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ストラヴィンスキー バレエ音楽 『火の鳥』
http://www.asyura2.com/18/reki3/msg/822.html
投稿者 中川隆 日時 2020 年 1 月 21 日 11:27:53: 3bF/xW6Ehzs4I koaQ7Jey
 

(回答先: 20世紀の音楽を切り開いたストラヴィンスキー「春の祭典」の衝撃 投稿者 中川隆 日時 2020 年 1 月 20 日 23:25:11)

ストラヴィンスキー バレエ音楽 『火の鳥』



Return of the Firebird. - I. Stravinsky FIREBIRD


Stravinsky - Ballet "L'Oiseau de feu" - Diana Vishneva



ストラヴィンスキー: バレエ組曲《火の鳥》1910年版 ブーレーズ, BBC 1967


Stravinsky - The Firebird Chicago Symphony Orchestra, Pierre Boulez 1993


Stravinsky: The Firebird / Gergiev · Vienna Philarmonic · Salzburg Festival 2000


Stravinsky, L'Oiseau de Feu, Gergiev/Kirov Orchestra


_________



『火の鳥』(仏: L'Oiseau de feu、露: Жар-птица) は、イーゴリ・ストラヴィンスキーが作曲したロシアの民話に基づく1幕2場のバレエ音楽、およびそれに基づくバレエ作品。音楽はアンドレイ・リムスキー=コルサコフ(ニコライ・リムスキー=コルサコフの息子)に献呈された。

オリジナルのバレエ音楽と3種類の組曲があり、オーケストレーションが大幅に異なる。組曲版では一部曲名が異なる部分もある。


セルゲイ・ディアギレフは1910年のシーズン向けの新作として、この題材によるバレエの上演を思いついた。最初ニコライ・チェレプニンが作曲を担当することになっていたが、不明な理由によって手を引いた。『魔法にかけられた王国』作品39(1912年出版)の一部に、この時にチェレプニンが作曲した音楽が含まれる[1]。ついで1909年9月にアナトーリ・リャードフに作曲を依頼したが、これはうまくいかなかった。リャードフの怠け癖によって作品が出来上がらなかったという逸話が有名だが、実際にリャードフがディアギレフの依頼を引き受けたという証拠は残っていない[2]。ディアギレフはほかにグラズノフや、ニコライ・ソコロフにも依頼したかしれない[3]。しかしいずれもうまくいかなかったので、1909年の公演で『レ・シルフィード』の編曲を依頼した若手作曲家のストラヴィンスキーに作曲を依頼し、ミハイル・フォーキンにストラヴィンスキーと相談しながら台本を作成するよう指示した。フォーキンは指示通りストラヴィンスキーと相談しつつ台本を仕上げた。ほどなく並行して作曲していたストラヴィンスキーも脱稿した。依頼を受けてから半年あまりであった。


初演は1910年6月25日にパリ・オペラ座にて、ガブリエル・ピエルネの指揮により行われた。



あらすじ


フォーキンによる『火の鳥』の台本はロシアの2つの民話の組み合わせによる。ひとつは「イワン王子と火の鳥と灰色狼」で、ツァーリの庭に生える黄金のリンゴの木の実を食べに来る火の鳥をイワン王子が捕まえようとする冒険譚、もうひとつは「ひとりでに鳴るグースリ」で、不死身のカスチェイにさらわれた王女のもとを王子が訪れ、王女がカスチェイをだまして魂が卵の中にあることを聞き出す話である。本来は子供向けの話だが、大人の鑑賞にたえるように大幅に手が加えられている[4]。なお、ストラヴィンスキーの師であったニコライ・リムスキー=コルサコフも共通の題材による歌劇『不死身のカシチェイ』を書いている。


イワン王子は、火の鳥を追っているうちに夜になり、カスチェイの魔法の庭に迷いこむ。黄金のリンゴの木のところに火の鳥がいるのを王子は見つけて捕らえる。火の鳥が懇願するので解放するが、そのときに火の鳥の魔法の羽を手に入れる。次に王子は13人の乙女にあい、そのひとりと恋に落ちるが、彼女はカスチェイの魔法によって囚われの身となっていた王女(ツァレヴナ)だった。夜が明けるとともにカスチェイたちが戻ってきて、イワン王子はカスチェイの手下に捕らえられ、魔法で石に変えられようとする。絶体絶命の王子が魔法の羽を振ると、火の鳥が再び現れて、カスチェイの命が卵の中にあることを王子につげる。王子が卵を破壊したためにカスチェイは滅び、石にされた人々は元に戻り、王子と王女は結ばれる[5]。


初演


1910年6月25日のパリ・オペラ座での初演時のスタッフと配役は以下のとおり[6]。


振付:ミハイル・フォーキン
美術:アレクサンドル・ゴロヴィン
衣装:アレクサンドル・ゴロヴィン、レオン・バクスト
火の鳥:タマーラ・カルサヴィナ
イワン王子(ツァレヴィチ):ミハイル・フォーキン
王女(ツァレヴナ):ヴェーラ・フォーキナ
カスチェイ:アレクセイ・ブルガコフ



その他の著名な上演


バレエ・リュスの元ダンサーだったアドルフ・ボルム(英語版)の振付により、1945年にアメリカン・バレエ・シアターによる上演が行われた。音楽は1945年の組曲版による。このときの舞台装置はマルク・シャガールによる豪華なものであり、アリシア・マルコワが火の鳥を踊ったが、成功しなかった[7]。ボルムはハリウッドに住むようになったストラヴィンスキーの友人であり、1940年にすでにハリウッド・ボウルで『火の鳥』(1919年の組曲版)をバレエとして上演するためにストラヴィンスキー本人に指揮を依頼している[8]。


1949年、ニューヨーク・シティ・バレエ団はボルム版のためにシャガールが作った舞台装置を再利用し、ジョージ・バランシンとジェローム・ロビンズの振付によって『火の鳥』を上演した(やはり1945年の組曲版による)。マリア・トールチーフが火の鳥を踊り、大変な成功をおさめた[9][10]。



編成


フルート4(ピッコロ持ち替え 2)、オーボエ3、イングリッシュ・ホルン1、クラリネット3、バス・クラリネット1、ファゴット3(コントラファゴット持ち替え 1)、コントラファゴット、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、チューバ1、ティンパニ、バスドラム、スネアドラム、シンバル、トライアングル、タンバリン、タムタム、グロッケンシュピール、シロフォン、チェレスタ、ピアノ、ハープ3、弦五部(16-16-14-8-6)
バンダ:トランペット3、テナー・ワーグナー・チューバ2、バス・ワーグナー・チューバ2、鐘


演奏時間は約48分。『春の祭典』や『ペトルーシュカ』に比べると1.5倍近い長さである。



構成


1 導入部
2 カスチェイの魔法の庭園
3 イワンに追われた火の鳥の出現
4 火の鳥の踊り
5 イワンに捕らえられた火の鳥
6 火の鳥の嘆願
7 魔法にかけられた13人の王女たちの出現
8 金のリンゴと戯れる王女たち
9 イワン王子の突然の出現
10 王女たちのロンド
11 夜明け
12 魔法のカリヨン、カスチェイの番兵の怪物たちの登場、イワンの捕獲
13 不死の魔王カスチェイの登場
14 カスチェイとイワンの対話
15 王女たちのとりなし
16 火の鳥の出現
17 火の鳥の魔法にかかったカスチェイの手下たちの踊り
18 カスチェイ一党の凶悪な踊り
19 火の鳥の子守歌
20 カスチェイの目覚め
21 カスチェイの死、深い闇
22 カスチェイの城と魔法の消滅、石にされていた騎士たちの復活、大団円



