビジネス」と「外交」は違う

 かくしてホワイト・ハウスと中南海の信頼関係が築かれ米中友好関係がスタートしたわけだが、はたして昨年来の一連の対北朝鮮交渉に当たって、トランプ大統領=ポンぺオ国務長官コンビは、かつてニクソン大統領=キッシンジャー補佐官コンビが中国政府に示したような信頼醸成への作業を試みていたのであろうか。

 トランプ大統領の金正恩委員長に対する評価が「ロケット・マン」から「クレバーなグッド・ガイ」に180度の転換を見せたとしても、それが単なるリップ・サービスの域を出ないなら、やはり北朝鮮としてもアメリカを信用するわけにはいかないだろう。

 ハノイ会談2日目、対北朝鮮強硬論者のボルトン大統領補佐官が北朝鮮国内の核・軍事施設に関する最高機密を提示したことで、金正恩委員長が席を立ち、交渉は決裂したとも伝えられる。だが、強硬姿勢一辺倒では“窮鼠猫を噛む”といった状況を招きかねない。やはり一寸の虫にも五分の魂である。相手の「五分の魂」をクスグルような硬軟織り交ぜた措置が必要ではなかろうか。これを企業家出身大統領が得意とするディールというのなら、ビジネス上の取り引きと外交交渉とが同じレベルの話になってしまう。ビジネスにおける駆け引きには外交と表裏一体の国防(=国家の歴史・矜持・栄誉の守護、国民の生命・財産の防衛)という側面がないことを、やはり忘れてはならない。

経済発展で独裁体制は崩壊するという“幻想”
 トランプ大統領は核を放棄した場合の北朝鮮経済の大いなる可能性を公言する。だが、金王朝の継続による経済発展を想定しているのか。それとも経済発展によって生活向上が果たされることで国民が民主化の方向に動き、将来の金王朝の独裁体制崩壊を思い描いているのか。

 かりに経済発展の果実の多くが金王朝とそれに連なる特権階層を潤すだけで終わることになったら、最悪の場合、国民にとっての将来は現在と大差はなく、悪夢以外のなにものでもないだろう。一方、経済が豊かになれば独裁体制は崩れ自ずから民主化に向かうと想定しているなら、それが幻想にすぎないことは、1978年末の対外開放以後の中国が教えてくれる。「中国の特色を持った社会主義」ならぬ「金王朝三代の特色を持った社会主義」を朝鮮半島に定着させかねない。独裁体制下の市場経済は独裁の基盤強化に繋がりこそすれ、民主化に向かうことが至難であることは、隣国の中国で実証済みのはずだ。

 はたしてトランプ大統領は北朝鮮にどのような将来像を描いているのか。もっとも、同大統領の一連の北朝鮮外交が大統領再選を目指す選挙戦略の一環に過ぎないというのなら、金正恩委員長のみならず北朝鮮国民にとっては“いい面の皮”といったところだろう。

日本人には理解しにくい“外交交渉の現実”

 相手を全く信頼しない双方が交渉した典型例として思いつくのは、やはり中国における国共対立だ。

 1945年8月15日の日本敗北を機に、将来の中国の在り方をめぐって国民党と共産党が激しく対立した。アメリカ政府が仲介役を務めたこともあるが、最終的には両党を率いる?介石と毛沢東が重慶で会談し、次代の中国の指導者は?介石(=国民党)であることを骨子とする協定――結ばれた1945年10月10日に因んで「双十協定」と呼ぶ――を結んだ。だが、1924年の国共合作以来、互いに騙し騙された関係を続けてきただけに、双方が相手を全く信頼してはいなかった。時間稼ぎに協定を結ぶ一方で、互いに相手を打倒すべく軍備を整え、戦端が開かれる時を待っていたのだ。

 以後、共産党史観で「国内解放戦争」と呼ぶ国共内戦が1946年6月から1949年10月の中華人民共和国建国前後まで続くことになる。

 この間の農村における共産党の戦いの正しさを国民に周知徹底すべく編まれ、文化大革命期に盛んに公演された革命現代京劇の代表作の1つである『杜鵑山』では、戦いを進めるうえでの方針に関して「談々打々、打々談々」なるセリフが飛び出す。いわばテーブルに着く(「談々」)のも、戦場でドンパチ撃ち合う(「打々」)のも、最終目的である勝利を手にするために連続する戦術の一環である。戦場での戦いの主導権を握るために話し合い、テーブルでの交渉に強い立場で臨むために戦場での戦いを有利に展開し、最終勝利に繋げようというわけだ。

 日本人は「打々」が終わったところで「談々」が始まり、双方が“不可逆的”に戦場に戻らないことを前提にテーブルに着くと考えがち。だが、世界はどうもそうではないらしい。

「マラソン交渉」が予想されるワケ
 かりに米朝交渉に「談々打々、打々談々」を当てはめるなら、アメリカにとっての「打々」は制裁の強化であり、北朝鮮にとってのそれはミサイル発射であり核実験となろうか。おそらく今後とも周辺を危機的状況に巻き込みながら、米朝両国は外交能力の限りを尽くしマラソン交渉を続けることになるだろう。だがアメリカにせよ北朝鮮にせよ一方的に相手を屈服させることは出来そうにない。それというのも米朝両国の都合(国益)だけで北東アジアを左右することはできないからだ。

 北東アジアを巡る歴史、地政学、国際関係などを考慮する時、以下を確認しておくことも必要ではなかろうか。

1)北朝鮮主導にせよ韓国主導にせよ、核を保有したままに朝鮮半島が統一されることは日本、中国、アメリカ、ロシアにとって受け入れ難い。

2)朝鮮半島が統一されたとして、この4カ国のうちの1カ国だけが統一された朝鮮半島と“特殊な関係”を持つことは許されない。

3)朝鮮戦争以来、中朝両国は必ずしも「血の同盟」で結ばれていたわけではないし、これからもそうであるはずだ。

4)北朝鮮の経済発展を考えた時、現実的に資金提供をできるのは好むと好まざるにかかわらず日本のみだろう。

5)その日本と北朝鮮の間には「拉致問題」が解決への糸口すら見つからずに残されたままだ。

6)核は金王朝を支える唯一最強の手段である。

 おそらく、以上を同時に満足させるような“多元方程式の解”は目下のところ見つかりそうにない。であるとするなら関係各国は相当長期に亘るマラソン交渉を覚悟する必要があるはずだ。

朝鮮半島の歴史が暗示する“金正恩の末路”
 同じ専用列車の長旅ながら威風堂々たる往路に較べ、復路は意気消沈――メディアが伝える印象は全く違っていた。だが昨年のシンガポール以来、ここまで西側メディアに“露出”してしまった以上、金正恩委員長は以前のように“神秘のベール”の内側に閉じこもったままではいられないだろう。やはり国際社会に向けて何らかのメッセージを発し、関係諸国との関係再構築を模索し続けるのではないか。

 そこで浮かんでくるのが、朝鮮半島の独裁者が激変する国際社会にどのように対応するのかという問題である。金正恩委員長の“次の一手”を考える時に思い至るのが、李氏朝鮮第26代国王で大韓帝国初代皇帝(在位1864年~1907年)に就いた高宗(1852年〜1919年)と閔妃(明成皇后/1851年〜95年)の2人の最高権力者の振る舞いである。

 清国朝貢体制下に置かれている以上、国際関係における選択肢は極めて限られたものだった。そのうえ相次ぐ宮廷内クーデターと内乱、さらには日清・日露戦争を経て日韓併合へと続く歴史の奔流に、高宗と閔妃は時に道化振りを発揮しながらも立ち向かった。そこで2人の事績を描いた『高宗・閔妃』(木村幹 ミネルヴァ書房 2007年)を引用しながら、彼らの“獅子奮迅の姿”を追ってみたい。

 高宗の実父である大院君は、高宗即位から10年間の大院君執政期と呼ばれる時期に「朝鮮王朝において最も大きな権力を振るった」。だが財政政策に失敗したことで「農村のさらなる窮乏化をもたらし」てしまう。「清国やロシア国境に近い地域では、国境を越えて逃亡する農民が続出し、王朝経済の崩壊は、国防面において問題をもたらすことになる」。ということは「脱北」という現象は金王朝三代の治世だけに起こったわけでもなさそうだ。

 皇子である義親王は妃より格下の貴人である張氏との間に生まれたことから宮廷外で育てられただけでなく、高宗のお膝元の「漢城府を離れて日本やアメリカ等、海外を点々とすることを強いられた。その意味で、同じ皇子であっても、義親王の立場は、兄である皇太子や弟である英親王より遥かに劣るものであった。/高宗もまた、海外留学中に浪費癖のあった義親王を快くは思っていなかった」。

 ここに記される義親王の境遇は長く海外に留め置かれた金正日の実弟を思い起させるに十分であり、また海外留学中の浪費癖が原因で父親から「快くは思われていなかった」という点は一昨年2月にマレーシアで暗殺された金正男を連想させるから不思議な因縁だ。

 高宗が勅令で自らを大韓民国の陸海軍を統括する「大元帥」と定めた1898年、「自らの下で皇太子が『元帥』としてその一切の統率に当たることを明言した」。同時に「『非常事態が発生したり、出征しなければならない状態が起こった場合を除き』、皇太子以外の皇子、皇孫を、その下の大将に任ずることができないように定めている」。これを権力維持のための伝統的手段と考えるなら、実兄である金正哲に対する金正恩委員長の振る舞いもなんとなく納得できてしまう。

 対外関係では、「第一に(宗主国の清国を差し置いて)、自らの密書による秘密外交で西洋列強を引き込もうとすること、そして第二に、その事が露見した場合には、それを直接の交渉に当たった臣下の責に帰すること、第三に、その場合に工作の対象となった列強には最大限配慮するというやり方である」。

「対外関係と国内問題の区別さえ、曖昧だった」高宗ではあったが、「それを高宗の権力欲や金銭欲からのみ出たものだと考えるのは拙速であろう」。それというのも、そうすることが彼にとっては「自らと自らの家族を守ることに直結していたからである」。

『高宗・閔妃』は「こうして本当の破局がやってくることになる」と、印象的な一文で結ばれている。

 1990年代初頭にベルリンの壁が崩壊し、ソ連が解体され、東西冷戦構造が崩壊し、資本主義の勝利が叫ばれ、アメリカ一極構造が生まれた状況を捉え、フランク・フクヤマは「歴史の終わり」と評した。だが、歴史に終わりはなかったようだ。

 以上、朝鮮半島情勢にもアメリカ政治にも全くの門外漢ではあるが、ハノイにおける米朝首脳会談をめぐっての若干の思いを綴ってみた。
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/15585
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/646.html

[国際25] エチオピア航空、米ボーイング最新機墜落の深刻度 737MAX機の発注を控える動きが広がる 経営に大きな影響
エチオピア航空、米ボーイング最新機墜落の深刻度

大西 孝弘
ロンドン支局長
2019年3月11日
 
全1215文字
 エチオピアの首都アディスアベバの国際空港からケニア首都のナイロビに向かっていたエチオピア航空302便が10日、離陸から約6分後に墜落し、同航空は乗客乗員157人の全員が死亡したと発表した。


3月10日、エチオピア航空302便がアディスアベバの国際空港から離陸し、同空港の南東のビショフツ近郊で墜落した(写真:共同通信)
 機材は米ボーイングの737MAX8型機という小型の最新機材で、昨年11月にエチオピア航空に導入された。2月上旬に最初のチェックメンテナンスを行ったばかりだったようだ。事故の原因は明らかになっていないが、同航空によるとパイロットは離陸直後にトラブルを報告し、空港に引き返すことを要請した。

 エチオピア航空はアフリカで最大の就航路線を持ち、アディスアベバの国際空港はアフリカのハブ(拠点)空港である。エチオピア航空は就航路線を増やし、最新機材を積極的に導入していた。アフリカの航空会社の中では優良な航空会社と受け止められていた。

 アディスアベバとナイロビ間はその主要路線で、政治やビジネスなどで日本人を含め利用者が多い。エチオピアの日本人ビジネスコミュニティーでも衝撃が広がっているという。

 筆者は特集「逆説のアフリカ」の取材で、2月上旬にエチオピア航空を利用した際に、比較的新しいボーイング737-700という小型機に搭乗した。アディスアベバからルワンダ首都のキガリまでのフライトで、飛行ルートや機体サイズなど今回の事故と重なる面があり、驚きを禁じ得ない。

米パイロット組合が737MAX8型機に懸念も

 今回の事故で大きな焦点になっているのが、ボーイングの737MAX8型機の安全性だ。同機種は昨年10月にインドネシアのライオン航空でも墜落事故を起こし、半年間に墜落事故が2回発生したことになる。

 
 インドネシアでは事故の調査が続いている。インドネシア運輸安全委員会は昨年11月に、機体の空中姿勢を測るセンサーの異常が墜落につながった可能性を示唆する中間報告を発表している。

 その他にも同機種に懸念が広がっていた。米ブルームバーグ通信は昨年11月、米国の2つのパイロット組合による指摘を報じている。同機種の安全機能の潜在的リスクがマニュアルや訓練で十分に説明されていなかったというものだ。

 世界の航空機需要を牽引しているのは新興国であり、エチオピア航空のように最新機材の導入も多い。その新型機で事故が続いてしまっている。世界的に737MAX機の受注や導入が本格化する局面にあった。

 墜落事故の調査結果が出るまでには時間がかかりそうだが、航空専門家は「当面は737MAX機の発注を控える動きが広がりそうだ」と指摘する。世界の航空機需要は中小型機に集中しており、主力機材の墜落事故はボーイングの経営に大きな影響を与えそうだ。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/031100155/?P=2
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/650.html

[国際25] ベネズエラ全土で停電4日目、略奪や断水で市民に混乱広がる マドゥロ大統領:大規模停電は米側の破壊工作 国内:無能と汚職の
ワールド2019年3月11日 / 15:18 / 5時間前更新
ベネズエラ全土で停電4日目、略奪や断水で市民に混乱広がる
Brian Ellsworth and Corina Pons
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[カラカス 10日 ロイター] - ベネズエラでは、7日に発生した全国規模の停電が4日たっても解消されず、もともと食料品不足に悩まされていた商店が略奪されたり、住宅街で断水が起きたり、携帯電話の電波も拾えなくなるなど、混乱が広がっている。9日には怒れる市民が、水や燃料を求めて各地で長蛇の列を作った。

7日の発生以降、当局は一部の電力しか復旧できていない。マドゥロ大統領は、大規模停電は米側の破壊工作によるものだと主張しているが、国内からは無能と汚職の結果だとの批判が上がっている。

政府は9日、翌10日の休校と商業活動の休止を決めたが、停電解消のめどについて何の情報提供もなかったため、無期限に停電が続くのではないかとの憶測が広がっている。

ベネズエラ史上最悪の今回の停電は、マドゥロ政権がハイパーインフレによる経済崩壊と前例のない政治危機に直面する中で発生した。野党指導者のファン・グアイド国会議長は1月、2018年の大統領選でマドゥロ陣営に不正があったとして、暫定大統領就任を宣言している。

首都カラカスのチャカオ地区では9日、怒った住民が停電に抗議するため、目抜き通りや横道にバリケードを築いた。

「冷蔵庫の中の食べ物は腐ってしまった。商店も営業しておらず、通信手段も、携帯電話すら通じなくなっている」。商店主のアナ・セラートさん(49)は、がれきと有刺鉄線の山の前でこう怒りをぶちまけた。

「私たちには助けが必要だ。人道的危機だ」

ガソリンスタンドには、車やバスが何ブロックも列を作った。停電中の住宅は断水しているところがほとんどで、市民は太陽の強い日差し下、水を買うために行列を作った。

ベネズエラ国営石油会社(PDVSA)[PDVSA.UL]は9日、燃料の供給は保証すると表明した。だが、ガソリンスタンド業界関係者によると、国内1800カ所の給油所のうち、営業できているのは停電のため100カ所程度だという。

冷蔵庫が動かなくなった商店では、チーズや野菜、肉類を顧客に無料で配った。

商品を盗まれた店もあった。カラカス南東地区のスーパーでは9日に略奪が起き、従業員や他の目撃者によると、警察と国家警備隊が発砲した。略奪者はパスタやコメ、トマトソースなどを盗んでいったという。

プラスチックの椅子などを売る近くの商店も略奪にあった。

国家警備隊は現場で40人以上を拘束。両手を背中で縛り、通行止めにした道路に下を向いて横たわるよう命じたと、目撃者の1人はロイターに語った。

9日夜には、労働者が多く住むカラカス西部の地区で、抗議活動の参加者が道にバリケードを築いて警官隊と衝突し、小さなスーパーが略奪被害にあったと、店主のマヌエル・カルデイラさん(58)は証言した。

「やつらは食品を奪い、ショーウィンドーを壊し、はかりやPOS(販売情報管理)端末を盗んでいった」と、カルデイラさんは割れたガラスが床に散乱した店内で話した。「私たちは当時、店にいなかった。帰ってきた時には、すべて壊されていた」

<無為無策>

グアイド氏は、マドゥロ政権が何の状況説明もしていないとして批判を強めている。

「前例のない規模の停電が発生して数日たった今になっても、政権は無為無策だ」と、グアイド氏は10日の記者会見で述べた。

ロドリゲス通信情報相は国営テレビで、政府は事態に対処していると述べたものの、技術的な詳細や、停電が長引く原因には触れなかった。

Slideshow (7 Images)
「憎悪や死、暴力を扇動するやからが不安をあおるなか、マドゥロ大統領は市民の要望を聞くよう閣僚たちを動員している」と、ロドリゲス氏は言った。

1月に暫定大統領就任を宣言したグアイド氏は、米国を始め主要な西側諸国から正当な指導者として承認を受けているが、軍や政府機関は依然としてマドゥロ氏が掌握している。

ブラジルやコロンビアなど米州諸国で構成する「リマ・グループ」は公然とマドゥロ氏に異を唱えており、今回の停電について、「マドゥロ政権が認知を拒否する人道的危機」が起きていることの証拠だとの声明を出した。

米国のベネズエラ担当特使、エリオット・エイブラムス氏は、マドゥロ氏には交渉に応じる意志はなく、地位にとどまり続けることを考えていると述べた。

ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は米ABCテレビの番組で、ベネズエラ軍の幹部は、野党議員との間で「今後起きうる展開や、野党に支持を切り替える方策について」議論していると話した。

非政府団体ドクターズ・フォア・ヘルスは9日、停電に加えて非常用発電機の不足・不調のため、全国の病院で17人の患者が死亡したと明らかにした。

カラカスのほか、一部の都市部では8日に電気が復旧したが、9日の昼ごろ再び停電した。

国営電力会社の元社長ミゲル・ララ氏は、「(復旧)の遅れや失敗から推測するに、原因はグリ発電所そのものではなく、発電所から外に電気を流す送電線にあると思う」と述べた。グリ発電所は、同国最大の電力源である水力発電所のことだ。

政府歳入のほとんどを占める原油生産への影響は、現段階では不明だ。

同国の主要産油地であるオリノコ川流域にあるPDVSAと外国企業による共同事業のほとんどは、自前の電力で操業している。だが同国北西部スリア州にある油田の多くは、送電網に頼っている。

PDVSAと共同事業を行っている外国企業の関係者は、原油生産は「安定している」と話した。

ロイターはPDVSAに複数回コメントを求めたが、回答がなかった。
https://jp.reuters.com/article/venezuela-politics-idJPKBN1QS0HW
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/651.html

[経世済民131] モルガンS:ゴルディロックスシナリオ、市場は織り込み過ぎ トルコがリセッション入り ゴールドマン取引失敗−今は対円ドル売

モルガンS:ゴルディロックスシナリオ、市場は織り込み過ぎ
Joanna Ossinger
2019年3月11日 23:29 JST
インフレ圧力が見られないまま世界的に経済成長が安定し、主要中央銀行が今後24カ月間政策を据え置く可能性はある。しかし、このシナリオを市場は過度に織り込んでいると、モルガン・スタンレーは指摘する。
  一方で、中国の景気刺激策で世界の成長がさらに強く持ち直す、あるいは1−3月(第1四半期)業績の顕著な弱さが市場に一段と大きな影響を及ぼしたといった「テール」リスクに関しては投資家は過度に否定的だと、アンドルー・ シーツ氏率いるストラテジストは分析した。
  ストラテジストは10日のリポートで、「市場は中心的なシナリオにあまりに自信を持ち過ぎている」と記述。底堅いがインフレ圧力を伴わない成長のシナリオである「ゴルディロックスを受け入れてはならない」と記した。

  同ストラテジストらはドルの循環的なピーク、新興国資産のアウトパフォーマンスなど、大きな市場の反転を見込んでいると指摘。債券のボラティリティを購入することも勧めた。
  今年は「マクロの転換点を迎えるだろう」とし、「成長やインフレ、政策期待にわたる、市場にまつわるあらゆる部分で問題が想定される」と記した。
原題:Morgan Stanley Says Market Is Overpricing Goldilocks Scenario(抜粋)


トルコがリセッション入り、10−12月GDP2.4%減−リラ一時下落
Cagan Koc
2019年3月11日 16:52 JST
トルコ経済は約10年ぶりにリセッション(景気後退)に陥った。
  11日の発表によれば、2018年10−12月(第4四半期)国内総生産(GDP)は季節調整済みで前期比2.4%減と、1.6%減(改定値)だった7−9月に続くマイナス成長。前年同期比では3%減だった。ブルームバーグのエコノミスト調査ではそれぞれ2.4%減、2.5%減が見込まれていた。
  リラは発表後に一時0.5%安となった。イスタンブール時間午前10時3分(日本時間午後4時3分)現在は1ドル=5.4590リラ。
原題:Turkey Enters First Recession in a Decade as Elections Loom (1)(抜粋)

ゴールドマンがドル取引で失敗−今は対円のドル売り持ち勧める
Joanna Ossinger
2019年3月11日 13:27 JST
• 米金融当局がハト派論調強めるとの読みは当たった
• 7日のECB発表後、損失拡大回避のためのストップロス執行
ゴールドマン・サックス・グループは米金融当局がハト派論調を強めるとの見通しを巡り、読みが半分当たったものの、ドルの取引で失敗した。そこで、今は別の戦術を試みている。
  最近までドル指数 (DXY)の売り持ちを勧めていた同社だが、7日に損失拡大回避でポジションを解消するストップロスが97.50の水準で執行された。欧州中央銀行(ECB)の政策発表を受けての動きだった。これは1.4%の潜在的な損失になると、ザック・パンドル氏ら同社ストラテジストが8日遅くのリポートに記述した。
  現在勧める戦術的な取引は円に対してドルを売り持ちすることという。

  ゴールドマンが勧めたDXYの取引は、政策軌道の変化を示唆したと思われたパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の1月上旬のスピーチ直後に開始された。米当局の論調の変化は基本的にゴールドマンの予想通りとなったが、同時に他の主要国・地域の成長が想定外に下振れし他の中央銀行もハト派色を強めたとストラテジストらは説明。このため、ドルが比較的高いままとなった。
  「現在のデータの状態から恩恵を受けるのは主に円である公算が大きいとみられる」とストラテジストらは記述。「引き続きドル安を予想しているが、この見方を支えるようなデータが出るとしても、世界の成長に悲観的な市場では、対ユーロの比重が大きいこともあり、ドル指数の下落実現には時間がかかるだろう」と分析した。
  ECBは7日に経済見通しを引き下げ緩和措置拡大を発表。ドル指数は同日、年初来の高値に達した。
  一方、円について強気の見方を示すストラテジストやエコノミスト、ファンドマネジャーは多い。ゴールドマンは現在、1ドル=108円を目標に円に対してドルを売り持ちとする取引を勧めている。ドル・円相場は8日、111円16銭で終了し、あと3%下落する必要がある。

原題:Goldman Cops to Misstep on Dollar Call, Eyes Yen Trade Instead(抜粋)

米小売売上高:1月はプラスに転じる−コア売上高が大きく改善
Katia Dmitrieva
2019年3月11日 21:35 JST 更新日時 2019年3月11日 23:50 JST
昨年12月に大きく減少した米小売売上高は、今年1月にプラスに転じた。前月は一方で、速報値から下方修正された。
キーポイント
• 小売売上高は前月比0.2%増−予想は横ばい
o 昨年12月は1.6%減に下方修正−速報値1.2%減
• コア売上高は1.1%増で予想上回る伸び−前月は2.3%減
o コア売上高は飲食店、自動車ディーラー、建材店、ガソリンスタンドを除いたベース


インサイト
• 1月の小売売上高は市場予想を上回り、消費の力強さを巡る懸念を和らげそうだ。昨年12月の減少は政府機関の閉鎖や季節要因が影響した可能性が高い
• 賃金上昇や堅調な労働市場が、経済の最大部分を占める消費を支えている
詳細
• 主要13項目中、8項目で改善が示された
• 特に建材や食品・飲料、スポーツ用品店、趣味用品で伸びが目立った
• ガソリンスタンドは2%減
o 小売売上高はインフレ調整されないため、同項目の減少はガソリン価格低下と販売減少のどちらか、もしくは両方を反映した可能性がある
• 自動車ディーラーは2.4%減と、ここ5年で最大のマイナス
• 自動車とガソリンを除いたベースでは、小売売上高は1.2%増−前月は1.6%減
• オンライン販売などの無店舗小売りは2.6%増と、1年余りで最大の伸び
統計の詳細は表をご覧ください。
原題:U.S. Retail Sales Rise in January, Stabilizing After a Slump (1)(抜粋)
(統計の詳細を追加し、更新します.)

ボーイング株、2001年以降で最大の下げ−737MAX事故で
Bloomberg News
2019年3月11日 9:11 JST 更新日時 2019年3月11日 23:42 JST
• 米市場で一時13%安、中国とインドネシアが運航停止命令
• エチオピア航空機事故、昨年10月の墜落事故に類似と専門家
エチオピア航空墜落事故のニュースを受け、米ボーイングに厳しい目が向けられている。同社製737MAX8の墜落事故は5カ月で2回目で、中国とインドネシアの当局は運航停止を命令した。11日の米市場でボーイングの株価は一時13%下げ、2001年9月11日の米同時多発テロ以降で最大の下落となった。
  エチオピア航空302便はアディスアベバからケニアのナイロビに向かって離陸した数分後に墜落し、乗客乗員157人全員が死亡した。同航空は今後通知するまで同型機の運航を停止すると発表。中国当局は国内航空会社が保有する同型機全96機の運航を停止させると決定し、インドネシア航空安全当局も12日からの全面運航停止を明らかにした。

エチオピア航空302便が3月10日に墜落した現場
Photographer: Jemal Countess/Getty Images
  737MAXはボーイングにとって営業利益のほぼ3分の1を稼ぐ人気機種だが、昨年10月にインドネシアの格安航空会社ライオンエア運航の同型機がジャワ海に墜落して乗客乗員189人が死亡した事故が起きたばかりだった。中国、インドネシアの措置に他国が続く見通しも強まっており、韓国当局は同型機に対する特別査察を開始した。
  欧州当局は米国およびボーイングと連絡を取っているとしつつ、行動に踏み切るには時期尚早だとしている。
  米国時間11日早朝の時間外取引で、ボーイング株は前週末比10%下落。米ゼネラル・エレクトリック(GE)との合弁会社で同型機向けエンジンを製造する仏サフランは、パリ時間午前11時15分時点で1.8%安となっている。
  元商用機パイロットで、インドのチェンナイを拠点に航空安全コンサルタントを務めるモハン・ランガナタン氏は「ボーイング737MAXには危険な設計上の欠陥がある」と指摘。「ライオンエアとエチオピア航空の墜落には間違いなく類似点がある」と述べた。
  世界最大級かつ最も影響力の大きい航空旅行市場の1つである中国での全面的な運航停止はボーイングの信用へのさらなる打撃となるほか、同社の財務上のリスクとなり得る。同社のウェブサイトによると、1月までに引き渡された737MAXの20%が中国の航空会社向け。
  ボーイングのウェブサイトに掲載された1月までのデータによると、中国南方航空には同型機16機が納入されており、そのほかにも34機を発注済み。中国東方航空には13機、中国国際航空には14機が引き渡されている。そのほか海南航空や山東航空などにも納入されている。

原題:Boeing Drops Most Since 2001 as Second 737 Crash Grounds Flights(抜粋)


エヌビディア:メラノックス買収へ、69億ドル−データセンターに注力
Ian King
2019年3月11日 22:23 JST
米半導体メーカーのエヌビディアは同業メラノックス・テクノロジーズを69億ドル(約7668億円)で買収することで合意した。これにより、成長しているデータセンター関連市場への進出を強化する。
  エヌビディアは米・イスラエル企業のメラノックスに1株当たり125ドルを現金で支払う。メラノックスはコンピューターサーバーの情報伝達を高速化する半導体を製造している。メラノックスの8日の株価終値は109.38ドル。買収額は終値に14%上乗せした水準となる。
  エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)はインタビューで、「データセンターの重要度はかつてないほど高い」と述べ、「この合併で当社は今まで以上のスピードで革新していくことができる」と話した。
原題:Nvidia to Buy Mellanox for $6.9 Billion in Data Center Push (1)(抜粋)


アップル、日本で80万人の雇用創出ー村田製やミネベアミツミを紹介
古川有希
2019年3月11日 9:21 JST
• 日本法人で4000人、サプライヤーで22万人、アプリ開発で57万6000人
• 「私たちの製品は日本製部品やサプライヤーの機器で作られている」
米アップルの事業展開に伴い、電子部品メーカーやアプリ開発など日本での雇用創出が80万人を超えた。日本法人のホームページで公表した。
  内訳は日本法人の社員4000人のほか、アップル向けのサプライヤーで22万人、アプリケーションのダウンロードサービス「アップストア」の開設により新たに生み出されたアプリの開発・設計に関する産業で57万6000人。アイフォーン向けに部品を供給する村田製作所やミネベアミツミを写真付きで紹介した。

日本での雇用創出が80万人を超えた
Photographer: Daniel Acker/Bloomberg
  アイフォーンの販売は伸び悩み、2018年10−12月期の売上高は前年同期に比べ15%減少した。日本の携帯市場では首位を維持しており、ホームページでは「私たちの主要な製品は、日本で作られた部品や材料を含んでいるか、日本を拠点とするサプライヤーの機器を使って作られている」として日本の重要性を強調した。
  アップストアを通じて日本のアプリ開発者が稼ぎ出した収益は08年以降で累計240億ドル(約2兆6670億円)に達したとしている。

サウジ、合意以上の規模での減産を4月も継続−当局者
Javier Blas
2019年3月11日 18:45 JST
• 日量1000万バレルを大幅に下回る生産を計画−3月と同ペース
• 3月の日量生産は2月から50万バレル減少
サウジアラビアは合意以上の規模での減産を4月も続けると、同国の政策に詳しい当局者が明らかにした。2カ月連続で需要を大幅に下回る供給となる。
  原油価格は石油輸出国機構(OPEC)加盟国の多くが政府支出をカバーするのに必要な水準を下回ったままで、原油の価格決定力を回復したいサウジの決意がうかがわれる。
  内部協議だとして匿名で語った同当局者によると、サウジは4月に日量1000万バレルよりもはるかに少ない生産を計画しており、これは3月と同じペースの減産。今月の日量生産は2月から50万バレル減らしている。サウジは昨年、OPECおよびロシアを含むパートナー諸国との間で、1日当たりの生産上限を1031万バレルとすることに合意した。
  製油業者がサウジに4月分として要請する原油供給量は日量760万バレル以上だが、同国はこれを63万5000バレル下回る700万バレル弱を供給する方針だと、関係者は述べた。

原題:Saudi Arabia Is Said to Extend Deep Oil Output Cuts Into April


米国産シェール、2020年代半ばまでOPECを圧迫へ−IEA見通し
Grant Smith
2019年3月11日 20:05 JST
• イランとベネズエラの減産、OPECの生産能力押し下げへ
• OPEC産原油への需要は2024年まで減産前の水準に回復しない公算
米国がシェールオイルの生産を拡大させるに伴い、石油輸出国機構(OPEC)は市場での影響力をかつての最大顧客だった米国に奪われている。国際エネルギー機関(IEA)によると、この状況は今後5年間は続く見通しだ。
  IEAが発表した中期展望によると、OPECの原油生産能力はベネズエラとイランの減産により2024年までに縮小する。ライバル産油国の生産が増えるに伴い、OPEC産原油への世界需要は同年までに、減産開始前の2016年より前の水準に回復することはない公算だ。
American Decade
U.S. shale oil will dominate non-OPEC supply growth until the mid-2020s
Source: International Energy Agency
  IEAは、米国のエネルギー生産増が今後も続き、24年末までの世界の生産拡大の70%を占めるとみている。その頃までに米国は日量900万バレルの輸出が可能だ試算されている。これはロシアを抜き、サウジアラビアにも迫る規模だ。
  IEAは「中期的には、米国が引き続き供給増の中心となるだろう」としている。
原題:OPEC Will Be Squeezed by U.S. Shale Until Mid-2020s, IEA Says(抜粋)


英政権:EU離脱交渉は「行き詰まり」、土壇場でEUに妥協求める
Tim Ross、Kitty Donaldson
2019年3月11日 21:59 JST
• メイ首相、ユンケル欧州委員長と10日夜に電話会談−進展なし
• 12日に首相離脱案を議会採決、下院院内総務は野党議員にも支持訴え
メイ英政権は欧州連合(EU)離脱交渉が「行き詰まっている」と認めた。メイ首相とEUが結んだ離脱合意を英議会が廃案に追いやるのを防ごうと、英閣僚らはEUに対し土壇場での妥協を求めている。
  英首相府は11日、メイ首相が欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会のユンケル委員長と10日夜に電話会談したことを明らかにした上で、交渉に進展がないとして首相がブリュッセル入りする計画はないと述べた。
  レッドソム下院院内総務は、首相の離脱案を巡り12日に予定されている議会採決で可決を勝ち取れるよう、英国とEUの離脱交渉担当者らに「最後の一押し」を訴えた。レッドソム氏は与党・保守党だけでなく、労働党とスコットランド民族党(SNP)の野党議員らにも離脱協定を支持するよう呼び掛けた。
  レッドソム氏はインタビューで、「一丸となって首相を支持する必要があるだろう」と述べ、そうすることによって「離脱方法を修正する可能性」に余地を残しつつ「前に進むことができる」と語った。
12日の議会採決を前に語るレッドソム下院院内総務
Source: Bloomberg)
原題:U.K. Says Brexit Talks in Deadlock Despite Appeal to EU for Help(抜粋)

クーレ理事、ECBの最新パッケージは政策の180度転換ではない
Piotr Skolimowski
2019年3月11日 16:14 JST
• 「現時点で」リセッションの兆候見当たらず−減速自体は驚きでない
• 量的緩和はECBの政策手段の1つだが、再開の必要はない
欧州中央銀行(ECB)が市中銀行向け長期資金供給の再開を決め過去最低の現行金利を据え置く期間の延長を発表したのは、当局者らが政策を転換させたことを意味しないと、クーレ理事が述べた。
  クーレ理事は11日のイタリア紙コリエレ・デラ・セラとのインタビューで、政策委員会の7日の決定を擁護し、予想よりも早く訪れた景気減速に対応しているだけだと説明した。減速自体は驚きではなかったとも述べた。当局は「現時点で」リセッション(景気後退)の兆候があるとは考えていないとし、インフレ率は最終的には中銀が目指す2%弱の水準に達するだろうが、そうなるまでの時間は長くなるだろうとの見方を示した。
  「ユーロ圏の成長が潜在成長率に向けて調整していくと考えている」とし、7日の決定は「政策の反転ではなく、この診断に合わせて注意深く微調整したものだ」と語った。
  量的緩和(QE)プログラムを再開する必要はないとし、「経済成長は以前より弱まったが堅調だ」と述べた。QEは今や、ECBの政策手段の1つだとも述べた。
原題:Coeure Says ECB Not Reversing Course on Policy With New Package(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-11/PO6XRK6TTDS601


http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/467.html

[経世済民131] 政策金利は適切、変更急ぐ理由ない−パウエル議長がCBSに語る 米小売売上高:1月はプラスに転じる−コア売上高が大きく改善
政策金利は適切、変更急ぐ理由ない−パウエル議長がCBSに語る
Jeanna Smialek
2019年3月11日 9:24 JST
自分を解任する権限、トランプ大統領にはないと考える
金利は「ほぼ中立」−中国や欧州、英EU離脱など海外情勢を注視へ
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、米金融当局として海外情勢の推移を見守るため、金利据え置きを続ける公算が大きいと述べ、現行の利上げ停止に明確な期限がないことを示唆した。

  パウエル議長は10日放送のCBSの番組「60ミニッツ」とのインタビューで、「インフレは抑制され、われわれの政策金利は適切な場所にあると考える」と指摘。現在の金利設定は景気を加速も減速もさせない「ほぼ中立」とし、当局はさらなるデータ発表を見守ることができると説明した。その上で、「辛抱強さとは金利政策を変更する切迫感がないことを意味する」と強調した。

Meeting Of The Financial Stability Oversight Council
パウエルFRB議長Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg
  議長は他の金融当局者とともに次の一手を考える上で経済成長や雇用創出、賃金動向、インフレ情勢を注視するほか、中国や欧州に加えて英国の欧州連合(EU)離脱交渉などのイベントを見守ると言明。「これらを総合し、いつわれわれの政策を変更するのが適切か決めることになる」と話した。

  パウエル議長は「米国の見通しは良好だ」とする一方、「現時点での米経済への主要なリスクは中国や欧州での成長鈍化や英国のEU離脱といった出来事に起因するものと見受けられる」と発言した。

  自身や金融政策を巡るトランプ大統領の一連の批判に関する質問に対し、パウエル議長は「大統領についてコメントするのは適切でないと思われる」としつつも、大統領には自分を解任する権限はないと考えるとし、「私に4年の任期があるのは法律上明白で、私はそれを全うするつもりだ」と明言した。

原題:Powell Says Fed Policy Is Appropriate, Sees No Hurry to Change(抜粋)

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米小売売上高:1月はプラスに転じる−コア売上高が大きく改善
Katia Dmitrieva
2019年3月11日 21:35 JST 更新日時 2019年3月11日 23:50 JST
昨年12月に大きく減少した米小売売上高は、今年1月にプラスに転じた。前月は一方で、速報値から下方修正された。

キーポイント
小売売上高は前月比0.2%増−予想は横ばい
昨年12月は1.6%減に下方修正−速報値1.2%減
コア売上高は1.1%増で予想上回る伸び−前月は2.3%減
コア売上高は飲食店、自動車ディーラー、建材店、ガソリンスタンドを除いたベース

U.S retail sales excluding autos rose the most in eight months

インサイト
1月の小売売上高は市場予想を上回り、消費の力強さを巡る懸念を和らげそうだ。昨年12月の減少は政府機関の閉鎖や季節要因が影響した可能性が高い
賃金上昇や堅調な労働市場が、経済の最大部分を占める消費を支えている
詳細
主要13項目中、8項目で改善が示された
特に建材や食品・飲料、スポーツ用品店、趣味用品で伸びが目立った
ガソリンスタンドは2%減
小売売上高はインフレ調整されないため、同項目の減少はガソリン価格低下と販売減少のどちらか、もしくは両方を反映した可能性がある
自動車ディーラーは2.4%減と、ここ5年で最大のマイナス
自動車とガソリンを除いたベースでは、小売売上高は1.2%増−前月は1.6%減
オンライン販売などの無店舗小売りは2.6%増と、1年余りで最大の伸び
統計の詳細は表をご覧ください。

原題:U.S. Retail Sales Rise in January, Stabilizing After a Slump (1)(抜粋)

(統計の詳細を追加し、更新します.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-11/PO7C8D6KLVRA01

http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/468.html

[国際25] 米財務省、ベネズエラ支援のロシア銀に制裁 ベネズエラ、大規模停電続く 病院での死者相次ぐ 国ぐるみ麻薬 
米財務省、ベネズエラ支援のロシア銀に制裁

トランプ政権 ヨーロッパ 北米 中南米
2019/3/12 6:22
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【リオデジャネイロ=外山尚之】米財務省は11日、ベネズエラ国営石油会社PDVSAを支援しているとして、ロシアの民間銀行エブロフィナンス・モスナルバンクに経済制裁を発動したと発表した。ロシアのプーチン大統領がベネズエラのマドゥロ政権を支える中、米トランプ政権はマドゥロ政権を支援する海外の金融機関を制裁対象に加えると予告していた。

支援を求めるため、ロシアのラブロフ外相(右)と会談するベネズエラのロドリゲス副大統領(1日、モスクワ)=ロイター
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支援を求めるため、ロシアのラブロフ外相(右)と会談するベネズエラのロドリゲス副大統領(1日、モスクワ)=ロイター

エブロフィナンスはモスクワに本店を置く民間銀行。ベネズエラ政府がインフレ対策と米国の制裁の回避を目的に導入した独自仮想通貨「ペトロ」の拡販に協力していたという。今回の制裁により、エブロフィナンスが米国に保有している資産が凍結された。

ムニューシン財務長官は「米国政府は不法なマドゥロ政権の維持に貢献する海外の金融機関に対し行動を取る」とする声明を出した。一方、ベネズエラの駐ロシア大使は11日、制裁に関し「予想されたことだ」と話した。

ベネズエラ問題を担当する米国のエイブラムス特使は10日、ロイター通信の取材に応じ、ベネズエラから原油を購入しているインドについて「(マドゥロ)政権を助けるのではなく、ベネズエラ国民側に立つべきだ」と発言した。今回のロシア銀への制裁はマドゥロ政権との原油取引を続ける国や金融機関へのけん制の意味があるとみられる。

 
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ベネズエラ、大規模停電続く 病院での死者相次ぐ
中南米
2019/3/11 3:56 
【サンパウロ=外山尚之】政情混乱が続くベネズエラで、7日に全土で発生した停電が長引き、深刻な被害が生じている。病院では透析機器や人工呼吸器が使えなくなり、死者が相次ぐ。主電源の喪失に加え、バックアップ電源が機能せず、復旧のメドがたたない状態だ。食料不足にも拍車がかかっており、深まる人道危機に歯止めがかからない。
停電の中、ろうそくで明かりをとる女性(9日、カラカス)=ロイター 

7日夕方に発生した停電は同国最大の電力供給源であるグリ水力発電所(ボリバル州)の整備不良が原因とみられる。カバーする役割を果たす火力発電所は長年の経済危機でメンテンナンスされておらず、復旧作業は難航している。

マドゥロ政権は「電力は徐々に回復している」と発表するが、停電発生から4日目に入った10日時点でも、部分的に復旧した電気がすぐ消えるといった報告が相次ぐ。

長年の経済危機でベネズエラの病院は非常用電源を備えていない施設が多く、人的被害が拡大している。現地からの情報によると、集中治療室にいた新生児が死亡したほか、人工透析や人工呼吸が受けられず、亡くなる例が相次いでいるという。

野党が多数を占める議会は10日時点で、病院での死者が120人を超えたと推計する。議会関係者は日本経済新聞社の取材に対し「保守的な数字で、停電が続けばさらに拡大する可能性がある」と明かす。非政府組織(NGO)のCodevidaによると、ベネズエラには全国で1万200人の透析患者がいるという。

また今回の停電により、食料不足がさらに深刻になることも避けられない状況だ。赤道に近いベネズエラでは日中の気温が30度を超える都市も多く、冷蔵設備の停止で食料の腐敗も進んでいるという。

年率268万%のハイパーインフレで紙幣が紙くず同然となる中、多くの国民はカード決済やオンラインバンキングの決済で現金を介さずに商取引を行っていたが、停電でシステムが機能しなくなり、経済活動もまひしている。
 
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ベネズエラ全土で停電 24時間経過も復旧の見通しなく
中南米
2019/3/9 9:28
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【サンパウロ=外山尚之】政情混乱が続く南米ベネズエラで7日、首都カラカスを含む全土で大規模な停電が発生し、丸1日経過した後も復旧していない。同国最大の電力供給源である水力発電所が機能不全に陥り、それをカバーする火力発電所も稼働を停止。全国的に電力供給が止まっている。病院や工場にも多大な影響を及ぼしており、崩壊状態の経済にとって致命傷になりかねない。

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現地からの情報によると、7日夕方に発生した停電は24時間以上続いており、カラカスを含む大半の地域で復旧のメドがたっていない。

同国最大の電力源であるグリ水力発電所(ボリバル州)が止まったからだが、その原因は不明だ。火力発電所も投資不足や燃料不足で稼働停止状態が続いており、電力が回復したのは一部地域にとどまる。

前代未聞の事態にマドゥロ政権は根拠を示さずに「米国がベネズエラの電力網を狙った」という主張を展開している。アレアサ外相はツイッターに「トランプ米大統領の側近はベネズエラ国民の苦悩を倒錯的に祝福し、楽しんでいる」と投稿。政府系メディアのテレスルは「電力のサボタージュは帝国がベネズエラを攻撃している証拠だ」との政府高官の言葉を伝えている。

年率268万%のハイパーインフレで崩壊状態の経済にとり、今回の大規模停電は追い打ちをかけることになりそうだ。現地からの情報では、アルミ精錬所など、数少ない産業も今回の停電で壊滅的な打撃を受けているという。また病院なども非常電源を備えていない施設が多く、被害が拡大している可能性が高い。

 
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世銀仲裁機関、ベネズエラ政府に80億ドル支払い命令
北米 中南米
2019/3/9 7:32
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【サンパウロ=外山尚之】世界銀行傘下の投資紛争解決国際センター(ICSID)は8日、ベネズエラ政府に対し、過去の石油プロジェクトの国有化の補償金として、米石油大手コノコフィリップスに80億ドル(約8890億円)を支払うよう命じる裁定を下した。経済的に苦境にあるマドゥロ政権にさらなる逆風となりそうだ。

ベネズエラ政府が補償金を支払わなければ、PDVSAの海外の製油所やタンカーを差し押さえられる可能性も(オランダ領キュラソー)=ロイター
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コノコフィリップスは2007年にベネズエラで行っていた事業を同国政府に国有化されたことを受け、提訴していた。このケースをめぐっては国際商業会議所(ICC)も2018年、ベネズエラ国営石油会社PDVSAに20億ドルの調停金を支払うよう命じている。

今後、ベネズエラ政府が支払いを拒めば、PDVSAが海外に保有する製油所やタンカーが差し押さえられる可能性がある。

また米司法省は同日、国際的な麻薬密売にかかわっている疑いがあるとして、ニューヨーク南部地区連邦地裁などがベネズエラのエルアイサミ前副大統領を起訴したと発表した。米国政府はベネズエラ政府が外貨獲得のため、国ぐるみで麻薬密売を手掛けていると主張していた。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42250730Z00C19A3000000
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/654.html

[国際25] トランプ氏のロシア疑惑、大半の米国民は態度決定済み 民主党側がこの問題を煽り過ぎれば裏目に
ワールド2019年3月11日 / 15:33 / 5時間前更新
トランプ氏のロシア疑惑、大半の米国民は態度決定済み

Reuters Staff
1 分で読む

[ニューヨーク 8日 ロイター] - 8日公表されたロイター/イプソスの調査で、2016年の米大統領選挙でトランプ氏陣営がロシア高官らの協力を得たか否かについて、大半の米国民が既に結論を下しているとの結果が明らかになった。

8割はこの問題について即座に判断したと答え、迷っているのは2割にとどまった。調査結果は過去2年間ほぼ変化せず、世論は早い段階で固まっていたようだ。

モラー特別検査官は近く、ロシア介入疑惑についての捜査結果をまとめる見通し。しかし、心を決めかねている有権者が非常に少ないことを踏まえれば、捜査結果は2020年大統領選の投票動向には大きな影響を及ぼさない可能性があり、民主党側がこの問題を煽り過ぎれば裏目に出る恐れもある。

調査では、トランプ氏陣営がロシアと協力したと答えたのは53%に上り、32%は協力しなかったと回答、15%は分からないとした。

また、回答者の約半数は、トランプ大統領が選挙戦を巡る連邦当局の捜査を妨害しようとしたと答え、しなかったとの回答は21%、分からないと答えたのは18%だった。

トランプ氏の政権運営については、40%が支持を表明した。これは1年前からほとんど変化していない。

政治アナリストは、想定外の一大事が起こらなければ世論は動きにくいと指摘する。

ブルッキングズ研究所のシニアフェロー、エレーン・カマルク氏は、モラー特別捜査官の報告により「教養は無いが世知にたけた交渉人」というトランプ氏像が崩れない限り、共和党側は痛手を被らない可能性があると述べた。

調査は2月27日から3月4日にかけ、オンラインで英語で実施。対象は成人2379人で、うち888人が民主党員、796人が共和党員だった。
https://jp.reuters.com/article/trump-russia-poll-idJPKBN1QS0J0
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/655.html

[経世済民131] 前向きに読み解く経済の裏側 景気は本当に後退しはじめたのか「最長景気」乱気流 中国減速、世界に連鎖 中国成長率、水増し
前向きに読み解く経済の裏側

景気は本当に後退しはじめたのか 

2019/03/11

塚崎公義 (久留米大学商学部教授)

 景気動向指数が悪化し、基調判断も下方修正されましたが、景気が後退しはじめたと考えるべきではない、と久留米大学商学部の塚崎公義教授は主張します。


(nixk/Gettyimages)
景気悪化を示唆する材料は多いが、性急な判断は危険
 今回は、かなり技術的な内容も多いので、要点を最初に示しておくと、「1月の数字が非常に悪かったが、統計は振れるので一喜一憂せず、2月以降の数字を見てからゆっくり判断すべき」「景気動向指数は製造業関係の指標を主に使っているが、経済がサービス化しているので、経済全体を見るべき」「労働力不足だから省力化投資を積極化する企業が多いため、景気は簡単には後退しないはず」といった点が重要だと思っています。

 景気楽観派の筆者としては、旗色が悪いことは十分認識しておりますが、現時点で白旗を掲げる必要は全くないと考えています。景気弱気派が読むと、強弁しているように見えるかもしれませんが(笑)。

 今ひとつ、予防線を張っておくと、仮に日本の景気が悪化したとすれば、それは中国経済が予想以上に落ち込んだためだろうと思われます。つまり、中国経済の専門家が予想を外したから筆者の予想が外れた、ということになるわけですね(笑)。もちろん、そうならないとは思っていますが。

経済指標は振れるから一喜一憂するべからず
 1月の景気動向指数が発表され、一致指数が大幅に悪化したことから、基調判断が下方修正されました。「事後的に判定される景気の山が、それ以前の数カ月にあった可能性が高いことを示す」ということですから、要するに拡大を続けてきた景気がすでに方向を変えて後退しはじめている、ということですね。

 もっとも、これは内閣府が機械的に計算した結果に基づいて機械的に出されている判断なので、実際の景気判断とは異なります。実際の景気判断は、様々な事柄を総合的に考慮して専門家の会議で決められるものです。そして、政府高官も景気が拡大を続けているという認識を変えていない模様です。

 筆者が機械的に出された上記の判断に対して感じる違和感の最大の原因は、1月だけ突出して悪い数字となっているけれども、それ以前の数字はそれほど悪くない、ということです。つまり、単月の数字が非常に悪かったことを理由に景気の方向が変わったらしい、と判断しているわけです。

 筆者は長年景気を見てきましたが、経済指標は振れるので、一喜一憂は危険です。景気を見ている「エコノミスト」は、経済指標を数カ月分じっくり眺めて、景気の大きな方向が変化しつつあるのか否かを判断するものです。したがって今回も、2月と3月の数字を見てから判断するべきだと思っています。

景気動向指数は製造業関連のウエイトが高い
 景気動向指数は、鉱工業生産・出荷の関係の数字が重要なウエイトを占めています。サービス業より製造業の方が景気の振れが大きいこと、生産・出荷が増えると運送業等も活発になること、といったことが考慮されているのでしょう。

 しかし、かつて製造業のウエイトが高かった時代はそれで良かったのでしょうが、経済がサービス化してきているので、景気動向指数だけで景気を判断するのは危険かもしれません。サービス業等の動向も併せて考える必要があるでしょう。

景気拡大にも慣性の法則あり
 景気は、拡大している時にはそのまま拡大を続ける力が働きます。雇用が増えると給料を受け取った元失業者が消費を増やす、といった好循環が働くわけです。今次局面で筆者が注目しているのは、労働力不足により省力化投資が増えつつあることです。

 中国向けの輸出が減りそうだ、ということで、中国関連企業の設備投資は落ち込むかもしれませんが、省力化投資が全産業への拡がりを見せれば、全体としての設備投資はそれほど落ち込まないかもしれません。

 今ひとつ、今次局面で重要なのは、製造業で仮に失業者が出たとしても、失業者はすぐに次の仕事を見つけられるだろう、ということです。従来の日本経済では、「輸出が減って製造業の雇用が減ると、失業者が消費を減らすので景気が更に悪化する」という悪循環が生じていたのですが、今回はそうした悪循環が見込まれないので、輸出の落ち込みが景気に与える悪影響が限定的だ、ということだと思います。

株価等を語るなら一喜一憂が重要かも
 余談です。株価等を語るために経済指標を見ている「マーケット・エコノミスト」は、経済指標が発表される度に一喜一憂しておかないと、株価等が経済指標に反応して動いてしまいますから、市場に置いていかれてしまい、仕事になりません。したがって彼らは一喜一憂しますが、それは彼らが景気そのものよりも株価等を見ているから、という違いに起因するわけです。

 読者の目的によって、景気を知りたいならば筆者の視点を共有していただきたいですが、株価を語りたいのであれば、拙稿よりもマーケット・エコノミストのコメントの方が役立つと思います。適宜使い分けをお願いします。

 本稿は、以上です。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/15588


 
「最長景気」に乱気流 中国減速、世界に連鎖
電子部品の輸出鈍化 設備・生産にも影
景気は緩やかな回復を続けつつも、先行きの不透明感が増している。景気の拡大期間は戦後最長を更新した可能性があるが、足元は中国や欧州など海外経済の減速の余波が広がる。輸出の鈍化に加え、堅調な設備投資や生産にも影響が見え始めた。海外から吹く乱気流への備えが欠かせない。

投資意欲が減退

TDKは2019年3月期の設備投資額を18年10月時点の予測から200億円減の1900億円に下方修正した。山西哲司常務執…
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO42273580Q9A310C1MM8000/


迫真水産大国再興なるか(1) 消えた「海のカナリア」

2019/3/11付日本経済新聞 朝刊
保存 共有 その他
北海道函館市、スルメイカ漁終盤の1月。きらびやかな夜景とは対照的な漆黒の海にともる漁火はまばらだった。2018年度の水揚げはピークから8割以上落ち込み過去最低の水準だ。「もうイカの街とはいえんかもしれんね」。早々に漁を切り上げた漁師も多い。

□   □

価格は平均でキロ632円と10年前の3倍。加工業者が買い付けられるのは400円台まで。函館の水産物地方卸売市場は全国有数だが、場内は寂しげな雰囲気…

残り文字数:1571文字
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO42276390Q9A310C1PE8000/


 
中国経済成長率、年平均1.7ポイント水増しと論文が指摘−2008〜16年
Bloomberg News
2019年3月11日 12:14 JST
ブルッキングズ研究所がシカゴ大と香港中文大の研究者論文草稿公表
ブルームバーグ・エコノミクスのオーリック氏は論文の結論に慎重
中国は2008年から16年まで9年間の経済成長率を平均で年1.7ポイント過大に発表していたとの研究報告を、香港中文大学と米シカゴ大学の研究者がまとめた。

  米ブルッキングズ研究所が公表した論文草稿で執筆者らは、成長と投資の目標を達成すれば高い評価を得られる地方政府による報告が成長率の水増しにつながったと分析。中国国家統計局はそうした統計操作を認識し、地方からの数値を調整しているが、2008年以降はそれほど十分に調整を行っていなかったとしている。

relates to 中国経済成長率、年平均1.7ポイント水増しと論文が指摘−2008〜16年
From the conference paper "A Forensic Examination of China’s National Accounts" 
  「08年の後、地方の統計は数値をますます不正確に伝えるようになったが、国家統計局の調整ではこれに応じた変更がなかった」と論文は説明。その代わりに税収や電力消費、鉄道貨物動向、輸出入などごまかしにくい数字を基に中国全体の年間国内総生産(GDP)を予測するようになったという。

  研究者らは、見直した後の数値は「08年以降の中国成長鈍化が公式統計が示唆するよりも深刻だったことを示している」と指摘している。

  国家統計局にコメントを求めたが今のところ返答はない。

  ブルームバーグ・エコノミクスのチーフエコノミストで中国経済指標に関する著書もあるトム・オーリック氏は、この論文の結論について「慎重」な見方をしている。

  国家統計局は1990年代以降、地方による誇張の影響を排除する「確固たる努力」をしており、地方当局が投資を過大に報告していたとの執筆者の主張は、中国の設備投資は拡大し過ぎているとの広範な論調と整合性がないと同氏は指摘。論文執筆者は税収を基にして「本当」のGDP成長率を推計したが、そこにはサービスセクターが大きめに反映されている可能性があり、他の指標に比べて正確だと言うことはできないと論じた。

原題:China’s GDP Growth Pace Was Inflated for Nine Years, Study Finds(抜粋)

米国株上昇−S&P500は6週間で最大の上げ
Reade Pickert、Vildana Hajric
2019年3月12日 5:50 JST 更新日時 2019年3月12日 6:14 JST
11日の米株式相場は6営業日ぶりに上昇。S&P500種株価指数は6週間で最大の上げとなった。買収関連の報道を好感して半導体銘柄が高い。堅調な米小売売上高統計を受け、景気に対する楽観も広がった。一方で米国債は下落した。

米国株は上昇、半導体などテクノロジー銘柄が高い
米国債は下落−10年債利回り2.64%
NY原油は反発、サウジの減産報道やベネズエラ懸念で
NY金は反落、米中通商協議が難航との見方を米政権が退ける
  S&P500種は200日移動平均を上抜けた。ナスダック100指数は2%超の上げ。アップルの投資判断引き上げも支えとなった。エヌビディアは競合他社の買収で合意し、フィラデルフィア半導体指数は1カ月で最大の上昇率。1972年以降で最長の連続安となっていたダウ輸送株平均も上昇した。ただ、ボーイングは大幅安。10日のエチオピア航空機の事故を受けて一部航空会社が737MAXの運航を停止したことが響いた。ボーイングはダウ工業株30種平均の構成銘柄でウエートが最大。この日ダウ平均の構成銘柄で下げたのはボーイングのみだった。

  S&P500種株価指数は前週末比1.5%高の2783.30。ダウ工業株30種平均は200.64ドル(0.8%)上げて25650.88ドル。ナスダック総合指数は2%高。米国債市場ではニューヨーク時間午後4時58分現在、10年債利回りが1ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇の2.64%。

  先週は世界経済に関するネガティブなニュースが相次いだほか、米雇用統計も低調な内容となり、米株式相場は昨年12月以降で最悪の下げとなっていた。

  インベスコの世界市場担当チーフストラテジスト、クリスティーナ・フーパー氏は「朝方発表された米小売売上高が材料となり、株価は上昇した」と分析。「株式相場に明るいセンチメントを作り出すという意味において、M&A(企業の合併・買収)がマイナスに働くことは決してない。先週は株式相場にとって比較的暗い1週間になったが、この日は良い形で安堵(あんど)感から上昇した」と述べた。

  ニューヨーク原油先物相場は反発。サウジアラビアが合意以上の規模での減産を4月も続けるとの報道や、ベネズエラでの大規模な停電で同国の原油生産が大幅に落ち込むとの懸念が背景。ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物4月限は72セント(1.3%)高の1バレル=56.79ドル。ロンドンICEの北海ブレント5月限は84セント上げて66.58ドル。

  ニューヨーク金先物相場は反落。米中通商協議で合意締結の可能性が低下しつつあるとの見方をトランプ政権が退けたことから、逃避先としての金の妙味が低下した。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物4月限は0.6%安の1オンス=1291.10ドルで終了した。

原題:Tech Rally Powers Best Stock Surge Since January: Markets Wrap(抜粋)
Oil Rises as Saudis, Venezuela Seen Carving Deeper Into Supplies
PRECIOUS: Gold Falls as U.S. Remains ‘Optimistic’ on China Deal

(第4−5段落を追加し、更新します.)


