18. 秘密のアッコちゃん[3] lOmWp4LMg0GDYoNSgr@C4YLx 2023年11月28日 12:22:41 : n4vXmS4Gso : WUN2WklXQ0Fya0k=[116]
ジャーナリスト 櫻井よしこ
作家 百田尚樹
ジャーナリスト 有本香
Hanada2024年1月号
■街頭演説で実感
★櫻井
2023年11月11日に大阪梅田で行われた街宣活動は、大変な聴衆が詰めかけましたね。
余りに多くの人が集まり過ぎたため、警察の要請により途中で中止となってしまったと伺いました。
★百田
政治演説に人が多く集まり過ぎて中止となったというのは前代未聞でしょうね。
梅田ヨドバシカメラ前は、多くの政党が演説会をやってきた場所なのですが、皆の想定を超える多くの方に集まって頂いた。
結果として通行にご不便をおかけしてしまったことは、お詫び申し上げます。
また、演説を聞くために集まって下さった方々にも大変申し訳なく思っています。
私も10分ぐらいしか話をすることが出来ず、消化不良でした。
態勢を強化した上で、必ず再行したいと思っています。
橋下徹氏や万博のことなど、もっと喋りたいことが山ほどあったんです(笑)。
★有本
聴衆の皆さんは終始、節度ある態度で演説を聞いて下さっていました。
そのお陰で、事故なく終えることが出来たと思っています。
この場を借りて御礼申し上げます。
★百田
不可解だったのは、演説が始まると同時に、夥しい消防車、救急車、パトカーがけたたましいサイレンを鳴らして集まったことです。
★有本
事後に判明したことですが、救急車両などの到着は
「人が将棋倒しになっている」
という旨の通報があったため、とのことでした。
当時の梅田駅周辺で、そのような事故は起きていませんでした。
★百田
つまり、虚偽通報とも考えられます。
通報者は警察によって特定されているようですから、背景も含めて今後の捜査が待たれます。
民主主義の基本とも言うべき街宣活動を妨害することは断じて許されません。
また、もし同じ時間帯に事故や災害などが起きていたら、救急用の車輛が間に合わなくなる虞れもあったことを考えると、これは人道的にも許されざる行為だった虞れもあります。
いずれにしましても、日本保守党としましては街宣の態勢強化を努め、出来るだけ早く私たちの想いを大阪の多くの方々に届けます!
★櫻井
2023年10月18日に行われた名古屋駅前での街頭演説でも、大変な数の聴衆が詰めかけましたね。
★百田
我々が演説を行った名古屋駅ゲートタワー前広場は、政治家が街宣活動をする場所としてよく使われるそうなのですが、ここでも関係者から
「あれほどの数の人が集まったのは未だかつて見たことがない」
と言われました。
★有本
2023年10月21日には秋葉原、新橋駅前でも配当演説を行い、ここでも名古屋同様、大変多くの人々が詰めかけて下さいましたね。
★百田
2023年9月1日にX(旧ツイッター)で日本保守党の公式アカウントを開設したところ、僅か15日間でフォロワー数が全政党を上回り話題になりました。
ただ、これはあくまでもネットの世界です。
「日本保守党はネットの世界の空中戦は得意だけど、実際はどうなのか」
と懐疑的な見方をする人たちも多くいました。
ところが、街頭演説にあれだけの人が集まったということは、一般の人たちが我々の発信に注目してくれている。
私たちへの期待はネットの世界だけではなかったことを実感しました。
★櫻井
詰めかけた人々は、日本保守党の何に共鳴していると考えられますか。
やはり、百田さんや有本さんが抱く、今の自民党政治に対する
「怒り」
なのでしょうか。
★百田
それには様々な理由があると思います。
その中で
「自民党に対する怒り」
は当然あるでしょう。
Xのフォロワーの人たちのポストを見ていると、
「初めて支持できる政党ができた」
「何年も選挙に行っていなかったけど、久しぶりに選挙に行きたいという気持ちになった」
という声が非常に多いんです。
周知の通り、今、国政選挙や地方選の投票率は年々下がっています。
その大きな理由の1つが
「入れたい政党がない」
というもので、これは怒りというよりもむしろ絶望感に近い気持ちではないか、と私は思っています。
過日、行われた東京・立川市選挙区での都議会議員補欠選挙は27%でした。
