クラシック音楽 一口感想メモ フェリックス・メンデルスゾーン(Felix Mendelssohn Bartholdy, 1809 - 1847 https://classic.wiki.fc2.com/wiki/メンデルスゾーン 端正でバランスの取れており、典型的なロマン派の情緒を持ち、美的感覚の鋭さを見せる優れた作品を多く書いている。しかしながら、作品の持つ世界がコンパクトで品が良すぎる点でやや地味な印象がある。非常に早熟な作曲家の一人である。
交響曲
交響曲第1番 ハ短調 Op.11 MWV.N 13 (1824年) 3.5点 わずか15歳の作品というのが驚きである。精神的な成熟による深みは全然ないのだが、音を楽しく心地よく巨匠的に鳴らすセンスに関するメンデルスゾーンの早熟に驚かされる曲の一つである。歯切れの良い音の使い方で耳を楽しませてくれる。弦楽のための交響曲からの正常進化であり、八重奏曲の高みに至る進歩の過程において、完成に近付いてきている。 交響曲第2番 変ロ長調「賛歌」 Op.52 MWV.N 15(1840年) 3.8点 3楽章のシンフォニアとカンタータの合わさった大作。前半は成熟感が高くて出来がよく、ブラームスの交響曲を連想するほど。ただし分かりやすいメロディーはない。隠れた名曲と言える。後半も非常に充実した立派な作品なのは確かだ。高揚感があって感動的なのだが、かなり長く、ずっと合唱が続く。交響曲として聴くには敷居が高いと思う。 交響曲第3番 イ短調「スコットランド」 Op.56、MWV.N 16(1842年) 4.5点 ずっしりとした重厚な手応えと響きや内容の充実は、イタリア交響曲よりもずっと上。どの楽章も聴きごたえがある本格的な曲。しかし、だからこそメンデルスゾーンの音楽の線の細さによる限界も露わになっている。 交響曲第4番 イ長調「イタリア」 Op.90、MWV.N 17(1833年) 5.0点 1楽章は明るい陽光を浴びるような明快さで楽しくてメロディーは完璧であり、ロマン派屈指の名曲の一つと言えるだろう。その後の2楽章も3楽章も異国らしい情緒があり雰囲気が良くてメロディーも良く、楽章の構成が効果的で楽しい。4楽章がやや軽いのが弱点。親しみやすい交響曲。 交響曲第5番 ニ短調「宗教改革」 Op.107、MWV.N 18(1830年) 3.0点 青年期の特徴をまだ少し残しながらも大人の音楽に成長する過程の曲と思う。メンデルスゾーン本人がこの曲の何を気に入らなかった不明だが、たしかに序奏の壮大を初めとして多くを詰め込んでいながらも、本人のやりたい事がやりきれていない感じがする。重心が定まっていない。実力があるだけに立派には仕上げているが、あとから曲が思い出せない。インパクト不足である。 協奏曲 ピアノ協奏曲第1番 ト短調 Op.25、MWV.O 7(1831年) 2.5点 やや性急に感じられるほどのテキパキとした音楽、かっちりした構築感、これらの若いメンデルスゾーンの特質が全くピアノ協奏曲に合っていない。このために、一部の場面を除いてあまり面白くない曲になっている。ピアノ書法は頑張っていて音数は多いのだが、いまいち心に響かない。ピアノ協奏曲は耽美性や自由さが大事ということに気付かされる作品。 ピアノ協奏曲第2番 ニ短調 Op.40、MWV.O 11(1837年) 2.5点 1番よりはいいが、やっぱりメンデルスゾーンにしてはいい曲ではないと思う。ロマン派大作曲家のピアノ協奏曲の中では駄作の部類だと思う。 ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 Op.64、MWV.O 14(1844年) 5.5点 1楽章は冒頭の魅力から始まり、メロディーやつなぎの部分といい構成と展開といい完璧な完成度。