ポンド8日ぶりに上昇、EU離脱案の採決控えて
Susanne Barton
2019年3月12日 3:44 JST 更新日時 2019年3月12日 6:42 JST
英首相と欧州委員長が急きょ会談、英議会の離脱案採決控え
ドル指数は小幅低下、ドルが主要10通貨の大半に対し下げ
11日のニューヨーク外国為替市場では、ポンドがドルに対し8営業日ぶりに上昇。昨年8月以降最長の連続安に歯止めがかかった。メイ英首相とユンケル欧州委員長の会談が急きょ設定されたが、トレーダーの間で英国の欧州連合(EU)離脱が延期されるとの見方が優勢となった。

ニューヨーク時間午後4時31分現在、主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は前週末比0.2%低下。ドルは主要10通貨の大半に対して下落
主要10通貨の中ではノルウェー・クローネの上昇も目立った
ポンドは対ドルで1%高の1ポンド=1.3144ドル。EU離脱延期への楽観が追い風に
英議会は12日、メイ首相のEU離脱案について採決を予定。引き続き首相が敗北するとのシナリオが見込まれている
早い時間には1.2949ドルで日中安値を付けた
「EU離脱の延期が実現する兆しはどのようなものであっても、ポンドに多少の上昇余地をもたらす可能性がある」と、ウェルズ・ファーゴ・セキュリティーズの通貨ストラテジスト、ブレンダン・マケナ氏は顧客向けメモで指摘
ユーロはドルに対し0.1%高の1ユーロ=1.1245ドル。1.1222ドルの日中安値から持ち直した
ドルは対円で0.1%未満の上昇で1ドル=111円22銭。一時は0.3%安となっていた
日銀金融政策決定会合を控え、日本の10年債利回りが約2週間ぶりの水準に低下
オーストラリア・ドルは米ドルに対し0.4%高
欧州時間の取引
  ポンドが対ドルで続落。一時は0.5%安の1ポンド=1.2949ドルとなった。12日に下院が採決を予定しているメイ英首相のEU離脱案への支持が十分でないことを示唆する報道が材料視された。ドル指数は0.1%上昇。

原題:Pound Set to End Losing Streak as May Meets Juncker: Inside G-10(抜粋)
Pound Declines as U.K. Says Brexit Talks Deadlocked: Inside G-10

(相場を更新し、情報を追加します.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-11/PO6H096KLVR401?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/472.html

[経世済民131] 米金融政策の教訓、次の一手は「利下げ」か ECBからまた「味方討ち」銀行試練 英、強い統計に潜むリセッション間近シグナル
為替フォーラム2019年3月10日 / 08:41 / 11時間前更新

米金融政策の教訓、次の一手は「利下げ」か
John Kemp
3 分で読む

[ロンドン 7日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)の次の一手は、利上げよりも利下げとなる可能性が大きい。米国の景気拡大が終盤に差し掛かっている点と、過去の似たような局面におけるFRBの対応を踏まえると、こうした結論が導き出される。

FRBの金融政策は、厳格なルールに基づいてではなく、連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーの裁量によって決定される。とはいえ、類似する経済データを見れば政策担当者は同じような政策手段を選びがちなので、政策金利はきっちり定義された循環に応じて動く傾向を持つ。

FOMCが一連の利上げの後にリスクバランスを見直しながらいったん立ち止まった場合、通常は次に利下げが実施される。そしてFOMCが利上げを休むのは、景気拡大が成熟段階に達し、債券市場で長短利回りの逆転(逆イールド)が起きる恐れが出てきて、物価は落ち着いた様子を保ち、成長ペースは緩やかという局面であることが多い。

この段階までに主要な景気循環指標、例えばISM製造業指数などはピークを過ぎて下がり始めているのが普通だ。もし景気拡大ペースがさらに減速するか、足踏み状態(ソフトパッチ)になれば、総じてFOMCは成長を持続させるために利下げで対応する。

はっきりしたインフレ圧力がなければ、政策担当者は物価抑制よりも成長維持を優先目標とすることが可能で、利下げを正当化できる。

過去数十年を見ると、FRBがある程度の期間動きを止めた後で利上げを再開したことは滅多にない。

<打ち止めではない>

ウィリアム・ダドリー前ニューヨーク連銀総裁は違った見方をしている。6日にブルームバーグで「次の一手は、時期こそ後ずれするにしても依然として利上げになる。今年の米経済はすう勢より上振れるとみている。第1・四半期は政府機関閉鎖や貿易を巡る不透明感、低調な規模の税還付金などが成長を抑えるので、そうした証拠は出てこないだろう。その後、状況はもった明るくなりそうだ」と論じた。

さらにFRBにとって利上げに「忍耐強くなる」という姿勢は「打ち止め」を意味しないと主張した。確かに政策金利決定の過程については、ダドリー氏ほど直接的な情報を得られるアナリストはほとんどいないという面もある。

ただ1年ないしそれ以上利上げを休んだ後に再開すれば、相当異例なケースになるだろう。

<1998年の利下げ>

現在米経済が置かれている状況は、1997─98年に政策金利がいったん据え置かれ、98年9─11月に計75ベーシスポイント(bp)の利下げが実施された場面と似通っている。

98年にFRBは国内の成長減速と、アジア金融危機に起因する世界経済の弱さが米経済を圧迫する恐れを指摘。当時のグリーンスパン議長は9月のFOMCで、米経済は底堅く推移しているものの、景気の弱まりを示唆する断片的な情報が増加していると説明した上で、その1週間後に利下げを発表し、11月までにさらに2回実施した。

この98年の利下げを受け、米経済はかろうじて景気後退(リセッション)を回避し、ハイテクバブルに沸いた2000年まで拡大を続け、リセッションに突入したのは2001年4月だった。

<正しいのはどちらか>

今は失業率が非常に低水準になっていることや、物価上昇率の低さ、債券市場が逆イールド寸前、世界経済はさえないといった点でも1998年を彷彿させる。

当時の方が世界経済と金融市場の緊迫度は高く、米経済への悪影響の波及具合も明白だ。しかし国際通貨基金(IMF)などは最近、今年は世界的に経済見通しが「脆弱」だと警鐘を鳴らし、金融市場はリセッションの可能性に対する警戒感を強めていることが分かる。

こうした環境であれば、一段の弱気サインが出てくれば、FRBがそれに対応して景気拡大を途切れさせないために利下げするというシナリオは容易に想定できる。

もちろん米経済が一時的なソフトパッチを乗り越え、今年後半には潜在成長率を上回る成長ペースが続き、来年に物価が押し上げられるリスクが生じてFRBに再び利上げを促す事態もあり得る。

米国と中国が貿易協議で合意に達すれば、株式投資家や企業経営者を覆っていた不透明感の重要な原因の1つが取り除かれる。急減速していた欧州とアジアの経済が持ち直すとともに、世界的に貿易はまた加速してもおかしくない。

また原油価格が上昇基調に戻るかもしれない。消費が増え、石油輸出国機構(OPEC)の減産に伴って需給が引き締まるからで、それは世界的な物価上昇圧力をもたらすことになる。

こうした展開になれば、ダドリー氏の正しさが証明される。つまりFRBはまだ利上げを打ち止めにしないだろう。

現在の米景気拡大は既に117カ月に達しており、今後1991─001年に記録した過去最長の120カ月を超える可能性はある。

しかし全体的に見て、多くの投資家はFRBがしばらく政策金利を据え置き、今年終盤か来年に景気の弱くなるのを踏まえて利下げすると考えている。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
https://jp.reuters.com/article/column-us-policy-idJPKCN1QP0J9


 

コラム2019年3月8日 / 08:30 / 3日前
ECBからまたもや「味方討ち」、銀行に試練
Swaha Pattanaik
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[ロンドン 7日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は、できるだけ銀行のためになる行動をしようと努力している。もちろん彼の動機は、消費者と企業にとっての借り入れの障害を確実に消し去り、減速するユーロ圏の経済成長とさえない物価を再び押し上げることだ。

だがECBの今回の決定を見れば、とても銀行の「友人」と呼べる内容ではない。

ドラギ氏は7日、以前ほど寛大な条件ではないものの、銀行向けの新たな貸出条件付き長期資金供給オペ(TLTRO3)を、前回のTLTROの返済期限が訪れる前に実施すると発表した。これはほとんどのエコノミストやトレーダーを驚かせた。彼らの間では新TLTROが表明されるとの予想自体は大勢になっていたとはいえ、発表時期はもう1カ月か2カ月先を想定していたからだ。

ところがポジティブサプライズが期待された市場のムードは、すぐに悪化に転じた。STOXX指数は急落し、特に以前のTLTROで借入額の約3分の1を占めていたイタリアの銀行の売りがきつくなった。

その理由の1つは、ドラギ氏がフォワードガイダンスを修正し、過去最低の主要政策金利がこれまでの見通しよりも長期間続くとの見方を示したことだ。もう1つ、ECBの今年のユーロ圏成長率見通しが1.7%から1.1%に引き下げたのも影響した。

ECBが現在マイナス0.4%としている中銀預金金利のような超低金利は、銀行に壊滅的な打撃をもたらす。だから銀行が少なくとも年末まで今の超低金利に苦しめられると聞いた投資家が、非常に気落ちしたのは当然だ。さらにユーロ圏の経済成長がドラギ氏の見通しほど弱いなら、銀行が融資を拡大すればその分だけ不良債権を抱えるリスクが高まる。経済活動が冷え込んだままであれば、消費者や企業が借金の申し込みに殺到することもあるまい。

一方、今回の一連の措置を全会一致で決めたECBにもそれなりの言い分はある。フォワードガイダンスの修正は経済活動を行っている人々に先行きの確実性をもたらし、ECBは経済環境が悪化してから策を講じるのではなく、先手を打つ姿勢なのだと示すことになる。またECBは予定より素早く動く大義名分が必要だったが、それは成長率見通しの下方修正によって与えられた。

とはいえそうしたECB側の事情など銀行にとって何の慰めにもならない。彼らは結局、またしてもECBからの「味方討ち」にさらされる。

●背景となるニュース

・ECBは7日、新たな銀行向けの貸出条件付き長期資金供給オペ(TLTRO3)を実施すると発表した。また政策金利に関するフォワードガイダンスを修正し、過去最低の金利水準が少なくとも年末まで続くと表明した。

・ECBによると、TLTRO3の開始は9月で2021年3月まで行う。資金供給の期間は2年、金利はECBの主要リファイナンス・オペ金利に連動する変動金利となる。

・単一通貨ユーロと、ユーロ圏国債の相場はECBの発表後下落した。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
https://jp.reuters.com/article/bv-column-ecb-idJPKCN1QO2SV


 

ビジネス2019年3月11日 / 16:03 / 4時間前更新
焦点:英ポンド空売り減少、「合意なき離脱」回避の期待で
Reuters Staff
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[ロンドン 8日 ロイター] - 英国の欧州連合(EU)離脱予定日が3週間後に迫ったが、「合意なき離脱」という最悪の事態は回避されるとの見方が強まり、ドルとユーロに対するポンドの空売りは減少しつつある。

ポジションの全体状況を見ると、離脱の行く末についてなお一定程度の警戒感が残っているようだ。しかし英議会が離脱日を予定の3月29日から延長するとの見方から、ポンドはここ数週間で数カ月ぶりの高値に上昇した。

年初来ではドルに対して7%上昇し、主要通貨の中で最も大幅な値上がりとなった。

さまざまなポジションデータによると、ポンドのショート(空売り)は人気が衰えている。米商品先物取引委員会(CFTC)のデータでは、投機筋のポンド/ドルの売り越しは2月25日時点で32億ドルと、昨年9月の65億ドルから半減し、米政府機関が一時閉鎖された昨年12月21日の48億4000万ドルに比べても大幅に減っている。

政府機関閉鎖によってCFTCのデータは数週間発表が止まっていたが、より最新の状況を示す銀行やファンドのデータを見ると、ポンドのショートが徐々に消滅しているのが分かる。

例えばBNPパリバのFXポジショニング・トラッカー(マイナス50からプラス50までの数値で表示)では、ポンドは3月4日にプラス4と、前週のマイナス5からプラス転換し、ショートが完全に無くなっている。昨年末はマイナス30、1月21日の週はマイナス18だった。

RBCキャピタル・マーケッツの分析によると、1月21日の週と1月25日の2度にわたり、特にユーロに対するポンドの買いが急増する場面があった。これは合意なきEU離脱が避けられるとの期待が高まったタイミングだ。

ノムラのポジション指標でも、ポンドの売り越しは30億ドルを割り込み、年初来の最低水準まで下がっている。昨年末は45億ドルだった。

もっとも、投資家は手放しでポンドの先行きを楽観している状況とは程遠い。CFTCのデータでは、2月末時点の売り越しは5年平均の27億ドルを大幅に上回っている。

UBSのFXストラテジスト、レフテリス・ファーマキス氏は「ハード・ブレグジット(合意なき離脱)が避けられるとの期待からポンドに少し楽観論が広がっている」とした上で、離脱が延期されるにせよ、EUがメイ英首相の離脱条件を受け入れるにせよ、「投資家は新たな可能性やリスクを考える必要が出てくる」と話した。

このため合意なき離脱が回避されても、ポンドが急上昇することはなさそうだ。

トレーダーによると、オプション市場でもEU離脱に備えたヘッジは減っているが、完全に消えてはいない。

また、通貨ファンド、ミレニアム・グローバル・インベストメンツの指数(マイナス5からプラス5)では、ポンドのポジションは1カ月前がマイナス1.7、1週間前がマイナス1.4、直近はマイナス0.9だった。

同社のグローバル経済・ストラテジー責任者、クレール・ディソー氏は「当社の指標によると、ポジションはまだショートで、少し不透明感が残っている」と指摘。「英議会は合意なき離脱の可能性を排除しているが、各政党が分裂しており、選挙実施の可能性もあるため、国内が不安定化するリスクは残る」と述べた。

(Saikat Chatterjee記者)
https://jp.reuters.com/article/short-pound-bets-idJPKBN1QS0L1


 
ワールド2019年3月11日 / 17:23 / 3時間前更新
英研究機関、強い統計に潜むリセッション間近のシグナルを指摘 企業の「誕生」と「消滅」の比率が収束
Reuters Staff
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[ロンドン 11日 ロイター] - 英エンタープライズ研究センターは11日公表のリポートで、主要統計では英労働市場の強さが示されているものの、雇用と企業の創出・消失のフローには、リセッション入りに関連するパターンがみられるとの研究結果を明らかにした。

英国の昨年の就業者数は約40万人増加しており、失業率は1975年以来の水準に低下。労働市場は、欧州連合(EU)離脱を巡る懸念や世界の通商問題が足かせとなり減速する英経済のなかで明るい材料を提供している。

ただ、同研究センターは、雇用統計を新興企業と従来型企業に分けて精査すると、気がかりなシグナルがあると指摘。新興企業は2018年に約100万人の雇用を創出し、従来型企業での61万3000人の純減を補った。

ただ、この傾向は、企業の「誕生」と「消滅」の比率が収束しつつあることを踏まえると、長く続かない公算が大きいという。企業の誕生と消滅の比率が収束することは、景気にとって悪い兆しとなる場合が多く、消滅の割合が誕生の割合を上回れば特にそうだ。

リポートはこの動きについて、ブレグジット(英EU離脱)を巡る一時的な不透明感の結果としてではなく、より長期的な流れの中で捉える必要があると指摘している。

アストンビジネススクールで企業家精神を専門にするマーク・ハート教授は、雇用が歴史的高水準にあると示す公式統計は政策当局者に偽りの安心感を植え付ける可能性があると指摘。

「新興企業による雇用創出で主要な統計の数字が押し上げられても、英経済の健全性にとって極めて重要な従来型企業による人員の採用が急速に鈍っていることをわれわれは既に目の当たりにしている」とした。
https://jp.reuters.com/article/uk-economy-jobs-recession-idJPKBN1QS0TH


 

ビジネス2019年3月11日 / 15:28 / 5時間前更新
ドル111円前半、英ポンドが急落
Reuters Staff
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[東京 11日 ロイター] - 午後3時のドル/円は、前週末ニューヨーク市場の午後5時時点とほぼ変わらずの111円前半。一時111円台を割り込む場面もあったが、アジア株の下げ渋りを背景に、底堅いとなった。英ポンドは下げが目立った。

ドルは午前にいったん110.88円まで下落したものの、すぐ111円台へ値を戻した。一時マイナス圏へ下落した中国や日本の株価が上昇へ転じたことで、円を買い上がる動きが限られたという。

この日、動きが目立ったのはポンド。前週末NY市場終盤の水準より気配値を切り下げて取引が始まり、一時1.29ドル半ばまで下落。2月19日以来ほぼ1カ月ぶり安値をつけた。

手掛かりは引き続き、今週議会で相次ぎ行われる欧州連合(EU)離脱修正案に関する採決。あす12日にはメイ首相提案の修正案が採決されるが「かなりの大敗を喫する可能性があるとの観測が出回った」(トレーダー)という。

ポンド/円も同様の値動き。一時143円半ばと、ほぼ1カ月ぶり安値を更新した。

サンデー・タイムズ紙は11日、メイ首相が辞任と引き換えに離脱案の承認を議会に提案すべきとの側近の説得に応じず、首相の座にしがみつくため悪戦苦闘していると報じた。また複数の閣僚が、早ければ今週中にメイ氏が辞めるべきだと表明するかどうか議論したという。

市場では12日は否決予想が大勢。13日には合意のないままEUを29日の期日通りに離脱するかを採決する予定で、これも否決の見込み。続く14日に行われる離脱延期の是非を問う採決がようやく賛成多数となる見通しで、その際に期限がどの程度、延期されるかが焦点となっている。

「首相が主張する3カ月程度、かつ1回限りの延期に対し、より長期の延期を求める修正動議が提出される可能性もあり、詳細は見通しにくい。ただ延期が可決されれば、EU離脱を巡る目先の不透明感の後退が好感され、ポンドはいったん上昇する」(三菱UFJ銀行シニアアナリストの亀井純野氏)という。

ドル/円JPY=  ユーロ/ドルEUR=  ユーロ/円EURJPY=

午後3時現在 111.10/12 1.1231/35 124.80/84

午前9時現在 111.07/09 1.1229/33 124.75/79

NY午後5時 111.15/18 1.1238/43 124.86/90

為替マーケットチーム
https://jp.reuters.com/article/tokyo-frx-lateaft-idJPKBN1QS0J2

ワールド2019年3月11日 / 15:23 / 5時間前更新
英議会が12日に離脱修正案採決、否決ならEU離脱撤回も
Reuters Staff
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[ロンドン 10日 ロイター] - 英議会は12日、メイ首相が示す欧州連合(EU)離脱修正案に関する採決を行う。ハント外相は、否決されればブレグジット(英のEU離脱)自体が撤回される事態になりかねないと訴え、与党・保守党の欧州懐疑派などに支持を求めている。

ただ同党欧州懐疑派や政権に閣外協力している北アイルランドの民主統一党(DUP)幹部らは、このままなら否決とメイ氏の政治的敗北は必至だと冷ややかな見方をしている。

メイ氏は12日の採決に向け、EUに最後の譲歩を促す交渉を行っているがまだ何の成果も出していない。議会は離脱修正案を否決すれば、メイ氏に対して29日に予定されているブレグジットの期日延期をEUに要請するよう迫る見通し。一部では、そうなると2016年の国民投票で決めたEU離脱方針が覆される事態になってもおかしくないとの声が出ている。

ハント氏もBBCに出演し「ブレグジットを止めようとする人々の動きが広がっているので、29日かそのすぐ後にEUを離脱する機会をしっかりつかみ取ることが重要だ。われわれは非常に危険な水域にある」と語り、ブレグジット実現に関する危機感をあらわにした。

政府はこれまで、ブレグジット撤回リスクを強調して欧州懐疑派にメイ氏の離脱案に賛成するよう働きかけてきた。ブレグジット撤回を図る人々はまずメイ氏の離脱案を葬り去り、次に離脱期日延長にこぎ着け、その後2回目の国民投票を実施するという理屈だ。

それでもDUPのナイジェル・ドッズ副党首と保守党欧州懐疑派のリーダーの1人であるスティーブ・ベーカー氏はサンデー・テレグラフ紙への寄稿で「以前と内容が変わらない離脱案が下院に再度提出されれば、保守党の相当数とDUP(の議員)によって確実に否決されるだろう」と記した。

1月15日に議会がメイ氏の離脱案を大差で否決した背景には、この案に盛り込まれたアイルランドとの国境管理問題についての「安全策」への反発があった。こうした安全策では英国が無期限にEUのルールに従わなければならなくなる上に、北アイルランドが英国から事実上切り離されてしまうというのが多くの議員の考えだった。ところがメイ氏は安全策の見直しという点で、EUから具体的な譲歩をまったく勝ち取っていない。

こうした中でサンデー・タイムズ紙は、メイ氏は、辞任と引き換えに離脱案の承認を議会に提案するべきだという側近らの説得に応じず、首相の座にしがみつくために悪戦苦闘していると報じた。また複数の閣僚が、早ければ今週中にメイ氏が辞めるべきだと表明するかどうか議論したという。

議会は12日にメイ氏の離脱修正案を否決した場合、13日には合意のないままEUを29日の期日通りに離脱するかどうか採決する予定だ。これも否決すれば、14日に「限定的な」離脱延期の是非を採決する。

もっともフランスのロワゾー欧州問題担当相は地元ラジオに対して、離脱を延期して協議を続ける意味はないと切り捨てた。「時間を延ばして何をするというのか。われわれには2年もあった。何も新しい要素がないなら、延期は不透明感の拡大を促し、不透明感は不安を生み出すだけだ。われわれに必要なのは時間ではなく決断だ」という。
https://jp.reuters.com/article/brexit-eu-idJPKBN1QS0IT
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/473.html

[経世済民131] 2月中国輸入の落ち込み、日本の輸出・生産に不吉なシグナル 景気が危うい中、インバウンド消費に陰り 「最後の砦」は化粧品?

 
コラム2019年3月11日 / 07:27 / 13時間前更新
2月中国輸入の落ち込み、日本の輸出・生産に不吉なシグナル
田巻一彦
2 分で読む

[東京 8日 ロイター] - 生産の失速が波紋を広げている。1月景気動向指数の一致指数が大幅に低下し、戦後最長の景気拡大実現が怪しくなってきたが、本質はそこではない。生産の弱さが継続すれば、設備投資計画の下振れや企業マインドの下方シフトを通じ、最終的に消費への悪影響を招いて景気後退という「穴」にはまり込むリスクを高める。

中国の輸入の落ち込みが日本の輸出に波及すれば、生産減速が「一時的」との見方は失望に変わりかねない。

8日の日経平均.N225は午後に下げ幅を広げ、前日比430円安の2万1025円となった。

2月の中国貿易統計で輸出が前年比マイナス20.7%と大きく落ち込み、中国経済の先行きへの懸念が強まったことが株価の下落要因の一つとして指摘されていた。

だが、私が注目したいのは、輸入の方だ。市場予想の同マイナス1.4%を大きく下回る同マイナス5.2%となった。1月は同マイナス1.5%で、中国経済が足元で冷え込んでいることを端的に示した。

日本の1月対中輸出は、同マイナス17.4%だった。2月の中国の輸入が大幅に下げているので、日本から中国への輸出はさらに落ち込むことが予想される。

さらに問題なのは、日本の鉱工業生産だ。1月速報値では前月比3.7%低下と大幅に失速した。同時に公表された生産予測指数は、2月が同5.0%上昇、3月が同1.6%低下となったが、5.2%という2月の中国輸入の落ち込みを受け、対中輸出の大幅減少と、生産の失速トレンド継続の可能性は高まったとみるべきだろう。

<過剰債務に直面する中国企業>

中国政府も、足元の経済情勢には危機感を持っているようで、5日から始まった全国人民代表大会で約2兆元(2983億1000万ドル)の企業向け減税を打ち出し、製造業、運輸、建設部門の付加価値税引き下げ方針も表明した。

ただ、企業部門の過剰債務問題が深刻化している中国では、金融の引き締まりが顕在化。今年1月からの中国人民銀の相次ぐ預金準備率引き下げなどで一時の金融ひっ迫は緩和されたものの、中国企業の「金繰りのひっ迫」は全面解消には程遠いと、中国企業と取引している日本企業関係者は口をそろえる。

過剰債務問題が発生しているときに、金融を緩和しても、債務問題に直面している企業は設備投資を活発化させない。当面の利払いを新たな融資でしのぐということが繰り返され、前向きの企業活動に結びつかないからだ。

<中国底割れなしでも、日本に一定の打撃>

日本政府関係者は、中国経済の「底割れ」はないと強調するが、前向きのメカニズムが動き出すのかどうか、予断を許さないだろう。

当面、中国の輸出入が前年比で数パーセントのプラスに復帰するのは難しく、楽観的なシナリオでも、明るい展望が開けるのは、19年後半になると予想する。

この仮定どおりに進んだとしても、日本の輸出・生産が再び、拡大方向に戻るにも、一定の時間が必要になる。

輸出・生産の停滞が長期化するなら、4月からの設備投資計画が当初よりも弱めに作成される可能性も出てくる。春闘における賃上げも、経営側は厳しい姿勢で臨むだろう。

18年の3月ごろと比べると、19年の日本経済のトレンドは、拡大へのモメンタムが弱くなるのではないか。

さらに今年は、日米通商交渉も控えている。メインテーマは、日本から米国への自動車輸出だ。米国は同国での現地生産にシフトすることを求めてくると見られ、そのペース次第では、日本の輸出・生産が一段と下方にシフトしかねない。

輸出・生産から日本経済を展望する見方は、先行性という点で久しぶりに優位性を発揮するかもしれない。
https://jp.reuters.com/article/column-china-idJPKBN1QR0W6


 
景気が危うい中、インバウンド消費に陰り 百貨店売り上げで「最後の砦」は化粧品?
上野 泰也 みずほ証券チーフMエコノミスト
2019年3月12日 全3440文字
 訪日外国人による旅行消費(いわゆるインバウンド消費)の金額が、「モノ消費」から「コト消費」へのシフトもあって、このところ伸び悩んでいる。中国・欧州の景気減速やハイテク部品のミニ不況などを背景とする輸出の減少、企業の設備投資姿勢の慎重化、消費マインドの慎重化などを背景に、腰折れ含みの危なっかしい展開になってきている日本経済に、懸念材料が1つ増えた。
 日本政府観光局(JNTO)によると、2018年の訪日外客数は過去最高を更新する3119.2万人(前年比+8.7%)。政府が目指している東京五輪・パラリンピック開催年(20年)の4000万人達成に向けて、順調に増えている。
 ところが観光庁によると、18年の訪日外国人旅行消費額は4兆5064億円にとどまった(今回からクルーズ客急増を踏まえた新しい調査ベース。従来の推計方法では4兆8000億円で前年比+8.7%)。政府が目指している20年の8兆円達成はまだまだ遠い<図1>。
■図1:訪日外国人旅行消費額

注:18年は速報で、クルーズ客急増を踏まえた新しい調査ベース
(出所)観光庁
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 インバウンド消費は日本の景気を兆円単位でサポートしてきた要因であるだけに、政府も憂慮している。菅義偉官房長官は1月26日、東京と大阪で訪日外国人受け入れの取り組み状況を自ら視察した。
 観光庁によると、訪日外国人(クルーズ客を除いた一般客)の1人当たり旅行支出は18年に15万2594円。調査方法変更前の17年の数字と単純に比較すると前年比▲0.9%になる。15年にかけては中国人観光客の「爆買い」が注目されたものの、その後は減少してきている<図2>。この流れを反転させることがいま、政府・関連業界の最大の課題になっている。
■図2:訪日外国人1人当たり旅行支出

注:18年は速報で、クルーズ客を除いた一般客のみの計数
(出所)観光庁
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インバウンド消費に新たな逆風
 だがここにきて、インバウンド消費にはいくつかの新たな逆風が吹いている。
 2月1日に大手百貨店4社が発表した1月の売上高で、訪日外国人による免税品の売上高が軒並み前年を下回った。報道された業界関係者の見方を総合すると、これには中国の景気減速が影響している上に、ネット通販を規制する法律が中国で1月から施行されたことにより、日本で大量に購入した化粧品などを中国国内で転売するのが難しくなったことが影響しているのだという。
 この中国の法律、電子商取引法(新EC法)については、以前のような中国人の「爆買い」はもはやないので全体的な影響はさほど大きくないのではというやや楽観的な見方もあるものの、現在のように中国景気減速や為替の円高元安とタイミングが重なると、売上高の減少幅が品目によっては大きくなりかねない。
 ここからは、インバウンド消費でいま主役の座にある化粧品について、関連する統計の代表例である、日本人によるものも含めた百貨店における化粧品の売上高を見ておきたい。
次ページ1人当たり実質賃金の伸び悩みも「寄与」
オンラインでの販売や、アプリ経由の個人間の中古品の売り買いを含め、日本の個人消費の「最前線」の様相は、ここ数年で様変わりしている。とはいえ、消費をウォッチする際の伝統的手法を完全に捨て去ってよいわけでもないだろう。筆者が昔から注視している統計の1つが、全国百貨店売上高である。商品別の売上高の動きが、消費の実情の一端を浮き彫りにすることがある。
 昨年12月の全国百貨店売上高は、総額が前年同月比▲0.7%(店舗数調整後)で、2カ月連続の減少になった。構成比が高い「食料品」と「衣料品」がいずれもマイナス。そうした中で絶好調が続いているのが「化粧品」である<図3>。12月は前年同月比+4.1%で、45カ月連続プラス。最後に前年同月比マイナスを記録した15年3月は、消費税率引き上げ前の駆け込み需要で14年3月に急増したことの反動である。
■図3:全国百貨店売上高 前年同月比(店舗数調整後) 総額、「化粧品」

(出所)日本百貨店協会
https://cdn-business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00122/00009/p3.jpg?__scale=w:500,h:240&_sh=0410aa0ce0

 その後、2月21日に発表された今年1月の全国百貨店売上高は、総額が前年同月比▲2.9%で減少続きとなったが、「化粧品」は同+0.3%で、小幅ながらも46カ月連続の増加を記録した。発表直前に社内で化粧品販売の底堅さを指摘していた筆者としては、胸をなでおろす数字だった。
1人当たり実質賃金の伸び悩みも「寄与」
 毎月勤労統計の不適切手法での調査実施問題に端を発して、年明け後に、1人当たり実質賃金の伸び悩みが世の中で改めて意識されている。そのことも陰に陽に寄与して、国内では消費マインドが弱含みとなっている。また、すでに述べたように中国人などのインバウンド消費が勢いを弱めている。にもかかわらず、百貨店では化粧品の売り上げがなお増えている。
 その理由として考えられるのは、@国内の2人以上世帯で「財布のひも」を女性側が握っている場合が少なからずあると考えられること、A若年層が「デパートコスメ(デパコス)」に戻ってきていること、Bインバウンド消費において日本の化粧品に対する需要が他の多くの商品に比べれば底堅いという事実、以上3点である。
 上記Bの関連で筆者の目を引いたのが、2月8日に過去最高益の決算を発表した日本の大手化粧品会社の社長による、中国事業に関するコメント内容である。
 「1月の店頭販売はプレステージ系で前年比40%を超えて伸びており、減速感がまったくない」と説明した同社の社長は、月次調査でも化粧品の購買意欲は落ちておらず「他の産業より耐性があるのではないか」との認識を示した。ただし、インバウンド消費については、転売抑制を図る中国の電子商取引法の影響で1月のバイヤー(代行購入業者)への販売が20%近く落ちている。その一方で、個人旅行者への売り上げは伸びているのだという。
 景気が腰折れ含みで推移する中、日本の化粧品販売の底堅さは、明るいニュースである。
 そうした中、百貨店大手が売り場の構成を大きく変えようとしているという報道が出てきた。読売新聞が2月25日朝刊に掲載した「百貨店 婦人服を縮小 カフェ・化粧品へ転換」である。
 この記事によると、百貨店各社は「集客の中核に位置づけてきた婦人服売り場を縮小し、化粧品や美容といった訪日客に人気の売り場やカフェなどへの転換を進めている」「低価格のファストファッションやネット通販の台頭で、衣料品販売の減少に歯止めがかからないためだ」という。17店舗を展開しているある大手は、17年から5年間で婦人服売り場のスペースを全体で3割減らす計画を進めるという。
 記事には、「長年、多くの百貨店は、婦人服売り場を入り口に近い低層階に展開し、集客のカギとしてきた。女性が家族連れで訪れ、化粧品や雑貨、上層階の紳士服売り場を回ることで、店舗全体への波及効果が期待できた」とある。
それでもやめられない婦人服
 1月の全国百貨店売上高を商品別に見ると、すでに述べたように「化粧品」が46カ月連続で増加している一方、伝統的に主力である「婦人服・洋品」は前年同月比▲5.4%(3カ月連続減)。衣料品全体では7カ月連続で減っている。また、ひところ人気を博したデパ地下の「総菜」は同▲1.0%(3カ月連続減)、「美術・宝飾・貴金属」は同▲2.2%(5カ月ぶり減)、「家庭用品」が同▲3.3%(37カ月連続減)、「食堂喫茶」が同▲3.0%(21カ月連続減)、「商品券」が同▲7.0%(95カ月連続減)などとなっている。
 もうかなり前のことになるが、東南アジアの国々から研修に来た人々にレクチャーした際、筆者は日本の百貨店の売り場構成を紹介。1階に化粧品や雑貨、2階から4階くらいまでは婦人服売り場が並び、紳士服は上のほう。財布のひもを握っているのは奥様であることが多く、ご主人はお金を出して荷物持ちをするのが日本では一般的だと説明したら、これが大うけした。男性陣は「俺の国でも同じだ」と口々に言いながらうなずいていた。
 そうした「定番」の売り場構成が変わろうとしているのだから、これは実に大きな変化である。それだけ、人口減・少子高齢化が進む中でのサバイバルを、百貨店業界が深刻にとらえていることの表れだろう。
 この記事には、「ただ、全売上高に占める婦人服・洋品の割合は、10年前に比べて4.7ポイント低下したものの、19.2%で依然として高く、婦人服に代わる確たる収益源を見いだせていないのが現状だ。『当面、婦人服売り場は聖域として重視せざるを得ない店は多い』(関係者)との見方もある」とも最後に書かれている。業界内には、やはり迷いがあるのだろう。売り場構成を変える会社と変えない会社に分かれるのかもしれない。それぞれがどのような売り上げ実績になるのか、要注目である。

https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00122/00009/


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[経世済民131] こんまり流の片づけ、中古品店はときめかず 
2019年3月12日 The Wall Street Journal
こんまり流の片づけ、中古品店はときめかず
洋服を抱える女性
Photo:PIXTA
 どんより曇ったある日、アン・カーティスさんはステーションワゴンの後部座席にがらくたを積み込んだ。末娘の大学進学をきっかけに家を片づけたいカーティスさんは「コンドウに夢中」だと語る。「こんまり」として知られる片づけのカリスマ、近藤麻理恵氏のことだ。「ロフトや物置、ガレージを整理したくてたまらない」

 何年も使っていないゲームやくたびれたハンドバック、靴、装飾品、寝具などを積み、ロンドン郊外のギルフォードのリサイクルショップに行くと、汗にまみれ、いらいらした様子の年配の男性が現れた。

 「寄付の品を持ってきました」と笑顔で言うカーティスさんに男性はあきれ顔でこう言ったそうだ。「持ってこない人はいません」

 リサイクルショップで働く人々にとって、近藤氏はときめきをもたらす存在ではないようだ。

 近藤氏が登場するリアリティ番組「Tidying Up With Marie Kondo(KONMARI〜人生がときめく片づけの魔法〜)」の配信が今年1月にネットフリックスで始まって以来、世界中のリサイクルショップに寄付が殺到している。問題はくたくたの衣類や買い手がつかないような家電製品が大量に持ち込まれていることだ。ポルノ雑誌や剣など奇妙な寄付もある。

 テキサス州ヒューストンでリサイクルショップを運営するグッドウィルの責任者、デービッド・ブラッドン氏は「私たちが寄付を歓迎するのはよく売れるからだ」と話す。

 近藤氏が書著「人生がときめく片づけの魔法」で紹介した方法で、世界中の人々ががらくたを片付けている。出版社によると、同書と続編の世界販売部数は合わせて1000万部に上る。近藤氏は「ときめく」ものだけを手元に残すよう勧めている。

 マインドフルネスの実践としてガレージを片づけたりTシャツを畳んだりすれば気持ちがすっきりする。これが世界的なブームとなり、寄付収集センターは誰も欲しがらない品物の山に埋もれている。

 オーストラリアの慈善団体ビニーズのマネージャー、ジャッキー・ドロプリック氏は「残念ながらあまり役に立たないものを持ち込む人がいる」と話す。「ここはごみ捨て場ではない」

 シドニーにあるビニーズの倉庫ではボランティアたちが寄付された衣類の仕分けを行っている。1週間の処理量は約130トン。気温が37度を超える中では過酷な作業だ。ビニーズは、1月の寄付が前年同月比で35%増えており、近藤氏の番組開始と関係があるとみている。

 シドニー郊外のグレイステーンズでビニーズの店舗を運営するレン・パイン氏は「一気に家全体の片づけを終わらせたいという切迫感がある」と話す。未処理分が増えているため、新たな寄付は見合わせてもらっているという。

ビニーズのシドニーの店舗
ビニーズのシドニーの店舗
Photo:Rachel Pannett/The Wall Street Journal
 米国では通常、冬は中古品の取引が鈍い(春の大掃除のシーズンになると再び活発になる)。しかし最近、一部リサイクルショップは寄付が集まりすぎて受け付けを一時的に停止している。

 米国とカナダでリサイクルショップを運営するグッドウィル・インダストリーズ・インターナショナルでは、1月の寄付がワシントンで32%以上増えた。ヒューストンは22%増、バージニア州ロアノークは20%増、ミシガン州グランドラピッズが16%増だった。

 当初、一部の店舗は片づけブームについて、政府機関の閉鎖で一時帰休となった職員が暇を持て余したことによるものと考えていた。しかし今も寄付は減っていない。ブラッドン氏は「マリエ・コンドウによるところが大きいと考えている」と話す。

 ヒューストンでグッドウィルの店舗マネージャーを務めるラダトリオン・ハービー氏は「どうにもならなくなるかもしれない」と話す。

 ハービーさんの店舗は石油で財を成した富裕層とテクノロジーで稼いだ新興富裕層が暮らすリバーオークス地区にある。1月は前年同月より49%も多い寄付の品が集まった。ハービーさんによると、男性がガールフレンドのグッチとプラダの靴を持ってきたことがあった。靴は箱に入ったままで1000ドルを超える値札が付いていた。男性はガールフレンドが新しい靴を買いに行きたがっていると話したという。

 最近、こんまりの片づけブームに乗ってマネキンを持ってきた人もいた。受け付けるかどうかスタッフが話し合っていたところ、別の人が店に入ってきて購入したいと言い、19.99ドル(約2200円)を支払った。

こんまり流セーターの畳み方
こんまり流セーターの畳み方 Photo:JEREMIE SOUTEYRAT FOR THE WALL STREET JOURNAL
 グレイステーンズの店舗マネージャーのパイン氏が最近、寄付の品が入ったバックを開けると、小さな四角形に畳まれた衣類が出てきた。「この人は本当にきちんとした人だと思った」が、すぐに「コンドウだ!」と気づいた。近藤氏はリアリティ番組で、引き出しの中で衣類が立つように同じ形に畳むように指導している。

 リサイクルショップによると、売れない衣類はぼろ切れとして再利用される。その他の物品は埋め立て処分やスクラップ処理されるものもあれば、有害物質として破壊されるものもあるという。

 オーストラリアのリサイクルショップでは、サメの死骸や入れ歯、義肢などの寄付も過去にあったという。「友達にあげられないようなものは寄付するな」――これがリサイクルショップで働く人からのアドバイスだ。

 「キスして感謝してもがらくたが消えることはない」と話すのは、ビクトリア州政府機関で環境の持続可能性に取り組むステファニー・ズーリッシュ氏。近藤氏はものを捨てるときには今までありがとうと感謝して手放すことを勧めている。ズーリッシュ氏はこんまりメソッドの6つのルールの7つ目のステップとして「もったいない」を提案しているという。

 こんまりファンの中には知恵を働かせてリサイクルに励む人もいる。ロンドン南東部に住むアリソン・スパイサーさん(33)は近藤氏の番組に「はまり」、8回分を二晩で見たという。

 リサイクルショップで働く人々を困らせないように、スパイサーさんは寄付する品物――衣類や布で5袋、がらくたは大箱で2箱、子ども用の本やおもちゃが1箱――を地元の2つの店に数日に分けて持ち込んだ。

 「特に大きな反応はなかったが、一つも断られなかった」

(The Wall Street Journal/Rachel Pannett and Rhiannon Hoyle)
https://diamond.jp/articles/-/196598
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/481.html

[環境・自然・天文板6] 「移動運動」こそが生物の形を決めた HONZ特選本『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか』 
「移動運動」こそが生物の形を決めた
HONZ特選本『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか』
2019.3.12(火) HONZ
本当に読むに値する「おすすめ本」を紹介する書評サイト「HONZ」から選りすぐりの記事をお届けします。

(文:冬木 糸一)

脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか: 生き物の「動き」と「形」の40億年
作者:マット ウィルキンソン 翻訳:神奈川 夏子
出版社:草思社
発売日:2019-02-18
 今年読んだノンフィクションの中で最高の一冊だ。人間は、鳥は、魚は、なぜ今のような形をしているのか? 偶発的な進化の賜物であって、非機能的で意味をなさない機能の集積が大多数を占めているのか? スティーヴン・ジェイ・グールドは、仮に進化の過程を再現したならば、今とは異なる生物界が現れるだろうと断言したが、本当にそうなのか? 今の生物世界は、進化の偶然性に支配された一回限りのものなのか? 否、そうではない! 物理学と運動器官の繋がりから生物を捉え直すことによって、そこには歴史的な流れと明確な帰結が存在しているのだ。

“生物とはつまるところ身体という物質だ。そして動き回っているときには、ニュートンの万有引力の法則、てこの原理や流体挙動の法則といった諸々の規則の支配下におかれている。効率的で効果的な動きが重要であるとすれば、これらの法則や規則は当然、運動器官を備えた生物の形質や行動に大きな制限を与える。”

 というわけで本書『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか:生き物の「動き」と「形」の40億年』は邦題に入っている脚・ひれ・翼だけではなく、そもそも今のような生物の「かたち」はどのような物理法則の結果収束していったものなのか?を40億年のスケールで解き明かしていく、「移動運動」を中心とした生物史である(原題『RESTLESS CREATUERES』)。『そう、生き物の世界には、とてつもなく多様でありながら、絶対ゆるがせにできないテーマが「1つだけある」のだ。進化が始まって以来、進化の実現性を支配してきたテーマ。それは「移動運動」である。』

 物理学と移動運動が生物の身体に大きな影響を及ぼすわかりやすい一例は翼のある生物だろう。ある翼を持つ生物が飛ぶとき、大雑把に説明すれば、体重が揚力と釣り合っていなければならず、揚力の大きさは翼面積と対気速度に左右されることが航空力学理論から導き出される。そのため、すでに絶滅して存在しない、アンハンネグラ(白亜紀前期に生息した翼竜)が、翼開長が5メートルもあるのに体重が10kgしかないその身体で、かつてどのように飛んでいたか推測できるのだ。『この経験はわたしにとっての啓示となった。これ以降、世界に対する考え方ががらりと変わってしまったのだ。なぜなら、運動器官の観点からものを考えるようになっていたおかげで、適応を形成する力は何も飛行運動だけに限った話ではないことに気づいたからだ。』

なぜ同じ形態に進化しなかったのか?
 なるほど、物理は生物の移動やらそもそも生存条件を規定するから、生物の身体や移動運動に対する一定の法則が導き出せるのはその通りだろう。しかし物理法則は水中や空中を除けば同様に働いており、そうであるならば、なぜ同じ外敵環境の中で生き抜こうとしているはずの生物はみな同じ形態に進化しなかったのだろうか。空を飛ぶのが理にかなっているのであれば、なぜ人間は空を飛べないのか。逆に、直立二足歩行を他のほとんどの生物は使っていないのか。

本コラムはHONZの提供記事です
 その一つの理由は、単純に住む場所の物理環境が違うから(海の中にいる生物は空を飛べないし二足歩行をする意味もない)だ。もう一つの理由は直感的にわかりづらいだけにまるっと一冊本書の主題となっている、「生き物の過去が現在の姿に影響を与えているから」という理由だ。同じ外的環境下で活動する2種類の生物が同じ物理的困難に直面したとしても、適応方法がまったく異なるケースがあり、その祖先の適応方法の違いにより、連綿と形態を受け継いで発展させていったのちの生物たちにも違いとなって現れているのだ。たとえば、飛ぶ時に鳥は羽毛を使い、コウモリは長い指の間に生えている薄い膜を使って飛び、翼竜は1本の指にくっついて広がる膜でコウモリともまた少し違う。ただ「飛ぶ」と一言でいっても、そこには無数の選択肢が広がっている。

凄まじい熱量ある文章がすばらしい
 本書の構成としては、そうした「無数の選択肢」がどのように生まれ、継承されてきたのかを「移動運動」を中心として解き明かしていく。たとえば、人間はいかなる経緯で二足歩行への転換を果たしたのかといった歴史をたどり、鳥はどのようにして飛ぶのか、水生動物はなぜ、どのように陸地に乗り出し、なぜ動物の多くは左右対称で、脳と筋肉が生まれ、最終的に「移動」はどのようにして生まれたのか?という移動運動誕生の瞬間にさかのぼってみせる。一つ一つのトピックが興味深いのはもちろん、生物学・物理学だけではなく「運動」についてのかなり専門的な化学領域にまで踏み込んでおり、一般向け科学ノンフィクションではよくある、「わかりやすく簡略化された結果、根本的な原理がわからない」ことがないように書かれている。

 何より素晴らしいのは、ケンブリッジ大学の生物学者である著者マット・ウィルキンソンの(ヒクぐらいの)凄まじい熱量ある文章だ。ボルテージがどんどん上がっていき、疑問を提起したとおもったらその前提となる説明をはじめ、さらにそれに関連した動物の話をはじめ──と何かのマニアの語りがよくそうであるように、議論が四方八方に飛んでいくのが玉に瑕だが、その中心思想はシンプルで力強く、どれほどふらふらと話題が彷徨ってもきちんと「移動運動」という主軸へと回帰し、どこまでもこちらの注意を惹きつけてやまない。

“人々の注目が、生命の生化学の中核をなすDNA、RNA、タンパク質、細胞膜、そしてこれらの要素が具現化している代謝と生殖プロセスの出現に集まるのは正しいことだ。しかし、それだけで止まってしまう生物圏は、生物圏の名に値しない。移動運動が生物圏に登場して初めて、生命体の世界は十分に発達し、たんなる生化学以上の何かになるのだ。自己推進力が進化してこなかったら、生命は、数個の散在した、短命の、ひどく複雑な化学物質の破片でしかなかっただろう。死の惑星の海底にあるちっぽけな存在で終わったに違いないのだ。”

 さて、全体雑感と構成の話も終わったしそろそろ個別のおもしろい記述の紹介に・・・と思ったがもうけっこうな文字数使ってしまったので、最後に少し紹介して終わりとしよう。たとえば、「なぜ植物は移動しないのか?」を語る8章「移動しない生物が進化した理由」(『問いへの答えがついに見つかった。植物がここまでかたくなに移動運動を拒んだ理由は、植物が高く成長して陸生になるよりもずっと前に、自然選択によって細胞の周囲に壁ができたからなのだ。』)。

 原核生物はどのようにして移動をはじめたのかや、「移動」がもたらした大いなる意義を語る第9章「最初の移動運動はどう始まったか」(『最後に、そしてこれは何よりも大切な点だが、生物が長く生きられるようになったのはひとえに移動運動のおかげである。運動性生物は絶滅という事態から逃げることができる。』)、機能的な面ではなく動くことと心に焦点を当てた第10章「動物はなぜ動きたいと思うのか」(『ある生物の逸脱がその子孫に与える影響を見たときにわかるのは、わたしたちの身体と心は解剖学的・心理学的形式で書かれた、祖先の性質についての味気ない記録などではない、ということだ』)──特にこの最終3章は、とことんエモーショナルで感動的なので、この記事でちょっとでも興味を持ってくれた人は、ぜひよんでもらいたい!


冬木 糸一
1989年生。フィクション、ノンフィクション何でもありのブログ「基本読書」運営中。 根っからのSF好きで雑誌のSFマガジンとSFマガジンcakes版でreviewを書いています。

◎こちらもおススメ!
・『無脊椎水族館』得体のしれない彼らに会えば、人生が救われる、新しい発見がある!
・脳科学について知りたい人へ最初に渡したい一冊──『メカ屋のための脳科学入門-脳をリバースエンジニアリングする-』
・異なる道筋で進化した「心」を分析する──『タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源』
・オリンピックに翻弄されたくなければ読むべし──『オリンピック秘史: 120年の覇権と利権』
・「文明」の土台を知るために──『人類を変えた素晴らしき10の材料』
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55707
http://www.asyura2.com/15/nature6/msg/701.html

[政治・選挙・NHK258] 「声を荒げない」は政治的発言か 与野党の別なく、冷静に考えるべき客観的事実  
「声を荒げない」は政治的発言か 与野党の別なく、冷静に考えるべき客観的事実
2019.3.12(火) 伊東 乾
安倍首相、学校法人への国有地格安売却問題で関与を否定
衆院予算委員会に出席した安倍晋三首相(右、2017年2月24日撮影)。(c)AFP/Kazuhiro NOGI〔AFPBB News〕

 3月6日、内閣法制局長官の参議院予算委員会での発言が問題になり、撤回、陳謝といったやり取りがありました。

 私は、この問題について、客観的、科学的な背景と根拠に基づいて著しい違和感を持っています。解説してみましょう。

議会で何が発言されたのか?
 まず、出来事を客観的に確認しておきましょう

 3月6日、参議院予算委員会で質問に立った立憲民主党会派の小西洋之議員は、憲法に基づいて、立法府すなわち国会・国会議員が、行政府つまり政府・内閣を監視する役割について質問しました。

 どういうことか? ここから正確に確認しましょう。

 日本国憲法は、国家の成り立ちとして「三権分立」を明確に謳っています。三権分立とは

司法権・・・法に基づいて裁判など司法する権利
行政権・・・法に基づいて行政など統治する権利
立法権・・・主権者国民の意志を反映して、法を定める権利

 の3者を分けて、互いにコントロールし合い、決して独断的、独善的な働きをしない、民主的な祭りごとを行うことにほかなりません。

 日本国憲法は、まず立法権について

第41条(国会の地位・立法権)

 国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。

 と、国会を立法府と定めています。また行政権については

第65条(行政権)

行政権は、内閣に属する。

 とあります。内閣総理大臣が「立法府の長」などと発言するようなことは、あってはならないことになります。さらに司法権については

第76条1項(司法権)

すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。

 とあり、裁判所が法を司ること、そして、その法律を作るのは国会であって、司法権=裁判所は国会が定めた法律に厳密に従って、裁判などの手続きを進めて行かねばならないことが定められています。

 このように、国の基本的な成り立ちを規定するのが「憲法」の役割であって、道徳訓などを記すところではないことも、付記しておきたいと思います。

 「改憲論議」が自由なのは結構ですが、しばしば「壊憲」と見える、幼児の落書きのごとき逸脱も目にします。

 亡くなった刑法の團藤重光教授は、そうした無思慮を常々嘆いておられ、まったき法の素人である一般国民をいきなり巻き込む「裁判員」制度の導入にも、非常に慎重、というより、批判的な意見をお持ちでした。

 これは、弁護士の友人たちに言わせれば、團藤さんが戦後にGHQと一緒に作った「精密司法」のプロセスと以後60年の判例の堆積が、時間ばかりかかって動かない裁判所を作ってしまったということでもあるので、一面的には言えないとのこと。

 なかなか難しいものですが、少なくとも憲法が曲解によって濫用されるような、脇の甘い言葉で書かれてはならないことは、議論の余地がありません。

 そのような、法律の整合性をチェックするのが「内閣法制局」であり、その責任者が「内閣法制局長官」ということになります。

三権分立が崩壊したら?
 仮に三権分立ができていなかったら、何が起きるかを考えてみましょう。

 例えば、政府が一部の人にとってのみ都合のよい法律を作って、それに基づいて特定の人たちだけが儲かるような公共事業や、官費の執行が推し進められたら・・・?

 大多数の国民はたまったものではないことになります。そんな政治は許されません。

 また、政府が自分にとって都合の悪い人間を監獄に放り込んで黙らせるような法律を作って、政敵を次々に黙らせていったら、どんなことになるでしょう?

 戦時中の特高警察は、まさにそのものずばりの行動で、全国民を縛りつけていたわけで、こうしたことは決して絵に描いた餅ではありません。

 いままで日本国で現実に繰り返されてきた国家の在り方として誤った形、憲法に照らして不法な行為にほかなりません。

 国民主権、三権分立といった、憲法の骨格を支える基本事項は、決してなまなかにされてはならないもので、そうした大原則をおかしくするような「壊正」は、例えばドイツでは行うことができません。

 第2次世界大戦中、ともに枢軸国として協調して戦った、ファシズムを指導原理とする戦前の日本とナチスドイツは、戦後その姿勢を厳しく改められ、世界の模範たる人類史上最高度に民主的な憲法、基本法によって統治されることになりました。

 その結果、どのような変化があったでしょうか?