引用曲


この作品では民謡を2曲引用している。「王女たちのロンド」の旋律はウクライナの結婚の音楽「как по садику」(庭のまわりで)から取られている。この曲は師のリムスキー=コルサコフが「ロシアの主題によるシンフォニエッタ」作品31の第2楽章の主題として使用している。終曲の旋律は「У ворот сосна раскачалася」(門の所で松の木が揺れる)から取られている[11]。



組曲(1911年版)


最初の管弦楽組曲は1911年に作曲され、1912年にユルゲンソンから出版された。もとのバレエ曲との違いは少ない。この版は最も演奏の機会が少ない。他の組曲と異なり「カスチェイ一党の凶悪な踊り」で組曲が閉じられる(そのため、演奏者独自の判断により、他の版と合成して「子守歌」「終曲」を付け加えて演奏する指揮者もいる)。
編成は1910年版と基本的には同じだが、バンダが省かれている。


構成


数字は全曲版での該当部分を表す。


1〜4 導入部〜火の鳥の踊り
1 導入部
2 カスチェイの魔法の庭園
3 イワンに追われた火の鳥の出現
4 火の鳥の踊り
6 火の鳥の嘆願
8 金のリンゴと戯れる王女たち
10 王女たちのロンド
18 カスチェイ一党の凶悪な踊り


組曲(1919年版)


手ごろな管弦楽の編成と規模から、実演では最も演奏機会の多い版である。「魔王カスチェイの凶悪な踊り」での有名なトロンボーンのグリッサンドはこのバージョンで導入された。



編成


一般的な二管編成になり、打楽器が減らされている。チェレスタは必須ではなく、「子守歌」のピアノパートに「またはチェレスタ」の注釈が添えられている。
フルート2(ピッコロ持ち替え1)、オーボエ2(イングリッシュ・ホルン持ち替え1)、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、チューバ1、ティンパニ、バスドラム、タンバリン、シンバル、トライアングル、シロフォン、ハープ、ピアノ、チェレスタ、弦五部



構成


数字は全曲版での該当部分を表すが、曲の長さが違う部分もある。

1・2 序奏
3 火の鳥の踊り
4 火の鳥のヴァリアシオン
10 王女たちのロンド(ホロヴォード)
18 魔王カスチェイの凶悪な踊り
19 子守歌
22 終曲


「序奏」から「火の鳥のヴァリアシオン」までは切れ目なく演奏されるが、それ以降の曲もアタッカで演奏する指揮者が多い。「魔王カスチェイの凶悪な踊り」と「子守歌」の間は、切れ目なく演奏する方法と、「魔王カスチェイの凶悪な踊り」で一旦終止させる方法とがあり、どちらの方法もスコアに印刷されている。一般的には切れ目なく演奏する事例が多いが、有名な指揮者ではレナード・バーンスタイン指揮、イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団の演奏(ドイツ・グラモフォン録音)が、一旦終止させる方法をとっている。「子守歌」と「終曲」の間は切れ目なく演奏される。


組曲(1945年版)


指揮者によってはこの版を非常に好むが、全曲版や1919年版組曲に比べると、演奏機会が多いとは言えない。その原因の一つは、ストラヴィンスキーが後年大きく変えた作風が如実に反映されている版となっていることにある。顕著な特徴の一つが、「終曲の賛歌」の最後 Maestoso の部分に見られる。全管弦楽が終曲の主題を繰り返す箇所で、全曲版・1919年版組曲では4分音符の動きで朗々と旋律を奏でるが、この1945年版では「8分音符(または16分音符2つ)+8分休符」という、とぎれとぎれのドライな響きで旋律が奏でられる。組曲全体の後味を大きく変える相違点であり、この版の評価を分ける一つの要因になっていると思われる。1945年版を用いながらも、「終曲の賛歌」のみ1919年版の「終曲」に差し替えて演奏する指揮者もいる。



編成


現在出版されているスコアでは1919年版とほぼ同一である。相違点は、スネアドラムが追加されていることと、イングリッシュ・ホルンのソロをオーボエに置き換えていること、そしてピアノパートの一部の「またはチェレスタ」の注釈がない点だけである。ストラヴィンスキー自身が1959年にNHK交響楽団を指揮してこの版を演奏した際にはチェレスタを加えていた(この時のチェレスタは特別参加の黛敏郎が演奏した)。編成は1919年版とほぼ同一とは言え、オーケストレーションが異なる箇所が散見される。特に「凶悪な踊り」は、1919年版の「魔王カスチェイの凶悪な踊り」に比べると金管楽器や打楽器が分厚くなっている部分が多い。



構成


数字は全曲版での該当部分を表すが、曲の長さが違う部分もある(特に「パントマイムI」「パントマイムII」は極端に短い)。「パ・ド・ドゥ」「スケルツォ」とパントマイム3曲以外は1919年版と同じ部分に該当するが、スコア上の各曲の題名は違っている。

1・2 序奏
3 火の鳥の前奏と踊り
4 ヴァリアシオン(火の鳥)
5 パントマイムI
6 パ・ド・ドゥ(火の鳥とイワン・ツァーレヴィチ)
7 パントマイムII
8 スケルツォ(王女の踊り)
9 パントマイムIII
10 ロンド(ホロヴォード)
18 凶悪な踊り
19 子守歌(火の鳥)
22 終曲の賛歌


「序奏」から「ヴァリアシオン」までは切れ目なく演奏される。「ヴァリアシオン」から「ロンド」までは、切れ目なく演奏する方法と、「パントマイムI」「パントマイムII」「パントマイムIII」を省略し「ヴァリアシオン」「パ・ド・ドゥ」「スケルツォ」「ロンド」と区切りながら演奏する方法とがある。どちらの方法もスコアに印刷されている。 「凶悪な踊り」から「終曲の賛歌」までは、切れ目なく演奏する方法と、1曲ずつ区切って演奏する方法とがあり、どちらの方法もスコアに印刷されている。終曲の金管軍の和音の切れが印象的である。


https://ja.wikipedia.org/wiki/火の鳥_(ストラヴィンスキー)
 

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コメント
1. 中川隆[-14303] koaQ7Jey 2020年1月21日 11:31:29 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-1178] 報告

ストラヴィンスキー好き 2013 JAN 30 by 東 賢太郎
https://sonarmc.com/wordpress/site01/2013/01/30/ストラヴィンスキー好き/


中学の頃からラジオで聴いたある甘いメロディーが気に入っており、あるとき母に歌ってこれ何?と聞きました。「火の鳥かしら・・・」ということで、すぐ新宿のコタニへ行き、「火の鳥を下さい」と言いました。ストラヴィンスキーの名前も知らなかったのです。そこで店員さんが出してきたのがこれ(写真)です。後に知ったのですが、僕の気に入っていたそのメロディーはケテルビーの「ペルシャの市場にて」でした。でもドレミーレドシ・・・は火の鳥の「ホロヴォード(王女たちのロンド)」に確かに似ている。それにしても、母はストラヴィンスキーなんか知らなかったはずなのに、なんで火の鳥の名前がでてきたんだろう・・・。

