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[経世済民128] 今の株価は1988〜89年のバブルに近い "適温経済"は2019年に覆される(PRESIDENT) 赤かぶ
4. 2018年8月28日 21:44:16 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1335]
株、信用買い残が今年最低の2兆9729億円に・24日時点
2018/8/28 18:25

 東京証券取引所が28日発表した24日申し込み時点の信用取引の買い残高(東京・名古屋2市場、制度信用と一般信用の合計)は2週連続で減少し、17日申し込み時点に比べて389億円少ない2兆9729億円となった。節目の3兆円を下回り、今年最低の水準。信用買いを入れていた個人投資家が株式相場の上昇を受けて利益確定売りを出し、買い持ち高を減らしたとみられる。

 この週(20〜24日)の日経平均株価は、円安・ドル高で輸出企業の採算が改善するとの期待から331円(1.5%)上昇した。信用買い残は、2017年11月24日申し込み時点(2兆9073億円)以来9カ月ぶりの少なさだった。

 信用売り残は前の週より687億円多い8379億円と、およそ2カ月ぶりの高水準だった。増加は2週ぶり。個別銘柄では、JディスプレやみずほFGなどの信用買い残が減少し、マネックスGやビックカメラなどの信用売り残が増加した。

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

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米中貿易戦争 収束に備えを(大機小機)
2018/8/28 16:00日本経済新聞 電子版
 世界経済は安定成長を続け、企業業績も拡大している。米国が今年4回利上げするとの予想は織り込み済みとみなされている。テクニカル指標に目を転じれば、様々な上放れシグナルがともる。それなのに、世界の株価は膠着感が強い。デジタル時代の覇権争いの様相を呈している米中貿易戦争が、投資家を金縛り状態にしているのだ。

 逆に言えば、争いが収束すれば世界の株価は一挙に上昇する。筆者は十分あり得るシナリオだと考える。

 時にハチャメチャに見えるトランプ米大統領の政策だが、対中国では戦上手ぶりを発揮している。知的財産権の侵害やサイバー攻撃などで米国を脅かす中国は、米国民の間に悪感情が強い。これに「便乗」し、対中戦で万全の態勢を整えた。一方、欧州連合(EU)とは急きょ、関税撤廃に向けての交渉に同意し、これまでの対立を棚上げ。メキシコ、カナダとも北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉への道を開いた。

 中国は米国との貿易戦争に長くは耐えられないだろう。減税効果と歳出拡大の後押しで、米国の4〜6月の成長率が年率4%台と絶好調なのに対し、中国はインフラ投資の落ち込みや個人消費の伸び悩みなどで成長減速が顕著だ。

 中国には関税引き上げ合戦を続ける余力もほとんど残っていない。米国の対中制裁対象は第1弾から3弾までの合計で2500億ドルと、昨年の中国からの輸入総額(約5000億ドル)の半分程度にとどまる。しかし、中国の対米制裁対象はすでに1100億ドルに達し、米国からの昨年の輸入総額(約1300億ドル)に迫っている。

 中国企業の技術力の進歩によって、中国はコピーする側からされる側(知財大国)に変貌しつつある。米国が非難する、デジタル分野の知的財産権侵害を続ける必要性は薄れている。世界一のデジタル国家を目指す「中国製造2025」も、自力での達成のメドをつけたといわれている。

 以上を勘案すれば、中国は今秋にも習近平(シー・ジンピン)国家主席がデジタル分野や通商上で思い切った妥協案を出すことが考えられる。ディール(取引)の短期完結がモットーのトランプ大統領がこれをのみ、休戦が実現する可能性も十分ある。これへの備えも重要だろう。

(逗子)
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さらば株式市場、世界の上場企業数減少に転じる
カネ余り時代 企業と市場の溝(上)
2018/8/28 16:00
日本経済新聞 電子版
 世界的な資金余剰を背景に、企業と市場の関係が変わりつつある。非公開化を選ぶ企業が増え、世界の上場企業数は減少に転じた。証券取引所は上場企業をつなぎとめようとルール緩和に走る。長期的に見れば、世界の上場企業数は実は2000年代半ばから伸び悩みが鮮明となっている。企業の市場離れの根幹には世界の低成長化と成長資金需要の縮小があり、上場企業数の減少は一過性ではない可能性がある。

 世界銀行や大和総研などによると、世界の上場企業数は17年で約4万5000社と、過去最高だった15年から500社超減った。
■米の半減補えず
 主因は先進国だ。なかでも米国は、8000社を超え過去最高だった1996年からほぼ半減した。インドや中国は増えているが、欧米の減少を補いきれない。
 上場企業数減少の背景には、短期志向の投資家や上場企業に課せられる厳しいルールを敬遠して自ら非公開化を選ぶ企業の存在がある。
 英国・ロンドン、高級ブランド店が軒を連ねる「ニューボンドストリート」の一角で、宝飾品のTASAKIの欧州旗艦店の開店準備が進む。真珠だけでなく、時計や服飾雑貨をそろえて年内に開業する予定だ。
 TASAKIは17年にMBO(経営陣が参加する買収)で非公開化。一時的に損益を悪化させかねないロンドンの旗艦店のような大型投資がしやすくなった。同社は「中長期の視点で成長戦略を進めるうえで非公開化は有効」と説明する。
 「経営の自由度が増した」。16年に上場を廃止した婚礼大手、ノバレーゼの増山晃年取締役の表情は明るい。市場の目から解放されたことで、「不採算事業の見直しなど経営判断のスピードが上がった」という。

非公開化を断念した米テスラのイーロン・マスクCEO=ロイター
 非公開化のメリットは個人など不特定多数の株主を排し、株価の変動に惑わされずに経営できる点だ。「短期の株価を気にする投資家が増え、中長期の成長を考えたい経営者との乖離(かいり)が大きくなっている」(カーライル・ジャパンの大塚博行マネージングディレクター)。非公開化を目指していたテスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)も非公開化の理由を「テスラをできるだけ短期的な考え方から解放する」と説明していた。
■ファンドが資金
 こうした動きを加速させているのがカネ余りだ。MBKパートナーズの加笠研一郎代表取締役は「低金利下でファンドには多額の資金が流入している」と解説する。「多額の資金を持つファンドの助けを借りることができれば、企業が資金調達のために上場にこだわる理由はなくなる」(野村資本市場研究所の岡田功太主任研究員)
 ただ世界の上場企業数の伸び悩みは今に始まったわけではない。90年代には年間2000社を超えるようなペースで増えていた上場企業数は00年半ばから停滞が鮮明となった。

 見逃せないのは、世界経済の大きな構造変化だ。00年代以降、先進国では1〜2%台の成長が常態化した。ローレンス・サマーズ元米財務長官は「米国は金融危機以前から深刻な問題に直面していた」と世界的な需要不足による経済の「長期停滞論」(セキュラー・スタグネーション)を主張する。
 産業構造の変化も著しい。工場建設に巨額の資本が必要な自動車や製鉄会社など重厚長大型産業の成長が鈍化。代わって「成長が期待されるのはフィンテックやシェアリングなどのサービス業が目立つ」(大和総研の太田珠美主任研究員)。IT・サービス企業にとって重要なのは画期的なアイデアを生み出す人材で、市場から成長に必要な資本を調達するニーズが乏しい。
 企業の投資不足と資金余剰の背景には、こうした世界の成長率低下や産業構造の変化がある。
 米国の10年物国債の利回りは10%を超えていた80年代から右肩下がりが鮮明だ。世界の上場企業数が減少に転じた理由が、リーマン・ショック後の金融緩和だけではないとすると、この流れは長期にわたって続く可能性がある。
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[経世済民128] トランプと習近平、それぞれが抱える憂鬱と貿易戦争の行方 まさに内憂外患だ(現代ビジネス) 赤かぶ
2. 2018年8月28日 22:11:39 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1336]
米中貿易戦争「本当の闘いは11月の中間選挙後」という見立て ある経済関係者が語った「中国の戦略」
近藤 大介『週刊現代』特別編集委員
プロフィール
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「米中新冷戦」の影響
先週、アメリカ東部時間23日深夜0時1分(日本時間同日午後1時1分)、米トランプ政権が、中国向け追加関税の第2弾を発動した。

USTR(米通商代表)のプレス・リリースにはこうある。

〈 中国のアンフェアな貿易政策に対して、中国製品による第2弾の追加関税を最終決定した。約160億ドル(約1兆7600億円)分の中国製品に25%の追加関税を課す。これは、アメリカの技術や知的財産の強制的な移転という中国のアンフェアな貿易政策に応えたものだ。制裁リストは、7月15日に発表したオリジナルの284品目から、279品目とした…… 〉

279品目とは、半導体、電子部品、プラスチック製品などだ。

一方の中国も即日、かねてから予告していた通り、アメリカ産の自動車、石油化学関連製品、鉄鋼製品など333品目に25%の報復関税を課した。

中国商務部は合わせて、こんなコメントも発表した。

〈 アメリカが23日、勝手に一方的に、中国からの輸入品約160億ドルに、301条の調査に基づいた追加関税25%をかけた。これは明らかに、WTO(世界貿易機関)のルールに違反するものである。

今回、中国は強く反対するとともに、必要な対抗措置を継続せざるを得ない。同時に、自由貿易と多国間貿易を守り抜くため、また自国の合法的権益を守り抜くため、中国はWTOの担当部門に本件を提訴するものである 〉

〔PHOTO〕gettyimages
すでに7月6日には、それぞれ第1弾の追加関税措置を取っている。アメリカは中国製品818品目、約340億ドル分に25%の追加関税をかけ、一方の中国もアメリカ産の農産物など545品目、約340億ドル分に25%の追加関税をかけた。

もはや「米中新冷戦」とも言える状況であり、両国合わせて世界のGDPの4割近くを占めるだけに、今後、世界経済に与える影響は計り知れない。

国際社会全体の問題へ
今回、第2弾となる双方の応酬で、興味深い点が二つあった。

一つは、22日、23日と、中国商務部の王受文副部長がワシントン入りし、マルパス米財務省次官と米中貿易戦争の対応策を協議した。その協議の真っ最中に、双方が追加制裁を発動したという事実だ。

王副部長は北京で、「中国のライトハイザー」の異名を取っている。そんな対米強硬派筆頭の通商問題専門家だが、今回はアメリカに、「アメリカ産の輸入品を増やしますから勘弁してください」と、頭を下げに行ったのである。

それをトランプ政権は、完全に無視するかのように、制裁の第2弾を発動した。このことは、今回の貿易戦争が、単に貿易上の摩擦にとどまらず、米中の覇権争いの様相を呈していて、かつ長期化することを示唆している。

もう一点は、中国がアメリカをWTOに提訴すると宣言したことだ。これによって米中貿易戦争は、「2大国の角逐」から国際社会全体の問題へと広がることになる。

トランプ大統領は過去に、WTOからの離脱の意思を公言している。つまり中国が提訴してアメリカが負けたら、世界のGDPの4分の1近くを占める最大の経済大国が離脱してしまうかもしれないのだ。これはすなわち、WTO体制の崩壊と、ほぼ同意だ。

そのあたりのことを先週、WTOに詳しい方と会って聞いたら、こう答えた。

「WTOの上訴機関には7人の委員がいるが、親中派と目される4ヵ国・地域の委員が、まもなく任期切れになる。そのため、WTOが中国の味方になるとは限らない」

また、中国が最も頼りにしていたEUは、先月早々、トランプ大統領と「手打ち」してしまった。

EUにしても日本にしても、「自由貿易とグローバリゼーション」という観点からは、中国に味方したいところだ。だが、トランプ政権が問題視する中国の社会主義市場経済システム(国有企業の特異な存在など)に関しては、やはり疑心暗鬼でいる。そのため、「中国応援団」とはならないのである。

中国はどうなるのか


トランプ政権は、この後に第3弾として、2000億ドル相当の中国製品に追加関税をかけると予告している。そうなると中国はどうなるのか。また、中国はどうやってこの難題を解決しようとしているのか。

そのヒントとも言えるのが、7月31日に開かれた中央政治局会議だった。この会議は、中国共産党のトップ25人が勢揃いし、ひと月に1回程度開かれている。この時、主に6つの決定を行った。

@「穏中有変」……中国経済の方向を、これまでは「穏中有好」(安定した中に好転が見られる)としてきたが、「安定した中に変化が見られる」に改める。「変化」とは言うまでもなく、トランプ政権との貿易戦争である。★

A積極的財政政策と穏健的貨幣政策……これまでの金融引き締め策を改める。人民元を緩和し、投資を拡大することによって、内需を喚起する。

B「六穏」……就業、金融、貿易、外資、投資、決済期日の6つを安定させる。就業をトップに持ってきたのは、7月に820万人という史上最多の大学生が卒業したためと思われる。政府発表では、6月の失業率は4.8%で、警戒ラインの5%を超えていない。

C「補短板」……いわゆる短所の補強・補填である。特に金融引き締め策によって、地方経済が悪化しているため、鉄道・地下鉄建設を中心とした地方のインフラ投資を拡大させる。

Dレバレッジ率低下政策の堅持……これ以上レバレッジ率(負債率)が上昇すれば、10年前のアメリカのリーマン・ショック時と同様になるので、これを鎮めていく。

E不動産価格統制の堅持……不動産バブルは中国経済最大のリスクと捉え、これを防止していく。
経済学者が非難轟々
8月に北京を訪問した際、まず驚いたのは、「3人幇」なる言葉が飛び交っていて、3人の著名な経済学者らが、「血祭り」に上げられていたことだった。

@胡鞍剛・清華大学公共管理学院教授(65歳)
A金灿栄・中国人民大学国際関係学院副委員長(55歳)
B梅新育・商務部国際貿易経済合作研究院研究員(50歳)

この3人はいずれも、「中国経済はいまや世界一」「すでにアメリカを追い越した」などと吹聴していたという共通点があった。

私は長く中国の学界を見てきたが、中国の経済学者には、3つのタイプがいる。

第一類は、とにかく中国共産党や時の政権に媚びを売って立身出世を目指すタイプ。いわば「習近平の御用学者」だ。その代表格と言えるのが、まるで習近平主席の生き写しのような胡鞍剛教授だった。

毎年、日本の各機関からも招待を受けていたので、日本で最も知られた中国の経済学者の一人だ。私もお目にかかったことがあるが、学者にありがちなエリート臭さがまったくないところが、やはり習近平的だ。ちなみに二人は同い年で、同じ清華閥だ。

第二類は、共産党や時の政権から何らかの役職をもらったりはするけれども、当たらず触らずで、事実だけを淡々と論じるタイプ。同じ清華閥でも、もう一人の著名な経済学者の李稲葵・清華大学中国世界経済研究中心主任教授などが、典型例である。アメリカでMBAや博士号を取った学者に、このタイプが多い。

第三類は、共産党や時の政権にあまり動じず、中国にとって悪いものは悪いと一刀両断するタイプ。ケ小平の改革開放政策の理論作りを行い、88歳の現在も第一線で論調を張っている呉敬琏・中国国務院発展研究中心研究員が典型例だ。

呉氏は2001年の正月、中国中央テレビのインタビューで、「中国の証券取引所は、いわば政府が胴元を務める賭博場のようなもので、先進国とは違う」と発言し、大問題になった。この発言で一時は干されたが、めげることなく自説を述べ続けている。

つまり、第一類の典型のような経済学者が非難轟々というのは、それはとりもなおさず、現在アメリカと互角の貿易戦争を戦っている習近平政権に対する批判なわけである。政府を直接批判できないから、御用学者たちを血祭りに上げているのだ。特に、胡鞍剛教授に対しては、清華大学からの除名運動も起こっていた。

そんな中、私はある中国の経済関係者に、米中貿易戦争についての現状を聞いた。以下は、その一問一答である。

中国が強気に出た理由

「中国にも対抗策はたくさんある」
――北京へ来て意外に思ったのは、いま最大の話題のはずの米中貿易戦争に関する報道が、こちらでは極端に少ないことだ。むしろ日本の方が多いくらいだ。4月に北京を訪れた時は、米中貿易戦争のニュース一色で、「奉陪到底」(アメリカに最後まで付き合ってやろうではないか)が合言葉になっていたのに。

「わが国が最も恐れているのは、アメリカとの貿易戦争によって、中国国内が混乱することだ。混乱を防ぐには、報じない(ようにさせる)ことが一番ではないか。『奉陪到底』は、もう使わない。先制攻撃を仕掛けてきたのはアメリカの方で、こちらは応戦しているのだという事実は、すでに浸透したからだ」

――米中貿易戦争は、第1弾が7月6日に双方340億ドルずつ。第2弾が8月に160億ドルずつ。その後、9月にアメリカが第3弾で2000億ドル分にかけてきたら、中国はどうするのか。

「今回の貿易戦争は、アメリカよりも中国にとって不利だと言う人が多い。それはその通りだと思う。だが、短期的には中国が不利でも、長期戦になればアメリカも相当な打撃を受けるはずだ。中国にも対抗策は多いからだ。

第一に、ボーイングなどから受注している大量の民間航空機をキャンセルする。その分は、欧州のエアバスやロシア製に振り替えていく。

第二に、農産品をアメリカ以外の国からの輸入に切り替えていく。大豆は年間9000万トン輸入し、うち5000万トンがアメリカからだが、ブラジルその他からの輸入を増やせば、代価は利く。

第三に、アップル社のiPhoneをボイコットする。ファーウェイ、シャオミー、OPPO、vivoなど、スマホは中国製品で十分だからだ。

第四に、GM、フォードなどアメリカの自動車会社を中国市場から締め出す。自動車産業も、ガソリン車から電気自動車へ、そして自動運転車という転換点を迎えており、アメリカ製品がなくても十分やっていけるからだ。

トランプは、農家に補助金を出して救済するなどと言っているが、一年はできても毎年はできないだろう。

ともあれ、まずはアメリカと話し合い、トランプの拳を振り下ろしてもらうよう、方法を模索していく」

――中国側は、当初の強気一辺倒から、いまは防戦一方を強いられている。状況判断を誤ったのではないか。

「俗に『樹大招風』(樹が大きくなれば風を招く=出る杭は打たれる)と言う。これは個人的意見だが、中国はあと10年、いや5年でもよいから、ケ小平の遺訓『韬光養晦』(目立たず実力を蓄える)を堅持すべきだったのだ。

中国がトランプに対して強気に出た背景には、二つのことがあったように思う。一つは、昨年11月にトランプが訪中した時の印象がとてもよかったため、トランプが本気で中国に牙を剥いてくるとは想定していなかった。あの時、2535億ドルものプレゼント(中国からアメリカへの投資や購買)を与えて、それでもう貿易摩擦問題は解決したと思ったのだ。

ところがトランプは、北京から戻るや、態度を一変させた。中国からすれば、『あの時の2535億ドルは一体何だったのだ?』という怒りがあった。

もう一つの背景は、習近平政権の第1期5年が、何もかもうまく行き過ぎたことだ。政治的には習主席の一強体制が確立し、経済的にはアメリカの3分の2規模までGDPが拡大した。外交的には『一帯一路』に多くの国が賛同し、軍事面でも科学技術面でも世界ナンバー2の地位を確立した。

3月20日に、全国人民代表大会が閉幕した。習主席は憲法改正で自らの任期を取っ払い、省庁を改編し、ほしいがままの幹部人事を断行した。つまり2期目の習近平政権が始動した時点で、習政権に死角はゼロだったのだ。

もともと習主席の『原点』は、1996年の台湾海峡危機(初の台湾総統直接選挙で、台湾独立派の李登輝総統の当選を阻むため、人民解放軍が威嚇演習を繰り返したが、アメリカ軍の2隻の空母に駆逐された)を、現場で体験したことだ。あの時に、中国は国産にこだわって強国にならなければいけないと確信したのだ。だからこれからは強国の精神で進んでいくとした。

ところが、習体制が完成した二日後の3月22日に、トランプが突然、中国に対して貿易戦争を『宣戦布告』してきた。そこでわが国としては、『奉陪到底』を合言葉に、徹底抗戦に出ることにしたのだ。習主席の周囲の幹部たちも、『アメリカの方が先に音を上げるに決まっています』と吹聴した……」

「十分妥協点を探れる」

「これが今回の貿易戦争の真実だ」
――それが、3回にわたる大臣級協議でも、米中双方の溝は埋まらず、トランプ大統領の態度はエスカレートしていった。中国側の代表は、習近平主席の中学時代の同級生である劉鶴副首相だが、劉副首相の力量に、疑問の声が上がっている。

「劉鶴副首相は、生真面目な学者出身で、トランプ政権のような海千山千の連中との交渉には不慣れだった。それでも、中国は今後とも、『表看板は劉鶴、裏看板は王岐山(副主席)』という二枚看板で進んで行く。これは個人的な意見だが、誰が中国側代表になっても、結果はそんなに変わらないだろう」

――それは、どういうことか?

「当初、われわれが考えていたのは、これはトランプのハッタリだということだった。トランプは商人だから、最初に相手に対して吹っかけ、その後、『討価還価』(値引き交渉)に出てくる。すなわち、最初の発言はあくまでも『言い値』にすぎないと判断したのだ。

だが、実際には、アメリカは非常に戦略的に中国叩きの計画を立てていることが分かってきた。中国は市場規模ではすでにアメリカを追い越し、資金力では五分五分の力を蓄えた。アメリカにまだ追いつけていないのは、技術力だけだ。だがまもなく、最先端技術を手にするだろう。

アメリカは、そのことに危機感を抱いたのだ。現在の中国は、20世紀のソ連の軍事力と、日独の経済力を合わせた以上のパワーでもって、アメリカに挑戦してきている。このままでは、アメリカの先端技術とドル体制を基軸とした世界秩序は、中国に取って代わられるかもしれない。世界中がアメリカ国債を買わなくなるかもしれない。

アメリカは、いま中国を叩かないとアメリカの時代は終わると判断したのだ。中国が進める『一帯一路』は、ブレトンウッズ体制を根本から変革することが裏の目的だと、アメリカは見ているのだ。だからアメリカは、AIIB(アジアインフラ投資銀行)に参加しないし、日本にも入らせない。こうしたことが、今回の貿易戦争の真実だ」

――それならば、短期間には、つまり11月6日のアメリカの中間選挙までには、米中貿易戦争は解決しないのではないか?

「その通りだ。ファーウェイとZTEを事実上、アメリカから締め出したが、そういったことをどんどんエスカレートさせていくだろう。

アメリカという国は、自国の覇権を維持するために、どんなことでもやる国だ。リーマン・ショックの後、ユーロがドルに取って代わろうとするや、ギリシャ危機を煽ってEUを弱体化させた。

中国が日本、韓国とFTA(自由貿易協定)を結ぼうとするや、石原慎太郎(都知事)をワシントンに呼んで、釣魚島(尖閣諸島)を東京都が買うと言わせて、中日関係を破壊させた。それで中国は、韓国と先にFTAを結んだら、アメリカは今度は韓国にTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)を配備して、中韓関係を破壊した」

――それはあまりに「謀略論」に思えるが……。ともあれ再度聞くが、今後どのようにして解決を図っていくつもりなのか?

「1979年に中米が国交正常化を果たした時、一部のアメリカの強硬派は、こう主張した。『中国と国交を結び、中国の発展を助けてはならない。そうすれば中国はいつしか巨竜と化し、アメリカに対して牙を剥くだろう』。その時にこう主張していた人々が、再び『それ見たことか』と声を上げ始めている。

いま想定しているのは、11月のアメリカ中間選挙は、貿易戦争の終わりではなく始まりだということだ。中間選挙が終わり、アメリカが冷静になって初めて、本格的な交渉が始まる。その後、一年で交渉をまとめるのが当面の目標だ。つまり、2020年秋の、トランプが再選を賭けた大統領選挙まで、この問題を引きずらないということだ。

いまわれわれは、日本とドイツがどうやってアメリカとの貿易摩擦を解消していったかを、深く研究しているところだ。それにしても、日本人とドイツ人というのは、クソ真面目な民族だと思う。幸い中国人は、頭がもっと柔軟だ。そしてトランプも、決して真面目なタイプではない。中国とアメリカは、十分妥協点を探れると信じている」

1年3ヵ月ぶりの日中財務対話

とってつけたような「微笑」
おしまいに、日中関係についてもひと言、言及しておきたい。
米中貿易戦争が激化するほど、中国が日本に微笑外交を行うという現象が起こっている。今週31日には、1年3ヵ月ぶりの日中財務対話を開くことが、急遽決まった。日本からは麻生太郎財務相以下、幹部がズラリ参加する。
ついこの間まで、中国側は「もはや日本との財務対話など考えていない」などと冷たかったのに、手のひらを返したような恭しさなのだ。
8月12日には、日中平和友好条約締結40周年を迎えたが、個人的には、こうしたとってつけたような友好は、あまり望ましいものとは思わない。
だが、9月20日に自民党総裁選挙を控えた安倍晋三首相も、9月11日〜13日にウラジオストクで行われる東方経済フォーラムで、習近平主席との日中首脳会談を望んでいる。日本も中国を「政治利用」しているのだから、文句を言えた立場ではないが…。
ともあれ、日本にも多大な影響を与えるこの米中貿易戦争、これからも引き続き論じていきたい。

本文で述べたアメリカとの貿易戦争以外にも、近未来の中国には、様々な問題が重くのしかかってきます。ご高覧ください!

【今週の推薦新刊図書】

『安倍晋三の真実』
著者=谷口智彦
(悟空出版、税込み1,620円)
26日に、安倍首相が鹿児島で、3選に向けた出馬宣言を行い、事実上の自民党総裁選挙が火ぶたを切った。そんな中、スピーチライター(内閣官房参与)という立場から、安倍首相を論じたのが本書だ。「首相官邸で働くということは大変だ」とつくづく思った。まさに裏方の世界満載の奇書、いや稀書だ。

 


米中貿易戦争のウラで、いま中国で起きている「ヤバすぎる現実」
もう限界…報道されない現場の悲鳴
週刊現代講談社
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米中貿易戦争でアメリカとつばぜり合いを続ける中国。アメリカに対して強気姿勢を見せているウラで、じつは中国国内では新しい問題が次々に勃発している。日本のメディアが報じないそのヤバイ現実を、『未来の中国年表』著者の近藤大介氏が明かす。

アメリカが最も恐れていること
米トランプ政権が、中国製品に関税をかけたり、中国からの投資に規制をかけようとしたりと、「なりふり構わぬ」格好で、中国を潰しにかかっています。

なぜトランプ政権が、このような行為に及ぶのかと言えば、それは「未来の中国年表」を見ると一目瞭然です。「未来の中国年表」とは、「人口はウソをつかない」をモットーに、人口動態から中国の行く末を予測したものです。

現在の米中両大国の人口を比較すると、中国は、アメリカの約4.2倍の人口を擁しています。

経済規模(GDP)については、2017年の時点で、63.2%まで追い上げています。このペースで行くと、2023年から2027年の間に、中国はアメリカを抜いて、世界ナンバー1の経済大国となるのです。

先端技術分野に関しては、アメリカにとってさらに深刻です。

国連の世界知的所有権機関(WIPO)によれば、各国の先端技術の指標となる国際特許出願件数(2017年)は、1位がアメリカで5万6624件ですが、2位は中国で4万8882件と肉薄しています。

しかも企業別に見ると、1位が中国のファーウェイ(華為)で4024件、2位も中国のZTE(中興通訊)で2965件。

3位にようやくアメリカのインテルが来て2637件となっています。トランプ政権がファーウェイとZTEの2社を目の敵にしているのも、アメリカの焦燥感の表れなのです。

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これに加えて、消費に関しては、14億中国人の「爆消費」が世界経済を牽引していくことは、「未来の中国年表」から見て、間違いありません。5年後には、中間所得者層が4億人を突破し、彼らの「爆消費パワー」は、計り知れないのです。

例えば、世界最大の電子商取引企業アリババ(阿里巴巴集団)は、毎年11月11日を「消費者デー」に指定して、24時間の特売を行っています。

昨年のこの日の売り上げは、1682億元(約2兆8000億円)に達し、これは2016年の楽天の年間取扱額に、ほぼ匹敵する額です。

中国でアリババのライバルである京東も、6月1日から18日までを「消費者デー」に定めて、同様の特売を行っています。今年のこの期間の京東の売り上げは、1592億元(約2兆7000億円)に達しました。

このように、近未来の世界のマーケットは、まるで中国という巨大な掃除機に吸引されていくかのように動いていくことになります。それは、日本企業もアメリカ企業も同様です。

3000万人独身男の憂鬱

急増する「空巣青年」問題
それでは、近未来の世界は中国の天下になるのかと言えば、必ずしもそうではありません。EU28ヵ国、ASEAN10ヵ国のそれぞれ2倍以上の人口を擁する中国は、悩みもまた2倍以上(?)と言えるのです。

たとえば中国は、1978年に始まった改革開放政策に伴って、「一人っ子政策」を、2015年まで続けました。憲法25条に「国家は一人っ子政策を推進実行する」と明記し、違反者には厳しい罰則を定めました。

21世紀に入って、「一人っ子政策」の弊害が多方面に表れてきましたが、その最たるものが、いびつな男女差です。

特に農村部では、どうせ一人しか産めないなら男児を産もうということで、さまざまな方法を使って男児を産んだため、子供の男女比が120対100くらいまで開いてしまったのです。

国連では107までを「正常国家」と定めているので、中国は明らかに「異常国家」です。

その結果、2年後の2020年には、結婚適齢期の男性が、女性より3000万人も多い社会になります。中国では「3000万人独身男の憂鬱」と題した記事も出ています。

彼らは「剰男」(余った男)と呼ばれていますが、嫁を探しにアフリカまで出かける「剰男」も出ているほどです。

さらに、結婚を半ば諦めた「空巣青年」も急増中です。親元を離れて都会で一人暮らしをし、スマホばかり見て引きこもっている若者を「空巣青年」と呼ぶのです。

若者に関して言えば、2022年に大学の卒業生が900万人を超えます。中国の大学生は昨年9月現在、3699万人もいて、世界の大学生の2割を占めます。日本の約13倍の学生数で、経済規模は日本の2.5倍もないので、就職先がまったく足りません。

若年失業者が増すと、反政府運動などを起こすリスクも増すので、中国政府は必死に起業を勧めています。昨年は、年間600万社以上が創業し、1351万人の新規雇用を確保したと誇りました。

2人で起業した企業が600万社できれば、それだけで1200万人の雇用を確保したというわけです。

ところが、600万社がその後、どうなったかについては、発表がありません。おそらく、死屍累々の状況が生まれているはずです。それでも、「その日の就業」を最優先するという究極の自転車操業社会です。

「421家庭」の悲劇

「マンション離婚」がとまらない理由
2024年になると、年間600万組が離婚する時代になります。つまり1200万人で、これは東京都の人口に近い数です。ちなみに日本の離婚件数は21万7000組(2016年)なので、中国では日本の27.6倍も離婚していくことになります。

北京や上海などの大都市では、離婚率はすでに4割に達しています。離婚率が5割を超えるのもまもなくです。

逆に結婚件数は5年で3割減っているので、中国は近未来に、年間の離婚件数が結婚件数を上回る最初の国になるのではという懸念も出ているほどなのです。

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なぜこれほど離婚が多いのかと言えば、その大きな理由として、やはり「一人っ子政策」の弊害が挙げられると思います。

彼らは幼い頃から、「6人の親」に育てられると言います。両親と、両親のそれぞれの両親です。

祖父母が4人、親が2人、子供が1人であることから、「421家庭」という言葉もあります。そのため、男児なら「小皇帝」、女児なら「小公主」と呼ばれ、贅沢かつワガママに育つのです。

そんな彼らが結婚しても、我慢することが苦手で、かつ便利な両親の実家が近くにあるため、容易に人生をやり直してしまうのです。

さらに、中国特有の離婚も急増中です。それは「マンション離婚」と呼ばれるものです。

マンション投資が過熱すると、価格が急騰して庶民が買えなくなるため、政府は2011年以降、「ひと家庭に1軒のみ」といったマンション購入制限令を出してきました。

それならば「離婚してふた家庭になれば2軒買える」というわけで、「マンション離婚」が急増したのです。そのため、例えば北京市役所は「1日の離婚届受け付けを1000件までとする」という対策を取っているほどです。

2025年になると、中国は深刻な労働力不足に見舞われます。15歳から64歳までの生産年齢人口に関して言えば、すでに2015年頃から減少しています。

労働力の絶対数が減り続ける上に、一人っ子世代は単純労働を嫌うので、大卒者の給料よりも単純労働者の給料のほうが高いという現象が起こってしまうのです。

中国政府は、労働力不足の問題を、AI(人工知能)技術を発展させることでカバーしようとしています。世界最先端のAI大国になれば、十分カバーできるという論理です。

「未富先老」が流行語


超高齢化社会・中国の末路
しかし、労働力不足はある程度、AI技術の発展によって補えたとしても、来る高齢社会への対処は、困難を極めるはずです。

国連の『世界人口予測2015年版』によれば、2050年の中国の60歳以上人口は、4億9802万人、80歳以上の人口は1億2143万人に上ります。

「私は還暦を超えました」という人が約5億人、「傘寿を超えました」という人が、現在の日本人の総人口とほぼ同数。まさに人類未体験の恐るべき高齢社会が、中国に到来するのです。

しかし現時点において、中国には介護保険もないし、国民健康保険すら、十分に整備されているとは言えません。そのため中国では、「未富先老」(未だ富まないのに先に老いていく)という嘆き節が流行語になっているほどです。

実はこの未曾有の高齢社会の到来こそが、未来の中国にとって、最大の問題となることは間違いありません。日本に遅れること約30年で、日本の10倍以上の規模で、少子高齢化の大波が襲ってくるのです。

そうした「老いてゆく中国」を横目に見ながら、虎視眈々とアジアの覇権を狙ってくるのが、インドです。インドは早くも6年後の2024年に、中国を抜いて世界一の人口大国になります。

しかも、2050年には中国より約3億人(2億9452万人)も人口が多くなるのです。15歳から59歳までの「労働人口」は、中国より3億3804万人も多い計算になります。

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2050年のインドは、中国と違って相変わらず若々しいままです。

つまり中国にしてみれば、21世紀に入ってようやく、長年目標にしてきた日本を抜き去ったと思いきや、すぐにインドという巨大な強敵を目の当たりにするのです。

中国は2049年に、建国100周年を迎えます。その時、「5億人の老人」が、しわくちゃの笑顔を見せているとは限らないのです。


近藤大介(こんどう・だいすけ)
中国・朝鮮半島取材をライフワークとする。25冊目の新著『未来の中国年表 超高齢大国でこれから起こること』(講談社現代新書)が好評発売中
「週刊現代」2018年7月14日号より

http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/302.html#c2

[国際23] ベネズエラ経済を破壊するアメリカ合州国(マスコミに載らない海外記事) 赤かぶ
6. 2018年8月29日 12:15:55 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1337]
2018年8月29日 / 12:02 / 10分前更新
ペルーが北部国境に非常事態宣言、ベネズエラ人の大量流入受け
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[リマ 28日 ロイター] - ペルーは28日、経済危機と飢餓から逃れてくるベネズエラ人の流入が止まらない問題を受け、北の国境について公衆衛生に関する非常事態を宣言した。

ビスカラ大統領は、移民により保健と公衆衛生に「差し迫った危険」が生じているとして、北部2県について60日間の非常事態を宣言、文面を官報に掲載したが、危険に関するそれ以上の詳細は明らかにしなかった。

国連は今週、ベネズエラ人の中南米諸国への脱出は地中海地域の難民問題に匹敵する「危機的状況」となりつつあると指摘した。

ペルー、コロンビア、ブラジルの移民当局者は、コロンビアのボゴタで2日にわたって対応を協議。その後、28日に発表した共同声明で、現在コロンビアに暮らすベネズエラ人は約100万人、ペルーには40万人以上いると明らかにした。ペルーでは、合法的な滞在が認められているか、もしくは手続き中の状態にある人は17万8000人にすぎない。

ペルーの保健当局は先にも、大半の流入者は母国で基礎的な医薬品と医療にアクセスできておらず、流入した人々からはしかやマラリアが拡大することが懸念されると表明している。コロンビアとペルーは28日、流入状況を追跡するとともに、支援を公平に分配するため流入に関する情報をデータベースとして共有していくと表明した。

コロンビア移民当局の責任者は、来週に同国とエクアドル、あるいはペルーとブラジルも加わり、ベネズエラからの流入について協議すると述べた。
http://www.asyura2.com/18/kokusai23/msg/688.html#c6

[経世済民128] 日本がインフレになって、金利上昇するのはいつなのか? --- 内藤 忍  赤かぶ
3. 2018年8月29日 12:19:19 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1338]
2018年8月29日 / 12:02 / 10分前更新
UPDATE 1-どんな良薬にも副作用、金融政策の影響注視=鈴木日銀審議委員
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(内容を追加しました。)

[那覇市 29日 ロイター] - 日銀の鈴木人司審議委員は29日、那覇市で講演し、長期化する強力な金融緩和の弊害を注視すべきだと語った。金融政策運営そのものに対しては肯定的な見方を示しながらも、「どんな良薬にも副作用がある」と指摘。国債市場や金融機関への影響を「虚心坦懐に見極めていくことが、政策を継続する上で重要」と語った。

鈴木委員は、金融政策の効果がもたらされる時間軸と、副作用が累積する時間軸が異なる点を認識した政策運営が求められると強調。副作用がいずれ現れてしまうと「手遅れとなるリスクがある」とし、中長期的な視点で政策の費用対効果を見極める必要があると述べた。

日銀は7月の金融政策決定会合で、金融緩和の長期化に備え、政策の枠組みを修正した。長期金利の変動幅を従来の倍程度とする方針を決めたが、鈴木委員は「金利水準の引き上げを意図しているわけではない」と指摘。長期金利が多少上昇しても、「金融機関の貸出や社債市場に与える影響は限定的」との見方も併せて示した。

金利については「市場で決まるもの」と述べ、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の下でも「日銀はその金利操作目標に向けて、市場を通じて誘導を図っていく」とした。

副作用を巡っては、国債市場の流動性低下に加え、金融機関への影響にも触れた。鈴木委員は「金融政策は金融機関のために行うものではない」とする一方、「金融政策の効果を経済に波及させていく役割を担うのは金融機関」とも述べ、金融システムや金融仲介機能への影響を注視する必要があると説明した。

物価の足取りが鈍い背景については、少子高齢化の中で将来不安が根強いためと分析。ただ、物価上昇を遅らせてきた要因の多くは「次第に解消していく」とし、物価2%に向けた勢いは維持されているとの見方を示した。「『物価だけが上がればよい』というものではなく、賃金の動向についても注視し続けていかねばならない」とも語った。

海外経済のリスク要因としては、米国の保護貿易やそれに対する各国の報復措置で「世界の貿易量の減少や国際金融市場への影響が懸念される」ことを挙げた。 (梅川崇)

 

 


2018年8月29日 末澤豪謙 :SMBC日興証券金融財政アナリスト

日銀政策修正は政権と命運をともにする「終わりなき緩和」宣言だ

 7月30・31日に開催された金融政策決定会合で、日本銀行は金融政策の修正を決定した。
 主な修正点は、(1)フォワードガイダンスの導入、(2)長期金利の変動幅の拡大(±0.1%⇒±0.2%)、(3)マイナス金利の政策金利残高の圧縮(10兆円⇒5兆円)、(4)ETFの銘柄別買い入れ額の見直しだ。
 日銀は今回の政策修正の目的として、異次元緩和(長短金利操作付き量的・質的金融緩和、YCC)の持続性の強化を挙げたが、会合後の会見で、黒田総裁は政策修正の背景として国債取引の不成立に再三、言及した。
 だが政策修正の「真意」は別のところにあるのではないか。

黒田会見で強調された
市場機能低下への対応

 確かに今年に入り、日本相互証券(BB)での新発10年国債の取引不成立日が既に6日に達している(8月27日現在)。2017は2回、2014年から2016年は1回、2013年はゼロだったことを勘案すると、今年は突出して多い。
 取引不成立は、次の3つの要因により国債市場の流動性が低下していることが背景と思われる。

出所: 日本銀行資料よりSMBC日興証券作成 拡大画像表示

 第1に、異次元緩和の累積効果により、民間金融機関等が保有する市中国債残高の減少が続いていることだ。2018年3月末段階で、日銀の国債保有割合は、国庫短期証券を除く利付国債残高の43.9%と、4割強を占めるまでになっている(図表1)。
 第2に、YCC政策の影響で、10年国債利回り(長期金利)は0.0%台での安定推移が続き、投機(スペキュレーション)的売買やヘッジ売買のニーズが大幅に減り、裁定取引(アービトラージ)の機会も減少していた。
 第3に、今年5月から、国債取引の決済期間がT+1(約定日の翌日に受け渡し)となり、新発10年債も翌日発行(本格的には7月から)となり、業者がポジションを抱える必要がなくなったことがある。
 図表2で見るように売り切り・買い切りのアウトライト取引を意味する一般売買高は、2013年4月の異次元緩和導入後、減少傾向が続いてきた。今年5月以降、売買高が増加しているのはT+1の導入の影響で、玉確保のため、急増した現先取引だ。
 また7月に、売買高が若干、増えたのは日銀の金融政策修正観測で、長期金利が久方ぶりに上下したためで、8月以降は再度、減少傾向に転じるとみられる。2013年以降も、国債の現存額は累増しているため、一般売買で見た売買回転率は過去最低を更新中である。

◆図表2:公社債店頭売買高の推移

出所:日本証券業協会資料よりSMBC日興証券作成 拡大画像表示

 ただ、黒田総裁はこれまで一貫して、異次元緩和の長期化にもかかわらず、国債市場の流動性や市場機能にはさしたる問題はないとの認識を示していた。
 それだけに、やや違和感を覚えた。
 黒田総裁もさすがに取引不成立が頻繁する状況に危機感を抱いたのか、あるいは、もう1つの副作用として指摘されている金融機関の収益悪化を政策修正の理由として挙げたくなかったのか、定かではない。
 確かなのは、ここへきて市場機能の低下が政策修正の「大義名分」として使えると考えたことだろう。

政治日程が影響
急遽、決めた可能性

 ただし市場機能の低下は一挙に進むものではなく、累積的なものだ。なぜ、このタイミングなのかについては、明確な説明はなかった。
 あえて言えば、物価上昇率の先行きの見通しを引き下げる中、異次元緩和の長期化が必至となったため、持続可能性を高めるためということだろう。だがそれでは手段と目標の優先順位が逆転しているようにも思える。
 当初は、2年で2%の物価上昇の到達が可能としてスタートした政策が5年半近くたった今日、今回の政策修正により、目標が達成できるとは常識的には考えにくい。
 ではこの時期に何を狙って、修正をしたのだろうか。
 このタイミングでの修正は、政治スケジュールが影響した可能性が高いのではないか。
 今回、日銀の金融政策修正に関する観測報道が出始めたのは、会合の10日前の7月20日の夜からだ。
 ロイターや時事通信、朝日新聞などの報道はタイミングが同じであり、日銀幹部と報道各社との懇談会などでなんらかの情報提供があった可能性が高そうだ。
 今年の日銀の金融政策決定会合の開催日(2日目)は、7月31日の次は9月19日、10月31日、12月20日となる。自民党総裁選の投開票日は7月段階で、9月20日との見方があった(その後、9月20日に正式決定)。
 また11月6日には米中間選挙が控えている。12月下旬はクリスマス休暇と年末・年始の休暇等の影響で、為替相場等が変動しやすい。2019年は4月には統一地方選、7月には参院選、10月には消費増税を控えており、政策変更はおろか、修正も難しくなる。
 こうしたことを考えると、米株価や米景気も堅調で、為替市場や株式市場が不安定化する心配が少ないということで、今回の会合で急遽、決定した可能性が高いと思われる。
 とすると、次回の本格的な政策変更までの距離感は相当遠いともいえそうだ。

異次元緩和の
長期化を「宣言」

 今回の日銀の決定や黒田日銀総裁の会見を聞いていた際、筆者の頭によぎった歌がある。それは、「Endless Game」。山下達郎氏の作詞作曲で、TBS系列で1990年に放映された『誘惑』の主題歌だ。
 歌の冒頭は「心の中できしむ音が聞こえるでしょ 重ねた白い指がふるえたから」でスタートする。
 今回の政策修正の発端ないし大義名分は、国債市場における新発10年国債の取引が業者間で不成立となる日が相次いだことだと考えられる。いわば「市場のきしむ音が聞こえるでしょ、国債取引不成立が続いたから」。
「Endless Game」の2番は「いつかはこんな風になる気がした」で始まる。日銀は当初、異次元緩和の導入により、「2年程度で、2%の物価上昇を達成できる」としていたが、当時、その通りになると予想していた向きは、少数派だった。筆者を含め、市場関係者の多数は異次元緩和の長期化により、いつかは政策の修正が必要となると見込んでいた。
 まさに「いつかはこんな風になる気がした」だ。
 だが日銀はまだそうは思っていないようだ。あるいはそう思っていても、そうは歌えないのかもしれない。
 7月の決定会合で出された「展望レポート」で、日銀は2018年度(政策委員見通しの中央値+1.3%⇒+1.1%)、2019年度(同消費税率引き上げの影響を除くケース+1.8%⇒+1.5%)、2020年度(同+1.8%⇒+1.6%)の物価見通し(除く生鮮食品)を下方修正した。
 物価見通しを引き下げ、2%物価目標とのかい離が拡大する状況で、YCCの金利の操作水準を引き上げたのでは、論理的説明ができない。それだけでなく、市場が政策転換だと受け止めて、長期金利の上昇や円高・株安を招くおそれがあった。実際、事前報道を受けた7月23日の東京金融市場では、長期金利が上昇、円高・株安が進行した。
 こう考えれば、今回、政策決定のタイトルを「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」と打ったことは、「終わりのないゲーム(It's The Endless Game)」ならぬ「終わりのない異次元緩和(It's The Endless QQE with Yield Curve Control)」の継続を宣言したに等しい。
 異次元緩和の出口のハードルは、まずは、2019年10月の消費増税だが、2020年度段階で消費者物価(除く生鮮食品)の見通しが、政策委員の大勢見通しで+1.5%〜+1.8%、中央値で+1.8%にすぎないことを勘案すると、微修正、微調整を除く、本格的な出口戦略の発動時期は、現状、見通せないといえそうだ。
「Endless Game」の歌詞の「夜明けの街並みへと やがてあなたは消えて行く 途切れた夢のかけら ここに置き去りにしたまま」のようにはならず、向こう数年以内に、消費者物価が安定的に2%に到達し、晴れて、日銀が「出口宣言」をできる環境になる可能性は低いといえそうだ。
 今回の日銀の政策修正は、異次元和緩和に関し、いわば安倍政権と命運をともにすることを改めて、宣言したともいえる。

「アンチエイジング策」に
ギアを入れ替える時だ

 だが一方で、少子高齢化やグローバル化が加速し、仮に2020年代後半以降 2%物価目標が達成されたとしても、その時には金融政策の正常化、「出口戦略」などという悠長なことは言っておられず、日本経済にとって「最大の危機」への対応が問題となっている可能性が高いのではないか。
 南海トラフ地震や重大な地政学的リスクの発生の場合、そのタイミングが早まる可能性も頭の片隅に置いておくべきだろう。
 そろそろ、日銀や政府も金融政策の限界を認め、しょせん「時間稼ぎ」と認識した上で、日本経済の「アンチエイジング」策、具体的には抜本的な少子化対策や、日本の強み・潜在能力を極限まで発揮させる産業振興策など、「異次元の成長戦略」を進める政策にギアを入れ替えるべきではないか。
(SMBC日興証券金融経済調査部部長金融財政アナリスト 末澤豪謙)


 


 
FRB議長講演、ハト派的と捉えるのは間違い−ゴールドマン
Liz Capo McCormick
2018年8月29日 3:13 JST
米ゴールドマン・サックス・グループはパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の先週の発言について、政策金利の道筋に関しハト派的なものだったと解釈するべきではないと指摘した。
  前週末24日の米国債市場では10年債利回りが低下。カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウムでパウエル議長が「過熱のリスクは高まっていないようだ」と述べたことが材料視された。さらには、10年債と2年債の利回り差が2007年以降で最小近くまで縮小した。
  ゴールドマンの金利ストラテジストは先週、投資家が求めるタームプレミアムの回復が鈍いことを踏まえ、年末時点の米10年債利回り予想を引き下げた。だが同社エコノミストは、米金融当局が低失業率を無視するのは賢明でないと指摘したFRBエコノミストの論文にパウエル氏が同意したことを27日付のリポートで強調。これを背景にゴールドマンのエコノミストは、米当局が2018年にあと2回、19年に4回利上げするとの予想を据え置いた。

  ゴールドマン・サックスのエコノミスト、ダーン・ストゥリュイーベン氏はリポートで、「債券市場とは違い、当社はパウエル議長の講演をそれほどハト派的とは受け止めなかった。米金融当局スタッフの論文に言及したことがその一因だ」と指摘。「コアインフレ率が限定的ながら目標値を上回るだけでなく、失業率が大幅に予想を下回ると当社は予想している。そして連邦公開市場委員会(FOMC)がその失業率の大幅低下を引き続き憂慮すると考える」と述べた。
  米短期金融市場では、ゴールドマンの予想、さらにはFOMCの予測ほど積極的な利上げがあるとはみられていない。今年に関しては、9月の利上げは市場で確実視されているものの、12月利上げの可能性は完全に織り込まれていない。
原題:Goldman to Bond Traders: Your Dovish Take on Powell Is Wrong(抜粋)



http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/313.html#c3

[経世済民128] 市場には好材料 「トランプ弾劾」で9月大相場がやってくる(日刊ゲンダイ)  赤かぶ
1. 2018年8月29日 12:22:03 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1339]

ブラックマンデー以来の海外勢売り、日本株悩ます−8月まで3.9兆円
河元伸吾、Tom Redmond
2018年8月29日 1:00 JST
最高値更新の米S&P500種指数、TOPIX騰落率なおマイナス
トランプ減税や日銀変心リスクも影響、「安倍3選」再評価の鍵に

Photographer: Akio Kon/Bloomberg
史上最高値を更新する米国株に対し、日本株の年初来騰落率は依然マイナスのままだ。両者の差が埋まらないのは日本株の売買代金シェアで7割以上を占める海外投資家の姿勢が影響しており、8月までの累計売越額は過去2番目の高水準にある。
  東京証券取引所の投資部門別売買状況によると、2018年年初から8月3週までの海外勢による日本株現物の売買額は差し引き3兆8511億円の売り越し。統計を開始した1982年以降ではリーマンショックの08年を抜き、世界的に株価が急落したブラックマンデー(暗黒の月曜日)の87年に記録した7兆1928億円に次ぐ売越額だ。東証1部全体の値動きを示すTOPIXの年初来パフォーマンスは、28日時点でマイナス4.7%。プラス8%超の米S&P500種株価指数に対する劣勢が顕著で、主要国ではフランスやドイツにも負けている。
売越額が拡大
海外投資家は現物株を3兆8500億円の売り越し

出所: 日本取引所グループ
備考:2018年は8月まで、その他は暦年ベース
  日興アセットマネジメントのチーフ・グローバル・ストラテジスト、ジョン・ベイル氏は海外勢の日本株売りについて「当初北朝鮮の好戦的な態度に関係していた公算が大きいが、米国投資家に関して言えば、力強い経済と減税に関連し、米企業業績が急速に伸びるとの期待を受けた自国回帰の傾向もかなりあった」とみている。
  JPモルガン・アセット・マネジメントの重見吉徳グローバル・マーケット・ストラテジストは、「米国市場で『FANG』などIT銘柄が強い中、日本は相対的にバリュー銘柄が多く、世界的にグロース先行で足が遠のいた」と分析。また、日本株は中国の影響を受けやすい銘柄が時価総額の上位を占めており、「中国の景気鈍化を背景に米国株に買い安心感があった」と話す。
日米景況格差、日銀の政策変更意識も
  米国の4ー6月期実質国内総生産(GDP)は年率換算で前期比4.1%増と4年ぶりの高い伸びを記録。トランプ大統領による減税政策の効果を受け、個人消費などが良好だった。日本の4ー6月期GDPも1.9%増と2期ぶりにプラス成長となったが、米成長率の高さには及ばない。米国が各国に対し保護主義的な貿易政策を打ち出す中、企業の1株当たり利益の予想伸び率(向こう12カ月)も米S&P500種の22%に対し、TOPIXは2%にとどまる。

日米首脳
Photographer: Yuri Gripas/Pool via Bloomberg
  海外勢の間には、米国や欧州の中央銀行が金融引き締め方向にかじを切る中、異次元金融緩和を続ける日本銀行の政策変更リスクを気にし始める向きもあった。ジェフリーズのチーフ株式ストラテジスト、ショーン・ダービー氏(香港在勤)は「日銀は必ずしも認めていないが、市場は政策が変わりつつあると感じている」と言う。
  日銀は7月31日の金融政策決定会合で、長期金利の変動幅拡大を容認し、年間約6兆円としている指数連動型上場投資信託(ETF)の買い入れについては銘柄配分を見直すとともに、市場状況に応じ買い入れ額は上下に変動し得るとした。
  一方、日興アセットのベイル氏は、海外勢が日本株買いに転じるには「世界的な貿易戦争を巡る懸念の後退や一段と高い配当性向、19年の消費税率引き上げでも日本経済の急変を回避できるという確信などが必要」とみている。JPモルガンの重見氏は、米中貿易摩擦の懸念後退に加え、「自民党総裁選で安倍晋三首相の3選という政治イベントをこなしていけるかどうか」に注目。米国株の最高値更新など世界的に株式投資へのセンチメントが上向いている波に乗っていければ、「日本株を避ける理由はなく、海外投資家は戻ってくる」と予想した。

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ナスダック指数8000突破、牽引した半導体2銘柄AMD NVIDIA

エヌビディアとAMDの株価上昇がナスダック指数を牽引している PHOTO: TYRONE SIU/REUTERS
By
Amrith Ramkumar
2018 年 8 月 29 日 02:45 JST
 米株式市場で快進撃を続ける半導体2銘柄が注目を集めている。
 過去6営業日で、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)とエヌビディアがそれぞれ28%、13%上昇し、年初からの上げ幅を一段と拡大した。これを追い風に、ハイテク株が中心のナスダック総合指数は27日、史上初めて8000の大台を突破した。
 半導体株は今年、貿易を巡る米中対立に巻き込まれた。経済大国である両国の貿易は半導体製造ビジネスに重大な影響を及ぼす。主要な半導体銘柄で構成するフィラデルフィア半導体株指数(SOX)は3月に過去最高値を更新したが、その後は米中の衝突で半導体セクターのボラティリティが高まった。
 だがここにきて、対立解消に向けた米中の動きが投資家を勇気づけている。SOXは27日まで5営業日続伸した。

AMDとエヌビディアの株価は足元で急伸

Source: SIXNote: As of Aug. 27

 半導体株は市場全体の先行指標とみなされる場合が多いことから、SOXの上げは市場の強さを示すサインだと、アナリストらは指摘する。半導体メーカーに対する投資家の信頼は、経済に対する信頼感を示すことにもなり得る。半導体はデータセンター、ゲーム、人工知能(AI)といった急成長分野に利用されているからだ。
 ワラックベス・キャピタルのETF取引ソリューション担当ディレクター、モヒト・バジャージ氏は「半導体株は状況が少し落ち着くと、さらに大きく回復する傾向がある」と語る。
 AMDは年初来の上げ幅が140%超に達し、S&P500種指数構成銘柄で値上がり率首位だ。データセンター関連収入、インテルなど同業他社からサーバー市場のシェアを奪うと予想されていることなども、株価の押し上げ要因となっている。
 エヌビディアは、直近の四半期決算発表の後、仮想通貨のマイニングに関わる収入の減少を嫌気して株価が下落した。だが、その後は最新のゲーム用チップに対する期待感がセンチメントを上向かせている。
 SOXは2016年初めからの上昇率が111%に達している。同じ期間にS&P500種の業種別指数で「IT(情報技術)」は82%、S&P500種は42%上昇した。
 今年はアマゾン・ドット・コムなどインターネット関連株の着実な上昇も市場を支えている。半導体株が一段と値上がりすれば、不透明感の漂うハイテクセクターを鼓舞する可能性がある。来月にはフェイスブックとグーグルの親会社アルファベットがS&P500種のIT指数構成銘柄から外れ、新設される「コミュニケーションサービス」指数に組み入れられる予定だ。
 投資家は一段と大きなボラティリティーに耐えなければならないかもしれない。一部のアナリストは、11月の米中首脳会談を前に、グローバルな貿易交渉がさらにこじれる可能性があると懸念している。
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41兆ドル、年金の自縄自縛 逃げ水の利回り モネータ 女神の警告 それぞれのジレンマ(2)
2018/8/29 0:00
日本経済新聞 電子版
 米国の時限爆弾――。米投資家のウォーレン・バフェット氏がこう呼んだ米国の年金問題が顕在化しつつある。舞台はトランプ大統領の支持基盤、ラストベルト(衰退した工業地帯)が広がる米イリノイ州だ。

バフェット氏は米年金問題を「米国の時限爆弾」と呼んだ=ロイター
 元イリノイ州立大学教授のケント・レッドフィールドさん(70)は「年金のお先は真っ暗だ」と話す。同州の公務員年金は州民の5%にあたる約70万人が加入する。金利低下による運用難が年金財政を圧迫し、資産の積み立て不足は約1300億ドル(14兆円)に膨らんだ。イリノイ州の歳出の3割近くを年金費用が占め、財政悪化で福祉関連の未払いが頻発している。
 全米50州の公的年金で積立率が健全とされる80%を超えるのはわずか10州。イリノイ州やケンタッキー州など7州は50%を切る。高金利時代に設計した制度の限界が露呈しており、運用利回りは年1%程度なのに長期の想定利回り(予定利率)をなお7〜8%に設定したままの州年金もある。

 先進国だけの問題ではない。ロシアでは支給年齢引き上げに反発が強まり、プーチン大統領の支持率が急落している。中国では退役軍人の年金を巡り待遇改善を求めるデモが頻発する。

 追い込まれた年金の余波は金融市場にも及ぶ。「年金が米金利の上昇を抑えている」。みずほ証券の岩城裕子氏はいう。少しでも金利が上がれば年金がすかさず米国債に買いを入れるからだ。中でも30年債の利回り低下(価格上昇)は顕著だ。30年債と10年債の利回り差はわずか0.15%。年初の約半分に縮小した。

 米ウイリス・タワーズワトソンの調査では、主要22カ国の年金マネーは17年末時点で41兆ドルと10年前の1.6倍に増えた。世界の債券市場の時価総額の24%に相当する規模に膨らんだ年金マネーはまるで「池の中の鯨」。自らの買いで金利を押し下げ、高利回りが逃げ水のように去っていく。

 それゆえに大胆にリスクを取る年金もある。カナダの公的年金、年金計画投資委員会(CPPIB)は米ゼネラル・エレクトリックから未公開株投資向けの融資事業と貸出債権を約120億ドルで丸ごと買収した。

 10年前のリーマン危機の反省から金融当局は金融機関がリスクを取りすぎないよう目を光らせるが、今度は年金が低格付け債などにお金を出す。米ムーディーズ・インベスターズ・サービスは「再び金融危機が発生すれば、年金に想定外の損失が出る」と警戒する。

 新興国でも高齢化は進み、中国は2050年に今の日本と同じように4人に1人が65歳以上になる。世界経済フォーラムは50年に日米英中インドなど主要8カ国で計400兆ドル(約4京5000兆円)の年金資金が不足すると試算する。

 給付を下げれば消費を直撃し、放置すれば破綻は免れない。膨らむ資産が金利上昇を阻み、積極運用に頼れば過度なリスクテイクにつながる。将来の暮らしを支えるはずの年金が、国民や市場の不安を高めるジレンマの処方箋はみえない。

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[経世済民128] 市場には好材料 「トランプ弾劾」で9月大相場がやってくる(日刊ゲンダイ)  赤かぶ
2. 2018年8月29日 12:26:47 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1340]
トップニュース2018年8月29日 / 12:12 / 10分前更新
焦点:米中間選挙、民主党の上院奪還は「絵に描いた餅」か
Tim Reid
4 分で読む

[シカゴ 24日 ロイター] - 11月に予定する米国の中間選挙において民主党が上院の過半数を奪還する可能性について、ある政治アナリストは「ほぼ不可能な道のり」と評している。他はさらに悲観的だ。

可能性は低いにもかかわらず、今月シカゴに集まった同党の戦略担当者らは強気だ。トランプ米大統領の元側近をめぐる司法トラブルが深刻化し、共和党が腐敗スキャンダルに巻き込まれているため、民主党のチャンスが拡大する可能性がある、と言うのだ。

とはいえ、その道のりが険しいことに変わりはない。

11月6日の中間選挙で争われるのは、下院の435議席すべてと上院100議席のうち35、そして50州のうち36州の州知事職だ。

今回の改選で民主党が防衛すべき上院の現有議席は24で、そのうち10議席は2016年にトランプ氏が勝利を収めた州であり、一部は大差での勝利だった。上院での過半数奪還には、2議席増やす必要がある。

民主党が過半数を獲得すれば、トランプ大統領の政策アジェンダの多くを、阻止もしくは停滞させることが可能となり、政権に対する議会の監視や調査を強化することができる。将来的に、連邦最高裁にさらに空席が生じた場合でも保守派の指名を困難にする効果も生まれる。

無党派の政治アナリスト、スチュー・ローゼンバーグ氏は、民主党による上院過半数の奪還は「ほぼ不可能な道のり」だと評する。ただし、共和党が直面している逆風を考慮すれば、「上院選挙の情勢が動く可能性はある」と付け加えた。

シカゴで開催された民主党全国委員会の夏季集会でインタビューに応じた10数名の党戦略担当者や党員、そして立候補予定者らは、2014年以来失っている上院での優位を取り返すための同党の方針や戦略について語った。

<注目州はどこか>

民主党関係者によれば、今年、特に困難な戦いになるのはウェストバージニア、インディアナ、ノースダコタ、モンタナ、ミズーリの5州だという。いずれも2016年にトランプ氏が勝利を収めた州であり、このうち1議席でも失えば、上院奪還の展望は非常に暗くなる。

各州における世論調査の結果は、民主党に希望を与えている。ノースダコタ、インディアナ、ミズーリでは五分五分の情勢という結果が出ているためだ。

トランプ氏が20ポイント差をつけて勝利したモンタナにおける最近の世論調査では、現職の民主党ジョン・テスター上院議員が平均5ポイント差でリードしている。また、同じくトランプ氏が40ポイント差で勝ったウェストバージニアでは、民主党のジョー・マンチン上院議員が僅差でリードしている状況だ。

「共和党にとって、最大のターゲットとなるのは、明らかにこれら5州だ」と語るのは、バージニア大学政治学センターの無党派アナリスト、ジェフリー・スキリー氏。「上院の情勢については見方が2つある。民主党にとってはひどく不利だが、その反面、議席を守るという意味では最高の年だ」

上院の選挙対策に従事している共和党担当者は、トランプ人気が引き続き高い州で再選を目指す民主党議員は頭を悩ませているはずだ、と主張する。「全国レベルで民主党が左派寄りになっていることにより、これらの州の有権者が離反する一方で、ただでさえ脆弱な現職はダメージを受けている」

フロリダ州の上院議席をめぐる争いは一部の民主党関係者を憂慮させている。世論調査によれば、現職の民主党ビル・ネルソン上院議員と、これに挑戦する共和党リック・スコット州知事の接戦となっている。フロリダ・アトランティック大学が21日に発表した世論調査の結果では、スコット氏がネルソン氏を6ポイントリードしている。

トランプ氏が勝利した州すべてで議席を死守することに必死になる一方で、民主党は、戦略担当者が重要な奪還目標として掲げるアリゾナ、ネバダ両州にも力を注いでいる。

アリゾナ州では、現職の共和党ジェフ・フレーク上院議員が引退を決めており、共和党では、3人の候補のあいだで指名を争う予備投票を28日実施する。民主党側ではカイルステン・シネマ氏が世論調査で優位に立っている。

ネバダ州のディーン・ヘラー上院議員は、共和党現職のなかで最も再選が危ういと言われている。民主党の戦略担当者は、同議員が医療費負担適正化法、いわゆる「オバマケア」の一部廃止に賛成したことは、年金生活者が多く、医療へのアクセスが大きな問題になっている州において、プラスに働いていると述べている。

民主党が上院で1議席上回るためには、現有議席をすべて守ったうえで、ネバダ、アリゾナ両州を奪う必要がある。

<戦力の集中投下>

民主党の2つのスーパーPAC(政治資金団体)である「プライオリティズUSA」と「シネート・マジョリティPAC」は、少なくとも総計で1億2000万ドル(約134億円)をアリゾナ、ネバダ、ウェストバージニア、インディアナ、モンタナ、ノースダコタでの宣伝費に投入している。

スーパーPACは特定候補・政党の選挙戦とは独立して行動しなければならないが、金額に制約なく資金を集め、支出することができる。

民主党上院選挙対策委員会の独立支出部門は、アリゾナ、ネバダ、ウェストバージニア、インディアナ、モンタナ、ノースダコタの各州で当面のCM枠として3000万ドル分を確保している。

また民主党関係者によれば、同党とその外部グループは、テネシー、テキサス両州でも、見込み薄ながらも議席奪還をめざして資金を投じているという。

最近の世論調査によれば、テキサス州では現職の共和党テッド・クルーズ上院議員に対し、挑戦者である民主党ベト・オルーク氏が2─4ポイントという僅差で追走している。

また現職引退を受けたオープンレースとなっているテネシー州では、人気の高い穏健派の民主党フィル・ブレッドセン知事が、共和党のマーシャ・ブラックバーン下院議員とつばぜり合いを演じているという調査結果になっている。

<医療、税金、政治腐敗>

民主党内での調査によれば、中間選挙で民主党候補にとって有利な争点となるのは、医療制度と、共和党による減税政策だという。有権者の中には、この減税政策が富裕な個人・企業に対する「ばら撒き」だという見方があるためだ。

民主党の戦略担当者であるカレン・フィニー氏はシカゴでの会合の際、「医療制度のような重要テーマは、有権者にとって本当に深刻だ。共和党は減税政策でポイントを稼げると考えていたが、逆に弱点となっている」と話している。「われわれはこうした主要な争点を巡るトレンドを有利に使っている」

今月、トランプ大統領の元選対本部長ポール・マナフォート氏が有罪評決を受け、元顧問弁護士マイケル・コーエン氏が罪状を認める証言を行ったことを受けて、民主党全国委員会のトム・ペリッツ会長は、上院選挙のなかで民主党がトランプ大統領をめぐる法的なトラブルを強調していくことを明らかにした。

コーエン氏は脱税、銀行詐欺、選挙資金に関する違反などの連邦犯罪の告発について罪状を認めた。同氏はトランプ氏と性的関係があったと主張する2人の女性に対して口止め料を払うよう、トランプ氏本人から指示を受け、その支払いは2016年の大統領選挙を考慮したものである、と証言している。

これらの女性との関係を否認しているトランプ大統領は、コーエン氏には個人的な資産から支払いを行っており、選挙戦を有利に進めるためではなく、個人的な問題を解決するために支払ったものだと主張している。

「この共和党政権に見られる腐敗の文化は手に負えなくなっている」と、ペリッツ氏は民主党の会合で語った。

(翻訳:エァクレーレン)


ビジネス2018年8月29日 / 09:02 / 3時間前更新
米長期債への弱気姿勢広がる、5カ月ぶり水準=JPモルガン
1 分で読む

[ニューヨーク 28日 ロイター] - JPモルガン・チェースの調査によると、米長期国債に対する投資家の弱気な見方が約5カ月ぶりの高い水準となった。今週行われる国債入札や米国とメキシコの北米自由貿易協定(NAFTA)合意が影響しているとみられる。

ベンチマークより米長期国債保有が少ない「ショート」とベンチマークより多い「ロング」との差(ネットショート)は21%と、3月19日以来の水準に拡大した。

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は24日、ワイオミング州ジャクソンホールで開かれた年次経済シンポジウムの講演で、米経済はさらに改善したとの見解を示し、段階的な利上げを継続する方針を表明した。調査はこの講演後に実施された。パウエル氏の発言を受けて米長期国債が買われ、イールドカーブ(利回り曲線)が平たん化。長短金利差は2007年以来の水準に縮小した。その後、週明け27日からイールドカーブはスティープ化し、2・10年債利回り格差US2US10=TWEBは22ベーシスポイント(bp)に迫った。カーブは3営業ぶりの急勾配となった。

ベンチマークと同等の米長期国債を保有しているとの回答は3週間連続で57%だった。

米商品先物取引委員会(CFTC)が24日に公表した統計によると、投機筋の米10年債先物のショート(売り持ち)ポジションは21日に過去最高水準に達した。ここでも国債に対する弱気な姿勢が伺える。

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[経世済民128] 消費増税「間違いなく実施」 麻生財務相、主計官会議で訓示(SankeiBiz) 赤かぶ
1. 2018年8月29日 12:31:05 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1341]
2018年8月29日 / 12:02 / 20分前更新
岸田派が安倍首相にアベノミクス継続など政策提言、党総裁選踏まえ
1 分で読む

[東京 29日 ロイター] - 自民党岸田派の金子原二郎・参院予算委員長らは29日午前、党総裁選を踏まえて官邸を訪れ、安倍晋三首相に政策提言を手渡した。金融・財政政策などアベノミクスの継続を訴える内容。

岸田派を率いる岸田文雄会長が総裁選への出馬を一時検討した経緯もあるが、同行した望月義夫・元環境相は記者団に対して「岸田派と首相は一心同体」と強調した。提言を受けた首相も、なるべく政策に反映していきたいとの意向を表明したという。

主な提言内容は以下の通り。

1:引き続き金融政策、財政政策、成長戦略を一体的に展開し、デフレ脱却、成長と分配の好循環を着実に実現する

2:大企業からの人材供給、事業継承支援などで中小・小規模企業を支援

3:災害に強く効率的な交通網構築。農林水産業・インバウンドの推進

4:抜本的な少子化対策、健康づくりのインセンティブ強化

5:人生100年時代に対応した教育

6:平和憲法・日米同盟・自衛隊を3本柱とした多元的外交

7:謙虚で丁寧な政治など

竹本能文

 

どうなる幼保無償化 消費税増税合わせ来秋から 受け止め多様
[2018/08/29]

 

認定こども園で過ごす3歳児クラスの園児。来年10月から利用料は無償になる=前橋市のろっくひよこプリスクール
 来年10月の消費税増税に合わせ、幼児教育・保育の無償化が始まる。認可保育所や認定こども園などの利用料が3〜5歳児は全て無料になるほか、認可外保育施設でも一定の補助が受けられる制度が柱だ。子どもの教育費が家計の負担になる中、群馬県内でも対象となる保護者は無償化を歓迎するが、保育需要の受け皿や病児保育の拡充を優先すべきだとの声も上がる。

◎歓迎「負担減る分貯蓄に」/懸念「待機児童が増える」

 前橋市に住む母親(33)は、近くの認定こども園、ろっくひよこプリスクールに長女(4)と長男(1)を預けている。「無償化でだいぶ負担が減る。その分は子どもの習い事か、将来のための貯蓄に回したい」と好意的に受け止める。

 ただ、周囲で「希望する保育園に入れなかった」という話をよく聞くようになった。「子どもが多い地域にもっと保育園を造るなど、根本的な問題を解決してほしい」と要望する。

 長男(1)を育てる母親(41)=同市=は昨年度、保育所の入所を申し込んだが、一次募集、二次募集ともに落選した。認可外保育施設に預ける選択肢は「最初から考えていなかった」といい、自身の体調も考慮して勤務先を退職した。

 長男が3歳になり幼稚園などに通い始めたら、再び働くことを考えているという。「無償化よりも、必要な人が保育園を利用できるようにする環境づくりや、保育士の処遇改善にお金を使うのが先ではないか」と考えている。

 県内の待機児童は昨年10月時点で42人、育児休業中や求職活動をしていない保護者が育てている潜在的待機児童は566人。今回の制度は、0〜2歳児の住民税非課税世帯(年収約250万円未満)や幼稚園による預かり保育も対象となる。保育需要の掘り起こしにつながると指摘され、地域によっては待機児童が増える懸念もある。

 県内自治体で昨年10月時点の待機児童が最も多かった館林市は「無償化により、待機児童の増加が想定される」とする。昨年度、公立保育所を増築したのに加え、保育士が市内の保育所に再就職する際の補助や、保育士自身の子どもの保育料補助といった独自の支援制度を継続し、需要増に備える。

 関東短大こども学科の森静子教授は「幼児教育への投資が重要という認識がようやく一般化した」と無償化を評価。その上で、「保育園に通う子どもと預ける親の立場を考えると、全ての園に看護師を配置するなど病児保育を手厚くすべきだ」と課題を挙げた。


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[2018/08/20]
https://www.jomo-news.co.jp/news/gunma/politics/75652


 


消費税100%で「持続可能な未来」実現?
小川淳也・元総務政務官

2018年8月28日

小川淳也氏=長谷川直亮撮影
小川淳也氏=長谷川直亮撮影
産業革命以降の後始末
 最後にこのような変革を超長期にわたって続け、100年の危機を乗り越えた先の日本が、いったいどのようになっているか。その見通しを共有して一連の原稿を終えたいと思います。ただし、今から見るとかなり極端な話になります。もはやSF?との批判も十分受け止めたいと思います。

<地方は「法人税・所得税ゼロ」に>玉木雄一郎氏の寄稿
<みんなが負担を支え合う「オール・フォー・オール」>前原氏が提唱
 しかし、今後、約100年にわたって、人口減少と超高齢化という下方圧力と格闘し続けなければならない現実からは逃れられません。従って、この100年をどうしのぐかが、今後の日本にとって死活的に重要であり、逆に言えば100年先の遠い未来は、人口減少も止まり、超高齢化も落ち着き、エネルギー、資源、食糧、水、空気、土地、あらゆるものとの均衡を前提に定常状態が訪れ、安定するとの希望を持っています。同時に今とは比較にならないほどの超長寿社会が実現し、極めて先進的かつ持続可能な未来が訪れていると信じて疑わないのです。従って、この先100年は、いわば産業革命以降の100年がもたらした、急激な変化と膨張(成長)の後始末をつける100年である。その覚悟と希望を持って、この時代に船出したいのです。



http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/319.html#c1

[経世済民128] トルコ金融市場の休場明けで再び波乱も(会社四季報オンライン) 赤かぶ
3. 2018年8月29日 12:34:27 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1342]
独がトルコへの緊急支援検討、難民危機再来を懸念=関係者
ドイツは経済危機に直面しているトルコへの緊急支援を検討している(写真はイスタンブール市内の両替所)
By Bojan Pancevski
2018 年 8 月 29 日 01:10 JST

 【イスタンブール】ドイツ政府は、通貨急落で経済混乱に直面しているトルコに対し、緊急支援の提供を検討している。トルコが深刻な経済危機に陥れば、中東地域をさらに不安定化させ、新たな難民の大量流入など、欧州へも影響が及ぶとの懸念が背景にある。独・欧州当局者が明らかにした。

 まだ初期の検討段階にあり、実施には至らない可能性がある。ユーロ圏債務危機で財政難の加盟国に行ったような協調支援や、欧州投資銀行(EIB)などによる特定プロジェクトへの融資、ドイツによる2カ国間支援などが選択肢として検討されているもようだ。

 ただ、エコノミストらは、必要な支援規模を見極めるのは時期尚早だとみている。トルコが抱える多額の債務の多くは民間部門にあるためだ。支援規模を検討する上で、似たような経済危機に陥り、6月に国際通貨基金(IMF)から500億ドル(約5兆6000億円)の支援を受けたアルゼンチンが参考例になるとの指摘が出ている。

 ドイツ高官2人によると、オーラフ・ショルツ独財務相とトルコのベラト・アルバイラク財務相は先ごろ、支援の選択肢を巡り協議した。

 ドイツとトルコは1世紀以上にわたり親密な関係にあったが、トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領が独裁色を強めるのに伴い、最近では関係が冷え込んでいた。そのため金融支援が実施されれば、関係修復に向けた大きな転換点となる。

 エルドアン大統領は9月28日にドイツを訪問する予定で、その1週間前にはショルツ、アルバイラク両財務相が大統領の訪問に備え、ベルリンで会談する見通しだ。金融支援が議題になるとみられている。

 こうした動きは、トルコの通貨危機で動揺する市場の沈静化にもほとんど関心を示さない米国とは対照的だ。それどころか、米国人牧師拘束問題でエルドアン大統領と対立するドナルド・トランプ米大統領は、追加の制裁措置や新たな関税の導入を決めている。

 ドイツが懸念するのは、2015年に起きた欧州への移民・難民大量流入の再来だ。トルコは支援と引き替えに、欧州に向かう難民を国境で厳しく取り締まる合意を欧州側と結んでおり、ドイツは経済危機で合意が履行されない事態を危惧している。

 財政危機に陥った国はこれまで、IMFに支援を仰いできたが、米国はトルコによるIMFへの支援要請に拒否権を行使することも辞さない姿勢をみせており、独・欧州当局者らは、自ら介入する必要があるかもしれないと考えているようだ。

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ハリケーン死者は約3千人 プエルトリコ、大幅増
北米 社会
2018/8/29 9:27
 【ニューヨーク=共同】カリブ海の米自治領プエルトリコのロセジョ知事は28日、昨年9月の大型ハリケーン「マリア」による死者が当初公式発表の64人ではなく3千人近くだったと発表した。この日公表されたジョージ・ワシントン大の研究所の調査結果を受け入れたとしている。

 調査では、マリアが上陸した昨年9月20日から6カ月間のハリケーン関連死を2975人と推計。数カ月にわたり電力や通信網が復旧しなかったことに加え、大規模災害の死亡認定ガイドラインが現地医師らに説明されていなかったことなどが、当初発表が非常に少なかった原因とみられる。

 米メディアは地元住民の情報を基に犠牲者が少な過ぎると報道。公式死者数が実態と違うとの批判を受け、地元当局は今月9日、上陸後4カ月間の死者が1400人を上回ると発表していた。

http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/309.html#c3

[国際23] アンドレス・オブラドール、メキシコ大統領に当選: ロシア-メキシコ関係にとって明るい見通し(マスコミに載らない海外記事) 赤かぶ
4. 2018年8月29日 12:36:08 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1343]
2018年8月29日 / 10:02 / 2時間前更新
米・メキシコの合意、メキシコの無関税自動車輸出に上限=関係筋
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[ワシントン/メキシコ市 28日 ロイター] - 北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉で米国とメキシコが27日に合意した案には、メキシコから米国への自動車・部品輸入が一定の水準を超えた場合に米国が最大25%の関税を適用することが可能になる別の合意が付帯されている。自動車業界幹部や関係筋が28日、明らかにした。

関係筋によると、付帯合意ではメキシコからの年間自動車輸入が240万台、部品については年間輸入額が900億ドルを超えた場合、米国は安全保障を理由とした関税を適用することができる。

米政権は自動車・部品輸入が安全保障上のリスクとなるかどうかを巡り調査を行っており、向こう数週間中に結果を発表する見通しだ。

自動車メーカーの間ではこの合意について、米国が安全保障を理由とした関税発動に踏み切り、日本や欧州連合(EU)との交渉で譲歩を引き出す材料に使う構えであることを示唆しているとの懸念が出ている。

付帯合意では「最恵国」に対する現行2.5%の自動車関税を引き上げるシナリオが示されており、既存または新たなNAFTAの条件を満たさない車両には新たな税率が適用される可能性がある。

協議について説明を受けた関係筋によると、メキシコは安全保障を理由とした米国の関税について世界貿易機関(WTO)に提訴する権利を保持する。

<メキシコ産自動車輸出の上限>

関係筋によると、メキシコは米国への年間自動車輸出が240万台を超えた場合に25%の関税を適用される。この水準内で新たな原産地規則を満たす車両は無関税で輸出できる。水準内だが、新原産地規則を満たさない場合は2.5%の関税が適用される。

2017年のメキシコから米国への自動車輸出は約180万台だった。

両国の合意は最終確定しておらず、カナダと米国の協議や他の要因次第で修正される可能性がある。

米自動車部品工業会(MEMA)の政府関係担当幹部、アン・ウィルソン氏は、メキシコから米国への無関税での部品輸出は年間900億ドルが上限とされ、これを上回った場合は安全保障を理由とした関税が適用されると明らかにした。

関係筋によると、合意では自動車メーカーに一定の国産鉄鋼・アルミニウムの使用も義務付けている。

また、部品の原産地規則は種類によって異なる水準の比率が適用され、最も価格の高いエンジンやトランスミッションは75%が適用されるという。

関係筋によると、新協定は2020年から5年をかけて段階的に導入される。

米通商代表部(USTR)の報道官はコメントを控えた。

メキシコ経済省は現時点でコメントの求めに応じていない。

両国の合意に盛り込まれている関税の枠組みは、メキシコでの生産拡大を望むアジアやドイツの自動車・部品メーカーにとって不利となる可能性があり、これらのメーカーはより多くの車両やエンジンを米国で生産する必要に迫られるかもしれない。


 


今朝の5本】仕事始めに読んでおきたいニュース
西前明子
2018年8月29日 6:14 JST
カナダの立場、トランプ氏グーグルに警告、中国で一転攻勢のトヨタ ムニューシン氏はイールドカーブ懸念せず、歴史的高水準の米信頼感

Photographer: Jason Alden/Bloomberg
米国とメキシコが暫定合意した通商協定にカナダが加わるのか、期待と不安が渦巻く中、株式市場ではいち早くカナダの自動車部品株に買いが入っています。リナマーは3.1%高、マグナ・インターナショナルは1.7%高といずれも大幅続伸となり、合意を先取りした格好です。以下は一日を始めるにあたって押さえておきたい5本のニュース。
乳製品で譲らず
カナダのトルドー首相は米国とメキシコの間の通商協議で進展があったことを評価しながら、北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉の争点とされているカナダの乳製品については、従来の姿勢を変えるつもりがないことを明白にした。ワシントン入りしたフリーランド外相らカナダの代表団を通じて、建設的に関与し、カナダ国民のためになる合意にいずれ調印できることを望むと述べた。
フェイク検索
トランプ米大統領は自分についての悪いニュースばかりが表示されているとして、アルファベット傘下のグーグルが検索結果を操作していると主張。「非常に重大な状況」であり「対処する」と表明した。グーグルは声明で、「政治的な感情を操作するように検索結果を並べることは決してない」と反論した。トランプ氏はこの後もツイッターに再度投稿。グーグルだけでなくフェイスブックとツイッターに対しても「気をつけたほうがいい」と警告した。
攻めに転じる
トヨタ自動車は2030年ごろまでに中国での生産を年間350万台規模まで増やすことを視野に、事業を強化していく。ハイブリッド技術を中心に電動車を拡充させる方向で、出遅れていた中国で巻き返しを図る。現地生産350万台のほか日本などからの輸入50万台の計400万台を中国から供給していく方向性が取引先に伝えられている。今年5月に中国の李克強首相が同社の北海道の拠点を視察したことなどを契機に、中国事業に対して積極姿勢に転じたという。
心配無用
ムニューシン米財務長官は米国債市場で長短利回り差が縮小する現象について、「まったく心配していない」とCNBCとのインタビューで述べた。政府が国債発行による借り入れを増やしている現状において、イールドカーブのフラットニングは実際には好ましいことだと指摘。また、連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長を「驚くほど優秀」なリーダーだと称賛し、利上げは「うれしくない」と発言したトランプ大統領と一線を画した。
2000年以来
コンファレンスボードが発表した8月の米消費者信頼感指数は2000年10月以来、17年ぶりの高水準となった。ブルームバーグがまとめたエコノミスト全員の予想を上回った。現況指数は2000年12月以来の高水準。コンファレンス・ボードの景気指数担当ディレクター、リン・フランコ氏は発表文で、「こうした歴史的な高水準の信頼感は引き続き、短期的に健全な消費支出を支えるだろう」と述べた。
その他の注目ニュース
FRB議長講演、ハト派的と捉えるのは間違い−ゴールドマン
ブラックマンデー以来の海外勢売り、日本株悩ます−8月まで3.9兆円
CFAアナリスト試験:レベル3合格率56%、06年以来の高水準

 

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[国際23] 北朝鮮紙「アメリカは殺人部隊の侵攻のための秘密演習を行っている」(ニューズウィーク) 赤かぶ
4. 2018年8月29日 12:37:39 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1344]
北朝鮮で「マネーの達人」台頭、正恩氏に諸刃の剣 食品や医薬品などを販売する公式・非公式の市場が急増
北朝鮮では急速に市場経済が広がっている(写真は4月、平壌の食品店) IVARSSON JERKER/AFTONBLADET/IBL/ZUMA PRESS

By
Jonathan Cheng
2018 年 8 月 29 日 04:07 JST
 【ソウル】北朝鮮で急拡大する市場の存在が、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が掲げる経済復興の重要なけん引役として台頭してきた。それは金持ちのエリート層を生み出し、政府もその利害を無視できなくなりつつある。
 新たな調査結果から、北朝鮮では製品や食品、医薬品などを販売する公式、非公式の市場が急増していることが分かった。その恩恵によって誕生した中・上階級の商人らは、北朝鮮で「ドンジュ(マネーの達人)」と呼ばれている。
 かつて配給制度に依存していた北朝鮮では目下、こうした市場が興隆しており、ビジネスに高い関心を寄せるエリート層に大きな富をもたらしている。こうした状況は、今年に入り核開発の完成を宣言し、経済重視にかじを切る正恩氏にとっても重要性が高まっている。

注:データは北朝鮮開発研究所(NKDI)が提供。最近の脱北者への取材や、市場の位置・規模に関するグーグル・アースの画像分析に基づく。戦略国際問題研究所(CSIS)がNKDIのデータを精査・翻訳し、位置情報を確認した。営業許可や1日当たり家賃・税などを通じ政府公認市場のみを含め、闇市場は除く。【グラフィックス(英語)を見るには地図をクリック】
 ワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)と脱北者が運営するシンクタンク、北朝鮮開発研究所(ソウル)によると、北朝鮮内で許可を受けた公式市場は436に達し、10年前から倍増したとみられている。1990年代に発生した飢饉(ききん)時は皆無だった。
 ジョンズ・ホプキンズ大学の米韓研究所にかつて研究者として勤務していたカーティス・メルビン氏と、ソウルの通信社デイリーNKは、公式市場の数をそれぞれ480 、387と推定。少なくとも60万人を雇用しているとみている。
 正恩氏は春以降、辺境地域の工場や農場などを精力的に視察。国営メディアは今月、「愛国心にあふれた献身の長旅」と称賛した。
だが、正恩氏が誇示する国家プロジェクトは、市場が北朝鮮内で果たす中心的な役割とは対立する。こう指摘するのはCSISの報告書を執筆したビクター・チャ、リサ・コリンズの両氏だ。北朝鮮の人々の話に耳を傾けると、市民は生活する上で、国家よりも市場への依存度を高めているという。
 北朝鮮では、旧ソ連からの支援が打ち止めになると社会主義的な配給制度が崩壊に向かい、1990年代の飢饉(ききん)時に政府管理をかいくぐって闇市場が生まれた。国の許可を受けた公式市場はこうした闇市場と共存している。

信川(シンチョン)郊外の道路脇で果物を販売する女性 PHOTO: ED JONES/AFP/GETTY IMAGES
 こうした市場は都市部から地方まで広く根ざすようになり、北朝鮮政府は売買への課税を通じて年間およそ5680万ドル(約64億円)の収入を得ているとみられている。国際社会からの制裁で窮地に追い込まれている政府にとって、市場は比較的安定した収入源だ。米国との非核化協議がまとまり、制裁緩和が実現すれば、経済成長の活路にもなり得る。
 CSISの推定によると、北朝鮮の市場には2800平方フィート(260平方メートル)程度の小規模なものもあるが、北東部・清津市にある最大の市場は25万平方フィートを超える規模で、数千の店が並び、年間85万ドルの収入を政府にもたらしている。
 北朝鮮の市場経済がどのように機能し、どこから商品を調達しているかなど、詳細は完全には分かっていない。公式市場は、急速に発展している、石炭や水産品などの輸出産業関連のサプライチェーン(供給網)とのつながりを深めている。

工場や農場などの視察に回る金正恩氏 PHOTO: KCNA VIA KNS/AGENCE FRANCE-PRESSE/GETTY IMAGES
 北朝鮮では民間企業は違法だが、国有企業と関連のあるビジネスがドンジュの繁栄を支えてきた。CSISのコリンズ氏によると、中には起業や市場拡大、住宅建設、工場生産向けの原料確保向けに資金を提供するものもあるという。
 ソウル大学の学者、ピーター・ワード氏は、ドンジュは総じて、国家の利益と整合すると指摘する。「彼らはカネを手にするほど、保守的な姿勢を強めていく」とし、「革命は望まず、インフレや財政危機により自らの報酬や貯蓄が失われる羽目にはなりたくない」と話す。
 正恩氏にとってのリスクは、ドンジュなど台頭する新規階級層と、権力を譲り渡すつもりはない政府の利害がぶつかる事態に発展することだ。

平壌の花屋(11月撮影) PHOTO: ED JONES/AFP/GETTY IMAGES
 専門家らは、北朝鮮政府が2009年に実施したデノミネーション(通貨の呼称単位の変更)の失策により、市民の間で不満が広がったことを指摘する。 デノミ失敗の責任を問われた政府高官の1人はその後、処刑された。
 それから10年近くたち、ドンジュ階層は急速に厚みを増した。彼らは誇示的消費の味を占め、北朝鮮の首都では、コーヒーショップやすしレストラン、スパが立ち並ぶようにまでなった。
 CSISのコリンズ氏は、正恩氏は生活の質向上などを通じて、指導者としての自らの立場を正当化しており、自由化改革に逆行するような動きは危険を伴う可能性があると指摘する。

花や飲料などを扱う平壌の販売店(昨年撮影) PHOTO: WONG MAYE-E/ASSOCIATED PRESS
 「正恩氏は、収入を得る制限付きの自由を与え、市場活動や開発プロジェクトへの資金を提供する一方で、ドンジュを管理しながら、自らが進める経済発展計画に誘導するという難しいかじ取りを求められる」
CSISのチャ氏は、市場の普及が「潜在的な市民社会」の黎明(れいめい)期を形成しつつあると指摘する。そこでは、自らの生活に打撃が及ぶような政策変更には抵抗する可能性があるという。
 ドンジュの多くは外国のパートナーとの取引で富を得ており、国家への依存度が低下している。こうした中、北朝鮮の国営メディアは欧米型ビジネスを強烈に批判。「マネーがすべて」の資本主義は道徳的に腐敗した制度だと指弾し、ほぼ毎日のように社会主義礼賛を展開している。
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http://www.asyura2.com/18/kokusai23/msg/739.html#c4

[経世済民128] アマゾンの次の狙いが「高齢者」である、これだけの理由(ビジネス+IT) 赤かぶ
1. 2018年8月29日 12:39:15 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1345]
アマゾンが小売企業に及ぼす脅威、好況が隠れみの
家電販売大手ベスト・バイ(ニューヨーク)
By Justin Lahart
2018 年 8 月 29 日 09:58 JST

――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

 ***

 米小売企業は以前よりずっとよくやっている。だが彼らの問題が魔法のように消え去ったという意味ではない。

 それを思い出させたのが、家電販売大手ベスト・バイが28日に発表した決算だ。5-7月期(第2四半期)の既存店売上高は前年同期比6.2%増と、アナリスト予想の3.7%を大きく上回った。だが8-10月期(第3四半期)売上高の自社予想はアナリスト予想と一致し、同社は投資の強化が利益を圧迫するとの見通しを示した。

 他の小売企業では好決算が続いていたが、ベスト・バイのニュースは、好調な小売企業に投資家が期待していた内容ではなかった。ベスト・バイ株は過去2週間に6%上昇していたが、決算を受けて急落した。同社決算はまた、アマゾン・ドット・コムによる市場浸食を食い止める方法を他の小売企業が見いだしたとの考えが間違っていることを示す。

 いずれにしても、アマゾンは米小売市場でパイを拡大しているようだ。商務省はアマゾンの動向を補足するのに役立つ2種類のデータをまとめている。ひとつはカタログ販売や自動販売機など実店舗以外で販売をしている企業のデータだが、この分野はアマゾンに支配されている。4-6月期(第2四半期)には、小売売上高(ガソリンスタンドと自動車ディーラーを除く)に占めるこうした企業の割合が18.8%と、前年同期の18%から上昇した。もうひとつは全小売業者のオンライン売上高を含む電子商取引の売上高だ。その割合は同じ期間に13%から14.3%に上昇した。アマゾンは4-6月期のオンライン売上高が前年同期比12%増加したと発表している。

 言えるのはせいぜい、一部の小売企業が電子商取引とそれ以外を組み合わせた有望な戦略を開発しているということ。ベスト・バイもそうした企業のひとつだ。同社は2012年に開始した事業再建の一環として、同社店舗で商品を選んだ消費者が価格の低いオンラインショップで購入する「ショールーム化」を防ぐために値下げを行い、顧客サービスに一段と力を入れ、店舗をオンライン発注された商品の受け渡し場所としても活用し始めた。

 だが小売業界にとっていま最高の追い風は好況だ。強い労働市場が続いている上、多くの労働者が受け取る手取り賃金は減税を背景に上昇している。4-6月期の個人消費の伸びは約4年ぶりの高水準だった。

 いずれ、早ければ減税の効果が薄れ始める来年にも、個人消費は再び減速し始める。その時になって投資家は知る――小売市場の変化に順応する堅固な戦略を編み出したのがどの企業で、環境が悪化した時に再び不振に陥るのはどの企業かを。

関連記事
復活遂げたウォルマート、運命分かれる小売り株
トランプ関税、小規模企業の値上げ「限界」
http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/304.html#c1

[経世済民128] 日銀が政策を「玉虫色修正」、金融正常化を曖昧にし続ける理由(ダイヤモンド・オンライン) 赤かぶ
1. 2018年8月29日 14:29:18 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1346]

>日銀法改正で「独立性」の基盤が強まったはずなのに、政治に弱く、国民よりも円高を嫌う経済界に配慮する「体質」は変わっていない

人事権を握られているのだから、政治圧力が0になることはないし

金融業界や産業から常に人を入れているのだから配慮して当然


またバブル時の引き締めを喝采したマスコミ

デフレ不況時の白川日銀への民主党からの日銀法改正圧力や

日銀叩きなど


この掲示板での黒田叩きもそうだが

民主主義国家で、衆愚政治に左右されるのは必然ということだ


そしてトランプの米国や、欧州を見れば明らかなように

目先の問題に左右される既得権層や愚民たちによって

人事や政策に影響が及ぶのは日銀に限らない話だ



http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/325.html#c1

[経世済民128] 日銀が政策を「玉虫色修正」、金融正常化を曖昧にし続ける理由(ダイヤモンド・オンライン) 赤かぶ
2. 2018年8月29日 14:35:40 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1347]
累積する副作用が顕現化すれば「手遅れとなるリスク」:鈴木日銀委員
日高正裕、竹生悠子
2018年8月29日 11:49 JST
地域金融機関も含めた金融機関の経営状況の推移を注視すること重要
上下0.2%の変動幅は主要国の10年金利動向からみても「許容範囲」

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
日本銀行の鈴木人司審議委員は、累積していく金融緩和政策の副作用が将来、顕現化すれば「うまく対処することが難しくなることや、手遅れとなるリスクがある」との見方を示した。那覇市内で29日に講演した。

  鈴木委員は、金融政策は「金融機関のために行うものではない」としながらも、その効果を経済に波及させていく役割を担う地域金融機関も含めた金融機関の経営状況の推移や金融システム、金融仲介機能などへの影響を「引き続き注視していくことが重要」と語った。

  日銀は先月31日の金融政策決定会合で「当分の間、現在の極めて低い長短金利の水準を維持することを想定している」というフォワードガイダンス(政策金利の指針)を導入。ゼロ%程度を目標とする長期金利や指数連動型上場投資信託(ETF)の買い入れ額が上下に変動しうることも決定した。市場では、今回の政策修正が緩和の強化なのか正常化への一歩なのか、見方が分かれている。

  鈴木委員は、金利変動幅が拡大し、10年物国債金利が多少上昇しても、「金融機関の貸し出しや社債市場へ与える影響は限定的と考えられる」と指摘。今回の措置は「金利水準の引き上げを意図しているわけではない」とし、「金利が急速に上昇する場合には迅速かつ適切に国債買い入れを実施していく方針だ」とも述べた。

  日銀がゼロ%をはさんでプラスマイナス0.1%の倍程度の変動幅を念頭に置いていることについては、「足元の主要国の10年物国債金利の動向からみても許容範囲」との見方を示した。


 

政策委員会審議委員:鈴木人司(すずきひとし)
English

生年月日
昭和29年1月8日
出身地
東京都
任期
平成29(2017)年7月24日〜平成34(2022)年7月23日
履歴

昭和52年3月 慶應義塾大学経済学部卒業
昭和52年4月 (株)三菱銀行入行
平成14年5月 (株)東京三菱銀行 市場企画室長
平成16年5月 (株)東京三菱銀行 市場企画室長 兼 情報企画室長
平成17年6月 (株)東京三菱銀行 執行役員市場企画室長 兼 情報企画室長
平成18年1月 (株)三菱東京UFJ銀行 執行役員市場企画部長 兼 本店東京ビル出張所長
平成19年2月 (株)三菱東京UFJ銀行 執行役員クレジットポートフォリオ戦略部長
平成20年4月 (株)三菱東京UFJ銀行 常務執行役員市場部門長 兼 金融商品開発部長
平成20年5月 (株)三菱東京UFJ銀行 常務執行役員市場部門長
平成20年6月 (株)三菱東京UFJ銀行 常務取締役市場部門長
平成23年5月 (株)三菱東京UFJ銀行 専務取締役市場部門長
平成24年5月 (株)三菱東京UFJ銀行 専務取締役
平成24年6月 (株)三菱東京UFJ銀行 副頭取
平成26年6月 (株)三菱東京UFJ銀行 常勤監査役
平成28年6月 (株)三菱東京UFJ銀行 取締役常勤監査等委員
平成29年6月 (株)三菱東京UFJ銀行 顧問
平成29年7月24日 日本銀行政策委員会審議委員
http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/325.html#c2

[経世済民128] 日銀が政策を「玉虫色修正」、金融正常化を曖昧にし続ける理由(ダイヤモンド・オンライン) 赤かぶ
3. 2018年8月29日 14:37:44 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1348]

わが国の経済・物価情勢と金融政策
沖縄県金融経済懇談会における挨拶要旨
日本銀行政策委員会審議委員 鈴木 人司
2018年8月29日

全文 [PDF 1,189KB]
図表 [PDF 728KB]
1.はじめに
日本銀行の鈴木でございます。本日は、沖縄県の金融・経済界を代表する皆様方にお集まり頂き、誠にありがとうございます。皆様には、日頃より日本銀行那覇支店の様々な業務運営に多大なご協力を頂いており、この場をお借りして厚くお礼申し上げます。

本日の懇談会では、まず私から経済・物価情勢と日本銀行の金融政策についてご説明させて頂いたうえで、沖縄県経済についても触れさせて頂きたいと思います。その後、皆様方から、当地の実情に即したお話や日本銀行の政策運営に対するご意見などを承りたく存じます。

2.最近の経済・物価情勢
海外経済
まず、海外経済についてですが、グローバルな製造業の業況感は足もと幾分低下してきているものの、総じてみれば着実な成長が続いています。米国経済は、企業の景況感も良好であり、雇用・所得環境や消費者マインドの改善等に支えられて個人消費も増加基調にあります。先行きも、緩やかな利上げが継続するとみられるものの、拡張的な財政政策に支えられ、雇用・所得環境の着実な改善を背景に景気は拡大を続けていくと予想されます。欧州については、本年1〜3月期にかけてユーロ高や天候要因等もあり経済成長が幾分減速し、4〜6月期にもう一段減速しましたが、生産面は基調として増加しており、先行きも回復が続くとみられます。中国経済は、固定資産投資の増勢が鈍化する中、米国との貿易摩擦問題の影響が懸念されるところですが、輸出や工業生産は堅調であり、総じて安定した成長を続けています。先行きも、当局が財政・金融政策を機動的に運営するもとで、概ね安定した成長経路をたどるものとみています。その他の新興国・資源国経済については、輸出の増加や各国の景気刺激策の効果等から、全体として緩やかに回復しており、先行きも先進国の着実な成長の波及や景気刺激策の効果等によって、成長率は徐々に高まっていくことが予想されます。

IMFが7月に発表した世界経済の成長見通しによれば、2018年は2017年を上回るプラス3.9%の成長が見込まれており、各国の財政・金融政策や構造改革の動向次第では、経済が上振れる可能性もあると考えられます(図表1)。もっとも、足もとは経済への下振れ方向の不確実性が高まりつつある点にも留意が必要です。具体的には、米国の保護貿易主義的な措置とそれに対する各国の報復措置によって、世界の貿易量の減少や国際金融市場への影響が懸念されます。加えて、英国のEU離脱交渉の展開や南欧の政局、原油価格の動向、地政学リスク、中国経済の減速等についても引き続き注視していく必要があります。

この点、新興国経済では、米ドル建て債務がこの10年間ほどの間に拡大してきた中で、米国金利の上昇や返済原資となる自国通貨の下落、通貨防衛やインフレ抑制のための利上げによる経済の減速といった状況に直面しています。現時点では、それらが世界経済へもたらす影響は限定的とみられますが、今後も情勢を注意深く見守っていくことが重要です。

国内経済の現状と先行き
次に、わが国の経済についてですが、わが国の景気は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかに拡大し、需給ギャップも需要超過を維持しています(図表2)。本年1〜3月期は天候要因等から一時的にマイナス成長となりましたが、4〜6月期の実質GDP成長率(速報値)は、個人消費の復調や設備投資の伸び率の拡大等を背景に、はっきりとしたプラス成長となりました(図表3)。日本銀行が7月に公表した「地域経済報告」、いわゆる「さくらレポート」では、全国9地域のうち九州・沖縄を含む6地域で景気の総括判断を「拡大している」、「緩やかに拡大している」としております(図表4)。九州・沖縄地域については、公共投資が高水準にあり、設備投資も増加する中で、雇用・所得環境の改善を背景に個人消費も緩やかに増加しており、しっかりとした足取りで、緩やかに景気が拡大しています。特に、沖縄県では、足もとは台風等の影響がみられていますが、国内外からの観光客が増加基調にある中で、インバウンド消費の拡大やホテル建設等の民間設備投資の増加等がみられており、これらが景気の牽引役となっています。

また、景気の拡大とともに、労働需給は着実に引き締まってきており、短観の雇用人員判断DIでみた企業の人手不足感は幅広い業種で高水準にあるほか、失業率も足もと2%台半ばまで低下してきています。有効求人倍率は1974年以来の高水準にあり、正社員の有効求人倍率については、調査が開始された2004年11月以降のピークを更新しています(図表5)。こうした状況を踏まえ、幅広い業種において、AIやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の活用等も含めた省力化投資が積極化しています。この点、AIやRPAの活用が進められた場合、人間の雇用が機械に置き換えられてしまう「代替効果」が想定されますが、自動化によるコスト削減に伴う経済の拡大や、技術革新による新たな財・サービスの提供のための新規雇用の創出も考えられますので、経済全体としてさらなる成長につながる可能性もあるとみています。このことは、少子高齢化という課題に取り組んでいるわが国において一つの糸口ともなり得るものであり、実際、海外では、AIの活用等により想定される経済へのポジティブな効果とネガティブな効果の双方を分析しつつ、今後社会が取り組むべき課題を指摘する研究1もあります。

先行きのわが国経済については、緩やかな拡大を続けるとみられます。2018年度は、海外経済が着実な成長を続けるもとで、きわめて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられます。企業の成長期待の高まりやオリンピック関連投資の本格化、人手不足に対応した省力化投資の増加など、設備投資は増加を続けると予想されます。また、個人消費も、雇用・所得環境の改善が続くもとで、緩やかな増加基調をたどるとみられるほか、海外経済の成長を背景に、輸出も基調として緩やかな増加を続けると考えられます。2019年度から2020年度については、資本ストックの蓄積やオリンピック関連需要の一巡による設備投資の減速が見込まれるほか、2019年度下期には消費税率引き上げによる一時的な個人消費の落ち込みも予想されますが、輸出の増加にも支えられ、景気の拡大基調は続くことが見込まれます。具体的に、日本銀行が7月に発表した展望レポートにおける政策委員の成長率見通しの中央値では、2018年度はプラス1.5%、2019年度、2020年度はプラス0.8%となっています(図表6)。なお、2019年10月に予定されている消費税率引き上げの影響については、駆け込み需要とその反動、および実質所得の減少効果という2つの経路による経済への影響が考えられますが、足もと政府による各種の負担軽減策等も進められており、2014年度の前回増税時と比べて小幅な影響に止まる可能性も相応にあるとみています。

Acemoglu, Daron and Pascual Restrepo (2018) “Artificial Intelligence, Automation and Work” NBER Working Paper No. 24196.
物価の現状と「物価安定の目標」の考え方
こうしたもとで、物価情勢についてみますと、生鮮食品を除く消費者物価(コアCPI)の前年比は、本年2月にプラス1%まで上昇した後、一旦は鈍化したものの、エネルギー価格の上昇もあって、足もとでは幾分持ち直しています(図表7)。

物価は、「経済の体温」とも呼ばれます。物価上昇率が、高過ぎず、低過ぎず、一定の水準で安定することは、日本経済全体を動かす原動力となると考えられます。例えば、人々が生み出す製品やサービスの付加価値が高まり価格が上昇する、すなわち物価が緩やかに上昇する環境においては、企業収益についても潤っていくことが考えられ、その場合には企業で働く労働者の賃金も増え、家計所得もまた潤うこととなります。家計が潤えば、人々がさらに企業の製品やサービスへの支出を増やすと考えられますので、企業収益が一層潤う――こうした好循環の流れをつくっていくことが重要ではないかと考えています。

では、その「経済の体温」はどの位がちょうど良いのか、ということですが、日本銀行では、これを「2%」とし、「物価安定の目標」と位置付けています。理由としては、第1に、消費者物価の統計上、数字が実勢よりも高めに出やすいという上方バイアス、すなわち「くせ」が指摘されていることがあります。また、第2に、中央銀行はインフレやデフレに対し、政策金利の上げ下げで対応していますが、金利を上げていく場合には、かなり高い金利まで引き上げが可能な一方、金利を下げていく場合には、大幅なマイナス金利は困難であるという政策対応の非対称性があります。このため、中央銀行としてはデフレ方向に向かった場合に金融緩和で適切に対応できるよう「のりしろ」を確保しておく方が望ましいと考えられます。さらに、主要な先進国では、物価安定の定義として「2%」が用いられており、これがグローバル・スタンダードとなっています。色々と申し上げましたが、人間の体温と同様、物価上昇率についても一定の基礎体温を維持しておくことが重要であり、それが「2%」というのが主要中央銀行のコンセンサスでもある、と考えられます。

物価・賃金に対する考え方
続いて、物価や賃金の情勢について、マクロ的な需給ギャップや予想物価上昇率の動向を切り口に、ご説明したいと思います。

まず、マクロ的な需給ギャップの動向についてですが、労働需給の着実な引き締まりや資本稼働率の上昇を背景に、プラス幅が拡大しています。この点、本来であれば、需給ギャップの拡大は物価上昇圧力をもたらし、タイムラグを伴いつつもコアCPIが上昇していくことが想定されますが、現状では物価はなかなか思うようには上昇していません。その背景には、後述するように、本格的な賃金上昇の実現に時間がかかっていることに加え、少子高齢化の中での家計の将来不安が依然根強く、有体に申し上げれば「財布の紐が固い」、値上げに対する許容度が高まらない、ということが挙げられます。実際、原材料費や人件費の上昇を受けて、昨秋以降、外食や運輸等のサービス業を中心に値上げに踏み切る企業もみられ、本年入り後も業務用ビールや一部食品等をはじめとした値上げが行われていますが、それらの取組みが企業業績の改善に結び付くケースはまだそう多くはなく、消費者心理を計りかねている企業が少なくないように見受けられます。こうしたことが、企業の慎重な価格設定スタンスにつながっていると考えられます。家計の不安を解消するためには、賃上げによる所得面の改善が直接的な方法ですが、間接的には、年金制度や他の社会保険制度といった枠組みを通じて、国民にとって安心感の持てる制度設計を図っていくことも重要と考えられます。

賃金面についてみますと、人手不足が深刻さの度合いを高めている割には名目賃金が伸び悩んでいます。こうした背景には、正規雇用者の側で賃上げよりも雇用の安定を優先する傾向がみられることや、企業側でも中長期的なリスクを踏まえ慎重な賃金設定スタンスを維持していることが考えられます。また、人手不足感が強まる中、労働供給の賃金弾力性が高い女性や高齢者の労働参加が増えていることも挙げられます。このような状況のもとで、物価の影響を除いた実質ベースの賃金も伸び悩んでいます。今後、物価が上昇していったとしても、賃金が上昇しなければ、国民経済に負担がかかることも考えられますので、「物価安定の目標」を達成し、国民経済の健全な発展に資するためには、ただ「物価だけが上がれば良い」というものではなく、賃金の動向についても注視し続けていかなければなりません。

次に、中長期的な予想物価上昇率をみますと、足もとは横ばい圏内で推移しています(図表8)。予想物価上昇率は、理論的には、過去(現実)の物価上昇率に基づく「適合的な期待形成」と、日本銀行が「物価安定の目標」の実現に強くコミットし金融緩和を推進していくことに伴う「フォワードルッキングな期待形成」に影響されることとなります。わが国では、予想物価上昇率が現実の物価上昇率に引きずられる傾向が強いとみられることを踏まえると、現実の物価を上昇させていくこととともに、日本銀行が引き続き「物価安定の目標」の達成に向けて強力なコミットメントを維持し続けることが重要です。これらによって、少しずつでも企業や家計の予想物価上昇率が押し上げられていけば、それが現実の物価上昇率へもフィードバックされ、物価上昇率が徐々に高まっていくと考えられます。

このように、様々な要因が複合的に作用していることで、物価は、堅調な経済・雇用情勢に比べると、弱めの動きが続いています。もっとも、コアCPIは本年2月までの間に19か月連続で横ばいないし改善を続けてきたことも事実です。決して楽観視はできませんが、先行きについても、景気の拡大基調が続く中で、物価の上昇を遅らせてきた要因の多くは次第に解消していくとみています。すなわち、本年の春闘の結果からも、企業における賃上げの動きが徐々に裾野を拡げつつあることが窺われますので、技術進歩の影響等は先行き強まる可能性もありますが、労働需給が引き締まった状態が続くもとで賃金上昇率の高まりはより明確化していくとみられます。こうしたもとで、外食等のサービス業でみられ始めているように、販売価格の上昇圧力も強まっていくとみられるほか、人手不足を背景とした物流コストの増加は、インターネット通販企業と小売業との競争環境を緩和させる方向に作用すると考えられます。また、労働生産性の上昇や非正規雇用者の賃金水準の高まりが正規雇用者の賃金にも波及していけば、家計としても値上げを許容し易くなると考えられます。先程、中長期の予想物価上昇率は横ばい圏内にあると申し上げましたが、日本銀行による「生活意識に関するアンケート調査」の結果では、「1年後」の物価が現在と比べて「上がる」と回答した人の割合は上昇傾向にあり、人々の物価の見方に変化の兆しもみられ始めています(図表9)。

これらを踏まえますと、現時点ではなお力強さに欠けてはいますが、「物価安定の目標」に向けたモメンタム自体は維持されており、コアCPIの前年比については、これまでの想定よりは時間がかかるものの、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられます。具体的な数値で申し上げると、7月の展望レポートにおける政策委員見通しの中央値は、2018年度にプラス1.1%、2019年度には消費税率引き上げによる直接的な影響を除いたベースでプラス1.5%、2020年度には1.6%となっています(図表6)。

3.金融政策運営
「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」について
次に、金融政策についてお話しします。日本銀行は、2013年4月に「量的・質的金融緩和」を導入し、2016年9月以降は、その枠組みを強化した「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を推進しています。この「長短金利操作」、いわゆる「イールドカーブ・コントロール」は、2%の「物価安定の目標」に照らして最適と考えられる金利水準の期間構造、イールドカーブの形成を促すというものです。理論的に申し上げますと、名目金利から予想物価上昇率を差し引いた値である現実の実質金利を、景気を加速も減速もさせない中立的な状態を実現する実質金利である自然利子率より低位に抑えることで経済活動を刺激し、需給ギャップが改善することで、物価上昇圧力を生むというメカニズムを念頭に置いています。

様々な要因から、「物価安定の目標」の実現にはなお途半ばの状況にありますが、金融緩和の効果がしっかりと発揮されるもとで、わが国の景気拡大は継続されており、先程申し上げたとおり、賃金や物価が上昇していく道筋も見えつつあります。こうした動きをより確かなものとするためには、強力な金融緩和を息長く継続し、需給ギャップがプラスの状態をできるだけ長く続けることが適当であり、そのことが2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現することにつながると考えられます。

金融緩和の継続にあたっての視点
このように強力な金融緩和を息長く継続していくにあたっては、重要となる視点が2つあります。まず第1に、日本銀行の先行きの「物価安定の目標」の実現に向けた政策運営スタンスをより明確にし、金融緩和が長期化する中にあっても、政策に対する信認の確保を図るということです。こうした観点から、先日の金融政策決定会合において、政策金利の「フォワードガイダンス」を導入しました。「日本銀行は、2019年10月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持することを想定している。」ということを明確に約束することで、「物価安定の目標」の実現に対するコミットメントの強化につながると考えています。

第2に、物価上昇に時間を要し、金融緩和の継続が先行きも見込まれる中にあっては、金融政策が国債市場や金融機関へ与える影響について、一層目を凝らしていく必要があります。どんな良薬にも副作用があるように、金融政策がどこでどのようなかたちで影響を及ぼしているかを、虚心坦懐に見極めていくことは、政策を継続していくうえで重要な観点です。

(1)金融政策の国債市場等への影響
そこで、まずわが国の国債市場をみますと、足もとこそ7月31日の日本銀行の政策決定を受けて多少の動きを取り戻してきていますが、市場機能という観点では、その低下が懸念される事象も見受けられます。具体的には、国債取引量の低下に伴い、新発10年債の業者間取引が不成立となる日が、本年に入ってから過去にないペースで発生しています。また、長期金利には、様々な経済的要素を反映するバロメーターとしての側面もあるわけですが、米国等の海外長期金利が上昇する局面においても、わが国の長期金利が殆ど反応しない、といったことが見受けられるようになりました。市場関係者からは、売り手と買い手による「公正な価格形成機能」や経済のバロメーターとしての「シグナリング機能」といった本来の市場機能が低下しているのではないか、と危惧する声も聞かれています。長く市場実務に携わってきた私の経験から申し上げますと、金利は市場で決まるものであり、イールドカーブ・コントロールのもとにあっても、日本銀行はその金利操作目標に向けて市場を通じて誘導を図っていくという点は変わりません。ただ、一定の狭い価格レンジの中で取引が長期間続いてきたことにより、様々な投資家やアービトラージャー、スペキュレーター等で構成される市場参加者の数や、取引のインセンティブが限定的となってきたことが、足もとの国債市場で起きていることの背景の一つとして考えられます。こうしたことを踏まえ、先日の政策決定では、10年物国債金利の操作目標を従来の「ゼロ%程度」としつつ、そのもとで「金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうる」ということをお示ししました。この場合の変動幅としては、「イールドカーブ・コントロール」導入後の金利変動幅である、概ね±0.1%の幅から、上下その倍程度に変動しうることを念頭に置くことになるかと考えられます。こうした変動幅は、足もとの主要国の10年物国債金利の動向からみても、許容範囲であるとみています(図表10)。

この点、これまでよりも金利水準が少しでも上昇することがあれば、金融緩和の効果が減殺されるのではないか、との議論もあるかと思います。もっとも、現状では、大手金融機関の新規貸出は、個人向け、法人向けともに短期金利ないしは短期金利連動型の貸出が多く、中長期の資金調達手段である社債についても、銀行・保険会社の発行分も含めた国内普通社債の発行残高は60兆円前後の規模で推移しています。今回の措置に伴い金利変動幅が拡大し、10年物国債金利が多少上昇しても、金融機関の貸出や社債市場へ与える影響は限定的と考えられます。むしろ、金融緩和政策の持続性の強化という効果が期待されます(図表11)。なお、今回の措置は金利水準の引き上げを意図しているわけではありませんので、金利が急速に上昇する場合には、迅速かつ適切に国債買入れを実施していく方針であることについても、付言させて頂きます。

また、現状、ETF(指数連動型上場投資信託)やJ-REIT(不動産投資法人投資口)については、保有残高がそれぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行っていますが、これらについても、資産価格のリスク・プレミアムへの働きかけを適切に行う観点から「市場の状況に応じ、買入れ額は上下に変動しうる」こととし、政策の柔軟性・持続性の向上を図っています(図表11)。

(2)金融政策の金融機関への影響
国債市場等への影響に加え、低金利が続くことに伴う金融機関への影響についても、しっかりとモニタリングをしていくことが重要です。金融機関では、債券や株式投信等の益出し、与信費用の戻入によって最終利益を支えている先もみられますが、この間の決算動向をみますと、いずれの業態でも、国内貸出利鞘の縮小に伴い資金利益が減少しているほか、米国長期金利の上昇を受けて債券等の評価損益が悪化しています。この点、金融機関では、大手行を皮切りに、AIの活用や様々な省力化技術の導入によって効率化の取組みが進められており、経費の削減による収益力向上の余地もまだ残されていると考えられますが、そうした効果が顕現化するには時間がかかる可能性もあります。金融政策は、金融機関のために行うものではないことは言うまでもありません。もっとも、金融政策の効果を経済に波及させていく役割を担うのは金融機関となりますので、地域金融機関も含めた金融機関の経営状況がどう推移していくのか、また、そのことが金融システムや金融仲介機能へどう作用していくのかを、引き続き注視していくことが重要と考えています。

今後の金融政策運営に向けて
ここまで申し上げてきた金融政策の目的とその効果、そして国債市場や金融機関への影響も踏まえた上で、今後の留意点について、お話ししたいと思います。まず、金融政策では、常に中長期の効果と副作用の比較衡量に基づいて慎重な判断を求められることとなるわけですが、累積していく政策の副作用については、将来どこかの時点で顕現化してしまいますと、その時点ではうまく対処することが難しくなることや、手遅れとなるリスクがあることに、十分注意を払う必要があります。金融政策による効果がもたらされる時間軸に加え、その副作用が累積していく時間軸についても複眼的な視点で捉えつつ、両者を比較衡量しながら政策運営を図っていくことが重要です。少なくとも現状においては、わが国の金融機関は全体として資本、流動性の両面で強いストレス耐性を備えており、金融システムの安定性も維持されているものと考えていますが、イールドカーブの適切な形成にあたっては、2016年9月の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の導入の際にも示されておりますとおり、経済・物価・金融情勢を踏まえて判断していくことが適切と考えております。

今後も、現状の金融緩和政策を息長く続けていくもとで、金融政策運営の観点から重視すべきリスクの点検を行うとともに、「物価安定の目標」に向けたモメンタムをしっかりと維持すべく、適切な政策運営に努めて参りたいと考えています。

4.おわりに ―― 沖縄県経済について ――
最後に、沖縄県の経済についてお話ししたいと思います。

わが国では、人口減少が今後の大きな社会的課題とされていますが、この沖縄県は、昨年の人口の自然増加率は全都道府県のトップであり、先行き2030年にかけての期間でみますと、全国で東京都と沖縄県だけが人口増加が見込まれています。そして、産業構造では、建設業や製造業等の第2次産業の比率は1割強に止まる一方で、商業や観光サービス業等の第3次産業が8割以上を占めており、日本有数の観光立県の地となっています。近年は、官民による各種施策の奏功もあってさらにその魅力に磨きをかけており、県内各港へのクルーズ船の寄港や新規航空路線の拡大等が進み、昨年度の国内外からの観光客数は約958万人、観光収入は約7,000億円と、5年連続で過去最高を更新しています。今年度入り後も、増加基調が続いており、県では2021年度に観光客1,200万人、観光収入1.1兆円を目指しておられます。

また、県により2012年度から策定されている「沖縄21世紀ビジョン基本計画」では、地域社会の絆で支えられたコミュニティの形成や世界の架け橋となる自立型経済の構築を基軸的な考えとして、様々な取組みの推進が図られています。昨年5月の同計画の改定では、MICE(Meeting, Incentive, Convention, and Exhibition/Event)を沖縄経済成長のプラットフォームとして新たに位置付け、各産業分野の成長発展と都市ブランド力の向上を図ることなども盛り込まれました。沖縄県に止まらず、日本やアジア地域の発展にも貢献する「21世紀の万国津梁」を実現すべく、時代に即した産業の育成として、観光リゾート産業、情報通信関連事業に加え国際物流拠点の形成を目指しており、「沖縄国際物流ハブ」の整備も着実に進められています。

この沖縄には、「行逢(いちゃ)りば、兄弟(ちょおでぇ)」という言葉があると伺っております。誰しも一度会えば兄弟のような仲としてふれあい、互いを尊重し合うこの沖縄の気質こそ、国内外の人々を惹きつけて止まない魅力であり、また、歴史を乗り越えてきた力強さなのではないかと思います。私自身も、日頃金融政策のあり方を考えるにあたっては、様々なデータや経済理論が指し示す内容を精査することもさることながら、実際に経済を動かしているのはやはり人間であり、少しでも多くの方々とふれあい、そのご意見にできるだけ寄り添っていけたらと考えています。今回の金融経済懇談会を通じてお会いできた皆様との出会いも、「行逢りば、兄弟」の言葉のとおり、大切にさせて頂きたいと存じます。

今後も、皆様の幅広い取組みが奏効し、沖縄県経済が一層の発展を遂げられていくことを祈念いたします。ご清聴ありがとうございました。
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2018/ko180829a.htm/
http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/325.html#c3

[経世済民128] 6行が融資上限に抵抗 今やカードローンは銀行の“命綱”に(日刊ゲンダイ) 赤かぶ
1. 2018年8月29日 22:58:23 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1349]

何度も言っている通り

中長期的には、ゆうちょは勿論、今の地銀の大部分も廃業した方が良いだろう

そして金融庁や財務省など多くの官公庁も大幅に縮小できる

http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/329.html#c1

[経世済民128] 通帳もATMも消えていく…?5年後の銀行の姿はこうなっている 利用者もうかうかしていられない(現代ビジネス) 赤かぶ
3. 2018年8月29日 23:01:50 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1350]

>通帳は廃止されるかもしれない

と言うより、既に不要になっている

金融の本質は情報

マネーに実体などないのだから当然のことだ


http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/327.html#c3

[国際23] 欧米はなぜ『中国製造2025』を恐れるのか(マスコミに載らない海外記事) 赤かぶ
2. 2018年8月30日 14:22:02 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1351]
対中強硬姿勢をますます強化させる米国防当局
2018年版「中国軍事レポート」で示された国防戦略の大転換
2018.8.30(木) 北村 淳
米国防総省のサイトに弱点138か所、バグ発見の報奨制度で判明
米首都ワシントンD.C.にある国防総省のビル(資料写真)。(c)AFP/STAFF〔AFPBB News〕

 アメリカ国防総省が毎年8月中旬に公表する『中国軍事レポート』が、今年(2018年)も8月16日に公表された。

 このレポートには、中国の安全保障・軍事戦略の概要や中国軍事力の現況(2018年版の場合は2017年末までの状況)、それにアメリカ国防当局の対中姿勢などが簡潔に記述されることになっている。また、毎年公表される定型的な報告内容以外にも、アメリカ国防当局が特に触れておきたい事項に関して特別の章を設けたり、囲み記事を挿入することにより、中国軍事力の脅威に対する警鐘を鳴らしている。

不思議な日本メディアの無反応
 今年のレポート(以下、『中国軍事レポート:2018』)では、中国人民解放軍の戦力、とりわけ海洋戦力や宇宙・サイバー戦力が着実に強化されつつある状況に加えて、特別の章を5つ付加して様々な角度から中国軍事力の強化状況に関して警戒を喚起している(本レポートで指摘されている中国の軍事的脅威のうち日本に直接関係するものに関しては、追って本コラムで取り上げたい)。

 これに対して中国政府は、「ペンタゴンのレポートは無闇に中国脅威論をまき散らすもので、断じて容認できない」と強く反発している。中国当局による反発は、いわば毎年の恒例行事のようなものであるが、不思議なのは日本のメディアである。なぜならば、今年のレポートには、日本のメディアが飛びつくことが常となっている「アメリカ当局の尖閣問題に対する基本姿勢」が明示されているにもかかわらず、それを取り上げていないからである。

『中国軍事レポート:2018』における、中国による周辺諸国との領域紛争に関する部分では、当然ながら尖閣諸島を巡る領域紛争が記述され、アメリカの次のような立場が明記されている。

「アメリカ合衆国は尖閣諸島の統治権に関しての立場を表明することはしないが、尖閣諸島は日本の施政下にあり、それゆえ尖閣諸島は日米安保条約第5条が適用される、と認識している。さらに、アメリカ合衆国は、尖閣諸島に対する日本の施政権を弱体化させるための一方的行動は、いかなるものであろうとも反対する」

 これは、従来からアメリカ政府高官たちが繰り返し述べてきた尖閣諸島に対するアメリカの立場である。「第三国間の領域紛争には直接関与しない」というのはアメリカ合衆国が伝統的に遵守している基本的外交原則の1つであり、尖閣諸島問題が日本と中国の間の領域紛争であるがゆえに明確な態度を表明しないというわけではない。

『中国軍事レポート:2018』では南シナ海の領域紛争についても、東シナ海での領域紛争よりも分量を割いて記述しており、伝統的外交原則に遵(したが)う姿勢も次のように表明している。

「アメリカ合衆国は南シナ海の陸地(注:島、環礁、暗礁、人工島などを含む広義の陸地)を巡る統治権に関しての立場を表明することはしないが、中国の埋め立て作業は他の紛争当事国の行動に比べて常軌を逸していると認識している。アメリカ合衆国は、それら紛争中の陸地におけるさらなる軍事化に反対するとともに、すべての紛争当事国が一方的かつ強圧的な変化を避けるよう要望する」

『中国軍事レポート』は米政府の公式見解
 ちなみに、『中国軍事レポート』の正式名称は、『連邦議会に対する年次報告書:中華人民共和国に関する軍事・安全保障の発展』という。国防総省が毎年作成し、連邦議会に提出することが法律で義務づけられている中国軍事力に関する調査分析報告のうち、公開が認められた情報をレポートの形にして公刊したものである。

 したがって『中国軍事レポート』の重みは、日本の防衛省が毎年公刊している『中国安全保障レポート』とは全く異なっている。

 なぜならば、日本の『中国安全保障レポート』の冒頭には、「本書は、防衛研究所の研究者が内外の公刊資料に依拠して独自の立場から分析・ 記述したものであり、日本政府あるいは防衛省の公式見解を示すものではない」と明言されている。つまり、日本国防当局が公刊しているものの、その内容は研究者たちの個人的見解という位置づけなのだ。

(もっとも、アメリカ国防当局が9万5000ドルの税金をつぎ込んで「国防総省の見解とは関係がない個人的見解」を記述したレポートを作成することなど、アメリカの納税者は許さないであろう。『中国軍事レポート』では、毎回冒頭にレポート作成に要した直接経費が明示されている。2018年版は9万5000ドルであった)

 いずれにしても、本レポートに記載されてある内容は全てアメリカ国防当局の公式見解であり、連邦議会や政府機関そしてアメリカ国民にとっても中国軍事力に関する共通認識ということになるのである。

国防戦略の基本方針を大転換したアメリカ
 ここで注意すべきなのは、そもそも『中国軍事レポート』は、著しく強化されつつある中国の軍事力に関する報告書であるため、中国人民解放軍の戦力強化に対して警鐘を鳴らす役割を生来的に持っているということだ。したがって、中国当局が非難するように、中国脅威論を唱道する形になってしまうことは避けられない。

 とはいうものの、本年度のレポートを手にすれば、トランプ政権による対中軍事姿勢の大転換が反映して対中軍事警鐘のレベルが一段と上がっていることは明らかだ。

 トランプ政権はアメリカ国防戦略の基本方針を「世界的なテロ勢力との戦い」から「大国間の角逐に打ち勝つ」すなわち「中国とロシアに対する軍事的優勢を手にする」ことへと大転換した。

 今回のレポートで定型的内容に付加された5つの「Special Topic」(「中国の国際的影響力の拡大」「中国の北朝鮮に対する取り組み」「中国人民解放軍の統合軍への進捗状況」「周辺海域を越えての爆撃機運用状況」「習近平の國家創新驅動發展戰略」)からは、中国に対する軍事的姿勢の変化が強く読み取れる。そして、毎回レポートに記載される「当該年度に予定されている米国と中国の軍事的直接対話」の回数がトランプ政権下で大きく減少している(下の表を参照)という事実は、アメリカ国防当局が中国に対する「関与政策」から脱却しつつあることを誰の目にも見える形で示している。

米国と中国の「軍事的直接対話」の回数の推移
「雪解けムード」でも防備は欠かせない
 トランプ政権による対中経済強硬姿勢によって引き起こされた“米中経済戦争”に直面している中国は、少しでも厄介な揉め事を当面の間は棚上げにしておくために、日本に対する軍事的強硬姿勢を表面的には後退させて、外交的“雪解け”ムードを浸透させようとしている。

 だが、中国にとって日本との“雪解け”などは、もちろんトランプ政権が吹きかけている嵐が過ぎ去るまでの一時的なものに過ぎない。その間も対米・対日軍事能力の構築は着々と進めておけば良いのである。

 日本にとっては幸いなことに、米中間の経済的軋轢が強まれば強まるほど、アメリカ国防当局は軍事力の強化、とりわけ中国との対決に欠かせない海洋戦力の強化に邁進することが容易になっている。日本としても、中国が虎視眈々と狙っている東シナ海における軍事的優勢の掌握を阻むために南西諸島へ強力なミサイルバリアを構築する(本コラム2018年7月26日、2018年4月12日、2016年12月29日、2015年7月16日、2014年5月8日、拙著『トランプと自衛隊の対中軍事戦略』講談社α新書、など参照)などの具体策を実施し、中国の軍事的脅威への防備を推し進めなければならない。

 もちろん外交的“雪解け”を促進して日中間に友好関係を構築する努力を欠かしてはならない。しかし、外交的友好関係を維持する努力と、軍事的防備を固める努力は代替関係にはない。そうである以上、常に平行して推し進めねばならない。
http://www.asyura2.com/18/kokusai23/msg/747.html#c2

[国際23] 「エルサルバドルが台湾との国交を絶ち中国と国交を結んだ件」(人民網・台湾国際放送・Sputnik・米大統領府) 無段活用
3. 2018年8月30日 14:24:09 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1352]
「我々は台湾ではない」中華民国を悩ませる離島の現実
かつては激戦地の「金門島」、島民の心はずっと中国人?
2018.8.30(木) 安田 峰俊
台湾の蔡総統、中台関係の改善望む 中国新指導部発足受け
台湾・台北で演説する蔡英文総統(2017年10月26日撮影、資料写真)。(c)AFP/Sam YEH〔AFPBB News〕

 金門島という島をご存知だろうか? 台湾本島から台湾海峡を挟んで西に約270キロ、中華人民共和国の福建省厦門市の沖合いわずか5キロの場所に浮かぶ、中華民国の実効支配下にある地域だ(下の地図)。現在、この島がちょっとホットな話題の場所となっている――。

赤い丸で囲んだ場所が金門島(Googleマップ)
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砲戦記念イベントを欠席した蔡英文
「なぜ、蔡英文は島に来ないのか?」

 今年(2018年)8月23日、かつて陳水扁政権時代の副総統だった呂秀蓮が金門島を訪れた際に、地元住民からこうした質問攻めに遭ったと台湾紙『自由時報』が報じている。呂は記者会見の席で「台湾は(金門島に対して)情がなさすぎる、冷たすぎる。もしも金門が存在しなければ今日の台湾はなかったでしょう?」と発言。蔡英文の姿勢を批判した。

 この日は、過去に中華民国軍と大陸の人民解放軍が金門島をめぐる激しい砲撃戦「八二三砲戦」を開始した日からちょうど60年目にあたる。この日の前後、台湾からは当時の戦役に参加した老兵600人以上が島を訪れて記念イベントに参加し、往年の戦いを偲んだ(下の写真)。

「823砲戦」から60年、台湾の金門島で開催された記念式典の様子。AFP動画ニュースから (c)AFP〔AFPBB News〕
 だが、中華民国現総統の蔡英文(民進党)は、外遊の直後であることや、エルサルバドルが台湾との断交を発表したことによる多忙もあって、金門島でのイベントを欠席。蔡は公式フェイスブックに「60年前も60年後も、台湾人が故郷を守る決心を砲弾で変えることはできない」と関連する投稿をおこなったのみで、副総統の陳建仁を代理出席させることもなかった。

 ゆえに、高齢層や金門島の地元住民を中心にうっすらとした反発が広がっている。野党・国民党は同月18日に台北市内で「八二三砲戦」を記念する式典を開き、蔡政権の姿勢に批判的な構えを見せた。

中華民国の最後の大陸領土「金門島」
 現在は「台湾」とほぼイコールのようなイメージがある「中華民国」は、かつては中国全土に主権を持つとされた国家だった。だが、日中戦争の終結直後に起きた第2次国共内戦に敗北し、臨時首都を台北に移転して、台湾島と周辺地域を実効支配する国に変わる。中華民国は1950年代前半までに大陸の主要部をすべて失い、1955年には浙江省の島嶼部の拠点も放棄した。

 ところが、台湾から見て海峡を挟んだ向こうにある福建省北部の島嶼部の馬祖県と、同省南部の島嶼部の金門県だけは、その後も「中華民国」のまま残存した。この領域が事実上確定したのが、60年前の「八二三砲戦」だったのだ。

 1958年8月23日、中華人民共和国の人民解放軍は、厦門市の沖に残された中華民国支配地域・金門島の「解放」を目指して大規模な軍事作戦を開始。1カ月半にわたり中華民国軍との間で猛烈な砲戦をおこなったものの、戦略目的を達成できずに終わった。この砲戦は「八二三砲戦」と呼ばれ、500人以上の死者を出した中華民国軍の頑強な抵抗は語り草となっている。

 中華人民共和国側は、この後も1960年ごろまで断続的に戦闘行為をおこなうが結果が出ず、やがて決められた曜日に儀式的に砲弾を撃ち込むだけになる。これは1979年まで続いた。対して中華民国側は、国共内戦の最前線として小さな金門島に10万人の兵士を貼りつかせ、軍政のもとで島内住民への移動制限を布告。民兵の組織化をはじめとした総動員体制を敷いて防衛し続けた。

 やがて中台間の軍事的緊張が雪解けを迎えた後も、金門県における戒厳令の解除は台湾本島や澎湖島より5年も遅い1992年となり、民主的な県議会選挙の実施もその翌年までずれ込んだ。2002年までは、金門地域だけで通用する紙幣も発行されていた。

 金門島は、まさに中華民国版の「基地の島」だったというわけだ。徴兵制が敷かれていた台湾では、40代以上の多くの男性が、「最前線」の雰囲気が残っていた時代の島内での勤務経験を持っている。島民としても、軍隊に地域生活のすべてを管理されていた時代の思い出はいまだに風化し切っていない。

 そもそも、金門島は第2次大戦中の8年間の日本占領期を除けば、1912年に建国された中華民国の106年の歴史上でほぼ一貫して「中華民国領」であり続けた、世界でも稀な土地でもある(台湾は戦前は日本領、中国大陸の大部分は戦後に中華民国の範囲ではなくなっているためだ)。

 往年、島を基地化されて砲弾を撃ち込まれ続けるなかで金門島民のプライドを支えたのは、自分たちが中華民国のオリジナルの土地に住み、それゆえに「中華民国」体制を守る立場を担っていることへの自負だったという。

 往年の八二三砲戦は、そんな島の歴史の象徴だ。それゆえに、現在の中華民国の代表者である蔡英文に島に来てほしいという島民の感情も存在したわけである。

「私たちは台湾人ではない」と話す住民たち
 もっとも、島民たちが蔡英文の来島を望んだのは彼女が「中華民国総統」だからであって、別に蔡英文や民進党を支持しているからではない。むしろ、与党・民進党の人気は、金門島内では極めて低い。

「正直、民進党は嫌いです。陳水扁政権時代(2000〜2008年)に進められた台湾正名運動で、パスポートに『TAIWAN』と書かれたり、『中華郵政』だった郵便局が『台湾郵政』に変わったり(注:その後に中華郵政に再度変更)した。でも、私たちは台湾人じゃなくて、福建人で中華民国人なんですよ」

 すこし前の話だが、2013年4月に筆者が金門島に行った際に、地元の人からこんな話を聞いたことがある。中華民国では1990年代の李登輝政権のもとで台湾化が進み、やがて陳水扁や蔡英文など「台湾」のアイデンティティを強調する民進党の総統が登場するようになった。

 だが、これに複雑な思いを抱くのが金門島の人たちだ。中華民国の台湾化に対しては、内戦後に中国大陸から台湾へ流入した外省人とその子孫たちの一部も反発しているが、彼らは少なくとも現住所の点では「台湾人」である。だが、金門島民はいかなる意味でも「台湾人」ではない。

 金門島民に言わせれば、自国が「中華民国」ではなく名実ともに「台湾」になってしまうと、自分たちとは本来無関係な「台湾」という国に、島をさながら植民地支配されるような形になってしまうのである。

「そもそも民進党は党旗に台湾しか描かれていない。私たちのことなんか、どうでもいいんでしょ?」

 こんな発言からも分かるように、島内で民進党は全然支持されていない。金門県は選挙においては国民党をはじめとする藍営(青色陣営)の票田で、県会議員の約9割が藍営系議員で占められている。2016年1月に蔡英文が地滑り的な勝利を収めた総統選でも、金門県では国民党の総統候補だった朱立倫が蔡英文の4倍近い票を集める現象が見られた(似たような歴史的経緯を持つ、媽祖島がある連江県も同様だ)。

 行政区画のうえでは「福建省」で、地理的にも中国大陸の一部である金門島は、中華民国の各地のなかでもかなり特殊な場所なのである。

やむを得ない面がある「対中傾斜」
 ゆえに国共内戦が沈静化した2000年代以降は、金門島はすぐ近くの中国大陸との結びつきを強めている。多くの島民が対岸の経済特区・厦門市の土地に投資して豊かになり、国民党の馬英九政権時代には中国人観光客の誘致も進んだ。中国大陸客の誘致に対する現地のアレルギー感情は非常に薄い。

 金門島と対岸の中国領の厦門や泉州は、方言(閩南語。台湾の台湾語も同系統の言語だが、台湾語と違い日本語由来の語彙がない)のレベルでも言語が同じで、親族が金門島と福建省本土にまたがる例もある。金門島で支持者が多い国民党や新党は中国大陸との交流に熱心で、島全体として中台融和は歓迎ムードだ。

 今年8月5日には、慢性的な水不足に悩んでいる金門島に対して、対岸の厦門市(中華人民共和国)から水を供給する海底送水パイプが開通した。この建設は中台関係が良好だった馬英九時代に決められ、蔡英文政権は開通記念式典の開催に難色を示したが、地元は式典の開催を強行。さらに中国大陸からの送電や、両岸を直接つなぐ橋の建設への地元の要望も強い。

 金門島の中国大陸への接近は、台湾本土や東南アジア各国で進む「対中傾斜」とは意味が異なる。なぜなら島民自身が、自分たちの土地が紛れもない「中国」で、自分自身が「中国人」であると考えているためだ。

 中国大陸との違いは民国と人民共和国という政体だけで、民族的にも文化的にも同じ。そう考える人たちの地域が中国大陸と結びつきを深めるのは、あながち「悪い」とも言えないのが悩ましいところである。

 1990年代に民主化してからの中華民国(台湾)は、中国大陸と対峙するうえでの生存戦略の面もあって、人権立国を打ち出すリベラルな国家になった。台湾では、客家や山地原住民などのマイノリティのアイデンティティを重視する政策が採用され、市民の理解も進んできた。だが、「第5のエスニックグループ」とも呼ばれる金門島(および媽祖島)の住民について、台湾人の関心は決して高くない。

 まぎれもない「中華民国の国民」ではあるものの、「台湾人」ではない人たち――。中国への警戒感を強める蔡英文政権にとって、過去の歴史のいたずらが作り出した金門島住民の問題は、なかなか頭の痛い話ではある。
http://www.asyura2.com/18/kokusai23/msg/730.html#c3

[アジア23] 韓国司法 日本の対馬からの盗難仏像と認識しながら、裁判の検証と証し自国の所有物の如く菩薩坐像を検分 怪傑
3. 2018年8月30日 14:26:16 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1353]
経済統計が悪いから? 韓国で統計庁長が突然更迭
「青瓦台の言うことをよく聞かなかった」─爆弾告白も
2018.8.30(木) 玉置 直司
北朝鮮、韓国大統領府のレプリカを建造 演習に使用か
韓国・ソウルにある青瓦台(大統領府、2015年11月4日撮影、資料写真)。(c)AFP/STEPHANE DE SAKUTIN〔AFPBB News〕

 このところ韓国では、経済に関するニュースが連日、メディアの大きな話題だ。雇用や経済に関する「最悪」とも言われる統計発表が相次ぎ、政府の経済政策に対する批判の声が高まっている。

 そんな中、8月26日の日曜日に、意表をつく統計庁トップ交代人事があり、その背景が大きな話題になっている。

 韓国の新聞やテレビは、8月後半以降、連日のように「経済ニュース」を大きく報じている。国民の最大の関心事である雇用が最悪の水準なのだ。そんな統計が相次いで発表になっているのだ。

 8月17日には、過去最悪といわれる「7月の雇用動向」が発表になった。就業者数は前年同月比5000人増という低水準だった。

相次ぐ悪材料
 さらに、23日には「2018年第2・4半期(4〜6月)家計動向調査」が発表になった。

 所得分布で下位20%の家庭の所得が前年同期比で7.6%減少した一方で、上位20%の所得は同10.3%増加して「格差拡大」という結果が出てしまった。

 政府にとっては「忌々しい」発表だが、いずれも、統計庁発表だから、致し方がないはずだ。

 就業者が増えずに失業率が上昇する。おまけに庶民層の所得が減少して格差が拡大するということになれば、「経済失政」という批判が出てきてもおかしくはない。

 かねて文在寅(ムン・ジェイン=1953年生)政権の経済政策を批判してきた保守系のメディアなどは、厳しくこれまでの政策を批判している。

 文在寅大統領や青瓦台の幹部は、これまでの「所得主導成長路線」を堅持することを確認した。これをまた保守系メディアが批判する。経済ニュースが、最大の話題になっていた。

次官人事を日曜日に発表
 そんな最中の8月26日、政府は「次官人事」を発表した。6人の次官、または次官級人事を発表した。

 その中でメディアもびっくりの人事があった。統計庁のトップの交代が発表になったのだ。

 「どうしてこの時期に?」

 韓国メディアからは、こんな驚きの声が上がった。

 というのも、統計庁長を辞めることになった黄秀慶(ファン・スギョン=1963年生)氏は、今の政権発足後に「政治人事」として就任した。就任からまだ1年2か月。これといった「失策」もなく、無難に役職をこなしてきた。

 「この時期に急に交代するということは、更迭であることは間違いない」(韓国紙デスク)という見方が強い。

 では、何があったのか?

