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国守る異次元の人的基盤強化を 麗澤大学特別教授、元空将 織田邦男
2023/9/14 8:00
https://www.sankei.com/article/20230914-3XX63EKAXZITJHCJNOU3YYF4TM/
2023年8月29日に厚生労働省が公表した人口動態統計速報によると、2023年上半期の出生数は37万1052人(前年同期比3.6%減)で、2年連続40万人を割った。
通年でも2022年同様80万人を割ることが確実である。
我が国を取り巻く厳しい安全保障環境下にあって、少子化の進行は深刻な問題であり、まさに「静かなる有事」である。
■人材は防衛力支える中核
人材は装備品と共に防衛力を支える中核である。
今後、無人化、省人化、AI活用などが更に進むであろう。
だが限界がある。
頭数が必要な作戦は依然残る。
災害派遣などはその典型だ。
2022年度、任期制隊員の自衛官候補生(18〜32歳対象)の採用について約9000人の採用計画に対し、入隊者は半数にも満たなかった。
任期制隊員は現場を支え、戦闘力の基盤をなす。
2〜3年の期間限定で自衛隊に入隊し、任期が満了すると継続任用を希望しなければ退職して市民に戻る。
少子化は今後益々加速し、自衛官募集は悪化の一途を辿る。
自衛隊の戦力基盤が今、崩壊しつつある。
2022年暮れ、国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画の3文書が閣議決定された。
この中でも、少子化の危機感が共有されており、
「人的基盤強化」
が謳われた。
防衛省は大臣の諮問機関として
「防衛省・自衛隊の人的基盤の強化に関する有識者検討会」
を設け、2023年7月、報告書が提出された。
今後検討すべき人材確保策として、待遇改善、勤務環境の向上、採用方法の見直し、民間の高度人材の登用などが挙げられた。
全て重要であり、完全施策化が期待される。
だが、これらは弥縫策に過ぎず、今後の少子化の猛威には対応できていない。
国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2020年に約7500万人だった生産年齢人口(15〜64歳)は、2043年には約6000万人を下回り、2062年には約5000万人を割るという。
凄まじい少子化の到来であり、深刻な人手不足を迎えるのは確実だ。
官庁や民間の間で熾烈な人材獲得競争が過熱するだろう。
パイが縮小していく中、パイを奪い合っても所詮、全体で最適にはならない。
従来の発想では、やがて国の防衛は立ちいかなくなる。
防衛、警察、消防、海保
そこで提案である。
命を懸けて国家、国民に奉仕する者、あるいは業務の性質上、一定の危難に身を晒さなければならない法的義務がある者(以下「特別義務者」)、つまり防衛、警察、消防、海保などの人材については一括管理し、有効活用してはどうか。
国家公務員と地方公務員の制度上の問題は、ここでは措く。
防衛、治安、火災・救急といったサービスは国民に不可欠なものである。
それぞれ求められる専門知識や職務内容は異なるが、職務遂行に当たって厳格な規律や高い使命感、倫理観が求められるところは共通している。
ならば特別義務者を目指す若者は最初に自衛隊に入隊し、任期制隊員として教育、訓練を受け、2年後にそれぞれ、警察、消防に移ることを制度化してはどうか。
自衛官は若年定年制が採用されているように、特に若さが求められる。
警察や消防は、自衛隊で2年間鍛えられた即戦力の人材を受け入れることになる。
身体を鍛え、規律を学ぶといった基礎的教育を施す手間が省け、専門的知見を教育するだけで立派な警察官や消防官が確保できる。
海上保安官要員もまず海上自衛隊で訓練を受ければ、同じ効果が期待できる。
■セクショナリズム排し
自衛隊としては、戦力基盤たる若年隊員の充足率が向上し、精強化が図られる。
また自衛官を経験した警察官、消防官、海上保安官はいざという時の予備戦力になり、総合戦力強化が図られる。
加えて自衛官から警察官、消防官、海上保安官への転職が制度化されれば、任期制隊員の再就職の選択肢が広がり、自衛官の処遇改善に繋がる。
人事管理上も、適切な人的ピラミッドの構築に資する。
特別義務者という国家の「宝」の人材有効活用策であり、検討に値すると考える。
ただ、セクショナリズムに凝り固まった組織からは、猛反対が出ることが予想される。
軍事アレルギーに染まった朝野からは反発が出るだろう。
できない理屈を考えるのは、官僚の得意技である。
だが、最早そんな悠長なことが許される状況ではない。
異次元とも言える人的基盤強化策が求められている。
国家の死生存亡がかかっているのだ。
政治の強いリーダーシップの出番である。
少子化の深刻さは、ほとんどの日本人が自覚している。
だが、どこか他人事だ。
比較的はっきりしている将来を分かっていながらズルズルと状況に流され、遂には手遅れになって破綻を来すというお馴染みのパターン、つまり大東亜戦争に引きずり込まれていったパターンを再び繰り返すのか。
それとも縦割りを排する異次元の改革を断行して、厳しい安全保障環境に立ち向かうのか。
残された時間は多くない。
http://www.asyura2.com/16/genpatu47/msg/799.html#c84