その時は大変でした。このレコードを大事に抱きかかえるようにして新宿から家に帰り、わくわくして針を落としました。すると、甘いメロディーどころか、低音で弦楽器がゴワゴワと妙な音をたて、バイオリンがヒューヒューと人魂の飛ぶみたいな不気味な騒音を出すではないですか。「なんじゃこりゃ」といきなり仰天。その後も奇天烈な音がさく裂しまくり、今か今かと待っていた「あのメロディー」はついに登場しないまま僕のレコードは決然と終わっていったのでした。この失望感といったらありません。大枚2000円の小遣いが藻屑と消えた瞬間でした。これが何をかくそう僕のストラヴィンスキー初体験なのです。

Stravinsky "The Firebird" (Original 1910 Version) - Ernest Ansermet (1968)



母に文句はいっさい言いませんでした。きっと名曲に違いない。持ち前の前向き思考でそう信じ、そのレコードを何度もかけてみました。そして、このエルネスト・アンセルメの最後の録音は結局僕の人生の宝物になってしまったのです。「組曲より全曲版がいいよ」と教えてくれたコタニの店員さん。少年はドレミーレドシ・・・だけ買えればいいんだけどなあと意味がぜんぜん分かってなかったんですが、そう、まさに全曲版だったからなのです。高校に入って、小遣いはたいて1万2千円もした大型スコアを買うほど火の鳥に魅せられてしまったのは。ちなみにケテルビーはつまらない曲と後にわかり、いまだに持ってもいません。母の圧勝でした。
                                    「春の祭典」との出会いはブログに書きました。それがあったのも、まずわかりやすい「火の鳥」で耳がトレーニングされていたからです。そして残るはもちろん「ペトルーシュカ」です(右の写真)。


Stravinsky - Petrushka, Boulez / New York Philharmonic 1975




このレコード、曲の出だしの5秒?で好きになりました。一目(一聴)惚れ最短記録です。わー、ストラヴィンスキーってマジすっげえ、チョーめっちゃカッコイーじゃん!今どきなら大声でこういう歓声をあげたことでしょう。

火の鳥とも春の祭典とも違うこの乾いた色気とゾクゾク感。宝石箱をぶちまけたような、まばゆいばかりにキラキラする光彩に頭がふらつきました。クラシックの魔の道に引きずりこまれた瞬間でした。この一撃があまりに強烈だったために、当時の僕はモーツァルトやベートーベンを聴いても退屈で仕方なく、王道に入るのにずいぶん時間を要することになってしまったのです。

https://sonarmc.com/wordpress/site01/2013/01/30/ストラヴィンスキー好き/
2. 中川隆[-14302] koaQ7Jey 2020年1月21日 11:39:23 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-1177] 報告
2011年2月18日
〜名曲シリーズ〜 ストラヴィンスキー バレエ音楽「火の鳥」 愛聴盤
http://harucla.cocolog-nifty.com/blog/2011/02/post-eff5.html


今回の名曲シリーズは、 ストラヴィンスキーのバレエ音楽「火の鳥」です。クラシック音楽ファンで、このタイトルを聴いて「ああ、手塚治虫のマンガね。」などという方はおられないでしょうが、20世紀初頭に書かれたバレエ音楽です。当時のパリで一大旋風を巻き起こしていたディアギレフのロシア・バレエ団(いわゆるバレエ・リュス)の依頼によって作曲をしました。新進作曲家のストラヴィンスキーに仕事を頼むあたりは、ディアギレフの音楽への造詣は相当深かったのでしょうね。ですが、余り知られてはいませんが、ディアギレフはこのバレエの為の音楽を先にリャードフに依頼していました。リャードフが一向に着手する気配が見られなかったので、しびれを切らせてストラヴィンスキーに依頼したのです。時間は差し迫っていましたが、ストラヴィンスキーは短期間で作曲に取り組み、無事完成させました。初演されたパリのオペラ座での公演は大成功となりました。一躍名の売れたストラヴィンスキーは、「ペトルーシュカ」「春の祭典」の三大バレエを作曲するチャンスを得て大変に有名となり、とうとうココ・シャネルと恋に落ちて不倫にまで至ることになります(というもっぱらの話です)。

もしもリャードフが作曲を行なっていたら、 ストラヴィンスキーの「火の鳥」は世に存在しませんでした。そうなれば「ペトルーシュカ」「春の祭典」」も存在したかどうか分かりません。運命の悪戯というのは実に面白いものです。

「火の鳥」はロシアの民族童話に基づいて台本が書かれています。登場人物は、自分の庭園に入ってきた乙女達を魔法の力で捕えてしまい、男達を石に変えてしまう魔王カスチェイ、妖精の火の鳥、勇敢な王子イワン、カスチェイに捕えられた王女13人です。ストーリーは簡単で、火の鳥を捕えた王子が、逃がしてやる代りに魔法の羽をもらい、その後自分が魔王の庭園に入って捕えられそうになった時に魔法の羽の力でカスチェイを倒し、捕えられていた乙女達を全員解き放してやるという話です。めでたしめでたし・・・だけど、石にされた男たちは本当に元に戻してもらったのかしらん?今度は王子が乙女たちを傍に囲うなんてことは無かったのでしょうね。男はスケベだから信用できん!(苦笑)

音楽については、斬新な書法を用いながらも、ロシアの民謡を基にしたような旋律が出てきたり、夢のように美しく繊細であったり、激しい部分があったりと飽きさせません。とても分かりやすい音楽だと思います。初演の際のオリジナル版が通称「1910年原典版」です。4管編成の完全版で演奏には40分以上かかりますので、家で聴くには少々長く感じるかもしれませんが、これはやはり必聴です。のちにストラヴィンスキーが自分でコンサート用に編集した2管編成の組曲「1919年版」は7曲の抜粋で、原典版のおよそ半分の長さです。「王女達のロンド」、「カスチェイの凶暴な踊り」などの聴きどころがてっとり早く聴けて便利なのですが、短過ぎて少々物足りなく感じられます。同じ組曲版でも「1945年版」は、編成は2管編成で12曲の抜粋ですので、原典版では長過ぎる、1919年版では短過ぎるという人には丁度良いと思います。

もちろんストラヴィンスキーの最高傑作と言えば「春の祭典」ですが、僕はこの「火の鳥」をとても好んでいます。

僕は大学4年の時に母校のオーケストラで1919年組曲版を演奏したことがあります。就活中だったために余り練習が出来なかったので、本番では難しい箇所はほとんど弾けなかった記憶が有ります。バレエ音楽といえども一切の手抜きをしなかったからこそ、ストラヴィンスキーは音楽家として大成功したのでしょう。
この作品を実際にバレエとして観たのは、3年くらい前に東京バレエ団のモーリス・ベジャール追悼公演で観た一度だけです。その時の音楽は録音だったので、今度は生のオーケストラ付きでぜひ観たいと思っています。でも滅多にやらないのですよね。「春の祭典」や「ペトルーシュカ」と一緒にもっと公演が行われれば良いと思います。


