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http://www.asyura.com/2003/war23/msg/289.html
破産板にも投稿した、寺島実郎・三井物産戦略研究所所長の意見を読んで下さい。
投稿者 Ddog 日時 2003 年 2 月 05 日 23:32:14:

(回答先: 米国のイラク攻撃批判に思う 岡崎久彦 投稿者 Ddog 日時 2003 年 2 月 05 日 00:48:04)

戦争板しかお読みにならない方の為にこちらでも再度投稿いたします。岡崎久彦氏は元外務官僚である、彼の世界観は今でも天動説ではないが、米国中心説であることは間違いない。岡崎氏の日米安保幻想はある意味現実論あるしで正論である。そのことを認めたうえで日本の戦略国益を論じなくては、単なる飲み屋のオヤジの議論である。

阿修羅の投稿者の多数派は米国不審及び非難の世論であるので、当然投稿記事は激しく批判されると思った。ところが意外に批判が少なかった。

単純に反米嫌米を論ずる諸氏に、破産板に投稿した寺島氏の論文を読んで頂きたいと思います。日本は米国抜きでは生存できないが、米国追随でも道を誤る。寺島氏の意見は非常に示唆に富む内容と思う。
<http://asyura.com/2003/hasan21/msg/270.html>

「"無限の可能性"時代の潮流を見誤るな」寺島実郎・三井物産戦略研究所所長
投稿者 Ddog日時2003年2月05日01:38:31:

「"無限の可能性"時代の潮流を見誤るな」寺島実郎・三井物産NAA 2343 : 2003/02/04火曜日08:10 QUICKエコノミスト情報VOL.83 「2月特別版」 2003/02/03低迷を続け、デフレの出口が見出せない日本経済。どこに問題があり、どんな方向に 進むのか。今はどういう時代なのか。複数の有識者に現状と展望を伺った。前回の石弘光・一橋大学学長 (QZ3470)に続く今回は、寺島実郎・三井物産戦略研究所所長です。

「"無限の可能性" 時代の潮流を見誤るな」寺島実郎・三井物産戦略研究所所長

【問】今の時代をどう見ますか。

【答】先ず、100年前の20世紀初頭の20年間と、我々が生きている21世紀初頭の20年間の 類似性について指摘すると、日本が日清・日露戦争の谷間で20世紀を迎えた頃、世界史の 深層底流では植民地主義が終焉を迎え、民族自決の国民国家構想の台頭など次代のテー マが見え始めていた。ところが、日本は、世界史の潮流は植民地を奪い合う列強帝国主 義の競争の中にあると誤認し、列強模倣型の路線に傾斜していった。そして、最後には 満州国の夢を追い求めて太平洋戦争で一敗地に塗れてしまった。 この不幸な歴史は時代認識のズレによって生じたものだが、同じことが今の21世紀初 頭に起きているのではないか。つまり、我々は、米国を発信源とするグローバリゼーシ ョンとIT革命という潮流が21世紀の普遍的潮流であり、その中でゲームをしていかなく てはならないと信じがちだ。しかし、そうした我々の思い込みをよそに、米国イズムの 終わりが始まっているのではないかということだ。

【問】その予兆は?

【答】実際に、冷戦後を主導した米国流の資本主義が限界を見せ始めている。端的な例 が、ITを利した過剰なマネーゲームを背景とするエンロン、ワールドコムの経営破綻だ 。つまり、米国発のIT革命による金融技術の高度化は、LBOファンドやベンチャーキャピ タルなど直接金融の新しい仕組みを育てる一方で、コンピュータネットワークの中を短 期の資金が駆け巡るようなビジネスモデルを肥大化させた。その結果、90年代以降、産業や事業を育てるよりも事業を売り抜く資本主義が跋扈し、ITを駆使した金融商品として先物やオプションの利鞘を取るデリバティブが新しい金融ビジネスモデルとして礼賛 された。エンロンの電力デリバティブはその象徴だ。電力のような基本財にまでマネーゲームの対象とするようなビジネスモデルがどんどん展開され、経済に歪みが生じた。 そして、米国の90年代型資本主義の行き着いた先が、ITバブルの崩壊であり、エンロン 、ワールドコムの経営破綻だ。 米国を代表する企業の破綻で様々な問題点が露呈し、米国資本主義の屋台骨が揺らい だ。米国資本主義神話の崩壊だ。デリバティブやリファイナンス、ストックオプション などは、いわば右肩上がりの幻想の中で繰り広げられるゲームだ。いったんその幻想が 崩れると悲惨な結果となる。事実、そういう方向に向かいつつある。

