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昨日深夜から本日未明にかけて開催された安保理追加報告と安保理理事国の演説をTV中継で見た。
政治的外交テーマとしての「イラク問題」はいよいよ終局を迎え、米英が主導するイラク攻撃がどのようなかたちでいつ開始されるのかという段階に入り、今回の安保理で17日を期限を設ける内容に修正された米英スペイン提出の“新決議案”が最後の外交攻防戦のテーマになった。
軍事力もしくは生命がけで米英のイラク攻撃を止める動きは期待できず、米英との決定的な対立も避けようとしている状況から、攻めの米英と受けの反対派という構図でことは進んでいくはずである。
今回の安保理理事国の演説を聞いた範囲で、米英スペイン提出の“新決議案”がどうなるのか、そして、米英が“新決議案”をどのようなかたちで利用しようとしているのかを考えてみたい。
■ 米英スペイン提出の“新決議案”の結末
結論から言えば、米英スペイン提出の“新決議案”は採択されない。
イラク攻撃反対派の常任理事国は、それを望んでいないとしても、最後には拒否権を行使してでも反対するからである。
理事国の演説を米英寄りに好意的に受け止めての賛否識別は以下の通りである。
● “新決議案”支持:米国・英国・スペイン・ブルガリア
● “新決議案”支持可能性:メキシコ
● “新決議案”棄権:チリ・アンゴラ・ギニア
● “新決議案”反対可能性:パキスタン・カメルーン
● “新決議案”反対:フランス・ロシア・中国・ドイツ・シリア
「支持可能性」と「反対可能性」は、採決にあたって棄権に回る可能性が高いと見られる国々のなかで賛否傾向の違いを示すものである。
現状では、最大6ヶ国が賛成票を投じると思われ、拒否権なしでの“新決議案”採択に必要な9カ国の賛成は得られないと予測する。
■ 米英はなぜ“新決議案”を提出したのか
米英は、もとより、採択されるという見通しがあって“新決議案”を提出したわけではない。採択されないとわかっていながら、“新決議案”を提出したのである。
それは、揺るぎないイラク攻撃決意とその開始について、国内及び国際的正当性をできるだけ主張できる条件を得たいからである。
● [ベスト]:反対派常任理事国の拒否権行使で不採択
米英が外交的に追求している目標は、“新決議案”が拒否権行使で不採択になることである。
そうであれば、拒否権を行使した常任理事国を「国際社会の多数意見に逆らって正義の実現を阻害した悪」と位置づけることで、イラク攻撃同盟国を、理不尽な妨害を跳ねのけて正義を達成する正義の戦士と説明することができる。
それに対して、反対派の常任理事国はルールを持ち出して対抗するだろうが、多数決原理と制度的正当性の“神学論争”になり、米英のイラク攻撃に対する正当性がそれなりに高まることになる。
反対派常任理事国は、米英との関係悪化や“神学論争”に陥ることはわかっていても、これまでの態度表明に照らし、最悪の手段として拒否権を行使し、米英に国際法的合法性を与えることはしないはずだ。
● [ベター]:賛成が反対を数で上回るか同数ながら不採択
前述のように、“新決議案”に対する賛否を素直に数えると、賛成4:反対5となり不採択になるだろう。
しかし、これが賛成5:反対5になったり、賛成6:反対5になれば、“多数決原理”を持ち出してイラク攻撃の正当性を主張できる。
メディア支配力を誇っている米英だから、その正当性説明は増幅されて世界中とりわけ先進国の人々に届くはずだ。
このような結末をつくるために、メキシコを第1ターゲット、チリを第2ターゲットした賛成票積み上げ外交攻勢を仕掛けてきたし、今後ますます苛烈に仕掛けるはずである。
そして、それと同時に、パキスタンやカメルーンなどが反対票を投じないよう外交攻勢もかける。
これらの外交攻勢は、メキシコが経済制裁の恫喝を受けたように、“買収(金融経済援助)”と“恫喝(経済取引制限や支援削減)”が横行するものになるはずだ。
日本政府は、そのような外交攻勢の一翼を担ってきたし、今後も、より強く担おうとしている。
● “新決議案”の採決なし
米英が最悪と考えるのは、“多数決原理”でも少数派になった状態でイラク攻撃に踏み切ることである。
外交期限時点でそのような票読みになったら、米英は、“新決議案”を採決しないままイラク攻撃に踏み切ると予測する。
無用な非難ネタを提供するよりは、従来の「フセイン悪玉論」・「査察無力論」・「世界の安全確保」を声高に叫びながらイラク攻撃に踏み切ったほうが“得”だと判断するはずだ。
見通しとしては、[ベター]か“新決議案”の採決なしのいずれかだと考えているが、反対派も米英との関係を極端に悪化させたくないし“武士の情け”もある、そして、米英日のような“えげつない”外交攻勢も行わないと思われるので、[ベター]という結末になる可能性も高いと思っている。
■ 日本は「世界最終戦争」で敗北するのか
9・11からアフガニスタン侵略そしてイラク攻撃という流れで進んでいる今回の「対イスラム戦争」を「世界最終戦争」だと考えている。
近代史的に言えば、『第二次世界大戦』である。
『第二次世界大戦』とするのは、「第一次世界大戦」(欧州大戦)と「第二次世界大戦」は一続きの世界大戦だと考えたほうが的確で、「第一次世界大戦」(欧州大戦)と「第二次世界大戦」の戦間期は“休戦期間”と捉えたほうが近代史理解に資すると考えているからである。