メンデルスゾーンの音楽の線の細さがプラスに働いている。ヴァイオリンの奏でる歌は微かなメランコリーを常に持ちつつも繊細で美しくて魅力的。2楽章の憧れや儚さや人恋しさを歌い続けるヴァイオリンのメロディーの魅力も凄い。3楽章の妖精が踊るような楽しくて愛らしい音楽も非常に完成度が高くて魅力的。全体にほぼ全ての部分が完璧に近い完成度である。 序曲 『夏の夜の夢』序曲 “Ein Sommernachtstraum”Op.21(1826年) 3.8点 とても17歳の作品とは思えない完成度。各主題の良さとそれらの対比の素晴らしさ。妖精や幻獣の創意に満ちた描写の巧さは見事であり、想像を膨らませながら音楽の世界に入り込むことにより、絵巻物のような物語の世界を楽しめる。 トランペット序曲 Op.101(1826年、改訂1833年) 3.3点
なかなか快活で愉しい曲。ただ、それ以上ではないかなという気もする。とはいえ、9分間ずっとひたすら快活で華やかで飽きずに楽しめる曲は案外少ない気がする。シンプルな中に高い作曲技術が込められてはいるのだろう。 序曲「静かな海と楽しい航海」 “Meeresstille und glückliche Fahrt”Op.27(1828年、改訂1832年) 2.8点
大作の序曲であり、序奏の長さを初めとして立派ではあるのだが、分かりやすい華がない。じわじわとした良さしかないため、印象に残らずに終わる。 序曲「フィンガルの洞窟(ヘブリディーズ諸島)」 “Die Fingals-höhle”Op.26(1830年、改訂1832年) 3.3点 ワーグナー的な濃密で現実感のある自然描写が特徴の曲。ブルックナー的なオケのパワーを生かしたダイナミックさもある。ロマン派らしいとても優れた管弦楽曲と頭では分かるが、メロディーが明確さを欠いた曖昧な雰囲気の曲でもあり、自分は個人的にはあまり心を動かされないのが率直な感想である。生のオーケストラで聴いてみたい。 序曲「美しいメルジーネの物語」 “Das Märchen von der schönen Melusine”Op.32(1833年、改訂1835年) 3.0点 並みの作曲家には書けないメンデルスゾーンの作曲技術が駆使されたダイナミックな良作で十分に楽しめる。しかし、他の序曲と比較すると全体を通してインスピレーションがやや弱いため、強くは推せない曲である。 序曲「リュイ・ブラース」 “Ruy Blas”Op.95(1839年) 2.8点 この曲はあまり面白い曲ではなく、一般的な作曲家に近いレベルと思う。主題が地味であまり工夫を感じないし、それを繰り返す中での味付けや他のテーマとの対比もイマイチである。舞台的な明朗な快活さだけが印象に残った。 吹奏楽のための序曲 作品24 3.5点 前半はモーツァルトの傑作緩徐楽章に匹敵するほど、美しいメロディーの叙情的で切ない気分になる名曲で、しんみりする。後半はいつものサバサバした音楽だが、賑やかな感じが愉しい。メンデルスゾーンが吹奏楽を書くとこうなるのか、と興味をそそるが、成功度合いとしては、なかなか良いと思った。 ピアノ曲 ピアノ・ソナタ 第1番 ホ長調 Op.6(1826年) ピアノ・ソナタ 第2番 ト短調 Op.105(1821年) ピアノ・ソナタ 第3番 変ロ長調 Op.106(1827年) 3.3点 1、2楽章は性急な感じがピアノソナタに合っておらず、お仕着せな印象もあり、聴いていて面白くない。3楽章の柔らかくては穏やかな書法の産み出す夢幻的な音楽がかなり美しくて、なかなか感動しながら聴き入った。そのままの流れでジワジワと無言歌を大規模にしたかのように、柔らかさを保って盛り上げていく4楽章もなかなか良い。しかし、2楽章の主題がリプライズされてガッカリするのだが。後半2つの楽章が優れている曲。 厳格な変奏曲 ニ短調 Op.54(1841年) 4.0点
