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(回答先: 米経済対策6740億ドル、景気の本格回復図る 【読売新聞】 投稿者 招き猫 日時 2003 年 1 月 08 日 14:12:12)
ワシントン 1月7日(ブルームバーグ):ブッシュ米大統領は7日、総額 6740億ドルの「米経済強化への行動」と銘打った景気刺激策を発表した。6740 億ドルと、マスメディアのヘッドラインを意識して金額は膨らんだものの、「ふわふわとけば立たせるための算術」(英紙フィナンシャル・タイムズ)といった面が強く、「大統領再選への行動」と形容した方がより正確かもしれない。
総額6740億ドルといっても今後10年間にわたるもので、今後1年間では 980億ドルにとどまる。しかも、目玉の配当所得税撤廃も「経済成長」に寄与するかどうか、疑わしい。米国民の間では、投資信託や年金基金を通じた間接的な株式保有は浸透しているものの、配当税撤廃の恩恵を受けるのは個別株を保有する富裕層が中心。これら富裕層は株式配当税が撤廃されたからといって、それを消費に向ける度合いは限られる。
さすがの米政府も株式配当税撤廃について、景気刺激効果と言うのははばかれるようで、「株価を20%押し上げる効果がある」(ハバード大統領経済諮問委員長)と、具体的な数値まで示して株価効果を強調せざるを得なかった。しかし、この措置は現時点で配当の低いベンチャー企業など、構造改革を推し進めるために必要とされる成長企業株への投資には結びつかない。
投資家の増配要求で設備投資圧迫の事態も
さらに、投資家が配当税撤廃に伴い、企業に対して配当の増額を要求する傾向を強めかねず、そうなれば、企業は手持ち現金を設備投資や自社株買いに振り向けるのが以前より困難になる恐れがある。企業の成長力は弱まり、「今回の措置で短期的に株価が上昇しても、中長期的には株価下落要因になりかねない」(ウォールストリート・ジャーナル紙)。ブッシュ大統領は当初、この配当税を50%控除する考えだったが、土壇場になってローブ大統領顧問ら選挙参謀の意見を入れ、一気に全廃に進めた。
同大統領は昨年12月にオニール前財務長官とリンゼー前大統領経済補佐官を解任して経済チームを再編した流れを推し進めている。2004年までに景気が回復すれば、大統領選で、経済チーム刷新で見せた大統領のリーダーシップを強調できる。景気回復に失敗した場合でも、大統領は指導力を発揮し、経済政策に力を入れたが、民主党の妨害で景気拡大が予想通り進まなかったと主張できる。民主党は富裕層優遇になる配当税の全廃は到底支持できないからだ。
米財務省はオニール長官を中心に昨年8月から今回の景気刺激策を練ってきたが、同長官解任後、スノー次期長官はまだ、上院での承認手続きすら開始されていない。新経済チームはまだ名ばかりなら、経済対策も景気刺激効果は二の次にならざるを得ない。再選に向けた今回の新経済政策は旧経済チームが作成し、土壇場でヘッドラインの数値を膨らませたにすぎない。
ブッシュ大統領再選への保険
そもそも、大統領の経済対策の期間は10年間であり、グリーンスパン連邦準備制度理事会(FRB)議長が指摘した現在の「景気軟弱局面(Soft Patch)」を克服するためのものとは言えない。一部所得減税の前倒しはことし1月1日にさかのぼって実施されるが、今回の議会で成立するのは早くても5月以降になるだろう。政府、FRBともことし後半には持続的な景気拡大に復帰するというシナリオを描いており、本来なら必要のないものである。
ブッシュ政権は、景気対策に名を借りて、今回の対策に再選への地ならしと、長期的な税構造改革を忍び込ませたと言えよう。配当所得税の撤廃にしても、法人所得に課税後、さらにこれを受け取る株主に課す現行の二重課税是正という観点からは意味がある内容だ。同税の撤廃について、エール大学のシラー教授は「斬新的な対策」と評価した。しかし、「エンロンのケン・レイ前会長やその他企業幹部が国民を痛めつける一方で、私利を得たていことを考えれば、議会通過は困難だろう」と述べた。
ブッシュ政権も配当税撤廃が無傷で議会を通過するとは考えていないだろう。民主党が配当税の撤廃に難色を示し、仮に目玉の配当税撤廃が廃案になったとしても、選挙戦では有効なカードとして残るメリットがある。つまり、「景気が2004年にかけても十分回復しない場合、民主党の反対に遭って経済政策が遂行できなかった、と民主党に責任を転嫁することができる」(G7グループの斉藤毅バイスプレジデント)からだ。
ブッシュ政権の新経済チーム発足前にローブ大統領顧問ら政治チームによって完成された景気対策は、優れた「大統領再選に向けた保険」といえる。民主党が6日に発表した景気刺激策は総額1360億ドルと小ぶりで、ブッシュ政権の6740億ドルに対し静かな抵抗を試みている。民主党案は2003年1年間で、まさしく景気への即効を狙ったものだ。民主党はブッシュ政権の広げた大風呂敷には乗らず、国民の良識に訴える作戦のようだ。
ワシントン 山広恒夫 Tsuneo Yamahiro