つまり、3人に1人も投票に行っていないのです。
例えば40人のクラスがあったとして、
「学級委員」
を選ぶ際、僅か11人しか投票していないんです。
こんな選挙で選ばれた人が
「学級委員」
と言えるでしょうか。
しかも、立川市の補選の立候補者は自民党と都民ファーストと立憲民主党の3人で、自民党だけが落選しています。
これは従来の自民党支持者が選挙に行かなかった、と推察できます。
★櫻井
政治あるいは自民党に期待していないことが無関心に繋がり、それでもその中で自民党政治が続いてきたことの深刻さを痛感している人が多いことが選挙結果に表れている、と見ることができます。
そもそも百田さんと有本さんが堪忍袋の緒を切らして新党結成に踏み出したのは、LGBT理解増進法の成立がきっかけと伺いました。
★百田
はい、そのことはこれまでも月刊『Hanada』やYouTubeなどで度々申し上げてきましたので簡潔にお伝えしますと、LGBT法案という日本を根底から破壊する天下の大悪法を、自民党は党内で反対が多いにもかかわらず、そうした声を一切無視し、ろくな審議もせずに党議拘束をかけて強引に可決、成立させました。
余りの怒りに、こんな暴挙を黙って見ているようでは生きている価値がないとすら思い、せめて自民党に一太刀浴びせたいとの思いで、新党の立ち上げを決意しました。
YouTubeで新党結成を宣言したところ、半日経って有本さんから電話がかかってきて
「百田さん、あれ本気か」
「本気やったら私も相当腹に据えかねることがあるから、私も一肌脱ぐで!」
「本気やろな!」
と。
★有本
そんな言い方はしていませんが(笑)、私もあの異常な法案成立には怒り心頭で、この怒りを共有できるのは百田さんしかいないと思って
「協力しますよ」
と電話したんです。
★百田
LGBT理解増進法の中心概念は、ジェンダー・アイデンティティという意味不明な言葉なんです。
こんな言葉、私は67年間生きてきて初めて聞きました。
多くの人が聞いたこともない、辞書にも『現代用語の基礎知識』にも載っていない、どう訳していいのかも分からない新語を日本の法律の中心概念に据えている。
そんな法律を党内で反対が多数だったのに、平然と通している。
異常ですよ!
狂っているとしか思えない。
■首相が気付いていないこと
★櫻井
その激しい怒りは私も共有します。
ジェンダー・アイデンティティを日本語で
「性自認」
と表現すると、そこからまた別の解釈が生まれて議論があらぬ方向に行きかねない。
そういう懸念により、仕方なしにカタカナ言葉に落ち着いたというのが経緯なわけですが、適切な日本語、つまり母国語に訳せない言葉を我が国の法律に書き込んだこと自体がまずおかしい。
過日、私は岸田首相と対談した際、LGBT法が日本に必要な理由を未だに理解できない。
なぜ立法したのかと尋ねました。
岸田氏は多様性が重要だと答えました。
多くの日本人はLGBTに関して、日本が欧米諸国よりもその種の多様性には寛容であり、LGBT理解増進法は必要がないということを肌感覚で知っています。
にもかかわらず、岸田氏は欧米にもないLGBTに特化した法を作った。
そのことへの国民の深い懸念と反発の強さを、首相は恐らく感じ取っていません。
★有本
このデタラメな法律を作ったことによる余波が早くも生じています。
2023年10月11日付で静岡家裁浜松支部は、
「戸籍上の性別を変更するには生殖能力をなくす手術を受ける必要がある」
とする性同一性障害特例法を憲法違反として、性転換手術なしの性別変更を認めました。
判断理由の1つに、関口剛弘裁判長はLGBT理解増進法を挙げています。
更に2023年10月25日、最高裁大法廷で行われた審理で、戸倉三郎裁判長をはじめ15人の裁判官全員が、生殖機能をなくす手術を求める規定は
「違憲」
と全員一致で決めました。
★櫻井
性別変更に生殖機能をなくす手術が必要だとする性同一性障害特例法の規定を最高裁は違憲としましたが、これは要件を外すことに反対する性同一性障害当事者の多くの意見を無視したものです。
強い違和感と危惧を覚えます。
★有本
2023年7月11日には、最高裁判所が、経済産業省に勤めるトランスジェンダーの職員が職場の女性用トイレの使用を制限されているのは不当だとして国を訴えた裁判で、トイレの使用制限を認めた国の対応は違法だとする判決を言い渡しましたね。