繊細で美しい主題。ロマンチックで美しく、華やかでありながら繊細な変奏の数々。ピアノの書法は見事。変奏曲の醍醐味を味わえる巨匠的な作品である。メンデルスゾーンのピアノ曲の中で一番素晴らしい。 幻想曲 嬰ヘ短調「スコットランド風ソナタ」Op.28(1833年) 3.8点 ロマンチックであるが、古典的な平衡感覚も十分に持っている。しかし、決して小さくまとまった行儀の良さだけではないとともに、繊細な歌心と美的な鋭敏な感覚を充分に発揮した曲である。ベートーヴェンとシューマンの間位に位置するような曲。一種のソナタとも言われるが、やはり雰囲気は幻想的。15分というなかなかの大曲。 ロンド・カプリチオーソ ホ長調 Op.14(1824年) 4.0点
ショパンのように華やかでメロディーが秀逸で耳に残る。上品で軽やかで聴いていて楽しい気分になれる名作。メロディーの対比は秀逸である。メンデルスゾーンのピアノ曲で一番よく演奏される曲であるのも当然の名作。 6つの子供の小品 Op.72(1847年刊) 3.5点 子供のための易しい小品集だが、決して子供だましのような幼い音楽ではなく、大人らしい精神の品位とリリシズムのある良い音楽である。従って、大人のとっても聞き応えがある作品となっている。 アルバムの綴り「無言歌」 ホ短調 Op.117(1837年) 3.5点 ホ短調であり、スマートで物憂さと情熱をはらんだ分かりやすいメロディーという点でヴァイオリン協奏曲に通ずるところがある。雰囲気は良いがすこし通俗的である。それより中間部分の長調のメロディーが、夢のような繊細さと柔らかさを持っていて素晴らしい。 ヴェネツィアの舟歌 イ長調(1837年) 3.5点 まさにタイトル通りの曲だが、ゆらゆらと揺られるような雰囲気、黄昏時の光のあたり方のような描写と詩情は素晴らしく、描写的な性格小品の傑作だと思う。描写力や詩情の素晴らしさはドビュッシーの小品を彷彿とさせる。 2つの小品 2.8点 対照的な2曲の小品。悪くはないがあまり優れた所もない。その意味で地味な作品。1曲目は歌があるし2曲目は高速で派手ではあるが。 無言歌集
第1巻 作品19 出版年代:1832年 3.5点 全6曲。1曲目から美しさにいきなり心を奪われる。それ以外の曲も捨て曲なしであり、全て個性的で素晴らしい。メロディーや雰囲気は素朴で音数は多くないが単純過ぎることはなく、シューベルトにも匹敵するような歌心を内包した音楽となっている。 第2巻 作品30 出版年代:1835年 3.3点 1集と比較すると薄味で、さらっと流して聴いてしまうような曲が多いと感じる。ただし最後の6曲目の憂鬱な重たさのあるメロディーはかなり印象的。 第3巻 作品38 出版年代:1837年 2.8点 悪い曲ではないが、ちょっと地味でパッとしない曲ばかりという印象。これはという名作がない。メンデルスゾーンの才能があればいつでも書けそうな浅い曲ばかり。 第4巻 作品53 出版年代:1841年 3.3点 成熟した骨太さと神経の繊細さを併せ持った曲が並んでいる。個々の曲が特に優れているというわけでないが、それぞれに美しさがあり、通して聞くとそれなりに魅力がある。 第5巻 作品62 出版年代:1844年 3.3点 ただし「春の歌」は4.0点 春の歌は一番有名なだけあって、他の曲と比較して断然魅力的。