「世界大戦」は、世界構造を変えるための戦争であり、世界構造を変えることができず大戦前の世界構造(先進国の植民地支配と後進国(ドイツや日本など)の市場拡大欲求という対立構造)を残すことになった「第一次世界大戦」はその機能を果たせなかったと言える。
米国の絶対的経済力と軍事力そして植民地体制の崩壊を導いた「第二次世界大戦」こそが、それまでの近代世界構造を根底的に変えた『第一次世界大戦』ということになる。
『第一次世界大戦』は、このような意味で、近代国家(先進国)間の世界収奪構造を変える世界大戦だっと言うことができ、今回の「世界最終戦争」=『第二次世界大戦』は、これまで限定的に「近代経済システム」に組み込まれたきたイスラム世界を全面的に「近代経済システム」に組み込むことをめざすものだと言うことができるである。
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軍人である石原莞爾氏は、“大量破壊兵器”の出現から「第二次世界大戦」を「世界最終戦争」と見通した。
軍事論的に言えば、それは正しい。相互が“大量破壊兵器”を保有し合っている大国同士の戦争は、「第二次世界大戦」で終わったと考えている。
今回の「世界最終戦争」=『第二次世界大戦』は、世界構造を根底から変えることを目指すものであっても、戦闘の激しさは先の大戦と比較すれば低位のものになる。
圧倒的な“飛び道具”の軍事力を誇っている米英と先進国から供与される兵器に依存しているイスラム諸国では、戦争と言える戦闘にはならない。それどころか、国家として、米英の攻撃に対抗する国も限られたものになるはずだ。(あったとしてもイランなど少数)
地理的条件としては異なるが、「ベトナム戦争」と同じような正規軍と抵抗勢力が主流になると予測する。
しかし、「世界最終戦争」=『第二次世界大戦』が世界構造を根底から変えることを目指すものである限り、その戦いは、妥協のない血みどろの悲惨なものになる。
戦争が政治目的を対外的に追求するものである限り、戦争で勝利することは序の口でしかない。相手に、政治目的を受け入れさせ、それで確立した政治・経済制度が安定的に持続するようになることが唯一の勝利条件である。
日本政府は、川口外相が安保理に提出された17日を期限とする米英スペインの新決議案を支持すると表明したように、イラク問題では米英と歩調を合わせることを決意したようだ。(もちろん、新決議案が採択されなかったときに方針を転換する余地は残っている)
小泉政権に問い質したいのは、アフガニスタン侵略・イラク攻撃&占領支配がどういう世界史的意味を持っていると考えているのかということである。
小泉政権が、アフガニスタン侵略は9・11の報復であり、イラク攻撃は「悪玉フセイン政権」を打倒するための戦いであるという認識だけで米英の支持を決めているとしたら、無能統治者の烙印を押さざるを得ない。
奇妙な言いかただが、近代世界の最終的な構造転換をめざす「世界最終戦争」を支持するのなら、米英のように、持てる軍事力・外交力・資金力をフルに使って参戦しなければならないのである。
なぜなら、「世界最終戦争」に敗北した側は、戦後構築される世界に従来的立場では加わることができないからである。
それは、「第二次世界大戦」で敗北した日本やドイツが遂げた変容を考えればわかることである。
戦争に協力し戦後復興の足がかりを得た朝鮮戦争や出撃拠点を提供し特需で潤ったというベトナム戦争とはまったく次元が異なる戦争に対して、ある陣営につくということなのである。
もう一度言うが、最終的にイラク攻撃を支持するならば、それ自体が国際法違反で行われる侵略なのだから、自国及び米英の勝利を確かにするために、日本国憲法も無視し、日本の持てる総力を挙げて参戦しなければならないほどの世界史的転換点に立っているのである。
それができないというのなら、国際法と憲法に従った対応をしなければならない。
開戦前から怒涛のように沸き起こっている反戦運動を押し切ってまでイラク攻撃に踏み切ろうとしている米英の意図が見えないとしたら、愚か者の極みであり、国家統治者としての適格性を欠くのである。
断言するが、「世界最終戦争」に米英(国際金融家)が勝利することはない。
攻撃が始まり、イラク占領支配が始まると段階を経るごとに、世界の反戦運動はより高まる。そして、イスラム世界の米英への対抗運動も強まっていく。
米英が勝利できるとしたら、敬虔なムスリムを皆殺しにしたときだけである。
現在の米英及び先進諸国の国民意識を考えれば、そのようなとんでもない暴挙ができるわけもなく、仮に、そのような暴挙をやったとしても、曖昧なムスリムが敬虔なムスリムとなり、もぐら叩き的暴挙を繰り返さなければならない。
さらに言えば、米英にも、内にムスリムが数多く存在する。彼らのなかからも次々と敬虔なムスリムが出現するのである。国内で爆弾を落とすわけにもいかないから、怪しそうなムスリムを次々と拘束するしかないだろう。
それで、米国や英国の国内がもつと考えるのは、あまりにも甘い見通しというか、愚昧な判断であろう。
ただ米国を支持しただけだ、ただイラク復興に資金協力しただけだと言って責任を回避しようとしたら、「世界最終戦争」後の世界に日本の居場所はないということを肝に銘じて欲しい。
米英支配層は「世界最終戦争」であることを自覚しながらことを進めている。
米英に付き従っていくというのなら、最低限同じ自覚を持たなければ、日本は、国際金融家に利用だけされた“愚昧国家”という烙印を押されることになるだろう。