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(回答先: マルクスと宇野氏の経済理論 − 両者の誤りと優劣 − 投稿者 あっしら 日時 2002 年 11 月 16 日 21:31:41)
小生がレス相手では、あっしらさんもあまり新鮮味がないかも知れませんが、ご容赦を。
宇野弘蔵氏の3段階論は「イデオロギーと、科学としてのマルクス経済学の分離」を主眼に提起されていますが、その背景には、戦前の天皇制をどう分析するか、を巡る講座派と労農派の不毛な対立(封建遺制を残した絶対主義権力か、資本主義をバックにしたファシズムか)を打破したい、という意向があった、と言われています。
また、物理学者の武谷三夫氏が認識論として提起していた「現象−実体−本質」という3段階論の影響もあったようです。この2つの理論ょ完全につないだ体系を発表したのが、革マル派の教祖の黒田寛一氏であることは、ご存知の方も多い、と思います。
一方、宇野派の異端と言われた岩田弘氏は、原理論−現状分析という2段階論を提起、宇野氏の体系が「資本の本源的蓄積を巡るイギリス資本主義とドイツ資本主義の差」を重視する点を批判して、「資本主義体制は、個別各国の資本主義の合算ではなく、あくまでも世界資本主義というシステムの分肢として各国の資本主義をとらえるべき」と主張しました。岩田理論は、60年年代末の新左翼運動の強力なバックアップ理論でしたが、経済分析を重視し過ぎる点を「主体性」重視派などに批判され、影響力を失いました。しかし、最近、また、新たな世界システム分析に力を入れているようで、ウォーラーステンらの「世界システム論」の影響を受けた理論になるようです。
宇野理論のもうひとつの特徴は、「労働力商品化論」の強調です。特に恐慌の原因として、労働力商品化の矛盾を重視しています。マル経では、恐慌は、「生産力と生産関係の矛盾」をベースにしてみますが、これだけでは念仏のようで、なにをいっているのか、分からない。具体的には、好況だと、企業は古い生産設備を廃棄して、新しい設備に更新する。それによって過剰生産になり、利益性も低下する。しかし、鉄鋼などの巨大固定生産設備は簡単にはリプレイスできないが、利益率の極限的な低下を乗り越えるためには、恐慌というパニックによって、巨大固定生産設備等の過剰資本・過剰生産体制を破壊的に一新するしかない、これこそ「生産力と生産関係の矛盾の発現だ」というのが、マルクスの主張です。(正確には小生流の要約ですが)。
これに対し、宇野氏は「労働力というのは、景気の変動に合わせてアップダウンできない。なぜなら労働力=人間であり、人間が労働力として働けるようになるには、生まれてから最低でも十数年かかり、その時点で労働力が既に過剰であろうとなかろうと、それにあわせるわけにはいかない」と指摘、この矛盾が恐慌の主要原因としました。
分かり易く言えば、製品は市場動向に合わせて、生産量をふやしたり減らしたりできますが、クーロン人間でも普及すれば別ですが、人間の出生数はコントロール不能で、しかも、働けるようになるまでのタイムラグも大きい、ということです。
まあ、昔、仕入れた知識ですので勘違いもあるでしょう。今のところ、小生が開陳できる知識はこの程度です。