いずれも、LGBT法案が成立していなければ異なった判決が出ていた可能性が高い。
★百田
LGBT法が出来たことによる負の影響が出ていることは明らかです。
法律的な問題は数多くあるのですが、ここではより直接的に申し上げると、今後、女性や児童、特に女児の安全が担保されない社会になる危険性があります。
★有
問題は更に深刻で、あの法律には3カ所、LGBTについて
「児童に教育する」
という旨の記述があります。
★櫻井
その点は自民党も問題視し、家庭の同意なしには児童にそういった教育は出来ないように修正されましたが、不十分だということですね。
★有本
「家庭の同意なしに」
という曖昧な記述では全く不十分です。
削除すべきでしょう。
日本保守党は重点政策で、LGBT法の改正を掲げています。
もちろん廃案が理想ですが、成立した法律をいきなり廃案にするのはハードルが高い。
であるならば、まず
「児童に教育する」
という箇所を削除し、更に中心概念に据えるジェンダー・アイデンティティという意味不明の言葉が一体何を指しているのか、議論の場に引きずり出したいと考えています。
■河村共同代表就任の衝撃
★櫻井
河村たかし名古屋市長が日本保守党の共同代表に就任した件です。
サプライズというか、意外に思われた人も多かった。
河村たかし氏という評価相半ばする政治家と組んだ狙いは何ですか。
★有本
河村さんのような経験豊富な政治家が突然、日本保守党に加わったことに対して
「新味がない、がっかりした」
と思われた方がいらっしゃったかもしれませんが、相当な時間をかけ、熟考に熟考を重ねた上での判断であり、その狙いは色々とありました。
言うまでもなく、私と百田さんには政治の経験がありません。
その点、河村さんは政治経験が豊富で実績もある。
そして何より、圧力や報道のバッシングに屈しない、日本をど真ん中において考えられる政治家であることが大きいです。
一例を申し上げますと、櫻井さんもよくご存じですが、2012年、河村市長が
「南京大虐殺は無かった」
と発言して大騒動になりましたね。
あの時、私は市長に初めてお会いし、事の経緯を全て話してもらい本にする予定だったんです。
その過程で、政治家としての様々な話も伺いました。
以来、例えば東海財務局が名城公園の前の土地3000坪を中国の総領事館に売却する動きを河村さんが止めた際も取材しましたし、愛知トリエンナーレの反対の件でもご一緒しました。
他に数年間、私が小池百合子東京都知事を批判していると聞きつけた河村さんから
「何をそんな怒っとるの」
と電話がかかってきました。
お会いして一連の経緯をお話ししましたら、当時、小池知事の顧問を務めていた人が過去に名古屋市の顧問もやった人で、河村さんの同級生だったんです。
すぐその場で電話してくださり、
「おかしいと言うとるよ」
と伝えてくれたこともありました。
このように様々な場面、場面で、私は河村たかしという政治家をウォッチしてきました。
★百田
河村さんと共同でやると発表した時、多くの人が衝撃を受けたことは、私はプラスだったと考えています。
エンターテインメントでも政治でも、ショックを与えることは非常に重要な要素ですから(笑)。
★櫻井
共同会見の様子はメディア各紙が取り上げましたね。
河村さんがタイトルになっているものが多かった。
★有本
河村さんの参入で、大メディアの見出しになることは読んでいました。
やはり、現職の名古屋市長という存在はメディアも無視できない。
ただ意外だったのは、百田さんとこっそり名古屋に行き始めた時、河村さんが最初から
「一緒にやろう」
とおっしゃったことです。
いくら百田さんがミリオンセラーの作家であっても、政治的には海の物とも山の物とも分からない存在ですので。
★百田
そう、最初に
「面白い、一緒にやろう」
と即答されましたね。
★有本
「今の政治は嘘ばかり」
「堕落、腐敗している」
「こんなんじゃダメだ」
と。
★百田
河村さんの
「南京発言」
に対して、中国はもちろん、日本の左翼メディア、左翼文化人、政治家などが連日連夜、河村さんに猛烈なバッシングを浴びせました。
ところが、河村さんは一切、謝罪、撤回をしなかった。
これは非常に骨のある政治家だと思いました。
河村さんに否定的な意見もよく聞くのですが、実はその大半がイメージなんです。
