(回答先: WSJ-ウォルマートが日本進出、厳しい競争に直面か(ダウ・ジョーンズ) 投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2002 年 3 月 15 日 12:25:32)
ここ数年、流通業界というよりも産業界で“噂の的”であった米ウォルマートの日本進出が正式に決まった。国内第4位の西友<8268>を事実上、買収する方向で日本市場戦略の足掛かりにすると14日に発表した。東京都内を中心にいわゆる首都圏に網の目上に店舗を置く西友は、ウォルマートのみならず国内大手から見ても垂涎の的だ。ウォルマート〜西友ラインはどこまで続くのか。イトーヨーカ堂<8264>やイオン<8267>はどう関わってくるのか。「西友、ウォルマート、これにヨーカ堂が合従連衡に合流し3社連合へと発展する」―の予測は現実のものになるのか。「上陸間近」が伝えられる英テスコなども絡んでいよいよ本格的な「世界流通戦国時代」が火ぶたを切った。
●突然の第一報に騒然
ニュース第一報を伝えたのは14日午後2時のNHKであった。定時ニュースらしく淡々と読み上げられた「世界最大の流通企業である米ウォルマート社が西友と包括提携することで合意に達しました」のコメントに、記者クラブは静まり返り、その後、騒然となった。すでに夕刊には間に合わない。発表は午後4時30分からだ。この数年間、経済記者が共通項として目標にしてきた米ウ社日本進出の一報は、こうしてピリオドが打たれた。
ウォルマート進出が間近に迫った、との憶測が流れたのは実は今回が初めてではない。すでに1年近く浮かんでは消えてきた。昨年秋には「2002年1月にも発表」との話が信憑性を伴って流れ、その相手にはダイエー<8263>が最有力候補として挙げられていた時期もあった。しかし、ご存知のようにダイエーがあたかも国家の管理下に置かれてしまってからはこの話も立ち消えとなってしまっていた。そこに登場したのが西友との組み合せである。
●危機的状況脱出に一応のメド〜西友
包括提携の会見の席上、西友の木内政雄社長は「提携することによって、当社のリストラがいろいろな形でやりやすくなる」と極めて核心に触れる言葉を伝えた。同社は有利子負債に加え、子会社であるファイナンス会社の処理が大きく膨れ上がり、財務体質が極端に悪化していた。マイカルやダイエーと並んで総合スーパー(GMS)の“危機的企業リスト”に連ねてしまっていたからだ。しかしウォルマートが予定通りに、今後5年間で約2500億円もの巨費を投ずれば、財務体質の改善に一定のメドはつく。
それでも問題は簡単には片付かない。証券アナリストの次の言葉が来るべき事態を象徴する。「西友とウォルマートの焦点は、ウォルマートによる資本注入で、まず西友は再生する。次にこれを見据えてイオンや国内のGMSがどう動くか」にかかってくる。したがって大きなポイントはウォルマートの戦略自体ではない。ウォルマート、西友、さらにウォルマートと提携関係にあるヨーカ堂の連合軍が、他社・他グループを突き動かして、想像も出来ないような国内GMS大再編がスタートするであろうからだ。
●「あくまでも長期的スタンス」が米ウ社の日本戦略
実はウォルマートはこれまで日本展開にはひどく慎重なスタンスを持ち続けてきた。業界では常套句でもある「先手必勝」には目もくれなかった。(ウォルマートが)西友店舗の看板を付け替えただけで、成功するとはとても考えていないのであろう。現実にフランスのカルフールが千葉・幕張などで苦戦していたり、英ブーツなど相次いで流通外資が撤退していることを目の当たりにしている。ウォルマート自身が日本の隣国・韓国、さらに一足早く進出を果たしたドイツで、必ずしも軌道に乗っていない事実もある。そこへもってきて未曾有の不況にはまり込んだ日本だ。ことさら慎重にならざるを得ない日本では短期リターンを求めるのではなく、長期的な投資スタンスで臨んでいるだろう。
●メーカーや卸にも再編の大波が押し寄せる
西友とウォルマートが提携することによって構築する形(=インフラ)は、再編の呼び水となり、さらに推し進めることは間違いがない。対抗勢力のイオンは一段とグループ化を加速させていく。直接取引の拡大などといった改革がエスカレートしていくのも明らかであろう。国内はこの2つの軸でグループ化が進み、「すぐ近くにまで来ている」と噂される英国テスコなど外資が、この2強にどう絡んでいくか。当然のことながらメーカーや卸も再編が迫られることは不可避だ。ウォルマートの上陸は国内流通を内側から抜本的に変革する可能性を秘めているといえる。
(山科静 市川徹)