大過なく務めたのに・・・
上の言うことをよく聞かないから・・・
 本人の、8月27日の離任式での発言は意味深長だ。

 「これまで統計庁の独立性、専門性を最優先に考えて任務にあたってきた。統計が政治的な道具にならないように心血を注いできた。この間、大過なく庁長職を務めてきた」

 いかにも「不本意な突然の退任」であることを滲ませたうえで、「統計が政治的な道具になる」という危惧を抱いて任務にあたっていたことも示唆した。

 さらにこの直後に、一部韓国メディアからの「どうして交代なのか?」という質問に対して「私は知らない。人事権者(青瓦台=大統領府)の考えだ。どちらにしても、私は、上の話をよく聞いてあげた方ではなかった・・・」と答えた。

 「上」はもちろん人事権を持つ青瓦台のことだ。

 青瓦台と何らかの意見の相違があったことが原因だと受け止められても仕方がない発言をしたのだ。

悪い統計に戸惑う青瓦台
 このあたりの事情を韓国紙デスクが解説する。

 「大統領周辺は、統計庁から相次いで出てくる『悪いニュース』に戸惑っていた。数字が悪いのは仕方がないにせよ、その意味づけなどで統計庁がもう少し政府の政策に配慮してくれてもいいという声があった」

 これが黄秀慶前統計庁長の「上の話をよく聞いてあげた方ではなかった」という意味だというのだ。

 更迭された黄秀慶氏は、ソウル大化学工学科を卒業後、ニューヨーク州立大で経済学博士号を取得した。労働問題が専門のエコノミストとして研究機関で勤務した。いわゆる「進歩系エコノミスト」だ。

 就任当初は、「政府の政策に合うような統計解析をするのでは」との懸念も一部であったが、在任中は、本人が言うように大きな問題はなかった。だが、逆に言えば、それが政権中枢の不満だったのかもしれない。

後任者も話題の人物
 では、黄秀慶氏を更迭してまで起用した後任者は誰か?

 姜信c(カン・シンウク=1966年生)氏は、ソウル大経済学科を卒業したエコノミストだ。分配重視の社会政策などを長年研究してきた。

 進歩系のエコノミストである点では前任者と同じだが、2018年5月に韓国メディアを騒がせたことがある。

 経済政策で思ったような成果が上がらないことに対する批判が強まり、韓国メディアは「2018年1月に最低賃金を16.4%も一気に引き上げたことが大きな要因だ」と指摘していた。これに対して文在寅大統領が「最低賃金引き上げの肯定的な効果が90%はある」と反論した。

 「いったい、大統領は何を根拠に90%という数字を話したのか?」

 こんな疑問を当時の青瓦台の経済首席秘書官が後で補足説明した。その時に使った統計資料を用意したのが政府系のシンクタンクの研究員だった姜信c氏だったといわれた。

 本人は後日これを否定したが、「統計の加工や解釈」が得意で、青瓦台の経済政策スタッフと親密な関係であることは間違いないという。

 そういう人物を起用したことから、保守系メディアや野党からは「経済統計が悪いのを統計庁のせいに転嫁し、統計を都合の良いように加工しようという目論見だ」という批判が出ている。

 青瓦台はこれに対して「文在寅政権は、統計庁の独立性に介入する考えは全くない。統計庁の独立性を損なわせるような指示を出したことも全くない」と全面的に反論する。

 統計庁長の人事についても「どんな組織でも活力を吹き込むためには人事は重要だ。特定の問題のための特定の人物の人事などではない」と説明した。

 政府の経済政策に合わせた統計を作らせるための人事であるはずがないと強調した。

 いくら大統領が強大な権限を持っていても、統計庁の発表統計をいじることなどできるとは思えない。

どうしてこんな時期に人事をしたのか?
 では、いったい、どうしてこんな「誤解」を招くような人事を、芳しくない経済統計が統計庁から次から次へと出てくるこの時期に断行したのか?

 韓国紙デスクも首をかしげる。

 「確かに、政府にとって見たくもない統計がどんどん統計庁から出てきた。だが、それが統計庁のせいでないことは誰もが分かっている。こんな形で人事をしたら、統計に対する信頼性にも影響が出かねない」

 今の政権は、「経済状況は年末以降に好転するので少し待ってほしい」と国民に要請している。万一、そうなって良い統計が出てきても、今度は、野党などから必ず「統計の信頼性」に対する指摘が出ることは間違いない。

 統計庁は1990年に独立し、いまや3000人を超える職員がいる大きな組織だ。直接作成する統計だけでも60種類ある。

 そのほかに、統計庁の承認を得て各省庁が作成する統計が385種類あるという。こんな重要な組織のトップ人事なのだ。

 前庁長が言うとおり、独立性と専門性がきわめて重要だ。果たして今後どういうことになるのか。

「経済」が頭痛の種。支持率急落
 「経済」は今の政権にとって頭の痛い問題だ。

 韓国ギャラップ研究所が毎週実施している世論調査では、8月23日に発表になった「8月第4週」分で、「大統領支持率(大統領職務遂行評価)」が56%にまで下がってしまった。

 5月第1週には83%だったが、最近はほぼ一本調子で下がっている。

 大統領が職務を「よく遂行していない」と回答した理由は、「経済/民生問題解決不足」が45%、「最低賃金引き上げ」が11%で経済政策に対する不満が高まっている。

 こうした国民の不満が、統計庁長への「八つ当たり人事」になったのかもしれない。

 ちなみに、同じ日、気象庁長も交代になった。

 当たらない天気予報に対する不満は韓国内では高い。つい最近も、台風の進路が事前予想とは異なり、「どうして日本の予報は当たるのに韓国の予報は当たらないのか」という批判を浴びたばかりだ。

 こちらに関しては、人事に対する批判はメディアでもほとんど聞かれない。
http://www.asyura2.com/17/asia23/msg/749.html#c3

[経世済民128] 日銀の資産規模がGDPに迫る異常な膨張、海外からは「無謀」の声(ダイヤモンド・オンライン) 赤かぶ
1. 2018年8月30日 14:36:58 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1354]

>日銀資産がどこまで膨張するのか、総裁も含めて誰も予見できていない。日銀資産の対名目GDP比100%は通過点でしかない

国民の政治依存が強く、地方シルバー民主主義の現状では、

どの政権になっても、増税はできても歳出削減を進める可能性は限りなく低い

つまり放漫財政が続き、産業の生産性が追いつかないほど

インフレが激化するまで続く確率は高いだろう


http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/333.html#c1

[経世済民128] 好景気なのに消費停滞の原因は「体感物価」の上昇だ(ダイヤモンド・オンライン)  赤かぶ
5. 2018年8月30日 14:44:04 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1355]

若年層の雇用が改善し、賃金が上昇しても、

既に古いタイプの消費からは離れ、デフレマインドが定着しているし

超少子高齢化でマスとしては小さい


膨大な高齢年金世代や、中高年世帯の収入はほとんど変わらず

社会保障負担の増加で、手取りは減り続けるし

今後の増税予想も、消費を鈍らせる


つまりCCPI以外の日常的購入品目が上がらないとしても

基本的に家計の消費に景気の牽引を期待するのは間違いということだ


http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/334.html#c5

[経世済民128] 人生100年時代でシミュレート 賃貸派は1600万円も損をする(日刊ゲンダイ) 赤かぶ
3. 2018年8月30日 14:53:47 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1356]

>人生100年時代でシミュレート 賃貸派は1600万円も損

巨大災害が起こらないとしても

30歳で購入して70年間も、物件が良好に維持され、引っ越すこともないし

施設にも入らないと考えるのは、かなり非現実的


>90歳で賃貸住宅はツライ

高齢者向けの賃貸は、今後増え続けるだろうし

100歳近くまで生きれば、多くの場合、要介護になり

若いときに購入した自宅に済み続けることなどまず無理だろう



http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/330.html#c3

[経世済民128] 欧米はなぜ『中国製造2025』を恐れるのか(マスコミに載らない海外記事) :国際板リンク  赤かぶ
3. 2018年8月30日 15:18:25 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1357]
2018年8月30日 週刊ダイヤモンド編集部
中国自動車産業の外資解禁は「外資依存不要宣言」、日本は下請けに!?
外資規制を緩和する――。習近平国家主席がそう宣言した背景には、中国の製造業が外資に頼らずともやっていけるという、製造強国世界一としての確固たる自信があると見られています。つまり、外資規制緩和は、中国の勝利宣言でもあるのです。『週刊ダイヤモンド9月1号』の第1特集は、「自動車・電機・IT 40年で完成した日中逆転の全経緯」です。1978年に「改革開放」を掲げ、日中平和友好条約が調印されてから40年間、日本の製造業を学ぶところから始めた中国は、あっという間に日本を逆転してしまいました。特集ではその過程を振り返り、日本の製造業が進むべき道はどこにあるのかを考えました。今回はその特集の中から、外資規制を緩和した背景を考察した記事を特別に抜粋してお届けします!
中国・深圳では、BYD製のEVタクシーが多く見られます。
中国・深センの街中で多く見られる、BYD製のEVタクシー
 改革開放から2年後の1980年。ケ小平氏は、深センを中国初となる「経済特区」として選んだ。人口3万人ほどの鄙びた漁村だった深センが、中国へ市場経済を導入する起点となったのだ。

 日系企業として初めて深センの蛇口に進出したのは三洋電機だ。工場でのそろいの制服や効率的な労務管理といった“日本式”が中国企業に根付くきっかけとなった。外資のノウハウ、技術、資金を吸収しながら、深センは独自の産業発展を遂げていった。

 中国の中でも外資の導入に寛容だった深セン。今や、アジアを代表するイノベーション都市として知られる。電気自動車(EV)のBYD、巨大EMS(受託生産サービス)の鴻海精密工業(台湾)、通信のファーウェイ、ITサービスのテンセント。ドローンのDJI──。超ハイテク企業ばかりが育成された。

 スタートアップ企業の“乱造エリア”ともいえる場所もある。深セン市南山区にある「深セン湾創業広場」には、約20棟の高層ビルがそびえ立ち、スタートアップ企業が約300社入居している。ベンチャーキャピタル、インベストメントバンク、インキュベーション企業などが物理的に同じ場所に集結しているので、ベンチャーの芽が開花する機会はどうしても増える。毎日、エリア内にあるカフェやミーティングスペースでは、ベンチャー経営者と投資家による商談の風景が見られる。

 そして、中国が誇るITジャイアント、テンセントやバイドゥも入居しており、常にベンチャーを物色している。中国全体のスローガン「大衆創業 万衆創新(大衆による起業、万人によるイノベーション)」が大げさな表現とも思えないくらい、深セン湾創業広場にはビッグチャンスが転がっている。

深圳、南山区の起業支援エリア「深圳湾創業広場」にはテンセントやバイドゥも入居している。
深セン、南山区の起業支援エリア「深セン湾創業広場」にはテンセントやバイドゥも入居。スタートアップ起業の熱気が充満している。党と一緒に起業しようという共産党の標語も
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 今年4月に、習近平国家主席は堂々と外資解禁宣言をした。「中国の開放の門戸をますます開いていく。特に自動車業界の規制を緩和する必要がある」。

 保護主義を強める米国を意識した発言であることは間違いないが、ある自動車メーカー幹部は、「もう一つの意味がわれわれにとっては重要なメッセージ」と言い切る。習宣言は、「中国が製造業で世界一になった、近いところまで来たという勝利宣言だ」(同)というのだ。

 どういうことか。中国が狙うのは世界制覇しかない。そのためには、冒頭のような民間主導のITのスタートアップも必要なのだ。

 習近平氏の「外資解禁」は、中国がもはや外資に依存する必要がないことを示したもので、逆に、日本経済は中国企業の存在がなければ立ち行かなくなっていた。

研究開発支出の中国上位社数は
10社から125社へ
 中国政府の算段はこうだ。まず、中国の自動車政策の中心をガソリン車からEVへシフトさせる。EVを前面に押し出して、NEV(新エネ車)とコネクテッド、自動運転といった世界最先端のITを拡充し、モビリティサービスで世界市場を攻めるというやり方だ。

 従来の製造(マニュファクチャリング)工程だけにとらわれることなく、電動化、コネクテッド、サービスの合わせ技でゲームチェンジを起こそうとしている。

 すでに、滴滴出行などのライドシェアリングサービスは、市場規模が大きく電子決済が浸透している中国が一番進んでいる。

世界の企業のR&D支出ランキング(2017年)
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 日中でR&D(研究開発)の支出額の大きい企業の動向を比べてみた(PwCグループの戦略コンサルティング会社、Strategy&が実施)。上位1000社中、日本企業は171社、中国企業は125社入った。10年前の調査では、中国企業はわずか10社だったので、いかに中国企業が躍進したかが分かる。

 また、日中の上位30社の比較では、日本が自動車に、中国がITに傾斜している。

日本と中国企業のR&D支出ランキング
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 実際に、下図の「製造品出荷額と従業者数」を見ても日本の(自動車の)一本足打法の傾向が強まっている。

中国での電気自動車関連の特許出願件数と日本の製造品出荷額と従業員数
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 現在、世界の自動車業界には、「100年に1度」の大激変が訪れている。自動車メーカーの開発領域も、ガソリン車から電動化、コネクテッド対応、自動運転、モビリティサービスへと広がった。

 しかし、得てして大企業は変化に臆病だ。どうしても開発対象は、エンジン屋が強い、ハイブリッド技術が強い、内燃機関の燃費効率が良い、といった過去の成功体験や遺産に引きずられてしまう。これだけ世界各国で野心的な電動化目標が提示されているにもかかわらず、「ガソリン車がなくなることはない」「ハイブリッド車もEVも共存できる」といった発言が自動車メーカーの技術者から出てくるのは、今起きている大激変の深刻さを理解できていないからだろう。

中国ITジャイアントのコネクテッドカーに関する連携事例
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製造、販売で潤った
自動車ビジネスは崩壊する
 そして、中国が狙うモビリティサービスが世界に行き渡ると、自動車産業の構造が根底から崩れる。完成車メーカーの「下請け構造化」は避けられないだろう。

 ライドシェアサービスが浸透すると、完成車を売るディーラー網も立ち行かなくなる。

 完成車メーカーは必ずしも製造設備が必要ではないため、自動車の企画設計に特化した企業が増えるかもしれない。電化製品でEMS企業が台頭したように、EVでも水平産業が加速するはずだ。

 つまり、「製造」と「販売(ディーラー網)」の工夫で長らく潤ってきた日本の自動車ビジネスは立ち行かなくなるということだ。

 それほどの覚悟を持って「100年に1度」の大激変に挑んでいる自動車メーカー関係者はどの程度いるのだろうか。そして、この変化は10年前に「隣のエレキ業界」が見せてくれた変化でもある。

 だからこそ、問題意識を持った自動車メーカー幹部は中国政府の一挙手一投足を気にしている。「中国の強みは、善しあしは別として、国家主導で自国に有利なようにルール変更できること」(日系メーカー幹部)だからだ。

 一方で、年間販売台数1000万台レベルの国営3社の統合を進めながらも、最近、中国当局がテンセントへの締め付けを厳しくしているのは何か意図があるように思えてならない。

 78年。ケ小平氏がある意味自国の負けを認めて、製造業の遅れを取り戻すところから始まった大改革。中国の製造業やITは一足飛びに強くなったわけではない。

 40年という膨大な時間をかけて、日本などの外国から技術、人材、カネ、そして情報を余すところなく中国へ環流させることに成功したといえるだろう。

 翻って、日本はどうか。40年前に中国へ惜しみなく技術や情報を供与できたほどには、日本にアドバンテージはないのではないか。

 圧倒的な市場規模とイノベーションを生む力。日本の製造業に欠けている要素を中国は持っている。日本は教えを請うところから始めるべきなのかもしれない。

中国自動車産業のR&D体制のイメージ
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http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/332.html#c3

[経世済民128] 高齢者が金融機関のカモにされずに資産を守る方法(ダイヤモンド・オンライン)  赤かぶ
2. 2018年8月30日 15:25:26 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1358]
2018年8月30日 野口悠紀雄 :早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問
働く高齢者が損をする「在職老齢年金制度」は廃止が当然だ
シニアの労働者
写真はイメージです Photo:PIXTA
 政府は、「経済財政運営と改革の基本方針2018」(骨太2018)で、在職老齢年金制度を見直すとした。

 これは、年金受給資格がある人でも、働くと、年金の一部または全額を支給停止する制度だ。

 この連載でも何度か書いてきたように、この制度は、高齢者の就業に対して強い抑制効果を持っている(2017年1月19日付け「なぜ『高齢者は働かないほうがトク』になってしまうのか」、10年8月21日付け「矛盾だらけの『在職老齢年金』が高齢者の働く意欲を失わせる!」、17年1月12日付け「『高齢者は働かないほうがトク』という制度は見直すべきだ」など)。

 この見直しは、労働力不足が深刻化し、高齢者の就業率の上昇が望まれる時代になって、当然すぎる措置だ。見直されれば、働く高齢者にとって大きな福音になるだろう。

在職老齢年金制度による
年金削減額
 まずは、在職老齢年金制度の仕組みについて説明しよう。

 年金停止額は、「基本月額」(以下では、記号bで表わす)と「総報酬月額相当額」(以下では「報酬月額」という。yで表わす)の組み合わせによって異なる。

「基本月額」とは、年金額(年額)を12で割った額だ(老齢基礎年金や加給年金は含まれない)。「総報酬月額相当額」とは、毎月の賃金(標準報酬月額)と、「1年間の賞与(標準賞与額)を12で割った額」の合計だ。

 厚生労働省や日本年金機構などのウェブページに計算方法の説明があるが、きわめて煩瑣な方法で表示されているので、分かりにくい。図表1と図表2のように示すのが最も分かりやすい。

(1)60歳以上65歳未満の場合(図表1参照)

60〜64歳の年金減額算定式の図表
拡大画像表示
 5通りのケースがある。

 ケース1では、年金は全額支給される。したがって、p+yは、b+yになる。pは在職老齢年金制度で調整後の年金額(基礎年金を含まず)。

 ケース2では、年金は(b−28+y)/2だけ減額される。この結果、p+yは、14+b/2+y/2になる。したがって、報酬がΔy増えても、p+yはΔy/2しか増えない。例えば、報酬が10万円増えても、年金を含めた所得は5万円しか増えない。これは、賃金所得に対して、限界税率50%の税がかかるのと同じことだ。

 ケース3では、年金はy/2だけ減額される。この結果、p+yは、b+y/2になる。したがって、ケース2と同じく、所得がΔy増えても、p+yはΔy/2しか増えない。

 ケース4では、年金は(b/2−37+y)だけ減額される。この結果、p+yは、37+b/2と、yによらぬ定数になる。つまり、いくら稼いでも年金を含めた所得はまったく増えない。稼いだ所得はすべて年金減額の形で召し上げられてしまうわけで、限界税率100%の税がかかるのと同じことになる。
 だから、就労のインセンティブは著しく低下することになるだろう。

 ケース5では、年金は(−23+y)だけ減額される。この結果、p+yは、23+bと、yによらぬ定数になる。つまり、ケース4の場合と同じく、限界税率100%の税がかかるのと同じことになる。
 ケース4や5は稀と考えられるが、あり得ないことではない。

(2)65歳以上の場合(図表2参照)

65歳以上の年金減額算定式の図表
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 ケース1では、年金は全額支給される。したがって、p+yは、b+yになる。

 ケース2では、年金は(b−46+y)/2だけ減額される。この結果、p+yは、23+b/2+y/2になる。したがって、限界税率50%の税がかかるのと同じことになる。

報酬が増える場合に、
報酬+年金はどうなるか?
 以下では、いくつかの場合について、yが増えるにつれてp+yがどのように変化するかを見ることとしよう。

(1)60歳以上65歳未満、b=10万円の場合(図表3参照)

標準報酬の増加による受取額の変化(60〜64歳)の図表
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 yが18万円までは全額支給されるので、p+yは、図表3のAから出発してBに至る勾配が45度の直線で表わされる。

 yが18万円から46万円までは、図表1のケース2となるので、p+yは、BからCに至る勾配が22.5度の直線で表わされる。

 C(y=38)において年金額pがゼロになるので、これ以降は、p+yはyになる。つまり、p+yは、原点からの45度線になる。

(2)60歳以上65歳未満、b=30万円の場合(図表3参照)

 この場合は、最初から年金が減額される。yが46万円までは図表1のケース3となるので、p+yは、EからFに至る勾配が22.5度の直線で表わされる。

 yが46万円を超えると、図表1のケース5となる。したがって、p+yは水平線FGとなる。

 Gにおいては、年金額pがゼロになるので、これ以降は、p+yはyになる。つまり、p+yは、原点からの45度線GDになる。

(3)65歳以上、b=30万円の場合(図表4参照)

標準報酬の増加による受取額の変化(65歳以上)の図表
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 yが16万円までは全額支給されるので、p+yは、図表4のHから出発してIに至る45度の直線で表わされる。

 yが16万円を超えると、図表2のケース2となるので、p+yは、IからJに至る勾配が22.5度の直線で表わされる。

 Jにおいて年金額pがゼロになるので、これ以降は、p+yはyになる。つまり、p+yは、原点からの45度線JKになる。

(4)65歳以上、b=50万円の場合(図表4参照)

 この場合は図表2のケース2となるので、最初から年金が減額される。yが46万円まではp+yは、LからMに至る勾配が22.5度の直線で表わされる。

 Mにおいて年金額pがゼロになるので、これ以降は、p+yはyになる。つまり、p+yは、原点からの45度線MKになる。

働かないほうがトク
限界税率100%も
 以上から分かる基本的な考えはつぎのとおりだ。

(1)まず、p+yについての「壁」がある。これは、「屈折点」と呼ばれる。

 図表3ではB'B、図表4ではI'Iの水平線で示されている。45度線がこれにぶつかると、減額が始まり、22.5度線になる。つまり、報酬の1/2だけ年金が減額されるのだ。

 28万円は、現役男子被保険者の平均標準報酬の6割程度に相当する。これが年金の給付基準とされているため、65歳未満でも「ここまでは賃金と併給してもよい」と考えられ、全額給付されるのだ(「在職老齢年金制度の見直し等について」参照)。

(2)65歳未満については、yについての「壁」もある。

 これは、図表3ではFを通る垂直線で表わされる。22.5度線がこれにぶつかると、100%課税が始まり、水平線になるのだ。

 46万円は、男子の標準報酬月額の平均に相当する(注1)。「現役とのバランスを考えると、これ以上、年金と賃金の総手取り額が増額するのは適切ではない」との考え方から、65歳未満の場合には、賃金がこれ以上になると、100%課税に相当することを行なっているのだ。

 働いて得た報酬に税がかかるのは、高齢者に限ったことではない。しかし 、高齢者の場合には、限界税率が非常に高いのが問題だ。50%の限界税率でも非常に高いが、100%の限界税率はさらに問題だ。

 こうした高率の課税を、上の理由で正当化できるかどうか、大いに疑問である。

 また、年金カットが始まる報酬額は、基本月額が大きいほど小さくなる。つまり現役時に給与が高かった人ほど、退職後は労働を続けるインセンティブを失うことになる。

(注1)この額についての記載は、厚生労働省や日本年金機構のウェブページでも混乱している。従来は46万円であったが、2015年4月から47万円に改定された(15年5月13日更新のサイト)。しかし、17年では46万円とされている(17年4月19日更新のサイト)。

高齢者の低賃金化を招く
能力発揮を妨げることにも
 在職老齢年金制度は、高齢者の就業を抑制するだけでない。この制度は、高齢者の賃金を低く抑えている可能性がある。

 これを見るために、つぎのような場合を考えて見よう。

 それまでの賃金を維持すれば、これ以上働くと年金減額になるとしよう。それでも働くのを「オプションI」としよう。

 しかし、賃金を低くすれば年金が減額にならないとしよう。そこで、賃金を下げて働くことを「オプションII」とする。

 被雇用者としては、I、IIのどちらでもよい(年金のほうが税制上優遇されていることを考えると、手取りが同じならオプションIIのほうがよい場合が多いだろう)。 

 他方で、雇用者としては、同一労働時間で賃金は低く抑えられるのだから、明らかにIIがよい。それなら、何らかの特典を与えても、オプションIIを勧めようとするだろう。

 ここで、特典というのは、賃金以外の形態での経済的利益だ。例えば、雇用期間を延長するなどのことが考えられる。

 こうして、在職老齢年金制度は、就業する場合にも低賃金の就業を促進することになる。低賃金の就業を促進することによって、高齢者の能力発揮を妨げているとも言える。

 つまり、この制度は、低賃金で高齢者を雇用する企業への補助金として機能してしまっているのだ。

在職老齢年金制度で、
1兆円程度の支給額が減額されている
 日本経済新聞(2018年5月12日)によると、65歳未満で年金支給停止の対象者は約98万人、停止額は約7000億円、65歳以上の対象者は約28万人、支給停止額は約3000億円だ(14年度)。

 したがって、仮にこの制度を廃止するとすれば、約1兆円の財源手当が必要だ。

 これは簡単なことではない。しかし、高齢者就業が経済を活性化する効果を考えれば、それは正当化されるだろう。

 なお、就業者が増えたり、低く抑えられている高齢者の賃金が上昇したりすれば、保険料収入が増えることにも注意が必要だ。

(早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問 野口悠紀雄)
http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/326.html#c2

[国際23] トランプ大統領が「検索結果を不正操作」とグーグルを批判(日刊ゲンダイ)  赤かぶ
1. 2018年8月30日 15:32:52 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1359]
2018年8月29日 / 16:28 / 8時間前更新
アングル:イランのネット世論操作、世界に広がる実態明らかに
Jack Stubbs and Christopher Bing
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[ロンドン/ワシントン 28日 ロイター] - 世界のインターネット利用者を標的とした、イランによる情報操作とみられる活動が、従来特定されていたものよりもはるかに大規模であることが、ロイターの取材で分かった。

こうした活動には、匿名サイトやソーシャルメディア・アカウントなど11言語に及ぶ広範なネットワークが使用されている。

米フェイスブック(FB.O)や短文投稿サイトのツイッター(TWTR.N)、などは先週、複数のアカウントやウェブサイトが、他国の世論を秘密裏に操作しようとするイランによる政治宣伝活動の一部だったと発表した。

ロイターの分析によって、フェイスブックやツイッター、写真共有アプリのインスタグラムや動画投稿サイトのユーチューブ上で、さらに10件のサイトや数十件のアカウントが特定された。

米サイバーセキュリティー会社ファイア・アイ(FEYE.O)と、イスラエルのクリアスカイの2社が、この分析を検証したところ、今回特定したサイトやアカウントは、技術的な特徴から、フェイスブックやツイッター、そしてユーチューブを傘下に持つアルファベット(GOOGL.O)が、先週アカウントを削除したものと同じ団体に関連するものであることが分かった。

それはインターナショナル・ユニオン・オブ・バーチャル・メディア(IUVM)と呼ばる団体だ。

IUVMは、イラン国営メディアなどイラン政府の意に沿う媒体のコンテンツを、広くインターネットに発信している。その際、イランの英語メディアであるプレスTVや準国営ファルス通信、ヒズボラ系のアルマナルTVなど、元々の情報源を隠していることが多い。

プレスTVやファルス通信、アルマナルTV、イラン政府の代表者は、コメントの求めに応じなかった。イランの国連代表部は先週、イランによる操作活動を巡る指摘について、「ばかげている」と一蹴した。

多岐に及ぶ情報操作活動のネットワークは、イラン政府とつながりのある複数グループが、利用者を操作して政治宣伝を行うためソーシャルメディアを悪用している実態を示している。

また、テクノロジー企業にとって、自社プラットフォーム上で行われる政治介入活動を防ぐことが、いかに困難かも明らかになった。

米大陪審は7月、2016年の米大統領選で民主党候補のヒラリー・クリントン氏や民主党のコンピューターネットワークにハッキングを行ったとして、ロシア軍情報部の当局者12人を起訴した。ロシア側は容疑を否定しているが、米政府関係者は、ロシアが11月の中間選挙に再び介入を試みる可能性があると指摘する。

米シンクタンク大西洋評議会(アトランティック・カウンシル)デジタル科学捜査研究所のベン・ニモ上級フェローは、IUVMのネットワークは、イラン政府による活動の範囲や規模を表していると指摘する。同氏は過去に、フェイスブックのために情報操作キャンペーンの分析を行っている。

「これはイラン国家が発信するメッセージの大規模な拡声装置だ」とニモ氏。「オンラインで影響操作活動を行うことが、低レベルの技術でも、いかに簡単かを示している。イランの活動は、質より量を重視しているが、それでも何年も検知されなかった」

<継続調査>

フェイスブックではイランと関連のあるアカウントやページをさらに調べており、追加的な削除を28日実施したと、同社の広報担当者ジェイ・ナンカロー氏は語った。

「調査は継続中で、さらに見つかるだろう」と同氏は言う。「われわれや他社が先週、情報共有したことで、この種の信頼できない行動に対する関心が高まったことを歓迎する」

ツイッターは27日、自身のツイートで、利用規約違反により先週以降、さらに486のアカウントを削除し、停止したアカウント総数が770件に達したと発表した。「770の停止アカウントのうち、米国内だと主張するものは100件以下で、その多くが社会の分断を深めるようなコメントをしていた」と同社は指摘した。

グーグルはコメントを拒否しているが、ロイターがユーチューブ上のIUVMのアカウントについて質問した後、同アカウントを閉鎖。28日時点で同ページには「ユーチューブの利用規約違反により閉鎖」との説明が表示されている。

IUVMにメールやソーシャルメディアを通じて何度かコメントを求めたが、返事はなかった。

とはいえ、IUVMの目的は明白だ。IUVMのメインサイトには、本部がテヘランにあり、その目的は「目に余る傲慢や、西側政府、シオニスト(イスラエル)の活動に立ち向かうこと」とある。

Facebook Inc
175.58
FB.ONASDAQ
-0.68(-0.39%)
FB.O
FB.OTWTR.NFEYE.OGOOGL.O
<アップストアと風刺漫画>

IUVMは、インターネットを通じて、イラン国営メディアや、地政学的な問題を巡りイランに好意的な媒体からの情報を拡散している。

使用するネットワークには、ユーチューブのチャンネルや、ニュース速報サービス、携帯電話のアプリストア、そしてイスラエルや宿敵サウジアラビアを揶揄(やゆ)する風刺漫画のサイトなどが含まれる。

同団体のネットワーク活動は、英語以外にも、フランス語、アラビア語、ペルシャ語、ウルドゥー語、パシュトー語、ロシア語、ヒンズー語、アゼルバイジャン語、トルコ語、スペイン語などの言語で行われていることを、ロイターは確認した。

こうしたコンテンツのほとんどが後に、複数の他メディアサイトに再掲載されていた。その中には、ファイア・アイが先週、米国や英国のニュース媒体と見せかけたイランによるサイトも複数含まれる。

例えば、ファイア・アイが暴いた偽の米国ニュースサイトの1つ「リバティ・フロント・プレス」は1月、イランの盟友シリアのアサド大統領の軍隊が地上戦で勝利を収めたと報じた。同記事の出典はIUVMだったが、ファルス通信の記事2本から作成されたものだった。

ファイア・アイのアナリスト、リー・フォスター氏は、IUVMが運営するサイトの中でも最大級の「iuvmpress.com」は、2015年1月の登録時に、すでにイラン政府運営サイトとして確認されていた2つのサイトと同じメールアドレスを使用していたと話す。クリアスカイによると、IUVMが運営する複数のサイトが、イランの活動で使われている別のサイトと同じサーバーを利用している。

(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

http://www.asyura2.com/18/kokusai23/msg/744.html#c1

[国際23] トルコリラ・銀行株が下落 財務相、経済に大きなリスクなしと言明(ニューズウィーク) 赤かぶ
1. 2018年8月30日 15:33:51 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1360]
2018年8月29日 / 16:28 / 6時間前更新
コラム:米FRBが長短金利操作を検討する日=井上哲也氏
井上哲也 野村総合研究所 金融イノベーション研究部主席研究員
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[東京 29日] - 米連邦準備理事会(FRB)が8月22日に公表した7月31日―8月1日の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨によれば、政策金利が「事実上の下限(ELB)」に達した場合の政策手段について、執行部の分析も活用しながら検討を行ったことが明らかになった。

ELBとは「Effective Lower Bound」の略で、景気後退時にどこまで政策金利を引き下げることができるかを表す概念である。従来は、ZLB(Zero Lower Bound)、すなわち「ゼロ金利下限」と言われていたが、欧州中央銀行(ECB)や日銀がマイナス金利政策を導入したこともあり、より広い概念としてELBの語が使われるようになった。

米国では過熱感が指摘されるほど景気が好調なのに、金融当局者がこうした議論を行うことは、「ぜいたくな悩み」のように映るかもしれない。だが、FRBの立場からは、以下の通り、真剣に考えるべき理由が存在する。

<今後10年でELBに複数回直面する恐れも>

まず、パウエルFRB議長が8月24日、ジャクソンホール会議での講演で強調した慎重な利上げスタンスの下では、今回の景気拡大における政策金利の最高到達点が3%前後にとどまる可能性が高いことである。

日欧から見れば3%は十分高い水準だが、米国の過去の景気循環のうち1980年代以降だけでも5%程度は確保できたことに比べれば相当に低い。

長い目で見ても、景気拡大局面で平均的に到達し得る政策金利の最高到達点が、過去に比べて低下することへの懸念もある。ファンダメンタルな面では、その最大の理由は米国の長期的なインフレ率や経済成長率が低下しており、かつなかなか元に戻らないことにある。

このため、短期的にも長期的にも、FRBにとって景気後退に対応するための利下げ余地は小さくなり、以前よりも容易にゼロ金利になってしまう懸念が生ずる。実際、上記の議事要旨によれば、執行部は今後10年の間に政策金利がELBに複数回にわたって直面するとの推計を示したようだ。

もちろん、この問題は突然浮上したわけではなく、FRBは以前から十分意識していた。だからこそ、2017年6月のFOMCで決定した金融政策の「正常化」に関する方針でも、今後は政策金利の上げ下げを主たる政策手段にするが、利下げだけでは十分に緩和的な金融環境を実現できない場合にはバランスシートの規模や内容に関する政策手段(つまり量的緩和のような資産買い入れ)を活用するとの考え方を明確に示している。

それにもかかわらず、ここへきてFRBがこうした検討を行ったことは一層興味深い。つまり、上記の議事要旨が示すように、FOMCメンバーが資産買い入れは有効ではあるが効果は強くないとの理解を共有し、だからこそ打開策を模索しているようにみえるからだ。

<「平時」の多用には疑問が残る資産買い入れ>

そこで、FRB自身の議論も参照しながら資産買い入れの効果を改めて整理すると、第1に、金融危機の際に金融仲介を回復したり、資産価格の過小評価を修正したりする上では有効である。この点は、パウエル議長による上記の講演でも確認されているし、FRBだけでなく金融市場でも広く共有されている。

第2に、タームプレミアム(期間に伴う上乗せ金利)を相応に引き下げる上でも有効だ。フィッシャー前FRB副議長が2015年の講演で整理したように、定量的な効果に関する推計にはばらつきもあるが、量的緩和の第1弾から第3弾を通してみれば10年国債の利回りに対して100ベーシスポイント(bp)を超える引き下げ効果があったとの結果が多い。一見すると小さい印象を与えるが、短期政策金利でなく長期金利を直接に引き下げている点に注意すべきだろう。

しかし第3に、資産買い入れの運営を機動的に行うことは容易ではない。この点は縮小したり、撤退したりする局面に特に当てはまる。実際、FRBは量的緩和の第2弾のように大規模な資産買い入れを大きなストレスなく実施したが、量的緩和の第3弾に象徴されるようにその縮小は極めて緩やかに進めざるを得なかった。さらに、買い入れた資産の削減に至っては、原則として市場での売却を行わず償還に委ねるだけに、相当な時間を要することが明らかだ。

この3点目が意味することは、大規模な資産買い入れを行った場合、それを元に戻すための時間が通常の景気循環を上回ってしまう可能性が高いことである。その意味で、資産買い入れは相応に有効だが効率性には難のある政策手段ということになる。

資産買い入れの縮小や撤退を慎重に行わなければならない理由の大きな部分が危機後の経済構造の脆弱性にある点も含めて、まさに資産買い入れは「有事」の政策手段であって、「平時」の多用には疑問が残ることになる。

<日銀の「長短金利操作」は参考になるか>

こうした観点から言えば、FRBがELBに直面したとしても、現在の日銀のように比較的小額の資産買い入れで長期金利を抑制できるのであれば、それは効率的な政策手段となり得る。しかも、7月末に日銀が決定したように、長期金利の目標値を10bp単位で調整できるのであれば、機動性の面でも魅力的である。

もちろん、話はそう単純ではない。まずFRBは、日銀が長期金利をコントロールできている要因が米国にも妥当するかどうかを検討する必要がある。

しばしば米国から指摘される点として、日本は長期の成長率やインフレ率が低いので長期金利の抑制が比較的容易であるという理解がある。それ自体は正しいが、FRBは米国のファンダメンタルズに即して長期国債金利の誘導目標水準を相対的に高くすれば、米国の経済構造の下で政策効果を発揮し得るはずである。

むしろ、この点に関してはマイナス金利との関係にも注目すべきだろう。日本では成長率やインフレ率の低さもあって、将来にわたってマイナス金利の局面が何度も実現するとの予想が生じ、長期金利の上昇圧力が抑制されている可能性である。

その意味でFRBは、マイナス金利政策とイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)が相互補完的である点にも注意する必要がある。

一方、国内市場で意識される点として、日銀による国債市場での価格支配力が非常に強いとの理解がある。これは、ストックにとどまらず、(日銀による買い入れだけでなく政府の発行額も減っているため)フローで見ても依然として日銀のプレゼンスが大きい事実や、市場金利が目標を上回る恐れが生じた場合の「指値オペ」を含む日銀のコミットメントの強さに基づく面が大きいのだろう。

これらの点はFRBも対応できるように思われるが、日本の市場では依然として国内投資家の存在が支配的で、相対的に少数の大手プレーヤーに対して政策当局による「道徳的説得」が利きやすい点では、米国との相違も感じられる。

加えてFRBは、長期金利の引き下げが景気や物価以外の面で持ち得る影響についても、日米での違いを認識する必要があろう。このうち、金融システムに及ぼす影響については大きな違いがある。

実際、緩やかな利上げの下で長期金利の上昇が抑制されている現在の米国では、株価だけでなく広範なクレジット商品の価格も顕著な上昇を示した。同時に、伝統的な銀行の金融仲介機能の外で行われる金融取引(いわゆるシャドーバンキング)や資本市場も量的に拡大している。これらの点は、長期金利の引き下げが可能であれば政策効果も大きいことを示す一方で、将来に向けて金融システムの不安定化につながる要因を作っているとも言えよう。

他方、財政に対する影響にはそこまで大きな差異はないかもしれない。長期金利を引き下げれば、少なくとも結果的に国債費は軽減されるが、長い目で見ればこのことが財政規律の維持を難しくするリスクが残る点で、日米の置かれた状況に差異はない。

経済規模と比較した場合の債務残高はもちろん日本の方が厳しいが、歳出スタンスの面では、周知の通りトランプ米政権が拡張的な財政政策志向を強めるなど、米国には日本以上に懸念すべき面も現れ始めている。

ELBに対する政策手段が乏しいだけに、日米間での構造的な相違や他の政策との関連を考慮しても、FRBが潜在的な効率性や機動性を有する長短金利操作を最初から放棄するのももったいないように思う。量的緩和と同じく長短金利操作についても、先行した日本の例をFRBが研究し、最終的には米国流に変えて採用するかどうかは、今後の興味深いテーマである。

井上哲也氏(写真は筆者提供)
*井上哲也氏は、野村総合研究所の金融イノベーション研究部主席研究員。1985年東京大学経済学部卒業後、日本銀行に入行。米イエール大学大学院留学(経済学修士)、福井俊彦副総裁(当時)秘書、植田和男審議委員(当時)スタッフなどを経て、2004年に金融市場局外国為替平衡操作担当総括、2006年に金融市場局参事役(国際金融為替市場)に就任。2008年に日銀を退職し、野村総合研究所に入社。主な著書に「異次元緩和―黒田日銀の戦略を読み解く」(日本経済新聞出版社、2013年)など。

*本稿は、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいています。

(編集:麻生祐司)

http://www.asyura2.com/18/kokusai23/msg/748.html#c1

[国際23] トルコリラ・銀行株が下落 財務相、経済に大きなリスクなしと言明(ニューズウィーク) 赤かぶ
2. 2018年8月30日 18:22:42 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1361]
トルコ危機、PIMCOとブラックロックも犠牲−8月に5%超の損失
Selcuk Gokoluk
2018年8月30日 6:48 JST
• トルコ・リラ急落、他の新興市場にも急速に波及
• 現地通貨建て新興市場債ファンド、8月の平均成績が世界最悪

Photographer: Brent Lewin/ Bloomberg
トルコの金融危機による打撃を8月に被らなかった新興市場ファンドはほとんどなかった。トルコ危機は急速に他の新興市場に広がり、ブラックロックやパシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)などのファンドは3週間で5%を超える損失を被った。現地通貨建て債券ファンドの8月の平均成績はマイナス2.1%で世界最悪だった。

  パインブリッジ・インベストメンツのファンドマネジャー、アンダース・フェアグマン氏は「誰もがトルコを巡るリスクを抑え込もうとしたが、トルコ資産がこれほど短期にこれほど大きく値下がりするとは誰も予想できなかった」とした上で、「このような環境では多くの投資家が損失を被る。トルコ資産への投資家の戻りは遅いだろう」と話した。
  ブラックロックの新興市場債責任者、セルジオ・トリゴ・パズ氏は「トルコ通貨の前代未聞の相場急落で、弊社の現地通貨建て新興市場債ファンドはアンダーパフォームした」と述べた。トルコへのエクスポージャーは「変化の何らかの兆候が明白に表れるまで」縮小した状態を続けるという。
  PIMCOの広報担当者はこの記事についてコメントを控えた。
Bleeding Bonds
Most emerging markets had losses alongside Turkey in August
Source: Bloomberg

原題:Turkey Puts Pimco and BlackRock on Wounded EM Bond-Fund List (1)(抜粋)

 

2018年8月30日 / 12:14 / 4時間前更新
トルコの対外債務、約20兆円が1年以内に返済期限=米銀試算
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[ロンドン 29日 ロイター] - トルコが来年7月までの1年以内に返済期限が到来する対外債務は約1790億ドル(約20兆円)で、年間国内総生産(GDP)のほぼ4分の1に達する──。JPモルガンは調査ノートでこうした試算を明らかにした上で、通貨危機に襲われている経済が急速に縮小する恐れがあると警告した。

これらの対外債務のうち、銀行を中心とする民間部門が抱えているのがおよそ1460億ドル。政府が返済もしくは借り換えを迫られるのは43億ドル強で、残りは公的機関の借り入れだという。

JPモルガンは「向こう1年で必要な資金手当ては規模が大きく、市場へのアクセスは難しくなっている」と指摘。中央銀行のデータに基づいて計算したところでは、年内に期限を迎える債務が320億ドル前後存在し、9月と10月、12月にそれぞれ大規模な支払いが発生する。

ただ「国際的な銀行は少なくとも一部のトルコ向け融資を減らす公算が大きいので、元本の借り換えはいくつかの借り手にとって厳しい状況になってもおかしくない」とみている。

JPモルガンは、全体としてトルコ企業は外貨建て債務をカバーできるだけの対外資産を保有しているもようで、期限を迎える債務のうち470億ドル程度後は比較的借り換えが容易な貿易金融だと分析し、借り換えリスクが高いのは1080億ドル前後との見方を示した。

さらに海外からの資金流入が突然止まれば、借り換えリスクが増大して、経常赤字のファイナンスが困難になると付け加えた。

 

 

トルコ・リラの痛み、メキシコ・ペソ和らげる−BBVAに拡大の恩恵
Charlie Devereux
2018年8月29日 12:49 JST

Photographer: Ismail Ferdous/Bloomberg
スペインのビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア銀行(BBVA)は何年にもわたり新興市場事業の拡大によって恩恵を受けてきたが、今年はトルコ危機によって打撃を受けた。リラはドルに対して今年37%下落。BBVAの株価は道連れになり、年初来で20%余り値下がりした。
  しかし、事業拡大による強みは、痛みを和らげてくれる別の市場があることだ。
  メキシコはBBVAにとって最大の海外投資先。政治的リスクにもかかわらずメキシコ・ペソはユーロに対して年初来で約7.5%上昇。北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉を巡り27日に米国と合意したこともあり、7−9月(第3四半期)はトルコからの影響を一部打ち消してくれるかもしれない。

原題:Mexican Peso Helps Offset BBVA’s Turkish Currency Crisis Woes(抜粋)



http://www.asyura2.com/18/kokusai23/msg/748.html#c2

[国際23] トルコリラ・銀行株が下落 財務相、経済に大きなリスクなしと言明(ニューズウィーク) 赤かぶ
3. 2018年8月30日 18:32:09 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1362]
2018年8月30日 / 10:34 / 5時間前更新
アングル:アルゼンチン経済危機を示す「5つの指標」
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[ブエノスアイレス 28日 ロイター] - アルゼンチンは昨年景気が改善し、市場寄りとされるマクリ大統領率いる連立与党が昨年10月の議会選で勝利して、今年初めの時点でエコノミストは明るい見通しを描いていた。しかしペソ相場の動きはアルゼンチン金融市場の混乱が当分終わらないことを示している。
以下5つの指標からアルゼンチンの経済危機を読み解く。

●ペソ/ドル直物相場

エコノミストは以前からアルゼンチンペソは過大評価されていると主張しており、アルゼンチン政府もペソは年間を通じて徐々に下落すると見込んでいた。しかし政府のインフレ抑制達成を疑問視する見方や米連邦準備理事会(FRB)の利上げを背景に、ペソの対ドル相場は4月以降、誰も予想していなかったペースで下落した。
アルゼンチンはペソ安でドル建て債務の返済コストが膨らみ、国際通貨基金(IMF)から500億ドルの融資を受けることになった。

●前年比物価上昇率


高インフレはアルゼンチンが他の新興市場国に比べて投資家のリスク回避志向の影響を受けやすい要因の1つ。大衆迎合的な政府が何年にもわたり財政赤字穴埋めのため紙幣を増発した結果、消費者物価は急上昇した。
マクリ政権はこうした政策を見直したが、政府補助金の削減や財政赤字穴埋めの一環として電気料金を引き上げたため、物価は上昇し続けている。この数カ月はペソ急落がインフレに拍車を掛けている。
●外貨準備高

アルゼンチン中銀は急激なペソ安とインフレ高騰に対応し、政策金利を45%に引き上げ、外貨準備を放出してペソ防衛を図った。その結果、2015年12月のマクリ政権発足以来徐々に増加していた外貨準備高は急激に落ち込んだ。
外貨準備高はIMFからの融資で持ち直したが、ペソに対する売り圧力は止まらず、中銀はこの数週間でまた市場介入に動き始めた。

●経済成長率

インフレ高騰と金利の上昇はアルゼンチン経済を圧迫しているが、金融面の混乱に加えて、政権にはいかんともしがたい不運にも見舞われた。過去数十年で最悪の干ばつで大豆とトウモロコシの収穫が落ち込んだが、この2つの作物はアルゼンチン経済の大黒柱だ。
経済は農業の不振が響いて3カ月連続のマイナス成長となっており、エコノミストは景気後退入りは確実だとみている。6月の国内総生産(GDP)は前年同月比6.7%のマイナスで、2009年の世界金融危機以来の落ち込みとなった。

●就業者数

マクリ大統領は「貧困ゼロ」と雇用創出の2つの公約を掲げるが、いずれも景気悪化で実現が危ぶまれている。大統領は今月初め、インフレと景気の悪化で貧困が増えたようだと認めており、就業者数は昨年12月にピークを付けた後、減少し始めている。
政府はIMF融資の取り決めにより、財政赤字圧縮に向けた歳出削減の一環としてインフラ投資を減らす計画で、雇用情勢は一段と悪化するだろう。そうなれば2019年の再選を目指すマクリ大統領にとって厄介なことになりそうだ。

 


アルゼンチン、IMFに追加支援要請 通貨下落続き
中南米
2018/8/29 23:31
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 【サンパウロ=外山尚之】アルゼンチンのマクリ大統領は29日、通貨防衛のため国際通貨基金(IMF)に追加支援を求めると発表した。トルコショックに伴う新興国からの資金流出で通貨ペソは売られ、連日のように対ドルで過去最安値を更新していた。6月に合意した500億ドル(約5兆5千億円)の融資枠のうち、未利用分を使うとみられる。

 マクリ氏は29日朝の緊急テレビ演説で「来年の金融プログラムへの適応を補償するため、すべての必要な資金を前進させる」と発言。詳細は明らかにしなかったが、地元経済紙アンビト・フィナンシエロは80億〜150億ドルの追加融資を求める方針だと報じている。アルゼンチン政府はIMFとの合意直後、通貨防衛のため150億ドルの融資を受けている。

 IMFの支援もあり、ペソは7月に入り一時落ち着きを見せていたが、トルコの通貨リラ下落を受けてペソ売りが再燃。28日には1ドル=31.43ペソと、融資枠設定で合意する直前の水準から約20%下落していた。


今さら聞けない「通貨危機」とは
岸本好正・日経プラス10キャスターに聞く
2018/8/27 10:00日本経済新聞 電子版


 ニュースを詳しく解説する「フカヨミ」コーナー。トルコ・リラの急落を受けて、通貨危機の基礎情報を日経プラス10の岸本好正キャスターに聞きました。

小谷キャスター
小谷キャスター

岸本キャスター(8月21日出演)
岸本キャスター(8月21日出演)


▼ニュースの骨子
 8月10日、アメリカとの関係が悪化しているトルコの通貨リラが1日で20%急落した。これを受けてトルコと貿易や金融の結び付きが深い欧州株も売られ、日経平均も400円を超す下げとなった。通貨の急落を食い止める効果がある利上げをエルドアン大統領は拒否。アルゼンチンのペソや南アフリカのランドの新興国通貨も売られ、「トルコ通貨危機」と呼ばれている。

 岸本キャスターの解説要旨は以下の通りです。

■1997年はタイ・バーツがきっかけに


 「通貨危機と呼ばれる状況は過去にもありました。1997年、タイの通貨バーツの暴落をきっかけにマレーシアや韓国などの通貨も急落し、アジア各国に景気悪化が連鎖しました。インドネシアでは当時のスハルト大統領が辞任に追い込まれました。日本でも消費増税の影響も重なり、通貨危機と世界的な株安の影響で日経平均が2万円台から1万円台に逆戻り。山一證券や北海道拓殖銀行が破たんしました。翌年にはロシアで国債が支払えなくなるデフォルト=債務不履行が起きて、大きな経済危機に発展したのです」

■新興国通貨の売りは続く


 「通貨危機とは、通貨の急落が引き金となってドルなど外貨で借りている借金が膨らんだり、資金が引き揚げられたりして、深刻な景気後退に見舞われることです。今回のトルコの状況は、そこまで深刻な状態にはなっていないようです。都内でも円をリラに換金できますし、トルコ市民の生活も輸入品の価格は上がっていますが、一定の安定を保っているようです」

 「ただ、直近でもトルコのリラを含む新興国の通貨は売られています。南アフリカやインド、ブラジル、インドネシアなど、経常赤字が大きく、海外からの借金の国内総生産(GDP)比率が高い国の通貨が売られています。アジア通貨危機のように一気に影響が広がるとは考えにくいですが、トルコとの関係の深い欧州、特に南欧などへの影響は注意して見ておく必要があるようです」

日経プラス10 今週の放送予定(都合により変更することがあります)
特 集 ニュース解説(フカヨミ)
8/27(月)
テスラ非公開化へ 電気自動車の行方は 清水功哉(編集委員)
8/28(火)
中国ショック!どうなるゲーム業界 坂本英二(編集委員)
8/29(水)
トランプ政権の今後 上杉素直(コメンテーター)
8/30(木)
白血病にも光明!進化するiPS 武類雅典(企業報道部長)
8/31(金)
医療保険値下げ!競争激化、どこを選ぶ? 西岡貴司(経済部デスク)
https://www.nikkei.com/article/DGXZZO34485020T20C18A8000000/?n_cid=SPTMG053


アルゼンチンやブラジル、通貨安続く 過去最安値も
中南米
2018/8/23 8:52
 【サンパウロ=外山尚之】為替市場でアルゼンチンやブラジルの通貨下落が続いている。アルゼンチンペソは22日、1ドル=30.2ペソと、対ドルで過去最安値で取引を終えた。ブラジルの通貨レアルも一時1ドル=4.09レアルと、約2年半ぶりの安値を記録。トルコショックを引き金に新興国から資金が流出する中、経済や政治が不安定な国が狙い撃ちされる構図となっている。

ブラジルの通貨レアル(左)とアルゼンチンの通貨ペソ(右)とも、為替市場で売られる
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ブラジルの通貨レアル(左)とアルゼンチンの通貨ペソ(右)とも、為替市場で売られる

 アルゼンチンの中央銀行は13日に通貨防衛のため緊急利上げを実施、政策金利を45%に引き上げたばかりだが、通貨売りに歯止めがかからない状況だ。4月からの通貨下落や度重なる利上げにより、アルゼンチンの経済は低迷が続く。政府は国際通貨基金(IMF)の支援を受け市場介入で対抗するが、ペソ売りの圧力が強い。

 8月に入り、2015年までの左派政権の汚職スキャンダルが発覚したことも通貨安の要因となっている。左派陣営の打撃となりマクリ氏にとっては政治的な追い風となるはずが、建設業界を中心に経済界に汚職がまん延していることが露呈し、経済の足かせになるとの見方が出ている。

 ブラジルでは10月の大統領選の最新の世論調査で、汚職事件で収監中のルラ元大統領の人気が高まっていることが売り材料となっている。二審で有罪判決を受けたルラ氏の出馬が認められる可能性は低いとみられるが、市場の警戒心は強い。

 ルラ氏を除く候補者の中では、極右のボルソナロ候補が首位に立ち、2位以下の候補とのリードを広げていることも懸念材料だ。「ブラジルのトランプ」と呼ばれるボルソナロ氏は国連からの脱退や地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱を示唆しており、市場では警戒する声が広がる。

 ブラジルの金融大手イタウ・ウニバンコのマリオ・メスキダ筆頭エコノミストは「外的要因と内的要因でそれぞれ悪材料がそろい、金融市場のボラティリティー(変動率)が高い中で売られやすくなっている」と分析している。



http://www.asyura2.com/18/kokusai23/msg/748.html#c3

[経世済民128] 人生100年時代でシミュレート 賃貸派は1600万円も損をする(日刊ゲンダイ) 赤かぶ
6. 2018年8月30日 18:37:29 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1363]

#当然、大都市といえども油断はできないし リスク自体大きい

 

東京・大阪で異変、地方は…不動産は活況なのか 地価で見る不動産市況。進む二極化とスポット化

2018.8.30(木) 曽我部 健
大阪「ミナミ」の象徴・戎橋。公示地価で「キタ」を抜き、路線価でも肉薄する(写真はイメージ)
「不動産市場は活況」。2020年に控えた東京五輪によって首都圏を中心とした建設ラッシュは続いている。では、実際に不動産はどう見るべきなのか。2018年3月に発表された「公示地価」と7月に発表された「路線価」からその傾向をニッセイ基礎研究所・金融研究部准主任研究員の佐久間誠氏に聞いた(JBpress)。

「人が集まる地域」「人が集まらない地域」で進む地価の二極化
「不動産の価格を表す指標には『公示地価』『固定資産税路線価』『基準地価』『路線価』の4つがあり、このうち一番最近に発表された(毎年7月)のが、路線価です。公示地価は不動産取引の参考となる指標ですが、路線価は相続税、贈与税を計算するためのもの。公示地価をおおよそ八掛けしたものが路線価にあたるとされています。そのため、路線価=取引価格というわけではなく、地価の上げ下げの傾向を知るための指標として見るべきです」(佐久間氏、以下同)

 路線価を発表した国税庁によれば、今年は全国平均で前年比0.7%アップし、3年連続の上昇となった。都道府県別では、東京、大阪、愛知など18都道府県で上昇している。昨年は13都道府県だったので、都市部を中心に不動産売買が活発化しているように読み取れる。

「路線価のトップは33年連続で東京・銀座の『鳩居堂』前です。1平方メートルあたり4432万円と、バブル期の終わりである1992年の3650万円を大幅に上回る水準で、前年に続き過去最高を更新しました。また、公示地価を見ると、地方にも徐々に波及していることがわかります。たとえば、三大都市圏を除いた『地方圏』の商業地は26年ぶり、バブル以降初めてプラスになりました。バブル以降で、もっとも地方まで地価上昇が波及しているといえます」

 やはり「不動産」は活況なのか。しかし、それはすべての地域で上昇しているということではない。路線価を47都道府県全体で見ると、じつは地価が上昇した地域よりも下落している地域のほうが多い。とりわけ顕著なのは「二極化」、そして「スポット化」だ。

「それがよくわかるのが、地方主要4都市の『札仙広福(札幌、仙台、広島、福岡)』です。中心部の地価はすごく上昇していますが、その周辺地域では下落するところもあるという現象が起きている。札幌市内でも住宅地の地価が下がっている区があるんです。『東京と地方』という二極化だけでなく、同一都道府県内の二極化もかなり進んでいます。それは東京も例外ではありません」

 例えば、田園調布や成城学園前。高級住宅地としてブランド力を誇っていた東京の一等地は徐々にその価値の低下が指摘されている。「都心から少し離れた閑静な住宅地」という価値が「都会の利便性」という新しい価値にとって代わられているわけである。

 この「二極化」「スポット化」の傾向を端的に言えば「人がより多く集まるエリア」は地価がどんどん上昇し、「人があまり集まらないエリア」は下落していく状態である。

差をつくり出すのは「再開発」「交通インフラ」「インバウンド」
 こうした状況をもたらす要素は「3つある」と、佐久間氏は指摘する。

「ひとつは『再開発』です。再開発によって大きなビルが建てられ、街がきれいになったら、多くの人が集まるようになったという事例はたくさんある。2つめは『交通アクセスの改善』。東北地方最大の都市である仙台では、2015年に地下鉄東西線が開業したことで、交通利便性が高まり、路線周辺の住宅地の地価がかなり上昇しました。そして3つめの要素が外国人観光客の『インバウンド』。この影響が大きいことが今年の傾向でしょう」

 象徴的なのは地方都市の雄というべき大阪だ。「公示地価」では、ミナミ(難波などの商業地)がキタ(梅田などのオフィス街)よりも高くなったのである。

「これまで大阪では、オフィス街のキタほうが地価は高かったのですが、それを商業のミナミが上回った。大都市である大阪でもこれだけインバウンドが強いというのは、かなり象徴的な出来事といえるでしょう」

 その傾向は「路線価」でも続いており、ミナミの戎橋ビル前「中央区心斎橋筋2丁目」が22.3%も上昇し1184万円。大阪圏の税務署別最高路線価を35年連続で守ったキタの阪急百貨店うめだ本店前の御堂筋「大阪市北区角田町」の1256万円に肉薄し、その価格差は昨年の208万円から72万円になった。

 インバウンドの勢いは他地域の路線価でも顕著で、大阪圏での上昇率トップが東山「四条通大和大路西入中之町」で25.9%と高い上昇率を示すなど、訪日観光客で賑わう京都が並ぶ。

 この3つの要素は、1つだけでも効果があるが、2つ以上重なるともっと地価が上昇しやすくなる。たとえば、名古屋駅周辺地域は上昇率で全国5位、6位に入ったが、これは「リニア中央新幹線が開業する」ことに加え、「オフィス開発が進んでいる」ことが大きいという。

 もともと人が集まるエリアは再開発やインバウンドによってさらに地価が上昇し、人口が減少しつつあるエリアはさらに地価が下がっていく。それによって同じ都市内でも、より二極化、スポット化が進んでいる、というわけだ。

 佐久間氏は、こうした流れにある「地殻変動」を指摘する。

「もう1つ、象徴的だった数字に東京があります。これまで東京の住宅地の地価で最高額だったのが千代田区の番町でした。その番町を今回、港区の赤坂が上回った。番町と赤坂では住民層がまったく違います。番町には昔ながらの富裕層、一部上場企業のトップなどが住み、一方、赤坂はIT系などベンチャー企業のCEOなど新興富裕層が多い傾向があります。つまり、大阪ではインバウンドがオフィス需要を上回り、東京の住宅地では旧来の大手企業に代わってITを中心とした新興企業の力が強くなってきている。『地殻変動』というべきものが顕在化しつつあるんです」

 つまりこうだ。

「インバウンドやITというのは、旧来の価値観ではやや軽く見られていたものでした。それが名実ともに国の経済を支える位置づけにまで成長した。これは産業構造の変化の現れであり、まさしく地殻変動です。この価値観の転換は公示地価に見られたものですが、路線価にも当てはまります」

 二極化とスポット化が示すのは新しい時代が、名実ともにシフトしているという事実である。
http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/330.html#c6

[国際23] 売女マスコミの際限のない偽善(マスコミに載らない海外記事) 赤かぶ
2. 2018年8月30日 18:40:20 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1364]

#売女にもいろいろある


家族を養う唯一の方法が売春だった…… ベネズエラの経済危機で、追い詰められる女性たち
Bill Bostock
Aug. 27, 2018, 10:45 AM FINANCE

スカイ・ニュース(Sky News)の取材に応じるベネズエラ人女性。

Sky News

ベネズエラは深刻なインフレ、停電、食料不足に苦しんでいる。
その結果、複数のベネズエラ人女性たちが隣国コロンビアで売春を始めている。スカイ・ニュースが報じた。
報道によると、国境に近いコロンビアの街では、売春宿で働いている女性のほぼ全員がベネズエラ人だという。
スカイ・ニュースの取材に応じた女性たちは、ベネズエラのインフレと食料不足はあまりにひどく、家族を養うには他に手段がないと語っている。
ベネズエラの経済危機によって、生計が立たないとして、複数のベネズエラ人女性が隣国コロンビアで売春を始めている。スカイ・ニュースが報じた。

ベネズエラとの国境に近いコロンビアの街ククタでは、生活のために売春宿で働くベネズエラ人女性の流入が増えているという。

こうした女性たちを含め、多くの人々がハイパーインフレや深刻な停電、食料や医薬品不足といったベネズエラの国の経済破たんにより、国を出ざるを得なくなっている。

スカイ・ニュースによると、ククタの売春宿で働く60人の女性のうち、2人のコロンビア人を除き、全員がベネズエラ人だ。客1人あたりの料金は、少なければわずか33ドル(約3700円)だという。

「これまでに比べれば、何でもマシよ」

ある女性は語った。

「やらなきゃどうにもならないから、やっているの」

また別の女性はスカイ・ニュースの取材に対し、家族を養う唯一の方法が売春だったと語った。

女性たちはベネズエラを一時的に離れているだけで、正式な移民の証明書を持っていないため、合法的に仕事を得ることができないのだと、スカイ・ニュースは指摘する。

長蛇の列

食料を手に入れるため、列に並ぶベネズエラの人々(2018年8月23日)。

Reuters

この経済危機に対し、ベネズエラ政府は極端な手段に出た。同国のマドゥロ大統領は20日、米1袋の値段を250万ボリバルにまで上げたハイパーインフレを食い止めるため、通貨ボリバルからゼロを5つ取るデノミネーション(通貨単位の変更)を実施した。

[原文:Venezuela's economic crisis is so bad that some women say they're turning to sex work to survive]

(翻訳、編集:山口佳美)
http://www.asyura2.com/18/kokusai23/msg/743.html#c2

[国際23] 北朝鮮がアメリカに警告「非核化交渉崩壊するかも」〜「米は、平和条約の締結に向けて北が望むような…」/テレ朝 news 仁王像
2. 2018年8月30日 18:42:03 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1365]
トランプ大統領は「かつてない規模」の軍事演習を再開、北朝鮮で進展なければ
Toluse Olorunnipa、Jennifer Epstein
2018年8月30日 6:35 JST 更新日時 2018年8月30日 7:26 JST
大統領は先週、ポンペオ国務長官の訪朝中止−非核化の進展不十分で
中国との通商対立は今後さらにエスカレートする見通し

Photographer: Carl Court/Getty Images AsiaPac
トランプ米大統領は29日、北朝鮮の非核化に向けた協議が前進しなければ、韓国と日本との合同軍事演習を再開し、それは「かつてない規模」となり得るとツイッターで警告した。

  大統領はこれに先立ち、米朝協議は「順調」だが、「中国がはるかに難しくしている」とホワイトハウスで記者団に語っていた。

  トランプ氏は、ホワイトハウスの声明だとする一連のツイートで、中国が北朝鮮に「資金や燃料、肥料、その他のさまざまな商品を含むかなりの援助」を提供していると指摘した。

  この発言の数日前にトランプ大統領は、朝鮮半島の非核化に向けた協議に十分な進展が見られないとしてポンペオ国務長官による訪朝を中止させた。大統領は24日の一連のツイートでは、米国と中国との問題が解決した後にポンペオ長官が訪朝する可能性が高いとしていた。

  中国は北朝鮮にとって最大の貿易相手国で国境を接することから、米国は昨年発動された北朝鮮に対する制裁強化で中国に大きく依存してきた。トランプ氏は29日、中国は「北朝鮮へのルートだ」と主張した。

  米中貿易協議は先週2日間の日程で行われたが、前進は見られず、通商対立の一層のエスカレートが見込まれる。事情に詳しい関係者1人によると、米中の追加協議は予定されていないという。

  ここ1週間に米国は新たに中国製品160億ドル(約1兆7800億円)相当に追加関税を賦課した。これに対抗した中国政府による報復措置で、米中貿易摩擦の影響を受ける貿易額は計1000億ドルに達したが、さらに膨らむ恐れがある。トランプ政権は中国からの輸入2000億ドル相当に対してさらなる関税を賦課する構えを見せており、中国政府は既に報復の用意を表明している。トランプ大統領は29日、「貿易戦争と呼びたくはない」と述べた。

原題:Trump Warns of ‘Bigger Than Ever’ War Games If Korea Talks Stall(抜粋)

(トランプ氏のツイートを追加して更新します.)


http://www.asyura2.com/18/kokusai23/msg/745.html#c2

[国際23] 英「合意なき離脱」への対策発表〜EU離脱まで7か月余りとなる中/nhk 仁王像
3. 2018年8月30日 18:44:41 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1366]
2018年8月30日 / 15:50 / 14分前更新
コラム:ブレグジット推進派、何が欠けていたのか
Edward Hadas
3 分で読む

[ロンドン 29日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 英国の欧州連合(EU)離脱というのは危険極まる作業だ。先週、英政府が合意なしのブレグジット(EU離脱)に向けた準備書を公表したことは、そうした事実を思い知らせてくれる。

英国の「独立」を唱える人々は、同国の対外貿易や人とモノの移動全てがEUへの加盟、あるいはEUとの包括的な合意に実質的に依存していることを認識できていなかったのだ。

EUとの関係を完全に断ち切る、いわゆる「クリーンブレイク」の推進派は、食品や医薬品の不足を心配する国民に対して有益なことを何も言えない。これは不思議に思える。何といっても、多くのブレグジット支持者は反EUキャンペーンに何十年も費やしてきた。だとすればもっときめ細かな思考をする十分な時間が確実にあったのではないか。

EU残留支持派は、真の問題は根本的な部分にあると主張する。すなわち、世界最大の経済圏から去るのは愚かだというのだ。だが離脱の判断が正しいと仮定しても、よりダメージが少ない形で離脱する方法はあった。反EU論者は、軍人やディベートの世界で当たり前になっている「敵を知る」という方法論に従っていれば、そうしたやり方を発見できたはずだ。EU建設の歴史が、より実践的な離脱方式をひらめかせてくれただろう。

多くのブレグジット推進派のイメージでは、英国は加盟の事実によってEUに束縛されている。1972年の欧州共同体法やそれを受け継いだ法律が、1本の太いコードとなってドーバー海峡の両岸を結んでおり、新たな法律という鋭い刃物でコードを切断すれば、英国は世界に独自の居場所を見つけられるという理屈だ。

こうした単純な発想は、自由貿易と国家主権の関係をめぐる高尚な言い分と符号する。ただし現実を見ると、EU諸国を結び付ける絆は1つの基本法から始まったものだ。そして45年を経た今、英国と欧州大陸の間には多数の細い糸が絡み合っている。

医薬品を例に取ると、EUは新薬の承認や製造施設の立ち入り検査、治験などについて共通の基準を設定している。加盟国は個別に、または一体的にこれらの基準の整備や執行に従事する。膨大な関連書類が、蓄積された域内の知識や協力関係の骨格を成している。

英国がEUに加盟していなかったとすれば、カナダや日本のように独自の医薬品規制を策定していただろう。今からでも可能だが、出来上がるには何年もかかる。それまで英国には、医薬品の流通を止めないためにはEUと相互承認制度の導入に合意する必要が出てくる。

ブレグジットは、こうした規制体系の再構築を何度も繰り返す作業だ。どのセクターにも複雑な法的取り決めや、細かい特殊事情、深く浸透した慣行などが存在する。英国を合意なしでこれらの体系から引きはがしてしまったら、経済的に途方に暮れることになる。

規制や法律の策定は情熱的には見えないかもしれないが、延々と専門的な細則を仕上げていく取り組みは、背後にある力強い思想を表している。細かい取り決めの多くは論争を呼び、関係者は妥協するか、協調するか、それとも喧嘩別れするか態度を決めなければならなかった。平和で繁栄した欧州という理想に突き動かされ、関係者らは幾度も国益よりも欧州共同体の利益を優先する道を選んできた。

気高い理想と面倒な細かい手続きを並行的に推進していく考えは、1952年の欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)の設立によって定まった。EUの前身だったECSCの最終目標は、当時のシューマン仏外相の言葉によれば「戦争を考えられなくするだけでなく、実行不能にすること」だった。そして欧州の平和の恒久化のための決意は、高尚な言い回しにとどまらず、石炭や銑鉄などで各国の年間生産割り当てを決めるという実に地道な措置を必要とした。

ブレグジット支持派が忘れていたのは、並行的な作業のうちの細かい手続きという面だった。これをなおざりにしたばかりに、英政府は昨年3月にEU離脱を通知した後で、具体的な事項を検討しなければならなくなったのだ。来年3月というブレグジットの期限が迫った今、合意なしの離脱という自業自得の大混乱が現実的な可能性となってしまっている。

もちろん、どんなに周到に準備したブレグジットであっても、英経済への打撃は免れないだろう。EU離脱で非常に多くの関係が切れるのは避けがたく、英国の知的資本は大いに毀損されるだろう。

それでもECSCを立ち上げてきた過程を逆回しにして見習えば、痛手は最小限にとどまったのではないか。英国とEUは、加盟時の数多くの点をどう変更するかを詰めるための協議に入りことができたはずだ。緊迫したやり取りが何年も続いただろう。しかし共通の経済的利益と、ある程度は残っている共通の理想により、適切な着地点にたどりつけた可能性がある。

それももう手遅れだ。とはいえブレグジットで何が起きるにせよ、政治的または経済的な理想主義者にとっては1つの教訓が得られた。夢は感動を与えるかもしれないが、それが退屈で面倒な政策へと具体化されない限り意味はなく、場合によっては有害だということだ。


 

 


英離脱「前例のない提案」を用意、EU首席交渉官
交渉先行きはなお不透明
2018/8/30 5:58日本経済新聞 電子版
 【ブリュッセル=森本学】英国の欧州連合(EU)離脱を巡って、EUのバルニエ首席交渉官は29日、「他のどの第三国とも交わしたことのないような関係を英国に提案する用意がある」と語った。市場はバルニエ氏が英国へ柔軟な姿勢を示したと受け止め、29日のロンドン外国為替市場で英ポンドが急騰。対ドルで一時、1ポンド=1.3ドル台と3週間ぶりのポンド高・ドル安水準をつけた。

記者会見するEUのバルニエ首席交渉官(左)(29日、ベルリン)=AP
記者会見するEUのバルニエ首席交渉官(左)(29日、ベルリン)=AP

 バルニエ氏はベルリンでマース独外相と会談した後に記者会見した。離脱後の関係を巡って、英国に「前例のない」提案をする構えがあると説明。一方で、EU単一市場の「アラカルトはない」とも述べ、英国の「いいとこ取り」を許さない姿勢も改めて強調した。

 離脱交渉を巡ってはEUと合意できないまま、英国が2019年3月に離脱を迎えるとの不安が高まっている。バルニエ氏が29日に言及した「前例のない」関係の構築は英国が繰り返し求めてきたもの。市場ではバルニエ氏が英への姿勢を軟化させたとして、交渉加速への期待が広がった。

 ただバルニエ氏は過去にも英国と「前例のない」関係を目指すと言及している。29日の記者会見でも、EU非加盟国ながらEUとの人の移動の自由を受け入れる代わりに、EU単一市場の恩恵を受ける「ノルウェー型」が利用可能なモデルだと改めて指摘。交渉姿勢が実際にどこまで変わったのかは不透明だ。

 英国とEUは31日、ブリュッセルで首席交渉官会合を開く。EU側はバルニエ氏、英国からはラーブEU離脱担当相が出席する。ラーブ氏は29日の英国議会で、EUとの合意は「目に見えるところ」まで来ていると自信を示した一方、英・EUが目指してきた10月中の合意には時間的な余裕があまりないとの認識も示した。
http://www.asyura2.com/18/kokusai23/msg/723.html#c3

[国際23] 米中貿易戦争、第1ラウンドはアメリカの勝ち(ニューズウィーク)  赤かぶ
1. 2018年8月30日 18:45:48 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1367]
米国とは異なる「超大国」中国、次の覇権を握れるのか
Marc Champion
2018年8月30日 11:14 JST
初の海外軍事基地をジブチに、「孔子学院」でソフトパワー強化
非常に自己本位的な大国−ジョージ・ワシントン大シャンボー教授
中国は今、長い歴史の中で初めて真にグローバルなビジョンを持つ指導者に率いられている。必然的にこれまで唯一の超大国とされていた米国と比較される。

中国が南極大陸に設けた「長城基地」(2017年1月)
撮影:Rong Qihan / Xinhua / eyevine via Redux
  だが習近平総書記の共産党指導部は次の覇権国として見なされることには躊躇(ちゅうちょ)しており、覇権国が担うコストを引き受けることには慎重だ。「超大国」という言葉をあえて避け、米国のようなやり方で超大国として振る舞うことはイデオロギー的に受け入れられないとしている。
  中国人民大学重陽金融研究院の王文執行院長は習総書記が13年に国家主席に就任した後に頭角を現し始めた党幹部だ。中国の将来に対する自信はあふれるばかりだが、南極観測に参加し、数百人の学術関係者から成る米国の南極観測チームを目の当たりにした時にはその規模に圧倒された。そして中国は追い付く必要があるとの結論に至った。王氏に大国としての中国はどのようなものになるのかと尋ねると、「米国のようなものではないこと」は確かだと言う。  
  米国が超大国への道を歩み始めた時もまた、それまで列強が行ってきた帝国・植民地主義を繰り返さないとの決意があった。その米国は今、11の空母打撃群と世界中に展開する軍事基地を通じ自国の権益を守っている。 

北京で使われている顔認識ソフトを使ったモニターに映る人々
撮影:Gilles Sabrie / New York Times via Redux
  中国も似たような道を行こうとしているのかもしれない。中国人民解放軍は昨年、アフリカのジブチに初の海外基地を置いた。外交予算も大きく増加。米国に代わる世界のテクノロジー大国となることを目指す「中国製造2025」や人工知能(AI)の世界を30年までに牛耳ろうとする計画もある。
 
Baby Bust
China's population is projected to start declining as soon as 2023, in millions

Source: United Nations World Population Prospects 2017
  ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によれば、中国の国防支出は昨年時点で2280億ドル(約25兆5000億円)と、1990年の210億ドルから急増している。権威主義的な政治体制と国主導の市場経済に基づく中国の発展モデルはすでに、米国そして国際通貨基金(IMF)のような第2次世界大戦後に設立された国際機関によって長く推進されてきたよりリベラルな理想に反発するカンボジアなどの一部の国を引き付けている。豊富な資金力もまた北京に目を向けさせる要因だ。 

中国の南極観測隊(2014年)
撮影:Xinhua / eyevine via Redux
  中国政府は国内において言論の自由などの取り締まりを強化しているが、そのことが習政権が自信にあふれ、体制の基盤が盤石であることを示唆しているわけではない。米中間の貿易戦争を受け株価は大きく下落し、習氏が米国とあからさまに対峙(たいじ)し過ぎたのではないかとの議論が本土内でも見受けられる。
  中国では人口高齢化がすでに始まっているが、平均的な国民はまだ平均的なメキシコ人よりも貧しい。共産党が自らの正統性を誇示するため進めてきた投資主導の成長に何十年も融資をしてきた国内大手銀行の健全性に疑問を抱く投資家もいる。
  オーストラリア国防省で情報収集を担当していたポール・ディブ氏は、中国政府は国防よりむしろ内政に資金を投じると指摘。「銃か老人介護かのどちらかを選択しなければならないだろう」と語る。

中国が設けた5カ所目の観測基地(2018年1月)
撮影:Bai Guolong / Xinhua / eyevine via Redux
  ベテランの中国専門家の1人である米ジョージ・ワシントン大学のデービッド・シャンボー教授によれば、超大国にとって必要なのは軍事力のみならず、テクノロジーと強い経済力、そして影響力を維持するためのソフトパワーで、「中国はそれを理解している」。中国が世界中に展開する中国語と中国の文化を教える「孔子学院」は500を超えた。

ナイロビでの鉄道建設(2018年6月)
撮影:千葉康義/ AFP via Getty Images
  だが同教授は中国に真の同盟国はほとんどなく、依然としてせいぜい部分的な超大国にとどまっているとも指摘する。南シナ海に軍事拠点を築く動きに加え、現代版シルクロードとされる広域経済圏構想「一帯一路」を通じた多額の海外向けインフラ融資が小国を従わせるための債務のわなでなはいかとの懸念が、こうししたソフトパワー強化の取り組みを損ねている。中国の文化は豊かで深みがあるものの、ハリウッドを擁し個人の自由を理想に掲げる米国の影響力には遠く及ばない。

ジブチの中国人民解放軍(2017年8月)
撮影:AFP via Getty Images
  シャンボー教授は「中国軍はまだ地域的」で外交力も同様だと分析。大きな国際合意の主導権を握ったことはなく、「非常に自己本位的な大国」で、「世界的秩序を形成することに関心はない」と論じる。
China's Rise
China overtakes the U.S. economy, in USD adjusted for purchasing parity

Source: IMF
  北京で全球化智庫(センター・フォー・チャイナ・アンド・グローバリゼーション)を設立した王輝燿理事長は異なる見方だ。中国は米国が築き上げた世界秩序から恩恵を受けており、それを壊すことは望んでいないと説明。アジアインフラ投資銀行(AIIB)などの新たな国際的な枠組みを加える「グローバリゼーション2.0」を実現させたいのだという。中国の規模を「人々は恐れている」が、中国はより包括的なグローバル化を望んでいると解説する。
Spending Power
China's spending power in nominal USD has been volatile, percentage change
Source: IMF/Bloomberg
  南極観測に加わった王氏の見立ては「中国は欧米の社会科学で説明できない非常に興味深い段階に入っている」というものだ。「もし欧米のセオリーを用いるなら、中国の外交政策は理解できないだろう」と語る。
  王氏は今年夏にまとめた報告書で、領有権の主張を凍結した1959年の南極条約にもかかわらず、南極の地下深く眠る膨大な資源を巡り「猛烈」な地政学的な争いが繰り広げられていると分析。主張を強めなければ、中国は敗れてしまうとの恐れを隠さない。「中国は深海や極地、宇宙、インターネットといった新たな分野のルール作りにより積極的に参加する必要があると習国家主席は繰り返し強調している」と記した。

習近平総書記(2017年10月の共産党大会)
撮影:Qilai Shen / Bloomberg
原題:What Does a Chinese Superpower Look Like? Nothing Like the U.S.(抜粋)


http://www.asyura2.com/18/kokusai23/msg/750.html#c1

[経世済民128] 市場には好材料 「トランプ弾劾」で9月大相場がやってくる(日刊ゲンダイ)  赤かぶ
6. 2018年8月30日 18:49:51 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1368]
また高値更新のS&P500種、買われ過ぎ領域入り
Sophie Caronello
2018年8月30日 12:07 JST

  S&P500種株価指数がまた最高値を更新した。問題はこの素晴らしい日々が続くかどうかだ。S&P500種は29日、2900を突破した。期間14日の相対力指数(RSI)は70を上回り、買われ過ぎを示唆している。前回この領域に入ったのは1月で、その直後に調整した。
原題:Fresh Record for S&P 500 Revisits Overbought Territory: Chart(抜粋)

 

星が導く米金融政策−システムの安定に必要な金利水準にも注意必要か
Rich Miller
2018年8月30日 12:30 JST
景気の加速も減速も招かない中立金利より高い水準である可能性
2つの金利水準の相違によって金融当局の政策運営は一層複雑に

パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長 Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg
米金融当局が政策運営に当たって指針の1つとするのは、景気の加速も減速も招かないとされる中立金利(自然利子率)の推計値だ。だがこの金利に比べ、金融システムの安定に必要とされる金利はずっと高い水準にあるかもしれない。

  パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は24日、ワイオミング州ジャクソンホールで行った講演で、r*(Rスター)と呼ばれる中立金利やu*(Uスター)として知られる自然失業率、インフレ目標を指すΠ*(パイ・スター)に言及した。これら星々に、金融政策は導かれるというわけだ。

  ブルームバーグではさらに、金融の安定性(financial stability)確保に合致する金利を「ファスト・スター」と呼ばせてもらおう。この金利水準を実際の政策金利が大幅に下回れば資産バブルや過度のレバレッジといった金融システムの行き過ぎが生じ、逆に大幅に上回ればリスクテークを抑制して経済成長を主導するアニマル・スピリットを冷え込ませる事態を招くと定義する。

  中立金利は、完全雇用と物価安定をいったん達成すれば経済を安定化させる金利だが、近年は低下傾向にあると推計されている。
  

Falling Star
Fed officials reduce their estimate of the neutral interest rate


Source: Federal Reserve

  アリアンツの主任経済顧問を務めるモハメド・エラリアン氏はこれに関し、ブルームバーグに寄稿した27日のコラムで、「最大限の雇用と物価安定の実現という、米金融当局の2つの責務を全うする金利政策やバランスシート政策であっても、必ずしも金融の安定性と合致しない恐れがある」と記していた。

  こうした事態がどれほどの困難をもたらすかを見るには、2000年代半ばにさかのぼればよい。米金融当局は当時、経済の安定を保ちインフレを抑制するため、中立金利の推計を頼りに整然と利上げを進めた。

  しかし、金融規制監督当局がおおむね不干渉主義的なアプローチを取る状況にあって、一連の利上げでは不動産バブルや債務の大幅膨張を防ぐにはとうてい十分ではなく、こうした行き過ぎは最終的に大恐慌以来最も深刻なリセッション(景気後退)を引き起こすことになった。

  そして現在、同じような力学が再び働きつつあるリスクがある。米金融当局は何年もの緩和局面を経て、持続可能な最大限の雇用と2%のインフレという2つの目標にようやく近づいている。ただ、これまでの政策運営姿勢の下で、米国の株価と社債相場は当局者が「高い」と見なす水準に押し上げられた。

  パウエル議長は24日の講演で、金融政策運営で指針とするRスターやUスターなどの推計値が不確かなものである点を強調する一方で、現在進めている漸進的な利上げ継続の方針をあらためて表明した。


  経済学の教科書に記載のない「ファスト・スター」について、パウエル議長の発言がなかったのは当然のこととして、金融の安定性を金利政策に関連付けることで同議長はこのファスト・スターに実質的に言及したようにも見受けられる。

  パウエル議長は「過去2回のリセッションに先駆けて、インフレではなくむしろ金融市場を中心に不安定化をもたらす行き過ぎが見られた。このため、リスク管理ではインフレ以外での行き過ぎ兆候を見定める必要性が示唆される」と語った。

  今年早い段階で国際金融協会(IIF)のパネル討議に参加したブレバン・ハワードの米国担当チーフエコノミスト、ジェーソン・カミンズ氏はもっと明快に語っていた。同氏は「実体経済の均衡を保つ」金利水準が、金融経済の均衡をもたらす金利水準とは「異なって、しかもずっと低い」場合、どうすべきかと問い掛けた上で、「どちらか1つを選ぶか、この2つの何らかの組み合わせを選ばなければならないだろう」と指摘した。

  「ファスト・スター」の概念は、サマーズ元財務長官が唱えた長期停滞論にも暗に示されている。サマーズ氏は、貯蓄の過剰供給によって中立金利の水準が大幅に押し下げられたため、米金融当局が金融面の行き過ぎを生じさせることなく中立金利を達成するのは困難だとの考えを示した。

  エラリアン氏は電子メールで、パウエル議長率いる金融当局にとって「この問題は極めて重要だ」とコメントした。

原題:Introducing the New Star That Powell’s Fed Needs to Navigate By(抜粋)


 

 

 
米GDP、4−6月は14年以来の高い伸び
Jeff Kearns
2018年8月29日 21:36 JST 更新日時 2018年8月30日 0:02 JST
4−6月(第2四半期)の米実質国内総生産(GDP)改定値は、速報値から小幅に上方修正され、2014年第3四半期以来の高い伸びとなった。輸入や知的財産投資の修正などが反映された。
GDPのハイライト(第2四半期、改定値)
実質GDP改定値は前期比年率4.2%増と速報値の4.1%増から上方修正され、14年第3四半期以来の高い伸び−市場予想4%増
経済で最も大きな部分を占める個人消費は3.8%増(予想3.9%増)、速報値の4%増から下方修正−自動車や非耐久財、ヘルスケアが下向きに修正された
知的財産投資は11%増に上方修正(速報値8.2%増)
輸入は0.4%減(速報値0.5%増)に修正、速報のGDPマイナス寄与からプラスに転じた
税引き前の企業利益は前年同期比7.7%増、前期比では3.3%増−双方とも14年以降で最大の伸び


  純輸出のGDP寄与度はプラス1.17ポイントと、速報値のプラス1.06ポイントから上方修正。在庫はマイナス0.97ポイント(速報値マイナス1ポイント)だった。
  インフレ調整後の国内総所得(GDI)は1.8%増。前期は3.9%増だった。
  設備投資は8.5%増(速報値7.3%増)。機器への投資は4.4%増(速報値3.9%増)に上方修正された。住宅投資は1.6%減(速報値1.1%減)へと下方修正された。 
  GDPの項目のうち変動が大きい在庫と貿易を除く国内最終需要は3.9%増と、速報値から変わらず。   
  政府支出は2.3%増で、速報値の2.1%増から上方修正。
  実質可処分所得は2.5%増(速報値2.6%増)に下方修正。
  統計の詳細は表をご覧ください。
原題:U.S. Second-Quarter Growth Revised Up to 4.2% on Software, Trade(抜粋)
(統計の詳細を追加し、更新します)


 


 
2018年8月30日 / 15:35 / 16分前更新
コラム:ドル人気の陰で育つ「ステルス円高」の芽=内田稔氏
内田稔 三菱UFJ銀行 チーフアナリスト
3 分で読む

[東京 30日] - 足元のドル円相場は、おおむね111円を挟んだもみ合いとなっており、方向感に乏しい。また、最近の特徴は、リスク回避の場面でも円高方向への反応が限定的となっている点だ。この背景は、リスク回避の場面で、円と並んでドルも強くなるためだろう。

国際通貨基金(IMF)の試算によれば、2010年1月から2017年9月までの間、新興国の証券市場には約3666億ドルの資金が流入。そのうち1721億ドルが、米連邦準備理事会(FRB)の資産買い入れ効果だという。

そこで、MSCI新興国株価指数を構成する国々(中国除く)の外貨準備高をみると、その合計額は同じ期間に約4割増加している。周知の通り、外貨準備高の変動要因の1つは為替介入だ。資金流入による自国通貨高圧力を抑制するため、ドル買い自国通貨売り為替介入を行なった結果と考えられる。この外貨準備高の変化は、IMFの分析と整合的である。

一方、昨年10月以降、FRBは保有資産の縮小、すなわち資金吸収に着手した。当然、新興国から米国への資金還流が生じているとみられる。このため、新興国の株式や通貨が軟調に推移している場面では、その裏で米国への資金流入により、ドル高圧力が生じていると考えられる。これがリスク回避の場面で、円高とドル高とに挟まれ、ドル円の動きが鈍い背景だろう。

むろん、ドルが強い背景には、米国経済が好調を維持しているため、ドルの先高観が根強いことも一因とみられる。つまり、ドルは対円でこそ上値は重いだろうが、総じて底堅く推移する公算が大きい。

<実質金利上昇が招く円高圧力>

こうした中、円はスイスフランと並び、年初来、そのドルに対して上昇している数少ない主要通貨だ。これは、当然ながらその他多くの主要通貨に対し、円高が進んだことを意味する。

実際、国際決済銀行(BIS)が試算している円の名目実効相場をみると、8月17日時点で年初よりも約7.4%上昇している。こうした円高の一因は、リスク回避の局面で円が買われやすいためだ。

とはいえ、今年2月をピークにボラティリティー・インデックス(VIX指数)は低下傾向をたどってきた。米国の主要な株価指数も史上最高値を更新するなど、市場は決してリスク回避に傾いているわけでもない。円高の要因をリスクオフだけに求めるのは合理性を欠いていると言えよう。

その点、円高の背景として、日本のインフレ期待の低迷、すなわち実質金利の上昇が挙げられる。日本のブレークイーブン・インフレ率(10年物)は、今年1月をピークにじりじりと低下。日銀が7月末、金融緩和の枠組みを強化した後も一段と低下した。低金利政策の長期化だけをもって、インフレ期待は高まりにくくなっているのだろう。

加えて、円安予想の根拠として挙げられることが多い本邦勢の対外直接投資や証券投資も、実際にはそれほど円安効果を発揮できていないとみられる。なぜなら、こうした対外投資は、結局、世界最大規模の日本の対外純資産とそこから日本へと還流する配当金の増加を通じ、円高圧力となって跳ね返るためだ。

例えば、年間約20兆円の第1次所得収支のうち、直接投資収益の多くは円転されるとみられる。証券投資収益も半分程度は円転されると考えられる。つまり、全体の7―8割程度の円買い需要が生じる計算だ。これにそのほとんどが円転される貿易収支の黒字を合わせると、対外投資から生じる円売りのかなりの部分が相殺されている可能性が高いだろう。

国際収支から実際に生じる「エクスチェンジ(為替)」のバランスが、それほど円売り過多に傾いていなければ、先述した実質金利の上昇が、地味ながらも円高圧力となったり、円安を抑制する役割を果たすと考えられる。時折、投機筋の思惑で円安気味に振れることはあっても、持続的な円安トレンドは形成されにくいだろう。

<クロス円での円高に特に注意が必要>

このように、ドルも強いが円も強いため、当面、リスク回避の場面でもドル円は動きにくい一方、クロス円での円高には注意が必要だ。いわば、ドル人気の陰に隠れ、やや見えづらいものの、名目実効ベースでじわりと進行する「ステルス円高」を警戒しなければならない。

例えば、イタリアの財政拡張路線が嫌気され、独伊国債の利回り格差が広がる場面では、ユーロ円の下げ幅が広がる可能性は高い。英国が欧州連合(EU)との合意がないまま無秩序な離脱に向かうリスクへの警戒が高まると、ポンド円での円高進行にも注意を要する。

また、オーストラリアドルも、豪米政策金利がすでに逆転した状況の下では、コモディティー価格が一段と軟化すれば、2年ぶりの安値圏まで下落しても不思議ではない。何より、新興国通貨に対する円高はより顕著に進んでいる。8月にはブラジルレアル円が史上最安値を更新したほか、新興国通貨は対円で軒並み下落している。

では、ドル円は今後も安定した推移やドル人気を映じた円安を期待できるだろうか。確かに、緩やかな利上げ継続を示唆するFRBと、低金利を継続するとのフォワードガイダンスを導入した日銀との隔たりは大きい。

しかし、米国の利上げについては、2019年中にも打ち止めとなる可能性がささやかれ始めている。日銀は、金融緩和の副作用への配慮から、長期金利の弾力化を講じたとあって、追加緩和に動くとは考えにくい。つまり、両者のスタンスの隔たりは、おそらく今が最も大きいと考えられる。ここからさらに拡大するというよりは、むしろゆっくりと縮小していく可能性の方が高いだろう。

こうしてみると、ドル円相場の上下いずれのリスクが高いのかは、自明の理ではないだろうか。

*内田稔氏は、三菱UFJ銀行グローバルマーケットリサーチのチーフアナリスト。1993年、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、一貫して外国為替業務に携わり、2012年より現職。J-money誌の東京外国為替市場調査ファンダメンタルズ分析部門では2013年から17年まで個人ランキング1位。

*本稿は、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいています。

(編集:麻生祐司)


 

 
TOPIXが5日ぶり小反落、自動車や精密安い−米中懸念と高値警戒
河元伸吾
2018年8月30日 8:06 JST 更新日時 2018年8月30日 15:57 JST
米GDP上振れ材料に朝方は強含む場面も、日経平均は8日続伸
1部売買代金は前日比3割増える、JPX日経400などリバランス
30日の東京株式相場は、TOPIXが小幅ながら5営業日ぶりに反落。米国と中国の2国間関係に不透明感が根強い上、急ピッチの上昇に対する警戒から午後にかけ売り圧力に押された。自動車や精密機器株が安く、銀行など金融株、電気・ガス株も軟調。
  TOPIXの終値は前日比0.46ポイント(0.03%)安の1739.14。一方、日経平均株価は21円28銭(0.1%)高の2万2869円50銭と8営業日続伸した。
  三井住友アセットマネジメントの市川雅浩シニアストラテジストは、米国とカナダ、メキシコの北米自由貿易協定(NAFTA)の合意期待を背景に「日本も同様に折り合えるとの期待はあるが、経済への影響が大きい自動車関税の対応が不透明で、日本株には早々に利益確定の売りも出やすい」と指摘。また、「先物取引の投機的な動きが主導し、日経平均2万3000円の定着は難しくなっている」と言う。

東証内
Photographer: Junko Kimura/Bloomberg
  米商務省が29日に発表した4−6月(第2四半期)の実質国内総生産(GDP)改定値は、前期比年率4.2%増と速報値(4.1%増)から上方修正された。また、米国のトランプ大統領はNAFTA改定を巡るカナダとの協議が順調に進んでいるとし、両国が週内に合意する可能性があるとの楽観的な見方を示した。
  景気や通商協議の先行きを楽観視する買いでこの日の日本株は続伸して始まり、日経平均は朝方に一時183円(0.8%)高の2万3032円と5月21日以来の日中高値を更新。しかし、高値警戒感からの売りに徐々に押されると、TOPIXとともに一時マイナス圏に転落。午後もさえない動きとなった。
  丸三証券の服部誠常務執行役員は、「日経平均で2万3000円の攻防は手強い。買い手が少なく、2万2500円を挟んだレンジでの滞留が長かったため、大台に近づくと売り圧力がかかりやすい」と分析。みずほ証券の倉持靖彦投資情報部長は、「外資系中心に日経平均を使ったポジションで2万3000円を超えるとポジション的に損失が出る可能性があり、先物やオプション主導で売られた」とみていた。
  中国上海総合指数の下落もマイナス要因だ。トランプ米大統領は29日、北朝鮮の非核化に向けた協議が前進しなければ、韓国と日本との合同軍事演習を再開し、それはかつてない規模となり得るとツイッターで警告。これに先立ち、米朝協議は順調だが、中国がはるかに難しくしていると記者団に語るなど、中国との通商対立がエスカレートする可能性が警戒されている。三井住友AMの市川氏は、「米国による対中国製品2000億ドルへの追加関税が実施される可能性が高まってきており、市場は織り込み始めた。米中協議はハイテク分野の覇権争いで譲歩は難しく、時間がかかる」と話していた。
東証1部33業種は精密機器、輸送用機器、電気・ガス、ゴム製品、不動産、鉄鋼、保険、銀行など17業種が下落、上昇はその他製品、鉱業、パルプ・紙、食料品、石油・石炭製品、空運、サービスなど16業種
売買代金上位ではアステラス製薬やスズキ、リコー、SMC、丸紅、HOYAが安い半面、通訳デバイスの収益貢献が高まるといちよし経済研究所が指摘したソースネクストは大幅高、野村証券が目標株価を上げたユニ・チャームも高い
東証1部の売買高は13億9935万株、売買代金は2兆6338億円、上昇銘柄数は1167、下落844、きょうはTOPIXとJPX日経400のパッシブ資金によるリバランス需要が大引け時点であり、代金は前日に比べ34%増えた


 


一方向のボラティリティーの賭けは無意味一リターン6000%のファンド
Dani Burger、Yakob Peterseil
2018年8月30日 14:12 JST
• 「勝ち組になれるような取引がなかなかない」−エドワーズ氏
• ボラティリティー、急騰の可能性あるが影響は限定的−ゴールドマン
どちらの方向に賭けても負けー。株式市場のボラティリティーの上昇あるいは低下のどちらに賭けても損をするというこの状況は、今年が初めてだ。
  その理由はこうだ。2月に発生したボラティリティー急上昇事件「ボルマゲドン」は、ボラティリティーのショート(売り持ち)戦略に大打撃を与えるのに十分だったが、ロング(買い持ち)戦略を最高値更新を繰り返す株式市場の穏やかさから守るのには不十分だった。
            

  米テキサス州オースティンのヘッジファンド、ハウンズトゥース・キャピタル・マネジメントの創業者であるリンカーン・エドワーズ氏は「勝ち組になれるような取引がなかなかない」と話す。最近はボラティリティーが上下どちらに動いてもうまくいくようなポジションを組んでいるという同氏は、最高のタイミングをつかもうとするのは「無駄なことだ」と考えている。750万ドル(約8億4000万円)を運用する同社は2月の相場急落時にプラス6000%のリターンを挙げた。
急騰しても影響は限定的
  今から年末にかけても、絶対に勝ち組となれる取引を探し求めるボラティリティートレーダーは、思い迷いそうだ。良好な経済環境が市場の変動を抑制するのに役立つ一方、危険がないと考えるにはあまりにも多くの脅威がくすぶっていると、ゴールドマン・サックス・グループの経済調査チームは指摘する。
  クリスチャン・ミュラーグリスマン氏を含むストラテジストらは28日のリポートで、「短期的には、ボラティリティーが高くも低くもない状態が続く公算が大きい。急騰する可能性はあるが、影響は限定的だろう」との見方を示した。

Long and Short of It
Playing volatility mostly brought losses this year, no matter which way
Morningstar Inc., Bloomberg

原題:One-Way Vol Bets Seen as ‘Fool’s Errand’ by 6,000% Winner (1)(抜粋)


http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/324.html#c6

[経世済民128] 欧米はなぜ『中国製造2025』を恐れるのか(マスコミに載らない海外記事) :国際板リンク  赤かぶ
4. 2018年8月30日 19:10:49 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1369]
「オフィスと社員はもう要らない」孫泰蔵「思考停止を疑え」「経路依存性」という悪習慣

2018年8月30日(木)
孫 泰蔵

その「常識」は本当に必要? 「あたりまえ」から踏み出して新しい発想を生む視点や思考の組み立て方、その実践方法について、スタートアップを支援する投資家、アクセラレーターとして活躍する孫泰蔵さんに聞いた。

(聞き手:日経BP社出版局編集第一部長・中川ヒロミ)


初回のテーマは、「オフィスと社員はもう要らない」。いきなり衝撃的ですが……。

孫泰蔵氏(以下、孫):大げさでなく、その通りだと考えています。この取材を受けている今日は2018年7月で、場所は僕が5年前に設立した会社、Mistletoe(ミスルトウ)が3年前に開設したオフィスですが、実は今月末にここのオフィスを完全閉鎖することを決めました。

ええ! Mistletoeのオフィスといえば、孫さんが支援するスタートアップ企業が集まる最先端のコワーキングスペースとしても知られていますが。広さもかなりありますよね。

孫:400坪ありますが、サッパリ消滅します。決めたのは今年の4月頃。ちょうど更新の時期で、家主から「更新しますよね?」という問い合わせが来た時に、「うーん、やめますか」と(笑)。相手も「え?」って驚いてましたが、社内であらためて話し合って、「やっぱりやめよう」ということになったんです。

皆さん、すぐに納得したんでしょうか?

孫:いえ、かなり議論しました。もともと環境整備について考える定例会で度々上がっていたテーマではあったんですね。事業の流れとしてはむしろ拡大方向にあるのに、それに逆行する形でオフィスをなくすことへの抵抗は少なからずありました。現時点で200人くらいが出入りしているオフィスですしね。

孫さんが「オフィスは不要」と決定できた理由を教えてください。

孫:ゼロベースで問いを立てていくと、自然とそう結論づいたというだけです。まず、そもそもオフィスとは何か? と考えてみました。広いフロアに机と椅子が整然と並んで、ミーティングスペースがあって、食堂や休憩室がある。多少の違いはあれど、まぁ、それが基本形ですよね。つまり、オフィスの機能とは「仕事をする場所」でした。

 でも、ホワイトカラーの仕事に関して言えば、今や「仕事をする場所」は自宅やカフェ、どこでも可能になってきているわけです。会議もオンライン化が加速的に進んでいます。「そうは言っても、リアルなコミュニケーションには勝てないでしょ?」と疑う人は多いかもしれませんが、技術面の現実的な予測として、5年後にはリモートワークのストレスはほぼゼロになります。実際、目の網膜に直接映像を投影する技術の開発が進んでいて、360度の視界に映像の合成投影ができる環境はいずれ実現します。人間の目は5Kを超える映像は現実と区別できないと言われているので、「目の前で商談していると信じ切っていた相手が、実はジャカルタにいた」なんてことがざらになるでしょう。


とは言え、早くて5年先だと。今月末にオフィスを閉鎖というのは早過ぎませんか?

孫:今現在の僕たちの働き方だけで判断してみても、充分に早過ぎないと思えたんですよね。僕はシンガポール在住ですが、現地のオフィスに行くことも今はほとんどありません。すべてのミーティングが「ZOOM」というビデオ会議ツールで行われていて、出社する必要がない。「working anywhere(どこで働いてもいい)」という制度はすでに導入済みです。

 リアル会議と比べての良さは、議題についての話が済んだら「じゃ」とすぐに終えて、次のミーティングに移れること。リアル会議だと、40分で話は終わっているのに、1時間終了するまでの20分間、なんとなく雑談が続くようなムダが生まれませんか。それをなくせるのは大きなメリット。移動の時間的・体力的負担もない。

 さらに言えば、僕は同時に2、3個のミーティングを同時進行しています。「ふむふむ、なるほど。じゃ、この点についてちょっと皆で考えてみて」とチャネルを切り替えて「こっちはどんな感じ? ふむふむ」と。そしてまたチャネルを戻して「結論出た?」みたいな感じで。濃密なマルチタスクなので頭はめっちゃ疲れますが、単純に生産性は1.8倍くらいにはなっていると思いますよね。これができるのは、充分に価値観を共有できている相手だからなので、初対面の人とはできるだけ直接会うようにはしていますが。

 一方で、常に感じてきた違和感があって、僕は1人でビデオ会議に参加しているのに、相手はオフィスに集合して5人まとめて画面に映っていたりするんですよ。「どこで働いてもいいんだから、皆バラバラでいいはずなのに、なんで集まってんの?」と。

「習慣を変えるのは億劫」の罠
オフィスがあるから、とりあえず集まった方が安心と思う人は多いかもしれませんね。

孫:それが「経路依存性」という悪なんです。人間の習性として、一度慣れ親しんだものを変えることに億劫になってしまう。ただ「今までやっていたから」というだけで、明日も同じ行動を取ろうとする。だからいくら技術的に可能な環境が整っても、相変わらず朝から出勤したりするんですよ。「なんで会社に来てるの。バカじゃないの?」と僕は怒るわけです。


社長は「会社に来ないなんてけしからん」と怒るのがフツウだと思いますが、会社に来ると怒られるとは(笑)。

孫:だって、朝の通勤ラッシュって地獄じゃないですか。狭い空間にギュウギュウと詰め込まれて、1時間以上も揺られるだけなんて。人類の恥ずべき歴史として語られる奴隷船の絵図と何も変わりませんよ。あれを酷いと言うなら、現在の東京の通勤電車をすぐに改めるべきですよね。精神を蝕まれるような働き方は、僕は選択すべきではないと思っているんです。


「オフィスの必要性」を徹底議論してみると
社内の反対意見に対してはどう説得を?

孫:まず、「オフィスは本当に必要なのか?」という議論からスタートしました。必要派からは「顔を合わせて会議がやりたいです」という意見がありました。「会議は会議室じゃなくてもできるでしょ?」と返すと、「いや、オンラインでは難しいです」と言う。なぜ難しいのかと問うと、「相手の息遣いが伝わらないと…」と言う。「相手の息遣いが伝わらないと決まらない会議ってどんな会議?」と聞くと、特に見当たらない。「チームビルディングのために必要です」という意見もありましたが、「そもそもチームビルディングって何? 仮に直接会って相手の顔色が悪かったとして、何ができる?『大丈夫?』って声を掛けることで相手は一時的に気が晴れるかもしれないけれど、根本的解決になっていないよね。その解決に向かう働き方を実現するほうが、よっぽどチームビルディングに役立つかもしれないよ」と話していきました。

なるほど。問いを突き詰めていくと、納得できますね。

孫:僕は何も相手を言い負かそうなんてまったく思っていなくて、「なんとなく経路依存するのは止めよう。ゼロに戻って考えよう」と伝えたかったんです。これはいつも僕がミーティングで言っている口癖のようなものですが、何事も思考停止に陥っては終わり。常に問いを立て直す意識がないと、会社も淘汰されていく時代なんです。

 「Slack」のようなビジネスチャットツールを社内のコミュニケーションベースにすることの是非もよく議論されていると思いますが、僕の考えでは“やり方次第”ということに尽きます。例えば、僕が参加している「Slack」のチャネルグループは数十あるのですが、原則としてどんな小さなこともここで共有するようにしています。「口頭で少人数だけが知る」ということがないように、情報を徹底的に共有することが重要。年に1、2回しか顔を出さない会社でも、何が起きているかは全部把握できています。しかも、「1対1のダイレクトメッセージは無し」に。なぜなら、皆に共有できない情報なんてあるはずがない、という前提があるからです。

でも、「あの人、ちょっと怒ってるよね」とかオフラインで言いたくなることはあると思うんですが。

孫:なぜ誰かが怒る状況になっちゃったのか? という問題解決をすべきですよね。ストレスを溜める原因には、きっと特定の誰かに仕事が集中していたり、情報の偏りがあったりと、必ず原因がある。情報を全員でフルオープンにしておくと、ストレスが発生する芽に誰かが気づいて、肥大化する前に摘み取ることができるんです。

ありがちなのが、プロジェクトが進む途中段階で、偉い人が「俺は聞いていないぞ」とヘソを曲げるとか。情報共有が徹底していたら、そういった非効率も防げると。

孫:そう思います。ただし、「読んでいなかったあなたが悪い」と言うのも禁止にしています。多忙な相手に対して勝手にメッセージを送って「読まない方が悪い」と責めるのは理不尽ですから。必ず読んでほしい相手には、必ず相手の名前を入れて通知が届くようにして、読んだ相手は何らか返信をするというルールにしています。こういったコミュニケーションを上司部下関係なく続けていると、結果的に組織はフラットになりました。

それでうまくっているんですか?

孫:すごくうまくいっています。うち、稟議も承認もなくなりました。経費の使い道さえ、そのプロセスをオープンしておけば勝手に進めていいんです。


唯一見つかったオフィスの重要な機能
使い込んじゃった、みたいな例は出ないんですか?

孫:唯一あったのは、同じ製品をダブル発注しちゃったというミス。この時も「買いました」「え、俺も買っちゃった! アイヤー」みたいなやりとりがあって。すると面白いのが、「じゃあ、余った1個をどう活用する?」というアイディアが共有されていくんです。こういった日常的な問題解決はオンライン上で完結されているとなると、ますます「会議室は要らないよね」となる。

 じゃあ、オフィスって他に何があったっけ? と考えていくと「食堂かな」と。でも、食堂ってあるから皆そこで食べているだけで、オフィスにある必然性は見つからない。「やっぱりオフィス、要らないんだ」と終わりかけたんですが、なんかモヤモヤするわけです。僕も含めて。何か見えていない“オフィスの重要な機能”があるのかもしれない、ともう一度じっくり考えてみたら、あったんです、1個だけ。その1個だけを表現した「新しいオフィス」を作ることにしました。

その機能とは?

孫:ミートアップ(出会いの場)です。つまり、皆、偶然の出会いから得られる気づきや刺激、交流を求めているんです。会議というのは議題と目的を決めて行うから、「いつ、誰と」という計画を立てることが可能で、オンラインに向いている。ミートアップは偶然性を重視するから、物理的に人と人が出会える場が重要。しかも、本当に人が集まるには、場の魅力を高めることが必須です。時間さえあれば行きたくなるような場所。だから、本気で面白い場づくりを演出しなければならない。

 例えば、「今日は京都から食材を集めてとっておきの朝粥を提供しますよ」とか「シルク・ド・ソレイユのアクターが来てくれます」とか、あるいは「日中に休息するための極上の寝具を用意しました」とか。人間の本能に訴えるユニークな企画が満載の場所。そこで新たに必要になってくるのは、「労働環境デザイナー」です。備品の管理人ではなく、企画、デザインができる人。

オフィスというよりサロンに近いですね。

孫:一流ホテルのラウンジ以上の居心地と知的好奇心を満たせる場づくりを、これからやっていこうと思っています。しかも、1カ所ではなく、都内に何カ所も点在させる予定です。

 さらに言うと、「社員」という雇用の仕方もなくしたいと思っています。会社と個人の関係を雇用ではなく対等な契約関係で成立させたいんです。個人が得意でやりたいプロジェクトと、会社が求める役割が一致したら、都度契約関係を結んでいく。複数の会社で仕事をするポートフォリオワーカーという働き方をどんどん取り入れていきたいと思っています。

「社員を管理しないと不安」「会社から管理されないと不安」と考える人がほとんどではないでしょうか。

孫:まさに思考停止が生む不安だと思います。ここでまず立てたいのは、「なんでサボっちゃダメなの?」という問いです。「サボっちゃダメに決まってるだろう!」と怒っている上司も、実はパソコンでゴルフ場の空き検索とかしていないですか? ぶっちゃけ、匿名で答えたら、皆、本音は「サボりたい」だと思うんです。

 でも、本当に会社の業績がヤバい時には馬力が出るものだし、人によってパフォーマンスの出しどころや持ち味は違うもの。それを一律に管理したところで生産性が劇的に上がるわけでもないです。実際、メールの中身までチェックされるほどガチガチに管理されている金融機関や官公庁の人たちの生産性ってものすごく高いですか?「管理するほど人は真面目に働く」という考えが本当にそうなのか。これもイチから問い直すことが重要だと思っています。

なるほど。常に、「思考停止になっていないか?」と見直す姿勢でいようと。

孫:そうです。僕も指摘されることがありますよ。「泰蔵さん、思考停止になっていますよ」と。

孫さんに対して、社員の方々がそんな進言ができるんですか?