うららかな春の陽気と、そよ風の心地よさの楽しい気分が絶妙に表現されている。その他の曲は、4集よりやや精神的に落ち着いて成熟感が増した代わりに、美しさの魅力が少し減った印象。 第6巻 作品67 出版年代:1845年 3.3点 それまでの曲集と音楽的に大きく変わらないのだが、雰囲気が違う。この曲集はシューベルトを強く連想した。シンプルな中に、憂いと生への羨望の入った、静謐な世界。晩年らしい曲集となっている。 第7巻 作品85 出版年代:1851年 3.3点 没後4年目に、遺作として出版。4曲目がかなり美しい。歌曲以上の歌心を要求する曲。全体に様々な時代の曲が集められた曲集であり、統一感はあまりない。軽やかな曲も多くあり、それらがやけに心を癒される。 第8巻 作品102 2.5点 第7巻までの曲集と比較して、似ているようでも何かが足りないような曲ばかりが集まっている。特に印象に残った曲もない。やはり、死後に時間が経過した後にボツになった曲を集めた曲集というのが納得のレベルになってしまっている。 弦楽のための交響曲 弦楽のための交響曲 第1番 ハ長調(1821年)MWV.N 1 2.8点 12歳の習作にしては大人びている。少なくとも3、4歳位は上に感じる。音階が単純などまだまだ技術は足りないものの、快活さと音の豊さと耳を惹きつける魅力を既に持っていて驚く。 弦楽のための交響曲 第2番 ニ長調(1821年)MWV.N 2 3.3点
1楽章は快速な音で伴奏を埋めていて楽しい。2楽章はモーツァルトの五重奏40番2楽章のような柔らかさや哀愁が素晴らしい。3楽章はやや平凡。 弦楽のための交響曲 第3番 ホ短調(1821年)MWV.N 3 2.5点 1楽章は初めての短調曲だが全然面白くない。2楽章はモーツァルトのロマンチックなエッセンスを活用した感じで割とよい。3楽章は短調で対位法的に書かれているが、習作レベルという印象が強い。 弦楽のための交響曲 第4番 ハ短調(1821年)MWV.N 4 3.0点 1楽章は対位法的に書かれた短調のソナタであり、かなり成功しているように思える。提示部も展開部も対位法的とは面白い。2楽章も柔らかくて悪くない。3楽章は相変わらず弱点だが成長しているように思える。 弦楽のための交響曲 第5番 変ロ長調(1821年)MWV.N 5 3.0点 1楽章は小刻みの音が使われている快活な曲。2楽章はモーツァルト的な優美さ。3楽章も快活な曲。全体に精神的に一歩成熟した感がある。 弦楽のための交響曲 第6番 変ホ長調(1821年)MWV.N 6 3.3点
1楽章は快活だという程度の感想。2楽章は初めてメヌエットになり、それがセンスが良い曲であるとともに、変奏されていく複雑な構成。弱点だった3楽章のセンスが良くなり、しかも複雑な構成で楽しめる。 弦楽のための交響曲 第7番 ニ短調(1822年)MWV.N 7 2.5点 1楽章は切れ味が鋭いがザクザクしすぎ。2楽章は所々期待させつつ、盛り上がりに欠けて終わる。3楽章もいいのは瞬間的。4楽章は交響曲らしい力感のあるフィナーレになった。全体に約20分とこれまでより大作になったが、それに見合う楽しさがないと思う。 弦楽のための交響曲 第8番 ニ長調(1822年)(同年に管弦楽用に編曲)MWV.N 8 3.0点