それでは愛聴盤をご紹介します。

<1910年原典版>


ピエール・ブーレーズ指揮ニューヨーク・フィル(1975年録音/SONY盤) 
現代作曲家ブーレーズが指揮活動を盛んに行っていた頃の演奏です。当時の「運命」「幻想交響曲」それにストラヴィンスキーの三大バレエなど、毎回リリースされる度に話題となりました。CBSの録音の分離の良さが演奏を余計に引き立てていたと思います。個々の楽器の動きがとても明確で聴き易いです。後年グラモフォンに再録音を行いますが、この頃の演奏と録音のほうがブーレーズとしては個性がはっきりと際立っていると思います。


コリン・デイヴィス指揮アムステルダム・コンセルトへボウ管(1978年録音/フィリップス盤) 
ブログお友達のオペラ・ファンさんご推薦の演奏です。ややもすると冷たい管弦楽の響きになるストラヴィンスキーですが、その点ACOは音に人肌のぬくもりを感じさせます。そのオーケストラの響きの美しさは正に極上です。アンサンブルも優秀なのですが、「カスチェイの凶暴な踊り」あたりは、ブーレーズやゲルギエフたちの切れの良さと迫力には一歩譲る印象です。

ワレリー・ゲルギエフ指揮キーロフ管(1995年録音/フィリップス盤) 
非常に繊細で美しい演奏です。弱音部の音をとても抑えるので、うっかりすると聴き逃しかねませんが、ある程度ボリュームを上げて真剣に耳を傾けると、素晴らしさが良く分かります。あの美しい「王女のロンド」は震えるほどの美しさですし、「カスチェイの凶暴な踊り」は凄みが有りますし、「終曲」での音のつながりと高揚感も見事です。それにちょっとした節回しに、ロシアの作曲家の手による作品であることを思い出させてくれます。やはり現在では一番の愛聴盤です。

マイケル・ティルソン・トーマス指揮サンフランシスコ響(1998年録音/RCA盤) 
トーマスはロシア系の血筋を持ちます。また若いころにストラヴィンスキーと親交が有りましたので曲への思い入れは強いと思います。各楽器のソロもアンサンブルも優れていますが、肌触りは温かく、クールな印象は受けません。当然アメリカのオケですので音そのものや民謡的なメロディの歌い回しにロシア臭さは感じられません。また「カスチェイの凶暴な踊り」の迫力がいま一つなのは残念です。録音は優秀で分離の良さが見事です。

<組曲1919年版>


レナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィル(1957年録音/SONY盤) 
バーンスタインの「火の鳥」は1974年のニューヨーク・フィルの来日公演で聴きましたので、とても思い出深いです。あの広いNHKホールでしたが、3階席までずしりとした音が響き渡りました。このCDは初期のステレオ録音というのが信じられないほどに音が優秀です。演奏も非常に新鮮です。ただ「カスチェイの凶暴な踊り」は非常に躍動的ですが、健康的なので凄みに欠ける印象も有ります。「ウエストサイド」みたい?そうかもしれません。この演奏は1919年版では古典的な名盤と言えると思います。

<組曲1945年版>

リッカルド・シャイー指揮(1995年録音/DECCA盤) 
1945年版の演奏は珍しいですが、シャイーが素晴らしい演奏を聴かせてくれます。あのいぶし銀のコンセルトへボウから、非常に透明感の有る美しい音を引き出しています。機能的にも極めて優秀なのですが、それでいて音楽の温かさを失うことがありません。組曲でも1919年盤では物足りないと思う時に取り出すには最高だと思います。

コメント

私は組曲形式より、やはりオリジナル版で聴くのが大好きです。
残念ながら現在のお気に入りはコリン・デイヴィス指揮ロイヤル・コンセルトへボウ管弦楽団の1978年のPHILIPSでの録音。私はこの作品の最高の演奏と思っていたのですが・・・

またオリジナル版に目覚めさせてくれたのは小澤征爾指揮パリ管弦楽団との1970年代のEMI盤。

これらを喜んで聴いているのは私しかいないのかな?
ゲルギエフ盤はまだ聴いていません。いろいろと聴いてみるつもりです。
投稿: オペラファン | 2011年2月18日 (金) 01時58分


春の祭典は大好きなのに、火の鳥は色々CDを買いましたが、どのCDも前半が退屈してしまいます。読響の実演も聞きに行ったのですが変わりませんでした。
投稿: わんわん2号 | 2011年2月18日 (金) 09時59分

追伸
私は手塚治虫の「火の鳥」は全巻読んで深い感銘を受けた者ですが、この作品は実際に作者が「火の鳥」のバレエのステージを見て、「火の鳥」を狂言回しにして生命の生と死を見つめた大作を書こうと思いついたと何かの本で読んだことがあります。その為か、どうしても私は「春の祭典」より「火の鳥」(あくまでもオリジナル版)が好きです。

さて昨晩の私のコメントは、かなり酔っての支離滅裂なコメントでお恥ずかしい限りです。

ただ私のお気に入りのC・デイヴィス盤はロイヤル・コンセルトへボウの緻密ながら底力のある見事な演奏、そして録音当時のPHILIPSのたいへん優れたアナログ録音であると言う事を補足しておきます。
投稿: オペラファン | 2011年2月18日 (金) 11時08分

バーンスタインもデイヴィスも懐かしい録音です、学生時代には買うお金がなかったので友人のディスクをカセットテープにダビングしてもらったものです。
三大バレエの中でいちばん叙情的で、親しみやすい旋律が多い、チャイコフスキーまでの古典的なバレエに近いスタイルを感じます。

だいたいオペラやバレエというのは筋書きを言葉で書くとたわいないものが多いので、実際に舞台を見て聴いて、どっぷり浸ってなんぼ、というのが楽しみ方なのでしょうね。その意味では、バレエライブで見たことがないので残念です。
スラブ的ではなく中央アジア(北アジア)的な旋律が多いのが、わたしの趣味に合っています。
投稿: かげっち | 2011年2月18日 (金) 12時17分

ハルくん、こんにちわ
ディアギレフはロシア・バレエ団の創設者として有名ですが、法科大学に在学中はリムスキー・コルサコフに作曲を学び、また、オペラ上演に通っていたそうですので、音楽の造詣は深かったようですね。また、絵画にも造詣が深かったようですので、いわゆる芸術一般をよく知っており、それがバレエ団結成に生かされたのだと思います。このため、音楽に関しては、先物買いみたいなこともでき、それがストラビンスキーを産んだのだと思っています。ストラビンスキーも三大バレエの頃が最も良くて、その前の「花火」も、それ以降の作品も滅多に演奏されない曲ばかりだと思います。

それにしても、バレエの場合、昔の公演(演出)はすぐに忘れ去られ、音楽だけが残りますね。この点、まだ、歌劇の方が実況録音として残るだけ、良いような気がしています。

ストラビンスキー自作自演の録音ではコロンビア交響楽団を指揮したものが有名ですが、あれは、弟子?のクラフトが指揮したとの噂もありますので、まともに指揮した録音ではNHK交響楽団を指揮した録画のみでしょうか。
なお、この曲で、私が持っている録音はモントゥー指揮のもののみです。
投稿: matsumo | 2011年2月18日 (金) 17時38分

オペラファンさん、こんばんは。
小澤征爾/パリ管は僕も昔聴きました。懐かしいですね。記憶では少々綺麗すぎて荒々しさに欠ける印象でしたが、久しぶりに聴いてみたくなりました。
デイヴィスは「春の祭典」がとても気に入っていますが、「火の鳥」は未聴です。是非一度聴いてみたいです。
投稿: ハルくん | 2011年2月19日 (土) 00時37分