孫:できますよ。なぜなら、うちの会社は、評価と報酬を完全に切り離しているんです。つまり成績がいいからといって給料が上がるわけではないし、その逆もない。

会社を独立した自由人が集まる場に
では、何によって給料の額が決まるんでしょうか?

孫:個々の事情によってです。例えば、仕事上でまったく同じ成果を上げた2人がいて、独身の1人暮らしで当面はそんなに生活に困っていないというAさんと、子どもが4人いて教育費に出費がかさむBさんだとすると、Bさんに多く取ってもらいます。それをアンフェアだと言う人もいるけれど、僕はむしろフェアだと思う。Aさんもいつか出費がかさむライフステージに来たら同じだけもらえばいい。「アメリカ人のように高い報酬を望む」と言うならアメリカに行って勝負をすべきであって、あの国は日本より家賃も物価も高いから、その分、報酬が必要になるというだけです。

 「今の自分にとっていくら必要か」を正確に計算せずにむやみに「もっと稼がないと」と不安になっている人も多いので、その時は一緒に考えたり、「こういうふうにしたら、支出は抑えられるよ」と教えることもあります。オープンにすることで、お金の面の不安も解消しやすくなるんですよね。

報酬に関しても、よりオープンに個人と会社が交渉できる関係性を目指すということでしょうか。

孫:これまでの日本の企業文化では、社員と会社が1対1で報酬を交渉するという場面はほとんどなかったと思います。フリーランスの業務委託契約と同じように、「これだけのパフォーマンスを提供すると約束するから、これくらい欲しい」「その額を希望するなら、この部分をさらに強化して欲しい」といった交渉を誰もができるようになるといい。今の雇用関係は会社にとって有利な契約を一方的に結んでいるだけ。正社員という名の奴隷制だと言ってもいい。

 とはいえ、いきなり「全員自立してください」は無理だと思うので、移行期間として「自立できるまでは社員としていていいです。ただし、奴隷ですけど(笑)」というステップになるかと思います。僕としては、社員に「社員なんて、いい加減やめときなよ。もっと自由に羽ばたきなよ」と言い回っていて、「社長がそんなこと言うのおかしいです」とツッコまれてます(笑)。

では、孫さんの会社には、いわゆる正社員はいなくなっていくと。

孫:独立した自由人が集まる場でありたいと思います。「属する」ための会社ではなく、やりたいことを実現するための仲間や環境が手に入る場所としての会社、すなわち「場」を目指したい。うちのリソースだけでは実現できないことがあれば、一部は他の会社でやればいい。言うなれば、Mistletoeは、「本気で遊びたい人のための遊び場」のようなものをイメージしています。そのかわり、遊ぶなら本気で遊べよ、と。

人材が流出する心配はない?

孫:むしろどんどん外の世界に飛び出してほしいと思います。その経験を経てなお、Mistletoeが魅力的だと感じてもらえる場であり続けていたら、また戻って来てくれたり、一緒に仕事をしてくれる相手として選んでもらえるでしょう。働く人を縛り付けるのではなく、仲間としてより良い関係を築くことにエネルギーを投入する。これがこれからの会社の活路だと思います。

とても新しい改革ですね。

孫:これくらい思い切らなければ「働き方改革」なんて言っちゃいけないと思いますよ。副業解禁くらいだと「働き方修正」レベルじゃないですか。バージョンが0.1上がったくらいのマイナーチェンジにしか思えません。

孫さんは教育に関しても提言があるのだとか。次回じっくり伺っていきます。


構成・文/宮本恵理子 写真/竹井俊晴
http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/332.html#c4

[アジア23] 日本との差は歴然!韓国政府が“老舗”育成計画を発表も、ネットからは不満の声  赤かぶ
1. 2018年8月30日 19:14:52 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1370]
2018年8月29日 / 14:12 / 8時間前更新
コラム:韓国の財閥改革、ぶち当たる経済的現実の壁
Robyn Mak
2 分で読む

[香港 28日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 韓国の財閥改革は、経済的現実の壁にぶち当たっている。同国の公正取引委員会は、公正取引法を約40年ぶりに改正し、多岐にわたる事業を展開する複合企業への規制を強化する案を発表した。

だが、韓国経済の成長が鈍化する中で、低迷する労働市場に対するサムスンのような財閥の重要性が一段と増している。つまりそれは、同国のコーポレートガバナンス(企業統治)改革が、当初予想されていたよりも成功しないことを意味する。

「チェボル」として知られる強大な家族経営の財閥を改革すると公約した文在寅(ムン・ジェイン)大統領の就任から1年あまりで、今回の規制強化案が打ち出された。「財閥スナイパー」の異名をもつ公取委の金尚祚(キム・サンジョ)委員長は、サムスンと現代の2大財閥を名指しして、所有構造や他の経営的欠陥を非難した。

現在、3代目が支配する両財閥は、関連会社の株式を保有することで多大な影響力を発揮している。こうした構造により、少数株主は蚊帳の外に置かれる傾向にある。

肥大化したビジネスに対する創業者一族の支配力を弱めることが改正の狙いだ。透明性向上を求めるほか、株式の持ち合いや財閥グループ内の取引、議決権の制限などが含まれる。

文大統領はこうしたアイデアの一部を法制化するために必要な政治的支持を得るのに苦労するだろう。その一因として、自身が率いる与党「共に民主党」の議席数が議会の5分の3に満たないことがある。大統領の支持率も56%に低下し、就任以来の最低水準に近づいている。

北朝鮮の非核化が進展していないことも、また別の要因として考えられる。

弱い経済も原因だろう。今年7月までの1年間における雇用の伸びは月平均12万2000人で、前年同期の35万3000人から低下している。「雇用の大統領」を自負する文氏にとっては痛い状況だ。

文大統領は雇用支援の見返りとして、財閥への強硬姿勢を弱めざるを得なくなるかもしれない。サムスンは今月、雇用計画とともに130兆ウォン(約13兆円)の国内投資を決めた。

CLSAのアナリスト、スティーブ・チャン氏によると、事実上の持ち株会社であるサムスンC&T(028260.KS)の株式は、純資産価値の半値程度で取引されている。過去のディスカウント率は平均15%だ。

このことは、韓国政府の財閥改革に対する姿勢がどの程度強硬なものになるか、投資家が見方を修正していることを示唆している。

Samsung C&T Corp
121500.0
028260.KSKOREA STOCK EXCHANGE
-500.00(-0.41%)
028260.KS
028260.KS
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
http://www.asyura2.com/17/asia23/msg/732.html#c1

[国際23] 英「合意なき離脱」への対策発表〜EU離脱まで7か月余りとなる中/nhk 仁王像
4. 2018年8月30日 19:17:21 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1371]
2018年8月30日 / 15:50 / 42分前更新
コラム:正道を外れた迷子のブレグジット
Edward Hadas
3 分で読む

[ロンドン 29日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 英国の欧州連合(EU)離脱というのは危険極まる作業だ。先週、英政府が合意なしのブレグジット(EU離脱)に向けた準備書を公表したことは、そうした事実を思い知らせてくれる。

英国の「独立」を唱える人々は、同国の対外貿易や人とモノの移動全てがEUへの加盟、あるいはEUとの包括的な合意に実質的に依存していることを認識できていなかったのだ。

EUとの関係を完全に断ち切る、いわゆる「クリーンブレイク」の推進派は、食品や医薬品の不足を心配する国民に対して有益なことを何も言えない。これは不思議に思える。何といっても、多くのブレグジット支持者は反EUキャンペーンに何十年も費やしてきた。だとすればもっときめ細かな思考をする十分な時間が確実にあったのではないか。

EU残留支持派は、真の問題は根本的な部分にあると主張する。

すなわち、世界最大の経済圏から去るのは愚かだというのだ。だが離脱の判断が正しいと仮定しても、よりダメージが少ない形で離脱する方法はあった。反EU論者は、軍人やディベートの世界で当たり前になっている「敵を知る」という方法論に従っていれば、そうしたやり方を発見できたはずだ。EU建設の歴史が、より実践的な離脱方式をひらめかせてくれただろう。

多くのブレグジット推進派のイメージでは、英国は加盟の事実によってEUに束縛されている。1972年の欧州共同体法やそれを受け継いだ法律が、1本の太いコードとなってドーバー海峡の両岸を結んでおり、新たな法律という鋭い刃物でコードを切断すれば、英国は世界に独自の居場所を見つけられるという理屈だ。

こうした単純な発想は、自由貿易と国家主権の関係をめぐる高尚な言い分と符号する。ただし現実を見ると、EU諸国を結び付ける絆は1つの基本法から始まったものだ。そして45年を経た今、英国と欧州大陸の間には多数の細い糸が絡み合っている。

医薬品を例に取ると、EUは新薬の承認や製造施設の立ち入り検査、治験などについて共通の基準を設定している。加盟国は個別に、または一体的にこれらの基準の整備や執行に従事する。膨大な関連書類が、蓄積された域内の知識や協力関係の骨格を成している。

英国がEUに加盟していなかったとすれば、カナダや日本のように独自の医薬品規制を策定していただろう。今からでも可能だが、出来上がるには何年もかかる。それまで英国には、医薬品の流通を止めないためにはEUと相互承認制度の導入に合意する必要が出てくる。

ブレグジットは、こうした規制体系の再構築を何度も繰り返す作業だ。どのセクターにも複雑な法的取り決めや、細かい特殊事情、深く浸透した慣行などが存在する。英国を合意なしでこれらの体系から引きはがしてしまったら、経済的に途方に暮れることになる。

規制や法律の策定は情熱的には見えないかもしれないが、延々と専門的な細則を仕上げていく取り組みは、背後にある力強い思想を表している。細かい取り決めの多くは論争を呼び、関係者は妥協するか、協調するか、それとも喧嘩別れするか態度を決めなければならなかった。平和で繁栄した欧州という理想に突き動かされ、関係者らは幾度も国益よりも欧州共同体の利益を優先する道を選んできた。

気高い理想と面倒な細かい手続きを並行的に推進していく考えは、1952年の欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)の設立によって定まった。EUの前身だったECSCの最終目標は、当時のシューマン仏外相の言葉によれば「戦争を考えられなくするだけでなく、実行不能にすること」だった。そして欧州の平和の恒久化のための決意は、高尚な言い回しにとどまらず、石炭や銑鉄などで各国の年間生産割り当てを決めるという実に地道な措置を必要とした。

ブレグジット支持派が忘れていたのは、並行的な作業のうちの細かい手続きという面だった。

これをなおざりにしたばかりに、英政府は昨年3月にEU離脱を通知した後で、具体的な事項を検討しなければならなくなったのだ。来年3月というブレグジットの期限が迫った今、合意なしの離脱という自業自得の大混乱が現実的な可能性となってしまっている。

もちろん、どんなに周到に準備したブレグジットであっても、英経済への打撃は免れないだろう。EU離脱で非常に多くの関係が切れるのは避けがたく、英国の知的資本は大いに毀損されるだろう。

それでもECSCを立ち上げてきた過程を逆回しにして見習えば、痛手は最小限にとどまったのではないか。英国とEUは、加盟時の数多くの点をどう変更するかを詰めるための協議に入りことができたはずだ。緊迫したやり取りが何年も続いただろう。しかし共通の経済的利益と、ある程度は残っている共通の理想により、適切な着地点にたどりつけた可能性がある。

それももう手遅れだ。とはいえブレグジットで何が起きるにせよ、政治的または経済的な理想主義者にとっては1つの教訓が得られた。夢は感動を与えるかもしれないが、それが退屈で面倒な政策へと具体化されない限り意味はなく、場合によっては有害だということだ。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
http://www.asyura2.com/18/kokusai23/msg/723.html#c4

[政治・選挙・NHK249] 「正直、公正」を総裁選のキャッチコピーにするほど日本は劣化している。(日々雑感) 笑坊
3. 2018年8月30日 19:19:55 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1372]

#過剰な期待は無意味


2018年8月30日 / 19:00 / 18分前更新
配達か放置か、種類で選んだか
共同通信
1 分で読む

 郵便物を配達せず隠したとして、郵便法違反の疑いで宮城県登米市の郵便局契約社員岩渕智彦容疑者(51)が逮捕された事件で、隠されたものは手紙やはがきがほとんどだったことが30日、宮城県警への取材で分かった。現金書留や小切手、小包はなかった。

 県警によると容疑を認めており、配達するものと放置するものの種類を選んでいた可能性があるとみて調べている。

 逮捕容疑は2016〜18年の間、郵便物5通を配達せず、自分が所有する空き家に隠した疑い。車と空き家から、計約3万7千通の郵便物が見つかった。

 郵便物は宛名などを確認し、再配達するという。

【共同通信】
http://www.asyura2.com/18/senkyo249/msg/845.html#c3

[中国12] 中国で労働争議 女性リーダー不明、学生ら50人拘束〜当局は封じ込めに動いたものとみられ/テレ朝 news 仁王像
4. 2018年8月30日 19:24:17 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1373]
WSJ社説】中国「再教育」施設のムスリムたち
中国の新疆ウイグル自治区にあるモスクの前を警備する警察官(2017年6月)
中国の新疆ウイグル自治区にあるモスクの前を警備する警察官(2017年6月) PHOTO: JOHANNES EISELE/AGENCE FRANCE-PRESSE/GETTY IMAGES
2018 年 8 月 30 日 08:40 JST

 中国の少数民族ウイグル族が政府に不当に扱われていることについての情報が次々と明るみに出ており、政府の対応は自らの信頼を損ねている。

 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は今月、中国政府が北西部の新疆ウイグル自治区で、ウイグル族やその他のイスラム教徒向けの収容所を増やしつつあると報じた。わずか4週間前の衛星写真にも、壁に囲まれた複数の施設が建設されている様子が写っている。これらの施設で拘束されていたと話す6人の元収容者はWSJに対し、他の収容者と共に肉体的・精神的な虐待を受け、イスラム教の信仰を捨てるよう迫られたと明かした。

 中国政府は今月に入り、このような少数民族向け収容所の存在を初めて認めた。だがマイノリティー政策を担当する共産党の高官フ・リャンヘ氏は、人種差別を扱う国連の委員会に対し、これらの収容所は軽犯罪者向けの職業訓練所だと述べた。

 フ氏は、政府がウイグル族や少数派のイスラム教徒を「再教育センター」で恣意(しい)的に拘束しているわけではないと述べた。また100万人が収容されているとする国連の専門家や米当局者の推計が誤りであるとも話した。外務省の報道官は外国人記者らに対し、反中国勢力が「政治的な意図を持ち、中国にぬれぎぬを着せようとしている」と述べた。

 中国政府がいくら憤慨しても、これらの収容所に数十万人もの無実のイスラム教徒が拘束されている証拠は否定できないほどある。ウルムチやカシュガルには街角から人影が消えた地区がいくつかあり、警察が複数の住宅を封鎖している。ベルリンにある欧州文化神学学院のエイドリアン・ゼンツ研究員が公共事業の契約書を分析したところ、中国政府が1億ドル(約111億円)を投じて「再教育キャンプ」を78カ所に建設し、その総面積は最大で計8万2000平方メートルに及ぶことが分かった。ゼンツ氏はこのような収容所が1300カ所もあると推計している。

 中国のイスラム教徒らがいま海外メディアに口を開いていることには大きな意味がある。彼らは親族が拘束されることを恐れ、通常は多くを語らない。だが家族単位で施設に収容され、そのまま消息が分からなくなるような今、守るべき人すらいないのだ。収容所の中で死亡した親族もいると話す人もいる。

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 フ氏は国連の委員会に対し、「少数民族の弾圧はなく、テロ対策の名の下で彼らの信仰の自由を迫害していることもない」と伝えた。だが2015年に制定された中国の対テロ法は、日々の祈りやあごひげを伸ばすこと、ラマダン(断食月)中の断食、そして伝統的な食事制限を守るといった普通の信仰表現を罰するために利用されている。

 元収容者らによれば、施設の守衛はイスラム教徒らに、信仰を放棄して共産党への忠誠を誓うよう圧力をかけている。ある若いウイグル族の人物はWSJに対し、「彼らは宗教について、宗教など存在しない、なぜ信仰するのか、神などいない、と言う」と述べた。別の人物は守衛が国家主席の名前を挙げ、「アラーに感謝するのではなく習近平に感謝すべきだと言った」と明かした。

 共産主義を掲げる中国は信仰の自由を尊重するとの約束を一度も守ったことがないが、毛沢東後はしばらくの間ある程度寛容だった。習主席の下での迫害は、毛の文化大革命以来で最も厳しいものになっている。当局は全国で宗教信仰者に嫌がらせをし、モスクだけでなくキリスト教の教会も破壊している。国際社会はこのような悪行を止めることができないかもしれないが、その実態を暴くことはできる。

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http://www.asyura2.com/17/china12/msg/789.html#c4

[中国12] 中国で労働争議 女性リーダー不明、学生ら50人拘束〜当局は封じ込めに動いたものとみられ/テレ朝 news 仁王像
5. 2018年8月30日 19:26:37 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1374]
ミャンマー軍幹部訴追の勧告、中国には好機 ロヒンギャ問題
国連調査団の報告書に反発、中国はミャンマーを引き寄せるか
ミャンマーのアウン・サン・スー・チー国家顧問と中国の習近平国家主席(2017年5月、北京)
ミャンマーのアウン・サン・スー・チー国家顧問と中国の習近平国家主席(2017年5月、北京) PHOTO: DAMIR SAGOLJ / POOL/EUROPEAN PRESSPHOTO AGENCY
By Josh Chin
2018 年 8 月 30 日 16:42 JST

 【北京】イスラム系少数民族ロヒンギャに対する弾圧問題で、ミャンマー軍幹部をジェノサイド(大量虐殺)で訴追すべきだとする国際調査団の勧告を巡り、中国がまたも国連を舞台に抵抗する構えを見せている。中国にとって、これは好機になり得る。

 国連の人権理事会の調査団が今週公表した報告書は、中国がミャンマー軍や政治指導者を国際社会の圧力から守る新たなチャンスをもたらす。米国がアジアへの関与を弱める中、中国はミャンマーを自らの勢力圏に一段と引き込むだろう。アナリストはこうした見方を示す。

 「ロヒンギャ危機は(中国に)真のチャンスを生み出す」。米ワシントンのシンクタンク、スティムソン・センターでミャンマーと中国の関係を研究する孫韻(ユン・スン)氏はこう指摘する。「今は誰が真の友人であるかを示すときだ」

 中国は友人の立場で、インド洋に面する資源の豊富な隣国への自国企業のアクセスを確保することを期待する。ミャンマーは、中国のアジアにおける軍事力増強に対する批判を鎮めるための戦略的パートナーでもある。

 欧米諸国は、国連安全保障理事会で中国とロシアが拒否権を行使し、ロヒンギャ迫害を巡るミャンマーへの制裁措置を阻止していると非難する。ミャンマーで暴力にさらされたロヒンギャは昨年から一斉に国外に逃げ出している。スウェーデンとオランダは28日、国際刑事裁判所にミャンマー軍司令官に対する判断を委ねるよう求めたが、中国とロシアは粘り強い外交交渉を促した。

 「一方的な非難や圧力は問題解決につながらない」。中国外務省の華春瑩報道官は28日の定例会見でこう述べた。同氏は中国が国際社会の行動を妨げていることを否定。ロヒンギャ問題は複雑であるとの見方を示した。

 中国は70万人以上のロヒンギャが難民として流入した隣国バングラデシュとミャンマーの交渉を手助けし、安全な帰還を促してきた。だが交渉が進展する兆しは見えない。

ミャンマーからバングラデシュに逃れたロヒンギャの難民キャンプ
ミャンマーからバングラデシュに逃れたロヒンギャの難民キャンプ PHOTO: PAULA BRONSTEIN/GETTY IMAGES
 アナリストによると、中国の指導者が得るかもしれない見返りは、戦争犯罪者を擁護していると非難されるリスクに値するものだ。中国が懸念するのは、民族浄化とも言われるロヒンギャ問題の解決に国連が一定の役割を果たすのを認めれば、他の国境問題にも国連が関与しかねない前例を作ってしまうことである。例えば中国国境沿いで長く続くミャンマー軍と反政府組織の紛争がそうだ。

 反政府組織は中国と民族的にも商業的にも絆を持っており、中国はそこで和平調停人の役割を果たし、自らに都合のよい条件で紛争を解決したいと考えている。中国の見解は「ミャンマーの民族紛争に国際社会が介入すべきではない」というものだと、アムネスティ・インターナショナルの東アジア責任者、ニコラス・ベクラン氏は指摘する。

 中国の習近平国家主席が進める広域経済圏構想「一帯一路」においても、ミャンマーは重要な役割を担っている。一方、ミャンマーにとって中国は今も最大の貿易相手国であり、中国企業はミャンマーの対内直接投資のおよそ4分の1を占めている。

 何よりも中国は、ミャンマー軍および文民指導者との関係を修復することにより、アジアで台頭する超大国にふさわしい名声を取り戻すことができる。前出のスティムソン・センターのスン氏はこう話す。

 「そこには復讐(ふくしゅう)に近い心理が働いている」とスン氏は言う。欧米諸国がミャンマーをおだてて中国の元から連れ去ったと受け止めているのだ。「中国の考え方はこうだ。『ミャンマーとは国境を接している。彼らの面倒を見られないとしたら、何のためにわれわれはいるのか』」 

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http://www.asyura2.com/17/china12/msg/789.html#c5

[国際23] 米中貿易戦争、第1ラウンドはアメリカの勝ち(ニューズウィーク)  赤かぶ
2. 2018年8月30日 19:31:25 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1375]
米北西部の大気汚染、北京よりひどい実態周辺地域の山火事の影響、体調崩す人が続出
米ワシントン州スポケーンでは、大気汚染で屋内練習を強いられていた高校のフットボールチームが23日、ようやく屋外で練習できるようになった NOUR MALAS/THE WALL STREET JOURNAL
By
Jim Carlton and Nour Malas
2018 年 8 月 30 日 11:18 JST 更新
 【スポケーン(米ワシントン州)】自然に恵まれたこの町にあるマウントスポケーン高校の体育館では、先日の朝、スポーツの練習をする600人ほどの生徒がひしめいていた。ボールを投げるフットボール選手、周回するクロスカントリーのランナー、バトンをくるくると回すマーチングバンドのメンバーらだ。
 屋外は煙たすぎて息ができないほどだった。
 米太平洋岸北西部は、山火事の煙が残る北側のカナダ・ブリティッシュコロンビア州と、山火事で大きな被害を受けた米国西部の6州に近接しており、その記録的な惨状の影響を受けている。人口21万5000人のスポケーンでは、過去数週間にわたり連日のように息苦しい煙が雲のように広がり、日々の暮らしは一変し、何百万もの人々が健康被害の危険に直面している。
 「どこへ行ってもキャンプファイアのようだった」。マウントスポケーン高校のアスレチックディレクターのポール・カウツマン氏は、特にひどい状況だった日をこう振り返った。
 空がかすんで農作物の生育が遅れ、アメフトチームのシアトル・シーホークスは練習場所を屋内施設に移し、人々は喉の不調や息苦しさを訴えて病院や診療所を訪れている。以前から予定されていた手術は、煙で患者の容体が悪化したためキャンセルされた。

大気汚染のため体育館で練習するマウントスポケーン高校のフットボールチーム(23日) PHOTO:NOUR MALAS/THE WALL STREET JOURNAL
 スポケーンでは先週、厚い灰色の霧が空を覆い、スポケーン山がかすみ、地平線を彩るモミの木の景観もぼやけていた。YMCAのキャンプに参加した60人の子供たちはマスクを付け、公園から最寄りの屋内施設に移送された。
 8月20日はスポケーンにとって最悪の日だった。スイスの空気清浄機メーカーでデータ収集部門を持つIQエアグループの調査によれば、スポケーンはこの日、北京やパキスタンのラホールのようなスモッグ漬けの都市をも抜き去り、世界のどの主要都市よりも大気汚染のひどい場所となった。同社によると、人口30万人以上の80都市のうち、この日最も大気汚染がひどかったのは、ブリティッシュコロンビア州のバンクーバーで、シアトルがこれに続いた。
世界各都市の大気質指数数字が大きいほど大気の質が低い(濃い色は北米の太平洋岸北西部)

Source: AirVisual*An air quality index of 100 or greater is consideredunhealthy for sensitive individuals; 150 or greater isconsidered dangerous for everyone.

16516215215114914812711911810961バンクーバー(カナダ)シアトルドバイジャカルタムンバイラホール(パキスタン)リマ(ペルー)成都(中国)デンバーポートランド(米オレゴン州)北京
 米環境保護局(EPA)が大気汚染の基準とする大気質指数(AQI)では、101−150が敏感な人にとって健康によくない、151−200があらゆる人にとって健康によくない、200超が極めて健康によくないとされている。スポケーンでは先週、AQIが過去最高の226に達した。バンクーバーでは165だった。
 ワシントン州ポートアンジェルスにあるオリンピック医療センターのエリック・ルイス最高経営責任者(CEO)は、喉がひりひりし、声がかすれ、息苦しさを感じていると言う。呼吸器疾患は発症していないが、毎日の散歩を2週間以上控えている。「急に喫煙者になったようだ」と語る。
 気象専門家によれば、いつ煙が消え去るかは分からない。ワシントン州環境保護局の大気科学者であるラニル・ダンマパラ氏の話では、異例なほど勢力の強い高気圧が太平洋から海風が吹き込むのを阻んでいる。米太平洋岸の北西部では毎年この時期に高気圧が張り出し、山火事が頻繁に起こるが、今年の大気汚染の期間と規模は異例のものだという。

「どこへ行ってもキャンプファイアのようだった」と語るマウントスポケーン高校のアスレチックディレクター、ポール・カウツマン氏 PHOTO: NOUR MALAS/THE WALL STREET JOURNAL
 煙の吸入が長期的に人体に及ぼす影響は分かっていない。短期的な影響としては、ぜんそくや肺気腫など呼吸器系の疾患を抱えている人には咳(せき)や息切れといった症状が特に顕著に表れると、コロラド大学のコリーン・リード准教授(地理学)は語る。同准教授は気候変動と公衆衛生について研究している。
 マウントスポケーン高校の上空を覆っていた煙は23日には消え、一部の生徒が今夏初の屋外練習ができるまでになった。
 「頭が少し痛いときもあるけど、大丈夫」。同校のフットボールチームでワイドレシーバー兼ラインバッカーを務めるタナー・ブルックスさんはこう話した。
 だが、そんな状態も長くは続かなかった。午前中の半ばまでに、各スポーツチームとマーチングバンドが屋内に呼び戻された。大気の質が悪くなったからだ。翌日には、フットボールのプレシーズンマッチが中止された。
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• 【社説】カリフォルニア州の山火事と州議会の愚行
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http://www.asyura2.com/18/kokusai23/msg/750.html#c2

[国際23] 北朝鮮がアメリカに警告「非核化交渉崩壊するかも」〜「米は、平和条約の締結に向けて北が望むような…」/テレ朝 news 仁王像
3. 2018年8月30日 19:32:54 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1376]
米韓軍事演習、トランプ氏「再開の理由なし」
韓国の軍事演習に参加した米軍部隊(6月)

By Nancy A. Youssef
2018 年 8 月 30 日 10:58 JST

 ドナルド・トランプ米大統領は29日、米韓軍事演習の今後のあり方に疑問を呈した。米韓軍事演習は今年、米朝の非核化協議を進展させる目的で中止されている。

 トランプ氏は29日、ツイッターへの投稿で、「現時点で米韓軍事演習に多額の資金を拠出する理由はない」と言及。

 「それに、大統領が望めば韓国や日本との合同演習を即座に再開することができる」とし、「その場合、(合同演習は)かつてない規模になる」と述べた。


Donald J. Trump

@realDonaldTrump
STATEMENT FROM THE WHITE HOUSE

President Donald J. Trump feels strongly that North Korea is under tremendous pressure from China because of our major trade disputes with the Chinese Government. At the same time, we also know that China is providing North Korea with...

6:23 AM - Aug 30, 2018
44.8K
19.7K people are talking about this
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 三人称の語り口で書かれたこのツイートの標題は「ホワイトハウスからの声明」となっていた。

 ジム・マティス国防長官は28日、米韓軍事演習をこれ以上中止する計画はないとしたが、来年に大規模演習を実施するかについてはまだ決定が下されていないとの見方も示していた。

 米軍当局は、韓国の安全保障や米韓の軍事同盟にとって軍事演習は重要と考えている。

 だがトランプ氏は、6月にシンガポールで金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と首脳会談を行って以降、米韓軍事演習を「挑発的」とする正恩氏の主張に同調している。

関連記事
米韓軍事演習、さらなる中止の予定はない=マティス国防長官
米韓、8月の合同軍事演習を中止
http://www.asyura2.com/18/kokusai23/msg/745.html#c3

[経世済民128] 好景気なのに消費停滞の原因は「体感物価」の上昇だ(ダイヤモンド・オンライン)  赤かぶ
6. 2018年8月30日 19:38:23 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1377]

#ちなみに生鮮食品や輸入資源の上下に一喜一憂しても全く意味はないし

金融政策に及ぼす影響も本来は無視しうるレベル

 

レタス卸値 前年並みに 暑さ和らぎキャベツも下落
サービス・食品
2018/8/30 19:04日本経済新聞 電子版
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 猛暑で7月下旬から8月上旬にかけて急騰した葉物野菜が一段と値下がりしている。東京都中央卸売市場のレタスの平均卸値は8月中旬時点で前年同期比1%安い1キロ112円。7月下旬時点では9割高かったが、ほぼ前年並みに下がった。

 キャベツは同103円と前年同期比1割高いが、前年の2.5倍だった7月下旬に比べて下落している。

 長野や群馬の産地で厳しい暑さが和らぎ、生育が進んでいる。東京・大田の青果卸は「現在…

 


サンマ豊漁に期待感…宮古
2018年08月30日
直送便、受け付け開始
宮古市魚市場に今季初めて水揚げされたサンマ(29日、宮古市で)
宮古市魚市場に今季初めて水揚げされたサンマ(29日、宮古市で)
 サンマの水揚げ量が全国有数の宮古港で29日、サンマが今季初めて水揚げされた。不漁により昨年の水揚げ量が前年比78%減と歴史的な落ち込みだった同港。この日の初水揚げ量は近年最多で、昨年は中止されたサンマの直送便も受け付けを始めた。地元で今後への期待が高まっている。

 宮城県気仙沼市の水産会社が所有する棒受け網漁船「第38千代丸」(199トン)が、ロシア海域で漁獲した110トンを水揚げした。昨年より90トン多く、宮古市に記録のある2003年以降で最多。漁労長の鈴木俊次さん(49)は「自然相手で今後は分からないが、今回のサンマは大きくて脂ののりも良い」と話した。

 サンマは140グラム前後の中型が中心。宮古市魚市場で行われた競りでは1キロ当たり280〜350円と、昨年(720〜800円)より大幅に安値だった。落札した須藤水産の須藤征雄社長(74)は「昨年はひどすぎた。今年は冷蔵庫がいっぱいになるくらい豊漁になってほしい」と願った。

 全国さんま棒受網漁業協同組合の統計によると、昨年の水揚げ量は県内で前年比36%減の1万3914トン。宮古港は78%減の1350トンで、全国で最大の落ち込み幅だった。

 市は東京都の「目黒のさんま祭り」に7000匹を送っているが、昨年は不漁のため北海道産で代用。16年も台風10号の影響で代用したため、3年ぶりに宮古産を送る予定だ。山本正徳市長は「初水揚げ量が多く、うれしい。サンマのまちをPRしたい」と話した。

 宮古水産物商業協同組合は昨年、水揚げされたサンマを家庭に直送する「宮古さんまふるさと便」を中止した。今年は29日から受け付けを開始。島香尚組合長(65)は「1年でここまで変わるのかと思うほど脂がのっている。昨年の分までおいしいサンマを送りたい」と意気込んでいる。

2018年08月30日


 

サンマ豊漁、復調に期待 水揚げ日本一の北海道・花咲港
社会
2018/8/29 18:31
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 サンマ水揚げ量が昨年まで8年連続日本一だった北海道根室市の花咲港で28、29両日、大型船が大量のサンマを水揚げした。千島列島沖でまとまった魚群が見つかり、2日間の水揚げ量は計約2700トンに上った。予期せぬ豊漁に港は活気づいており、漁業関係者は近年の不漁からの復調を期待。店頭価格も手ごろになってきた。

大型船からサンマを水揚げする漁業関係者(29日、北海道根室市)=共同
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大型船からサンマを水揚げする漁業関係者(29日、北海道根室市)=共同

 29日は港に水揚げを待つ漁船が並び、トラックの荷台は大ぶりなサンマで満杯となった。漁業情報サービスセンター道東出張所(釧路市)によると、しばらく豊漁と不漁を繰り返し、漁場が北海道に近づく9月中旬以降に水揚げ量が安定する見通しだ。

 花咲市場では29日の競りの高値が1キロ205円で、昨年同時期の半値以下となった。道内での店頭価格は、1尾100円を切っている。根室市の鮮魚店では、1尾30円程度で販売するところもあった。

 大型船機関士の椿隆幸さん(63)=静岡県西伊豆町=は「魚体が大きく、これからも期待したい」と笑顔を見せた。水産庁は、昨年の記録的不漁からは回復するものの、2013年以降の低調な傾向は続くと予測している。〔共同〕


 

サンマに続け!秋サケ漁が解禁 今年は豊漁に期待(2018/08/30 17:06)

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 30日から秋サケの定置網の漁が解禁された。過去最低だった去年に比べて漁獲量が2倍との予想もあり、関係者の期待は高まっている。

 秋の味覚「サケ」。今年は国産の秋サケが手の届く値段で楽しめそうだ。サンマに続けとばかりに、今年はサケにも豊漁の期待が高まっている。30日に北海道で解禁された秋サケ漁。船を走らせること20分。仕掛けていた定置網を一気に引き上げる。北海道の秋サケは、ここ数年不漁が続いていた。去年は平成以降最低となる漁獲量を記録。それだけに関係者の期待も高い。
 大樹漁港・伊藤浩二専務:「去年の倍の予想だけど、それでも平年の4割くらいだからなんとか平年並みに回復してもらいたい。今年こそはと思っている」
 北海道立総合研究機構によると、今年北海道に戻ってくる秋サケは約3167万匹。去年の1737万匹と比べて1.8倍になると予想されている。理由としては、放流した年の海水温がサケの成育に適していたことが考えられるという。都内の小売店でも秋サケを手に取る機会が増えそうだ。現在、店頭に並んでいる秋サケは定置網漁が解禁される前に期間限定で取られたもの。こちらの店では切り身2切れで580円。一方、外国産のギンザケは2キロで510円だ。
 魚屋シュン・渡部博店長:「かなり獲れているようなので、今後(秋サケは)増えてくると思います。先週から比べても 多少安くなっています。これからすごく買いやすい値段になってくると思います」
 これは期待できそうだ。
 買い物客:「(Q.今後、秋サケが増えるかもしれないが?)それは嬉しいですね。(秋サケは)味が違いますからね」「もうちょっと安くなれば嬉しい」
http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/334.html#c6

[経世済民128] デフレ日本の衝撃事実、高齢者だけがインフレに襲われていた(マネーポスト) 赤かぶ
1. 2018年8月30日 19:52:16 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1378]

衝撃というより、何年も前から、とっくに周知の事実
 
日銀批判のオマケで、最近騒がれるようになっただけか


https://www.mof.go.jp/pri/research/special_report/f01_2013_09.pdf
ファイナンス 2013.11

高齢者の直面する物価水準

財務総合政策研究所・研究部・総括主任研究官

宇南山 卓


本稿では、年齢別の消費行動の違いを考慮した
「年齢別の物価指数」を構築した。高齢者は、少なくとも1987年から2007年にかけては、平均よ
りも高めのインフレ率に直面していた。その差は、20年間で2%程度であるが、その差の大部分は
1997年までの10年程度で発生していた。

平均との乖離が発生した原因は、70歳以上の世帯で住居・保健医療の支出シェアが高く、それら
の品目の物価上昇率が相対的に高かったためである。1997年以降は、どの支出項目も価格が安定したため、消費する財の違いが物価指数の違いに与える影響は小さかった。

年齢別の購買行動の違いを反映した差は1997年までは小さかったが、過去10年程度で拡大傾向で
ある。高齢者は「一般小売店」での購入が多いのに対し、デフレにもよらず「一般小売店」の価格の低下は相対的に小さかったため、差が生まれたと考えられる。

現時点では、年齢別の物価指数の動向に大きな違いはないため、物価スライドの目標を変更する
などの政策的な対応の必要性は低いと考えられる。しかし、今後の物価の動向次第では無視でき
ない影響を与える可能性があるため、今後とも定期的にチェックをする必要はあるだろう。


 
https://www.huffingtonpost.jp/nissei-kisokenkyujyo/aging-society_a_23469985/
高齢者を直撃する物価上昇〜世代間で格差:研究員の眼
物価上昇率に差が出る要因:「60歳以上」と「39歳以下」との比較

• ニッセイ基礎研究所経済・金融、保険・年金・社会保障、資産運用、不動産、経営・ビジネス、暮らし、高齢社会についてのシンクタンク
(物価上昇に直面する高齢者)
 2017年の消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合、以下も同じ)は前年比0.6%と2016年の同▲0.1%から2年ぶりにプラスに転じた。この上昇率は平均的な世帯が消費する財・サービスが基準になっている。
しかし、世帯属性によって消費構造は変わってくるので、直面している物価変動は異なっている可能性がある。実際に、消費者物価指数を公表する総務省では、年齢階級別や収入階級別、住宅の所有有無別など、世帯をある特徴ごとに区分して物価指数を算出している。
その1つである世帯主の年齢階級(*1)別消費者物価指数物を元に、3分類(39歳以下、40〜50歳代、60歳以上)して指数の動きをみると、年齢が上がるにつれて、消費する物の価格が大きく上昇している(図表1)。

AOL
2010年から2013年までの3年間は、年齢別の物価指数に大きな差はなく、3年間の上昇率は0.1〜0.3%に収まった。一方、2013年から2017年までの4年間では、39歳以下が3.7%に対して60歳以上は5.5%と差は2%ポイント近く開いており、指数の差は年々広がっている。
若年層は、消費税率引き上げ(5% 8%)のあった2014年こそ物価が大きく上昇したものの、その後の物価水準は概ね変わっていない。一方、高齢者は消費税率引き上げ後も基調は変わらず物価上昇に直面している。
________________________________________
(*1) 世帯主の年齢階級:29歳以下、30〜39歳以下、40〜49歳以下、50〜59歳以下、60〜69歳以下、70歳以上
(物価上昇率に差が出る要因:「60歳以上」と「39歳以下」との比較)
「60歳以上」と「39歳以下」の10大費目の支出ウェイトと物価上昇率から、物価上昇率(2013〜17年の4年間)の差(1.7%ポイント)の要因を分析すると図表2のようになった。なお、品目の物価指数は、全国の品目別価格指数を共通に用いており、物価上昇率の差は各世帯属性における品目のウェイト差に起因している(*2)。

AOL
1.7%ポイントのうち、10大費目の支出ウェイトの差による影響(ウェイト要因)が0.6%ポイント、残り1.1%ポイントは10大費目ごとの物価上昇率の差による影響(品目選択要因)となっている。
ウェイト要因については、総合の物価上昇率を上回った食料のウェイトが60歳以上は高いこと、総合の物価上昇率を下回った交通・通信のウェイトが60歳以上は低いこと等から発生している(図表2赤枠)。
品目選択要因は、食料、住居、交通・通信の影響が大きかった(図表2青枠)。食料については、60歳以上は約21%(*3)を生鮮食品の支出に充てており(39歳以下は約11%)、生鮮食品の物価は18.3%と大幅に上昇している。
また、外食(物価上昇率:5.9%)は食料の中で物価上昇率が低位の品目だったが、60歳以上は約12%しか支出に充てておらず(39歳以下は約26%)、物価上昇率に差が出た。住居については、39歳以下は支出の約92%を占める家賃の物価上昇率がマイナスとなり、住居全体でもマイナスになった。
一方、60歳以上は持家率が高く、支出の約75%が住宅リフォームを含む設備修繕・維持(物価上昇率:6.1%)に充てられており、住居の物価上昇率が大幅なプラスとなった。
交通・通信については、電話通信料のうち、固定電話通信料は物価が5.0%上昇した一方で、移動電話通信料は▲6.9%下落した。固定電話通信料は60歳以上の方がウェイトが高く(60歳以上:約9%、39歳以下:約3%)、移動電話通信料は39歳以下の方がウェイトが高い(60歳以上:約16%、 39歳以下:約28%)ことが、差の広がる要因となっている。
________________________________________
(*2)世帯年齢によって消費行動も異なっており、同じ財・サービスを購入するのにも利用する店舗・業態が異なれば直面している物価変動に差が生じている可能性があるが、それは考慮していない。
(*3) 総務省統計局の2015年家計調査(二人以上の世帯)から計算した数値。以下に出てくる年齢別の品目ウェイトについても同様。
(最後に)
世帯年齢によって物価上昇率は2014年以降大きく異なっている。これは、世帯の消費構造の違いから物価指数に差が生じているためだ。高齢者の消費支出ウェイトが高い生鮮野菜、設備修繕・維持、固定電話通信料などは物価上昇率が高く、若年層と比べて高齢者は厳しい物価上昇に直面している。
この期間の消費支出の増減率をみると、名目消費支出では39歳以下の減少幅が最も大きいが、年齢別の消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)を用いて実質化すると、60歳以上の減少幅が最も大きくなった(図表3 左図)。
所得面でみても、年金給付額は、賃金・物価の上昇を受けて本則の改定率が2%台半ばのプラスとなる一方、年金財政健全化に向けた特例水準の解消やマクロ経済スライドの発動を受けて抑制されている(図表3 右図)。
厚生労働省の国民生活基本調査によれば、公的年金を受給する高齢者世帯の半数以上は所得が年金のみであり、高齢者世帯の経済環境は厳しい状況に置かれている。デフレではない状況に達した日本だが、世帯の属性別に直面している物価上昇にもより注意を払っていく必要があるだろう。

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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(2018年6月19日「研究員の眼」より転載)
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経済研究部 研究員
白波P 康雄


http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/336.html#c1

[経世済民128] デフレ日本の衝撃事実、高齢者だけがインフレに襲われていた(マネーポスト) 赤かぶ
3. 2018年8月30日 20:03:17 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1379]

元論文などと違って、以下のような愚かな考察を行っているのは週刊ポストなどの大衆メディアらしいと言えるが

そもそも外食費や賃料負担自体、自炊や自宅に比べ、遥かに高コストだったということであり

その上昇に占める原材料価格の割合が小さいから、単に値上げの見かけ上の負担が小さく見えるだけで

仮に値上がりが定着すれば、絶対値としては、同様のコスト負担をすることになる(既にしている)

> 同じように1日3食をとっていても、「生鮮食品を買って自宅で調理する」という自炊習慣が当たり前となっている世代は、確実に家計を圧迫されている。

>「同様に住居についても、92%が賃貸住宅で生活している39歳以下の世代に比べ、持家率の高い60歳以上は、住宅リフォームを含む設備修繕・維持費用の値上がり(4年間でプラス6.1%)の煽りをもろに受ける。賃貸物件の家賃の上昇率がマイナスに進んだ(値下がりした)こともあり、その差はどんどん広がった」(同前)

>皮肉なことに、現役時代にコツコツとローンを返済して手に入れたマイホームの存在によって、“値上げ”による打撃を直に受けている


http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/336.html#c3

[経世済民128] 日本の携帯電話料金は高すぎるのか、物価に直接的な影響も --- 久保田 博幸  赤かぶ
1. 2018年8月30日 20:14:04 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1380]

以前もコメントしたとおり価格が高いというのは間違いだろう

ただ大手の2年縛りや、SIMロックなどは、特に高齢情弱層への搾取とも言え

独占禁止法違反にも限りなく近いから、本来、公取が動いても、そうおかしくはないレベルだろう

ただ経済的には、若年層への再分配にもなっている面があるから、それほど害はないとも言える


http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/335.html#c1

[経世済民128] 日本の携帯電話料金は高すぎるのか、物価に直接的な影響も --- 久保田 博幸  赤かぶ
2. 2018年8月30日 20:15:29 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1381]
2018年8月28日 / 19:36 / 2日前
総務省が中古端末のSIMロック解除義務付け、来年9月から
1 分で読む

[東京 28日 ロイター] - 総務省は28日、スマートフォンを契約した携帯電話会社以外で使えないようにする「SIMロック」について、中古端末でも解除に応じるよう携帯電話会社に義務付けることを決めた。関係ガイドラインを改正し、来年9月1日から実施する。SIMロックを解除することで中古端末の流通に弾みをつけ、安くスマホを利用できる環境を整える。

SIMロックの解除や端末購入補助の適正化に関するルールを定めた「モバイルサービスの提供条件・端末に関する指針」を28日付で改正した。

これまで中古端末はSIMロック解除の対象となっていなかったため、消費者は中古端末を自由に選ぶことができず、これが通信料の安いMVNO(仮想移動体通信事業者)普及を妨げる要因のひとつになっていた。中古端末のSIMロックが解除されれば、消費者は中古端末と通信サービスを自由に組み合わせることが可能となり、MVNOを含めた携帯電話会社間の競争促進も期待できる。

志田義寧
http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/335.html#c2

[経世済民128] 日銀の資産規模がGDPに迫る異常な膨張、海外からは「無謀」の声(ダイヤモンド・オンライン) 赤かぶ
3. 2018年8月30日 23:05:35 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1382]

https://www.rieti.go.jp/jp/publications/nts/18e056.html

金融政策の資源再配分効果

執筆者 及川 浩希 (早稲田大学)/上田 晃三 (早稲田大学)
研究プロジェクト 企業成長と産業成長に関するミクロ実証分析

ダウンロード/関連リンク • ディスカッション・ペーパー:18-E-056 [PDF:1.3MB] (英語)

このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。
産業・企業生産性向上プログラム(第四期:2016〜2019年度)
「企業成長と産業成長に関するミクロ実証分析」プロジェクト
いずれの国の生産主体にも、さまざまな差異がある。質の高い企業と低い企業が共存し、必ずしも市場において淘汰が進むとは限らない。もし質の低い企業から高い企業へのスムーズな資源再配分を促すことができれば、市場全体の効率性を高めることが可能なはずだ。とりわけ日本においては、バブル崩壊後、淘汰されてしかるべき質の低い企業が追い貸しによって市場に残る、いわゆるゾンビ企業問題が長期的停滞の一因として挙げられており、政策的にも重要な論点になっている。ただ、これまでの先行研究では、議論はもっぱら実物経済に寄っており、名目面を通じた影響は分析されてこなかった。本稿では、金融政策等で引き起こされる名目的変化が、資源再配分のチャネルを通じて、実体経済にいかなる影響を及ぼすかを分析し、社会的に望ましい金融政策の在り方を示した。
日本の製造業において企業レベルのデータを観察してみると、企業間の規模の差は、企業物価の投入指数に基づくインフレ率が高い時に、広がることが分かった。また、高インフレの下では企業成長は抑制される傾向にあるが、その影響は企業規模が大きいほど小さいことも観察された。これらの結果は、実需や借入制約等、さまざまな他の要因をコントロールしても維持される。以上の実証結果は、貨幣的なショックが企業間の淘汰や資源再配分に影響することを示唆しており、金融政策を評価するに当たって無視できない要素であることが分かる。
企業間の資源再配分を考慮に入れた形で、望ましい金融政策を導出するための理論的な枠組みは、異質的企業を伴う内生成長のモデルに、ニュー・ケインジアン型の価格硬直性を導入することによって構築した。モデルにおいては、企業は研究開発投資を通じて他企業と市場を奪い合い、成長企業と衰退企業が出てくる構造になっている。この時、研究開発の成果が生み出す利潤は、インフレ率・名目成長率と価格の硬直性の程度に依存する。というのも、価格が硬直的なせいで貨幣的な環境変化への臨機応変な対応ができなければ、利潤獲得の効率は悪くなり、イノベーションを起こそうとするインセンティブ自体を弱めてしまうからである。資源再配分を考える際に大事なのは、そのインセンティブ低下の程度が企業のタイプに依存するところだ。研究開発能力が高く、従来製品と比べて格段の質的向上を生み出せるのならば、それに付随する将来的な利潤も相応に大きいため、価格硬直性からくるロス程度のものを深刻に受け止める必要はない。一方で、新規性に乏しい研究開発成果しか挙げられないような企業は、ちょっとした価格硬直性によるロスでも研究開発投資を躊躇するだろう。その結果、インフレ下で価格硬直性由来のロスが膨らむ時、能力の高い企業が行う研究開発投資の比重が増し、市場におけるシェアを広げるという資源再配分効果が生み出されることになる。
政策的含意として興味深いのは、価格硬直性の下では誰もが同じインフレに直面していても、質の低い企業から高い企業への資源再配分が見込まれる点である。マクロ的で選択性のない金融政策が、選択的な政策効果を持ち、しかもそれが社会的に望ましい形で機能する。このメカニズムが、正の名目成長が社会的に最適になる可能性をもたらし、ゼロ名目成長を最適とする標準的なニュー・ケインジアン・モデルと一線を画す結果となっている。
定量的にどの程度の効果が見込まれるのかについては、理論モデルをデンマークと日本の経済に合わせてパラメーター調整したモデルをシミュレーションすることで明らかにした。図は、日本経済をベースにした結果で、名目成長率(n、横軸)が増した時の実質成長率(g、左軸)と経済厚生(U、右軸)をシミュレーションしたものである。これによると、名目成長率が上がるにつれて実質成長は上がり、その後、ごくゆっくりと低下を始める。一方、経済厚生は最初の上昇局面は似通っているが、その後の低下は比較的早く、1-2%の名目成長が最適という結果になる。従って、1-2%の名目成長トレンドを目標に設定して金融政策を運営するのが社会的に望ましい(本稿のモデルにおける名目成長率は、品質調整を施していない場合のインフレ率に等しい)。
プラスの名目成長が望ましいのは、上述の資源再配分効果が働いているためである。それが一方的に有効であり続けないのにはいくつかの理由があるが、価格硬直性のもたらす非効率性の拡大や、研究開発能力の高い企業が一方で独占力を強めて価格の高騰が生じることなどが主要因である。
図:日本における名目成長率上昇の影響


 

インフレ/デフレの解析:個別物価のクラスターが重要!
https://www.rieti.go.jp/jp/publications/nts/18e055.html
執筆者 吉川 悠一 (新潟大学)/青山 秀明 (ファカルティフェロー)/藤原 義久 (兵庫県立大学)/家富 洋 (新潟大学)/吉川 洋 (ファカルティフェロー)

研究プロジェクト マクロ・プルーデンシャル・ポリシー確立のための経済ネットワークの解析と大規模シミュレーション

ダウンロード/関連リンク • ディスカッション・ペーパー:18-E-055 [PDF:9.8MB] (英語)

このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。
産業フロンティアプログラム(第四期:2016〜2019年度)
「マクロ・プルーデンシャル・ポリシー確立のための経済ネットワークの解析と大規模シミュレーション」プロジェクト
インフレ/デフレとは、個別物価の平均で算出された物価水準の上昇/下降として定義される。従来の経済学では、個別物価同士は独立に振る舞い、共通の外的ショックによって物価水準が上下すると考えられてきた。しかし、現実には企業同士は取引関係などによって強く結びつき、企業間相互作用が個別物価の集団運動の可能性など物価のダイナミクスにも重要な影響を与えている。本論文を含めてこれまで我々が行ってきた一連の研究では、このような多体問題的視点からインフレ/デフレを実証的にもう一度見直すことを目的とした。
解析に用いたデータは、中分類の個別物価指数(輸入、生産、消費)と景気動向指数(先行、一致、遅行)、円ドル為替レート、マネーストック(M2)、ベースマネーなどのマクロ経済変数とを組み合わせた多変数月次データ(1985年1月から2016年12月までの期間)である。これまでに、日本の個別物価データに複素ヒルベルト主成分分析(CHPCA)法を適用することにより、物価変動を駆動する2つの外的ショック(一方は為替変動、他方は景気変動)の存在を確認した。しかし、上流から下流に向かって伝播する国内個別物価の変動の様相は、それらのショック源とは無関係に普遍的である。この事実は、個別物価同士の相互作用に基づく集団運動の存在を強く示唆する。
図1に示すように、CHPCAで得られた個別物価間のリード・ラグ関係を使って個別物価を上流から下流(それぞれの図(上の図が物価下降、下の図が物価上昇)の上から下)へ並べ直すと、大きな経済ショックによって誘発された物価の集団運動が眼前に浮かび上がる。この図1では各物価の月次変動率の大小が円の大きさで表現されている。(例えば、1990年代前半に上の図の下方で比較的大きな円が多数見られるが、これはバブル期後半の下流における物価上昇の大きさを示している。)そのように再整列された正方格子上の個別物価データに対してパーコレーション解析法(臨界点近傍となるように物価間の結合パラメーターを調整)を適用することにより、物価上昇/下降のクラスターを任意性無く同定することができる。その結果が図2である。パーコレーション転移近傍では、さまざまなスケールのゆらぎがべき的に分布し、目視によるクラスター認識を裏付ける結果が得られる。バブル期における大規模インフレ、「失われた10年」期における川下デフレ、リーマンショックによる突然のインフレからデフレへの転移、アベノミクスによる円安起因のインフレなどを図2から見て取ることができる。
アベノミクスの第1番目の矢である大胆な金融政策が始まり、すでに5年余の時が経過した。図2は、確かにアベノミクスが物価上昇のクラスターを誘発したことを示している。しかし、その川下への波及は息切れしているとともに、物価上昇クラスターの背後に物価下降クラスターが迫っていることも同時に示している。科学の科学たる所以は、観測データに基づく現象の客観化である。我々は、最新の数理解析手法に立脚した冷徹な目をもって個別物価データと正対することにより、データの中に隠れた個別物価の集団的振る舞いを抽出し、個別物価が相互に連関していることを明らかにした。異次元の金融緩和政策の有効性について、本研究で得られたような科学的分析結果を基盤とするエビデンスベースの議論が早急に望まれる。
図1:個別物価の上昇(上段)および下降(下段)の川上から川下への波及の様子
[ 図を拡大 ]図2:図1における物価上昇(青)/下降(赤)クラスターの抽出結果
[ 図を拡大 ]


 


http://www.nri.com/jp/info/2018/180828_1.aspx
「家計金融資産とマクロ経済に関する研究会」の報告書を公表
2018年08月28日
株式会社野村総合研究所
印刷用ページPDFを別ウィンドウで開きます316KBメールを送りますお問い合わせ
株式会社野村総合研究所(以下NRI)は、2017年11月より、マクロ経済や財政問題を主な専門とする有識者をメンバーとした「家計金融資産とマクロ経済に関する研究会」※(以下、「本研究会」)を立ち上げ、議論を進めてきました。この度、議論の成果を報告書にとりまとめ、公表いたします。

報告書はこちらPDFを別ウィンドウで開きます
主な内容
第1章はじめに 研究会設置の背景
第2章家計金融資産の現状と将来展望
・日本の家計金融資産の現状と将来展望(1,800兆円の行方)
第3章 「貯蓄から投資へ」の国民経済的意義
・家計部門、金融仲介部門、企業部門にとっての意義
第4章なぜ日本では「貯蓄から投資へ」が進まなかったのか
・「貯蓄から投資へ」を促すための政策・制度の変遷と現状
・日本で定着しなかった理由(住宅資産の存在・金融制度や雇用慣行の影響)
・求められる政策対応の方向性
第5章総括
報告書の主な結論
家計金融資産において、「貯蓄から投資へ(資産形成へ)」を進めることは、家計部門の所得形成の充実をはかる観点から重要。特に、国際分散投資を促進することで、グローバルな経済成長の果実を日本の家計に還元させる効果が期待できる。また、過度な預金流入を抑制することで、銀行システム全体の適正化にも寄与しうる。
一方で、日本の社会的・制度的背景を長期的に振り返ると、家計が預貯金を中心として金融資産を保有することは一定の合理性を伴う選択だった。換言すると、現在の、預貯金を中心とした金融資産選択の意思決定は、戦後、長い時間をかけて根付いてきた「生活習慣」のようなものであり、簡単には是正できない性質の問題であるといえる。
こうした「生活習慣」を克服していくためには、これまでの延長線にはない視点に立った政策対応を考えていく必要がある。具体的には以下の方向性が考えられる。
@NISAなどの関連制度を「ふるさと納税」並みにわかりやすく簡素化し、普及を促進する
A金融リテラシーの底上げを図り、投資による資産形成への理解を促す
B「貯蓄から投資へ」が目指すあるべき姿を定量的な政策目標として示し、施策の評価につなげる
NRIではこれからも、本研究会で提示された内容を踏まえ、家計金融資産を起点に、より良い経済・社会の実現に資する調査研究および政策提言活動を続けていきます。

ご参考 研究会のメンバー(五十音順)
祝迫 得夫 氏 一橋大学 経済研究所 教授
宇南山 卓 氏 一橋大学 経済研究所 准教授
江口 允崇 氏 駒澤大学 経済学部 准教授
チャールズ・ユウジ・ホリオカ 氏 アジア成長研究所 副所長
中里 透 氏 上智大学 経済学部 准教授
野村 亜紀子 氏 野村資本市場研究所 研究部長
(事務局)
金子 久 野村総合研究所 上級研究員
竹端 克利 野村総合研究所 上級研究員
石川 純子 野村総合研究所 主任研究員
(注)所属・役職は2017年11月研究会発足当時のもの

※本研究会の趣旨については、以下のニュースリリースをご覧下さい(2017年11月9日発表)。
http://www.nri.com/jp/news/2017/171109_1.aspx
本研究会に関するお問い合わせ
株式会社野村総合研究所 金融ITイノベーション事業本部 金子、竹端

TEL:03-5877-7465(金融ITイノベーション研究部)

E-mail:hfa@nri.co.jp(研究会事務局)

http://www.nri.com/~/media/PDF/jp/info/2018/180828_2.pdf

 


https://synodos.jp/economy/21965
2018.08.27 Mon
金融政策決定会合の「総括的検証」――物価はなぜ上がらないのか part2
中里透 / マクロ経済学・財政運営

7月30、31の両日に開催された金融政策決定会合での議論を経て、日本銀行は金融政策の変更を決定した。今回の決定は新聞などで大きく報じられたが、その趣旨については見方がかなり分かれているようだ。そこで、本稿では今回の金融政策決定会合の「総括的検証」を行うとともに、5年半にわたる異次元緩和の来し方行く末について考えてみることとしたい。本稿の主たるメッセージは

(1)日本銀行の現行の金融政策の枠組み(長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策)は、その名称とは裏腹に、市場に供給する資金量をコントロールする「量的緩和政策」とはなっていない。金融政策の運営はすでに金利を操作対象とする枠組みに移行しており、「日銀はどんどんお札を刷って、際限なくおカネをばらまいている」という異次元緩和のイメージは大きく修正される必要がある。

(2)今回の政策変更の主たる目的は、「円債村の過疎対策」(国債市場における市場機能の回復)にある。「過疎対策」の具体的な内容は、「ゼロ%程度」で推移させることとしている長期金利(10年物国債利回り)の変動幅を倍増させる(プラスマイナス0.1%程度から0.2%程度へ)というものだ。

(3)円債村(国債市場)の過疎化が進展したのは、マイナス金利の導入(2016年2月)とイールドカーブ・コントロール(長短金利を一定の水準に誘導する金融政策の枠組み)の導入(16年9月)の影響によるところが大きい。今回の政策変更は、このうち後者について枠組みの微調整を行うものである(併せて、前者についても「実務的な対応」として微調整が行われることとなった)。

(4)イールドカーブ・コントロール(長短金利操作)の導入は、長期のゾーンにおけるマイナス金利の発生で水没しかかっていた円債村を救うための措置であったが、長期金利の変動幅を狭く抑えすぎたために過疎化がさらに進展してしまった。この点を踏まえてなされた今回の見直し(長期金利の変動幅の倍増)が過疎対策としてどの程度の効果を発揮するかについては、いましばらく慎重な見極めが必要となる。

(5)今回の措置は「ゼロ%程度」で推移させることとしている長期金利の上方への水準訂正に道を開くものであり、今後の運営のいかんによっては金融機関の収益の下支えに資するものとなるかもしれない。

(6)リーマンショック後、一貫して下落が続いている家賃(持家の帰属家賃を含む)のことを考慮すると、2%の物価安定目標の達成には大きな困難が伴う。一方、2014年の春には消費者物価の上昇率が1%台半ばに到達したという実績がある。物価が上がりにくい状況を生じさせている構造的な要因の分析も重要だが、2%の物価安定目標と金融政策の運営スタンスの間の距離感、間合いをどのようにとるかを改めて考えることが必要だ。

というものだ。以下、これらの点について順をおって説明していくこととしよう。


1.円債村の過疎対策:国債市場の機能低下への対応

今回の政策変更のポイント

現在、日本銀行は「長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策」という枠組みのもとで金融政策の運営を行っている。だが、その名称から受ける印象とは裏腹に、この枠組みは市場に供給している資金量を操作対象(操作目標)とする「量的緩和政策」とはなっていない。実際、「80兆円をめど」に買入れることとされている長期国債の買入れ額は大きく減少して、足元では40兆円台で推移している(図表1)。


図表1 長期国債の買入れ(保有残高の増加額)の推移

(資料出所)日本銀行の資料より作成


すなわち、現行の金融政策は、すでに金利を操作対象とする枠組みに転換しており、「長短金利操作」のほうがその枠組みの中心となっている。具体的には、民間金融機関が日本銀行に預入している準備預金(日銀当座預金)の一部にマイナスの金利(▲0.1%)を付すとともに、長期金利(10年物国債利回り)を「ゼロ%程度」で推移させることによって、短期(翌日物)から超長期(40年債)に至る金利体系全般に影響を与える操作(イールドカーブ・コントロール)が、現行の金融政策の基本的枠組みということになる。今回の政策変更のポイントは、このうち「ゼロ%程度」で推移させることとしている長期金利について、その変動幅を上下0.1%程度から0.2%程度に拡大させるというものだ。


国債市場における市場機能の回復

それではなぜこのような措置が必要になったのかといえば、国債市場の機能低下という問題がその背景にある。マイナス金利政策の導入が決定される前の時点(16年1月)でも長期金利はすでに0.2%台まで低下していたが、導入後は一段と金利が低下して一時はマイナス金利が続く局面もみられた(図表2)。このため、国債の金融商品としての魅力は大きく低下した。


図表2 長期金利の推移

(資料出所)財務省「国債金利情報」より作成


イールドカーブ・コントロール(長短金利操作)は、マイナス圏に落ち込んだ長期金利をプラスの水準に引き上げる意図をもって導入されたものであるが、実際の運営においては長期金利の変動幅が狭い範囲に抑えられたため、国債市場の機能低下がさらに進んでしまった。もし仮に日経平均株価が2万2千円ちょうどで推移するように、日々の株価がコントロールされていたとしたら、はたして積極的に株を売り買いする気になるかということを想起すれば、この事情は容易に理解されよう。

このような市場機能の低下は閑散とした取引とそれに伴う人員配置の縮小というかたちで立ち現れる。

「多様な見方をする市場参加者が存在するという意味での市場の厚みは、大きく損なわれている」
「各社とも円債の部署に人材を投入しなくなっている」
「先行きにわたって収益環境が改善する見通しを持てず、若い人材の採用や育成にコストをかけ難い環境となっている」

国債取引の現場からはこのような悲痛な声が聞かれるようになっていた(以上のコメントは債券市場参加者会合(日本銀行)の第7回議事要旨より引用)。

マイナス金利政策の導入によって金利水準の全般的な低下が生じ、一時は10年超のゾーンまでマイナス金利の余波が広がっていた円債村(国債市場)は、長短金利操作の導入によって水没の危機は免れることができた。だが、長短金利操作における金利の変動幅が狭い範囲に抑えられたため、今度は金利の変動を通じた収益機会の喪失が村を襲い、過疎化がなお一層進展しかねない状況となっていた。

こうした中でとられた今回の措置(長期金利の変動幅の倍増)は、このような円債村の窮状を憂慮した日本銀行による過疎対策と理解することができる。もっとも、このような対応がとられたもとでも、長期金利の誘導水準自体は「ゼロ%程度」のままであり、これによって国債という金融商品の魅力が大きくアップするというわけではない。この点を踏まえると、今回の措置が過疎対策としてどの程度の有効性を発揮するかは、しばらく推移をながめてからでないと判断できないというのが現状ということになる(直近20営業日の経過をみる限り、長期金利は0.1%近辺
の狭いレンジで推移しており、大きな変化はみられない)。


2.「倍」は地銀を救う?:金融機関の収益環境に対する配慮

マイナス金利が金融機関に与える影響

マイナス金利政策の導入で苦境に立たされたのは債券市場の関係者にとどまらない。国債への投資を安定的な収益源としてきた機関投資家(生命保険会社・年金基金など)や、資金利益(貸出などの資金運用から得られる利益)に収益の多くを依存している銀行も、マイナス金利の影響を受けてさまざまな対応を迫られていた。とりわけ、地域金融機関(地方銀行・第二地方銀行・信用金庫など)は手数料収入などから得られる利益(非資金利益)の確保が十分にできていないことから、マイナス金利の影響をより大きく受けることとなる。

極めて緩和的な金融環境が継続するもとで、資金利鞘(資金の運用利回りと調達利回りの差)は以前から縮小が続いていたが、マイナス金利の導入はそれに拍車をかける結果となった。2016年の春頃から貸家業(個人)向けの貸出が大幅に増加するなど(図表3)、マイナス金利の影響とみられる変化も生じたが(ただし、貸家の供給増については15年に実施された相続税の強化の影響も大きいとみられる)、このような変化をマイナス金利政策の効果としてどの程度高く評価するかについてはさまざまな見方があり得るだろう。


図表3 貸家業(個人)に対する貸出の状況(国内銀行・銀行勘定)

(資料出所)日本銀行の資料より作成


長短金利操作の導入

長短金利操作の導入によって長期金利の誘導水準が「ゼロ%程度」とされたのは、金融政策の引き締め方向への政策転換と受けとめられることを回避しつつ、長期金利を小幅なプラスの水準にもっていくための工夫であった。すなわち、長短金利操作の枠組みは、マイナス金利政策の軌道修正を図るために採られた措置ということになる。このような対応が可能となった背景には、長短金利操作の導入を機に長期国債の買入れ(保有残高の増加額)に関する数値目標が外れ、資金供給量を弾力的に変化させることができるようになったということがある。

このことを踏まえて今回の措置の意味を考えると、「ゼロ%程度」で推移させるとしている長期金利の変動幅を2倍に拡大させる(プラスマイナス0.1%程度から0.2%程度へ)という変更を行うことについては、小幅ながらも長期金利の上方への水準訂正を行ういう意図があるとみるのが自然な話ということになるだろう。すなわち、この措置は、資金利鞘の縮小に伴う資金利益の減少によって十分な収益の確保が困難になっていくおそれのある地域金融機関などを念頭に、収益環境の改善につながる一定の配慮を行ったものということができる(ただし、0.1%程度の引き上げにとどまることから、収益の改善に対する寄与は限定的である)。

今回の政策変更では日銀当座預金のうちマイナスの付利(▲0.1%)を行っている部分(政策金利残高)について、「長短金利操作の実現に支障がない範囲で、現在の水準(平均して10兆円程度)から減少させる」ことが併せて決定された。この措置も、金融機関の収益に対するマイナスの影響を低減させることにつながる措置と理解される。


3.名ばかり「フォワードガイダンス」:「時間軸政策」の復活と不明確な「約束」

今回の政策変更では上記の措置と併せてフォワードガイダンスの導入が決定された。フォワードガイダンスは、中央銀行が将来の金融政策の運営スタンス(政策金利の水準など)について現時点であらかじめ「約束」(コミットメント)をすることにより、現時点における長めの金利(10年物国債利回りなど)に影響を及ぼすことを主眼とする金融政策の枠組みのことである。

このような政策枠組みの採用が可能となる背景には、ある年限(満期)の金利が、現在からその年限までの各時点における短期金利の水準に依存するかたちで決定されるというメカニズムの存在がある。たとえば、向こう3年間にわたって中央銀行が政策金利(短期金利)を0%程度で推移させるという約束を行い、この約束が市場参加者から十分な信頼(信認)を獲得することができれば、現時点における3年物の金利はほぼ0%で推移することとなる。

新聞報道などでは、今回の措置が「ECB(欧州中央銀行)の例に倣って新たに導入されたもの」といった解説がなされることがあるが、フォワードガイダンスの元祖は1999年に日本銀行が導入した「時間軸政策」にある。「デフレ懸念の払拭ということが展望できるような情勢になるまでは、市場の機能に配慮しつつ、無担保コール・オーバーナイトレートを事実上ゼロ%で推移させ、そのために必要な流動性を供給していく現在の政策を続けていく」(99年4月13日の速水総裁記者会見)という意思表明は、フォワードガイダンスの原型にほかならない。

もっとも、99年時点の約束では、ゼロ金利政策の継続期間が「デフレ懸念の払拭ということが展望できるような情勢になるまでは」と曖昧なかたちで記述されており、その意味ではフォワードガイダンスとして極めて不完全なものとなっていた。そして、同様のことは今回の措置についても当てはまる。今回の政策決定に関する公表文には、「日本銀行は、2019年10月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在の極めて低い長短金利の水準を維持することを想定している」とあるが、現行政策の継続期間については「当分の間」とあるだけで、物価上昇率など具体的な経済指標との明確な結びつけがなされていない。

今回の政策決定においてフォワードガイダンス(時間軸政策)が導入されたことについては、これを金融緩和の強化と見る向きもあるが、今回の約束の内容は極めてあいまいなものである。この措置は、長短金利操作における「ゼロ%程度」の変動幅を倍増させたことが金融引き締めの動きと受けとめられないよう、修辞的な工夫によって外形を整えるべく導入されたものとみるほうが妥当である。【次ページにつづく】
4.もはや「量的緩和」ではない:異次元緩和の過去と現在

ここまでみてきたことをまとめると、今回の措置は、マイナス金利政策の導入によって生じた歪みを補正するために導入された長短金利操作の枠組みについて、長期金利の変動幅を拡大させるなどの措置を講じることにより、国債市場における市場機能の回復と金融機関の収益改善を図ったものということになる。基本的な枠組みが不変であるもとでの部分的な手直しであるにもかかわらず、今回の措置が大きく報じられた背景には、16年9月に導入された長短金利操作が量的・質的金融緩和の枠組みからの大転換であったことが、一般に広く認識されていなかったことがあるかもしれない。


量的・質的緩和からマイナス金利までの状況

2013年4月に量的・質的緩和政策がスタートした時点での金融政策の枠組みは、資金量を操作対象(操作目標)とするシンプルでわかりやすいものであった。すなわちそれは、市場に出回っている資金量(マネタリーベース)を年間約60〜70兆円に相当するペースで増加させることを基本とするものであり、この資金量の増加に見合う分だけ国債などの資産を市場から買い入れることが、異次元緩和の当初の枠組みの中心をなしていた。

14年10月の追加緩和はこの枠組みのもとで、市場に供給する資金量を拡大させる措置(マネタリーベースの増加額を年間80兆円に拡大させることなど)を講じたものであり、追加緩和後の金融政策の枠組みは、いわば量的・質的緩和の拡大コピーといえるものであった。16年2月に導入されたマイナス金利政策は、量的・質的金融緩和の枠組みに、金利を操作対象とする枠組みを付加する大きな政策変更であったが、マネタリーベースの増加と国債の買入れに関する量的緩和の約束(コミットメント)は引き続き維持された。


長短金利操作導入後の状況

これに対し、16年9月に導入された金融政策の枠組み(長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策)では、資金供給量に関する量的な操作目標が撤廃され、金融政策の運営の枠組みは金利を操作対象(操作目標)とするものに完全に移行した。国債の買入れ額については「概ね現状程度の買入れペース(保有残高の増加額年間約80兆円)をめどとしつつ、金利操作方針を実現するよう運営する」とされており、「年間約80兆円」という表現は残っているものの、これはあくまで「めど」に過ぎない。

実際、足元では国債の買入れ額のペースは大幅に鈍化して年間40兆円台まで減っている(前掲図表1)。これを受けて日本銀行が市場に供給している資金量(マネタリーベース)の増加のペースも大幅に鈍化しており、月次でみると前月よりも減少する月もみられるようになった(図表4)。


図表4 マネタリーベースの推移

(資料出所)日本銀行の資料より作成


このように資金供給量は引き続き増加基調で推移しているものの、その増加のペースは大幅に鈍化しており、しかも資金量を操作対象とする金融政策の枠組み(量的緩和政策)はもはや過去のものとなりつつある。「日銀はどんどんお札を刷って、際限なくおカネをばらまいてる」という異次元緩和のイメージは、この意味において大きく修正される必要がある。今回の決定を「大規模緩和の転換点」というかたちでとらえる向きもあるが、今回の決定前にすでに大転換が生じていたということに留意が必要だ。


5.物価はなぜ上がらないのか?:消費増税の影響と家賃という「岩盤」

今回の金融政策決定会合では最近の物価動向についても詳細な点検がなされた。最近の物価動向をめぐる議論については前稿(「物価はなぜ上がらないのか」2018年7月23日公表)で詳述したが、金融政策決定会合においてなされた議論も踏まえ、ここで改めてまとめておくこととしよう。 


消費増税などのショックが物価に与える影響

7月31日に公表された「展望レポート」(日本銀行)では物価が上がりにくい理由として、(1)賃上げに対する企業のスタンスが依然として慎重であること、(2)値上げに対する家計の許容度が十分に高まっていないこと、(3)こうしたもとで、企業の価格設定のスタンスが引き続き慎重であること、(4)分野によっては競争環境が厳しさを増しているために、価格を押し下げる圧力が働いていることがあげられている。

これらはいずれも重要な指摘であるが、この5年半を見渡した場合、物価はつねに弱い動きが続いてきたというわけではないことに留意が必要である。消費者物価上昇率(対前年同月比)は、2014年の春には消費増税の影響を調整してもなお1%台半ばに達する局面があったわけであり(図表5)、このことを踏まえると、物価上昇のモメンタム(勢い)がなぜ途中で途切れてしまったのかということについても、併せて検討することが必要となる。


図表5 消費者物価指数(消費税調整済)の推移

(資料出所)総務省「消費者物価指数」より作成


この点に関しては原油価格の下落の影響がよくとりあげられるが、物価上昇率の上げ幅の縮小はガソリン価格の高騰が続いていた14年6月の時点ですでに生じていたことを踏まえると、14年4月の消費税率引き上げの影響、すなわち、増税に伴う実質所得の低下と反動減によって消費が落ち込み、景気が減速したことの影響を併せて考慮することが必要となる。

この5年半の賃金の動向についてみると(図表6)、名目賃金はボーナスの支給時期のずれなどによる振れを伴いながらも、基調的には緩やかな増加を続けてきた。これに対し、実質賃金は13年の夏から14年の春にかけて大幅に低下し、その後は振れを伴いつつも、17年の秋まではほぼ横ばいで推移してきた。所得環境をめぐるこのような動きは実質可処分所得の推移についてもみてとることができる(図表7)。


図表6 名目賃金と実質賃金の推移

(資料出所)厚生労働省「毎月勤労統計」より作成

図表7 実質所得と実質消費の推移

(資料出所)総務省「家計調査」より作成


こうした中、実質消費については、14年4月を起点に下方への大幅な水準訂正が生じ、その後も長い期間にわたって停滞が続いた。国民経済計算(内閣府)や消費活動指数(日本銀行)によってマクロの消費動向をみても、14年4月の消費増税後、17年の年央まで消費の十分な回復がみられなかったことが確認できる。こうしたもとで、企業の価格設定行動が慎重化し、値下げの動きも広がって、物価が上がりにくい状況が生じたことになる。

このような物価をとりまく状況を模式的に表すと、「売り上げが大幅に増える見込みがないので、賃上げに慎重」、「十分な賃上げが期待できないので、消費態度が積極化しない」、「消費が増えないので、売り上げが増えない」という構図があって、そこに天候不順による生鮮食品の上昇、ガソリン価格の高騰、消費税率の引き上げといったショックが加わると、いったんは物価が上がるものの、その後はむしろ物価の弱い動きが広がることとなる。すなわち、コストプッシュで物価が上がると、実質所得の低下が生じて家計の節約志向が高まり、それに伴う消費の減退に対応するために企業の価格設定行動が慎重化する結果、物価に下押しの圧力が加わることになる。

今回の金融政策決定会合の公表文では「2019年10月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在の極めて低い長短金利の水準を維持する」というかたちで19年10月の消費増税が不確実性として明示されているが、前回の消費税率引き上げ時の経験を踏まえれば、このような取り扱いは適切な判断といえるだろう。


家賃という「岩盤」の存在

この5年半の物価動向についてみると(前掲図表5)、消費者物価指数としてどのような範囲の財・サービスを対象とする指数を採用するかによっても物価の推移が異なったものとなることがわかる。このうち、「持家の帰属家賃を除く総合」については上昇率(対前年同月比)が2014年3月から5月にかけて2%に到達しており、最近時点(18年1・2月)についても2%近くまで上昇する局面がみられた。これに対し、コア(生鮮食品を除く総合)やコアコア(食品及びエネルギーを除く総合)では2%への到達がなかなか見込みにくい状況が続いてきた。

この背景には、リーマンショックの直後の時期(08年10月)を起点に家賃(持家の帰属家賃を含む)の下落が続いてきたという現実がある。家賃は消費者物価指数の構成項目の中で全体の2割近く(1万分の1782)を占めており、こうしたもとでヘッドライン(総合)あるいはコア(生鮮食品を除く総合)でみて2%の物価上昇を目指すとなると、家賃以外の部分で2%台半ばあるいはそれを上回る物価上昇が生じる必要があるということになる。

だが、最近の物価動向の跛行性を踏まえると(図表8)、家賃以外の品目の物価が2%台半ばの水準で推移する場合には、食料や日用品など普段の買い物の際に感じる「体感物価」は3%を大きく上回って推移する可能性があり、賃金の伸びが十分に期待できない中で、このような物価上昇が家計の許容するところとなるかということが懸念される。


図表8 消費者物価指数(購入頻度別)の推移

(資料出所)総務省「消費者物価指数」より作成


物価が上がりにくい理由として「根強いデフレマインド」の存在がしばしば強調されるためか、物価については長期にわたってデフレ脱却だけが課題とされてきたような印象をもたれることが多いが、07年から08年にかけては資源価格の高騰を起点とする物価上昇が大きな政治課題となったことも思い起こす必要がある。

08年8月に策定された経済対策(「安心実現のための緊急総合対策」)では「原油・食料価格等の急激な上昇に伴う国民の生活への不安」への対応が重要な課題としてもりこまれた。当時はコアコア(食品及びエネルギーを除く総合)の上昇率(対前年同月比)がほぼ0%で推移する中、食料は2%ないし3%程度の上昇、エネルギー関連品目は10%を上回る上昇が生じており、こうしたもと、「体感物価」の上昇に対する不満の高まりに押されるかたちで政府による緊急の対応が求められることとなった。

ここまで顕著なかたちではなかったが、14年の春には円安に伴う輸入物価(原材料などの値上がり)に、ガソリン価格の高騰と消費増税による税込価格の上昇が加わって、物価が大幅に上昇したため、食品・日用品の値上がりが大きな話題となった。

このような経過を踏まえると、長期にわたって下落が続いている家賃という「岩盤」があるもとで、コア(生鮮食品を除く総合)を対象に2%の物価安定目標を達成することについては、政治的な側面からも大きな制約が存在するということになる。


6.金融政策の今後の道行きについて

ここまでみてきたように、今回の政策変更は、16年9月になされた大きな政策転換(量的緩和から金利操作への移行)の微調整と理解されるが、政策枠組みのさらなる調整につながる新たな要素もある。そこで、金融政策の今後の道行きについてここで簡単に展望しておくこととしよう。

極めて緩やかな「約束」ではあるが、今回の政策変更においてはフォワード・ガイダンス(時間軸政策)が導入された。長短金利操作に基づく長期金利のコントロールには市場機能の低下などの弊害があることを踏まえると、長期金利の直接的なコントロールを、時間軸政策を通じた調節に置き換えるということが、今後の金融政策の運営におけるひとつの方向性としてあり得よう。もちろん、その際には、時間軸方向の約束(コミットメント)が明確なものとなるよう、時間軸政策の解除条件を物価上昇率の具体的な数値と明確に結びつけることが必要となる。

2%の物価安定目標については、今年4月の「展望レポート」において達成時期の記述が削除され、中長期的な目標への事実上の移行が進展しつつあるが、その分だけ金融政策の運営における物価安定目標の位置づけが不明確なものとなってしまった。現行の金融政策の運営においては、長短金利操作とマネタリーベースのそれぞれについて、2%の物価安定目標との関連付けがなされているが、前者については長短金利操作の継続期間が「(2%の物価安定目標を)安定的に持続するために必要な時点まで」となっており、約束は極めてあいまいなかたちでしかなされていない。

後者については「消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで」というかたちで継続期間については約束の明確化が図られているものの、具体的な運営方法については「マネタリーベースの拡大方針を継続する」と極めてあいまいな書き方になっている(しかも、第4節で説明したように、マネタリーベースはすでに操作対象ではなくなっている)。この点からも時間軸政策におけるコミットメントの明確化が重要ということになる。

物価安定目標の達成をめぐっては、今後もさまざまな紆余曲折が予想され、景気の先行きについても不透明感が高まっていく可能性があるが、デフレへの逆戻りが生じることのないよう、引き続き金融政策の安定的な運営に努めていくことが望まれる。

知のネットワーク – S Y N O D O S –

中里透(なかざと・とおる)
マクロ経済学・財政運営
1965年生まれ。1988年東京大学経済学部卒業。日本開発銀行(現日本政策投資銀行)設備投資研究所、東京大学経済学部助手を経て、現在、上智大学経済学部准教授、一橋大学国際・公共政策大学院客員准教授。専門はマクロ経済学・財政運営。最近は消費増税後の消費動向などについて分析を行っている。最近の論文に「デフレ脱却と財政健全化」(原田泰・齊藤誠編『徹底分析 アベノミクス』所収)、「出生率の決定要因 都道府県別データによる分析」(『日本経済研究』第75号、日本経済研究センター)など。

https://synodos.jp/economy/21850

2018.07.23 Mon
物価はなぜ上がらないのか?――「アマゾン効果」と「基調的な物価」のあいだ
中里透 / マクロ経済学・財政運営
このところ、「物価が上がらないのはネット通販のせい?」という話が注目を集めている。この議論は、6月18日に日本銀行から公表されたレポートを機に盛り上がりをみせているが、足元の物価の弱い動きをめぐる議論とも連動するかたちで、引き続き話題となっていきそうだ。こうしたなか、7月30〜31日に開催される金融政策決定会合(日本銀行)では、物価に関する集中点検がなされることとなっている。そこで、本稿ではこれまでの物価動向を振り返りつつ、この議論に関する簡単な論点整理を試みることとしたい。

本稿の主たるメッセージは、

(1)ネット通販の拡大による「アマゾン効果」が物価を下押しする要因となっているとしても、その影響は限定的なものにとどまる。物価全体の基調的な動きについては、物価動向を規定する基本的な要因を重視して、その推移を注視していくことが必要である。

(2)家電製品については、2012年以前の方が価格低下が際立っており、13年以降はむしろ下げ止まりの動きがみられる(ただし、以前ほどではないが16年以降はふたたび低下が生じている)。このことは、ネット通販が大きく拡大する前にも既存の家電量販店の間で激しい価格競争があったことを示唆するものだ。アマゾン効果だけを強調して、足元の物価の動きを説明することには慎重さが求められる。

(3)ネット通販の拡大がみられる衣料と文房具については、最近時点においてむしろ価格上昇がみられる。この点から、ネット通販の拡大による価格低下圧力以外の要因が、物価の動きに影響を与えている可能性が示唆される。

(4)ネット通販の拡大が物価に与える影響については、17年の年央以降に生じている宅配便の運賃(送料)値上げの影響を併せて考慮する必要がある。

というものだ。以下ではこれらの点について、順をおってみていくこととしよう。


1.物価動向における「アマゾン効果」

日本の家計消費支出に占める、インターネット経由の消費(ネットショッピング)の割合は3%程度にとどまっている。だが、利用金額は年々増加しており、その傾向は一段と勢いを増している。こうしたなか、6月18日に日本銀行から公表されたレポート(河田・平野[2018])では、インターネット通販の拡大が物価動向に与える影響について興味深い分析結果が示されている(河田皓史・平野竜一郎「インターネット通販の拡大が物価に与える影響」『日銀レビュー』2018-J-5)。

ネット通販は、実店舗を持たないことによるコストの抑制などを通じて、実店舗を持つ既存の小売企業との競争において価格面での優位性を確保し得る。このようなネット通販の拡大は、競合する商品を販売している企業の価格設定行動に影響を与え、商品の販売価格を引き下げる方向への競争圧力を強めるものと予想される。

また、ネット通販の取扱量の拡大は、配送センターの新設などを通じた物流網の整備を通じて、輸送距離の短縮化による輸送コストの低減にも寄与することになる。この点においても、ネット通販のコスト面での優位性を高める方向に作用することになる。

河田・平野論文では、「アマゾン効果(Amazon Effect)」と呼ばれるこのような効果に注目し、日本においても、ネット通販の拡大が物価の下押し圧力を強める方向に作用してきた可能性があることを、実証分析によって明らかにしている。

河田・平野論文から得られる示唆は、ネット通販の拡大が消費者物価指数(生鮮食品とエネルギーを除く総合)を0.1〜0.2ポイント下押ししている可能性があるというものだ。この知見は、2%の物価安定目標の達成を後ずれさせる要因のひとつとして、アマゾン効果を考慮する必要があることを示唆するものである。

だが、ここで留意が必要なのは、最近時点についても物価は一様に下落してきたわけではなく、2014年春にはコア(生鮮食品を除く総合)でみて対前年同月比1%台半ばの上昇率に達する局面もあったということだ(図表1)。すなわち、物価はアマゾン効果以外の要因からも強い影響を受けるかたちで推移してきたということになる。


図表1 消費者物価指数の推移(消費税調整済)

(資料出所)総務省「消費者物価指数」より作成


この点を踏まえると、河田・平野論文から得られる知見は、足元の物価の弱い動きをめぐる議論とはきちんと分けて理解されるべきものということになる。だが、残念なことに結論がひとり歩きして、「デフレの正体」はネット通販にあるというような受けとめ方をする向きもある。だが、はたしてそのような理解は可能なのかということが、ここでの大きな論点ということになる。


2.アマゾン効果と「ヤマダ電機効果」

ネット通販の市場規模

ネット通販の拡大が物価に与える影響は、商品やサービスのカテゴリーによって大きく異なるものと予想される。というのは、分野によってネット通販の浸透度(市場規模・EC化率)に大きな差があるからだ。そこで、経済産業省による調査(平成29年度「電子商取引に関する市場調査」)を利用して、最近時点におけるBtoC(企業と一般消費者(家計)の間)の電子商取引の状況について確認しておくこととしよう。

この調査によると、ネット通販の市場規模については物販系が8.6兆円、サービス系(航空券・宿泊予約など)が5.9兆円、デジタル系(オンラインゲームなど)が1.9兆円となっている。このうち物販系分野について詳しくみると、市場規模では「衣料・服飾雑貨等」、「食品、飲食、酒類」、「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」の規模が大きく、EC化率では「事務用品、文房具」、「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」、「書籍、映像・音楽ソフト」の割合が高くなっている(図表2)。


図表2 物販系分野のBtoC-EC市場の市場規模

(資料出所)経済産業省「電子商取引に関する市場調査」より作成


そこで、以下では市場規模・EC化率ともに上位に位置している家電製品、市場規模がもっとも大きい衣料、EC化率がもっとも高い事務用品・文房具の3分野を対象に、これらの物価動向をながめていくこととする。

経済産業省の調査は事業者側を対象にしたものであるが、「家計消費状況調査」と「家計調査」(いずれも総務省)をもとに家計側の動向をみても、これらの分野の商品がネット通販において大きな比重を占めていることが確認できる。これらの調査の分類からは確認できないが、生活雑貨(洗剤・ティッシュペーパーなど)についてもネット通販による購入が多いと考えられることから、生活雑貨についても併せて動向を確認しておくこととする。


4分野の物価動向

日本銀行のレポートでは、2016年から18年にかけての期間を対象に分析が行われている。また、ネット通販と物価動向の関係をめぐる最近のいくつかの新聞報道においても、足元の物価動向との関係に着目して解説がなされている。そこで、ここではまず直近の2年間(16年4月以降)の物価動向について、上記4分野の品目を対象とする消費者物価指数のデータをもとに確認しておくこととしよう。

ここでは家電の物価指数として「家事用耐久財」(電気冷蔵庫・電気洗濯機など)と「教養娯楽用耐久財」(テレビ、パソコンなど)の指数を、衣料の物価指数として「衣料」を、事務用品・文房具の物価指数として「文房具」の指数を、生活雑貨の物価指数として「家事用消耗品」(洗剤・ティッシュペーパーなど)の指数を、それぞれ利用することとする(教養娯楽用耐久財にはピアノと学習机が含まれるが、これらのウエイトは59分の8である)。

まず、家電についてみると(図表3)、家事用耐久財(電気冷蔵庫・電洗濯機など)については、17年9月を除くと、いずれの月も上昇率がマイナスとなっており、価格の下落傾向が続いてきたことがわかる。また、教養娯楽耐久財(テレビ、パソコンなど)については、16年8月以降、上昇率がマイナスで推移している(価格は下落)。


図表3 家電製品の価格動向

(資料出所)総務省「消費者物価指数」より作成


次に、衣料についてみると(図表4)、物価指数の上昇率が次第に縮小して、17年秋以降は基調的にマイナスで推移している。また。家事用消耗品(洗剤・ティッシュペーパーなど)については、16年7月以降、上昇率がマイナスで推移している。これに対し、文房具については、物価指数の上昇率が2年にわたってプラスで推移している。


図表4 衣料・文房具・生活雑貨の価格動向

(資料出所)総務省「消費者物価指数」より作成


このようにネット通販の市場規模が大きい、あるいはネット通販による購入の割合が大きい商品の物価動向については、文房具を除くと、総じて弱い動きが続いてきたということになる。


家電の価格低下

このような物価指数の推移は、「物価が上がらないのはネット通販のせい」という想像をかきたてるものであり、実際、そのような受けとめ方をする向きもみられる。だが、「ネット通販の拡大が物価を下押しする要因になる」ということと、「物価の基調的な動きがネット通販の拡大という理由によって説明できる」ということの間には大きな距離がある。物価の動きを上記のように局所的な範囲でとらえずに、より長い期間でながめてみれば、以下に示すようにこのことは容易に理解される。

そこで、1995年度から2017年度までの期間を対象に、家電製品の値動きをながめてみると(図表5)、「家事用耐久財」(電気冷蔵庫・電気洗濯機など)と教養娯楽耐久財(テレビ、パソコンなど)のいずれについても急速な価格低下が生じた後、13年度あたりから15年度にかけてようやく下げ止まりの動きがみられるようになった(ただし、以前ほどではないが、16年度以降はふたたび低下が生じている)ということがわかる(なお、消費税の増税の影響を除きやすくするため、ここでは暦年ではなく年度の計数をもとに物価の動向を把握している)。


図表5 家電製品の価格動向(1995年−2017年・年度平均・消費税調整済)

(資料出所)総務省「消費者物価指数」より作成


ここからわかるのは、家電製品の価格低下がネット通販の拡大が生じた時点になってはじめて観察されるようになった出来事ではなく、実店舗による販売がほとんどだった頃に、むしろ大幅な価格下落が生じていたということだ。

このような価格低下には、性能の向上によって実質的な価格低下が生じたことによる部分(品質調整に伴う下落分)と、販売店間の値引き競争の進展によって生じた部分の双方があるものとみられる。後者についていえば、ネット通販が主流になる前から家電量販店による競争は熾烈であり、そうしたなかで、いわば「ヤマダ電機効果」とでもいうべきものによって、家電の販売価格の上昇が抑制されてきたということになる。

「他店より1円でも高い場合は値引きします」という価格競争が、家電量販店の店頭で20年以上前から展開されてきたことを想起すれば、この事情は容易に理解されるだろう。アマゾン効果は、インターネットの発達によって店舗間の価格比較がさらに低コストで行えるようになり、このような価格裁定の動きがさらに強まるようになった現象ということになる。

このように、家電製品の価格の動向には、アマゾン効果として認識されるような影響をもたらす価格競争が、実店舗どうしの間でも以前から展開されてきたこと、価格下落は最近時点よりもむしろ以前のほうが顕著であったことを踏まえると、最近時点における物価の動向を把握するうえでネット通販の影響をどの程度大きなものととらえるかについては、過大評価が生じないよう慎重な見極めが必要ということになる。


衣料と文房具の価格上昇

一方、衣料と文房具の動向をみると(図表6)、価格の動きは区々であり、それぞれの局面で大きく変動してきたことがわかる。15年度と16年度については値上がりが顕著となっており(文房具については17年度も)、上昇率でみると衣料については1%台前半、文房具については1%台後半の率で上昇が生じている。


図表6 衣料・文房具の価格動向(1995年−2017年・年度平均・消費税調整済)

(資料出所)総務省「消費者物価指数」より作成


衣料と文房具の価格上昇はヘッドライン(総合)やコア(生鮮食品を除く総合)でとらえられる物価全般の動きを上回るものだ。このことは、衣料と文房具について、もし仮にアマゾン効果による価格下落が生じているとしても、それは衣料と文房具の価格の基調的な動きを左右するほど大きなものとはなっていないことを示唆するものである。


オンライン価格と実店舗価格の間の裁定

アマゾン効果は、ネット通販の拡大が、実店舗を持つ既存の小売企業の販売価格を引き下げることで顕現化するものだ。すなわち、オンライン価格と実店舗価格の裁定がどの程度強力に働いているかによって、アマゾン効果が消費者物価指数に与える影響は異なったものとなる。

この背景には、ネット通販を通じた販売価格の把握が、小売物価統計調査においてきわめて不十分なかたちでしか行われておらず、消費者物価指数の作成においてネット通販経由の販売価格の反映が限定的なものにとどまっているという事情がある。

オンライン価格と実店舗価格の間の裁定がどの程度行われているかについては、オンラインショップと実店舗の間の販売価格の差について大規模な調査を実施したCavallo[2017]が有益な情報を与えてくれる(Cavallo, Alberto”Are Online and Offline Prices Similar? Evidence from Large Multi-channel Retailers”Ameican Economic Review Vol.107 No.1)。

この研究では、調査対象となっている10か国のなかで、日本はオンラインと実店舗の価格差が最も大きく(10か国平均では両者の価格差が4%であるのに対し、日本は13%)、両者の間の価格裁定が不完全であることが示されている。この分析において調査対象となっている日本の企業はビックカメラ、ケーズデンキ、ローソン、ヤマダ電機の4社であり、対象業種が家電販売に偏っていることに留意が必要だが、日本においてアマゾン効果が実際にどの程度影響を与えているかを把握するうえでは、このような状況についても一定の留意が必要となる。【次ページにつづく】
3.アマゾン効果と「ヤマト運輸効果」

これらのことを踏まえると、アマゾン効果による物価の下押しは、基調的な物価の動きを左右するほど大きなものではない(限定的なものにとどまる)ものと判断される。だが、ネット通販の拡大による価格の押し下げが、消費者物価指数に十分反映されるようになれば、物価上昇率を全般的に押し下げる要因のひとつとなることは確かだろう。

もっとも、低価格を売りにしてネット通販が拡大していくためには、商品の配送料が低廉であるということが維持される必要がある。「宅配クライシス」がアマゾン効果の拡大を阻む要因となる可能性があることにも留意が必要である。

ネット通販の拡大による少量・多頻度の小口配送は、人員の確保などの面で宅配便の事業者に大きな負荷をもたらしている。このため、ヤマト運輸がアマゾン・ドット・コムに対して、当日配送の受託の縮小と運賃(配送料)の値上げを要請(2018年1月に合意)するなどの見直し動きが進展してきた。

こうした動きのもとで、17年の年央以降、宅配便の運賃(送料)の値上がりが生じている(図表7)。この値上げ分を事業者と消費者のいずれが負担するとしても、このような動きは、商品価格・送料の値上げや無料配送の縮小などを通じて、ネット通販のコスト面での優位性を低下させる要因となるものである。アマゾン効果について考える際には、このような「ヤマト運輸効果」についても併せて注視していくことが必要ということになる。


図表7 宅配便の運賃(送料)の動向

(資料出所)総務省「消費者物価指数」、日本銀行「企業向けサービス価格指数」より作成


4.この道はいつか来た道?

「物価が上がりにくいのはネット通販のせい」という説は、日本銀行のレポートの執筆者の意図を離れてひとり歩きしつつあるようだが、ここで思い出されるのは2014年の「冷夏」をめぐるエピソードだ。

14年4月には消費税率の引き上げ(5%から8%へ)が実施されたが、14年春の時点では、その影響は一時的なものにとどまり、夏には景気が「V字回復」するものとされていた。だが、9月下旬に相次いで公表された8月分の百貨店・スーパー・コンビニの売上高が、いずれも5か月連続で対前年同月比マイナスとなるなど、秋口になっても消費の回復は確認されなかった。

折しも11月に消費税の再増税(10%への引き上げ)の実施・延期の最終判断が控えていたことから、関係者の間で景気回復の遅れが懸念されたが、そこで登場したのが「景気回復が遅れているのは天候不順(冷夏)のせい」という説明であった(この間の経過と天候不順が消費に与えた影響についての評価については中里透「天候不順の経済分析」を参照のこと。

その後も家計消費は停滞を続けたことから、次に登場したのは、「消費が停滞しているようにみえるのは家計調査(総務省)のバイアスのせい」という説明であった。この議論は、15年10月16日の経済財政諮問会議における麻生財務大臣の発言をきっかけに盛り上がりをみせた。消費に関する統計の見直しは、日本銀行による消費活動指数の作成(16年5月公表開始)と総務省による消費動向指数の作成(16年3月公表開始)というかたちで結実したが、結局のところいずれの指標を利用した場合にも、14年4月を起点に消費が大きく落ち込んで、長い期間にわたって停滞した状態が続いたということには変化がみられなかった(図表8)。


図表8 消費の動向

(資料出所)総務省「家計調査」、日本銀行「消費活動指数」より作成


このように、当初の予定通りに物事が進まない場合に、ユニークな理由付けが登場することはしばしばあり、ネット通販の拡大と物価動向をめぐる議論も、14年の「冷夏」と同じような経過をたどるおそれがある。

もっとも、このような方向で議論が進められていくことについては、その費用対効果がどの程度高いものか、慎重かつ冷静な判断が求めれられることになるだろう(もちろん、ネット通販経由の販売価格を消費者物価指数にきちんと反映させること自体は重要な課題であり、この点については総務省統計局においてすでに検討が進められている)。

なお、14年4月を起点とする消費の停滞については、消費増税の影響によるところが大きいとの認識が共有されつつある。このような消費増税後の需要の弱い動きが、原油価格の下落や新興国経済の減速とあいまって、2%の物価安定目標の達成を後ずれさせる結果となったというのが、日本銀行の「総括的検証」(16年9月)で示された判断ということになる。


5.物価はなぜ上がらないのか?

7月30・31の両日に開催予定の金融政策決定会合における「展望レポート(18年7月)」のとりまとめに際しては、「物価はなぜ上がらないのか」ということが大きな論点となりそうだ。

この点について考えるための手がかりとして、7月20日に公表された消費者物価指数(全国・6月分)をみると、ヘッドライン(総合)は対前年同月比0.7%の上昇となっているのに対し、コアコア(食料及びエネルギーを除く総合)は横ばい(0.0%)となっている。

ここからわかるのは、現在の物価上昇の大半が食品とエネルギー関連品目の値上がり(コストプッシュ要因)によるものであるということだ。食品や電気・ガス料金、灯油、ガソリンの値上がりによる物価上昇を、デフレ脱却に向けた前向きな動きと手放しで喜ぶことは難しい。

先ごろ公表された5月分の百貨店・スーパー・コンビニの売上高はいずれも前年割れとなったが、このような消費の弱い動きを踏まえると、食品や光熱費などの値上がりを受けて、家計の節約志向が高まっている可能性がある。実際、購入頻度別に品目を区分した物価指数をみると、頻繁に(1か月に複数回)購入する品目の物価は対前年比2%以上のペースで上がっており(図表9)、購入頻度が低い品目の上昇率が0%台前半にとどまっていることと明確な対照をなしている。


図表9 消費者物価指数の推移(年間購入頻度別)

(資料出所)総務省「消費者物価指数」より作成


物価が上がりにくい理由としては「根強いデフレマインド」の存在がしばしば強調される。だが、13年の年央から14年の春にかけては、むしろ物価高が話題となっていたことを想起すると、この説明がどの程度の妥当性を持つものなのか、ということにも留意が必要である。物価動向に上記のような跛行性があることを踏まえると、デフレマインドよりも「体感物価」の上昇が、めぐりめぐって物価が全般的に上がりにくい状況をもたらしている可能性についても考慮する必要がありそうだ。

すなわち、やや逆説的ではあるが、食品やガソリンなどの値上がりが家計の節約志向の高まりをもたらし、そのことが消費の手控えを通じて売上げの伸び悩みにつながって、企業の価格設定行動に影響を与えた可能性がある。14年4月の消費税率引き上げを機に、実質所得の低下を起点とする消費の停滞が生じ、物価が弱含みとなった経過を踏まえれば、このような検証の必要性は容易に理解されよう。

リーマンショック後、継続的に下落している家賃(持家の帰属家賃を含む)という「岩盤」の存在を踏まえると、2%の物価安定目標の達成に困難が伴うことはたしかだが、未達の原因をアマゾン効果に求めてよいかとなると話は別だ。「物価が上がらないのはネット通販のせい」とやってしまうと、2014年の「冷夏」に続いて今年の夏も不思議な夏ということになりかねない。物価と所得と消費の間の基本的な関係に立ち返って現状をつぶさに点検し、落ち着いた環境のもとで誤りのない判断がなされていくことが望まれる。

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http://www.minto.or.jp/print/urbanstudy/pdf/research_49.pdf
日銀・異次元金融緩和の行方(論点メモ)
都市研究センター専任研究員
丹上 健
はじめに
1.日銀は、2013 年 4 月以来、同年 3 月に
就任された黒田総裁の下で、5 年以上の長
きにわたり、いわゆる異次元金融緩和を続
けている。2%の物価安定目標を実現し、デ
フレを脱却するためである。当初は「2年
程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早
期に実現する」とされたが、これまで 6 度
にわたり達成時期が先送りされ、ついに本
年 4 月の「経済・物価情勢の展望」(展望リ
ポート)では、達成時期の記載が削除され
るに至った。
2.このように異次元金融緩和は、短期戦
から長期戦へと様相を変えているが、折し
も本稿対象期間末の 7 月 31 日、日銀は、「強
力な金融緩和継続のための枠組み強化」を
決定するとともに、新たな展望レポートを
発表した。
消費者物価上昇率は、本年 4 月時点から、
2019 年度:+1.8%→+1.5%、2020 年度:
+1.8%→+1.6%となり、見通し期間中の
2%達成は見通せないものになっている。ま
た、「枠組み強化」は、「2%の「物価安定の
目標」の実現には、これまでの想定より時
間がかかることが見込まれる」としている。
ただし、「マクロ的な需給ギャップがプラス
の状態を続けることにより、消費者物価の
前年比は、2%に向けて徐々に上昇率を高め
ていくと考えられる」として、基本スタン
スは従来と変わっていない。その上で、「強
力な金融緩和を粘り強く続けていく観点か
ら」、@政策金利のフォワードガイダンスの
導入とA「長短金利操作付き量的・質的金
融緩和」の持続性を強化する措置を決定し
ている。
ここで詳細には触れないが、「枠組み強
化」の決定は、@2%の物価安定目標の達成
には、なお時間が掛かること、A異次元金
融緩和は、若干の修正を行った上で、今後
も継続すること、B特に 2019 年 10 月に予
定される消費税率引上げの影響を見極める
までは、現在の極めて低い長短金利水準を
維持すること、を明らかにしたことに意義
があるものと考えられる。
3.しかし、短期戦でこそ成り立つ異次元
の金融緩和を、このように長期にわたり継
続することについては、疑問がある。
本稿は、異次元金融緩和の行方を考える
上で必要と思われる基礎的事項を、論点メ
モとしてまとめたものである。具体的には、
〔目次〕のとおりであり、次のような問題
意識に基づいている。
@異次元金融緩和の内容と考え方はどのよ
うなものか。:1〜3、
A異次元金融緩和はどのような成果を上げ
ているか。:4
Bそもそもデフレとは何か。:5
C異次元金融緩和の実施状況はどうなって
いるか。:6
D異次元金融緩和が 2%の物価安定目標を
2
実現するメカニズムは何か。:7
E異次元金融緩和の副作用としてどのよう
な問題があるか。:8・9
Fデフレは日本経済低迷の原因か。本当に
求められる政策は何か。:10
G今後の経済政策はどうあるべきか。:11
以上の結論として、筆者が考える今後の
経済政策の方向は、次のようなものである。
[日本銀行]
@目指すべき物価安定目標を 2%から引き
下げ、又は、2%の物価安定目標を中期的に
達成を目指すべきものとして、政策運営を
柔軟化すること。
A異次元金融緩和によるリスクの蓄積を可
能な限り早期に停止し、その縮小を進める
こと。
B異次元金融緩和とその正常化に伴うリス
クをしっかりコントロールして、金融シス
テムや経済の安定を確保すること。
[政府]
@企業防衛マインドの転換と国民の将来不
安の解消を図ること。
A民間の創意工夫の発揮やイノベーション
を促進する各種成長戦略や構造改革を強力
に推進すること。
B政府の支出と収入のアンバランス(低支
出・最低収入)を是正するため、財政再建施
策を着実に実施すること。
特に日銀が出口に向かう前の低金利が維
持された猶予期間のうちに、財政健全化の
実を上げるとともに、財政規律の確保に強
くコミットすることによって、出口におけ
る国債市場の不安定化を抑止すること。
もとより経済・金融の門外漢であり、理
解不足や誤解を懼れるが、本稿が異次元金
融緩和の行方を考える上で、何らかの参考
になることがあれば幸いである。
〇「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」の
概要
1.日本銀行は、強力な金融緩和を粘り強く続けて
いく観点から、政策金利のフォワードガイダンス
を導入することにより、「物価安定の目標」の実現
に対するコミットメントを強めるとともに、「長短
金利操作付き量的・質的金融緩和」の持続性を強
化する措置を決定した。
(1)政策金利のフォワードガイダンス
日本銀行は、2019 年 10 月に予定されている消
費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確
実性を踏まえ、当分の間、現在のきわめて低い長
短金利の水準を維持することを想定している。
(2)長短金利操作(イールドカーブ・コロール)
短期金利:政策金利残高に▲0.1%のマイナス金
利を適用する。
長期金利:10 年物国債金利がゼロ%程度で推移
するよう、長期国債の買入れを行う。その際、金
利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度
変動しうるものとし、買入れ額については、保有
残高の増加額年間約 80 兆円をめどとしつつ、弾
力的な買入れを実施する。
(3)資産買入れ方針
@ETFおよびJ−REITについて、保有残高
が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に
相当するペースで増加するよう買入れを行う。そ
の際、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切
に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額
は上下に変動しうるものとする。
ACP等、社債等について、それぞれ約 2.2 兆円、
約 3.2 兆円の残高を維持する。
2.日本銀行は、1.の措置と合わせて、以下の実務
的な対応を行うこととした。
(1)政策金利残高の見直し
政策金利残高を、長短金利操作の実現に支障が
ない範囲で、現在の水準(平均して 10 兆円程度)
から減少させる。
(2)ETFの銘柄別の買入れ額の見直し
ETFの銘柄別の買入れ額を見直し、TOPI
3
Xに連動するETFの買入れ額を拡大する。
3.(略)物価は、経済・雇用情勢に比べて弱めの
動きが続いている。その背景には、企業の慎重な
賃金・価格設定スタンスや値上げに対する家計の
慎重な見方の継続といった要因が複合的に作用し
ており、2%の「物価安定の目標」の実現には、こ
れまでの想定より時間がかかることが見込まれる。
もっとも、マクロ的な需給ギャップがプラスの状
態を続けることにより、消費者物価の前年比は、
2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えら
れる。
〇展望レポートの経済・物価見通し(2018.7)
出典:日本銀行
〔目 次〕
1.異次元金融緩和の概要
(1)政府・日本銀行の共同声明 2013.1
(2)「量的・質的金融緩和」の導入 2013.4
(3)「量的・質的金融緩和」の拡大 2014.10
(4)「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の
導入 2016.1
(5)「「量的・質的金融緩和」導入以降の経済・
物価動向と政策効果についての総括的な検
証」と「長短金利操作付き量的・質的金融緩
和」の導入 2016.9
2.異次元金融緩和の考え方
(1)デフレの問題点
(2)「2%の物価安定の目標」の実現
(3)「量的・質的金融緩和」のポイント
(4)「量的・質的金融緩和」の効果:金融緩和効
果の波及経路
(5)金融政策運営を巡る論点
(6)デフレからの脱却
(7)「量的・質的金融緩和」拡大の意義
(8)「マイナス金利付き量的・質的金融緩
和」導入の意義と効果
(9)「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」導
入の意義と考え方
3.黒田日銀の2期目のスタート
4.異次元金融緩和の成果
(1)経済情勢
(2)金融情勢
(3)企業動向
(4)物価動向
(5) 異次元金融緩和の成果・要約
5.「デフレ」とは何か
(1)「デフレ」
(2)「デフレ・スパイラル」
(3)「デフレではない」と「デフレ脱却」
6.異次元金融緩和の実施状況
(1)日銀のバランスシートの変化
(2) 国債の保有状況
7.異次元金融緩和のメカニズム
(1)異次元金融緩和のメカニズム
(2)非伝統的金融政策
(3)貨幣数量説と予想物価上昇率の引上げ
(4)ポール・クルーグマンの提案
(5)長期金利の引下げ
(6)ポートフォリオ・リバランス効果
(7)マイナス金利
(8)為替変動のメカニズム
(9)物価上昇のメカニズム
8.異次元金融緩和の副作用
(1)金利の展望
(2)異次元金融緩和の仕組み
(3)異次元金融緩和の正常化プロセス
(4)国債買入れの限界
(5)金融機関の収益悪化と金融システムの不安
定化
(6)日銀の収支悪化と債務超過の懸念
(7)中央銀行の債務超過がもたらす影響
(8)リスク資産の蓄積と市場の歪み
(9)財政規律の緩みと財政運営の困難化
(10)異次元金融緩和の副作用・要約
9.財政ファイナンスとヘリコプターマネー
(1)財政ファイナンスと財政の持続可能性の確
4

(2)財政の健全化と持続可能性
(3)金融政策と財政政策
(4)ヘリコプターマネー
(5)異次元金融緩和とヘリコプターマネー・財政
ファイナンス
10.デフレ脱却の意義と求められる政策
(1)デフレ脱却の意義
(2)デフレは日本経済低迷の原因か
(3)企業防衛マインド
(4)国民の将来不安
(5)求められる政策
11.今後の経済政策と日銀への期待
(1)中央銀行の役割と物価の安定
(2)異次元金融緩和の評価と今後の方向
(3)目指すべき物価安定目標
(4)今後の経済政策と日銀への期待
〔参考文献〕
池尾和人
「現代の金融入門」2010.2 筑摩書房。
「連続講義・デフレと経済政策」2013.7 日経 BP 社。
岩田規久男・浜田宏一・原田泰編著
「リフレが日本経済を復活させる」2013.3 中央経済社。
植田和男
「ゼロ金利との闘い」2005.12 日本経済新聞社。
翁邦雄
「ポスト・マネタリズムの金融政策」2011.6 日本経済新
聞出版社。
「日本銀行」2013.7 筑摩書房。
「経済の大転換と日本銀行」2015.3 岩波書店。
「金利と経済」2017.2 ダイヤモンド社。
木内登英
「異次元緩和の真実」2017.11 日本経済新聞出版社。
白井さゆり
「超金融緩和からの脱却」2016.8 日本経済新聞出版社。
「東京五輪後の日本経済」2017.9 小学館。
高田創編著
「シナリオ分析 異次元緩和脱出」2017.10 日本経済新
聞出版社。
野口悠紀雄
「金融政策の死」2014.12 日本経済新聞出版社。
「異次元緩和の終焉」2017.10 日本経済新聞出版社。
早川英男
「金融政策の「誤解」」2016.7 慶応義塾大学出版会。
吉川洋
「デフレーション」2013.1 日本経済新聞出版社。
1.異次元金融緩和の概要
まず、2013 年 4 月以来進められてきた日
銀のいわゆる異次元金融緩和の内容につい
て概観する。
(1)政府・日本銀行の共同声明 2013.1
2008 年 9 月のリーマン・ブラザーズの破
綻を契機に米欧を中心に世界的な金融危機
が発生した。我が国では、サブプライムロ
ーン関連証券への投資は少なく、直接的影
響は限られたが、世界的な経済の冷え込み
から急速に円高・株安が進み、輸出の激減、
消費の低迷等によって、実質GDP成長率
(年率換算)が 2008 年 10-12 月期△12.7%、
2009 年 1-3 月期△15.2%となるなど、震源
地アメリカをも凌ぐ大幅な景気後退に見舞
われた。
日銀は、2008 年 10 月から政策金利(無
担保コール翌日物金利)の引下げ(0.5%から順
次 0〜0.1%へ)、2010 年 10 月から「包括的な
金融緩和政策」の実施と逐次の拡大を行っ
たが、2011 年 3 月に発生した東日本大震災
の影響も重なり、景気回復の足取りは重か
った。特に為替レートが 2011 年・2012 年
に1ドル80円を切る水準にまで円高が進ん
だことは、輸出関連産業を中心に深刻な影
響を与え、日銀のバランスシート(B/S)
の拡大規模やペースが米国の中央銀行・連
邦準備制度理事会(FRB)のそれより小
さく遅かったことが原因ではないかという
批判が半ば通説化して日銀に寄せられた。
そうした中、2012 年 11 月の民主党野田
5
首相の衆議院解散を受けて行われた総選挙
では、かねて日銀の政策に批判的だった安
倍自民党総裁が、野党党首として、高いイ
ンフレ目標の設定と無制限の金融緩和、円
安誘導の実施を公約して選挙戦を闘い、同
氏を次期首相と目する市場はこれに強く反
応して、以後翌 2013 年 5 月頃まで急速に円
安・株高が進むことになる。
12 月の総選挙の結果、自民党は政権に復
帰し、第 2 次安倍内閣が発足した。禁じ手
である円安誘導論は封印されるが、安倍首
相の経済政策は、アベノミクスの「3 本の
矢」=@大胆な金融政策、A機動的な財政
政策、B民間投資を喚起する成長戦力とし
て取りまとめられた。
こうした流れの中で、2013 年 1 月 22 日、
以下のような政府・日銀の政策連携の共同
声明(以下「共同声明」という)が公表された。
〇「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のため
の政府・日本銀行の政策連携について(共同声
明)」の概要
1.デフレからの早期脱却と物価安定の下での持
続的な経済成長の実現に向け、以下のとおり、政
府及び日本銀行の政策連携を強化し、一体となっ
て取り組む。
2.日本銀行は、今後、日本経済の競争力と成長
力の強化に向けた幅広い主体の取組の進展に伴い
持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率が高
まっていくと認識している。この認識に立って、
日本銀行は、物価安定の目標を消費者物価の前年
比上昇率で2%とする。 日本銀行は、上記の物価
安定の目標の下、金融緩和を推進し、これをでき
るだけ早期に実現することを目指す。
3.政府は、我が国経済の再生のため、機動的な
マクロ経済政策運営に努めるとともに、日本経済
再生本部の下、思い切った政策を総動員し、経済
構造の変革を図るなど、日本経済の競争力と成長
力の強化に向けた取組を具体化し、これを強力に
推進する。 また、政府は、日本銀行との連携強化
にあたり、財政運営に対する信認を確保する観点
から、持続可能な財政構造を確立するための取組
を着実に推進する。
4.経済財政諮問会議は、金融政策を含むマクロ
経済政策運営の状況、その下での物価安定の目標
に照らした物価の現状と今後の見通し、雇用情勢
を含む経済・財政状況、経済構造改革の取組状況
などについて、定期的に検証を行うものとする。
ポイントは、日本銀行は、@消費者物価
前年比上昇率 2%の物価安定目標の導入、
A金融緩和の推進による目標のできるだけ
早期の実現、政府は、@機動的なマクロ経
済政策運営、A日本経済の競争力と成長力
の強化に向けた取組の具体化と強力な推進、
B持続可能な財政構造の確立の着実な推進、
をそれぞれに行い、デフレ脱却と持続的な
経済成長の実現に一体となって取り組むと
したことである。
この共同声明は、前任の白川総裁の下で
公表されたものであるが、その後の黒田総
裁の異次元緩和を含め、今日に至るまで政
府・日銀の政策連携のベースを成している
ものと考えられる。
(2)「量的・質的金融緩和」の導入 2013.4
2013 年 3 月、白川総裁が退任し、黒田氏
が日銀総裁に就任した。総裁就任後初めて
となる 4 月 4 日の金融政策決定会合におい
て、「量的・質的金融緩和」の導入が決定さ
れた。いわゆる異次元金融緩和の始まりで
ある。
〇「量的・質的金融緩和」の概要
(1)「量的・質的金融緩和」の導入
日本銀行は、消費者物価の前年比上昇率2%の
「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に
6
置いて、できるだけ早期に実現する。このため、
マネタリーベースおよび長期国債・ETFの保有
額を2年間で2倍に拡大し、長期国債買入れの平
均残存期間を2倍以上に延長するなど、量・質と
もに次元の違う金融緩和を行う。
@マネタリーベース・コントロールの採用
量的な金融緩和を推進する観点から、金融市場
調節の操作目標を、無担保コールレート(オーバ
ーナイト物)からマネタリーベースに変更し、マ
ネタリーベースが、年間約60〜70兆円に相当
するペースで増加するよう金融市場調節を行う。
A長期国債買入れの拡大と年限長期化
イールドカーブ全体の金利低下を促す観点から、
長期国債の保有残高が年間約50兆円に相当する
ペースで増加するよう買入れを行う。また、長期
国債の買入れ対象を40年債を含む全ゾーンの国
債としたうえで、買入れの平均残存期間を、現状
の3年弱から国債発行残高の平均並みの7年程度
に延長する。
BETF、J−REITの買入れの拡大
資産価格のプレミアムに働きかける観点から、
ETFおよびJ−REITの保有残高が、それぞ
れ年間約1兆円、年間約300億円に相当するペ
ースで増加するよう買入れを行う。
C「量的・質的金融緩和」の継続
「量的・質的金融緩和」は、2%の「物価安定の
目標」の実現を目指し、これを安定的に持続する
ために必要な時点まで継続する。その際、経済・
物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検
し、必要な調整を行う。
(2)「量的・質的金融緩和」に伴う対応
@資産買入等の基金の廃止
資産買入等の基金は廃止する。「金融調節上の必
要から行う国債買入れ」は、既存の残高を含め、
上記の長期国債の買入れに吸収する。
A銀行券ルールの一時適用停止
上記の長期国債の買入れは、金融政策目的で行
うものであり、財政ファイナンスではない。また、
政府は、1月の「共同声明」において、「日本銀行
との連携強化にあたり、財政運営に対する信認を
確保する観点から、持続可能な財政構造を確立す
るための取組を着実に推進する」としている。こ
れらを踏まえ、いわゆる「銀行券ルール」を、「量
的・質的金融緩和」の実施に際し、一時停止する。
ポイントは、@日本銀行が、「消費者物価
の前年比上昇率 2%の物価安定目標を、2
年程度の期間を念頭に置いてできるだけ早
期に実現する」とし、このため、「量・質と
もに次元の違う金融緩和」を行い、「2%の
物価安定目標の実現を目指し、これを安定
的に持続するために必要な時点まで継続す
る」としたこと、A金融市場調節の操作目
標を金利からマネタリーベースに変更し、
これが年間約 60〜70 兆円のペースで増加
するよう金融市場調節を行うとしたこと、
Bこのため、長期国債、ETF(指数連動型
上場投資信託)、J−REIT(不動産投資信
託)の保有残高が、それぞれ年間約 50 兆円、
1兆円、300 億円のペースで増加するよう
買入れを行い、長期国債の買入れ対象を全
ゾーンの国債とし、買入れの平均残存期間
を現状の 3 年弱から 7 年程度に延長すると
したことなどである。
※1物価安定の目標と物価の基調:日銀は「物価
安定の目標」を消費者物価の総合指数で前年比上
昇率2%と定義している。主要国の中央銀行も基
本的に同様である。ただし、時々の物価情勢を評
価するに当たっては、一時的に大きく変動する要
因の影響を取り除いた物価の基調的な動きに注目
している。その代表的指標が、生鮮食品を除く物
価指数であり、長期的に総合指数と似た動きをし
ていること、総合指数を予測する力が高いことが
その根拠とされている。しかし、原油価格が大き
く変動するようになると、生鮮食品とエネルギー
を除く物価指数など様々な指標が公表されるよう
になった。また、需給ギャップや中長期の予想イ
ンフレ率も、物価の基調をみる重要な指標である。
なお、消費税率の引上げによる消費者物価指数
の押上げについては、@1 年経てばなくなる一時
7
的なものであること、A商品やサービスの対価の
上昇でなく、商品やサービスの消費に際して支払
うべき税金が上乗せされた結果に過ぎないことか
ら、日銀は、消費税率引上げの直接的な影響を除
いた物価指数により 2%の物価安定目標の達成を
目指している。
※2 日銀当座預金:民間金融機関が日銀に保有し
ている当座預金。@金融機関相互間や日銀、国と
の決済、A現金通貨の支払準備、B準備預金の役
割を果たす。
※3 所要準備額と超過準備:民間金融機関は、「準
備預金制度に関する法律」により、受け入れてい
る預金等の一定比率(準備率)以上の金額を日銀
に預け入れることが義務付けられている。日銀当
座預金のうち、この準備率に対応する部分が所要
準備額(法定準備預金額)、これを超える部分が超
過準備である。
※4 マネタリーベース:日銀と政府が供給してい
る通貨の総量。日本銀行券発行高+貨幣流通高(硬
貨)+日銀当座預金。日銀が長期国債等を買い入
れると、日銀のB/Sの資産に長期国債等、負債に
日銀当座預金が計上され、マネタリーベースが増
加する。
※5 マネーストック:金融部門(日銀等・民間金
融機関)が経済全体に供給している通貨の総量。
マネタリーベースに含まれる日銀当座預金や金融
部門が保有する銀行券・貨幣は含まない。通貨と
して何を含めるかは国や時代によって異なり得る。
我が国では、M1、M2、M3、広義流動性の 4 つの
指標が作成・公表されている。M1=現金通貨(日
本銀行券発行高・貨幣流通高)+預金通貨(要求
払預金)、M2=M1+準通貨(定期性預金等)+C
D(譲渡性預金)(発行者は国内銀行等)、M3=M
1+準通貨+CD(発行者は全預金取扱機関)
※6 日銀券ルール:金融調節上の必要から行う国
債買入れを通じて日本銀行が保有する長期国債の
残高について、銀行券発行残高を上限とするとい
う考え方(2001 年 3 月決定)。2010 年 10 月の「包
括的な金融緩和政策」も適用停止となっている。
(3)「量的・質的金融緩和」の拡大 2014.10
量的・質的金融緩和導入後、我が国経済
は基調的に緩やかな回復を続け、先行きも
潜在成長率を上回る成長を続けると予想さ
れたが、物価は、2014 年 4 月の消費税率引
上げ後の需要の弱めの動きや 2014 年夏以
降の原油価格の大幅な下落が下押し要因と
して働いた。こうした状況を踏まえ、日銀
は、2014 年 10 月、それまで着実に進んで
きたデフレマインドの転換が遅延するリス
クがあり、その顕現化を未然に防ぎ、好転
している期待形成のモメンタムを維持する
ためとして、次のとおり量的・質的金融緩
和を拡大した。
○「量的・質的金融緩和の拡大」の概要
(1)マネタリーベース増加額の拡大
マネタリーベースが、年間約 80 兆円(約 10〜
20 兆円追加)に相当するペースで増加するよう金
融市場調節を行う。
(2)資産買入れ額の拡大および長期国債買入れの
平均残存年限の長期化
@長期国債について、保有残高が年間約 80 兆円
(約 30 兆円追加)に相当するペースで増加するよ
う買入れを行う。買入れの平均残存期間を 7 年〜
10 年程度に延長する(最大 3 年程度延長)。
AETFおよびJ−REITについて、保有残高
が、それぞれ年間約 3 兆円(3 倍増)、年間約 900
億円(3 倍増)に相当するペースで増加するよう
買入れを行う。
増加ペースを約 80 兆円(従前約 60〜70 兆円)
に増額するとともに、A長期国債、ETF、
J−REIT保有残高の年間増加ペースを
それぞれ約 80 兆円(従前約 50 兆円)、約 3
兆円(同約 1 兆円)、約 900 億円(同約 300 億
円)に増額し、長期国債買入れの平均残存
期間を 7〜10 年程度 ポイントは、@マネ
タリーベースの年間(同 7 年程度)に延長す
るとしたことである。
8
(4)「マイナス金利付き量的・質的金融緩
和」の導入 2016.1
2015 年夏頃から再度低下を始めた原油
価格は、2016 年の年明け後、一段と下落し
た。また、中国をはじめとする新興国・資
源国経済に対する先行き不透明感などから、
金融市場は世界的に不安定な動きとなり、
円高・株安が進行した。このため、日銀は、
2016 年 1 月、企業コンフィデンスの改善や
人々のデフレマインドの転換が遅延し、物
価の基調に悪影響が及ぶリスクが増大して
いる、こうしたリスクの顕現化を未然に防
ぎ、2%の物価安定の目標に向けたモメンタ
ムを維持するためとして、新たに「マイナ
ス金利付き量的・質的金融緩和」の導入を
決定した。
○「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の概

