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特集:燃料電池
[中]資源小国の知恵生かす
原油の採掘権を持つ国際石油資本(メジャー)の支配力が強い石油業界で、燃料電池車の登場を機に、地歩拡大を目指しているのは、国内最大手の日石三菱だ。日米欧の石油会社が今、繰り広げている専用の新しいガソリンの開発競争が、その舞台だ。
燃料電池の燃料となる水素の調達方法として、石油会社は、現在も車の燃料として一般的なガソリンを主役とすることを目指している。ただ、燃料電池で使用するには、今よりも硫黄分などの不純物を少なくし、水素を取り出しやすくする必要がある。日石三菱は、この点に目をつけた。
その理由は、日本が資源小国だという点にある。「資源に恵まれないが故に、進歩してきた技術があり、それが活用できる」(池松正樹・機能商品事業室長)からだ。
石油ストーブなどに使われる灯油は、実は日本特有の商品だ。パイプラインで容易に周辺国から天然ガスを調達できる欧米では、暖房器具の燃料の主役は、天然ガスが占める。
一方、島国の日本は、エネルギー輸送手段が船に限られるが、天然ガスを液体化して船で輸送するのはコストがかさむため、低コストで運べる原油から暖房器具向けに灯油を精製する独自技術が発達した。灯油は、屋内で使うため、硫黄分などの不純物を最大限取り除いたクリーンな燃料だ。
また、比較的、硫黄分が少ない北海油田やアメリカ大陸の油田を持つ欧米に比べ、硫黄分が多い中東産出原油に頼らざるを得ない日本では、原油の精製技術そのものも、不純物への対応が進んでいる。
日石三菱では、原油に含まれる硫黄分や芳香族と呼ばれる不純物を、貴金属など触媒の上で化学分解する触媒技術に磨きをかけ、燃料電池車向けガソリンの精製方法を開発した。実用化まであとわずかだ。内容は企業秘密だが、貴金属の材質や、長期間触媒を使っても性能が落ちない工夫を凝らしたという。
米エクソン・モービルなどメジャー各社も水面下で開発を急いでいるが、「品質や開発のスピードで、ひけは取らない」(池松室長)と自信満々だ。
メジャー各社より、優れていると自動車メーカーなどが判断してくれれば、日石三菱の技術が、石油精製の分野では国内企業で初めての世界標準となる。そうなれば、ライバル各社への技術供与による収入が入るだけでなく、初の海外展開につながるかもしれない。
これまでは、アジアでもメジャーが旧植民地を中心に展開しており、日石三菱は海外進出できなかったが、新技術を武器に、まだメジャーも進出していない空白地帯の中国市場でのガソリン精製・販売事業への進出で、優位に立てそうだ。
メジャー優位の石油業界の勢力図が、弱点を武器に転じようとの日本企業の努力で、変わるかもしれない。