 1950〜60年代、日本と(当時の西)ドイツでは、人類史上最大最速の高度成長が実現し、国民所得の大幅な上昇も実現しました。

 戦後最長の景気といった言葉は、こういった時期の現象を正確に跡づけながら使うべきものだろうと思います。

 今日のEU経済も、ドイツが牽引力となって支えているのは周知の事実です。

 高度に民主的な基本法=憲法が社会経済の発展を支えること、決して経済成長の足かせなどにならないことは世界の誰もが認める事実、その最大の骨格というべき三権分立は、国の基本的な「健康」を保証するメカニズムというべきものです。

 ここまで確認したうえで、小西議員が参院予算委員会で質問した「国会=立法府による行政府の監視」を、やはり憲法にもとづいて確認してみます。日本国憲法は第66条3項に

第66条3項

内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。

 と記しており、適切な行政が行われているか、国会の場でチェックされることが明記されています。

 小西議員はこうした条文を念頭に「国会の機能」を質問したのだと思われますが、第66条は「第五章 内閣」(第65−75条)の内容で内閣に関する記述ですから、国会の機能に関しては「第四章 国会」(第41−64条)の記載を見る必要があるでしょう。

 日本国憲法は、例えば政府全体に対して第62条に

(議院の国政調査権)

第62条 両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる

 として、行政を監視する具体的な国際調査や証人喚問などの権利が保証されていますし、内閣に対しては

第63条 内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。

 と答弁を義務づけています。さらに司法権に対しても第64条に

(弾劾裁判所)

第64条 国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。

2 弾劾に関する事項は、法律でこれを定める。

 として、明確に三権分立の機能を規定し、これ以外には何も記されていません。ここまでは、異論の余地がない部分で、ここから先が議論の分かれるところになると思います。

 つまり、日本国憲法第四章「国会」を構成する第41条から64条までの条文をどれだけひっくり返しても、どこにも「国会あるいは両議員の議員は、声を荒らげて発言する」機能を有する、などとは、一切書かれていない。

 これ自体は、まぎれもない事実であって、法制局長官の発言そのものは、法の規定の範囲内に間違いなく収まっている、その事実を確認するべく、わざわざ日本国憲法の関連条文のすべてを引用して、ここまで確認してきたわけです。

「政治的発言」とは何か?
 内閣法制局長官の発言した内容そのものは、法の範疇に納まり、逸脱する点は指摘することができません。

 では、何が問題だとされているのか?

 それは、選挙によって国民主権者に選ばれた議員から、参議院予算委員会の場で、内閣法制局長官として国会の機能を訊ねられたとき

 「こういう機能が存在する」(「立法機関としての作用はあるが」)という答えだけではなく、

 「こんな機能は存在しない」(「このような場で声を荒らげて発言することまで含むとは考えていません」)という、いわば蛇足の発言をしたこと、ならびにそれが小西議員の言動を批判するものだと受け取られかねない、と猛反発したところがポイントになります。

 予算委員会の審議は止まり、法制局長官は速やかに

 「委員会で判断すべき事柄を評価したことは、越権だった」として「お詫びして」発言を「撤回」、ことなきを得たわけです。

 これに対するメディア、さらには与野党を問わず議員まで含めたヒステリック、かつアレルギー的な反応、分かりやすく言えば「声を荒らげ」てのリアクションは、いったいどういうことか?

 自然科学に基づく冷静な観点からは、そこを問わざるをえないとの疑問を持ちました。

 人は、感情が高ぶった状態では、悟性をもって正確に議論したり、判断を下したりすることができません。

 脳の機能に即して言うなら、「情動の修飾」が過多な状況にあって、冷静かつ正確な思考や判断を下すことは著しく困難、あるいは実質的に不可能と言ってもいいでしょう。

 これは日常的な生活経験に照らして、誰での覚えがあることだと思います。つまり

 「ついカッとなって」何々してしまった、無用の発言をしてしまった・・・とか

 「ペットが死んでしまい、あまりに悲しくて宿題(あるいは仕事)に手がつかない」とか

 いくらでも事例が挙げられるヒトの生理にほかなりません。

 今回の法制局長官の発言は、TPOに照らして、適切でなかった面はあると思います。本人もすぐ撤回しているわけですが、憲法が定める

国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関(41条)

 であるところの国会で、声を荒げて発言してウッカリミスを犯すとか、不規則発言、いわゆるヤジの類で、下品な罵声を上げるといったことは、与党も野党も関係なく、およそ推奨される行為、行動では全くありません。

 これは全くもってその通りとしか、言いようがないと思います。

 野党の反発は、与党や官僚のちょっとした発言のシッポを捕まえてキャンペーンする、割に定型的なものと思いますが、「政治的」とか「国会軽視」といった表現は、冷静な第三者の観点からは尾ヒレのつけ過ぎのようにも見られ得るものでしょう。

 「声を荒らげる国会質問は認められない」とは「民主主義を否定」みたいな拡大の仕方も目にしましたが、それこそ「アララゲ」過ぎで、そういうおかしな加熱や炎上はなしにして冷静に考えなければ、内閣法制局のような機関での仕事ができないのは間違いありません。

 法制局長官が何を考え、どうしてあのタイミングでああいう発言をしたのかは分かりませんが、リアクションに騒ぎ過ぎの面が指摘できる可能性は高いでしょう。

 さらに、与党側からの批判も報じられるのですが、

 「内閣総理大臣配下にいる人間が、国会議員に対して、間違っても言ってはいけない、あり得ないこと」「少し思い上がっているのではないか」

 といった、やはり感情の修飾過多な、つまりメディアに流れると国民大衆の気持ちが「アララゲ」られるような活字を目にし、率直に疑問を感ぜざるを得ませんでした。

 内閣総理大臣の配下にいるものが、国会議員に対して「間違っても、カクカクシカジカの発言をしてはならない」と記された憲法の条文もなければ、法律の定めもありません。

 国の行政を、もっぱら成文法に基づいて、すなわち法律の条文として明記されたテクストを厳密に当てはめ、解釈して実行する統治することを「法治(主義)」と呼び、そこから逸脱し、お奉行様がアドリブで名 「おさばき」などを案出するのは、人間が勝手に統治する体制、すなわち三権が分立しない独裁にほかなりません。

 このように、反民主的で遅れた体制、人間の勝手で統治を左右する「人治(主義)」、恣意的な「人の支配」は、北朝鮮など一部の国家には見られますが、国連加盟国の大半では、あってはならないものとして、良識ある知識層から、厳しい監視の眼差しを注がれ続けている要注意ポイントにほかなりません。

 閣僚や議員など権力を手にするものが、法の条文にない「思い上がった」言動で、国民を威圧するようなことは決して日本で許されることではありません。

 日本国憲法の多くの条文には

 「法律でこれを定める」と記されています。これをひっくり返して言えば、

 「人間が勝手にこれを変えない」「忖度その他でこれを定めない」

 と読み替える必要が常にあります。議会で声を荒らげるなど、人間としては本来もってのほかの言動と一個人として私は思います。

 それを責任ある立場の官僚が国会で発言すると、現在観察されるような騒ぎになったりする。審議の攻防が、一種の形骸化、動脈硬化を起こしているようにも感じられます。

 もちろん罵声とか侮辱とかいった、公務員だ議員だといったことと無関係に、為すべきではない発言や行動は普通にあると思います。

 内閣の指揮下にある公務員が、国会議員に対する発言を慎重にすべきことは、言うまでもありません。

 しかし「こういう発言は間違ってもしてはいけない」というのは、下手をすればある種の忖度を言外に求めていると解釈され得る、おかしな発言と感じる人がいても不思議でないのではないか?

 さらに言えば「思い上がる」という日本語も、こういう場で適切なものなのか?

 つまり国会議員は選挙で国民に選ばれた存在であるのに対して、官僚は職掌に応じて仕事しているのであって、淡々と執務すべきである、というのはその通りですが、そこに『思い上がり』といった、感情のアララゲを触発しかねない日本語がつけられて、メディアに載るというのはどういうものか?

 私は、この問題に関して、およそ「政治的」な考えを持っていません。

 与党野党の別なく、大きな声を出したり、合理的な根拠なしに圧力を感じさせるよな言動を取るもの全般に、自然科学の観点から疑問を感じる、ということに尽きています。

 少なくとも、身の回りで大きな声を出して勢いで進んだようなことで、ロクな結果に結びついた例をあまり思いつきません。

 まして国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である国会です。

 古今の歴史的な名演説は、多くが冷静に、また決然と語られたものでしょう。大きく、張りのある声であっても、激高して叫ばれるシュプレヒコールでは、普通ないはずです。

 メディア・プロパガンダとその脳認知を検討してきた観点からは、落ち着いた声で語られる中に、最も多く真実が宿るのを痛感します。

 本当に重要な内容であれば、感情を荒げることはむしろ逆効果に繋がるものです。

 私は長年、広島や長崎、あるいはナチスの絶滅収容所やルワンダ虐殺から生還した人からお話を伺ってきましたが、最も本質的な内容は、ほぼ例外なく、小さな声で語られます。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55711
http://www.asyura2.com/19/senkyo258/msg/395.html

[国際25] 計り知れない罪、ロシアで生まれた史上最悪の陰謀論 フェイク文書が世界に広めた反ユダヤ主義(前編) 
計り知れない罪、ロシアで生まれた史上最悪の陰謀論フェイク文書が世界に広めた反ユダヤ主義(前編)
2019.3.12(火) 佐藤 けんいち
ロシア・モスクワの赤の広場
(佐藤 けんいち:著述家・経営コンサルタント、ケン・マネジメント代表)
「ロシアゲート」(Russiagate)に関する最終調査報告書が、特別検査官から司法長官に提出されるというニュースが流れている。トランプ大統領は、眠れない日々を送っていることだろう。
 ロシアゲートとは、ロシアがらみで米国のトランプ大統領が関与しているとされる疑惑のことだ。1972年に発覚し、その2年後に共和党のニクソン大統領(当時)を退陣に追い込んだ「ウォーターゲート」(Watergate)事件をもじったネーミングである。
 2016年の米国大統領選で、ロシアに厳しい姿勢をとっていた民主党のヒラリー・クリントン候補を落選させ、共和党のドナルド・トランプ候補(当時)を勝利させるために、ロシアがサイバー攻撃やSNSを使った世論誘導工作と選挙干渉を行ったとされている。その際、ロシア政府とトランプ氏が共謀していたのではないか、というのがロシアゲート疑惑の焦点である。
ネット時代以前からあったデマの拡散
 2016年に英米アングロサクソン社会で相次いで発生した、世界を揺るがせた衝撃的事件は、英国のブレクジット(EU離脱)と米国のトランプ大統領誕生であったが、両者ともにその背景には「フェイクニュース」の存在があったという主張がある。
 フェイクニュースは2016年に登場した新語だ。ネット上に投稿された偽情報が、瞬く間にリツイートやシェアによって拡散され、特定の政策の実現に向けて有権者を誘導していく。まさにネット時代ならではの現象である。人間には見たいもの、聞きたいものにしか注意しないという認知バイアスが存在するのだが、この傾向がネットによって増幅しているのである。情報洪水時代だからこそ、選択の幅が狭い方が精神的にラクになる。
 2018年には、SNSを代表するフェイスブックの個人情報漏洩事件も大きな話題になった。流出した個人情報が離脱賛成サイドに利用され、EU離脱の是非を問う英国の国民投票に影響を与えたという主張もある。それ以降、全世界的にフェイスブック離れも進行している。
 ロシアによるサイバー攻撃の対象は米国に限った話ではない。英国や欧州大陸でも活発だと言われている。ソ連が自壊してからすでに四半世紀以上も経っているが、かつての冷戦時代を思わせる事態が進行している。その冷戦時代に米ソ間で激しいプロパガンダ合戦が行われていたことは、当時のことを知る人にとっては常識だといっていいだろう。デマや偽情報、プロパガンダや陰謀論の拡散はネット時代以前から行われていた。
 ロシアのプーチン大統領が、ソ連時代に情報機関KGBの将校であったことは周知の事実だ。情報統制と情報操作による専制国家的な強権体質が、ソ連崩壊後にもロシアにも引き継がれていることは明らかだろう。情報操作の体質が、ネット時代に新たな展開を見せているのである。
ロシアから世界に広がった陰謀論
 ロシアで専制国家的な強権体質が始まった起源は、いまから100年前のロシア革命前後にさかのぼることができる。はるか昔の13世紀から約3世紀にわたって続いたモンゴル統治時代までさかのぼることも可能だが、現在の特異な強権体質はやはりロシア革命以降のものであろう。(参考:「日本は専制国家に戻るロシアを追い詰めてはいけない」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52652)。
 ロシア革命は2つのフェーズにわけて考える必要がある。1917年の2月革命で帝政が倒れたのが第1フェーズ。その8カ月後の10月革命でボリシェヴィキ(レーニンが率いた左派の一派)がクーデターによって政権を奪取したのが第2フェーズ。これがその後の約5年間にわたる激しいロシア内戦の引き金となった。ロシア内戦では、「赤軍」(革命勢力=ボリシェヴィキ)対「白軍」(反革命勢力)の武力衝突だけでなく、国際がらみの情報戦もまた活発に行われていた。
 前回のコラム(「知られざる戦争『シベリア出兵』の凄惨な真実」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55568)で取り上げた「シベリア出兵」は、まさにそのロシア内戦の渦中の戦争であり、干渉戦争に参加した日本も含めた連合軍の立場は、基本的に反ボリシェヴィキであった。
 反革命勢力である白軍は諸勢力が乱立していたために、最終的に敗退することになったわけだが、その白軍にはとある文書が流通していた。それは、「シオン長老の議定書」(「シオン賢者の議定書」とも訳される)という名のロシア語のパンフレットである。ホロコースト(ショア)にもつながった「反ユダヤ主義」を煽る内容の文書だ。
英語版『シオン長老の議定書』(1934年)(出所:Wikipedia)
 すでに当時から偽書とみなされていたが、この文書が全世界に与えた悪影響と損害は計り知れないものがある。その意味では、史上最悪の偽造文書であるといっても言いすぎではない。影響は現在に至るまで続いており、イスラーム世界にも拡散している。その悪質さと広がりに関しては、フェイクニュースがらみのロシアゲートの比ではない。
 その「シオン長老の議定書」は、シベリア出兵の際に日本にも入ってきた。シベリア出兵は、多額の戦費と戦死者にもかかわらず、なにも得るところのなかった戦争だという評価がなされているが、じつはそれだけではなかった。反ユダヤ主義が日本に持ち込まれるきっかけとなったのである。
陸軍がシベリアから持ち帰った「反ユダヤ主義」
 シベリア出兵は、日米を中核とした15カ国の連合軍によって行われた多国籍軍による干渉戦争であった。連合軍は、ユーラシア大陸にまたがる広大なロシアの東のはてに位置するウラジオストク港から上陸して、バイカル湖方面に向けて西進する。
 革命思想と革命勢力は、それとは逆にロシア西部からシベリア鉄道に乗って東進してきた。同時に、「反ユダヤ主義」もまた「反革命」とともにシベリア鉄道に乗って東進してきたのだ。その媒体となったのが、「シオンの長老の議定書」であった。
 この文書は、反革命サイドの白軍将兵に配布されていた。革命勢力のボリシェヴィキの指導者にトロツキーやジノヴィエフなどユダヤ系の革命家がいたことから、反革命側はボリシェヴィキ革命を世界制覇をたくらむユダヤ人による陰謀とみなしていたのである(だが実際には、ボリシェヴィキにおけるユダヤ系革命家比率は、社会革命党(エス・エル)などその他の社会主義政党におけるユダヤ人比率よりも低かった)。
荒唐無稽な「シオン長老の議定書」
「シオン長老の議定書」は、帝政時代の1903年にロシアで出版され、「秘密権力の世界征服計画書」という触れ込みで広まった会話形式の文書である。スイスのバーゼルで開かれた「第1回シオニスト会議」(1897年)において、「シオン24人の長老」が決議してユダヤ人による世界支配を表明したという、まったくもって荒唐無稽としかいいようがない内容だ。
 オリジナルの発想はフランスで生まれたようだ。フランスは反ユダヤ主義にもとづく「ドレフュス事件」(1894年、フランスの陸軍将校でユダヤ人のアルフレド・ドレフュスがスパイ容疑で逮捕された事件)が発生した国であり、近代以降、反ユダヤ主義の発生地となっていた。欧州では最も早くユダヤ人が「解放」されたフランスでは、成功したユダヤ人の存在が妬みや憎しみの対象となっていたからだ。だが、「ドレフュス事件」が最終的に冤罪と確定して以降、フランスでは「反ユダヤ主義」は下火になった。
 一方、ロシア帝国でも、反ユダヤ主義が台頭していた。皇帝アレクサンドル2世が暗殺(1881年)されると、ロシア帝国は犯人をユダヤ人テロリストによるものとみなした。そして、新たに設立された政治秘密警察組織の内務省警察部警備局(オフラーナ)が反ユダヤ主義文書である「シオン長老の議定書」を作成させ、拡散させたと言われている。その文書が、革命後に猛威を振るうことになったのだ。
日本で展開された反ユダヤ主義
 さて、シベリア出兵に出征した帝国陸軍が「シオン長老の議定書」を知ることになったのは、日本が傀儡として担ぎ上げたコサックのアタマン・セミョーノフの司令部にこの文書が山積みされていたからだ。そして、司令部に出入りしていたロシア語のできる陸軍将校たちや、軍属となっていたロシア語通訳たちが日本に持ち帰ることになる。現地でこの文書を読んだことで、日本人は初めて反ユダヤ主義思想に触れることになったのだ。
 まずは、陸軍のロシア語教官でロシア語通訳として従軍した樋口艶之助(ひぐち・つやのすけ)が、ペンネームで発表した『猶太禍(ゆだやか)』の中で紹介した。セミョーノフ軍の連絡将校をつとめていた陸軍将校の安江仙弘(やすえ・のりひろ)もまた、『世界革命之裏面』というタイトルで日本語訳し、ペンネームで出版している。
 安江氏は、のちに大連特務機関長として、満洲国へのユダヤ資本誘致を目的とした「河豚計画」にも関与している。満洲国ではユダヤ系住民の保護を行っているので、その後半生だけを知っている人は奇異に感じるかもしれないが、思想と実践との間に少なからぬギャップがあったようだ。
 ユダヤ人がわずかしか在住していない日本では、反ユダヤ主義はあくまでも頭の中の虚構であり、観念論であるに過ぎない(現在でも日本に住むユダヤ人はせいぜい1000人前後で、多くても2000人以下とされる)。仕事なり私生活で、生身の人間としてのユダヤ人との接触があれば、反ユダヤ主義という観念論はすぐに消えてしまうものだ。おそらく安江氏においても、そうだったのだろう。どんな国や民族にも、いいヤツもいれば悪いヤツもいる。現在の韓国の「反日」や日本側の「嫌韓」もまた、その類いの観念論としての色彩が強いというべきではないだろうか。
 シベリア出兵がきっかけになった、日本における反ユダヤ主義の展開については、あまりも膨大なものになってしまうのでここでは省略するが、戦後になってからも消え去ることはなかった。1995年には、アウシュヴィッツはなかったと主張する記事を掲載したことで、掲載雑誌が廃刊に追い込まれた「マルコポーロ事件」があった。それ以後も現在に至るまで反ユダヤ主義がらみの陰謀論は消えることなく生き延びている。
 とくにネット時代には、かえって見えにくくなっているかもしれない。この問題に関心のある人は、『ユダヤ人陰謀説−日本の中の反ユダヤと親ユダヤ』(デイヴィッド・グッドマン/宮沢正典、講談社、1999)を参照するといいだろう。
帝政ロシアのユダヤ人が米国とパレスチナに
 以上、「シオン長老の議定書」が、ロシアからいかに全世界に拡散していったかについて見てきた。
 そもそもなぜロシアが発信源だったのか、その背景まで考えてみる必要がある。帝政時代のロシアにおいてユダヤ人はいかなる環境に置かれていたのかについては、拙著『ビジネスパーソンのための近現代史の読み方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2017)の第4章に書いているので、ご覧いただければ幸いである。
「シオン長老の議定書」作成とほぼ軌を一にして、ロシアのユダヤ人は、度重なるポグロム(ユダヤ人に対する組織的虐殺)の恐怖にさらされることになる。その結果、帝政時代にロシアに住んでいたユダヤ人の大部分は米国とパレスチナ(現在のイスラエル)に移住していった。ロシアに残って社会主義に身を投じたのは知識階層が中心で、ユダヤ人の多くは生きるために移民として脱出する道を選択したのである。現在、ユダヤ系米国人の9割近くが、ロシア移民の子孫たちである。
 なお、反ボリシェヴィキが反ユダヤ主義と結びついたのはロシアだけではない。英国でもフランスでも、米国でもまた同様であった。いずれも第2次世界大戦の戦勝国であり、シベリア干渉戦争に参加した国々でもある。英仏では1920年に反ユダヤ主義の論調がメディアにあふれ出ている。
「シオン長老の議定書」は米国でも拡散した。後編では、議定書が米国を経てドイツのヒトラーにまで届く流れと、第2時大戦前に登場して日本を苦しめ続けた偽文書を紹介しよう。
(後編につづく。後編は明日公開します。)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55703

http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/657.html
[政治・選挙・NHK258] スマートメーターの発火事故が続発する「根深い事情」 情報隠す体質は変わらず  事故の「報告不要」を指示した総務省
2019年3月12日 岡田幹治 :ジャーナリスト
スマートメーターの発火事故が続発する「根深い事情」 

全国で切り替えが進められている次世代型の検針器スマートメーターの製品不良と施工ミスで発火事故が続いている(写真はイメージです) Photo:PIXTA
 全国で切り替えが進められている次世代型の検針器「スマートメーター」の発火事故が続いている。

 発火のほか異常音や照明がちらつくなどのトラブルも、東京電力と中部電力の管内で確認されている。

 メーターに想定以上の電気が流れて発熱するためだが、原因のほとんどは製品の不良と施工ミスだ。

東電管内、27件の発火事故
異常音や照明のちらつきも
 昨年11月30日午後2時ごろ、ランチタイムが終わりに近づき、客もまばらになっていた茨城県つくば市の飲食店に、アスファルトの舗装工事のような油っぽいニオイが漂った。

 不審に思った店のマネジャーが外に出てみると、外壁に取り付けてあったスマートメーターから青白い炎が出ていた。あわてて備え付けの粉末消火器で消し止めたが、外壁が焼け焦げた。

 店の電気が使えず、営業ができなくなったため、客には頭を下げて帰ってもらったという。

 事故直後、マネジャーは「本当にびっくりした。気が付くのが遅かったら建物に燃え移っていた」「営業補償をもらいたいぐらい」などと話していたという。

「東京電力パワーグリッド」(東電の会社分割で2016年4月に発足した配送電会社=東電PG)は12月1日、自社のサイトでこの火災を公表し、6日には「原因は施工不良の可能性が高い」と発表している。

 今年2月末に店を訪れると、マネジャーは「その件はいっさいコメントできない」と話すだけ。しかし痕跡は残っていた。

 スマートメーターは真新しくなり、壁板が50センチ四方ほど取り換えられたことが、はっきりわかった。

 発火まではいかないが、近所中に聞こえる異常音が出る事故も報道されている。

 2017年元日、東京都江戸川区の住宅で、外壁に取り付けてあったスマートメーターから「ピーー」という、ものすごい音が出て鳴りやまず、大騒ぎになった。

 当時、住人は留守だったが、向かいに住む夫婦が気づいて東電に電話で知らせ、1時間ほどで駆けつけた作業員がメーターを取り換え、異常音はおさまった。

 取り換えにきた作業員が、このまま放っておけば火事になるところだった、と話したという(『東京新聞』昨年11月21日朝刊)。

 東電管内だけでも、スマートメーターの発火事故は2016年5月から昨年末までに24件判明しており、今年も2月までに3件発生している(電磁波問題に取り組む市民団体「電磁波問題市民研究会=電磁波研」調べ)。

 また東電PGによれば、異常音は約200件起きている。中部電力管内では、発火・異常音・室内の照明のちらつきといった「トラブル」が50件以上確認されている(注1)。

注1 日本に先駆けて切り替えが行われたアメリカやカナダなどでも、火災が多数発生している。米カリフォルニア州では2012年に、スマートメーターを設置した翌日に火災が発生し、1人が死亡する事故も起きている(加藤やすこ『電磁波による健康被害』)。

想定以上の電気が流れる
原因は「製品不良」と「施工ミス」
 スマートメーターは、通信機能を持ったデジタル式の電力量計だ。

 従来のメーターがアナログ型で、検針員が毎月検針していたのに対し、電気使用量を30分ごとに(中継点を経由して)電力会社へ送信できる。

 政府が閣議決定した「エネルギー基本計画」で「2020年代早期に全所帯・全事業所に導入する」と定めている。

 電力会社最大手の東電管内では、すでに約1900万台を交換し、20年度中に全世帯2900万台の交換を終える計画だ。

 そのスマートメーターで発火や異常音が起きるのはなぜなのか。

 東電PGの説明によれば、メーター内に想定以上の電気が流れて発熱するためで、その原因は2つある。

 1つは、東光東芝メーターシステムズ(埼玉県蓮田市)製のメーターの一部、約9万台に欠陥があったことだ。

 設置した世帯にはダイレクトメールで連絡し、年末までに正常なメーターに取り換えるという(注2)。

 もう1つの原因は、スマートメーターを取り付けた際の施工ミスだ。

 スマートメーターでは電線が何本もネジで留められているが、その締め付けが弱かった場合などである。

 再発防止対策として東電PGは、設置工事を発注した会社に注意を喚起し、約600人の作業員に研修を実施した。さらに、設置済みメーターから5200台を抽出してネジの締め付け具合をチェックし、全体の状況を把握するという。

 だが、施行工事を一時停止し、全数を調べるといった大掛かりな調査をしたわけではなく、発火事故は今後も発生する可能性がある。

 スマートメーターが設置された家庭では、できるだけ早く異常に気づけるよう、ニオイや音に常に注意しているくらいしか、対応策はないようだ。

注2 不良製品は、東光東芝メーターシステムズで15年3〜12月に製造された型式「S43WS−TA」と16年8〜9月に製造された型式「S18WS−TA」。スマートメーターの表面にメーカー名・型式・製造年が表記されているので、自宅のメーターが該当するかどうか確認できる。

なぜ見過ごされてきたのか
「安全性軽視」や慣れあい?
「不良製品」や「施工ミス」がなぜ見逃されてきたのか。

 そこには日本の電力業界に根ざす「構造問題」があるように思われる。

 まず「安全性軽視」だ。

 東電の場合、2010年度に実証実験を始めたが、福島第一原発の事故で中断し、仕様変更などをして14年4月に切り替えを始めた。20年度末に導入を終えるという10電力会社の中では最短の計画を公表している。

 そのために製品の製造と設置作業を急ぎに急いでいる(他社は中部電力の22年度末など、22〜24年度)。その過程で安全が二の次にされた疑いがある。

 東電管内では16年5月から発火事故が起きていたが、東電PGがそのことを自社のサイト(ホームページ)で発表したのは、最初の発火から2年半後、東京新聞が報道した翌日の昨年11月19日だった。

 そのサイトでは、発生したのは「メーター内部の基板部分の発熱による焦げ跡や異音などの不具合」であり、「メーターの各種部品には難燃性の部材を使っているので、建物に被害を与える可能性は極めて低い」と記している。

 しかし、つくば市の場合など、真夜中に発生して気づくのが遅れていたら、どうなっていただろうか。

 スマートメーターの突然の発火に驚き、水をかけて消火しようとした人もいたが、これは感電の可能性のある危険な行為だ。

「スマートメーターは発火する可能性があること」や「消火には粉末式消化器を使うこと」などを事前に広報しておけば、このような行為は防げたはずだ。

 次に指摘できるのは、「ファミリー企業」で仕事を分け合うことによる慣れ合いの体質だ。

 東電発注の検針器は、東電幹部が天下りしているメーター製造会社4社が受注してきた。

 東光東芝メーターシステムズ(東電が35%出資する東光高岳の子会社)・大崎電気工業・三菱電機・GE富士電機メーターの4社だ。

 スマートメーターでもこの「慣行」が続けば、コスト高・料金値上げの一因になると、原発事故の後、指摘され、メディアでも「スマートメーター利権」(『週刊ダイヤモンド』12年4月14日号)などと取り上げられた。

 このため東電は、予定していた「指名入札」をやめ、「国際入札」にしたが、結果は従来と変わらなかった(網代太郎『スマートメーターの何が問題か』)。

 その東光東芝メーターシステムズ製のメーターで、不良製品が9万台も出たのだ。競争もなく身内同士の受発注で、製造工程や品質の管理に甘さがあったと言われても仕方がない。

情報隠す体質は変わらず
事故の「報告不要」を指示した総務省
 安全性の軽視や閉鎖的な体質は、情報の公開が独りよがりで、都合の悪いことは隠す体質につながる。

 たとえば、メーターの切り替え工事をする場合、施工業者から各家庭にチラシ1枚の連絡があり、断らない限り実施される。

 配布される「取替工事のお知らせ」(チラシ)には、訪問予定日と工事の際の停電の有無が大きく記入されているだけで、何のために、どんなメーターに交換するのか、交換にはどんなリスクがあるのかなどの説明はない。

 チラシが配布されたその日のうちに工事が行われ、知らないうちに交換された例や、偽りの説明をして強引に交換した例もあり、事実上の強制とみる人が多い。

 ところで、電気製品の発火は、消費者庁などが運営する「事故情報データバンクシステム」に掲載(登録)し、広く消費者に知らせて注意を促すべき事故だ。

 消費者安全法は、商品の安全性の問題で消費者が身体に一定程度の被害を受けたり、受ける恐れがあったりする事故の報告を行政機関に義務づけている。

 実際、スマートメーターの発火事故は同システムに2017年1月から掲載されてきた。ところが、いつの間にか、東京都内の事故が掲載されなくなった。

 原因は、総務省消防庁が18年4月、東京消防庁に「今後、報告しないよう」指示したことだった。

 消防庁によれば、スマートメーターは東電PGの所有物であり、消費者が家の中で使う一般的な家電ではない。このような製品の火災は報告しないことに決めており、東京消防庁の運用は間違いだという。

 これについて石田真敏総務相は昨年12月7日の会見で「スマートメーターの火災が複数発生している状況を踏まえると、消費者の注意を喚起することも重要だと考えられる。今後、消費者庁とも相談し、スマートメーターも報告対象とすることについて検討していきたい」と述べている。

 昨年4月といえば、電磁波研などが、政府の全世帯への設置計画に対して、「スマートメーターの全戸強制をやめさせよう」と、訴え、衆院議員会館で集会を開いた時期だ。

 その時期にあえて消防庁が「事故報告不要」の指示を出したことになる。

(ジャーナリスト 岡田幹治)
https://diamond.jp/articles/-/196561
http://www.asyura2.com/19/senkyo258/msg/401.html

[政治・選挙・NHK258] 脱韓国へ、対中作戦で米陸軍・海兵隊が陸自と一体化 米朝首脳会談後の大きな変化、喫緊に求められる日本の複眼思考  
脱韓国へ、対中作戦で米陸軍・海兵隊が陸自と一体化 米朝首脳会談後の大きな変化、喫緊に求められる日本の複眼思考
2019.3.12(火) 用田 和仁

比首都マニラの北方に位置するサンバレス州サンアントニオで行われた合同訓練で、南シナ海に面した海岸を走行する自衛隊の水陸両用車(2018年10月6日撮影)。(c)TED ALJIBE / AFP〔AFPBB News〕
1 日本の生死に無関心でいいのか
 2回目の米朝首脳会談が終わっていろいろな議論があるが、日本では米朝首脳会談が失敗か成功かの論評ばかりが語られ、そこを起点として日本はどう朝鮮半島情勢に対応していくのか、どう中国に立ち向かっていくのかの具体的な議論がなされないのは残念だ。
 相変わらず国会は日本にとって死活的重要なアジア情勢について深く分析し、対応手段を講じようとしない。
 政治家も国民も、米国の庇護の下、この国は未来永劫続くと思っているのならば大きな間違いだ。このような時に必要なのは、複眼思考である。
2 米朝首脳会談の成果とは何か
 米朝首脳会談を評価するうえで、絶対に外してはならないことがある。
 1つは、どんなに北朝鮮が騒いでも、北朝鮮問題はインド太平洋地域で起きている米中対決の「前哨戦」に過ぎず、「本丸」は中国だという複眼思考である。
 そして、進行中の朝鮮半島情勢が、混沌とした日清戦争前の状況に近づきつつあるとの認識だ。
 2つ目は、我々は預言者ではないということだ。
 将来を見通すときは1つのシナリオでなく、幅を持った複眼思考で将来を捉える必要がある。そして変化に応じプランAからプランBへ変化させていくことだ。その切り替えが難しい。
 その視点から考えると1回目の首脳会談の最大の成果は、前哨戦たる北朝鮮対処一辺倒から、「本丸」中国対処に米国が本気になり、大きく舵を切ったことである。
 米国が北朝鮮対処に忙殺されている間に、中国は2017年10月の中国共産党大会で、新たな目標を設定した。
 これまで中国は、2020年までに東・南シナ海を排他的に支配し、2050年までに太平洋を2分割して米国から覇権を奪うことを目標としてきた。
 その中間の2035年までに西太平洋における軍事覇権を確立するとの目標を設定したものであり、その意味するところは極めて重大である。
 また、2018年6月の中央外事工作会議で中国独自の価値観やシステムに基づいて新たな国際秩序を作ると宣言し、中華民族の支配の下、世界に運命共同体を作ると宣言した。
 これに対し米国は、大国間競争の時代に入ったとの認識を前提として国家安全保障戦略(2017年12月)や国防戦略(2018年1月)を策定し、まずその手始めとして中国に対して貿易戦争を開始したのも第1回米朝首脳会談の結果を反映していると見ることができよう。
 2回目の首脳会談の成果は、現時点において、北朝鮮は核ミサイルの開発計画を全面凍結する意思がないことが国際社会に明白にされたことであり、金正恩労働党委員長が裸の王様で、国際情勢を正しく理解していなかったことが白日の下に晒されたことである。
 また、今回はお友達感覚でトランプ大統領を籠絡することができるだろうと高をくくっていた認識をへし折り、米国と北朝鮮の格の違いと軍事力や情報の圧倒的な差を再認識させたことだろう。
 これでまた金正恩は、米国の軍事的脅威の前に立たされることになるだろう。
 確かに北朝鮮の非核化の時期は遅くなっただろう。
 しかし、トランプ大統領は、国際社会に北朝鮮が核を真剣に放棄せず、時間稼ぎに入ったことを説明する必要はなく、改めて米国の選択肢に軍事行動を含めることができるようになる。
 今後の展開において、トランプ大統領は韓国に遠慮することなく、北朝鮮が米国はまさか情報を掴んでいるはずがないと考えていた軍事施設を奇襲的に攻撃し、金正恩を強制的に成果のあるテーブルに付かせることもあり得よう。
 一方、トランプ大統領のトップダウンのやり方は、複雑な核廃棄交渉には向かないとして事務レベルに落として詰めの作業から入るべきとの意見もあるが、それは時間稼ぎをしたい北朝鮮や中国の思惑通りになってしまう。
 独裁国家である北朝鮮や中国にはトップダウンで打開をしていかなければ決して解決には結びつかない。日本人流の安易な考えは捨てるべきだ。
3 2回目の会談の負の遺産
 もちろん、負の遺産も明瞭になってきた。
 第1に、米国は、北朝鮮にすり寄り、日本との問題を大きくする韓国を見限ったかもしれない。
 2019年1月、文在寅大統領政権発足後初めて発表された韓国の国防白書では、「北朝鮮は敵」の文言が削除され、対北朝鮮作戦における「大量反撃報復(KMPR)」などの用語も消えた。
 そのような韓国は、もはや米韓同盟の継続を望んではいないと考えられても仕方があるまい。
 今後は米海空軍に対する反撃能力を持たない北朝鮮に対しては、軍事的合理性に基づき海空軍を主体とした打撃を柱にするつもりだ。
 従って、在韓米陸軍はいずれ撤収するし、この流れを止めることはできないだろう。
 朝鮮戦争前に米国がアチソンラインという防衛線を日本と朝鮮半島の間に引いたが、それが復活する。そして、日本の防衛は、南西諸島に引き続き、五島列島、対馬にその防衛拠点を拡大しなければならない。
 第2は、核兵器は依然として北朝鮮に残る可能性があるし、また、短・中距離ミサイルの廃棄までは進まない可能性が大きい。しかし、米国を責めても何の意味はない。
 そもそも日本の防衛を他人事として、米国による核の持ち込みすら拒否する日本の態度や、防衛に十分な投資をしなかった日本の責任である。
 北朝鮮や中国に対して日本のミサイル防衛を根本的に解決するには、すでに何度か書いてきたが(「中国の日本侵略への備えを明確にせよ」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55316)、防衛大綱にあるサイバー・電磁波兵器(マイクロウエーブ兵器、電波妨害兵器)の早急な開発・装備化・日本全土への展開しかない。
 これが主でありミサイルは最終手段としての従の手段である。
 第3は、2回目の会談にかかわらず極めて大切なことだが、北朝鮮と本丸中国を同時に視界に入れながら、日本防衛を考えなければならないということだ。
 特に複眼思考を持たない日本は、米国が中国に対して本気で戦いを挑んでいるのに対し、日本があたかも第三者として米中の仲介役を気取っているように映ることは、米国をいら立たせることになろう。
 再三、中国の軍艦(公船は軍隊の指揮下に入った)が尖閣の領海を侵犯しているのに、安倍晋三首相は、繰り返し中国とは「完全に正常な軌道に戻った」とし、米国と真逆な「競争」から「協調」へと向かうとする見解は異常だ。
 韓国のみならず、防衛力の格段の強化を怠る日本も見捨てられることもあることを認識すべきである。
 そのような中で、昨年から陸上自衛隊と米陸軍は第1列島線沿いに対艦ミサイルによる「壁」を作る戦略と装備のすり合わせを進めている。
 さらに米海兵隊もこれに参画することになった。
 すなわち、固定配置型の陸上主体の3軍種が、機動戦力である海空軍と一体となって、本気で「船を沈めよ」の実現に取り掛かったのである。複眼思考なくしてこの一体化は考えられない。
4 第1列島線の壁の日米による一体化
 くしくもこの3月下旬、奄美大島に対艦ミサイル、防空ミサイル、普通科部隊を中核とする島嶼配置型の部隊が新編される。
 2009年に非公開の陸海空自の統合演習において、対艦ミサイル部隊は初めて海を渡り、奄美大島に展開し、統合訓練を行ったのがすべての始まりだ。そしてクロスドメイン(領域横断作戦)作戦はすでに10年前に始まっていた。
 その後米国では、前米海軍大学のトシ・ヨシハラ教授によって地上発射型による対艦ミサイル防衛の有効性が広められ、2015年に筆者らがCSBA(戦略予算評価センター)を訪問した時は、クレピナビッチ所長によって、列島線防衛が具体化されていた。
 そこでは、米陸軍は陸自の作戦・編成を学ぶべきだと言っていたが、当時、米陸軍は頑なに拒否していたものだ。
 それが、昨年、陸自と米陸軍の対艦ミサイル部隊が、米海軍のリムパック演習に参加したことは間違いなくCSBAの考えがハリス前太平洋軍司令官に伝わり、新たな海軍戦略である「打撃力の分散」と連動し「船を沈めよ」に集約され、実現したものだ。
出典:米国戦略予算評価センター(CSBA)
 一方、海兵隊司令官は、上陸作戦一辺倒の考え方を変更し、「シーコントロールの戦いで海軍を支援するため、可及的すみやかに長射程対艦ミサイルを選定し配備したい」と米海軍ニュースに語った。
 それをジョセフ・ハナセック海軍大尉は具体化し、地上兵力はエアシーバトルで価値を持つとして「島の砦(Island Forts)」のタイトルでプロシーディング誌(2019年2月号)に論文を発表した。
 今後はINF条約が破棄されることから、米陸軍・海兵隊共に長距離対艦ミサイル保有に向かうだろう。
 すでに空自が導入するLRASMは約1000キロの射程を持つF-18空母艦載機用の対艦ミサイルであるが、イージス艦からも発射可能で、また、簡単に地上発射型にも発展させることができる。
 これを日本や台湾、フィリピン、ベトナムなどに配置したら、中国艦隊は東・南シナ海で壊滅するだろう。日本も早急に1000キロ射程の対艦ミサイルに改造すべきである。
出典:プロシーディング誌2019.2 ジョセフ・ハナセック大尉(赤矢印は筆者)
 これは南西諸島防衛の雛形の初歩的な絵ではあるが、特筆すべき点は、対馬に対艦ミサイルを配置している点である。
 中国海軍は最近日本海に進出している。
 これは南西諸島を抜けて西太平洋に至るだけではなく、日本海側から東京や米軍施設を攻撃し、あるいは津軽海峡などを抜けて太平洋へ進出する危険な兆候であり、韓国配慮で対馬の対艦拠点化を躊躇してはならない。
5 北朝鮮対処と中国対処は同一線上にある
 北朝鮮対応は、結局、ミサイル防衛とゲリラ(ハイブリッド戦)対処そして、韓国からの邦人救助や避難民への対応措置に集約されるだろう。
 これはすべて対中対処のケースにも含まれる。
 このため、日本は一番厳しい対中国対処を柱として防衛力を至急構築していくことが喫緊の課題である。
 孫子は、その「謀攻篇」で「故上兵伐謀」と言っている。
 これは、「戦いで最も重要なことは、敵の戦略(核心)を攻撃すること」を意味し、その格言の通り、日本の最大の狙いは、中国の拡大覇権戦略の中核である海軍、その「船を沈めよ」である。
 繰り返すが、複眼思考のできない単純な判断だけは避けるべきである。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55716

http://www.asyura2.com/19/senkyo258/msg/402.html

[経世済民131] 企業の社債は「ジャンク債予備軍」が54%にOECDが警鐘 世界経済、金融危機以来の低成長 日銀「次の一手は追加緩和」倍増
2019年3月12日 週刊ダイヤモンド編集部 ,竹田幸平 :記者
企業の社債は「ジャンク債予備軍」が54%に、OECDが警鐘
過去FRB議長を務めたバーナンキ氏
金融危機時にFRB議長を務めたバーナンキ氏(写真)が決めた量的金融緩和は低金利をもたらし、社債市場膨張につながった Photo:REUTERS/アフロ
「社債という形態の未払い債務の規模は2018年末、世界全体で13兆ドル(約1450兆円)に達し、08年から倍増した」。このほどOECD(経済協力開発機構)は国際的な社債の動向に関する報告書を取りまとめ、リーマンショック後に急拡大を続けてきた同市場に対して警鐘を鳴らしている。

 金融危機後は米国をはじめ、主要国の中央銀行が長らく金融緩和を続けたことで世界的に金利が低下。グローバルな投資家が少しでも高い利回りが得られる投資対象を探し求めた結果、国債より信用度が劣る分利回りの高い、企業が発行する社債に巨額のマネーが群がってきた。

 社債は、その発行体となる企業の財務の健全性などから格付け会社が「投資適格」と判断するものと、高利回りだが信用度が低く、元本償還や利払いの不確実性が高い「投資不適格」と見なすものに大別される。

 OECDが危惧するのは、投資適格の社債の中で最も信用度の低いトリプルB格の発行残高に占める割合が54%に達し、2000年の20%超から急上昇していること。「ジャンク(投機的)」とも称される投資不適格すれすれの“予備軍”がひしめいているのだ。

 野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは景気悪化や金利上昇時などに「1段階の格下げでジャンク債となるトリプルB格社債には危うさが潜む」と指摘。特に近年はエネルギー関連企業の社債が増えているとして、「原油価格下落などを引き金に、トリプルB格市場が一気に崩れることもあり得る」と警戒する。

さらなる増加の公算も
 足元では、そんな社債市場が一段と拡大しかねない市場環境が到来した。FRB(米連邦準備制度理事会)は15年12月の利上げ決定を皮切りに金融緩和からの出口戦略を進めてきたが、今年1月末にパウエル議長が方針を急転換。しばらく利上げを見送る考えを示したのだ。低金利環境が長引けば、企業が社債を発行しやすい環境が続くことになる。

 だが、これは社債市場の潜在的なリスクを高める危険と隣り合わせだ。同報告書によれば、今でさえ仮に08年の金融危機と同程度のショックが起こると、5000億ドル相当の社債が1年以内にジャンク債へ転じる。また不況下では企業の負債の返済が難しくなり、社債の債務不履行の増加で「不景気の影響がさらに増幅される」(OECD)懸念すらある。

 米国では投資適格から投資不適格へと格下げされた企業のことを、キリスト教で天使だったが神に反逆して悪魔となった存在を指す「フォーリンエンジェル(堕天使)」と呼ぶ。このままいけば景気が悪化した際、社債市場では堕天使が一気に姿を現し、世界経済を悪夢へ陥れるシナリオも現実味を帯びかねない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 竹田幸平)
https://diamond.jp/articles/-/196450


 

世界経済、金融危機以来の低成長に−「下方モメンタム自律化」リスク
Fergal O'Brien
2019年3月12日 10:49 JST
最新の成長率は前期比年率2.1%−昨年半ばは約4%だった
ブルームバーグ・エコノミクスの新たなGDPトラッカーが示す
グローバル経済は2018年に急減速し、世界の国内総生産(GDP)成長率は10年前の金融危機以来の弱いペースとなっている。ブルームバーグ・エコノミクス(BE)の指標が示した。

  BEの新たなGDPトラッカーによれば、最新の四半期成長率は前期比年率2.1%。昨年半ばは約4%だった。世界経済が足掛かりを見つけ、減速が止まる可能性はあるが、「下方モメンタムの自律化がリスクだ」とダン・ハンソン、トム・オーリック両エコノミストは指摘する。

relates to 世界経済、金融危機以来の低成長に−「下方モメンタム自律化」リスク
  経済協力開発機構(OECD)が11日発表した景気先行指数は、米国と英国、カナダ、そしてドイツとイタリアを含むユーロ圏で全体的に勢いが鈍っている一方、中国では安定化の兆しがあることを示している。

One Direction
OECD gauge has slipped lower, pointing to easing global momentum

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iskMOEc1HN8c/v1/576x-1.png

Source: Organisation for Economic Cooperation and Development

  暗い展開にもかかわらず、欧州中央銀行(ECB)の当局者は平静を装い、ユーロ圏が経験しているのは減速であって、リセッション(景気後退)ではないと主張。クーレECB理事は11日付のイタリア紙コリエレ・デラ・セラとのインタビューで、「以前ほど強くはないが、引き続きしっかりした経済成長が見られる」と述べた。

BEエコノミストのコメント
「17年半ばに世界経済に根付いた循環的な上振れは、決して続くものではなかった。それでも、昨年終盤からの減速の度合いは、われわれを含む多くのエコノミストを驚かせている」
(ハンソン、オーリック両氏のリポートはこちらをクリック)

原題:Global Economy Hits Its Weakest Spell Since Financial Crisis (2)(抜粋)


ポンド8日ぶりに上昇、EU離脱案の採決控えて
Susanne Barton
2019年3月12日 3:44 JST 更新日時 2019年3月12日 6:42 JST
英首相と欧州委員長が急きょ会談、英議会の離脱案採決控え
ドル指数は小幅低下、ドルが主要10通貨の大半に対し下げ
11日のニューヨーク外国為替市場では、ポンドがドルに対し8営業日ぶりに上昇。昨年8月以降最長の連続安に歯止めがかかった。メイ英首相とユンケル欧州委員長の会談が急きょ設定されたが、トレーダーの間で英国の欧州連合(EU)離脱が延期されるとの見方が優勢となった。

ニューヨーク時間午後4時31分現在、主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は前週末比0.2%低下。ドルは主要10通貨の大半に対して下落
主要10通貨の中ではノルウェー・クローネの上昇も目立った
ポンドは対ドルで1%高の1ポンド=1.3144ドル。EU離脱延期への楽観が追い風に
英議会は12日、メイ首相のEU離脱案について採決を予定。引き続き首相が敗北するとのシナリオが見込まれている
早い時間には1.2949ドルで日中安値を付けた
「EU離脱の延期が実現する兆しはどのようなものであっても、ポンドに多少の上昇余地をもたらす可能性がある」と、ウェルズ・ファーゴ・セキュリティーズの通貨ストラテジスト、ブレンダン・マケナ氏は顧客向けメモで指摘
ユーロはドルに対し0.1%高の1ユーロ=1.1245ドル。1.1222ドルの日中安値から持ち直した
ドルは対円で0.1%未満の上昇で1ドル=111円22銭。一時は0.3%安となっていた
日銀金融政策決定会合を控え、日本の10年債利回りが約2週間ぶりの水準に低下
オーストラリア・ドルは米ドルに対し0.4%高
欧州時間の取引
  ポンドが対ドルで続落。一時は0.5%安の1ポンド=1.2949ドルとなった。12日に下院が採決を予定しているメイ英首相のEU離脱案への支持が十分でないことを示唆する報道が材料視された。ドル指数は0.1%上昇。

原題:Pound Set to End Losing Streak as May Meets Juncker: Inside G-10(抜粋)
Pound Declines as U.K. Says Brexit Talks Deadlocked: Inside G-10

(相場を更新し、情報を追加します.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-12/PO8CGP6K50XS01


 

日銀「次の一手は追加緩和」が倍増、今会合は全員現状維持−サーベイ
日高正裕、Cynthia Li
2019年3月12日 5:00 JST
「相対的に副作用の小さい手段が選択される可能性」とシティ村嶋氏
財政ファイナンスより「ETF買いの方が質的に良い」とアグリコル
世界経済の先行き不透明感や国内の景気後退懸念が強まる中、日本銀行が次に動くとすれば追加緩和になるとの見方が増えている。

  エコノミスト46人を対象に4−7日に実施した調査で、次の政策変更は追加緩和との予想は17人(37%)と1月の前回調査(18%)から倍増した。年内の政策変更を予想したのは7人で、うち6人が追加緩和だった。日銀が14、15両日開く金融政策決定会合はエコノミスト46人中、全員が現状維持を予想した。

調査の結果はここをクリックしてください

  内閣府は1月の景気動向指数(一致指数)で基調判断を景気後退局面に入った可能性が高いことを示す「下方への局面変化」に引き下げた。複数の関係者によると、日銀は今会合で海外経済、輸出、生産の現状判断を下方修正するかどうか議論する見通しだ。世界経済の先行き不透明感の高まりや米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ停止を受けて、日銀の追加緩和期待が徐々に強まっている。

  シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミストは、最近の日銀幹部の発言からは「追加緩和への期待を残すことで円高を回避したい一方で、本音では追加緩和は避けたいという雰囲気が透けて見える」と指摘。今後、追加緩和が必要となる場合、「相対的に副作用の小さい手段が選択される可能性が高いように思われる」とみる。

ETF購入
  有力な選択肢とみられているのが指数連動型上場投資信託(ETF)の買い増しだ。英国の欧州連合(EU)離脱問題などで市場が不安定化した2016年7月、日銀はETFの年間購入額を約6兆円に倍増。半年前に導入し不評だったマイナス金利の深掘りや持続性への疑念が生じていた長期国債購入の拡大は行わず、9月会合で操作目標をマネーの量から金利にシフトする長短金利操作に転換した。

  クレディ・アグリコル証券の森田京平チーフエコノミストは、「1ドル=100円を割る円高となれば圧力は強まる」と予想する。その際、日銀に「何が効果があるか」というぜいたくな選択の余地はなく、「何が副作用を最小に抑えられるか」という視点しか残されていないと指摘。国の財政赤字を日銀が従属的に穴埋めする財政ファイナンスよりは「ETF買いの方がよほど質的に良い」と言う。

  ETF買い入れについても市場の価格形成を歪めているとの批判があるほか、日銀財務への影響も懸念されている。黒田東彦総裁は2月27日の国会答弁で、TOPIXが1350程度を下回ると保有ETFの時価が簿価を下回ることを明らかにした。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニアマーケットエコノミストは、株価が財務に与える潜在的な影響が大きくなっていることや、国債と異なり将来売却が必要なこと、ETF購入に関する説明責任の説得力が乏しいことを考えると「さらなる増額は難しくなってきている」とみる。

  しかし、SMBC日興証券の森田長太郎チーフ金利ストラテジストは、「株価下落の程度次第ではその時点で本格的な景気後退に陥っている可能性もある」ので、その場合はETF購入額の拡大に慎重になる余地もないのではないかとみる。

REIT減額
  追加緩和の可能性がささやかれる中、日銀は不動産投資信託(J−REIT)についてはむしろ買い入れペースを縮小している。ブルームバーグ・インテリジェンスの増島雄樹主席エコノミストは、「昨年7月に買い入れ額が上下に変動し得るものと変更して以降、過去7カ月間買い入れペースは鈍っている」と指摘する。

  岡三証券の愛宕伸康チーフエコノミストは「金融機関の不動産向け融資が膨らんでおり、次回金融システムリポートのヒートマップは過熱を示す赤が点灯する見通しだ」と指摘。購入ペース鈍化は「そうした金融不均衡の蓄積を意識した動き」とみる。東海東京調査センターの武藤弘明チーフエコノミストも、日銀は不動産向け融資の過熱を懸念しており、「今後政策的に買い入れを停止する可能性もある」と予想する。

  増島氏はREIT購入の目標額は国債購入額の「めど」とは異なるので、「大幅なペース鈍化が丸1年続くようなら、日銀は正式に目標を変更する必要があろう」としている。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-11/PO6S8A6K50XT01?srnd=cojp-v2

 


メイ英首相、離脱案で「法的拘束力ある修正」確保−EUと合意
Tim Ross
2019年3月12日 7:21 JST 更新日時 2019年3月12日 12:11 JST
「この合意案か、離脱が全く実現しないかどちらか」と欧州委員長
共同文書はバックストップに無期限に拘束されない法的保証を与える
メイ英首相
メイ英首相 Photographer: Alex Kraus/Bloomberg
メイ英首相は欧州連合(EU)と離脱条件の見直しで合意に達した。だが、英議会の支持が得られる十分な修正を首相が勝ち取ったかどうかは予断を許さない。

  メイ首相は11日遅く、EUの行政執行機関、欧州委員会のユンケル委員長と仏ストラスブールで開いた共同記者会見で、離脱後のアイルランド国境へのハードボーダー(物理的壁)設置回避を保証する「バックストップ(安全策)」条項について、「法的拘束力を伴う修正」で合意が成立したことを明らかにした。

  ユンケル委員長は「取るべき選択ははっきりしている。この合意案か、さもなければ離脱が全く実現しないかどちらかだろう。英国の離脱を秩序立った形で終わらせよう。われわれはその責任を歴史に負っている」と言明。メイ首相は「今こそ一致団結して改善されたこの離脱案を支持し、英国民の負託を実現すべき時だ」と述べ、12日の下院採決で修正案を支持するよう英議会に訴えた。

  メイ首相とユンケル委員長の共同会見での他の主な発言は次の通り。

メイ首相:
バックストップは恒久的な措置にはなり得ない
バックストップは代替措置で置き換えることが可能
安全策の置き換えで非常に明確なスケジュールを確保
離脱案の法的修正を英下院が審議へ
ユンケル委員長:
英国は5月23日までにEUを離脱しなければならない
EU27カ国に離脱巡る新たな文書の承認を求める
英離脱に関する新たな交渉はないだろう
  英政府とEUが合意した共同文書は、アイルランド国境への物理的壁の設置を回避する安全策として、英国全体がEUとの関税同盟にとどまるとしたバックストップ措置に同国が無期限に拘束されないよう法的保証を提供する内容で、12日に下院で集中審議が行われることになる。

  共同文書にはまた、バックストップに代わる通商協定締結に向けてEUが十分努力しない場合、一定の権限を英国に認めることも盛り込まれた。紛争処理制度の下で、EUがバックストップを無期限に存続させるような行動を取っていると独立した仲裁機関が認定できるようになる。

  首相の側近であるデービッド・リディントン氏は11日、「離脱協定案」およびEUとの将来の関係の枠組みを描く「政治宣言案」への修正を英政府が確保したことを明らかにし、これまでの合意を反映させた文書を11日中に議会に提出すると語っていた。

原題:May Strikes New Brexit Deal and Asks Parliament to Back It
May’s Deputy Says Govt Has Secured Changes to Brexit Deal
*MAY: TODAY WE HAVE AGREED LEGALLY BINDING CHANGES TO BACKSTOP
This Is the New Brexit Deal That U.K.’s May Got From the EU(抜粋)

(英とEUが合意した共同文書の内容を追加して更新します.)


