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(回答先: Re: 石油ストーブなどに使われる灯油は、実は日本特有の商品だ。 投稿者 max 日時 2003 年 1 月 19 日 23:41:33)
エネルギーと世界転換石油の地政学(中)フセイン後――利権争い、地域の火種。
もしかしたら、イラクにはコストの安い。
低硫黄原油があるのかもしれない。
砂煙にかすむ空に黒煙がもうもうと上がる。イラク北部モスル近くにある製油所では、フセイン大統領の肖像画がにらみをきかす下でイラク兵が銃を構える。
国連のイラク制裁でスペアパーツなどの不足は深刻になり、設備の消耗も想像以上に進んでいる。「非効率で無駄な生産が続いている」と湾岸の石油関係者はみる。
そんなイラクの確認埋蔵量(千百二十億バレル)はサウジアラビアに次ぎ、世界第二位。発見された七十四カ所の油田のうち、稼働しているのはその五分の一だけだ。「フセイン後」をにらみ、権益を巡る各国の駆け引きが熱を帯びる。
昨年十二月中旬。イラク反政府指導者、チャラビ・イラク国民会議代表は「現政権が外国と交わした油田開発契約はすべて見直す」と発言した。トルコ・アンカラに駐在するイラク反政府組織の事務所には「祖国の将来を話し合いたい」と、外国石油会社の代理人らが次々に接触してくる。
イラクが外国石油会社と締結・交渉中の契約は三十あるとされ、ロシアとフランスが先行している。ロシアはイラク向け債権を含め四百億ドルともいわれる利権がある。仏ロにとっては、石油の地政学で米国に対抗するカードとなるが、フセイン政権がある限り、経済制裁は続き、経済的実利は得られない。
そこを米国が突く。「ロシアがイラクに経済的利益を持っていることは理解している」。ブッシュ米大統領の発言からは、戦後処理での米ロの密約説が浮上する。イラクがロシアのルークオイルとの合意破棄を通告したのも「ワシントンに『フセイン後』の支持を取り付けに行ったため」とアジズ副首相は語る。
米英の石油会社にとり政権交代は劣勢を覆す好機でもある。英系石油大手BPのブラウン社長は「戦後の参入機会は公平でなければならない」と発言。仏トタルフィナ・エルフ首脳は「イラクの油田で十分な調査をしてきた。開発を早く進めるには我々の経験が利益になる」とけん制する。
世界の大国がここまでイラクにこだわる最大の理由は圧倒的な生産コストの安さにある。イラク原油の生産コストは一バレル当たり二ドルを下回るとみられ、ロシア油田(九ドル程度)より競争力がある。サウジに代わる安定供給源を確保する意味もある。
だが、イラク原油を巡る争いは封印されていた民族、宗教問題を表面化させる危険をはらむ。
バグダッドから北へ三百キロ。イラク最大の石油生産都市キルクークはクルド人居住地域に取り囲まれるように位置する。クルド人勢力はキルクークを将来の「首都」と宣言し、石油利権に関心を強める。国内にクルド人を抱える隣国のトルコは神経をとがらす。
一九三二年に誕生したイラクの国境線画定は、キルクークを自国の勢力下に入れたい当時の英国の意向が働いた。キルクーク問題はその帰属を巡り火を噴きかねない時限爆弾だ。
イスラム教シーア派住民が多数を占める南部の油田でも、フセイン後を担うシーア派の勢力の間で対立が起きるとの見方は少なくない。利権争いの行く先は「地域一帯の不安定」になりかねない。
(バグダッド=松尾博文、バーレーン=岐部秀光)