日本銀行は、2%の物価安定の目標をできるだ
け早期に実現するため、「マイナス金利付き量的・
質的金融緩和」を導入することを決定した。今後
は、量・質・金利の3つの次元で緩和手段を駆使
して、金融緩和を進めていくこととする。
(1)「金利」:マイナス金利の導入
金融機関が保有する日本銀行当座預金に▲
0.1%のマイナス金利を適用する。今後、必要な場
合、さらに金利を引き下げる。具体的には、日本
銀行当座預金を3段階の階層構造に分割し、それ
ぞれの階層に応じてプラス金利、ゼロ金利、マイ
ナス金利を適用する(※)。
※3段階の階層構造
(1)基礎残高(+0.1%を適用)
各金融機関の日本銀行当座預金残高のうち、
2015 年1〜12 月積み期間における平均残高まで
の部分を、既往の残高に対応する部分として、+
0.1%を適用する。
(2)マクロ加算残高(ゼロ%を適用)
以下の合計額にはゼロ%を適用する。
@所要準備額に相当する残高
A金融機関が貸出支援基金および被災地金融機関
支援オペにより資金供給を受けている場合には、
その残高に対応する金額
B日本銀行当座預金残高がマクロ的に増加するこ
とを勘案して、適宜のタイミングで、マクロ加算
額を加算していく。
(3)政策金利残高(▲0.1%を適用)
各金融機関の当座預金残高のうち、(1)と(2)を
上回る部分に、▲0.1%のマイナス金利を適用する。
金融機関の現金保有によってマイナス金利の効
果が減殺されることを防止する観点から、金融機
関の現金保有額が基準期間から大きく増加した場
合には、その増加額を、マクロ加算残高(それを
上回る場合には、基礎残高)から控除する。
ポイントは、@日銀が各金融機関から受
け入れている日銀当座預金を 3 つの階層に
区分し、A基礎残高に+0.1%、マクロ加算
残高にゼロ%、これら以外の政策金利残高
に△0.1%の金利を適用するとしたことで
ある(図表 1)。
2008 年 10 月の補完当座預金制度の導入
以降、超過準備には 0.1%の付利が行われ
てきた。基礎残高とマイナス金利が適用さ
れる政策金利残高が適切な規模となるよう
増額されるマクロ加算残高は、こうした経
緯と金融機関の負担軽減のために設けられ
た階層と考えられる。しかし、金融取引の
価格は、ある新しい取引を行うことに伴う
限界的な損益によって決まるため、金融市
場では政策金利残高に適用される△0.1%を
前提に金利や相場の形成が行われる。
日銀は、「当座預金金利をマイナス化する
ことでイールドカーブの起点を引き下げ、
大規模な長期国債買入れとあわせて、金利
全般により強い下押し圧力を加えていく」
としている。
※7 補完当座預金制度:超過準備に利息を付す制
9
度。日銀当座預金は無利子が原則であり、金融機
関はこれを嫌って超過準備を持たないのが通常で
あるが、2008 年 10 月、当時の金融情勢に鑑み、
積極的な資金供給を円滑に行うための臨時の措置
として導入された制度である。
(図表 1) マイナス金利の仕組み
出典:日本銀行・講演資料
(5)「「量的・質的金融緩和」導入以降の
経済・物価動向と政策効果についての総括
的な検証」と「長短金利操作付き量的・質
的金融緩和」の導入 2016.9
2016 年 7 月、日銀は、英国のEU離脱問
題や新興国経済の減速を背景に海外経済の
不透明感が高まり、国際金融市場では不安
定な動きが続いているとして、@ETF買
入れ額の増額(約3.3兆円から約6兆円へ)、
A企業・金融機関の外貨資金調達環境の安
定のための措置を決定した。また、こうし
た状況を踏まえ、2%物価安定目標のできる
だけ早期の実現の観点から、次回の金融政
策決定会合において、「量的・質的金融緩
和」・「マイナス金利付き量的・質的金融緩
和」のもとでの経済・物価動向や政策効果
について総括的な検証を行うこととした。
これを受け、2016 年 9 月、日銀は、以下
のとおり総括的な検証を行うとともに、こ
れを踏まえ、「長短金利操作付き量的・質的
金融緩和」の導入を決定した。
〇「「量的・質的金融緩和」導入以降の経済・物価
動向と政策効果についての総括的な検証」の概

(1)「量的・質金融緩和」のメカニズム
「量的・質的金融緩和」は、予想物価上昇率の
押し上げと名目金利の押し下げにより、実質金利
を低下させた。自然利子率は趨勢的に低下してい
るが、実質金利はその水準を十分下回っており、
金融環境は改善した。その結果、経済・物価の好
転をもたらし、物価の持続的な下落という意味で
のデフレではなくなった。
(2)2%の実現を阻害した要因
しかしながら、2%の「物価安定の目標」は実
現できていない。(i)@原油価格の下落、A消費税
率引き上げ後の需要の弱さ、B新興国経済の減速
とそのもとでの国際金融市場の不安定な動きとい
った外的な要因が発生し、実際の物価上昇率が低
下したこと、(ii)その中で、もともと適合的な期
待形成の要素が強い予想物価上昇率が横ばいから
弱含みに転じたことが主な要因と考えられる。
(3)予想物価上昇率の期待形成メカニズム
2%の「物価安定の目標」を実現するためには、
フォワード・ルッキングな期待形成の役割が重要
である。マネタリーベースの長期的な増加へのコ
ミットメントが重要である。
(4)マイナス金利と国債買入れによるイールドカ
ーブの押し下げ
マイナス金利の導入は、国債買入れとの組み合
わせにより、短期金利のみならず長期金利も大き
く押し下げた。中央銀行がイールドカーブ全般に
影響を与えるうえで、この組み合わせが有効であ
ることが明らかになった。
(5)イールドカーブ引き下げの効果と影響
国債金利の低下は、貸出・社債・CP 金利の低下
にしっかりとつながっている。金融機関の貸出態
度は引き続き積極的である。
イールドカーブの形状に応じた経済・物価への
効果や金融面への影響については、以下の点に留
意する必要がある。@経済への影響は、短中期ゾ
ーンの効果が相対的に大きい、Aただし、マイナ
ス金利を含む現在の金融緩和のもとで、超長期社
債の発行など企業金融面の新しい動きが生じてお
り、こうした関係は変化する可能性がある、Bイ
10
ールドカーブの過度な低下、フラット化は、広い
意味での金融機能の持続性に対する不安感をもた
らし、マインド面などを通じて経済活動に悪影響
を及ぼす可能性がある。
○「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の概

日本銀行は、2%の「物価安定の目標」をでき
るだけ早期に実現するため、「長短金利操作付き量
的・質的金融緩和」を導入することを決定した。
その主な内容は、第1に、長短金利の操作を行う
「イールドカーブ・コントロール」、第2に、消費
者物価上昇率の実績値が安定的に2%の「物価安
定の目標」を超えるまで、マネタリーベースの拡
大方針を継続する「オーバーシュート型コミット
メント」である。
(1)長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)
@金融市場調節方針
金融市場調節方針は、長短金利の操作について
の方針を示すこととする。今後、必要な場合、さ
らに金利を引き下げる。
短期金利:日本銀行当座預金のうち政策金利残
高に△0.1%のマイナス金利を適用する。
長期金利:10 年物国債金利が概ね現状程度(ゼ
ロ%程度)で推移するよう、長期国債の買入れを
行う。買入れ額については、概ね現状程度の買入
れペース(保有残高の増加額年間約 80 兆円)を
めどとしつつ、金利操作方針を実現するよう運営
する。買入対象については、引き続き幅広い銘柄
とし、平均残存期間の定めは廃止する。
A長短金利操作のための新型オペレーションの導

