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(回答先: 財務省が民間格付け機関3社に意見書送付−国債評価基準を問う(東京 4月30日ブルームバーグ) 投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2002 年 4 月 30 日 16:29:10)
著名格付け会社が日本国債の格付けを下げているのは、経済論理に基づくものではなく、「今後起きる世界的な経済苦境を日本の責任にする」ためであり、「日本経済をより悪化させる」ためという政治的論理に基づくものである。
しかし、経済論理に基づいても、「政府債務=日本国債問題」は危機的な段階に入っている。
※参考書き込み
『格付け会社批判ではなく日本政府もそろそろ目覚めたら』
http://www.asyura.com/2002/hasan9/msg/569.html
国際金融家はもっと“上手”な屁理屈を展開すると思うが、屁理屈にあまりならないように回答をしてみた。
[意見書の質問項目]
>1)日米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。デフォルトと
>していかなる事態を想定しているのか。
「日米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」という言説は、日本財務省の想像力が欠如していることの証左である。
そのような財務省が政府債務を管理していることが、日本国債の危ういものにしていると言える。
我々は、日本政府がデフォルトを行うとは断じていない。日本国債を不安視しているのは、デフォルトの代わりに、ハイパーインフレにつながる政策を無思慮に採ると考えているからである。
1億円額面の国債が、将来の償還時にインフレのために現在価値にして3千万円になれば、70%がデフォルトされたことと同じである。
多くの人が激しいインフレ傾向を認識すれば、償還前の既発国債も、早く現金化しようとする動きにより価格が大幅に下落することになる。
そうなるという根拠については、次の書き込みを参照して欲しい。
『レス4:「国債サイクル」による金融資産の侵食とハイパーインフレへの道』
http://www.asyura.com/sora/dispute1/msg/505.html
>2)格付けは財政状態のみならず、広い経済全体の文脈、特に経済のファンダメンタ
>ルズを考慮し、総合的に判断されるべき。以下の要素をどう評価するか。
>−日本は世界最大の貯蓄超過国で国債はほどんど国内で極めて低金利で安定的に消化
>されている。
前述の参考書き込みを読んでもらえばわかるが、日本政府は、国内の貯蓄を国債で消費し、利払いや国債償還を新たな貯蓄で充当してきた。
今後予測される貯蓄伸び率の低下もしくは貯蓄の低減が、そのような国債のサイクルを不能にする可能性が高いと考えている。
日本国債が国内でほとんど消化されているのは、外国の投資家に迷惑をかけないという意味では歓迎すべきことだが、それだけ日本国債に魅力がないということの証であり、国内貯蓄でやりくりができなくなったときにそれを補うことができないということを意味する。
また、日本財務省が現在の国債金利を低金利と考えているとしたら、経済学的無知をさらすものだと断じざるを得ない。
国債の利子率が1.5%でデフレ率が1%とすれば、実質金利は2.5%である。
インフレであれば、5%の利子率でもインフレ率が3%であれば、実質金利は2%である。インフレ率が5%であれば、実質金利は0%である。
デフレが継続すれば、政府債務の実質的な負担はさらに増大するのである。
日本政府は、ここ4年ほど続いているデフレ状況を克服できず、近い将来デフレを解消できる目途も立っていない。
税収も低迷し、高齢化も進んでいるなかで、日本政府は、実質的に高金利の債務を増大させている。
インフレ状況では実質金利を調整できるが、マイナス金利にするわけにはいかないデフレ状況では実質金利を調整することはできない。
国債の金利が0%だったら、幾分でもリスクがある国債に投資せず、現金のまま保有するだろう。
>−日本の世界最大の経常黒字国、債権国であり、外貨準備高も世界最高。
格付け会社は、現在ではなく、償還時と言わないまでも数年先の経済状況を予測して格付けを行っている。
日本の貿易収支は、工場の海外移転により、3年ほどで赤字に転落する可能性が高い。
まさに、米国が、貿易黒字の黒字から赤字に転落し、経常収支も黒字から赤字に転落していった歴史と同じ道を歩んでいる。
米国は、戦後世界で、最大の経常黒字を誇り、過半数の富を握っていたのである。
赤字に転落した米国は、国際基軸通貨国であり世界最大のGDPと軍事力により、厖大な赤字を埋めるためのドル還流を実現してきたが、日本には、現状が示すように、外国投資家を引きつける力を持っていない。
日本が債権国であるとしても、米国債を大量に売却すれば世界経済の循環システムを崩壊させ、もっとも大きな被害を被るのは日本である。
また、米国債を売却し金など他の資産に組み替えても、日銀の信用力を高めるだけであり、政府債務問題を解決するものではない。
3)各国間の格付けの整合性に疑問。次のような例はどのように説明されるのか。
−1人当たりのGDPが日本の3分の1でかつ大きな経常赤字国でも日本より格付けが高い国がある。
経常赤字国でも、財政赤字が対GDP3%以内で緩やかなインフレを保っていれば、財政破綻を免れることができる。
重要なことは、GDPの規模が財政の持続性を保証するものではないということである。
1人当たりのGDPが大きいということは国民生活が豊かであるということでもあり、経済が苦境に陥り政府が国民生活の支援をしなければならなくなったとき、多額の財政支出を求められるということである。
アフガニスタン国民には飢えないレベルの財政支出をすれば済むが、日本の失業者・生活保護受給者・老人に同じレベルの生活を強いるわけにはいかない。
−1976年のポンド危機とIMF(国際通貨基金)借り入れのわずか2年後に 発行された英国の外債や、双子の赤字の持続性が疑問視された1980年代半ばの米国債はAAA格を維持した。
米国や英国は、世界を指導している国家である。
日本は、米国や英国が構築した枠組みのなかで経済成長を遂げてきた。
また、英国や米国は、経済的衰退のなかで、社会保障関連の財政支出を削減することで財政の破綻を防いだ。
日本政府が、英国や米国のように、国民生活に痛みを強いるような税制改正や経済政策を採用するとは考えられない。
サッチャーリズムやレーガノミックスを称揚している小泉政権の財務省が、そのような政策で危機を脱した英国や米国の過去の政府証券の格付けをとやかく言うのは理解に苦しむ。
繰り返しになるが、格付け会社は、現在ではなく、償還時と言わないまでも数年先の経済状況を予測して格付けを行っている。
経済状況の予測にあたっては、その国の政府が持っている統治能力や政策立案能力も評価している。
−日本国債がシングルAに格下げされれば、日本より経済のファンダメンタルズではるかに格差のある新興市場国と同格付けとなる。
新興市場国は、危険視されるが故に経済論理に沿った財政運営をしなければ外債を消化することができない状況に置かれている。
日本政府は、そのような規制がないために放漫な財政政策を採り続け、10年にもわたる不況を克服することもできなかった。
日本経済のファンダメンタルズを長期にわたって損耗させてきたのが日本政府である。