【エルサレム29日=当間敏雄】
ヨルダン川西岸パレスチナ自治区の中心都市ラマッラに侵攻したイスラエル軍は29日、アラファト自治政府議長の執務するビルを除き議長府施設をほぼ全面的に制圧した。砲撃で施設の一部が炎上した。シャロン・イスラエル首相は同朝、議長を、対イスラエル・テロ連合を組織した「敵」と呼び、「議長を隔離する」閣議決定を下したと表明した。これで、ジニ米特使の停戦調停はとん挫、アラブ首脳会議が前日に採択した包括和平案も事実上意味を失い、中東情勢は重大危機に突入した。
侵攻部隊は、パレスチナ治安部隊と銃撃戦となり、少なくともパレスチナ人6人が死亡、20人以上が負傷、イスラエル兵1人も死亡した。同軍当局者は議長府内でパレスチナ人約70人を逮捕したと発表。現地からの情報では、議長の警護要員が射殺されたものの、議長本人は地下壕(ごう)に退避し、無傷。側近によると、議長は電話で各国首脳に支援を要請しているという。
イスラエル放送によると、首相は「作戦は前例のない規模で、少なくとも数週間続ける」と述べた。ベンエリエザー国防相は「議長に危害は加えない」と語った。イスラエル軍は29日午前、ラマッラ全域に夜間外出禁止令を発令した。
議長はパレスチナ住民に徹底抗戦を呼びかける一方で、米国に介入を求めた。
イスラエルは、今月中旬にジニ米特使がパレスチナ側との停戦調停を開始して以来、軍事行動を自制してきたが、27日、イスラエル中部でイスラム過激派の自爆テロが発生、イスラエル人ら21人の死者を出す事態となり、報復作戦を再始動させたものだ。
◆エルサレムでは女性自爆テロ、3人死亡◆
エルサレム市内のスーパーマーケットでは29日午後、18歳のパレスチナ人女性による自爆テロが発生、犯人を含め少なくとも3人が死亡した。パレスチナ解放機構(PLO)主流派ファタハ系の「アルアクサ殉教者旅団」が犯行声明を出した。
(3月30日08:39)