日本株は大幅続伸、米小売売上高改善と米国株反発−全業種高い
河元伸吾
2019年3月12日 7:54 JST 更新日時 2019年3月12日 11:39 JST
1月の米小売売上高は0.2%増、前月の大幅減から回復
米S&P500種株価指数は6日ぶりに反発、半導体株指数は2.4%高
12日の東京株式相場は大幅に続伸し、日経平均株価は3週ぶりの日中上昇率を記録。堅調な小売り指標で米国株が6日ぶりに反発して投資家心理が改善した。米ハイテク株高を受けた電機など輸出関連中心に全業種が高い。

TOPIX午前終値は前日比27.38ポイント(1.7%)高の1608.82
日経平均株価は同396円52銭(1.9%)高の2万1521円61銭
  米商務省が11日発表した1月の小売売上高は前月比0.2%増と、市場予想の横ばいを上回り前月の1.6%減から改善した。米S&P500種株価指数は前週末比1.5%高と6営業日ぶりに反発、フィラデルフィア半導体株指数は2.4%高とここ1カ月で最大の上昇率となった。

  みずほ証券の三野博且シニアストラテジストは「大幅なマイナスだった12月の米小売売上高は、政府閉鎖などの一時的な要因で実態以上に下振れていたと確認でき、安心感につながった」と指摘。これをきっかけとした「海外ヘッジファンドなど短期筋による先物主導での買い戻しが相場を押し上げている」と話した。

大幅に続伸し2万1500円台を回復
東証1部33業種は電機、機械、精密機器など輸出関連が上昇率上位、不動産や医薬品の上げも目立つ

日経平均の「都市伝説」覆る、初の旧大証銘柄採用−任天堂には逆風も
長谷川敏郎
2019年3月12日 7:54 JST
銘柄入れ替えでオムロン採用、クオンツアナリストに「驚き」
旧大証銘柄への期待高まるが、ウエート警戒なら任天堂遠のくとの声
日経平均株価の臨時入れ替え銘柄の発表を受け、クオンツアナリストや市場に驚きが出ている。かつての大阪証券取引所銘柄として初の新規採用が実現する一方、同時に日本経済新聞社による銘柄ウエートへの警戒も再認識されたためだ。

  「市場には(旧)大証銘柄は日経平均に組み入れられないという都市伝説があったが否定された」。みずほ証券の永吉勇人チーフクオンツアナリストは、臨時銘柄入れ替え発表後のリポートでこう記した。SMBC日興証券の伊藤桂一チーフクオンツアナリストも同じく、「ついに旧大証銘柄を採用」との反応を示す。

Stock Boards As Japan's Nikkei 225 Hits Above 20,000 At Market Close
都内の株価ボードPhotographer: Noriko Hayashi/Bloomberg
  旧大証銘柄とは大証(現:大阪取引所)を優先市場としていた銘柄群。これまでは村田製や任天堂、日本電産が証券各社が予想する採用候補に挙がった。ロームや小野薬品工業なども旧大証での有力銘柄だった。日本経済新聞社が「市場統合に対する日経平均の銘柄選定上の取り扱い」ルールを2013年6月に変更したことで、旧大証銘柄が採用されるとの期待が一時高まったこともあったが、これまでは空振りに終わっていた。

  現在の構成銘柄であるパイオニアが整理銘柄に指定されたことを受け、日本経済新聞社は8日に旧大証銘柄のオムロンの新規採用を発表。東京証券取引所と旧大証の現物株市場が統合された13年7月以降、旧大証銘柄の採用はなかった。このため、市場では今回のオムロンの採用をきっかけに旧大証銘柄の採用が進むのではないかとの期待が強まっている。

  ただ、採用候補として人気の高い任天堂については、「組み入れが近付くどころか、日経の組み入れウエートに対する警戒が明らかになったことで遠のいた」とも、みずほ証の永吉氏は分析する。任天堂と同様に株価水準の高い村田製が採用見送りとなったのは、同社株を組み入れる資金作りのために既存の224銘柄への売り圧力が相場全体を不安定にしかねないからだ。

  東海東京調査センターの仙石誠マーケットアナリストは、旧大証銘柄が選出された背景として、「現物株統合から5年以上が経過し、東証が市場区分の見直しを行おうとしている流れをくみ取って採用された可能性がある」との見方を示す。「村田製など株価水準が高い銘柄が採用されていけば、必然的にファーストリテイリングの指数ウエートが下がりやすくなる良い一面もある」と話していた。

日経採用で11日は08年以来の上昇率に

ドイツの縮みゆく2大銀行、合併協議がじわり前進
Steven Arons
2019年3月12日 11:58 JST
ドイツ銀とコメルツ銀、非公式の合併協議を強化
両行の経営再建努力は失速−ドイツ銀CEOはディールへの抵抗断念
ドイツの上場金融機関で最大手のドイツ銀行とコメルツ銀行は、独立した企業として成長力を示す時間がなくなりつつあり、合併にじわり近づいている。

  事情に詳しい関係者1人によると、両行は自行の経営再建努力が失速する中、非公式の合併協議を強化している。ドイツ銀のクリスティアン・ゼービング最高経営責任者(CEO)には合併を追求する正式な責務はなく、他の選択肢も依然検討されているが、同CEOは年内のディール取りまとめへの抵抗を断念したと、同関係者は匿名を条件に明らかにした。

  ドイツ銀の取締役会はコメルツ銀との交渉を承認したという。

  就任から1年足らずのゼービングCEOは、景気減速の中で減収に歯止めをかけることに依然苦戦している。複数の関係者によれば、独財務省は輸出経済を下支えする中小企業を支援するため、状況が悪化する前に両行が合併することを支持しているという。

  ドイツ銀は2月に2019年の収益性目標を再確認したが、市場が不振で減収が続けばより厳しい措置を講じる必要性があることを明確にした。1月はトレーディング事業が極めて不調だったが、2月に状況は持ち直していると複数の関係者は話している。

Deutsche Bank AG's Slump Deepens
クリスティアン・ゼービングCEO写真家:Krisztian Bocsi / Bloomberg
  同関係者によると、ドイツ銀は今、収益性目標の達成を実現するための一歩として、より厳しいコスト削減を計画中。ほかの戦略的選択肢には、別の欧州銀行との合併も含まれるが、可能性は低いと受け止められている。ドイツ銀首脳陣に近い関係者はUBSグループやBNPパリバ、INGグループなどの名前を挙げている。

Just a Notch Over Junk
Deutsche Bank's senior non-preferred rating is close to sub-investment grade


Source: Company filings

Note: Moody's has a negative outlook on DB's rating; two notches of downgrade caused by sector-wider rating action after legal change

原題:Germany’s Two Shrinking Banks Are Edging Closer to a Merger(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-12/PO89LB6KLVR801?srnd=cojp-v2


 

http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/483.html

[国際25] ISに参加したイギリス人少女の赤ちゃん、シリアで死亡 救出は「危険」と英外相 英市民権はく奪 バングラデシュも市民権ない
BBC News
2019年3月12日
ISに参加したイギリス人少女の赤ちゃん、シリアで死亡 救出は「危険」と英外相
BBC News  

 

イスラム過激派勢力「イスラム国(IS)」に参加したイギリス人少女の生後3週間の赤ちゃんがシリアの避難所で死亡した問題で、ジェレミー・ハント英外相は10日、赤ちゃん救出に英政府関係者を派遣するのは危険すぎると判断したとBBCに述べた。イギリス人少女シャミマ・ベガムさん(19)は帰国を希望しているが、英内務省は市民権を剥奪(はくだつ)した。

ベガムさんは2015年に15歳でロンドンからシリアに渡り、ISに参加した。オランダ出身のIS戦闘員と結婚し、子供3人を出産した。子供2人はすでに死亡し、夫はベガムさんと別の拘置所で収監されている。

今年2月にシリアの難民キャンプで発見されたベガムさんは、イギリスに帰りたいと訴えているが、内務省は帰国を認めず、市民権を剥奪した。

3週間前に生まれた男の子のジャラちゃんは7日、肺炎のため難民キャンプで死亡したのが確認された。男の子はイギリス国籍を持っていたため、野党などはベガムさんの帰国を認めなかったサジド・ジャヴィド内務相を批判している。

10日朝にBBC番組「アンドリュー・マー・ショウ」に出演したハント外相は、ジャラちゃんが英市民だったことを認めた上で、「母親は自ら選び、自由な国を離れてテロ組織に参加した」と批判。ジャラちゃんをシリアから救出するのは危険すぎて、「あの戦闘地域に送り込む英政府関係者の安全性を考慮」する必要があったと述べた。

ベガムさんのいる避難施設には、BBCのクエンティン・サマヴィル中東特派員をはじめ、複数の報道関係者が到達し、ベガムさんに直接話を聞いている。

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IS参加の19歳女性、バングラデシュも市民権ないと 英は市民権はく奪
「シャミマはダエシュ(アラビア語でのISの蔑称)に参加すると決めたとき、大使館も領事館の支援もない国に行くのだと分かっていたはずだ。そういう決断には、悲惨なことではあるけれども、それなりの結果が伴う」とハント外相は述べた。

外相によると、他のいわゆる「IS花嫁」が産んだイギリス国籍の子供たちを発見・救出するため、外務省は方法を検討しているという。

最大野党・労働党のダイアン・アボット影の内相は、ジャラちゃんが病死したのは、ベガムさんの市民権剥奪という「冷淡で非人道的」な決定のせいだと、ジャヴィド内務相を批判した。与党・保守党からも、法務省の閣外相を経験したフィリップ・リー下院議員が、政府は自分たちの「道徳的責任」を「反省すべき」だと述べた。

政府報道官は、「どのような場合でも、子供が亡くなるのは悲劇で、家族にとって大きな心痛だ」とコメントした。

ベガムさんのほかにも、2人のイギリス出身の女性が市民権を剥奪され、幼い子供たちとシリアの避難施設にいることが明らかになった。

10日付の英紙サンデー・タイムズによると、ロンドン東部出身の姉妹、リーマ・イクバル(30)さんとザラ・イクバルさん(28)がシリアの難民キャンプにいる。2人は別々のキャンプにおり、8歳未満の男の子が合計5人いるという。姉妹の両親はパキスタン出身だが、姉妹が二重国籍を持っていたかははっきりしない。姉妹は2013年にシリアに渡り、欧米人捕虜の殺害ビデオと「強く関係する」IS戦闘員たちと結婚したという。

消息筋はBBCに対して、姉妹の市民権剥奪の判断は、2018年4月に辞任したアンバー・ラッド前内相によるものだという。

内務省は、個別の案件についてコメントしないが、個人から市民権を剥奪するのは個別の証拠にもとづく、きわめて慎重な判断によるものだと述べた。

英政府は1981年イギリス国籍法にもとづき、内相が「公共の利益にかなう」と判断し、かつ当事者が無国籍にならない場合において、個人の市民権を剥奪することができる。

移民法サイト「Free Movement」によると、内務省が市民権剥奪権限を行使する回数は近年で劇的に増えており、2017年までの10年間では50件だったのに対し、2017年には104人が市民権を喪失しているという。

(英語記事 Shamima Begum: 'Not safe' to rescue IS bride's baby, says Hunt)

https://www.legislation.gov.uk/ukpga/1981/61

提供元:https://www.bbc.com/japanese/47523009


UK sisters who wed Isis fighters lose citizenship
Two Londoners with five young sons between them have, like Shamima Begum, been stripped of their British nationality

https://www.thetimes.co.uk/edition/news/uk-sisters-who-wed-isis-fighters-lose-citizenship-36sz69fn9



IS参加の19歳女性、バングラデシュも市民権ないと 英は市民権はく奪
2019年02月21日
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BBCの取材に応じたシャミマ・ベガムさんは、15歳でイギリスからシリアに渡航し、IS戦闘員の妻となった
バングラデシュ外務省は20日、イギリスからシリアへ渡航しイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」に参加したシャミマ・ベガムさん(19)について、バングラデシュの市民権はなく、入国を認めることは「絶対にあり得ない」と発表した。

ベガムさんは2015年、15歳でISに参加するためにロンドンからシリアに渡航。今年2月にシリアの難民キャンプで発見され、イギリスに帰りたいと訴えている。

しかしイギリス政府は19日、ベガムさんにはバングラデシュ出身の母親を通じてバングラデシュの市民権があるとして、ベガムさんの市民権をはく奪した。

これに対しバングラデシュ外務省は、ベガムさんが「誤って」バングラデシュ国籍があるとされたことに「深い懸念」を表明した。ベガムさんはバングラデシュに二重国籍の申請をしておらず、バングラデシュを訪れたこともないという。

同外務省はその上で、バングラデシュはテロや過激派を「一切容認しない」と強調した。

「1つの市民権」
ベガムさんの母親はバングラデシュ出身とされており、BBCが取材した弁護士によると、同国の法律ではベガムさん自身にも自動的にバングラデシュの市民権が与えられる。

しかし20日にBBCの取材に応じたベガムさんは、自分は「1つの市民権」しか持っておらず、イギリス政府が自分と話さずに市民権をはく奪したのは間違っていると話した。

「私はバングラデシュ生まれではないし、バングラデシュに行ったこともないし、ベンガル語すらきちんと話せない。どうして私にバングラデシュの市民権があると言えるのか」

「私は若くて世間知らずだったから過ちを犯した。本当に大きな過ちを犯した。そのことをイギリスに分かってほしい」

ベガムさんの家族の代理人、タスニム・アクンジー弁護士は、英内務省の決定でベガムさんは無国籍になってしまうと述べ、「あらゆる法的手段」でこれを阻止する構えだと話した。

一方、英ITVニュースの取材でベガムさんは、英内務省の決断は「悲痛なもの」だと話した一方、夫を通じてオランダ市民権の取得を試してみるかもしれないと話した。

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(左から)カディザ・ソルタナさん、アミラ・アベイスさん、シャミマ・ベガムさん
ベガムさんは2015年2月、学校の友人だったカディザ・ソルタナさんとアミラ・アベイスと共にイギリスを離れた。ソルタナさんは爆撃で死亡したと報じられている一方、アベイスさんの安否は分かっていない。

ベガムさんは、ISがオランダ国籍のベガムさんの夫を投獄し拷問した際に、ISに対する考えを改めたという。

逃げることは不可能で、「逃げようとしたら殺される」とベガムさんは話した。

報道によると、ベガムさんはシリア最後のIS拠点バグーズから逃げてきた。ベガムさんはこれまでに2人の子どもを亡くし、先週末に息子を出産したばかり。

ベガムさんの夫はイスラム教徒に改宗しISの戦闘員となったが、2週間前に対立するシリアの戦闘員に投降したとみられている。

ISはこれまでシリアで支配していた地域のほとんどを失い、現在ではイラク国境の50キロ平方メートルほどの地域に1000〜1500人の戦闘員が残っている。

「複雑な問題」
英政府は1981年イギリス国籍法にもとづき、内相が「公共の利益にかなう」と判断し、かつ当事者が無国籍にならない場合において、個人の市民権をはく奪することができる。

かつて対テロ法の独立審査官だったカーライル卿によると、ベガムさんは裁判あるいは司法審査を通じて、内務省の判断に不服を申し立てることができる。しかしその場合、内相の対応に誤りがあったことを証明しなくてはならない。

カーライル卿は、この案件は「裁判所で長期間争われるかもしれない複雑な問題」で、ベガムさんは現在の居住地に「少なくとも2年間」はとどまることになるだろうと話した。

また、ベガムさんの息子にはイギリスとオランダ、バングラデシュの国籍が認められるだろうと指摘している。

「非常事態」
イギリスのサジド・ジャヴィド内相は個別案件にはコメントしないとしながらも、ベガムさんの息子はなおイギリス国民となる可能性があると話した。

ジャヴィド氏は議会で、「子どもが権利を損なわれることはあってはならない。親がイギリスの市民権を奪われても、子どもの権利には影響しない」と述べた。

その上で、市民権はく奪は「非常事態」でしか発動しない権限だと述べ、一例として「個人が(イギリスの)基本的な価値観に背を向け、テロを支持した場合」と話した。

ジャヴィド氏はITVの番組に出演した際にも、個人を「無国籍」にして放っておくことはしないと語った。

「個人について言及はしないが、その時点で個人を無国籍状態にするような決定は下さないし、私以前の内相もそういった決定は下していないはずだ」

しかし最大野党・労働党のダイアン・アボット影の内相は、ジャヴィド氏が「何人も独断的に国籍を奪われてはならない」と定めた世界人権宣言に違反したと非難している。

<分析>シャミマ・ベガムにバングラデシュ市民権はあるのか ――クライヴ・コールマン、BBC司法担当編集委員
BBCが取材した弁護士らによると、バングラデシュ法では、イギリスでバングラデシュ国籍を持つ親の元に生まれた子どもには自動的にバングラデシュの市民権が付与され、二重国籍となる。

しかしバングラデシュ当局は、これはベガムさんには当てはまらないと主張している。

この「血筋」法では、こうした子どもがバングラデシュの国籍や市民権を維持すると申し出ない場合、彼らの権利は21歳で消滅するという。

ベガムさんが現在19歳だとということを考えれば、彼女にはなおバングラデシュの市民権がある。これは、内務省の弁護士と内相にはベガムさんのイギリスの市民権をはく奪する法的根拠でもある。

2017年、バングラデシュ系イギリス人2人が国外にいる間にイギリス市民権を奪われたとして政府に不服を申し立て、政府の判断が覆される出来事があった。

特別移民不服申し立て委員会は、この2人が21歳までにバングラデシュ市民権継続申請をしなかったため、彼らのバングラデシュ市民権は自動的に消滅したと判断した。

この場合、イギリスの市民権をはく奪するという決定によって2人は無国籍状態になってしまうからだ。

しかし、ベガムさんの状況は異なる。もし立証されれば、ベガムさんがバングラデシュを訪れたことがなくても、自ら市民権の継続を望まなくても、ベガムさんのバングラデシュ市民権は21歳までは有効だ。

(英語記事 IS bride 'is not Bangladeshi citizen')
https://www.bbc.com/japanese/47314271


ISカップルはシリアでどういう暮らしを 夫はオランダ、妻はイギリスから参加
2019年03月5日
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クエンティン・サマヴィル、BBC中東特派員

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オランダ出身で元IS戦闘員のヤゴ・レディク氏(左)は23歳の時、当時15歳だったシャミマ・ベガムさん(右)とシリアで結婚した
完璧な家庭生活を求めて4年前にイギリスからシリアへ渡航し、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」に参加したシャミマ・ベガムさん(19)は、首都ラッカに到着後間もなく、オランダ出身で当時IS戦闘員だったヤゴ・レディク受刑者(オランダで不在のままテロ罪で有罪、現在シリアの拘置所で収監)と結婚した。

結婚当時ベガムさんは15歳、レディク受刑者は23歳だった。15歳との結婚は、イギリスでは性犯罪に相当する。

レディク受刑者は現在27歳。クルド人部隊が運営する拘置所の凍えるような取調室で、黄色いプラスチック椅子に腰かけて私に向き合った。看守が手錠を外したばかりだ。

近いうちにそうなるとは考えにくい。

受刑者はそれから1時間にわたり、外界から隔絶された親密な家庭生活と、その外に吹き荒れるテロの日々という、矛盾する日常について語った。


なぜ15歳少女と結婚したのか BBC単独取材で元IS戦闘員に聞く
ベガムさんはISの犯罪について承知していたと、発言している。しかし受刑者は、家庭とISの活動を切り分けていた、妻はISが何をしていたか知らなかったはずだと話した。

「自分は妻を大事に守っていた。外で何が起きているのか教えなかった。自分がどういう問題、どういう危険に直面しているか、家では話さなかった」

「自分がなんとか生き延びようとしている間、妻はただ家の中にいて家事をしていた」

「妻を養い、自分を養い、トラブルに巻き込まれないよう必死だった。公安に殺されないよう必死だった」

Image copyrightREUTERS
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ISは2017年10月、「首都」と称するシリア北部ラッカを追われた
私が先週ベガムさんと面会した時、彼女は完璧な家庭生活を求めてISに参加したと述べた。

「自分の家族は、イギリスで結婚を世話してくれなかった。ISが宣伝していた家庭生活は、かなり素敵だった」と、ベガムさんは言った。

「完璧な家庭生活、ISがあなたのことも家族のことも面倒をみてくれると。それは本当だった」

「ISは、最初は私のことも家族のことも面倒を見てくれたけど、後から様子が変わった」

ISが主張するカリフ制国家の夢はすぐに崩壊した。

レディク受刑者を取り巻いていたのは、首のない死体とISの刑務所と拷問の世界だった。

ISがイラクの少数派ヤジディ教徒を奴隷にし、殺害していたことを知っていたか尋ねると、レディク受刑者はこう答えた。

「1人のオランダ人の男のことを聞いた。奴隷が1人いると」

「奴隷については、それくらいしか知らない。その女性は40歳くらいだと聞いた」

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ベガムさんはゴミ箱に入った人間の頭を見たことがあると明かした。夫のレディク受刑者は、軍服姿のIS囚人の死体が山積みにされた上に、袋が置かれ、その中に人の頭が入っていたと話した。

受刑者はさらに、「姦淫」で訴えられた女性への石投げの刑に参加したと認めた。

「実際に斬首は見たことがない」が、「石投げの刑は1度目撃したことがある」という。

「死刑になった人たちを見たが、刑そのものは見ていない」

「実際には、女性は石投げの刑では死ななかった」と訂正もした。「立ち上がり、走って逃げた。すると、『投石をやめろ』と係に言われた」

「女性が立ち上がって逃亡した後は、もう石を投げてはいけない決まりだ。だから自分たちは投石をやめたし、女性は脱出した。それからもう、その女性は手出しされなかった」

「大きな過ちを犯した」
ベガムさんは夫について「本当は戦闘員ではなかった」と主張したが、リダイク受刑者はシリア北部コバニでISとして戦い、負傷した。

シリア北部の主要都市アレッポでも戦闘に加わった。

「私は大きな過ちを犯した。人生の何年も、無駄にしてしまった。それは私の人生ではなかった」と受刑者は述べた。

「幸い、私は直接誰かに危害を加えずに済んだ。しかし、あんな組織に加わり、支援した。許されることではない」

ほとんど武器を使ったこともないと付け加えた。

レディク受刑者は現在、妻と生まれたばかりの息子と共にオランダへ帰国することを希望している。

「自分の国に戻りたい」、「あの国で自分がどれだけ恵まれていたか、今は理解している。あの国に市民として暮らすのは、恵まれた特権だ」と受刑者は言う。

「もちろん、自分のしたことを許せない人が大勢いるのは、理解している。それはすごくよく分かる」

「自分がしたことについて、責任を取らなくては。刑に服して。それでもいずれ、普通の生活に戻り、家族と暮らせるようになりたい」

現在ベガムさんとレディク受刑者は、パスポートを持っていない。自分の運命を自分で決めることもできない。

ISに参加した時に2人はパスポートも、自分の未来を自分で決める権利も放棄した。近いうちに、どちらか一方を取り戻せるとは考えにくい。

ベガムさんは、夫が収監されている拘置所からそう遠くない避難民キャンプに身を寄せている。

クルド人部隊は、2人を再会させる予定はないとしている。

(英語記事 What was life like for the IS couple?)

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2016年12月6日
https://twitter.com/freemovementlaw/status/1098182926905294848


https://www.bbc.com/japanese/47437625


http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/658.html

[戦争b22] 迫りくる台湾をめぐる米中危機 トランプにはしごを外された金正恩、想定外だった米朝の「物別れ」 
世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

迫りくる台湾をめぐる米中危機

2019/03/12

岡崎研究所

 台湾をめぐる米中の対立は、本欄でも何度も指摘してきた通り、高まる一方である。こうした事態に懸念を示す、最近の論説、社説の中から、米外交問題評議会のリチャード・ハースによる2月15日付け論説を中心にご紹介する。同論説の要旨は、以下の通り。


(Plateresca/Oleg Mishutin/bymandesigns/imannaggia/iStock)
 米中外交は、米国は「中国は一つであり台湾は中国の一部であるという中国の立場」を認識する(acknowledge)とする、3つのコミュニケ(1972年、1978年、1982年)を基礎としている。1979年の台湾関係法には、米国の台湾へのコミットメントが明記されている。3つのコミュニケと台湾関係法が相まって、米国の「一つの中国政策」の基礎をなしている。

 この構造は、勝利の方程式となってきた。中国は世界第二の経済大国にまで発展し、台湾も経済発展と民主化を遂げた。米国は、地域の安定、中台双方との緊密な経済関係により利益を得ている。

 問題は、時間が尽きつつあるのではないかということだ。長年、米国の政策立案者は、台湾が独立その他、中国に受け入れられないことをしないか、懸念してきた。台湾の指導者は理解しているように見える。ただ、彼らは「一国二制度」による統一を拒否している。

 しかし、今や、安定は米中双方により危機にさらされている。中国経済の鈍化は習近平を脆弱な立場に置き得る。習が、国民の目を経済成長の鈍化から逸らすために外交政策、とりわけ台湾問題を使うことが懸念される。習は今年1月、台湾併合を目指す考えを繰り返し、そのために武力行使を排除しないと述べた。

 米国も、過去40年間機能し続けた外交的枠組みを守らないようになってきている。ジョン・ボルトン安全保障担当補佐官は、就任前、ウォール・ストリート・ジャーナル紙に、「一つの中国政策を見直す時だ」とする論説を寄稿している。トランプも、米大統領(あるいは同当選者)として、1979年以来初めて台湾の総統と直接話をした。

 最近、5人の共和党上院議員が、ナンシー・ペロシ下院議長に、蔡英文総統を米議会に招くよう求める書簡を送った。そんなことをすれば、米台間の非公式の関係と矛盾し、中国の強い反応を招く。

 政府内外の多くの米国人が中国に強いメッセージを送ることを望み、そうすることで失われるものはほとんどない、と信じている。

 この計算が正しいかどうか、全く明確ではない。中国の経済制裁、軍事力行使が行われるような危機が起これば、2300万の台湾人の自治、安全、経済的繁栄が危機に瀕する。中国にとり、台湾危機は米国および多くの近隣諸国との関係を破壊し、中国経済にダメージを与えるだろう。

 危機により、米国は台湾への支援を求められ、それは新冷戦あるいは中国との紛争に繋がり得る。といって、台湾の自助努力に全て任せるという判断は、米国の信用を損ね、日本の核武装、日米同盟の再考に繋がりかねない。

 関係者全てにとり、リスクが高くなっている。相手にとって受け入れられないような象徴的な一歩を避けるのが最善だ。現状維持には欠点があるが、一方的な行動、きちんとした解決策の伴わない状況打破の企てよりは、はるかにマシである。

出典:Richard N. Haass,‘The Looming Taiwan Crisis’(Project Syndicate, February 15, 2019)
https://www.project-syndicate.org/commentary/looming-taiwan-crisis-over-one-china-policy-by-richard-n--haass-2019-02

 上記論説でハースが言っていることは、3つのコミュニケと台湾関係法に基づく「一つの中国政策」が40年間機能してきたのだから、今後ともそれに従って各当事者が自制すべきである、ということである。

 フィナンシャル・タイムズ紙も、2月19日付け社説‘Taiwan tensions call for restraint from big powers’において、米国による台湾への武器売却、米海軍艦艇による台湾海峡の通過、台湾への武器売却の継続と当局者の交流を求める「アジア再保証イニシアティヴ法」など一連の米国の動きを「中国は刺激的だと見ている」とする一方、中国の台湾併合への熱意はこれまでになく高まっている、として各当事者に自制を呼びかけている。

 自制は重要だが、米国の「一つの中国政策」の枠組みが今後も有効であるのかは、検討を要する。中国が台湾を併合する意思は一貫しているが、今や、中国は軍事大国であり、台湾併合のために武力行使を排除しない、と明言している。米中双方が危機を作り出しているというが、やはり中国の責任が重いのではないか。米国が強い態度をとり中国を抑止することの方が「現状維持」に資すると思われる。米国の最近の対中強硬姿勢は止むを得ないと言うべきであろう。上記フィナンシャル・タイムズ社説が挙げているような、米国による台湾支援強化の措置は、ますます強化されると考えられる。ちょうど、2月下旬にも米海軍の艦艇が台湾海峡を通過したばかりである。

 蔡英文の米議会への招聘については、ワシントン・ポスト紙のジョン・ポンフレット元北京支局長が2月18日付の論説‘China’s Xi Jinping is growing impatient with Taiwan, adding to tensions with U.S.’で、中国を怒らせるとする専門家の見解と、それほどでもないとする専門家の見解を紹介している。

 米国の対応で、むしろ最も心配すべき点は、トランプ大統領が、台湾問題が米中の間でカードとなり得ると解釈され得るような発言をしてしまうことであろう。トランプは、そういう不用意な発言をする傾向があるので、注意を要する。
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/15556


 
トランプにはしごを外された金正恩、想定外だった米朝の「物別れ」

2回目の米朝首脳会談を振り返る(前編)
2019/03/11

礒ア敦仁,澤田克己


ハノイで行われた第2回米朝首脳会談(写真:ロイター/アフロ)
 率直に言って、トランプ米大統領と金正恩国務委員長による2回目の首脳会談の結果は想定外のものだった。もちろん完全な破綻であれば「ありえる」結果ではあったけれど、会談は決裂するが交渉自体は破綻していない、という状況はとうてい考えが及ばないものであった。完全な核放棄につながる具体的な措置を北朝鮮が取る見返りに米国が国交正常化と制裁解除を約束するというビッグディールは期待できなかったろうが、寧辺の核施設への査察受け入れと南北経済協力の容認というようなスモールディール、あるいは中間のミディアムディールにはなるのではないかというのが一般的な見立てだった。内政で苦しい状況に追い込まれたトランプ大統領と、トランプ政権の間に成果を挙げたい金正恩委員長の双方が、「成果」を必要としていると考えられたからだ。

 ところが、ハノイで2月末に行われた会談は具体的な文書の合意に至らず、事実上の決裂に終わった。従来の積み上げ型の外交ではなく、トップダウンの「新しい方式」による交渉は大きな妥結を引き出す可能性を秘めていたが、薄氷を踏むような過程でもある。事前の「準備不足」が指摘される中で開かれた会談は、結果として悪い方向に進んでしまった。今後の展望は次回に回し、今回はこの想定外の結果に対する評価をまず考えたい。

金正恩政権は成果を出す自信を見せていた
 北朝鮮側は、昨年6月のシンガポールでの第1回首脳会談で米朝間の関係改善がうたわれたのに経済制裁解除のような実利を得られないことに強い不満を抱いた。そのため同9月頃からは第2回首脳会談の実現を目指し、対米交渉にオールインする姿勢を見せてきた。今年元日に行われた恒例の金正恩委員長による「新年の辞」では、これまでになく対米関係に時間を割き、初めて自ら「完全な非核化」を口にした。「新年の辞」は、北朝鮮の全国民が徹底して学ぶものだけに、その意義は大きい。しかも今年に入ってから金正恩委員長は、一度も農場や工場に行っていない。経済を重視する姿勢を明確にしているにもかかわらず、である。それだけ対米戦略を練るのに時間と労力を要したということだ。

 そして、北朝鮮が今回の会談で一定の成果を得られると考えていたことは間違いない。『労働新聞』や朝鮮中央テレビなどの北朝鮮メディアが金正恩委員長の平壌出発から大きく報道したことは、北朝鮮側のこうした見通しに基づくものだ。北朝鮮国内向けの報道で事前に首脳会談開催を知らせたことは、制裁解除へ向けた国民の期待感を高めただろう。北朝鮮メディアの論調は、今回の米朝首脳会談が国家の経済的繁栄につながるものとのニュアンスを醸し出していた。

 シンガポール会談以降、昨年9月までは韓国が提案した「終戦宣言」に乗り気だった金正恩政権だが、米国がそれに応じないと見るや、要求事項を経済制裁の緩和に切り替えた。北朝鮮は「経済制裁に効果は無い」と主張し続けてきたが、その頃から金正恩委員長自身が経済制裁への非難を強めていた。経済制裁が強化されたことで北朝鮮経済が混乱に陥るというような事態にはなっていないものの、影響はじわじわと拡大しているということであろう。首都平壌は安定しているように見えるが、地方都市は相変わらず停電に悩まされている。外貨獲得の手段が狭まったことに加え、原油や石油精製品の輸入が制限された打撃も大きい。いわゆる瀬取りと呼ばれる手法での密輸もあるが、コスト面での負担増は避けられない。

「制裁の部分解除」と「全面解除」は認識の違い
 初日に開催された1対1形式の膝詰め会談の冒頭で、金正恩委員長は「全ての人が喜ぶ、素晴らしい結果をつくり出せると確信し、そうなるように最善を尽くす」と述べていた。2日目の拡大会合の冒頭では、非核化について「その意思がなければここに来ていない」と述べるとともに、米国の連絡事務所設置について「歓迎すべき」とまで言及した。

 ところが2日目の午後になると、ワーキングランチと署名式の中止が明らかになった。ただこの時点では物別れに終わったのだろうと推測できるだけで、いったい何が起きたのだろうかという状況だった。トランプ大統領の記者会見を聞いてようやく、経済制裁が焦点になったと分かったのである。トランプ氏によると、北朝鮮側は寧辺の核施設廃棄の見返りとして制裁の全面解除を要求。それに対して米国側は、制裁解除のためには寧辺以外の核施設廃棄も必要だと応じて全面解除を拒否したという。

 北朝鮮側は翌日未明になってから、李容浩外相が宿泊先のホテルで記者会見を開いて反論した。韓国・聯合ニュースによると、李容浩外相は首脳会談での北朝鮮側の提案について「米国が国連制裁の一部、すなわち人民生活に支障をきたす項目の制裁を解除すれば、寧辺にあるプルトニウムとウランを含む全ての核物質生産施設を米国の専門家らの立ち会いの下、両国の技術者たちの共同作業で永久かつ完全に廃棄する」というものだったと表明。これまでに採択された国連安保理制裁決議11本のうち、2016、2017両年に採択された5本の「民需経済と人民生活に支障を与えている項目」をまず解除するよう要求したことを明らかにした。

 両国の主張は完全に食い違っているように見えるが、そうでもない。北朝鮮に対する制裁は2006年10月の第1回核実験を受けて決議されて以降、現在までに11本ある。だが、当初は核・ミサイル開発に関連する特定の組織や人物などを対象とした制裁であり、北朝鮮にそれほど大きな痛みを強いるものではなかった。いわゆるターゲット型の制裁である。しかし、北朝鮮が2016年に核・ミサイル開発を加速させたことへの対抗策として、国連安保理制裁は北朝鮮の外貨収入や石油輸入を直撃する経済封鎖に近い形に強化された。2016、2017の2年間に採択された6本の制裁決議のうち5本が、こうした制裁だ。李容浩外相のいう「5本」はこれだろうから、米国側から見れば「ほとんど全面解除」になる。

 北朝鮮側は寧辺の核施設廃棄によって大幅な制裁解除を狙う取引をしかけたが、米国側は「それ以外」の核施設廃棄を含めた非核化措置が必要だと応じた。この食い違いには、シンガポールでの第1回会談での合意に対する双方の認識の違いが反映された可能性がある。

 シンガポールで署名された共同声明の骨格は、「北朝鮮の安全の保証(朝鮮語原文は「安全の担保」)」と「朝鮮半島の完全な非核化」のディールである。この場合の「安全の保証」は金正恩体制に対して与えられるものであり、北朝鮮の立場から言えば、体制を温存したままでの経済制裁の完全解除や米国との関係正常化が必要条件となる。その考えに従うなら寧辺核施設の廃棄という部分的措置に見合うのは、完全な「安全の保証」の手前となる民生部門への制裁解除だったのかもしれない。ところが米側は「制裁の全面解除」を要求されたと受け止めたから、それでは釣り合わないと拒否したという構図だ。そうであるならば、スモールディールないしミディアムディールをしようとした北朝鮮に対して、米国がビッグディールで対抗したことになる。

金正恩にとって大きなマイナスではあったが……
 トランプ大統領は記者会見で、北朝鮮での拘束から解放されたものの昏睡状態で帰国し、亡くなったオットー・ワームビア氏の件について「(金正恩委員長は)関知していなかったと思う」と述べた。さらに強制収容所の存在を肯定するような発言を続けた。米国の大統領とは思えないような人権感覚の欠如を物語る発言だった。

 これから数十年は政権を担うつもりの金正恩委員長は、人権に関心を持たないトランプ大統領の任期中にできるだけ多くの果実を得たいはずだ。退任までに北朝鮮核問題で明確な結果を出せなくても自身にとって死活的問題にならないトランプ大統領とは違う。それを考えると、今回の結果は金正恩委員長にとって大きなマイナスであった。

 しかも、今回の会談決裂により、昨年9月の南北首脳会談で文在寅大統領から取り付けることのできた開城工業団地と金剛山観光の再開も実現から遠のいてしまった。金正恩委員長は、元山葛麻観光地区や温泉観光地区の開発を急ピッチで進めているが、それも韓国から外貨が入るという見込みがあってこそのことだ。トランプ大統領にはしごを外された結果となり、大きく失望したことは間違いない。

 ただ、北朝鮮にとって核・ミサイル開発を再び加速させるという選択は簡単ではない。金正恩委員長はなんとか交渉で巻き返そうとしてくるはずだ。北朝鮮が核廃棄に応じる可能性は依然としてあるだろうが、その大前提は「隠せるなら隠そうとする」ことである。最終的に核廃棄に応じるとしても、そこにいたるまでには激しい駆け引きが展開されるだろう。一方でトランプ大統領の交渉術も一般の外交交渉とは違い、いったん席を立つことがむしろ支持率アップにつながると考えた可能性が高い。

 今回の会談結果は物別れであり、原因は双方の誤算にあった。それは特に金正恩委員長に大きかっただろうが、あくまでも途中経過だと考えた方がよいようにも思われる。これからの動きも、予断を持たずに注視していく必要がありそうだ。

*後編へ続く(近日公開予定)
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/15592
http://www.asyura2.com/18/warb22/msg/565.html

[経世済民131] 米ボーイング機墜落事故、株急落が映す「中国の脅威」ボーイング機墜落事故、米国で訴訟なら巨額賠償に
コラム2019年3月12日 / 13:50 / 9時間前更新

米ボーイング機墜落事故、株急落が映す「中国の脅威」
Tom Buerkle, Ed Cropley
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[ニューヨーク/ロンドン 11日 ロイター BREAKINGVIEWS] - この半年間でボーイング(BA.N)の新型機737MAX8で2度目となる墜落事故が起きたことを受け、同社株は11日に急落した。投資家の反応は、事故による短期的な財務面の影響を恐らく過大視しているが、もっと大きな長期的脅威を反映しているのかもしれない。

それは事故をきっかけに、世界最大の市場である中国で競合他社に門戸が開かれる恐れだ。

エチオピア航空機の事故原因は判明していない。それでも中国は昨年10月にジャカルタ沖で起きたライオン・エア機の墜落事故との共通点を指摘した上で、737MAX8型機の運航を停止した。インドネシアとエチオピアも追随した。仮に米連邦航空局(FAA)が同様の措置に出れば、同型機は実質的に世界中で運航停止となる。11日の米株式市場ではボーイング株が急落。先週末時点で2390億ドルだった同社の時価総額は一時、300億ドル程度減少した。

事故による財務面への影響を考えてみよう。仮に事故原因がソフトウエアの問題であれば、737MAX8型機は数週間から数カ月ほど運航停止となる可能性がある。FAAは2013年には787型機をバッテリーの問題で3カ月間、運航停止としている。それでもこうした問題がボーイングの事業に多大な負担となる公算は小さい。ボーイング737MAXはこれまでに4600機を受注しており、生産ラインは競合するエアバス(AIR.PA)のA320型機と同様、数年先まで予定が埋まっているためだ。

737MAX8型機に関連した航空会社からの損害賠償請求も、対処可能とみられる。同型機は現在、約350機が運航している。運航停止になった場合でも航空会社は、購入のために借り入れた融資の金利を支払わなければならず、ボーイングに利払いの肩代わりを要求するかもしれない。航空会社が同型機を定価の1億2200万ドルの6割で購入し、年率5%で資金を借り入れたと想定すると、年間の利払い費は全社合計で約13億ドルになる。リフィニティブI/B/E/Sの業績予想によると、これはボーイングの2019年の営業キャッシュフローの約7%に相当する。

それでも中国の反応は懸念すべきだ。中国はボーイングにとって最大の市場であり、同社は最近、中国に最終段階の生産を担う工場を建設した。さらに宇宙航空機部門は、習近平国家主席が掲げる「中国製造2025」計画で重点分野に挙げられている。こうした中、国有企業の中国商用飛機(COMAC)は米FAAに単通路型機「C919」の認定を求めている。中国の航空機メーカーに門戸が開かれれば、ボーイングとエアバスが享受している高収益の寡占状態は崩れ去るだろう。

●背景となるニュース

・エチオピア航空の旅客機が10日に首都アディスアベバの空港から離陸直後に墜落して乗員乗客157人が死亡した事故を受け、中国とインドネシア、エチオピアの3カ国は事故機と同型のボーイング737MAX型機の運航を停止した。

・ボーイング737MAX型機を巡っては、昨年10月にもインドネシアのライオン・エアが運航する同型機がジャカルタ空港を離陸後に墜落する事故が起きている。

・中国民用航空局(CAAC)は2件の事故に「ある程度の共通点」があると指摘。双方とも新たに納入された航空機で事故が発生した。

・11日の米国株式市場でボーイング株は一時、前週末比10%超下落、終値は5.3%安となった。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
https://jp.reuters.com/article/bv-column-boeing-idJPKBN1QT0E6



トップニュース2019年3月12日 / 15:35 / 6時間前更新
アングル:
ボーイング機墜落事故、米国で訴訟なら巨額賠償に
Reuters Staff
2 分で読む

[11日 ロイター] - 米航空機大手ボーイング(BA.N)の保険会社が、エチオピア航空「ボーイング737MAX8」機墜落の犠牲者の遺族から、巨額の損害賠償請求に直面する可能性があると、業界関係筋が明らかにした。

昨年10月にインドネシア格安航空会社(LCC)ライオン航空の同型機による墜落事故が起きてから半年もたっておらず、新型ボーイング737MAX8機の安全性への懸念が高まっている。

エチオピア航空の同旅客機は10日、首都アディスアベバのボレ空港からケニアのナイロビに向けて離陸した直後に墜落し、乗員乗客157人が犠牲となった。

当座の保険金はエチオピア航空と契約している保険会社が支払うが、もし機体に欠陥があったことが証明された場合、ボーイングの保険会社からも資金を回収する可能性があると関係筋は語る。

遺族に支払われる当座の保険金は、航空運送に関するワルソー条約とモントリオール条約に定められた規則に基づくが、遺族が法的手段、とりわけ米国の裁判所で訴訟を起こした場合、金額は跳ね上がる可能性があると、英大手法律事務所アーウィン・ミッチェルのクライブ・ガーナー氏は指摘する。

「機体あるいは部品に何らかの欠陥があれば、ボーイングとエチオピア航空を相手取って訴訟を起こすことは可能だ」と同氏は付け加えた。

保険会社は通常、大規模な訴訟によるリスクを共有するコンソーシアム形式をとり、幹事となる保険会社が最も大きなリスクを負う。業界筋によると、事故機自体の保険価額は約5000万ドル(約56億円)だという。

エチオピア航空の保険ブローカーはウィリス・タワーズ・ワトソン(WLTW.O)が務め、チャブ(CB.BN)が幹事保険会社になっていると、ワトソンの広報担当者は11日明らかにした。チャブの広報はコメントしなかった。

一方、ボーイングの幹事保険会社は英グローバル・エアロスペースで、昨年10月に同型機事故を起こしたライオン航空の幹事保険会社も務める。

ボーイングの保険ブローカーはマーシュ(MMC.N)だと、関係筋2人がロイターに語ったが、契約の詳細については明らかにしなかった。

ボーイングの株価は11日、5.3%下落で引けた。

<米国での訴訟>

グローバル・エアロスペースが支払いを始める前に、ボーイングが当座の保険金を自家保険で賄うことになっていると、ボーイングに対して訴訟を起こす遺族の代理人を務めた経験があるニューヨークの弁護士、ジャスティン・グリーン氏は指摘する。ボーイングは自社の保険範囲についてコメントするのを差し控えた。

シカゴに本社を置くボーイングが米国で訴訟に直面するのは珍しいことではない。グリーン氏によると、同国では訴訟となった場合、墜落事故の犠牲者への損害賠償金は、適用される法律によって1人当たり約200万─300万ドルに上る。一方、エチオピアでは同20万ドル程度だという。

Slideshow (2 Images)
海外で証人を見つけることは困難なことから、米裁判所はそのような訴訟を却下することがよくある。だが今回の墜落事故では、米市民8人が犠牲になっていることから、全犠牲者の遺族を代表とする訴訟が米国内で認められる可能性が高まっているとグリーン氏は指摘する。

モントリオール条約に基づくロイターの試算によると、犠牲者157人全員の当座の賠償費用は2500万ドル程度になる可能性がある。

モントリオール条約は旅客1人当たりの死亡または傷害につき最大11万3100SDR(国際通貨基金の特別引出権)の無過失責任を認めている。現在のSDRあたり1.39ドルのレートで計算すると、約15万7200ドルとなる。ただし、全ての国が同条約に加盟しているわけではない。

(Noor Zainab Hussain記者、Carolyn Cohn記者、Suzanne Barly記者 翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)
https://jp.reuters.com/article/boeing-insurers-idJPKBN1QT0JS
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/487.html

[国際25] 中国全人代、産児制限の修正求める声高まる 出生率低下で
ワールド2019年3月12日 / 19:41 / 4時間前更新
中国全人代、産児制限の修正求める声高まる 出生率低下で
Reuters Staff
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[上海 12日 ロイター] - 中国全国人民代表大会(全人代、国会に相当)に参加した各地の代表から、産児制限の修正や撤廃を求める声が上がっている。

中国は2016年に一人っ子政策を廃止。2人目の子どもの出産を認めたが、昨年の出生率は2年連続で低下しており、各地の代表からは「出産の自由化」に向けた抜本策が必要だとの声が相次いでいる。

全人代には、医療・妊婦手当の改善、優遇税制の適用、無償教育の拡大を求める案が提出された。

一部では産児制限を撤廃し、憲法から計画出産に関する文言をすべて削除することを求める案も出ている。

政府系シンクタンクの中国社会科学院(CASS)が先に発表した報告書によると、同国の人口は2029年に14億4200万人でピークに達し、30年には長期にわたる「止めようのない」人口減少が始まる見通し。[nL3N1Z71AF]

政府による産児制限に反対する米国の人口問題研究所のスティーブン・モーシァー所長は、中国が「低出生率のリセッション」に突入しつつあると指摘。「中国は人口動態の死の罠を自ら作り出し、今後の低出生率・ゼロ出生率を自らに宣告した」と述べた。

各地の代表が全人代に出した提案書は、法的な有効性はないが、普段は公の場で議論されない問題を議題にできるという象徴的な意味合いがある。

全人代に5日までに提出された5件の提案書では「出産の包括的な自由化」という言葉が使われており、産児制限の抜本的な修正を求める声が高まっていることが浮き彫りとなった。
https://jp.reuters.com/article/china-parliament-population-idJPKBN1QT191


http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/666.html

[国際25] 米国、妥協許さない対北朝鮮戦略は奏功せず=韓国大統領補佐 米国は北朝鮮の段階的な非核化を模索すべき
ワールド2019年3月12日 / 18:36 / 5時間前更新
米国、妥協許さない対北朝鮮戦略は奏功せず=韓国大統領補佐官
Reuters Staff
1 分で読む

[ソウル 12日 ロイター] - 韓国大統領府の文正仁(ムン・ジョンイン)統一外交安保特別補佐官は12日、妥協を許さない「オール・オア・ナッシング」の戦略は米朝交渉の行き詰まりの打開にはつながらないとし、米国は北朝鮮の段階的な非核化を模索すべきだとの考えを示した。

トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は2月末にベトナムのハノイで首脳会談を実施したが、会談は物別れに終わった。

文氏は、米朝首脳会談が合意見送りとなった責任は双方にあると指摘。その上で、米国が北朝鮮の非核化を巡り、以前は段階的なアプローチで合意する可能性を示唆していたものの、急に姿勢を硬化させ完全な非核化を求めたと述べた。

「米国は北朝鮮に過度な要求をした一方、金委員長は寧辺の核施設閉鎖の見返りとして自身が望むものを得るため、トランプ大統領を説得できると過信していた」と述べた。

また、北朝鮮が他の核施設でのウラン濃縮プログラムも放棄することにコミットし、米国の懸念に対応していれば合意に至っていただろうと語った。

米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)は先週、北朝鮮の「西海(ソヘ)衛星発射場」で活動がみられたと明らかにした。文氏は、北朝鮮がミサイルを発射すれば「過ち」となるとの考えを示した。
https://jp.reuters.com/article/northkorea-usa-southkorea-idJPKBN1QT136



http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/667.html

[経世済民131] ハイテク大手の解体:言うは易く行うは難し ITバブル時と違うリスク 中国の驚くべき輸出激減、犯人は太陰暦 豪旱魃GDP↓
2019年3月12日 The Wall Street Journal
ハイテク大手の解体:言うは易く行うは難し
フェイスブックとグーグル
Photo:Reuters
――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

*** 

 最近は、ハイテク大手の支配力が当然なものとして受け入れられなくなってきた。その永続性についても同様である。

 そのため、現在の巨大ハイテク企業を解体するか、さもなければ規模拡大を抑制すべきだという声も強まってきた。米連邦取引委員会(FTC)は先週、反トラスト法違反がないか「ハイテク市場を精査する」ため、新たな作業部会を立ち上げると発表した。FTCは、合併が理念とは矛盾していた場合、過去の合併を解消する可能性すらある。

 民主党の大統領候補指名争いに名乗りを上げているエリザベス・ウォーレン上院議員(マサチューセッツ州)は8日、過去の買収を白紙に戻させるなどしてグーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブックを分割すべきだと提案した。フェイスブックはインスタグラムやメッセージアプリのワッツアップなど、グーグルはカーナビアプリのウェイズ、広告配信サービスのダブルクリック、家庭用機器メーカーのネスト・ラボなどをそれぞれ買収してきた。

 当然のように政治的、法的な問題が持ち上がることを踏まえると、それが実現する可能性は依然として低く、何らかの措置が取られるとしてもかなり先の話だろう。とはいえ、大手ハイテクは共和・民主両党のお気に入りの標的となってきているため、それを頭から否定することもできない。しかし、ハイテク業界の歴史は、支配力が次々と移り変わり、多くの企業が政府の介入なしに買収、分割を繰り返してきたことを示している。

 例えばIBMだ。80年代の大半で時価総額が世界最大だった同社は大手から中小まで、ほぼすべての企業と取引があるようだった。同社の年間売上高は今も800億ドル近くあり、フェイスブックのそれを43%も上回っているが、いくつかの技術変化や経営判断が積み重なったことでその支配力の大半は失われてしまった。

 こうした時代の流れは企業の決算報告書に反映されないこともある。ネットワーク機器大手のシスコシステムズの年間売上高は2000年当時の3倍近くに増加しているが、時価総額が最大に達したのはドットコムバブルのときだった。同社は今もインターネットを支える機器の多くを供給しているが、その影響力は弱まってきた。同社はS&P500種指数の時価総額上位20社にも入っていない。同様に、今もパソコンやサーバーを動かす重要なプロセッサーの大部分を供給しているインテルは、半導体製造と半導体設計の両面でライバル企業との新たな競争に直面している。

 最近、時価総額世界最大に返り咲いたマイクロソフトだが、意外にもウォーレン議員の提案の標的にはなっていなかった。政府に反トラスト法違反を指摘され、基本ソフト「ウィンドウズ」からインターネットブラウザーを切り離すことを余儀なくされた過去があるにもかかわらずである。

 最近の解体を迫る声が最終的に実を結ぶとしても、その前に最も有名なそうした事例である80年代のベル・システムの解体を振り返って検証すべきだろう。その分社化では今やHBO、CNN、ハリウッドの大手スタジオ、ワーナー・ブラザースなども所有しているAT&Tが誕生することになった。政府が企業の経営に口出しできると考えている人にとって、それは最も喜べる結果ではないはずだ。

(The Wall Street Journal/Dan Gallagher)
https://diamond.jp/articles/-/196600


2019年3月12日 The Wall Street Journal
中国の驚くべき輸出激減、犯人は太陰暦?
山東省の港
Photo:Reuters
――WSJの人気「ハード・オン・ザ・ストリート」

***

 毎年この時期の中国経済は荒れ放題の裏庭のようになる。犬、豚、さらには竜までが統計を踏みつけ駆けずり回っている。

 中国の輸出が2月にただならぬ激減となったのはその典型例だ。輸出額(ドル建て)は前年同月比20.7%も減少した。欧米諸国は太陽暦を採用しているが、中国で最も大切な祝日は太陰暦で定められる。このため、一週間程度の連休となる旧正月(春節)の時期が毎年変わり、1月、2月、場合によっては3月も、経済指標を前年同月の水準と比較するのが難しくなる。

 戌(いぬ)年だった2018年の春節は2月16日で、過去10年で2番目に遅い旧正月となった。つまり、1年の早い時期に生じる貿易統計のゆがみの多くが3月にずれ込んだことになる。18年2月の輸出は前年同月比で44.5%増加したが、3月には2.7%減となった。今年の春節は2月5日で、影響の大半は1月と2月に現れた。去年の2月と比べた甚だしいベース効果が、今年の悲惨な落ち込みの大きな原因だ。

 だからといって、中国の輸出が好調だというわけではない。ただ統計の落ち込み方が異常なのだ。1月と2月を合わせた統計であれば、もう少し正確に現実を映し出す。19年1〜2月の輸出は前年同期比4.6%減で、18年12月の4.4%減と同程度だ。

 欧州の経済成長減速は一つの要因となる。1〜2月の輸出は元建てで前年同月比7.5%増と、18年半ばの2桁台の伸びに比べ著しく減速した。だが、対米貿易摩擦は今や相当な重荷となり始めている。1〜2月の対米輸出(元建て)は9.9%減少した。一方、東南アジア向けは7%増加。オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)はこうした動きについて、米関税を回避するためのサプライチェーン(供給網)の再編が反映されていると指摘する。8日の中国株式相場は、前夜に欧州から飛び出した弱気材料を受けて大幅安で始まり、日中に貿易統計が発表されると下げ幅を一段と広げた。

 中国は米国からの通商圧力の強さを実感し始めているというのが全体像だが、統計が示すほどの完全な崩壊には至っていない。ただし、状況は上向く前に一層悪化する可能性が高い。中国製造業の購買担当者指数(PMI)は依然として輸出受注の減少傾向を示している。

 中国の輸出は昨年、底堅さを証明した。だが残念ながら、本格的な苦しみに直面するのはこれからだ。

(The Wall Street Journal/Nathaniel Taplin)
https://diamond.jp/articles/-/196601


2019年3月12日 The Wall Street Journal
巨大ハイテク企業、ITバブル時と違うリスクとは
アマゾンとアップル
ITバブル期の大型ハイテク株に比べれば現在のハイテク大手の株価には多くの下支え要因がある
Photo:Reuters
――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

*** 

 IT(情報技術)バブル期のハイテク大手と現在のハイテク大手で一つ違いがあるとすれば何か。現在の巨大ハイテク企業はまさに圧倒的な規模を誇り、しかも熱狂した投資家でなくともそうと認めるほどなのだ。

 だからといって、リスクがないわけではない。

 IT(情報技術)バブルが頂点に達した2000年3月10日、当時の大手ハイテク企業の時価総額はとにかく無視できない規模に押し上げられていた。「四騎士」と呼ばれたマイクロソフト、シスコシステムズ、インテル、オラクル(時にパソコンのデルが入れ替わったが) の合計時価総額は、S&P500企業全体の約13.9%を占めていた。

 四騎士のうち、当時の時価総額を上回るのはマイクロソフト1社だけとなった。マイクロソフトは最近になって米企業の時価総額1位に返り咲いた。背後にはアップル、アマゾン・ドット・コム、グーグル親会社のアルファベットが迫っている。この4社を合わせた時価総額はS&P500企業全体の約13.5%と、かつての四騎士の水準に近い。

 現在のトップ4社はしかし、経済的にはるかに大きな影響力を持つ。4社合わせた年間売上高は約7500億ドルと、ITバブル期の四騎士のおよそ10倍に相当し、足元ではS&P500企業の売上高総額の6.4%を占める。この比率は2000年当時の4倍余りだ。どれか1社が抜きんでて大きな割合を占めているわけではない。S&P500企業の売上高総額に占める割合はアップルとアマゾン(厳密には小売企業だが)がそれぞれ約2%、マイクロソフトとアルファベットがほぼ1%ずつとなっている。利益も同様で、4社の合計利益はS&P500企業の利益総額の11%と、2000年3月の四騎士の水準に比べ倍以上だ。

 それでもITバブル期よりはずっと健全だ。当時は現実離れしたバラ色の見通しをもとに四騎士のバリュエーションが高騰していた。四騎士を合わせた過去19年の投資リターンは、S&P500種指数のリターンを100ポイント余り下回った。現在のトップ4社は売上高、利益とも大幅に拡大し、株価の下支え要因が増えた格好だ。