交響的な響きの充実感がここまでの曲と違う。そのため精神的により成熟した印象を持つ。2楽章のチェロの活躍ぶりも良い効果を出している。最終楽章のモーツァルトのように活力あるたたみかけるような楽想溢れる曲も良い。 弦楽のための交響曲 第9番 ハ長調「スイス」(1823年)MWV.N 9 3.3点 25分。巨匠的な音楽的充実感と品位の高さがあり、管弦楽曲的な響きの豊さがある。冒頭の悲劇的な開幕に驚くが、本編は明るい。驚くべきメンデルスゾーンの成長が見られており、既にドイツロマン派の巨匠の域に達している。 弦楽のための交響曲 第10番 ロ短調(1823年)(一楽章のみ) MWV.N 10 3.0点 単一楽章。端正で均整の取れた美しさと、年齢の割に大人びた音楽と実力には関心するが、雰囲気的に中庸すぎてあっさりしており、これはというような目を引くものに欠ける。短いので盛り上がらずにあっさり終わる。 弦楽のための交響曲 第11番 ヘ長調/ヘ短調(1823年)MWV.N 11 3.0点 40分近いという弦楽のための交響曲の中でダントツの大作。長さを十分に生かしきっているとは思えないが、長いなりの音楽的内容になっており十分に頑張っている。目を引くような楽章は特にない。 弦楽のための交響曲 第12番 ト短調(1823年)MWV.N 12 3.5点 冒頭はまたしても短調の重厚で悲劇的な開始。2楽章は珍しくロマンチックの極みのような感動系の音楽で驚く。3楽章は短調で豊富な楽想を込めて対位法も活用したものすごい力作で圧倒される。この完成した最後の弦楽のための交響曲は、総決算であるとともに別次元の高みを目指してチャレンジした事は明白であり、試みとしては十分に成功していると言えるだろう。 弦楽のための交響曲 第13番 ハ短調(1823年) MWV.N 14 3.0点
重厚で悲劇的な前奏と対位法的曲な主部の1楽章のみ。自筆譜には番号無し。後のメンデルスゾーンの音楽を考えると、この後半数曲の音楽性はこの時期だけのマイブームだったのだと思う。出来は悪くないが、この一楽章だけでは総合性が無いので、未完成のまま放棄された曲として聴く事になる。 室内楽 メンデルスゾーンは室内楽マスターの一人だ。軽快な作風で音の重さに頼っていないし音感が良く、複数声部を絶妙に絡めることに長けているから室内楽に合っているのだろう。数が多いがどれも質が高く、名作揃いで楽しめる。 ヴァイオリン・ソナタ ヘ長調(1820年) 2.8点 いかにも子供が書いた作品という音の使い方であり、巨匠的ではない。それにも関わらず、思いのほか印象が良い。爽やかだし、様々な工夫をこらして頑張っているのが伝わってきて微笑ましい。センスの良さには驚く。 ヴァイオリン・ソナタ ヘ短調 Op.4(1825年) 3.5点 若書きだが、メンデルスゾーンとヴァイオリン曲の相性の良さを強く感じる佳曲。冒頭から独奏のモノローグが悲しく響くのが独創的。1楽章の線の細さが産み出すもの悲しさは魅力的で、後のヴァイオリン協奏曲の萌芽を感じる。2楽章は端正なつくりのなかに感動的なロマンチックさを存分に発揮させていて、非常に魅力的で驚いた。3楽章はやや凡庸な曲ではあるが、やはりメンデルスゾーンらしい端正さともの悲しさの同居にそれなりの魅力を感じる。 ヴァイオリン・ソナタ ヘ長調(1838年) 3.0点 若書きの作品と比べて、規模の大きさ、ピアノとヴァイオリンの有機的で混然となった関係など、ロマン派の進化に沿った充実した作品となっている。にも関わらず、心への響きも曲の魅力も不足しており、立派だが平凡で面白くない作品と感じる。メロディーの魅力があまりない。 ヴィオラ・ソナタ ハ短調 (1823年) チェロとピアノのための協奏的変奏曲 ニ長調 Op.17(1829年) 3.3点 ベートーヴェンを強く連想する、品の良さと広大さのある正統派の変奏曲。かなり雰囲気はよい。ただ、かっちりとしており、ロマン派にしてはやや手堅すぎて物足りない感はある。 