「南京発言」
でも分かるように、左翼メディアに物凄く嫌われ叩かれました。
彼らはとにかく
「河村を落としたい」
「名古屋市役所から放逐したい」
と何年もネガティブキャンペーンを行った。
そのネガキャンに侵されている人が非常に多いんです。
「百田さん、何や河村さんと組むんかい」
「がっかりや」
と言う人に
「では、河村さんの具体的にどこがどう問題なのですか」
と尋ねても、誰も答えられない。
「何となく」
のイメージなんです。
せいぜい出てくるのは、金メダルを噛んだくらいの話です。
■河村市長に懇々と言った
★櫻井
河村さんと百田さん、有本さんの間に少なからぬ価値観の差があるように見えるのは河村さんは民主党の流れを汲むリベラルだということがあります。
国旗国歌法に反対し、国家の根幹を成すエネルギー政策では環境主義者と言わざるを得ないほど、飯田哲也という反原発で積極的に動いている人物と組んで反原発、再生可能エネルギーの推進を猛烈にしてきました。
★有本
内幕を申し上げますと、河村さんのリベラル性は当初から我々も懸念していました。
そして、今、櫻井さんがおっしゃった国旗国歌法や原発政策についてもこの2カ月間、何度も議論を重ねてきました。
河村さん曰く、国旗国歌法に反対した時というのは野中広務氏らが自民党を牛耳っている時代で、とにかく酷かったと。
決して河村さん自身が国旗に敬意を払えないとか、国歌は歌わないということで反対したのではなく、理由をこうおっしゃった。
「空襲など戦争で苦しんだ民間人に対して日本政府は何をしたのか」
「救済立法も行わず、何もしていないじゃないか」
「名古屋市では独自の民間戦災障害者援護見舞金を10万円に増額した」
「そうしたことを全く考えない連中が、何が国旗国歌法だ」
「そういう時だけ国家然とするのか」
「そんな思いから反対した」
であるならば、そのことをしっかりと説明すべきだと伝えました。
★百田
私が
「国旗国歌法に反対するのはおかしいですよ」
と懇々と言ったら、河村さんは黙っていましたね。
★櫻井
河村さんは、今後は国旗と君が代を大事にするということですか。
★百田
当然です。
■政治家劣化の根本原因
★有本
原発政策についても、安全審査に合格した既存の原発再稼働の必要性と合理性、再エネ賦課金の非合理性、再生可能エネルギーに傾斜していくことの欺瞞性などを懇々と説明しましたらちゃんと理解してもらえて、
「再エネ賦課金なんてやめたらええ」
と憤っていました。
★櫻井
河村さんは、従来の反原発政策からも考えを転換させたというわけですね。
★百田
そうですね。
ただ、原発政策に関しては1点、原発の新増設までは私自身もまだ詰め切れておらず、その点は河村さんもまだ納得していませんので、ここは日本保守党としても更に議論を重ねていきたいと考えています。
ですが、政党内で政策など多少のズレや修正点はどの政党にもあると思います。
日本保守党としてそこはどうしても譲れないという点以外は、しっかりと議論を重ねて、多少のズレなどは大きく併せ吞んでいくぐらいでないと、党としての発展は難しい。
一方で、河村さんと我々の考えている政策には多くの共通点があります。
例えば、我々が重点政策で掲げた中に
「減税と国民負担率の軽減」
があります。
私は、日本経済をダメにした大きな原因の1つに税の重負担があると考えています。
その点、河村さんは減税日本の代表であり、名古屋市長として実際に減税を行い税収を増やすなどしっかりと成果を上げている。
そして、この減税を全国で行いたいとの思いを強く持っている。
それと、
「政治家の家業化をなくす」
という点でも我々の考えと全くの同意見です。
これは私の持論なんですが、今の政治家が劣化している大きな原因は世襲にあると思っています。
★櫻井
世襲の中には安倍晋三さんのような政治家もおられますが。
★百田
もちろん、世襲でも安倍さんや中川昭一さんのような素晴らしい政治家はいました。
でも、それはごく稀な例外であって、安倍さんの存在はほとんど奇跡なんです。
そうした例外を持ち出しても意味はありません。
問題は全体がどうかです。
今の政治家、自民党の幹部クラス、大臣クラス、総理大臣を見て下さい。
ほとんどが世襲議員です。
自民党で総理大臣や幹部クラスになるには、能力以上に当選回数が重視されます。
