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米国のイラク攻撃批判に思う
国民の利益を最大限に守るのが肝要
http://www.glocomnet.or.jp/okazaki-inst/hanbeijp.html
岡崎久彦
(産経新聞「正論」2003年1月31日掲載)
<「反米は人畜無害」なり>
一月に東京に降ったボタ雪は忽ち消えてしまったが、年初に頂いた年賀状に次の一句があった。
―――反米は人畜無害、春の雪―――
たしかに旧社会党の村山首相までが「安保堅持」を明言し、いかなる反米論者も日米同盟に代る代案を持たない現状では、反米論は無害であろう。あたかも日本のサラリーマンが仕事後一杯飲みながら会社や上司の悪口を言いつつも翌朝は善良な社員として会社や家族のために働くように、日本国民が、今後長い将来にわたる日米同盟の重要性の認識を失わないかぎり、何も心配することはないのであろう。
ただ今のところ心配なのは、アメリカのイラク攻撃に際して、一部に対米批判があり、それだけならば何という事はないが、それが政府の姿勢に影響を与えるようになると、日米同盟の信頼関係に影をさすおそれがある事である。
現在アメリカの同盟国では、ドイツとフランスがイラク攻撃に反対しているが、NATOの中では、英国をはじめ、イタリア、スペインの南欧諸国、ポーランド等の中東欧諸国は米国支持である。
ドイツの場合は日本にとって参考にならない。冷戦後の欧州では多くの左翼中道政権が生まれた。それらは社会主義イデオロギーは当然捨てねばならず、またそうでなければ政権は取れなかったのであるが、ミサイル防衛反対、原発反対などに旧野党時代の尻尾を引きずり、反米ムードもそのまま残っている。
<近代国際社会の原則>
とくにドイツは、多数連立政権を作るために緑の党と連立した。たとえて言えば、村山政権が、自民党との連立でなく、野党を糾合し、外相は左派反体制派から起用したような政権であり、ドイツ外務省も内心は困り果てているようである。
フランスは、ドゴール以来の伝統的自主独立路線であるが、反対の理由はもっぱら法的手続論であり、安保理決議さえあれば攻撃にも参加する余地もある姿勢である。
シラク大統領の発言を見ても、サダム・フセイン政権は邪悪な政権であり、イラク国民にとってもその地域世界にとっても有害だ、と日本の政治家が誰もそこまでいう勇気のないような認識をはっきり示した上で、十七世紀以来の国際社会のルールの上から国連決議なしの行動に疑念を示している。
実は問題の深い本質はここにある。一七世紀中葉、宗教戦争を終らせたウェストファリア条約以降近代国民国家が成立した。信仰は各国自由、主権は平等となった。
<秩序を守るのが大国の宿命>
「悪の枢軸」のように、国には善い国と悪い国があるという考え方、悪い国が先に攻撃して来る前に先制攻撃をしても良いという考え方、これが近代国際社会の原則に反するというのである。
もちろんこれに対して法的にも是非の論はある。国際法といってもそんなに確立した法でもないし、右の原則にしても、近代世界でこれが守られた例よりこれに反した例の方が圧倒的に多いであろう。
また、ウエストファリア条約以来三世紀半、国際関係の基礎構造は、列強の、最後には米ソの、力関係の上に構築されて来た、現状の米国のように一国がずば抜けた力を持った例は一度もなかったし、また、デモクラシーのような特定の価値観が独り勝ちしてしまった例もない。
たしかに国際社会の基礎構造は変質したのであろう。状況が変わったということならば、日本としては一九世紀に開国して以来習い覚えて来た国際規範に固執するよりも、状況の成り行きを冷静に見極め、その中で国民の利益を最大限に守る方策を見失わないことが肝要であろう。
最後にフォーリン・アフェアーズ最新号巻頭のアジヤミ博士の論文を抜粋紹介する。
博士は、米国はアラブの心を掴めるとか、戦争の正当性を納得させられるとか、甘い期待を持つべきでないと、冷静かつ厳しく警告を発しつつ、にもかかわらず、アラブ世界のひがみ、甘え、後進性を脱却しようとしている心あるアラブ人は米国の介入に期待していると述べた上、そして更に、たしかに戦争が引き起こす惨苦は甚大なものがあろうが、ここで攻撃を中止しサダム独裁の継続を許すことのもたらす恐るべき結果と較べれば、それさえも卑小なものであり、力の行使そのものに対する非難を甘受しつつ、世界の秩序を力で守るのが大国の宿命だと結んでいる。(了)
以上岡崎研究所HP
単純に反米を叫ぶのは簡単で、正義の味方でかっこいい。
この板でのメジャーな世論では反米主義である。岡崎氏の主張は十字砲火を受けるだろう。
私も、心情的には反米意識は持っていますが、日本国益を考えた場合、岡崎氏の主張にも耳を傾けるべきだと考えています。
Ddog