わんわん2号さん、コメント頂きましてどうもありがとうございました。
確かに「火の鳥」の前半は幾らか充実度に欠ける気がしないでもありません。でも通して聴き終えると、やはり良い曲だなぁと思います。「春の祭典」とは性格が違うので、それぞれの曲の良さを楽しんでいます。
どうぞまたお気軽にコメントください。今後ともよろしくお願いします。
投稿: ハルくん | 2011年2月19日 (土) 00時45分

かげっちさん、こんばんは。
三大バレエの中で比較すれば革新性は乏しいと思います。けれどもあの時代の作品としては、やはり書法は非常に革新的です。それに純粋に音楽的に魅力が有りますよね。

バレエもオペラと同じで、生の舞台は本当に素晴らしいですよ。是非とも一度ご体験なさることをお勧めします。
投稿: ハルくん | 2011年2月19日 (土) 00時51分

matsumoさん、こんばんは。
ディアギレフが音楽を勉強していたことは知りませんでした。なるほど造詣が深くて当然ですね。「春の祭典」でパリに騒動を巻き起こしたのも確信犯だったそうですし、それだけ芸術に真摯だったわけですね。

ストラヴィンスキー自身の演奏は昔LP盤時代に聴いたことがありますが、なんとも生ぬるい印象でした。それはモントゥー/パリ音楽院についても同じような印象を受けました。これはやはり時代のせいなのでしょうね。
投稿: ハルくん | 2011年2月19日 (土) 01時01分

こんにちはハルさま。ストラヴィンスキー『火の鳥』大好きな曲です。ですが、この記事から外れたコメントで申し訳ないのですが ’70年代にブルースロックとか言われたと記憶してるのですが『マハヴィシュヌ・オーケストラ』というグループのアルバムに『火の鳥』ってありましたよね。ロックに詳しいハルさまならご存知ではと思いお聞きしました。クラスメイトの男子が「これ、イイゼー!」って言ってたんだったかな?その時1回聞いたきりなんですけど、結構インパクトあったなぁ。曲もよく覚えていないし、グループ名も曖昧なんですけど。知っていらしたら教えてください。アルバム入手しようかしらん…
投稿: From Seiko | 2011年2月19日 (土) 12時32分

Seikoさん、こんにちは。
マハヴィシュヌ・オーケストラのリーダーのジョン・マクラグリンは超絶テクのギタリストでギターフリークのカリスマでしたね。カルロス・サンタナもこの人とセッションをしてからテクが上がったというもっぱらの話です。
残念ながら「火の鳥」のアルバムは持っていませんが、バリバリのフュージョンでストラヴィンスキーとは何ら関係無かったように記憶しています。この辺りの話は恐らくHABABIさんかsource manさんが詳しいと思うのですが。

ストラヴィンスキーの「火の鳥」の終曲をオープニングに使用したのがイエスのライブ「Yessongs」でした。キース・エマーソンと並ぶクラオタのリック・ウェイクマンのアイディアだと思います。但しバンド演奏では無くテープ演奏なのがショボイなぁ。エマーソンならバンドで演奏しただろうに。
なんてことを書いていたら急にイエスが聴きたくなって今流しています。Oh,Jesus!
投稿: ハルくん | 2011年2月19日 (土) 12時57分

ハルくんさん、こんばんは
お呼びが掛かったようなので、出て来ました。
マハヴィシュヌ・オーケストラのLPは何枚か持っていますが、あまり聴いていませんでした。「火の鳥」(但し、標記はFirebird ではなくBirds of Fire)も持っていたので、先ほど聴いてみましたが、ストラヴィンスキーのものを連想するところはありませんでした(個別のフレーズがどうだったのかまでは、私には分かりませんが)。このLPは1973年頃の発売で、ネットで調べたところ、CDが今も販売されているようです。

ストラヴィンスキーの「火の鳥」は、最近ではラインスドルフ指揮ボストン交響楽団の演奏録音(組曲)で聴いています。
それから、昨夜は店で焼き鳥を食べました。これも火の鳥みたいなものです(すみません、くだらないことを言って)。HABABI
投稿: HABABI | 2011年2月20日 (日) 00時33分

HABABIさん、こんにちは。
さっそくのご確認ありがとうございます!
マハヴィシュヌ・オーケストラの「火の鳥」はそのように記憶はしていたのですが、なにせディスクを持っていませんでしたので。一度購入しようかなあと思いつつそのままでした。

ラインスドルフの演奏録音とは珍しいですね。興味があります。
焼き鳥いいですね!いや確かにこれも火の鳥です。
投稿: ハルくん | 2011年2月20日 (日) 09時21分

HABABI様。情報提供ありがとうございます。
ハルさまの一声で、呼ばれて飛び出たジャジャジャジャーン!ハクション大魔王の如く、すぐさま登場して下さるお仲間、素晴らし〜!ですねぇ。おー!じーざす。
検索したらAmazonに出ておりましたよ。でも先ずは中古CD探しに行ってきま〜す。
ついでに焼き鳥と滅多に買わない缶チューハイを求めようかな。
投稿: From Seiko | 2011年2月20日 (日) 14時07分

ハクション大魔王の如く、すぐさま登場して下さったHABABIさん。そう言いながら同じように登場して下さるSeikoさんもさすがです。
今夜は焼き鳥と缶チューハイでストラヴィンスキーですね!余りお飲み過ぎになりませぬように!(笑)
投稿: ハルくん | 2011年2月20日 (日) 17時02分

先週友人がスイスの作曲から聴いた話・・・実は春の祭典の冒頭はクラリネットのためdに書いていたのだが、初演に向けた練習の直前にふざけてファゴットが真似して吹いていたのを作曲者が聞いて、それ面白い、ファゴットにしよう、と急遽変更したとのこと。

ストラヴィンスキーってけっこういい加減というか大らかというか何というか(笑)こんどから肩の力をぬいて聴かなきゃいけないと思いました。
投稿: かげっち | 2011年2月20日 (日) 19時48分

かげっちさん、こんばんは。
やはり、あれだけ斬新な音楽を生み出したわけですから、新しいアイディアに対する適応力が有ったのでしょう。いい加減というよりは柔軟性だと思いますよ。当時としては物議をかもし出した音楽も現在では定番名曲ですものね。気楽に楽しみたいですね。
投稿: ハルくん | 2011年2月20日 (日) 21時44分

毎日暑いですね。暑い日に火の話もなんですが、火の鳥というとリャードフを思い出します。残念ながらリャードフは過小評価されていますが、私は大ファンなのです。ピアノ曲の水準は非常に高く、後世に残るべき作品も多いです。最近は全集の試みもあるので、ようやく真価が認められてきたのかなあと思ってます。劇場型の音楽はリャードフには向かないので委嘱するほうが見当違いですね。ストラヴィンスキーとはおそらく性格も正反対だったのではないかと思います。
投稿: NY | 2012年7月11日 (水) 05時05分