その当選回数を重ねるためには、20代の後半や30代前半で政治家にならなければならない。
一般の人が社会に出て働いて様々な経験をして
「よし政治家になろう」
と政治を志し、親戚などから資金を集めて晴れて政治家になったとしても、40歳を超えているのが普通です。
すると、もう当選回数を稼げない。
そうした人はどれほど能力があっても、よほどの引き上げがない限り上には行けません。
2世、3世の世襲議員は大抵早くから父親の秘書などを務め、
「ジバン(地盤)、カンバン(看板)、カバン(鞄)」
を引き継ぎ当選回数を重ねていく。
結果、社会経験も能力もないボンクラでも幹部や大臣になっていく。
そんな連中が日本の政治中枢を占めているのが実情です。
■政治家による合法的な脱税
★櫻井
現在のように、政治家を家業と捉えて2世、3世が政界で幅を利かせるのはおかしいと私も思います。
世襲の政治家たちが余りに多く、新たな有為の人材が政治を志してもなかなかチャンスがないのは、日本のためになりません。
★有本
世襲の問題では、例えば、親の政治団体から子の政治団体へと
「寄付」
という形で資産を移せば贈与税も相続税も一切かからないため、
「無税の遺産相続」
が横行していることも是正すべきです。
政治団体の代表者が議員から親族に交代してもやはり非課税で、実際は相続や贈与でも課税を免れている例が多いのが実態です。
庶民からは高い税金を搾り取っておきながら、自分たちは税金逃れを行っている。
★百田
合法的な脱税ですよね。
★有本
世襲議員は親から
「寄付」
された豊富な政治資金を使えるため、選挙でも非常に有利です。
こうした不公平さも含めて、政治家の家業化を止めることでも河村さんとは一致しています。
この2カ月間やり取りをしてきて分かったことは、河村さんは見かけとは異なり、物凄く緻密だということです。
例えば、日本保守党の37項目の重要政策を作る時も1つ1つの政策について実に細かい。
「これは具体的にどうやるつもり?」
「自分の経験からいくとこの法改正は大変だから、ここの表現はこう変えた方がいい」
など微に入り細を穿つ。
深夜、思わず
「こんな時間まで・・・」
と思うような時にも電話がかかってきて、
「この問題については過去、誰々が質問主意書を出していて、政府はこう答弁してきたはずだから、それを前提に文言をこう変えた方がいい」
と詰めることも度々。
つまり、河村さんの中では、これを国会で質問したらどうなるかという風景が見える。
だから攻め口はこうだという政治の現場の動きを教えてもらえていることは、我々にとって非常に大きいです。
とにかく河村さんは世間のイメージとは異なる人であり、私たちにとって最高の先生です。
■自民党が無視できない存在
★櫻井
河村たかし氏という個性の強い政治家を得た日本保守党は、今の岸田政権とどのように向き合って行こうとお考えですか。
★有本
具体的に申し上げますと、岸田政権による内閣改造が行われた2023年9月13日、北朝鮮がミサイルを複数回発射したことを受けて、日本保守党のXで次の発言をしました。
「本日、北朝鮮はミサイル発射という暴挙を複数回働いた」
「日本保守党(代表:百田尚樹)は、日本政府に、北朝鮮への制裁の拡大を求める」
「まず、現在、朝鮮総連の最高幹部と一部技術者を対象にしている
『再入国禁止』
の制裁を総連の中央委員と専従職員に拡大すべきである」
今の立憲民主党や共産党といった野党のように、くだらない揚げ足取りやスキャンダル追及、夢物語に現(うつつ)を抜かすのではなく、毎回
「遺憾砲」
の政府に対して具体策を提示し、
「これをやるべきではないか」
「何故こういうことをしないのか」
と突き付けていきたいと思います。
★櫻井
再入国禁止の範囲拡大は北朝鮮に対する有効な手段であり、私も賛成です。
一方で、そうした効果的な政策を政府に実行させるためには、やはり議席を確保し数の力が必要となってきます。
この辺りはどうお考えですか。
★百田
日本保守党に期待して下さっている読者の皆様に水を浴びせるようなことを言って申し訳ないのですが、ボクシングに喩えると日本保守党はまだプロデビューもしていない、言わば4回戦ボーイ以下の存在です。
この1年、2年で、絶対的王者であるチャンピオンの自民党にタイトルマッチを挑むなんてことはおこがましい。