 それでも、今の値がさハイテク株が長期的に良い投資先になるとは限らない。巨大企業には、規模の経済によるコスト低下など有利な面もあるが、不都合な面もある。

 そもそも稼げる資金には限度がある。マイクロソフト、アップル、アマゾン、アルファベットの売上高総額が世界の国内総生産(GDP)の1%近くに達する中、経済成長ペースをしのぐほどの4社の成長力は規模的な制約に直面しつつあるかもしれない。

 巨大企業は小規模な競合より動きが鈍くなる恐れもあり、事業環境の変化に適応するのが一層難しくなりかねない。実際、創業初期のマイクロソフトやアップル、アマゾン、アルファベットは、既存勢力を破壊するシリコンバレーの風雲児そのものだった。マイクロソフトとアップルはパソコン革命で中心的役割を果たし、小型コンピューターやメインフレームのメーカーに取って代わる存在となった。アマゾンは小売業界を一変させ、アルファベットは広告業界の大変動を引き起こした。その4社が今や、一大勢力となっている。

 さらに、巨大企業が直面する規制上の制約も大きくなる可能性がある。買収計画は独占禁止法を根拠に阻止されるかもしれない。規制当局は時として、企業が大き過ぎると判断することもある。アメリカン・テレフォン・アンド・テレグラフ(現AT&T)は1981年末時点で時価総額最大の米企業だった。同社は1982年1月、米司法省による反トラスト法(米独占禁止法)訴訟で和解するため、分割することで合意した。

 大企業への投資は振るわない結果になることも多い。リサーチ・アフィリエイツのロバート・アーノット氏とリリアン・ウー氏の分析によると、1951年から2011年にかけて、各セクターの時価総額1位になった米企業は、その後の年月でリターンが平均を下回る傾向にあった。

 もちろん、大企業が重力に逆らうかのように長期にわたって高い収益を上げることもある。アップルが最初に米企業の時価総額1位になったのは2011年8月で、時価総額は約3400億ドルだった。株価はその後も極めて好調で、昨年9月には時価総額が1兆1000億ドルに達した。

 アップルの向こう1年の売上高は減少が見込まれ、その規模の大きさが成長を阻害している可能性がある。アップル株は9月以降、25%近く下落している。アマゾンは9月に一時、時価総額1兆ドルに届いたが、やはり株価の急落に見舞われている。アルファベットとマイクロソフトの株価は比較的小幅な下落にとどまり、おおむね市場平均に並ぶ動きとなっている。

 新たな四騎士のレースは見る者を楽しませるとはいえ、投資家は過去の大企業の実績を考慮し、他に目を移した方がいいかもしれない。何しろS&P500種構成企業は他に496社もあるのだから。

(The Wall Street Journal/Justin Lahart)
https://diamond.jp/articles/-/196599


 


ワールド2019年3月12日 / 17:35 / 6時間前更新
豪州の干ばつ、今年のGDPの重しに=デベル中銀副総裁
Reuters Staff
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[シドニー 12日 ロイター] - オーストラリア準備銀行(中銀)のデベル副総裁は12日、同国東部で続いている深刻な干ばつについて、降雨量が近く平均水準に戻ったとしても、今年の経済成長率の重しになるとの見通しを示した。

干ばつはすでに国内総生産(GDP)を0.15%押し下げているという。

「気候変動と国内経済」と題したシドニーでの講演で明らかにした。

副総裁は、気候変動の影響を最も受けるのは通常農業だが、地球温暖化は国内経済の幅広い分野にとって大きなリスク・商機になると指摘。金融政策の決定に際しては、常に多数の要因を分析・評価するが「気候変動ほどのスケール、根深さ、システミックリスクを持つ要素は少ない」という。

副総裁は「干ばつやサイクロンの頻度が上がればどうなるか。供給面のショックは、もはや一時的ではなく恒常的に近いものになる」と述べた。

オーストラリアは昨年、干ばつや低木地帯の火事の影響で観測史上3番目に暑い年となった。

副総裁は「気候モデルから得られた結果を受け取り、我々の経済モデルに組み込むことが課題になる」とも発言。中銀は、企業や気候モデルの製作者と連絡を取り合い、金融政策の参考にしているという。

豪中銀は昨年、気候変動問題を検証する中銀のグループである「NGFS(気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク)」に参加した。

副総裁は、再生可能エネルギーへの投資が近年増えているとも指摘。「マクロ経済の水準にも顕著な影響を及ぼす大型(投資)であり、総生産と金融政策の計算にも影響する」とし、インフレ統計に占める電気料金の重要性を踏まえ、今後の再生可能エネルギーの価格・投資動向を注視していくと述べた。
https://jp.reuters.com/article/australia-economy-rba-idJPKBN1QT0YY



http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/488.html

[経世済民131] 物価に金利…日銀の「約束」に見る「過ぎたるは及ばざるがごとし」ETF買増へ ファンド過去10年で最低いかに損失を抑えるか
2019年3月13日 森田京平 :クレディ・アグリコル証券チーフエコノミスト
物価に金利…日銀の「約束」に見る「過ぎたるは及ばざるがごとし」
Photo:PIXTA
物価とマネタリーベース
さらに金利で「約束」
 日銀の金融政策の操作変数は、イールドカーブコントロール(長短金利操作)を導入した2016年9月以降、量(マネタリーベース)から金利に移っている。
 したがってマネタリーベースは、現行の金融政策においては副次的な位置づけにとどまる。
 だが一方、日銀は依然、マネタリーベースについて「コミットメント」を掲げている。いわゆる「オーバーシュート型コミットメント」である。
 さらに、2018年7月には新たに金利の「フォワードガイダンス」を導入した。
 2013年1月に導入された「2%物価目標」とあわせると、「約束」が多くなり過ぎ、金融政策の運営の意図がみえにくくなるばかりだ。
 日銀は目標(物価)、コミットメント(マネタリーベース)、フォワードガイダンス(金利)という順に、約束事(コミュニケーション・ツール)を増やしてきた(図表1参照)。

https://diamond.jp/mwimgs/6/3/-/img_63911cb9e0231093099c2b9cab5996b1124525.jpg

 物価、量、金利というあらゆる面で約束事を導入している中央銀行を、筆者は、日銀以外に知らない。
 これらの約束事は、本来であれば日銀の政策運営の指針となるべきものである。
 ところが、約束事が多すぎて、かえって日銀の政策運営を分かりにくくさせている。まさに「過ぎたるは及ばざるがごとし」である。
増勢に急ブレーキ
マネタリーベース拡大は限界に
 一例として、量についてのオーバーシュート型コミットメント(物価上昇率が2%を安定的に超えるまではマネタリーベースの拡大方針を継続)と、政策金利についてのフォワードガイダンス(当分の間、現在の極めて低い金利を維持)の関係を見ておこう。
 マネタリーベースを、前年同期との差額(前年差)で捉えると、足元の増勢は量的・質的金融緩和が始まったばかりの2013年初期まで落ちている(図表2参照)。

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「マネタリーベースを増やし続ける」という先述のオーバーシュート型コミットメントの妥当性がいよいよ問われる局面だ。
 オーバーシュート型コミットメントに沿う形で、日銀が今後もマネタリーベースを積み増すには、資産側である国債保有残高の積み増しが求められる。
 しかし、時間が経つにつれて、これは一段と難しくなるだろう。
 日銀は2016年後半には、年率120兆円という巨額の長期国債を買っていた。しかし、今ではその規模は90兆円ほどまで下がっている(図表3参照)。

https://diamond.jp/mwimgs/b/2/-/img_b2fa9441988d718d0b2a964d8922a34694428.jpg

 一方、日銀が保有する長期国債の償還も、年率換算すると足元で年間54兆円まで膨れ上がっている。
 つまり、日銀の国債買い入れは、すでに半分以上が再投資に過ぎない。
 このように、国債の「買い入れ」が減り、「償還」が増える中では、マネタリーベースの増勢を高めるような規模で、日銀が国債保有残高を積み上げることの難しさは増している。
 しかも、今後は一段と日銀保有国債の償還が増えるとみられる。
 鍵を握るのは、日銀が買い入れた国債の平均残存年限だ。
 日銀が量的・質的金融緩和の下、国債の大量購入を始めたのは2013年4月だが、その頃に買い入れた長期国債の平均残存年限は約7年である(図表4参照)。

https://diamond.jp/mwimgs/4/5/-/img_452c036d0dfe8e2c58d89f671cbb41d6111319.jpg

 その結果、2020年(=2013年+7年)に向けて、日銀が保有する長期国債の償還額は増える一方である。
 こうした中、オーバーシュート型コミットメントを順守するべく、マネタリーベースを着実に増やすには、国債買い入れを一段と増やす必要がある。
量のコミットメントと
金利のフォワードガイダンスで矛盾
 ところが、今は、金融政策の軸は金利(長短金利)に移っており、そのうち長期金利のターゲットは、10年国債金利でゼロ%程度(許容変動幅は±20bp)とされている。
 実際の10年国債金利はすでにマイナスとなっており、金利操作ターゲットは十分すぎるほど実現されている(図表5参照)。

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 日銀がオーバーシュート型コミットメントを実現するべく、長期国債の買い入れをむやみに増やせば、長期金利が一段と低下(イールドカーブのフラット化)しよう。
 このような長期金利の低下は、すでにそれが長期間続いていることと相まって、銀行などの収益力の弱化どころか、ソルベンシー(自己資本)の毀損の問題に及ぶ可能性がある。
 異次元緩和の副作用が、銀行の収益力(P/L)にとどまらず、ソルベンシー(つまりB/S)の問題に発展すれば、黒田日銀総裁が2017年11月にスイス・チューリヒ大学の講演で言及した「リバーサル・レート」への懸念が再燃する。
 この時の黒田総裁の講演は、邦銀の自己資本が十分である(つまり収益力は下がっていてもソルベンシーの問題はない)がゆえにリバーサル・レートは日本には当てはまらない、との趣旨だったが、低金利が長期化する中、リバーサル・レートの妥当性が問われるのは、むしろこれからである。
 リバーサル・レートを念頭に置くと、量(マネタリーベース)のコミットメントであるオーバーシュート型と、金利操作のフォワードガイダンスの間の矛盾がいよいよ現実的となってきたといえよう。
実現見通せない物価目標
10月分以降のCPIには要注意
 コミットメント(量)とフォワードガイダンス(金利)の矛盾だけでなく、もう一つの約束事である物価目標の約束も、心許ないことこの上ない状況だ。
 一部の食料品で値上げの報道が相次いでいるが、CPIを構成する585品目(沖縄県のみで調査する4品目を含む)を見ると、値上げ品目の割合が目に見えて高まっているという証左はない。
 CPIの構成品目について、1年前と比べて価格が「上昇」した品目と「下落」した品目の割合の差(上昇−下落)を見ると、その値は20%ポイント前後で、むしろ2016〜17年を下回る。
 しかも、景気の足取りは2019年前半は鈍化が見込まれており、当面、CPI前年比変化率も停滞しやすい。
 筆者は、消費税を除くベースで見た場合、2020年までにコアCPI(生鮮食品を除く)が前年比1%を超えることはないと見ている(図表6参照)。

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 なお、今後のCPIを展望する上では、消費税率引き上げに加えて、教育無償化(2019年10月の幼児教育無償化、2020年4月の高等教育無償化など)の影響も無視できない。
 参考として図表6でも、「教育無償化の影響を含む」ベースのCPI予測も示した。
 この場合、コアCPIも2019年10月から2020年半ばに向けて、前年比マイナスの領域に落ち込む。
 このマイナスはあくまで一時的なものだが、人々に「デフレ再来」を想起させ、結果的に予想インフレ率を抑え込むことになれば、デフレ期待が実際に消費や投資を落ち込ませて自己実現的にデフレ環境が形成されかねない。
 だからこそ日銀は、四半期の『展望レポート』で示すコアCPI見通しについて、教育無償化(CPI押し下げ要因)の影響を単独で示すことを避け、消費税率引き上げ(CPI押し上げ要因)と相殺させる形をとっている。
 教育無償化が消費増税分を財源とすることを踏まえると、消費税を除くCPIを見る際には、教育無償化の影響も除くことが自然なのだが、このことが人々の物価の見通しにどういう心理的影響を与えるのか、注意が必要だ。
 いずれにせよ物価のターゲット、量のコミットメント、金利のフォワードガイダンスという約束事の多さは、政策意図の明確化どころか、政策の視界を悪くさせている。
 このことを考えれば、2019年の日銀の課題はコミュニケーション戦略の再考ではないだろうか。
「効果のある政策」はない
政策選択に残された「ミニマックス」的視点
 日銀は、今週14〜15日、金融政策決定会合を開く予定だが、筆者を含め金融政策は維持、据え置きというのが、大方の見方だ。
 一方、仮に今後、ドル円が100円を下回るような円高になった場合は、TOPIX連動型のETFの買い入れ増額が予想される。
 ETFの買い入れ増が円高に効くかは不明だ。ただし、日銀の政策選択に当たって、もはや「効果のある政策はどれか」という贅沢な視点は残されていない。
 あるのは「副作用の小さい政策はどれか」というミニマックス(Minimax:想定される最大の損害の最少化))的な視点である。
 この観点に立つと、ETFの買い入れ増額が最も選択余地の大きい政策領域と思われる。
(クレディ・アグリコル証券チーフエコノミスト 森田京平)

https://diamond.jp/articles/-/196703

 
2019年3月13日 The Wall Street Journal
18年のファンドファミリー・ランキング
いかに損失を抑えるかが重要に
 2018年初め、世界の主要経済圏はいずれも成長していた。さまざまな資産クラスで堅調な兆候が見られ、これまで経験した中で最高の投資環境だという声も聞かれた。しかし、株価は昨年9月に史上最高値を付けてから急速に下落し、2018年の年間パフォーマンスは過去10年で最低となった。アクティブファンドのマネジャーは、どれだけ高い利益を上げたかではなく、どれだけ損失を抑えたかで評価されることになった。
 損失を抑えるのは簡単なことではない。年間でS&P500指数が4.4%下落、MSCI世界指数が8.7%下落となる中、損失を1桁台前半にとどめることができれば御の字だ。今年の本誌ファンドファミリー・ランキングの対象となったアクティブファンド3794本のうち、3128本の年間リターンはマイナスだった。リターンがプラスとなった666本のうち、2桁台のリターンを上げたファンドは7本にすぎない。
 今年のランキング1位は、昨年36位で合計運用資産額1兆6000億ドルのアメリカン・ファンズである。特に運用資産額1340億ドルのアメリカン・バランスド・ファンド(ABALX)が寄与した。リターンは約2.5%のマイナスだったが、それでもリッパーによる同カテゴリーのファンド内で上位4%に入った。
 第2位はニューヨーク・ライフ・インベストメント・マネジメント傘下のメインステイ・ファンズである。傘下のブティック型投資会社マッケイ・シールズとサブアドバイザーのウィンズロー・キャピタル・マネジメントの堅調な成績が寄与した。第3位はイートン・バンス(EV)、第4位はスライベント・ミューチュアル・ファンズ、第5位はピムコだった。
 ランキングの対象となるには、リッパーの米国株全般カテゴリーのミューチュアルファンドかアクティブ型上場投資信託(ETF)を3本以上設定していなければならない。さらに、海外株式、ミックスアセット型(バランス型など)、国内免税債券の各カテゴリーで1本以上、課税債券カテゴリーで2本以上の設定が必要で、いずれも最低1年の運用実績を条件としている。インデックスファンドは除外しているが、いわゆる「スマートベータ」ETFは対象に含めている。これらのETFはパッシブ運用だが、アクティブ投資戦略に基づいて設定されている。従って、本ランキングは各社のアクティブ運用の能力を反映したものである。
 2018年のランキング対象は、リッパーのデータベースに掲載されている869社のうち57社にとどまった。ドッジ・アンド・コックスやジャナス・ヘンダーソンなど、多くの著名企業が対象外となっているが、M&A(合併、買収)や商品追加によって対象企業は毎年変わる。
 本ランキングでは資産加重方式で得点を計算するため、同一企業内で最大のファンドの運用成績に順位が左右されやすい。ナティクシス・インベストメント・マネージャーズの場合、2016年と2017年は運用資産額354億ドルのオークマーク・インターナショナル・ファンド(OAKIX)が順位を押し上げて1位となったが、昨年はオークマークのリターンがマイナス23%となったことで最下位に沈んだ。
18年のファンドファミリー・ランキング 拡 https://diamond.jp/mwimgs/3/7/-/img_37c04610e0e429d9ee0ada022592fe4e332823.jpg

上位企業の動向
 第1位となったアメリカン・ファンズでは、市場に対する見解がマネジャーによって大きく異なる。アメリカンの運営会社であるキャピタル・グループのティム・アーマー会長兼最高経営責任者(CEO)は、意見の多様性こそが経営のカギであると語る。同社では36本の異なる戦略に基づくファンドを複数のマネジャーが運用しているが、各マネジャーの自主性が確保されている。これがスターマネジャーへの依存を回避し、堅調なリターンを上げることにつながっている。
 アメリカンでは、運用資産額の20%を占める債券ファンドの強化に重点が置かれている。今年の順位上昇に大きく貢献したのは、上記のアメリカン・バランスド・ファンドと、運用資産額400億ドルの債券ファンドであるアメリカン・ファンズ・ボンド・ファンド・オブ・アメリカ(ABNDX)だった。両ファンドはリッパーのカテゴリー内でそれぞれ競合ファンドの96%と82%を上回る成績を上げた。
 ニューヨーク・ライフ・インベストメント・マネジメントのイエ・シン・ホンCEOも独立的な思考を重視しているが、アプローチはやや異なる。同社の個人向け資産運用部門のメインステイ・ファンズは、運用資産額が540億ドルで、傘下に8社のブティック型資産運用会社を有する。これらの運用会社が、メインステイを2018年のランキング2位に押し上げた。
 こうした運用会社の一つがマッケイ・シールズである。同社はインカム投資、とりわけ地方債に重点を置いている。運用資産額56億ドルのメインステイ・マッケイ・ハイ・イールド・ミュニシパル・ボンド・ファンド(MMHAX)の個人向けシェアクラスは、昨年に4.3%のリターンを上げ、リッパーのカテゴリー内で上位6%に入った。
 運用資産額116億ドルのメインステイ・ラージ・キャップ・グロース・ファンド(MLAAX)は、2018年のリターンが3.7%となり、競合ファンドの92%を上回った。同ファンドの長年のサブアドバイザーであるウィンズロー・キャピタル・マネジメントは、グロース株を専門に取り扱っている。同社はグロース株を「コンシステント」(一貫)、「シクリカル」、「ダイナミック」の三つに区分しており、この区分がアップル(AAPL)を早期に売り抜けることに役立った。アップルの株価は2018年に約7%下落している。
 第3位のイートン・バンスは、他の大手ファンド運用会社と同様に、新たな分野の商品を拡充している。2016年後半には、持続可能投資を専門に手掛けるカルバート・リサーチ・アンド・マネジメントを買収した。旗艦ファンドである運用資産額24億ドルのカルバート・エクイティ・ファンド(CSIEX)は、昨年に5%以上のリターンを上げた。この結果は、環境・社会・ガバナンス(ESG)が財務面の強さや底堅さと密接に関連する傾向があるという考え方を裏付けた。また、イートンによるカルバートの買収や、その後のESGリサーチプラットフォームへの投資が賢明だったことも示された。
 第4位のスライベント・ミューチュアル・ファンズは、人々が「お金について賢くなり、寛大な心で生きる」ことを支援するという理念を掲げている。昨年末に業界全体が巨額の資金流出に見舞われる中、同社は新規資金を呼び込むことに成功した。同社のファンドファミリーは運用資産額207億ドルで、販売チャンネルの拡大が売上高の増加に寄与した。
 堅調なパフォーマンスも貢献している。スライベントの運用資産額上位2本は、共にミックスアセット型で、28億ドル規模のスライベント・モデレートリー・アグレッシブ・アロケーション・ファンド(TMAAX)と24億ドル規模のスライベント・モデレート・アロケーション(THMAX)である。両者の昨年のリターンは共にマイナスとなったが、早期に海外株をアンダーウエートとし、グロース株よりもバリュー株を選好したことで損失を抑えた。
 運用資産額1兆7000億ドルの巨大企業であるピムコは第5位に入った。同社はあらゆる主要な資産クラスをカバーするが、運用資産額の88%を占める債券を最大の強みとしている。同社の多くのファンドにとって、2018年の共通テーマは社債の増加とその品質の低下だった。グループ最高投資責任者(CIO)のダン・アイバシン氏は「過去数年で大量の社債が発行され、その多くがインカム志向の投資家の手に渡った。市場のセンチメントが変わったとき、オーバーシュートする可能性が最も高いセクターだ」と語る。
 多くのファンドは社債へのエクスポージャーを限定し、住宅ローン担保証券(MBS)に重点を置くことで好調なパフォーマンスを上げた。アイバシンCIOは「今後数年にわたり、(MBSは)非常に魅力的かつディフェンシブなセクターとなり、安定した利回りを上げるとみられる」と言う。とはいえ、ピムコは社債市場の拡大を無視しているわけではなく、むしろその逆である。同CIOは、発行額の急増を受けて、米国外を中心に社債のリサーチを強化し、投資機会に備えているという。
ランキング手法
 本誌の目的はマネジャーのスキル測定にあるため、販売手数料などを控除する前のリターンを使用している。各ファンドのパフォーマンスは、リッパーの同カテゴリー内のファンドと比較して点数化され、同一ファンドファミリー内の運用資産額に応じて加重される。すなわち、ファミリー内で最大のファンドが良好なパフォーマンスを上げれば、そのファミリー全体の順位が上昇する。
 最後にリッパーの資産カテゴリーに基づき点数が加重平均される。2018年の1年リターン部門の加重割合は、米国株全般が34.8%、ミックスアセットが21.3%、海外株式が17.1%、課税債券が22.4%、免税債券が4.4%である。5年リターンではそれぞれ35.9%、19.7%、17.3%、22.5%、4.5%、10年リターンでは37.1%、20.0%、16.7%、21.2%、4.9%となっている。
 例えば、あるファンドが米国株全般のカテゴリーに含まれており、その運用資産額が5億ドルであるとしよう。そのファンドは、ファンドファミリーの同カテゴリーにおける運用資産額の半分を占め、パフォーマンスがカテゴリー内で上から75%の位置にあると仮定する。この場合の得点は、75に0.5を掛けた37.5と、リッパーのカテゴリーに基づく加重割合34.8%を掛け、37.5×0.348で13.05となる。同様の計算を各ファンドについて行い、最後に各カテゴリーおよび全体で得点を合計している。
(The Wall Street Journal/Sarah Max)

https://diamond.jp/articles/-/196740
 
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/490.html

[経世済民131] 中国は日本の「失われた10年」に学ぶ必要=人民銀行前総裁 米中通商交渉、数週間で終結する可能性=USTR代表
ビジネス2019年3月13日 / 08:48 / 4時間前更新
中国は日本の「失われた10年」に学ぶ必要=人民銀行前総裁
Reuters Staff
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[ロンドン 12日 ロイター] - 中国は日本の「失われた10年」がもたらした教訓を学び、同じ問題に苦しめられないようにする必要がある──。中国人民銀行(中央銀行)前総裁の周小川氏は12日、英王立国際問題研究所における講演でこうした考えを示した。

周氏は、中国政府は債務圧縮の取り組みを進めているものの、債務水準は今も高過ぎると指摘。「日本は急速な発展を遂げた後に、いわゆる失われた10年を迎えた。中国経済も似たような過剰債務の問題を抱えるかもしれず、(日本での)事象から教訓や知識を吸収しなければならない」と語った。

中国の昨年の国内総生産(GDP)成長率は1990年以降で最低の伸びにとどまり、社債のデフォルト(債務不履行)は過去最多、銀行の不良債権比率も10年ぶりの高水準に達した。

また周氏は、中国は金融セクターの改革や一段の市場開放を続ける見通しで、人民元の国際化進展でそれが可能になっていると強調するとともに「多くの年を経て中国はさらなる改革・開放政策への自信を格段に強めている」と説明した。半面、一部の改革が遅れていることや、資本市場のさらなる充実、年金システム立て直しについては、もっと抜本的な対応が必要なことも認めた。

貿易問題については「われわれは自由な貿易や投資、多国間主義に賛成している」と主張し、米中貿易摩擦が今後和らぐだろうとの期待を表明した。
https://jp.reuters.com/article/china-jp-lost-decade-idJPKBN1QT34G


 

ワールド2019年3月13日 / 02:27 / 14分前更新
米中通商交渉、数週間で終結する可能性=USTR代表
Reuters Staff
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[ワシントン 12日 ロイター] - 米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は12日、米中通商交渉が合意に向けた最後の数週間の段階にある可能性を示した。

ライトハイザー代表は上院財政委員会の公聴会で「協議が合意に向けた最後の数週間の段階にあると期待している」と語った。同時に「米国に有益になるよう懸案が解消されなければ、合意はない」と強調した。

合意締結後に中国に順守を迫る手段として対中関税を維持するつもりはあるのか議員らに問われ、ライトハイザー氏は「中国側は撤廃を交渉の焦点にしている」と説明。「これが譲歩だとしても、協議の対象になっている」とした。

また、米政府は知的財産権を巡る構造問題に「確実に」対応しており、為替操作の問題に対処するための合意に近づいていると述べた。

中国国営メディアによると、ライトハイザー代表と中国の劉鶴副首相は12日に電話で会談した。ライトハイザー氏は公聴会で、13日にも電話会談が予定されていると明らかにした。「われわれはほぼ絶え間なく取り組んでいる」とした。

中国以外の問題については、ライトハイザー氏はカナダとメキシコに対する鉄鋼・アルミニウム輸入関税を撤廃するための合意に向けて米政府は動いていると説明。関税を廃止する一方で、関税のプラス効果を持続するような取り決めを模索していると説明し、輸入割当枠が有効との見方を示した。

欧州連合(EU)との協議については、農産品の市場開放を巡り「完全なこう着状態」にあると説明。「他の分野について協議を進めているが、農産品が入らない(通商合意)はあり得ないと認識している」とした。

世界貿易機関(WTO)の改革に向けて諸外国に圧力をかけるトランプ政権の姿勢については、WTOが「急速に変化する世界で存在意義」を保つよう、新たなルール作りを精力的に働き掛けていると語った。

*内容を追加しました。
https://jp.reuters.com/article/usa-trade-lighthizer-china-idJPKBN1QT2F8
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/493.html

[経世済民131] 春闘集中回答日、ベア前年割れ相次ぐ 消費拡大に黄信号 企業物価指数2月は前年比+0.8%、原油高で4カ月ぶり上昇幅拡大
ビジネス2019年3月13日 / 11:28 / 1時間前更新
春闘集中回答日、ベア前年割れ相次ぐ 消費拡大に黄信号
Reuters Staff
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[東京 13日 ロイター] - 2019年春季労使交渉(春闘)で、自動車や電機などの主要企業が13日、労働組合の賃金要求に対して一斉に回答した。基本給を底上げするベースアップ(ベア)は前年水準を割り込む企業が相次いでおり、賃金上昇を起点とした消費拡大に黄信号がともる結果となっている。安倍晋三首相の賃上げ要請に応える「官製春闘」が支えてきたアベノミクスは正念場を迎えている。

日立製作所(6501.T)やパナソニック(6752.T)、三菱電機(6503.T)、富士通(6702.T)など大手電機はベアに相当する賃金改善額について、前年を500円下回る月1000円で決着した。ベアは6年連続となったが、電機業界は中国経済の悪化で業績拡大にブレーキがかかっており、足元の不透明感を反映する結果となった。

トヨタ自動車(7203.T)の平均昇給額(期間従業員や再雇用者を含む全組合員)は前年を1000円下回る月1万1700円で妥結。ホンダ(7267.T)のベアは前年を300円下回る月1400円、日野自動車 (7205.T)の賃金改善は同200円下回る2000円で、それぞれ決着した。一方、日産自動車(7201.T)の賃金改善は3000円と前年と同水準となった。  

金属労協に入っているこのほかのベア回答は、オークマ(6103.T)が2438円(前年1508円)、島津製作所(7701.T)が1000円(同1500円)、ジーエス・ユアサ コーポレーション(6674.T)が1000円(同1100円)、NTN(6472.T)が1200円(同1100円)、日本精工(6471.T)が1200円プラス住宅手当(同1500円プラス住宅手当)、コマツ(6301.T)が2000円(同2000円)などとなっている。

足もとでは物流費や人件費の上昇に悲鳴を上げていた食品業界を中心に値上げの動きが相次いでおり、家計を直撃している。10月に消費税増税を控える中、賃上げの動きが鈍れば、財布のひもはさらに固くなりかねないリスクがある。

*内容を追加しました。

志田義寧
https://jp.reuters.com/article/wage-baseup-idJPKBN1QU07A


 

ビジネス2019年3月13日 / 10:28 / 3時間前更新
企業物価指数2月は前年比+0.8%、原油高で4カ月ぶり上昇幅拡大
Reuters Staff
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[東京 13日 ロイター] - 日銀が13日に発表した2月の企業物価指数(CGPI)速報によると、国内企業物価指数(2015年=100.0)は前年比でプラス0.8%となった。プラスは26カ月連続。昨年末の原油価格下落の影響を受けて、1月まで上昇幅は3カ月連続で縮小していたが、年明けから原油価格が下げ止まり・反発したことから、4カ月ぶりにプラス幅が拡大した。

ロイターがまとめた民間調査機関の予測中央値は前年比プラス0.7%だった。2月の指数は101.1。

前月比はプラス0.2%で、4カ月ぶりにプラスに転じた。

米中貿易協議進展の期待感や米国の利上げスタンスの転換、中国の景気対策などがあり「ひところに比べると市場参加者の悲観的な見方が和らぎ、各種の商品市況の下げ止まりや持ち直しにつながった」(幹部)と日銀はみている。また、年明けは為替相場がやや円安方向に振れたことも、企業物価の押し上げ要因となった。

原油市況の影響を受ける「石油・石炭製品」は、1月の前月比マイナス4.2%から2月はマイナス2.1%へとマイナス幅が縮小した。米中貿易摩擦の懸念から下落していた銅やアルミニウムなどの「非鉄金属」も前年比5.6%下落と、前月の7.4%下落から下落幅を縮小させた。

今後について日銀は「米中貿易摩擦を巡る不意透明感が強い状況は続くため、世界経済に与える影響に注意が必要な状況が続く」とし「商品市況だけでなく、実体経済の動向も重要なポイントになる」(幹部)とコメントしている。

公表744品目のうち、前年比で上昇したのは393品目、下落は276品目だった。上昇と下落の差は117品目で、前月から22品目減少した。

清水律子
https://jp.reuters.com/article/corp-goods-price-feb-idJPKBN1QU05B

http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/494.html

[国際25] 米、「非常に重大な」ベネズエラ追加制裁を計画=担当特使 米与野党、不祥事への対応でWファーゴCEOを追及 議会公聴会
ワールド2019年3月13日 / 08:53 / 5時間前更新
米、「非常に重大な」ベネズエラ追加制裁を計画=担当特使
Reuters Staff
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[ワシントン 12日 ロイター] - 米国のベネズエラ担当特使、エリオット・エイブラムス氏は12日、金融機関を対象とするベネズエラ関連の「非常に重大な」追加制裁を数日内に発動する準備を進めていると明らかにした。

追加制裁の詳細には踏み込まなかった。米財務省は11日にベネズエラ国営石油会社PDVSAと取引を行なっているとして、ロシアのユーロファイナンス・モスナル銀行に対する制裁措置を発動させたばかり。

エイブラムス氏はまた、ベネズエラのマドゥロ大統領と近い関係にあるベネズエラ人の米入国査証(ビザ)を追加で取り消す計画であることも明らかにした。

同氏は「かなり近いうちに相当の数のビザが追加で取り消されることになる。数日内には非常に重大な追加制裁が導入される」と語った。

ベネズエラ政府はこの日、同国駐在の米外交官に72時間以内の国外退去を要求した。

米側もベネズエラ情勢の悪化を理由に、同国駐在の外交官全員を週内に帰国させると明らかにしている。

エイブラムス氏は外交官への帰国指示は「米国の対ベネズエラ政策のいかなる変更も意味しない。ベネズエラの人々や彼らの民主主義に向けた闘いに対する米国の関与低下も意味しない」と強調。制裁を通じてマドゥロ政権への圧力を継続する考えだと述べた。
https://jp.reuters.com/article/us-ve-sanctions-idJPKBN1QT34Z

 
ビジネス2019年3月13日 / 10:18 / 3時間前更新
米与野党、不祥事への対応でWファーゴCEOを追及 議会公聴会
Reuters Staff
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[ワシントン 12日 ロイター] - 米大手銀行ウェルズ・ファーゴ(Wファーゴ)(WFC.N)のティム・スローン最高経営責任者(CEO)は12日に開かれた下院金融サービス委員会の公聴会で、悪質な販売慣行など一連の不祥事を受けて業務改善が図られたかどうかを巡り、与野党の厳しい追及を受けた。

スローン氏は同行の企業文化は変わったと主張したが、懐疑的な議員らを納得させるには至らなかった。ただ、CEOとしての資質に疑念を生じさせるような大きな失敗もせずに無難に議会証言を終えた。

スローン氏は、2018年の中間選挙後に民主党が同委の多数派となって以来、同委の追及を受けた初めての銀行首脳となった。モルガン・スタンレー(MS.N)、ゴールドマン・サックス・グループ(GS.N)、シティグループ(C.N)、JPモルガン・チェース(JPM.N)、バンク・オブ・アメリカ(BAC.N)の各CEOは来月、同委の公聴会に出席する見通し。

同委の民主、共和両党の議員らはWファーゴの業務改善への取り組みや人事、リスク管理、企業文化、企業分割の是非などについてスローン氏に厳しい質問を浴びせた。

銀行に批判的なことで知られるマキシン・ウォーターズ委員長は冒頭で、Wファーゴは悪質な営業方針を撤廃したと証明できていないと批判。「Wファーゴの現在の無法で立て直しが図られていない状態は、同行が大き過ぎて管理不能であることを示している」と主張した。スローン氏は辞任すべきだとも述べた。

スローン氏が準備した証言原稿によると、同氏は企業文化や販売慣行、リスク管理に関してこれまで実施した改革や不当な料金を支払った顧客に対する返金の取り組みについて強調。「Wファーゴは3年前に比べて良い銀行になった。さらに良くなるためにわれわれは日々取り組んでいる」としている。

また、ウォーターズ委員長が同行の分割を求めた際にはこれに反論。住宅ローンで不当な手数料を取っていた問題では、全顧客に返金したと述べ、不正な自動車保険料徴収の問題についても同様の回答をした。

ただ、公聴会後に米通貨監督庁(OCC)の報道官は「Wファーゴの経営状況、そして効果的な企業統治(ガバナンス)体制や結果を伴うリスク管理制度が構築できないことについて、われわれは引き続き失望している」との声明を出した。OCCは昨年、自動車保険と住宅ローンでの過剰な料金徴収を巡り同行に10億ドルの制裁金を科している。
https://jp.reuters.com/article/wells-fargo-hearing-idJPKBN1QU04W
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/673.html

[国際25] 「ボーイング737 MAX 8」で5カ月の間に2度発生した墜落事故の類似点

2019年03月12日 09時28分乗り物
「ボーイング737 MAX 8」で5カ月の間に2度発生した墜落事故の類似点

by Gusti Fikri Izzudin Noor

2019年3月10日(日)、エチオピアの首都・アディスアベバ近郊にあるボレ国際空港から離陸したエチオピア航空302便が墜落し、乗員・乗客合わせて157人全員が死亡する事故が起きました。この便で用いられていた「ボーイング737 MAX 8」は、2018年10月にインドネシアで発生したライオン・エア610便墜落事故でも運用されていました。わずか5カ月の間に発生した2つの事故には、運航機材が同じであったという点も含めていくつか類似点があるということを、旅行ニュースサイト・The Points Guyが取り上げています。

Striking Similarities Between Lion Air and Ethiopian Crashes
https://thepointsguy.com/news/similarities-lion-air-ethiopian-737-max-crashes/

・運航機材が同じ
何より目立つのは、2つの事故が同じ「ボーイング737 MAX 8」で運航されていたという点です。

この機材は、ボーイングが製造している「ボーイング737」シリーズの第4世代機「ボーイング737 MAX」ファミリーに属しています。ファミリーには、MAX 8より小型のMAX 7、MAX 8の座席数を200に増やしたMAX 200、MAX 8より大型のMAX 9とMAX 10があります。

「ボーイング737 MAX」は、2010年12月にライバルであるエアバスがA320neoを発表して好評だったのを受け、2011年8月に開発計画が始動。2018年までに4000機以上の受注があり、2017年から引き渡されて運航されています。2019年1月までに引き渡された機体数は350。

2011年から運用されているボーイング787はその倍以上の機数が引き渡し済みで、バッテリー問題をはじめとした機材トラブルが幾度も発生している一方で墜落事故は起きていません。

by Jetstar Airways

・事故が離陸時に起きている
そもそも航空業界で「魔の11分間」「離陸3分、着陸8分」と呼ばれるほどに航空事故は離陸時・着陸時に集中しているので、これは珍しい一致ではありませんが、2つの事故はいずれも離陸時に発生していました。

ライオン・エア610便は離陸から13分で墜落、エチオピア航空302便の場合は離陸から6分でレーダーから消失しています。

・離陸時の上昇に不具合があった可能性
ライオン・エアの事故は、ブラックボックスの解析により、離陸からの13分間で機首下げ動作が24回以上行われていたことがわかっています。この動作は「ストール(失速)防止システム」によるものであるとみられ、オートパイロットではない手動操縦時にもシステムは作動するようにできていたとのこと。おそらく、仰角センサーの不具合か何かで、離陸時の正常な上昇を「危険」なものだと誤認してシステムが作動。その度にパイロットが機首上げを行ってはシステムが再度作動し、という繰り返しになっていたと考えられます。この事故後の調査で、ボーイング737 MAX 8の乗務員用マニュアルに、ストール防止システムのことが記載されていなかったことが指摘されています。

このストール防止システムがエチオピア航空の事故に影響を与えたかどうかはまだ不明ですが、当該便のフライト記録から、離陸後の高度上昇がうまくいっていなかったことがわかっていて、2つの事故はともに「離陸時の上昇になんらかの不具合が起きた」可能性が見られます。
Twitterで画像を見る

Flightradar24
✔@flightradar24

返信先: @flightradar24さん
Additional data from Flightradar24 ADS-B network show that vertical speed was unstable after take off.

Take off 05:38:18 UTC
Last position received by FR24 at 05:41:02 UTC

Please note that Addis Ababa airport is located at 7,625 feet AMSL.

841
18:31 - 2019年3月10日

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・1日の最初のフライト
事故原因との関連はともかく、ライオン・エア610便は午前6時20分離陸、エチオピア航空302便は午前8時38分離陸で、いずれも当該機体を用いた当日最初のフライトでした。

ただ、その前の状況は両機で違いがあり、ライオン・エア機はジャカルタで一泊した後だったのに対し、エチオピア航空機はヨハネスブルグからのフライトで事故の2〜3時間前に到着したところでした。

・天候は無関係
機体への落雷や着雪が事故原因となることもありますが、ライオン・エア610便の事故遭遇時の天候は晴天で風は弱く視界良好、エチオピア航空302便の事故遭遇時も雲は点在する程度で視界良好であったことがわかっています。
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https://gigazine.net/news/20190312-boeing-737-max-8-crash/

http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/674.html

[政治・選挙・NHK258] 北朝鮮非難決議案の提出をとりやめ決定=菅官房長官
ワールド2019年3月13日 / 12:03 / 2時間前更新
北朝鮮非難決議案の提出をとりやめ決定=菅官房長官
Reuters Staff
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 3月13日、菅義偉官房長官(写真)は午前の記者会見で、昨年まで毎年提出してきた国連人権委員会への対北朝鮮非難決議案を、今年は取りやめる方針を明らかにした。写真は都内で2017年5月撮影(2019年 ロイター/Toru Hanai)
[東京 13日 ロイター] - 菅義偉官房長官は13日午前の記者会見で、昨年まで毎年提出してきた国連人権委員会への対北朝鮮非難決議案を、今年は取りやめる方針を明らかにした。

同長官は「米朝首脳会談の結果や拉致問題を取り巻く諸情勢を総合的に勘案して決定した」と説明。人権外交への考え方に変わりはなく、「米朝対話のプロセスを後押しし、それを通じて核ミサイルの廃棄、拉致問題の解決を図る」との認識を示した。

また安倍晋三首相が北朝鮮の金委員長と直接会談する決意を示していることや、トランプ大統領の対北朝鮮政策を政府として全面的に支持していることなどを踏まえ、「拉致問題などで今後も米国と緊密に連携し、安全保障理事会の決議を履行していくことに変わりはない」と強調した。その上で「今回の決断により国際的な足並の乱れが生じることはないと考えている」と述べた。

中川泉
https://jp.reuters.com/article/suga-north-korea-idJPKBN1QU09F
http://www.asyura2.com/19/senkyo258/msg/440.html

[政治・選挙・NHK258] 国(環境省)が示す毎時0.23マイクロシーベルトの算出根拠 追加被ばく線量年間1ミリシーベルトの考え方
国(環境省)が示す毎時0.23マイクロシーベルトの算出根拠

ページ番号:553-677-116

更新日:2018年2月9日

国(環境省)が示している毎時0.23マイクロシーベルト(μSv)の算出根拠について

環境省では、放射性物質汚染対処特措法に基づく汚染状況重点調査地域の指定や、除染実施計画を策定する地域の要件を、毎時0.23マイクロシーベル ト(μSv)以上の地域であることとしました(測定位置は地上50cm〜1m)。この数値は、追加被ばく線量年間1ミリシーベルト(mSv)を、一時間あ たりの放射線量に換算し、自然放射線量分を加えて算出されています。 (詳しい計算は※の通り)

これは、放射性物質が面的に存在し、一年を同じような放射線量の場所で過ごすことを想定した地域の面的な汚染を判断していくための要件です。局所的に限定された地点での汚染については、滞在時間が短いと考えられるため、必ずしも、この要件が適用されるものではありません。

※線量の換算について

追加被ばく線量年間1ミリシーベルト(mSv)を、一時間当たりに換算すると、毎時0.19マイクロシーベルト(μSv)と考えられます。(1日のうち屋外に8時間、屋内(遮へい効果(0.4 倍)のある木造家屋)に16 時間滞在するという生活パターンを仮定)

毎時0.19マイクロシーベルト(μSv) × (8時間 + 0.4 × 16 時間) × 365 日= 年間1ミリシーベルト(mSv)

測定器で測定される放射線には、事故由来の放射性物質による放射線に加え、大地からの放射線(毎時0.04マイクロシーベルト(μSv))が含まれます。このため、測定器による測定値としては、

0.19 (事故由来分)+0.04 (自然放射線分)=毎時0.23マイクロシーベルト(μSv)

である場合、年間の追加被ばく線量が1ミリシーベルト(mSv)になります。

詳細はこちら

外部サイトへリンク 新規ウインドウで開きます。追加被ばく線量年間1ミリシーベルトの考え方(環境省)(外部サイト)
http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/policy_others/radiation/view/men.html

 


参考資料
追加被ばく線量年間1ミリシーベルトの考え方
追加被ばく線量は、空間線量率の測定により確認することができ、追加被ばく線量年間1
ミリシーベルトは、一時間当たりの空間線量率(航空機モニタリング等の NaI シンチレー
ション式サーベイメータによる)に換算すると、毎時 0.23 マイクロシーベルトにあたる。
その考え方は、以下のとおり。
追加被ばく線量の考え方
@ 事故とは関係なく、自然界の放射線が元々存在し、大地からの放射線は毎時 0.04 マイ
クロシーベルト、宇宙からの放射線は毎時 0.03 マイクロシーベルトである。
※大地からの放射線、宇宙からの放射線はそれぞれ年間 0.38 ミリシーベルト、年間 0.29
ミリシーベルト(文部科学省「学校において受ける線量の計算方法について」(平成
23 年 8 月 26 日))であり、これを一時間当たりに換算(24 時間 ×365 日で割る)
した数値
A 追加被ばく線量年間1ミリシーベルトを、一時間当たりに換算すると、毎時 0.19 マイ
クロシーベルトと考えられる。(1日のうち屋外に8時間、屋内(遮へい効果(0.4 倍)
のある木造家屋)に 16 時間滞在するという生活パターンを仮定)
※毎時 0.19 マイクロシーベルト × (8時間 + 0.4 × 16 時間) × 365 日
= 年間1ミリシーベルト
B 航空機モニタリング等の NaI シンチレーション式サーベイメータによる空間線量率の
測定では、事故による追加被ばく線量に加え、自然界からの放射線のうち、大地からの放
射線分が測定されるため、
0.19 + 0.04 = 毎時 0.23 マイクロシーベルト
が、追加被ばく線量年間1ミリシーベルトにあたる。
※通常の NaI シンチレーション式サーベイメータでは宇宙からの放射線はほとんど測
定されない
※航空機モニタリングに使用する検出器では宇宙からの放射線も検出するが、その分は
差し引かれている
平成 23 年 10 月 10 日災害廃棄物安全評価検討会・環境回復検討会 第1回合同検討会 資料(別添2)
http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=18437&hou_id=14327

http://www.asyura2.com/19/senkyo258/msg/441.html

[経世済民131] 設備投資に暗雲、1─3月期GDPマイナスも 外需減速響く 春闘ベア前年割れトヨタ1000円下回る
ビジネス2019年3月13日 / 16:34 / 1時間前更新
焦点:
設備投資に暗雲、1─3月期GDPマイナスも 外需減速響く
Reuters Staff
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[東京 13日 ロイター] - 設備投資の先行きに暗雲が漂っている。内閣府が13日発表した1月機械受注統計で、民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力を除く民需」の受注額は前月比5.4%減と3カ月連続で減少し、投資意欲の後退をあらためて印象づけた。

中国などの外需減速が内需に波及するリスクを意識させる結果となり、一部のエコノミストは外需の弱さを設備投資と消費の内需で補えず、2019年1─3月期の国内総生産(GDP)は、前期比マイナスに転落する懸念を示している。

「内外需とも弱い」――。機械受注を受けてSMBC日興証券・シニアエコノミストの宮前耕也氏は、こう題したリポートを顧客向けに配信した。

1月機械受注統計では、船舶・電力を除く民需の受注額(季節調整済み)が8223億円と、前月比5.4%減った。「電気機械や情報通信機械向けの受注減が主な要因」(内閣府・経済社会総合研究所景気統計部)で、貿易交渉を巡る米中対立が飛び火した格好。「これまで堅調だった非製造業からの受注も一部で弱さがみられ、1−3月期の設備投資は減少に転じるリスクが高まっている」と、宮前氏は指摘する。

IHSマークイット・主席エコノミストの田口はるみ氏の見方はさらに厳しい。「中国からの受注動向が悪く、スマホ関連の需要も落ちている。先行きへの懸念が続き、さらに設備投資の抑制が続く可能性もある」と機械受注を分析。そのうえで「引き続き外需は弱い。設備投資は前期比マイナスに転じ、在庫投資も減らす動きがあり、19年1─3月の実質GDPは一時的にマイナスに転じる可能性がある」と予想する。

内閣府が8日発表した18年10─12月期の国内総生産(GDP)改定値で、実質成長率が年率1.9%増に上方修正(速報値は年率1.4%増)されたのは、設備投資や在庫の伸びを反映した結果だ。

ただ、足元で設備投資が失速している現状について、ニッセイ基礎研究所・経済調査室長の斎藤太郎氏は「18年10─12月期は消費や設備が伸びてプラス成長となったが、19年1─3月期は消費、設備とも横ばいで、外需の落ち込みをカバーできない」と分析。「1─3月期の実質GDPは、前期比年率で0.4%のマイナスになる」と想定している。

内閣府と財務省が12日に発表した法人企業景気予測調査では19年度の設備投資は全産業で6.2%減の見通しとなっている。

マクロ政策取材チーム 編集:田巻一彦
https://jp.reuters.com/article/japan-industry-idJPKBN1QU0RA


 
ビジネス2019年3月13日 / 11:28 / 1時間前更新
春闘集中回答日、ベア前年割れ相次ぐ トヨタは1000円下回る
Reuters Staff
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[東京 13日 ロイター] - 2019年春季労使交渉(春闘)で、自動車や電機などの主要企業が13日、労働組合の賃金要求に対して一斉に回答した。基本給を底上げするベースアップ(ベア)は前年水準を割り込む企業が相次いでおり、賃金上昇を起点とした消費拡大に黄信号がともる結果となっている。安倍晋三首相の賃上げ要請に応える「官製春闘」が支えてきたアベノミクスは正念場を迎えている。

「賃金要求に対しては、経営側は厳しい姿勢を最後まで崩さなかった」──。自動車総連の高倉明会長(金属労協議長)は今回の春闘についてこう総括した。

トヨタ自動車(7203.T)は平均昇給額(定年後再雇用やシニア期間従業員も含む全組合員)について、昨年を1000円下回る月1万0700円で妥結した。昇給率は3.01%(昨年3.3%)となる。夏の賞与(ボーナス)は組合員1人平均120万円とし、冬については継続協議になった。前年は年間243万円だった。

ホンダ(7267.T)のベアは昨年を300円下回る月1400円で決着。日野自動車 (7205.T)の賃金改善も月2000円と昨年を200円下回った。

一方、カルロス・ゴーン前会長の不正疑惑で揺れている日産自動車(7201.T)の賃金改善は月3000円と昨年と同水準となった。

電機大手も厳しい交渉となった。日立製作所(6501.T)やパナソニック(6752.T)、三菱電機(6503.T)、富士通(6702.T)など大手電機はベアに相当する賃金改善額について、昨年を500円下回る月1000円で決着した。ベアは6年連続となったが、電機業界は中国経済の悪化で業績拡大にブレーキがかかっており、足元の不透明感を反映する結果となった。

電機連合の野中孝泰委員長(金属労協副議長)は「経営側は『過去5年間連続して賃金水準を改善してきており、昨今の厳しい経営環境を踏まえれば、さらなる上積みは極めて慎重にあるべきだ』と繰り返した」と述べ、難しい交渉だったと振り返った。

ただ結果については「これまでの5年間で9000円を積み上げてきた。この上に1000円積むことができたことは非常に重たい」と前向きに評価した。

金属労協に報告があったほかのベア回答は、オークマ(6103.T)が月2438円(昨年1508円)、島津製作所(7701.T)が月1000円(同1500円)、ジーエス・ユアサ コーポレーション(6674.T)が月1000円(同1100円)、NTN(6472.T)が月1200円(同1100円)、日本精工(6471.T)が月1200円プラス住宅手当(同1500円プラス住宅手当)、コマツ(6301.T)が月2000円(同2000円)などとなっている。

足元では物流費や人件費の上昇に悲鳴を上げていた食品業界を中心に値上げの動きが相次いでおり、家計を直撃している。10月に消費税増税を控える中、賃上げの動きが鈍れば、財布のひもはさらに固くなりかねないリスクがある。

*内容を追加しました。

志田義寧 白木真紀 編集:田巻一彦
https://jp.reuters.com/article/wage-baseup-idJPKBN1QU07A
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/497.html

[経世済民131] イタリア、戦略的利益を保護へ 「一帯一路」覚書巡り 建国70年・天安門30年、習氏への忠誠強いる中国共産党
ワールド2019年3月13日 / 17:04 / 30分前更新
イタリア、戦略的利益を保護へ 「一帯一路」覚書巡り

現地紙Reuters Staff
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[ミラノ 13日 ロイター] - イタリアのコンテ首相は、中国が提唱する巨大経済圏構想「一帯一路」に関する覚書に署名することについて、イタリアは通信などの戦略的インフラを保護し、重要技術の移転を回避すると述べた。現地紙コリエレ・デラ・セラが報じた。

コンテ首相は同紙とのインタビューで、「一帯一路」に関する覚書で署名される商業協定を監視する方法や、イタリアの「戦略的活動や国益」を守るためのその他方策を検討していると語った。
https://jp.reuters.com/article/china-italy-belt-and-road-idJPKBN1QU0UH


 

トップニュース2019年3月13日 / 15:14 / 2時間前更新
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建国70年・天安門30年、習氏への忠誠強いる中国共産党
Ben Blanchard
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[北京 7日 ロイター] - 今年、いくつか重要な記念日を迎える中国では、一党支配を敷く共産党による政治的忠誠の要求が過熱している。

共産党が「誤った思考」に対して警告を発する中、高官たちは習近平国家主席と同主席の哲学に競って忠誠を誓っている。

中国は今年、慎重な対応を要する節目をいくつか迎える。学生らの民主化運動が武力弾圧された「天安門事件」から30年、チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世のインド亡命の契機となったチベット動乱から60年、さらに10月1日には、共産主義国中国が建国されてから70年を迎える。

多くの人が命を落とした長い内戦の混乱と革命を経て、1949年に中華人民共和国を建国した中国共産党は、「乱」が起きないよう常に警戒を怠らず、何よりも安定を重視してきた。

「今年は建国70周年を迎える。持続的かつ健全な経済発展と社会の安定を維持する使命には、極めて大きな努力を要する」と、習主席は全国人民代表大会(全人代)が開幕した5日、内モンゴル選出の議員らにこう語った。

習主席は2012年に党中央委員会総書記になって以降、政府や市民生活のほぼあらゆる面において党の支配を強めている。

昨年の全人代で、国家主席の任期を撤廃する憲法改正案が採択され、習氏は望めばずっと主席の座に居続けることが可能となった。ただし、それが実現するかは定かではなく、これについて習氏は公に語っていない。

党は、中国が「党の構築」と呼ぶテーマを話し合う幹部総会を年内に開催する可能性が高いと、中国指導部とつながりのある外交官や関係者は明らかにした。党の支配強化を目指し、党の指示が確実に守られるようにするためのコンセプトだ。

1月には国営メディアで「党の政治体制強化」に向けた新たなルールが公表され、党として忠誠心を改めて強調し、忠誠を偽ったり「低レベルの共産党員」であったりしてはいけないと党員に呼びかけた。

「イデオロギーに関するあらゆる誤った考え、曖昧な理解、悪しき現象を非常に警戒せよ。油断せず、事態を早期に見極めよ」と同文書は警告している。

<忠誠第一>

国営メディアが伝えた公式発表によると、習主席は、中国共産党の幹部を養成する中央党校で3月1日行ったスピーチで、少なくとも7回「忠誠」という言葉を使った。

政府高官が党に忠実かどうかは、彼らに理想や信念があるかをはかる重要な基準となると習主席は明言。「忠誠は常に何よりも重要である」と同主席は述べている。

中国は、党の命令に対して底辺で抵抗が起きる可能性や、経済の減速、また国民が豊かになるにつれて政治改革を求める声が高まることを懸念していると、エコノミスト・インテリジェンス・ユニットのアジア担当ディレクター、ダンカン・イネスカー氏は指摘する。

「支配への欲求はある時代特有のものではなく、転覆を常に恐れる独裁政権の根本原理だ」と同氏は語った。

党への絶対的な忠誠によって選ばれた代表が全国から集まり、ほぼ形式的に進められていく全人代だが、今年は習主席が一段と存在感を示した。

全人代が開幕した5日、閣僚たちは記者団との会話の中で、習氏に計16回言及した。

「イデオロギーが何よりも優先されている」と、オブザーバーとして全人代に出席したある西側外交官は語る。「全ては建国70年だ」

<背信根絶>

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党は、背信行為や党方針からの逸脱の根絶を、汚職監視当局の取り締まり内容に位置付ける傾向をますます強めている。同局の役割は名目上、贈収賄などの犯罪行為を取り締まるものだった。

同局は先月、地方政府や省庁に対する今年の調査で「政治的な逸脱を明らかにする」とした。

反腐敗運動を指揮する党中央規律検査委員会トップの趙楽際氏は、1月に行った演説で「忠誠」という言葉を8回使った。

「党に忠実だという手本を示しなさい」と同氏は呼びかけた。

中国は、汚職撲滅運動について、習氏による政敵排除や政治的駆け引きではないと繰り返し強調している。同氏は2015年にシアトルで、ネットフリックスで放送されて人気の米政治ドラマ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」のような権力闘争ではないと述べている。

党がさらに深く懸念しているのは、党の支配を終わらせかねない危機をあおるような国内外の事件や情勢不安である。

習主席は1月、甚大な影響をもたらす想定外の事態を意味する「ブラックスワン」に特に注意するよう述べている。

また同月、中国の警察トップは、警察は市民による暴動「色の革命」を阻止することに重点を置き、政治体制の防衛を第一に行動しなければならないと語った。

党は一方で政治改革に関心を示しておらず、中国共産党の美点を重ねて強調している。今月、国営メディアのツイッターアカウントに、「中国の民主主義」をたたえる英語の宣伝ビデオを掲載した。中国ではツイッターは依然ブロックされている。

国営の新華社通信は3日、英語の論評で、中国は自国の政治モデルに忠実であり、西側の民主主義は拒否すると主張した。

「わが国は1世紀前に民主主義について学ぶようになったが、すぐに西側の政治スタイルはここでは機能しないと分かった。混乱と内戦が何十年も続いたからだ」

(翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)
https://jp.reuters.com/article/china-events-idJPKBN1QT0MC
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/498.html

