東京(ウォール・ストリート・ジャーナル)世界最大の小売企業である米ウォルマート・ストアーズ(NYSE:WMT)は14日、西友(J.SEY)の株式を将来的に約3分の2取得する権利を得ることにより、日本市場に進出すると発表した。ただ、世界で最も競争が激しく、消費者が気まぐれな日本の小売市場で同社が成功できるかどうかは不透明だ。
発表によると、ウォルマートは、西友が第3者割当増資で発行する新株を購入し、6.1%出資する。また、今年末までに33.4%、2007年末までに最大66.7%まで出資比率を高める権利も取得した。投資総額は20億ドル。
段階的に出資を引き上げることにより、ウォルマートは、世界2番目の規模である日本の小売市場に、リスクを抑えながら参入できることになる。ウォルマートは、すでにブラジル、ドイツなどに進出しているが、同社幹部らによると、国際的な地位を確立するには日本市場が重要であるとかなり前から判断していたという。2002年1月期の売上高約2180億ドルのうち、米国外の売り上げは約16%を占めた。
ウォルマート国際本部のチャールズ・ホリー最高財務責任者(CFO)は、西友との資本提携合意について、「長期的なパートナーシップの第一歩とわれわれはみている」と述べ、西友との協力にはコミットしていることを強調した。段階的に出資を引き上げるという方法を選んだことについて、ウォルマート幹部らは、日本市場を調査する時間を確保することが主な目的と説明した。
ホリーCFOは、ウォルマートがいつごろ日本で独自店舗を開くか、それがどのような規模のものになるかなどについて、詳細な見通しは示さなかった。同CFOによると、近いうちにウォルマートから複数の幹部が日本を訪れ、これについては西友側と協議する予定という。
日本では景気低迷の長期化で消費者の財布のひもが固くなっており、値下げ競争も激しく、ウォルマートは厳しい市場に直面することになる。また、日本の旧態依然とした小売市場に革命をもたらすと意気込んで参入した外資系企業の多くは、失敗に終わっている。外資系企業が、新しい店舗形式、幅広い商品など大きな変化を日本市場にもたらしたことは事実だが、これまでに一定の成功を収めることができたのは、がん具大手のトイザラス(NYSE:TOY)、コーヒーチェーンのスターバックス(Nasdaq:SBUX)など一握りだ。
オフィスサプライチェーンの米オフィス・マックス(NYSE:OMX)、英ドラッグストアのブーツ、仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン(F.LVH)傘下の化粧品小売店セフォラなどは、期待通りに売り上げが伸びず、昨年撤退している。
ウォルマートが参入する分野である、食品、医薬品、日用雑貨は特に競争が激しい。多くのスーパーがひしめき合い、激しい値下げ競争を繰り広げている。ウォルマートが、日本のローカルブランドを販売することに専念すれば、地元業者との差別化は難しくなる。また、日本では、卸売りなどの供給業者が依然として強い力を持っており、ウォルマートが本国のように大きな値引きを業者から引き出すことは難しいとみられる。
世界第2位の小売企業である仏カルフール(F.CAR)は、2000年に日本に進出しているが、アナリストらによると、日本の消費者の好みにあった商品をそろえることで苦労し、これまでは期待通りに伸びていないという。カルフールは当初、2003年末までに13の店舗を開設する予定だったが、3つ目の店舗を開設した時点で、この目標は達成できないことを明らかにしている。店舗に適した不動産が見つからないためという。
ウォルマートは1990年代半ば、イトーヨーカ堂を通じ、ウォルマートの独自商品の販売に乗り出したものの、期待された成果はあげられず、この試みはとん挫した。日本の小売業界ではここ1年間ほど、ウォルマートが日本進出を検討しているとのうわさが流れていたため、今回の発表に対しては意外感は少なかった。昨年破たんしたマイカルは、ウォルマートに救済を求め、ウォルマートも打診を受けたことを確認したものの、合意には至らなかった。
ウォルマートの14日終値は、前日比28セント(0.45%)高の62.27ドル。