(i)日本銀行が指定する利回りによる国債買入れ
(指値オペ)、(ii)固定金利の資金供給オペレー
ションを行うことができる期間を 10 年に延長
(現在は1年)
(2)長期国債以外の資産買入れ方針
@ ETFおよびJ−REITについて、保有残高
が、それぞれ年間約6兆円、年間約 900 億円に相
当するペースで増加するよう買入れを行う。
ACP等、社債等について、それぞれ約 2.2 兆円、
約 3.2 兆円の残高を維持する。
(3)オーバーシュート型コミットメント
日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現
を目指し、これを安定的に持続するために必要な
時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」
を継続する。マネタリーベースの残高は、上記イ
ールドカーブ・コントロールのもとで短期的には
変動しうるが、消費者物価指数(除く生鮮食品)
の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超える
まで、拡大方針を継続する。
今後とも、経済・物価・金融情勢を踏まえ、2%
の「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持
するため、必要な政策の調整を行う。
ポイントは、@金融市場調節方針は、長
短金利操作について示すこととし、短期金
利は△0.1%、長期金利は 10 年物国債金利
ゼロ%程度としたこと、A長期国債の買入
れ額は、保有残高増加額年間約 80 兆円を
目途としつつ、金利操作方針を実現するよ
う運営するとしたこと、B新たに日銀が利
回りを指定して国債を買入れる指値オペを
導入したこと、C消費者物価指数(除く生
鮮食品)前年比上昇率の実績値が安定的に
2%を超えるまでマネタリーベースの拡大
方針を継続するとしたことである。
日銀は、新たな枠組み導入の考え方につ
いて、次のように説明している。
@量的・質的金融緩和は、主として実質金
利低下の効果により経済・物価の好転をも
たらし、日本経済は物価の持続的な下落と
いう意味でのデフレではなくなった。この
実質金利低下の効果を長短金利の操作によ
り追求する「イールドカーブ・コントロー
ル」を新たな枠組みの中心に据えることと
した。
A予想物価上昇率をより強力な方法で高め
ていくことが必要と判断し、第1にフォワ
11
ード・ルッキングな期待形成を強めるため、
オーバーシュート型コミットメントを採用
した。第2に枠組みの中心にイールドカー
ブ・コントロールを据えることで経済・物
価・金融情勢に応じたより柔軟な対応を可
能とし、政策の持続性を高めることが適当
であると判断した、
2.異次元金融緩和の考え方
日銀の金融政策は、年 8 回開催される「金
融政策決定会合」において、政策委員 9 名
(総裁、2 名の副総裁、6 名の審議委員)の多数
決によって決定される。したがって、各委
員によって意見の相違もあり得るが、ここ
では、日銀を代表する黒田総裁の講演録を
中心に、異次元金融緩和の考え方について
整理してみたい。
(1)デフレの問題点
@緩やかだが、長期にわたるデフレの進行
我が国では、1990 年代初頭にバブルが崩
壊し、企業の破綻や金融機関のバランスシ
ート毀損を背景に、景気の悪化、不良債権
の増加、物価の下落、円高などが相互に影
響しながら進行する悪循環が発生して、経
済成長率とインフレ率が低下した。1997 年
には大手金融機関が破綻するなど大規模な
金融危機が発生し、1998 年夏にはインフレ
率がゼロ%を下回った。こうした状況の下
で、日銀は、1990 年 8 月に 6%であった政
策金利を一貫して引き下げ、1998 年 9 月に
は 0.25%とゼロ近傍に達した。こうして日
本ではデフレとゼロ金利制約が理論ではな
く現実の話となった。
デフレとは、一般的に「物価が持続的に
下落する状態」を指すが、日本経済は、90 年
代後半以降、15 年わたってデフレが続いて
いる。日本のデフレの特徴は、1930 年代の
大恐慌時の急激かつ大幅な物価下落とは異
なり、極めて緩やかな物価下落が長く続い
ていることである。実際、1998 年度から
2012 年度についてみると、消費者物価の下
落率は平均して年△0.3%に過ぎない(図表
2)。失業率をみても、最も悪い時期でも
5.5%で町に失業者が溢れるといったこと
はなかった。しかし、こうしたデフレが 15
年の長きにわたって続いている。
大恐慌が激烈で急性の症状だったとすれ
ば、日本のデフレは慢性の生活習慣病のよ
うな症状を呈している。
(図表 2)デフレ下での消費者物価(除生鮮食品)
出典:日本銀行・講演資料
Aデフレは、景気低迷の「結果」であると
ともに、景気低迷長期化の「原因」
長期にわたるデフレの原因としては、バ
ブル崩壊による過剰設備や雇用の調整、不
良債権問題と金融システム不安、アジア通
貨危機・ITバブルの崩壊・リーマンショ
ック・東日本大震災等のネガティブショッ
ク、新興国の台頭、企業の低価格戦略、労
働市場の構造変化、過度な円高の進行など
様々なものが考えられる。
しかし、重要なことは、これらの要因に
よって現実の物価が低下し続けると、人々
12
の間に「物価は上がらない、むしろ下がる
ものだ」というデフレ予想が生まれ、一旦
こうしたマインドが定着すると、人々は物
価が上がらないことを前提に意思決定や行
動を行うようになることである。
デフレを前提とする経済には以下のよう
な問題があり、デフレは、景気低迷の「結
果」であるとともに、それ自体が景気低迷
の長期化をもたらす「原因」になったと考
えられる。
@売上の減少と消費の低迷の悪循環
企業にとっては、デフレの下では製品や
サービスの価格を引き上げることができな
いため、売上高は伸びず、収益も上がりに
くくなる。このため、人件費や原材料費、
設備投資をできるだけ抑制することになる。
一方、家計にとっては、賃金が上がらな
いため、消費を抑えることになる。また、
将来物価が下落するのであれば、消費をで
きるだけ先送りしようとする傾向が強まる。
このようにして消費が抑制されれば、企業
はさらに価格の引下げを余儀なくされる。
こうして、価格の下落→売上・収益の減
少→賃金の抑制→消費の低迷→価格の下落
の悪循環が生まれ、続くことになる。
A投資の抑制と成長力の低下
デフレは、企業の投資判断にも影響する。
第 1 に、デフレ予想が定着すると、たと
え名目金利が低下しても、名目金利から予
想物価上昇率を差し引いた実質金利は高止
まりし、投資意欲を減退させる。
第 2 に、デフレ予想が定着すると、現金
や預金は金利がゼロないし極めて低い水準
であっても、これらを保有することが相対
的に有利な投資になる。デフレは、実物投
資やリスク性資産の収益率を低下させる一
方で、元本が保証される現金や預金の実質
的な収益率を高める方向に作用する。
こうして設備や研究開発に投資して、リ
スクを取って新しいビジネスに挑戦しよう
とするインセンティブを削がれると、需要
不足から景気の低迷とデフレが自己実現的
に長期化するとともに、経済の成長力も低
下を続けることになる。
(2)「2%の物価安定の目標」の実現
日銀は、日本銀行法に定められていると
おり、「物価の安定を図ることを通じて国民
経済の健全な発展に資すること」を理念と
して金融政策を実施している(法 2 条)。
共同声明等において、日銀が「物価安定
の目標を消費者物価の前年比上昇率で
2%」としたのは、以下の理由からこの「物
価の安定」を具体的に定義したものであり、
「これをできるだけ早期に実現することを
目指す」としたのは、法に定める物価安定
の使命を果たすため自ら決定したものであ
る。
@消費者物価指数の上方バイアス
一般に消費者物価指数には、指数の上昇
率が高めに出る傾向=上方バイアスがある
ことが知られている。実際 1998 年度以降
についてみると、消費者物価指数の変化率
は、GDPデフレーターの変化率を平均し
て1%程度上回っている。このため、消費
者物価指数の前年比で「物価安定の目標」
を定義する場合には、ある程度プラスの値
にすることが必要である。
A金利の引下げ余地の確保:金融政策の
「のりしろ」
ごく単純化すれば、景気に対して中立的
な金利水準は、経済が持つ潜在的な成長率
13
と平均的な物価上昇率の合計によって決ま
る。この 15 年間の困難を踏まえれば、デ
フレを未然に防止するための有効な手段で
ある金利操作のチャネルについて、これが
容易にゼロ金利制約に直面して失われるこ
とのないよう、2%程度の物価上昇を安定的
に実現し、金利の引下げ余地を確保してお
くことが重要である。
B物価安定目標のグローバル・スタンダー
ド:中長期的な為替相場等の安定
物価指数の特性と金利の引下げ余地の確
保の観点から、世界の中央銀行の多くが
2%の物価上昇を目標とする政策運営を行
っている。具体的には、英国、カナダ、ニ
ュージーランドなどでインフレ・ターゲッ
トを 2%としているほか、米国でも長期的
な物価安定のゴールを 2%としている。ま
た、ユーロ圏では物価安定の数値的な定義
を示す形で 2%未満かつ 2%近傍としてい
る(図表 3)。
このように 2%の物価上昇は、世界の主
要中央銀行の物価安定目標のグローバル・
スタンダードになっており、中長期的に為
替相場の安定を図り、金融資本市場や企業
活動の安定に資するためには、世界各国と
ともにこれを共有することが必要である。
(図表 3)各国の物価安定目標
出典:日本銀行・講演資料
(3)「量的・質的金融緩和」のポイント
@強く明確なコミットメント
まず、今回の決定で、日銀は、「消費者物
価の前年比上昇率 2%の物価安定目標を、2
年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ
早期に実現する」と明確に表明した。
A量・質ともに次元の違う金融緩和
次に、このコミットメントを裏打ちする
手段として、量・質両面の金融緩和を行う
ことを決めた。具体的には、金融市場調節
の操作目標を「金利」からマネタリーベー
スという「量」に変更し、これを年間約 60
〜70 兆円のペースで増加させることにし
た。その手段として、長期国債の保有残高
が年間約 50 兆円のペースで増加するよう
買入れる。質の面では、買入れ対象を全て
のゾーンの国債に拡大した上で、買入れの
平均残存期間を現状の 3 年弱から国債発行
残高の平均並みの 7 年程度に延長した。さ
らに、資産価格のプレミアムに働きかける
観点から、ETFとJ−REITの保有残
高がそれぞれ年間約1兆円、約 300 億円の
ペースで増加するよう買入れを行うことに
した。
Bわかりやすい金融政策
包括的金融緩和で導入された「資産買入
等の基金」を廃止し、長期国債の買入れ方
式を一本化した。また、量的緩和の指標と
してマネタリーベースを選択した。日銀の
積極的な金融緩和姿勢を対外的にわかりや
すく伝える上で最も適切であると判断した
からである。
C金融緩和の継続期間
量的・質的金融緩和は、「2%の物価安定
目標の実現を目指し、これを安定的に持続
するために必要な時点まで」継続する。日
14
銀のコミットメントは、2%の物価上昇率を
できるだけ早期に実現することであるが、
これは一時的にでも 2%を達成すればよい
ということではない。2%の水準を安定的に
維持することが重要であり、物価の基調的
な動きを見極めながら、これを実現するの
に必要な時点まで金融緩和を継続する。
(4)「量的・質的金融緩和」の効果:金融
緩和効果の波及経路
@金利と資産価格プレミアムの引下げ
長期国債やETF、J−REITの買入
れは、長めの金利の低下を促し、資産価格
のプレミアムに働きかける効果を持つ。こ
れが、資金調達コストの低下を通じて企業
などの資金需要を喚起する。
Aポートフォリオ・リバランス
日銀が長期国債を大量に買入れる結果、
これまで長期国債の運用を行っていた投資
家や金融機関が株式や外債等のリスク資産
へ運用をシフトしたり、貸出しを増やした
りするポートフォリオ・リバランス効果が
期待される。
B予想インフレ率の引上げ
物価安定目標の早期実現を約束し、次元
の違う金融緩和を継続することにより、市
場や経済主体の期待を抜本的に転換する効
果が考えられる。デフレ期待の払拭である。
予想インフレ率が上昇すれば、現実の物価
に影響を与えるだけでなく、実質金利の低
下などを通じて民間需要を刺激することも
期待できる。
※8 予想インフレ率:人々が予想する将来の物価
上昇率。予想物価上昇率,期待インフレ率ともい
う。利付国債と物価連動国債の利回り差から求め
るブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)のほか、
過去のインフレ率の実績、各種アンケート調査結
果などから推定される。一般に実際のインフレ率
と連動して変動するが、多くの人が一定の物価上
昇率が続くと予想すると、それをベースに行動す
るため、実際の物価上昇率にも影響すると考えら
れている。
※9 フィッシャー方程式と実質金利:名目金利=
実質金利+予想インフレ率。実質金利は、本来異
時点間の財の相対価格であり、予想インフレ率と
は無関係に決まるが、現実にはこれを直接観測す
ることができず、また、名目金利が硬直性を示す
こともあることから、名目金利と予想インフレ率
からフィッシャー方程式によって計算される値が
実質金利とみなされる。ここから、予想インフレ
率が上昇したとき、名目金利が同様に上昇しなけ
れば、実質金利が低下するという関係が導かれる。
(5)金融政策運営を巡る論点
@為替相場への影響
日銀の金融政策は、あくまで国内物価の
安定を目的としており、為替をターゲット
として金融政策を運営することはない。
我が国経済がデフレから脱却することは、
世界経済全体にも好影響を与えていくと考
えており、こうした点は既に国際的にも理
解を得られていると思う。
A財政ファイナンスとの関係
量的・質的金融緩和による長期国債の買
入れは、金融政策上の目的のために日銀自
身の判断で行うものであり、財政ファイナ
ンスではない。
こうした議論を惹起しないためにも、政
府が今後の財政健全化に向けた道筋を明確
にし、財政構造改革を着実に進めていくこ
とは極めて重要である。政府も、共同声明
において、「日本銀行との連携強化にあたり、
財政運営に対する信認を確保する観点から、
持続可能な財政構造を確立するための取組
15
を着実に推進する」としており、そうした
取組に強く期待している。
※10 財政ファイナンス:一般に中央銀行が政府の
発行する国債などを直接引き受けることを言う。
中央銀行が政府の財政赤字を直接補填する措置で
あり、国債のマネタイゼーションとも呼ばれる。
我が国では財政法 5 条により、特別の事由がある
場合を除き禁止されている。
B「三本の矢」との関係
現在政府進めている「三本の矢」は、極
めて適切な政策パッケージだと思う。
第1の矢である「大胆な金融緩和」は、
日銀の役割であり、日銀は責任を持って実
現する。「三本の矢」の他の2本、「機動的
な財政政策」や「成長戦略」の実行によっ
て成長見通しを引き上げていくことは、よ
りスムースに物価安定目標を達成すること
にも繋がる。その着実な実行を大いに期待
している。
(6)デフレからの脱却
@デフレからの脱却とは
量的・質的金融緩和は、我が国の経済が
デフレを脱却して、2%の物価安定目標が安
定的に持続する状態となるよう実施してい
る。これは、「物価は上がらない」という人々
の認識を変え、景気が普通の状態であって
も「物価はだいたい2%くらい上がる」こ
とを前提に各経済主体が行動するようにな
る状態にすることである。
このため、人々の中長期的なインフレ予
想を 2%程度まで引き上げ、そこでアンカ
ーする必要があり、これができれば、物価
は平均的にその近傍で安定的に推移し、仮
に景気悪化などによって一時的な下落圧力
がかかっても、継続的に物価が下落するデ
フレに陥ることは回避できるようになる。
量的・質的金融緩和は、デフレ下で定着
してしまった悪循環をちょうど逆回転させ
ようとするものであり、予想インフレ率の
上昇=デフレ期待の払拭を起点として、物
価の緩やかな上昇→売上・収益の増加→賃
金の上昇→消費の活性化→価格の緩やかな
上昇という経済の好循環を実現し、定着さ
せようとするものである。
※11 フィリップス曲線:賃金上昇率又は物価上昇
率と失業率の負の関係を示した曲線。インフレ率
=γ×(自然失業率−実際の失業率):γ正のパラ
メータ。これを将来のインフレ予想及び(自然失業
率−実際の失業率)と需給ギャップの比例的関係
を考慮して修正すると、物価上昇率と需給ギャッ
プの関係を示すフィリップス曲線が得られる。イ
ンフレ率=予想インフレ率+δ×需給ギャップ:
δ正のパラメータ。
黒田総裁は、「1990 年代後半以降、日本のフィ
リップス曲線は、人々の予想インフレ率の低下に
より、それ以前より低下している(図 4)。量的・
質的金融緩和は、この予想インフレ率を引き上げ
ることによって、需給ギャップがゼロ、即ち景気
が普通の状態の時に物価上昇率が 2%となるよう
フィリップス曲線を上方にシフトさせる政策」と
説明している。
(図表 4) フィリップス曲線
出典:日本銀行・講演資料
16
A量的・質的金融緩和による「期待の転換」
量的・質的金融緩和は、「期待の転換」を
特に重視している点で、日銀のこれまでの
金融緩和政策や海外の主要中央銀行が実施
している金融緩和政策と大きく異なる。
強く明確なコミットメントとそれを裏打
ちする異次元の金融緩和は、フォワード・
ルッキングに人々の予想インフレ率を引き
上げる。こうした予想インフレ率の上昇は、
フィリップス曲線を直接上方にシフトさせ、
実際のインフレ率を高める。また、実質金
利の低下やポートフォリオ・リバランスは、
景気刺激効果を強化し、需給ギャップの縮
小を通じて実際のインフレ率を上昇させる。
こうして実際に物価が上がり始めれば、バ
ックワード・ルッキングにも予想インフレ
率が上昇し、好循環が生まれることになる。
B2%の物価安定目標の早期実現を目指す
理由:諸外国との違い
日銀を含む多くの中央銀行は、2%程度の
物価上昇率を目標に金融政策運営を行って
いる。しかし、各国の消費者物価は、その
時々でかなり広いレンジで推移しており、
各中央銀行は、「中期的に平均して」あるい
は「景気循環の波を通じて」、目標とする水
準を達成するように金融政策を運営してい
る。その際、各中央銀行が重視しているの
が中長期的な予想インフレ率の動向である。
なぜなら、中長期的な予想インフレ率が
2%程度でアンカーされていれば、景気の循
環や一時的な要因により実際の物価上昇率
が目標とする水準から離れたとしても、中
期的・平均的には物価安定の目標を達成で
きる可能性が高いと考えられるためである。
日銀の物価安定の目標も基本的には同様
の考え方に基づくものであるが、日本の場
合は、長年にわたるデフレの下で、中長期
的な予想インフレ率がゼロ%近傍まで低下
しているとみられることから、人々の「物
価は上がらない」という感覚を早期かつ抜
本的に転換し、これを 2%程度まで引き上
げてアンカーし直すことが必要である。
デフレ均衡は一つの安定的な状態であり、
そこに向けて引力が働く。そこから脱却し、
縮小均衡から拡大均衡に転換するためには、
ロケットが地球の引力圏から離れる時のよ
うに「速度と勢い」が必要である。「2%の
物価上昇率にこだわる必要はなく、1%程度
でも十分ではないか」との意見も聞かれる
が、2%の物価安定目標がグローバル・スタ
ンダードとなっているのは、デフレに陥ら
ないためのいわば経験知であり、1%の低
い軌道ではまた引力に引き戻されるおそれ
がある。また、「2%を目指すにしても、2
年程度という期間にこだわる必要はないの
ではないか」との意見もあるが、「いつか
2%にする」では、デフレマインドが定着し
てしまった人々が「これからは 2%を前提
に行動しよう」とは思わないであろう。こ
れが、日銀が 2%の物価安定目標の早期実
現にこだわる理由であり、期待形成のモメ
ンタムの維持を重視する理由である。
C成長戦略と金融政策
日本の潜在成長率は、1990 年代以降低下
を続け、最近では 0%台半ばで推移してい
る(図表 5)。その向上を図るため、政府に
おいて、民間投資を喚起するための成長戦
略として「日本再興戦略」を策定・改訂し、
その実行に取り組んでおり、日銀としては、
その着実な実施に強く期待している。
成長力強化の取組は極めて重要であるが、
中長期的課題であり、それが実を結び、実
17
際に潜在成長率が引き上げられるまでには
ある程度の時間を要する。しかし、それに
よって、金融政策運営上、物価安定目標の
達成が困難になることはない。量的・質的
金融緩和を着実に推進することで、需給ギ
ャップの改善と予想インフレ率の上昇を通
じ、2%は達成できると考えている。
その上で強調したいのは、デフレから脱
却すること自体が日本経済の成長力の強化
に資するということである。成長力の源泉
はあくまでも民間企業の投資とイノベーシ
ョンであり、政府の成長戦略の役割は企業
がビジネスチャンスを十分に活かせるよう
な環境を整備することである。デフレから
脱却し、経済主体が 2%の物価上昇を前提
に行動するような経済・社会を実現するこ
とは、失われたアニマルスピリットを復活
させることになると考えられる。
(図表 5) 潜在成長率
出典:日本銀行・講演資料
(7)「量的・質的金融緩和」拡大の意義
消費税率引上げ後の反動減は、自動車な
どの耐久消費財を中心にやや長引いている。
また、このところ原油価格が大幅に下落し
ている。現在の物価下押し圧力が残存する
場合、これまで着実に進んできたデフレマ
インドの転換が遅延する可能性も否定でき
ない。これは量的・質的金融緩和の核とな
るメカニズムに関するリスクであり、こう
したリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転し
ている期待形成のモメンタムを維持するた
めに、量的・質的金融緩和を拡大すること
とした。今般の措置は、日銀の揺るぎない
コミットメントを示すものにほかならない。
(8)「マイナス金利付き量的・質的金融緩
和」導入の意義と効果
2016 年年明け以降、原油価格の一段の下
落に加え、中国をはじめとする新興国・資
源国経済の先行き不透明感などから、金融
市場は世界的に不安定な動きとなっている。
こうした状況を踏まえると、企業のコンフ
ィデンスの改善や人々のデフレマインドの
転換が遅延し、物価の基調に悪影響が及ぶ
リスクが増大していると考えられる。こう
したリスクの顕現化を未然に防ぎ、2%物価
安定目標の達成に向けたモメンタムを維持
するため、「マイナス金利付き量的・質的金
融緩和」の導入を決定した。
マイナス金利の適用と大規模な長期国債
買入れで、イールドカーブ全体により大き
な下押し圧力を加えることができる。日銀
は、この枠組みの下、「量」・「質」・「マイナ
ス金利」の3つの次元で金融緩和を進めて
いく(図表 6)。
なお、一部に「量的・質的金融緩和の限
界」が言われるが、長期国債の買入れにつ
いても、全体の約3分の2が市場に残って
おり、更に買入れを拡大することは十分可
能である。また、オペ先の金融機関がマイ
ナス金利で被るコスト負担は、長期国債等
の売買価格の上昇、すなわち利回りの低下
で釣り合うことになるので、マイナス金利
政策の下でも、長期国債の買入れが困難に
18
なることはないと考えている。
(図表 6)マイナス金利導入後の国債イールドカー
ブの変化
出典:日本銀行・講演資料
(9)「長短金利操作付き量的・質的金融緩
和」導入の意義と考え方
@金融政策の課題への対応
前例のない大規模な金融緩和を行ったに
もかかわらず、日本におけるインフレ予想
の形成は依然としてかなりの程度「適合的」
であり、2014 年夏以降の原油価格の大幅下
落を受けて物価上昇率が低下すると、これ
により予想物価上昇率は再び低下傾向をた
どっている(図表 7)。また、長短金利が有
意にプラス領域にあったときは、金利は低
いほど金融緩和効果が高まると考えること
ができたが、短期金利がマイナスとなり、
長期金利も極めて低い水準まで低下すると、
金融仲介機能ひいては金融緩和効果を低下
させる副作用やコストが生じ得ることが認
識された。こうして、第 1 に、一度低下し
たインフレ予想をどのように引き上げ、目
標である 2%に再びアンカーするか、第 2
に、経済・物価に対し最大限の金融緩和効
果を引き出す最適なイールドカーブの水準
や形状があるのではないかが金融政策の大
きな課題になってきた。
これら二つの課題に対応するため、日銀
は従来の政策枠組みを発展・強化する形で、
「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」
の導入を決定した。
(図表 7) 予想物価上昇率
出典:日本銀行・講演資料
Aオーバーシュート型コミットメント
オーバーシュート型コミットメントは、
「消費者物価上昇率の実績値が安定的に
2%を超えるまでマネタリーベースの拡大
方針を継続すること」を約束し、人々の物
価観に一段と積極的に働きかけることを企
図したものである。
ポイントは、消費者物価上昇率の「見通
し」でなく、「実績値」に基づいたコミット
メントとしたことである。金融政策が経
済・物価に影響するまでには時間差がある
ことを踏まえると、中央銀行が実績値をベ
ースにここまで強いコミットメントを行う
ことは異例である。しかし、長年インフレ
が続いてきた我が国において、予想物価上
昇率を 2%程度に引き上げ、その水準でし
っかりとアンカーするためには、人々が実
際に 2%を超える物価上昇率を経験し、「物
価は毎年 2%くらい上がっていくものだ」
という物価観を定着させていくことが必要
である。このため、オーバーシュート型コ
ミットメントによって、こうした姿が実現
19
するまで大規模な金融緩和を継続すること
を約束したものである。
Bイールドカーブ・コントロール
イールドカーブ・コントロールは、従来
のマネタリーベースの増加額や国債買入額
に代えて、長短金利水準を金融市場調節方
針の操作目標とし、2%の物価安定目標の達
成に向け最も適切と考えられるイールドカ
ーブの形成を促すこととしたものである。
中央銀行による金利操作については、伝
統的に「短期金利の操作はできるが、長期
金利の操作はできない」と考えられてきた。
グローバル金融危機以降、量的緩和政策を
導入したいずれの中央銀行も、国債の買入
額を操作目標とし、その結果として長期金
利が内生的に決まるという枠組みを採用し
ている。
しかし、総括的な検証では、国債買入れ
が長期金利に及ぼす影響は時々の状況によ
ってかなり異なることが分かった。つまり、
国債の買入額を操作目標として事前に決め
ると、実現する長期金利は中央銀行が最も
望ましいと考える水準よりも高過ぎたり低
過ぎたりすることになる。他方、日銀は既
に極めて多額の国債買入れを行っており、
これとマイナス金利の組合せによって、長
期金利の押下げに大きな効果を発揮してい
る。こうした状況を踏まえ、日銀は、主要
国の中央銀行で初めて、長短金利に操作目
標を明示的に設定するイールドカーブ・コ
ントロールの導入に踏み切ることとした。
なお、長短金利水準を示す金融市場調節
方針は、以上の考え方に沿って金融政策決
定会合で決定し、国債買入れなどのオペ運
営は、この金融市場調節方針を実現するた
めに実務的に決定される。毎回の国債買入
れの金額などは金融市場の状況に応じて変
化するが、日々のオペ運営によって先行き
の政策スタンスを示すことはない。
また、しばしば指摘される「国債買入れ
の限界」については、これまでのところ国
債の買入れは円滑に行われており、近い将
来問題が生じるとは考えていない。その上
で、仮に将来いずれかの時点で国債の需給
が逼迫するような状況になった場合には、
より少ない金額の国債買入れによって同じ
金利低下効果を実現できることになり、1
単位の国債買入れによる長期金利押下げ効
果はより大きなものとなる。このようにイ
ールドカーブ・コントロールは、極めて持
続性が高いスキームである。
3.黒田日銀の2期目のスタート
以上のような考え方の下、日銀は、2013
年 4 月以来異次元金融緩和を強力に推進し
てきたが、2%の物価安定目標の達成は 6
度にわたり延期され、未だ実現していない。
こうした中、黒田総裁は、去る 4 月 9 日、
日銀総裁に再任され、また、3 月 20 日、岩
田規久男・中曽宏両副総裁の後任として、
雨宮正佳日銀理事及び若田部昌澄早稲田大
学教授が副総裁に新任された。これにより
新たな体制の下、黒田日銀の 2 期目の 5 年
がスタートすることになった。
総裁任命に係る国会質疑や記者会見にお
いて、黒田総裁は、異次元金融緩和に関し
次のような所信を述べられている。また、
雨宮・若田部両副総裁も、多少ニュアンス
の違いはあるが、金融政策に関する基本認
識は黒田総裁と共通しているとみられる。
「2%の物価安定の目標」の実現を図り、こ
れを安定的に持続するために必要な時点ま
20
で、引き続き異次元金融緩和を強力に推進
していくというものである。
@日本経済の現状認識
日本経済はこの 5 年間で大きく好転し、
戦後 2 番目の長さとなる景気回復が続いて
いる。企業収益は既往ピークを更新し、労
働市場はほぼ完全雇用、賃金も緩やかなが
ら着実に上昇し、生鮮食品・エネルギーを
除いた消費者物価は 2013 年秋以降ほぼ一
貫して前年比プラスで推移して、日本経済
は物価が持続的に下落するという意味での
デフレではなくなっている。
このように経済・物価情勢は大幅に改善
したが、2%の物価安定の目標の実現までに
はなお距離がある。原油価格の大幅な下落
なども影響したが、より根本的な要因は家
計や企業に根付いたデフレマインド、これ
を転換するにはある程度の時間を要するこ
とも明らかになってきた。
もっとも、賃金・物価は緩やかに上昇し、
人々のインフレ予想も上向いてきているな
ど、情勢は着実に変化しており、日本経済
はデフレ脱却に向けた道筋を着実に歩んで
いる。現在の強力な金融緩和を粘り強く続
けていくことにより、物価安定の目標を実
現できると考えている。
A出口についての考え方
将来の出口の局面では、金利水準の調整
と拡大したバランスシートの扱いが課題と
なる。その際には、保有国債の償還や各種
の資金吸収オペレーションのほか、超過準
備に対する付利金利の引上げなどの手段を
活用することで、市場の安定を確保しなが
ら適切な政策運営を行うことは十分可能と
考えている。
一方、出口の局面で実際にどの手段をど
の順序で用いるかは、その際の経済・物価・
金融情勢によって変わり得る。あまり早い
段階で出口の進め方を具体的に説明するこ
とは難しく、市場との対話という観点から
もかえって混乱を招くおそれが高いのでは
ないかと思う。現在は、先行きの経済・物
価動向を注意深く点検していくことが必要
な情勢であり、出口のタイミングやその際
の対応の手順等を検討する局面には至って
いないと考えている。
B消費税率引上げの影響
2014 年 4 月の消費税率 3%引上げは、予
想以上に駆け込み需要とその反動減が大き
く、2014 年夏からの原油価格の大幅な下落
もあって物価上昇率が下がり、適合的期待
形成から物価上昇期待にも影響した。2019
年 10 月に予定される消費税率の引上げは
2%で、しかも食料品は引き上げない、税収
の一部を教育の充実等に支出するとなって
いるので、その影響は前回と比べるとかな
り小さなものになると予想される。ただ、
消費税の影響は、その時の経済・物価の状
況によっても影響され得るので、状況を十
分注視していく必要があると考えている。
C現時点での緩和の縮小調整
現時点では、まだ 2%の物価安定の目標
には距離があるので、今の段階で将来の政
策の余地を拡大するために引締めに転換す
るとか、緩和を縮小していくことは適切で
ないと考えている。
D安倍総理とのやり取り
総理から、2%の物価安定の目標の実現に
向けてしっかりとした金融政策の舵取りを
して欲しいと言われた。私自身も、共同声
明の中にしっかりと日本銀行及び政府のそ
21
れぞれの役割が記されているので、これを
堅持して 2%の物価安定の目標をできるだ
け早期に達成すべく全力を挙げたいと申し
上げた。
E財政政策が果たすべき役割
財政については、政府、国会で決めるべ
きことで、私から何か言うことは適切でな
いが、共同声明にかなりはっきり書いてあ
るので、必要に応じて財政政策の対応があ
り得るし、中長期的に財政の健全化や持続
可能性を高める努力を引き続き行っていか
れるだろうと思っている。
F2%の物価安定目標にこだわらない政権
への交代があった場合
共同声明は、現在の政権と日本銀行との
間で合意されたものだが、「2%の物価安定
の目標をできるだけ早期に実現する」こと
は、日銀が政策委員会で決定したことであ
る。消費者物価の上方バイアスや政策余地
の確保、2%がグローバル・スタンダードに
なっており、その下で中長期的に為替も安
定し得ることも含めて、日銀が物価安定の
使命を実現するために決定している。この
考え方自体、私は変更する必要はないと思
っている。
G正常化のプロセスに入るタイミング
2%の物価安定目標がしっかり達成され
ることがはっきりする時点まで、現在の長
短金利操作付き量的・質的金融緩和を続け
ていく。さらにオーバーシュート型コミッ
トメントという形で、2%を超えてもマネタ
リーベースの拡大方針を続けていく。そう
いった状況になった時に出口や正常化を進
め、あるいはそうした議論がまずは行われ
ることになると思う。
米国の場合、目標の 2%に達していない
が、短期金利の引上げを何度も行い、バラ
ンスシートの縮小も始めたという意味で正
常化のプロセスに入っている。予想物価上
昇率が目標の 2%にしっかりアンカーされ
ているので、我が国とはやや違った面があ
ると思っている。
H欧米と比べたバランスシートの大きさ、
保有資産利回りの低さ
大幅な緩和を続けた後の金融政策の転換
のやり方としては、あまり性急に引き締め
ていくようなことをすると、金融システム
に影響が出るかもしれない。特に非伝統的
金融政策の場合は、長期金利が跳ねたりし
ないよう、経済や市場に悪影響が出ないよ
うに慎重に緩やかに進めていくのではない
かと思う。バランスシートの大きさや保有
資産利回りの低さはもちろん影響はあるで
あろうが、それが本質的な問題だとは思っ
ていない。
I2019 年度頃の 2%の達成時期が後ずれ
するような場合の追加措置
2%の物価安定の目標に向けて、経済・物
価等がしっかりしたモメンタムを維持して
いるかどうかにより追加的な措置を検討す
る。その点は従来と全く変わりはない。
J金融緩和の副作用
大規模な金融緩和を長く続けた時の副作
用は十分考慮しなくてはならない。特に金
融資本市場が金融仲介機能を十分発揮でき
る状況にあるかどうかは重要な関心事項で
あり、十分みていく必要があるが、今の時
点で長短金利操作付き量的・質的金融緩和
が何か大きな影響を及ぼしていることはな
いと思う。
22
4.異次元金融緩和の成果
日銀の異次元金融緩和が開始されてほぼ
5 年が経過する。前記のとおり黒田総裁は
日本経済の現状についてかなり肯定的に評
価されているが、この間の経済情勢等をた
どりながら、実現したこと・実現しなかっ
たことなど異次元金融緩和の成果について
みることとしたい。
(1)経済情勢
@GDP(国内総生産)
(図表 8・9)によってGDPの長期的推
移をみると、1985年〜2017年の33年間に、
名目GDPは 320 兆円から 550 兆円、実質
GDPは 310 兆円から 530 兆円へと増加し
ている。
この間、1990 年代初めのバブル崩壊と
2007〜2009 年の世界金融危機の二つの大
きな節目があり、名目GDPは 1992 年頃ほ
ぼ 500 兆円に達した後、500〜530 兆円程度
で横ばいに推移し、さらに世界金融危機と
東日本大震災のあった 2009〜2011 年には
480 兆円台まで低下し、ようやく 2015 年に
なって 530 兆円を超え、2017 年に 550 兆円
となっている。
また、実質GDPは概ね増加傾向をたど
っているが、2008・2009 年に△2.1%・△
6.0%の著しい落込みがあったほか、1991
年までの年平均成長率が 4.7%であったの
に対し、1992 年以降の成長率は 2008・2009
年を除いても 1.3%と大きく低下している。
(図表 8) GDP(実額)(1985〜) 兆円
出展:内閣府・四半期別GDP速報
(図表 9) GDP(前年比)(1985〜) %
出展:内閣府・四半期別GDP速報、月例経済報告
次に、(図表 10)によって最近の実質G
DPの推移をみると、2016 年第 1 四半期以
降、直近の 2017 年第 4 四半期まで 8 期連続
でプラス成長が続いており、△1.1%だった
2015 年第 4 四半期を挟めば、プラス成長は
さらに2014年第4四半期まで遡ることがで
きる(5 月 16 日には発表されたGDP速報によ
ると、2018 年第 1 四半期の実質成長率は△0.6%、
2017 年度の実質成長率は 1.5%である)。
また、内閣府社会総合研究所の景気基準
日付によれば、2012 年 12 月以来景気回復
局面が続いており、本年4月現在で 64 カ月
と、最長の 2002 年 2 月〜2008 年 2 月の 73
ヶ月に迫る戦後 2 番目の長さとなっている
(図表 11)。
このように我が国経済は、良好な状態が
継続しているが、各四半期の実質GDPの
平均成長率は、2013 年第 2 四半期〜2017
23
年第 4 四半期が 1.3%、8 期連続でプラス成
長している2016年第1四半期〜2017年第4
四半期でも 1.8%であり、それ以前の例えば
2009年第2四半期〜2013年第1四半期の成
長率が 2.2%であったことと比べても、そ
の成長率は力強さに欠け、緩やかなものに
とどまっている。戦後最長の景気回復局面
である 2002 年 2 月〜2008 年 2 月の各四半
期の平均成長率は約 1.6%であり、「実感な
き経済成長」と言われたが、今回もほぼ類
似した状況にあると考えられる。
(図表 10) GDP(前期比・年率) %
出展:内閣府・四半期別GDP速報
(図表 11) 景気回復局面の継続期間
出典:内閣府等、日本銀行・講演資料
A潜在成長率と需給ギャップ
我が国経済の潜在成長率は、1980 年代に
は 3〜5%であったが、バブル崩壊後急速に
低下し、1990 年代末から 1%前後、世界金
融危機時には 0%前後まで低下した。その
後金融危機を脱するとともにやや回復し、
最近は 1%程度となっている(2017 年第 4 四
半期:内閣府推計 1.1%、日銀推計 0.9%)(図表
12)。
一方、需給ギャップは、バブル期は大き
なプラスであったが、バブル崩壊後は、
1996・1997 年、2006 年〜2008 年前半等の
一時期を除いて基本的にマイナスであり、
特に世界金融危機時には△7%の大きなデ
フレギャップが発生した。しかし、その後
急速にマイナス幅は縮小し、日銀推計の需
給ギャップは2016年第4四半期から5期連
続、内閣府推計のGDPギャップは 2017
年第 2 四半期から 3 期連続でプラスとなっ
ている(2017 年第 4 四半期:内閣府推計 0.7%、
日銀推計 1.5%)(図表 13)。
このように需給ギャップがプラスになる
と、物価上昇圧力が高まり、デフレ脱却を
後押しすることになるが、それは同時に、
実質経済成長率が既に上限又は上限近くに
達していることを意味する(図表 9)。人々
が真に望んでいるのは、実質的な経済成長
であり、今後は成長戦略等により潜在成長
率を高めることがより重要な課題になると
考えられる。
※12 潜在成長率:過去のトレンドからみて平均的
な水準で生産要素を投入した時に実現可能なGD
Pを潜在GDP、その変化率(年率)を潜在成長
率という。景気循環の影響を除いた中長期的に実
現可能な経済成長率であり、供給面からの一国の
経済力の指標とされる。一般に資本、労働力、全
要素生産性の伸びの総和として推計される。
※13 需給ギャップ:一国の経済の総需要(実際の
GDP)と供給力(潜在GDP)の差を示す指標。
総需要が供給力を上回るとプラスとなり、インフ
レ傾向、逆に下回るとマイナスとなり、デフレ傾
向になる。内閣府は、(実際のGDP−潜在GDP)
÷潜在GDP=「GDPギャップ」を推計し、日
銀は、生産設備の稼働率や失業率・労働参加率等
24
を直接捉えて「需給ギャップ」を推計している。
(図表 12) 潜在成長率(1985〜) %
出典:内閣府、日本銀行
(図表 13) 需給ギャップ(1985〜) %
出典:内閣府、日本銀行
B民間最終消費支出
GDPの最大の需要項目である民間最終
消費支出の長期的推移をみると、(図表 14)
のとおり、(図表 8)のGDPと類似した形
で緩やかに上昇しているが、世界金融危機
後の2009年第1四半期と消費税引上げ後の
2014年第2四半期の落ち込みがやや目立っ
ている。
また、(図表 15)によって最近の実質民
間最終消費支出の推移をみると、総じて低
調であるが、特に 2013 年第 2 四半期〜2017
年第 4 四半期の平均伸び率は 0.4%、2016
年第 1 四半期〜2017 年第 4 四半期でも
0.9%にとどまっている(2009 年第 2 四半期〜
2013 年第 1 四半期は 1.8%)。2014 年 4 月の消
費税率引上げに伴う反動減が大きいが、そ
の後も積極的な消費拡大の傾向は現れてい
ない。
(図表 14)民間最終消費支出(実額)(1985〜)兆円
出展:内閣府・四半期別GDP速報
(図表 15) 民間最終消費支出(前期比) %
出展:内閣府・四半期別GDP速報
C賃金・所得動向
その背景として、勤労者の賃金・所得の
動向をみると、一人当たりの所得である現
金給与総額の賃金指数(2015=100)は、名
目・実質ともに 1997 年 1 月をピーク(それ
ぞれ 118・120)に長期低落傾向を続け、2014
年4月以降は100程度と1990年以来最低の
水準で推移している(図表 16)。また、2008
年以降の対前年変動率をみると、名目が
2013 年夏以降微増で推移する中、消費者物
価が上昇した 2013 年夏ごろから 2015 年初
めにかけて実質が大きくマイナスとなり、
これが実質指数を名目指数まで下押しする
大きな要因となっている(図表 16・17)。
25
(図表 16) 現金給与総額(1990〜)2015=100
出典:厚生労働省・毎月勤労統計
(図表 17) 現金給与総額(前年比) %
出典:厚生労働省・毎月勤労統計
一方、現金給与総額に非農林業雇用者数
を乗じた総雇用者所得の指数(2011=100)
の名目は、1997 年 12 月をピーク(114)に
長期低落傾向を続けてきたが、2014 年から
回復し、直近の 2018 年 2 月には 108 まで回
復している。また、実質は、1997 年 12 月
を一つのピーク(101)として概ね横ばいで
推移してきたが、2016 年からやや上昇し、
2018 年 2 月に 104 となっている(図表 18・
19)。
しかし、これは、下記のとおり就業者数
全体がほぼ横ばいである中、非農林業雇用
者数が増加したことを反映したものであり、
消費の拡大を図るためには、何よりも一人
当たりの所得=賃金の増加が必要と考えら
れる。
(図表 18) 総雇用者所得(1994〜)2011=100
出展:内閣府・月例経済報告
(図表 19) 総雇用者所得(前年比) %
出展:内閣府・月例経済報告
D雇用情勢と今後の見通し
雇用情勢は、(図表 20)のとおり、世界
金融危機後の 2009 年をボトムとして急速
に改善し、完全失業率や求人倍率はほぼバ
ブル期と同等になっている。その要因を求
人倍率についてみると、求人数が大きく増
加する一方求職者数が減少しており、これ
らが相乗して求人倍率が高くなっているこ
とが分かる(図表 21)。
こうした情勢を反映して、パートの時間
当たり所定内給与は 2010 年以来大きく上
昇しているが、一般の所定内給与の改善ペ
ースは極めて緩やかであり、2014 年以降よ
うやくプラスとなっている(図表 22)。
(図表 23)は、経団連傘下の大企業の昇
給・ベースアップの実施状況である。昇給
は毎年 2%程度行われているが、賃金水準
26
の上昇につながるベースアップは 2000 年
頃から 10 年以上にわたり休止されてきた。
安倍首相の強力な働き掛けもあり、2014 年
から久々にベースアップが復活したが、未
だ 0.3〜0.4%にとどまり、今後の更なる拡
大が期待される状況である。
(図表 20) 失業率と求人倍率(1985〜)%・倍
出展:総務省・労働力調査、厚生労働省・職業安定業務統計
(図表 21) 求人倍率の状況(1985〜)倍・万人
出展:厚生労働省・職業安定業務統計
(図表 22) 就業形態別の賃金(前年比) %
出典:日本銀行・講演資料
(図表 23) 昇給・ベースアップの実施状況 %
出展:経団連・昇給、ベースアップ実施状況調査
(図表 24)は、1985 年以降の就業者数等の
推移である。15〜65 歳の生産年齢人口は
1995 年の 8700 万人をピークに 2017 年の
7600 万人まで 1100 万人減少しているが、
この間、就業者数は 6500 万人でほぼ横ばい、
非農林業雇用者数は 5230 万人から 5760 万
人へと 530 万人増加している。就業者で増
加が目立つのは 60 歳以上と女性であり、特
に非農林業雇用者では女性が 530 万人増加
している。就業率(人口に占める就業者の割合)
の推移をみると、2006 年以降 60〜65 歳が
急増し、2013 年以降は全体に就業率が上昇
している(図表 25)。また、雇用者のうち正
規雇用は 1998 年から減少し、非正規雇用は
1985 年以来一貫して増加している。その結
果、雇用者に占める正規雇用の割合は約 8
割から 6 割へと大きく低下し、非正規雇用
が 4 割を占めるに至っている。ただし、2015
年以降は、正規雇用もやや増加し、その割
合の低下に下げ止まりの兆しもみられる
(図表 26)。
27
(図表 24) 就業者数等(1985〜) 万人
出展:総務省・労働力調査
(図表 25) 就業率(1985〜) %
出展:総務省・労働力調査
(図表 26) 正規・非正規雇用の状況 万人・%
出展:総務省・労働力調査
以上のとおり我が国の生産年齢人口は、
1995 年をピークに 2017 年まで 1100 万人減
少し、特に 2009 年以降 600 万人減少してい
る。これまで非正規雇用を中心に 60 歳以上
と女性の就業者の増加によってこの減少を
カバーしてきたが、これらの就業率も既に
相当程度高くなっている。最近の雇用情勢
の好転は、景気の回復以上にこうした人口
動態の進展を多分に反映したものと捉える
ことができる。
しかし、我が国の生産年齢人口は、少子
高齢化の進展に伴い、2065 年さらに 22 世
紀に向けて更に大きく減少すると見込まれ
る(図表 27・28)。今後は、経済成長のボト
ルネックとなる労働力不足の問題として顕
在化することが予想され、就労の質の向上
や省力化の推進を含め、就業者一人当たり
のGDP、即ち労働生産性を向上すること
が極めて重要な課題になると考えられる。
(図表 27) 年齢別人口(1955〜2065) 万人
出展:国立社会保障・人口問題研究所・人口統計資料集
(図表 28) 年齢別人口(対前 5 年増減数)万人
出展:国立社会保障・人口問題研究所・人口統計資料集
E民間企業設備
次に、景気変動の主因であり、将来の経
済成長の源泉となる民間企業設備の推移を
みると、(図表 29)のとおり、2013 年第 2
四半期〜2017年第4四半期の実質企業設備
の平均伸び率は 4.1%、2016 年第 1 四半期
〜2017 年第 4 四半期は 2.5%であり(2009
年第 2 四半期〜2013 年第 1 四半期は 0.8%)、特
28
に 2013 年第 2 四半期〜2015 年第 1 四半期
が 7.2%と高くなっている。
また、(図表 30)によって民間企業設備
の長期的推移をみると、1991 年にピークと
なった後、バブル崩壊と世界金融危機で大
きく減少したが、その後は順調に回復し、
特に実質額はバブル期のピークを上回って
いる。しかし、そのGDP比率は、1991 年
に名目 21%・実質 19%に上ったが、その後
は名目・実質ともに 15%前後で低位に推移
している。これを法人企業の(営業キャッ
シュフロー+人件費)に対する設備投資の
比率でみると、(図表 31)のとおりバブル
崩壊後低下しており、企業活動レベルにお
いても、設備投資のウェイトは大きく低下
していることが分かる。
こうした状況を反映して、非金融法人企
業の貯蓄投資バランスは、(図表 32)のと
おり、1998 年以降プラスとなり、最近は最
大の黒字部門となっている。しかし、非金
融法人企業は、本来赤字部門として家計の
黒字を吸収し、設備投資や研究開発投資を
積極的に行うことによって、有効需要を生
み出すとともに、経済成長の基盤を充実す
ることが期待される部門である。1998 年以
降の状況は、民間需要の恒常的な不足と経
済成長力の低下が生じていることを示すも
のであり(一般政府の大幅赤字と海外部門の赤
字が経済を支える状態)、我が国経済が長期低
迷を脱するためには、このISバランスを
是正することが最大の課題の一つと考えら
れる。
(図表 29) 民間企業設備(前期比) %
出展:内閣府・四半期別GDP速報
(図表 30)民間企業設備(実額・GDP比率)兆円・%
出展:内閣府・四半期別GDP速報
(図表 31) 法人企業の設備投資比率 %
(図表 32) 貯蓄投資バランス(対名目GDP)%
出典:内閣府・国民経済計算
29
F輸出・輸入
民間企業設備と並んで景気変動の大きな
要因となる輸出・輸入の推移をみると、(図
表 33)のとおり、輸出・輸入とも 2008 年
半ばまで増加した後、世界金融危機により
急減したが、円安が進んだ 2013 年から大き
く回復している。
一方、輸出から輸入を差し引いた純輸出
は、(図表 34)のとおり、名目は 5〜10 兆
円で推移してきたが、世界金融危機後大き
く減少し、ようやく 2016 年に至ってプラス
になっている。また、実質は 2007〜2008
年、2010 年などごく一部の期間を除いてマ
イナスであり、現在、2014 年第 1 四半期を
底に回復傾向にあるが、未だマイナスを脱
していない。
(図表 33) 輸出・輸入(1985〜) 兆円
出展:内閣府・四半期別GDP速報
(図表 34) 純輸出(1985〜) 兆円
出展:内閣府・四半期別GDP速報
(図表 35・36)は、こうした名目輸出と
名目輸入の動向を数量と価格の要因に分け
てみたものである。輸出金額は 2013 年から
大きく回復したが、これは専ら輸出価格の
上昇によるもので、輸出数量はむしろ弱含
んでいる。2013 年から円安が進み(図表 36)、
数量的にも輸出の拡大が期待されたが、こ
れは実現せず、いわば円換算した評価額の
みが上昇した。これはグローバルに事業展
開する企業が海外子会社や関連会社の収益
を円換算して連結財務諸表を作成する場合
も同様であり、企業収益が増加しても、実
体が伴わなければ、円の世界で大規模な所
得移転のみが生じることになる。これが輸
出(金額)の拡大にもかかわらず、関連産
業への波及効果に乏しく、経済全体が活性
化しない主因と考えられる。
一方、輸入数量は、世界金融危機後の一
時的減少はみられるものの、全体として緩
やかに増加している。輸入金額の大きな増
減は専ら輸入価格の変動によるものであり、
原油価格と為替レートの影響が大きいと考
えられる(図表 37・38)。特に 2007〜2014
年原油価格は歴史的にも異常な高値圏にあ
ったが、2008〜2012 年の円高がこれを相殺
し、輸入価格にみられるように交易条件の
悪化を相当程度緩和したと考えられる。
(図表 35) 貿易指数(輸出) 2010=100
出展:財務省・貿易統計
30
(図表 36) 貿易指数(輸入) 2010=100
出展:財務省・貿易統計
(図表 37) ドル・円レート(1992〜)
出典:日本銀行
(図表 38) 原油価格(1990〜) ドル/バレル
出典:IMF
G経常収支
(図表 39)は、経常収支の推移である。
貿易収支は、2008 年以降大きく悪化し、
2011〜2015 年に赤字となったが、2014 年を
底に回復し、2016 年から黒字となっている。
また。対外資産の蓄積に伴い、第 1 次所得
収支(対外金融債権・債務から生じる利子・配当
金等の収支)が着実に増加し、2005 年以降
貿易収支を上回って最大の黒字項目となっ
ている。また、サービス収支は、インバウ
ンドや知的財産権等使用料の増加によって
順調にマイナス幅が縮小している。これら
を総合した経常収支は、変動幅の大きい貿
易収支とほぼ同様の動きを示し、2008 年以
降大きく悪化したが、赤字に陥ることなく、
2014 年を底に大きく回復している。
(図表 39) 経常収支(1996〜) 兆円
出展:財務省・国際収支統計
(2)金融情勢
@金利
(図表 40)は、すべての金利の基準とな
る国債の利回りの長期的な推移である。
1990年9月にはほぼすべての年限の国債利
回りが 8%を超えたが、ゼロ金利政策が導
入された 1999 年まで急速に低下し、以後、
2002 年後半〜2013 年前半を除き、2008 年
夏までほぼ横ばいで推移した(2008 年 8 月の
利回り:概ね残存期間 1 年債 0.6%、5 年債 1.0%、
10 年債 1.5%、20 年債 2.1%、30 年債 2.4%)。
2008年9月のリーマンショックの発生と
政策金利の逐次引下げを受け、国債利回り
は再び低下する(2013 年 1 月の利回り:概ね 1
年債 0.1%、5 年債 0.2%、10 年債 0.8%、20 年債
1.8%、30 年債 2.0%)。
ここを出発点として2013年4月から異次
元金融緩和が導入された。(図表 41)がそ
の後の推移である。国債利回りは更に低下
を続け、特に著しかったのが 2016 年 1 月の
31
マイナス金利導入後である(ボトムとなった
2016 年 7 月の利回り:概ね 1 年債△0.4%、5 年債
△0.4%、10 年債△0.3%、20 年債 0.0%、30 年債
0.1%)。その後 2016 年 9 月のイールドカー
ブ・コントロールの導入もあり、国債利回
りはやや戻して、2017 年 2 月からはほぼ横
ばいで推移している(2018 年 4 月の利回り:
概ね1年債△0.1%、5年債△0.1%、10年債0.0%、
20 年債 0.5%、30 年債 0.7%)。
日銀は、現在、政策金利残高△0.1%・10
年物国債金利ゼロ%程度を金融市場調節方
針として長短金利操作を行っており、国債
利回りは1年債△0.2〜△0.1%、10年債0.0
〜0.1%で推移している。これを主要国と比
較すると、(図表 42)のとおり、2016 年 11
月のトランプ大統領の当選以降、米国の 10
年国債は 2.5%台に急上昇し、ドイツ国債
も 0.5%程度まで上昇しているが、日本国
債はこうした世界の金利動向に関わりなく
低位で安定的に推移している(その後米国 10
年国債は、この 5 月に 3%台に乗せている)。
(図表 43)は、異次元金融緩和導入後の
国債のイールドカーブの推移である。マイ
ナス金利導入により大きく下方シフトし、
その後やや戻して安定的に推移している。
これを我が国と同様マイナス金利を導入し
ているユーロ圏のドイツ・フランスと比較
すると、(図表 44)のとおり、我が国は長
短金利差の少ないフラット化の傾向が強く、
金融機関の経営や金融仲介機能を維持する
上での大きな課題になっている。
(図表 40) 主要年限別国債利回り(1990〜) %
出典:財務省・国債金利情報
(図表 41) 主要年限別国債利回り(2013〜) %
出典:財務省・国債金利情報
(図表 42) 主要国の 10 年国債利回り %
出典:Bloomberg、日本銀行・講演資料
(図表 43) 国債のイールドカーブ %
出典:bloomberg、内閣府資料
32
(図表 44)日本とユーロ圏の国債イールドカーブ
出典:日本銀行・講演資料
(図表 45)は、日銀スタッフの推計によ
る自然利子率(均衡実質金利)と実質金利の
推移である。2008 年の世界金融危機まで総
じて実質金利は自然利子率を下回ってきた
が、金融危機後は自然利子率の低下により
これが逆転した。しかし、2013 年以降は、
国債利回りの更なる低下と消費者物価の上
昇、自然利子率の下げ止まりによって、実
質金利は自然利子率を大きく下回っている。
現在の金利水準は、理論上は、潜在成長率
を上回る経済成長と物価のスパイラル的上
昇をもたらし得るだけの低水準と言うこと
ができる。
また、国債利回りの低下を受けて、銀行
貸出金利は、2008 年以来、(図表 46)のと
おり逐次低下し、銀行貸出残高は、2010
年・2011 年を除き、年 2%程度増加してい
る(図表 47)。また、借手から見た銀行の貸
出態度は、金融危機直後の 2009 年を底に大
きく改善しており、金融環境は極めて緩和
した状態にある(図表 48)。
※14 自然利子率:景気への影響が緩和的でも引締
め的でもない中立的な実質金利の水準。均衡実質
金利、中立利子率とも呼ばれ、完全雇用の下で貯
蓄と投資をバランスさせる実質金利の水準と定義
される。実質金利が自然利子率より低いと好況と
なり、物価が上昇する。実質金利が自然利子率よ
り高いと不況となり、物価が下落する。なお、一
定の仮定の下で、自然利子率は潜在成長率と等し
い(潜在成長率がプラスであれば、自然利子率も
プラスとなる)。
(図表 45) 自然利子率と実質金利 %
出典:日本銀行・講演資料
(図表 46) 銀行貸出金利 %
出典:日本銀行・講演資料
(図表 47) 銀行貸出残高(前年比) %
出典:日本銀行・講演資料
(図表 48) 貸出態度判断DI(短観)
出典:日本銀行・講演資料
33
A為替レート
(図表 37)は、1992 年以来のドル・円レ
ートの推移である。日米の貿易摩擦が激し
かった 1995 年には一時 83 円まで円高が進
んだが、その後は 105〜125 円で推移してき
た。しかし、世界金融危機後、グローバル・
インバランス(米国の巨額な経常収支赤字の恒
常的な発生)の巻戻しや欧州債務問題の発生
によって急速に円高が進み、2011 年・2012
年には80円を切り、最高76円まで達した。
こうした円高は、原油価格高騰の緩和など
積極的意義もあったが、輸出関連産業を中
心に深刻な影響を与え、それが金融緩和不
足という日銀批判にもつながった。
この急激な円高は、ECB(欧州中央銀行)
の対応による欧州債務問題の不安心理の後
退、貿易収支や経常収支の悪化、2012 年 12
月の総選挙における安倍自民党総裁の無制
限の金融緩和による円高是正の公約等によ
って、2012 年 11 月から反転し、2013 年 11
月に 100 円台、FRBの利上げ期待が高ま
った2015年3月には120円台まで円安が進
んだ。その後英国のEU離脱問題、新興国
経済の減速懸念、トランプ政権の拡張的な
財政政策と保護主義的傾向の高まり等があ
り、今年に入っては月中平均 106〜110 円で
推移している。
(図表 49)は、円の総合的な価値を表す
実効為替レートの推移である(2010=100 の指
数。グラフの上方が円高傾向を示す)。2009〜
2012 年の名目実効為替レートは際立って
円高となっているが、実質実効為替レート
は 1992〜2004 年の方が高く、特段に円高と
いうものではなかった。当時の輸出不振は、
円高というより世界的な不況によるものと
捉えられるように思われる。また、円安が
進んだ 2013 年以降の実質実効為替レート
は、1992 年以来の最低の水準で推移してい
る。
※15 実効為替レート:特定の 2 通貨間の為替レー
トをみているだけでは捉えられない、一国の通貨
の価値(対外競争力)を総合的に示す指標。うち
名目実効為替レートは、各貿易相手国通貨との為
替レートを貿易額に応じて加重平均し、指数化し
たもの、また、実質実効為替レートは、名目実効
為替レートを各国の物価指数の推移によって調整
したものである。
(図表 37)ドル・円レート(1992〜)(再掲)
出典:日本銀行
(図表 49) 実効為替レート(1992〜)2010=100
出典:日本銀行
B株価
株価の推移を日経平均株価によってみる
と、(図表 50)のとおり、バブル最盛期の
1989 年末に3万 8915 円の最高値を付けた
日本の株価は、2003 年 4 月の 7607 円まで
約 8 割下落し、その後 2007 年 7 月に 1 万
8261 円まで回復したが、世界金融危機によ
って再び下落し、2009 年 3 月には 7054 円
34
とバブル崩壊後の最安値を更新した。その
後 9000〜1 万円前後で推移していたが、円
安が始まった 2012 年 11 月から急速に上昇
を始め、今年 1 月には 2 万 4129 円とピーク
時の約 6 割水準に達している。最近は、ト
ランプ政権の保護主義的傾向の高まり等も
あり、2 万 2000〜2 万 3000 円で推移してい
る。
日経平均株価とドル・円レートは特に
2000 年代後半から正の相関が高くなって
いる(図表 50)。円安は、一般に輸入産業や
国内産業にマイナス、輸出産業やグローバ
ルに事業展開する産業にプラスに作用する
と考えられるが、東証一部上場企業の動向
を示す日経平均株価は、特に後者の側面が
より強く表われるものになっていると考え
られる。
(図表 50) 日経平均株価とドル・円
レート(1988〜) 1989=100
出展:日本経済新聞
(3)企業動向
@民間企業の業況判断
上記のような経済情勢と金融情勢の下で
民間企業が業況をどう判断しているかを日
銀短観でみると、(図表 51・52)のとおり、
2009 年に大きく悪化した後、2010 年から急
速に改善して、2013 年からは「良い」が「悪
い」を上回っている。日銀は、特にこうし
た傾向が企業規模別にも、地域別にも幅広
く認められることを強調している。
(図表 51) 業況判断DI(短観)・企業規模別
出典:日本銀行・講演資料
(図表 52)業況判断DI(短観)・地域別
出典:日本銀行・講演資料
A法人企業の活動実態
次に、財務省・法人企業統計によって
1990 年度以来の法人企業の活動実態をみ
ると、売上高は概ね 1400〜1500 兆円、付加
価値は 250〜300 兆円で推移しており、いず
れも世界金融危機後に大きく低下した後、
2009 年度を底に回復している(図表 53)。
こうした状況を反映して、営業利益・経
常利益・当期純利益・内部留保は、2009 年
度を底に急上昇しており、2016 年度はいず
れも過去最高額になっている(図表 54)。
この状況を売上高営業利益率・売上高経
常利益率・総資本経常利益率でみると、2016
年度はバブル期を上回って最高率となって
おり(図表 55)、過去の好況期と比較しても、
売上高経常利益率は際立って高くなってい
る(図表 56)。
35
(図表 53) 法人企業の売上高と付加価値 兆円
出展:財務省・法人企業統計
(図表 54) 法人企業の経営状況 兆円
出展:財務省・法人企業統計
(図表 55) 法人企業の利益率 %
出展:財務省・法人企業統計
(図表 56) 売上高経常利益率の比較
出典:日本銀行・講演資料
(図表 57)は、法人企業の利益率の高さの
背景として、付加価値の構成(分配)の推
移をみたものである。人件費・賃借料・租
税公課がほぼ横ばい、支払利息等が大きく
低下する中、付加価値の増加に応じて営業
純益が大きく増加している。営業純益が最
も低下したのは 1993 年度の 2 兆 5 千億円
(構成比約 1%)であるが、2016 年度には
52兆5千億円(同 18%)まで増大している。
また、人件費は概ね 200 兆円程度で推移し、
その構成比は不況期に上昇、好況期に下降
する傾向にあるが、2008・2009 年度の構成
比 75%は 2016 年度に 68%まで低下してい
る。
また、(図表 58)は、法人企業の設備投資
の動向をみたものである。借入金利子率が
大きく低下したものの、設備投資も低調に
推移してきた。2011 年度以降、上昇傾向が
みられるが、1990〜1997 年度や 2006・2007
年度には及ばず、なお力強さに欠ける状況
である。
(図表 57) 法人企業の付加価値の構成 兆円
出展:財務省・法人企業統計
(図表 58)法人企業の設備投資と借入金利子率 兆円・%
出展:財務省・法人企業統計
36
法人企業の財務状況をみると、(図表 59)
のとおり、総資産は 1990 年度の 1140 兆円
から 2016 年度の 1650 兆円へと大きく増加
しているが、流動負債が微減、固定負債が
微増で、そのほとんどが純資産の増加によ
るものである。これを自己資本比率の推移
でみると、1998 年度まで 19%程度で横ばい
であったが、以後逐年上昇し、2016 年度に
は 41%に達している(図表 60)
純資産の内訳は、(図表 61)のとおりで
ある。各項目とも増加しているが、特に配
当後の利益の蓄積である利益剰余金の増加
が著しく、1998 年度以降着実に増加してい
る。2016 年度の純資産 670 兆円の内訳は、
資本金 110 兆円、資本剰余金 150 兆円、利
益剰余金 410 兆円である。
(図表 59) 法人企業の負債・純資産 兆円
出展:財務省・法人企業統計
(図表 60) 法人企業の自己資本比率 %
出展:財務省・法人企業統計
(図表 61) 法人企業の純資産 兆円
出展:財務省・法人企業統計
(4)物価動向
(図表 62・63)は 1970 年以来の消費者物
価指数とGDP(前年比・指数)の長期的
動向をみたものである。我が国は、第 1 次
オイルショックによって 23%に上る狂乱
物価を経験したが、第 2 次オイルショック
は 8%の上昇に収め、1980 年代以降、主要
国の中でも物価安定の優等生とされてきた。
バブル期の 1990・1991 年には 3%を上回っ
たが、安定成長期の 1983 年からバブル崩壊
後の 1998 年まで、消費者物価の上昇率は概
ね 0〜2%で推移している。物価上昇率が連
続してマイナスを記録するようになったの
は 1999 年以降であり、2008 年を除いては
ほぼゼロないしマイナスで推移し、2012 年
までの 14 年間の平均物価上昇率は△0.3%
である(黒田総裁が、我が国経済は 1998 年度か
ら 2012 年度まで 15 年間、消費者物価下落率△
0.3%の緩やかだが、長期にわたるデフレが進行し
てきたと言われることに対応する)。
また、消費者物価とGDPの関係は、特
に名目GDPとの相関が高く、これらの変
動率の大きさは、バブル崩壊までは概ね名
目GDPの成長率が物価上昇率を上回って
いたが、1997 年以降はほぼ同等となり、指
数も重なって横ばいに推移している(図表
62・63)。
37
(図表 62)消費者物価指数とGDP(前年比)%
出典:総務省・消費者物価指数、内閣府・国民経済計算
(図表 63)消費者物価指数とGDP 2015=100
出典:総務省・消費者物価指数、内閣府・国民経済計算
(図表 64)は、2007 年以降の消費税の影
響を除いた消費者物価の変動率である。総
合と生鮮食品を除く総合は、ほぼ同様の動
きをしており、2008 年夏の 2%以上の上昇、
2009 年夏の△2%以上の下落の後、物価は
2012 年のゼロ近辺まで緩やかに回復した。
大きな物価上昇がみられたのは 2013 年 6
月以降であり、2013 年 11 月〜2014 年 6 月
には 1.5%前後となった。しかし、2014 年
7月から下降し、2015 年はゼロ前後、2016
年は△0.1〜△0.5%で推移した。その後、
総合は 2016 年 10 月から、生鮮食品を除く
総合は 2017 年 1 月から再び上昇し、2018
年 4 月現在、総合は 0.6%、生鮮食品を除
く総合は 0.7%となっている。また、2013
年4月以降の平均上昇率は、総合が0.5%、
生鮮食品を除く総合が 0.4%である。
(図表 64) 消費者物価指数(消費税抜き) %
出典:総務省。消費者物価指数
こうした総合と生鮮食品を除く総合の物
価変動に大きな影響を与えたとされるのが
原油価格の動向である。
(図表 38・65)のとおり、2003 年まで 1
バレル 30 ドル以下で推移してきた原油価
格は、その後大きく上昇し、2011 年〜2014
年夏には 100〜110 ドルに達した。しかし、
2014 年 6 月を境に急速に低下し、2015 年に
は 40〜60 ドル、さらに 2016 年 1 月・2 月
には 30 ドルを切るまで下落した。その後
40〜50 ドル水準に回復し、2017 年夏からは
上昇傾向を強め、この 5 月に 70 ドルに達し
ている。
このように消費者物価と原油価格の変動
はほぼ対応しており、それは(図表 66)の
寄与度に示されているとおりである。原油
価格の動向は、今後とも、為替レートや労
働需給の逼迫による賃金の動向とともに、
物価上昇率の行方を左右する大きな要因と
考えられ、その意味からも、中東の地政学
的リスクの高まり等には注意が必要である。
38
(図表 38)原油価格(1990〜)(再掲)ドル/バレル
出典:IMF
(図表 65) 原油価格(2007〜) ドル/バレル
出典:世界銀行・OPEC バスケット価格
(図表 66) 消費者物価指数(寄与度) %
出典:日本銀行・講演資料
一方、日銀が注目する生鮮食品・エネル
ギーを除く総合の変動率は、(図表 64)の
とおり、世界金融危機後マイナスで推移し
てきたが、2013 年 10 月にプラスとなり、
プラス基調は今日まで続いている。特に
2013 年 11 月〜2016 年 7 月には 0.5〜1.2%
となり、2017 年春に 0%まで低下したが、
2017 年 7 月から再び上昇し、2018 年 4 月現
在 0.4%となっている。また、2013 年 4 月
以降の平均上昇率は 0.5%である。
また、消費や設備投資などすべてのGD
P構成項目について国内発の物価動向を表
すGDPデフレーターは、(図表 67)のと
おり、2014 年第 1 四半期〜2016 年第 2 四半
期及び 2017 年第 3・第 4 四半期がプラスで
あり、特に 2014 年第 2 四半期〜2015 年第 1
四半期は、消費税増税の影響もあるが、1.7
〜3.4%の高い上昇となっている。総じて生
鮮食品・エネルギーを除く総合と類似した
動きを示している。
(図表 68)は、企業物価指数と企業向け
サービス価格指数の推移である。輸入物価
と輸出物価は、原油価格等の国際市況の影
響を受け大きく変動している。また、国内
企業物価は、総合・生鮮食品を除く総合の
消費者物価と類似した動きを示している。
一方、企業向けサービス価格は、生鮮食品・
エネルギーを除く総合と類似しており、
2013年第3四半期からプラス基調が続いて
いる。この間、GDPデフレーターと同様、
2014 年第 2 四半期〜2015 年第 1 四半期に
3%を超える高い上昇を示したが、それ以外
は 0.1〜0.8%の低位な上昇にとどまって
いる。
(図表 67) GDPデフレーター %
出展:内閣府・四半期別GDP速報
39
(図表 68)企業物価・企業向けサービス価格指数%
出典:日本銀行
(図表 69)は、中長期的な予想物価上昇
率の動向である。いずれの指標も、2013 年
から大きく上昇したが、2015 年夏以降低下
し、2016 年からはほぼ横ばいで推移してい
る。日銀の総括的検証にもあるとおり、中
央銀行の物価安定目標に収斂していく「フ
ォワードルッキングな期待形成」より、現
実の物価上昇率の影響を受ける「適合的な
期待形成」が強く作用し、特に総合と生鮮
食品を除く総合の消費者物価の動向が影響
していると考えられる。このため、日銀が
2%の物価安定目標を掲げて異次元金融緩
和を実施しても、現実に物価が上昇しなけ
れば予想物価上昇率も上昇せず、また、物
価が上昇しても短期間のうちに低下すれば、
予想物価上昇率もアンカーされずに低下す
ることになると考えられる。
(図表 69) 予想物価上昇率 %
出典:日本銀行・講演資料
また、(図表 70)は、日銀が今年 4 月に発
表した「展望レポート」の経済・物価見通
しである。政策委員見通しの中央値で、実
質GDPの成長率は、2018 年度 1.6%、2019
年度と 2020 年度は 0.8%である。また、生
鮮食品を除く消費者物価指数の上昇率は、
2018 年度 1.3%、2019 年度と 2020 年度は
1.8%である。同レポートは、「消費者物価
の前年比は徐々にプラス幅を拡大している
が、エネルギー価格の影響を除くと 0%台
半ばにとどまっており、景気の拡大や労働
需給の引き締まりに比べると、なお弱めの
動きが続いている」。しかし、「先行きを展
望すると、マクロ的な需給ギャップの改善
や中長期的な予想物価上昇率の高まりなど
を背景に、プラス幅の拡大基調を続け、2%
に向けて上昇率を高めていくと考えられ
る」としている。
しかし、4 月の展望レポートが注目され
たのは、前回 1 月の展望レポートまでは、
物価上昇率が 2%程度に達する時期につい
て、「2019 年度頃になる可能性が高い」な
どと具体的に記述していたが、今回からこ
うした記述を行わないこととしたことであ
る。この点について黒田総裁は、@2013 年
4 月に 2 年程度を念頭に置いて量的・質的
金融緩和を始めたが、その後はそういった
特定の達成時期を念頭に置いて金融政策を
運営しているわけではない。A現在の金融
政策は、2%の物価安定の目標をできるだけ
早期に実現するという大きな目標の下で、
その目標に向けたモメンタムが維持されて
いるかどうかを点検し、モメンタムが失わ
れつつあるようであれば追加緩和を検討す
るというものである。この点は今後も全く
変わらない。Bしかし、市場の一部に、見
40
通しを 2%の達成時期と捉え、その変化を
金融政策の変更に直接結びつけるといった
見方が根強く残っているため、日銀の金融
政策スタンスが誤解されることのないよう
に削除した。C2%の物価安定の目標をでき
るだけ早期に実現するというコミットメン
トに全く変化はなく、中長期的目標に変更
したといったことはない、と説明されてい
る。その上で物価の見通しについては、前
回と同様、1.8%は年度の平均なので、年度
の中で一定の動きはあり得る。2019 年度頃
に 2%程度に達する可能性が高いと思って
いると説明されている。
(図表 70)展望レポートの経済・物価見通し(2018.4)
出典:日本銀行
(5) 異次元金融緩和の成果・要約
以上、異次元金融緩和の成果に関し、主
な経済指標の動向をみてきたが、これらを
要約すれば次のとおりである。
@ 2012 年 12 月以来、戦後2番目に長い景
気回復が続いている。特に 2016 年第 1 四半
期以降は、8 期連続でプラス成長となって
いる。ただし、その成長率は、1.3%ないし
1.8%程度と、それ以前と比べても力強さに
欠け、緩やかなものにとどまっている。
A しかし、我が国の潜在成長率は 1%程度
であり、ここ 1 年ほど連続して需給ギャッ
プがプラスになっている。これは物価上昇
圧力を高め、デフレ脱却を後押しするが、
実質的な経済成長を図るため、今後は成長
戦略等により潜在成長率を高めることがよ
り重要な課題になると考えられる。
B 民間最終消費支出は、低調であり、消
費税増税による反動減後も積極的な消費拡
大の傾向は現れていない。賃金が名目・実
質とも 1990 年以来最低の水準で推移して
いることがその背景と考えられる。2014 年
から久々にベースアップが復活したが、未
だ低調であり、今後の更なる拡大が期待さ
れる。
C 民間企業設備は、順調に回復している。
しかし、そのGDP比率や企業活動におけ
るウェイトは、バブル崩壊後大きく低下し、
非金融法人企業のISバランスは、最大の
黒字部門になっている。我が国経済が長期
低迷を脱するためには、このISバランス
を是正することが極めて重要と考えられる。
D 輸出・輸入とも 2013 年から大きく回復
している。実質純輸出は回復傾向にあるが、
未だマイナスを脱していない。輸出金額は
増加したが、これは専ら円安による輸出価
格の上昇によるもので、輸出数量はむしろ
弱含んでいる。これが輸出の拡大にもかか
わらず、波及効果に乏しく経済全体が活性
化しない主因と考えられる。
E 雇用情勢は急速に改善し、完全失業率
や求人倍率はバブル期と同等になっている。
我が国の生産年齢人口は、1995 年をピーク
減少しており、最近の雇用情勢の好転は、
こうした人口動態の進展を多分に反映した
ものと捉えることができる。しかし今後は、
経済成長のボトルネックとなる労働力不足
の問題として顕在化することが予想され、
41
就業者一人当たりのGDP・労働生産性を
向上することが極めて重要な課題になると
考えられる。
F 国債の利回りは、2013 年 1 月時点で 1
年債 0.1%、10 年債 0.8%であったが、異次
元金融緩和によって更に低下し、最近は 1
年債△0.2〜△0.1%、10 年債 0.0〜0.1%で
安定的に推移している。日本国債のイール
ドカーブをドイツ・フランスと比較すると、
長短金利差の少ないフラット化の傾向が強
く、金融機関の経営や金融仲介機能を維持
する上で大きな課題になっている。
2013 年以降、実質金利は自然利子率を大
きく下回っている。また、銀行貸出金利も
低下し、貸出態度も改善するなど、金融環
境は極めて緩和した状態になっている。
G ドル・円レートは、世界金融危機後、
2011 年・2012 年には 80 円を切るまで円高
が進んだが、2012 年 11 月から反転し、2013
年 11 月に 100 円台、2015 年 3 月には 120
円台まで円安が進んだ。今年に入っては月
中平均 106〜110 円で推移している。実質実
効為替レートは、2013 年以降、1992 年以来
の最低の水準で推移している。
H 株価の推移を日経平均株価によってみ
ると、円安が始まった 2012 年 11 月から急
速に上昇を始め、今年 1 月には 2 万 4129
円とピーク時(1989 年末の 3 万 8915 円)の約
6 割水準に達している。最近は 2 万 2000〜2
万 3000 円で推移している。日経平均株価と
ドル・円レートは特に 2000 年代後半から正
の相関が高くなっている。
I 日銀短観の民間企業の業況判断DIは、
2010 年から急速に改善して、2013 年からは
「良い」が「悪い」を上回っている。こう
した傾向は企業規模別にも、地域別にも幅
広く認められる。
J 法人企業の営業利益・経常利益・当期
純利益・内部留保は、2009 年度を底に急上
昇し、2016 年度はいずれも過去最高額にな
っている。売上高営業利益率・売上高経常
利益率・総資本経常利益率も過去最高率と
なっている。付加価値の構成(分配)は、
人件費・賃貸料・租税公課がほぼ横ばい、
支払利息等が大きく低下する中、営業純益
が大きく増加している。
また、法人企業の自己資本比率は、1998
年度まで 19%程度であったが、以後逐年上
昇し、2016 年度には 41%に達している。純
資産の内訳は、特に利益剰余金の増加が著
しく、2016年度の純資産670兆円の内訳は、
資本金 110 兆円、資本剰余金 150 兆円、利
益剰余金 410 兆円である。
K 総合と生鮮食品を除く総合の物価上昇
率は、2013 年 6 月以降大きく上昇し、2013
年11月〜2014年6月には1.5%前後となっ
た。しかし、原油価格の低下を受けて、2014
年7月から下降を始め、2015 年はゼロ前後、
2016 年はマイナスとなった。その後、総合
は 2016 年 10 月から、生鮮食品を除く総合
は 2017 年 1 月から再び上昇し、2018 年 4
月現在、それぞれ 0.6%と 0.7%になってい
る。また、2013年4月以降の平均上昇率は、
総合が 0.5%、生鮮食品を除く総合が 0.4%
である。
中長期的な予想物価上昇率は、こうした
物価の動向を反映して、2013 年から大きく
上昇したが、2015 年夏以降低下し、2016
年からはほぼ横ばいで推移している。
このように異次元金融緩和開始後 1 年半
ほどは 2%の物価安定目標の実現も間近な
ものと感じられたが、その後遠退き、ここ
42
1 年ほど回復傾向にはあるが、その実現に
は距離がある。ただし、日本経済は、物価
が持続的に下落するという意味でのデフレ
ではなくなっている。
もとより経済情勢等は様々な要因によっ
て左右されるが、この 5 年間の異次元金融
緩和の成果を整理すれば、次のようになる
であろう。
[実現したこと]
@それ以前の極端な円高是正と円安の実現
A極めて緩和した金融環境
B過去最高の法人企業の利益額・利益率
C株価の大幅な上昇
D雇用情勢の改善とベースアップの復活
Eデフレではなくなったこと
[十分には実現していないこと]
@戦後 2 番目の長さとなる景気回復、プラ
スの需給ギャップ:力強さに欠け、緩やか
な成長率、潜在成長率の低さ
A消費の拡大:低調
B設備投資の回復:非金融法人企業のIS
バランスは最大の黒字部門
C輸出の拡大:円安による輸出価格の上昇、
輸出数量は弱含み
[実現していないこと]
@2%の物価安定目標の実現
A実質賃金の上昇
以上まとめれば、「円安、低金利、株高、
原油安等の好条件が揃い、法人企業は史上
最高益を実現した。しかし、賃金の上昇や
設備投資などへの波及は限定的で、消費や
投資の拡大が不十分なものにとどまった。
このため、景気の回復は力強さに欠け、物
価の上昇も限られたものになった」と言え
るのではないかと思われる。企業収益の増
大にもかかわらず、いわゆるトリクル・ダ
ウンが不十分な状態である。
5.「デフレ」とは何か
「デフレ」とは何か、ここでその意味を
確認しておこう。
(1)「デフレ」
2001 年 3 月、内閣府は、「デフレ」を「物
価の持続的下落」と定義した。その上で、
「現在、日本経済は緩やかなデフレにある」
との判断を示した。また、日銀は、その直
後に量的金融緩和政策に踏み切り、「消費者
物価指数の変化率が安定的にゼロ%以上に
なるまで継続する」とのコミットメントを
公にした。
その考え方を示すものとして、同月、内
閣府政策統括官がディスカッション・ペー
パー「デフレに直面する我が国経済−デフ
レの定義の再整理を含めて−」を取りまと
めている。その概要は、次のとおりである。
@ 政府は、これまで「デフレ」を「(単に
物価が下落することを指すのではなくて、)
物価の下落を伴った景気の低迷」と定義し
てきた。また、日銀は、「物価の全般的かつ
持続的な下落」と定義してきた(2000 年 10
月調査月報「わが国の物価動向−90 年代の経験を
中心に」による)。
A デフレの定義については、論者によって
幅があり、議論がかみ合わないケースがあ
った。そこで、@「良い物価下落」VS「悪
い物価下落」の議論の問題点、Aインフレ
議論との非対称性、B国際的な共通認識と
してのデフレという 3 つの論点から、デフ
レの定義の再整理を行った。
その結果、@国際的な基準に合わせる、
43
A現在の状況下では、物価が下がること自
体に問題がある等の観点を重視し、政府の
従前の定義を改め、「物価の持続的な下落」
を今後はデフレの定義として採用すること
とする。
この定義によると、「現在、日本経済は緩
やかなデフレにある」と判断できる。
B デフレの経済的コストとして、@名目利
子率の非負制約による経済変動の不安定化、
A名目賃金の下方硬直性により生じる失業
率の高まり、B金融仲介機能の低下を通じ
たマクロ経済への悪影響等が考えられる。
インフレに対する議論に比べ、デフレに
対する議論は、理論的にも実証的にも十分
行われてきたとは言い難い。したがって、
デフレに対する対策については、あらゆる
政策の実施を前提に議論を進めることがよ
り望ましいと考える。
このうちAについて、同ディスカッショ
ン・ペーパーは、(図表 71)のAD・AS曲
線(総需要・総供給曲線)を使って、次のよ
うに説明する。
@ 図Cのように需要の減少による総需要
曲線の左方シフトが起きている状態を「悪
い物価下落」、図?のようにコスト低下によ
る総供給曲線の右方シフトが起きている状
態を「良い物価下落」と整理できる。
しかし、現実に我が国経済で起きている
現象は、総需要曲線も総供給曲線も同時に
シフトする図C+図?の複合形態であろう。
現在の物価下落の何割程度が「良い物価下
落」であり、何割程度が「悪い物価下落」
であるのかの要因分解することは事実上困
難であり、こうした議論は、政策的に余り
意味がない。
また、「良い物価下落」であれ「悪い物価
下落」であれ、物価が全般的かつ持続的に
下落すれば、様々なチャンネルを通じて、
実体経済に悪影響を及ぼしている点を重視
すべきであろう。
しかし、だからといって、この区別をす
ることが重要であることは、ケインズ教授
が 77 年前に述べたときと変わりはない。
A デフレ・インフレの原因を区別して議論
することは重要であるが、図Aも図Bもイ
ンフレと認識しているのに対し、政府はこ
れまで図Cだけをデフレと定義付けして問
題視してきた。ここに「インフレ議論との
非対称性の問題」がある。インフレとデフ
レを対照的に議論することが必要であり、
図Cと図?を合わせてデフレと認識するの
が望ましいと考えられる。
B これまで日本のデフレの定義は国際的
な定義と整合的でなかった。「物価の持続的
な下落」と定義すれば、齟齬がなくなり、
より実りのある経済論議が行われるものと
期待される。
(図表 71) AD・AS曲線
上記の整理により、内閣府はデフレの定
義を変更しているが、これは必ずしも「従
来の定義は合理性に欠けていた」としたも
のではないであろう。
これまで、インフレ議論との非対称性は
44
十分承知の上で、図Cのみをデフレと定義
してきたのは、人々にとって困った事態と
いうのは図A〜図Cであり、図?はむしろ
望ましい状態であるからである。しかし、
それだけでは、原因はともあれ物価が持続
的に下落すること自体が経済に悪影響を及
ぼすことがあるという視点が抜け落ちてし
まうこと、言葉の定義が人によって異なる
ことは混乱のもとになることを考慮し、変
更することとしたと理解されるからである。
そのことは、上記Aの「@国際的な基準に
合わせる、A現在の状況下では、物価が下
がること自体に問題がある等の観点を重視
し、〜」の表現や、上記@末尾の「しかし、
だからといって、この区別をすることが重
要であることは、ケインズ教授が 77 年前に
述べたときと変わりはない」の記述に現れ
ているとおりである。
物価の動向については、デフレの定義の
如何にかかわらず、@状況により、物価の
持続的下落が経済に悪影響を及ぼすこと、
A物価下落の原因によって「良い物価下落」
と「悪い物価下落」があること、この 2 つ
の視点を保ち、丹念にバランスよく分析・
評価することが必要と考えられる。
こうした観点から、これまでの異次元金
融緩和や経済情勢を巡る論議をみると、と
かく前者の視点ばかりが強調され、後者の
視点が弱いのではないかという印象がある。
例えば、原油価格の低下を否定的に捉え、
その上昇を期待するきらいがあるが、本当
に日本経済にとって望ましいものなのかど
うか、慎重に検討すべきものと思われる。
(2)「デフレ・スパイラル」
デフレ・スパイラルについて、内閣府の
上記ディスカッション・ペーパーは、次の
とおり定義している。
「物価下落と実体経済の縮小とが相互作用
(スパイラル)的に進行すること。
すなわち、@物価下落によって企業の売
上が減少する、A賃金などが短期的には下
方硬直的であるため、企業収益が減少する、
B企業行動が慎重化し、設備や雇用の調整
が行われる、C設備投資や個人消費などの
需要の減少が物価下落につながる、という
悪循環が生じることを意味している。」
その上で、「物価下落を伴った景気の低
迷」というこれまでの「デフレ」の定義は、
むしろ「デフレ・スパイラル」に極めて近
い定義であり、両者の相違は不明確である
としている。
(3)「デフレではない」と「デフレ脱却」
政府・日銀は、日本経済の現状について、
「もはやデフレではない。しかし、デフレ
脱却には至っていない」との認識を示して
いる。
「デフレではない」とは、文字通り「物
価の持続的下落」と定義されたデフレの状
態ではないことを意味する。
一方、「デフレ脱却」とは、内閣府が 2006
年 3 月に日銀が量的金融緩和政策を解除し
た直後に導入した概念であり、「物価が持続
的に下落する状況を脱し、再びそうした状
況に戻る見込みがないこと」と定義してい
る。その判断基準は、@消費者物価指数(特
に物価の基調を表す生鮮食品及びエネルギーを除
く総合)、AGDPデフレーター、BGDP
ギャップ、C単位労働コスト(名目雇用者報
酬÷実質GDP)の 4 つの経済指標であり、
これらを総合的に考慮して慎重に判断する
45
としている。
2017 年第 3 四半期に、このデフレ脱却の
4 条件が 25 年ぶりにすべてプラスとなり、
内閣府は、これを「デフレ脱却に向けた局
面変化」と表現した。2018 年第 1 四半期に
再び 4 指標が揃ってプラスとなり、「現在も
改善方向に変わりはない」と評価している
という。
デフレ脱却については、「当時日銀が急速
に引締めに向かうことをけん制するために
作ったもので、厳し過ぎる条件で自分を縛
ってしまっている面がある」との見方があ
る。しかし、今や日銀は 2%の物価上昇を
目標に金融政策を行っており、これとの整
合性や関係は明確でなくなっている。また、
生きた経済を相手に政府が「再びそうした
状況に戻る見込はない」としてデフレ脱却
宣言を行うことには疑問を感じるが、4 つ
の指標は「デフレではない」ことの内容や
安定性示すものであり、その動向を踏まえ
て政策転換のきっかけにすることは大いに
あり得ることと考えられる。
6.異次元金融緩和の実施状況
日銀は、この 5 年間異次元金融緩和を実
施してきた。ここで異次元の内容を具体的
にみることとする。
(1)日銀のバランスシートの変化
(図表 72)は、異次元金融緩和の実施状況
を日銀のバランスシートの変化(2013 年 3
月 31 日〜2018 年 3 月 31 日の 5 年間)によって
みたものである。主な項目をピックアップ
すれば、次のとおりである。
〔資産〕
・総資産:164 兆円→529 兆円、3.2 倍
・国債 :125 兆円→448 兆円、3.6 倍
・長期国債:91 兆円→427 兆円、4.7 倍
・ETF:1.5 兆円→18.9 兆円、12.3 倍
・J-REIT:0.1 兆円→0.5 兆円、4.0 倍
〔負債〕
・発行銀行券:83 兆円→104 兆円、1.3 倍
・当座預金:58 兆円→378 兆円、6.5 倍
・政府預金:1.5 兆円→15.1 兆円、10.1 倍
・引当金勘定:3.2 兆円→4.9 兆円、1.5 倍
*マネタリーベース(3 月次平均残高):
135 兆円→476 兆円、3.5 倍
*当座預金の三層構造(3 月積み期間):
・基礎残高上限値:210 兆円
・マクロ加算残高上限値:136 兆円
・政策金利残高:28 兆円
(完全裁定後政策金利残高:12 兆円)
・所要準備額:10 兆円
・超過準備額等:365 兆円
〔資本〕
・資本金:1 億円→1 億円、1.0 倍
・準備金:2.7 兆円→3.2 兆円、1.2 倍
また、(図表 73)は、2018 年 3 月 31 日現
在の自己資本残高の状況である。資本勘定
と引当金勘定の合計額であり、日銀が債務
超過とならないためのバッファーとなる金
額である。
・自己資本残高:6.1 兆円→8.2 兆円、
1.4 倍
46
(図表 72) 日本銀行のバランスシート 億円
出典:日本銀行・営業毎旬報告
(図表 73) 日本銀行の自己資本残高 億円
出典:日本銀行・財務諸表
(図表 74・75)は、2012 年以来の日銀の
資産と負債・純資産の推移である。異次元
金融緩和が実施された 2013 年 4 月以降、資
産においては長期国債、負債・純資産にお
いては当座預金が驚異的に増加しており、
正に異次元の緩和であることが分かる。
これを主要国と比較したのが(図表 76)
である。世界金融危機後、日銀は、2008 年
10 月から政策金利の引下げ、2010 年 10 月
から包括的金融緩和を行ったが、米国、ユ
ーロ圏でも大規模な金融緩和が行われ、各
国中央銀行の資産規模は、2013 年までに、
対名目GDP比 20〜30%に拡大した。この
時点まで各国に大差はなかったが、2013 年
以降、我が国は突出してGDP比が高まり、
現在ほぼ 100%に達している。これに対し
ユーロ圏は 40%程度、米国は 20%程度であ
り、特に米国は 2014 年から減少傾向に入っ
ている。我が国は、一般政府の債務残高が
GDP比 250%(2017 年末現在)と世界でも
突出して高いが、この 5 年間で、さらに中
央銀行の資産規模も巨大な特異な国に変貌
している。
(図表 74) 日銀の資産(2012〜) 兆円
出典:日本銀行
(図表 75)日銀の負債・純資産(2012〜) 兆円
出典:日本銀行
(図表 76)各国中央銀行の資産規模(1995〜)
出典:日本銀行・講演資料
47
(2)国債の保有状況
異次元緩和による大規模な国債の買入れ
の結果、日銀の国債(国債・財投債、国庫短期
証券)の保有割合は、18%から 41%(2017
年末現在)へと急速に高まっている。これに
見合って大きくシェアを低下させたのが預
金取扱機関、特に都市銀行である(図表 77)。
(図表 78)は、2017 年末現在の保有状況
を国債(国債・財投債)と国庫短期証券に分
けてみたものである。日銀の保有割合は、
国債 43%、国庫短期証券 21%である。海外
はこの 5 年近くで 8%から 11%へと全体の
シェアを高めているが、圧倒的に国庫短期
証券が多く、その 60%を占めている。逆に
生損保等は国債中心であり、銀行等はいず
れも同程度のシェアで保有している。
(図表 77)国債の保有者別内訳(2012〜) %
出典:日本銀行・資金循環統計
(図表 78)国債の保有者別内訳(2017 年末)
出典:財務省
日銀は、2016年9月の総括的検証の結果、
金融政策の操作目標を量から金利に切り替
え、長短金利の操作を行うイールドカー
ブ・コントロールを導入した。目標とする
金利と国債等の買入れ額は正に表裏の関係
にあり、どちらを操作目標とするかの問題
であるが、日銀が保有する長期国債の対前
年増加額は、(図表 79)のとおり変化して
いる。
すなわち、2013 年 4 月の量的・質的金融
緩和導入時に長期国債の保有残高が年間
50 兆円に相当するペースで増加するよう
買入れを行うとされ、さらに 2014 年 10 月
に 80 兆円に拡大され、実際の保有残高もほ
ぼそのとおり増加して、イールドカーブ・
コントロール導入時の 2016 年 9 月当時は
80 兆円増加のペースで推移していた。イー
ルドカーブ・コントロールでは、長期国債
の買入れ額について、「概ね現状程度の買入
れペース(保有残高の増加額年間約 80 兆円)を
めどとする」とされたが、その後長短金利
操作が行われる中で、長期国債の増加額は
漸減し、本年 4 月には 48 兆円まで低下して
いる。
こうした状況を踏まえて、日銀は事実上
ステルス・テーパリング(密かな量的金融緩
和の縮小)を開始したと捉える見方もあるが、
黒田総裁は、「毎回の国債買入れの金額など
は金融市場の状況に応じて変化するが、
日々のオペ運営によって先行きの政策スタ
ンスを示すことはない」としており、あく
まで金融政策決定会合で決定された金融市
場調節方針(現在、政策金利残高△0.1%、10 年
物国債金利ゼロ%程度)を実現した結果に過
ぎないというものである。
しかし、減少したといっても対前年増加
額 50 兆円程度である。これは「2 年で 2%
を実現する」とされた当初の異次元緩和の
48
増加ペースであり、巨額な長期国債の買入
れを継続していることに変わりはない。傾
向的に更に減少する可能性はあるが、後に
みるように、日銀の政策が変更されない限
り、異次元緩和の本質が変わるほど減少す
ることはないと思われる。
(図表 79)日銀保有長期国債の対前年増加額兆円
出典:日本銀行
7.異次元金融緩和のメカニズム
異次元金融緩和がどのようなメカニズム
によって 2%の物価安定目標を実現するの
か、これを明らかにすることは、異次元金
融緩和を評価する上で重要なポイントと考
えられる。ここでは、日銀の考え方を紹介
するとともに、これらについて識者の見解
を踏まえつつ検討することとしたい。
(1)異次元金融緩和のメカニズム
日銀が考える異次元金融緩和のメカニズ
ムは、上記2.(4)「量的・質的金融緩和の
効果」に記したとおり、@金利と資産価格
プレミアムの引下げ、Aポートフォリオ・
リバランス、B予想インフレ率の引上げを
主たる波及経路とするものである。
総括的検証では、これを「「量的・質的緩
和」で想定したメカニズム」として、(図表
80)のとおり、「人々の予想物価上昇率の引
上げ」を中心に体系的に示している(総括
的検証の結果、日銀は長短金利操作付き量的・質
的金融緩和を導入し、操作目標を量から金利に切
り替えているが、メカニズムについての考え方は
基本的に変わっていないと考えられる)。
(図表 80)「量的・質的緩和」で想定したメカニズム
出典:日本銀行・「総括的な検証」背景説明
図表の番号に従って分説すれば、以下の
とおりである。
@ 日銀の 2%の物価安定目標の強く明確
なコミットメントとこれを裏付ける大規模
な長期国債の買入れによって、人々の予想
物価上昇率を引き上げる。
日銀は、これを「フォワード・ルッキン
グな期待形成」と言うのみで、その具体的
メカニズムは明らかにしていない。しかし、
金融市場調節の操作目標を金利からマネタ
リーベースに転換し、これを大規模に拡大
することとしたこと、総括的検証において
も、「予想物価上昇率の形成におけるマネタ
リーベースの役割」として、「マネタリーベ
ースの拡大は、「物価安定の目標」に対する
コミットメントや国債買入れとあわせて、
金融政策レジームの変化をもたらすことに
より、人々の物価観に働きかけ、予想物価
上昇率の押し上げに寄与したと考えられる。
一方、マネタリーベースと予想物価上昇率
は、短期的というよりも、長期的な関係を
持つものと考えられる。したがって、マネ
タリーベースの長期的な増加へのコミット
メントが重要である」と記述していること
49
などから、一般に、貨幣数量説を根拠に、
マネタリーベースの拡大が予想物価上昇率
の上昇につながると想定したものと理解さ
れている。
A 日銀による大規模な長期国債買入れに
よって、名目金利を低下させる。
日銀が国債市場において大量の国債を買
い入れることによって、国債の需給に影響
を及ぼし、国債価格の上昇→国債利回りの
低下→市場金利一般の低下を図るものであ
る。ゼロ金利政策の導入もその重要な一環
と位置付けられる。
B @Aによって、実質金利を引き下げる。
@〜B(中段の枠組み)は、フィッシャ
ー方程式(※9)そのものであり、@による
予想物価上昇率の引上げと、Aによる名目
金利の引下げによって、実質金利を低下さ
せる。
C 実質金利の低下によって、需給ギャップ
を改善する。
実質金利の低下→投資や消費の拡大→需
給ギャップの改善のメカニズムである。伝
統的なIS-LMモデルやIS-MPモデル
によれば(※16・17)、LM曲線やMP曲線
の右方ないし下方シフトによってGDPは
増加し、需給ギャップは改善する。
D 需給ギャップの改善は、予想物価上昇率
の上昇とあいまって、現実の物価上昇率を
押し上げる。
C・D(下段の枠組み)は、フィリップ
ス曲線(※11、図表 4)のメカニズムを表して
いる。@による予想物価上昇率の引上げは
フィリップス曲線を上方にシフトさせ、D
による需給ギャップの改善は動点をフィリ
ップス曲線上右上に移動して、物価を上昇
させる。
(図表 4) フィリップス曲線(再掲)
出典:日本銀行・講演資料
E 現実の物価上昇率の上昇によって、適合
的な期待形成メカニズムを通じ、人々の予
想物価上昇率を更に引き上げる。これによ
り、上記のプロセスが一段と強まることに
なる。
以上のほか、日銀の金融緩和によって、
F 株価や為替相場などの資産価格が、経
済・物価の動きを反映しあるいは先取りす
る形で形成されることを通じて金融環境が
改善し、経済・物価面にも好影響を与える。
G 投資家がリスク性資産への選好を高め
る(ポートフォリオ・リバランス効果)結果、
リスク性資産の価格に対するプラスの影響
のほか、貸出の増加などが期待される。
としている。
日銀は、以上の波及メカニズムに沿って
分析を行い、2%の物価安定目標が実現でき
ていない理由について、「@原油価格の下落、
消費税率引き上げ後の需要の弱さ、新興国
経済の減速とそのもとでの国際金融市場の
不安定な動きといった外的な要因が発生し、
実際の物価上昇率が低下したこと、Aその
中で、もともと適合的な期待形成の要素が
強い予想物価上昇率が横ばいから弱含みに
転じたことが主な要因と考えられる」とす
50
るとともに、「実際の物価上昇率が当面低い
水準で推移する中にあって、適合的な期待
による引き上げには不確実性があり、時間
がかかる可能性に留意する必要がある。そ
れだけに、フォワード・ルッキングな期待
形成の役割が重要である」として、オーバ
ーシュート型コミットメントを導入してい
る。
以下、こうしたメカニズムについて検討
を進める。
(2)非伝統的金融政策
(図表 81)は、主要国の政策金利の推移で
ある。我が国では、1990 年代初めに 6%で
あった政策金利は、バブル崩壊とともに逐
次低下し、ついに 1999 年に事実上のゼロ金
利に到達した。以後、ゼロ金利政策や量的
緩和政策が解除された直後にわずかばかり
上昇したが、この 20 年近くほぼゼロ金利状
態が続いている(2008 年 10 月からの若干のプ
ラスは補完当座預金制度による 0.1%の付利金利、
2016 年 2 月からの若干のマイナスはマイナス金利
政策による政策金利残高の△0.1%である)。
一方、米国とユーロ圏では、政策金利は、
世界金融危機前はそれぞれ 5%、4%程度で
あったが、危機後にいずれも急速に低下し、
ゼロ金利水準に至っている(FRBは、2008
年 12 月から 0.25%、2015 年 12 月に 0.5%、以後段
階的に金利引上げ。ECBは、2013 年 11 月から
0.25%、2014 年 9 月から 0.05%、2016 年 3 月から
ゼロ%、2014 年 6 月にマイナス金利導入)。
こうした政策金利の低下にもかかわらず、
世界金融危機は各国経済に深刻な影響を与
え、各中央銀行は、金融機関の信用不安、
証券化商品等のリスクプレミアムの高まり、
欧州債務危機など、それぞれの課題を踏ま
えて、非伝統的金融政策の実施に踏み切る
ことになった。
米欧におけるような金融市場の混乱やB
/S上の問題こそみられなかったが、世界金
融危機以前から経済が低迷し、世界に先駆
けて非伝統的金融政策を採用してきた我が
国においては、「いかにしてゼロ金利制約を
乗り越えるか」が改めて大きな課題になっ
た。
この問題に対する日銀の対応は、大きく
以下のように整理されている。
@ 金融政策の操作目標をより長めの金利
にシフトすること。長期国債の買入れによ
って長期金利のタームプレミアムを圧縮す
る方法と、将来の短期金利のパスを約束し、
これを低位に維持することで長期金利に影
響を与える方法(時間軸効果、フォワード・
ガイダンス)がある。
A リスク性資産の買入れを通じて、リスク
プレミアムに働き掛けること。社債やCP、
ETF、J-REIT の買入れによって、企業
や家計が直面する資金調達コストを一段と
引き下げること。
B 短期の名目金利にマイナス金利を適用
することで、ゼロ金利制約そのものを取り
払うこと。
C 人々のインフレ期待に働き掛けること
によって、実質金利を引き下げること。
いずれもこれまでの金融政策が直接の対
象としてこなかった分野に金融緩和の余地
を見出し、長期金利、リスク資産のリスク
プレミアム、マイナス金利、インフレ期待
を施策対象として積極的な対応を図るもの
である。また、こうした取組は、事実上為
替レートや財政ファイナンスにも大きな影
響を与えるものである。
51
日銀の取組の特徴を挙げれば、@市場機
能の回復など個別具体的な課題への対応で
なく、景気対策そのものであること、A対
策の規模が突出して大きいこと、しかし、
Bこれまでのところ出口への展望が見えて
来ないことなどである。
(図表 81) 主要国の政策金利
出典:日本銀行・講演資料
ここでゼロ金利制約と非伝統的金融政策
の関係をIS-LMモデルとIS-MPモデ
ルで確認すれば、次のように考えられる。
(図表82)と(図表83)の財市場の均衡条件
を表すIS曲線は、バブル崩壊や金融危機
後、消費の低迷や投資の縮減によって大き
く左方にシフトするとともに、傾きがステ
ィープ化した。景気の後退を受け、日銀は
政策金利を逐次引き下げ、貨幣供給量(マ
ネーストック)の増大を図った。その結果、
貨幣市場の均衡条件を表すLM曲線は右方
シフト、金融政策ルールを表すMP曲線は
下方シフトして、一定の効果を発揮したが、
景気を回復するまでには至らず、ついにそ
れ以上金利の低下を図り得ない、LM曲線
は流動性の罠、MP曲線はゼロ金利制約に
直面することになった。こうした状況下で
は、政策金利を操作する伝統的な金融政策
は基本的に無効となり、IS曲線を右方シ
フトする財政政策や民間投資を促進する成
長戦略だけが有効となる。非伝統的金融政
策は、これまで金融政策が対象としてこな
かった分野を施策対象に取り込み、積極的
な対応を図ることによって、こうしたゼロ
金利制約の課題を乗り越えようとするもの
である。
※16IS-LMモデル:縦軸に金利、横軸に産出量
(GDP)をとり、財市場の均衡条件を表すIS
曲線と貨幣市場の均衡条件を表すLM曲線を描い
たマクロ経済モデル。IS曲線とLM曲線の交点
において財市場と貨幣市場を同時均衡させる利子
率と産出量が求められる。金利が低下すると、投
資や消費が増え、GDPが増加することから、I
S曲線は右下がりの曲線になる。貨幣需要は物や
サービスを購入するための取引需要(取引動機と
予備的動機)と債券等に投資するための投機的需
要(投機的動機)からなるとし、GDPが増加す
ると、取引需要が増加し、投機的需要に回る貨幣
が減少して、金利が上昇することから、LM曲線
は右上がりの曲線になる。公共投資の増加など同
一金利における総需要の増大はIS曲線を右方シ
フトする。また、中央銀行による貨幣供給量の増
大はLM曲線を右方シフトする。
※17IS-MPモデル:縦軸に実質金利、横軸に産
出量(GDP)をとり、財市場の均衡条件を表す
IS曲線と金融政策ルールを表すMP曲線を描い
たマクロ経済モデル。伝統的なIS-LMモデルを
修正して、貨幣需要の均衡を表すLM曲線をMP
曲線に置き換えたもの。MP曲線は中央銀行が行
う金融政策から導かれるが(テイラー・ルールは
その一例)、GDPが減少すると、中央銀行は需要
を刺激するため実質金利を低下させ、GDPが増
加し過ぎると、インフレを抑制するため実質金利
を上昇させることから、MP曲線は右上がりの曲
線になる。中央銀行による金融緩和=実質金利の
引下げはMP曲線を下方シフトする。
IS-MPモデルは、IS-LMモデルに比べ次
のような長所を持つとされ、現在主流となったニ
ュー・ケインジアンの理論的枠組みは、IS曲線、
52
フィリップス曲線、金融政策ルールの3つから成
るとされる。@現実的である。IS-LMモデルは
中央銀行がマネーストックをターゲットにすると
仮定する。これに対しIS-MPモデルは中央銀行
が金利ルールに従うと仮定する。A一貫性がある。
IS-LMモデルは実質金利と名目金利が混在し
ており、一貫性がない。これに対しIS-MPモデ
ルは金利概念が実質金利に統一されている。B簡
単である。LM曲線を導くにはマネー市場を分析
しなければならないので難しい。これに対しMP
曲線はマネー市場の分析を省略できる。
※18 流動性の罠:金融緩和により金利がゼロ近く
に低下すると、債券の代わりに貨幣を保有するコ
ストがほぼゼロとなり、また、人々が債券価格の
下落(金利の反転上昇)を予想して投資を行わな
くなるため、投機的動機による貨幣需要は貨幣供
給に応じて無限に拡大する。このように金利の低
下によって貨幣の投機的需要が無限大となり、い
くら中央銀行が貨幣供給しても、それ以上金利が
低下せず、金融緩和が無効となった状態をいう。
IS-LMモデルでは、LM曲線が水平になった部
分で表される。
(図表 82) IS・LM曲線
(図表 83) IS・MP曲線
出典:矢野浩一・なぜリフレ派は消費増税に反対なのか?
SYNODOS 2014/12/10
(3)貨幣数量説と予想物価上昇率の引上げ
上記のように、日銀は、「2%の強く明確
なコミットメントとこれを裏付ける大規模
な長期国債の買入れによって、人々の予想
物価上昇率を引き上げる」とし、これを「フ
ォワード・ルッキングな期待形成」と呼ん
でいる。日銀はその具体的メカニズムを明
らかにしていないが、一般に、貨幣数量説
を根拠にマネタリーベースの拡大が予想物
価上昇率の上昇につながることを想定した
ものと理解され、その上で、ゼロ金利下に
おいてもそうしたメカニズムが働くかにつ
いては多くの疑問が寄せられている。
貨幣数量説は様々に論じられているが、
その代表がアービング・フィッシャーが定
式化した交換方程式:M(貨幣総量=マネー
ストック)×V(貨幣流通速度)=P(物価水
準)×T(取引量)である(Tは実際には観測
困難なため、しばしばY(実質GDP)が用いら
れる)。XとTはほぼ一定と仮定し、Mが増
加すればPが上昇するとする。また、マネ
タリズムの主唱者であるミルトン・フリー
ドマンは、貨幣の中立性は短期的には満た
されないことがあるが(Yも上昇する)、長
期的には満たされるとして、Mが増加すれ
ば、長期的にPだけが上昇するとする。
一般に理解されているメカニズムは、こ
うした貨幣数量説を根拠に、「日銀によるマ
ネタリーベースの増加→マネーストックの
増加→物価の上昇」を人々に予想させるこ
とによって、予想物価上昇率を引き上げる
メカニズムである。しかし、このメカニズ
ムが働くためには、@マネタリーベースの
増加→マネーストックの増加(信用創造)、
Aマネーストックの増加→物価の上昇(貨
幣数量説)の 2 つのステップがともに実現
53
されなければならない。
日銀が長期国債等を買い入れることによ
って供給したマネタリーベース(日本銀行券
発行高+貨幣流通高(硬貨)+日銀当座預金。日
銀券等は既に飽和状態にあり、増加したのは主に
日銀当座預金)は、民間銀行が企業や家計に
与信することによって、社会に流通する貨
幣=マネタリーストックとなる。その関係
は、マネタリーベース×貨幣乗数又は信用
創造乗数=マネーストックと表され、信用
創造と呼ばれるが、これらの乗数はあくま
でも上限を画するものであり、民間銀行の
与信が行われない限り、マネーストックが
増加することはない。
経済が流動性の罠やゼロ金利制約の下に
あることは、金利がゼロでも企業や家計は
積極的に借入れをしないことを意味する。
また、民間銀行は、短期金利ゼロでは、少
なくとも短期金融市場に資金を提供しても
利益は得られず、長期運用してもリスクプ
レミアムを除いた利益はゼロであり、与信
拡大のインセンティブが働きにくい。この
ため、ゼロ金利下においては、借手・貸手
いずれのサイドからみても、大きな与信拡
大は期待し得ず、@のマネタリーベースの
増加→マネーストックの増加(信用創造)
のステップは限られたものになる。
また、貨幣数量説:M×V=P×Tは、
専ら取引動機に基づく貨幣需要を念頭に立
論されたものである。しかし、貨幣需要に
は、このほかケインズの言う投機的動機と
予備的動機があり、ゼロ金利下においては、
投機的需要が無限大となり、また、将来不
安から予備的動機に基づく資金需要も大き
いと考えられる。こうした状況下では、仮
にマネーストックが増加したとしても、企
業や家計は現預金を積み増すばかりで、投
資や支出を拡大しようとせず、Aのマネー
ストックの増加→物価の上昇(貨幣数量説)
のステップも限られたものになる。交換方
程式に擬えるならば、V(貨幣流通速度)が
大きく低下した状態である。
以上、ゼロ金利下、さらにこれに類似し
た不況期においては、上記@・Aのいずれ
のステップもほとんど実現せず、貨幣数量
説を根拠とする物価上昇、これを前提とす
る予想物価上昇率の引上げは期待し得ない
ものと考えられる。
Aの物価の動向は上記4.(4)でみたと
おりである。また、@の状況をみたのが(図
表 84〜86)である。マネタリーベースは日
銀当座預金(ほとんどが超過準備)を中心に、
2013 年 4 月以降驚異的に増加し、2018 年 4
月現在 492 兆円に達している(図表 84)。こ
の間マネーストックも緩やかに増加してい
るが、特段マネタリーベースの増加を反映
するものとはなっていない(図表 85)。これ
を対前年増加率でみたのが(図表 86)であ
り、マネタリーベースの急増にマネースト
ックがほとんど反応していないことが分か
る。民間銀行は既に与信に必要な資金をは
るかに上回る準備預金を保有しており、こ
れが追加的に増加したからといってマネー
ストックが増えるものではないであろう
(マネーストックの緩やかな増加は、これとは無
関係に、経済規模の全体的な拡大に対応したもの
と思われる)。
ただし、以上のことは、日銀のコミット
メントと異次元緩和が予想物価上昇率を引
き上げる可能性が全くなかったことを意味
するものではない。人々が信じることによ
って自己実現的に予想が形成され、成就す
54
る場合があるからである。しかし、賃金も
物価も思うように上昇しない現実を前にし
て、人々は日銀の掛け声だけで期待形成を
変えることはなかった(この点は、メカニズ
ムが明白な物価高騰時に行われる金融引締めとは
異なる)。日銀は、今でも「我が国は適合的
な期待形成の影響が大きいが、今後もフォ
ワード・ルッキングな期待形成を強めるた
め、オーバーシュート型コミットメントを
実施する」としているが、果たしてその効
果はどうであろうか。
※19 貨幣数量説:一般的な物価水準は、社会に流
通する貨幣の総量(マネーストック)と生産物の
総量の相対的な大きさによって決まるとする経済
理論。その定式化の代表にアービング・フィッシ
ャーの交換方程式とケンブリッジ学派の現金残高
方程式がある。前者は、M(貨幣総量)×V(貨
幣流通速度)=P(物価水準)×T(取引量)。X
とTはほぼ一定と仮定し、Mが増加すればPが比
例して上昇するとする。後者は、M(貨幣総量)
=k(比例定数、マーシャルのk)×P(物価水
準)×Y(実質GDP)。実際に観測困難なTに代
わってYが用いられ、kは人々の貨幣選好を表す。
マネタリズムの主唱者であるミルトン・フリード
マンは、貨幣の中立性は短期的には満たされない
ことがあるが、長期的には満たされるとする。こ
のため、Mが増加すると一時的にYが増加するこ
とはあるが、長期的にはPの上昇だけが生じると
する。
(図表 84) マネタリーベース(1998〜) 兆円
出典:日本銀行
(図表 85)マネタリーベースとマネーストック兆円
出典:日本銀行
(図表 86)マネタリーベースとマネーストック(前年比)%
出典:日本銀行
米国でも、2008 年 11 月から 3 次に渡っ
て「QE(Quantitative Easing)」と呼ば
れた量的緩和政策が実施された(2008 年 11
月〜2010 年 6 月QE1、2010 年 11 月〜2011 年 6
月QE2、2012 年 9 月〜2014 年 10 月QE3)。
しかし、当時のバーナンキFRB議長は、
QEと呼ばれることを嫌い、かつて日銀が
実施した量的緩和政策とは異なることを強
調して「信用緩和政策」と呼んだ。公式に
は「大規模資産買入れ:LSAP(Large
Scale Asset Purchases)」である。
その狙いはMBS等のリスク資産の買取
りによるリスクプレミアムの低下であり、
日銀の行った量的緩和が負債側の日銀当座
預金を増やすことに主眼があったのに対し
(異次元金融緩和は同じく負債側のマネタリーベ
ース)、LSAPはどのような資産をどれだ
け買うかという資産側に力点があった。資
産の買入れによって当然準備預金は増加す
るが、それはあくまで結果に過ぎないとの
55
位置付けである。QE2・QE3 では長期国
債等も買入れ対象となり、一般的な景気対
策としての性格を強めていったが、なお長
期金利の引下げなど資産側の効果に主眼を
置くものであった。その上で、バーナンキ
議長は、2012 年 12 月、「誤解がないことを
確実にしておきたい」として、「FRBのバ
ランスシートの規模は、期待インフレ率に
全く影響しない」と断言した。また、退任
を間近にした 2014 年 1 月、「量的緩和の問
題点は、それが現実には効果を発揮したが、
理論的には効果がないことだ」と言っての
け、その実験的性格を指摘したという。
なお、米国でマネタリズムが最も光彩を
放っていたのは、1970 年代の大インフレの
時代からポール・ボルカーがFRB議長と
してインフレ退治を行った 1970 年代末ま
での時期であり、その後次第に輝きを失い、
グリーンスパン議長の時代にはその影響力
が決定的に低下したという。その主因は、
金融技術の革新によってマネーストックの
範囲や機能が流動化し、マネーストックと
物価との安定的関係が失われて、金融政策
の拠り所になり得ないことが明らかになっ
たことである。現在FRB等の多くの中央
銀行が依拠しているニュー・ケインジアン
のマクロ経済学では、通貨供給量への関心
が薄れ、そもそもその基本モデルに通貨供
給量は明示的に登場していない(※17ISMPモデル参照)。
我が国でも、上記のとおり、ゼロ金利下
やこれに類似した不況期においては、マネ
タリーベースが増加しても物価は上がらず、
また、1980 年代のバブル期には、その後の
大規模な不良債権処理につながるマネース
トックの膨張があったにもかかわらず、そ
の多くが不動産投資や株式投資に回り、物
価は上昇しなかったこと、そのことが日銀
の対応の遅れを招き、今日に至る日本経済
低迷のそもそもの原因となったことは、記
憶に新しいところである。
(4)ポール・クルーグマンの提案
1998 年、アメリカの経済学者ポール・ク
ルーグマンが、我が国経済に対する処方箋
として、予想インフレ率引上げによる実質
金利の引下げの提案を行った。日本でも大
きな話題となり、その考え方は日銀の政策
にも少なからず影響を与えたとみられてい
るため、ここに紹介する。
提案の内容は、「中央銀行が無責任である
ことを確信させるような約束をすべきだ。
日銀は、4%のインフレを 15 年間続けるこ
とにコミットせよ」というものである。「実
質金利を自然利子率まで引き下げるために
は、名目金利を引き下げるか、予想インフ
レ率を引き上げるしかないが、自然利子率
がマイナスとなり、流動性の罠に陥った現
時点では、どんなに量的緩和やゼロ金利を
行ってもデフレから脱却できない。しかし、
いつかは何らかのショックでインフレが起
きる。「そのとき、中央銀行は景気が過熱し
インフレ率が高騰するまで事態を放置す
る」と人々に確信させることができれば、
将来についてインフレ期待が生じる。これ
により現時点の長期的インフレ期待が高ま
れば、現時点の実質金利が低下して、潜在
GDPを実現する自然利子率まで行き着
く」というものである。
景気の循環的変動を重視した考え方であ
るが、大きな弱点は、時間非整合性の問題
(経済がデフレから脱却して景気が過熱始めたと
56
き、物価の番人である中央銀行が約束どおりイン
フレの行き過ぎを放置することはあり得ないであ
ろうし、国民も中央銀行に約束を守らせる誘因を
持たないであろうということ)である。そのこ
とが余りにも明白なため、こうしたコミッ
トメントは人々に信じてもらえず、したが
って、長期的インフレ期待は生じないとい
うことになる。クルーグマン自身も明快な
解決策を示すことができず、難しい問題だ
と認めていたという。しかし、「国民や将来
の政策委員が受け入れやすい 2%のインフ
レの実現にコミットするのでは、予想イン
フレ率の引上げが不十分で、実質金利が十
分に下がらず、デフレ脱却には役立たない」
として、「臆病の罠」と呼んでいた。
ところが、世界金融危機後の 2013 年 11
月、元米国財務長官のローレンス・サマー
ズが先進国経済に関し長期停滞仮説を提唱
し、その原因として、自然利子率が長期に
わたり低下し、マイナスになるような状況
を挙げた。サマーズにとっての中心課題は、
「自律的には自然利子率が上昇しない長期
停滞から経済を浮揚するにはどうすればよ
いか」であり、いずれ自然利子率が上昇し、
インフレが生ずることを前提とした政策論
議は無意味だということになる。こうして
長期停滞仮説は、クルーグマンの提案に対
し根本的な疑問を投げかけることとなった。
こうした議論を受け、クルーグマンは、
2015 年 10 月に発表した小論「日本再考」
で、「長期停滞仮説を前提にすると、金融政
策による期待への働き掛けではインフレに
ならない」として、日本への処方箋を見直
した。その概要は次のとおりという。
@1998 当時は需要不足が長引き、大胆な金
融緩和が必要であったが、現在の日本は需
要不足がほぼ解消し、経済は潜在成長力並
みで推移している。主因は人口動態の変化
である。
A自然利子率は、低水準のまま推移してい
る。金融緩和で無責任になることを公約し
ても、誰もインフレ率が上昇すると信じな
ければインフレは起きないだろう。
Bこの状態でインフレ率を確実に上昇させ
るためには、金融緩和とともに財政出動を
断行することが必要である。インフレ率を
上昇させる目的は、財政再建の痛みを和ら
げるためである。積極的な財政出動と金融
緩和を行って、インフレ率を財政が持続で
きる状態になるまで大きく引き上げるべき
である。
サマーズは、その反応を踏まえ、2015 年
11 月に、「今後の政策対応の焦点は、金融
政策でなく財政政策に移るだろう」とコメ
ントしたという。こうした方向は、バーナ
ンキ等のヘリコプターマネーやクリストフ
ァー・シムズのFTPL:物価水準の財政
理論と相まって、最近の日本の経済論議に
つながっていると考えられる。
以上を踏まえると、日銀の異次元金融緩
和によるフォワード・ルッキングな期待形
成、特にオーバーシュート型コミットメン
トは、現時点の予想物価上昇率をそのまま
引き上げるのではなく、インフレが生じた
将来時点のインフレ率を更に高めることに
コミットすることによって、現時点の長期
的予想物価上昇率を引き上げるクルーグマ
ン流の考え方に基づくものとも考えられる。
しかし、少なくとも現在においては、2%の
達成にも大きな隔たりがあり、そのような
長期的インフレ期待を人々が懐く状況には
至っていないと言うべきであろう。
57
(5)長期金利の引下げ
リスクフリー資産である長期国債の金利
は、概念上次のように示すことができる。
長期金利=予想される短期金利の累積値
+タームプレミアム
n年満期の長期金利は、裁定によって、
n年後まで毎年借換えを行う場合の金利と
等しくなる。また、長期金利には、金利変
動、物価変動、流動性等を反映したリスク
プレミアムが含まれる。こうした関係を単
純に示したのが上記の式である。
中央銀行がほぼ完全に操作できるのは政
策金利とされているごく短期の金利であり、
中央銀行はその時々の経済情勢に応じてこ
れを決定する。しかし、日銀が 1999 年に導
入したゼロ金利政策では、@政策金利をゼ
ロとするとともに、Aこれをデフレ懸念が
払拭されるまで継続すると発表した。この
ように将来の政策金利を現時点において決
定し、約束することによって、長期金利を
低位に安定させる政策が時間軸政策であり、
その効果が時間軸効果である(上記式の第1
項が低位に確定する)。異次元金融緩和では、
マイナス金利導入前までは付利金利 0.1%、
導入後は政策金利残高△0.1%がこれに相
当し、イールドカーブ・コントロール導入
後は 10 年物国債金利ゼロ%程度もこれに
類するものと考えられる。
また、日銀の長期国債の買入れによって、
上記式第 2 項のタームプレミアムが低下す
る。利益獲得を目的としない日銀が大量に
国債を買入れることによって、既に時間軸
効果によって低下した長期金利が更に低下
するが、これはタームプレミアムの低下に
よるものと整理されている。
時間軸効果は、かつてのゼロ金利政策や
量的緩和政策においても大きな効果を発揮
したと言われるが、異次元金融緩和の特徴
は、何と言っても国債買入れ額の圧倒的な
規模の大きさである。例えば、年間 80 兆円
のペースで国債保有残高を増加させていた
ときには、概ね、日銀の国債買入れ額=新
規買入れ額 80 兆円+償還分再投資額 40 兆
円=120 兆円、財務省の長期国債発行額=
新発債 40 兆円+借換債 80 兆円=120 兆円
であり、ネットで、日銀は財務省が発行す
る国債のほぼすべてを取得していたことに
なる(その結果、民間の国債保有残高は、毎年
40 兆円ずつ減少する)。
このように日銀は国債の流通市場におい
て圧倒的存在感を示し、国債の金利に決定
的な影響を与えることになった。その典型
がいわゆる「日銀トレード」である。日銀
トレードは、証券会社や銀行が財務省から
落札した国債を数日で日銀に売却して利鞘
を稼ぐ取引であり、転売までの数日間に金
利が上昇しない限り、確実に利益を上げる
ことができる。特に 2016 年のマイナス金利
の導入により、金融機関が高値での転売を
狙って国債を大量に買い入れるようになっ
たことが、金利の急速な低下につながった
と言われている。このように国債の保有者
がほとんどリスクを負担せず、いわば仲介
手数料を鞘取りする中で形成される国債の
金利は、とても市場金利とは言えないであ
ろう。また、伝統的に中央銀行が長期金利
をコントロールすることは不可能と言われ
てきたが、長短金利に操作目標を設定する
イールドカーブ・コントロールを導入し、
安定的に運用できていること自体、日銀の
国債市場に対する影響力の大きさを如実に
示すものと考えられる。
58
こうしてみると、我が国の国債金利は、
正に日銀の政策判断を示す政策金利であり、
いわゆる市場金利ではないことになるが、
リスクフリー金利を決定する一国経済の根
幹に関わる国債市場がその市場機能を失っ
ているとすれば、資源の適正配分や有用な
情報の発信、特に財政規律の確保を図る上
で、重大な問題をはらむものと考えられる。
(6)ポートフォリオ・リバランス効果
ポートフォリオ・リバランス効果は、日
銀が長期国債を大量に買い入れると、それ
まで長期国債で運用してきた金融機関や投
資家がポートフォリオを変更し、貸出を増
やしたり株式や外債等のリスク資産で運用
したりすることによって、経済が活性化す
る効果である。
しかし、国債の売却によって取得した日
銀当座預金は、個々の金融機関が自分の持
ち分を変化させることはできても、金融機
関全体としてはその量を変化させることが
できない。日銀当座預金は、ある金融機関
が手放せば他の金融機関が取得する構造と
なっており、日銀が買い入れた国債の売却
等を行わない限り減少しない。マネタリー
ベース全体の規模を決め左右するのは供給
者である日銀である。
また、国債金利が低下する中、国債と日
銀当座預金の資産性は次第に同質化し、こ
れを交換しても、ポートフォリオを変更す
るインセンティブはほとんど無くなった。
また、リスクフリー金利である国債金利が
低下すれば、他の多くのリスク性資産の収
益率も同時にそれだけ低下するため、投資
行動の変化は生じないと考えられる。かつ
ての量的緩和でもポートフォリオ・リバラ
ンスのメカニズムは機能しなかったと言わ
れるが、結局、今回も期待された効果はほ
とんど生じていないという。
(図表 77)でみたように、異次元金融緩
和で多くの国債を手放したのは預金取扱機
関、中でも都市銀行である。銀行等がこれ
だけ低金利にもかかわらず国債に投資して
きたのは、非金融法人企業のISバランス
が黒字化する中、有力な投資対象が不足し
ていたためと考えられる。その結果、将来
に向けて巨大な金利変動リスクを抱えるこ
とになったが、日銀がこのリスクを引き取
ってくれる上、売却すれば金利低下による
キャピタルゲインを得ることができる。こ
うして多量の準備預金を手にすることにな
ったが、では国債に代わる有力な投資対象
が出て来たかといえばそうした状況変化は
みられない。少なくとも基礎残高には
0.1%が付利され、現状では多くの金利変動
リスクと信用リスクを取ってリバランスす
ることはできない、というのが個々の金融
機関の実情と思われる。なお、国債を有力
な投資対象とする機関は、国債金利が低下
する中、一定の利息収入を確保するため、
その投資対象を 10 年債から 20 年債、30 年
債へと長期化させた。これが国債のイール
ドカーブをフラット化した主因と考えられ
るが、これはポートフォリオ・リバランス
効果とは異なるものであろう。
(7)マイナス金利
2012 年 7 月、デンマーク国民銀行が預金
金利を△0.2%に設定した。これを皮切りに、
スウェーデン、スイス、ノルウェーなど欧
州各国でマイナス金利の導入が相次いだ。
主要な中央銀行でマイナス金利を最初に導
59
入したのがECBであり、2014 年 6 月、政
策金利を過去最低の 0.15%に引き下げる
とともに、当座預金への付利を△0.1%とし
た(2016 年 3 月以降△0.4%)。
マイナス金利導入の効果として、欧州各
国の中央銀行は、為替レートに与える影響
を重視している。中銀当座預金をマイナス
にすれば、自国通貨保有にペナルティを課
すこととなり、自国通貨買いを抑制できる
と期待されるためである。円と同様、スイ
スフラン高に悩まされたスイスでは、これ
が大きな効果を発揮したという。ECBは
さすがに物価の安定を前面に掲げているが、
ユーロ安効果を歓迎していることは間違い
ないであろう。
日銀は、これらの先例を参考に、2016 年
1 月、マイナス金利を導入した。「当座預金
金利をマイナス化することでイールドカー
ブの起点を引き下げ、大規模な長期国債買
入れとあわせて、金利全般により強い下押
し圧力を加えていく」として、ゼロ金利制
約を乗り越える金利の引下げ効果を強調し
ている。
このほかマイナス金利の効果について、
「金融機関は資金を中央銀行に預けておく
と損をしてしまうので、貸出しを拡大する」
と説明されることがある。しかし、前記の
とおり、個々の金融機関が貸出しを増やし
ても金融機関全体の日銀当座預金(正確には
マネタリーベース)が減少することはなく、
貸出しが増えるかどうかは、ひとえに与信
が行われるかどうかにかかっている。
ゼロ金利制約は、一般に金利ゼロの安全
資産である銀行券が存在することによって
生じる。銀行券の保有にマイナスの金利を
課すことは、技術的に困難であるばかりで
なく、社会的に受け入れられないであろう。
しかし、預金については、銀行券の保蔵に
セキュリティ上の問題があることや保管費
用などハンドリングコストがかかることか
ら、そのコストの範囲内でマイナスの金利
を課すことができる。これがマイナス金利
であり、預金から銀行券への大規模なシフ
トを起こさずにすむ下限がマイナス金利の
物理的下限である。それは、金額の多寡、
取引慣行、キャッシュレス化の程度、犯罪
率、国民意識等の違いから、国や地域によ
って異なる。他方、マイナス金利には預金
者の負担、金融仲介機能の低下等のマイナ
ス効果もあり、どこまでなら経済的にプラ
スの効果が発揮されるかというマイナス金
利の経済的下限がある。我が国ではマイナ
ス金利の導入によって、日銀が想定した以
上と言われる金利の低下とイールドカーブ
のフラット化が進み、銀行収益の圧迫、年
金生活者をはじめとする預金者の不満の高
まり、年金・保険の運用難と受給者負担の
増加、企業の退職給付債務の急増など様々
なマイナス効果が発生したと指摘されてい
る。今後とも、プラス効果・マイナス効果
を分析・評価して、マイナス金利の経済的
下限を適切に見極めていくことが必要であ
る。
(8)為替変動のメカニズム
黒田総裁は、「日銀の金融政策は、あくま
で国内物価の安定を目的としており、為替
をターゲットとして金融政策を運営するこ
とはない」としている。また、安倍首相も、
2012 年 12 月の政権復帰後は「意図的な円
安誘導は行わない」とし、アベノミクスの
三本の矢にも入れていない。為替政策は表
60
向きすっかり封印された形になっているが、
2013 年以降の我が国経済の回復に最も影
響したのは円安であり、経済界をはじめ国
民が最も関心を寄せているのが円相場の行
方であることは間違いないであろう。
変動相場制の下、各国通貨の交換比率で
ある為替レートも、他の財と同様、各国通
貨に対する需給関係によって決定される。
この需給関係を決定する要因には様々なも
のがあり、しかも時々の経済情勢や政治状
況によって変化することから、日々の為替
変動の要因を特定することは容易ではない。
しかし、こうした為替変動のベースを説明
する基礎的な理論として、次のような理論
が唱えられている。
@購買力平価説(マネタリー・アプローチ)
為替レートは、自国通貨と外国通貨の購
買力の比率(絶対的購買力平価説)又は物価
上昇率の相違(相対的購買力平価説)によっ
て決定されるとする説。一物一価が国際的
にも成立すると仮定したものであり、非貿
易財には当てはまりにくい。このため、絶
対的購買力平価説は成立しにくいが、相対
的購買力平価説は長期的に観察されるとい
う。物価上昇率の低い日本の通貨円はドル
に対し円高となる。
A国際収支説(フロー・アプローチ)
為替レートは、国際収支が均衡するよう
に決定されるとする説。経常収支が黒字で
あれば自国通貨が超過需要され、資本収支
が赤字(流出超過)であれば外国通貨が超過
需要される。このため、経常収支黒字(赤
字)=資本収支赤字(黒字)+外貨準備増
加(減少)となるように為替レートが調整
されるとする。資本収支は短期的にも大き
く変動するが、経常収支はその国の経済構
造や国際競争力によって決まり、余り変動
しないため、中期的にこの均衡が成立する
という。日本は経常黒字を続けており、そ
れ以上に資本収支が赤字になれば円安、そ
うでなければ円高となる。
B金利平価説等(アセット・アプローチ)
金利平価説は、将来の為替レートは、ど
の通貨で資産を保有しても収益率が同じに
なるように決定されるとする説。現在の為
替レートに対し将来の為替レートがどう動
くかを説明するものであり、金利の低い日
本の通貨円はドルに対し円高となる。
世界の金融市場では収益を求めて日々大
量の資金が動いており、為替レートの決定
に圧倒的な影響を与えている。その代表が
高金利の債券、値上がりが期待される株式、
増価が見込まれる通貨などへの投資であり、
投資先の国の通貨は増価し、流出元の通貨
は減価する。世界金融危機前には、ミセス・
ワタナベとも称された円からドルへのキャ
リートレードが盛んに行われ、金利平価説
に関わりなく急速に円安が進んだ。
他方、平時はより高い収益を求めて移動
するこうした実需を伴わない資金は、紛争
や政治的・経済的混乱が発生すると、たち
まちのうちに安全な場所に移動し、危機が
過ぎ去るまで待機する(リスク量を一定以下
に管理するリスクオフ)。このとき買われるの
が安全通貨・避難通貨などと呼ばれる円や
スイスフラン、状況に応じドルやユーロで
ある。かつて冷戦時代には「有事のドル買
い」と言われたが、最近ではむしろ円高・
ドル安が進む傾向がみられる。このように
円が安全通貨とされる理由としては、次の
ような点が挙げられている。@デフレ通貨
であり、価値が高い上に、インフレが進ん
61
で減価する可能性も少ないとみられること。
A低金利国通貨であり、平時のキャリート
レードの巻き戻しによって円高になること
が期待されること。B世界最大の対外純資
産保有国であり、安全性が高いとみられる
上に、リパトリエーションによって円高に
なることが期待されること。世界的な危機
の発生は我が国にとっても深刻な事態であ
り、更に円高に追い打ちをかけられること
は不都合な現象である。しかし、悪性のイ
ンフレが発生し円の信用が失墜する状況と
比べれば、まだ恵まれた状況にあると考え
るべきなのかもしれない。
さて、冒頭にも記したとおり、世界金融
危機後急速に円高が進んだのは、日銀のバ
ランスシートの拡大規模やペースがFRB
より小さく遅かったことが原因ではないか
とされ、それが異次元金融緩和導入の大き
な契機となった。こうした日銀批判の根拠
となったのがソロス・チャートの考え方と
言われている。
ソロス・チャートは、著名な投資家ジョ
ージ・ソロスが考案した為替のチャート分
析手法であり、2 国間のマネタリーベース
比と為替レートは相関するというものであ
る。相対的に米国がドルの供給量を増やせ
ば円高、日本が円の供給量を増やせば円安
になるとする。これは、マネタリーベース
の増加→マネーストックの増加→物価の上
昇→為替レートの減価という、貨幣数量説
と購買力平価説を合わせたメカニズムを想
定したものである。しかし、上記7.(3)
でみたとおり、少なくともゼロ金利下にお
いては、信用創造を含め貨幣数量説は成立
し難い。また、購買力平価説についても、
長期的にその傾向が認められるとしても、
短中期の為替変動を分析するには自ずと限
界がある。唯一可能性があるのは、誰もが
それを信じて行動するという美人投票の論
理・バンドワゴン効果であるが、特に我が
国がゼロ金利制約に陥った 1999 年以降は、
ソロス・チャートの相関関係は大きく崩れ
ているという。
では、なぜあれほど円高が進んだのか。
それはやはり世界のマネーの流れ、アセッ
ト・アプローチが示唆する影響が大きかっ
たからと考えられる。2007 年のサブプライ
ム・ローン問題、2008 年のリーマン・ショ
ックの発生を受けて、円キャリートレード
が逆流するとともに、世界のマネーが避難
通貨円に流入した。2011 年に東日本大震災
が発生すると、日本の生損保会社が巨額の
保険金の支払いに備えるため海外保有資産
を売却するのではないかとの憶測を呼び、
投機筋の円買いが発生した。また、2010 年
以降繰り返し問題となった欧州債務危機は、
世界のマネーを円に呼び寄せる大きな原動
力となった。金融政策の関連では、米欧の
金利が大きく低下し、内外金利差がほぼ無
くなったことが大きいが、これは長年にわ
たる金融緩和の結果、日本では利下げ余地
がほとんど無くなっていたことによるもの
であって、日銀のバランスシートの大きさ
とは関係がない。
ではまた、なぜ 2012 年 11 月から円安に
向かったのか。これも多くは世界のマネー
の流れによるものと考えられる。リーマ
ン・ショック発生から 4 年以上経過し、米
欧、特に米国の経済は順調に回復した。緩
和マネーを活用して積極的に収益獲得に乗
り出すべき情勢となった。欧州債務問題も、
2012 年 7 月のマリオ・ドラギECB総裁の
62
「ユーロを守るためには何でもする」の発
言によって、不安心理が大きく後退した。
また、2011 年から赤字となった日本の貿易
収支は、原油価格の上昇と原発の稼働停止
の長期化によって赤字幅が拡大し、経常収
支まで赤字に転落する可能性が出てきた。
こうした情勢が避難通貨円へのマネーの流
れを大きく変え、そこに当時は野党党首で
あった安倍総裁の円安誘導発言が加わって、
その後の円安の進行につながったと考えら
れる。
こうしてみると当時の日銀批判は何だっ
たのかということになるが、これをきっか
けに導入された異次元金融緩和は、@金利、
特に長期金利の引下げによる内外金利差の
拡大、A外国人投資家を中心とする物価上
昇期待の高まり、B円安との相互作用によ
る株価の上昇等によって、円安を促進した
と考えられる。
(9)物価上昇のメカニズム
日銀の想定する物価上昇のメカニズムは、
上記7.(1)Dとおり、フィリップス曲線に
基づくものであり、@需給ギャップの改善
とA人々の予想物価上昇率の引上げによっ
て、2%の物価安定目標を実現しようとする
ものである。このうち@については、(図表
87)のとおり、需給ギャップと物価とはよ
く相関しており、そのメカニズムが働くと
考えられる。しかし、Aについては、上記
7.(3)のとおり、オーバーシュート型コミ
ットメント等のマネタリーベースを拡大す
る政策によって、フォワードルッキングに
人々の予想物価上昇率を高めることができ
るかについて大いに疑問がある。
(図表 87) 需給ギャップと物価
出典:日本銀行・講演資料
一方、日銀も安倍首相も賃金の動向を注
視し、安倍首相はその引上げを図るべく積
極的に経済界に働き掛けている。
また、吉川洋東京大学名誉教授は、賃金
が上昇しないことこそが日本のデフレの原
因と指摘されている。これを引用すれば、
次のとおりである。
「日本だけがデフレに陥ったのはなぜか。
その理由は、日本の賃金決定に生じた大き
な変化だ、というのが筆者の考えである。
1990 年代初頭のバブル崩壊以降、経済が
長期的に停滞する中で、日本の経済・社会
にはさまざまな面で大きな変化が生まれた。
かつて「終身雇用」といわれた日本の大企
業における「雇用」も本格的に変わった。
本格的なリストラが行われる中、「雇用か、
賃金か」という選択に直面した労働者は、
名目賃金の低下を受け入れた。名目賃金は
「デフレ期待」によって下がったのではな
い。1990 年代後半、大企業を中心に、高度
成長期に確立された旧来の雇用システムが
崩壊したことにより、名目賃金が下がり始
めたのである。そして、名目賃金の低下が
デフレを定着させた。
なぜ日本だけがデフレなのか、という問
いに対する答えは、日本だけで名目賃金が
63
下がっているからだ、ということになる。
デフレ「期待」によって名目賃金が下がっ
ているわけではない。フィリップス・カー
ブ全体を下にシフトさせたのは、「期待」で
はなく、大企業における雇用システムの変
貌である。」
「そもそも価格や賃金の決定において、将
来に対する「期待」の出番はあるのか。資
産の価格や一次産品の価格は「期待」、すな
わち「思惑」で動く。こうした市場の論理
は、ケインズが『一般理論』で「美人投票」
のたとえ話を用いて巧みに説いたように、
付和雷同である。
対照的に、普通のモノやサービスの価格
や賃金の決定においては、「期待」が入り込
む余地はほとんどない。「将来××だろうか
ら」価格を上げるとか、「将来は××になる
はずだから」賃金を下げる、というような
ことはあり得ない。なぜなら、将来のこと
はわからないから、売り手と買い手の間で
将来に関する「期待」が一致することはな
いからである。普通のモノやサービスの価
格、賃金の決定の原理は、ヒックスやオー
カンが強調したとおり「公正」である。そ
こに期待が入り込む余地はない。」(吉川洋
「デフレーション」2013.1 日本経済新聞出版社。
212〜213 頁、216 頁)
ところで、「賃金が上がれば物価は上がる
のか」、この点については、貨幣数量説を信
奉するマネタリストの立場からは異論があ
る。「一般物価(一般的な物価水準)と相対価
格の区別がついていない」というものだ。
「一般物価の変化は貨幣的現象であり、マ
ネーストックの増減によって決まる。実体
的要因を背景に相対価格は変化するが、こ
れによって一般物価が変化することはな
い」とする。例えば、「Aの価格が上がれば、
Aに対する支出が増えるから、名目所得(マ
ネーストック)が一定である以上、Bに対す
る支出が減る。するとBの価格が下がるか
ら、AとBの平均的価格である物価は、A
とBの相対価格が変化しても影響を受けな
い」と考えるためである。したがって、「賃
金が上がり、個々の商品の価格が上がって
も、こうした個別の価格を積み上げて物価
の変動を論じる「積上げ論」は、一般物価
と相対価格を混同した謬論」ということに
なる。こうしてマネタリストは、一般物価
は、中央銀行がマネタリーベースを適切に
供給してコントロールすべきものと考える。
しかし、こうした理論が現実にそぐわな
いことは、上記7.(3)でみたとおりである。
日銀がマネタリーベースを増加しても、マ
ネーストックが安定的に増加するとは限ら
ない。また、マネーストックが一定の流通
速度で回転するとも限らない。これを逆に
言えば、日銀が何もしなくても、社会の必
要に応じて、与信が行われ、あるいは流通
速度が上がって、マネーストックが手当さ
れることになる。即ち、マネーストックは、
日銀の金融政策によって与えられる外生変
数ではなく、社会の必要(この場合は物価の
上昇)に応じて決まる内生変数であり、因
果関係は、@日銀によるマネタリーベース
の供給→マネーストック→物価でなく、A
社会における価格形成→物価→マネースト
ックとなる。日銀によるマネタリーベース
の供給は、Aにおいてマネタリーベースが
不足し、マネーストック形成のボトルネッ
クになっている場合においてのみ有効であ
り、近年の我が国のように資金があり余り、
ましてゼロ金利となった状況においては、
64
デフレ防止に効果を発揮するものではない。
先の例について言えば、「Aの価格が上がれ
ば、Aに対する支出が増える。しかし、B
に対する支出もこれまでと同様必要である。
このため、名目所得(マネーストック)が増
額調整される。AとBの平均的価格である
物価は、Aの値上がりによって上昇する」
ということになる。
このように考えれば、消費者物価が実際
そうして算定されているように、一般物価
は、個々の商品の価格を加重平均したもの
にほかならず、物価の動向やデフレの原因
を検討するに当たっては、個々の商品の価
格変動を分析し、それを積み上げればよい
ことになる。常識に適った結論であり、一
般物価と相対価格の区別は、フリードマン
特有のレトリックのように思われる。
さて、賃金と物価の関係を実際にみたの
が(図表 88)である。図のとおり明確に相
関している。物価に占める人件費の大きさ
を考えればむしろ当然とも言えよう。
(図表 89〜91)は、日本・米国・ドイツ
のインフレ率・中長期のインフレ予想・ベ
ースアップ率を比較したものである。イン
フレ率は、世界金融危機前は米国・ドイツ
が 2〜3%であるのに対し、日本はゼロない
し若干のマイナス、金融危機後はいずれも
大きく変動し、15・16 年はゼロ近辺になっ
ている。中長期のインフレ予想は、これに
比べ安定しており、米国 2.0〜2.5%、ドイ
ツ 1.5〜2.0%、日本 1.0〜1.5%である。ま
た、ベースアップ率は、米国・ドイツが 2
〜3%であるのに対し、日本はゼロ、14 年
以降若干のプラスとなったが、未だ 0.5%
程度で米国・ドイツには遠く及ばない。長
年にわたるベースアップの実績とこれを支
える賃金決定の慣行が、中長期のインフレ
予想の形成に大きく作用しているものと考
えられる。
また、(図表 92)は、日本と米国のフィリ
ップス曲線を比較したものである。失業率
とインフレ率、失業率と賃金上昇率いずれ
をみても、日本のフィリップス曲線は急傾
斜で、しかもその範囲がマイナスの領域に
まで及んでいる。これに対し米国はなだら
かで、低下してもマイナスになることはな
い。「賃金の下方硬直性」がよく言われるが、
現在の日本の賃金決定システムは、伝統的
な世界の労働市場とも異なるものになって
いることが伺われる。
以上を踏まえれば、吉川教授が言われる
ように、賃金が上昇しないことこそが日本
のデフレの原因であり(原油等の原材料価格
は物価に大きな影響を与えるが、多くの原材料価
格は国際市場で競争的に決まるから、その変動は、
為替レートによる影響を除き、各国の物価にほぼ
共通の影響を与える)、賃金を引き上げること
がデフレ脱却の最大のポイントと考えられ
る。また、日銀が重視する人々の予想物価
上昇率の 2%への引上げとそこでのアンカ
ーを実現するためには、マネタリーベース
の拡大でなく、米国・ドイツ並みの 2〜3%
のベースアップを当たり前のこととして社
会に根付かせることが必要と考えられる。
65
(図表 88) 賃金と物価 %
出典:日本銀行・講演資料
(図表 89) 主要国のインフレ実績(CPI) %
出典:日本銀行・「総括的な検証」背景説明
(図表 90) 主要国の中長期のインフレ予想 %
出典:日本銀行・「総括的な検証」背景説明
(図表 91) 主要国のベースアップ率 %
出典:日本銀行・「総括的な検証」背景説明
(図表 92) 日本と米国のフィリップス曲線
出典:日本銀行・講演資料
賃金の上昇を図り、デフレを脱却するた
めには、その原資となる名目GDPの成長
と労働分配率の向上が必要である。また、
国民が望んでいるのは実質賃金の上昇であ
り、単なる物価上昇ではない。しかし、物
価は経済の体温であり、実質GDPの成長
率が高まれば、一般に物価上昇率も高くな
る。このため、潜在成長率の上昇と需給ギ
ャップの解消により実質GDPを成長させ、
これを前提に物価の上昇と名目GDPの成
長を図っていくことが必要である。凍りつ
いた人々のマインドと世界でも異例な賃金
決定システムを融解させるのは、やはり経
済の成長であり、これを実現することがデ
フレ脱却の道筋と考えられる。
上記4.(4)の(図表 62・63)では、消費
者物価と名目GDPの相関が高く、バブル
崩壊までは概ね名目GDPの成長率が物価
上昇率を上回っていたが、1997 年以降は、
ほぼ同等となり、これらの指数も重なって
横ばいに推移していることをみた。また、
(図表 93)は、予想インフレ率と潜在成長
率が相関することを示している。主要国の
潜在成長率は、(図表 94)のとおりであり、
これが先にみた日本・米国・ドイツのイン
フレ率・中長期のインフレ予想・ベースア
66
ップ率にも対応しているものと思われる。
(図表 93) 予想インフレ率と潜在成長率 %
出典:日本銀行・講演資料
(図表 94) 主要国の潜在成長率 %
出典:日本銀行・講演資料
日銀は、物価上昇のメカニズムついて、
専らフィリップス曲線に着目し、需給ギャ
ップの解消とフォワードルッキングな予想
物価上昇率の引上げを強調する。しかし、
我が国の潜在成長率は現状 1%程度に過ぎ
ず、需給ギャップはここ 1 年ほどプラスと
なり既に高圧状態が続いている。また、フ
ォワードルッキングな予想物価上昇率のメ
カニズムは定かでない。賃金を主眼とする
積上げ論や(図表 71)でみたAD・AS曲
線による分析など、GDPとその動向に焦
点を当てた多角的な検討が必要と考えられ
る。
8.異次元金融緩和の副作用
どのような政策も、目的とする意図した
効果のほか、意図せざるプラスの効果・マ
イナスの効果、政策の実施を制約する効果
などを持つ。異次元金融緩和は、規模が巨
大なだけにこうした目的外の効果も大きい。
政策担当当局には、これら様々な効果を総
合的に勘案して、プラスがマイナスを上回
る限りにおいて、より適切に政策を実施す
ることが求められる。意図せざるプラスの
効果としては円安の促進と国の財政運営を
当面容易にする効果が考えられるが、ここ
では、意図せざるマイナスの効果と政策の
実施を制約する効果を「異次元金融緩和の
副作用」として検討してみたい。
副作用には、@異次元金融緩和の継続期
間中に顕在化する副作用と、A2%の物価安
定目標が達成され、金融政策が正常化に向
かう過程で顕在化する副作用の大きく 2 種
類があると考えられる。まず、@とAの前
提となる金利の展望や異次元金融緩和の仕
組みと正常化プロセスから検討を始める。
(1)金利の展望
現在の金融市場調節方針に基づく金利水
準は、短期金利△0.1%・10 年長期金利ゼ
ロ%程度である。これは毎回の金融政策決
定会合で決定されるから、変更の可能性が
ないわけではないが、2%の物価安定目標が
達成されるまでは、容易に変更されず、仮
に変更されたとしても小幅なものにとどま
ると思われる。
一方、2%の物価安定目標が安定的に達成
された暁には、異次元金融緩和も終息し、
伝統的な金融政策に向け正常化が進められ
る。この場合の政策金利である短期金利は、
67
潜在成長率を 1%とすれば、典型的なテイ
ラー・ルールによって次のように試算され
る。均衡実質金利 1%(潜在成長率並み)+
目標インフレ率 2%+1.5×(実際インフレ
率 2%−目標インフレ率 2%)+0.5×需給
ギャップ 0=政策金利 3%。また、10 年国
債のタームプレミアムを 1%とすれば、10
年長期金利は、3%+1%=長期金利 4%と
試算される。現在の金利から短期金利
3%・長期金利 4%の上昇であり、控えめに
みても短期金利 2%・長期金利 3%程度の上
昇は想定されるであろう。
この場合、最も懸念されるのが、日銀に
代わって国債を保有する主体が現れるか、
あるいは財政の持続可能性に対する不安が
高まらないかであり、こうした懸念が顕在
化した場合には、国債価格の下落と更なる
金利上昇が生じて、悪循環に陥るおそれが
ある。
(2)異次元金融緩和の仕組み
異次元金融緩和によって何が起こってい
るかを、各経済主体のバランスシートの変
化によってみたのが、(図表 95)である(図
表は、政府が国民に現金を支給して、サービス機
関からサービスを受けるケースを示しているが、
政府が公共施設を整備して国民の利用に供するケ
ース等も、結果は同じである)。
政府が 100 兆円の国債を発行して財政支
出し、民間銀行がこれを引き受けて資金提
供し、日銀がこのうち 60 兆円の国債を買い
入れるとした場合、各主体のB/Sは、図表
にあるとおり、次のように変化する。
・政府:徴税権(財政赤字)拡大 100 兆円/
国債増額 100 兆円。
・民間銀行:国債増額 40 兆円、準備預金増
額 60 兆円/預金増額 100 兆円。
・日銀:国債増額 60 兆円/準備預金増額 60
兆円。
なお、政府と日銀の勘定を統合した統合
政府の観点に立てば、日銀の買い入れた国
債と政府の負債たる国債は相殺されるから、
実質的に国債残高が減少し、財政再建に資
するとの議論がある。しかし、日銀は国債
買入れの見合いとして民間銀行の準備預金
(日銀当座預金)という負債を負っており、国
債を相殺しても統合政府の負債額が減少す
ることはない。日銀による国債の買入れは、
民間銀行に対する国債という長期債務を準
備預金という短期債務に置き換えているだ
けであって、統合政府の観点に立った財政
再建論はまったくの誤解である。
また、日銀による国債の直接引受けは、
財政法 5 条によって原則禁じられているが、
仮に直接引き受けを行った場合の効果をB
/Sの変化によって比較したのが(図表 96)
である。両者は、経路は異なるが、結果は
同じである。結局、この経路の違いに意味
があることになるが、この点は後に検討す
る。
(図表 95)日銀国債買入れによるB/S変化兆円
68
出典:筆者作成
(図表 96)日銀国債引受けによるB/S変化兆円
出典:筆者作成
(3)異次元金融緩和の正常化プロセス
金融政策の正常化とは、本来金融機関に
とって無用な超過準備を解消し、資金の有
効利用を図る金融環境に戻すとともに、金
融政策を長年慣れ親しんだ政策金利の調節
等の伝統的金融政策に戻すことと理解され
る。2%の物価安定目標が達成された暁には、
異次元金融緩和もこうした正常化が図られ
ていくものと考えられる。
この点に関し、黒田総裁は、「出口を論ず
るのは時期尚早」という発言のみが伝えら
れることが多かったが、上記3.A・C・
G・Hのように、最近は、出口についての
考え方や課題、政策手段等について具体的
に述べられている。ただし、「出口の局面で
実際にどの手段をどの順序で用いるかは、
その際の経済・物価・金融情勢によって変
わり得る。あまり早い段階で出口の進め方
を具体的に説明することは難しく、市場と
の対話という観点からもかえって混乱を招
くおそれが高い」、「現在は、出口のタイミ
ングやその際の対応の手順等を検討する局
面には至っていない」とのスタンスである。
しかし、出口においてどのような事態が
発生するかは、日本経済の行方を左右する
極めて重要な事項である。また、このまま
異次元金融緩和が継続され、いわば正常化
のハードルが高まることをどう評価すべき
かの観点からも重要なポイントである。
そのため、出口戦略の基本となる異次元
金融緩和の正常化プロセスについては、識
者において盛んに論じられており、それら
を整理すれば、次のようなプロセスが想定
される。
T FRBの出口戦略に準じた正常化プロ
セス
@ イールドカーブ・コントロールの枠組み
を廃止して、資産買入れ額を再び金融政策
の操作目標とする。その上で、国債とリス
ク資産の買入れ増加ペースを緩やかに縮小
する(テーパリング)。
A @と併せて、階層型の当座預金制度をマ
イナス金利導入前の制度に戻し、0.1%を付
利する。
B @が進展したら、資産の買入れ増加をゼ
69
ロとし、残高を一定水準に維持する。その
下で、保有国債の平均残存年数を短期化す
る。
C 経済情勢を踏まえて、付利金利を段階的
に引き上げる。
D 付利金利が一定水準まで高まったら、資
産残高の緩やかな縮小に着手し、相応の時
間をかけて超過準備を解消する。
U イールドカーブ・コントロールの枠組
みを活用した正常化プロセス
@ イールドカーブ・コントロールの運用を
柔軟化し、徐々に長期金利の決定を市場に
委ねる。又は長期金利のコントロール対象
を現在の 10 年から短期化する。
A @と併せて、階層型の当座預金制度をマ
イナス金利導入前の制度に戻し、0.1%を付
利する。
B @の結果、長期金利のコントロールが不
要となったら、資産の買入れ増加をゼロと
し、残高を一定水準に維持する。その下で、
保有国債の平均残存年数を短期化する。
C・DはTと同じ。
Tは、FRBの出口戦略に習ったもので
ある。FRBは、2014 年 10 月まで 3 回に
わたりいわゆる量的緩和QEを行ったが、
2014年1月から買入れ額を減額するテーパ
リングを開始し、2014 年 10 月に買入れを
停止している。その後、2015 年 12 月から
政策金利の利上げを開始し、本年6月まで
7回行って、これを 0.00〜0.25%から 1.75
〜2.00%に引き上げている。また、B/Sの
縮小は、2017 年 10 月から開始している。
FRBは、当初、B/Sの縮小後に利上げ
を行う予定であったが、2013 年 5 月に、当
時のバーナンキFRB議長が国債買入れの
減額を示唆した途端にB/Sの縮小に着手
すると誤解されて国債市場が大きく混乱し
たことから(バーナンキ・ショック、Taper
Tantrum)、その後、順番を入れ替えて、利
上げ開始後にB/Sを縮小することした。
我が国においても、日銀が保有する国債
を大量に売却すると、国債価格が暴落して
金利が急上昇するとともに、日銀の損失が
直ちに表面化するおそれが高いことから、
FRBと同様に、@資産買入れ額のテーパ
リング→B資産買入れの停止→C金利の引
上げ→D保有資産の売却=超過準備の縮小
のプロセスを踏むものと考えられる。A・
Cは、金利の引上げをD以前に国債の売り
オペによって行うことはできないため、超
過準備に対する付利の引上げによって行う
ものである。これにより、短期市場金利の
過度な変動を抑制しつつ、景気の過熱や物
価の高騰を防止する金利の引上げが可能と
なる。B・Dの国債残高の維持や縮小は、
満期償還された国債の再投資を行うか否か
によって実施し、市場へのインパクトが大
きい保有国債の売却は基本的に行わない。
しかし、日銀保有国債の平均残存期間(デュ
レーション)は 7〜8 年であり、満期償還が終
了するまでには 15 年程度の期間を要する。
Bの保有国債の平均残存年数の短期化は、
この期間を短縮する一つの工夫であり、F
RBの正常化でも行われたという。
Uは、基本的にTと同じであるが、国債
の買入れと金利の調整は表裏の関係にある
ことから、現在のイールドカーブ・コント
ロールの枠組みを活かしてテーパリングを
行うものである。@の徐々に長期金利の決
定を市場に委ねるとは、国債買入れ額を緩
やかに縮小するとの意味であり、いずれ国
債の買入れ額はゼロになる。長期金利のコ
70
ントロール対象の短期化も、それ以上の年
限の長期金利は市場の決定に委ねるとの意
味であり、いずれ長期金利のコントロール
は短期金利のコントロールに包摂される。
Tに比べ、市場の実情へのきめ細かい対応
が可能となるが、ある種の割切りや単純明
快さに欠ける面があることは否定できない。
以上、準備が整ったところで、異次元金
融緩和の副作用について検討を進める。
(4)国債買入れの限界
上記6.でみたように、日銀の保有国債
はこの 5 年間で 125 兆円から 448 兆円(う
ち長期国債 91 兆円から 427 兆円)へと急増し、
2017 年末現在の保有割合は 41%(うち長期
国債 43%)に達している。こうした状況を
踏まえて、日銀が大量の国債買入れを継続
すると、いずれ限界に達し、異次元金融緩
和は遂行不可能になるであろうとの指摘が
IMFスタッフや民間シンクタンクなど各
方面から寄せられている。
一般に金融機関の国債保有の目的には、
次のようなものが挙げられている。@確実
な利息収入の獲得(全般)、A運用資産の適
切なポートフォリオ(公的年金、企業年金基金
等)、BALM(生命保険会社等)、CBIS
による金融規制への対応(銀行等)、D金融
取引のための担保(全般)。
このように各金融機関にはそれぞれ固有
の国債需要があり、(図表 78)のとおり、日
銀はこれまで専ら預金取扱機関、特に都市
銀行から多くの国債を取得してきたが、金
融取引のための担保需要や金融規制対応等
から、いずれこれも限界に至るのではない
かと思われる。
(図表 78)国債の保有者別内訳(2012〜)(再掲) %
出典:日本銀行・資金循環統計
しかし、日銀は、こうした指摘に対し、
2016年9月に操作目標を量から金利に変更
することによって、政策の持続性に関する
問題は解消したとしている。すなわち、い
ずれどこかに国債買入れの限界があるとし
ても、その限界に近付けば近付くほど、日
銀はより少ない国債の買入れによって金利
をコントロールすることができるから、限
界に達して政策を続けることができなくな
ることはないとする。実際にイールドカー
ブ・コントロール導入後、国債の買入れ額
は減少しており、これはそうしたメカニズ
ムが働いた結果としている。
そこで、国債の流通の最も大きな契機と
考えられる、財務省が発行した国債の日
銀・民間別の取得状況をモデル的に整理し
たのが(図表 97)である。
ケース 1 は、イールドカーブ・コントロ
ール導入前に年間 80 兆円の増加ペースで
国債を買い入れていた当時の状況である。
日銀は、民間分の借換債を含めて財務省が
発行する国債をすべて取得しており、いわ
ば買手独占の状態である。これにより、日
銀は、国債価格の形成に圧倒的な影響力を
発揮し、民間は、年間 40 兆円ずつ保有国債
を減少させて、次第に縮小の限界に近付い
ていく。
ケース 2 は、民間がそうした保有国債縮
71
小の限界に達したときの状態である。民間
は、それ以上の国債の縮小を防止するため、
民間分の借換債をすべて取得し保有する。
日銀は、自己の借換債と新発債を取得し、
その限りで市場への影響力を行使すること
になる。ケース 2 から次のケース 3 に向け
て日銀が新発債の取得額を減少させている
状態が、上記(3)の正常化プロセスTU@
のテーパリングに該当する。
ケース 3 は、日銀が新発債の取得を停止
し、自己の借換債のみを取得することとし
た場合の状況である。新発債 40 兆円は民間
がすべて取得することとなるが、それだけ
の需要が民間にない場合、国債価格が下落
し、金利が上昇する。しかし、日銀の影響
力は大きく減少している。上記(3)の正常化
プロセスTUB=日銀が国債残高を一定
水準に維持する場合に該当する。
さらにケース 4 は、日銀が償還国債に対
応する再投資を停止して、資産残高を緩や
かに縮小しているときの状況である。日銀
の国債価格への直接的影響力はゼロとなる。
正常化プロセスTUDに該当する。
(図表 97) 国債の取得状況 兆円
出典:筆者作成
本年 4 月現在、日銀はネット 50 兆円程度
のペースで国債を増額しており、ケース 1
とケース 2 の中間で、ケース 2 に近い状態
と考えられる。ここで金融調節目標の 10
年国債ゼロ%程度が維持されているのは、
日銀が自己の借換債と新発債を取得し、そ
れなりの影響力を発揮するとともに、民間
がゼロ%程度見合いで借換債の放出を行っ
てバランスが保たれているためと考えられ
る。しかし、ケース 2 が間近になった時点
で、何らかの外的ショック(景気回復、海外
の長期金利の上昇、財政赤字懸念の高まり等)が
発生し、国債金利への上昇圧力が高まると、
日銀は、目標金利を維持するため、国債の
買増しを行わざるを得ず、容易にケース 2
に到達してしまうと考えられる。日銀の言
う「いくら接点に近付いても接点にたどり
着くことはない」といった微妙な調整は、
現実には実現困難であろう。
こうしてケース 2 に到達すると、日銀は、
国債金利の引下げ(買入れ価格の引上げ)を
行わない限り、民間分の借換債を取得する
ことはできない。これまで圧倒的な力を発
揮して国債金利を引き下げて来ただけに、
金利がある程度弾力化することは避けられ
ないが、景気の変動等に応じて金利が一定
72
範囲で変動することは、経済安定化の見地
から望ましく、これを「国債買入れの限界」
として問題視する必要はないと思われる。
むしろ懸念すべきは、イールドカーブ・コ
ントロールが弱まったとして、国債買入れ
額を増加する動きが出てくることであり、
金利の更なる低下や民間の国債需要の圧迫
をはじめ様々な副作用を拡大することにつ
ながると考えられる。
なお、これまで国債の買入れ額が減少し
てきたことをもって、ステルス・テーパリ
ングとし、更に減少することを予想する向
きもあるが、日銀が自己の借換債と新発債
の買入れを続ける限り、ネットの新発債の
額、ケース 2 の設定では 40 兆円程度の買入
れ増加は今後も続くと思われる。
(5)金融機関の収益悪化と金融システムの
不安定化
上記4.(2)@でみたように、異次元金融
緩和によるマイナス金利と国債買入れによ
って、国債のイールドカーブは大きく低
下・フラット化し、我が国の金融環境は極
めて緩和した状態にある。こうした状況が
金融機関の経営や金融仲介機能にどのよう
な影響を与えているかについて、日銀は、
総括的検証や金融システムレポート等にお
いて詳しく検証し、概ね次のような認識を
示している。
@マイナス金利導入後、貸出・社債・CP
金利は大幅に低下しており、いずれも過去
最低水準にある。実質金利の低下は、経済・
物価にプラスの影響をもたらす。
Aマイナス金利が金融機関の収益を過度に
圧迫する場合には、金融機関の貸出姿勢が
消極化したり、マイナス金利に伴うコスト
を転嫁するために貸出金利が上昇すること
などを通じて、金融仲介機能に悪影響を与
える可能性がある。
Bしかし、マイナス金利政策そのものが、
直接、金融機関の収益に与える影響は、そ
れほど大きくない。380 兆円ある当座預金
のうち、限界的な 20 兆円程度の部分(政策
金利残高)にのみ△0.1%は適用され、その
影響額は 200 億円程度に過ぎない。
影響が大きいのは、イールドカーブがフ
ラット化したことである。これが金融機関
の預貸利鞘の縮小や保険・年金の運用難と
いう形でマイナスの影響を与えた。
Cしかし、現段階で、そのようなマイナス
の影響が政策のメリットを上回るほど大き
くなっているとは判断していない。日本の
金融機関は、総じて健全な自己資本ポジシ
ョンを維持し、減益傾向とはいえ、まだ収
益レベルは高水準である。このため、金融
機関の貸出態度は引き続き積極的であるほ
か、貸出金利も低下するなど、金融環境は
一段と改善しており、金融仲介機能の悪化
は伺われない。
Dただし、低金利の影響は、どうしても累
積的に蓄積していく。今後とも金融緩和の
効果と副作用を総合的に検証し、評価して
いく。
要するに、「金融機関にはまだ体力がある
から、体力が続く限り走り続けてもらいた
い」との趣旨であろう。しかし、一つ得心
が行かないのは、「金融機関は、本当に体力
を消耗して走れなくなるまで走らなければ
ならない必要があるのか。これによって、
日本経済は本当に良くなるのか」という疑
問である。
異次元金融緩和によって、金融機関は、
73
主に次の要因により収益を低下させている。
@貸出金利の低下による預貸金利差の縮小
(銀行貸出の中心を成す 10 年以下の金利はマイ
ナス、新規貸出に係るクレジットスプレッドも大
きく低下)、A有価証券運用利回りの低下(10
年物国債ゼロ程度、10 年以下はマイナス)、B日
銀当座預金におけるマイナス金利の導入・
ゼロ金利適用額の拡大(政策金利残高 20〜30
兆円、マクロ加算残高 130 兆円程度)。そして、
その影響を最も強く受けているのが、海外
での資金運用や手数料収入の拡大に限りの
ある地域金融機関(地域銀行、信用金庫等)
であり、現在の金融緩和が長期化すれば、
やがて採算割れする金融機関も出てくるの
ではないかと危惧されている。
上記の疑問とする点は、以下のような事
項である。
@低金利は、貯蓄主体から借入主体への所
得移転効果を持つ。ISバランス上、唯一
最大の受益者は政府であり、マクロでみれ
ば、家計も企業(非金融法人企業)も、仲介
する金融機関も、政府に所得移転を行って
いるに過ぎない。
A家計は、年金生活者中心に利息収入の減
少、年金・保険料負担の増大等によりマイ
ンドを冷え込ませ、低金利は消費低迷の一
因になっている。
B企業は、投資するにしても自己資金中心
で積極的な借入れは行わず、逆に、退職給
付債務の増大や資産運用に苦慮する状態と
なっている。
C上記のような企業行動からIS曲線はス
ティープ化した状態にあり、金利が低下し
ても投資を誘発する効果はごく限られたも
のにとどまるとみられる。
D異次元緩和により金利は低下したが、大
きく低下したのは長期金利であり、日銀が
「経済・物価にプラスの影響をもたらす効
果がより大きい」とする短期〜中期の金利
の低下は、0.2〜0.3%ほどに過ぎない(2013
年 1 月の国債利回り:概ね 1 年債 0.1%、5 年債
0.2%、10 年債0.8%、20年債 1.8%、30 年債 2.0%。
2018 年 4 月の国債利回り:概ね 1 年債△0.1%、5
年債△0.1%、10 年債 0.0%、20 年債 0.5%、30
年債 0.7%)(このように異次元緩和による経済・
物価へのプラス効果は思いのほか小さいと考えら
れるが、短期〜中期金利がマイナスとなり、長期
金利が大きく低下したことが、金融機関の経営に
とっては大きく響いている)。
E景気変動に応じて金利が変動する正常な
状態であれば、金利の低下は投資の前倒し
効果を持つ。しかし、現状のように低金利
が長期化すると見込まれれば、投資の前倒
し効果は期待し得ず、逆に先送りするイン
センティブにもなり得る。
F異次元金融緩和によって、既に実質金利
は自然利子率を大きく下回り、需給ギャッ
プはプラスを続けている。ファイン・チュ
ーニング(実質金利=自然利子率)を大きく超
える低金利のために、金融機関に体力を消
耗するまで走り続けることを求めるのはい
かがかと思われる(それでも 2%の物価安定目
標は達成されていない。上記7.(9)に沿って政策
の方向性を見直す必要があると思われる)。
G日本経済が明るさを取り戻し、発展する
ためには、地域経済の活性化を措いてあり
得ない。その中心的役割を果たすべき地域
金融機関の体力が失われ、どこでも身近に
金融サービスを受けられる環境が損なわれ
るとしたら、将来に大きな禍根を残すこと
になる。
以上のように考えると、日銀のような認
74
識には至らず、金融機関の収益悪化や金融
システムの不安定化に関する異次元金融緩
和の副作用は大きいと言わざるを得ない。
まずはフラット化したイールドカーブを早
急に是正することが必要と思われる。
次に、正常化の段階について考える。
正常化により上記金融機関の収益低下の
要因@ABはいずれも改善され、正常な状
態に戻ることができる。ただし、金利の上
昇により債券価格は低下する。特に、都市
銀行が異次元金融緩和開始後相当額の国債
を日銀に売却したのに対し、収益力の乏し
い地域金融機関は、残存期間の長い債券に
多額の投資を行っており、大きな評価損を
計上せざるを得ない。金融システムの安定
確保の観点から、出口において金利が急騰
することのないよう十分な配慮が必要であ
る。
(6)日銀の収支悪化と債務超過の懸念
日銀の収支構造も民間企業のそれと基本
的に変わらない。ただし、生産活動や営業
活動を行っているわけではないから、収益
はすべて資産の運用益(評価損益を含む)に
よっている。また、費用は事務費、給与等
であり、銀行券製造費も計上される。負債
は発行銀行券、日銀当座預金、政府預金等
であり、基本的に有利子負債はないが、補
完当座預金制度の導入によって、現在は、
基礎残高(210 兆円程度)に 0.1%、政策金
利残高(20〜30 兆円)に△0.1%の付利が行
われている。企業の税引後当期純利益に相
当する当期剰余金から法定準備金積立額及
び配当金(年 5%=500 万円)を控除した残額
が国庫納付金として政府に納入される。
日銀は、日銀券を印刷して発行すればす
るほど利益=通貨発行益(シニョリッジ)が
得られる(1 万円札 1 枚の印刷費は 20 円ほどだ
から、その度に 9980 円の利益が得られる)とい
う議論がある。だから日銀は経営について
何の心配もいらないとする議論まである。
しかし、世の中に出回る現金の量は家計や
企業の現金需要によって決まり、その額を
上回る日銀券を供給しても民間金融機関の
準備預金に入金される形ですぐに日銀に戻
ってきてしまうため、いくらでも日銀券が
発行できるわけではない。2018 年 3 月末現
在の発行残高は 100 兆円ほどであり、タン
ス預金も含め既に十分な量の日銀券が供給
されている状態である。
なお、日銀券は、これを印刷して資産に
計上するのでなく、民間金融機関から資産
を買い入れ、代金を支払う形で供給され、
このとき初めて、資産/発行銀行券の会計処
理が行われる。資産が有利子であるのに対
し負債の発行銀行券は無利子であり、この
差額が日銀の利益となる。将来にわたる利
息収入の割引現在価値は資産額=日銀券の
額面に相当するから、これが通貨発行益に
該当すると考えられる。しかし、会計上は、
毎年度、上記のような当期剰余金の計算が
行われ、配当等を除いた残額が国庫納付金
として政府に納入される。したがって、通
貨発行益に相応する日銀の利益は、毎年度
国庫納付され、広く国民に還元されている
と考えることができる。
さて、(図表 98)は、日銀の損益及び剰
余金処分の状況を簡略に示したものである。
2017 年度決算においては、経常収益 1 兆
8400 億円、経常費用 6100 億円、当期剰余
金 7600 億円であり、国庫納付金は 7300 億
円である。
75
国債利息は1兆2200億円と経常収益の約
7 割を占める日銀の主要な収益源であるが、
その推移をみると、(図表 99)のとおり、
国債保有残高の大幅な増大(図表 75)にも
かかわらず、2016 年度以降横ばいないし微
減となっている。これは、年々より低利の
新発債と借換債を取得する度に保有国債の
平均利回りが低下するためであり、2017 年
度は 0.279%まで低下している。しかし、
この傾向は、異次元緩和が続く限り継続し、
いずれゼロ%程度になると見込まれる(保
有国債のデュレーション 7 年程度と同じ期間の国
債利回りになるとすれば、△0.05%)。一方、経
常費用は、補完当座預金制度利息 1800 億円
は今後も基本的に変わらず((基礎残高−政策
金利残高)×0.1%)、事務費、給与等も同様
であって、大きく減少することはない。す
ると、将来の税引前当期剰余金は、2017 年
度決算をベースに考えれば、国債利息分 1
兆 2200 億円が減額されて△3300 億円にな
ると試算される。2016 年度決算をベースと
すれば△4800 億円である。このほか、国債
については、多額の金利調整差額残高の存
在という問題がある。額面を上回る金額で
国債を取得した差額のうち、償却原価法に
より未だ償却されていない部分の残額であ
り、今後も国債利息を減少する形で処理す
る必要がある。その推移をみたのが(図表
100)であり、2018 年 3 月末現在、金利調
整差額残高は、日銀の自己資本残高 8.2 兆
円を上回る 10.2 兆円に上っている。日銀が
日銀トレードなどによっていかに割高に国
債を取得してきたかの一端を示すものとも
捉えることができる。差額残高はなお増加
する傾向がみえるが、現在の 10.2 兆円を今
後 15 年間(保有国債のデュレーション 7 年程度
の 2 倍の期間で国債満期償還すると仮定)で償却
するとすれば、毎年度の減収額は 6800 億円
になる。これを差し引けば、将来の税引前
当期剰余金は、2017 年度決算ベースで△1
兆 100 億円、2016 年決算ベースで△1 兆
1600 億円になると試算される。以上はあく
までも目安としての試算であるが、現在の
異次元金融緩和が日銀の経営にとっても持
続可能でなく、早急な見直しが必要である
ことは間違いないと思われる。
(図表 98) 日銀・損益計算書等 億円
出典:日本銀行・財務諸表
(図表 99) 日銀・国債収入と利回り 億円・%
出典:日本銀行・財務諸表
(図表 100)日銀・国債金利調整差額残高 兆円
出典:日本銀行・財務諸表
次に、正常化の段階について考える。
上記(1)のとおり、2%の物価安定目標が
76
達成された暁には、潜在成長率 1%・物価
上昇率 2%・タームプレミアム 1%を前提と
すれば、金利水準は短期金利 3%・長期金
利 4%となり、短期金利 3%・長期金利 4%
の金利上昇が生じると見込まれる。
この金利上昇によって、本年 3 月末現在
の日銀保有国債 448 兆円(デュレーション 7
年と想定)を時価評価すれば、次のような評
価損が発生すると試算される。
・448 兆円×7%(デュレーション 7 年の債権
は 1%の金利上昇で 7%価格が下落する)×4
=125 兆円。
・金利上昇を控えめにみて、2%とすれば
63 兆円、3%とすれば 94 兆円である。
日銀の自己資本残高は 8.2 兆円であるか
ら、いずれの金利上昇でも日銀は大幅な債
務超過に陥る。
しかし、日銀は、円貨建債権等を満期保
有目的債券に適用される償却原価法によっ
て評価しているから、国債を売却しない限
り、こうした損失が顕在化することはない。
このため、日銀は、国債売却による国債
価格の暴落=金利の急騰を避けるためにも、
上記(3)でみたように、@テーパリング、A
保有国債の維持と段階的な短期金利=付利
金利の引上げ、B保有国債の縮減と超過準
備の縮小の正常化プロセスを順を追って進
めると考えられる。
しかし、日銀が正常化プロセスに着手す
るのは、2%の物価安定目標が安定的に達成
された時点であり、既に短期金利 3%・長
期金利 4%の金利水準が相当となっている
時点である。こうした経済情勢の下で、短
期金利△0.1%(政策金利残高付利金利)、長
期金利ゼロ程度(10 年物国債金利)を維持す
ることは、景気の過熱と更なる物価上昇を
招き適切でないことから、早急に金利を引
き上げる必要が生じると考えられる(この
点は、FRBが物価上昇率 2%達成以前から正常
化プロセスに着手し、切れ目なくプロセスを進め
ているのと基本的に状況が異なる)。
このうち長期金利の引上げは、正常化プ
ロセス@から始まるが、日銀保有国債の平
均利回りの上昇は緩やかで、日銀の利息収
入の増加は緩慢なものにとどまると考えら
れる(長期金利の上昇は、短期金利が引き上げら
れない限りタームプレミアム 1%の範囲内にとど
まる。また、デュレーション 7 年の国債が再投資
によってすべて入れ替わるためには単純計算で14
年程度を要する)。
一方、短期金利の引上げは、正常化プロ
セスAから始まるが、付利金利の引上げは
超過準備全体に適用されるため、日銀の利
払費は一気に増加すると考えられる。本年
3 月の超過準備額等 365 兆円に対する付利
引上げによる影響額は、次のとおりである。
・365 兆円×3%=11.0.兆円/年
・付利金利を控えめにみて、0.5%とすれば
1.8 兆円/年、1%とすれば 3.7 兆円/年、
2%とすれば 7.3 兆円/年である。
2%の物価安定目標が既に達成されてい
る状況を踏まえれば、@とAに余り時間を
置くことはできず、日銀の収支は急速に悪
化して、債務超過に陥る可能性もあると考
えられる。前記した多額の金利調整差額残
高による影響も大きい。(例えば、短期金利=
付利金利 3%、長期金利 4%で保有国債の平均利回
りがその 1/3 水準(1/2 水準)になっているとす
れば、国債利息=448 兆円×4%×1/3(1/2)=6.0
(9.0)兆円/年。付利利息=365 兆円×3%=11.0
兆円/年。国債収支=6.0(9.0)兆円−11.0 兆円
−0.68 兆円(金利調整差額償却額)=△5.68(△
77
2.68)兆円/年。△5.68(△2.68)兆円/年×2(4)
年=11.36(10.72)兆円>8.2 兆円(自己資本残
高)。2 年(4 年)で債務超過となる。同様に、短
期金利=付利金利 2%、長期金利 3%で保有国債の
平均利回りがその 1/3 水準(1/2 水準)になって
いるとすれば、国債収支=△3.5(△1.3)兆円/
年。3 年(7 年)で債務超過となる。)
以上のように、異次元金融緩和は、この
まま継続するにせよ・正常化するにせよ、
日銀の収支を悪化させるものであり、日銀
が債務超過に陥る可能性も否定できない。
(7)中央銀行の債務超過がもたらす影響
主要国の中央銀行が債務超過に陥った事
例としては、1977 年〜1979 年のブンデスバ
ンク(西ドイツ)や 2013 年〜2015 年のスイ
ス国民銀行のケースが挙げられている。い
ずれも自国通貨高によって外貨建て資産に
含み損が生じたためであり、為替変動によ
る一時的な現象と判断され、実際 2〜3 年で
赤字が解消したことから、それが問題とな
り、業務に支障が生じることはなかったと
いう。
しかし、上記により日銀の財務が悪化す
ると、短期間の一時的現象では済まない可
能性がある。日銀券の通用力や日銀の業務
執行に直接的影響があるわけではない。問
題は、@日銀が債務超過に陥ることを回避
し、あるいは早期に債務超過を解消するた
め、自らの財務体質の改善を優先した政策
運営を行うのではないか、A日銀が債務超
過になると、政府の財政支援に依存せざる
を得なくなり、中央銀行の独立性が有名無
実化し、政策運営に政府の意向が反映され
やすくなるのではないか、といった見方が
一般に広がり、日銀の政策運営への信認が
低下するおそれがあることである。
@の見方は、@出口において、超過準備
を固めたまま、付利金利を引き上げない、
A法定準備率を大きく引き上げ、超過準備
を金利の付かない所要準備に切り替える、
といった方策を採ることである。これによ
り日銀は超過準備への利払い負担を軽減で
きるが、@では景気の過熱と物価上昇が放
置され、Aでは民間金融機関に大きな機会
損失を強い(信用創造機能の停止)、いずれも
国民に大きな負担が生じる。
@@のように、名目金利を物価上昇率よ
り低く抑え、実質金利をマイナスにする政
策は、歴史的に金融抑圧と呼ばれ、しばし
ば用いられてきた。しかし、金融市場のグ
ローバル化によって、中央銀行が金利を低
め誘導する一国単独の金融抑圧は、以前よ
りはるかに困難になっているという。高金
利国への資金流出→円安→物価上昇→実質
金利低下→更なる資金流出(キャピタル・フ
ライト)と実質金利低下(ヴィクセルの累積過
程の発生)のメカニズムが働くためである。
これを抑止するためには、幅広い金融資産
の金利規制と国際的な資本移動の規制が必
要となり、グローバルに事業を展開する企
業や金融機関に致命的な損失を与えること
になる。
Aの見方は、例えば付利の利払いを行う
にしても財源が必要であり、これを準備預
金の増額等で賄ったのでは借金に借金を重
ねることになるから、いずれ政府の支援が
必要になるというものである。しかし、1998
年に施行された新日銀法では、日銀の自主
性が定められたのに対応して、旧日銀法に
あった「日銀に準備金などを超える損失が
生じた場合には政府がその損失を補填す
78
る」旨の規定が削除されている。このため、
現状は、日銀が債務超過になったとき、そ
の損失をどうやって穴埋めするか何も定ま
っていない状態であり(法律上予定されてい
ない)、それが現実化した場合、大きな社会
問題になる可能性がある。仮に政府による
財政支援が行われることになった場合には、
日銀の財務体質改善や財政ファイナンスへ
の志向が強まるのではないかと想像される。
いずれにせよ、主要国の中央銀行が長期
にわたり赤字決算を続け、債務超過に陥っ
たことはない。マーケットがこれをどう受
け止めるかは予測困難であるが、物価や通
貨価値の安定が脅かされ、金融市場に様々
な動揺が生じることが懸念される。
(8)リスク資産の蓄積と市場の歪み
日銀の買入れ対象資産は、短期国債など
短期で安全性の高い金融資産に限定され、
従来リスク資産の買入れは行ってこなかっ
たが、現在は、財務大臣等の認可を受け、
次のとおりETF等の買入れを行っている。
@CPと社債の買入れ
2009年1月に企業金融円滑化の観点から
導入を決定した(2012 年末それぞれ 2.1 兆円、
2.9 兆円)。異次元金融緩和では、2013 年末
にそれぞれ 2.2 兆円、3.2 兆円の残高まで
買入れたあと、その残高を維持している。
AETFとJ-REITの買入れ
2010年10月の包括的金融緩和において、
「リスクプレミアムの縮小を促すため」、導
入を決定した(2012年末残高それぞれ 1.5 兆円、
1100 億円)。異次元金融緩和では、「資産価
格のプレミアムに働き掛ける観点から」、買
入れ額を大幅に増加している(2013 年 4 月:
それぞれ年間 1 兆円・300 億円増加、2014 年 10 月:
年間 3 兆円・900 億円増加、2016 年 7 月:年間 6
兆円・900 億円増加)。
日銀は、これまでの買入れの結果、2018
年3月末現在で18.9兆円のETFを保有し
しており、実質的に日本株第 3 位の株主に
なっている(最大の株主はGPIF(年金積立
金管理運用独立行政法人)で、2017 年第 3 四半期
現在約 42 兆円)。
東証 1 部 1 日当たり売買高約 2 兆円の中
で、日銀の買入れ額は 300〜700 億円であり、
株式相場にある種の底堅さをもたらしてい
るという。その意味で、日銀のETF買入
れは、株式市場の安定化・活性化に一定の
効果を発揮しているが、他方、次のような
問題をはらんでいる。
@コーポレートガバナンスの後退
日銀もGPIFも中立性の観点から外部
専門家に運用を委託した物言わぬ大株主で
ある。こうした株主の出現は、常に緊張感
をもって業績や競争力を高めようとする企
業の改革意識を弱めるおそれがある。
A市場価格の歪み
現在の株式市場は、国債市場ほどではな
いにせよ、日銀による買入れを織り込んで
動いており、健全なシグナリング機能を発
揮すべき自由な市場ではなくなりつつある。
また、ETFに組み込まれた株式は、実
力以上に割高な株価を付け、日銀の退場が
現実となったときには、株式相場以上に低
落するおそれがある。
B出口における株価急落のおそれ
国債と異なり、ETFには償還期限がな
い。このため、出口において正常化するた
めには、市場で売却せざるを得ず、これを
きっかけに株式相場が急落するおそれがあ
る。特に外国人投資家は、日銀が売るとな
79
れば追随して売りに走る可能性があり、株
価が下落すれば、日銀にも大きな損失が生
じる。
中央銀行によるリスク資産の買入れは、
FRBがMBS等を買い入れた時のように、
リスクプレミアムが異常に高まり、市場が
機能不全に陥っているような場合に有効・
適切と考えられる。日銀によるETF等の
買入れは、正常に機能している市場に対し、
人為的に価格を押し上げ、あるいは価格低
下を抑止しようとするものであり、正常な
価格形成上大きな問題がある(株価上昇によ
る資産効果や心理効果を狙ったものと考えられる
が、金融緩和で株式を買うこととした中央銀行は
日銀だけという。また、世界では、本当に支援す
べきは中小企業であって、もともと強い立場にあ
る大企業ではないという意識が強いという)。特
に、異次元金融緩和はいずれ正常化される
ものであり、このとき、市場の混乱や日銀
の財務悪化を招くおそれのあるリスク資産
を大量に買入れ、蓄積することは、極めて
副作用が大きいと言うべきであろう。
(9)財政規律の緩みと財政運営の困難化
我が国の財政事情は世界でも最も深刻な
状況と言われるが、まずその概況を財務省
資料によって確認する。
(図表 101)は、1975 年度以来の一般会計
の歳出・税収・公債発行額の推移を示した
ものである。一見して明らかなとおり、バ
ブル崩壊後、歳出が引き続き増加する一方
で税収が減少し、「ワニの口」が大きく開い
ている。この差額を埋めるのが公債発行額
であり、特に日本経済低迷の大きな節目と
なった 1998 年度と世界金融危機後の 2009
年度に大きく拡大している。その後景気の
回復とともに公債発行額はやや減少してい
るが、なお 35 兆円前後の巨額に上っている。
その結果、国の公債残高(普通国債残高)は、
(図表 102)のとおり、年々増加の一途をたど
り、2018 年度末には 883 兆円・対GDP比
156%に上ると見込まれている。
(図表 101)一般会計歳出・税収・公債発行額兆円
出展:財務省・日本の財政関係資料(平成 30 年 3 月)
(図表 102) 公債残高 兆円・%
出展:財務省・日本の財政関係資料(平成 30 年 3 月)
我が国の財政状況(対GDP比。一般政府:
中央政府・地方政府・社会保障基金ベース)を主
要国と比較したのが、(図表 103・104)であ
る。2017 年の財政収支は△4.8%であり、
米国と並んで最低レベルである。債務残高
は 240.3%で、圧倒的な高さである。また、
80
債務残高から保有金融資産を差し引いた純
債務残高は 120.9%で、イタリアと並び最
高レベルである。我が国の財政事情は、正
に主要国の中で群を抜いて深刻な状態にあ
ると言うことができる。
また、(図表 105)は、OECD 諸国の政府支
出・収入の状況(対GDP比、2015 年)を比
較したものである。社会保障支出は、近年
急速に増加し、我が国財政の大きな課題に
なっているが、対GDP比でみると、OECD
諸国の中で中位の規模に過ぎない。社会保
障以外の支出の規模は最低水準であり、こ
れらを合わせた総支出も低位に位置する。
他方、租税収入は最低水準であり、その結
果、政府の財政収支はギリシア、スペイン
に次ぐ赤字となっている。結局、我が国は、
低支出・最低収入のアンバランスによって、
世界でも最も深刻な財政状況に陥っている
と考えることができよう。
(図表 103) 財政収支の国際比較(対GDP) %
出展:財務省・日本の財政関係資料(平成 30 年 3 月)
(図表 104) 債務残高・純資産残高の
国際比較(対GDP) %
出展:財務省・日本の財政関係資料(平成 30 年 3 月)
(図表 105)OECD 諸国の政府支出・収入(2015)%
出展:財務省・日本の財政関係資料(平成 30 年 3 月)
以上を踏まえて、改めて 1990 年度以降の
普通国債残高の増加要因をみると、(図表
106)のとおり、歳出面では、1990 年代は公
共事業関係費の増加が主因であったが、近
年では社会保障関係費や地方交付税交付金
等の増加が主因となっている。バブル崩壊
による民間需要の大幅な減少を財政支出に
81
よってなんとか穴埋めし、経済の崩壊を防
止してきたのが 1990 年代の姿であり、高齢
化の進展等により社会保障費等が必然的に
増加し、対応に追われているのがその後の
姿と考えられる。また、歳入面では、景気
の悪化や減税による税収の落込みが主因と
なっている。税収の内訳をみると、(図表
107)のとおり、消費税が増税の度に大きく
増加しているのに対し、所得税と法人税は
減少し、2009 年度以降回復傾向にあるもの
の、1990 年当時のそれぞれ 7 割と 6 割 5 分
の水準にとどまっている。
上記のとおり、我が国の深刻な財政状況
の原因は、低支出・最低収入のアンバラン
スであり、特に税収が OECD 諸国の中で対G
DP比最低水準になっていることと考えら
れる。最近は「増税」と言うと消費税ばか
りが注目されるが、これまで税収の落込み
を主導してきたのは所得税と法人税であり、
これを見直していくことが必要と思われる
(特に法人税については、近年法人企業が過去最
高益を上げ、利益剰余金が 1990 年当時の 3.3 倍に
達していること、家計に対しては既に消費税増税
が行われていることに鑑み、前向きに検討すべき
と思われる。なお、かつて日本国内で企業誘致合
戦が展開されたがごとく、最近は国際間で法人税
率の引下げ競争が行われている。これはゼロサム
ゲームによって各国の税収だけは確実に減少する
ものであり、法人課税の適正化に向け各国間の連
携を深めることが必要と思われる)。
(図表 106) 普通国債残高の増加要因 兆円
出展:財務省・日本の財政関係資料(平成 30 年 3 月)
(図表 107) 税収の内訳と推移 兆円
出展:財務省・日本の財政関係資料(平成 30 年 3 月)
財政再建の必要が言われて久しいが、そ
の成果は表れてこない。特に最近は、2 度
にわたる消費税増税の先送りと教育費への
使途拡大があり、その道のりは更に遠退い
た感がある。
社会保障費等の必要的経費は、増税先送
りの有無にかかわらず、高齢化の進展等に
伴い必然的に増加する。給付水準の見直し
は常に必要であるが、増税が避けられるほ
ど巨額なものにはなり得ない。また、給付
水準の引下げは、私的負担への鞍替えであ
り、国民経済的な負担総量はほとんど変わ
らない。結局、少子高齢化による人口オー
82
ナスは、経済成長を促進し、GDPを拡大
する以外に乗り切る方法はない。こう考え
ると、政府に求められるのは、@何よりも
長期的に着実な経済成長を実現すること、
A公共の役割と負担の公平の観点から国民
の納得の得られる適切な制度設計を行うこ
と、B国民に負担を求めるに当たっては、
経済へのマイナスの影響を極力低下するた
め、可能な限り平準化し、負担感を軽減す
ること、C以上を通じて、国民が覚悟を持
つにせよ、将来に無用な不安を抱かないよ
うにすること、などであろう。
確かに消費税増税が行われれば、駆け込
み需要ととともにその反動減が出るが、こ
れはチャラである。増税による実質所得の
減少は避け難いが、いずれ将来増税が必要
になることを考えれば、これもチャラであ
る。問題は、増税の先送りが、将来の増税
額を拡大し、増税実施のタイミングの選択
余地を狭めることによって、経済へのマイ
ナスの影響を増幅させることである。また、
国民の将来不安や財政の持続可能性への不
信を高め、消費の低迷や金利上昇リスクな
ど経済に様々な混乱を生じさせることであ
る。
「今は景気回復が優先」との議論はあり
得る。しかし、国民の将来不安がこれだけ
大きくなってくると、「景気回復と財政再建
の二分法」は成立しなくなっている。長期
的・総合的視点に立つことが重要であって、
短期的視点に立つ限り、国民に不人気な政
策を実施できるタイミングは基本的に存在
しない。その繰り返しが現在の膨大な財政
赤字を生み出した主因と考えられる。
さて、こうした財政規律の緩みとも言う
べき状況を支えてきたものは何か。それは
皮肉にも、長年にわたる金融緩和によって
国債金利が低下し、債務残高の増大にもか
かわらず、利払費がほとんど増加していな
いことが大きな要因として挙げられる。
その状況をみたのが(図表 108)である。
国債金利は、特にバブル崩壊後急速に低下
し、2002 年度からペースを落とすが、2016
年度に 1.0%まで低下している。これによ
り国債の利払費は、1986〜2000 年度 10 兆
円台で横ばいに推移した後、2002 年度の 7
兆円まで低下し、以後 2017 年度まで 7〜8
兆円で推移している。
これが国債を発行しても一定の範囲にと
どまる限り負担は増えないという状況を創
り出し、国債の増発を可能としてきた。さ
らに、国債金利は、新規発行と借換えを繰
り返すことによって徐々に低下するが、日
銀は現在イールドカーブ・コントロールに
よって 10 年物国債金利をゼロ%程度に誘
導しており、国債金利はやがてゼロ近辺ま
で低下する。そうなれば既発債の利払負担
がなくなる上、新発債の発行がいくらでも
可能となる。
黒田総裁は、「日銀の金融政策は、財政フ
ァイナンスを目的としたものでは全くない。
財政規律云々の話は、政府と国会において
議論され、決定されるものであり、そこで
しっかりした財政規律を引き続き確立して
いかれるものと考えている」旨話されてい
る。それは正しい。しかし、国債の市場金
利が上昇し、増税先送りは危険というシグ
ナルを市場が発するならば、国債の増発は
自ずと制約され、財政再建が喫緊の課題と
して浮上して、財政規律の緩みが許される
余地はなくなる。異次元金融緩和が、国債
金利を人為的に大きく引き下げ、市場がそ
83
うしたシグナルを発することを封じている
ことは否定できない。
(図表 108) 利払費と金利の推移 兆円・%
出展:財務省・日本の財政関係資料(平成 30 年 3 月)
しかし、こうした状況は、2%の物価安定
目標の達成によって一変する。市場金利の
上昇によって、国債金利も上昇し、それま
での公債残高の蓄積を反映して、利払費が
大きく増大する。
上記(1)でみたように、長期金利は 4%、
控えめにみても 3%程度になることが想定
される。国債金利は、現在 1%ほどである
が、新発債と借換債を発行する度に上昇し、
いずれ長期金利に収束する。2018 年度予算
の国債残高 883 兆円を前提にすれば、利払
費(予算額 9.0 兆円)は、国債金利が 2%に
なれば 17.7 兆円、3%になれば 26.5 兆円、
4%になれば 35.3 兆円に増加する。
ただし、2%の物価安定目標が達成された
時点では、金利が上昇するとともに経済成
長率も高まっていると考えられる。その影
響を比較するため、財務省「債権管理レポ
ート 2017」から関係する試算結果を取り出
したのが(図表 109)である。経済成長率
が現在の水準 1.5%から 3.0%に高まった
場合の税収増加額と、その時金利が様々に
上昇した場合の利払費増加額(借入金利子・
財務省証券利子を含む)を試算したものであ
るが、金利が 1%上昇するだけで(長期金利
2%に相当)、利払費の増加が税収の増加を上
回る結果になっている。物価安定目標達成
後の金利上昇が、その後の財政運営にいか
に大きな影響を与えるかを如実に示すもの
と考えられる。
(図表 109) 経済成長・金利変化の影響試算 兆円
出展:財務省・債権管理レポート 2017・最下行筆者計算
利払費の増加は財政運営を困難化するが、
それ以上に懸念されるのが、これが財政の
持続可能性への不安感を高めて、更なる金
利上昇を生み、その悪循環から財政危機が
発生するおそれがあることである。そうし
た可能性がある場合、キャピタルロスの発
生を厭わずに日銀に代わるほど国債に投資
する投資家が現れることを期待することは
困難と思われる。理論上、財政は債務のG
DP比率が発散的に増大する場合に持続可
能でないと言われる。しかし、現実には、
財政危機は人々の不安感によって突然自己
実現的に発生し得るものであることに十分
な注意が必要である。
(10)異次元金融緩和の副作用・要約
以上みてきた異次元金融感の副作用を要
約すれば、次のとおりである。
[異次元金融緩和の継続期間中に顕在化す
る副作用]
@国債買入れの限界:早晩、日銀の国債取
得は新発債と自己保有国債の借換債に限ら
84
れ、民間保有国債を減少させてまで国債を
買い入れることはできなくなると考えられ
る。しかし、景気の変動等に応じて金利が
一定範囲で変動することは望ましく、問題
視する必要はない。懸念すべきは、イール
ドカーブ・コントロールが弱まったとして、
国債買入れ額を増加する動きが出てくるこ
とであり、様々な副作用を拡大することに
つながると考えられる。
A金融機関の収益悪化と金融システムの不
安定化:金融機関は、ファイン・チューニ
ング(実質金利=自然利子率)を大きく超え
る低金利のために、体力の続く限り走り続
けている。その経済効果に疑問があるばか
りでなく、地域経済活性化の中心的な役割
を果たすべき地域金融機関の体力が失われ、
どこでも身近に金融サービスを受けられる
環境が損なわれようとしている。
B日銀の収支悪化と債務超過の懸念:異次
元金融緩和をこのまま継続すると、日銀の
国債利息収入は低下を続け、また、現在 10
兆円に及ぶ金利調整差額残高の償却も必要
であることから、日銀の収支は悪化し、債
務超過に陥るおそれもある。
Cリスク資産の蓄積と市場の歪み:日銀に
よるETF等の買入れは、正常に機能して
いる市場に対し、人為的に価格を押し上げ
ようとするものであり、コーポレートガバ
ナンスの後退や市場価格の歪みの問題をも
たらしている。
D財政規律の緩み:財政規律の確保は政府
と国会の責任であるが、異次元金融緩和は、
利払費を低減して国債増発を可能とすると
ともに、市場が増税先送りは危険というシ
グナルを発することを封じることによって、
財政規律の緩みが生じる契機となっている。
[2%の物価安定目標が達成され、金融政策
が正常化に向かう過程で顕在化する副作
用]
@金融機関の収益悪化と金融システムの不
安定化:正常化により金融機関の収益低下
要因はいずれも改善され、正常な状態に戻
ることができる。ただし、金利が急騰する
と債券価格が急落し、地域金融機関中心に
金融システムが不安定化するおそれがある。
A日銀の収支悪化と債務超過の懸念:日銀
保有国債の利回りの上昇が緩やかであるの
に対し、付利金利の引上げは日銀の利払費
を一気に増加するため、日銀の収支は急速
に悪化し、債務超過に陥るおそれもある。
日銀が債務超過に陥ると、物価や通貨価
値の安定が脅かされ、金融市場に様々な動
揺が生じることが懸念される。
Bリスク資産の売却と資産相場:国債と異
なり、ETF等には償還期限がない。この
ため、正常化するためには、市場で売却せ
ざるを得ず、これをきっかけに資産相場が
急落するおそれがある。価格が下落すれば、
日銀にも大きな損失が生じる。
C財政運営の困難化と財政危機の懸念:市
場金利の上昇によって、国債金利も上昇し、
それまでの公債残高の蓄積を反映して、利
払費は大きく増大する。利払費の増加は財
政運営を困難化するが、それ以上に懸念さ
れるのが、財政の持続可能性への不安感を
高めて、更なる金利上昇を生み、その悪循
環から財政危機が発生するおそれがあるこ
とである。
日銀は、異次元金融緩和の副作用につい
て、国債買入れの限界の問題を否定すると
ともに、金融仲介機能への影響は「重要な
85
関心事項であるが、現時点では問題となる
影響は生じていない」とのみ説明する。ま
た、出口の進め方はその際の情勢に依存す
るとして多くを語らず、財政規律や将来の
財政運営等への影響は政府・国会の問題と
整理している。しかし、異次元金融緩和の
効果を総合的にみれば、日本経済の中心で
ある金融・資本市場・中央銀行たる日銀・
国の財政に様々な歪みを生じ、あるいはリ
スクを蓄積しているのではないかと思われ
る。そして、異次元金融緩和のプラスの効
果がマイナスの効果を上回るかについては、
極めて疑問に思われる。これまで異次元金
融緩和については、「日銀が大量の国債を買
い続ける限り、財政危機という爆弾が破裂
することはないから、経済は平穏なままで
ある。しかし、2%の物価安定目標が達成さ
れると、国債買入れをやめるにやめられな
いことが分かり、経済はパニックに陥る」
と評されることが多かった。しかし、金融
機関や日銀の収支への影響、財政規律への
影響等を考えると、今や大量の国債購入を
続けること自体、副作用が顕在化してまま
ならぬものになりつつあるように思われる。
9.財政ファイナンスとヘリコプター
マネー
(1)財政ファイナンスと財政の持続可能性
の確保
財政ファイナンスとは、一般に中央銀行
が政府の発行する国債などを直接引き受け、
政府の財政運営を財源的に支援することを
言う。しかし、広義には、政府の財政政策
が円滑に実行されるよう中央銀行が政府に
協力し、財政政策と金融政策を一体化して
運営することを指す場合がある。前者は我
が国の場合財政法 5 条により明確に禁止さ
れており、政策評価上はむしろ後者の方が
意義が大きいとも考えられる。
黒田総裁は、この点に関し、「量的・質的
金融緩和による長期国債の買入れは、金融
政策上の目的で日銀自身の判断で行うもの
であり、財政ファイナンスではない。こう
した議論を惹起しないためにも、政府が今
後の財政健全化に向けた道筋を明確にし、
財政構造改革を着実に進めていくことは極
めて重要である。政府も、「共同声明」にお
いて、「日本銀行との連携強化にあたり、財
政運営に対する信認を確保する観点から、
持続可能な財政構造を確立するための取組
を着実に推進する」としており、そうした
取組に強く期待している」旨述べられてい
る。
現在日銀は、2%の物価安定目標の実現に
向け異次元金融緩和を続けており、その限
りでは財政ファイナンスか否か直ちに判断
できない。問題は、その目標が達成され、
金融引締めの必要が生じたときに、市場の
動向に即して金利の引上げが行えるかどう
かである。上記8.(9)のとおり、長期金
利が上昇すると、国債の利払費が増大して
財政運営が困難化するとともに、財政危機
のリスクが高まるおそれがある。いくら物
価の安定をマンデートとして業務運営の独
立性が認められた中央銀行といえども、物
価の安定を優先して、政府が財政危機に陥
ることは厭わないとするわけにはいかない
であろう。日銀が金利の引上げができず財
政ファイナンスを行うことは、インフレの
高進を許容することになるが、このように
中央銀行が否応なしに財政の都合に合わせ
ざるを得なくなることを「財政支配」と言
86
う。こうした状況に陥らないためにも、黒
田総裁が言われるとおり、日銀が出口に至
るまでに、政府は財政構造改革を着実に進
め、財政の持続可能性を確保していくこと
が極めて重要である。
※19 財政法第 5 条:「すべて、公債の発行につい
ては、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入
金の借入については、日本銀行からこれを借り入
れてはならない。但し、特別の事由がある場合に
おいて、国会の議決を経た金額の範囲内では、こ
の限りでない。」と規定している。河野一之「新版
予算制度」昭和 62.3.31 学陽書房は、その趣旨に
ついて、「戦前・戦中において大量の公債発行が日
銀引受けによって行われた結果、マネーサプライ
の増加を通じて激しいインフレーションを引き起
こしたことへの反省に基づき、財政の健全性を確
保するために規定されたものである」とするとと
もに、但し書きについて、「「特別の事由」に何が
あたるかは、必ずしも法文上明らかではないが、
実際には、毎年度の特別会計予算総則に規定を置
き、日銀が保有する公債の借換えのために発行す
る公債の金額については、「特別の事由」にあたる
ものとして、日銀引受けによる公債の発行が認め
られている。これは、借換債の性質上、日銀が現
に保有しているものの引受けであり、通貨膨張の
要因となるものではないからである」と解説して
いる。これに依る限り、但し書きは、本文の趣旨
に反する事由を例外的に許容するものではないと
思われる。
(2)財政の健全化と持続可能性
財政の健全化とは、利払費を含めた財政
収支を黒字化して、国債残高の名目GDP
比を安定的な水準まで引き下げることと考
えられる。EUの安定・成長協定は、@単
年度の財政赤字額GDP比 3%以下、A国
債残高 GDP比 60%未満を加盟国に求め
ているが、こうした水準はなかなか実現し
得ないにせよ、年々近付けていくことが重
要であり、これが国民の安心感にもつなが
ると考えられる。
財政の持続可能性については、よくドー
マーの条件が取り上げられる。公的債務残
高のGDP比が発散しないことをもって
「財政の持続可能性がある」とするもので
あり、次のような条件が示されている。
@名目GDP成長率>利子率
プライマリーバランス(基礎的財政収支:
借入金を除いた税金など正味の歳入と、借入金返
済のための元利払いを除いた歳出の収支)が多少
赤字でも発散しない。
A名目GDP成長率=利子率
プライマリーバランスが均衡又は黒字で
ないと発散する。
B名目GDP成長率<利子率
プライマリーバランスがかなり黒字でな
いと発散する。
ただし、公的債務残高が大きいと、3 つ
の変数(プライマリーバランス、名目GDP成長
率、利子率)の変動によって公的債務残高の
GDP比が大きく変動し、自己実現的に財
政危機が発生するリスクが高まるため、や
はり公的債務残高を低減することは重要と
考えられる。
さて、名目GDP成長率と利子率の関係
については、戦後 1980 年代までは成長率≧
利子率が基調であり、金融自由化が進行し
た 1980 年代以降は成長率<利子率が基調
になっているという。金融自由化以前には、
金利を市場実勢を下回る水準に誘導する人
為的低金利政策がとられていたためとされ
る。また、ソローの成長モデルでは、長期
的に成長率<利子率が成立すると言われて
いる。
我が国のプライマリーバランスの対GD
87
P比は、(図表 110) のとおりであり、1992
年度以来赤字を続け、2017 年度は国△
3.8%、国・地方△3.4%である。また、政
府は、これまで 2020 年度の黒字化を目標と
してきたが、成長低下による税収の伸び悩
み、消費税率引上げ延期と使途の見直し等
によって達成困難となり、去る 6 月 15 日に
閣議決定されたいわゆる骨太の方針におい
ては、「@経済再生と財政健全化に着実に取
り組み、2025 年度の国・地方を合わせたP
B黒字化を目指す、A同時に債務残高対G
DP比の安定的な引下げを目指すことを堅
持する」との新たな財政健全化目標が決定
されたところである。
新たな目標の確実な達成を期待するが、
経済の最も自然な関係=ドーマーの条件B
名目GDP成長率<利子率となった場合に
は、プライマリーバランスをよほど黒字化
しない限り、財政の持続可能性を確保する
ことはできない。
人為的低金利政策には、
@金融抑圧:目標金利<インフレ率<市場
実勢金利(実質金利は負)
A金融抑制:インフレ率<目標金利<市場
実勢金利(実質金利は正)
が区別されている。Aのインフレ率<目標
金利≒名目GDP成長率<実勢金利を実現
することが、たとえ広義の財政ファイナン
スに該当するものとしても、我が国の異常
な公的債務残高の存在を踏まえれば、現実
的に必要と考えられる。日銀には、金融政
策正常化後、物価の安定を阻害しない範囲
で、こうした金融政策を実施することが期
待される。
(図表 110) 基礎的財政収支(対GDP) %
出展:財務省・債権管理レポート 2017
(3)金融政策と財政政策
「紐は引けても押せない」の例えは、や
はり金融政策の本質を言い当てた金言と思
われる。マイナス金利と独占的な国債買入
れによって流動性の罠やゼロ金利制約を乗
り越えた異次元金融緩和でも、効果が大き
いとされる短期〜中期の金利は 0.2〜
0.3%ほどしか低下していない。また、そも
そも民間の借入需要が弱くIS曲線が立っ
た状態では、金利が低下してもGDPの押
上げ効果は自ずと限られたものになる。
そこで最近、関係者の関心を高めている
のが財政政策である(上記7.(4))。財政支
出を拡大すればIS曲線が右シフトしてG
DPが増大する。自然利子率が高まりプラ
スになれば、金融政策の有効性も復活する。
さらに需給ギャップをプラスにすれば、物
価の上昇をいくらでも加速できる(IS-L
Mモデルを開放経済に拡張したマンデル・フレミ
ングモデルは、変動相場制の下における財政政策
の有効性を否定する。しかし、これは金融政策の
基本をマネーストックとみるモデルである。マネ
ーストック一定(LM曲線一定)の下では、財政
支出拡大→IS曲線右シフト→金利上昇→円高→
純輸出減少→総需要不変=財政政策無効となる。
このため、財政政策は、不況期(IS曲線がLM
88
曲線の水平部分で交差する状態)においてのみ有
効となる。しかし、現実の金融政策は金利操作を
基本に行われており、仮に金利一定とすれば、I
S曲線右シフトとともにLM曲線が右シフトして、
本モデルにおいても財政政策は有効となる)。
その結果、金融政策への関心は、金利引
下げによる直接的な景気刺激効果から、財
政の持続性を確保し、これを通じて景気回
復や物価上昇を促進する役割へとシフトし
つつある。この点で、日銀がイールドカー
ブ・コントロールで 10 年物国債金利をゼロ
程度とし、国債の買入れを行っていること
は重要な意味を持つ。国の財政運営を当面
容易にする効果を、意図せざるプラス効果
でなく、異次元金融緩和のメインの効果と
位置付けるものと考えられる。
しかし、拡張的な財政政策は、早晩増税
が必要となり、人々の将来不安を高めて消
費を抑制する。また、そのための財源を日
銀が工面することは典型的な財政ファイナ
ンスであり、財政規律を喪失して、長期金
利の高騰や財政危機が発生するリスクがあ
る。我が国の財政状況を踏まえれば、正に
禁じ手と言うべきものであろう。
こうした中、財政政策の効果を最大限に
高める政策として近年注目を集めたのが、
以下に述べるヘリコプターマネーである。
(4)ヘリコプターマネー
バブル崩壊後、我が国経済の長期低迷を
打開するための方策が米欧の経済学者中心
に様々に寄せられた。その代表が、上記7.
(4)で紹介したポール・クルーグマンの提案
であり、ベン・バーナンキ元FRB議長や
アデア・ターナー元FSA(英国金融サービ
ス機構)長官によるヘリコプターマネーの
提案である(アメリカの経済学者ジョセフ・E・
スティグリッツの政府紙幣発行の提案もほぼこれ
に類する)。
ヘリコプターマネーのアイデアは、ミル
トン・フリードマンが 1969 年の著作の中で
行った思考実験に端を発するという。「ある
日、ヘリコプターが頭上から紙幣をばらま
く。すると国民は、その紙幣の供給が 1 回
限りであり、後で回収されることもないと
認識し、少し自分の資産が増えたと思って、
消費支出に充てる。こうしてヘリコプター
マネーの供給は、総需要を拡大する」とい
うものである。これを現実に当てはめれば、
「中央銀行が政府の発行する無利子・永久
国債を引き受け、永続的に保持すると公約
する。政府がこれを財源に減税や現金配布、
公共投資を行うと、国民は将来の増税や歳
出削減を心配することなく、安心して現在
の総需要を拡大する」といったものである。
バーナンキは、「日銀の国債購入を財源に
政府が減税し、日銀は物価水準目標の達成
にコミットするとともに、購入した国債の
大半を恒久的に保持すること」を提案する。
また、ターナーは、「最早日本には、国債を
返済を要する債務とみなすシナリオは存在
しない」との認識から、「日銀は今後も国債
を大量に買い入れ、ほぼ永遠に抱え込むこ
と、さらに保有する利付国債を無利子・永
久国債に転換すること」を提案する。その
上で、「仮にインフレが加速する場合は、法
定準備率を引き上げて対応すれば、信用供
与の拡大を抑制できる」とする。
これらを総合すれば、ヘリコプターマネ
ーは、次のような効果を持つものと考えら
れていると言えよう。
@財政資金の確保:日銀が市場を経由せず
89
直接国債を引き受けることによって、政府
は、市中金利への影響(クラウディング・ア
ウト)を回避しつつ、必要な財政資金をい
くらでも確保することができる。
A将来の増税負担の回避:日銀が引き受け
た国債を保有し続けることによって、政府
は将来の増税が不要となり、将来の増税あ
るいは歳出抑制の予想が現在の民間支出を
抑制するという「リカードの中立命題」を
回避することができる。
B将来償還を要する国債残高の削減と利払
負担の軽減:日銀が市中に存在する国債を
大量に買い入れ、永続的に保有することに
よって、政府は、将来償還を要する国債残
高を削減するとともに、利払負担を軽減す
ることができる。日銀が保有する利付国債
を無利子・永久国債に転換すれば、これを
より明確にすることができる。これにより
国民は、将来の増税負担が大幅に軽減され、
その分安心して消費を拡大することができ
る。
Cインフレの促進と政府債務の縮小:日銀
は、インフレ目標を達成するとともに、イ
ンフレ期待の高まりによって実質金利を低
下させることができる。政府は、インフレ
によって国債の返済負担を軽減し、実質的
に政府債務を縮小することができる。
夢のような話であるが、問題は、こうし
た効果が本当に期待できるかどうかである。
まず、効果A・Bから検討する。
(図表 111)は、政府の国債発行によって
各経済主体のB/Sがどのように変化する
かをケース分けしてみたものである(結論
部分のみ示している。その過程は(図表 95・96)を
参照いただきたい)。
(図表 111) 国債発行によるB/S変化 兆円
90
出典:筆者作成
日銀が市中から国債を買い入れて保有す
ると、ケース 1 からケース 2 に移行する。
日銀が借換債への再投資を繰り返し行えば、
政府は国債元本の支払を免れることができ
る。ケース 3 の日銀が始めから国債を引き
受ける場合も同様である。また、ケース 4
のように永久国債を日銀が引き受け、又は
保有する国債を永久国債に転換する場合は、
借換えを行うまでもなく、政府は国債元本
の償還を免れることができる。しかし、政
府が国債元本の支払を免れたとしても、国
債や永久国債が有利子である限りは、将来
にわたる利払費の割引現在価値は基本的に
資産価格に合致するから、政府ひいては国
民の負担が軽減されるわけではない。有期
限の元利払いが基本的に等価の無期限の利
払いに転換されるだけと考えられる。
なお、日銀が市中の国債を買い入れれば、
統合政府の国債は相殺されるから、その負
債が減少するとの議論があるが、これが誤
りであることは、ケース 2 の統合政府のB/
Sが示すとおりである。日銀による国債の
買入れは、民間銀行に対する国債という長
期債務を準備預金という短期債務に置き換
えているに過ぎない。ケース 3、ケース 4
の統合政府のB/Sも同様である。
他方、国債の利払負担については、日銀
が保有する国債に関しては、政府が支払っ
た利払費は国庫納付金として還元されるか
ら、政府に利払負担が生じないように感じ
られる。しかし、ケース 2〜4 の日銀のB/
Sが示すとおり、日銀の保有する国債・永
久国債は、いずれも民間銀行の準備預金に
よってファイナンスされており、日銀が超
過準備に付利金利を支払うと、それだけ国
庫納付金が減少する。すなわち、日銀保有
の国債については、政府は、国債に対する
利払負担を負わない代わりに、準備預金に
対する利払負担を負うことになる。統合政
府のB/Sの構造を考えれば、至極当然のこ
とであろう。
ここで問題になるのは、上記8.(6)でみ
たように、正常化の過程で、付利金利の支
払額が国債利息収入額を超えて、日銀が債
務超過に陥る可能性があることである。こ
の場合、政府が負うべき利払負担の一部を
日銀が肩代わりしていることになるが、こ
れにより金融市場に様々な混乱が生じるお
それがあることは、上記8.(7)でみたとお
りである。
一方、永久国債を無利子とすることは、
政府が負うべき利払負担を始めからすべて
日銀に押し付けるものであり、日銀の債務
超過と金融市場の混乱を考えれば、当然是
認されるものではないであろう(仮にこれを
行えば、政府は日銀に対し財政支援を行わざるを
得ず、負担の形が変わるだけである)。
結局、ヘリコプターマネーの実施によっ
て起こることは、政府の有期限の国債の元
利払いが無期限の準備預金に対する利払い
に転換されるということである。政府の財
91
政負担は、形は変わるが、無くなるわけで
はない。したがって、A・Bの効果は存在
せず、リカードの中立命題が回避されるこ
ともないと考えられる。準備預金に対する
利払いを無くすためには、@ヘリコプター
マネーか否かに関わらず、2%の物価安定目
標達成後も、政策金利をゼロ%として超過
準備への付利を行わないか、A法定準備率
を大きく引き上げ、超過準備を所要準備に
切り替える必要がある。しかし、@を行え
ば、景気が過熱して物価が高騰し、Aを行
えば、民間金融機関に多大の損失が発生し
て金融システムに大きな混乱が生じる。や
はり経済の世界にフリーランチは存在しな
いと言うべきであろう。
ヘリコプターマネーの効果@・Cは、確
かに十分過ぎるほど認められるであろう。
その容易さから財政規律が破壊され、イン
フレに歯止めがかからなくなるおそれがあ
る。また、A・Bの効果がない以上、財政
危機のリスクが急速に高まり、金利が高騰
する。日銀の金融政策や円の通貨価値に対
する信認も大きく低下するであろう。こう
した状況を国民が予想すれば、消費が抑制
され、財政拡張の経済効果は、当初から削
がれると考えられる。
「デフレ下においては、財政政策だけが
有効である」、「増税できないのであれば、
インフレ税でいくしかない」、「ハイパーイ
ンフレは、金融政策によって防止可能であ
る」など様々な議論がある。しかし、ヘリ
コプターマネーは、2%程度の物価上昇を実
現するには、余りに過大であり、膨大な政
府債務を縮小するには、有効かもしれない
が、それは同時に経済の破壊を意味するこ
とになると考えられる。
なぜこうした提案が次々寄せられるのか
理解に苦しむが、ターナーの言う「最早日
本には、国債を返済を要する債務とみなす
シナリオは存在しない」との認識(多くの外
国人投資家も共有していると言われる)につい
ては、真摯に厳しく受け止める必要がある
と思われる。
(5)異次元金融緩和とヘリコプターマネ
ー・財政ファイナンス
ヘリコプターマネーがバーナンキのブロ
グ搭載や訪日によって再び注目を集めた
2016 年当時、黒田総裁は、これについて問
われ、「ヘリコプターマネーは、金融政策と
財政政策を一体として運営するものと思う
が、我が国を含む先進国では、歴史的な経
験も踏まえて、財政政策は政府、議会の責
任において行う、金融政策は独立した中央
銀行が行うという考え方、制度的仕組みが
確立しているので、我が国の現行の法制度
の下では実施できないと考えている」旨答
えている。また、関連して財政ファイナン
スについても問われ、「日銀の金融政策は、
財政ファイナンスを目的にしたものでは全
くないし、物価の安定を目的として行って
いる。したがって、財政ファイナンスであ
るとは考えていない」、「中央銀行が物価安
定目標を実現するために金融緩和政策を推
進している状況において、政府が財政支出
を拡大する場合には、国債発行に伴う金利
上昇が抑制されるため、これらの相乗効果
によって景気刺激効果がより強力なものに
なることはよく知られている。こうした政
策の組合せは「ポリシー・ミックス」と呼
ばれており、マクロ経済政策として、一般
的な考え方であると思う。しかし、こうし
92
たポリシー・ミックスは、政府による財政
資金の調達を手助けすることを目的とする
財政ファイナンスでもないし、中央銀行の
マネーの恒久的な増加を原資として財政支
出を行うヘリコプターマネーとも全く違う
と考えている」旨答えている。
では、通常の金融緩和とヘリコプターマ
ネーや財政ファイナンスを分けるポイント
は何か。大きく次の 3 点が挙げられると思
われる。
@金融緩和が、財政政策の支援として行わ
れているかどうか。
A金融緩和が、一時的でいずれ正常化され
るものかどうか。
B金融緩和が、政府の発行する国債を直接
引き受ける形で行われているかどうか。
黒田総裁は、@について、日銀の役割と
政策の目的の観点から、異次元金融緩和は
財政ファイナンスでなく、リコプターマネ
ーとも全く異なるとされている。しかし、
異次元金融緩和が実態上発揮している効果
の観点からは、マクロでみた唯一最大の受
益者は政府であり、政府の国債発行を円滑
化するとともに、利払負担を軽減すること
によって、財政ファイナンスの機能を十分
果たしていると考えられる。
Aについては、異次元金融緩和は、2%の
物価安定目標の達成によって正常化される
こととなっており、ヘリコプターマネーに
は当たらない。しかし、開始後 5 年以上経
過し、正常化の目途が立たない中で、財政
ファイナンスとしての性格を強めているこ
とは間違いないと考えられる。
Bについては、財政法 5 条によって明確
に禁止されている。ただし、(図表 111)の
ケース 2 とケース 3 にあるとおり、日銀が
国債を市中から買い入れる場合と政府から
直接引き受ける場合で、各経済主体のB/
Sの変化は変わらない。これを踏まえると、
財政法 5 条の趣旨は、政府の国債発行を市
中発行・市中消化に限定することによって、
市場の機能を活用して無秩序なマネースト
ックの拡大とインフレの加速を防止し、財
政の健全性を確保することにあると考えら
れる。しかし、国債市場は、日銀の大規模
な国債買入れによって、価格発見機能やシ
グナリング機能を大きく低下させており、
日銀トレードにみられるように、政府が発
行した国債を日銀に引き渡す橋渡しの機能
しか果たしていないようにみえる。こうし
た意味において、異次元金融緩和による日
銀の国債買入れは、実態上直接引受けと大
きく異るものではないのではないかと危惧
される。
以上総合すれば、異次元金融緩和は、い
ずれ正常化されるという意味においてヘリ
コプターマネーではないが、実態上、財政
ファイナンスの機能を果たすものと考えら
れる。
10.デフレ脱却の意義と求められる政策
以上、異次元金融緩和について、これま
での成果、メカニズム、副作用などをみて
きた。その結果は、政策の規模が異例に大
きいだけに副作用も大きく、プラスの効果
がマイナスの効果を上回るかについては疑
問とするものであった。ここで改めて原点
に立ち戻り、デフレ脱却の意義と求められ
る政策について検討してみたい。
(1)デフレ脱却の意義
上記2.(1)(6)でみたとおり、日銀は、
93
デフレ脱却の意義について次のように説明
している。
@我が国では 1998〜2012 年度の 15 年間、
消費者物価上昇率年平均△0.3%という緩
やかだが長期にわたるデフレが続いた。
Aこれにより、人々の間に「物価は上がら
ない。むしろ下がるものだ」というデフレ
予想が生まれ、人々は物価が上がらないこ
とを前提に意思決定や行動を行うようにな
った。
Bデフレを前提とする経済には以下のよう
な問題があり、デフレは、景気低迷の結果
であるとともに、景気低迷の長期化をもた
らす原因になった。
@売上の減少と消費の低迷の悪循環
企業にとっては、デフレの下では、製品
やサービスの価格を引き上げることができ
ないため、売上高は伸びず、収益も上がり
にくくなる。このため、人件費や原材料費、
設備投資をできるだけ抑制することになる。
一方、家計にとっては、賃金が上がらな
いため、消費を抑えることになる。また、
将来物価が下落するのであれば、消費をで
きるだけ先送りしようとする傾向が強まる。
このようにして消費が抑制されれば、企業
はさらに価格の引下げを余儀なくされる。
こうして、価格の下落→売上・収益の減
少→賃金の抑制→消費の低迷→価格の下落
の悪循環が生まれて続くことになる。
A投資の抑制と成長力の低下
デフレ予想が定着すると、たとえ名目金
利が低下しても名目金利から予想物価上昇
率を差し引いた実質金利は高止まりし、投
資意欲を減退させる。
また、デフレは、実物投資やリスク性資
産の収益率を低下させる一方で、元本が保
証される現金や預金の実質的な収益率を高
める方向に作用する。
こうして設備や研究開発に投資して、リ
スクを取って新しいビジネスに挑戦しよう
とするインセンティブを削がれると、需要
不足から景気の低迷とデフレが自己実現的
に長期化するとともに、経済の成長力も低
下を続けることになる。
C異次元金融緩和は、デフレ下で定着して
しまった悪循環をちょうど逆回転させよう
とするものであり、予想インフレ率の上昇
=デフレ期待の払拭を起点として、物価の
緩やかな上昇→売上・収益の増加→賃金の
上昇→消費の活性化→価格の緩やかな上昇
という経済の好循環を実現して定着させよ
うとするものである。
また、デフレから脱却すること自体が日
本経済の成長力の強化に資する。デフレか
ら脱却し、経済主体が 2%の物価上昇を前
提に行動するような経済・社会を実現する
ことは、失われたアニマルスピリットを復
活させることになる。
(2)デフレは日本経済低迷の原因か
以上のように、日銀は、デフレが日本経
済低迷の原因であり、デフレを脱却するこ
とが経済の好循環の実現や成長力の強化に
資するとしているが、これらについては次
のような疑問がある。
@デフレ下では、価格の下落→売上・収益
の減少→賃金の抑制→消費の低迷→価格の
下落の悪循環が生まれて続く。
⇔物価が下落しそれぞれの名目値が低下し
ても、それらが比例的に低下する限り、実
質値は変わらない。したがって、単に各経
済変数の名目値が低下することを以って経
94
済の低迷と言うことはできない。
デフレの下においても、価値の高い新商
品を開発すれば価格は上昇するし、同じ商
品を販売していても生産性が上がれば賃金
は上昇する可能性がある。デフレだからと
いって、必然的に上記のような関係が生じ
るわけではない。
Aデフレ下では、企業は、製品等の価格を
引き上げることができないため、人件費等
をできるだけ抑制し、家計は、賃金が上が
らないため、消費を抑えることになる。消
費が抑制されれば、企業はさらに価格の引
下げを余儀なくされる。
⇔(図表 16・18)で、勤労者一人当たりの
所得である現金給与総額と現金給与総額に
非農林業雇用者数を乗じた総雇用者所得の
推移をみた。△0.3%のデフレが続いていた
1998〜2012 年度の年平均上昇率を切り出
せば、現金給与総額は名目△0.9%・実質△
0.6%、総雇用者所得は名目△0.6%・実質
0.2%である。また、この間のGDPは名目
△0.5%・実質 0.6%、民間最終消費支出名
目は 0.2%・実質 0.9%、うち家計最終消費
支出は名目 0.1%・実質 0.9%である。
ここから浮かび上がるのは、企業は、物
価の低下率を大幅に上回る賃金の引下げを
行っていること、家計は、高齢者や女性中
心に就業率を高め、賃金低下の緩和に努め
るとともに、GDPの伸びを上回るプラス
の消費支出を行っていることである。
賃金の低下が消費を抑制し、景気が盛り
上がらない要因になっていることは間違い
ない。しかし、物価の低下以上に賃金が低
下していることは、デフレでは説明がつか
ない。また、家計最終消費支出の推移をみ
ると、基本的にプラスで推移しており、消
費の抑制によって「企業がさらに価格の引
下げを余儀なくされる」といった状況は現
実には生じていない。家計にとってみれば、
賃金が低下する中、デフレはせめてもの救
いであったと言うべきであろう。
B将来物価が下落するのであれば、消費を
できるだけ先送りしようとする傾向が強ま
り、消費が抑制される。
⇔将来の予想物価上昇率は、名目金利に反
映される(フィッシャー方程式i=r+π:i
名目金利、r実質金利、π予想物価上昇率)。こ
れを含めれば、将来買うことのできる商品
の量は、インフレ・デフレに関わりなく一
定になる(今期に 1 円貯金すると、来期に購入
できる実質値は(1+r)/p。:p。今期の価格)。
ただし、名目金利がマイナスになった場
合は(i<0即ちr<△π:この場合のπはマイ
ナス)、誰も貯金しようとはせず、現金で保
有した方が将来買うことのできる商品の量
が増加する(今期に 1 円現金保有すると、来期
に購入できる実質値は(1−π)/p。:この場合の
πはマイナス。これを先の実質値と比較すれば、
(1+r)/p。−(1−π)/p。=(r+π)/
p。となり、名目金利がプラスかマイナスかに対
応している)。
このため、デフレでも、名目金利がプラ
スである限り、消費の先送りは生じず(現
在と将来の支出の配分は、実質金利と人々の選好
によって決まる)、名目金利がマイナスである
場合に限って、消費の先送りが生じること
になる。
2016年1月に異次元金融緩和によってマ
イナス金利が導入されるまで、名目金利は
プラスであった。したがって、それまでの
間、デフレだからといって消費の先送りが
生じていたとは考えられない(なお、この議
95
論は、そもそも生鮮食料品のように貯蔵できない
財やサービスには無関係であり、耐久消費財や貯
蓄可能な財に限られる。また、一般物価水準が不
変で特定の商品の価格だけが変動する場合、消費
税増税のように一般物価水準に影響がない場合は、
名目金利が変動せず、買い急ぎや買い控えの問題
が生じ得る)。
また、実際に人々が将来の物価をどう予
想していたかをみると、(図表 112)のとお
り、「少し下がる」「かなり下がる」は極め
て少なく、「将来物価が下落するから消費を
先送りしよう」という発想はそもそもなか
ったと考えられる。
(図表 112) 1年後の物価に対する見方 %
出典:日本銀行・生活意識に関するアンケート
Cデフレ予想が定着すると、名目金利が低
下しても名目金利から予想物価上昇率を差
し引いた実質金利は高止まりし、投資意欲
を減退させる。
⇔これはデフレの典型的な弊害と考えられ
る。しかし、(図表 45)をみると、日銀の
長期にわたる金融緩和の結果、1995〜2008
年までは総じて実質金利は自然利子率を下
回っている。世界金融危機後の 2008〜2012
年はさすがに自然利子率の低下によってこ
れが逆転したが、2013 年以降は、異次元金
融緩和によって実質金利は自然利子率を大
きく下回っている。
こうした状況を踏まえれば、世界金融危
機後というごく短期の異常時を除けば、デ
フレがこのメカニズムを通じて経済低迷の
原因として作用したことは現実にはなかっ
たと考えられる。
Dデフレは、実物投資やリスク性資産の収
益率を低下させる一方で、元本が保証され
る現金や預金の実質的な収益率を高める方
向に作用する。
⇔投資の決定は、名目収益率と名目金利を
比較することによって行われる。デフレに
よって将来の投資収益の名目値は低下する
が、名目金利も低下するため、将来のキャ
ッシュフローを名目金利で割り引いた投資
の現在価値は変わらず、デフレは投資の決
定に影響を及ぼさない。
一方、投資を行わず現金のまま保有する
場合は、将来の額面金額は変わらないため、
その現在価値は、名目金利がマイナスの場
合に増価するが、上記のとおり、名目金利
はマイナス金利が導入されるまで長年にわ
たりプラスであり、現金保有を有利な資産
運用とみることはできない。
確かに名目金利の低下によって、現金保
有の機会損失は低下するが、投資の収益率
を上回ることはないと考えられる。
消費者物価指数は、「経済の体温計」と言
われる。物価が経済の状況を敏感に映し出
す鏡の一つであることを指すものであろう。
デフレはさながら低体温症とでも言うべき
状態であるが、それはあくまでも結果であ
り、症状に過ぎない。ただし、高熱を発す
るなど時として症状が病気を悪化させる原
因になる場合がある。しかし、日銀がデフ
レが原因として挙げる事項にはいずれも上
96
記のような疑問があり、「デフレは、景気低
迷の結果であるとともに、景気低迷の長期
化をもたらす原因になった」とは言えない
と考えられる(これらは次にみるような実体経
済上の問題の現れと考えられる)。病気を治すた
めには、やはり病気の原因に対する根本治
療が必要であり、症状を緩和するだけでは
意味がない。逆に症状を軽減するための薬
の大量摂取が副作用の蓄積・顕在化によっ
て病状を悪化させないか懸念される状況で
ある。
では、病気の原因として何が考えられる
か。以下、企業防衛マインドと国民の将来
不安を取り上げてみたい。
(3)企業防衛マインド
上記4.異次元金融緩和の成果では、主
要経済指標について分析し、「円安、低金利、
株高、原油安等の好条件が揃い、法人企業
は史上最高益を実現した。しかし、賃金の
上昇や設備投資などへの波及は限定的で、
消費や投資の拡大が不十分なものにとどま
った。このため、景気の回復は力強さに欠
け、物価の上昇も限られたものになった」
と経済情勢を取りまとめた。
しかし、こうした企業収益の増大にもか
かわらず、消費や投資へのトリクル・ダウ
ンが生じにくい企業の体質は、この 5 年間
にとどまらず、バブル崩壊後、特に 1998
年頃から顕著になった傾向であり、日本経
済が長期低迷を脱しない大きな原因の一つ
ではないかと考えられる。
もとより企業は千差万別であり、一括り
に論じられるものではないが、各種経済指
標や識者の論説などから伺われるこうした
企業の行動パターンや考え方の傾向を「企
業防衛マインド」と呼び、以下に提示して
みたい。
企業防衛マインドの特徴は、次のとおり
である(物価が上がらないことを前提に意思決定
や行動を行うデフレマインドを含むが、以下のと
おり企業行動の全般にわたる広範なものである)。
@企業経営の最大の目標は、利潤や企業価
値の最大化ではなく、企業の存続可能性の
最大化である。この場合の企業とは、具体
的には正社員メンバーのグループである。
A@の目標を達成するため、利潤の極大化
を目指すが、企業の存続を危うくするよう
なリスクはとらない。また、どのような経
済情勢にも耐え得る財務体質の強化を目指
す。このため、次のような企業行動をとる
ことになる。
B新商品の開発競争でなく、既存商品の価
格競争によって売上高の確保を図る。無理
をして新規市場の開拓や需要の掘り起しは
行わず、価格の維持や値引きによって既存
市場でのシェアの維持・獲得を図る。
C販売価格が引き上げられない以上、売上
原価や経費の縮減が唯一の利潤獲得手段と
なる。このため、人件費、原材料費等のコ
スト削減や不採算部門のリストラが企業経
営の眼目となる。人件費については、可能
な限り人員の縮小と非正規社員の活用を図
るとともに、正社員のベアを凍結する。正
社員も雇用の安定こそ最も求めているもの
であり、企業の存続を危うくするおそれの
あるベアの要求には慎重である。
D既存市場でのシェアの維持・獲得を目的
とする以上、人口減少が見込まれる日本国
内での能力増強投資は行わない。また、新
規市場の開拓や需要の掘り起しは行わない
以上、研究開発投資やこれに関連する設備
97
投資も行わない。投資は、自ずと更新投資
や省力化投資中心となり、その規模も縮小
する。省力化投資による労働生産性向上の
成果は、企業の利潤に還元する。
E有利子負債は極力圧縮して、実質無借金
企業(現預金や短期保有有価証券などの手元資金
>有利子負債。2017 年度末上場企業の 59%)を
目指す。純資産、特に利益剰余金を積み上
げ、自己資本比率を高める(法人企業統計に
よると、2016 年度の純資産 670 兆円:資本金 110
兆円、資本剰余金 150 兆円、利益剰余金 410 兆円。
自己資本比率:1998 年度 19%→2016 年度 41%)。
企業がこうした企業防衛マインドに基づ
き行動すると、次のような状況が導かれる。
@既存商品を既存市場で販売する限り、価
格の引下げ競争にならざるを得ない。デフ
レだから価格が上げられないのでなく、消
費者の所得が上がらず、新興国からも廉価
な商品が流入する状況下では、競争の結果
として、価格が低下する。(物価が上がるのは、
輸入原材料価格の上昇などコスト・プッシュがあ
った場合に限られる。しかし、この場合も、価格
の引下げ競争が行われることには変わりがない)。
A賃金は、その抑制が企業の重要な利潤獲
得手段となっており、容易には上がらない。
昨今の人手不足は、非正規社員の賃金上昇
に結びついているが、もともとのベースが
低い。正社員のベアは、企業が史上最高益
を上げている割には小幅なものにとどまる。
今後については、人材獲得の必要性や企業
の存続可能性を労使がどう評価するかにか
かっている。
B賃金が上がらないため、消費は弱含みと
なる。デフレだから消費を先送りしている
わけでなく、消費者は、限られた収入の中
で「身の丈に合った消費」を行っている。
C投資は、更新投資や省力化投資だけでは
規模が小さく、企業がリスクをとって新商
品の開発等を行わない限り盛り上がらない。
自己資金を豊富に保有し、有利子負債の拡
大にも慎重な企業は、金利が低下しても、
積極的に借入れを行おうとはしない。投資
が少なく、現金や預金の保有が多いのは、
こうしたリスク回避的な企業行動の結果で
あり、デフレが原因ではない。
D商品の価格や賃金が上がらず(価格の積上
げ要因)、消費や投資が盛り上がりを欠くた
め(需給要因)、結果としてデフレが生じる。
E我が国の国内市場は、人口減少により長
期的に縮小が続くと予想されている。また、
異次元金融緩和によってデフレでなくなる
とともに、企業は史上最高益を実現したが、
高収益は、円安、低金利、株高、原油安等
を経済環境の変化によるもので、自ら売上
高を増加させた結果ではない。こうした状
況の下では、企業マインドはなかなか転換
せず、トリクル・ダウンは不十分となる。
Fしかし、企業の実力は、社会の動向に目
を凝らし、時代の先を行く新たな価値の創
造にチャレンジすることによって養われる。
リスクをとらず、既存商品の価格競争やコ
スト削減、リストラばかりに注力する企業
は、安全経営のようにみえて、やがて競争
力を失い、必敗の途を歩まざるを得ないの
ではないかと思われる。
バブル崩壊後、既に 30 年近くが経過した。
この間、米国では世界をリードする企業が
次々に誕生し、中国でもハイテク分野で米
国とわたり合える企業が数多く誕生してい
る。我が国は、グローバルな競争社会の中
で地位を低下させており、早急な方向転換
98
が必要と考える。
(4)国民の将来不安
日本経済が低迷を脱しないもう一つ大き
な原因が、国民の将来不安と考えられる。
少子高齢化・人口減少と巨額な財政赤字の
問題である。後者は特に社会保障制度の持
続可能性に関わる部分が大きいから、広く
人口問題と捉えることもできる。
家計は、限られた収入の中で「身の丈に
合った消費」を行っており、企業における
ようなリスク回避マインドを持っているわ
けではない。しかし、将来の所得増加が見
込まれない中で、増税や社会保険料の増額、
社会保障給付の減額が懸念される状況下で
は、積極的な消費に乗り出すことはできな
い。また、企業は、人口減少によって、需
要が先細り売上が減少するとともに、労働
力不足から人件費が上昇すると予想し、企
業防衛マインドを一層強くしている可能性
がある。
我が国の人口は、2008 年の約 1 億 2 千 8
百万人をピークに、今後長期にわたり人口
減少と高齢化が進むと見込まれている。(図
表 113)のとおり、国立社会保障・人口問
題研究所の将来推計人口(平成 29 年推計)
の中位推計及び長期参考推計によると、総
人口は、2050 年に約 1 億 2 百万人(2015 年
の 8 割水準)、2100 年には約 6 千万人(同 5
割水準)まで減少する。また、年齢3区分
別人口は、年少人口(0〜14 歳)と生産年齢人
口(15〜64 歳)が減少する一方、老年人口
(65 歳以上)はなお 2042 年まで増加し、そ
の後減少に転ずる。その結果、年齢別の人
口構成は、2050 年頃(2053 年)に、年少人
口が 10%台、生産年齢人口が 51%台、老年
人口が 38%台に達し、以後は、概ねこの構
成割合で推移すると見込まれている。
(図表 113) 将来推計人口
出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口
(平成 29 年推計)」中位推計。2066 年以降は長期参考推計
少子化は、人口減少と高齢化を同時にも
たらす。このうち人口減少については、1
人当たりGDPが減少しない限り、経済的
には特段問題を生じない。人々の経済的豊
かさは、一国全体のGDPでなく、1 人当
たりのGDP、即ち 1 人当たりの所得の大
きさによって決まると考えられるためであ
る。逆に人口減少は、1 人当たりの国土資
源を増加し、環境負荷を低減するなど、ゆ
とりある豊かな国土を実現するための貴重
な機会を提供するものとも捉えることがで
きる(2100 年の我が国の人口と人口密度は、国
土面積が比較的近いフランス・ドイツ・イタリア・
イギリスの現在の数値とほぼ同等である)。
一方、高齢化は、従属人口指数((年少人
口+老年人口)÷生産年齢人口)の上昇、貯蓄
率の低下と投資余力の低下、年金・医療・
介護の社会保障給付の増加等のいわゆる
「人口オーナス」をもたらす。「人口問題の
本質は、人口減少でなく、人口構成(=高
齢化の進展)にある」と言われる所以である。
こうした観点から、我が国の人口問題を
概括的に捉えるならば、3区分別の人口構
成が大きく変化する 2050 年までは、人口減
99
少と人口オーナスが併進する期間、人口構
成がほぼ安定する 2050 年以降は、専ら人口
減少が進行する期間であり、2050 年までの
ここ 30 年をいかに乗り切るかが我が国が
直面する最大の課題と捉えることができる。
既に記したように少子高齢化による人口
オーナスに対応するためには、経済成長を
促進し、GDPを拡大する以外に方法はな
い。昨今、外国人労働者の受入拡大に期待
する議論もあるが、これらの者もやがて高
齢化することを考えれば、女性や高齢者中
心に労働参加率を高め、就業者一人当たり
のGDP、即ち労働生産性を向上すること
が何よりも必要と考えられる。
(図表 114)は、2016 年の OECD 加盟諸国の
労働生産性を比較したものである。こうし
た国際比較には国により種々の統計データ
上の制約があることも指摘されているが、
我が国は 35 カ国中 21 位であり、世界第 3
位の経済大国と言われる割には極めて残念
な状態にあることが分かる。また、(図表
115)は、1970 年以来の労働生産性の順位の
変遷を示したものである。我が国は、バブ
ル期に 15 位まで順位を上げたが、1998 年
以降 20〜22 位で推移している。これまで我
が国は人口=就業者の多さでGDPの大き
さを誇ってきたが、1 人当たりでみれば決
して豊かな国ではなく、今後少子高齢化が
進む中で、いよいよ真剣に労働生産性の向
上に取り組むべき時期を迎えていると考え
るべきであろう。
※20 労働生産性:「生産諸要素の有効利用の度合
い」を生産性といい、「生産性=産出/生産要素の
投入」で表わされる。生産性はそれぞれの生産要
素の視点から捉えることができ、労働生産性は労
働の視点からみた生産性である。他に資本生産性
や全要素生産性がある。労働生産性は、「労働投入
量 1 単位当たりの産出量又は産出額」であり、労
働者 1 人当たり又は労働 1 時間当たりでどれだけ
の成果を生み出したかを示す。物的生産性として
「生産量/労働者数」と「生産量/(労働者数×労
働時間)」、付加価値生産性として「付加価値額/
労働者数」と「付加価値額/(労働者数×労働時間)」
が用いられている。GDPは一国の付加価値額の
合計であり、本文の「労働生産性」は、「GDP/
就業者数」を指している。
(図表 114) OECD 加盟諸国の労働生産性
(2016 年・就業者 1 人当たり)
出典:日本生産性本部・「労働生産性の国際比較 2017 年版」
(図表 115)主要先進 7 カ国の就業者 1 人当たり
労働生産性の順位の変遷
出典:日本生産性本部・「労働生産性の国際比較 2017 年版」
100
(図表 116)OECD 加盟諸国の実質労働生産性上昇率
(2010〜2016 年平均・就業者 1 人当たり)
出典:日本生産性本部・「労働生産性の国際比較 2017 年版」
ここで、労働生産性をどの程度引き上げ
る必要があるか目の子で試算する。必要と
なる労働生産性の向上は、@我が国固有の
人口オーナス対応分とA世界主要国並みの
経済成長分である。
@人口オーナス対応分
(図表 113)によれば、2015 年の従属人口
指数は約 0.64、2050 年以降は概ね 0.94 で
ある。生産年齢人口と就業者数が比例する
とすれば、2015 年と同程度の経済的豊かさ
(国民 1 人当たりGDP)を維持するために
は、労働生産性を(1+0.94)/(1+0.64)=
1.18 倍にする必要があり、これは、(図表
114)から、81777 US ドル×1.18=96497 US
ドル、13〜15 位のオーストラリア・ドイ
ツ・フィンランド並みに引き上げることを
意味する。また、GDPの規模でみれば、
2015 年のGDPを名目 532→628 兆円、実
質 518 兆円→611 兆円に引き上げることに
相当する。毎年 1%ずつ上昇させるとすれ
ば、16〜17 年で達成可能である。また、30
年で達成するとすれば、年 0.56%の上昇率
である。
A経済成長分
(図表 116)は、OECD 加盟諸国の 2010〜
2016 年平均の実質労働生産性上昇率であ
る。世界金融危機の影響により低めの数値
になっている可能性はあるが、1%程度が目
安と考えられる。
@・Aを合わせれば、実質 2%程度の労
働生産性上昇率の実現が目標となる。順位
としては 13〜15 位を可能な限り早期に実
現してキープすることであり、過去の実績
からみれば容易ではないが、実現不可能な
ものではないであろう。これはあくまでも
目の子計算であり精査の必要があるが、こ
れまで我が国の労働生産性が低かったこと
が逆にハードルを低くし、幸いしているの
ではないかと思われる。
(5)求められる政策
以上の議論を前提にすれば、日本経済を
低迷から脱却させるために特に重要と考え
られる政策として、T企業防衛マインドの
転換とU国民の将来不安の解消を挙げるこ
とができる。Tにより労働生産性(就業者 1
人当たりのGDP)を向上させ、これによっ
て国民 1 人当たりのGDPを増加させると
ともに、その成果を活用してUの少子高齢
化・人口減少や財政赤字の問題を解決しよ
うとするものである。
T企業防衛マインドの転換
企業防衛マインドの転換の具体的イメー
ジは、次のとおりである。
@企業が産み出す価値=付加価値の最大化
を企業経営の目標とする。その上で、その
成果をすべてのステークホルダーに適切に
分配する。⇔企業の存続可能性の最大化、次い
101
で利潤や株主利益の最大化。
A(@の目標を達成するため)時代の先を行く
新たな価値の創造に積極的に取り組む。世
界や医療・介護など国内の成長分野の動向
に目を向け、新たなビジネスモデルの創造
や社会が求める新たな商品の開発により売
上高の増加を図る。⇔リスクをとらず、既存商
品の価格競争や改良により売上高の確保を図る。
B(Aを実現するため)専門知識や起業家精
神にあふれた若者、生き甲斐を求める高齢
者、女性、外国人など多様な人材が自由闊
達に能力を発揮できる環境を整備する。ま
た、世界をリードする研究開発投資やこれ
に関連する設備投資、需要の拡大に合わせ
た能力増強投資を推進する。⇔前例踏襲・上
命下達の事なかれ主義、出る杭は打たれる企業文
化。更新投資・省力化投資中心の投資。
C(Bの結果)企業のISバランスを赤字化
し、健全なマクロ経済バランスを回復する。
⇔非金融法人企業のISバランスは 1998 年以降
プラスとなり、最近は最大の黒字部門。これが我
が国経済の長期低迷の直接的原因。
D(以上の結果)企業は、社会の公器として
の役割を果たし、自らの努力によって売上
高を伸ばし利益を獲得するという企業本来
の姿を取り戻す。これにより過剰な企業防
衛マインドの払拭を図る。⇔売上高は伸びず、
人件費、原材料費等のコスト削減やリストラによ
って利益を獲得。企業業績は、基本的に海外経済
や原油価格、為替等の経済環境次第。
E(以上の結果)需給ギャップを改善すると
ともに、GDPの成長とベアの拡大によっ
て望ましい物価のアンカーを形成する。
⇔需給ギャップが改善し、デフレではなくなった
が、ベアの上昇が不十分で、2%の物価安定目標に
は程遠い状況。
現状とかけ離れた企業像のようにも思わ
れるが、バブル崩壊以前の日本企業は、世
界各国の企業と同様、多かれ少なかれこう
したアニマルスピリットを持っていたので
はないかと思われる。
しかし、黒田総裁がデフレの原因として
挙げられる「バブル崩壊による過剰設備や
雇用の調整、不良債権問題と金融システム
不安、アジア通貨危機・ITバブルの崩壊・
リーマンショック・東日本大震災等のネガ
ティブショック、新興国の台頭、企業の低
価格戦略、労働市場の構造変化、過度な円
高の進行など(上記2.(1)A)」が、企業防
衛に向け日本企業のマインドを転換させる
ことになった。具体的には、特に次のよう
な状況が労使共々に大きく作用したと考え
られる。
@バブル崩壊後の資産価格の暴落とバラン
スシート調整の必要、これによるバランス
シート不況の発生
(図表 117〜119)・(図表 50)、三大都市圏の地価
は1991年をピークに2004〜2006年に商業地16%、
住宅地 36%まで低下(地方圏の地価は 2013〜2014
年まで低下し、商業地 14%、住宅地 45%まで低下)、
日経平均株価は 1989 年をピークに 2003 年に 19%
まで低下。これらにより失われた国富は 1500 兆円
と言われる。資産価格に比べれば、物価は僅か△
0.3%/年であり、極めて安定している。
A1997 年の急激な緊縮財政とアジア通貨
危機の発生
B1997〜1998 年の金融システム危機の発