チェロ・ソナタ 第1番 変ロ長調 Op.45(1838年) 2.5点 チェロらしい良さがあまり感じられない。お勧めポイントがあまりない曲。自分で演奏したら充実しているのかもしれないとは感じたが、鑑賞用としてはいまいち。 チェロ・ソナタ 第2番 ニ長調 Op.58(1843年) 3.0点 発想の豊さ、楽想の自然さなど、4つの楽章に作曲者の充実が現れている。1番はいかにも作り物という印象であり、こちらの2番の方がずっと音楽的に良いとは思う。だが、鑑賞していて感動するほどの場面はなかった。 チェロとピアノのための無言歌 ニ長調 Op.109 2.8点 凡庸な曲かなと思う。しかし一方で、チェロをたっぷりと歌わせているため、音数たくさんで作り込んだソナタより安心して聴ける楽しさがある。 クラリネット、バセットホルンとピアノのための演奏会用小品第1番ヘ短調 Op.113 3.5点 3つの楽章に分かれたコンパクトな作品。月光ソナタのような三連符に乗せたロマンティックな甘さが素敵な2楽章が印象的。1楽章は正統派の悲劇的な短調のゴツい曲調のなかにクラリネットとバセットホルンの歌心のある音色の魅力を活かせていて十分に魅力的。3楽章の高揚感のなかにクラリネットとバセットホルンらしい陰もしのばせていて表情豊かなのも楽しい。 クラリネット、バセットホルンとピアノのための演奏会用小品第2番ニ短調 Op.114 3.5点 1楽章は充実感が素晴らしい。2楽章の管楽器の2重奏でモーツァルトにかなり似た雰囲気の歌謡的な旋律をロマン派の情緒も取り入れて存分に歌うのが、かなり魅力的。3楽章のポロネーズ風を取り入れた曲も新鮮で楽しい。もっと高揚感があるとさらに好みだったが。全般にとても愉しめる曲。 ピアノ三重奏曲 ハ短調 (1820年)(ピアノ・ヴァイオリン・ヴィオラ)
ピアノ三重奏曲 第1番 ニ短調 Op.49(1839年) 3.8点 ベートーヴェンばりの本格派で精神的な厳しさのある曲。メンデルスゾーンの普段の柔らかい音楽とは違う顔を見せている。ピアノが名人芸的な難易度の高さであるのが非常に高い効果を上げている。音数が盛り上げる曲想の鋭さと複雑さと密度感は聞き応えを増しているし、単純に華やかでもある。全体に説得的で情熱的で大きな感情の揺れがあり素晴らしい。ベートーヴェンが30年生まれるのが遅かったらこんな曲を書いたかもと思わせる。楽章の出来もレベルが揃っているが4楽章がやや落ちるか。 ピアノ三重奏曲 第2番 ハ短調 Op.66(1845年頃) 3.8点 巨匠的な成熟感と音楽的内容における密度の高さが素晴らしい。三重奏曲における音の少なさがメンデルスゾーンの音楽に合っている。音の厚みに頼らず、端正で無駄がない。短調らしい情熱と、颯爽ときたさわやかさと力感や高揚感、可憐さを伴った美しさが共存している。全ての楽章が力感にあふれて素晴らしい。ピアニスティックで音数が多いのも楽しい。ロマン派屈指のピアノ三重奏曲。ただし、メロディーがあまり印象に残らない。1番ほどの厳しい緊密さがない代わりに、束縛のない自由な広大さがある。柔らかさと充実感が同居している。1楽章がやや地味で、2楽章以降が素晴らしい。 ピアノ四重奏曲 ニ短調 (1822年) ピアノ四重奏曲 第1番 ハ短調 Op.1(1822年) 3.3点 若書きだが音は充実していて驚く。まだおおらかな典型的で古典的な音型のレベルから脱してはいないが、決してつまらない音楽ではないし、陳腐だとは全然感じない。知らないで聴いたらとても13歳の書いた音楽には聴こえない。弦は弱いがピアノパートがかなりよく出来ており、純粋に音楽としてなかなか楽しめる。