ただ、私はこう思っているんです。
この1年、2年、3年は自民党と対峙できないが、5年先を見てほしい、と。
1つ1つやるべきことをやっていけば、必ず自民党が無視できない存在になると思うのです。
そして5年、10年後に自民党を打ち破ることが出来るかもしれない。
「何だ10年もかかるのか」
と言って諦め、最初のスタートを切らなければ、その10年先は永遠にやってきません。
だから、今、行動しなければならない。
私は今、67歳です。
自分の年齢と体力を考えたら、あと何年出来るか分かりません。
正直、自民党を脅かす存在になるまで活動出来ないかもしれません。
しかしながら、今、思いを共にする党員が想像以上に増えています。
更に、今後は政治塾のようなものも立ち上げていきたい。
そうした同志の中に後を託せる素晴らしい人材が必ずいる、と信じています。
■全国に同志の輪を
★有本
新党を宣言した当初から、様々な人から
「どうやって議席を取るのか」
「誰が選挙に出るのか」
と散々訊かれました。
ですが、我々は敢えてそうした声を全て聞き流してきたんです。
その根底には、
「議席は本来、後から付いて来るものだ」
という考えがあるからです。
失礼ながら、自民党をはじめとした今の政党は、総じて
「本末転倒」
に陥っていると思います。
政党とは本来、理念や思いを共有する人が集い政策を叩き出す場であって、その代表に相応しい人を議員として送り出すべきです。
ところが、今の永田町の皆さんは選挙のことしか頭にない。
私たちはこの選挙互助会的な考えではなく、政党の王道を歩みたいと思っています。
即ち、志を同じくする党員を集めることに主眼を置きたいんです。
義理で入る名ばかり党員や、お勤め先で半ば強制された党員ではなく、意志を持つ党員に1人でも多く集まって頂く、全国津々浦々にそんな同志の輪を広げていけば、議席は後から自ずと付いて来るとの考えです。
我々の街頭演説をあれだけ大勢の方が足を止めて聞いて下さったように、今後も
「今、岸田政権が行っている政策のここがおかしいのではないか、これが問題なのではないか、我々はこう考えている」
といったことを1つ1つ皆さんの前で訴えていけば、必ず届くと信じています。
そうすれば、自ずと選挙の結果に結び付いていくだろうと考えているのです。
■過去の新党が失敗した理由
★百田
もちろん党員が10万人、15万人になっても、全国的に見た場合、決して多くはないし、小選挙区で勝つとなるとハードルはかなり高い。
ただ、参議院になってくると全国比例がありますから、そこではかなり闘えるのではないか。
日本保守党を立ち上げた時、多くの人からしたり顔で、
「新党の未来なんてないんだ」
「この20年ほどの間に一体どれほどの新党が生まれて、如何に全部消えていったか」
と、それはもう耳にタコが出来るほど聞かされました。
過去の新党を1つ1つ挙げながら、新党なんて絶対に無理だと。
しかし、過去の新党は全てが政治家の都合による
「寄せ集め」
なんです。
例えば、
「自民党の右に柱を立てる」
として、旧日本維新の会に所属していた石原慎太郎氏を支持するグループが集まって2014年8月に結党した
「次世代の党」
は当初、衆院19人、参院3人の計22人がいたんです。
ところが、2014年12月の衆院選で19議席から2議席と惨敗した。
★有本
その後継が、中山恭子さんが代表を務めた
「日本のこころ」
です。
この
「日本のこころ」
の党員数を皆さんはご存じでしょうか。
ほとんど知られていないのですが、1500人です。
「次世代の党」
にも
「日本のこころ」
にも立派な政治家がたくさんおられましたが、肝心の党員という
「基盤」
がなかったのです。
つまり、これまでの新党は政治家の都合で作られてきたことを物語っているとも言えます。
★百田
新党を立ち上げようと言って、
「よし、どれだけ議員を集められるかが勝負だ」
「皆来てくれ」
「やったぞ、10人来た! お、15人に増えた! 19人も集まったで!」
とやっても、土台がない党には何の力もないんですね。
私たちはそうした愚は絶対に犯しません。
「とにかく議員の数だ」
と寄せ集めた団体を作ったら、今、日本保守党を応援して下さっている党員が一番がっかりするでしょう。
たちどころに党員が離れていく。