1997 年、三洋証券・北海道拓殖銀行・山一證券
破綻、1998 円、日本長期信用銀行・日本債券信用
銀行破綻。著しい貸し渋り・貸し剥しが発生した
が、1998・1999 年の公的資金投入により鎮静化。
102
C不良債権問題の拡大
(図表 120)、バランスシート調整と不況の深刻
化により不良債権が急増、1995〜2001 年度中心に
1992 年度以降 2001 年度までに 82 兆円、2007 年度
までに 112 兆円不良債権処理。
D相次ぐ企業倒産
(図表 121)、1997〜2001 年度中心に 181 行の金
融機関が破綻。(図表 122)、バブル崩壊後、企業
倒産が再び増加し、特に負債総額が急増。1997〜
2003 年は各年 10 兆円を超え、ピーク時の 2000 年
は 24 兆円に上る。
(図表 117) 資産価格と消費者物価(1989〜)
出典:日本銀行・講演資料
(図表 118) 公示地価(1985〜) 万円/u
出展:国土交通省・地価公示
(図表 119) 公示地価(1985〜)1991=100 の指数
出展:国土交通省・地価公示
(図表 120) 不良債権処分損等(全国銀行)兆円
出展:金融庁
(図表 121) 金融機関の破綻件数(1990〜) 件
出展:金融庁
(図表 122)全国企業倒産状況(1985〜)件・億円
出展:東京商工リサーチ・全国企業倒産状況
しかし、企業防衛マインドを生み出した
と考えられる資産価格の下落や不良債権問
題、金融機関を含む多数の企業の倒産等は、
(図表 117〜122)にみるように、既に 2003
〜2006 年頃終息している。2008 年の世界金
融危機によって再び強化された可能性はあ
るが、その深刻さは 2000 年前後の状況とは
比ぶべくもないであろう。こう考えると、
企業防衛マインドは、今や実体的根拠があ
るものではなく、企業に伝承され、染み付
いた企業行動に関する組織文化であり、企
業の人々、特に経営者が信じて疑わない企
103
業の行動様式そのものと考えられる。それ
は合成の誤謬の一種であるが、短期的景気
変動による誤解でなく、長期的・構造的な
確信に基づくものであり、これが世界も警
戒する「日本病」の核心ではないかと思わ
れる。
では、どうしたら企業防衛マインドを転
換できるか。
異次元金融緩和によって 2%の物価上昇
を実現したとしても、デフレは企業防衛マ
インドの結果に過ぎないから、これを転換
することは難しい。また、短期的な経済対
策を講じても、企業防衛マインドは長期
的・構造的なものであるから、その時だけ
景気が上向いても、マインドを転換するま
でには至らないであろう。さらに、成長戦
略によって潜在成長力の上昇を図る場合に
も、労働力の増加が期待できない以上、イ
ノベーションによって労働生産性を上げる
しかないが、これを実際に行うのは企業で
あり、企業防衛マインドの転換に焦点を当
てない限り、なかなか成果が上がらず、空
回りするおそれがある。
有効なアイデアがあるわけではないが、
以下、思いつくまま何点か記してみたい。
@企業防衛マインドが組織文化や人々の意
識の問題とすれば、「人が変わる・人を変え
る」が重要なポイントと考えられる。
若者や女性、外国人など多様な人材の積
極的登用と活躍がその原動力になる。ベン
チャー企業や研究機関、異業種との交流・
連携も有効である。また、日本国内への外
資の積極的導入や外国企業のM&Aの成果
を自らの組織文化の改編に生かしていくこ
とも重要と考えられる。今般、働き方改革
関連法案が成立したが、社員でなく経営者
の働き方改革こそ最大の課題と考えること
が必要と思われる。
A企業行動を積極化させ、イノベーション
を促進する最大のモチベーションは需要の
存在である。特に縮小ばかりが懸念される
国内需要の発見と創出が必要である。
世界に目を向ければ需要はいくらでもあ
る。米国では新たな発想とチャレンジ精神
によってユニコーン企業が次々に誕生して
いる。日本人にも不可能なことではないで
あろう。また、情報化の進展は、これまで
国内に埋もれていた優れた技術や商品の世
界デビューを可能にする。こうした価値の
発見とコーディネート機能の充実が重要で
ある。
一方、国内に目を転じると、人口減少は
需要の減少と就業者数の減少を招き、国内
産業の縮小要因になる。しかし、2050 年頃
までは生産年齢人口が総人口を上回るペー
スで減少することから(生産年齢人口比率:
2015 年 61%→2050 年 52%)、縮小する供給能
力に比べ需要が相対的に増大する。厳しい
と同時にビジネスチャンスの多い事業環境
となり、国内産業は活性化すると期待され
る。こうした競争を通じて労働生産性を着
実に向上させていくことが必要である(人
手不足だからといって、安価な外国人労働者の受
入拡大を行うことは、せっかくの賃金上昇や労働
生産性向上の機会を阻害する面があり、慎重な検
討が必要である)。
また、分野的には、少子高齢化により医
療・介護や農林水産業が成長産業になる。
また、都市や建物、自動車、公共交通等社
会インフラを根本的に改編する必要があり、
大きな需要要因になる。高齢者の生きがい
や健康の実現、子供を産み・育てやすい環
104
境の整備も同様である。少子高齢化につい
てはマイナス面ばかりが強調されがちであ
るが、これをどう克服し、どう生かすか前
向きに検討し、需要を掘り起こしていくこ
とが必要である。また、混合診療・混合介
護の拡大や各種規制緩和により、民間のイ
ノベーションを促進する事業環境を整備す
ることが重要である。
B諸外国と比較して我が国の労働生産性が
低い理由を特定し、改善の方向を明らかに
すること必要がある。
(図表 123・124)は、我が国の労働生産性
を産業別に米国及びドイツと比較したもの
である(2015 年 1 時間当たり付加価値:米国 6
位、ドイツ 8 位、日本 20 位)。図から明らかな
とおり、我が国の労働生産性は、特に卸売・
小売をはじめとするサービス業において低
い。これはイギリスやフランスと比較して
も同様である(対米国:製造業 67.4・サービス
業 50.7、対ドイツ:製造業 88.7・サービス業 65.2、
同様に対イギリス:製造業 99.4・サービス業 69.6、
対フランス:製造業 82.2・サービス業 71.7)。
サービス業は、産業の大宗を占め、国内
産業の中心を成すものであり、我が国の労
働生産性を向上させるためには、この低調
なサービス業の生産性を上昇させることが
必須と考えられる。購買力平価の影響も考
えられるが、付加価値の生み出し方につい
て、産業構造や商慣習まで立ち入って国際
比較し、労働生産性が低い理由を特定して、
企業が取り組むべき改善の方向を明らかに
することが必要である。
(図表 123) 日米の産業別生産性(1 時間当たり
付加価値)と付加価値シェア
出典:日本生産性本部・産業別労働生産性水準の国際比較
(図表 124) 日独の産業別生産性(1 時間当たり
付加価値)と付加価値シェア
出典:日本生産性本部・産業別労働生産性水準の国際比較
C今後人口が減少する我が国においては、
労働生産性、即ち就業者 1 人当たりのGD
Pや付加価値の大きさに注目し、イノベー
ションを促進することが必要である。
我が国の潜在成長率は、世界金融危機か
ら回復したといっても未だ 1%程度にとど
まる。このため、成長戦略や構造改革を強
力に推進し、これを引き上げることが必要
である。ただし、今後の人口減少を踏まえ
れば、潜在成長率以上に労働生産性に注目
し、その向上を図ること重要である。潜在
成長率が上昇してもそれが就業者数の増加
による場合は人々が豊かになるとは限らな
い。潜在成長率が上昇しなくても労働生産
性が上昇すれば豊かになることができる。
これを実現するのがイノベーションであり、
上記Aを踏まえれば、特に需要創出型のイ
105
ノベーションが求められる。新たな価値を
生み出すことによって、世界の需要を取り
込むとともに、世界有数の長寿国日本の潜
在需要を顕在化させることが重要である
(かつて構造改革の必要が盛んに叫ばれた頃の議
論は、専ら供給サイドに焦点を当て、効率性を追
求するものであった。これが需要不足の中でコス
ト削減やリストラを促進した面があるが、こうし
た方向は、今後求められる構造改革の方向とは異
なる)。
D企業経営の目標を、企業の存続可能性の
最大化、あるいは利潤の極大化から付加価
値の最大化に転換すべく、企業の経営環境
を改善する必要がある。
リスクをとらない安全経営は、やがて競
争力を失い、必敗の途を歩まざるを得ない
と考えられる。これを脱するためには、す
べてのステークホルダーがこうした認識か
ら企業をチェックし、刺激を与え続ける経
営環境とする必要がある。
今後は人口減少に伴い労働需給が更にひ
っ迫すると見込まれる。これを契機に本来
の労使関係を復活させる必要がある。また、
諸外国の株主は、コスト削減により一時的
に利益を増額しても評価せず、持続的な付
加価値の増加によって継続的に利益を増加
させることを強く求めるという。我が国に
おいても、こうした株主と経営者の関係を
構築していく必要がある。海外の公的年金
等は物言う株主として有名であるが、日銀
やGPIFも何らかのチェック機能を発揮
することについて検討する価値はあるので
はないかと思われる(現在日銀は「設備・人材
投資に積極的に取り組んでいる企業」の株式を対
象とするETFを年間 3000 億円買い入れている)。
U国民の将来不安の解消
今後の少子高齢化・人口減少の進展や巨
額な財政赤字に起因する国民の将来不安を
解消するためには、労働生産性を向上させ、
国民 1 人当たりのGDPを増加させるとと
もに、政府の支出と収入のアンバランス(低
支出・最低収入)を是正することが必要であ
る。
このため、企業の企業防衛マインドの転
換を促進し、これを礎として各種成長戦略
や構造改革を強力に推進すること、財政再
建施策を着実に実施することが必要である。
また、国民の将来不安は、人々の気持ちや
認識に関わるものであることから、その解
消を図るに当たっては、特に以下の諸点に
留意することが必要と考えられる。
@我が国の少子高齢化・人口減少は、今後
50 年・100 年単位の長期にわたり進展する
ものであり、人々は捉えどころのない将来
不安を感じているのではないかと思われる。
こうした人口構造の変化に対応するため、
どのような経済構造や社会構造を実現しよ
うとするのか、その長期展望を明らかにす
ること。
A@の経済構造や社会構造を実現するため
推進しようとする骨格的な対策を明らかに
すること(小規模な対策は、施策体系を複雑化
し人々の理解の妨げになることから、盛り込まな
い)。
BAの対策について、定期的にその推進状
況と効果を検証し、必要に応じ見直しや補
完を行うこと。
C@の合理性とAの必要性を国民と共有す
るとともに、着実に歩みを進めている状況
をBにより分かりやすく示すこと(特に財政
再建については、着実に成果を上げ、国民に安心
106
感を与えることが必要である)。
現在、政府の経済政策は、毎年度の骨太
の方針や未来投資戦略等にまとめられてい
るが、内容が広範で詳細にわたること、中
長期的な将来展望が示されていないことな
どから、国民が将来不安を解消するには実
感を持ちにくく、別途長期計画を策定する
など何らかの工夫が必要と思われる。
11.今後の経済政策と日銀への期待
(1)中央銀行の役割と物価の安定
中央銀行は、しばしば物価の番人と呼ば
れる。特に近年では、中央銀行は物価の安
定に専念することがグローバル・スタンダ
ードとなり、これを前提にその独立性が強
化されている(1998 に施行された新日本銀行法
は、この点に関し次のとおり規定している。「第 2
条 日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当
たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経
済の健全な発展に資することをもって、その理念
とする。」、「第 3 条 日本銀行の通貨及び金融の調
節における自主性は、尊重されなければならない。
2 日本銀行は、通貨及び金融の調節に関する意思
決定の内容及び過程を国民に明らかにするよう努
めなければならない。」)。@ブレトンウッズ体
制崩壊による変動相場制の下で、通貨価値
の安定を維持するためには、中央銀行が物
価安定へのコミットを強める以外に方策は
ないこと、A1970 年代のスタグフレーショ
ンの経験によって、物価安定は国民生活上
望ましいだけでなく、経済成長にもプラス
という認識が広まったことが、その大きな
背景と言われている。
また、中央銀行がその権能を行使して行
う金融政策の目標には、物価の安定、雇用
の増大、経済成長など様々なものがあり、
これらは必ずしもすべて両立可能でないこ
とから、かつては激しい意見の対立もみら
れたが、現在は、次のような合意が成立す
るようになっているという。
@経済活動の潜在的実力ともいうべき水準
は、経済の実物的要因(技術条件や資源の賦
存量など)で決まり、それを金融政策で変え
ることはできない。水準の改善・向上は構
造改革等の取組による。
Aしかし、そうした実力は常に実現される
わけではなく、その水準から実際の経済が
離れてしまうことがある。そうした振れを
小さくすることは金融政策により実現可能
であり、金融政策の役割は、振れを小さく
すること、すなわち経済を安定化すること
にある。
Bただし、振れの大小は水準に影響する可
能性がある。その意味で、物価の安定は持
続的な経済成長の基盤になる。
こうした理解から、「短期的に景気変動を
なだらかにすることに配慮しながら、中長
期的に物価の安定を目指す」というのが、
金融政策の目標についての大まかなコンセ
ンサスになっているという。
(2) 異次元金融緩和の評価と今後の方向
こうした現在のコンセンサスをベースに
置きながら、これまで異次元金融緩和につ
いて述べてきた事項をまとめてみたい。
@需給ギャップの解消と経済の安定化
異次元金融緩和は、極めて緩和した金融
環境を実現し、実質金利の引下げと需給ギ
ャップの解消により、戦後 2 番目に長い景
気回復を実現している。コンセンサスAの
経済の安定化の達成は、異次元金融緩和の
大きな成果と考えられる。
107
ただし、金融政策は、需要を前倒しした
り、先送りしたりすることによって、景気
変動の振幅を小さくするものであり、経済
成長が停滞する中で需要を前倒しすると、
将来の需要が減少し、自然利子率は更に低
下する。既に実質金利が自然利子率を大き
く下回り、需給ギャップがここ 1 年ほど連
続してプラスになっていること、その結果、
潜在成長率を上回る成長を続けていること
等を踏まえれば、こうした過度の低金利政
策を長期にわたり継続することには疑問が
ある。
A長期にわたる景気低迷からの脱却
日銀は、デフレが日本経済長期低迷の原
因であり、異次元金融緩和によって物価が
上昇すれば、経済の好循環が生まれ、景気
低迷から脱却することができるとする。
しかし、上記 10.(2)のとおり、デフレ
は景気低迷の結果であって原因ではないと
考えられることから、物価が上昇したから
といって、景気低迷を脱することができる
とは思われない。日本経済低迷の主因はや
はり需要不足であり、経済を活性化するた
めには、企業防衛マインドの転換や国民の
将来不安の解消を図り、消費や投資を促進
することが必要である。需要の前倒しでな
く底上げこそ必要な対策と考えられる。
B潜在成長率の引上げと経済成長の実現
日銀は、デフレから脱却し、経済主体が
2%の物価上昇を前提に行動するような経
済・社会を実現することは、失われたアニ
マルスピリットを復活させ、日本経済の成
長力の強化に資するとする。
これはコンセンサス@とは異なる考え方
である。しかし、バブル崩壊後、我が国の
潜在成長率が大きく低下し、経済成長も低
調に推移してきたのは、上記 10(3)(5)
のとおり、バランスシート不況や企業防衛
マインドによって新たな需要の開発や研究
開発投資・設備投資が積極的に行われてこ
なかったためであり、デフレが原因ではな
い。したがって、異次元金融緩和によって
物価が上昇したからといって、アニマルス
ピリットが復活するわけではなく、企業防
衛マインドの転換を正面に据えて、成長戦
略や構造改革を強力に推進していくことが
必要である。
C2%の物価安定目標の達成
2%の物価安定目標は今もって達成され
ず、いつ達成されるかの目途も立っていな
い。本年 4 月の展望レポート発表時に黒田
総裁は、「2019 年度頃に 2%程度に達する可
能性が高いと思っている」旨説明されてい
たが、7 月の「強力な金融緩和継続のため
の枠組み強化」には、「2%の「物価安定の
目標」の実現には、これまでの想定より時
間がかかることが見込まれる。もっとも、
マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を
続けることにより、消費者物価の前年比は、
2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと
考えられる」と記すに至った。
上記7.(9)のとおり、日銀は、物価上昇
のメカニズムついて、専らフィリップス曲
線に着目し、需給ギャップの解消とフォワ
ードルッキングな予想物価上昇率の引上げ
を強調している。しかし、我が国の潜在成
長率は 1%程度に過ぎず、既に需給ギャッ
プはプラスとなり高圧状態が続いている。
また、マネタリーベースの拡大によって、
フォワードルッキングに人々の予想物価上
昇率を高められるかについては大いに疑問
がある。したがって、需給ギャップのプラ
108
ス状態を続けたとしても、どこまで物価が
上昇するかは不明であり、仮に 2%の物価
上昇率が達成されたとしても、そこにアン
カーすることは困難と思われる。
物価を上昇させ、アンカーするのは、や
はり経済社会に習慣・規範として定着して
いる値上げの仕組みであり、1998 年頃まで
は当然と受け止められていたような毎年の
賃上げと、これを受けて行われるサービス
料金の値上げと考えられる。賃金の上昇は、
労働生産性の向上、労働需給のひっ迫、企
業マインドや労使関係の転換等によって実
現されるものであり、2%の物価安定目標を
実現するためにも、こうした実体経済上の
取組を進めることが必要と考えられる。
D副作用・リスクの蓄積
コンセンサスBは、景気の振れの大小が
経済水準に影響する可能性があり、物価の
安定は持続的な経済成長の基盤になること
を指摘する。
異次元金融緩和は、戦後 2 番目の長さの
景気回復とデフレではない物価安定を実現
することによって、こうした要請に応えて
いる。しかし、問題は、余りに過大な政策
であるため、多くの副作用を伴い、日々リ
スクを蓄積していることである。
上記8.(10)でみたように、2%の物価
安定目標が達成された暁には、日銀の収支
悪化と債務超過、財政運営の困難化と財政
危機、これらによる金融システムの混乱等
の極めて重大な副作用が顕在化するおそれ
がある。また、それ以前にも、金融緩和の
継続によって、金融機関の収益悪化と金融
システムの不安定化、日銀の収支悪化と債
務超過、財政規律の弛緩等の副作用が顕在
化するおそれがある。こうしたリスクの蓄
積を可能な限り早期に停止し、その縮小を
進めることが必要である。
以上を踏まえれば、異次元金融緩和につ
いては、需給ギャップの解消を図るレベル
(プラスでなくゼロ)に規模を縮小すると
ともに、リスクの蓄積を可能な限り早期に
停止して縮小すること、A〜Cについては、
企業防衛マインドの転換や国民の将来不安
の解消を図り、成長戦略や構造改革、財政
再建を強力に推進していくことが必要と考
えられる。
(3)目指すべき物価安定目標
異次元金融緩和が様々なリスクを抱える
こととなった理由は、もとより 2%という
高い物価安定の目標を掲げ、文字通り異次
元の金融緩和を行ってきたことによる。(長
短金利操作付き量的・質的金融緩和は 2%の物価
安定目標が安定的に持続するまで継続され、マネ
タリーベースの拡大方針は消費者物価指数(除く
生鮮食品)上昇率の実績値が安定的に 2%を超え
るまで継続される)。
したがって、異次元金融緩和について、
リスクの蓄積を可能な限り早期に停止し、
縮小を進めるためには、@目指すべき物価
安定目標を 2%から引き下げること、又は、
A2%の物価安定目標を中期的に達成を目
指すべきものとし、政策運営を柔軟化する
ことが必要である。
@に関し、黒田総裁は、「2%の物価安定
目標がグローバル・スタンダードとなって
いるのは、デフレに陥らないためのいわば
経験知であり、1%の低い軌道ではまた引
力に引き戻されるおそれがある」とされる
(2.(6)B)。しかし、デフレは日本経済低
迷の結果であり原因ではないと考えられる
109
ため、仮に「引力に引き戻されるおそれが
ある」としても、今後顕在化が懸念される
リスクに比べれば、はるかに問題は少ない
であろう。
また、そもそも 2%の物価上昇には、@
賃金の上昇がこれに追いつけるか、A現在
の金利水準と整合がとれるか、という重大
な問題がある。
現金給与総額の変動率は、(図表 17)の
とおり、名目は 2014 年以降プラスとなり
2017 年まで 0.1〜0.5%で推移しているが、
実質は物価上昇率が低下した 2016 年以外
すべてマイナスになっている。また、経団
連傘下の大企業のベアは、(図表 23)のと
おり、2014 年から復活したが、未だ 0.3〜
0.4%の上昇にとどまっている(2018 年は、
新聞報道によると 0.6〜0.7%程度)。国民が望
み、また消費の拡大につながるのは実質賃
金の上昇である。日本経済が低迷を脱する
ためには賃金の上昇が必要であり、跛行性
が生じることはやむを得ないが、物価上昇
率は名目賃金上昇率を下回ることが望まし
い。賃金の原資が名目GDPであることを
考慮すれば、物価安定目標は少なくとも消
費税を除いたGDPデフレーターの範囲内
に収めることが必要と考えられる。
また、潜在成長率 1%、長短金利差 1%で
物価上昇率 2%とすれば、政策金利 3%・10
年長期金利 4%となり、短期金利 3%、長期
金利 4%の金利上昇が生ずると見込まれる。
国債をはじめとする債券価格の暴落、日銀
の付利金利の急騰と収支悪化、公債利払費
の大幅増加と財政運営の困難化、財政危機
の高まりなどの問題を考慮すれば、金利の
上昇を抑制する必要が生じるが、これは取
りも直さず見込まれる金利水準が高過ぎる
こと、すなわち 2%の物価上昇が我が国の
経済実態と整合していないことを意味する
ものと考えられる。
また、Aは、異次元金融緩和を、いわゆ
る「インフレ目標政策」(インフレ目標を実現
するため、「できることは何でもやる」といった金
融政策)から世界標準と言われる「柔軟な
インフレーション・ターゲティング」政策
(インフレ目標を経済成長に関わる様々な要素に
配慮しながら中長期的に実現するものとして柔軟
に運営する金融政策)に転換しようとするも
のである。この点に関し黒田総裁は、「日本
の場合は、長年にわたるデフレの下で、中
長期的な予想インフレ率がゼロ%近傍まで
低下しているとみられることから、人々の
「物価は上がらない」という感覚を早期か
つ抜本的に転換し、これを 2%程度まで引
き上げてアンカーし直すことが必要であ
る」、「米国の場合、目標の 2%に達してい
ないが、短期金利の引上げを何度も行い、
バランスシートの縮小も始めたという意味
で正常化のプロセスに入っている。予想物
価上昇率が目標の 2%にしっかりアンカー
されているので、我が国とはやや違った面
がある」として、日本と諸外国との違いを
強調される(2.(6)B、3.G)。しかし、
上記7.(3)でみたように、ゼロ金利下、さ
らにこれに類似した不況期において、オー
バーシュート型コミットメント等のマネタ
リーベースを拡大する政策によって、「中長
期的な予想インフレ率を 2%程度まで引き
上げてアンカーし直すこと」は困難と考え
られる。
物価を上昇させ、アンカーするためには、
やはり毎年の賃上げとこれを受けて行われ
るサービス料金の値上げが必要である。こ
110
れを実現するのは、潜在成長率の引上げに
よる経済成長であり、政府による積極的な
構造改革と企業の努力が必要である。日銀
は、需給ギャップをゼロとすることによっ
て時々の潜在成長率に見合った経済成長と
物価上昇を実現するとともに、各種副作用
をしっかりコントロールすることによって
金融市場の安定を確保することが必要であ
る。こうした柔軟な取組を通じて、実際に
潜在成長率が高まれば、2%の物価上昇率と
整合的な強い経済がいつか得られる。これ
が 2%の物価上昇を実現する現実的な方法
であり、近道ではないかと考えられる。
以上、異次元金融緩和のリスクを低減す
るため、@又はAにより見直しを行うこと
が適切と考えられる。
なお、日銀は、物価安定目標を 2%とし
た理由として、@消費者物価指数の上方バ
イアス、A金利の引下げ余地の確保:金融
政策の「のりしろ」、B物価安定目標のグロ
ーバル・スタンダード:中長期的な為替相
場等の安定の 3 つを挙げる(2.(2))。しか
し、それぞれ以下の理由から、2%は絶対的
なものではないのではないかと考えられる。
@消費者物価指数の上方バイアス
消費者物価指数に上方バイアスがあると
しても、1%を超えるほどではないように見
受けられること(なお、GDPデフレーターと
は対象が異なる)。
A金利の引下げ余地の確保:金融政策の「の
りしろ」
2%の高い物価安定目標を掲げ異次元金
融緩和を継続していることが、逆に将来の
リスクを高めていること。また、将来の金
融政策(特に非伝統的金融政策)の対応余地
(のりしろ)を狭めていること。
B物価安定目標のグローバル・スタンダー
ド:中長期的な為替相場等の安定
ア 円安は、一般に輸出産業やグローバルに
事業展開する産業にプラスに作用するが、
輸入産業や国内産業にはマイナスに作用す
ること。消費者にとっても、賃金が上昇し
ない限りマイナスに作用すること。
イ 輸出と輸入はバランスを保ちながら拡
大する必要があり、円安による貿易不均衡
の拡大は持続可能でないこと。
ウ 実質輸出の為替感応度は、(図表 125)の
とおり、世界金融危機以降大きく低下して
おり、円安は、かつてのような景気浮揚効
果を持つものではなくなっていること。
エ 日本の輸出産業等は既に為替の変動に
対応できる体制を構築するとともに、現地
通貨建て価格を変化させない価格設定行動
に移行しているとみられること。こうした
事情は、輸入産業等と大いに異なること。
オ 円安は、実質輸出が増加しなくても、外
貨建ての売上高や海外からの配当金の円換
算額を上昇し、輸出産業等の収益を増加す
る(第一次所得収支は、(図表 126)のとおり、為
替レートとの連動性が高い)。これは、円の世
界で外貨を持たない者から持つ者への大規
模な所得移転が生じている結果にほかなら
ないと考えられること。
カ 以上を踏まえれば、為替の急速な変動は
避けなければならないが、国際的に一物一
価を成立させる購買力平価の原理に従って、
長期的に緩やかな円高が進むことは、必ず
しも避けなければならないものではないと
考えられること。
111
(図表 125) 実質輸出の為替感応度 %ポイント
出展:日本銀行・展望レポート(2018.4)
(図表 126) 所得収支と為替レート 前年比%
出展:日本銀行・展望レポート(2018.4)
(図表 127)は、1980 年以来の主要国の消
費者物価上昇率の推移である。我が国の物
価上昇率は、1990 年代末のデフレ開始以前
から米国や欧州 4 カ国(ドイツ・イギリス・
フランス・イタリア)より低く、概ね 2%以上
の開差がある。物価上昇率は、潜在成長率
や経済成長率、就業者数や労働市場など
様々な経済実態と密接に関連して形成され
る。特に我が国では今後世界でも例を見な
い少子高齢化と人口減少が進むことを考慮
すれば、たとえ 2%がグローバルスタンダ
ードであるとしても、物価上昇率だけ切り
離して諸外国と合わせようとしても自ずと
無理があり、そのために強力な政策を実施
するとすれば、様々な混乱が生じると考え
られる。物価安定目標については、こうし
た我が国の経済実態に即して柔軟に設定し、
運用することが肝要と思われる。
(図表 127)主要国の消費者物価上昇率(1980〜)%
出展:IMF 注:欧州 4 か国平均は、ドイツ・イギリス・
フランス・イタリアの単純平均
(4)今後の経済政策と日銀への期待
以上縷々述べてきたが、筆者が考える今
後の経済政策の方向をまとめれば、次のと
おりである。
[日本銀行]
@目指すべき物価安定目標を 2%から引き
下げ、又は、2%の物価安定目標を中期的に
達成を目指すべきものとして、政策運営を
柔軟化すること。
A異次元金融緩和によるリスクの蓄積を可
能な限り早期に停止し、その縮小を進める
こと。
B異次元金融緩和とその正常化に伴うリス
クをしっかりコントロールして、金融シス
テムや経済の安定を確保すること。
[政府]
@企業防衛マインドの転換と国民の将来不
安の解消を図ること。
A民間の創意工夫の発揮やイノベーション
を促進する各種成長戦略や構造改革を強力
に推進すること。
B政府の支出と収入のアンバランス(低支
出・最低収入)を是正するため、財政再建施
策を着実に実施すること。
特に日銀が出口に向かう前の低金利が維
持された猶予期間のうちに、財政健全化の
112
実を上げるとともに、財政規律の確保に強
くコミットすることによって、出口におけ
る国債市場の不安定化を抑止すること。
また、こうした政策の展開に当たって留
意が必要と思われる事項を挙げれば、次の
とおりである。
@経済情勢の判断が「物価上昇・円安・株
高」一色で行われている感があるが、これ
らは経済の一面を表すものに過ぎないこと。
また、原因と結果の逆転等の混乱がみられ
ること。
A「需給ギャップの解消と潜在成長力の向
上」、「景気回復と財政再建」の二分法は成
立せず、一体のものとして取組を進める必
要があること。
B構造改革や財政再建を推進するためには
長期的・総合的視点に立つ必要があり、短
期的視点に立ち、目先の経済指標に捕らわ
れる限り成し遂げられるものではないこと。
C経済政策の転換や異次元金融緩和とその
正常化に伴うリスクのコントロールのため
には、政府・日銀の連携が不可欠であり、
新たな共同声明等により経済政策の全体像
を明らかにする必要があること。
D日銀は、金融市場との対話を充実し、正
常化と金融システムの安定維持に向け市場
の理解と協力を得る必要があること。
E政府は、国民の将来不安を解消するため、
少子高齢化・人口減少に対応した経済・社
会の長期展望、講ずる対策とその推進状況
を分かりやすく提示する必要があること。
異次元金融緩和の出発点となり、ベース
になっているのは、言うまでもなく 2013
年 1 月の政府・日銀の政策連携に関する共
同声明である(1.(1))。改めて共同声明を
読み返せば、ポイントは次のとおりである。
@日本銀行は、今後、日本経済の競争力と
成長力の強化に向けた幅広い主体の取組の
進展に伴い持続可能な物価の安定と整合的
な物価上昇率が高まっていくと認識してい
る。この認識に立って、物価安定の目標を
消費者物価の前年比上昇率で2%とする。
A日本銀行は、上記の物価安定の目標の下、
金融緩和を推進し、これをできるだけ早期
に実現することを目指す。
B政府は、我が国経済の再生のため、機動
的なマクロ経済政策運営に努めるとともに、
革新的研究開発への集中投入、イノベーシ
ョン基盤の強化、大胆な規制・制度改革、
税制の活用など思い切った政策を総動員し、
経済構造の変革を図るなど、日本経済の競
争力と成長力の強化に向けた取組を具体化
し、これを強力に推進する。
C政府は、財政運営に対する信認を確保す
る観点から、持続可能な財政構造を確立す
るための取組を着実に推進する。
以上のとおり、2%の物価安定目標は日銀
が金融緩和によって実現するものであるが、
その前提に、「日本経済の競争力と成長力の
強化に向けた幅広い主体の取組の進展に伴
い持続可能な物価の安定と整合的な物価上
昇率が高まっていく」との認識があり、政
府によるそのための取組の強力な推進があ
った。物価の上昇は経済実態を離れてはあ
り得ないことを宣明したものであろう。
しかし、その後に決定された異次元金融
緩和は、こうした政府の取組に期待しつつ
も、異次元の緩和による需給ギャップの改
善と予想インフレ率の上昇を通じ 2%は達
成できるとして強力に進められた(2.(5)
C)。それは壮大な社会実験とも言うべきも
113
のであるが、今日に至るまで 2%は実現せ
ず、達成時期の目途も立っていない。未だ
緩和が不十分と言う向きもあるが、日銀の
資産規模は世界でも異例な 530 兆円・GD
Pの 100%に達し、国債の保有額は 450 兆
円・保有割合 40%で、今もって年間 40 兆
円台のペースで増加している。日銀は十分
過ぎる金融緩和を行ってその責務を果たし
ており、逆にこれが日本経済の大きなリス
ク要因になっている。
ここは原点に立ち返り、何が足りなかっ
たのか、どうすれば日本経済の持続的な成
長を実現できるのか、また、膨れ上がった
リスクにどう対処すればいいのかについて、
英知を集めて検討すべき時期に来ていると
考えられる。
緩和を進めるだけのときは、円安・株高
となり、誰からも歓迎された。しかし、こ
れを正常化するためには、関係者のコンセ
ンサスの形成、リスクの管理、そのための
政府や金融機関を含む態勢の整備、金融市
場との対話と理解の醸成、国民の信頼の確
保など多くの課題があり、長く険しい道の
りとなる。現在の未曽有の状況からの脱却
は人類初の試みとなるが、日銀には、関係
機関と協力しつつ、こうした歩みを着実に
進めることを期待したい。
以 上


 


 
浮上する米銀の資本バッファー引き上げ議論
2018年08月30日
パウエル議長に新たな課題が浮上
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長に、新たな政策課題が浮上してきた。カウンターシクリカル資本バッファー(CCyB)の引き上げ議論だ。クリーブランド連銀のメスター総裁、ボストン連銀のローゼングレン総裁、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は、銀行の財務の健全性確保、金融システムの安定維持の観点から、揃って、CCyBの引き上げを主張し始めている。しかしそうした政策は、金融規制の緩和を進めるトランプ政権、議会共和党との新たな対立の火種ともなる。

カウンターシクリカル資本バッファーとは?
CCyBとは、好況時に銀行が、損失吸収力のある資本を平常時よりも積み上げ、不況時には資本を取り崩すことを可能とする、マクロプルーデンス政策の代表的な手段だ。これは、自己資本比率規制が持つプロシクリカリティ(Procyclicality、景気循環増幅効果)という問題への対応策として作られた経緯がある。
つまり好況時には収益改善から自己資本が増加しやすいため、銀行には、規制で定められた一定の自己資本比率のもとでは貸出を増加させる余地が拡大し、それが景気過熱、信用拡大を一層促してしまう。一方で、不況期には、自己資本が減少しやすいため、貸出を強く抑制することで、規制で定められた自己資本比率の水準の維持を図るインセンティブが銀行に生じ、これが景気悪化、信用縮小を加速させることになってしまう。同資本バッファーは、国際金融規制で求められている自己資本比率を可変的にすることで、こうした問題に対応しようとするものだ。

決定権はFRB理事に
米国では、同資本バッファーは、2013年にFRBと通貨監督庁(OCC)、連邦預金保険公社(FDIC)によって新設されたが、上乗せ率は0%に据え置かれ、マクロプルーデンス政策手段としては活用されたことはない。
同資本バッファーの変更を決める権限を持つのは、FRBの本部理事であり、地区連銀の総裁には決定権はない。理事の中では、ブレイナード理事が同資本バッファー引き上げに前向きである。ブレイナード理事は今年4月の講演で、「循環的な圧力が高まり続け、金融の脆弱性が拡大すれば、最大手の金融機関にカウンターシクリカルな資本バッファーの構築を求め、回復力を強化してストレスから自行を守るようにさせるのが適切となるかもしれない」と語っていた。
他方、パウエル議長は今年6月に、金融機関のリスクは抑制されている一方、資本は十分に確保されているため、同資本バッファー引き上げの必要性はない、と発言している。金融規制緩和を進める銀行監督担当のクオールズ副議長も、引き上げに反対である可能性は高い。
このように、同資本バッファー引き上げがFRB理事会で決定される可能性は現状では低いものの、地区連銀総裁などから強い要求が出されていることから、パウエル議長は今後も内部での議論を続けていくことが求められるだろう。メスター総裁は、景気情勢が良い時に、将来のショックに備える必要があると主張している。またカシュカリ総裁は、同資本バッファー引き上げだけでは、金融システムの安定確保には全く十分ではないとしながらも、やらないよりはまし、としている。

トランプ政権との新たな火種か
先日、トランプ大統領は、パウエル議長の金融引き締め策に不満であることを表明し、両者の関係は悪化している。今後、同資本バッファー引き上げの議論がさらに広がりを見せた場合、トランプ政権、あるいは銀行の規制緩和に積極的な共和党議員などから、FRBを牽制する動きが出てくる可能性も考えられるだろう。その場合、FRBの金融政策決定にも何らかの影響が及ぶかもしれない。
また、FRBの政策姿勢は、物価の安定と雇用の最大化のデュアルマンデート(二重責務)を同時に達成するというバランスの中で決められているが、今後、金融システムの安定というマンデートも金融政策の決定過程でより考慮されるようになっていけば、政策決定のメカニズムはより複雑化し、金融市場による政策の予見性が低下する事態も考えられる。これは金融市場の不安定化に繋がるかもしれない。
Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
専門:内外経済・金融 


 


http://www.jsri.or.jp/publish/research/103/103_01.html
トランプ時代の米国金融規制?マクロプルーデンスを巡る議論?
若園智明(当研究所主任研究員)
〔要 旨〕
 本稿は米国のマクロプルーデンス関連規制を分析対象とし,行政府(大統領府および連邦監督機関)と連邦議会で展開された同規制の修正議論を整理する。DF法には十分な議論を踏まえずに制定された条項も複数含まれている。金融危機から10年を経て,米国内では金融規制を全般的に再評価する活動が見られる。
 第45代合衆国大統領に就任したドナルド・トランプは,行政命令を発令して米国内の金融規制全般の見直しを命じている。また連邦議会では,特に第114回連邦議会以降,連邦議会下院の共和党議員を中心にDF法および同法が導入した金融規制を修正する法案が多く提出されている。中でも2018年5月24日の大統領署名により,システム上重要な金融機関(SIFIs)の指定条件を緩和する法律が成立したことは注目に値する。この連邦法はDF法の中核であるマクロプルーデンス政策を見直しているが,両院の民主党議員からも賛同を得て超党派で成立した点で重要である。
 本稿は第2節で,DF法が導入した主要なマクロプルーデンス関連規制を整理し,再評価の論点提示を行う。第3節では,17年に発令された大統領令等および財務省の報告書を中心にレビューし,行政府の方針を確認する。第4節では,主に第114回連邦議会と第115回連邦議会で提出されたマクロプルーデンス関連規制の改正を意図する主要法案を比較し,連邦議会での議論が変化していることを指摘する。
http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/333.html#c3

[経世済民128] 人生100年時代でシミュレート 賃貸派は1600万円も損をする(日刊ゲンダイ) 赤かぶ
10. 2018年8月30日 23:08:17 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1383]
http://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=59486&pno=2?site=nli 
2018年08月30日
人口動態から考える今後の新規住宅着工について〜都道府県別にみた住宅着工床面積の長期予測
金融研究部 准主任研究員・総合政策研究部兼任 吉田 資
■要旨

• 国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成 30 年推計)」によれば、2030 年以降、全都道府県で総人口の減少が始まり、本格的な人口減少局面を迎える。また、老年人口比率(65歳以上人口の占める割合)は、2015年の 26.6%から、2035年に 32.8%へ上昇し、約3人に1人が高齢者となる。住宅供給やまちづくりを中長期な視点で考えるにあたり、人口減少と高齢化の進展は無視できない問題である。

• そこで、本稿では、人口動態と新設住宅着工床面積に関する計量分析に基づき、人口減少・高齢化が新規の住宅供給量に及ぼす影響を考察した。

• 本稿の分析結果から、2035年の新設住宅着工床面積(全国)は、現在の7割程度の水準まで減少し、一部の都道府県では、半分以下の水準まで落ち込む可能性があることが示された。今後の経済環境等に影響される部分があるものの、人口減少・高齢化に伴い、新築住宅市場が大幅に縮小することは免れないものと考えられる。

• 今後、新築住宅市場の縮小や政策の後押しを受けて、中古住宅流通事業や修繕・リフォーム事業に企業活動の軸をシフトする不動産・建設事業者が増えると思われる。

■目次

1――はじめに
2――住宅着工床面積の長期予測
  1|予測方法
  2|予測結果
3――おわりに
1――はじめに
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成 30 年推計)」によれば、2030 年以降、全都道府県で総人口の減少が始まり、本格的な人口減少局面を迎える。また、老年人口比率(65歳以上人口の占める割合)は、2015年の 26.6%から、2035年に 32.8%へ上昇し、約3人に1人が高齢者となる。住宅供給やまちづくりを中長期な視点で考えるにあたり、人口減少と高齢化の進展は無視できない問題である。

また、住宅供給・まちづくりの担い手である建設業は、地域に根ざした産業であり、地域経済や雇用に及ぼす影響が大きい。地域経済の今後を見通すうえでも、人口動態が住宅供給に及ぼす影響を考えることは意義があると思われる。

そこで、本稿では、人口動態と新設住宅着工床面積に関する計量分析に基づき、人口減少・高齢化が新規の住宅供給量に及ぼす影響を考察したい。

2――住宅着工床面積の長期予測
1|予測方法
本章では、人口動態と新規住宅供給の関係について計量分析を行った上で、国立社会保障・人口問題研究所の人口予測(「日本の地域別将来推計人口(平成 30 年推計)」)に基づき、住宅供給量(都道府県別)を予測する。

具体的には、被説明変数に「新設住宅着工床面積(都道府県別)」、説明変数に人口規模を表す「総人口」と、人口構造を表す「従属人口指数1」を採用し、回帰分析(パネルデータ分析)を行い、人口動態が新規の住宅供給量に及ぶ影響を推定する。その上で、「日本の地域別将来推計人口(平成 30 年推計)」)における人口予測に基づき、2035年までの新設住宅着工床面積を予測する。

説明変数に採用した「総人口」は、総務省「国勢調査」では直近の2015年調査で減少に転じた。今後も減少は継続し、2035年には約1億1500万人(2015年対比▲9%)へ減少する見通しである(図表1)。

また、「従属人口指数」は、生産年齢(15〜64歳)人口100人で、年少者(0〜14歳)と高齢者(65歳以上)を何名支えているのかを示す指数である。一般的に、「従属人口指数」が低下する局面は、全人口に占める生産年齢人口の割合が高まり、人口構造が経済にプラスに作用すると考えられている(「人口ボーナス」と呼ぶ)。反対に、「従属人口指数」が上昇する局面は、生産年齢人口の割合が低下し、人口構造が経済にマイナスに作用する(「人口オーナス」と呼ぶ)。先行研究2では、「従属人口指数」は、住宅供給量と強い負の相関関係があると指摘されている。

図表2は、従属人口指数(全国)の推移を示したものである。1990年の年少人口は約2,300万人、生産年齢人口は約8,600万人、老年人口は約1,500万人であり、「従属人口指数」は43.5であった。1990年以降は、生産年齢人口の減少と老年人口の急激な増加に伴い、「従属人口指数」は上昇し続けている。2015年の「従属人口指数」は64,5となった(年少人口;約1,600万人、生産年齢人口;約7,700万人、老年人口;約3,400万人)。2035年には、年少人口は約1,200万人、生産年齢人口は約6,500万人、老年人口は約3,800万人となり、「従属人口指数」は過去最高水準の77.3に達する。今後も「人口オーナス」の状況が継続すると見込まれている。


________________________________________
1 従属人口指数=(年少人口+老年人口) ÷ 生産年齢人口× 100
2 森祐司『高齢化と不動産市場−高齢化・人口減少による地価への影響』九共大紀要第4巻第2号、2014年3月
2|予測結果
パネルデータ分析による推定結果を図表3に示した。自由度修正済み決定係数は、0.70と一定水準以上を確保しており、人口動態により新規の住宅供給量が概ね説明できることが分かった。

人口規模と人口構造(「総人口」と「従属人口指数」)は、新規の住宅供給量(「新設住宅着工床面積」)に対して統計的に有意な影響を与えている。具体的には、「総人口」が1%上昇すると「新設住宅着工床面積」は約0.3%増加、「従属人口指数」が1増加すると、「新設住宅着工床面積」は約2.8%減少することが示された。

上記の推定結果に基づく新設住宅着工床面積の予測結果を図表4(全国)、図表5(地方別)、図表6(都道府県別)に示した。新設住宅着工床面積(全国)は、「総人口」の減少および「従属人口指数」の上昇に伴い、2017年の約7,800万m2から2035年には約5,500万m2(2017年対比▲29%)まで減少する見通しである。過去最高水準であった1996年の着工床面積(約15,800万m2)に対して約3分の1の水準まで減少する(図表4)。

地方別の予測結果をみると、「東北」と「北海道」では、新設住宅着工床面積が対2017年比で40%以上減少する見通しとなる(図表5)。最も減少率が大きかったのは、「東北」であり、新設住宅着工床面積は、2017年の約550万m2から2035年には約290万m2(2017年対比▲47.9%)まで減少する予測結果となった。最も減少率の小さい「中国」でも2017年対比▲20.1%であり、大きく減少する。

都道府県別の予測結果をみると、青森県・秋田県・福島県・山梨県では、新設住宅着工床面積が対2017年比で50%以上減少する見通しとなった(図表6)。これらの県では、「総人口」は2017年対比で15%以上減少し(図表7)、「従属人口指数」が20以上上昇する(図表8)。上記の都道府県では、人口減少および高齢化が急速に進み、新設住宅着工床面積が大幅に減少する。

また、最も減少率が小さい東京都でも、2017年対比で16%減少するように、新設住宅市場の縮小が全国レベルで進行する可能性が高い。



3――おわりに
新規の住宅供給量は、経済環境や金利動向、税制改正等の様々な要因に左右されるが、本稿の分析から、長期的にみると人口動態に大きな影響を受けていることが分かった。

本稿の予測結果から、2035年の新設住宅着工床面積(全国)は、現在の7割程度の水準まで減少し、一部の都道府県では、半分以下の水準まで落ち込む可能性があることが示された。今後の経済環境等に影響される部分があるものの、人口減少・高齢化に伴い、新築住宅市場が大幅に縮小することは免れないものと考えられる。

このような状況下で、中古住宅市場や修繕・リフォーム市場を整備・活性化させる動きが始まっている。国土交通省「未来投資戦略2017年」では、「既存住宅流通・リフォーム市場を中心とした住宅市場の活性化」を取り上げており、2025 年までに既存住宅流通の市場規模を8兆円、リフォームの市場規模を 12 兆円に倍増することを目指している。今後、新築住宅市場の縮小や政策の後押しを受けて、中古住宅流通事業や修繕・リフォーム事業に企業活動の軸をシフトする不動産・建設事業者が増えると思われる。


________________________________________

(ご注意)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。
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金融研究部   准主任研究員・総合政策研究部兼任
吉田 資 (よしだ たすく)
研究・専門分野
不動産市場、投資分析


http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/330.html#c10

[経世済民128] キャッシュレス社会は日本に根付くか? LINEペイの本気度は銀行ビジネスを崩壊させる(ニューズウィーク) 赤かぶ
2. 2018年8月30日 23:28:30 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1384]

いずれ現金の時代は終わることは間違いないが

アプリ起動してQRを読み込む手間などを考えるとCCardリーダーに暗証番号を入力する手間は小さいし

既存ユーザー側からは、まだCCardの方が、ポイントやセキュリティ的に見てスマホ決済より優位性は高いだろう

ただし企業側も、スマホでQRコードを提示するだけで済むようになり

コストではCCardが負けるから、最終的にはCCardユーザーは一部の階層だけになるか

もしくはQR決済などと組み合わせて信用ビジネスの一部として生き残ることになるか

今後のCashlessのシステムの生存競争の行方は興味深い
 

http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/337.html#c2

[国際23] 日本すら参加しないイラン制裁〜国力を維持したいなら、対米従属をあきらめざるを得ない/田中宇 仁王像
3. 2018年8月31日 08:37:07 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1385]
トルコの二の舞になりたくない
解析ロシア
米制裁に危機感募らすプーチン政権

2018年8月31日(金)
池田 元博

 クリミア半島の併合、米大統領戦への介入、神経剤を使った襲撃事件への関与、対北朝鮮制裁の決議違反……。米国のトランプ政権がロシアに対する制裁措置を次々と発動している。通貨ルーブルが下落するなど経済への打撃も顕在化しており、プーチン政権は危機感を募らせている。

米の制裁で苦況に立つイランも他人事ではない……。写真はロシアのプーチン大統領(左)とイランのロウハニ大統領(右)(写真:ロイター/アフロ)
 「制裁は非生産的で意味がない。とくにロシアのような国に対してはそうだ」――。8月22日、黒海沿岸の保養地ソチで開いたフィンランドのニーニスト大統領との会談後の共同記者会見。プーチン大統領は米トランプ政権が続々と打ち出している対ロ制裁措置を厳しく批判した。

 
 トランプ、プーチン両大統領は7月16日、フィンランドの首都ヘルシンキで実質2回目となる会談を開き、関係改善への意思を首脳間で確認したばかりだ。しかし、その後も米国による対ロ制裁圧力は続き、8月3日には米財務省が北朝鮮の違法な資金取引に関与したとして、ロシアのアグロソユーズ商業銀行などを制裁対象に加えた。

 
 さらに8月8日、こんどは米国務省が米国の安全保障に関わるモノや技術の輸出を禁じることなどを盛り込んだ対ロ制裁を新たに発動すると発表した。こちらは今年3月、英国で起きた神経剤を使ったロシア元情報機関員の暗殺未遂事件を受けたもので、27日に正式に発動された。

 
 米国務省は「ロシア政府が化学兵器を使用した」と断定し、新たな追加制裁を決めた。約3カ月以内にロシアが化学・生物兵器を使用しないと確約して国連などの査察に応じない限り、さらに厳しい措置に踏み切るという。プーチン大統領の発言は、こうした米国の制裁圧力に反発したものだ。

 
 プーチン大統領は、ヘルシンキでのトランプ氏との会談に関しては「有益だったと前向きに評価している」と語る。そのうえで米国の制裁は、米大統領の立場だけでなく「いわゆるエスタブリッシュメント」の意向が反映されていると指摘。ロシア批判の急先鋒(せんぽう)となっている米国の議会勢力や主要メディアなどを暗に非難するとともに、「こうした政策には将来性がない」と彼らがいずれ自覚し、通常の協力を始められるように期待すると述べている。

 ヘルシンキでの首脳会談開催を受けて、米ロ関係に変化がみられるようになるか――。会談直後、ロシアの民間の世論調査会社レバダ・センターと政府系の全ロシア世論調査センターがともに国民の意見を聞いている。いずれも「変化なし」と予測する向きが5割前後を占めたものの、関係が「良くなる」と期待する声も少なからずあった。

ヘルシンキ会談後の米ロ関係

トランプ大統領に裏切られた
 米トランプ政権による会談後の矢継ぎ早の対ロ制裁は、こうしたロシア国民の期待を裏切ったとみることもできる。それだけにプーチン大統領も国内世論に配慮し、「ロシアには無意味だ」などと言い訳することで、さほど深刻な事態ではないと強調せざるを得なかったようだ。

 もちろん、米国による対ロ制裁そのものは決して目新しくはない。「ロシアに冷淡」とされたオバマ前政権も、とくにロシアによるクリミア併合以降、制裁を頻繁に発動していた。米大統領選への介入疑惑をめぐっては、多数のロシア外交官を国外追放したこともあった。

 米国の制裁はロシアにとって半ば慣れっこになっているわけだが、トランプ政権下で発動される制裁は、ロシア国内ではオバマ前政権下よりも相当な危機感をもって受け止められているのが実情だ。なぜか。

 トランプ大統領は平素、ロシアとの「融和と協調」の必要性を唱えているだけに、“裏切り行為”として倍加してとらえられる面もあるが、ロシアが危機感を抱く理由は別にある。制裁措置の内容が徐々に、ロシア経済を根幹から揺るがしかねない厳しいものになりつつあるからだ。

 
 トランプ政権は今年4月には、昨年8月成立のロシア制裁強化法に基づき、米大統領選への介入やシリアへの武器売却などを根拠に対ロ制裁を発動した。ここでは世界有数のアルミニウム会社「ルサール」などを実質支配する大富豪のオレグ・デリパスカ氏を始め、ロシア経済をけん引する大手新興財閥の経営者らを標的にした。

 
 神経剤を使った英国での襲撃事件への関与を理由に、米国務省が先に打ち出した「米安保に関わるモノや技術の禁輸」措置にしても、厳格に適用されればアエロフロート・ロシア航空の米国内での発着禁止といった深刻な事態に陥る懸念があるという。

 
 さらに、米超党派の上院議員らが準備している新たな対ロ制裁法案では、ロシア国営銀行によるドル決済の禁止、米国民によるロシア国債の取引禁止、ロシアのテロ支援国家の指定まで盛り込んでいるとの情報も伝わってきている。

 
 ロシアの金融市場ではここにきて、米国による一連の制裁圧力を嫌気して株式相場が急落。通貨ルーブルも一時1ドル=70ルーブル近辺まで下落する場面があった。国内の経済専門家の間では「米国の対ロ制裁はロシアの経済成長率を0.5〜1.5ポイント押し下げる要因となる」と予測する向きも出ている。

 
 「ロシアにとっては非生産的で意味がない」というプーチン大統領の発言とは裏腹に、ロシア政府も経済・金融界も、米国の制裁がもたらす負の影響を深刻に受け止め始めているのは間違いない。

ロシア、イラン、トルコが「団結」
 米国の制裁との関連で、ロシアの専門家が注視している国々がある。トルコとイランだ。

 米国のトランプ政権は、米国人牧師がトルコで自宅軟禁となっていることに強い懸念を表明。牧師の釈放を求めて経済制裁を発動した。トルコの閣僚を制裁対象とし、トルコから輸入する特定商品の追加関税率の引き上げも決めた。トルコのエルドアン政権も対抗措置をとっているが、この対立を背景にトルコの通貨リラが急落し、経済が大きく混乱する事態に至っている。

 
 一方、イラン情勢で焦点となっているのは、米国が英仏独中ロとともに結んだイラン核合意から離脱したことだ。トランプ大統領は今年5月、「核合意の交渉内容は非常にお粗末」などと表明して一方的な離脱を宣言。8月にはイランへの経済制裁を再開し、各国企業に自動車や貴金属などの取引停止を求めた。

 
 米政府は11月からは、イラン産原油・天然ガスの取引や金融分野を含む本格的な制裁に踏み切る予定だ。イランではすでに米制裁の影響で通貨が下落、物価も高騰しており、国会が経済財政相を弾劾する騒動も起きている。

 
 ロシアはもともとトルコ、イランと関係が深く、シリア問題では内戦の終結に向けた和平協議を共に進めている。もちろん、米国が制裁をかける理由は異なるが、米国の制裁によって経済苦境に立たされているという点では共通する。ロシアにとっても他人事ではない。

 
 実際、プーチン大統領は8月10日、トルコのエルドアン大統領と電話会談してエネルギー協力などの推進を確認した。その2日後の12日には、カザフスタン西部のアクタウで開かれたカスピ海沿岸5カ国首脳会議の場を使って、プーチン大統領とイランのロウハニ大統領が首脳会談を開いている。

 
 米国をけん制するような協力も顕在化している。

 
 ロシア国営の武器輸出企業ロスオボロンエクスポルトは、ロシア製の最新鋭地対空ミサイルシステム「S400」のトルコへの供給時期を、当初の2020年以降から19年に前倒しすると表明した。米国は北大西洋条約機構(NATO)加盟国であるトルコがロシア製のS400を導入することに再三反対してきた。それだけに、米国への対抗意識をより鮮明にしたともいえる。

 
 また、12日のカスピ海沿岸5カ国首脳会議では、カスピ海の領有権などを定めた「法的地位に関する協定」に署名。1991年末のソ連崩壊後、天然資源の活用などをめぐって長年続いてきた沿岸各国の係争に終止符を打った。

 
 5カ国は旧ソ連のロシア、カザフスタン、トルクメニスタン、アゼルバイジャンの4カ国とイランで構成される。ロシアが主導した今回の合意はカスピ海の豊富な地下資源活用などを促すとみられ、沿岸国にとっては朗報だ。米国が対イラン制裁を再発動した直後だけに、イラン支援の思惑もあるとされている。

 
 ロシア、トルコ、イランの3首脳はさらに9月には、シリア情勢を巡る協議を名目にイランで会談するとの情報もある。3カ国の協調を誇示し、米国に対抗する狙いもあるのだろう。

 
 とはいえ、経済規模で大きく見劣りするロシアが米国の制裁に面と向かって対抗するすべはなく、国際社会の影響力も極めて限定的だ。一方で、とくにトルコとは強権的な統治スタイルで似通う面もあるだけに、米国の目の敵になりやすい。米国が次々と繰り出す制裁措置に戦々恐々とし、「トルコの二の舞にはなりたくない」と願っているのがプーチン政権の本音ではないだろうか。


このコラムについて
解析ロシア
世界で今、もっとも影響力のある政治家は誰か。米フォーブス誌の評価もさることながら、真っ先に浮かぶのはやはりプーチン大統領だろう。2000年に大統領に就任して以降、「プーチンのロシア」は大きな存在感を内外に示している。だが、その権威主義的な体制ゆえに、ロシアの実態は逆に見えにくくなったとの指摘もある。日本経済新聞の編集委員がロシアにまつわる様々な出来事を大胆に深読みし、解析していく。


http://www.asyura2.com/18/kokusai23/msg/753.html#c3

[国際23] トランプ大統領 “米韓軍事演習の再開 現時点では必要ない”〜 キム委員長との関係良好を強調 中国に不満/nhk 仁王像
1. 2018年8月31日 08:38:48 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1386]
南北朝鮮に騙されたトランプ、「牙」をむく
アメリカ現代政治研究所
ポンペオ訪朝中止で非核化交渉は暗礁に

2018年8月31日(金)
森 永輔


トランプ大統領(右)とポンペオ国務長官は訪朝の取りやめを決めた(写真:ロイター/アフロ)
今度こそ非核化交渉を軌道に乗せようと張り切っていたマイク・ポンペオ米国務長官の訪朝が急遽中止になってしまいました。原因は何だったのですか。

高濱:米政府高官は米ワシントンポストのジョシュ・ローギン外交安全保障担当コラムニストにこう漏らしています。「ポンペオ国務長官に宛てた金英哲(キム・ヨンチョル)朝鮮労働党副委員長の書簡に、トランプ大統領とポンペオ長官に今回の訪朝取り止めを決断させるに足るだけの好戦的(belligerent)な文言があったからだ」

 この書簡は「秘密チャンネル」とされる北朝鮮国連代表部経由でポンペオ国務長官に届けられたようです。

 CNNはその具体的な内容にいついてこう報じています。「金英哲副委員長はこの書簡の中で『非核化に向けた協議は再び危うくなって(again at stake)きており、瓦解する(may fall apart)かもしれない』と警告してきた」。事情に精通した3人の米政府高官から話を聞き出したということです。

 ポンペオ国務長官はこの書簡をトランプ大統領に見せてどうするかを協議しました。その協議には米中央情報局(CIA)のアンドリュー・キム北朝鮮担当官も同席していました。席上、トランプ大統領は同長官に訪朝を取り止めるよう指示し、そのことをさっそくツイッターで発信しました。「私とポンペオ国務長官は今回の同長官の訪朝を取り止める決定をした。現時点で大きな前進があるとは思えないからだ。中国が以前のように非核化プロセスで助けてくれるとは思わない。(非核化に向けての交渉は)中国との貿易問題が解決した後になる公算が大きい」
("Why Trump cancelled Pompeo's trip to North Korea," Josh Rogin, Washington Post, 8/27/2018)

「朝鮮戦争終結宣言」で米軍事力の排除を図った金正恩
金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の「懐刀」である金英哲副委員長がなぜ、ここにきて、「好戦的なメッセージ」を送り付けたのですか。

高濱:ポンペオ国務長官の訪朝はこれまで3回。米朝首脳会談前の4月1日と5月8日、会談後の7月6、7日にピョンヤンを訪問しています。米朝は首脳会談以降、非核化に向けた実質的な意見交換を水面下で続けてきました。最大の問題は北朝鮮が保持している核兵器をどうやって破棄し、それを検証(verification)するかでした。

 その過程で北朝鮮は、首脳会談でも俎上に載った朝鮮戦争の終結宣言を出すよう改めて提案してきました。非核化協議と並行して協議しようじゃないかと言い出したのです。トランプ大統領による「現体制堅持」の口約束だけではやはり信用できなかったのですね。

 朝鮮戦争の終結宣言を出すことで、「トランプの牙」を抜こうとしたのです。戦争状態でなくなれば、むやみやたらに攻撃を仕掛けることはできないと見たのでしょう。

北朝鮮が保有する核施設の検証問題はこれまでの米朝間の協議でも難題中の難題でしたね。

高濱:その通りです。1994年の「枠組み合意」の時も、2003年の「6カ国協議」の時も、「検証」問題がネックとなり破綻しました。
(参考:『北朝鮮の核問題をめぐる経緯』、国立図書館「調査と情報」、国立国会図書館調査及び立法考査局外交防衛課、久古聡美、内海和美、7/12/2018)

 「検証問題」のポイントは、具体的には、北朝鮮が軍事基地に保有する核兵器を含めた査察ができるかどうかですね。北朝鮮とって軍事基地は、言ってみれば「国家の主権」が及ぶ最たる「聖域」です。すんなり受け入れるわけがありません。

 また一口に「検証」と言っても米国だけではできません。国連や国際原子力機関(IAEA)の関与が不可欠です。1〜2カ月で済むようなものではなく、1〜2年または数年かかる話です。

素人的は、米朝が和解すれば、当然、朝鮮戦争終結を双方が宣言してもおかしくないと思いがちです。

高濱:ところが、すでに指摘したように、北朝鮮の非核化をめぐって米国は苦い経験をしてきました。

 米国は、北朝鮮に「最終的かつ完全に検証された非核化」(FFVD=Final, Fully Verified Denuclearization)*をさせるためにはどうしても手放したくない「切り札」があります。「軍事力行使」という脅しです。それゆえ、朝鮮戦争終結宣言など容易に出すことはできません。

*:トランプ大統領は、米朝首脳会談を受けてポンペオ国務長官が7月上旬に訪朝した際に、それまで使っていた「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化」(CVID=Complete, Verifiable, Irreversible Denuclearization)という表現を取り下げている。外交専門家たちは「核兵器関連施設の完全破棄を「verify」(検証)することを最優先議題にするため米側がトーンダウンした」と見ていた。
 朝鮮戦争終結宣言を拒否することについてトランプ政権は一致団結しています。対北朝鮮強硬派のジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)も穏健派のジェームズ・マティス国防長官も慎重論を唱えています。

米国は「斬首作戦」をひそかに訓練?
話は元に戻りますが、金英哲副委員長はなぜ、ポンペオ国務長官の訪朝前に好戦的なことを言い出したのですか。ポンペオ国務長官はその前日、北朝鮮問題担当特別代表にスティーブン・ビーガン氏*を指名し、訪朝に同行させようとしていました。この時期になぜ出鼻をくじくようなことをしたのでしょう。

 ちなみにこの代表職はそれまで空席でした。ビーガン氏はフォード・モーターの副社長を務める人物です。

*:ビーガン氏はジョージ・W・ブッシュ政権で、コンドリーザ・ライス大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の補佐を経験。トランプ政権でH・R・マクマスター大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が解任されそうになった時には、その後釜に座ると噂されました。もともとロシア問題の専門家。朝鮮問題は門外漢なことから今回の人事は「次のステップ」に向けた腰掛との見方も出ている。
高濱:要は「来るな、来ても何の進展もないぞ」というわけです(笑)。

 金英哲副委員長はなぜ、労働党機関紙などを使わずに「秘密チャンネル」経由で「米朝協議は危うくなっており、瓦解するかもしれない」と警告したのか。

 ヒントは二つあります。北朝鮮の新聞報道です。一つは8月26日付の「労働新聞」。もう一つは同27日付の「統一新報」です。

 労働新聞はこう報じています。「トランプ大統領は裏表のある言動をしている。微笑をうかべながら我々と交渉しつつ、犯罪的策略をめぐらしている。日本駐留米軍の人殺し特殊部隊がピョンヤン侵入を目的とした秘密作戦の訓練に忙しい」
("North Korean newspaper condemns 'double-dealing' US after Pompeo trip called off," Reuters in Seoul, 8/26/2018)

 一方、統一新報はこう報じています。これは外国向けの週刊紙です。「米国は対話を進める裏で刀を研いでいる。米軍の特殊部隊が韓国南部の海軍基地や日本などで対北朝鮮秘密訓練を行っている――と韓国のメディアが報道している。表では笑みを浮かべ対話をしているが、裏では秘密裏に斬首作戦(有事の際に敵の首脳部を排除するもの)の訓練を強行している」
(参考:「北朝鮮メディア『米国は態度に表裏』、ポンペオ氏訪朝中止で非難」、ソウル聯合ニュース、8/28/2018)

米軍はこうした報道について何かコメントしているのですか。

高濱:ソウルの米大使館はロイター通信記者に対して「それに関する情報はない」とコメントしています。在韓米軍司令部もロイター通信記者の問い合わせにコメントしていません。おそらく事実なのでしょう。

 トランプ大統領は米朝首脳会談のあと、マティス国防長官に対し三つの大規模演習を中止するよう指示しました。8月に実施する予定だった米韓合同演習「乙支(ウルチ)フリーダムガーディアン 」*や「韓国海兵隊交換プログラム」(KMEP)などです。ツイッターでは「演習には費用もかかるし、(交渉相手である北朝鮮に対して)挑戦的だ」と発信していました。

*米国防総省によると、同演習には1400万ドル(約6億円)がかかる。国防総省高官は、中止した後でも、国防長官から再開の命令があれば直ちに実施できると発言している。
 韓国との合同演習は一時中止した。が、それ以外の、米軍による通常の軍事演習は続けていたのでしょうね。特に「斬首作戦」、つまり金正恩委員長暗殺作戦と聞けば北朝鮮はドキッとするでしょうね(笑)。

マティス長官は韓国との「野外機動訓練」を示唆
 ポンペオ国務長官が訪朝を中止した後、マティス国防長官は28日、「乙支フリーダムガーディアン以外の他の演習を追加で中止する予定はない」と発言しました。

 北朝鮮の態度次第では、すでに予定されている野外機動訓練「フォール・イーグル」については実施する可能性を示唆しています。
(" Mattis Warns U.S. Drills May Restart Without Progress on North Korea," Daily Beast, 8/28/2018)

何やらきな臭くなってきましたね。トランプ大統領の次の一手は何でしょう。

高濱:国務省の関係者の一人は、筆者に「トランプ大統領その人以外、誰も予測できないね」と言っています。とにかく他人の話には一切耳を貸さない御仁ですから(笑)。

 トランプ大統領は今回、北朝鮮に対する認識を変えました。これまで「米朝首脳会談は成功だった」と自画自賛してきました。主要メディアに「失敗だった」「何も解決していない」と批判されればされるほどむきになって「成功だった」と言ってきました。

 ワシントンでは誰も聞いてくれないので、支持者だけを集めた田舎の集会で豪語していました。しかし、ここまでくると、さすがに現実を認識したのでしょう。

 口には出していませんが、金正恩委員長や韓国の文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領に対して怒り心頭に発する状況でしょう。文大統領は米朝首脳会談のお膳立てをしました。トランプ大統領は文大統領から「歴史的な米朝首脳会談を実現させたのだからノーベル平和賞ものだ」と煽てられて屋根の上に登ったら梯子を外されたわけですから。

 トランプ大統領だけではありません。トランプ政権内部で、文大統領に対する不信感が高まっています。「文政権は米国の同意なしに北朝鮮との和解に向けて独走しようとしているのではないのか」という危惧の念が広がっています。

 米スタンフォード大学アジア太平洋研究所のダニエル・スナイダー教授は米ワシントンポストのローギン記者にこう語りました。「米朝首脳会談に関与した米政府高官(複数)は『文大統領は単独で北朝鮮との和解を進めようと決心している。同大統領はこれ以上米国と足並みをそろえて対応する必要性を感じていないからだ』と分析している。米韓同盟関係が危うくなる恐れが出てきた」。同氏は冷静な分析で右からも左からも高い評価を受けている人物です。
("Why Trump cancelled Pompeo' trip to North Korea," Josh Rogin, Washington Post, 8/27/2018


秋の外交の場でトランプ氏は“蚊帳の外”?
 文大統領と金正恩委員長は、開城に南北連絡事務所を設置するとすでに決めています。南北朝鮮は開城工業団地や金剛山観光事業の再開に動いている。離散家族再会も実現しました。非核化などそっちのけで南北朝鮮関係の強化にハンドルを切った感じすらします。

 今後の動きをみましょう。9月9日は北朝鮮建国記念日。9月12〜13日には文大統領が訪朝して3回目の南北首脳会談を開く予定です。その前日の9月11日からはロシアのウラジオストクで「東方経済フォーラム」が開かれます。金正恩委員長が出席するのではないかとの臆測が流れています。そして9月25日からは国連総会が始まる。

 米主要紙の外交担当記者は、筆者に「一連の動きはトランプ大統領の意向とは無関係に粛々と進められる。トランプ大統領はまさに『蚊帳の外』だよ」と言っていました。

 国務省やCIAで過去20年間、北朝鮮との核交渉に取り組んできたジョエル・ウィット博士(現在ヘンリー・スティムソン研究所上級研究員)はこう予測しています。「トランプ大統領はこれからの数週間、南北朝鮮双方に対し強硬なスタンスを取りかねない*。それによって朝鮮半島の緊張はエスカレートするかもしれない。しかし同大統領はこれから連鎖的に起こる事案ばかりに気を取られて、(せっかく作り上げた)非核化を前進させる可能性を反故にしてはならない。ここはひとつ、ポンペオ長官とボルトン補佐官に具体的な交渉を任せて様子を見るべきだ」
("Why Trump cancelled Pompeo's trip to North Korea," Josh Rogin, Washington Post, 8/27/2018)

*:ウィット博士はその理由に言及していない。だが、トランプ大統領は「米朝首脳会談で非核化に向けた突破口を開いた」と自負したにもかかわらず、実質的協議が進まないことや、非核化よりも南北朝鮮和解路線を突っ走る文大統領への不信感や苛立ちから何をしだすか分からない、といった認識があるのではないか。独断専行で気性の激しいトランプ大統領の行動傾向を考慮しているものと思われる。
 迫りくる「ロシアゲート疑惑」追及に眠れない夜が続く(?)トランプ大統領にとって数少ない外交的成果だったはずの北朝鮮の非核化。それが怪しげになってきました。

 手厳しい論評で知られるジェニファー・ルービン記者はこう書いています。「トランプ大統領は現実がどうなっているかをやっと認識した。ポンペオ国務長官をはじめとする周辺がナルシストで外交に無知なトランプ大統領におべっかをつかった結末こうなったのだ」
("Pompeo hasn't been straight with us on North Korea," Jennifer Rubin, Washington Post, 8/26/2018)

 米主要メディアによるトランプ政権批判のボルテージは上がるばかりです。


このコラムについて
アメリカ現代政治研究所
米国の力が相対的に低下している。
オバマ大統領に代わって政治経験ゼロの不動産王ドナルド・トランプ氏が大統領の座に就いた。
大統領選中に掲げた「米国第一主義」と「偉大な米国」を錦の御旗に、内政外交の舵を大きく切った。
東アジアでは、北朝鮮の挑発行為に対抗して軍事力を誇示。緊張を高める政策を取る。一方、欧州では、防衛費の分担をめぐって、北大西洋条約機構(NATO)加盟国との関係をギクシャクさせている。政権発足早々に中東諸国を歴訪したが、イスラム教過激派組織によるテロの撲滅につながる糸口をまったく掴めていない。
転換期を迎えた米国が今後どう出るかは、日本にも重要な影響を及ぼす。日本にとって米国の後ろ盾は欠かせない。これまでにも増して米国政治の動向を注視する必要がある。
米国に拠点を置いて25年のベテラン・ジャーナリスト、高濱賛氏が米国政治の最新の動きを追う。
http://www.asyura2.com/18/kokusai23/msg/752.html#c1

[政治・選挙・NHK249] 安倍政権はこのままでいいのか! 古賀誠・元自民党幹事長が喝 「総裁選は何が起きるか分からない」=ジャーナリスト・鈴木哲夫 赤かぶ
6. 2018年8月31日 08:50:31 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1387]
総裁選、安倍氏は「党員票6割超え」できるか石破氏の出馬で見えてきたこと
田原総一朗の政財界「ここだけの話」


2018年8月31日(金)
田原 総一朗


自民党総裁選に出馬の石破茂氏(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)
 9月に控える自民党総裁選(9月7日告示、20日投開票)に向けた動きが活発化している。

 今回の総裁選は、結局、安倍晋三首相と石破茂氏との一騎打ちとなった。8月26日、僕が司会を務める「激論! クロスファイア」(BS朝日)で石破氏にインタビューをしたとき、1つ興味深い話があった。

 石破氏は、立候補を表明したときに「正直、公正」というキャッチフレーズを掲げていた。すると、自民党の安倍支持者から「これは個人攻撃である」との反発の声が続出。参院幹事長で竹下派の吉田博美氏も「相手への個人的なことでの攻撃は非常に嫌悪感がある」と痛烈に批判した。これでは石破氏を支持できない、と言い始めたのである。

 強い反発を受けた石破氏は、その後、一時的に「正直、公正を使わない」と封印する意思を示した。しかし、さらにその3日後、石破氏は一転、「正直、公正」を変えないと言い出した。

 僕は、こんなものは個人攻撃でも何でもないと思う。石破氏はキャッチフレーズを変える必要など全くない。

石破氏は3つの問題を指摘
 石破氏が掲げる政策には3つの柱がある。1つは、森友・加計問題で損なわれた国民の信頼を取り戻すための「100日プラン」だ。安倍首相はこれらの問題に対し、「徹底的に調査し、全容を明らかにしてうみを出し切る」と発言していたが、そんなことは全くしていない。

 現に、森友・加計問題について報道各社が世論調査を実施したところ、「安倍首相の説明に納得できない」と回答した割合がいずれも8割近くに上った。このあたりも石破氏は考慮しているのだろう。

 2つ目は、「地方経済に軸足を置いた政策」だ。アベノミクスでは、異次元緩和、機動的な財政出動、成長戦略という3つの柱があるが、結局のところ借金財政に頼っている。人口減少が急速に進むなか、そのダメージを最も受けるのは地方自治体だーー。石破氏はこう主張している。

 地方の経済は急速に落ち込み、若い世代がどんどん都市部に流出している。出生率も落ち込み、過疎化がさらに進むという悪循環に陥っている。

 石破氏が地方創生担当大臣を務めていた当時、僕は彼にインタビューをした。そのとき、石破氏は次のように話した。「各県知事からは、主に2つの要望があった。1つは、国からの助成金が欲しい。もう1つは、大企業の工場が地方に来て欲しい」。しかし、いずれも実現できなかった。

 石破氏は今回の総裁選に向けて、「地方自治体が活性化しなければならない。そのためには、イノベーションが必要である」と述べた。今はインターネットの普及率が高く、都市部に住まなくても仕事ができる。こういった点も利用して、地方にイノベーションを巻き起こし活性化することはできないか、というのである。

 安倍首相は、こういった地方創生の議論を全くしていない。石破氏はそんな背景もふまえ、地方創生に力を入れたいと主張している。

 3つ目は、「慎重な憲法改正議論」だ。安倍首相は、次の国会で憲法改正を進めると言っている。しかし、共同通信が8月25、26日に実施した世論調査によると、安倍首相が秋の臨時国会に自民党改憲案の提出を目指す意向を示したことについて、「賛成」は 36.7%、「反対」は49.0%だった。このように反対の多いなか、石破氏は「憲法改正は急ぐ必要はない」と主張している。

 しかも安倍首相は、憲法改正について、9条の1項と2項は変えないまま自衛隊を明記すると言っている。9条の1項、2項とは、次のようなものだ。

「一項 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」

「二項 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」

 つまり、日本は戦力、交戦権を持たないということだ。しかし、日本の自衛隊は世界の軍事力ランキングで第7位に位置しており、戦力を持っているのである。こうしたなかで憲法を改正するならば、憲法9条の2項をどうするのか、ここを議論しなければならない。

 しかし、安倍首相は「2項は変えない。しかし自衛隊は明記する」と主張している。これは大きな矛盾である。石破氏もこの点を問題視し、指摘している。

 僕が懸念しているのは、自民党の大部分がこの問題に気づいていないことだ。なぜ、自民党内から反論が出ないのか。要するに自民党の議員たちは、ほとんどが安倍首相のイエスマンということである。

安倍首相は党員票を獲得するために地方を回っている
 9月の総裁選は、議員票については安倍首相が圧倒的に優勢だといわれている。安倍首相に反発することによる影響をおそれるためだ。

 ところが、党員票についてはどうなるか分からない。2012年の総裁選では、党員票は石破氏が165、安倍氏は87と、石破氏が圧勝していたのである。その後、議員票で逆転した。

 自民党の幹部たちは、次のように話している。「議員票では安倍首相が有利だが、もし石破氏が党員票で405のうち200に迫ったら、安倍首相が当選してもそれで十分と言えないのではないか。少なくとも、安倍首相は党員票の6割以上を獲得しなければならない」。

 だから今、安倍首相は必死になって地方を回り、党員票を何としてでも獲得しようとしている。ポイントはやはり安倍首相が「党員票6割」のラインを超えられるかどうかだ。

 さらに石破氏は、「総裁選で安倍首相と様々な討論をしたい」と言っている。僕も当然すべきだと思う。しかし、安倍首相は石破氏との議論は避けるだろう。

 なぜか。安倍首相は、石破氏と議論をすれば総裁選に負ける、と考えているからだ。安倍氏はこれまで5年半、首相を務めてきた。政策や問題について、石破氏は批判しやすい立場にある。二人が議論をすれば、石破氏が有利になるのである。そのことは、安倍首相本人も分かっている。

自民党内の問題が明確に
 おそらく、安倍首相は石破氏との議論をせずに逃げ切るだろう。だから彼は総裁選出馬表明もギリギリまで遅らせた。

 総裁選までに、マスメディアはどのような報道をするのか。自民党の内部からも様々な意見が出てくるだろう。

 僕は、石破氏が立候補したことは非常に大きな意味があったと思う。もし、立候補しなければ、自民党の問題点を指摘する者は誰もいなかっただろう。彼が出たことによって自民党の中の問題が明確化されたのである。たとえ石破氏が負けても、出馬したこと自体に大きな意味がある。

 問題は、一体、安倍首相は再選後に何をするのか、という点だ。この国をどうするのか。彼が今主張しているのは、憲法改正だ。しかし、先にも触れたように、憲法改正は反対が強い。国民からは、憲法改正より経済政策の方に注力してほしいという声が多く聞こえてくる。

 安倍首相は、総裁選後に何を打ち出すのか。僕は、ここを見守りたいと思う。


このコラムについて
田原総一朗の政財界「ここだけの話」
ジャーナリストの田原総一朗が、首相、政府高官、官僚、財界トップから取材した政財界の情報、裏話をお届けする。
http://www.asyura2.com/18/senkyo249/msg/874.html#c6

[国際23] 欧米はなぜ『中国製造2025』を恐れるのか(マスコミに載らない海外記事) 赤かぶ
3. 2018年8月31日 08:56:18 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1388]
ついに頓挫か、中国人100万人マレーシア移住計画
一帯一路で天に唾した中国、海外に初の“鬼城”を輸出する羽目に
2018.8.31(金) 末永 恵
マレーシア・イスカンダル計画の最大プロジェクト、中国主導の「フォレスト・シティ(中国名:森林都市)。中国・華人100万人をマレーシアに移民させる一帯一路計画の模範プロジェクトだ。
 日本人の「海外不動産投資ブーム」を牽引したのが東南アジアのマレーシアだ。

 東日本大震災以降、マレーシア政府は早々に、マレーシアでのロングステイ、セカンドホーム「MM2H」やコンドミニアム(マンション)購入投資の多様な商品を並べ、ジャパンマネーの取り込みを行った。

 特に 、マレーシアでは不動産取得において、最低購入価格制限以外に外資規制がほとんどなく、シンガポールなど他の東南アジア諸国と比較し、外国人に開放されていて、その結果、MM2Hのビザで永住する日本人も多い。

 とりわけ人気だったのが、第2の都市、マレー半島最南端のジョホールバル(ジョホール州首都、最大都市)だった。

 温暖な気候に整ったインフラ、英語圏で安価な物価、さらには親日国というのが売りで、投資や資産逃避に加え、子供の留学の教育移住先としても日本人の受け皿になった。

 中でもジョホールバルは、シンガポールに隣接し、香港と隣り合わせの深圳を髣髴させる好立地。

 この地に、マレーシアとシンガポールが共同出資する人口300万人を目指す巨大都市開発構想「イスカンダル経済特区」に伴うコンドミニアムなどの不動産開発ラッシュが起き、日本人の爆買いが注目された。

 マレーシアの場合、「プレビルド」という、数年後に完成予定の物件を更地の状態のときに予約購入する不動産購入方式が主流。

 しかし、供給過剰で大量に建設された結果、完成したものの住むこともままならない状態に陥っている。商業施設も住民が少なく、続々と撤退した。

 「売れない、貸せない」状況が発生し、空き家だらけで、未来開発都市・ジョホールバルは「廃虚化したマンション都市」との汚名が着せられる不測の事態となった。

 そんな辛酸を嘗めた日本人バイヤーが淘汰される一方で、地元不動産を爆買いし始めたのが、急速な経済成長で中間富裕層拡大の中国からの華人だった。

 彼らの不動産購入・投資先は、イスカンダル計画の目玉で70万人の居住区構想である最大プロジェクト「フォレスト・シティ」(中国名:森林都市)。

 しかし、彼らの目的は日本人と違った。

 彼らは、不動産取得を通じ、「マレーシアの長期ビザ、ひいては永住権、市民権を獲得するのが目的だったからだ」(マレーシア政府関係者)。

 中国の不動産が高騰する一方で同物件価格は北京の4分の1ほどの値段だ。さらに子供の英語教育の機会を模索するだけでなく、両親なども呼び寄せて、第三国の永住権を家族全員が取得可能な道しるべを作る狙いがある。

 要するに、不動産購入は中国人にとって「海外逃避のための手段」に過ぎないのである。

 最長10年(更新可能)のビザ取得が可能なマレーシアのセカンドホームプログラム(MM2H)利用でも、2002年の開始後、中国人が最も多くなっている事情がこうした背景にある。

シンガポールに隣接するフォレスト・シティ
 例えば、フォレスト・シティに関しても購買者の8割から9割が中国からの華人だ。

 結果、将来的にはフォレスト・シティは「華人によって文字通り、空室だらけで人が住まない“森林”になるだろう」(シンガポールの不動産関係者)と揶揄され始めていた。

 そんな中、マレーシア国内での“華人共和国”建設の動きに当初から反対を表明したのがマハティール元首相(当時)だった。

 「マレーシアの広大な土地が外国に占拠されてしまう。外国による領土化だ。マレーシアは大国の植民地ではない」

 そう言って、5月の総選挙で野党を率い、選挙公約に「フォレスト・シティなどの中国資本による巨大開発事業の(凍結を含む)見直し」をかかげた。

 中国政府と蜜月だったナジブ前政権の腐敗、癒着の象徴として同事業を挙げ、国民の賛同を得て61年ぶり初の政権交代を果たした。

 6月に首相再登板後、初の外遊先の日本で20年ぶりとなった日本記者クラブでの会見でも、次のようにフォレスト・シティに関する筆者の質問に厳しい姿勢で臨むことを表明していた。

 「米国でもメキシコからの移民を排除しようとしている。外国人居住地を認める国はない。入国を拒否する権利がある。このまま、計画が進めば、政府として対抗策を講じる」

 その選挙公約に沿って今月27日、マハティール首相は「フォレスト・シティの外国人不動産販売を中止し、ビザも市民権も与えない」と都市計画のイベントで発言。

 欧米批判で知られるマハティール首相の”差別的発言”と言葉尻だけをとらえてロイター通信など海外メディアが伝えたが、28日、首相府は我々メディアに声明を送付。

 「外国人の不動産取得はマレーシアの規定や法の下、認められるが、不動産取得は市民権(あるいは永住権)を同時に授与されるものではない」と発表。

 マハティール首相の懸念は、不動産取得そのものではなく、森林都市計画という名の下の中国によるマレーシアの領土化、中国人“大量移民”の居住区設置計画なのだと、マハティール首相の“独特の”レトリックを噛み砕いて補足説明した。

 その上で、ナジブ政権時代、中国側との“密約”で、中国人の不動産売買でビザや市民権が贈与されるといった影の条件を否定した。

 同時に、フォレスト・シティに関しては、特別委員会を設置し、関係省庁や中国などの不動産開発業者などから聴取を行い、不動産の取得条件など合意内容の再審査や見直しを実施することも明らかにした。

 フォレスト・シティ計画は、ジョホール州南部の海域(ジョホールバルとシンガポールを結ぶセカンドリンク付近)を埋め立て、4つの人工島を建設する世界最大級の大規模総合開発だ。

 2016年3月に起工式を行い、完成は2035年を目指す。総事業費約1000億ドル(約11兆1300億円)を投じ、東京ドームが300個入るという、約14平方キロメートルの全敷地に、住宅、別荘、ホテルなどの商業施設、学校、病院などを建設予定だ。

 同プロジェクトは、中国第3位の大手不動産開発会社で香港株式上場企業の「碧桂園」(カントリー・ガーデン・ホールディングス)とジョホール州政府子会社クンプラン・プラサラナ・ラクヤット・ジョホールによる合弁会社が手がける。

 同州企業はジョホール州スルタン(州王)が最大株主で、実質、中国とジョホール州王室とのジョイントベンチャーだ。

 同州は、シンガポールを領土としてかつて保有し、国内の州の中でも莫大な資産、資本を抱え、州政府の中で唯一、州軍も所有する”独立色”の強い州でも知られる。

 さらに、同州の権益はスルタンが所有し、大型投資などの案件許諾も独占して握っている。

 王室の権限を縮小したいマハティール首相と王室統治の「ジョホール州・ファースト」を提唱する同州スルタンとは、長年の因縁の間柄。

 同プロジェクト中止を目指すマハティール首相の狙いは、憲法上、国の統治者となっているこうした王室絶対主義の修正への民主化加速への狙いも影にはある。

 一方、中止した東海岸鉄道プロジェクトとともに、フォレスト・シティ計画は、習近平政権が進める「一帯一路」に関連する中国の大手企業による開発だ。

 2016年3月の同計画起工式後の同年末発行の「瞭望週刊」(新華社発行)では、中国政府の幹部が同計画は一帯一路戦略の「模範的プロジェクト」と絶賛。碧桂園集団の朱剣敏副総裁も「一帯一路戦略上の計画」と公言した。

 碧桂園は、年商1500億元(約2兆5500億円)、社員約10万人の中国を代表する企業で、中国政府のバックアップのもと、森林都市計画が進められており、中国からの大量移民による「植民地100万都市構想」で中国人を100万人、マレーシアに定住させる思惑が根底にあるといわれている。

 しかし、この1000億ドル計画も、中国政府が昨年、不動産投資目的の海外への外貨送金を禁止したため頓挫するのでは、とささやかれ始めている。

 中国人のフォレスト不動産購入者は、手付金は支払ったものの、購入資金の送金がその後できなくなり、しかも、購入を断念するとペナルティーとして、「購入価格の30%」を開発業者の碧桂園に支払うことが義務付けられており、契約解除で支払済みの預託金の返済を求めることすら、困難になっているという。

 そのような状況下で、一部完成しているフォレストの高級マンションは、買い手があっても誰も住まず、よって商業施設もオープンしない悪循環に苛まれているという。

 中国国内には、完成しても人が住めない「鬼城(ゴーストタウン)」が散在して社会問題に発展している。

 このままいけば、森林都市計画は、海外での中国「鬼城」が“輸出”された初のケースになる可能性も出てきている。

 一方、中国の華人にとっては、独裁国家の中国ではあり得ない民主選挙で選ばれた政権交代で、政策が180度転換し、中国による投資がマレーシアでは歓迎されない予想外の結果に戸惑っている。

 皮肉にも、自らの行いが中国への反発を呼び、マレーシアでの政権交代を実現させたと痛感しているだろう。

 シニカルなレトリックを好むマハティール首相は「フォレストシティは、本当の意味で森になるだろう。なぜなら、そこの住民はサルとヒヒ(汚い醜い人)で十分だからだ」と述べた。

 中国の植民地計画は醜い、そう一刀両断する小国の老練宰相が大国を戒めるときが再び、来るだろう。

(取材・文 末永 恵)
http://www.asyura2.com/18/kokusai23/msg/747.html#c3

[国際23] 日本発貨物、ロシア向け輸送スピードを加速へ(Sputnik日本) 無段活用
1. 2018年8月31日 08:57:12 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1389]
米国の覇権に赤信号、ロシア製最新鋭ミサイルの威力
世界中で導入が進み米国離れが加速中、中国、インド、トルコ・・・
2018.8.31(金) 堀田 佳男
ロシア、「海軍の日」記念式典開催 プーチン大統領も視察
ロシア北西部のサンクトペテルブルクで行われた「海軍の日」の記念式典に参加した軍艦(2018年7月29日撮影)。(c)AFP PHOTO / Kirill KUDRYAVTSEV〔AFPBB News〕

 これこそが米国らしさと言うべきなのだろうか。

 ロシアが開発を続けてきた最新鋭ミサイルシステム「S400」が7月末、初めてロシア以外の国に引き渡されて、米政府が過剰とも思える反応をしている。

 同システムを導入した国は、どの国であろうとも制裁を課すと脅したほどである。

パトリオットより性能は格段に上
 ロシア製であるだけに、ドナルド・トランプ政権が過敏に反応するのも分からなくはない。米政府の「許すまじ」という強いトーンの背後からは、単に敵対的な姿勢だけではない複雑な国家関係が浮上してきている。

 背景を説明させていただく。

 S400と呼ばれる最新鋭ミサイルシステムは地対空ミサイルで、ロシアが1990年代後半から開発していたものだ。「S300」の改良型で、2004年に迎撃実験に成功している。

 S400は米国の迎撃ミサイルであるパトリオットのロシア版と捉えられているが、性能はS400の方が格段に上であると評価されている。

 別名「トリウームフ(大勝利)」と呼ばれており、6つの目標に対して同時に対応できる「多目標同時交戦能力」を持つだけでなく、3種類のミサイルを運用できるばかりか、射程距離もパトリオットの2倍以上と言われているからだ。

 ウラジーミル・プーチン大統領にしてみると、世界ナンバーワンを誇れる迎撃ミサイルなのである。

 今年5月にモスクワの赤の広場で行われた軍事パレードでもS400を登場させている。ロシアはすでにS400の改良型である「S500」の開発にも着手していると言われる。

 それだけに米政府としては、S400が世界に数多く売却されることに黙っていられないわけである。

中国に配備され、深まる米国の懸念
 まずS400に最初に触手を伸ばしたのは中国だった。

 ロシアのイタルタス通信は今年7月26日、中国に最初の配備分を供給したと伝えた。実はロシアの国営武器輸出企業が中国にS400を売却する契約を交わしたのは2015年4月のことだった。ロシア側の生産の遅延などで納期が大幅に遅れたのだ。

 米国にしてみると、ついに来るべき日が来たことになり、心中穏やかではない。

 というのも、S400はミサイルだけでなく、高性能レーダーシステムを含む一連の関連装備も中国に渡ったからだ。

 S400の射程圏内には台湾全域が入り、韓国の駐留米軍の動きも監視が可能になる。

 S400の導入に前向きなのは中国だけではない。NATO(北大西洋条約機構)の同盟国であるトルコは7月25日、ロシアとS400の供与で正式に合意したと発表した。

 現在トルコだけでなく、インドやカタールも前向きに導入を検討している。

 こうしたことから、米国務省欧州・ユーラシア担当のウッス・ミッチェル次官補は6月、トルコに対して「S400を購入した場合には『敵対者に対する制裁措置法(CAATSA)』を発動することになるだろう」と警告した。

各国に踏み絵負ますトランプ大統領
 さらに8月23日には国務省のヘザー・ナウアート報道官が述べている。

 「トルコを含めたNATO諸国がS400を導入することは米政策に反するものです。S400はNATO諸国のシステムと相互運用できないため、世界中の同盟国と関係国が導入することに反対します」

 トランプ政権はS400というミサイルシステムを踏み絵にして、他国が米国にどれだけ忠誠を誓えるかを見極めようというわけだ。

 国務省はシステムの互換性がないことを口にするが、米国の同盟国や関係国がロシア側に引き入れられてしまうことの脅威が言葉に表れている。

 それに対し、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は強気の姿勢を崩していない。

 トルコで拘束している米国牧師のアンドリュー・ブランソン氏を解放しないことも含め、トルコショックが発生しても米国になびいてこない。

 「我々は経済制裁には屈しない。牧師に関する問題では譲歩しないし、(S400導入によって)米国はNATOの同盟国を失う可能性があることを忘れるべきではない」

 こうした反米の動きは、トランプ政権に対する政治的な反駁だけでなく、軍事的な意味合いもある。

インドと中国が同じミサイルを撃ち合う?
 インドの軍事関係者は以前、米パトリオットがイエメンから発射されたミサイルを撃ち落せずに地上に落下した動画を観て、ロシアのS400を購入することを決めたとも述べた。

 インタファックス通信は4月、インドがロシアとS400の導入で今年中に契約を交わすと伝えている。

 ドミトリー・シュガエフ連邦軍事技術協力庁長官は「今年末までに契約が交わされれば、2020年までの納入は可能」と述べており、インドもS400に頼ることになりそうだ。

 インドがS400を購入する理由は、中国が中印国境付近で大規模な軍事演習をしており、防空網を強化するためだ。

 S400システムは巡行ミサイルだけでなく、航空機、中距離を含む弾道ミサイルを破壊できるため、インドにとっては大きな魅力だ。

 中国がすでにS400を導入し、インドも同システムを導入すれば、ロシア製の武器で両国が撃ち合うという構図になる。

 さらにカタールやイラクもS400の導入を検討しており、1つのミサイルシステムをめぐって国際関係が複雑化してきている。

 カタールは2017年6月以来、サウジアラビアを含む湾岸4か国と国交断絶をしており、国防強化が課題になっている。そのためロシアと関係強化を図ってS400導入に傾いたのだ。

サウジアラビアよ、お前もか
 つけ加えると、米国の同盟国であるサウジアラビアまでもがS400獲得に興味をもっているというのだ。

 カタールはサウジアラビアなどから経済封鎖されているが、トルコとイランが支援に動いている。

 つまり中東諸国の間で今、S400導入をめぐってロシア対米国という対立軸がはっきりし始めているということだ。

 トランプ大統領は7月にヘルシンキでプーチン大統領と米ロ首脳会談をおこない、米ロ関係の好転を自慢してみせたが、本質的な両国関係は両首脳が笑顔を見せるほど良くはない。

 米国によるイランやロシアへの制裁を含めたトランプ外交により、多くの国で米国離れが起き、米ロが新たに世界を自分たちの色で染め始めたといっては言い過ぎだろうか。
http://www.asyura2.com/18/kokusai23/msg/754.html#c1

[政治・選挙・NHK249] 若者が払う移民問題のツケ/政界地獄耳(日刊スポーツ)  赤かぶ
6. 2018年8月31日 09:00:13 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1390]
「入国在留管理庁」が来年4月発足へ本格的な外国人労働者の受け入れへ体制整備
働き方の未来


2018年8月31日(金)
磯山 友幸


東京入国管理局(東京都港区、写真:PIXTA)
労働分野の開放で、就労目的外国人が増える
 外国人労働者を本格的に受け入れるための体制整備が進む。政府はこのほど、法務省入国管理局を格上げして、「入国在留管理庁」(仮称)を設ける方針を固めた。来年4月に発足させる。従来の入国管理業務に加えて、入国後の外国人労働者の在留管理や生活支援を行う。海外先進国の政府が持つ「外国人庁」「移民庁」と同等の役割を担うことになる。

 安倍晋三首相は「いわゆる移民政策は取らない」という姿勢を崩していないが、その一方で、深刻な労働力不足に対応して、これまで「単純労働」だとしてきた分野にも外国人労働者を受け入れる方針を決めている。来年4月から「建設」「農業」「宿泊」「介護」「造船」などの分野を対象に、「特定技能評価試験」(仮称)に合格すれば就労資格を得られるようにする。

 こうした労働分野の開放によって、就労目的で日本に入国する外国人が一気に増加するとみており、入国管理体制の強化が待ったなしになっていた。報道によると、新設する「入国在留管理庁」は長官をトップに次長と審議官2人を置くほか、「出入国管理部」と「在留管理支援部」を設ける方向で検討している。職員も現在より約320人増員し、5000人を超す組織に衣替えする。秋の臨時国会に関連法案を提出する。

 これまで入国管理業務は在留資格の水際でのチェックなどに重点が置かれ、不法滞在の摘発などは後手に回っていた。また、入国後の生活支援や日本語教育などについては文部科学省などに任せきりだった。格上げしてできる「入国在留管理庁」は、今後、外国人の受け入れ環境の整備について、警察庁や経済産業省、厚生労働省、文部科学省、外務省、内閣府など関係省庁や、自治体との調整機能も担うことになる。

 深刻な労働力不足を背景に、様々な業界や地方自治体から外国人労働者の受け入れ拡大を要望する声が上がっている。安倍内閣はこれに応える格好で、数年前から首相官邸に関係する省庁の連絡会議を置き、外国人の受け入れ方法について検討してきた。

 今年6月に閣議決定した「未来投資戦略2018」では、外国人材の受け入れ拡大について踏み込んだ方針が示された。

留学生の就職支援にも取り組む
 「第4次産業革命技術がもたらす変化」のひとつとして、「『人材』が変わる」と指摘、「女性、高齢者、障害者、外国人材等が活躍できる場を飛躍的に広げ、個々の人材がライフスタイルやライフステージに応じて最も生産性を発揮できる働き方を選択できるようにする」として、外国人材の活躍を長期方針に盛り込んだ。

 その上で、「外国人材の活躍推進」という項を設け、「高度外国人材の受入れ促進」、「新たな外国人材の受入れ」、「外国人受入れ環境の整備」に分けて具体的な施策を列挙している。

 例えば、高度外国人材の受け入れ拡大については、外国人留学生の受け入れ増や、留学生の日本の中堅・中小企業への就職促進などに取り組む方針を強調。「高度外国人材の受入れ拡大に向けた入国・在留管理制度等の改善」も掲げた。

 また、新たな外国人材の受入れとして、「一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人材に関し、就労を目的とした新たな在留資格を創設する」と明記した。受け入れる業種については、具体的な明示を避け、「生産性向上や国内人材の確保のための取組(女性・高齢者の就業促進、人手不足を踏まえた処遇の改善等)を行ってもなお、当該業種の存続・発展のために外国人材の受入れが必要と認められる業種」として幅を持たせた。

 閣議決定前の新聞報道では前述の通り、「建設」「農業」「宿泊」「介護」「造船」の5分野と報じられたが、コンビニエンスストアなど「留学生」を大量採用している「小売り」分野などから、外国人労働者の受け入れ解禁に強い要望があることから、玉虫色の表現となった。
 もっとも受け入れに当たっては、政府が基本方針を示すこととした。

 「受入れに関する業種横断的な方針をあらかじめ政府基本方針として閣議決定するとともに、当該方針を踏まえ、法務省等制度所管省庁と業所管省庁において業種の特性を考慮した業種別の受入れ方針(業種別受入れ方針)を決定し、これに基づき外国人材を受け入れる」

 これまで、経済産業省や内閣府は外国人材受け入れ拡大に積極的な一方、法務省は慎重姿勢をとり続けていると批判されてきた。内閣の方針に従って、法務省と関係省庁が調整することを盛り込んだ。今回、法務省の「権益」とも言える入国管理局を格上げすることとしたのは、法務省のメンツを保つ一方で、姿勢の転換を求めたとも言えそうだ。

 その上で、「未来投資戦略」では、「新たに受け入れる外国人材の保護や円滑な受入れを可能とするため、的確な在留管理・雇用管理を実施する」とし、「きめ細かく、かつ、機能的な在留管理、雇用管理を実施する入国管理局等の体制を充実・強化する」とした。

 これを受けて、安倍首相は7月に入国管理組織の抜本的な見直しを指示。今回、入国管理局の「庁」への格上げが決まった。

 「未来投資戦略」の外国人材活躍促進では、「外国人の受け入れ環境の整備」を打ち出しているのも特徴だ。

2025年までに「50万人」の受け入れを目指す
 まず、日本語教育の強化を指摘している。「外国人児童生徒に対する日本語指導等の充実」を掲げた上で、「日本語教育全体の質の向上」が必要だとしている。また、就労環境の改善なども掲げた。

 その上で、「総合的対応策の抜本的見直し」を行うとして、こう書いている。

 「外国人材の受入れの拡大を含め、今後も我が国に滞在する外国人が一層増加することが見込まれる中で、我が国で働き、生活する外国人について、多言語での生活相談の対応や日本語教育の充実をはじめとする生活環境の整備を行うことが重要である」

 「外国人の受入れ環境の整備は、法務省が総合調整機能を持って司令塔的役割を果たすこととし、関係省庁、地方自治体等との連携を強化する。このような外国人の受入れ環境の整備を通じ、外国人の人権が護られるとともに、外国人が円滑に共生できるような社会の実現に向けて取り組んでいく」

 安倍首相は頑なに「移民政策は取らない」としているものの、この文章を読む限り、実質的な移民政策に踏み込んでいるとみてもいいだろう。今後、日本で働き、生活する外国人が増えていくことを前提に、2006年に政府が作った「『生活者としての外国人』に関する総合的対応策」を抜本的に見直すとしている。

 これまで日本は「高度人材」には門戸を開く一方で、「単純労働」とされてきた分野については受け入れを拒絶してきた。しかし、人手不足が深刻化する中で、留学生や技能実習生などの枠組みを使った事実上の受け入れが現場では進行していた。こうした「なし崩し」の外国人受け入れは、後々、問題を引き起こすことが先進国の過去の例でも示されており、外国人受け入れについて「本音」の対応をすることが求められてきた。

 「いわゆる移民政策ではない」としながらも、外国人の本格的な受け入れ解禁に舵を切ったとみていいだろう。

 法務省がまとめた2017年末の在留外国人数は256万1848人。1年前に比べ7.5%、約18万人も増加した。5年連続で増え続けており、256万人は過去最多だ。厚生労働省に事業所が届け出た外国人労働者は約128万人で、これも過去最多を更新している。

 来年から始まる新たな在留制度によって政府は2025年までに5分野で「50万人超」の受け入れを目指すとしているが、実際にはそれを大きく上回る増加になる可能性もある。

 今後数年のうちに、様々な分野で働く外国人が増え、日本の職場も社会も大きく変わっていくに違いない。


このコラムについて
働き方の未来
人口減少社会の中で、新しい働き方の模索が続いている。政官民の識者やジャーナリストが、2035年を見据えた「働き方改革」を提言する。

http://www.asyura2.com/18/senkyo249/msg/842.html#c6

[原発・フッ素50] たまり続けるトリチウム水 福島第一原発  こちら原発取材班(東京新聞)  赤かぶ
1. 2018年8月31日 19:34:35 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1391]
大前研一ニュースの視点〜
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原子力産業/福島第一原発〜原子力事業は日本全体で1つの事業体で担うべき

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原子力産業 膨らむ費用、再編迫る
福島第一原発 足りない廃炉人材

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▼原子力事業は日本全体で1つの事業体で担うべき
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日経新聞は23日、「原発 膨らむ費用、再編迫る」と
題する記事を掲載しました。
東京電力と中部電力、日立製作所、東芝が
原子力事業で提携協議に入ったと紹介。
原発事業は世界的にコストが膨らむ傾向にあり、
4社とも「1社では事業を担えない」という共通の焦りがあり、
今回の提携をきっかけに国内の原発は
もう一つの連合との2陣営時代を迎える
可能性もあるとしています。

確かに一昔前は、BWR(沸騰水型軽水炉)と
PWR(加圧水型軽水炉)の2つの陣営に
別れていましたが、今ではそれほど明確に
分かれてはいないと私は見ています。

BWR陣営には、日立、東芝、東京電力、
中部電力、東北電力、中国電力、北陸電力。
そしてPWR陣営には、三菱重工、関西電力、
九州電力、四国電力、北海道電力。
これがかつての2陣営の構図でした。

PWRを世界で初めて商用化したのは
ウエスチングハウスで、かつて日本国内では
三菱重工が提携し、PWR陣営の一翼を担っていました。
しかし、東芝がウエスチングハウスを
傘下におさめたことで、東芝はBWRもPWRも
どちらも対応できるようになっています。
一方、三菱重工は仏アレバと提携しました。
現在、全体として見ればBWR陣営、
PWR陣営という区分けに敏感ではなくなっています。

また「1社では無理なので4社で」
原子力事業を担っていこうとのことですが、
4社でも不十分だと思います。

私は東日本大震災が発生した3月11日の直後、
すでに次のように提案していました。
すなわち、9電力会社の原子力部分を全て切り離し、
そこに日立、東芝、三菱重工を加えて、
「日本原子力機構」という組織を作るべきだ、と。
このように提案した理由は明確です。
とても1社だけでは無理ですし、
日本全体で1つにならなければ対応できないからです。

東京電力は相当大きな企業ですが、
それでも福島の原発だけで持て余す状態になっています。
原子力損害賠償・廃炉等支援機構が資金を注入しなければ、
存在できない状況です。中部電力は、浜岡原発を
当時の菅直人首相に閉鎖させられて困り果てています。

フランスでも実質的にアレバ1社に
原子力事業が集約されているように、
日本も「とりあえず4社で」などと言わず、
全体として1つに集約されなければ
原子力の体制を立て直すことは難しいと思います。

福島第一原発事故もあって、日本国内で
新しい原子炉を作るのはほぼ不可能な状況にあります。
これから先は海外に出ていくしかありません。
その意味でも、日本全体でまとまらないと
企業体力の面でも厳しいことは目に見えています。

─────────────────────────
▼廃炉のイメージを払拭し、環境産業として位置づけて人材を確保せよ
─────────────────────────
日刊工業新聞の情報サイトは21日、
「東京電力と大学の思惑一致せず…足りない廃炉人材」と
題する記事を掲載しました。
福島第一原発の廃炉作業を支える人材育成について、
大学が廃炉技術の研究者を育てている一方、
実際に現場で求められるのは
日々発生するトラブルに対応しながら
計画管理ができるプロジェクトマネージャーであると紹介。
こうした人材を育てるには、
自身の専門以外の基礎を働きながら学べる仕組みや
大学と現場をつなぐ場が必要としています。

かつて私がMITで原子力工学を学んだときには、
同級生が130人もいました。
しかしスリーマイル島原発事故が起こって
状況が一変しました。97年頃私がMITに訪れたときには、
原子力工学を学ぶ生徒は1学年で15人くらいに激減していました。
しかも、その15人の中に米国人は一人もいませんでした。
ほとんどは奨学金をもらって
アフリカから来ていた留学生でした。

私が学んでいた時代には、
原子力工学には夢がありました。
マンハッタン計画の後は、
原子力の平和利用だと誰もが思っていましたし、
MITでも非常に有名な先生が教鞭を執っていました。
ところが、スリーマイル島原発事故の後、
米国人の中に原子力を学ぶという発想はなくなりました。

福島第一原発事故で、同じことが日本でも
起こってしまいました。当時の米国でもそうでしたが、
今、日本で原子力を学んでいると言ったら
「将来性がない」と思われるでしょう。
だから誰も学ぶ人がいなくなります。

この問題は廃炉人材がいなくなることになるので、
極めて重要な問題です。
廃炉のために外国人を雇用して
危険な環境の中で仕事をさせるのは、
国際的な批判も受けるでしょうし、難しい点があります。
とは言え、廃炉は絶対にやらなければいけないことです。

私は「廃炉」という言葉も、
その印象が良くないと思います。
グリーン技術の1つとして環境学科の科目にするなど
工夫するのも1つの策でしょう。
「グリーン」「環境」という言葉で表現すれば、
興味関心を持ってくれる生徒も増える可能性があります。
実はMITでもそのようにしています。

また考え方次第では、これは成長産業です。
なぜなら、先程も述べたように廃炉は
「絶対にやらなくてはいけないこと」だからです。
完全なニーズがあります。
「廃炉」という見せ方ではなく、
成長が約束された環境産業として位置づけて
人材を確保して欲しいと思います。

http://www.asyura2.com/18/genpatu50/msg/267.html#c1

[経世済民128] アルゼンチン、ペソ安止まらず 中央銀行が主要政策金利60%に引き上げ(ニューズウィーク) :国際板リンク  赤かぶ
1. 2018年8月31日 19:49:38 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1392]
アルゼンチンペソ下げに拍車、新興国に動揺広がる
イスタンブールの外貨両替所 

By Mike Bird and Saumya Vaishampayan
2018 年 8 月 31 日 07:14 JST

 アルゼンチンペソが過去最安値に沈み、トルコリラが再び下げ足を速めている。ドルの上昇に最も影響を受けやすい新興国市場は、一段と厳しい状況に直面しつつある。

 国内の問題を抱えるアルゼンチンとトルコはとりわけ窮地に陥っているが、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げでドルが押し上げられる中、世界的に新興諸国は圧力にさらされている。一部の新興国では多額のドル建て債務が影響をさらに悪化させ、中銀関係者がFRBの政策方針に懸念を示している。

 アルゼンチンのマウリシオ・マクリ大統領は、国際通貨基金(IMF)による融資枠500億ドル(約5兆5600億円)からの支援前倒しを要請したと言明。これを受け、アルゼンチンペソがドルに対しオーバーナイトで7.5%急落し、新興国市場に動揺が広がった。アルゼンチン中央銀行は30日、通貨下支えのために政策金利を60%へ引き上げたものの、ペソはさらに7.5%下落した。

 一方、トルコリラは同日、対ドルで4.7%下落。今月上旬には金融政策への政治介入の可能性や、ドル建て債務膨張を巡る懸念から過去最安値を更新していたが、新たなリラ売りで再び安値に近づいた。

新興国通貨の対ドル相場
 
アルゼンチンペソxJuly 19, 2018x-32.92%


 南アフリカランドはドルに対して2%超下げ、インドネシアルピアは約3年ぶり安値をつけた。ブラジルレアルも約2年ぶり安値に迫り、インドルピーは過去最安値を記録した。

 市場の混乱は国際的なドル依存の大きさを浮き彫りにしている。世界の国際融資総額30兆ドルのうち、約48%はドル建てで、その割合は10年前の40%から拡大している。為替相場の変動は債務返済の負担を増減させる。しかも米金利は依然として過去平均を下回り、ドルは2016年の高値までまだ回復の途上にある。FRBが金融引き締めを継続するにつれ新興国通貨への圧力が高まる可能性がある。

 フィデリティ・インターナショナルの債券ポートフォリオマネジャー、エリック・ウォン氏は「市場はトルコで起きたことを見た後では、次は南アかブラジルか、あるいはインドネシアか、いったいどの国かと身構えるようになった」と指摘。「市場はいまだに不安にとらわれることがあり、良好な国とそうでない国を差別化しようと試みている」との見方を示した。

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米株と債券が共有する物語:好況に賭けるな

株と債券はなぜこれほど様相が異なるのか PHOTO: DREW ANGERER/GETTY IMAGES
By
James Mackintosh
2018 年 8 月 31 日 12:07 JST
――筆者のジェームズ・マッキントッシュはWSJ市場担当シニアコラムニスト
***
 株と債券は、分断された米国について二つの相反する話を語っているようだ。一方にある米株は、次々に最高値を更新し、新たな好景気という考えを支えている。もう一方にあるのは債券市場という陰気な悲観論だ。10年物米国債の利回りは3%超を維持できず、停滞している。
 だが実際には、同じ投資家が両方の市場で取引し、同じ情報にアクセスしている。では、なぜこれほど様相が異なるのか。
 グラスキン・シェフのチーフエコノミスト、デービッド・ローゼンバーグ氏は、どちらの市場も経済について教えてくれないと考えている。株は「記録的な合併・買収(M&A)と自社株買いで盛り上がっている」が、欧州と日本の国債利回りがゼロに近い一方で米国債利回りが上昇する「チャンスはわずか」だ。ローゼンバーグ氏は今週、「実のところ、債券と株は市場とは関係のない力学を相殺しあっているにすぎない。グリゴーリー・ポチョムキンなら非常に誇らしく感じただろう」と記した。ポチョムキンは訪れる者を感動させるために偽の村々を造ったロシアの軍人だ。
10年物米国債の利回り

Source: Consensus Economics via FactSet

 しかし、私たちは裏に回って現実を検証できる。虚構が取り払われれば、株と債券が語っているのは減速したもののなお成長している経済のストーリーだ。
 まずは株から。1月下旬に急落した後、米経済の急進と減税を受けた増益を背景にあらためて楽観論が浮上した。だが過去3カ月は、ディフェンシブ銘柄が好調な一方、経済の加速時に上昇する傾向のある景気循環株が後れを取っている。
 ディフェンシブ銘柄主導の強気相場は少なくとも上昇し続けているうえ、景気循環セクターでさえみな利益を生んでいる。つまり、成長見通しはさえないものの許容範囲であり、多くの景気循環株が下落している他国の兆候に比べればずっと良い。例えばS&P500種株価指数の資本財セクターは過去3カ月に4.1%上昇している。資本財セクターは新興国市場では12%、ユーロ圏では3%、日本では8%、それぞれ下落している(ドルベース)。
シカゴでのレバレッジドファンドの米国債先物ネットポジション

Source: Thomson Reuters

 米国債も、米国が落ち着いていることを示すメッセージだと解釈できる。米国債利回りは、償還までについて予想される連邦準備制度理事会(FRB)の金利を反映し、リスクを表すタームプレミアムが上乗せされる。タームプレミアムは科学というよりアートだと思うが、広く使われているニューヨーク連銀のモデルは1月以来それが低下していることを示唆している。タームプレミアムを除いた国債の利回りは3カ月ほど前まで上昇が続き、その後はほぼ横ばいだ。
 国債利回りが発するメッセージは弱い経済だが、このモデルは全てがまずまずであることを示唆している。過去3カ月は一層の改善がないだけだ。株と同様、債券投資家は本格的な好況を見込んでいる訳ではないが、景気後退を予想している訳でもない。
 市場が多くの面で間違っているとも考えられるが、投資家の予想は主に三つある。一つは緩やかなインフレ。もう一つはFRBが現在打ち出している方針よりも幾分ハト派に傾くこと。最後はイタリアの問題が続くことだ。このいずれかが変われば債券利回りはついに上昇するかもしれない。大半のエコノミストがそう予想し、多くのヘッジファンドがそれに賭けている。
 債券市場が織り込んでいる5年後から5年間のインフレ率予想は2%強と、FRBの目標に一致しており、1月の上昇後これまでのインフレ率にも近い。逼迫(ひっぱく)した労働市場や米国の生産ボトルネックの兆し、あるいは欧州や中国の回復でインフレ懸念が高まれば、債券利回りが跳ね上がる可能性がある。株はやはりインフレ懸念をきっかけに、再び1月のような下落に見舞われかねない。
過去3カ月の株価景気循環に左右されやすい
一般消費財セクターはアマゾンを除外すると生活必需品セクターをアンダーパフォーム

Source: Thomson Reuters, WSJ calculationsNote: *Excluding Amazon

 インフレの兆しは先物市場が織り込んだ予想も揺るがすだろう。先物市場は、FRBが今年あと2回利上げし、来年の利上げは予想中間値の3回に至らないとみている。資産運用会社ルーミス・セイレスのデービッド・ロリー氏は「FRBは中立に達したら動きを止め、しばらくそこにとどまるとの見方が増えている」と述べた。
 イタリアは意外に大きな問題だ。そのポピュリスト政府と欧州連合(EU)との反目を巡る懸念はドイツ国債の利回りを圧迫している。ゴールドマン・サックスの推計は、5月以来、米タームプレミアム抑制の最も重要な要因がドイツ国債の利回りの低さであることを示唆している。そのためイタリアへの懸念が後退すればドイツの利回りが上昇し、米国にも届くかもしれない。
 もちろん、これをみな覆す要素も考えられる。例えば対中関税の拡大が甚大な影響を及ぼす兆しや、トルコやアルゼンチンの問題がウォール街に打撃を与えるといった兆候だ。今のところ、投機筋はこうした脅威を無視している。利回り上昇に対するヘッジファンドの賭けは2010年のデータ再編以降で最大だ。債券はここ数カ月落ち着いているかもしれないが、不確かなファンダメンタルズ(経済の基礎的要因)と極端なセンチメントからすると、どちらかの方向に急転することもあり得る。
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バフェット氏「変心」、6年ぶり自社株買い
北米
2018/8/31 5:30
 【ニューヨーク=宮本岳則】米投資会社バークシャー・ハザウェイを率いるウォーレン・バフェット氏は30日、米メディアのインタビューに答え、自社株買いを実施したことを明らかにした。2012年以来、およそ6年ぶりとみられる。従来は株主還元よりも大型買収を優先する考えを示していた。有望投資先が見つからず手元資金が10兆円規模に膨らむなか「変心」を迫られた形だ。

ウォーレン・バフェット氏=AP
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ウォーレン・バフェット氏=AP

 88歳の誕生日を迎えたバフェット氏は30日、米CNBCの番組に出演し、会長兼最高経営責任者(CEO)を務めるバークシャーが「小規模な自社株買いを実施した」と明かした。米ファクトセットのデータベースによると、バークシャーは12年を最後に自社株の買い戻しを行っていない。6月末の手元資金(米国債を含む)は1100億ドル(約12兆円)に膨らみ、市場では現金の使い道に注目が集まっていた。

 伏線はあった。7月中旬に自社株買い方針を修正すると発表。バフェット氏と副会長のチャーリー・マンガー氏の考えるバークシャーの「本質的価値」に株価が届いていないと見なした場合、実施可能とした。12年に定めた旧方針ではPBR(株価純資産倍率)で1.2倍を超える株価水準では買い戻しを実施しないと明言していた。足元のPBRは1.4倍程度。今回の自社株買いは、実施条件を緩めた新方針に沿ったものだ。

■株主の声無視できず

 バフェット氏は5月の株主総会で「我々は配当や自社株買いよりも、投資に資金を使う」と明言していた。このほどインドのモバイル決済サービス最大手に約400億円を出資したが、バフェット氏が狙うのは数千億円規模の大型案件だ。

 盟友のマンガー氏は米企業に広がる自社株買いブームについて株主総会で言及し「いくつかの企業は単に株価を維持するためにやっている」と批判的だった。ただ株高で買収価格が高騰するなか、バフェット氏の志向する大型案件はなかなか実現しない。結局、株主還元を求める株主の声を無視できなくなった。

 米ゴールドマン・サックスによると18年の米企業による自社株買いは1兆ドル(約110兆円)規模に達し、00年以降では最高額になると予想する。アップルの時価総額に匹敵する規模だ。好景気と法人税引き下げが空前の自社株買いブームを生み、それを批判的にみていたバークシャーも最終的に輪に加わった。M&A(合併・買収)や設備投資も増えているが、高いリターンが見込める投資先は限られる。バフェット氏の変心は、米企業全体の苦悩を映す。

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望み叶えつつあるFRB、物価上振れリスク軽視も
FRBはインフレ面で望みをかなえつつある(写真はワシントンのFRB本部)

By Michael S. Derby
2018 年 8 月 31 日 09:20 JST

 米連邦準備制度理事会(FRB)が持続的に2%のインフレ目標を達成できる見込みが強まってきた。

 商務省が30日発表した7月の個人消費・所得統計では、FRBが注目するインフレ指標が、FRBの目標に向かい、そして上回る安定したトレンドが続いていることを示した。これにより、FRBによる利上げ継続をほぼ確実にしたが、この軌道には困難が控えていることも浮き彫りにした。

 7月の個人消費支出(PCE)価格指数は前年同月比2.3%上昇し、前月の2.2%上昇から加速。変動の大きい食品・エネルギーを除くコアPCE価格指数も前年比2.0%上昇し、同様に前月の1.9%上昇から伸びが拡大した。

 この水準において、インフレ圧力はすでに、FRB当局者の長期予想を上回っている。FRB当局者によるインフレ見通しでは、今年に入りしばらく、インフレ率が2%をやや上回ると想定している。だが、2.1%程度の上振れしか見込んでいない。しかも、コアインフレ率はすでに、FRBの2018年の予想である1.9%をすでに上回っている。

 FRBにとっては、インフレが長らく待ち望んでいた目標水準で安定することは朗報だ。大規模な刺激策にもかかわらず、インフレ率が目標に回帰するにはこれまで何年も要した。FRBは自らの約束の地にたどり着いたことで、緩やかかつ着実な利上げを進める根拠が強まる。

 FRBは9月の会合で、現在1.75?2%のフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を引き上げることが、ほぼ確実視されている。今後の焦点は、FRBが年内さらにもう一度利上げできるかどうかに移るが、これはそれほど確かではない。

 物価上昇圧力が今後も力強ければ、金融政策の軌道を変える可能性がある。キャピタル・エコノミクスはリポートで、「FRB当局者は明らかに、コアインフレ率が現在の水準から一段と上昇することはないとみているようだが、とりわけ、賃金増ペースが明確な加速の兆候を示していることを踏まえると、予想は楽観的すぎることが判明するだろう」と指摘。「こうした状況下では、FRBは四半期に一度の利上げを継続する公算が大きい」とみる。

 インフレ加速により、より複雑な影響を受けるのは消費動向だ。指標は雇用市場が極めて堅調なことを示しているが、賃金増はなお緩やかな状況が続いている。物価が上がれば上がるほど、実質賃金は目減りする。そうなれば、企業が減税の追い風を受けて記録的な利益水準を記録する中でも、消費者は経済成長を支援する上で、新たな逆風に直面するだろう。

 消費者心理には、物価上昇による足かせの影響がすでに出始めている。さらに悪化すれば、将来の経済成長に問題をもたらすだろう。
http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/341.html#c1

[経世済民128] 人生100年時代でシミュレート 賃貸派は1600万円も損をする(日刊ゲンダイ) 赤かぶ
13. 2018年8月31日 20:21:12 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1393]
WEDGE REPORT

マンション王者「住友不動産」に聞く『どうなる首都圏のマンション』その8
2018/08/31

中西 享 (経済ジャーナリスト)

 首都圏のマンション供給戸数で4年連続首位の実績のある住友不動産の住宅分譲事業部(マンション担当)の遠藤毅営業部長に聞いた。

 「昨年は首都圏で約7000戸を供給して少し多くなった。今後も年間5000から6000戸を供給していきたい」と述べ、消費税増税の影響については「建物への影響は1%程度なので、前回3%上がった増税と比べるとほとんど影響はないのではないか」と指摘、全体的にマンション需要は2020年の東京オリンピック以降も落ち込まないとの見通しを示した。


(taka4332/Gettyimages)
「土地がみつからない」
 「東京オリンピック関連工事も来年になれば落ち着いてくるだろうが、いまは建設資材の価格も高く、マンションの工事費用も高くなっている。中でも都心はマンションを建てる土地が見つからない。23区内の新築マンションの価格が高くなったこともあって、いまは郊外が人気になっており、ほかの開発会社も郊外の土地の仕入れに力を入れている。