[政治・選挙・NHK258] 二クラスはなぜ死んだか、入管収容所の現実 東京入管でクルド人難民申請者が体調悪化、いったんは救急搬送されず
ワールド2016年3月9日 / 09:29 / 2年前
特別リポート:ニクラスはなぜ死んだか、入管収容所の現実
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[東京 9日 ロイター] - 祖国スリランカの海沿いの町に夫の無事を祈る妻を残し、およそ1年3カ月前、ニクラス・フェルナンド(当時57)が急死したのは、東京・品川にある東京入国管理局の収容所内だった。

日本に到着してわずか10日後の2014年11月22日、施設に収容されていたニクラスは胸の痛みを訴え治療を求めたが、病院には搬送されず、その数時間後に息を引き取った。急性心筋梗塞だった。

「(収容所側の対応に)重大な落ち度はなかった」。法務省入管当局は彼の死亡についてこう結論づけた。他の多くの被収容者のケースと同様、この事案は管理責任が明確に問われることなく、同氏の家族への詳細な説明も行われないまま処理された。

ニクラスが死に至る過程で、何が起きたのか。

──関連記事:アングル:トラブル絶えない入管収容所、海外からも厳しい視線

ロイターが収容所内の目撃者、多くの被収容者、医師、弁護士への取材や独自に確認した資料をもとに行った調査からは、入管当局の説明にはないさまざまな問題が浮かび上がってきた。

取材に応じた人々の多くは、収容所の警備官がニクラスに起きた異変を正しく判断すれば、救命できる可能性もあったと証言する。

さらに、収容所では被収容者の健康悪化、精神障害、突然の死亡などを防ぐため医療体制の整備が急務になっているが、公的な監視機関、日本弁護士連合会などからの再三の改善要請にもかかわらず、当局の対応は遅々として進んでいない、という実態も明らかになった。

<ガラス越しの最後の面会>

入国管理局は、収容命令を受けたり、本国への送還措置が決まった外国人を収容所に入れ監視下に置く。厳重な警備が敷かれた施設内では、自殺を含む死亡事故、自傷事件、あるいは拘禁状態が長期間続くことによる精神疾患の発生が後を絶たない。

法務省によると、全国17の施設に収容されているのは1070人(2015年11月1日時点)。これらの施設では過去10年間に4件の自殺があり、12人が収容中に死亡した。最も新しい事例であるニクラスを含め、4人の死亡事案は2014年11月までの13カ月間に起きている。これ以降、死亡事案はないが、自殺未遂や自傷事件は東京入国管理局で14件(2015年)発生している。

日本で急増する難民申請者
日本で急増する難民申請者

ニクラスの急死は、こうした日本の入管収容施設の厳しい現実をあらためて物語っている。

ロイターの取材によると、彼がスリランカを離れたのは、日本で難民申請をしている息子に会うためだった。次男ジョージ(27)は妻と一緒に同年11月12日、羽田空港に父を迎えに行った。しかし、何時間も待ったが、父は到着ゲートから出てこなかった。

ジョージが父に会えたのはその2日後の14日。「触れることもハグすることもできなかった」ガラス越しの面会だった。観光ビザで来日したものの、ニクラスが観光目的を証明できないとの理由で空港内の収容施設に拘束されていたためだ。

息子のジョージが「敬けんな家庭的な男性だった」と表現する父ニクラスの写真を見せる。千葉の自宅で昨年11月撮影(2016年 ロイター/Yuya Shino)

https://static.reuters.com/resources/media/editorial/20160307/refugees-in-japan.gif

入管法に詳しい複数の弁護士によると、観光ビザを持っていても、所持金不足などで観光目的が疑わしいと判断され、入国が許されないケースは珍しくない。法務省によると、2014年には、2226人がそうした理由で入国不許可となっている。

ガラス越しのやりとりが、ジョージにとって父との最後の面会になった。ニクラスは17日、出入国管理及び難民認定法に違反した疑いがあるとして羽田空港から品川の東京入国管理局に移送され、5日後の22日に心臓発作を起こして他界する。

ロイターが確認した資料や目撃証言によると、ニクラスは死亡当日の午前7時19分に収容施設の警備官に胸の痛みを訴えた。警備官は心拍数と血圧を測定、その際に異常は認められないと判断したが、あらためてニクラスの症状を確認するため、同8時少し前、彼を別室に移した。通訳をする別のスリランカ人被収容者も一緒だった。

別室からいったん共同部屋に戻ってきたニクラスは、ようやく病院で治療を受けられると思い、安心した表情だったと目撃者は話す。しかし、連れていかれたのは病院ではなかった。午前8時16分、彼は監視カメラを備え付けた隔離室に移された。その後、警備官は、声をかけても応答がなかったので、彼が眠っていると判断したという。それから数時間、ニクラスはうつ伏せに横たわったままだった。

隔離室の窓越しに彼の異常に気づいた他の被収容者が、警備官に知らせたのは午後1時過ぎだった。警備官はAED装着、心臓マッサージなどの救命措置を行ったが効果はなく、午後1時20分に救急隊が到着。ニクラスは病院に搬送されたが、午後3時03分、死亡が確認された。

ロイターは、ニクラスと同じ被収容者で、その時の状況を知る4人の目撃者に取材した。その1人で現在は仮放免中のカナダ人、ジェームス・バーク(30)によると、ニクラスは隔離室に移される前、「私はクリスチャンだから嘘はつかない。病院に連れて行ってくれないと死んでしまう」と聖書を手に英語で叫んでいた。その声は周囲に響いていたが、彼が立って話していたため、警備官は容態が重いとは受け止めていなかったようだ、とバークは言う。

二クラスが病院に連れて行ってくれと頼んでいたと語る、当時同じ被収容者だったカナダ人のジェームズ・パーク。都内にある東京入局管理局の前で昨年12月撮影(2016年 ロイター/Yuya Shino)

共同部屋で一緒だったペルー人被収容者は、ニクラスが病院への搬送を求めていると警備官に伝えた。しかし、警備官は、土曜日なので病院は閉まっているとして拒否した。実際には、東京入管がある港区では、多くの病院が土曜日も外来を受け付けている。

<容態急変判断は「困難」>

この間のニクラスへの措置について、法務省入国管理局が国会議員からの要請で作成した文書がある。

その中で同省は「本人が不調を訴えているとき、既に心筋梗塞もしくはその切迫状態にあったと思われ、医療機関に連れて行くことが必要であった」としながらも、「対象者の行動や顔色等からは、その時点において、こうした病状にあると明確に判断することは困難を極める」と指摘。さらに、彼の訴えが警備官に十分に伝わらなかった理由として、「通訳に同収者(他の被収容者)を利用し、同人が正確な通訳をしなかった」ことを挙げている。

隔離室に移された後のニクラスについては「9時33分以降、身体の動きは一切なし」とし、「(警備官は)本人が横になった後、容態が落ち着いて就寝したものとの思い込みから、以降、声かけや呼吸の確認等を実施せず、就寝姿勢が変わらないことにも気付かなかった」と説明している。

ロイターの取材に対し、入国管理局警備課の鳥巣直顕法務専門官は昨年10月、当時の東京入管の対応について「重大な落ち度はなかったと考えている」との判断を示した。

警備官がニクラスの訴えを理解していたかどうかについて、同専門官は「胸が痛いというのは理解していた」としながらも、「落ち着かせれば、おさまるのだろうという判断だったと思う。救急車を呼ぶまでの重篤な症状ではなかったという認識だった」と振り返った。

二クラスの息子ジョージ(中央)と彼の妻と弟。彼らの住む千葉のアパートで昨年11月撮影(2016年 ロイター/Yuya Shino)
二クラスの息子ジョージ(中央)と彼の妻と弟。彼らの住む千葉のアパートで昨年11月撮影(2016年 ロイター/Yuya Shino)

彼の遺体を解剖した東京医科歯科大学の上村公一医師は、この事案については事件性のない通常の解剖事案とは異なり、法務省から鑑定書を書くよう依頼があったと明かした。さらに入管側が改善すべき点についても、医師としての意見を書き添えるよう要望されたという。

同医師は、法務省がこのケースを特別扱いにした理由について、ニクラスへの医療が適切に行われず、病気が悪化した可能性がかなり高いと判断したからではないか、と話す。

同医師自身も、彼の様子をとらえたモニターカメラの映像を確認し、画像は良くなかったものの苦しんでいる様子はわかったと指摘。入管側の対応は遅く、収容施設の医療全般についても「かなり不十分」との見方をしている。

<実現していない再三の改善勧告>

日本で不慮の死をとげたニクラスのケースは、遺族にすら十分な説明がないまま、過去の出来事になりつつあるかに見える。

だが、緊急の救命医療を求めたニクラスに対し入管側の配慮に不備はなかったか、さらにこうした事態を未然に防ぐ対策を当局は十分にとっていたのか、さまざまな問題はなお残っている。

入国者収容所の運営を監視する機関として、法務省は2010年に、法曹関係者、医療関係者、学識経験者、NGO関係者など10人からなる「入国者収容所等視察委員会」を東日本、西日本にそれぞれ1つずつ設けた。視察委員の氏名は非公開で、各委員には視察内容などについて「守秘義務」がかかる。ニクラスの事案は、死亡の2週間後、同委員会に報告された。

ロイターの取材によると、委員会は資料の分析などを行い、昨年7月、施設側の対応を「不適切」とする文書を東京入国管理局長に提示した。

その中で、同委員会は、救命治療を訴えたニクラスへの対応について、「職員は重篤性の判断を誤り、直ちに救急搬送しなかったことから、死亡という結果を回避する機会を失ったものと思われる」と指摘。さらに「被収容者の生命を守るべき施設として、不適切な対応があったと言わざるを得ない」との判断を示している。

法務省の鳥巣専門官は「不適切な対応というのがどういうものか、個別にみると難しい」とし、「同じことが起こらないようにするためにも、医療体制やさまざまな面での強化、改善を今後も続けていくとしか言えない」と話している。

それ以前からも、同委員会は法務省に対し、入管収容施設の医療体制を改善するよう、毎年のように提言している。

昨年3月12日付の「東日本入国管理センターの医療問題に関する意見書」では、14年3月に死亡したイラン人男性とカメルーン人男性のケースを含む3例を取り上げ、施設内の診療や外部医療機関での受診を希望しても実現には時間がかかる、などと指摘。常勤医師の雇用に向け最大限の努力をすることなど、「受診の要否を判断するシステムなどを見直すことなどにより、改善が図られるべきである」と強調している。

昨年5月には、前視察委員1人が、当時の上川陽子法相あてに書簡を書き、現役の視察委員1人とともにそれを直接手渡して、医療体制の改善を求めた。

ロイターが取材した8人の現役および元視察委員の全員が、収容施設の医療システムは不十分だと述べた。さらに、多くが常勤医師の確保など改善への提言が実現されていないことに不満を示した。

実際に、職員に対する新たな研修の実施、2名の警備官に准看護士の資格取得を指示するといった措置以外、根本的な改革はなされておらず、ニクラスの死から1年3カ月経った現在でも、全国に17ある収容施設のうち、常勤医師がいる施設はまだない。

茨城県牛久市にある東日本入国管理センターの収容室の内部。昨年3月撮影(2016年 ロイター/Yuya Shino)

<「闇に葬られる可能性」>

ニクラスが死亡する2週間前の11月7日には、日弁連も別のケースに関する独自調査に基づき、入管収容施設の現状について「医療を受ける権利を侵害したものとして、人権侵害行為があったというべき」とする見解を当時の上川法相あてに提出した。

しかし、法相がこれに回答したのは8カ月経った昨年7月。「改善を求められている事項についても、従来から既に実施している事項であり、勧告を受けて改めて改善措置を講じた事項はありません」とする極めて簡素なものだった。

「法務省の体質を考えると、(死亡事案の詳細が)闇に葬られる可能性はあると思う」と元視察委員の廣瀬理夫弁護士は憂慮する。

旅行会社を経営し、敬虔なカトリック信者でもあったニクラスは、日本への出発前、教会に一晩中こもって熱心に祈りをささげた。そして、妻マグレットに「帰って来るまで子どもたちの面倒をみてくれ」と言い残していったという。

スリランカ西部のチラウにある自宅には、いま同氏の遺影が置かれている。ロイターの取材に対し「今でも彼の声が聞こえる。彼なしで幸せはこない」とマグレットは涙を流した。

法務省は遺族に対し、遺体の解剖結果を口頭で説明したとしている。しかし、ニクラスの急死から1年3カ月が経過した今も、それ以上の詳しい説明は遺族に届いていない。

昨年3月に法務省がまとめた「東京局におけるスリランカ人被収容者死亡事案に関する調査結果報告」と題する文書がある。ロイターが行政文書開示請求で入手した同報告書は、A4サイズ4枚の分量。しかし、「処遇(健康状態の確認)状況」「死亡に至る経緯」「外部医師による意見」「問題点」という肝心の項目は全て黒く塗りつぶされていた。

(文中、敬称略)

(Thomas Wilson、宮崎亜巳、舩越みなみ、斎藤真理 取材協力: Shihar Aneez、Antoni Slodkowski 編集:北松克朗)


2014年11月、来日したスリランカ国籍のニクラス・フェルナンドさんは、観光目的の訪日ではないと判断され、入国管理局の収容所に拘留された。施設内で激しい胸の痛みを訴えたフェルナンドさんだったが、医師の診察を受けられずに息を引き取った。取材したロイターの記者は、日本の入管収容施設の厳しい現実を物語っていると指摘する。
https://jp.reuters.com/article/special-report-1-idJPKCN0WA2UB


 

ワールド2019年3月13日 / 16:59 / 35分前更新
東京入管でクルド人難民申請者が体調悪化、いったんは救急搬送されず
Reuters Staff
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[東京 13日 ロイター] - 東京入国管理局(東京都港区)に収容されていたクルド人の難民申請者が12日、体調悪化を訴えたものの、支援者が呼んだ救急車で搬送されなかったことがわかった。家族や支援者ら約50人が入管施設前に集まり、13日朝まで入管の対応に抗議を続けた。

体調悪化を訴えたのは、メメット・チョラク氏(39歳)。14カ月にわたり収容されている。家族が12日に面会に来た際に体調が悪いと訴え、家族は外部の病院に連れていくよう要請したが、受け入れられなかった。

支援者によると、チョラク氏は13日に病院に搬送されたという。

東京入国管理局では、救急車でチョラク氏を搬送させなかった対応について「救急車は入管が呼んだものではなく、外部の人が呼んだ。救急隊に症状を説明したところ、救急搬送の必要はないと判断した」と説明した。収容所内で12日に嘱託医師が診察したところ、「経過観察」という判断だったという。

ロイターは2016年3月、日本の入管収容所における被収容者の処遇の実態を取材した記事を配信している。被収容者の健康悪化、精神障害、突然の死亡などを防ぐため、医療体制の整備が急務になっているが、公的な監視機関や日本弁護士連合会などからの再三の改善要請にもかかわらず、当局の対応は進んでいないという。

*関連記事は、以下のURLをクリックしてご覧ください。

「特別リポート:二クラスはなぜ死んだか、入管収容所の現実」

here

宮崎亜巳 斎藤真理 編集:田巻一彦
https://jp.reuters.com/article/tokyo-immigration-kurds-idJPKBN1QU0SJ
http://www.asyura2.com/19/senkyo258/msg/451.html

[医療崩壊5] 透析患者の僕だから言える「透析中止事件」の罪  透析中止報道「福生病院は悪くない」
【第206回】 2019年3月14日 竹井善昭 :ソーシャルビジネス・プランナー&CSRコンサルタント/株式会社ソーシャルプランニング代表
透析患者の僕だから言える「透析中止事件」の罪
「人工透析中止問題」で揺れる公立福生病院 写真:日刊現代/アフロ
 透析中止を医者が提示した結果、患者が死亡した事件が、テレビや新聞でも大きな話題となっている。マスコミもTwitterなどのネット言論も、おおむね透析中止した福生病院に批判的だ。一方で、福生病院を擁護する意見も散見される。しかもそれは、医師や病院理事長といった医療ど真ん中の人たちから擁護論である。
 僕は透析中止を患者に提案する病院や医者がいること自体が衝撃だったが、それを擁護する医療関係者が何人もいることがさらなる衝撃だった。これはつまり、「患者が望めば死なせてもいい」と考える医療関係者が世の中の人が思っている以上に多い、ということだ。その意味では、今回の件は福生病院だけの問題ではない。読者の皆さんは、病院に殺されないためにも色々と情報は持っておいたほうがいい。
 そこで今回は、患者の立場から「透析のリアル」を語ってみたいと思う。というのも、僕もまた透析患者だからだ。数年前、当連載の記事で「あと数年したら透析することになるだろう」と書いた通り、約1年前に透析患者となった。いまは週に3回、透析クリニックに通っている。出張も多いため、その時は出張先の病院で透析を受けている。合計すると10ヵ所くらいの病院で透析を受けてきたため、透析クリニックの医療現場について結構詳しくなってしまった。
透析中止!? 患者の僕が驚く
あり得ない提案
 そんな僕が今回のニュースを聞いてまず感じたのは、「透析って中止できるのか!?」という驚きだ。というのも、僕が知る限り透析クリニックというのは、とにかく何がなんでも患者に透析を受けさせようとするからだ。それは職業的な倫理というより、ほとんど執念みたいなものだといえる。
 ちなみに透析は、週3回行うのが基本。つまり、どこかで中2日のインターバルが空くことになる。たとえば月水金で透析をしていると、土日の2日間は透析しない日が生じる。基本的にこの「中2日」が、透析患者にとっては最大のインターバルとなる。ただし、何らかの事情でそれが中3日になったとしよう。すると、医者も看護師も激怒するのだ。
 実際、僕も一度、仕事の関係でやむなく中3日になってしまったことがある。そのことを病院に事前に伝えた時には、看護師にも院長先生にも激怒された。「何がなんでも病院に来なさい。死んでも責任とれないぞ」くらいの勢いで叱られたのだ。まあそうは言っても、仕事の都合。なんとかお願いして中3日にしてもらったのだが、彼らを説得するのは本当に大変だった。
 また、旅行先やお正月の時期には、透析時間がいつもと変わることがある。一度それをうっかり忘れてしまい、予定の時間に大幅に遅れてしまったことがあった。そんな時も15分も遅れようものなら、電話がガンガンかかってきた。それも旅先のクリニックとかかりつけの病院のダブル攻撃で、「いまどこにいるのか?あと何分で病院に来れるのか?」と問い詰められる。ちょっと遅れたくらいで大騒ぎなのである。
 こんな状況だからこそ、今回の事件のように透析中止を医者が提案するなど、僕の感覚からしてもあり得ないことだ。おかしいと思う点は多々あるが、最大の謎が「患者の状態」だ。報道によると、「シャントにトラブルがあり、医者は『首周辺にシャントを作るか、透析中止するか』の選択を迫った」という。
 シャントというのは静脈と動脈をつなぐバイパスのことで、透析に必要な血流量を確保するためには、このシャントを形成する必要がある。通常は利き手の逆の手首、親指の付け根あたりに作る。しかし何らかの理由でこのシャントが詰まってしまい、使えなくなることがある。その場合は、利き手の手首に作る。それもダメになった場合は、左右の大腿部に作る。通常はこの順番を経て、それでもダメな場合には、前胸部に作る。報道が伝えた「首周辺に」というのは、前胸部のことだろう。つまり、普通に考えれば、死亡したこの女性患者はそれまでに4回もシャントをダメにしていると思われる。しかし、この女性はまだ44歳という若さだ。血管が細くなる高齢者ならともかく、44歳という年齢で、それだけのシャント・トラブルを起こしていたとは考えにくい。
 そもそもまともな透析クリニックであれば、シャントが潰れないようにシャント管理もきちんとやる。透析を行うたびに聴診器で血流をチェックするし、3ヵ月に一度は腎臓外科に行き、専門医が血管にバルーンを入れて、血管が細くならないように処置したりする。このようにシャントは厳密な管理を行っているわけで、40代という若さでそう簡単に潰れるものでもない。もちろん、なんらかの理由でシャントが使えなくなることはあるし、大腿部でシャントが作れない場合もある。シャントは両腕とも潰れたのか、大腿部では作れなかったのか。そのあたりが分からないと、医師の対応が適切だったかどうか判断ができない。
 それ以前に、「首周辺に」という説明自体が不適切だったと思う。一般の患者からすれば、首にカテーテルを入れるなど大ごとだと感じる。そこまでして生きていたくない、と感じるかもしれない。実際にこの女性患者はそう感じて、死を選んだ。これを「前胸部に」と言っておけば、印象はかなり変わったはずだ。その意味では、この医師たちは言葉によって患者を殺したともいえる。この女性は鬱も患っていたと報道されているが、もしそうであれば、余計に言葉には気をつけるべきだったろう。しかし、その配慮がなかったのは、そこに「明確な意図」が隠されていたからではないかと思う。
「透析しない」ことへ
患者を誘導していた?
 福生病院の腎臓内科医、腎臓外科医は、毎日新聞の取材に対してこう答えている。
 以下、『毎日新聞』2019年03月07日記事より引用
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本来、患者自身が自分の生涯を決定する権利を持っているのに、透析導入について(患者の)同意を取らず、その道(透析)に進むべきだというように(医療界が)動いている。無益で偏った延命措置が取られている。透析をやらない権利を患者に認めるべきだ。
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(透析学会や国の)ガイドラインは「説得をして透析を続けさせよう」という「継続ありき」だ。変わっていかなければならない。
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 このように福生病院の医師たちは、透析医療界の「透析ありき」を批判するが、彼らもまた「透析中止ありき」「透析非導入ありき」だったのではないか。実際、この病院では平成25年4月〜平成30年3月、透析治療のため同病院を訪れた腎臓病患者149人のうち20人前後が、担当医と相談したうえで透析治療を行わなかったという。さらに言えば、この病院では透析中止で他に3人が亡くなっている。この数字はどう考えても異常だ。この病院がいかに「透析しない」ことへと患者を誘導していたかが分かる数字だ。
 だが驚くべきことに、何人もの医師や医療関係者が福生病院を擁護し、マスコミを批判している。たとえば尼崎市にある長尾クリニック院長の長尾和弘氏は、自身のブログで「透析中止報道 『福生病院は悪くない』」という記事を掲載。愛媛県松山市にある医療法人ゆうの森理事長の永井康徳氏も、m3.com (エムスリー・ドットコム)という医療従事者向けのサイトにて、「問題は『透析中止』にあらず、マスコミ報道に違和感」という記事を投稿している。また、医療関係者ではないが、元東京都知事の舛添要一氏も「ジョルダンソクラニュース」というニュースサイトにて、「福生病院の人工透析中止、安楽死・尊厳死の論議につなげよ」という記事を投稿している。
 掲載スペースの関係上、これら擁護派の意見に対する個別の反論はしない。ただ今回の事件に対する僕の見解を言えば、「これは、安楽死でもなければ尊厳死の問題でもない。また、無駄な延命治療の問題でもない」ということだ。
透析患者は終末期患者ではないし、
透析は延命治療でもない
 透析患者というのは、透析さえしていれば、健康な人と同じように仕事をしたり、生活したりできる。というか、むしろ健康な人より健康管理ができているといえる。ちなみに僕の場合は、週に3回病院に行き、医師や看護師に問診される。毎回体重を計り、体温も測り、透析中は何度も血圧を測定する。月に2回は血液検査を行い、毎月レントゲン撮影をする。体調が悪いと言えばすぐに心電図を撮ったり、インフルエンザの検査をしたりもする。このように日常的に医師のチェックを受けているのだから、一般の人よりもずっと健康管理ができていると言えるだろう。
 透析はよく、苦痛だとかしんどいと言われる。たしかに、透析直後は身体がつらい。ひどい時は歩くのも嫌になり、電車に乗るのも苦痛になる。でも、夜間透析にすれば夜の22時くらいに透析が終わり、食事して帰宅して寝てしまえば、翌朝には気分爽快。元気に仕事に向かうことができる。そうすれば、透析は日常生活において何の支障にもならない。
 また、週に3回、4時間ずつとなると、多くの人は「大変ですねえ」と言う。しかし透析中はパソコンで仕事もできるし、テレビを観たり、本も読んだりできる。僕の場合はタブレットを持ち込んでNetflixで動画を見ている。おかげですっかり海外ドラマに詳しくなってしまった。つまり週に3回、勉強したり仕事したりするためのまとまった時間が取れ、それなりに有益な時間を作れるのだ。だから、透析患者は終末期の患者でもないし、透析も延命治療ではない。腎臓内科医、腎臓外科医であればそんなことはよくわかっているのだから、透析中止を提示するなどあり得ないのだ。
 もちろん後期高齢者や末期癌など、他の重篤な病気のために身体が衰弱して、日常生活もままならず死を待つだけの患者に対しては、透析中止のオプションもあり得るだろう。しかし、今回の女性患者はまだ44歳だ。透析さえすれば、普通に生きていける。それなのに透析中止を提案し、それが正義であると主張する。この医師たちは、やはり倫理観が狂っているのではないか。
 福生病院の医師およびその擁護者たちは、今回の事件はいわば自殺ほう助だとか、死ぬことの権利云々を主張するが、それならば、たとえば18歳くらいで精神を病んでしまって自殺願望を持つ若者に「本人が望んでいるから」といって、死ぬ方法を教えることが許されるのか。もちろん世の中には、「死にたいヤツは死なせれば?」と考える人もいるだろう。しかし、医者はそうではないはずだ。ましてや透析中止のような苦しい死に方を提示するのは、医師として間違っている。
 昔、作家の団鬼六さんが腎不全になった時、潔く死のうと思って透析拒否をしたが、あまりに苦しいので、やはり透析することにしたという。それくらい、透析中止は苦しいのだ。高須クリニックの高須院長が「あの女性の最後は、地獄の苦しみだったと思う」という趣旨のツイートをしているが、本当にそうだと思う。
 実際、透析患者が透析を中止するとどうなるか。まず水分を排出できないので、身体に水が溜まる。その水が心臓を圧迫し、肺にも水が溜まる。それで心肺機能が低下し、呼吸ができなくなって死ぬ。今回の女性患者は、死ぬ前日に「こんなにつらいなら、透析治療を受けようか」と言ったそうだが、さもありなんである。ちなみに、尿毒症は意識障害も引き起こす。福生病医の医師は、女性患者の意志がハッキリせず、意識が明瞭だった時の「透析中止」の判断を重視したというが、意識がもうろうとした時に発した言葉のほうがむしろ本音だったとも言えるわけで、この医師たちはそんなことも想像できなかったのかと思うと、そら恐ろしくなる。
 というわけで、透析中止は安楽死でもない。苦しんで苦しんで死ぬわけで、それを安楽死の問題を絡めて論じるべきではない。たとえ本人に明確な意志があっても、心身に耐えがたい苦しみを与えるような処置は、けっして安楽死ではないのだ。
透析患者に対する大きな誤解
 ちなみに透析と聞いて思い出すのは、元アナウンサーの長谷川豊氏のことだ。ご記憶の方も多いと思うが、長谷川氏は自身のブログで「自業自得の透析患者は殺せ」と書いて大炎上。レギュラー番組をすべて失うはめになった。このブログで長谷川氏が言っていたことは「医者の言うことも無視して暴飲暴食を繰り返して糖尿病になり、透析患者になったヤツは自費で治療費を払わせろ。それが無理と泣くなら殺せ」という趣旨で、炎上中に彼は「これは10人以上の医者に話を聞いて、病院も見学してそう思った」と弁明もしている。そして「透析患者の8割から9割はそんな患者だ」とも語っている。ずいぶんと偏った医者や病院ばかり取材していたようだ。
 そもそも透析患者の大多数が、糖尿病性腎症が原因なわけではない。日本透析医学会の資料によれば、透析患者のうち、糖尿病性腎症の患者は男性で42%、女性で32%。慢性糸球菌腎炎は男性で26%、女性で31%。腎硬化症が男女とも約10%。長谷川氏が言うような数字ではない。
 さらに言えば、糖尿病性腎症の患者も、すべてが「暴飲暴食を続けた自堕落な患者」ではない。誤解も多いのだが、糖尿病と生活習慣病はイコールとは言えないのだ。糖尿病には大まかに言って1型と2型がある。1型糖尿病は自己免疫疾患で、生後数ヵ月の赤ちゃんでも発症することがある。つまり、生活習慣病ではない。また、2型糖尿病も生活習慣病と言われるが、その発症原因は生活環境に加え、遺伝などさまざまな要因が絡み、必ずしも暴飲暴食が原因とは限らない。
 子どもの場合は1型患者が多いが、小学生でも2型を発症する場合があるし、中学生以上では1型より2型の方が発症数は多くなるという。また、肥満でなくても糖尿病となる場合もある。このように、必ずしも暴飲暴食の自堕落な生活が糖尿病の原因とは言えないのだ。
 つまり糖尿病性腎症で透析になった患者も、社会的、経済的、遺伝的など、さまざまな要因で発症しているわけで、むしろ自堕落な生活で透析になった人間のほうが少ないのではないか。そういう事情を無視して暴飲暴食で糖尿病になり、腎不全になった自業自得の透析患者は殺せという長谷川氏はあまりに偏見が強すぎると思うが、今回の事件で感じたのは、医師にもそのような偏見を持つ者が少なくないようだということ。福生病院の医師もそれを擁護する人間も、どこかで透析患者に対する嫌悪感を持っているのか。そうでなければ、日常的に治療すれば普通に暮らせすことのできる患者に、死の選択などさせないだろう。
 透析はたしかに金がかかる。毎月40万円、年間で500万ほどの費用がかかるといわれるが、これは税金で賄われ、透析患者の負担はゼロだ。たしかに社会にとっては大きな負担だ。透析を受けながら、僕も申し訳なく思う。ましてや僕は、以前にも当連載で述べたように(下記記事参照)、高齢者の過剰な医療に対しては否定論者だ。欧米のように、ある年齢以上の高齢者の医療は廃止したり、自力で食事できなくなった高齢者の延命措置もやめたりしたほうがいい、とさえ考えている。実際、自分の母親が食事できなくなり、胃ろうを医師に打診された時も、それを拒否した。
●第115回:長生きすることは、本当に良いことなのか? 親の介護で未来を奪われる若者たち
●第150回:高齢者は適当な時に死ぬべきなのか?
 そんな僕でも恥を忍んで透析治療を受けているのは、根性なしだから死ぬのが怖いというのもあるが、透析さえ受けていれば普通に働けるし、多少なりとも社会の役に立つことができるかもしれない、そう思えるからだ。
 だからこそ、今回の件は強い憤りを感じる。治療を続ければ生きられる、まだ44歳の人間を死なせてしまったからだ。何をどう言い繕おうと、そこに正義はない。もし彼女が44歳で死ななければならない理由があったなら、それをちゃんと説明すべきだとも思う。「死ぬ権利」だとか抽象的な概念や思想ではなく、たとえば「ステージ4の末期癌でした」といった「事実」で語るべき。医者なのだから、思想ではなく、事実で語るべきだったのだ。そうでなければ、医療は医者の独善に支配されてしまう。多くの国民は、「自分の生き死にを、誰かの独善で決定されるなどまっぴらゴメン」、そう思っているはずだ。

【筆者からのお知らせ】
透析患者の多くを占める糖尿病患者を救い、2型糖尿病の予防のためにも、日常的な血糖値測定は大切です。しかし、血糖値測定のためには針で指先を刺す必要があり、これがなかなか苦痛です。そんな中いま、針を刺さない血糖値センサーが開発中です。これはレーザーによる測定器ですが、すでにISOの血糖値測定の基準もクリアしています。実用化まで、あとひと息。これが実用化されれば、血圧測定のように誰もが気軽に日常的に血糖値測定ができるようになり、2型糖尿病の予防にも大いに役立ちます。現在、その開発資金調達のための、ふるさと納税によるクラウドファンディングが実施されています。ぜひご協力をお願いします。
>>詳細はhttps://www.furusato-tax.jp/gcf/519から。
https://diamond.jp/articles/-/196794

 


透析中止で死亡 倫理委員会は当初から開かず 院長「必要ない」
毎日新聞2019年3月12日 06時00分(最終更新 3月12日 06時01分)

公立福生病院=東京都福生市で2019年3月6日、宮武祐希撮影
 公立福生(ふっさ)病院(東京都福生市)の人工透析治療を巡る問題で、2014年ごろ以降、昨年8月に亡くなった女性(当時44歳)を含む数人の患者に外科医(50)が透析治療中止の選択肢を提示し、その全てについて病院内の倫理委員会が開かれなかった。松山健院長が「必要ない」と最初に示した判断が踏襲された。治療中止では女性を含む3人が死亡。日本透析医学会のガイドラインは倫理委の助言が「望ましい」としている。立ち入り検査した都は、いずれの事例もガイドラインから逸脱していたとみて調べている。
• 【女性が夫に送った最後のメール】
• <透析中止の病院長に聞く「選択肢は必要。むしろ倫理的だ」>
• <医師が「死」の選択肢提示 透析中止、患者死亡 東京の公立病院>
• <透析中止、院長が容認 女性死亡「意思を複数回確認。適正な医療だ」>
• <透析中止の女性、死の前日に「撤回したいな」 SOSか、夫にメールも>
• <公立福生病院の外科医・腎臓内科医、一問一答>
 福生病院の倫理委は外部有識者を交えたもので、副院長が委員長を務める。
 外科医によると、最初の透析治療中止は14年ごろ。当時副院長だった松山院長に倫理委開催の必要性について尋ねたところ、松山院長は「医療上の流れで倫理委員会は必要ありません。ただ、書面(意思確認書)は(患者から)取ってください」と答えた。外科医は意思確認書を取っただけで、倫理委は開かれなかった。その後、女性の事例を含む数人の治療中止でも外科医はこのやり方を踏襲。倫理委開催を松山院長に要請しなかった。
 病院関係者によると、どういう事例の場合に倫理委を開くのかについて病院内に明確な基準はない。「倫理委に上げるかどうかは医師の判断。倫理委はめったに開かれないのが実情だ」という。学会のガイドライン(14年)は「倫理的な問題に対しては倫理委員会や外部委員会などの助言があることが望ましい」としている。
 松山院長によると、病院では約10年前、意識のないまま透析治療を続ける患者の家族が治療中止を求めた際に倫理委員会が開かれた。家族の意思だけでは中止は認められないとする結論だった。その後、患者の容体が悪化して治療自体が医学的に危険と判断され、治療は中止されたという。
 14年ごろ以降に倫理委を開いていないことについて松山院長は「外部委員を呼ばなくてはならないなど、開くのに苦労する。1回ごとに開くのは非現実的だ」と話す。
 末期がんや重度認知症などで透析治療を中止したり導入しなかったりした例が12例ある「長崎腎病院」(長崎市)では、全ての事例を他の病院の精神科医も加わった倫理委員会に諮っている。患者やその家族が自殺願望のあるようなうつ状態でないかどうかチェックしているという。原田孝司院長は「透析治療の中止は死に直接つながるため、患者本人の意思確認ができている場合でも、その意思が確かかどうか倫理委員会に諮るのは当然だ」と話している。【斎藤義彦】
https://mainichi.jp/articles/20190312/k00/00m/040/007000c

 


 
透析中止報道 「福生病院は悪くない」


2019年03月10日(日)
透析中止報道の詳細が徐々に明らかになってきた。
結論から言えばコミュニケーションに問題があったかもしれないが
福生病院は充分ではなかったにせよ大きくは逸脱していないと思う。
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まずは、2つの記事を読んで欲しい、

透析中止、他にも20人の情報 全員死亡か:イザ! →こちら

東京都福生(ふっさ)市の「公立福生病院」で昨年8月、担当医が腎臓病患者の女性=当時(44)=に人工透析治療中止の選択肢を示し、中止を選んだ女性が約1週間後に死亡した問題で、平成25年以降、同病院で他にも約20人の患者が透析治療を選択しなかった可能性があることが8日、関係者への取材で分かった。これらの患者は全員死亡したとの情報もある。

<< 下に続く >>
 一般的に透析が必要とされる腎臓病患者が、透析や腎移植を受けないで生きていくことは難しいとされる。同病院を監督する都は病院側が必要な情報提供を行った上で、患者らの意向を十分に確認していたのかなどについて調査を進める。また、日本透析医学会が設置した調査委員会が来週にも、同病院に調査に入る方針を固めた。

 関係者によると、25年4月〜30年3月、透析治療のため同病院を訪れた腎臓病患者149人のうち、20人前後が担当医と相談した上で透析治療を行わなかったという。女性のケースと同様、死亡リスクを伝えた上で担当医が透析治療をしない選択肢を示した可能性がある。


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透析中止で死亡「密室で独断専行してない」 病院が反論
2019年3月8日 (金)配信朝日新聞

 腎臓病患者の40代女性が人工透析治療を中止し、死亡していた公立福生(ふっさ)病院(東京都福生市)で、医師が終末期ではない患者に透析治療をしない選択肢を提示していたことがわかった。透析をしない選択をした約20人のうち複数が死亡したとみられる。このほか、透析中止後に死亡した患者が女性以外に3人以上いることも判明。日本透析医学会の提言から逸脱している可能性もあり、学会は来週後半にも病院に立ち入り調査に入る方針だ。
 福生病院は8日、透析治療をめぐる手続きについて「多職種で対応し、家族を含めた話し合いが行われ、その記録も残されている。密室的環境で独断専行した事実はございません」とのコメントを公表し、病院の対応に問題はないとの考えを示した。
 都などによると、福生病院では2013年以降、腎臓病患者149人が受診。透析を始めるかどうかの相談の際に、医師が透析をしない選択肢も示していた。学会の提言では、透析を中止もしくは始めないことを検討できる状況について、全身の状態が極めて悪い場合などに限定。しかし福生病院では、終末期のように極めて悪い状態でなくても透析をしないことを検討し、実際に約20人が透析を選ばなかった。病院側はいずれのケースでも、患者の同意書をとっていると説明しているという。

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ここからが私の意見。

1  中止したら死ぬのはあたりまえ。

   新聞の「透析中止 患者死亡」とか「他にも20人中止 全員死亡」とある。

  透析治療は延命治療なので、中止すれば100%死ぬのが当たり前。
  もし死ななかったら、「不要な透析だった」ことになり、こちらのほうが問題。

  だから「飛行機が墜落、全員死亡」のような見出しを付けるメデイアはおかしい。
  「止めたら死ぬのが透析」という当たり前のことを知らない記者が見出しをつけている。

  明らかに悪意がある見出し。
  煽って部数を増やしたいのか。


2 「透析医が透析を中止する」という意味を、マスコミは分かっているのか。

  透析医療機関は透析で飯を食っている。
  だから透析を中止すれば、お客さんがいなくなり経営には不利である。

  ラーメン屋が、お客さんに「ラーメンもう食べないほうがいいですよ」と言うようなもの。
  そんなことを言うラーメン屋や透析医は、世の中にあまりいないだろう。

  「死期が近いのに可哀そう」と思いながらも続けているのが多くの透析医の本音。
  もし嘘だと想うなら、透析関係者に聞いて欲しい。複雑な想いの患者さんがいる。

  透析医が中止を相談した(提案ではなく相談だろう)のは、患者さんのことを想ってのこと。
  それ以外に考えられない。


3 「透析非開始」と「透析中止」

  福生病院では透析適応の149人のうち20人が非開始であったようだ。
  それぞれがどんな背景で、どんな話し合いがあってのことなのか。

  90代の慢性腎不全で透析導入を拒否して亡くなる人はいくらでもいる。
  私自身もそんなリビングウイルを有する患者さんの意思を尊重してきた。

  また90代の認知症で要介護5の本人・家族の意向を尊重し中止もしてきた。
  透析学会のガイドラインにある「終末期にあること」を、話し合ったうえで。

  非開始は時にあるし、中止も時にあるが、両者は同等であると私は考える。
  そんな現実があるのに過激な見出しをつけている目的は?それとも、無知?


4 欧米では透析中止は日常。

  日本でも非開始や中止はあるが、透析学会の意向かあまり表に出てない。
  しかし欧米では高齢や認知症ならQOLの観点から非開始や中止例は多い。

  むしろ日本のように「本人の意思を無視して金儲けのために死ぬ日まで続けている」 
  多くの現状のほうが特異で、世界的視点からみれば「とっても異常」な国である。

  開始も、継続も、中止も、再開も、根底は同じことだ。
  患者・家族と医療者が、何度も話し合いをして納得しているか。

  透析学会のガイドラインに従うことは当然だが、いろんなケースがある。


5 問題は医師のコミュニケーションが下手だったかもしれないこと。

  「人生会議」をどんな風にやったのかが、本来の論点では。
  メデイアはなぜここで人生会議という文字を書かないのか。
 
  これこそが国策である「人生会議」の限界を物語っている。
  ACPの有効性(このケースは失敗例)として論じるべきだ。

  人の気持ちは常に揺れ動く。
  本人・家族の意向に常に寄り添い、丁寧な話し合いを重ねるべき。

  家族が「後悔している」というならば、主治医のACPは失敗だ。
  また医療経済の問題を患者さんにつき付けるのもご法度である。

  人間の尊厳と経済は切り離して考えないといけない。

6 そもそも毎日新聞がこの報道をした理由とは?

  ・家族からの苦情?
  ・裁判を前提?
  ・新聞を売るため?

  どれなのか知りたい。

  新聞の第一面で煽る内容ではない、と思う。
  事件でないなら、普通の紙面で報じるべき。
  

7 透析学会には福生病院を責めないでほしい

  医師らは透析学会のガイドラインが厳しすぎると言っているので
  事実関係を把握したうえで、病院関係者と医学会が話し合うべき。

  今こそ、透析学会の立ち位置が問われているとも感じる。
  曖昧にしてきた事案が世間に広く知られることになった。
  

  福生病院が
  ・悪いのか
  ・悪くないのか

  マスコミはすべて福生病院=悪、という構図だが、福生病院はそこまで悪いのか。
  患者さんの意思を尊重してやっていても、時には行き違いがあるのではないのか。


  「ガイドラインを満たしていいたのか」と聞かれたら、反省の余地がある。
  「人生会議が適切に行われたのか」についても、改善の余地がある。
   
  パンドラの箱を開けてくれた。
  しかし犯罪ではない。


8 日本医師会も発信をすべき。

  透析学会と同様、専門家集団として、国民やメデイアに正しい認識を示して欲しい。
  今までタブーの課題なので、国民の関心も高いし透析患者さんを安心させて欲しい。
 
  「終末期ガイドラインや人生会議は机上の空論」と言われないように
  具体的にどう受け止めるべなのか、分かり易い言葉で説明して欲しい。
  

これは安楽死ではなく尊厳死である。
そのプロセスを振り返る必要はある。

しかし報道の目的がよく分からない。

このブログはあくまで個人的な日記で感想を羅列しただけ。

福生病院は患者さんの意思を尊重する病院であると信じたい。

こう書くとバッシングを受けるだろうが、勇気を応援したい。
そして、日本透析学会と日本医師会のコメントを待ちたい。

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以下、在宅のMLから中野先生と永井先生の意見を勝手にコピペさせて頂く。
私もまったく同感である。
おそらく多くの現場の医師は同じように考えていると思う。

こんにちは。中野一司@ナカノ在宅医療クリニック、です。
 現在話題になっている透析中止の報道に対する、当会員の永井さんのコメントです。
 永井さんのご意見に全面的に賛成ですが、在宅では、透析せずに看取るケースや、透析中止のケースも時々あります(勿論、腹膜透析の患者さんもおられます)。
https://www.m3.com/news/iryoishin/664550… 

**********************

問題は「透析中止」にあらず、マスコミ報道に違和感
核心は「十分な選択肢の提示と納得のいく対話」の有無
オピニオン 2019年3月10日 (日)配信永井康徳(医療法人ゆうの森理事長)


19件のコメントを読む  ツイート
 公立福生病院(東京都福生市)の人工透析治療を巡る問題でのマスコミ報道が止まらない。多くのマスコミの論調はこうだ。
 「透析を中止すれば死に至るのが分かっているのに、透析の中止の選択肢を提示して患者は死亡した。そもそも医師は患者を死に至らしめる選択肢を提示していいのか」
 医師が透析の中止を選択肢と提示することはいけないことなのか。そもそもこの出発点のボタンが掛け違っている。私が理事長を務める医療法人ゆうの森(愛媛県松山市)は、在宅医療を主体にする医療機関を運営しており、法人全体の看取りは年間約200人に上る。私自身、透析中止の選択肢を提示した経験が何度もある立場から、一言申し上げたい。
 まずは、現在の日本の人工透析について再確認しておこう。人工透析患者の数は、年々増加し、2016年には全国で32万9609人に上る(日本透析医学会ホームページによる)。
 透析に至る原因は、糖尿病性腎症が最も多く、約4割を占めているが、現在は高齢化に伴う腎機能悪化による透析患者も増加している。1カ月の透析治療の医療費は、患者一人につき外来血液透析では約40万円、腹膜透析(CAPD)では30万〜50万円程度が必要と言われている。このように透析治療の医療費は高額だが、患者の経済的な負担が軽減されるように医療費の公的助成制度が確立している。
 人工透析は、医療機関側から見ると最初の医療機器の初期投資は必要だが、一度人工透析を開始すると継続的安定的な患者確保が可能で、透析医療に取り組む医療機関の中には、一種の利権とも言える医療が展開され、人工透析の安易な導入もあるようだ。
 一方、透析患者は基本的に週に3回、1回につき数時間の透析の時間が必要で透析には患者家族にも大きな時間と労力がかかり、公的医療機関では、患者の利便性を考え、人工透析に取り組まざるを得ない状況もある。
 腎不全の患者が、腎機能が悪化した時、人工透析で人工的に腎臓の機能を代用する選択肢が日本にはある。人工透析には多額の医療費がかかるが、日本ではほとんどが公費負担で人工透析を受けられる体制が整っている。多くの海外の国では、医療費が高額のためこの人工透析を受けられない国も多い。
 腎機能が悪化して人工透析が必要になった際、患者家族は、まずは人工透析を導入するか否かという選択が迫られる。医師は透析を導入した場合と導入しなかった場合、その後どうなるかを患者家族に丁寧に納得がいくまで説明する必要があるが、そもそも透析を実施する選択肢もあれば、実施しない選択肢もある。それは、呼吸状態が悪くなったときに人工呼吸器装着するかどうか、食べられなくなったときに胃瘻栄養などの人工栄養や点滴を選択するかどうかを選択することと同じである。医師は、治す医療の選択肢を提示すると同時に、何もせず自然に経過を看る選択肢まで全ての選択肢があることを患者家族に説明する義務があり、患者家族はそのどの選択肢を選択してもよいはずだ。
 ある記事の中に、日本透析医学会監事の医師のコメントがあった。「患者に人工透析を中止する提案をすることは少なく、私自身は経験がない」と発言している。そもそも透析をしない選択や透析を中止する選択はあり、医師はその全てを提示した上で、その患者本人家族にとって最善の選択を選択できるように支援するべきであり、透析をしない選択や中止の選択を提示しないことの方が問題である。
 私たちは、多くの高齢者を診てきたが、最近は、超高齢の患者も多く、腎機能が悪くなっても人工透析を選択せずに、自宅で自然に看取るケースも多い。高齢だからという理由だけで、人工透析をするかどうかを決定できるわけではなく、患者本人にとって最善の選択かどうかが選択の大きなポイントとなる。
 一番問題なのは、人工透析の中止を選択肢として提示して死に至ったことではない。患者家族と十分な話し合いがもたれていたのかということだ。これは、まさにアドバンスケアプランニング(ACP)の問題である。意思決定支援で大切なこととして、本人の気持ちが分からないと家族の気持ちが優先されてしまいがちだが、あくまで本人の命であり、体なのだから、本人が何を望んでいるのかを最優先に考えることがまず大切である。
 そして、自然に診る選択肢から、とことん治療する選択肢も含め、全ての選択肢を関係する全ての人と十分に議論することが大切である。さらに、本人に代わって道筋を選択する家族の重荷に配慮しながら、気持ちは揺れてもいいことをお伝えすることが大切だ。
 本人にとっての最善は何か、正解はない中で、「当事者と支援する医療者で十分に悩んで出した結論が正解なのだ」と言ってあげられるようなプロセスを踏んでいくことが大切ではないだろうか。最終的に出た「結論」ではなく、悩んだ「過程」が大切だと思う。
意思決定支援で大切なこと
 (1)家族だけではなく、本人の意思を最優先する
 (2)とことん治療する選択肢から、何もしない自然の選択肢まで考え得る全ての選択肢を提示する
 (3)その時点で関係する全ての人と十分に議論する
 (4)決断に迷う当事者に寄り添い、決断は変わっても良いことを伝える
 (5)後で「これで正解だったんだ」と言ってあげられるプロセスを踏む(結果ではなくプロセスを大切に)
 現在の社会は超高齢社会となり、今後、団塊の世代の方が後期高齢者となり、死亡者がかつてないほど増加する多死社会を迎える。この多死社会で死亡者が多くなるのは、高齢化が進み、治せない病や老化で亡くなっていく人たちが増えるためだ。
 高齢で亡くなっていく人たちが増えていく時代に、全ての人が最期まで治療を続けて亡くなっていく社会でよいのだろうか。病気だけではなく、人は人生のあらゆる場面で決断が迫られる。もちろん、一人一人にとって最善は違う。どのような決断をしようともその決断をする権利が患者家族にはあるはず。そして、人の命に関わる重要な決断をするときに、迷ったり、決断が変わったりするのも当然のことだと思う。
 支援者にとって大事なのは、本人や家族が命に関わる重大な決断をするときに、「迷ってもいい」というスタンスを示し、十分な説明と対話を繰り返すこと。支援者も当事者と同じ立場に立って一緒に悩んで考えることが大切である。
 そして、一人一人にとっての最善が違う以上、その人にとっての正解は何かは誰にも分からない。そして、一緒に全ての選択肢を十分に議論して出した結論は本人や家族にとっても納得のいくものとなるだろう。一緒に悩んで考える過程を経て、出た結論は「それが正解だった」と後押しをすることが支援者にとって大切である。「結果」ではなく、一緒に悩む「過程」を大切にする。
 今回のこの「透析中止」の報道での核心は、この部分であると思う。十分な選択肢の提示と納得のいく対話が行われていたのか否かなのかが問題であって、透析の中止の選択をして死に至ったことが問題ではない。この点を報道するマスコミの方々にも十分に認識していただきたい。
ACPの3つのコア概念
 (1)人によって最善は違う
 (2)気持ちは変わってもよい
 (3)結果よりも過程を大切にする
 生まれたら人はいつか必ず亡くなる。亡くなるまで全ての人が治療を受け続けなければいけないわけではない。
 医療者はむしろ治療を続ける方が楽であり、死に向き合って、治療を選択しない選択をする方がつらいものである。
 「死」は医療の敗北ではない。それでもいつか亡くなる「死」に患者本人も家族も医療者も向き合って、いつか亡くなるときにどんな最期を迎えたいのかを考えることがこの多死社会では大切になってくるのではないだろうか。
 人生とは「いつか亡くなるまでどうよりよく自分らしく生きるか」だと思う。長く生きることだけが善ではない。このような報道で透析の中止や死に向き合って治療をしない選択が全て非難されるようなことにならないことを私は祈る。


 