そんな政党は議員が何人いようが意味ない。
★櫻井
すると、河村さん以外は既存の政党から日本保守党に来ることはないと考えていいですか。
★百田
そこはまだ秘密です(笑)。
★有本
仮に今後、既存の政党から入って頂く方がいたとしても、河村さん同様、私たちの理念に共感して下さって、何度も話し合いを重ねた末に
「この人だったら一緒にやれる」
という人でなければ行動は共にしません。
それから、闘える人でないと。
メディアに叩かれたぐらいで折れるような人とは組めませんね。
この点は、はっきりと申し上げておきたい。
■何が起こるか分からない
★櫻井
単なる数合わせはしない、議席は自ずと後から付いて来るというお考えも分かります。
分かった上で、例えば日本保守党が重点政策として掲げる憲法改正でも、現実問題として改正の発議には衆参両院の3分の2以上の賛成が必要となる。
つまり、政策を進めていく上ではやはり数がものを言う。
改正するアプローチとして、他の政党との協力も行わなければならない。
自民党とも協力しなければならないわけですが。
★百田
政党同士の交渉条件は力関係に左右されますから、もし日本保守党がこのまま党員数を増やし、議席もある程度増えれば他党も我々の意見に乗ってくるかもしれません。
ただ、繰り返しになりますが、今のろころ我々はまだリングにも上がれていませんので、他の政党も我々のことなど相手にもしていないでしょう。
「直に消えていくやろ」
としか思っていないのではないでしょうか。
なので、まずは党員を増やし、その上で1つ1つ議席を確保していきながら戦っていきたいと思っています。
★有本
矛盾する言い方になってしまうのですが、議席を確保していかなければ影響力を発揮できない一方で、政治家は時の風や世論に非常に影響される存在でもあります。
この数カ月間、様々な方から色々な声を掛けて頂きましたが、結党会見後の名古屋での街頭演説の前と後では、明らかに反応が違いました。
多くの聴衆が集まった状況を見て、
「日本保守党とは仲良くしておいた方がいいのではないか」
と政治家なら思うのかしれません(笑)。
★百田
良いか悪いかは別にして、その時の風や流れというのは非常に大きいものがあります。
今の若い人たちにとっては
「そんなことがあったのか」
という昔の話になっていますが、2009年、一瞬にして自民党が下野して政権交代が起きたんです。
そんなことはそれまで考えられないことでした。
これは夢物語と受け取られ笑われてしまうかもしれませんが、一旦風が吹けば何が起こるか分からないとも言えます。
★櫻井
民主党の場合は、政権交代前の参議院選挙で比例票の獲得数は民主党の方が多かったわけですが、民主党に風が吹いたのは確かです。
そうした風を日本保守党が今の段階からでも起こすことは可能だと思うのです。
特に憲法改正については、議席を確保する前からどんどん改正の風を巻き起こして頂きたい。
憲法改正が必要だと考える人たちが日本保守党の党員になることは、党にとっても大変な力になります。
何よりも日本の国益になる。
既に5万4000人を超える人々が党員になったということは、憲法改正といった国益に適う政策実現への期待感の表れだと見ます。
★有本
多くの人たちが我々に期待して下さっていることは、
「当たり前のことをやってほしい」
ということだと思っています。
憲法改正、議員の家業化の抑止、移民政策の是正、今、その当たり前のことが、永田町では全く行われていないどころか、議論さえされない。
一方で、とんでもない事ばかりが次々と行われている。
ここで日本を守るための当たり前の主張を出来ないようでは、日本保守党も存在する価値がない。
それぐらいの覚悟と緊張感は常に持ってやっていきたい。
★百田
日本保守党がこれからポシャッテしまうのか、伸びていくのかは正直分かりません。
ただ、これは私の願望でもあると思うのですが、ずっと一定のペースで伸びていくのではなく、ある程度行った時点でガッと急激に伸びる気がしています。
★櫻井
日本保守党の支持が急上昇し、憲法改正をはじめ国益に適う政策を次々に実行していくことを大いに期待しています。
(2023年10月20日放送の言論テレビを基に再構成しました)
http://www.asyura2.com/23/senkyo292/msg/484.html#c18