 郊外は土地代が安いので、販売価格を抑えることができる。具体的には、埼玉県越谷市の駅に近くて利便性のある『シティテラス越谷レイクタウン』(497戸)は、最多価格帯が3千万円台の設定で順調に契約できている。これからは利便性の良い郊外型マンションのマーケットは広がるのではないか」と話す。

 一方で都心のマンションについて「単に居住するというのとは意味合いが違ってきている。ホテル、投資用、賃貸に回して利回りを稼ぐなど付加価値を付けることができるので、価格が下がるとは思えない」とみている。

「完成品在庫は適正水準」

遠藤 毅(えんどう・つよし)1965年生まれ。89年に住友不動産に入社、2017年10月から住宅分譲事業部営業部長。
 住友不動産のマンション建設は2010年以降に大きく伸びた。13年は新築マンション供給戸数では3位だったが、14年には上位グループの三菱地所レジデンス、三井不動産レジデンシャル、野村不動産などを抑えて首位に立ち、以後、トップをキープしている。昨年は16年より888戸多い7355戸を契約、初めて7000戸台に乗せ、2年連続で最高契約数を獲得した。

 18年3月期決算を見ると、完成して販売できていない「完成品在庫」が1129戸(内訳は1年超が495戸、1年以内が634戸)あることになっているが、この在庫水準について遠藤部長は「毎月500から600戸を販売している中では適正な水準だと思う」と述べ、一部で指摘されている値引き販売については否定した。

オフィスビルとマンションが両輪
 タワーマンションについては「100棟以上販売してきており、今年の新規では品川区の武蔵小山、埼玉県所沢市で計画している。タワマンの急増により学校が足りなくなるなど地域のインフラにも影響を与えるので、今後は行政とも対話をしながら開発を進めたい」と話す。

 いま、販売に力を入れているタワマンが、昨年8月から1期(400戸弱)の売り出しを始めた江東区有明にある「シティタワーズ東京ベイ」(33階)だ。1期の販売は好調で売り切れたそうで、2期を売り出している。最終的には1500戸以上入るマンションと商業施設の複合開発になっている。

 このほか銀座に近い晴海に高級タワマン「ドゥ・トール晴海」(52階)をツインタワーで建設している。また賃貸マンションでは都内で「ラ・トゥールシリーズ」を展開している。

 住友不動産は都内のオフィスビルでもCMで見るように棟数で「ナンバーワン」になっている。同社は建てたビルをREIT(不動産信託)に売却せずに持ち続ける戦略を取っており、これにより安定した賃貸収入を得ることができている。大手町・丸の内は三菱地所、日本橋は三井不動産など中心部の一等地は両社が抑えているが、そのほかの都心でのオフィスビル建設で住友不動産の勢いが止まらない。マンションとオフィスの両輪が同社の好調な業績を支えているといえそうだ。
http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/330.html#c13

[経世済民128] 今年初の8日続伸で上昇気運 海外勢の日本株爆買いが始まる(日刊ゲンダイ)  赤かぶ
1. 2018年8月31日 20:34:15 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1394]
日経平均2万3000円の壁

広木 隆 

日経平均はこのところ2万3000円で押し返される展開が続いている。思えば、昨年秋に16連騰という新記録を達成した大相場があったが、その強い相場も2万3000円の壁を破れなかった。相場のピークは、忘れもしない11月9日だ。その日、我々マネックス証券は「日経平均3万円への道」という記者会見を行った。その記者会見当日、日経平均は一時470円近い大幅高となり2万3382円まで上昇したが、我々の記者会見を境に午後から急落してしまった。結局、その日終値では2万3000円を超えらなかったが、それ以降も何度も2万3000円を試したものの、結局越えられずに昨年は終わった。今年これまで、2月3月の急落後の戻り局面で、やはり2万3000円が壁となってきた。5月に一度だけ終値で2万3002円をつけるも定着せず、その後は6月も7月も終値で2万3000円台乗せは達成できていない。

しかし、僕はもうすぐこの壁を越えられると思う。その根拠は、利益の見通しが過去最高になってきたからだ。前述した通り、戻り局面で1回だけ終値で2万3000円を超えたのは5月21日につけた2万3002円。それは3月決算発表の好業績を受けてのものだった。ただ、そのあと今年度の予想が控えめに出て予想EPSが下がってしまっていたが、足元Q1の好決算を受けて予想EPSが上昇、5月の値を抜けて予想EPSとしては過去最高になってきた(「実績」はもっと高い1800円台であるが、これは「市場が見なかった幻のEPS」である)。利益予想が5月の値を越えたなら、株価も5月につけた2万3002円を超えるだろう。

20180831_1_1.png

明日から9月。セル・イン・メイ(5月に売れ)の格言は続きがあって、「9月に戻って来るのを忘れるな」。9月は投資家がマーケットに戻って来る。9月は過去の平均では1年のうちでもっともパフォーマンスの悪い月である。

20180831_3.gif

リーマンショックから丸10年が経つが、リーマンショックが起きたのも9月である。しかし、過去は過去である。実際に、昨年は日経平均16連騰という大相場の起点となったのが9月である。月が替わるというのは案外、相場の潮目に影響する。上述した通り、昨年秋から年末にかけて再三再四試して抜けなかった2万3000円の節を、年が改まったらいとも簡単に抜けてしまった。

9月は相場が上に放れると考える。@自民党総裁選や、A安倍首相が国連総会出席のタイミングでおそらくセットされる日米首脳会談での通商協議の決着など9月は材料が豊富だ。しかし、そこまで待たずとも2万3000円を超えていくと思う。

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個人投資家も非上場企業に投資を 米SECが規制緩和に意欲
クレイトンSEC委員長は個人投資家向けの選択肢を広げたい考えを示した
By Dave Michaels
2018 年 8 月 31 日 03:14 JST

 【ナッシュビル(テネシー州)】米証券取引委員会(SEC)は個人が非上場企業に投資しやすくする方法を検討する意向だ。SECのジェイ・クレイトン委員長が29日のインタビューで明らかにした。非上場企業には世界的に人気の高い投資先も含まれるが、多くの個人にとってはこれまで手が届かない存在となっていた。

 クレイトン氏によると、長年にわたり上場を避けてきた企業に対し、より多くの個人投資家が投資できるようにする措置を講じることもSECは望んでいる。

 米配車サービス大手ウーバー・テクノロジーズや民泊仲介サイト最大手の米エアビーアンドビー(Airbnb)といった企業は公開市場を避け、ベンチャーキャピタリストなどからの資金調達を優先している。過去何十年もの間、規制当局は大半の非上場企業について、小口投資家が資金調達に参加できないような規制を敷いてきた。未公開株への投資につきもののリスクの高さから、投資に参加するためには所得や純資産に関する厳しい要件を満たす必要があった。

 クレイトン氏によるとSECは現在、個人投資家保護関連規制の大幅な見直しを検討中で、新たな選択肢を取り入れることを目標にしている。

 クレイトン氏は29日にナッシュビルで起業家やビジネススクールの学生を前に講演した際、「非公開市場はこのところ資本があふれている」とし、「問題は、誰が参加しているのかだ」と述べた。

 ドナルド・トランプ大統領もSECに対し、公開市場と非公開市場のバランスを検討するよう圧力をかけている。2週間前にはツイッターで、上場企業の決算報告を四半期ごとではなく6カ月ごとにすることを検討するようSECに求めた。

 クレイトン氏はインタビューで「特定の結論に固執しているわけではないが、検討すべきだと思う」と語った。SECは決算報告期間について検討しているとしつつ、たとえ企業の報告回数が減ったとしても、企業は引き続き重要な事業動向について投資家に報告するはずとの見方を示した。

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[国際23] トランプ中間選挙後に弾劾も?元顧問弁護士ら「裏切り」続々(ダイヤモンド・オンライン) 赤かぶ
4. 2018年8月31日 20:37:34 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1395]

トランプ氏「連邦職員の昇給凍結」、大統領の特別権限行使
トランプ大統領(写真)には、連邦職員の報酬について代替案を提出する権限がある
By Kate Davidson
2018 年 8 月 31 日 05:44 JST

 【ワシントン】ドナルド・トランプ米大統領は30日、大統領の特別権限を行使し、来年の連邦政府職員の昇給を凍結すると明らかにした。財政状況の悪化を理由に挙げた。

 現行法では、連邦職員の賃金は2019年1月1日から一律2.1%引き上げられるほか、勤務先ごとの昇給が加えられる予定で、トランプ大統領はこれらの昇給分を凍結するとしている。

 トランプ大統領はポール・ライアン下院議長に宛てた書簡で「われわれは国家財政を持続可能なものにする取り組みを続ける必要があり、連邦政府機関の予算ではこうした昇給は維持できない」と述べた。

 トランプ大統領には、「国家の緊急事態か、国民の福祉に影響するような深刻な経済状況」により、現行の賃上げが不適切となる場合には、連邦政府職員の報酬に関する代替案を提出する権限がある。

 トランプ大統領は、報酬は「仕事ぶりに基づくべきで、優秀で重要な能力を備えた連邦職員を採用・維持し、報いる戦略に沿ったものであるべきだ」と述べた。

 議会は、賃上げ分を歳出法案に盛り込むことで大統領の決定を覆すことができるが、そのためにはトランプ大統領が法案に署名する必要がある。上院は今月、連邦政府職員に対し来年1.9%の昇給を認める法案を可決し、トランプ大統領が2019年度の予算教書で求めていた昇給凍結を退けている。

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銃業界に逆風、トランプ政権が招いたスランプ

「この奇妙な市場では、民主党政権が需要を刺激している」との声も

For years, AR-15-style semi-automatic rifles have been one of the biggest drivers of growth for the gun industry. But President Donald Trump's election triggered an unexpected response: A slump in demand. Photo: Patrick T. Fallon for The Wall Street Journal
By Zusha Elinson and Cameron McWhirter
2018 年 8 月 31 日 16:44 JST

 【ダラス(米テキサス州)】ドナルド・トランプ米大統領は5月、全米ライフル協会(NRA)の年次総会で演壇に立ち、銃所有者はかつてないほど強力な支援を現政権および議会多数派の共和党から取りつけたと語った。聴衆は拍手喝采でこれに応じた。

 だが銃器メーカーにとってその恩恵は矛盾をはらむことが分かってきた。

 2016年にトランプ氏が選挙に勝利して以降、銃の販売は低迷する。一番の売れ筋である半自動小銃「AR-15」がとりわけ不振で、業界幹部の間では「トランプ・スランプ」と呼ばれるほどだ。民主党政権下で銃規制が導入されることへの危機感から順調に販売を伸ばした業界は、トランプ政権誕生でこうした懸念が後退し、新たな需要を喚起するのに苦慮している。

 「(規制導入への)危機感による市場がなくなり、販売が通常モードに戻ったのだ」。メーン州の銃器メーカー、ウィンダム・ウェポンリーのマーク・エリアソン氏はこう話す。

 銃器メーカー、トーラス・ホールディングスのマーク・クレッサー元最高経営責任者(CEO)は、政治に次の変化が起きるまでAR-15のブームは再来しないだろうと語った。「(駆け込み需要の)メッキはもうはがれつつある」

 「スミス・アンド・ウェッソン(S&W)」ブランドを持つアメリカン・アウトドア・ブランズでは、ARタイプのライフル銃の需要低下で、ロングガン(拳銃に対してライフル銃や散弾銃などの銃身の長い銃器)の通期売上高(4月30日まで)が前年比50%減の9000万ドル(約99億9000万円)にとどまったという。

 大手銃器メーカーのスターム・ルガーが発表した1-6月期(上半期)決算では、銃器の純売上高が前年同期より13.5%減少。種類別の内訳を示していないが同社はAR-15タイプのライフル銃も販売している。

 業界全体の売上高データは入手できないが、身元調査の件数が大まかな尺度になるだろう。業界団体である全米射撃協会(NSSF)が米連邦捜査局(FBI)のデータを分析したところ、身元調査は過去最高を記録した2016年から翌17年に11%減少した。銃携帯許可証など銃購入に関係のない身元調査はここに含まれていない。

ダラスで開催されたNRAの年次総会で演説するトランプ大統領(5月4日)
ダラスで開催されたNRAの年次総会で演説するトランプ大統領(5月4日) PHOTO: PATRICK T. FALLON FOR THE WALL STREET JOURNAL
 1816年創業の老舗銃器メーカー、レミントン・アウトドアは3月に経営破綻(連邦破産法11条の適応を申請)。2カ月後に再建を果たした。ブッシュマスターやDPMSパンサーアームズなどのブランドでARタイプのライフル銃を製造している。

 銃器メーカーは現在、米国銃業界の復活に大きく寄与したこの種の銃器の販売不振にどう対応すべきかを模索している。テキサス州ダラスで開催されたNRAの会合では、各メーカーが新しい色やサイズ、モデルなどを紹介した。ウィンダム・ウェポンリーは口径や銃身長が今までと異なる2種類のARタイプのライフル銃を発表。1つは狩猟用、もう1つは長距離射撃用のものだ。

米軍が顧客の訓練場に

 AR-15は米軍が使用するM16ライフルの民間モデルとしてコルト社が1964年に売り出した。発売当初は「狩猟の最高のパートナー」とうたわれたが、手動式の猟銃や散弾銃を使い慣れた銃所有者の間で人気が出ることはなく、数十年にわたりほぼ誰も関心を払わなかった。

 銃器メーカーにとって思わぬ転機となったのは、イラクやアフガニスタンの戦闘でM16を使用した何千人もの兵役経験者が帰国したことだ。「米軍は実際、将来の顧客を訓練する場となった」と銃器部品メーカー、ルースARを経営するランディー・ルース氏は言う。

ダラスのNRA総会に出席したランディー・ルース氏
ダラスのNRA総会に出席したランディー・ルース氏 PHOTO: PATRICK T. FALLON FOR THE WALL STREET JOURNAL
 軽量で操作がしやすいこの銃のデザインは、幅広い層を魅了した。銃所有者は簡単に部品を交換したり、付属品を装備したりすることができ、愛好者は「大人用のレゴ」と呼んだ。

 より重要だったのは、政府が断続的にAR-15の制限または禁止措置を導入しようとしたことだ。多数の死者を出した銃乱射事件の一部で凶器となったのがその理由だ。バラク・オバマ前大統領の8年間の任期中には、銃規制に危機感を覚えた人々のパニック買いが繰り返し発生した。

銃業界に逆風、トランプ政権が招いたスランプ
 「オバマほど有能なAR-15のセールスマンはいなかった」。ジョージア州で銃販売業を営む退役軍人のクリス・ウォルツ氏(54)はこう語る。

 ARライフルを製造するアーマライトの経営者を1994〜2013年に務めたマーク・ウエストロム氏は、コネティカット州サンディフック小学校で2012年12月に発生した銃乱射事件後、オバマ氏が攻撃用武器の禁止を求めたことが、銃購入者のパニックを引き起こしたと振り返る。規制法案は結局、成立しなかった。

 パニックが続く間、アーマライトは生産量を引き上げ、いつ終わるかを慎重に見極めたという。「この奇妙な市場では、民主党政権が需要を刺激している」とウエストロム氏は言う。

ルースARのバイスプレジデントを務めるヘザー・ルース・メイエン氏
ルースARのバイスプレジデントを務めるヘザー・ルース・メイエン氏 PHOTO: PATRICK T. FALLON FOR THE WALL STREET JOURNAL
 旺盛な需要を追い風に、ARライフルはニッチな分野を脱した。昨年は100億ドル規模の米銃器市場の4分の1強を占めていた。2016年版「シューターズ・バイブル・ガイド・トゥ・AR-15」によると、大小併せて少なくとも143社がARライフルを製造しており、メーカーの数は5年前に比べて2倍以上に増えた。

銃業界に逆風、トランプ政権が招いたスランプ
「目新しさが必要」

 銃規制強化の動きは今年再び高まっている。2月にフロリダ州パークランドの高校でAR-15と同種のライフル銃を使った銃撃事件が発生し、17人が死亡した。民主党のダイアン・ファインスタイン上院議員は昨年10月に起きたラスベガスの銃乱射事件の後、攻撃用武器の禁止法案を提出したが、2月の事件を受けてあらためて禁止を訴えた。

 ところが過去数年とは違い、これが銃販売を大きく押し上げるうねりとはなっていない。

パルメット・ステート・アーマリー社の「AK-47」風のライフルはAR-15の弾倉を使うことができる
パルメット・ステート・アーマリー社の「AK-47」風のライフルはAR-15の弾倉を使うことができる PHOTO: PATRICK T. FALLON FOR THE WALL STREET JOURNAL
 テキサス州サンアントニオ在住のピアース・スウィーニー氏(32)は以前なら銃所有者は銃規制の呼びかけに反応し、さらに買い増していたと話す。今ではそうした報道に何も感じない人が多いという。

 スウィーニー氏はAR-15を2丁とその他の銃を7丁所有し、妻と共に射撃の練習やイノシシ猟などに使っているという。もし新たな銃を購入するなら、既に持っているどれかを売るつもりだと話す。

 最近のハーバード大学の調査によると、米国の銃所有者全体の約8%が、全ての銃の39%を所有していることが判明した。また多くの人は今持っている武器で十分だと回答した。つまり銃器メーカーは需要を掘り起こすため、さらなる新製品の投入を余儀なくされるだろう。

 今春のNRAの会合で、サウスカロライナ州に本社を置くパルメット・ステート・アーマリーは、旧ソ連の自動小銃「AK-47」風のデザインで、AR-15と同じ銃弾を使う新型ライフルを披露した。「ARは誰でも持っているから、何か目新しさが必要だ」。同社のネット通販用コンテンツクリエイター、クリス・バーミリオン氏はこう語った。

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http://www.asyura2.com/18/kokusai23/msg/756.html#c4

[国際23] EUを反中国貿易戦線に引き入れたワシントン(マスコミに載らない海外記事) 赤かぶ
2. 2018年8月31日 20:40:59 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1396]
日中財務対話、金融協力を加速へ 貿易摩擦も議論
経済 中国・台湾
2018/8/31 11:03 (2018/8/31 12:53更新)
 【北京=原田逸策】日本と中国両政府は31日、財政当局が意見交換する日中財務対話を北京の釣魚台迎賓館で開いた。通貨交換(スワップ)協定の締結を含む金融協力を加速することで一致する見通し。貿易摩擦を巡っても意見を交わす。

 財務対話は2017年5月に横浜で開いて以来1年3カ月ぶり。日本は麻生太郎財務相ら財務省幹部に加え遠藤俊英長官ら金融庁幹部も参加。中国側は劉昆財政相ら財政省幹部のほか、金融監督部門の幹部も出席した。

 会議の冒頭、劉氏は「金融協力について突っ込んで検討してほしい」と述べた。5月の日中首脳会談で合意した金融協力の詰めを急ぐ考えを示したものだ。麻生氏も「次回の首脳会談までに具体的な成果が出せる作業を進めたい」と応じた。

 また劉氏は米国を念頭に「一国主義や保護主義がますますエスカレートしている」と指摘。「日中は共同で多国間貿易体制を支持し、貿易と投資の自由化や利便性向上を促進する責任を負っている」と述べ、日中が共同して保護主義に対抗するよう呼びかけた。

 麻生氏は「先進国の金融政策が正常化し、金融市場では金利が上昇している。日中両国が2国間や多国間の枠組みで協力し、万一の事態に対処できる関係を築くことは極めて重要」とも語った。


 

270回 海外留学を終え帰国する若者が増加 【北京駐在員事務所から】
配信日:2018年8月31日
マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長が、今の中国の政治、経済、社会あるいは日常生活に関する様々な事柄についてお届けいたします。

第270回 海外留学を終え帰国する若者が増加 【北京駐在員事務所から】
中国の若者にとり、海外留学は大変魅力的なもので、高い人気があります。
全国統一大学入試「高考」の熾烈な競争を回避できること、卒業後に良い就職機会と高い報酬を得られる可能性があること、さらには就職により海外に留まることにより、永住権や国籍を得られる可能性もあるということで、毎年多くの学生が、世界各地に出ています。

就職機会や永住権等のメリットが大きいため、以前は留学からそのまま海外で就職という人が多かったのですが、近年、卒業後中国に戻り、就職あるいは起業する人が急増しているそうです。
中国政府の教育部によると、昨年2017年に出国した留学生は608,400名で、一方、留学を終え帰国した者は480,900名でした。
単純計算では、留学生の約8割が帰国したということになります。
30年前の1987年には、この割合が5%に過ぎず、また10年前の2007年でも、30%にとどまっていましたので、「留学から帰国」のルートが近年急速に拡大していることがわかります。

この背景には、中国国内での就職事情の好転と、海外の多くの国で、外国人の就労や居住に関する政策が厳格化していることが挙げられます。
先月、研究機関と就職情報サイト運営会社が共同で、帰国した留学生2,190名を対象に実施したアンケート調査によると、回答者の40%が、帰国の理由として中国での就職機会の増加を挙げ、また27%が諸外国での外国人管理の厳格化により、海外でのキャリアの形成に不安を感じたことを挙げています。

2,190名の帰国者の就職先は、20%が北京、14.6%が広東省の広州及び深?、11.4%が上海で、大都市に集中しています。
これらの都市では、起業支援、資金援助、税制優遇や戸籍の付与など、帰国した留学生に対し充実した支援制度を設けており、人材の獲得に成功しています。
他の都市でも、住宅の家賃補助等、優秀な若年人材の確保のための政策を講じているのですが、地元企業が国内の大学の卒業生を好む傾向があるとのことで、なかなか実を結んでいないそうです。
また、中国国内で就職活動を行う留学生からは、期待した水準の報酬を得られる職が少ないとの声が上がる一方、企業側からは「留学生よりも実務経験者が望ましい」との声もあり、ミスマッチも生じているようです。
留学生の側にも、どのような人材が、どの程度の条件で求められているのかについて、現実を正しく理解することが求められます。

年間60万人の留学生というのは、日本の8倍ほどにも達します。
また、日本人の留学生は、1年以下の短期の者も多いのに対し、中国人留学生は大学4年間のフルタイムの学生が多く、内容も大きく異なっています。
もちろん、留学のためには、学生本人の能力と努力に加え、家庭の経済力が必要になります。日本では、親の収入が子供の学習機会の差に、さらには進学から就職の機会の差につながっていると指摘されていますが、中国でも同様に、生まれた家庭の経済力という子供自身にはどうすることもできない差が物を言いつつあるように思えます。
難しいこととは思いますが、「機会の平等」が出来る限り保たれるよう望みたいと思います。

海外留学生の動向からも、中国の発展ぶりが理解できる話題でした。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト
次の記事「第269回 来園客の餌やりに頭を悩ませる北京動物園 【北京駐在員


 



http://www.asyura2.com/18/kokusai23/msg/757.html#c2

[国際23] アルゼンチン、ペソ安止まらず 中央銀行が主要政策金利60%に引き上げ(ニューズウィーク) 赤かぶ
1. 2018年8月31日 20:42:54 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1397]
552回「ハイパーインフレとデノミ」
配信日:2018年8月31日

損をしないために知っておくこと、得するために覚えておきたいことを、ファイナンシャル・プランナー廣澤知子がやさしく解説します。(週1回更新)

第552回「ハイパーインフレとデノミ」
先週、ベネズエラでデノミが実施されました。そもそもデノミとは何か、どんな効果を期待されているのか等、今ひとつ、ピンとこないという方もいらっしゃるでしょう。

デノミというのは、デノミネーション(denomination)の略で、本来の英語の意味は通貨単位そのものを指しますが、日本語では「通貨単位を切り下げること(切り上げることもある)」として使われています。
ハイパーインフレのような急激なインフレが起こった時、例えば昨日まで100円で買えたキャベツが翌日には10,000円になる、といったような状況になると、ちょっとした買い物にも大量の紙幣を持ち歩かねばならず、計算も記帳も煩雑になってしまいます。市民生活のみならず、経済上も支障をきたすため、解決のために行う、これまでの100円を新1円にします、といった政策をデノミというのです。
新しく貨幣を発行し、旧貨幣と交換というのが一般的な方法で、今回のベネズエラにもそうですが、例え事前告知されていたとしても、多くの場合は社会が混乱に陥ります。

そもそもハイパーインフレという事態はどういうことなのでしょう。
需要と供給のバランスが崩れ、短期間のうちに物価が急激に上昇する現象ですが、その結果、通貨の価値が急落してしまいます。こうした事態は敗戦や革命、政府の混乱時といった時に起こりやすく、近年ではアルゼンチン、ブラジル、ユーゴスラビア、ジンバブエなどの例があります。前述した、記帳が煩雑というレベルの問題ではなく、国家の通貨価値が暴落するということは国際経済の中で立ち行かなくなっていくことを意味します。輸入価格の暴騰はもとより、国際機関や他国からの借金が膨大になり国家として破綻し、デフォルト(債務不履行)となってしまいます。

日本が戦後の急激なインフレ対応として新円発行、預金封鎖、預金引出制限を行い、そのために一気に財産を失った人が多かったことを見聞きして、赤字国債で財政赤字の日本が近い将来、国債暴落、ハイパーインフレ、通貨危機となり、同様の政策が行われるのではないかと不安を感じている方もいるようです。現状ではインフレ目標を必要としているほどですし、日本国債の保有者の90%以上が日本銀行や民間金融機関、地方自治体であり、海外に対する借金ではありません。金融機関などを通じた国民に対しての借金であることは事実ですし、財政赤字に危機感を持たなくてよいというわけでは、もちろんありませんが、実際にハイパーインフレや、デフォルトになった諸国とは状況が異なります。

冒頭のデノミですが、本当に効果はあるのか、といえば混乱に陥るに過ぎないケースの方が多いのが事実です。数少ない成功例として、第一次世界大戦後のドイツで急速にインフレを終息させた「レンテンマルクの奇跡」と呼ばれたデノミがあります。デノミはそれほどまでに失敗例が多い政策であり、当事国のみならず周辺国に波及、世界経済にも影響を及ぼす可能性の高いものです。特に近隣諸国や政治、財政状況が似ている国は投資家からもリスクが高いと判断されます。新興国に投資する時の要注意点の一つが、こうした連鎖反応です。地球の裏側に起こっている混乱と思わず、投資への影響について考える機会にしましょう。

廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員

http://www.asyura2.com/18/kokusai23/msg/755.html#c1

[国際23] 欧米はなぜ『中国製造2025』を恐れるのか(マスコミに載らない海外記事) 赤かぶ
4. 2018年8月31日 21:02:08 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1398]
2018年8月31日 週刊ダイヤモンド編集部
中国企業がEVの先頭ランナー、2年遅れでVWが追い、日本勢はその後
CATL日本法人 多田直純社長インタビュー
中国が製造強国世界一の地位を確固たるものにする中で、日本の製造業が進む道はどこにあるのか――。『週刊ダイヤモンド9月1号』の第1特集は、「自動車・電機・IT 40年で完成した日中逆転の全経緯」です。特集では、飛ぶ鳥を落とす勢いで躍進している中国の車載電池メーカー、寧徳時代新能源科技(CATL)を紹介。創業7年目にして、日本のパナソニックを抜き去り世界首位に躍り出た注目の企業です。今回、そんなCATLの日本法人、コンテンポラリー・アンプレックス・テクノロジーズ・ジャパン(CATJ)の多田直純社長のインタビューを特別に掲載します。急成長の理由や日系自動車メーカーとの協業方針について聞きました。(聞き手/「週刊ダイヤモンド」副編集長 浅島亮子)


CATLの多田直純社長 Photo:DW
──2017年に、電気自動車(EV)の基幹デバイスである「車載用リチウムイオン電池」の出荷量で、CATLはパナソニックを抜き世界首位に立ちました。急成長の要因はどこにあるのでしょうか。

 まだ若い会社ではありますが、着実にグローバルな自動車メーカーさんとの取引を拡大できたことにあります。私自身、電池の納入実績が100社以上あることを聞かされて驚いたのですが。

 2012年から独自動車メーカーBMWとハイブリッド向け電池から協業しています。BMWやフォルクスワーゲン(VW)と受注契約を結べたので、中国に続き、ドイツにも生産拠点を設けることになりました。これで、LG化学やサムスンSDIなどの韓国電池メーカーとも肩を並べることができます。

──5月末に、横浜市に日本国内初の営業拠点を設けました。日本進出の狙いはどこにありますか。

 お客さんと一緒にグローバルな会社になりたい。これは、創始者であるロビン(ロビン・ゼン会長)の気持ちでもあるのです。

 もともと、CATLは日本のTDKが買収した香港系電池メーカーの車載部門が独立してできた会社で、ロビンを含め経営幹部は日本のことをよく知っています。中国の自動車メーカーとだけ向き合っていてもダメで、グローバルでやって行きたいという思いが強いのです。

 世界の約4割の車を日本が作っているので、日本の自動車メーカーとの関係強化は欠かせません。中国市場でも、日本のバッジを付けた車は“日本の車”としてのクオリティーがシビアに求められます。CATLはその評価に耐えうる仕事をしないといけません。

 お客様である日本の自動車メーカーの要望がわかり、日本の仕事のやり方をわかる人がプロジェクトを引っ張って行かなければならない。それが日本法人設立の理由です。そして、私自身が独大手自動車部品メーカーのボッシュから転職し、昨年8月に入社しました。

飛ぶ鳥を落とす勢いのCATL製電池
CATLの電池
──多田さんがヘッドハントされた理由はどのあたりにあると思いますか。

 どうでしょう(笑)。ボッシュでは日本の自動車メーカーの担当をしていましたので、それぞれのメーカーのカルチャーや特性をよく知っているということかなと推察します。ボッシュでは、「グローバル キーアカウント マネジャー」として、日本の自動車メーカーとの取引の損益管理を全て仕切っていました。

 担当は、トランスミッションやエンジンシステムなど車の心臓部です。日本のお客様の欲しいもの、要求は非常に厳しいです。その要求を受け取って、自分なりの戦略を立てて、いかにボッシュの方針と整合性を取るか。そうしたサクセスストーリーをいつも探していましたね。

 中国福建省にあるCATL本社へ入社面接に行った時のことをよく覚えています。1日半ぐらい滞在し、CATLからは、6人のダイレクターが出席していました。

 その場は面接と言うよりも、なかば戦略会議のようになってしまいました。ボッシュ時代の経験ではどう考えるのか、より具体的な方策について意見を求められました。僕にとっては、とても楽しい面接でしたね。

──100社以上の納入実績があります。世界中の自動車メーカーと付き合いがある立場からみると、日本の自動車メーカーはどう見えているのですか。

 正直に申し上げれば、日本の会社はEVでは遅れていると思います。中国の自動車メーカー向けの電池はほぼ完成に近いところまで持っていけます。VWは中国から2年遅れくらいでついて来ている状況。日本の自動車メーカーは、それよりまだ遅れている印象です。

 そして、現時点でもEV担当をされている自動車メーカー幹部でも、EV市場が急成長する将来シナリオに懐疑的な方がいらっしゃるように思います。

 中国の自動車メーカーがどんどん成長して、ヨーロッパ系が追いついて、彼らが市場を席巻しかねない。日本の自動車メーカーさんは今、頑張らないと将来が危なくなる状態です。

──日本の自動車メーカーからは、(他の自動車メーカーと開発した)既存の電池で、一番安くて良いものを調達したい」と言われていると聞きました。EVの基幹デバイスであるにもかかわらず、競合の設計した電池をください、と言ってきているのですか。

 それは、ちょっと答えられません(笑)。日本の自動車メーカーさんが求めるレベルの電池を提供できるよう、努力を続けるのみです。

──現在、2020年に50GWhを生産するという目標ですね。

 でも、じきに上振れすると思います。2027年のタイミングで、自動車メーカーのお客様1社だけで40〜50GWhの生産規模になる予定です。そのお客様が4、5社あるイメージです。単純計算で、少なくとも200GWhは必要なのではないでしょうか。

 実は、将来的には、中国、ドイツに続き、北米でも生産拠点をもちたいと考えています。


 


 

2018.8.31(第359号)

1. 大理での出会い(論長論短 No.327)

2. ソフトブレーングループからのお知らせ(セミナー&最新情報)

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1. 論長論短 No.327

この秋から、米国の大学に在学中の長女が、14人のアメリカ人同級生とともに
上海の復旦大学に留学しました。今日の宋メールは彼女に書いてもらいました。
(宋文洲)

大理での出会い

宋 紅叶

一週間ほど前から大学の交換留学で上海に来ていた私は、プログラムの一貫として
中国雲南省の大理に訪れました。引率する教授が選んだ宿はリンデン・センター
と言って、古くからの大理伝統の建築物をそのまま利用した素敵なホテルです。

到着した夜、教授が私たちをホテルのロビーに集めると背の高い優しそうな
白人の男性がやってきました。旅行客かと思いきやなんと彼がこのホテルの
オーナーだというのです。

彼はブライアン・リンデンと言ってシカゴの貧しい家庭で育ちました。
18歳の時から掃除の仕事を始め、その稼ぎで夜間大学に通っていました。
ある時、彼は貯めたお金で中国へ旅行に行きました。それが彼と中国との
縁の始まりでした。

旅行を通じて中国に興味を持った彼は試しに中国政府の全額奨学金を申請してみると、
なんと成功しました。1985年にブライアンは晴れて中国政府の招待で
中国の大学で勉強を始めました。当時としてはとても珍しいことでした。

留学中の彼は米国CBSの報道カメラマンとしてアルバイトを数年間やりました。
その経験から中国の魅力、歴史の深さを感じたと同時に、世界の中国への
理解の浅さにも気づいたそうです。

中国の大学を終えた後、ブライアンはスタンフォード大学の全額奨学金をも
獲得し経済学部を卒業しました。そのキャリアがあればアメリカでそれなりの
収入を得て不自由のない暮らしもできましたが、彼はチャンスをくれた中国に
恩返しをしたい一心で中国に戻ったそうです。

その後、中国の文化遺産を守る手伝いがしたいと、大理の国家文化遺産財に
認められている土地に外国人として史上初めてホテルを建てることに
成功しました。その他にも、彼は中国全土で中国政府と協力しながら
いくつかの施設をデザインしています。

全ての施設は地元の人をスタッフとして雇い、レストランで使用されている食材などは
全て地元のものを使用しているそうです。なぜなら、彼は国家文化遺産として
認定されている土地の特色を守り続けながら、旅行者にもその美しさを
味わってもらえ、地域も活性化させられるようなコミュニティーを作ることに
人生を賭けているからです。

ブライアンの人生に私が深く惹かれたのは、彼の目には私が見たことのない中国が
見えていたからです。日本で生まれ育ち、高校からアメリカで教育を受けている私は、
中国人ながらも中国についてしっかりと学んだことは無く、世界が持っている
中国へのステレオタイプというフィルターを通して中国を見ていました。

しかしながら、ブライアンの経験、そして中国への思いを聞いて、
恥ずかしながらも自分よりもブライアンの方がよほど真の中国人だと認識しました。
また、私の父も中国政府の奨学金で日本に留学したということもあり、
ブライアンと父の人生に共通点をたくさん見つけました。

父がよく「中国政府からの恩は返しきれない」と私に話してくれましたが、
アメリカ人であるブライアンの口から同じ言葉が出た時、私は何かに気付かされた
気がしました。私が中国に対して持っていたネガティブな視点はただの偏見でしかなく、
私自身で中国についてきちんと学ぶ必要があると気付かされたからです。

私は今大学で経済を専攻しています。私からすると、経済の授業には他の科目では
無かった面白さ、そしてやりがいがあり、将来はビジネスの世界で何かをしたいと
考えています。アメリカの大学の授業では中国の経済についてよく話しますが、
中国社会の変化とグローバル化について触れることはありません。

変貌を遂げる中国社会についてブライアンは、
「今の中国にはビジネスチャンスを生かし大金を稼ぐビジネスは沢山あるが、
I want to be a dreamer, not only a businessman」と言っていました。

私はその通りだと思います。
私が将来どこに住み、どんな仕事をするかはわかりませんが、
ブライアンのように、損得よりも夢を持って生きたいと思います。


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http://r31.smp.ne.jp/u/No/5508817/BFwU42j9eqAD_42725/180831001.html

 


 
http://www.asyura2.com/18/kokusai23/msg/747.html?c3#c3
ついに頓挫か、中国人100万人マレーシア移住計画

一帯一路で天に唾した中国、海外に初の“鬼城”を輸出する羽目に
2018.8.31(金) 末永 恵
マレーシア・イスカンダル計画の最大プロジェクト、中国主導の「フォレスト・シティ(中国名:森林都市)。中国・華人100万人をマレーシアに移民させる一帯一路計画の模範プロジェクトだ。
 日本人の「海外不動産投資ブーム」を牽引したのが東南アジアのマレーシアだ。

 東日本大震災以降、マレーシア政府は早々に、マレーシアでのロングステイ、セカンドホーム「MM2H」やコンドミニアム(マンション)購入投資の多様な商品を並べ、ジャパンマネーの取り込みを行った。

 特に 、マレーシアでは不動産取得において、最低購入価格制限以外に外資規制がほとんどなく、シンガポールなど他の東南アジア諸国と比較し、外国人に開放されていて、その結果、MM2Hのビザで永住する日本人も多い。

 とりわけ人気だったのが、第2の都市、マレー半島最南端のジョホールバル(ジョホール州首都、最大都市)だった。

 温暖な気候に整ったインフラ、英語圏で安価な物価、さらには親日国というのが売りで、投資や資産逃避に加え、子供の留学の教育移住先としても日本人の受け皿になった。

 中でもジョホールバルは、シンガポールに隣接し、香港と隣り合わせの深?を髣髴させる好立地。

 この地に、マレーシアとシンガポールが共同出資する人口300万人を目指す巨大都市開発構想「イスカンダル経済特区」に伴うコンドミニアムなどの不動産開発ラッシュが起き、日本人の爆買いが注目された。

 マレーシアの場合、「プレビルド」という、数年後に完成予定の物件を更地の状態のときに予約購入する不動産購入方式が主流。

 しかし、供給過剰で大量に建設された結果、完成したものの住むこともままならない状態に陥っている。商業施設も住民が少なく、続々と撤退した。

 「売れない、貸せない」状況が発生し、空き家だらけで、未来開発都市・ジョホールバルは「廃虚化したマンション都市」との汚名が着せられる不測の事態となった。

 そんな辛酸を嘗めた日本人バイヤーが淘汰される一方で、地元不動産を爆買いし始めたのが、急速な経済成長で中間富裕層拡大の中国からの華人だった。

 彼らの不動産購入・投資先は、イスカンダル計画の目玉で70万人の居住区構想である最大プロジェクト「フォレスト・シティ」(中国名:森林都市)。

 しかし、彼らの目的は日本人と違った。

 彼らは、不動産取得を通じ、「マレーシアの長期ビザ、ひいては永住権、市民権を獲得するのが目的だったからだ」(マレーシア政府関係者)。

 中国の不動産が高騰する一方で同物件価格は北京の4分の1ほどの値段だ。さらに子供の英語教育の機会を模索するだけでなく、両親なども呼び寄せて、第三国の永住権を家族全員が取得可能な道しるべを作る狙いがある。

 要するに、不動産購入は中国人にとって「海外逃避のための手段」に過ぎないのである。

 最長10年(更新可能)のビザ取得が可能なマレーシアのセカンドホームプログラム(MM2H)利用でも、2002年の開始後、中国人が最も多くなっている事情がこうした背景にある。

シンガポールに隣接するフォレスト・シティ
 例えば、フォレスト・シティに関しても購買者の8割から9割が中国からの華人だ。

 結果、将来的にはフォレスト・シティは「華人によって文字通り、空室だらけで人が住まない“森林”になるだろう」(シンガポールの不動産関係者)と揶揄され始めていた。

 そんな中、マレーシア国内での“華人共和国”建設の動きに当初から反対を表明したのがマハティール元首相(当時)だった。

 「マレーシアの広大な土地が外国に占拠されてしまう。外国による領土化だ。マレーシアは大国の植民地ではない」

 そう言って、5月の総選挙で野党を率い、選挙公約に「フォレスト・シティなどの中国資本による巨大開発事業の(凍結を含む)見直し」をかかげた。

 中国政府と蜜月だったナジブ前政権の腐敗、癒着の象徴として同事業を挙げ、国民の賛同を得て61年ぶり初の政権交代を果たした。

 6月に首相再登板後、初の外遊先の日本で20年ぶりとなった日本記者クラブでの会見でも、次のようにフォレスト・シティに関する筆者の質問に厳しい姿勢で臨むことを表明していた。

 「米国でもメキシコからの移民を排除しようとしている。外国人居住地を認める国はない。入国を拒否する権利がある。このまま、計画が進めば、政府として対抗策を講じる」

 その選挙公約に沿って今月27日、マハティール首相は「フォレスト・シティの外国人不動産販売を中止し、ビザも市民権も与えない」と都市計画のイベントで発言。

 欧米批判で知られるマハティール首相の”差別的発言”と言葉尻だけをとらえてロイター通信など海外メディアが伝えたが、28日、首相府は我々メディアに声明を送付。

 「外国人の不動産取得はマレーシアの規定や法の下、認められるが、不動産取得は市民権(あるいは永住権)を同時に授与されるものではない」と発表。

 マハティール首相の懸念は、不動産取得そのものではなく、森林都市計画という名の下の中国によるマレーシアの領土化、中国人“大量移民”の居住区設置計画なのだと、マハティール首相の“独特の”レトリックを噛み砕いて補足説明した。

 その上で、ナジブ政権時代、中国側との“密約”で、中国人の不動産売買でビザや市民権が贈与されるといった影の条件を否定した。

 同時に、フォレスト・シティに関しては、特別委員会を設置し、関係省庁や中国などの不動産開発業者などから聴取を行い、不動産の取得条件など合意内容の再審査や見直しを実施することも明らかにした。

 フォレスト・シティ計画は、ジョホール州南部の海域(ジョホールバルとシンガポールを結ぶセカンドリンク付近)を埋め立て、4つの人工島を建設する世界最大級の大規模総合開発だ。

 2016年3月に起工式を行い、完成は2035年を目指す。総事業費約1000億ドル(約11兆1300億円)を投じ、東京ドームが300個入るという、約14平方キロメートルの全敷地に、住宅、別荘、ホテルなどの商業施設、学校、病院などを建設予定だ。

 同プロジェクトは、中国第3位の大手不動産開発会社で香港株式上場企業の「碧桂園」(カントリー・ガーデン・ホールディングス)とジョホール州政府子会社クンプラン・プラサラナ・ラクヤット・ジョホールによる合弁会社が手がける。

 同州企業はジョホール州スルタン(州王)が最大株主で、実質、中国とジョホール州王室とのジョイントベンチャーだ。

 同州は、シンガポールを領土としてかつて保有し、国内の州の中でも莫大な資産、資本を抱え、州政府の中で唯一、州軍も所有する”独立色”の強い州でも知られる。

 さらに、同州の権益はスルタンが所有し、大型投資などの案件許諾も独占して握っている。

 王室の権限を縮小したいマハティール首相と王室統治の「ジョホール州・ファースト」を提唱する同州スルタンとは、長年の因縁の間柄。

 同プロジェクト中止を目指すマハティール首相の狙いは、憲法上、国の統治者となっているこうした王室絶対主義の修正への民主化加速への狙いも影にはある。

 一方、中止した東海岸鉄道プロジェクトとともに、フォレスト・シティ計画は、習近平政権が進める「一帯一路」に関連する中国の大手企業による開発だ。

 2016年3月の同計画起工式後の同年末発行の「瞭望週刊」(新華社発行)では、中国政府の幹部が同計画は一帯一路戦略の「模範的プロジェクト」と絶賛。碧桂園集団の朱剣敏副総裁も「一帯一路戦略上の計画」と公言した。

 碧桂園は、年商1500億元(約2兆5500億円)、社員約10万人の中国を代表する企業で、中国政府のバックアップのもと、森林都市計画が進められており、中国からの大量移民による「植民地100万都市構想」で中国人を100万人、マレーシアに定住させる思惑が根底にあるといわれている。

 しかし、この1000億ドル計画も、中国政府が昨年、不動産投資目的の海外への外貨送金を禁止したため頓挫するのでは、とささやかれ始めている。

 中国人のフォレスト不動産購入者は、手付金は支払ったものの、購入資金の送金がその後できなくなり、しかも、購入を断念するとペナルティーとして、「購入価格の30%」を開発業者の碧桂園に支払うことが義務付けられており、契約解除で支払済みの預託金の返済を求めることすら、困難になっているという。

 そのような状況下で、一部完成しているフォレストの高級マンションは、買い手があっても誰も住まず、よって商業施設もオープンしない悪循環に苛まれているという。

 中国国内には、完成しても人が住めない「鬼城(ゴーストタウン)」が散在して社会問題に発展している。

 このままいけば、森林都市計画は、海外での中国「鬼城」が“輸出”された初のケースになる可能性も出てきている。

 一方、中国の華人にとっては、独裁国家の中国ではあり得ない民主選挙で選ばれた政権交代で、政策が180度転換し、中国による投資がマレーシアでは歓迎されない予想外の結果に戸惑っている。

 皮肉にも、自らの行いが中国への反発を呼び、マレーシアでの政権交代を実現させたと痛感しているだろう。

 シニカルなレトリックを好むマハティール首相は「フォレストシティは、本当の意味で森になるだろう。なぜなら、そこの住民はサルとヒヒ(汚い醜い人)で十分だからだ」と述べた。

 中国の植民地計画は醜い、そう一刀両断する小国の老練宰相が大国を戒めるときが再び、来るだろう。

(取材・文 末永 恵)

 



http://www.asyura2.com/18/kokusai23/msg/747.html#c4

[経世済民128] 固定電話5%、タクシー4%値上げ 高齢者負担増の流れ鮮明に(マネーポスト) 赤かぶ
4. 2018年8月31日 21:10:09 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1399]

フィーチャーフォン(3G)向けサービスの打ち切りは、黙って行われる

需要が減っていく固定電話も、いずれ消えるのだから

早めに値上げして、ユーザー数を減らし

淘汰を加速するのは全体最適であり合理的だろう


そしてタクシーなど贅沢品だから、いくら値上げしても問題はない

生活保護で医療受給している者を除けば、昔から貧困高齢者には縁などない


しかし、ポピュリズム大国の日本だから

いずれ税金で補填などという愚かな話がでてきても全く驚かないが



http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/339.html#c4

[経世済民128] 固定電話5%、タクシー4%値上げ 高齢者負担増の流れ鮮明に(マネーポスト) 赤かぶ
5. 2018年8月31日 22:15:19 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1400]
世界の富豪、慈善活動への寄付は自身の望み通りのペースで進まず
Tom Metcalf
2018年8月31日 15:56 JST
• バフェット氏ら米国の有力慈善家、株価上昇で資産膨らみ続ける
• バフェット氏の財産は過去8年間で86%増加

米資産家ウォーレン・バフェット氏
Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg
米資産家ウォーレン・バフェット氏は2010年に慈善事業のビジョンを説明した際、自身にある課題を与えた。
  バフェット氏は同年に慈善活動の取り組みに関する書簡で、「私が保有する全てのバークシャー株からの収入は、遅くとも、私の財産が確定してから10年で慈善目的に費やされる」と記していた。

  しかし、過去最大級の財産からの大口寄付という課題は難しくなる一方だ。バフェット氏はその後、バークシャー・ハサウェイ株を寄付時点の合計額で300億ドル(約3兆3300億円)余り手放したものの、同氏の資産は増加し続けている。ブルームバーグ・ビリオネア指数によると、30日に88歳の誕生日を迎えた同氏の純資産は871億ドルで、10年に同書簡を公表した時よりも86%増加した。
  巨額の資産を寄付しようとしているのはバフェット氏だけでない。17年末時点で510億ドルという世界最大規模の慈善基金の創設者、ビル・ゲイツ氏と妻のメリンダさんも死後20年以内に全ての財産を寄付するとしている。フェイスブックの共同創業者マーク・ザッカーバーグ氏と妻のプリシラ・チャンさんも15年に、保有するフェイスブック株の99%を慈善活動目標の推進に提供する計画を明らかにした。
  だが、こうした富豪の資産は多額の寄付の後も、過去最大に膨らんでいる。ゲイツ、ザッカーバーグ、バフェットの3氏の資産は10年以降、マイクロソフトやフェイスブック、バークシャーといった保有銘柄の値上がりを背景に、合計で1390億ドル増加した。
投資戦略や新しいヘルスケアベンチャー、銀行業界について語るバフェット氏
出所:ブルームバーグ)
原題:World’s Richest Just Can’t Give Away Their Money Fast Enough (1)(抜粋)


http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/339.html#c5

[国際23] EUを反中国貿易戦線に引き入れたワシントン(マスコミに載らない海外記事) 赤かぶ
4. 2018年8月31日 22:59:13 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1401]
トランプ米大統領:EU、中国とほぼ同じくらい悪い−次の標的と示唆
Shawn Donnan
2018年8月31日 20:42 JST
ユーロ、人民元とともに「どんどん値下がりしている」−トランプ氏
貿易巡る争い、中国と同様に欧州に対しても勝利を確信
欧州委員会のユンケル委員長は7月下旬、トランプ大統領と米欧の貿易問題を一時「休戦」とすることで合意し、握手してワシントンを出発した。だが、この休戦が長く続くかは今や疑問だ。

  トランプ大統領は30日、ブルームバーグ・ニュースとのインタビューで欧州連合(EU)が次の標的であるかのように語り、「中国とほとんど変わらないくらい悪い。規模が小さいだけだ」と言明した。


米大統領執務室でインタビューに応じるトランプ氏(30日)Photographer: Al Drago/Bloomberg
  トランプ氏は弱いユーロは人民元と同様だと論じた。人民元について同大統領は、米企業を不利にし、世界の貿易不均衡是正への自身の取り組みを妨げる方向で操作されていると主張しており、インタビューでは「われわれが競争しているのは人民元だけではない。ユーロもだ。両通貨はどんどん値下がりしている」と語った。

  さらに「私生活では、弱いドルと低金利を常に好んでいた。強いドルはスコットランドやアイルランドの土地を購入したい時にだけ好都合だった」とし、「大統領としては、少し違う感じ方をしている。ドルが強く、強い力を持つという事実はとても耳に快い。ただ、世界の他の地域に商品を売るのが難しくなることが欠点だ」と続けた。

  貿易を巡る争いで欧州をしのぐことができるかとの問いに、中国に対してと同様に勝利を確信しているとしつつ、合意の用意はあり、欧州側もそうだろうと指摘。

  「欧州は合意を切望している」と述べた。

原題:Trump Makes Clear EU Won’t Escape His Ire on Trade for Long (1)(抜粋)


 

ECBはユーロ操作していないーフィンランド中銀総裁インタビュー
Alessandro Speciale、Kati Pohjanpalo
2018年8月31日 17:51 JST
「貿易戦争エスカレートさせる傾向が米国側にあるのは極めて遺憾」
中国の通貨安をもたらしているのは貿易戦争エスカレートの脅威
欧州中央銀行(ECB)政策委員会メンバーのレーン・フィンランド銀行(中央銀行)総裁は31日、ECBがユーロ相場を操作しているとのトランプ米大統領の主張に反論した。

  同総裁はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「中国のみならず欧州とも貿易戦争をエスカレートさせる傾向が米国側にあるのは極めて遺憾だ」と言明。「中国と欧州の貿易政策比較にあまり重大な意味があるとは思えない」と説明し、「ECBがユーロを操作していないのは確かだ」と述べた。

  レーン総裁はまた「中国の状況に関する私の読みは、中銀の操作ではなく、貿易戦争がエスカレートする脅威が主因で人民元が安くなっているというものだ」と語り、通貨安をもたらしているのは中銀との米国の主張とは「反対」の状況との認識を示した。

原題:ECB’s Rehn Calls Trump Accusations on Global Trade Regrettable(抜粋)

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ユーロ圏:8月インフレ、予想外の減速−2%に逆戻り
William Horobin
2018年8月31日 18:48 JST
8月のCPIは前年同月比2%上昇、予想2.1%上昇
7月の失業率は8.2%に低下し約10年ぶり低水準
ユーロ圏のインフレ率は8月に、予想に反して前月から低下した。経済へのリスクが高まる中で金融緩和縮小を図る欧州中央銀行(ECB)の懸念材料が増えた形だ。

  欧州連合(EU)統計局(ユーロスタット)が31日発表した8月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)速報値は前年同月比2%上昇。エコノミストは7月から横ばいの2.1%上昇を予想していた。食料品やエネルギーなど変動の激しい項目を除いたコアCPIも1%上昇に減速、予想を下回った。

  同日発表された7月の失業率は8.2%で約10年ぶりの低水準を保ったが、貿易摩擦とイタリアの政情不安を巡る懸念が景気の足かせになっている。


8月速報値 市場予想 7月
ドイツ 1.9% 2.1% 2.1%
フランス 2.6% 2.5% 2.6%
イタリア 1.7% 1.7% 1.9%
スペイン 2.2% 2.3% 2.3%
原題:Euro-Area Inflation Unexpectedly Slows as Trade Risks Escalate(抜粋)
http://www.asyura2.com/18/kokusai23/msg/757.html#c4

[国際23] EUを反中国貿易戦線に引き入れたワシントン(マスコミに載らない海外記事) 赤かぶ
5. 2018年8月31日 23:01:24 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1402]

トランプは、よくいる利己的な愚かなポピュリスト

世界最強の国家で民意で選ばれた最高権力者



http://www.asyura2.com/18/kokusai23/msg/757.html#c5

[経世済民128] 今年初の8日続伸で上昇気運 海外勢の日本株爆買いが始まる(日刊ゲンダイ)  赤かぶ
2. 2018年8月31日 23:08:21 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1403]

日本株は下落、貿易摩擦再燃と連騰疲れー素材や輸出、金融売られる
河元伸吾
2018年8月31日 7:49 JST 更新日時 2018年8月31日 15:47 JST
• 米大統領、2000億ドル対中追加関税の来週発動意向を示す
• 為替は一時1ドル=111円割り込む、株価指数下げ幅は限定的

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
31日の東京株式相場は下落。米国のトランプ大統領が対中国の追加関税を来週にも発動する意向を示し、貿易摩擦への警戒が再燃した。直近の連騰を受けた買い疲れもあり、鉄鋼や非鉄金属など素材株、自動車やゴム製品など輸出株が安く、銀行や保険など金融株、石油株も下げた。
  TOPIXの終値は前日比3.79ポイント(0.2%)安の1735.35と続落。日経平均株価は4円35銭(0.02%)安の2万2865円15銭と、小幅ながら9営業日ぶりに反落した。
  SMBC信託銀行投資調査部の佐溝将司マーケットアナリストは,、「米国による対中国追加関税2000億ドルは前からくすぶっていたが、影響の大きさからさすがに実施されないとの見方が多かっただけに、現実味を帯びると市場はマイナスに反応した」と言う。米中通商協議の再開や北米自由貿易協定(NAFTA)の合意方針を受け、「トランプ米大統領の強硬姿勢が和らぐとの期待で株式相場は上昇してきたが、『やはり』という失望感から売りが先行した」とみていた。

東証玄関前
Photographer: Akio Kon/Bloomberg
  トランプ米大統領は中国からの輸入品2000億ドル相当への関税について、9月6日までの公聴会が終わり次第、発動したい考えだと事情に詳しい関係者が明らかにした。同大統領は、欧州連合(EU)が提示した自動車関税撤廃案に関しても「十分良いものではない」と述べ、はねつける意向も示している。
  前日の米S&P500種株価指数は0.4%安と5日ぶりに反落。きょうのドル・円は一時1ドル=110円80銭台と、前日の日本株終値時点111円65銭からドル安・円高水準に振れる場面があった。大和証券投資情報部の石黒英之シニアストラテジストは、「米中は協議を続けていたため、いったんは先送りとの期待が高かっただけに、早期の追加関税発動との観測で冷や水を浴びせられた」と指摘。また、トランプ大統領がEUの自動車関税を批判したことも「9月の日米通商協議で自動車が標的にされやすくなった。日本にとってネガティブ」と受け止める。
  週末・月末を迎えたきょうの日本株は、貿易問題に対する警戒再燃で売り先行で始まり、朝方に日経平均は一時191円安まで下げ幅を広げた。ただ、その後は徐々に下げ渋り、午後に入るとTOPIXとともにプラス圏に浮上する場面もあった。中国の8月の製造業購買担当者指数(PMI)が市場予想を上回った点も持ち直した要因の一つ。PMIは51.3と前月の51.2から上昇、事前予想は51だった。
  野村証券投資情報部の小高貴久エクイティ・マーケット・ストラテジストは、対中2000億ドルの追加関税は額が大きく、間接的に日本にも影響が及ぶ可能性はあるが、「7月の340億ドル、8月の160億ドルが発動された後、翌日に米国株は上昇しており、今回もある程度市場に織り込まれている」と話していた。
• 東証1部33業種は石油・石炭製品、保険、鉄鋼、非鉄金属、銀行、海運、ゴム製品、輸送用機器、鉱業など24業種が下落、保険など金融セクターは前日の米10年債利回りが2.86%と2ベーシスポイント低下した影響もあった
• 上昇は医薬品、精密機器、サービス、不動産、情報・通信、倉庫・運輸、陸運など9業種
• 売買代金上位では、中国教育省のゲーム本数制限計画を受けカプコンやネクソンが安い、ファナックやスルガ銀行、東京海上ホールディングス、JXTGホールディングスも下げた
• これに対し、中国テンセントグループとの合弁会社設立などの提携を野村証券が評価したスクウェア・エニックス・ホールディングス、新事業として仮想通貨「LINK」を9月から取り扱うLINEは高い
• 東証1部の売買高は13億302万株、売買代金は2兆4086億円、大引け時点ではMSCI指数の銘柄入れ替えによるリバランス需要があり、代金は前日に続き2兆円を超えた
• 値上がり銘柄数は736、値下がりは1253

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コラム】今度の新興市場資産売りは伝染しそうだ−アシュワース
Marcus Ashworth
2018年8月31日 14:37 JST
新興市場の苦境は新たな局面に入った。明らかに各国固有の危機だったものが、世界中に広がりつつある。
  アルゼンチンは30日、ペソの下落に歯止めをかけるため、政策金利をべらぼうに高い60%にまで引き上げたが、ペソは下げ止まらなかった。それにしても、トルコも問題は多いとはいえ、リラが同日に4%下げる理由があったとは思われない。
  南アフリカ共和国の通貨ランドとブラジル・レアルも約3%下落したが、これも特段の理由が見当たらないようだ。
  これでは伝染としか思えない。一つの新興国の問題が他の新興国の問題になる。この連鎖を断ち切る方法が見えない。  
This Looks Like Contagion
Argentina's currency crash drove losses in other emerging market hotspots

Source: Bloomberg

  しかも、このところの急落はドル高に起因していたようには見えない。ドルは貿易加重ベースで下落していたからだ。
It's Not the Dollar's Fault
This week's selloff in some emerging market currencies wasn't driven by a stronger greenback

Source: Bloomberg
  問題の核は、世界の金融安全ネットが外されようとしていることだ。投資家は米金融当局が向こう1年間に4回の追加利上げをするとの見通しを強めている。これに加え、当局は量的引き締めへと着実に動いている。明らかに、流動性がシステムから引き揚げられつつある。
  欧州中央銀行(ECB)と日本銀行はまだ流動性を注入し続けているが、そのペースは鈍っているし、ECBは年末で終了する予定だ。
Quantitative Tightening
The Fed will cut its QE holdings by $50 billion monthly from 4Q

Source: Federal Reserve
  国際通貨基金(IMF)も頼りにはならない。IMFによる500億ドル(5兆5500億円)規模の救済計画はアルゼンチン・ペソの下落を止めるには全く不十分であることが分かった。もちろん、IMFがいなければどこまで安くなったかと思うとぞっとするが。
  8月は市場の流動性が薄いし、リスクオフに転じた市場で相場変動が激しくなるのは想定内だ。しかし今回は、皆が夏休みから戻ってきたら取引が正常に回帰するのか分からない。売り込まれる新興市場国はそれぞれに深刻な問題を抱え、明白な解決方法もなく、救世主もいない。
(このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)
原題:This Emerging Market Selloff Looks Contagious: Marcus Ashworth(抜粋)
This column does not necessarily reflect the opinion of the editorial board or Bloomberg LP and its owners.


 

 


ドル・円が1週間ぶり安値、米中貿易戦争への懸念でリスク回避圧力
小宮弘子
2018年8月31日 11:39 JST 更新日時 2018年8月31日 15:15 JST
• 一時110円89銭まで下落した後は111円ちょうど前後でもみ合う
• ユーロは反発、ECBのノボトニー氏の利上げ発言に反応
東京外国為替市場ではドル・円相場が約1週間ぶりの安値を付けた。米中貿易戦争の激化懸念や新興国通貨の下落を背景に投資家のリスクセンチメントが再び悪化し、リスク回避に伴う円買いが先行した。
  ドル・円は31日午後3時13分現在、前日比ほぼ変わらずの1ドル=110円97銭。米株安や米長期金利の低下を受けて、ドル安・円高が進んだ前日の海外市場の流れを引き継ぎ、午前9時ごろに110円89銭と23日以来の水準まで下落。その後は111円ちょうど前後でもみ合った。
  IG証券の石川順一シニアFXストラテジストは、トランプ政権の対中関税第3弾が来週にも本格的に動き出す可能性が高まっているため、世界の株価は上値の重い展開が想定され、「そうなってくると円高圧力が強まりやすい」と指摘。リスク局面では新興国通貨売りなどの受け皿としてドルも選好されやすいが、「現状をみるとやはり円買いの方が強く、ドル・円の上値は重い」と語った。

  クロス円(ドル以外の通貨の対円相場)も円買いが先行。オーストラリア・ドルは対円で一時1豪ドル=80円37銭と2週間ぶりの安値を付けた。
  東海東京証券金融市場部外貨管理グループの吉田幹彦グループリーダーは、「地合いが悪い中で、クロス円や新興国通貨に対しての円買いはワークしやすいが、ドル・円は111円割れが堅く動きづらい」と指摘。「基本的に材料は蒸し返しが多く、積極的に売る新しい材料が出てきているわけではない。今日に関しては米国が三連休ということ、新たな材料待ちということもあり、ドル・円は111円前後の水準であまり動かなくなりそう」と話した。
  トランプ大統領は30日のブルームバーグのインタビューで、米中貿易摩擦で中国が米国よりも長く生き延びることはないだろうと述べた。また、中国が最近の経済成長の鈍化に対応して自国通貨を切り下げてきたと主張し、政権が各国の為替操作の有無をどう決定するか検討していると述べた。
  前日の海外市場では、トランプ大統領が来週にも中国からの輸入品2000億ドル相当への関税を発動する意向との報道やアルゼンチンペソの急落などを受け、リスク回避の動きが再燃。株安・債券高となり、外為市場では円高とドル高が進んだ。31日のアジア株もおおむね下落。ただ、日本株は徐々に下げ渋り、日経平均株価は小幅安で引けた。
  静岡銀行NY支店マーケット担当の吉田真康氏は、来週は「米ISM指数など先行指標が今後の米利上げ回数を占う上で比較的重要」としながらも、「経済指標をもってそこまで大きく相場が動くとは思っていない」と指摘。トランプ政権の対中追加関税などの「ヘッドラインリスクの方が大きく動くだろう」と話した。
  一方、ユーロは反発。欧州中央銀行(ECB)の政策委員会メンバー、ノボトニー・オーストリア中銀総裁が、イタリア経済の弱さを理由に金融緩和の解除や利上げ開始を遅らせるべきではないとの考えを示したことに反応した。ユーロ・円相場は午前に1ユーロ=129円33銭と4営業日ぶりのユーロ安・円高水準を付けていたが、午後には一時129円84銭まで上昇した。

 

 

債券上昇、海外リスク回避の買いが先行−オペ運営方針前に様子見に
野沢茂樹
2018年8月31日 8:08 JST 更新日時 2018年8月31日 16:09 JST
• 先物は7銭高の150円38銭で引け、長期金利は一時0.10%に低下
• 日銀オペ運営方針の変更があるかは「五分五分」−みずほ証
債券相場は上昇。米中の貿易摩擦、イタリアや新興国を巡る投資家のリスク回避で米長期金利が低下した流れを受けて買いが先行した。日本銀行の国債買い入れオペは無難な結果となり、午後は夕方発表される来月のオペ運営方針を前に小幅な値動きにとどまった。
  31日の長期国債先物市場で中心限月9月物は前日比9銭高の150円40銭で取引を開始し、午前に一時150円44銭まで上げ幅を拡大。午後はやや伸び悩み、結局は7銭高の150円38銭で引けた。
  みずほ証券の稲垣真太郎マーケットアナリストは「米独金利の低下もあって強めに始まったが、午後は日銀のオペ運営方針を待っている状況だ」と指摘。変更があるかどうかは五分五分で、一番可能性があるのは残存期間25年超の買い入れ額レンジ引き下げか、先月末の政策微修正で掲げた柔軟化という名目に配慮した上下両方向へのレンジ拡大とみている。

  現物債市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の351回債利回りは0.10%と、日本相互証券が公表した前日午後3時時点の参照値より0.5ベーシスポイント(bp)低く開始し、午後3時過ぎに0.105%を付けた。新発20年物の165回債利回りは1bp低い0.615%に下げた。
  トランプ米大統領は中国からの輸入品2000億ドル相当への関税を来週に公聴会が終了し次第発動したい考えだと、東京時間の早朝に伝わった。アルゼンチンやインドネシアの通貨安に加え、日中にはインドの通貨ルピーが対ドルで最安値を更新。円相場は1ドル=110円80銭台と、約1週間ぶりの高値を付けた。
  日銀はこの日の午後5時に当面の長期国債等の買い入れの運営方針を発表する。政策微修正の当日に発表した8月の運営方針では、各年限の1回あたりの買い入れ額レンジ、回数とも7月と同じだった。
  岡三証券の鈴木誠債券シニアストラテジストは、「オペ運営方針で変わるとすれば買い入れ額が下限に迫っている超長期ゾーンのレンジか」と予想。オペの減額が今後あるとしたら超長期だろうが、「想定された話で驚きはない」と述べた。
国債買い入れオペ
  日銀はこの日、残存期間1年超3年以下と3年超5年以下、5年超10年以下の長期国債買い入れを実施。オファー額はいずれも前回と同じ2500億円と3000億円、4000億円だった。
国債買い切りオペの結果はこちらをご覧下さい。
新発国債利回り(午後4時時点)
前日比
2年債 -0.115% 横ばい
5年債 -0.080% -0.5bp
10年債 0.105% 横ばい
20年債 0.615% -1.0bp
30年債 0.845% 横ばい
40年債 0.985% -0.5bp


英住宅価格が8月に0.5%下落、2012年以来の下げ幅
Fergal O'Brien
2018年8月31日 20:54 JST
• イングランド銀行は今月2日に0.25ポイント利上げ、金利0.75%に
• ネーションワイド、今年の住宅値上がり幅は1%程度と見込む
英国の住宅価格は8月に6年ぶりの下落を記録した。ネーションワイド・ビルディング・ソサエティーが明らかにした。イングランド銀行(英中央銀行)は同月に金利を引き上げている。
  ネーションワイドが31日公表したリポートによると、8月の英住宅価格は前月比で0.5%下落。前年同月比では2%上昇となり、7月の2.5%上昇から上げ幅を縮めた。

  ネーションワイドのチーフエコノミスト、ロバート・ガードナー氏は「低調な経済活動と家計への圧迫が続く現状が、年内を通じて住宅価格の伸びと売買の活動へのブレーキとなり続ける公算が大きい」とした上で、「2018年の住宅価格の上昇幅は1%程度になると引き続き見込んでいる」と述べた。
  イングランド銀行は今月2日、政策金利を0.25ポイント引き上げ、2009年以降で最高の0.75%とした。
原題:U.K. House Prices Drop Most Since 2012 as BOE Raises Rates(抜粋)


カルパースCEOの学歴説明で疑問浮上−理事会内で調査求める声
John Gittelsohn
2018年8月31日 15:03 JST
• CEOに大学の学位ないが取得目指していると16年の起用前に説明
• サイト「ネーキッド・キャピタリズム」はそうした努力はないと主張
米最大の公的年金基金、カリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)がマーシー・フロスト氏を最高経営責任者(CEO)に起用すると2年余り前に決めた際、同氏は大学の学位を持っていないが、取得を目指しているとカルパースは説明していた。
  ウェブサイト「ネーキッド・キャピタリズム」は最近、こうしたカルパースの発表を疑問視する投稿を掲載。フロスト氏はエバーグリーン州立大学で行政学の学士号と修士号を得るよう取り組んでいるとカルパースは2016年7月時点で説明していたが、ネーキッドの投稿は同氏がそうした真剣な努力をした形跡はないと伝えた。

マーシー・フロストCEO
ソース:Calpers
  3620億ドル(約40兆1800億円)相当を運用するカルパースの13人から成る理事会は今、この問題への対応で意見が分かれている。
  マーガレット・ブラウン理事はフロストCEO起用の過程およびそれ以降の説明についての全面的な調査を求めるとする一方で、ブルームバーグ・ニュースが接触した理事2人は、9月後半の同CEOとの年次勤務評価で学歴について説明を求める方針だと語った。
  
  理事会メンバーの3人はフロストCEOは学位があると申し立てたことはなく、学歴は関係ないと主張。面接とワシントン州の公的年金基金を率いてきた実績に基づき採用されたと述べた。
  プリヤ・マートゥル理事長とロブ・フェックナー副理事長は連名で「フロストCEOおよび彼女のリーダーシップへの理事会の信頼は揺るぎない」とのコメントを発表した。
  フロストCEO(54)はコメントを控えたが、10年以降にエバーグリーン州立大で授業を受けていないことは認めた。カルパースの広報担当ウェイン・デービス氏は16年の発表内容について自身に責任があるとしているが、フロストCEOが受けた教育についての情報をどのようにして得たか思い出せないと話した。
原題:Calpers CEO’s Education to Get Scrutiny From Some Board Members(抜粋)

中国人民元:上昇−予想より高めの中心レート設定、17営業日連続
Tian Chen、Emma Dai
2018年8月31日 13:12 JST
• オフショア元、このままいけば1週間ぶり大きな上げ
• 人民銀に抵抗するような取引を市場は望まず−謝棟銘氏
中国人民元は31日、対ドルで上昇している。中国人民銀行(中央銀行)が人民元の中心レートを市場予想より引き続き元高方向に設定し、当局が為替相場の安定化を望んでいるとの見方が強まった。
  オフショア人民元は香港時間午前10時54分(日本時間同11時54分)現在、0.32%高の1ドル=6.8457元。このままいけば1週間ぶりの大きな上げとなる。 中国本土市場の人民元は0.15%上昇。
 
Clear Signal
Yuan reference rate shows biggest bias for strength in two weeks
Source: Bloomberg, CFETS
  人民銀は17営業日連続で中心レートを市場予想より高めに設定。この日の中心レートとブルームバーグ調査での予想平均の開きは0.1%と、2週間ぶりの大きさとなった。
  オーバーシー・チャイニーズ銀行の謝棟銘エコノミスト(シンガポール在勤)は「人民元相場の安定化に向けた一段の支援策を巡る懸念があり、人民銀に抵抗するような取引を市場は望んでいない」と指摘。「貿易摩擦が大きく悪化したり、ドルが大幅上昇したりしない限り、人民元はこの先、狭いレンジ内で推移する可能性が高い」と述べた。
原題:Offshore Yuan Gains Most in Week as China Sends Signal With Fix(抜粋)

 

 

http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/345.html#c2

[国際23] EUを反中国貿易戦線に引き入れたワシントン(マスコミに載らない海外記事) 赤かぶ
6. 2018年8月31日 23:10:41 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1404]
トランプ大統領がWTO脱退を警告−米国への対応悪ければ
John Micklethwait、Margaret Talev、Jennifer Jacobs
2018年8月31日 6:00 JST 更新日時 2018年8月31日 10:49 JST
米国が脱退すれば国際貿易体制の基盤を弱体化させる恐れ
トランプ氏:WTO設立協定は「通商協定としては過去最悪だ」

トランプ大統領 Photographer: Al Drago
トランプ米大統領は30日、ブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、世界貿易機関(WTO)が米国をより良く扱わなければ、脱退するだろうと述べ、国際貿易体制の基盤であるWTOをあらためて批判した。

  大統領執務室でインタビューに応じたトランプ大統領は「彼らが正しく振る舞わなければ、私はWTOから脱退するだろう」と述べ、WTO設立協定は「通商協定としては過去最悪だ」と語った。

  米国がWTOから脱退すれば、世界経済には米中間で深まる通商対立よりもはるかに重大な事態となり、貿易紛争解決の場として米国など主要国が1994年に発足を決めたWTOを弱体化させかねない。トランプ大統領は先月、米国がWTOに長年「非常に不当に扱われている」と述べ、WTOが「やり方を変える」必要性に言及していた。

  大統領は30日のインタビューで、WTOへの「提訴で米国は昨年を除けばめったに勝てなかった」が、「過去1年に多く勝ち始めている。なぜか分かるか。それは米国が勝たないと私が脱退することを彼らは知っているからだ」と述べた。
  

原題:Trump Threatens to Pull U.S. Out of WTO If It Doesn’t ‘Shape Up’(抜粋)

(大統領のコメントを追加して更新します.)
http://www.asyura2.com/18/kokusai23/msg/757.html#c6

[経世済民128] アルゼンチン、ペソ安止まらず 中央銀行が主要政策金利60%に引き上げ(ニューズウィーク) :国際板リンク  赤かぶ
2. 2018年8月31日 23:29:43 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1405]

 
2018年8月31日 / 15:21 / 5時間前更新

コラム:悪循環に陥るアルゼンチン、市場経済派大統領を窮地に

Martin Langfield
2 分で読む

[ニューヨーク 30日 ロイター BREAKINGVIEWS] - アルゼンチンの市場経済派の旗手であるマクリ大統領は、2015年12月に政権の座に就いてからずっと同国の長期的繁栄に適った政策を進めてきた。しかし今、あと一歩で破滅する状態に追い詰められている。

歯止めのかからないインフレや干ばつ、投資家心理の悪化が、マクリ氏が取り組んできた経済再生計画を危機にさらしている。

新興市場国経済への懸念を強めた投資家がアルゼンチンペソに売りを浴びせたため、マクリ氏は5月に国際通貨基金(IMF)に支援を要請。IMFは財政引き締め策の導入を条件に500億ドルの融資枠を与えることを約束した。しかし既にこの支援では十分ではないようだ。

マクリ氏は29日夜、IMFに融資の早期実施を求めていると述べて国民に安心感を与えようとしたが、むしろ同国が債務を返済できないのではないかとの投資家の不安を煽り、逆効果になった。中央銀行は30日に主要政策金利を45%から60%に引き上げたが、これもまた効果がなかった。ペソは15%以上下落し、アルゼンチンはこれほど高い金利には耐えられないという投資家の認識が浮き彫りになった。

ペソの下げ幅が大きくなるほど、アルゼンチンは外貨建て債務の返済が困難になる。昨年のドル建て100年債の発行も、堅実な政策というよりも自信過剰な行動に見えてくる。100年債の価格は今年に入って3分の1近く下落。利回りは3%ポイントほども上がって9.96%となった。

政府は30日、一段の財政引き締めを発表したが、インフラ支出などの景気刺激策が減り、エネルギー補助金の縮小や30%を超えるインフレに見舞われている有権者の痛みが一段と増して、問題はさらに悪化するだろう。

しかしペソを売る投資家は、自分が何を求めているのか注意した方がいい。持続不可能な財政支出やフェルナンデス前大統領の政策を見直す動きは、常に政治的な反発を招いてきた。今年の成長率が3%と予想されていたときには、汚職疑惑で支持率が落ちている野党・正義党(ペロン党)のフェルナンデス氏が来年10月の大統領選に出馬しても、人気の高いマクリ氏が勝つとみられていた。

ペソが急落し、今年の経済成長率が少なくとも1%のマイナスになりそうな今となっては、マクリ氏はフェルナンデス氏よりおとなしい正義党候補にすら勝てないかもしれない。

●背景となるニュース

・アルゼンチン中銀は30日、主要政策金利を45%から60%に引き上げた。インフレを抑制し、通貨ペソの下落に歯止めを掛けるため。ペニャ官房長官は、政府が財政引き締め策を加速させる手段を模索していると述べた。

・マクリ政権に対する投資家の信認は失墜し、ペソの対ドル相場が過去最安値を更新。国際通貨基金(IMF)は29日、500億ドルの融資の早期実施を求めるアルゼンチンからの要請について検討していることを明らかにした。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。


 


 


8月は新興市場にとって醜悪な月に−通貨危機が拡大
山崎朝子、Yumi Teso
2018年8月31日 14:44 JST
MSCI新興市場通貨指数は5カ月連続の月間下落へ
インドネシア・ルピアとインド・ルピーも売られる

Photographer: Dimas Ardian / Bloomberg
新興市場資産は月間ベースで下落へと向かっている。アルゼンチンとトルコの通貨急落が、世界へ危機が波及するとの懸念を引き起こした。貿易を巡る米中の緊張の高まりも影響した。

  MSCI新興市場通貨指数の月間下落率はシンガポール時間午前11時57分(日本時間午後0時57分)現在で2.2%。5カ月連続の月間下落となりそうで、2015年9月以来で最長となる。アジアでは31日、インドネシア・ルピアが1998年以来の安値となり、インド・ルピーは過去最安値を更新した。ルピーの月間下落率は3年ぶりの大きさとなる見込み。

  最新の売り浴びせの引き金となったのはアルゼンチンだ。ペソが過去最安値に沈む中で当局は政策金利を60%に引き上げた。FPG証券の深谷幸司社長は、アルゼンチンンの問題は投資家の視線を新興市場の中のファンダメンタルズが弱い国へと引き付け続けるだろうと述べた。


原題:August Turns Ugly for Emerging Markets as Currency Crises Spread(抜粋)


 
 

ワールド2018年8月31日 / 18:47 / 4時間前更新

トルコリラ、作戦の標的にされた=エルドアン大統領
1 分で読む

[アンカラ 31日 ロイター] - トルコのエルドアン大統領は31日、軍の式典で演説し、同国の通貨リラは作戦の標的にされたとの考えを示した。ただ、トルコは攻撃を克服すると述べ、通貨の乱高下は終わるとも予想した。大統領はトルコがリラの下落に対して必要な措置を講じていると強調し、そうした措置の具体的な成果が見え始めていると述べた。

また、作戦はトルコに対するものだと指摘し、為替相場乱高下の背後に誰がいるかを理解するのに天才である必要はないと語った。

大統領はさらに、トルコはロシア製の最新鋭地対空ミサイル「S400」を必要としており、可能な限り早期に調達するとも述べた。

トルコは最新鋭ステルス戦闘機「F35」も必要としており、米国から購入するための支払いを続けるが、もし米国がF35の引き渡しを停止すれば、ほかから調達するとしている。

 


2018年8月31日 / 17:27 / 6時間前更新

コラム:米国経済、「景気の山」へ急接近か
John Kemp
2 分で読む

[ロンドン 30日 ロイター] - 米国の景気は、減税や企業と消費者の信頼感がしっかりしているおかげで拡大が続いているという兆候が読み取れる。

ただし拡大期間の長さと、労働市場および財市場のスラック(需給の緩み)が限られているように見える点の双方が、現在の成長ペースは恐らく中期的には持続できないことを示唆している。

景気拡大は足元で110カ月目を迎え、来年7月まで続けば過去最長を記録する。

この長さだけでは景気の転換点を占う適切な材料にはならないが、ほとんどの金融関連、実体経済関連の指標が数十年来の強い水準近辺にあり、リスクバランスは変化しつつある。

米国における景気循環研究の権威であるビクター・ザーノウィッツ氏は1992年の論文で「一番大事なのはカレンダー上の時間の経過ではなく、その間動き続ける経済に何が起きたかだ。それは数々のイベントとプロセス、知見、行動に満たされた歴史的、心理的な時間と言える」と記した。

さらにザーノウィッツ氏は「1つの単純な論理的帰結は、現在の景気循環局面とその長さに関する知識は役に立つものの、それだけを使ってはいけないということ。景気の拡大と縮小の長さはばらつきがあまりに大きく、転換点を予想するのは極めて難しい。ある局面の長さは、その終わりを見通す上で大して有益ではなく、進化を続ける景気情勢のダイナミクスの方が意味がある」と指摘した。

同氏によると、最も大きな予想の間違いが起きるのは景気循環の変わり目付近、特に景気の山においてだ。多くの人は直近のイベントや事態の展開に過度の影響を受け、足元の流れに身を任せてしまい、景気後退や回復を見逃すという意味で循環の視点が不十分になるという。

<逆イールド>

米国債の「逆イールド化」と景気減速は数十年にわたってかなり相関関係を持つだけに、現時点で長短利回りスプレッドがゼロに近づいていることで、景気減速懸念が高まってきた。

2年債と10年債の利回りスプレッドは現在わずか22ベーシスポイント(bp)と、直近の景気後退が始まった2007年12月の数カ月前以来の低水準になっている。

このスプレッドは、1983年以降のいくつもの景気循環に関してパーセンタイル順位で分類した場合、82番目─83番目の段階に相当し、景気が既に相当に成熟し、金融が引き締まっている局面に入っていることが分かる。

次の景気減速の正確なタイミングやその深さを予測するのは不可能だが、利回りスプレッドの縮小からは、今後数年間の景気動向のリスク分布が下振れ方向にシフトしている様子がうかがえる。

またインフレ加速や新興国危機、金融政策の失敗、企業の財務悪化といった事態が悪くなるシナリオは増えている半面、万事順調というシナリオは少なくなっている。

足元の小幅な利回りスプレッドは、購買担当者景気指数(PMI)や消費者信頼感、失業率、消費者物価指数、株価など多くの指標の動きとも一致する。

これらは全て、景気循環の山が近づいていて、向こう1年から2年の間に景気後退に陥らないとしても、成長がより緩やかになる公算が大きいことを示している。

重大な問題は、次の景気減速が単なる小休止で拡大自体は続く(1994/95年のケース)のか、あるいは現在の循環が終わって新たな循環が始まる(2000/01年ないし07/08年)起点になるのかだ。


 

 

 

グロース株は弱気相場に直面、バリュー株に上振れ余地大
Dani Burger
2018年8月31日 10:33 JST
• バリューとグロースのスプレッド、ネットバブル以来の最低水準付近
• 次の下落局面では割安株がアウトパフォームする公算大きい

Photographer: Martin Leissl / Bloomberg
もしアナリストが正しいなら、米国株の歴史的な強気相場で最大の勝ち組となった銘柄の一部が厳しい局面に向かっている可能性がある。
  一貫して高水準の利益を稼いでいる企業、いわゆるグロース株は、上昇相場に後れを取る割安なバリュー株に先行している。実際、S&P500種バリュー指数はグロース株との比較で2000年以来の低水準に接近している。
  もっとも、この2つのファクター間におけるパフォーマンスの違いを語る上で安値更新が一つの節目になるとしても、アナリストらはドラマは終わらないと考えている。モルガン・スタンレーは今週、市場ではバリュー株が不釣り合いなほど売られており、これは次の下げがグロース株に生じる公算が大きいことを意味すると指摘した。
             

              
  マイク・ウィルソン氏を含む同行の株式ストラテジストらは27日のリポートで、業績見通しが大幅に改善されても、上振れ余地が大きいバリュー株が最大の受益者になるだろうと述べた。
            
Cheap Thrills
Value factor clocks worst performance over the past month

Source: Bloomberg
Pure market neutral factors as tracked by FTW
  また、エバコアISIのポートフォリオ戦略責任者、デニス・ディバッシャー氏は28日のリポートで、割安株はモメンタム株を広くアンダーパフォームしているものの、極端な格差はこの関係がより平均的な水準に収れんする公算が大きいことを意味すると説明。「伝統的なバリューと価格モメンタムの相対パフォーマンスは16年半ば以来の低水準にある」とし、「価格モメンタムの戻りはピークに達している可能性がある」と付け加えた。
原題:Morgan Stanley Says Growth Stocks Face Rolling Bear Market (1)(抜粋)


 


http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/341.html#c2

[政治・選挙・NHK249] <防衛費>過去最高5兆2900億円要求 米兵器押し上げ(毎日新聞)-しかしトランプ大統領は「もっと米国製兵器を買え」 JAXVN
7. 2018年8月31日 23:37:36 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1406]

#安全保障と対米政策、デフレ脱却を理由にした財政膨張が続く限り

日銀による財政ファイナンスは続く可能性は高い

 


 


ワールド2018年8月31日 / 15:06 / 8時間前更新
19年度防衛費、過去最高の5.3兆円を要求 2%超の大幅増
1 分で読む

[東京 31日 ロイター] - 防衛省は31日、2019年度の防衛費について、過去最高の5兆2986億円(米軍再編費除く)を要求することを決定した。18年度の当初予算から2.1%の上積みで、毎年0.8%ずつ増額してきた過去5年と比べて大幅な伸びとなる。米軍再編費は年末の政府予算案の編成までに要求するとしており、総額はさらに膨らむことになる。

来年度は、陸上配備型のミサイル迎撃システム「イージス・アショア」や長距離巡航ミサイルなど、北朝鮮や中国をにらんで日本がこれまで保有してこなかった装備の取得に乗り出す。宇宙やサイバーといった、新たな領域の対処能力も強化する。

イージス・アショアは、イージス艦に積むミサイル迎撃システムを陸上に配備したもので、目となるレーダー、頭脳となる戦闘システム、機材を収納する建物で主に構成する。関連経費を含めた来年度の計上額は、2基で2352億円。5年で分割払いし、来年度は57億円を支出する。

迎撃に使用するミサイル本体は別費用で、この取得費として19年度は818億円を計上する。関係者によると、能力を向上させた最新型の「SM3ブロック2A」は1発当たり40億円を超える。

最新鋭のステルス戦闘機「F35A」から発射する射程500キロの巡航ミサイルの取得費73億円も盛り込んだ。従来型の戦闘機「F15」も、射程1000キロ弱の巡航ミサイルを搭載できるよう改修する方針で、2機分101億円を計上する。

長距離巡航ミサイルは、専守防衛を掲げる日本が保有してこなかった他国の領土に届く攻撃能力を持つ。防衛省は取得に乗り出す理由として、世界的にミサイルの長射程化が進む中、戦闘機の搭乗員の安全を確保しながら、島しょ部や艦艇を守る必要があるためとしている。

宇宙関連は、不審な動きをする人工衛星や、打ち上げロケットの残骸などを米軍と連携して監視するレーダーを整備する。また、自衛隊の指揮・通信機能を守るサイバー防衛隊を約50人増員して220人体制にする。

このほか、6機のF35A取得を計画する。従来より小型で安価な護衛艦を2隻、潜水艦を1隻建造する費用、超音速で巡航可能な誘導弾の研究費なども要求する。

日本の防衛予算は、主に自衛隊の能力増強費と米軍再編費で構成される。今回の概算要求では米軍再編費は「事項要求」として年末の政府予算案編成時までに決めるとしている。

久保信博 編集:田巻一彦


 

ビジネス2018年8月31日 / 19:52 / 3時間前更新
政策経費最大の78兆円台、要求総額も最大に=19年度予算で政府筋
1 分で読む

[東京 31日 ロイター] - 2019年度一般会計予算の概算要求で、国債費を除く政策経費は過去最大の78兆円台前半となる見通しとなった。複数の政府筋が明らかにした。高齢化に伴う社会保障費の伸びに加え、北朝鮮情勢への対応で防衛費がかさみ、要求総額も102兆円台後半と過去最大を更新する。

要求総額が100兆円を突破するのは5年連続。政策経費の約4割は厚生労働省の要求で、年末にかけた予算査定でいかに縮減できるかが焦点となる。来週にも発表する。

国債費も合わせた19年度の要求総額は、過去最大だった16年度の102.4兆円を数千億円規模で上回る。安倍政権はこれとは別に消費増税対策を19年度予算に計上する方針で、当初予算額として初めて100兆円を突破する可能性が出てきた。

山口貴也

 


 
ビジネス2018年8月31日 / 17:36 / 6時間前更新
日銀9月国債買入額レンジ、「5年超10年以下」上限を1000億円引き上げ
1 分で読む

[東京 31日 ロイター] - 日銀は31日、9月3日から適用する「当面の長期国債買い入れの運営について」(9月分)を公表した。

それによると、1回当たりのオファー金額として示されたレンジは、「残存1年超3年以下」が2000億─4000億円程度、「残存3年超5年以下」が2500億─4500億円程度、「残存5年超10年以下」は3000億─6000億円程度と、8月に比べて上限がいずれも1000億円引き上げられた。また、現時点で予定されている回数はそれぞれ月5回と1回減少した。

また、「残存1年以下」は100億─1000億円程度、「残存10年超25年以下」は1500億─2500億円程度、「残存25年超」は500億─1500億円程度、「物価連動債」は250億円程度、「変動利付債」は1000億円程度に据え置かれた。回数も8月から据え置きとなった。

星裕康


 


外国為替2018年8月31日 / 18:31 / 5時間前更新
日銀オペこうみる:事実上の買入減額、市場機能低下を懸念か=メリルリンチ 大崎氏
1 分で読む

[東京 31日 ロイター] -

<メリルリンチ日本証券・チーフ金利ストラテジスト 大崎秀一氏>

日銀は31日に発表した9月国債買い入れ方針で、中期と長期を対象に通知回数を5回と従来から1回減らした。9月は国債入札日と金融政策決定会合の結果発表日を除くと9営業日になり、月10回程度としてきたこれまでのペースを下回るため、回数の減少はある程度想定されていた。月間買入額が多い中期と長期を減らしたのだろう。

一方で、1回オファー金額として示されたレンジ上限をいずれも1000億円引き上げた。市場に緩和縮小(テーパリング)と受けとめられないようにバランスを取ったのではないか。

レンジの中央値を前提にした場合、月間買入額は、「3年超5年以下」「5年超10年以下」で事実上の減額になる。日銀の方針として、国債買い入れを減らしたいとの思惑が透けて見える。

日銀は7月末の決定会合で、市場機能の改善を狙って政策修正に踏み切った。1カ月も経たずに、主要年限の新発債取引が不成立になる日がみられるなど、市場では流動性やボラティリティの低下が懸念され始めた。日銀としては、金利水準だけではなく、国債市場の機能が低下していると思えば、減額することも躊躇しない姿勢なのだろう。7月会合で決まったことをたんたんと実行に移しているにすぎないともいえる。


 


日銀オペ方針、中長期買い入れ回数を削減ー金利上昇要因との見方(1)
山中英典、野沢茂樹
2018年8月31日 17:29 JST 更新日時 2018年8月31日 18:15 JST
1ー3年、3ー5年、5ー10年の買い入れレンジの上限引き上げ
回数減少と買い入れレンジの上限上げでバランスを取ったー野村証
日本銀行は9月の国債買い入れ計画で、中期と長期ゾーンのオペの実施回数を減らす一方、買い入れ額のレンジの上限を引き上げた。市場ではオペ回数減少は金利上昇要因になるとの見方が出ている。

  日銀が31日に発表した買い入れ計画によると、中期、長期ゾーンとも買い入れる日数を8月の6回からともに5回に減らした。

  9月は国債入札日と日銀金融政策決定会合の最終日を除いたオペ実施可能日は9営業日しかなく、これまでの月10回から回数が減るとの見方は出ていた。日銀はオペ計画の注意書きで、買い入れの回数について「必要に応じて回数を増やすことがある」としている。

  残存期間1年超3年以下の買い入れレンジの上限を4000億円、3年超5年以下は4500億円と、8月よりそれぞれ1000億円ずつ引き上げた。5年超10年以下も1000億円多い6000億円とした。

  野村証券の中島武信シニア金利ストラテジストは、「9月のオペ方針で残存1−5年と5−10年のオペ回数を5回に減らしたが、単純に回数を減らすだけだと、柔軟化ではなくテーパリングと捉えられかねない。買い入れレンジの上限を引き上げてバランスを取った」と分析。その上で、「動いて欲しいという日銀の意図をくむのであれば、週明けは金利が上昇する可能性がある」と述べた。

  一方、残存期間1年以下や10年超の超長期ゾーンなど他の年限は、買い入れ実施回数やレンジに変更はなかった。

9月の日銀買いオペ方針(単位=億円)
年限 購入レンジ オペ額 回数(8月)
1年以下 100〜1000 500 2(2)
1−3年 2000〜4000 2500 5(6)
3ー5年 2500〜4500 3000 5(6)
5ー10年 3000〜6000 4000 5(6)
10ー25年 1500〜2500 1800 5(5)
25年超 500〜1500 600 5(5)
(第5段落、本文末尾にオペ計画の表を追加して更新します.)

 


#その一方で。。

 

人生100年時代、高齢女性にはいばらの道−「貧困の苦しみ続くだけ」
高橋舞子
2018年8月31日 10:20 JST
• 高度成長支えた専業主婦、高齢になって自立求められても仕事なく
• 家族主義崩壊で時代遅れの社会保障制度、寿命100年想定せず
北上秀代さん(60)はこの2カ月間で100件以上の会社に応募し、ほとんど書類選考で落とされた。テレビ局で働く夫と結婚し、都内で専業主婦として暮らしていたこともあったが、約10年前に離婚した。「きっと私は貧しい『下流老人』になるのだと思う。この苦しみが続くだけなら、人生100年もいらない」と語る。

北上秀代さん
Photographer: Noriko Hayashi/Bloomberg
  主に男性が働き大家族を支えていた高度経済成長期の日本の社会保障制度は、時代に合わなくなってきている。大家族はもはや珍しく、人々は昔よりも長生きするようになった。財政難で年金の支給開始年齢が引き上げられる中、政府は「人生100年時代」と銘打って高齢者の雇用を促進しているが、高度成長期に専業主婦やパートタイマーになることを期待されてきた女性たちは勤務経験やスキルに乏しく、働くことを望んでも現実は厳しい。
  日本は、65歳以上の人口が総人口に占める割合を示す高齢化率が世界で最も高い。平均寿命は女性の方が長く、100歳以上の高齢者の88%を女性が占める。男性よりも女性の方が「働けるうちはいつまでも働きたい」と思っている割合がわずかに高いにもかかわらず、60歳代後半の男性就業率が55%であるのに対し、女性は35%にとどまる。
女性の一生は長い
高齢になるほど女性比率高まる

出所:国立社会保障・人口問題研究所
備考:2015年のデータを使用
  厚生労働省の調査によれば、収入が公的年金のみの受給者の63%を女性が占め、うち57%の年金収入は100万円未満だ。所得格差を示す指標の一つである相対的貧困率は、日本の高齢者は19.4%で経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均の12.6%を上回る。高齢者のうち、単身女性の52%が相対的貧困にあるのに対し、単身男性は38%だ。
  第一生命経済研究所の宮木由貴子主席研究員は「そもそも社会システムが100歳まで生きるライフコースを想定して作られていない」と指摘する。現行制度は夫が退職後十数年で亡くなり、妻がその後の人生を夫の退職金と生命保険、そして年金を使って過ごす前提で機能してきたと説明。これまで専業主婦として生きてきた女性が高齢期を迎えてから仕事を探すのは「非常に難しい」と話す。
負担は家族に
  現行の社会保障制度は家族の支えを前提としている。妻は夫の扶養に入り、夫の死後は息子の世話になる女性が多いと想定されていた。65歳以上の高齢者がいる世帯の半数程度が孫を含む三世代で暮らしていた約30年前はそれでも問題なかったかもしれない。だが、今では単身高齢世帯が倍増している。そのうち7割近くが女性だ。
  「100歳まで生きたいと思うのはお金があって家族がいる人だけ」。さいたま市のアパートで一人で暮らす別井節子さん(78)は月12万円の生活保護で生活している。「私はあと2、3年の人生で十分」とつぶやく。
  戦後の高度経済成長期には、男性は「企業戦士」や「モーレツ社員」と呼ばれて長時間労働をこなし、女性は結婚したら専業主婦やパートタイマーになるのが当然とされる風潮があった。制度面でも政府は妻の給与収入が年103万円以下の従業員には配偶者控除を適用し、130万円未満の年収であれば妻の社会保険料の支払いを免除したほか、多くの企業も配偶者手当を支給してきた。配偶者控除の基準額は今年に入り150万円以下へと引き上げられた。

バス停に座る女性。東京、多摩市で。
Photographer: Noriko Hayashi/Bloomberg
  高齢者の貧困問題に警鐘を鳴らす「下流老人」の著者、藤田孝典氏は日本の社会保障は家族主義を採用してきたと指摘。「高度経済成長期が終わり、日本型終身雇用が崩壊した時に、政府は国民から税制上のコンセンサスがもらえず、負担が家族にかかってきた」と語る。しかし、子世代も自らの子供を支えるのに精いっぱいで、親の生活まで支援するのは難しく、結果として親を見捨てたり共倒れをしたりする世帯が増えているという。
  ソーシャルワーカーとしても活動している藤田氏は、専業主婦として男性に従属的に生きてこざるを得なかった高齢女性の相談者の多くは、低年金、低スキルで、我慢強い傾向があると話す。
  少子高齢化が進む中、厚生年金の支給開始年齢は、男性は2025年、女性は30年までに60歳から65歳へと段階的に引き上げられる。財務省は今年4月に、68歳まで引き上げることを議論した。1947−49年のベビーブームに生まれた団塊世代が75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」はすぐそこに迫っている。高齢女性が貧困に陥るのをどう回避するのか、早急な対策が求められている。



http://www.asyura2.com/18/senkyo249/msg/892.html#c7

[国際23] 米中貿易戦争、第1ラウンドはアメリカの勝ち(ニューズウィーク)  赤かぶ
5. 2018年8月31日 23:47:45 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1407]

 


2018年8月31日 / 20:17 / 3時間前更新
中国全人代、個人所得税法の改正を承認
1 分で読む

[北京 31日 ロイター] - 中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)は31日、個人所得税法の改正を承認し、基礎控除額を月額3500元から同5000元(732.02ドル)に引き上げた。国営メディアが報道した。

人民日報によると、納税者は子どもの教育、住宅ローン金利、家賃、重病の治療費に関連した費用の控除も可能になる。

改正は来年1月に施行されるが、基礎控除の引き上げは今年10月1日に発効するという。

財政次官は記者会見で、所得税法の改正案により、消費が大幅に押し上げられる一方、税収は年間で約3200億元減少すると述べた。

財政省関係者によると、法改正後に納税者数が減少する見込み。都市の労働人口における納税者の割合は現在の44%から約15%に減少することが予想されるとした。

中国国営の新華社によると、劉昆財政相は6月、個人所得税法の改正により、低・中所得者層を中心に全ての納税者に程度の差はあれ減税をもたらすとの見方を示していた。

中国中央テレビ局(CCTV)の報道によると、月額の給与額が約1万元(1463.55ドル)の納税者は、税負担が70%減少する。

改正法では他の収入源も含む包括的な収入に基づいて税負担が評価される見通し。現状の所得税率は賃金に基づいている。


 

ワールド2018年8月31日 / 11:16 / 3時間前更新
アングル:NAFTA新合意、主要分野にみる勝ち組と負け組
2 分で読む

[30日 ロイター] - 米国とカナダは30日、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を巡り、31日までの合意を目指して集中的な協議を行った。

この問題では米国とメキシコが27日に合意し、カナダの交渉再開に道を開いた。米・メキシコ間の合意と元のNAFTAとの主要な相違点および、勝ち負けについての見通しを以下にまとめた。

●自動車

米国とメキシコは自動車の原産地規則について、現地調達率を現行の62.5%から75%に引き上げることで合意した。

これは北米以外の地域で組み立てた自動車を米国で売りにくくするだけでなく、アジア製部品をこの地域からさらに締め出すのが狙い。

両国はまた、自動車の40─45%を米国やカナダなど時間当たり賃金が最低16ドルの地域で生産することで合意。これはメキシコへの生産移転を食い止める可能性がある。

正式な合意に盛り込まれていない付帯合意では、米国はメキシコからの乗用車およびスポーツタイプ多目的車(SUV)の輸入台数が年間240万ドルを超えると、国家安全保障上の理由による関税を検討することが認められる。

これは昨年の実際の輸入台数よりも大幅に多い数字であるため、メキシコは輸出を増やす余地があるが、潜在的な輸入枠の役割を果たす。付帯合意では、年間900億ドルを超えるメキシコからの自動車部品輸入に対しても同様の関税が認められる。

それでも、トランプ政権が世界中の自動車輸入に対し、米通商拡大法232条に基づく国家安全保障を理由とした関税を発動するなら、メキシコは他国に比べれば有利になるかもしれない。

合意では、従来のNAFTAに比べ北米製の鉄鋼、アルミニウム、ガラス、プラスチックの利用を増やすことも義務付けた。

新NAFTAは付帯合意を通じ、北米を「管理貿易」へと近付ける。これは、合意に対応できる大企業には有利かもしれないが、消費者は値上がりという害を被る可能性がある。

●紛争処理

米国とメキシコは、反ダンピング紛争処理制度を定めたNAFTA19条の撤廃で合意した。

これはトランプ大統領が強く求めたものだが、カナダは難しい立ち場に追い込まれる。トルドー首相は、針葉樹製材や紙に対する米国の関税を不公平として戦う上で、19条の維持を主張してきたからだ。

カナダは19条を維持するため、現在保護されている210億カナダドル(163億米ドル)規模の乳製品市場に関して譲歩を迫られるかもしれない。

●雇用

新たな合意では、国際労働機関(ILO)の労働基準を順守することをメキシコに義務付ける条項も盛り込んだ。これはメキシコの賃金を引き上げ、労働集約型投資の場としての同国の魅力を削ぐことになる。

●農業

合意では、今後も米国はメキシコ産農産物に関税をかけない。メキシコは最大の対米農産物輸出国。

●国境を超えた輸送

メキシコは、免税対象の配送額の上限を2倍に引き上げ、100ドルとする。これは配送企業やアマゾン・ドット・コムのような電子商取引企業にとって追い風となる。

●有効期間

新たな合意では、NAFTAの有効期間を16年間とし、6年ごとに見直して16年間延長できるようにする。

貿易制限が強まる結果、メキシコとカナダは6年ごとに交渉のテーブルに戻る必要性が増す。

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」
ワールド2018年8月31日 / 20:17 / 3時間前更新
中国全人代、個人所得税法の改正を承認
1 分で読む

[北京 31日 ロイター] - 中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)は31日、個人所得税法の改正を承認し、基礎控除額を月額3500元から同5000元(732.02ドル)に引き上げた。国営メディアが報道した。

人民日報によると、納税者は子どもの教育、住宅ローン金利、家賃、重病の治療費に関連した費用の控除も可能になる。

改正は来年1月に施行されるが、基礎控除の引き上げは今年10月1日に発効するという。

財政次官は記者会見で、所得税法の改正案により、消費が大幅に押し上げられる一方、税収は年間で約3200億元減少すると述べた。

財政省関係者によると、法改正後に納税者数が減少する見込み。都市の労働人口における納税者の割合は現在の44%から約15%に減少することが予想されるとした。

中国国営の新華社によると、劉昆財政相は6月、個人所得税法の改正により、低・中所得者層を中心に全ての納税者に程度の差はあれ減税をもたらすとの見方を示していた。

中国中央テレビ局(CCTV)の報道によると、月額の給与額が約1万元(1463.55ドル)の納税者は、税負担が70%減少する。

改正法では他の収入源も含む包括的な収入に基づいて税負担が評価される見通し。現状の所得税率は賃金に基づいている。

 

http://www.asyura2.com/18/kokusai23/msg/750.html#c5

[国際23] 日本発貨物、ロシア向け輸送スピードを加速へ(Sputnik日本) 無段活用
2. 2018年8月31日 23:49:52 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1408]
コラム2018年8月31日 / 14:31 / 4時間前更新
コラム:中国とロシア、大規模軍事演習にこだわる理由
Peter Apps
4 分で読む

[29日 ロイター] - トランプ米大統領が直面する司法・政治面での課題、そして英国の欧州連合(EU)離脱など、西側諸国がさまざまな国内問題に忙殺されている中で、中国はロシアが9月に実施する過去30年以上で最大規模の軍事演習に参加しようとしている。

ロシアによれば、約30万人の部隊、1000機以上の軍用機、ロシアの戦艦2隻とすべての空挺部隊が参加する今回の軍事演習「ボストーク」は、旧ロシアが1981年に行った演習以来の規模となる。

中国による過去最大の海上演習の実施からたった半年後となる今回の合同軍事演習は、世界の2大独裁体制国家が、いかに軍事姿勢を重要視しているかを浮き彫りにしている。

米国や米同盟国に対する戦争を期待、または予想している可能性は低いものの、中国とロシア両国は、そのための準備は粛々と進めており、抜かりはないとの印象を絶えず与えたいと願っている。それにより近隣地域を支配し、さほど強力ではない隣国を威圧しているのだ。

また両国とも、米国防総省に対して明確なメッセージを発信している。それはすなわち、東欧や南シナ海で戦争が勃発した場合、米国が介入を試みるならば、深刻な損失を被るリスクがある、という警告だ。

こうした耳目を集める演習は、軍事面における投資開発や、兵器実験など、より大局的な動きの一部にすぎない。その成果は、時に明暗が分かれることがあるにしてもだ。

報道によれば、ロシア軍は昨年、北極海で失敗に終わった核弾頭巡航ミサイルの試験飛行からまだ立ち直れないでいるという。一方、中国は過去2年間、特に南シナ海を中心に、軍用機事故の増大に頭を悩ませていると伝えられている。

これは、軍事力強化を追求する中ロ両国が、その過程でどれほど大きなリスクを背負う意志があるかを示す明白なサインだ。恐らくそれは、米国と比べても、あるいは欧州やアジアの米同盟国と比べても、かなり大きいのではないだろうか。

ロシアが9月実施する合同演習と平行して、同国は地中海にここ数年で最大の海軍部隊を展開している。

これは、シリアにおけるロシアの行動に今後介入するな、という米国への露骨な警告だが、それと同時に、国内向けの政治的メッセージである可能性も高い。プーチン大統領の支持率に最近やや陰りがみられる中、軍事的行動は人気回復につながる可能性があるからだ。

また中国の習近平国家主席も、権力基盤を固める過程で軍事的なナショナリズムをより強く打ち出すようになっている。とはいえ、実際の戦争勃発時に両国が直面する状況は、かなり異なるものになる。

ロシアは、将来的な戦争は地上戦の可能性が高いと考えている。つまり、隣国ジョージア、ウクライナに対する2004年及び2014年以降に起こった紛争が、拡大版で再現されるような状況だ。この場合、勝利の鍵は、国境から数マイル以内に圧倒的な軍事力を展開しつつ、米国を筆頭とする強力な西側諸国の介入を阻止することにある。

一方、中国は、戦争勃発の可能性が最も高いのは海上であり、南シナ海の領有権紛争か台湾を巡る問題が起因となるだろうと考えている。

中国政府は台湾を「反抗的な属州」と位置付けており、台湾側では独立への希望を打ち砕くために中国が介入するのではないかという懸念を長年抱いている。だが、ロシアが欧州に抱く領土的な野心を巡る状況と同じく、中国もやはり、戦争勃発の際には、できるだけ米国や米同盟国の部隊を戦域から遠ざけておくことが勝利の鍵となる。

中ロ両国が開発を進めている新たな軍事技術の多くは、こうした目標を念頭においたものだ。特に中国のミサイルと潜水艦は、明らかに米国の航空母艦を撃沈するために作られている。

だが、新たな兵器調達や軍事配備も、さらに大きな外交・宣伝戦略の一部だ。ジョージアとウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟を阻もうと、ロシアは熱心なロビー活動を行っているが、ロシア政府によるソーシャルメディアやテレビ向け情報発信を注意深く追っている人々によれば、NATO加盟国の最も東側に位置するバルト海沿岸諸国に対する支援を邪魔することも試みているという。

中国は今年に入り、台湾の孤立化に向けた強引な外交キャンペーンを展開しており、航空会社や外国政府に対して台湾を中国の一部として再び考え直すよう働きかけている。こうした試みにおいて中ロ両国は非常に限定的な成果しか挙げていないが、今後数カ月、もしくは数年にわたって両国がこうした努力を強化し続けると考える人は多い。

当然ながら、米国も中ロ両国とほぼ同じ戦略を用いている。

欧州では、特にバルト海沿岸諸国、ノルウェー、ポーランドなど、ロシアの侵略を受けやすい国々におけるNATO演習に対して、米軍の関与を格段に拡充している。中国が南シナ海での軍事的プレゼンスを劇的に高めている中で、米国やその同盟国も、この係争水域において軍艦や軍用機による哨戒活動を積極的に継続している。

明らかに、こうした動きは中ロ両国をいら立たせている。

中国は、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国との共同実施を自ら画策する地域軍事演習から、米国を排除しようと試みており、ロシアのメディアは繰り返し、東欧に展開されるNATO部隊は、それ自体が近接するロシア軍部隊や自国地域に対して挑発的であり、脅威であるという不満を表明している。

こうしたことすべてが、世界的な不信感の高まりを加速している。米国は今年、毎年開催する環太平洋合同演習(リムパック)に中国を招待しなかった。中国の参加による情報漏洩を危惧したためだが、南シナ海で中国が好戦的な態度を強めていることに対する抗議の意味もある。

対米戦略という点では、これほどまでに利害が一致しつつあるロシアと中国だが、両国が互いを特に信頼している兆候は見受けられない。

ロシア政府は、人口密度の低い中央ロシアにおいて中国が領土奪取を試みるのではないかと以前から危惧しており、中国側も、ロシアの軍事力が自国に対して行使されるのではないかとの不安を抱いている。

有識者の中からは、ロシアが9月の演習に中国を招請した理由の1つは、中国側に実際の軍事行動の前兆ではないかとの疑念を抱かせないためだ、と勘ぐる声も出ているほどだ。

真意がどこにあるか、それを知ることは必然的に困難だ。しかし世界的な大国が、大規模な軍事演習に対して自らのエネルギーと関心を向ければ向けるほど、現実の、そして恐らくは制御不能の紛争に引きずり込まれる可能性も大きくなるのだ。

*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)
http://www.asyura2.com/18/kokusai23/msg/754.html#c2

[経世済民128] 外国人単純労働者を受け入れるべき業界、受け入れるべきでない業界(ダイヤモンド・オンライン) 赤かぶ
2. 2018年9月01日 00:04:18 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1409]

ライフスタイル 2018/08/31 20:00
「1日4時間労働」が理想的な理由

Brianna Wiest , CONTRIBUTOR
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Artur Szczybylo / shutterstock

ストレスが限界を超えた時、最後の手段となるのが、仕事量を減らすことだ。

だがこれこそが、より多くの成果を上げ、生活のバランスを維持するための鍵なのかもしれない。これに関することは、企業の管理職も気づき始めている。人間の脳と身体は、より短時間に多く働かせることで、機能が高まるのだ。イリノイ工科大学の科学者が1950年代に行った研究では、週に35時間働く人は、20時間の人と比較して生産性が半減することが分かっている。これは心理学の分野で、センディル・ムッライナタンとエルダー・シャフィールが「集中力の分配(focus dividends)」と呼んだ概念で説明できる。

2人は著書『いつも「時間がない」あなたに:欠乏の行動経済学』で、時間短縮により生産性を向上させられる理由を説明している。人は、丸1日を仕事で埋めようとするとだらついてしまう。時間が限られていれば、作業をできる限り終わらせようとする気が起きる。このエネルギーの急上昇が、最初のアクションを起こさせ、勢いを生む。結果として、同じタスクのために丸1日時間を空けておいた場合よりも、生産性は上がる。

他にも多くのメリットがある。バイス誌が掲載したある記事では、1日の労働時間を短縮することで、雇用が増えるのみならず、生産量が落ちるために環境汚染が減ると指摘している。これは、警察や教師といったその場にいることが必要とされる仕事や、建設業のように多くの人力を要する仕事には明らかに当てはまらないが、自営業者や、従業員の生産性を上げようとする経営者や管理職にとっては実現可能なことだ。

あなたがこうした立場にいたり、労働時間を減らして生産性を向上させたいと考えていたりするなら、以下を試してみよう。

「きょう終わらせられることがこれだけだとしたら、それで満足できるか?」と自問する

重要性と満足度に従って1日を組み立て、仕事の優先順位を付けること。思いつくままのタスクを手当たり次第こなしていくのではなく、その日に終えられたら真に誇りに思えるようなタスクを決め、それを絶対に終わらせること。

目指すのは忙しさでなく、生産性

生産性とは、何かを成し遂げることだ。一方、忙しい状態は、時間の無駄だ。いつも「忙しい」と言っている人間は、自分の時間とエネルギーの管理ができていないのだ。生産的な人間はその逆で、忙しさにのまれることがなく、多くの成果を上げられる。

重要なタスクを委託し、自動化する

機械で自動化できるものは、全てそうするべき。効率化できるものは、全て効率化する。委託は、あなたが持つ最重要ツールであり、あなたは何かに不必要なエネルギーをつぎ込まないように気を付けなければいけない。

気を散らすものを排除する

自分の作業時間に邪魔が入らないようにすること。プッシュ通知をオフにし、電子メールのアカウントからサインアウトして、目の前の最も重要なタスクに集中する。

自分がどうエネルギーを消耗しているかを把握する

特に自分を疲れさせ、いら立たせるものがあれば、まずはそれに対処すること。午後まで放置できたり、専門知識を持った人間に任せた方がよかったりするような難しい技術的問題のために、朝の時間を無駄にしないこと。

日課を効率化する

出勤する前夜のうちに、翌日着る服を選んでおく。食事を事前に用意しておく。可能なら、通勤時間を短縮する。一日のうちにこなすべきタスクをできる限りスムーズにするために、できることは何でも実行すること。雑用的な日々のルーティンにかけるエネルギーを節約すれば、生産性の向上により集中できる。

時間あたりの収入の改善に集中する

それぞれの作業について、1時間当たりの収入を計算し、それを基に考える。年間合計をいかに調整しようかと悩むのではなく、一日一日の仕事、さらには一日を細分化した各部分に着目すべきだ。通常7時間で稼ぐ金額を3.5時間で得られるとしたら、実行しない手はないだろう。
https://forbesjapan.com/articles/detail/22783?n=1&e=22795

 

 

高齢者、女性の労働参加を=加藤厚労相、時事通信セミナーで講演

時事通信セミナーで講演する加藤勝信厚生労働相=31日午後、東京都中央区

 加藤勝信厚生労働相は31日、時事通信など主催のセミナーで「働き方改革」について講演した。少子高齢化と人口減少による労働力不足への対応について、「高齢者や女性で働きたい人の希望を実現できる社会をつくる」と述べ、非正規社員の処遇改善などに取り組む必要性を強調した。

総人口、9年連続減少=生産年齢層は6割切る−総務省

 加藤厚労相は、日本が今後抱える課題として「生産年齢人口が減っていく中で、活力をどう保つかだ」と指摘。労働力を確保するため、「働き方改革」を通じて長時間労働の是正、生産性向上、子育て・介護と就労の両立を図る考えを示した。
 また、加藤氏は「どうしても外国人の人材に頼る必要がある」と説明、政府が進める外国人就労者の受け入れ拡大に理解を求めた。(2018/08/31-15:59)

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ビジネス2018年8月31日 / 19:47 / 3時間前更新
日本の産業は新陳代謝ない、もっと再編を=志賀革新機構会長
1 分で読む

[東京 31日 ロイター] - 官民ファンドの産業革新機構の志賀俊之会長は31日の記者会見で、会長に就任した2015年からの活動を振り返り、事業再編をもっとやりたかったと悔しさをにじませた一方で、日本企業の動きの鈍さを批判した。9月下旬に予定されている改組で、志賀会長は旧機構にとどまり、これまでの投資案件のエグジット(投資回収)に活動の軸足を移す。

志賀会長は日本の産業界について「国際競争力は明らかに弱まっている」と指摘。その理由として、1)イノベーション(技術革新)を生んでいない、2)事業の新陳代謝が進んでいない、3)同じ業界にプレーヤーが多く、日本のメーカー同士が過当競争をしている──の3点を挙げた。

3年間の活動を問われると「もっと再編をやりたかった。どう考えてもプレーヤーが多すぎる業界がある。いろいろと動いたつもりだが、なかなか業界再編は進まなかった」と悔しさをにじませた。

産業革新機構の投資実績133件(7月末現在)のうち、再編関連は8.3%、11件にとどまっている。

志賀会長は再編について「会社が隆々としている時に、しっかりと将来のことを考えて、事業別の資本効率を見極めた上で、事業を出さないといけない」と述べ、「経営的に持ちきれなくなったから外に出して再編が進むというのはやはりだめだ」と日本企業の姿勢を批判した。

産業革新機構は9月下旬に産業革新投資機構(JIC)に改組。旧機構は会社分割で株式会社INCJとなり、新規投資から段階的に手を引く。志賀会長はJICには参画せず、INCJの取締役としてとこれまで投資してきた案件のエグジットなどを手掛ける予定。

志田義寧

http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/343.html#c2

[経世済民128] 外国人単純労働者を受け入れるべき業界、受け入れるべきでない業界(ダイヤモンド・オンライン) 赤かぶ
3. 2018年9月01日 00:09:27 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1410]

週刊金曜日編集部2018年08月31日 16:53安倍政権、業界圧力で外国人労働者の在留資格を緩和か



首相官邸公式サイトから。

介護や建設業界が人手不足にあえいでいるのを受け、政府は外国人労働者の受け入れ拡大に踏み切る。秋の臨時国会に新たな在留資格の創設を盛り込んだ入国管理法改正案を提出し、来春にスタートさせることを描いている。「一定の技能を持つ人が対象」。これが国の言い分だ。それでも実質は単純労働者の受け入れに舵を切るもので、入管政策の転換点となる。

7月24日にあった「外国人材の受け入れ・共生に関する関係閣僚会議」の初会合。安倍晋三首相は「現場での人手不足は深刻だ」と訴え、「即戦力となる外国人材を幅広く受け入れていく仕組みを構築することが急務」とハッパをかけた。上川陽子法相はこの日の記者会見で、いまの入管局の「入国管理庁」への格上げを検討する考えを示した。

農業、介護、建設、宿泊、造船。少子高齢化のあおりで、この5業種はとりわけ人手不足が目立つ。1人にいくつの働き口があるかを示す2017年の有効求人倍率は1・50と44年ぶりの高水準だったが、中でも建設(4・01)や介護(3・57)は際だっている。職員を雇えずに稼働できない介護施設などの話を伝え聞いた安倍首相は、周囲に「外国人の受け入れもやむを得ないよね」と漏らしていたという。

現行制度では、就労目的で日本に滞在できるのは医師など高度専門職の人に限られている。この規制を緩和し、新制度では一定の技能や日本語能力を条件に最長5年の在留を認める。介護などの5業種に加えて外食産業なども対象となる見通しだ。既存の技能実習制度で来日した人なら、同制度の5年分の枠と合わせて計10年間とどまれる。政府は25年までに50万人超の労働者を確保できるとみており、東京五輪・パラリンピックを控えて特需に沸く建設業界は歓迎ムードだ。

【来年の選挙対策の一面も】
新制度も「単純労働は認めない」のが建前。だが、今ですら127万人の外国人労働者のうち、アルバイトが23%、技能実習生が20%を占め、多くは単純労働に駆り出されている。16年の厚労省の立入調査では、実習生が働く事業所の7割で賃金不払いなどの違反が発覚した。年間に失踪する実習生は7000人を超えている。

家族の帯同も新制度では原則認めない。「人」ではなく、あくまでも「労働者」としての受け入れだ。「移民ではない」ためだが、外国人受け入れに批判的な厚生労働省幹部は「便法だ。外国人を安価な労働力とみなしているとみられても仕方ない」と漏らす。

安倍首相は元々、外国人労働者受け入れには慎重だった。それが自民党支持団体の建設業界などから上がる、未曽有の人手不足に対する悲鳴に揺れ始めた。放置すれば成長戦略重視のアベノミクスへの影響は避けられない。来年の統一地方選や参院選もにらみ、6月に閣議決定した「骨太の方針2018」に受け入れ拡大をねじ込んだ。

ただ、人手不足対策としては、新制度は中途半端、との見方もある。東京都内の介護事業者は「50万人増えても他業種との争奪戦になり、介護業界には数万人来るくらいだろう。人手不足が解消するとは思えない」と話す。

外国人の受け入れを拡大する以上、いかに共生していくかを模索し、日本の文化への理解を求めていく必要が生じる。にもかかわらずこうした議論は低調だ。

93年に始まった技能実習制度の本来の目的は、外国人に日本で5年間のうちに技術を身につけてもらい、自国で生かしてもらうことだった。それなのに新たな在留資格と通算して10年日本に滞在できるようになれば、技能実習制度はますます形骸化が進む。

「いわゆる移民政策はとらない」。安倍首相はそう繰り返してきた。しかし、骨太の方針では新資格を得た人が専門分野の試験に合格するなどした場合、在留期限を撤廃し、家族を呼び寄せることを認めている。便法を積み重ねることによって、「移民」の定義をじわじわ狭めているようにも見える。

(吉田啓志・『毎日新聞』編集委員、2018年8月10日号)


 


2018.08.31 08:33
労働力人口とは|現在の推移状態・今後の予測について解説
労働力人口とはその国の経済成長を推測する1つの指標で、どの位の人口が働いているかということを指し、生産年齢人口とは少し違います。政府の労働力調査によると労働力人口は5年連続で増加しており、研究機関の調査によると今後10年は安定して労働力人口が高水準で推移すると予想されています。しかし、高齢者の増加と少子化により長期的には労働力人口の減少が予想されます。本記事では、労働力人口確保のための取り組みを含めて労働力人口に関する情報をお伝えします。

この記事の著者
ビヨンド(Beyond)編集部

目次
• 労働力人口とは
• 労働力人口の推移
• 労働力人口の予測
• 労働力人口減少への対策方法
• 労働力人口をいかに増やすか
労働力人口とは
労働力人口はその国や地域の労働に参加する意欲のある人口のことを指します。その国の経済成長を推測する1つの指標となります。
労働力人口
労働力人口は満15歳以上で労働する意思と能力を持った人の数を指します。労働力人口には、働く意思と能力が合って実際に働いている人と、働く意思と能力はあるけれども失業している人が含まれています。
一方で、学生や専業主婦は満15歳以上であったとしても労働に参加する意思が無いので労働力人口に含まれませんし、老人や病気で働けない人も労働力人口に含まれません。ただし、主婦や学生であったとしても家事や勉強のかたわらで働いている人は労働力人口に含まれます。
生産年齢人口との違い
労働力人口とよく似た指標に生産年齢人口があります。生産年齢人口とは15歳以上65歳未満の人口のことを指します。基本的には生産年齢人口の中に労働力人口が内包されますが、微妙に異なります。
たとえば、生産年齢人口には含まれていても、労働する意思や能力の無い人は労働力人口に含まれません。また65歳以上で働いている人は生産年齢人口には含まれませんが労働力人口には含まれます。
労働力人口の推移
では、日本の労働力人口はどのように推移しているのかについて説明します。
2017年の労働力人口は6720万人
総務省が毎年発表している2017年労働力調査によると、2017年の労働力人口は6720万人となっています。このうち、6530万人は就業者で前年から65万人増加しており、完全失業者は190万人で前年から18万人減少しています。
労働力人口は2012年の6280万人から5年連続で増加しており、2007年から2017年までの10年間で2017年はもっとも労働力人口が高い年になっています。また、労働力人口における高齢者の割合が上昇し続けていることは特筆すべきです。
非労働力人口は減少中
労働力人口は増加する一方で、非労働力人口は減少中です。総人口は横ばいないしは減少傾向にあって、労働力人口が増加しているということは、これまで労働に参加していなかった、主婦や学生、高齢者なども労働に参加するようになったということです。
ただし、すべての層において非労働力人口は減少しているわけではありません。高齢の男性などでは非労働人口の増加が目立ちます。また、働けるのに労働する意思がなくて、労働に参加していない潜在的な労働力人口はまだまだ存在すると考えられます。
労働力人口の予測
では、今後日本の労働力人口はどのように推移すると考えられるのでしょうか。
労働力人口の高水準はいつまでか
ニッセイ基礎研究所のアナリストが東洋経済オンラインに寄稿した記事や三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査レポートによると、人口は減少しているのにも関わらず、2020年代半ばまでの労働力人口は高水準を保てるとの指摘されています。
生産年齢人口は減少するものの、今まで労働に参加していなかった女性や高齢者の労働力参加率が増加するので、結果として今後10年程度は、労働力人口は低下しないと考えられています。一方、人数×時間で見た労働投入量は2023年頃から減少が加速するとの推計もあります。
女性や高齢者が働きやすい環境を整え、労働力人口・労働投入量ともに増やすためには、働き方改革を推進することが重要です。

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少子高齢化による労働力人口の減少
ただし、女性や高齢者の労働力参加率の向上もいずれ頭打ちになり、長期的には少子高齢化によって生産年齢人口は大幅に減少するはずなので、労働力人口も大幅に減少すると考えられます。
みずほ総合研究所の調査によると、2065年の労働力人口は4,000万人弱と現状から約4割減少し、労働力参加率は50%程度になると予想されています。全体の人口が減少していることから労働力人口の減少だけを回避することは困難です。
問題を解決するために少ない労働力人口でも付加価値を高められるように労働生産性および知的生産性の向上が必要となります。

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次ページ:労働力人口減少への対策方法とは

労働力人口減少への対策方法
今後予想される労働力人口の減少に対してどのような対策が行えるのかについて説明します。
高齢者のさらなる雇用
まず、対策として考えられるのが高齢者の労働力参加率を増やすことです。一般的に60歳や65歳を定年に設定している企業が多いですが、これは昭和期に設定された年齢で、医療が発達し平均寿命は伸びている昨今において60代半ばの高齢者はまだまだ働くことが可能です。
定年退職になる年齢を引き上げたり退職後の雇用をつくったりすることにより、高齢者の労働力参加率を高めることによって労働人口を増加させられます。
女性が働きやすい制度の拡充
女性が働きやすい制度を拡充することも重要です。女性は出産や育児などよって、働き方に制約が課される時期もありますが、いざ働き続けたいと思っても育児などと両立しやすい雇用条件の会社が少ないので、就労が困難となり離職するケースもあとを絶ちません。
子育てしながら働きたい女性が働きやすい制度を設けて、働きたいけれども今の雇用制度では働けない女性にアプローチすることによって労働力人口の増加が期待できます。
非正規社員を正規雇用や格差是正
非正規社員を正規雇用に切り替えて労働者に安定した雇用を提供することも重要です。非正規社員は契約が終了すれば再雇用されないかもしれない不安定な存在なので、安心して労働に参画してもらうためには正規雇用への転換が必要です。
現行法でも、一定の条件を満たした非正規社員から申し出があった場合、有期雇用契約から無期雇用への切り替えに応じなければならないという無期転換の制度が存在します。

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また、非正規と正規の格差を是正することも重要です。これに関しては同じ仕事に対しては身分に関係なく同じ賃金を支払わなければならない「同一労働同一賃金制度」が2020年4月から大企業に、2021年4月から中小企業にも適用されることによって是正されていくと考えられます。

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病気を治療しながら通える職場
労働者の中に高齢者が増えると自然と病気を抱えながら働く人も増えます。また、高齢者だけに限らず、不妊治療などを含めて、仕事と病気治療をどのように両立させるのかということは社員の労働環境を改善するためにも取り組むべきテーマです。
労働力参加率を増加させ、社員に安定して長く働いてもらうためにも治療と仕事の両立支援がこれまで以上に重要になってきます。

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労働力人口をいかに増やすか
今後10年は労働力人口は高水準で推移するとの見方もあるものの、少子高齢化が進み、人口も減少傾向にあるので長期的には大幅な労働力人口の減少は避けられません。国にとっても企業にとってもこのような環境の中でいかに労働力人口を確保していくかは重要なテーマです。
労働力人口を確保するためには労働力参加率を増加させる必要があり、そのためにはこれまでの雇用制度をあらためて従業員の働きやすさに寄り添った、自社に会った柔軟な働き方に関する制度を拡充することが肝心です。

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2018.08.31 08:33
働き方改革

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米大統領、メキシコとの通商合意を議会に通知−カナダが望めば参加も
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カナダ外相:ウィン・ウィン・ウィンの合意は近いー5日に交渉再開
カナダ国民の利益にならない合意には調印しない−フリーランド外相
トランプ米大統領はメキシコと合意した通商協定を進める計画を表明し、カナダもこれに参加する可能性があると述べた。カナダとの交渉は期限の数時間前に合意を結ばずにいったん終了した。

  ホワイトハウスは31日に議会に対し、90日以内にメキシコと協定に調印する計画であり、カナダが「望めば」参加することになると通知した。4日間にわたってワシントンで行われた米国とカナダの集中協議は合意に至らずに終了。9月5日に再開される。ホワイトハウスは27日にメキシコとの間で成立した北米自由貿易協定(NAFTA)改定の暫定合意に、カナダも調印することを望んでいた。

  ワシントンで米通商代表部(USTR)と交渉にあたったカナダのフリーランド外相は、協議終了後に記者団に対し、「ウィン・ウィン・ウィンの合意が近いことが分かっている」と発言。カナダと米国はそれぞれの自動車セクターの労働者のために、より良い合意に到達しようとしていると述べた。「良好な進展があるが、まだやるべきことが残されている」と続けた。

  カナダ国民の利益にならない合意には調印しないと、フリーランド外相は言明した。

原題:U.S. Alerts Congress of Mexico Deal, Says Canada Can Join On (2)(抜粋)
Freeland Says Steel, Aluminum Tariffs Are Unrelated to Nafta(抜粋)


 

 



トランプ大統領就任委員会に外国資金、パッテン被告が有罪答弁
Andrew Harris、Andrew Martin、Tom Schoenberg
2018年9月1日 4:23 JST
トランプ大統領の元選対本部長、ポール・マナフォート被告の元同僚が外国代理人登録法(FARA)違反の罪を認め、トランプ大統領の就任式実行委員会に外国から資金が渡るのを手助けしたと証言した。

  サム・パッテン被告は31日、ウクライナの政党のために行ったロビー活動でFARAに基づいた登録を怠ったことを認め、検察に協力することに同意した。裁判所での有罪答弁で同被告が認め、訴追を免れた罪の中に、トランプ大統領の就任式実行委員会に「外国の資金」が支払われるように取り計らった罪があることが、検察によって開示された。

  裁判所に提出された文書によると、パッテン被告に仕事を依頼したウクライナ人顧客は、2017年1月のトランプ大統領就任式への出席を希望。米連邦選挙委員会の規則により大統領就任に際し外国人が資金的な寄与をすることが禁じられているため、同被告は規則をかいくぐろうと米国人個人を隠れみのに5万ドルでチケット4枚を購入。資金は同被告とコンスタンティン・キリムニク氏が共同経営する会社がまず立て替え、その後ウクライナ人顧客から払い戻されたという。キリムニク氏はマナフォート被告の元同僚で、ロシア軍情報機関と関係があるとされている。

原題:Patten Caused Foreign Money to Be Paid to Inaugural Committee(抜粋)


 

NY外為】ドルが上昇、貿易巡る緊張などで逃避需要高まる
Robert Fullem
2018年9月1日 4:46 JST 更新日時 2018年9月1日 6:40 JST
31日のニューヨーク外国為替市場ではドルが上昇。ブルームバーグのドル指数はこの日の高値からは上げをやや縮めたものの堅調を維持し、週間・月間でも値上がりとなった。米国とカナダの通商協議は、この日は合意が成立しないまま終了した。新興国市場のボラティリティーの高まりや貿易面での緊張で安全通貨が買われた一方、資源国通貨は下落した。

  ブルームバーグのドル指数は一時0.5%上昇。ドルは主要10通貨中スイス・フランを除く全てに対して上げた。

  米ドルはカナダ・ドルに対して上昇。北米自由貿易協定(NAFTA)改定を巡る米国とカナダの協議はこの日合意に至らず、協議は来週再開される見通しとなった。

  ニューヨーク時間午後4時59分現在、主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は前日比0.4%上昇。週間では0.2%、月間では0.7%それぞれ上げた。ドルはこの日、対ユーロで0.6%高の1ユーロ=1.1602ドル。対円では0.1%上昇の1ドル=111円03銭。米ドルはカナダ・ドルに対して0.4%高の1米ドル=1.3040カナダ・ドル。

  トランプ米大統領は前日、世界貿易機関(WTO)からの脱退を警告。これも背景にドルは堅調に推移した。トランプ大統領はこのほか、欧州連合(EU)が提示した自動車関税撤廃案について、「十分ではない」と述べた。

  ユーロは一時0.7%安と、2週間で最大の下げ。格付け会社フィッチはこの日、イタリアの格付け見通しを「ネガティブ」に引き下げた。格付けは「BBB」で据え置き。

欧州時間の取引
  欧州時間にはユーロが上昇。欧州中央銀行(ECB)の政策委員会メンバー、ノボトニー・オーストリア中銀総裁は、イタリア経済の弱さを理由に金融緩和の解除や利上げ開始を遅らせるべきではないとの考えを示した。

原題:Dollar Presses Forward as Trade Frictions Grow: Inside G-10(抜粋)
Euro Rises a Third Week as Swiss Franc Leads Gains: Inside G-10

(情報を追加し、更新します.)