この記事へのコメント
「福生病院は悪くない」と言うことは可能だと思います。
また「これは安楽死ではなく尊厳死である。」と言うことも可能だと思います。しかし「そのプロセスを振り返る必要はある。」と、強く思います。「福生病院は悪くない」と言い得るためには、そのプロセスを明確にする義務があると思います。
この件が釈然としない一番大きな理由は、患者の年齢が44歳と若く、9日のブログ本文にも書かれていますが「中止しなければ女性は約4年間生きられた可能性があったという。」 
その上に、本人は(闘病生活が主たる原因と推測しますがウツ傾向はあったが)正常な事理弁識能力を備えていた。自分で飲食可能な状態でもあったと推測できます。
そのような状態の患者を「終末期」と断言できるのか、という疑問があります。
また、腎移植や腹膜透析という別手段について医師側がどのような説明をして、患者側がどのような意思表示をしたのか「不明」である、ことも、ダークな印象を与えます。
年齢で線引きするべきではないとは思いますが、意識がしっかりしていて若く、あと4年は生きられた、のであれば、医療者側の対応の仕方ひとつで「あと4年、生きます」という選択が可能だったのではないでしょうか。
それから、憎まれ口承知で書きますが、どのような理由であっても毎日新聞が報道したことは讃えられるべきではありませんか? 
医師側が、マスコミに報道されることを忌み嫌うようでは、いつまでたっても医療改革などできません。たとえ誤解があってもセンセーショナルであろうとも、マスコミはもっと医療事件を報道するべきです。この件、YomiDr,も朝日も取り上げています。
国民のために、テレビも週刊誌もどんどん報道してください。マスコミが報道して初めて、一般大衆が気付き始めるのです。
「医者の言うとおりに」ってオカシイよ、ね、と考えるようになる。
Posted by 匿名 at 2019年03月10日 07:59 | 返信
長尾先生が紹介されている新聞報道。
3.7毎日、3.8産経、3.8朝日を時系列に読み進めると、一番手の毎日が知りたい「事実」がくわしく、
後追いは、肝腎の知りたい「事実」から遠ざかっている。
ご本人は、診療所での透析5年で挿入血管が詰まり、中核病院を紹介された。
対応した外科医から新たな挿入場所が首なので、手術時時死亡の可能性があること、
その際、「透析中止」という選択肢もある旨、説明した。
外科医は、「同意」を得て透析を中止したが、中止後本人から「苦しいので透析を再開してほしい」との訴えを
数回聴いた。
外科医は、透析を続ければ4年は生存できるが、本人の「正常時の判断」を優先したと、記者にのべた。
このやりとりが、どこまで「事実」に近いのか分からないが、重要な問題を孕んでいるように思う。
小生も、昨年救急搬送され、意識だけはすこぶる明晰だったので、救急医から検査や処置の都度、説明を受け同意。
ろれつが回らず発語がよかったり悪かったりしたが、リュックの中に当院の診察券があること、3年の健診記録やモデルMRI記録もあることをなんとか伝えた。ただ、診察券や保険証の束の中に、「尊厳死協会会員証」があることは、なぜか伏せた。
4年前、透析22年の友人が亡くなった。その息子が父とのやりとりの中で、「父は、自らの意志で最後を決め、透析の道を断った」と、手記に書いている。なぜか?
黒田さんを追悼する長尾先生のブログのなかで、触れさせていただいたことがある。
Posted by 鍵山いさお at 2019年03月10日 09:30 | 返信
長尾先生の9日の記事へのコメントで樫の木さんが書いておられましたが、
「医師の人生観の押しつけの問題は、このケースにあったのかないのか」
「メディアを駆使するがん治療や緩和ケアの専門医から、自死を勧められているような気持ちがする時があります」etc.
との文言にありますように、一般日本人の意思決定は、かかわる医師のスタンス(仕事や物事に取り組む姿勢)がものすごく影響します。
その原因はやはり「お医者様は偉い」「お医者様は国家資格者であり専門家であるから常に正しい」「お医者様の言う通りにしないと大変なことになる」という医者信仰です。
現在の一般日本人には「医者に逆らってはいけない」という意識が骨の髄まで染み込んでいる。医者も、それを知っている。本当に患者の立場で「自分ごと」として医療に関わっている医者なんていないと思う。
2年前に90歳10ヶ月で亡くなった父は、82歳で食道がん、放射線治療を希望して入院した某有名大学病院の外科医は、父の入院時には放射線治療ができないことを告げずに入院させました。ちょうどその時に放射線治療装置を入れ替えていたので物理的に不可能だったのです。
しかし一連の検査を指示し「手術の可能性もあるので」と言って抗がん剤治療を始めた。私も父も、何となく不思議に思いつつ、質問することができない雰囲気でした。
某有名大学病院、しかも初心者の医師ではなく評判の良い医師が担当になってくれてラッキーだ、と、そう思いました。しかし父は、毎晩のように手術するように勧められたのです。
「決死の思い」で「手術しません、最初から放射線治療を希望しているのです。」と主張して別の病院に紹介状を書いてもらって転院して放射線治療。その病院の放射線治療担当医師は、細かく丁寧に説明してくれる誠実な人柄でした。おかげさまで再び食べることができるようになりました。
父は退院後、介護施設で生活し、外出や外食もできました。最期の死因は肺炎でしたので、高熱のため食欲も無くスプーンひと口くらいしか食べれませんでしたが、亡くなる一週間くらい前まで自分で飲食できました。
あの時、某有名大学病院の「執拗なお勧め」に根負けして手術していたならば、命永らえても1年か2年、しかも病院と縁切れずに入退院を繰り返し、苦しみながら死んでいったことでしょう。
医療はビジネスです。医者はビジネスマンです。だから「透析を継続させたいハズだ」という長尾先生の推論も成立しますが、逆に、混雑している透析ベッドを空けるために、少しでも良好な状態で手のかからない患者を得たい、という推論も成立します、よ、ね。
医療をとりまく情報は、もっともっとオープンになってほしい。医療にかかわる記事は、何でもかんでも報道されるべきです。それが、一般の日本人を啓蒙することに役立ちます。
患者が、一般人が、賢くなるしか、一般人の幸福はナイのです。自分は自分で守る、自分の人生は自分で決める。
Posted by 匿名 at 2019年03月11日 01:14 | 返信
マスコミ報道の一般的な傾向として、事実確認をせずに、医者を一方的、恣意的に悪者にしようと世間を誘導するような内容であるということです。理由はそのほうが売れるからです。
公平性を欠いた、医療叩きありきの報道が医療を滅ぼす第一歩になるという事を多くの人はわからない。
相変わらず医療側は強者だから感情論で叩いて世間を扇動させればいいという短絡的な思考回路。
自分の病気をどうしたいかは本来自分で決めるもので、利点と欠点を説明して選択支を示すべきでしょう。明らかに間違った方向(まだ進行期ではないのにがんの標準治療を拒否するとか)の場合は医療者がアドバイスして修正を試みるべきだとは思いますが。
透析医療に関しては、80〜90歳でもやっていて、エンドレス。やめどきのガイドラインなどないと思いますが、これも相当な問題だと思いますが。患者の意思がどこまで反映されてるのか?
Posted by マッドネス at 2019年03月11日 12:15 | 返信
私は、糖尿病についても、人工透析についても、よく知らなかったなあとおもいます。
人工透析をしていても、治らない人が多いのですね。
であれば初めから、人工透析に頼らず食事療法と、運動療法で自分でセルフコントロールしなければだめだなあと思いました。
公立福生病院の、以前の病院で「人工透析は、成績が悪ければ、途中で止めます。苦しんで死ぬこともあります。」と説明する必要がありますね。
鍼灸治療をしていると、血糖値が下がり過ぎて「私のカバンから、飴ちゃんを出して、私の口に入れて下さい!!」と言われる事があります。
灸だけで良いから、毎日自分でコントロールした方が、人工透析に幻想を持つより、良いかも。
高脂血症も、高血糖症も、日本人が太古の昔から、お米と魚とマメ類で、低いカロリーで生活してきた歴史があるから、遺伝的に現代の豊富な食事に、慣れないのだろうと思います。
Posted by にゃんにゃん at 2019年03月11日 03:20 | 返信
今日は 3.11 大災害に見舞われた日。News で流れる映像を見ながら
「日本人は凄いな」と思うし、強いと思います。
医師会と国の思惑があって、何かが投げかけられているのだと思いますが、もっと
国民を信頼して、事実を知らせてくれた方が、事の運びが穏やかに進むのではないかと
思うことが、ままあります。
透析という言葉は聞いたことがあっても、その実は当事者であっても、果たしてどこまで
承知の上で、透析を開始するのか、また開始された行く末には、どのような事が待ち受けて
いるのかを、どれ程の当事者本人が理解しているのか、理解無きまま漠然と透析のレールに
乗っている場合も多くあるのではないでしょうか。
糖尿病を甘く見て、治療のために薬を服役したり、インスリン注射を打っているにも拘わらず、
飲酒生活を辞められない患者もいるでしょうし、その時その先に「透析」=「人工腎臓」という
ケースが待っていることがあるとか、透析を開始したなら、それは「一生涯」であるとか、
様々な「害」・リスクについてを承知していないままの患者群が多い日本国内ではないか? と
思ったりします。
「病気」は生活・人生と直結しているし、そして、それは「国民皆保険」という保障の上に
乗っ取った安心と、一方では甘えもある、日本の世の中です。
このような事を考えたり、ブログ参加する事自体が、結構マニアックなことだと自覚していますが
現状、日本の世の中は、かなり切実な、切迫した事態に陥っているのではないか?と危惧するのです。
Posted by もも at 2019年03月11日 07:50 | 返信
ももさんの「このような事を考えたり、ブログ参加する事自体が、結構マニアックなことだと自覚していますが」に深く同感。
現実社会の御婦人方はTVで(堺)マチャアキちゃんが太り過ぎもダメだけど痩せすぎもダメだと言ってたとか、もっぱらお茶の間TVが情報源。国民皆保険は既得権、腰が痛い膝が痛いと医者に行っては薬とビタミン剤をもらうのがまるで仕事みたい。ずっと元気でいるために医者に行く団塊世代は同時にいつもいつも病気におびえているように見えます。「病気になったら早く死にたい」とのたまう。彼女たちは尊厳死も安楽死もどちらでも良いらしく、むしろそのほうがノーテンキで深く考えることなく丈夫で長生きなさるのかも。共通認識は「あとは子供がやるから。」つまり受け身。自分で決め(られ)ないのです。
Posted by 匿名 at 2019年03月11日 11:46 | 返信
報道を見ていますが、福生病院の医師を責める方がおかしいと感じます。
透析治療を医療者側が患者に強制するのが正しいというマスコミの考えに驚きを隠せません。
透析以外の人口呼吸器などの延命治療を望まない選択肢は患者側にあるのに、透析だけ行わないという選択肢を示すことがいけないような考えは時代に逆行していると思います。
福生病院の方が患者側の気持ちにたって考えている病院だと私は思います。
Posted by ささ at 2019年03月12日 08:43 | 返信
人の死を、コミュニケーションの問題があったかもしれないが...と発言すること自体、医者のおごりと感じるのは私だけでしょうか。
透析中止の提示をすることには問題は無いでしょう。しかしながら、今回の問題については、患者が透析再開の意思を示したにもかかわらず、意識朦朧状態の言葉だと断定し、治療を再開しなかったことにつきるのでは..人の心はふらふら変わるものです。亡くなってしまえばどうにもなりません。
一旦治療を再開し、患者さんの気持ちが落ち着いた時点で、もう一度透析中止の意思があるのかを問うべきだったのでは。当然、治療を再開しても助かったかは分かりませんが..
Posted by 匿名 at 2019年03月12日 10:31 | 返信
「人工透析」て必要ですか?
おかしなことを言っていると思われるのは分かっています。
人工透析という治療にどうしても不信感が拭えないのです。
4年後ほど前に父親をある公立病院に連れて行きました。
年は87歳で高齢であることは否定できませんし自力で立っていられないので入院しなければならないと思ってのことです。
多少苦しそうでしたが会話はできましたので意識はしっかりしていました。
診察後入院を勧められました。そして病室の契約も行いました。
その時担当医から人工透析の治療を勧められました。
人工透析について詳しい知識はありませんし素人判断ですが最初に書いたことが頭をよぎりました。
そこで担当医に「人工透析を行わないとどうなりますか?」と尋ねました。
担当医からは「死にます」と明確に言われました。
もう私の方からは人工透析治療の同意書にサインするしか他に方法はありませんでした。
即、人工透析を行うとのことで父親は治療室へと移動しました。
この時が父親との最後の別れとなりました。
時間的考えても人工透析の治療がはじまるとまもなく亡くなっています。
一分でも一秒でも長生きして欲しいからそれが人工透析では?
今となっては叶わぬ願いですが福生病院へ連れて行ってあげたかった。
人工透析報道を見ると何故か思ってしまいます。
Posted by 匿名 at 2019年03月12日 10:48 | 返信
厚労省のガイドライン「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」と言う物が有り透析に限らないすべての医療が対象になる物です。
ACPの概念や在宅医療等を受けたガイドラインであくまで本人意思が優先で医療従属者の倫理委員会などは基本関係ないです。ただし医療・ケアチームと本人と家族等が後の医療計画に同意が得られない場合等に医療・ケアチームに助言者をいれ検討助言できるとされ、倫理委員会とはまるで別機能のものです。透析学会のガイドラインの解説記事が日本薬事新報社に「終末期の透析中止で学会が提言発表 − 患者家族の推定意思も尊重 [日本透析医学会]」と言う物に記者の作ったフロチャートでも倫理委員会が必要になるのは医療・本人・家族等の関係者の同意が得られない場合に倫理委員会等での検討となっています。福生の件はどちらのガイドラインからも不十分かつ逸脱してそうですが、最初から倫理委員会を開かなかった事を非難する根拠が見当たらない。「倫理委員会」を振り回す透析医やマスコミは事態を正確にとらえる気が有るのか?他に何か思惑でもあるのか?
先々透析の可能性が有る身としては個人の死生観を優先してほしいかぎりです。
Posted by 吉松 at 2019年03月12日 11:08 | 返信
福生病院殿は、腎臓内科を受診するかたに、透析中止を案内する病院であることを、ホームページ等で知らせる義務があるとおもいます。
Posted by 透析患者 at 2019年03月12日 02:31 | 返信
40歳代半ばであと4年生きられる可能性、という部分に想像力を働かせてみると、決して楽に生きられる状況ではないように思えます。40歳代の人ってそんなに簡単に死ぬものではないでしょう。すると普通の仕事ができる状況では少なくともないでしょう。
「可能性」ですから4年のところは2年かもしれませんし1年かもしれません。そして最後の1年は入退院を繰り返し・・・かもしれません。透析中止を考えた時点でさえかなり生活に問題がありそうにも思えます。
ご自身がそういう状況に置かれたことを想像すると、できるだけ長く生きたい、と言える人ってそう多くはないような気もします。とても生きる希望が持てそうもありません。自分だったら透析をやめて、しんどくなったら鎮静でいいです。
Posted by anonymous at 2019年03月12日 05:33 | 返信
私も数年後に透析になる可能性があると言われました。私は透析は受けないと答えました。糖尿病でインシュリンを打ってますが、自分の中で薬でサポートして行きていくのは受け入れますが死んだ臓器を機械処理して生きていくのは自分の生き方に反すると思うからです。ただ、末期になり苦しくなったらなりふり構わず、透析でもなんでもいいから治療してくれと懇願するかもしれません。今、自分が恐れているのは死そのものではなくその死までに至る苦痛に耐えられるかどうかです。ネットで検索してもそいういう患者を受け入れるホスピスのような施設の情報がありません。
Posted by 鈴木正彦 at 2019年03月13日 09:15 | 返信
今回の記事を拝見になって、公立福生病院のとった行動に敬意をもうしあげたいと思います。
透析患者は、状態が様々です。
その状態によっては、大変に苦しんでおり、透析前後〜その後までは様々であり、大概は心不全を併発して死に至ります。
若くて心臓にパワーが有り、状態も良いならば透析で延命治療も良いでしょう。
しかし、高齢で心臓にパワーも無くなってきており、動脈硬化や色々な疾患を併発していて苦しんで透析をしている患者さんもそれなりにおられます。
透析最中に、ぽっくり病のように大声を突然出し、透析を止めてくれー。苦しいー。と怒鳴る患者さんもおられます。
その人は、透析、糖尿病による足の切断、脳梗塞などを合併されており、当然車椅子生活で自力では通院が不可能です。
そういうこ80歳過ぎの高齢者をICUを行ったり来たりしてまで、透析をしているのです。
当然、透析というものは心臓にものすごい負担がかかるので、心機能が拒否反応し、苦しみます。
冷や汗も出ますし、足もつりますし、血圧も100以下に下がり、その逆で200以上にもなります。
そうすると、透析を継続すると大変危険な状態になるので、一旦は透析を中止し、透析が再開できるまで、タイマーをセットして様子をみます。
足の側を上に上昇させたり、頭の側を上昇させたり、生理食塩水を点滴して、血圧が上がるまで透析は中止するのです。
透析患者は年数を重ねるごとに、徐々に悪化していき、その終末期は患者本人が選択した治療ができれば、望ましいのです。
ICUに長期入院してまでも、スパゲティー治療をするか、しないか。
できれば、安楽死または、尊厳死の選択する病院との契約書が必要な時代になっているのではないでしょうか。
なので、透析はあくまでも延命処置にすぎません。完治はしないのです。
海外では、終末期はどのようにして死ぬか、状態の良い時にに契約した通りにする国もあるのです。
カリウム製剤を致死量注射すれば、安楽死できるので、問題は法律の整備でしょうけれど。
Posted by ルンペン at 2019年03月13日 09:33 | 返信
医療は、患者さんの為にあるのだから、患者さんの意見が聞きたいと思います。
糖尿病患者さんの為の医療だったのか。
断食道場とか、エアロビクス体操などが、気軽に楽しめたり、オリンピックのためだけではなく、国民的にスポーツが楽しめるような環境が欲しいです。
合理化合理化で、死ぬまで働かされたり、人手不足と言うと、直ぐ外国人の導入を考えたりではなく、GDPは低くても、一人一人が生活を楽しめるような国であってほしいと思います。
Posted by にゃんにゃん at 2019年03月13日 02:29 | 返信
http://blog.drnagao.com/2019/03/post-6688.html

透析中止、他にも20人の情報 全員死亡か
2019.3.8

1/1枚 東京都福生(ふっさ)市の「公立福生病院」で昨年8月、担当医が腎臓病患者の女性=当時(44)=に人工透析治療中止の選択肢を示し、中止を選んだ女性が約1週間後に死亡した問題で、平成25年以降、同病院で他にも約20人の患者が透析治療を選択しなかった可能性があることが8日、関係者への取材で分かった。これらの患者は全員死亡したとの情報もある。
<< 下に続く >>
 一般的に透析が必要とされる腎臓病患者が、透析や腎移植を受けないで生きていくことは難しいとされる。同病院を監督する都は病院側が必要な情報提供を行った上で、患者らの意向を十分に確認していたのかなどについて調査を進める。また、日本透析医学会が設置した調査委員会が来週にも、同病院に調査に入る方針を固めた。
 関係者によると、25年4月〜30年3月、透析治療のため同病院を訪れた腎臓病患者149人のうち、20人前後が担当医と相談した上で透析治療を行わなかったという。女性のケースと同様、死亡リスクを伝えた上で担当医が透析治療をしない選択肢を示した可能性がある。
同病院では昨年8月、医師が腎臓病の女性に治療継続と治療中止の2つの選択肢を提示、女性は治療をやめることを決めた。その後、女性は透析再開を願い出たが、同月中旬に死亡したという。都は今月6日、医療法に基づき同病院を立ち入り検査。女性側と病院側のやりとりを詳しく確認している。
<< 下に続く >>
 同病院は8日、「家族を含めた話し合いが行われ、記録も残されている。密室で独断専行した事実はない。悪意や手抜きや医療過誤もない」などとするコメントを発表した。
https://www.iza.ne.jp/smp/kiji/events/news/190308/evt19030820220033-s2.html

https://mainichi.jp/articles/20190307/ddm/003/040/033000c?pid=14516


http://www.asyura2.com/16/iryo5/msg/760.html

[政治・選挙・NHK258] 石破茂氏激白「私が言うべきことを言い続ける理由」 党内に「言論統制」の風潮はないか、自民党はいつからこうなった 
石破茂氏激白「私が言うべきことを言い続ける理由」
党内に「言論統制」の風潮はないか、自民党はいつからこうなった
2019.3.14(木) 阿部 崇

 安倍政権が長期政権化する中、自民党内では「安倍一強」がますます鮮明になっている。その中にあって、安倍首相に批判的な発言を続ける唯一の存在が石破茂元幹事長だ。安倍批判は、世論に向けて存在感をアピールする効果もあるが、党内での孤立化を招くリスクもある。どんな思いが石破氏の舌鋒を先鋭化させているのか。その胸の内を聞いた。(聞き手:JBpress 阿部崇、撮影:西ア進也)

石破派だけを排除
――安倍晋三首相が、公邸に石破派以外の派閥幹部を呼んで会食したりするなど、石破派を排除するような動きが見られます。これをどう受け止めていますか。

 構いませんよ。うち以外の派閥を呼んで、お祝いの会をするのは。

 ただ、総裁選から5カ月も経ってからなぜやるのかが分からないし、そのお祝いの会の存在について箝口令を敷いたり、公邸の裏口から出入りさせたり、翌日の新聞の動静欄に載せなかったりしたのであれば不思議だな、と思うだけです。もっと堂々とやればいいのになと。

――石破派排除の意図はどんなところにあると?

 それは私には分かりません。うち以外の派閥を集めてお祝いをしようと言い出したのが誰なのかも分かりません。ですから推測で何かを言うべきではないでしょう。

――総裁選の際の演説はもちろんだが、自民党内では唯一、石破さんだけが安倍批判を続けている。「安倍一強」と言われている中で、批判を続ける信念はどういうものか。

 特に安倍批判をしているつもりはありません。ただ、自民党は国民政党なんです。国会議員だけの党じゃない。党員がいて、地方組織があって、それで成り立っている政党なんです。

 国民政党であるからには、党内に様々な意見があるのが当然です。憲法改正、経済政策、財政政策、金融政策、社会保障政策、安全保障政策、それぞれにいろいろな意見がある。

 その多様な意見をいろいろなところで伺って、自分の中で咀嚼・消化し、議論をするために国会議員は存在しているのです。だから私は、国会議員の当たり前の仕事、自民党所属議員として当然のことをしているだけです。

――だが、今の自民党は批判を受け止める度量がないように見える。公邸での会合の一件もそうだし、安倍首相は国会でも野党からの批判に、敵意むき出しで応戦している。さらに菅官房長官も、記者会見で特定の記者がする質問を排除しようとしている。これほど批判を受け止められない政権はちょっと思い浮かばない。安倍政権になって政治家の質が変わったのか。

 私は今まで長く国会に議席をいただいて、中曽根総理から現在の安倍総理に至るまでの総理総裁を見てきましたが、その中でも現在の安倍総理のアプローチはかなり異質ではあると思います。

 ただそれは、安倍先生が総理になって突如としてそうなったのではありません。安倍先生は小泉純一郎内閣で官房副長官だった当時、山口新聞のインタビューで『野党に親切である必要は全くない。ケンカ腰でやるくらいの方が国民に対して誠実だ』と答えられています。つまり、安倍総理はもともとそういうスタイルであり、それを総理になってからもずっと踏襲されているのだと思います。

代議士とは「代わりに議論するサムライ」
――今の自民党は、さきほどの「国民政党」というイメージはかなり薄れているように見えます。

 少なくとも私が思い描いている自民党とは違っているように思いますし、日本国中あちこちに行って会う自民党員の方からも、「こんな自民党じゃなかったよね」という意見を多くいただきます。

 代議士は、「代わりに議論する士(サムライ)」です。国民の中のいろいろな意見を吸い上げ、自分なりに咀嚼し、自分の考え方として昇華させ、議論する。それが仕事です。

 自民党は本来、そういう代議士の集まりだったと思います。

石破茂:1957年生まれ。鳥取県八頭郡八頭町出身。慶応義塾大学卒。三井銀行入行後、1986年の衆議院選挙に立候補し初当選。以後、防衛庁長官、防衛大臣、農水大臣、自民党政調会長、自民党幹事長、内閣府特命担当大臣(地方創生・国家戦略特別区担当)などを歴任。
 私は小泉内閣で防衛庁長官に登用された時から自分の政治家人生が変わったなと思っているんです。というのも、私と小泉先生は過去、徹底的に対立したことがありました。

 私は政治改革において、「小選挙区制を断固導入すべし」との立場でした。小泉先生は反対派の急先鋒で、「小選挙区制になったら、政治家が党本部や官邸の言うことしか聞かなくなるから絶対にダメだ」と言っておられた。私は「そんなことはない。党と対立しようが官邸と対立しようが、述べることは述べる議員でなければ国会議員ではない」と反論したものです。今から思えば、小泉先生がおっしゃっていたことのほうが正しかったのかなっていう気もしないでもないですが、ともかく当時、小選挙区制導入の是非を巡って徹底的に対立しました。

 そして小泉先生が、橋本龍太郎元総理と総裁の椅子を争った2001年の総裁選の時、私は当時、橋本派の所属議員として、めいっぱい橋本先生の応援をしていました。「小泉旋風」が吹き荒れる中、47都道府県のうち橋本先生が勝ったのは、ご自身の地元の岡山、橋本先生が大臣をなさっていた沖縄、野中広務先生の京都、青木幹雄先生の島根、それ以外では、私の鳥取だけでした。それくらい徹底的に橋本先生の応援をしたんです。

 だから小泉政権が出来た時には「小泉政権が続く限りはポストなしだ」と思っていたのに、政権発足から1年後、突如として防衛庁長官に起用された。国会議員をやってきてあれほど驚いたことはありません。

 小泉総理は、誰を起用するかについて、好き嫌いや、派閥の理論ではなく、小泉内閣のために誰が「使える」か、という視点で判断されたんだろうと思います。

 安倍総理も、もちろん内閣の布陣は適材適所で選んでおられるでしょうし、今の日本に最もふさわしい人材を用いているのだと思いますが、それを国民に対して丁寧に説明するプロセスがもう少しあってもいいのではないかと思います。

――2012年12月の総選挙で、安倍総裁の下で自民党は勝利して政権に復帰しました。当時の自民党への支持は、国民の中にあった「民主党ではだめだ」という反・民主の票が自民党に流れたという、いわば消極的な支持が多かった。現在は、「やっぱり自民党でなきゃだめだ」という積極的な支持が増えているという実感はありますか。

 そこは分かりません。民主党政権時代、私も主に野党・自民党の政調会長として、予算委員会で鳩山総理や菅総理、野田総理に対して多くの質問をしました。そこで彼らの政策、政権運営を徹底的に批判しました。


 あのときの自民党が立派だったなと思うのは、当時、衆議院議員がたった119人になってしまった中、谷垣総裁の下で党綱領を作り直したことです。国で言えば憲法に当たる党の綱領を、あの最も苦しい時期に、党の再生のために作り直したのです。

 その綱領には、侃々諤々の議論の末に、自民党は「勇気をもって自由闊達に真実を語り、協議し、決断する」という言葉や、「多様な組織と対話・調整し、国会を公正に運営し、政府を謙虚に機能させる」政党であるという宣言が盛り込まれました。さらに党の基本的な考えとして、「政府は全ての人に公正な政策や条件づくりに努める」としています。

「なぜ自分たちは野に下ることになったのか」という反省の下にこの綱領を定め、「自分たちはこれからこういう政党になります、ですから皆さん、支持してください」ということで2010年1月に国民に提示したわけです。

 その年の7月の参議院選挙で、谷垣総裁は公約にあえて『消費税10%』を掲げられました。党内からは「野党なのにそんなことを言ってどうするんだ」という意見もあったのですが、谷垣総裁は「言うべきことは言わねばならない」として譲られなかった。結局、この参議院選挙で与党・民主党は議席を減らし、自民党は大きく伸ばしました。このように、批判を恐れず、言うべきことを言う自民党に対する期待が大きくなったからこそ、2012年の総選挙で政権を奪還できたのだと思うんです。

 その後、果たして自民党は綱領に掲げたような党になりえたのだろうか。最近も「魔の三回生」が話題になっていますが、野党時代の苦労を知らない議員が多くなってきていることも背景にあると思います。

 そういう中で、いみじくも安倍総理が民主党政権を「悪夢のような」とおっしゃいましたが、「あの民主党に比べればマシでしょう」っていう程度では本物の支持は得られません。有権者の方には「自民党のここがすばらしい」ということで選んでもらえる党にしたい、と今も思っています。

角栄流「報いを求めない親切心」
――石破さんは、田中角栄、渡辺美智雄の両氏を政治の師としている。有権者との向き合い方で2人から学んだことは何か。

 角栄先生は、「歩いた家の数しか票は出ない、握った手の数しか票は出ない」という考えを徹底しておられました。とにかく街頭演説をやれ、挨拶廻りを徹底しろとおっしゃっていました。古いやり方に見えるかもしれませんが、やっぱり「代議士」ってそういうものだということをおっしゃっていたのだと思います。選挙区を知らないとこんな仕事はできない、そして地元の人たちを説得できないでこんな仕事はできないっていうことなのだろうと思います。

 角栄先生の人気は今でも衰えていませんが、近くで接した者として感じるその圧倒的魔力というのは、「報いを求めない親切心」にあるんだと思います。角栄先生の親友だったうちの父親(石破二朗氏。元鳥取県知事、参議院議員、自治大臣などを歴任)が亡くなる間際、鳥取で療養していたんですが、『死ぬ前に一度田中に会いたい』と漏らした。そうしたら田中先生はわざわざ鳥取に来てくださいました。そして父は、角栄先生に葬儀委員長を頼んで亡くなりました。父は鳥取県知事を4期務めたため、葬儀は鳥取県民葬になりました。そこで角栄先生は「県民葬の葬儀委員長は現職の知事に決まっている。俺は友人代表で弔辞を読む」と言って、また鳥取まで来て、「石破、お前と約束したけど、葬儀委員長はできない。許してくれ」と泣きながら弔辞を読んでくれました。

 驚いたのはさらにその後、東京でもう一度、「田中派葬」という形で葬式を上げてくれたことです。「お前のおやじとの約束を果たすぞ」っていって葬儀委員長を務めるために、わざわざですよ。

 私の結婚式の時に、親代わりとして、うちのおふくろの横に立ってくれたのも角栄先生。そういう行動は、角栄先生にとって何のプラスにもならないんです。でも約束を必ず守るというその姿勢、報いを求めぬ親切というものが角栄先生の真骨頂。その姿が今も国民に浸透しているからこそ、人気も衰えないのだと思います。

 渡辺美智雄先生も有権者と深く付き合うタイプの政治家でした。私が議員になる一年前、昭和60年夏の渡辺グループの研修会で、先生はこう述べられました。「政治家の仕事というのは勇気と真心をもって真実を語ること。それだけである」と。

 この言葉は、実は先ほど触れた自民党綱領の、「勇気をもって自由闊達に真実を語り、協議し、決断する」の部分の下敷きになっています。私が強く主張して、渡辺先生の言葉をそのまま入れてもらいました。先生は、「お前たちは何のために国会議員になろうとしているのか。金が欲しいだの、いい勲章がもらいたいだの、先生先生と呼ばれたいだの、女にもてたいだの、そんなことを考えている奴は絶対に政治家になるな」とそれは厳しく言われました。渡辺先生の下で、政治家とはそういうものだというのを叩きこまれました。

「後ろから弾を撃つな」は言論統制では?
――綱領で「勇気を持って自由闊達に真実を語り」と掲げたが、石破さん以外は、誰もものを言えない雰囲気になってしまっているのか。

 私はときどき「後ろから弾を撃つな」と党内で批判されます。また、「石破さんね、正しいことを言っていればいいっていうもんじゃないんだ」とよく言われます。でもそれに従ってばかりいたら、言論統制に限りなく近づいていくようで恐ろしい気がするのです。権力を批判する者を「非国民」と言って言論を封殺した戦前と同じような雰囲気になっては絶対にいけないと思います。

 金融政策、財政政策、社会保障政策、安全保障政策、さらに憲法についての考え方など、私が安倍総理と違うところはそれなりにあります。ですから私はいろいろな会議で自分の意見を述べるわけですが、私が発言すると、場が静まってしまったりすることがあります。うっかり賛同の意見でも言おうものなら、官邸から圧力がかかるのではないか、と危惧するような雰囲気があるような気がします。

 新聞紙面にときどき、「匿名のある自民党閣僚経験者」や「ある自民党代議士」の発言として、「内容としては石破の意見は正しいが」といったコメントが載っていますが、それも同じような危惧によるもののような気がします。

――国民にはそういう自民党の状況はなかなか見えない。むしろ経済的閉塞感が強まり、安全保障の危機が高まっている中で、安倍首相の「強気」の姿勢を好感する国民が多いように感じる。

 国民の皆様が支持して下さっているのはありがたいことです。しかしそれに安住せず、我が国の安全保障環境、我が国の経済、本当に良くなっているのか、われわれ与党としても常に検証しなければいけません。


 確かにリーマンショックから10年が経ち、今、企業の利益は1.6倍になりました。でもその内容を子細に見ていけば、売上高はほぼ横ばいで推移しています。また労働分配率は43年ぶり低水準と言われていますし、年収186万円以下の人は929万人もいると言われています。

 領土問題も、国家の根幹をなす要素の1つですから、慎重な姿勢が求められます。ロシアとの間の懸案である北方四島について、「四島返還」を断念したと報じられました。

 そもそも、今の北方四島の現状はどのようにして作られたのでしょうか。ソ連に対日参戦を促してきたアメリカとイギリスが、ソ連に「相互不可侵・戦時中立」を定めた日ソ中立条約の破棄を認め、その代わりに日本が支配している満州の権益、南樺太、千島諸島の領有を認める密約を、ヤルタ会談で交わしていたとされています。

 この密約に基づき、ソ連はまだ中立条約の有効期間であるにも関わらず、一方的に中立条約を破棄し、日本がポツダム宣言受諾を連合国側に伝える前日の1945年8月9日に宣戦布告しました。千島列島に攻め込んだのは、日本が無条件降伏をした8月15日以降でした。

 そしてサンフランシスコ講和条約では、日本が領有を放棄した「千島列島」の範囲を明記していないにもかかわらず、ソ連はサンフランシスコ条約で北方四島がわが国のものになったと主張したわけです。

 日ソ中立条約、ヤルタ協定、ポツダム宣言、サンフランシスコ条約、この4つを国際法的に正しく理解すれば、日本が主張すべき領土が「四島」であるのは当然です。ですから日本は、「ソ連の継承国であるロシアの主張は、国際法的に見て間違いである」と主張しなければなりません。「四島返還断念」などはもちろん安倍総理もまったくお考えになっていないと思いますが、法的根拠を踏まえない交渉だと思わせることのないよう、留意が必要です。

――安倍首相の悲願は憲法改正と言われています。石破さんも憲法改正の必要性を否定していませんが、ここでも意見は違いますか。

 憲法は必ず日本国民によって改正しなければならない、そこは同じです。しかし今、現行の憲法第9条に新たに3項を付け加えて、自衛隊の存在を明記する、という案が出されています。「大学教授が自衛隊は憲法違反だ、と言っているのはけしからん。募集に応じない自治体があるのはけしからん、だから憲法改正だ」と。さすがにそれは論理が飛躍しすぎでしょう。

 自民党が「条文イメージ」とか「たたき台素案」とか呼んでいる改正案は、「我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する」などの条文になっており、安倍総理が「実態は何も変わらないんです、自衛隊の存在を明記するだけです」とおっしゃると、それはかなり違うと言わざるをえません。

 私自身は、国民に正直に誠実に真剣に向き合うということを一番の政治信条にしていますし、自民党も本来そうあるべきだと思っています。安倍内閣の姿勢がこれと異なるように感じられるとすれば、とても残念だと思いますし、そうならないように発言し続けているつもりなのです。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55742
http://www.asyura2.com/19/senkyo258/msg/464.html

[国際25] 中国船、もはや遠慮なくベトナム漁船に体当たり 中国が生きた手本を示している島嶼奪還の困難さ 
中国船、もはや遠慮なくベトナム漁船に体当たり
中国が生きた手本を示している島嶼奪還の困難さ
2019.3.14(木) 北村 淳
ベトナム当局者「中国船の体当たりで漁船沈没」
南シナ海に中国が設置した石油掘削施設近くで、ベトナムの船舶に接近する中国の海警艦を監視するベトナム海洋警察(資料写真)。(c)AFP/HOANG DINH Nam〔AFPBB News〕

 西沙諸島のディスカバリー礁(華光礁)周辺で操業していたベトナムの漁船が、3月6日、中国船に衝突されて沈没した。ベトナムのメディア(Tuoi Tre)によると、漁船に乗っていた5名は漁船の残骸にしがみつき2時間ほど海面を漂っていたところをベトナム漁船によって救助されたということである。

 中国側メディア(中国共産党新聞網)が伝えた中国外交当局者の発表によると、ベトナム漁船から救難信号を受信した中国公船が直ちに現場海域に急行したところ、ベトナム漁船が沈没しつつあったため、中国の海洋捜索救難センターに通報し、中国救助船が派遣されたということである。

 中国当局は、5名のベトナム漁民は救助されたとしているが、ベトナム漁船と衝突した船についての情報や、ベトナム漁船を救助したのは中国救助船なのかベトナム側の報道のようにベトナム漁船なのか、などの詳細については明言していない。

多発する衝突“事故”
 西沙諸島海域、そして南沙諸島海域でのこの種の衝突事故による沈没事故は近年増加しているという。ベトナム漁船が中国船に衝突されて沈没した事例はしばしば報道されている。だが、報道されている“事故”は氷山の一角に過ぎない。ベトナムからの留学生(軍事情報研究のために渡米している)が米海軍関係者に語ったところによると、「毎週のように衝突事件が繰り返されていると言っても過言でない状況である」ということだ。

 西沙諸島や南沙諸島での領域紛争で軍事的優勢を掌握しつつある中国当局は、これらの海域で海上民兵が操船する漁船を多数操業させ、ベトナム漁船やフィリピン漁船などに脅威を与えている。

 アメリカ海軍などが“第3の海軍”と呼ぶ海上民兵たちは、南シナ海での中国の主権を守る“任務”に従事することが、自らの漁業権益を確保することに直結するため、積極的に任務を遂行することになるのだ。

 そして海上民兵の漁船群の周辺には、“第2の海軍”である中国海警局の各種巡視船が「安全操業の確保と違法操業の監視」に当たっている。それらの周辺は、“第1の海軍”である中国海軍艦艇が警戒監視に当たっている。

 それだけではない。西沙諸島のウッディー島(永興島)、南沙諸島のファイアリークロス礁(永暑礁)、スービ礁(渚碧礁)、ミスチーフ礁(美済礁)には航空基地が設置されているため、海南島や中国本土から飛来する中国海軍機は心置きなく南シナ海の警戒監視活動を実施できるような状況になっている。

ディスカバリー礁(華光礁)とウッディー島(永興島)の位置
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 このように、南シナ海における中国の圧倒的な軍事的優勢がほぼ確立している。そのため、西沙諸島や南沙諸島で“毎週のように繰り返されている”衝突事故は、報道されないどころか報告すらされない状態になりつつあるとのことである。

 なぜならば、ベトナム当局が中国側に強く抗議すると、さらに衝突事故が頻発する結果となってしまうからだ。政府間の対応は八方塞がり状態に陥っているというわけだ。

静観するしかないベトナム当局
 実際にベトナム漁船と衝突事故を起こすのは中国公船ではなく民間の漁船である。その漁船が海上民兵によって操船されていても、偽装漁船でも軍艦でも公船でもなく、あくまでも漁船である。したがって、ベトナム当局が中国側に抗議しても、漁船同士の衝突に関して中国政府には責任はないと言われればそれまでだ。

 おまけに強行に抗議するとさらに衝突事故が起きてしまうため、ベトナム側としては衝突事故を表沙汰にして騒ぎ立てても無意味どころか逆効果である。結果的に静観するしかなくなってしまっているのだ。

 もちろん、ベトナム側が中国の海洋戦力に痛撃を加えられるレベルの海洋戦力を保持していれば、中国側としてもベトナム漁民を圧迫する“作戦”は差し控えざるを得なくなる。

 だが、ベトナムの戦力は地上軍に偏重している。ベトナムは陸続きの中国からの軍事侵攻に備えて比較的強力な地上軍(ベトナム陸軍、国境警備軍)を備えている。中国軍としても、そう簡単にベトナム軍を打ち破ってベトナムに進行できるとは考えていないはずだ。しかしながら、西沙諸島や南沙諸島のように海域で作戦行動を実施する海洋戦力となると、ベトナム側が圧倒的に劣勢であり、手も足も出ないという状態に近いのだ。

島嶼の奪還は至難の技
 1974年に南ベトナム海軍と中国海軍が戦闘を交えて中国側が奪取した西沙諸島は、それ以降、中国による実効支配が続いている。西沙諸島の中心となっているウッディー島(永興島)には軍事拠点だけでなく“中国の領域”である南シナ海の行政を司る政庁まで設置されており、中国の領土としての体裁が完全に整っている。

 このような状況でベトナムが西沙諸島の主権を取り戻すには、再び中国海軍と戦闘を交えて、力づくで奪い返すしか方法はない。しかし、比較することすら無駄なほど海洋戦力に差が生じてしまっている現状では、そのような可能性はゼロに近い。

 西沙諸島での事例は、日本にとって決して対岸の火事ではない。西沙諸島や南沙諸島にしろ尖閣諸島にしても、また中国との間に限らず竹島や千島列島にしても、ひとたび島嶼を完全に占領されてしまうと、それを取り戻すには軍事力を用いて奪還する以外には方法がない。その現実を、中国は南シナ海で、日本をはじめとする国際社会に教示しているのだ。

 そして、島嶼奪還のための戦闘が極めて困難な軍事作戦となるのは必至である。島嶼周辺に限定された局地戦には留まらずに全面戦争に発展しかねないことを覚悟しなければならないのである。

http://jbpress.ismedia.jp/mwimgs/a/2/-/img_a28631c6de5035168a70701e62ea85ba487761.jpg

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55735
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/679.html

[国際25] 要警戒!世界を中国化する「一帯一路」の危ない誘い 取り込まれるイタリア、「中国式植民地主義」は息を吹き返すのか 
要警戒!世界を中国化する「一帯一路」の危ない誘い
取り込まれるイタリア、「中国式植民地主義」は息を吹き返すのか
2019.3.14(木) 福島 香織
「一帯一路」建設で5つの進展 中国商務部
商務部の記者会見に臨む銭克明副部長(中央、2019年2月12日撮影、資料写真)。「2018年の一帯一路の経済貿易合作は規模が拡大し、質も向上した」と言う。(c)CNS/趙雋〔AFPBB News〕

(福島 香織:ジャーナリスト)

 中国の一帯一路戦略は、昨年(2018年)頓挫しかけていた。エチオピア〜ジブチ鉄道は棚上げとなり、マレーシア〜シンガポール間高速鉄道プロジェクトは中止、パキスタンの政権交代に伴う一帯一路事業の見直しなどが続いた。また欧米諸国から、返済見込みのない事業に多額の融資をして相手国を借金漬けにして支配するやり方を「債務の罠」「中国式植民地主義」などと非難されてイメージも地に落ちていた。だが今年に入って、ひょっとすると一帯一路は息を吹き返すのか、と思わせる動きが出てきている。

 1つはすでに日本でもニュースになっているイタリアの一帯一路への正式参加表明である。3月下旬に習近平がイタリアを訪問した際に、イタリアのジュゼッペ・コンテ首相と一帯一路参加に関する覚書を交わすことになっている。G7としては初の正式な「一帯一路」参加に、中国は急に自信を見せ始めた。昨年秋の安倍晋三首相訪中時に「第三国市場での日中協力」という名目で日本が一帯一路への支持姿勢を見せたことも追い風になっている。

 加えて、なにより世界銀行が一帯一路のプロジェクト効果として、参加国の貿易を3.6%増やし、世界貿易全体も2.4%増加させたとポジティブに評価していることも大きい。コロンビア大学政治国際関係研究所のある研究者は、一帯一路について「中国は世界秩序の再構築プロセスの重要な要素」とまで語っているようで、中国の参考消息などが喜々としてこれを転載して報じている。

中国との接し方を巡って足並みが乱れるEU
 イタリアが中国の思惑に気づいているかは別として、イタリアの国内事情はスキがあった。イタリアの左右ポピュリスト連立政権の内部で、鉄道プロジェクトをめぐる非常に厳しい対立があり、また財政赤字はEU規則の上限を上回りそうになっている。イタリアにしてみれば、大盤振る舞いを約束してくれる中国にすがりたいところだろう。

イタリア、ポピュリズム政権が正式発足
2018年6月にイタリア下院で、新政権の信任投票に先立ち演説するジュゼッペ・コンテ首相。(c)AFP PHOTO / FILIPPO MONTEFORTE〔AFPBB News〕

 だが、中国の一帯一路戦略については、米国やEU諸国の間には依然、根強い不信感が強い。米国家安全保障委員会(NSC)のマーキス報道官は「フィナンシャル・タイムズ」に対し、「イタリア政府の(一帯一路への)支持がイタリア国民に持続的な恩恵をもたらすとは思えない。長期的にはイタリアの国際的信用を傷つける結果になりうる」(カッコ内は筆者)と脅しにも似たコメントを出している。

 EU本部のあるベルギー・ブリュッセルも、イタリアが、中国に取り込まれたギリシャの二の舞になるのでは、と警戒している。そのあたりを最近、ドイツ華字メディア「ドイチェ・ベレ」が詳細に報じているので参考にしながら解説する。

 中国は一帯一路の足掛かりとして、2012年からスタートしている中国と中・東欧首脳によるサミット「16+1」をフォーマットとして、EUを分裂させるための「トロイの木馬」を仕込んだ、と批判されている。たとえばギリシャのピレウス港の67%にのぼる株式の買収。ここは海のシルクロードの起点の1つである。続いてハンガリー・セルビア高速鉄道の入札。バルカン半島という地政学的要衝地が大量輸送インフラでつながれることになった。中国国家電網はギリシャ電網の株の24%を押さえており、ポルトガルでも電信、エネルギー、保険の4分の1を中国資本が押さえた。中・東欧から南欧に、すでに中国の経済力を通して政治力が浸透し始めている。チャイナマネーになびいたギリシャやハンガリーは、EUが中国の南シナ海問題や人権問題について非難の声明を出そうとすることに反対して、中国を名指しした非難声明が見送られたこともあった。

マークの付いた場所がギリシャのピレウス港。ピレウス港に荷揚げされた貨物がハンガリー・セルビア高速鉄道を経由して欧州まで運ばれることになる(Googleマップ)
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 べったりとした親中派であったドイツは、中国にハイテク産業ロボットメーカー「クーカ」を2016年に買収されて少し目が覚め、「中国がEU事務に干渉している」と何度も非難するようになった。だが、華為科技(ファ―ウェイ)製品の全面締め出しには躊躇し、米国から「ファ―ウェイ製品を排除しなければ重要情報が共有できない」と圧力を受けているところだ。EU本部は域外からの投資審査を強化する仕組みを2020年秋から導入するが、これは中国の戦略的重要領域への投資に対するコントロールを強化するためでもある。だが、EU内部は再び中国の戦略に振り回され、その結束は乱れているのだ。ちなみにハンガリー・セルビア高速鉄道はその入札プロセスに疑義があるとして、着工が事実上の棚上げになっている。

 こうした状況で、イタリアが一帯一路に参与するインパクトは小さくない。瀕死の一帯一路が復活するだけでなく、EUの亀裂がますます深まり、まさしく中国が狙う、世界秩序の再編の時代到来が早まる、ということになるやもしれない。

 米ペンシルバニア州のハリスバーグ大学講師のエフティミアダスがドイチェ・ベレに対してこうコメントしている。「もし中国とイタリアの協議内容に、地政学的に重要な地域のインフラ建設や5Gネットワークのプロジェクトが含まれていたら、イタリアおよびEUの安全に深刻な悪影響をもたらす。いずれにしろ、イタリアの一帯一路参与がEUの政治的分裂と弱体化を招き、北京のEU“分割統治”戦略をさらに強化させることになる」

 5G覇権を米中が争っている最中、EU諸国が米国と足並みをそろえて5Gを締め出すかどうかについて、もともと異論が出ている。欧州会議の見解としては、「中国企業が開発する5G対応端末には、製造業者および当局が非公開データや個人情報、さらに通信にEUの許可を経ずにアクセスできるバックドアが埋め込まれている可能性があるとされる最近の疑惑」について深刻な懸念を示しているが、イタリアの態度次第で、このEUのファーウェイ包囲網が決壊する可能性も高まるわけだ。

中国はネガティブイメージの払拭に必死
 EUの揺らぎに勇気を得たのか、中国は目下開催中の全人代で一帯一路のネガティブイメージ払しょくの宣伝に懸命だ。

 全人代、政治協商会議の「両会」(国会に相当)は外国メディアにも取材機会が与えられ、中国政治を国際社会に喧伝する最大のステージだ。王毅外相は記者会見で、「一帯一路が“債務の罠”と呼ばれていることについてどう思うか」と尋ねる質問に対して、「絶対に債務の罠(陥穽)などではなく、人々に恵みをもたらす饅頭(餡餅)だ(陥穽と餡餅は中国語発音が似ている)」と反駁。「すでに123カ国と29の国際期間が一帯一路の協力文書に調印し、明確に支持と信任票を投じている」「ケニアのモンバサ―ナイロビ鉄道は5万人もの雇用を生み出し、GDP伸び率1.5ポイント増に貢献した世紀の大プロジェクトだった」などとその成果を強調した。そして、「建設的な意見はいつでも出してほしい、本当に、共にビジネスを行い、共に造り、共に分かち合いたいのだ。一帯一路は、古きシルクロードを新時代によみがえらせることができる。違う民族、違う国家が手を取り合って人類運命共同体に力強い動力を注入しよう」と、最近の王毅にしてはずいぶん殊勝な態度で呼びかけた。

 さらにカザフスタン記者から、一帯一路のプロジェクトの目的、やり方の不透明さについて質問されると王毅はこう訴えた。

「一帯一路は一切、お天道様の下で行われている。一国だけが独断でするのではなく、関係国が平等に参加し、ブラックボックスの中で操作することもなく、公開し、透明度を堅持している。・・・地元経済社会の発展のために、“雪中炭を送る”の影響力を発揮してきた。・・・一帯一路はグローバルな公共産品だから国際ルールを順守している。国際協力プラットフォームだから市場ルールに従って行われる。・・・我々は真心を込めて一帯一路への建言献策を歓迎し、一緒に一帯一路をうまく建設していきたい。・・・中国が恩恵を得るだけでなく、世界の幸福をつくりたいのだ」。なかなか言うじゃないか。

 このほか、中国メディアはこの機会に、一帯一路は防災減災に役立つ、一帯一路はエコなどと喧伝。先進国はエコや防災といったフレーズに弱い。

 また国家発展改革委員会副主任の寧吉浮ヘやはり全人代記者会見で、一帯一路についてこう語った。

「中国とフランスは、アジア・アフリカなどの一部国家で第三国市場での協力を行っている。シンガポールとも東南アジア国家で第三国市場協力を行い、日本ともタイで協力を開始した。協力内容は充実し続けて、一帯一路の協力メカニズム、モデル、プラットフォーム構築を推進し、イノベーションを続けている。一帯一路に対する人々のプロジェクト支持のパワーを一層大きくして、一帯一路建設を和平の道、繁栄の道、開放の道、エコの道、イノベーションの道、清廉潔白の道、文明の道としていく」

 日本やフランスなど先進国とも実は協力しているんだ、とことさら強調して、一帯一路のネガティブイメージ払しょくに懸命なのだ。特に日本の国際イメージといえば、まずエコで清潔。中国主導のAIIB(アジアインフラ投資銀行)には入っていないが、アジア開発銀行を主導する日本の参画はこの上ない信用の担保になろう。

中国の本当の狙いと日本の立ち位置
 だが、一帯一路の中国の本当の狙いというのは、かねてから主張されるように、中華圏を世界に打ち建てることである。習近平は何度も、世界がこれまで100年なかった未曾有の変局に直面しているということを強調し、「グローバルな統治システムが変革調整期の重要な時期を迎えており、中国は積極的に国際ルールの制定に参加し、グローバル統治の変革プロセスに参与し、推進し、リーダーシップをとるものとなるのだ」(「求是」2月16日号)と語っている。つまり、“米国スタンダード”であった世界の秩序がこれから再編成されるという局面で、中国こそが国際ルールメーカーになり、“中華秩序”で支配する世界を拡大するという野望を描いている。一帯一路はまさにその雛型であり、5Gもその野望に沿っての戦略なのだ。米国はその野望を阻むべく、同盟国の日本ともに「開かれたインド太平洋戦略」で一帯一路の拡大を包囲し、ファーウェイ締め出しによって5Gの国際基準を米国が手にしようとしている。

 これは「閉じられた監理社会」と「開かれた自由社会」、「管理市場経済」と「自由市場経済」、「国家資本主義的独裁」と「自由資本主義の民主」といったグローバルスターダードを争う価値観・文明の衝突、いやすでに“戦争”といえる。まさしく“冷戦”である。

 さて、一帯一路が本当に息を吹き返すのか、は4月に北京で開かれる第2回「一帯一路国際協力サミットフォーラム」に先進国首脳が何人参加するかが1つの判断材料だろう。それまで結論はあずけておく。

 気になるのが、日本の立ち位置である。日本は一応、開かれたインド太平洋戦略の発案者であるし、米国同盟国として対中包囲網の一角をなしているのだが、昨年秋の首相訪中で、「第三国市場での日中協力」という形で一帯一路への協力を表明してみたり、ちょっと何を考えているかよく分からない。イタリアの一帯一路参与の時と違って、米国から嫌みの1つも言われていないので、米国も了解済みの深謀遠慮があるのかもしれない。

 まさかと思うが、米中対立を緩和させる仲介役になろうとか考えているのか。あるいは、米中どちらがグローバルスタンダードを支配するか分からないので、両方に掛金をベットしておこう、という魂胆なのか。

 もしそうなら、もう一度基本から考え直してほしい。日本にとって中華秩序と米国式グローバルスタンダード、どちらがなじみやすいか。「閉じられた監理社会」と「開かれた自由社会」、どちらを理想としているか。100年なかった未曾有の変局に直面しつつあるとき、小金儲けや目先の平和・安寧を優先して、理想を見失うようでは日本の未来は危うい。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55753
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/680.html

[国際25] 「ボーイング737運航停止」に込めた習近平の底意 漂流する東アジアを撃つ(第4回)  
「ボーイング737運航停止」に込めた習近平の底意
漂流する東アジアを撃つ(第4回)
2019.3.14(木) 右田 早希
うん中国当局、ボーイング737MAX8型機に運航中止命令
ボーイング737MAX8型機(2016年7月12日撮影)。(c)ADRIAN DENNIS / AFP〔AFPBB News〕

(右田早希:ジャーナリスト)

 ボーイングは、中国では「波音」と表記する。「波の音」という漢字を、「ボーイン」と読ませ、エキゾチックで美しいイメージを、中国人に与えている。

 ところが、3月11日に中国政府が下した決定は、容赦なかった。この日の午前中、中国民間航空局が、緊急通知を発表したのだ。

世界に先駆けボーイングに「ダメ出し」
<本日18時以降、ボーイング社の「737MAX8型」航空機の商業運行を、一時的に停止する>

 3月10日、エチオピア航空の737MAX8型航空機が墜落し、乗客乗員157人全員が死亡したが、その中に8人の中国人が含まれていた。インドネシアのライオン・エアのこの型の航空機も、昨年10月29日に墜落しており、中国当局はもはや看過できないとして、異例の停止措置に踏み切ったのだ。

 これによって、ボーイング社の株価は、たちまち10%も暴落し、200億ドルが消えた。だが、皮肉なことに中国の航空各社の株価は、「安全性が確保された」として、小幅上昇したのだった。

 調べてみたら、中国が737MAX8型を購入したのは、2017年11月3日に、シアトルで中国国際航空に引き渡されたのが最初である。以来、中国の航空会社は、計96機も購入し、ボーイング社にとって「お得意様」となっている。内訳は、中国南方航空24機、中国国際航空15機、海南航空11機、上海航空11機、アモイ航空10機、山東航空7機、深圳航空5機、中国東方航空3機、祥鵬航空3機、奥凱航空2機、福州航空2機、昆明航空2機、九元航空1機である。

 アメリカと並ぶ航空大国の中国が、先陣を切って「ノー・ボーイング(737MAX8)」を宣言したことで、その後、インドネシア、シンガポール、オーストラリア、イギリス、ドイツ、フランス、ブラジル・・・と世界各国が続いたのだった。

 737MAX8型は、「1機100億円超」とも言われる、ボーイングが誇る最新鋭の航空機である。従来型よりも一回り大きい上に、燃費は従来型よりもよい。2017年5月に初めて納入され、世界の航空機業界では、737MAX8型を導入することが流行になっていた。墜落したエチオピア航空も、昨年11月に導入したばかりで、日本では今年1月に、ANAが導入を決めている。

 そんな737MAX8型に、中国が真っ先に「ダメ出し」をして、世界を方向づけた。そこがポイントである。

ボーイングにまつわる習近平「二つの追憶」
 それは、墜落したエチオピア航空に中国人が8人乗っていたからではなく、習近平主席の「怒り」が爆発したと見るべきだろう。習主席が決断しないと、中国でこのような「即時の重大決定」はできないからだ。

 その背景には、習近平主席の「二つの追憶」がある。

 一つは、いまから4年前に遡る。2015年9月23日午前中、習近平主席は、米ワシントン州シアトル郊外にあるボーイング本社を訪問した。当時のオバマ大統領とのホワイトハウスでの会談に臨む途中で、わざわざ立ち寄ったのだ。

 ボーイング社のコナーCEOらは、習近平夫妻を丁重に迎え、中国国際航空に引き渡す787型の操縦席に案内した。習近平主席がジェット機の操縦桿を握る様子は、中国中央テレビのその日のトップニュースになった。

 私もその映像を見たが、習主席はまるで新しいおもちゃを手にした子供のように、喜々としていた。だが、その周囲のコナーCEO以下、ボーイング社の幹部たちは、さらに大仰なスマイルを見せていた。それもそのはず、この日、ボーイング社と中国の航空各社は、習近平主席の面前で、計300機、総額380億ドルに上る超大型契約の覚書に調印したのである。

 もう一つの出来事は、2年前である。2017年11月8日から10日まで、トランプ大統領が北京を訪問した。この時、習近平政権は、故宮を貸し切りにするなどして、「国賓以上の待遇」でもてなした。そのトランプ訪中のメインイベントが、11月9日の昼に人民大会堂で開かれた「2535億ドルの超特大調印式」だった。

 2016年のアメリカの対中貿易赤字は、3470億ドルだった。そのうち、アメリカ企業が中国で生産し、アメリカに輸出しているものが約4割あった。そこで習近平政権は、残りの2000億ドル分を一気に解決するようにして、トランプ大統領に花を持たせたのである。

トランプの「裏切り」に遭った習近平
 その大型契約の主要なものの一つが、ボーイング社との航空機契約だった。中国航空機材集団がボーイング社から、B737型を260機、B787型とB777型を40機、計300機を購入したのである。合計370億ドルに上るビッグ・ディールだ。覚書の調印を壇上で見守ったトランプ大統領は、笑みがこぼれっぱなしで、「習主席とはとてもケミストリーが合う」とご機嫌だった。

米中、28兆円の巨額商談で合意 ボーイングから300機購入
〔AFPBB News〕2017年11月9日、中国・北京の人民大会堂で行われたビジネス会議に出席したトランプ大統領(左)と習近平主席。計28兆円もの大型商談合意でホクホクだったトランプ大統領だったが・・・。(c)AFP/FRED DUFOUR

 習近平主席からすれば、それ以降の米中関係は、「ここまでしてやったのに、いったいどういうことだ!?」というものだった。2018年に入ると、トランプ大統領は中国に対する態度を豹変させ、3月には米中貿易戦争を「宣戦布告」。7月、8月、9月と3回も中国に対する制裁関税をかけ、12月には中国経済を牽引する「BATH」(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)の一角であるファーウェイの孟晩舟副会長を、カナダで逮捕してしまった。周知のように、米中関係はこの一年の間に、「新冷戦」と囁かれるまでに悪化してしまった。

 そのため中国は、アメリカに対して密かに「報復」を考えていた。それは、アメリカ製品の不買と、中国市場からの追放である。その「追放リスト」の中で、最も「安い」ものはスタバのコーヒーやマックのハンバーガーなどで、最も「高い」ものが、ボーイング機だった。ボーイング社は、アメリカの軍需産業をも担っているので、ボーイング社が傾けば、アメリカの軍需産業にも大きな痛手となる。

 中国側が、そのような機会を虎視眈々と狙っていた矢先に、エチオピア航空墜落の惨事が起こったというわけだ。そこで中国は世界に先駆けて、「ボーイングは危険」とのレッテルを貼り、習近平主席のメンツを2度も潰したことに対して、「ちゃぶ台返し」をやってのけたのである。

 しかも、「安全性に疑問」ということを、あくまでも前面に出した。4000年の外交大国は、なかなか老獪である。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55760
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/681.html

[国際25] 東京大空襲:恐るべき戦争犯罪に手を染めた米国 B-29が作った逃げようのない火炎地獄、人々はなぜ生きながら焼かれたのか
東京大空襲:恐るべき戦争犯罪に手を染めた米国
B-29が作った逃げようのない火炎地獄、人々はなぜ生きながら焼かれたのか
2019.3.14(木) 渡邊 光太郎

http://jbpress.ismedia.jp/mwimgs/8/4/600/img_843245e2c2451fa7da2485f7ca89c879247259.jpg
日本空襲を準備するB-29。飛行場を埋め尽くすほど大量のB-29が駐機している。(出所:米空軍博物館)

 3月10日は東京大空襲の日である。約300機の「B-29」が、現在の台東区、墨田区、中央区、江東区にあたる地域を空爆し、一晩で約10万人が犠牲になったとされる。

 当時、この地域は日本最大であるにとどまらず、世界でも有数の人口密集地であった。さらに、密集して建っていたのは木造家屋だった。

 米軍は関東大震災を研究し、この地域で大火災が起きれば民間人に恐るべき人的被害が発生することを知り、それを狙って実行したのである。

 実際、日本家屋を模した家を建て、焼夷弾の実験を行っている。勝てば官軍で不問となっているが、立派な戦争犯罪である。

 他の大都市の空襲や、東京を狙った他の空襲でも犠牲者は数千人レベルであり、原爆の被害を除いては10万人という犠牲者数は突出していた。米軍が狙った最大限の破壊が実現してしまったのである。