NYさん、こんばんは。
リャードフのファンでいらしたのですね。
実は自分はこれまでリャードフを聴いた覚えがありません。ピアノ曲が良いとのことですが、管弦楽作品なども色々と書いているようですね。
聴いてみたくなりましたが、一番のお勧めと言うと何の曲でしょう?
投稿: ハルくん | 2012年7月11日 (水) 23時07分
私はこれが好きですよ。たぶん一番有名だと思います。

リャードフ 「三つの小品」 作品11からロ短調
http://www.youtube.com/watch?v=eKTb07oYO74&feature=related

ポエジーですね。泣けますね。
その他、上記のCDに入っているのですが、舟歌、ルーマニア民謡変奏曲、グリンカ変奏曲等は演奏効果も高いので、これからのピアニストにも注目してほしいなと思ってます。
投稿: NY | 2012年7月12日 (木) 00時05分

NYさん、こんばんは。
ご紹介ありがとうございます。
確かに、これは一遍の詩ですね。心に染み入ってくるようです。
他の曲も幾つか聴いてみましたが、管弦楽曲にもロシアの情緒を感じさせる良いものが有りそうですね。
ピアノ曲以外にも興味が湧いてきました。じっくりと聴いてみたいです。
どうもありがとうございました。
投稿: ハルくん | 2012年7月12日 (木) 21時09分


マイナー曲にお付き合い頂いてありがとうございます。
ロシア音楽のほの暗さは日本人好みだと思います。そこぬけに明るい作風の人はあまりいない。いつもなにか重いものを感じます。管弦楽にはなぜか魔女ものが多いのですね。

リャードフの後輩にあたるスクリャービンも正真正銘の芸術家体質だったように思われます。いい意味で暗いです。二人とも天才肌で、あんまり勤勉でなさそうなところがいいです。そういう意味ではストラヴィンスキーは系譜的にちょっと特異な感じがしますね。
投稿: NY | 2012年7月14日 (土) 05時25分


NYさん、こんにちは。
スクリャービンは昔から演奏される機会が多かったですね。
日本人には暗さや哀愁を感じさせるロシア民謡や音楽は、受け入れやすいのでしょうね。(国家としては付き合いづらいですが)

19世紀から20世紀にかけて、音楽家だけでなく、美術分野でもシャガールやカンディンスキーなどの色々と異なるタイプの才人が多数現れました。凄い国(旧ソヴィエト連邦地域として)だったと思います。
投稿: ハルくん | 2012年7月14日 (土) 10時37分


カンディンスキーですか。抽象画ですね。だいぶ前のことですが、作曲家の原博さんの本を読んで非常に興味深く感じたことがあります。

原さんはもう亡くなられましたが、現代音楽と現代美術の泰斗とされるシェーンベルクとカンディンスキーをほとんど評価していなかった方ですね。彼らの活動は天才の業というよりはむしろ意志の力であると指摘されています。多くの人が新しい技法に追随した時代に勇気ある発言ですね。異論もあることでしょうが、原さんの論旨は明快で、文章が非常に上手なので説得力がありました。原さんは決して古典に帰れと言っているわけではなく、あんまり技法のための技法が進化してもダメだよと言いたかったのだと思います。

私も残念ながら現代音楽は一部を除いてほとんど理解しておりませんし、無調になると果たしてそれでいいのかと思ってしまう一人です。アドルノら、シェーンベルク擁護派の論文も読んでみましたが、現代音楽の理解はやはり意志の問題であることがなんとなくわかりかけてきました。理解しようと意志して努力すればわかるものはわかるという感じですかね。
投稿: NY | 2012年7月22日 (日) 00時37分


NYさん、こんにちは。
原博さんの本は読んでいませんが、「あんまり技法のための技法が進化してもダメだよ」という考えには共感できますね。
感動できない現代音楽と、感動できる古典以前の音楽とどちらが好きかと言われれば後者です。

但し、「技法のための技法」を聴いて楽しめる方はそれで良いのだとも思います。価値観の違いですからね。

シェーンベルクは嫌いと言うことでも無いのですが、これまで「意志」を持って理解しようと思ったことはありません。
カンディンスキーのほうが、なんとなく良さが分かるような気はします。同時代のパウル・クレーのほうは更にですね。
投稿: ハルくん | 2012年7月22日 (日) 10時32分


このところバレエのDVD観て勉強しております。動画にあったゲルギエフ指揮マリインスキー劇場バレエの火の鳥&春の祭典のDVD買いましたよ。春祭は衣裳がダサくて期待外れでしたが、火の鳥はエカテリーナ・コンダウーロワの魅力もあって楽しめました。コンダウーロワは今度マリインスキーの来日でオデットやりますけどハル様お薦めですよ。ロパートキナとヴシニョーワが格上みたいですが、美貌ならソーモワかコンダウーロワですね、ザハロワには及びませんけど(笑)。
ハル様お薦めのセクシーなライプチッヒ・バレエの春の祭典、懐に余裕があれば早く観たいですね。
投稿: シーバード | 2012年7月26日 (木) 19時59分


シーバードさん、こんばんは。
ゲルギエフ/マリインスキーのDVDは残念ながらまだ観ていません。いずれとは思っていますが。

マリインスキーの「白鳥」は大好きなので、今秋の来日公演は見に行く予定です。実は、そのコンダウーロワがオデットを演じる日なのです。美系に弱い邪道バレエファンなものでして・・・(笑)
投稿: ハルくん | 2012年7月26日 (木) 21時59分

ああ羨ましいな。
小生は地方在住なので、残念ながら平日は無理ですね。年に何度か上京しますけど。

ハル様はクラシック音楽以上に女性対する審美眼が優れていますよ。それにしても色っぽくてアダルトなオデットだろうな(笑)。
投稿: シーバード | 2012年7月27日 (金) 13時34分


リャードフに名前が似てますけど、リャプノフも魅力ある作曲家だと思います。お兄さんはリャプノフ(リアプノフ)安定性で有名な数学者で、微分方程式の教科書に載るほど偉い人です。私は理科系なのでそういうところも歴史的に興味深いと思ってます。後期ロマンの流れをくんだピアノ曲は書法が緻密で、しかも恐ろしく難しい曲が多い。並みのピアニストでは手が出ないでしょう。これからまだ評価が上がる作曲家だと思います。最近はミャスコフスキーにも興味があるのですが、意外に作品が多くてまだよくわからないです。残念ながらじっくり聴く暇がないですね。もっと前から研究しておくべきだったなあと思います。
投稿: NY | 2012年7月28日 (土) 08時35分


シーバードさん、こんにちは。
上京されるときに、良い公演をご覧になられる機会が有ると良いですね。
秋のマリインスキー、コンダウーロワのオデットについては、その時に詳しくレポートしたいと思います。
投稿: ハルくん | 2012年7月28日 (土) 10時48分

NYさん、こんにちは。
リャプノフという人は名前も知りませんでした。文系の自分は「有名」というお兄さんのほうも知らないです。

ロシアの作曲家、演奏家には一般には知られていない凄い人が相当居るのでしょうね。

色々と聴いてみたい気はしますが、じっくりと聴く時間は中々とれなさそうです。
でも、ご紹介を頂きまして、どうもありがとうございました。
投稿: ハルくん | 2012年7月28日 (土) 10時59分


春の祭典や火の鳥を聴いたのは云十年前ですけど、指揮者やオケは忘れてしまいました。ドラティだったかなあ。LPの時代で1300円だったような。レコードは昔から値段があまり変わらなかった製品だったのに、あるときを境に安くなったりCDにとって替わられたりして、時代の栄枯盛衰を感じます。