室内楽らしいピアノパート語法をマスターしている。 ピアノ四重奏曲 第2番 ヘ短調 Op.2(1823年) 3.5点 1番よりさらに充実した作品。少なくともピアノパートは既に例えばシューベルトのピアノ五重奏曲くらいの充実感を実現しているように聴こえる。弦も、凄みを感じるほどではないが、十分によく書けているように聴こえる。大作曲家の作品として相応しい出来であり、習作感がなく、若書きと意識する必要がないくらいである。巨匠的な品格があり、屈性のない素直な初期のロマン派音楽を堪能できる。 ピアノ四重奏曲 第3番 ロ短調 Op.3(1825年) 3.3点 2番から2年後の作品だが、自分はあまり成長を感じない。むしろやや陳腐に聴こえる場面が増えていて、2番より面白くないと思った。最終楽章のゴツさやスケール感はなかなか楽しめるが。室内楽としての基本的な出来の良さはかなりのもので、とても16歳の作品とは思えないのだが。 ピアノ六重奏曲 ニ長調 Op.110(1824年)(ヴァイオリン1、ヴィオラ2、チェロ1、コントラバス1、ピアノ1) 3.0点 ピアノばかり活躍しすぎで、弦が薄いし活躍しない。4人もいる弦奏者が可哀想になる。くつろいで聴く曲なので、特に活躍は必要ではなのかもしれないが。たまに見せるピアノのテクニック以外は聞き応えもあまりない、まったりした曲である。悪くはないが、それなりの曲。 弦楽四重奏曲 変ホ長調 (1823年) 2.5点 これは明らかに習作レベルである。ときどき音の絡ませ方に14歳とは思えないセンスを見せる箇所はあるが、大半はごくシンプルな子供レベルの簡潔な書法ばかりである。聞いていて楽しめるレベルにない。同時期でもここまでシンプルでない曲もあるから、この曲は練習に書いたのではと思う。ただ、4楽章のフーガはなかなか楽しめて天才少年ぶりに驚かされる。 弦楽四重奏曲 第1番 変ホ長調 Op.12(1829年) 3.5点 かなり完成度は高いと感じた。全体に渋いと言ってよいと思うが、柔らかい中に多くを詰め込んでおり、室内楽としての書法はレベルが高いように思う。少し地味さがあるものの、演奏のせいかピアノ三重奏曲のような緊張感はなくマッタリしているものの、自分としては完成度を楽しむ意味ではなかなか感動できた。20歳とは思えないほど精神的にも音楽的にも成熟感がある。 弦楽四重奏曲 第2番 イ短調 Op.13(1827年) 3.5点 面白い曲。暗くてモヤモヤしたつかみどころのなさと自由闊達な動きに最初は驚いた。これが18歳の曲か?と思った。それが後期ベートーヴェンの作品に大きな影響を受けたのだと知って納得した。後期から、ロマン的で、耳が聞こえることによる音感の向上を施すと、このような曲になるかもしれない。曲そのものの絶対的な良さより、とにかく面白さが気に入った。 弦楽四重奏曲 第3番 ニ長調 Op.44-1(1838年) 3.8点 2番までとは全く違う、爽快で気持ちいい曲である。こちらが通常のメンデルスゾーンのイメージである。すっきりして正統派の書法や語法を使った音楽で、聴きやすいが決して表面的なだけでない内容の充実がある。楽しめて、音の愉しみに酔える音楽であり、素晴らしい。ロマン派の弦楽四重奏曲としての出来栄えはかなりのものである。メロディーが魅力的。 弦楽四重奏曲 第4番 ホ短調 Op.44-2(1837年) 3.5点 3楽章が非常に美しくて感動した。1楽章は規模が大きくて聴きごたえがあるが、苦労と努力で書かれているように聴こえてイマイチかと思ったが、後半が素晴らしい。4楽章も躍動感を見事に体現しており、しかもヴァイオリン協奏曲に通じるような繊細な陰影を見せており、音の織物が風になびくかのごとく自然に揺れて、感動させられる。 