【問】米国は日本のバブル崩壊と同じ道を辿るでしょうか。

【答】その可能性は大いにある。ただ、米国にはマネーが流れ込んで行く仕組みを絶え ず設計する底力がある。ITが駄目ならバイオ、バイオが駄目ならナノテクと新しい投資 オプチュニティーを創造する力が米国経済にはある。勢いは衰えるにしてもマネーは米 国中心に向かい続けるだろう。 留意すべきは、そもそもこの議論に傾斜する前に、日米両国の産業構造の決定的な違 いの存在を認識しておく必要があるということだ。先ず第一に違うのは経済のインフラだ。 エネルギーと食料というキーワードをよく考えればわかることだが、日本の石油の中東依存率が約9割に対して、米州エネルギー自給構想によって約4割を国内生産で賄える米国は、中東からの輸入が途絶えても対応出来る戦略を保持している。米国は世界最 大の食糧自給国であり輸出国でもある。米国は日本と比べ緊急時に対応していける力が 圧倒的に強い。逆に、日本はエネルギー、食料など生存基盤が脆い。 もう一つ決定的に違うのが軍事産業の基盤だ。冷戦期に累積投資された軍事技術の民 生転換によってIT革命が起こり、それが90年代の米国経済の再生と復活に繋がった。軍 事という産業基盤を持っているというのは米国の物凄い強みだ。一方、日本には軍事の 産業基盤があるわけでもなく、また、そうしないことを国策として展開してきた。 日米両国ではエネルギー、食料などの経済インフラや軍事産業の基盤が全然違う。米 国には余裕がある。余裕の中でマネーゲームをやっている。 日本には米国のような余裕はない。そういう状況下で、米国の産業や経営モデルを礼賛し、鵜呑みにして展開して 良いことと悪いことの限界がある。 日本は米国流の資本主義に翻弄されているというの が現状だ。それにそろそろ気付かないといけない。生存基盤が根本的に違うエネルギーと食料問題については、出来るだけ盤石な体制にしていく戦略性が日本としては問われている。軍事産業をやるべきだという意味ではないが、例えば、宇宙航空産業などをどうやって育てていくかが課題だ。

【問】時代の深層底流は新しいテーマを見せ始めているのでしょうか。

【答】今のところ、米国主導のグローバリズム、IT革命の次なる世界観、新しい世界秩 序、新しい資本主義の在り方は見えてこない。その答えは20年、30年後に見えてくるだ ろう。 間違いないのは、我々は大きな方向転換を余儀なくされているということだ。このよ うな問題意識を鋭く持ちながら、「21世紀初頭を生きる我々の時代の潮流について認識の ズレはないのか?」を絶えず自問自答する姿勢を見失ってはならない。それが、20世紀初 頭の20年間の歴史の誤認とその後の不幸の再現の回避となる。

【問】日本の進むべき道をどうお考えですか。

【答】産業の自画像を冷静に考えてみると、日本は基本的にはモノ作りの国だ。モノを 作る生真面目さで今日の産業国家を作ってきた。それが今、海外への生産拠点の移転で 産業の空洞化が一気に進み、国内のモノ作り基盤が液状化している。 過去10年間の輸出主力品は、相変わらず半導体、自動車、事務用機器などがトップで固定したままだ。次代を支える付加価値の高い競争力のある分野を創出していない。これからは、新しいプロダクトサイクルの設計にもっと情熱をもって取り組み、新しい成長のプラットフォームを作っていかないといけない。例えば、アジア大移動時代を迎え撃つようなコミューター型の空港基盤を整備して、日本で中型以下のジェット旅客機を生産し、新しい産業 のプラットフォームにしていく。そういう発想で、大きなシナジー効果を出していくようなことを考えていかないといけない。 そこで問われるのが、アイディアや技術可能性を現実のプロジェクトにしていくエン ジニアリング力だ。エンジニアリング力とは、個別要素のそれぞれの特色を生かしなが ら総合設計する力だ。どんなに目に見える小さなことでも、付加価値を付けて創造して いくことによってどれほどの産業に育つかだ。 例えば、ディズニー社をイメージすると 分かりやすい。1920年代にウォルト・ディズニーが漫画のキャラクターとして生み出した ミッキー・マウスが、今や巨大な総合メディア・エンターテインメント産業に育ち、何百 万人という雇用を創造している。東京やパリ、上海にまでビジネス展開するディズニー ワールドは、今や、米国の巨大な輸出産業になってきている。 日本も、単純に目に見えるモノ作りだけでなく、そこに大きな付加価値を見出してい くことだ。これまでに育ててきた産業群、企業群にどう付加価値を付けて広げていくか 。日本でもアニメ分野など想像力のある分野が育ってきている。無限の可能性があるの だから、何も立ち尽くしてこの国に未来はないと悲観する必要はない。金融議論にばか り集中せず、もっと産業の議論をすることだ。 金融セクターが安定化しても、産業基盤 が再生しなければ、不良債権問題は解決しないだろうし、株価も低迷を脱却出来ないだろう。不良債権償却の話をしていれば経済議論をしているという錯覚から脱却し、新しい産業、事業を創生する。これが今年の課題だ。
(聞き手・QUICK岡村健一)

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