ストラヴィンスキーの作品には神話的なものもあれば、子供が聴いてもよくわからんというのもありますね。兵士の物語なんかは現代劇として今上演しても面白いと思いますが、なんとなく暗いので好き嫌いはあるでしょうね。
投稿: NY | 2012年7月29日 (日) 09時15分


NYさん、こんにちは。
昔のLP時代の廉価盤と言うと、録音の古いものや無名のものが多かったですね。
現在の廉価盤は古いといっても1970〜80年代の名演奏家のものが大半ですので、どうかすると最新盤よりも優れているくらいです。価格と内容が比例しないというのは、喜んで良いのでしょうかねぇ。

ストラヴィンスキーの傑作と言うと、やはり三大バレエなのでしょうね。一般的にも個人的にも、そうだと思います。

でも後期の作品にも熱烈なファンが居るでしょうし、自分は余り聴き込んでいないので、時間があればじっくり聴いてみたいです。
投稿: ハルくん | 2012年7月29日 (日) 13時01分

ハルくん様
アンセルメ&ニュー・フィルハーモニア管弦楽団は、如何でしょうか。
自身がレコードに興味を持ち始めた頃、KINGレコードからロンドン・デラックス・アルバムと言う¥2300の価格で、SLA-1014と言うリハ突きの盤で、当時住んでいたN市の星電社レコード・コーナーに、鎮座ましまして居りました。襷に、挑戦する事三度、ついに頂点を極めた楽聖アンセルメ生涯最後の録音!と言う、物々しいキャッチ・コピーがあった事まで、覚えております(笑)。

で、KICC-9277と言う限定千円CDで、手元にあるわけですがやはりブーレーズ&NYフィル、ドホナーニ&VPOと比べると、リズムの切れ味やダイナミックスの幅広さに於いて、やはり及ばないなぁ…と言う印象でございます。データを拝見すると、1968年11月収録でお亡くなりになる、3カ月前のセッションです。この事実を知る我々後世の者は、勝手な色眼鏡で見て正しい評価を成し得ていないかも、分かりませんが。ただ、末梢事ながら、少年の日(笑)に見て興味をそそられたLPと同じ、アンセルメの横顔のイラストが、ブックレットのデザインに採用されていたのは、嬉しかったです。
投稿: リゴレットさん | 2018年4月14日 (土) 08時39分

リゴレットさん
そのアンセルメ盤は聴いたことが有りません。
昔定評が有った演奏を現在の演奏と聴き比べてそん色ない場合も有りますが、聴き劣りしてしまうことが有りますね。モントゥーのストラヴィンスキーなども一例です。逆にバーンスタインの幾つもの旧録音が現在でも光り輝いているのは前者の例です。

そしてアンセルメですが、スイスロマンドの質も含めて失望することが少なくは有りません。
でも決して嫌いということでも無いのですが。
投稿: ハルくん | 2018年4月16日 (月) 12時40分


ハルくん様
まぁ、英国Deccaは往年のアンセルメのレパートリーを、デュトワ&モントリオール交響楽団で、ほぼ録り直して現在のファンにアピールするディスクを、造り上げましたからね。

アンセルメ翁の録音も、当時の現代作品・近代音楽をこぞって取り上げ、それらの音楽のファンを増やし、聴き手の視野を拡げて下さった功績は、讃えられて然るべきでございます。

輸入盤取扱店に、イタリア・ユニヴァーサル制作の約30枚組の伊仏音楽アンソロジー物を見かけましたので、現在の購入層にもある程度の関心は持たれているんだと、一抹の安心感(笑)も覚えました次第です。
投稿: リゴレットさん | 2018年4月18日 (水) 14時15分

http://harucla.cocolog-nifty.com/blog/2011/02/post-eff5.html

3. 中川隆[-14293] koaQ7Jey 2020年1月21日 15:53:07 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-1163] 報告
ストラヴィンスキー バレエ音楽 「火の鳥」2015 MAR 5 by 東 賢太郎
https://sonarmc.com/wordpress/site01/2015/03/05/ストラヴィンスキー-バレエ音楽-「火の鳥」/


僕がこの曲を母の一言で知ったひょんな経緯はこれに書きました。

ストラヴィンスキー好き
https://sonarmc.com/wordpress/site01/2013/01/30/ストラヴィンスキー好き/


このアンセルメ盤「火の鳥」とブーレーズ盤「春の祭典」を買った高校1年が自分の音楽史の真の元年といってよく、のちに肩の故障で思うようにいかなくなった野球をあきらめようという契機になり、それならついでに受験も頑張ってみようかなという気にもなったという、ひとえに人生の導師のような存在です。

コタニの売り場のお兄さんに言われた「組曲より全曲版がいいよ」という教えを順守してアンセルメ盤を全部覚えてしまい、しばらく組曲版の方を知りませんでした。それを初めて耳にした時の衝撃は忘れません。なんじゃこりゃ?もう全然別な曲であり、オーケストラが妙でフィーナーレに変なホルンのグリッサンドが鳴るに至ってはディズニーの漫画かよという感じです。

しかしもっとも怒りを覚えたのは、大好きなところである「火の鳥の嘆願」がばっさりと切り捨てられていることでした。これです。

https://sonarmc.com/wordpress/site01/files/2014/11/firebird.png

ここのゾクゾクするエロティックな和声はどうだろう!ドビッシー風なんだけども火の鳥にしかないたまらない色香!寝ても覚めても四六時中これが頭の中で鳴るほど惚れ込んでしまい、以来ずっとストラヴィンスキーはもちろん、誰のであれこういう音のする音楽を探し求めてきましたが、ひとつもありません。弾ける方はこの楽譜だけでも鳴らして3小節目の「火の鳥和声」を味わってみて下さい。

これはもう音の魔法なんです。僕はバレエには皆目無関心で観たことがなく、火の鳥がなにをどう嘆願しているか知りませんが、この音の動きを目をつぶって追っているだけで恍惚として法悦の境地をさまよっており、たのむから舞台でドタバタと余計な雑音やほこりをたてんでほしいと願ってしまうのです(バレリーナのかた、すみません・・・)。

これを書いたストラヴィンスキー、そして組曲でこれを捨てたストラヴィンスキー、どっちが本物なんだろうとさんざん迷うことになりました。

魔法はいくらでもあります。まず、冒頭の「導入部」は低弦の不気味なユニゾンで幕をあけます。それにファゴットの低音の和音がからむ部分の雰囲気は一気に我々を魔法の園に引き入れますが、これは森の洞窟を暗示するワーグナーの楽劇ニーベルンゲンの指輪の第2日(3曲目)である「ジークフリート」の幕あけの「序奏」そっくりです。「カッチェイの死」の2小節も「ジークフリート」の第2幕序奏にホルンの重奏で出てくる音型、和声にそっくりです。

感心するのは「王女たちのロンド」のバスのピッチカートの後です。3小節目でアルトがd♮になる、こんな簡素な譜面でたったそれだけなのに、ほのかにサブドミナントのあの希望の灯りがさしこむところ!彼がやたら音の洪水みたいな騒然たる曲で有名と思ったら大間違い、こんな繊細な和声感覚があるからああいうものでも人を魅了できるのです。


https://sonarmc.com/wordpress/site01/files/2014/11/firebird1.png



ところがです。これは作曲者によるピアノ版なのですが、8小節目のf#は全曲版にはなく、ここはファゴットとヴィオラがeを鳴らしています。音まで変えているというのはどうかと思います。あんな素晴らしいスコアを書いておきながらこんないい加減なことがどうしてできるのか神経を疑う。またしてもわからなくなります。