弦楽四重奏曲 第5番 変ホ長調 Op.44-3(1838年) 3.5点 作品44の他の2曲に比べると前半部分の感動はかなり落ちる。前半は余った材料で書いたのでは、と失礼なことを考えてしまう。一段階地味に聴こえる。しかし3楽章のアダージョは大変美しい。ベートーヴェンの渾身の名作アダージョにも匹敵するほどの素晴らしい。人生の重みと深みを表現し、多くの悲哀とその中にある生きる喜びを感じさせる曲といえよう。この楽章があるから曲全体を高く評価する。4楽章は料理の仕方は悪くないが材料がイマイチ。 弦楽四重奏曲 第6番 ヘ短調 Op.80(1847年) 3.5点 悲劇的で重たい沈んだ気分で書かれている。姉が亡くなった影響というのは明らかだと思われる。もちろん大作曲家らしく楽曲としての必要なバランスは考えられているが、鎮魂の気分と自身の喪失感はかなりの時間を占めている。若い頃の明快さと元気さは消えてしまってパワーが無くなっており、悲しい独奏や不協和音が挟まったりして、痛ましい気分になる。3つの楽章が短調であり、唯一の長調の楽章も暗い場面が多い。とはいえ内容は強靭な発想力に満ちており、充実した密度の高い音楽である。ハマる人は非常に気にいるかもしれない。また、人によってはあるタイミングでこの曲が心に強く響く体験をするかもしれない。 弦楽四重奏のための4つの小品 Op.81 2.8点 悪くはない小品集だが、これといって強い特徴もない。やはり弦楽四重奏の深く広大な世界と比較すると、いかにも重みに欠ける小品集といった感じであり、あっさりと終わる曲が集まっているように感じられる。 弦楽五重奏曲第1番 イ長調 Op.18(1826年) 3.3点 切れ味と整理の良さはあるものの、それだけの単純明快でない複雑な充実感に踏み出している。普通の五重奏曲と比べて、なぜか声部が多いように聴こえて、弦楽四重奏と差が大きいように感じる。そういう充実感はなかなか良い。メロディーや楽想に強い魅力は感じないが、佳作としての価値があると思う。 弦楽五重奏曲第2番 変ロ長調 Op.87(1845年) 3.3点 いまいち焦点が定まっていない感じがする曲。そのせいか気力が衰えたようであり、力強さとか展開の推進における生命感のようなものが、本来のメンデルスゾーンのそれと比較すると少し弱く感じる。ピアノ三重奏曲2番もその兆候はあるもののまだ大丈夫だったが、その後に書かれたこの曲でより強く現れたと解釈している。とはいえ、3楽章は非常にロマンチックで美しい、オーケストラ曲のようなスケール感があってよい。音は分厚い響きであり、弦楽四重奏より声部が多い恩恵を活かせていると思うが、1番ほどではないと思う。 弦楽八重奏曲 変ホ長調 Op.20(1825年) 3.5点 初期の歯切れの良さと爽やかさに中にみせる古典的かつ巨匠的な音感センスの音楽の総決算と思われる曲。弦楽四重奏二つは音は多すぎて全ては聴き取れない。これ以降は徐々に大人の複雑さを表現しはじめる。初期の純粋さと才能のきらめきの魅力における一つの創作活動の頂点である。勢いに乗りながら推進していきながらも歌心あふれるのがよい。楽想の豊かさや密度の濃さや構成力による完成度は16歳とは思えないが、メロディーの魅力はそこそこだと思う。 声楽曲・宗教音楽 オラトリオ 聖パウロ Op.36(1836年) エリヤ Op.70(1846年) https://classic.wiki.fc2.com/wiki/メンデルスゾーン
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