 


米国株・国債・商品】S&P500横ばい、米加通商交渉を注視
Brendan Walsh
2018年9月1日 5:46 JST 更新日時 2018年9月1日 6:16 JST
週央に過去最高値更新したS&P500種、8月月間では3%高
米国とカナダの通商協議は物別れ、週明けに交渉再開へ
31日の米株式市場ではS&P500種株価指数とダウ工業株30種平均がほぼ横ばい。米国とカナダは合意なくこの日の通商協議を終えたが、週明けに協議を再開すると遅い時間に伝わった。米国債は遅い時間に伸び悩み、長期債は下落した。

米国株はまちまち、米とカナダの通商協議に注目−ナスダックは続伸
米国債は長期債が下落、10年債利回りは前日並みの2.86%
NY原油は反落、サウジ産油量引き上げ報道で−月間では上昇
NY金は小反発、月間ベースでは5カ月続落
  連休を控え、株式市場は薄商いとなった。米加の通商交渉が物別れに終わり協議が週明けに持ち越されたことを受け、自動車株が下げた。S&P500種は週間ベースで0.9%高、月間ベースでは3%高となった。

  S&P500種は前日比0.1%未満上げて2901.52、ナスダック総合指数は0.3%高の8109.54。ダウ平均は22.10ドル(0.1%)安の25964.82ドル。ニューヨーク時間午後4時50分現在、米10年債利回りは1ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)未満上げて2.86%。

  ニューヨーク原油先物市場ではウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)が反落。サウジアラビアの8月の産油量が7月に比べ増えたと伝わったのが背景。ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物10月限は45セント(0.6%)安の1バレル=69.80ドルで終えた。ただ、イラン制裁で原油供給が引き締まるとの見方を受け、8月月間では上昇した。ロンドンICEの北海ブレント10月限の終値は35セント安い77.42ドル。

  ニューヨーク金先物相場は小反発。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は0.1%高の1オンス=1206.70ドルで終了。ただ8月月間では2.2%安で、5カ月続落。過去5年で最長の下落局面。米国と諸外国の貿易摩擦を受けて金を敬遠し、ドルを買う動きが優勢となり、8月はドル指数が上昇した。

  今週半ばにはS&P500種が過去最高値を更新したが、ここ数営業日では慎重ムードが台頭した。貿易関係の悪化で世界経済が打撃を受ける可能性を、投資家は引き続き懸念している。トランプ米大統領は前日、欧州連合(EU)が提示した自動車関税撤廃案をはねつける意向を示した。

  米国債市場では、月末特有のポートフォリオ調整で長期物が需要を集める場面があった。米加合意の可能性が薄いとのカナダ当局者見解が伝わり、10年債利回りは一時2.829%を付けた。

原題:Trade Talks Weigh on U.S. Stocks as Dollar Gains: Markets Wrap(抜粋)
Treasuries Pare Gains and Curve Steepens Despite Month-End
Oil Posts Monthly Gain as Iranian Sanctions Stoke Supply Fears
Gold Posts Fifth Straight Monthly Drop as Dollar, Stocks Rally

(第6段落以降を追加し、更新します.)


WTO事務局長、米国が脱退なら米企業に大きな打撃と警告
Shawn Donnan
2018年9月1日 4:01 JST
トランプ米大統領が世界貿易機関(WTO)からの脱退を警告したことを巡り、WTOのアゼベド事務局長は、米国が脱退すれば、世界で事業を展開する米企業は大きな打撃を被るとの認識を示した。

  トランプ大統領は30日、大統領執務室でのブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、「彼らが正しく振る舞わなければ、私はWTOから脱退するだろう」と発言。さらに、WTO設立協定は「通商協定としては過去最悪だ」と語った。


アゼベド事務局長写真:SeongJoon Cho / Bloomberg
  アゼベド事務局長は31日、ブルームバーグとのインタビューで、共通した不満に対応するため米国や他の加盟国と既に取り組んでいると説明。一方で、米国がWTOから脱退すれば、世界経済ならびに米国自身に大きな悪影響が及ぶと警告した。

  アゼベド事務局長は「このシナリオは誰にとってもプラスにならない」と言明。「米国は世界の貿易全体の約11%を占めている。よってWTOから脱退すればWTOには大きな打撃だ。ただ米国にとっても大きな打撃となる」と加えた。

原題:WTO Head Warns U.S. Exit Would Mean Chaos for American Business(抜粋)

 

8月の米ミシガン大学消費者マインド指数:7カ月ぶり低水準
Jeff Kearns
2018年8月31日 23:06 JST 更新日時 2018年9月1日 0:39 JST
8月の米ミシガン大学消費者マインド指数(確定値)は、1月以来の低水準に落ち込んだ。

ミシガン大学消費者マインド指数のハイライト(8月、確定値)
消費者マインド指数は96.2と、前月の97.9から低下し、7カ月ぶり低水準。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は95.5−速報値は95.3
現況指数は110.3に低下し、2016年11月以来の低水準(前月は114.4)−速報値は107.8
期待指数は87.1に低下、前月は87.3−速報値は87.3
  ミシガン大学の消費者調査ディレクター、リチャード・カーティン氏は「今回の消費者マインド指数は、米経済成長に関する最近の非常に明るい指標とは極めて対照的だ」と指摘。「最も低調だったのは、購買環境を巡る明るい見方が後退したことと関連している。これは主として、市場価格に対する明るい見方の後退や、度合いはより小さいが金利上昇も影響している」と分析した。

  1年先のインフレ期待は3%、前月は2.9%だった。5−10年先のインフレ期待は2.6%(前月2.4%)に上昇した。

  統計の詳細は表をご覧ください。

原題:Consumer Sentiment in U.S. Fell Less Than Forecast in August(抜粋)

(統計の詳細を追加し、更新します)


http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/342.html#c3

[経世済民128] アルゼンチン、ペソ安止まらず 中央銀行が主要政策金利60%に引き上げ(ニューズウィーク) :国際板リンク  赤かぶ
3. 2018年9月01日 11:24:43 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1412]

 
ペソの価値はいくらか−混乱のアルゼンチン経済、商取引は即金のみ
Patrick Gillespie、Jorgelina do Rosario、Carolina Millan
2018年9月1日 1:53 JST
• ペソ急落で企業は価格提示できず、クレジット供与も不可能に
• インフレ率30%、ペソ安でさらに加速の見通し
「ペソ急落後、明確な基準価格はなくなってしまった」。
  ブエノスアイレスで外科用医療機具の輸入会社を経営するトミー・サムソン氏は、アルゼンチンの金融市場混乱で事業縮小を強いられた理由を説明した。サムソン氏の会社は外貨で製品を輸入し、ペソで国内の顧客に販売する。ペソ急落でこれが成り立たなくなりつつある。
  アルゼンチン・ペソは今年に入り50%余り下落。今週だけで下落率は20%前後に達する。これが企業のサプライチェーンを寸断し、家計を圧迫するなどアルゼンチン経済に大混乱を引き起こしつつある。
Record Rout Deepens
Argentine peso worst performer in 2018 among emerging-market peers

Source: Bloomberg
Note: Values as of 8 p.m. New York time
  インフレ率は30%を超え、ペソ安でさらに加速する見通し。国内で仕入れを行う企業ですら、対処は難しい。
  ハンバーガーやホットドッグ用のパンを生産する会社を営むパブロ・リカッティ氏は、2週間前にトランク2台分の小麦粉を購入した。「価格上昇に備えたヘッジ」が目的だった。仕入れ先は通常、払い込みまで数週間の猶予をくれるが、「今や応じてくれない」という。「こうやって話している間にも」価格が上がっていくからで、「自分が即金で支払う必要がある。だから今後はそうする」と語った。
  先行きを見通しづらいのは大企業も同じだ。アルゼンチン最大の繊維会社TN&プラテックスは、即金で支払うことのできる買い手には価格を提示できるとテディー・カラゴジアン最高経営責任者(CEO)は述べた。平時なら60日や90日のクレジットを顧客に提供できるが、為替の急変動でそれはできなくなったと明らかにした。

ブエノスアイレスの外貨両替所に列を作る市民ら(30日)
フォトグラファー:Erica Canepa / Bloomberg
原題:What’s a Peso Worth? All Bets Are Off as Argentina Pain Spreads(抜粋)


 


 

黒田日銀総裁、「利上げ長期間しない」−読売
占部絵美
2018年9月1日 9:58 JST
政策修正、金融政策を正常化させる布石ではない−黒田総裁
物価上昇率2%目標、23年任期までの達成が当然−黒田総裁
日本銀行の黒田東彦総裁は短期金利をマイナス0.1%、長期金利を0%程度に操作している現状の金融政策について「結構長い期間にわたり、上げるという考えはない」と読売新聞のインタビューで述べた。同紙朝刊が1日に報じた。

  日銀は7月30、31日に開いた金融政策決定会合で、強力な金融緩和を粘り強く続けていく観点から当分の間、現在の極めて低い長短金利の水準を維持することを想定しているとした政策金利のフォワードガイダンスを導入。また、長期金利の変動幅について、これまでのプラス・マイナス0.1%程度から上下0.2%程度まで容認する姿勢を示した。

  同紙は、金融市場では若干の金利引き上げなど修正観測がくすぶっていたとした上で、黒田総裁が政策修正は金融政策を正常化させる布石ではないとの考えを強調した、とも報道。さらに物価上昇率2%の目標に関しては、同総裁の任期である2023年までに達成するのが「当然だ」と語った、としている。



イタリアの格付け見通し「ネガティブ」に引き下げ−フィッチ
Hari Govind、Lorenzo Totaro
2018年9月1日 9:21 JST
格付け会社フィッチ・レーティングスは、イタリアの格付け見通しを「ステーブル(安定的)」から「ネガティブ(弱含み)」に引き下げた。新政府の財政計画を巡る懸念を理由に挙げた。長期外貨建て発行体デフォルト格付けは「BBB」を維持した。

  フィッチは8月31日のリポートで「構造改革からの転換がイタリアの信用ファンダメンタルズに悪影響を与えるリスクが若干高まった。財政など政策リスクは、政治不安が比較的高いことによって一段と悪化している」と指摘した。

原題:Italy Rating Outlook Cut By Fitch on Possible Fiscal Loosening(抜粋)




http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/341.html#c3

[環境・自然・天文板6] 猛暑のせい?セミ羽化中に15%死ぬ 小3男児自由研究 (かいけつニュース速報) 怪傑
4. 2018年9月01日 11:31:13 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1413]
猛暑で北極の氷山に亀裂、観測史上初の異常事態に

Trevor Nace , CONTRIBUTOR
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I cover geology, earth science, and natural disasters.


City Escapes Nature Photo / shutterstock

世界的な猛暑の影響で、北極圏で最も古く強度も強いとされる海氷が崩れ始めている。この地域は普通なら、1年を通じて氷に閉ざされているが、今年は例年より熱い風が吹き込んだことにより、2度にわたって海氷に亀裂が走った。

グリーンランドの北側の海は北半球で最も海氷がとけない場所で、地球上で最後に海氷がとけ始める場所の1つとされている。しかし、今年は前代未聞の事態が発生した。2月と8月に気温が急上昇し、海氷がとけ始めたのだ。これは1970年代の観測開始以来、初の事態だ。

気象科学者のZack Labeは「スヴァールバル諸島周辺で海氷の厚みが非常に薄くなっている」というツイートにグラフをそえて投稿した。NASAが作成した1979年以降の北極の海氷の変化を示す動画でも、前代未聞の速さで氷がとけだしていることが示された。

英紙「ガーディアン」は、北極の温暖化によって夏の気候が北米と欧州で「固定化された」と報じている。この記事の元となったのは、北極の気温が上がることによってジェット気流のスピードが落ち、気候の変化を停滞させると指摘する「ネイチャー」に掲載された論文だ。これにより乾燥した夏が長く続き、熱波や干ばつ、そして森林火災が増えることになる。

北極の氷がとけると地球全体の海洋循環が滞る。熱帯地方と両極の間の熱の循環が停滞することで、これまでにない異常気象が起きるのだ。実際に、世界各地で海面の上昇が起こり、小さな嵐でも簡単に洪水が起きるようになっている。100年前ならさほどの被害をもたらさなかった規模の嵐でも、大きな被害が発生する状況になっている。
編集=上田裕資

http://www.asyura2.com/15/nature6/msg/665.html#c4

[自然災害22] 世界各地で異常な猛暑=米で気温52度、北極圏でも30度超え−国連機関 ピノキ
7. 2018年9月01日 11:37:20 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1414]
 
http://www.asyura2.com/15/nature6/msg/665.html?c4#c4

猛暑で北極の氷山に亀裂、観測史上初の異常事態に
 


 


温暖化の影響がついに北極「最後の砦」に 最古の氷山が2カ所で崩壊
2018年8月26日 13:58小中大印刷

●史上初、2カ所の亀裂
 北極に存在する、最も古くまた厚みのある氷山の崩壊が始まった。2018年以前には起こったことがない現象であり、地球の温暖化の深刻さを伝える事象として憂慮される。

【こちらも】北極圏ツンドラ域の夏季温暖化を日本の海洋研究開発機構が解明

 2018年に入ってから、この氷山に2か所の亀裂が認められた。今年の記録的な猛暑がもたらしたこの崩壊は、衛星画像によって確認されている。グリーンランドの北部に位置するこの氷山は、北極でも最後の砦と呼ばれるほど厚い氷が特徴であった。

●地球の温暖化にも耐えてきた「最後の砦」
 衛星画像による北極の調査が開始されたのは1970年代であった。地球の温暖化の影響を受けて、かつては変化がなかった氷の厚さも年々縮小していることが確認されてきた。

 その中で、グリーンランド北部沖のこの氷山はその厚さが20メートルを超える場所もあり、温暖化の影響を受けない「最後の砦」であったのである。

 ケンブリッジ大学極地海洋物理グループのピーター・ワダムス教授は、今年の春の熱風によって氷山は陸から切り離され、結果亀裂が入ったのではと『インデペンデント紙』に語っている。来春にこの状況が悪化することを危惧する声もある。

●北極の動物生態系に大きな影響を及ぼす可能性も
 さらに、最も厚みのある氷山に亀裂が認められたことで、ホッキョクグマをはじめとする北極圏の動物の生態系にも影響を与えることが懸念されている。

 ホッキョクグマはアザラシを主食としており、氷を掘ってアザラシの巣穴を襲うという習性がある。そのため、温暖化による氷山の縮小はホッキョクグマの生態を脅かす危険が指摘されてきた。ワダムス教授は、氷山が陸から離れることによってホッキョクグマが狩猟の場を失う可能性があると語っている。それはすなわち、ホッキョクグマの絶滅につながる危機的状況を意味する。

 今後、海氷の変化が世界の気候にもどのような影響を与えるのか注目される。

 

 
http://www.y-asakawa.com/Message2018-3/18-message68.htm

加速する北極の氷の溶解

要因は表面を覆う「すすの微粒子」
 
 

北極海を行く原子力砕氷船ヤマル号。 私が北極点に立った2002年にも
氷の割れ目は随所で見られた。 溶解が進んでいる現在は割れ目はさらに拡大しているようである。

 

 
北極海の氷の中から大量のプラスチックの粒子が発見されたことから、ヨーロッパの海洋調査研究者や生物学者から、プラスチックの使用に対する警告が発せられたことは、先の「海水汚染の危機」でお伝えした通りである。 今回は同じ北極海で進む「すすの微粒子」による「氷の溶解」に関する警報である。

北極で氷の研究に携わっている日本やドイツ、デンマーク、オランダの研究チームが、いま北極ではたくさんの黒い氷が発見されており、気候変動に破壊的な影響を及ばしていると警鐘を鳴らしている。 黒い氷と言うのは、すすの微粒子が表面に癒着した氷のことである。

黒色の「すす」が氷に癒着すると、日光は氷の表面で反射されず黒い微粒子を通して氷に吸収されることになる。 その結果、氷は温度が上昇し溶け始める。 そうして空いた巨大な穴を上空から見ると、まるで月のクレーターのように見えるようである。

北極のすすの微粒子の増加は、氷棚を溶かして巨大な流氷や氷山を生み出し遠洋に流し出すため、北極海の氷床面積を減少させることになる。 それは また、温暖化現象を加速させるため、さらに氷棚や流氷、氷山の溶解を早めるという悪循環を生み出すことになっているのだ。 

 
 

 
 

氷に空いた巨大な穴は上空から見ると月のクレーターのように見える。

 
 
こうした状況を発生させている黒い微粒子のもととなる「すす」の増加の要因については未だ正確なことは分かっていないが、次の3つ の可能性が指摘されている。

@ 気候変動による草原火災の増加。
A 北極海を航行する船舶量の増加。
B 中緯度地域や北米、アジア地域からの飛来。

@についての代表的な事例として、最近起きたグリーンランド西部の数平方キロメートルに及ぶ草原火災による影響が指摘されている。 こうした火災は温暖化現象の影響で氷が溶け地肌が露出するようになったことが要因となっている。

こうして発生し始めた厳寒の地、グリーンランドや北シベリア地域の草原火災や森林火災は、 温暖化による氷の溶解をさらに加速させる悪循環に陥っている。 一つの火災が次なる火災を発生させる「火災の連鎖反応」を引き起こしているのだ。

一方、これまでHPで何度もお伝えしてきたように、米国・カリフォルニア州で頻発している森林火災も、Bの大きな要因となっていることは間違いなさそうである。 温暖化が世界各地に異常乾燥をもたらし、そうした異常気象が森林火災を頻発させて、さらなる温暖化を加速させているのだ。

こうして見てみると、トランプ大統領の温暖化対策を盛り込んだ「パリ協定」からの脱退は、北極圏の氷の溶解を推し進めることにつながるだけに、地球という水と氷に覆われた美しい惑星を危機的状況に追い込む要因の一つとなっていることは間違いなさそうである。 

自国第一主義を進める不動産屋・トランプ大統領には 、北極海や南極における氷棚の溶解などどうでもよいことだろうが、巨大な氷河が轟音と共に溶けていく凄まじい光景が、遠からずして自国の滅亡に繋がることを教えてやりたいものだ。

 
 

 
 

北極の氷の研究に携わっている研究者が手にしているのはすすの微粒子の集まり

 

 
 

 
 

2002年に撮影した北極海の氷棚。

氷棚(上)は降り積もる「すすの微粒子」によって温度をあげ、
下のように騒音と共に溶けて海面に向かって流れ落ちる。

 

 
 

 
 

(ドイツZDFテレビより)

 

 
 

 
 

私が訪ねた2002年の段階でも、北極海を覆った海氷はあちらこちらに
穴があき始めていた。今こうした氷の穴は遥かに巨大化して来ているようである。 
http://www.asyura2.com/17/jisin22/msg/584.html#c7

[政治・選挙・NHK250] 性格は正反対 感情最優先の安倍と論理的説明に拘る石破 徹底比較 安倍晋三と石破茂(日刊ゲンダイ) 赤かぶ
1. 2018年9月01日 13:09:56 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1415]
2018年9月1日 AERAdot. ,週刊朝日
石破茂氏に総裁選から醜聞まで直撃「天地神明に誓い、指一本触れたこともない」
石破茂衆院議員
熱弁する石破茂衆院議員
 自民党総裁選は現職の安倍晋三首相と石破茂元幹事長との一騎討ちとなる。首相を決める大事な一戦に挑む石破氏に、政治家としての信条、酒、家族、オンナまでぶっちゃけインタビューを敢行した。

──逆風の中、石破包囲網となっても、自民党総裁選に出たのは?

「自分の保身のためだったら、出ないほうが楽でしょう。こんなに無茶苦茶、言われないし、肉体的、精神的にしんどいこともないでしょう。 だけど、誰も何にも言わないのは自民党のためにもならないし、日本国のためにもならない。国会議員20人の推薦を集めないと、総裁選には出馬できないわけですね。どんなに意欲があっても。私には『水月会』(石破派)のみなさんを中心として、参議院平成研究会、ほかにも、心ある人20人以上が応援して下さっているわけです。それなのに、出ないなんていう選択はあり得ないでしょう」

──石破さんが安倍首相を批判したことに対して、参院の竹下派を率いる吉田博美・参院幹事長からクレームがあったとか、なかったとかいう報道があります。

「直接、伺ったことはありません」

──吉田さんに一度も指摘されたことはない?

「ありませんが、信頼関係がありますので、どのような点についてもお互いに話をしていけば、必ず一致できると思っています」

──小泉純一郎元首相や進次郎議員が石破さんを支持するのではないかという見方もありますが。

「それは私があれこれ申し上げる立場にはありません。小泉元総理は多面性のある方ですから、一事をもって語ることはできないだろうと思っています」

──東京では議員宿舎で生活しているんですか。

「はい、娘2人と暮らしています。2人とも会社員です。彼女たちは総合職に就いていて、とても忙しそうです。帰るのは私のほうが早いときもあるくらい。家内は鳥取と東京を行ったり来たりという生活です。ですから食事は外食がおもですね。もともと家事全般が好きなので、以前、暇だった時は自炊。掃除、洗濯もやっていました」

──地元の鳥取をルポすると、「石破さんが嫌いでも、佳子夫人が好きだから投票する」という声をよく聞きました。

「ありがたいことです、逆は困るよね。『奥さんが好きだから』という人が多いんですよ。家内は誰に対しても、分け隔てがないからね。私は政治家の奥さんよとか、大臣の奥さんよとか、幹事長の奥さんよとかという思いを持ったことが一度もない人なんだ」

──政治家の妻をめざしているわけでは必ずしもない、と。

「(笑顔で)ぜんぜん」

──佳子夫人とは慶応大学の同級生だそうですが、石破さんにとってはどんな存在?

「彼女がいなければ今の私はいない。彼女はものすごく自分に厳しい人ですから、それを見習ってます。総裁選に出るべきだとか、『やめてください。私たち迷惑なんだから』みたいなことは、一言も言わない。そりゃ大変だと思いますが、彼女は妥協とか保身とかが大嫌いなので」

──電話ではいつもご連絡を取り合っているそうですが。

「できるだけね。疎遠になったり、連絡がつかないと、お互いに不安になったりもしますんでね。気をつけなきゃいけないですね」

──防衛相時代、石破さんと女性秘書との関係が噂されました。恐縮ですが、奥様に直撃しました。

「それはためにする話です。そんなことあり得ないことは周囲の人たちが一番知っている。それは女性差別にもなりかねないんじゃないですか?そんな関係だったら20数年、彼女は石破事務所にいないし、事務所がもたない。私は秘書たちのプライバシーに関与したことは一度もない。人に迷惑だけはかけてはいかんよということでね。

 防衛大臣当時、防衛省改革を手掛けて、現状維持派の人たちから恨みをいっぱい買ったことがあります。それより以前、森内閣で防衛庁副長官を拝命した時、ある大学教授から『あなたは副長官を辞める時には、自衛隊を嫌いになっている。自衛隊のためにと、やればやるほど嫌われて、いろんな怪情報が出て、あなたは嫌な思いをするだろう』と言われたことがありました。なるほど、こういうことなのかなって思いましたね。一方で今でも、『石破さんがんばって』と言ってくれる自衛官、それも、偉い人より曹士クラスの人達がおられます。みんな味方なんて、あるわけがないし、防衛省・自衛隊に限らず、陰湿な文化はあるのだろうと思います。変えたいなと思いますけど」

──ご友人の片山善博元鳥取県知事に取材したら、『よく出た』とおっしゃってました。

「損なほうに賭ける性分なんでしょうかね。正しいことを正しいと言うために政治家をやっているんで、自分の保身のためだったら、こんな仕事やっちゃいかんですよ」

──93年、自民党を離党し、新生党と新進党に参加し、97年に自民党に復党なさいました。それが自民党内ではマイナスになっているという指摘もあります。

「政治改革法案をめぐり、自民党が党議決定したことをそのまま貫徹した結果なんです。私たちは若かったせいもあるけどね。昭和61年当選組で、当選3回になっていたけど、3分の2は自民党を出ましたからね」

──二階俊博・自民党幹事長も自民党を離党し、戻られていますね。

「同期では、今でも無傷で残っているのは園田先生と私だけになってしまいました。連続で11回当選させていただいています。『自民党を出たじゃないか』とか、『おめおめ、戻ってきやがって』とか言われたし、落選した人も一杯います。あの当時、小沢一郎自由党代表こそが真の保守だって、私たちは思ったんだよね。財政の健全性の回復、あるいは憲法の見直し。それを自民党が失おうとしていた。引き継いでいるのは小沢さんだと、信じたんだよね。 だから、それが違ったと気づいた時のショックはものすごく大きかった。総選挙(96年)前、私は新進党として戦おうと、ずっと地元で活動してきた。解散の日、ファックスで新進党から送られてきた公約には消費税は21世紀まで3%を維持、集団的自衛権は認めないという、それまで新進党で私が考えてきたこととまったく違う色が出てきた。 もし、新進党公認でこの公約のもとで戦って議席を得れば、任期中はその公約にずっとしばられる。それで新進党を離党して、無所属で戦うしかなかった。それから自民党に復党した。生涯で最大の挫折でした。でもね、それでもまだこうやって残っている。自民党幹事長も大臣も政調会長も務めさせていただいた。あの時に自民党を出て、落選してそのまま戻って来なかった人達は一杯いる。亡くなった方もいる。そういう人達の無念さや、悔しさを思うと、それはもう、ここで自己保身に走ることはできないんです」


鳥取駅前の石破二郎朗像
──鳥取にお墓参りに行かれた理由は?

「毎年、機会があれば行っています。父は鳥取県知事や自治大臣を務めました。国会議員としての年数や役職では私のほうが上ということになるのでしょうが、一生かかっても父を超えることはできないと思っています。頭の良さも、他人への思いやりも、自分を律する厳しさも、そのすべてにおいて、一生かけても超えられない親を持った。村の人からは、村長だったおじいさんはもっと偉かったと聞きました。当時は任命されて村長になったから、財政が傾きかけた村に派遣されて、立て直したら次の村というふうな立派な人だった。私が生まれた時にはもう他界していたから、直接には知りません。父親の偉大さというのは死んでからよくわかる。亡くなって37年になりますが、超えられない親を持ったというのは幸せなことだと思う。父の教えはたった一つ。『人に迷惑をかけるな』。これだけ。そういう父だったから、自分は傲慢になりようがない。母の父は内務官僚で、徳島県知事の後、山形県知事になった人。母親自身、知事の家庭で育ったからすごく厳しかった。私が小学一年生の頃、鳥取県庁の秘書課の人が知事公舎に来ていた時に、偉そうな口を利いたということで、母が激怒した。何を言ったかは覚えていませんが、寒い日だったけど、一晩中入れてくれなかった。母は『お前が偉いわけじゃない。お父さんが知事だから、みんなお前に頭を下げるんだ。何を勘違いしているのか』と叱られました。怖かったね」

──お酒が強いそうですが、最近は控えているのですか。

「なるべく節制するようにしています」

──ひと晩で一升飲めるということを多少オーバーでしょうが、鳥取の地元の人からは聞きました。

「オーバーではないです。昔は飲みました。飲めますけど、強いから酔うことはあまりないんですよね」

──酒はストレス発散にはならないですか。

「ならないです」

──銀座とか六本木でも、ずいぶんと飲み歩いた時期があったようですが。

「六本木なんか行ってないよ」

──武勇伝もいくつかお聞きしました。

「銀座には飲みに行ってましたよ」

──六本木のクラブの帰りのエスカレーターでコップの水をかけられたということはありませんか。

「そんなこと一度もありません。まったく一度もありません」

──銀座は?

「それはもう当時のことだからね。衆議院宿舎で勉強していると、電話がかかってきて、『何を勉強なんかしてるんだよ、飲もうよ、飲もう』と言われて。そんな時代でしたよね。最近はあまり行かなくなりました。六本木なんてぜんぜん行ったこともない。酔わないから、行ってもそんなに面白くない。街で『あ、石破だ』と言われるようになって、あれこれありもしないことを言われ、とうとう、銀座に彼女がいるということにされて、もう懲りた」

──銀座のクラブの○○○ちゃんというのは彼女とは違うんですか。

「ほら、そういわれる。鳥取出身の女性でしたからね。違いますよ」

──米子市?

「そうです。どうしてるかなぁ。天地神明に誓って、指一本触れたこともないです。同郷人って親しみがある」

──石破さんと安倍首相の一騎討ちともなれば、身辺を洗われたりするようなこともあるのではないかと思います。

「どうぞ、なんでも。何か、他に聴いたことがありますか? ○○○さんの話くらいしか、出てこないんじゃないですか」

──逆風はかなり強そうですが。

「現職の総理を相手に戦うのですから、困難な戦いに決まっているでしょう」

──以前は総裁選と言えば何人も立候補がいました。

「そうですね。6年前は5人出馬したし、9年前も5人出ましたね」

──石破バッシングも起こり、自民党に多様性がなくなっているように見えます。

「私は先輩議員から、保守というのは自分に厳しく、他者に寛容なものだと教わりました。多様性や寛容さは、保守の本質の一つです。保守政党である自民党こそが、多様で、寛容でなければならない」

──それがなぜ、こういう風になったのでしょうか。

「なぜかはわかりませんが、多様性を失った自民党はいつの日か、愛想つかされるでしょうね。そうなる前に、党員の皆さんと一緒に自民党のあり方を問い直さなければならないと思っているんです」

――安倍首相は「(自衛隊明記などを盛りこんだ)憲法改正案を自民党として次の国会に提出できるよう、とりまとめを加速すべきだ」と主張しています。一方、石破さんの憲法改正案は「憲法9条の『戦力不保持と交戦権の否認』を規定した2項を削除する」という主張です。お2人の改憲論議の報道を見ると、安倍首相のいわゆる加憲案は「穏健」で石破さんの改憲案は「過激」と印象操作されているという指摘もあります。

「憲法9条1項、2項をそのままにして自衛隊を明記するという“加憲論”というのは理屈が通らないし、党内議論での説明もない。どういうことか、と国会で尋ねられた時は、(安倍首相は)読売新聞を読めとおっしゃった。私が言っている「自衛隊を憲法に明記し、9条の『戦力不保持と交戦権の否認』を規定した2項を削除する」という改正案は自民党が党議決定したものです。それを変えるんだったら変えるプロセスが必要で、なぜそれが正しいか、きちんと党内で検証することが必要なのに、それをやっていない。この状態で、『石破は危険な過激派で、加憲案は穏健だ』みたいにいわれるとすれば心外です。テレビ朝日『モーニングショー』にこの前、出演した時、司会の羽鳥慎一さんに『そもそも交戦権って何だと思いますか?』と質問したら、『戦争する権利でしょう』という答えでした。交戦権とは戦いのルールのことで、『無差別爆撃はだめ』とか『相手国に向かう船は拿捕、没収していい』『捕虜は虐待してはいけない』などを定めたものです。ですから『交戦権を認めない』というのは、日本国は実力組織の自衛隊を持っているのに、戦争のルールを認めないことになります。戦争になり、相手がどんどん日本の基地を叩いてくるのに、こちらは向こうの基地も叩けないとすれば、ものすごいハンデになります。それでどうやって日本国を防衛できるんですか?ということなんです。現行憲法制定時には自衛権も認めていなかったのだから交戦権がないのは当たり前でした。自衛権を認めたのなら、交戦権も認めないといけない。そうした議論がないままの憲法改正は意味を失います。国民が今、政治に望むことは憲法改正よりも、経済と社会福祉でしょう。9条改正は国民、野党の理解なくして決してできるものではないので、時間をかけて丁寧にやるべきです」

──総裁選で安倍首相に公開討論を挑まれています。

「自民党の総裁選びというだけでなく、事実上、内閣総理大臣を選ぶわけだから、国民に対して広く、自分はどういう国を作りたいかということを話す機会は必要だと思います。 候補者が国民に果たすべき責任だと思いますよ。それが自民党のためであり、国家のためです。 現職総理が候補者となる総裁選というのは自民党でも久しぶりだね。小泉元首相の3期目(2003年)以来じゃないかな。現職総理だから危機管理もあるし、警備・警戒も大変だし、外交もある。今までは全候補で全国を遊説してまわっていたけど、今回はインターネットやBS放送も入れて中継という形で討論会というのが、総理の負担も減らせると思う。アメリカ大統領選挙でも、現職であっても公開討論できていますものね。日本でも、今回はぜひ、実現したいです」

(週刊朝日 上田耕司、田中将介)

※週刊朝日オンライン限定記事より、※AERA dot.より転載
http://www.asyura2.com/18/senkyo250/msg/126.html#c1

[経世済民128] 概算要求、続く“借金依存” 「平成」最後の19年度、30年間で1.6倍に(SankeiBiz) 赤かぶ
2. 2018年9月01日 13:48:09 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1416]

景気減速警戒 緩む財政規律 概算要求 最大水準

2018年9月1日 朝刊


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 二〇一九年度予算の概算要求が三十一日、締め切られたのを受け、財務省は査定作業を本格化させる。最大の焦点は、今回盛り込まれなかった来年十月に予定する消費税率10%への引き上げに伴う景気の下支え策だ。首相官邸が増税後の消費減速を警戒しているのに加え、来年夏に参院選を控える与党内では大規模な財政出動を求める声が強まっている。既に先進国で最悪の財政は、さらに悪化する懸念がある。 (渥美龍太)

 「消費税を上げて景気後退を招けば、政策は失敗だ。きちんとした対応を当初予算からやる」。麻生太郎財務相は概算要求の締め切りに先立つ二十七日、予算査定を担う主計官を集めた会議でこう宣言した。財政規律を重視する立場の閣僚が、歳出拡大を認めるような訓示をするのは異例だ。

 発言の背景にあるのは、四年前のトラウマ(心的外傷)だ。安倍政権は一四年四月、消費税率を5%から8%に引き上げた。景気悪化を防ごうと、五兆円規模の経済対策を組んだが、個人消費が想定以上に冷え込み、一四年度の実質成長率は五年ぶりのマイナスに転じた。

 その二の舞いを避けるため、来年の増税にあたっては景気の下支え策を徹底する。税制では、価格が高い自動車や住宅の購入を促す優遇措置を検討している。一方、予算については概算要求と別枠で検討されることとなり、「どこまで膨らむか読めない」(財務省幹部)状況だ。

 ただ、巨額の国費を投じる対策の必要性には疑問符もつく。日銀の試算によると、増税に伴う家計負担の増加額は一四年が八兆円だった。今回は食料品などに軽減税率が適用され、税収の使い道も教育無償化などが追加されることから、二兆二千億円にとどまる。

 それでも政府・与党内に大規模な経済対策を求める声が強いのは、来年春の統一地方選、夏の参院選への影響を抑えたいからだ。自民党の二階俊博幹事長の派閥は党総裁選で支持する安倍晋三首相に対し、「国土強靱(きょうじん)化」の推進を提言。党内の若手議員グループは二十兆〜三十兆円の経済対策を求めている。

 世界的な好景気にもかかわらず、安倍政権は切れ目なく、大きな経済対策を講じてきた。その上、一九年度当初予算は初の百兆円超えが視野に入るなど、財政規律の緩みが止まらない。

 日本総研の河村小百合氏は「一時的な景気落ち込みを恐れ、巨額の経済対策を積むのでは増税の意味がない。財政への危機感があまりに薄い」と指摘する。


 

アルゼンチン、苦渋の緊縮策へ 市場の信認遠く
中南米
2018/8/31 16:24日本経済新聞 電子版
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 【サンパウロ=外山尚之】通貨ペソの下落が続く中、アルゼンチン政府は緊縮策を含む財政再建に踏み込む。中央銀行の利上げや国際通貨基金(IMF)の支援にもかかわらず、ペソの対ドルでの年初来の下落幅は50%に達する。景気悪化も覚悟のうえで一段の財政再建策が不可欠と判断したが、金融市場での信認回復につながるかは予断を許さない。

 アルゼンチンの中央銀行は8月30日の緊急会合で政策金利を60%に引き上げた。前…


 


韓国政府、10年ぶりに財政拡大を最大に…雇用・福祉に集中
登録:2018-08-29 06:16 修正:2018-08-29 16:51
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政府、来年度予算案を470兆ウォンに確定 
 
景気減速に財政支出9.7%増やし 
保健・福祉・労働に161兆5千億ウォン割り当てる 
雇用予算22%増やした23兆5千億 
税収好調により国家債務の影響は少ない

キム・ドンヨン副首相兼企画財政部長官(中央)が今月24日、政府世宗庁舎で「2019年度予算案」事前ブリーフィングで発言している=企画財政部提供//ハンギョレ新聞社
 文在寅(ムン・ジェイン)政権が来年の予算案を470兆5千億ウォン(約47兆1千億円)規模で編成した。今年より財政支出を9.7%、41兆7千億ウォン(約4兆8千億円)増やすことで、世界金融危機直後の2009年を除けば、2000年以降最も高い水準だ。雇用創出と両極化解消、少子化対策など当面の構造的問題を解決するため、財政を拡張的に運用するという意志が盛り込まれた。最近の景気減速や雇用低迷などの状況とも相まって、政府が従来より積極的に国の財政を運営していく計画を打ち出したのだが、依然として短期的な税収好調に依存する側面が大きく、中長期福祉の拡充などには限界があると指摘されている。


中期財政収入・支出の展望//ハンギョレ新聞社
 政府は28日の国務会議を開き、このような内容を骨子とした「2019年度予算案」を確定した。来年の財政支出の増加率9.7%は、2009年の10.6%以来最高値だ。政府は増える予算を雇用創出と革新成長などの経済活力の強化や所得分配の改善およびセーフティーネットの拡充、国民生活の質の改善、国民が安心できる社会の実現に重点的に投資する計画だと明らかにした。来年の総収入は481兆3千億ウォン(約48兆2千億円)で、1年前より7.6%増える見通しだ。この中で国税収入は今年より11.6%(31兆2千億ウォン)増えた299兆3千億ウォン(約30兆円)になるものと予想された。

 来年度の予算は福祉分野に多く使われる。政府は来年の福祉分野(保健・福祉・労働)に今年より12.1%増額した161兆2千億ウォン(約16兆1500億円)を割り当てた。今年の福祉予算は当初、政府予算案基準では前年度に比べ増加率が12.9%だったが、国会で一部削減され、11.7%になった。福祉分野予算の中でも雇用予算が23兆5千億ウォン(約2兆4千億円)で、一年前より22%増えた。構造的な雇用不足に加え、最近の雇用低迷が影響を及ぼしたものと見られる。今年大幅に削減された社会間接資本(SOC)予算は今年(19兆ウォン)より2.3%減少した18兆5千億ウォン(約1兆9千億円)だ。政府は地域経済と雇用に及ぼす影響を考慮し、当初の今年の政府案(17兆7千億ウォン)よりは増額したものだと明らかにした。

 財政支出の大幅な増加にもかかわらず、財政収支や国家債務に与える影響は制限的だ。国内総生産(GDP)における財政収支は今年-1.6%(本予算基準・補正予算の基準は-1.7%)から来年は-1.8%で、赤字幅がやや増える。GDPにおける国家債務の比重は今年39.5%から39.4%に、むしろ低くなる。最近の税収増加により、支出を増やしたにもかかわらず、赤字幅を抑えられるようになったわけだ。

 政府は任期中、拡張的な財政運営に乗り出すと明らかにした。この日政府が発表した「2018〜2022年国家財政運用計画」によると、2022年まで年平均財政支出の増加率が7.3%に達する。ただし、専門家らは安定的な税収拡充計画が伴っておらず、政府の財政投資計画が国民の政策の実感度を高めるには十分でないと指摘している。チョン・セウン忠南大学教授(経済学)は「全体的に進展した側面があるが、現在韓国社会が直面した構造的問題を考慮すると、さらに特段の対策を樹立し、積極的な財政拡充計画が伴わなければならない」と話した。

チョン・ウンジュ、ホ・スン、パン・ジュノ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
http://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/859663.html
韓国語原文入力:2018-08-28 22:35
訳H.J
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日本の解き方】不合理な緊縮財政は人を殺す インフラ整備阻む「EU規律」、日本も金科玉条扱いは不要 (1/2ページ)
2018.9.1
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8月18日、イタリア・ジェノバで高架橋崩落事故の犠牲者の国葬に出席するために集まった弔問者ら(ロイター) 8月18日、イタリア・ジェノバで高架橋崩落事故の犠牲者の国葬に出席するために集まった弔問者ら(ロイター)
 イタリアのジェノバで発生した高架橋崩落事故をきっかけに、「反緊縮財政」の可能性が浮上していると報じられた。日本の報道では「バラマキ」と批判的なトーンが多いが、緊縮財政がもたらす悲劇と比べてどちらが問題なのだろうか。

 イタリアのコンテ首相は既に2019年予算案の枠組みを固めているが、連立政権を構成する右派政党「同盟」を率いるサルビーニ副首相は、ジェノバの事故を受けて、安全対策への支出を妨げる欧州連合(EU)の財政規律に「従うことが理にかなうのか疑問が生じる」と不満を示したという。

 EUの財政規律とは、1993年11月発効のマーストリヒト条約(現リスボン条約)に定められた財政赤字の2つの基準である。具体的には(1)単年度の財政赤字が国内総生産(GDP)比3%以下(2)公的債務が同60%以下というものだ。基準の順守を加盟国に義務付けるとともに、加盟国の財政を監視することが取り決められた。

 この公的債務残高をGDP比60%以下とするのは、理論的にもおかしな話だ。まず、これでは赤字国債も建設国債も同じ扱いになってしまう。資産が残る建設国債は投資のための手段であり、経済成長には欠かせないものだ。この点を考慮すると、公的債務残高の基準を作るなら、建設国債を除いて考えるべきだろう。


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8月18日、イタリア・ジェノバで高架橋崩落事故の犠牲者の国葬に出席するために集まった弔問者ら(ロイター) 8月18日、イタリア・ジェノバで高架橋崩落事故の犠牲者の国葬に出席するために集まった弔問者ら(ロイター)
 実は、EUに至るこれまでの発展の中で、各国の投資は欧州機関で行うという考え方があった。58年にローマ条約によって設立された欧州投資銀行(EIB)は、ルクセンブルクに本部があり、EU域内のインフレ整備などに融資している政策金融機関だ。EU各国が出資しているが、財政的にはEUと独立している。つまり、EIBが融資するインフラは、EIBが発行する債券で賄われ、自国で国債発行することなく整備できる仕組みだ。

 この仕組みがワークすれば、EU各国はインフラ整備のための建設国債を発行する必要はないのだが、実際にはあまりEIBは機能していない。EIBの総資産は5500億ユーロ(約71兆円)。EUのGDP15・3兆ユーロ(約2000兆円)の3・5%に過ぎず、とてもEU全域のインフラ投資を賄えるものではない。つまり、EU各国の建設国債振り替えの受け皿にはなれない。

 こうして、EUは健全なインフラ整備を行おうとしても財政規律で障害が出るようになっている。イタリアの事故で、今やその不満が噴き出しているとみたほうがいい。

 日本では、EUの財政規律を金科玉条のように扱い、その不合理性を指摘する論考はほとんどない。本コラムで繰り返しているように、日本では財政再建の必要性はかなり乏しく、不合理な緊縮財政がもたらす悲劇のほうが大きい。

 無駄なインフラ整備はダメだが、費用便益を精査した上でのインフラ整備は、財政規律と無関係だ。財政問題を理由として、躊躇(ちゅうちょ)してはいけない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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【第41回】 2018年9月1日 三井住友アセットマネジメント 調査部
街角景気が悪化でも、今後の日本企業の景況感は期待できるワケ
日本企業の今後の景況感
(写真はイメージです) Photo:PIXTA
 皆さんこんにちは。三井住友アセットマネジメント調査部です。毎週土曜日に「ビジネスマン注目!来週の経済、ここがポイント」をお届けしています。

 世界経済は、減税や財政支出増によって力強さを増している米国経済に牽引される形で数字の上では堅調に推移しています。しかし、地域や産業ごとで強弱にばらつきが見られる他、米国の強硬的な通商政策や、トルコ通貨リラの大幅下落などもあって、安定感に欠けている印象です。

 日本経済も例外ではなく、景気が冷え込んでいる訳ではないものの、好調な経済データが続いている訳でもありません。GDP成長率を見ると、1−3月期は9四半期ぶりに前期比でマイナスに落ち込んだのち、4−6月期は回復して前期比年率で+1.9%と高めの成長率を記録しました。とはいうものの、経済データは強弱まちまちとなっていて、必ずしも力強さを感じるものではありません。

 今週は日本企業が置かれている環境を確認し、投資や賃金・雇用といった将来の経済成長につながるものがどのような展開を見せるかについて考えてみたいと思います。

 まず、世界経済の状況について、簡単に整理しましょう。

米国に牽引され堅調に拡大する世界経済
2018年は前年比+3.9%の経済成長へ
 IMFの予想によると、2018年の世界経済は前年比+3.9%の経済成長が見込まれています。その内訳は、米国が同+2.9%で前年から0.6%ポイントの加速が見込まれている一方、ユーロ圏は0.2%ポイント減速の同+2.2%、日本は0.7%ポイント減速の同+1.0%見込みとなっています。

 また、今年4月以降に進んだドル高の影響もあり、アルゼンチンやトルコ等の新興国通貨が大きく下落しています。国や地域によっては利上げによって通貨下落の防衛を図っているところもあり、そういった国や地域では経済成長見込みが引き下げられる傾向にあります。

 世界の貿易量も、ここにきて足踏み状態となっています。オランダ経済分析局が発表したデータによると、4−6月期の世界の貿易数量は前期比年率で▲0.1%と、わずかながらも9四半期ぶりに減少しました。今年の春以降、米国の追加関税のニュースが出ていて駆け込み輸出もある模様ですので、これらのデータがどの程度実態を表しているのかやや判断が難しい面もあります。

 このように、世界経済はGDP成長率で見れば堅調ですが、実際は強弱が混じった状況と見ておいてよさそうです。

「悪くはないが、すごく良い訳でもない」
日本経済の現状をデータでチェック
 経済全体の強弱を知るにはGDPを見るのが最もシンプルで分かりやすいのですが、この数字は前述の通り、4−6月期は前期比年率で+1.9%と高めの成長となりました。ただ、GDPは四半期に一度しか発表されないため、次の発表の11月まではその他の経済統計や業界統計をチェックする必要があります。

 景気の先行きを占う際に広く参照される経済データの代表格として、景気ウォッチャー調査があります。これは、「街角景気」とも呼ばれ、景気に敏感なタクシー運転手や小売店、メーカー、輸送業、広告代理店など、地域の景気の動きを敏感に観察できる立場にある約2000人を対象とした調査です。足元の景気の動向を最も敏感に表している指標と考えられます。

 さて、その「街角景気」ですが、7月は「現状判断」も「先行き判断」も前月と比べると悪化しています。同月に日本列島を襲った豪雨や猛暑の影響が出ている模様です。家計関連と企業関連に分かれてデータが集計されていますが、それらを見ると、家計関連の落ち込みが大きく、天候不順により一般消費者が外出を控えたリスクうかがえます。

 他には、百貨店やスーパー、コンビニ等の小売業の売り上げも7月分の数字が発表されています。データは前月比で+0.1%でした。豪雨や猛暑はありましたが、一方で飲食需要やエアコン販売が伸びたため、消費者の売買行動は影響をそれほど受けなかったと見られます。また、賃金やボーナスといった所得が伸びていることも、比較的堅調な消費を支えていると考えられます。

 もう1つ発表されている7月のデータには貿易があります。実質輸出は、前月比わずかに増加しているものの、4−6月期の輸出数量を▲1.3%下回っており(当社計算値)、弱めの数字となった印象です。なお、世界経済は現在までも堅調に推移していること、米国の開始している鉄鋼やアルミ製品への関税引き上げの影響はそれほど大きくないと見られることから、基調としての輸出は底堅く推移していると考えることが出来ます。7月の輸出の弱さも、豪雨や台風の影響が表れている可能性があります。

 以上が日本の企業を取り巻く環境です。一言でまとめますと、「悪くはないがすごくいいという訳でもない」といったところです。

 さて、それでは、企業部門の状況を確認しましょう。

好調だった4−6月期業績発表
設備投資は2ケタ増、賃金も前年比増
 企業の売り上げや利益については、7月から8月の半ばごろにかけて行われた4−6月期の企業業績発表が参考になります。東証一部上場企業全体(金融を除く)では、売り上げが前年同期比+5%、営業利益は同+10%となりました。

 昨年度は過去最高益を更新した後ですし、企業が発表している今年度通年の利益成長の見通しがプラスマイナス・ゼロ近辺ですので、4−6月期の企業業績は良好と言えます。なかでも、情報通信、電気機器、輸送用機器等のセクターが事前予想を上回り、好調な業績となりました。4月と比べると円安・ドル高が進んだこと、グローバル景気の拡大が続く中、海外売り上げが好調だったこと等が要因になっていると見られます。

 企業は、ものすごく良好とはいえない経済環境ながら、創意工夫によって好調な業績を上げていると考えられますが、そういった業績を裏付けとして企業はどういった経済活動を行っているのでしょうか。まず、設備投資の状況を見ます。

 設備投資は、内閣府が発表している機械受注が参考になります。これは6月分まで発表されていますが、6月のデータはかなり弱く、前月比▲8.8%で製造業、非製造業ともにマイナスでした。特に製造業のマイナスが大きくなっています。米国の強硬的な通商政策を受けて企業が機械設備の発注を一旦様子見した可能性があります。

 日本政策投資銀行が今年の6月に行った調査結果によると、大企業(資本金10億円以上)の2018年度国内設備投資額は、全産業で前年比+21.6%の大幅増となる見込みです。これは7年連続の増加で、伸び率としては38年ぶりの高さです。

 製造業は同+27.2%増、非製造業は同+18.5%増でいずれも2ケタの伸びが見込まれています。中でも製造業は、自動車の電動化などのモデルチェンジ対応や、自動車向けを含む能力増強・省力化投資が幅広い業種で増加する見込みで、非製造業は、運輸、不動産で都市機能拡充に向けた投資やサービスなどでインバウンド対応の投資が続くほか、人手不足に対応した店舗、物流投資も増加する模様です。

 次に、設備投資に並んで重要な企業活動である雇用や賃金の状況を見ます。

 過去数年、日本企業の業績は傾向的に伸び続けてきましたが、その割には賃金の伸びは低く抑えられてきました。現在の景気拡大は2012年12月に始まりましたので、既に6年目に入っています。また、有効求人倍率は6月に1.62倍と、1974年1月以来の高水準となっており、人手不足感が高まっています。こういった状況下、徐々に賃金上昇率は高まってきています。

 6月の毎月勤労統計によると、名目賃金は前年比で+3.3%となりました。これは97年1月以来の高さです。また、日経新聞が集計した夏のボーナスの支払い状況は前年比+4.2%と、企業は利益の従業員への還元に徐々に前向きになってきている印象です。

 一方、雇用については、6月は前年比で+1.5%となっています。雇用と名目賃金をかけ合わせると、前年比で5%程度の所得の伸びとなっていると考えられます。世帯に勤労者がいる消費者は、久しぶりに所得の伸びを実感できる状況になっていると見られます。

 さて、今後の企業活動はどうなるでしょうか?

トランプ大統領の政策に不安は残るが、
ドイツの景況感は改善、日本にも波及か
 経済は引き続き比較的堅調な拡大が続くと見られます。米中が財政政策を積極化しているため、下振れのリスクはかなり低下していると考えられます。リスクは、やはりトランプ大統領の強硬的な通商政策です。ただし、7月末以降、EUやメキシコとの交渉でそれぞれ合意に至るなど、11月の中間選挙へのアピール材料の「刈り取り期」に入ってきている印象があります。まだ、完全に安心はできませんが、今まで以上の悪材料となる可能性は下がってきていると見られます。

 こうなると参考にしたいのがドイツの有力な経済研究機関のIfoが毎月発表している景況感指数(通称、Ifo調査)です。これは、ドイツ経済の先行指標として金融市場ではいつも注目されているもので、このところ米国との貿易摩擦問題を背景に数字が弱含んでいました。ところが、8月27日に発表された8月分のデータは大きく改善しました。これは、米国とEUが7月25日に貿易交渉で合意に至りましたが、これによって企業センチメントが大幅に改善したと見られます。

 日本企業の場合も米国の貿易摩擦問題が最大の懸念材料ですが、具体的には米中協議と米国による自動車への関税の引き上げの2つがあります。これらのいずれもが懸念材料ではなくなる可能性はそれほど高くないと見られますが、片方でも懸念材料でなくなれば、日本企業もドイツ企業のようにセンチメントが改善し、設備投資や賃金・ボーナスの引き上げにより前向きになる可能性があります。

 最後に、アジアのIT需要の先行指標として注目される台湾の輸出受注についてご紹介します。8月20日に発表された7月データは予想を上回り前年比+8%となりました。内訳をみると、電子部品や情報通信機器の需要が強まっています。米国を中心とした通商摩擦が大きく改善しなくても、日本の企業活動を後押しする材料になると見られます。

(三井住友アセットマネジメント 調査部長 渡辺英茂)

http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/349.html#c2

[国際23] 事実に追い詰められた人びとが逃げ込む「陰謀論」という呪文(櫻井ジャーナル)  赤かぶ
1. 2018年9月03日 09:02:36 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1417]
世界金融危機から10年、ポピュリズムこそが真の遺産

驚くほど変わらない国際金融市場、犠牲になったの労働者の怒り

2018.9.3(月) Financial Times
(英フィナンシャル・タイムズ紙 2018年8月31日付)

米株、強気相場の最長更新 連続3453日
米ニューヨークで、強気相場(bull market)を象徴する雄牛(bull)の銅像と並んで写真を撮る人(2010年5月25日撮影)。(c)AFP PHOTO / GETTY IMAGES NORTH AMERICA / SPENCER PLATT〔AFPBB News〕

 世界金融危機の遺産は、市場経済の見直しでもおかしくなかった。「何でもあり」という風潮が、「誰もが利益を得る」に少し近い風潮に道を譲っていた可能性もある。

 市場暴落の後に聞かれた説得力のある演説や大胆な約束――バラク・オバマ氏、ゴードン・ブラウン氏、アンゲラ・メルケル氏などの姿を思い浮かべてほしい――は、まさにそのような期待を抱かせた。

 ところが、我々が結局手に入れたのは、ドナルド・トランプ氏であり、ブレグジット(英国の欧州連合=EU=離脱)であり、近隣窮乏化を厭わないナショナリズムだった。

 2008年9月のリーマン・ブラザーズ破綻を機に始まったプロセスは、大きな敗者を生み出した。自由民主主義と開かれた国境という2つの概念だ。

 民間銀行の幹部、中央銀行の幹部、規制当局者、政治家、エコノミストなど、危機の元凶になった人たちは、自分のせいではないと肩をすくめるばかりだった。

 世界は明らかに変わった。しかしその変わり方には、本来なら知性ある改革の特徴になるような秩序や体系がなかった。

 所得の伸び悩みと緊縮財政が10年間続いた以上、金融危機の経済的影響から最も大きな打撃を被った人々が、エリートに反旗を翻すポピュリストの台頭を支持することは決して意外なことではない。

 豊かな国々では人口のかなりの部分が、レッセフェール(自由放任)の経済や、グローバル化という開かれたフロンティアを拒むようになっている。

 最も景気がいい時期でさえ、大規模な移民は混乱をもたらす。そこへ緊縮財政を放り込めば、移民はあっという間にスケープゴートにされる。

 とりわけ衝撃的なのは、国際金融市場の運営にほとんど変化が見られないことだ。

 解雇された銀行幹部は何人かいた。巨額の罰金の支払いを迫られた金融機関もいくつかあった。だが、最大の負担は国や株主に押しつけられた。

 野放図な金融資本主義を構築した張本人たちは、今でも巨額のボーナスを手にし、何ケタあるか数えている。

 困ったことと言えば、そのボーナスの現金化が可能になるまで待たねばならない期間が少し延びたことぐらいだ。

 当初の規制改革――銀行は自己資本を増強したり、コンプライアンス(法令順守)担当社員を増やしたりしなければならなくなった――にもかかわらず、米ウォール街や英シティーの人々の日常は以前とほとんど同じだ。

 銀行幹部は、社会の役に立たない活動をしながら多額の給料を手にしている。国家は、大きすぎてつぶせない金融機関に保証という形で巨額の補助金を提供し、その原資は納税者が負担している。

 そして頭脳明晰な若い数学者たちは、トレーディングルームの活気を保つために、危険なほど不透明な金融商品を新たに開発している。

 今日でも以前と同じように、利益が民営化される一方でリスクは国有化されている。欠けているのは、資本主義の正直さを維持してくれる競争だ。

 事後の分析が行われた場合でも、それが公表されるや否や、急進的な結論は脇に追いやられ、ほこりをかぶるだけとなった。

 中央銀行の幹部らは、共謀の疑惑を否定した。市場の監視役を担う当局も同様だ。

 米連邦準備理事会(FRB)の議長を2006年まで務めたアラン・グリーンスパン氏は、足かせを外した市場の美徳を説く第一人者だった。同氏はいまだに賢人としてあがめられている。

 マービン・キング氏はイングランド銀行総裁として、同銀による組織的な規制に投じる資源を減らし、金融危機は投資銀行のせいだと批判を積み重ねた。公職を退いた今はシティグループに助言を行う立場に収まっている。

 片や政治家たちは、金融界を特別扱いするのをやめる、ウォールストリートよりもメーンストリートを重視する、市場を国民の主人ではなく僕(しもべ)にすると約束していた。

 当時、英財務相だったジョージ・オズボーン氏は「我々はみな同じ船に乗っている」と言っていた。

 そんなことはない。暴落のコストは主に、最も負担に耐えられない人たちの肩にのしかかった。

 緊縮財政では、増税ではなく公的支出の削減が中心になった。英国の場合、オズボーン氏が設定した負担の配分は、歳出削減と増税が8対2の割合だった。

 所得が少ない人ほど、国の支出に頼る割合は大きくなる。票が必要なときには政治家が愛してやまない「ハードワーキング・クラス(一生懸命働く階級)」が犠牲にされたのだ。

 このようにほとんど自明の観察を行うのは、ポピュリズムの復活を説明するためだ。

 かつての安定した働き口を失ってしまった白人ブルーカラーの米国人が今トランプ氏を支持しているのを見て、誰が驚くだろうか。

 同様な立場にある英国の人々が、彼らの不幸を移民のせいにする悪意ある議論に影響されてブレグジットを支持したことも、やはり不思議ではない。

 欧州大陸を見渡してみても、極端なナショナリズムの台頭が社会市場経済――普通の有権者にも利害関係を持たせた資本主義の一形態――の衰退を反映していることがよく分かる。

 もちろん、デジタル技術や、一握りの巨大ハイテク企業による非競争的なレントシーキング(注1=自分の都合に合わせて法規制を調整させて超過利潤(レント)を得ようとする行為)によって、負担が重くなった面はある。

 グーグルが積極的に推進している租税回避のコストは、税負担を引き受ける力が最も弱い人々の肩にのしかかる。

 ポピュリストを増加させるのに最も貢献した感情は、不公平感だ。つまり、エリート連中は俺たちが困っていても何とも思わないんだ、という考えだ。

 トランプ氏をはじめとする人々は答えなど持っていない。

 それどころか、この米国大統領の「支持基盤」だと言われている人々こそが、大統領の始めた貿易戦争の敗者になるだろう。

 彼らはすでに、大金持ちへの減税によって富を奪われている。英国の労働者たちも、ブレグジットのおかげで貧しくなる。

 イタリアの連立与党の一角を担う「同盟」とフランスの「国民連合(RN、旧国民戦線)」も同じ類いのインチキを吹聴している。しかし、彼らが認識している不満の多くは本物だ。

 後年の歴史家たちはいずれ、2008年の世界金融危機を振り返って、この瞬間に世界最強の国々が国際社会をリードするのをあきらめ、グローバル化が逆回転を始めたのだと認識することになるだろう。

 無理もないことだが、世界の他の国々は、西側諸国から学ぶべきことはもうほとんどないとの結論に至っている。

 当時は多くの人々が、共産主義の崩壊はオープンで自由な民主主義が永久に覇権を握る時代の前兆だと考えていた。

 だが、実際にはそうなっていない。

 未来の歴史家たちを本当に悩ませるのは、アンシャンレジーム(旧体制)はなぜ、自らの終焉に際してこれほどまでに怠惰で無頓着だったのか――それどころか、終焉に手を貸していたのか――ということだろう。

By Philip Stephens


http://www.asyura2.com/18/kokusai23/msg/773.html#c1

[国際23] 事実に追い詰められた人びとが逃げ込む「陰謀論」という呪文(櫻井ジャーナル)  赤かぶ
2. 2018年9月03日 09:04:07 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1418]
アルファベット会長が語る「偽ニュース・中国・米政府」

Alphabet Chairman John Hennessy: How I Work

WSJのインタビューに答えるアルファベットのヘネシー会長(英語音声、英語字幕あり)
By Douglas MacMillan
2018 年 9 月 2 日 08:59 JST 更新

 ドナルド・トランプ米大統領は最近、グーグルのニュース検索結果は保守派に不利になるよう操作されていると批判し、政府の介入が必要かもしれないとの認識を示した。こうした批判に対応することは、半年前にグーグルの親会社アルファベットの会長に就任したジョン・L・ヘネシー氏の喫緊の課題だ。

 アルファベットを巡っては、グーグル利用者からプライバシーに関する懸念の声が上がる一方、規制当局もアルファベットが過度な影響力を握らないよう対応を模索している。検閲対応の検索エンジンで中国再参入を目指しているとされ、こうした物議を醸すプロジェクトについては、社内でも一層の透明性求める声も多い。ヘネシー氏は、こうした波乱の時代を切り抜けるよう、アルファベットを導く手腕が問われている。

 ヘネシー氏はこのほど、サンフランシスコでウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のインタビューに応じた。

 ヘネシー氏は、シリコンバレーが生み出す未来を懸念しているかとの質問に対し、「テクノロジー楽観主義者」との立場を変えていないとし、ハイテク業界が自主規制を行うことが可能だと話す。ただ、業界がその方策を見つけられなければ、政府の介入は不可避とした。また「偽ニュース」など、テクノロジーが悪用されるケースに言及し、意図せぬ悪影響をもたらす可能性に留意する必要があるとした。

 ヘネシー氏はアルファベットの会長に就任する以前は、スタンフォード大の学長を務めており、ハイテク業界とのつながりを深めてきた。グーグルの他、ネット検索のヤフー、電子決済サービスのペイパル、動画配信サービスのネットフリックス、写真共有サイトのインスタグラムなど、これら有力ハイテク企業はいずれも、スタンフォード出身者が創業した。

 米政府との共同プロジェクトへの批判など、社内で活発な議論が交わされる企業文化の是非については、社内で生まれ、他の社員を不快にさせない限り、問題はないとの認識を表明。企業は社員の貢献の元に成り立っており、社員が信念を持って仕事に注力し、自分たちの意見を聞き入れられていると感じるほど、会社も強くなると述べた。

 グーグルは中国の検閲方針に反対し、2010年に同国から撤退した。その原則を曲げずに、中国に再参入できるかとの問いには、まだ検討段階だと指摘。中国再参入を目指す理由については、中国ほどの大国を無視することは難しいとし、「問題は、制限付きのグーグルでも中国の人々の暮らしが良くなるのか、それともアクセスが全くない方がましなのかだ」とした。その上で、「世界には何らかの形で検閲が存在するのが現実」とも述べた。

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http://www.asyura2.com/18/kokusai23/msg/773.html#c2

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4. 2018年9月03日 09:08:24 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1419]

利上げ批判の意図【フィスコ・コラム】[FISCO]

配信日時 2018年9月2日(日)08:35:00 掲載日時 2018年9月2日(日)08:45:00

トルコのエルドアン大統領のお株を奪うような、アメリカのトランプ大統領による中銀への圧力が波紋を広げています。世界を相手にした貿易摩擦でみせる剛腕ぶりを、今度は金融市場で発揮するのでしょうか。

パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は8月24日、ジャクソンホールでの講演で、好調な経済を背景に目先の引き締めに引き続き積極的な姿勢を示しました。一方で、過度な利上げを避けたいとの見解も述べています。市場では利上げ打ち止めの見方が広がり、ドル売りに振れました。直前にトランプ大統領がFRBの利上げを「気に入らない」などと批判したことで、この講演は注目されていました。

パウエル議長の発言は、今後の政策余地を広げる狙いがあったとみられ、大統領を忖度したものではないものの、そうみられても不自然ではありません。

トランプ大統領による利上げ批判はこれで3度目とあって、当然であるべき中銀の独立性が脅かされるとの懸念も出始めています。金融政策に直接意見を言わないとの不文律が金融大国で破られたことで、市場は少なからず動揺しているように思えます。

1960年代以降、各国政府は悪性のインフレに悩まされ、それを克服する過程で、専門性の高い金融政策は独立した組織である中銀に委ねるという現在のような体制が整備されました。政治家が自身への支持を集めようと景気浮揚に走って中銀に無制限に紙幣を印刷させれば、インフレに拍車をかけてしまいます。そうした事態を避けようと、中銀の独立性は確立されてきました。しかし、最近ではどこの国もインフレではなくデフレに悩まされており、問題の解決には富の分配を要するため、金融政策ではなく政府が直接関与する財政政策によって経済を立て直すべきとの意見が強まっているのも事実です。それでも、アメリカ大統領が金融政策に直接言及したケースは記憶がありませんが、トランプ政権はそうしたカルチャーまでも破壊してしまうのでしょうか。

今年に入って始まった貿易摩擦は、トランプ政権が世界中を敵に回して始めた戦争です。世界貿易機関(WTO)からの脱退を検討する可能性を示唆したほか、最近では直接ドル売り介入に関する観測も出始めました。

欧州連合(EU)をはじめメキシコやカナダも、力でねじ伏せようとするトランプ政権に譲歩以外に道はなさそうに見えます。

向かうところ敵なしです。

仮に貿易戦争で関税率が引き上げられれば、物価は一時的にせよ上昇が見込まれます
。その際に引き締め政策が制限されれば長期的なインフレリスクが高まる、と市場関係者は警戒しています。

しかし、トランプ政権にはそうした正当な理論が受け入れられるとは思えません。FRBを中銀として尊重するよりも、ディープステートの一角とみて、根本から変えることを狙っているのかもしれません。利上げ批判にはそんな意図を感じます。(吉池 威)




利上げ濃厚な9月のFOMC前の最後の雇用統計は?<米雇用統計>
配信日時 2018年9月1日(土)17:02:00 掲載日時 2018年9月1日(土)17:12:00
 さて、早くも9月に入り、盛り上がることの多い秋相場に突入です。特に今年は11月に米中間選挙を控えていることもあり、いろいろな動きが期待されるところです。

 米経済は依然として好調。
 今月25日、26日に開かれる米FOMC(連邦公開市場委員会)では、利上げがほぼ確実視される状況となっています。
 8月29日に発表された米第2四半期GDP改定値が、予想に反して速報値から上方修正され、前期比年率+4.2%を記録するなど強い数字が目立ちます。また、31日に発表されたインフレターゲットの対象であるPCEデフレータ(8月)は
予想通りとはいえ、前年比+2.3%、同コアの前年比+2.0%と総合はターゲットを大きく超え、コアもターゲットと同水準となるなど、物価上昇傾向も継続しています。

 こうした中で、今週金曜日は月初恒例の米雇用統計が発表されます。
 利上げ濃厚なFOMC前最後の雇用統計だけに注目度が高まっています。

 前回の7月分では予想の+19.3万人を下回り+15.7万人にとどまった非農業部門雇用者数は、+19.1万人と好調な数字が期待されています。
 前回も予想を下回ったとはいえ、5月分、6月分が合わせて5.9万人の上方修正となっており、その反動を考えると十分に好結果だけに、予想通りだとすると、米雇用の堅調な状況が続いているといえると思います。

 前回の内訳をみると、製造部門の雇用が+5.2万人と好調を維持。サービス部門はトイザらスの閉店に伴う人員削減などが響いて弱めとなりましたが、好況時に増えるレジャー&ホスピタリティが+4万人と好調。先行指標として知られるテンポラリーヘルプサービスが+2.79万人とこちらもかなり好調で、今回の数字も期待できそうな強めの結果になっています。

 前回3.9%と予想通りながら改善した失業率は、今回も3.9%が期待されています。

 物価との関係もあり注目される平均時給は前回+2.7%と予想及び前々回と一致しました。 今回は+2.8%とさらに上昇の見込みです。

 予想通りの数字が出てくると、9月の利上げのみならず、12月のもう一段の利上げ期待を押し上げてくる可能性が高そうで
ドル買いの動きにつながりそうです。

 なお、直前の先行指標の予想状況をみてみると、3日が米国の祝日となる関係で今回は雇用統計の前日6日の発表となる
ADP雇用者数は予想が+18.8万人と、前回の+21.9万人から若干伸びが鈍化見込み。

 4日のISM製造業は予想が57.6と前回の58.1からわずかに鈍化見込み、6日のISM非製造業は予想が56.9と前回の55.7から若干上昇見込みと、先行指標はまちまちです。

 利上げを促し、さらに今後の利上げ期待を押し上げてドル高を誘うような、力強い数字が出てくるのかどうか、世界中の注目が集まるところです。



http://www.asyura2.com/18/kokusai23/msg/770.html#c4

[国際23] 経済についてのトランプ大統領の発言(米国大統領府)[2018.7.27発表] 無段活用
5. 2018年9月03日 09:15:04 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1420]

新興国市場での混乱が続く中、通商摩擦でも米・カナダの交渉が妥結せず、先行き不透明になっています。今週は同交渉が再開されるほか、米国の対中関税第3弾発動の可能性があります。3日は米国株式・債券市場は休場です。以下は一日を始めるにあたって押さえておきたい5本のニュース。

NAFTA廃止が再浮上
トランプ米大統領は北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉に絡んで、カナダによる「何十年にも及ぶ地位の乱用」を非難、米議会の交渉介入もけん制した上で同協定を廃止する可能性をあらためてちらつかせた。両国は期限だった8月31日までに交渉をまとめられず、9月5日に再開する。

欠席へ
トランプ氏は11月の東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議とアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を欠席する。代わりにペンス副大統領を派遣する。APECには通常、中ロ首脳が出席しており、トランプ氏の欠席は、経済力・軍事力を強化する中国への対抗勢力としての米国の信頼性に対し、域内の懸念を高める恐れがある。また、習近平主席との会談の可能性を閉ざすことにもなる。

さらなる格下げも
既に投機的等級にあるアルゼンチン債務の格付けを、S&Pグローバル・レーティングが「B+」からさらに引き下げる可能性がある。通貨急落や国際通貨基金(IMF)による救済が背景。関係者によると、同国政府は市場の不安を和らげるため穀物輸出に対する課税を復活させ、財政赤字の穴埋めに充てることを検討している。

最大2.4万人削減
米自動車フォード・モーターは最大2万4000人を削減し、一部車種の生産を中止する可能性がある。赤字の欧州事業についても、てこ入れを図る。英日曜紙サンデー・タイムズが報じた。同紙によれば、モルガン・スタンレーのアナリストはフォードが20万2000人の従業員のうち欧州事業を中心に12%削減すると予想。スポーツタイプ多目的車(SUV)に注力し、「モンデオ」や「ギャラクシー」などの生産を中止する可能性が高いという。



トランプ大統領、カナダは「何十年も地位を乱用」
Andrew Mayeda、Josh Wingrove、Eric Martin、Shawn Donnan
2018年9月3日 1:26 JST
両国の交渉がまとまらずに期限を過ぎたその翌日にツイート
米議会の介入けん制、NAFTAを完全に終わらせる可能性に言及
トランプ米大統領は北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉に絡んで、カナダによる「何十年にも及ぶ地位の乱用」を非難し、同協定を廃止する可能性をあらためてちらつかせた。

  トランプ氏は1日にツイッターで、「新たなNAFTAの取り決めにカナダをとどめておく政治的な必要性はない。何十年にも及ぶ地位の乱用があった後で、われわれが米国にとって公正な合意を結ぶことにならなければ、カナダが出ていくことになる」と主張。「議会はこの交渉に介入すべきではない。さもなければ私はNAFTAを完全に終わらせる。その方がずっと良い状態になるだろう」とコメントした。

  米国とカナダは、米国が期限に設定した8月31日までに交渉をまとめることができなかった。大統領のツイートはその翌日、バージニア州のゴルフ場に向かうために車でホワイトハウスを出た直後に投稿された。

  トランプ氏は8月31日、メキシコとの間で90日以内に協定に調印する計画であり、「カナダが望むなら」同国も加わることになると議会に通知した。米国の企業や議会関係者の多くが最悪のシナリオとして恐れていた事態は避けられたかにみえたが、翌日のこのツイートで見通しは再び陰った。

  両国は5日に交渉を再開する。米議会のルールにより、トランプ政権は新たな協定の全文を30日以内に公表しなければならない。ただその分、交渉は数日間でなく、なお数週間単位で続く可能性がある。


トランプ大統領 8月31日フォトグラファー:Joshua Roberts / Bloomberg
原題:Trump Slams Canada’s ‘Decades of Abuse’ After Nafta Talks Stall(抜粋)


トランプ大統領は自分に倍賭け、ひたすら猛進へ−ミクルスウェイト
John Micklethwait
2018年9月3日 6:02 JST
外の世界から見たドナルド・トランプ氏は、多少なりとも追い詰められている。

  検察当局の捜査網は絞られ、長年仕えてきた弁護士のマイケル・コーエン被告は寝返った。中間選挙では民主党が下院の過半数を取り戻す勢いと目され、そうなれば大統領弾劾への動きに弾みがつく。ホワイトハウスからの要人流出には歯止めがかからず、先日は法務顧問の退任が決まった。立法アジェンダは行き詰まり、一段と強国化する中国をはじめ各国との貿易戦争がどうなるのか、企業は戦々恐々としている。

  大統領が後ずさりするのは時間の問題だ。これとは正反対の景色が、大統領執務室の机の向こう側に座った当人には見えている。


大統領執務室でインタビューに応じるトランプ大統領(8月30日)撮影: Al Drago/Bloomberg
  大統領は自分自身に最上級のAプラス評価を与えている。経済は活況を続けている。モラー特別検察官による捜査は「違法」であり、「素晴らしい働きぶりの人を弾劾する」のは不可能だと大統領は8月30日のブルームバーグ・ニュースとのインタビューで語った。支持者集会で自分に向けられる「愛のレベル」は「見ていて美しい」ほどだという。

  マクガーン法律顧問の後任探しも問題ではなく、「確実に言えるのは、誰もがこの仕事に就きたがっていることだ。みんながほしがるポストだ」とトランプ氏は述べた。

変化を認識せず
  トランプ氏の目には、状況は悪化していない。例えば貿易。トランプ氏によればメキシコはすでに折れ、次はカナダだ。中国は叩かれて、また叩かれて結局降伏するはずだ。米国の方が強いからだ。そして「欧州連合(EU)は中国と同じくらい悪い、ただ小さいだけだ」。欧州は次の標的だ。EUの自動車関税撤廃案は「十分なものではない」という。

  ついでに世界貿易機関(WTO)に不満を伝えることも忘れない。「正しく振る舞わなければ」米国は脱退も辞さない。

  世界各地でひんしゅくを買っている外交についても、トランプ氏はまったく萎縮していない。北朝鮮との交渉については、「私は世界の誰よりも忍耐力がある」と自認する。

相次ぐ失望

  ドイツのメルケル首相やトルコのエルドアン大統領と、トランプ氏を失望させた人は少なくない。セッションズ司法長官は当面現職にとどめるつもりだが、ロシア疑惑では誰よりも追及されるべき民主党をなぜ追い詰めないのか、トランプ氏は憤りを感じている。

  トランプ大統領は自分への評価が気になって仕方がない。自分が支持した候補者のほとんどが今年の共和党予備選で勝利したのは、まったくの想定内だという。

  トランプ氏によれば、ヘルシンキで開かれたロシアのプーチン大統領との首脳会談は、大成功だった。なぜなら大成功だと知っているからだ。そうではない解釈はすべてフェイクニュースだ。

  トランプ氏を批判する人たちは、これこそ同氏が現実から目を背けるナルシストの証拠であり、遅かれ早かれ報いを受ける兆候と受け止めるかもしれない。確かにトランプ氏の転落を待ち構えるわなは無数にある。しかしその日が来るのはずっと先であり、反トランプ陣営が期待するよりずっと先となる理由は2つある。

現実にある功績
  トランプ氏の自画自賛はさておき、現実にある功績は批判したくても認めざるを得ない。経済は実際に過去最長の好調に近く、それはウォール街も同じだ。北朝鮮はもはや、米国にミサイルを撃ち込むと脅さなくなった。欧州も防衛支出を拡大する。中国の市場開放を心待ちにする企業は多い。

  数々の不祥事と法的問題にもかかわらず、共和党内でのトランプ氏の支持率は確かに高い。

  もう一つの問題は、トランプ氏の目に映る世界がいかさまであろうがなかろうが、トランプ氏はみじんの疑いも持たず、これまでの行動を重ねていくことだ。中国には今週、2000億ドル(約22兆2000億円)相当の産品に関税が発動される。欧州には別の処方箋が近く突きつけられるだろう。その結果がどうであれ、困難を乗り切るにはアクセルをもっと踏み込んで走り抜けるしかないと信じているのが、今の米国大統領だ。批判しようとしても、ターゲットは常に動いている。

  英国の街頭に抗議の暴徒が溢れた1980年、当時のマーガレット・サッチャー首相は政策転換を求める著名エコノミストや閣内からの圧力を受けながら、「メディアが喜ぶUターンという言葉を息を潜めて待っている人々に、一つだけ言っておきます。Uターンはあなた方がすればいい。私はしません」と宣言した。

  サッチャー氏が存命だったら、貿易戦争からストーミー・ダニエルズ氏絡みのスキャンダルに至るまで、トランプ大統領の行動には目をふさぎたくなるだろう。しかしそこにあるセンチメントは同じだ。トランプ大統領はUターンしない。

原題:Trump Doubles Down on Donald Trump: John Micklethwait(抜粋)

トランプ大統領は11月のASEAN首脳会議など欠席
Joshua Gallu
2018年9月1日 10:40 JST

トランプ大統領と習近平国家主席 Photographer: AFP Contributor/AFP
米ホワイトハウスは8月31日、トランプ大統領が11月にアジアで開催される東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議とアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を欠席する、と発表した。代わりにペンス副大統領を派遣する。

  ペンス副大統領は、ASEAN首脳会議出席のためにシンガポールを訪問した後、パプアニューギニアに向かい、APEC首脳会議に参加する予定。

原題:Trump to Skip Asia Summits as Doubts Over U.S. Commitment Linger(抜粋)

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EUは中国とほぼ同じくらい悪い、トランプ大統領が次の標的と示唆
Shawn Donnan
2018年8月31日 20:42 JST
ユーロ、人民元とともに「どんどん値下がりしている」−トランプ氏
貿易巡る争い、中国と同様に欧州に対しても勝利を確信
欧州委員会のユンケル委員長は7月下旬、トランプ大統領と米欧の貿易問題を一時「休戦」とすることで合意し、握手してワシントンを出発した。だが、この休戦が長く続くかは今や疑問だ。

  トランプ大統領は30日、ブルームバーグ・ニュースとのインタビューで欧州連合(EU)が次の標的であるかのように語り、「中国とほとんど変わらないくらい悪い。規模が小さいだけだ」と言明した。


米大統領執務室でインタビューに応じるトランプ氏(30日)Photographer: Al Drago/Bloomberg
  トランプ氏は弱いユーロは人民元と同様だと論じた。人民元について同大統領は、米企業を不利にし、世界の貿易不均衡是正への自身の取り組みを妨げる方向で操作されていると主張しており、インタビューでは「われわれが競争しているのは人民元だけではない。ユーロもだ。両通貨はどんどん値下がりしている」と語った。

  さらに「私生活では、弱いドルと低金利を常に好んでいた。強いドルはスコットランドやアイルランドの土地を購入したい時にだけ好都合だった」とし、「大統領としては、少し違う感じ方をしている。ドルが強く、強い力を持つという事実はとても耳に快い。ただ、世界の他の地域に商品を売るのが難しくなることが欠点だ」と続けた。

  貿易を巡る争いで欧州をしのぐことができるかとの問いに、中国に対してと同様に勝利を確信しているとしつつ、合意の用意はあり、欧州側もそうだろうと指摘。

  「欧州は合意を切望している」と述べた。

原題:Trump Makes Clear EU Won’t Escape His Ire on Trade for Long (1)(抜粋)
http://www.asyura2.com/18/kokusai23/msg/770.html#c5

[国際23] 経済についてのトランプ大統領の発言(米国大統領府)[2018.7.27発表] 無段活用
6. 2018年9月03日 09:26:35 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1421]

>>02 武田教授が警告。日本がトランプ保護主義をバカにできない理由:MAG2NEWS)

バカにできない理由は、彼が正しいからというより

保護貿易と超富裕層優遇減税で、さらに世界全体と自国民を貧しくさせ

自由世界を分断することで、安全保障も致命的に破壊していく可能性が増えていくからだろう

そして米国民のコアなトランプ支持者は、その深刻さよりも

自分たちの怒りに囚われているというのがバカにできない理由だが


こうした保護主義と自国第一主義は、最も知性的である欧州も含む世界全体の流れであり

人の愚かさと、利己主義、自己破壊衝動の結果だから

まさにバカにできない根本問題と言える


https://www.mag2.com/p/news/369301
トランプ大統領の狙いは主に二つあると思う。

お金万能、グローバリゼーション礼賛の結果、アメリカの富は偏在し、10%以下の人が50%以上の富を持っているとい われる。これでは90%の国民が不満を持つのは当然だから、なんとか解消しなければならない。
双子の赤字(貿易赤字、政府赤字)を減らすべきだという意見は長く根強いが、具体的な政策がなかった。
経済的にだけ考えれば自由貿易が良くても、農家は農業をやりたい。それが生きがいなのだ。だからお金中心に考えてアメリカ人の素朴な生きがいを奪ってはいけない。
これまでグローバリゼーションの動きと軍需産業、エネルギー産業が癒着していて、世界で紛争が絶えない。そんな状態をやめてアメリカはアメリカだけでやっていきたい。
ということだ。これらがなにが悪いのだろうか?なぜトランプ大統領が考えが足りないのだろうか?

一つ一つのことは、あるいは別の手段で解決できるものもあるだろう。でもそれは現実的に今まで全部失敗してきた。だから、新しい手段を考える必要があり、保護貿易をすれば、1から4まで一気に解決
http://www.asyura2.com/18/kokusai23/msg/770.html#c6

[国際23] ニューヨーク・タイムズによれば、プーチンがアメリカを支配している(マスコミに載らない海外記事) 赤かぶ
3. 2018年9月03日 09:32:41 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1422]
2018年9月1日 / 08:22 / 1時間前更新
コラム:「ポスト・プーチン」のロシアはどうなるか
John Lloyd
4 分で読む

[24日 ロイター] - これはいま言うべきタイミングではないだろうが、トランプ大統領にも一理ある。新鮮さに欠け、実現は難しい言葉だが、先月ヘルシンキで行われた米ロ首脳会談の前にトランプ氏は、「ロシアとうまくやって行くことは、よいことだ」と述べている。

彼は間違っていない。

ロシアのような国が、西側諸国に抱く敵意を軽視すべきではない。その攻撃的な姿勢をまねるのではなく、ウクライナで行われた言語道断の侵攻や、バルト海沿岸の北大西洋条約機構(NATO)加盟国への威圧に対し、民主主義諸国は慎重かつ毅然とした態度を維持すべきだ。

だがその一方で、さまざまな意見を持つロシア国民との文化的交流やオープンな議論を活性化し、教育面での交流を深め、そしてロシア側のコメンテーターや有識者、政治家に対して発言の場を与えることに、もっと積極的に努力するべきだ。

宿命的な「絶望」に終ったヘルシンキでの米ロ首脳会談がもたらした多くの不都合な点の1つは、この会談を機に、プーチン大統領が米国側の代表者よりも優れている、つまり、有能で理路整然としており、主導権を握っているとの印象を与えたことだ。

ロシアのメディアは明らかに上機嫌でこの点を強調している。再選されて大統領として4期目を迎え、これから6年間、揺るぎない権力を握るロシアの指導者は、自らのプログラムと政権、国家を手中に収めているというメッセージを、世界中に発してしまったのだ。

とはいえ、そうならない可能性もある。

プーチン大統領の国内支持率は、ここ数カ月で急落している。8月12日にパブリック・オピニオン・ファンデーションが行った世論調査によれば、「今週大統領選が行われたらプーチン氏に投票する」という回答が、6月の62%から46%に下落した。

独立系の調査会社レバダ・センターが実施した別の世論調査では、「この国は間違った方向に進んでいる」と答えた割合が、5月の27%から7月には40%に上昇した。「物事がうまく行っている」という考える人は、半分以下の48%となった。

民主主義国の指導者が受ける水準からすれば、これらの数値はそれほどひどいものではないだろう。だがプーチン大統領の支持率が80%を軽く超えていた時期に比べれば、これは急激な低下だ。

人気低下の原因は主に、プーチン大統領が2005年に公約した内容とは裏腹に、政府が女性の年金支給年齢を55歳から63歳に、そして男性の場合は60歳から65歳へ引き上げたことにある。

男性の平均寿命が66歳のロシアでは、この引き上げは幅広い反感を生んだ。指導者としてのプーチン氏に、これまで大体忠実だった中高年層では、それが特に顕著だ。

この層が、たとえやや消極的であっても、反発する事態に陥れば、さすがのプーチン大統領も、クリミア半島併合や東ウクライナの分離独立主義者支援といった、国内では称賛される政策によってさえ、大衆的な幻滅の法則を免れることはできないというシグナルになる。

ロシアのように統制された民主主義の下であっても、忠実な支持者が離反する余地はある。いくつかの世論調査では、年金制度の変更が発表されて以降、プーチン氏個人の支持率が69%に低下した。

今のところプーチン大統領の権力に揺らぎはないが、こうしたトレンドからみる限り、彼はもはや無敵の存在ではなく、今回の任期では苦労が多くなるかもしれない。

もし支持率が大統領を裏切り、政権内部からも反旗を翻す動きが出てくることにより、プーチン大統領が辞任を強いられる羽目になれば、西側諸国らは、多大な変化を期待するだろう。

多くの論評がプーチン氏をロシア政治形態の柱として扱っているせいで、時として、彼個人が彼の指導する国家そのものと同一視されていることがあるからだ。彼こそがロシアだ、というように。

「ポスト・プーチン」の変化はあるかもしれない。しかしそれが非常に大きなものになる可能性は低い。

まず、共闘する野党勢力が存在せず、「影の内閣」などもない。不人気のリベラル政党やグループにも、脆弱な野党を構成している共産党やその他の政党にも、そして最もカリスマ性のある大胆な反体制派で、上層部の政治腐敗を訴えている著名人アレクセイ・ナワルニー氏でさえも、そこまでの用意はない。

また、ここ数年、幅広いロシア人のあいだで西側諸国の人気は低い。こうした感情をゼロからプーチン氏が生み出したわけではない。西側がNATOの領域をロシアの国境近くまで拡大しており、ロシア政府が同性愛嫌悪を政治的手段として利用する一方で、西側が性的な寛容を推進していることで、大統領は、西側はロシア的な価値観を否定しているという考えを吹聴したのだ。

ロシアの過激なナショナリズム勢力は、若者を中心に多くの支持を集めているが、平均的なロシア人でさえ、自分の国は欧州の一部ではなく、独自の文明であると考えている。

プーチン大統領は、ソ連崩壊は20世紀最大の地政学的な惨事であるとの確信を抱いて、権力の座に就いた。これは直近の選挙においても彼が繰り返していた信念だ。

彼はロシアを世界的な大国として復活させようと努力してきた。経済や人口面での衰退を考えれば、これは大変な難題だ。彼がこれほど難しい課題に成功を収めてきたということは、根本的に異なるアプローチを取る余地がほとんど無かったことを意味している。

将来の後継者は、西側に対する敵意を抑制しようと試みるかもしれないが、その動きは緩慢かつ限定的で、世界におけるロシア独自の文化と地位という感覚を失わないよう、慎重なものになるだろう。

2024年の任期終了前にプーチン大統領の足場はぐらつくかもしれないが、国内そして海外の一部から喝采を浴びつつ任期を全うする可能性もある。

いずれの場合においても、その後継者が、少なくとも見た目だけでもロシアを再び偉大にしようとするプーチン氏の成功を維持しようとするならば、西側に対しておおむね敵対的な姿勢をとる「プーチン主義」が主流になるだろう。

世界の民主主義国は、ロシアのように攻撃的で、潜在的な不安定要因となり得る国家と正常な関係を保つことはできない。

リスクに直面するNATO加盟国を保護するための説得力が必要だし、効果があると多くが考える制裁体制を維持し、民主的でリベラルな価値観に対する自らのコミットメントを強調しなければならない。

その一方で、元駐モスクワ米国大使のマイケル・マクフォール氏が記しているように、米国など西側諸国の首脳は、「ロシアとの際限のない対立は望んでいないと、はっきり表明すべき」なのだ。

プーチン氏抜きのロシアであっても、その見た目や行動がプーチン氏がいる場合とほとんど同じとなる可能性が高いだけに、長期戦は避けられない。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

http://www.asyura2.com/18/kokusai23/msg/763.html#c3

[経世済民128] 欧米はなぜ『中国製造2025』を恐れるのか(マスコミに載らない海外記事) :国際板リンク  赤かぶ
6. 2018年9月03日 09:44:19 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1423]
中国の経済方針大転換で、市場は小春日和
市場は「晴れ、ときどき台風」
ヒットアンドアウェイで勝負のチャンス
2018年9月3日(月)
居林 通
(前回はこちら→「市場は米中貿易摩擦より、米金利の上昇を注視」)
先月は珍しく「先行きが読みにくい、休むも相場」という結論でしたが、市場もそれに同意するように、日経平均株価は膠着しています。
居林:米トランプ大統領が仕掛けた貿易摩擦問題は、飛び火して欧州、日本、さらに政治的な理由でトルコに燃え移りました。そのうしろには、新興国経済がどうなるんだ、という不安があります。
居林さんは「株価は基本的に企業業績の関数。政治的なイベントが市場に与える影響は中長期的には無視できる。短期的な下げなら、むしろ買いのチャンス」とおっしゃっていました。
居林:はい、米中の貿易摩擦は政治イベントなのか、経済イベントなのか、区別が大変難しいんです。ですから、判断が付いたらどう動くべきか、ディシジョンツリーを用意して、状況が見えるのを待つのも手ですよ、とお話ししたわけです。
新興国の通貨危機、経済危機が世界的な暴落の引き金を引く例はいくつもありましたよね。
金融危機の定番、新興国の通貨クライシス
居林:いい機会なので新興国についておさらいしておきましょうか。今回新興国で問題になるのは「資本を海外から輸入せねばならない、経常赤字国」であるという点です。国内の資本が足りないので、海外から外貨で借りた資本を使って、自国の通信網、鉄道網などのインフラ、不動産開発、鉱山開発などに使うわけです。これらの投資の結果上がってきた収益で借りてきた外貨を返済してゆく、というのが基本構造です。
 現状はドルの金利が上昇しています。ということは、そもそもの借金の金利が上がることになる。苦しいですね。そして、金利上昇でドル自体の需要が増して、自国通貨に対してドル高になれば、ドル建てで借りたお金に対して払う自国通貨が増えてしまう。二重に苦しい。これによってドルの、すなわち資本を借りるための条件がどんどん厳しくなっていくと、自国の資本市場が、金融システムが干上がってしまう。平たく言えばお金を貸してくれる人がいなくなり、国全体の経済が回らなくなる。これは、金融危機の定番です。アジア通貨危機もそうでしたし、リーマンショックは先進国も巻き込まれました。
米国債金利の推移

恐ろしい。
居林:どうしてこうなるかと言えば、米国だけが景気が良くて、金利が上昇しているからですね。8月に入って日本経済新聞に、米金利上昇で新興国の経済運営が難しくなっていることを指摘する記事がいくつか載りました(「新興国債券 償還ラッシュ 年100兆円、返済に懸念 米利上げで負担増大」など)。
 金利だけでなく、PMI(※)でみても、米国経済が独りで調子がいいことが分かります。
PMI比較

(※:Purchasing Managers’ Index、購買担当者指数。企業の購買担当者への聞き取りによって、新規の受注、生産状況、雇用など、景況感について調査し、指数化したもの。50を上回り続ければ景気は拡大、逆に下回り続ければ減速を示すとされる。世界各国で集計・発表が行われ、同じ国でも調査の主体が異なる場合もある)
「米国一人勝ち」で世界経済は持つのかという不安
米国の景気がいいならば、世界にとっても基本的にはよいことのようではありますが……もともと、トランプ大統領が国内受けを狙って、景気刺激策をいくつも行ったことで、本来の回復軌道以上に景気が上昇して金利が上がっているんでしたよね。
居林:はい、ついでに言えば、保護貿易を行えば「これまで海外から安く輸入していたものを入れないで、国内で高く買う」わけですから、GDPもインフレ率も(少なくとも一時的には)上昇するのは当たり前、金利が上がるのも当然と言えば当然だと思います。
 一方で、もうひとつの大きなマイナス要因として危惧されてきたのが中国経済です。前回と重なりますけれど、米金利上昇は中国からも投資マネーを引き上げさせています。そこに、トランプ大統領が引き起こした貿易摩擦が絡んで。
先行き、お金が詰まるわ、商品は売れなくなるわじゃないかと。
居林:さらに中国が膨らませてきた理財商品のバブルが弾けるのではないかという。
バブル崩壊への懸念ですか。
居林:つまるところ、米国と中国のバランスがどうなるかがなかなか読めず、安心して株を買うことも、見切って売ることもできない状況なんですね。
 おまけに、日本銀行はまだ煮え切らない様子ですが、世界の中央銀行が量的緩和を終え、セーフティネットをたたみ始めた。そんな中で「米国さえ好景気ならば世界経済は大丈夫なのではないか」「いや、貿易摩擦と理財商品という2つの負の要素で中国経済が落ち込めば、世界中を巻き込んで経済がおかしくなっていくのではないか」という2つの見方が拮抗していた。そうかもしれない、そうでないかもしれない。この迷いで私も市場も立ちすくんでいた、ということです。
居林:しかし、これまではマイナス方向の要因が注目されてきましたが、このひと月あまりで、好材料も見直されています。市場の心理としては、いまは、プラスとマイナスの天秤が釣り合って、どちらかというとプラスに振れつつある、そんな状況だと思います。

好材料と言いますと。
居林:例えば、中央銀行が量的緩和終了のペースを緩めたり、セーフティネットらしきものを再構築するのではないかという期待。私はあまりいいことだと思いませんが。他には、日本の政治的安定もそのひとつでしょう。金融緩和の終了で、世界的に財政出動、財政政策がもう一度入ると見られています。といいますか、金融政策が一段落する以上、次は財政でやるしかない。
 日本企業の設備投資が去年から大きく出始めたことも挙げられます。ようやく始まったという感じですが、景気をプラスにする、とてもいい事象です。他に挙げるとすれば、日本の金融機関がリスクを取った融資を行っていないことも、金融危機が起こりにくいという意味ではプラスなのかもしれません。
中国は再びインフラ投資へ舵を切った
では、最大の問題であろう中国の好材料とは。
居林:中国は7月31日に、財政の健全化や高度技術への転換を目指してきた従来の方針を、内需拡大策に切り替える発表を突然行いました。中央銀行が、主要銀行に対して緩和的な融資を認めることにした、平たく言えば、省や主要都市の投資会社の社債を引き受けることによって、インフラや設備投資を認めようということです。
中国経済は高付加価値化を目指し、重複が目立つムダなインフラ投資を削る方針だったはずが……。
居林:「背に腹は替えられなくなった」ということです。長期的に見れば中国にとっては足踏みですが、これで景気鈍化への不安は後退しました。効果が数字として出てくるのは秋以降になりますが、そこまで来れば「中国経済はスローダウンしている」という雰囲気が停まる期待が出てきています。
マクロでは天秤がやや強気に傾き始めたと。では、日本株にはそれらはどう影響しそうでしょうか。
居林:これも前回と被りますが……日本市場の主役は誰か覚えていますよね。
日銀。あ、じゃなくて、海外投資家ですね。
居林:はい(笑)。日銀は基本的に買う一方ですが、海外投資家は今年3月に、これまで買い越してきた14兆円の半分、7兆円分を売っています。基本的に「売りすぎ」ですので、戻る余地がある。過去もそういうことが2回(2016年3月と2018年3月)ありました。

 ですから、短期的な上昇を狙うチャンスはあるかな、と思っています。
ポップアップしそう、ただし短期戦で
 第一は、トルコショックの解消です。これはトランプ政権とエルドアン政権が引き起こした政治問題です。トルコの貿易収支は米国に対して赤字なんですから、米国が「関税を上げるぞ」と脅かす理由が本来はない。近々片が付く可能性があります。。例えば今晩、もしトルコで司祭が解放されて、それで米国の関税が元に戻ったら、株価は懸念が払しょくされて上昇すると思います。一度限りのチャンスですが。
なるほど。
居林:もうひとつは、先ほどお話ししたように、中国の景気対策がはっきりしてくれば、膠着状態を生み出していたバランスが強気側に傾くからです。金融システム崩壊→世界に連鎖、という恐怖感が薄れることで、世界の株価はすくなくとも一度はポップアップする可能性が、そうですね、6:4か7:3で「あり」と思います。
おお。
居林:ただし、短期戦です。不安要素が消えるわけじゃない。いったん強気側に傾く可能性が強い、というだけで、なにかあれば簡単にバランスは戻ったり、弱気に触れるでしょう。ですから、降りる準備をして、乗る。ヒットアンドアウェイをお勧めします。
具体的な目安としては?

居林:今年の3月の日経平均の下値は2万766円。ここまでは下がらないでしょうし、もし下がったら、ごめんなさい、買って下さい、というところです。上値は2万4124円でしたが、瞬間値では超えるかもしれません。
下値が限定的で、投資しやすい状況とも言えますか。
でも最後はバフェット氏が勝つんです
居林:ええ。悪くないシチュエーションです。まとめておきますと、このところ悪い材料が続き、いくつかは本質的、構造的なので、政治リスクと片付けられないため、全体に弱気が支配していました。その後、プラスマイナス両方に材料が積もり、ネガティブのほうのいくつかは、政治的なもので短期の解決が予想できるようになってきた。海外投資家の売り越しが7.4兆円あることを考えれば、少なくとも戻る可能性の方が高い。(グラフの赤青線の)ギャップくらいとれるかもしれません。投資家としては腕の見せ所ですね。ひとつ警告するとしたら、すでに一度上昇した主要銘柄には、わたしなら目を向けません。
なぜですか。
居林:去年も今年も、ある一定のグロース株に資金が集中していたからです。これは日本も米国でも同じです。
居林さんはウォーレン・バフェット的な、バリュー投資のほうに好意的ですよね。
居林:昨日(8月26日)の日経に、“バフェットの苦戦”が指摘されていました。バフェットが信奉するバリュー株、年率配当の高い株が不人気で、PER100倍の株が買われている。個人的には、世の中というか、投資がパッシブ化しているからだと思うんですが、これは市場のゆがみを生みます。いずれバフェットは必ず復活する、と私は信じて……いや、余談でした。ともかく、他の投資家が熱狂しているテーマだから、とか、去年人気だった株が安くなったから、という買い方より、長期的に成長する業界や事業を見抜いて、投資するほうがいいんじゃないかと思っています。
次回も市場が動かなければ、そんなお話も聞かせて下さい。


このコラムについて
市場は「晴れ、ときどき台風」
いわゆる「アナリスト」や「経済評論家」ではなく、「実際に売買の現場にいる人」が書く、市場の動きと未来予測です。筆者はUBS証券ウェルス・マネジメント本部日本株リサーチヘッドの居林通さん。そのときそのときの相場の動きと、金融市場全体に通底する考え方の両面から、「パニックに流されず、パニックを利用する」手法を学んでいきましょう。


 

トップニュース2018年9月3日 / 08:00 / 2時間前更新
新興国通貨安や米中貿易摩擦で潮目が変わる余地も=今週の外為市場
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[東京 3日 ロイター] - 今週の外為市場では、不安定な新興国通貨と米中貿易摩擦の先行きに関心が集まる。新興国通貨が一段と不安定化し、トランプ大統領が2000億ドル規模の対中追加関税の発動に踏み出せば、リスク回避の動きが強まって円に上昇圧力がかかりそうだ。

予想レンジはドル/円が109.50━112.00円、ユーロ/ドルが1.1500―1.1750ドル。

トランプ米大統領は9月6日のパブリックコメント提出期限後に、2000億ドル規模の中国製品に対する追加関税を発動させる意向だ。新たな関税案では、住宅建材やテクノロジー製品、自動車、衣服など消費者向け商品に影響が及ぶ。

「米中貿易摩擦がエスカレートする可能性がある。また、再び新興国通貨が非常に不安定になっており、リスク回避の動きが強まれば、為替市場でも潮目が変わって、円高方向に振れてもおかしくない」とトウキョウフォレックス上田ハーローの営業推進室長、阪井勇蔵氏はみている。

過去6週間、ドルは110―112円のレンジ内にほぼ納まり、ボックス相場が続いているが、近年の外為市場では、ボックス相場の後に高ボラティリティ相場が出現しやすい。

アルゼンチン中央銀行は30日、主要政策金利を45%から60%に引き上げたが、アルゼンチンペソARS=RASLは一時約20%下落し、終値ベースで最安値を更新した。

SMBC日興証券の新興国担当シニアエコノミスト、平山広太氏は「アルゼンチンの通貨危機がグローバルのリスクセンチメントを冷やすことによって、他の新興国市場からの資金流出を加速させている。トルコリラには独自の原因もあるが、南アランドやブラジルレアル、インドルピーなどにはその連想が働いている」とみている。

トルコリラ/円TRYJPY=Rは8月13日に15.25円付近まで急落して「リラ危機」と呼ばれた。現在は16円台後半。

トルコリラ相場や英国の欧州連合(EU)離脱条件を巡る先行き不透明感は、前週もクロス円での円買いを誘ったが、今週もクロス円での円高圧力に注意が必要だという。

「トランプ氏の不規則発言や予測不能な行動など、いわゆる『トランプリスク』で、ファンド勢もドルが買いにくくなっているのは確かだ。IMMでもそろそろ買い疲れ感が出てもいいころだ」(FX会社)との見方も聞かれた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が31日公表したデータを基にロイターが算出したIMM通貨先物の非商業(投機)部門の取組(8月28日までの週)によると、ドルの主要6通貨(円、ユーロ、ポンド、スイスフラン、カナダドル、豪ドル)に対する買い越し額は233億4000万ドルで、前週の236億7000万ドルから縮小した。

ドルの買い越しは11週連続。その前は48週連続で売り越しだった。

ドルの買い越し規模は縮小したものの、2017年1月半ば以来の高水準を保っている。


 


トップニュース2018年9月3日 / 07:50 / 1時間前更新
今日の株式見通し=弱含み、材料乏しく様子見 中国市場の動向注視
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[東京 3日 ロイター] - きょうの東京株式市場で日経平均株価は、弱含みとなりそうだ。前週末の米国株がまちまち。為替も方向感に欠く動きとなり外部環境に大きな変化はない。3日の米国株市場が休場となるため市場参加者も細るとみられる。米中貿易摩擦が重しとなる中、中国市場の動向によっては短期筋の先物売買で値が振れることも予想される。

日経平均の予想レンジは2万2650円─2万3000円。

前週末の米国株市場は、ダウ平均が下落、S&P総合500は横ばい、ナスダック総合は小幅高とまちまちだった。米国とカナダによる北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉の2国間協議が合意に至らず終了。米通商政策に対する不透明感を残す形となった。シカゴの日経平均先物9月限(円建て)清算値は2万2820円、大阪取引所の夜間終値は2万2840円だった。為替は1ドル111円台前半で落ち着いているものの、国内に買い材料は見当たらず、週明けの株式市場は弱含みでのスタートとなりそうだ。

3日の米国株市場がレーバーデーで休場となるため海外勢の売買は細るとみられている。市場では「基本的には手掛かり材料が乏しく様子見姿勢だが、中国市場に動きが出た場合は、欧州勢の売買により日本株も振れる可能性がある」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券投資ストラテジストの三浦誠一氏)との声が出ていた。

主なスケジュールは、4─6月法人企業統計(財務省)、8月新車販売・軽自動車販売が発表される。海外で重要な経済統計の発表は予定されていない。

前営業日終値 年初来高値 年初来安値

日経平均.N225      22865.15 24129.34 20347.49

-4.35 2018年1月23日 2018年3月26日

日経平均
22765.16
.N225NIKKEI INDEX
-99.99(-0.44%)
.N225
.N225
シカゴ日経平均先物9月限 22820(円建て)

*内容を追加しました。

河口浩一


トップニュース2018年9月3日 / 07:45 / 2時間前更新
今週の日本株は外部環境にらみ、FRB要人発言や米経済指標に関心
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[東京 3日 ロイター] - 今週の東京株式市場は、外部環境にらみで方向感を探る展開となりそうだ。国内の材料不足が続く中、市場参加者の関心は相次ぐ米連邦準備理事会(FRB)の要人発言や米重要経済指標に向かっている。米国株、為替の反応次第では日経平均2万3000円の壁を再度試す展開も考えられる。

米中の関税措置を巡る応酬は引き続き重しとなるが、市場に深刻な打撃を与えるとの見方は少ない。

日経平均の予想レンジは2万2400―2万3200円。

24日に行われたパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長のジャクソンホール講演がハト派寄りと受け止められ、前週は米国株市場でS&P総合500とナスダック総合が連日最高値を更新。極端な円高に振れることもなく日経平均は一時2万3000円を回復するなど日本株も米株高の恩恵を受けてきた。

9月第1週(3―7日)は「流動性相場の行方、米金利動向を見極める上でFRB要人発言が注目点になる」(国内証券)とみられている。週内にはエバンズ・シカゴ連銀総裁、カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁らが相次いで会合等で発言する見通し。新興国情勢などにも配慮し、米利上げ加速懸念を和らげる内容であれば株式市場には追い風となりそうだ。

一方、トランプ米大統領が2000億ドル相当の中国製品に対し来週にも追加関税を発動する考えを示したと一部で報じられた。貿易戦争に対する懸念はくすぶっている。市場では「海外勢は日本株の先物に買いを入れ始めているが、米中摩擦が重しとなり慎重姿勢は崩していない。ただ、関税発動によって需要がすぐに落ち込むことはなく、市場が過剰に反応することもなさそう」(みずほ総研市場調査部長の武内浩二氏)という。

経済指標では4日に8月米ISM製造業景気指数、6日にISM非製造業景気指数、7日に8月米雇用統計が発表される。米経済の堅調さが確認されれば、米株高を通じて日本株にも波及が見込まれる。国内では3日に4―6月法人企業統計、7日に7月家計調査、7月景気動向指数などが発表される。

株式マーケットチーム




http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/332.html#c6

[経世済民128] アルゼンチン、ペソ安止まらず 中央銀行が主要政策金利60%に引き上げ(ニューズウィーク) :国際板リンク  赤かぶ
5. 2018年9月03日 09:50:39 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1424]

コラム2018年9月2日 / 16:59 / 1時間前更新
コラム:中南米3カ国、市場経済寄り政権から左に舵か
Martin Langfield
2 分で読む

[ニューヨーク 27日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ここ数年、市場経済寄りに転換してきた中南米主要3カ国の政治が、岐路に立たされている。

アルゼンチンでは景気が悪化し、改革推進派のマクリ大統領を脅かす。メキシコ政府は石油産業の自由化を延期した。10月のブラジル大統領選では、実業界で人気の候補者の支持率が低い。

3カ国が財政規律と外国からの投資に背を向けるなら、実業界と貧困層の双方に悪影響が及ぶだろう。

マクリ大統領は2019年10月の大統領選で再選を果たし、新たに4年の任期を務めたい意向。勝利は景気拡大頼みという面が大きい。しかし今、新興国市場全体に対する投資家心理が悪化し、通貨ペソは年初から40%近くも下落している。干ばつにより、輸出の約60%を占める農業セクターが打撃を受けた。ゴールドマン・サックスの推計では、今年は1─2%のマイナス成長となる可能性がある。

来年も景気が回復しなければ、野党・正義党(ペロン党)候補が政権を奪回する可能性がある。場合によっては、左派の旗手であるフェルナンデス前大統領が新たな汚職疑惑を切り抜け、返り咲くかもしれない。同氏は夫のキルチネル氏とともに、アルゼンチン財政を混乱に陥れた張本人だ。

メキシコでは12月初め、左派の国家主義者ロペスオブラドール氏が次期大統領の座に就く。同国はこれまで石油自由化に成功しているが、ペニャニエト現大統領は次期大統領の就任まで新たな入札を延期した。次期政権は自由化の手続きを再開する前に、過去の入札による契約を総点検する意向だ。

ブラジルの大統領選では、市場で最も人気の高いアルキミン前サンパウロ州知事が決選投票に勝ち残れないかもしれない。世論調査によると、10月7日の第1回投票では得票率トップ2を右派ボルソナロ元陸軍大尉と左派労働党候補が占める可能性がある。労働党は元大統領のルラ被告を候補者として届け出たが、裁判所が同氏の出馬を認めない場合にはフェルナンド・アダジ元サンパウロ市長が出馬する。ボルソナロ、ルラ、アダジの3氏とも、財政赤字の削減に取り組む資質はアルキミン氏に劣る。

中南米地域はどちらに転ぶか予断を許さない。アルゼンチンでは大統領選までに景気が再び回復軌道に乗り、マクリ氏に追い風を吹かせるかもしれない。メキシコのロペスオブラドール次期大統領が国家主義的な経済政策を改めるかもしれない。ブラジル大統領選でアルキミン氏の支持率が急激に上向く可能性もある。しかしそうならなければ、放漫財政と内向きの経済政策が大手企業と貧困層の両方を苦しめそうだ。

●背景となるニュース

*アルゼンチン政府統計局が23日発表した6月の国内総生産(GDP)は前年同月比6.7%のマイナス成長だった。同国は通貨ペソが急落し、国際通貨基金(IMF)から500億ドルの融資を受けることで合意した。

*メキシコの石油監督当局は7月18日、年内に予定されていた石油入札を来年まで延期すると発表した。大統領選で大勝したロペスオブラドール氏の就任を見据えた措置。新たな入札日程は来年2月14日。

*22日のブラジル大統領選世論調査によると、収賄罪で服役中のルラ元大統領の支持率が39%で首位となった。ルラ氏の出馬が認められない場合、同氏が指名するとみられるフェルナンド・アダジ元サンパウロ市長に投票するとの回答は31%を占めた。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/341.html#c5

[経世済民128] アルゼンチン、ペソ安止まらず 中央銀行が主要政策金利60%に引き上げ(ニューズウィーク) :国際板リンク  赤かぶ
6. 2018年9月03日 09:52:47 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1425]

>>04 国家破綻したら助かりますよ、アルゼルチン。
ギリシャと同じようにすれば、、、中国、ドイツが借金棒引きにしてくれる?

デフォルト(財政破綻)して借金棒引きしたところで、無責任な放漫財政と借金体質が続く限り、

激しいインフレと産業崩壊は止まらない


http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/341.html#c6

[国際23] 産経新聞(主張)  国連委の対日勧告 思い込みの非難はやめよ(かいけつニュース速報) 怪傑
4. 2018年9月03日 10:03:14 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1426]

国連を有難がるのは愚か

間違いを訂正した上で、無視するのが一番

その辺は、トランプや中ロを見習うといい


http://www.asyura2.com/18/kokusai23/msg/771.html#c4

[国際23] 「トランプは正気じゃない」──また浮上した「心の健康不安」説(ニューズウィーク)  赤かぶ
2. 2018年9月03日 21:08:39 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1427]
2018年9月3日 / 17:31 / 4時間前更新
トランプ氏、APEC首脳会議など欠席 ペンス副大統領派遣へ
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[ワシントン 31日 ロイター] - 米ホワイトハウスは8月31日、トランプ大統領が11月にシンガポールで開かれる東アジアサミットと、パプアニューギニアで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を欠席し、代わりにペンス副大統領を派遣すると発表した。

中国の国際的な存在感が増す中、トランプ政権のアジア政策への関与姿勢に疑問の声が高まりそうだ。

サンダース米大統領報道官によると、トランプ大統領はペンス副大統領に対し、主権や法規制、自由かつ公平で互恵的な通商原則に基づく、米国の自由で開かれた米国のインド太平洋政策について強調するよう依頼した。

トランプ大統領は11月11日に、パリで開かれる第1次世界大戦終結100年の記念行事に出席する。サンダース報道官は「訪欧中にアイルランドも訪れる予定だ」と述べた。その後は11月下旬にブエノスアイレスで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会合に出席し、コロンビアにも立ち寄って安全保障問題などで議論を交わす予定。

米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のボニー・グレイザー氏は「トランプ大統領は米国外に出かけて多国間交渉をするのがとても嫌いだ。特にパプアニューギニア(で開かれるAPEC首脳会議)に参加させるのはほぼ不可能で、トランプ大統領は数週間後にG20で中国の習近平国家主席と顔を合わせることになる」と述べ、サミットの結果によってはさらにインド太平洋政策への関与姿勢に疑問が強まりそうだと指摘した。

またブルッキングズ研究所のジョナサン・ポラック氏は「東南アジア諸国が、米国と中国の対立に挟まれて不安定な状態に陥っているのは間違いない」と指摘した。


 


 

外為フォーラムコラム2018年9月3日 / 11:41 / 3時間前更新
コラム:日米FTAは「今がお買い得」か、米加交渉にヒント=熊野英生氏
熊野英生 第一生命経済研究所 首席エコノミスト
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[東京 3日] - 米国とメキシコは8月27日、北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉の2国間協議で大筋合意した。トランプ米大統領はこれまでNAFTAを痛烈に批判し、国境に壁を築くなどと言っていた割に合意内容は厳しくない。

米国との貿易交渉に当たっては2つの立場がある。1つは、正論を譲らず徹底抗戦する立場だ。もう1つは、特定分野で妥協しても早く合意すれば名を捨てて実が取れるという立場である。メキシコは後者を選んだ。

争点となっていた自動車関税をゼロにする基準「原産地規則」については、現地調達率を現行の62.5%から75%に引き上げることで合意。また、完成車の40─45%を、メキシコの平均賃金の約2倍に当たる時給16ドル以上の労働者によって生産することで合意した。この条項は、時給の安い労働者が製造するメキシコ製品ではなく、米国製品の使用を求めるものだ。

細かい点はともかく、自動車分野でトランプ大統領が得をしたと感じる条件を受け入れれば、残りは自由貿易のルールが守られる。今更ながら、環太平洋連携協定(TPP)交渉をするのと本質的に何が違っているのかが分からない。

もっとも、TPPの原産地規制は55%であり、日本は40%とより低い調達率を希望していた。この点は少し厳しい。

恐らくトランプ大統領には、独特の戦略がある。最初に2国間自由貿易協定(FTA)で妥協したのは、韓国だ。この米韓合意は、早く妥結すれば、好条件が与えられるというメッセージを感じさせた。その後、欧州連合(EU)、メキシコとの間で割と甘い条件で合意が決まった。

<日本の自動車に対する条件も今なら甘くなるか>

日米FTAは、合意が遅れるほどに条件が厳しくなるのだろうか。こうした疑心暗鬼に襲われるところが、トランプ流の交渉術である。11月に中間選挙を控えたトランプ大統領は、早期合意を目指している。だから、「今がお買い得」と思わせる。

そのときに焦点になりそうなのが、自動車と農産物である。特に、自動車は完成車の対米輸出が厳しい扱いになりそうだ。

周知の通り、トランプ大統領はすでに自動車関税を表明して脅しをかけている。ただ、メキシコはNAFTA再交渉では、域内調達率を引き上げることによって、この関税をかわした。日本の自動車に対する条件も、今ならば甘い内容になるかもしれない。

また、農産物については、日本が米国とのFTAよりもTPPを先行させると、米国はカナダやオーストラリアに対して不利になる。そのため、米国はある程度甘い条件で早期合意を目指す可能性がある。

そもそも、日本はすでにTPP交渉である程度の開放条件を受け入れて、農業分野の対策予算を組んでいる。日米FTA交渉では、農産物の方が自動車よりも追加負担は小さくなるのではないか。

<カナダが良い妥協点を見いだせるか注目>

日米FTAに進むべきか否かの判断は、カナダと米国のNAFTA再交渉にかかっている。なぜならば、カナダのトルドー首相とトランプ大統領の仲が険悪なことは万人の知るところだからだ。

トルドー首相の国内的支持は、トランプ大統領に下手に妥協しないことで高まっている。そのカナダが、NAFTAで良い妥協点を掘り出せれば、日米FTAが好条件で落としどころを見いだせるとの類推解釈が成り立つ。

トランプ大統領は、成果を急いでいる。中間選挙もあるが、トランプ大統領は対中貿易戦争に集中しようとしている。なるべくならば、日本との間で早急にFTAを結びたいと思っているに違いない。

他方、すでにTPPと日欧経済連携協定(EPA)の合意にこぎ着けた安倍晋三首相にとっては、残された大きな貿易連携は日米FTAだけである。トランプ大統領に対して、最小限の条件悪化で手打ちにするかが、秋以降の課題となる。

熊野英生氏(写真は筆者提供)
*熊野英生氏は、第一生命経済研究所の首席エコノミスト。1990年日本銀行入行。調査統計局、情報サービス局を経て、2000年7月退職。同年8月に第一生命経済研究所に入社。2011年4月より現職。

*本稿は、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいています。
http://www.asyura2.com/18/kokusai23/msg/776.html#c2

[経世済民128] 高齢者を狙い撃ちした負担増がさらなる不況を招く可能性(マネーポスト) 赤かぶ
4. 2018年9月03日 21:13:44 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1428]
2018年9月3日 / 17:11 / 3時間前更新
焦点:歯止めかからぬ人件費率低下、消費増税後を懸念する声も
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[東京 3日 ロイター] - 財務省が3日に発表した2017年度の法人企業統計では、経常利益が過去最高を更新する一方、労働分配率は前年度の67.5%から66.2%に低下し、人件費率の漸減傾向に歯止めがかかっていない。

他方、内部留保にあたる利益剰余金は前年から10%近く増えて446兆円と過去最高を記録。政府内では鈍い賃上げが続けば、来年10月の消費増税を経て個人消費が失速し、景気に悪影響を与えかねないとの懸念の声もある。

17年度の経常利益は、前年度比11.4%増の83.5兆円。世界経済の好調さを背景に自動車販売が拡大し、五輪投資や大型開発を背景にした建設機械の需要増、AI(人工知能)やモノのインターネット化による自動化・情報化投資の活況で、半導体や同製造装置の売り上げが寄与し、製造業、非製造業とも過去最高額となった。

一方、従業員への還元の動きは、なかなか加速しない。17年度の付加価値の構成をみると、人件費は66.2%とアベノミクスが始動した13年からの過去5年間で最低となった。

従業員1人当たりの労働生産性は、13年の690万円から17年に739万円まで上昇。賃上げに追い風のデータもそろっていた。

野村証券・チーフエコノミストの美和卓氏は「人件費率の低下の背景に、日本企業の利益率が低く、企業の取り分を高めにし、人件費を抑制する傾向がある。それに歯止めがかかっていない」とみている。

通商白書17年版でも、日本企業の売上高営業利益率は4.2%、米国の7.5%やEU加盟国の6.7%に比べて低いと指摘された。

この分野に詳しい専門家の間では、1)起業が少なく、リスクテーク姿勢が消極的、2)製品の抜本的差別化に踏み切れないために、業界の過当競争が脱出できない、3)価格競争で利幅がとれない──といった状況が続いていると分析されている。

人件費の伸び悩みは、今年の春闘にも表れた。17年度が過去最高益だったにもかからわらず、賃上げ率は2.07%(連合調べ・定期昇給込み)に終わり、直近ピークの15年に届かなかった。

その結果、利益剰余金は過去最高の446兆円に積み上がった。そのうち製造業が153兆円、非製造業が293兆円だった。

政府内には、来年10月からの消費税率10%への引き上げを控え、次の春闘では大胆な賃上げが必要だとの声が根強くある。

しかし、今年の春闘が政府の希望する3%賃上げを達成できず、政府の要望受け入れに前向きだった前経団連会長から現会長への交代で、企業の賃上げマインドが一段と萎縮するリスクに目を向ける企業関係者もいる。

野村証券の美和氏も「消費増税自体のマイナスの影響は前回より小さく、景気腰折れを招くほどではないはずだが、政治的にはまた、先送りの可能性もあり得るだろう」と見ている。

他方、明るい兆しもある。企業の人件費抑制姿勢の転換には、一層の生産性向上と利益率改善が必要だが、そのエンジンとなる設備投資にようやく本格的な強さが見え出した。

17年度の投資額は45.4兆円と過去最高。情報化投資向けの電子部品の能力増強投資や、生産自動化投資、国内の娯楽施設拡大や配送サービス向け倉庫の省力化投資など、IT化の流れが新たな投資を呼び込み始めている。

ただ、政府部内では、米国による保護貿易主義の影響も懸念される中、従業員への還元を優先する企業が増えるのかどうか、楽観する見方よりも不安視する声が広がり始めている。

中川泉 編集:田巻一彦  
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