この後に出てくる「魔法のカリヨン」、ここのスコアは春の祭典の先駆けであり、幻想交響曲の第5楽章の妖気を孕んだ傑出した部分です。アンセルメ盤のここの異界の音響のおどろおどろしさはききものです。ところがこれも組曲版はあえなくカット、ひどいものです。ひとことで言ってしまえば、組曲版はいくつか種類がありますが、全曲版の版権が認められない米国で印税稼ぎするためにあえて差異を作りだした改悪版なのです。

特に最も演奏頻度の高い1919年版というのは魔王カッチェイの宮殿にたちこめていた邪悪な霧や火の鳥の魔法の痺れるようなオーラは消し飛び、ディズニーランドのBGMみたいにド派手で子供受けするショーピースになってしまった無残なカリカチュアです。これがプログラムにのっているコンサートは昭和の食堂にあった日の丸が立ってる「お子様ランチ」を思い出し、足を運ぶ意欲が一気に萎えます。正直のところ、なくてもいい楽譜と思います。

むかし音楽誌に「全曲版は冗長なので1919年版が良い」などと書いている人がいて、評論家のあまりのレベルに低さに絶句しました。しかしそういう輩が出かねないぐらい作曲者本人が米国での版権目当てに、要は金儲けのために混乱を生んでいる部分もあるのです。やっぱりこれはドビッシーだなと思う和声は多いし、「魔王カッチェイの踊り」は師匠リムスキー・コルサコフの歌劇「ムラダ」の「悪魔のロンド」とムソルグスキーの「禿山の一夜」の影響が明白なことは禿山のピアノバージョンを聴けばすぐわかります。彼自身、習作に近いと認識していたかもしれず、この曲に深い愛情があったかというとやや疑問のようにも思います。

友人であり作品へのアドバイザーでもあったアンセルメはスコアにあれこれ意見していました。その結果、やがて解釈のちがいから喧嘩して口をきかない中になりました。N響に来演したビデオがありますが、フィナーレの4分の7拍子をザクザク切って全曲版のスコアと程遠いものになっています。この辺にも愛情不足を感じてしまいます。かたや、やはりN響を振ったアンセルメはずっと自然です。喧嘩の影響だったんでしょうか。

さて、この曲の魔法の極点はフィナーレにやってきます。

カッチェイが死ぬと15パートに分割した嬰ニ短調の弱音器付の弦の和音が上昇、そしてトレモロで徐々に霧が晴れるように下降して、ラファエロの絵のような神々しい空気を作ります。ホルンが牧歌的なロ長調の主題を歌う。悪の消滅、そして感謝。ここは田園交響曲の終楽章、嵐の後の神への感謝のムードそのものです。

天使の導きのようなハープのグリッサンドがその歌をヴァイオリンに渡すと、コントラバスがそっと基音のシを添え、ハープのハーモニクスが天への階段を一歩一歩登るようにやさしく歌を支えていきます。そして空からの一条の光のようなフルートがさしこむと、音楽はゆっくりと大団円に向います。

スコアのこの1頁のこの世のものとも思えぬ神々しい響きはあらゆるクラシック音楽のうちでも絶美のものというしかなく、いかなる言葉も無力、無価値です。それをここにお示しして皆さんで味わっていただくしかございません。

https://sonarmc.com/wordpress/site01/files/2014/11/firebird3.png


そしてここから 4分の7拍子の歓喜の円舞がロ長調からハ長調へと高潮し、もういちどロ長調に半音下に戻すところのティンパニとチューバの f# の一発!これをアンセルメは渾身の力でズーンとやりますが、これに何度しびれたことか。半音ずれるだけの転調がこの1発で正当化されてしまう天才の一撃!そして2コーラス目に入るところの h の一撃!

この半音下にずれる転調は、僕のブログを読んでいただいている方は思い出されるでしょう。そう、ボロディンの交響曲第2番の第2楽章トリオに稀有な例があるのです。ストラヴィンスキーがそこから発想したかどうかわかりませんがあれを知らなかったということは考えられません。ただ火の鳥の方は背景の和声の事後的な正当化は何もなくf#のドスンでいわば暴力的にロ長調におさまってしまう。とてもストラヴィンスキー的ではありますが。

この曲の演奏は何回、何種類きいたか記憶にもありませんが、実演で感動したのはゲンナジー・ロジェストヴェンスキーが東京芸術劇場で読響とやったものです。拍手が延々と鳴りやまず、指揮者が指揮台のスコアを手に取って高く掲げ、聴衆と一緒にそれを讃えたのも感動的でした。

もうひとつは95年3月30日にフランクフルトのアルテ・オーパーできいたヴァレリー・ゲルギエフ / キロフ管弦楽団で、ドイツの家に遊びに来ていた母と行った演奏会でした。フィラデルフィア、ロンドン、フランクフルト、チューリヒと言葉もわからないのによく一人で何度も訪ねて来てくれたものです。そのたびに好きな音楽会にたくさん連れて行きましたが、母の一言で知ることになった火の鳥をいっしょにきけたというのも幸せでした。実は今日、母が手術をして、うまくいって先ほど家に戻ったところで、だいぶ前に書き溜めていた縁のある火の鳥を投稿させていただこうということに致しました。


全曲をそのゲルギエフの演奏で。





この曲を知っている方も知らない方も、僕が母とコタニのお兄さんのおかげで買うことになったエルネスト・アンセルメの最後の録音(ニュー・フィルハーモニア管弦楽団を振ったDecca盤)をお聴きになられることを心よりお薦めします。作曲者とひと時代を共有したアンセルメが丹精をこめ、いっさい性急なテンポをとらずにスコアの隅々にまで光を当ててすべての美を描ききった演奏であり、オーケストラが見事にそれを具現しているという文化遺産級の録音であります。

Stravinsky "The Firebird" (Original 1910 Version) - Ernest Ansermet (1968)



唯一の対抗馬としてピエール・ブーレーズ / ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団のCBS盤をあげますが、こちらも指揮者の眼光紙背に徹する空前絶後の名演です。オーケストラのつややかな音響とそれのブレンドによる光彩陸離たる音色美はいまだに並ぶものはなく、当時のブーレーズの音のテクスチュアを分解整理する高度に知的な能力に圧倒されるしかありません。自分もそうでしたが、アンセルメ盤で耳を作ってからこれを聴かれるという順番が理想的かと存じます。


ブーレーズのフィナーレです。





(補遺)
下のビデオを聴くと「f#のドスンでいわば暴力的にロ長調におさまってしまう」部分からをストラヴィンスキーは一音一音をスタッカートで演奏している。来日した折のN響とのビデオも同じであって、それが作曲家の意図だったことは明白だ。現代の指揮者でそうやる人がいないのはどういう経緯があったのか不思議である。


Stravinsky Conducts Firebird



https://sonarmc.com/wordpress/site01/2015/03/05/ストラヴィンスキー-バレエ音楽-「火の鳥」/

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