悪条件が重なり犠牲者が増えた
 東京大空襲の犠牲者が突出して多かった理由は、米軍の恐るべき狙いが目論みどおりに実現してしまったうえ、日本側に悪条件が重なっていたことだった。

 実は、東京大空襲以前の空襲は必ずしもうまくいっていなかった。また、すでに住宅地も空爆されていたが、あくまでも主目標は軍需工場であり、一般市民の住む住宅地を焼き払うことを主眼にしていなかった。

 サイパン島の基地が完成し日本の主要部分が攻撃圏内に入った後、最初に爆撃目標となったのは、航空エンジン工場である。

 最初に三鷹にあった中島飛行機武蔵製作所が空爆され、次が名古屋の三菱発動機であった。その後も明石の川崎、太田の中島、名古屋の三菱と航空産業を狙って爆撃していった。

 当初、編隊を組んだB-29が高度1万メートルを飛行し、軍需工場に精密に狙いを定めて爆撃するという方法をとった。しかし、爆弾を外しまくり、日本の航空産業は軍用機を作り続けた。

 空爆する時、日本の1万メートル上空を吹き荒れるジェット気流により機体が安定せず、照準器も強過ぎる風に対応できなかった。

 編隊を組む場合、他の飛行機に合わせるための操縦が必要になり、燃料を余計に消費する。また、当時の飛行機では成層圏の飛行は燃料消費が大きかった(ジェット機では高空の方が、空気抵抗が小さく燃費がよい)。

 燃料と爆弾はトレードオフになるため、最大9トンの爆弾を積むことができるはずのB-29だったが、初期の日本空襲では2トン強しか積めなかった。

 また、結論としては、日本はB-29を防げず焼野原にされたのだが、日本軍も少数ながらB-29を討ち取っていた。

 航空産業は潰されていないし、爆弾が落ちてきても被害は爆弾が落ちた周囲に限定されているし、日比谷公園には撃墜したB-29が晒し者になっているし、自分の住んでいる町では日常生活は続いている。

 既に市民にも犠牲者は出ていたが、東京大空襲の前はB-29の最大の破壊力はまだ発揮されておらず、日本側は空襲の本当の恐ろしさを体感するに至っていなかった。

 これも逃げ遅れなどの要因になり、被害の拡大をもたらしたことは想像に難くない。

 しかし、3月10日の空襲では、米軍は様々な新機軸を打ち出してきた。

 東京大空襲はこれまでの空襲と全く違うものだったのだ。以前のB-29は軍需工場を狙っていたが、3月10日の空襲では標的は都市全体だった。

 そして、軍需工場を爆弾の爆発力で破壊するのでなく、焼夷弾で大火災を起こすことで木造家屋の多い燃えやすい都市を丸ごと焼き払うことが計画された。

 1945年3月10日に多くの人々の命を奪った火炎地獄は東京大空襲で初登場だったのだ。

 軍需工場と違い、都市全体であればターゲットが大きいので外すことはない。だいたいの位置で爆弾を落とせばよい。

 より多くの焼夷弾を積むため、燃料を消費する編隊飛行と高空への上昇をやめ、必要な燃料を減らした。さらに防御用の機関銃も降ろした。結果、3倍近い重量の焼夷弾を積むことができた。

 こうした工夫により、より恐ろしい兵器をより大量に積んだB-29が襲ってくることになった。同じB-29でもこれまでよりも破壊力が強化されていたのだ。

 編隊飛行をやめていたことも日本側に災いした。

 大規模な編隊であれば目立つし何をやろうとしているか明らかであるが、個々のB-29がバラバラの方向から飛んできた場合、行動を捉えにくい。これが空襲警報の遅れにつながった。

 空襲警報が出た時には、すでに空襲の火災が始まっていた。空襲は深夜だった。空襲警報を聞いて起き上がった時にはすでに周囲は火の海だったという場合も多かったことだろう。

 当日の気象条件も悪かった。当日は強い北風が吹いていたという。火災の広がりは早かった。それだけでなく、レーダーは吹き飛ばされないように格納され、戦闘機も強風で飛び上がれなかった。日本側の迎撃もやりにくかったのだ。

 迎撃が難しいなか、これまでよりも破壊力を強化したB-29が火災に弱い下町の木造家屋に焼夷弾を大量に投下した。強い風も吹いていた。

 これで瞬く間に火炎地獄になった。火災は上昇気流を巻き起こし、さらに風が強くなる。炎の突風が吹き荒れる状態になった。

 消防隊は出動したが、消防車が火に巻かれ立往生したり、消防署が焼け落ちて消防士が全滅したりして、すぐに消防は機能しなくなった。

 放水を始めても、あまりに火災が強く、酸素を消費したので、酸素不足で消防用ポンプのエンジンが止まってしまったこともあったそうだ。

 空襲警報が遅れたから人々が逃げるのも遅れたが、さらにその場にとどまり火を消すことが命令されていたため、さらに事態を悪化させた。

 空襲された地域は広大だったことも逃げるのを困難にした。火災は南北では墨田区の北端から東京湾まで、東西では日本橋や上野から荒川まで広がった。仮に空襲圏外に出ようとしても、火の中を何キロも進むのは無理である。

被災者の生死は運次第
 路上でも火に巻かれるような状態の中、逃げるにしてもどこを向いても火である。どうすればよかったのか。

 多くの人々はコンクリートの建物や川を目指した。コンクリートの建物は木造の建物よりも燃えにくいし、耐熱性もありそうだ。川は防火壁として機能するだろうし、灼熱地獄から逃れるために川に飛び込みたいという欲求も加わる。

 しかし、東京大空襲の火炎地獄は普通の火災とはレベルが違った。窓が割れれば、そこから火炎が侵入し、コンクリートの建物も内部が焼き尽くされた。

 また、熱気で建物ごと蒸し焼きになってしまうこともあった。

 旧日本橋区の避難所と指定されていた明治座はコンクリートの建物であったが、多数の犠牲者を出すことになった。

 確かに荒川を超えて逃げることができた場合は助かったのだろう。しかし、被害地帯の中心を流れる隅田川に向かった人々には悲劇が待ち受けていた。

 川の向こう側へ逃げれば助かると思うのは自然なことである。隅田川にかかる橋には避難者が殺到した。しかし、東京大空襲では隅田川の両側が空襲されていたので、どちらに渡ろうとも火から逃れることができなかった。

 隅田川にかかる言問橋では、台東区側から逃げてきた人々の流れと、墨田区側から逃げてきた人々の流れが橋の上でぶつかり、進退窮まる状態となった。

 そこに焼夷弾が落ちてきた。人々が持っていた家財だけでなく人そのものにも着火した。文字通り筆舌に尽くしがたい状況になった。

 10メートル近い高さの橋の上から隅田川に飛び込んでも助からなかった。地上は火炎地獄だったが、寒い日が続いた3月の隅田川の水温は摂氏2度。多くの人が低体温症で命を落とした。

 皮肉なことに言問橋の墨田区側、旧本所区向島の河岸地域は焼け残った場所も多かった。墨田区側の避難民に関しては、言問橋に突っ込まず、河岸に留まっていれば助かった可能性が高い。

 実は、東京大空襲の火炎地獄の中でも、ぽつぽつと焼け残った地域があった。そうした場所に逃げ込んでいれば、結果論から言えば助かった。

 例えば、墨田区京島は非常に家屋が入り組んだ地域で、火災でここに逃げ込もうとは思わない場所であるが、周囲はすべて燃えたにもかかわらずこの地区は火災を逃れた。

 しかし、後から見れば焼け残る地域にいればよいと分かるが、空襲下ではどこに焼夷弾が降ってくるかも、火災がどのように広がるかもわからない。

 どこへ向かって逃げればいいか、どこまで逃げれば空襲されている地区から脱出できるのか知る術はない。

 また、どの建物であれば、火災に耐えられるかなど分かりようもない。1945年3月10日にあの場所にいた人々にとっては、生死はまったくの運次第だったのだ。恐ろしいことである。

 もう燃えるものがなくなったのか、火災は午前8時頃にはほぼ鎮火していた。

 昨日まで日本最大の人口密集地で家が立ち並んでいた墨田区、江東区、台東区、中央区北部の大部分が焼け野原になっていた。道には黒こげの遺体で、川は水死体で埋め尽くされていた。

http://jbpress.ismedia.jp/mwimgs/b/9/500/img_b9230825db9c535060e8f34a381b6196154614.jpg

隅田川西岸の東京大空襲被害地域 白く見える部分が焼き尽くされた部分である。右側に見える川が隅田川。(出所:米議会図書館)
 3月10日以降、都市を焼き払うことに味を占めた米軍は、名古屋、大阪、神戸と大都市を次々に焼き払い、大都市を焼き終わると、地方都市を焼き尽くしていった。

 東京大空襲ほどの被害規模にはならなかったものの、似たような地獄絵図が日本中に水平展開されていった。そして、8月15日の敗戦時、日本中が焼野原になっていた。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55732
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/682.html

[不安と不健康18] 興奮してもリラックス、コーヒーの作用を解明する カフェインとの賢いつきあい方(前篇)  
興奮してもリラックス、コーヒーの作用を解明する
カフェインとの賢いつきあい方(前篇)
2019.3.15(金) 漆原 次郎
コーヒー豆などにはカフェインが含まれている。豆を炒った粉を煮出したコーヒーからも、私たち人はカフェインの作用を受ける。
 眠気を覚ましたいときや、仕事で気合いを入れたいとき、コーヒーを飲む。コーヒーに含まれる「カフェイン」の作用を期待してのことだ。たしかに、コーヒーを飲んだあとは、気分が高まるような気がしないでもない。

 全日本コーヒー協会が行った「コーヒーの需要動向に関する基本調査」によると、日本における1週間のコーヒー飲用杯数は、2016年で平均11.09杯という。カフェインは、コーヒーのほか、緑茶や紅茶などの各種お茶、またエナジードリンクなどにも含まれている。量の多少はあれ、私たちは日常的にカフェインを摂取しているのだ。

 今回は、かくも身近な「カフェイン」について学び直したい。体への作用とはどういったものだろうか。「眠気覚まし」や「興奮」の効果はよく言われているが、他に言われる「リラックス」や「酔い覚まし」などの効果はあるのだろうか。

 カフェインをめぐる数々の疑問を、専門家に投げかけてみた。応じてくれたのは、元東京福祉大学教授の栗原久氏。幅広くカフェインの作用について研究し、『カフェインの科学』という著書も出している。

 前篇では栗原氏に、カフェインとはどんな物質で、どんな作用があるかを聞いてみた。乱用薬物などとは一線を画す「効き目のほどよさ」が特徴のひとつといえそうだ。後篇ではより具体的に、カフェインとの賢いつきあい方についてアドバイスを受けることにする。

人類、コーヒーの興奮作用に気づく
栗原久氏(くりばら・ひさし)氏。元東京福祉大学教授。医学博士。群馬大学大学院工学研究科応用化学専攻修士課程修了後、同大学医学部にて助手(行動医学研究施設行動分析学部門)。途中、米国ニュージャージー州立ラトガース大学心理学教室、またテキサス大学ヘルスサイエンスセンター・サンアントニオ校薬理学教室への留学を経て、1997年、群馬大学医学部助教授。2006年より東京福祉大学教授。2018年に定年退職。カフェイン研究は、1980年代に起きた咳止め薬「ブロン」乱用問題を機に本格化。著書に『カフェインの科学 コーヒー、茶、チョコレートの薬理作用』(学会出版センター刊)など。出身・在住地である群馬県への愛が深く、NPO赤城自然塾による「赤城山検定」策定などにも従事。
――カフェインとは、どのような物質でしょうか。

栗原久氏(以下、敬称略) カフェインは「アルカロイド」とよばれる、窒素の原子(N)を含み、苦みを呈する物質の一種です。コーヒーの果実、また茶葉などに含まれていて、抽出した粉末は、舐められないほどの苦味を持ちます。

――コーヒーノキなどの植物は、そもそもなぜカフェインを持っているのでしょうか。

栗原 苦みを持っていれば動物、特に昆虫に食べられにくくなります。カフェインなどの苦み成分を持つ植物が生き残り、いまに至ったわけです。

――動物が普通は避けるカフェインを、人類は積極的に摂取しているわけですか。

栗原 ええ。もともと人類は、「コーヒーチェリー」とよばれるコーヒーの果肉を食べることから、カフェイン摂取を始めたものと考えられます。

 コーヒーチェリーは熟すと赤くなり、果糖が含まれるため甘くなります。人類はこの甘い果肉を食料にしたのでしょう。同時に、この果肉を食べると気分が興奮し、身体のパフォーマンスが高まるということにも気づいたのです。

 人類は、ほぼ体毛をもたず、発汗で体温調節できることから、長時間にわたり獲物を追いかけることができます。この得意技をさらに生かすうえで、カフェイン摂取は役立ったわけです。

 ほかに、チャノキの葉からも、興奮し、パフォーマンスが高まる効果を見出していたものと思います。

コーヒーノキの果実のうち、成熟して赤紅色になったものは「コーヒーチェリー」とよばれる。果肉の中には、2個の種子が包まれており、それが「コーヒー豆」。
――果肉の中の種子であるコーヒー豆を、わざわざ炒って煮出して「コーヒーとして飲む」という習慣は、どう生じたのでしょう。

栗原 いくつか仮説があります。

 ひとつは、囲炉裏などの火があるところで果肉を食べ、種をペッと捨てたところ、種が焦げて芳ばしい香りが上がり、お湯で煮てみたら美味しく、健胃やパフォーマンス向上の効果も感じられた。それにより焙煎が始まったというものです。

 もうひとつ、果肉を貯蔵していた倉庫が火事になり、焦げ跡から芳香がしたため、豆を焙煎することを発見したという説もあります。

 果肉を食べることは何千年以上も続いてきたものと考えられますが、飲むコーヒーの利用は12世紀ごろから広まったとされます。コーヒーを飲むようにもなったのは、人類にとっての重要な転機といえます。

パフォーマンス向上、気管支拡張、強心、血管収縮・拡張、利尿・・・
――カフェインは、体にどのように作用するのでしょうか。

栗原 まず、いまお話ししたようにパフォーマンスの向上があります。眠気が取れて目が覚めたり、疲労感が軽くなったりというものです。これらは、中枢神経系(脳)に対する作用としてくくることができます。

 また、気管支を拡張させる作用もあります。気管支喘息などにカフェイン摂取は有効とされています。

 さらに、心臓を刺激して機能を活発にさせるといった強心の作用もあります。

 薬理学的に有効とされる主なものは、これら3つです。

――他の作用はいかがでしょうか。

栗原 血管を収縮させたり拡張させたりといった作用もあります。脳の血管に対しては、収縮させるほうに働きます。脳の血管が広がってズキンズキンと感じるような偏頭痛に対しては、それを抑えることになるので有効です。

 逆に、手の先などの末梢血管には、拡張させるほうに働きます。末梢の血管が広がることで、血行はよくなります。

――利尿作用についても実感するのですが。

栗原 それもあります。カフェインは心臓の働きを活発にさせ、末梢血管を拡張させもするので、腎臓を通過する血液の量が増えます。腎臓でろ過される水分の量が増えるため、それが利尿作用として現れるわけです。

 特に寒い時期には、もともと交感神経が興奮状態にあって、心臓の働きは活発で血流が増えるなどしています。そこにカフェインの作用が加わるため、尿が出やすくなります。逆に暑い時期は、汗をかいて脱水傾向になっているため、あまり影響はありません。

「恐怖を打ち消す」というリラックス効果
――巷でいわれているカフェインの作用や効果についてもお聞きします。小説などで「コーヒーを飲んで体を温めて」という表現が見られますが、こうした効果はあるのでしょうか。

栗原 多少はあるかもしれませんが、それほどではありません。たしかにカフェインには代謝を高める作用もあり、熱産生は増します。けれども、皮膚の辺りの末梢血管が広がることで、熱を逃してもいます。このふたつはほとんど打ち消しあっていることになります。

――「コーヒーを飲んでリラックスして」という表現も小説などで見かけます。脳を興奮させる作用と相反する気がしますが・・・。

栗原 たしかに矛盾しているように思われるかもしれませんね。

 けれども、「リラックス」という状態を「不安や恐怖を打ち消す」状態と考えると、そう間違ってはいません。カフェインにはそうした効果があるからです。

 動物を使った研究を紹介すると、空腹のネズミが餌を取ると電気刺激を与えられる実験があります。餌を得る「快」と、電気刺激を受ける「不快」の程度が、同じくらいになる状況を作ります。そうした中でカフェインを与えられたネズミは、餌を取る率が上がったのです。恐怖などを打ち消しているものといえます。

 リラックス効果についてはもうひとつ、コーヒーやお茶には香り成分もあります。こうした香りも、巷で言われているリラックス効果と関係していると考えられます。

――運動競技に臨む人にとってのカフェイン摂取も効果的でしょうか。

栗原 そういえます。瞬発力に関係する運動と、持久力に関係する運動のどちらでもパフォーマンスを向上させます。

 瞬発系については、反応が早くなります。たとえば、相撲の立ち合いのような、ほんの一瞬の素早さを必要とするような場面で、カフェインを摂取しておくことは有効といえます。

 持久系についても、脳が興奮するため、「疲れたからこれ以上は危険だ。もう運動するな」という脳からのブレーキがかかりにくくなります。結果、パフォーマンス向上につながるわけです。実際、長距離走やトライアスロンの選手たちの多くは給水のとき、糖分の他にカフェインも入ったドリンクを補給しています。

乱用薬物とコーヒーの違いとは
――カフェイン摂取の作用に、個人差はあるのでしょうか。

栗原 あります。カフェインは肝臓で代謝され、腎臓で排泄されるため、まず、これらに障害のある人では代謝や排泄が遅れ、相対的にカフェインの作用が強くなります。

 また、男性より女性のほうが代謝・排泄は少し遅いとされます。特に妊娠中の方は遅くなります。本人だけでなく、胎盤で通じている胎児への影響も考えると、妊婦さんは、脳に作用するような物質の摂取を控えたほうがよいでしょう。

 子どもも原則的には、強くカフェインを含むようなものは摂らないほうがよいといえます。脳の成長は18〜20歳でピークを迎えますが、その成長途上にある子どもも、脳を興奮させる物質を摂ると、感度が高まってしまう増感現象をきたすおそれがあります。

――個人を考えても、カフェインが効くときと効かないときがある気がします。

栗原 それもあります。自分がどういう状態にあるかで変わってくるのです。

 眠くて仕方ないようなときは、カフェインを摂って多少は脳を興奮させたとしても、眠気が勝って寝てしまいます。一方、眠気がほどほどのときは、カフェインの作用が上回って、眠らないで済む、あるいは眠れなくなる、といったことになります。

 私たちの体には日周リズムもあります。起床後の朝や、体温のピークを迎える午後3時過ぎは、カフェインを摂取すると、脳が興奮するなどの効き目は強くなります。

――脳の興奮作用などはあっても、覚せい剤などと違って、カフェインは日常的に摂ってよいことになっています。作用がさほど強くないからでしょうか。

栗原 そうです。覚せい剤や麻薬などの乱用薬物と、コーヒーやお茶などの嗜好品との違いは、「その物質なしにいられないかどうか」です。乱用薬物は、自分の体が壊れてでも欲してしまうものですが、嗜好品はそうはなりません。コーヒーを飲みたくて、コーヒーを盗むような人はまずいませんよね。

 嗜好品に使われるカフェインのようなものは、長い人類の歴史においてずっと利用されてきたものです。それは、人びとの人生にとってプラスになるからこそ。一時的に何かよからぬ問題が起きたとしても、全否定するものではないと思います。

(後篇へつづく)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55734
http://www.asyura2.com/16/health18/msg/728.html

[経世済民131] デジタル革命は雇用と働き方をどう変えるのか? 日本の活路を開くデジタル革命(4) 
デジタル革命は雇用と働き方をどう変えるのか?
日本の活路を開くデジタル革命(4)
2019.3.15(金) 高野 研一
(高野 研一:コーン・フェリー日本共同代表)


◎連載「日本の活路を開くデジタル革命」バックナンバー
(1)「産業革命に追いついた日本、デジタル革命でも再び」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55315
(2)「日本企業が『デジタル破壊』から身を守る唯一の方法」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55463
(3)「デジタル革命が導くビジネスモデルの7つの方向性」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55611

 日本企業がデジタル革命に適応して生き残っていくために、いよいよ終身雇用の価値観を変えるべき時が来たのではないだろうか。

 産業革命とは、エンジンやモーターの登場により、生産物流システムが根底から変わり、巨大工場や大企業が台頭した時代であったということを連載の第1回で述べた。日本企業がそこで大成功できた理由の1つに、終身雇用の価値観があったことは間違いないだろう。

 巨大工場を成り立たせようとすると、大勢の人を採用し、教育し、定着させる必要がある。終身雇用制は、職の安定を提供することで、企業への帰属意識を高め、お互いに協力してライバル企業に打ち勝とうとするモチベーションを生み出すことに成功した。それが戦後の復興と相まって、日本の驚異的な経済成長を可能にしたといえよう。

 ところが、経済成長が止まると、今度は終身雇用制の弊害が目立つようになってきた。人が退職しないため、管理職ポストが空かず、昇進昇格のスピードが遅くなったり、雇用削減を伴うような事業構造改革がやりにくくなってきている。その結果、有能な学生は、将来性の見えない大企業に就職することを敬遠するようになっている。

 そこにいま、デジタル革命が起こり、既存のバリューチェーンのスクラップ&ビルドが始まったのだ。本来であれば、価値を生みにくくなった機能は自らスクラップし、新たに価値を生む機能の獲得に動かなければならない。しかし、人の入替を伴うようなスクラップ&ビルドには、終身雇用制の下では誰も前向きになれない。

 また、デジタル革命の時代には、大企業に代わってプラットフォーマーが台頭し、その周りにグローバルなエコシステムが形成されていくことは連載の第2回で述べたとおりだ。エコシステムとは「勝ち組企業連合軍」のことを指す。競争を勝ち抜いた企業はエコシステムの中に留まり続けるが、敗れた企業はエコシステムから退出していく。そうして、プラットフォーム自体が絶えず必要な機能、不要な機能をスクラップ&ビルドし続け、自己革新していくことができるのだ。

 そこでは、淘汰された企業から人が流出し、勝ち抜いた企業へと移っていく。企業も雇用も柔軟に変わりうることが前提条件になっていく。そうした環境の中で、日本だけ終身雇用制を続けていたらどうなるだろうか。おそらく世の中の進化のスピードについていけず、取り残されてしまうだろう。

雇用者と従業員が変えるべき価値観
 そこで、今こそ終身雇用制を捨てることが求められているといえる。

 幸いなことに、いまは人手不足の環境だ。こうしたタイミングに、正社員の雇用に関する既得権を緩和し、整理解雇の金銭解決を容認していく必要があるだろう。雇用の保障を緩和するからといって、怖れることはない。日本の外に出てみれば、むしろそれが当たり前なのだ。

 貢献している社員であれば、企業は手放そうとはしないし、給与を上げてでも引き留めようとすることすらある。仮に職を失ったとしても、1〜3年分のサラリーを経済的補償として得られれば、その間に自分に合った仕事を探したり、新たなスキルを習得したりできるのだ。

 転職によって給与が下がってしまうことも当初は出てくるだろう。しかし多くの場合、それは年功的に上がった給与が、本来の職務に見合った水準まで調整されるという話であり、これまでがもらいすぎだったと見ることも必要だ。むしろ、正社員だけが既得権益に守られ、非正社員は同じ仕事をしていても守られない状態が、公平・公正といえるのかどうかを考えてみる必要がある。

 もちろん、雇用慣行を変えるためには、我々の価値観も大きく変えなければならない。雇用する側は、「会社のため」という理由で滅私奉公を求めることはできなくなる。人が退職していくのは、「帰属意識が低い」とか「金の亡者」だからではなく、「自社に魅力が足りなかった」ということになる。このため、有能な人材を惹きつけようとすれば、年功にかかわらず昇進昇格の機会を提供しなければならないし、そのために別の人にポストを外れてもらうことも、「当たり前だ」と受け止めていく必要があるのだ。

 それができると、新たな価値観がもつメリットも見えるようになっていく。社員はもはや家族と離れて泣く泣く単身赴任をしなくてもよくなる。転勤よりも転職を選ぶことが可能になるからだ。あるいは、親の介護が必要な人や妊婦が、周りの目を気にしながら休暇をとる必要もなくなる。自分の望む働き方に合わせて、働く会社を選べばいいのだ。

働きたい時だけ会社と「契約」
 終身雇用の世界では、中途入社組は転校してきた生徒のように、どこか肩身の狭い思いを強いられる。しかし、雇用が流動的な世界では、皆が様々な企業で働いた経験を持っており、転職もクラス替えのようなものに感じられるようになる。

 とくにデジタル革命の時代においては、大きな事業を分業体制で実行してきた人たちよりも、小さくてもいいから、1つの事業を成長させた人の方が市場価値をもつようになっていくだろう。このため、大企業に終身雇用で勤めるよりも、ベンチャー企業を渡り歩いた方が、ビジネスパースンとしての価値を高められるチャンスははるかに大きくなる。

 また、連載第2回では、グローバルなエコシステムの中で、欧米人、ユダヤ人、インド人、中国人などの起業家たちと、仲間になって動ける人材が求められることについて述べた。日本の大企業の中にいるだけでは、こうした経験はなかなか積めない。むしろ、世界の様々な企業に就職し、グローバルでもトップクラスの外国人たちと接する経験が重要になっていくだろう。

 さらに、連載第3回では、デジタル技術の活用により、今後、クラウドソーシングが普及していくことについて述べた。これは、仕事に対する需要と供給をネットワークを介してマッチングするもので、「運転」という仕事をエリアごとにリアルタイムでマッチングするUber(ウーバー)のビジネスモデルが典型例といえる。これによって、多くの仕事が「雇用」ではなく、「契約」という形で仲介されるようになる。そうすると、自分の働きたい時だけネットワークに登録し、コンピュータに仕事を見つけてもらうことも可能になるだろう。これこそ究極の働き方改革だ。

会社に依存しないで老後に備えるには?
 こうした新しい環境の中で、我々はどのようなことに気をつけて生きていくべきなのだろうか。

 まず、会社に依存しないことが大切だ。人生100年時代においては、会社の寿命よりも、ビジネスパーソンとしての寿命の方が長くなるだろう。このため、自分のキャリアは自分で切り拓いていく必要がある。将来価値が下がるかもしれないスキルに依存することなく、常に新たなスキルを習得する習慣が必要になる。

 そのためには、副業やボランティアの機会を利用することも重要だ。日本においては、そうはいっても終身雇用制から一気に転換するのは容易ではない。そこで、会社が副業やボランティアを認め、社員はそれを利用して新たなスキルの獲得に務めることも重要になる。

 また、自分の評判を気にすることが重要になるだろう。クラウドソーシングで仕事を探す時代になると、ウーバーで乗客とドライバーがお互いを評価し合うように、個人の評価が記録として残っていくようになる。インターネットを通じて自分の評判が誰からも見られるようになっていくのだ。評判が悪いと、就職や結婚、借入れなどの際に、AIに自動的に弾かれてしまうかもしれない。だからといって怖れる必要もない。職場の上司から評価されるよりも、お客さんから評価されたいと思う人は多いのではないだろうか。

 稼げる時に稼いでおくことも大切だろう。いい就業先が見つかるかどうかは、これまでは卒業前の就職活動に拠っていたが、これからは常時、新たな仕事の紹介が舞い込んでくる時代になる。ベンチャー企業などで未公開株をもらえれば、上場時のキャピタルゲインで一攫千金を掴めることもある。その一方で、不況や企業買収などで、突然仕事がなくなることもある。

 最後に、稼いだお金は株に投資して、老後に備えることも必要だろう。デジタル革命期においては、産業革命の時のように、新興企業から爆発的な富が生まれる。そこに投資することで、人生100年時代を生きるための資金を確保することが重要だ。株価は数カ月単位で見ると上がったり下がったりするが、10年単位で見ると、分散投資さえしていれば、経済が破綻でもしない限り上がることが多い。長寿時代だからこそ、この10年単位の時間を利用して、株に稼いでもらう必要がある。これまでは「お金がないから株は買えない」というのが常識だったが、これからは「お金がないからこそ、株で稼がなければならない」時代になっていくのだ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55738
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/515.html

[医療崩壊5] 「透析停止」と病状の死角  問われる制度整備と「人間の尊厳」 
「透析停止」と病状の死角 
問われる制度整備と「人間の尊厳」
2019.3.15(金) 伊東 乾
人工透析受けた6人が死亡、12人が救急搬送 ベトナムの国立病院
ベトナム北部ホアビンの病院の集中治療室で人工透析を受けている患者を見守る患者の親族ら(右の2人、2017年5月29日撮影)。(c)AFP/Vietnam News Agency 〔AFPBB News〕

 東京都福生市の公立病院で、腎臓病の透析治療を受けていた患者(女性、享年44)が、人工透析治療の「停止」を医師に提案されこれを了承、数日後に死亡していたことが毎日新聞の取材によって明らかになり、多くの論議を呼んでいます。

 当該の病院には東京都福祉保健局の立入検査が行われ、別に日本透析医学会の調査も入りました。

 委員会メンバーで医師の秋野公造参議院議員は「医師が延命治療を中止し、患者が死亡した場合、殺人や自殺に関与した罪に問われる可能性がある」と指摘し、法的な整理が必要との考えを示してもいます。

 日本では透析治療の停止は、病状の終末期のみ認められるガイドラインが透析医学会により採用されています。

 しかし、この女性患者の場合、もし透析治療を継続していたなら、余命が4年程度あったと報道されており、正しいとすれば、およそ「終末期」には当たらないことになります。

 そうであるなら、これは一種の「尊厳死」の問題にもなり得ます。医療現場の個別判断だけでは済まない、倫理的な問題を含む可能性があります。

 一連の行為について帝京大学准教授で生命倫理を専門とする冲永隆子さんの

 「死の選択肢を示し、結果的に(死へと)誘導」

 「患者は、よく理解しないまま不利益を被る選択をすることがある」

 「医師の独善」

 といったコメントが報道されました。沖永さんは医師ではありませんが、医療従事者からも 「JCHO千葉病院」の室谷典義院長が、公立福生病院の件について「医師による身勝手な考えの押しつけで、医療ではない」と手厳しい批判がなされました。

 これらに対して、福生病院側からは

 「当院で悪意や手抜きや医療過誤があった事実はない」とするコメントが発表されました。

 一般に「倫理」の問題は、善悪を判断する価値観そのものの選択が関係しますので、万人の納得する結論は得られにくいものです。

 私たちの研究室では「低線量被曝のモラル」「自動運転車技術の倫理」「視聴覚メディア表現の倫理」など、この21年来、様々な倫理の問題を考えてきました。

 今回の事態も明らかに厳しく倫理を問う必要があります。しかしそこで決着がつきにくいこともあらかじめ想定されるところです。

 シロクロのつけにくい問題であればあるほどケジメ(しばしば、制度設計)が求められることになります。

 早い話がルール、法律ないしはそれに代わるガイドラインを適切に定めることが再発防止を含め、最も重要、かつ有効になります。

地震と非常時電源
 私が長年、近しくご指導をいただいている黒川清先生は腎臓内科のご専門で、日本に今日の透析治療を輸入する際、頭脳流出していた米国から「逆輸入」された経緯があります。

 黒川先生が、こんな話をされたことがあります。

 すでに20年以上前のことになりますが、ある地方で大地震があり、多くの人が避難所の生活を余儀なくされてしまいました。

 被災者はひとまず安全な学校の体育館などに場所に集まります。ライフラインが寸断されてしまい、水や火力なども配給に頼らざるを得ません。

 そんな被災者の中に、透析治療を受けていた患者さんも含まれていました。

 透析設備は安定した電源が必要で、物流網も適切に回っていなければ稼働させることができません。

 結果的に透析を受けられなくなった患者さんは、尿毒症の症状に苦しみ、命を落とされた方もあったけれど、そうした数字はあまり表に出ることはなかった。

 しかし、非常時電源の重要性、必要性を関係する誰もが認識するところとなった・・・。

 透析先進国だった米国には、こうした「地震に備えての透析電源設備」といった考え方はなかったので・・・ざっと、こんなアウトラインだったと思います。

 黒川先生は、日本学術会議会長などを歴任されたあと、2011年の東日本大震災後は、国会の事故調査委員会の委員長として重責を担われました。

 その人選の背後に実は、大規模災害時「透析治療のための電源確保」という課題に取り組まれていたことがありました。

 一度、透析治療を開始すると、それをやめることはできません。最も切実な一断面としてご紹介し、福生の問題を改めて考えてみたいと思います。

インフォームド・コンセントの落とし穴
 当該の患者さんは腎臓病を罹患後、約5年にわたって続けてきた透析治療で、血液浄化のために腕に作った血管の分路「シャント」が使えなくなってしまい、通院していた透析診療所が直ちに紹介状を準備、それを持ってカテーテルの挿入口を作ってもらうべく福生病院を訪れました。

 腎臓病の治療そのものは内科の領分ですが、透析ができるように通路を作る、患者さんの体にメスを入れるのは外科の領分です。

 つまり、透析治療という20世紀後半のテクノロジーの産物は、19世紀以来の縦割り診療科目の区分を超えたものであることに注意しましょう。

 そこで外科医から提示されたのが

(1)首周辺に管=カテーテルを挿入して透析治療を続ける
(2)挿管などの手術は行わず、透析治療を中止する

 という2つの選択肢でした。

 別の病院を紹介され、そこでこのような選択肢を提示されなければ、全く違う状況であったことが考えられます。

 また、本当にこれ以外の選択肢がなかったのか、という点も大いに問われるところでしょう。

 今日の医療では「インフォームド・コンセント」が徹底されているので、治療法の変更や停止には本人の同意、また「同意書」などが非常に重要な意味を持ちます。

 福生の病院のケースでも、複数の治療法が提示され、その中から本人が選択した中に「透析の停止」という選択肢があった。

 実際、そのような選択肢を示した外科医(50)や腎臓内科医(55)は「透析治療を受けない権利を患者に認めるべきだ」と述べています。

 新たな挿管で透析を行うためには、外科の施術が必要不可欠である。だが、昨年8月9日、外科医からは「それをしない」という選択肢も提示され、「おそらく2週間ぐらいで死を迎えます」という説明があったとされます。

 実はこの部分は後でいろいろな意味で重要になります。というのも8月9日の、このインフォームド・コンセントと「同意書」が、その後の事態を著しく非人間的なものにしていると思われるからです。

「変化する主体性」に応じた
人間の尊厳を重視する制度の確立を!
 主として3月12日までの各種報道から得られる情報を元に、この間の経緯を確認してみましょう。

 女性患者さんの夫(51)によると、女性は1999年、自殺の恐れがある「抑うつ性神経症」と診断されていたとのことです。

 今から20年前、まだ24〜25歳頃のことで、自殺未遂が3回、いわゆる希死念慮があったようです。

 女性患者さんは、透析に使う通路である「シャント」が「使えなくなったら透析はやめようと思っていた」とのことで、8月9日、いったんは透析中止を決めて意思確認書に署名、外科医は看護師と夫を呼んで再度意思確認。夫は迷いながらも中止を承諾。

 この時点で女性は「今は症状がなく、家に帰りたい」と希望し、診療所に戻ったというのですが、ここは大いに注意すべき点と思います。

 治療を継続するものとばかり思っていた透析診療所側では「在宅で、おみとりです」という福生病院からの、あり得ない連絡に仰天します。

 だって、そのまま治療を続ければ、4年程度の余命は少なくとも見込まれる、およそ終末期ではない患者さんのことで、直前の透析治療は2日前の7日のことでした。

 いつもどおりに透析を開始しようとしたところ、シャントが使えなくなっていることが判明。

 これはいけない、と直ちにカテーテルを繋いでもらいに専門病院の外科に紹介状を書いた。透析診療所ではカテーテル挿入術の外科手術は実施できないからです。

 ところが、専門病院に来てみると、透析を停止するという「選択」で「在宅でおみとり」だという。そんな・・・としか言いようがありません。

 実際、患者さんの体からは尿が出ないため、毒素が溜っているはずで、尿毒症を発症すればことは命に関わります。猶予される時間はありません。

 何としてもカテーテルを病院で入れてもらうようにと診療所は女性患者さんを説得しますが、患者さんは事態をどう認識してのことか「病院で相談する」と言って、9日は帰宅してしまったそうです。

 明けて10日、女性患者さんは福生病院を訪れ、腎臓病総合医療センターの腎臓内科医(55)と面会しますが、「透析しない意思は固い」「最後は福生病院でお願いしたい」と話したとも報じられました。

 これも本当はどのようなニュアンスだったのか、活字からだけでは全く推し量れません。

 しかし4日後の14日になると、「息が苦しくて不安だ」と、パニック状態のようになって、結局、福生病院に入院することになります。

 それはそうでしょう。前回の人工透析は8月7日だったはずです。まる1週間が経過していますから、尿毒症の症状が出ていて当然です。

 何もしなければ、尿毒症は、全身身もだえするような苦しみに襲われるとのこと。

 福生病院が「透析停止」ののち、どういう薬を処方していたのか資料がありませんが、透析だけ停止したうえ自宅に帰してまる1週間という状況自体が、まともな医療判断と言えるのか、問われる問題だと思います。

 そして翌8月15日には女性患者さん本人が「透析中止を撤回する」と話し出し、夫は直ちに外科医に「透析できるようにしてください」と依頼。

 人工透析の患者団体は、こうした反応は当然のこと、とコメントしています。

 透析を停止し、それに伴う尿毒症の苦しみが始まれば、誰だって拷問のような状況から抜け出したいと思います。当然のことで、患者本人に選択させること自体が酷で、非人間的であると患者団体は指摘します。

 ところが帰宅しようとした夫が腹部に激痛を覚え、同じ病院に緊急入院。

 ストレスで胃に穴が開いており、胃潰瘍の手術を受けたものの麻酔から覚めたときには妻は亡くなっていた、という経緯は広く報道される通りです。

 女性患者は8月15日「(透析中止を)撤回したいな」と生きる意欲を見せ、夫も「私からも外科医に頼んでみよう」と、それを請け負いながら、自身が胃潰瘍のため緊急手術を受けることになってしまった。

 その間、外科医は女性患者から「こんなに苦しいのであれば、また透析をしようかな」という発言を複数回聞いているといいます。

 しかし、それには応じず、苦痛を和らげる治療だけを実施しました。結果的に女性は8月16日、午後5時過ぎに死亡しています。

 この、透析を停止した外科医は「(女性患者が)正気な時の(治療中止という)固い意思に重きを置いた」と説明します。

 またそれを証拠づけるように、幾度も念押ししたうえで署名された同意書も残っています。

 これらがある限り、現在の法の枠組みで考えれば、外科医に責任が問われる可能性は少ないようにも思います。

 逆に、これらの同意書があるのにカテーテルの挿管手術を実施すれば、むしろ医師は「同意書違反」を問われる可能性も考えられるでしょう。

 しかし、これだけで説明がつくことなのでしょうか?

患者は病態を理解していたのか?
 3月12日の毎日新聞は、別の角度からの見方を報道しています。

 亡くなった女性患者(44)の長男(28)の談話で、初孫を抱かせてやりたかったというコメントなどが報じられました。

 今日の少子高齢化の趨勢のなか、44歳で孫というのは珍しいケースではないでしょうか?

 ご長男の年齢から、この女性患者さんが16、17歳で第1子を設けられた経緯が察せられます。

 高等学校の教程に相当する生物学や化学、尿毒症のリスクや「死に直結する」といった医師の言葉を、どのように理解したのか。

 少なくとも、医療のプロである医師たちの理解とは、相当に隔たっていたと裁判官が考えても、全く不自然ではないと考えることができるでしょう。

 亡くなる3日前、入院の前日に当たる8月13日、女性患者は結婚して独立した長男を突然訪ね、「(透析治療が)できないって言われたから、とりあえずやめる」と話したそうです。

 治療をやめる選択肢を外科医から示され、意思確認書に署名したのは9日、それから4日、最後の透析からすでに6日も経過しています。

 長男は絶句したとのことですが女性患者さんは堅い表情で「もしかしたら死ぬかもしれない」と語ったそうです。

 「とりあえずやめる」「もしかしたら」「かもしれない」

 もし、字義通りに取るなら、患者さん本人は「透析の中止」が「死に直結する」という医師の言葉の意味を、もっと曖昧に捉えていた可能性が考えられるでしょう。

 透析を続けても苦しいばかりだ。やめられるのならやめたい。それでも大丈夫「かもしれない」・・・そんな本音が透けて見えるようにも思われます。

 さらに、翌14日、女性患者さんはパニック状態になって入院しますが、心配する息子の「どうだった?」という電話に対して、父親は「平気そうだよ」と返事し、息子もひとまず安心します。

 しかし、父親はその間にストレスのため胃を自己消化してしまい、翌日には穴が開いて、胃潰瘍の手術で緊急入院することになってしまいます。

 果たして、翌15日、女性患者さん本人が、痛みや苦しみから「透析を再開したい」と言い出しますが、医師とのやり取りの末、結局再開しないことに。それは明確にある結末の方向を示すことになります。

 長男は8月16日の朝、最期の面会をしています。父すなわち夫は胃潰瘍で緊急入院して手術というアクシデントがあっての面会と思われますが、まともに会話ができなかったとのことです。

 「何で? まずいな」

 長男は嫌な予感がした、と毎日新聞は報じます。以下報道(https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190312-00000002-mai-soci)を引用すると

 「外科医は『お母さんの意思を尊重する。容体が今後急変することがあるが、何もできない』と長男に告げたうえ、強い鎮静剤を女性に打った」

 「30分間だけ、話ができた。10日前に生まれた初孫の男の子の写真を、長男は女性に見せた。『お前に似てるよ』。女性は薄く笑い、つぶやいた」

 「家の中の片付けをしなかったのが『心残り』と言った。『もう死ぬから、後のことをよろしくね』。それが最後だった」

 このやりとりは、いったいどういう「治療行為」の結果、かわされたものなのか?

 ほんの1週間前までは、透析を受けながら自宅で普通に暮らしていた人が病床でかわす会話として、尋常なものでないことは間違いありません。

人間の尊厳と主体性
 刑法の故・團藤重光教授は、このような状況を「人間の主体性」という言葉を併用して議論されました。

 法の条文や書類、判例などは動かず、変わりません。しかし、人間は時々刻々、内心が変化する生き物です。

 そういう個人の「動く主体性」を、きちんと掬い取ってこそ、人間の尊厳を守ることができる。それができない硬直した法や司法は、非人間的な訓詁の学、いわば朱子学のようなものだ。

 そうではなく、ゆれ動く人間と社会の実相に応じた知行合一の学、陽明学的な法と法文化を目指さなければならない・・・。

 90代の團藤先生が重視された、このような主張を「時代錯誤」「駿馬も老いては駄馬に劣る」などと、明確に否定する法律家の意見も、私は直接耳にしました。

 しかし今回のような事態を直視し、さらに、情報化の進展など「私文書」の在り方が変化している時代状況を考えるに、外科医が「重きを置いた」「正気なときの堅い意志」の評価と、それを跡づける「同意書」は、意味や価値を相対化される可能性があるように思います。

 女性患者さんの夫は「意思確認書に一度サインしても、本人が『撤回したい』と言ったのだから、認めてほしかった」と述べています。

 しかし冷たい司法や過去の判例は、同意書(たぶん有印私文書でしょう)を重く見る可能性があるでしょう。

 女性患者が夫に最後に送った電子メールは亡くなった16日の朝7時50分のタイムスタンプで「とうたすかかか」という7文字を記録しています(ご長男との面会との前後関係は報道からは分かりませんでした)。

 スマートホンやSNSがこれだけ普及した現在、以前なら口頭で意志が変わったといっても、正気なときの堅い意志とは全く違う、死に隣接して痛み、苦しみに直面する人間の生の肉声が、時刻の裏づけとともにデジタルデータとして保存され、裁判所にも提出可能な状況になっています。

 同意書の在り方に本質的な見直しを迫られる可能性があるのではないでしょうか。

 今回の出来事それ自身は、もう取り返しがつきません。

 医師が治療法を説明する際、透析をやめればその後に必ずやってくる、尿毒症の症状による痛みや苦しみ、そして避けがたい死をどのように説明したのか? 

 実際、8月9日に女性患者さんは帰宅しているわけで、14日の入院までは自宅で過ごし、連絡していなかった長男宅を訪ねて「もしかしたら」「死ぬかもしれない」と語っています。

 文字通りの意識であれば、インフォームド・コンセントといいつつ、患者は自分の病状について、ほとんど何も正確には理解していなかった可能性が考えられるでしょう。

 「痛みを和らげるケア」は、終末医療そのものと言うべきですが、そのようなケアが必要になる終末状況が100%やって来ることを、患者本人が精神的に健康な状況で客観的に理解したうえでの合意だったのか?

 医師は「手続き的に瑕疵がない」と主張する、ここでなされた「合意」や「治療」は、本当に人間的、主体的なものであったと言えるのか?

 ティーンエイジャーで第1子を出産、その後も病身の夫を支え、生活苦のなかで20代半ばにノイローゼの診断との報道もあります。患者自身がどの程度、医学的に正確に自分の病状を理解することができたのか?

 よしや、それが難しいとき、ヒトの命を守るのが、かつての「仁術」としての医術だったのではないか?

 やはり透析を再開したい、という苦しみの中にある本人の意思に対して、それ以前に本人が書いたから、と紙に記された合意・同意を「重視」して「強い鎮静剤」(一般には入眠する場合が多いように思います)を処方するというのは、どういう医療か?

 福生は、私の地元、都下「国立」と10キロほどの距離なので、週末秩父に用事があったのですが、行きがけに公立福生病院の横を通ってみました。

 病院そのものは新しいきれいな建物でしたが、直近にある米軍横田基地と周辺の街区が新築の高層病院と対照的な風景を創り出していたのが印象に残りました。

 明らかに、正解のない問題です。

 しかし、現在の制度や法だけでカタがつくことは絶対にあり得ない、1つに定まらない答えを幾重にも問い続ける必要がある、非常に重要な問題がここに存在していると思われます。

 新年度に入ってからになると思いますが、「東京大学哲学熟議17」として、この問題を考える市民大学講座の開催を準備したいと思っています。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55746
http://www.asyura2.com/16/iryo5/msg/761.html

[経世済民131] 原油価格の頼みの綱となった中国の原油「爆買い」 原油市場もバブルの中国、需要の反動減は時間の問題か 
原油価格の頼みの綱となった中国の原油「爆買い」
原油市場もバブルの中国、需要の反動減は時間の問題か
2019.3.15(金) 藤 和彦
中国・上海の道路。中国の乗用車販売台数は9カ月連続でマイナスとなっている
 米WTI原油先物価格は3月に入っても1バレル=50ドル台後半で推移している。

 まず供給サイドの動きから見てみたい。

 ロイター調査によれば、OPEC(石油輸出国機構)の2月の原油生産量は前月比30万バレル減の日量3068万バレルと4年ぶりの低水準となった。遵守率は101%となり目標を達成した。

 サウジアラビアの生産量は前月比13万バレル減で遵守率は159%に達している。3月から4月にかけては日量1000万バレルを下回る大幅な減産を実施する(3月11日付ブルームバーグ)。協調減産について年末までの延長を提案している(3月12日付ロイター)。

 OPECのその他の加盟国の動向では、減産を免除されているイランやリビアの原油生産量が若干増加した。一方、ベネズエラの生産量は前月比12万バレル減で減少傾向に歯止めがかからない状況が続いている。

 世界第2位の原油生産国であるロシアでは3月4日、ノヴァク・エネルギー相が「3月に減産スピードを速め、3月末には昨年10月からの減産幅が目標(日量23万バレル)に達するだろう」との見方を示した。

 OPEC加盟国と非加盟主要産油国で構成するOPECプラスは4月に閣僚会議を開くが、この時点で今後の生産方針を決める可能性が低く、米国によるイランやベネズエラへの制裁がどのように展開するかを見極めた上で、6月の会議で減産継続で合意するとの見方が一般的である(3月5日付ロイター)。

 イランは米国による禁輸制裁で昨年(2018年)以降輸出は半減した。米国は、禁輸制裁の適用が除外される8カ国(日本、韓国、インドなど)と除外を取りやめる方向で個別に協議を開始したが、インドは5月以降も日量30万バレル程度のイラン産原油の輸入を継続したいとの意向を示している(3月7日付ロイター)。

 ベネズエラについては、「政権が転換すれば米国による制裁が解除され、原油生産が回復する可能性が高い」との観測がある。

OPECプラスの減産を米国の増産が帳消しに
 トランプ大統領から原油高を批判されたOPECだが、OPECのバルキンド事務局長は「原油市場の均衡を図るためトランプ大統領も協議に参加してほしい」と懇願している(2月27日付OPILPRICE)。

 昨年の米国の原油生産量は日量220万バレル増加した。国際エネルギー機関(IEA)は「2024年までの世界の原油供給の伸びの7割を米国が占める」との見通しを示している。

「2019年の原油価格は下落する」との予想に基づき、独立系石油会社は昨年から増産よりも利益拡大を優先して設備投資を縮小してきた。そのため、米国の石油掘削装置(リグ)稼働数は昨年5月以来の低水準となっているが、原油生産量は日量1200万バレルと過去最高水準を維持している。

 独立系石油会社とは対照的に、石油メジャー(エクソンモービルとシェブロン)はシェールオイルの最大生産量を誇るパーミアン鉱区で積極的に投資を行う姿勢を鮮明にしている。パーミアン鉱区での2025年の生産量は、エクソンモービルが日量100万バレル、シェブロンは同90万バレルにまで拡大し、2社合計の生産量はパーミアン鉱区の全体の3分の1を占めるまでになる見込みである。パーミアン鉱区全体の生産量も現在の日量400万バレルから5年後には500万バレルを超え、2030年には600万バレルに増加する、との予測がある。

 米国の原油輸出量は好調であり、2月は日量300万バレルをはるかに水準となった。

 一方、2月末の米国の原油純輸入量は日量256万バレルとなり、21世紀に入って最低となった。この水準は、原油需要が米国の5分の1に過ぎない日本の輸入量も下回っている。21世紀初頭の輸入量(約1000万バレル)と比べると隔世の感がある。内訳を見てみるとサウジアラビアからの輸入量が日量35万バレル、ベネズエラからの輸入量は同21万バレルとなっている(3月は同8万バレルにまで減少した)。

 OPECプラスの減産努力を米国の増産が帳消しにするとの構図がより鮮明になっている。供給側から見ると、値崩れする心配は少なくなっているが、WTI原油価格が1バレル=60ドル超えとなる要因もないのが現状である。

ベネズエラ原油の輸入減少が価格下押し圧力に
 膠着状態が続く中で世界経済への懸念が高まっていることから、市場では「原油価格の今後の帰趨を決めるのは需要サイドである」との認識が強まっている。

 世界最大の原油需要国である米国では、2月のISM製造業景気指数が2016年11月以来の低水準となった。2月の雇用統計でも、景気動向を敏感に反映する非農業部門の雇用者数が前月比2万人増にとどまり、増加幅は前月(31万1000人増)から急減速した。建設や小売などの業種での減少が目立っており、原油需要の下振れが警戒されている。

 ベネズエラからの原油輸入が減少していることから、米国政府は4月から5月にかけて最大600万バレルの戦略国家備蓄(SPR、6.5億バレルを保有)を放出する予定である。

 米国メキシコ湾岸の製油所は分解装置や脱硫装置などを備えることでベネズエラ産の安価な重質高硫黄原油を処理して利益を上げてきた。だが、ベネズエラからの供給減少により製油所の精製マージンは2014年以来の低水準となっている。SPR原油も他の代替原油と同様にベネズエラ産原油より割高であることから、製油所の精製マージンが改善される可能性は低いとされている。

 3月は季節的にガソリン在庫が最も多くなる時期であることも加味すれば、精製業者の活動が今後低調となり、原油在庫の増加傾向に拍車をかける可能性がある。米国の原油在庫は現在約4億5000万バレルである。2017年の5億2800万バレル、2016年の4億9100万バレルに比べて少ないが、昨年の同時期よりは多い。ベネズエラ産原油の輸入減少は原油価格の上昇よりも下押し圧力になるかもしれないのである。

原油市場もバブルの中国
 欧州の原油需要は昨年末以来低迷しているが、今後さらに悪化する可能性がある。そして、それ以上に関係者が注目しているのは経済の減速傾向を強める中国である。

 中国における2月の乗用車販売台数は前年比18.5%減で、9カ月連続のマイナスとなった。1〜2月の貿易統計では輸出と輸入がともに前年割れとなっている。年初来大量の新規融資がなされたのにもかかわらずに、である。中国の昨年の労働人口は8億9729万人と前年比470万人減となり、統計開始以降初めて減少に転ずるなどデフレ圧力も生じている。

 中国経済の失速の要因として米中貿易摩擦や債務圧縮策が挙げられるが、足元の悪化は中古住宅価格の下落による逆資産効果の影響が大きいとの見方がある(3月5日付日本経済新聞)。中国の不動産の時価総額はGDPの5倍に当たる65兆ドルに達したとの観測があるが、上昇が当然とされてきた中古住宅価格が下落し始めた悪影響は計り知れない。世界一割高な香港の不動産市場でも住宅が値下がりが目立ってきている(2月26日付ブルームバーグ)。

 中国政府はこれ以上の景気悪化を食い止めるため、大型の景気刺激策を実施しようとしているが、その効果は本当に現れるのだろうか。

 国家発展改革委員会が2月末に「投資家の信頼感低下がインフラ投資計画を圧迫している。計画されたプロジェクトの一部で急速な落ち込みが見られる」との認識を示したように「笛吹けど踊らず」の状況になる可能性もある。

 モルガンスタンレーは3月7日、「電気自動車の普及などでガソリン需要が減少することから中国の原油需要は2025年にピークを打つ」との見通しを示した。

「中国の原油需要に陰りが見られるのではないか」との心配をよそに、2月の中国の原油輸入量は前年比22%増の日量平均1027万バレルとなり、昨年11月以来4カ月連続で日量1000万バレル超えとなった。だが、中国の原油需要は日量1300万バレル弱、国内生産量は約400万バレルであることから、輸入量は900万バレル程度で十分なはずである。昨年末の輸入量増加は、民間製油所「茶壺」が年間の輸入枠を消化するためための駆け込み需要と説明されていたが、今年に入っても国内の原油需要を大幅に上回るペースで原油輸入が続いている。筆者は「経済全体がバブル気味であることから中国の原油市場でもバブルが発生している」と推測しているが、バブルによる仮需発生後の反動減が起きるのは時間の問題ではないだろうか。

 世界の原油需要は過去50年間で3倍となり、現在日量1億バレル超となっているが、過去三度減少を経験している。二度の石油危機とリーマンショックであるが、中国バブルが崩壊すれば四度目の減少となり、世界の原油需要のピークアウトになるかもしれない。そうなれば現在の原油市場の均衡が崩れ、WTI原油価格は再び50ドル割れし、12月末の安値(43ドル)をはるかに超える下落となってもおかしくない。

サウジで問題視される皇太子の独断専行
 最後にサウジアラビア情勢について触れてみたい。

 サウジアラビアが軍事介入しているイエメン情勢が再び悪化している。

 中東メディアによれば、世界最大の武器輸入国となったサウジアラビアは過去4年間イエメン空爆だけで最大180億ドルと巨額の軍事予算を費やしている。中東・北アフリカ地域で最大の債務国となったサウジアラビアにとって、原油価格のさらなる上昇はなんとしてでも達成しなければならない。

 英紙ガーディアンは3月初め「サルマン国王とムハンマド皇太子の間の溝がサウジアラビアの安定にとって不安になるほど広がっている」と報じた。その溝が最も目立ったのが2月末のアラブ・欧州会議に出席するために国王がエジプトを訪問した際である。消息筋によれば、国王の顧問たちは「国王に反対する動きがある」としてムハンマド皇太子への忠誠が厚いとされる国王の護衛陣を急遽入れ替え、国王のリヤド帰還の際には空港出迎えの列からムハンマド皇太子を排除したという。

 また、国王不在の間にムハンマド皇太子が、新駐米大使(初の女性)と前駐米大使(実弟)の国防副大臣任命を国王の相談なしに行ったことも問題視されている(サルマン国王はテレビでその事実を知ったとのこと)。

 真偽のほどは定かではないが、国王の側近たちがムハンマド皇太子の独断専行ぶりに不満を高めている証左であることは間違いないだろう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/55750
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55750
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/516.html

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