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アメリカの罠にはまった日本
私はＱ２の放送で『イラクの査察受け入れも単なる時間稼ぎであり、日本と北朝鮮の首脳会談も茶番劇に過ぎず、それどころか小泉首相はわざわざ罠にはまりにのこのこ出掛けて行く』という趣旨で繰り返しお話を致しました。既にご存知の通り、首脳会談の結果は悲劇的な内容が明らかになり、にもかかわらず腰が引けた小泉首相の対応に、改めて失望感を抱く形になっています。
小泉首相は郵政民営化や特殊法人の改革など、いずれも派手にアドバルーンを上げて大見得を切るものの、いざ結果を見るとことごとく尻すぼみで、相手方に妥協を強いられ、実質的には何のメリットもない形だけの無様な結果をさらけ出してきました。今回の首脳会談も拉致問題の解決なくして正常化はないと事前に叫んでいましたが、終わってみれば解決どころかほとんどの人々が死亡していることが分かり、そのうえ様々な懸案事項は表面的なコメントだけで、実際に公式発表された共同宣言の中には、相手方が明確に非を認める具体的な文言は入りませんでした。共同宣言の中には、小泉首相が最優先課題としていた拉致問題については、何も具体的な謝罪がなく、単に遺憾な問題とだけに留まっています。ところが一方で、日本側は過去の植民地支配に反省と心からのお詫びを明確に表明しています。しかも北朝鮮側が重視していた日本による様々な経済協力資金の供与に関しては、具体的な項目がいくつも並べられました。これでは結果としてわざわざ小泉首相が北朝鮮に出掛けて行き、日本が謝罪をした上で、お詫びに経済協力を約束したのと同じです。
案の定北朝鮮側は、そのような趣旨で今回の報道を一斉に行っています。国家間の友好関係は大切ですが、これでは駆け引きを伴なった外交になりません。ですから私はＱ２の送で小泉は子供の使いだと言い切りました。恐らくブッシュ大統領をはじめ、アメリカ政府の首脳は、日本をあざ笑っている事でしょう。
しかもこれも思った通りイラクが査察を受け入れても、アメリカは無視して攻撃に踏み切ろうとしています。私が言い続けてきたとおりです。アメリカは誰が何を言おうと、イラクを叩き潰す方向に突き進むわけで、そうした戦略をきちんと踏まえた上でなければ、何も理解できません。
この時期に日本がのこのこ北朝鮮に出掛けて行き、一方的に国交正常化という名のもとに謝罪し、経済協力を約束してきたという事が、今の世界の歴史的な潮流から見ていかにバカげたタイミングであるか、小泉首相も外務省も何も分かっていないようです。
アメリカが、誰が何を言おうとイラクを叩き潰して、アフガニスタンと同じように民主化の名目でカイライ政権をおき、実質的に支配する目的はどこにあるのか？それはアメリカの最終的な狙いがイラクではないからです。地図を見てイラクという国の場所をもう一度考えてみて下さい。悪の枢軸と名指ししたイランが右隣にあり、イラクの下には世界最大級の産油国であるサウジアラビアがあるのです。断固としてイラクを叩き潰すのと同じく、アメリカは北朝鮮も悪の枢軸と名指ししました。つまりイラクの次は北朝鮮も叩き潰 す為に、アメリカが行動を起こしていく可能性が極めて大きくなっているのです。
今年１２月に韓国で大統領選挙が行われ、野党の候補が世論調査の支持率通りに勝利した場合は、韓国も従来の友好路線から、北朝鮮に対して強硬な姿勢に大転換していく可能性が極めて大きくなります。そのような状況下で日本が北朝鮮との国交正常化に踏み切り、しかも１兆円規模といわれる経済協力を行うのは、アメリカから見れば重大な裏切り行為以外のなにものでもありません。
つまり、拉致問題解決なくして国交正常化はないと小泉が大見得を切っていたように、それならばほとんどの日本人が既に死亡していることが明らかとなった時点で、交渉を直ちに打ち切り、日本に帰ってくるべきだったのです。それならば小泉首相としても筋を通す事になり、アメリカに対しても拉致問題という日本の固有の問題の解決だけに限定して、話をつけに行ったという名目が立ちます。にもかかわらず、小泉首相は結局腰が引けてしまい、そうした強硬姿勢を示すことが出来ずに、逆に相手側が望む経済協力を具体的に明記して、のこのこ帰ってきました。これでは日本は極東の中で孤立する立場になりかねません。アメリカとの同盟関係を断ち切って独立独歩でいくのであれば、矛盾はしませんが、あくまでも日米同盟関係を大前提とするのであれば、経済協力など一言も宣言に盛り込んではいけなかったのです。その意味で小泉首相の対応は、国賊者と言わざるを得ません。
アメリカが北朝鮮を攻撃するのはイラクの後ですから、まだ時間的な余裕がありますが、今回の件で日本は改めて情勢を正確に把握し、分析し、どのように行動すれば良いのかという欧米の政治家からすれば当り前の能力がゼロであることを内外にさらけ出しました。無能なリーダーの下で、日本人はこれから大いになる苦しみを味わう事になるでしょう。そして今回の件で日本はアメリカに対して借りを作ってしまいました。この借りをどのように返すかは明らかです。それは日本が強大な軍事力を持ち、アメリカと共同歩調を取って中国と対決する道を歩まざるを得なくなるということです。
大多数の人々は全く気付いていないでしょうが、日本は今回の首脳会談で北朝鮮の仕掛けた罠にはまっただけでなく、アメリカの罠にもはまったのです。愚かなピエロの役回といえるでしょう。
http://www.hayami.org/htm/mdm_01.htm
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。